衆議院

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第2号 平成14年10月21日(月曜日)

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平成十四年十月二十一日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  平成十四年十月二十一日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。
    〔鳩山由紀夫君登壇〕
鳩山由紀夫君 鳩山由紀夫です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、過日の小泉首相の所信表明演説に対して質問をいたします。(拍手)
 質問に先立ち、過日、小柴昌俊さんと田中耕一さん、お二人がノーベル物理学賞及びノーベル化学賞を受賞されたことに対し、心からお祝いを申し上げます。
 大学時代、優が二つだった小柴さんと、四十三歳のサラリーマン研究者である田中さんの快挙には、不況、失業、生活苦、将来不安の影に悩まされている多くの日本人が非常に勇気づけられました。
 さて、小泉総理、一体どうしたのですか。今は未曾有の経済不況です。日本じゅうの国民が、一体日本はこれからどうなるのだろうかと不安に駆られながら、経済国会、まさに不況国会と言われる今国会冒頭であなたが示すであろう処方せんに注目をしていました。
 しかし、そこにあったのは、政治責任を避けて具体論をすべて先送りし、官僚の官僚による官僚のための所信表明演説を棒読みしただけのあなたの姿でした。私は、今、怒りすら覚えています。
 現在の経済状況について再確認をしておきます。
 総理、あなたの経済無策が政権発足以来の小泉デフレスパイラルを招き、さらに、改造内閣スタート早々、竹中大臣の不用意な発言が株価の竹中クラッシュをもたらしました。小泉スパイラル、竹中クラッシュによって経済環境がますます悪化する中、今国会は小泉不況国会の様相を呈しています。
 今や、日本は完全に経済有事であります。昨年四月小泉政権成立以来、各種の景気指標は悪化の一途をたどっています。あなたの就任当時の株価は一万三千九百七十三円。しかし、その後は下落を続け、とうとう一九八三年二月以来十九年ぶりの低水準を記録するに至りました。先週末の水準で計算しても、就任以来の株価下落率は三五%、まさに百三十兆円の時価総額を喪失したことになります。
 総理、歴代政権下での株価時価総額の推移を御存じでしょうか。森政権下では七十七兆円、橋本政権下では六十兆円、宮澤政権下では四十二兆円が失われました。しかし、小泉政権では既に百三十兆円の損失です。断然のトップです。あなたは株価下落のチャンピオンであります。
 失業者数は十七カ月連続増加、企業倒産は二万件、自己破産は十六万件を超えました。高校生の就職内定率は三割を切る地域も出ており、いずれも過去最悪の状況です。その一方で、国債はふえ続け、健康保険法改悪で国民負担も一・五兆円増大しました。国民の将来不安は増幅されるばかりであります。
 構造改革が一向に具体的成果を上げない一方で、大島農相をめぐって再び構造汚職が発覚をしました。
 今国会、そして、今月二十七日に迫った衆参の統一補欠選挙でも、その最大の争点は小泉不況対策と構造汚職問題だということを国会の開会に当たり明確に申し上げた上で、質問に入ります。(拍手)
 総理、あなたは、十八日の所信表明の中で、今直面する最重点の課題は、厳しさを増す日本経済の再生だと述べられました。しかし、あなたが総理に就任して既に一年半が経過しています。そもそも、日本経済が厳しさを増している理由は、あなた自身の無定見、無為無策、経済失政によるものではないですか。改めて、日本経済をここまでおかしくしてしまったことについて、あなたのお考えを聞かせていただきます。
 そもそも、あなたの経済失政の結果として、今、世間がどのような状況になっておるのか、あなたは理解をしていますか。
 先日、私は、千葉県の補選の応援に行くために、地下鉄有楽町線に乗りました。その際、偶然隣に座った社会保険労務士の女性から声をかけられました。自分のお客さんが一月に三件も倒産したんです、こんなことは生まれて初めてです、小泉さんを初め政治家の皆さんは景気の状況がわかっているんでしょうか、ぜひこのことを総理に伝えてくださいと。総理、今、その言葉をそっくりあなたにお伝えをいたします。よくよくかみしめていただきたい。
 日夜資金繰りに奔走する中小企業。職を失い、毎朝ハローワークに通い続ける求職者。収入が減って、子供の教育費の工面に頭を悩ます親御さん。体調が悪いにもかかわらず、医療費がふえ続け、病院に行くこともできないお年寄り。総理、あなたの耳にはそうした国民の声がしっかりと届いているでしょうか。
 先日、私は都内の中小企業を訪問し、お話を伺いました。金型の製造機械五台を大切に使い、熟練した技術で長い間日本経済の下支えとなってきたその企業も、今は受注がほぼ底をつき、機械も毎日午後にはとめている状況でした。その経営者の方は私の手をぐっと握り、何とかしてくださいと語るその目には涙がにじんでいました。総理、あなたは、その涙さえ構造改革が成功しているあかしだとおっしゃるおつもりでしょうか。それとも、あなたの構造改革が失敗していることを示す涙と思われるでしょうか。あなたの意見を伺いたい。
 また、所信表明演説の中で、早急に総合的な対応策を取りまとめると述べていますが、あなたは今までに何本の対策方針ペーパーをまとめたのですか。昨年六月のいわゆる骨太の方針に始まって、ことし六月の骨太の方針第二弾まで、計八本です。竹中さんを登用したかいがあったとおっしゃるかもしれませんが、レポートをまとめるのが政治の仕事ではありません。正しい対策を実行し、実際に経済を立て直すのが、本来の政治の仕事です。
 今回まとめると言われている対応策の目的は何ですか。また時間稼ぎをするつもりですか。経済対策というのは、それによって経済を、雇用を、国民生活を再建することでなければなりません。あと何年、国民に痛みを与え続けるつもりなのでしょうか。明確にお答え願いたい。
 総理、あなたは、ことし一月二十四日の衆議院予算委員会における我が党の菅直人議員との質疑を覚えておられますか。菅議員は、構造改革や地方分権、官から民への仕事の移行は私たちも必要だと思う、しかし、構造改革や地方分権が進むと景気がよくなる、官から民に仕事を移すと景気がよくなるというのは、どういう理屈でそうなるのですか、総理の考え方を聞きたいと真摯に質問しましたが、あなたは、景気は直ちにはよくならない、多少の痛みはやむを得ないという趣旨のことを繰り返されるばかりで、結局、明確な答えは何も聞こえてきませんでした。そして、さらに経済状態は悪化したのです。
 私は、政治は心だと信じていますが、小泉さんの政治には心というものが全く感じ取れません。
 改めてお伺いします。構造改革なくして景気回復なしとは、どういう理屈でそうなるのですか。説明を飛躍させずに、絶叫しないで、論理的に冷静に説明をいただきたい。(拍手)
 そもそも、この点を明確に国民に説明しておられないから、国民の皆さんの不安と不信が増大するばかりなのです。本日の中継は多くの皆さんがごらんになっておられますから、国民に向かってきちんと説明をしていただきたい。官僚の作成した答弁に頼らずに、自分の心でお答えを述べていただきたい。
 次に、不良債権処理に関する金融庁の対応について伺います。
 そもそも四年前に、金融国会の際、きちんと民主党の方針に基づいて対応していたのならば、こんな事態には陥りませんでした。すなわち、不良債権の正確な事態把握と公表、経営責任の明確化を条件にした公的資金の投入や一時国有化を速やかに行うことが重要であります。
 一方で、あるべき金融行政の姿とは、自立可能で、まじめに頑張っている企業には資金が回り、不明朗、不適切な案件にはきちんと対処するものでなければなりません。しかし、金融検査の現実はそうなっていません。中小零細企業に対する検査基準が実態を踏まえておらず、これでは中小零細企業の存在そのものがなくなってしまう、検査基準を再考してもらいたい、先日お会いした信用組合の支店長さんもそう言っていました。
 現行の金融検査マニュアルが、中小企業や中小金融機関にとってどの点が非現実的な内容となっているかをよく洗い出していただき、的確に修正すべきだと考えます。総理は、見直しを指示するおつもりがあるかどうか、お答えを願いたい。
 民主党は、地域金融円滑化評価委員会に金融機関の中小企業など地域金融への寄与度を評価させる、いわゆる金融アセスメント法案を既に国会に提出しています。中小企業経営者同友会など多くの中小企業団体も、その実現に向けて積極的に活動してもらっています。政府は、メガバンクの動静ばかりに目を奪われることなく、健全な地域金融機関の育成にも真剣に取り組むべきです。金融アセスメント法案の早期実現を強く求め、総理の見解を伺います。
 次に、景気対策について伺います。
 厳しい景気の状況を反映し、補正予算に関する議論も活発化しています。確かに、デフレ対策や景気対策が必要です。と同時に、安易な財政支出を容認できないことにも変わりはありません。したがって、我々は、まず予算の組み替えを行うべきだと考えます。
 我が党は、当初予算の審議の折にも予算の組み替えを求めましたが、小泉政権はこれを受け入れず、その結果が一段の景気悪化です。我が党が主張したように、経済効果の薄い従来型の公共事業関連支出を抑制し、本当に経済効果のある事業への支出、民間企業の投資を誘発できるような支出、国民の雇用や老後の不安を解消するような政策への支出が必要であったことを、現下の小泉不況が事実をもって証明しているのです。
 我が党としては、予算の組み替えや不要不急の歳出削減、国有財産の売却などによって、国民に新たな財源負担を求めない内容の補正予算を可及的速やかに編成するべきと考えますが、今国会における補正予算編成を実施するのかしないのか、総理の考えを聞かせてください。
 また、キャピタルゲイン課税の大幅な見直し、NPO、社会福祉法人、学校法人など、今後雇用増の可能性がある非営利セクターに対する税制の支援、住宅・教育ローンの利子減税などの速やかな実施を提案いたします。御見解を聞かせていただきたい。
 さらに、小泉内閣の公約である国債発行三十兆円枠を堅持するのか破るのか、総理の正式な御見解を伺います。
 今後の経済情勢いかんでは、新たな財源負担を国民に求めてでも補正予算を編成する必要が出てくるかもしれません。ただし、その場合、小泉政権の公約である国債三十兆円枠が堅持できなくなることは明らかであり、小泉政権の明らかな公約違反、経済失政であります。
 総理は、ペイオフ解禁再延期を初め、余りにも無責任に公約や前言を翻し続け、しかも、それを政策強化などという詭弁、強弁で開き直っています。
 「玉の盃底無きが如し」とは、韓非子の言葉です。「玉の盃底無きが如し」、すなわち、幾ら格好がよくても使い物にならないという意味であります。幾ら歯切れのいい言葉や格好いいパフォーマンスを並べ立てても、経済再生には何の役にも立ちません。むしろ、こうした無責任、開き直り、不誠実な姿勢が政府の政策に対する内外の信頼を損ね、小泉政権発足以来の景気低迷につながっていることにあなたは早く気づくべきです。
 そして、国債増発、増税等、国民の皆さんに新たな財源負担を求める補正予算編成が必要になった場合には、これは、先ほど申し上げたように、明白な公約違反であり、直ちに小泉首相は退陣するのが筋であります。(拍手)
 改めて申し上げます。本格的な補正予算の大前提は、小泉首相の退陣であります。
 次に、外交問題について伺います。
 十月十二日深夜、インドネシア・バリ島で爆弾テロが発生をし、鈴木康介さん、由香さん御夫妻を含め百八十名以上の人命が失われました。心より哀悼の誠をささげたいと思います。負傷された数多くの方々にも心よりお見舞い申し上げます。また、同時に、卑劣なテロに対して毅然として対応することを誓います。
 北朝鮮問題について質問をします。
 現在、北朝鮮による拉致被害者五名が一時帰国を果たし、二十四年ぶりに祖国の土を踏み、家族や友人との再会を果たしています。今回帰国を果たせなかった拉致被害者の方々やその御家族の方々も含め、余りにも長い道のりであり、私を含め政治に身を置くすべての者の責任を痛切に感じています。
 また、北朝鮮の卑劣な行為に対し改めて非難をし、事件の完全解決と再発防止に全力を尽くすことをここに誓います。
 総理、あなたは、所信表明演説の中で、国交正常化交渉を今月二十九日に再開すると明言されました。しかし、拉致問題の真相解明について北朝鮮の誠実な対応に確信が持てないまま、北朝鮮による核開発という事実を受け、なぜそのように国交正常化を急ぐのか、どのような成算を持っているのか、これらの点について明確に説明をしていただきたい。
 総理、あなたは、従前より、拉致問題の全面解決なくして国交正常化なしと発言してきましたが、あなたの言う拉致問題の全面解決とはどのような状態を指すのか、明確にするよう求めます。
 また、政府は、第二次調査団派遣を当面見送ると言っていますが、それでどのように真相究明を行っていくのですか。何もかもがあいまいなままでは、この交渉をあなた自身にゆだねるわけにはいかないと申し上げなければなりません。総理、明確にお答え願いたい。
 ところで、臨時国会開会の前日、北朝鮮が核開発を継続していたことが明らかになりました。これは、一九九四年の米朝枠組み合意やNPTに対する明らかな違反行為であり、我が国及び北東アジアの平和と安全にとって看過できない重大な事態であります。こんな重要なこともきちんと確認をせずにあなたが平壌宣言に署名したことは、日本の外交史上の大失態として歴史に記憶されることになるでしょう。
 あなたが署名してきた平壌宣言を読み直してみましたが、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」と明記しています。総理は、所信表明の中でも、国交正常化交渉について、「日朝平壌宣言の原則と精神が誠実に守られることが交渉進展の大前提」と述べています。
 北朝鮮が平壌宣言署名後の今月三日になって核開発を認めたことは許しがたい約束違反であり、総理みずからが交渉進展の前提と述べた平壌宣言及びその精神は既に破られたと言えます。にもかかわらず、総理が二十九日に国交正常化交渉を再開するとしているのは理解できません。この点に関して総理の説明を求めるとともに、二十九日までに北朝鮮に対していかなる行動をとり、交渉においては何を進展の条件とするのか、明らかにしていただきたい。
 また、北朝鮮の核開発という事態を受け、KEDOについて、資金供与を含めて、日本政府としてどのように対応していくのか、方針を示すよう求めます。
 この核問題に関して、さらに質問いたします。
 福田官房長官は、総理の訪朝前に米国政府から北朝鮮の核開発について知らされていたと明らかにしています。総理は、北朝鮮が核開発を継続していることを知りながら、「すべての国際的合意を遵守することを確認した。」という、事実に反する外交文書に署名してきたのですか。明確にお答えください。これは、重大な国家国民への背信行為であります。なぜ核開発継続の事実を隠す必要があったのか、説明をしていただきたい。
 この点について納得できる説明がなければ、やはり、核開発の事実が表に出なければ、小泉総理は、その事実を知りながらも、それを国民に隠し、日朝国交正常化と経済協力に突っ走ろうとしていたのではないかという疑念は増幅されるでありましょう。
 さらにお尋ねをいたします。
 政府筋の発言によれば、会談の席上、金正日総書記が、核開発問題は日本には関係がない、核問題は米朝間の問題だ、米朝のどちらが強いかは戦争をやってみなければわからないと発言したと聞いています。総理、あなたはその発言を聞いたとき、なぜ明確に反論しなかったのですか。陸奥宗光ならば、必ず反論していたはずです。核問題は、日本の安全保障にとって最大の脅威です。この点をもってしても、あなたは日本の総理として失格、その責任は重大です。明確な答弁を求めます。
 次に、イラク問題について質問します。
 去る十六日、ブッシュ大統領は、イラクへの武力攻撃権限を大統領に与える議会決議案に署名しました。私は、イラクがすべての国連決議を受け入れ、国連による査察を即時かつ無条件に受け入れることを強く求める一方、米国に対しても慎重に行動することを求めます。
 総理は、所信表明演説の中で、ブッシュ大統領に国際協調が重要であることを明確に伝えたと言及しましたが、抽象的な物言いばかりで、具体的提言を行うことを避けているように見受けられます。
 イラク攻撃が現実のものとなれば、中東は政治的に極めて不安定な状況になることが予想されます。日本にも多大な影響を与えることは必至ですし、イラク攻撃が新たな憎しみと報復の連鎖を生む可能性が高いということも十分考慮して事に当たらなければなりません。米国の単独主義的な行動こそが、テロリストたちにテロを行う口実を与えてしまっているのではないでしょうか。日本としては、安易に協力や支援を表明するのではなく、主体的に態度を決するべきであります。
 そこで、総理にお伺いをします。
 あなたは、中東地域の政治的安定のために、テロの連鎖防止のため、米国の対イラク攻撃問題についてどのように対応するか、明確にお答えください。
 不良債権、デフレの放置、北朝鮮問題の放置、昨今の企業の隠ぺい、偽装の放置など、日本社会から信頼という言葉が急速に消え去っています。その元凶は、自民党長期政権下で増殖してきた政官業の癒着構造にこそあります。
 こうした構造汚職体質を改めるために、民主党は、一貫して公共事業受注企業からの企業献金禁止を唱え、法案も提出してまいりました。しかし、さきの国会でも、あなたは何の関心も示されませんでした。政治と金をめぐる消極的な姿勢は今も変わりませんか。
 さらに、既に公的資金が投入をされ、再投入の是非が議論されている金融機関からの政治献金を、この際、無条件に永久に禁止すべきだと考えます。こうした利権企業から献金禁止をするのかしないのか、はっきりさせてください。御答弁願います。
 さて、最後に、今月二十七日の衆参統一補欠選挙について申し上げます。
 加藤紘一前議員の辞職に伴う衆議院山形四区、井上裕前議長の辞任に伴う参議院千葉選挙区は、両前議員の口きき疑惑に端を発した出直し選挙です。議員辞職こそしていませんが、鈴木宗男議員も逮捕、収監中であります。このたびの補選は、自民党にしみついた構造汚職体質、口ききビジネス体質に対する有権者の怒りを示す選挙でなければなりません。
 この重要な補選を控えた折、過日、内閣改造が行われ、新入閣した大島農相に口きき疑惑が早速発覚しました。総理、この事態をあなたはどのように受けとめているのですか。大島大臣は自民党の国会対策の最高責任者でもありましたが、このような汚職疑惑議員を以前から重用し、さらに引き立てたのは、小泉総理、あなた自身です。
 大島農相は、十八日の閣議後記者会見で、秘書官は金をもらっていないと弁明したと聞いています。それでは、大島農相はなぜ秘書官を解任するのですか。やましいことがなければ、解任する必要は全くないのではないんですか。大島大臣、明確にお答え願います。
 総理に伺います。
 現時点での大島農相の責任並びに総理の任命責任をどのように考えているのか。また、仮に大島農相の弁明が事実でないことが明らかになった場合には、大島農相を更迭するのか。さらには、任命権者としての総理はどのように責任をとる覚悟なのか。構造汚職体質が争点となっている補選を前に、すべての有権者の皆さんに明確に答弁をしていただきたい。(拍手)
 小泉政権は、六つの改革を標榜しながら内実は国民の負担増とパフォーマンスに終わった橋本政権と極めてよく似ています。そして、国民は、一九九八年夏の参議院選挙で橋本首相を事実上リコールしました。今週末、二十七日の衆参統一補欠選挙は、国民にとって、小泉不況に対してノーを突きつけ、自民党腐敗政権にピリオドを打つ大事な選挙です。日本の荒廃の元凶である自民党政権の交代、人心の一新こそが日本再生のための唯一の道であることを強調し、私の代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山議員にお答えいたします。
 日本経済低迷の原因、中小企業経営者の涙に関するお尋ねがございました。
 私は、今日の経済の低迷というものは、これまでうまく機能してきた経済社会システム等、これが時代の流れに対応できなくなっている、そこに根本の原因があると考えております。こうした状況を打破するためにこそ、私は、構造改革が必要だ、改革なくして成長なしと。いろいろな、今まで手をつけられなかったような構造問題に踏み込んで取り組んでいるところでございます。
 こういう経済低迷の原因が私の構造改革路線にあるというのは、それは私は誤解だと思っております。むしろ、今までそのような原因に手を突っ込まなかったことこそ今日の経済停滞をもたらしてきたのではないかと思っております。一刻も早くこの日本経済をたくましく再生させるためにも、構造改革なくして成長なし路線を堅持してまいります。
 御指摘のあった事業者の方々の涙も、確かに、現在の窮状、困難さによってそのような、泣きたくなるというような涙が出てきたものと思っておりますが、我が国経済というのは、厳しい状況の中にも果敢に挑戦意欲を持って取り組んでいる中小企業もたくさんあります。そういう中小企業が数多く存在するのも事実だということを認めながら、余り悲観主義に陥らないで、少しは明るい展望を持って進むのも必要ではないかと思っております。
 私は、就任以来、二、三年は痛みに耐えて、あすをよりよくしようというその姿勢こそが大事なんだと。将来の明るい展望を持ちながら、力強く、希望を持って意欲的に取り組んでいってもらいたいと思います。
 今回まとめる総合的な対応策についてでございます。
 デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長を実現するためには、政府、日銀一体となって総合的な取り組みを行う必要があります。
 今申し上げましたように、これをすればすぐ景気がよくなるとか、即効薬、そういうものはありません。改革なくして成長なし、行財政改革の基盤に立って金融改革、税制改革、規制改革、歳出改革、これを予定どおり、あるいは予定を早めるような形で加速させることによって、この困難な経済状況を打開していきたい。もとより、その間生じるであろう雇用問題、中小企業対策などのセーフティーネット策に対しましては、しっかりとした対応策を今月末に取りまとめていきたいと思います。
 こうした取り組みを進めて、民間需要、雇用の拡大に力点を置いた改革を推進することにより、私は、将来、持続的な成長が可能になるような体制をつくっていきたいと思います。
 構造改革と景気回復についてのお尋ねであります。
 常々言います、構造改革するから景気回復しないんだ、早く景気回復させろ。逆だと私は思っています、見解は全く違う。構造改革しないで、補正予算を出して、財政支出をして、何で景気が回復するんですか。そんなことできなかったから、構造改革に手を出しているんです。その辺は全く違う。今後とも、私は、構造改革なくして景気回復なし、この路線をしっかりと堅持させていく。
 金融検査マニュアルの見直しを指示すべきではないかとのお尋ねがありました。
 金融機関においては、適切な資産査定等を行うことによりその健全性を確保することは、金融機関の規模のいかんにかかわらず、共通の原則であります。
 金融検査マニュアルにおいては、特に中小零細企業等について、その特殊性を総合的に勘案して判断するものとしておりますが、先般、債務者企業の経営実態のより的確な把握を目的として、「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」を作成、公表したところであります。現在、その内容を検査の現場や債務者企業などに広く浸透させているところであり、こうした努力を継続していくことが重要であると考えます。
 民主党が提案している金融アセスメント法案についてのお尋ねです。
 金融機関の融資業務等は、基本的には自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであり、民主党提案のように、何らかの一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価すること等については、慎重に考えるべきものと思います。
 補正予算の編成と三十兆円枠についてでございます。
 政府としては、総合的な対応策を今月末に取りまとめ、デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく所存です。しかしながら、対応策に伴い今国会に補正予算を提出することは考えておりません。このため、現時点で国債発行三十兆円枠の問題は生じませんが、いずれにせよ、十四年度の国債発行額を三十兆円以下に抑制するとの精神は、我が国の財政需要が厳しさを増している中で、財政規律を維持するため、大切な役割を果たしていると考えております。
 キャピタルゲイン課税の見直し等についてお尋ねがありました。
 証券税制については、簡素でわかりやすく、貯蓄から投資へといった視点から、十五年度税制改革の一環として、本格的な見直しを既に指示しております。NPOなどへの税制支援や住宅・教育ローンの税制についても、NPO法人の実態や租税特別措置の整理合理化方針等を踏まえつつ、十五年度税制改正の中で検討してまいります。
 拉致問題や核問題の扱いと日朝国交正常化交渉についてのお尋ねであります。
 政府としては、拉致問題や核開発問題を初めとする諸懸案の解決のためには、国交正常化交渉を再開させ、その中で、北朝鮮に対して首脳間での合意である日朝平壌宣言に従って誠実に対応するよう求めていくことが最も効果的と考え、国交正常化交渉を予定どおり再開させることとします。
 拉致問題についてのお尋ねです。
 この問題については、北朝鮮による拉致の事実関係の解明とともに、生存者及びその家族の帰国の実現など、御家族を初めとする関係者が納得する形で問題が解決されるということが重要と考えています。
 また、調査団の今後の派遣については、これまでの調査結果の分析、鑑定結果等を踏まえて検討していく考えです。なお、真相解明については、国交正常化交渉等の場でも引き続き詳細な情報の提供を求めていく考えであります。
 今後の政府のKEDO、いわゆる朝鮮半島エネルギー開発機構への対応についてであります。
 KEDOは、国際社会が北朝鮮の核開発を阻止するための現実的な手段であるとの認識に変わりはありません。政府としても、今後とも、日米韓三国が緊密に連携し、KEDOの場をも活用しつつ、北朝鮮の核開発問題の解決を図っていく考えであります。
 北朝鮮の核開発問題と日朝平壌宣言に関するお尋ねです。
 先般の日朝首脳会談においては、その時点で得ていた情報も踏まえ、金正日国防委員長に対し、核問題を取り上げ、責任ある行動をとるよう強く求めました。これに対して、金正日委員長は、関連するすべての国際的合意を遵守するとしました。私は、これを実現していくことが問題解決に資すると判断し、この点を明記して日朝平壌宣言に署名しました。
 なお、本件に関する情報は、日米同盟関係に基づく信頼関係のもとで米国より提供されてきているものであり、米国政府との関係にかんがみ、対外的に明らかにしなかったものであります。
 日朝首脳会談において、先方が、核開発は米朝の問題であると述べた点についてのお尋ねです。
 日朝首脳会談で、私は、金正日国防委員長に対し、核問題は米朝だけの問題ではなく、日本さらには北東アジア全体の問題である旨指摘し、核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意の遵守を強く求めました。
 いずれにしても、日朝間に横たわる過去の問題、現在の問題、将来にわたる問題、これを交渉を通じて、対話を通じて私は解決していきたい。今、いろいろ不満があるからといって交渉再開に反対であるという態度は、まことに残念であります。
 米国の対イラク政策についてのお尋ねです。
 米国がイラクに対して軍事行動をとることを予断することは適当でないと考えます。
 重要なのは、イラクが実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れ、すべての関連安保理決議を履行することであり、このため、必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきです。この点については日米の意見は一致しており、我が国は、国際社会と協調しつつ外交努力を継続してまいります。
 政治と金の問題と金融機関からの献金についてのお尋ねです。
 政治献金については、いささかの疑惑も持たれることのないよう適正になされなければなりません。
 公的資金の投入を受けている銀行の政治献金については、自民党では、平成十年十月より、公的資金投入銀行からの一切の寄附を自粛しております。
 大島農相の元秘書官の問題についてでございます。
 政治と金の問題は、常に政治家が襟を正して当たらなければならない大事な問題であります。このような問題については、仮定の議論をする前に、まず、しっかりと事実関係を明らかにすることが重要であると考えます。
 大島大臣に対しては、農林水産大臣としての職務に全力を尽くすとともに、事実関係を明らかにし、疑惑を晴らすよう指示しております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
国務大臣(大島理森君) 今回の報道以降、政務秘書官としての仕事に支障を生ずる状況にあることから、交代させることとしたものであります。
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 堀内光雄君。
    〔堀内光雄君登壇〕
堀内光雄君 私は、自由民主党を代表し、小泉内閣総理大臣の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)
 福沢諭吉の「学問のすすめ」と並んで、明治維新時に大きな影響力を与えた著書に、中村正直の「西国立志編」があります。この冒頭に紹介されている「天は自ら助くる者を助く」という言葉があります。これは、自助の精神の大切さと、努力する者は報われるということをあらわす言葉であります。しかし、中村翁は、この後に続けて、名を知られる人は少なく、報われることもない多くの人々の努力により国は支えられているのだと述べております。
 努力が報われ、名を上げた人々を称賛することは、多くの人々に奮起を促す上で大切なことであります。しかし、恵まれない環境にありながら日々努力を重ね続けている国民の圧倒的多数に光を当てることが、政治の重要な役割だと私は考えております。(拍手)
 経済の国際化に伴ってグローバリズムが叫ばれる今日、他の国の制度をそのまま導入しようとする安易な考え方がともすれば見受けられます。このようにして日本に持ち込まれた制度の多くは、生存競争の中で、すぐれた者、強い者が生き残り、劣った者、弱い者が滅んで世の中は進歩していくという適者生存の世界観、宗教観を持つ国々の制度であります。言うまでもなく、国の風土、歴史により国民の世界観は異なります。日本国民は、歴史的に、弱い者を皆で助け、ともに生きていこうという共存の世界観を持っております。
 国際化した経済の世界においては、競争の原理、市場の原理で物事が動いていくことは否定しようがない事実でありますが、すべての制度にこれを取り入れた場合、制度が国内で消化されず、日本経済を不安定にするのではないかということを懸念いたしております。
 明治維新において、急激な西欧化の後、和魂洋才という考え方に基づく国家統治に大きく旋回をした歴史もあります。小泉総理は抜本的な構造改革を進めようとされておりますが、諸制度の改革、国家ビジョンの策定に当たって、どのような考え方で、どのような方向に進めていかれようとされておられるのか、総理のお考えを最初にお伺いいたします。(拍手)
 政府は、五月の月例経済報告で景気の底入れ宣言を行い、その後、持ち直しの動きがあると上方修正し、今日に至っております。
 しかしながら、本年に入ってからの倒産件数は一万四千件を超える高水準にあり、廃業はさらに膨大な数に上っております。失業率も五・四%と戦後最悪の水準が続いております。経済の先行指数と言われる平均株価も、十月十日には一時八千百九十七円まで急落をしました。これは、平成元年末の終値三万八千九百十五円の五分の一であります。十月十八日には九千円台に戻したとはいえ、民間経済に大きな影響が起きております。この状況は、世界不況に突入する危機をはらんでいるのであります。
 現下の最大の課題は、景気の回復であり、日本経済の再生であります。日本は経済大国であり、日本経済の成長と安定は、世界経済の成長と安定のためにも必要なことであります。
 もちろん、総理が日本経済の再生に向けて構造改革に本格的に取り組んでいることには、ほとんどの国民が賛意を表し、総理のスローガンである、改革なくして成長なしを私は心から支持いたしております。
 しかし、現下の経済情勢では、改革だけで成長を実現させることは困難であります。改革の無理押しは、日本経済を混乱に陥れるおそれがあります。日本経済を本格的な成長軌道に乗せるためには、長期対策である構造改革とあわせて、現下の経済危機を乗り切るための緊急経済対策が必要であります。改革とあわせて緊急対策を講じることは、これまでの改革路線と矛盾するものではなく、相補完するものであり、今は、大胆かつ早急に景気対策を講じるべきであります。
 緊急経済対策は、財政、税制、金融のあらゆる面から実施すべきであると考えます。したがって、まず、デフレ脱却のために補正予算を編成すべきであると考えます。従来型の公共事業の追加ではなく、国民の消費や民間設備投資を刺激する効果のある対策を実施すべきであります。その際、三十兆円の枠にとらわれるべきではないと思います。枠は政策運営の操作目標にすぎません。枠に政治的に過大な意味を持たせるべきではないと思います。
 税制については、税収が大幅に落ち込んでおります。これこそ景気の悪い証拠であり、事態の深刻さを認識しなければなりません。緊急事態でありますから、税収中立にとらわれず、設備・研究開発投資への政策減税や、資産の世代間移転を促すための相続税、贈与税についての見直し、土地バブル時代に地価上昇を防ぐために導入された土地税制をバブル以前の状況に戻すべきであると考えます。
 デフレ脱却のための緊急経済対策への取り組みについて、総理のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
 次に、金融問題について伺います。
 総理は、今回の内閣改造に際して、日本経済の再生を最重要課題に掲げ、不良債権処理を加速することに強い意気込みを示されました。また、竹中経済財政・金融担当大臣は、就任に当たり、不良債権問題の処理を加速するため、資産査定の厳格化、自己資本の充実、金融機関のガバナンスの強化の三原則を述べて、この原則に沿って取り組むという考え方を明らかにされております。
 しかしながら、銀行の国有化とか公的資金の注入といった議論が不用意に行われたこともあり、国民の間に、金融危機が起きるのではないかとの懸念が広がっております。不良債権処理は、あくまで、資金が民間経済を円滑に循環するよう、金融機関の経営を健全化することが目的でなければなりません。
 金融危機は起こさせないという総理の強い決意をお聞かせいただきたいと思います。
 また、現下のデフレを阻止して、穏やかな物価上昇を実現することが重要であります。政府、日銀と一体となって、早急に、より一層の金融緩和を促進するための措置を実施すべきであります。
 株価は経済の先行指数であり、実体経済の反映であると言われておりますが、経済の市場化が進んだ結果、株価動向などの市場の動向が実体経済に及ぼす影響も大きくなってきているのであります。したがって、デフレ脱却のためには、金融・証券市場の活性化対策も重要であります。
 不良債権処理のための債権の証券化の促進も必要です。また、個人の証券投資促進のための証券税制の見直しも早急に行うべきであると考えます。
 今回日銀が発表した、銀行保有の個別会社の株式の購入も、日銀の金融危機に対する決意のあらわれとして、また、市場環境整備に資するものとして評価できる面もありますが、さらに、デフレ対策として成立したETFを取り上げるべきであると考えます。
 今回の日銀の株式購入は、個々の企業の株式でありますから、問題がないとは言えません。が、このETFは、銀行救済ではなく、日本株式会社の株を買うのであり、日本の資本主義を買うということなのであります。
 今後、不良債権の処理を加速するとなれば、企業倒産や失業者の増加が予想されます。巨額な公債残高を考えれば、安易に国債発行による財政支出に頼ることは許されないことは承知をいたしておりますが、雇用対策や中小企業金融措置を講じないまま不良債権処理を加速することも、また許されることではありません。
 世界大恐慌の真っただ中にあった昭和六年の第五十九回通常議会において、浜口内閣の井上蔵相と政友会の三土忠造議員による論争が繰り広げられました。適者生存の論理に立って、国債発行による財政出動や失業対策を拒否して緊縮財政を主張する井上蔵相に対し、三土議員は、国家は生きているのである、国民は生活をしているのである、その国家の発展を図り、国民の安寧幸福を図るのが大蔵大臣の責任であると言い、井上蔵相の主張は、銀行の狭い窓口から一般経済を見ているようなものだと痛烈な批判を加えたと伝えられております。(拍手)
 不良債権を早期に処理し、構造改革を進め、日本経済を再生させるためには、あわせて、デフレ対策のための中小企業金融措置等のセーフティーネットの構築が不可避だと思います。
 総理は、経済状態に対応して、大胆かつ柔軟な措置を講じると述べられました。今がそのときではありませんか。セーフティーネットの構築について、政府のお考え、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、産業の再生について申し上げます。
 政府の方針である不良債権処理の促進を図ることは、当然であります、また大事なことであります。しかし、不良債権処理だけを行えば、企業の倒産が増加し、したがって、失業率が上昇することは明らかであります。
 また、倒産対策のための雇用の助成等のセーフティーネットはしっかりと用意をしなければなりませんが、それだけでは不十分であります。大事なことは、第一に、部分的にでも生かせる事業部門を分別し、存続させることであります。そして、さらに大事なことは、日本経済を支える新しい事業、新しい産業の創生、発展を政府が応援することであります。
 日本では、企業の廃業率が開業率を大幅に上回る状況がこの数年続いております。特に廃業は、倒産の十倍、年間に約十八万件と推計されております。また、開業率は、アメリカに比べて非常に低いありさまであります。もちろん、アメリカは開業率が廃業率を上回っております。
 今必要なことは、不良債権処理による廃業率を高めることではなくて、開業率を高めて新産業をつくり出し、発展させることであります。
 ことし、我が国の科学者が二人、ノーベル賞を受賞いたしました。物理学賞と化学賞であります。日本には、産業の基盤になる技術シーズ、産業の種は十分あるのであります。これを生かして新しい産業を興し、育成していくことが大切であります。大がかりなものでなくても、国民の事業を興そうという意欲を後押しするような政策が必要なのであります。
 政府は、新規産業創生のための環境整備や思い切った助成を行うべきであります。アメリカでも、ベンチャー企業育成には政府が大きな役割を果たしております。総理の本問題への取り組みの決意をお聞かせいただきたいと存じます。
 行政改革法案が今国会に提出されております。
 行政改革法案は、改革のための改革、数合わせのための改革になってはなりません。独立行政法人という、形を変えるだけの改革になっていないか。独立行政法人になりながら、従来と変わらず、国からの委託費や助成金がその収入の大半であるという法人もありますし、独立行政法人になって給与を上げた法人もあるといいます。
 中国の言葉に、「一利を興すは一害を除くに如かず、一事を生ずるは一事を省くに如かず」というのがあります。特殊法人改革は、戦後、規制に便乗して増加した不必要な特殊法人をなくすことであります。短期日に処置するだけではなく、腰を据えて取り組みをすることが必要であると思います。
 また、行政改革の監視を徹底して行うためにも、改革の成果を検証するために監視委員会を設置してはいかがでありましょうか。総理のお考えをお伺いしたいと存じます。
 次に、安全保障について伺います。
 まず、食品安全行政についてであります。
 この一年間、BSE問題、未指定添加問題、海外産加工野菜の残留農薬問題、食肉の偽装表示問題など、食に関して国民の信頼を根底から揺るがす重大な問題や企業のモラルが問われる事態が頻発をいたしました。
 このため、我が党を初め与党三党は、共同して、食品安全行政について、国民の視点に立った提言を行ってまいりました。
 総理は、国民の食への信頼の回復に向けて、今後の食品安全行政をどのように再構築していくお考えか、伺いたいと存じます。
 次に、有事法制についてお聞きをいたします。
 国家の緊急事態に対する備えとしての有事法制は、不可欠な法整備であります。さきの通常国会に武力攻撃事態対処関連三法案が提出をされ、既に六十七時間の審議が行われ、有事に備えることについて議論が進み、国民の理解も深まってきたものと思います。
 また、国民保護法制など、今後整備されることとなる個別法制の内容についても議論がありました。これら個別の法制は、武力攻撃事態対処法案成立後に整備をするということにされておりますが、国民の権利義務に密接にかかわるものであります。
 国民保護法制の輪郭を速やかに明らかにし、幅広く議論をしていただく必要があると考えますが、いかがでありましょうか。
 これに関連して、領域警備についてもお伺いしたいと存じます。
 国の安全を全うするためには、有事法制が対象としている武力攻撃のみならず、不審船や工作員の潜入あるいはテロといった、武力攻撃に至らないような緊急事態にも的確に対応することが重要であります。警察や海上保安庁といった警察機関と自衛隊が、省庁の枠にとらわれず、政府一丸となって対応する必要があると思います。
 国民の安全に関する総理のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
 最後に、外交問題について伺います。
 総理は、六月のサミット以来、一連の外遊成果を上げておられますが、とりわけ、国交のない北朝鮮に飛ばれて首脳会談を実現されたことは、その白眉でありました。
 一部には、平壌宣言に署名をせず、北朝鮮の国家犯罪が明らかになった時点で席を立つべきだったとの声もありますが、交渉のテーブルに着かない限り、拉致問題の解明がやみに閉ざされたままになってしまうのでありますから、断腸の思いで総理は署名されたことと思います。
 国交正常化交渉は今月二十九日に再開をされますが、政府は、拉致問題の真相解明と並んで、昭和三十三年から四年ごろ、一部政党による、北朝鮮は地上の楽園であるとの宣伝と扇動で北朝鮮に渡った日本国籍を持つ方々の消息と、これらの方々の置かれている境遇についての調査を取り上げるお考えがあるかどうかを伺いたいと思います。
 十月十六日の報道で、北朝鮮において核兵器の開発が進められていることが判明をいたしました。我が国の生存にかかわる重大な問題であります。また、既にノドン、テポドン等のミサイルが配備され、一衣帯水の我が国も完全に射程内にあることが確認をされております。備えあれば憂いなしであります。改めて、有事法制の早期成立を強調させていただきます。同時に、今後、北朝鮮に対し確固たる姿勢で臨まれることを期待し、総理の所信を伺いたいと思います。
 また、イラク、パレスチナと中東情勢が厳しい局面を見せておりますが、米国の対イラク政策に我が国はどのように対応するのかを伺いたいと存じます。
 総理は、就任後最初の所信表明演説において、明治維新にも匹敵する「新世紀維新」を断行するとの決意を述べられました。私は、この総理の改革断行の決意に心から共感を示しているものであります。
 グローバリゼーションの中で、戦後五十年の間につくり上げられた政治、経済、社会のパラダイムの根本改革が求められているのであります。この古い制度を改め、新しいものに切りかえるというのは容易なことではありません。これをできるのは小泉総理以外にはないと思っております。と同時に、この大改革は、総理お一人に重い荷物を背負わせるわけにはまいりません。大改革をなし遂げるために、我々与党一丸となって取り組む決意を申し上げて、私の代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 堀内議員にお答えいたします。
 質問、御意見に加えまして、激励までいただきまして感謝申し上げます。(拍手)
 最初に、中村翁の言葉を持ち出されました。明治の「自助自律」の精神を強調された言葉であり、私も何度か読んだことがございます。いかなる時代、いかなる国においても、世代を超えて、私は、みずからを助ける精神とみずからを律する精神なくして国家の繁栄はないと思っております。どの世代にも、どの時代にも、どの国にも通用する大事な教えだと思っております。
 そういう中から、構造改革と今後の方向性についてのお尋ねでございます。
 御指摘のとおり、現在の日本経済を支えてきたいろいろな構造、制度、経済社会システムは時代の変化に対応できなかった、新しい二十一世紀にどのように対応していくかというその中で、今苦しんでいる面に改革を断行する際に直面しております。私は、こういう困難さを打開して、やはり新しい時代に対応した、経済、財政、行政、社会の各分野において改革すべきは改革しなきゃいかぬということで構造改革に取り組んでまいりました。
 今後、方向性といたしましては、この日本経済の潜在力は依然として強いと思っていますので、この潜在力を引き出すような改革を断行していきたい、そう思っております。それは、もう何回も申しておりますように、官から民、中央から地方へ、そして、それぞれの民間の創意と工夫が発揮されるような改革に取り組んでいきたいと思います。
 デフレを克服するためにあらゆる面からの緊急経済対策を講ずるべきだという御指摘であります。
 この点につきましても、民間需要主導の持続的な経済成長を実現していくためには、政府と日銀が一体となって総合的な取り組みを行う必要があります。
 私は、不良債権処理の加速を含む金融システム安定化策、また規制改革、都市再生事業など、構造改革の加速策を含む対応策を今月末に取りまとめることとしております。
 税制改革につきましても、あるべき税制の構築という観点から、法人課税、相続税あるいは贈与税、さらには証券税制等、現下の経済情勢を踏まえまして、一兆円を超える、できる限りの規模の減税を先行させることとしております。
 また、税制改革に際しましては、単年度にはこだわらず、多年度税収中立の方針を考えながら、あるべき税制に向けて、十五年度税制改革の中で実現していきたいと思っております。
 金融危機は起こさせないという決意についてお尋ねがございました。
 日本経済の再生に向け、平成十六年度には不良債権問題を終結させるとの方針のもと、現在、金融担当大臣が不良債権処理の加速の具体策についてさまざまな観点から検討を行っており、十月中に取りまとめることとしております。その際には、金融機関、ひいては日本経済を強化するため、企業、産業の再生と一体のものとして不良債権処理に取り組んでいく必要があると考えます。
 いずれにせよ、いかなる金融不安が起こっても、それを阻止するために、政府と日銀が協力し、あらゆる手だてを講じることで日本から金融危機を起こさせないとの決意のもと、経済情勢に応じては、大胆かつ柔軟な措置を講じ、金融システムと経済の安定を確保してまいります。
 証券市場の活性化策、一層の金融緩和を促進するための日銀のETFの購入についてのお尋ねがございました。
 我が国経済の再生を図るためには、金融・証券市場を通じて資源が効率的に成長分野に流れることが不可欠です。貯蓄から投資へという流れの中で、証券市場を幅広い投資家の参加する厚みのあるものとするため、証券の販売経路の多様化、債権の証券化の促進などの環境整備を含め、証券市場の構造改革を進めてまいります。
 金融・証券税制についても、平成十五年度税制改革の一環として、わかりやすい、簡素で、貯蓄から投資へといった観点から、本格的な見直しを既に指示しております。
 また、デフレ克服に向けては、日銀、政府一体となり総合的に取り組む所存でありまして、日銀におかれては、質量両面にわたり、実効性のある金融政策運営が行われるよう期待しておりますが、金融政策運営の方針をどのように設定し、どのような手段で達成するかは、日銀において適切に判断されるものと考えます。
 中小企業金融措置等のセーフティーネットの構築についてです。
 政府としては、不良債権処理の加速に伴う雇用や中小企業経営への影響に対しては細心の注意を払い、セーフティーネットには万全を期す考えです。
 このため、雇用に影響を受ける労働者に対する再就職支援策、中小企業への貸し渋り、貸しはがし対策など、しっかりとしたセーフティーネット策を含む総合的な対応策を今月末に取りまとめることとしております。
 新規産業創出のために環境整備や助成をすべきではないかとのお尋ねであります。
 我が国経済を活性化させるためには、新たな産業を興したり、その担い手となるベンチャー企業を育成していくことが極めて重要であります。
 このため、これから市場の拡大が見込まれる分野の規制改革に積極的に取り組むとともに、新たな事業の担い手に対して必要な資金や人材などが円滑に供給されるような環境の整備に全力を挙げて取り組んでまいります。
 特殊法人改革の進め方についてでございます。
 特殊法人改革は、肥大化した公的部門を抜本的に縮小し、簡素、効率的、透明な政府を実現するために不可欠の改革であります。昨年十二月に閣議決定した特殊法人等整理合理化計画では、道路四公団の民営化や住宅金融公庫、石油公団の廃止等、相当踏み込んだ改革内容となっており、さらに、政府関係金融機関の見直しを含め、その具体化を着実に進めてまいります。
 特殊法人改革を進めるに当たっては、御指摘のとおり、第三者による評価、監視が必要であると考えており、既に本年七月に、特殊法人等改革推進本部に民間有識者九名から成る参与会議を設置し、整理合理化計画の進捗状況のフォローアップに当たっているところであります。
 今後の食品安全行政の再構築についてのお尋ねであります。
 食品の安全性についても、それを科学的に評価する食品安全委員会の内閣府への設置、食品に関するリスク管理などを担う関係省の体制の見直し、国民の健康保護を基本とする食品安全基本法の制定及び食品の安全性にかかわる関連法の改正を次期通常国会で実現させるなど、食品に対する国民の信頼回復に万全を期してまいります。
 有事関連三法案を早期成立させるべきであり、同法案の審議とあわせて国民保護法制の輪郭を明らかにすべきとの御指摘がありました。
 継続審査となっている有事関連三法案については、国会における議論を通じて幅広い国民の理解と協力が得られるよう努めてまいります。
 今後整備される国民の保護のための法制についても、法案審議の中で、現段階における政府の考え方を可能な限り示してまいりたいと思います。
 不審船や工作員の潜入、テロ等の、武力攻撃に至らない緊急事態への対応についてお尋ねがありました。
 これまで、外国の工作船や工作員が我が国に侵入し、拉致などの違法な活動を繰り返していた実態が明らかになりました。我が国がこうした活動を阻止することができなかったことは、まことに遺憾に思います。
 御指摘のように、国及び国民の安全にとって現実の脅威であるさまざまな事態に対して有効な対応を確保することは、政府の重大な責任であると認識しております。
 こうした反省の上に立って、事態に応じて、警察、海上保安庁等の警察機関と自衛隊のそれぞれの機能が最大限に活用されるよう、態勢、装備、相互の連携のあり方等について一層の改善と強化を図り、国民の不安を解消してまいりたいと思います。
 在日朝鮮人の帰還事業で北朝鮮に渡った日本人の消息調査についてのお尋ねです。
 これらの方々の消息調査については、日朝赤十字間での取り組みとして行われているところですが、再開される国交正常化交渉においても、このような赤十字間の取り組みの促進を図っていきたいと考えております。
 北朝鮮の核開発についてです。
 この問題は、国際的な平和と安定、不拡散体制にかかわる問題であるとともに、我が国自身の安全保障にとって重大な懸念であります。
 我が国としては、日米韓の連携のもと、日朝平壌宣言の精神に基づき、国交正常化交渉等の場で北朝鮮側に対してその解決を強く働きかけていく考えであります。
 米国の対イラク政策についてです。
 イラクの大量破壊兵器開発問題は、国際社会共通の問題であります。
 重要なのは、イラクが実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れ、大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連安保理決議を履行することであり、このため、必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきであります。この点について日米の意見は一致しており、我が国は、国際社会と協調しつつ外交努力を継続してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 中野寛成君。
    〔中野寛成君登壇〕
中野寛成君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、総理の所信表明に対して質問いたしますとともに、若干の所見を表明いたしたいと存じます。とりわけ、私は、内政問題に絞り、小泉内閣の経済無策とその不幸な帰結について問いただします。(拍手)
 さて、私は、小泉総理の所信表明を聞いて、この政権はいよいよやる気を失った、そういう強い印象を持ちました。
 経済再生国会とも言われますときに、期待された総合デフレ対策も示さず、いま一つの焦点である日朝国交正常化交渉についても、事前に解決すべき拉致問題、核開発問題、工作船事件など重大な障害ばかりが目立って、展望が欠けたままであります。手詰まり、空回り、空疎な大音声、あげくの果てに説明なき政策転換、国民はもう聞き飽きました。
 市場は、国民生活や日本経済を学者の実験道具のように扱う姿勢に驚愕しています。竹中大臣が打ち出したのは、反省なきペイオフ解禁二年間延期と、デフレ対策なき不良債権処理加速化であり、明らかな政策転換でありました。
 ところが、首相は、記者団に対して、政策転換ではない、改革路線を確固たる軌道に乗せるものだとかわしています。あるお年寄りの言葉をかりますと、まさに、撤退を転進と言った戦前の大本営発表そのものだということであります。(拍手)
 大本営といえば、小泉総理の不良債権対策など、その最たるものであります。説明責任を回避し続ける小泉総理の姿勢に、さすがに身内の自民党内からも、過ちを改むるにはばかることなかれという声が聞こえるほどであります。このままでは日本経済がつぶされてしまいかねない。国民は、先ほどの答弁にも示されたとおり、総理の危機意識が余りにも欠落していることに驚いております。
 説明なき政策転換のもとで、竹中ショックはさらなるデフレ圧力を生み出し、景気回復の芽を摘み、市場では企業倒産のうわさが飛び交っています。これは、柳澤氏が銀行と企業再生の一体的処理を打ち出した二年前より日本経済がはるかに深刻なデフレに陥っていることを見ない、無視した、タイミングを逸した判断の帰結にほかなりません。
 今日の日本では、不良債権問題と物価の継続的な下落のデフレーションが同居しております。この両方同時に手を打たなければ、不良債権処理の加速化がデフレ圧力をさらに高めるという悪循環に陥ることは火を見るより明らかであります。かのアメリカの大恐慌時代と全く同じ、消費が冷え込み、失業者が急増し、問題企業の連鎖倒産が引き起こされる危機的状況にあります。
 不良債権処理とデフレ対策がパッケージで取り組まれるのでなければなりません。しかし、政府のデフレ対策はいまだ明らかではない。それが竹中ショックの背景だということを総理はよく認識するべきであります。
 しかるに、所信表明では、デフレ退治の具体策は示されず、デフレ不安をそのまま加速するかのようなポーズをとり続けているだけでした。あるのは、総理お得意の逃げ口上、大胆かつ柔軟な措置を講ずるという意味不明の一言だけであり、産業人や国民が注目している補正予算についても、大胆かつ柔軟な措置の一言であります。これでは、政府が何をしようとしているのか理解することは到底不可能です。
 そこで、まずお尋ねいたしたい。
 大手企業の倒産も辞さないとの威勢のいい、しかし、経済政策担当者としては実に無責任な言葉を繰り返した竹中発言のほかに何も示されていないという事態をどう受けとめているのか。とりわけ、雇用や中小企業経営者の不安を断ち切る安全網対策はどこに消えたのか。それでも補正予算を見送るという判断はどこから来たのか。一体、何のための臨時国会なのか。総理の明確な回答を求めます。(拍手)
 無責任ないわゆる竹中ショックで、国民の先行き不安は頂点に達しています。株価下落に続いて、企業倒産の風評被害の続発、個人の消費意欲の低迷、企業の投資意欲の減退、外資の流出、まさに小泉式デフレスパイラルが加速しているのであります。こうした中で、とりわけ中小企業の経営者が路頭に迷う悲劇が生まれており、自殺者も後を絶ちません。これが経済の実態です。
 先般、大阪では、二千万円の融資を申し込んだところ、追い詰められた中小企業者の足元を見て、一千万円の強制出資金を条件に融資を示されたあげく、融資をした信金はつぶれて出資金は返してもらえない、ふいになった、あげくの果てに、その出資金に使ったお金を加えた三千万円の借金だけが残ったという出来事も起こっております。
 あなたがつくり出したデフレスパイラルは、こうした事態を毎日つくり出しているのであります。総理は、これら中小企業者に対して、どんな政策をもって臨もうとしているのでしょうか。
 小泉内閣は、大手ゼネコンなどを救済し、国民や中小企業を切り捨てる政策をとっておりますが、これこそ本末転倒と言わざるを得ません。また、政府の不良債権処理は、大銀行を助けても、中小企業への貸し渋り、貸しはがしを加速するものであり、その哲学や手法に大きな問題があると言わざるを得ません。
 民主党が主張している不良債権処理は、あくまでも、金融機関が本来の姿に戻り、特に地元の中小企業に積極的に融資を行えるようにすることが目的であります。そのため、金融アセスメント法を策定するとともに、中小企業に対する金融上のセーフティーネットを確立することが絶対条件であります。
 また、私たちは、消費者、生活者の生活支援のため、住宅ローン、教育ローンの利子減税、失業者の住宅ローン負担軽減を断行すべきだと考えます。また、個人投資家から完全に信頼を失った証券市場を活性化するため、大胆なキャピタルゲイン課税の軽減を実施すべきだと主張しております。
 さらに、深刻化する失業対策と雇用の場の確保について、政府はもっと真剣に取り組むべきであります。失業手当給付期間の延長、自治体やハローワークだけに依存しない柔軟な失業対策、職業訓練など再教育を保障する個人を対象とした給付制度の拡充、そして雇用保険財政の安定化など、政府としてやるべきことはまさに山積いたしております。
 そもそも、景気浮揚効果のある十分な補正を組むには、総理の思いつき的な口約束、国債三十兆円枠なるものの撤廃が避けられないのではないか。これは、閣内からもその声が上がっているではありませんか。現実を直視せず、みずからの勇ましい言葉に酔いしれている間に、政策転換を認める潔さもあなたは見せようとせず、言葉の上塗りで、どのようにしてこの難局を乗り切ることができると考えているのでしょうか。補正問題に対する総理の姿勢を改めてお尋ねいたします。
 不良債権を一気に処理する案も、公的資金の投入も引当金の引き上げも、すべて、四年前の九八年で出されていた方策でしかありません。政策に何の新味もないのに、経済財政諮問会議で検討いたしますと、議論ばかりで結論は出ない。問題なのは、総理の指導力の欠如にあると言わなければなりません。これから先も、政治責任のない民間人の議論に任せるつもりなのか、総理がみずから責任を負うのか、所見を伺います。(拍手)
 早くも、総合的なデフレ対策を打ち出すと豪語した経済財政諮問会議自体が、先送りを繰り返して迷走しております。十七日の会合で決定するはずが、まとまらず、総理の所信表明にも間に合わないというていたらくであります。これでは、加速化ではなく、遅速化にほかなりません。審議のブレーキは、大胆なデフレ対策にしり込みする財務省に忠実な総理御自身ではなかったのか。いかがでしょうか。何か反論がありましょうか。(拍手)
 小泉総理が威勢よく語るのは、いつも、財務省の枠の中での発言ばかりであります。税制改革も、国債発行枠も、補正予算の編成も、特殊法人の改革も、皆、財務省、金融族そのままではありませんか。みずから族議員にとどまっていては、大胆な改革などできるわけがありません。これでは、改革は加速どころか、日本経済は立ち往生し、野たれ死にすることは火を見るよりも明らかであります。あなたが自民党をぶっ壊す前に日本経済をぶっ壊すということを強く指摘しておきたいと思います。(拍手)
 財源は、国債以外にもあります。従来型の公共事業を大胆に見直し、これを介護、医療・健康、環境や新エネルギーなど新しい分野への人材育成や投資などに振りかえれば、それだけでも大きな景気浮揚効果が生まれるはずであります。国有財産の売却、特殊法人の改廃、公務員改革によっても財源は出ます。それらの財源を、都市再生、バリアフリーの町づくり、今やオールドタウンと言われるニュータウンのリニューアルや、公立学校の三五%に達する老朽校舎の建てかえなど、これらに振り向ければ、地域のコミュニティー活動の活性化や地元中小企業の活力回復にも結びつくはずであります。今、政府に求められているのは、こうした生活密着型の新しい需要と雇用を掘り起こすことだと私は考えます。
 同時に、NPOを初め非営利団体の活動を促進し、新しい形の雇用をつくり出すべきであります。この際、総理も、民主党を初めとする野党が提出しておりますNPO支援税制法案に賛同し、その成立を急がせるべきだと考えますが、いかがでしょうか。(拍手)
 ことしは医療制度の改革、来年は介護制度の見直し、再来年は年金再計算と再設計、課題は山積しております。そうした中、国民の多くは今、将来、年金がもらえなくなるのではないか、失業したときに雇用保険は受け取れないのではないかという不安をますます大きくしております。セーフティーネットをしっかり整備し、その不安を除去しない限り、冷え切った消費や投資を回復することはできません。これが、消費不況を解決する、まさにかぎであります。
 再来年に予定されている年金改革については、現在の少子高齢化傾向をもとに今の公的年金制度で運営していけば、次期改正はまたぞろ給付削減と保険料率アップで対応するしかないと危惧されております。ことし一月に発表された政府の将来推計人口に基づく年金財政試算でも、二〇二五年度には厚生年金保険料が月収の三割を超える高水準になり、年金制度が維持できなくなるとの指摘もあります。
 まさに今、現行制度を前提に、従来から繰り返されております逃げ水年金とやゆされる小手先の見直しを今後も進めるのか、それとも、制度を再設計するような抜本的な改革を目指すのか、問われております。
 そこで伺います。国民の年金不信を解消し、将来に向けて安心できる年金制度にするため、総理はどのような年金制度を構築していこうと考えているのでしょうか。将来の年金ビジョン、そして、そのために必要な制度改正の方向について、総理の明快な答弁を求めます。
 基礎年金の国庫負担引き上げについて、政府は、前回の法改正時に、「平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、」「二分の一への引上げを図るものとする。」ことを法律に明記しました。坂口厚生労働大臣は、国庫負担引き上げには二兆五千億円程度の財源が必要であり、消費税引き上げをお願いできるかどうかにかかっており、そのことを明確に国民に示すべきだと、実態を記者会見で述べておられます。財源をどうするかというあいまいな議論をする時期は過ぎています。まさに政治決断が求められている問題だと言わなければなりません。
 私は、基礎年金の国庫負担引き上げの財源として、将来、税方式で対応していくべきだと考えます。年金財源のあり方に対する総理の明確な答弁を求めます。
 次に、医療制度改革について質問いたします。
 その前に、さきの通常国会において、小泉内閣は、健保本人の医療費負担を三割に引き上げ、一兆五千億円もの国民負担増を押しつける改正健康保険法を強行成立させました。政府・与党は、九七年以来先送りしている医療制度の抜本改革をまたも見送り、患者負担だけを押しつけました。国民の生命と生活に重大な影響を与える法律改正を連立与党の数の暴力で成立させたことは、遺憾のきわみであります。
 さて、健保法の附則に、医療制度改革の検討項目が羅列されております。中でも、医療保険制度のあり方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しの三点について、総理は、今年度中に具体的内容、手順などを含む基本方針をまとめるとしております。医療制度の抜本改革は、十年来の重要課題であります。その間、何度も厚生大臣を歴任された小泉総理が、結局なし遂げたのは法律附則に項目を並べただけだなどと言われないよう、明快な方針を打ち出していただきたい。しっかりとした決意と答弁を求めます。
 さきの通常国会で、衆議院で継続審議となったいわゆる有事関連法案について伺います。
 民主党は、結党以来、緊急事態法制の必要性を認めて、積極的にその検討を進めてきました。しかし、さきの通常国会では、武力攻撃事態、人権規定、民主的統制と国会の関与、地方公共団体との関係、米軍との関係など多くの問題点が明らかにされ、政府案の余りにもずさんであることが露呈いたしました。政府の答弁も全く要領を得ず、外務省、防衛庁の不祥事も相まって、惨たんたる審議となりました。
 そのいわゆる有事法制について、政府内で今、武力攻撃事態の定義や国民保護法制の見直しを、おくればせながら、つけ焼き刃のように進めているとの報道がありますが、事実でしょうか。本当に国民を守るという姿勢と哲学がその中にあるのでしょうか。また、テロ対策や不審船への対応との関連についても明快な御答弁をいただきたいと存じます。
 また、総理の所信に、沖縄に関する言及が一切なかったことには失望しました。
 ことし八月、民主党は、地元沖縄の人々との共同作業のもと、民主党沖縄ビジョンを発表しました。その特徴は、沖縄の自立に焦点を当てていることであります。
 他方、政府が七月に発表した米軍普天間飛行場の代替施設に関する基本計画案は、環境に最も悪影響を及ぼすと見られる埋立工法による建設や、米軍基地の十五年使用期限問題の結論を事実上先送りしているなど、大きな問題をはらんでおります。今次代替施設案を見直すつもりはないか、改めて政府に伺いたい。
 次に、個人情報保護関連法案について質問いたします。
 私たちは、メディア規制法案の色彩が強いこの法案に反対し、根本的な見直しを求めてまいりました。報道によれば、七月二十九日の与党三党首会談では同法案の修正に合意したと言われております。政府は法案の欠陥を認めて修正する方針であるのか、そうであれば、どのような修正を考えているのか、総理の答弁を求めます。
 さて、BSE発生を受け、食肉処理された牛肉の買い取りが行われた際、その手続があいまいにされ、業界最大手までもが偽装に手を染め、牛肉業界全体に対する不信が定着してしまったことは周知のとおりです。しかも、買い取り手続が省略された経緯に族議員の暗躍があると報じられています。
 族議員の関与と政官業癒着の自民党的体質は、今日まで、国民の税を食い物にし、財政を破綻させる原因ともなりましたが、今や、ついに国民の命や健康までをも危うくするものとなっております。この現実を総理・総裁の立場からどう受けとめておられるでしょうか。
 食品だけではありません。一部の電力会社による原子力発電の自主点検記録の虚偽報告については、不正、ごまかしの究極ともいうべきものがありました。今回の事件は、事の発端が日本で最も尊敬される電力企業の一つであったこと、また、他の企業にも同様の問題が波及したことから、これまでの原発事故や不祥事に比べ、その社会的インパクトははるかに深刻だったと言えるものであります。
 私たちは、原子力発電の推進は、言うまでもなく、我が国のエネルギー供給の観点からも重要な施策の一つと考えております。しかし、国民の不信感をそのままに、これまでどおり原子力政策を推し進めることは困難であります。だからこそ、政府の抜本的な改善策が求められていると言わなければなりません。
 さて、今回の電力会社の自主点検をめぐる虚偽記録の事件においても、内部告発が大きな役割を果たしました。ところが、原子力安全・保安院による内部情報の取り扱いはまことに不適切なものでありました。保安院は、最初の通報があってから二年間もその情報を留保したのみならず、通報者の氏名や個人情報を電力会社に漏らすということまでしてしまったのであります。これでは、不正を暴くことはできません。このような担当行政の無責任、無神経な対応を総理はどう受けとめておられるでしょうか。また、今後、同様の告発があった場合、どのようにして迅速な処理を行うつもりなのか、いかにして告発者の人権と情報を保護するのでしょうか、その見解をお示し願います。
 さらに、今回の事件を契機として、保安院が原子力推進機関と目されている経済産業省の管轄にあることについて、疑問が提示されております。民主党は、以前から、この保安院を完全に独立させ、内閣府に移動させることを主張し、実際、西暦二〇〇〇年四月に、原子力安全規制委員会設置法案を提出しております。政府としても当然この法案に賛成されるべきだと考えますが、いかがお考えでしょうか。
 公共事業に絡み多額の口きき料を得ていたという疑惑事件がまた発覚しました。
 先ほどの総理及び農水大臣の答弁を聞いて、がっかりいたしました。大島農水大臣は、当時の国対委員長として、国会の中で、あっせん利得収賄処罰の厳格化論議に携わった御本人であります。しかも、鈴木宗男前議員の秘書逮捕に絡んで、議員には秘書に対する監督責任があると主張していた御当人でもあります。それだけに、こうした懲りない面々の後を絶たない事件の発覚に、国民の政治不信はきわまっております。
 総理は、国民の政治への信頼なくして改革の実現は望めないと述べました。しかし、通常国会の最中に四名もの国会議員が政治と金で辞職し、現在行われている統一補欠選挙の最大課題とされているのに、所信表明では、この問題に一言も触れておりません。先ほどの答弁でも、誠意と反省のかけらも全く感じられません。あなたに一貫しているのは、この政治と金の問題で終始他人事を決め込み、一度としてリーダーシップを発揮しようとしたことがないということであります。これでは、総理自身をミスター・モラルハザードと呼ばなくてはなりません。
 この政治と金に係る欠落について、改めて総理の明快な所見を求めます。
 最後に、長い景気の低迷、絶えることのない政治と金にまつわる政治家とその秘書のあっせん利得、政治不信、そして企業挙げての隠ぺい、不正の発覚の中で、社会の荒廃、社会崩壊の危機が静かに、しかし、急速に忍び寄っております。相次ぐ少年犯罪の発生は、少年刑務所までをもあふれさせております。性犯罪や、想像を絶する凶悪犯罪も続発しています。
 私は、今日の経済問題は、人々が現在に対してせつな的になり、未来に対して希望を抱けなくなっている、この強い危惧の念を抱いております。今、日本は、九〇年代のいわゆる失われた十年に引き続いて、二十一世紀初頭のもう一つの失われた十年を過ごそうとしております。このままでは、社会の崩壊が現実のものとなり、今でさえ年間三万人を超える自殺者がさらに増大し、犯罪の発生率の上昇と検挙率の低下によって社会不安が一気に膨れ上がるときが来るのではないかと恐れております。
 ドイツの元首相シュミット氏の言葉として伝えられるものに、「大改革を断行する者は穏やかに話せ。改革に自信のない者は声高に語れ。」というものがあります。総理の真摯な答弁を求めます。
 民主党は崩壊の危機にある日本社会の再生に大きくチャレンジすることを改めて明らかにして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 中野議員にお答えいたします。
 雇用や中小企業経営者の安全網対策を含む今後の経済対策と補正予算についてのお尋ねでございます。
 デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長を実現していくためには、政府と日銀が一体となって総合的な取り組みを行う必要があります。
 私は、改革なくして成長なしとの考えのもと、不良債権処理の加速を含む金融システム安定化策、規制改革、都市再生など構造改革の加速策のほか、雇用や中小企業対策などのセーフティーネット策を含む対応策を今月末に取りまとめることとしております。
 対応策において、政府としては、国民に不安を与えることのないよう、雇用や中小企業経営への影響に対しては細心の注意を払い、安全網、いわゆるセーフティーネットには万全を期す考えであります。
 この対応策は、直ちに財政措置を伴うものではないと考えられることから、今国会に補正予算を提出することは考えておりません。
 今臨時国会の意義についてお尋ねであります。
 内政、外交とも課題は山積しております。この臨時国会においては、継続審議となっている案件や、ペイオフに関する制度の整備、構造改革特区や中小企業のセーフティーネット、特殊法人改革などの構造改革の推進のための重要課題について審議していただきたいと考えております。
 中小企業経営者に対する施策、不良債権処理の加速に伴う中小企業金融のセーフティーネット等についてのお尋ねであります。
 不良債権問題は平成十六年度には終結させることとしておりますが、中小企業経営への影響には十分配慮し、やる気と能力のある中小企業が破綻する事態を回避するため、信用補完制度の充実等、実効ある資金供給円滑化のためのセーフティーネット策を今月末を目途に取りまとめることとしております。
 なお、民主党の提案している金融アセスメント法案については、金融機関の融資業務等は、基本的には自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであり、何らかの一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価すること等については、慎重に考えるべきものと思います。
 いずれにせよ、中小企業の新規創業、新事業展開を促進することが重要であり、中小企業の果敢な挑戦を後押ししていくように体制を整えていきたいと思います。
 住宅・教育ローンへの税制、キャピタルゲイン課税の見直しについてのお尋ねです。
 住宅・教育ローンの利子減税については、ローンに頼らず生計を立てている者とのバランスの問題等もあり、慎重な検討が必要であると考えております。
 証券税制については、簡素でわかりやすく、貯蓄から投資へといった視点から、十五年度税制改革の一環として、本格的な見直しを既に指示しております。
 なお、失業者などの住宅ローンの負担軽減については、住宅金融公庫における返済期間の延長などの軽減措置について、その周知徹底を図ってまいります。
 失業対策と雇用の場の確保についてでございます。
 政府としては、規制改革の推進を通じたサービス業を中心とした新規産業における雇用の創出を図るほか、しごと情報ネットの運用など、官民による求人、求職の相互結合機能の強化等によるミスマッチの解消などに重点的に取り組んでいるところであります。さらに、今月末に取りまとめる総合的な対応策においても、雇用のセーフティーネット確保のため万全を期す考えです。
 また、雇用保険については、当面する財政破綻を回避し、将来にわたり雇用のセーフティーネットとしての安定的運営を確保するため、給付と負担の両面にわたる見直しを行ってまいります。
 不良債権処理などの政策についてお尋ねがございました。
 日本経済の再生に向け平成十六年度には不良債権問題を終結させるとの私の指示に基づき、現在、金融担当大臣が不良債権処理の加速の具体策についてさまざまな観点から検討を行っており、まずはその報告を待ちたいと思います。
 いずれにせよ、今後、経済財政諮問会議でも議論をしながら、政府として、しっかりとした政策を今月末には取りまとめてまいります。
 私の対応策に御不満があるようで、私がこの対策にブレーキをかけているのではないかという御指摘がございました。
 私は、加速させるための構造改革の努力をしているのであって、そのような御批判は当たらないと思っております。
 総合的な対応策については、十一日及び十七日に開催された経済財政諮問会議においても、集中的な議論が行われました。政府としては、取りまとめに向け、経済財政諮問会議での議論も踏まえ、引き続き精力的に検討を進めてまいります。
 経済対策に関し、従来型の公共事業を見直し、生活密着型の新しい需要と雇用を掘り起こすべきだとの御指摘がありました。
 私は、民間の自由な取引を阻害している規制や肥大化し硬直化した政府組織を改革し、民間の力を発揮できる新しい経済社会の仕組みと簡素で効率的な政府をつくり上げるため、従来型の対策によらず、構造改革に全力で取り組んでおります。
 こういう観点から、総合的な対応策においては、不良債権処理の加速を含む金融システム安定化策、規制改革、都市再生など構造改革の加速策のほか、雇用や中小企業対策のセーフティーネット策を盛り込むこととしており、これにより、デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていくつもりでございます。
 NPO法人に対する税制上の優遇措置についてのお尋ねであります。
 NPOを初め非営利団体の活動を促進していくことは重要と考えております。NPO法人に対する税制上の支援措置については、NPO法人の活動の実態を見きわめた上で、平成十五年度税制改正の中で検討してまいります。
 年金改革の方向性と基礎年金の国庫負担についてのお尋ねがございました。
 公的年金については、国民の老後生活を確実に保障する役割を持続的に果たしていけるよう、長期的に安定した制度を確立することが不可欠であります。
 このため、平成十六年に行う次期年金改正では、国民に開かれた形で幅広い観点から議論を進め、将来の現役世代の保険料水準が過大にならないような制度づくりに取り組み、国民の年金に対する不安を払拭するとともに、少子化等の進行に柔軟に対応でき、持続的に安定した制度づくりに努めてまいります。
 基礎年金の財源については、平成十二年の年金改正法において、「安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」との規定が設けられており、平成十六年に行う次期年金改正においてこれをどのように具体化していくかについて、安定した財源確保の具体的方策と一体として、国民的議論を行いながら幅広く検討してまいりたいと思います。
 医療制度改革の基本方針についてのお尋ねがありました。
 医療保険制度の体系のあり方等の諸課題については、将来とも国民皆保険を堅持し、安定的な運営を図っていくことを基本として、現在、厚生労働省において、たたき台を取りまとめるべく準備を進めているところであり、今後、各方面の御意見も伺いながら、今年度中に基本方針を策定し、医療制度の改革に全力を挙げて取り組んでまいります。
 有事関連三法案及びテロ対策等についてのお尋ねです。
 継続審査となっている有事関連三法案については、国会における議論を通じて幅広い国民の理解と協力が得られるよう努めてまいります。
 今後整備される国民の保護のための法制についても、法案審議の中で、現段階における政府の考え方を可能な限り示してまいりたいと考えます。
 また、国と国民の安全にとって現実の脅威となっているテロや工作船などへの対応については、態勢、装備、関係機関相互の連携のあり方などについて一層の改善と強化を図り、国民の不安を解消してまいりたいと思います。
 普天間飛行場代替施設基本計画の見直しについてです。
 普天間飛行場代替施設の基本計画は、沖縄県及び地元地方公共団体の長にも参画いただいた代替施設協議会の合意を得て決定されたものであります。今後、この決定を踏まえ、沖縄県及び地元地方公共団体と引き続き十分協議を行いながら、計画の着実な推進に向けて、環境影響評価などの所要の手続を進めてまいりたいと考えます。
 個人情報保護関連法案についてのお尋ねです。
 個人情報保護関連法案は、IT社会が進展する中、個人のプライバシー等の侵害を防止し、国民生活を守るための基盤整備として不可欠なものであり、その速やかな成立をお願いしているところでございます。
 提出の法案は、プライバシーの保護と表現、報道の自由を両立させる観点から万全の措置を講じたと考えておりますが、七月二十九日の与党三党首会談合意を踏まえ、その趣旨が徹底されるよう、与党三党において修正を検討していただいております。野党からも法案をよりよいものとする御提案があれば、検討をしてまいりたいと思います。
 牛肉買い取り事業についてのお尋ねでありました。
 消費者の不安を払拭するための牛肉買い取り事業が悪用され、牛肉業界に対する国民の信頼感を揺るがすこととなったことは、まことに遺憾であります。
 反省すべき点は反省し、消費者の視点に立った食の安全の確保のあり方を構築するよう、農林水産大臣に指示をしております。現在、農林水産省において、有識者の意見をいただきながら、国民の信頼回復のための今後の行政のあり方について検討しているところであります。
 原子力安全・保安院の内部告発の取り扱いについてのお尋ねです。
 今回の原子力発電所の不正記録問題について申告のあった案件に関し、原子力安全・保安院の調査や公表の方法等において、反省すべき点があったことは事実だと思います。
 現在、経済産業大臣は、有識者の意見をいただきながら、反省点を踏まえて申告制度の改善を図っているところであります。原子力保安行政の信頼の確保に向けて、早急に改善策を実行に移してまいります。
 企業不正に対する内部告発についてのお尋ねであります。
 内部告発者の保護については、最近の企業不祥事の多くが善意の情報提供により明らかになったことなどにかんがみ、国民生活審議会において審議を行うこととしており、これを踏まえ、告発者の人権と情報の保護のあり方について必要な措置を講じてまいりたいと思います。
 原子力安全・保安院の独立に関するお尋ねです。
 原子力安全規制については、経済産業大臣が一次規制を実施し、原子力安全委員会が客観的、中立的立場から再度安全性を確認するという現在のダブルチェックの体制が最も有効に機能するものと考えます。
 今般の事案が原子力の安全に対する信頼性を損なったことを重く受けとめ、再発防止策として何が必要かについて、総合的に検討してまいります。
 政治と金の問題についてであります。
 さきの通常国会においては、あっせん利得処罰法の改正、入札談合防止法の改正など、精力的に取り組んできたところであります。
 政治と金の問題は、常に政治家が襟を正して当たらなければならない大事な問題だと認識しております。(拍手)
副議長(渡部恒三君) 鳩山由紀夫君の質疑に関して、農林水産大臣から、答弁を補足したいとのことであります。これを許します。農林水産大臣大島理森君。
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
国務大臣(大島理森君) 補足して答弁をさせていただきます。
 大臣政務秘書官の職務は、大臣職と政務の調整で、秘書官として、政務調整であります。例えば、スケジュール調整等があると思います。
 報道以来、その職務に彼が全力で集中して仕事ができる環境と状況でないと判断して、そのような対応をいたした次第でございます。
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 太田昭宏君。
    〔太田昭宏君登壇〕
太田昭宏君 私は、公明党を代表して、さきの小泉総理の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)
 我が国は、今、過去の負の遺産の清算と二十一世紀日本の未来の創造という、大きな歴史的分水嶺にあります。外交も経済も社会自体も、その構造から大きく変革させなければ未来の展望は開けません。今こそ、政治の安定と改革へのリーダーシップが問われており、小泉内閣は、まさに一点集中、国民の視点に立った、仕事をする内閣でなければなりません。そのためには、「民の欲する所、天必ず之に従う」との言葉どおり、今こそ国民の声を聞くことであります。
 私ども公明党は、今臨時国会を前に、九月から十月にかけて、北海道から九州まで全国十一カ所で、列島縦断フォーラムを開催いたしました。開催地の市民、首長を初め、経済、農業、文化芸術、中小企業など各種団体にも参加していただき、国民の皆様の率直かつ切実な声を聞くことができました。この列島縦断フォーラムを通して私が痛感いたしましたのは、将来に対する言い知れぬ不安、焦燥感、閉塞感が列島全体を覆っているということであります。まさに緊急事態であります。
 国民が今、政治に求めているのは、我が国が進むべき道筋、将来ビジョンを大胆に提示し、国民に希望と安心を与える政治のリーダーシップであり、痛みより励ましの改革であります。時代の変化に適応できなくなった既成の理念、価値観、制度を問い直し、先見性を持って政策を打ち出し、スピーディーに実行に移していく強いリーダーシップの確立こそ、我が国政治の喫緊の課題であります。
 以下、その観点から順次質問をいたします。
 まず初めに、私は、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮の日本人拉致問題並びに日朝国交正常化交渉についてお伺いいたします。
 去る十五日、五名の拉致被害者の方々を故国日本に迎えることができました。私は、心より歓迎申し上げるとともに、二十数年の歳月の間、被害者、御家族の方々が味わってこられた苦しみ、悲しみを思うとき、胸の引き裂かれる思いであります。
 今般の一時帰国は、総理も述べられたように、問題解決の第一歩にすぎません。私たちは、今日までの拉致問題解決へ向けた政府、外務省、さらには国権の最高機関である国会の取り組みについて、反省すべき点があったことを率直に認めるとともに、今後、その反省に立ち、一致結束して、真相究明など残された課題に全力を傾けてまいらなければなりません。
 そこで、今月二十九日から再開される日朝国交正常化交渉についてでありますが、両国がさきの日朝平壌宣言の精神と原則にのっとり、誠実に協議し、日朝間の新たな関係構築を目指すことは、北東アジアの平和と安定、ひいては世界の安定のためにも極めて重要なことであります。
 ただ、その交渉に当たっては、日本人拉致問題の真相解明は言うまでもなく、新たに浮上した核開発や大量破壊兵器などの安全保障問題、この二点を最優先課題に据えることであります。
 まず、一時帰国されている拉致被害者五人に関する真相究明はもとより、生存が確認されていない方々についての真相究明についても、さらなる情報の収集と、御家族への迅速な情報提供等を強く求めていくべきであります。この件については、第二次政府調査団を早急に派遣し、解明へ向け全力を挙げるべきであると考えます。さらに、拉致された方々並びに御家族の今後の生活問題については、あくまでも御本人、御家族の意思を尊重した形で、御家族一緒の帰国、さらには、今後の生活等について希望に沿えるよう総力を挙げるべきであります。
 第二は、安全保障上の問題であります。北朝鮮が核開発を進めていることが明白になりましたが、この問題は、我が国の安全保障のみならず、世界の平和と安定にとって重大な問題であります。北朝鮮が核開発を認めた以上、米韓両国と緊密な連携をとりながら対応することはもちろん、核開発を即時中止するよう、毅然とした態度で交渉に臨むべきであります。
 以上、日朝交渉に当たっての政府の方針と決意を小泉総理にお伺いいたします。
 なお、北朝鮮と親密な関係を続け、結果として拉致の事実に重いふたをし続けてきた一部野党の対応にも言及しておきたいのであります。
 社民党は、旧社会党時代から、拉致はないとして北朝鮮を擁護する姿勢をとり続け、最近まで、「新しく創作された事件」との論文をホームページに掲載し続けていました。
 一方、日本共産党は、かつて北朝鮮を地上の楽園と賛美し、また、拉致問題について、疑いのある段階から出ていないとし、拉致事件解明を国交正常化交渉の前提条件とすべきでないと、政府の方針とは正反対の主張を繰り広げてきたのであります。
 社民、共産両党は、拉致問題への対応について、国民に対して明確な総括を行うべきだと思います。(拍手)
 経済問題についてお伺いいたします。
 世界と緊密にリンクしたグローバリゼーションのもとでの我が国経済において、経済構造改革が最重要の課題であることは当然であります。しかも、不況・失業下における構造改革は、先進国の中で類例のない難題であります。今大切なのは、この難題に目をそらさず、あわせて、経済の底割れをさせない政策、デフレ対策、セーフティーネットの整備を果敢に図ることであります。
 私たちは、今臨時国会を経済対策国会と位置づけ、適切かつ大胆な総合的なデフレ対策を早急に取りまとめ、できるものから速やかに実行すべきだと考えます。
 中でも、私は、不良債権処理の加速化によるデフレ圧力を緩和するための需要創出策の策定、さらには、中小企業、雇用のセーフティーネットの整備を急ぎ、そのための速やかな補正予算の編成を強く求めるものであります。(拍手)
 補正予算については、三十兆円枠の問題等がありますが、需要創出を図り、デフレをとめなければ、税収も伸びず、結果として財政再建は遠のきます。構造改革を加速するためにも、まずは、デフレ退治に向けて政府一丸となって取り組みをすべきであります。三十兆円枠にこだわることなくデフレ克服のため相応規模の補正予算を編成することについては、国民の理解も必ず得られるものと確信いたします。総理の大所高所からの英断を強く求めるものであります。
 痛みより励ましの改革という点では、切迫した状況にある中小企業対策を急がなければなりません。今日まで日本の産業を支え、社員を支え、身内を守ってきた中小企業の社長さん、おやじさんの悲鳴を真正面から受けとめ、今こそ政治の力でバックアップしなければ、日本はございません。
 その意味で、深刻化している金融機関の貸し渋り、貸しはがし等をとめさせるとともに、政府系金融機関、信用保証協会によるセーフティーネット貸し付けや保証の思い切った拡充と、売掛債権担保融資制度の一層の推進、特別信用保証制度で延滞歴のない中小企業者が追加保証を求めた場合の優遇措置等を実施すべきであります。さらに、倒産しても再挑戦可能な社会を構築するため、破産法改正や中小企業経営者に対する個人保証の見直し等を行うべきであります。
 また、新規創業に対する支援をさらに強化すべきであります。技術開発に果敢に挑戦し、地域経済を支える中小企業の活性化なしに、我が国経済の再生はありません。中小企業や地域の大学は新しい技術の宝庫であり、産学の連携による技術開発によって、新たな事業がより効果的に生まれます。これまで進められてきた産業クラスターや中小企業の技術開発支援、新創業融資制度などをさらに促進し、守りの対策に加えて、このような攻めの支援策を抜本的に拡充していくべきと考えます。総理と経済産業大臣の所見をお伺いいたします。(拍手)
 雇用創出、セーフティーネットの構築も急がねばなりません。
 雇用創出策は国と地方が一体となって取り組むことが重要であり、具体化には地方自治体が主体となって地域のニーズに沿った施策を講ずべきであると申し上げたい。既に予算化されている緊急地域雇用創出特別交付金等については、共働き家庭のために重度障害児を預かる介助者を雇った大阪・守口市、県土の七七%を森林が占める県域の特性を生かし、緑の雇用事業を進める和歌山県の事例など、大変大きな効果を上げております。私は、交付金の要件を緩和し、さらには、執行を前倒しする、金額も拡充するなど、一層使いやすい柔軟な制度にしてはどうかと考えます。
 中高年の失業とともに緊急に対策を講じなければならないのが、学卒無業者やフリーターなどの若年者の雇用対策であります。就学時のインターンシップや職業教育、フリーターに対するトライアル雇用など、若年者の雇用促進に向けて有為な施策を講じていくべきであります。総理並びに厚生労働大臣の御見解を賜りたいと存じます。
 思い切った規制の緩和、撤廃が経済活性化の起爆剤となることは自明であります。その点では、都市再生本部による四十四カ所の都市再生緊急整備地域が動き始めましたが、特定分野に関する規制を先行的に緩和、撤廃する構造改革特区構想の具体化は日本経済再生の突破口となると確信いたします。
 既に、政府の構造改革特区推進本部には、大学が持つITやバイオなどの知的財産を産官学連携で技術開発を進める構想、高度の先進医療を推進する構想など、IT、教育、物流、農業、医療、金融等の幅広い分野で四百二十六件もの提案がなされているとお伺いしております。
 この構造改革特区は、地域の潜在活力を引き出す契機となるものであります。総理が一層強いリーダーシップを発揮して、構造改革特区法案の早期成立とその運用に充実を期すことはもとより、ぜひとも税・財政支援措置等も考えるべきではないでしょうか。この点は地域の要望が極めて強いものがあり、総理の所見を伺います。
 経済の活性化にとって、税制改革も極めて重要な柱であります。
 研究開発・投資促進減税や、個人消費を促すための相続税、贈与税の見直し、資産デフレの克服に向けて、土地の取引の活発化を促す土地流通課税の見直しなどが重要であります。これらの税制改革も、総合的なデフレ対策の重要な柱に据えて、早急な取りまとめを図っていくべきであります。また、税制改革に当たっては、先行減税、多年度税収中立と称して、法人に係る減税を先行させ、それを補う財源を所得課税の控除制度の見直しなどによる増収で賄うかのような議論が見受けられますが、賛成できません。所得課税の抜本見直しの議論と先行減税、多年度税収中立の議論は明確に分けて行うべきであると考えます。総理の答弁を求めます。
 昨年のBSE問題発生以来、食品の偽装や虚偽表示、また、残留農薬基準値を超えた輸入野菜や、生命を脅かすダイエット健康食品等々、食品をめぐる相次ぐ不正事件に、国民の食の安全に対する不信は頂点に達しております。また、一連の事件は、我が国の食品安全行政の欠陥や消費者の視点の欠如、さらには、法律の遵守をおろそかにする一部食品業界の体質をも露呈する結果となりました。
 国民の健康と命を守るためには、健康生活の基盤である食の安全と安心を確保する、新たな食品安全保障システムの構築が急務と考えます。食品に対する国民の信頼回復に向けての具体的な取り組みについてお尋ねいたします。
 また、食品の偽装事件と同様、原発のトラブル隠しなどに見られる、企業モラルの低下が招いた一連の不祥事については、特に、人の生命を脅かす企業について、行政指導、監督体制を強化すべきではないでしょうか。加えて、国民の生命や財産にかかわる問題に関して善意の情報提供者が不利益をこうむることのないよう、保護規定の導入についても検討すべきと考えます。総理の御見解をお聞かせください。
 次に、環境問題についてお伺いいたします。
 まず、さきのヨハネスブルク・サミットにおいて提起された国連・持続可能な開発のための教育の十年につき、この十一月に開かれる国連総会へ向けて、提案国である我が国としてどう取り組もうとされるのか、また、NGO等が中心となって国際的な潮流となっております地球憲章につき、その啓発普及をどう認識され、いかに取り組むか、伺いたいのであります。
 さらに、最も緊急な課題である自然との共生につき、政府挙げて推進する体制づくりとして、内閣に仮称自然共生社会推進本部を設置し、総理を本部長に、副総理格の担当大臣を置き、関係諸機関を整理統合するとともに、オールジャパンの体制における環境行政のリーダーシップの明確化と基盤強化を図るべきだということを提案いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 私は、環境問題について重要なことは、ライフスタイルの転換であると考えております。みずから範を示すためにも、公共機関が先頭を切って、まず、全省庁、国会、自治体等へのISO14001の取得を推進すべきではないかと考えますが、総理の見解を承りたいのであります。
 最後に、外交問題についてお伺いいたします。
 国際平和にとって喫緊の課題となっているのが、イラク問題への対応であります。
 米国は、イラクが期限つきの核査察受け入れを表明しない限り、先制攻撃も辞さぬ構えを崩しておりません。
 私たち公明党は、国連憲章に基づき、国連中心の対話による解決を求め、アメリカを中心に取りざたされている軍事的対応という選択肢を直ちにとるべきではないと明確に主張してまいりました。力のみによって押し切ることは報復の連鎖を招く危険があります。今後とも、我が国は、国連と連携を重ね、加盟国とともに、国連査察の実施が速やかに実現できるよう粘り強い対話を重ね、どこまでも平和的な解決を求めるべきだと思います。(拍手)
 一方、戦争、テロ、貧困、難民といった脅威から人間一人一人を守ろうとする人間の安全保障という考え方が、外交の基軸として、今ほど求められているときはありません。今日の状況下で、我が国がなし得ることは、人間の安全保障の役割を担った国際貢献のための人材を育成することであり、それは世界に誇れる人道大国への道でもあります。
 そこで、我が国ができる国際貢献策として、地雷除去、農業技術、環境問題への対応、難民支援等、非軍事分野における国際貢献活動を推進するため、官民共同の人材育成機関である国際平和貢献センターの設置を提案いたします。
 以上、申し上げたことについて、総理並びに関係各大臣の率直かつ大胆な答弁を求めることとし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 太田議員にお答えいたします。
 日朝国交正常化交渉についてでございます。
 二十九日に再開いたします国交正常化交渉においては、米国及び韓国と緊密に連携しつつ、日朝平壌宣言の精神と基本原則に従って北朝鮮側が諸懸案の解決に向け誠実に対応するよう働きかけていく考えであります。
 特に、拉致問題及び核問題を含めた安全保障上の問題について、日本としての立場を明確に主張し、問題の解決に向け最大限の努力を行う考えであります。
 補正予算についてでございます。
 私は、構造改革を進める以外に日本の経済活性化の道はないと確信しております。
 このため、今までの改革路線を確固たるものにするため、半年間で改革を加速することとし、不良債権処理の加速を含む金融システムの安定化策、規制改革、都市再生など構造改革の加速策のほか、雇用や中小企業対策などのセーフティーネット策を含む総合的な対応策を今月末に取りまとめ、デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていくつもりでございます。
 しかしながら、この対応策に伴い、今国会に補正予算を提出したらどうかという意見もございますが、現時点において、私は、今国会に補正予算を提出することは考えておりません。
 中小企業対策についてのお尋ねでございます。
 やる気と能力のある中小企業が破綻する事態を回避するため、金融セーフティーネット対策に万全を期してまいりたいと思います。
 また、我が国経済の活性化のためには、中小企業の新規創業や新事業展開を促進することが重要であり、中小企業の果敢な挑戦を後押ししていきたいと思います。
 雇用対策です。
 緊急地域雇用創出特別交付金の運用については、実際に事業を企画、運営している地方公共団体の意向を考慮しながら、その効果的な実施が図られるよう改善を検討してまいります。
 また、若年者の雇用促進を図るため、インターンシップ等、在学中からの職業意識の啓発や、フリーターなどに対するトライアル雇用、職業訓練の実施等、各般の施策を積極的に講じてまいります。
 構造改革特区において税・財政支援措置等を検討すべきとの御意見でございます。
 構造改革特区は、国から地方へ、官から民へという流れの中で、地方が提案してきたものを取り入れるという考えであります。いわゆる地方の「自助と自律」の精神を尊重して、自主性を持って地方が知恵と工夫の競争による活性化を図るものであって、構造改革特区に対して税・財政上の優遇措置など従来型の財政措置を講じないこととしております。
 税制改革についてのお尋ねです。
 税制については、あるべき税制改革を今検討していただいております。個人所得課税における諸控除の簡素・集約化を含め、法人課税、相続税等、広範にわたる抜本的な改革に取り組みます。改革に当たっては、現下の経済情勢を踏まえまして、一兆円を超える、できる限りの規模を目指した減税を先行させるとともに、財政規律の観点から、多年度税収中立の枠組みのもとで、全体を一括の法律案として次期通常国会に提出すべく検討を進めてまいります。
 新たな食品安全保障システムの構築についてです。
 食品の安全性については、それを科学的に評価する食品安全委員会の内閣への設置、食品に関するリスク管理などを担う関係省の体制の見直し、国民の健康保護を基本とする食品安全基本法の制定及び食品の安全性に係る関連法の改正を次期通常国会で実現させるなど、食品に対する国民の信頼確保に万全を期してまいります。
 企業の不祥事に対する対応です。
 御指摘のように、安全が何よりも大切な分野において不祥事が相次ぎ、国民の信頼を損ねていることは、ゆゆしい事態だと思っております。まずもって、事業者みずからが襟を正し、徹底した自助努力を行うことが重要と考えますが、政府としても、情報の公開を基本に、監視体制の強化など、再発防止と安全確保に向けた仕組みを整備してまいります。
 また、善意の情報提供者の保護については、最近の企業不祥事の多くが善意の情報提供により明らかになったことなどにかんがみ、国民生活審議会において審議を行うこととしており、これを踏まえ、善意の情報提供者の保護のあり方について所要の措置を講じてまいります。
 国連・持続可能な開発のための教育の十年についてのお尋ねでございます。
 ヨハネスブルク・サミットにおいて、持続可能な開発のための教育の十年の採択の検討が合意されたのを受け、現在開会中の国連総会に決議案を提出すべく準備中であります。具体的な活動内容については、NGOの方々や関係国際機関、各国と十分協議していく考えであります。
 地球憲章についてのお尋ねであります。
 地球憲章では、地球環境保全のための行動原則が示されております。政府としては、さまざまな主体の行動を求めたヨハネスブルク・サミットの成果も踏まえ、人々が環境保全のための行動に取り組めるよう、啓発普及、環境教育等の推進に努めてまいります。
 自然共生社会推進本部の設置と環境行政の基盤強化についての御指摘がございました。
 政府の重要課題である自然との共生に向けて、地球温暖化対策や自然環境の保全について関係閣僚参加のもとで方針を決定するなど、政府一丸となった取り組みの推進体制を整備しております。今後とも、こうした体制を最大限活用しつつ、環境行政を強力に推進してまいります。
 公共機関のISO14001の取得についてのお尋ねがございました。
 ISO14001などの環境管理システムは各機関の行動に環境配慮を織り込む上で効果的であり、環境省や一部の自治体では既にISO14001を取得しております。各府省も、環境基本計画に基づき、実効ある環境管理システムの導入を進めてまいります。
 人材育成機関である国際平和貢献センターの設置についてのお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、非軍事分野における国際貢献活動に資する人材の養成、確保は極めて重要と考えます。このような認識を踏まえて、民間とも協力しつつ、一層人材の養成に取り組んでまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
国務大臣(平沼赳夫君) 太田議員にお答えさせていただきます。
 中小企業対策についてでありました。
 現下の厳しい経済状況の中で、やる気と能力のある中小企業に対してセーフティーネット網を構築して、そして、この日本の経済、その活力を維持するということは、御指摘のとおり、大変必要なことでございます。また、経済活性化の原動力にもなります、そして雇用の原動力にもなります新規創業、そして新事業展開、こういったところも後押しをすることが、これは不可欠な政策だと私は思っております。
 セーフティーネット対策について申し上げますと、金融サイド、産業サイドの不良債権処理が進みますと、非常に中小企業は厳しい局面に立たされます。そういう意味で、我々は、従来やっておりますいわゆる中小企業信用保険法、この臨時国会にその改正案を提出させていただいて、そして、セーフティーネット貸し付け、保証、これに万全を期してまいりたいと思います。
 また、御言及のございました売掛金債権の担保保証制度でございますけれども、当初はなかなか進捗が芳しくありませんでしたけれども、おかげさまで、ようやくその保証総額も一千億を超えることになりました。さらに、譲渡禁止の特約解除でございますとか手続の簡素化、このことに鋭意努力いたしまして、ここも伸ばしていきたい、こういうふうに思っております。
 さらに、新規創業そして新事業の活性化、このことは非常に必要なことでございまして、一つは、御指摘のありました産業クラスター計画、これは今、非常に順調に進捗しておりまして、全国十九拠点で既に二百の大学が参画し、四千を超える企業が参画して、そこから新しいベンチャーを含めた企業が誕生しておりますし、特許もどんどん出てきております。
 そういう意味では、御指摘の産学官連携、これを深めて、さらにこのことも私どもは力を入れていかなければならないと思っておりますし、新規創業、そしてさらには、新事業展開に当たりましては、中小企業の挑戦支援をするための法律というものを、関係法律の改正を含めてこの臨時国会に提出をさせていただきたい、このように思っております。
 いずれにいたしましても、中小企業は日本経済の屋台骨を支えております大切な存在ですから、全力を挙げて頑張ってまいりたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 雇用問題についてお尋ねがございました。
 ちょっと声をからしてしまいまして、申しわけありません。
 緊急地域雇用創出特別交付金の運用につきましては、総理からお答えのあったとおりでございますが、現在六カ月ということになっておりますので、もう少しこれは使いやすいようにしていきたいというふうに思っております。今後、地方公共団体の今後の工夫とも相まちまして、できるだけ使いやすいように改善をしていきたいと考えております。
 それから、若年者に対する問題でございますけれども、若年者は失業も非常に大きいのですが、今度は、失業だけではなくて若年者に対する求人もまた大きいわけであります。この求人と求職者をどう結びつけていくかということが非常に大事でございますので、これを一層ひとつ積極的にやっていきたいというふうに思っております。特に、カウンセラー等をここに導入いたしまして、若い人たちの求職のためにひとつ積極的にやりたいと思っておるところでございます。
 以上でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
下村博文君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十二日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
副議長(渡部恒三君) 下村博文君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十八分散会


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