衆議院

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第8号 平成14年11月8日(金曜日)

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平成十四年十一月八日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第六号
  平成十四年十一月八日
    午後一時開議
 第一 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日程第一 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 構造改革特別区域法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第一、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案、日程第二、特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。総務委員長遠藤武彦君。
    ―――――――――――――
 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書
 特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔遠藤武彦君登壇〕
遠藤武彦君 ただいま議題となりました両案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、両案の要旨について申し上げます。
 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案は、本年八月の人事院勧告どおり給与改定を実施しようとするもので、すべての俸給表の俸給月額、初任給調整手当及び扶養手当の額並びに期末手当、勤勉手当及び期末特別手当の支給割合の引き下げ等を行おうとするものであります。
 次に、特別職の職員の給与に関する法律及び二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案は、一般職の職員の給与改定にあわせて、内閣総理大臣、国務大臣、大使、公使及び秘書官等の俸給月額の引き下げ等を行おうとするものであります。
 以上の両案は、去る十月三十日本委員会に付託され、十一月五日に片山総務大臣から提案理由の説明を聴取し、昨七日一括して質疑を行い、これを終局いたしましたところ、両案に対し、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合の共同提案に係る修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、両修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、一般職の職員の給与法等改正案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。
 まず、日程第一につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第二につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
下村博文君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 内閣提出、防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 下村博文君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
    ―――――――――――――
 防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。安全保障委員長田並胤明君。
    ―――――――――――――
 防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔田並胤明君登壇〕
田並胤明君 ただいま議題となりました防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
 本案は、一般職の国家公務員の給与改定の例に準じてその俸給月額の改定等を行おうとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。
 第一に、防衛参事官等俸給表及び自衛官俸給表の俸給月額並びに防衛大学校及び防衛医科大学校の学生の学生手当の月額を一般職の国家公務員の例に準じて改定すること、
 第二に、営外手当の月額の改定を行うこと、
 第三に、防衛大学校等の学生の期末手当の支給割合の改定を行うこと
等であります。
 本案は、去る十月三十日本委員会に付託され、十一月五日石破防衛庁長官から提案理由の説明を聴取し、本日質疑に入り、質疑終了後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 構造改革特別区域法案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、構造改革特別区域法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣鴻池祥肇君。
    〔国務大臣鴻池祥肇君登壇〕
国務大臣(鴻池祥肇君) このたび、政府から提出いたしました構造改革特別区域法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国が今直面する最重点の課題は、厳しさを増す環境の中にある日本経済の再生です。我が国経済の活力を取り戻すためには、構造改革を加速させる必要があります。
 このような現状にかんがみ、日本経済を活性化させる大きな柱として、七月二十六日に閣議決定により、内閣総理大臣を本部長とする構造改革特区推進本部を設置し、構造改革特区制度を推進するため、規制の改革は全国一律の形でなければいけないという従来の発想から、地方の特性に応じてさまざまな規制のあり方があるという発想に転換し、実現するためにはどうすればいいかという方向で検討を重ねてまいりました。
 十月十一日に開催された第三回同本部において、構造改革特区を推進するための具体的な制度の骨格、構造改革特区において特例措置を講ずることができる規制等について、構造改革特区推進のためのプログラムを決定いたしました。
 そこで、このプログラムを実現することにより、構造改革をさらに加速させるための突破口として構造改革特区制度を推進し、我が国経済構造の改革及び地域の活性化を図るため、この法律案を提出する次第であります。
 この法律案の概要を申し上げますと、第一に、構造改革特別区域の設定を通じ、経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与することを目的としております。
 第二に、構造改革特別区域を通じた経済社会の構造改革の推進及び地域の活性化に関する構造改革特別区域基本方針を閣議において決定することとしております。
 第三に、地方公共団体による構造改革特別区域計画の申請や、内閣総理大臣による計画の認定等の所要の手続を定めております。
 第四に、学校教育法の特例など構造改革特別区域において講ずることができる法令の特例の内容について定めております。
 第五に、構造改革の推進等に必要な施策を集中的かつ一体的に実施するため、内閣総理大臣を本部長とする構造改革特別区域推進本部を内閣に設置することとしております。
 第六に、法律の施行後も、規制の特例措置について定期的に調査を行い、必要な見直しを行うこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 構造改革特別区域法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。木下厚君。
    〔木下厚君登壇〕
木下厚君 民主党の木下厚でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました構造改革特別区域法案について、小泉総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)
 本題に入る前に、まず、小泉総理の経済失政の責任を厳しく指摘したいと思います。
 総理は、かつて、けがをしながら優勝した大相撲の横綱貴乃花関に対し、土俵上から、「感動した」と声を張り上げましたが、私は、これまでの総理の経済政策に、「絶望した」と声を張り上げたいと思います。(拍手)それは、私だけではなく、多くの国民の共通した思いではないかと思います。
 小泉内閣が誕生してから一年六カ月になりますが、構造改革は一向に進まず、経済はますます悪化の一途をたどっております。それに金融と財政の破綻危機が追い打ちをかけ、日本は、今、まさに破滅寸前にあるのではないか、そんな思いさえいたします。ところが、小泉総理を初め政府・与党には、こうした危機感が全く感じられません。
 政府は、十月三十日、迷走と先送りを繰り返した末、ようやくデフレ対策を決定しましたが、この中身を見ると、現下の厳しい経済情勢に対する危機感の欠如と経済無策ぶりを改めて露呈したと言わざるを得ません。
 実際、最近の朝日新聞の世論調査によると、今回のデフレ対策では経済の立て直しを期待できないと答えた国民が実に七五%に上り、また、小泉首相は経済対策で指導力を発揮していないと答えた国民が六三%に達しております。これは、深刻なデフレ状況に小泉内閣が十分に対応していないという国民のいら立ちを端的に示しているのではないでしょうか。
 総理、あなたは、国民の本当の苦しみや痛み、あるいは、中小零細企業経営者や、企業倒産で職を失ったり、リストラされた中高年サラリーマンや、家計を預かる主婦の皆さんの悲痛な叫びをどこまで認識しておられるのでしょうか。一億二千万国民の生活と暮らしが、総理、あなたの双肩にかかっているのです。空疎なかけ声やパフォーマンスでは国民の生活や暮らしを守れないということを、あなたはもっと肝に銘ずるべきではないでしょうか。
 今回の中途半端なデフレ対策で本当に景気がよくなるとお考えなのか、よくなるとしたら、いつごろからなのか、その見通しを明らかにしていただきたい。また、与党内や経済界から、大型の先行減税や補正予算の編成あるいは国債発行三十兆円枠突破などの強い要望が出ていますが、総理はどうお考えなのか、改めてお聞きしたいと思います。
 では、本題の構造改革特区法案についてお伺いします。
 総理は、所信表明で、本法案について、日本経済を活性化させる大きな柱、思い切った規制改革を実行すると強い決意を示されました。また、今回の総合デフレ対策の中にも、早期具体化・充実の方針が盛り込まれました。政府は、本法案の目的として、この法律は、構造改革特別区域の設定を通じ、経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与するとうたっています。
 しかし、私は、総理が得意とするこの大上段のうたい文句に極めて強い違和感と疑念を抱かざるを得ません。
 というのは、今回の特区制度では、省庁の抵抗を排除するために、内閣に推進本部を設置し、本部長に就任する総理がリーダーシップを発揮できるような態勢をとったと自画自賛しています。しかし、地方公共団体などが八月末までに提案した約九百項目余りの規制緩和要望のうち、認められたのは、わずか一割程度の九十三件にとどまっています。野球でいえば打率一割、これでは打者失格、すぐにお払い箱です。また、三割自治といいますが、これではまさに一割自治であり、地方分権、規制改革を金看板とする小泉総理の看板が泣くのではないでしょうか。
 なぜこれほど認定が少なくなったのか、その理由と同時に、不認可になった理由の情報開示を強く求めたいと思いますが、総理並びに鴻池担当大臣の見解を求めます。
 また、認められた項目についても、総理が特区を認可する際や特区ができて企業が参入する際、それぞれの項目について厳しい条件が付記されています。しかも、申請のあった特区を総理が認定しようとするときは、関係行政機関長の同意を得なければならないと定められています。逆に言えば、各省庁の同意がなければ、総理といえども特区として認定できないことになります。省益を温存したいという関係省庁の抵抗によって、許認可のハードルを上げるとともに、省庁の裁量余地をできるだけ残そうとした、そう指摘せざるを得ません。これでは、規制緩和と言いながら、別の新たな規制をつくる結果になるのではないかと危惧します。
 今回の法案を見ると、総理がリーダーシップを発揮した形跡はほとんど見られませんし、デフレ対策と同じように、この特区法案も担当者に丸投げしたと指摘されても抗弁のしようがないと思いますが、いかがでしょうか。一体、総理のリーダーシップは、どのような場面で、どのような形で発揮されたのか、具体的な説明をしていただきたいと思います。
 さらに指摘すれば、規制改革については、昭和五十七年三月に発足した第二臨調以来、再三提言されてきました。最近では、平成十二年三月に規制緩和推進三カ年計画を再改定し、十六分野にわたり千二百六十八項目の規制改革を進めているとのことですが、総務省行政評価局の資料によれば、省庁の許認可件数は、減るどころか逆にふえています。例えば、平成七年度は一万七百六十件、八年度は一万九百八十三件、九年度は一万一千三十二件、十年度は一万一千百十七件、十一年度は一万一千五百八十一件となっています。つまり、規制緩和をやっても、関係省庁が、自分たちの省益を守るためや業界の利益温存のために、新たな許認可項目を次々と設けたからです。ですから、一向に規制改革が進まないのです。
 したがって、今回の構造改革特区法案は、こうした規制改革のおくれをカムフラージュするための方便に使われるのではないか、あるいは、全国規模の規制緩和や撤廃に向けての動きをおくらせる隠れみのにされるのではないか、そんな懸念を抱かざるを得ません。むしろ、今やるべきは、関係省庁の省益や業界団体の圧力、これを徹底的に排除し、総理のリーダーシップのもとに、全国規模の規制緩和や撤廃、さらには地方分権を強力に推進させるべきだと思いますが、総理の御見解を伺います。
 もう一つ私が指摘するのは、これまで政府が鳴り物入りで進めてきた地方公共団体に対する経済活性化策がことごとく無残な結果に終わってきたという前科があるからです。例えば、昭和五十九年以来進めてきた高度技術集積都市、通称テクノポリス、昭和六十二年に成立した総合保養地域整備法、通称リゾート法、さらには平成四年に第三次行革審がまとめた地方分権特例制度、通称パイロット自治体構想など、すべてが失敗に終わっています。
 なぜ、見るも無残に失敗したのか。そこに長期的な哲学や理念がなく、その場しのぎの、場当たり的なびほう策に終始したからではないでしょうか。まして、それを推進した政治家も官僚も、だれ一人として失敗の責任をとろうとしていないことです。
 それらは、今回の特区制度とはシステムに多少の違いがあり、単純に比較はできないかもしれませんが、規制を緩和し、政府主導で行った経済活性化策という点では全く同じであります。にもかかわらず、過去の失敗を何ら反省することもなく、また同じ轍を繰り返すのではないかとの懸念を禁じ得ません。
 したがって、過去の失敗をどう反省し、この特区制度を総合デフレ対策の中でどのように位置づけ、また、どのような経済効果を上げようとしているのか、具体的な金額も予測しておられれば、総理並びに鴻池担当大臣にあわせてお答えをいただきたいと思います。
 今回の特区制度は、地方分権の推進という大きなテーマもあるわけですが、その観点からすれば、地域を限定した特区を設けるのではなく、規制している法律を廃止して、地方公共団体の特性や実情に応じて規制を条例にゆだねるという考えもあるのではないかと思いますが、鴻池担当大臣はどのようにお考えでしょうか、御見解を伺いたい。
 特区というのは、限定的、試行的な制度と位置づけているわけですから、本来ならば、もっと大胆な規制緩和を行ってもよかったのではないかと思います。例えば、今回の特区制度の大きな目玉とされていた学校、病院経営への株式会社の参入が見送られました。しかし、株式会社が学校や病院を経営することについては、条件をつけることにより実施が可能ではないかと思いますが、なぜ認められなかったのか、その理由を明らかにしていただきたい。さらに、今後、法改正を行って株式会社の参入を認める方向に行くのかどうか、今後の対応を含め、総理に答弁を求めます。
 また、特区法案が閣議決定された直後の記者会見で、鴻池担当大臣が、教育と医療の二点で私自身もすっきりしないと不満を口にしたとの報道がありますが、その発言の真意と、学校や病院経営への株式会社参入が見送りになったことに対する御見解と今後の対応をお伺いしたい。
 一方、農業分野への株式会社の参入要件は緩和されたものの、要望の強かった企業による農地の取得は、農業団体や自民党農水族の強い抵抗で見送られ、賃貸のみ認められています。しかし、特区ができた後も、地元農家や農協の代表から成る農業委員会の認可が必要とされますし、企業が使う農地も、将来にわたり耕作が行われる見込みがない土地に限定されるなど、当初案より大幅に後退しています。
 果たして、こんな内容で企業が農業に参入してメリットがあるのかどうか、非常に疑問を感じます。さきの郵政公社化法の信書便への参入で、あれほど参入に意欲を示したヤマト運輸が規制の厳しさに参入を断念したように、今回もまた民間が参入しなければ、特区制度はまさに絵にかいたもちになってしまいますが、なぜここまで後退したのか、あるいは、このような厳しい条件の中で民間が参入してメリットがあると考えておられるのかどうか、大島農水大臣の答弁を求めます。
 今回の特区法案の内容を一言で評価すれば、金融機関の貸し渋りと同じで、まさに、中央官僚による規制緩和と地方分権の出し渋りと言えます。これでは総理のリーダーシップはないに等しく、あなたが事あるごとに声高に言っている、改革なくして成長なしは、まさにスローガン倒れと言わざるを得ません。即刻、総理はこのスローガンを外すべきだと思いますが、どうお考えでしょうか。
 真の構造改革とは、中央から地方へ、官から民へ、これが鉄則であります。
議長(綿貫民輔君) 木下厚君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
木下厚君(続) それによって、地方や民間の創意工夫が生かされ、経済が活性化し、雇用創出や新規事業創出につながるわけですから、今回の特区制度については、地方公共団体や民間の要望をできるだけ反映させるような、柔軟で大胆な制度にする必要がありますし、要請があれば、地方公共団体等の熱意にこたえるためにも、特区地域はできるだけ多く認められるべきであります。
 その一方では、今回の特区制度が省庁や地方公共団体の既得権確保のために使われたり、族議員の圧力によって認可が左右されたりすることがないよう、チェック体制を強化すべきだと思いますが、総理の見解を求めます。
 最後に、大島大臣に伺います。
 去る十月二十四日の衆議院予算委員会において、あなたは、宮内前秘書官の住宅購入原資について、その一部は父親の遺産相続と母親からの生前贈与だと説明したものの、その贈与税については支払っていないことを認めていますが、その際、あなたは、宮内前秘書官の言葉として、これから払えるものなら調査して対処したい、こう言っておりましたと答弁しておりますが、その後、贈与税の問題についてどのように調査し、結果として税金を支払ったのかどうか、お伺いしたい。
 もし支払っていないとすれば、これは明らかな脱税であります。管理監督の立場にある大島大臣の責任は極めて重いと言わざるを得ません。大島大臣は、みずからの責任をとり、潔く辞任すべきです。大島大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 木下議員にお答えいたします。
 デフレ対策についてでございます。
 今般取りまとめた、改革加速のための総合対応策においては、不良債権処理の加速を含む金融・産業の再生策に加え、経済社会の活性化のための税制改革、資産デフレの克服にも寄与する証券・不動産市場の活性化、民間投資・消費を誘発する都市再生、潜在需要を喚起する規制改革など、構造改革の加速策を講ずることとしており、あわせて、雇用・中小企業のセーフティーネット策にも万全を期すこととしております。
 今後、これらの施策を具体化し、デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長を実現してまいりたいと思います。
 先行減税や補正予算の編成についてのお尋ねでございます。
 まずは、既存の予算を最大限に活用し、そこに盛り込まれた諸施策を早期かつ着実に実施していくことが重要と考えております。したがって、今国会に補正予算を提出することは考えておりません。
 税制改革につきましては、現下の経済情勢を踏まえ、一兆円を超える、できる限りの規模を目指した減税を先行させるとともに、財政規律の観点から、多年度税収中立の枠組みのもとで、全体を一括の法律案として次期通常国会に提出すべく検討を進めてまいります。
 いずれにせよ、今後とも、金融経済情勢に応じては、大胆かつ柔軟な措置を講じていく考えであります。
 なお、三十兆円枠についてでございますが、我が国の財政事情が厳しさを増している中で、財政規律を維持するため、一定の役割を果たしていると思います。
 今回の特区法案についてリーダーシップを発揮しているかという御質問であります。
 今回の特区制度の検討に当たっては、私を本部長とし、全閣僚を本部員とする構造改革特区推進本部が中心となって推進してまいりました。各大臣は最大限の指導力を発揮するよう、私から指示したところであり、各大臣が指導力を持って特区構想の実現に向けて取り組んでくれました成果が今回の法案であります。
 規制緩和は全国規模で行うべきではないかとの御意見であります。
 全国的な規制改革の実施については、さまざまな事情により進展が遅い分野があるのが現状であり、地域の特性に応じた規制の特例を導入する構造改革特区は、全国規模の規制改革の突破口となる有効な手段であると考えております。
 なお、本年十月十一日に構造改革特区推進本部で決定した構造改革特区推進のためのプログラムにおいては、労働者派遣関係の緩和、先進医療推進のための規制緩和など、全国で対応する事項も盛り込まれており、構造改革特区を推進することにより、特区のみならず、全国規模の規制改革についても着実な前進が図られているところであります。
 過去の失敗の反省をどう生かし、どのような経済効果を見込んでいるかとの御質問であります。
 特区制度を構築するに当たっては、国があらかじめモデルを示して全国の均衡ある発展を目指すという従来型の地域振興制度の発想から転換し、地方公共団体、民間事業者等が、それぞれの地域の特性に合わせて、規制改革を通じた構造改革を進めることができるよう、地方公共団体から幅広く提案を受け付け、これを制度構築の基礎としたところであります。
 特区において規制改革を進めることについては、民間参入が限定されていた分野について民間事業者の新規参入が進む効果や、地域特性を生かした産業の集積によって経済を活性化する効果など、潜在需要を喚起する効果が期待されるところであります。
 学校や病院経営への株式会社参入についてのお尋ねでありました。
 株式会社の教育及び医療分野への参入問題については、総合規制改革会議でも議論されているところであり、引き続き、関係者の意見も聞きながら検討してまいりたいと考えております。
 なお、木下議員独自の考えでございますが、民主党が、党として正式に、学校、教育分野に民間株式会社を参入させよと具体的な提案をしていただくならば、真剣に検討してまいります。
 今回の特区制度を柔軟で大胆な制度とし、特区地域をできるだけ多く認める一方、チェック体制を強化すべきとの御意見がありました。
 今回の特区制度においては、地方公共団体が地域の特性に応じた計画を作成し、内閣総理大臣がその計画を認定すれば、規制の特例措置が講じられることとしております。
 また、特区の認定に当たっては、法案に基づいて閣議決定される基本方針に適合すると認められる地方公共団体の計画は、内閣総理大臣がこれを認定することとしており、特区の数は限定しておりません。
 本制度は、地域の自発性に基づいて規制改革を行うものであり、規制当局の裁量により省庁や地方公共団体の既得権確保に使われたり、関係議員の圧力によって認可が左右されるといった御懸念は生じないものと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣鴻池祥肇君登壇〕
国務大臣(鴻池祥肇君) 私に対しましては、地方公共団体から要望のあったものについて認められなかったものの理由等について申せ、こういうことでございました。
 地方公共団体等から出された九百三項目の規制改革要望の中には、現行で対応可能なものや事実誤認のものも含まれており、これらを除けば三百四十五項目と相なります。このうち、特区として実施する九十三項目、全国で実施する百十一項目を合わせた二百四項目、すなわち、地方公共団体等の要望の約六割が、十月十一日の構造改革特区推進本部で決定されたプログラムに基づいて規制改革として実現することと相なりました。
 今回は特区において実施されなかった要望について、その理由を一概に述べることは困難でありますが、これらの規制改革要望については、引き続き、実現するためにはどうすればよいかという観点から検討を行っていくということでございます。
 このため、民間事業者、地方公共団体等からさらなる規制改革の要望を募ることとし、昨日より、来年の一月十五日を締め切りとした第二次の提案募集を開始したところであります。
 この提案募集では、新たな規制改革要望だけではなく、第一次の提案で実施されなかった事項についても再度提案を行うことを可能といたしているところであります。
 第二次の提案募集の結果も踏まえて、引き続き、特区における規制改革の充実に努めてまいります。
 過去のテクノポリス法等の評価、反省等の御質問がございましたが、この御質問に関しましては、既に総理よりお答えが出ておりますので、私の方からは省略をさせていただきたいと思います。
 次に、地方分権の推進の観点から、規制を定めている法律を廃止し、規制を条例にゆだねるべきではないかとのお尋ねがございました。
 今回の構造改革特区制度は、特定地域に限定して、その地域特性に応じた規制改革を実施することにより、地域の活性化及び経済社会の構造改革を図ろうとするものであり、御指摘のように、規制を定めている法律を廃止し、全国一律に規制を撤廃することは想定しておりません。
 しかしながら、特区において講じた規制の特例措置の成果については、一定期間の経過後、評価を行い、その結果を踏まえて、当該規制の全国的なあり方について見直しを図っていく必要があると考えております。
 教育と医療への株式会社参入見送りについての見解ということでございます。
 学校や病院への株式会社参入については、私自身も関係大臣に検討要請を強く行ったものでございますが、所管省庁や関係団体にさまざまな御意見があるということも認識をさせていただいているところであります。
 しかし一方、こうしたこれまで実行することが難しかった規制改革こそ、構造改革特区において先行的に実施してみる価値のあるものと私は考えておるところでございます。
 今後、引き続き、関係者の意見や第二次募集における提案等も踏まえて検討していきたいと思っております。
 以上のように、今後引き続き検討を要するものであるとの認識から、教育あるいは医療への株式会社参入についての記者会見での私の発言となった次第であります。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
国務大臣(大島理森君) 木下議員の御質問にお答えを申し上げます。
 大きく二点ございました。まず第一点は、構造改革特区における民間企業の農業参入についてのお尋ねであります。
 これにつきましては、地方公共団体等からの貸し付け方式や協定の締結など、地域との調和や農地の適正かつ効率的な利用を確保する仕組みの中で、現行の法人要件については適用しないという大幅な規制緩和を行っており、一般の株式会社の幅広い参入が可能となると考えております。
 仕組みにつきましては、何点か御指摘がありましたが、まず貸し付け方式については、幾つかの地方要望の中でも提案されているものでございまして、投機目的での農地取得等に対する懸念を払拭することが可能であると同時に、参入する法人にとりましても、初期投資が少なくて済むというメリットもあるとともに、公的な団体が貸し主であることから、安心して農業経営を行うことが可能であると思っております。
 また、農地の権利移動につきましては、現行制度でも農業委員会の許可制とされており、新たな規制を課すものではありません。
 さらに、本構造改革特区は、耕作放棄地や低利用農地が地区の相当程度存在すると認められる地域としておりますが、地域内の農地は、耕作放棄地に限らず貸付対象となり得るものであります。
 いずれにしても、本特区制度の積極的な活用により、企業を初め多様な法人の農業参入が行われ、農地の効率的利用や農外のノウハウの導入等を通じて、地域農業及び地域経済の活性化が図られるものと考えております。
 二点目でございますが、十月二十四日の予算委員会における答弁のうち、贈与税の修正申告のお尋ねであります。
 改めて、前秘書官に贈与税の修正申告をしたのかと厳しく問いただし、税務署に問い合わせたところ、期限後申告については、平成十三年三月十五日までに行わなければ制度上納付できないと言われたとのことでありました。
 私は、厳しく叱責をいたしました。このことに関して、前秘書官は、大変申しわけないと反省し、謝罪しておりましたが、今、改めて税務署に相談に行っているとの報告でございます。
 私の監督責任についてでございますが、私の責務は、今御指摘をいただいたことなど、また、御質問があったことなど、そのことに対し、厳しく本人から問いただし、そしてそのことに対してお答えすることにあると思います。
 私自身、政治生活に入って以来の生き方を振り返りながら、なお、みずからを律して職務に専念することが私の責務と考えております。
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 河合正智君。
    〔河合正智君登壇〕
河合正智君 公明党の河合正智でございます。
 私は、自由民主党、公明党及び保守党の与党三党を代表いたしまして、ただいま議題となりました構造改革特別区域法案につきまして質問させていただきます。(拍手)
 本法案は、構造改革特別区域の設定を通じ、経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与することを目的として制定するものとなっております。規制のあり方を、これまでの全国一律から、実験的かつ先行的に地域特有の規制のあり方へ転換するこの特区制度につきましては、経済の活性化を加速するとともに、地方主権の確立をも視野に入れたものであり、評価するものであります。
 とりわけ我が国経済は、今、非常事態ともいうべき極めて深刻な状態にございます。行き詰まった現状を打開し、新しい時代にふさわしい活力ある経済社会へ転換することは、喫緊の課題でございます。今こそ、強力なデフレ対策、不良債権処理、構造改革等の施策を一体化した総合的な経済対策を断行しなければなりません。
 さて、我が国におきます規制緩和は、一九七〇年代の石油ショックに始まる先進諸国の財政の悪化、経済グローバル化、フリードマンに代表される新自由主義による政府の介入を排除して自由な市場原理による小さな政府を目指した米国レーガン政権並びに英国サッチャー政権及びIMF等による国際的潮流を背景としました、いわゆる外圧によるところが大きいと言わざるを得ません。いまだ日本は、最も成功した社会主義経済国と言われる、規制大国の一つと言われるゆえんでございます。公的部門の縮小と民間部門の市場原理の拡大を中心とした「聖域なき構造改革」を掲げる小泉内閣が国民の高い支持率を得ている理由は、まさにここにあります。
 しかし、その先の将来像につきましては国民の安心があるとは必ずしも言い切れないことを各種調査は示しております。単なる市場原理は、弱肉強食であり、貧富の格差と社会不安を拡大し、対立と差別を生むという予感が国民にあるからだと私は考えます。
 ところで、私は、最近、綿貫議長の訪問団の一員として、ヨーロッパを訪問する機会を得ました。スウェーデンでは、一九九二年、バブル崩壊後直ちに、GDPの四・五%分、日本国に置きかえますると約二十三兆円の公的資金を投入し、不良債権処理を行い、健全化した経済のもと、十年かけて、今後五十年間は耐え得るという年金改革を既になし遂げておりました。
 市場原理主義ともいうべきアメリカ型資本主義に対し、単なる経済優先ではなく、人々こそがヨーロッパの必要な資産であると政策綱領にうたった二〇〇〇年三月のEU首脳によりますリスボン宣言に表明されております、人間の顔をした福祉重視型ヨーロッパ型資本主義による政治統合が進み、ヨーロッパは復興しているとの感を強くしたのでございます。
 そこで、私は、我が国におきまして、何のために、だれのために、何を、どのように改革するのかという確固たる国家戦略を示し、国民が安心できるビジョンを確立することと、それを実現するための具体的な行動計画を明らかにすることが必要と考えます。
 市場原理主義的な米国のあり方と、社会的な目的のために市場原理を活用すべきだとする欧州のあり方とを対比した上で、日本の改革のあり方について総理の見解をお示しください。
 本法案は、特定分野の特定地域に限定したものとはいえ、全国各地に埋もれた地域特有の潜在活力を引き出し、経済社会再生への突破口としての枠組みとなります。
 本法案に対する慎重論の一部には、一国二制度という、法律に例外を設けることになり、認められないとする声も聞かれますが、効果や弊害を検証しつつ、実験的に先行的に実施するのが、この特区制度でございます。
 反面、この制度の運用次第では規制緩和の突破口となり得るものだけに、既得権益からの抵抗も強く、本制度は成立しても空回りするのではないかと懸念する声も聞かれております。
 総理は、これら抵抗に屈することなく、強いリーダーシップを果敢に発揮して本法案の早期制定を期し、今後の取り組みに当たっても、本法の精神が最大限生かされるよう対処すべきであります。本法制定に際しまして、総理の基本的考えと決意を伺います。
 また、今回、厚生労働省関係において医療分野への株式会社の参入が見送られ、農業分野への株式会社の参入も制約された条件下で認められたことに対しまして、株式会社イコール悪と決めつけるのは間違っている、誤っているとの批判もなされております。加えて、特区における事業認定には各省庁の同意が必要とされておりますが、これは、各省庁に事実上の拒否権が残されたものであるとの批判がなされております。
 こうした一連の批判に対しまして、政府は広く国民に説明する責任があります。明確なる御説明を求めます。
 さらに、今回、全国の地方自治体から出された提案の中には、東アジアの歴史の十字路ともいうべき長崎県の離島対馬から、韓国旅行者のビザなし観光の実現、小中学校での韓国語教育の実施、民宿等の施設要件を緩和する旅館業法の適用除外等を内容とする国際交流特区の構想が提案されていることを初め、縄文杉の七千年の記憶を浮かべる島、鹿児島県の屋久島からは、島内のすべての自動車を水素燃料で走るクリーンな燃料電池車にいたしまして、化石燃料を一切使用しない、クリーンエネルギー社会屋久島モデル形成特区の構想、東京都足立区からは、職業紹介や教育、福祉など、これまで公的セクターが担ってまいりましたさまざまなサービスを民間に開放して産業、雇用の創出を図る生活創造特区の構想など、注目すべき提案が幾つもございます。
 こうしたすぐれた提案を最大限実現するために、今回の法案の中には具体的に受け入れられなかったものでも、次回の法改正の際に再度検討の対象に加え、実現を目指すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 また、来年一月十五日を締め切りとして第二次の提案公募がなされるとのことでございますが、地方や民間の思い切った提案を歓迎し、そのような意欲を最大限実現しようとする姿勢を政府が示す必要がございます。地方や民間から、これで日本が変わるのだといった目の覚めるような提案が続出するよう、総理、鴻池大臣が先頭に立ってその機運を盛り上げるべきであると考えます。
 あわせて、地方や民間の提案の受け入れ方針は、現下の一過性のものとして終えるのではなく、制度として確立するため、本法に基づく基本方針の中に明定すべきものと考えます。総理、鴻池大臣の所信をお聞かせ願います。
 もとより、特区を設置して経済活性化を促進する取り組みに当たりましては、民間企業の活力をどれほど引き出せるかということがキーポイントでございます。
 民間企業の活力を引き出すためには、国内におきましても、本年四月に施行されました沖縄振興特別措置法の金融・情報通信特区において、地域内に進出した金融機関には法人税軽減などの特典が付与され、また、本年六月施行の都市再生特別措置法の都市再生特区におきましては、民間事業者に、資金調達時の債務保証など、金融支援措置が講じられることになっております。
 本法案における特区制度には従来型の財政措置は講じないこととなっておりますが、ベンチャー企業の育成など産業再生関連の特区は財政措置がないと企業誘致が難しいとか、規制緩和だけでは効果が薄いといった指摘の声も少なくありません。本制度の実効性を高めるために、私としましては、ぜひとも、税財政上の支援措置の導入を検討すべきものと考えます。御答弁を求めます。
 なお、本案では、外交、防衛や刑法に関する特区は対象外となっております。規制改革の本来のねらいは、個人や企業の自由な市場競争を制限している経済的規制を緩和、撤廃することにより、競争力を高め、新産業の育成を促進したり、安全の確保や弱者保護を目的とする社会的規制の分野にありましても、実施主体が、それらを口実に既得権益を持つ者だけに制限されることがないように、多様な参入主体を認め、国民に満足のいくサービスが提供できるものにすべきと考えます。したがって、本案に定められた特区制度の対象となる規制は可能な限り幅広いものとすべきと考えますが、御見解をお示しください。
 他方、もろもろの規制の中にあって、むしろ規制を強化すべきものがあることも否定できません。例えば、現行の規制を強化したり新たな規制を設けるなどして伝統ある都市や町並みを保存することなどにより、いにしえの文化を学んだり都市や町の活性化を図ろうとするなど、国の一律の規制とは異なる新たな規制を導入して地域の活性化を図ろうとする考え方があってもおかしくないと思われます。
 仮に、こうした規制強化や規制の新設を行う提案がなされました場合には、この法案の対象となるのかどうか、どういう扱いになるのか、御見解をお伺いし、私の質問とさせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 河合議員にお答えいたします。
 国家戦略ビジョンとそれに向けた取り組みについてでございます。
 私は、就任以来、戦後の経済発展を支えてきた仕組みが、現在の時代の変化に対応できず、二十一世紀の社会に必ずしもふさわしいものとなっていない、こういう認識のもと、このような状況を打破するため、経済、財政、社会、各分野における構造改革が必要だと思っております。
 このような構造改革が目指すのは、我が国の人材、自然、歴史など、多様な資源を生かし、知恵と工夫で、個人や企業、地方や国そのものが、持てる潜在力を十分発揮できる社会の実現だと思います。その際には、効率的な市場原理を一層導入しつつも、我が国の経済社会システムのよい面を生かしながら、二十一世紀の我が国にふさわしい活力ある豊かな社会を構築していくことが重要であると考えております。
 法案の早期成立に向けた基本的考え、また、決意についてでございます。
 構造改革特区は、官から民へ、国から地方へという小泉内閣の構造改革をさらに加速させるための一つの突破口となるものと思います。
 特区制度を構築するに当たって地方公共団体等から募集した特区構想数は、二百四十九の提案主体から、四百二十六件にも上りました。
 私は、このような地方や民間の知恵と意欲をしっかりと受けとめ、地方公共団体の自発性を最大限に尊重し、構造改革を推進することによって日本経済を活性化させるため、法案の早期成立と、今後、さらなる充実に向けて全力を挙げて取り組んでまいります。
 また、地方や民間の提案の受け入れが一過性のものとならないよう、特区において講ぜられる規制の特例措置を定期的に加えていくことを基本方針に明記したいと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣鴻池祥肇君登壇〕
国務大臣(鴻池祥肇君) 医療分野への株式会社参入の見送り、農業分野への株式会社参入が制約されたことについてのお尋ね、また、計画の認定に各省庁の同意が必要とされているのはなぜか、こういうお尋ねでございました。
 私も、先ほど申し上げましたように、医療分野への株式会社参入につきましては、先行的に実施してみる価値があるものと今も考えております。
 厚生労働省との折衝も私自身行いましたけれども、医療分野への株式会社参入にはさまざまな問題があるとの立場でございます。今後、さらに検討していく項目として位置づけております。関係者の意見や第二次募集における提案等も踏まえて検討していきたいと思っております。
 農業分野への株式会社参入について、ある一定の条件下で認められたことについては、投機目的での農地取得等に対する懸念を払拭するためであり、また、参入する法人にとっても初期投資が少なくて済む等のメリットがあると理解をいたしているところであります。
 総理大臣が計画を認定する際に、個別規制については関係行政機関の長の同意を必要としていますが、規制の特例を受けることの必要性及び要件適合性等については地方自治体の判断が尊重され、要件に適合しておれば、関係行政機関の長は原則として同意するものであります。
 自治体の提案で今回実現できなかったものも、次回の法改正の際に再度検討し、実現を目指すべきであるとのお尋ねがございました。
 今回、地方自治体等から提案された九百三の規制改革項目のうち、特区として実現するもの及び全国で実施するものは全部で二百四項目でありますが、これ以外のもののうち、現行制度で対応可能なもの及び事実誤認のものや財政措置に関するものを除いた百四十一項目については、引き続き検討するものといたしております。
 この百四十一項目については、昨日募集を開始いたしました第二次募集で新たに提案される事項とともに、実現するためにはどうすればいいかという方向で検討していただくよう、関係大臣に一層のリーダーシップを発揮していただくことについて、本日の閣僚懇談会で要請をいたしたところであります。
 今後も、引き続き、地方自治体や民間の提案を最大限実現する方向で構造改革特区の推進に努めてまいります。
 特区制度をさらに盛り上げるべきとの御激励をいただきました。
 特区制度については、さらに充実したものとすべく、第二次提案公募については、平成十五年一月十五日を締め切りとして、昨日、募集を開始いたしております。
 私も、担当大臣として、地方自治体や民間団体に対して積極的にPRを行い、必要があれば地方にも出向くなど、全国から目の覚めるような、すばらしい提案が数多く出るよう努めてまいります。
 また、地方や民間の提案を受けて規制の特例措置を追加していくことを制度化することは、総理の答弁にございましたように、法案に基づく基本方針に盛り込んでいく所存であります。
 特区制度に税制上の支援措置の導入を検討すべきではないかという御発言でございました。
 構造改革特区は、国から地方へ、官から民へという流れの中で、地方の自助と自立の精神を尊重して、地方が自主性を持って、知恵と工夫の競争による活性化を図るものであります。
 したがって、構造改革特区推進本部で決定した基本方針においても、構造改革特区に対して従来型の財政措置を講じないことといたしております。
 本法案に定められた特区制度の対象となる規制は可能な限り幅広いものであるべきであるとの御発言でございました。
 まさにそのとおりと存じます。本法案におきましては、十月十一日に決定いたしました構造改革特区推進のためのプログラムに基づき、経済的規制を初めとして、教育、社会福祉、労働等、幅広い分野を対象としております。
 最後に、伝統ある都市あるいは町並みなどの保存について規制の強化というものが必要ではないかというお尋ねでございました。
 今回の制度においては、規制の強化や規制の新設を行うことも可能でございます。ただし、構造改革特別区域において規制を強化する等の特例措置を講じようとする場合には、新たに権利の制限を行うことになるため、より慎重な検討が必要であります。
 いずれにいたしましても、伝統ある都市や町並みの保存というものは、重要性を住民一人一人が認識して、行政も一体となって取り組んでいくことが必要であろうかと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 高橋嘉信君。
    〔高橋嘉信君登壇〕
高橋嘉信君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました構造改革特別区域法案について質問いたします。(拍手)
 冒頭に、一言申し上げます。
 かつて、自由党が中心となって、政府委員制度の廃止や副大臣等の設置、党首討論のための国家基本政策委員会の新設を柱とした、国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律を制定しましたが、その際、自民党の強い要望により、総理大臣が本会議や予算委員会に出席した週は国家基本政策委員会を開催しない、ただし、「党首討論と重要広範議案の本会議への総理出席は、重複にこだわらず弾力的に運用する。」との申し合わせがなされました。
 その後、自民党は、この申し合わせを盾にして、自由党を初め我々野党が党首討論の開催を求めても、総理が本会議に出席したから今週は党首討論を開催しないと、幾度となく拒否したのであります。
 ところが、今回は、構造改革特別区域法案について野党が慎重審議を求めていたにもかかわらず、与党は、一昨日の党首討論と昨日の総理出席の本会議に続いて、本日の本会議を強引に開催したのであります。
 もちろん、我々も、いたずらに本法案の審議入りをおくらせる気はありませんが、与党が党利党略むき出しで国家基本政策委員会や総理出席本会議の開催に関する申し合わせ事項を都合がいいように運用し、本会議等の国会運営を勝手に行うことは、断じて容認できません。与党の猛省を求めます。(拍手)
 さて、小泉総理が唱える構造改革が言葉だけで全く実体がないばかりか、日本社会を悪い方向に導くものであることを如実に示したのが、今回提出された構造改革特別区域法案であります。
 ピンぼけ答弁、お遊び答弁は今やすっかり小泉総理の専売特許になっていますが、今度はまたまた、とんでもない勘違いをやってくれました。
 総理は、どうも、日本は中華人民共和国と同じ社会主義国だとお考えのようであります。官僚による規制社会は確かに社会主義的ではありますが、だからといって、我が国において中国と香港のような一国二制度を認めるというのは、ピンぼけと言わざるを得ません。
 そもそも、構造改革特別区といえば、まず連想されるのは経済特別区であります。諸外国の例を見ても、経済特別区ならば、国や地方公共団体がその対象となる区域において税制優遇や規制の大幅な緩和などを行うため、企業誘致の促進や産業の育成が見込まれ、その結果として、特定地域については経済開発に効果があると思われます。しかし、これは、先述のように、あくまでも旧共産圏の国々や開発途上国等が経済発展の手段として用いることが多い手法であり、先進国で実施している国においても、一国二制度となることから、ごく特定の地域に対し時限的に限定して行っている制度であります。
 一国二制度ですら、法のもとの平等という観点から考えると非常に問題が多い制度でありますが、本法案によると、一定の要件を満たせば構造改革特別区が認められるため、数多くの構造改革特別区域が日本に乱立することになります。
 しかも、この構造改革特別区域は、必ずしも地方公共団体を単位としなくてよいことや、住民投票を要件としていないため、国民の多くは自分の居住地域がどのような構造改革特別区域になっているかもわからず、社会が大混乱になるおそれすらあります。
 一つの国の中に無数の構造改革特別区域が生じることは、極めて問題があり、容認できるものではありませんが、総理の見解を伺います。
 また、本法案で定義される構造改革特別区域は、経済特別区域のような経済効果が期待できるものではありません。
 小泉総理は、先般の所信表明演説で、「日本経済を活性化させる大きな柱として、構造改革特区を実現します。規制は全国一律という発想を、地方の特性に応じた規制に転換します。四百を超える提案に示された知恵と意欲をしっかり受けとめて、教育、農業、福祉などの分野で思い切った規制改革を実行します。」と述べ、今回の法案を提出しましたが、百歩譲って特別区が必要だとしても、予算と税制に関することに一切触れないまま、特定の地域においてのみ一部の法律、政省令、通達の規制緩和を行うことが日本経済の活性化へ向けた大きな柱になるとは、到底思われないのであります。
 一体、この法案は、日本の構造改革、経済成長、規制緩和の何を目的としているのでしょうか。これはまさに、小泉総理の唱える構造改革というスローガンに対して、官僚がつじつま合わせのためにやむなく作成した法案と断ぜざるを得ませんが、総理の見解を伺います。
 また、今回の法律では、国が特定の法律、政省令、通達について規制の特例措置を講じることとしています。そして、地方公共団体が構造改革特別区域の範囲、規制の特例措置及び特例措置を適用する事業の内容等の計画を作成し、これが政府作成の構造改革特別区基本方針の要件を満たせば、構造改革特別区域となり、規制緩和が認められるとされていますが、さきに述べたように、この構造改革特別区域は、対象区域についても制限がなく、また、対象となる法令等も無数にあるため、国内で数多くの異なったルールの区域が生まれることとなり、法のもとの平等に反することになります。
 そもそも、法律、政省令、通達というのは、日本における国民が平等なルールのもとで社会経済活動を行うために国が統一的なルールとして制定しているものであり、原則として全国一律でなくてはならない性格のものであるべきです。地方公共団体が申請すれば特定の地域について規制緩和を認めるというのは、規制緩和の趣旨を取り違えた考えであり、原則は、不要な法律等を改正、撤廃し、規制緩和すればよいだけの話であります。(拍手)
 本法案は直ちに廃案とし、逆に、本法案で対象とされている法案等を廃止、改正して規制緩和を行うことが筋論であると考えますが、総理の見解を伺います。
 なお、もとから本法案は議論するにも値しない、日本社会を混乱させるだけの本末転倒の内容となっていますが、本法案の策定過程や法律の中身を見ると、日本の社会が旧態然とした中央省庁主導の政策決定システムのもとに置かれており、規制改革とは名ばかりであることが如実にあらわれております。
 今回の法案を策定する前提として、内閣に設置された構造改革推進本部において、各地方公共団体から約四百余りの提案を受けたと言われていますが、対象となる法律、政省令、通達のすべてが省庁間協議によって取捨選択されたために、官僚等の抵抗により除外された項目も数多くあります。
 また、地方公共団体が構造改革特別区域を申請する際に、各省庁が特別区の内容が現行制度で実現可能かどうかについて速やかに回答する制度を設け、地方公共団体からの申請がスムーズにいくかのごとき印象を与えていますが、規制緩和のための具体的な個別分野においては、地方公共団体が策定する計画の是非に対して、各省庁に裁量余地を残す前提条件が数多く残されているのであります。これでは、各省庁が事実上の拒否権を持っていると言っても過言ではありません。
 政府は、この法案で、地方公共団体がみずからの考えで独自の町づくりが可能となり、日本経済が活性化するとうそぶいていますが、結局のところは、中央主導のコントロールによる部分的な地方分権にすぎないのであります。この点について、総理及び総務大臣の見解を伺います。
 最後に、一言申し上げます。
 小泉総理の提唱する構造改革特区構想は、今まで述べたように、考え方そのものが論外であり、間違っております。本来ならば、全国どこでも民間の力が自由に発揮できるようなルールを定め、経済の原動力を培うべきであります。規制撤廃の本旨を間違ってはいけません。
 自由党は、既に、民間の経済活動が自由に公正な競争のもとに行われ、かつ、何人にも開放されるべきであるとの理念に基づき、経済活動における自由な競争の促進と経済の活性化を図ることを目的とした、民間の事業活動の規制の廃止等に関する法律案を提出しております。この自由党案こそ、日本の真の構造改革に向けた第一歩となります。政府提出の本法案を早急に撤回し、自由党案を丸のみして出し直すよう求めます。(拍手)
 自由党は、旧来の中央主導の管理及び談合型のシステムを打破し、規律ある自由とルールに基づき、多様な選択肢の中から国民がみずからの判断でみずからの生き方を追求できる、国民が主役の社会を構築するために全力を尽くすことを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 高橋議員にお答えいたします。
 法案の目的についてのお尋ね、また、構造改革特区は一国二制度となり問題ではないかとの御指摘であります。
 経済の活性化のためには、規制改革によって民間活力を最大限に引き出すことが必要ですが、全国的な規制改革の実施は、さまざまな事情により進展が遅い分野があるのが現状であります。
 構造改革特区は、規制は全国一律でなければならないという考え方から、地域の特性に応じた規制を認めるという考え方に転換を図り、地域の実態に合わせた規制改革を通じ、それぞれの地方が知恵と工夫の競争による活性化を目指すことで、全国に多様な構造改革特区の実現を目指すものであり、全国規模の規制改革の突破口となる有効な手段であると考えているところであります。
 なお、地方自治体が作成した計画が特区として認定された際には公示を行うこととしており、さらに、当然のことながら、各地方公共団体においても住民に対し必要な周知が図られることとなり、住民が居住地域がどのような特区になっているかわからないという、御指摘のような事態は生じないと考えております。
 特区法案は中央主導による部分的な地方分権にすぎないという御指摘でございます。
 地方公共団体の計画については、地方の提案を最大限実現する観点から、内閣総理大臣が一元的に判断することとしております。
 また、内閣総理大臣が地方公共団体の計画の認定を行うに際して、関係行政機関の長の同意を得ることとしておりますが、これは、あらかじめ法令等に定める内容に適合する場合は関係行政機関の長の裁量の余地なく同意がなされるものであります。
 以上のように、本法案においては、地方公共団体の提案を最大限生かすような措置を講じているところであり、御指摘の、中央主導による部分的な地方分権との御指摘は当たらないものと考えます。
 政府は、構造改革特区法案を撤回し、自由党提案に賛成すべきだという御意見がございました。
 個別の規制に関するさまざまな事情や背景を考慮することなく、一律に三年以内に民間事業活動に関する規制を廃止することなどを内容とする自由党提案の民間の事業活動の規制の廃止等に関する法律案は、現実性に欠けるものと考えております。
 いずれにせよ、政府としては、本法案に基づいて構造改革特区を推進することによって全国規模の規制改革の突破口とするなど、全国規模においても着実に規制改革を進めていく考えであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 高橋議員から、私にも質問がございました。
 特区法案は中央主導による部分的な地方分権にすぎないのではないかと。
 総理のお答えですべて尽くされておりますけれども、全国的な規制緩和、規制改革ができれば一番いいのですけれども、いろいろな問題がある、困難がある場合に、地域的に、地方団体が手を挙げたものについて規制改革の実験をやってみる、それを規制改革全般の突破口にするというのは、私は、大変すばらしいアイデアではないか、こう考えております。
 そこで、内閣総理大臣が一元的にやるのですけれども、各省庁の大臣の同意を得る、これで各省庁の裁量が働くのではないかと。
 それは、総理の答弁のように、法令なり政令、省令で、規制改革をこうするということを書いているわけですから、その書いている要件に地方団体の申請が合っているかどうかのチェックをするだけなんですよ。裁量の余地なんか全く働かないような仕組みになっておりまして、私は、全体として、この制度は地方の自立と活性化のために必要なシステムである、方法であると考えております。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 吉井英勝君。
    〔吉井英勝君登壇〕
吉井英勝君 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました構造改革特別区域法案について、小泉総理に質問いたします。(拍手)
 初めに、今なぜ構造改革特区なのかということについてお聞きします。
 政府が閣議決定した構造改革特区推進のための基本方針では、全国的な規制改革の実施はさまざまな事情により進展が遅い分野があるのが現状である、構造改革特区の導入により全国的な構造改革へと波及して我が国全体の経済の活性化を図るとしています。
 特区で規制緩和しようとしている内容は、これまで政府が全国一律で規制緩和を行おうとしてきたものとほとんど同じです。
 総理に伺いますが、この法案は、政府の思うように進まない規制緩和を進めるために、一点突破し、全国に全面展開させる役割を持たせるということですか。
 政府の総合デフレ対策は、今後、規制緩和を進める分野として、福祉、教育、農業、医療を挙げています。これらの分野の規制緩和策の中心は、各分野への利潤追求第一とする株式会社の全面参入です。
 規制緩和を進める政府の総合規制改革会議の中間取りまとめでは、規制緩和の対象を、生命・身体・健康、公序良俗、消費者保護等に関する規制であるという理由によって対象外とすべきではないことを強調し、強引に国民の安全や健康を守る規制緩和に切り込もうとしていますが、こんなことを許すことはできません。
 医師会の代表が、生命・身体・健康を犠牲にしても経済活性化を図るという考え方については、我々は容認できず断固反対していくと述べているのは当然であります。
 総理、あなたは、国民の生命・身体・健康を守るべき規制に対しても規制緩和を推し進めるのですか。
 規制緩和については、我が党は、古い、実情に合わない規制を廃止するのは当然、同時に、国民の世論や取り組みで生み出した規制のルールは守るべきであり、さらに、ヨーロッパなどに比べてもおくれている必要な規制は強化を図るべきであると考えています。
 さて、この法案の目的は、地域に構造改革特区を設定し、教育や農業、社会福祉などの規制の特例措置を適用させて、地域の活性化、国民生活の向上を図ることとしています。
 しかし、政府が言うように、規制緩和を推進することで、経済を活性化させ、国民生活を向上させることができるのでしょうか。それどころか、今、国民生活や地域経済の中では、規制緩和万能主義の弊害があらわれているのではないでしょうか。
 土地開発や大型プロジェクト建設を促進させた立地規制や建築基準等の規制緩和、廃止は、不動産投機をあおり、バブルを招きました。また、米国と大企業の要求で進めてきた大店法の規制緩和、廃止によって、地域社会を支えてきた地域商店街が次々と姿を消しました。さらに、必要な規制のルールもないままに、外為法などの規制緩和によって、大企業は無秩序に海外進出し、国内産業を空洞化させました。労働法制では、職安法や労基法の規制緩和で、失業者、不安定雇用者を増大させ、最悪の雇用情勢を招きました。
 総理、政府が進めてきた規制緩和万能主義は、国民の中に失業の増大、福祉切り捨て、貧富の格差の拡大をもたらしてきたのではありませんか。構造改革特区法は、こうした規制緩和万能主義をさらに進め、国民生活と地域経済に打撃を与えることになるのではありませんか。
 第二に、構造改革特区の仕組みと問題点について伺います。
 構造改革特別区域は、地方自治体が計画を作成し、総理大臣に申請し、認定を受けることになっています。特別区域内で事業を行う企業等の実施主体は、地方自治体に計画の提案ができるようになっています。
 この特別区域の範囲ですが、県、市町村だけでなく、それ以外に、特定の地域、あるいは事業を実施する企業の敷地だけを特別の区域にすることも可能なのですか。そうだとすれば、極めて特定企業に偏重した仕組みではありませんか。
 政府は、特区の申請は地方の自主性で行うことを強調しています。しかし、十月十一日の経済財政諮問会議では、ある委員が、一回目の地域分布を見て空白の多いところは国会議員に直接指示をするなど各地で満遍なくやれということが発言され、これに対し、鴻池大臣は、御指摘を十分勉強すると答えています。
 これまでの提案内容が、これまでから経団連などが要求してきた内容と同じものが多いということを考えると、見逃すことはできません。こうした発言をする人が特区制度を検討しているということ自体、驚きであります。総理、特区申請の地方の自発性というのは建前で、裏では国会議員に地方を指示するようにさせるものなんですか。伺いたいと思います。
 次に、構造改革特区と巨大プロジェクト推進との関係です。
 政府は、特区について、従来型の財政措置は講じないとしています。ところが、国土交通省の来年度予算概算要求では、構造改革特区を支える基盤整備のために必要となる連携事業を強力に推進するということを目玉として予算要求を出しています。つまり、特区指定されたところの連携事業に予算を重点的に配分するというものです。総理、これでは特区が従来型の巨大プロジェクト推進と一体で進められるものではありませんか。
 実際に、愛知県の三河港国際自動車特区構想について見ると、自動車企業が集積している三河港地域で、各企業の共同化により輸出入基盤整備を行い、流通機能を高めようというものです。この特区構想が実際の経済活性化に結びつくためには、大量の完成自動車や、部品の大量輸送にとって欠かせない、流通基盤の大規模整備を行う必要があります。この整備のための自治体の負担も重くなります。特区が自治体財政をさらに危機に追い込むことになるのではありませんか。明確に答えていただきたいと思います。(拍手)
 第三に、政府が構造改革特区法などによって強力に進めようとしている規制緩和の内容について、順次質問いたします。
 まず、農業特区についてです。
 地方自治体から農業への株式会社参入という要望が出されているのは、高齢化、担い手不足などで耕作放棄に歯どめがかからず、地域農業維持のために特区に活路を見出そうと考えているからであります。
 しかし、農村地域をここまで追い込んでしまったのは、牛肉、オレンジ、米などの農産物輸入の自由化と減反政策の押しつけであり、さらに、大商社などの開発輸入で農業経営の基盤を破壊してきたからであります。それを正さずして、どうして農村地域の活性化が実現できるのでしょうか。
 そもそも、農地法第一条は、農地はその耕作者みずからが所有することが最善であるという、耕作者主義を基本理念としています。農地の権利を取得できるのは、みずからその農作業に常時従事する者に限定されているのです。この耕作者主義こそ、戦後の農地改革の成果を引き継ぎ、耕作者の土地所有と権利保護を目的とし、戦後日本農業の発展の土台となってきた大事な原則であります。
 今回の特例によって株式会社に農地の権利取得を容認することは、こうした農地法の根本理念を否定するものではありませんか。しかも、耕作者主義は農地転用規制の土台となっており、耕作者主義の否定は、権利転用規制の根拠を失わせることになります。これでは、農地の一層の荒廃につながるのではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 また、現在、遊休地となっているのは、飛び地や耕作条件が悪い場所がほとんどです。こうした農地を、営利性を重視する株式会社が借りるでしょうか。むしろ、一般農家とは比べものにならない資本力を持つ大企業が農業に参入すれば、耕作条件がよい農地は大企業に集中し、小規模農家は優良な農地から締め出されてしまうのではありませんか。
 さらに、株式会社の農業参入によって、小規模農家は、株式会社との価格競争で一層の苦境に追い込まれます。例えば、株式会社カゴメは、和歌山県で四十ヘクタールの土地を借り受け、アジア最大のトマト温室をつくる計画を進めています。カゴメは、この計画実現により、十カ月間連続収穫、年間六千トン生産、三十億円の売り上げを目指しています。政府は、日本の農業を支えている小規模農家を大企業との弱肉強食の競争にほうり込もうというのでしょうか。
 商業の分野でも、大規模店舗の新設、変更手続の一層の緩和が認められています。
 政府は、大規模小売店舗法を改悪、廃止し、多くの中小零細商店と地域商店街に大打撃を与えてきました。今日の地域経済の危機と地域社会の崩壊の要因をつくり出しました。まさに、大型店規制の改悪で活性化したのは一部の大型店だけではありませんか。これ以上の規制緩和は、ただでさえ深刻な地域経済を一層深刻化させるのではありませんか。
 教育の分野では、幼稚園の空き教室がふえたことを理由に、学校教育法で定めている幼稚園入園年齢を満三歳から年度内に三歳になる年齢に緩和する特例が認められています。
 しかし、現行の学校教育法で教育年齢を満三歳としていることには、一定の科学的、医学的根拠があります。これに問題があるというのであれば、相応の科学的、医学的根拠を示すのが当たり前ではないでしょうか。空き部屋が生まれて営業上の困難があるからとの理由で、なし崩しに入園年齢の例外を設けるのは、教育とは何かという基本姿勢を欠いたものと言わざるを得ないのではありませんか。
 福祉の分野では、特別養護老人ホームへの株式会社の参入が認められています。
 そもそも、従来、長い間、福祉や医療の分野について、目先の利益を最優先する株式会社の参入が制限されてきた理由はどこにあるのですか。福祉の増進と営利の追求とは根本的に矛盾するからではありませんか。
 とりわけ、特別養護老人ホームについては、十年以上前から株式会社の参入を認めるべきだという主張があったにもかかわらず、厚生労働省や与党も含めて、株式会社参入を認めないという立場を一貫してとってきたではありませんか。
 それは、老人福祉の分野は、老後を安心して過ごすための長期で安定したサービスが何より大切であり、目先の利益を最優先する株式会社の活動にはなじまないからにほかなりません。今になって特別養護老人ホームへの株式会社の参入を認める根拠は何ですか。明確な答弁を求めます。(拍手)
 政府は、特別養護老人ホームへの株式会社参入を認める理由の一つとして、介護保険の世界では、在宅介護においては主体制限を行っておらず、ホームヘルプ事業等では株式会社の参入は自由であること、これを挙げています。
 しかし、介護保険発足直後、コムスンという株式会社が全国展開しましたが、その後、採算が合わないことがわかると一気に撤退するという事態が起きたではありませんか。今回の特別養護老人ホームへの株式会社参入によって同様の事態を引き起こすおそれはないのか、総理の明確な答弁を求めます。
 今、国民の雇用や中小企業の営業を守り、日本経済を地域から再生させる上で必要なことは、規制緩和万能主義でなく、大企業の横暴から国民生活を守る民主的ルールをつくることではありませんか。
 最悪の雇用状況を改善するには、労働基準法を改正し、長時間過密労働を改善し、不当な解雇を規制する解雇規制法の制定です。下請中小企業も地域経済も無視した、大企業の海外移転と国内産業の空洞化の規制です。これらは、ヨーロッパではEU理事会が採択した社会労働憲章に盛り込まれている内容であり、国際的には当然の社会的ルールであります。
 地域経済を守るためには、アメリカの地域再投資法のように、中小企業の資金需要にこたえる地域金融活性化法案の実現であり、不良債権処理の加速で倒産、失業をふやしてデフレを加速するという、この政策を転換することではありませんか。
 私は、人間の尊厳を守る民主的ルールの確立に全力を挙げて取り組む決意を表明して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 吉井議員にお答えいたします。
 法案の目的についてです。
 経済の活性化のためには、規制改革によって民間活力を最大限に引き出すことが必要ですが、全国的な規制改革の実施は、さまざまな事情により進展が遅い分野があるのが現状であります。
 こうしたことを踏まえ、地方公共団体の自発性を最大限に尊重し、地域の特性に応じた規制改革を推進することによって日本経済を活性化することが、本法案の目的であります。
 国民の生命・身体・健康を守るべき規制に対しても規制緩和を進めるのかとのお尋ねであります。
 現在、政府が進めているのは、単なる規制緩和ではなく、生活者、消費者本位の経済社会システム構築と経済の活性化を同時に実現する体系的、包括的な規制改革であります。
 福祉、教育、農業、医療の分野においても、規制改革を通じて、利用者の選択の拡大や利便性の向上が期待されるとともに、新しいサービスが創出されることにより、雇用機会の増大にもつながることが考えられるところであります。
 政府としては、国民の生命、身体などの安全確保について、当然ながら十分に配慮しつつ、必要と考えられる規制改革については、今後とも積極的に取り組んでいく考えであります。
 構造改革特区法案は国民生活と地域経済に打撃を与えるのではないかという御指摘であります。
 経済の活性化のためには、規制改革を行うことによって、民間活力を最大限に引き出し、民業を拡大することが重要であります。
 構造改革特区は、このような規制改革を地方公共団体や民間事業者等の自発的な立案により進めるものであり、さらに、地方公共団体の計画を内閣総理大臣が認定する際には、その計画の実施が適切な経済的、社会的効果を及ぼすものであることを要件としており、地域の活性化を目的としているものであるため、御指摘のような懸念は生じないものと考えております。
 特別区域の範囲について、企業に偏重した仕組みではないかとの御指摘です。
 構造改革特別区域の対象となる区域については、地方公共団体がみずからの判断に基づき、当該地域の活性化を図るものとして設定することとしております。また、対象となる分野も、産業分野に限らず、教育分野、社会福祉分野など、国民生活の向上に資するものも含め、幅広い分野を対象としているところです。
 したがって、構造改革特別区域が極めて企業に偏重した仕組みであるとの御指摘は当たらないと考えます。
 特区申請の自発性は建前で、裏では国会議員が地方を指示するのではないかという御指摘であります。
 構造改革特区制度の構築のため、八月に全国より提案を求めましたが、地域の特性に応じたさまざまな分野で、四百二十六もの提案がありました。これらの多くは、地方自治体の知事、市長が熱心に陣頭指揮をとったものであり、地方の熱意を感じるものであります。かかる地方の提案にこたえるためにも、特区制度を積極的に推進してまいります。
 特区が従来型のプロジェクトと一体として進められ、自治体の財政をさらに危機に追い込むことになるのではないかとのお尋ねであります。
 構造改革特区においては、地域の自助と自立の精神を生かすため、国として従来型の財政措置は講じないこととしております。一方、地方公共団体が自発的に各省庁の予算を効率的に活用することにより、より地域の活性化の効果を高めようとすることを否定するものではありません。
 なお、御指摘の国土交通省の来年度概算要求につきましては、複数の公共事業間の連携に対して一層弾力的に対応することを主眼として要求しているものであり、特区と従来型の巨大プロジェクトを一体的に進めるためのものではありません。
 また、特区になることによって新たに財政負担が生じるかどうかについては、地方公共団体が自発的に作成する計画次第であり、まさに、地方公共団体の知恵と工夫が試されるものと考えます。
 農業政策のあり方、株式会社の農業参入に伴うさまざまな懸念についてのお尋ねであります。
 農業政策については、本年四月に公表した、食と農の再生プランの着実な進展を基本として、まず、食の安全と安心を確保するとともに、米政策の再構築、担い手の育成、農地制度の見直しなど、農業の構造改革を加速化し、さらに、農山漁村で人々が誇りを持って生きていくことを基本とする農村政策を展開するべく積極的に取り組んでいく考えであり、今般の株式会社などに農業への参入を認める措置については、担い手不足により農地の遊休化が進行し、農地の荒廃という状況に直面している地域において、特例的に行うこととしております。これは、農地法のいわゆる耕作者主義という基本的な考え方を変更することなく、むしろ、農地の荒廃という問題に積極的に対処しようとするものであります。
 また、今回の特例措置により企業等が参入するに当たっては、地域との調和や農地の適正かつ効率的な利用を確保することとしております。これにより、地域の農家に及ぼす影響についても適切な配慮がなされるとともに、農地の効率的利用が促進され、地域農業及び地域経済の活性化が図られるものと考えております。
 大規模小売店舗立地法の特例についてのお尋ねであります。
 本特例の活用に当たっては、都道府県があらかじめ関係市町村と協議するとともに、住民等に説明し、意見を聴取した上で申請を行うこととしており、関係者の意向を反映させることが可能となっております。
 本特例は中心市街地を対象としており、大型店の退店などにより疲弊が進んでいる中心市街地にとって、手続の簡素化により大型店の迅速な出店や空き店舗対策が促進され、地域経済の活性化に寄与するものと考えております。
 幼稚園の入園年齢の特例についてのお尋ねです。
 今般の幼稚園入園年齢を緩和する特例措置は、少子化や核家族化などにより幼児が他の幼児とともに活動する機会が減少している地域などにおいて、幼稚園教育を通じて幼児の社会性の一層の涵養を図るために実施することとしたものであります。
 こうした特例措置を実施することにより、集団生活の中で幼児の心身の発達を促すという幼稚園教育の目的を維持しつつ、むしろ、地域の実情に応じた幼児教育の活性化を図ることができるようになるものと考えております。
 特別養護老人ホームへの株式会社参入についてでございます。
 現在、特別養護老人ホームの経営主体としては、自治体と社会福祉法人のみが認められているところですが、今回、自治体からの提案もあり、有料老人ホーム等について既に株式会社の参入を認めていることなども踏まえ、特区においてこれを認めることとしたものです。この特例措置により、特別養護老人ホームが不足している地域での整備の促進の効果が期待されるものと考えております。
 また、自治体が十分関与できる公設民営方式とPFI方式に限って参入を認めることとしており、御指摘のような事態は生じないものと考えております。
 国民生活を守る民主的なルールをつくる必要性等についてのお尋ねがありました。
 我が国経済の活性化のためには、各分野における構造改革を進め、労働や資本等の経済資源を有効に活用していくことが不可欠であり、こうした課題を実現していくに当たっては、規制改革の推進が不可欠なものであると考えております。
 同時に、雇用の安定、産業空洞化や中小企業等に対する対応も極めて重要な課題と認識しており、先般取りまとめた、改革加速のための総合対応策においても、雇用や中小企業のセーフティーネットの拡充、産業・企業再生のための施策が盛り込まれているところであります。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 北川れん子君。
    〔北川れん子君登壇〕
北川れん子君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました構造改革特別区域法案につきまして、小泉総理並びに関係大臣に対し、質問をいたします。(拍手)
 今、未曾有の経済不況のただ中で、日本は、仮借なき市場競争社会を許すか、それとも人間回復の社会を形成するか、二つに一つの選択を迫られています。市場競争万能社会を許すならば、この国は国家も自治体も、そして、社会全体がミニ・アメリカになってしまいます。その行き着く先には、失業も福祉も教育も、すべてが国民の自己責任に帰される社会が待っていることは言うまでもありませんし、現に今、そうした方向に我が国が急速に傾斜していることは明らかです。
 自己責任、自助努力を強調する小泉構造改革は、市場万能論に立った新自由主義の焼き直しにほかなりません。しかし、今は少々苦しくても我慢して改革を実行していけば必ず経済が上向き、生活も楽になると総理は言われておりましたが、今の状況はどうでしょうか。不良債権は一層悪化し、株価は低迷、雇用情勢は深刻化の一途です。小泉内閣の経済財政政策は、国民には負担を押しつけ、将来不安をかき立てるばかりで、いわゆるデフレの深刻化、不良債権の累増、一層の経済危機はかえって深刻になっています。もっと痛みを感じなければ景気はよくならないとでもお考えなのですか。
 総理、痛みを伴う改革が何をもたらしたのか、真摯に反省すべきと考えますが、総理の御見解をお尋ねいたします。
 雇用や年金に係る将来不安の解消策などに特化した具体策がない限り、GDPの約六割を占める個人最終消費が好転することは困難であり、幾らデフレ対策といっても、その原因をみずから生み出しているだけではないですか。竹中経済財政担当大臣の御認識をお伺いいたします。
 バブル崩壊後、深刻な不況が続き、地域においても、商店街の空き店舗の増加に見られるように、町の活力が低下し、人間の共生、連帯の場である地域コミュニティーは、まさに崩壊の危機に瀕しています。
 この間、景気対策として公共事業がどんどん積み増しされましたが、ゼネコン中心、中央主導の公共事業も一向に景気波及効果が上がらず、国と自治体の借金をふやすばかりとなっています。また、国土の均衡ある発展はもう終わりにしよう、最後の護送船団で甘えるなとして、地域間の競争による活性化をあおり、自治体にも自助努力、自己責任を貫徹し、競争原理を持ち込もうという小泉流構造改革は、都市と地方の不毛な対立をあおり、地方を切り捨てるだけとなっています。
 旧来の自民党流の利権ばらまき論でも、小泉流の競争原理、自己責任論でも地域の再生は実現できないと考えます。今、求められているのは、都市再生、規制緩和で経済活性化というのではなく、生きる、働く、暮らすという人間の存在を丸ごと統合した地域社会の復権ではないでしょうか。
 しかし、構造改革特区は、地方から手を挙げさせるなどと分権、自治の衣を着ていますが、真の分権、自治にかなうものとは到底言えません。
 例えば、法案では、地方公共団体の自発性を最大限に尊重したと言いながら、内閣総理大臣が認定しなければいけないとなっています。構造改革特区という発想ではなく、課税自主権を人々の暮らしに近い小さな自治体に認め、国家の権力、干渉を一切受け付けない、地域の主権こそ確立すべきではないでしょうか。自治体に任せるべきは任せればよいではないですか。総理並びに片山総務大臣の御所見をお伺いいたします。
 また、十月三十日に出された地方分権改革推進会議「意見」は、肝心の税源の移譲も盛り込まれないなど、このままでは地方にしわ寄せが行くといった事態も起こりかねません。
 私は、昨年六月の地方分権推進委員会の最終報告の言うように、「税財源の地方分権は、国・地方を通ずる行財政全体の構造改革にとっても重要な要素であり、むしろ不可欠の手段」であるという基本視点こそ、これからの分権の推進に生かされるべきであると考えています。総理並びに片山総務大臣の地方分権と税源移譲についての御見解をお尋ねいたします。
 今回の特区は、企業、財界側から見ると、参入したい分野の障壁について、進まない規制緩和をとにかく実施して、一点突破で既存のしがらみを打ち破り、その成果を全国に波及させようということが見え見えです。
 また、自治体にとってみれば、少しでも他の地域よりも先行して特区構想を打ち出し、企業の参入を促して、何とか財政を立て直そうというものであり、有望産業の奪い合いになります。多様な個性ある自治を目指すというより、まさに、企業に好かれるための自治体間の競争にほかなりません。
 しかし、かつて企業誘致に成功して活況を示した企業城下町が企業の衰退とともに大きな痛手をこうむったという例は、幾つも存在します。鴻池大臣、特区がすべてうまくいくなどという保証はどこにあるのですか。
 沖縄では、一足先に、米軍普天間飛行場の移設受け入れに伴い、沖縄県名護市が求めていた情報通信・金融特区が沖縄振興法で認められました。地元では大きな期待があるようですが、しかし、金融の専門企業に地元の人がどれだけ雇用されるのでしょうか。逆に、地に足のついた自立型経済を目指すべきではないかとも考えます。
 特区は、本当に雇用効果、経済活性化効果があるのか。むしろ、自立的、内発的な地域経済にはマイナスになるのではないかと心配しています。構造改革特区はデフレ対策の目玉にも位置づけられていますが、特区で本当に地域経済の活性化や雇用創出につながるのでしょうか。竹中経済財政担当大臣の展望をお聞かせください。
 北欧では、スウェーデンが先陣を切って地方分権に取り組みました。当時のホルムベリ自治大臣の、「靴のどこがきついかは履いている本人が一番よくわかる」という有名な言葉で、フリーコミューン実験が始まりました。
 今回の構造改革特区は規制緩和の実験場という印象が強いのですが、北欧のフリーコミューンはそうではありません。フリーコミューンにおける規制の緩和は、国の自治体に対する規制の緩和が中心であり、まさに、分権の推進であったと思います。しかも、経済をよくするという発想というよりも、生活をよくするという発想での実験でした。したがって、企業の活動に対しては規制の強化も行われています。
 例えば、自然と社会の調和ある発展、環境保全を目指した多角的取り組みを行い、一九九九年にはヨーロッパ持続可能都市に認定されたフィンランドのハメンリンナ市の改革の一歩も、一九八九年のフリーコミューンプロジェクトへの参加から始まっています。
 一方、今回の特区には、大規模小売店舗の新設、変更の際の手続の簡素化が盛り込まれていますが、最近のシャッター通りと言われる地域商店街の状況を考えた場合、逆に、大規模店舗に対する規制を強化するということもあってしかるべきと考えます。簡素化はいいが、規制強化はWTO違反というのでは、分権、自治にも反します。鴻池大臣並びに総務大臣、いかがでしょうか。
 しかも、ハメンリンナ市は、小さな政府と市民参加をテーマに、縦割り行政の打破、結果責任制の導入、政策決定への市民参加、市民サービスの向上を実現しました。特区は、このような行政内部を変える効果があるのでしょうか。
 日本でも、かつて、このフリーコミューン実験をまねて、地方分権への強い期待をベースに構想されたパイロット自治体制度がありました。担当の総務庁は、募集パンフレットに、「思い切って手を挙げてみませんか」と刷り込み、熱心に申請を呼びかけましたが、いろいろな条件が厳しく、結局、三年目には手を挙げる自治体がいなくなったといいます。特区もパイロット自治体の轍を踏むのではないですか。総務大臣の御見解をお伺いします。
 小泉内閣が掲げる「聖域なき構造改革」は、国民にさまざまな痛みを求める内容です。政治の側もみずからに痛みを課してこそ、改革実行への期待も持てるのではないでしょうか。自民党の破壊、改革を掲げる小泉政権のもとでも、政官業の癒着、金まみれの政治、口きき政治は相変わらずで、政治の構造改革は何ら進んでいない象徴的な事件が次々と起きています。国民の信頼を回復するためにも、最低限、あなた自身が言ってきた公共事業受注企業からの企業・団体献金の禁止に直ちに着手すべきではないかと考えます。
 最後に、自民党をぶっ壊すと言われた総理の政治改革、政治倫理の確立に関する御決意をお伺いして、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 北川議員にお答えいたします。
 痛みの伴う改革についてでございます。
 あらゆる改革には反対、抵抗並びに痛みも伴うということを、否定はいたしません。その痛みを和らげるということも政治の責任と考えております。
 例えて言えば、不良債権処理を進めていけば、企業の倒産もあり得るでしょう。失業者も出てくるでしょう。そういう際に、雇用、中小企業経営への影響に対して細心の注意を払い、セーフティーネット等の対策に私は万全を期していきたいと思います。
 地方社会の復権のため地域主権を確立すべきとの御指摘であります。
 構造改革特区は、地方の自助と自立の精神を最大限尊重し、地方の自主性をもって知恵と工夫の競争による活性化を図るものであり、法案においても、特区の認定に当たっては、法案に基づいて閣議決定される基本方針に適合すると認められる地方公共団体の計画は、数を限定することなく、内閣総理大臣がこれを認定することとしているなど、国の関与は極めて限定的なものとなっております。
 このような構造改革特区を政府として推進していくことは、御指摘の地域主権の確立の理念にも基本的にかなうものと考えております。
 地方分権と税源移譲についてのお尋ねであります。
 今回、私に提出していただいた地方分権改革推進会議の意見は、国庫補助負担事業の見直しなどに関係するものであります。
 今回の意見を踏まえて、今後、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方の三位一体の改革につなげていきたいと思います。行財政全体の改革を進めるに当たり、税財源の地方分権が不可欠であるという基本的な考え方は、この三位一体の改革の中で反映させてまいります。
 公共事業受注企業からの企業・団体献金についてでございますが、この公共事業受注企業からの献金等について、疑惑を招くことがないような仕組みを現在考えております。
 自民党におきまして、有識者の懇談会における提言などを踏まえ、現在、検討が進められておりますが、各党各会派から幅広い合意が得られる成案の作成に向けて、引き続き努力してまいりたいと思います。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 北川議員から、私に対しまして四点の質問がございました。
 まず第一点は、課税自主権についてのお尋ねでございます。
 我々は、地方自治体の課税自主権はできるだけ認めたい、こう考えておりますけれども、憲法上は、御承知のように租税法定主義、法律で租税は決めろということがある。一方ではまた、税制というのは公平公正が基本でございますから、そういうことと地方自治とをどう調和させるか。
 こういうことでございまして、今の考え方は、地方税法の中で一定の枠の中では自由にやっていただく。例えば、主な税目については標準税率というのを決めておりまして、財政上必要がある場合には、それを超えて、超過課税ができるようになっております。多くの地方団体がその制度を活用しております。
 また、二年前に地方分権一括推進法、一昨年の四月から施行になりましたけれども、その中で、今まで、法律に決めない税については、法定外普通税というのですが、これについては、私どもの方で許可をすれば認める、こういうことでございましたが、許可でなくて、協議にいたしました。またさらに、法定外普通税だけでなくて、法定外目的税についても、地方が必要ならそれをつくることができる。
 こういうことでございまして、地方団体の実情に応じまして、超過課税なり法定外普通税・目的税を活用する、こういうことについて地方税源の充実を図ってまいりたいと考えております。
 それから、地方分権改革推進会議の報告についてのお話がございました。
 よくできているのですが、国庫補助負担金の整理合理化については少し切り込みが不足なのと、税源移譲については、述べておるのですが、はっきりしてないのですね。その点、私は少し不十分ではないかということを指摘しておりますが、基本的な考え方は、私はあの方向でいいのではなかろうかと。
 地方の歳入歳出における自立性、自主性を強化する、そのためには、やはり税源移譲は不可欠なんですね。国が六で地方が四で、仕事は地方が六以上やって、国が四以下しかやってない。そこで、国から国庫補助負担金が流れてき、地方交付税が流れてくる。これが地方の自主性や自立性を害しているわけでありますから、できるだけ仕事の配分に応じた税源の配分というのが必要でございまして、我々としては、地方に対する税源の移譲と国庫補助負担金の整理合理化と地方交付税の見直しを三位一体でぜひ改革いたしたい。総理もそういう方針でございますので、ぜひ来年の夏ぐらいまでにそういう案をつくって実行に着手いたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
 それから、特区について、規制緩和だけではなくて、物によっては規制強化も必要ではないかと。
 しかし、今の制度は、規制強化は余り想定してないのですね。規制改革の突破口にしようということでできた制度でございますが、それじゃ、法律上、規制強化ができないか。それはできないことはありません。したがいまして、私は、どういうことで、どういう需要があって、どういうふうに対応するかについては総合的に検討する、しかし、基本的には慎重に規制強化については考えていくべきではないかと思っております。
 それから、パイロット自治体のお話がございました。
 これは大分前に出てきたわけですが、パイロット自治体の問題点は、一つは、法律にさわってはだめだということなんですよ。法律はいじらない、法律以外のことでやれと。結果として、あれは手続の省略、簡素化だったのです。それからもう一つ、申請は二十万以上の市町村がやれ、二十万以下の場合には共同でやれ、こういうことでございまして、申請も限定があった。
 こういうことでございますので、今回は、法律でちゃんと根拠があって、すべての地方団体が申請できて、しかも、法律の制定、改廃まで含むわけでありますから、今回の方がはるかに強力で有効だ、こういうふうに考えているわけでございまして、ぜひそういう観点での御理解を賜りたい、こう思っております。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 北川議員から、二問、まず、雇用や年金に係る将来不安の解消についてお尋ねがありました。
 雇用や年金などの社会保障制度は、国民にとって大切な生活インフラであります。同時に、国民の生涯設計における重要なセーフティーネットでございます。我が国が今後、経済発展を進めていくためには、将来にわたって持続可能で安心できる社会保障制度を構築することが絶対必要不可欠でありまして、したがって、雇用や年金を初めとした社会保障制度改革に積極的に取り組んでおります。
 政府としては、こうした改革を含めた一連の構造改革を推進することにより、国民の将来不安の解消を通じた消費、投資の活性化などの効果が発揮されることで、デフレを克服しながら持続的な経済成長を図っていくというふうに考えております。
 構造改革特区、この効果についてのお尋ねがございました。
 この特区は、地方自治体がその地域の特性を考慮しながら規制改革に関する要請を行うものであり、特定地域の規制改革を通じて経済の活性化を図ることを主眼としているわけです。
 例えばでありますけれども、港湾について、行政財産であります港湾施設を民間に貸し出しできるような措置をすることによりまして、民間活力を引き出して、民業を拡大し、地域経済の活性化や雇用機会の創出を図ることが期待できるわけでございます。
 これはあくまで一例でありますが、こうした例からもわかりますように、構造改革特区は、まさに、地域の知恵によって地域経済の活性化や雇用機会の拡大が期待されるものでございます。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣鴻池祥肇君登壇〕
国務大臣(鴻池祥肇君) 特区が企業に好かれるための自治体間の競争ではないか、また、うまくいくか、この二点であります。
 特区で実施する特例措置は、地方公共団体等の要望を受けて、可能な限り幅広い規制を対象としており、教育分野、社会福祉分野など国民生活の向上に資するものも含め、幅広い分野を対象といたしておりますので、企業のみに好かれる特区制度ではないということを申し上げたいと思います。
 また、うまくいくかどうか。うまくいくために懸命の努力をいたす所存でございます。
 また、規制の簡素化だけではなく、規制強化も認めるべきではないかということでございましたが、先ほどの片山大臣の御答弁に追加するものはございません。
 以上であります。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時八分散会


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