衆議院

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第6号 平成15年2月4日(火曜日)

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平成十五年二月四日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  平成十五年二月四日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)


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    午後二時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。小沢一郎君。
    〔小沢一郎君登壇〕
小沢一郎君 自由党の小沢一郎でございます。
 小泉総理の施政方針演説に対し、自由党の理念、政策と私の所信を申し上げ、今、日本の進むべき針路を明らかにしたいと思います。(拍手)
 小泉さんが総理大臣になってから、国会答弁を初めとして、いろいろな小泉語を聞かされてきました。しかし、小泉総理は何を聞かれても、それに真っ正面から答えるのを耳にしたことがありません。小泉総理とは、対話、議論というものがおよそ成り立たないのであります。これは、本会議や予算委員会でだれが質問しても同じようでございます。
 私は、最初、総理の答弁は、はぐらかしや論理のすりかえだと思っていました。しかし、質疑をよく分析してみると、小泉総理自身には、はぐらかしているとか、すりかえているといった意識さえないようであります。そもそも、相手が何を質問しているのか、正確に理解できていらっしゃらない、あるいは、理解しようとしないのではないでしょうか。(拍手)
 それはなぜか。いわゆる小泉語は、基本的にモノローグ、独白の言葉であり、自問自答して自分で合点するたぐいのものだからであります。また、自分の感情をあらわし、聞く人の感情に直接訴えることを特徴とする情緒の言葉だからであります。
 私たち政治家にとって最も重要な道具は、もちろん言葉であります。特に、政治家は、互いに、国政の諸問題を分析し、理解を深め、解決策を見出すために、言葉を論理的に正しく使い、対話を進めていくことを旨としております。ところが、国会で私たちが幾ら論理の言葉で対話を求めても、小泉総理は、情緒の言葉で答え、モノローグで済ませようとするのですから、議論が成立しないのは当然であります。
 戦後の総理大臣で、これほど論理的な議論の成り立たない総理はいなかったと思います。(拍手)まさに、小泉語の横行は、日本の政治そのものをバラエティー化し、空洞化してしまったと言っても過言ではありません。
 したがって、私は、この場で、国民の代表として対話を旨とする同僚議員の方々、そして国民の皆様に、直接、私たち自由党の考え方と私の若干の所信を論理的に申し上げ、それについて総理に御意見がありましたら、できるだけ論理的にお答えくださるよう求めます。(拍手)
 私が、自民党では日本の再生はできないと考えまして、同志とともに自民党を離党し、日本再生の具体策をまとめて「日本改造計画」を世に出してから、ことしでちょうど十年になります。「日本改造計画」では、自己責任の原則に基づく自由で公正な社会の実現を新たな国家目標に掲げ、そのための政策として、小選挙区制度の導入を初めとする政治改革、真の地方自治の確立、安全保障原則の明確化、所得税、住民税の半減、社会保障制度の再構築、住環境整備の加速化などを提言しました。
 以来、政党の違いはあっても、その実現を第一義として政治活動をしてまいりました。しかし、まことに残念ながら、細川非自民連立政権での選挙制度改革を除き、それら改革はいまだほとんど実現できておりません。なぜそうなったのか、国民の皆様に思い起こしていただきたいと思います。
 平成八年の総選挙で、当時、新進党の私たちは、所得税、住民税の半減、法人税の大幅引き下げを柱とする十八兆円の大減税を訴えました。国民が自分の所得の使い道を自分で決められる仕組みに改めるとともに、可処分所得をふやすことで、個人消費を拡大し、景気の回復にも役立つと考えたからであります。平成十年の参議院選挙では、不況がより深刻になっていたことから、自由党は、十八兆円減税に加え、消費税の三%への引き下げを公約に掲げました。
 それに対し、政府・自民党は、財源はどうするのか、無責任なばらまきだと激しく攻撃しました。私たちは、一時的に国債を増発しても、景気回復による税の自然増収と行財政経費の削減によって十分にカバーできると反論いたしましたが、聞く耳を全く持ちませんでした。
 ところが、橋本内閣が国民負担の増加とそれによる景気の急激な落ち込みを批判されて退陣すると、深刻な金融危機に直面した自民党が協力を求めてきました。そこで、私たち自由党は、小渕総理、自民党との間で、政治、行政、財政、安保などの抜本的改革を内容とする九項目の合意書を交わして、連立を組みました。
 しかし、その後、自民党が連立合意を実行する意思のないことが明らかになったため、私たちは連立を解消しました。一方で、政府・自民党は、相変わらず従来型の公共事業と国債増発を続け、その結果、国債発行残高は平成八年度の二百四十五兆円から現在の四百二十八兆円にまで急増、国家財政は今や破綻状態に陥っております。しかも、景気はよくなるどころか、悪化する一方であります。
 仮に、私たちが主張したように、全額国債を財源として十八兆円減税を実施しても、今年度までの六年間で百八兆円にしかなりません。平成九年度から十八兆円減税を断行していれば、少なくとも日本経済と国家財政が今のように破滅的になることはなかったと断言できます。(拍手)
 私たちが自自連立政権で実現した政府委員制度の廃止と副大臣・政務官制度の導入にしても、同様であります。
 自由党は、それを、官僚支配を打破して国民主導の政治を確立し、政官業癒着による政治腐敗を根絶するために不可欠の政治改革と考えましたが、自民党は、単に議員のポストをふやすとしか考えていませんでした。そのため、今では、仕組みとして残ってはいるものの、政治家の官僚依存はむしろ以前よりひどくなっておると思います。
 特に小泉内閣になってから、この傾向が顕著になっております。特殊法人改革、規制の緩和、撤廃、有事法制の整備、最近では地方財政改革、消費税の見直しなど、ほとんどは、「日本改造計画」や自由党の基本政策である「日本再興へのシナリオ」で提言した改革政策の言葉だけのつまみ食いであります。
 もちろん、私たちの政策を理念と原則も含めてすべて実行してくださるなら、大変結構なことであります。国民のためになることであるならば、実行者がだれであっても構わないからであります。
 しかし、小泉内閣のいわゆる構造改革は、改革の何たるかもわからないまま、また、本気で改革する気もないのに、私たちの政策の上辺の言葉だけをつまみ食いしているにすぎません。政権の延命のためにただ言葉をもてあそぶ、その結果、国民は改革という言葉に幻惑されて方向感を失い、日本は今まさに破滅のふちをさまよっていると言わざるを得ません。改革という言葉をもてあそぶことで改革をつぶしてきたのが、自民党政治、小泉政治の実態なのであります。(拍手)
 私たち自由党は、野党だからといって、このような状況を座視することはできません。国民に日本の針路を明示し、国民の潜在力を引き出すために、この国会において、まず、九つの基本法案を提出する方針であります。
 日本一新九法というべきこれら法案は、新しい日本に最低限必要な九本柱であり、国民のだれもがわかるように、新しい国の姿を具体的に示すものであります。
 自由党は、前回の総選挙後、一昨年の臨時国会と昨年の通常国会において、幾つかの基本法案を提出しましたが、今国会では、基本法案づくりを集大成いたします。最終的には、地球環境の保全、農林漁業の維持発展などに関する基本法案も作成し、体系的な日本一新大綱をつくり上げる考えであります。
 なぜ、新しい国の土台づくりにこだわるのか。それは、現在の株価の危機的状況を見ても明らかなように、政府・自民党がやっている場当たりのびほう策では日本経済を立て直すことは絶対にできないからであります。土台からつくり直すことによって初めて、国民の創造力が発揮され、潜在的能力を顕在化させることができると思います。すなわち、日本の再生は、単なる言葉の遊びではなく、私たち自由党の主張する真の構造改革を断行することによってのみ可能なのであります。(拍手)
 私たちの描く新しい日本を、政治家として最も論理的な言葉である法案という形で御説明いたします。
 まず第一に、自由で創造的な経済活動を促進するため、所管省庁が各業界ごとに事業活動を規制している業法はすべて原則として廃止し、業種にかかわらず、公正で公平な競争ルールを定めた市場経済基本法を制定いたします。
 経済活動は、そのルールを守っている限り何をしても自由ですが、自由放任や弱肉強食とは異なり、あくまでも秩序ある自由でなければなりません。
 行政は、個人や企業が市場のルールを遵守しているかをチェックする審判役に徹しますが、公正取引委員会の強化を初め、独占禁止などの市場監視体制を整備する必要があります。また、金融不安などによって市場が混乱し、ルールが機能しなくなったような場合には、国が逆に大きな権限に基づいて混乱を収拾することができる危機管理の仕組みをあらかじめ用意しておきます。
 次に、肥大化した行政部門を縮減して民間の経済活動を活性化するために、特殊法人と認可法人は原則として三年以内に廃止あるいは民営化いたします。
 小泉内閣は特殊法人改革と称して独立行政法人への衣がえを進めていますが、これは、実際には官僚天国をさらに拡大しているにすぎません。私たちは、独立行政法人についても、同様の原則に基づいて三年以内に整理いたします。原則全廃することによって初めて、官僚の天下り先と政官業の癒着の温床をなくすことが可能になるのであります。
 この特殊法人等の民営化と、市場経済基本法による規制の緩和、撤廃は、相乗的に、民間の経済活動の場を大きく広げると同時に、個人であれ法人であれ、大変な創意工夫と活動意欲を生み出します。
 例えば、携帯電話は、今、日本の国民に広く普及したにとどまらず、我が国が世界をリードする有力な産業になっております。これは、十四年前、私が当時の宇野総理の命を受け、日米通信交渉に臨み、その結果、それまでNTTが独占していた電波のほんの一部を民間に開放することによって始まったものであります。
 この一事によっても、規制の撤廃と官業の民営化がどれだけ国民生活の利便性を高め、また、どれだけ日本経済と産業技術の発展に貢献するかがわかります。このような大改革を勇気を持って断行する以外に、景気の回復、日本経済の再建はできないと思います。(拍手)
 第三に、性別、年齢などに関係なく、だれもが安心して、かつ、生きがいを持って経済社会活動を行えるように、国民生活の原則を定める国民生活基本法を制定します。
 社会保障制度に対する国民の不安と不公平感を解消するために、社会保険料はすべて現行水準以下に抑えるとともに、消費税は、全額、基礎年金、高齢者医療、介護を初めとする基礎的社会保障経費の財源に充てます。
 しかし、基礎的社会保障を国の責任で行うだけで国民生活が安定するわけではありません。少子高齢化の加速化に対応して、児童手当を劇的に増額するとともに、親と同居して扶養している人たちへの手当などを新設いたします。さらに、子育てのために離職した人については、子供が義務教育を終えたらもとの雇用主に再雇用させることを義務づけ、また、定年退職した人についても、一定比率の雇用を義務づけるクオータ制度を導入いたします。
 このような国民生活と新しい経済社会システムを確立するためには、税制を一新する必要があります。
 すべての国民がどんなに少額であっても社会への参加料として収入に応じて税金を納めるよう、各種控除は全廃し、所得に課税する今の仕組みを収入に課税する仕組みへと抜本的に改めます。
 また、税率を引き下げ、所得税、住民税の半減を図ると同時に、各種控除の廃止で新たに税負担が生じたり、税負担が重くなる人たちには、新しい児童手当、親との同居扶養手当などを手厚く支給し、税負担増をはるかに上回る手当が確保されるようにいたします。
 さらに、源泉徴収は廃止し、国民が一人一人、自分で税額を計算して申告できるようにいたします。それにより、民間企業も行政機関も、納税・徴税コストを大幅に削減することができます。
 法人課税は実効税率をOECD加盟国の最低水準にまで引き下げ、日本企業の国際競争力の強化と外国からの対日投資を進めます。
 五つ目の法案は、国が地方自治体を縛っている個別補助金を廃止し、その相当額を地方に自主財源として一括交付するものであります。
 これは、政官業の癒着の腐敗構造を打破すると同時に、真の地方分権を実現するために不可欠の改革であり、私たちの提唱する全国三百自治体への再編成の重要なステップでもあります。それによって、地方自治体は本当に必要とする事業を地域住民の中で話し合って自由に行えるようになり、地方の真の自立を促すことができます。また、補助金を獲得するために地方が中央省庁に陳情活動を繰り返すといった経費のむだを削減し、縦割り行政の弊害である重複事業をなくすこともできます。
 こうした大胆な改革を実施するためには、事実上、官僚が国政を牛耳っている現状を改め、国民の代表である政治家がみずから政策を立案、決定する制度にしなければなりません。
 その一環として、国会の調査・立法機能と行政監視機能を強化し、国会審議を充実させるため、衆参両院の法制局などを統合して国会立法調査院を新設いたします。そして、立法調査院は、官公庁に対して資料の提出、説明などの協力を求める権限を持ち、国会議員の質疑や立法作業を有効に支援できるようにいたします。
 また、官僚が国会審議に関し、国会議員等の活動に関与することを厳しく禁止し、議員が国会審議で官僚などと質疑を行う必要があるときは、通常の委員会ではなく、その下の小委員会あるいは分科会で質疑を行うことといたします。これにより、議員の官僚依存体質をなくし、官僚の政治支配を改め、真の国民主導政治を実現することができます。(拍手)
 次の安全保障基本法案と非常事態対処基本法案は、政治の究極の使命である国民の生命財産と基本的人権を守るためのものであります。
 まず、安全保障基本法で、我が国の防衛と国際社会の平和のための国際協力について原則を定め、その規定がない現行憲法を補完すべきであります。
 自衛権の発動としての武力行使は、我が国に対して直接の武力攻撃があった場合、並びに、我が国周辺の地域でそのまま放置すれば我が国への武力攻撃に至るおそれのある事態が生じた場合に限定いたします。国際平和のために、国連の安全保障理事会または総会で決議が行われた場合は、率先して活動に参加することとし、そのために、自衛隊とは別の常設組織として国連平和協力隊を新設いたします。
 次に、非常事態対処基本法案でありますが、非常事態への対処は、外国による侵略、大規模テロなどにとどまらず、大規模な自然災害、経済社会の騒乱なども想定した幅広い危機管理でなければなりません。そのための機動的な仕組みを非常事態対処基本法で定めます。
 まず、政府は、組閣直後に、平時から、総理大臣を議長とする非常事態対処会議を内閣に設置いたします。非常事態が発生した場合は、原則として国会の承認を得た上、非常事態を布告し、総理大臣が直接、警察、海上保安庁を初めとして行政全般の指揮に当たり、速やかに事態に対処いたします。その際、これら国の講じた措置については、それによって国民が損害を受けた場合には、国が全責任を持って補償する国家賠償の対象といたします。
 最後に、新しい日本を担う人材を国と国民が協力して育成するために、現在の教育基本法にかえて、人づくり基本法を制定しなければなりません。どんなにすぐれた制度をつくっても、それを有効に機能させ得る人材がいなければ、ほとんど無意味だからであります。
 現在、責任の所在さえ不明確で基本方針もよくわからない義務教育は、国が最終的に責任を負うと同時に、市町村がみずからの創意工夫で自由にできる仕組みに改めます。特に、基礎学力を維持向上させるとともに、日本人の伝統的な資質をはぐくみ、よき日本人を育てることを重視いたします。また、家庭と地域社会の教育機能を高めるためにも、学校の完全週休二日制はやめて、毎週土曜日は、教師、子供たち、家族が一緒に道徳や集団生活のルールや地域の伝統文化を学ぶ日といたします。
 さらに、教師は次代を担う子供たちを育てるという崇高な職務にかんがみ、国家公務員教育職として身分を保証する一方、地方の現在の教育委員会制度を教育オンブズマン制度に改組し、教育行政の民主的な運営に役立てます。
 以上が、新しい日本をつくる九本の柱であります。その上で、人類と自然との共生の理念に基づき、国是として環境問題の解決に優先的に取り組むことを定める地球環境保全基本法、生産者と消費者が互いに協力して食料の自給を促進し、農林漁業の維持発展を図るための自然産業基本法などを制定いたしたいと思います。
 繰り返しますが、国家の大改革に当たって肝要なのは、全体構想と到達目標を明確に描き、国民のだれもがわかるように将来像を具体的に示し、その上で、一体の総合政策として実施することであります。明治維新が立憲君主制の近代国家を構想することなしには成功しなかったように、今日では、明治以来の中央集権的官僚制度、シャウプ税制以来の社会主義的税制、自民党政治の政官業癒着構造などを前提にしては、新しい国づくりはできません。(拍手)
 私たちの日本一新法案は、最も具体的な新国家構想であるだけでなく、そのまま、自由党の政権構想であります。自民党政治を打破し、私たちが政権をとったら、直ちに、これら法案に基づき、改革を断行してまいります。そうしなければ、日本の再生が手おくれになってしまうからであります。
 私は、国民とともに、その実現に政治生命をかける覚悟であります。また、自由党は、その実現によって、闘う政策集団としての真骨頂を示そうと決意しております。そのスタートを宣言するために、私は、ここにこうして、四年半ぶりに代表質問に立ちました。
 ただ、新しい国づくりは、私たち自由党だけでできるものではありません。政権交代なしには、着手することすらできないのであります。したがって、まず、より多くの国民の皆様に私たちの志をおわかりいただくとともに、民主党を初めとして、政権交代を実現するための勢力を結集していかなければなりません。(拍手)
 十年前、私たちは、日本の政治の構図を改革派対守旧派という象徴的な表現で指摘し、国民に改革の必要性を訴えました。しかし、今や、改革という言葉がもてあそばれ、だれもが改革を口にいたします。
 それでも、先ほど来るる申し上げてきましたように、上辺の言葉とはかかわりなく、私ども改革派と、本音では改革を嫌う小泉総理を含む守旧派との対立構図は、今も厳然と存在しております。自由党は、改革断行派の先頭に立ち、その勢力の大結集に率先して汗を流そうと決意いたしております。(拍手)
 今日の日本のさまざまな病理のうち、最も深刻なのは、日本人の心の荒廃であると思います。職業、年齢、性別などを問わず、正しいことを正しいと感じず、異常を異常とも思わない。恥を忘れ、罪を罪とも思わない。親の子殺し、子の親殺しさえ大したニュースにならなくなっている現状は、そのような日本社会のあらゆるものの大崩壊のあらわれであると思います。
 経済を立て直すことは、正しい政策を手順を間違えずに実行すれば、それほど難しくはありませんが、精神を立て直し、国民が心を奮い立たせて新しい国づくりに取り組むようにするのは、至難のわざであります。したがって、私たちは、何よりも、日本人の心の荒廃を直視し、日本人のよき資質を再生させることに心を砕くべきであります。(拍手)
 ところが、小泉総理は、日本人の心の蘇生を図るどころか、みずから、心の大崩壊を先導しているのであります。公約、約束は何一つ守らず、そのことを指摘されると、平然と開き直って、公約なんか守れなくても大したことではないと言い放つ。小泉総理の言動には、日本人の伝統的よき資質である、自分の不明を恥じる心や、間違いを率直にわびる良心と誠意のかけらも見られません。日本の指導者、政治家である以前に、日本人、社会人としての資質を問われる問題であると思います。(拍手)
 このような小泉自民党政権が一日長く続けば、日本沈没の日が一日早まるだけであります。よって、小泉内閣の即時退陣を求めるとともに、この機会に改めて、私たちの主張について小泉総理の見解をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小沢自由党党首にお答えいたします。
 私並びに小泉内閣の進める構造改革に対しまして御意見並びに御批判を賜りまして、まことにありがとうございます。せっかくの機会でありますので、若干、私の考えを述べたいと思います。
 小泉内閣の構造改革が目指すものは、簡素で効率的な質の高い政府のもとに、自助自律の精神で、国民一人一人や企業、地域が持っている大きな潜在力を自由に発揮できる、活力ある民間と個性ある地方が中心となった豊かな社会の実現です。この点については、小沢党首の言われた点と共有する面が多々あると思います。民間にできることは民間に、地方にできることは地方にゆだねるという方針を貫いていきたいと思います。
 また、基本的な改革の目指すべき姿は自由党とも共有するところがあるということは否定いたしませんが、実際、具体的な進め方につきましては、かなり問題もあるのではないかと思っています。
 例えて言いますと、規制改革について、規制を設けている業法を一律に廃止する、あるいは特殊法人改革について、一律にすべての法人を廃止または民営化するという点については、これは、すぐに廃止できない特殊法人もあります。また、すぐに民営化するのにふさわしくない点もあります。
 民主主義の時代であります。多少時間がかかるものもありまして、一律にという点については、若干、現実性に欠ける面もあるのではないかと思います。しかし、方向性については、別に私は異議を唱えるものではありません。
 また、社会保険料を現行水準以下に抑えて消費税を基礎的な社会保障財源に充てることとしておりますが、これは大幅な消費税アップにつながります。果たして、これが国民の理解を得ることができるかどうか、これも疑問に思っております。
 一方、所得税、個人住民税の半減ということでございますが、これを半減した場合に財政状況がどうなるか、こういう点も考えなきゃいけないと思っております。
 私の改革については、言葉だけをつまみ食いして進んでいないという御批判もありますが、事実、郵政事業への民間参入や住宅金融公庫、道路公団の廃止・民営化、公的部門の縮小に向けた改革は着実に進んでおります。また、都市再生や規制改革の突破口であります構造改革特区など、地方や民間の意欲を生かした経済活性化に向けた取り組みも、目に見える形で大きく動き出しているところであります。
 今後とも、国民にわかりやすく説明することに留意しながら、理解と協力を得ながら、この構造改革を推進していきたいと思います。
 また、終わりに、小沢党首自身、心の荒廃ということについても心配されておられますが、我々としても、改革に立ち向かう日本にとって一番必要なことは、やはり、制度面あるいは政策面の底にある精神的なもの、自助と自律の精神、あるいは、失敗してもくじけないでまた立ち上がる意欲を持つということ、そういう点におきまして、小沢党首の言われる、自己責任の原則に基づき自由で公正な経済社会の実現を目指すという党首の考え方についても、共通する面もあるのではないかと思います。
 いずれにしても、日本人の持てる潜在力、これについて、余り悲観的な見方をしないで、自信と勇気を持って敢然と難局に立ち向かうというこの精神的な心意気も、これからの我が国の経済と社会の再生に向けて必要なものではないかと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 穀田恵二君。
    〔穀田恵二君登壇〕
穀田恵二君 私は、日本共産党を代表して、小泉総理の施政方針演説に対し、質問します。(拍手)
 まず、国民生活と日本経済をどのようにして再建するのか、その方向と方策についてただしたいと思います。
 小泉内閣が発足して、一年九カ月が経過しました。あなたが経済運営のかじを握ってから、日本経済の指標でよくなったものが一つでもあったでしょうか。失業、倒産、株価も最悪。主要国で戦後どこも経験したことのない連続的な物価下落が続き、不況はその深刻さを一段と深めています。総理、あなたの経済運営は全く惨たんたるありさまと言わなければなりません。
 日本共産党は、小泉総理が政権についた当初から、あなたの言う構造改革路線を進めれば国民の暮らしと日本経済に深刻な事態を招くことになると警告してきましたが、今や、小泉内閣の経済政策の破綻はだれの目にも明らかです。ところが、小泉総理、あなたは、その責任をとるどころか、破綻が証明済みの路線に固執し、国民の暮らしと日本経済をさらに破局の方向へと導こうとしているのであります。
 その第一が、この大不況のもとで、社会保障の負担増と給付削減、さらに庶民増税によって、何と四兆円もの負担増を国民に押しつけようとしていることです。これでは、国民の需要は一層落ち込み、経済危機を加速させるだけではありませんか。
 小泉内閣の一年九カ月で、国民の所得は大きく減り続けています。先日発表された家計調査でも、サラリーマン世帯の実収入は、一昨年に比べ二十七万二千円も減っています。これだけ所得が減っているときに、そこに追い打ちをかけるように、医療制度の改悪、介護保険料の引き上げ、年金給付額の引き下げ、雇用保険の改悪など社会保障の全分野に及ぶ改悪で二兆七千億円、発泡酒、たばこの増税や配偶者特別控除の廃止、消費税の特例廃止など庶民増税が一兆七千億円、合わせて四兆四千億円もの負担を政府が押しつけようとしています。
 総理、こんな負担増を家計、国民の生活に今押しつけたら、暮らしと景気、日本経済にどんな影響を与えると認識しているのですか。およそ、不況からの脱出を目指すことを真剣に考えるのなら、何を差しおいても、国内総生産、GDPの約六割を占める家計消費を温めることを最優先すべきではありませんか。(拍手)
 わけても、医療保険制度の改悪は、国民の命と健康を直接脅かす大問題です。既に、昨年十月に行われた老人医療制度の改悪で、深刻な受診抑制が起こっています。日本医師会が行った緊急レセプト調査の結果でも、昨年十月から十一月のお年寄りの通院一件当たりの医療費は、一年前に比べてマイナス一一・八%と大幅に落ち込んでいます。
 日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会の医療四団体は、「国民の健康に対する国の責任を放棄し、国民皆保険制度を根底から崩壊させるもの」との共同声明を発表し、四月からの健康保険本人三割負担の凍結を求めています。野党四党は、共同して、負担の凍結法案を今国会に提出します。総理、この切実な願いにこたえるべきではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 総理は、先行減税を実施する、負担増だけ着目するのはいかがかなどと必ず言います。それでは、先行減税で、家計や国民の暮らしに向けられた減税があるのですか。その中身を見ると、研究開発費やIT投資減税、相続税の最高税率引き下げという、専ら、この大不況でも黒字を出している大企業や、ごく一握りの大資産家向けの減税ではありませんか。そして、この減税の財源を、庶民のわずかな楽しみである発泡酒から始まり、家族を扶養している勤労者への所得税増税などでひねり出そうとしています。
 多年度中立などと言いますが、これのどこが中立ですか。総理は、庶民に増税し、大企業に減税することがあるべき税制の姿だと言うのでありましょうか。
 国の財政であれ、社会保険財政であれ、国民への負担増で事を解決しようというあなたのやり方は、完全に破綻しています。
 来年度予算案は、その破綻ぶりの象徴です。小泉政治のもとで、税収は一年間に五兆円も減ってしまいました。負担増が不況の深刻化をもたらし、その結果、税収減となる、そしてまたさらなる負担増の押しつけ、こういう形で悪循環に陥っています。痛みを我慢すれば、明るい光が見えるどころか、もっと大きな痛みが来るのです。財政危機を負担増で糊塗するやり方は、痛みの増幅路線にしかなりません。税金の使い方を変えること、ここにしか、この悪循環から抜け出す道はないのであります。
 総理は、昨年、この国会で、公共事業費を一兆円削減すると大見えを切りました。ところが、同時に決定した補正予算で、同じ公共事業費を一兆五千億円追加しました。減らすどころか、ふやしています。来年度予算でも同じであります。公共事業を聖域にしているではありませんか。関西空港第二期工事を初め中部国際空港、諫早湾干拓事業、第二東名高速道路など、むだ遣いとして中止を求められている大型公共事業などに、今、根本的にメスを入れ、社会保障を中心に据えた財政に根本的に転換することこそ、問題解決の道であります。
 ドイツでは、社会保障費は公共事業の三倍です。アメリカは四倍、イギリスは六倍です。社会保障など国民の暮らしを直接支える分野を予算の主役に据え、その何分の一かを公共事業に投資するのが、世界では当たり前になっています。
 総理、こういう方向での歳出構造の根本的転換を図るべきではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 第二は、不良債権処理の加速による中小企業つぶしの問題です。
 今、中堅・中小企業に、猛烈な貸しはがしと金利の引き上げが押しつけられています。総理は、不良債権の早期最終処理をして金融を再生させる、本当に必要なところに資金が回るようにすると言ってきました。今起きていることは全く逆さまではありませんか。
 バブル崩壊から十年以上、この長い、苦しい不況のトンネルの中で必死に頑張ってきた中小企業から、必要な資金が乱暴に回収されています。不況下で金利の引き上げが押しつけられ、断れば貸しはがしに遭うという深刻な実態を御存じなのでしょうか。
 総理、売り上げが低下しているもとで、中小企業にとって、たとえ一%でも金利を引き上げられることがどれだけ大変か、致命的とも言える打撃になることをおわかりですか。
 東京商工会議所の昨年八月の調査では、五六%もの企業が銀行から金利引き上げ要請を受け、そのうち八二%が、要請を受け入れざるを得なかったと答えています。きちんと返済している黒字企業にも、金利引き上げが強制されています。金融の再生どころか、金融システムをめちゃめちゃにしている、これが現実ではありませんか。
 なぜ、こんな事態になっているのでしょうか。銀行の責任も重大ですが、政府の不良債権早期処理の大号令のもとで起こっていることなのです。二年から三年という期限を切って不良債権処理をと銀行に強要すれば、時間をかければ立ち直れる企業もつぶしていくことになります。不良債権処理のコストのため銀行の自己資本が減り、それを回復するため、貸しはがしと金利引き上げに走らざるを得ない、その結果、倒産がふえ、結局、新たな不良債権が生ずるという、まさに悪循環です。総理、その責任への自覚はありますか。
 総理、あなたの不良債権処理加速策というのは、結局のところ、大銀行の収益性だけを追い求めるもの、大銀行のバランスシート、帳簿から不良債権を落とすこと、それだけしか考えないという乱暴なものです。その結果、金融再生どころか、金融は極めて深刻な事態になってしまいました。
 しかも、大銀行の不良債権は、あなたが総理になってからも新たに発生し続け、この一年半で九兆円も発生しました。これまで、正常、要注意などで踏みとどまっていた企業が、破綻懸念先に落とされていきました。
 金融緩和と言いながら金融の現場で超金融引き締めが展開されていること、これらの政策の破綻と矛盾にどう責任を感じているのですか。中小企業への円滑な融資を銀行に指導すると言うなら、まず、不良債権処理策の加速などという暴政をやめることです。
 我が党は、貸し渋り、貸しはがしなどを規制し、中小企業金融を円滑にするための、地域経済および中小企業等の金融を活性化させる法律案、いわゆる地域金融活性化法案を既に提案しています。その実現を強く求めるものであります。(拍手)
 第三に、雇用問題です。
 小泉内閣が、不良債権最終処理と言って大量の失業と倒産をふやし、大企業のリストラを産業再生などと言って支援してきたために、雇用危機と雇用不安は未曾有のものになってしまいました。これをさらに進めようというのですか。
 坂口厚生労働大臣は、今後六十五万人の離職者が生まれるなどと、事もなげに述べています。政府の見通しでも、失業率がさらに上昇する。戦後最悪の失業率をさらに悪くする政策を遂行する、こんな政府がどこにあるでしょう。仕事がないということは、生活の糧を失うということであり、暮らしが成り立たないということなのです。
 しかも、セーフティーネットなどと言いながら、雇用保険の失業給付を六千億円も削減する制度改定を来年度からやろうとしています。給付期間を短縮する、給付額を削減する、これが失業者に対する仕打ちです。どこがセーフティーネットでしょうか。
 さらに、サービス残業を合法化する裁量労働制の大幅拡大、不当な解雇であっても会社が金さえ払えば解雇できるというような労働基準法の改悪を行おうとしているのです。これら一連の労働法制の改悪は絶対に行うべきではありません。(拍手)
 今、三百数十万人もの失業者が職を求めている一方で、雇用の現場では何が起きているでしょう。
 リストラで人は減っても、仕事は減らない。そのために、違法なサービス残業や深夜までの異常な長時間労働がはびこっています。
 豊田労働基準監督署の調査で、世界のトヨタとその関連企業で、年間三千六百時間という驚くべき長時間労働が存在していることが明らかになりました。連合の調査によれば、サラリーマンの約半分がサービス残業を行っており、その平均は月三十時間と言われています。あってはならない過労死、過労自殺もふえ続けています。
 長時間労働によってみずから命を絶つところまで追い込まれる、こんな非人道的なことをいつまで続けるのですか。日本社会にとっても、そして、産業と企業の将来にとっても、重大な障害になるとは考えないのですか。雇用は過剰どころではありません。過剰なのは労働時間ではありませんか。(拍手)
 日本共産党は、「無法なリストラや解雇から雇用と人権を守り、安心して働くことができるルールの確立を」との雇用政策を発表し、法制化を提案してきました。直ちに次の四つの点での取り組みを緊急に実行することを提案します。
 第一に、サービス残業の根絶と長時間残業を規制する実効ある措置をとることです。
 サービス残業は明白な犯罪です。しかも、今日明らかになっているサービス残業は、異常な長時間労働の氷山の一角であります。総理にその認識はありますか。
 第二に、四八・八%にまで下がっている年休の取得率を、最低でも八〇%以上とする目標を持って行政指導を行うことです。
 昨年六月に発表された経済産業省、国土交通省の試算でも、有給休暇の完全取得を行えば、十二兆円の経済効果があり、雇用創出も百五十万人と見込んでいます。取得率を八〇%に引き上げるだけで極めて大きな効果があることは明らかです。
 第三に、恒常的な長時間残業や、有給をとれないことを前提にした企業の生産計画、要員計画をなくすための行政指導を行うことです。
 第四に、青年、特に高校卒業予定者の深刻な雇用の問題です。
 就職内定率は五割と言われていますが、数字以上に実態は深刻です。就職そのものをあきらめた高校生が急増し、フリーターの道さえない状況です。こうした事態を放置すれば、労働力の構成や技術の継承などで深刻な弊害をもたらし、日本の将来をも左右しかねません。
 各国政府の青年雇用対策予算は、GDP比で計算すると、フランスは日本の百四十倍、イギリスは五十倍、ドイツは三十倍、低いとされるアメリカでも十倍に上っており、我が国の貧困さは際立っています。政府として、これら青年が正規の雇用に結びつくような特別な手だてと必要な予算措置を講ずるべきではありませんか。具体的答弁を求めます。(拍手)
 総理は、日本経済の再生にあらゆる政策手段を動員するとして、歳出、税制、金融、規制の四つの改革の加速を挙げました。しかし、その内容は、今見てきたように、一層、国民の暮らしと日本経済を窮地に追いやるだけです。国民生活の再建なくして、国の経済の再建はありません。この立場から、国民の暮らしを支える歳出、税制への転換、中小企業を支援し雇用を守る真の改革への道筋こそ求められていることを述べて、次へ進みます。
 世界の平和にとって焦眉の問題となっているイラク問題です。
 今、重要なことは、国連による査察という手段を必要で十分な時間をとって継続し、それを強化して、あくまで国連の枠組みの中でこの問題を平和的に解決するために、引き続き国際社会が努力を図ることです。
 現に、国際原子力機関のエルバラダイ事務局長は、査察は継続されるべきだ、今後数カ月以内にイラクに核兵器開発計画が存在しないという信用に足る確証を提供できるはずだ、その数カ月は戦争を避けるための価値ある投資となるだろうと表明しています。また、国連監視検証査察委員会のブリクス委員長も、イラクの査察への実質的な協力は十分でないとしつつも、査察の有効性を強調し、それを継続する方針を示しています。
 総理、国連の査察を通じての平和的解決こそが今最も求められていることであると思いませんか。
 ところが、問題は、アメリカのとっている態度です。アメリカのブッシュ大統領は、先日の一般教書演説で、一方的、独断的に、イラクは大量破壊兵器を保有していると決めつけ、イラクが大量破壊兵器を廃棄しないなら友好国を率いて武装解除すると述べ、国連を無視した一方的武力攻撃を辞さないとの言明を繰り返しています。
 総理、イラクに対して査察に全面的、積極的に協力するように求めるのは当然でありますが、国連を無視した一方的武力攻撃計画にもきっぱりとノーと言うべきではありませんか。国際社会が取り組んでいる査察による解決の努力を妨害するこうしたアメリカに対しても、国連憲章と国連決議を無視するなときっぱりと言うべきではありませんか。(拍手)
 イラク問題の解決は、二十一世紀の世界のあり方がかかった問題です。もし、アメリカの武力攻撃を許すならば、二十世紀の二つの大戦の惨禍を経てつくり上げた国連中心の平和の国際秩序を破壊することになります。絶対に歴史の歯車の逆転を許してはならないのです。
 そもそも、大量破壊兵器の廃棄のために戦争という手段をとるべきではありません。あくまで、平和的手段で解決を図るべきです。戦争という手段に訴えれば、世界の平和のルールを壊すだけでなく、はかり知れない未曾有の市民犠牲の惨禍をもたらし、中東の平和と安定のみならず、世界の平和を危機に陥れることになります。
 今、世界の多くの諸国、人々が、アメリカが戦争に訴えて破局的事態を招くことを回避するために努力しています。
 ドイツのシュレーダー首相は、まだ外交的な道はある、戦争回避のためすべての手段を尽くすと述べ、フランスのシラク大統領は、戦争は宿命ではない、それは常に失敗の確認であり最悪の解決策だと表明し、イラク周辺六カ国外相会議での共同声明は、これ以上の新たな戦争、また、それがもたらす破壊的な影響のもとで暮らすことも望まないとしています。市民レベルでも、アメリカのノーベル賞受賞者四十人がイラク攻撃反対の共同声明を発表するなど、イラク攻撃ノーは大きな国際世論となっているのです。
 総理、あなたはこれらの声をどうお聞きになりますか。
 この間、日本共産党の代表が、中国、そして中東六カ国、すなわち、エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦、ヨルダン、イラク、さらに南アジアの三カ国、すなわち、インド、パキスタン、スリランカを訪問し、それぞれの国の代表と会談を行いました。どの国の政府との会談でも、国連憲章を守り、イラク問題の平和的解決を強く求める一致点が確認されました。イラクに対しては、査察に対する態度など問題点も率直に批判しました。
 総理、国際紛争を武力で解決してはならない、平和的な解決をとしたのが日本国憲法第九条です。その憲法を持つ国、日本こそが、今、率先して平和的解決のために世界に働きかけ、アメリカにイラク攻撃やめよと率直に申し入れるべきではありませんか。それが日本の責務ではありませんか。憲法を遵守すべき総理の明確な答弁を求めるものです。(拍手)
 イラク問題にかかわって重大なことは、小泉内閣が昨年末、アメリカがイラク攻撃態勢を強めようとするさなかに、イージス艦をインド洋に派遣し、自衛隊による米軍艦船への給油活動を継続し、今国会での有事法制の成立を企てていることです。
 昨年の国会審議で明らかになったことは、有事法制の本質が、アメリカの引き起こす干渉戦争のために日本の自衛隊が海外で武力行使できる道を開き、さらに、国民を統制し、地方自治体、民間を初め国民を戦争に協力させ、強制動員することにあるということです。だからこそ、陸上、海上、航空の輸送にかかわる労働組合が立場の違いを超えて反対を表明し、宗教者、文化人を初め多くの国民が反対し、多くの地方自治体が懸念を表明し、日本弁護士連合会は、憲法違反だという総会決議を上げたのであります。
 今、アメリカがイラクの政権転覆を公然と企て、国連を無視した一国行動主義と先制攻撃戦略をあからさまに表明しているもとで、日本が有事法制を持つことの危険性は一層明白です。どんなに修正しても、有事法制の危険な本質は変えようがないのであります。有事法案を直ちにきっぱりと廃案にすることを強く求めるものです。(拍手)
 次に、世界とアジアの平和にとって大きな問題となっている北朝鮮の核兵器問題について質問します。
 去る一月十日、北朝鮮は、NPT、核不拡散条約からの脱退を表明しました。日本共産党は、一部の国による核兵器の独占を体制化するNPT条約には反対する態度をとってきました。しかし、これは、核兵器の全面禁止を目指す立場からであって、核兵器保有国が新たにふえることを容認するものでは決してありません。一たんこの条約に加盟して核兵器を持たない意思を表明した国が、この条約から脱退して核兵器保有への道を目指すことは、世界平和を脅かす行為であり、どんな理屈をつけようとも正当化することはできません。北朝鮮に対して核兵器開発計画の放棄を求めること、そして、それを平和的な話し合いの方法によって実現すること、これは当然のことであります。
 今、大事なことは、北朝鮮の核兵器問題に対して、日本政府が日朝平壌宣言の当事国としてどのような積極的な役割を果たすかにあります。日朝平壌宣言は北朝鮮の核兵器問題での直近の国際的合意であり、日本政府は、その当事国として、日朝平壌宣言を守らせる立場で、道理に立った交渉を行う国際的責務を担っています。このことが今、問われています。
 そうした役割を果たす上でも、国交正常化交渉を前に進める上でも、拉致問題、核兵器問題を初めとする安全保障の問題、過去の植民地支配の清算の問題など、日朝間の諸懸案を包括的に解決する、この立場に立ってこそ、困難と障害を打開する道が開かれると確信します。
 日朝平壌宣言を調印した当事者として、また、核兵器の廃絶を願う唯一の被爆国の総理としての見解を求めるものであります。北朝鮮がこれまで国際的な無法行為を犯してきた国であればこそ、理性と道理に立った粘り強い対応を強く求めるものであります。(拍手)
 最後に、政治と金の問題で小泉総理の政治姿勢をただしたいと思います。
 自民党長崎県連公選法違反事件は、公共事業受注企業からの献金は政治献金として届け出、報告しても、実態が選挙のための資金であれば法律違反の献金になるということを明らかにしたものです。
 昨年の国会で大問題となったムネオ事件や口きき疑惑で国民から厳しく問われたのは、公共事業受注企業等からの政治献金は税金の還流であり、許されないということでした。政党として厳格な対応が求められた問題でした。だから、小泉総理は、ちょうど一年前、「国民の信頼を回復するには、公共事業受注企業からの献金等について、疑惑を招くことがないよう、法整備を含め、もう一段踏み込んだ仕組みを考えることが必要」だと答弁したのではありませんか。
 総理、この答弁は、あなたの国民への公約、約束です。この国民への約束も守らなくてよいと考えているのですか。自民党長崎県連の公選法違反事件を受け、今また与党自民党に検討を指示することで国民の批判をかわそうというのですか。はっきりとお答えください。(拍手)
 野党四党は、既に昨年の通常国会で、公共事業受注企業からの政治献金禁止などを盛り込んだ政治資金規正法等改正案を提案しています。具体的提案は既に国会にあるのです。総理に問われているのは、これを実現させる意思があるかどうかです。明確な答弁を求めるものです。(拍手)
 政治と金の問題で看過できないのは、ことしの年頭に公表された日本経団連の奥田ビジョンです。社会保障の財源として消費税を毎年一%ずつ上げて、二〇一四年度には税率一六%にまで引き上げる、その結果、企業の保険料負担をゼロにする、これを実現するために働く政治家に企業献金をするというのです。政治を金で動かし、国民に耐えがたい負担をかぶせる一方で、みずからは莫大な見返りを手にする。露骨な政治の買収そのものではありませんか。こんな政治献金を自民党は受け取るのですか。総裁である総理の見解を求めます。(拍手)
 総理、一九六一年、第一次選挙制度審議会が答申した企業・団体献金の禁止を、今こそ実現すべきではありませんか。一体、いつまで放置するのですか。企業・団体献金の全面禁止への道に大胆に踏み出すべきときです。自民党をぶっ壊してでもと豪語してきた総理の見解を求めるものであります。
 以上、政治に対する国民の信頼を回復することが不可欠であることを最後に強調して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 穀田議員にお答えいたします。
 社会保障の負担増や家計消費についてのお尋ねであります。
 急速な少子高齢化が進展する中で、今後、社会保障給付費は増大していく見込みであり、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、医療保険などの制度改革は不可欠なものと考えます。改革を進めなければ、保険制度の運営が困難となり、かえって将来に対する不安が広がり、経済にも悪影響を及ぼすことになると考えます。
 さらに、今般の税制改革においては、税負担のゆがみを是正する等の観点から酒税及びたばこ税の見直しを行うものの、税制改革全体としては、平成十五年度に、国、地方合わせて一兆八千億円程度の減税を実施することとしております。
 当面の景気との関係については、個々の負担増のみを取り上げて議論するのではなく、社会保障給付の拡大等のプラスの側面や先行減税の効果なども含め、総合的に考えるべきものと思います。
 政府としては、今後とも、金融、税制、歳出、規制などの構造改革の取り組みをさらに加速し、国民全体の将来への不安感の解消や、潜在的な民間需要の顕在化と雇用の拡大を通じて、家計消費を初めとする民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく考えであります。
 健康保険本人三割負担についてです。
 国民皆保険を将来にわたり堅持していくためには、患者、加入者、医療機関といった関係者に等しく負担を分かち合っていただくことは避けられず、保険料の引き上げ幅を極力抑制するためにも、予定どおり、本年四月から三割負担をお願いすることが必要と考えます。
 税制改革について、庶民に増税し、大企業や一部の大資産家に減税するものではないかとのお尋ねでありますが、そうではございません。
 今般の税制改革におきましては、相続税、贈与税の一体化により、相続税が課税されないと見込まれる個人についても住宅取得資金を初めとする生前贈与が行われやすくなること、金融・証券税制の見直しは、一般の個人投資家にとり預貯金を中心とした資産運用から株式市場への投資参加がしやすくなること、土地流通税の大幅軽減は、土地建物を取得する個人の税負担を軽減すること等、種々の減税措置を講じることとしており、これらの措置は、大資産家のみならず、広く個人を対象とするものであります。
 さらに、研究開発・設備投資減税や中小企業税制に係る措置についても、産業の競争力強化や中小企業の経営基盤の強化を通じて雇用の拡大につながるなど、大企業のみならず、中小企業や個人に広く恩恵を及ぼすものと考えます。
 また、個人所得課税等の見直しは、税負担のゆがみを是正するなど、国民皆が広く公平に負担を分かち合うとの基本的考え方によるものであります。
 このように、それぞれの措置は、持続的な経済社会の活性化に資する、あるべき税制を構築する観点から一体として行うものであり、御批判は当たらないと考えます。
 歳出構造についてでございます。
 平成十五年度予算については、歳出改革の一層の推進を図るとの基本的な考えのもと、活力ある経済社会の実現に向け、将来の発展につながる分野を中心とした予算の重点配分や、徹底した単価の見直しなどの効率化に大胆に取り組んだところであります。
 社会保障予算については、効率的な、また安定的な社会保障制度を構築する観点から、年金等の物価スライド、雇用保険制度改革等を行うとともに、少子高齢化や厳しい雇用情勢等に対応するための各般の施策を推進することとしており、一般歳出を厳しく抑制する中、その予算規模は約十九兆円で、その伸びはプラス三・九%と大きなものとなっております。
 他方、公共投資関係費については、公共投資全体の規模について、前年度当初予算から三%以上削減し約八兆九千億円としつつ、都市の再生や地方の活性化など、雇用、民間需要の拡大に資する分野へ重点配分を行うとともに、個々の事業について、整備水準、整備の緊急性等を勘案して重点化を図っております。
 このように、歳出構造の見直しは確実に進んでいるものと考えます。
 不良債権処理と中小企業金融の問題であります。
 不良債権処理の加速は、金融機関の収益力改善や貸出先企業の経営資源の有効活用などを通じて、新たな成長分野への資金や資源の移動を促すことにつながるものであり、他の分野における構造改革とあわせ実施することにより、日本経済の再生に不可欠なものと認識しております。
 政府としては、こうした認識に立って、先般、不良債権処理をこれまで以上に加速し、政策を強化することとしたところでありますが、これは、銀行経営の健全性を高め、中小企業向け融資を含めた銀行の資金仲介機能を一層強化させようとするものであり、御指摘のような矛盾があるとは考えておりません。
 また、民間における融資対応は、基本的に個々の銀行等の経営判断によるものと考えておりますが、我が国経済の基盤を支える中小企業をめぐる厳しい状況を踏まえ、不良債権処理の加速に伴う影響にも細心の注意を払い、やる気と能力のある中小企業への円滑な資金供給を確保するためのセーフティーネット対策を取りまとめ、着実に実施に移しているほか、金融機関に対し、中小企業への資金供給の一層の円滑化を繰り返し要請しているところであり、引き続き、やる気と能力のある中小企業への資金供給については万全を期していきたいと考えます。
 なお、円滑な地域金融の確保は重要なことですが、共産党提案の地域金融活性化法案は、基本的に自主的な経営判断にゆだねるべき金融機関の業務内容を公的な機関が画一的な基準で評価、公表しようとするものであり、慎重に考えるべきものと思います。
 雇用情勢についてですが、引き続き厳しい状況が続くのは避けられないと考えております。
 このため、政府としては、不良債権処理の加速などに伴う雇用への影響には十分配慮することとし、平成十五年度当初予算及び平成十四年度補正予算において、早期の再就職の支援など、雇用のセーフティーネットに万全を期したところであります。
 雇用保険制度の改正と労働時間、労働契約制度の改正でございます。
 雇用保険制度の改正については、その将来の安定的運営を確保するべく、早期再就職を促進し、多様な働き方に対応するとともに、再就職の困難な状況に対応するため、給付水準や所定給付日数の見直し等を行い、雇用のセーフティーネットとしての役割を適切に果たせるようにするものであります。
 労働契約や労働時間制度については、解雇ルールの明記、裁量労働制の要件・手続の緩和等を内容とする労働基準法の改正法案を今国会に提出する予定としておりますが、これは、労働者が多様な働き方を選択できる環境を整備し、働き方に応じた適正な労働条件を確保する観点から行うものであります。
 長時間労働、サービス残業、年次有給休暇及び若年者雇用についてのお尋ねであります。
 長時間労働を抑制していくことは、国民生活にとりまして重要な課題と認識しております。このため、長時間労働につきましては、労働基準法に基づき、時間外労働の限度基準を定め、指導を行っているところです。
 また、年次有給休暇を取得しやすい環境整備のためには、年次有給休暇の完全取得等を前提とした業務計画を作成するなどの工夫も重要であると考えております。政府目標である年間総実労働時間千八百時間の達成、定着に向けて取り組んでまいります。
 いわゆるサービス残業については、労働基準法に違反するものであり、的確な監督指導等を通じて適正な労働時間管理に向けた改善が図られてきており、引き続き、その解消に努めてまいります。
 厳しい就職環境にある高卒予定者等については、十五年度予算において、インターンシップの充実や若年者に対するトライアル雇用の実施等、若年者の雇用を推進するための施策を盛り込んでいるところであります。
 イラク問題の平和的解決についてでございます。
 まず重要なことは、イラクが査察を単に妨害しないだけでなく、みずから能動的に疑惑を解消し、大量破壊兵器の廃棄を初めとするすべての関連安保理決議を誠実に履行することです。それが実現でき、平和的解決が達成されることが最も望ましいと考えております。
 イラク問題をめぐるアメリカとの関係についてであります。
 イラク問題解決のためには、安保理を初め国際社会が協調して毅然たる態度を維持し、イラクが査察に全面的かつ積極的に協力するように求めることが何よりも重要であります。米国に対しては、先日の電話会談で、私からブッシュ大統領に対し、米国が構築してきた国際協調を維持することが引き続き重要であると述べたところであります。
 イラク問題に関する国際世論についてのお尋ねであります。
 米国は、対イラク軍事行動を決定したとは言っておりませんが、フランス、ロシア、中国、ドイツが武力行使に慎重な意見を表明している一方で、イギリス、イタリア、スペイン、ポーランドなどは、米国との連携を重視しています。
 このように、国際世論は必ずしも一致していません。しかし、イラクが査察に対し完全かつ無条件の積極的な協力を実施していないというのが、国際社会の一致した認識であります。
 我が国としては、イラクが誠実に決議を履行するように外交努力を継続してまいります。
 有事関連法案についてでございます。
 継続審査となっている有事関連法案は、憲法の範囲内でさまざまな緊急事態に対応できる態勢づくりを進め、国民の安全を確保するため、ぜひとも必要であります。
 政府としては、国民の幅広い理解を得て、今国会における有事関連法案の成立を期してまいります。
 北朝鮮の核兵器開発問題でございます。
 政府としては、日朝平壌宣言に基づき、拉致問題や安全保障上の問題を含む諸懸案の解決を図っていく方針であり、特に北朝鮮による核兵器開発問題については、引き続き、アメリカ、韓国を初めとする関係国と緊密に連携しながら、さまざまな機会をとらえ、北朝鮮側に問題の解決のための前向きな対応を粘り強く求めていく考えであります。
 公共事業受注企業等からの政治献金問題でございます。
 政治献金については、疑惑を招かないような仕組みを考えることが必要であり、昨年、あっせん利得処罰法を改正強化するとともに、官製談合防止法を制定したところであります。
 公共事業受注企業等からの献金については、野党四党から改正法案が既に国会に提出されている一方、現在、自民党においても検討を進めているところであり、一歩でも前進するような措置を講じたいと考えております。
 企業・団体献金については、政党本位、政策本位の政治を目指す政治改革の理念を踏まえ、政党に対する企業・団体献金については、一定の範囲内で認められる一方で、政治家個人の資金管理団体に対する企業・団体献金は、既に平成十二年一月から禁止されたところです。
 いずれにせよ、政治資金のあり方は、政治活動にかかるコストをどのように国民に負担していただくかという重要な問題であり、今後も各党各会派が十分に議論を積み重ねることが必要であると考えます。
 経団連の政治献金についてのお尋ねです。
 企業等民間の団体が政党や政治資金団体に対して寄附を行うかどうかは、その団体がみずから決めるべき問題であることは言うまでもありません。
 いずれにせよ、政治資金については、政治資金規正法にのっとり厳正に処理することにより、公明公正な政治活動を確保していかなければならないと考えます。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。
    〔土井たか子君登壇〕
土井たか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、小泉純一郎内閣総理大臣の施政方針演説に対して質問をいたします。(拍手)
 小泉総理大臣が先週この場で行われました演説を聞きまして、内外ともに大きな危機が迫っている中で、なぜ、これほど緊張感がなく、また、内容も薄いものを出されたのか、ほとんど絶句いたしました。ここには、二〇〇三年の荒波を乗り越えていこうとする小泉船長の気迫も覚悟も見出せません。日本丸がどこへ向かうのか、その針路さえも見えません。ただただ波間に漂う姿があるだけで、勇気と希望を持てと呼びかけられた国民も、どうしたらいいのか、迷うばかりであります。私がこの演説を超薄型と称したゆえんであります。
 演説は総花的ですから、中には、男女共同参画社会の形成を進めるとか、保育待機児童ゼロ作戦の推進とか、それ自体、私たちも評価し、もっと積極的に推し進めてほしいものもあります。一般公用車を低公害車とするという試みも結構でしょう。
 しかし、今、国民に深く広く覆いかぶさっているのは、言い知れない不安であります。これからの自分や家族の暮らしが果たして成り立っていくのかという不安と恐怖であります。日本の現状と未来に対して、もはや希望が見出せないでいるのです。次々と負担がふえ、そればかりか、このままでは自由や民主主義や平和が奪われていくのではないかという不安の中に生きているのです。小泉総理大臣は、この国民の不安に真っ向からこたえておられません。
 以下、数点に絞りまして、私の意見を申し上げ、お尋ねいたします。
 まず、総理が施政方針演説を行われた一月三十一日の新聞の夕刊には、昨年一年を平均した完全失業率、過去最悪五・四%という総務省の発表が載っています。昨年十二月は五・五%、完全失業者数は三百三十一万人。職を探すことをあきらめて失業者数の中に入っていない人を加えれば、この数は倍近くにもなると言われています。
 ホームレスは、全国で約二万五千人、大都市からその周辺、地方中小都市にまで急速に広がっています。自殺者は、ここ数年、毎年三万人以上、このうち、経済的な理由によるものは一万人を超えるというすさまじい数であります。
 リストラのあらしがなお吹き荒れ、総務省の発表でも、昨年一年で百十四万人が職を失いました。正規の雇用者が六十五万人減った一方、非正規の雇用者は四十一万人ふえ、雇用の不安定化が進んでおります。
 こういう状態の中での大学卒業者の新規採用数は、推して知るべしと言えるでしょう。大学卒業予定者の就職内定率は七六・七%です。まして、高卒の就業率は、絶望的と言えるほど悪化しております。高校新卒者の就職内定率は六〇・三%。もはや、私たちの社会は、若者に満足に職を提供することさえできなくなっているのです。こんな状態でどうして、若い人々に、夢を持て、希望を持て、あるいは、世代間の連帯の意識をなどと言うことができるのでしょうか。
 これらの数字や現象について、総理はどう認識しておられるのか。また、どうすべきだと考えておられるのか。国民が知りたいのは、そのことでございます。その国民の疑問に答えることこそが、政権担当者としての責務ではないですか。どのように総理は受けとめておられますか。
 こうした数字、こうした現象が示すのは、一言で言って、今の日本は人間が大切にされていない社会であるということです。経済の好不況は常にあります。産業構造の転換はそう簡単にいかないとしても、それが直ちに個人の生活の破綻や、ましてや命を絶つことにつながるなど、あってはならないことです。もし、そうであるとすれば、それは、その社会のシステムや政治のあり方が根本から間違っているということでしょう。
 国民が将来に安心し、それを保障する政府を信頼したとき、初めて景気も回復するでしょう。小泉改革は、その逆の方向にばかり進んでいます。法人税やいわゆる資産家向けの相続税や贈与税の減税を行って、どうして、それが今、圧倒的多数の庶民の消費に向かうなどと考えることができるのでしょうか。
 日銀も、政府の施策などを通じて国民の将来不安、不透明感が払拭され、前向きの支出を行える環境が整っていけば、金融緩和はこれを強力に後押しして、デフレ脱却も自然に展望できると分析しているではありませんか。第一の問題は、政府の行う施策、国民の将来不安、不透明感を払拭する施策にかかっているのです。
 先ほど触れた一月三十一日の各紙夕刊には、公的年金の給付額が物価スライドの凍結解除により年間〇・九%引き下げられることが報じられていました。全体で二千六百億円の給付減、これも国民の将来不安に追い打ちをかけ、年金制度への信頼を失わせることになります。
 金融広報中央委員会の最近の調査によれば、老後の生活について「心配である」としている世帯は八割近く、そのうち、「非常に心配である」とした六十歳未満の世帯の回答は、年を追うごとに激増しています。そして、その理由の七割近くが「年金や保険が十分ではない」ということなんです。まさしく、国民生活の実像を浮き彫りにしています。同じ調査で、老後の必要資金を「年金だけではまかなえない」と答えた六十歳未満の回答者のうち、三分の二が「支給金額の切り下げ」、また、半数強が「支給年齢の引き上げ」を挙げています。いかに公的年金制度への信頼が失われているか、そして、国民が将来に不安を抱く大きな理由になっているかがよくわかります。
 総理は、年金制度への国民の不安にどうお答えになりますか。
 確かに、少子高齢化社会に移行するスピードが速まっていて、負担は軽く、給付は厚くというわけにいかない、これは総理が就任されて初めての二〇〇一年の所信表明演説の中で言われたことでありますけれども、これは、一般論は私も認めるところです。しかし、今回の施政方針演説には、何ら年金制度改革への具体的な言及はありません。
 一つ、総理に率直に伺います。長い年月にわたって世界に例のないほどに積み立てられた年金積立金の行方についてです。今、年金積立金は幾らありますか。総額百五十兆円近い年金積立金は、果たして無傷で残っているのでしょうか。
 まず、私たちは、年金積立金を特殊法人である年金資金運用基金が株式市場で運用してきたことに強い懸念を表明してまいりました。年金積立金は、この一年で減少したのではないですか。自主運用における累積欠損は幾らだったのですか。旧年金福祉事業団の失敗分も含めて幾らのマイナスが出ているのか、最近のデータで明らかにしていただきたいのです。
 私は不思議に思います。四月に発足する郵政公社は、郵便貯金と簡易保険の新規資金を委託運用しないことを決めました。国内債券中心に運用することとし、株式市場での運用リスクを回避するとしています。一方、社会保障審議会では、次々と株式市場でのマイナス運用が厳しい結果を生んでいるにもかかわらず、株式投資を容認する姿勢を変えておりません。本当に国民の立場から年金制度の将来を考えてのことなのか、疑問に思います。
 総理に伺います。郵便貯金と簡易保険の資金管理と、年金積立金のそれとの差異はありますか。あるとすれば、どんな差でしょうか。
 厚生年金法の第七十九条の二には、こうあります。「積立金の運用は、積立金が厚生年金保険の被保険者から徴収された」「将来の保険給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うこと」、こう決められているのです。損失を出し続け、年金積立金も削り続けている現状は、異常なことと言わなきゃなりません。郵政問題に声高な総理は、熟知されているはずの年金運用の改革について、役所任せ、審議会任せなのはなぜでしょうか。
 ところで、百五十兆円の年金積立金の行方のうちで私が最も心配しているのは、約百三十兆円の財政投融資に回っている資金の行方です。
 総理がこだわられた道路公団を初めとして、石油公団、水資源開発公団などの特殊法人、政府系金融機関に貸し付けられた資金は、どのくらい焦げついているのでしょうか。すべてが優良であれば年金積立金は無傷ですが、不良債権となり回収不能となっている資金はどれくらいなのか。もう時間稼ぎは許されません。直ちに年金積立金の緊急保全措置をとるべきです。こうした責務を果たさずして、来年度の年金改革の議論を言い出す資格はありません。直ちに情報公開に踏み切るべきだと考えます。明快な総理の御答弁を求めます。
 既に、この問題は、我が党の中川議員が、一月二十七日、補正予算の総括質疑で取り上げまして、総理は、その席で、「それは、できるだけ国民にわかりやすいような情報を提供する必要があると思っております。」とお答えになったのですから、速やかな対応を、ひとつこの場でしっかりお願いしたいと思います。(拍手)
 ほかにも、ことしは、家計への負担増がメジロ押しです。
 まずは、医療保険制度改革です。既に昨年十月から老人医療の窓口負担がふえて、ことし四月からは、給与所得者の保険料が引き上げられると同時に、給与所得者の窓口負担が三割に引き上げられます。介護保険料も四月から引き上げられます。雇用保険制度では、昨年十月に保険料が引き上げられ、ことしの五月からは給付が引き下げられるという調子です。
 増税もあります。発泡酒、ワイン、たばこなどの増税、配偶者特別控除の廃止、消費税の免税点等特別措置の見直しなど、これは決して小さな負担増ではありません。しかも、デフレ不況という深刻な経済状況の中で国民に負担増を押しつける総理の政治姿勢が、私には理解できません。
 財政が非常に危機であることはよくわかります。しかし、今、このような負担をふやせば、いよいよ国民の財布のひもはかたくなり、消費は減り、デフレが加速することは明らかです。
 消費は、日本の経済の六割を支えております。消費が冷え込めば、経済は失速して、財政もさらに悪化するでしょう。その証拠に、昨年の三月危機、九月危機、それに引き続いて、ことしもまた三月危機がささやかれております。
 この繰り返しは一体何事でありましょうか。政府の施策が全く誤っている結果としか考えられません。日本経済は、こんな繰り返しをしながら、じわりじわりと奈落の底に沈みつつあるのではないのですか。
 家計には負担増を押しつけ、一方で採算のとれない高速道路建設は続行するというのが小泉改革なんでしょうか。どの世論調査を見ましても、七割近い国民が、もう高速道路は要らないと答えています。国民の意思と小泉政権の政策は大きくかけ離れています。自民党の利権よりも国民の意思を選ぶというのが、小泉政権発足当時の総理の志だったのではないのですか。自民党が民間参入法案をつぶすのだったら、自民党が小泉内閣をつぶすか、小泉内閣が自民党をつぶすかの戦いになるというあの気負いは、どこに行ったのですか。総理の御存念をお伺いします。(拍手)
 次に、政治への信頼、公共事業受注企業からの献金問題を取り上げたいと思います。
 総理、今、国民の大半が最も問題だと考えているのは、単なる増税や負担増だけではありません。問題とされているのは、税の使い道なんです。お金を出しても、それがわけのわからないことに使われてしまうのではないかと疑っているからこそ、増税や負担増にノーという声が国民の声なんです。
 では、使い道を決めているのはどこか。まさしく政治であります。国民に痛みに耐えるよう要請しながら、政治家が公共事業の口ききに走り、あっせんをする、あまつさえ、その公共事業受注企業からの献金を受けるなど、この重要な政治への信頼をずたずたにする問題外の行為はもってのほかです。
 総理、今必要なのは、公共事業と政治の金によるつながりを、この際、一切断ち切るという決断です。公共事業受注企業からの献金を禁止する。少なくとも、巨額の負債を抱えて銀行から債務免除されているゼネコンや民事再生法で再生中の建設業者などからの献金は禁止することなくして、国民の政治への信頼はあり得ません。ただいまも、自民党長崎県連の前幹事長の逮捕を発端に問題になっています。後を絶たない自民党の政治と金をめぐる汚職疑惑です。
 緊急の政治課題として、社民党は、他の野党と協力いたしまして、公共事業受注企業からの献金禁止を内容とする政治資金規正法改正案を提出済みで、継続審議となっています。本来ならば、小泉総理も同調されるところでしょう。なぜなら、小泉総理は、昨年三月、記者会見で、公共事業受注企業からの献金は制限なり禁止措置なりを加える必要があるとはっきり言われていたからです。四月の党首討論の場でもそうでした。
 ところが、どうでしょう。総理は、公共事業受注企業からの献金禁止を求める我が党の横光議員に対する一月二十三日衆議院予算委員会の答弁で、問題は、法律を幾つつくっても、法律に違反しているんですから、どうしようもない、こう述べられているわけです。全くさま変わりとしか言いようがない、こう思います。ひつじの年に羊頭狗肉はお断りですよね。
 総理、これはあなたの党の問題です。報道によれば、巨額の債務免除を受けたゼネコン数社から自民党は献金を受けたと言われています。こういうことが続くから、国民はいよいよ、公共事業そのものに疑いを深め、政治に疑いを深め、税金の使い道に疑問を深めるのです。総理、きちんと全国をひとつ調査されて、結果を明らかにされて、公共事業受注企業からの献金を禁止する、このことをきっぱり決める立法のために御尽力されるのがただいま急務であると思います。総理の御決断を求めます。(拍手)
 引き続いて、「もんじゅ」、核燃料サイクル政策について取り上げたいと思います。
 一月二十七日、名古屋高裁金沢支部は、高速増殖炉「もんじゅ」の原子炉設置許可処分の無効確認を求める行政訴訟に対して、設置許可を無効として、政府に対して安全審査の全面的なやり直しを命ずる画期的な判決を下しました。
 私は、従来より高速増殖炉の危険性を唱え、核燃料サイクル政策の全面的な見直しを求めてまいりました社民党の立場から、この判決を歓迎し、直ちに政府に、上告を断念することを申し入れました。その際、プルトニウム使用を前提としたエネルギー政策を見直すことも申し入れたのです。しかし、一月三十一日、まさしくその日は総理の施政方針演説のあった日ですが、政府は、判決を不服として最高裁に上告いたしました。
 総理にお尋ねしたいのは、このように重大な即刻上告決定を決められるときに、閣議で十分討議されたのかということでございます。
 かつて、夢の原子炉と言われ、各国が開発に努めた高速増殖炉は、もはや、構造的に製造が不可能であることは明白だと言われています。それが証拠には、アメリカもイギリスもドイツも、そして、実証炉まで開発を進めたフランスでさえ、高速増殖炉から撤退しているではありませんか。時代おくれの夢を追っているのは日本だけということになるわけです。
 この二月一日、スペースシャトル・コロンビアが空中分解し、七名の乗組員の方々が命を失われました。改めて、犠牲となられた皆さんの御冥福と家族の皆さんの悲しみに哀悼の意を表したいと思います。
 さて、このシャトルは、世界で最高水準の科学技術を集積した宇宙船と言われてきました。にもかかわらず、今回の事故は、十分過ぎる点検と、わずかであっても危惧する事態に対しては飛行を中止する決断が必要だということを私たちに警告いたしました。科学技術に万全はないという教訓を生かさねばなりません。
 高速増殖炉の最大の問題は、言うまでもなく事故の危険性です。今回の判決でも、炉心崩壊事故が起こり得ることを指摘いたしておりますが、仮に、暴走事故が起こって炉心内蔵のプルトニウムの一%が外部に放出されたとして、二十万人のがん死が生ずるという災害評価もなされています。しかも、この放出量は極めて控え目な予測であると、計算した科学者は述べておられます。つまり、一たび事故が起これば、周辺住民はもちろん、日本全体にとって破滅的な結果をもたらす可能性が高いのです。そして、高速増殖炉は、歴史的に見て、事故を起こすことの多い原子炉であります。
 経済産業省の原子力安全・保安院は、昨年十二月に許可した「もんじゅ」の原子炉設置変更計画に沿って詳細な設計の審議を今後も進めていくと表明されております。
 しかし、上告したからといって、これまで政府がとってきた手段が有効とされたわけでは決してありません。少なくとも、最高裁での判決が下されるまでの間は、設置変更計画の推進や具体的な改造工事に着手することは許されません。社民党は、高裁判決に従って「もんじゅ」の廃炉か安全審査の全面的見直しに着手するよう政府に求めます。
 日本は、時代おくれになった原子力の開発に資金と人的エネルギーを使い過ぎました。ここに未来はありません。できるだけ速やかに、エネルギー政策を転換して、脱原発を進めて、再生可能なエネルギーの開発に資金と人的エネルギーを投入すべきと思いますが、総理のお考えをお聞きします。(拍手)
 最後に、小泉首相の外交政策についてお尋ねします。
 私は、昨年の秋からことし初めにかけましての小泉外交には、三つの過ちがあったと考えています。
 第一の過ちは、十月末の日朝正常化交渉において、次回の日程を設定せずに交渉を打ち切ったことであります。
 私は、九月十七日の日朝首脳会談及び日朝平壌宣言について、評価する立場に立っております。戦後五十六年にわたった両国の不幸な、不正常な関係を正常化するために、総理大臣として歴史上初めてピョンヤンを訪れ、日本が植民地支配によって朝鮮の人々に与えた損害と苦痛に対して直接謝罪をされた。そして、北東アジアの平和と安定を願い、両国の国交正常化に向けた基本的な考え方に合意をして、いわば両国の和解の基盤をつくられたからです。しかし、その後、肝心の交渉の場がとんざしています。交渉と対話の場がなければ、いかなる努力も生きないでしょう。
 拉致問題は言うまでもなく、昨年十月よりにわかに緊迫した北朝鮮の核開発問題についても、日本は懸念を伝える場さえないではありませんか。申すまでもなく、私は、北朝鮮の核開発には反対ですし、問題は多いながら、NPT、核兵器不拡散条約にも復帰すべきだと思っています。国連を初め、韓国、ロシア、EU、インドネシア、オーストラリアなどが特使派遣などで動いている中、せっかく首脳会談で開いた交渉の場が閉ざされてしまっているのはどうしたわけか。切歯扼腕しているのは私だけではないと思います。
 どうして日朝の交渉は途絶してしまったのか、そして、今、活路を開くためにどのような努力をされているのか、総理にこの点をお伺いいたします。
 韓国では、昨年末、金大中大統領の太陽政策を継承する盧武鉉次期大統領が誕生しました。次期大統領は、太陽政策の継承、発展を国民に約束して、北朝鮮の核開発問題の解決に精力的に対話の糸口をつくり出すべく行動されています。私も、この十日に、金大中大統領、盧武鉉次期大統領と、韓国が進める太陽政策に日本がどのようにコミットできるかという会談を持つことにしています。
 小泉首相は、この太陽政策を支持されていますか。どのようにコミットされていくのですか。
 第二の過ちは、昨年末のイージス艦派遣であります。
 この派遣について、総理は、対テロ特措法によるものと位置づけ、これまでの派遣と違わないと主張されるでしょう。私は、対テロ特措法それ自体が憲法違反の法律であって、自衛艦のアラビア海への派遣は集団的自衛権を禁じた政府見解からも逸脱すると考えていますが、イージス艦の派遣は、それに輪をかけて大きな問題を生じさせました。それは、アメリカの対イラク攻撃に対して日本は支持するというメッセージを諸外国に与えたことです。当のイラクを初め、諸外国は間違いなくそう受け取っています。
 国連決議に基づかない攻撃は侵略戦争です。このことは国連憲章によっても明らかです。もし、国連決議のないままブッシュ政権のイラク攻撃が行われることにでもなれば、これまで長い間をかけて形成してきた国際法、国際機関を根底から破壊してしまうおそれをはらんでいます。そうなったら、世界の秩序はどうして保たれるでしょうか。こんな危険な性格を持つ戦争に、平和憲法を持つ日本がどうして支援し、協力しなければならないのですか。(拍手)
 イラクを攻撃して最も被害をこうむるのは、フセイン政権より、イラクの弱い立場の国民です。つまり、女性であり、子供たちであり、高齢者です。アメリカでは、百名以上の法律家が連名で、米英軍の無差別攻撃で民間人が死傷すれば戦争犯罪として国際刑事裁判所に訴追することを公にしました。
 ブッシュ政権のイラク攻撃の本当の目的は石油資源にあるとも言われており、だからこそ、当のアメリカ国内を初め、ヨーロッパ各国、韓国においても、ベトナム戦争以来と言われる大きな反戦運動が起きているのです。我が国も、最近の世論調査では、いずれも、過半数を上回る人たちがイラクへの軍事攻撃に反対しています。国連安保理常任理事国のフランス、ロシア、中国などは攻撃に反対であり、非常任理事国のドイツは、戦争に参加も資金協力もしないとはっきり宣言しているではないですか。周辺のアラブ各国、とりわけ民衆は、アメリカのイラク攻撃に強く反対しています。対テロ戦争のときとは全く様相が違っているのです。
 こんな情勢の中で、どうして思慮に欠けたイージス艦派遣の決断をなし崩しにしたのかをお伺いしたいのです。
 また、イラク攻撃が国連の新たな決議なしに行われた場合、総理、日本政府はいかなる態度をとるおつもりか。ブッシュ・ドクトリンからすれば、このような場面がないとは言えません。党首討論の場でも申し上げましたけれども、総理は、ブッシュ大統領に先制攻撃をやめるよう話し合うことができる同盟国の総理であって、平和憲法日本国の総理ではありませんか。沈黙は危機感を深めます。時間が切迫している折、これをはっきりしたお考えでもって表示していただきたいと思います。
 小泉外交第三の過ちは、一月十四日の総理の靖国参拝であります。
 北朝鮮の核問題で周辺諸国と、とりわけ中国、韓国とこれまで以上に協力することが大事だと言われていた、まさにそのときに、総理は、周辺諸国との信頼関係をみずから後退させました。これは一体いかなる外交感覚なんですか。これを過ちと言わずして、何と言えばいいのでしょうか。昨年秋以来、外交当局が慎重に修復を図ってきた日中関係も、また難しくなったと言えるでしょう。
 周辺諸国からの指摘をまつまでもなく、総理の靖国参拝は、総理の憲法感覚と歴史観を問うものだと言わなくてはなりません。一宗教法人である靖国神社に内閣総理大臣が公式に参拝するのは、国の宗教活動の禁止を定めている憲法二十条に違反します。
 総理は、二〇〇一年、中国を訪れて、盧溝橋で侵略戦争を反省し、韓国を訪れて、西大門独立公園で植民地支配を反省されたのではないのですか。
 総理、靖国参拝による外交への影響をどのようにお考えになっているのか、お伺いします。
 また、昨年十二月二十四日、福田官房長官の私的諮問機関が、無宗教の国立追悼施設を建設すべきとの報告書を取りまとめておられます。総理は、この報告をどのように受けとめておられますか。
 総理、近代以降、多くの国家は憲法に基づいて統治を行っていることを改めて申し上げる必要はないでしょう。憲法に従って政治を行うこと、それが立憲政治であります。近代国家の基本的原理であります。そして、憲法は、権力を縛り、権力がほしいままに力を振るわないという、国民との間の誓約でもあります。余りに当たり前のことを申し上げるのは、今、日本の政治において、基本中の基本であるこの立憲政治が危機に瀕しているのではないかと危惧するからであります。
 今国会に与党三党が武力攻撃事態法の修正案を出すと言われていますが、このことは、既にさきの国会でこの法案での政府の見解が破綻したことを認めるに等しいと言わねばなりません。それはまさに、現憲法が放棄している戦争のための法案だからであります。
 憲法制定以来五十五年の間、有事法制は存在してこなかったのです。そして、それで十分やっていけたのです。
副議長(渡部恒三君) 土井たか子君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
土井たか子君(続) それが今、なぜ法案提出なのか。これは立憲政治からの逸脱ではありませんか。憲法の規範から権力が逸脱するのは、国民との誓約への違反です。近代国家にあるまじきことが、今、日本の政治で行われようとしている。それは、総理が考えておられるよりはるかに大きな結果をもたらすことになるでしょう。
 憲法の規範への復帰を、しからずんば政権の交代を私は強く申し上げて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 土井社民党党首にお答えいたします。
 厳しい経済社会情勢への認識についてでございます。
 御指摘のとおり、若年者を初めとした雇用情勢は厳しく、自殺の増加といった事態については、まことに痛ましいことと認識しております。
 日本経済は、世界的規模での社会経済変動の中、単なる景気循環ではなく、複合的な構造要因による景気低迷に直面していると考えます。また、不良債権や財政赤字などの負の遺産を抱え、世界的な株価低迷の中で、戦後経験したことのないデフレ状況が継続しているなど、想定以上に厳しい内外経済環境が生じていると思っております。
 小泉内閣は、こうした状況を構造改革によって打破し、我が国の再生と発展が可能となるとの認識のもと、デフレ克服を目指しながら改革を推進し、経済情勢に応じては大胆かつ柔軟に対応するという一貫した方針で経済運営に当たってまいりました。
 改革は道半ばにありまして、成果が明確にあらわれるまでにはいまだしばらく時間が必要ですが、日本の潜在力は失われているとは思っておりません。厳しい環境の中でも、多くの人々が前向きに挑戦を続けています。余り悲観主義に陥らず、勇気と希望を持って改革に立ち向かうことが、将来、明るい未来をもたらすものだと考えております。
 今後とも、金融、税制、規制、歳出、これらの改革の取り組みを着実に実施し、さらに加速させ、政府は日銀と一体となってデフレ克服に取り組むことによりまして、日本経済を、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていきたい、それが私に課せられた責務であると考えております。
 公的年金制度についてでございます。
 公的年金が国民の安心を確保するものであるためには、国民の老後生活を確実に保障する役割を持続的に果たしていけるよう、長期的に安定した制度を確立することが不可欠であります。
 このため、平成十六年に行う次期年金改正では、国民に開かれた形で幅広い観点から議論を進め、将来の現役世代の負担が過大とならないよう配慮しつつ、長期的に給付と負担の均衡を確保できるような制度づくりに取り組み、国民の年金に対する不安を払拭するとともに、少子化等の進行に柔軟に対応でき、持続的に安定した制度づくりを行ってまいります。
 年金積立金の額、財政投融資を含めた運用に関するお尋ねがございました。
 国民年金及び厚生年金の年金積立金の額は、財政融資資金への預託額と年金資金運用基金への寄託額を合計して、平成十三年度末で百四十七兆円となっています。一方、年金資金運用基金の累積利差損は、平成十三年度分の損失一兆三千億円に旧年金福祉事業団からの承継分を合わせて、平成十三年度末で三兆円となっています。これを含め、平成十三年度末時点において時価評価を行いますと、年金積立金の額は百四十四兆円となります。
 なお、この一年間の計数については、三月末の決算の確定に基づき、可能な限り早期に公表することとしたいと考えております。
 公的年金の積立金の運用については、専門家の提言に基づき、公的年金給付は賃金上昇率に応じて給付額が増加するという点で郵貯や簡保とは異なる性格を有していることから、賃金上昇率を上回る収益を長期的に確保することを目標としており、このため、株式を一定の割合で限定的に組み入れて運用を行っております。
 平成十三年度末における株式比率は、市場運用分では四〇%、財政融資資金への預託分を含めた年金積立金全体に占める株式の比率は六%となっており、郵貯、簡保と比べても特に高い比率となっているものではございません。
 しかしながら、御指摘のような昨今の経済状況もあり、年金資金運用のあり方については、次期財政再計算時に検討することとされ、現在、厚生労働省において議論が行われております。政府としては、その結論も踏まえて、国民の信頼が得られるようにしっかり対応してまいりたいと考えております。
 なお、財政投融資による特殊法人等への貸し付けについては、これまですべて返済されているところであり、平成十三年度より、財政投融資の改革で新規の年金積立金は自主運用となりましたが、この改革前に旧資金運用部に預託された年金積立金についても、約定どおりに償還がなされてきております。
 しかし、特殊法人等の事業については、楽観的な需要予測などの弊害が明らかとなっており、このため、私は、郵貯、年金を財源とし、財政投融資を通じて特殊法人等が事業を行う公的部門の改革を主張してまいりました。将来とも、年金積立金の返済に支障の生じることのないよう、この改革を推進していく考えであります。
 高速道路整備についてでございます。
 昨年末提出された道路関係四公団民営化推進委員会の意見において、高速道路の整備方式について、整備の必要がある一方、採算性の乏しい路線については、国と地方の負担による新たな方式の導入が提言されたところです。政府は、これを踏まえ、平成十五年度予算では、新たな直轄方式による高速道路建設のため、地方に対し、新たに財源を譲与するとともに、国費一千億円を計上することとしたものです。
 一方、公団の高速道路建設については、工事の進捗率の高い区間などにその対象を重点化することとし、九千百六十億円と大幅な縮減を行った平成十四年度と同額としたところです。
 このように、新たな直轄方式と公団の建設方式は全く異なるものであり、両者の建設費を単純に足し合わせて議論することは適当ではないと考えております。
 政治の、公共事業受注企業からの献金についてのお尋ねでございます。
 政治に対する国民の信頼は、改革の原点であります。政治に携わる一人一人が、初心に返って、みずからを厳しく律していかなければならないと思います。
 自民党としては、一連の政治資金をめぐる問題を重く受けとめ、改めるべきは改めるという姿勢で政治改革に臨み、国民から信頼される政治を目指して努力してまいります。
 政治献金については、疑惑を招かないような仕組みを考えることが必要であり、昨年、あっせん利得処罰法を改正強化するとともに、官製談合防止法を制定したところであります。
 公共事業受注企業からの献金については、野党四党から改正法案が既に国会に提出されている一方、現在、自民党において検討が進められているところであり、一歩でも前進するよう措置を講じたいと考えております。
 「もんじゅ」についてであります。
 「もんじゅ」の判決に係る上訴につきましては、閣内の関係大臣が十分に協議を行い、決定したものであります。
 この「もんじゅ」の計画を中断するべきではないかとのことでございますが、「もんじゅ」の判決については、先般、上訴したところであり、「もんじゅ」の設置許可処分は無効が確定しているものではないと承知しております。
 エネルギー資源に乏しい我が国において、高速増殖炉開発を進めることは必要であり、「もんじゅ」については、その安全確保を大前提として、国民の理解が得られるよう努力を続けてまいります。「もんじゅ」の計画を中断することは考えておりません。
 脱原発と再生可能エネルギーの導入促進についてでございます。
 資源に乏しい我が国は、エネルギーの供給に関し、安定供給の確保という課題に加え、地球環境面での対応が厳しく求められております。こうした中、政府としては、安定性にすぐれ、発電過程で二酸化炭素を発生しないという特性を有する原子力発電について、安全審査に万全を期しつつ、安全の確保と国民の信頼の回復に全力で取り組み、その推進に引き続き努めてまいりたいと考えております。
 また、再生可能エネルギーの開発導入についても積極的に推進してまいります。
 日朝国交正常化交渉についてでございます。
 拉致問題や核問題への対応をめぐり、現在、日朝間では国交正常化交渉を直ちに再開する状況にはありませんが、政府としては、日朝平壌宣言に基づいて諸懸案を解決し、地域の平和と安定に資する形で国交正常化を実現するという基本方針に変わりはなく、北朝鮮に対し、問題の解決に向け前向きに対応するよう、引き続き働きかけていく考えであります。
 韓国政府の太陽政策についてでございます。
 韓国の盧武鉉次期大統領は金大中大統領の太陽政策を継承する旨公表しており、政府としては、引き続きこれを支持していく考えであります。
 また、核開発問題を含む北朝鮮との関係については、さきに述べたように、日朝平壌宣言に基づき取り組む中で、引き続き、韓国及び米国と緊密に連携してまいります。
 イージス艦派遣の理由についてでございます。
 先般、艦艇の交代時期を迎えるに当たって、イージス型護衛艦を派遣することにより、指揮に当たる艦艇の今後の派遣ローテーションの柔軟性が確保されることに加えて、補給活動の安全性及び隊員の居住環境が改善されることを考慮して、派遣が妥当と判断したものであります。
 同艦の派遣は、テロ対策特措法に基づく協力支援活動の一環であり、米国の対イラク攻撃を支援するものではございません。
 イラク問題についてです。
 米国は、イラク軍事行動を決定したとは言っておりません。我が国としては、査察の状況、安保理の議論等、今後の事態の推移を注視して対応を判断してまいります。かねがね、私は、ブッシュ大統領に対しまして、米国が構築してきた国際協調を維持することが重要であるということを述べております。
 靖国参拝でございます。
 私は、靖国神社に参拝したのは、心ならずも国のために命を失わなければならなかった方々に対する敬意と感謝の意を込めて参拝いたしました。二度と戦争を起こしてはいけない、現在の平和というものはそういう方々のとうとい犠牲の上に成り立っているものだということを常に忘れてはならないという思いで参拝いたしました。
 日中・日韓友好の気持ちは全く変わりません。今後とも、韓国、中国との友好に努力していきたいと思っております。
 国立追悼施設についてでございますが、新たな施設については、懇談会の意見を踏まえ、政府としての今後の対応を検討してまいります。
 有事関連法案については、継続審査となっている有事関連法案は、さまざまな緊急事態に対応できる態勢づくりを進めるため必要であると考えます。政府としては、幅広い国民の理解を得て、今国会における有事関連法案の成立を期してまいります。
 なお、法案で定める武力攻撃事態への対処は憲法の範囲内で実施するものであり、法案提出が立憲政治からの逸脱になるのではないかとの御指摘は当たりません。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 熊谷弘君。
    〔熊谷弘君登壇〕
熊谷弘君 私は、保守新党を代表し、小泉総理の施政方針演説に対し、質問をいたします。(拍手)
 総理は、演説冒頭、「今、私に与えられた職責は、我が国の経済と社会の再生です。」と述べられました。全く同感であります。現下、日本の進むべき道は、経済と社会の再生以外にはないと確信します。
 そこで、その進め方や総理の基本的な考え方について、見解を伺います。
 まず、経済再生をいかに実現するかについてであります。
 総理の演説からうかがえることは、経済の供給面に着目し、その改革なしに成長なしという考え方だと理解されるのであります。日本経済が複合的な構造要因によって停滞に直面していることは、だれも否定できない事実であります。
 しかしながら、ここで、総理の認識について、もう一歩踏み込んで御意見を伺っておかなければなりません。経済の供給面のむだや非効率を取り除くことは、需要という経済のもう一方の側面から見れば、縮小を意味することであります。そして、そのことは、経済が収縮過程に入ることを意味するのであります。現下の日本に生じていることは、まさにこのようなプロセスなのであります。
 供給面の構造改革は重要であります。この構造改革を成功させるためには、他方で経済が最低限の活力を維持しない限り成功しません。自然成長率または潜在成長率と言われる、その国の持つ基本的な力が発揮されて初めて、総理の言う、技術革新や新事業への積極的な挑戦を生む基盤がつくられ、国を富ませる土台が築かれるのであります。
 およそ経済政策を進めるに当たって、供給面のみに目を奪われれば、その政策は破綻するのは当たり前であります。一定の成長なしに構造改革はあり得ません。三党連立政権合意の中で、景気回復とデフレ不況の克服に真剣に取り組むことに合意したことは、総理がこの考え方に合意したものと理解しておりますが、その所見を伺いたいのであります。
 構造改革を進めるに当たって、需要面もマネージしていくとすれば、その政策いかんということになるのでありますが、総理は、政府は日本銀行と一体となって政策を進めると述べておられます。財政規律という枠組みを前提にすれば、金融政策以外に有力な政策手段は考えられないわけですし、また、理論的にも実際的にも、さらには歴史の教えるところでも、金融政策の活用こそは最も重要なポイントであります。総理は、その年頭所感においてもこの方向を明らかにし、施政方針演説でもその方向を明確にされました。
 しかしながら、さきの日本銀行の政策決定会合の模様を知って、私は驚いたのであります。そして、一つのエピソードを思い出しました。第二次世界大戦中、シンガポール陥落の第一報を受け取ったとき、時の英国首相、チャーチルが発した言葉であります。英国のシンガポール守備軍司令官、パーシバルについて、チャーチルはこう言ったというのです。パーシバルは実に頭のいい男だ、確かに頭がいい、彼は行動しないためには百の理屈をすぐ思いつくことができる男だと。
 総理は、「日本経済を再生するため、あらゆる政策手段を動員する」と述べ、日本銀行も一体となってこれに取り組むと発言されました。その言やよしであります。日本銀行は独立を保障されていますが、法王庁ではありません。総理の強いリーダーシップのもとで、マクロ経済の運営を誤りなきよう進めていくことが肝要であります。
 次に、総理は、不良債権処理問題へ取り組む決意を示しておられます。健全な銀行システムの構築は我が国の最重要課題であり、不良債権処理はそのために不可欠であります。しかし、不良債権処理のみで銀行問題は終わるのではありません。決済機能が麻痺したとき、一国の経済もまた機能停止に陥るのであります。その面から見ると、日本の銀行はもう一つの不安定要因を抱えているのであります。すなわち、銀行による株式保有の問題であります。
 株式市場が不安定化すれば、株式を保有する銀行の経営が常に不安定となります。これは決して健全ではありません。また、銀行の株式保有は株主と債権者という利益相反する立場を抱え込むという意味で、銀行経営自体の健全性に問題が生じます。さらに、銀行がオーバープレゼンスになるということは、借り手側にも問題を生じさせることになります。
 こうした事態を避けるため、米国などでは銀行による株式保有は認められていないのであります。株式買取機構など、既にそれなりに仕組みがつくられていますが、これが機能しているかという点については、到底そうは思われない状況にあります。
 制度面、ファイナンスの仕組みを含め、抜本的な見直しが必要と考えますが、この点についても総理の御意見を伺いたいのであります。
 いま一つ、観光立国懇談会設置を初め、総理は、観光の振興に政府を挙げて取り組む決意を表明しておられます。この点に関する総理の考え方について、伺いたいことがあります。
 現在、我が国の完全失業者数は約三百三十万人ですが、その中で、注目すべき点があります。高卒以下のいわゆる低学歴層の完全失業者数は、実に二百五十万人を超え、比率でいえば七五%に達しているのです。
 この数字の向こうに見える姿は何か。
 第一に、既に全盛期の四分の一の能力が海外移転したという、製造業の空洞化がもたらしたものが何であったかという点が示されているのです。かつて企業戦士と呼ばれた、生産現場を支えていた人々が完全失業の世界に追いやられている姿が、そこにはあるのであります。
 第二に、日本型リストラの特徴である新規採用の制限がもたらすものであります。新卒者たちが希望を持って社会に出ていくその日に、社会の側から、君は要らないと言われるのであります。失われた十年の間に、これらの若者は実に百万人近くも、社会の片隅で完全失業者として積み上げられているのであります。
 総理は、新しい技術の振興、新しい産業の振興を提案されました。確かに、それらは重要な政策でありますが、現実の雇用の場に展開される問題を解決するには、日暮れて道遠しの感を免れません。
 成熟国が、みずからの持つ歴史的、自然的資源を生かして、観光国として自国民の働く場をつくり出してきたことは、歴史的な知恵であったと思います。我が国は、観光中進国だと言われます。観光先進国の場合、労働力人口のほぼ一割の人々が観光産業に働く場を見つけているとされます。
 こうした人々に希望をつくり出すためにも、地方が誇りを取り戻すためにも、観光立国は我が国の進むべき有力な道筋であると考えます。日本は魅力のある国であります。地域の自然、歴史、文化等の資源を活用し、世界に誇り得るこの国土、開かれた先進文化国家日本をより多くの人々に知ってもらうことこそ、今、必要なことです。
 観光とは国の光を観ること、旅する人は平和の使者だと言われます。近ごろ、観光立国について特に力を注いでおられる小泉総理の所見を伺います。
 次に、社会の再生への総理の考え方を伺いたいと思います。
 施政方針演説を聞く限り、我が国の社会の全体状況をどう認識されているのか、いま少しはっきりしません。私は、日本は経済も危機のさなかにありますが、社会もまた破綻の危機にあると考えるのであります。教育現場の荒廃、家庭の破綻、犯罪や自殺者、また失業者の激増、どれをとっても危機としか言いようのない状況にあると思うのであります。
 ここで、特に犯罪増加の問題に対して総理はどのように取り組もうとされているか、伺います。
 かつて、一九七〇年代また八〇年代の欧米社会は、犯罪の激増に悩まされてきました。九〇年代、これらの国々は、積極果敢にこの問題に取り組みました。米国において最も犯罪の多い都市として知られたニューヨークが、当時のジュリアーノ市長によって犯罪発生が劇的に減った話は有名であります。英国のブレア首相も、タフ・ツー・クライム、犯罪には厳しく、これをその政策の中心課題に据えて、大きな成果を生み出してきました。
 振り返って、我が国の現状を見るとき、かつて世界で一番安全な国と言われたこともあるこの国が、先進国の中で最も安全ではない国になりつつあるのであります。本年に入って、警察庁長官が、治安回復元年と檄を飛ばさざるを得ない状況に陥っているのです。
 しかし、犯罪は警察当局のみで減少させることはできません。犯罪は、その社会の病理現象であります。社会の病を治さない限り、犯罪を減少させることはできません。経済不安のみならず、不法滞在外国人の急増、伝統的な価値や社会の崩壊、教育現場の荒廃など、日本の社会構造の危機そのものにその根本原因があると考えられます。犯罪防止のためには、社会の再生以外に方策はないのであります。
 経済再生と並んで、社会の再生こそ、まさに求められているものであります。家庭やコミュニティーの再生、そして教育の再生。さらに、進展するグローバリゼーションが、異なる文化や生活様式の衝突をもたらし、外国人犯罪の急増をもたらしている実情を見るとき、これをどのようにマネージしていくのか。まさに、政治そのものが果たすべき役割であります。この点について、総理の所見を伺いたいと思うのであります。
 目下、世界はイラク問題、また北朝鮮問題をめぐり、緊張が高まっております。
 総理は、国家の緊急事態への対処態勢を充実し、継続審査となっている有事関連法案の今国会における成立について決意を表明されました。国益に係る問題に、与野党の壁はあってはなりません。これまでの率直な意見交換を踏まえて、一刻も早く合意を形成し、万一の緊急事態に備える体制が一日も早く確立できることを望みます。
 かつて「レイテ戦記」を書き、さきの大戦のむなしさと、これを指導した軍部の愚劣さを告発した作家、大岡昇平氏が、同時に、特攻隊に散っていった若者の心情に共感し、こうした若者を持ったことへの誇りを書いておられます。さきの予算委員会での審議の模様を聞きながら、総理の胸中に去来するものに思いをいたしました。
 しかしながら、総理、さきの大戦で、広島また長崎で被爆を体験した人々や、大空襲の犠牲になっていった多くの無告の民の存在をも、決して忘れてはなりません。加えて、かつて、オウム事件の際、サリンの恐ろしさ、化学兵器の恐ろしさを身をもって体験したのも日本の国民であります。
 この地球上において、大量破壊兵器の保有を競い合う状況になることは、何としても避けなければなりませんし、防がなければなりません。平和の構造を構築するために、国際的に、また積極的に発言、行動を起こすことは、日本の責務であります。この点について、総理の所見を伺います。
 最後に、総理に伺います。
 総理は、「聖域なき改革」への決意を一貫して表明しておられます。多くの国民はこの姿勢に共感していると確信します。しかし、我が国の現状を見るとき、具体的な改革の実現に踏み込むと、国論が分裂し、その実現が残念ながら果たし得ないでいることも、この十年、我々が見てきたところであります。すべての国民の心を結び合わせ、この日本の基本となる課題について、国民がともに力を合わせて歩んでいけるようにすることこそ、政治の最高指導者たる総理に期待されていることと私は思っております。
 この危機の時代、日本再生のために、総理が国民の連帯の先頭に立つ政治を実行していただくよう切に願って、代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 熊谷保守新党党首にお答えいたします。
 我が国経済と社会の再生に向けた取り組みについてでございます。
 私は、現在、厳しい状況にありますこの経済社会情勢、いわばデフレ克服を目指しながら構造改革に全力で取り組んでいるところでございますが、この改革につきましては、即効薬、万能薬はないと思っております。金融、税制、規制、歳出、万般の改革を着実に進めていく中で、将来、民間需要主導の持続的な成長軌道に持っていきたい、そう考えております。
 また、国民全体の持っております大きな潜在力、これをいかに顕在化させるかということについても、悲観的にならずに、明るい未来を見詰めて勇気を奮い起こしていくのも必要ではないか。悲観論から新しい挑戦は生まれないと思っております。
 まずは、確固たる改革路線を進めていく、この方針のもとで日本経済を再生させていくことが、私に課せられた責務であると考えております。
 三党連立政権合意の中にある、「景気回復とデフレ不況の克服に真剣に取り組むこと」の解釈についてでございます。
 デフレは、企業等の実質債務を増加させるとともに、実質金利の高どまりや実質賃金の上昇を生み、企業収益を圧迫させ、将来のデフレ期待によって現在の消費を手控えることなどを通じて民間需要を抑制するため問題があり、構造改革による経済活性化の効果を相殺するほか、供給面の改革に伴い生ずる痛みをさらに重いものとしかねないことから、日本経済の再生のためには乗り越えていかなければならない課題であると認識しております。
 こうしたことから、さきに与党三党間で合意いたしました認識を共有しながら、今後、この合意を踏まえながら、政府は、日銀と一体となってデフレ克服に取り組むとともに、各般の構造改革を加速させ、持続的な経済成長の実現を図っていく考えであります。
 銀行による株式保有の問題についてでございます。
 株価の変動が銀行等の財務の健全性等に与える影響にかんがみ、銀行等の株式保有を適正な規模に縮減するため、一昨年の臨時国会において、株式保有制限が導入されたところであります。あわせて、株式保有制限の導入に伴う銀行等による株式処分の円滑化を図るため、銀行等保有株式取得機構が設立されたところであり、同機構は、銀行等からの申し出に応じ、株式の買い取りを行っているところです。また、日銀においても、銀行の株価変動リスクを早期に軽減させるべく、銀行からの株式買い取りを行っているところであります。
 各金融機関においては、このような各種の制度的枠組みを生かして、その経営の健全性の確立に前向きに取り組んでいくことが期待されております。政府としては、以上のような取り組みとあわせて、金融再生プログラムの着実な実施を図ること等により、強固な金融システムを構築してまいる考えであります。
 観光立国についてでございます。
 観光産業は、我が国の経済、人々の雇用、地域の活性化に大きな影響を及ぼす極めてすそ野の広いものであり、二十一世紀をリードする産業であると認識しております。
 特に、訪日外国人旅行者の増加は、国際相互理解の増進のほか、我が国における豊かな自然、歴史、文化等の観光資源を生かした旅行消費の拡大、関連産業の振興や雇用の拡大による経済の活性化といった効果がもたらされるものと考えます。
 このような観点から、現在、訪日外国人旅行者が約五百万人程度にとどまっているのを、二〇一〇年には一千万人に倍増させることを目標として、観光立国懇談会を立ち上げたところであり、観光の振興に政府を挙げて取り組んでまいります。
 犯罪の増加とその対策についてお尋ねがありました。
 毎年、犯罪が増加し、国民の多くが治安の悪化に不安を抱いており、刑務所などの過剰収容も深刻な事態になっております。また、治安の悪化に対する不安の背景に、密入国や不法滞在の外国人による犯罪の多発が見られることも、御指摘のとおりであります。
 良好な治安は国家社会発展の基盤であり、政府としては、警察はもとより、入管、税関、海上保安庁、刑務所など関係当局の体制や機能の強化に努めるとともに、相互の連携の向上を図り、世界一安全な国の復活を目指してまいります。
 大量破壊兵器の拡散に対する我が国の責務に関するお尋ねでございます。
 唯一の被爆国として、我が国は、核兵器を初めとする大量破壊兵器の廃絶に向けた積極的な外交努力を行ってきました。例えば、毎年の国連総会への核廃絶決議案の提出、包括的核実験禁止条約の早期発効に向けた働きかけ等を行っております。今後とも、こうした現実的かつ着実な努力を継続してまいります。
 具体的な改革の実現を行おうとすると国論が分裂する、国民の心を結び合わせることについてどう思うかということであります。
 確かに、御指摘のとおり、改革が具体論に踏み込みますと、総論賛成、各論反対、賛否両論がさまざまに出てくることは事実であります。
 しかし、政治家として、総理大臣として、敵も味方、抵抗勢力も協力勢力だ、できるだけ多くの方々の協力を得られるように、すべてが最後はあるべき改革に協力してくれるであろうという希望と期待を持って、目指すべき改革を着実に進めていきたいと思います。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十分散会


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