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第7号 平成14年11月7日(木曜日)

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平成十四年十一月七日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  平成十四年十一月七日
    午後一時開議
 第一 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日程第一 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案(内閣提出)及び農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第一、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案、日程第二、中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。経済産業委員長村田吉隆君。
    ―――――――――――――
 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案及び同報告書
 中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔村田吉隆君登壇〕
村田吉隆君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案につきましては、中小企業金融のセーフティーネットの一層の充実を図るため、中小企業信用保険について、
 第一に、金融機関が経営の合理化に伴って金融取引の調整を実施していることにより借り入れが減少している中小企業者や、金融機関により整理回収機構へ貸付債権が譲渡された中小企業者のうち、その事業の再生が可能と認められるものをいわゆるセーフティーネット保証の対象に加えること、
 第二に、法的再建手続において再生計画が認可された中小企業者等に対する保証制度を創設すること
等の措置を講じようとするものであります。
 次に、中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案につきましては、創業、新事業など新たな事業活動に挑戦する中小企業等を積極的に支援するため、
 第一に、中小企業等協同組合法を改正し、企業組合の組合員要件、従事比率及び組合員比率要件を緩和すること、
 第二に、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律を改正し、有限責任組合の投資手法及び投資対象を拡大すること、
 第三に、新事業創出促進法を改正し、株式会社及び有限会社の最低資本金等の制限を受けない会社の設立を認めること
等の措置を講じようとするものであります。
 両案は、去る十月三十日本委員会に付託され、十一月一日平沼経済産業大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取いたしました。昨日、両案について質疑を行い、それぞれ採決を行った結果、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。
 なお、両案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。
 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案(内閣提出)及び農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案及び農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣竹中平蔵君。
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) ただいま議題となりました、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 我が国経済において、金融機関が担う資金決済の安定確保は極めて重要であります。このため、金融機関の破綻時に全額保護される決済用預金を設けるとともに、仕掛かり中の決済の結了のための措置等を講ずることにより、我が国の金融機能の一層の安定化を図ることとし、あわせて、流動性預金の全額保護を平成十七年三月末まで継続するため、この法律案を提出することとした次第であります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、為替取引等に用いられ、かつ、要求払い・無利息である預金については、決済用預金として、金融機関の破綻時にその全額を保護することとしております。
 第二に、金融機関が破綻前に依頼を受けた振り込み等の仕掛かり中の決済の結了を可能とするため、仕掛かり中の決済債務を全額保護することとしております。また、預金保険機構が、破綻金融機関に対して決済債務の弁済のための資金を貸し付けることを可能とし、あわせて、決済債務の弁済や相殺を可能としております。
 なお、流動性預金は、平成十七年三月末まで全額保護することとしております。
 次に、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案につきまして御説明申し上げます。
 我が国の金融機関等においては、収益性の向上に真摯に取り組み、経営基盤の強化を図ることが求められておりますが、合併等の組織再編成はそのための有力な手段であると考えられます。
 このような観点から、金融機関等の組織再編成を円滑化するための特別措置を講ずることにより、金融機関等の経営基盤の強化を期し、もって我が国の経済の活性化に資することを目的として、この法律案を提出することとした次第であります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、当分の間の措置として、合併等の組織再編成に伴い必要となる総会手続等を簡素化するための特例を設けることとしております。
 第二に、経営基盤の強化に関する計画を平成二十年三月末までに提出し、主務大臣の認定を受けた金融機関等について、根抵当権の譲渡に係る特例等の措置を講ずることとしております。
 第三に、組織再編成を行うことにより低下した自己資本比率を回復するため、預金保険機構が整理回収機構に委託して、優先株式の引き受け等や、協同組織中央金融機関が引き受けた優先出資等に係る信託受益権等の買い取りを行う措置を講ずることとしております。
 第四に、当分の間の措置として、合併等を行った金融機関等の預金者等に対し、合併等の後一年間に限り、保険基準額の特例を設けることとしております。
 以上、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。
 何とぞ御審議のほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 農林水産大臣大島理森君。
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
国務大臣(大島理森君) 農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨につきまして、御説明申し上げます。
 農漁協系統の信用事業のセーフティーネットにつきましては、従来から、他の金融機関のセーフティーネットである預金保険制度と同様の農水産業協同組合貯金保険制度を設けているところであります。
 今後とも、農漁協系統の信用事業が我が国金融システムの一員として適切な運営を行っていくためには、そのセーフティーネットについて、他の金融機関と同様の整備を図ることが必要であります。
 このため、預金保険制度の見直しに合わせて、農水産業協同組合貯金保険制度について、これと同様の見直しを行うこととし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容を御説明申し上げます。
 第一に、為替取引等に用いられ、かつ、要求払い・無利息である貯金については、決済用貯金として、農水産業協同組合の破綻時にその全額を保護することとしております。
 第二に、農水産業協同組合が破綻前に依頼を受けた振り込み等の仕掛かり中の決済の結了を可能とするため、仕掛かり中の決済債務を全額保護することとしております。また、農水産業協同組合貯金保険機構が、経営困難農水産業協同組合に対して決済債務の弁済のための資金を貸し付けることを可能とし、あわせて、決済債務の弁済や相殺を可能としております。
 なお、流動性貯金は、平成十七年三月末まで全額保護することとしております。
 以上、農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案(内閣提出)及び農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山本明彦君。
    〔山本明彦君登壇〕
山本明彦君 自由民主党の山本明彦です。
 私は、自由民主党、公明党、保守党、与党三党を代表いたしまして、ただいま議題となっております、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案及び農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。(拍手)
 十月三十日、金融再生プログラムが発表されました。この中で、主要行の抱える不良債権問題を平成十六年度中には終了させ、金融機能の正常化を図ろうとされておられるわけでありますが、銀行の不良債権処理状況は悪くなるばかりであります。
 直近の三年間だけ見ましても、全国銀行ベースで二十二兆七千億円の不良債権処分損が計上されておりますが、それでもなお、この間にリスク管理債権残高は十二兆四千億円増加しております。主要行の破綻懸念先以下の債権状況を見ましても、この一年間で六兆一千億円をオフバランス化したものの、新たに九兆九千億円も発生しているという状況であります。
 金融再生プログラムが発表された後、ドイツ銀行がレポートを出しました。「不良債権を処理するだけではデフレは解消しない、並行して確固たる需要刺激策が不可欠」とありました。
 不良債権処理に力を入れるより、新たな不良債権が発生しない方に力を入れるべきだと思いますが、この点について総理の御所見をお伺いいたします。
 続いて、竹中金融担当大臣にお伺いいたします。
 ただいま申し上げたような現状の中、果たして、予定どおり二年後に不良債権問題を終了させることができるでしょうか。不良債権問題終了とはどのような状態をいうのかも、あわせてお答えいただきたいと思います。
 法案の内容についてお伺いいたします。
 預金保険法等の一部改正についてであります。
 本年一月末から四月末までの間、定期性預金は三十一兆五千億円減少、要求払い預金は五十三兆一千億円増加いたしました。これだけ預金者がペイオフ解禁に対し敏感に反応したということであります。ということは、預金者が現在の金融システムに大変不安を抱いているという証拠でもあります。
 こうした状況下でペイオフ解禁を予定どおり実施することは金融不安を一層深刻化するものであり、不良債権問題が終結するまではペイオフ解禁を延期するという今回の法改正は大いに評価するものであります。
 しかし、総理は、これまで、ペイオフ解禁こそ構造改革であると主張されてこられました。今回の解禁二年延期は構造改革の後退ではないかとの疑問に対しどのようにお答えをされるのか、お伺いいたします。
 ペイオフは、元来、あくまでも少額預金者保護のために創設された制度で、一九七一年、まず百万円の保証から始まったものであり、それが一九九六年の金融危機により、全額を保護するとなったものであります。それが今回の法改正により、決済機能の安定確保のために、決済用預金という新しい性格の預金を設けることとされておりますが、突然であり、しかも、時限的なものでなく恒久的なものとして考えられた決済用預金の意義は何か、そして、預金者が、より安全を求めて、他の預金から決済用預金に預金をシフトしてしまうというモラルハザードを起こす心配はないか、竹中金融担当大臣にお伺いいたします。
 次に、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案についてお伺いいたします。
 大手銀行の合併は進みました。これからは、地域の金融機関が体質を強化することにより、あらゆる金融機関が預金者にとって安心のできる金融システムを一刻も早く構築することが必要であります。
 今回の法案は、特に地域の金融機関を中心として、体質強化のために合併をしたいという場合は、円滑に合併できるようにお手伝いをしようという趣旨の法案であり、該当する金融機関には大変意義のある法案であると思います。
 しかし、安心できる金融システムの構築は、金融機関のために行うわけではありません。利用者にとって安心できるものでなくてはなりません。合併により二つの金融機関が一つになって、利用者、特に借り手にとって不利益になるおそれはないのでしょうか。例えば、それぞれの金融機関から一千万円ずつの借り入れがある中小企業に、合併後も果たして二千万円貸してくれるのか。
 ユーザーにとっては、合併前と条件が同じでもともとであります。合併前より条件がよくなって初めてよい合併と言えると思いますが、竹中金融担当大臣は、今回の法案により、どのような地域金融機関を目指し、借り手の中小企業に対しどのように配慮を考えておられるのか、お伺いいたします。
 次に、農林水産大臣にお伺いします。
 農水産業協同組合貯金保険制度は、営利事業をも行う農協の貯金者を保護する制度であり、一般金融機関の預金者を保護する預金保険制度とは別の制度であると認識しておりますが、二年後のペイオフ解禁に向け、どのように体制を整備されているのか、農林水産大臣の考えをお聞かせいただきたいと思います。
 大手行と地域金融機関がそれぞれの役割を全うする、その役割を全うするための基盤整備を築き上げることによって、利用者が安心して金融機関を利用できる。金融システムが安定しさえすれば、ペイオフを解禁しても何の問題もなくなるわけであります。そのためにも、新たな不良債権をこれ以上つくらないようにすることが最も大切なことだと思います。
 このたびの金融三法が我が国の金融システムの再構築に寄与し、一刻も早くデフレからの脱却が図られることを期待して、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山本議員にお答えいたします。
 デフレ解消のため、需要刺激策など、新たな不良債権が発生しない方に力を入れるべきではないかとのお尋ねであります。
 不良債権処理の加速は、金融機関の収益力の改善や貸出先企業の経営資源の有効利用などを通じて、新たな成長分野への資金や資源の移動を促すことにつながるものであり、他の分野の改革とあわせて実施することにより、デフレの克服、日本経済の再生に資するものと認識しております。
 今般取りまとめました、改革加速のための総合対応策におきましては、不良債権処理の加速のみならず、経済社会の活性化のための税制改革、さらには証券・不動産市場の活性化、民間投資・消費を誘発する都市再生、潜在需要を喚起する規制改革など、構造改革の加速策を講ずることとしておりまして、あわせて、雇用・中小企業のセーフティーネット策にも万全を期すこととしております。
 今後、これらの施策を早急に具体化し、民間需要主導の持続的な経済成長を実現してまいりたいと思います。
 ペイオフについてでございます。
 このペイオフは、不良債権処理を進める際、同時に、金融システムの安定と中小企業金融等の円滑化に十分配意することが必要であります。そういうような観点から、ペイオフについては十七年四月から実施することとしたものであります。
 現下の最重要課題である不良債権処理を加速し、あわせて各種の改革を進めることにより、構造改革への取り組みは全体として強化されることになると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 山本議員にお答えいたします。
 不良債権問題の終結についてお尋ねがありました。
 今回の金融再生プログラムは、平成十六年度に不良債権問題を終結させることを目指して、三つの点、新しい金融システムの枠組み、新しい企業再生の枠組み、そして、新しい金融行政の枠組みを構築し、包括的な政策強化を行い、もって不良債権処理の加速の強力な推進を図ることとしております。
 特に、主要行の不良債権問題の解決に向けて、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化などについて政策強化を行い、主要行の不良債権比率を平成十六年度までに現状の半分程度に低下させ、問題の正常化を図るとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指すこととしております。
 このプログラムの施策を速やかに実施に移すことにより、世界から評価される金融市場をつくることが不良債権問題の終結につながるというふうに考えております。
 決済用預金の意義及びモラルハザードについてお尋ねがございました。
 各経済主体が経済取引を行う上で、決済を確実に完了することは極めて重要であることを踏まえますと、決済のためのセーフティーネットとして決済用預金の全額保護の制度を設け、現金以外に安全確実な決済手段を確保することは国民経済にとって有意義であるというふうに考えております。
 また、決済用預金は、その要件として利息が付されていないこととしております。このため、預金者にとっては、真に決済に必要な資金以外を決済用預金に預け入れることに対する抑制が働くこととなり、御指摘のモラルハザードを抑える仕組みになっているというふうに考えております。
 組織再編成促進法案に関し、地域金融機関の将来像、借り手の中小企業に対する配慮についてのお尋ねがございました。
 地域金融機関の将来像としましては、引き続き、地域に根差して、きめ細やかに地域住民、企業のニーズに対応することによって、リレーションシップバンキングの考え方をベースに経営基盤の強化を図っていくことが核になると考えられますが、今回の法案においては、そのための有力な選択肢の一つである合併等の組織再編成の円滑化のための支援措置を盛り込んでおります。
 また、借り手中小企業の保護については、組織再編成による経営基盤の強化が金融機関の融資対応力の強化に資するものと考えられることに加えまして、本法案においても、政策支援の前提として、金融機関等が提出する経営基盤強化計画の認定に当たって金融の円滑が阻害されないことを要件とするなどの配慮を行っているところでございます。(拍手)
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
国務大臣(大島理森君) 山本議員の御質問にお答えを申し上げます。
 農協系統のペイオフ解禁に向けた体制整備についてのお尋ねであります。
 昨年の農協改革法により、問題農協の早期発見、早期是正の観点から、農林中央金庫が中心となりまして、自主ルールを作成し、これに基づいて農協等を指導するという新たな農協金融システムが整備されております。
 また、本年四月のペイオフの部分解禁に向けまして、行政と農協系統が連携して、自己資本比率四%未満の農協の解消を行ったところでございます。
 こうしたことの結果として、農協貯金は対前年同期比で一%程度の伸びを示しており、農協金融は全体として安定した状態にあるものと考えておりますが、今後も、その健全性を確保できるよう、指導監督を一層強化してまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 五十嵐文彦君。
    〔五十嵐文彦君登壇〕
五十嵐文彦君 民主党・無所属クラブの五十嵐文彦です。
 ただいま議題となりました三議案について、小泉総理及び関係各大臣に質問をいたします。(拍手)
 小泉総理、あなたは、自民党をぶっつぶすと宣言して、旧来型自民党政治家とは違う、変人宰相として国民の喝采を浴びました。しかし、今やあなたは、変節宰相と言われても仕方のないような状況になっているのではないでしょうか。靖国参拝、一内閣一閣僚、ペイオフ解禁、道路特定財源見直し、国債発行枠三十兆円など、あなたは、次々と公約を事実上放棄しているのではありませんか。
 特に、ペイオフ解禁については、あなたは、再三にわたって、予定どおり解除すると言い続けました。
小泉構造改革の重要な柱のはずであります。それを簡単に翻して、しかも、金融システムは健全であるとかたくなに言い続けてきた柳澤金融担当大臣、この方を更迭いたしまして、その柳澤大臣に異を唱えてきた竹中経済財政政策担当大臣を後任の金融担当大臣に任命した。このことは、これまでの金融行政が大失政であった、失敗であったということをみずから認めたに等しいものではありませんか。
 さらに、あなたのリーダーシップのなさから、新たな経済政策を策定するにも、迷走また迷走のジグザグコースを繰り返してきました。先月三十日に発表されました、改革加速のための総合対応策及び金融再生プログラムは、発表がずるずると先送りされただけではなく、至るところに、これから検討します、要望するなどと書いてある中途半端な内容であります。閣議決定も閣議了解もされていないわけであります。
 これらのペーパーは、一体どういう位置づけなのでしょうか。金融再生プログラムとは、他のお役所に対する金融庁の要望書、陳情書なのでしょうか。なぜ、閣議決定をして、内閣を挙げて正式な方針として取り組むということをされないのでしょうか。
 しかも、金融再生プログラムの策定に当たっては、粉飾まがいの自己資本のかさ上げを是正し、銀行経営者の責任を問うという至極当たり前の措置を講じようとした、もともとあったのかどうか、竹中案、報道されていますけれども、それに対して、かつて自民党に毎年巨額の献金をしていた大手銀行の経営者が、それなら貸しはがしをしてやるとばかりに開き直り、与党と一緒になってこの原案をつぶしたとされております。政官業のあり方が問題となっている昨今、白昼堂々とこのような行為が行われたことは、重大な問題であります。
 私たちは、この間ずっと、金融システムは危機的な状況にある、金融システムが健全だというのは国家的な粉飾であると訴えてきました。しかし、総理は、全く取り合わず、金融危機なんてないじゃないか、こううそぶいてきたわけであります。
 このような国家的な粉飾が続いたことにより、金融システムの健全化は先送りされ、中小企業は、今なお、厳しい貸しはがしに苦しめられているわけであります。その結果、約七万社の企業が、大手銀行に総額七兆円を超える資本注入を実施し、柳澤前大臣が不良債権処理は完了したと宣言した九九年三月以降、倒産に追い込まれているのです。
 その一方で、大企業は、金利減免や追い貸し、さらには債務免除で救済され、不当な価格競争で中小企業を苦しめているのです。そして、大手銀行の経営者は、そのようなことをしながらも、全く責任をとろうともせず、いまだに高額な退職金を受け取っています。
 総理、本当にこんなことでいいのですか。すべてあなたの責任だということを自覚されているのでしょうか。
 次に、金融再生プログラム及び本法律案の具体的内容について、竹中大臣にお尋ねをいたします。
 金融再生プログラムには、「金融行政が護るべき対象は、預金者、投資家及び借り手の企業や個人など国民であることを確認する。」ということがわざわざ書かれています。このようなことは全く当たり前のことで、わざわざ確認しなければならないということは、これまでの金融行政が実はそうではなかったということを示すものではないでしょうか。もっと言えば、銀行経営者を守るためのものであったということを今反省しているということなのでしょうか。であれば、大手銀行経営者の圧力に負けたこと自体、この原則に反することになりますが、いかがでしょうか。
 銀行の資産査定について、これまでも、その甘さが多くの識者から指摘されてきました。だからこそ、竹中大臣も資産査定の厳格化を打ち出したのだと思います。金融再生プログラムには、主要行の自己査定と金融庁の検査結果の格差を公表すると書いてありますが、ことし三月期の決算ベースではどれだけの格差があったのでしょうか。かつて、柳澤前大臣は、格差は二五%程度だと言ったように記憶しておりますけれども、どうでしょうか。
 与党幹部や大手銀行の経営者が大反対した項目の一つが、繰り延べ税金資産の見直しでした。私たちが以前からずっと主張していますように、繰り延べ税金資産は過大に計上されております。御存じのとおり、収益が見込めなければ繰り延べ税金資産というのは認められません。今、銀行は、収益が改善している状況でありません。なのに、過去の実績を何倍も上回るような繰り延べ税金資産を見込んでいるのは、明らかにおかしいのです。正味の自己資本をほとんどなくして、一方で過大に繰り延べ税金資産を計上している、そのこと自体が、銀行が貸しはがしに走る根本原因に実はなっているのです。
 竹中大臣は、これは会計ルールの変更などではない、きちんと監査をすれば、この粉飾まがいの繰り延べ税金資産は是正されなければならない、これは正しい措置なのだと言って銀行経営者に反論し、そのように正しい措置をとらなければならなかったはずであります。骨抜きにしようとする与党幹部や大手銀行経営者の反対を、なぜ、あなたは押し切らなかったのですか。
 現行の預金保険法では、金融危機の際には、金融危機対応会議を開催し、必要とあらば銀行への資本注入をできるということになっております。しかし、金融再生プログラムには、「新しい公的資金制度の創設」という項目が盛り込まれ、「必要な場合は法的措置を講ずる。」と明記されています。
 なぜ、新法が必要なのでしょうか。危機を認定して、今もある現行法でやればいいわけであります。現行法では不足だというのでしょうか。政府が金融危機を認定したくないから、金融危機対応会議を開かなくても資本注入ができるように新法をつくった、こそくなやり方だと私は考えますが、お答え願いたいと思います。
 さらに、銀行経営者の責任追及について、竹中PT案にはもっと厳しいことが具体的に書いてあったはずですが、なぜ、あいまいな表現に変わったのでしょうか。貸しはがしをするぞと言わんばかりの大手銀行経営者のけんまくに恐れをなしたのですか。金融行政の守るべき対象は、国民ではなかったのですか。
 九九年三月の資本注入の条件とされた中小企業向け貸し出し目標に対し、UFJホールディングスは二兆五千億円、あさひ銀行は一兆四千億円も下回り、金融庁から業務改善命令を受けております。しかも、退任した役員には、平均して四、五千万円の退職慰労金まで支払われているのです。こんなことを許すのですか。
 不良債権の間接償却を完了し、金融システムを健全化した後は、不良債権の直接償却、つまり、最終処理が残された課題となります。私たちは、金融機関から金利減免や追い貸し、さらには債務免除で救済され、不当な価格競争を仕掛けてデフレを加速させている大企業、あるいは下請ばかりを泣かせている大企業と、それによって苦しめられている中小企業とを明確に区別し、中小企業の直接償却は急ぐべきではないと考えています。これは単なる同情論ではなく、中小企業は小回りがきいて再生しやすい、そうした十分な経済的な合理性があるからなのであります。大臣の見解を伺います。
 金融機関組織再編特措法案では、健全な金融機関同士の合併に際し、合併により低下した自己資本比率を回復するという名目で資本注入を実施することが可能となっております。しかし、そもそも、なぜ、健全な金融機関同士の合併に資本注入が必要なのでしょうか。九九年三月の資本注入も、健全な銀行への資本注入という名目で実施された、そのために、これが国家的なフィクションとなったということは明らかであります。今度はそうならないという保証があるのでしょうか、お答え願います。
 四年前、時の小渕総理は私たちの金融再生法案を丸のみし、日本発の世界金融恐慌を防ぐことができました。今、私たちには金融再生ファイナルプランがあり、関連法案も継続審議となっております。
 すなわち、金融機関の本当の姿を明らかにして、存続不可能な銀行は金融再生法で一時国有化、存続可能な金融機関には早期健全化法で思い切った金額の資本注入を実行し、速やかに金融システムを健全化する。もちろん、経営者の責任は厳しく問います。また、いわゆる金融アセスメント法を制定し、情報公開を通して金融機関同士の健全な競争を促し、金融機関に一方的に有利な取引慣行を改めさせる。中小企業への不当な貸しはがしも解消するはずです。
 総理、金融危機を乗り切るためには、私たちの金融再生ファイナルプランを丸のみするしかありません。そのお考えはおありになるでしょうか。
 次に、塩川財務大臣に、二点お尋ねいたします。
 今年度税収は、前年同月比約二割の大幅マイナスで推移しております。このままでは、巨額の歳入欠陥が発生することは確実であります。塩川大臣、歳入欠陥は何兆円になるのでしょうか。また、これを穴埋めする財源はあるのでしょうか。結局は、赤字国債を増発するしかないのではありませんか。以上、お答え願います。
 我が国の国際競争力が低下した背景には、円レートが我が国経済の実力以上に高いという事実があります。例えば、世界銀行の分析では、購買力平価で見た円の対中国人民元レートは、実際のレートより六倍も高いという結果が出ています。我が国は、明らかに通貨外交に失敗しているわけであります。
 為替レートはマーケットが決めるものではありますが、マーケットメカニズムが働いていない仕組みがあるのであれば、これを改めるというのは、むしろ当然のことであります。その一つが、郵貯、簡保、年金等の公的資金の一部を対外証券投資等に振り向けるということです。我が国が稼いだお金の大部分は、これら公的部門が吸収しています。そして、その資金は、多くが国債のファイナンスに向けられ、ほとんどが国内に閉じ込められたままになっております。この構造を変えれば、実力以上の円高は自然に是正されるはずではないでしょうか。大臣にそのような考えはおありになるかどうかを伺います。
 さて、去る十月二十四日の衆議院予算委員会において、私は、大島農水大臣に対し、宮内前秘書官の住宅購入の原資についてお尋ねをいたしました。私の質問に対し、大島大臣は、「六百九十万円強、出所がわかりません」と答弁しておられます。その後、この出所不明の六百九十万円について調査したのかどうか伺いたい。調査を約束したわけでありますから。
 さらに、前秘書官が七千万円余りのローンを増額返済している事実があるかどうかもお尋ねいたします。
 いずれにせよ、大臣の説明は説得力がなく、ますます疑惑は深まっております。そうである以上、大島大臣は、みずから責任をとり、潔く辞任をすべきであります。そのような意思はおありになりませんでしょうか。
 任命権者である総理のお考えもお伺いいたします。
 私どもに金融政策をお任せいただければ、短期間のうちに日本を見違えるほどよみがえらせてみせます。よろしくお願いします。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 五十嵐議員にお答えいたします。
 竹中大臣を金融担当大臣に任命したことで金融行政の失敗を認めたことになるのではないかとのお尋ねでございます。
 小泉内閣は、これまでも、不良債権処理及び金融システムの安定を重要な政策課題として取り組んできたところでありまして、柳澤前大臣には金融危機の回避に大きな成果を上げていただいたと思っております。
 私は、内閣改造の際に、これまでの経験と成果を踏まえて、改革なくして成長なしとの路線を確固たる軌道に乗せていくため、日本経済を取り巻く不確実性を除去し、政府、日銀一体となってデフレ克服に取り組み、平成十六年度には不良債権問題を終結させるとの基本方針を示したところでありまして、この方針に沿って構造改革を強化していくため、竹中大臣には、経済財政政策担当大臣として、マクロ経済とともに、金融担当大臣としても、金融問題を総合的、一括的に担当してもらうことが適切と考えたところであります。
 今般、審議をお願いしている法案におきましては、ペイオフについて、不良債権問題を終結した後の平成十七年度に実施することとしておりますが、これも不良債権処理の加速化という構造改革を強化するものであり、基本方針は全く変更しておりません。
 改革加速のための対応策及び金融再生プログラムの位置づけについてのお尋ねであります。
 改革加速のための総合対応策は、最近における金融経済情勢の不確実性の高まりを踏まえ、金融及び産業の早期再生を図るための取り組みを強化することなどを目的として、各関係大臣がそれぞれ所管する分野における施策についての検討の成果を、経済財政諮問会議等での議論を踏まえ、政府として取りまとめたものであります。
 また、金融再生プログラムは、主要行の不良債権問題の解決を通じた経済再生のための方策を金融庁において取りまとめたものであり、総合対応策の一部として位置づけられるものであります。
 なお、総合対応策は、既に閣議決定された経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二を踏まえつつ、日本経済の再生に向けて構造改革を加速させるための政策強化を行うものであり、新たに閣議決定を要するものとは考えておりません。
 銀行の取引先への対応、経営者の責任についてでございます。
 銀行の取引先への対応については、基本的には当事者間で判断されるべきものですが、政府としても、不良債権処理の加速策とあわせ、金融機関による不当な貸しはがしなどを防止するためのモニタリング体制の強化や、やる気と能力のある中小企業者への資金供給の円滑化のためのセーフティーネット貸付・保証の拡充などの中小企業対策を実施しているところであります。
 また、資本増強を行った大手行においては、経営健全化計画に役員退職金の抑制を織り込んでいるところであり、その水準については、今後とも適切に指導してまいります。
 民主党が提案している金融再生ファイナルプランについてでございます。
 金融再生ファイナルプランでは、金融再生法と早期健全化法の復活を提案しておりますが、これらの法律に盛り込まれていた時限的な破綻処理等の制度については、改正預金保険法において恒久的措置として定められており、これら二法の復活の必要はないと考えております。
 また、金融機関の融資業務等については、各金融機関の自主的な経営判断に基づき行われるものであり、民主党提案の金融アセスメント法案のように、特定の項目に基づいて政府が各金融機関の活動を評価すること等については慎重であるべきと考えております。
 金融システムと経済の安定を確保するためには、必要に応じて大胆かつ柔軟な措置を講じてまいります。
 大島大臣についてでございます。
 大島大臣につきましては、農林水産大臣としての職務に全力を尽くすとともに、今までの疑惑に対する事実関係を明らかにし、職務に精励するように指示してあります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 五十嵐議員から、七点質問をいただきました。
 金融再生プログラムにおける金融行政が守るべき対象に関する記述についてのお尋ねでございます。
 金融庁としましては、これまでも一貫して、預金者、投資家、借り手の保護という観点から行政を取り仕切ってきた次第でございます。
 金融再生プログラムには議員御指摘のような記述がありますが、これは、不良債権処理等の金融システム改革を加速するに当たって、同改革に伴う負担が、預金者を初めとする個人や、個人に準ずる借り手中小企業に過度に転嫁されることがないよう、あくまで、従来からの金融行政における基本スタンスを改めて確認したものであるという点を御理解いただきたいと思います。
 主要行の自己査定と金融庁の検査結果の格差公表についてのお尋ねがございました。
 主要行の自己査定と検査結果の格差につきましては、対象金融機関を風評リスクにさらすことのないように留意しながら、公表方法の確定や集計作業を行った上で、できるだけ早く公表することとしております。
 検査の実施に当たっては、それぞれ自己査定の正確性の検証を行う対象となる決算期が各行で異なるため、一律に今年三月期における格差を申し上げることは困難であります。
 いずれにしましても、主要行に対する通年・専担検査の中で、引き続き、厳格な資産査定の確保に努めてまいりたいと思います。
 繰り延べ税金資産の見直しについてのお尋ねがございました。
 今般の再生プログラムは、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を図るため、主要行の資産査定の厳格化、自己資本充実、ガバナンス強化等の包括的な政策強化によって不良債権処理を加速し、平成十六年度にこの問題を終結させるということを目指しております。
 このプログラムは、プロジェクトチーム、与党、金融界等の各方面の方々等の意見を踏まえて取りまとめたものであります。
 この中で、繰り延べ税金資産については、会計指針の趣旨にのっとって資産性を厳格に評価するとともに、外部監査人による厳正な監査、厳格な検査を実施する等、自己資本への算入の適正化を図ることとしています。さらに、自己資本を強化するための税制改正を要望するとともに、算入上限についても速やかに検討することにしております。
 金融再生プログラムの中の、新しい公的資金制度の創設についてお尋ねがございました。
 周知のように、現行法では、この注入の措置が講ぜられなければ極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認められるとき、金融危機対応会議の議を経た上で資本注入の必要性の認定を行うことができるというふうにされています。
 このような現行法の規定を踏まえつつ、金融システムの安定に万全を期し、不良債権問題を終結させるため、迅速に公的資金を投入することを可能とする新たな制度の創設が必要かどうかという点についても検討していきたいというふうに考えているところでございます。
 金融再生プログラムにおける銀行経営者の責任追及及び役員の退職慰労金についてのお尋ねがありました。
 今般の金融再生プログラムは、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を図るため、主要行の資産査定の厳格化、自己資本充実、ガバナンス強化等の包括的な政策強化によりこの不良債権の処理を加速しまして、特別支援を受けることになった金融機関を代表する経営者の責任の明確化についてもはっきりと盛り込んだところであります。
 このプログラムは、プロジェクトチーム、与党、金融界等、各方面の意見を取りまとめたものであり、あいまいな表現に変わったとの御指摘は当たらないというふうに思っております。
 また、資本増強を行った金融機関は、経営健全化計画において、平均役員退職慰労金等について記載し、決算期ごとにその履行状況について公表するものとされておりまして、パブリックプレッシャーによる金融機関の自己規正が求められていますが、平成十四年三月期の経営健全化計画の履行状況報告によれば、大手行の平均役員退職慰労金は各行とも計画を達成しているところであります。
 いずれにしても、公的資本増強行の役員退職慰労金の水準については、今後とも、適切に指導してまいるつもりでございます。
 中小企業に対する不良債権処理についてお尋ねがありました。
 直接償却等による不良債権の最終処理は、銀行の経営の健全化、非効率な企業、部門の効率化を通じて、我が国経済の再生に資するものと考えておりますが、一方で、御指摘のように、経済の基盤を支える中小企業への円滑な金融の確保が極めて重要であり、特段の配慮を行う必要があると考えます。
 このため、不良債権処理の加速策について、雇用対策、中小企業対策等とあわせて、今般、総合的な対策として取りまとめたところであり、これらの取り組みを実施することによりまして、不良債権問題の正常化を図るとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指してまいりたいというふうに思います。
 金融機関組織再編特措法案における資本増強についてお尋ねがございました。
 金融機関に対するヒアリングを通じて、合併等の組織再編成に伴い自己資本比率が低下することが見込まれるような場合には、健全な金融機関同士であっても合併等をちゅうちょする場合もあり得ると聞いており、また、自己資本比率低下に伴う融資対応力の低下も懸念されるところであります。
 そこで、本法案においては、合併等への障壁を除去するとの観点から、合併等による自己資本比率の低下分を回復するために必要な限度において、預金保険機構が資本増強の措置を講ずることができるとしております。
 資本増強を行う場合には、主務大臣は、金融機関から提出された経営基盤強化に関する計画を、収益性が相当程度向上する等の認定要件に即して審査することとなっており、こうした計画の履行を通じて金融機関の経営基盤の強化が図られることになるというふうに考えております。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) 私に対するお尋ねは二つあったと思っております。
 一つは、税収の問題についてでございます。
 前年に比べて二〇%の減収だとお話しでございますけれども、九月末現在で精査いたしましたら、一六%の減収になってきておるということでございまして、この実態を正確につかまえまして、現在、収入に対する徴収について一段の努力をしておるところでございまして、予定どおり確保いたしたいと思っております。
 ついては、十四年度の税収見込みの不足をどうして補うのかということでございますけれども、十四年度税収につきましては、土台となる十三年度の見積もりでございますけれども、これが、補正後におきます決算等を見ました場合に、一兆七千億円という大きい税収不足がございました。これをベースにして十四年度の予算を編成しておりますので、相当厳しい状況にあるということは事実でございまして、なお、この対策につきましては、企業収益等を含む経済動向を慎重に見守りながらその対策を考えていきたいと思っておるところでございます。
 なお、為替レートについてお尋ねがございました。
 為替レートにつきましては、御指摘のように、これはマーケットが決めるものでございますので、あえて自動的に、操作すべきものではないと心得ておりますし、また、ファンダメンタルズを正確に反映するものでございますので、あえて政府の手においてこれを操作することは慎むべきであると思っております。
 お尋ねの、郵便貯金とか簡保とか年金とかいうその資金を、これを運用したらどうだろうということでございますけれども、これらの資金につきましては、それぞれ審議会で決定されておりますので、政府の指図によってこれを為替の関係の資金に使うということは禁じられておるところでございますし、また、こういう資金は、国民的な貴重な資金でございますから、安全な運用が絶対的な命題となっておりますので、リスクの多い為替等に対する運用は極力避けるべきであると思っておりまして、現在はそういうことを考えておらないというところでございます。(拍手)
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
国務大臣(大島理森君) 五十嵐議員にお答えいたしますが、三点あったと思います。
 第一点は、十月二十四日の予算委員会における答弁のうち、前秘書官の自宅購入資金のうち六百九十万の不明についてのお尋ねでありました。
 この点につきまして、御指摘もありましたので、厳しくさらに調査を命じましたが、その結果、新たに銀行口座から約三百六十万の出金記録を確認できたとの報告を受けており、その資料につきましては予算委員長のもとにお届けいたしております。
 なお、引き続き、残りの出金記録を調査するよう厳しく命じております。
 二十四日の予算委員会において五十嵐委員、また十月三十日においては筒井委員からこの点に関して御質問、御指摘がありました、つまり、繰り上げ償還があったのかという御指摘でございました。
 平成十三年一月二十九日、一千万の繰り上げ償還を行ったとの報告を受けましたが、その原資につきましても予算委員長に報告資料を提出しております。
 私の責務は、今御指摘をいただいたこと、また御質問があったことに対して厳しく本人から問いただし、そして、そのことに対してお答えすることにあると思います。私自身、政治生活に入って以来の生き方を振り返りながら、なお、みずからを律して職務に専念することが私の責務と考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 樋高剛君。
    〔樋高剛君登壇〕
樋高剛君 自由党の樋高剛でございます。
 私は、自由党を代表し、ただいま議題となりました法案を含め、小泉総理並びに竹中金融・経済財政担当大臣に質問いたします。(拍手)
 まず、さきに発表された、改革加速のための総合対応策と不良債権処理加速のための金融再生プログラムについてお聞きいたします。
 経済は生き物だから、大胆かつ柔軟にと総理は言いますが、要は、小泉総理御自身が日本の経済社会のあるべき姿、ビジョンを持っていないために、言葉だけを並べ、経済政策の支離滅裂ぶりをごまかしているだけではありませんか。
 小泉総理就任から一年半がたち、国民のだれも実感しない景気底入れを政府が堂々と宣言してから半年がたちます。一方で、株価は続落、東証一部上場の株式の時価総額は百三十兆円以上が消えてしまっています。市場は、既に、小泉総理の経済政策が失敗であるという評価を突きつけているのであります。
 総理は、現在の経済情勢の現状をどのように認識しておられるのでしょうか。景気底入れ宣言をしている政府ですが、国民の皆さんからは先行き不安の悲鳴が私たちには聞こえるばかりです。それでも、景気は悪くない、よい方向に向かっているとお考えなのでしょうか。
 実際、この対策が発表されても、株価は全く反応することはありませんでした。このプランでは景気の浮揚は見込めないばかりか、経済失政の上塗りで、市場の動向も思考停止に陥らせているのです。
 それは、この対策の中身を見れば明らかです。現状施策の追認でしかなく、税制改革は具体性もなく、相変わらず、先送りの状態であります。雇用対策も真新しいものはなく、雇用保険制度の見直しという規定も、その実は、雇用保険料の引き上げを暗示するだけであります。
 この総合対応策、金融再生プログラムは、今の経済状況をどのように立て直すのでしょうか。これによって景気の下支えに即効的な効果を与えられると本気でお考えなのでしょうか。経済認識と総合対応策の位置づけについて、小泉総理にお聞きいたします。
 総合対応策の一環として不良債権処理の加速策の金融再生プログラムだけは事細かに書かれておりますが、これもまた、不良債権処理の筋道からいえば支離滅裂であります。
 不良債権の処理が必要であることは言うまでもありません。しかし、さらに前提として必要不可欠なことは、経済活動の担い手である健全な企業が有効な資金を使える環境を整え、実体経済を浮揚させることであります。
 小泉総理は、当初、既存の不良債権は二年、新しい不良債権は三年で最終処理すると明言しておりました。しかし、現状を見れば、金融機関が九兆円の不良債権の処理をしても、新たに不良債権が九兆円増加しており、不良債権処理のアクセルは踏みっ放しにして、経済政策は思いっ切りブレーキをかけ続けるだけであります。総理はその両足踏みっ放しの全く動かない車の中でハンドルをくるくる回して遊ぶだけであり、日本経済社会というエンジンと日本という車は、ただ壊れていくばかりなのであります。
 例えば、政府は、不良債権処理を、最終処理、オフバランス化、正常化と、処理の定義のよくわからない言葉にすりかえて、さも進んでいるように言っていますが、実際には、不良債権の処理も進まず、実体経済自体も弱体化しています。幾ら金融機関が処理を進めても不良債権処理問題が改善しないのは、政府の経済運営が失敗している結果なのであり、それを金融問題に転嫁しているのが小泉内閣の実態であります。
 今回の金融再生プログラムでは、平成十六年度の主要銀行の不良債権比率を現状の半分程度に低下させると掲げていますが、就任当初から主張していた最終処理とか正常化とは、もともとこのことを指していたのですか。二年で既存の不良債権は処理し切れたのですか。あと一年で、新規発生した不良債権は処理するのですか。十六年度の不良債権比率を現行の半分程度にするというのは、具体的には幾らにするのでしょうか。終結をさせると言うならば、何をもって終結宣言できるとお考えなのでしょうか。不良債権の処理の時期と表現が時とともに変わりますので、この際、小泉総理に総括してお答えいただき、竹中金融担当大臣には具体的に数値を明示していただきたいのであります。(拍手)
 また、不良債権問題を抱える金融機関の自己資本の充実についてお聞きいたします。
 これまで、小泉総理は、公的資金の注入は必要ないと言っていましたが、今回の金融再生プログラムで、不良債権問題の解決に対して政府が積極的に関与する立場で、公的資金投入も辞さないと、明確な政策転換をなされました。この転換理由について、小泉総理に理由をお聞きします。
 政府、日銀が一丸となって金融問題に対処することは言うまでもありませんが、このプログラムでは具体的な法的枠組みが明確ではありません。
 例えば、特別支援の枠組みとして、日銀特融による流動性対策、現行預金保険法による公的資金投入、検査官の常時派遣という三項目を示しています。日銀特融は流動性の一時的不足に対処するものですが、それで、特別支援金融機関として指定され、常に役所派遣の検査官が銀行経営会議で陪席し、口出しできるようになるのですか。また、現行預金保険法による公的資金の投入と言いながら、一方では新たな公的資金制度の創設を行うと言い切っていますが、危機対応以外の新しい公的資金投入の原則とは具体的にどのようなものなのか。竹中金融担当大臣、整理して明確にお答えください。
 ただいま議題となっている法案の審議に当たって、政府がまず明確にしなければならないことは、ペイオフを延期することに対する国民への説明責任であります。
 小泉総理は、就任当初から、ペイオフ解禁は予定どおりと繰り返し言い続け、今年七月、総理が当時の柳澤金融担当大臣に決済性預金保護の検討を指示したときでさえ、ペイオフ実施は来年四月予定どおり、その間に無用の混乱を起こさせないと記者会見で述べられておりました。
 一方、竹中金融担当大臣は、経済財政担当大臣として就任した当初、ペイオフ解禁の延期などに象徴されるような政府が一たん約束したことを延期することは政府の信用を損ねるという意味で大変残念なことである、そういうことが絶対起こらないような経済運営をぜひしていかなければならないと、当たり前とばかりに答弁していたのです。
 しかし、小泉総理の方針は、言葉とは裏腹に、決済性預金の保護の指示に始まり、結局、二年のペイオフ延期を決定し、総理の発言も金融政策も、一貫性の体を全くなしていません。それにもかかわらず、政策転換に対する説明責任は全く果たされておりません。むしろ、政策転換ではなく政策強化だと、言葉のすりかえと言葉遊びに終始しているのみであります。
 小泉総理は、ペイオフ延期という明らかな政策転換について、なぜそうなったのか、今後どのように対応していくつもりでいるのかを国民にわかりやすく明確に説明する義務があります。
 また、竹中大臣は、かつて言っていた、ペイオフ延期などに象徴される政府の信用を損ねることが起こらないような経済運営を行っていたはずなのではありませんか。それがなぜ、みずから金融担当大臣としてペイオフ延期を決めたのでしょうか。経済財政担当大臣としてのこれまでの経済運営は明らかに失敗だったとみずから認めることにほかなりません。
 この一年半の経済運営をどう総括するのか、竹中経済財政担当大臣と、最高責任者である小泉総理大臣にお伺いいたします。(拍手)
 次に、預金保険法における決済性預金の位置づけについてお聞きします。
 そもそもこの枠組みは、ペイオフ実施を前提に、総理が決済性預金の保護を指示した結果として、ゼロ金利の普通預金をつくり、これを恒久的に全額保護をするというものであります。この制度発足も、ペイオフの完全実施に合わせた来年四月からです。
 しかし、ペイオフを延期することを宣言した今では、この法案そのものの存在意義がわからなくなってしまっているのです。それでもこの法案を出し続けるというのは、ゼロ金利普通預金をつくることを決めてしまったのは変えられないという、金融庁のメンツを守るだけでしかありません。
 平成十七年三月までペイオフ延期をするのに、利息のある、なし併存のこの制度に、どのような意義があるのでしょうか。また、中長期的に見て、実際の運用において、総理や竹中大臣が言うような無用の混乱を引き起こす火種になりはしませんか。竹中大臣にお聞きいたします。
 次に、金融機関組織再編成特別措置法に関連してお聞きいたします。
 地方銀行や信用金庫、信用組合など地域金融機関の合併を促すこの法案は、優良な銀行がほかの銀行を救済合併するときの自己資本比率の低下などに対して、優先株や優先出資証券などで公的資金を投入し、自己資本の増強を図ることが柱となっています。
 しかし、地域金融機関の合併だけで、経営基盤が強化され、問題がすべて解決するかといえば、必ずしもそうではありません。
 経営基盤の強化に向けて、金融機関自身が努力することが前提となるべきであります。例えば、IT化を通じて効率化を行うことが考えられます。安易に合併に走る前に、行うべき経営努力があるのではないですか。地域金融機関としての機能について、竹中大臣にお聞きいたします。
 小泉総理は、見た目は異質に見えても、中身は生粋の自民党的体質です。何の基本方針もなく、場当たり的、なし崩し的、そして、無責任で弁明なし。
 今の金融に対する国民や市場の不安は、小泉総理の経済無策が原因であり、言葉だけが踊る小泉総理の政治姿勢に対する不信のあらわれなのであります。小泉総理がどういう日本の経済社会の姿を描いているのか。もしその方針があるとして、経済運営で間違いがあったというのであれば、素直に国民に明確に弁明し、政策転換すべきであります。この点について総理の御所見をお伺いし、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 樋高議員にお答えいたします。
 現在の経済情勢の認識及び立て直しについてのお尋ねでございます。
 我が国経済は、一部に緩やかな持ち直しの動きが見られるものの、株価の下落や失業率が高水準で推移するなど、環境は厳しさを増しており、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まりつつあるのは事実でございます。
 政府としては、こうした金融経済情勢の不確実性の高まりを踏まえ、今般、改革加速のための総合対応策を取りまとめたところであります。
 この対応策においては、金融再生プログラムにも盛り込まれた不良債権処理の加速を含む金融・産業の再生策のほか、税制改革あるいは規制改革等、構造改革の加速策や、雇用・中小企業のセーフティーネット策を講ずることとしております。
 今後、これらの施策を早急に具体化し、デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく考えであります。
 不良債権問題の終結の意味するところについてでございます。
 平成十六年度には不良債権問題を終結させるとの方針のもと、今般の金融再生プログラムにおいては、主要行の不良債権比率を十六年度末までに現状の半分程度に低下させ、問題の正常化を図るとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指すこととしております。
 本プログラムの施策を速やかに実施に移すことにより、日本の金融システムと金融行政に対する信頼を回復し、世界から評価される金融市場をつくることが、すなわち、不良債権問題の終結を意味するものと考えております。
 公的資金注入についてのお尋ねです。
 公的資金注入は、そのこと自体が目的ではありません。一つの結果として行われるものであります。万一、金融危機のおそれがあると判断される場合には、あらゆる手段を念頭に置いて、大胆かつ柔軟に対処していく考えであります。この考えは従来から変わっておりません。
 ペイオフの延期理由についてでございます。
 不良債権処理は構造改革を進める上での最重要課題であります。その加速を図るためには、同時に、金融システムの安定と中小企業金融等金融の円滑化に十分配意することも必要です。このような観点から、ペイオフについては、不良債権問題が終結した後の十七年四月から実施することとしたものであります。また、今回のペイオフ延期の措置は、不良債権処理の加速化という構造改革を強化するものであり、基本方針は全く変わりません。
 政府としては、金融システムに不安がない状態で平成十七年四月を迎えることができるよう、全力を挙げる考えであります。
 この一年間の経済運営の総括と将来像についてでございます。
 私は、今日の経済の低迷は、これまでうまく機能してきたいろいろな経済社会のシステムが時代の流れに対応できなくなっていることにその根本原因があると認識しております。
 現在、日本経済は改革の途上にありまして、厳しい状況が続いておりますが、これまで培ってきた日本の潜在力、これは失われているとは思いません。構造改革こそがこの潜在力を発揮させる道であるとの考えのもと、金融システム改革、税制改革、規制改革、歳出改革など構造改革に取り組み、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図ってまいりたいと思います。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 樋高議員から不良債権問題の正常化の意味等についてお尋ねがありましたので、総理の御答弁につけ加えて申し上げます。
 まず、不良債権の最終処理とは、個々の不良債権をバランスシートから切り離すということを意味し、昨年四月の緊急経済対策以来、主要行の破綻懸念先以下債権について、既存分は二年以内、新規発生分は三年以内に処理するとの方針を掲げてきました。
 その進捗状況を申し上げますと、まず、既存分に当たる十二年九月末時点の残高十二・七兆円については、十四年三月末までの一年半の間で六割強の減少を見ております。十二年度下期に新規発生した三・四兆円についても、十四年三月末までの一年間でほぼ半減しております。十三年度上期に新規発生した三兆円についても、十四年三月末までの半年間で三分の二に減少となっており、着実に処理は進められております。
 一方、正常化については、主要行全体の不良債権比率を低下させるなど不良債権問題の正常化を図ることであり、今般の金融再生プログラムにおいては、主要行の不良債権比率を平成十六年度末までに現状の八・四%からその半分程度に低下させるとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指すこととしております。
 したがいまして、本プログラムの施策を速やかに実施に移すことによりまして、世界から評価される金融市場をつくることが不良債権問題の終結につながるものというふうに考えております。
 金融再生プログラムの具体的な法的枠組みについてお尋ねがございました。
 今般のプログラムでは、個別金融機関が経営難や資本不足もしくはそれに類似した状況に陥った場合には、特別支援の枠組みを適用し、まず、万が一、金融危機のおそれが生じた場合には、金融庁は責任を持って適切な対応をとるとともに、日銀に特別融資等必要な措置を要請し、一体となって万全の危機管理体制を整備する。さらに、必要な場合には、現行の預金保険法に基づき、速やかに所要の公的資金を投入することとされています。
 こうした特別支援の対象となった金融機関に対しては、取締役会や経営会議などに検査官を陪席させることを検討することとしていますが、その内容につきましては、今後、具体的な方策等に関し検討を行ってまいります。
 また、新しい公的資金制度については、金融再生プログラムにおいて、金融システムの安定に万全を期しつつ、不良債権問題を終結させるため、迅速に公的資金を投入することを可能にする新たな制度の創設の必要性などについて検討し、必要な場合は法的措置を講ずるとされているところでありまして、新たな制度の創設が必要かどうかということも含めて、しっかりと検討をしていきたいというふうに考えております。
 この一年半の経済運営の評価についてのお尋ねがございました。
 小泉内閣の発足以来、政府は、昨年六月のいわゆる骨太方針を起点としまして、広範な構造改革を推進するとともに、景気・雇用情勢に適切に対応してまいりました。こうした取り組みによりまして、悪化傾向を続ける経済と財政のトレンドに一定の歯どめをかけることに成功したというふうに思っております。
 今般、政府は、最近における金融経済情勢の不確実性の高まりを踏まえ、不良債権処理の加速を含む金融・産業の再生策、税制改革、規制改革等の構造改革策のほか、雇用・中小企業のセーフティーネットの拡充策を内容とする総合対応策を取りまとめ、構造改革を加速し、日本経済を再生させるための政策強化を行うこととした次第であります。
 なお、不良債権処理の加速を図るためには、同時に、金融システムの安定と中小企業金融の円滑化に十分配慮することが必要であり、ペイオフについては、不良債権問題が終結した後の平成十七年四月から実施することとしたものであります。
 このように、ペイオフの完全実施の延期は、今般取り組む構造改革の加速、そして、日本経済再生のための政策強化の一環として行うものであり、この一年半の経済運営の失敗によるものとの指摘は当たらないものと考えております。
 決済用預金の保護の意義等についてお尋ねがございました。
 日本の経済では、ほとんどの決済が金融機関の関与する決済機能を通じて行われており、その安定確保を図ることが公共性の観点から必要不可欠でございます。
 このため、我が国の実態に即した決済のためのセーフティーネットとして、金融機関破綻時にも各経済主体が取引に伴う決済を円滑かつ確実に完了できる、現金以外の安全、確実な決済手段を確保することが重要であります。
 無用な混乱を引き起こす火種とならないかという御指摘もありましたが、決済機能の安定確保策をペイオフ解禁の際に混乱なく円滑に実施し、その定着を図るためには、金融機関がシステム対応を周到に進めるとともに、預金者に対する説明を十分に行う必要があります。したがって、決済機能の安定確保のための制度については、できるだけ早期に手当てすることが必要であります。
 このように、決済機能の安定確保の重要性、その円滑な実施の必要性を踏まえれば、決済用預金の全額保護の制度をペイオフ解禁に備えて手当てし、金融機関が早期に準備を開始できるようにしておくことが必要であるというふうに思います。
 最後に、地域金融機関についてのお尋ねがございました。
 地域金融機関については、引き続き、地域に根差してきめ細やかに地域住民、企業のニーズに対応することによって、リレーションシップバンキングの考え方をベースに経営基盤の強化を図っていくべきであると考えます。
 金融庁としては、個々の金融機関が経営基盤を強化するため、多様な選択肢を真摯に検討し、経営努力を行っていくことが重要であると考えておりますが、今回の金融機関組織再編特措法案では、金融機関が経営基盤強化の観点から合併等の組織再編成を選択する場合の障壁を除去するための支援措置を盛り込み、地域金融機関の経営基盤強化に資することを期待しているところであります。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 佐々木憲昭君。
    〔佐々木憲昭君登壇〕
佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました預金保険法改正案等三法案について、小泉総理に質問をいたします。(拍手)
 初めに、政府が十月三十日に決めた経済対策についてお聞きします。
 この対策の中心内容は、不良債権処理を一気に加速させるというものであります。しかし、最終需要を拡大せずに不良債権処理をやれば、処理しても処理してもその残高がふえ続けるというのがこれまでの実績ではないでしょうか。
 九六年度の経済成長は三%台で、不良債権の新規発生額は二兆円でありました。しかし、橋本内閣のもとで消費税増税など九兆円の負担増が強行された九七年度は新規発生額が十五兆円、九八年度は十六兆円と増加したのであります。その後、小渕内閣、森内閣時代には、一、二%の経済成長となり、不良債権の新規発生は年に十兆円、九兆円と減りました。
 ところが、構造改革を掲げて登場した小泉内閣ではどうでしょうか。最重点課題として不良債権処理を掲げ、デフレを加速させました。そのため、経済成長率は最悪のマイナス一・九%に転落しました。そして、新規の不良債権発生額は実に十七兆円を記録したのであります。
 小泉総理、あなたは、これまでの内閣で一番大きな不良債権をつくった総理大臣であります。一体その責任をどのように感じているのか、答弁を求めます。(拍手)
 総理は、ふえた不良債権をさらに処理するとしています。政府の金融再生プログラムによれば、そのために、まず、特別検査の再実施によって銀行の資産査定を厳格化し、それに見合う引当金を積ませるなどの措置をとるとしています。
 そうなると、当然、経営難や資本不足に陥る銀行も出てきます。そのような銀行を特別支援金融機関とみなし、融資先のうち健全な債権は新勘定に、不良債権は再生勘定へと分類する。そして、この不良債権を大規模にRCC、債権回収機構などに売り払うというのであります。他方で、再生の可能性がある企業は産業再生機構に移すというのでありますが、一体、どのような基準で、だれがこれらの区分けをするのでしょうか。答弁を求めます。
 再生機能を付与されたRCCのこれまでの実績を見ましても、再生とは名ばかりで、不良債権とみなされた中小企業のほとんどがつぶされているのであります。小泉内閣になって、六万社を超える企業がRCCに送られましたが、再生の仕組みに乗ったのは、たった八十七件ではありませんか。
 再検査で不良債権とみなされた大手企業の場合も、つぶされるか、徹底的なリストラで大量の失業、倒産を生み出すことになるのであります。
 政府が決めた不良債権処理の加速とは、失業と倒産の加速であり、デフレの加速であります。小泉内閣の政策が不況を一層深刻化させ、不良債権をふやし、経済全体に取り返しのつかないダメージを与えるという認識は、総理には全くないのでしょうか。答弁を求めます。
 昨日、我が党の志位委員長が党首討論で指摘したように、小泉内閣になって、その前の四年分の貸しはがしが一気に起きているのであります。
 金融再生プログラムによって再検査を実施して不良債権処理を加速すれば、これまで健全とみなされた中小企業も含めて、中小企業全体に対する貸しはがしが猛烈に進むことになり、貸出金利の引き上げが大手を振ってまかり通ることになるのであります。
 総理は、しばしば、金融システムの安定化とか、銀行を強くするためと言っておられます。しかし、このようなやり方は、銀行の体力を弱め、金融システム全体を一層不安定にするのではありませんか。そのような危険な政策を、なぜ、この最悪の不況期に強行しなければならないのでしょうか。明確な答弁を求めます。
 しかも、重大なことは、体力の落ちた銀行に対し、公的資金を投入するというのであります。公的資金とは、せんじ詰めれば、国民の税金で、血税であります。結局、政府がやっていることは、倒産と失業をふやすために血税を使うということではありませんか。そのような税金の使い方があるでしょうか。国民の税金は、ぎりぎりのところで頑張っている中小企業を支援し、失業者を救うためにこそ使うべきではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 次に、提案されている法案に即してお聞きします。
 まず、預金保険法改正案についてであります。
 深刻な不況と信用不安のもとで、現在はペイオフ解禁の条件にないことは明白であります。しかし、今回の延期措置は、小泉内閣が進める不良債権早期最終処理の集中処理期間に対応して二年間に限定したものになっているところに問題があります。
 ペイオフ解禁は、経済の立て直し政策によって景気を回復させることを大前提に行うべきであります。ともかく機械的に二年間という期限を切って解禁するというやり方は、極めて乱暴であり、無責任であります。なぜそうなるのか。それは、不良債権処理の加速による企業つぶし、金融機関の淘汰、再編の方針と結びつけて出されているからではありませんか。答弁を求めます。
 法案は、資金決済を保護するためとして、ペイオフ全面解禁後も全額保護される決済用預金の新設を盛り込んでおります。
 しかし、今、全国で課題となっているマンション管理組合の長期にわたる修繕積立金の保護や、自治体公金預金の地域金融機関からの流出に対応するものになっておりません。また、解禁後の保護の上限を一千万円に据え置いているため、老後の生活資金の保護の点でも十分ではありません。一体これらにどう対応するのか、明確な答弁を求めます。
 地域において金融不安をつくり出し、預金者の金融機関に対する信頼を失わせるような事態をつくり出したのは、一体だれでしょうか。それは、自己資本比率と金融検査マニュアルをてこに金融機関の整理、淘汰を進めてきた政府自身ではありませんか。小泉内閣が誕生してから五十一の信金、信組と二つの地銀を破綻させ、地域金融機関の再編を強引に進めてきたのであります。
 提案されている金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案は、これをさらに促進するため、地域金融機関に対して収益力の強化を求め、合併によって地域金融機関の整理、淘汰、再編を促すものであります。
 地域金融機関に対して中小企業支援よりも収益力の強化を求めることは、不況で苦しんでいる中小企業の経営難に追い打ちをかけるものであります。ひいては、収益力強化どころか、地域金融機関の経営基盤を掘り崩すことになるのであります。それは、地域の金融システムそのものを弱体化させることにつながるのではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 塩川財務大臣は、九月九日の経済財政諮問会議で、「信用金庫は三百以上あるが、資本金一千億円以上とか預金八千億円以上とか、地方銀行では預金一兆円以上といったモデルケースを示し、これを一つの基準に合併するとの意見もある。すると、信用金庫が三つ、四つ集まるケースも出てくるのではないか。」と、具体的な再編方法にまで言及しました。建前上は金融機関の合併は自発的なものだと言うけれども、これでは、最初に合併ありき、上からの合併促進となるのではありませんか。答弁を求めます。
 今、政府に求められているのは、地域金融機関をつぶすことではありません。信用金庫、信用組合など協同組織金融機関が、地域に密着し、協同を広げることができるような環境をつくり出すことであります。
 これらの金融機関は、本来、会員、組合員の相互扶助のための機関であり、基本的には、構成員である中小企業の出資によって支えられているものであります。上から合併を促し、資本不足になったら税金を投入する、こういう発想はまさに本末転倒であります。
 本法案は、合併等によって金融機関の自己資本比率が低下した場合、その低下分を補う措置として、預金保険機構が存続金融機関の株式等を買い取る仕組みをつくるというものになっております。
 しかし、買い取った株式等が毀損した場合には政府保証で穴埋めすることになり、結局は、国民負担になるではありませんか。地域金融の機能を弱体化させながら税金投入の仕組みをつくることは、到底認められるものではありません。根本的な再検討を求めるものであります。
 本来、金融機関の評価は、地域経済、地域の中小企業への貢献度によって行われるべきものであります。小泉総理は、我が党の地域金融活性化法案に対して、一律の基準を適用することはよくないと言われました。しかし、政府のやり方こそ、自己資本比率や検査マニュアルなどで一律で画一的な基準を押しつけ、地域の金融機関を破綻させ、金融機能を弱体化させるやり方ではありませんか。
 我が党の提案は、貸し渋り、貸しはがしなどをやめさせ、地域に必要な資金を供給し、国民の暮らしと中小企業・業者の営業を育てる金融機関に変えるものであります。この方向でこそ、長い目で見て地域金融機関を安定化させ、国民の金融への信頼を回復させる道であります。このことを指摘して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 佐々木議員にお答えいたします。
 不良債権問題の責任に関するお尋ねであります。
 十四年三月期における不良債権の状況については、積極的な最終処理が行われた一方、その残高は前年度末に比べ増加しておりますが、これは、厳しい経済情勢の影響があった一方で、金融庁の特別検査などにより、むしろ、不良債権の徹底的な洗い出しを行ったこと等によるものであると考えております。
 不良債権問題については、日本経済再生のため、その終結に向けて不良債権処理を確実に進めていくことが私の責務と考えております。
 銀行の保有する債権をRCCと産業再生機構に移す場合の区分けについてのお尋ねでございます。
 金融再生プログラムでは、特別支援を受けることとなった金融機関の経営を改革し、早期健全化を行うため、その資産等を新勘定と再生勘定に分離し、適切に管理することとしておりますが、特別支援金融機関における資産管理の方法その他の経営のあり方については、今後検討していくこととしております。
 また、改革加速のための総合対応策においては、新たな機構を創設し、再生可能と判断される企業の債権を金融機関から買い取り、企業の再生を進めることとしております。
 このため、具体的なスキームの構築に向けて早急に検討を進め、その中で、新たな機構とRCCとの役割分担などについても整理していくこととしております。
 不良債権処理の加速がデフレの加速や貸し渋りなどを引き起こし、経済システム、金融システム全体にダメージを与えるという御指摘がございました。
 不良債権の処理は、金融機関の収益力の改善や貸出先企業の経営資源の有効利用などを通じて、新たな成長分野への資金や資源の移動を促すことにつながるものであり、他の分野における構造改革とともに実施することにより、デフレの克服及び我が国経済の再生に必要なものであると考えます。
 なお、不良債権処理の加速に伴う雇用、中小企業経営への影響に対しては、細心の注意を払い、セーフティーネットには万全を期す必要があると考えており、今般取りまとめました、改革加速のための総合対応策においては、税制改革、都市再生、規制改革などの構造改革の加速策に加え、離職者に対する再就職支援のための新たな助成措置の創設、地方公共団体による緊急かつ臨時的な雇用の創出などの雇用対策、金融機関による不当な貸しはがしなどを防止するためのモニタリング体制の強化、やる気と能力のある中小企業への資金供給円滑化のための信用保証の拡充などの中小企業対策を講じることとしているところであります。
 ペイオフ解禁、機械的に二年間という期限を切って解禁するやり方は乱暴であるというお尋ねでございます。
 不良債権処理は構造改革を進める上での最重要課題であり、その加速を図るためには、同時に、金融システムの安定と中小企業金融等金融の円滑化に十分配意することも必要であり、そのような観点から、ペイオフについては、不良債権問題が終結した後の十七年四月から実施することとしたものであります。
 したがって、企業つぶしとか金融機関つぶしというものを目指すものではなく、金融システムの健全化を目指すものであります。
 決済用預金と保険金支払い限度額についてのお尋ねであります。
 決済用預金は、決済機能の安定確保策として、金利ゼロ等の要件を満たす預金を金融機関が破綻した場合に全額保護するものであり、この預け入れられた資金の性格は問わないこととしております。したがって、御指摘のマンション管理組合の修繕積立金や自治体の公金についても、決済用預金に預け入れれば全額保護されることとなります。
 一預金者当たり一千万円の保険金支払い限度額については、我が国の一人当たりの平均貯蓄残高や諸外国の水準、保険料負担の増加等を勘案すると、現時点でこの水準を引き上げる必要はないと考えております。
 金融機関組織再編特措法案における中小企業への影響についてでございます。
 本法案は、金融機関の経営基盤強化の有力な手段である合併等の組織再編成を円滑化し、金融システムの強化と経済の活性化に資することを目的としております。
 また、借り手中小企業の保護についても、組織再編成による経営基盤の強化が金融機関の融資対応力の強化につながるものと考えられることに加え、本法案においても、政策支援の前提として金融機関等が提出する経営基盤強化計画の認定に当たって、金融の円滑が阻害されないことを要件とするなどの配慮を行っているところであります。
 金融機関組織再編特措法案に関連して、最初から合併ありきの上からの合併促進ではないかとのお尋ねであります。
 本法案は、あくまで、各金融機関が自主的に合併等の組織再編成を選択した場合に、これを円滑化するための措置を講ずるものであり、上からの合併促進との御指摘は当たらないものと考えております。
 金融機関組織再編特措法案における資本増強について、国民負担となるのではないかとのお尋ねでございます。
 預金保険機構が資本増強を行うために必要な資金を低コストで安定的に調達するため、政府は保証を付することができることとされておりますが、本法案においては、自己資本比率が健全な水準にある金融機関同士が合併等をするケースを対象とし、経営基盤強化計画の認定や計画のフォローアップ等により収益性の向上等をチェックすることとしており、安易に国民負担につながることのない仕組みを設けているところであります。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 植田至紀君。
    〔植田至紀君登壇〕
植田至紀君 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま提案されましたいわゆる金融関連三法案等にかかわって、小泉総理並びに関係大臣に質問をさせていただきます。(拍手)
 生産コストや商品価値に見合った価格設定ができないまま物価下落が続くというデフレ経済を克服するためには、企業や家計の前向きな支出活動を引き出し、総需要を増加させる必要があります。
 しかし、国民生活に負担と痛みを強いるだけの小泉流構造改革は、経済の総収縮をもたらすだけに終わってきました。この硬直した路線が破綻している何よりの証左が深化するデフレ不況だと言えます。小泉改革の幕引きこそがデフレ退治の特効薬である、この点は今や与党においても大勢になっているのではないでしょうか。
 以上を踏まえ、小泉総理にお伺いいたします。
 現下の経済局面において、小泉流の財政緊縮路線は、あるべき政策実現にとっては阻害要因以外の何物でもありません。このままでは、個人の財布のひもはますますかたく閉じられ、深刻な税収減がさらなる借金漬け財政を拡大する、逆サイクルの深みに落ち込むことは避けられません。とどのつまりは、特例公債に頼らない限り、小泉内閣が言うところのセーフティーネットのための財源すら用意できないことになります。この自家撞着に陥っているのが、現在の小泉改革の実態であります。
 生活再建を最優先する改革手法なくして財政再建は成らず、この当たり前の論理の帰結を総理は真摯に受け入れるべきではないでしょうか。国民の生活再建、わけても雇用対策と中小零細企業等に対する抜本的支援を中核とする積極的な財政出動が求められる理由は、ここに明らかであります。
 このあるべき幹がない限り、小泉政権のデフレ対策は雇用破壊と中小零細企業淘汰のための加速策になることは必至であります。抜本的なデフレ対策を本気でやる気が総理はおありであれば、速やかに補正を組むことを強く求めます。決意をお示しいただきたい。
 今、解決が求められている最大の政策課題は、積極的な雇用安定・創出策の展開による先の見える安心社会をつくることにある、この点は、当然、総理も異論なかろうと思うのです。しかるに、骨太を誇っておる小泉流構造改革にもかかわらず、雇用に関しては、その片りんすら見えていないことは明らかな事実であります。史上最悪水準で高どまりする完全失業率とは、小泉内閣の雇用無策、政策不在によって生み出された犠牲者の姿そのものではありますまいか。
 事ここに至っては、雇用保険特別会計の枠にとらわれない、一般財源からの積極的な財政出動を行い、実効ある生活安定及び再就職支援のための施策を国策として行うべきではないでしょうか。確たる答弁を求めます。
 さて、竹中大臣、今回のいわゆる総合デフレ対策に、雇用・中小企業などのセーフティーネットという冠を幾らかぶせたとしても、小泉流の構造改革路線の延長線上にある限り、無力となる、砂上の楼閣となることは自明の理ではないでしょうか。
 先月二十二日に公表予定だった、不良債権処理加速策を柱としたいわゆる竹中プランがお蔵入りになったことは記憶に新しいところでありますが、その失態を笑い事で済ませるわけにはいきません。
 金融再生プログラムに盛られたメニューは、幾ら理屈が立ったところで、時宜を得ない限り、何の効力も持ち得ません。目標の妥当性はもとより、順序立て、タイミングなど、緩急わきまえた手綱さばきこそがマクロ政策の肝要となるべきことをよくおわかりではなかったのでしょうか。
 竹中プランは、そうした当然の目配りもデフレ対策も、雇用配慮の社会的セーフティーネット強化の備えすらないまま、公的資金注入ありきで突っ走り、みずから墓穴を掘る愚を演じたことになります。
 かくのごとく、いつもながら竹中大臣のやり方は書生論の域を出るものではなく、その冒険主義につき合わされることになる実体経済、そして我々国民は、たまったものではありません。その達成に向けた過程には細心の配慮がなくてはならない。このどたばた劇が続くのであれば、金融システムは、機能不全に陥ったままメルトダウンに至る事態すら懸念されます。
 猛省を求めるものですけれども、どのような反省に立ち、今後にこの教訓を生かす御決意か、竹中大臣、お聞かせいただきたい。
 さて、今般の金融再生プログラムに盛り込まれた各論のうち、引当金強化のための割引現在価値方式に関してお伺いします。
 企業の将来性も重視するDCFは、政策誘導を工夫すれば、中小企業に対する柔軟な融資姿勢を引き出すきっかけになることも期待できなくはないと私は思います。また、物的担保優先主義に寄りかかる我が国特有の融資慣行をはびこらせてきた、これまでの倒産実績に基づく一律の引当率適用方式に変革を迫る可能性も有しているとは思います。
 プログラムでは、当面、大口、要管理先の大口債務者に限定されていますけれども、物的担保資産に乏しい中小企業等の成長性の芽などを重視する融資姿勢を引き出す方向での定着を目指すべきではないでしょうか。
 その他の各措置においても、単に銀行の経営基盤強化のためのメニューにとどまるのではなくて、国民的利益にかなう機能を発揮させるための点検、検証を絶えず厳格に行うことも要請されているはずです。その用意がおありか、あわせて明確な答弁を求めます。
 もう一点、竹中大臣、中小企業の経営や地域経済の活性化にとって地域金融機関の果たす役割が極めて大きいことは、言うまでもありません。その意味でも、金融組織再編成特措法の必要性については理解します。
 合併で貸出金が膨らむと自己資本比率が低下することは、多くの場合、避けられない。比率を上げるためには増資が不可欠となる。しかし、長期不況に苦しむ我が国経済の実態からしても、経営基盤が脆弱な中小金融機関が資本金を市場や取引先から調達することは、大きな困難を伴います。そこで、資本増強へ公的資金注入の条件を法的に整備することが要請されていたことは事実です。
 とまれ、地域に根差した金融機関の体力強化を目指すのですから、なおのこと、地域経済の発展と雇用維持に重要な役割を果たしてきた中小企業向け融資枠等の増大は、より重視されなくてはならないと確信します。確たる答弁をお願いいたします。
 次に、産業・企業再生、セーフティーネットについて、平沼経済産業大臣にお伺いいたします。
 不良債権処理が加速化されるのであれば、何よりも優先されなければならないのは、経営が健全な企業や善意、善良な企業を保護することであり、金融機関による不当な貸し渋りや貸しはがし、それによって起こるリストラや倒産といった事態を万全のセーフティーネットによって防止することであります。政府の示したセーフティーネット施策は全く不十分であり、中小企業者の不安はこれでは払拭できないということをまず強く指摘しておきたい。
 最大の問題は、政府の対策では、肝心の産業・企業再生へのプロセスとその具体像が全く見えないということです。
 不良債権処理に伴うセーフティーネット構築に最大限の配慮をし、事業を営む人々、そこで働いている人々の安心を保障することは当然のことでありますが、しかし、産業の再生、企業の再生という大きな目的からすると、セーフティーネットそのものが目的であるはずはないのです。地域に根の張った、活力ある産業をどう育成していこうとしているのか、あるいは、そのための産業構造の転換をどう図ろうとしているのか、政府はその設計プラン、青写真を明確に示すべきであります。そうでなければ、セーフティーネットそのものが自己目的化して、政府が言っているところの産業構造の転換も、二十一世紀を生き抜く企業の育成もできません。明快な御見解をお示しいただきたいと思います。
 さて、最後に二点、坂口厚生労働大臣に、やや激励の意味も込めつつ、決意のほどをお伺いしたいと思っています。
 私自身、厚生労働省がこの間出してきたいわば雇用対策、それぞれの個々の政策メニューについては評価すべきところもあるだろうと考えています。決して、全部だめだと言うつもりはありません。しかし、それぞれの施策の財政規模が小さい、また、個々のそれぞれの政策がよくても、それがそれぞれ連関していないがために、接合していないがために、結果的に個々の政策が使い勝手が悪くなって、そして、結果として当初の目標にも達していないというのは、これは実態であろうかと思います。
 自治体の創意工夫の発揮が期待できる雇用創出策の柱として、緊急地域雇用創出特別交付金にかかわる事業費三千五百億円が都道府県に交付されていることは当然承知しております。三カ年事業の実質的初年度となる今年は既に一千四百億円の予算が計上されていることも知っています。小泉内閣としては極めて異例の、一般財源による実雇用に結びつく唯一の施策であるだけに、その果たすべき役割は、私は重要だろうと思うのです。
 しかし、この施策の限界は、中途半端な財政規模はもちろん、一部を除いて、雇用期間が半年に限定されているということです。そのため、地方自治体がアイデアを出しても、技術習得を要する事業には不向きになりますから、単純作業が多くなる、失業者にとって次に結びつかないものになっています。高失業率時代の今、必要なのは、持続する雇用の創出、安定した雇用ではないでしょうか。
 依然、底割れ懸念が残る雇用失業情勢に照らすのであれば、本制度の制度設計を再検討するとともに、さらなる財政的裏づけを求めて坂口大臣御自身が財務省に乗り込んで談判するぐらいの気概を私は持っていただきたい。前向きな答弁を求めます。
 最後に、もう一点、坂口大臣にお伺いいたします。
 私は、福祉・環境問題を中心に据えて、雇用関係にとらわれない、働く者の相互連帯による仕事興しの仕組みを振興させ、人間が本来持っている多様な能力、活力を生かすことができて初めて、地域が活性化し、あすに希望が持てる社会づくりができると考えています。
 同じ見地から、昨年春のことですけれども、雇用対策法の本会議質問において、我が党の同僚議員が坂口大臣に決意のほどを伺った際、こうおっしゃいました。大臣は、我が国においても、働く者の協同組織などを含め、多様な働き方を前提とした就業環境の整備が重要であり、人々の意欲と能力が生かされる社会実現に向けて真剣に取り組んでいきたいとおっしゃったわけです。明快な答弁だと思います。卓見だと思います。
 さて、今こそ、働く者の相互連帯による仕事興しの仕組みを強力に支援する法整備に着手するときではないでしょうか。この点について明快な御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 植田議員にお答えいたします。
 補正予算についてでございます。
 まずは、既存の予算を最大限活用し、そこに盛り込まれた不良債権処理の加速策や、雇用・中小企業のセーフティーネットなどの諸施策を早期かつ着実に実施していくことが重要と考えております。
 いずれにせよ、経済は生き物であります。必要に応じ、時に応じては、大胆かつ柔軟に対応することに変わりありません。
 一般財源による生活安定及び再就職支援策の実施についてでございます。
 今般、政府が取りまとめた、改革加速のための総合対応策においては、雇用面のセーフティーネットに万全を期すという観点から、緊急雇用創出特別基金による就職等の支援、緊急地域雇用創出特別交付金事業の運用の改善による地域における雇用機会の創出、再就職支援のための生活資金貸付制度の改善などの施策を盛り込んだところであります。
 政府としては、この総合対応策に盛り込まれた施策を着実に実施するとともに、今後の金融経済情勢の動向を注視しつつ、引き続き、必要な措置について検討していく考えであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 植田議員にお答えを申し上げたいと思います。
 第一は、緊急地域雇用創出特別交付金の充実についてのお尋ねでございました。
 緊急地域雇用創出特別交付金は、一定の雇用創出効果を上げているというふうに考えておりますが、本交付金に係る事業を企画運営しております地方公共団体から、雇用期間を含め、さまざまの要望がなされていることから、これらも勘案しつつ、交付金事業の効果的な実施が図られるよう、その改善について検討を行っているところでございます。
 また、交付金の財源の増額についてお話がございましたが、平成十五年度、十六年度の事業費として、都道府県に約二千億円の基金が既に交付されております。まずは、この基金をもとに、各都道府県において、地域の実情を踏まえた使用が行われるよう、前倒しも含めまして、現在、適切に運営されるように検討しているところでございます。
 それからもう一つ、働く者の協同組織などについてのお尋ねがございました。
 いわゆるワーカーズコレクティブなどを含めまして、多様な働き方を前提とした就業環境の整備は重要であると考えておりまして、人々の意欲的な取り組みと能力が生かされる社会の実現に向けまして取り組んでいきたいと考えております。
 法的整備につきましては、企業組合やNPO法人など現行の各種法人制度との関係をどのように整理するかなど、検討すべき課題もございますので、最終的な取りまとめを行っているところでございます。いましばらく御猶予をいただきたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
国務大臣(平沼赳夫君) 植田議員にお答えをさせていただきます。
 セーフティーネット及び活力ある産業の育成についてのお尋ねでございました。
 今般取りまとめられました総合対応策につきまして、私どもといたしましては、思い切った施策を盛り込んだところでございます。特に雇用や中小企業のセーフティーネット、これに関して思い切った施策を盛り込ませていただきました。
 経済産業省といたしましても、中小企業への円滑な資金供給に支障を及ぼさないように、セーフティーネット保証の拡充等を内容とする中小企業信用保険法、この改正案を今国会で御審議いただいているところでございまして、中小企業や雇用者の不安が払拭できるよう、各省庁とも連携をとって万全を期していかなければならない、このように思っております。
 また一方、植田議員御指摘のとおり、我が国産業の競争力強化に向けた改革を進めていくということは極めて重要なことだと私どもも思っております。
 私は、昨年の秋から産業競争力戦略会議を立ち上げまして、ここで、約半年にわたって競争力強化のための議論をかんかんがくがく、私も参加して行いました。そして、具体的な対応策について検討を進めまして、その成果といたしまして、六つの戦略を取りまとめたところでございます。
 中でも、最大のポイントは、産学官の資源を集中させて、我が国を世界最先端の研究開発拠点化して技術の発信基地とする。そのことが必要である、技術革新を次々と起こすことによって二十一世紀をリードする最先端産業を生み出すことが重要だと思っております。
 その他、地域の経済のことについてもお触れになりました。
 これは、植田先生も御承知のように、今、全国十九の拠点で地域の産業クラスター計画が進捗しておりまして、産学官連携のもとに、二百を超える大学や四千の企業が参画して、これが地についた形で新たなベンチャーを生み、そして新たな特許を生み、そしてそこから活力が生まれてくる、こういうことにつながっている、そういうこともさらに進めていきたいと思っております。
 こういったことをやるために、産業全体の研究開発力の底上げを図るべく、試験研究税制の抜本的な拡充等の税制措置もあわせて検討させていただいているところでございまして、私どもといたしましては、この日本のポテンシャリティーを生かして、地域経済の活性化も含めて、この日本の産業の活性化のために全力を尽くしてまいりたい、このように思っているところでございます。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 植田議員から、質問が四点ございました。
 金融再生プログラム策定の過程において混乱が生じていたとの御指摘がございました。
 このプログラムは、平成十六年度に不良債権問題を終結させるとの総理の指示に基づき策定したものでありますが、改革なくして成長なしとの従来からの内閣の基本的な方針のもと、実務的に取りまとめが行われたというふうに考えております。
 しかし、検討の過程において、報道の中には、具体的な方針が固まっていない段階において、プログラムの概要が固まった旨言及したものが見られるなど、市場参加者等にあらぬ誤解を与えるものがあったことは事実でありまして、この点は遺憾に思っております。
 いずれにせよ、今後、こうした点を踏まえて、無用の混乱を招かぬように一層の慎重を期すとともに、プログラムに掲げた施策を迅速に実行に移してまいりたいというふうに思っております。
 いわゆるDCF方式に基づく引き当てについてのお尋ねがございました。
 今回のプログラムにおいては、主要行の資産査定の厳格化、その中で、「引当に関するDCF的手法の採用」も項目として掲げられているところでございます。この方式を基礎とした引き当てにつきましては、市場評価との整合性を図る観点からその具体的手法について専門的、実務的に検討することとなっていますが、その際、将来の期待キャッシュフローの見積もりに当たっての考え方も含め検討することが有用であるというふうに考えております。
 金融再生プログラムの各措置について、国民的利益にかなうべく点検を行うべきとの御指摘がありました。
 御指摘の国民的利益につきましては、この再生プログラムの中で、「金融行政が護るべき対象は、預金者、投資家及び借り手の企業や個人など国民であること」を確認し、国民のための金融行政という基本的なスタンスを明らかにしているところでございます。
 この基本的なスタンスを踏まえながら、金融再生プログラムに盛り込まれた措置については、これを速やかに実施に移せるよう、今月中を目途に作業工程表を作成、公表するとともに、関連する諸制度の整備に努めてまいります。
 組織再編成特措法案との関連で、地域金融機関による中小企業向け融資の拡大についてのお尋ねがございました。
 この法案は、金融機関の経営基盤強化の有力な手段である合併等の組織再編成を円滑化することを目的としておりますが、これにより、借り手中小企業等に対する金融機関の融資対応力が強化されることが期待されるところであります。
 また、本法案による政策支援の前提として、金融機関等が提出する経営基盤強化計画を認定することになっておりますが、その際、中小企業向け融資枠の確保を意識して、金融の円滑が阻害されないことを要件とするなどの配慮を行った次第でございます。
 こういったことの必要性は認めるという議員の御指摘もございましたので、御審議をいただいた上、よい制度にできるように努力をしたいというふうに考えております。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時十一分散会


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