衆議院

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第17号 平成15年3月25日(火曜日)

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平成十五年三月二十五日(火曜日)
    ―――――――――――――
  平成十五年三月二十五日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 議員坂井隆憲君の議員辞職勧告に関する決議案(野田佳彦君外九名提出)
 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
下村博文君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 野田佳彦君外九名提出、議員坂井隆憲君の議員辞職勧告に関する決議案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 下村博文君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 議員坂井隆憲君の議員辞職勧告に関する決議案(野田佳彦君外九名提出)
議長(綿貫民輔君) 議員坂井隆憲君の議員辞職勧告に関する決議案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。議院運営委員長大野功統君。
    ―――――――――――――
 議員坂井隆憲君の議員辞職勧告に関する決議案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔大野功統君登壇〕
大野功統君 ただいま議題となりました議員坂井隆憲君の議員辞職勧告に関する決議案につきまして、議院運営委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本決議案は、去る十一日に提出され、同日本委員会に付託されました。
 本決議案の取り扱いにつきましては、理事会で慎重に協議を重ねてまいりました結果、本日の委員会において、提出者長浜博行君から趣旨の説明を聴取し、質疑の申し出がありませんでしたので、討論、採決の結果、本決議案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
下村博文君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 議院運営委員長提出、国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 下村博文君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
議長(綿貫民輔君) 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長大野功統君。
    ―――――――――――――
 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔大野功統君登壇〕
大野功統君 ただいま議題となりました国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 この法律案は、郵政事業庁の廃止に伴い、平成十五年三月三十一日をもって国立国会図書館支部郵政事業庁図書館を廃止しようとするものであります。
 本案は、本日、議院運営委員会において起草し、提出したものであります。
 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及び城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生労働大臣坂口力君。
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 雇用保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 雇用保険制度については、厳しい雇用失業情勢の長期化等により、受給者が増加する一方で保険料収入が減少し、極めて厳しい財政状況にあり、こうした財政状況や雇用就業形態の多様化の進展等制度をめぐる諸情勢に的確に対応し、失業した労働者の生活の安定及び再就職の促進を図るとともに、将来にわたり安定的な運営を確保し得るものとしていくことが求められています。
 このため、給付について、受給者の早期再就職の促進及び多様な働き方への対応の観点からの見直し、再就職の困難な状況に対応した重点化等を図るとともに、保険料率について、労使負担の急増を緩和する配慮をした上で、必要最小限の引き上げを行う等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一は、雇用保険法の一部改正であります。
 まず、基本手当日額について、受給者の再就職時賃金の実情等にかんがみ、その上限額を引き下げるとともに、給付率について、基本手当日額の高い受給者層を中心に、その額の減少に応じ引き下げの程度が逓減するように見直すこととしております。
 次に、基本手当の所定給付日数について、通常労働者と短時間労働者ごとに定めている現行の体系を見直し、倒産、解雇等による離職者については現行の通常労働者の日数に、それ以外の離職者については現行の短時間労働者の日数に一本化するとともに、三十五歳以上四十五歳未満の倒産、解雇等による離職者については日数の延長を行うこととしております。
 また、就業促進手当を創設し、支給残日数が所定給付日数の三分の一以上ある場合には、常用雇用以外の就業にも基本手当の一定割合を支給することにより、基本手当受給者の多様な形態による早期就業を支援することとしております。
 このほか、教育訓練給付及び高年齢雇用継続給付について、失業者の給付への重点化等を図るため、給付率等の見直しを行うこととしております。
 第二は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正であります。
 雇用保険の失業等給付に係る保険料率について、賃金総額の千分の十六とし、平成十六年度末までの間は暫定的に千分の十四とすることとしております。
 第三は、船員保険法の一部改正であります。
 船員保険についても、雇用保険法の改正に準じて所要の改正を行うこととしております。
 最後に、この法律の施行期日については、平成十五年五月一日としております。
 以上が、雇用保険法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
 よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 提出者大島敦君。
    〔大島敦君登壇〕
大島敦君 ただいま議題となりました雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 今年一月の完全失業率は五・五%と、昨年十月と並んで、過去最悪の数字となりました。我が国経済は低迷を続け、経済社会の先行きに対する不安感、閉塞感はこれ以上ないというほど深まっております。多くの勤労者、しかも、世帯の主たる生計者が離職を余儀なくされ、かつ、長期にわたって再就職が困難な状況に陥っているばかりでなく、多くの自営業者が廃業に追い込まれております。
 この際、雇用保険財政の安定化を図り、再就職、創業のための能力開発を積極的に支援するなど、政府の責任のもとで抜本的なセーフティーネットを整備することによって、国民の不安を解消し、安心して暮らすことのできる社会を構築することこそが政治に課せられた使命であるとの思いから、必要な緊急措置として、この法律案を提出することとした次第であります。
 以下、その主な内容を申し上げます。
 第一に、求職者等能力開発支援制度を創設いたします。
 民主党は、以前より、再就職や創業のための能力開発訓練の委託先を質、量とも充実を図り、こうした能力開発訓練に係る費用を援助することを主張してきたところですが、この法案では、こうした能力開発訓練の受講を要件として、雇用保険の失業等給付が終了した非自発的失業者、一年以上失業している自発的失業者及び一定の自営業廃業者に対する最長二年間の能力開発手当の給付制度を創設するという内容を盛り込んでおります。そして、この制度が職業を求める方々にとって真に使いやすいものとなるよう、能力開発訓練の内容を求職者のニーズにこたえられる幅広いものとするとともに、能力開発手当の受給手続にテレビ電話を利用できることとしております。
 第二に、失業等給付資金を労働保険特別会計の雇用勘定に設けます。
 これは、現在の失業等給付の給付水準を確保して雇用保険に対する不安を払拭しつつ雇用保険の制度的安定を図るため、失業等給付費等を支弁するため必要があるときに使用することができる資金であり、一般会計から二兆円規模をこれに拠出することとしております。
 現下の雇用失業情勢をかんがみれば、破綻寸前の雇用保険の求職者給付の水準を確保するために必要な緊急財政措置を講ずることは政治の責任です。また、再就職、創業のための能力開発手当の創設は、やる気がありながらも必要な職業能力開発に専念できない多くの失業者にとって、生活の安定を図るとともに、新領域での就業の可能性を広げ、個人が主体的にキャリアを開発する一助となると考えられます。
 新たな発想で二十一世紀にふさわしいセーフティーネットを築いていくため、全会派の御賛同をお願い申し上げまして、趣旨の説明といたします。
 どうもありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。齋藤淳君。
    〔齋藤淳君登壇〕
齋藤淳君 民主党の齋藤淳です。
 ただいま議題となりました政府提出の雇用保険法等の一部を改正する法律案及び民主党提出の雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案につきまして、民主党・無所属クラブを代表して、質問いたします。(拍手)
 小泉政権が不良債権処理と構造改革を先送りしている間に、不況はさらに深刻化し、雇用不安は拡大する一方です。一月には、完全失業率が史上最悪の五・五%、そして、完全失業者は三百五十七万人に上っています。
 内閣府の調査でも、現在の日本の状況について、悪い方向に向かっていると思われるのはどのような分野かと聞いたところ、「景気」を挙げた人が六五・三%と最も高く、以下、「雇用・労働条件」が五一・六%、「国の財政」が四一・九%、「経済力」が三四・四%などの順となっています。民間企業で働く人たちの四人に一人が「一年以内に失業する不安を感じている」、そのような調査結果もあります。
 まず、経済財政担当大臣、厚生労働大臣並びに民主党にお尋ねします。
 本来、雇用政策とは、単なる失業対策ではなく、新しい雇用を創出し、新たな産業を育成することであり、そのための明確なビジョンが示されなければなりません。
 私は、山形県出身です。日本海沿岸では、環境の変化や松くい虫の被害により、クロマツの防風林、防砂林が荒廃しています。例えば、農業や自然環境を守るために、人手のかかる里山の手入れに十分な予算をかける。住民が必要としていない箱物にお金をつぎ込むのではなく、次世代の地域住民、そして公益の実現に真に必要な事業を雇用対策の一環として選択すべきではないでしょうか。あるいは、ひとり暮らしの老人の支援や託児サービスなど、地域の社会的ニーズに根差したコミュニティービジネスを支援するなどの、地域住民主体の施策が必要だと考えます。
 つまり、従来型の単純な公的雇用創出ではなく、まさに、社会のあり方や生活スタイルそのものの転換につながるような新規雇用や産業創出の明確なビジョンに基づいて政策を実行する必要があると思われます。(拍手)
 雇用創出のためにどのようなビジョンをお持ちか、経済財政大臣、厚生労働大臣並びに民主党提案者のお考えをお尋ねいたします。
 私は、政治の役割とは活力ある個人と社会をつくることだと思い、この世界に飛び込みました。そうした活力ある個人と社会にとって雇用のセーフティーネットは不可欠であり、雇用状況の厳しいときほど、その真価が発揮されるものであります。そして、万が一失業したとしても、必ず新しい適職を見出すことのできる能力開発のシステム、そして、その間の生活支援のシステムが組み込まれていなければなりません。
 ところが、今回出された政府案は、あれこれ盛り込んでいるように見えますが、要は、現役世代の基本手当を最大にして二四%、額にして八十四万円削減する、あるいは高年齢雇用継続給付を削減するなど、破綻寸前の保険財政を安易な給付削減によってつじつま合わせしよう、そのようなものであります。
 去年の十月には雇用保険の料率が千分の二上がり、一年間で約三千億円の国民負担が増大しました。そして、今回、三千百億円に上る給付カットをしようというのですから、雇用不安の解消、個人消費の回復どころか、政府は雇用のセーフティーネットの意義をみずから否定しているのであります。
 厚生労働大臣にお尋ねします。
 この小手先の改革案で、雇用保険財政は一体この先何年もつのでしょうか。大体、前回の見直しが甘いから、このような失態につながっているのではないでしょうか。五年後の失業率を何%と見込んで改正案をお出しになっているのか、基礎となる数字も含め、端的にお答えください。
 民主党提案者に対してもお尋ねします。
 どのようなお考えのもと、今回のセーフティーネットの整備を用意しているのか、テレビ電話の利用も含め、政府案との違いを明確にお示しください。
 厳しい雇用情勢を反映して、長期にわたって再就職できない方はふえ続ける一方です。一年以上の長期失業者は昨年十月現在百五万人、失業者の三割に達します。そのうち、二年以上の失業者は五十五万人に上っています。
 なぜ就職に至らないかという問いに、昨年十一月、日本労働組合総連合会が全国のハローワーク前で七千人を超える失業者にアンケート調査を行いましたが、その際に、「希望する賃金との差が大きい」という理由を挙げる方が多い一方、失業期間が長くなればなるほど、その比率が小さくなっていくということがわかりました。じっくり仕事を選ぶ余裕がなくなっている、そのことがわかります。
 政府は、長期失業を抑制するために給付を抑制すると主張していますが、中高年の非自発的失業者は、年齢制限の壁もあり、再就職がほとんど絶望的で、あっても、えり好みしていられないという状況にあります。まさに、景気も雇用も最悪のタイミングで失業時のサポートを手薄にするという、最低のシナリオであります。
 今回の法改正が財政的観点からだけのものであるということを、もう一つ、お示ししましょう。
 法案を読み始めると、「就職への努力」という条項が目に飛び込んできます。
  求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない。
こう書いてあります。
 なぜ、このような当たり前のことを法文に書き込む必要があるのでしょうか。働く意思と能力があるのに再就職できない方たちの気持ちを踏みにじるような条文ではないでしょうか。毎年毎年、保険料率を上げなければならない見通しの甘さを棚に上げ、わざわざ、正しい失業者像なるものを条文に書き込む。そんな資格は今の政府にはありません。いっそのこと、「政府は誠実かつ熱心に雇用対策に取り組まなければならない」、そう書き直した方がましではありませんでしょうか。(拍手)
 受け皿となる雇用機会の創出がない現状では、ハローワークの再就職支援機能は非常に限定されたものとなってしまいます。私がまだ候補者としての活動をしているころ、視察に訪れた地元のハローワークの職員が言いました。「私たちは、今ここにある仕事を一生懸命紹介しています。しかし、仕事をつくることそれ自体は、私たちにはできない仕事なのです。」
 地方のハローワークの駐車場は朝からいっぱいです。求人情報をコンピューター端末で検索するのにも、長い順番待ちになっています。就職指導を行う職員は恒常的に不足しています。現状では、ハローワークは求人票の掲示板の役割ぐらいしか果たせていないのではないでしょうか。これでは、「就職への努力」という条文は単なる給付の厳格化に終わるおそれがあります。失業認定など、ハローワークの対応がどのように変わるのか、明確にお答えください。
 そもそも、政府は、国民に負担を押しつける前に、みずからの身を削ってやるべきことがたくさんあるはずです。例えば、雇用三事業の保険料を財源に運営されている雇用能力開発機構は、現在、全国二千カ所以上の勤労者福祉施設を、採算がとれないからという理由で投げ売りしています。
 厚生労働大臣、削りやすいところから削るのではなく、雇用保険三事業の保険料率を引き下げ、その分を失業等給付に回すよう、事業者の皆さんを説得するとか、抜本的な改革にメスを入れてはいかがですか。見解をただします。
 もう一つ、与党三党が補正予算で手当てした早期再就職支援基金について触れておきます。
 この一般会計から拠出された二千五百億円のうち、使われず余った分は失業等給付に対する穴埋めに充当されることになっています。早期再就職支援基金とは名ばかりで、この仕組みはまさに、ここ数年間、民主党が主張し続けてきた仕組みをそのままなぞったものであります。苦しい理屈でマネーロンダリングするのではなく、ここは素直に民主党案を取り入れてはいかがかと提案だけさせていただきます。(拍手)
 次に、職業訓練の受講者に対する雇用保険給付の拡充についてお伺いします。
 一昨年、政府は百九十一億円の予算を組み、厚生労働大臣は、平成十三年度補正後で約十六万人、複数回の訓練受講対象者は平成十三年度で約五千人、平成十四年度では三万五千人が利用される見込みだとお答えになりました。一年半近くたった現在、全国で一体何人の方がこの制度を受講したでしょうか。明快にお答えください。
 政府の雇用対策は、かつての低失業率時代にその骨格ができ上がったものであり、今日のような高失業率を前提とした設計にはなっておりません。二割職安と言われるハローワークに、きめ細かく対応するための人員体制や求人開拓の機能がないのであれば、それを民間の職業紹介事業や地方公共団体に積極的に託すべきではないでしょうか。
 例えば、地域の労使官学が連携し、地域の特性を生かしたコミュニティーカレッジをつくる。そこで、失業率の高い若年者や長期失業者を対象に地域社会と密接した職業訓練を実施し、雇用を地域の手でつくり出し、地域の手で雇用のミスマッチを解消する発想が必要だと考えます。
 私が六年間留学していたアメリカでは、地域が多種多様な職業訓練及び成人教育のコースを提供していました。職業教育だけではなく、一たん働いた後で進学するための準備、働きながら経営学修士号、MBAを取得し、最先端の経営知識を身につける、こうした仕組みが地域社会の活力につながっていたのです。
 今、政府に求められているのは、一つは、新規産業の育成による新たな雇用の受け皿づくりであります。もう一つは、求職者一人一人が尊厳を持ち、チャレンジ精神を持って、安定した雇用のために能力開発ができる環境を整備することであります。いつからでも、どこからでもやり直しがきく地域社会、それがあすへの希望となり、活力ある個人と社会をつくるのであります。
 人への投資を積極的に行い、あすの日本と地域社会のあり方をにらんだ総合的な雇用対策こそが、大都市だけでなく地方都市や農漁村地域でも必要である、このことを強く主張させていただき、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
国務大臣(竹中平蔵君) 齋藤議員から、雇用創出のためのビジョンについてのお尋ねをいただきました。
 政府は、日本が目指す将来の経済社会の姿と、それを実現するための中期的な経済財政運営についてのビジョンとしまして、いわゆる「改革と展望」を策定しております。本年一月には、その改定を行ったところでございます。
 政府としては、本年改定しましたこの「改革と展望」に示されたビジョンに基づいて、構造改革を加速することにより民業の拡大を図り、職業能力開発の機会を拡充し、民間需要主導の着実な成長と、それに基づく雇用機会の拡大に努めているところでございます。
 具体的に申し上げますと、新たに雇用機会や事業機会を拡大するため、規制改革の一層の推進や経済活性化戦略の加速化によりまして、産業発掘の具体化に取り組むこととしております。また、ライフスタイルの変化による国民の潜在的需要を掘り起こし、文化・観光産業、健康に資する産業の活性化等を通じて、次代の暮らしを実現するイノベーションの創造を促進することとしております。
 いずれにしましても、この「改革と展望」に基づいて総合的なビジョンを示しているわけでありまして、そのもとで雇用がしっかりと拡充されていくような努力を一層進めたいというふうに思っております。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 齋藤議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 まず最初に、雇用創出についてのお尋ねがございました。
 現下の厳しい雇用情勢の中で、規制改革を初めとする構造改革を進め、新規産業の育成などを行うことは、一番重要なことだというふうに考えているところでございます。
 厚生労働省におきましても、雇用の創出に向けまして、都道府県の労働局と経済産業省の経済産業局が連携いたしまして、地域の実情を踏まえたミスマッチの解消とか雇用創出を目指す地域産業・雇用対策プログラムを実施いたしているところでございます。
 私も、山形には山形にふさわしい雇用があると考えております一人でございます。
 新規成長分野の事業主が三十歳以上六十歳未満の非自発的離職者を、雇い入れ時期を前倒しして常用雇用者として雇い入れた場合の支援を行いますとか、あるいはまた、地域に貢献する事業を行う法人を設立し、三十歳以上六十五歳未満の雇用の場を創出した場合の支援措置の創設等を行っているところでございます。
 雇用保険財政の見通しについてのお尋ねがございました。
 今回の改正は、雇用保険受給者の動向を最も端的に示します受給資格決定件数について、バブル崩壊後、雇用情勢が悪化しました過去十年間の平均伸び率であります年五%程度の割合で今後とも伸びが続く等の前提に立ちましても、今後五年間程度は安定的運営が確保できるようにすることを目指して、給付及び負担の両面にわたる見直しを行うものでございます。
 失業認定などハローワークの対応についてのお尋ねがございました。
 御指摘の規定は、求職者給付は、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業につくことができない状態にあることが確認できた場合に支給されるものであることから、その趣旨を法律上明記することとするものであり、この規定により失業認定のあり方が変更されるものではありません。
 また、厚生労働省としましては、雇用保険受給者の早期再就職のため、就職支援セミナーの開催や、早期再就職専任支援員によるマンツーマンの支援などの施策を行っているところでございます。
 雇用保険三事業についてのお尋ねもございました。
 雇用保険三事業は、失業の予防、労働者の能力の開発及び向上等を図る事業でありまして、厳しい雇用情勢のもとで極めて重要な役割を担っております。
 三事業につきましては、平成十五年度予算におきましては、保険料収入が約二百億円減少し、単年度赤字が約七百億円程度見込まれておりますので、保険料率の引き下げは困難であると考えております。
 ただし、今回の改正におきましても、雇用保険財政が破綻の危機に直面していること等を踏まえまして、暫定措置として、三事業の剰余金を積み立てる、いわゆる雇用安定資金というのがございますが、これを失業等給付費の不足分に一時的に充てることができることとしたところでございます。
 なお、三事業につきましては、助成金の整理統合でありますとか、労働移動や再就職支援対策への重点化、勤労者福祉施設の廃止等を行っておりまして、今後とも、重点化、合理化に努めてまいりたいと考えているところでございます。
 最後に、複数回の訓練受講指示制度の実績についてお尋ねがございました。
 雇用対策臨時特例法に基づき昨年一月から実施しております複数回の訓練受講指示につきましては、中高年齢者に対しまして、複数回の訓練を受講させることにより、円滑な再就職の促進を図るために行っているものであります。
 この受講指示は、複数回にわたる訓練の受講を指示することによりまして、本人の就職可能性が高まるか否かを勘案して行ってまいりました。ただし、議員が御指摘のとおり、ここは非常に人数が少のうございまして、昨年九月までの実績は百五十六名となっております。
 今般の雇用保険法改正案におきましては、この特例の対象年齢を、四十五歳から五十九歳までになっておりましたのを三十五歳から五十九歳までに拡大いたしました。また、平成十六年度末とされておりました終期を延長する等の措置を盛り込んだところでございます。
 以上のようなことを行いながら、雇用の対策に努めてまいりたいと考えております。(拍手)
    〔加藤公一君登壇〕
加藤公一君 齋藤議員の御質問にお答えいたします。
 初めに、雇用創出のためのビジョンについて御質問がございました。
 さきに民主党として発表いたしました平成十五年度予算案の中に、既にその考え方が盛り込まれておりますので、その内容を御説明申し上げたいと思います。
 この予算案では、むだな公共事業の削減などによって八兆八千億円の財源を捻出いたし、百万人の仕事を生み出すことを提起いたしました。主にサービス産業分野で、高齢者・障害者向けグループホームの一万戸増設、学童保育の充実、三十人学級の実現など、国民の潜在的需要を掘り起こすことがポイントでございます。また、新たな産業を育成する観点から、民間の創業を支援するとともに、雇用の受け皿としてNPOの役割を重視し、その育成を図ることといたしております。
 まさに、齋藤議員のおっしゃるように、生活スタイルの転換、社会の活性化を通して雇用を創出するという考え方に立っているところでございます。
 次に、御質問のありました民主党案について、政府案との考え方の違いを含めて御説明申し上げたいと思います。
 ここで、最初に指摘しておきたいのは、そもそも、今日のように大量の失業者が発生し、雇用保険の財政が逼迫したのは、小泉政権の経済失政による痛みが労働者を直撃したことに原因があるということでございます。(拍手)
 雇用対策においても、政府みずから、失業の原因の七割程度がミスマッチによるものであると分析しておきながら、打ち出される政策は、職業訓練にもならない、不自然な追加需要策ばかりでございまして、これが常用雇用につながるとは到底考えられません。
 本来、雇用政策には、雇用創出、ミスマッチの解消、失業者の救済という三つのテーマがございまして、現下の厳しい雇用情勢のもとでは、これらすべてにおいて最善の手を尽くすことが必要でございます。
 したがいまして、第一に、勤労者の生活を守るセーフティーネットを整備するに当たりましても、雇用吸収力を損なうことのないように最大限配慮することが肝要であると認識しております。
 民主党案では、雇用保険財政の安定を目的とした二兆円規模の失業等給付資金を一般財源から繰り入れて創設することを提案しております。これによって、労使とも保険料負担の増加を強いることなく、雇用保険財政の安定が図れます。
 一方、政府案では、附則ではごまかしながらも、本則では、保険料率を〇・二%値上げいたします。今後、雇用情勢がさらに悪化すれば、弾力条項が発動されるのも必至でありましょう。このように保険料負担が大きくなるということは、使用者が人を雇い入れるに当たってのハードルが高くなるということを意味します。これでは、たとえわずかではあっても企業の雇用吸収力がさらに減退させられ、求人を減らしてしまうという悪循環に陥りかねません。
 第二に、私たちは、失業者の救済においても、単に雇用保険を延長するだけで終わらせるのではなく、個人の能力開発支援と連携させることが重要であると考えております。
 そのため、民主党案では、求職者能力開発支援制度を創設することにいたしました。これは、失業給付期間が終了してもなお就職できない非自発的失業者、さらに、一年以上失業中の自発的失業者、そして、一定の自営業廃業者に対して、能力開発訓練を受けているという要件のもと、能力開発手当を給付し、生活の安定を図るという内容でございます。
 これに対して、政府は、今回、就業促進給付、早期再就職者支援基金事業などを創設するようでありますが、再就職をしたくても職がない多くの失業者の実態とかけ離れておりますし、そもそも、こうした施策は効果的な職業訓練と一体でなければ効果がないと考えている次第であります。
 なお、私どもは、能力開発支援制度に、裁判所における尋問などでの使用実績のありますテレビ電話を活用する仕組みを導入し、利用者の利便を図ることといたしました。今回の提案をきっかけに、将来的には、雇用保険の失業等給付の認定にもテレビ電話を導入することができるのではないかと考えている次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 大森猛君。
    〔大森猛君登壇〕
大森猛君 私は、日本共産党を代表して、雇用保険法改正案について、坂口厚生労働大臣に質問します。(拍手)
 今日、雇用情勢は極めて深刻であります。失業率は、ことし一月、五・五%と戦後最悪に並び、女性の失業率は最悪を更新しました。失業者の数は、前年同月比で十三万人もふえて三百五十七万人に達し、その中で、失業給付受給者はわずか二割余り、無収入の人が半数近くを占めています。また、世帯主の失業者も百万人に及ぶなど、家庭と社会に甚大な困難を招いています。
 今ほど、失業者救済を初め、国民生活を応援する政治が求められているときはありません。ところが、政府は、給付の削減、保険料引き上げなど、雇用保険の大改悪を今進めようとしているのであります。
 以下、具体的に質問します。
 第一に、雇用保険制度の根幹をゆがめる給付率の削減についてであります。
 法案は、失業保険の給付率を前職賃金の六割から五割にまで切り下げるものです。現行の雇用保険法は、その第一条に、失業中の労働者の生活の安定を図ることをその目的とすると明確に掲げています。そして、失業者がその生活の安定を図るために、給付額を失業時賃金の六〇%と定めています。この給付率は、一九四九年以来、実に半世紀以上にわたって維持してきたものであります。
 しかるに、今回の法案でこの給付率を一挙に一〇ポイントも引き下げて、どうして、雇用保険の目的である失業者の生活の安定が図れますか。まさに、制度の根幹を掘り崩す大改悪ではありませんか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
 給付の大幅削減の影響は、極めて重大であります。給付削減で最も大きな打撃を受けるのは、中高年のサラリーマンです。この年代層は、住宅ローンや教育費など、家計における必要な出費が最も大きい時期であります。この人たちへの給付が大幅に削減されることは、受給者本人が安心して求職活動に専念することを困難にするだけでなく、その家族の生活の安定を大きく損なうこととなります。余りにも失業者とその家族に冷酷な仕打ちではありませんか。大臣の答弁を求めます。(拍手)
 また、削減の影響は、比較的収入の高い層にとどまらず、月収二十万円台の人にも及ぶなど、受給者全体への影響も重大であります。一体、賃金月額幾らの人まで削減の対象となるのですか。明確な答弁を求めます。(拍手)
 見過ごすことができないのは、給付削減についての政府の言い分です。
 政府は、給付額が比較的高い層では失業中の給付額が再就職時の賃金より高くなるという逆転現象を解消するためだと言っています。逆転現象とは何という言い分でしょうか。失業者は、失業給付が欲しくて就職しないのではありません。職につきたくても、政府の失政のために再就職できないのであります。厚生労働大臣、あなたは、労働者が職を失うことの痛みが全くわかっていないのではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 そもそも、雇用保険は、労働者が失業した場合のため、賃金に見合った保険料を負担し、失業時には前職賃金に見合った給付を受け取るものです。これは正当な権利であり、ここに、再就職時の賃金水準などという全く異なる概念を持ち込むことが、保険原理上、どう説明できるというのですか。正当な根拠があるというなら示していただきたい。
 また、失業給付は、失業者本人とその家族の生活を保障するとともに、その労働力の維持保全を図ることを目的とするものです。だからこそ、給付額は、労働力の価値、すなわち賃金を基準としてきたのであります。これは当然の大原則であります。今回の給付削減案は、こうした賃金基準の原則を真っ向から否定するものではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 第二に、所定給付日数の削減についてであります。
 給付日数は、これまで、通常労働者と短時間労働者で区分されてきましたが、本法案が倒産、解雇とそれ以外の理由で区分する方式に変えようとしていることも重大であります。これによって、五年以上被保険者であった通常労働者の給付日数は、その離職理由が倒産、解雇以外であれば、これまでより三十日も短縮されることになります。
 そこで聞きたいのは、一体、政府は今日の失業者の実態をどのようにとらえているのかということであります。倒産、解雇に該当しない場合でも、雇用の継続を希望しながら、心ならずも退職に追い込まれた失業者は多数存在しています。離職理由で給付日数に差をつけることは、こうした現実を見ないものであり、事実上の解雇者を切り捨てるものではありませんか。
 また、今日、多くの失業者が失業の長期化に苦しんでいます。現在、所定給付日数満了後も再就職できない失業者はどのぐらいに上ると把握していますか。明らかにしていただきたい。
 私の事務所に相談に来た五十一歳の失業者は、履歴書を五十通作成し、面接を二十回行っても、再就職の道は閉ざされたままですと語っています。求職活動を真剣に行っていても、失業給付日数が切れてなお再就職が実現しない、これが現在の雇用実態です。
 今、政治がなすべきことは、給付日数の削減ではありません。給付日数の延長をこそやるべきであります。求職者を支援するためには、少なくとも四年前の水準に給付日数を回復すべきではありませんか。坂口大臣、なぜそうしないのですか。答弁を求めます。(拍手)
 さらに、法案は、重点化の名のもとに、高年齢雇用継続給付、短期特例被保険者の求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付等の削減も盛り込んでいます。これでどうして失業者の再就職活動を支援できるのですか。厚生労働大臣の答弁を求めるものです。
 第三は、保険料の大幅引き上げの問題です。
 今回の改悪は、給付の削減だけではありません。本法案は、保険料率を一・六%へ引き上げるものであります。これによる負担増は三千億円にも上ります。そして、この法律には弾力条項があり、最大一・八%までの引き上げが可能です。現に、二〇〇一年の前回改正時は、翌年に直ちに弾力条項を発動し、一・四%に引き上げられました。今回も弾力条項をすぐに発動するのではありませんか。大臣の見解を求めます。
 さらに、前回引き上げ前の二〇〇〇年度と二〇〇三年度を比較すると、保険料収入は八千二百四十二億円ふえるのに対し、失業給付は、逆に、一千四百七十六億円も減額となるのであります。これでは、保険料あって給付なしではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)
 第四に、労働保険会計の悪化をもたらした政府の責任についてであります。
 そもそも、今日の財政悪化の第一の原因は、失業者の急増にあります。この間、政府は、大企業の大リストラを放置するだけでなく、これを支援する政策をとり、不良債権早期処理の名のもとに中小企業つぶし政策を強行してきました。その結果が今日の事態をもたらしているのであり、政府の責任は極めて重いのであります。財政が悪化したから保険料を引き上げるなどというのは、本末転倒であります。政府の失政のツケを国民に転嫁することは許されません。答弁を求めるものであります。
 さらに許せないのは、国庫負担の問題であります。
 もともと、国庫負担は給付の四分の一とされていました。ところが、バブル崩壊後、失業率が年々高まるにもかかわらず、政府は、逆に、一九九二年から二〇〇〇年まで国庫負担を大幅に減らしてきました。このことが労働保険会計の悪化を招いたもう一つの原因ではありませんか。厚生労働大臣の見解を求めます。
 政府の責任を棚に上げて、被保険者には保険料引き上げを押しつける一方、来年度予算における国庫負担は今年度よりもさらに一千七十八億円も引き下げようというのであります。労働保険会計の悪化を言うのであれば、失業や長期不況に苦しむ労働者と中小企業を支援するために、国庫負担の増額をこそすべきではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 第五に、今回の雇用保険法改悪が日本の労働市場をさらなる低賃金・不安定雇用の構造へと導くものだということであります。
 これまでの就職促進給付は、法律上も、「安定した職業に就いた場合」と明記、つまり、正規常用労働への就業を促進するものでありました。ところが、今回の法改悪は、就業促進手当創設に見られるように、これまで正規常用就職を基本としてきた職安行政を臨時やパートに拡大しようとしています。基本手当を削減し、十分な給付日数も保障しないまま、わずかな手当で不安定雇用への再就職を促進する、いわば労働力の安売りと不安定化を強制するものであります。
 再就職後の賃金などの労働条件、仕事の適性などを熟慮できる十分な求職活動期間の確保といった観点を全く考慮せず、早期再就職をただただ促進することは、失業者を低賃金・不安定雇用へと追いやるだけでなく、労働市場全体を低賃金・不安定雇用を中心とする構造へと再編するてこともなるものであり、絶対に認められるものではありません。厚生労働大臣の見解を求めます。
 最後に、雇用問題は、一国の社会、経済の基盤をなすものであります。その重要な柱である雇用保険を目先の財政問題に従属させ、保険制度の根本をゆがめることは、国の進路をも誤らせることになります。
 よりよい職場で働きたい、このだれもが願う当然の要求を実現するために、日本国憲法は、幸福追求権、勤労の権利、職業選択の自由を保障しているのであります。今、政府が進めようとしていることは、この憲法上の要請に重大な制約を加えようというものであり、断じて認められません。
 現在、日本の経済、国民の暮らしは重大な困難に直面しています。しかるに、小泉内閣は、本法案での雇用保険の大改悪にとどまらず、年金、医療、介護などの大幅負担増、庶民大増税で、総額四兆円を超える負担増を多くの国民に押しつけようとしているのであります。
 私は、日本経済と国民の暮らしを再建するためにも、本法案を撤回することを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 大森議員から、合計十二問、ちょうだいをいたしました。
 まず、失業給付の給付率の引き下げによる失業者の生活への影響についてのお尋ねがございました。
 失業給付は、失業者の生活の安定を図るとともに、求職活動を支援することをその目的といたしております。
 このため、失業給付の給付水準は、受給者の再就職を阻害しないよう設定することが適当であり、高賃金層を中心に見られる失業給付と再就職時の収入との逆転を避けるため、給付率について、離職前賃金を基準に、その八〇ないし六〇%から八〇ないし五〇%に改めることとしたものであります。
 なお、この見直しにつきましては、高賃金の方以外は、その受ける影響はわずかであります。
 中高年齢層に対する給付の削減の影響についてのお尋ねがございました。
 今般の基本手当の給付水準の見直しが、現行の賃金、雇用慣行のもとでは、結果として、中高年労働者に相対的に影響が大きく及ぶことになることは認識をいたしております。
 しかしながら、基本手当は、失業者の生活の安定を図るとともに、求職活動を支援し、再就職を促進するという目的を有するものでありまして、給付の趣旨から、基本手当の水準が一般的に再就職時賃金の水準を逆転している状況を放置することは適当でないと考えております。
 給付削減の対象者についてのお尋ねがございました。
 給付率につきましては、基本手当日額の高い受給者を中心に、その額の減少に応じ引き下げの程度が逓減するように見直すこととしていることから、給付率が八〇%の賃金月額十二万六千三百円を超える方から影響を生じますが、受給額が五%以上低下するのは賃金月額約三十三万円以上の方であり、受給者全体の二七%となっております。
 失業の痛みについてお尋ねがございました。
 厳しい雇用失業情勢のもとで、失業の予防や失業期間の短縮化等を図りましてその痛みを和らげるため、構造改革の過程におけるさまざまな影響に十分留意し、平成十四年度補正予算及び平成十五年度予算におきまして、早期再就職支援策でありますとか雇用機会の創出策などの施策を盛り込んだところであります。
 今後、このような雇用対策の機動的かつ効率的な実施と相まって、雇用保険については、早期再就職促進等の観点から給付見直しを行うなどにより、将来にわたり安定的な運営を確保し、雇用のセーフティーネットに万全を期してまいりたいと考えております。
 基本手当の給付水準の設定根拠についてのお尋ねがございました。
 基本手当は、労働者の失業中の生活の安定を図るとともに、求職活動を支援することをその目的としているため、基本手当の給付水準は、基本手当と再就職時の収入との逆転を避け、受給者の再就職を阻害しないよう設定することが適当であることから、今回、高賃金層を中心に給付水準の見直しを行うこととしたものであります。
 所定給付日数終了後の就職状況についてお尋ねがございました。
 平成十二年度の受給資格決定者の平成十三年十二月末の就職状況を見ますと、再就職している者が約四二%、求職活動の有無を問わず就職していない者が約五八%となっております。
 また、再就職している者のうち、約四八%が支給終了までに再就職し、約五二%が支給終了後に再就職していますが、再就職している者全体を通じて、支給終了後一カ月以内に再就職している者が約二九%と最も多くなっております。
 所定給付日数を四年前の水準とすべきとのお尋ねがございました。
 基本手当の受給者の就職状況を見ますと、受給中に再就職する者よりも、受給終了後一カ月以内に再就職する者の方が多く、また、各年齢層を通じ、所定給付日数が長くなるほど受給中の再就職者の割合が低くなるという実態があります。
 倒産、解雇等以外の理由による離職につきましては、所定給付日数が四年前の水準に比べて短縮されていますが、これを四年前の水準まで延長する場合には、再就職の時期がさらに先延ばしされ、失業者の滞留を招くだけとなるおそれがあり、適当ではないと考えております。
 就職促進給付や教育訓練給付の見直しと再就職支援との関係についてお尋ねがございました。
 今回の改正におきましては、給付について、失業者に対する給付への重点化等を図る観点から、在職者を中心とする教育訓練給付や就職促進給付等の給付水準について見直すこととしております。この見直しによって、これらの給付制度の実効性は維持されるものと考えており、今後とも、これらの給付制度の活用により雇用保険受給者の早期再就職の促進を図ってまいりたいと考えております。
 弾力条項の発動についてのお尋ねがございました。
 失業等給付に係る保険料率につきましては、労使負担の急増を緩和する配慮をした上で、必要最小限の負担として、平成十六年度末までの間は現行の一・四%に据え置き、平成十七年度から一・六%とすることとしたところであり、平成十六年度末までは基本的に一・四%への据え置きを堅持したいと考えております。
 このため、今般の雇用対策を機動的かつ効率的に講じるとともに、予備費の使用、雇用安定資金の臨時的な使用等のあらゆる手段を活用いたしまして、可能な限り、弾力条項の発動を回避してまいりたいと考えております。
 保険料の引き上げと給付削減についてのお尋ねがございました。
 雇用保険制度につきましては、財政状況の悪化や雇用就業形態の多様化の進展等に的確に対応し、失業した労働者の生活の安定及び再就職の促進を図るとともに、将来にわたり雇用のセーフティーネットとしての安定的運営を確保することが求められております。
 このため、今回の改正では、給付について、受給者の早期再就職等の観点から見直しますとともに、保険料率について、労使負担の急増を緩和する配慮をし、平成十五、十六年度の二年間据え置くとともに、必要最小限の引き上げを行うこととしたものであります。
 さらに、我が国の保険料率は主要諸外国に比べまして低いことを考え合わせれば、今回の改正は適当なものと考えております。
 雇用保険財政の悪化への対応についてのお尋ねがございました。
 現下の厳しい雇用失業情勢は、景気変動に伴う短期的な雇用失業の動向に加えまして、産業構造の変化、経済の国際化の進展、労働移動の増加、雇用就業形態の多様化の進展等、中長期的な労働市場の変化の影響を受けているものであります。
 今回の改正では、このような中で雇用保険の将来にわたる安定的運営を確保するため、給付について受給者の早期再就職の促進等の観点から見直しを行いますとともに、保険料率について、労使負担の急増を緩和する配慮をした上で、必要最小限の引き上げを行う等の措置を講ずるものであります。
 国庫負担の増額についてのお尋ねがございました。
 御指摘の国庫負担率の暫定的引き下げは、雇用保険財政に余裕がある状況のもと、保険料率の引き下げ等とあわせて行われたものでありますが、その後の厳しい雇用保険財政にかんがみまして、平成十二年の制度改正の際に原則の四分の一に戻したところであります。
 雇用保険制度は労使の共同連帯を基本とする制度であり、また、我が国は主要諸外国と比べて既に高い国庫負担割合であることから、さらなる財源を安易に国民全体の負担となる国庫負担に求めることは適当ではないと考えております。
 最後でございますが、就業促進手当の創設が低賃金・不安定雇用につながるのではないかとのお尋ねがございました。
 今般、多様な就業形態によります早期就業を積極的に支援するため、基本手当の受給資格者が常用雇用以外の就業をした場合にも、その就業した日に基本手当日額の三〇%を支給する就業促進手当制度を創設することとしております。
 一般的に、求職活動中に短期間でも就労することにより受給者の労働習慣が維持され、求職活動への意欲や再就職先への適応力の向上に大きな効果があると考えております。
 また、この手当の支給を受け就業するか、あるいはまた就業せずに求職活動を行うか、さらに、どのような形態の就業を選択するかは全く本人の自由でありますことから、この手当の存在により短期就業の押しつけが生じて不安定雇用が拡大することにはならないと考えているところでございます。
 以上十二問、お答えを申し上げました。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 今川正美君。
    〔今川正美君登壇〕
今川正美君 社会民主党の今川正美です。
 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、ただいま提案されました雇用保険法等の一部を改正する法律案に対し、坂口厚生労働大臣にお尋ねいたします。(拍手)
 質問に入る前に、このたびのイラク戦争の犠牲になった死傷者の方々へ、心から哀悼の意を表し、お見舞いを申し上げておきたいと思います。
 同時に、全世界からわき起こるイラク戦争反対の国際世論を一顧だにせず、アメリカやイギリスなどが国際法を全く無視してイラクに対する武力攻撃に踏み切ったことに対して、私は、社会民主党を代表して、満腔の怒りを込めて抗議をいたしたい。(拍手)
 さらに、こうした無法きわまる大義なき戦争を支持すると表明した小泉内閣に対しても、心の底から抗議をいたします。(拍手)
 我が国の憲法は、国際紛争を解決するに当たって、武力による威嚇、武力行使を一切禁じることを国際社会に約束しているはずです。平和国家日本として、直ちにイラク戦争をやめるように、関係当事国、国際社会に積極的に働きかけていくことを強く求めたいと思います。(拍手)
 さて、小泉不況の実相は、雇用や老後の不安など、将来不安の蔓延による家計の収縮に顕著です。かたく閉じられた財布のひもは消費の停滞を増幅し、到底妥当とは思えない低価格競争に憂き身をやつしても、物が売れない負の連鎖に我が国経済はむしばまれています。
 小泉内閣が忌み嫌う赤字国債に頼ることなくして、社会的セーフティーネットの費用すら捻出できずにいる。この自家撞着にいまだに気づかないでいるとしたら、小泉政権の思考停止状態もきわまったことになります。作為による失政よりも、無作為による失政の方が罪深くさえあることを実証するためにつき合わされる国民は、たまったものではありません。
 小泉政権の政策不在、雇用無策が雇用保険財政の破産状態を深刻化させたのです。まじめ一筋に働いてきた勤労者の責めに帰すべきものは、小泉政権下では何一つあろうはずもないのです。小泉政権が続く限り、事雇用保険に関しては、財政の論理をかざした、給付にかかわるいかなるカットも許されないのが普通の常識というものです。経済を守るとの理屈で、政権の生命線でもあった国債発行枠三十兆円をあっさりほごにする変わり身を見せた今の政権です。国民生活を守るための支出はより容易でしょう。
 生活再建を最優先する政策選択なくして雇用保険財政の健全化も成らず、この当たり前の帰結を政府は真摯に受け入れるべきだと思います。国民の心に届く見解をお示しください。(拍手)
 批判ばかりでなく提案をというのが最近の小泉総理の口癖でもあります。一つ、具体的な提案をさせていただきます。
 求職者給付の総額の三分の一に相当する額に達する額までを負担し得る雇用保険法第六十六条第二項の要請にこたえよということです。
 ちなみに、失業保険発足後の昭和二十二年から三十四年三月末までの国庫負担率は、法の定める限度いっぱいの三分の一であったということも明らかにしておきます。政府得意の、前例がないという逃げ口上は通用しないと思います。所要財源は一千六百億円程度で済むわけです。要は、やる気次第です。誠意ある答弁を求めます。
 今回の見直しは、小泉政権のもとでの改正案という不幸な出自をこうむることになりました。本来なら、掘り下げるに足る視点も盛り込まれています。しかし、さきの改正効力が二年しかもたなかった現実への一片の反省もなく、雇用保険財政の悪化を改正の動機にすること自体、労働行政の非力さを示して余りあります。その背景には、無定見な規制緩和の大合唱に身をゆだねて、傍観を決め込んできた厚生労働省の姿勢があるのではないでしょうか。
 この延長線上に立てば、政府案の別のねらいも透けて見えてきます。
 昨年九月に、制度見直しに先行して実施された、失業認定の厳格化や法第三十二条の給付制限制度の強化などへ視野を広げるとします。浮かび上がってくるのは、就職の促進を口実に、雇用保険受給者を、低賃金、しかも不安定雇用の再就職へと誘導するための輪郭です。
 この意図に基づき、雇用保険制度の変質を目指すものではないかとの疑念は晴れません。確たる答弁を求めたいと思います。(拍手)
 雇用保険法第一条は、失業に際して、労働者の生活の安定を図ることを規定しています。生活の安定を図るとは、失業者の離職前の生活状態を一定程度まで維持する必要性を明らかにしたものと言えます。この要請に基づくがゆえに、失業給付の額は離職前賃金を基準としてきたのではありませんか。
 政府案にあるような基本手当の給付水準に再就職時賃金の実勢を持ち込むことは、雇用保険制度のあるべき性格をゆがめざるを得ないのではありませんか。見解をお示しください。
 拙速かつ安易な給付率カットに頼る手法の唯一のよりどころは、生活保障のためのセーフティーネットとしての性格がかえって再就職促進を阻害するモラルハザードとして逆機能せざるを得ないとの論理にあると思われます。しかし、失業者を増加させるだけの小泉改革の前では、この論理展開は著しく説得力を欠きます。セーフティーネットのための機能維持を最優先することは、小泉改革の存在がある限り、必然であるべきです。
 したがって、坂口厚生労働大臣に許された選択は、給付率引き下げ案の撤回以外に本来はないと思います。問答無用、オール・オア・ナッシングの手法は、私の好むところではありません。そこで、次善の策も提案したい。
 例えば、賃金日額の算定基礎期間を現行法のように離職の直前六カ月間とするかわりに、離職直後は離職直前の生活を保障する観点から高い水準としつつ、その後は逓減していく案なども選択肢に、修正への歩み寄りを、虚心坦懐、検討すべきことを強く求めたいと存じます。その用意がおありかどうか、確たる答弁をお願いいたします。(拍手)
 一年未満の短期の就職者に対して賃金に上乗せする形で手当が支給される就業促進手当の創設は、これまで一年以上の雇用への再就職促進を本筋としてきた施策のかじ取りを大転換するものではありませんか。
 雇用の安定は、国民生活の安定そのものです。他方、短期雇用拡大の容認路線とは、近い将来の失業、つまりは、収入の途絶を予定する雇用政策へのシフトを志向することにほかなりません。
 均等待遇原則実現に向けた強制法規もないままの見切り発車がはらむ問題点の追及は改めて行いたいと思いますが、長期雇用を雇用行政の根幹的目的としてきたこととの調和をいかに図っていくのか、明快な答弁を求めます。(拍手)
 最後に、本音の議論を若干いたしたいと思います。
 現行の雇用保険料の負担増もさることながら、問題の本質は、負担の問題以上に、繰り返し触れてきたとおり、失業の憂き目に遭ったときに、自分が納得できる再就職先が見つかるまでの間の生活費保障のあり方にこそあります。
 小渕内閣以降、産業再生法や会社分割法など、労働者の犠牲を前提とした企業の論理優先の法整備が矢継ぎ早に行われ、労働者は、守勢一方の局面に追いやられてきました。政府案を奇貨とする気概を持って、みずから望む給付水準・内容などを再構築した上で、それに見合う保険料負担のありように関して労働者が主体的な議論を行うことは、時代の要請でもあると思うのです。
 この観点から、改善が強く要請されるメニューを一つ挙げてみます。
 社民党が九八年当時から求めてきた失業給付にかかわる訓練延長給付の積極的適用の目的は、失業者がみずからを安売りしなくても再就職を果たすために欠かせない能力開発やスキルアップとの両立を図ることにありました。しかしながら、現状は、公共職業訓練校ですら、少数者対象の一年コースが最長というていたらくです。
 現行トライアル雇用の発展系として、イギリスで成果を上げている実習・試用期間と、資格制度、いわゆるNVQ的仕組みを有効に組み合わせるなど、二年間の延長を制度的に担保できる訓練コースの整備にこそ、政府は本腰を入れるべきではありませんか。決意のほどをお示しください。
 あらゆる改革、革新も、最後は、人材、人間の問題に帰着します。この真理を酌み取り得る見直しが、二十一世紀に通用する改正の意義を持つはずです。翻るならば、財政の論理に終始する政府案にこの意思すら読みとれないのはけだし当然であろうということを明らかにして、質問の締めくくりといたします。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 今川議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 雇用保険制度の見直しでなく雇用対策を最優先すべきだというお尋ねがございました。
 厳しい雇用失業情勢に対応しますため、構造改革の過程におけるさまざまな影響に十分留意いたしまして、平成十四年度補正予算及び平成十五年度予算におきまして、早期再就職支援策でありますとか雇用機会の創出策などを盛り込んだところでございます。
 雇用対策の機動的かつ効果的な実施と相まって、雇用保険については、早期再就職促進等の観点から給付見直しを行うなどにより、将来にわたる安定的な運営を確保しまして、雇用のセーフティーネットに万全を期してまいりたいと考えております。
 雇用対策を最優先に行うべきだという御意見に対しましては、私も同感するものでございます。
 雇用保険法第六十六条第二項についてのお尋ねがございました。
 御指摘の条項におきましては、一般求職者給付費等の額の四分の三倍が失業等給付に係る保険料額を超える場合には、国庫負担率を原則四分の一から最大三分の一まで引き上げることとされておりますが、現在は、この高率負担を適用する状況にはまだ至っていないわけでございます。至りましたときには、そのときに検討したいと思います。
 なお、現行制度以上に国庫負担の水準を引き上げることにつきましては、我が国の雇用保険は主要諸外国と比べまして既に高い国庫負担割合となっておりますこと、また、労使の共同連帯を基本とする雇用保険制度におきまして、労使以外の雇用保険制度の枠外にいる自営業者等も含めた国民全体にさらに負担を求めることとなりますことなどから、慎重に対応しなければならないと考えております。
 今回の改正と低賃金・不安定雇用との関係についてお尋ねがございました。
 今回の改正は、厳しい雇用失業情勢が長期化する中で、当面する雇用保険財政の破綻を回避するとともに、将来にわたり制度の安定的運営を確保するために行うものであります。
 具体的には、高賃金、高給付層を中心に、基本手当日額と再就職時賃金との逆転現象を解消して早期再就職の促進を図ります一方、多様な早期就職を促進するための給付の創設、それから、倒産、解雇等により離職しましたパートタイム労働者につきまして、その所定給付日数を通常労働者に合わせる方向での拡充、壮年層、三十五歳から四十四歳の基本的手当の給付日数の延長につきまして整備をしたところでございます。
 基本手当の給付水準についてのお尋ねがございました。
 基本手当は、労働者の失業中の生活の安定を図りつつ求職活動を支援することをその目的としており、離職前の賃金に応じてその日額が算定されております。
 しかしながら、基本手当の給付水準は、基本手当と再就職時の収入との逆転を避け、受給者の再就職を阻害しないように設定することが雇用保険制度の趣旨から適当であり、このため、賃金日額の上限額を引き下げるとともに、最低給付率を六〇%から五〇%に引き下げることとしたものでございます。
 給付水準を離職直後とそれ以降で異ならせる案についてお尋ねがございました。
 基本手当の給付水準につきましては、再就職時の収入との逆転を避け、受給者の再就職を阻害しないよう設定することが適当であります。
 今回の改正内容はこのような考え方に基づくものでありますが、基本手当日額の給付率は、離職理由や年齢等に応じて設定された所定給付日数を限度として、その間は、求職活動の時期のいかんを問わず、就職活動に専念するのに最低限必要な水準とすべきものであることから、離職直後とそれ以降で給付率を異ならせることは適当でないと考えております。
 それから、就業促進手当と不安定雇用の拡大との関係についてのお尋ねもございました。
 今般、多様な就業形態によります早期就職を積極的に支援しますため、基本手当の受給資格者が常用雇用以外の就業をした場合にも、その就業した日に基本手当日額の三〇%を支給する就業促進手当制度を創設することといたしております。
 一般的に、求職活動中に短期間でも就労することにより受給者の労働習慣が維持され、求職活動への意欲や再就職先への適応力の向上に大きな効果があるというふうに考えているところでございます。
 最後に、職業訓練についてのお尋ねがございました。
 離職者に対しましては、産業界の人材ニーズ等を踏まえまして、早期再就職を図るため、必要な内容、期間の職業訓練を実施しておりまして、近年の高度な人材への需要等も踏まえ、一年などの長期間の高度な訓練も、職業能力開発大学校等において実施しております。
 また、実践的な職業能力の習得を図りますために、専門学校等における座学と企業実習を組み合わせた職業訓練を実施しているところでございます。
 お尋ねのとおり、長期の訓練コースを整備すべきではないかという御意見に対しましては、私もそのとおりというふうに思っておりまして、努力をする決意でございます。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十三分散会


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