衆議院

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第5号 平成15年2月3日(月曜日)

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平成十五年二月三日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  平成十五年二月三日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。岡田克也君。
    〔岡田克也君登壇〕
岡田克也君 民主党の岡田克也です。
 私は、民主党幹事長として、民主党・無所属クラブを代表し、総理の施政方針演説について総理に質問いたします。(拍手)
 質問をかわすことなく、真正面から誠意を持って御答弁いただけるようにお願いいたします。なお、答弁が十分でないと考えたときは、時間の範囲内で、納得のいくまで再質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
 小泉総理、今私は、この壇上に立ち、複雑な思いであなたの姿を見ています。
 平成十三年五月、あなたは、この壇上で、恐れず、ひるまず、とらわれず改革に取り組む、日本経済再生の処方せんは既にあり、今なすべきことは決断と実行だと。国民は大きな期待を持ちました。改革なくして成長なしという総理のスローガンに、国民は、しばらく痛みを我慢してみようと覚悟を決めました。小泉総理に任せれば、改革が実現し、経済再生や生活の安定も可能になると信じようとしたのです。
 それから一年九カ月。日本の社会、経済、国民生活の現実は、期待外れを通り越して最悪の状況です。改革もなければ、成長もありません。先の展望が見えません。国民にただ我慢してくれと言うだけで、いたずらに痛みをふやしています。それでも、改革が少しでも前進していれば、まだ救いがあります。しかし、小泉総理、あなたは、ひたすら既得権を守ろうとする自民党抵抗勢力と理念なき妥協を続けてきました。
 小泉総理、ことしは、日本にとっても世界にとっても極めて重要な年です。経済は再生するのか。改革は進むのか。イラクや北朝鮮の問題にどう対応するのか。総理、あなたは、リーダーとしてこれらの問題に適切に対処できる自信がありますか。
 総理、私は、これまで、注意深くあなたの言動を見てきました。総理、あなたは、日本国総理大臣としてリーダーシップを発揮すべき肝心なときに、決断を回避し、あるいは丸投げしてきたのです。私は、この間、もし私が日本国総理大臣であればこうしたのにと思ったことが何度かあります。先日の施政方針演説を聞いても、小泉総理のビジョンも、断固やり抜こうという決意も伝わってきません。
 私は、今こそ政権交代によってこの国の政治を変える、本当にこの国の政治を変えたいという思いを強くし、その実現に向けて決意を新たにしています。(拍手)
 以下、具体的に、小泉総理、小泉自民党政権の問題点を四点にわたって指摘し、民主党政権ならどうするかを国民の皆さんに対して明らかにしたいと思います。
 まず、小泉自民党政権第一の問題点として、経済失政を指摘し、民主党の目指す経済再生の具体策について説明します。
 経済の現状について、小泉総理の認識は甘過ぎます。具体的な数字を生活者の視点から指摘します。
 昨年度の個人破産件数は前年度比二四%増の十七万三千件と過去最高を記録し、民事再生法の個人申請件数は八千五百件にもなっています。教育費や住宅ローンなど固定的経費が負担し切れなくなった家庭も数多くあり、その影響で、住宅金融公庫の住宅ローンの代位弁済が二千九百億円にも達しています。
 職を失うことは人生にとって最大の出来事と考えますが、失業者の数の増加だけではなくて、世帯主の失業の増加、一年以上の失業者の増加など、内容もより深刻になってきています。
 また、不況の影響は子供たちの勉学環境にも深刻な影を落とし始めており、保護者の失業、賃金カットを理由に授業料の免除、減額を受けた公立高校の生徒は全国に十七万人です。同様に、私立学校に通う生徒の中には、退学にまで追い込まれるケースもふえています。
 さらに言えば、小泉失政の究極の犠牲者とも言える自殺者がいまだに三万人を超えています。
 これらは小泉総理の経済失政の結果であり、内閣総理大臣としていかなる責任を感じているのでしょうか。真摯な反省の弁を国民に対して述べていただきたいと思います。答弁を求めます。(拍手)
 次に、来年度経済成長見通しについてお伺いします。
 厳しい経済状況の中で、政府は、来年度、実質で〇・六%の経済成長を見込んでいます。その牽引車は、個人消費と設備投資です。とりわけ、国内総生産五百兆円の中で二百八十五兆円、約六割を占める個人消費がどうなるかは重要です。
 しかし、来年度予算には、国民の消費マインドに対して冷や水をかけるような負担増、増税がメジロ押しです。医療保険で一兆四千三百億円、たばこ・酒税の増税で三千億円、国民へのしわ寄せは合計二兆円にも及び、消費の一%近い大きさです。
 ただでさえ雇用不安と賃金低下に加え、先行きに対する不透明感、不安感が増す中で、消費に大きな悪影響を及ぼすことは確実です。総理はなぜこのような国民生活を直撃する負担増を行うのでしょうか。答弁を求めます。
 特に、サラリーマン本人の医療費の窓口負担の二割から三割への引き上げは容認できません。直ちに凍結すべきです。
 昨年、医療の負担増を決めた際に、ことし三月までに新しい高齢者医療制度の創設などについての基本方針を策定することが法律に明記されました。厚生労働省のたたき台は昨年十二月にできたものの、調整が難航していると聞きます。必ず基本方針を三月中にまとめるとの総理の決意を伺います。
 また、結局は、またしても改革なくして負担増ありになってしまうのではないでしょうか。総理に、四月の医療費本人負担の三割への引き上げ開始を凍結し、医療制度の抜本改革を先行させるおつもりはないか、お伺いします。(拍手)
 さて、小泉総理は、当初、今後二、三年を日本経済の集中調整期間とし、その後、民需主導の経済成長が実現することを目指すと述べておられました。
 しかし、二年近くが経過しましたが、現実は、このような楽観的な見通しとはかけ離れており、デフレが深刻化する中、民需主導の経済成長実現の見通しはめどさえ全く立たない状況にあります。これを失政と言わずして何と言うのでしょうか。何が問題だったのか、そして、それをどのように乗り越えようとしているのか、総理の率直な反省の弁をお伺いしたい。答弁を求めます。(拍手)
 残念ながら、政府の来年度予算案では同じ失敗の繰り返しになることは確実です。例えば、あれだけ大騒ぎした高速道路の建設費が対前年度比で一・二%ふえ、また、すべてを廃止するか民営化すると総理が主張した特殊法人も、独立行政法人を含めた支出で見ると、わずか五・八%しか減っていません。小泉総理の歳出構造改革は、まさしく政官業癒着構造の中で身動きがとれなくなっているのです。
 これに対し、民主党は、責任野党として、経済再生を実現するための民主党版来年度予算案を現在作成中です。その骨子を申し上げます。
 民主党の予算編成の柱は、第一に、間違った税金の使い道を改めること、第二に、将来を担う次の世代、若者や子供たちに対する投資、過重な負担回避を重視すること、第三に、公共事業、特殊法人などの大胆な見直しで財源を生み出し、経済活性化につながる分野に重点配分することです。
 まず、私たちは、大衆増税を盛り込んだ政府税制改革案は採用せず、撤回を求めます。民主党は、既に発表しているローン利子控除制度の創設、環境税の創設などを柱とした税制改革を提案します。
 歳出では、以下の重点五分野に八兆円規模の予算を重点配分し、雇用の創出に全力を挙げます。現在五・五%の失業率を一ポイント下げるには六十万人の雇用創出が必要ですが、政府案では、失業率は来年も上昇することになっています。しかし、民主党の予算案を採用すれば、確実に四%台に下がります。
 高齢者が身近な町で暮らせるグループホームの整備や介護、保育、障害者対策など福祉分野に二兆円、高校生の就職を促進するためのカウンセラーの配置、犯罪対策のための警察官の増員、NPOの支援など雇用分野に二兆円、そして、三十人学級や老朽校舎の耐震構造化など教育の分野、起業支援など中小企業分野、バリアフリーやマンション再生など国土交通分野、緑のダムなど環境分野を中心に残り四兆円の予算を積み増します。
 これらの予算措置を実現するため、従来型の公共事業や特殊法人への支出、各種補助金、ODA、国のむだな行政経費などを大胆に削り込み、補助金は一括交付金化します。
 以上の民主党の予算案について、小泉総理の見解をお願いします。(拍手)
 民主党は、予算だけではありません。経済再生のため重要なことは、民間の活力をいかに引き出すかです。日本経済の圧倒的大部分は、政府部門ではなく民間部門です。しかし、民間活力を生かすための規制改革は、小泉総理のリーダーシップが見られないまま、堂々めぐりの議論が続いています。それに加えて、一時は政府みずからがその切り札と位置づけた構造改革特区構想が、現在、見事なほど、しりすぼみ状態になっています。
 株式会社の積極参入などを含め、大胆な取り組みが必要と考えますが、小泉総理はなぜリーダーシップを発揮されないのか、答弁を求めます。
 また、民間部門の大宗をなす中小企業が本来の活力を取り戻すことは、極めて重要です。特に、全国五百五十を超える地方議会でその制定を求める決議が採択された地域金融円滑化法案の成立や、政府系金融機関の融資における個人保証の禁止、個人破産時における差し押さえ禁止財産の範囲の拡大などの民主党の中小企業金融対策について、どうお考えでしょうか。答弁を求めます。(拍手)
 次に、小泉自民党政権の第二の問題点として、構造改革について小泉総理が決定的に国民の期待を裏切ってきたことを指摘し、民主党の考え方を説明します。
 先日の予算委員会で、我が党の菅代表の追及にたまりかねて、小泉総理は、この程度の約束を守らなかったことは大したことではないと言われました。政治家、しかも一国の総理大臣の約束がいかに軽いかを、みずから白状してしまったのです。小泉総理は、就任以来、改革実現と言いながら、日本の構造改革にとって重要な局面で原則なき妥協をし、決断すべき場面でリーダーシップを発揮してこなかったのです。
 以下、具体的に指摘します。
 まず、道路関係四公団民営化問題について取り上げます。
 昨年十二月、ようやく、民営化推進委員会の意見書がまとまりました。民主党は、この改革案に賛成です。借金方式でどんどん高速道路をつくれば、次の世代に、高速道路も残りますが、借金も残ります。これを税金で返すのは、私たちの子供たちです。
 しかし、小泉総理は、推進委員会に基本的な方向を示さず議論させ、その結果、委員会は大混乱に陥りました。また、抵抗勢力が地方を巻き込んで高速道路建設の大合唱をしたときも、自民党総裁でありながら、何もしませんでした。さらに、自民党道路調査会は、地域分割は行わない、私企業による道路資産買い取りは認めないなどの決議を行っています。
 私が総理の立場なら、まず、大きな方向を示した上で推進委員会に議論させます。そして、任せた以上、その結果については責任を持って、自民党の介入を断固排除し、実現したでしょう。これらの問題について、小泉総理の反省の弁と決意をお聞かせください。
 次に、税制改革について取り上げます。
 小泉総理は、昨年の年頭会見で、「聖域なき税制改革」を実現すると言われました。しかし、その後は、経済財政諮問会議と政府税調に丸投げし、両機関の間で、基本理念をめぐって不毛な議論が続きました。
 私が総理の立場なら、まず、経済財政諮問会議で基本的な方向を決定した上で、政府税調で専門的な見地から議論させたはずです。総理としてのリーダーシップの発揮がなかったことの責任をどう考えるのでしょうか。お答えください。
 また、最後は自民党税調で、従来型の発想で決まってしまいました。その結果、「聖域なき税制改革」とはほど遠い、不況下の大衆増税案になりました。国民生活と乖離した長老議員が日本の税制を決めています。民主主義国家の中で、政府でもなく、国民に対して直接責任を負う立場にない人々によって政策が実質決定されているのは極めて異常なことだと思います。まず、この仕組みを壊すことから税の抜本改革が始まると思います。
 自民党を壊すと小泉総理は国民に約束しましたが、まさしく、こういうことがきちんとできるかどうかが問われているのです。自民党税制調査会を廃止する考えはないか、総理のお答えを求めます。(拍手)
 次に、地方分権について指摘します。
 総理は、二〇〇六年度までに補助金、地方交付税、税源移譲を三位一体で改革することを表明されました。率直に言って、私も多少の期待を持って総理の決意を聞きました。
 しかし、二〇〇三年度予算案では、補助金、交付税の改革はほとんど進まず、特に義務教育国庫負担金に関しては、都道府県からは、選択の余地のない押しつけでかえって改悪だという批判すら出ています。税源移譲に至っては、議論すらまともになされていません。
 私が総理の立場なら、地方分権を最重要課題に取り上げ、まず、補助金を思い切って統合し、一括交付金とすることで、地方自治体の自由な判断と責任にゆだねます。
 総理もよく御承知のように、ここ十年間の大きな変化は、国ではなく地方で始まっています。有能な知事、市長が続々と誕生しています。例えば、三重県の北川知事や長野県の田中知事は、国の補助事業を大胆に削減し、福祉、環境、教育、雇用などの生活関連分野に対しては重点的に予算配分しています。情報公開や電子入札など、国ではできないような新たな事業にも積極的に取り組む自治体もふえてきました。
 中央が地方自治体をコントロールするという発想をやめて地方に任せることが、税金のむだのない使い方につながるのです。総理は地方分権を日本再生の切り札とは考えないのでしょうか。答弁を求めます。(拍手)
 次に、小泉自民党政権の第三の問題点として、政治腐敗の問題を指摘し、民主党の考える、政治資金を中心とした政治改革の実現について説明します。
 先日の自民党長崎県連前幹事長の逮捕を例に挙げるまでもなく、政治と金をめぐる問題が後を絶ちません。これは自民党の政治体質そのものです。大島農林水産大臣の秘書官の口きき疑惑、久間自民党政調会長代理の秘書のコンサルタント料疑惑、そして、自民党組織ぐるみの長崎県連疑惑。野党四党は、予算委員会における一日も早い関係者の参考人招致を強く求めていますが、今日に至るも、与党から具体的な回答はありません。
 これらの政治と金をめぐる問題について、自民党総裁として、調査をし国会に報告すること、そして、参考人招致を明確にこの場でお約束いただきたい。また、再発防止のための具体策をお示しください。さらに、我々民主党を中心に野党が提出している公共事業受注企業からの献金禁止法案に賛成するお気持ちがないか、改めてお伺いします。
 地に落ちた政治への国民の信頼を取り戻すために、政党はみずからの政治資金の透明性確保に努めることが必要です。
 自民党の二〇〇一年の政治資金収支報告を見ると、党運営の責任者である幹事長に対し、十二億円近くの巨額の金が一年間で渡っています。具体的に、森総理時代の古賀幹事長に四億七千万円、小泉政権の山崎幹事長に七億一千万円です。しかし、その使途は一切明らかではありません。これは、国民の常識からかけ離れたことであり、政治資金規正法の脱法的行為です。
 小泉総理、このままでは、あなたは今までの自民党総裁と何ら変わりません。不明朗、不透明な自民党の金の扱いについて、どのように自民党総裁として国民に説明されるのか、そして、それを改めるつもりはないか、お伺いします。
 民主党は、本年度から、党本部の決算について外部監査を全面的に導入し、政治資金の使途について第三者のチェックを受けることに決定いたしました。国民に対して説明責任をきちんと果たしていこうという決意のあらわれです。総理には、民主党同様、自民党の政治資金決算について全面的に外部監査を導入するつもりはないのか、この場で明確にお答えください。(拍手)
 小泉自民党政権の問題点として、第四に、イラク問題を例としつつ、外交姿勢について取り上げます。
 ブッシュ大統領は、昨年九月に、国家安全保障戦略、いわゆるブッシュ・ドクトリンを発表しました。その中で、テロリストに伝統的な抑止力は通用しないとして、米国は単独行動も辞さない、先制攻撃も辞さないと主張しています。今回のイラク問題に対する米国の対応は、このブッシュ・ドクトリンが背景にあることは明らかです。
 第二次世界大戦の惨禍を踏まえ、世界は、国連を中心とした平和維持のための仕組みをつくり上げました。国連憲章第五十一条は、武力攻撃が発生した場合に限り自衛権の行使を認め、基本的には安全保障理事会の決議によって制裁を行うことで世界の平和を維持することになっています。私は、ブッシュ・ドクトリンはこの国連を中心とした世界の平和維持の仕組みと明らかに矛盾するものであり、重大な提案であると受けとめています。仮に、米国以外の国も含めて先制攻撃、単独攻撃を行うということになれば、世界は不安定化します。国際社会は今、大きな分岐点に立たされているという認識が必要だと思います。
 ブッシュ大統領の単独行動、先制攻撃容認論に対して、小泉総理は基本的にどう考えているのでしょうか。このような重要な提案に対して沈黙を続けるようでは、本当の意味での同盟国とは言えません。私が総理の立場なら、ブッシュ大統領と徹底的に議論し、再考するように説得します。日本国総理大臣として、明確な見解を求めます。(拍手)
 イラクに対する査察が継続しています。ブッシュ大統領は、イラクに対して、新たな国連決議がなくとも安保理決議一四四一号で武力行使できると主張しています。しかし、フランス、ドイツ、ロシアなどの主要国は、イラク攻撃を行う場合、武力行使を容認する新たな決議が必要との立場を明確にしています。
 日本はいずれの立場に立つのでしょうか。自民党の山崎幹事長は、明確な証拠があれば新たな決議がなくとも武力行使できると述べていますが、小泉総理も同じ考えでしょうか。私は、新たな決議がなければ武力行使すべきでないと、国際社会に対し日本の考えを明確に主張すべきだと考えますが、いかがでしょうか。(拍手)
 米国は日本にとって重要な同盟国ですが、みずから主体的な判断や主張ができない日本の姿勢を改める必要があります。木で鼻をくくったような総理の答弁は聞き飽きました。日本国民を代表する日本国総理大臣として、責任と誇りのある答弁を求めます。(拍手)
 二年前、森政権のもとで、自民党は完全に行き詰まっていました。既得権を守り続け、時代の大きな変化の中で身動きがとれなくなっていたのです。そういう中、小泉総理が誕生し、国民は、自民党政治を大きく変えてくれることを期待しました。しかし、従来の自民党政権と何ら変わらぬ小泉政権の本質が明らかになってきました。
 国民の皆様に申し上げたい。政治を変え、日本を変えるためには、政権交代が必要なのです。我々に任せていただきたい。(拍手)
 民主党は、納税者、生活者、消費者の立場に立つ新しい政党です。新しい国づくりのために、古い既得権をぶち壊し、開かれた、公正で透明性の高い社会を目指しています。市場の役割を重視し、政府の介入を最小限にしながらも、所得の再分配など、市場がおのれの役割を果たし得ない分野については、社会的公正の視点から、政府が今まで以上にきちんと責任を果たしていくことが必要だと考えています。子供や孫たち、将来世代が明るい展望を持てるように、世代間の公平、将来世代への責任を重視する立場に立ちます。
 この国会を通じて、小泉自民党政権と厳しく対決し、国民の皆様に政権交代による日本の再生という選択肢を示すために全力を尽くすことをお誓いして、私の代表質問といたします。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 岡田民主党幹事長にお答えいたします。
 私の経済政策の結果責任についてでございます。
 御指摘のとおり、雇用情勢は厳しく、自殺の増加といった事態についても、まことに痛ましいものと認識しておりますが、日本経済は、世界的規模での社会経済変動の中、単なる景気循環ではなく、複合的な構造要因による景気低迷に直面しているものと考えております。また、不良債権や財政赤字など、負の遺産を抱え、世界的な株価低迷の中で、戦後経験したことのないデフレ状況が継続しているなど、想定以上に厳しい内外経済環境が生じていると思います。
 小泉内閣は、大胆な構造改革を進め、二十一世紀にふさわしい仕組みをつくることによってこそ、こうした状況を打破し、我が国の再生と発展が可能となるとの認識のもと、デフレ克服を目指しながら改革を推進し、経済情勢に応じては大胆かつ柔軟に対応するという一貫した方針で経済運営に当たってまいりました。
 改革は道半ばにあり、改革の成果が明確にあらわれるまでにはまだしばらく時間が必要ですが、日本の潜在力は失われておらず、厳しい環境の中でも、多くの人々が前向きに挑戦を続けております。悲観主義に陥らず、自信と希望を持って改革に立ち向かうことが、国民全体に明るい未来をもたらすためにたどるべき道だと考えております。
 今後とも、金融、税制、歳出、規制などの改革の取り組みをさらに加速させ、日本銀行と一体となってデフレ克服に取り組むことにより民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図り、日本経済を再生させていくことが、私に課せられた責任であると考えております。
 社会保障の負担増や増税による国民負担についてのお尋ねであります。
 急速な少子高齢化が進展する中で、今後、社会保障給付費は増大していく見込みであり、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、医療保険などの制度改革は不可欠なものと考えます。改革を進めなければ、保険制度の運営が困難となり、かえって将来に対する不安が広がり、経済にも悪影響を及ぼすことになると考えております。
 さらに、今般の税制改革におきましては、税負担のゆがみを是正する等の観点から、酒税及びたばこ税の見直しを行うものの、税制改革全体としては、平成十五年度において、国、地方合わせて一兆八千億円程度の減税を実施することとしております。
 当面の景気との関係については、個々の負担増のみを取り上げて議論するのではなく、社会保障給付の拡大を通じた所得等の増加というプラスの側面や先行減税の効果なども含め、総合的に考えるべきものと考えます。
 いずれにせよ、政府としては、デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく考えであります。
 医療制度改革の基本方針の策定と医療費三割負担の凍結についてのお尋ねであります。
 国民皆保険を将来にわたり堅持していくためには、患者、加入者、医療機関といった関係者に等しく負担を分かち合っていただくことは避けられず、保険料の引き上げ幅を極力抑制するためにも、予定どおり、本年四月から三割負担をお願いすることが必要と考えております。
 また、医療保険制度の体系のあり方など、医療制度改革の諸課題については、各方面の御意見も伺いながら、今年度中に基本方針を策定し、将来にわたり持続可能な制度としていくため、さらなる改革に全力を挙げて取り組んでまいります。
 税制改革案及び民主党案についてのお尋ねであります。
 今般の税制改革におきましては、現下の経済財政状況を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化の実現を目指し、平成十五年度において、国、地方合わせて一兆八千億円程度の減税をするものであります。これにより、民間設備投資、消費、住宅投資など、足元の経済への好影響が期待できるほか、中長期的にも、我が国経済の構造改革を促進し、民間需要主導の成長に寄与するものと考えています。
 御指摘のローン利子控除制度については、課税の公平な負担という問題もあり、適切ではないと考えております。
 民主党の予算編成方針についてのお尋ねであります。
 民主党の予算編成方針については、その具体的内容を承知しておらず、詳細についてコメントすることはできませんが、御質問いただいた分野の予算についてお答えいたします。
 平成十五年度予算においては、福祉分野については、待機児童ゼロ作戦の推進などの少子化対策やグループホームの拡充など、各般の施策を推進していくこととしているところであります。
 雇用分野については、将来にわたる安定的運営を確保するための雇用保険制度改革の実施のほか、現下の雇用失業情勢等を踏まえ、若年者の総合的な雇用対策の推進や、早期再就職を促進するための施策などを盛り込んだところです。
 教育分野についても、確かな学力の育成、学校施設の耐震化の推進、育英奨学金の充実などについて重点的に取り組んでいるところであります。
 中小企業対策費については、創業、経営革新の推進や中小企業への円滑な資金供給を確保するための基盤強化等への重点化を図っているところであります。
 環境分野についても、循環型社会の構築、地球温暖化問題への対応などに資する予算に重点化を図っているところであります。
 また、公共投資関係については、単価の見直し等を通じたコスト削減に努め、公共投資全体の規模について、前年度当初予算から三%以上削減しつつ、都市の再生や地方の活性化など、雇用や民間需要の拡大に資する分野に重点配分を行っております。
 国庫補助負担金については、三位一体改革の芽出しとして、国、地方を通じた行政のスリム化を図る観点から、抜本的な整理合理化を行うこととしております。特殊法人等向け財政支出については、事業の徹底した見直しの成果を予算に反映させることなどにより、縮減を図っております。ODAについては、全体の量的規模を縮減しつつ、国際協力の観点から、我が国の責任の十全かつ適切な遂行が可能となるよう、援助対象分野等のさらなる戦略化、効率化等を図っているところです。
 このように、平成十五年度予算においては、歳出改革の一層の推進を図るとの基本的な考え方のもと、活力ある社会経済の実現に向けて、経済活性化や将来の発展につながる分野へ予算を重点的に配分するとともに、徹底した単価の見直しなどによる効率化に大胆に取り組んだところであります。
 構造改革特区を含めた規制改革への取り組みについてです。
 規制改革は、民間活力を最大限に引き出し、新規需要や雇用を創出するとともに、サービスなどについて多様な選択肢が確保された豊かな国民生活を実現する観点からも、重要な課題と認識しております。
 構造改革特区については、四月には第一号を誕生させるとともに、第二次提案募集で寄せられた構造改革にかける地方や民間の熱意を真摯に受けとめ、教育分野への株式参入を含め、今後とも、規制改革の突破口として、そのさらなる充実を図ってまいります。このため、私から関係大臣に対し、実現するためにはどうすればいいかという方向で検討するよう、強い指示を出しているところであります。
 また、全国的な規制改革についても、総合規制改革会議を積極的に活用し、経済財政諮問会議とも連携を図りつつ、引き続き強力に推進していく考えであります。
 中小企業金融対策についてのお尋ねであります。
 円滑な地域金融の確保は重要なことですが、民主党提案の地域金融円滑化法案は、基本的に自主的な経営判断にゆだねるべき金融機関の業務内容を政府が画一的な基準で評価、公表しようというものであり、慎重に考えるべきものと考えます。
 政府系金融機関における保証人の問題については、国民生活金融公庫で第三者保証人が不要な制度を創設する等、適切な保全策を考慮しつつ、対応しているところであります。差し押さえ禁止財産の範囲の拡大については、破産法の全面的な見直し作業の中で引き続き検討してまいります。
 政府は、中小企業の資金繰りを支援する保証制度等、約四千五百億円の補正予算の活用により、中小企業金融対策に万全を期してまいります。
 道路関係四公団民営化問題についてです。
 道路四公団の民営化については、一昨年末に閣議決定した特殊法人等整理合理化計画において、採算性の確保などについて、その基本的な方向を明示したところであります。
 民営化推進委員会の審議はこれに従い行われたものであり、最終的な意見の取りまとめに当たり、幾つかの点で意見の対立が解けず、委員長が辞任するなど残念な面もありましたが、債務の確実な返済、建設コストの削減、ファミリー企業のあり方の見直しなどの点で大きな成果を上げられたものと認識しております。
 提出された同委員会の意見を基本的に尊重するとの方針のもと、必要に応じ与党とも協議しながら、改革の具体化に向けて取り組んでいくことが、私に課せられた責務であると考えております。
 税制改革に関してのお尋ねであります。
 税制改革については、昨年一月、私が二十一世紀の新しい時代に対応するあるべき税制について新年早々から検討していただきたいと指示したことに基づき、経済財政諮問会議や政府税制調査会が検討作業を開始し、その後も、多年度税収中立のもとで一兆円を超えるできる限りの規模を目指した減税を先行させるなど、私が指示した方針のもとに、両会議などが連携しつつ検討を進めた結果、平成十五年度税制改正において、あるべき税制に向けた改革の第一弾として、広範な改革を取りまとめることとなったものであります。
 したがって、私がリーダーシップを発揮していないとの御批判は当たらないものと考えます。
 自民党税調の廃止についてでございます。
 他党の調査会について廃止と言うことについては、いささか疑問を持っておりますが、自民党税制調査会は、党に所属するすべての議員が参加できる場であります。毎年、自由かつ徹底した議論を重ねた上で、税制改正案を取りまとめるところであります。
 今後も、政府税制調査会、経済財政諮問会議とともに、自民党を含めた与党税調の議論を生かして税制改革を進めていきたいと考えております。
 地方分権に対する考え方についてでございます。
 中央が地方自治体をコントロールする発想はやめ、地方に任せることが税金のむだのない使い方につながるのではないかという御指摘は、基本的に同感であります。
 地方にできることは地方にゆだねるとの考え方のもと、国が地方行政に対する関与を縮小するとともに、地方の権限と責任を一層拡大することが必要であると考えます。地方が主体的かつ効率的に施策を選択し推進できるよう、みずからの創意と責任による自主財源の確保を可能にする仕組みが必要であります。
 今後、御指摘のようなひもつきの補助金に関する議論も含めて、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で幅広い視点から検討し、本年六月を目途に改革案を取りまとめたいと思います。
 一連の疑惑についてのお尋ねです。
 政治に対する国民の信頼は、改革の原点であります。政治に携わる一人一人が、初心に返って、みずからを厳しく律していかなければならないと考えます。
 自民党長崎県連の浅田前幹事長らが公職選挙法及び刑法違反容疑により逮捕された事件については、現在、当局において調査中でありますが、自民党として、今回の事件を重く受けとめ、改めるべきは改めるという姿勢で政治改革に臨み、国民から信頼される政治を目指して努力してまいります。
 国会への報告や参考人招致については、各党各会派間の議論を踏まえて対応したいと思います。
 民主党が提案している公共事業受注企業からの献金禁止についてのお尋ねであります。
 政治献金については、疑惑を招かないような仕組みを考えることが必要であり、昨年、あっせん利得処罰法を改正強化するとともに、官製談合防止法を制定したところであります。
 公共事業受注企業からの献金についても、現在、自民党において検討が進められているところであり、一歩でも前進するような措置を講じたいと考えております。
 自民党における政治資金の扱いと外部監査の導入についてでございます。
 政治資金については、国民から誤解を招くことのないよう、政治資金規正法に沿って適切に処理されることが必要であります。自民党においては、政治資金は法令に沿って適切な手続を経て処理しているものと承知しており、今後とも適正に処理してまいります。
 また、外部監査の導入についてでございますが、自民党におきましては、御指摘の外部監査の導入の問題については、将来の検討課題であると考えております。
 米国の国家安全保障戦略についてのお尋ねであります。
 政府は、米国がこの戦略において、国際社会と連携しつつ、冷戦後の新たな脅威に対し断固たる姿勢で臨む決意を示した点を評価しております。
 我が国として、他国の国際法の解釈につき有権的に評価する立場にはありませんが、この戦略は、米国が脅威への先制的対処のため必ず武力を行使するとしているわけではなく、先制を侵略のための口実としてはならない旨を明記しております。
 いずれにせよ、米国は国際法上の権利及び義務に合致して行動するものと考えます。
 イラク問題に関する新たな安保理決議の必要についてでございます。
 イラクの大量破壊兵器をめぐる問題は、国際社会全体への脅威であります。イラクが査察に全面的かつ積極的に協力し、大量破壊兵器の破壊を初め、関連する国連安保理決議を誠実に履行することが重要であります。
 我が国としては、安保理を初め国際社会が協調して毅然たる態度を維持すべきとの考えのもと、査察の状況、安保理等の議論を踏まえ、イラクが誠実に決議を履行するように、日本としての外交努力を継続してまいります。(拍手)
議長(綿貫民輔君) 岡田克也君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。岡田克也君。
    〔岡田克也君登壇〕
岡田克也君 まず、率直に感想を申し上げたいと思います。
 大変失望いたしました。ナッシング・ニューという言葉がありますが、今の総理の答弁は、ほとんどが、施政方針演説に書かれたことをそのまま述べているだけであります。これでは、何のためにこの本会議で代表質問があり、総理の答弁があるのか、国民から見ても全く理解できないことではないでしょうか。(発言する者あり)
 改めて、六問、質問いたします。総理に聞こえないといけませんから、皆さん、ちょっと静かにしてください。
 まず、総理は、私の経済失政についての質問にお答えになりました。しかし、そこに書かれたことは、すべて、施政方針演説に書いてあることです。総理の答弁は極めて形式的で、本当に今国民が厳しい状況にあるということがわかっておられるのかどうか、私は疑問に思います。そういう意味で、より具体的に申し上げて、総理の感想を求めたいと思います。
 例えば、これは我々の周りによくある話、皆さんも御存じのことだと思います。借金してマイホームを買った。しかし、所得が減ったり、職をなくして、あるいは職がかわって、そのマイホームを手放さざるを得ない。家はなくしたけれども、借金は残っている。こういう人がたくさんいます。一体、総理はどう思われるのでしょうか。
 あるいは、希望を持って勉強して、そして、望む高校や大学を卒業したけれども、一向に就職する道がない。そういう子供たちがたくさんいます。それに対して、総理はどう思うのでしょうか。
 頑張って私立高校に入学したけれども、親の収入が減って、そのみずから選んだ私立高校を退学せざるを得ないという子供たちもいます。そういったことに対して、総理の血の通った答弁をいただきたいと思います。(拍手)
 二番目に、道路公団の問題について追加質問いたします。
 総理は、民営化推進委員会の報告書は基本的に尊重すると言われましたが、基本的に尊重するというのは、一体どういう意味でしょうか。全面的に採用するという意味なんでしょうか。
 例えば、具体的にお聞きします。道路調査会が決議している地域分割の問題です。総理は、報告書どおり、地域分割を実行するおつもりがありますか。それとも、自民党道路調査会の決議を採用するのでしょうか。お伺いします。(拍手)
 三番目です。規制改革、規制改革特区の問題です。
 総理はいろいろ言われましたけれども、例えば、内閣委員会等で、厚生労働副大臣や文部科学副大臣と鴻池担当大臣の間で議論があります。見解が分かれています。そういったことに対して、閣内が不一致であることに対して、総理はどういうリーダーシップを発揮されたのでしょうか。お伺いします。(拍手)
 四番目、税制改革についてお聞きします。
 先ほどの答弁で、総理は、税制改革についてリーダーシップを発揮していると答弁されました。それでは、総理の「聖域なき税制改革」ということの基本理念を、わかりやすく、国民にわかるように述べていただきたいと思います。(拍手)
 五番目、政治資金であります。
 施政方針演説の中でも、あるいは今の答弁の中でも、この問題を、政治家一人一人が襟を正さなければなりませんという一般論にすりかえています。自民党総裁としての責任をどう考えているのでしょうか。改めるべきは改めるとおっしゃいました。何を改めるのでしょうか。御答弁をいただきたいと思います。(拍手)
 最後に、イラクの問題です。
 イラクの問題で、アメリカの先制攻撃に対して、これをもし認めるとすれば、従来の自衛権の概念を変えることになります。急迫不正の侵害、そういったことがないままで単独行動、先制攻撃をするということは、従来の国際法の考え方を変えるわけで、そのことについての総理の御認識を私はお聞きしたかったわけであります。
 同時に、国連決議一四四一号について、総理は、査察の状況とかイラクの対応とか、いろいろ言われましたが、しかし、一四四一号の解釈は、相手の対応や査察の状況で解釈が変わるわけではありません。一四四一号が新たな決議を武力行使のために必要としているのかしていないのか、それはまさしく決議の解釈の問題であります。明確にお答えいただきたいと思います。
 以上、総理の明快な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 岡田議員の再質問ですが、六問ありますが、私は、最初の答弁ですべて答弁しているつもりであります。しかし、あえて再質問されましたから再答弁いたします。
 経済失政についてでございます。
 私は、改革の成果がすぐあらわれるとは思っておりません。時間がかかります。いろいろ経済の指標、状況、厳しいことは事実でありますが、金融、税制、規制、歳出、各般にわたる改革をなし遂げて、将来、持続可能な民間主導の成長軌道に乗せるようしていくことが私に課せられた責任だと思っております。
 道路公団につきましても、あの答申を基本的に尊重するということで、十分、私は答弁になっていると思います。
 また、我が党に相談しないでどうなるんですか。政党を排除せよと。反対している政党の言うことを聞くよりも、協力してくれる政党の意見をよく聞きながら委員会の意見を尊重して実現していくのは、当然のことではありませんか。(拍手)
 規制改革、これも積極的に特区で進めております。それぞれの分野におきまして、今まとめておりますので、鴻池担当大臣が今、積極的に努力しております。その点につきましても、先ほど答弁したとおりでございます。
 税制改革につきましても、私は、昨年一月から、一兆円を超える規模の先行減税、将来、単年度にこだわらない、税収のバランスは多年度で結構、しかし、現下の厳しい状況を考えまして、先行減税あり得べし、将来の財源も考えながら多年度税収というバランスも考えて結構という方針を示して改革を行ってきたわけでありまして、できるだけ負担にたえ得るような制度、国民が広く薄く、だれでもが負担できるようなあるべき税制を目指して改革してほしいという指示を出したところであります。
 政治資金につきましても、これは、各政党それぞれ、資金調達手段が違うと思いますが、税金あるいは団体、企業、個人、バランスのとれた、国民の疑惑を招かないような制約はどういうことが必要かということを考えながら、今後も、自民党のみならず、各党で検討すべき問題だと思っております。
 イラクの問題につきましても、先ほどお答えしたように、まず、イラクが一四四一国連安保理決議を誠実に履行することが重要なんです。これは、国際社会が一致して、イラクが疑惑に積極的に協力しなきゃならない。むしろ問われているのは、イラクの、この決議を守るかどうかの姿勢なんです。
 アメリカは、平和的解決を望んでいる、国際協調を構築するよう努力すると。今、努力の最中であります。日本は、イラクが無条件、無制限にこの国連決議を誠実に履行するよう働くとともに、アメリカに対しても、国際協調をとれるような努力が引き続き必要だ。そして、今後も、国際社会の動向を見きわめながら、日本として日本の外交努力を続ける。先ほど答弁したとおりであります。(拍手)
議長(綿貫民輔君) 岡田克也君からさらに再質疑の申し出がありますが、残りの時間がわずかでありますから、ごく簡単に願います。岡田克也君。
    〔岡田克也君登壇〕
岡田克也君 総理、私は難しいことを聞いているつもりはありませんから、誠意を持ってお答えいただきたいと思います。三つだけ申し上げます。
 一つは、先ほどの道路公団の問題です。
 今のお話は、結局、どういうことなんでしょうか。民営化推進委員会の報告は尊重するけれども、これから自民党内の議論でいろいろ変えていく、そういうふうに私には聞こえました。そして、私が具体的に質問した、地域分割のことはどうするのですかという問いには答えていただけませんでした。ぜひ、この点についてお答えいただきたいと思います。(拍手)
 二問目です。税制の問題です。
 私が聞いたのは、総理の「聖域なき税制改革」の基本理念を述べてください、国民にわかりやすく説明してくださいと申し上げました。総理の今のお答えは、一兆円を超える規模の先行減税をやる、そして、最終的には税収中立だと。これは理念じゃありません。技術論です。税制というのは、まさしく国民生活にとって最も基本的な部分です。そこの、総理としての、日本国総理大臣としての基本的な考え方をぜひ述べていただきたい。もう一度お願いします。(拍手)
 三番目です。イラクの問題です。
 これも、私の質問に全く答えていただいておりません。イラクが国連の査察をきちんと受け入れて、そして、必要があれば、もしそういう事実があればきちんと武装解除する、これは当たり前のことであります。
 私が聞いたのは、アメリカの先制攻撃というこの考え方は、今までの国際法の考え方からはみ出る、そこについて、まさしく日本国総理大臣としてどう考えているのか、そのことを聞いています。
 同時に、国連決議一四四一号の解釈は、何度も言いますが、イラクの対応、査察の状況によって変わることではありません。一四四一号が最終的な武力行使を容認している決議なのか、そうではないのかという、その解釈を日本国総理大臣としての総理に求めているのです。もう一度、ぜひお答えいただきたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 再々質問でありますが、私は答えているつもりなんですが、道路公団の問題につきましては、地域分割ですから、基本的に尊重するというのは、その方向なんですよ。基本的に尊重すると言っているでしょう。
 税制についても、あるべき税制、簡素、公平公正、中立。そして、税負担なしにはいかなる政策も実行できない。国民にできるだけ公正に負担していただく。低ければ低いほどいい。その負担にたえ得るような簡素で効率的な政府をつくるというのも、これは当然重要なことであります。(拍手)
 イラクの問題についても、これは、イラクがまず武装解除、疑念を晴らすことが大事なんです。そして、一四四一の決議を守らなかった場合は自動的に武力行使を容認しているかどうか。これは、自動的に容認しているものではありませんが、その間のいろいろな国際状況を見ながら、どういう対応に出るかというのは、今後、日本として主体的に対応していきたい、そう思います。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 山崎拓君。
    〔山崎拓君登壇〕
山崎拓君 岡田君にまず申し上げますが、更問のときに、小泉総理が施政方針演説のとおりに答えたということはけしからぬと言われましたが、今回の質問は、施政方針演説に対する代表質問でございます。もし総理が、内容、質問に沿って答えなかったとすれば、こちらの方がよっぽど問題であります。(発言する者あり)
 私は、自由民主党を代表して、総理の施政方針演説に質問いたします。
 まず冒頭に……(発言する者あり)
議長(綿貫民輔君) 静粛に願います。
山崎拓君(続) 米国スペースシャトル・コロンビア号の墜落事故により、七名の勇敢な乗員全員が命を落とされたことに対し、米国並びに関係国政府と国民に衷心より哀悼の意を表します。
 小泉内閣は、間もなく満二年を迎えます。その間、一貫して「聖域なき構造改革」に取り組み、改革なくして成長なしと叫んでこられましたが、我が国は、依然として、既存の政治、行政の行き詰まりとデフレ経済の閉塞感に覆われています。
 総理は、施政方針の中で、「改革は道半ばにあり、成果が明確にあらわれるまでには、いまだしばらく時間が必要だ」と言われました。そして、続けて、「我が国には、高い技術力、豊富な個人資産、社会の安定など、経済発展を支える大きな基盤が存在します。厳しい環境の中でも、多くの人々や企業、そして地域が、前向きに挑戦を続けています。改革を進め、こうした力を一日も早く顕在化させることにより、我が国の発展につなげてまいります。」と自信のほどを示されました。
 総理は、一国を率いるリーダーとして、たとえワンフレーズ・ポリティックスと言われようが、このように国民の先頭に立って未来を切り開いていく揺るぎなき信念、責任感を示されることが必要です。いま一度、国民に向かって、今後も引き続き「聖域なき構造改革」を推進していく断固たる決意を示していただきたいと思います。(拍手)
 さて、本国会には、現在予定されているだけでも、法律案、条約等百四十五案件という未曾有の多数の提出案件が準備されています。まさに、「聖域なき構造改革」を実行に移すための法的インフラの整備が行われようとしているのです。
 実例は枚挙にいとまがありませんが、大くくりに申し上げますと、産業再生関連、税制改革関連、公正取引委員会体制改革及び司法制度改革関連、特殊法人及び公益法人関連を初め、食品安全関連、環境関連、社会資本整備関連、そして、個人情報保護法制関連等々です。
 これらの法律案は、総理が唱える構造改革の方向性である、官から民への転換に資するものであり、その意味で、一つ一つが、出口の見えない閉塞状況を脱出するかぎとなるものと言えます。その意義を体して、すべて会期内に成立させるべく、与党は結束して国会審議に対応しますが、ひな壇におられる小泉総理以下閣僚の皆さんも緊張感を持って国会審議に臨まれるよう、特に要望しておきます。
 私は、「聖域なき構造改革」の中心軸は何といっても歳出の見直しを柱とする財政構造改革だと考えます。こう申しますと、必ず、デフレ不況の克服が先決だとの反論が押し寄せてきます。総理は、敢然として、改革なくして成長なしとの持論で押し返してこられました。この話は、ちょっと卵が先か鶏が先かの議論と似ています。
 私は、過去の失われた十年を振り返ってみると、景気てこ入れのためにケインズ理論に立脚した公共事業中心の財政出動を繰り返してきたにもかかわらず、一時的な景気カンフル効果は見られても、わずかな時間にもとに戻ってしまう悪循環を繰り返してきました。結局のところ、いたずらに財政硬直化を促進するのみで、公共投資にかつてのような乗数効果は見られないと確信するに至りました。
 もちろん、今後とも、均衡ある国土の発展のための社会資本整備の必要性を否定するものではありませんが、問題は、限られた財政資源をいかに、経済波及効果が高く、今後の成長実現に寄与する分野に選択的に集中していくかであり、財政運営に対する戦略が求められています。歳出構造改革について、総理のお考えをお聞きします。
 そこで、平成十五年度政府予算案を点検してみますと、一般会計伸び率〇・七%、一般歳出伸び率〇・一%ですから明らかに景気中立型の予算でありますが、一方、財政健全化という視点からは問題なしとしません。
 何分にも、国債発行が三十六兆四千四百五十億円、二一・五%増に達しており、ついに、平成十五年度末の国債発行残高が四百五十兆円に達する見通しとなりました。もちろん、一兆八千億円の先行減税これあり、税収及び税外収入の減収見込みが四兆九千六百六十二億円、約五兆円と大きいことが、対前年比大幅な国債発行増を招いています。
 このように、デフレ経済のもとでは、当然、税収は落ち込むことになります。財務省の試算によりますと、名目成長率〇・〇%の場合と一定のプラス成長がある場合には、歴然と税収に差が出てきます。十八年度には二兆円超の差がつく試算になっています。
 したがって、デフレ不況克服が急務であり、二〇一〇年代初頭のプライマリーバランス回復実現に向け、実効ある政策展開が求められています。
 デフレ不況克服のためには、財政、税制、金融、規制改革を四本柱とする政策総動員が必要であることは論をまちませんが、先月末、平成十四年度補正予算が成立したばかりであり、また、いよいよこれから平成十五年度政府予算案と税制改正案の審議に入っていく段階であります。しかも、一部では、三月末決算をにらんで三月金融危機説も取りざたされています。まさに、現時点に限って言えば、金融政策の出番だと言えましょう。この点について、総理の御認識をお伺いいたします。
 そこで、金融政策について、いささか論じたいと存じます。
 デフレの対処策として、フィッシャーの貨幣数量説をひもとくまでもなく、市場に潤沢な資金供給を行い続けることが重要です。確かに、日銀は一昨年二月以来、切れ目なく金融緩和措置を講じてきた結果、日銀当座預金残高は一年半前の四倍である二十兆円弱で推移し、市場への資金供給は超緩和状態であるにもかかわらず、民間金融機関は国内経済、産業活動への新たな資金供給に消極的になり、貸し渋り現象が見られます。すなわち、銀行がリスクをとらずに国債保有残高だけをふやし続ける状態です。
 一月の月例経済報告を見ましても、マネタリーベースは一九・五%増となっていますが、逆に、銀行貸し出しは二・三%減となっています。これでは、デフレが進行するのは当然であり、日銀にも、従来型の手法で事足れりとしてきた意味で大きな責任があります。
 日銀が資金を供給しても銀行貸し出しが減っていくのはなぜか。銀行が貸し渋りを行うのはなぜか。それは明らかに、不良債権処理問題が重くのしかかっているからです。
 金融再生法に基づく開示不良債権は、大手十二行で平成十四年九月末現在二十三・九兆円という額に上っており、小泉政権スタート時の平成十三年三月期決算十八兆円からさらに増加しております。処理しても処理しても新しく発生してくる悪循環をどこかで断ち切る必要があります。その方途は、不良債権の迅速なる処理と、新規発生を抑止するための景気回復であります。
 前者の方途としては、政府は、昨年十月、金融再生プログラムを決定し、不良債権処理を加速して平成十六年度に終結させる目標を立てました。今、最も求められているのはスピード感であり、解決のめどが示されれば、新たな民間投資の計画も立てやすくなります。したがって、不良債権処理と企業再生は車の両輪であるとの基本方針を改めて確認したいと思います。
 今国会には、産業再生機構法が提出されます。早期成立に全力を挙げますが、産業再生は基本的には民間ベースで進めるものであり、また、そうでなければ実のある再生とはなりません。もちろん、政府としても手をこまねいて眺めていることは許されません。民間が主役であるとの基本線は守りつつも、強力にてこ入れを行う必要があります。
 産業再生機構を単なる不良債権の塩漬け機関とせず、我が国産業再生の起爆剤としてどのような方針で立ち上げ、運営していくのか。モラルハザードを招くなどといって二次ロスの処理にかかる少々の国費の投入を忌避せず、不良債権処理のスピードアップを図るべきであり、その具体的手順とあわせ、総理のお考えをお聞きします。
 不良債権処理のスピードアップとともに、日銀プロパーの金融政策について、期待感と不信感が交錯しています。
 インフレ目標設定の是非論がその象徴的な事例です。この問題は賛否両論に分かれて論争を生んでいますが、日銀の速水総裁は、明確に反対の意見を述べておられます。確かに、日本銀行の独立性は、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」とする日本銀行法第三条の規定等によって担保されています。
 一方、同じ日銀法第四条には、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」とあります。したがって、政府と日銀は一体となって金融政策を推進することは当然であり、政府のデフレ脱却の基本方針と整合的かつ積極的な金融政策の展開を日本銀行に期待するゆえんもそこにあります。
 この際、政府が日銀と連絡を密にし、十分な意思疎通を図ることができるよう、間もなく国会承認を経て決定される日銀総裁及び副総裁の人事において、柔軟かつ積極的な思考のできる人材の起用を強く期待いたします。
 しかしながら、当面は、取りざたされている三月金融危機を不良債権処理の問題とも絡めて必ず回避すべきであり、政府も日銀も危機感を持って真剣に対処していただきたいと存じます。日銀による各種国民資産購入の提案もありますが、具体的な方策は当局にお任せいたします。当局の弾力的かつ大胆な対応を期待いたします。
 次に、規制改革について質問いたします。
 小泉総理のキャッチフレーズに、官から民へという言葉があります。つまり、この民間にできることは民間に任せるとの方針を徹底し、さまざまな規制や制度が自由な経済活動を阻んでいる現状を改革して、民間経済活動の活性化と企業、産業の国際競争力強化を実現していくべきものと考えます。
 構造改革特区についても、一層の活用が望まれます。例えば、今回、農業への一部株式会社参入が実現しましたが、農業者団体の理解を得つつこれをさらに進めれば、地方への人口定住、食の安全確保、自給率アップ、農業の輸出産品化と国際競争力強化等、多くのメリットが期待できるのではないでしょうか。
 教育についても、慎重意見がありますが、国民が公立中高への不信を強めて私立を選択し、また、塾や予備校が教育の多くを担っている現状は、既に現実の方が先に進んでいることを示しています。
 規制に守られ、緊張感もなく惰性的に存続できるシステムが、市場により淘汰されるシステムよりすぐれているとは思いません。経済活性化の観点からの規制改革、構造改革特区の推進について、総理にお伺いいたします。
 次に、税制については、あるべき税制の構築に向け、構造改革の一環として国家戦略を明確にし、結果平等主義から決別して、国際競争力の高い企業や知恵とやる気を備えた中小企業がさらにその活動の幅を広げていけるよう、国際的な視点で、経済活性化のかぎとなる分野に集中的、重点的な措置を講じていくべきだと考えます。
 その意味において、今回の税制改正が、国内産業の空洞化に対処し、日本ならではの技術を創造し独自の付加価値を生み出す底力を強化する観点から、米国の税制と比べても三倍から四倍の税額控除を可能とする研究開発税制を創設したのを初め、過去最大規模の設備投資減税、中小企業減税を盛り込んだことを高く評価いたします。
 また、国内経済の観点からも、資産デフレの進行を食いとめるとの強い決意のもと、現役世代への資産移転を促すための相続税、贈与税の一体化、土地流通課税の大幅な軽減、貯蓄から投資へを加速する金融・証券税制の抜本的な軽減・簡素化等、資産課税全般にわたり数十年に一度の大改革がなされたことも高く評価したいと思います。
 しかしながら、一点、難を指摘すれば、不良債権処理と金融システム機能回復の観点からすれば、金融機関の不良債権処理に係る貸し倒れ償却・引き当ての取り扱い、欠損金の繰り戻し還付等の検討が来年度改正に持ち越されたことを残念に思います。今後、不良債権処理を加速する中で具体的な議論を行い、政府・与党一体となって詰めていきたいと考えます。
 税制のあるべき姿について、総理のお考えをお聞きします。
 次に、エネルギー問題についてお伺いいたします。
 我が国が今、未曾有のエネルギー危機に直面していることは、余り意識されていません。昨年、東京電力の原子力発電所のデータ改ざん問題が表面化したことで、同電力の原子力発電所は、順次、安全点検のため停止しなければならず、スムーズに再稼働できなければ全基停止の事態を招き、夏場のピークでは幅広い停電発生のおそれすら考えられる状況にあります。
 一方、OPEC第三の産油国であるベネズエラでは、長期のゼネストにより原油輸出が平常時の二割に低下しており、原油価格への影響があらわれています。もし、今後、イラクに対する米国等の武力行使という事態が生じれば、イラクの原油生産停止の影響のみならず、中東情勢の緊迫化により、原油タンカーの航行不能という事態が生じる懸念もあります。
 このような状況下で、一月二十七日には、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の安全審査をめぐる行政訴訟で国が敗訴するという事態も生じました。
 既に我が国の電力供給の三四%を分担する原子力は、生活、産業を支える根幹であり、地球環境問題やエネルギー安全保障、コストなど、いかなる面において考えても、化石燃料主体のエネルギー体系への回帰は現実的でありません。将来、爆発的な技術革新が期待される燃料電池や太陽光発電など、クリーンなエネルギーの開発はもちろん重要ですが、家庭や地域のエネルギーとはなり得ても、鉄道や道路などの大動脈や産業を支える力は期待できません。
 一方、原子力については、核燃料サイクルやプルサーマル計画の推進、高レベル廃棄物の最終処理・処分問題など、解決すべき課題がなお山積しております。民間中心の推進体制が整っても、安全や安心など、社会的規制を通じて国民に対して保障措置を講ずることができるのは国や自治体であり、官から民への例外として、国がより前面に立って推進すべきだと考えます。エネルギー問題の現状に対する総理の認識とあわせて、お考えをお聞きいたします。
 次に、社会保障問題について質問いたします。
 少子高齢時代を間近に控え、年金、医療、介護等、社会保障制度について、国民が安心し、将来設計をしっかりと立てられるような改革を進めることが急務です。
 国民に信頼され、持続可能で安定的な制度にしていくため、給付と負担の見直しを初め、不断の改革を行っていく必要があると考えますが、社会保障制度全体の改革の方向性をどのように考え、また、今後、具体的にどのように進めていくのか、総理にお伺いいたします。
 国民の老後生活にかけがえのない役割を果たしている年金制度については、若い世代を中心に、自分が年金を将来もらうまで制度が維持されているのか、不安を感じる人も少なくありません。昨今言われている損得の観点からの次元だけでなく、年金制度の意義や役割について、若い世代の理解を深める努力が必要です。また、国民年金の未納・未加入問題、基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げの対応、女性と年金等、課題は山積しています。
 どのような考え方を基本に置いて年金制度改革を進めていくのか、総理のお考えをお伺いします。
 ここで、特に少子化対策についてお伺いいたします。
 我が国では、少子化が進む中、これまでふえ続けてきた総人口が急速に減り始める人口減少時代が間もなく到来します。予想を超えた少子高齢化により、世界のどの国も体験したことのない規模とスピードで人口が減少するとされており、日本は持続不可能な国になるという指摘さえ聞かれます。こうした事態をどう受けとめ、対応しようとしておられるのか、総理のお考えをお伺いします。
 人口の減少を和らげるためといって、国家が個々人の結婚や出産に介入することは、戦前の人口政策の反省からも戒めるべきことであります。ただ、若い世代の中に、本当は子供が欲しい、二人目が欲しいが産めないという声が少なからずあるのに、実際にはあきらめているという状況には問題があると考えます。そうした原因を、長時間、職場に拘束される働き方や、重い子育て費用、保育サービスの不足といった社会環境がもたらしていると言われており、こうした状況は早急に改善していかなければなりません。
 子供たちは、社会のあすを担う希望であり、力です。日本を安心して子育てできる国にするため、次世代の育成支援に社会全体で取り組むという次世代育成支援宣言を総理が行い、内閣を挙げて取り組むべきだと考えます。
 小泉政権は、待機児童ゼロ作戦をいち早く打ち出し、保育所の定員拡大に取り組んできましたが、保育サービスの需要は高まる一方です。介護保険の創設が、高齢者の介護を支える安心の仕組みとなりました。子育てについても、ゼロ作戦からさらに踏み込み、ばらばらになっている育児支援施策、児童手当、出産育児一時金、保育所への助成、育休手当などを財源も含めて統合し、強力な次世代支援システムとなるよう検討すべきと考えますが、総理のお考えをお伺いいたします。(拍手)
 我が国の治安水準の悪化や心の荒廃、モラルの低下は極めて憂慮すべき状態にあり、世界一安全な国、日本の神話は崩れつつあります。
 昨年一年間に発生した刑法犯は二百八十五万三千七百三十九件に上り、前年比で四・三%も増加、七年連続で最悪を更新しました。その一方で、二〇〇一年の一般刑法犯の検挙率は一九・八%と過去最低を記録、昨年は二〇・八%とやや持ち直したものの、極めて低い状態で推移し、犯罪の抑止力を失うとともに、国民の体感治安が深刻なまでに悪化したと報じられています。
 このような状況はもはや放置は許されず、警察・司法体制の根本的な見直しが迫られていると考えます。凶悪犯罪の大宗を占めるのは、不法入国・滞在外国人によるものであり、犯人の特定が極めて難しく、入出国管理体制や税関業務機能の強化はもちろん、不法入出国を水際で食いとめるための領域警備体制の構築、警察官や入国管理、司法等にかかわる人員の増員、外国語教育の強化など、総合的な対策が何よりも急がれると思いますが、また、このことは観光立国推進の前提条件とも考えられますが、総理のお考えをお聞きします。
 一方、外国人犯罪と並んで深刻な問題となっている青少年犯罪増加の背景には、公徳心よりも個人主義を優先した教育のひずみや社会全体のモラルの低下等による心の荒廃が指摘できます。個に優先する公の概念をしっかりと身につけ、健全な思想と国際的な視野を持った青少年の育成は急務であり、政治がしっかりと問題を直視し、逃げることなく、公共の概念や、郷土や国を愛する心、我が国の伝統や文化を学びはぐくむ教育改革に取り組まなければなりません。
 今国会には教育基本法改正案の提出が予定されていますが、我々国会議員に課せられた使命は、教育立国の見地に立ち、国民精神のあり方について憲法改正論議同様の徹底討議を行い、これを二十一世紀初頭に生まれた崇高な文化遺産とすることが、未来の国民と国家に責任を果たすことであると確信します。
 教育改革、なかんずく教育基本法の改正について、総理の理念、哲学と決意をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 次に、外交・安全保障問題について質問いたします。
 世界の安全保障環境は、東西冷戦の終結とその後の米国における九・一一テロ事件から一変し、平和に対する脅威の存在が、国家対国家という構図を超えた国際的なテロ組織に広がっています。大量破壊兵器の開発と拡散のおそれと結びついて、ポスト冷戦構造における新しい脅威が発生したものと認識すべきでしょう。
 こうした中で、米国は国際テロ根絶に向けた闘いを継続し、我が国の自衛隊も、テロ対策特措法に基づき、米軍等に対する給油活動や物資輸送などの協力支援活動を行っていますが、残存するアルカーイダによる国際テロの脅威は今も除去されておらず、現在も、多くの国がアフガン周辺に部隊や艦艇等を派遣しています。
 さらに、イラクの大量破壊兵器開発疑惑をめぐる状況をめぐって、国際情勢は緊迫度を日増しに高めています。イラクに関しては、総理は、米国に対して、昨年の九月の国連総会演説などで、一貫して、国際協調の枠組みを大事にすべきだと説くなど、日米同盟関係を尊重しつつも、国連決議に基づく行動を行うよう、正しく主張すべきことは主張してこられました。その後、イラクに対する国連による査察が実現したのも、見方によれば、総理の主張に沿った国連決議一四四一号の採択が実現したからであります。
 そして、去る一月二十七日、安保理において、ブリクス国連監視検証査察委員会委員長及びエルバラダイ国際原子力機関事務局長より、査察結果の最新の報告が公開で行われましたが、これに対し、米国は、イラクは一連の主要な疑問に答える確固たる情報を全く提供していないと厳しい評価を示しました。
 また、翌一月二十八日、米上下両院合同会議において、ブッシュ大統領は、一般教書演説を行い、その中で、イラクは十二年間、国連決議に違反し続け、国連安保理が最後の機会を与えたにもかかわらず、イラクの独裁者は武装解除せず、査察を妨害し、逆に世界を欺いていると指摘しました。その上で、二月五日に安保理の開催を求め、パウエル国務長官がイラクの違反の証拠を明らかにし協議すると述べ、武力行使による大量破壊兵器の根絶を辞さない決意を示唆しています。
 いずれにしても、今後も国連機関による査察が継続され、その結果、明白な証拠が出れば、武力行使等、重大な局面の展開が予測されます。
 イラクがみずから進んで大量破壊兵器の廃棄を明確にし、その保障措置が講じられない限り、イラクの大量破壊兵器の開発に対し、国際社会が危機感を共有し、国際協調下での対応が望まれます。したがって、米英軍等が武力行使に踏み切るためには新たな国連決議が採択されることが望ましいことは当然ですが、基本的に大事なことは、イラクのもたらす人類社会全体に及ぼす恐るべき脅威の根源を絶つ力は、究極において米国の軍事力しかないということも十分考慮すべきです。
 本問題に関する総理の基本的なお考えを、この際、改めてお聞きしたいと存じます。
 一方、昨年九月十七日、小泉総理の英断による北朝鮮訪問で、歴史的な日朝首脳会談が実現いたしました。その際、北朝鮮の拉致事件への関与が明らかにされ、金正日国防委員長の正式な謝罪と再発防止が約束されるとともに、五人の拉致被害者が帰国しましたが、死亡されたとされる八人の安否と、さらなる数多くの被害者がいるのではないかとの思いは、国民の心に重くのしかかったままです。
 その後、日朝国交正常化交渉は中断しており、再開のめどは立っておりません。拉致問題の全面的な解決こそが国交正常化の前提条件となりますが、局面打開のための一層の外交努力を要望いたします。
 また、その後、北朝鮮では、濃縮ウランの開発疑惑から、核兵器の再開発が行われている可能性が表面化し、核施設に対するIAEAの封印撤去や監視要員の国外退去措置、NPT条約脱退表明、核燃料棒の移動など、無謀としか言いようのない瀬戸際外交の矢継ぎ早の展開に、我が国のみならず、国際社会全体が危機感を持ち、危惧の念を強めています。
 北朝鮮に対しては、IAEA、国際原子力機関が国連安保理に対応をゆだねるのは確実な情勢となっています。我が国としても、いわゆるP5、国連安保理常任理事国プラス2、日本と韓国の枠組みで対応措置を話し合うことを提案していますが、北朝鮮が現在のような対応を続ける限り、国際社会が経済制裁等の措置をとることは避けられず、北朝鮮は体制の存続そのものが重大な岐路に直面することになります。
 いずれにせよ、北朝鮮が核開発を放棄することがすべての前提であり、米国も、それを北朝鮮が受け入れれば対話に応じ、武力攻撃せず、さらには、新たな大胆な支援を行う考えを表明しています。この際、我が国としても、北朝鮮暴走封じ込めの基本的枠組みである米国、日本、韓国三国の連携を一層強化するため、小泉総理がブッシュ大統領や盧武鉉次期大統領との積極的な対話を行い、首脳外交を通じて北朝鮮の国際協調路線への転換を促すべく、我が国の主体的な外交努力の展開を求めます。
 その上で、平壌宣言にうたわれたように、日米韓中ロと北朝鮮の六者協議による、朝鮮半島のみならず、北東アジア全体の安全保障の枠組み構築を行っていく努力を行うべきだと考えますが、総理のお考えをお聞きいたします。
 総理、私は、こうした予断を許さない国際情勢の中で、昨年、与党が国会に提案した武力攻撃事態対処関連三法案の修正案を一刻も早く国会で成立させるなど、我が国の安全保障体制を盤石に導くことが急務だと考えます。(拍手)
 同法案は、与党三党において、党派を超えた国民の幅広い支持が大切だと考え、民主党の意見等も取り入れて修正を行ったものであり、その中で、国民の関心の高い国民保護のための法制についての法案作成に向けた準備作業の加速、また、テロ・不審船対策等について、関係機関の緊密な連携の強化とその対処能力の充実を政府に求めています。
 以上、国際テロ根絶への協力の決意、拉致問題解決への対処方針及び北朝鮮情勢についての認識、国交正常化交渉の今後の展開、イラク情勢についての基本認識と我が国の対処方針、武力攻撃事態対処関連三法案への対処など、総理の安全保障に対するお考えをお聞かせください。
 また、中国では、昨年、新しい指導者が誕生し、韓国もことし二月には誕生しますが、北朝鮮問題を考えれば、その他の問題も含めまして、一日も早く両国首脳との緊密な関係を構築する必要があると考えます。中国、韓国外交に対する総理のお考えをお聞きします。
 終わりに、総理は施政方針演説を通じて、悲観論から新しい挑戦は生まれない、挫折してもくじけず、また立ち上がることが大事、難局に敢然と立ち向かった歴史に学び、勇気と希望を持って新しい日本をつくり上げると訴えられました。私の座右の銘も、「可能性を信じる」という言葉です。国民は、小泉総理が「聖域なき構造改革」に着手した以上、途中で投げ出すことなく最後までやり遂げてほしいと期待しているはずです。
 私は、昨年の代表質問で、総理をネバー・ギブアップの言葉で激励いたしました。今回も、再び、ネバー・ギブアップを大声で申し上げますので、ことしこそ、小泉政治の成果が正当に評価されることによって、本年末には流行語大賞をとらせていただきたいと思います。
 ネバー・ギブアップ。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山崎自民党幹事長にお答えします。
 激励を込めた御質問、ありがとうございます。
 構造改革を推進していく決意についてでございます。
 私の構造改革に対する決意は、いささかも揺らいでおりません。改革は道半ばでありますが、今後、即効薬あるいは万能薬はないとは思いますが、金融、税制、歳出、規制、これらの改革を着実に進めることによって、持続可能な成長軌道、民間主導の成長路線に持っていきたいと思います。
 我が国には、現在、高い技術力、豊富な個人資産、社会の安定など、経済発展を支える大きな基盤が存在しております。悲観主義に陥ることなく、新しい挑戦に向かって我々は頑張っていかなきゃならないと思います。こうした潜在力を顕在化させるための改革がいわゆる構造改革であるということを御理解していただくために、今後とも努力していきたいと思います。(拍手)
 経済活性化に向けた歳出構造改革についてでございます。
 経済活性化や将来の発展につながる分野へ限られた財政資源をいかに重点配分するか、これは最も重要な現在の課題であります。こうした課題につきまして、平成十五年度予算におきましては、予算配分の重点化、効率化を行うこととしたところであります。
 具体的には、公共投資の重点配分、雇用・中小企業対策などのセーフティーネット構築を図るとともに、将来の発展につながる分野への重点配分や、総合科学技術会議による優先順位づけを踏まえた科学技術予算への大胆な再配分を行うこととしているところであります。
 政府としては、今後とも、負担に値する質の高い小さな政府を実現するため、郵政改革、道路公団改革など、公的部門の見直しを進めるとともに、真に必要な分野に予算の配分を集中するなど、歳出改革を加速してまいりたいと思います。
 デフレ克服のための政策でございます。
 できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向け、政府は日本銀行と一体となって強力かつ総合的な取り組みを実施していく必要があると考えております。
 十五年度予算におきましては、厳しい財政状況の中、雇用の創出や将来の発展の基盤となる分野に重点配分を行うとともに、国、地方合わせて一兆八千億円の減税を先行させるなど、経済活性化に向けて、先般成立した十四年度補正予算とあわせ、両年度を通じて切れ目ない対応を図ることとしております。このため、十五年度予算、税制改正関連法案の早期成立を切にお願いしたいと思います。
 また、金融再生プログラムを着実に実施することにより、強固な金融システムを構築していくほか、金融危機の阻止には、日本銀行とも協力して万全を期してまいります。
 金融政策につきましては、日本銀行においても、量的緩和政策を継続するなど、これまでもデフレ克服に向けさまざまな努力をしてきたところであり、さらに実効性ある金融政策の運営を行っていただけるよう期待しております。
 産業再生機構についてです。
 再生の可能性があるにもかかわらず、債権者間の利害調整が困難である等の理由で民間だけでは再生が進まない企業に対し、産業再生機構は、金融機関からの債権の買い取り等を通じて再生を支援するものであります。政府保証等、政府からの支援を受けつつ、民間の英知と活力を最大限に生かして、産業の再生と不良債権の処理を促進していくこととしております。
 規制改革の推進についてであります。
 規制改革は、不必要な規制を撤廃することなどを通じ、民間活力を最大限に引き出し、新規需要や雇用を創出するとともに、サービスなどについて多様な選択肢が確保された豊かな国民生活を実現する観点からも、重要な課題と認識しております。
 構造改革特区については、四月に第一号を誕生させるとともに、第二次提案募集で寄せられた構造改革にかける地方や民間の熱意を真摯に受けとめ、教育分野への株式参入も含め、今後とも、規制改革の突破口として、そのさらなる充実を図ってまいります。
 今後、私からも関係大臣に対し、実現するためにはどうすればいいかという方向で検討するよう強い指示を出しているところでありますし、また、全国的な規制改革につきましても、総合規制改革会議を積極的に活用し、経済財政諮問会議とも連携を図りつつ、引き続き推進していく考えでございます。
 税制改革につきましては、あるべき税制の構築に向け、二十一世紀をリードする戦略分野の成長を支援する研究開発・設備投資減税の集中・重点化、中小企業の活力強化のための中小企業減税、次世代への資産移転の円滑化に資する相続税、贈与税の一体化措置の導入、貯蓄から投資への改革に資する金融・証券税制の軽減・簡素化等の改革を一体として講じることとしております。
 税制改革は政府が取り組んでいる構造改革の柱の一つであり、今後も、あるべき税制の構築に向け、さまざまな課題について検討を深め、税制改革のさらなる推進を図ってまいりたいと考えております。
 金融機関の不良債権処理に係る税制上の対応につきましては、銀行の自己資本の充実に関する金融行政及び企業会計制度を含む全体としての対応のあり方とあわせ、金融機関以外の企業の取り扱いや歳入面に与える影響なども考慮しつつ、検討を続けてまいりたいと考えております。
 エネルギー問題の現状と原子力政策についてでございます。
 資源に乏しい我が国は、エネルギーの供給に関し、安定供給の確保という課題に加え、地球環境面での対応が厳しく求められております。
 政府としては、代替エネルギーの開発を進めるとともに、安定性にすぐれ、発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電について、安全の確保と国民の信頼の回復に全力で取り組み、原子力政策を推進してまいります。
 社会保障制度全体の改革の方向性及び進め方についてのお尋ねであります。
 急速な少子高齢化が進む我が国にあって、社会保障制度を将来にわたって持続可能で安定的なものとして維持していくことは、国民の将来に対する安心の確保につながるものと考えております。
 このため、今後とも、給付と負担のあり方について正面から取り上げ、国民的な開かれた議論のもとに改革を継続してまいります。
 年金改革の基本的考え方についてでございます。
 公的年金については、国民の老後生活を確実に保障する役割を持続的に果たしていけるよう、長期的に安定した制度を確立することが不可欠であります。
 このため、平成十六年に行う次期年金改正では、国民に開かれた形で幅広い観点から議論を進め、将来の現役世代の負担が過大にならないような制度づくりや、国民年金の未納・未加入者問題などに取り組み、国民の年金に対する不安を払拭するとともに、少子化等の進行に柔軟に対応でき、持続的に安定した制度づくりを行ってまいります。
 少子化対策についてでございます。
 少子化の進展は、今後、労働力の減少や地域社会の人口減などを通じて、我が国の社会経済に重大な影響を与えるものであり、少子化の流れを変えるための取り組みを進める必要があると考えております。
 このため、従来の対策に加え、もう一段の施策の充実を図る観点から、昨年九月に、少子化対策プラスワンを取りまとめたところであります。
 今後は、これを具体化するため、待機児童ゼロ作戦を引き続き推進するとともに、家庭、地域、企業が一体となり、計画的に次世代の育成を支援するための法案を提出します。
 さらに、こうした次世代の育成支援をより効果的に推進するため、議員の御指摘を踏まえ、児童手当など子育て家庭への経済的支援、保育や地域の子育て支援などの福祉サービス、職場における働き方の見直しなどについて、総合的かつ効率的な取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 治安問題についてでございます。
 御指摘のとおり、近年、凶悪事件が多発し、国民の多くが治安の悪化に不安を抱いており、刑務所などの過剰収容も深刻な事態になっております。
 政府としては、警察、入管、刑務所など関係職員の増員や国際化に対応した教育の充実を含め、一層の体制強化に努めるとともに、施設、装備面の充実にも力を入れてまいります。
 さらに、治安の悪化に対する不安の背景に、密入国や不法滞在の外国人による犯罪の多発が見られることから、入管、税関、海上保安庁を含めた、国境における取り締まりに関係する当局の機能を強化するとともに、連携の一層の向上を図り、国民の不安を解消してまいりたいと思います。
 教育改革の理念や教育基本法の改正についてでございます。
 教育立国を目指す我が国においては、教育改革の推進が国政上の最重要課題の一つであります。勇気を持って新しい時代に立ち向かう人間を育成するために、画一と受け身から自立と創造へと、教育のあり方を大きく転換してまいります。
 このため、確かな学力と豊かな心の育成を目指した初等中等教育の改革、知の世紀を担うにふさわしい大学改革を進めるとともに、不登校児童の増加など新しい状況に対応した多様な教育機会の整備や、あすを担う人材が勉学の機会を失うことのないよう、奨学金制度の充実に努めてまいります。
 教育の根本を定める教育基本法については、現在、中央教育審議会において検討が行われているところであり、今後、同審議会の答申を踏まえ、幅広く国民的な議論を深めながら、その見直しにしっかりと取り組んでまいります。
 イラクの問題についてでございます。
 イラクの大量破壊兵器をめぐる問題は国際社会全体への脅威であり、イラクが査察に全面的かつ積極的に協力し、大量破壊兵器の廃棄を初め、関連する国連安保理決議を誠実に履行することが重要であります。
 我が国としては、安保理を初め国際社会が協調して毅然たる態度を維持すべきとの考えのもと、査察の状況、安保理の議論等を踏まえ、イラクが誠実に決議を履行するよう、我が国としての外交努力を今後も継続してまいります。
 北朝鮮問題についてでございます。
 日朝平壌宣言にあるとおり、北東アジア地域の関係諸国間に相互信頼に基づく協力関係が構築され、将来に向け、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であります。
 政府としては、アメリカ、韓国との連携を強化しつつ、安全保障上の問題や拉致問題についての北朝鮮の前向きな対応を強く求め、北朝鮮が国際社会の責任ある一員となることが北朝鮮にとっても利益になることを理解させるべく努力してまいります。
 国際テロ根絶に向けての各国との協力についてでございます。
 国境を越えたネットワークを有する国際テロの根絶のためには、国際社会が一致団結してあらゆる手段を講じることが重要であります。我が国としては、テロ対策特措法に基づく支援のほか、G8等多国間の枠組みを含め、テロ資金対策、テロ関連情報の収集など、諸外国との協力関係の強化等に引き続き主体的に取り組んでまいります。
 我が国の安全保障に対する認識及び有事関連法案についてのお尋ねがありました。
 米国の同時多発テロ、北朝鮮当局による武装工作船や拉致事件などは、現実の脅威として国民に大きな不安を与えていると考えます。
 政府としては、こうしたさまざまな緊急事態に対処できるよう、態勢の整備に一層努めるとともに、特に、継続審査となっている有事関連法案については、国民の幅広い理解を得て、今国会における成立を期します。
 中国及び韓国に対する外交の考え方でございます。
 良好な日中・日韓関係は、アジアの、ひいては世界の安定と繁栄にとっても極めて重要であります。今後、中韓両国の新体制とも緊密な関係を構築し、中韓両国との間で、北朝鮮問題を含め、幅広い分野における友好協力関係をさらに発展させていきたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 伊藤英成君。
    〔伊藤英成君登壇〕
伊藤英成君 民主党・無所属クラブを代表して、総理の施政方針演説について質問いたします。(拍手)
 質問に入る前に、このたびの米国のスペースシャトル・コロンビアの事故について、宇宙の平和利用という人類共通の崇高な夢にとうとい命を犠牲にされた七名の勇敢な宇宙飛行士の方々に心から哀悼の意を表します。(拍手)
 さて、私は、冒頭に、総理の政治姿勢、総理として国民に発する公約に対する言葉の重さについてどう考えておられるのか、伺います。
 政治家の口から出た言葉が国民に信頼されるかどうか、それは、状況の変化はどうあれ、あらゆる困難に打ちかって、口に出したことをみずからの行動を通してどう実現していくかにかかっており、その実現の過程を国民はじっと見ているのであります。
 私は、政治家が発する言葉が近年特に軽くなったのではないかと危惧します。最近、小泉総理が言葉を発すれば発するほど、国民の政治不信が増します。「綸言汗のごとし」といいます。一度君主が口に出した言葉は、取り消しができないのです。
 小泉総理は、去る一月二十三日の本院予算委員会において、我が党の菅直人代表に対し、八月十五日に靖国神社へ参拝すること、国債発行を三十兆円以下に抑えること、当初予定どおりペイオフ解禁を実施することという国民への三つの公約について、確かに約束はしたが、自分の国民に対する最大の約束は行財政改革であるから、その大きな問題を処理するためには、この程度の約束を守れなかったのは大したことではないと答弁されました。後日、不適切な発言であり反省しているとされましたが、あきれるほど無責任な発言であり、総理の政治責任は極めて重大であると認識すべきです。
 そもそも、政治家に必要な資質は冷静な分析に基づく先見性であるはずであり、たび重なる公約違反は、その先見性の欠如を如実に示すものではないですか。できもしない公約を声高に叫んで、後になって、実現できなかったのは大した問題ではない、そう開き直られては、国民は何を信じればいいのですか。なぜこれらの公約が実現できなかったのか、きちんと説明すべきです。大きな声ではぐらかすあなたの手法はもう通用しないと見るべきです。
 総理、政治に信頼を取り戻すためにも、御自身の言葉で、公約の重さについて御見解を伺いたい。(拍手)
 かつて、日本について、ジャパン・インク、つまり日本株式会社と言われました。日本がジャパン・アズ・ナンバーワンともてはやされ、ある意味、自信を持っていた時期だったでしょうか。今、日本株式会社の会長兼社長は、小泉総理、あなたであります。そして、その日本株式会社は、今や危機にある、倒産の危機に瀕していますが、総理、あなたにはその危機意識がありますか。言葉だけでなく、実行が危機を救うのです。実行こそが意味を持っているのです。あなたの実行力の伴わない軽い言葉からは、倒産の危機を脱し、再生を図ろうという意気込み、執念が全然伝わってこないからです。
 とんざする行財政改革や国民に負担を押しつける年金改革、悪化する一方の治安情勢、国の安全保障の基本となるべき有事法制のあり方、膠着状態に陥った北朝鮮との交渉、イラクへの武力行使の可能性が高まる現在に至っても全く顔が見えない日本外交、いずれも、進展が見られないばかりか、むしろ、内実は後退しているのです。
 以下、具体的な問題について質問いたします。
 三つの公約を大した問題ではないと言い、あなたは、行財政改革こそが国民への最大の約束だと言い放ちました。ならば、伺います。
 総理就任から間もなく二年になり、総理の公約が実行に移されていたとすれば、今ごろは、さぞかし改革が浸透していることでしょう。総理は、当初、七十七の特殊法人に限っても、原則廃止・民営化を旗印に、民でできることは民に、地方でできることは地方にとの観点から、抜本的見直しをするはずでした。
 しかし、一昨年十二月に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画では、七十七のうち、廃止方針がわずか九つにとどまり、民営化等は二十五、総理の強い意気込みからはほど遠い、極めて不十分な内容となりました。政治は結果責任であります。総理の見解を求めます。(拍手)
 先月二十三日の本院予算委員会で我が党の上田議員が指摘したように、総理就任以来、民営化された特殊法人はまだ一つもありません。総理は、道路公団も石油公団も段取りを踏んで民営化に持っていくと答弁されましたが、悠長に構えないでいただきたい。スピードこそが重要であります。まさに、あなたが経営する日本株式会社は倒産寸前なんです。
 平成十五年度予算案では、特殊法人等に対し三兆円を超える税金などが投入されていながら、郵貯、簡保の改革も先送りですし、依然として、特殊法人等への天下り、その常識外れの給料、退職金の問題は放置され、手つかずの状態ではありませんか。
 総理、あなたは、国民に対し受けのよい言葉だけで、結局は、実行力が伴わず、政官癒着の既得権構造を守っているだけではありませんか。御答弁をいただきたい。(拍手)
 次に、公務員制度改革についてお尋ねします。
 政府が進める制度改革案に対し、昨年十一月に、ILOが勧告を出しております。労働基本権が制約されている今の日本の公務員制度は国際労働基準に違反しているということ、改革案作成に当たり職員団体など関係者との意見交換が不十分であることがポイントです。
 総理、ILO勧告を受けて、政府はどのような対応をなされるのでしょうか。また、今国会に関連法案の提出を検討されていると聞きますが、その内容はILO勧告の趣旨を踏まえたものとなるのでしょうか。総理の答弁を求めます。
 総理は、国民に対し、構造改革に伴う痛みに耐えればいずれ景気は回復すると言い続けてこられました。しかし、それがいつなのか、見当もつかない状況ではありませんか。
 フランクリン・ルーズベルト大統領の知恵袋として大恐慌時代を乗り切ったガルブレイス氏が、その書「日本経済への最後の警告」の中で、こんなことを述べておられます。「日本の政権担当者たちは、健康保険の自己負担分の増額など、結局は社会的弱者層の痛み感が増すようなことばかりに力を入れている。これでは早晩、内閣支持率の低下どころではなく、それこそ本当の恐慌が起こりかねないのではないか。年金や医療保険といった社会保障制度の充実なしに、国民が生活の不安や恐怖から解放されることなどあり得ない」と。まさに正鵠を得た提言です。
 このまま小泉政権が続けば、不況は一層深刻化し、もはや、小泉不況どころではなく、小泉大恐慌となる可能性さえ現実味を帯びてきます。
 総理、私は、昨年、この書物をあなたあてに託しましたが、ガルブレイス氏の言葉をどのように受けとめておられますか。見解を伺います。
 昨年の健保法見直しの際に、総理はひたすら抜本改革を叫んでおられましたが、結局、なし得たのは国民の負担増だけでした。これも空虚な言葉だけで、抜本改革と言っても実行が伴っていない顕著な例です。患者負担増を求める前に抜本改革を行うのが本筋です。負担増だけを先食いし、改革先送りでは、国民の理解が得られるはずがありません。
 政府は、ことし三月までに高齢者医療制度の見直しなど改革項目の基本方針をつくることを約束していますが、総理、この約束はどのように実行するのですか。答弁を求めます。
 次に、年金制度改革についてお尋ねいたします。
 国民は今、みずからの年金の将来に言い知れぬ不安を抱き、それが景気低迷の大きな原因の一つになっています。さきのガルブレイス氏も指摘しているように、年金や医療など社会保障の充実こそが将来の安心をもたらすのです。それを実現して初めて、政治や行政に対する信頼が高まってきます。
 現行制度を維持しようとすれば、現役の保険料負担ばかりが重くのしかかり、不公平感が高まります。数年後には団塊の世代がどっと年金受給年齢に達することから、給付水準の議論も当然出てくるでしょう。
 しかし、私は、将来への不安を募らせる若い世代の信頼を取り戻すために、また、保険料を納めるのがばからしいと思うことのないようにするために、例えば、現在の年金の給付水準を断固維持するのだ、そういう力強い決意を表明するならば、年金制度及び政治への信頼性を高めていくのだと思います。そのためには、当然、税財源も視野に入れておくべきでありましょう。
 総理は、次期年金改革に対してどのようなビジョンをお持ちか、将来にわたって国民の安心できる具体的な方針案をぜひお示しいただきたい。
 現在、国民の安心感の根幹をなす治安情勢は、悪化の一途をたどっております。工事用の重機を使ったATM強盗、ピッキング、コンビニ強盗という悪質な窃盗犯から、市民を巻き込んだ殺人事件など、枚挙にいとまがありません。
 かつて、日本は、世界で一番安心できる、犯罪発生率の少ない国でしたが、今や、刑法犯の認知件数は平成八年以降の六年間だけで約百万件も急増し、住民が肌で感じる治安は悪化する一方です。検挙率を、交通事故関係を除く一般刑法犯で比較すると、かつて、約六割程度の水準を維持していた検挙率が、平成十三年には、二割を切るまでに落ち込みました。
 犯罪発生率の上昇と反比例するかのように検挙率が低下する惨状に対して、施政方針演説で総理は、気楽に、世界一安全な国の復活を目指すと宣言しましたが、絶対に実現しなければなりません。口先だけではなく確実に復活を遂げるために具体的にどのような対策を講じるのか、お答えいただきたい。
 次に、有事法制についてお尋ねいたします。
 さきの臨時国会で継続審議となった有事関連三法案については、武力攻撃事態の定義、人権規定、民主的統制と国会の関与、地方公共団体との関係、国民保護法制、米軍との関係など、我が党が多くの問題点を提起したにもかかわらず、政府側の答弁も全く要領を得ませんでした。
 有事法制の運用の中心となるべき防衛庁は、個人情報リスト作成問題で組織の弛緩を露呈し、また、有事を防ぐ外交上の使命を持つべき外務省は、瀋陽総領事館事件等の処理の過程において、国会及び国民の信頼を大きく損ないました。
 有事法制は、政府に対して一時的に国民の生命財産の運命をゆだねる側面を内包し、運用を誤ると、国民の生命身体の安全を守る目的を離れて濫用される危険と隣り合わせという、ある種の矛盾をはらんでいます。だからこそ、その濫用を防ぐには、民主主義の根底をなすシビリアンコントロールが大前提なのです。
 一連の不祥事やイージス艦の派遣などに関して、国会に対する説明責任を放棄してきた政府の姿勢からは、誠実さのかけらも感じられません。今のこのような政府に対して、果たして有事法制の制定と運用を任せていいのかという思いにさえ駆られます。
 政府への信頼こそ有事法制の前提と考えますが、いかがですか。総理の答弁を求めます。
 政府の専横を防ぐには、ぜひとも、国会による民主的統制が必要です。提出されている政府原案によると、武力攻撃事態の認定や防衛出動に関して、厳格なシビリアンコントロールをきかせる必要があるにもかかわらず、それを具体的に担保するには極めて不十分かつわかりにくい制度となっています。
 そもそも、有事法制は、外国からの侵略に際し、必要な法的措置をあらかじめ定め、国家の安全保障に資すると同時に、国民の生命身体の安全や基本的人権の確保を図るべきものであるはずです。現在、国民保護法制として、法整備の輪郭が明示されつつありますが、実際には、有事関連法案の成立後に検討が開始される扱いとなっています。また、武力攻撃よりも蓋然性が高いテロや武装工作船の対策が軽視されたままです。
 これでは、事の重要性の判断が麻痺していると言わざるを得ません。少なくとも、国民保護法制やテロ、武装工作船等への対策は同時並行して進めていくべきものだと考えますが、総理の方針をお示しいただきたい。
 さらに、表現の自由については軽い扱いとなっており、これは、政府の個人情報の不当な扱いからすると、驚きを通り越してあきれるばかりであります。戦前の大本営発表や、いまだに表現の自由が制限された北朝鮮等の高圧的な報道姿勢に思いをいたせば、表現の自由が国政に果たす重要性は推して知るべしであり、国民への情報提供は不可欠であります。同じく、国際人道法や米軍との関係については、その内容が例示されておりません。政府の人権感覚を疑います。総理から、国民に安心感を与える答弁をいただきたい。(拍手)
 次に、北朝鮮問題についてお尋ねいたします。
 小泉総理は、昨年八月三十日、北朝鮮訪問を電撃的に発表し、九月十七日、金正日国防委員長とともに日朝平壌宣言に署名をいたしました。その直後のピョンヤンでの記者会見で、総理は、「金正日国防委員長とは、率直に会談し意見を交換し合いました。」と述べられ、「核開発疑惑は、国際社会の懸念事項であり、今回、金正日委員長は関連するすべての国際的合意を遵守することを明確にしました。重要なことは、北朝鮮がこの約束を行動に移すことであります。」と、厳粛な面持ちで話されました。
 その後、拉致被害者の方々の帰国が実現したことは、被害者やその関係者の方々の長い御労苦に思いをいたせば一層、私も国民の一人として歓迎いたします。
 ただ、残念なのは、その後わずか数カ月、この総理の言葉とは全く正反対の方向に北朝鮮が向かっていることです。日朝協議が停滞しているという以上に、両国は最悪の時期にあると言っても過言ではありません。この状況に対し、総理が結果責任を感じておられるのかどうか、まず伺います。
 私の認識では、日本を取り巻く東アジアの安全保障は極めて憂慮される状況に置かれています。その最大の犠牲者が拉致被害者及びその御家族の方々であることは、言うまでもありません。しかし、残念なことに、訪朝以降、特に昨年十月末の日朝国交正常化交渉が失敗に終わった以降、小泉総理からは、北朝鮮問題への主体的取り組みが見えてきません。
 北朝鮮の核開発問題をめぐって緊張がエスカレートする中、米国は、ボルトン国務次官やケリー国務次官補を関係諸国に派遣し、核廃棄に向けた外交を展開しており、韓国も南北閣僚級会談を開催したほか、大統領特使を北朝鮮に派遣し、核問題の打開を試みています。片や、我が国政府は、米国や韓国、中国、ロシアが問題を解決してくれるのを待っているかのごとくです。
 小泉総理は、外交も国内政治同様、パフォーマンス外交や、副長官等や諸外国に頼る丸投げ外交になっているのではありませんか。
 小泉政権は、北朝鮮に平壌宣言を遵守してもらう努力をする旨の国会答弁を繰り返していますが、昨年九月十七日の署名時に、そもそも、北朝鮮が平壌宣言を遵守するとの確信を持っていたのか、あるいは、遵守させるための政策を何か持っていたのか、現在、いかに遵守させるための努力をしているのか、総理の明快な答弁を求めます。(拍手)
 また、北朝鮮の核問題を初めとして、生物化学兵器の拡散に関し、安全保障上、最も深刻な影響を受ける可能性のある日本はどういう役割を果たすのですか。何をするのですか。焦る必要はありませんけれども、ホットラインの開設や政府特使の派遣等も真剣に検討する意味があるのではないですか。また、とんざした拉致事件の解決のため、拉致被害者の方々に対して今後どういう方策をとっていくのか、総理の考えを伺いたい。
 さらに、国境の取り締まりが厳しい中、北朝鮮から命からがら脱出してくる日本人妻、元在日朝鮮人や難民の方々の境遇は、深刻な人道問題であります。政府はこの問題に対しいかに取り組んでいるのか、法的な手当てを含め具体的な支援策を打ち出すべきと考えますが、総理のお考えを示していただきたい。(拍手)
 私が北朝鮮にまつわる諸懸案事項に考えをめぐらすたびにたどり着くのは、やはり、関係諸国の協調、連携の重要性であります。しかし、総理は、その協調、連携が最も重要な時期に、靖国神社を参拝されました。拉致事件や核問題で、米国はもとより、韓国、中国やロシアなどの関係諸国頼みですが、そうであるなら、なおさら慎重に国益を考えて行動すべきであります。
 そうした観点を踏まえて、靖国参拝についての総理の考えを伺います。中国は国連常任理事国でもあります。
 二十一世紀の世界像を思い描くとき、また、同時多発テロ以降、国際社会の切迫した問題となったテロの撲滅という課題に当たるとき、国連を中心とした国際社会の協調体制は一層重要となってきております。米国も、同時多発テロ直後、テロとの闘いにおける国際社会の協力の重要性を訴えました。しかし、ブッシュ大統領は、一月二十八日の一般教書演説で、場合によっては米国単独でもイラク攻撃を行う用意があることを再確認しました。
 国連安保理のコンセンサス、すなわち、新たな国連安保理決議なしにイラク攻撃に至るならば、国連の存在意義が問われる大問題であります。総理はこのような危機意識がありますか。お答えいただきたい。
 もし万一、イラク攻撃という場合に、国際社会とともにとか、国際社会が協調して、こういうときには国連決議が必要だということではありませんか。いかがですか。
 イラク攻撃が差し迫っているとの認識を世界の国々が共有し、これに対する態度を示す中、我が国政府だけが国際社会に対して意味のあるメッセージを発信しておりません。小泉総理は、一月二十三日の本院予算委員会で、我が党の菅直人代表の質問に対し、仮定の問題には答えることはないというのがはっきりした答えだと、相変わらずの人を食った答弁をされましたが、そもそも、仮定の問題を想定し、日本の外交や安全保障政策のあり方を示すのが総理及び外務大臣等の使命であるはずであります。(拍手)
 アラブ・イスラム諸国はもとより、フランス、ドイツ、ロシア、中国は、イラク攻撃に反対ないし慎重の姿勢を示していますし、英国、スペイン、イタリアやオーストラリア等は、既に支持を表明するなど、みずからの意思を明らかにしています。小泉総理は、イラクが国連安保理決議を遵守し大量破壊兵器を廃棄することを求める、米国に自制を働きかけていると述べるにとどまり、その後の問題については思考停止している感さえあります。
 我が国は、これまで、中東アラブ諸国と良好な関係を築いてきましたが、先般のイージス艦を派遣するや、イラクでは、日本、対イラク戦争に参戦と報じられました。私は、以前、イラク及び周辺諸国への総理特使の派遣を国会の場で提案し、政府は、これも受けて、周辺諸国へは派遣しましたが、肝心のイラクへは派遣しませんでした。
 イラク政府に対し日本の姿勢を説明する努力こそが最も重要だと考えますが、なぜ、イラクへは派遣しなかったのですか。
 また、現在に至るまで、日本政府の意思を国民に対して、そして、国際社会に対しても明確に示されない理由を明らかにしていただきたい。また、イラク問題に関する我が国の国益とは何か、それをどう考えるか、明確に示された上で、国益に照らして政府は何をなすべきだとお考えか、伺います。(拍手)
 対イラク攻撃が行われた場合、戦争がいかなる展開になると予想するか、イラク及び中東はどうなるのか、自衛隊がインド洋、アラビア海に派遣されている状況下、政府が、その都度、どのような展開を想定しているか等、説明責任を果たすことは、国会によるシビリアンコントロールの見地からも極めて重要であります。
 小泉総理を初めとして関係閣僚は、これまで、国会の場での極めていいかげんで、はぐらかすばかりの答弁を二年近く続けてまいりました。国会において、仮定の議論あるいはシミュレーション的議論を拒否する総理や外務大臣等の姿勢は、無責任そのものであります。小泉政権の国会軽視は甚だしく、私は、このような姿勢に危うさを感じます。
 小泉総理の威勢のいい発言に、国民は期待を寄せてきました。しかし、それが見かけ倒しであることは歴然としてきております。内憂外患の日本をこれ以上小泉総理に任すならば、あるいは、こんな状態がさらに続くならば、日本株式会社は本当に倒産してしまうのではないか、そういう懸念を私は有しているということを申し上げて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 伊藤英成議員にお答えいたします。
 公約についてでございます。
 先日の私の公約に対する発言は不適切なものだったと反省しておりますが、政策を遂行するに当たっては、基本的な方針を堅持しつつ、情勢を見きわめながら大胆かつ柔軟に対応していくことが必要だと思っております。今後も、基本的な方針に沿って改革を進めてまいりたいと思います。
 一昨年、私は、八月十五日に靖国神社への参拝を行う旨、表明しましたが、内外に不安や警戒を抱かせることは私の意に反すると考え、二日前に参拝を済ませました。それ以降も、特定の日の参拝にこだわることはいたしませんが、年に一度、欠かすことなく参拝しておりまして、一連の経緯から、私の真意につきましては、多くの国民から理解を得ているものと考えております。また、今後とも、近隣諸国の理解を得るための努力をしてまいります。
 ペイオフにつきましては、昨秋、不良債権処理をそれまで以上に加速することとし、同時に、金融システムの安定と中小企業金融等金融の円滑化に十分配意することも必要であることから、不良債権問題が終結した後の十七年四月から実施することとしたものであります。これは、不良債権処理の加速化という構造改革を強化するための措置であり、金融仲介機能の回復を図り、より強固な金融システムを構築するという大きな目標は全く変更しておりません。
 国債発行三十兆円につきましては、我が国の財政が厳しさを増す中で、財政の規律を確保し歳出構造を改革するため、平成十四年度の財政運営の目標としたものであります。この目標があったため、平成十四年度予算においては、医療制度改革や特殊法人改革等へ向け、財政支出の一兆円超の削減、公共投資予算の一割削減など、従来にない改革に向けた予算を実現できたところであります。
 他方、財政規律を確保しつつ、経済情勢に応じては大胆かつ柔軟に対応するとの私の考えは、一貫しております。
 十四年度補正予算におきましては、当初予算編成時には想定し得なかった税収の落ち込みへの対応や、現下の経済金融情勢に応じて柔軟に対応する観点からのセーフティーネットの構築などに必要な経費を追加するため、国債の追加発行を行うこととしたところであります。結果として国債発行額が三十兆円を突破したことは残念なことでありますが、この三十兆円の精神は、我が国の財政事情が厳しさを増している中で、財政規律を維持するため大切な役割を果たしてきたものと考えております。
 特殊法人改革についてでございます。
 特殊法人改革は、官から民へ、国から地方への流れのもとで、肥大化した公的部門を抜本的に縮小し、簡素、効率的、透明な政府を実現するために不可欠の改革であります。
 今回の特殊法人改革では、百六十三すべての特殊法人等について、ゼロベースからの事業の徹底した見直しを行い、その結果を踏まえ、組織形態について、主たる事業が廃止されたもの等については廃止、採算性が高く、かつ、国の関与の必要性が乏しいものについては民営化、政策実施主体として存続させるものについては独立行政法人化といった見直しを行うこととしたところであります。
 これにより、従来から指摘されていた経営責任の不明確性や事業運営の非効率性といった特殊法人の弊害を克服し、業務運営の効率性や透明性の高い法人へと見直すこととしております。
 既に、百十八の特殊法人等について法律改正等の必要な措置を講じておりまして、道路四公団についても民営化に向けた検討が行われております。また、こうした改革に伴い、新しく設立される独立行政法人の役員数を、法定数で約四割減、常勤役員数で約二割五分減と、大幅に削減したところであります。
 また、郵政事業につきましても、民間的な経営を取り入れ、質の高いサービスを提供する日本郵政公社が四月から発足することとなり、実質的な民営化の第一歩を踏み出しました。
 このように、改革は着実に成果を上げていると思います。
 ILO勧告についてです。
 今回のILOの勧告は、人事院勧告制度等の我が国の法制度についての理解が十分でなく、また、ILOの過去の見解と整合しないと認められる部分もあると認識しているため、政府としては、我が方の見解について十分な理解が得られるよう、ILOに対し、必要な情報提供等を行うこととしています。
 公務員制度改革については、今後とも、職員団体と誠実に交渉、協議を行いつつ、国家公務員法の改正等の検討を進めていきたいと思います。
 社会保障制度に関するガルブレイス氏の指摘についてでございます。
 社会保障制度が国民生活の安心のために重要であるとのガルブレイス氏の指摘は、そのとおりであると考えております。
 我が国では、急速な少子高齢化が進展しており、将来的に社会保障制度を安定的に運営し、国民の安心を確保していくためには、制度全般について、給付と負担の見直しは不可欠であります。
 昨年の医療制度改革は、このような観点から行ったものであり、診療報酬を引き下げるとともに、保険料負担の上昇をできる限り抑制するため、自己負担を引き上げることとしましたが、低所得者の方へは、高額療養費制度の自己負担限度額を据え置くなどの配慮を行っているところであります。
 なお、政府としては、今後とも、社会保障制度改革に加え、金融、税制、規制、歳出の四本柱の構造改革を一体的かつ整合的に実行し、デフレの克服を目指しながら民間需要主導の持続的な経済成長の実現を目指してまいります。
 ガルブレイス氏の、社会的弱者の痛みを増すことに力を入れているとの御指摘は当たらないと思います。
 医療制度改革の基本方針についてでございます。
 医療保険制度の体系のあり方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直し等の諸課題については、昨年十二月に厚生労働省が公表したたたき台をもとに、各方面の御意見を伺いながら、今年度中に基本方針を策定し、将来にわたり持続可能な制度としていくため、さらなる改革に全力を挙げて取り組んでまいります。
 年金制度改革についてです。
 年金制度が将来にわたって国民から信頼されるものとなるためには、今後、少子高齢化の急速な進行に伴って現役世代の負担が過大なものとならないことにも配慮し、持続的で安定した制度を確立することが重要であります。
 平成十六年に行う次期年金改革に向けては、どのような給付と負担のあり方が望ましいのか、正面から取り上げ、国民的な議論を行い、持続的で安定した年金制度を構築してまいりたいと考えます。
 なお、繰り返し申し上げているとおり、歳出の見直しを含めた徹底した行財政改革を行うことが重要でありまして、社会保険財源などの解決策として安易に消費税に頼ることは、私は考えておりません。消費税議論は封殺いたしませんが、在任中に消費税率を引き上げる考えはありません。
 治安情勢と対策についてでございます。
 近年、凶悪事件が多発し、国民の多くが治安の悪化に不安を抱いており、また、刑務所などの過剰収容も深刻な事態になっております。
 政府としては、警察、入管、刑務所など関係職員の増員や国際化に対応した教育の充実を含め、一層の体制強化に努めるとともに、施設、装備面の充実にも力を入れてまいります。
 さらに、治安の悪化に対する不安の背景に、密入国や不法滞在の外国人による犯罪の多発が見られることから、入管、税関、海上保安庁を含めた、国境における取り締まりに関係する当局の機能を強化するとともに、連携の一層の向上を図り、世界一安全な国の復活を目指していきたいと思います。
 有事関連法案についてでございます。
 継続審査となっている有事関連法案は、さまざまな緊急事態に対応できる態勢づくりを進めるため、ぜひとも必要であると考えております。
 政府としては、今後とも、行政の説明責任を十分に果たすことにより国民の信頼確保に努めるとともに、有事関連法案については、幅広い国民の理解を得て、今国会における成立を期してまいりたいと思います。
 有事法制について、国民保護法制やテロ、武装工作船への対策を並行して進めるべきとの御指摘であります。
 米国の同時多発テロ、北朝鮮当局による武装工作船や拉致事件などは、現実の脅威として国民に大きな不安を与えていると考えます。政府としては、こうしたさまざまな緊急事態に対処できるよう、態勢の整備に一層努めてまいります。
 国民保護法制については、国民の権利義務と深い関係を有することから、地方公共団体や民間機関等の意見を聞き、幅広い御理解を得ながら内容を深めてまいります。
 有事法制における人権の問題についてです。
 武力攻撃事態対処法案では、基本理念として、日本国憲法の保障する国民の自由、権利の尊重を定めています。今後の個別法制の整備においても、この基本理念にのっとり、国民の自由、権利の尊重に最大限配慮するとともに、ジュネーブ諸条約等の国際人道法の的確な実施を確保してまいります。
 日朝平壌宣言についてです。
 日朝平壌宣言は、今後の日朝関係のあり方を規定した重要な文書であり、これに署名したことは、私は正しい判断であったと思います。
 この日朝平壌宣言に基づいて、拉致問題及び核問題等の諸懸案を解決し、地域の平和と安定に資する形で国交正常化を実現するという我が国の基本方針については、北朝鮮側も十分承知しており、引き続き、我が国は、さまざまな機会をとらえ、北朝鮮側に前向きな対応を働きかけていく考えであります。
 北朝鮮の核問題等に関するお尋ねであります。
 核兵器、生物化学兵器の問題を含む北朝鮮に関する安全保障上の問題につきましては、日米韓三カ国の緊密な連携を維持し、その他の関係国や国際機関とも協力しつつ、北朝鮮に対して問題解決のための前向きな対応を引き続き強く求めていく考えであります。
 なお、現時点での北朝鮮とのホットライン開設や特使派遣は、検討しておりません。
 拉致問題解決に向けた今後の方策についてです。
 拉致問題につきましては、御家族を初めとする関係者が納得する形で問題が解決されることが重要であります。政府としては、被害者の方々及び御家族との連絡を引き続き密にし、その御意向も踏まえながら、北朝鮮側に対し、事実解明、被害者御家族の帰国の実現等を引き続き強く求めていく考えであります。
 北朝鮮からの脱出者への対応についてです。
 北朝鮮からの脱出者への対応の問題につきましては、国内のさまざまな議論を踏まえ、関係者の身の安全、人道上の観点等の種々の観点を総合的に勘案しながら、真剣に対処してまいります。
 私の靖国神社参拝と北朝鮮問題との関係についてでございます。
 中国及び韓国に対しては、今回の参拝の趣旨につき、必要に応じ説明し、我が国との友好は今後とも変わりないことを理解してもらいたいと考えております。
 また、北朝鮮問題につきましては、米国や韓国に加え、中国等の近隣諸国と緊密に協力してきているところであります。
 イラク問題をめぐる国際社会の協調体制についてでございます。
 安保理を初め国際社会が協調して毅然たる態度を維持し、イラクが査察に全面的かつ積極的に協力するように求めることが、何よりも重要であります。米国に対しても、先日の電話会談で、私からブッシュ大統領に対しまして、国際協調の維持の重要性を述べたところであります。
 新たな安保理決議については、安保理において議論が行われると承知しておりまして、今後の事態の推移を注視する必要があります。いずれにせよ、我が国は、現在行われている査察の状況、安保理の議論等を踏まえ、イラクが誠実に決議を履行するように、我が国として外交努力を継続してまいります。
 イラクへの特使派遣についてでございます。
 昨年末の特使派遣に際しましては、イラク側より政治的に利用されないような配慮が必要であるという考えから、イラクには派遣しませんでした。しかし、イラクに対しては、先般、川口外務大臣から在京イラク臨時代理大使に対し、改めて我が国の立場を強く申し入れるなど、働きかけを行ってきております。
 イラク問題に関する日本政府の対応についてでございます。
 重要なことは、イラクが査察を単に妨害しないということだけでなく、みずから能動的に疑惑を解消し、大量破壊兵器の廃棄を初めとするすべての関連安保理決議を誠実に履行することであります。我が国としては、このために、さきに述べたような外交努力を継続してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 神崎武法君。
    〔神崎武法君登壇〕
神崎武法君 私は、公明党を代表して、小泉総理の施政方針演説を含む政府四演説に関連して、当面の主要テーマに絞って質問いたします。(拍手)
 まず初めに、御病気御療養中の天皇陛下の一日も早い御退院、御快癒を心よりお祈り申し上げます。(拍手)
 また、今回のスペースシャトル・コロンビアの事故につきましては、本当に胸が痛みます。七名の宇宙飛行士、御遺族の皆様に心より哀悼の意を表します。(拍手)
 総理、改革はまさしく「言うは易く、行うは難し」であります。
 小泉連立政権発足当時、国民は、小泉総理の掲げる「聖域なき構造改革」に大きな期待を抱きました。一年十カ月を過ぎた今、なお五〇%前後の国民世論の支持があるということは、この間の小泉政権の改革への取り組みやその真摯な政治姿勢が評価されていることの証左にほかなりません。
 ただ、最近の支持率低下が経済政策を中心とする不満の高まりにあることや、小泉内閣支持が、改革内容を評価するというより、総理の指導力、人格面での人気といった側面にあることは、注意を要します。
 特に最近聞かれるようになったのが、改革に伴う痛みへの覚悟はわかる、痛みの先に何があるのかを同時に語ってほしいということであります。難しい問題ではありますが、この声にこたえることがさらに改革への不動の決意をみずからに課していくという意味で、まず、総理の改革への決意と展望、目指すべき成果についてお聞かせください。
 さて、我が国経済を取り巻く環境は、極めて厳しいものがあります。昨年、緩やかながら回復しつつあった景気も陰りが見え、また、デフレは我が国経済に深刻な影響を及ぼしてきています。もちろん、実際の我が国経済が抱えるさまざまな課題、特に不良債権処理の抜本的解決などを進める中では、デフレ克服が一足飛びにできるものでないことも事実でありますが、決して手をこまねいているわけにはいきません。デフレの早期克服に向けて、政府、日銀が、まさに英知を集め、可能なあらゆる政策手段を集中的に講じていくべきであります。
 こうした観点から、幾つかの点について申し上げたい。
 まず第一は、不良債権処理の着実な実施と産業・企業再生への取り組みの強化、そして、万全な雇用・中小企業セーフティーネット対策の構築についてであります。
 このうち、産業・企業再生については、産業再生機構を速やかに立ち上げ、産業構造の変革と企業の再生を通じて経済の活性化を図っていくことが重要であります。
 一方、厳しさを増す雇用情勢について、私どもは、一貫して、セーフティーネットの構築を主張してまいりました。
 雇用保険料率が我が党の強い主張で現行のまま据え置かれることとなり、あわせて、早期再就職者支援基金二千五百億円が創設され、不良債権処理の加速に伴う失業者への支援が講じられることとなりました。
 民間企業の雇用を後押しする雇用再生集中支援事業の創設も含め、多くの雇用の安全網を実効ある制度としていくためにも、速やかな十五年度予算案の成立と施策の実施、追加的施策の可能性などを含め、政府は全力を挙げて取り組むべきでありますが、総理の決意をお伺いしたい。
 中小企業対策については、特に長期デフレと不良債権処理の加速化に伴う中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしがさらに厳しくなっており、その一つの要因が、公的資金を受けた金融機関が中小企業向け貸し出し目標を大幅に下回っている事実を早急に改善すべきであると思うが、総理の意見をお伺いしたいと思います。(拍手)
 特別信用保証制度や売掛債権担保融資保証制度など、公明党は、まじめに働く中小企業の方々への支援も数多く実現してまいりました。
 平成十四年度補正予算においても、中小企業セーフティーネット対策として五千億円の予算が確保されました。その中の大きな柱が、複数ある保証つき融資を一本化するなどして月々の返済額を軽減する資金繰り支援保証制度であり、地域の関係者の協力を得て中小企業を再生する中小企業再生協議会の創設や創業塾の拡充なども盛り込まれております。
 とはいえ、経済再生の核となる中小企業の活性化のため、必要に応じてさらなる支援を行っていくべきであると思いますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。(拍手)
 第二には、日本銀行による適切な金融政策運営であります。
 特に、デフレ不況の克服に向けて政府、日銀の連携を図り、デフレ脱却に向けて同じ認識を共有し、共同歩調をとりながら、一定の政策目標に向けた対応措置を講じていくことが重要であると考えます。
 その意味におきまして、物価安定についての緩やかな目標を政府と日本銀行が政策協定や宣言という形で合意することも積極的に検討すべきではないかと考えるものであります。種々の論議は必要ですが、まず一歩踏み込んでみようとの姿勢を持った上での検討であるべきと思いますが、総理、いかがでしょうか。(拍手)
 第三には、規制改革の徹底した推進を強調したい。特に、構造改革特区構想の大胆な展開が当面の大きな焦点であります。
 昨年八月の第一次の特区では、幾つかの規制緩和が実現したものの、目玉とされたものがことごとく退けられました。そもそも、構造改革特区なるものはもともと地域や実施時期を限定した一種の社会実験であり、不都合が出たならば撤退や軌道修正が可能であればこそ、特区なのであります。
 先月十五日に締め切られた第二次構造改革特区には、地方自治体や民間企業などから、前回の一・五倍に当たる六百五十一の提案が寄せられました。
 例えば、韓国・釜山市と近い長崎県の離島、対馬は、海外旅行者のノービザ渡航の実現、小中学校での韓国語教育などの規制緩和を「しま交流拡大特区」として要望、あるいは、農家に酒の醸造、販売を地域限定で認めようという岩手県などの「どぶろく特区」、モナコ・グランプリのように公道でのカーレース開催を認める「大阪夢サーキット誘致特区」、政令市以上にしか許可されていない宝くじの発行を広域連携五市で発行しようという「両毛地域振興宝くじ特区」、違法駐車等の取り締まりを市町村が行うことで渋滞を解消し、商店街の活性化と市民の安全性を図る埼玉県草加市の「安全・安心改革特区」など、地域や民間の創意工夫、アイデアはまさに無尽蔵であります。
 総理は、施政方針演説の中で、特区をてこに全国規模での規制改革を進めると明言されましたが、足元の省庁で特区の二次提案に前向き姿勢を示しているのは一、二割にすぎないようであります。もちろん、中には検討を要するものもありますが、総理がリーダーシップを発揮して、まずやってみよう、結果で判断しようと、特区構想の多くにゴーサインを出してあげることが極めて大事と思いますが、総理の決断を求めたい。(拍手)
 ここで、我々は、なぜデフレ不況から脱却できないでいるのか、なぜ日本社会を活気づかせることに苦しんでいるのかを改めて考えてみたいと思います。
 アジア近隣諸国との経済の構造調整や不良債権処理の問題が原因していることは、申すまでもありません。総理も提案されているとおり、我々国民一人一人のマインド、意識をどう転換するかが大きな課題であることも事実であります。我々日本人は、古来、勤勉であります。創意工夫に富み、自分の力で自分の運命を切り開いてまいりました。
 そこで、もう一度、私たちは、日本の持つ底力、潜在力を見直し、それを日本再発見行動プランともいうべきものとして、国家戦略の作成を提案いたします。
 具体的に、幾つか列挙したいと思います。
 第一は、言うまでもなく、先端技術であります。
 日本の技術開発力が世界のトップレベルにあることを示した、昨年の物理学、化学の両分野でのノーベル賞同時受賞。そのすそ野にある中小企業や大学の研究機関などが持つ技術力のすばらしさ。例えば、人工衛星づくりが東大阪の町工場で始まったことは有名であり、そのほかにも、医療用機械やロボット、ナノテクノロジー、新エネルギーなどの技術力は世界でも有数であります。
 問題は、これらの技術開発力を産業力にいかに効率よく結びつけるかであります。TLO、技術移転機関の活性化や知的財産戦略を強力に進めるとともに、中小企業や大学などの研究開発を誘発する環境を整備し、新産業創出を図ることは急務だと考えます。
 第二は、観光の振興であります。
 日本の旅行消費額は二十兆円、雇用創出効果は百八十一万人にも上り、間接的な生産波及効果は四十兆円、雇用創出効果は三百九十三万人にも達すると試算されています。日本の伝統文化、四季に富んだ自然景観は、観光先進国の魅力を凌駕する潜在力を秘めております。
 しかしながら、我が国の観光における実力は、外国人旅行者の受け入れ数が世界三十五位と、海外に出かける旅行者数の四分の一にすぎず、その収支は約三兆五千億円の赤字に甘んじております。このことは、サービスの高度化などによって、これまでの観光産業の立ちおくれを観光先進諸外国並みに挽回するだけで、その展望は限りなく広がっていると考えます。
 アメリカが近年、観光重視政策をとってきているように、今こそ日本も、文化・観光担当の大臣を任命するとともに、内閣に観光立国戦略本部を設置するなど、総合的な事業展開を図るべきであります。(拍手)
 第三は、我が国は本来、山紫水明の自然環境大国だということであります。
 自然は人間の活力の源でもあります。我が国は、今、改めて、水と緑と豊かさの自然共生先進国の実現に向けて大きくかじを切るべきときだと考えます。
 そのために、一つは、我々公明党が強く主張し続け、先般、議員立法として成立した自然再生推進法について、政府として自然再生基本方針を早期に策定し、積極的な活用を図ること。二つ目に、公共事業の長期計画の改革が図られようとしておりますが、その際、自然共生に最大限の配慮をすべきこと。三つ目は、都市再生における自然環境の再生、整備。四つ目は、途上国の教育支援のために、NPOなどとの連携を図りつつ、世界に冠たる我が国の先端的な環境技術の移転、環境人材育成のための一大ワールドセンターを我が国に設置し、環境留学生を受け入れること、などを提案したいと思っております。
 第四は、スポーツと文化芸術の振興であります。
 この分野にあっても、日本の潜在力は大きなものが期待されます。最近、プロ野球の松井秀喜選手がアメリカ・メジャーリーグに移籍することが大きな話題になりましたが、日本人スポーツ選手の活躍は枚挙にいとまがありません。日本人の海外での雄飛は、多くの国民に夢や感動を与え、青少年にとっては大きな希望となっております。
 トップレベルのスポーツ選手を育成するためには、スポーツを愛好する人のすそ野を広げることが肝要です。今、地域におけるスポーツクラブの運動が全国的に広がりつつありますが、こうした地域の取り組みを応援し、社会を挙げて生涯スポーツ社会とすることで、国家と国民の健康、発展が大きく期待できるのであります。
 一方、物はあふれているのにどこか空虚感を覚えるのが今日の社会と言われ、心の満足のためには支出を惜しまないという時代になっております。心の満足を追求するもの、それが文化芸術であります。その文化芸術に楽しさ、エンターテインメントの要素を加えて大きな産業にしようという試みが世界で始まっています。世界に誇る文化芸術を持つ日本として、それをさらに発展させることを含め、その資源を有効に生かすことを考えてはいかがでしょうか。
 以上、日本の潜在力と目される事例を幾つか掲げました。
 これらにとどまらず、例えば、日本固有の地域コミュニティーの持つ力、日本独特の人情や触れ合いさえも、それだけで、世界に誇るべき、我々日本社会が有する潜在成長力だと考えます。これらを掘り起こし、再発見し、再構成していくことが重要だと考えます。
 これが、仮称、日本再発見行動プランの作成を提案するゆえんであり、そのための実施機関の設置など、内閣挙げての国策とすべきであると考えますが、総理の御見解を伺います。(拍手)
 次に、私は、日本の高齢社会は負の面ばかりクローズアップされているように思えてなりません。
 一口に高齢者と言っても、その実像は多様であります。例えば、六十五歳以上に占める要介護者の割合は一割強、残りの九割弱は元気な高齢者として社会参加が可能なのであり、年金、医療、介護など、将来にわたり安定した制度を構築するため、抜本改革を急がねばなりません。その上で、高齢者があらゆる場で生き生きと活躍し、自己実現ができる社会へ、社会経済のシステム変革、私たちの意識変革が必要ではないでしょうか。
 具体的に、次の三点を提案いたします。
 まず第一に、高齢者が寝たきりや痴呆症になるのを防ぎ、健康で充実した生活を送るための国民的な健康づくり運動の推進です。
 健康日本21に代表される、生活習慣の改善や健康維持増進のための健康教室の開催、さらには各種健康診査の充実など、膨張する国民医療費の抑制や、疾病構造の変化への的確な対応という観点からも、こうした一次予防への取り組みに対し、国の強力なバックアップが必要だと考えます。
 次に、二点目として、就労やボランティア活動などを通じた社会参加の促進であります。
 幸い、我が国の高齢者は、就労、社会貢献への意欲が高く、その経験豊富な知識や技能を生かし、高齢者が生涯現役で活躍することで、若年世代に刺激を与え、社会に新たな活力が生まれてくるのではないでしょうか。
 最近では、高齢者が同世代の悩みや相談に乗るシニア・ピア・カウンセリングや、対高齢者のみならず小学生や一般市民も対象にしたパソコン教室の開催など、地域における世代内・世代間交流も大いに注目されております。こうした取り組みを推進するNPOへの支援の充実や、企業においても、フルタイムではない短時間勤務制度の導入、促進など、高齢者の多様な可能性を引き出せる雇用形態の見直しが強く求められております。
 そして、第三には、観光、文化芸術活動、生涯学習等を通じた、心の健康づくりや生きがい探しへの取り組みであります。
 心身のいやしの場として高齢者に人気の高い温泉地への観光は、疾病・介護予防とも直結し、今後ますますニーズの高まりが予測されます。また、コミュニティーカレッジの創設、活用などにより、生涯学習の機会が充実することで、閉じこもりの防止やコミュニケーションの場が確保され、高齢者の社会参加や生きがい探しに大いに貢献するものと思われます。
 高齢期を、人生で最も充実した幸多き、漢字で書けば幸せの年齢、つまり幸齢期とし、日本再生の大きな柱の一つとするためにも、これらの施策を果敢に断行し、世界に誇れる高齢社会の日本型先進モデルを示していく使命があると思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 次に、教育についてお伺いしたい。
 奨学金制度などは公明党の粘り強い取り組みで充実してきましたが、いまだ、不登校の児童生徒数が過去最高となるなど、今日の教育において、取り組むべき課題は余りにも多いのが現状であります。これらの諸課題に早急に、かつ、全力で取り組むことは当然ではありますが、あるべき教育の姿とは何かといった中長期的な視野に立った検討も、今、教育に求められており、この観点から、以下の提案をさせていただきます。
 第一に、教育の地方分権化を政府が大胆に推進すべきということであります。
 今日の教育にあっては、規制や前例に縛られない、地域や学校、民間の自由な発想が有効であり、これらの努力や創意工夫がより生かされる仕組みが求められております。
 その意味で、今回の構造改革特区における第二次提案では、教育特区として、不登校の児童生徒のための学校の設立や、NPOや地域住民による学校の運営など、地域、子供の実情に即した、自治体、民間によるさまざまな提案がなされているところであり、政府は極力支援すべきであると考えますが、総理のお考えをお聞きしたい。
 第二に、公立学校の復権であります。
 今日、公立学校の信頼性の回復が喫緊の課題になっておりますが、義務教育における公立学校の基幹的役割を考慮すれば、いかに公立学校を活性化させるかということが今後の大きな焦点であります。既存の学校制度の見直しも重要であると考えます。
 その一つの試みである学校選択制の活用は、十分検討に値するものと言えます。特に、埼玉県志木市が、教育特区として、中学校を文系、理系などの学部と見立てての自由化構想を掲げていますが、これは、市内の各中学校を大学の学部に見立てて、それぞれに特色を持たせ、学区を自由化して、行きたい学校を選ぶことのできるようにするという画期的なものであります。
 また、公立学校の活性化のため、一つの起爆剤として、例えば、実験的に、クーポン券を家庭、子供たちに配布することにより、行きたい学校に行けるといった教育バウチャー制度の導入の検討も視野に入れていいのではないでしょうか。
 文部科学大臣並びに教育バウチャー制度を熱心に提唱している竹中大臣のお考えを伺います。
 なお、教育基本法の見直しについてでありますが、私どもは、教育基本法は準憲法的な性格を有しており、十分時間をかけて議論を尽くすべきであると考えています。(拍手)
 次に、農業活性化について質問いたします。
 農林水産省が昨年十二月に決定した米政策改革大綱は、国が直接配分していた生産調整を生産者や農協の主体的判断で実施することや、地域の特色を生かした水田農業に資する産地づくり、過剰米処理、流通の改革などから成っております。しかし、こうした新政策について、生産者は、米価がさらに値下がりするのではないかなど、今後の米づくりに強い不安を抱いております。
 これらの不安にどう対処し、さらには、新米政策のかぎである担い手不足対策や担い手への農地集約を具体的にどう進めていくのか、総理の答弁を求めます。
 また、この際、米飯としての米の消費拡大だけではなく、米を粉体化し、米粉、米の粉と漢字で書いてコメコと読みますが、この米粉としての利用拡大を図るべきではないかと考えております。
 特に、近年、粉体化技術が向上し、各地で米粉パンやうどんへの混入などの事例がふえております。米粉による米の消費拡大は、食料自給率の向上、水田の多面的機能の発揮にもつながるものであり、新たに光を当てる分野ではないかと思います。
 国として米粉の普及推進機関をつくるべきではないかと思いますが、米粉の消費拡大とあわせ、農林水産大臣のお考えをお伺いいたします。
 WTO農業交渉は、ことし三月末のモダリティー、自由化の基準確立に向け、大詰めに来ております。食料自給率の向上、食料安全保障、農業の多面的機能発揮の観点などから、米国やケアンズ・グループの大幅一律関税削減案は余りにも非現実的であります。
 我が国は、EUなどと連携を深め、品目ごとに異なる関税設定を認めているウルグアイ・ラウンド方式やミニマムアクセス米の削減を目指し、全力を挙げるべきですが、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。(拍手)
 国民の信頼なくして政治、行政は遂行できません。しかしながら、残念なことに、最近も、政治、行政の倫理が厳しく問われる事件が起こっております。
 公明党が与党入りして三年余り、政治家個人に対する企業・団体献金の禁止、あっせん利得処罰法の制定、対象拡大、官製談合防止法の制定など、多くの腐敗防止策が講じられてきました。
 しかし、いつまでも続く、政治家の影響力を背景とした政官業癒着の構造を断ち切るために、さらなる再発防止策を講ずべきであると考えます。
 既に制定された防止策の厳正なる運用はもとより、公共工事受注業者からの政治献金の量的、質的な制限や、政治家や秘書の公共工事の入札への関与を禁止する旨を国会議員の行為規範などに明記すること、そして、電子入札の普及など、一歩も二歩も踏み込んだ防止策を検討すべき段階に来たと痛感いたしますが、総理の政治腐敗防止への決意をお伺いしたいと思います。
 次に、いわゆる公務員の天下り問題についてであります。
 一昨年十二月に出された公務員制度改革大綱においては、営利企業への再就職について各省大臣が承認する仕組みが示されましたが、承認の主体を人事院から担当大臣に変更しただけであり、逆に、お手盛りになるのではないかといった懸念もあります。天下り人事については、強いチェック機能が必要であり、内閣の承認事項とすべきであります。
 公明党は、天下りの背景にある早期退職慣行そのものが、特殊法人や公益法人のあり方も含めた公的な部門全体にかかわる種々の問題の根源にあると認識しており、これまで一貫してその是正を主張してきました。
 今後、行政改革を進めるに当たっては、早期退職慣行の是正、内閣の調整機能の強化など、天下り問題に大胆に取り組み、国民の期待にこたえることが不可欠だと考えます。場合によっては、公務員制度改革大綱の見直しも視野に入れるなど、これまでの経緯にとらわれない大胆なかじ取りを期待するものでありますが、総理の御見解を伺います。(拍手)
 次に、イラク、北朝鮮問題についてお伺いいたします。
 世界が直面する最大の脅威は、核や大量破壊兵器などの拡散であります。そして、これらの武器をテロリストが手にすることほど恐ろしいことはありません。我が国も、国際社会と一致結束して、これらの問題に真正面から対峙せねばなりません。
 まず、イラク問題についてでありますが、先月二十七日、国連監視検証委員会と国際原子力機関による査察の報告を受け、国連安保理で協議が行われました。その結果、イラクは大量破壊兵器などに関する疑惑を解消するために十分な協力を行っていない、イラクは能動的に疑惑を解消し、みずから武装解除を行うよう強く求めるとともに、引き続き査察を継続するとの結論に至りました。また、今月五日には、再度、安保理協議が開催されることになりました。私は、この国連の努力と判断を支持するものであります。
 この問題解決のために重要なことは、まず、イラクが査察に無条件、無制限に協力し、大量破壊兵器の廃棄など、すべての関連安保理決議を履行することであります。国連への全面協力を通じてのみ、平和的な解決の第一歩が始まるのであります。
 公明党は、国連を中心とした国際社会の連携を軸に、あくまでも外交努力による平和的解決を目指す立場であります。我が国も、あらゆる機会を通じ、査察に関する前向きな対応をイラクに求めるべきです。
 総理は今後どのような外交努力をされようとしているのか、お伺いしたいと思います。
 一方、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国は、昨年十二月、核の凍結解除と核施設の再稼働を発表、そして本年に入り、ついには、NPT、核拡散防止条約の脱退表明と、日朝平壌宣言を一方的に踏みにじる事態に至ったことは、まことに遺憾であります。
 我が国はあらゆる機会を通じて、北朝鮮の約束違反について、毅然として、かつ、粘り強く正していくとともに、北朝鮮が何としてもNPTにとどまるよう全力を挙げねばなりません。
 当面は、日米韓の枠組み、そして、ロシアと中国の仲介を含め、北朝鮮を説得することが重要であります。
 一方、長期的な取り組みとしては、北朝鮮を交えた形での国連主催の北東アジア平和会議を設置し、同地域における信頼醸成を図りつつ、非核地帯構想への参加を通じて、NPT加盟の継続を図る選択肢を北朝鮮に提供したらどうかと考えます。くしくも、昨年、キューバがこの道を選択したことを考えれば、決して不可能なことではありません。
 また、拉致被害者の御家族の帰国問題を初めとする拉致問題の全面解決、さらには、北朝鮮を脱出して帰国された方々に対する法整備を含めた生活支援など、これらの問題に全力で対処していただきたい。
 総理の御見解を承りたいと存じます。(拍手)
 カンボジアに始まり、我が国が国連の平和維持活動に参加してはや十年、我が国の自衛隊が今後ますます国際平和協力へ貢献する上でも、私は、自衛隊の中にPKOを専門とする部隊の創設を検討する時期に来ていると考えます。
 昨年十二月、明石座長を中心に熱心に議論された国際平和協力懇談会の報告書が福田官房長官に提出されました。その中で、第一に、国際人道援助への迅速な対応、第二に、これからは平和維持から平和構築の分野に力をシフトしていく重要性と、そのために、経済、行政、治安、教育など、より広範な協力と人材が求められているとの指摘がありましたが、私も全く同感であります。
 私は、新しい平和主義との観点から、次の三つの提案をさせていただきます。
 第一は、国際人道援助への敏速な対応、円滑な実施であります。
 特に難民や被災民支援など人道的な分野においては、医師やレスキュー隊員など自衛隊員以外の文民専門家の派遣については、より弾力的な運用により迅速に派遣できる体制を法制度を含めて整備するなど、硬直化した対応が結果として人道支援の機会を損ねることのないようにすべきであります。
 第二には、国連待機制度への加入であります。
 この制度は、国連PKOの機動的かつ迅速な展開を可能とするために、国連加盟国が一定期間内に提供可能な要員の種類、数などを国連側にあらかじめ報告しておき、実際に展開が必要となった場合、国連がこれに基づき各国に要請するシステムであります。この際、我が国も加入の意思表明をすべきであります。
 第三は、国際平和貢献センターの設置と人材育成であります。
 国際平和協力の現場に求められている警察活動や紛争予防、医療・衛生、教育など文民的分野で対応できる人材を育成するために、官民共同の人材育成機関である国際平和貢献センター(仮称)の設置を内閣府のもとで推進していただきたい。
 以上の提案について、総理の御所見を承りたいと存じます。
 総理、どのような時代にあっても、懸命に汗して、まじめに働く人が報われる社会を築くことが、政治に課せられた使命ではないでしょうか。庶民が抱える苦しみと不安を除去し、安定した生活基盤を築くために、政府・与党が一体となって全力で取り組まなければなりません。
 経済の再生、そして、政治への国民の信頼回復のためにも、総理の強靱なるリーダーシップを期待して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 神崎公明党代表にお答えいたします。
 友党としての御激励を賜り、まことにありがとうございます。
 構造改革への決意と展望、また、目指すべき成果についてのお尋ねでございます。
 私は、現在の経済停滞というのは、構造改革にも大きな問題があるのではないか、単なる景気循環ではないと考えまして、構造改革なくして成長なしという基本路線のもとに、いろいろな改革に取り組んでいるところであります。
 今後、これだという即効薬はありませんが、金融あるいは税制、歳出、規制、もろもろにわたる改革をなし遂げまして、将来、民間主導の持続的な経済成長路線に乗せていきたいと思っております。
 まず、大事なことは、個人なり企業なり、地域が持っている、いわば一人一人、一つ一つの企業、各地域が持っている潜在力をいかに発揮させるような環境を整えるか、それが大事だと思っております。
 私の改革はまだ道半ばでありますが、今後、成果が得られるように不断の努力を続けていきまして、国民の生活が希望の見えるような、また、現在出ているいろいろな経済指標につきましても、明るさが見えるような形に何とかしていきたいと思っております。私の改革に向けた決意は全く変わっておりません。
 また、何よりも大事なことは、だめだだめだという、日本人自身が悲観主義に陥ることであります。施政方針演説でも申し上げましたように、むしろ外国の方が、日本の潜在力に期待している。また、日本人の業績、日本人の企業、日本の持てる潜在力に高い評価をしている。こういうことにつきまして、余り悪い面ばかりを見ないで、いい面も、強い面も十分見て、悲観主義に陥ることなく、勇気と希望を持って改革に取り組む、それが大事だと思っております。(拍手)
 雇用対策への取り組みでございます。
 厳しい雇用失業情勢に対処し、国民の雇用面の不安を払拭することは、今後の改革を進める上においても最も重要な課題であると認識しております。
 このため、雇用対策に万全を期すことといたしまして、今般成立した平成十四年度補正予算及び十五年度予算におきまして、早期再就職支援策や雇用機会の創出対策などの十分な施策を盛り込んだところであります。
 政府としては、十四年度補正予算の円滑な執行を図り、十五年度予算とあわせ、切れ目のない対応を図ることが重要と考えておりまして、十五年度予算の速やかな成立をお願いする次第であります。
 公的資本増強行の中小企業向け貸し出しについてでございます。
 我が国経済の再生を図る上で、やる気と能力のある中小企業への円滑な資金供給を確保することは大変重要であります。
 このため、中小企業向け貸し出しが減少している公的資本増強行に対しては、金融庁において、必要に応じ業務改善命令を発出するなど厳正に対処し、目標達成に向けた取り組み努力を促しているところであります。
 中小企業対策についてでございます。
 厳しい経済環境の中で、やる気と能力のある中小企業はまだまだたくさんあります。この中小企業の資金繰りを円滑化するために、金融セーフティーネット対策に万全を期してまいりたいと思います。
 また、中小企業の新規創業や新事業展開への果敢な挑戦に対して、資金確保、技術開発、人材育成等の支援策を強化してまいります。
 日本銀行との関係でございます。
 経済財政運営の重要課題でありますデフレ克服のために、金融面を含め総合的な対応が重要であるという御指摘は、全く同感であります。
 このため、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向け、政府は日銀と一体となって総合的な取り組みを実施していく必要があると考えます。日本銀行におきましては、さらに実効性ある金融政策運営を行っていただけるよう期待しております。
 いずれにしても、日銀とは、その独立性を尊重しつつ、今後とも、経済財政諮問会議のほか、さまざまなレベルにおいて意見交換を行い、連携をとっていきたいと思います。
 教育特区を含め、地域から出された特区構想の実現に向けた問題についてでございます。
 構造改革特区は、地域の特性に応じた規制の特例措置を導入し、それぞれの地方が知恵と工夫の競争による活性化を目指すことにより、民間活力を最大限に引き出し、経済社会の活性化につなげようとするものであります。
 今回の第二次募集では、さまざまな地域や民間から六百を超える提案があり、特に教育の分野においては、学校設置主体を株式会社に拡大するなど、多くの提案がなされております。このような構造改革にかける地方や民間の熱意を真摯に受けとめ、規制改革の突破口としての構造改革特区のさらなる充実を図ってまいります。
 このため、関係大臣に対し、実現するためにはどうすればいいかという方向で検討するよう強い指示を出しているところであり、教育特区については、地域や子供の実情に即したよりよい教育を目指し、可能な限りの実現を図ってまいります。
 日本の持つ潜在力を掘り起こす国家戦略を策定してはどうかとの御提案であります。
 日本の持つ技術、伝統、自然、文化芸術など、大きな潜在力を有効に生かし、経済社会の活性化を図るべきとの神崎代表の考え方にも、私は全く同感であります。
 このような観点から、政府としては、科学技術創造立国の実現に向け、平成十五年度の一般歳出全体を厳しく抑制する中で、対前年比三・九%増の科学技術振興予算を措置したほか、今般の税制改正において、一兆二千億円に上る研究開発・投資減税を行うなど、研究開発を重点的に支援していくとともに、訪日外国人旅行者数を二〇一〇年に倍増させることを目標として、ことし一月に観光立国懇談会を立ち上げ、観光の振興にも一歩踏み込んだ取り組みを進めることとしているところであります。
 また、ごみゼロ社会の実現や脱温暖化社会、自然と共生する社会の実現に向け、リサイクルの推進、不法投棄の一掃のための仕組みの整備、燃料電池車の普及拡大などに積極的に取り組んでいるところであります。
 さらに、スポーツや文化芸術等、幅広い分野で国民が世界の中で一層活躍し貢献できるよう、トップレベルの担い手育成や国際交流の推進など、その振興にも取り組んでいるところであります。
 今後とも、公明党を含め、さまざまな御意見、御提言を踏まえながら、我が国の持つ大きな潜在力が発揮されるような取り組みを政府一体となって総合的に進めてまいります。
 高齢社会対策についてでございます。
 高齢者がいつまでも健康で心の豊かさや生きがいを充足できるようなさまざまな条件整備を図っていくことは、極めて重要な課題であります。
 政府としては、だれもが長生きしてよかったと誇りを持って実感できる社会を目指し、疾病の予防に重点を置いた健康づくりの推進、就労やボランティア活動などの高齢者の社会参加促進や生涯学習の基盤整備など、高齢社会対策を総合的に推進してまいります。
 米政策の改革についてでございます。
 今般の米政策の改革は、食生活の変化に伴う消費の減少に生産構造などが対応し切れていない状況を打開し、需要に応じた米の生産、流通を実現するため、生産調整システムだけでなく、生産構造及び流通体制の改革も含め、米政策を市場重視、消費者重視の考え方に立って再構築し、水田農業の未来を切り開こうとするものであります。
 改革の実行については、十分な準備期間を設けることとしており、今後、関係者の理解と納得を得ながら、地域での話し合いを通じ、担い手の確保や農地集積などを進めてまいる考えであります。
 WTO農業交渉についてでございます。
 三月の交渉の大枠確立を控え、重要な段階となっております。我が国としては、WTO農業交渉については、EU等と連携し、食料安全保障、農業の多面的機能等の非貿易的関心事項を適切に反映するため、御指摘のような品目ごとの柔軟性の確保を初めとする我が国農業交渉提案の実現に向けて、政府一体となって全力を挙げて対処してまいります。
 政治と金の問題についてでございます。
 常に政治家が襟を正して当たらなければならない大事な問題であり、昨年、あっせん利得処罰法を改正強化するとともに、いわゆる官製談合防止法を制定したところであります。
 公共事業受注企業からの献金についても、現在、自民党において検討を進めております。電子入札の普及などを進めつつ、政治と金の問題について、一歩でも前進できるよう措置を講じたいと考えております。
 いわゆる天下り問題でございます。
 原因の一つと指摘されている早期退職慣行については、昨年末に、政府として是正の基本方針を取りまとめたところであります。
 また、公務員の営利企業への再就職については、大臣承認制の基準の策定や総合調整に関し、内閣が主体的に取り組んでいくこととしています。
 天下り問題については、今後とも、国民の信頼が得られるよう、公務員制度改革大綱に基づき、幅広く意見を聞きつつ取り組んでいく考えであります。
 イラク問題についてでございます。
 御指摘のとおり、イラクが査察に全面的かつ積極的に協力し、大量破壊兵器の廃棄を初め、関連する国連安保理決議を誠実に履行することが重要であります。
 我が国としては、国際社会が協調して毅然たる態度を維持すべきとの考えのもと、イラクに対する申し入れや関係諸国との協議など、我が国としての外交努力を継続してまいります。
 北朝鮮問題への対処でございます。
 政府としては、日朝平壌宣言に基づき、拉致問題や安全保障上の問題を含む諸懸案の解決を図っていく方針であり、引き続き、米韓を初めとする関係国と緊密に連携しながら、さまざまな機会をとらえ、北朝鮮側に問題の解決のための前向きな対応を求めていく考えであります。
 また、北朝鮮からの脱出者への対応の問題については、国内のさまざまな議論を踏まえ、関係者の身の安全、人道上の観点等の種々の観点を総合的に勘案しながら対処してまいります。
 新しい平和主義に基づく国際貢献を積極的に進めるべきとの御指摘がございました。
 御質問の国連待機制度への加入など、平和の定着及び国づくりのための国際協力については、昨年十二月に、国際平和協力懇談会が報告書を取りまとめております。我が国は、頻発する地域紛争に対し、国際平和への決意を具体的な行動に移すため、この報告書を踏まえつつ、平和の定着及び国づくりに積極的に取り組んでまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 神崎代表から、私が以前から申し上げておりました教育バウチャーについてお尋ねがございました。
 クーポン券を持っていれば好きなところで教育が受けられるといういわゆる教育バウチャー制度は、教育を受ける側から見ますと、教育機関を選別できるという仕組みでありまして、理論的には、教育機関の間の競争を促して、教育の多様化、活性化につながるものというふうに考えております。
 経済も社会も、結局は人に依存するわけでありますから、教育を多様化、活性化する教育改革を推進することによって有能な人材を育てていくということは、極めて重要なことであるというふうに考えております。
 そうした観点から、昨年六月に閣議決定した基本方針二〇〇二におきましては、「学校や教員の個性と競争を通じて、基礎学力の維持・向上を図る」ということを掲げております。この方針のもと、政府としては、議員から評価いただいた学校選択制の推進等に取り組んでいるところでございます。
 こうした方向に沿いながら、教育制度の全体的な見直しを進める中で、教育バウチャー制度については、総合的に議論がなされることが適当であると考えております。
 いずれにしても、経済財政諮問会議では、本件についてこれまで議論してきた経緯もあります。神崎議員の提案も踏まえながら、その利点、問題点を総合的に議論してまいりたいというふうに思っております。(拍手)
    〔国務大臣遠山敦子君登壇〕
国務大臣(遠山敦子君) 神崎議員にお答えいたします。
 議員からは、公立学校活性化のための教育バウチャー制度の導入についてお尋ねがございました。
 総理からも既にお答えがございましたように、現在、画一と受け身から自立と創造へという理念のもと、大きな教育改革に積極的に取り組んでおります。
 この改革に当たりましては、学校教育のあり方についても、これまでの画一から脱して、地域や学校の実情に応じた多様な創意工夫を促すことが大切と考えておりまして、現に、各自治体の判断により、通学区域の弾力化による学校選択制の導入など、さまざまな取り組みが進んでいるところでございます。
 御質問の教育バウチャー制度につきましては、学校間に競争原理を導入し、学校選択の幅を拡大することをねらいとする構想でありますが、必ずしも確立した方式があるわけではなく、また、教育条件や財政負担の問題など、検討すべき課題も多いと考えております。
 国際的に見ましても、教育バウチャー制度の実施は極めて限定的なものにとどまっておりまして、いまだ評価も定まっていない状況は御存じのとおりでございます。したがいまして、この問題につきましては、今後の研究課題と認識いたしております。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
国務大臣(大島理森君) 神崎議員の御質問にお答え申し上げます。
 最近、米粉を利用したパン等の新製品が開発されまして、そして、御党主催で集会にもお招きをいただきました。評価が急速に高まっておりまして、米の消費拡大を図るためには、このような米粉を利用した製品の普及を推進することが非常に大事だ、こう思っております。
 昨年の六月に、近畿農政局と大阪食糧事務所が中心となりまして、近畿米粉食品普及推進協議会を立ち上げたところでございますが、当面はこういうふうな形で官民挙げての取り組みを他のブロックでも推進して、行く行くは全国組織を立ち上げて普及に努めてまいりたい、このように思っておりますので、一層御支援をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
下村博文君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明四日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
副議長(渡部恒三君) 下村博文君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十九分散会


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