衆議院

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第35号 平成13年6月5日(火曜日)

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平成十三年六月五日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十号

  平成十三年六月五日

    午後一時開議

 第一 特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律案(内閣提出)

 第二 電気通信事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 温泉法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 浄化槽法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官訴追委員辞職の件

 裁判官訴追委員の選挙

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 預金保険機構理事及び同監事任命につき同意を求めるの件

 公害等調整委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件

 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 航空・鉄道事故調査委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日程第一 特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 電気通信事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 温泉法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 浄化槽法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 債権管理回収業に関する特別措置法の一部を改正する法律案(山本幸三君外三名提出)

 民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員辞職の件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 裁判官訴追委員北側一雄君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員の選挙

議長(綿貫民輔君) つきましては、裁判官訴追委員の選挙を行います。

小此木八郎君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官訴追委員に上田勇君を指名いたします。

     ――――◇―――――

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 預金保険機構理事及び同監事任命につき同意を求めるの件

 公害等調整委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件

 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 航空・鉄道事故調査委員会委員任命につき同意を求めるの件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 内閣から、

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員

 預金保険機構理事及び同監事

 公害等調整委員会委員

 日本放送協会経営委員会委員

 日本銀行政策委員会審議委員

 宇宙開発委員会委員

 労働保険審査会委員

 中央社会保険医療協議会委員

 社会保険審査会委員

及び

 航空・鉄道事故調査委員会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 内閣からの申し出中、

 まず、

 証券取引等監視委員会委員長に高橋武生君を、

 同委員に野田晃子を、

 預金保険機構監事に中嶋敬雄君を、

 公害等調整委員会委員に磯部力君を、

 日本放送協会経営委員会委員に大下龍介君、北島哲夫君、小林緑君、佐々木涼子君及び鳥井信一郎君を、

 宇宙開発委員会委員に川崎雅弘君を、

 労働保険審査会委員に氣賀澤克己君及び佐藤歳二君を、

 中央社会保険医療協議会委員に飯野靖四君及び村田幸子君を、

 社会保険審査会委員に大槻玄太郎君を、

 航空・鉄道事故調査委員会委員に佐藤泰生君、中川聡子君、松浦純雄君、宮本昌幸君及び山口浩一君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 証券取引等監視委員会委員に川岸近衛君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 預金保険機構理事に篠原興君及び松田京司君を、

 日本銀行政策委員会審議委員に中原眞君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 預金保険機構理事に廣瀬権君を、

 公害等調整委員会委員に田辺淳也君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長山本有二君。

    ―――――――――――――

 特定機器に係る適合性評価の欧州共同体との相互承認の実施に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山本有二君登壇〕

山本有二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の適確な実施を確保するため、通信端末機器、無線機器及び電気製品に係る国外適合性評価事業に関する認定等に必要な事項を定めるほか、電気通信事業法、電波法及び電気用品安全法の特例を定める等の措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、欧州共同体向けの通信端末機器、無線機器及び電気製品に係る国外適合性評価事業を行おうとする者は、協定に定める欧州共同体の基準に適合していると認められるときは、主務大臣の認定を受けることができること、

 第二に、登録を受けた欧州共同体の適合性評価機関が実施する適合性評価を受けた端末機器、特定無線設備及び特定電気用品について、電気通信事業法、電波法及び電気用品安全法に定める技術上の要件に適合しているもの等とみなす特例を定めること

等であります。

 本案は、去る五月二十四日本委員会に付託され、翌二十五日平沼経済産業大臣から提案理由の説明を聴取し、同月三十一日質疑を行い、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 電気通信事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第二、電気通信事業法等の一部を改正する法律案、日程第三、消防法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長御法川英文君。

    ―――――――――――――

 電気通信事業法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 消防法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔御法川英文君登壇〕

御法川英文君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、電気通信事業法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、電気通信事業の公正な競争の促進を図る等のため、市場支配的な電気通信事業者の業務の適正な運営の確保、卸電気通信役務制度の導入、電気通信事業者間の紛争処理の円滑化及び基礎的電気通信役務の提供の確保のための措置を講ずるほか、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社が営むことができる業務の追加等を行おうとするものであります。

 本案は、去る五月十六日本委員会に付託され、同月二十四日片山総務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。同月二十九日から質疑に入り、同月三十一日質疑を終局いたしましたところ、本案に対し、民主党・無所属クラブから、情報通信の規律に係る行政組織の見直し規定を設ける修正案が提出され、その趣旨説明を聴取いたしました。次いで、原案及び修正案を一括して討論を行い、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 次に、消防法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、化学物質の火災及び生産、流通の実態等にかんがみ、危険物の保安の確保を図るため、危険物の品名を追加するとともに、引火性液体の性状を有する危険物の規制の合理化を図るため、引火点の上限を定める等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月十八日本委員会に付託され、同月二十四日片山総務大臣から提案理由の説明を聴取し、同月三十一日質疑を行い、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 温泉法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 浄化槽法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第四、温泉法の一部を改正する法律案、日程第五、浄化槽法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長五島正規君。

    ―――――――――――――

 温泉法の一部を改正する法律案及び同報告書

 浄化槽法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔五島正規君登壇〕

五島正規君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。

 まず、温泉法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、温泉を湧出させるための土地の掘削の実施状況にかんがみ、当該掘削の許可の有効期間を設けるとともに、温泉に入浴する者等の健康を保護するため、温泉の成分等の掲示に際してその分析をする者に関する登録制度を設ける等の措置を講じようとするものであります。

 次に、浄化槽法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、浄化槽設備士試験及び浄化槽管理士試験の事務等の適正な実施を図るため、指定法人の制度を設け、指定基準、試験委員、役員または職員の秘密保持義務、主務大臣の監督命令等について定めようとするものであります。

 温泉法の一部を改正する法律案は去る三月九日に、浄化槽法の一部を改正する法律案は同月十六日に、それぞれ本院に提出され、両法律案は五月十八日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、五月二十五日川口環境大臣から両法律案についてそれぞれ提案理由の説明を聴取いたしました。次いで、六月一日両法律案について質疑に入り、同日質疑を終了した後、採決を行った結果、温泉法の一部を改正する法律案は全会一致をもって、浄化槽法の一部を改正する法律案は賛成多数をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。

 まず、日程第四につき採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第五につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 山本幸三君外三名提出、債権管理回収業に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 債権管理回収業に関する特別措置法の一部を改正する法律案(山本幸三君外三名提出)

議長(綿貫民輔君) 債権管理回収業に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長保利耕輔君。

    ―――――――――――――

 債権管理回収業に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔保利耕輔君登壇〕

保利耕輔君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、内外の社会経済情勢の変化にかんがみ、不良債権処理及び資産流動化を一層促進するとともに、倒産処理の迅速化を図るため、債権回収会社の取扱債権の範囲を拡大し、あわせて、債権回収会社の業務に関する規制を緩和しようとするもので、その主な内容は、

 第一に、債権回収会社が取り扱う特定金銭債権の範囲について、貸金業の規制等に関する法律に規定する登録貸金業者が有するすべての貸付債権に拡大するとともに、資産の流動化に関する法律に規定する特定目的会社等が流動化対象資産として有するすべての金銭債権及び法的倒産手続中の者が有するすべての金銭債権を追加すること、

 第二に、債権回収会社は、利息制限法の制限額を超える利息を伴う金銭債権について、適法利息に引き直した上で、元本及び利息を請求できるように改めること

であります。

 本案は、山本幸三君外三名提出によるもので、去る五月二十五日本委員会に付託されたものであります。

 委員会においては、五月二十九日提出者山本幸三君から提案理由の説明を聴取し、六月一日及び本日質疑を行い、これを終了し、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、民事訴訟法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣森山眞弓君。

    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕

国務大臣(森山眞弓君) 民事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、民事訴訟における証拠収集手続の一層の充実を図るため、公務員または公務員であった者がその職務に関し保管し、または所持する文書に係る文書提出命令について、文書提出義務を一般義務とするとともに、文書提出義務の存否を判断するための手続を整備する等の措置を講ずるものでありまして、その要点は、次のとおりであります。

 第一に、公務員がその職務に関し保管し、または所持する文書についても、私文書の場合に提出義務が除外されている文書のほか、その提出により公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある文書等を除いて、文書提出義務があるものとしております。

 第二に、除外された文書に該当するかどうかは裁判所が判断するものとしております。

 第三に、除外された文書に該当するかどうかを判断するための手続として、いわゆるインカメラ手続を設けるものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。平岡秀夫君。

    〔平岡秀夫君登壇〕

平岡秀夫君 民主党の平岡秀夫でございます。

 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました民事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。(拍手)

 これから私が質問いたします民事訴訟法の一部を改正する法律案については、その題名を聞いて、皆さんは、どうも、裁判手続のことなので余り関係がないというふうに思っておられる方も多いのではないかと思います。しかし、この改正法案は、国民の皆さんの権利の保護や権利の行使が十分にできるかどうかの重大な内容を持ったものであります。どうぞ皆さん、しっかりと耳を傾けて聞いていただきたいと思います。(拍手)

 皆さんの理解をより深めるために、あらかじめ、この改正法案の問題の所在を端的に申し上げます。

 それは、この改正法案の内容では、民事訴訟において、裁判所に提出されるべき公文書あるいは裁判所に提出されるべき官公庁の所持する文書の範囲が極めて限られているということであります。

 そこで、これから改正法案の具体的な中身を質問いたします前に、この改正法案を作成しました政府の基本姿勢について問いたいと思います。

 政府の基本姿勢は、公文書や官公庁が持っている文書を、できる限り裁判所に提出しないで済むように制度を仕組もうとしていると言わざるを得ません。

 特に、刑事訴訟関係書類などを一律的に提出義務のない文書であるとした規定を、法制審議会で十分な議論をしないままに改正法案に入れてしまったことは、政府のお手盛りとしか言いようがありません。この刑事訴訟関係書類の取り扱いについては、極めて重要な課題であるにもかかわらず、先ほどの法務大臣の趣旨説明の中にも一言たりとも触れられていないのが現状であります。これは一体どういうことなんでしょうか。

 裁判が国民のためにあることを考えると、適正かつ迅速な裁判を確保するためには、公文書や官公庁が持っている文書についても、できる限り裁判所に提出される仕組みとすることが必要であると考えます。

 平成八年に行われた民事訴訟法の改正の際に付された本院の法務委員会における附帯決議においても、公文書や官公庁が持っている文書についての提出命令の制度は「司法権を尊重する立場から再検討を加えること。」とされているにもかかわらず、そうなっていないのです。

 政府は、そもそも、どのような基本的な考え方に基づいて今回の法律改正を検討したのでしょうか。法務大臣にまずお伺いいたしたいと思います。

 以下、法律案の改正内容の是非について具体的にお尋ねいたします。

 まず、先ほど申し上げました刑事訴訟に関する書類や少年の保護事件の記録などについての取り扱いについてお尋ねいたします。

 これらの文書は、提出の義務があるとされる文書から一律的に除外されております。このため、文書提出の申し立てがあった場合に、その文書が提出命令から除外される文書に該当するか否かの判断を裁判所が検討する手続、いわゆるインカメラ手続からも完全に除外されているわけです。これでは、裁判において真実発見、権利救済のための証拠として必要な刑事訴訟関係書類などを、検察当局、警察当局は、だれのチェックも受けることなく提出を拒めることになってしまいます。

 この点について、法務省は、刑事訴訟法、刑事確定訴訟記録法や、昨年制定された犯罪被害者保護法、さらには運用によって、刑事訴訟関係書類などの提供が可能となっているという見解を示しています。

 しかしながら、民事訴訟手続における文書提出義務の範囲を検討しているときに、他の制度を持ち出して正当化するような見解を示すことは、捜査当局の自己中心性を示しているものにほかなりません。しかも、法務省の示した見解の内容は、具体的な事例に照らして考えてみれば、全く不十分なものであることが明らかであります。

 すなわち、法務省の見解によれば、直接の犯罪被害者ではない者の場合には、刑事訴訟関係書類などは提出されません。例えば、取締役による総会屋への利益供与の責任を追及しようとする株主代表訴訟や、談合業者への損害賠償を請求しようとする住民訴訟を提起した場合には、その訴えのもともとの原因となった刑事事件の訴訟記録は提出されないのです。

 また、法務省の運用で提出がされるという不起訴記録についても、そもそも法務省の御好意によってしか提出がされないという、全くもって前近代的な仕組みになっております。

 例えば、不起訴記録が十分に提出されなかった例として、次のようなものがあります。

 ことしの二月に、八年前に起きた藤沢市の女性殺人事件で一たんは不起訴にされていた男性が殺人容疑で逮捕されましたが、その逮捕のきっかけとなったのは、殺された女性の御両親が、容疑者を相手に起こした民事裁判で勝訴したことでありました。しかし、この民事裁判では、御両親が裁判所を通じて捜査書類の提出を請求したのに対して十分な書類が提出されなかったため、勝訴までに大変な苦労をしてしまったわけであります。

 このように、法務省の御好意による運用だけでは、その提出の対象範囲もごく限られているなど、不十分な点が極めて多いのです。

 さらに、警察当局が所持している犯罪捜査関係書類も、提出義務が課される文書から一律に除外されてしまうおそれがございます。

 昨年問題となった、森前総理の買春疑惑報道に対する損害賠償請求事件において、東京地裁が警視庁に当時の森総理の検挙歴を調査嘱託したのに対し、警視庁は、犯歴情報は犯罪捜査のために収集、保有しているもので調査には応じられないとの理由で回答を拒否したことがあったことを、皆さん、覚えておられますでしょうか。

 今回の改正法案によって、捜査当局は、今後、すべての犯罪捜査関係書類を何らの理由も示さないで裁判所に提出しないで済むことが、法律上も認められることになるわけです。そんなことになってしまっては、制度の全くの後退であります。今回の改正は、一体何を目指したものなのでしょうか。

 刑事訴訟関係書類などについて、これを一律的に提出義務から除外される文書とすることをやめ、一般の公務秘密文書と同様、提出義務がないとされる場合を限定するとともに、提出命令を出すかどうかを裁判所の判断に係らしめるべきであります。

 また、裁判所がその判断をするに当たって必要があると認めるときは、これも一般の公務秘密文書と同様、いわゆるインカメラ手続を認めるべきと考えますが、法務大臣の見解をお伺いいたします。

 第二に、公務秘密文書の取り扱いについてお尋ねいたします。

 今回の法案では、公文書で提出義務が除外されるものは、「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」としていますが、これでは余りに除外の範囲が広過ぎます。

 特に、公務秘密文書のうち、提出義務が除外されるものは、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に限定することになっていますが、この限定は、これまでの判例実務を全く後退させるものです。

 判例では、公文書に対する文書提出命令に関しては、提出によって国家利益または公共の福祉に重大な損失、重大な不利益を及ぼすものについて、その提出義務が除外されるとしてきましたけれども、改正法案の規定は、明らかに、この判例よりも文書提出拒絶範囲を拡大するものとなっています。とりわけ、公務の遂行への影響を基準として提出義務があるか否かを判断する考え方は大いに疑問です。

 現に実施中の公共事業、例えば諫早湾の干拓事業について、その中止を求める訴訟が提起された場合において、事業の妥当性を判断した官公庁の検討文書の提出を求めても、公務の遂行、すなわち、事業の実施に著しい支障を生ずるおそれがあるという理由だけで文書の提出を拒絶できるのです。そんなことでは、文書の提出を拒絶することを安易に認めてしまうことになりはしないでしょうか。

 以上のことから、公務秘密文書として提出義務が除外される文書の範囲を定める基準は、より客観的で、かつ、限定的な基準であるべきと考えますが、法務大臣の見解をお伺いいたします。

 第三に、公務員の自己使用文書の取り扱いについてお尋ねいたします。

 今回の法案では、公務員が個人的に作成しているメモ、記録などは、自己使用文書として提出義務から除外されることとしています。

 しかしながら、例えば薬害エイズ事件において、当時の厚生省が、ロッカーの中に保管されていたとして裁判の最終段階でようやくその存在を明らかにした文書の中には、いわゆる郡司ファイルがあり、その表紙には、「個人メモ」というメモ書きがあったわけであります。今回の法案によれば、この郡司ファイルは、裁判所へ提出する義務のある文書から除外されることになりそうですけれども、それでもよろしいのでしょうか。

 公務員が公務を遂行するために作成して、所持または保管している文書については、それがたとえ、個人的なメモであろうが、「個人メモ」などと表題に書かれていようが、文書提出命令の対象となり得る文書とすべきと考えますが、法務大臣の見解をお伺いいたします。

 最後になりますが、今回の民事訴訟法の改正に当たって改めて判明したことは、政府の発想は、国民のための政治、行政、司法といったものではなく、統治者のための政治、行政、司法という発想であります。(拍手)

 しかし、幸いなことに、この改正法案は森内閣時代に作成、提出されたものでございます。改革断行内閣を訴える小泉内閣は、森内閣と違って、官公庁の所持する文書について聖域を設けることのないよう、以上、私が指摘させていただきました問題点について、国民の立場に立って十分に検討していただけるものと思います。

 そのことを最後に念願いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕

国務大臣(森山眞弓君) 平岡議員にお答えを申し上げます。

 まず、今回の法改正に当たっての基本的考え方についてお尋ねがございました。

 法務省は、平成八年に制定された新民事訴訟法附則第二十七条において、公文書を対象とする文書提出命令の制度について、「行政機関の保有する情報を公開するための制度に関して行われている検討と並行して、総合的な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされたことを受け、同年十月から検討を開始しました。

 その過程においては、不合理な官民格差を生じない方向で、司法権を尊重する立場から検討を加え、かつ、「その経過を広く開示し、国民の意見が十分反映されるように格段の配慮をすべきである。」という国会における附帯決議の趣旨に従って、幅広い角度から議論をし、結論を得ました。

 その基本的な考え方については、先ほど法律案の趣旨説明において申し上げたことでございますが、民事訴訟における証拠収集手続の一層の充実を図るため、第一に、公文書についても、私文書の場合に提出義務が除外されている文書のほか、その提出により公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある文書等を除いて、文書提出義務があるものとすること、第二に、除外された文書に該当するかどうかを裁判所が判断するものとすること、第三に、除外された文書に該当するかどうかを判断するための手続として、いわゆるインカメラ手続を設けるものとすることというものであります。

 本法案は、ただいま申し上げました基本的な考え方に基づき、行政情報公開制度の法制化を念頭に置きつつ、総合的な検討を加えた上で立案したものであります。

 次に、刑事訴訟関係書類などの文書提出命令についても、裁判所の判断に係らしめ、そのためにインカメラ手続を認めるべきではないかとのお尋ねがありました。

 刑事訴訟書類については、刑事訴訟法等が、関係者の利益保護、捜査の秘密及び刑事裁判の適正の確保等と開示により図られる公益等との調整を考慮した上で、手続の段階に応じて、開示の要件、方法等について独自の規律をしております。このため、民事訴訟において、裁判所が刑事訴訟法等により開示が認められる範囲を超えて刑事訴訟関係書類の提出を命ずることになると、関係者の名誉、プライバシー等に対して重大な侵害が及ぶおそれや、捜査、公判の適正が確保されないおそれ等が生ずるものと考えられます。

 また、刑事訴訟関係書類について、裁判所のインカメラ手続により提出義務の有無を判断させる仕組みを採用する場合には、除外文書に該当するかどうかの判断は事件ごとの個別の判断によらざるを得なくなりますが、その審理の過程で監督官庁が捜査の秘密等との関係上詳細な事情を述べることができないときには、裁判所の適正な判断が損なわれることになります。

 また、裁判所は、文書提出命令の申し立てのされた文書のみをインカメラ手続で閲読しても、捜査、公判への悪影響といった、開示による弊害の有無を的確に判断することは困難であります。

 したがって、御指摘のような方法をとることは必要がなく、かつ、相当でもないと考えております。

 次に、公務秘密文書として提出が除外される範囲についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、本法案では、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」文書は、提出義務の対象から除外されております。これは、いわゆる実質秘に該当する秘密を保護するために認められたものでありますが、民事訴訟法においては、既に、公務員の証人尋問に関する第百九十一条第二項において、実質秘をあらわす文言として、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」との表現が用いられております。したがって、文書提出命令における公務秘密文書の条文上の表現も、公務員の証人尋問に関する第百九十一条第二項と同一の表現をとるべきであると考えられます。

 また、「おそれ」という表現は、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずる」ことが将来の予測的判断であることから用いられているもので、秘密の範囲を広く解釈する根拠となるものではありません。

 したがって、提出義務の対象から除外される範囲をより限定的にする必要はないと考えております。

 次に、本法案における、いわゆる自己使用文書の取り扱いについてお尋ねがありました。

 自己使用文書とは、個人的な備忘録、日記等のように、およそ外部の者に開示することを予定していない文書を意味します。このような文書を文書提出義務の対象から除外しているのは、その文書の性質にかんがみ、常に裁判所からの提出命令を想定して文書を作成しなければならないものとすると、個人の自由な意思活動が不当に妨げられることになるからです。

 しかし、他方において、本法案第二百二十条第四号ニは、国または地方公共団体が所持する文書であって、公務員が組織的に用いるものを自己使用文書から除外しておりますから、公務員が組織的に用いる文書であれば、それが「個人メモ」等と表題に書かれているものであっても、文書提出命令の対象となります。

 このように、本法案では、公務員の自由な意思活動が不当に妨げられないように配慮しつつ、公文書を対象とする文書提出命令の制度の実効性を確保しているものであります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十四分散会




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