衆議院

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第6号 平成14年2月6日(水曜日)

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平成十四年二月六日(水曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  平成十四年二月六日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。
    〔鳩山由紀夫君登壇〕
鳩山由紀夫君 小泉首相、一昨日の施政方針演説、拝聴いたしました。
 あなたは、いつ、自分の言葉を失ったのでしょうか。あなたは、いつ、自民党をつぶす、日本を変えるという志を捨てたのでしょうか。(拍手)構造改革をなさるというなら、なぜ、日本再生の展望もビジョンも示すことができなかったのでしょうか。私は残念でならない。一国の宰相としての自覚をお持ちいただきたい。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、総理の施政方針演説に対し質問をするとともに、私の所信の表明を行います。(拍手)
 とりわけ、私は、小泉内閣に決定的に欠けている説明責任と結果責任について、厳しくただしてまいります。
 二〇〇二年は、昨年末の愛子内親王殿下の御誕生を受け、国民にとって喜ばしい年になるはずでした。しかし、小泉内閣が今日国民にもたらしたものは、日本売りという最悪のシナリオの到来であり、現在と将来に対する強い不安でしかありません。
 このようなときだけに、私は、総理の施政方針演説に注目をしていました。しかし、それは、何と、事なかれ主義に覆われた、官僚の作文そのものではありませんか。そこには、差し迫る危機に対する緊張感もまるでなく、経済再生の見通しも処方せんも示されていません。
 政治決断が求められる医療制度改革やBSE問題に対する覚悟と責任も欠如しており、あれほど世間を騒がせたアフガニスタン復興支援会議におけるNGO排除問題についての言及もなく、緊急事態法制については基本方針すら見えないままでした。
 総理、あなたには、物事を直視し、それと真剣に向き合うという姿勢が根本的に欠けているのじゃありませんか。私は、強い失望を禁じ得ません。(拍手)
 その第一は、抵抗勢力と手を握って行った、田中眞紀子外務大臣の更迭問題です。
 私は、昨年末とことしの初め、パキスタン、アフガニスタン、そしてインドを訪問いたしました。これらの国々を訪れて、私は、改めて、世界は今、国際協力と多くのNGOの活動によって支えられていることを強く感じました。さきのアフガニスタン復興支援会議は、まさに、こうした歴史の大きな流れを受けた極めて重要な会議であったはずです。
 ところが、外務省幹部による恣意的なNGO参加拒否に対して、世界各国から集まったNGOのリーダーたちは、口々に、排除なんてヨーロッパではあり得ないことだと、その古い体質に驚いたのでございます。
 一体、どのような理由で、NGOの参加を決断した田中眞紀子大臣を更迭したのでしょうか。行政的責任ですか、それとも政治的責任ですか。国民の皆さんは知りたがっているのです。明確にお答えください。(拍手)
 また、NGOの参加拒否を決定したのはだれであり、どのような権限に基づくものか。国民の税金をあたかも自分の金でもあるかのような発言をしたとされる鈴木宗男議員が、外務省のだれに、どんな内容の働きかけをしたのか。また、それらの真実を追求し、国民に伝えるために、私たちが要求している田中眞紀子前大臣、鈴木宗男前議院運営委員長、野上義二事務次官、NGOの大西健丞氏の参考人招致要請に賛同しますか。すべて、総理に伺います。(拍手)
 ところで、聞くところによりますと、官僚出身の川口さんが新しい外務大臣に就任したことに対して、外務官僚は大喜びをしたといいます。その川口新大臣をして、一体、どうやって外務省改革を進めていくおつもりなのですか。既にもうトーンダウンしているじゃありませんか。
 私は、このたびの出来事は、鈴木宗男議員や外務官僚の、根強い官尊民卑の意識のあらわれだと受けとめています。そもそも、国民があなたに期待したのは、こうした古い体質を変革することでありました。にもかかわらず、事もあろうに、森前総理や青木参議院幹事長と結託をして、あなたは、外務省改革に立ち向かおうとした田中外務大臣を更迭し、外交機密費・官房機密費問題、さらには、ODAをめぐる利権問題にふたをしようとしたではありませんか。あなたが手を組んだこれらの政治家たちは、密室談合で森総理を決めたあの五人組そっくりじゃありませんか。(拍手)
 国民は、あなたのその決定の中に、昨年以来、道路公団問題等で抵抗勢力に屈し、妥協を続けた姿を重ね合わせて失望し、さらには、これでは構造改革はできないと見抜き始めています。そのことが支持率の急落につながりました。
 あなたは、今回の騒ぎで一番傷ついたのは自分だと予算委員会で答弁しましたね。しかし、最も傷ついたのは、自民党をつぶすと言ったあなたに期待した国民だということに、どうしてあなたは気づかないのですか。(拍手)
 私は、小泉総理が自民党内の抵抗勢力と対決し、国民にとって必要な構造改革を断行するのであれば、協力する用意があるとまで言ったことがあります。しかし、同時に、もし総理が改革にひるみ、抵抗勢力に屈することがあるならば、そのときにはあなたの首をとらなくてはいけないと申し上げたのであります。今、まさにそのときだと言わなければなりません。(拍手)
 日本は、今、未曾有の危機の局面を迎えています。小泉総理がどんなに声を大に改革を叫んでも、一向に事態は改善していません。そして、何より最大の危機は、政府にこの事態に対する危機意識が欠けていることであります。
 私は、小泉総理との最初の党首討論で、不良債権処理をスピーディーに推し進めることが日本経済再生のかなめである、したがって、その正確な実態を把握し、国民に知らせることが肝心だと指摘しました。しかし、総理は、その圧倒的な支持率におごり、真摯な答弁もせず、逃げ回りました。まさに、今日の経済不況は、総理自体の危機意識の欠如が生んだ経済無策の結果と断ぜざるを得ません。
 官僚政治や自民党的なるものとの妥協を繰り返す小泉総理の口先だけの改革論に、マーケットはもう既に明確にノーを突きつけています。株安、円安、債券安のトリプル安が進行し、マーケットは大規模な日本売りを始めています。株価は一万円を大きく割り込み、バブル崩壊後最安値を更新しました。我が国は、今や、金融不安がトリプル安を招き、さらにトリプル安が金融不安を増幅させて日本売りを加速させているという悪循環、すなわち、小泉スパイラルに陥っているのです。(拍手)
 総理は、施政方針で、デフレスパイラルに陥ることを回避するための細心の注意を払うとしていますが、このような事態を招いた経済無策に対する責任とあわせて、その具体的な処方せんを聞かせてください。
 総理は、初めての所信表明演説で、米百俵の精神を説き、構造改革に取り組む姿勢を示しました。しかし、今国会では、昨年秋の臨時国会であれほど全く考えていないと強調していた第二次補正予算を、うまいへそくりがあったと無邪気に喜びながら、憶面もなく提出された。
 今の痛みに耐えてあすをよくしようという米百俵の精神と、あすの借金返済のためにとっておかなければならないお金に安易に飛びついてしまう神経は、全く矛盾しているのじゃありませんか。米百俵の精神も、単に国民を惑わす話だったのでしょうか。
 さらに、総理は、需要追加型の政策とは決別すると宣言したにもかかわらず、なぜ、需要追加型の第二次補正予算を組んだのでしょうか。総理がもし政策転換をしたのであれば、はっきりとそう宣言すべきではありませんか。
 私は、小泉総理の経済政策は、口先では改革をうたい、実態はこれまでと同じ、自民党の既得権益擁護政策だと思います。
 具体例を挙げましょう。
 来年度予算の省庁別シェアや公共事業のシェアは、昨年度当初の小渕総理の予算、今年度当初の森総理の予算とほとんど変わりがありません。川辺川ダムなどのむだな公共事業も予算計上されています。施政方針では、中小企業を積極的に応援すると言いながら、関連予算は削減するという矛盾したこともやっています。本質的な部分は全く変わっていません。小手先の、改革もどきなのです。総理に反論があれば伺いましょう。
 もっと悪いことには、小泉総理の予算編成は、数字合わせのための借金先送りや隠れ借金などの会計操作を行い、財政をますます不透明なものにしていることです。来年度予算では、一・五兆円もの隠れ借金が復活しているではありませんか。過去、財政再建に失敗した多くの国が、このような同じ過ちを繰り返しています。総理も同じ轍を踏もうというのでしょうか。御見解を聞かせてください。
 今、日本経済再生を図るためには、徹底した不良債権処理を進めて金融再生を確実にするとともに、家計における個人消費を活性化させることが不可欠です。しかし、小泉内閣は、イの一番に支援すべき勤労者世帯に痛みをどんどん押しつけるという、完全に逆の政策をとり続けています。
 私は、業界支援中心の経済政策に終止符を打ち、勤労者・自営業者世帯の生活を全面的に支援する、家計支援型の経済雇用政策をとることが何よりも必要だと考えます。
 すなわち、従来型公共事業に使われてきた予算を大幅に見直し、福祉、教育、環境など国民生活の質を支える分野へと切りかえるといった大胆な政府予算の組み替えを実行すること、また、住宅ローン減税や教育費負担軽減などを実施して消費を促進すること、そして、年金、医療など社会保障制度の充実や雇用機会の確保に全力を挙げて不安を取り除き、家計の行動が貯蓄ではなく消費へと向かうように支援することです。
 二〇〇二年度政府予算案には、そうした思い切った資源配分の切りかえは全く見られません。このことによっても、小泉内閣が古い利権配分型予算の構造改革に完全に失敗していることは明らかです。総理、これに反論できますか。
 道路四公団の改革は、第三者機関に丸投げされてしまいました。しかも、第三者機関には個別路線の優先順位の決定権を与えず、路線の選定も国土交通省に任せるというのでは、族議員にすべて任せると同じ、骨抜きじゃありませんか。(拍手)
 道路特定財源の一般財源化の見直しも言葉だけ、いかにも改革を装う小泉流ごまかしそのものであります。民主党はそのすべての一般財源化を決めていますが、小泉総理は、抵抗勢力が本気で抵抗しなくても済むほどのところに巧みに着地させてしまいました。
 小泉総理、あなたがやっていることは、ことごとく抵抗勢力との手打ちじゃありませんか。道路特定財源の一般財源化に踏み込まない理由はなぜなのか、総理の明快な答弁を求めます。
 九八年の金融国会において、我が党が提案した金融再生法が成立したとき、金融行政は変わるかもしれないという期待感が広がりました。しかし、その後の金融行政は、全くその期待を裏切るものでありました。銀行業界とのもたれ合い体質から脱却できずに、不良債権の真の実態を隠ぺいしたことが、問題をさらに深刻化させました。これまで三十三兆円もの巨額の公的資金を使いながら金融再生に失敗した柳澤金融担当大臣について、即刻、責任をとっておやめいただかなくてはなりません。総理、いかがでしょうか。
 我が国の金融は、今や、断崖絶壁に立っていると言っても過言ではありません。総理は、現時点では資本注入は必要ないが、万が一の場合は大胆かつ柔軟に対応するという意思を表明されております。万が一とは、どういうことなのでしょうか。
 政府や銀行の表向きの発言では、大手行の自己資本比率は一〇%以上あるということになっています。それだけ健全な銀行に、今後、資本注入を行う必要が生じてくるかもしれないというのであれば、どういう理屈なんですか。総理、はっきりとした原理原則をお示しください。
 民主党は、真の金融システム再生のための最終手段として、金融再生ファイナルプランを発表いたしました。すなわち、緊急一斉検査を実施して不良債権の真の実態を明らかにし、債務超過の銀行は一時国有化をし、過少資本の銀行には経営者や株主の責任を明確にした上で資本注入を行い、速やかに金融システムを健全化するというものであります。そして、一時国有化した銀行の中から中小企業向け融資に特化した銀行をつくり出し、間接金融市場の構造改革も実現しようという考えも盛り込んでいます。全国の中小企業が成立を求めている、不当な貸し渋りなどを許さないための地域金融円滑化法も、あわせて法案提出を進めています。
 銀行業界とのなれ合い、もたれ合い体質につかった自民党政権、さらには、銀行族とさえ言われてしまっている小泉総理のもとでは真の金融再生はできないこと、そして、それができるのが、唯一、民主党であることを強く訴えます。(拍手)
 十二月の完全失業率は五・六%に達し、間もなく六%失業の時代に突入しつつあると言われています。完全失業者数は三百三十七万人、しかも、倒産、リストラ等による失業者が過去最高の百二十五万人を記録しています。
 総理は、青木建設倒産の報を受け、構造改革が進んでいる証拠と、あたかも好ましい事態と言わんばかりのコメントを発しました。そこで起こった倒産、失業といった不幸な出来事に対する思いやりのない言葉に、私は、この人には温かい血が流れていないのではないかと背筋が寒くなりました。
 自殺者は年間三万二千人にも達し、中でも、会社倒産やリストラを苦にする一家の大黒柱の自殺がふえています。さらに、路上生活をするホームレスの人々が二万四千人にも達し、就労を求めても仕事が見つからないのが現実です。
 私は、先日、新宿の戸山公園を訪れ、ホームレスの人々に直接お話を聞きました。私がお会いしたホームレスの人々は、口々に、働きたくても仕事がない、仕事がないから住まいがない、住まいがないから仕事がない、そんなことを言っておられました。
 ホームレスの人々の自立支援について、国の責務を明らかにし、NPOと連携をしながら、就労と安定した住居の確保を促すことが必要だと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 私はまた、都内にある、現代の駆け込み寺にも伺いました。夫の暴力から避難する女性を受け入れる、いわゆる民間のシェルターです。ドメスティック・バイオレンス、すなわち、夫の暴力によって、日本では二十人に一人の女性が命の危険を感じており、年に百三十人以上の女性が殺されております。その原因は、暴力を振るっても妻を従わせて当然といった男女不平等な考えがあり、最近では、リストラに遭った夫が暴力を繰り返すというケースもふえています。
 ところが、こうした被害者を守り、支援するシェルターに対する国の援助は、極めて不十分です。私は、こうしたところに手が届く政策こそが、今、求められていると思うのですが、総理はどうこたえるつもりですか。
 小泉内閣は、母子家庭の命綱である児童扶養手当を改悪しようとしています。小泉総理、政治に求められているのは、こうした仕事を失い、家族の崩壊に直面している人々に対して、不安と痛みを取り除くことではありませんか。それが欠けたまま、構造改革も立ち往生している現実を総理はどう受けとめておられるのか、あなたの率直な気持ちを伺いたい。
 私たち民主党は、構造改革を言葉だけに終わらせることなく実行する強い意志を持ち、同時に、そうした人々に対して十分なセーフティーネットの確立と、自立支援のための政策をセットで進めることをここに改めて申し上げます。(拍手)
 小泉流の自民党的体質に乗っかった、無責任な、冷たい構造改革から、国民のための、責任ある、温かな構造改革への転換が必要なのです。
 まさに冷たい構造改革の象徴が、医療費自己負担率三割引き上げの問題ではありませんか。国民は、過去何度も医療制度の抜本改革を理由にサラリーマンらの自己負担を求めては改革を先送りし続けてきた政府の姿勢に、憤りを感じています。
 民主党は、将来不安を克服せずに国民にこれ以上の負担増を求めるやり方には、強く反対をしています。今、国民に負担を強いれば、この深刻な不況のただ中で、消費がますます冷え込むことは明らかではありませんか。加えて、国民に負担を求める前に、薬価をめぐるさまざまな問題や診療報酬制度の抜本的な見直しを断行し、不安のない医療制度の確立をやり遂げることがまず先行されるべきと考えます。
 それでも、総理は、医師会や医薬業界に配慮して、抜本改革を先送りし、国民に負担を求める姿勢をとり続けるつもりですか。改めて、銀行族だけではなく、厚生族とも見られておられる小泉総理の見解をお示し願いたい。
 自民党の元幹事長の事務所代表が、公共事業に絡み、口きき、あっせんを行い、巨額の報酬を得た上、脱税していたという事件、茨城県での競売入札妨害容疑で市長ら六人が逮捕された事件が続いています。これらの事件については、国会の場でこれら事件の真相を明らかにすることが政治の責任だと考えます。加藤紘一議員らの証人喚問に対する総理の所見をお尋ねします。
 政治家は、金と政治にまつわる不正が絶えないことについて、常に謙虚に反省しなければなりません。その姿勢を示すのが議会における証人喚問であり、ぜひとも、総理の決断をお示し願います。
 今や、与党もあっせん利得処罰法改正に取り組み始めているとのことでありますが、そもそも、二年前に民主党を初めとする四野党が提案してきた対案で、私設秘書も対象とするなどの内容が盛り込まれていたにもかかわらず、与党がかたくなに拒んできたじゃありませんか。
 民主党を初め野党四党は、既に、あっせん利得処罰法強化法案を用意しています。私設秘書のみならず、父母、配偶者、子、兄弟姉妹といった親族も対象にし、また、犯罪の構成要件から請託を外すなど、真に実効性を高める内容です。さらに、現行法の大きな欠陥である、職務権限を持つ政治家に限定する文言は削除すべきであります。
 こうした我々の提案に基づく改正を行わなければ、実効性が上がらないことは言うまでもありません。二年前に大きな過ちを犯した与党の諸君、今、その責任者として、小泉総理に反省と謝罪に基づく真摯なお答えを願いたい。
 公正なルールと自己責任原則に基づく事後チェック・救済型社会に向けた司法制度の改革は、その審議過程の透明性が保障されることが必要です。そのためにも、すべての議事録などの徹底した情報開示を行うことが大切と考えますが、総理の姿勢を伺いたい。
 BSE、いわゆる狂牛病問題に関して、昨日、私たち野党四党が提案をした武部農水相不信任決議案は否決されましたが、任命権者として、なぜ、総理は、大臣が国民の不信を増長させた責任を明確にしようとしないのですか。武部農水大臣を罷免しない理由を、ぜひ国民に御説明ください。
 国民の食べ物を提供する農業は、国の基礎であります。その農業者の汗が報われないとしたら、政治は一体何をしているのかが問われます。民主党が提案をする法案のように、BSE問題の被害を受けた肉牛生産農家らに対する十全な救済措置を、総理みずから率先してとられることを強く要請いたします。(拍手)
 ここで、改めて小泉外交の基本的スタンスを伺いたい。
 小泉外交は、単にブッシュ政権の顔色だけをうかがい、機嫌をとる、完全なアメリカ追従外交以外の何物でもありません。
 地球環境問題への余りの無理解、ABM条約からの突然の離脱通告、さきの一般教書で悪の枢軸と名指しした今のアメリカ政府の外交姿勢では、到底、世界の平和は望めません。今回の一般教書演説には、米国内の良識派からも大いに疑問が呈せられているところであり、行き過ぎたブッシュ政権の政策に対して、訪日の際には、きちんといさめるべきだと考えますが、いかがですか。総理の所見を伺いたい。
 とりわけ、我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす朝鮮半島問題について、ブッシュ政権は北朝鮮敵視政策を打ち出しました。総理はこれに追従するお考えなのかどうか、お尋ねをします。
 私は、冒頭に申し上げましたように、今回、アフガニスタン、パキスタン、インドを訪問し、各国要人との対話を通じ、改めて、二十一世紀の今日の世界が必要とするものは友愛の精神だと痛感したところです。ことしのダボス会議のキーワードは思いやりだったと聞いています。国際社会の中で、日本も必要不可欠な協力を行いながら、同時に、友愛の精神に基づき、粘り強い対話に挑んでいくべきだと考えます。
 朝鮮半島問題も、韓国の金大中大統領を初めとする関係者との親密な対話を通じながら、朝鮮半島和平にとって真に望ましいことを日本独自で判断し、実行することが極めて重要です。
 しかしながら、この重要な日韓関係も、昨年、あなた自身が引き起こした靖国問題などによって完全に冷え切ってしまい、小泉総理がその職にとどまる限り、関係修復は極めて難しい環境にあります。中国とも同様です。
 まさに、小泉内閣は経済のみならず安全保障においても国益に反するものであるということを、ここではっきりと申し上げなければなりません。(拍手)
 私は、世界の現状、そして、我が国の子供たちの間に起こるとげとげしい事件、家庭内暴力等の社会風潮を見るとき、目指すべきものは友愛国家の建設であると、一貫して訴え続けてまいりました。友愛精神は、みずからの尊厳、誇りを大切にします。個人の尊厳を大切にする人は、みずからの責任を果たし、自立し、だからこそ、互いに尊重をし合いながら共生していくことができるのです。
 アメリカのゴア前副大統領は、環境こそ新しい国家戦略課題だと定義しました。イギリスのブレア首相は、教育、教育、教育、これこそ新しい国家の基本戦略だと定義しました。まさに、自立と共生に基づいて、教育と環境、そして、あえて言えば介護、このようなテーマが新しい国づくりのキーワードと理解すべきです。
 あの川辺川ダムもそうですが、コンクリートのダムから緑のダムに変えていこうじゃありませんか。テトラポット漬けになっている日本の海を、テトラポットから解放しようじゃありませんか。一人一人の個性が生き、地域社会の中で参加することのできるコミュニティースクールをつくっていこうじゃありませんか。それぞれが参加型の福祉社会を求めていこうじゃありませんか。
 新しい価値観を政治家が訴え続けることによって、私は、新しい産業、ひいては日本の経済を大きく動かすことすらできると信じています。(拍手)
 しかし、その大事業を前に推し進めていくには、何よりもまず、政治が国民から確かな信頼をかち得ていなければなりません。残念ながら、今の小泉内閣は、国民を信頼せず、国民に真実を知らせず、いまだ古い体質のまま、官僚政治そのものに戻ってまいりました。これでは、信頼の政治を望むことはできません。
 江戸時代の末期に著された重職心得箇条があります。あなたが田中眞紀子議員に渡した、国の政を預かる大臣らの心得を記したものです。二百年も前のこの心得は、こう言っています。
  物事を隠す風儀甚あしし
  役人の仕組事皆虚政也
 小泉内閣は、この心得に見事に反する行動をとり続けているのです。隠し事をし、閣僚や党幹部たちの画策にうつつを抜かしているそのさまは、こっけいにすら思えてなりません。抵抗勢力の前に、恐れて、ひるんで、とらわれて、とうとう小泉スパイラルです。(拍手)
 小泉首相、あなたに、私は、本物のライオン宰相とうたわれた浜口雄幸の盟友、大蔵大臣井上準之助が生前に好んだ句をここで差し上げます。
  危うきに臨みて節を守り心改むる無し
  死を忍び生を捐て志移さず
 これは、明の志士、夏桂州の詩です。私は、この志でなければこの国は滅ぶ、そう信じています。
 ところが、何ですか、きょうのあなたは。
  危うきに臨みて節を曲げ心改むる有り
  死を怕れて生を貪り志移す
 これでは、この国はもちません。
 今、必要なのは、国民に背を向け、マーケットからも見放されてしまった自民党政権に終止符を打ち、新しい政府を誕生させることです。まさに、政権交代なくして真の構造改革なしであります。
 私は、その政権交代の実現のために、他の野党の皆さんとも協力をしながら、私の持てる力のすべてを尽くすことをここに宣言します。
 代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山議員にお答えいたします。
 お互い、高い志を持って改革に邁進したいと思います。
 NGOのアフガン復興会議参加問題についてのお尋ねであります。
 今回の件につきましては、もともと外務省内の問題であります。それが、国会全体の問題となり、国会を混乱させました。その事態の打開のために行った私の判断であります。
 参加不許可は、会議運営の実務を行っていた外務省の判断として行われたものと思います。
 なお、議員が役所にいろいろな意見を言うのは自由であります。しかし、どんな意見であろうとも、与党、野党の意見であろうとも、適切なものは取り入れるべきであり、不適切なものは排除すべきものである。こういう点をよく考えて、各省、外務省のみならず、適切な行政の責任を果たしていただきたいと思います。
 参考人招致については、国会の運営の問題でありますので、よく国会の場で議論していただきたいと思います。
 川口大臣を長とする外務省新体制における外務省改革に関する私の見解についてのお尋ねであります。
 私は、川口外務大臣の就任時に、まず、政治家の不当な圧力は排除し、耳を傾けるべき意見はきちんと取り入れる、外務省の体質、仕事ぶりが国民の期待にこたえるものであるように、きちんと反省すべきは反省し、正すべきところは正す、外交の体制は総理官邸と一体となって万全を期す、この三点を指示しました。
 川口大臣が内外の信頼を一刻も早く回復するよう外務省改革に意欲的に取り組もうとしておりますので、私はそれを支援してまいります。
 金融不安とトリプル安の悪循環を招いた責任とその処方せんについてのお尋ねがありました。
 確かに、我が国経済については、雇用情勢を含め、厳しい状況にあると認識しております。しかしながら、これまで、公共投資等による従来型の需要追加策や減税による景気回復策を講じてきましたけれども、持続的な成長にはつながらなかったわけであります。そういう反省に立ち、今、改革なくして成長なしの方針のもとに、経済・財政、行政、社会の各分野における構造改革を断行しているところであります。
 その過程においても、御指摘の金融市場を含めた経済情勢の監視を怠ることなく、改革を推進していく中で考えられるさまざまなリスクに十分注意することとし、政府としては、日銀と一致協力して、デフレ阻止に向けて強い決意で臨むとともに、経済金融情勢によっては大胆かつ柔軟な政策運営を行ってまいります。
 米百俵の精神と補正予算との関係についてのお尋ねでございます。
 米百俵の精神は、いつの時代でも必要なものだと思います。私は、今回の補正予算につきましても、改革を進めながら、その中で伴う痛みを緩和する、そういう策も大事ではないかと思ってとった補正予算でございます。構造改革に資する社会資本整備を行うものであり、米百俵の精神と矛盾するとは考えておりません。
 この補正予算におきましては、民間投資の創出、就業機会の増大に資し、早期執行が可能で経済への即効性が高く、緊急に実施の必要のある事業を盛り込むなどの工夫を行ったところであります。従来型の単なる需要追加とは異なる点に御理解をいただきたいと思います。
 来年度予算に関するお尋ねであります。
 改革断行予算として、公共投資の一割削減を初めといたしまして歳出の効率化を進める一方、予算配分を重点分野に大胆にシフトいたしました。御指摘の中小企業関係予算についても、経費の節減合理化に努める一方で、創業、経営革新の推進支援等については抜本的な拡充を行うなど、重点化に努めております。
 また、国債発行額三十兆円を守り、将来の財政破綻を阻止するための第一歩を踏み出すことができたと考えております。
 資源配分の切りかえという観点からも、五兆円を削減しつつ二兆円を重点分野に再配分するとの方針のもと、公共投資やODAを一割削減する一方、少子高齢化への対応、科学技術、教育、ITの推進などの重点分野に大胆な配分を行っているところであり、利権配分型予算の構造改革に失敗しているとの御指摘は当たらないと考えます。
 道路特定財源についてのお尋ねであります。
 自動車重量税については、昭和四十六年の創設時より、法律上の特定財源ではありませんが、道路特定財源として取り扱われてきておりました。自動車重量税の国の分の八割はすべて道路予算に充てることとされてきたところでありますが、平成十四年度予算においては、公共投資を一割削減する中で、道路予算についても削減を行っております。その結果、自動車重量税を含めたいわゆる道路特定財源の額が道路予算の額を上回ることとなり、十四年度においては、これを使途の限定なく一般財源として初めて活用することを決定しております。
 なお、道路を含め、特定財源及びその税制の見直しについては、その基本的なあり方について、経済財政諮問会議や政府の税制調査会の場において幅広く検討を進め、平成十五年度予算に反映させていきたいと考えております。
 公的資金使用の責任の問題についてであります。
 金融安定化のための公的資金については、預金保険法、早期健全化法及び金融再生法に基づき、我が国の金融システムに対する内外の信頼を確保するとの観点から措置されたものであり、これを活用して、預金全額保護、金融機関の資本増強、不良資産の買い取り等の措置を適切に講じてきたところであります。
 現時点において、銀行の健全性について問題がある状況ではないと承知しておりますが、今後とも、預金者保護及び金融システムの安定のため、内閣を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
 どのような場合に資本増強を行うかについてのお尋ねであります。
 預金保険法では、資本増強が行われなければ信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときには、金融危機対応会議の議を経て、例外的措置として資本増強が可能とされているところであります。
 いかなる事態がこれに該当するか。これは、将来起こり得るさまざまなケースについての発動基準をあらかじめ定めておくことは困難であり、かえって対応できない場合が生じるおそれがありますので、また、市場の憶測やモラルハザードを回避する必要があること、こういうことなどから、具体的に申し上げることは適切でないと考えております。
 ホームレスの自立支援についてのお尋ねであります。
 政府として取りまとめた「ホームレス問題に対する当面の対応策」に基づき、関係省庁が関係地方公共団体と一体となって、雇用、保健医療、住まい等の各般にわたる対策に取り組んでいるところであります。今後とも、地域の実情を踏まえつつ、NPO等とも連携を図りながら、ホームレス対策の推進に努めてまいります。
 いわゆる民間シェルターに対する国の支援についてのお尋ねであります。
 政府におきましては、昨年十月に施行された配偶者暴力防止法に基づき、被害者の一時保護等が適切に行われるよう、都道府県を支援するとともに、いわゆる民間シェルターなどの民間団体に対しても必要な援助を行うこととしております。家庭内暴力の実態把握が進むにつれて、深刻な状況にあることが明らかになってきておりまして、今後の国の支援のあり方についても、こうした状況を踏まえつつ検討してまいります。
 仕事を失い、家庭の崩壊に直面している人々に対するお尋ねでございます。
 従来より申し上げておりますとおり、改革を進めるから痛みを伴うというだけではありません。改革を進めなかったら、もっと痛みが多くなるのです。こういう点を考えながら、構造改革に伴って生ずる痛みと、それに対する国民の不安をどのように和らげていくかということが、現下の政治の大きな課題であり、責任でもあると私は思っております。このため、雇用のセーフティーネットの整備などにより、こうした痛みを極力緩和すべく努めてまいりたいと思います。
 また、母子家庭対策につきましては、母子家庭の自立が一層促進されるよう、子育て支援策、就労支援策、養育費、奨学金の確保策、経済的支援策などについて見直し、総合的な施策の展開を図ります。
 こうした対策を講じつつ、引き続き改革を断行してまいります。
 医療制度についてでございます。
 日本の医療保険財政が厳しい中、この医療保険を持続的、安定的な制度として将来も堅持していくためには、改革待ったなしであります。
 このため、患者、加入者、医療機関の三者がそれぞれ痛みを分かち合う三方一両損の方針のもと、これまでにない診療報酬の引き下げを行うとともに、患者の方々にも相応の負担をお願いすることが必要と考えております。また、あわせて診療情報や医療機関情報に関する規制改革や健康づくりを推進することとしております。
 同時に、医療保険制度の体系、高齢者医療制度、診療報酬体系の見直しなど、諸課題についてもさらに検討を進め、基本方向を明らかにしてまいります。
 加藤議員らの証人喚問についてのお尋ねであります。
 政治と金の問題につきましては、国民の不信を招かないよう、政治家が常に反省し、みずからを厳しく律するべきものと考えております。
 金をめぐる問題で世間から疑惑を持たれているのであれば、まずは、個々の政治家が国民に対してきちんと説明し、対応していくべきものと考えます。その上で、証人喚問をする必要があるかどうか、議院の運営に関する問題であり、国会においてよく議論していただきたいと考えます。
 あっせん利得処罰法についてでございます。
 一昨年のあっせん利得処罰法の審議においては、さまざまな形態の私設秘書を一律に処罰の対象とするのは不適当である等の判断から現行法が成立したものと承知しています。
 当時の野党案には、私設秘書の定義の問題を初め、なお慎重に検討すべき点もあると考えますが、どうすれば国民の信頼を損なう行為を防止できるかについて、早急に改善策をまとめる必要があると考えております。
 司法制度改革における議事録等の情報公開についてであります。
 改革を進めるに当たり、情報公開による透明性の確保は重要であり、司法制度改革推進本部の議事録等の公開を含めて、検討過程の透明性の確保に最大限の努力を行ってまいります。
 武部大臣に関する問題でございます。
 昨日、農林水産大臣への不信任決議案が否決され、立法府から信任が得られたところでありますが、政府としては、一連の経緯を真摯に受けとめ、今後とも、生産現場や消費者の意見をしっかり踏まえ、BSE対策に遺漏のないよう、全力を尽くしてまいります。
 武部農林水産大臣のとるべき責任は、まず、BSEに関する正確で科学的な情報を国民にきちんと伝えること、BSE発生に伴う生産から消費に至るさまざまな悪影響に対応するための措置を講ずること、過去における行政措置等を点検し、将来にわたりBSEの発生防止に取り組むこと、これにあると考えておりまして、今後とも、これらの職責を果たし、国民の皆様に安心していただくよう、全力を尽くしていただきたいと考えております。
 ブッシュ大統領の訪日に関するお尋ねであります。
 さまざまな課題に直面する二十一世紀において、日米の協力関係、これは、日本にとっても大変重要でありますが、世界全体にとっても大変重要なものであると認識しております。この日米両国の緊密な協力関係、これを維持発展させ、世界平和と繁栄に向けて、これから、我が国は米国との間で、幅広い分野における緊密な政策協調を行っていく考えであります。
 今月訪日されるブッシュ大統領とは、これまで築いた個人的な信頼関係のもと、忌憚のない意見交換を行う考えであります。
 ブッシュ政権の対北朝鮮政策についてのお尋ねであります。
 ブッシュ政権は、国際的なテロへの取り組みとの関係で北朝鮮に対する懸念を表明する一方、前提条件なく北朝鮮との真剣な協議を開始する用意があるとの立場に変更はないと承知しております。
 こうした中、我が国としては、韓国、アメリカ両国との緊密な連携を維持しながら、今後とも、日朝国交正常化交渉の進展に粘り強く取り組み、こうした努力を通じ、安全保障上及び人道上の諸問題の解決を目指していく考えであります。
 小泉内閣としては、与党だから与党だけの意見を聞くという内閣ではありません。野党でも、いい意見があればどんどん取り入れていきたいと思います。鳩山さんも高い志をお持ちのことだと思います。野党だから与党を批判しなければならないということはないと思います。野党としても、与党のいい改革につきましてはぜひとも御協力いただければありがたいと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 山崎拓君。
    〔山崎拓君登壇〕
山崎拓君 私は、自由民主党を代表し、さきに行われた小泉総理大臣の施政方針演説に対し、質問いたします。(拍手)
 まず、総理も触れられましたが、愛子内親王殿下の御誕生をすべての国民とともに喜び、明るい未来への希望として、お健やかな御成長を心よりお祈り申し上げます。(拍手)
 国民は変化を求めています。
 「変化を予期せよ」「変化にすばやく適応せよ」「変わらなければ破滅することになる」「従来どおりの考え方をしていては新しいチーズはみつからない」これはスペンサー・ジョンソンの「チーズはどこへ消えた?」にある言葉です。総理は、昨年九月の臨時国会冒頭の所信表明演説で、進化論で有名なダーウィンの言葉を引用されましたが、この本も、変化に対応できる生き物だけがこの世に生き残ることができると説いており、だからこそベストセラーになったと思います。
 小泉総理は、みずから変化を起こし、変化に対応できる国民性を涵養しようとしておられます。我が国は今、戦後最大の試練に直面し、あらゆる社会制度と国民意識の変革を迫られる歴史的転換期にあります。日本社会に安心と活力を取り戻すため、この過渡期の痛みを克服し、新時代を切り開いていかなければなりません。
 冒頭に、いかなる困難をも乗り越えて「聖域なき構造改革」を断行せんとする総理の御決意を改めて確認したいと存じます。(拍手)
 緊急の経済対策を盛り込んだ十三年度第二次補正予算を成立させる過程で、アフガン復興支援会議への一部のNGOの参加問題をめぐって、予算審議に混乱を生じました。総理は、国会審議の正常化と外交体制の再建のために、泣いて馬謖を切る決断をされました。この決断がさまざまな批判を呼び、支持率の低下を招いていることを率直に認めなければなりません。
 しかし、目下の五〇%前後の支持率は、いまだ極めて高い水準にあります。自信を持って、国民の期待にこたえていく努力を続けるべきであります。
 とりわけ、田中前外相が強い意欲を持って当たった外務省改革を引き続き断行する総理の決意がいささかも揺るぎないこと、そのため、極めて有能で果断な手腕を持つ川口新大臣を登用されたことを高く評価し、期して成果を待ちたいと思います。(拍手)
 外務省改革について、総理並びに外務大臣の決意を改めてお伺いいたします。
 さて、総理は、この四月から始まる年度を改革本番の年と位置づけ、経済再生の基盤を築く年にすると言明されました。構造改革をなし遂げ、経済を再生させるには、痛みの時期をくぐらなければなりません。このことは多くの国民の理解しているところであります。
 かつて、深刻な双子の赤字に悩んだ米国、老大国と呼ばれた英国は、それぞれ、数年間にわたる構造改革に耐え抜き、経済を再生させるまでに足かけ十年を要したのであります。痛みが激しいから改革をやめるという選択は、将来の希望を捨て去る、日本の未来をあきらめるということにほかなりません。
 自由民主党を初め与党三党は、総理の改革にかけるかたい決意を一丸となって支え、改革を推進する強力なエンジンでなければならないと私は信じています。
 一方、完全失業率が五・六%という深刻な状況に、痛みを和らげる万全のセーフティーネットを用意し、新たな雇用を創出するための具体策を提案することも、与党の責任であります。
 私は、総理の改革にかけるかたい決意を最もよく知る者の一人として、改革の具体的な姿を政府・与党一体となって国民の前に明らかにしていく使命を痛感いたします。この代表質問を通じまして、どうしても断行しなければならない構造改革のポイントを指摘し、その必要性と改革の工程について、一つずつ明らかにしてまいりたいと願うものです。
 そこで、まず、喫緊の課題である金融安定化への取り組みについてお伺いします。
 今なすべきことは、我が国経済がデフレスパイラルに陥らないよう、金融、税制、規制のあり方を大胆に見直し、既得権益を打破し、政策を有機的に関連させ、あらゆる知恵を総動員して効果的な景気刺激策を早急に打ち出すことです。
 国、地方を合わせた債務残高は、来年度末には六百九十三兆円、実にGDPの一・四倍に達する深刻な状況を考えれば、これまでのように、国債を増発し、公共事業を追加し続けるという旧来型の財政政策を選択することはできません。
 日銀のたび重なる金融緩和措置の結果、市場への資金供給は超緩和状態にありますが、その先の、民間金融機関から国内経済産業活動への資金の供給は全く不十分であります。特に、最近の中小企業金融をめぐる状況は深刻です。金融は経済活動の血流であり、一刻も早くこの状況を是正して、金融仲介機能を正常化しなければなりません。
 一方、最近の株価の動向や続出する大手企業の破綻によって、国民の間に、金融危機への懸念が広がっています。総理は、金融危機を起こさせないためにあらゆる手段を講じると決意を表明されました。ささやかれる金融危機の発生を未然に防止し、金融システムの安定を確保することが、構造改革の推進を確実なものとし、景気回復を実現する道筋であり、また、それが、我が国のみならず、米国を初めとする諸外国の期待にこたえることにつながると考えます。
 私は、整理回収機構、いわゆるRCCや企業再建ファンドを最大限活用して不良債権を早期に処理するとともに、危機に際しては大胆かつ柔軟な措置をとること、ペイオフ解禁に向け、悪質な風評などにより金融不安を生じさせることのないよう適切な監視と情報の提供を行うことが重要であり、中期的には、株式市場に個人投資家を呼び戻し、市場の活性化を図るため、国民が信頼できる公正なルールの確立、市場監視制度の強化等を図ることが必要だと考えます。
 不良債権の処理と今後の金融システムの安定化の取り組み、証券市場の改革について具体的にどのような方策を講じられるのか、金融危機の回避に向けた総理の決意とあわせて、改めてお伺いいたします。
 不良債権の処理は、単に、金融機関がバランスシートから落とせばいいというものではありません。むしろ、実体経済を支える産業、企業、事業者をどのようによみがえらせるかが大事であります。優秀な技術と人材を持つ企業を再生させるためのミクロの手法と同時に、経済全体としてこれからどのような産業構造に変えていくのか、マクロの新しい国家戦略をしっかりと提示することが必要であります。
 そのためには、不良債権の処理を金融機関と金融庁の問題としてだけとらえるのではなく、経済産業省や国土交通省など、それぞれの産業を所管する省庁が一体となって、政府全体でこの難局に当たらなければならないと思います。総理の御所見を求めます。
 次に、税制についてお伺いします。
 税制は、国家構造の根幹をなすものだけに、あくまで中立、公正、かつ、国民が理解しやすい簡素なものであるべきだと考えます。当面、早期施行を念頭に置き、民間経済活動の活性化に資する投資減税のあり方及び土地税制の見直しなどを検討するよう提案いたします。
 例えば、規制改革の進展に伴い、民間事業者が新たな事業展開に取り組む場合の研究開発や設備投資に対する減税、個人投資家が企業への直接投資に踏み切りやすい環境をつくる証券取引税制の透明化、簡素化を大胆に進めるべきであると思います。また、自由な経済活動を確保する観点からは、複雑でわかりにくくなっている租税特別措置の見直しも必要です。さらに、デフレスパイラルを避けるため、土地関連税制の抜本的見直しなど、資産デフレの進行を食いとめる税制、さらには、景気低迷の大きな要因である個人消費を回復させるため、相続税、贈与税のあり方を検討する必要を感じます。
 所得格差や世代間の富の偏在を、税制上、どう位置づけていくのか、消費できる人が消費することによって経済が活性化し、生産が増加し、雇用が拡大するという当たり前の議論が真剣になされるべき時期に来ていると思いますが、総理のお考えをお示しください。(拍手)
 スイスのIMD、経営開発国際研究所によれば、我が国経済の国際競争力は、八九年から九三年まで五年連続トップであったものが、昨年、ついに、四十九カ国・地域の中で総合二十六位にまで下がりました。この背景には、企業家精神、大学教育、株主の権利と責任、政府の政策の透明性など、日本が抱える問題が横たわり、特に製造業が、その生産拠点の多くを人件費などのコストの安い発展途上国へ移転し、国内産業の空洞化が進んでいることがあります。
 しかし、IMDや日本経済研究センター、世界の政財界の大物が集まるダボス会議を主宰する世界経済フォーラムなどの調査によれば、技術開発に対する取り組みと評価で日本は依然としてトップクラスを維持しており、構造改革にさえ成功すれば先行きは明るいとの評価を得ていることも事実です。
 総理は、バイオテクノロジーやナノテクノロジーを初めとする世界最高水準の科学技術創造立国の実現に向け、最先端の戦略的研究分野に重点を置き、産学官の連携、地域における科学技術の振興を図ると述べておられます。産業競争力強化に向けた我が国の国家的取り組みの考え方をお示しいただきたいと思います。
 産業競争力の強化と世界有数の知的財産の戦略的な保護、活用は、表裏一体のものであります。総理は、知的財産戦略会議を立ち上げる考えを表明されましたが、過去の知的財産を守るだけでは、将来の発展はありません。新たな知的財産を創造する人材の育成こそが国家の目標でなければならないと思います。
 昨年、ベネッセ文教総研という民間のシンクタンクの調査によると、約四千人の高校三年生を調査した結果、六年前に比べて、英語を除くすべての科目で成績が下がっていることが報告されています。特に低下の幅が大きいのは物理、生物、数学ですが、九九年にIEA、国際教育到達度評価学会が実施した第三回国際数学・理科教育調査の結果との間に残念な一致が見られることに御注目いただきたいと思います。すなわち、当時、世界の中学二年生を対象に、数学、理科が好きかどうかや学校外での勉強時間などを調べた結果、日本は、三十八カ国中、最低レベルだったのであります。
 知的パワーの育成と蓄積を実現していく上で、初等中等教育における理科教育の重要性がますます増大し、大学を初めとする高等教育の成果に直結していることを考えると、理科教育の水準の低下が顕著になってきたことに強い危機感を抱かざるを得ません。これでは、科学技術創造立国の看板が泣き、二十一世紀の前半に自然科学分野におけるノーベル賞受賞者を三十名にしようという目標は到底、達成できないと思われます。
 教育の目的が単に有能な産業人の育成にあるのでないことは言うまでもありませんが、二十一世紀の産業の米である知的財産、人材を開発する上で、初等から高等に至る各段階の教育システムの強化は喫緊の課題であります。
 二十世紀に、世界は軍事から経済へと重点を移し、さらに二十一世紀は、知によって国家を運営する世紀に入ったと言われています。こうした知の時代を迎えて、小泉改革の最大の目玉が大学改革であると考えます。
 現在、政府関係機関の独立行政法人化が進められておりますが、ことしは、国立大学の改革の方向を定める大事な転換点に立っています。改革の目標を、大学の教官、事務官、学生が総力を挙げて世界と競争し、トップレベルの成果を実現する体質への変革と明確に位置づけ、現行国立大学の一番の問題である非効率を改革し、研究、教育、経営、管理に至るまで徹底した競争原理が導入されるよう、講座制の改革を含めた大学システム全体の構造改革を断行すべきであると考えますが、総理のお考えをお聞きします。(拍手)
 「聖域なき構造改革」の中心的な柱である財政構造改革と財政の健全化についてお伺いいたします。
 我が国は、バブル崩壊以来、次々と財政出動による景気対策を打ち出し、この十年間で、総事業規模約百三十兆円を超える経済対策を実施してきました。しかし、金融不安や世界経済の停滞、経済社会の中枢を直撃した米国での同時多発テロ、それに続くテロ撲滅のための闘いなど、さまざまな障害もあって、我が国の景気は、民間主導の自律的成長軌道に乗ることができないまま推移しております。
 構造改革がなされないまま、景気回復を財政出動による公共事業などの需要の追加だけに頼るこれまでのやり方を、根本的に変えなければなりません。歳出のむだを省いて、国民の負担割合が少ない小さな政府の実現を目指すだけでなく、公共投資を新たな成長分野に重点的に振り向け、国債発行額の抑制や歳出の優先順位をつけた重点配分など、財政構造改革を促進すべきだと考えます。
 また、財政構造改革を進める上で重要なことは、優先順位をつけた事業選択が公正で客観的な判断により行われる環境を保証することであり、このことは、我々政治家一人一人が強く心に銘記しなければならないことであります。
 この点についての総理のお考えをお伺いいたします。
 次に、行政改革についてお尋ねします。
 昨年末に改革の方針が示された特殊法人改革、公益法人改革、公務員制度改革は、二十一世紀の我が国が国際社会で生き残っていくために避けて通れない、行政分野の構造改革の大きな柱であります。
 総理は、民間にできることは民間にゆだね、地方にできることは地方にゆだねるとの原則を打ち出し、民間と地方の知恵が活力と豊かさを生み出す社会の実現を目指すことを明確にお示しになりました。
 これらの改革について、十四年度予算に反映された部分を含め、石油公団、都市基盤整備公団、住宅金融公庫など十七法人の廃止、道路四公団など四十五法人の民営化について、必要な措置をできる限り速やかに講じると総理は述べておられますが、目標の期限をどう考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。また、その際、国民の批判の強い天下りに対する規制措置が必要と考えますが、あわせてお伺いいたします。
 地方にできることは地方にゆだねるとの総理の方針が、地方の切り捨てと誤解されるようなことがあってはなりません。地方の公共事業依存体質を改革し、交付税制度の見直しを進めつつも、当面、真に必要な社会基盤整備のための公共事業整備を着実に進めていくことは当然であります。地方の自立と活性化のために、市町村合併の促進や地方分権の推進、地方みずからが知恵を出し、汗をかく中での産業育成など、地方の構造改革への支援を強化していただくよう要望いたします。
 また、都市、地方を問わず、中心市街地の活性化を図ることは、自立型経済の構築の第一歩であり、公共投資に限らず、広く民間の知恵と資金を活用していくことが肝要です。
 既に法整備が行われているPFI手法を思い切って多用し、民間の事業機会を拡大し、眠っている資本、資金の活用を進めて、民間主導の経済基盤整備の道を開くためにも、PFIの手続の簡素化、事業決定の迅速化、対象事業の拡大などの促進策と同時に、情報、財務の透明性、自由で公正な競争環境を担保し、公共事業の構造改革を進めるべきであると考えますが、総理のお考えをお示しください。
 国民の将来への不安を取り除き、国家が用意するセーフティーネットへの揺るぎない信頼を与える制度を確立することが社会保障の原点であり、政治の役割であると考えます。
 先日発表された国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口の中位推計によれば、今後百年で我が国の人口は、現在の一億二千七百万人から六千四百万人と、約半分に激減いたします。しかも、六十五歳以上の人口比率は二倍の三六%と予測されており、このような急激な人口減少と高齢化を経験した国家は、史上どこにも存在しないのであります。
 この未知の領域においては、これまでのあらゆる政策分野において従来の手法がまるで役に立たないと考えなければならず、福祉政策もまた例外ではありません。
 持続可能な年金・医療・保健制度などを構築し、国民の信頼をより一層確かなものとするため、総理は、思い切った改革を進めると、決意を述べておられます。この問題については、政府を挙げて、社会保障分野が構造改革の中で聖域であることを許されない理由を説明し、国民の理解と協力のもとに進めていくことが必要です。
 しかしながら、まず少子化問題に抜本的に取り組むことなしには、いかなる改革も机上の空論となるのではないでしょうか。
 少子化の背景には、女性の晩婚化、非婚化だけでなく、結婚しても子供を産まないという考えが浸透しつつあることがあります。政府は働く女性に対するさまざまな支援措置を講じ、総理も待機児童ゼロ作戦や学童保育の充実を打ち出して着々と実施に移しておられますが、日本社会全体の意識改革を伴わない限り、少子化に歯どめはかからないのではないかと危惧いたします。
 今の自分たちさえよければという考えが蔓延すれば、国家の行く末を考え、担う人材も、育つことはありません。地域社会も、学校も、家族でさえも崩壊し、若者の勝手な傍若無人な振る舞いへの対処能力を失った社会にあって、子供を産み育てることに不安を抱く現状を、やむを得ないことと放置すべきではありません。
 今や我が国にとって最も深刻な少子化問題を、厚生労働大臣はどのように考えておられるか、お聞かせください。
 次に、司法制度改革についてお伺いします。
 司法制度改革は、三権の一翼を担う司法の基本的制度を半世紀ぶりに抜本的に見直す、まさに大改革であります。昨年十二月には、総理を本部長とする政府の司法制度改革推進本部が設置され、この大改革は、小泉改革の象徴的な位置づけとなりました。
 社会が複雑多様化し、国際化する中で、自由で活力ある健全な経済社会システムを確立するためには、明確なルールと自己責任原則に貫かれた、事後監視・救済型社会への転換が不可欠であり、司法の機能を充実強化して、国民の権利、利益が適切かつ迅速に保護され、また、救済が図られるよう改革していく必要があります。そのため、広く利用者である国民の声をくみ上げるとともに、万全の予算措置を構ずることも肝要と考えます。
 今後の司法制度改革の断行について、総理の御決意をお伺いいたします。
 次に、BSE、いわゆる狂牛病の問題についてお伺いします。
 狂牛病の問題で国民に不安と不信を与えた原因の一端には、農林水産省と厚生労働省のいわゆる縦割り行政の弊害があるとも言われています。
 全頭検査という世界でも類を見ない厳格な検査体制が確立されたことを受けて、不安は徐々に解消されつつありますが、農水大臣は、不信任案が否決された今日、あくまでも謙虚に、かつ不退転の決意を持って、感染源の特定、情報の一層の公開、新たな発見に備えての迅速な対応などに取り組み、厚生労働大臣とともに、国民一人一人が安全宣言に確信を抱くように努力し、その責任を全うされることを望みます。
 また、あってはならない雪印食品の詐欺事件の徹底した解明と処分を強く求めます。
 国民の食卓に安心を与えるとともに、牛飼育農家の経営と生活への厳正な補償にも大胆に踏み込むことが必要と考えますが、農林水産大臣の決意をお聞かせください。
 大量の被災民を出し、極度の貧困に苦しむアフガニスタンに国際的な支援の手を差し伸べるため、我が国主導で開催したアフガン支援のための国際復興会議は大成功をおさめ、内外から高い評価を得ることができました。
 この東京会議では、貧困と飢えに苦しむ子供や女性の実情が切々と語られました。そうした窮状にあってなお、子供たちは食べ物よりも勉強がしたいと訴えていると聞き、胸がつぶれるような思いを味わったのは、私一人ではないと思います。今や、アフガニスタンの国民は、みずからの国家のあすに希望を抱いています。
 今日のアフガンの荒廃は、七九年の旧ソ連軍侵攻以来、戦乱が繰り返され、世界から見捨てられた状態で混乱と貧困が進み、結果としてタリバン勢力の伸長やビンラーディン率いるアルカーイダの暴挙を許したことにあります。今後は、アフガン復興に、国連が中心となり、場合によってはPKO部隊が派遣され、治安・平和維持・復興支援活動が行われることも予想されますが、我が国も、この際、PKO参加五原則の見直し等を行い、積極的に参加すべきものと考えます。
 小泉総理を初め、川口新外務大臣や緒方アフガン問題政府代表を先頭に、現地で真摯に活動するNGOや、国連を初めとする国際機関などと密接に協力、連携してアフガン復興を支援していくことが大切だと考えますが、総理のお考えをお聞きします。(拍手)
 私は、先月、公明党の冬柴幹事長、保守党の二階幹事長とともに、イスラエルとパレスチナを訪問し、それぞれの首脳と会って、和平の実現と、寛容と相互理解に基づく共存の実現を訴えました。
 世界を震撼させたイスラム原理主義過激派による米国同時多発テロの根底には、パレスチナ問題があるとの認識もあります。イスラエルではパレスチナ人による自爆テロが相次ぎ、それに対する報復がさらなる過激な行動を招いて、両国人民はおびえ切っております。
 我々三幹事長は、総理への帰国報告の中で、イスラエル・シャロン首相とクレイPNC議長の同時訪日を招請し、和平会談を東京において実現するよう提案いたしましたが、このたび、思いがけなく、両者の会談が現地において実現しております。
 和平仲介に最も熱心な米国が有効な打開策を見出せず、手詰まり状態にある現状では、あらゆる国があらゆるルートを用いて和平実現に努力すべきだと考えますが、我が国のパレスチナ和平に果たし得る役割について、総理のお考えをお聞きします。
 次に、国家安全保障及びいわゆる有事法制についてお伺いします。
 私は、総理の施政方針演説における前向きの姿勢を高く評価いたします。なぜなら、国家の安全保障が国政の最重要課題であることは改めて言うまでもないからです。
 我が国においては、万一、直接武力攻撃を受けた場合、防衛出動命令が下令される事態に際しての関連法制がいまだに整備されないまま放置されているのであります。
 先日、共産党の代表が、私が同席いたしましたテレビ討論会で、我が国が侵略されるような事態は起こり得ないと発言しましたが、それならば、自衛隊も日米安保体制も必要ないということになります。共産主義国家や独裁主義国家はすべて重武装であり、侵略的であります。我が国周辺にも、そのような国家が存在しています。備えあれば憂いなしという格言は、我が国のような専守防衛を国是とする独立主権国家の座右銘とすべきでありましょう。(拍手)
 政府では、これまで、自衛隊の行動に係る法制のうち、いわゆる第一分類の防衛庁所管の法令と、第二分類の防衛庁以外の省庁所管の法令について検討を進めてまいりました。
 私は、侵略に対する日米共同対処を前提とすれば、これに米軍の行動に係る法制を加えたものを、まず第一段階として法制化を急ぐ必要があると考えております。
 さらに、所管省庁が明確ではない事項に関する法令である第三分類や、自衛隊及び米軍の行動には直接かかわらないが国民の生命財産などの保護のための法制についても、可及的速やかに検討を進めるべきだと考えています。
 政府は、その上に包括規定を置く構想のようですが、与党三党としても、さきに与党・国家の緊急事態に関する法整備等協議会を発足させ、今国会での早急な法整備に向けて取り組んでいるところであります。
 そこで、いわゆる有事法制についての今後の取り組みについて、総理は具体的にどのようにお考えか、お尋ねいたします。
 最後に、憲法をめぐる議論についてお尋ねいたします。
 国民が痛みに耐えてでも「聖域なき構造改革」に強い支持を与えているのは、ともに時代の閉塞状況を打破しようとの総理の力強い呼びかけにこたえている証左であると考えています。
 総理に求められているのは、戦後一貫して追求してきた、やみくもな経済成長路線の限界を直視し、長いトンネルの先に見え始めた、国民生活に真の豊かさをもたらす新たな光の実像を示すことであります。総理の主張される暮らしの改革も、同じ着想のものであると信じます。
 アフガニスタン復興支援会議で来日したカルザイ議長は、汚職、腐敗には侍のように臨むと語りました。高潔で、恥を嫌い、誇り高く、道義を重んじる日本人の行動原理が今なお世界の人々の記憶に残っていることに、私は深い感銘を抱かざるを得ません。(拍手)
 しかし、今日なお、政治の倫理と公務員の使命感が問われ、雪印食品問題に見られるように、民間の商行為のモラルが崩壊し、心の荒廃は青少年のみならず、子供を虐待死させる親にまで及ぶ現状に、大多数の国民が底知れぬ不安を感じております。
 国家は、国民の生命、財産、安全を守り、次の世代を育成し、自由で公平な社会を確立するという、最も基本的な存在理由に立ち戻らなければなりません。
 憲法が掲げる平和主義を貫き、国際平和への貢献、プライバシーの保護、情報公開の原則、自立した国民を育てる教育理念を明確に示すためにも、新たな憲法論議を国民的レベルで巻き起こすことの必要性を感ずるものであります。
 今こそ、日本のあるべき姿として、内にあっては礼節や信義、そして社会奉仕の精神、外に対しては国際貢献という、道徳性の高い国民精神をうたう道義国家日本を哲学とする新しい憲法を国民合意のもとで築き上げていくべきだと考えますが、総理のお考えをお示しいただきたいと思います。(拍手)
 第二次世界大戦後初めてケンブリッジ大学の卒業式に招かれた、当時の英国の首相ウィンストン・チャーチルは、静まり返る中、卒業生全員に向かって、ネバー・ネバー・ギブアップ、ネバー・ネバー・ギブアップ、ネバー・ネバー・ギブアップ、それだけを叫んで、はなむけの言葉としました。熱弁を期待していた卒業生たちはあっけにとられましたが、やがて式場は歓声に包まれ、割れんばかりの拍手はいつまでも鳴りやまなかったと伝えられております。
 小泉内閣の支持率の低下は一時的なものであり、総理の信念である「聖域なき構造改革」に対する国民の全面的な支持は今も変わりないものと信じます。
 我が自由民主党は、今後とも、公明、保守両党の御支持と御協力を得て、改めて小泉構造改革内閣を全力で支援していく決意を表明し、質問を終わります。
 小泉総理、ネバー・ネバー・ギブアップ。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山崎議員にお答えいたします。
 まず、力強い御激励をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。ネバーギブアップ、改革に邁進したいと思います。(拍手)
 まず、改革を断行する決意でございます。
 山崎幹事長の御指摘のとおり、ネバーギブアップの精神でこの改革断行に邁進していきたい。今、小泉内閣に対する支持が低下しておりますが、高かろうが低かろうが、改革に向かう決意は全く揺るぎません。動き出した改革を一つ一つ軌道に乗せ、これを大きな流れにしていく、ことしはその改革本番の年だと認識して、今後も「聖域なき構造改革」に全力で取り組んでいく決意でございます。(拍手)
 外務省改革についてのお尋ねでございます。
 川口大臣が、意欲的に、積極的に取り組む決意を表明しております。私は、川口大臣のこの意欲を総理大臣としても全面的に支援していきたいと思います。
 不良債権処理と金融システム安定化への取り組み、証券市場の改革及び金融危機の回避に関するお尋ねであります。
 まず、不良債権処理につきましては、破綻懸念先以下の債権の最終処理に加えて、主要行に対する特別検査の厳正かつ的確な実施、要注意先債権に対する十分な引き当ての確保、整理回収機構や企業再建のための基金を活用した不良債権処理と企業再生等の取り組みを果断に実施してまいります。
 次に、証券市場の改革につきましては、貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切りかえなどを踏まえ、国民一般が安心して参加できる、透明性、公平性の高い証券市場を構築することが重要であります。
 このため、改革先行プログラム等を踏まえ、証券取引等監視委員会の体制増強等による市場監視制度の強化、証券会社の法令違反行為に対する厳格な行政処分の実施、公表、これらにより、今後とも、投資家保護に向けて全力を尽くしてまいります。
 金融危機の回避につきましては、検査、監督を通じて、金融機関の状況を的確に把握しつつ、その経営の健全性の確保に努めているところですが、四月からのペイオフの円滑な実施に向けて、今後さらにこれを推進し、金融システムの安定に万全を期してまいります。
 政府としては、市場の動向や不良債権の処理状況等、金融情勢については十分注視しているところであり、また、流動性供給を担う日本銀行との間で万全の体制をとりつつ、今後、金融危機が生ずるおそれがある場合には、あらゆる手段を講じることで、大胆かつ柔軟に対処して、その責任を果たしてまいりたいと思います。
 不良債権処理に関連して、実体経済の再生への取り組みについてでございます。
 不良債権問題の背景には、借り手である企業や産業側の過剰債務や非効率性といった構造問題があります。不良債権問題は、こうした借り手の構造問題と一体的に解決されることが必要だと思います。
 政府としては、個々の企業が経営資源を新たな成長分野に集中し、新分野へ進出する事業再構築を促すため、累次の商法改正や産業活力再生法により企業の事業再構築を支援してまいりました。今後とも、これらの法制の適切な運用や連結納税制度の導入、産業再編の促進などを通じて、企業の事業再構築を支援することにより、御指摘のとおり、政府一体となって金融と産業の再生を実現していきたいと考えております。
 税制についてでございます。
 経済再生の確固たる基盤を築くかぎが税制だと思っております。今後は、個人や企業の経済活動における自由な選択を最大限尊重し、努力が報われる社会を実現するために、税制を再構築していくことが必要であります。
 そのためには、経済活性化をどのように支え、経済社会の構造変化にどう対応するのか、中立、簡素、公平な税制をどう実現するのか、適切な租税負担水準のあり方をどう考えるかなど、多岐にわたる課題を検討していかなければならないと思います。
 あるべき税制の構築に向け、税制調査会あるいは経済財政諮問会議等において総合的に取り組みまして、六月ごろを目途に基本的な方針を示すとともに、当面対応すべき課題について年内に取りまとめ、十五年度以降、実現してまいりたいと思います。
 産業競争力の強化についてでございます。
 我が国産業の競争力を強化するためには、産学官の連携、実践的な技術開発の推進などを通じた産業技術力の強化や、開業、創業の促進を通じた新事業の創出により、産業の高付加価値化を促すことが重要であります。
 あわせて、エネルギー、物流などの分野における高コスト構造の是正等を通じ、国際的に競争力を持った事業環境の実現を図ってまいります。
 国立大学の改革でございます。
 我が国が経済社会の発展と世界への貢献を目指す上で、知の拠点たる大学の役割は極めて重要であります。
 国立大学の法人化を契機に、諸規制を大幅に緩和するとともに、民間の経営手法の大幅な導入、大学間の再編統合の推進、第三者評価による競争原理の導入など、国立大学の構造改革を強力に推し進めることにより、活力に富み、国際競争力のある大学づくりを目指してまいります。
 財政構造改革でございます。
 我が国の財政事情は、平成十四年度末の国、地方の長期債務残高が六百九十兆円を超えております。G7諸国の中で最悪の状況にあり、財政構造改革を促進することが重要な課題であると認識しておりまして、今後の財政運営に当たっては、御指摘のように、客観的な公正な判断のもと、優先順位をつけた事業選択を一層進めていくことが重要であると考えております。
 特殊法人改革でございます。
 昨年末に取りまとめました特殊法人等整理合理化計画に基づき、平成十四年度から事業について講ずべき措置の具体化に取り組み、組織形態についても、平成十四年度に法制上の措置その他必要な措置を講じ、平成十五年度には具体化を図ることとしております。
 本年は、道路四公団の民営化など、整理合理化計画で示された改革の方向性を具体化する作業が本格化する年であり、手綱を緩めることなく、緒についた特殊法人改革を一層進めてまいります。
 公務員の天下りについては、特殊法人等が再就職の安易な受け皿とならないように、公務員制度改革大綱などに基づき、厳しく対処してまいります。
 PFIの積極的活用でございます。
 効率的な社会資本の整備や民間事業者の新たな事業機会の創出を通じた経済の活性化を図るためにも、多様な事業分野におけるPFIの積極的な活用を図っていくことは、御指摘のように、極めて重要であります。
 さきの臨時国会において、与党議員の提案により、行政財産の取り扱いに係る規制緩和やPFI事業の実施主体の範囲の拡大を主な内容とするPFI法の改正が行われたほか、先般成立したいわゆる社会資本整備特別措置法において、無利子融資の対象をPFI事業を実施する民間事業者にも拡大するなど、PFIの一層の普及促進を図るための環境整備を図っているところであります。
 また、PFI事業の実施に当たっては、PFI法の基本理念、基本方針にのっとり、事業者の選定においては一般競争入札を原則とし公平性の担保を図ること、また、事業者の選定を初め法に基づく手続の全過程を通じ透明性の確保を図ることとされており、これらを通じ、御指摘の公共事業の構造改革をさらに積極的に推し進めてまいりたいと思います。
 司法制度についてでございます。
 司法制度改革は、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック・救済型社会への転換に不可欠な緊急の課題であり、必要な法制上または財政上の措置等を講ずるなどして、新しい社会にふさわしい、国民にとって身近で信頼される司法制度の構築に全力を挙げて取り組んでいく決意であります。
 アフガン復興についてでございます。
 昨年十二月に発足したアフガニスタン暫定政権を支援し、アフガニスタンの真の安定の達成に向け、積極的に人道・復興支援を行ってまいります。具体的には、アフガン復興支援国際会議において発表した幅広い支援を実施していくとともに、NGOや国連などの国際機関との連携、協力を図っていく考えであります。
 パレスチナ問題についてでございます。
 中東和平問題は、中東地域全体、ひいては国際社会全体の安定に影響を及ぼす問題でありまして、現状を極めて憂慮しております。この事態打開のために、我が国を含む国際社会の取り組みが必要であるということは、御指摘のとおりであります。
 先般の与党三党幹事長の訪問の際には、私からシャロン首相とアラファト議長にあてた親書も伝達いただいたところでありますが、今後とも、我が国としては、事態の収拾に向けて粘り強く取り組んでまいりたいと思います。
 有事法制でございます。
 政府としては、日本国憲法のもと、法制が扱う範囲、法制整備の全体像、基本的人権の尊重及び適正手続の保障等の法制整備の方針等を明らかにするとともに、御指摘のような個別の権限法規の見直しを進めてまいりたいと考えております。具体的検討に当たっては、政府は、与党とも、協議会等の場を通じ緊密に連携してまいります。
 憲法についてでございます。
 憲法の基本理念である民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、これまで一貫して国民から広く支持されてきたものでありまして、将来においても、これを堅持すべきものと考えております。
 しかし、憲法は永久不変のものではありません。この憲法改正の問題につきましては、世論の成熟を見きわめるなど慎重な配慮を要する問題であると考えておりますし、現在、憲法に関する問題につきましては、衆参両議院の憲法調査会で幅広く熱心な議論が行われております。これから、国会のみならず、国民の間でも大いに議論していただき、二十一世紀にふさわしい憲法改正の議論が活発に展開されていくことを強く期待しております。
 山崎議員の御指摘のとおり、改革に向かってネバーギブアップ、決意を新たにして、これからも懸命に取り組んでいきたいと思いますので、よろしく御支援、御協力をお願いします。(拍手)
    〔国務大臣川口順子君登壇〕
国務大臣(川口順子君) 外務省改革を進める上でどういう決意を持っているかというお尋ねでございます。
 外交の任を担っていく上で重要なことは、外交が国民に理解され、国民に支持されなくてはならないということです。私は、昨年の一連の不祥事を踏まえ、何よりも外務省改革の推進が重要だと考えています。
 私は、外務省改革に既に着手いたしました。昨日、三つの考え方を示しまして、外務省改革に関する骨太の方針を約一週間で取りまとめ、発表したいとの方針を省の内外に対して述べました。
 改革の今後の取り進め方については、今、一生懸命に考えておりますけれども、透明性、スピード、実効性をキーワードに進めていく考えです。すなわち、改革を考え、実行していくプロセスを極力透明なものにする、また、改革後の仕組みを透明なものにする、スピードを持って、実施によりどれだけの効果が生まれるかを常に意識しながら、省員の徹底した意識改革を含め、改革を実行していく方針です。
 なお、昨年六月に、田中前外務大臣のリーダーシップのもとで、外務省改革要綱が策定をされました。報償費を初めとする会計・予算諸手続の改善、本省監察制度の立ち上げ、集中的な査察の実施等については、既に実施に移されてきております。私は、これまで打ち出された諸措置の実施状況をレビューし、十分でないところについては、さらに速度を上げて実施していきたいと考えます。
 私もネバーギブアップの精神で取り組みたいと考えます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 山崎議員から、少子化問題につきましてのお尋ねをいただきました。
 少子化の進展は、我が国の社会経済全体に大きな影響を及ぼすものでありますし、政府といたしましても、総合的な対策を進めていく必要があると考えております。
 厚生労働省といたしましては、当然のことながら、子育てに当たります若い男女の負担感を緩和し、安心して子供を産み育てることができるよう、保育の充実でありますとか雇用環境の整備などを行うことはもちろんでございますが、政策全体について、少子化対策を盛り込んでいく必要があると考えているところでございます。もちろん、今後の年金、医療につきましても、そうした観点から改革を加えていきたいというふうに思っております。
 あわせて、子供を持つことや子供を育てることそのものに大きな価値があること、子育てこそ人生最大の事業であることを、国、社会全体で認識していくことが重要でございます。
 いずれにいたしましても、少子化問題は、国民一人一人の生活観、社会のあり方にかかわる問題でありますだけに、大きな視点から対策を検討していく場を早急につくりたいと決意をしているところでございます。(拍手)
    〔国務大臣武部勤君登壇〕
国務大臣(武部勤君) 山崎議員の御質問は、BSE対策について私の決意いかんとのお尋ねでありますが、以下、お答えいたします。
 昨日、私への不信任決議案が否決されたところでありますが、一連の経緯については真摯に受けとめつつ、謙虚な気持ちで職務を遂行してまいりたいと存じます。
 今後とも、生産現場の皆様の声や消費者の方々の御意見等をしっかり受けとめつつ、厚生労働省を初めとする関係省庁とも連携を図りながら、国民の皆様に安心していただけるよう、BSE対策の実を上げるために全力を尽くしてまいりたいと存じます。(拍手)
 今月初めから、生産者の間で最も心配されておりました廃用牛について、買い上げ等を内容とする廃用牛対策を国の責任で実施することといたしました。さらに、今回のBSEの感染原因、感染経路の徹底究明、BSEの正確な情報提供等一層のPR活動の推進、感染牛が確認された経営体が力強く安心して経営を再開、継続できるような仕組みの構築、BSEの感染経路の究明や消費者の安心を確保するための全頭に対する耳標の装着の実施など、法制化を視野に入れたトレーサビリティーシステムの検討等、喫緊の重要な課題について、関係者の御意見も伺いながら、その解決に向けて全力で取り組んでまいる決意でございます。
 また、雪印食品問題については、BSEに対する消費者の不安を払拭するための事業を悪用した悪質きわまりないものであり、今後、事件の徹底的な真相究明と全倉庫の徹底総点検を行うとともに、食品の表示制度を見直し、制度の改善強化を急いで、牛肉に対する消費者の安心と信頼を取り戻し、牛肉消費の回復に全力を挙げてまいりたいと存じます。
 また、私と厚生労働大臣の私的諮問機関でありますBSE問題に関する調査検討委員会の報告を待って、農林水産省の改革とともに、畜産・食品衛生行政の一元的な改革を目指し、抜本的な食の安全と安心を確保する仕組みづくりについて、真剣に取り組んでまいりたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 川端達夫君。
    〔川端達夫君登壇〕
川端達夫君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、小泉総理の施政方針演説に対して質問をいたします。(拍手)
 質問に入る前に、まず、愛子内親王殿下の御誕生を心からお祝い申し上げるとともに、お健やかな御生育を心から御期待申し上げたいというふうに思います。
 さて、総理、総理の施政方針演説を伺って失望したのは、私だけではないというふうに思います。相変わらず、改革の言葉は躍っております。しかし、改革は手段であって目的ではありません。こんな社会を実現するためという理念が完全に欠落しているではありませんか。
 さらに指摘をいたします。
 総理、国民が今一番関心を持ち、願っていることは何だと認識しておられるでしょうか。驚くべきことに、景気を何とかよくしてほしいと願っている国民のその期待に、施政方針演説では、景気という言葉は一回も使われませんでした。もちろん、景気回復という言葉や、構造改革なくして景気回復なし、「聖域なき構造改革」というお得意のスローガンもありません。一体どうされたのですか。まさか、景気回復をあきらめたのではないでしょうね。所見を伺います。
 総理は、どのようにして景気を回復させるのか、構造改革はなぜ景気回復につながるのか、はっきりと具体的に示すべきであります。見解を伺います。
 さて、小泉改革とは一体何でしょうか。我が国の現状を見るとき、国と地方の借金は七百兆円になろうとし、景気は底なしの泥沼状況、国民生活の基盤を支える仕事は、きょうあすにもなくなろうというがけっ縁、老後は不安で真っ暗、そして、子供たちは、そんな大人を見て、目に光を失っているではないですか。
 なぜ、こんな国になったのでしょうか。一体、だれがこんな国にしてしまったのですか。
 国民が一人一人胸に手を当てたとき、確かに、勉強も努力もしてこなかった、ずるもした、悪もした、仕事も手を抜きサボり続けてきた、お年寄りや子供をないがしろにしてきたと思い当たるのであれば、まだ救いがあります。しかし、国民はみんな、これ以上頑張れないほど必死に働き、家族を守り、地域を支えてきたのです。そして、気がつけば、こんな国になっています。
 総理、国民は苦しんでいます。今、すがるような思いで助けを求めています。確かに、多くの国民は、あなたが現状の閉塞感を一気に打ち破ってくれるのではないかとの思いであなたを支持してきました。しかし、総理就任以来、あなたの言う構造改革を断行して何かプラスがあったのですか。構造改革と称して実行されている結果は、すべてマイナスになっているではないですか。
 あなたが総理に就任して以来、倒産件数は半年間で九千四百件に上り、株価は一段と値を下げ、ついに九千五百円割れ、バブル後の最安値を更新しました。失業率は五・六%に達し、自殺者は半年間で一万四千人を超え、新卒高校生の就職内定率はわずか六三・四%、いずれも深刻かつ危機的な状況です。労働条件は切り下げられ、医療費負担増まで押しつけられそうになっている。結局、あなたの改革は、弱者の犠牲と切り捨てだけしかもたらしていないと言わざるを得ません。一体、どこにあすの希望を持てというのでしょうか。
 このままでは日本は滅びる、みんなが危機感を募らせる今、総理の口からは、いつまでたっても、痛いけれど頑張れ、何とかなると、精神論を叫ぶだけで、その危機感が全く伝わってきません。
 あなたは、国民に対して、この国のあるべき姿を示し、それを達成するための改革の内容を詳しく説明する責任があります。そして、痛みを伴うのであれば、国民に対して、目指すべき社会像を明らかにした上で、一体どこに問題があるのかを認識させ、どのようなやり方でこの難局に取り組み、その過程でどのような痛みを伴うのか、説明する責任があるのです。
 残念ながら、総理はこの責任を全く果たしておられないと言わざるを得ません。御見解を求めます。
 国民の期待は、今や失望に変わってきました。このままでは小泉さんに本当の改革はできないと、国民は気がつきつつあります。
 その一つの象徴的事例が、先般のアフガニスタン復興支援会議でのNGO参加拒否問題です。
 役所が何でもやるという時代は終わりました。これからの社会は、中央と地方が、機能も財源もすみ分けると同時に、幅広い価値観と自立に基づくNGO、NPOとも一体となって、ともに支えるネットワーク社会を目指していくべきと思います。
 総理は、一体、あるべき社会の姿をどう描いておられるのか、そして、今日の時代におけるNGO、NPOの役割をどのように認識しておられるのか、まず伺います。
 加えて、総理は、今回の一件で、当初、外務省がNGOの参加を拒否したことは間違っていたという認識ですか、お伺いをいたします。
 もう一つは、所管大臣よりも直接関係のない族議員の方が影響力があるという、行政と政治のあり方です。
 これからの社会は透明で公正でなければならない、最も排除しなければならないのは政官業の癒着構造であるという改革の原点を揺るがす大問題であり、真相を明らかにすることは、構造改革を唱える総理の最大の責任であります。しかし、一連の総理や官邸の動きは、究明より隠ぺいに加担していると思わざるを得ません。総理の見解を伺います。
 加えて、大臣と次官と答弁が食い違うという前代未聞の事態まで招きました。そして、混乱収拾のため、なぜ、外務大臣に報告もせずにNGO出席を排除した次官と、NGOを参加させるよう軌道を修正した外務大臣とが同時に責任をとらされるのでしょうか。全く理解できません。納得できる説明を求めます。
 そして、今回、大臣は更迭されたのですか、罷免されたのですか、どちらなんでしょう。憲法六十八条には罷免の規定はありますが、更迭の概念はありません。みずからやめる意思のない大臣を実際は罷免しながら、形式上、本人の申し出の形を繕うことを過去の内閣は繰り返してきました。このようなごまかしこそ、政治を改革する上で最も避けるべき手法ではありませんか。やることを真っ正面からやる、逃げない、責任をとる、これが小泉改革だと思っていましたが、転換されたのですか。御所見を伺います。
 総理、今回のNGOをめぐる混乱のときこそ、「外務大臣、よくやった。これからも改革のために頑張れ。」「外務省官僚、NGO参加拒否は間違っていた。言うことを聞かない大臣に対し、対抗する族議員を利用することは許さない。次官は混乱の責任をとってやめなさい。」「変な議員の変な声が聞こえる、行政に特定議員の不当な介入は許されない、徹底的に事実関係を究明し、二度とこういうことは許さない。」「いかなる抵抗があろうとも改革は断行する。」とおっしゃるのが、自民党を変える、日本を変えると公約された小泉改革の真骨頂ではなかったのでしょうか。(拍手)なぜ、そうされなかったのか、見解を伺います。
 国民は失望し、支持率は急落しました。国民の期待を裏切ったのだから当然だと思いますが、総理は、支持率は山あり谷ありだと、人ごとのようにおっしゃっている。そして、演説では、支持率が低下して小泉改革は後退するのではないかとの懸念があるが、改革の決意は全く揺るぎないと強弁されましたが、認識不足も甚だしいと言わざるを得ません。
 国民は、そして九千五百円割れをした市場は、改革が後退したと感じたから急落したのではありませんか。このことを本当に自覚しておられないのですか。幾ら言葉で取り繕っても、総理の行動は、改革の後退以外の何物でもありません。いかなる改革も国民の信頼なくして実行はできませんという総理の言葉が、国民支持率急落により、風前のともしびであるのです。
 小泉改革の本質が問われています。支持率と株価の急落をどう受けとめておられるのか、明確なる答弁を求めます。
 次に、狂牛病対策について質問をいたします。
 行政は本当に国民のために機能しているのでしょうか。もはや、官僚が間違いを起こさないという無謬性は完全に否定された時代に入っております。エイズ薬害事件では、行政の不作為が問われ、厚生省元課長に有罪判決が下されました。今回は、危険を十分に予測できる肉骨粉の使用を漫然と放置してきた行政の不作為による過失責任について、総理はどのように認識されているのか、まず伺います。
 BSE発生後現在まで、牛肉の生産、製造、加工、流通、小売、さらに焼き肉店、牛どん屋、ステーキレストランなど、牛肉に関係するすべての事業者の経営状態は、危機的状況に瀕しております。これまでの努力がすべて水泡に帰し、倒産、廃業は相次ぎ、自殺者まで出ているありさまです。
 政府の対応は後手後手に回り、方針は朝令暮改、事実関係は二転三転、縦割り行政の厚い壁はそのまま、責任は押しつけ合い、そういう姿ばかりを見せつけています。加えて、雪印食品による牛肉偽装事件でも、農水省のずさんな買い上げ制度にも大きな原因があるのではないでしょうか。そして、何の責任もない国民だけが犠牲になっていくのです。
 一体、これが国民のための政治なんですか。だれの責任でこんな事態になったのですか、まず、責任を明確にすべきであります。
 私たちは、今回の不手際の責任をとり、国民への信頼回復を求めて、農水大臣の不信任案を提出しましたが、残念ながら、国民の意思に反して、否決されてしまいました。また、与党の中には、不信任案は否決するが、大臣はやめるべきだという、理解しがたい言動をしている人たちがいます。こういう議員は、国民に負託された議員の権利を放棄した人たちであると言わざるを得ません。(拍手)
 総理、行政が国民のためにこそ存在し、事があれば迅速機敏に動くよう改革することこそ、小泉改革の根幹ではないですか。その改革の決意を示し、国民の信頼を回復するため、農水大臣を総理の責任で罷免すべきではありませんか。所見を伺います。
 さらに、廃用乳牛ばかり三頭、BSEを発症したことから、乳牛関係者は深刻な打撃を受け、混乱に陥っています。これらにどう対処されるのか、伺うとともに、これらの牛が解体されずに処分されることになれば、汚染源の原因究明への影響が心配されます。どう対処するのか、あわせてお伺いをいたします。
 民主党は、政府が十分な対応を打ち出していない食肉・飲食関連業界の被害も含めた総合的かつ早急な対策を行うべきと考え、民主、自由、社民、共産の四党で、BSE緊急措置法案をまとめました。政府・与党もこの法案に賛成し、直ちに法律を成立させる必要があると思いますが、総理はどのようにお考えでしょうか。
 次に、政府の政策決定のあり方について質問いたします。
 総理、私は、目指すべき新しい社会は透明で自由でルールに基づく公正な社会であると考えます。しかし、今日の我が国の病根の一つは、裁量と口ききというものが、さまざまな政治腐敗を生んでいることです。これが、国民の税金の使い方を大きくゆがめているのです。
 公共事業の決定の過程への政治家の介入が、限りない税のむだ、不正、腐敗を生み出してきました。現在、道路四公団民営化後の路線選定を行う第三者機関の人選方法をめぐって綱引きが行われているように伝えられています。
 しかし、人選が、人事が大事なのでしょうか。これらの事業をどういう基準で行うかという物差し、すなわちルールと、それぞれの機関の徹底した情報公開こそが最も重要なのではないでしょうか。総理の所見を伺います。
 衆議院議員小選挙区選挙の制度改正にしても、ルールに基づく社会づくりの観点を重んじるなら、衆議院議員選挙区画定審議会の勧告こそ尊重されるべきであって、利害当事者の介入は断固排除されるべきではありませんか。総理の見解を伺います。
 与党優位の手続が本来的な首相権限の行使を困難にしている現実を直視するならば、連立与党による政策の事前調整システムを見直し、内閣による一元的な政策・法案決定を確立する仕組みを、今こそ構築すべきではありませんか。
 そもそも、憲法に言う内閣とは、単なる合議機関ではありません。総理大臣の統括及び指揮監督のもとに成立する執政機関です。民主党は、首長たる内閣総理大臣の統括権を明記するなど内閣法の改正を初めとして、一連の内閣強化法を策定することを提言いたしますが、政府はこれにどう取り組むのか、総理の答弁を求めます。
 次に、雇用対策と景気回復について伺います。
 雇用保険財政は、悪化の一途をたどっています。今年度中にも底をつくことが明白な雇用保険の積立金について、失業率が毎月悪化する中、この積立金がなくなったら一体どうするおつもりなのか。セーフティーネットの根幹の一つである雇用保険について、その財政見通し、対応を明らかにするのは、政府の責務であります。厚生労働大臣の見解を求めます。
 さて、総理は、演説の中で、「一年前と比べると、製造業は三十七万人、建設業は二十一万人の就業者が減少しています。しかし、この一年間のマイナス成長の中でも、サービス業の就業者は五十万人増加しています。」と誇らしく述べておられますが、サービス業の就業者がふえたと手放しで評価される姿勢を見るにつけ、全く事態の深刻さを認識しておられないと言わざるを得ません。この数字の裏に、正規雇用者が職を失い、若者が職を見つけられず、不安定、低収入のパート労働者へ移行させられているという現実があるのです。働く人の痛みが全くわかっておられないと言わざるを得ません。この厳しい現実を直視し、それを踏まえて改革を進めるという、心の温かさも対策もないのですか。
 必要なのは、正当で合理的な理由のない解雇の禁止やパート労働者等の差別的取り扱いの禁止、また、経営者の社会的責任を厳格に定めるなどの法の整備です。総理並びに厚生労働大臣の見解を求めます。
 さて、景気には個人消費が最も大きな影響を与えています。
 総理、今、国民が、苦しい財布のひもを緩めてでも、どうしても手に入れたいものは何だとお考えでしょうか、お答えください。
 ある都心の百貨店の店長が、大売り出しの前日、すべてのフロア、すべての売り場を巡回、点検し、準備すべてよしと判断したまではよかったけれども、気がつくと、自分がどうしても欲しいものがなかったと愕然としたという話を伺いました。国民の本当に欲しいものが手に入る社会こそ、消費も拡大し、雇用も創出されるのです。
 大量生産、大量消費、大量廃棄の時代は終わりました。物の豊かさから心の豊かさへ。便利、快適を求めるのと同じ、あるいはそれ以上に、環境保全が大切であり、何より安全、安心、健康の確保が一番大切な、国民が手に入れたいものです。そのことがかなう社会の実現が求められているのです。物の消費からサービスの消費が個人消費の主体になる社会、それを支えるシステム、そのビジョンなくして、かけ声だけの政策では雇用も景気もよくならないのではないでしょうか。
 このような新しい社会に対応したジョブクリエーションこそ、最も必要な雇用対策であり、景気対策です。トータルのビジョンを示してこそ、新しい時代の仕事が見えてくる、求められる知識、技能、技術が見えてくる。その雇用創出に際し、邪魔な規制は廃止する、官から民への移行を図る、必要な予算を確保し支援策をとる、新しい分野に必要な技能、技術、知識の教育訓練を行う、転職や流動化への障害を取り除く等、やるべき政策が本当の実効を上げるのではないでしょうか。
 トータルビジョンを何も示さず、一度や二度の失業、失敗にくじけないように新しいチャンスに向けて頑張れという、精神論や抽象論ではだめです。ITという道具を使ってどういう社会をつくるのかを示さず、全国でパソコン講習をするというような、自然と共生する社会への理念を示さずに、森林作業関係者を短期間採用するというような場当たり的な対応では、本当の雇用創出はもちろん、景気回復も到底望めないと思いますが、所見を伺います。
 次に、中小企業への金融対策について伺います。
 今、中小企業、零細企業は、総理の、痛みに耐えて頑張れというかけ声のもとに必死に頑張って、そして倒れていくというのが現実です。まさに、小泉構造改革はかけ声だけの精神論で、実態が破綻しているという証左であります。
 政府の間違った金融健全化策と不良債権処理策のため、大企業が追い貸しや債権放棄で救済される一方、本来はつぶれなくて済む中小企業でさえ、倒産に追い込まれています。昨年の倒産件数は一万九千件を超え、バブル崩壊後最悪を記録しました。こうしている間にも、三十分に一社が倒産しているのです。この三年間で、大企業向け融資は四兆円もふえているのに、中小企業向け融資は、何と、四十兆円も減っております。総理は、この現実をどうお考えでしょうか。これも構造改革が進んでいるあらわれなのでしょうか。
 中小企業が、今後とも、我が国経済の中心的役割を果たすと認識されるのであれば、私は、今の事態を招いている金融政策は間違っていると断言いたします。金融機関が中小企業の方ではなく金融庁の方ばかりを向き、どうやってBIS基準をクリアするのかに腐心しているようでは、中小企業は生き残れるはずはありません。我が国の中小企業の多くは、単に投資資金だけではなく、資本金をも金融機関から借り入れしているという実態を踏まえる必要があるのではないでしょうか。総理の御認識を伺います。
 民主党は、昨年の通常国会に、地域金融円滑化法案、通称金融アセスメント法案を提出いたしました。情報公開を通じて、中小企業に一方的に不利な銀行取引慣行を是正し、地域金融を円滑化しようとするもので、全国の中小企業が、このような新法の制定を求めて、運動を展開もしています。残念ながら、昨年の通常国会では、審議入りもさせてもらえず、廃案となりました。本日、再び提出いたしました。総理も、この新法を制定すべきとお考えになりませんか、また、民主党案に賛成すべきとお考えになりませんか。お答えをいただきます。
 次に、経済構造について伺います。
 総理は、演説の中で、「中国は、昨年、WTOに加盟し、今後、我が国を初めとする国際社会との関係において一層建設的な役割を果たしていくことが期待されます。」と、わずか一行半で触れておられますが、この中国の数億人以上という労働者が世界の労働市場に参入した現実こそ、我が国の経済に最も深刻な状況を生み出しているということを認識しておられるのでしょうか。
 資源はないが、優秀な知識と技能、技術を持ち、そして勤勉な労働力に恵まれ、我が国の産業は育ち、これらに支えられて、日本は技術立国、貿易立国として発展してきました。中国の参入により、産業は空洞化の一途をたどっています。日本の産業政策は根底から転換しなくてはいけません。個々の企業は努力し、苦しみ、悩み、まさに、のたうち回っています。
 空洞化にどう対応していくべきとお考えですか。農作物、工業製品へのセーフガードのちぐはぐな対応ぶりを見ても、日本の経済、産業をどう導いていくかという道筋も戦略も全く見られません。
 総理は、これからの日本経済は一体、何で支えようとお考えですか。私は、これまでもそうであったように、これからも、資源のない我が国の経済の根幹を支えるのは、科学技術、そして物づくりであると確信をいたします。総理の見解を求めます。
 確かに、小泉政府は、内閣府に総合科学技術会議を設置し、国立の試験研究機関や大学の改革にも取り組んでおられます。しかし、科学技術立国を誇ってきた我が国が、今日、バイオテクノロジーや情報技術など、多くの面で欧米諸国からおくれをとってしまった最大の理由は、まさに、ビジョンなき科学技術政策にあったのではないでしょうか。総理は、この点をどのように御認識されていますか。
 あわせて、我が国が科学技術立国として生き残るためには、教育、特に高等教育の改革とともに、小中学校における教育のあり方が極めて重要であると考えます。我が国の将来の盛衰を決するとまで考えられる青少年教育について、総理はいかなるビジョンをお持ちなのか、伺います。
 次に、地方分権について伺います。
 何でも中央集権で、お上がコントロールする時代は終わりました。中央と地方の行政が権限、財源を分担し、参加と共生の社会に改革することが、構造改革の最も重要な課題の一つであります。総理も、重ねて、地方にできることは地方にと発言されています。しかし、それにもかかわらず、総理の地方分権に対する熱意が感じられません。むしろ、地方いじめでしかないというのが実感です。
 そこで、伺います。
 政府は、累次の経済対策において、これに必要な地方債の償還について地方交付税で措置するとしてきました。また、昨年から、地方交付税特別会計の借り入れを原則廃止することとし、これによって発生する財源不足分のうちの地方負担分を赤字地方債で賄うよう制度改正を行いましたが、この赤字地方債の償還についても地方交付税で面倒を見ることとしています。
 ところが、今次予算では、国債三十兆円枠を大義名分として、国と地方のあるべき姿の提示や事務事業の見直しを行わないままに、一方的に地方交付税の削減を行ったのです。総理は、この矛盾をどう解消するつもりなのか。総理並びに総務大臣の御見解を伺います。
 次に、地方への税源移譲について伺います。
 現在の地方交付税制度を初めとする地方財政制度は、既に限界に来ており、早急な改革が必要であります。この考えに従い、昨年、民主党は、政権をとれば、即座にすべての補助金を一括交付金として統合した上で、その後五年以内をめどに地方交付税の抜本改革と税源移譲を行うというスケジュールを国民に示しました。我が党の案に対する見解を求めるとともに、総理の財源移譲に関する方針をお聞かせいただきたい。
 次に、環境政策について伺います。
 まず、京都議定書の批准についてお伺いいたします。
 政府が京都議定書の国会承認手続を今国会で行うことは当然のことであると考えますが、総理の決意を伺います。
 循環型社会を目指す地域の取り組みでは、例えば温暖化対策として、休耕田に菜の花を植え、菜種油をとり、バイオディーゼル燃料、BDFとして、ディーゼル車の燃料として利用するという試みも行われています。しかし、このような地域の地道な取り組みに対しても従来どおりの軽油引取税をかけるようでは、せっかくの努力の芽を摘むようなものであります。
 自動車にかかわる課税のあらかたは、道路損傷への負担という側面からのものであります。電気自動車やハイブリッドカーなどの取得にかかわる優遇税制はありますが、例えば、低公害な燃料を優遇するというような税制や政策はありません。税金で低公害車を購入して得意げに自慢をしておられますが、日本を変えるとおっしゃるなら、環境をベースとした税体系の再構築をするというお考えはありませんか。総理並びに財務大臣の御所見を伺います。
 以上、るる述べてまいりましたが、最後に、総理は、インフォームド・コンセントという言葉を御存じだと思います。医者と患者が信頼関係のもとに治療を行うために、どこが悪くてこのようになったのかをはっきりさせ、処方をどのようにするかを明らかにしていく手法です。
 苦いけれど薬を、痛いけれど注射を、つらいけれど禁酒禁煙を、苦しいけれどリハビリを、怖いけれど手術を、みんな、どれもやりたくないけれど、治ると信じるから、治りたいから耐えて頑張るのです。これはまさに、今の政治に求められていることではありませんか。
 ところが、小泉総理、あなたは国民に、改革と叫び、我慢しろと言うが、何がいけないからこうなったのか、どう治すのか、どんな国にするのか、そのメッセージが、あなたからは伝わってきません。十分な病状診断も治療方法も示さず、ただただ治してやる、痛いぞ、やってみないとわからない、頑張れと叫び、病状が悪化した患者に、うまくいっていると言っているだけの医者に、国民は身をゆだねるわけにはいきません。
 総理の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 川端議員にお答えいたします。
 構造改革による景気回復についてお尋ねがありました。景気回復していないじゃないかという質問であります。
 私は、目先の景気回復じゃない、持続的な景気回復策を求めるために、改革なくして成長なしという方針のもとにやっているのです。国民を信じております。一、二年の低成長を覚悟してでも将来の持続的な経済成長を望んでいるのが国民であり、それに耐えてくれる国民であるということを、私は確信を持って改革を進めてまいります。(拍手)
 不良債権の処理、特殊法人改革、税制改革などの構造改革の方針を、既に明らかにしています。それがないと言うのは、わからない、見ようとしない、野党だから与党の内閣のやっている改革を見ようとしない態度は、改めていただきたい。着々と改革は進んでいるのです。
 国民の将来に対する不安の解消等を通じ、私は、消費、投資の経済活動を活性化するとともに、金融機能の再生、新規成長分野への資源の投入、民間のビジネス機会の拡大による設備投資、雇用増加、コストの低下等を通じ、景気回復を図り、持続的な経済成長を実現してまいりたいと考えておりますと、何回も表明しております。
 私は、野党の皆さんも、小泉内閣の進んでいる改革を冷静に見詰めて、協力すべきは協力していただきたいと思います。
 国のあるべき姿についてであります。
 我が国の現在の経済状況の背景の一つには、時代や環境の変化に対応できない制度、規制などが民間活力の発揮の機会を制約していることがあると思います。
 このため、私は、改革なくして成長なし、不良債権処理の促進、規制改革、財政改革、こういう改革を着実に進めております。今後二年程度の集中調整期間は、低い成長を甘受せざるを得ない。しかし、構造改革への取り組みを継続することにより、その後は、中期的に民間需要主導の着実な経済成長が実現されるものと私は考えております。
 このようなあるべき姿、その道筋については、既に小泉構造改革五つの目標を示し、その達成の道筋を施政方針演説で明らかにしております。
 あるべき社会の姿、そしてNGO、NPOの役割についてでございます。
 先般決定した「改革と展望」においては、日本が目指す社会の姿として、人、これを何より重視する国を示しました。二十一世紀の新しい社会では、市民意識を持つ個人を核として、行政、企業、NPO、NGOが、その個人の知的資源、労力、経済的資源に依拠しつつ、互いに連携しながら活動を行い、安定的で活力のある社会を築くことが期待されております。
 NPO、NGOは、行政でも営利企業でもない第三の主体として、国民のさまざまな多様化した要望にこたえ得る組織として、これからも、大きな役割を発揮してくれると期待しております。
 アフガニスタン復興支援会議へのNGOの参加拒否に関する御指摘がございました。
 NGO二団体の参加につきましては、外務省が一たんは不許可と判断したことは、私は、適切さを欠いたと思っております。しかし、その後、田中前大臣の指示を得てさらに検討を行いまして、二十二日のアフガン復興会議閉会セッションにオブザーバーとして参加してもらうことになり、また、外務省も、今後、アフガン復興支援に当たり、NGOと十分協力していく旨を確認しております。
 NGOの参加拒否問題の真相究明に関する私や官邸の動きについてのお尋ねでございます。
 先月二十八日、政府として見解を発表しました。また、累次、予算委員会で説明を行ってきたところでありまして、隠ぺいに加担しているとの御指摘は、全く当たらないと考えております。
 NGOの出席拒否問題における大臣と次官の責任、さらに役所と国会審議との関係に関するお尋ねであります。
 このNGOの出席問題については、本来は外務省内の問題です。それが国会全体の問題になった、国会の混乱という事態に至ったことから、私は責任を感じ、事態打開のために、田中前大臣にも野上次官にも協力を要請した。両氏とも、この事態の打開に協力をしていただきました。私は、その協力に従って、この事態の打開に全力を尽くした次第であります。
 政治家の不当な圧力は排除し、耳を傾けるべき意見は取り入れるという点は、川口外務大臣就任時にも強く指示しております。
 田中前大臣更迭の法的位置づけについてであります。
 今お話ししましたように、田中前大臣については、国会審議の正常化のために御協力いただけないかということをお話しし、その協力要請に対して田中前大臣は了解され、辞任することとされたものでありまして、これを受けた依願免であります。
 支持率の急落についてのお尋ねであります。
 私の改革は、支持率が高かろうが低かろうが、全く決意に揺るぎはありません。支持率が下がったといっても、民主党よりもはるかにまだ高い。(拍手)私は、この国民の期待を背に受けまして、しっかりと改革を進めてまいりたいと思います。
 BSEの責任問題、今後の対応についてであります。
 九六年四月のWHO勧告を受け、牛には肉骨粉がほとんど使われていなかったことなどの状況を踏まえ、農林水産省は、行政指導により対応したものと承知しています。当時のこうした対応のあり方については、厚生労働大臣と農林水産大臣の私的諮問機関として設置されたBSE問題に関する調査検討委員会において、議論していただいているところであります。
 昨日、農林水産大臣への不信任決議案が否決され、立法府からの信任が得られたところでありますが、政府としましては、一連の経緯を真摯に受けとめ、今後とも、廃用牛の出荷円滑化対策などのBSE対策や原因究明に遺漏のないよう、全力を尽くします。
 なお、農林水産大臣のとるべき責任は、BSEに関する正確で科学的な情報を国民にきちんと伝えること、BSE発生に伴う生産から消費に至るさまざまな悪影響に対応するための措置を講ずること、過去における行政措置等を点検し、将来にわたりBSEの発生防止に取り組むことにあると考えており、今後とも、これらの職責を果たし、国民に安心していただくよう、全力を尽くしていただきたいと考えております。
 野党がまとめられたBSE緊急措置法案についてであります。
 BSE対策や、生産者、流通業者等への対策を法律で措置することについては、今後、BSE問題に対してどのような法的対応が適当かについて議論を深めるべきだと考えております。政府としては、BSEの発生、蔓延防止と感染経路の究明に遺漏のないよう、関係法令の見直しについて検討を進めているところであり、今国会に法案を提出する予定であります。
 道路四公団に係る事業の決定やその情報公開についてであります。
 道路四公団の事業については、昨年十二月に決定した特殊法人等整理合理化計画において、組織形態とともに、その事業についてのルールを的確にすべく方針を決定したところであり、今後、その着実な具体化を進めてまいります。また、関係機関の情報公開については、既に各般の施策を進めているところであり、今後とも、その充実を図ってまいります。
 衆議院小選挙区の制度改正についてのお尋ねであります。
 選挙区画定審の勧告は尊重されるべきものだと考えておりますが、現在、与党三党間では、衆議院の選挙制度について見直しのための協議が行われており、政府としては、この協議の動向を見ながら、選挙区画定審の勧告の取り扱いを検討したいと考えます。
 与党審査手続の見直しと内閣機能強化に関するお尋ねであります。
 中央省庁改革において、内閣及び内閣総理大臣が、国政運営上、行政各部に対する指導性をより一層発揮できる体制が整備されました。今後、この体制を大事にして、議院内閣制そして各政党の関係、こういうことを総合的に判断し、意思決定に際しては内閣総理大臣の指導力が十分に発揮できるよう努めてまいりたいと思います。
 厳しい雇用の現実を踏まえた法整備の必要性についてであります。
 解雇基準・ルールを明確にすることやパートタイム労働者の適正な処遇を確保することは、重要な課題であると認識しております。現在、厚生労働省において、労使を初め関係者の意見も十分聞きながら検討しているところであります。
 また、従業員の雇用の安定に最大限努力すべきことは企業の社会的責任であると認識しており、既に、雇用対策法において、再就職援助計画を策定することを事業主に義務づける等の措置を講じたところであります。
 今後とも、政府としては、厳しい雇用情勢に対応するため、雇用対策を積極的に推進することにより、国民の雇用不安の払拭に努めてまいります。
 今、国民が手に入れたいものは何か。
 私は、これは、一人一人違うと思います。なかなか難しい、一口で言うのは。しかし、手に入れたいものは、さまざまな物もあると思います、サービスもあると思います。人それぞれによって違うと思いますが、私はやはり、全体的に考えて、一番手に入れたいものは、希望に満ちた、日本の明るい将来であると考えております。(拍手)このような社会の実現を目指し、一つ一つ改革を積み重ねていくことにより、私は、個人消費も拡大し、景気も回復していくものと思います。
 雇用創出など景気回復へのビジョンについてお尋ねであります。
 雇用創出のかぎを握るものは、民間需要主導の持続的な経済成長であります。この持続的成長を支える新たな成長のエンジンは、高齢化社会や循環型経済社会への対応など、消費者の新たな需要を充足するサービス産業を中心とした新規産業分野であります。こうした分野の産業の拡大により新たな雇用をつくるとともに、雇用創出効果の高い分野への歳出の重点化、規制改革などの構造改革を進めることにより、雇用のミスマッチを解消し、雇用不安の軽減を目指していきたいと思います。
 なお、現在のような厳しい雇用情勢のもとで、地方の自主的な取り組みを生かした緊急的な雇用づくりは一定の意義があるものと考えております。
 不良債権処理等の中小企業への影響でございます。
 政府としては、先般の改革先行プログラムに基づき、不良債権の最終処理に当たっては、中小企業について、その特性も十分に考慮し、再建可能性等をきめ細かく的確に見きわめ、極力、再建の方向で取り組むとともに、中小企業を含む健全な取引先に対する資金供給の一層の円滑化に努めるよう、金融機関に対し要請しているところであります。
 民主党が提出する地域金融円滑化法案についてでございます。
 金融機関の融資業務等は、基本的には自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであり、何らかの一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価すること等については、慎重に考えるべきものと思います。
 産業の空洞化についてです。
 我が国の基幹産業である製造業は、安価な労働力等を背景に、近年、中国等への進出、移転が続いております。国内雇用の減少等も懸念しておりますが、重要なのは、国内の経営資源を、より高付加価値の分野や生産性の高い分野に振り分けていくことだと思います。
 産学官の連携強化や実践的な技術開発を推進し、産業技術力を強化してまいりたい、また、規制改革や制度改正を通して、情報通信産業、環境関連産業などの成長産業の育成を図ってまいりたいと思います。
 科学技術政策についてでございます。
 科学技術政策を戦略的に推進するため、第二期科学技術基本計画に基づき、政府一体となって、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料など、最先端の戦略的研究分野の重点的推進と科学技術システムの改革に取り組んでおります。
 今後とも、総合科学技術会議を中心に、世界最高水準の科学技術創造立国の実現に全力を尽くしてまいります。
 科学技術立国を目指す我が国の将来を担う青少年の育成についてのお尋ねであります。
 知的創造力が最大の資源である我が国にとって、次代を担う創造性豊かな質の高い人材を育成することは、極めて重要であります。このため、高等教育においては、大学の構造改革を推進するとともに、初等中等教育においては、基礎、基本の確実な定着、習熟度別指導の推進などにより、子供たちに確かな学力の育成を図っていきたいと思います。
 今後とも、青少年が、新たなる国づくりを担い、豊かな個性や能力を十分に伸ばすことができるよう、教育について全力を挙げて推進してまいります。
 地方交付税の削減についてでございます。
 地方財政計画の歳出についても、国の歳出の見直しと歩調を合わせつつ、国と地方の事務事業の見直しを行い、抑制に努めたところであります。その上で、地方債の償還に要する財源も含め、地方財政の運営に支障を生じることのないよう、地方交付税等の地方財源を確保したところであります。
 今後、地方にできることは地方にゆだねるとの方針のもとに、国と地方の役割や税財源配分のあり方の見直しなどに取り組むなど、地方分権を一層推進してまいりたいと思います。
 補助金の一括交付金化、地方交付税の抜本改革と地方への財源移譲についてのお尋ねであります。
 個別補助金等のあり方については、平成十四年度予算においても、地方公共団体の自主性を尊重する統合補助金について制度の改正を含めた一層の拡充を図る等、積極的に見直しを行っているところでありますが、今後とも、見直しを行ってまいりたいと思います。
 一方、地方の財源の問題については、地方の自立性を高めるため、地方行財政の効率化を前提に、自助と自立にふさわしい歳入基盤を確立することが重要であります。
 こうした観点を踏まえ、地方交付税のあり方、税源移譲を含め国と地方の税源配分などについて、民主党の考えも含め、根本的に検討してまいりたいと考えております。その際、国、地方それぞれの財政事情や個々の自治体に与える影響等を踏まえる必要があると考えております。
 京都議定書についてであります。
 緊急に対応を要する地球温暖化の問題に対しては、今国会における京都議定書締結の承認と、これに必要な国内法の整備を目指します。また、米国の建設的な対応を引き続き求めるとともに、途上国を含めた国際ルールが構築されるよう、最大限の努力を続けていきます。
 環境をベースとした税体系の再構築についてのお尋ねであります。
 税体系のあり方につきましては、経済社会の構造変化等を踏まえつつ、幅広い観点から検討されるべき課題であると考えております。環境問題に関する税制面での対応についても、規制的措置、経済的措置、自主的取り組み等による環境施策全体の中での税制の具体的位置づけを踏まえながら、今後の税制のあり方を検討する中で考えていきたいと思います。
 残余の質問については、関係大臣に答弁いたさせます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 川端議員にお答えを申し上げたいと思いますが、二点ございます。
 第一点目は、雇用保険の財政見通しとその対応策についてでございました。
 厳しい雇用失業情勢のもとで、雇用保険受給者の増加が続いておりますが、十三年度におきましても、支出額が保険料等の収入を上回る見込みでありまして、給付に必要な財源は積立金の取り崩しによって確保いたしております。
 十四年度につきましても、同様の措置によりまして対応できると思っているところでございますが、しかし、全体の雇用保険財政の見通しが厳しくなってきていることは御指摘のとおりでございまして、本年度から施行された新制度の影響、そして今後の経済や雇用失業動向等を見まして、十四年度中にどうするかの決定をしなければならないものと考えているところでございます。
 もう一点、厳しい雇用の現実を踏まえた法整備の必要性についてのお尋ねがございました。
 解雇基準やルールにつきましては、労働関係をめぐります紛争を防止する等の立場から、あらかじめ明確になっていることが大切だと考えておりまして、労働政策審議会に検討をお願いし、議論をしていただいているところでございます。その内容につきましては、今後、労使を初め関係者の御意見を十分に拝聴しながら結論を出したいと思っているところでございます。
 また、パートタイム労働者と通常の労働者の処遇の均衡につきましても重要な課題であると認識しておりますし、現在、パートタイム労働研究会におきまして、これらの問題につきましても議論を進めていただいているところでございますが、今回、その中間報告をさせていただいたところでございます。
 さらに、経営者の社会的責任につきましても、企業がその存続を図るために雇用調整を行う場合には、企業として従業員の雇用の安定に最大限努力すべきものであると考えております。離職を余儀なくされる労働者につきましては、企業はその再就職を支援していくことが重要であり、既に、雇用対策法におきまして、事業規模の縮小等に伴いまして相当数の労働者を離職させる場合には、再就職援助計画を作成することを事業主に義務づけているところでございます。
 今後とも、地域に見合いました雇用の確保でありますとか、あるいはカウンセラーの育成によります親切な雇用指導、そしてまた、ワークシェアリングの今後の充実等々につきまして、これから、新しい角度から取り組んでいきたいと考えているところでございます。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 私に対します質問は、来年度予算における地方交付税についてのお尋ねでございました。
 御承知のように、地方交付税というのは、その所要額は、毎年度の地方財政計画の策定を通じて決めるものでございます。特に来年度の地方財政計画におきましては、国と地方は構造改革のパートナー、こういうことでございまして、例えば投資的経費につきましては、一般単独事業を一割、これはカットいたしました、決算との乖離もございますので。また、経常経費についても、効率化を含めて厳しい見直しをやりまして、近々に国会に出させていただきますけれども、八十七兆六千億円の、本年度に比べますとマイナス一・九でございますけれども、地方財政計画をまとめたところでございます。
 その財源につきましては、国庫支出金等の特定財源、地方税を除くものにつきまして、地方交付税及び臨時財政対策債で措置いたしたわけでございまして、国が責任を持ってそういたしましたということは、来年度の地方団体の財政運営については、ほぼ支障がないものだと私は考えております。
 ただ、地方交付税の総額は、本年度に比べますと約七千九百億円ぐらい、これは少なくなりました。これは、川端議員も御指摘のように、地方交付税の所要額の制度改正をやったわけでありまして、今までは、交付税が足りないものは交付税特別会計に資金運用部その他から借り入れをやりまして、借り入れたものを地方団体に配分いたしておったわけであります。
 ただ、特会の借り入れも四十兆円に及びますし、資金運用部等の資金調達先も変わってまいりましたので、いつまでもこういうことは限度があろうということで、十三年度から、交付税特会の借り入れをやめて、国が責任を持つものは一般会計で調達してもらって交付税特会に入れてもらう、地方が責任を持つものは赤字地方債を出そうと。ただ、一遍にそういうことは大変でございますので、二カ年ないしは三カ年かけてそういう方向に持っていこう、こうやったわけであります。
 したがいまして、交付税そのものと交付税に見合う臨時財政対策債を足しますと、本年度が約二十一兆八千億でありますが、来年度は二十二兆七千七百億円になっておりまして、プラス四・五%でございます。しかも、この臨時財政対策債につきましては、後年度、地方交付税で全額を元利償還、補てんする、こういう仕組みになっておりますので、関係の地方団体にも了解を得ているところでございます。
 総理の御答弁にもありましたが、いずれにせよ、国と地方のあり方、あるいは、税源移譲を含む国と地方の税源配分のあり方につきましては、地方分権改革推進会議や地方制度調査会や経済財政諮問会議等で十分な御議論をいただいて、適正な方向づけをしていただき、それに従って我々は実現を図ってまいりたい、こう思っております。
 今後とも、御指導をよろしくお願いいたします。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) お尋ねの趣旨は、環境をベースとした税体系の再構築をやってはどうかという御質問でございまして、先ほど総理もお答えいたしました。
 非常に適切な御指摘ではございますけれども、現在の自動車関係諸税におきましては、おおむねその趣旨を生かしております。すなわち、ガソリン税なりあるいは軽油引取税というものは、その消費量に基づきまして課税されておりますし、また、自動車につきましては、重量に相当するものとして課税をいたしておりまして、要するに、環境負荷の軽減を勘案しております。
 なお、しかしながら、今後とも汚染者負担の原則を重視して、今後の税制のあり方の中で検討させていきたいと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 神崎武法君。
    〔神崎武法君登壇〕
神崎武法君 私は、公明党を代表して、小泉総理の施政方針を含む政府四演説に関連して、主要なテーマに絞って質問をいたします。(拍手)
 小泉連立内閣が「聖域なき構造改革」を掲げ誕生して、ほぼ十カ月。この間、小泉内閣は、経済再生や歳出構造の見直し、特殊法人改革、テロ撲滅や地球温暖化への取り組みなど、失われた十年を回復し、社会に元気を取り戻すため、あるいは顔の見える国と言われるため、果敢に努力を続け、内外の一定の期待にこたえつつあります。
 問題は、小泉総理も指摘されているように、構造改革には痛みが伴うということであります。改革本番の年と総理が強調される今、企業倒産の増加、失業率の悪化など、痛みと不安が次第に国民生活の随所に広がり始めていることを、政治家として夢にも忘れてはならないと思うのであります。
 まさしく、小泉内閣として正念場を迎えているのであり、これからが本番であります。国民の支持、期待にこたえるため、今後もしっかりと取り組まなければなりません。
 そのためには、小泉内閣の構造改革後の社会はどういうものであるのか、明確に示すべきでありますし、構造改革の結果が求められていると言えます。総理は、施政方針演説で、努力が報われ、再挑戦できる社会、人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会など、五つの社会像を強調されており、私も基本的には同感であります。この方向を底流に据えながら、私は、我が国が目指す国家の方向として、文化の薫り高き、活力ある国際国家を二十一世紀は目指すべきであると考えるものであります。(拍手)
 以下、その観点に立って、順次、質問並びに私の見解を申し述べます。
 昨年のKSD事件問題に続き、年明け早々、政治家の影響力や肩書を利用し、私設秘書や元秘書らが公共工事をめぐる口ききの見返りとして金を受け取るという政官業癒着の事件が、またしても発覚しました。
 公明党は、結党以来、政界の浄化と闘い、清潔、公平、公正な政治の実現を目指し取り組んでまいりましたが、今回の問題に国会が真剣に対処することこそ、政治の信頼回復であり、この国の第一の改革と強く訴えるものであります。
 総理、あなたは、先月開催された自民党大会で、いかなるよい政策を掲げても、政党、政治家に対する国民の信頼がなくては政策を遂行することはできませんと、明言されました。総理が目指す「聖域なき構造改革」の断行には政治倫理の確立こそが急務であり、政治の信頼なくして改革なしと言えるのではないでしょうか。
 そのためにも、疑惑を持たれている政治家は、みずからの疑惑解明に努め、国民に真相を明らかにすることが、政治的道義的責任を有する政治家としての身の処し方であり、信頼回復の第一歩であります。
 再発防止策として、三つの提案をさせていただきます。
 第一は、あっせん利得処罰法の適用対象を拡大し、私設秘書や親族も加えることであり、第二は、いわゆる官製談合防止法の早期制定であります。国や地方自治体など発注側も規制する法整備がなければ、談合は根絶できません。既に、与党三党プロジェクトにおいては骨子案は合意されており、公明、保守両党の党内手続は終了しています。あとは、自民党の決断を待つのみです。自民党総裁としての総理のリーダーシップが求められております。
 第三は、政治団体間の寄附のあり方の見直しです。政党や政党支部に対する企業・団体献金が寄附の名目で政治家個人の資金管理団体や個人後援会などへ還流していると言われており、何らかの検討をすべきであります。
 なお、政治への信頼回復という点では、永年在職議員の特典廃止を初めとする国会改革も、大胆に進めるべきであります。
 また、BSE感染牛の発生を許した農林水産省の危機意識の欠如や初期段階における不手際などについて、国民の不信と怒りは極めて大きいと言わねばなりません。このままの状態が続けば、営々と築いてきた我が国畜産、酪農は崩壊すると言っても過言ではありません。政府は、BSE発生の原因解明等、BSE対策の一層の強化、食品行政に対する国民の不信感を払拭すべきであります。そのためには、三月に結果が出るBSE問題に関する調査検討委員会の結論に基づき、その責任を明確にし、農林水産省改革を断行すべきであります。
 さらに、今回明るみとなった雪印食品の牛肉偽装事件は、食に対する国民の不安、不信を増大させるものであり、まさしく企業倫理が問われております。個々の企業による倫理の確立、徹底は当然でありますが、行政としても、法令違反には厳然たる措置を講ずるとともに、特に食品など、国民の生命、健康に影響を及ぼす製品の安全性を確保するため、徹底した規制、基準を設けていくべきであります。
 一連の外務省問題につきましても、川口新大臣になったのを機に外務省改革を徹底的に行い、国民の信頼を回復すべきであります。特に外務省幹部職員の人事については、従来の慣例や手法にとらわれずに、外務省改革を実現する上でふさわしい人物を、民間人を含め登用することを検討すべきでありますし、外務省改革も、民間の有識者から成る第三者機関を設置し、適切なアドバイスを受ける形で新たな改革を目指すべきであると考えます。(拍手)
 さて、我が国経済は、長期にわたり持続的に物価が下落するデフレ状況が続き、デフレスパイラルにいつ陥ってもおかしくない局面に立たされております。特に、三月期決算、四月のペイオフ解禁に向け、これから二カ月が、金融システムの問題も含め、重要な段階と言えます。
 私は、今、大事なことは、正念場にある我が国経済の現状、なかんずく、デフレスパイラルへ陥りかねない断崖絶壁の危機的状況について認識を共有し、事態の打破に向け一致結束して取り組んでいくことであります。
 総理、私たち公明党は、構造改革へと果敢に立ち向かう小泉船長のもと、団結して荒波を乗り越えていく覚悟はできておりますし、改革なくして成長なしの方針も、一面においては支持します。しかし、深刻なデフレにあって、やみくもにデフレ的要素の強い改革だけに邁進するならば、我が国経済の展望は開けません。デフレ克服こそ、経済政策の最優先に位置づけて取り組むべき課題であります。
 そういう意味におきまして、私は、改革なくして成長なしの前に、デフレの克服なくして改革もなしという言葉をつけ加えたいと思います。総理自身も、デフレ阻止に向けて強い決意で臨む旨を表明されておりますが、具体的にどう実行されるのかが重要であり、総理の実行力を強く期待するものであります。
 以下、私は、五つの視点から提案いたします。
 第一は、適切な金融政策の実行であります。
 現在、日本銀行は、日銀当座預金残高を通じた潤沢な資金供給、長期国債買い入れの増額など思い切った対応措置を講じており、評価をいたしますが、残念ながら、実体経済にはほとんど効果をあらわしておりません。財政政策に縛りがある以上、この際、デフレ克服という共通の目標に向かって、政府、日銀が連携し、思い切った金融政策を打ち出すべきであります。
 第二は、税制改革についてであります。
 この一月より政府税制調査会において抜本的な税制改革に向けた議論が始まり、経済財政諮問会議でも議論が始まるとのことであります。中長期的視点に立って、二十一世紀のあるべき税制について議論を進めることは大いに歓迎をするものでありますが、当面、平成十五年度改正に向けては、デフレの克服のための経済活性化を促し、また、構造改革にも資する税制改革に絞るとともに、景気の現状にかんがみ、少なくとも税制中立を前提で議論すべきであると考えます。
 第三は、資産デフレの克服、特に土地、不動産の流動化、有効利用の促進についてであります。
 景気の低迷、デフレが進行する中、土地、不動産の価格低迷がさらに不良債権を膨らませるという悪循環を断ち切るためには、思い切った土地、不動産の流動化、有効利用促進策を講じる必要があります。
 中でも、都市再生に向けた集中的な投資を行うとともに、規制改革の断行、思い切った税制措置、PFI活用などを含めた官民一体となった土地の有効利用の促進策、住宅対策の強化などを図るべきであると考えます。
 第四は、規制改革の積極的推進であります。
 経済活性化のためには、官から民へとの大方針のもと、新たなビジネスチャンスを生み出すよう規制を改革し、民間参入を促すことが重要であります。政府がまとめた三カ年計画にこだわらず、できるものは速やかに実行に移すべきであります。
 第五は、産業競争力の強化、空洞化対策への取り組み強化であります。
 我が国経済のデフレの一因は、中国デフレとも言われる、中国を初めとするアジア諸国の競争力の拡大にあることは、周知のとおりであります。日本に比べ安価な労働力、資本に支えられた国からの競争にあおられ、また、不良債権処理の過程で既存の供給過剰、高コスト業種の再編淘汰が進む中、我が国産業政策を抜本的に見直し、新産業の創出、なかんずく高付加価値型産業の創出、育成が待ったなしであります。民間主導による産業創出が何より求められますが、政府としても、新たな産業分野における国家戦略を打ち出すべきときと考えるものであります。
 以上、五つの視点から私の考えを申し述べましたが、あわせて、金融に関しては、ペイオフは予定どおり四月から解禁するとともに、特に地域金融機関を中心とした中小企業金融への影響などについて、適切な対応措置を講じる必要があります。また、金融システムの安定化の観点から、システミック(連鎖)リスクなど万が一の状況が起こった場合には、金融不安を取り除くために、経営者責任、株主責任等を明確にした上での公的資金の注入をためらうべきではないと考えるものであります。
 次に、中小企業対策についてであります。
 中小企業をめぐる金融経済環境は、ペイオフ解禁を初めとする金融システム改革の中で極めて厳しい状況にあり、特に地域の金融機関の環境は、当分の間、厳しくなるものと予想されます。
 このような状況の中、市中の金融情勢は、中小企業に対する貸し渋りのみならず、貸しはがしといったことが行われているとの現場の声も聞かれます。政府の方針どおり、早急に不良債権処理を進めることは当然ですが、その結果、我が国経済の屋台骨である健全な中小企業への金融が滞っているとすれば、それは、全く本末転倒であり、構造改革とは言えません。政府は、実態を十分に踏まえつつ、貸し渋り、貸しはがしに対し適切な対応措置を講じるよう、強く要請いたします。
 平成十三年度第一次補正予算は、こうした中小企業の実情を考えて、総合的な緊急中小企業対策として打ち出したわけであります。
 とりわけ、売り掛け債権を担保とした保証制度の創設は、多様な資金調達を開く有効な手段の一つとして、非常に画期的なことであります。しかしながら、金融機関への売掛金債権の担保融資の周知徹底が不十分であるとの現場の声が聞こえてきます。この制度の円滑な運用を行うための周知徹底をすべきであると考えます。
 国際経営開発研究所の世界競争力白書によれば、我が国は、科学総合ランクでは米国に次いで二位であるにもかかわらず、総合ランクでは十七位と低迷しており、これは、研究開発活動が効率よく競争力へ反映されていないことのあらわれと推測されます。
 私は、日本の企業が国際競争に打ちかつためには、民間企業内で事業化されていない多くの研究成果や大学に存在している知の蓄積を円滑に活用するシステムを確立すべきであると考えます。
 特に、これからは、大学が持つ技術を特許化し企業へ移転するTLO、技術移転機関の活性化などの施策による産学官の連携を強化することが必須です。持ち前の機動性、柔軟性、創造性を発揮できる、中小企業による社内ベンチャー制度や大学発ベンチャーなどを促進し、新製品の開発が積極的に行われ、その実用化、事業化が円滑になされる仕組みを確立するなど、思い切った取り組みを行う必要があります。
 次に、厳しさを増す雇用失業対策についてであります。
 公明党は、特に失業率の高い中高年や若年者対策について重点的に取り組むとともに、雇用の流動化に伴い増大するパートや派遣など、いわゆる非正規労働者の雇用環境の整備についても見直しが必要と考えます。
 中高年の雇用問題については、これまでも、再就職を困難にしている募集や採用における年齢制限の撤廃や、ミスマッチ解消策としての相談、職業訓練、あっせん等を一括して行う新たな再就職支援システムの創設などを提唱してきましたが、今後は、個人の能力や適性を客観的に把握し、就職や転職などを総合的にサポートするキャリアカウンセラー制度を充実させるなど、一層の再就職支援策が必要であります。
 また、若年労働者対策については、高校新卒者の就職内定率が六三・四%と、前年同期を五・五ポイントも下回るなど、深刻さに一層拍車がかかっております。
 特に、フリーターの数は百五十万人を超え、定職につけないために職業能力開発の機会が失われ、将来の労働生産性の低下を招くなど、本人にとっても国家経済にとっても、極めて深刻な問題であります。実践的な職業能力を身につけさせるため、一定期間の試行雇用を実施する企業に対して政府が助成を行うトライアル雇用制度や、学生が在学中に、企業などにおいてみずからの専攻や将来の希望に応じた就業体験を行うインターンシップ制度の拡充など、次代を担う若者が希望を持って働ける職場環境づくりが急務です。
 さらには、雇用の流動化問題について、先行きの見えない経済状況の中で、長期雇用を前提とする正社員が減る一方、パートや派遣など非正規労働者の割合が四人に一人と増大しており、こうした傾向は今後も続くものと思われます。
 有期雇用契約の見直しなど規制緩和による就業機会の拡大、さらには、少子高齢化に伴う労働力不足の解消策としても、雇用の流動化、就業形態の多様化は必要と考えますが、一方で、賃金体系や社会保険適用の問題など、正社員との待遇格差が拡大しております。雇用の流動化を進めるに当たっては、こうした非正規労働者の労働条件や雇用保障についての環境整備が必要であり、ワークシェアリングの導入を検討するにおいても、この点を十分に踏まえて検討すべきであります。
 次に、国民の安心の基礎である社会保障制度の改革についてであります。
 社会保障制度は、国民が安心して生活していくためには欠かせないセーフティーネットであり、老齢、疾病、失業などに際しても、社会全体で支え合う仕組みが将来にわたって確実に存在してこそ、社会の活力が生まれ、経済再生への道も開かれると考えます。
 総理は、今までのように、給付は厚く、負担は軽くというわけにはいかないと述べましたが、将来の給付水準を見据えて、どの程度までなら納得のいく負担をしてもらえるのか、年金、医療、介護等の給付と負担の将来像を国民にわかりやすく提示すべきであり、それとあわせて、先行き不安が増大している今、総理自身が力強く、国民に安心感を与えるような生活安全保障宣言を行うべきであります。
 次に、環境先進国への取り組みについてであります。
 本年九月に、南アフリカ共和国のヨハネスブルクで、環境と開発に関する世界サミットが開催されますが、このサミットで、昨年のCOP7、気候変動枠組条約第七回締約国会議で大きく前進しました、地球温暖化防止のための京都議定書の発効を目指し、我が国もそのときまでに批准すべきは、当然のことであります。
 このサミットに小泉総理も出席して、日本が二十一世紀の世界の環境政策を主導するとの姿勢を明確に打ち出すべきであり、同時に、アメリカがテロの問題で国際協調を求めたと同様に、今度は我が国が、地球温暖化防止のため、京都議定書の議長国として、ブッシュ米大統領に協調と参加を働きかけることも重要だと考えます。
 総理は、就任の際の所信表明演説で、自然と共生する社会の実現を表明されました。
 私は、その実現のため、まず第一に、京都議定書の批准に向けた国内制度の整備が早急の課題と考えます。
 地球温暖化防止のための取り組みを我が国経済再生の原動力とすべきであり、その意味で、取り組みの進捗状況、施策評価が客観的かつ透明性を持った仕組みで行われることが不可欠であり、省庁の垣根や縦割りを超えて、このための体制を早急につくる必要があります。
 あわせて、同じ観点から、既に幾つかの国で導入されている環境税についても、導入に向け積極的に検討すべきであります。
 第二に、自然エネルギーの推進です。
 持続可能な社会を目指すためには、化石燃料から自然エネルギーへと、大きくエネルギー政策の重心を転換することが重要であります。既に、EUでは、各国の自然エネルギーの割合を二二%に引き上げるという取り決めがなされました。我が党は、二〇二五年までに自然エネルギーを二〇%にという提言をしております。自然エネルギーの積極的な推進を図りつつ、それが普及するまでの間、環境負荷の大きい化石燃料への依存を減らす意味からも、天然ガス利用は、十分検討すべきであります。
 また、こうした観点から、エネルギーを国家戦略ととらえ、総理主導の推進体制をつくることが不可欠であると考えます。
 第三に、大都市圏のあり方を自然生態系の環に戻すために、我が党が提唱し、実現に向けて進んでおります、大都市圏エコタウン構想の一層の推進と全国的な展開が重要です。
 第四に、新たな取り組みとして、失われた自然を保全、再生、維持していくために、自然再生推進法の制定も欠かせません。総理が表明された自然との共生社会実現への重要な具体策であると考えるものであります。
 次に、教育についてであります。
 私は、今、日本で一番大切なものは教育であると訴えたいと思います。不登校児が十三万人を超えるなど、今日のさまざまな教育問題を考えれば、これまでの教育への政策的取り組みは不十分であったと言わざるを得ません。抜本的な教育改革なくしては日本の再生はありません。
 教育に対する投資はすぐに効果をあらわすものではないかもしれませんが、総理の口にする米百俵の精神は、まさに、未来への先行投資たる教育にこそ当てはまるのではないでしょうか。そうであるならば、二十一世紀を担う子供たちのために、公明党は、教育振興について小泉総理を支えていく決意であります。(拍手)
 その上で、具体的に提言をさせていただくならば、教育への財政支援も含んだ投資を検討すべきであります。例えば、現在、少人数学級の推進や、不登校児に対して、自宅への教員の派遣などを検討している自治体があります。こういった先進的に教育改革に取り組んでいる自治体に対する財政支援や、だれもが学びたいときに、いつでもどこでも学べる教育環境の整備のために、入学金の公的貸付制度の創設や無利子奨学金の拡充などが喫緊の課題であります。
 また、今こそ、平和教育の重要性について強調したい。学校における平和教育の推進とともに、小学校における英語教育の推進や、海外日本人留学生への支援など、世界に貢献できる人材の育成を強力に推進する必要があります。
 いずれにしても、国家や社会のために教育があるのではなく、教育のために国家や社会があるという、発想の転換が今こそ求められています。子供たちが目を輝かせて未来を語る国家こそ、本当に未来のある国家なのであります。
 次に、司法制度改革ですが、昨年六月、司法制度改革審議会が「二十一世紀の日本を支える司法制度」と題する意見書を内閣に提出、これを受け、十二月に、総理を本部長とする司法制度改革推進本部が発足しました。
 そこで、私は、司法制度改革の実施に当たっては、あくまでも司法制度改革審議会の意見書に忠実でなければならないこと、また、その作業や議論の透明性確保に努めるとともに、広く国民の意見を反映できるようにすべきこと、さらに、司法制度改革実現のため、法曹人口の大幅な増員や法科大学院の設立、法律扶助、国選弁護の拡充などについて財政上の措置を講ずるべきであると考えます。
 二十一世紀が目指す国際社会は、戦争や紛争がないということにとどまらず、国家よりも、むしろ一人一人の人間に徹底的に光を当てながら、だれもが人間らしい生活を営める環境が構築されなければなりません。
 そのためには、人間の安全保障の視点から、貧困、飢餓、国際組織犯罪、麻薬、エイズといった人類の問題に絶え間なく挑戦していくことが重要であります。また、国際テロの防止、根絶のためのテロ関連防止条約の早期批准や、国際犯罪人を裁くための国際刑事裁判所の創設なども含め、あらゆる課題に国連とともに全力で取り組むことこそが、人道大国として我が国が目指すべき方向であると確信するものであります。(拍手)
 その意味でも、まずは、アフガニスタンの復興を成功させることが、我が国にとってその大きな試金石となるのではないでしょうか。先月、東京で開催されたアフガン復興支援国際会議は、第一の目的であった資金拠出も需要額を満たし、大成功で終えました。これは我が国の外交に新たな局面を開くものであり、復興のイニシアチブをとったことは大きな意義があったものと確信します。
 今、アフガニスタンの人々は、あらゆる困難にもかかわらず、希望を持って、平和に向けた第一歩を踏み出しました。私たちは、彼らの村に学校や保健所をつくり、そして、子供たちが安心して、笑顔で元気に遊ぶことができる平和の大地を取り戻すために尽力しなければなりません。
 そこで、私は、アフガン復興に関して、三つの提案をさせていただきます。
 第一は、地雷の除去支援です。
 復興に当たっての大前提となるのが、地雷や不発弾の除去であります。地雷除去のための緊急機材の提供、現地及び国内のNGOなどの除去事業者に対する支援、そして、我が国が最も得意とする技術開発で協力するために、地雷除去ロボットなどの実用化を目的とする産官学の共同プロジェクトを発足するなど、総力を挙げて支援することを提案いたします。
 第二は、我が国の独自のアフガン復興支援ビジョンの策定と速やかな実施です。
 特に、我が国は、戦後の復興やカンボジア和平・復興支援の経験、かつてアフガンで難民帰還支援策を試験的に実施していたこともあり、和平プロセスへの支援、難民帰還と定住支援、教育、保健医療、女性の自立支援、文化遺産の保存、修復、そして新たな国づくりへのインフラ整備等、我が国独自の幅広い貢献が可能であります。
 アフガン復興支援・各省庁間連絡会議(仮称)を設置し、NGOの意見を最大限に取り入れながら、復興支援ビジョンを策定することを提案いたします。
 第三は、人づくりへの支援です。
 現地のプロジェクトを支援する人材育成と派遣体制の整備、留学生や技術研修の受け入れを含め、人づくり支援を積極的に進めるべきであります。
 さて、今国会の大きな焦点となっております自衛隊の防衛出動に関する法制、いわゆる有事法制について、私の見解を申し述べたいと思います。
 我が国に対する武力攻撃が起こり、国民の生命、財産、人権が脅かされるという事態が発生したときに、必要にして最小限の対応措置がとられることは当然であります。ただし、いわゆる有事法制の有事という言葉からイメージして、国民が一抹の不安を抱いていることも事実であります。
 この国民の不安を払拭するためにも、私は、法整備を検討する上で、一定の歯どめが必要であると考えます。
 第一は、あくまでも憲法の枠内、第二は、集団的自衛権の行使には踏み込まないなど、従来の憲法解釈の変更は認めない、第三は、国民の権利制限に関する事項は必要最小限とする、第四は、緊急事態下においても、表現、報道の自由、政治活動の自由など、国民の自由権は保障する、第五は、我が国に対する武力攻撃の事態への対応措置を法整備の中心とするなどであり、まずは、政府がこうした基本方針を国民に提示すべきであると考えます。
 なぜ、今、防衛出動法制が必要なのか。どのような原理原則で法案を策定するのか。私は、国家の緊急事態に関する法整備については、全国民の生命、人権に直接かかわる問題なので、具体的な作業に入る前に、国民の理解を求めるためのあらゆる努力を払っていく姿勢が大切であると考えます。(拍手)
 最後に、米国同時多発テロ事件は、平和とはほど遠い国際社会の現実と、その底流に横たわる人類課題の根深さを改めて顕在化させました。一方、我が国においても、年間三万人を超す自殺者、年間一万人前後の交通事故死者、千四百件を超える殺人、犯罪の多発、幼児虐待など、安心、安全が大きく脅かされつつあります。これらは社会の姿として異常と言わざるを得ません。
 私は、これらの課題は、根底的には、我々一人一人の生き方、価値観に最終的に帰着するものであり、今、必要なことは、そうした点を直視して、我が国の今後のあり方を抜本的に問い直すことであると考えます。
 そうした観点から今後を展望したとき、我々が目指すべき社会とは、個人としての人間の生きる力、いわば人間力ともいうべきものが十分に生かされる社会、個の多様性を認め合い、互いに支え合う社会、一人一人の感性、個性の自由な発露として文化や芸術、芸能が隆盛し、文化の薫り豊かな社会、その結果として、経済や庶民生活に活力の満ちあふれた国ではないでしょうか。(拍手)
 私は、こうした生命の尊重を基調とする、文化の薫り高き、活力ある国際国家の実現という認識を国民が共有して初めて、小泉総理の掲げる「聖域なき構造改革」も重みを持ち、痛みを伴わざるを得ない諸施策を断行することの意義も、一層の迫力と重要性を増すものと考えております。
 私の質問、見解などに対する小泉総理及び関係大臣の明快な見解をお伺いし、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 神崎議員にお答えいたします。
 まず、温かい激励の思いを込めての御質問、ありがとうございます。
 政治倫理の確立についてでございます。
 政治と金をめぐる問題、これは大変残念なことでございますが、このような国民の不信を招くような行為をいかに防止できるか、これが、今国会においても、国会の責任として大変重要なものだと認識しております。
 御指摘いただきました、あっせん利得処罰法の見直し、いわゆる官製談合防止法の整備、企業・団体献金に対する規制のあり方については、いずれも、今国会で十分御議論いただくべきものと考えておりまして、私としても、各党各会派の意見を踏まえつつ、適切に判断をしてまいりたいと思います。
 BSE問題の解明と農林水産省改革についてでございます。
 これまでの行政のあり方については、厚生労働大臣、農林水産大臣の私的諮問機関として設置されました調査検討委員会において、現在、議論していただいております。私としましては、その委員会の結論に基づき、御指摘のように、農林水産行政の改革を実施し、国民に安心していただくよう、全力を尽くしてまいりたいと思います。
 食品の安全性確保でございます。
 雪印食品が行った牛肉の産地などの虚偽の表示というのですか、これは、国民の食品に対する信頼を著しく損なう行為である、極めて悪質な行為であると思いまして、極めて遺憾であります。
 この事件やBSE問題を契機といたしまして食品に対する不安が高まっておりますが、食は生活の基盤であります。国民に安心していただけるよう、食品衛生法等に基づく規制、基準の遵守の徹底を図るなど、今後とも、食品の安全性の一層の確保に最善を尽くしてまいりたいと思います。
 外務省改革でございます。
 私は、川口外務大臣の就任時に、特定の議員の不当な圧力は断固として排除しなきゃならないが、貴重な、耳を傾けるべき意見はきちんと取り入れなさい、そして、外務省の体質、仕事ぶり、これは多くの国民から批判を受けておりますので、こういう批判に対しては謙虚に耳を傾け、きちんとした対応をし、反省すべき点は反省し、正すべきは正すという観点から、意欲的に、積極的に取り組んでもらいたい、さらに、今後の外交推進体制については、政府、官邸一体となって取り組むよう万全を期すように、この三点を強く指示しました。
 外務省改革を進めるに当たって、民間人の登用や、あるいは、意見の聴取などに関する神崎代表からの御指摘、この点、大変必要なことであり、また、大事なことだと思っております。川口大臣が、同様の問題意識に立って、外務省改革に意欲的に取り組むという強い姿勢を示しております。私も、これを全面的に支援していきたいと思います。
 デフレ阻止に向けた具体的施策についてでございます。
 先般閣議決定した「改革と展望」では、今後二年程度の集中調整期間において、デフレの克服を最重要課題と位置づけています。このため、十三年度第二次補正予算の編成、また、日本銀行による金融緩和措置などが講じられてきましたが、今後とも、民間需要、雇用の拡大に力点を置いた構造改革の推進、不良債権処理の促進などにより、政府、日銀が一致協力して、デフレ問題に強力かつ総合的に取り組むこととしており、この取り組みによりデフレも克服していきたいと考えます。
 土地、不動産の問題でございます。
 御指摘のとおり、資産デフレの克服には、土地の流動化、そして有効利用を通じて、民間主導により、緊急に都市再生を推進することが重要と考えております。また、こうしたことが不良債権問題の解消にも資すると考えております。
 今回、時間と場所を限って、これまでにない大胆な発想で、都市計画に係る規制をすべて適用除外とする制度の導入、民間事業者に対する強力な金融支援などを新たに実施するほか、引き続き不動産の証券化を促進することにより、今後とも、土地の流動化、有効利用に向けた積極的施策を展開してまいります。
 規制改革でございます。
 政府としては、新たなビジネスチャンスを生み出す観点を含め、可能なものから実施するとの立場から、規制改革に取り組んでおります。
 昨年末の総合規制改革会議の第一次答申を最大限尊重し、レセプト審査についての民間の参入、介護施設、保育所の公設民営方式の推進、労働者派遣事業の派遣期間や対象事業の見直しなどを進めることとしており、また、可能なものは、規制改革推進三カ年計画の改定を待つまでもなく、速やかに実行に移してまいりたいと思います。
 中小企業対策でございます。
 中小企業をめぐり厳しい金融経済環境が続く中、取引先企業の破綻に伴う連鎖倒産を防ぐためのセーフティーネット保証・貸付制度の充実や、売り掛け債権担保融資に対する保証制度の創設等、きめ細かいセーフティーネット対策を講じてまいります。
 さらに、開業、創業の促進と新分野進出による経営革新を推進するため、人材育成、技術開発、資金調達などの支援を推進いたします。
 厳しい雇用情勢、失業情勢に対する取り組みでございます。
 政府としては、新規産業の創出、雇用の創出を推進するため、医療・福祉分野等を中心とした規制改革の推進、さきの第一次補正予算で計上した緊急地域雇用創出特別交付金を活用した新公共サービス雇用の創出等の施策を積極的に推進しております。
 加えて、雇用のミスマッチの解消を図るため、インターネットを通じて官民の求人情報を一覧で検索できるしごと情報ネットの運用、中高年ホワイトカラー離職者等に対する職業能力開発を、企業や大学、NPO等のあらゆる民間資源を活用して推進、沖縄県においてことしの四月に稼働予定の、再就職を希望する者に対して全国の再就職支援機関の情報提供を行う情報ネットコールセンター、いわゆる働らコールの活用等の施策を積極的に推進しております。
 さらに、我が国においてもワークシェアリングを推進するため、昨年十二月に、政労使ワークシェアリング検討会議を設置いたしました。本年三月を目途に、基本的な考え方についての合意を得るべく、検討を進めてまいりたいと思います。
 社会保障制度についてでございます。
 国民生活のセーフティーネットとしての役割をしっかりと果たさなければならないと思います。給付と負担の改革を行い、国民に信頼される、持続可能で安定的、効率的な制度に再構築していく必要があると思います。
 このため、御指摘のように、国民に対して改革の道筋や改革後の給付と負担の姿を提示しつつ、理解と協力を得ながら制度の見直しを進めることにより、将来に向けた安心を確保してまいりたいと思います。
 京都議定書でございます。
 地球温暖化問題は早急な対応が必要であり、今国会における京都議定書締結の承認と、必要な国内法の整備を目指します。
 京都議定書の目標達成は、大変重要であり、同時に、簡単なものではございません。国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって、総力を挙げて取り組むことが必要であります。地球温暖化対策推進本部を中心といたしまして、取り組みの進捗状況や施策を評価しつつ、政府は、関係府省一丸となって、この対策を進めてまいります。
 いわゆる環境税については、私はこれが必ずしも京都議定書締結の際に必要なものとは考えておりませんが、こういう環境税の問題については、今後、いろいろな観点から議論が出てくると思います。その中で、幅広い意見を参考にしながら、どういう取り組みが必要か、また、どういう税が必要かということを検討していきたいと考えます。
 自然の再生についてでございます。
 自然との共生、これは、二十一世紀において大変重要な問題であります。残された自然環境の保全に加え、失われた自然を積極的に再生することが重要で、このため、地域住民やNPO等を含む多様な主体の参画を得て、里山や干潟の再生、河川の蛇行化による湿原の再生などの自然再生事業を、関係各省の連携により推進してまいります。
 教育に関する見解についてのお尋ねでございます。
 私は、米百俵の精神というのは、まさに、教育の重要性を指摘したものだと思います。
 今回、思い切った歳出の削減、見直しを平成十四年度予算で行いましたけれども、その中でも、教育につきましては、特にこれからの青少年の育成、この重要性を認識しながら、少人数授業の推進、あるいは心の教育の充実など、人材育成、こういう問題についても重点分野の一つとして、配分を重点的に行ったところであります。
 また、国際化する社会の中で、平和を愛し、日本人としての誇りを持ちながら、世界に貢献できる、豊かな個性と能力を持った人間の育成のために、教育改革を推進してまいりたいと考えます。
 司法制度については、政府として、必要な法制上または財政上の措置等を講ずるなどして、司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとり、新しい事後チェック・救済型社会にふさわしい、国民にとって身近で信頼される司法制度を構築してまいります。
 改革実施に当たっては、御指摘のように、検討過程の透明性の確保に努め、広く国民の意見を反映させてまいりたいと考えます。
 アフガン復興支援策についてでございます。
 さきの東京アフガン会議におきまして発表したとおり、難民・避難民の再定住、地雷・不発弾の除去、教育、保健医療、女性の地位向上の問題などを重点分野として支援を行う考えであります。その際、政府としては、NGOを初め関係者の意見も踏まえつつ、具体的な支援を進めていく方針であります。
 有事法制についてであります。
 この整備を進めていく中で、神崎代表が御指摘した点もよく踏まえながら、まず、国民の十分な理解を得て進めていくこと、これが極めて重要であると私も認識しております。
 政府としては、個別の権限法規の見直しにとどまらないで、法制が扱う範囲、法制整備の全体像、基本的人権の尊重及び憲法上の適正手続の保障等の法制整備の方針等を明らかにしてまいりたいと思います。
 改革が目指す姿への認識の共有でございます。
 私は、先般、施政方針演説及び決定した「改革と展望」におきまして、まず、人間の能力と個性の発揮を大切にして、人が活躍できる仕組み、人をはぐくむ社会環境、自然環境を目指すことにより、人材大国の実現を目指すことを示しました。
 これは、国民が日本に生きることに誇りを持ち、文化芸術等を含め、世界の人々にとっても魅力のある国づくりを進めることになると同時に、経済の活性化にも大いに寄与するものと確信しております。
 御指摘のとおり、この将来展望が国民によって共有され、構造改革への共感が深まることによって、改革は加速され、その実を結ぶこととなると考えております。
 私は、これまで、公明党の皆さんが小泉内閣の進める構造改革に積極的に協力していただいていることに対しまして心から感謝を申し上げまして、これからも一生懸命、一緒に協力していきたいと思っております。
 まことにありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) デフレ克服のために、政府と日銀は協力して、推進をしてやっていくべきだという御質問でございました。
 もちろん、政府としては、日本銀行と緊密な連絡をとっておりまして、現在の経済状況に対する認識も全く一致いたしておりますし、その上に立ちまして、日本銀行といたしましては、流動性資金の潤沢な供給でもって経済の活性化に協力していただいておりますし、そのことの結果といたしまして、デフレ阻止に十分に役立っておると思って、我々は、その協力を高く評価しておるところでございます。
 また、政府といたしましては、第一次、第二次の補正予算を編成いたしまして、不良債権の処理等と並行して、経済の活性化に一層の努力をしておるところでございます。
 また、第二の問題といたしまして、税制改正の中で環境税について考えてみたらどうだという御提案がございました。
 この提案はずっと以前からもございまして、我々も真摯に受けとめて検討いたしております。つきましては、今後の経済構造の変化につきまして、これを重点に考え、さらにまた、原因者負担の原則をどのようにして実現していくかということとあわせて、今後とも検討を進めていきたいと思っております。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 神崎議員から、雇用対策につきましてのお尋ねがございました。
 中高年の再就職支援につきましては、求職者の方々に対しますきめ細かなカウンセリングを行いまして、求人と求職との的確なマッチングを図ることが重要であるというふうに考えております。
 このため、第一次補正におきましては八百名のカウンセラーを配置いたしまして、そして一千名体制になりました。次の十四年度の予算におきまして一万名の体制にしたいと思っておりますし、五年間で五万名の体制にしたいというふうに思っているところでございます。こうしたキャリアカウンセラーの配置によりまして、きめ細かな相談に乗っていきたいというふうに思っているところでございます。
 若年労働者対策につきましての御質問がございました。
 若年者を取り巻きます雇用情勢が極めて厳しい状況にありますことから、先般も、主要経済団体のトップにお集まりをいただきまして、私自身からもお願いをしたところでございます。
 若年者の職業意識の啓発でありますとか実践的な職業能力開発を推進する観点から、御指摘のようなトライアル雇用制度でありますとかインターンシップ制度というものの実現に努力をしているところでございます。
 しかし、中小企業におきましては、三年以内に約五〇%の人が、若者が一遍就職をいたしましてもやめてしまうという状況にありますので、若い人たちの働く意欲の問題、教育の問題等とあわせまして、この中小企業が、昔から依然としたいわゆる同族会社的な状況にあるとか、あるいはまた、若い人たちを指導する状況にないといったようなこともございますので、これらのことにつきましても改善を進めていきたいというふうに思っているところでございます。
 最後に、パートに対するお尋ねがございました。
 労働者が、多様でかつ柔軟な働き方を選択でき、それぞれの働き方に応じた適正な労働条件、処遇が確保されるようにすることは、非常に重要な課題であると思っております。
 昨日、パートタイム労働研究会の中間報告を発表させていただきました。その中で、正社員、パートにかかわらず、働きに見合った処遇にすることへの労使の合意形成が重要であること、二番目として、日本の実情に合った均衡処遇のルールの確立に向けた検討が必要であることが指摘されているところでございます。
 これから、ワークシェアリングの検討を進めていくに当たりまして、このパートタイム労働者の問題をどう位置づけるかということが非常に大事でございますので、この点を早急に整理いたしまして、今後、皆さん方にいろいろと御指導をお願いしたい、そういうふうに思っている次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
国務大臣(平沼赳夫君) 神崎代表にお答えをさせていただきます。
 私に対しては、六点の御質問がございました。
 まず、産業空洞化のために、新産業、とりわけ高付加価値産業の創出、育成が重要だ、そういう御指摘でございまして、そのとおりだと思わせていただいておりまして、創出、育成のためには、特に五つの点が重要だと認識しております。
 まず第一に、企業や大学における実践的技術開発の推進。二つ目は、生み出された技術の活用や保護に向けた知的財産戦略の一層の推進、これも重要だと思っております。三つ目は、高コスト構造の是正を通じた魅力的な国内事業環境の整備。四つ目といたしまして、医療、介護、保育、環境など、潜在的需要の高い分野における規制改革や制度改正を通じた市場の創出、これにも取り組んでいかなければならないと思っています。五つ目といたしましては、開業、創業などのチャレンジを評価して促進をする経済社会システムの構築。こういったことが非常に重要でございますので、私どもとしては、御指摘の点を踏まえ、全力を挙げて頑張らせていただきたい、このように思っております。
 また、貸し渋りや貸しはがしといった、厳しい金融環境にさらされている中小企業への対応についてのお尋ねがございました。
 これに関しましては、確かに、中小企業をめぐる金融環境が悪化をいたしておりまして、経済産業省といたしましては、やる気と能力のある中小企業までが破綻に追い込まれるような事態を回避するために、中小企業に対する金融セーフティーネットに万全を期すべく、全力で取り組んでおります。
 御指摘がございました、議会の御賛同をいただきまして昨年の秋に通しました売り掛け債権担保融資、これはまだ周知徹底がなかなか進んでおりません。その反省の上に立って、さらにこういったことのPRを通じて、この利用を促進してまいりたいと思っておりますし、さらに、セーフティーネット保証制度、貸付制度につきまして、平成十三年度第一次補正予算において、御承知のように、一千四百億円を措置いたしました。
 こういったことを通じて、金融機関の破綻や貸し渋り等に直面した中小企業に対する万全の措置、これも講じさせていただきたい、このように思っておりまして、こういうことを徹底するために、全国二十数県に中小企業庁の幹部を派遣いたしまして、金融経済状況をつぶさに把握するとともに、地域の関係機関との直接の情報交換も実施をさせていただいております。
 それから、四番目でございますけれども、大学に存在している知の蓄積を円滑に活用するシステムが必要だ、こういう御指摘でございます。
 そのとおりでございまして、大学が持つ技術を企業へ円滑に移転するシステムを構築するために、平成十年に大学等技術移転促進法を制定いたしまして、これまでの実績として二十六TLOを承認いたしまして、TLOの整備促進に努めてきたところでございます。
 さらに、私が昨年五月に公表いたしました「新市場・雇用創出に向けた重点プラン」における大学発ベンチャー一千社計画の具体的支援策といたしまして、平成十四年度より、大学発の事業創出を目指して、産学が連携して実用化研究開発を行う場合に、民間資金に見合った国の資金の援助、大学発ベンチャーの担い手となる起業家人材の育成、創業に対する法務、財務等の経営面での支援等、大学発ベンチャーに対する支援策を強力に講ずることといたしております。
 既に、我が国の大学発ベンチャーは、昨年三月末では百二十八社でございましたけれども、当省の調査によりますと、昨年の十二月末にはそれが二百六十三社、倍増する勢いとなっておりますので、さらにこのことを、引き続き、一体となって取り組んでいきたいと思っております。
 最後に、エネルギー国家戦略とエコタウンについて、簡単に御報告をさせていただきます。
 自然エネルギーについては、これまでも、太陽光発電や風力発電などの技術開発や導入促進への取り組みを行ってきたところでありますけれども、今後も、さらなる施策の強化を図ってまいりたい、このように思っております。
 御指摘の天然ガスにつきましても、ガス田の開発支援、ガス利用技術開発の支援等を行いまして、今後とも、開発及び導入促進に力を入れてまいりたいと思っております。
 以上を含めまして、エネルギー対策については、その重要性にかんがみて、総理が主宰をしております総合エネルギー対策推進閣僚会議における議論も踏まえつつ、政府全体として、適切な対策を講じられるよう、努めてまいりたいと思っております。
 御指摘の、二〇二五年までに自然エネルギーで二〇%以上、こういう御提言がございました。大変大きな目標でございまして、さまざま困難な面もございますけれども、政府といたしましても、それぐらいをやるという心意気でこれから取り組んでまいりたい、このように思っております。
 それから、最後の、エコタウン構想の大都市圏における一層の推進と全国的な展開についてでございます。
 ごみの大量廃棄により処理の限界に至っている大都市圏において、新しいごみゼロ型の都市の再構築を目指していくことは、御指摘のとおり、極めて重要な課題でございまして、昨年六月に、政府の都市再生本部におきまして、大都市圏に、高度な処理を行う廃棄物・リサイクル関連施設を複合的に整備すること、また、その第一段階のプロジェクトとして、東京湾臨海部において先行的に事業展開を図ることが決定されました。
 これを受けまして、当省におきましては、民間事業者を主体とした、先導的なリサイクル施設の整備等を支援するエコタウン事業によりまして、このプロジェクトのうち、早期の執行が可能なものから緊急に事業展開を図ってまいりたいと思っておりまして、これまで、大都市圏以外を含む十四の地域について、先導的なリサイクル施設等の整備を支援してきたところでございます。
 以上でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
馳浩君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明七日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
副議長(渡部恒三君) 馳浩君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十六分散会


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