衆議院

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第4号 平成15年1月31日(金曜日)

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平成十五年一月三十一日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  平成十五年一月三十一日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
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本日の会議に付した案件
 小泉内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 川口外務大臣の外交に関する演説
 塩川財務大臣の財政に関する演説
 竹中国務大臣の経済に関する演説


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
議長(綿貫民輔君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、竹中国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣小泉純一郎君。
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 天皇陛下におかれましては、御病気御療養中であります。陛下の一日も早い御快癒を、国民とともに心からお祈り申し上げます。(拍手)
 内閣総理大臣として、今、私に与えられた職責は、我が国の経済と社会の再生です。小泉内閣として、「聖域なき構造改革」を推進するとの考えのもと、今後の国政に当たる基本方針を申し述べ、国民の皆様の御理解と御協力を得たいと思います。
 日本経済は、世界的規模での社会経済変動の中、単なる景気循環ではなく、複合的な構造要因による停滞に直面しています。不良債権や財政赤字など負の遺産を抱え、戦後経験したことのないデフレ状態が継続し、経済活動と国民生活に大きな影響を与えています。大胆な構造改革を進め、二十一世紀にふさわしい仕組みをつくることによってこそ、こうした状況を抜け出し、日本の再生と発展が可能となります。我が国の経済社会に残る非効率な部分を取り除き、技術革新や新事業への積極的な挑戦を生む基盤を築く。そして、国民が安んじて将来を設計できる環境を整備する。これら多方面にわたる課題に一つ一つ着実に取り組んでいます。改革なくして成長なしとの路線を推進してまいります。(拍手)
 改革は道半ばにあり、成果が明確にあらわれるまでには、いまだしばらく時間が必要です。我が国には、高い技術力、豊富な個人資産、社会の安定など、経済発展を支える大きな基盤が存在します。厳しい環境の中でも、多くの人々や企業、そして地域が、前向きに挑戦を続けています。改革を進め、こうした力を一日も早く顕在化させることにより、我が国の発展につなげてまいります。(拍手)
 今国会には、動き出した改革路線をさらに確固たる軌道に乗せるための関連法案を提出いたします。
 日本経済を再生するため、あらゆる政策手段を動員する必要があり、歳出、税制、金融、規制の四つの改革を加速させます。政府は、日本銀行と一体となって、デフレ克服に取り組みます。(拍手)
 平成十五年度予算は、四十二兆円の税収に対して三十六兆円に上る多額の国債発行に依存せざるを得ない状況の中、歳出の構造改革を進め、一般歳出を実質的に平成十四年度の水準以下に抑制しました。その中で、セーフティーネットの充実に配慮し、民間活力を引き出し雇用の創出につながる分野や、科学技術など将来の発展の基盤となる分野に大胆に重点配分しました。また、道路特定財源や義務教育費国庫負担金の見直しなどを進めました。
 平成十五年度予算の早期成立に努め、平成十四年度補正予算とあわせ、切れ目なく現下の情勢に対応してまいります。
 二〇一〇年代初頭には、過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らない財政構造を目指します。
 税制改革については、あるべき税制の構築に向け、昨年一月より議論を重ね、多岐にわたる改正を一体として行うこととしました。特に、千四百兆円の個人金融資産を流動化する具体策として、相続と贈与を通じた新たな制度のもとで贈与時の非課税枠を設け、住宅取得に充てる贈与については三千五百万円まで非課税措置を講じます。この措置は、本年一月一日にさかのぼって適用することとしています。また、土地の有効利用を促進するため、土地流通税を大幅に軽減します。平成十五年度は、実質一兆八千億円の減税を先行させ、多年度で税収をバランスさせます。(拍手)
 不良債権問題に全力で取り組み、平成十六年度に終結させます。金融再生プログラムを着実に実施し、強固な金融システムを構築してまいります。金融危機は起こさせません。(拍手)
 産業再生機構を設立するとともに、産業再生法を抜本的に改正し、民間の英知と活力を最大限に生かしながら、産業再編や事業の早期再生に向けた取り組みを強化します。(拍手)
 離職者に対する早期再就職の支援を充実し、雇用保険制度を見直すとともに、地域の創意工夫による雇用創出策を拡充するなど、セーフティーネットを強化します。求人と求職を的確に結びつけ、労働者が多様な働き方を選択できるよう、制度を見直します。
 中小企業の金融対策に万全を期します。技術力のある中小企業による創業や新事業への挑戦に対して、資金確保、技術開発、人材育成等、支援策を強化します。
 貯蓄から投資への流れを加速するため、金融・証券税制を大幅に軽減・簡素化します。身近な金融機関などで証券を購入できるようにし、監査を充実強化することにより、個人投資家にとって参加しやすく、信頼できる証券市場とする改革を進めます。(拍手)
 公正取引委員会の体制を拡充するとともに、四月から内閣府の外局とし、公正かつ自由な経済社会のかぎとなる競争政策を強化します。
 全国どこでも司法を身近に利用できる社会を実現するため、総合的かつ集中的に司法制度改革を進めます。第一審が二年以内に終わることを目指して裁判を迅速化するための法案など、改革関連法案を提出します。
 私は、行財政改革で最も重要な課題は郵貯、年金を財源とする財政投融資を通じて特殊法人が事業を行う公的部門の改革であると主張してまいりました。これらの制度については、民業を圧迫し、また、楽観的な需要予測で国民負担を将来に先送りするなど、弊害が明らかになってきています。民間でできることは民間にゆだねることが基本です。この方針のもと、郵政事業、財政投融資、特殊法人の改革を一体のものとしてとらえ、簡素で効率的な質の高い政府に向け改革を進めます。(拍手)
 四月から、日本郵政公社が発足します。民間的な経営を取り入れ、質の高いサービスが提供されるものと考えます。民間の郵便事業参入も始まります。郵政事業は、実質的な民営化の第一歩を踏み出しました。国民的議論を踏まえ、さらに改革を進めてまいります。
 財政投融資については、郵貯、年金の預託の義務を既に廃止し、みずから財源を調達することとなりました。その規模も圧縮し、平成十五年度当初計画の規模は、ピーク時である平成八年度のおよそ四割減としました。
 百六十三の特殊法人等のうち、石油公団の廃止など、百十八法人について既に改革に着手しました。事業を徹底して見直した上で、廃止、民営化、または独立行政法人化し、透明性を高め、評価を厳正に行うことにより、新たな時代にふさわしい組織へと転換してまいります。住宅金融公庫を廃止することとし、新規貸し出しを段階的に縮小するとの方針を示した結果、利用しやすい民間の住宅ローンが相次いで提供されています。
 道路関係四公団の民営化については、民営化推進委員会の意見を基本的に尊重するとの方針のもと、建設コストを引き下げ、新会社のつくる道路と税金でつくる道路を区分するなど、改革の具体化を図ってまいります。
 政府系金融機関は、当分の間、その活用を図り、中小企業等に対する円滑な金融を確保します。国として、必要な機能を厳選し、民間金融機能の正常化の状況を見ながら、大胆に統合集約化を進めてまいります。
 このような公的部門の改革は、財政構造、経済構造、金融システムの改革につながり、将来、大きな果実を生むものと考えています。(拍手)
 公務員が国民全体の奉仕者として、志を持って行政に専念できる環境を整備するため、公務員制度改革の具体化を進めます。幹部職員の退職年齢の引き上げに政府一体となって取り組み、いわゆる天下りの弊害を是正します。国家公務員の退職手当について、民間企業の状況を踏まえ、支給水準を引き下げます。
 国と地方の関係については、平成十五年度予算において、改革の芽を出しました。地方にできることは地方にゆだねるとの原則に基づき、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分について三位一体の改革案を、六月を目途に取りまとめます。(拍手)
 市町村合併をさらに推進してまいります。
 政治に対する国民の信頼は改革の原点です。あっせん収賄罪に問われた現職国会議員の有罪判決や、公職選挙法違反に問われた献金事件といった、一連の政治資金をめぐる問題を重く受けとめています。さきの通常国会で改正あっせん利得処罰法や官製談合防止法が成立したところであり、法を遵守することはもとより、国民の信頼を裏切ることのないよう、政治家一人一人が常に襟を正さなければなりません。公務員の政治的中立の確保についても、厳しい姿勢で臨んでまいります。
 小柴さん、田中さんのノーベル賞受賞は、日本人を勇気づけるすばらしいことでした。昨年、日本人の業績が世界で高く評価されたのは、ノーベル賞だけではありません。カーボン・ナノチューブを発見した飯島澄男さん、青色発光ダイオードを初めて実用化した中村修二さんは、ノーベル賞の登竜門とも言われる米国のベンジャミン・フランクリン・メダルを受賞しました。中西香爾さんは、生物活性物質の研究で、アラブのノーベル賞と言われるキングファイサル国際賞の栄誉に輝きました。建築家の安藤忠雄さんは、米国建築家協会の最高賞である金メダルを授与されました。(拍手)
 科学や技術の分野だけではありません。輸入が急増する厳しい経営環境の中、タオル産地、今治市の企業三社は、商品企画力を高く評価され、米国の国際展示会でグランプリの栄誉を得ました。アニメ映画「千と千尋の神隠し」は、芸術性が世界で高く評価され、ベルリン国際映画祭の最優秀作品賞や、ニューヨーク映画批評家協会のアニメ部門最優秀作品賞を受賞しています。今井千恵さんと谷口郁子さんの二人の日本人女性が、世界女性起業家賞に輝きました。日本は高く評価されています。(拍手)
 科学技術、バイオテクノロジー、知的財産、IT、都市再生、構造改革特区など、日本再生のかぎを握る分野について、政府を挙げて取り組み、政策の方向を示してきました。さまざまな分野での挑戦をしっかりと後押ししてまいります。(拍手)
 科学技術創造立国の実現に向け、平成十五年度の一般歳出を厳しく抑制する中で、対前年度比三・九%増の科学技術振興予算を措置し、遺伝子レベルで個人個人に合った予防や治療を可能にする研究開発などを重点的に支援してまいります。また、一兆二千億円に上る研究開発・投資減税を行います。
 新たな技術への支援は、新たな産業の振興につながります。バイオベンチャー企業は急増しており、昨年までに三百社を超えました。イネゲノムの解読は、昨年十二月、日本の主導により終了しました。官民挙げて、バイオテクノロジーの発展に取り組んでまいります。
 特許審査の迅速化、特許をめぐる裁判制度の改革、模倣品・海賊版対策の強化を行い、知的財産立国を目指します。
 地球温暖化への対応には、一刻の猶予も許されません。国、地方公共団体、事業者、国民、それぞれが、脱温暖化社会への構造改革に取り組む必要があります。環境と経済の両立がかぎです。科学技術の活用を進め、世界の先端を行く環境産業を振興します。(拍手)
 二酸化炭素を吸収する多様で健全な森林の育成を進めます。緑の雇用を推進し、雇用創出と森林整備の担い手の確保を図ります。
 京都議定書の早期発効と、すべての国が参加する共通ルールの構築に最大限努力します。
 平成十五年度中には、一般公用車のうち七割を低公害車とし、平成十六年度までにはすべてを低公害車にします。また、昨年、世界で初めて市販された燃料電池車を公用車として導入しました。規制を総点検し、燃料電池車の普及拡大を後押しします。平成十七年から、ディーゼル自動車について、世界一厳しい排出ガス規制を実施します。同時に、次世代の低公害車や燃料などの開発と普及を支援します。
 ごみゼロ社会の実現に、就任以来、取り組んでまいりました。食品、建設、自動車など、各種のリサイクルの仕組みは既に整備しました。今後は、循環型社会形成への道筋を示すとともに、ごみの不法投棄の一掃に向けて制度を整備します。年間三百五十万台が廃棄されているパソコン処理の仕組みを合理化するなど、廃棄物の処理やリサイクルを一層促進します。身近な取り組みとして、中央省庁の食堂で生ごみのリサイクルを進めています。トウモロコシからつくる食器など環境に優しいバイオマス製品を、政府を初め公的機関で導入し、国民の身近な生活へと広げてまいります。
 我が国には、歴史に根差した文化や伝統、すぐれた人材や企業が各地にあります。地域が持つ潜在力や魅力を引き出し、日本を再構築します。(拍手)
 十四の都市再生プロジェクトを推進するとともに、四十四の都市再生緊急整備地域において、優良な民間都市開発を支援します。大都市だけではありません。北海道の稚内では、ロシア・サハリン州との交流を軸にした国際観光・交流都市づくり、沖縄の石垣では、港を中心にした町づくりが進んでいます。四国の松山では、小説「坂の上の雲」が町づくりのテーマです。地域の知恵と個性を生かした取り組みを支援してまいります。
 各地域で多様な形のタウンミーティングを開催し、国民との活発な対話を継続します。
 四月には、構造改革特区第一号が誕生します。地域や民間から、六百を超える第二次提案がありました。制度を一層充実し、教育分野への株式会社参入を含め、これまで規制されていた市場への民間参入の実現を図ります。特区をてこに、全国規模での規制改革を進めます。
 観光の振興に政府を挙げて取り組みます。現在、日本からの海外旅行者が年間約千六百万人を超えているのに対し、日本を訪れる外国人旅行者は約五百万人にとどまっています。二〇一〇年にこれを倍増させることを目標とします。
 海外から日本への直接投資は、新しい技術や革新的な経営をもたらし、雇用機会の増大にもつながります。脅威として受けとめるのではなく、日本を外国企業にとって魅力ある進出先とするための施策を講じ、五年後には日本への投資残高の倍増を目指します。
 英国の作家、スマイルズの著書「自助論」は、明治の多くの青年たちの心をとらえたと言われます。みずから志を立て、懸命に学問を修め、勤勉努力した若者たちが主役となって、近代国家日本の基礎が築かれました。新しい時代を切り開くのは、いつの時代でも、自助自律の精神のもと、他者への思いやりと高い志を持つ青年たちです。人こそ改革の原動力です。(拍手)
 アフリカのマラウイで数学や物理の教育を行う青年や、メキシコ南部の村で保健指導に従事する女性など、日本とは文化も価値観も異なる厳しい環境で、現在も約二千四百名の青年海外協力隊員が開発途上国の国づくりのために活躍しています。(拍手)
 勇気を持って新しい時代に立ち向かう力を培うため、画一と受け身から自立と創造へと、教育のあり方を大きく転換してまいります。教育基本法の見直しについては、国民的な議論を踏まえ、しっかりと取り組んでまいります。確かな学力と豊かな心の育成を目指した初等中等教育の改革、知の世紀を担うにふさわしい大学改革を進めてまいります。(拍手)
 「必ず邑(むら)に不学の戸なく、家に不学の人なからしめんことを期す。」明治五年の太政官布告は、すべての国民に教育の機会を保障すると宣言しました。現在、意欲があれば、みずからの意志と責任で、だれでも教育を受けることができます。一方、不登校児童の増加など、新しい状況が生じています。時代にふさわしい多様な教育機会の整備に努めてまいります。あすを担う人材が勉学の機会を失うことがないよう、奨学金制度の充実に努めます。世界に開かれた最高水準の教育研究を行う科学技術大学院大学の設立構想を、沖縄で推進します。(拍手)
 昭和三十年代には洗濯機、冷蔵庫、白黒テレビ、四十年代にはカー、クーラー、カラーテレビが、新しい生活を象徴する三種の神器と言われました。欲しいものがないと言われる現在でも、カメラつき携帯電話や薄型テレビ、食器洗い機など、新しい時代をとらえた商品の売れ行きは伸びています。自由な時間を自分を磨くためやボランティア活動に使う人は、着実にふえています。暮らしの質を高めたいという国民の意欲は、今でも健在です。
 暮らしの構造改革を進め、国民が安心して将来を設計することのできる社会を構築してまいります。
 新たな職業分野への進出など、女性の挑戦を支援し、先進諸国に遜色のない男女共同参画社会の形成を進めます。
 子育てと仕事の両立を支援するため、平成十六年度までにさらに十万人の受け入れ児童の増加を目指し、待機児童ゼロ作戦を引き続き推進します。小学生のための放課後児童クラブや、子育て中の親が集まって相談や情報交換ができる場を整備します。少子化の流れを変えるため、家庭、地域、企業が一体となって子育てを支援するための法案を提出します。
 年金制度については、平成十六年度に行う改革の検討に向けて、昨年、方向性と論点を取りまとめました。医療制度については、国民皆保険を守り、将来にわたり良質で効率的な医療を国民が享受できるよう、先般、大幅な改革を行いました。持続可能な社会保障制度を構築するため、給付と負担のあり方について正面から取り上げ、国民的な開かれた議論のもとに、改革を継続してまいります。
 我が国の高速インターネットの利用料金は、三年間で月額八千円から二千五百円に下がり、今や、世界で最も低い水準にあります。高速インターネットや携帯電話の普及により、さまざまな情報提供や、遠隔医療・教育など、暮らしに密着したサービスがあらわれ、IT革命は国民生活に着実に浸透しつつあります。利用者の視点を重視した新IT戦略を策定し、二〇〇五年に世界最先端のIT国家を実現します。行政手続を一つの窓口で済ませることができる、身近で便利な電子政府・電子自治体や、家庭のIT基盤となる放送のデジタル化を推進します。
 IT社会の基盤となる法制として、個人情報保護関連法案を、修正の上、再提出し、成立を期します。
 原子力発電の安全確保に全力を挙げて取り組み、信頼回復に努めます。また、エネルギー安定供給の確保に的確に対応してまいります。
 食品安全基本法を制定するとともに、安全性を科学的に評価する食品安全委員会を新設するなど、緊急事態に対処する体制を整備し、食の安全確保に万全を期してまいります。(拍手)
 農業・農村の改革を加速するため、米政策の改革と農業経営の規模拡大や法人化を推進し、意欲と能力のある経営体を集中的に後押しします。自然に恵まれた農山漁村と都市との交流を進めます。
 凶悪な事件が多発し、国民の多くが治安の悪化に不安を抱いている状況を改善し、世界一安全な国の復活を目指します。不法滞在の外国人による組織的犯罪やハイテク犯罪などへの対策を強化します。大規模地震等への消防防災対策を強力に推進するとともに、被災者への支援や災害復旧復興対策に万全を期します。
 昨年の交通事故による死者数は、過去最悪だった昭和四十五年の約一万七千人から半減しました。今後十年間で交通事故死者をさらに半減させ、道路交通に関して世界で一番安全な国とすることを目指します。
 弱い立場にある人権侵害の被害者を実効的に救済する、新たな人権救済制度を整備します。
 建築物や交通機関のみならず、制度や意識も含めて社会のバリアフリー化を促進し、年齢や障害の有無にかかわらず、国民が安心して生活できる社会を築いてまいります。
 国際社会の一員として、テロの防止、根絶に引き続き取り組みます。武装不審船、大規模テロを含む国家の緊急事態への対処態勢を充実し、継続審査となっている有事関連法案の今国会における成立を期します。(拍手)安全保障、危機管理に必要な情報収集能力を強化するため、我が国初となる情報収集衛星の今年度末打ち上げに向け、最終の準備を進めます。
 国際平和への決意を具体的な行動に移すため、和平交渉の促進、難民支援や対人地雷除去、インフラの復旧整備、教育支援など、平和の定着と国づくりに積極的に取り組みます。昨年一月に東京で開催したアフガニスタン復興支援国際会議は、国際社会でも高い評価を得ました。今後も、スリランカやインドネシアのアチェなど、さまざまな地域で平和な国づくりに貢献してまいります。
 我が国の平和と安全、そして繁栄を確保するため、各国首脳との信頼関係を築き、国際社会が直面する課題に主体的に取り組んでまいります。我が国の文化と伝統を積極的に紹介し、文化や智の交流を進め、深い相互理解と幅広い協力関係を構築します。(拍手)
 北朝鮮については、日朝平壌宣言を踏まえ、国交正常化に取り組んでまいります。我が国は、米韓両国と緊密に連携し、また、中国、ロシアや国際機関とも協力しつつ、北朝鮮に対して、核兵器不拡散条約の遵守を求めるとともに、核兵器開発の放棄を強く求めてまいります。拉致被害者並びに御家族の立場を踏まえ、拉致問題の全面解決に最大限努力します。国際社会の責任ある一員となることが北朝鮮の利益に最もかなう選択であることを、粘り強く説得していく考えです。(拍手)
 私は、先般、日ロ関係に新たな息吹を吹き込みたいとの思いでロシアを訪問しました。日ロ行動計画に合意し、プーチン大統領との信頼関係を深めることができました。我が国固有の領土である四島の帰属問題の解決による平和条約の締結を目指し、民主主義と市場経済という二つの基本的な価値を共有する国として、政治、経済、文化など幅広い分野で、関係の発展に取り組みます。
 イラクの大量破壊兵器をめぐる問題は、国際社会全体への脅威です。イラクが査察に全面的かつ積極的に協力し、大量破壊兵器の廃棄を初め、関連する国連安全保障理事会の決議を履行することが重要であり、我が国として主体的な外交努力を継続してまいります。(拍手)
 本年は、ペリー提督率いる米国の黒船艦隊が浦賀に来航してから百五十年目に当たります。同盟国である米国との関係は、今後も我が国の平和と繁栄の基礎であり、日米安保体制の信頼性の向上に努めるとともに、政治、経済を初め多岐にわたる分野において緊密な連携や対話を続け、強固な日米関係を構築してまいります。また、普天間飛行場の移設、返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の実施に取り組み、沖縄県民の負担軽減に努力するとともに、地域の特性を生かし、沖縄の経済的自立を支援します。(拍手)
 ワールドカップサッカー大会の共催成功でより緊密な隣国となった韓国との未来志向の友好協力関係を一層発展させていくため、二月に発足する盧武鉉新政権と密接に協力してまいります。
 本年は、日中平和友好条約締結二十五周年に当たります。両国国民の理解と信頼を基礎に、アジア地域、ひいては世界の平和・安定と繁栄の実現のため、中国との幅広い分野における協力関係を一層推進します。
 日本とASEAN関係の新時代に向けた昨年一月の我が国の提案は、着実に具体化されてきました。交流年の事業も既に開始されています。年末に予定されている、我が国で初の日本ASEAN特別首脳会議などを通じ、協力関係を発展させてまいります。
 国際社会での影響力を一層増しつつある欧州とは、広範な分野にわたって、より緊密な関係を築きます。
 貿易自由化を進め、途上国を含めたすべての国が利益を得られる多角的貿易体制を強化するため、WTO新ラウンド交渉を推進します。
 メキシコやASEAN、韓国との経済連携に積極的に取り組みます。
 三月に関西で開催される世界水フォーラム、六月のエビアン・サミット、九月末に東京で開催予定の第三回アフリカ開発会議へと続く一連の国際会議を通じ、持続可能な開発、途上国の貧困問題・感染症対策など、重要課題の解決に主体的な役割を果たしてまいります。
 ODAについては、効率化、透明性の向上に努めるとともに、アジアの安定と成長、紛争後の平和の定着、環境を初めとする人間の安全保障分野に重点化するなど、戦略的に活用します。
 科学的観点に立った水産資源の持続的利用を基本に、水産外交を展開いたします。
 私が初めて当選してから、三十年がたちました。初当選直後に第四次中東戦争が勃発し、我が国は、一年間で物価が二〇%以上も上昇する狂乱物価の時代を迎えました。インフレの抑制が最大の政治課題でした。
 二度の石油ショック、そして円高ショックと、我が国はこの三十年間、幾たびか、経済と国民生活の根幹を揺るがす危機に見舞われました。しかし、国を挙げて省エネ化を進めるとともに、企業においては、徹底した省力化投資と製品の高付加価値化による国際競争力の強化に取り組み、危機をばねにして、より強靱な経済社会をつくり上げてきました。(拍手)
 我が国は、構造的な停滞の中で、戦後初めて、デフレという状況に直面しています。今こそ、幾多の危機を克服してきた経験と、これを支えた日本の力を思い起こすときです。
 大事なことは、失敗しないことではなく、失敗を次の成功に生かすことです。人生で大切なことは、挫折してもくじけず、また立ち上がることだと思います。(拍手)
 明治維新の激動期も、敗戦後の混乱期も、先人たちは、難局に敢然と立ち向かって、今日の日本を築き上げてきました。悲観論から新しい挑戦は生まれません。厳しい経済状況下にあるとはいえ、今、私たちには、当時よりはるかに豊かな蓄積と、そこから生まれる大きな可能性があります。
 歴史に学び、勇気と希望を持って、新しい日本をつくり上げようではありませんか。
 国民並びに議員各位の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)
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議長(綿貫民輔君) 外務大臣川口順子君。
    〔国務大臣川口順子君登壇〕
国務大臣(川口順子君) 第百五十六回国会の開会に当たり、我が国外交の基本方針について所信を申し述べます。(拍手)
 北朝鮮をめぐる問題やイラク情勢など、国際社会が緊急に取り組むべき課題に直面している今こそ、我が国には、外交面で積極的かつ創造的な役割を果たすことが特に求められています。
 私は、昨年二月の就任以来、言うべきことは言い、やるべきことはやる強い外交、困難に直面している人々や異なる文化への理解を大切にするという温かい外交、そして、国民の皆様の目から見てわかりやすい外交を実践することを心がけてきました。国際情勢が大きく変化しつつある本年、私は、国民の生命、安全の確保に改めて万全を期した上で、こうした、強く、温かく、わかりやすい外交を基礎としながら、国際社会における秩序やルールづくりに我が国が一層積極的に関与していくことを通じて、創造的な外交を力強く実践していきます。(拍手)
 我が国及び国民の安全と繁栄を確保することこそが、外交に課せられた最も重要な使命です。
 我が国が直面する外交課題の中でも最重要案件の一つである北朝鮮との関係では、日朝平壌宣言に基づき、拉致問題及び安全保障上の問題等の諸懸案を解決し、北東アジア、ひいては国際社会の平和と安定に資する形で国交正常化を実現するため努力していくことが重要です。
 特に、拉致問題については、被害者及び御家族の立場を踏まえ、問題の全面解決のために引き続き全力を尽くしていきます。また、現在、緊急の課題となっている核兵器開発問題については、我が国は、平和的解決に向け、引き続き、米韓両国と緊密に連携し、また、中国、ロシア等の関係国や国際原子力機関(IAEA)とも協力しつつ、北朝鮮に対して、核兵器不拡散条約(NPT)の遵守、核関連施設の再凍結及びすべての核兵器開発の放棄を強く求めていきます。私自身、先般、韓国を訪問し、盧武鉉次期大統領等と意見交換を行ったほか、関係国の外相等と緊密に連絡をとっており、このような努力を今後とも継続していきます。
 イラクの大量破壊兵器をめぐる問題も、我が国を含む国際社会全体が一致団結して取り組まなければならない最も重要な外交課題の一つです。
 イラクは、過去に実際に化学兵器を使用したことがあり、また、十年以上にもわたって、大量破壊兵器の廃棄等を求める安保理決議を履行せず、国連の権威に挑戦しています。先般の安保理会合においても、イラクは大量破壊兵器等に関する疑惑を解消するために十分な協力を行っていないとの報告がなされています。
 昨年十一月に採択された安保理決議一四四一は、イラクに対して最後の機会を与えるものです。イラクは、同決議を重く受けとめ、無条件かつ完全に遵守しなくてはなりません。イラクが関連する安保理決議を履行し、国際社会の懸念を完全に払拭することが必要であり、我が国は、国際社会と緊密に連携しつつ、イラクが、今後継続される査察を妨害しないだけでなく、能動的に疑惑を解消し、みずから武装解除を行うよう、強く求めていきます。
 我が国及び国民の安全と繁栄を確保していくためには、国際社会全体の平和・安定と繁栄を実現し、維持していくことが不可欠です。
 昨年も、インドネシアのバリ島、フィリピン、ロシア、ケニア等でテロ事件が続発したように、テロの脅威は依然として深刻です。我が国は、テロをみずからの安全保障上の課題と認識し、テロ対策特別措置法に基づく米軍等に対する支援の継続、テロ資金対策、出入国管理、アジア諸国を中心とする途上国のテロ対処能力向上のための支援の強化等を行っており、引き続き、幅広い分野における国際社会の息の長い取り組みに積極的に参画していきます。また、我が国国民の安全を守るとの観点から、在外公館とも緊密な連携をとりつつ、海外の邦人保護にも一層努力していきます。
 大量破壊兵器や弾道ミサイル及び小型武器等の通常兵器の拡散問題は、テロ対策、紛争予防という観点からも、国際社会が一致団結して取り組まねばならない課題の一つです。
 我が国は、NPT体制の強化に加え、昨年のカナナスキス・サミットで合意された、G8グローバル・パートナーシップのもとで行われるロシアからの大量破壊兵器等の拡散防止、特に、先般の日ロ首脳会談で合意された退役原子力潜水艦解体事業の推進、さらには余剰兵器プルトニウム処分構想への協力等、軍縮・不拡散分野での取り組みを強化していきます。
 主な地域紛争に対しても、我が国は、引き続き、その解決に向けた取り組みに積極的に関与していきます。
 中東和平をめぐる情勢は国際社会の平和と安定に大きな影響を与え得る問題であり、情勢のさらなる悪化は許されません。我が国は、暴力の停止と和平に向けた交渉の再開をイスラエル、パレスチナ両当事者に対して粘り強く働きかけていきます。同時に、我が国は、双方の信頼回復に向けた取り組みを積極的に後押ししていきます。
 アフガニスタン、インドネシアのアチェ、フィリピンのミンダナオ等における地域紛争を恒久的に解決するため、我が国は、昨年十二月に発表された国際平和協力懇談会の報告書も踏まえつつ、引き続き、和平プロセスの促進、国内の安定・治安の確保、人道・復旧支援を迅速かつ切れ目のない形で進めることを通じて、平和の定着に向けた取り組みを強化していきます。また、先般、私が訪問したスリランカでは、現在、和平プロセスが進展しています。我が国は、明石康氏を政府代表に任命しましたが、三月に我が国で和平交渉を、その後、復興会議を開催するなど、同国における平和の定着に向けた努力を継続していきます。
 政府開発援助(ODA)は、狭い意味での開発目的に限定することなく、こうした国際平和協力を促進する手段としても積極的に活用するなど、その戦略性を一層高めていく方針です。また、私は、就任以来、ODAに対する国民の皆様の御理解と御支持を高めるため、透明化、効率化及び国民参加を柱として、ODA改革に取り組んできました。今後、ODA改革をさらに推進し、本年中ごろを目途に政府開発援助大綱の見直しを進めていきます。
 国際社会の平和・安定と繁栄の実現には、世界経済の安定的な発展が必要であり、WTOのラウンド交渉を通じて、多角的自由貿易体制を維持し、強化していくことが不可欠です。
 我が国は、二月に東京でWTO非公式閣僚会合を開催するなど、今回のラウンドの成功に向け積極的に貢献していきます。同時に、多角的自由貿易体制を補完し、強化するためにも、経済連携にも積極的に取り組んでいくとの方針であり、現在、メキシコとの協定交渉を進めているほか、将来における東アジア地域全体の経済連携の強化を目指し、韓国やフィリピン、タイ、マレーシア等のASEAN諸国との協議を推進していきます。
 グローバル化の利益を途上国を含む国際社会全体が適切な形で共有することは、極めて重要です。
 我が国は、引き続き、東アジア地域、特にASEANの後発国を重視した開発援助を行っていきます。九月末には、東京で第三回アフリカ開発会議を開催する予定であり、貧困、紛争、感染症等、多くの困難を抱え、国際社会の関心が高いアフリカ地域の問題の解決に向けても積極的に取り組んでいきます。また、五月には、沖縄で第三回太平洋・島サミットを開催し、太平洋島嶼国の関心の高い環境問題等への取り組みについての協力を深める予定です。
 人間の生存と生活に不可欠な資源である水の問題については、我が国は、三月に、関西で第三回世界水フォーラム及び閣僚級国際会議を開催します。我が国としては、人づくりと社会づくりの視点を重視し、途上国みずからの取り組みを側面から支援し、問題の解決に向けた国際協力の強化を図る考えです。
 地球温暖化についても、早急に取り組みを強化することが必要です。京都議定書は気候変動に対する国際的な取り組みを強化する重要な一歩であり、我が国は、同議定書の早期発効を目指します。同時に、米国や途上国を含むすべての国が参加する共通ルールの構築に向けて最大限努力していきます。
 このように多様化、複雑化する諸課題に対し、国際社会が一層効果的に対応するためには、安保理改革を初めとする国連の機能強化が不可欠です。安保理改革が実現する暁には、我が国は、常任理事国として一層の責任を果たしていく考えです。また、国際社会が直面する諸課題に取り組んでいくに当たり、G8プロセスは引き続き重要な役割を果たしており、六月のエビアン・サミットに向け、先般、私が訪問した本年のG8議長国であるフランスを初め、G8各国と緊密に協力していきます。
 また、以上のように国際社会の安定と繁栄の実現に取り組むに当たっては、人間の生存、生活、尊厳に対する脅威から一人一人の人間を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現していくことが重要です。このような人間の安全保障という考え方は、緒方貞子氏が共同議長を務めている人間の安全保障委員会の最終報告書においてこの二月にも打ち出される予定であり、我が国は、人間中心の社会づくりを推進するために、この理念の普及と実現を図っていきます。
 主要国・地域との関係を強化することは、以上述べてきたような、国際社会が直面する諸課題に有効に取り組んでいくためにも不可欠です。
 日米関係は、我が国外交の基軸です。我が国は、日米安保体制の信頼性のさらなる向上に努めていきます。また、北朝鮮やイラクの問題等、さまざまな課題につき、同盟国として、米国と引き続き緊密に協議、連携していきます。在日米軍にかかわる諸問題については、沖縄県民の方々が我が国全体の平和と安全のために背負っておられる御負担を軽減していくため、普天間飛行場の移設、返還を初めとする沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施に努めるなど、誠心誠意努力していきます。
 また、両国の持続可能な経済成長を図るため、引き続き、成長のための日米経済パートナーシップを通じた建設的な対話を行い、地球規模の問題を含む幅広い分野での対話及び政策協調を進めます。日米間で交流が開始されて百五十年という歴史的な節目を迎える本年、あらゆるレベルでの交流を一層活性化していきます。
 基本的人権の尊重、民主主義、自由貿易を基調とし、平和で安定し、繁栄する東アジア地域を実現することは、国際社会全体の平和・安定と繁栄の実現にとって極めて重要です。
 韓国は、我が国と基本的な価値観を共有し、政治・経済上極めて重要な隣国であり、両国間の未来志向の友好協力関係を一層発展させていくことが重要です。二月に発足する盧武鉉新政権とも協力関係を維持しながら、引き続き、幅広い交流を通じ、両国国民間の相互理解を増進していきます。
 中国との間では、平和友好条約締結二十五周年に当たる本年、人と人とのつながりをさらに拡大し、深めていくことなどを通じて、両国国民間の相互理解、相互信頼を深めていきます。特に、緊密な経済関係を踏まえ、日中経済パートナーシップ協議を初め、経済面での対話をより緊密にし、さらに、二国間関係の増進のみならず、地域問題やグローバルな諸課題の解決に向け、一層協力していきます。
 ロシアとの間では、先般、小泉総理が訪ロし、幅広い分野でのこれまでの協力の成果と今後の方向性を取りまとめた、日ロ関係の海図となる日ロ行動計画を発表しました。今後、同計画の内容を着実に実施し、具体的な成果につなげることが重要です。特に、本年は、年間を通じてロシアにおける日本文化フェスティバルが開催される予定であり、日ロ間の協力を幅広い分野で進めていく中で、平和条約締結問題についても、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を可能な限り早期に締結する決意を持って、粘り強く交渉に取り組み、前進を図っていきます。
 ASEANとの間では、ともに歩み、ともに進むとの基本理念のもと、さまざまな分野、レベルで一層の相互理解を深めていきます。また、我が国は、地域協力を進展させるための取り組みを行っていきます。日本ASEAN交流年である本年、十二月に予定される日本ASEAN特別首脳会議に向け、二十一世紀における幅広い協力の枠組みを構築していく考えです。
 先般、私が訪問をしたインドとの間では、グローバル・パートナーとしての協力関係を、より戦略的な視点から前進させていきます。
 EUの拡大と深化が進展し、NATOの拡大が決定され、国際社会での欧州の影響力が一層増しています。我が国は、日欧協力の十年のもと、緊密かつ幅広い協力、交流を進め、欧州との戦略的なパートナーシップをさらに強化していきます。
 以上述べてきた外交を実施していくに当たっては、外交が国民の皆様に理解され、支持されなくてはなりません。一連の不祥事によって失われた外務省に対する国民の皆様の信頼を回復するため、昨年二月の就任以来、私は、まず外務省改革の実施に全力投球してきました。有識者から成る「変える会」、外務省内の有志による自発的な改革グループ、国会議員の方々からのさまざまな提言を踏まえ、昨年八月に、外務省改革「行動計画」を発表しました。また、昨年十二月に、外務省の組織・機構改革に関し、中間報告をまとめ、本年三月中に最終報告の成案を得る予定です。
 私は、こうした取り組みを通じて、外務省改革を総仕上げし、国民の皆様の期待にこたえながら、創造的な外交を一層力強く、積極的に実践していく考えです。引き続き、国民の皆様と議員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 財務大臣塩川正十郎君。
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
国務大臣(塩川正十郎君) 平成十五年度予算の御審議に当たり、今後の財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明いたします。(拍手)
 少子高齢化の進展や経済のグローバル化といった内外の急速な経済社会状況の変化の中、国民が将来にわたり安心して暮らせる社会を築くため、私は、以下に申し述べます諸課題に着実かつ的確に取り組み、構造改革の努力の成果を上げてまいる所存であります。
 また、現下の経済財政運営において最も重要なことは、デフレの克服であります。これについては、平成十五年度予算、税制改正等において、厳しい財政事情の中、できる限りの努力をいたしました。政府は、日銀と引き続き一体となって、強力かつ総合的な取り組みを行ってまいります。
 第一の課題は、財政構造改革であります。
 平成十五年度予算については、歳出全体にわたり徹底した見直しを行うため、まず、概算要求段階において要望可能額を大幅に緩和するとともに、活力ある社会経済の実現に向け、重点的、効率的配分を行うことといたしました。また、高齢化の進行による負担増など歳出の増加が見込まれる中、予算執行調査の結果等を活用した経費の節減やコストの見直しなどを図り、一般歳出及び一般会計歳出全体について、実質的に平成十四年度を下回る水準といたしました。
 我が国の財政事情は、平成十五年度末の公債残高が四百五十兆円程度に達する見込みであるなど、過去に例を見ない厳しい状況にあります。今後の中長期的な財政運営に当たっては、先般閣議決定された「改革と展望」で示された、「二〇一〇年代初頭におけるプライマリーバランスの黒字化を目指す。」との目標達成に向け、努力を続けてまいります。
 第二の課題は、税制改革であります。
 従来の制度を大幅に見直し、個人の資産のより一層の活用と企業の新分野への取り組みの支援を念頭に置き、平成十五年度税制改正において、現下の経済財政状況を踏まえ、所要の措置を講ずることといたしました。
 具体的には、我が国産業の競争力強化のため、研究開発・設備投資減税の集中・重点化、次世代への資産移転の円滑化に資する相続税、贈与税の一体化及び税率の引き下げ、さらに、貯蓄から投資への改革に資する金融・証券税制の軽減・簡素化、土地の有効利用の促進に資する登録免許税の軽減、人的控除の簡素化等の観点からの配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止、消費税に対する信頼性、透明性を向上させるための免税点制度等の改革、酒税及びたばこ税の見直しその他の所要の措置を一体として講ずることといたします。なお、このうち、相続税、贈与税の一体化においては、一般の贈与について二千五百万円まで、住宅取得に充てる場合には三千五百万円までを非課税枠とするなどの措置を講ずることとしております。
 以上の措置の実施により、平成十五年度において、国、地方合わせて一兆八千億円程度の減税となり、多年度においては税収中立となります。
 今後も、少子高齢化と税制のあり方、国、地方のあり方と税制等、さまざまな検討課題についてさらに議論を進めてまいります。
 第三の課題は、世界経済の安定と発展への貢献であります。
 我が国は、国際機関やG7、アジア諸国等と協力しつつ、国際金融システムの強化や開発途上国の経済社会の発展等の課題に取り組んでまいります。また、アジアにおける通貨、金融の安定化に向けても、一層の貢献を行ってまいります。
 為替相場につきましては、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要であり、今後とも、為替相場の動向を注視しつつ、必要に応じて適切に対処してまいる所存であります。
 また、WTO新ラウンド交渉に積極的に取り組むとともに、自由貿易協定等の経済連携も積極的に推進してまいります。具体的には、既にメキシコとの間で正式な協定締結交渉を開始しており、韓国、ASEAN等との間でも検討を進めております。
 平成十五年度関税改正においては、後発開発途上国への一層の支援等を図るための特恵関税制度の改正等を行うこととしております。
 次に、今国会に提出しております平成十五年度予算の大要について御説明いたします。
 まず、歳出面についてでありますが、一般歳出の規模は四十七兆五千九百二十二億円、一般会計全体の予算規模は八十一兆七千八百九十一億円となっております。
 国家公務員の定員については、二千百三十六人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。
 次に、歳入面について申し述べます。
 租税等については、平成十五年度税制改正を織り込み、四十一兆七千八百六十億円を見込んでおります。また、その他収入については、三兆五千五百八十一億円を見込んでおります。
 これらの結果、公債発行予定額は三十六兆四千四百五十億円、公債依存度は四四・六%と、財政事情は厳しくなっております。なお、特例公債の発行については、別途所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 財政投融資計画については、行財政改革の趣旨を踏まえ、全体規模を縮減しつつ、構造改革に資する分野に重点を置き対象事業を見直すとともに、現下の経済金融情勢を踏まえ、企業再生・中小企業金融等、真に政策的に必要と考えられる資金需要には的確に対応することといたしました。この結果、平成十五年度財政投融資計画の規模は二十三兆四千百十五億円、前年度当初計画に対しまして一二・六%の減少となっております。
 次に、主要な経費について申し上げます。
 社会保障関係費については、将来にわたり持続可能で安定的、効率的な社会保障制度を構築する観点から、年金等について平成十四年の消費者物価の下落に応じた物価スライドを実施するとともに、雇用保険制度改革等を行うこととしております。
 公共投資関係費については、その水準を全体として縮減しつつ、快適で質の高い生活空間の形成など、活力ある社会経済の実現に向けて、人間力の向上・発揮、魅力ある都市・地域社会、高齢化社会・少子化対策、循環型社会の構築の四分野へ重点化を行っております。
 文教及び科学振興費については、義務教育費国庫負担制度の見直しや確かな学力の育成等教育改革の推進、世界的水準の大学づくり、優先順位づけも踏まえた戦略的重点化による科学技術の振興等に努めております。
 防衛関係費については、災害派遣能力の充実や防衛力の質的向上等、中期防衛力整備計画に掲げられた重要課題にこたえつつ、効率的で節度ある防衛力整備を行うこととしております。
 農林水産関係予算については、農林水産業の環境保全機能に配慮する一方、真に消費者を重視した政策への転換を進めております。
 経済協力費については、全体の量的規模を縮減しつつ、国際協力の観点から、我が国の責任の十全かつ適切な遂行が可能となるよう、援助対象分野等のさらなる戦略化、効率化を図っております。
 エネルギー対策費については、国際的な視点に立脚したエネルギーの安定供給確保や地球温暖化問題への対応等を着実に進めております。
 中小企業対策費については、創業、経営革新の推進や中小企業に対する円滑な資金供給を確保するための基盤強化等を図っております。
 国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲等を含む税源配分のあり方についての三位一体の改革については、芽出しとしての措置を平成十五年度予算に反映させたところであります。
 まず、国の関与を縮小し、国、地方を通じた行政のスリム化を図るため、地方公共団体向け補助金等の整理合理化を推進いたしました。
 また、国と歩調を合わせつつ、地方歳出の徹底した見直しを行い、その上で、通常収支の財源不足に関して、新規の特別会計借入金を解消するなど、地方財政の効率的な運営に向けた措置を講ずるとともに、所要の地方交付税総額を確保しております。
 さらに、市町村道整備に係る国庫補助負担金の見直し等に伴う影響を踏まえ、自動車重量譲与税の譲与割合を引き上げることとしております。
 地方公共団体におかれましても、歳出全般にわたる一層の見直し、合理化、効率化に積極的に取り組まれるよう要望するものであります。
 以上、平成十五年度予算の大要について御説明いたしました。本予算の編成に当たっては、公債依存度が四四・六%となるなど、財政事情が過去に例を見ない厳しい状況になっておる中、活力ある経済社会を構築するために思い切った予算の重点化を行うとともに、むだを徹底して排除し、持続可能な財政構造に向けて歳出の構造改革を推進することといたしております。
 何とぞ、関係法律案とともに御審議の上、速やかに御可決いただきますよう心からお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 国務大臣竹中平蔵君。
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 経済財政政策担当大臣として、日本経済の課題と政策運営の基本的考え方について所信を申し述べます。(拍手)
 振り返りますと、我が国経済は、八〇年代には年平均四ないし五%成長を達成していたにもかかわらず、九〇年代には年平均わずか一%程度しか成長できない経済になりました。その原因をどのように認識するかが、今後の経済財政政策を考える上での原点であります。
 日本経済は、単なる需要不足から一時的に悪くなっているのではありません。我が国経済の多くの部門の競争力、生産性が九〇年代に入って低下してきております。だからこそ、「聖域なき構造改革」を進めなければならないのです。
 我が国の競争力、生産性の低下の原因は、極めて複合的な要因によるものであります。過去の成功体験への依存と既得権へのこだわりが個人、企業、行政といった経済主体の規律を失わせ、迅速な対応を損ない、問題は先送りされ、この間に起こった冷戦構造の終えん、アジア経済の台頭等、国際的競争の大変化への対応もおくれました。
 その結果、日本経済は不良債権と財政赤字という二つの負の遺産を背負い込むこととなり、それがデフレの深刻化と株価の低迷に反映されております。このような中で、構造改革を先延ばしにして、財政拡大のみに頼る経済運営を行うのであれば、日本経済にあすはないと断言できます。こうした観点から、小泉内閣は、一貫して、改革なくして成長なしの姿勢を貫いているのであります。
 我が国は、構造改革によって基礎体力を強化すると同時に、二つの負の遺産の処理を先送りすることなく、本格的な問題解決に取り組まなければなりません。一夜にして日本経済を再生させる魔法のつえは存在しません。前例にとらわれず、政策総動員を図ることが重要であります。変化を恐れ、二つの負の遺産の処理を放置、先送りしていては、本当の危機、金融危機や財政危機を招くことになります。問題先送りは、断じてすべきではありません。また、内外の情勢変化により厳しい状況が生じた場合には、大胆かつ柔軟な経済政策を行ってまいります。
 小泉内閣は、発足以来、民間でできることは民間に、地方でできることは地方にの基本的立場に基づき、構造改革の基本戦略を、経済財政運営と構造改革に関する基本方針、骨太方針として決定し、それに沿った経済財政運営を行ってまいりました。
 当初から精力的に取り組んできたのは「聖域なき構造改革」であります。特に、公共事業については、十四年度予算から思い切った選択と集中を図り、当初予算ベースで一〇%以上の削減を行うとともに、中身についても、都市再生、地方活性化や高齢化対策等に重点配分を行いました。
 昨年は、「この国のかたち」をあらわす税制改革の論議に着手いたしました。機会の平等を重視しつつ、公正さを重んじ、企業や個人の経済の活力を最大限引き出し、納税者の納得を得る簡素な税を目指し、その改革の方向を基本方針二〇〇二に示したところであります。これを踏まえ、十五年度より本格的な税制改革に着手することにしております。この包括的かつ抜本的な税制改革は、今後とも引き続き進めなければなりません。
 規制改革についても、大きな前進が見られました。規制は全国一律でなければならないという考え方から、地域の特性に応じた規制を認めるという考え方に転換を図り、昨年は、異例のスピードで構造改革特区のスタートを切りました。農業や福祉といった分野への株式会社参入等、長年の課題に道が開かれました。先般の第二次提案募集では、昨年夏の第一次提案を上回る六百五十一件もの提案があり、地方や民間の豊かなアイデアが十分に示されました。この動きは、国から地方へ、官から民への構造改革を加速させる突破口として重要な成果と言えます。
 そして、第一回目の基本方針から日本経済再生の第一歩と位置づけてきたのは、不良債権の処理であります。昨年十月、小泉総理の、平成十六年度に不良債権問題を終結させるという強い覚悟を受け、金融庁は金融再生プログラムを策定し、現在、この工程表を着実に実施しております。
 不良債権処理の加速と歩調を合わせて、雇用・中小企業等のセーフティーネット拡充、減税、産業・企業再生への早期対応等を総合的に盛り込んだ対策や、これを補完、強化する改革加速プログラムを取りまとめ、これに基づいて平成十四年度補正予算を編成いたしました。平成十四年度の実質経済成長率は、当初見通しのゼロ%を上回り、〇・九%となる見込みであります。
 このように、小泉内閣発足以来の一年九カ月で構造改革は着実に進展してまいりましたが、いまだ道半ばであります。今後も、日本経済の潜在成長力を高めるための構造改革を断行し、あわせて、将来まで持続可能な財政や社会保障制度の姿を確立することは、未曾有の高齢化社会を支える将来世代への我々の責務であります。
 小泉内閣では、マクロ経済と財政の中期的な姿を初めて一体的にとらえた「改革と展望」を示し、それに沿った政策運営を行っております。「改革と展望」は、規律ある財政と経済活性化の両立という狭い道を歩むための道しるべであります。
 「改革と展望」については、不良債権処理の加速に伴う影響、世界経済の先行きへの懸念等、当初想定した以上に内外の不確実性が高まってきていることから、集中調整期間を一年程度延長すること等を内容とする二〇〇二年度改定を行いました。この改定においても、「改革と展望」の基本シナリオは変わりません。これを今後とも堅持し、民間需要主導の持続的成長とプライマリー収支の二〇一〇年代初頭の黒字化を目指します。
 平成十五年度の経済財政運営について申し上げます。
 十五年度は、マクロ経済運営の観点からは、財政のむだを排除しつつも、決して緊縮型ではない、景気中立型の経済財政運営を行います。引き続き、経済財政諮問会議等を活用して、これまで取り組んできたさまざまな改革を加速させ、その進展を実感できる年にすることを目指してまいります。
 その際の最優先課題は、デフレの克服です。デフレは、一般に、安価な輸入品の増加等の供給要因、需要不足の要因等、複合的な背景を持ちますが、現在の日本のデフレ状況は、貨幣的な要因による面も強いと考えております。政府は、改革を進めて民間需要主導の持続的成長を図り、あわせて、政府と日本銀行が一体となって、前例にとらわれず、デフレ克服を目指し、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組むことが必要です。
 また、不良債権処理と産業再生を一体的に加速してまいります。金融行政については、金融再生プログラムに従って、健全性、戦略性、誠実性という三つの視点を踏まえつつ、厳格に運用いたします。問題を先送りすることなく、不良債権処理を着実に進めるとともに、今後設立予定の産業再生機構の活用等を通じて産業の再生を促すことにより、金融発の経済の底割れは絶対に起こさせません。
 同時に、官から民へ、国から地方への方向に沿った改革を強化いたします。小さな政府を実現するために、徹底した歳出削減と行政のスリム化が必要であります。厳格な政策評価に基づく予算編成等、予算プロセスの改革を進め、歳出の効率化を図ります。このような取り組みなく、国民に安易に増税を求めることは避けなければなりません。そして、地方財政については、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討し、具体的な改革案を六月を目途に取りまとめいたします。
 また、引き続き、包括的かつ抜本的な税制改革に取り組みます。あわせて、地域経済の活性化を通じた需要と雇用の創出に向け、規制改革と構造改革特区を飛躍的に推進することを目指します。
 経済活性化を達成するには、約一千四百兆円の家計貯蓄の有効活用についても検討する必要があります。九〇年代以降、資金の流れは大きな変化を起こし、政府が使い道を決める資金の割合がふえ続けております。豊富な家計の貯蓄を将来の経済成長に結びつけるために、公的な資金の流れの改革について新たに検討を行います。
 ことしは、十六年の年金改革に向けて、その案が取りまとめられる予定です。その際、年金、医療、介護等をばらばらに議論するのではなく、受け取る国民の立場に立って、生涯にわたる社会保障サービスを一体的に検討し、受益と負担の両面からそのあるべき姿を設計しなくてはなりません。国民の生涯にわたる安心を構築すべく、社会保障サービスを総合的に議論し、持続可能な制度の確立を目指してまいります。
 国民生活の面でも、昨今の経済社会の現状にかんがみ、公益のための情報提供者を保護する制度の整備を含めた全体的な消費者政策を再構築するとともに、二十一世紀社会の新たな担い手であるNPOの活動基盤を整備してまいります。
 十五年度においては、不良債権処理の加速に伴う影響はあるものの、以上のような改革の成果と、十四年度補正予算や先行減税の効果、さらに、世界経済が徐々に回復していくこと等から、企業部門も緩やかに回復するものと見込んでおります。十五年度の国内総生産の実質成長率は〇・六%程度になると見通されます。今後とも改革を進めつつ、経済情勢に応じて大胆かつ柔軟なマクロ経済の運営に努めてまいります。
 諸外国の経験からも、改革の成果が十分に定着するまでに五年から十年の期間が必要であり、構造改革を進めるに当たっては、そうした歴史的な視点が必要であります。
 しかし、その一方で、失われた十年を経て、かつ、今後未曾有の高齢化社会を迎えようとしている我が国に、残された時間は多くはありません。過去の成功や既得権にとらわれることなく、スピード感を持って、二つの負の遺産の処理を加速しつつ、構造改革に邁進する必要があると考えます。既に、産業の再編が徐々に進展し、主要銀行も不良債権処理に向けた動きを加速し始める等、変化の兆しはあらわれ始めております。
 改革の成果は、ある臨界点を超えると加速的にあらわれるものであり、それまでは忍耐強い努力が必要であります。「天下の事は、進まざれば則ち退く」と古くから言われているように、絶えず前進しなければなりません。こうした動きを加速させることによってこそ、株式市場にも我が国経済の潜在力が反映されていくはずであります。
 日本経済は、依然として、勤勉な労働力、高い技術力で世界もうらやむ潜在力を有しております。今、日本経済の力強い再生に向けて、国民的英知を結集する必要があります。国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をお願いして、所信の表明といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
下村博文君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二月三日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 下村博文君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十七分散会


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