衆議院

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第21号 平成13年11月30日(金曜日)

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平成十三年十一月三十日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十六号

  平成十三年十一月三十日

    午後一時開議

 第一 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官訴追委員辞職の件

 裁判官訴追委員の選挙

 検査官任命につき同意を求めるの件

 総合科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日程第一 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案(相沢英之君外七名提出)




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    午後二時三十二分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員辞職の件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 裁判官訴追委員塩田晋君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員の選挙

議長(綿貫民輔君) つきましては、裁判官訴追委員の選挙を行います。

小此木八郎君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官訴追委員に鈴木淑夫君を指名いたします。

     ――――◇―――――

 検査官任命につき同意を求めるの件

 総合科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 内閣から、

 検査官

 総合科学技術会議議員

 電波監理審議会委員

 公正取引委員会委員

 日本放送協会経営委員会委員

 中央更生保護審査会委員

及び

 宇宙開発委員会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 内閣からの申し出中、

 まず、

 検査官に金子晃君を、

 総合科学技術会議議員に井村裕夫君及び松本和子君を、

 電波監理審議会委員に小舘香椎子君を、

 公正取引委員会委員に柴田愛子君を、

 日本放送協会経営委員会委員に宮崎満君及び一力徳子君を、

 中央更生保護審査会委員に福井厚士君及び細井洋子君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 総合科学技術会議議員に吉野浩行君を、

 日本放送協会経営委員会委員に須田寛君を、

 宇宙開発委員会委員に立川敬二君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長玉置一弥君。

    ―――――――――――――

 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔玉置一弥君登壇〕

玉置一弥君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。

 本案は、国連を中心とした国際平和のための努力に対して適切かつ効果的に寄与するため、所要の改正を行おうとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、武器の使用に係る防衛対象に、自己と共に現場に所在するその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を加えること、

 第二に、自衛隊法第九十五条を適用除外している規定を削除し、派遣先国で国際平和協力業務に従事する自衛隊の部隊等に所属する自衛官が武器等の防護のための武器の使用ができることとすること、

 第三に、自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務についての特例規定を削除し、国連平和維持隊本体業務の凍結解除を行おうとすること

であります。

 本案は、去る二十二日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日本委員会におきまして、中谷防衛庁長官から提案理由の説明を聴取いたしました。二十七日より質疑に入り、昨二十九日質疑を終了し、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 討論の通告があります。順次これを許します。大幡基夫君。

    〔大幡基夫君登壇〕

大幡基夫君 私は、日本共産党を代表して、PKO協力法の改悪に反対の討論を行います。(拍手)

 本法案は、国連平和維持軍、PKFへの参加凍結を解除し、自衛隊のPKF全面参加に道を開き、これまで政府自身が憲法違反とならないための担保としてきた基本原則さえもなし崩しにして、自衛隊の海外出動を一層拡大するものであります。

 憲法九条にかかわるこのような重大法案を、臨時国会の会期末に突如提出し、わずか二日間、十時間半の委員会審議で、公聴会も開かず、参考人質疑も行わず、法案内容を国民に十分知らせないまま押し通そうとする小泉内閣と与党の乱暴きわまるやり方に、厳しく抗議するものであります。(拍手)

 本法案の重大な問題は、第一に、武装した自衛隊の部隊を紛争冷めやらぬ外国領土に出動させ、国連平和維持軍の武力行使を伴う活動に参加させることであります。

 停戦監視、武装解除、治安の維持など、PKF歩兵部隊の活動は、武力衝突の危険と常に隣り合わせの軍事行動であり、国連の指揮下で、正当防衛の場合だけでなく、任務遂行の妨害に対する武力行使をも認める武器使用基準に基づいて、他国部隊との統一した行動が求められるものです。自衛隊が武力行使に及ぶ危険は明らかであります。だからこそ、政府自身も、憲法上、武力行使を伴うような平和維持軍への参加は困難だと繰り返し言明してきたのであります。それゆえに、九年前のPKO法制定時に凍結せざるを得なかったのであります。このような憲法九条をじゅうりんするPKF全面参加を断じて容認することはできません。

 第二に、PKF全面参加にあわせ、自衛隊の武器使用基準を大きく拡大することであります。

 自衛隊の武器使用を要員の生命等の防護のため必要最小限のものに限るという原則は、政府自身が、PKF参加が憲法違反にならないための担保とするPKO五原則の中心要素と位置づけ、譲ることのできない原則と明言してきたものであります。

 ところが、本法案は、武器使用による防衛対象に、自衛隊の管理下に入った者という極めてあいまいな規定を盛り込み、他国の軍隊の防衛も可能とし、現場の指揮官の判断で、警護活動もなし崩しにやろうとするものであります。

 さらに、自衛隊法九十五条を適用し、武器等の防護の目的で武器使用できるとしています。これは、自衛隊PKF部隊が検問所や警戒パトロール活動で攻撃を受けたら応戦する、任務遂行の妨害に対抗する武器使用に限りなく近づこうとするものにほかなりません。

 この武器防護の武器使用が五原則の枠外のものであることは、政府も認めざるを得ませんでした。五原則に枠外のものを持ち込むことは、五原則そのものを覆すものであります。中谷防衛庁長官は、五原則が崩れたらPKFに参加できないとはっきり答弁しました。この答弁に照らしても、五原則をなし崩しにして自衛隊のPKF全面参加を進める本法案は、憲法違反の法律であります。

 いかに国際貢献を口実にしようとも、戦争放棄、戦力不保持、そして国際紛争の解決のために武力の行使はしない、この日本国憲法の平和原則を踏みにじることは、絶対に許されません。

 私は、この法案を直ちに撤回することを求めて、反対討論を終わります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 岩屋毅君。

    〔岩屋毅君登壇〕

岩屋毅君 私は、自由民主党、公明党並びに保守党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 我が国は、平成四年の国際平和協力法の施行以来、今日までの九年間で、国際連合平和維持活動を六回、人道的な国際救援活動を三回、国際的な選挙監視活動を四回にわたって実施してきたところであります。

 今般、これまでの活動の経験を踏まえ、我が国が、国際連合を中心とした国際平和のための努力に対して、より一層適切かつ効果的に寄与するため、自衛隊の部隊等が行ういわゆるPKF本体業務の凍結を解除するとともに、国際平和協力業務に従事する自衛官等について、自己と共に現場に所在するその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するために武器を使用できるようにすること、及び、派遣先国で国際平和協力業務に従事する自衛官にも、自衛隊法第九十五条、すなわち武器等の防護のための武器使用に関する規定を適用することを内容とする改正を行うものであります。

 停戦監視などのPKF本体業務に自衛隊の部隊が参加することについては、もともと憲法上の問題はなかったものの、内外の一層の理解と支持を得るため、「別に法律で定める日までの間は、これを実施しない。」こととされてきたところであります。しかし、我が国の自衛隊の持つ高水準の組織、装備、能力及びこれまで六回にわたって国際平和協力業務に参加してきた経験を生かして、PKF本体業務への参加に道を開くべき時期を迎えていると考えます。

 我が国が国際平和のための活動に積極的に貢献することについては、既に国民から広く支持されているところでありまして、国連及び国際社会からも強い期待が寄せられているところであります。

 ところが、現行の国際平和協力法におきましては、武器の使用により守ることができるのは自己及び我が国のPKO要員に限られており、現場でともに活動する他国の要員や国際機関の職員は防衛対象にはなっておりません。

 しかしながら、国連PKOは、各国から派遣される要員が参加し、一体となって実施するものであります。このような状態では、国際貢献に一緒に汗を流す仲間である他国の要員などが危険にさらされていても、我が国の要員は何もできない、何もしないということになるわけでありまして、これでは、他国からの信頼、ひいては国際社会からの信用を失うことにもなりかねません。

 今回の改正によりまして、みずからの身を守る手段を十分に有していない自己の管理の下にある他国の要員も守ることができるようになるわけで、このことは、我が国要員への信頼を一層深めることにつながると確信しております。

 さらに、現行法では自衛隊法第九十五条が適用除外されていることにより、我が国の自衛官は、自分が持っている武器等を守ることができないという極めておかしな状況に置かれているわけであります。

 これも、もともと憲法上の問題はなかったものの、法の制定当時、自衛隊派遣の実績も経験もなかったことから、武器等を守ることによってかえって事態の悪化を招く危険があるということでありましたけれども、その後の六回に及ぶ自衛隊の派遣実績を踏まえれば、もはや自衛隊法第九十五条を適用除外する必要はなくなったものと考えます。

 したがいまして、この際、自衛隊法第九十五条の適用除外を解除し、武器等を守るための武器使用を認めることは、極めて妥当な改正であります。

 以上にかんがみれば、この改正案は、我が国の派遣する要員が、他国のPKO要員との間で今まで以上の信頼関係を持って、国際平和協力業務を一層適切かつ効果的に、そしてより安全に実施することを可能とするために、ぜひとも必要な改正であります。

 ますます相互依存を深める国際社会において、資源の多くを海外に依存する我が国においては、国際平和の実現は我が国自身の問題として取り組むべき課題でありますが、近年、我が国の国際平和への貢献については、国際社会からの期待が一層高まってきているところであります。また、もとより、国際平和への協力につきましては、広範な国民の皆さんの理解と支持、そして国会における幅広い合意に立脚すべきものであります。

 そのような意味で、この改正案は、内外のこうした期待にもこたえ得る、そして国民と国会の幅広い支持を得ることのできる、現段階における最善の案であると考えます。

 PKO活動は、ノーベル平和賞を受賞したことに示されますように、国際社会において高い評価をいただいてきた、極めて崇高な使命を担った活動であります。この活動に参加することが我が国の憲法の精神に抵触するなどという批判は全く当たらないものと考えております。

 今回の改正は、我が国が国際平和のためにより一層貢献できる道を開くものであり、憲法の目指す国際社会における名誉ある地位を占めるための着実な一歩であります。しかしながら……

議長(綿貫民輔君) 岩屋毅君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

岩屋毅君(続) この改正が実現してもなお、引き続き検討すべき課題が残されていることを強く申し添えまして、私の賛成討論といたします。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 大島令子君。

    〔大島令子君登壇〕

大島令子君 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。

 国会の民主的なルールは一体どこに行ってしまったのでしょうか。本日は、まだ財務金融委員会の審議が続いているにもかかわらず、本会議の開会がたびたび延長されるなど、国会の空洞化そのものです。

 私は、このことに対して政府・与党に強く猛省を促し、いわゆる国連平和維持活動協力法の一部改正案に対する反対討論を行います。(拍手)

 今回の改正案は、PKO協力法の一部の手直しという形をとっておりますが、PKO参加五原則を骨抜きにする危険なものであると言わざるを得ません。

 本改正案では、自衛官の防護の対象を自己の管理の下に入った者に広げ、さらに、自衛隊法第九十五条の適用除外を解除することとなっております。

 テロ対策特別措置法で初めて導入された自己の管理下とは、そもそも非常に幅の広い概念であり、武器の使用という非常な慎重さが必要とされる際の基準として、本来使われるべき言葉ではありません。

 さらに、自衛隊法九十五条の適用除外を解除することによって、武器弾薬の防護のために武器が使用できることとなっております。

 今回の改正によって、テロ対策特別措置法で想定されていた被災民や傷病兵だけではなく、他国のPKO要員や要人も警護できるとされており、武器の防護のための武器使用が可能になることとあわせて、PKO活動が武力行使に至る可能性が格段に高くなることは間違いありません。なし崩し的に解釈を変えて防護対象を際限なく広げる、このような手法を断じて許すわけにはまいりません。

 次に、PKF本体業務の凍結解除の問題でございます。

 今回の改正によって、これまで凍結されていたPKF本体業務として、新たに、停戦・武装解除の監視や駐留・巡回、放棄武器の収集・保管・処分などを行うことが可能になります。これらは、いずれも、一九九二年にPKO協力法が成立した際に、自衛隊員が戦闘に巻き込まれ、憲法が禁じる武力行使を招くおそれがあるとして凍結されたものです。しかし、こうした疑念は現在も何ら解明されていないというのが現状であります。

 海外での武力行使に直結しかねないPKF本体業務の凍結を解除するには、慎重にも慎重を期して議論を尽くすべきであることは当然です。一九九二年のPKO協力法は成立に一年余を費やしたことを考えても、今回、わずか数日間の審議で凍結解除を行うのは、余りにも拙速ではないでしょうか。PKO活動九年間の実績といっても、今回の改正に当たっては、何らの検証作業もなされておりません。

 専守防衛に徹し、海外に出ることはない、必要最小限の自衛力にとどめるとして創設された自衛隊が、PKOを皮切りに海外に展開し、テロ対策を口実に戦時出動までしてしまったことは、国民と国際社会に対する裏切りにほかなりません。

 社民党は、これからのPKOは、紛争予防や平和構築を基軸に据えるべきであり、社会党時代に提唱した、非軍事、文民、民生を基本とした別組織による国際協力をいま一度本格的に検討するべきであると確信しております。(拍手)

 現在のPKOをめぐる議論は、まず自衛隊ありきの発想に終始したため、多くの矛盾と無用な混乱を招いております。本法案は、テロ対策特別措置法成立の勢いに任せ、PKOを名目に自衛隊の活動領域をさらに広げるものであり、国連協力の装いを凝らした自衛隊活用法案にほかなりません。

 憲法が禁じた武力行使に道を開く本改正案を撤回し、平和憲法の理念に沿った国際貢献のあり方を真剣に議論していく、このことを強く申し上げて、私の反対討論といたします。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 相沢英之君外七名提出、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案(相沢英之君外七名提出)

議長(綿貫民輔君) 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長山口俊一君。

    ―――――――――――――

 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近の社会経済情勢にかんがみ、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五十三条に規定する金融機関等からの資産の買い取りについて、金融機関等の不良債権の処理を促進するため、不良債権の買い取り方法を多様化するとともに、買い取り価格決定方式の弾力化を図る等の措置を講じようとするものであり、以下、その概要を申し上げます。

 第一に、預金保険機構は、平成十六年三月三十一日までに、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五十三条第一項第一号ニに掲げる金融機関等から資産の買い取りに係る入札の実施の広告または申し出がなされた場合に、入札への参加により資産を買い取ることができることにしております。

 第二に、預金保険機構と同機構にかわって資産の買い取り等を行う整理回収機構との間の特定整理回収協定に、整理回収機構は、金融機関等から買い取った資産について、その処分方法の多様化に努め、当該資産の性質に応じ、経済情勢、債務者の状況等を考慮し、当該資産の買い取りから可能な限り三年を目途として回収または譲渡その他の処分を行うよう努めること、また、その際、当該資産に係る債務者の再生の可能性を早期に見きわめ、その可能性のある債務者については速やかな再生に努めることを追加することにしております。

 第三に、金融機関等の資産を買い取る場合または当該資産の買い取りに係る入札に参加する場合の価格は、時価によることにしております。

 本案は、去る十一月二十日当委員会に付託され、翌二十一日提出者相沢英之君から提案理由の説明を聴取し、二十七日から質疑に入り、二十八日には参考人の意見聴取を行う等慎重な審査を進め、本日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 討論の通告があります。順次これを許します。長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 民主党の長妻昭でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました金融機能の再生のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、断固反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 重病ではありますけれども、治る見込みのある患者さんに、痛みを抑えるためだけにモルヒネを打つ、そして手術を先延ばしにする、これでは、治る病気も治りません。これが今回の、整理回収機構、RCCの強化策と言われる法改正の正体であります。(拍手)

 不良債権処理という手術をこれ以上先延ばしすると、本当に日本経済が死んでしまいます。一体いつまで、日本という国は不良債権の処理を先延ばしし続けるのでしょうか。もう十年近くも、先延ばしし続けております。国家的問題どころか、日本の不良債権問題は、世界の経済不安の震源地、時限爆弾となってしまいました。

 本法案のポイントは、RCCが金融機関から不良債権を買い取るときの価格を時価とするということにあります。

 現行法の条文には、買い取る価格は不良債権が回収不能となる危険性を勘案して適正に定められたものでなければならないとあります。つまり、現行法は、損を出さないように買い取り価格を設定しなさい、こういうふうに決まっているわけであります。当然、RCCに損が出た場合は国民負担、つまり税金で穴埋めすることになりますから、今の現行法の条文は理にかなったものであります。ところが、政府は、本法案では、買い取り価格を時価とするという形に変更するということであります。

 本法案のねらいは明白です。RCCに金融機関の不良債権を高値で買い取らせるというところにあります。高値で買ってくれるなら、金融機関は、お荷物の不良債権を喜んでどんどん売るでしょう。

 しかし、本法案のスキームでは、RCCは買い取った不良債権を買い取り額ほど資金回収できず、損が出ます。そして、その損は最終的には税金で穴埋めされるのです。

 金融機関がお金を貸し出したものの、利息が支払われなかったり、お金が返ってこないなどの不良債権に対して、国民の税金で、金融機関の責任を問わないまま穴埋めしてあげる。何とも金融機関にとって都合のよい法律ではありませんか。金融機関がこぞって賛成するのは当たり前です。

 なぜ、法案提出者は過去の失敗に学ばないのでしょうか。今から約三年前、金融健全化法に基づいて、主要銀行に約七兆円の公的資金が投入されました。全然健全でないにもかかわらず、健全であるというフィクションに基づいて公的資金を投入したため、経営者の責任は問われませんでした。公的資金を投入して不良債権問題は解決すると、当時、胸を張っていた政府は、今の惨たんたる銀行の現状を見て、どう弁解するのですか。

 ここで学ぶべき教訓は、責任を問わないままの公的資金の投入は絶対にうまくいかないということであります。効果が上がらず、最終的に税金をどぶに捨てることになる。

 金融危機を回避するために、銀行の経営者を総退陣させた上、過去の甘い融資審査など責任追及をして、残すべき銀行に対してだけ公的資金を注入するのなら、まだわかります。しかし、本法案のように、責任を問わないままの公的資金の裏口入学では、貴重な税金がむだ金になってしまうのは、火を見るより明らかです。まさに天下の悪法と断ぜざるを得ません。(拍手)

 さらに、本法案では、RCCが不良債権一括売却、バルクセールの入札にも参加できるとありますが、間違いなく、民業圧迫になります。

 現在、サービサーと言われる、不良債権を買い取る、RCCと同じ業務を行う民間企業が、日本には五十社以上もあります。そこは、不良債権の企業をよみがえらせる豊富なノウハウを持っているプロ集団も、多く存在するのです。

 しかし、税金で補てんされるRCCと、価格競争で勝てるはずもありません。まさに民業圧迫にもなりますし、民間のプロの不良債権再生ノウハウも生かされなくなるという、二重の意味で不幸です。

 法案提出者からは、以下のような反論が聞こえてきそうです。現行法のRCCでは余りに不良債権の購入価格が低過ぎて、金融機関は余りRCCに不良債権を売らない、現行法では不良債権処理は進まないのじゃないか、こういう反論が聞こえてきそうです。これは全く本末転倒の議論です。

 現在、民間サービサーは、紛れもなく、時価で不良債権を買い取っているはずですが、それでも、余り買い取りが進んでいないのです。なぜか。銀行が提示してくる不良債権の売却希望額が時価を大幅に上回るからなんです。それはなぜか。銀行が不良債権を厳格に資産査定をして厳格な引き当てをしていないから、損を出さないために、過大に時価より高い売却希望価格を出さざるを得ないのです。

 決して、買い取り価格が低過ぎるから不良債権の売却が進まないのではありません。RCCの買い取り価格の問題じゃないのです。問題は、不良債権の売り手である銀行が売却希望額を高過ぎる設定にせざるを得ない、ここに原因があるわけです。

 ぜひ、本法案を否決して、不良債権処理に裏口から取り組むのではなくて、王道で取り組むべきであります。(拍手)

 まず、不良債権に対して厳格な資産査定をする、そして厳格な引き当てをする、これを金融庁が徹底監視をする。そして、過少資本行がふえて金融危機が発生しそうになった場合、一時、公的管理下に銀行を置く。そして、資産を詳細に分析して、残すべき銀行と退場させるべき銀行を選別する、そして、残すべき銀行は経営者を総退陣させて、経営改革をさせる。ここで初めて、公的資金を再注入した上で、公的管理を解いて民間に戻していく。これが王道の不良債権処理であると考えます。

 不良債権処理を先延ばししたこの十年、このような王道の不良債権の抜本処理は、やろうと思えば、いつでもできたのです。政府の先延ばしの責任は、万死に値します。

 本日、先ほどの衆議院の財務金融委員会で、森金融庁長官の不当な言動が問題になりました。

 十月二十四日、銀行会館の八階で、森長官と銀行の定例意見交換会がありました。その席で、森長官は、特別検査に関して二つの問題発言をしております。一つは、特別検査の結果を中間決算に反映するのかという点については、それは、そもそもできっこない話であり、やや期待を込めて言ったにすぎない、こんな発言をしている。もう一つは、決して破綻懸念先に落とすことを目的にして特別検査に入るわけではない、こういう発言もしている。

 銀行幹部を前にした金融庁長官の発言とは、到底思えません。特別検査も八百長だったことが明らかになったわけです。とんでもない話です。これほど重要な問題で、財務金融委員会では、森長官を呼ばないまま、採決が強引になされました。

 これまで、財務金融委員会では、良識ある自民党議員の皆さんが大量欠席したり、法案提出者が委員会を遅刻したり、この良識ある皆さんは、陰ながら、この悪法の成立を引き延ばす行動に出たのだと私は思いたい。そうでなければ、余りにたるんでいる。(拍手)

 採決の際には、心ある与党の皆様には、こぞって席を立って、この本会議場から退室いただくことをお願いいたします。

 いいかげんに、ここまで来たら、責任先延ばしの政治と決別すべきです。このままでは、日本経済の破滅どころか、世界経済の破滅を招きかねないのです。

 これで、断固反対の討論を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 鈴木淑夫君。

    〔鈴木淑夫君登壇〕

鈴木淑夫君 私は、自由党を代表いたしまして、金融機能の再生のための緊急措置法の一部改正案に反対の討論をいたします。(拍手)

 反対の第一の理由は、この法案がRCCの不良債権買い入れ価格の引き上げや入札への参加を容易にすることによって、結果的には国民の税負担による銀行救済スキームをつくろうとしているからであります。(拍手)

 この法案は、いわゆる時価での購入や入札参加の拡大により、金融再生勘定十兆円の政府保証のうち、まだ使われていない約四兆円を活用して不良債権を積極的に買い上げようとしておりますが、今まで約四百億円弱しか買い上げできなかったRCCが四兆円規模で買い上げを行うためには、これまで国民負担を最小限に抑えるという原則で決めてきた買い上げ価格を甘くする以外には、不可能であります。また、入札に参加して実際に落札するためには、民間サービサー等が提示する価格よりも高値をオファーしない限り、不可能であります。

 これらはいずれも、買い上げ後の二次ロスの危険性を拡大するもので、最終的には税金による国民の負担を増大させるものにほかなりません。これは、高値買い上げのツケを間接的に税負担で払うことで銀行を救済することにほかならず、許されることではありません。救済しなければ生き残れない銀行は、企業と同様、市場から退出すべきだというのが、私ども自由党の一貫した基本的主張であります。(拍手)

 反対の第二の理由は、RCCが買い上げた不良債権について、企業再生ファンドを活用して借り手企業を再建するとしておりますが、企業再建の専門集団である銀行でさえ手に負えなくなった厄介な不良債権のみをRCCに売却するのでありますから、寄せ集め集団であるRCCの能力で果たして企業再建がうまく進むのか、すこぶる疑問であります。

 企業再生ファンドには、政策投資銀行本体から五百億円、政策投資銀行を経由して産業投資特別会計から五百億円、合計一千億円が充てられますが、企業再生に失敗すれば、これもまた、最終的には税金による国民の負担となります。

 さらに、買い上げた不良債権の担保不動産を都市基盤整備公団を利用して整理したり、政策投資銀行等の融資を活用して企業再生を図るとしておりますが、特殊法人の力をかりて不良債権を処理するというこの法律の考え方自体が、行政改革の流れに逆行するではありませんか。都市基盤整備公団自体は廃止の方向となっており、小泉改革全体として政策の整合性がとれていないではありませんか。

 不良債権は、これまで、全国銀行ベースで見まして約七十兆円ほど処理されてきましたが、金融再生法開示債権の総額は、十三年三月末でも、なお三十三兆円あります。好況であれば、銀行はあと数年のうちに三十三兆円程度なら処理できるでしょうが、失われた十年間の損失と、今始まったマイナス成長が新たに不良債権をどんどん生み出している現状では、RCCがこの法律で想定しているような努力を幾ら払ってみたって、とても三年以内で処理することはできません。

 小泉総理は、構造改革なくして景気回復なしとして、構造改革の重要な柱に不良債権処理を掲げておりますが、不良債権処理そのものは構造改革ではないのです。それは、バブルに踊った一部の大企業や、査定の甘かった金融機関の護送船団方式の後始末であって、構造改革の本筋ではありません。

 構造改革とは、本来、日本の仕組みを変えることであります。例えば、事業活動の規制廃止と統一市場ルールの確立、民業を圧迫するすべての特殊法人の廃止と政府事業の民間への開放といった、経済社会の仕組みを変えることであります。これを実現することによって、創造力豊かで活力ある民間経済活動の舞台を広げ、日本経済を民需主導の持続的成長軌道に復帰させたとき、おのずと、民間の自主的な努力による不良債権の処理が進むのであります。我々自由党は、常に、このことを主張しております。

 国民の税金で銀行を救済しながら、他方では、失われた十年間の景気低迷と、今始まった二年連続のマイナス成長で、一時的に経営が悪化した中堅中小企業への貸し出しまでもが、厳密な査定によって不良債権とされ、早期処理の対象にされなければならない理由がどこにあるのですか。

 この法案には、仕組みを改めるという意味の、本来の構造改革の中身は全くありません。ただ、血税による銀行救済と、不況に悩む中堅中小企業や住宅ローンの重圧に苦しむ個人の借り手を圧迫する危険性だけが含まれていることを指摘して、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十三分散会




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