衆議院

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第10号 平成14年2月22日(金曜日)

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平成十四年二月二十二日(金曜日)
    ―――――――――――――
  平成十四年二月二十二日
    午後一時 本会議
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本日の会議に付した案件
 片山総務大臣の平成十四年度地方財政計画についての発言並びに地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに質疑


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    午後一時二分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の発言(平成十四年度地方財政計画について)並びに地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、平成十四年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出、地方税法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣片山虎之助君。
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 平成十四年度地方財政計画の概要並びに地方税法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
 まず、平成十四年度の地方財政計画の策定方針について御説明申し上げます。
 平成十四年度においては、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、歳出全般にわたり徹底した見直しを行うことにより歳出総額の抑制に努める一方、個性ある地方の活性化、循環型社会の形成、少子高齢化への対応など当面の重要政策課題に適切に対処し、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と地方交付税の所要額の確保を図ることを基本としております。
 また、通常収支における地方財源不足見込み額については、国と地方で折半し、国負担分については一般会計からの加算により、地方負担分については特例地方債の発行により補てんすることを基本としつつ、その一部について交付税特別会計借入金により補てんすることにより、地方財政の運営上支障が生じないよう措置するとともに、恒久的な減税に伴う影響額については、国と地方のたばこ税の税率変更、法人税の地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金及び減税補てん債の発行等により補てんすることとしております。
 以上の方針のもとに、平成十四年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は八十七兆五千六百六十六億円、前年度に比べ、一兆七千四百五億円、一・九%の減となっております。
 次に、地方税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 平成十四年度の地方税制改正に当たりましては、最近における社会経済情勢等にかんがみ、地方税負担の軽減及び合理化等を図るため、特別土地保有税の徴収猶予制度の拡充及び住宅用地に係る不動産取得税の税額の減額措置の要件の緩和等を図るほか、株式譲渡益に係る個人住民税の申告を不要とする特例の創設及び固定資産税における縦覧制度の見直し等を行うとともに、非課税等特別措置の整理合理化等を行う等、所要の改正を行うこととしております。
 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、平成十四年度分の地方交付税の総額につきましては、交付税特別会計における繰り入れ等の特例措置を講ずることにより、十九兆五千四百四十九億円を確保することとしております。
 また、単位費用につきまして、所要の改定を行うとともに、臨時財政対策債の償還に要する経費を算入することとしております。
 以上が、地方財政計画の概要並びに地方税法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の発言(平成十四年度地方財政計画について)並びに地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの地方財政計画についての発言及び二法律案の趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。後藤斎君。
    〔後藤斎君登壇〕
後藤斎君 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました地方税法の一部を改正する法律案等について、関係大臣に質問いたします。(拍手)
 現在の日本経済は、地方経済を初め、がけっ縁とも言えるほど危機的な状況にあります。小泉内閣がスタートをし、はや十カ月、構造改革のにしきの御旗のもと、ただただ多くの課題を先送りし、何もかもが解決するような幻想を国民に抱かせています。
 しかし、株価はバブル以降の最安値を更新し続け、小泉総理就任以降この十カ月間に、東京証券取引所の時価総額だけ見ても百兆円以上の資産が失われ、失業率、倒産件数、自殺者数も戦後最悪を更新し続けています。日本経済の先行きに対する不信感、警戒信号のみが数多く発せられ、日本経済が回復する兆しは全く見えていません。また、BSE問題、外務省のODAにかかわる疑惑等々に見られるように、行政への不信感は根深くなる一方であります。
 本来であれば、自分の職業に自信と誇りを持ち、地域経済の中で中心的な役割を担っているはずである地方の中小零細企業者、畜産農家、お肉屋さん等々が、今や、政府の対応の誤りと不手際で、塗炭の苦しみを味わう結果となっているのが現状です。
 自民党は、族議員という従来の政治手法しか持ち合わせておりません。それが、構造改革をおくらせ、国、地方の借金を雪だるま式に膨らませたのであります。今、必要なことは、具体的な日本のあるべき姿、将来像を国民の前に提示することが必要だと考えますが、官房長官の御見解をお伺いいたします。(拍手)
 経済財政諮問会議では、「国と地方の役割分担」の中で、地方分権を推進し、自立した国、地方公共団体を確立するという観点から、地方分権改革推進会議における調査審議を踏まえ、国、地方の役割分担の見直しに取り組むとしております。また、地方の自律性を高めるためには、地方財政の効率化を前提に、みずからの判断で使える財源を中心とした、自助と自律にふさわしい歳入基盤を確立することが重要であるとされております。いずれも、いつまでに、どのような形で国と地方のあり方を考えているのかわかりません。
 構造改革の中で、具体的にどう国と地方の関係を位置づけていくのか、地方自治を担当する総務大臣にはっきりとした説明を求めます。
 地方財政計画の意義は、言うまでもなく、地方交付税等の地方財源の保障、地方財政のあるべき姿を示すこと等であります。地方財政の規模は、今や国家財政と並ぶものであり、国の予算編成上も極めて重要な意義を持っております。毎年度、国の予算の編成と時期を同じくして策定される地方財政計画は、単に地方の財政の収支というだけではなく、国、地方を通じた財政全体の姿を明らかにするものとして、ますますその役割を高めております。
 しかしながら、自治体本位、住民不在の地方債の発行が、元利償還を地方交付税で補てんする方法とあわせて、地方債の乱発や非効率な公共投資の温床になり、地方財政そのものの国への依存体質を高めていく結果を許してきたのです。
 実際、平成十四年度の地方債は、地方財政計画の歳入中、突出した、前年度比六・二%の増加となっています。このように、地方財政は、ますます借金体質への依存度を高めることとなり、国家財政とともに、まさに危険水域に入りつつあります。この点、総務大臣の御所見をお伺いします。
 ところで、こういう状況の中、本年から、全国で初めて、住民参加型の公募型地方債、いわゆるコミュニティーボンドの発行が群馬県で始まります。
 従来、地方債は、約六割が郵貯などの政府関係資金が引き受け、約三割が公募せず、地方銀行が引き受けてきました。アメリカでは、州や郡が公共施設をつくる場合、地方債の三割強を個人保有資金で引き受けております。これは、住民の資金運用策としても、また、住民参加型自治を実現する手段ともなっております。あわせて、アメリカでは、受取利息を、連邦や州の所得税を非課税とするということでこの方法を普及させています。
 深刻な財政赤字で、地方に対する国の財政支援には限界が来た今日、地方が住民の力で自立する手段の一つにもなるコミュニティーボンドを、地方税法の改正も含め、支援していく必要が大と考えますが、総務大臣の御見解をお伺いいたします。
 平成十三年度地方財政計画において、片山総務大臣並びに総務省は、平成十三年度の財源不足の補てん措置十兆五千九百二十三億円のうち、交付税特会借入総額二兆八千七百三十八億円で、国及び地方が半分ずつ負担、新たな借り入れは十三年度限り、十四年度からなくなると、国会で何度となく答弁をされております。
 それにもかかわらず、十四年度も継続をし、総額二兆八百八十五億円、国、地方が半分ずつ負担と、基本的な措置の形は変わりません。これは、国会に対する背信行為ではないのですか。特別会計借り入れは、十三年度限りにしたはずであります。大臣は約束をほごにした。つまり、これまでの方針を取り消し、破棄なさるのでしょうか。
 支持率一けた台の森内閣ですら、地方財政改革に着手をいたしました。小泉内閣では、地方財政改革を大きく後退させることにほかなりません。総務大臣は、この責任をどう受けとめているのか、また、どうして国会答弁に反し、交付税特会借り入れを強行していかなければならないのか、具体的な説明を求めます。
 ペイオフが四月一日に凍結解除をされます。大口預金者は、自分の責任で自分の預金を守る時代に突入しております。地方自治体の公金は、地元の民間金融機関への預金がほとんどで、残高も億単位であります。地方金融機関の破綻整理が進む中、対応を誤れば、納税者から預かった大切なお金はふいになってしまう可能性もございます。
 総務省は、昨年三月、ペイオフ解禁への対応方策研究会の報告書で、公金預金について、国債など元本が保証される債券に切りかえる、借入金と相殺できる契約を結ぶ、金融機関が保有する国債などを担保にとるなどの指針を示しております。
 しかし、自治体の動きは鈍いままであります。昨年十二月時点で方針を策定済みなのは、四十七都道府県中わずか三県。公金残高に対する担保割合も、三十七都道府県が五〇%未満です。
 流動性預金にはペイオフ適用が一年間先送りされたため、定期性預金から流動性預金への資金シフトが起きております。
 多くの自治体は、地元金融機関との結びつきが足かせとなり、思い切った対策を打ち出せないという現状がございます。総務大臣及び金融担当大臣は、どのように自治体のペイオフ対策を考えているのか、御見解をお伺いいたします。
 行き過ぎた我が国の中央集権体制は、全国のあらゆる自治体に画一的な行政を強い、地域自主権を奪ってまいりました。中央政府が権限と財源の多くを握り締めているため、地方は中央からコントロールされ、地域が本来持っているエネルギーを枯渇してまいりました。
 民主党は、既に何度となく党内で議論をし、既に、精緻な、具体的な地域主権に関する報告書を取りまとめております。私たちがもう一度地域のエネルギーを再興するため、権限と財源を地方へ移譲し、自治体と地域に根差している住民が、権限と責任を持ち、みずから決定できるような、大胆な地方分権を進めていかなければならないと考えますが、総務大臣及び財務大臣の御見解をお伺いいたします。(拍手)
 来年は、ペリーが黒船で浦賀に来て百四十周年の年であります。百四十年前、私たちの先人は、封建社会に大きな閉塞感を感じ、志士たちが頭を使い、体を使い、血と汗を流し、時代を動かそうとしました。
 当時の江戸幕府は、国内の飢饉や一揆に見舞われ、諸藩は、幕府の封建的、圧制的な支配体制に不満を持ち始め、幕府を倒す機会をうかがうようになりました。皆さん御承知のとおり、十五代将軍慶喜は、最後の幕府の切り札であり、一八六七年、内政改革案で、廃藩、士族解体等を内容とした幕府改革案を取りまとめましたが、幕府内部の抵抗勢力に押され、その案は実施するに至りませんでした。そして、その改革の実現は、討幕による明治維新を待つしかありませんでした。
 今、私たちが、明治維新に匹敵するような諸制度の改革を行わなければ、この国は滅亡してしまうでしょう。そして、その改革の中心に、地方に働き、地方に住む人々が、真に誇りを持ち、自信を持てるよう、国と地方の大きな役割の見直しを含め、小泉内閣としてどう取り組むのか、官房長官にお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕
国務大臣(柳澤伯夫君) 地方自治体のペイオフ対策についてお尋ねがありました。
 ペイオフの解禁後は、地方公共団体も、みずからの公金預金の管理運用に関して自己責任が前提となるわけであります。
 総務省においては、御指摘のペイオフ解禁への対応方策研究会におきまして、地方公共団体がとるべき対応策を取りまとめられましたが、そこでは、公平の確保の観点から設けられた相殺の活用を図ることのほか、ペイオフ解禁後に重要となる金融機関の経営状況についての正しい情報の把握が基本であるとの認識が示されております。各地方公共団体におかれましても、ぜひとも、この方向で体制の整備をお願いしたいと考えております。
 金融庁としましては、四月のペイオフ解禁に伴いまして、銀行法等の枠組みのもとで厳正な検査、監督を行い、引き続き、より健全な金融システムを構築するよう、最善の努力を払ってまいる考えでおります。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) 小泉内閣は、地方にできることは地方に移譲していくという基本方針をもって国と地方との関係を位置づけております。
 したがいまして、今後とも、機関委任事務の、行政の委任をするとともに、地方財源の配分もしていかなければならぬのは当然でございまして、そのためには、まず何といっても、根本的には、国と地方との役割分担の見直しを急がなければなりません。
 それと同時に、地方自治体が合併等を促進いたしまして自治能力を高めていただくということがまず第一の要件であろうと思いますし、また、地方団体がそれに伴うところの行財政改革を国と合わせて積極的に進めていただくということも大事ではないかと思っておりまして、その方針に基づき、地方分権を一層推進していくようにいたします。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 後藤議員から、何点かの質問がございました。
 まず第一点は、構造改革の中で国と地方の関係をどう考えるのか、こういうお話であります。
 私は、二十一世紀は名実ともに地方の時代にしなければならない。その地方の中は都道府県と市町村ありますけれども、住民に身近な市町村中心のそういう時代にしなければならない。そのためには、地方分権の推進を図ることが必要でございまして、先ほどもお話がございましたが、地方にできることはできるだけ地方にやってもらう、地方にできないことだけ国が行う、こういうことで権限移譲を行うべきだ。
 ただ、今の市町村では規模、能力がまだまだ小そうございますので、もっと強く、大きくするために市町村合併ということを、今、推進いたしているわけでありまして、市町村合併は、平成十七年の三月末を目標にいたしております。
 また、権限移譲は、一昨年の四月から地方分権一括推進法の施行になっておりますけれども、さらなる地方分権の推進、権限移譲のために、地方分権改革推進会議等で御議論を賜ろう、こういうふうに思っておるわけであります。
 また、地方税源の充実強化のためには、税源移譲を抜本的に考えていただく。国と地方の関係の見直しとともに、それに合わせた税源移譲ということを考えておりまして、骨太の方針の中にもそれを書いておりまして、現在、議論を進めているところでございます。
 今後とも、地方分権の推進に努力いたしたいと考えております。
 平成十四年度の地方財政計画の中で地方債が突出しているではないか、こういうお話がございました。
 景気がこういう長い低迷の中にありまして、地方税収も落ち込む、地方交付税の原資となる国税の収入も大幅な落ち込みである、こういう状況でございますので、これは地方債に頼る、こういうことになるわけでございますが、特に十三年度から、地方の財源補てんのあり方を変えまして、今までの、交付税特会で借り入れをして地方団体に配分するということを改めまして、二カ年で、国は国の分を一般会計で調達して加算する、地方は赤字地方債を出す、こういうことにしましたから、特にその赤字地方債分が大幅に増加いたしているわけであります。
 地方財政は、御承知のように、累計の借り入れが百九十五兆円であります。十四年度の財源不足額は、恒久的な減税を除きましても十兆七千億であります。大変厳しい状況にあると思いますけれども、ぜひ、経済の活性化を図ることによって税収の増を図りながら、地方行政の簡素効率化に励む、あるいは、先ほど言いましたが、税源移譲等により地方財政の立て直しを図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
 コミュニティーボンドのお話がございました。
 私は、コミュニティーボンドというのは大変好ましい一つの資金調達の方法ではないか、こう思っておりまして、我々としては基本的には応援いたしたい、こう思っておりますけれども、税法上、コミュニティーボンドだけ特別扱いしろ、利子を非課税にしろということは、なかなかこれは理論的にも難しゅうございますし、法律改正も要りますし、慎重な検討をいたしたい、こういうふうに思っております。
 それから、平成十三年度、十四年度で、先ほど言いました、交付税特会の借り入れをやめると言ったではないか、こういう話でございます。
 十四年度は、我々が思ったよりずっと財源不足額が大きくなりまして、このままでこの方式をやりますと、国の方の一般会計の加算も、地方の方の赤字地方債も、十三年度の三倍になるのです。我々は、そんなに大きな不足額が出ると思っておりませんでしたから、このままでやると、国も大変です、三倍の一般会計の調達をやって加算する、地方も赤字地方債を三倍では、なかなかこれは大変でございますので、四分の一にいたしたわけであります。十三年度は半分、十四年度で半分というものを、十四年度は、半分の半分の四分の一にいたしたわけでありまして、四分の一だけ特別会計の借り入れを残したわけでございます。ひとつ、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
 それから、ペイオフ解禁への対策につきましては、後藤議員言われましたように、私どもの方で研究会をつくりまして、昨年三月に地方団体に指針を示しました。それぞれの地方団体で自衛策を講じていただくより仕方がないと私は思っておりますけれども、情報の提供、金融庁等との連絡等、それぞれの地方団体のペイオフ対策を我々は応援してまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
 今後とも、その関係で地方団体に対します積極的な指導をいたしてまいる所存でございます。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣福田康夫君登壇〕
国務大臣(福田康夫君) 後藤議員にお答えします。
 まず、日本のあるべき将来像についてお尋ねがございました。
 小泉内閣においては、経済・財政、行政、社会の各分野における構造改革に取り組んでいるところであります。構造改革が達成された後には、努力が報われ、再挑戦できる社会、民間と地方の知恵が活力と豊かさを生み出す社会、人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会などが実現されます。
 このような我が国のあるべき将来像については、先般、「改革と展望」を閣議決定するとともに、施政方針演説で、小泉構造改革の五つの目標を明らかにしたところであります。
 次に、国と地方の役割の見直しについてお尋ねがございました。
 二十一世紀の我が国を豊かで活力あるものとするためには、地域がその個性や魅力を生かしつつ、真の自立を達成することが不可欠でございます。地方にできることは地方にゆだねるという原則に基づき、国と地方の役割や税財源の配分のあり方の見直しに取り組むなど、地方分権を一層推進してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 黄川田徹君。
    〔黄川田徹君登壇〕
黄川田徹君 私は、自由党を代表して、ただいま提案のありました地方税法の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案、平成十四年度地方財政計画について、関係閣僚に質問いたします。(拍手)
 まずもって、冒頭に一言申し上げます。
 現在、地方経済を含め、日本経済は、今や末期的状況にあります。最近発表された各種の経済統計を見ても、日本経済が回復する兆しは全くありません。それどころか、小泉政権の無為無策と失政の結果、日本経済は、今、破綻の瀬戸際に立たされているのであります。
 本来、こうした国家的な危機に際して、第一に求められているものは、国家のあり方、経済、社会の将来像を明示し、それを実現するために、あらゆる仕組みを改革することであります。ところが、小泉内閣は、一度もそのビジョンを語ったことがありません。
 確かに、小泉内閣は改革という言葉を多用していますが、では、何をどう改革するのか、改革して日本の経済、社会をどのようにしたいのかという具体策は、何もないのであります。虚構の上に構築されている内閣だからこそ、田中外務大臣を罷免しただけで、小泉内閣の支持率が二、三〇%も下がるという異常事態が起こるのであります。
 原則も設計図もないまま、ただ単に日本経済という家を倒壊させるだけの小泉内閣は直ちに退陣し、自由党を初めとする我々野党に政権をゆだねるべきであります。(拍手)
 さて、本題に入りたいと思います。
 小泉総理は、さきの施政方針演説で、「国と地方の役割や税財源配分のあり方の見直しに取り組むなど、地方分権を一層推進してまいります。」と述べました。また、政府の地方分権推進委員会が昨年六月にまとめた地方税財源問題報告書の最終報告でも、所得税の一部を地方税の個人住民税へ移し、地方の自立を促すと同時に、地方交付税や補助金の減額を求めるセット論を打ち出しています。しかしながら、今回の法案は、真新しい改正もなく、例年どおりの内容を記述しているにすぎず、これらの考えは全く反映されていないのであります。
 そもそも、日本の構造改革に当たって、まず実施しなければならないことは、経済、社会の仕組みそのものである税制の抜本改革であります。その中でも、国と地方の役割や税財源配分の見直しであるべきです。それにもかかわらず、税制改革の具体策は政府税調に丸投げした上、国と地方の役割と税財源配分の見直しについては全く触れないというのでは、話になりません。
 地方財政の借入金残高はふえ続け、平成十二年度末で約百八十四兆円にも上っており、改革の断行は一刻の猶予も許されないはずであります。しかしながら、小泉内閣には、地方分権と言葉で唱えるだけで、実際には具体策は全くありません。
 今後、早急に、国と地方公共団体の役割を明確にし、現在のように地方公共団体が国に従属する関係から、国と対等になるよう改めるべきであります。同時に、国と地方公共団体の税財源のあり方を根本的に見直し、地方税財源の充実を図るべきと考えます。
 そこで、この点について、総務大臣の具体策をお伺いいたします。
 次に、地方財政計画について伺います。
 今回の地方財政計画では、財源不足の補てん方法として、財源不足のうち財源対策債等を除いた残余については国と地方が折半し、国庫負担分については一般会計から繰り入れる、地方負担分については特例地方債により補てん措置を講じることを基本とする、ただし、国負担、地方負担とも、四分の一は交付税特別会計借入金により補てんするとしています。
 しかし、特例的な借入金のうち、赤字地方債である減税補てん債等と実質的な全国ベースでの赤字地方債である交付税特別会計借入金が三十四兆円にも上っている現状を考慮し、平成十四年度からは地方交付税特別会計の民間借り入れをやめると、昨年決めたばかりではありませんか。それを、小泉内閣が必ず守ると絶叫しながらも、今や形骸化しつつある国債発行三十兆円枠を達成するだけのために、舌の根も乾かぬうちに地方交付税特別会計の民間借り入れを継続したことは、余りにも無原則、無節操な地方財政運営であると断ぜざるを得ません。
 そこで、この点について総務大臣の見解をお伺いいたします。
 次に、補助金制度について伺います。
 地方財政を健全化するには、補助金制度の改革も当然行う必要があります。
 先般成立した地方分権推進法により、国の地方に対する補助金行政はある程度解消されましたが、地方にとって不要な補助金、地方や国自身が何ら効果が上がらないことを熟知している補助金等も、いまだに残されております。
 一口に地方公共団体といっても、全国約三千三百の地方公共団体は、それぞれ、規模の大きさ、地域の特徴、特殊性、財政状況が異なっています。それを、国が、約三千三百の地方公共団体のそれぞれの個別事項について査定して、補助金を出すこと自体が問題であります。そして、そこにこそ、与党議員が自分の選挙区に補助金を引っ張ろうと暗躍する余地が残されているのではないでしょうか。
 また、地方公共団体が国から補助金を交付してもらうために要する陳情のための経費こそ、むだ遣い、不合理の最たるものであります。地方公共団体としても、国や国会議員等に陳情するために数百万円もかかっていた旅費等が不要になるなら、その分で何かしらの事業ができるからであります。
 このような縦割り行政のむだや政治家の介入の余地を排除し、地方が自主性を発揮するためにも、補助金は、ひもつきでなく、一括して交付するべきであります。
 自由党は、地方公共団体に対する個別の補助金にかえて、国が条件や使途をつけずに、地方公共団体がその裁量により使用できる、一括交付金の交付等に関する法律案を既に作成しております。
 そこで、この点について総務大臣の見解を求めたいと思います。
 次に、市町村合併の推進等について伺います。
 国と地方公共団体が対等な関係となり、地方公共団体を真の地方分権の担い手とするには、住民の意向を十分踏まえた上で、市町村の合併を強力に推進し、一定規模の行財政能力を持つ地方公共団体をつくることが必要であります。
 現に、合併をすることにより、行財政能力が高まり、広域的な視点から町づくりが行える、行政経費が節約され、少ない経費でより高い水準の行政サービスが可能となる、高齢者などへの福祉サービスが安定的に充実して提供できるなどなどの例が多々見られます。
 ただ、各地方公共団体において合併に向けた検討会は数多く見られますが、実現したケースはまだそう多くはありません。確かに、地方自治の本旨にのっとると、市町村合併は当該住民の意向に任せるべきではありますけれども、国としても、市町村合併を進めた上での最終的な地方公共団体のあり方等についての青写真を策定しておくべきであります。
 小泉総理は、昨日の政府の市町村合併支援本部で、改めて、市町村数を千にする目標の達成が必要と述べたようでありますが、相変わらず、具体策は何もなく、口先だけの発言でしかすぎません。
 自由党は、地方公共団体を当面千に、最終的には三百に再編するということを主張しておりますが、政府・総務省には、合併を進めた後の最終的な地方公共団体のあり方等についての青写真が全くないのであります。
 そこで、この点について、総務大臣の具体的な考えをお聞きいたしたいと思います。
 なお、市町村合併を進める上で、別の視点から改善しなければならない面があります。
 先月、自民党元幹事長加藤紘一議員の事務所代表が口きき料の脱税事件を起こし、政治と金が再び大きな問題になりました。そして、あっせん利得処罰法案の処罰対象にいわゆる私設秘書も含めることについて、第百五十一国会から拒否し続けてきた小泉総理が、ようやく重い腰を上げ、同法に私設秘書等を含めることを検討すると表明したのは、記憶に新しいことであります。
 しかし、これらの事件のもう一方の当事者は首長でありました。そして、市町村合併を推進すれば、首長の権限は強化され、このような談合疑惑が発生する土壌が強くなることは容易に想像でき、事前にこの疑念を取り除く必要があります。
 自由党は、以前より、国会議員、地方議員及び首長等が入札に口を出すだけでも犯罪行為となるという、入札干渉処罰法案を作成しております。この法案が成立すれば、談合事件及び談合ではないかと疑われる事例は激減すると確信いたします。
 つけ加えて言えば、問題の渦中にある自民党鈴木宗男議員の疑惑の一部についても、はっきりとシロクロがつけられていたはずであります。
 なお、保守党の方々も、以前は自由党の一員として、この法案作成に携わっておりました。自由党として、この法案について、野党間で協議し、再提出したい意向を持っていますが、提出した際には保守党の方々も御賛同いただけると確信しております。
 そこで、扇大臣に、国土交通大臣としてこの法案の評価と、保守党の代表の立場から、この法案が提出された際の対応についてお伺いいたします。
 最後に申し上げます。
 小泉内閣は構造改革を旗印にしていますが、この構造改革が口先だけで、中身のないパフォーマンスにすぎないことは、今回の法案の内容だけを見ても、一目瞭然であります。地方税財源の再配分をどうするか、国と地方の関係をどのように改革するかという具体策は全くなく、理念もビジョンもない、旧来の自民党政治を引きずった、無責任なものにすぎません。小泉内閣に構造改革を名乗る資格はありません。
 それに対し、我々自由党は、政治、行政、経済、社会のあらゆる仕組みを改革し、新しい日本をつくるための具体策を記した、日本一新を高く掲げております。そして、真の構造改革を断行し、日本が二十一世紀も平和と経済的繁栄を続けていけるよう、全力を尽くすことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 黄川田議員の御質問にお答えいたします。
 まず、地方分権と地方税財源の充実についてのお尋ねがございました。
 お話がありましたように、私も、地方にできることは地方にゆだねるという総理のお考えに基づいて、地方分権を一層推進し、国と地方との関係を対等、協力の関係にする、そういうシステムにすることが必要だと考えております。
 特に、御指摘の、税源移譲を含めた国と地方の税財源配分の見直しは不可欠な課題であろうと思っておりまして、経済財政諮問会議等で、私のプランとして、現在六対四、全体の租税の中で国税が六、地方税が四、それをぜひ一対一にしてほしい、こういうことを言っておりまして、そのためには、個人住民税を充実する、所得税から個人住民税へ、それから、消費税が今五%、国が四パー、地方消費税が一パーでございますけれども、この配分の見直しも行っていただくように強く提案いたしているわけであります。
 しかし、これらは、いずれも、現下のような経済情勢、財政状況の中で大きな問題でございまして、すぐどうにかなるというような問題ではない、しかし、着実にその方向に向かって制度を改正していく、そのために、地方分権改革推進会議や経済財政諮問会議で引き続いて議論をしていただくべきだ、私はこういうふうに考えております。
 それから、交付税特別会計借り入れの継続についてのお尋ねがございました。
 先ほどの後藤議員への御答弁でも申し上げましたが、我々は、二カ年で借り入れはやめよう、こういうふうに思ったわけでございますけれども、来年度の経済状況あるいは財政状況を見るときに、このままその方式をやりますと、国も一般会計の調達が三倍になる、地方も赤字地方債を十三年度の三倍も発行しなければならない、こういうことになるわけでございまして、これは、半分だけ借り入れを残した方が、地方の財政にとりましても国にとってもベターではなかろうか、こういう判断をいたしたわけであります。全体では、四分の一が借り入れで残ったわけでありまして、四分の三は今までの借り入れを解消したわけでございますので、ぜひその辺は御理解を賜りたい、こういうふうに思っております。
 次に、補助金の一括交付金化のお尋ねがございました。
 我々も、今の国庫補助負担金につきましてはいろいろな問題があると考えておりまして、個別・零細な補助金の廃止や縮減に努めておりますし、総合補助金の拡充を図っておりまして、来年度も約九千億円が総合補助金になる、用途だけ決めて箇所づけは地方がやる、こういう総合補助金にするわけでございますが、一括交付金というものの性格が私にはもう一つ理解できないわけでありまして、これは、本当に自由なものにするなら、第二交付税になるのですね。
 しかし、そうなると、国の施策目標に協力してもらう、そういう方向で使ってもらうというのが国庫補助負担金でございますから、その辺の関連をどう整理するのかについて私はもう一つわかっておりませんけれども、いずれにせよ、御提案は御提案として真摯に受けとめて、引き続いて、補助金の整理合理化の中で検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
 それから、合併の話でございます。
 現在、二千二十六の市町村が合併のための協議会や研究会をつくっておりまして、全体の市町村数の六二%を超えております。
 我々は、与党三党が言うように、将来の市町村数は当面は千だ、こう考えておりまして、それを目標に、引き続いて市町村合併を強力に推進してまいりたい、こう思っております。
 その先にどういう青写真があるのかということです。
 現在も、市町村制度は、政令市あり、中核市あり、特例市あり、普通の市あり、町村あり、こういうことでございますから、いずれにせよ、合併の後の市町村制度のあり方、府県制度との関連、あるいは都市制度、こういうものについては、現在も研究いたしておりますけれども、引き続いて研究してまいりたい。特に第二十七次の地方制度調査会にはそういうことの御検討を賜ろう、こう考えておりまして、引き続いて、地方団体のあり方につきましては、しっかりした青写真をつくるように努力をさせていただきます。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣扇千景君登壇〕
国務大臣(扇千景君) 黄川田先生から御質問がございましたので、お答えしたいと思います。
 公共工事に係るさまざまな不正行為を防止するために、一昨年、先生も御存じだと思いますけれども、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律というものを制定いただきまして、国、地方公共団体、特殊法人等、すべての公共工事の発注者に対して、透明性の確保、不正行為の排除の徹底等の入札、契約の適正化の義務化を私たちはしております。そして、今後、地方公共団体を含めて、より徹底を図っていくというのは当然のことでございます。
 一方、先生がおっしゃいました入札干渉処罰法案に関しましては、確かに、私も自由党のときには御一緒に提出させていただいた経緯もございます。しかしながら、その後、いわゆるあっせん利得罪法や、今申しました公共工事の入札適正化法等々、あらゆるものができてまいりましたし、また、政治倫理の確立の問題につきましては、現在、与党の政治倫理確立に関する協議会、これを設置して、入札干渉の問題も含めて協議が行われていると聞いておりますので、党といたしましても、その結果を待って対応したいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 春名直章君。
    〔春名直章君登壇〕
春名直章君 私は、日本共産党を代表して、地方財政計画外二法に関連して質問をいたします。(拍手)
 小泉内閣は、失業、倒産の激増、社会保障の切り下げなど、国民に塗炭の苦しみを押しつけています。その弱肉強食の路線は、地方自治体とそこに住む住民にも耐えがたい痛みとなって、今、あらわれています。二〇〇二年度の地方財政計画が対前年度初めてマイナスと、一層の歳出削減がかかる中、今、住民の福祉の増進を図ることを基本とする地方自治体の果たすべき役割が正面から問われていると思います。
 以下、その立場から、私は質問をいたします。
 第一は、地方財政計画についてであります。
 国と地方が膨大な借金を抱えてきた最大の理由は、毎年五十兆円という規模まで膨れ上がった公共事業の浪費にあることは明白であります。とりわけ地方自治体は、そのうち約三十兆円を担わされてまいりました。
 来年度、地方単独事業を一〇%カットしたといいます。しかし、計画額は十五兆七千五百億円、計画額を消化できない事態が七年連続し、その未消化部分が毎年膨らんでいるのが実態であります。カットしたといっても体力に合わせただけ、引き続き、実態以上の計画額を押しつけているのです。政府は、地方単独事業の計画と現実とのこの乖離の原因をどう認識されているのか、まずお伺いいたします。
 九〇年代、不況対策としての地方単独事業は、その消化のために、中には一〇〇%の地方債発行すら認め、元利償還の多くを地方交付税で面倒を見るという、けた外れの誘導装置で推進をしてまいりました。その反省は、一体、どこにあるのでしょうか。今また、合併促進などで交付税を誘導策に使うという、同じ誤りを繰り返そうとしています。総務大臣の明確な答弁を求めたいと思います。(拍手)
 来年度予算案では、自然増だけでも約百二十億円必要とされる児童扶養手当が、前年度比で二億円の減額となりました。この結果、受給者七十七万人のうち、三十三万人が手当を削減されることになります。
 母子家庭などの生活と命の糧であるこの手当削減に対し、少子化対策として児童手当の拡大が図られている一方で母子家庭への手当がなぜ削減されるのか、一番声が届きにくいところ、声を出しても社会的影響力が少ない、そういう層のねらい撃ちではないか、こういう批判が上がっています。政府はこの声に一体どうこたえるのか。削減を中止すべきではありませんか。厚生労働大臣の答弁を求めます。(拍手)
 また、リストラや倒産などでやむなく失業され、国保に加入する国民がふえて、国保財政が悪化しています。ところが、来年度、国の一般会計から繰り入れる予定になっていた三百六十億円を先送りするというではありませんか。これで、国保財政悪化に歯どめをかけることが一体できるのでしょうか。
 また、介護保険施行後、滞納せざるを得なかった住民に対し、保険証の取り上げ、短期証、資格証明書の発行を義務化したことは、本当にむごい仕打ちです。この財源先送りが、短期証や資格証明書発行を一層促進することに結局なるのじゃないでしょうか。答弁を求めたいと思います。
 第二は、地方税法、地方交付税法改正案についてであります。
 個人住民税の土地譲渡益課税について、現行三段階の課税ランクのうち、最も高額の八千万円超の部分にかかる九%だけを廃止するとしています。なぜ、最高税率だけを廃止するのでしょうか。またしても高額所得者優遇になるのではないか。総務大臣の答弁を求めます。
 地方交付税法で重大な問題は、十兆円という巨額の財源不足の一部を補てんする赤字地方債の発行の問題であります。不足額を赤字地方債で賄うことは、国の財源保障という責務を放棄し、地方に負担を転嫁するものとして、かつて、政府自身が禁じていたものです。政府は、償還財源を後年度交付税で全額措置するのだから法違反にならない、こう強弁しています。
 しかし、そんなことを言えば、財源不足に対し国の責任で交付税率引き上げなどを実施するとしている地方交付税法の趣旨そのものが無意味になってしまいます。結局、これは、国の責任を赤字地方債という方法で地方団体に肩がわりさせるものにほかならないと考えますが、総務大臣、いかがでしょうか。(拍手)
 今、政府がやるべきことは何か、三点申し上げたいと思います。
 その第一は、財源調整機能と財源保障機能としての地方交付税制度を、その趣旨にふさわしく堅持し、充実させることであります。一律削減など、断じて許されるものではありません。
 第二に、財政を通じて国の施策に地方を動員、むだ遣いを温存する仕組みをきっぱり断ち切ることであります。
 第三に、地方分権の最大のかぎは権限と財源の移譲であります。地方への財源移譲を速やかに実施することが極めて重要であります。それもせず、地方交付税や補助負担金を一方的に削減することは、まさに地方切り捨てと言わなければなりません。
 次に、現下の地方自治、地方行財政をめぐる焦点となっている市町村合併の問題について伺います。
 福島県矢祭町議会は、昨年十月、合併しない宣言を全会一致で決議いたしました。根本町長は、矢祭町は歴史と地域の実情からどこの町とも合併しない、合併を前提にした町づくり、村おこしなどあろうはずがありませんと述べています。町のホームページには一日最大数千件のアクセスがあり、今もなお視察が続いているとのことであります。総務大臣、どうしてこれほどの全国的反響があると思いますか。率直に感想をお聞きしたいと思います。
 私は、ここに地方自治の魂を見るのであります。今、国のなすべきことは、市町村合併に血道を上げるのではなくて、厳しい財政事情の中でも住民の暮らしを守るために努力している自治体を物心両面で応援することではないでしょうか。
 しかるに、政府は、一千を目標に合併するとの与党方針を閣議決定で確認し、二〇〇五年三月末までに市町村合併を推進するとしています。期限を切って、上から目標数値まで持って推進するやり方が、どうして地方分権の時代に許されるのでしょうか。これこそ、乱暴な地方自治の破壊ではありませんか。答弁を求めたいと思います。
 こうした合併を、あめとむちの政策で強行しようとしていることも重大です。
 最大のあめと言われるものが、財政の特例的な措置の数々です。
 合併特例債は、合併市町村に、箱物建設などに限り、地方債発行を九五%まで認め、後に元利償還の七割を交付税で措置するものであります。これは、合併推進という国の政策に地方の共有財産である地方交付税を利用する政策誘導そのものであって、地方交付税の趣旨を逸脱していると考えますが、総務大臣、いかがですか。
 また、一千にするということは、ほとんどすべての市町村が合併特例債を活用するということを意味します。もし、その上限いっぱいを使ったとき、本当に地方交付税で全額手当てできるのでしょうか。根拠をはっきり示していただきたいと思います。
 合併算定がえは、向こう十年間、地方交付税を、合併前市町村に配分されていた合算額を支出するというものであります。しかし、激変緩和措置が終わる十六年目からは一体どうなるのですか。合併前の市町村に配分されていた交付税総額の七割、六割へと、大きく削減されることになるのではありませんか。そうならない根拠はどこにあるのか、明確な答弁を求めたいと思います。
 最大のむちは、地方交付税の段階補正の見直しであります。
 人口が少ない市町村の交付税の割り増しを行ってきたこの制度を、今、見直しをしなければならない合理的根拠が一体どこにあるのですか。
 総務大臣は、ちょっと地方に優遇過ぎるのではないかという声がある、とにかく今ぬくぬくとしているからいささかも変えたくないというのは困ると、人口の少ない自治体を敵視するかのような発言をされています。
 しかし、日本世論調査会が昨年九月末に行った世論調査でも、国土の均衡ある発展のためには地方に多く配分するのは当然であるとの意見があるが、どう思うかという問いに対し、約七割の国民が、地方へ厚くしている交付税を削減すべきではないと、明確に答えています。国民の声を無視するのですか。答弁を求めたいと思います。(拍手)
 少なくない首長や自治体から、これは合併に向けた兵糧攻めだ、こういう反発と批判の声が上がっています。政府は、あくまで自主的合併と言われています。そうであるならば、直ちに段階補正見直しを中止すべきであります。答弁を求めたいと思います。
 平成の大合併には、行政効率という角度だけで、団体自治、住民自治という地方自治の本旨の実現に資するという角度がありません。
 もし、一千の自治体に再編するとなれば、どんな事態が待ち受けているか。一例を挙げますと、政令市、東京二十三区を除いて、現行五万七千人の地方議員数が、法定上限いっぱいで計算しても、三万六千人、約六割へと激減することになります。
 政府は、これからは自己決定・自己責任の時代と言います。しかし、住民自身が選ぶ首長も議員も存在しない、そういう地域を広範につくり出しておいて、どうして自己決定・自己責任が強化されるのでしょうか。逆行するのじゃないでしょうか。明確な答弁をしていただきたいと思います。
 なぜ、上から合併を押しつけるか。それは、市町村合併を、国から地方への財政支出を削減する自治体リストラの究極の手段、こう位置づけているからではないでしょうか。明確に答弁していただきたいと思います。
 最後に、日本共産党は、強制的な市町村合併を許さず、地方自治、住民の暮らしを守るため、全国の自治体、そして首長、住民の皆さんとともに全力を尽くすことを申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 春名議員から、数多い御質問をいただきました。順次、お答え申し上げます。
 地方単独事業の決算との乖離についてです。
 地方財政計画というのは、三千三百の地方団体が標準的に行政をした場合の数値をまとめたものでございまして、しかも、これは当初予算ベースでまとめるのですね。だから、一年たって、いろいろやってみての決算とは、ある程度乖離するのは、我々はやむを得ないと思っております。
 ただ、一般単独事業につきましては、我々も規模是正を含めて規模の縮小を図っておりますけれども、これは、今まで、景気対策ということで、かなり地方団体がいろいろな単独事業をやってまいりました。特に箱物だとかレジャー関係の施設だとか、そういうことの投資があったわけではありますけれども、現在、そういうことは慎もう、こういうこともございまして一割カットいたしたわけでございますし、全体は、やはり地方団体の考え方が抑制基調になっておりますから、ちょっと乖離が大きいのではないか、こういうふうに考えております。
 それから、交付税措置でございます。
 単独事業も、地域の実情に応じた社会資本の整備でございますし、地域経済対策でもございますので、必要なものには地方債を充て、地方債の元利償還を交付税で見ていこう、こういうことにいたしたわけでございますけれども、いろいろな御議論がございますので、来年度から、地域総合整備事業債というものは廃止いたします。そのかわり、中を絞りまして、基盤整備、生活インフラを中心に地域活性化事業債というのを起こしたいと考えております。
 また、合併特例事業につきましては、これは、新しく一つの市町村となるためには必要な事業が多々あるわけでございますので、その財源として合併特例債を見ていこう、必要なものは交付税でも補てんしよう、こう考えております。
 国民健康保険財政に関してお尋ねがございました。
 この三百六十億というのは、五年据え置きで、それから分割で加算していく、こういうことを財務省との間に決めておりまして、それじゃ十四年度はどうか。十四年度では、地方財政計画の中で、国保の高額医療費共同事業に対しては四百億円の財政措置をとっておりまして、それは財源の裏打ちもございますので、言われるような御心配はないと考えております。
 個人住民税の土地譲渡益課税に係る九%の税率廃止は、実はこれは、御承知のように、平成十五年末までの譲渡は六%だ、こうやったわけでありますが、十六年度からまた九%に返りますから、現下の土地のいろいろな状況を考えて、土地の流動化をさらに促進するためには、この際、六%にそろえた方がいいのではないかという判断でございます。御理解を賜りたいと思います。
 それから、例の、地方交付税に絡む財源不足の補てん措置についてでございます。
 何度もお話を申し上げておりますが、交付税率を上げれるような状況なら、我々も交付税率を上げたいわけでありますけれども、そういう状況ではありませんから、赤字地方債という便法をとりまして、それを後年度、元利償還は地方交付税で丸々補てんする、しかも、それを地方交付税法の中にはっきり法定化する、それによって保障する、こういうことでございますので、ひとつこれまた御理解を賜りたい、こういうふうに考えております。
 福島県の矢祭町の合併しない宣言、町長さんのお考え、議会のお考えでそういう宣言をされて、大変いろいろアクセスがある、来られる方が多いというわけでありますが、一方、合併する方にも、いっぱいアクセスがあって、いっぱい来られておりますから、これは、それぞれ地方団体のお考えで、行きたい方に行っていただければ結構ではないかと考えております。
 市町村数を千とするという国の目標数値でございます。
 これは、何か事をやるときには一つの目標が要るわけでありますから、与党三党のやる千を目標にいたしたわけでありまして、あくまでも、自主的な合併で、それぞれ市町村の関係の首長さん、議員さん、住民の皆さんがあるべき地域社会の将来を考えて御判断賜れば結構だ、こういうふうに考えております。
 したがいまして、合併特例債も、合併に伴い一つの町村として町づくりのために必要な事業については、これは面倒を見てやろう、その財源を確保してやろうということで考えたものでございまして、合併に伴い増加する財政需要に充てるものでございますから、ぜひその点も御理解を賜りたい、こういうふうに考えております。
 それでは、合併特例債だらけになって、将来の交付税は大丈夫かと。大丈夫でございます。それは、将来とも、地方交付税あるいは地方の一般財源につきましては、毎年度の地方財政計画の策定を通じて保障するわけでありまして、私は、その点についての御心配は制度的にないものだと考えております。
 それから、合併算定がえについてでございます。
 十年間は、合併しなかった場合の交付税額を保障する、さらに五年間、激変緩和措置があるが、その後はどうなるか。そのときは、十五年もたちますと状況は全然変わっておりますし、合併する団体の規模、置かれているいろいろな条件、財政力の違い、どういう団体が合併するか等によって千差万別でございまして、十六年後、どうなるかということは、私は、数値的に一概に言えないのではなかろうか、こう考えております。
 それから、段階補正につきましては、お話がありましたように、小規模な、人口が少ない市町村ほど割り増していく、こういう制度でございまして、昔からやっているのです、もう何十年も。
 ただ、現在の実情を見たときに、それは少し優遇し過ぎではないかという御指摘もありますので、我々は実態調査をしまして、実態に即したものに少しカットさせてもらおう、一六、七%、三カ年でカットしよう、こういうことでございまして、これは合併のための兵糧攻めという考えは全く持っておりませんので、御理解を賜りたいと思います。
 また、合併すれば議員さんが減るというのは、これは当然そういうことになるわけでありますが、議員さんが多ければいいというものでもないと私は思いますね。そこで、今後、合併のために、旧市町村単位で地域審議会等を設けることができて、そこで旧市町村単位のいろいろな住民の御意向はくみ上げるような仕組みも法的に定めておりますので、ぜひそれを御活用賜れば大変ありがたい。
 市町村合併は効率化のためではありません。我々は、地方分権の担い手としてしっかりした市町村をつくっていく、市町村をもっと強く大きく元気にする、こういうためにやっているわけでありまして、結果としての効率化というのはあるいはあるかもしれませんけれども、地方分権推進の有力な手段である、こういうふうに思っているわけであります。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 春名議員から、二問ちょうだいをいたしました。
 児童扶養手当制度の見直しについてのお尋ねでございます。
 厚生労働省といたしましては、母子家庭の自立促進を図りますため、子育て支援策、就労支援策、養育費の確保策、経済的支援策などにつきまして、総合的に見直すことといたしております。
 この一環として、児童扶養手当につきましては、平成十四年度予算案におきまして、就労等による収入増が総収入の増加につながるように、所得制限等を見直すことといたしております。
 さらに、母子家庭に対する総合的な施策を展開するために、関係法律の改正も予定しているところでございますが、児童扶養手当につきましては、児童の福祉や自立が困難な者にも配慮しつつ、母子家庭の自立が一層促進され、また、制度そのものが今後も維持できるようにしたいと考えているところでございます。
 もう一点は、国民健康保険についてのお尋ねでございました。
 資格証明書等の交付につきましては、保険料の収納確保と被保険者間の公平を図りまして制度を安定的に運営していく上で必要な措置でありますが、その適用に当たりましては、被保険者の個々の事情を踏まえつつ、適正な運用に努めてまいりたいと思っております。
 また、交付税特会への繰り入れの取り扱いにつきましては、交付税の交付自体が先送りされるものではありませんで、市町村の国保特会には何ら影響を与えないものであり、御指摘は当たらないと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 重野安正君。
    〔重野安正君登壇〕
重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、地方税法の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方団体の歳入歳出総額の見込み額に対するただいまの趣旨説明について、諸般の経済問題をも含め、関係閣僚に質問いたします。(拍手)
 議案に対する質問に入る前に、経済財政政策の基本問題について、財務大臣並びに経済担当大臣に質問します。
 塩川財務大臣、あなたは、さきのG7で、デフレ対策を強化し、もって二〇〇三年度において一%成長の実現を国際的に公約いたしました。しかし、昨年末の「構造改革と経済財政の中期展望」では、実質一・五%、名目二・五%成長の実現は二〇〇四年度以降とされております。こうした中期展望にもかかわらず、財務大臣が国際的に一%成長を約したということは、策定後わずか一カ月余りで中期展望を改定したことになりますが、大臣、そう受けとめて間違いありませんね。
 また、竹中経済担当大臣も、このことは、当然、事前に了解した上でのことと考えますが、両大臣より明確な答弁をいただきたい。
 問題は、そればかりではありません。「厳しい内外経済環境が続いていること、構造改革の効果が顕在化するのにはある程度の時間を要することなどから、ゼロ近傍の成長を甘受せざるを得ない。」と中期展望は指摘しながら、一方では、一%成長を国際公約した根拠はどこにあるのか。国民に対してはゼロ成長、世界向けには一%成長、こんな二枚舌内閣がどこにありますか。内閣官房長官並びに財務、経済両大臣の答弁を求めるものであります。
 このことは、審議中の来年度予算にも重要な影響をもたらすことを、よもやお忘れではありますまい。中期展望の改定と言えるこの国際公約は、予算の前提を大きく改変したことになるのではありませんか。
 来年度予算における円対ドルの積算レートは一ドル百二十二円とされておりますが、現在では、百三十円台半ばと、円安状況となっております。しかも、この円安は、G7では何らクレームはなされなかったばかりでなく、逆に、容認されているではありませんか。こうした事実からすれば、現在審議中の来年度予算において内閣の設定した前提条件を内閣みずから改変してしまったと言わなければなりません。となれば、来年度予算は全面的に組み替え、再提出されてしかるべきものと言わなければなりません。
 このような重要な問題について、直接、総理から答弁を得られないことは残念のきわみでありますが、内閣官房長官並びに財務及び経済担当両大臣の責任ある答弁を求めるものであります。
 さて、そこで、小泉内閣にあって名うての構造改革論者である竹中大臣に質問します。
 日米首脳会談で、総理は、構造改革の加速を言明しましたが、デフレ対策と構造改革とが本当に両立すると考えているのでしょうか。不良債権は今や、デフレの結果であって、原因ではないはずです。であれば、構造改革は不良債権をさらに積み増し、それがまたデフレを呼ぶ原因となることは、明らかではありませんか。大臣の見解を伺いたいと存じます。
 以上の問題認識に立ちつつ、来年度地方財政計画等を中心とする問題について質問します。
 本年度からルール化された、地方財政の財源不足額に対する補てん措置の問題ですが、財政調整財源である地方交付税の総額確保について、自治体の借金で賄っている国が世界のどこにあるのでしょうか。こんな補てん措置がまかり通るなら、我が国の地方財政調整制度は破綻に瀕したと世界から見られても仕方ないではありませんか。総務並びに財務両大臣の所見を求めたいと存じます。
 さらに、財源対策について言及すれば、本年度来の補てん策それ自体も破綻したと言えるのではありませんか。財源不足額にはカウントしながら、臨時財政対策債と称する赤字地方債の利子分については補てん措置を講じていないことは、その証左でありませんか。年々累増する利子は補てん対象としないということは、地方交付税法第七条に定める「地方団体の歳入歳出総額の見込」、つまり、地方財政計画が自治体の歳入歳出の見込み額たり得ないことと同義ではありませんか。こんな計画は、地方交付税法第七条が定める計画とはおよそ似て非なるものと指弾されても仕方ないと思います。総務、財務両大臣の見解を求めます。
 こうした地方財政対策がまかり通るのも、自治体の一般財源の重要な源泉たる地方交付税の性格に対する正確な認識が、小泉内閣には欠落しているからにほかなりません。
 そこで、財務大臣に伺います。
 九二年の百二十三国会で、当時、自治大臣であった塩川財務大臣は、地方交付税の性格について、「これはあくまでも地方の固有の財源である」と答弁されております。これだけ明確に答弁なさった大臣であれば、財務大臣になられた今でも同一認識に立たれていることと確信いたしますが、この点、再度、確認答弁をいただきたい。
 これをめぐる論議は数多く、そのたびに、歴代大蔵大臣は、固有財源と認めております。そうした歴代の認識が現在に生かされているなら、先ほどから指摘しているような財源補てん措置や地方財政計画の策定はなされないはずであります。まして、三十兆円の国債発行枠を形式的に整えるために、交付税特別会計において一兆四百四十三億円もの隠れ借金をつくるなどという見苦しい会計操作やごまかしも、当然、自制されていたはずであります。かつての自治大臣としての初心に立ち戻っての、財務大臣の真摯なる見解を求めます。
 次に、地方財政計画と決算の乖離問題について質問します。
 私の調べたところでも、建設事業において二割から三割、単独事業は計画を下回っております。地方財政の窮乏化を無視した景気対策、そのための自治体の単独事業のいたずらな拡大、ここに乖離原因があることは、今さら指摘するまでもない事実であります。
 このため、来年度地方財政計画では、補助事業の約二倍、一兆七千五百億円、単独事業を縮減していますが、これをもってしても単独事業の乖離は埋まるものでないことは、自治体の当初予算の動向からも明らかであります。私の調査でも、県と政令指定都市では、群馬県のマイナス一一・四%を筆頭に、ほとんどの県、指定都市で地方財政計画の減額幅を上回る緊縮予算となっております。
 この傾向からして、来年度もまた、計画と決算との乖離は免れません。地方債の増発や隠れ借金によってマクロレベルでは帳じり合わせをしても、個々の自治体では単独事業に回す金はない、これが地方の紛れもない財政実態であります。地方財政計画が計画たり得る基盤は、今や、どこの自治体にもありません。このような地方の実態のもとで、地方財政計画をいかに担保なさろうとするのか、総務大臣の見解を求めます。
 最後に、地方の実態と地方交付税、地方税のあり方について伺います。
 住民の足たる公共交通の衰退、放置される田畑、閑散とする商店街等、地方の社会的状況は、「田園まさに荒れなんとす」も、かくやあらんと思わせる惨状にあります。
 地域の経済財政の不均衡の結果として配分される地方交付税に対し、その財政調整機能をより高度化するには、地方分権一括法で取り残された税源の地方移譲の前倒しこそ、喫緊の課題ではありませんか。中期展望でも明言していることであり、これを前倒しする意思はないか、総務、財務両大臣の見識を求めるものであります。
 不況期だからこそ必要とされる法人事業税の外形標準課税への転換を見送り、段階補正の是正というこそくな手段によって都市と農村の対立をあおるような政策は、およそ構造改革とは無縁なものと言わなければなりません。税源が移譲されれば、おのずと地方交付税の財政調整機能は重点化されるのであります。
 この当然の論理を踏まえ、地域社会の再形成を図ること、そこに国民の求める構造改革があることを感知すべきであることを強調し、地方交付税の見直しに関する総務、財務両大臣の見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) まず最初に、この前のG7におきまして、私が二〇〇三年度の経済成長率を一%と言ったという発言に対します御質問でございます。
 G7の会議の中で、各国の経済情勢の意見交換というものがございました。各国、それぞれの自分の経済成長を見通して、あるいはまた問題点等を披露して議論するわけでございますが、その中で、私は、二〇〇二年度は経済成長率は〇%であるけれども、二〇〇三年度においては、実質成長率として〇・六は計画しておるけれども、一%に持っていきたい意向であるということを申し上げました。
 私は、自分の考えておりますことといたしまして、二〇〇二年は日本の経済の底固めができる年であり、二〇〇三年には必ずそれが上昇に向かっていくであろうという信念を持っておりまして、その意味におきまして、内閣府が出しました、経済財政諮問会議の出しました成長率は〇・六でございますけれども、それを若干上回った一%を希望する、目標にするということを申し上げた次第でございまして、これは何も、議論で出たものでございまして、国際公約でもないし、また、閣議に諮ったものでもないということでございまして、それに向かって鋭意努力をしていきたいと思っております。
 次に、十四年度予算の積算レートについてのお尋ねでございます。
 従来から、外貨換算のレートにつきましては、外国為替相場の予測という性格のものではなくて、予算編成上の事務的な必要性から、予算編成時点の過去のレートを機械的に平均して設定しておるものでございます。
 ちなみに、十四年度の予算におきましては、平成十三年、昨年の五月から十月までの直近六カ月間の平均を採用しておりまして、従来の相場変動等によるレートの乖離を理由として予算を組み替える必要はないと考えております。
 それからもう一つ、九二年の百二十三国会で、私は、地方交付税は地方の固有の財源であるということを発言しております。現在も、その考えに変わりはございません。地方交付税は、特定の国税の収入の一定割合を国から地方に交付されるものでございまして、これは地方にまさに権利のある税金でございますから、私は、これは国の税というよりも地方の固有の財源であるということを言ってきております。
 続いて、地方交付税の見直しを図ったらどうだという御質問がございました。
 確かに、見直しが必要であると思っておりますが、その前に、一番大事なことは、国と地方との役割分担をどうするかということ、これをしっかりと決めておかなきゃならぬと思っております。それによりまして、機関委任事務等の委任を、割り当てをきちっと分担するということが大事でございまして、これが地方分権への一番基礎的な条件でございます。
 それに伴いまして、それを可能にする意味において、税財源の見直しをいたさなければなりませんが、この中で一番大事なのは、交付税の見直しと補助金給付のあり方ということでございまして、こういう基本的な問題を討議いたしますにつきましても、今、三千数百に分かれております地方自治体の現状を、できるだけ統合いたしまして、自治能力を増大して、それの行政的な処理ができる自治体に編成していくということが大事な当面する問題ではないかと私は思っておりまして、なお、それにつきましても、地方交付税の将来にわたる検討につきましては、鋭意勉強してまいるつもりであります。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 重野議員にお答え申し上げます。
 まず、地方財源不足額の補てん措置についてのお尋ねがございました。
 今まで、この不足額の補てんは、交付税特別会計が資金運用部その他のお金を借りまして、地方団体に配分しておりました。それが相当な額になりましたし、大変不透明でございます。責任の所在も定かでないという御指摘もございますので、十三年度、十四年度からそれをやめよう、こういうことにいたしたわけであります。
 本当に不足があるのなら地方交付税率を上げるというようなことも考えられるわけでありますけれども、こういう景気低迷の中、国、地方の財政状況の中で交付税率引き上げということは大変困難である。それならばどういう方法があるか。
 私は、借り入れよりは、十三年度、十四年度やっている、国の責任は一般会計で資金を調達して加算してもらう、地方は赤字地方債を出す、こういう方式が借り入れ方式よりはベターではないか、こういうことで変えたわけでございまして、今後とも、この方式につきましては、本年度は四分の一だけ借り入れを残しましたけれども、赤字地方債等含めますと、十四年度の地方財政の運営には支障が出ないような措置になっているのではないか、こう考えております。ぜひ御理解を賜りたい、こういうように思っております。
 それから、赤字地方債の利子分についてでございます。
 国と地方が折半いたしましたときに、地方の赤字地方債の利子分については地方が責任を持つ、こういうことにいたしましたので、これは地方の責任にいたしました。それにつきましては、利子分を含めて後年度地方交付税で丸々補てんする、こういうことにいたしましたので、その点、いろいろな御議論があるいはあるかもしれませんけれども、これは一つの割り切った考え方ではなかろうかと思っております。
 それから、単独事業の乖離の問題でございます。
 御承知のように、地方単独事業というのは、バブルの前後、バブルのとき、バブル崩壊後については、地方財政計画の一般単独事業よりは決算の方が上回っている、しかし、その後は、決算額の方が下回っている、計画額の方が大きい、こういうことになっておりますけれども、やはりこれは、あのときの反省から、地方団体の方が一般単独事業を抑制基調で予算を編成している、こういうふうに考えておりまして、今回、一割カットも、規模是正の意味と、箱物その他のこういう投資については慎重にやってほしい、こういうことで一割カットをさせていただいたわけであります。
 先ほども言いましたが、私は、地方交付税と赤字地方債により所要の財源は確保したと思っております。両方で二十二兆七千七百億を確保しておりますから、必要な一般単独事業は地方団体に思い切ってやっていただく、その必要な量は確保していただく、こういうふうに、現在、要請いたしているところでございます。
 それから、税源の地方への移譲の前倒しを。私は、できれば、大変結構な話で大いに努力いたしたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、我が総務省は旧自治省の後も引き継いでおりますから、ぜひ、地方自治を尊重する、地方分権を推進する、地方を守り支えていく、こういう役所だと思っておりまして、地方への税源移譲については、さらに一層強力に推進いたしたいと考えております。
 それから、地方交付税の見直しについては、今、これだけ巨額な、予算のウエートを占めておりますから、私は、いつまでも今までのとおりでいいということにはならない、絶えざる地方交付税制度の見直しが必要である、そういう意味で、段階補正や事業費補正の見直しをさせていただきますけれども、今後とも、地方団体の実態に即して、地方団体の本当の財政需要に対応できるよう、地方交付税の見直しを引き続いてやってまいりたい、そして、それを合理化し、透明化し、簡素化する、こういうこともあわせてやっていきたいと思いますし、地方交付税は、重野議員御承知のように、地方団体にとりましては財源保障の制度であり、財政調整の制度でございますから、この機能が果たせるように、総量についてはしっかりと確保してまいりたい、こういうふうに思っております。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 重野議員から、四点の御質問をいただきました。
 まず、「改革と展望」における中期的な経済成長率とその改定についてのお尋ねであります。
 「改革と展望」では、さまざまな構造改革を通しまして、二〇〇四年度以降は、実質一カ二分の一%程度あるいはそれ以上、名目では二カ二分の一%程度あるいはそれ以上の、民需主導の着実な成長が見込まれるとしております。
 財務大臣のG7における二〇〇三年の実質成長率に関する発言は、民需主導の着実な成長をできる限り速やかに実現したいとのお考えを表明したものというふうに理解をしています。そうした意味におきまして、財務大臣の発言は、「改革と展望」の基本的な考え方から離れたものではなく、その改定を意味するものでもないというふうに思っております。
 二番目は、集中調整期間内の経済成長率についてのお尋ねであります。
 「改革と展望」では、今後二年間を集中調整期間と定めておりまして、この期間は、厳しい内外経済環境が続く、効果が顕在化するのにはある程度の時間を要することから、ゼロ近傍の成長を甘受せざるを得ないというふうに位置づけております。
 財務大臣のG7における二〇〇三年の実質成長率に関する発言は、こうした民需主導の着実な成長をできる限り速やかに実現したいという考え方を表明したものであるというふうに考えます。
 政府としては、「改革と展望」を踏まえて、デフレ問題に強力に取り組むとともに、構造改革を進めて、民需主導の成長を実現したいというふうに考えている次第であります。
 十四年度予算の積算レート、為替レートでございます。
 外貨換算レートについては、これは、外国為替相場の予測という性格のものではございませんで、予算編成上の事務的な必要性から、過去のレートを機械的に平均して設定しているというふうに伺っております。したがって、相場の変動等によるレートの乖離を理由として予算を組み替えるという性格のものではないというふうに思っております。
 デフレ対策と構造改革の両立のお尋ねがございました。
 デフレを克服することは構造改革を円滑に進めるためにも重要であるということで、「改革と展望」では、デフレ克服を今後二年間の集中調整期間の最重要課題と位置づけております。
 このため、政府としては、さまざまな構造改革を進めて、さらに不良債権の処理を進めて、金融機能の正常化を図って、資金が新興企業や成長産業に円滑に供給されるよう、環境整備を推進しているところでございます。また、十四年度予算、十三年度第二次補正予算と切れ目なく執行するということも重要であると考えております。
 また、先般、総理から、具体的で実効性のあるデフレ対策について、今月内に早急に検討して、できる限り実施に早く移すようにという御指示がありました。この問題に関しては、政府、日本銀行が一体となって、強力かつ総合的に取り組み、景気を回復させるとともに、デフレを阻止してまいる所存でございます。
 いずれにしても、デフレ対策と構造改革というのは、決して対立するものではなく、互いに補い合う、補完的な関係にあるというふうに理解をしております。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣福田康夫君登壇〕
国務大臣(福田康夫君) 重野議員にお答えします。
 まず、集中調整期間内の経済成長率についてお尋ねがございました。
 財務大臣のG7における二〇〇三年の実質経済成長率に関する発言は、民間需要主導の着実な成長をできる限り速やかに実現したいとの考え方を表明したものであり、先般閣議決定された「改革と展望」の基本的な考え方から離れたものではないと理解しております。
 いずれにしても、政府としては、「改革と展望」を踏まえ、デフレ問題に強力かつ総合的に取り組むとともに、構造改革を積極的に推進することにより、民需主導の持続的な成長の実現を目指してまいります。
 次に、十四年度予算の積算レートについてのお尋ねがございました。
 従来より、外貨換算レートについては、予算編成に当たって一定のルールを設定する事務的な必要性から、統一的なレートを設定しているところでございまして、具体的には、予算編成時点での過去のレートを機械的に平均する手法で設定しております。このレートは外国為替相場の予測という性格のものではなく、相場の変動等によるレートの乖離を理由として予算を組み替える必要はないと考えております。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時四十五分散会


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