衆議院

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第11号 平成15年2月28日(金曜日)

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平成十五年二月二十八日(金曜日)
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  平成十五年二月二十八日
    午後一時 本会議
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本日の会議に付した案件
 社会資本整備重点計画法案(内閣提出)及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに公共事業基本法案(第百五十一回国会、前原誠司君外三名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
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 社会資本整備重点計画法案(内閣提出)及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに公共事業基本法案(第百五十一回国会、前原誠司君外三名提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに第百五十一回国会、前原誠司君外三名提出、公共事業基本法案について、趣旨の説明を順次求めます。国土交通大臣扇千景君。
    〔国務大臣扇千景君登壇〕
国務大臣(扇千景君) 社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、社会資本整備重点計画法案について申し上げます。
 社会資本整備に関するこれまでの事業分野別の長期計画は、事業の計画的な推進等を図る上で一定の役割を果たしてまいりました。しかしながら、今日、社会資本整備については、地域住民等の理解と協力を確保しつつ、より低コストで質の高い事業を実現するといった時代の要請にこたえて、事業を一層重点的、効果的かつ効率的に推進するため、横断的な取り組みや事業間連携のさらなる強化が求められております。
 この法律案は、このような趣旨を踏まえ、新たに従来の事業分野別の計画を一本化した社会資本整備重点計画の策定等の措置を講じようとするものでございます。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、国家公安委員会、農林水産大臣、国土交通大臣の主務大臣等は、社会資本整備重点計画の案を作成し、重点計画は閣議の決定を要することとしております。
 第二に、重点計画には、社会資本整備事業の実施に関する重点目標、事業の概要、事業を効率的かつ効果的に実施するための措置等を定めることとしております。
 第三に、重点計画は、地方公共団体の自主性及び自立性の尊重、民間事業者の能力の活用等が図られるよう定めることとしております。
 第四に、主務大臣等は、重点計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、国民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、都道府県の意見を聞くこととしております。
 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
 次に、社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について申し上げます。
 この法律案は、社会資本整備重点計画法の施行に伴い、従来の事業分野別計画の根拠であります緊急措置法の廃止等関係法律について、所要の規定の整備等を行うものであります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、港湾整備緊急措置法、下水道整備緊急措置法及び都市公園等整備緊急措置法を廃止し、治山治水緊急措置法について、治水事業に係る規定を削除する等の改正を行うこととしております。
 第二に、道路整備緊急措置法の改正により、この法律の題名を「道路整備費の財源等の特例に関する法律」に改め、道路整備五カ年計画に関する規定を削除するとともに、平成十五年度以降の五カ年間は、揮発油税等を道路整備費の財源に充てるなどの措置を講ずることとし、当該措置を講じて当該期間に行うべき道路の整備に関する事業の量を閣議で決定することとしております。
 第三に、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法の改正により、この法律の題名を「交通安全施設等整備事業の推進に関する法律」に改め、特定交通安全施設等整備事業七カ年計画等に係る規定を削除するとともに、社会資本整備重点計画に即して、特定交通安全施設等整備事業の実施計画を作成することとしております。
 その他、関係法律につきまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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議長(綿貫民輔君) 提出者鉢呂吉雄君。
    〔鉢呂吉雄君登壇〕
鉢呂吉雄君 ただいま議題となりました公共事業基本法案について、民主党・無所属クラブを代表して、その趣旨を御説明いたします。
 公共事業は、国や地方公共団体が中心となって行う社会資本整備のための事業であって、そこから生み出されるサービスが、国民の健康で文化的な生活を充足させるために、重要な役割を果たすものであります。政府は、すべての国民がそのような生活を享受できるよう、効率的に社会資本を整備することが求められております。
 ところで、国と地方の借金が総額六百八十八兆円に達する今日の危機的な財政事情の中で、具体的に言えば諫早湾干拓事業、川辺川ダム事業など、全く効果がないばかりか、自然環境を破壊し、地域の生活をも破壊する公共事業が今なお延々と続けられております。
 そして、特に問題なのは、官僚主導の公共事業長期計画であります。そもそも、これらの長期計画は、その多くが緊急措置法とされ、一時的な法律であったにもかかわらず、事実上、全く見直されることなく、今日まで続いてきております。社会基盤が未成熟な時代はともかく、今日では、その役割を問われているところであります。
 この長期計画の問題点は、計画目標を次々と高くし、予算を獲得するにしきの御旗として機能してきたところであります。計画相互間の連携はほとんどなされていないばかりか、公共事業の計画全体をチェックする行政機関が存在しないまま、閣議決定にゆだねられ、国会のチェックが及ばない仕組みとなっているためであります。しかも、計画について外部からチェックができないことから、何十年も前に計画され、本来の目的を失った事業までも、そのまま惰性で続けられております。
 今回、政府もようやくその問題に対応すべく、社会資本整備重点計画法案を提出しておりますが、一本化されている事業のほとんどが国土交通省所管の事業で、相変わらずの縦割りで、中央官僚独占の計画であり、国会承認もなければ道路特定財源の一般財源化もないなど、公共事業をめぐる問題点への対応としては甚だ不十分であると言わざるを得ません。
 例えば、連携が有効な分野に山林、河川、海があり、これらは保水機能や洪水防止、水産資源などに相互に影響し合うにもかかわらず、今回、治山と治水を法律上も切り離し、省庁縦割りをより強固なものに再編するという矛盾を生み出しています。従来から言われている農道と国道の整備のむだも、今回の政府案では一向に解消されることにはならないのであります。
 このように、公共事業、とりわけ長期計画には多くの問題があり、これらの点を改善しなければ、公共事業の効率的配分はなし得ず、国民も納得しないばかりか、際限なく膨張し、財政赤字を肥大化させることになります。唯一、国会のみが、行政、とりわけ官僚をコントロールできるのであります。
 したがって、国民生活によくもあしくも大きな影響を与える公共事業について、国民の代表である国会が実質的に関与できない現行制度が異常なのであります。そのような視点に立って、民主党の公共事業基本法案を策定したところでございます。
 次に、その公共事業基本法案について、その内容を御説明いたします。
 第一に、道路等の各省庁にわたる公共事業関連の長期計画を、公共事業中期総合計画として一本化して、計画を国会承認事項とすることによって、国会が優先順位を判断することとしております。
 また、百億円以上の事業費が見込まれる公共事業については、公共事業実施計画を作成させ、国会承認事項とし、政治家が口ききなどにより個別事業について裏で介入するのではなく、国会の意思として明確に責任を持つこととしております。
 本州と四国との三本の橋の建設は、政官業癒着の結果、四兆円の債務を抱え込んでしまいました。この膨大な借金は、だれが責任をとるのでしょうか。このような事態を二度と引き起こさないためにも、国会が責任を持つというシステムが必要であります。
 第二に、国または特殊法人が実施することができる公共事業について、例えば、国道でいえばいわゆる一けた国道、空港でいえば羽田、成田などの拠点空港、国有林野、新幹線など広域的事業に限定し、地方分権を徹底しております。
 第三に、公共事業が国民生活や経済、環境に重大な影響を及ぼすものであることにかんがみ、一定期間が経過しても事業に着手していない場合、あるいは事業が完成していない場合について、政府が再評価を行い、継続の必要がある場合には国会承認を受けなければならないこととし、目的を失った事業が長期にわたって継続されることがないように措置しております。
 第四に、公共事業中期総合計画に基づく事業の有効性を検証するために、事業の終了後一定期間内に、政府が事業の効果及び各事業の及ぼした影響を評価することとし、評価の結果が新たに策定される計画へと反映される制度としております。
 第五に、公共事業中期総合計画の作成、再評価等の各段階において、国民や地方の意見を聞かなければならないこととし、国民が真に必要な事業かを判断できるようにするため、情報公開を義務づけしております。
 第六に、内閣府に公共事業調査会を設置し、省庁縦割りではなく、公共事業全般にわたり調査審議することとしております。
 第七に、いわゆる道路整備特定財源制度を廃止し、公共事業の優先順位や事業間の配分について、その時々の必要性に応じて弾力的に判断することとしております。
 行政が一度決めたことが、時代が変わり環境が変わっても永遠に正しいという話が幻想であることは、諫早湾や中海の干拓事業の例からも明らかであります。にもかかわらず、膨大な国債を発行して、いたずらに公共事業を肥大化させ、私たちは今、当面の財政危機のみならず、未来へさらに大きなツケを残そうとしております。
 未来にツケを回すのではなく、たとえ今、苦しみを伴おうと、正しい決断をすることによって、未来に明るい展望を開こうではありませんか。その明るい展望への大きな指針が本公共事業基本法案であります。
 議会人として、また一国民として、党派を超えて力強い御支援をいただきますようお願い申し上げまして、私の趣旨説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 社会資本整備重点計画法案(内閣提出)及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに公共事業基本法案(第百五十一回国会、前原誠司君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。栗原博久君。
    〔栗原博久君登壇〕
栗原博久君 自由民主党の栗原博久でございます。
 私は、自由民主党、公明党及び保守新党を代表いたしまして、社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に係る趣旨説明に対しまして質問をいたします。(拍手)
 社会資本の整備は、これまで、我が国の経済発展や豊かな国民生活の実現に大きく貢献してまいりました。計画的な社会資本整備の推進について、従来の長期的計画が果たしてきた役割には極めて大きいものがありますが、昨今の厳しい経済情勢、財政状況下におきまして、公共事業全体について改革が進められている中、長期計画についても例外でなく、社会資本整備をより重点的、効率的に実施していく観点からの改革が求められているものと認識しているところであります。このような中で、今回、事業分野別の長期計画を一本化することとされると認識しておりますが、その趣旨について、総理にお尋ねいたします。
 我が国の社会資本の整備水準は、官民一体の努力の結果により成果が出され、全般的にはそれなりに底上げが図られておりますが、しかしながら、地域別、分野別に見ますれば、諸外国と比較し、いまだに立ちおくれが見られます。
 例えば、高速道路の供用延長を見ましても、ドイツやフランスが一万一千キロ以上あるのに対しまして、我が国はいまだその六割程度の六千八百六十一キロであるのであります。また、下水道の普及率も、西欧諸国では既に一〇〇%近くに達しておりますが、我が国は六三・五%であるなど、社会資本整備が取り組まなければならない課題は山積しております。
 今後の社会資本整備について、限られた資源を二十一世紀の課題の解決に役立つ分野に重点的、集中的に投入するため、従来の緊急整備から重点的整備のための計画に転換するものと理解しておりますが、今後の社会資本整備のあり方について、国土交通大臣のお考えをお伺いいたします。
 今日、中国などアジア諸国の経済発展が目覚ましい中、我が国では、産業の空洞化が進行し、特に地方経済におきましては、極めて深刻な影響が出ております。産業の競争力を支える上で、物流は大変重要な役割を果たしておるわけであります。デフレ経済が進行する中、日本の製造業は、値崩れに対処するため、製造コストを徹底的に切り詰めることに努力を続けておりますが、生産部門以外の港湾、道路、空港、鉄道における物流コストなどのコスト高構造がデフレ経済への耐久力をそいでおるのであります。
 また、我が国の農産物の高値がよく指摘されますが、例えば、北海道にありましては、飼料用の穀物を旭川の倉庫から同じ道内の釧路の配合飼料工場まで運送しますと、輸送料、入庫料の流通経費が六十キロ当たり八百十円もかかります。これに対して、米国アイオワ州で生産されました飼料マイロにつきまして、日本の商社がこれを配合飼料工場に売り渡す値段は、無論、現地からの輸送料も含む流通経費を含みましても、わずか一千十三円にしかすぎません。
 これは、国内の高い物流コストが国内の生産農家に極めて厳しい競争条件を強いている一例であります。競争力の回復のためには、港湾や道路の整備を通じて、スムーズで低コストな物流を確保していく必要があるのであります。
 成長著しい中国や韓国では、公共がその責任におきまして高速道路や港湾の整備を積極的に進めておるのに対して、我が国の取り組みはまだまだという感じがしてなりません。また、同じようなことは、今後、我が国の産業の牽引車となります観光産業を支えるインフラである空港や鉄道などについても言えるのであります。
 このように、我が国の産業の競争力の回復や経済の発展の観点から、港湾、道路、空港、鉄道などの物流・人流インフラの整備について、小泉内閣のもとにおいて、確固たる理念のもと、しっかりとした全体の構想力を持って連携して整備していくことが重要と考えます。最後に、総理の御見解をお伺いして、私の質問といたします。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 栗原議員にお答えいたします。
 長期計画の一本化の趣旨についてでございます。
 新たに作成する社会資本整備重点計画は、従来の事業分野別の緊急措置法に基づく長期計画を見直し、横断的な重点目標を設定することで、事業間連携の強化を図るとともに、計画内容を事業費ではなく達成される成果へと転換を図るものであります。
 また、地域住民の理解の確保、コスト縮減、入札契約の改善といった事業横断的な公共事業改革の取り組みを記載することなどにより、社会資本整備事業を実体的にも一本化し、国民のための計画へ改革を行うものと考えております。
 物流・人流基盤の整備についてお尋ねです。
 国際競争力の向上や活力ある社会経済の実現につながる物流・人流基盤の整備については、事業間の連携を緊密に図りつつ、着実に推進していく必要があると考えております。
 このため、社会資本整備重点計画法案による長期計画の一本化などにより、港湾、道路、空港、鉄道などの事業分野を超えて、相互の連携を強化し、我が国の人や物の玄関口の整備など、競争力のある物流・人流基盤の整備を重点的に進めてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣扇千景君登壇〕
国務大臣(扇千景君) 栗原議員から御質問がございまして、総理からもお答えがございましたけれども、我が国の社会資本整備全体としては、栗原議員がおっしゃいましたように、一定の改善が図られておりますけれども、欧米に比して整備の歴史が極めて浅く、分野別、地域別に見ますと、依然として標準水準が立ちおくれていると言えると思います。
 また、国際競争力を維持するとともに、現下の緊急課題でございます都市再生、環境、少子高齢化などの二十一世紀の課題に的確に対応することが必要でございますし、厳しい財政状況のもとで、これまで以上に重点化、効率化を図っていかなければ、社会資本整備を進めることができないと思います。
 このため、昭和二十九年の道路整備五カ年計画策定以来続いてまいりました長期計画を五十年ぶりに抜本的に見直し、二十一世紀型に改革、事業分野別計画を一本化して、従来の事業分野の垣根を超えて重点化、集中化することによって計画を転換していきたいと考えたわけでございます。
 その中で、事業間の連携を図りつつ、コストの縮減あるいは事業のスピードアップを推進することとしておりますが、これに伴って、これまでの計画の法体系を見直して、緊急措置法は原則廃止し、一本化した計画の根拠法として社会資本整備重点計画法を提出させていただいたわけでございます。
 また、今後は、地方みずからの知恵と工夫で、個性を生かしながら自立的な取り組みを進められますよう、政策の基本を個性ある地域の発展に転換していくことが必要であり、全国一律の画一的な施設整備の規格・基準をローカルルール方式に転換するなどの方向で、さまざまな改革をさせていただきたいと思います。(拍手)
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議長(綿貫民輔君) 阿久津幸彦君。
    〔阿久津幸彦君登壇〕
阿久津幸彦君 民主党の阿久津幸彦でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、民主党提出の公共事業基本法案並びに内閣提出の社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)
 法案の質問に先立ち、緊迫度を増すイラク情勢について、総理の御見解を伺います。
 小泉総理、あなたは、イラク問題に対する我が国の行動、方針について、これまで一度も国民に明確な説明をされませんでした。そこで、総理や外務大臣等のあいまいな答弁から推測し得る事実関係を、改めて確認させていただきます。
 まず初めに、米英両国提出の国連決議案に小泉総理は賛成でしょうか、反対でしょうか。日本が、ODA等を通じて影響力のある国連安保理の非常任理事国に対して、新たな国連決議への支持取りつけに回っていたと報道されておりますので、賛成だと思われますが、念のため確認をさせていただきます。
 次に、米国が新たな国連決議なしにイラク攻撃に踏み切った場合、日本がその米国の行動を支持する可能性はあると考えてよいのでしょうか。
 さらに、今回、もしイラク攻撃が現実のものとなれば、日本の戦費負担は数兆円規模に達し、湾岸戦争時をはるかに上回るとも言われております。支持表明後の米国への協力について、戦費の一部を拠出する意思があるのかどうか、はっきりとお答えください。
 私がここで問題にしたいのは、総理の国民に対する説明責任の問題です。
 外交は、リアリズム、現実主義です。国民の生命財産を守るために、時にはつらい決断を迫られることもあるでしょう。だったら、説明すればいいじゃないですか。イラク攻撃への支持が本当に国益にかなうという信念をお持ちなら、なぜ、国民に対して堂々と説明しないのでしょうか。
 最近の世論調査では、国民に対する総理の説明が不十分であるという意見が九割近くに達しております。こうした国民の声を総理はどのように受けとめておられるのか、その考えをお聞かせください。
 中東和平等での貢献が認められ、ノーベル平和賞を受賞した元米国大統領のジミー・カーター氏は、在任中、イフ・アイ・ワー・ゴッド、イフ・アイ・ワー・ゴッドと、一日に何度も自問しながら決断をしたと言われます。
 総理、胸に手を当ててよく考えてみてください。私は、今からでも、日本の、小泉総理の決断次第では、イラク問題の平和的解決の道はまだ残っていると信じております。総理はこの点をどうお考えでしょうか。
 さて、今日、我が国の直面する最も重要な改革テーマの一つが、公共事業改革であります。
 高度経済成長、バブルとその崩壊、失われた十年を経て、ようやく私たち国民が日本経済の成熟化を認識した今、公共事業さえばらまけば景気がよくなるなどと本気で唱える政治家は、ほとんどいなくなりました。公共事業の費用が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることを考えれば、国民の求める公共事業が量より質に変わりつつあることは、当然であります。むしろ、環境、地方分権といった視点を十分に生かしながら、その内容と効率性をめぐり、与野党が真摯な議論を展開すべきであると考えます。
 我々民主党は、公共事業改革へ向け、一昨年の通常国会において、四本の議員立法を提出しました。すなわち、第一に、公共事業の従うべき原則を定めた公共事業基本法案、第二に、公共事業関係予算の段階的削減を定めた公共事業総量削減法案、第三に、ひもつき補助金の一括交付金化を定めた公共事業一括交付金法案、そして第四に、公共事業に環境保護の観点を取り込み、ダム事業の一時休止と森林整備を盛り込んだ緑のダム法案であります。
 このように、民主党は、政権交代を担い得る政党として、包括的な公共事業改革の構想を一連の法律の形で既に提示しております。
 このたび、政府・与党は、社会資本整備に関する法律案を提出しました。民主党の改革構想に対して、政府・与党から、ようやく対案が出されたわけであります。
 果たして、この法案は公共事業改革を求める国民の声や時代の要請にこたえる内容となっているのかどうか、民主党の法案と政府の法案のどちらが改革の名に値するものなのか、これらの点を明らかにするため、以下、小泉総理及び民主党法案提出者に対してお伺いします。
 まず初めに、小泉総理にお伺いします。
 今回提出された政府法案は、これまでの公共事業のあり方がもはや時代の要請にそぐわなくなってきている、そうした現状への反省から作成されたものと存じます。
 そこで、端的にお伺いしたいのですが、総理はこれからの公共事業のあるべき姿をそもそもどのようにお考えなのでしょうか。そのあるべき姿に照らして、現在の公共事業の最も根本的な問題点とは何なのでしょうか。そして、この法案が、総理が考える公共事業の時代の要請にどこまでこたえ得るものなのか。以上が第一の質問であります。
 第二の論点は、縦割り行政の問題であります。
 政府案を拝見して不思議に思うのは、事業一本化の範囲が国土交通省の所管する事業だけであるという点です。本来、効率化の観点から一本化するというのなら、全省庁の対象事業を一本化して、その配分に総理が主導性を発揮するべきです。それにもかかわらず、政府全体でなぜ一本化できないのか。この政府法案で縦割り行政の弊害が本当に除去できるのかどうか。総理及び民主党法案提出者に御見解を伺います。
 第三の論点は、本法案と地方分権との関係です。
 我々民主党は、結党以来、地方分権を我が国における最大の改革課題と位置づけてまいりました。公共事業改革は、地方分権社会を実現するための重要なステップです。国が財源と権限を握り、集権的、画一的にナショナルミニマムを実現する時代は、もう終わりました。地方がみずからの創意工夫と責任において、地元住民のニーズに合った公共事業を行う時代が来ています。
 具体的には、個別事業に対して自治体に補助金を出す、直轄事業でお金を出す、そういうやり方はやめるべきです。そして、個別の補助金にかえて、地方が裁量的に使える財源として一括交付金を交付する、また、国の事業を広域的な事業に限定するなど、地方分権の徹底が図られなければなりません。
 しかし、政府の法案では、計画作成時に「都道府県の意見を聴く」とあるだけで、権限と財源の移譲という地方分権の観点がほとんどないと言っても過言ではありません。総理は、公共事業と地方分権との関係をどのようにお考えなのか、公共事業を原則的に地域に任せるという考え方についてどうお考えですか。
 また、民主党法案提出者は、地方分権の理念を法案の中でどのように具体化しているのでしょうか。
 第四の論点は、道路特定財源の問題です。
 むだな公共事業の暴走に歯どめをかける上で象徴的な問題が、この道路特定財源の問題です。政府法案及び民主党法案では、道路特定財源の見直しをどのように行おうとしているのか、お伺いします。
 今回の政府法案では、なぜか、道路特定財源の見直しについて、実質的に全く触れられておりません。
 この点に関して、国土交通省の平成十五年度予算概要を見ますと、道路特定財源を「道路整備及び道路に密接に関連する事業に活用」するとあります。つまり、道路特定財源の使途の多様化を図ることがうたわれているわけですが、そこに示された活用例を見ると、地下鉄インフラ整備、住宅市街地整備、ディーゼル微粒子除去装置の導入支援、果ては、ETC車載器リース制度の創設、何でもござれです。私には、これらが「道路に密接に関連する事業」に当たるとは到底思えません。
 あかずの踏切対策程度ならまだしも、道路に使うから道路特定財源なのであって、ほかの目的に使うのなら、一般財源としてとっとと財務省へ回し、時代や社会の変化に合わせた使い方をすべきと考えますが、いかがでしょうか。将来的展望も含めて、道路特定財源の廃止、一般財源化についてお答えください。
 第五に、国民による公共事業のコントロールという問題であります。
 これまで公共事業の暴走を許してきた制度的な問題点の一つとして、社会資本の整備計画が閣議決定だけで行われているということがたびたび指摘されてきました。民主党は、公共事業改革への取り組みにおいて、一貫してこの点を重視し、計画の国会承認を主張してきました。今回の民主党法案における、公共事業コントロールという論点についてお伺いします。
 政府法案の提案理由説明では、公共事業計画案の作成に際して、「国民の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」と述べられています。「国民の意見を反映させる」というのなら、まず、国民の代表たる国会の議論の場にのせるべきではないでしょうか。国会承認に関する規定を盛り込むことについて、総理の御見解をお聞かせください。
 第六に、公共事業の政策評価の問題です。
 時代の変化に適応するため、また、公共事業をやりっ放しに終わらせるのではなく、その事業が本当に有効であったのかどうか、絶えず見直すための仕組みづくりは、むだな公共事業をなくす上で非常に重要な課題です。政府法案、また民主党法案において、こうした再評価、事後評価の仕組みは保証されているのでしょうか。総理と民主党法案提出者にお伺いします。
 最後に、国民の、国や地域社会に対する愛着は、何よりもまず、美しい国土や豊かな自然のめぐみ、あるいは個性的な景観や町並みといったものから生まれるものであります。二十一世紀、私たちが子供たちに残したいと願う環境は、コンクリートに覆われた自然や冷たい高層ビルではないはずです。失われつつある豊かな自然や、歴史と文化にあふれた町並みを再生する環境再生こそ、今、私たちが取り組むべき最大の課題であり、そして、公共事業もまた、この環境再生を第一の使命とすべきことを訴えて、私からの質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿久津議員にお答えいたします。
 イラク問題についてでございます。
 米国等による決議案提出は、平和的解決のための外交努力を最後まで行うものとして評価し、支持しております。我が国も、この問題はアメリカとイラクの問題ではない、ましてやアメリカとフランスの問題でもない、国際社会全体とイラクとの問題であるという認識でこれからも対応していきたい。なおかつ、日本としての日米同盟の重要性、国際協調の重要性を両立させるよう、これからも努力していきたいと思います。
 現時点において武力行使を支持するのか支持しないのか、表明すべき時点であるとは思っておりません。日本はこのような立場を再三再四明確にしてきております。
 なお、戦費負担については、アメリカより要請は受けておりません。
 公共事業のあるべき姿と社会資本整備重点計画法案についてでございます。
 公共事業については、事業分野別の長期計画が予算確保の手段になっているのではないか、重点化、効率化を進めるべきではないかなどの問題が指摘されているところであります。
 今後は、国際競争力の確保、個性ある地域の形成等の課題に対応し、二十一世紀の国民生活と経済活動の基盤を形成するため、真に必要な事業に重点化するとともに、事業間の連携、コスト縮減、入札契約の改善を進めるなど効率化に努めつつ、国民の理解を得ながら、引き続きその推進を図ることが必要であると考えております。
 社会資本整備重点計画法では、従来の事業分野別の計画を見直し、事業分野別の総事業費を記載せず、横断的な重点目標の設定により、事業間の連携の強化を図るとともに、効率的な実施のための措置などを重点計画に盛り込むこととしており、公共事業の改革を効果的に進めるものであると考えます。
 全省庁の対象事業の一本化についてでございます。
 新たに作成する社会資本整備重点計画は、広く国民生活、産業活動の基盤を形成する社会資本の整備について計画を統合するとともに、計画の内容についても、事業費ではなく達成される成果へと転換を図ることとしたものであります。
 一方、土地改良や廃棄物処理施設整備などの事業については、農業や環境の分野の他の施策と一体的に実施するため、それぞれの法体系に計画を位置づけることとしておりますが、重点計画の作成や事業の実施に当たり、これらの事業との連携についても十分確保してまいりたいと考えます。
 公共事業と地方分権の関係についてです。
 社会資本整備の重点化、効率化を進めていくためには、長期計画を一本化し、バリアフリー社会の形成などの横断的な目標を設定して、国、地方公共団体の各主体が、適切な役割分担のもとで、事業間の連携を確保することが必要であると考えます。
 このため、社会資本整備重点計画法案では、地方公共団体の自主性及び自立性を尊重することを基本理念として規定したところです。
 また、平成十五年度予算においては、補助金の廃止、縮減、統合補助金の拡充などの国庫補助負担事業の見直しを進めるとともに、三位一体の改革の芽出しとして、自動車重量譲与税に係る譲与割合を引き上げるなど、地方分権の観点も踏まえ、必要な改革を進めております。
 道路特定財源についてでございます。
 道路特定財源のあり方については、幅広く議論、検討してきたところですが、厳しい財政事情のもと、引き続き受益と負担の観点から納税者の理解を求めつつ、暫定税率の延長と使途の多様化を図ることとしたものです。
 具体的には、三位一体の改革の芽出しとして、自動車重量譲与税に係る譲与割合を引き上げるとともに、本四公団の債務の早期抜本処理へ活用するほか、環境分野や都市交通分野へ使途を拡大することとしております。また、道路特定財源の使途に関する法律の規定を五十年ぶりに改正することとしたところです。
 道路特定財源の今後の活用については、さまざまな意見を伺いながら、引き続き幅広く検討を進めていきたいと考えます。
 公共事業計画案の作成に対する国会承認についてです。
 社会資本整備重点計画は、社会資本整備の重点化、効率化を図る観点から、行政として取り組むべき今後五年間の重点目標と事業の概要を定めるものであり、他の同様の行政計画も参考として、閣議で決定することとしております。
 なお、事業の実施については、毎年度の予算に関する審議により、国会による承認を経た上で可能となることから、必要な国会の関与は担保されているものと考えます。
 公共事業の再評価、事後評価についてです。
 公共事業の再評価、事後評価については、事業の重点化、効率化に重要な役割を果たすものであると考えます。
 このため、再評価については、事業採択から五年間経過しても未着手の事業や、十年間経過した時点で継続中の事業を対象に、行政評価法に基づき既に実施しているところです。
 また、事後評価についても、平成十五年度から、行政評価法に基づき、本格的に実施していく予定としております。(拍手)
    〔佐藤謙一郎君登壇〕
佐藤謙一郎君 阿久津議員の御質問にお答えいたします。
 今回、この政府案が公にされたとき、これは明らかに我が党案の盗作だ、下世話な言葉で、ぱくられたといった批判が党内にありました。しかし、もしも、これが単なる我が党案と同趣旨のものであれば、その趣旨が生かされるわけですから、野党冥利に尽きるものだと私は思っております。
 何も、この公共事業基本法に限らず、国土交通委員会では、我が党の、航空機の中での迷惑行為を防止する法律案をほぼ丸写しにした航空法の一部改正案が用意されていますし、さきの国会では、野党四党提出のBSE対策特別措置法案も、不十分ではありましたが、全会派一致で野党の思いが生かされることになったのです。
 既に立法能力を備えた市民NPO、NGOとの共同作業で、民主党を初め野党各党は、生活者の立場に立った議員立法を次々に提案し、それを必死で政府・与党が追いかけるといった姿が常態化しているのです。ぱくられようが、まねされようが、それが真の国民のためになるものであれば、喜ばしいことだと思います。(拍手)
 しかし、今回の政府案は、今まで公共事業を私していた一部官僚や族議員のなりふり構わぬ利権温存法になるのではといった危惧があります。
 それは、民主党案がその柱にしている、十六本の長期計画を一本化できなかったこと、すなわち、縦割り行政の弊害をそのまま温存してしまったことです。いま一つは、納税者が主役であるはずの公共事業を国民そのものがコントロールする、すなわち、国会承認が盛り込まれなかったということです。
 ここで、この政府案で縦割り行政の弊害が本当に除去できるのかとの阿久津議員のお尋ねでございます。
 公共事業は、国土交通省が大半の事業を行っているとはいえ、農林水産省や環境省の事業も存在し、今御説明したように、省庁間の縦割り、シェアの固定化が問題となっています。しかも、類似の事業が各省庁間にまたがり、例えば、農道の隣に国道が建設されている例や、工業用水が余っているのに農業用水にそれが転用できない、あるいは、下水道と農業集落排水と合併処理浄化槽とが効率的に事業を分担しているとは到底思えない例など、多数指摘されているところであります。
 やはり、政府全体での効率的な予算配分を行うためには、省庁の垣根を超えた公共事業予算配分のあり方を大胆に見直す必要があると思われます。
 民主党は、この法案で、国土交通省所管事業だけではない、政府全体の公共事業について、その十六本の計画を一本化することにしております。
 また、政府案は、国土交通省の事情を優先して、道路や港湾など、国土交通省所管の九事業だけを一本化しましたが、例えば、そのために、治山治水という、本来一つの言葉で語られなければならない、一体であるべき大変大事な事業が分割されてしまっております。
 扇大臣は、さきの委員会で、長期計画そのものが予算獲得のためのものになってしまったと認められておられます。十六本を一本化できなかったことに関し、扇大臣はまた、このように答弁を委員会でされています。旧運輸、旧建設と、今まで背中合わせで縄張り争いをしていた巨大二大省をまとめるのが精いっぱいであったと正直に語っておられますが、しかし、これは図らずも、国民の利益よりも省益を優先していることを物語っていると言えるのではないでしょうか。(拍手)
 また、この政府案では、道路特定財源が残ってしまいました。道路特定財源を残している以上、道路は事実上聖域となってしまい、国土交通省内の縦割りさえも除去できていないと言わざるを得ません。この点について、民主党案では、道路特定財源の制度を廃止し、公共事業に関する縦割り行政の弊害を徹底的に除去していくつもりであります。
 以上です。ありがとうございました。(拍手)
    〔大谷信盛君登壇〕
大谷信盛君 大谷信盛でございます。
 阿久津幸彦議員のお伺いにお答えさせていただきます。
 特に、地方分権、道路特定財源、そして事後・再評価の課題について、お答えさせていただきたく思います。
 民主党の公共事業基本法におきましては、まず、第三条の「基本理念」の中で、国が実施すべき事業は「地方公共団体が実施することが難しい広域的な事業に限定する」など明記しておりまして、地方分権の理念を徹底しなければならないと、はっきりと規定させていただいております。
 この理念を徹底していくために、第四条におきましては、国と地方公共団体の役割を具体的に明記しております。国または特殊法人の行うことができる事業を、国有林野、一級河川、いわゆる一けた国道、そして神戸港などの最重要港湾、また、成田、羽田など最重要拠点空港など、個別具体的に列挙させていただいております。
 また、別途提出させていただいております公共事業一括交付金法案におきまして、地方分権を徹底するための財政的な手当てもあわせて行わさせていただいているところでございます。国が補助金制度で自治体による自治体の個性ある町づくりをがんじがらめにしていくようなことがなくなるようにするための内容とさせていただいております。
 次に、道路特定財源の見直しをこの法案の中でどのように考えているのかということでございます。
 どんな公共事業にどんな予算配分をしていくのかということは、時の政権、政府が、その政治理念また目指すべき未来の思想に基づいてしっかりと政治的判断をして決めていくことであって、今のように自動的に予算が配分されていくような、そんなシステムであってはいけないというふうに強く考えています。(拍手)
 政府もようやく道路特定財源の使途を拡大するような試みが見えてまいりましたが、その範囲は、それでも、道路に密接に関係する事業に拡大されただけにすぎません。いや、また反対に、解釈をねじ曲げているようなところもあります。ここはやはり、しっかりと明記していかなければいけないというふうに考えます。
 道路や空港をどう整備していくのか、福祉をどうやって向上させていくのかということは、その時代の環境変化をかんがみ、市民参加のある意思決定過程のもと、時の政権が責任を持って決めていくべきものであるというふうに思います。
 したがいまして、民主党の提出した公共事業基本法案では、附則におきまして、道路整備緊急措置法を廃止し、道路財源に係る揮発油税、石油ガス税の特定財源並びに地方道路整備臨時交付金を廃止することといたしております。
 次に、事業の再評価、事後評価の仕組みはどのようにして保証されていくのかという質問がございました。
 公共事業における問題点として、一度決めた事業は事業目的を失っても、再評価されることなく、どんどん、とまらずに進んでいくということが指摘されています。事後評価が次の事業にフィードバックもされないと指摘されています。
 例えばダム事業について見てみますと、ダム建設の目的がころころ変わり、利水目的でなくなっても、治水目的でダム建設が進んでいくケースが多々見受けられます。典型的な例がこれだというふうに思いますが、諫早湾の干拓事業でございます。農地造成から防災へと主な目的が変わったにもかかわらず、その事業内容はほとんど変わっておりません。
 むだ、もしくは厳しい財政状況の中、優先順位の低い公共事業が行われた場合でも、その反省がほとんど生かされることなく、省もしくは局、そのまた中の課の予算を削減されないように、何が何でも事業の予算を無理やり計上するような風習がいまだに続いているのではないかというふうに考えております。
 民主党案におきましては、いわゆる時のアセス法を明記し、事業実施決定後五年を経過した時点で着手されていないもの、事業実施決定後十年を経過した時点で完了していないものなど、具体的な要件に合致する場合におきましては、再評価を絶対に行うというふうにさせていただいております。再評価をした上で、事業の継続が必要な場合には国の承認手続を必要とするなど、行政のひとりよがりな判断で事業を継続していくようなことがないように措置をさせていただいております。
 また、事業の事後評価につきましては、事業の終了後二年以内と十年後をめどとして、事業効果や環境への影響その他経済的、社会的影響を評価すべきとさせていただいております。
 これからの時代は、この厳しい事後評価制度の徹底こそが、真に国民生活を豊かにしていくために必要な社会資本整備をするための条件だという考えのもとに、未来への責任と自信を持ってこの法案を提出しているところでございます。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 一川保夫君。
    〔一川保夫君登壇〕
一川保夫君 自由党の一川保夫でございます。
 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出の社会資本整備重点計画法案及び同施行関係法案について質問いたしたいと思います。(拍手)
 限られた時間でございますので、民主党の方から提出されました公共事業基本法案よりも政府提出の方がはるかに問題点が多いので、政府提出の法案の方に絞って質問させていただきたい、そのように思っております。(拍手)
 まず、社会資本整備についての自由党の基本的な考え方を述べさせていただきます。
 第一に、我が国における社会資本の整備は、投資額においては先進国では大規模な額を有しておりますけれども、しかし、その整備水準は今なお欧米に比べて相当立ちおくれているというふうに思います。社会資本の整備は依然として最重点課題の一つであるというふうに認識いたしております。少子高齢化がピークを迎える前に、新しい視点に立って、着実に社会資本の整備を進めていかなければならないというふうに考えております。
 第二に、これからの社会資本整備は、大型の事業が減少し、地域密着型、また生活関連型、そして、施設の維持管理などに事業の重点が移ってまいります。その際、社会資本の整備に当たっては、国と地方の役割を明確にし、行き過ぎた中央集権を改め、できるだけ地方主権の概念を導入して進めることが必要であると考えております。
 第三に、これからの社会資本の整備に当たっては、民間が参入可能な分野をできるだけ拡大して、民間の力を活用することが必要であると思います。そのためにも、今後、建設市場が徐々に縮小していく中で、建設業の体質改善を図り、建設市場を刷新することが必要であります。あわせまして、費用・便益分析の徹底、事業評価システムの整備、入札制度の透明性の向上などを推進しなければなりません。
 以上の基本的な立場を踏まえまして、政府案について、考え方をお尋ねしたいと思います。
 まず、そもそも国が五カ年計画を掲げる必要性そのものについてでございます。
 五カ年計画によって、公共投資が合理的に行われるわけではありません。効率的に行われるということでもありません。五カ年ごとに計画が実現したという実績もありません。制度そのものが硬直化し、形骸化してしまっているのであります。社会資本の整備水準を引き上げるためにだけではなくて、景気対策として余りにも安易に公共事業を利用してきた嫌いがございます。
 こうした各種の五カ年計画を形を変えて存続させる意味はどこにあるのか。これらの五カ年計画の実態は、国が地方を支配するための道具になる可能性があり、各省庁の公共事業予算獲得の大義名分であり、また、地方自治体の自由な事業の実施を阻害するものでもあり、各役所の縄張り争いの源泉となっているものであります。
 新しい計画では、総事業費は明示しないと言っておりますが、実態は、各種の五カ年計画を建前だけ一本化し、従来の縦割り行政、縄張り行政の本質がこれによって変わらないのは明白であります。
 五カ年計画の制度そのものを廃止するべきではないかというふうに思いますけれども、小泉総理の御見解をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 次に、国・地方、そして、官と民の役割分担の問題についてお伺いいたします。
 私ども自由党は、国の仕事は、空港、重要港湾、高速鉄道、基幹的な道路あるいは大規模河川などの国家的に必要なプロジェクトに限定して、これらについては国が責任を持って整備する。それ以外の公共投資については地方自治体や民間に権限と財源をゆだねて国は一切干渉しないとの方針、政策をとっております。
 その限りにおいて、国のナショナルプロジェクトにかかわる計画は存在したとしましても、それ以外の計画は国が策定する必要はないというふうに考えております。地方自治体や民間がみずから計画を立てて、みずからの責任で実施していくことが大切であります。
 小泉総理は、かねてより、地方に任せられるところは地方に、民間に任せられるところは民間にと述べられておりますが、そのように述べてきた総理であるならば、国が計画をつくるのではなく、地方自治体や民間に任せればいいのではありませんか。
 総理のおっしゃる、国・地方、官・民の役割分担とはどのようなものなのか、地方分権の徹底や地域特性、民間活力への配慮を国の計画の中に入れることそのものが自己矛盾ではないかというふうに考えております。総理の明快な御答弁をお願いいたします。
 具体的な問題についてお尋ねいたします。
 従来の縦割りで行われてきた公共投資について、この法律によって、事業がどのようにして重点的、効果的、また効率的に推進され、横断的な取り組みや事業間の連携の強化が図られることとなるのか。また、それがどのようにして担保されているのか。国土交通省関係に限定して一本化することの意味はどこにあるのか。以上の諸点について、扇国土交通大臣の答弁を求めるものであります。
 関連いたしまして、公共事業予算の考え方についてお尋ねいたします。
 自由党は、国が地方自治体を縛っている国の事業費補助金を廃止して、その相当額を地方に自主財源として一括交付すべきであるというふうに主張いたしております。これは政官業癒着の腐敗構造を打破すると同時に、真の地方分権を実現するために不可欠の改革であると考えております。私たちの提唱する全国三百自治体への再編成への重要なステップであるというふうにも考えております。
 それによって、地方自治体は本当に必要とする事業を地域住民の中で話し合って、創意工夫を凝らし、自由に行えるようになります。地方の真の自立を促すことにもなり、地方の自治体の意欲が出てまいります。また、補助金を獲得するために地方が中央省庁に陳情活動を繰り返すといった経費と時間のむだを削減し、縦割り行政の弊害である重複事業をなくすることもできるというふうに考えております。
 つまり、国が長期計画をつくって、そのための公共事業予算を補助金としてひもつきで交付するという政府の施策の対極にある考え方でありますが、この自由党の考え方について、小泉総理はどのようにお考えなのか。また、かつて、同様の主張をされていたはずの扇国土交通大臣にも、その点について御所見をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 次に、公共事業の再評価制度についてお伺いいたします。
 水源県である長野県の脱ダム宣言は、方々に大きなインパクトを与えてまいりました。また、先般、国土交通省が設置した第三者機関である淀川水系流域委員会が、ダムは原則建設しないとする提言をまとめました。ダムの果たす一定の役割を認めつつ、ダムが地域社会の崩壊をもたらし、河川の生態系に重大な悪影響を及ぼしていると指摘しながら、流域全体に水源涵養力なり治水力を持たせる施策に転換すべきであるということを求めたものであります。この提言を政府は重く受けとめるべきであるというふうに考えます。
 公共事業の中には、特に国家的なプロジェクトについては、時代の変化とともに事業のあり方を検証し、見直していかなければならないものがたくさんあります。これらを再評価していくシステムが必要であるというふうに考えますが、政府案にはこうした考え方が取り入れられておりません。
 事業再評価のあり方についてのお考えを、扇国土交通大臣にお聞かせ願いたいと思います。
 次に、道路特定財源の問題についてお伺いいたします。
 小泉総理は、かつて、小泉改革のシンボルとして、道路特定財源については、聖域なく見直しの方向で検討したいと国会で答弁しておられました。道路特定財源を聖域なく見直すということは、一般財源化を検討するととらえるのが常識的であります。
 しかし、政府は、来年度税制改革において、自動車関係諸税の特例として、揮発油税、地方道路税、自動車重量税の税率の適用期限を、これまでと同様に、五カ年間延長するという措置をとったのであります。
 どこが「聖域なき見直し」なのでございますか。大きな声で改革だけを訴えておりますけれども、何も変えることができないという実態でございます。かけ声だけの小泉政治の典型であると言わなければなりません。
 総理は、この問題もやはり、大したことではないというふうに済ませてしまうおつもりなのか。この際、道路特定財源の扱いについて、小泉総理の御見解を改めてお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 次に、災害対策に関連いたしましてお尋ねいたします。
 六千人を超える方々が犠牲となった阪神大震災から、早くも八年余りが経過いたしました。この間、神戸市や兵庫県を初め、着実に復興を進めてきた被災地住民の方々に対し、心から深く敬意を表するものであります。
 あのとうとい犠牲によって得られた教訓を、時の経過とともに風化させてはなりません。阪神大震災では、高速道路や鉄道などの公共建設物の耐震補強にも幾つもの教訓を残したはずであります。しかし、それが政府の対策に十分生かされているとは到底思えません。
 ことし一月に内閣府がまとめた調査では、学校、幼稚園の約五四%、病院など医療機関の約四四%が「耐震性に疑問」とされ、人口集中地区のうち、近くに広い避難場所がない区域は六一%にも上ったという状況が報告されております。
 また、報道によりますと、防災施設が備えるべき設備や水準を国が示していないこともあり、都道府県ごとにその格差が出ており、地震対策は東高西低の傾向だというふうにも言われております。
 大規模災害対策のようなプロジェクトこそ、国が指導力を発揮して推進しなければなりません。
 阪神大震災以降、政府は、高速道路、鉄道などの耐震性の向上にどのように努めてこられたのか。また、今後どのように対応していこうとしておられるのか。また、地方自治体の公共施設についても、整備する権限と責任は地方にゆだねつつも、施設整備に必要な耐震性の基準なり、また、防災施設が備えるべき設備や基準につきましては、国が示すとともに、あるべき基準についても必要に応じて常に見直しを行っていくべきであるというふうに考えておりますが、国土交通大臣並びに防災担当大臣の御答弁をお願いしたいのであります。(拍手)
 私たち自由党は、大規模な自然災害は外国による侵略、大規模なテロ、経済社会の騒乱などと同様、国家の非常事態として位置づけ、これに対処するための機動的な仕組みを整備すべきであるというふうに考えております。
 すなわち、政府は、組閣直後に、平時から、総理大臣を議長とする非常事態対処会議を内閣に設置し、非常事態が発生した場合には、原則として国会の承認を得た上で、非常事態を布告し、総理大臣が直接、警察、海上保安庁を初め行政全般の指揮に当たり、速やかに事態に対処するという仕組みが必要であります。非常事態に備えた社会資本整備の対処方針も、この範疇に入る問題であります。
 非常事態に対処するための基本法を制定せずに、国家国民の安全を守ることができるというふうに考えておられるのか、小泉総理の御見解をお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 一川議員にお答えいたします。
 五カ年計画の廃止についてです。
 社会資本整備は、大規模かつ長期にわたるものが多く、さまざまな分野に影響を与えるとともに、多額の投資を伴うため、整備の方針を国民に明確に示しつつ、計画的に進める必要があると考えます。
 今般の社会資本整備重点計画は、従来の事業分野別の緊急措置法に基づく長期計画を見直し、横断的な重点目標を設定することで事業間連携の強化を図るとともに、計画内容を事業費ではなく達成される成果へと転換を図るなどにより、社会資本整備事業を実体的にも一本化し、国民のための計画へ改革を行うものと考えます。
 国・地方、官・民の役割分担についてです。
 社会資本整備の重点化、効率化を進めていくためには、長期計画を一本化し、バリアフリー社会の形成などの横断的な目標を設定して、国、地方公共団体、民間の各主体が、適切な役割分担のもとで、事業間の連携を確保することが必要であります。
 このため、国において、国民や地方公共団体の意見を反映する措置を講じつつ、社会資本整備重点計画を作成し、横断的な重点目標を設定することとしたところであり、これにより、PFIの実施など民間活力の活用を図りながら、社会資本整備の改革を効果的に進めていきたいと考えます。
 国の事業費補助金を廃止し、地方に自主財源として一括交付すべきとの御指摘であります。
 国による地方行政に対する関与、とりわけ、各省庁の個別自治体の事業に対する口出しを減らすことが地方の自立を促すものと考えます。
 地方にできることは地方にゆだねるとの考え方のもと、地方が主体的かつ効率的に施策を選択し、推進できるよう、みずからの創意と責任による自主財源の確保を可能にする仕組みが必要です。
 今後、御指摘の議論を含めて、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討し、本年六月を目途に改革案を取りまとめます。
 道路特定財源の見直しについてです。
 道路特定財源のあり方については、幅広く議論、検討してきたところですが、厳しい財政事情のもと、引き続き受益と負担の観点から納税者の理解を求めつつ、暫定税率の延長と使途の多様化を図ることとしたものです。
 具体的には、三位一体の改革の芽出しとして、自動車重量譲与税に係る譲与割合を引き上げるとともに、本四公団の債務の早期抜本処理へ活用するほか、環境分野や都市交通分野へ使途を拡大することとしております。また、特定財源の使途に関する法律の規定を五十年ぶりに改正することとしたところであります。
 何も変えていないとの批判は当たらないと思います。
 自然災害への対応についてです。
 大規模な自然災害への対応については、これまで、災害対策基本法など関係法令を整備するとともに、関係省庁が一体となって迅速に対処する体制を整えてきたところであります。
 政府としては、国民の生命財産を守るため、必要な防災訓練を怠らないとともに、さまざまな観点から不断の点検を行い、その対処体制の充実に努めてまいりたいと考えます。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣扇千景君登壇〕
国務大臣(扇千景君) 一川議員から、四点にわたる御質問が出ております。
 まず、今回の社会資本整備重点計画は、従来の事業の縦割りが批判された、そのことに対して、今後、国土交通省の発足による統合のメリットを生かしたい、そういうことで、事業間の連携強化を図るために計画の一本化を図ったものでございます。
 計画が一本化されることによりまして、例えば、主要な鉄道駅やその周辺でのバリアフリー化を一体的かつ重点的に整備するなど、効果的、効率的な社会資本の整備を進めていくことができるということでございます。
 また、土地改良でございますとか廃棄物処理施設整備などの事業に関しましては、農業や環境の分野の他の施策と一体的になって実施するために、それぞれの法体系に計画を位置づけておりますけれども、今後は、この重点計画の策定や事業の実施の過程で、これらの事業との連携も十分に配慮してまいることができると思っております。
 二つ目には、従来の国土交通行政は、国が定めた全国一律の基準で全体を底上げする、均衡ある国土の発展が基本というのは御存じのとおりでございますけれども、今後は、地方が自立的な取り組みを進めます個性ある地域の発展に転換が必要であるというふうに、二十一世紀型にすることでございます。
 公共事業につきましても、地方が主体性を持って特色ある地域づくりができるよう、地方の裁量を高めていくことが不可欠でございます。
 このため、国土交通省としては、補助金については、地方公共団体の裁量で事業のメニューを選んで箇所づけができる統合補助金制度を創設しておりますし、また、その拡充を図ってきています。平成十五年度は、新たに五事業を創設し、国土交通省の公共投資関係費が前年度に比べましてマイナス三%になっているのは御存じのとおりでございますけれども、八%増の七千十九億円を配分して、大幅に地方を拡充したところでございます。
 今後とも、地方にできることは地方にゆだねるという小泉内閣の方針のもと、統合補助金の拡充等、補助金に関して地方の裁量を高めることとしておりますし、目指しております方向は、基本的には一括交付金、一川議員がおっしゃったことと合致している部分が多分にあると存じております。
 しかしながら、一括交付金は、人口等に基づいて機械的に配分することとされておりますので、例えば、ワールドカップサッカーのような国家的行事に合わせた町づくりとか、地方の緊急的な課題には対応できず、むしろ、現行の補助金の裁量性を高めることがこうした課題に的確に対応できるものと私は判断いたしておりますので、お答えをさせていただきたいと存じます。
 三つ目には、再評価の問題でございます。
 再評価は、事業の重点化、効率化を図る上で極めて重要なものであるというのは、いつも委員会でも御論議いただいているところでございます。国土交通省としましても、既に行政評価の施行以前から、自主的な取り組みとしてこの再評価を導入してまいりましたけれども、平成十四年度に施行されました行政評価法で再評価が法律上義務づけられてからは、この法律に基づいて実施しているところでございます。
 一方、御指摘のとおり、重点計画法に再評価は規定されておりませんけれども、これは、行政評価法において既に再評価が義務づけられているため、重ねて規定することは適当ではない、そう考えているからでございまして、重点計画に定められた事業についても再評価を行わなければならないことは、今までと何ら変わりもございません。今後とも、再評価の厳格な実施に努めてまいる所存でございます。
 最後に、阪神・淡路大震災に関しての御質問がございました。
 阪神・淡路大震災以来、道路、鉄道等の耐震基準は大規模な内陸直下型地震にも対応したものに強化しておりますけれども、新設される施設に関しましては、この基準で整備するほか、既存の施設に関しましても、補強を進めているところでございます。
 鉄道に関しましては、阪神・淡路大震災規模の地震においても高架橋が崩壊しないことを目標に、平成七年度より緊急耐震補強を実施しており、平成十三年度末時点で、新幹線は、すべてこれを完了いたしました。従来線についても、施工可能な箇所はすべて完了いたしております。
 高速道路に関しましても、同様に、早期の復旧が可能な程度の損傷にとどまることを目標として、平成七年度より耐震補強を実施しておりますし、平成十四年度末には、早急に耐震補強が必要な橋梁のうち約八割について、耐震性が確保される予定でございます。
 その他、建築物につきましても、昭和五十六年に導入された新耐震基準が定められました以前の建築物について特に、耐震性の診断、あるいは改修費用などを助成する制度の活用等によって耐震性の向上を図ってきております。
 今後とも、このような取り組みを通じて、国土交通省として果たすべき役割を適切に行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣鴻池祥肇君登壇〕
国務大臣(鴻池祥肇君) 地震防災施設の耐震基準や備えるべき基準についてのお尋ねがございました。
 施設の耐震基準については、それぞれ必要な耐震性能を確保するための基準が設けられており、阪神・淡路大震災の教訓なども踏まえ、これまでも随時、適切な見直しを行ってきているところでありますが、今後も、必要に応じて見直し、耐震性能の向上に努めてまいりたいと思っております。
 御指摘の調査は、地震防災施設が耐震性能を確保するだけではなく、防災対策としての総合的な機能を果たす必要がありますので、各施設にそれぞれ防災面の指標を設けて、そして、整備等の状況を初めて一斉調査し、本年一月に公表したものでございます。
 今後も、防災大臣といたしまして、関係省庁と連携し、必要なものについては、あるべき基準や適切な指標について検討し、その徹底を図ってまいる所存であります。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 瀬古由起子君。
    〔瀬古由起子君登壇〕
瀬古由起子君 日本共産党を代表して、社会資本整備重点計画法案及び社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について質問いたします。(拍手)
 今日、むだと浪費の公共事業費の削減、公共事業の抜本的見直しは緊急課題です。
 何を見直すべきか。それは、先に総額ありきで、長期計画に沿って公共事業予算が決められ、どんなに需要予測が過大でも、どんなに大多数の住民が不必要だと言っていても、一たん決めた事業はとめられない。しかも、その計画は国会で審議もされない。こうした仕組みが、公共事業のむだと浪費を生み出し、国民の批判を浴びてきたのです。
 政府は、本法案は公共事業見直しのためだと説明していますが、果たして、こうした根本問題が解決されるのかどうか、以下、総理と国土交通大臣に伺います。
 第一に、本法案は、各事業の重点計画を立て、事業の目標を総額明示方式から成果達成指標に切りかえるとしています。問題は、これで、先に総額ありきの予算配分が改まるのかどうかです。
 そこで、お聞きいたします。
 国、地方を合わせて年間十二兆円にも達し、公共事業の約三割を占める道路関係事業の予算規模は、縮小されるのですか。これまで、過大な交通需要予測のもと、採算の見通しもなく推進してきた高速道路や高規格道路の新設は、凍結を含めた大胆な見直しがされるのでしょうか。
 道路事業に関して、関係整備法案は、五年間の事業量を目標とする計画を閣議決定するよう規定し、これを受けて、政府は、国費だけで三十八兆円という総額を決めようとしています。これでは、先に総額ありきの方式が全く改められていないではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)
 道路以外のダム、港湾、空港などの各事業については、今後は、それぞれの重点計画がつくられます。この重点計画の政策目標には、従来から言ってきた、国際競争力の強化や都市再生、高規格化などを掲げるのではありませんか。それを口実に、高規格幹線道路、高規格スーパー堤防、スーパー港湾、大都市圏拠点空港などの大型公共事業を引き続き進めるということになりませんか。
 これでは、事業量の総額を決めないだけで、重点計画には幾らでも予算がつぎ込めることになるのではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 第二に、需要予測が過大で事業の根拠がなくなったり、不必要となった事業を抜本的に見直す内容となっているかどうかの問題です。
 関西国際空港の二期事業の根拠となっていたのは、二〇〇七年に年間発着回数が十六万回を超えるという航空需要予測でございました。ところが、昨年、一期事業で賄える範囲の十三万六千回に下方修正され、航空業界や財界からさえも見直し要求が出されました。にもかかわらず、政府は、二期工事をやめようとしません。そればかりか、経営破綻状態にある関西国際空港に対して、毎年九十億円を三十年にわたって投入するなど、将来にわたる国民負担を押しつけようとしています。
 空港需要予測のいいかげんさについては、二〇〇一年五月に出された総務省の、空港の整備等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告で、十五空港のうち四空港では予測値の半分以下の実績と指摘されたことでも明らかです。
 本法案によって、こうした関西国際空港二期工事や中部国際空港の建設をどのように見直すことになるのですか。答弁を求めます。(拍手)
 多くの住民が必要はないと言っている公共事業の典型が、川辺川のダム建設です。農民二千人余が、もう水は要らないと提訴までしています。また、熊本県知事は、同じ球磨川水系の県営荒瀬ダムの完全撤去を決定いたしました。それでもなお、国はダム建設を強行しようとしています。
 総理、本法案には、不必要な事業を中止するため、どのような仕組みがあるのですか。答弁を求めます。(拍手)
 第三に、重点計画に対する国会の関与の問題です。
 本法案には、重点計画を国会で審議し、その可否を承認するなどのチェックの仕組みがありません。
 これまでも、各事業の五カ年計画は国会審議の対象となりませんでした。しかし、それぞれの根拠法が五年ごとに国会に提出され、不十分とはいえ、国会審議の機会がありました。ところが、本法案のもとでは、重点計画は閣議決定だけで、国会で審議することになっていません。これでは、計画策定や事業決定に携わる官僚と政権党の関与が一層強まるのではないでしょうか。住民参加は名ばかりで、計画決定過程は一層不透明になるのではありませんか。総理の見解を求めます。(拍手)
 次に、関係整備法案の中の道路整備緊急措置法案についてお聞きします。
 本法案は、これまで五年ごとに延長されてきた道路特定財源制度を恒久化する内容となっています。道路特定財源制度は、もともと、高度成長期に、道路整備のおくれを緊急に整備するために制度化されたものです。それを、延々と半世紀にわたって、自動車利用者である国民から税として徴収を続けてきたのです。
 改正案は、緊急かつ計画的などの要件をなくして道路特定財源の使い道を定めるとしています。緊急性がなくなったのであれば、当然、その使い道を変えるべきです。
 総理、道路特定財源を恒久的に道路に使い続けるというのですか。それでは、総理、あなたが公約した一般財源化に全く逆行するのではありませんか。
 道路投資を聖域にし、むだを生み出す最大の元凶となっている道路特定財源を抜本的に見直さないで、どうして改革と言えますか。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 次に、公共事業の見直しの方向について、私は、三つの提案をいたします。
 その第一は、社会資本整備を、大企業、ゼネコンに奉仕する大規模開発型から、住民の生活に密着した、生活改善、安全や福祉、環境保護型に根本的に転換することです。
 住宅や学校、特別養護老人ホームや保育所の整備、公共施設や集合住宅、交通機関などのバリアフリー化、交通安全対策、住宅の震災対策などを重視した予算配分に転換し、公共事業費を大幅に削減すべきです。そうすれば、地域の景気回復や雇用にもよい影響を与えるのではないでしょうか。総理の見解を求めます。(拍手)
 提案の第二は、公共事業計画のあり方を根本的に見直すことです。
 本法案は、政府が作成する重点計画について、国土総合開発計画との調和を義務づけています。現行の国土総合開発計画である五全総は、「二十一世紀の国土のグランドデザイン」と称していますが、具体的プロジェクトとして、高規格幹線道路網一万四千キロ、地方高規格道路六千から八千キロ、東京湾口道路、伊勢湾口道路など、六つの新たな巨大道路建設、三大都市圏に国際ハブ空港、東京圏新空港、中央新幹線、首都機能移転など、一千兆円規模とも言われる事業が盛り込まれています。まさに、壮大なむだと浪費を推進するものと言わざるを得ません。
 全総計画は直ちに廃止すべきです。答弁を求めます。(拍手)
 提案の第三は、むだな公共事業の大もとにある政官業の癒着構造にメスを入れることです。
 従来、道路、港湾、空港などの予算の箇所づけや公共事業の受注をめぐって、政権政党や有力議員に政治献金が流れ、そのことが公共事業のむだと浪費を生み出してきました。これは、昨年のムネオ事件や、最近発覚した自民党長崎県連事件を見ても明らかです。本法案が成立すれば、今度は、何を重点事業とするかが利権の対象になり、重点計画の策定段階からお金が動くことになるのは必至です。
 この際、野党四党が共同提案しているように、公共事業受注企業からの政治献金を禁止し、公共事業を食い物にする癒着構造に根本的にメスを入れるべきではありませんか。
 総理は、この問題で、昨年来、与党に検討を指示したと言いますが、いまだに、何の具体策も示されていません。それどころか、自民党は、ゼネコン業界に対して、三億円規模の献金要請を行っています。総理は、先日の予算委員会で、株主に配当もできない企業からの献金は受けるべきでないと答弁しましたが、この国会でどういう具体的措置をとる考えですか。あわせて答弁を求めます。
 以上、私が提案した三つの抜本改革こそ、国民が求める公共事業見直しの声にこたえるものです。このことを強調して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 瀬古議員にお答えいたします。
 道路関係事業の予算規模と高速道路等の新設についてでございます。
 今後の公共投資の水準については、「構造改革と経済財政の中期展望」において、景気対策のため大幅に追加が行われていた以前の水準を目安とすることとされ、その抑制の方針が示されているところであります。
 また、今後の高速道路等の建設に当たっては、道路関係四公団民営化推進委員会の意見などを踏まえ、可能な限りコスト縮減を図るとともに、厳正な事業評価を行い、投資総額を抑制しつつ、真に必要な道路の整備を進めてまいりたいと考えます。
 道路事業に関して、総額ありきの方式と同じではないかとの御質問であります。
 道路整備五カ年計画については、道路整備緊急措置法の改正により、これを廃止し、社会資本整備重点計画へ一本化する、五十年ぶりの見直しを行うこととしております。
 また、道路特定財源の対象となる道路整備に関する事業の量を別に閣議決定することとしたのは、厳しい財政事情のもと、引き続き受益と負担の関係から納税者に理解をいただくため、暫定税率の前提となる事業の量について目安を示すものであり、従来の五カ年計画とは異なる趣旨によるものであります。
 本法案による関西空港二期工事、中部国際空港の建設の見直しについてでございます。
 航空需要予測については、より精度を向上させるため、鉄道に加え、他の交通機関との競合関係等も考慮して、昨年六月に、予測モデルを構築し、公表したところです。
 社会資本整備重点計画においては、行政評価法に基づく個別公共事業の再評価の厳格な実施について位置づけることとしておりますが、関空二期事業及び中部国際空港については、国際航空需要に適切に対応するために必要な事業であり、必要な見直しは行いつつ、着実に推進していく必要があるものと考えます。
 不必要な公共事業を中止するための仕組みについてでございます。
 事業採択から五年間経過しても未着手の事業や、十年間経過した時点で継続中の事業を対象に、既に、行政評価法に基づく個別公共事業の再評価を実施しているところであり、今後とも、これらの仕組みを活用しつつ、事業の必要性等を評価し、必要な見直しを行っていくことが重要であると考えます。
 このため、社会資本整備重点計画においては、事業評価の厳格な実施についても盛り込んでまいりたいと考えます。
 なお、御指摘の川辺川ダムについては、流域の洪水被害の軽減、安定的な農業用水の確保等のため、必要な事業であると考えます。
 重点計画に対する国会の関与、住民参加についてです。
 社会資本整備重点計画は、社会資本整備の重点化、効率化を図る観点から、行政として取り組むべき今後五年間の重点目標と事業の概要を定めるものであり、他の同様の行政計画も参考として、閣議で決定することとしております。
 また、重点計画の最終年度においては、政府は、重点計画に係る制度について検討を加え、必要があると認めるときは、重点計画法の改正法案の提出など、所要の措置を講ずることとしております。
 なお、事業の実施については、毎年度の予算に関する審議により、国会による承認を経た上で可能となることから、必要な国会の関与は担保されているものと考えます。
 住民参加については、重点計画に、事業の構想段階における住民参加の仕組みなど、地域住民等の理解と協力を確保するための措置に関する事項を定めるとともに、計画案の作成に際して、国民の意見を反映させるための措置を講ずることとしており、十分な配慮が行われていると考えます。
 道路特定財源についてでございます。
 特定財源のあり方については、幅広く議論、検討しているところですが、厳しい財政事情のもと、引き続き受益と負担の観点から納税者の理解を求めつつ、暫定税率の延長と使途の多様化を図ることとしたものであります。
 具体的には、自動車重量譲与税に係る譲与割合を引き上げるとともに、本四公団の債務の早期抜本処理へ活用するほか、環境分野や都市交通分野へ使途を拡大することとしております。また、特定財源の使途に関する法律の規定を五十年ぶりに改正することとしたところであります。
 特定財源の今後の活用については、さまざまな意見を伺いながら、引き続き幅広く検討を進めていきたいと考えます。
 社会資本整備の大規模開発型からの転換についてでございます。
 社会資本整備については、基本方針二〇〇二や予算編成の基本方針に示された、魅力ある都市、個性と工夫に満ちた地域社会や、公平で安心な高齢化社会・少子化対策などの分野に重点的に取り組んでいるところであり、平成十五年度予算においても、これらの分野を中心に、雇用、民間需要の拡大に資する分野への重点配分を行ったところです。
 今後とも、国民生活の質の向上や経済の活性化を図る上で効果の高い事業に重点的な投資を行ってまいります。
 全国総合開発計画は廃止すべきではないかとのお尋ねです。
 人口減少・高齢化の進行、財政、環境等の制約の高まりが見込まれ、我が国が進むべき明確な針路が求められる中にあって、長期的視点に立った国土づくりの総合的かつ基本的な計画は、極めて重要であります。
 現行の全国総合開発計画においては、国土基盤投資の重点化、効率化の方針を強く打ち出しており、今回の法案による重点計画は、この方針に合致し、その具体化を図るものであります。
 政治献金のあり方についてでございます。
 公共事業受注企業からの献金などについては、野党四党から既に改正法案が国会に提出されている一方、自民党において現在検討が進められているところであり、一歩でも前進するような措置を講じたいと考えます。
 また、欠損を出し、配当ができない会社からの政治献金について、自民党は、現在、受け取りの自粛をする方向で検討しております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣扇千景君登壇〕
国務大臣(扇千景君) 瀬古議員に、御質問をされましたけれども、ほとんど総理から御答弁がありますけれども、特に、今回の法律に、重点計画はということでございましたので、対象事業につきましては、重点目標を定めまして、事業間の連携強化、コストの縮減、そして厳格な事業評価などに関する事項を計画に盛り込むことによって、限られた予算の中で、より安く、スピーディーに事業を実施することを目標としたものでございます。
 したがいまして、この法律を口実に予算を拡大していくという御批判は当たらないと思っております。むしろ、国際競争力や都市再生だけではなく、豊かな国民生活の実現、安全の確保、環境の保全など、すべての分野にわたる事業について、今まで以上に重点化、効率化が図られるものと思っております。
 公共事業に関しての企業からの政治献金について、総理から既にお答えがございましたけれども、企業が政治活動に対して献金を行う場合においては、政治資金規正法や公職選挙法等の関係法令に従い、適正に行うということが必要だと考えております。
 特に、公共事業の受注者となる建設業については、我が国の住宅・社会資本の整備を担う基幹産業であることに伴う社会的責務の重大性にかんがみまして、これらの法令を遵守することはもとより、国民の疑惑を招くことのないよう十分に配慮するべきだと思っております。
 このため、平成十三年四月より施行しております公共工事の入適法、入札と契約に関する適正化法に関しまして、この徹底を図るとともに、建設業者からの政治献金については、国民の疑惑を招くことのないようという趣旨の文書を昨年四月二十六日に出しまして、強く指導しているところでございますので、今後とも、そのようにしていきたいと思っております。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 原陽子君。
    〔原陽子君登壇〕
原陽子君 社会民主党の原陽子です。
 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました、内閣提出、社会資本整備重点計画法案、社会資本整備重点計画法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、民主党提出、公共事業基本法案につきまして、政府案に絞って、小泉総理並びに国土交通大臣、環境大臣に質問いたします。(拍手)
 私は、公共事業長期計画が、戦後復興期の社会資本整備、そして、高度成長の基盤づくりに大きな役割を果たしてきたことを、否定するものではありません。問題は、社会資本整備が不十分だった時代に始まった計画に対し、その後の整備状況を踏まえ、計画が引き続き必要かどうか、根本からの見直しが行われず、現時点でもできていないということです。
 昨年十月の地方分権改革推進会議の「事務・事業の在り方に関する意見」は、ナショナルミニマムの達成から地域が選択する地域ごとの最適状態、ローカルオプティマムの実現へ向かうべきであるとしています。国が整備すべき社会資本について、既に必要な整備水準に達しているとの見解が関係審議会等で示されているものも多く、今回の法案でも、どの事業をどこまで見直したのか、姿が見えてきません。
 そこで、総理にお尋ねをしますが、箱物公共事業は、もう十分、ナショナルミニマムに達したのではないでしょうか。今、必要なことは、箱物公共事業への国家による集中的な資本投下をやめ、地方のニーズに合わせる分権の発想で決めていくことであり、長期計画やその根拠法をすっきりと廃止すること、特定財源、特別会計といった硬直化しやすい財政システムの見直しを行うこと、地方に必要な税源を移譲することが何よりも必要であると考えますが、いかがでしょうか。
 これまでも、長期計画は、省庁別に、あるいは同じ省でも担当局別につくられるため、事業の連携を図る余地が少なく、相互にチェックがきかないという問題が指摘されてきました。
 ところが、今回の法案は、予算の硬直化と縦割りへの批判にこたえたといいながら、実際は、国土交通省所管のばらばらな分野の関連法を重点化の名で一本にまとめただけのものとなっています。このことは、もう一つの公共事業官庁である農水省所管の土地改良、漁港、森林整備などの事業との調整がつかず、縦割りの弊害は依然残っているところにもあらわれています。
 計画の一本化というのなら、農水省の公共事業のあり方も抜本的に見直すべきではないでしょうか。また、事業の量をアウトカム指標に変えるといいながらも、なぜ道路に関してだけは、事業量を策定し、閣議決定を行うという特別扱いを続けるのでしょうか。表向きは変わっても、裏で縦割りの計画をつくるようなら、何ら改革とは言えないと思います。単に計画の表現が変わる現状維持法であり、意味なしと考えますが、これらについての総理の御見解をお伺いいたします。
 市民が払う税金の使途は市民が決める、代表である議会が決めるというのが、近代国家成立以来の基本的な原理です。法的根拠もなく、国会で審議されることもない閣議決定が政官財複合体のお墨つきとなり、税金が湯水のように使われる原因の一つであったと言えます。一本化計画は、かえって、不要な事業まで盛り込みやすい巨大な器を官僚に丸投げすることにつながるおそれもあると思います。
 総理、立法府による行政コントロールが叫ばれる中、重点化計画をなぜ国会承認事項にしなかったのか。した場合、しなかった場合のメリット、デメリットを含めて、御説明をお願いいたします。
 これまで、社会資本整備は、国土総合開発法に基づく全国総合開発計画、国土利用計画法に基づく全国計画など、国主導の計画でがんじがらめで来ました。それらが廃止されずにいる限りは、長期計画を重点計画と言いかえたところで、国が予算と再配分の分野をコントロールする状態から何も変わりません。
 重点的に何を行政サービスで国民に提供するかは、もはや、国が決めることではなく、自治体と地域住民に任せるべき時代です。国が果たすべき役割が残っているとしたら、それは、適正な行政手続、すなわち、計画の構想や策定段階での情報公開、そして、住民合意の仕組みを充実させることであると思います。
 学識経験者が霞が関に集まって、地域住民の声を吸い上げる仕組みが全くない審議会で、省庁が書いたシナリオどおりに答申し、全国レベルの公共事業計画を定める方式は、もうやめるべきです。ローカルレベルの計画を住民参加で決めていく方法に変えていくべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 国土交通省は、重点化計画を定めるに当たって、交通政策審議会と社会資本整備審議会の合同部会の答申を受けて計画を定めると言っています。しかし、法案では、重点計画案を作成する際、「国民の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」とあります。法律に定めがない審議会の答申と、法律で定められた措置に基づく国民の直接の意見では、どちらが、どのように尊重あるいは反映されるのでしょうか。扇国土交通大臣にお尋ねいたします。(拍手)
 さて、総理はオーフス条約という国際条約を御存じでしょうか。一九九二年のリオ宣言の原則十で提唱されたもので、現代及び将来世代のすべての人々の権利保護のために、環境に関し、情報へのアクセス権、政策決定への市民参加権、裁判を受ける権利の三つの権利を保障することを目的にした条約です。
 公共事業をこの環境に関する市民の三つの権利に照らすと、日本で最もおくれ、早急な措置を必要としているのはどれであると総理はお考えでしょうか。私は、裁判を受ける権利ではないかと考えますが、同意していただけますでしょうか。
 公共事業の、行政処分を伴わない行政計画は訴訟の対象とされず、また、公共事業の予定地に住み、所有権を持っていない限りは原告にすらなることもできず、提訴しても多くが門前払いされることが常識となっています。実際に、公共事業に関して、市民が裁判を起こす権利を発揮できる機会はほとんどなく、どんなに環境に影響がある事業であっても、行政計画が覆せる段階で判決を得ることは、事実上、不可能となっています。
 昨年三月に閣議決定された司法制度改革推進計画では、「司法の行政に対するチェック機能の強化」として、行政事件訴訟法の見直しを含めた行政に対する司法審査のあり方に関して、司法及び行政の役割を見据えた総合的、多角的な検討を行い、所要の措置を講ずるとされています。
 司法制度改革推進本部長を務める総理は、先ほど提起したさまざまな問題を解決するために、どのような司法改革が必要であるとお考えでしょうか。
 私は、一つの手だてとして、環境基本法に、何人も環境保全を目的として事業者や行政の行為または不作為を訴えることができる、いわば市民訴訟条項を入れるべきではないかと提案したいと思いますが、環境大臣の御見解をお伺いいたします。
 財政難の折、公共事業全体を、地域住民が目的を達成するために最も費用対効果の高い方法を選択できるように近づけていくべきではないでしょうか。例えば、生活排水で川や海の水を汚さないよう、現在は、国土交通省が下水道事業、農水省が農業集落排水事業、環境省が合併処理浄化槽整備をばらばらに進めています。それに加えて、バイオマスプラントなどの新しい技術も出てきています。これらを比較評価して、自治体や住民が、効果の最も高く、早く、そして安い事業を選択できるようにすることが急務と考えます。
 重点化法案のように下水道事業を鉄道や砂防事業と一本化するよりも現実的な重点計画だと思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。
 私は、今、国として重点化計画が必要なのは、箱物公共事業整備のための重点計画ではなくて、福祉、教育、医療、環境など、人に優しい行政サービスを実現するための重点化であるべきではないかと考えます。箱物公共事業の重点化法は撤回し、福祉、教育、医療、環境など、人を大切にするための予算の使い方と仕事の創出を目指した、本当の意味での未来への投資となる人づくりのための重点化法として出し直すべきだと考えます。
 最後に総理のお考えをお尋ねし、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 原議員にお答えいたします。
 公共事業に関し、必要な対応についてでございます。
 公共事業については、国際競争力の確保、個性ある地域の形成等の課題に対応し、二十一世紀の国民生活と経済活動の基盤を形成するため、真に必要な事業に重点化するとともに、国と地方の役割分担の明確化、事業間の連携、コスト縮減、入札契約の改善を進めるなど効率化に努めつつ、国民の理解を得ながら、引き続きその推進を図ることが必要であると考えます。
 このため、補助金の廃止、縮減や、統合補助金の拡充などの国庫補助負担事業の見直しを進めるとともに、道路特定財源の使途について、従来からの道路等の建設等に加え、密接に関連する環境対策事業等を追加することとしたほか、三位一体の改革の芽出しとして、自動車重量譲与税に係る譲与割合を引き上げることといたしました。
 本法案は、緊急措置法に基づく事業分野別の長期計画を統合し、バリアフリー社会の形成などの横断的な重点目標を設定し、事業間連携を確保するとともに、計画内容を事業費から達成される成果へと転換するなど、公共事業の改革を効果的に進めるものであります。
 農林水産省関係の公共事業のあり方、道路の事業量の仕組みについてでございます。
 農水省関係の公共事業については、食料・農業・農村基本法などの理念に基づいて他の農業施策と一体的に推進するため、今回の法案の対象となっておりませんが、事業間連携の確保、コスト縮減など、事業横断的な公共事業改革の取り組みは進めているところです。
 また、道路事業については、従来の五カ年計画を廃止し、社会資本整備重点計画に一本化することといたしましたが、道路特定財源の暫定税率の延長等について、納税者の方々の理解を得るため、その前提となる道路特定財源の対象となる事業の量の目安を示すこととしたものであります。
 現状維持との批判は当たらないと考えます。
 社会資本整備重点計画の国会承認についてでございます。
 社会資本整備の重点化、効率化を図る観点から、行政として取り組むべき今後五年間の重点目標と事業の概要を定めるものでありますが、計画の前提となる基本理念は、今般、まさしく、法案として国会の承認を受けることとなるものであります。
 一方、重点計画は、他の同様の行政計画も参考として閣議で決定することとしておりますが、その事業の実施については、毎年度の予算に関する審議により、国会による承認を経た上で可能となることから、必要な国会の関与は担保されているものと考えます。
 計画策定の行政手続や住民参加についてです。
 社会資本整備重点計画には、事業の構想段階における住民参加の仕組みなど、地域住民等の理解と協力を確保するための措置に関する事項を定めることとしております。
 また、計画案の作成に際し、国民や都道府県の意見を反映させるための措置を講ずることにより、地方公共団体の自主性や地域の特性等に配慮してまいりたいと考えます。
 裁判を受ける権利と行政に対する司法審査についてです。
 国民が容易に利用できるとともに、迅速、適切かつ実効的に救済を受けられる司法を実現するため、内閣は、司法制度改革に取り組んでおります。
 環境に関する裁判を受ける権利についての御議論を含めて、司法の行政に対するチェック機能を充実強化し、国民の権利救済をより実効的に保障する観点から、必要な見直しを続けてまいりたいと考えます。
 従来の事業と新技術との比較評価についてです。
 汚水処理施設の整備については、各都道府県が、費用対効果が最大となるような整備手法の組み合わせを示す都道府県構想を策定し、これに基づき、事業を進めているところです。
 また、新たな技術が実用化された場合には、それも含めて費用対効果を検討し、都道府県構想の中で適切な役割分担を図っていくものと考えます。
 なお、社会資本整備重点計画においても、より効率的、効果的な社会資本整備の実現に向けて、下水道と農業集落排水事業などとの連携について盛り込むこととしており、十五年度予算においては、合併処理浄化槽の整備は対前年度約三四%増とする一方、農業集落排水事業については約三〇%減とするなど、めり張りをつけた配分を行ったところであります。
 人に優しい行政サービスのための計画についてです。
 暮らしの質を高めたいという国民の意欲にこたえ、暮らしの構造改革を進め、国民が安心して暮らせる豊かな経済社会を実現していくことは重要な課題と考えます。
 このため、小泉内閣においては、今般の法案を含めた社会資本整備の重点化、効率化の推進に加え、医療を初め、将来にわたり持続可能なものとするための社会保障制度改革、待機児童ゼロ作戦の推進などの少子化対策、奨学金制度の充実などの教育改革、循環型社会の構築に向けた廃棄物処理やリサイクルの推進など、広範な改革への取り組みを進めているところであります。
 今後とも、予算配分の重点化などを通じ、活力ある豊かな経済社会の実現に向けた各般の改革を着実に進めてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣扇千景君登壇〕
国務大臣(扇千景君) 原議員から、審議会の答申と国民の直接の声の扱いについてのお尋ねが一点ございました。
 重点計画の策定に当たりましては、高度で専門的な第三者の意見を反映させるため、交通政策審議会及び社会資本整備審議会から意見を聞くことにいたしております。
 一方で、従来の長期計画は、国民の視点に立って、どのように役立つ事業なのかということがわかりにくい、そういう御批判もありますので、今回の重点計画では、案の策定に際しては、広く一般の国民に公表して、直接、その御意見を伺うことにいたしております。計画の内容にそれを反映させるつもりでございます。
 このように、大所高所から専門家の御意見を聞く審議会と、幅広く国民の御意見を伺うこととは目的は異なりますので、いずれも適切に計画に反映できるというメリットを最大限に生かしていきたいと思っております。(拍手)
    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
国務大臣(鈴木俊一君) 原議員から、市民訴訟条項についての御質問がございました。
 市民訴訟条項は、アメリカにおきましては、幾つかの環境関係の法律で規定されているものと承知しております。
 こうした市民訴訟条項を環境基本法に位置づけるべきとの御提案でありますが、裁判を受ける権利や行政に対する司法審査という司法、行政制度の根幹にかかわる問題でございますので、まずは、司法制度改革の議論の中で検討いただくべきものと考えているところであります。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時七分散会


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