衆議院

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第10号 平成15年2月20日(木曜日)

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平成十五年二月二十日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第七号
  平成十五年二月二十日
    午後一時開議
  一 株式会社産業再生機構法案(内閣提出)、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 株式会社産業再生機構法案(内閣提出)、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 株式会社産業再生機構法案(内閣提出)、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、株式会社産業再生機構法案、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣谷垣禎一君。
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 株式会社産業再生機構法案及び株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 初めに、株式会社産業再生機構法案について申し上げます。
 我が国経済は、現在、金融面において、不良債権問題の解決を図ることが課題となる一方、産業面において、過剰供給構造などの状況を考慮しつつ、過剰債務企業が抱える優良な経営資源を再生することが課題となっており、産業と金融の一体となった対応が必要な状況にあります。
 この法律案は、こうした状況を踏まえ、我が国の産業の再生と信用秩序の維持を図るため、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている事業者に対し、金融機関等からの債権の買い取り等を通じてその事業の再生を支援する株式会社産業再生機構を設立しようとするものであります。
 次に、その要旨を御説明申し上げます。
 第一に、株式会社産業再生機構の設立等の基本的な事項を定めております。
 産業再生機構は、内閣総理大臣、財務大臣及び経済産業大臣の認可により設立される株式会社とします。
 第二に、産業再生機構の組織について定めております。
 産業再生機構には、産業再生委員会を置き、機構の取締役の中から委員を選定して組織するものとします。産業再生委員会は、事業者の再生支援、債権の買い取り、債権の処分の決定などの重要事項の決定を行います。
 第三に、産業再生機構の業務について定めております。
 産業再生機構は、過大な債務を負っている事業者について、支援基準に従って再生支援をするかどうかを決定します。支援決定を行ったときは、関係金融機関等に対し、機構に対する債権買い取りの申し込みまたは事業再生計画への同意の回答を求め、その結果により、債権の買い取り等を行うものとします。
 産業再生機構の債権の買い取り等は、平成十六年度末まで行うこととし、買い取り決定から三年以内に、買い取った債権等の譲渡その他の処分を行うよう努めるものとします。
 第四に、産業再生機構の円滑な運営を図るため、その資金調達に対する政府保証や預金保険機構の業務の特例など、所要の規定を整備しております。
 続いて、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について申し上げます。
 この法律案は、株式会社産業再生機構法の施行に伴い、預金保険機構が整理回収機構に委託して行っている健全金融機関からの資産の買い取りにつき、その申し込みの期間を一年間延長するとともに、中小企業信用保険法その他の関係法律について、規定の整備を行うものであります。
 以上が、これら法律案の趣旨であります。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 経済産業大臣平沼赳夫君。
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
国務大臣(平沼赳夫君) 産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 現行の産業活力再生特別措置法は、経営資源の効率的活用を通じて我が国経済の生産性の向上を実現するため、事業者が実施する事業再構築の円滑化等の措置を講じることにより我が国産業の活力の再生を速やかに実現することを目的として、平成十一年八月に制定されました。同年十月の施行以来百八十件余の支援を行うなど積極的な活用がなされておりますが、本年三月末をもって、支援措置を受けるための計画提出期限が終了することになっております。
 同法の施行後、我が国経済の生産性は一たん回復が見られたものの、近年、過剰供給構造や過剰債務の問題が深刻化し、また、これらを背景として設備投資も低迷が続いており、生産性は再び低下に転じております。
 こうした状況を克服するためには、過剰供給構造や過剰債務の問題の解決に資する事業者の取り組みを支援、促進することが極めて重要であり、本法律案は、このための施策を講ずるものであります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、本法律案は、これまで講じられてきた事業再構築に向けた取り組みを支援する事業再構築計画に加え、過剰供給構造の解消を目指して二以上の事業者が共同で実施する事業再編の取り組みを支援する共同事業再編計画、他の事業者から事業を承継して当該事業に係る経営資源をより有効に活用しながら生産性の向上を図る取り組みを支援する経営資源再活用計画、事業者が国内に開発製造拠点を整備する取り組みを支援する事業革新設備導入計画の三類型を追加して支援対象を拡大することとしております。
 また、支援措置につきましても、新たに、企業組織の再編成や事業再生を機動的かつ柔軟に実現できるよう、株主総会決議にかえて取締役会決議でできる簡易組織再編成の範囲の拡大、増資と同時に行う減資等に関する手続の緩和等の商法上の特例措置を講ずることとしております。
 さらに、これらの事業活動に必要な資金の確保を円滑化するため、課税の特例、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の特例等の措置を講ずるなど、支援措置を拡充することとしております。
 第二に、中小企業の再生につきましては、多種多様で地域性も強いといった特性を踏まえつつ、種々の問題を抱える中小企業に対して再生の支援を図るため、商工会議所等に地域の関係者から成る中小企業再生支援協議会を設置し、中小企業の再生への取り組みに対する指導及び助言等の業務を行う体制を整える等の措置を講ずることとしております。
 以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 株式会社産業再生機構法案(内閣提出)、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小沢鋭仁君。
    〔小沢鋭仁君登壇〕
小沢鋭仁君 民主党の小沢鋭仁です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表し、本日議題の三法案について、総理及び関係大臣に質問いたします。(拍手)
 なお、三法案のうち一法案は他の法案に伴う法案でありますので、以下、二法案と呼ばせていただきます。
 本日の議題であります産業再生機構法及び産業活力再生特別措置法改正案の説明を初めて聞いたとき、私は、政府、あるいは官と申し上げていいのかもしれません、政府がここまで民間企業や産業にコミットすることの異常さに、驚きを禁じ得ませんでした。そして、逆に言えば、ここまでやらなければならないほど病んでいる我が国経済の状況に、改めて思いをめぐらせました。
 失われた十年という言葉がありますが、九〇年代が終わって二十一世紀になっても、一向に我が国経済には明るさが見えてまいりません。このデフレ不況が続いていけば、失業や倒産はさらに増加し、年金資金の運用も悪化し崩壊の危機を迎えるなど、いわば我が国の経済社会システムがメルトダウンする危険すらすぐそこにあると言えましょう。
 こうした事態を前にして、小泉総理は、就任以来、構造改革なくして景気回復なし、あるいは、改革なくして成長なしと訴えてまいりました。私は、一般論としては一見正しく聞こえるこの方針こそが、今日のデフレのもとにおいては、さらにデフレを深刻化させ、不況を一層悪化させていると考えています。今日の不況は、今や、政策の誤りによって加速されている小泉政策不況そのものと言っても過言ではありません。(拍手)
 予算委員会において、我が党の菅代表は、質問の最初に、竹森俊平氏の「経済論戦は甦る」という本について総理に尋ねました。総理は、読んでいないとのお答えでございましたが、今もまだ読んでいないのでしょうか。本日議題となっている産業再生機構法の本質にかかわることが記されています。
 デフレのもとで、ある商店主の年収が一千万、八百万、七百万と減っていったとします。生活を当然切り詰めます。しかし、その商店主が銀行に債務があった場合、借金があった場合、切り詰めるだけでは終わらず、債務が返済できなくなるという限界点が必ず存在します。そこを超えれば、いわば倒産であります。つまり、債務が介在することにより、商店主に起こったいわゆるマイナスのショックは、ある段階から非連続的に極めて大きな経済損失を生み出すのです。銀行にとっては、不良債権の発生であります。
 日常よく起こっているこうした出来事をマクロ的に見るとどうなるか。
 過剰債務のもとで債務者が債務の返済に走る。銀行においては、預金通貨の減少が起き、貨幣の流通速度の低下が起こる。そして、これは物価の下落を生む。企業の純資産価値が低下し、破産する。あるいは、利潤の低下が生じ、生産、販売、雇用の削減を促す。国民の間に悲観論と自信喪失が生まれ、買い控えが起こる。金利は、デフレのもとで、名目利子率は低下するのに実質利子率は上昇する。
 これはデットデフレーション理論と呼ばれ、米国の経済学者、アービング・フィッシャーが、一九三〇年代の大恐慌の最中に提唱したものです。
 竹森氏は、フィッシャーのこの研究が明らかにしたものが、約七十年たった今日、太平洋を隔てて我が国で起こったことに驚いています。そして、まさに、機構法はこのデフレのもとで借金に苦しむ企業が対象なのです。
 総理、今日、我が国で起こっているのは、まさに、このデットデフレーション、このメカニズムではないのでしょうか。
 つまり、デフレと借金のこの二つがキーワードで、それへの対応策は、大恐慌の経験及び今日の経済学に照らせば、総理の唱える構造改革ではなく、金融政策の強化、すなわち、金融緩和、リフレ政策なのであります。金との兌換を停止し、貨幣供給をふやした国から順に、デットデフレーションから脱却していったのです。構造改革は中長期の課題としてはやらなければならないことでありますけれども、デフレ不況に対してはかえって逆効果だというのが、この歴史から得た経済学の教訓であります。肺炎に苦しむ病人に、一般的には正しいことだからといって、ランニングによる体力増強を強いるようなものです。物事にはタイミングというものがあります。総理の御所見をお伺いします。
 総理、最近の総理の得意のフレーズは、「悲観論からは何も生まれない」であります。そのとおりだと私も思います。
 問題は、最大の悲観論者はどこにいるのかという点であります。あれもできない、これもできない、できない、できないと言い続けている公的セクターがあります。日本銀行です。先日も、政府が日銀に提案した、国債の買い入れ額の増額要求が、またしても政策決定会合で否定されました。総理は、「政府、日銀一体となって」と繰り返しこの本会議場でも答弁してまいりましたが、客観的に見て、一体となっているとはとても思えません。
 経済学者である竹中大臣にお尋ねします。
 竹中大臣が進めようとする不良債権処理の加速に当たっては、私は、当然、金融緩和を伴うべきで、現在の日銀のスタンスでは不十分であると考えます。政府の求める政策に対してこれだけ拒否を続けるのでは、一体となった対応は十分にできているとは言えないと思いますが、いかがでしょうか。率直にお答えいただきたいと思います。
 冒頭申し上げましたように、この産業再生機構の仕事は、形式的形態は株式会社とはいえ、官がここまでやることが妥当かどうかが問われるものであります。こうしたケースの場合、一般的に、歴史あるいは諸外国に例があるかどうかは大変役に立ちます。
 まず、我が国の歴史を振り返ってみると、戦後わずか一年を経過した時点で、企業再建整備法及び関連法が立法化されており、そこでは、事業が継続できるもの、あるいは新規事業にかかわるものを新勘定、残りの部分を旧勘定と二つに分離して再建を図っています。そして、これは事業会社と金融機関の双方に同種の法律を制定していました。
 古い事例でありますけれども、文献に当たっていくと、焼け跡から立ち上がろうとする国民のエネルギーを法制度がこのようにして支えていたのかがよくわかり、先人の見識や努力に思わず頭が下がる思いがいたします。
 結果については、その後の急激なインフレが特別損失額を減額させていっており、その法制度がどれだけ直接効果があったかは、学者の間でも意見が分かれるところです。しかし、その当時にもあった重要なルールは、特別損失額の処理は株主と債権者に応分の負担を負わせるというものです。
 今回の二法案は、公的部門の負担にのみ依存し、これまでの企業活動を肯定してきた株主や債権者の負担ルールが明確でない、そういう指摘があります。総理の答弁を願います。
 さらに、一九六三年には、迫りくる自由化の波に対処するものとして、特定産業競争力強化特別措置法が立案されました。今日の我が国産業の問題点を過剰供給構造と考える産業活力特別措置法案と極めて類似のものであります。作家の城山三郎さんの「官僚たちの夏」という小説は、まさに、この特振法を推進した当時の通産省を舞台にしたもので、自由化の波に対して、国主導で産業構造を変えていこうとする官僚たちの気迫が伝わってきます。
 今回の二法案は、これに対し、あくまでも市場原理をベースにした対応となっているわけですが、それだけに、例えば、債権放棄の計画には強制力がなく、果たしてどれだけの効果が実現できるのか、予想がつかない状況です。悪く言えば中途半端な代物との批判に対してはどうお考えになるのか、総理の御答弁をお願いします。
 次に、諸外国の例については、私の調査では、直接的に参考になるケースは見られませんでした。もちろん、金融分野の再生については、スウェーデンや韓国に事例があることは、これまでの国会審議において明らかにされてきているところです。
 いずれにしても、内閣府としては、産業再生機構を立案するに当たり、参考にした海外事例はあるのでしょうか。もし、ないとするならば、それだけ、この機構が珍しいもの、特殊なものと言えるのではないかと思いますが、谷垣担当大臣の御答弁を願います。
 次に、二法案、特に今回新たに立案された産業再生機構法は、名称に明らかなように、産業に焦点を当てたものとなっています。
 これまで、ややもすれば金融部門の不良債権問題、それも、さらに直接的な言い方をすれば、バランスシート問題に政策的関心がほとんど向かっていたことを考えれば、不良債権と裏表の関係である企業側の問題に関心を向けるのは、遅きに失したとはいえ、当然のことと言えましょう。そして、さきに述べたように、企業においては、デフレのもとでの債務ほど厄介なものはなく、それが一企業だけにとどまらず、我が国全体に大きなマイナス要因になっているからであります。
 問題は、それにしても債権・債務問題は裏表の関係でありますので、それが結局は金融機関の救済になってしまうという懸念であります。非メーンが債権放棄をする、しかし、それによって経営が悪化することになり公的資金の投入がなされる。つまり、形としては、非メーンの債権放棄の見返りとして国民の税金である公的資金が注入されるということにもなるわけで、国民から見ると、極めて不明瞭な姿に映ることになります。総理の御所見を求めます。
 二法案に関する新聞報道には、四大銀行グループは九十億円ずつ、金融界全体で五百億円の出資など、巨額な金額が毎日躍っています。一方、地域経済の厳しい環境の中で本当に苦しい経営を強いられている中小企業の経営者たちは、こうした数字を見て、まるで別世界のことのようだと嘆いています。
 片や大企業には債権放棄を行いながら、中小企業には従来より高い金利の改定を強制しています。中小企業の経営者は、個人保証を入れさせられ、返済ができなくなれば、現実は、有限責任では済まず、身ぐるみすべて取られることになります。今日の日本で、文字どおり命がけで仕事をしているのは、こうした中小企業の経営者や従業員であります。(拍手)
 そうした分野における対策は、今回、極めて不十分です。今回の特別措置法改正も、ないよりはましだが、従来からやっている倒産防止対策費の積み増しの方が本当はありがたいとの声も聞こえてきます。政府の中小企業への姿勢が問われます。平沼大臣、いかがでしょうか。
 最後に、この不況の中、これまでも、民事再生法がつくられ、会社更生法が改正され、破産法の改正も近く予定されています。そして、今回の二法案です。しかし、こうした措置も、デフレ不況という根源を絶たなければ、イタチごっこの繰り返しであり、一向に暗いトンネルを抜けることはできません。
 デフレをとめることのできる政治、政権、政治家こそが、今、国民が政治に期待し、求めているものです。そして、それは正しい政策を行うことで十分可能だと私は確信しております。それができないのなら、不況に苦しむ国民のために潔くみずから退くべきことを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小沢議員にお答えいたします。
 大恐慌時代の経験を踏まえたデフレ不況へのあるべき対応策についてでございます。
 竹森氏の著書を全部は読んでおりませんが、要点は承知しております。
 確かに、デフレは、実質債務負担の増加や企業収益の圧迫などを通じ、民間需要や雇用などに悪影響を及ぼすものであり、日本経済再生のためには乗り越えなければならない課題であります。
 しかしながら、大恐慌当時と現在では、世界的な政策協調の枠組みや、社会保障などのセーフティーネットの整備状況、物価下落等の規模などの点で、大きく異なっております。また、現在、我が国には、高い技術力、豊富な個人資産など、経済発展を支える大きな基盤が存在することも忘れてはならないと思います。
 政府としては、デフレの克服を目指しながら構造改革を進め、こうした潜在力を一日も早く顕在化させることにより、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく考えであり、このため、日本銀行の金融政策と一体となって総合的な取り組みを進めてまいります。
 株主や債権者の負担ルールについてでございます。
 政府としては、民間だけでは進まない事業の再生については積極的に支援をする必要があると考えておりますが、債務者企業が過剰な債務を負っている場合には、通常、債権放棄や減資等により、債権者や株主に応分の負担をしていただくことになると考えております。
 二つの法案の効果についてでございます。
 産業再生は、本来、民間の自主的な取り組みを通じて行われるのが望ましい姿であります。
 このため、産業再生法により支援措置を通じ民間の自主的取り組みを促すとともに、さらに、民間だけで再生が進まない場合には、産業再生機構が民間の英知と活力を最大限活用しながら事業の再生を支援していくことが必要であり、これにより、我が国の産業再生を加速してまいりたいと考えております。
 金融機関の債権放棄と公的資金の投入についてでございます。
 事業再生に伴い経済合理性を有する債権放棄等を行うことは、金融機関にとって、一時的には厳しくとも、残った債権の保全、バランスシートの健全化等により、経営基盤が強化されることになります。
 さらには、産業の再生により金融機関の収益機会が拡大する等の効果もあり、今回の産業再生に向けた取り組みが金融機関への公的資金の投入につながるとの御指摘は当たらないと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 小沢議員から、政府と日本銀行の一体となった対応についてお尋ねをいただきました。
 これまでも、政府と日本銀行は、諮問会議や日銀政策決定会合を初め、さまざまなレベルにおいて意見交換を行い、連携をとってきております。
 デフレ傾向が続く中で、その克服に取り組むことが必要でありまして、政府としては、今後とも、金融、税制、規制及び歳出の四本柱の構造改革を一体的かつ整合的に進めて、民需主導の成長の実現を目指しているところでございます。
 同時に、日本銀行においても、まさに小沢議員おっしゃる、貨幣供給がふえるような状況が実現できるように、さらに実効性ある金融政策の運営を行っていただけるように期待しているところでございます。
 いずれにしましても、日本銀行とは、今後とも、その自主性を尊重しつつ、密接に連携をとってまいりたいというふうに思っております。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 小沢議員より、参考にした海外事例についてのお尋ねがございました。
 産業再生機構法案の検討に当たりましては、スウェーデン、韓国等、海外の事例も参考にしておりますが、基本的には、我が国の金融及び産業界の実情を踏まえて立案したものであります。
 したがって、産業再生機構は、これら海外の事例とはその具体的な手法において異なるものとなっておりますが、不良債権処理と産業の再生を同時に進めるという目的においては、これらの国の事例と同様であると考えております。(拍手)
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
国務大臣(平沼赳夫君) 小沢先生にお答えをさせていただきます。
 中小企業の再生支援についてのお尋ねでございました。
 多様性、地域性を有する中小企業の再生のためには、改正法に規定する中小企業再生支援協議会におきまして、指導助言や再生計画の作成等の実効性のある支援を行うことが重要と考えております。
 これに加えまして、厳しい経済環境の中で、やる気と能力のある中小企業が破綻することのないように、金融セーフティーネット対策等に万全を期してまいりたい、このように思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 土田龍司君。
    〔土田龍司君登壇〕
土田龍司君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました産業再生機構関連二法案並びに産業活力再生特別措置法の一部改正案について質問いたします。(拍手)
 冒頭、まず申し上げます。
 十八日の議院運営委員会において、与党側が本日の日程を強行採決して決定したことに、強く抗議いたします。重要な予算の審議が行われているさなかに重要広範議案を本会議に提案してくるという与党側の強引な姿勢は、議会政治のルールを無視したものであり、断じて容認することはできません。(拍手)
 また、予算委員会審議における、名古屋刑務所の受刑者死亡事件に関する森山法務大臣の国会答弁は、虚偽答弁であり、国会軽視も甚だしいものであります。このような大臣には、おやめいただかなければなりません。私たち自由党は、この問題も徹底的に追及していくことを申し上げます。(拍手)
 さて、戦後の我が国の経済発展は、官主導、行政主導により行われてまいりました。この日本型経済システムが本質的に行き詰まりを迎え、未来への発展に対する本質的な障害となっております。経済主体を本当の意味での民間主体に変革するために、構造改革の断行が早急に迫られているのでございます。
 我が国産業が構造改革を迫られている背景には、このほかにも、急速に進展する経済のグローバル化、少子高齢化があり、バブル期の負の遺産ともいうべき、過剰債務、過剰人員、過剰設備等を解消しなければなりません。人、物、金を生産性の低い分野から高い分野へ円滑に移行させること、あわせて、その受け皿として、二十一世紀の日本を担う新たな産業を育てることが必要とされているのであります。
 そのためには、業法や特殊法人の廃止などの大胆な規制改革を進める一方で、改革に伴う痛みを最小限にとどめるため、所得税、住民税の半減を柱とする税制改革、国の補助金を廃止して地方の自由な発想による使途にこれをゆだねる地方分権などの構造改革を、一体的、総合的に進めなければなりません。
 私たち自由党は、小沢党首が小泉総理の施政方針演説に対する代表質問で明らかにしたように、これらの考え方を九つの基本法案として今国会に提出する方針であります。(拍手)
 小泉総理は、さきの施政方針演説で、「今、私に与えられた職責は、我が国の経済と社会の再生です。」と、イの一番に述べられました。経済と社会の再生を図るためには、自由党の主張するような法律を成立させることなくして、なし得るものではありません。口先だけで改革、改革と叫び続け、郵政の公社化など、改革の名には到底値しない制度改正を部分的に行うだけで、あとはすべて問題の先送り、その場しのぎの対応に終始していては、日本経済は悪くなるばかりでございます。
 総理は、今国会に政府が提出する法案の中に、自由党が提出を予定しているような真の構造改革に直結する重要法案が一本でもあるとお考えか。あるとすれば、どの法案がそれに当たると考えておられるのか。率直なお答えをまずいただきたいと思います。(拍手)
 ただいま提案されました三法案も、産業再生とは名ばかりで、危機感に欠け、問題意識も低いものであり、とても構造改革とは縁遠い代物であると断ぜざるを得ません。
 以下、具体的に指摘してまいります。
 まず、産業再生機構に関連してお尋ねします。
 本来、産業再生は、民間企業、すなわち民間にゆだねる分野であります。官製の再生機構をつくることが、結果としてビジネスの芽を摘み、民間の活力をそぎ、曲がった方向に産業が再生してしまうという可能性を、この機構は否定できません。産業再生を隠れみのに、経済産業省、国土交通省、財務省など、相も変わらぬ役所の権限争いが続けられており、その結果、民間のビジネスチャンスをつぶしてしまうのであります。
 欧米では、企業再生は既にビジネスとして確立しております。我が国においても、このような機構をつくるのではなく、不良債権を売り買いする市場の整備など、民間活力を引き出す環境をこそ整備すべきであります。
 企業再生は、企業自身の問題なのであります。そもそも、民間ではなく、このような機構をつくって行わなければならない必要性について、小泉総理の御所見をお聞かせください。
 確かに、この機構は、形こそ株式会社ですが、国が出資し、担当大臣まで置き、必要な資金の調達にも政府の保証がつくという、国の丸抱えの機構であります。これまでと同様、まるで日本株式会社とでもいうべき、社会主義国家のような手法をとろうとしているのであります。
 再建計画をつくらせて厳密に判定するといいますが、これをどのように判定するのでしょうか。いみじくも、塩川財務大臣は、この産業再生機構を、閻魔大王のようだと評されました。政府案は、日本的な、なあなあなやり方が入り込む余地を残し、自民党の政治家があたかも閻魔大王のような顔をして介在し、企業の生殺与奪の権限を振るい、再建見込みのあるなしにかかわらず政治力で救済するという、利権政治の温床となる可能性が極めて強い内容ではないかと思いますが、総理の御所見をお聞かせください。
 また、再建計画には、役員数の削減、給与、賞与の削減等を含む経営の合理化のための方策が具体的に盛り込まれるのか、経営責任明確化のための方策が盛り込まれるのか、株主責任明確化のための方策が盛り込まれるのか、以上三点について、産業再生機構担当大臣にお答えいただきたいのであります。
 次に、買い取り先の企業の資産を取引銀行に査定させることになっておりますが、査定が正しく行われなければ、水増し価格で買い取らされることになり、逆に、査定の仕方によっては、買い取り希望がなくて開店休業にもなりかねないと思いますが、資産査定の適正化をどのように行っていくべきだと考えておられるのか、産業再生機構担当大臣にお尋ねいたします。
 さらに、対象企業はどの業種で何件見込んでいるのか。民間からの出資を広く要請するとしていますが、どのくらいの出資が集まる見込みなのか。聞くところによれば、産業再生機構に対し地銀や第二地銀は消極的と言われており、この対象が都銀を中心とした有名企業に限定される懸念の強いものになっております。
 大企業救済偏重のこのような機構をつくり、中小企業対策をなおざりにする政府の相も変わらぬ中小企業軽視のあらわれではないかと思いますが、産業再生機構担当大臣並びに経済産業大臣の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、産業活力再生特別措置法に関連してお尋ねいたします。
 四年前の平成十一年に産業活力再生特別措置法が制定されたのは、当時も最大の政治課題であった、不況からの脱出、産業の再生、活性化をねらいとしたものでありました。低迷する生産性上昇率、下落を続ける国際競争力指数、深刻化する過剰債務など、産業界の厳しい現状を打開するため、今後二、三年かけて、選択と集中をキーワードに、事業再構築に向けて努力する企業に対して、企業が作成して主務大臣が認定した事業再構築計画にのっとって、商法の特例措置、債務の株式化のための環境整備、ストックオプション付与の対象及び上限の拡大、金融・税制上の措置を講じようとするものでありました。
 しかし、今日の事態を見れば、これらの対策が有効に機能して、生産設備の革新や経営手法の革新に結びつき、企業の再生に寄与していくものにならなかったことは明らかであります。
 産業活力再生特別措置法制定から今日までの経過の中で、何が問題であり、何が必要であると考えて今回の改正案を提出されたのか、経済産業大臣の見解をお聞かせください。
 当時、連立与党であった我が自由党は、再構築支援制度は大企業のみを優遇するものであってはならないと考え、政府案決定に際して注文をつけ、中小企業対策を法案に盛り込むよう強く主張しましたが、結局、「国は、活力ある中小企業者の事業再構築が我が国産業の活力の再生を実現するために重要な役割を果たすことにかんがみ、その円滑な実施のために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するよう努めるものとする。」という努力規定の条文を新たに追加するにとどまりました。
 今回の改正では、中小企業の事業再構築に向けた各種の支援措置が講じられておりますが、本来、四年前にこれらの施策が講じられなければならなかったのであります。当時の自由党の主張を聞いていればよかったと反省する意識がおありかどうか、小泉総理の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 政府の中小企業政策は、この程度の改正ではまだまだ不十分であります。産業再生の主役は中小企業でなければなりません。官業中心、大企業中心の経済から、中小企業が主役になって世界に通用する新しい産業をつくる必要がある。すなわち、中堅企業から小規模企業に至るまで、みずからの創意工夫が生かされるチャンスを与える環境をつくることが必要であると考えますが、小泉総理の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、具体的に中小企業対策に関連してお伺いします。
 政府が大銀行と同様に行っている、地方銀行や信用組合の地域の実情を無視した不良債権処理加速策が、地銀や信金を疲弊させ、地域の中小企業への円滑な資金供給に支障を生じているというのが実情であります。不良債権処理について、主要行と地銀、信金を同列に扱おうとする姿勢を改め、資金供給の円滑化を図るべきであると考えますが、この点について、竹中金融担当大臣の御所見をお聞かせください。
 また、中小企業向けに限定し、金融機関だけでなく、ノンバンクや商社も対象にし、保証人や担保のない中小企業への緊急融資を実施する、新たな信用保険制度を創設すべきであります。政府も検討しているようですが、対応が遅過ぎては実効性がありません。この国会中に法改正すべきであると考えますが、いかがでしょうか。次の国会でいいと言われるのであれば、その理由を経済産業大臣にお聞かせ願いたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 土田議員にお答えいたします。
 構造改革に直結する重要法案についてでございます。
 今国会においては、この産業再生関連法案を初め、既に御審議をお願いしている、あるべき税制の構築に向けた税制改革関連法案のほか、特殊法人等改革関連法案や構造改革特別区のさらなる充実を図るための法案など、構造改革を確実に進めるための多くの法案の提出を予定しているところであります。
 産業再生機構と民間活力の関係についてでございます。
 産業再生が民間主体で進むことが望ましいとの点については異論はありませんが、喫緊の課題である事業再生、産業再生が現実には必ずしも順調に進んでいないものと承知しております。
 そこで、民間の英知、活力を最大限活用しつつ、事業・産業の再生を強力に推進していく組織を期間を限って設立することとしたものであります。
 産業再生機構への政治介入についてでございます。
 産業再生機構は、専門家、有識者から成る産業再生委員会が徹底して市場原理に基づいた判断を行うなど、政治の介入を排除する仕組みとしております。さらに、政府としては、その運営を厳正に監視し、いわゆる政治介入を排除する決意であります。
 産業活力再生特別措置法における中小企業の再生支援についてでございます。
 現行の産業再生法においても、中小企業が再生や新事業開拓に取り組む場合には、信用保険の特例等の支援策が講じられておりますが、今般、同法を改正し、多様性、地域性を有する中小企業の再生にきめ細かに対応するため、中小企業再生支援協議会の設置など、施策の強化を図ることとしております。
 中小企業対策についてでございます。
 厳しい経済環境の中で、やる気と能力のある中小企業を支援するため、今般の法改正による再生支援のほか、金融セーフティーネット対策に万全を期しているところであります。また、中小企業の新規創業や新事業展開への果敢な挑戦に対して、資金確保、技術開発、人材育成等の支援策を強化してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 土田議員にお答えいたします。
 産業再生機構が支援する際の再建計画の内容にどのようなものが盛り込まれるかとのお尋ねです。
 機構は、対象企業の再建を実現するため、その再建計画を経済合理性に基づいて厳しく審査することとしており、役員数や給与、賞与等を含めたコスト、経営者の資質、それから既存株主の負担などについては、厳格に検証してまいる所存です。
 次に、産業再生機構が買い取る債権の査定についてのお尋ねです。
 機構が債権を買い取るに当たっては、原則三年以内に、買い取った債権を円滑に処分できるという処分可能性を精査した上で、買い取り価格を決定することとしています。その判断に当たっては、市場における評価との乖離がないように、市場関係者の意見を極力参考にすることとしています。
 三番目に、産業再生機構は中小企業を軽視しているとのお尋ねです。
 機構は、支援対象企業の規模の大小は問わないこととしており、その企業に再生可能性があり、機構の支援基準を満たす案件であれば、中小企業であっても機構の支援対象となります。したがって、軽視しているとの御指摘は当たりません。
 なお、機構への出資に関しては、地銀、第二地銀を含め、現在、鋭意御検討いただいているところと承知しております。(拍手)
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
国務大臣(平沼赳夫君) 土田先生にお答えをさせていただきます。
 機構は中小企業を軽視しているとのお尋ねがございました。
 産業再生機構の支援対象につきましては、今、谷垣大臣からも御答弁がございましたけれども、その企業に再生の可能性があり、機構の支援基準を満たす案件であれば、企業の大小は問わないことといたしております。
 また、中小企業の再生につきましては、機構の設置のほか、中小企業の多様性、地域性を踏まえまして、中小企業再生支援協議会の設置あるいは金融支援措置の強化等を図り、きめ細かな支援をしていくこととしておりまして、軽視しているという御指摘は当たらない、このように思っております。
 次に、現行産業活力再生特別措置法の問題点と今回の改正案の提出理由についてのお尋ねがございました。
 現行の産業活力再生特別措置法の施行以来、百八十件余りの事業再構築支援を行ってまいり、積極的な活用がなされているわけであります。同法の施行後、我が国経済の生産性は一たん回復が見られたものの、過剰供給構造や過剰債務の問題が深刻化し、生産性は再び低下してきているところでございます。今回の改正案は、こうした問題の解決に資する事業者の取り組みを支援するための措置を講ずるものでございます。
 最後に、中小企業のための新たな信用保険制度についてのお尋ねがございました。
 不動産担保に過度に依存した融資構造の改革、ノンバンク、商社等、新たな金融の担い手育成という観点から、法改正の要否等も含めまして、新たな信用保険制度の可能性を現在検討しているところでございます。
 当面の中小企業金融の確保につきましては、平成十四年度補正予算に約四千五百億円を計上いたしまして、借りかえ保証の創設等による十兆円のセーフティーネットを構築するなど、万全を期しているところでございます。
 今後とも、事態をしっかりと注視し、必要があれば大胆かつ柔軟に対応してまいりたい、このように思っております。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 土田議員から、地域金融機関の不良債権処理についてお尋ねがございました。
 不良債権の処理、これはやらなければいけないわけですが、それに伴う影響には細心の注意が必要だというふうに思っております。中小企業への円滑な資金供給の確保には特段の努力が必要であるというふうに私自身も考えております。
 中小地域金融機関の不良債権処理については、金融再生プログラムに基づきまして、まさに土田議員御指摘のように、主要行とは異なる特性を有するリレーションシップバンキングのあり方を多面的な尺度から幅広く検討しているところでございます。幅広い意見に耳を傾けながら、年度内を目途にアクションプログラムを策定するよう努力しておりますので、何とぞ御理解を賜りたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 塩川鉄也君。
    〔塩川鉄也君登壇〕
塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、産業再生機構関連法案及び産業活力再生特別措置法改正案について質問いたします。(拍手)
 この間、小泉内閣が進めてきた不良債権処理策は、日本経済に何をもたらしたでしょうか。昨年十二月の完全失業率は五・五%と過去最悪の水準、昨年の倒産件数は二万件に迫る戦後二番目の高水準です。にもかかわらず、政府は、不良債権処理をさらに加速するとして、一層大規模な失業、倒産を生み出そうとしています。
 今回の法案は、昨年十月の「改革加速のための総合対応策」において、不良債権処理加速策とセットの産業再生策として出されたものです。しかし、その内容は、大銀行と特定大企業の救済、支援の一方で、業界全体で労働者、中小企業を犠牲にしたリストラを進めるものです。これでどうして、産業再生、日本経済の再生につながるのでしょうか。
 まず、産業再生機構関連法案について質問いたします。
 第一に、機構が銀行の責任を肩がわりする問題です。
 産業再生機構は、いわゆる非メーンの銀行から、重い借金で経営の振るわない企業への債権を買い取ることで、銀行間の利害調整を図り、企業の経営再建を推進するとしています。この債権買い取りの担保として、政府が十兆円の保証枠を設けています。企業再生に失敗すれば、債権買い取り分の損失の穴埋めのため、この十兆円の保証枠が取り崩されることになる仕組みです。つまり、そのツケは国民負担です。これでは、本来なら銀行が行うべき企業再生を機構が肩がわりし、銀行の責任を棚上げすることになるのではありませんか。
 そもそも銀行は、顧客である企業の経営に責任を持つべきものです。企業経営が不振に陥ったからといって、国民の税金でそれを救済するいわれは何もありません。答弁を求めます。(拍手)
 機構が支援企業を決める基準は、主務大臣が定めるとしているだけです。これで、支援決定の公正さが担保されるのでしょうか。結局は、恣意的になるのではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 機構が買い取る債権は、当初、非メーン行の要管理先債権と言われていました。その後、メーン銀行からの買い取りもあり得る、要管理先債権でなくてもいい、社債も買うと、どんどん広がっています。支援決定すれば、際限なく銀行支援に税金をつぎ込むということになるのではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 機構が債権を買い取る価格は、「再生計画を勘案した適正な時価」とされていますが、この「適正な時価」をどうやって決めるのですか。銀行にとってメリットがあってこそ、買い取りも進むはず。高値買いが運命づけられています。結果として、機構が多大なリスクを負うことになるのではありませんか。
 第二に、機構が事実上、特定大企業の救済機関になる問題です。
 政府は、機構の支援対象は企業規模を問わないと言いますが、機構が対象とするのは、メーンバンクと複数の非メーンバンクの間で利害が複雑に絡み合うような企業です。したがって、中小企業は事実上除外されるのではないでしょうか。産業界からも、「実際は特定企業再建機構なのではないか」という疑問も出されています。結局、ほんの一握りの大企業に限られるのではありませんか。
 第三に重大なことは、企業再生をにしきの御旗に、機構が大リストラを進めることです。
 機構の役割は、メーンバンクと一体になって、「強力に企業のリストラ・経営再建を推進する」ことです。事実上、特定大企業の救済のために、銀行の肩がわりをして、労働者、中小企業切り捨ての大リストラを行うということではありませんか。一つの企業を再生できたとしても、その事業分野の労働者、中小企業を切り捨てたのでは、その産業分野の再生はあり得ません。答弁を求めます。(拍手)
 次に、産業活力再生法改正案について質問いたします。
 一九九九年の産業活力再生法制定時、我が党は、この法案が、大企業の大量人減らしにお墨つきを与え、全産業にわたるリストラ、人減らしを推進する法案であり、これでは、日本経済は再生するどころか、「一層の大量失業と雇用不安、下請・中小企業の倒産、廃業と地域経済の疲弊をもたらし、大不況を加速させる」ものであると厳しく指摘をしました。
 産業活力再生法の施行から三年半で、認定された百七十九件について見ると、計画ベースで見ても、トヨタの三千三百人を筆頭に、自動車メーカー七社で一万二千人、四大メガバンクで二万人、ダイエーで一万九千人など、七万人を超えるリストラ、人減らしが行われています。そんな企業に、登録免許税だけで四百億円もの減税が行われています。
 業績が回復したと言われている認定企業もありますが、その回復も、人員削減を中心とするリストラ効果によるものです。かえって、このリストラが失業者を生み出し、下請中小企業を切り捨て、一層、日本経済全体を冷え込ませています。まさに、我が党が指摘したように、産業活力再生法が大不況を加速させてきたのではありませんか。
 以下、法案に即して質問いたします。
 第一に、新たに創設される共同事業再編計画についてです。
 個々の企業のリストラだけでは「過剰供給構造」は解消できないとして、複数の企業の一体的なリストラ策を支援することで業界全体の再編を促そうとしています。
 しかし、「過剰供給構造」をつくり出したのは、相次ぐリストラや国民負担増が所得を奪い、需要を冷え込ませたことが原因です。この上、さらにリストラの規模を、企業レベルから、企業と企業の壁を超えた産業レベルへと一層拡大することは、以前にも増して需要を落ち込ませるだけではありませんか。
 第二に、もう一つの大きな柱である経営資源再活用計画についてです。
 改正案では、企業再生ファンドによる他力での企業再建を可能とするとしています。しかし、我が国では、企業再生ファンド市場は未発達な状態です。この現状で企業再生ファンドによる再建を加えたとしても、経営権を獲得して企業を再建した後、短期間で売却益を得ることを目的にした、いわゆるハゲタカファンドにもうけ口を提供するものにしかならないのではありませんか。
 第三は、リストラのための優遇税制についてです。
 これまでは、認定企業に対し、設備廃棄分のみを優遇税制の対象としていました。ところが、改正案では、リストラされる労働者に支払う割り増し退職金の割り増し部分についても新たに減税の対象にするとしていますが、これでは、認定企業は、リストラ、人減らしを進めれば進めるほど、税制上の優遇措置が受けられるということになります。まさに、首切り奨励税制ではありませんか。(拍手)
 このように、大規模なリストラが推進されれば、多くの労働者が失業し、中小企業の倒産が相次ぐことは必至です。その影響をどう受けとめているのでしょうか。答弁を求めます。
 今、日本経済に必要なのは、経済の主役である中小企業の経営を支え、国内総生産の六割を占める個人消費を温める政策に転換することです。不良債権処理加速策を撤回することこそ、最大の中小企業・雇用対策であり、日本経済を再生させる道です。このことを指摘して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 塩川議員にお答えいたします。
 企業再生に関する銀行の責任と国民負担についてです。
 産業再生機構は企業自身及びメーン銀行とともに企業の再生を目指すのであり、メーン銀行は債権放棄等の応分の負担を負うことになります。また、非メーンの銀行から債権を買い取る際は、厳格に算定した適正な時価で買い取ることとしております。
 したがって、国民の税金で銀行の責任を肩がわりし、企業を救済するとの御指摘は当たらないと思います。
 産業再生機構の支援対象企業についてです。
 産業再生機構の支援対象は、規模の大小を問わず、再生可能性があり、支援の基準を満たす企業としており、中小企業についても、条件に合うものについては、その再生に全力を挙げて取り組んでまいります。
 産業再生と労働者、中小企業との関係についてです。
 産業再生機構は、有用な経営資源を生かして、将来性のある事業を中心に再生を図るものであります。
 これにより、不振部門に引きずられて優良な部門までが破綻に至ることを未然に防止することができ、雇用の維持や取引先の中小企業の取引の確保を図ることができるものと考えております。
 産業再生法が大不況を加速させたのではないかとのお尋ねでございます。
 産業再生法は、企業の人材や技術などの経営資源を有効に活用する取り組みを支援することにより産業活力の再生を図るものであり、これまでに相応の成果を上げてきております。
 雇用については、その安定に配慮して運用を行っているところであります。
 共同事業再編計画についてです。
 過剰供給構造にある事業分野においては、いずれの企業も経営資源を有効に活用できず、体力を消耗して、前向きな設備投資や研究開発が低迷しております。産業活力の再生のためには、この構造の是正が不可欠であります。
 なお、雇用の安定については、今後とも十分配慮してまいります。
 企業再生ファンドについてです。
 人材、技術等の経営資源を散逸させることなく事業の早期再生を図る上で、企業再生ファンドの果たす役割は極めて重要であります。本法案では、経営資源を有効に活用する取り組みを支援することとしている一方、短期的な売却益を目的とし、事業を伸ばす観点を有しない取り組みは、支援の対象とはいたしておりません。
 税制上の優遇措置は首切り奨励税制ではないかということでございます。
 企業の事業再生と失業なき労働移動の両立を実現していくことが重要であります。お尋ねの税制措置は、再就職あっせんや教育訓練を行う場合に限って認めることとしており、事業者が雇用の安定に配慮した支援を行うことを奨励するものであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 塩川議員にお答えいたします。
 産業再生機構の支援基準についてのお尋ねがありました。
 機構の支援決定の公正さを担保することは極めて重要であり、そのために、支援基準をあらかじめ主務大臣が定めるものとしたものです。
 また、支援基準の内容は公表することとしており、この基準に従って専門家、有識者から成る産業再生委員会が判断を行うこととしているため、支援決定の公正性は担保されるものと認識しております。
 次に、機構の買い取り対象の拡大についての御指摘がありました。
 機構の買い取り対象は、非メーン行の要管理先債権を基本にし、産業再生に必要な貸し付け、出資、信託などの機能を有する点は、当初より変化はありません。
 また、債権の買い取りに当たっては、原則三年以内に、買い取った債権の処分ができると見込まれることなど、出口を見据えた判断を市場原理に基づき行います。
 したがって、際限なく銀行支援に税金をつぎ込むという御指摘は当たりません。
 次に、機構の買い取り価格についてのお尋ねです。
 機構が債権を買い取るに当たっては、原則三年以内に、買い取った債権を円滑に処分できるという処分可能性を精査した上で、買い取り価格を決定することとしております。
 その判断に当たっては、市場における評価との乖離がないように、市場関係者の意見を極力参考にすることとしております。
 したがって、機構が高値買いで多大なリスクを負うことになるという御指摘は当たりません。(拍手)
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
国務大臣(平沼赳夫君) 塩川議員にお答えをいたします。
 雇用と中小企業への悪影響についてのお尋ねでありました。
 産業再生法におきましては、雇用の安定に配慮することを明定いたしておりまして、事業者に必要な措置を講ずることを求めるとともに、政府といたしましても、雇用対策に万全を期してまいるつもりでございます。
 中小企業につきましても、再生を図る企業からの受注の減少等によりまして直ちに経営に支障が生じないよう、金融セーフティーネットの充実や下請中小企業の支援等に努めていきたいと思っております。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 塩川議員にお答えを申し上げたいと思います。
 産業再生法は、企業が事業を再構築することによりまして、その活力を再生し、雇用の維持を図ろうとするものと考えております。しかし、労働者の再就職が必要なことも生ずることはあるわけでありますので、中央と地方の連携を密にいたしまして、きめ細かく対応していきたいと考えているところでございます。
 最も重要なことは失業の予防でありまして、その点につきまして、経済産業省と連携し、全力で取り組んでまいりたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 大島令子君。
    〔大島令子君登壇〕
大島令子君 社会民主党・市民連合の大島令子です。
 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、ただいま提案されました三法案に関しまして、小泉総理大臣並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)
 質問に先立ちまして、私は、この本会議場にいらっしゃる大臣並びに政治家の皆さんに訴えたいことがあります。
 アメリカによるイラクへの武力行使問題に対しまして、先週末、全世界で反戦のデモが行われました。私たちは、平和の礎のもとに国会審議を行っているわけであります。再び戦火に飛び込むようなことがあれば、ただいま提案された法律も意味のないものになり、無視されるわけです。経済の安定も、平穏な暮らしも、意味がなくなるわけです。平和あっての暮らしであり、経済であり、産業再生であります。
 私は、この真理に、この議場にいる政治家の皆さんに勇気を持って立ち向かっていただきたい、このことを訴えて、質問に入ります。(拍手)
 企業存亡の分水嶺とも言われる株価百円以下の企業の増勢は、我が国経済の病巣の深さを物語っています。不良債権処理と産業再生の一体的解決を目指す産業再生機構の創設がデフレ対策のかなめへと押し上がらざるを得ないのは、小泉政権の経済失政によってもたらされたこの現実があるからこそとも考えます。同時に、それは長期不況の主因である小泉流改革を棚上げにしたままの泥縄的手法であることは、火を見るより明らかです。
 また、自民党長崎県連の違法献金問題が突きつける現政権の腐敗体質を思うにつけ、心配の種もつきまといます。そうなれば、総理の持論とする市場原理にゆだねれば退場が迫られるべき企業等についても、安易な延命に手を貸すだけに終わり、不良債権処理は一向に進まないという、笑えぬてんまつが待つことになります。
 そうならないという根拠を一体どこに見出しているのか、総理の明確な答弁を求めたいと思います。(拍手)
 さて、私自身は、企業の再生を支援していくために、産業再生機構のような枠組みをつくるという手法自体を否定するものではありません。しかしながら、政府が考える産業再生機構は、産業の再生ではなく、ゼネコンなど特定の企業を救済するための枠組みではないのかという疑問は、どうしても払拭できずにいます。この懸念は国民の間にも広がっていることは、周知の事実です。
 例えば、新聞に寄稿された某ゼネコンの社長さんは、大要、次のようなことを訴えておられます。
 すなわち、産業再生機構では、健全な競争を通じて市場から撤退すべき企業をも救済することになりかねない。産業の供給過剰は是正されるどころではなく、政府のえこひいきによって経営基盤まで強化され、みずからの才覚等で生き残りに奮闘する企業等が、こうむる必要のない競争に、端的に言えば不当な競争に巻き込まれざるを得ない。これでは健全な企業まで疲弊してしまう。果たしてこれが産業再生なのかという、至極真っ当な批判を行っておられます。
 政府は、適正な市場競争を通じて、あるいは、合併や業種転換を進めるという政策を通して、供給過剰の産業を適正化し、日本の産業の再生を図っていくという方針を持っておられます。しかし、この政府の大方針と産業再生機構が、私には矛盾に思えてなりません。政治家や役所の恣意によって市場のあり方がゆがめられるのではないかと心配するのは、杞憂でしょうか。
 産業再生機構において、市場の健全性はどのように担保されることになるのか、総理の明確な答弁を求めます。
 機構法案は、貸出金利などを減免した要管理先債権に分類される企業のうち、再生可能な企業の債権の買い取りに二年、再建計画の終了に三年という期限のめどを設けています。
 したがって、焦点は、機構がどういう企業の債権を買い取って再生させるのか、その基準となります。
 三年以内の再生計画の終了時点で、自己資本利益率二ポイント以上の向上など生産性向上基準と、負債が年間キャッシュフローの十倍以内などの財務健全化基準を同時に満たすことが、買い取りの要件となります。
 留意すべきは、硬直的に適用することはしない姿勢もあわせて明らかにしたことです。産業の実態等を踏まえたもっともな判断だと政府は吹聴したいのでしょう。しかし、基準があいまいとなったことは、もろ刃の剣にもなります。
 例えば、大企業がつぶれれば、関連する取引先への影響は大きくなる。この帰結は自明です。そこに政府が絡めば、再建の可能性にかかわらず、救済に向かうバイアスが増幅することは、ある意味では常識でしょう。大き過ぎてつぶせない企業を政府のお墨つきで助ける、例の住専処理や大手金融機関の破綻の際の議論になったツービッグ・ツーフェールの回路ができ上がることになります。
 業種ごとの事情のみならず、その時々の事情に応じた柔軟な判断に意を用いれば用いるほど、判断に裁量の余地が介在する幅は広がらざるを得ません。つまるところ、機構は、選別バイアスの動機を絶えず内包することになるのではありませんか。答弁を求めます。
 さて、中小企業が下支えしてきた我が国経済の実態からして、看過できないのが、再生機構が扱う企業、債権にかかわる問題です。
 常識論として、再生機構が数の多い中小企業を網羅的に対象とすることは困難であり、結果的には、機構の守備範囲は大企業の債権が主になることは不可避と言わざるを得ません。大企業の過剰債務問題が未曾有のデフレ不況の主因であることは、疑いようがありません。しかし、過剰債務問題の深刻さは、規模の大小を問わぬこともまた真理です。
 中国を筆頭とするアジア諸国の台頭で、世界的な供給過剰構造は拡大の度をふやしつつあります。中小企業に焦点を当てた産業再生の重要性は、機構法論議が真に深まるならば、浮き彫りにならざるを得ないのです。政府にその覚悟がない限り、機構が描く産業再生、経済の再生とが砂上の楼閣の産物としてついえる。この無為の結果を招くことは必至でしょう。
 再生機構の機能、役割が善意かつ善良な中小企業の事業再生にいかなる具体的有効性を発揮し得るのか、わかりやすい答弁を求めます。
 次に、産業活力再生特別措置法の一部改正案について、平沼経済産業大臣にお尋ねいたします。
 我が国の産業再生のかぎは、四百八十四万企業にも及ぶ中小企業の再生です。政府は、中小企業の再生機関としては、中小企業再生支援協議会をつくって支援していくとしていますが、この協議会への予算支出は、わずか二十億円です。しかも、この予算の主要なものは、中小企業の再生支援をする弁護士、会計士、税理士等に支払われ、再生可能と判断された中小企業は、既存の中小企業向けの融資を受けられるだけにすぎません。
 中小企業の資金環境が一層厳しくなることが予想される中で、果たして、この協議会の枠組みだけで再生できる中小企業が出てくるのか、経済産業大臣に明確な展望をお聞かせいただきたいと思います。
 さて、百四十五通常国会に提案された産業活力再生特別措置法案に対し、我が党の横光克彦議員が次のような質問を行っています。
 「本法案で雇用に十分な配慮が見られない規定ばかり並べ、あとは労働法制にお任せという無責任な姿勢では、到底雇用不安は解消されません。」との質問に、当時の通産大臣は、「事業再構築を実施する場合には、その雇用する労働者の理解と協力を得つつ行うよう努め」、「国または都道府県に対しても、雇用の安定等に関し必要な措置を講じるよう努めるべきことを」規定している、「こうした規定により、雇用への悪影響を防止し、雇用面にしわ寄せしない形で事業再構築の円滑化を図ることができるものと考えております。」と答弁されております。
 では、端的に、失業率という数字で、この答弁を検証させていただきます。
 法律施行年である一九九九年十月の失業率は四・七%、翌年の二〇〇〇年末には四・八%、二〇〇一年七月からは五%台に突入し、十二月には五・五%、そして、二〇〇二年は完全に五%台で推移しています。この数字は、さきの大臣の答弁を裏切っているのではありませんか。
 経済産業省は、この法律によって、希望退職者はありますが、解雇はないと言っています。私は、この認識自体、問題があると思います。希望退職者なら失業率に影響はないとの認識ですか。
 失業の問題一つをとっても、数字が示すとおり、結果は歴然としています。そればかりか、一九七八年の特定不況産業安定臨時措置法施行以来、時限で繰り返してきた法律が、経済状況の中でその効果として醸成されなかったのはなぜなのか。
 今回、この法案の一部改正ということですから、当然、これまでの総括を踏まえての内容となっているものと思っておりましたが、雇用に積極的に配慮した内容にはなっていません。一九九九年の成立時には附帯決議まで可決されながら、雇用が悪化しているという実態を見るにつけ、政府の認識の甘さを指摘せざるを得ません。
 どうか、小泉総理が深刻に今の事態を受けとめているということをこの法案でお示しいただきたい。総理の、雇用に対する通り一遍の方針ではなく、国民の安心を得られるような、また、途方に暮れている人が再び現実に立ち向かう元気が出るようなお答えを聞かせていただきたいと思います。
 以上で私の質問を終わりにいたします。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 大島議員にお答えいたします。
 産業再生機構と不良債権処理についてでございます。
 産業再生機構の債権の買い取り等の決定に当たっては、専門家、有識者から成る産業再生委員会が、原則三年以内に、買い取った債権の処分ができると見込まれることなど、出口を見据えた判断を市場原理に基づいて行うこととしております。
 したがって、機構が本来淘汰されるべき企業を単に延命させ、不良債権処理が一向に進まないことになるという御指摘は当たらないと考えます。
 産業再生機構と市場の関係についてでございます。
 事業再生、産業再生が喫緊の課題であるにもかかわらず、思い切った再生の取り組みは必ずしも多くはないことから、機構を設立し、民間の取り組みを支援することとしたものであります。
 債権の買い取り等の決定に当たっては、専門家、有識者から成る産業再生委員会が、民間の英知、活力を最大限活用して、徹底して市場原理に基づいて判断を行うこととしております。
 現在の雇用情勢の認識についてでございます。
 産業再生法においては、雇用の安定に配慮することを明定し、これに従った運用を行っております。今後も、この法律の適切な運用に加え、構造改革の加速化による影響に十分配慮して、雇用対策に万全を期してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 大島議員にお答えいたします。
 産業再生機構の買い取り基準についてのお尋ねがありました。
 事業の再生可能性は、数値で一律に判断できるものではなく、業種特性等を踏まえた判断が必要です。
 ただ、機構の債権の買い取り等の決定に当たっては、専門家、有識者から成る産業再生委員会が、原則三年以内に、買い取った債権の処分ができると見込まれることなど、出口を見据えた判断を市場原理に基づいて行うこととしております。
 したがって、裁量が大きく、大き過ぎてつぶせない企業を助けるとの御指摘は当たらないものと考えます。
 次に、産業再生機構の中小企業への対応についてのお尋ねがありました。
 機構は、支援対象企業の規模の大小は問わないこととしております。機構の支援を希望する企業が大企業であろうと中小企業であろうと、その企業に再生可能性があり、機構の支援基準を満たす案件であれば、機構は全力を挙げて再生のための支援に取り組むこととしております。(拍手)
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
国務大臣(平沼赳夫君) 大島議員にお答えをさせていただきます。
 中小企業再生支援協議会についてのお尋ねでございました。
 多様性、地域性を有する中小企業の再生のためには、各都道府県に設置する中小企業再生支援協議会において、指導助言や再生計画の作成等の支援を行うことが極めて有効と考えております。
 予算の点について御言及がございましたけれども、今回、補正予算で第一次に手配をさせていただきまして、順次、皆様方の御賛同をいただいて、拡大をしていかなければならない、こういうふうに思っております。
 また、同協議会の設置のほかに、今、厳しい環境に置かれております中小企業の皆様方に、その再生を図るための中小企業に対する融資制度、さらには、大変御好評をいただいております借りかえ保証制度、こういうものを創設いたしまして、こういったことを充実することによって、施策の強化によって、一生懸命に私どもは遺漏なきように期してまいりたい、このように思っているところでございます。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十二分散会


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