衆議院

メインへスキップ



第14号 平成15年3月13日(木曜日)

会議録本文へ
平成十五年三月十三日(木曜日)
    ―――――――――――――
  平成十五年三月十三日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件
 食品安全基本法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時四分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件
議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。
 内閣から、
 日本銀行総裁及び同副総裁に
次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
 内閣からの申し出中、
 まず、
 日本銀行総裁に福井俊彦君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
 次に、
 日本銀行副総裁に岩田一政君及び武藤敏郎君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
     ――――◇―――――
 食品安全基本法案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、食品安全基本法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣谷垣禎一君。
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) ただいま議題となりました食品安全基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国においては、経済社会の発展に伴い国民の食生活が豊かになる一方、食品に関する科学技術の発展、食品流通の広域化、国際化が進展するなど、我が国の食生活を取り巻く環境は、近年、大きく変化しております。このような変化を背景として、一昨年の牛海綿状脳症の発生を初めとして、昨年の外国産野菜における農薬の残留や国内における無登録農薬の使用など、食品の安全にかかわる問題が相次いで発生し、食品の安全性の確保に対する国民の関心は、従来にも増して高まっております。
 このような情勢の変化に適確に対応するためには、最終的に消費される食品の安全性を確保するだけでなく、第一次生産にさかのぼって必要な措置が講じられるようにするとともに、食品を通じた健康への影響の科学的評価を中心とする科学的手法により国民の健康への悪影響を防止し、または抑制することを食品の安全性の確保に関する基本原則として打ち立て、国民の健康保護を最優先にする新たな食品安全行政の体制を確立することが喫緊の課題となっております。
 本法案は、このような認識に立って、基本理念とこれに基づく基本的な施策の枠組みを新たに構築することにより、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進することを目的とするものであります。
 次に、本法案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、食品の安全性の確保についての基本理念として、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識、食品の生産から販売に至る供給行程の各段階における適切な措置、国際的動向及び国民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づいて措置を講じることによる国民の健康への悪影響の未然防止の三つを定めるとともに、国、地方公共団体及び食品関連事業者の責務並びに消費者の役割を明らかにしております。
 第二に、食品の安全性の確保に関する施策の策定に係る基本的な方針として、食品健康影響評価の実施、その結果に基づいた施策の策定、関係者相互間の情報及び意見の交換の促進、重大な食品事故等緊急の事態への対処に関する体制の整備、関係行政機関の相互の密接な連携等について規定するとともに、これらにより講じられる措置について、その具体的な実施に関する基本的事項を定めて公表することとしております。
 第三に、内閣府に学識経験者による合議制の機関として食品安全委員会を設置し、食品健康影響評価及びこれに基づく勧告を行うこと、委員は両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命することなどについて規定しております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 食品安全基本法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。後藤斎君。
    〔後藤斎君登壇〕
後藤斎君 民主党の後藤斎でございます。
 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました食品安全基本法案について質問いたします。(拍手)
 冒頭、この食品安全は農林水産大臣に大変関係することでありますが、きょう、大臣に対して質疑ができないことを大変遺憾に思っております。
 二〇〇一年九月十日、ちょうど米国の同時多発テロの前日でありますが、日本では、食の安全を脅かす重大な事件が起きました。BSE、いわゆる狂牛病が国内で初めて確認されたことであります。
 BSE問題は、何度となく国会でも議論しましたが、明らかに、行政の不作為で起こったことでございます。政府は、十年以上前からヨーロッパを中心とした各国で相次いで発見されたBSE感染牛の経済・社会的影響を知りながらも、それを無視し、また、国際機関からBSE発生可能性の警告を受けながら、有効な対策をとってまいりませんでした。これは重大な問題であり、食品安全行政に対する危機管理の欠如が露呈したわけです。
 また、BSE発生後の国と県との連携が不十分であったこと、農林水産省と厚生労働省の縦割り行政の弊害から、風評被害も含め、消費者、畜産農家、流通業者に甚大な影響を与えました。
 民主党では、BSE発生直後に、BSE問題対策本部を設置し、酪農家への視察、意見交換、情報収集に努め、風評被害はもとより、あるべき食品安全体制を検討することに着手いたしました。
 私自身も、十月末、一人で、議員としては多分最も早いヨーロッパ視察でありましたが、BSE先進国である英仏独三カ国を三泊五日で回り、各国のBSEへの対応状況及びその後の食の安全行政のあり方について、その経験と実施状況について調査をしてまいりました。
 BSE問題を皮切りに、さらに食の安全に対する信頼を失わせる数々の問題が発生いたしました。新聞紙上では、食品業者からのおわびの広告が並び、コンビニやスーパーで、食品の回収騒ぎが相次ぎました。
 香料を製造する事業者は、無認可添加物を違法と知りながらも販売し、外食産業では、輸入肉まんに無認可添加物が含まれていることを知りながらも販売を続けた業者や、原産地を偽って表示、販売する業者、消費の期限を書きかえて商品販売を行った業者、商品内容を正しく表示しない不正表示問題等々、数えれば切りがございません。昨年、JAS法の改正が行われましたが、単なる罰則強化で終わり、不正を防ぐための監視体制の強化は見送られました。
 輸入農産物の残留農薬の問題も、重大な問題です。中国では、農薬中毒で十万人以上の死者を出し、その実態も把握しないまま漫然と輸入を許可し続けた行政、また、それを隠ぺいしながら輸入した業者。国内消費の六〇%を外国農産物に依存する日本において、輸入食材が十分な検査も受けずに流通する実態を知り、消費者は慄然とさせられました。
 私たちは、食の安全に関する基本理念を明確にし、関係行政機関の見直しを行う必要性から、昨年の九月には、民主党の食品安全基本法案、食品安全委員会設置法案の骨子を取りまとめました。早期に公表を行ったため、今回の政府案も十分に我が案を参考にされたと思いますが、しかしながら、我が党案に比して不十分なところも多々見られます。
 BSE問題で明らかになった日本の食品安全行政にかかわる弱点は三つあると思います。第一に、リスクアセスメントとリスクマネジメントの混同、第二に、農林水産省、厚生労働省の縦割り行政の問題、第三に、飼料を含む六割の輸入食品の安全性についてむとんちゃくであったことにあります。
 これらの問題について、政府は、リスクアセスメントとリスクマネジメントの混同については答えを出した。しかしながら、食品安全行政のもろもろの問題が解消されたとは言いがたい面がございます。
 以下、法案について御質問を申し上げたいと思います。
 法案の第一条の「目的」は、国と地方公共団体及び事業者の責任と消費者の役割、食品の安全性を確保する施策の推進となっております。
 食品は、申し上げるまでもなく、日々、口にするものです。いつ、どこでつくられたか、どのようなものを口にしたかを過去にさかのぼって記憶しておくことは、個人的には不可能です。BSEのように、味やにおいを五感で異常がわからない場合には、国の責任によって安全性の確保を行わざるを得ないのです。そのためにも、本法の目的規定は消費者を軸に据える必要があると考えますが、谷垣担当大臣の見解を求めたいと思います。
 また、国、地方公共団体は、消費者が受けるべき権利を保障するため、本法の六条、七条において、責務規定が設けられました。しかしながら、その具体的内容は明らかにされておりません。昨今明らかになった食品安全に関する諸問題を含め、どのような手法を講じるのか、その手続に当たることを政令ではなく本法に明文化しておく必要があると考えますが、担当大臣の見解を求めます。(拍手)
 一連の食品安全に関する問題の数々は、関係行政機関や事業者の、ある意味では消費者軽視の風潮の中から生まれたものです。特に、安全不安に対する消費の低迷は、消費者心理を理解しない行政や不当業者の怠慢に起因しております。
 我が党の考え方は、食品安全委員会が食品安全に関する基本方針を定めるに当たって、それぞれの段階で公聴会、協議会を公開で行い、消費者の意向を十分に反映させる手段を確保することを提案しております。
 イギリスの食品基準庁は、消費者第一で、透明性を高め、情報公開を前提とする食品安全行政を実施しております。開かれた体制こそが、リスクを正しく認識し、冷静に対応できる消費者を形成する第一歩と考えますが、その点、政府案は不十分であります。担当大臣の見解を求めます。
 また、民主党案は、食の安全に関する年次報告、いわゆる「食の安全白書」を国会に提出することを義務づけ、行政機関としての情報公開を進めるべきとしています。政府にこのような考えはないのでしょうか。担当大臣の見解を求めます。(拍手)
 政府案は、食品安全委員会をいわゆる八条委員会として位置づけております。しかしながら、私たちは、独立した権限を持つ第三条委員会とするべきであると考えます。
 食の安全行政は、公正中立で、科学的知見により評価、判断されなければなりません。にもかかわらず、担当大臣が置かれた内閣府の審議会となれば、政策遂行上のいわゆる調整が行われ、真に食の安全の確保がなされなくなるのではないでしょうか。
 担当大臣として予定されている谷垣大臣は、国家公安委員会、産業再生機構の担当大臣も兼務されています。これらの担当分野は、食の安全と両立し得るのでしょうか。食品安全委員会は、公正取引委員会と同様、独立した位置づけを確保すべきと考えますが、内閣全体を統括する官房長官の見解を求めたいと思います。
 これまで、食品リスク管理を行う農林水産省、厚生労働省は、国民の健康への悪影響について、縄張り意識から関係相互の情報交換を怠り、また、国際的な動向、食品の安全性についての科学的な知見などの十分な研究蓄積をしてまいりませんでした。縦割り行政の体制は、本法案により食品安全委員会を設置しても、変化するとは到底考えられません。
 EUのBSE発生に対するリスクレポートを無視した農林水産省に見られるように、海外の動向を把握しつつも、それを無視することがあれば、何の進歩もないまま、消費者の不満を単に解消する法律づくりに終わってしまうのではないでしょうか。
 食品安全委員会の設置は食の安全確立の第一歩であるというふうには私自身も評価するところでありますが、海外の動向も見据えつつ、日本型食品安全体制の確立を進めていくことが必要と考えますが、担当大臣の見解を求めたいと思います。
 食品安全委員会の適切な業務遂行を保障するためには、人的、資金的に、農林水産省、厚生労働省や事業者からの強い独立性の確保が必要であります。EUと同様な組織と比較しても、事務局体制はイギリスの十分の一、フランスの半分となっています。行政の肥大化を防止するという考え方はわかりますが、必要な組織に人、資金を配置するのは当然であると考えます。内閣全体を把握している官房長官の見解を求めたいと思います。
 また、委員、事務局には事業者と関係のある者は除く、EUの食品安全庁のような、人事や活動の独立性にも十分配慮する制度設計にする必要があると考えますが、谷垣大臣の答弁を求めたいと思います。
 食品の表示について、いわゆるトレーサビリティーの確立が食の安全だけではなく安心をもたらす有効な手段であることは、民主党の骨子においても強調したところであります。安全と安心は別次元のものではありますが、安心のないところでは安全の認識は成り立たないというふうに考えております。
 昨年のJAS法改正時には、抜本改正を要するということがたびたび国会でも指摘されましたが、いつの間にか、うやむやになってしまいました。表示制度の適正な運用の確保だけではなく、それぞれの法律にばらばらに規定されている表示制度そのものの統一的な改革も必要であると考えますが、谷垣大臣の見解を求めたいと思います。
 先ほども指摘しましたように、日本の食料自給率は四〇%であり、口に入れる六〇%の食品は外国産のものであります。しかし、その安全性を確認する手段は極めて貧弱であり、消費者の健康を考えた施策、体制とは言えません。
 食品安全基本法においては、日本の食品供給体制の実情を反映し、輸入食品に対する取り組みについて特に明記すべきと考えますが、担当大臣の見解を求めたいと思います。(拍手)
 最後に、EU、特にドイツにおいて、BSE発生を契機に農業政策そのものを大転換してまいりました。消費者保護を優先させるため、連邦食料農林省を連邦食料保護省に変更させました。また、食料の基礎を安全という質に大転換させました。この基本法が、我が国において、真の二十一世紀型食料行政推進の中心法として、関係機関が十分に連携し、消費者の食の安全に対する信頼回復に貢献し、食品安全行政の改革が大いに前進することを願って、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣福田康夫君登壇〕
国務大臣(福田康夫君) 後藤議員にお答えします。
 まず、食品安全委員会を三条委員会にすべきではないかとのお尋ねがございました。
 食品安全委員会が行うのは、客観的、科学的な食品健康影響評価でございまして、行政処分等の国家意思を決定し、執行することではないため、いわゆる三条機関とはしなかったものであります。
 また、委員会担当国務大臣は、リスク評価の独立性の観点から、リスク管理機関の大臣との兼務は適当ではありませんが、それ以外であれば兼務はあり得ると考えております。
 次に、食品安全委員会事務局の組織、予算についてお尋ねがございました。
 委員会事務局は、事務局長、次長、四課一官体制の職員五十四名に加え、技術参与二十五名で構成する予定でございます。また、予算については約二十一億円を計上しており、これらによって、リスク評価やリスクコミュニケーションの展開など、十分な活動を行い得るものと考えております。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 後藤議員の御質問にお答えいたします。
 まず、法案の目的規定についてです。
 目的規定は、法案の構成と内容に即して立法目的を簡潔に表現するという観点から、他の立法例も参考にしながら規定しているものでございますが、今般打ち出した、国民の健康の保護が最も重要という基本的認識は、目的規定の「基本理念を定め、」という文言に含まれているものでございます。
 次に、国や地方公共団体の責務の内容についてです。
 法案においては、施策の策定と実施を国及び地方公共団体の責務として定めるとともに、これに関する基本的な方針として、本法案の中で十の方針を定め、さらに、具体的な実施に関しては基本的事項を作成することとしており、国や地方公共団体の責務の具体的な内容を明らかにしているところでございます。
 さらに、食品安全委員会の情報公開体制についてです。
 食品安全委員会では、審議会等の運営に関する指針に基づき、原則として議事内容を公開するとともに、関係者相互間の情報及び意見の交換、いわゆるリスクコミュニケーションを進めることとしております。
 続きまして、食の安全に関する年次報告書の作成についてのお尋ねでございます。
 法案においては、まず第一に、いわゆるリスクコミュニケーションの促進を図るとともに、第二に、食品安全委員会が行う評価結果や勧告の内容はすべて公表することとし、そしてまた、第三に、勧告に基づき講じた施策について、関係各大臣から委員会への報告を義務づけるなど、情報の公開や透明性の確保に十分に意を用いているところでございます。したがって、年次報告書の作成を法定する意義は乏しいものというふうに考えております。
 それから、日本型食品安全体制の確立についてです。
 本法案は、まさに日本型食品安全体制の確立を目指すものでございまして、本基本法によって、日本型の科学的な食品安全行政を確立し、その運営に遺漏なきを期してまいる所存でございます。
 それから、委員、事務局の人事や活動の独立性についてのお尋ねがございました。
 食品安全委員会の委員及び事務局の人選に当たっては、その業務の中立性、公平性の観点に十分留意する必要があると考えております。
 なお、委員につきましては、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することといたしております。
 それから、食品の表示制度についての御質問でございます。
 消費者に情報を正確に伝達する上で何が最も大切かという観点から、必要な検討が行われなければならないと考えております。現在、関係各省において、用語の統一などにつきまして鋭意検討が進められているものと承知しております。
 最後に、輸入食品についてでございます。
 本法案は、食品一般をその対象としておりまして、輸入食品について特段の規定を設けるまでもなく、本法案及び関係各法の規定に基づいて、輸入か国産かにかかわらず、安全性の確保のために必要な措置が講じられるべきと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 山田正彦君。
    〔山田正彦君登壇〕
山田正彦君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました食品安全基本法案について質問いたします。(拍手)
 質問に先立ち、一言申し上げます。
 既に、小泉政権は、末期的症状を示しており、内政、外政ともに、今や、完全に当事者能力を失っています。国民生活は大増税による負担にあえぎ、市場では株価が二十年ぶりについに七千円台に突入するなど、三月危機が現実のものとなりつつあります。また、対イラク外交では、安保理決議がないままで、アメリカの対イラク武力行使に従おうとしています。
 しかし、このような未曾有の危機において、小泉政権は、何ら具体的な対応を打ち出せないばかりか、総理自身や閣僚、与党議員の政治と金に関する疑惑で、国会審議もままならない状況です。
 本年元旦には、小泉総理、大島農林水産大臣及び総務大臣、環境大臣に関する不正献金疑惑がマスコミで報じられました。また、一月十五日には、自民党長崎県連の幹事長と事務局長が公職選挙法違反で逮捕、後日、起訴されました。さらに、今月七日には、元自民党の坂井衆議院議員が政治資金規正法違反で逮捕されました。
 国民もあきれ果てる状態が続いています。
 仮に、与党が主張するように、これらの疑惑がぬれぎぬであれば、自由党など野党四党が要求している参考人招致に堂々と応じるべきであると考えます。(拍手)
 また、同様に、自由党などが十一日に提出した、元自民党の坂井衆議院議員に対する辞職勧告決議案についても、速やかに採決し、我々国会議員みずからが襟を正すべきであると考えます。(拍手)
 さて、本来であれば、食品安全基本法案については大島農林水産大臣にお伺いしなければならないのですが、大臣自身の疑惑は極めて濃厚で、また、答弁の姿勢は余りにも不誠実なため、残念ながら、大臣としての資質はないと思わざるを得ません。そのため、あえて大島大臣に対する質問はいたしません。(拍手)
 まず、法案が提案されるに至ったいきさつについてお聞きいたします。
 平成十三年九月、我が国で一頭目のBSEが発生してからは、御承知のように、大変なパニックに陥りました。私も四百頭ほどの肉牛を飼っていた者として、夜も眠れないほどのショックでした。当時、生産者、流通業者はかなりの数の倒産、破産、夜逃げ、一家離散、ついには自殺者が身近なところで発生したのも、皆さんの記憶に新しいところです。BSEの発生によって、少なくとも三千億円を超える未曾有の損失を発生させました。
 その原因はどこにあったのでしょうか。
 一九九七年、米国などがEUからの肉骨粉の輸入を法律上も禁止しているのにもかかわらず、それまで二十五トンとわずかでしかなかった肉骨粉を農水省が承認して次々にEUから輸入、ついには十万トンに達する肉骨粉を輸入させたところにその原因があります。まさしく、報告書でも明らかにされたように、政府の失政、過失責任そのものなのです。
 ところが、政府は、農水大臣も辞任せず、農水次官も九千万円近い退職金をもらってやめたばかりで、だれ一人、責任をとろうとしませんでした。このようなことが二度と発生しないように、食の安全と安心の世論の高まりに応じて提案されたのがこの基本法です。
 確かに、この法案では、国の責務は記載されています。しかしながら、抽象的に、食の安全に対する施策を講じなければならないと述べているだけで、国の結果責任については、何ら触れられていません。食の安全に対して、罰則も含めて、行政はどの部署で、だれが、どのような責任をとるのか、結果責任についても明確に記載されなければならないはずです。
 残念ながら、今も、中国の残留農薬の問題、中国製の健康食品による死者の発生など、食の安全に関する危険は依然として進行中です。責任を明らかにしない限り、この法案は絵にかいたもちにすぎないのではないでしょうか。
 さらに、食品安全委員会を設置しても、実際の監視に当たる行政は食品衛生法によって厚生労働省、一方、農産物についてはJAS法によって農水省と、従来の縦割り行政に何ら変わりありません。
 この法案によってどこが変わったのか、谷垣担当大臣に見解をお聞きいたします。(拍手)
 次に、消費者としての役割について質問いたします。
 本法案では、「消費者の役割」として当たり前のことを抽象的に羅列しているだけで、具体的に、消費者がどのような制度のもとに、どのような意見を申し出ることができるか、何も記載されていません。そのため、消費者としても、自己の役割としてどのような行動が求められ、実際に消費者としてどのように食の安全という問題に参加してもらおうと考えているのか、イメージすらすることができません。
 谷垣担当大臣及び坂口厚生労働大臣に、本法案が消費者に対して求めている役割と行動について、具体的な内容をお答えいただきたい。
 次に、施策の中核である食品健康影響評価の実施についてお聞きいたします。
 今まで食品健康影響評価が満足に行われてこなかったこと自体が極めて問題ですが、さらに重要なことは、そのリスク評価に基づいてどのような行動をとるかというリスク管理、消費者の役割の発揮などを通じた情報の共有化といったリスクコミュニケーションをいかに整備するかにかかってきます。
 しかし、この法案では、リスク管理、リスクコミュニケーションについては、食品安全委員会が実施することになっていますが、諸外国のようなかなりの手足を持った組織ではないため、実質的には所管官庁が行うことになります。情報の共有やリスク管理のあり方に対する責任が明確でなければ、今までと変わらぬ体質を温存するだけです。
 この法案によって、リスク管理、リスクコミュニケーションについて、これまでと比べてどのような変化があらわれるのか、谷垣担当大臣にお聞きいたします。
 次に、食品安全委員会についてお聞きいたします。
 食品安全委員会がリスクを評価して勧告などのリスク管理を行ったとしても、強制力がないため、当該省庁が検討を行ったときに、事実上、骨抜きにされる可能性が大です。
 今回、この委員会は、国家行政組織法上の第八条委員会に位置づけられていますが、食の安全に対する強固な監視体制、また、食の安全が脅かされる事態が発生したときに、機敏に、かつ権限を持って対応するためにも、会計検査院や公正取引委員会のような、独立して権限を行使する機関にするべきではなかったでしょうか。谷垣大臣の御見解をお伺いいたします。
 また、あくまでも第八条委員会の位置づけとするのであれば、所管を総理大臣に付することも検討していいのではないでしょうか。
 本法案の食品安全委員会については、そうした食の安全が危機に陥ったときの総理大臣としての行動や、委員会として毅然とした対応をどのようにとるかといった方針は、十分に盛り込まれていません。
 例えば、委員会の委員七名は総理大臣が任命権者となっていますが、それ以降、特段、総理大臣がこの委員会に関与することはありません。委員会のリスク評価に基づく勧告や、緊急事態に対して調査審議を行った結果の意見を述べる先は、関係行政機関の長である各省庁の大臣となっています。つまり、委員会と総理の接点は任命するだけの関係であり、食の重大かつ緊急を要する事態が発生したとしても、総理はリーダーシップを発揮することができない体制となっています。
 もちろん、委員会の中立性、独立性は確保しなければなりません。しかし、問題発生時の意見の具申先や、重大かつ緊急時の対応では、総理のリーダーシップを存分に発揮するような仕組みをも考えなければならないのではないでしょうか。谷垣担当大臣にお聞きいたします。
 最後に、一言申し上げます。
 冒頭、表明したように、小泉政権は、今回の食の危機管理問題だけでなく、すべての問題について、口先だけのパフォーマンスを打ち出すばかりで、何ら具体的な対策を講じていません。このままでは、日本が崩壊の道を急速にたどることは必至の状況となっています。
 それに対し、我々自由党は、本年の代表質問で小沢一郎党首が高らかに宣言したように、日本を一新する十一本の基本法案を今国会に提案することを表明しております。今後、これらの基本法を成立させ、日本社会を再興して、国民の期待にこたえるために全力を尽くすことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 山田議員の御質問にお答えいたします。
 まず、食品安全行政における国の責務と縦割り行政についてのお尋ねでございます。
 本法案では、昨今の食品事故等の反省も踏まえまして、政府として総合的に対応することとして、まず、国等の責務を明らかにしております。
 また、基本的な方針の一つとして、関係行政機関の密接な連携のもとでの施策の策定を規定するとともに、関係各法の改正法案で、関係大臣間の連携について具体的に規定しておりますことから、食品安全行政におけるいわゆる縦割り行政は改善されるものと考えております。
 次に、消費者の役割と行動についてでございます。
 本法案では、具体的な方針として、情報の提供、意見を述べる機会の付与など、関係者相互間の情報及び意見の交換、いわゆるリスクコミュニケーションの促進を図るために必要な措置を講ずべき旨を規定しておりまして、消費者も、この関係者の一員としてリスクコミュニケーションに積極的に参加していただくことを期待しているわけでございます。
 それから、本法案によってリスク管理、リスクコミュニケーションがどのように変わるのかということでございます。
 今後の食品安全行政におきましては、この法案に基づきまして、まず、リスク管理については、原則として、食品安全委員会が行う食品健康影響評価の結果に基づいて行われることになります。また、リスクコミュニケーションにつきましては、評価と管理の双方に関して、情報の提供、意見を述べる機会の付与など、その促進を図るために必要な措置が積極的に講じられることとなります。
 続いて、食品安全委員会は独立権限を行使する機関とすべきではないかとのお尋ねでございます。
 従来の食品安全行政は、リスク評価とリスク管理の二つの機能が区別されないまま混然一体となっていたことが問題点でありました。このため、リスク評価を客観的かつ中立公正で科学的に行うために、リスク管理機関から独立した機関として、内閣府に食品安全委員会を設置することとしたものであります。
 最後に、食品安全委員会と内閣総理大臣との関係についてのお尋ねがございました。
 食品安全委員会は、食品の安全確保に関して、基本的事項の案について総理大臣に意見を述べて、リスク評価の結果講ずべき施策及びその実施状況を監視し、必要があると認めるときは、それぞれ総理大臣を通じて関係各大臣に勧告するなど、総理大臣にリーダーシップを発揮していただく仕組みとなっております。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 山田議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 消費者に対して求めている役割と行動についてのお尋ねがございました。
 消費者が安全性を確保するための情報を十分に提供すること、そして、意見が十分に表明される機会を与えること、そうしたことが基本として最も重要なことだというふうに思っております。
 こうしたことを具体化しますために、厚生労働省としましては、今国会に提出しております食品衛生法の改正法案におきまして、国や地方公共団体は、具体的な規格基準などを設定いたしますとき、あるいはそうした場合以外におきましても、定期的に、施策の趣旨や実施状況等を公表し、広く国民の皆さんの御意見を求めることといたしております。
 また、平成十五年度予算におきましては、消費者の御意見を伺うための意見交換会の開催経費を盛り込んでおりまして、これらの機会を通じまして、消費者の皆さん方に積極的に御参加いただくようにしたいと考えているところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 中林よし子君。
    〔中林よし子君登壇〕
中林よし子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました食品安全基本法案について質問をいたします。(拍手)
 まず、法案の基本についてです。
 本来、食品安全基本法は、日本国憲法に基づいて、消費者が安全な食生活を営む権利を有しており、国はそれを保障する義務があるという食品の安全性確保の基本原則を確立したものでなければなりません。
 しかしながら、この政府提出の食品安全基本法案は、第一に、国の食品安全確保の責任について見るならば、「基本理念にのっとり、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」と、一般的に規定するだけです。そこには、消費者の権利に相応する国の義務、責任も明記せず、逆に、事業者に責任があることは当然としても、事業者には第一義的責任があるとして、国は、事業者よりも責任が軽いかのような位置づけになっています。
 なぜ、食品の安全確保に対する国の責任を明記しないのですか。国は事業者より食品安全確保の責任が軽いと認識しているのですか。明確にお答えください。(拍手)
 第二に、消費者の役割の問題です。
 本法案では、「消費者の役割」として、「消費者は、食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるとともに、食品の安全性の確保に関する施策について意見を表明するように努める」としています。ここには、消費者は日本国憲法に基づいて安全な食生活を営む権利があるという、消費者の当然の権利を認めていません。その上、消費者は食品安全に不勉強だから勉強すべきという、驚くべき発想が展開されているのです。
 政府は、消費者の食品安全に関する知識と理解が浅いと本当に考えているのですか。また、なぜ、消費者の食品安全に関する権利を認めないのですか。明確な答弁を求めます。(拍手)
 第三に、食品の安全性の確保に関する施策の策定の問題です。
 食品の安全性の確保は、国民の命と健康に直結する問題であり、最も優先的になされなければならない問題です。コストがかかるからといって、国民の命と健康に直結する食品安全性確保が二の次、三の次にされてはなりません。
 そこで見過ごすことができないことは、本法案が、施策の策定にかかわる基本的方針で、「施策の策定に当たっては、」「その他の事情を考慮する」とされていることです。この「その他の事情」とは何ですか。仮に、規制緩和、行政改革、日米関係重視などの概念も「その他の事情」に入るのですか。そうだとすれば、最も優先されるべき食品の安全性確保に関する施策が極めて限定的に行われたとしても、許容されることになるのではないのですか。そうならない保証はあるのですか。明らかにされたい。
 また、食品安全の確保にとって重要な原則である予防原則が、本法案では規定されていません。なぜ、予防原則を除いたのですか。その理由をはっきりと答えてください。
 第四に、食品安全行政に重要な役割を果たすべきである食品安全委員会の問題です。
 今回の食品安全基本法のきっかけは、先ほどからも述べられているように、昨年のBSE問題でありました。このBSE問題の教訓は、産業振興と食品安全の両方の権限を有していた農林水産省が、産業振興を優先させ、食品安全に対するWHOの勧告を無視したことです。また、農林水産省と厚生労働省の縦割り行政が、食品安全確保に当たって連携性がとれず、障害になったということでした。
 その教訓からいえば、農林水産省と厚生労働省の食品安全部門を産業振興部門から切り離して、それをまとめて、ヨーロッパで主流となっている食品安全を専門とする食品安全庁とすべきではありませんか。なぜ、それができなかったのですか。明らかにしてください。(拍手)
 また、食品安全委員会は、厚生労働省や農林水産省から諮問を受けて食品安全性のリスク評価をするとしております。厚生労働省や農林水産省の下請機関になりかねないのではありませんか。縦割り行政は是正されないばかりか、逆に、縦割り行政を温存したまま、国民にリスクを押しつける委員会になりかねない危険性を持っていると言わざるを得ません。そうならない保証はどこにあるのか、明らかにしてください。
 次に、食品安全委員会における消費者の位置づけの問題です。
 消費者は食品安全の権利の主体であり、当然、消費者代表の委員会への参加が食品安全委員会に求められるものです。しかしながら、法案で設置される食品安全委員会は、その委員に消費者代表の参加を認めていません。ヨーロッパなどの先進国の食品安全庁には、消費者代表が位置づけられています。なぜ、消費者代表を位置づけなかったのですか。位置づける考えはないのですか。明確にお答えください。(拍手)
 食品安全行政を確立するためには、リスク評価を行うだけでなく、食品安全確保のための人員、体制、予算の問題もトータルに審議検討することが不可欠です。そのためには、リスク評価は一部の機構とし、上部機構として消費者団体代表を入れた総合的食品安全検討機関とする必要があります。その考えはないのですか。明確に答弁してください。
 次に、食品安全の基本問題について聞きます。
 日本の食品安全問題で、ほかの先進国にない特質は、食料自給率が四〇%であり、食料の六割を輸入に頼っているというところにあります。ですから、日本の食品安全は、輸入食品、輸入農水産物の安全性に大きく左右されるということです。ですから、食料自給率の抜本的引き上げが不可欠なことは言うまでもありません。
 だからこそ、現在、我が国の輸入食品安全のチェックは一体どうなっているのかが、厳しく問われなければなりません。
 我が国の輸入食品の安全に携わっている食品衛生監視員はわずか二百六十八人で、輸入届け出件数が九六年の百十一万件から二〇〇一年の百六十万件へと、五年間で実に四四%も急増しているのです。このもとで、国が行う食品検疫である行政検査は、九六年の五・四%から二〇〇一年の二・八%に急落しています。この行政検査も、モニタリング検査といって、検査結果が出たときには、その食品は私たちの食卓の上に上がってしまった後です。何ら、水際のチェックではないのです。また、計画輸入制度のもとで、小麦や大豆の七割が無検査で輸入されています。
 この事態を抜本的に変えることが、食品の安全性の確保にとって不可欠です。食品衛生監視員の人員と検査率の抜本的引き上げを直ちに行う考えがあるのですか。また、計画輸入制度や継続輸入制度を見直すのかどうか、明らかにしてください。(拍手)
 輸入飼料の安全性の確保も深刻です。今、大量の飼料が輸入されています。牛乳から、史上最強の発がん物質アフラトキシンB1に汚染された飼料を食べた家畜から移行したアフラトキシンM1が検出される事態となっており、今の人員、体制では、とても食の安全を守ることができないことは明らかです。この点でも人員と体制の抜本強化が不可欠ですが、直ちにそれを実現するのですか。はっきりと答えてください。
 また、国内的に見ても、専任の食品衛生監視員は千六百五十九人しかおらず、全体的にも人員の減少傾向の中で、食品衛生監視率も低下し、工場立ち入り実施率も同様に低下しています。地方自治体に配置されている専任の食品衛生監視員を抜本的にふやし、監視率の引き上げや工場立ち入り実施率の引き上げを進める考えがあるのですか。明らかにしてください。(拍手)
 このように、日本の食品安全性の確保のためには、輸入食品や輸入農水産物、輸入飼料の検疫検査の強化と国内の検査体制の強化が不可欠であり、そのための人員、体制、検査機器、予算の抜本的強化が求められています。そのことを抜きに、単にリスク評価だけを行えば食品の安全性が確保されると考えることは、極めて不十分です。
 日本共産党は、多くの消費者国民が十分納得できるまで、本法案を徹底的に審議し、食品安全基本法案がよりよいものになるように全力を挙げることを表明して、質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 中林議員の御質問にお答えいたします。
 まず、国の責任についてでございます。
 本法案では、食品を消費者に提供するのは事業者であることを踏まえまして、第一義的責任は事業者にあると規定しておりますが、食品の安全性は、国、事業者、消費者といった関係者がそれぞれの責務や役割を的確に果たすことによって初めて確保されるものでありまして、国の責務も重要だと考えております。
 このため、基本理念にのっとって総合的に施策を策定、実施すべきことを国の責務として、幅広くさまざまな施策を講ずるべきことを明らかにしております。
 次に、消費者の役割と権利についてでございます。
 消費者は、食品を最終的に消費する当事者であり、知識や理解を深めることは、食品の安全性の確保というみずからの利益を実現する上で重要な役割だと考えております。
 また、食品の安全性は、国、事業者、消費者といった関係者がそれぞれの責務や役割を的確に果たすことによって初めて確保されるものでありまして、権利という位置づけになじむものではないと考えております。
 さらに、施策の策定において考慮すべき事情についてでございます。
 社会的・経済的事情や国際貿易ルールとの整合性といったさまざまな事情が対象となると考えておりますが、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識に立って、健康への悪影響を防止、抑制するという規定の趣旨に即して考慮されることになるわけでございます。
 続いて、予防原則についてのお尋ねでございます。
 法案においては、まず、人の健康に悪影響が及ぶことを防止し抑制するため、国民の食生活の状況その他の事情を考慮して施策を策定する、また、緊急を要する場合には、食品健康影響評価を行うことなく必要な施策を策定できることとしております。
 したがって、国際的に概念の定まっていない予防原則という用語は用いていないものの、悪影響の未然防止という考え方は法案において適切に位置づけられているものと考えております。
 それから、食品安全行政を担う庁をつくるべきとのお尋ねでございます。
 BSE問題に関する調査検討委員会報告では、リスク評価とリスク管理の二つの機能が区別されないで混然一体となっていることが問題点であると指摘されまして、リスク評価を関係省庁から独立した行政機関において行うべきこと等が提案されております。
 したがって、評価と管理を一体にした庁のような組織をつくることは、この報告の趣旨に合致しないものと考えております。
 それから、縦割り行政の御懸念についてでございます。
 食品安全委員会は、関係大臣からの諮問によるほか、みずからの発意でリスク評価を行い、関係大臣に勧告できることとしておりますことから、そのような御懸念はないものと考えております。
 それから、食品安全委員会の委員についてのお尋ねでございます。
 食品安全委員会が行う食品健康影響評価は、科学的、専門的な知見に基づいて、客観的かつ中立公正になされるべきものでございます。このように、食品安全委員会は利害調整を行う場ではございませんので、消費者代表あるいは関連事業者の代表等が委員となることは、慎重に検討する必要があると考えております。
 それから、食品安全行政全体を審議検討する機関についてのお尋ねがございました。
 この基本法によりまして、食品安全委員会を設置し、リスク管理機関との役割分担を明確にするといった手段で科学的な食品安全行政を確立するとともに、政府が一体となって食品の安全確保に総合的に取り組んでいくこととしております。したがって、それに屋上屋を架するような機関の設置には慎重であるべきではないかと考えております。
 最後に、輸入飼料の安全性に関する人員と体制の強化についてのお尋ねでございます。
 飼料の安全性に関する科学的評価は委員会の業務でありますが、輸入飼料の安全性に関する人員と体制については、リスク管理上の問題でございますので、基本理念にのっとって、国の責務の一環として、農林水産省において適切に運用されるものと考えております。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 中林議員にお答えを申し上げたいと思います。
 三問ございまして、第一番目は、輸入食品監視についてのお尋ねでございました。
 検疫所に配置しております食品衛生監視員につきましては、過去十年間に百三名の増員を行ってまいりましたが、十五年度におきましても、十五名の増員を行ったところでございます。検査件数を、十四年度の五万二千件から、十五年度におきましては七万三千件へと、大幅に増加させたいと思っているところでございます。
 計画輸入制度と継続輸入制度についてのお尋ねがございました。
 反復継続的に輸入されます食品につきましては、違反の蓋然性が低い場合には、輸入手続を簡素化、迅速化するものでありますけれども、いずれに関しましても、検疫所において実施いたします輸入時のモニタリング検査につきましては、一層しっかりとやっていきたいと考えております。
 国内の食品監視についてのお尋ねがございました。
 全国の都道府県におきましては、約三千三百人余りが主として食品衛生監視に当たる職員として配置されているところでございます。
 今回の食品衛生改正法におきましては、厚生労働大臣は、監視指導についての基本的な考え方を監視指導指針としてお示しをし、各都道府県は、当該指針に基づきまして、地域の実情に応じた重点的な監視指導計画を策定することといたしております。これらによりまして、必要な施設への監視の一層の充実を図っていきたいと考えているところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 山内惠子君。
    〔山内惠子君登壇〕
山内惠子君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、食品安全基本法について質問を行います。(拍手)
 私の質問は、すべて谷垣大臣にお答えいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 この食品安全基本法案は、BSE調査検討委員会が提出した報告書を参考にして、食品安全行政に関する関係閣僚会議でまとめられたものを基礎に作成されたとお聞きしています。
 実は、私が新卒時代に担任した北海道・帯広の教え子は、親の代からの酪農を受け継ぎ、親の時代よりも牛の数をふやし、おいしい牛乳をと、日夜頑張っています。しかし、あのBSE事件では、あすは我が身かとおびえ、早い段階で政府が取り組んでくれていれば悲劇は起こらなかったのにと、強く訴えていました。
 その言葉を思い起こしながら、BSEの二の舞にならないことを願って、質問いたします。疑問点について、率直にお答えいただきたいと思います。
 この法案は、食品安全基本法という名称でありながら、合成化学農薬や遺伝子組み換え作物、食品添加物の使用を削減していくことが中心ですから、食の安全にとって根本的な部分が欠落していると言わざるを得ません。
 食べ物は、本来、自然の摂理に基づいてつくられるものです。にもかかわらず、効率化の余り、工業生産も同然につくられる食品がいかに多いかは、説明するまでもありません。有機農業や減農薬農業が環境創造型と言われるのは、農薬や化学肥料など薬剤漬け生産で汚された土と水と大気をも浄化に導くからです。
 有機農業に取り組んでこられた方のお話によりますと、水田には微生物もよみがえり、夏には蛍が飛び交い、冬に田んぼを掘り起こしたときには、ドジョウが出てきたそうです。これが自然の摂理だと思います。
 国の責務として、食料生産の化学薬剤依存からの脱却を目指すことを明記すべきです。谷垣大臣の明確な御答弁をお願いいたします。
 次に、法案には、「国民の健康の保護」が盛り込まれました。このことを評価します。さらに一歩進んで、「安全な食物を食べることは国民の権利である」とするべきではなかったでしょうか。お答えください。
 雪印乳業の食中毒事件が起きたのは、一昨年です。食べ物を媒介とした事件は、後を絶ちません。過去を振り返れば、森永砒素ミルク事件があり、魚やお米を媒介とした水俣病、イタイイタイ病、PCBが米ぬかに混入したカネミ油症があり、サルモネラ菌や大腸菌O157による食中毒事件もありました。犠牲を強いられたのは、常に消費者であり、生産者です。
 にもかかわらず、現行の食品衛生法には、国民の権利が位置づけられていませんでした。食品衛生法は、業者と行政の関係を規定したにすぎません。国民の権利を食品安全基本法案に盛り込み、食の安全を確保すべきです。国民の権利を法的に位置づけるということは、生産から製造・加工、食卓に至るまでのあらゆる段階に、国民が参加するシステムをつくるということです。国民参加の基礎は企業と政府の情報開示であり、情報の開示がなされなければ、消費者だけでなく、行政や専門家も、正確なチェックはできません。雪印乳業の事件を見ても明らかです。
 また、厚生労働省や農林水産省の認可していない遺伝子組み換え作物が日常食品に混入されていたことを検査で最初に明らかにしたのは、消費者団体でした。行政ではなかったのです。緊張感や使命感がなければ、厳格な検査はできません。
 その意味で、国民の権利、参加する権利を盛り込むことが不可欠です。このことについて、大臣のお考えをお聞かせください。
 次に、政府案では、「消費者の役割」として、「消費者は、食品の安全性の確保に関する施策について意見を表明するように努める」ことになっています。しかし、政府の策定する施策には、消費者の意見がどのように反映されていくのか、その回路が全く見えません。つまり、リスクコミュニケーションの位置づけが不明確です。この点についてお聞かせください。
 法案では、「情報及び意見の交換の促進」という条項が設けられているので、これがリスクコミュニケーションを担保する規定だというのでしょうか。
 第十三条には、意見を述べる機会の付与、情報及び意見の交換の促進を図るための必要な措置を講じることが規定されているだけで、リスクコミュニケーションを担保するものだとは思えません。
 もし、この規定がリスクコミュニケーションだとするなら、第六条の「国の責務」の項は、「消費者との意見交換を通じて国の施策を策定する」となっていなければならないはずです。谷垣大臣、この第六条「国の責務」の項に、「消費者との意見交換を通じて」と、一文をつけ加えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、「未然防止」の項が設けられたことは、評価いたします。この未然防止は科学的知見に基づいて行われると思いますので、そこで、質問いたします。
 人間は、食物を口にするとき、さまざまな食物を同時に摂取します。この科学的知見とは、いろいろな食物を複合的に摂取した場合の危険性を科学的に研究、試験するものでしょうか。谷垣大臣の御答弁をお願いいたします。
 続いて、食品安全委員会について伺います。
 BSE調査検討委員会報告では、リスク評価部門を他の省庁から独立させるために食品安全庁を設置すべきという内容でしたが、それがなぜ食品安全委員会になったのでしょうか。議論の経緯をお教えください。
 政府は、行政のスリム化、省力化を進める国の政策との関連で食品安全委員会にしたと説明していますが、事は、国民の命と健康、生態系の維持や保全にかかわる問題です。本来、行政の省力化とは違うベクトルで考えられるべきです。大臣のお考えをお聞かせください。
 次に、自民党の、食の安全確保に関する特命委員会も、食品安全委員会という名称ではありますが、BSE検討委員会と同じように、既存各省から独立したリスク評価機関の新設を提言しています。ところが、政府は、この基本法案の最大の眼目はリスク評価部門とリスク管理部門の分離にあるのだと説明されています。
 分離と独立は、同じ意味合いで使用されているのでしょうか、それとも違うのでしょうか。違うというのであれば、なぜ、独立が分離になったのでしょうか。説明をお願いいたします。同じ意味合いだとするなら、安全委員会の独立性を担保するものは何なのか、お聞かせください。
 次に、食品安全委員会は「自ら食品健康影響評価を行う」ということになっています。
 行うのは、あくまでも書類審査による評価であって、食品安全委員会がみずから試験や検査を行うのではないようです。書類審査も、民間のデータが、直接、食品安全委員会に上げられるのではなく、農林水産省と厚生労働省を経由して安全委員会に上げられるようになっています。
 このようなリスク評価の手法は、これまでも厚生省や農水省で行っていたことであって、食品安全委員会は、両省がこれまで行っていたものを単に内閣府に移すだけのように見えるのですが、そうではないのでしょうか。
 また、食品安全委員会はみずから研究機関を持つわけでもなく、既存の研究機関が安全委員会に直属するわけでもありません。これで果たしてリスク評価部門の独立性、政府の言葉をかりれば、分離は確保されるのでしょうか。大臣の御見解をお伺いします。
 さらに、食品安全委員会の事務員は、厚生労働省と農林水産省の職員が出向することになっています。この事務職員は、この食品安全委員会の職員として固定されるのでしょうか。すなわち、食の安全を守るエキスパート、国民の生活を守る職務を全うするという形になっているのでしょうか。
 もし、そうではなく、食品安全委員会に二、三年勤務した後は本省に戻るということになるのであれば、リスク評価部門と管理部門の独立・分離ができるのか、甚だ疑問です。食品安全委員会への両省の影響力の行使も当然考えられます。そのような危惧はないのでしょうか。谷垣大臣の御答弁をお願いいたします。
 最後に、食の安全は、放射能やダイオキシン、環境ホルモン物質、重金属、有害化学物質等による大気汚染、土壌汚染、水質汚染等の影響を排除しない限り、確保はできません。食品安全委員会には、厚生労働省と農林水産省の関係部局だけではなく、環境省の関係部局も統合すべきであると思いますが、いかがでしょうか。谷垣大臣の御認識をお伺いいたします。
 以上、食品安全基本法案についての代表質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕
国務大臣(谷垣禎一君) 山内議員の御質問にお答えいたします。
 まず、食料生産の化学薬剤依存からの脱却を法案に明記すべきだとのお尋ねでございました。
 この法案は、農薬や食品添加物等について、食品安全委員会が科学的なリスク評価を行って、その結果に基づいて関係各省が規制を行うことを定めるものでございますので、リスク評価と無関係にその使用の削減を法案に盛り込むことはなじまないというふうに考えております。
 次に、国民の権利についてでございます。
 食品の安全性は、国、事業者、消費者といった関係者がそれぞれの責務や役割を的確に果たすことによって初めて確保されるものと考えております。
 このため、この法案におきましては、権利という位置づけは行っておりませんが、まず第一に、安全な食品の供給については、第一義的責任が食品関連事業者にあると規定するとともに、第二番目として、国民の参加については、施策について意見を表明するよう努めることを消費者の役割として規定しているところであります。
 いずれにせよ、食品の安全性の確保という国民の利益が実現されることが重要だと考えておりまして、基本法の制定に加えて関係各法の改正等によりまして、政府全体として、我が国の食品安全行政の充実強化を図ることとしております。
 それから、法案でのリスクコミュニケーションの位置づけと国の責務についてのお尋ねでございます。
 法案におきましては、国民の意見に十分配慮することを基本理念に明記しますとともに、基本理念にのっとって施策に当たるべきことを国の責務として定めた上で、基本的な方針として、施策の策定に国民の意見を反映し、その過程の公正性と透明性を確保するため、関係者相互間の情報及び意見の交換、いわゆるリスクコミュニケーションの促進を図るために必要な措置を講ずべき旨を定めておりまして、国がリスクコミュニケーションを行うことは十分規定されているのではないかと考えております。
 それから、食品の安全性の確保に必要な科学的知見の内容についてでございます。
 これにつきましては、食品安全委員会において具体的に議論されるべきものと考えますが、さまざまな危害要因がさまざまな食品に含まれ得ることを前提として科学的評価が行われるものと考えております。
 それから、なぜ食品安全庁ではなくて食品安全委員会を設立することとしたのかとのお尋ねがございました。
 BSE問題に関する調査検討委員会報告では、リスク評価とリスク管理の二つの機能が区別されないで混然一体となっていることが問題点だと指摘されたわけでありまして、リスク評価を関係省庁から独立した行政機関において行うべきこと等が提案されているわけであります。
 したがって、リスク評価とリスク管理を一体化して行う食品安全庁のような組織をつくることは、この報告の趣旨に合致しないものというふうに考えております。
 このため、科学的なリスク評価がリスク管理から分離され、客観的かつ中立公正に行われるよう、食品安全委員会を内閣府に置くこととしているわけであります。
 それから、食品安全委員会の独立性についてのお尋ねがございました。
 与党の提言におきましても、それから、関係閣僚会議の取りまとめでも、委員会は関係各省から独立して内閣府に設置することとされておりまして、これに加えまして、委員は内閣総理大臣が任命するといった、その独立性の確保が図られているわけであります。
 それから、食品安全委員会が行うリスク評価の手法、それから、みずから研究機関を持たないということについてのお尋ねがございました。
 内閣府に食品安全委員会を設置することは、評価と管理が区別されないで混然一体となっている現状を改めて、リスク管理機関から独立して、科学的なリスク評価を客観的かつ中立公正に行うという意義を有するもの、これは先ほども申し上げたとおりであります。
 また、食品安全委員会は、独自の研究機関を持つわけではありませんけれども、提出データの信頼性、妥当性を判断できる各分野の専門家の英知を結集しますとともに、みずからも必要な調査研究が実施できることとなっており、適切なリスク評価が担保されるものと考えております。
 それから、食品安全委員会の職員についてのお尋ねがございました。
 食品安全委員会は、関係各省から独立して内閣府に設置され、その運営においても中立性の確保に十分留意していくこととしております。
 一方、食品安全委員会の事務局は、科学と行政の双方に通じていることが求められますので、関係省庁からの出向もあり得ると考えますが、職員の固定につきましては、事務局の規模や、専門性を要する行政資源の有効利用の観点から、いかがなものかなと考えております。
 最後に、食品安全委員会と環境省との関係についてでございます。
 食品安全委員会は、各省の関係部局を統合して設けるものではありませんが、環境省関係につきましても、食品に関連する事項、例えば農薬については環境大臣から諮問を受けることとなっておりまして、また、食品安全委員会は環境省に対しても勧告を行うことができることとなっております。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.