衆議院

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第21号 平成15年4月8日(火曜日)

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平成十五年四月八日(火曜日)
    ―――――――――――――
  平成十五年四月八日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 個人情報の保護に関連する諸法案を審査するため委員四十五人よりなる個人情報の保護に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)
 港湾法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 空港整備法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出)及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)及び情報公開・個人情報保護審査会設置法案(枝野幸男君外八名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 特別委員会設置の件
議長(綿貫民輔君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
 個人情報の保護に関連する諸法案を審査するため委員四十五人よりなる個人情報の保護に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
 ただいま議決されました特別委員会の委員は追って指名いたします。
     ――――◇―――――
下村博文君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 内閣提出、港湾法等の一部を改正する法律案、空港整備法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
議長(綿貫民輔君) 下村博文君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 港湾法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 空港整備法の一部を改正する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 港湾法等の一部を改正する法律案、空港整備法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。国土交通委員長河合正智君。
    ―――――――――――――
 港湾法等の一部を改正する法律案及び同報告書
 空港整備法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔河合正智君登壇〕
河合正智君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、港湾法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、既存の港湾施設の高度利用を図るため、電子情報処理組織の使用により入港届等の手続を迅速かつ的確に処理することができるようにするとともに、民間事業者による港湾施設の整備の促進により臨海部における土地利用の転換を進めるため、所要の措置を講じようとするものであります。
 その主な内容は、
 第一に、国土交通大臣は、港湾管理者が受理する入港届等を迅速かつ的確に処理させるため、電子情報処理組織を設置し、管理することができることとし、その電子情報処理組織を使用する港湾管理者は、使用料を負担しなければならないこと、
 第二に、民間都市再生事業計画の認定を受けた事業者が行う公共施設の整備について、その対象施設に港湾施設を加えること
等であります。
 次に、空港整備法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、最近における航空輸送に対する国民の需要の高度化に的確に対応する必要性にかんがみ、航空機の運航の確実性を一層向上させるため、所要の措置を講じようとするものであります。
 その主な内容は、
 第一に、第二種空港、第三種空港または共用飛行場において、国及び地方公共団体がその費用を負担すべき工事として、照明施設の新設もしくは改良または政令で定める空港用地の造成もしくは整備の工事等を追加すること、
 第二に、地方公共団体は、当分の間、その管理する第二種空港またはその設置し、もしくは管理する第三種空港において、予定された航空機の運航の確実性を高度に確保することができるものとして政令で定める照明施設に改良する工事及びこれとあわせて施行されるべき政令で定める空港用地の造成または整備の工事を施行することができること
等であります。
 両案は、去る二月二十八日本委員会に付託され、四月二日扇国土交通大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、本日質疑を行い、質疑終了後、両案について討論を行い、採決いたしました結果、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。
 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出)及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)及び情報公開・個人情報保護審査会設置法案(枝野幸男君外八名提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、個人情報の保護に関する法律案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに枝野幸男君外八名提出、個人情報の保護に関する法律案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案及び情報公開・個人情報保護審査会設置法案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣細田博之君。
    〔国務大臣細田博之君登壇〕
国務大臣(細田博之君) 個人情報の保護に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 同法律案に関しましては、第百五十一回国会に提出され、第百五十五回国会において審議未了のまま廃案となった経緯がありますが、基本原則を削除すること等を内容とする与党三党修正要綱に沿って修正し、再提出することとしたものであります。
 次に、本法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取り扱いに関し、基本理念、施策の基本となる事項、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務を定めること等により、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的としております。
 この法律案の要点を申し上げますと、第一に、個人情報の取り扱いについての基本理念を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、関係施策の総合的かつ一体的な推進を図るため政府が基本方針を作成することとするほか、国及び地方公共団体の施策等について規定しております。
 第二に、個人情報データベース等を事業の用に供している一定の事業者が個人情報を取り扱う際に遵守すべき義務として、個人データの第三者提供の制限や、本人の求めに応じた開示、訂正等の義務を定めることといたしております。同時に、義務に違反した場合における主務大臣による勧告及び命令、命令に従わない場合の罰則等も規定しております。
 第三に、民間団体による個人情報の保護を推進する観点から、苦情の処理等の業務を行う団体に関して、主務大臣が認定を行うこと等を規定しております。
 なお、報道、著述、学術研究、宗教、政治の五分野については、事業者の義務等に関する規定の適用を除外する一方、個人情報の適正な取り扱いのため必要な措置をみずから講じ、かつ、その内容を公表するよう努めなければならないこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 総務大臣片山虎之助君。
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 これら四法案は、第百五十四回国会に提出され、第百五十五回国会において審議未了のまま廃案となった経緯がありますが、行政機関の職員等に対して罰則を設けることを内容とした与党三党修正要綱に沿って修正し、再度提出することとしたものであります。
 次に、各法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 まず、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案は、行政機関において個人情報の利用が拡大していることにかんがみ、行政機関における個人情報の取り扱いに関する基本的事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護するものであります。
 この法律案の要点は、第一に、行政機関は、個人情報を保有するに当たっては、その利用目的をできる限り特定するとともに、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を保有してはならないこととする等、個人情報を適正に取り扱う義務を定めております。
 第二に、行政機関が電子計算機処理に係る個人情報ファイルの保有に関し、あらかじめ総務大臣に対し、所定の事項を通知しなければならないものとし、さらに、個人情報ファイルについて、原則として、所定の事項を記載した帳簿を作成し、公表しなければならないものとしております。
 第三に、何人も、行政機関の長に対し、当該行政機関が保有する自己に関する個人情報の開示、訂正または利用停止を請求することができる制度を設けております。また、行政機関の長は、開示、訂正または利用停止の決定等について不服申し立てがあったときは、情報公開・個人情報保護審査会に諮問するものとしております。
 第四に、行政機関の職員等に対する罰則を設けることとしております。
 次に、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案は、独立行政法人等のうち百三十二法人について、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案に準じて、一、個人情報の適正な取り扱い、二、個人情報ファイル簿の作成及び公表、三、開示、訂正及び利用停止、四、罰則等について定めるものであります。
 次に、情報公開・個人情報保護審査会設置法案は、内閣府に設置されている情報公開審査会を改組して情報公開・個人情報保護審査会とし、同審査会において、行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の規定による不服申し立てについて調査審議するほか、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案等の規定による不服申し立てについても調査審議することとするものであります。
 最後に、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、登記簿、特許原簿等、開示または訂正等について独自の手続が定められている文書に記録されている保有個人情報については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案第四章の規定の適用を除外する等、関係法律の規定の整備等を行うものであります。
 以上が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案等四法案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 提出者細野豪志君。
    〔細野豪志君登壇〕
細野豪志君 私は、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合を代表して、共同提出の個人情報保護法案並びに関連法案の趣旨の説明をいたします。(拍手)
 国会において、個人情報保護法案の審議が開始されたのは、二〇〇一年の三月、政府が最初の個人情報保護法案を提出したときにさかのぼります。本法案を審議する前に、なぜ、二年以上もの間、政府提出法案が成立しなかったのか、そして、昨年末、廃案という無残な結果を招いたのか、その原因を考える必要があります。
 振り返ると、政府案への批判は、表現の自由や国民の知る権利への侵害に集中していました。しかし、政府提出法案の最も深刻な問題は、個人情報の官への集中を放置しながら、民には厳しく、官には甘い、この一点にあったのであります。
 法案が提出されて以来、メディアの報道、市民団体の活動、そして、多くのジャーナリストからの批判が集中し、個人情報保護法案は国民からの袋たたきに遭いました。国会外の多くの方々からの声を受け、野党四党は、一致結束して、この欠陥法案に反対し、廃案に追い込むことができたのであります。政府及び与党三党は、この事実をまず真摯に受けとめるべきであります。(拍手)
 このたび、政府は、廃案となった旧法案に微修正を施し、形だけ新たな法案として、国会に提出いたしました。新たな個人情報保護法案の中身を見ると、修正の目的が報道からの批判を免れようとする意図にあることは明らかであります。一方、行政機関個人情報保護法案では、新たな罰則規定が設けられてはおりますけれども、昨年、国民に大きな衝撃を与えた防衛庁リスト問題のようなケースは不問に付される可能性が極めて高くなっております。政府提出法案は旧法案の持っていた深刻な問題を放置した欠陥法案であると断ぜざるを得ません。(拍手)
 今日、情報通信技術の急速な発展に伴い、多様な個人情報の利用が飛躍的な広がりを見せております。このような時代背景を考えたとき、個人情報保護法制の必要性は、我々野党も一致して認めるところであります。しかし、政府と我々との間には、個人情報保護に対する基本的な哲学に大きな差があります。
 我々が最も懸念するのは、民間と比較して膨大な個人データを有している行政機関への情報の集中であります。国民の最大の不安もこの点にあるのであります。そのことを考えると、個人情報保護のあり方は、権力の関与を最低限にとどめるものでなければなりません。野党四党は、この哲学に基づいて、国民の個人情報の保護を適切になし得る法案を提出いたします。
 以下、政府案との違いに焦点を当てて、ポイントを御説明いたします。
 まず、「個人情報の取得、利用、第三者に対する提供等に関し本人が関与する」という自己情報コントロール権を第一条の目的規定に定めました。この考え方は、個人情報取扱事業者の義務の部分で具体化されております。
 次に、個人情報取扱事業者に対して、センシティブ情報の特に慎重な取り扱いを義務づけました。
 具体的には、個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意なく、思想及び信条に関する事項、医療に関する事項、福祉に係る給付に関する事項、犯罪の経歴に関する事項、人種、民族、社会的身分、門地並びに出生地及び本籍地を取り扱うことを原則的に禁止するものであります。国民の最大の懸念であるセンシティブ情報について一切記載のない政府案は、この面からも国民の負託にこたえるものとはなっておりません。
 また、個人情報保護における主務大臣の恣意的な運用を避けるために、いわゆる三条委員会である個人情報保護委員会を内閣府の外局に設置することといたしました。すなわち、個人情報の適正な取り扱いのために必要な監督、苦情の処理等の役割をその個人情報保護委員会に与えることとしております。
 さらに、個人情報を保護する一方で、表現の自由や報道の自由を守り、国民の知る権利を担保するために、適用除外規定を設けました。政府案においても、適用除外が設けられてはおりますけれども、野党案では、その適用除外を報道機関に限定するのではなく、活動の目的によって規定しております。
 具体的には、「報道の用に供する目的」「著述の用に供する目的」「不特定かつ多数の者に対して、情報を発表し、又は伝達する活動の用に供する目的」「学術研究の用に供する目的」「宗教活動の用に供する目的」「政治活動の用に供する目的」の個人情報の取り扱いについては、本法の義務規定を適用しないことといたしました。
 また、政府案で定められている適用除外を受ける機関に対する努力規定は、報道の自由等を制限する懸念があるため、野党案では設けておりません。
 一方、行政機関個人情報保護法案については、より厳しい規定を設けております。特に、個人情報の目的外利用については、厳格に禁止いたしました。例外的に、「業務の円滑な遂行に著しい支障が生じるとき」には目的外利用を認めはしておりますけれども、その際も、情報公開・個人情報保護審査会の意見を聞かなければならないこととすることにより、行政機関の個人情報の乱用を許さないこととしております。この点、政府案では、「相当な理由」さえあれば目的外利用が許されており、行政の恣意的運用が強く懸念されるところであります。
 さらに、公務員に対する罰則規定は、政府案でも新設されましたが、不十分であり、実効的な規定を設けております。
 行政機関の職員がその職権を乱用して、個人の秘密に属する事項が記録された文書などを収集したときには、罰則を科すことといたします。防衛庁リスト問題のケースにおいては、この規定が適用されることになります。また、行政機関の職員が個人情報ファイル簿に掲載されていない個人情報ファイルを利用したときにも、罰則を科すこととしております。より厳格な罰則を設けることによって行政機関の個人情報の乱用を予防することを目的とした規定でございます。
 以上が、野党四党が共同提出いたしました法案の趣旨であります。
 趣旨説明の最後に、一言申し上げます。
 我々は、個人情報保護法案の十分な審議を強く求めております。ただし、その審議は、個人情報保護法案の審議を尽くしてきた内閣委員会で行われるべきでありました。このたび、与党三党は、委員長ポストを確保することで審議の短縮を目指し、特別委員会の設置を強行いたしました。この暴挙に強く抗議し、趣旨の説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出)、情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出)及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出)及び情報公開・個人情報保護審査会設置法案(枝野幸男君外八名提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。今野東君。
    〔今野東君登壇〕
今野東君 民主党の今野東です。
 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました野党四党提出の個人情報保護関連法案並びに内閣提出の個人情報保護関連五法案について質問いたします。(拍手)
 さて、日本列島は桜前線が北上しています。桜の季節の前後にもさまざまな花が咲き競いまして、列島は花の香りに包まれておりますが、ここ国会だけは、花の香りというわけにはいきません。どうも、うさん臭い霧が漂っています。
 坂井隆憲議員が逮捕されたこともあるかもしれません。大島理森前農林水産大臣が、秘書がやった、関知してないと言いながら大臣をやめたということもあります。さらに、なぜ、この時期に個人情報保護法案、関連法案の審議を急ぐのか。なぜ、内閣委員会で審議されたものが今回は特別委員会で、しかも、性急に審議されるのか。我が党もしっかり議論はさせていただきますが、これは国民の皆さんに説明しがたい与党のこそくな手段と言わざるを得ません。(拍手)
 さて、小泉総理に伺います。
 日々伝わってくるイラク戦争に、国民の皆さんは大きな関心を持っています。国連安全保障理事会を無視したアメリカ軍によるイラクへの武力行使に心を痛め、一日も早くイラク、中東地域に平和と安定の構築がなされることを祈っています。
 報道によれば、米英軍はバグダッド中心部へ侵攻し、フセイン体制の象徴だった大統領宮殿が爆撃され、政権は急速に支配機能を失いつつあるとも言われています。
 近ごろは、戦争後の統治、復興をめぐって、さまざまな意見が出始めました。政府も、あしたから、川口外務大臣をイギリス、フランス、ドイツに派遣するそうですが、総理は、この戦争はどうなったら戦後だと認識されるのでしょうか、どうなったら終結と考えるのでしょうか。そして、この復興をめぐっては、日本は国連主導の復興を主張するのでしょうか。はたまた、復興支援についてもアメリカから言われるままにイエス、イエスとうなずくのでしょうか。それとも、また例の、その時々に考えるのでしょうか。どうぞ、日本をどう主張するのか、お考えをお聞かせください。
 また、復興支援のための補正予算を編成する可能性を総理はマスコミには語っているようですが、この本会議場で、私たちにぜひお聞かせください。
 さて、本題に入ります。
 個人情報が公の利益の名のもとに収集されることが多くなりました。それに対して、監視社会の到来を心配する声も市民社会の中から出てきています。だからこそ、私は、プライバシーの権利である個人情報保護法はしっかり整備しなければならないと思っています。
 しかし、そこでは、実効性を担保すること、自己情報コントロール権をしっかりうたうこと、そして、表現の自由を担保すること、とりわけ、個人情報を原理として認めた上で法整備を進めるべきだと考えます。ここのところをしっかりさせておかないと、個人情報保護法はいいかげんな法律になってしまうと思いますが、総理はどうお考えでしょうか。
 政府は、表現、報道の自由を制限するものであるとして大きな反対を巻き起こした五つの基本原則を、今回は削除しました。確かに、このことでマスコミの個人情報保護法反対のキャンペーンは縮小されたように感じます。そういう意味では、政府のねらいどおりだったかもしれません。しかし、ここにはからくりがあることを見逃すわけにはいきません。
 義務規定の適用を除外された報道、学術、宗教、政治の四分野には、五十条三項で、努力規定が設けられています。これは、削除したと見せておいての裏仕掛けではないでしょうか。実質的に、これら適用除外を受けた四分野にも規制が及ぶ可能性を残した。つまり、メディアに配慮するポーズだけはするけれども、行政法規としての毒はそのままにしているという、実に卑劣な修正なのであります。総理の答弁を求めます。
 次に、自己情報コントロール権についてお尋ねします。
 個人の権利の尊重の立場から、個人の情報は本人が情報の流れをコントロールできるような仕組みにすべきだと考えます。個人情報の取得、利用、第三者への提供に関して本人が関与し、その他の個人の権利利益を保護する旨の規定を法律の「目的」の中に明記すべきではないかと思いますが、担当大臣並びに野党四党法案担当者のお考えをお話しください。
 政府・与党案には、思想、信条、その他の心身、経歴に関する一般に公表してほしくない個人情報及び差別の原因となるおそれのある個人情報、センシティブ情報を擁護する意思が見られません。
 センシティブ情報の収集禁止規定は、個人情報保護条例を持つ自治体のおよそ六割が条例に明記しています。センシティブ情報の慎重な取り扱いを「基本理念」に規定し、民間と行政機関の双方に、本人の同意のないセンシティブ情報については、その取り扱いを禁止すべきではないでしょうか。担当大臣と野党法案担当者の答弁を求めます。(拍手)
 センシティブ情報の取り扱いについて、特に心配な点は、義務規定の適用を除外された分野の学術の分野です。ここにも規制が及ぶ可能性を残しているとはいうものの、個人情報が学術研究という名のもとに使い回されるかもしれないという危うさは、政府案にも野党案にも見られます。
 憲法二十三条で、学問の自由は保障されています。しかし、人間の尊厳を考慮に入れない学問の自由はあり得ないのではないでしょうか。医学研究に応じて参加した人を道具としてしか扱わないようなことになると、それは人間の尊厳に反することになるのではないかと思いますが、担当大臣のお考えをお聞かせください。
 さて、政府案の基本法を見ますと、主務大臣の監督権限が残されています。また、三十六条では、主務大臣として国家公安委員会を指定することができるとなっています。私はここに驚きました。さらに、五十一条では、主務大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、地方公共団体の長その他の執行機関が行うことができるようになっています。そして、五十二条では、その他の執行機関の職員に主務大臣の権限を委任できるようになっています。究極のところ、警察官が主務大臣の代行ができるのです。
 これでは、政府案は、国家の国民管理の強化を目指す法律と言われても仕方がありません。戦前の治安維持法に戻るような国家思想が背後にあるのではないかとさえ思えます。また、特定業者との癒着などのおそれもあります。もっとしっかりしたチェックをする第三者機関が必要なのではないかと考えますが、担当大臣と野党法案担当者にお尋ねします。(拍手)
 日本は言うまでもなく国民主権の国でありますから、国家機関が国民の税金である国家予算を使い、主権者である国民の知ることのできない方法で個人情報ファイルを秘密に作成するようなことがあってはなりません。また、不開示情報の要件が、「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」あるいは「おそれがあるもの」と、ここは不明確です。本人からの開示請求が行政裁量によって拒否される可能性があります。
 例外規定を「不利益等が明らかであるもの」に限定すべきではないかと思いますが、これは総務大臣の答弁を求めます。
 最後に、罰則規定であります。
 政府案の罰則規定は、官僚などが個人の利益のために不正にデータを流用するなどした場合にしか適用されないことになっています。
 省庁の組織ぐるみで行われる不正行為に対してはどのように対処するのですかと質問すると、恐らく総務大臣は、そういうことはないように努めるわけでありましてと答えそうですが、そうはいきません。実際に、二〇〇二年六月、防衛庁の情報公開請求者リスト作成問題などのケースが明らかになっています。去年のことです。こうしたことから、省庁の組織ぐるみで行われる不正行為に対して何の罰則もないというのでは、個人情報の保護に関して政府の意気込みは極めてあいまいということになります。
 総務大臣の正義に訴えます。お考えをお聞かせください。
 個人情報保護法案が市民活動に対する規制ではないかという声もあります。高度情報化社会において個人情報の保護は大切ですが、この夏から稼働する住基ネットを隠れみのにして表現や市民活動の自由を脅かすようなことがあってはならないと主張して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今野議員にお答えいたします。
 実効性の担保、自己情報コントロール権、表現の自由の担保の必要性についてでございます。
 政府案においては、自己情報コントロール権を権利としては明記しておりませんが、事業者による個人情報の取り扱いに対する本人の関与を重要な仕組みと位置づけ、開示、訂正、利用停止、第三者提供に当たっての本人同意などについて明確に規定し、個人の権利利益を実効的に保護しております。
 また、個人の権利利益の保護と表現の自由を含む個人情報の有用性についてバランスをとる旨を明確にしているところであります。
 しかし、自己情報コントロール権については、その内容、範囲及び法的性格に関しさまざまな見解があり、明確な概念として確立していないことや、表現の自由等との調整原理も明らかでないことから、明記することは適切ではないと考えております。
 義務規定の適用除外を受けた分野にも規制が及ぶのではないかとの御指摘がありました。
 報道、学術、宗教、政治の四分野については、憲法上の自由に密接にかかわるものであることから、行政規制の対象とすることがふさわしくないものについて、必要な範囲で義務規定の適用を除外しているところであります。
 しかし、これら四分野においても、人格尊重の理念のもとに個人情報を慎重に取り扱うべきことに変わりはなく、政府案では、第五十条第三項の努力規定を設け、個人情報の適正な取り扱いを確保するための必要な措置をみずから講じていただくこととしておりますが、これはあくまでも自律的な措置であり、規制的効果を有するものではありません。
 イラクについてのお尋ねでございます。
 我が国といたしましては、イラク及び周辺地域の平和と安定の回復が我が国にとっても重要であるとの認識に立ち、イラクが一日も早く再建され、イラク国民が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるよう、今後の事態の推移を見守りつつ、国際社会と協調して、できる限りの対応を検討していく考えでございます。
 このような状況の中、現時点で戦後復興のための補正予算の編成を議論することは時期尚早であると考えます。
 なお、武力行使の終結の時点に関しては、具体的にいかなる状況となるかについて、事態の推移を見守る必要があると考えます。
 政府側の残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔山内功君登壇〕
山内功君 今野議員にお答え申し上げます。
 まず、個人情報の取得、利用、第三者への提供に関し本人が関与する旨の規定を明記すべきではないかとの御質問です。
 近年の情報化の発達した社会において、私生活の侵害を未然に防ぐ観点から、プライバシーの権利について、自己に関する情報の流れをコントロールするという側面が活発に議論されています。
 例えば、今野議員の地元の宮城県でいえば、石巻市は、その個人情報保護条例について、積極的に自己の個人情報に関与する新しい概念、自己情報コントロール権を保障することにより、本制度の究極の目的である個人の人格と尊厳の尊重を目指したものであると位置づけています。同様の条例や認識は、多くの自治体、さまざまな市民の間で広範に広がっています。
 確かに、自己情報コントロール権は生成中の概念ではありますが、基本的人権にかかわる重要な権利であることは間違いなく、私どもは、その趣旨や精神を法案に盛り込むことによって社会的な認知を後押しするという考え方をとっています。野党案は、自己情報コントロール権について、その要件効果が学説においてもなお検討過程にあることから、確定的なものとして明記はしていないものの、その基本的考え方を十分に反映させた画期的なものであると自負をしております。
 なお、自己情報コントロール権は、表現の自由と一種緊張関係にあることは事実ではありますが、だからこそ、私どもは、第一条で「表現の自由を尊重しつつ、」という規定を盛り込んだほか、中立的な個人情報保護委員会を設置すること、適用除外の範囲を広くとることなどを通じ、表現の自由については政府案より格段に尊重されているものと考えております。
 次に、センシティブ情報の規制についてです。
 今野議員御指摘のとおり、野党案では、三条二項で「基本理念」として示した上で、個人情報取扱事業者の具体的な義務としては、十五条一項で、本人同意を得ないで扱ってはならない旨を明記しております。
 政府案は、センシティブ情報といっても解釈があいまいだということでこの規定を置いていないわけですが、私どもは、各種法律や社会通念に照らしてみても、思想、信条、人種、民族など列挙した事由が取扱事業者に不明確な義務を課すとは考えていないところでございます。
 最後に、第三者機関が必要ではないかとの御質問です。
 まさに今野議員の御指摘のとおり、政府案では、依然として事業者に対する主務大臣の監督権限が残されており、事業者への恣意的な介入や特定業者との癒着が起きる可能性があります。
 それに対して、野党案では、第三者機関として、内閣府設置法四十九条三項の規定に基づき、内閣府の外局として個人情報保護委員会を設置し、個人情報取扱事業者に対する監督、個人情報の取り扱いに関する苦情の処理や国会に対する報告等の役割を与えることとしております。野党案の個人情報保護委員会は行政からの独立を強めており、御懸念のような問題に最大限配慮したものであると考えています。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 今野議員から、二点の御質問がありました。
 一つは、不開示情報についての法律上の表現のあり方でございます。
 「おそれがあるもの」としているけれども、「明らかなもの」の方がいいのではないかと。これは、既に制定されました情報公開法のときに、どういう表現ぶりにするか、大変議論があったところでございまして、現に支障が明らかであるものだけではなくて、将来支障が明らかである、相当な蓋然性があるものまで入れた方が適当ではないか、こういうことで、「おそれがあるもの」という表現にいたしたわけでございまして、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
 仮に、不開示決定に不服があるとすれば、情報公開・個人情報保護審査会等において第三者的な判断がなされるわけでございますので、もとより行政機関の恣意的な扱いはしない、こういうことでございます。
 第二点は、組織ぐるみで行われる不正行為に対する罰則はどうなるのだ、こういうことでございます。
 今野議員みずから言われましたように、組織ぐるみで不正があることはあってはならないことなんです。あってはならない。
 そこで、罰則の適用でございますけれども、例えば、当該行為をした職員に指示した上司などには、例えば共同正犯だとか間接正犯あるいは教唆犯、こういう刑法等の各条に基づき処罰することは十分に可能でございますので、そういうことで担保してまいります。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣細田博之君登壇〕
国務大臣(細田博之君) 今野議員にお答え申し上げます。
 個人情報の取り扱いに関し本人が関与する権利を法律の目的に明記すべきではないかとのお尋ねがありました。
 政府法案においては、個人の権利利益を保護する観点から、事業者による個人情報の取り扱いに対する本人の関与を重要な仕組みと位置づけ、開示、訂正、利用停止、第三者提供に当たっての本人同意などについて明確に規定しております。
 野党案のように、自己情報コントロール権という意味で本人の関与を規定することにつきましては、その内容、範囲及び法的性格に関しさまざまな見解があり、明確な概念として確立していないこと、報道の自由等との調整原理も明らかでないことから、適切ではないと考えております。
 さらに、センシティブ情報の本人の同意なき取り扱いの禁止についてお尋ねがありました。
 すべての個人情報は、情報の内容や性質にかかわらず、その利用目的・方法、利用環境によっては、個人の権利利益に深刻な侵害が生ずる可能性があるものであります。このため、何がセンシティブ情報であるかをあらかじめ類型的に定義することは極めて困難であります。
 このため、政府案におきましては、「基本理念」として、すべての個人情報について、個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきことを明記し、その上で、特定の分野において特に厳格な規律を要する場合には、官民を問わず、個別の法制度や施策ごとにきめ細かく措置することを義務づけております。
 第三に、学術研究分野の個人情報についてお尋ねがありました。
 学術研究分野における個人情報の取り扱いについては、学問の自由に密接にかかわるものでありますことから、政府案では、必要な範囲で適用除外としておりますが、学術研究分野においても、人格尊重の理念のもとに個人情報を慎重に取り扱うべきことに変わりはなく、努力規定を設け、個人情報の適正な取り扱いを確保するために必要な措置を自律的に講じていただくこととしております。
 主務大臣にかえまして第三者機関が必要ではないかとのお尋ねがありました。
 政府案の義務規定は、個人情報を取り扱う事業者について規律するものであり、個人情報を事業の用に供していない一般私人に規制が及ぶものではありません。
 また、政府案では、当事者間による自主的な解決を尊重する仕組みとしており、事業者みずからの努力義務を定めるとともに、民間の第三者機関として認定個人情報保護団体の制度を設けております。このため、主務大臣が事業者に対して勧告、命令等を行うのは、事業者による悪質な取り扱いが社会問題化しているような場合に限られることになります。
 このような政府案の仕組みにかんがみれば、主務大臣制とすることで行政による国民監視、恣意的介入、特定業者との癒着のおそれがあるとの批判は当たらないものと考えております。
 野党案のように、新たな第三者機関を設けるとすれば、地方組織を含む大規模な行政組織が必要となり、行政改革の流れに反するとともに、事業を所管する大臣との間に二重行政が生ずるなど、現実性、実効性の観点から問題が多いものと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 漆原良夫君。
    〔漆原良夫君登壇〕
漆原良夫君 公明党の漆原良夫でございます。
 私は、自由民主党、公明党、保守新党を代表して、ただいま議題となりました個人情報保護五法案について、総理並びに関係大臣等に質問をいたします。(拍手)
 日本は、今、世界最高水準のIT国家を目指して、さまざまな制度整備を進めているところでございます。プライバシー等の侵害から国民生活を守るために、個人情報保護法制は、IT社会に不可欠な基盤法制であります。また、住基ネットワークシステムが本年八月から本格稼働することを考え合わせれば、この法制の制定は急務であると考えております。
 政府は、このような観点から個人情報保護五法案を第百五十一回国会に提出いたしましたが、同法律案につきましては、残念ながら、メディア規制法案とか、民に厳しく官に甘いなどとの批判を受けて、第百五十五回国会において審議未了のまま廃案となった経緯があります。
 今回提出する法律案は、後で述べますとおり、メディア規制との批判を受けた「基本原則」部分を削除する等の修正を加えるとともに、行政機関の職員等に対する罰則を新設するなどの大幅な修正をして再提出されたものであります。
 私は、今回の法律案は各般の批判に十分に耐え得るものと確信するとともに、一日も早い同法律案の成立を願うものであります。(拍手)
 私は、まず総理に、修正部分について質問をさせていただきます。
 メディアとその法規制のあり方についてお尋ねします。
 私は、表現の自由、報道の自由は国民の知る権利に資するものであり、健全な民主主義社会の実現にとって最も重要な権利であると思っております。
 したがって、表現の自由、報道の自由に対する法規制は、あくまでも司法による事後的チェックによるべきであって、行政による事前チェックは厳に慎まなければならないと考えておりますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 廃案になった旧法律案も、以下、旧法と言いますが、決してメディア規制を意図したものではなく、むしろ表現の自由を重視するという観点から、メディア規制にならないように慎重な配慮がなされていたものと認識しております。しかし、今回提出の政府案は、以下、新法と申しますが、「基本原則」を削除する等の大幅な修正がなされております。
 今回の修正に際し、政府はどのような考え方に基づいて修正されたのか、その基本的な考え方についてお伺いします。
 旧法では、個人情報取り扱いに関する五原則が規定されておりました。すなわち、利用目的による制限、適正な取得、正確性の確保、安全性の確保、透明性の確保の五原則であります。
 新法では、この五原則を定めた条文が全面的に削除されております。新法において「基本原則」を削除した理由は一体何か、新法においては「基本原則」は不要という趣旨なのか、お尋ねいたします。
 法第五十条一項一号は、報道機関の典型例として、放送機関、新聞社、通信社を規定しております。ここに出版社を例示として規定しなかった理由は何か、出版社が報道を行う場合には第一号に、著述を行う場合には第二号にそれぞれ該当し、適用除外の対象となると考えてよいかどうか、お尋ねいたします。
 続いて、細田大臣にお尋ねします。
 野党案は、自己情報コントロール権の趣旨を目的規定で明確化しております。
 しかし、私は、学説上も確定していない自己情報コントロール権という不明確な概念を実定法に持ち込むことは、解釈、運用の混乱を招き、特に報道の自由等との調整原理も明らかではないため、メディアの正当な活動を制限することになるのではないかという危惧を持っております。
 政府案において自己情報コントロール権を規定しない理由についてお尋ねします。
 野党案では、いわゆるセンシティブ情報として、思想、信条、医療、福祉、犯罪、人種、民族、社会的身分、門地、出身地、本籍地を規定しております。
 しかし、野党案の規定では、いかなる個人情報がセンシティブ情報に当たるか、解釈次第で混乱を生じさせる可能性があります。さらに、これら以外の個人情報であっても、取り扱いに配慮すべき個人情報はたくさん存在していると思います。
 国民の権利利益に深刻な影響をもたらす個人情報の取り扱いについて、政府案ではどのように対応されようとしているのか、答弁を求めます。
 野党案では、主務大臣にかわって、第三者機関である個人情報保護委員会の設置が規定されております。
 しかし、私は、個人情報が取り扱われる分野は余りにも広範であり、また、紛争も全国津々浦々で発生する可能性もあります。同委員会がすべての個人情報の取り扱いについて適切かつ迅速に判断をし、処理することは到底不可能であり、現実性、実効性に乏しいのではないかと考えております。
 政府案において第三者機関を設置しないこととした理由をお尋ねします。
 新法では、その三十五条第二項で、情報提供者に対する主務大臣の権限の不行使が明記されております。
 しかし、私は、憲法の表現の自由等の保障及び新法三十五条第一項の「主務大臣の権限の行使の制限」の趣旨からすれば、解釈上、当然に同一内容の結論が導き出せると思っております。
 あえて第三十五条第二項の規定を新設した理由をお尋ねします。
 新法は、「報道」を定義し、「「報道」とは、不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること(これに基づいて意見又は見解を述べることを含む。)をいう。」と規定しております。
 「報道」の定義を条文化する理由は何か、「報道」をこのように定義することによって「報道」の概念を狭くすることにならないか、「客観的事実」とは一体何か、「客観的事実」が客観的真実と違う場合、いわゆる誤報の場合でありますけれども、そういう場合でも「報道」に該当するのか否か、御所見をお伺いします。
 新法では、第五章の「適用除外」を受ける者として、「著述を業として行う者」を追加しております。ここで言う「著述」の定義は何か、「著述を業として行う者」の範囲について、そして、著述を新たに適用除外とした理由について御所見をお伺いします。
 立証責任の分担についてお伺いします。
 主務大臣が報道目的を含まないと誤って判断をして、報道機関が命令取り消しの裁判を提起したとします。この場合、報道目的の有無の立証責任をだれが負うのか。すなわち、報道機関側に報道目的があるということの立証責任を負わせるのか、主務大臣側に報道目的が全くないということの立証責任を負わせるのか、裁判の実務ではその勝敗を決する大きな要因となります。
 私は、表現の自由等を尊重するという法の精神からして、主務大臣側に、当該メディアに報道目的が全く存在しないということの立証責任を負わせるべきであると考えておりますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、総務大臣にお尋ねします。
 新法では、行政機関の職員等に対する処罰規定が新設されております。今回、官に対する処罰規定を新設した理由は何か。職権を乱用して個人の秘密を収集する罪について、五十五条でございますが、本法案は、「専らその職務の用以外の用に供する目的」を要件としております。しかし、野党案は、これを要件としておりません。本法案がなぜこの目的を要件としたのか、野党案に対する批判も含めて御所見をお伺いしたいと思います。
 最後に、野党案の提出者の皆様に質問させていただきます。
 野党の皆さんは、これまで、政府案の個人情報保護法案が包括法の形式をとっていることを批判し、個別分野のみを対象とする個別法にすべきであることを強く主張されていたと認識しております。しかし、今回、実際に提出された野党案を拝見いたしますと、政府案と同様に、包括法の形式をとっております。しかも、その具体的な規定ぶりについても、抜本的改正とはほど遠く、単に政府案の一部を修正したにすぎないものとなっているのではないかという印象さえ私は受けるのであります。
 野党はなぜ従来の主張を撤回し、政府案と同様の包括法の形式をとったのか、答弁を求めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 漆原議員にお答えいたします。
 表現の自由や報道の自由に関する法規制について、行政による事前チェックは慎むべきとの御意見であります。
 御指摘のとおり、表現の自由や報道の自由については憲法上も保障されており、個人情報保護法案においても、その自立性が確保されるべきものであります。
 こうした観点を踏まえ、政府案においては、報道や著述の分野に対し、主務大臣による勧告、命令などの関与を伴う法案第四章の「個人情報取扱事業者の義務」について、適用を除外しているところであります。
 政府案における修正の基本的な考え方についてのお尋ねでございます。
 旧法案については、本来、メディア規制を内容とするものではなく、その意図も全くなかったところですが、そのような不安、懸念がなかなか払拭されなかったところであります。
 したがって、新法案は、表現の自由と個人情報の保護の両立を図るとの旧法案の趣旨を一層明確にすることを基本として修正したところであります。
 「基本原則」の削除についてでございます。
 旧法案においては、万人の努力義務として五つの基本原則を定めておりましたが、報道への支障についての不安、懸念を払拭するため、新法案では、これを削除することとしたところであります。
 なお、新法案においても、「個人情報取扱事業者の義務」については、旧法案同様、具体的な規律を定めております。
 政府案における出版社の扱いについてのお尋ねでございます。
 一般に、出版社が行う出版事業は、報道に限らず広範な分野を含むものであることから、報道機関の典型例として例示しなかったものであります。
 また、御指摘のとおり、出版社が報道を行う場合は法案第五十条第一項第一号に、著述を行う場合は第二号に該当いたします。このため、出版社が行う業務について、表現の自由との関係で特別な配慮が必要なものはすべて適用除外とされているところであります。
 政府側の残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣細田博之君登壇〕
国務大臣(細田博之君) 漆原議員にお答え申し上げます。
 政府案において自己情報コントロール権を規定しない理由についてお尋ねがありました。
 本法案においては、個人の権利利益を保護する観点から、事業者による個人情報の取り扱いに対する本人の関与を重要な仕組みと位置づけ、開示、訂正、利用停止、第三者提供に当たっての本人同意などについて明確に規定しております。
 しかし、本法案に自己情報コントロール権を明記することにつきましては、その内容、範囲及び法的性格についてさまざまな見解があり、明確な概念として確立していないことや、報道の自由との調整原理も明らかでないことから、適切ではないと考えております。
 次に、国民の権利利益に深刻な影響をもたらす個人情報の取り扱いへの政府案の対応についてお尋ねがありました。
 すべての個人情報は、その利用目的・方法、利用環境次第で個人の権利利益に深刻な侵害をもたらす可能性があることから、本法案のような一般法において、特定の性質のみに着目して一定の類型のもののみを対象に特別の規律を設けることは、適切ではないと考えております。
 一方、御指摘のように、特に個人情報の適正な取り扱いの厳格な実施を確保する必要がある場合、政府案においては、必要に応じて個別の法制度や施策ごとに、当該個人情報の取り扱い全般について、きめ細かく必要な措置を講ずることとしております。
 次に、第三者機関を設置しないこととした理由についてお尋ねがありました。
 民間における個人情報の取り扱いは、その事業実施と一体として行われるものであり、また、その適正な取り扱いの具体的な内容も業種、業態によってさまざまなことから、事業ごとに判断することが不可欠であります。
 このため、政府案では、それぞれの事業を所管する大臣を主務大臣とし、当該事業における個人情報の適正な取り扱いについて行政責任と権限を規定しております。
 野党案のように、新たな第三者機関を設けるとすれば、地方組織を含む大規模な行政組織が必要となり、行政改革の流れに反するとともに、事業を所管する大臣との間に二重行政が生ずるなど、御指摘のとおり、現実性、実効性の観点から問題が多いものと考えております。
 次に、第三十五条第二項の新設についてお尋ねがございました。
 第一項におきましては、主務大臣は、その権限行使に当たり、表現の自由、学問の自由などを妨げてはならないとしており、これに第二項の趣旨が含まれることは御指摘のとおりでありますが、個人情報を提供する事業者には義務規定が適用されており、第一項の趣旨をより明確にし、不安を払拭する観点から、主務大臣はこれらの者に対して権限の行使を行わない旨を明記したところであります。
 次に、「報道」の定義等についてお尋ねがございました。
 報道機関の報道活動を適用除外する制度を設けるためには「報道」という概念を用いることが不可欠でありますが、その範囲が恣意的に判断されることのないよう、趣旨を明確にするため、「報道」の定義を条文に明記することとしたものであります。
 また、「報道」の趣旨をより明確にし、判断基準を客観化するため、今回、一般に報道と考えられているものを「報道」の定義として追加したところであり、「報道」の概念それ自体の範囲を狭くしているものではありません。
 次に、「客観的事実」とは何か、また、誤報の場合も「報道」に該当するかとのお尋ねがございました。
 「客観的事実」とは、社会の出来事の意味であり、また、それを不特定多数の者に知らせようとする意図のもとに事業として行われているものであれば、結果的に誤報であったかどうかを問わず、「報道」に該当すると考えております。
 本法案における「著述」の定義及び「著述を業として行う者」の範囲についてのお尋ねがありました。
 本法案における「著述」とは、小説、評論等のジャンルを問わず、人の知的活動により、創作的な要素を含んだ内容を言語を用いて表現することをいうものであります。また、例えば出版物、放送、インターネットなど、その表現方法・手段を問うものではありません。
 著述は、取材、構想、執筆、編集、校正、印刷、製本、刊行という一連の行為のすべてによって成り立っているものであり、「著述を業として行う者」とは、著述にかかわる一連の行為について、複数の者が共同または分担して実施する場合を含め、著述にかかわる行為に参加する者すべてを含むものであります。
 法案において著述を新たに適用除外とした理由についてのお尋ねがありました。
 旧法案では、表現活動のうち、従来から個人情報を大量に取り扱ってきた報道のみを適用除外といたしましたが、近年のIT化の進展により、小説家、評論家を初め各般の著述活動においても大量の個人情報を取り扱う可能性があるとの認識により、そうおっしゃっている方もおられまして、著述活動についても幅広く適用除外することとしたものであります。
 主務大臣の改善命令に対する取り消し訴訟における立証責任についてお尋ねがありました。
 行政事件訴訟において、行政が私人に義務や負担を課す処分を行う場合には、行政の側に要件事実の立証の責任があるとされるのが一般的であります。
 したがって、報道機関に対する主務大臣の改善命令があったときに、報道機関が報道目的を含む取り扱いであることを理由として改善命令の取り消し訴訟を提起した場合には、主務大臣の側で、報道機関の当該取り扱いが報道目的を全く含まないことを立証する必要があると考えております。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 漆原議員にお答えいたします。
 今回の法案でなぜ官に対する処罰規定を新設したか、こういうことでございます。
 我々は、当初は、守秘義務違反に対する罰則がありますし、国家公務員法には懲戒処分の厳重な規定がありますから、これらの運用で対応できると考えておりましたが、国会等での御指摘もあり、行政に対する国民の一層の信頼性回復のためには、ここは処罰規定を置いた方がいいのかな、こういう判断でございます。
 そこで、職権乱用で個人の秘密を収集する罪について、この法案では、「専らその職務の用以外の用に供する目的」こう書いております。これは、職権乱用といいましても、いろいろな収集行為の中で、当罰性、刑罰の対象にしてもいい悪い行為、そういうものについてだけ限定するというのが、刑罰というのは大変重いものでございますから、そういう考え方でございまして、野党案のように、職務の用に供する目的で収集する際にも刑罰の対象にするというのは、これはやや過ぎているのではないか、問題ではないかと我々は考えておりまして、こういうふうに限定いたしたわけでございます。(拍手)
    〔山内功君登壇〕
山内功君 民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合を代表して、漆原議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、四野党はこれまで政府提出の個人情報保護法案が包括法の形式をとっていることを批判し、個別法にするべきだと強く主張していたという御認識を漆原議員はお持ちのようでございますが、四党で合意した正式の文書において、包括法形式を批判し、個別法を主張したことは一度もございません。
 ただ、対案を準備する過程の中で、義務規定の対象を別表に掲げる特定の事業のみとするポジティブリスト方式を一度は検討したのは事実であります。これは、個人情報の保護と、報道を含め国民の表現の自由を両立させなければいけないという野党四党の共通の問題意識から出発したものです。
 ポジティブリストにした場合、主務大臣による恣意的な適用除外はあり得ないというメリットがあります。また、日本で初めての法律ですし、施行された場合に及ぶ影響の広範さを考慮し、義務規定の適用事業を特定して絞り込むことを検討したわけであります。
 しかし、保護すべき個人情報は実に多様な企業や諸活動にまたがって存在し、これを切り分けるのは、立法技術上、非常に難しい点があったということが一つ。
 そして、第二に、これが重要ですが、主務大臣が大活躍する政府案とは違い、野党案は、中立な個人情報保護委員会を設置すること、また、表現の自由等、基本的人権の保障の観点から、より適切な適用除外の規定を設け、市民の生活に不当な規制を及ぼさない内容にすることで、包括法につきまとう懸念を払拭することは十分に可能だと判断し、今回の法案提出に至ったわけでございます。
 なお、野党案も、医療や信用情報など、これは政府案と同じではありますが、個人情報の性質及び利用方法にかんがみ、特に適正な取り扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報について、個別の必要な法制上の措置を講ずるものとする旨を定めているところであります。
 最後に、抜本的改正とはほど遠く、単に政府案の一部を修正したにすぎないものとなっているとの御指摘ではございますが、もし、両案の距離がそれほど遠くないとの御認識でしたら、ぜひ審議を通じて御理解を深めていただき、野党案への御賛同を賜りますよう、心からお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 工藤堅太郎君。
    〔工藤堅太郎君登壇〕
工藤堅太郎君 工藤堅太郎でございます。
 私は、自由党を代表して、ただいま提案のありました内閣提出の個人情報の保護に関する法律案、行政機関における個人情報の保護に関する法律案等五法案並びに民主党、自由党、共産党、社会民主党共同提案の個人情報の保護に関する法律案、行政機関における個人情報の保護に関する法律案等四法案について質問をいたします。(拍手)
 質問に先立ち、一言申し上げます。
 思い起こせば、自民党を初めとする与党は、昨年の通常国会において、本来、総務委員会で審議すべきであった行政機関における個人情報保護法律案以下四法案を、私たち野党の強い反対にもかかわらず、数の力を頼みとして、個人情報の保護に関する法律案を審議する内閣委員会に付託し、これら五法案を一括して審議することにしました。
 ところが、与党は、これらの法案が野党の追及を受け、内閣委員会で廃案になると、今国会においては、個人情報保護法案等五法案の審議について、これまで審議してきた内閣委員会に付託せず、新たに特別委員会を強引に設置して審議を行おうとしております。
 内閣委員会における議論の積み重ねを、なぜ生かそうとしないのでしょうか。朝令暮改の場当たり手法は小泉政権のお得意ではありますが、国会の場においても、小泉内閣及び与党が、その時、その場の都合により、同一の案件について審議する委員会を変えるというのは、余りにも国会をばかにした行為であります。(拍手)
 また、国民にとって重要な法案であるこれら五法案は、統一地方選挙のどさくさに紛れて短期間に強行成立させようなどとせず、十分に審議を尽くすべきであります。
 小泉総理及び与党の猛省を求めます。
 さて、政府は、批判の強かった旧法案を廃案にして、新たに、利用目的の制限など基本五原則の廃止、適用除外対象の追加を初め大幅な修正を行った個人情報保護法案や、個人情報を取り扱う行政機関の職員に対して新たに罰則規定を設けた行政機関における個人情報保護法案等を提出しました。
 しかし、政府は、これまで、旧法案について、これらの法案は妥当であると、根拠のない強弁を繰り返し行ってきたのであります。
 例えば、昨年の通常国会で、個人情報保護法案等を議題とした本会議における我が党の質疑に対して、総理は、「報道分野に基本原則が適用されても支障が生じるとは考えていない」とか、適用除外について、「例示には限りがあるため、あらゆる例示を列挙することは必ずしも適切ではない」と堂々と答弁しておりました。
 それが、野党や報道機関、国民からの強い批判を受けると、メンツを捨てて、法案の「基本原則」そのものを変更した法案を提出してきたのであります。
 公約を破ることすら問題がないとお考えの小泉総理にとって、法案の「基本原則」そのものを変えることぐらい朝飯前でしょうが、問題は、何を理由に変更したかであります。
 果たして、政府が旧法案の誤りをみずから認めて修正を行ったのか、内閣支持率至上主義の小泉総理が恥も外聞もなくマスコミにこびを売るために修正を行ったのか、総理の見解を伺います。(拍手)
 次に、政府提案の個人情報保護法案について、順次伺います。
 まず、法案の「目的」について伺います。
 政府案では、個人情報の取り扱いに関して、政府が基本理念と基本方針を定め、国、地方公共団体の責務を明確にするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務を定めることとなっております。
 しかし、これだけでは、個人情報の保護という本来の目的に反して、むしろ、政府・与党がジャーナリズムや表現活動に新たな制約を加えるのではないか、いわば官が情報をコントロールするだけの法案になってしまう懸念が非常に強くあります。
 したがって、少なくとも、法案の「目的」に、個人情報の取得、利用、第三者に対する提供等に関し本人が関与することや、個人の権利権益を保護すること等の自己情報のコントロール権を明確に位置づけるとともに、個人情報の収集、利用、第三者に対する提供に係る本人の権利権益を保護することも明記すべきであると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 次に、センシティブ情報の取り扱いについて伺います。
 個人情報の中でも、思想、信条や医療に関する事項、福祉に係る給付事項、犯罪歴に関する事項、人種、民族、社会的身分、出生地や本籍に関する事項については、特に慎重に取り扱う必要があります。センシティブ情報の無原則な収集を許すことは、そのこと自体が個人のプライバシーを侵すことになるのは明白であります。
 ところが、政府案では、センシティブ情報に関する問題点の重大性を全く無視して、取り扱いについての基本理念や具体的な事項について一切触れていません。本来であれば、センシティブ情報の特に慎重な取り扱いを個人情報取扱事業者に義務づけるとともに、具体的な項目や例外規定についての項目を明記すべきであります。
 なぜ、センシティブ情報の慎重な取り扱いに触れなかったのか、その理由について、総理の見解をお伺いいたします。
 次に、主務大臣の関与について伺います。
 本法案では、個人情報を取り扱う事業者の事業内容によって主務大臣を置くこととしていますが、これでは、所管大臣ごとに異なる取り扱いがなされるなどの事態が生じる可能性が十分にあります。また、民間事業者全体や思想、信条、言論、表現などの自由に対する不当な介入を招きかねません。
 また、主務大臣が報道機関などに個人情報を提供する行為については、その権限を行使しないと規定されましたが、報道かどうかの判断については主務大臣が行うことになっています。これでは公平な判断ができないとの批判もあるわけであります。
 また、監督や命令は、あくまでも事業者の行為に対するものであって、実際に個人情報を侵害された者の苦情処理や救済は機能しない可能性もあり、公権力による表現、報道への不当介入を招くおそれがあります。
 したがって、所管ごとの主務大臣の関与はやめて、統一的な個人情報保護の第三者機関として個人情報保護委員会を独立した委員会として設置し、主務大臣の権限を移すべきだと考えますが、総理の御見解を伺います。
 なお、個人情報保護法案の野党案については、政府案と比較すると、これらの問題点が改善された内容となっていると思われますが、野党案と政府案の根本的な違いについて、提出者に伺います。
 次に、政府提案の行政機関が保有する個人情報保護法案について伺います。
 先ほど述べたように、行政機関といえども、個人情報を取り扱うには、個人の自己情報コントロール権を明確にすることや、センシティブ情報の慎重な取り扱いを行うことが必要であります。
 しかし、政府案では、センシティブ情報の慎重な取り扱いのための具体的内容については一切触れられていません。また、自己コントロール権についても、法案の目的としていないばかりか、具体的な点についても抜け道が多いものとなっております。
 例えば、個人情報ファイル簿の作成、公表についても、公表しなくてよい場合が多く、説明責任を果たせないものとなっており、さらに、開示の例外規定についても、行政機関の長が認めることに相当の理由がある場合などとするなど、拡大解釈のおそれがあるものとなっております。
 自己コントロール権の規定を明確にしなかった理由及びセンシティブ情報の慎重な取り扱いについて具体的に触れなかった理由について、総理の見解を伺います。
 また、政府案では、本人の同意・提供以外の目的外利用については第三者的機関がチェックするシステムがありません。情報公開・個人情報審査会等を設置して、目的外利用については厳しく規定することが必要と考えますが、総理の御見解を伺います。
 なお、行政機関の保有する個人情報保護法案の野党案については、政府案と比較すると、これらの問題点が改善された内容となっていると思われますが、野党案と政府案の根本的な違いについて、提出者に伺います。
 最後に申し上げます。
 個人情報保護法案等の必要性は、だれしもが認めるところであります。しかし、これだけ政府案が批判されているのは、法案の内容に問題点が多いこともさることながら、国民の間に小泉内閣や与党に対する信頼がないことも一因であります。政府・与党に対する不信感が強いからこそ、本法案が恣意的に運用され、政府による情報コントロールが行われるのではないかと疑われているということを小泉総理は知るべきであります。
 自由党は、政府提出法案等の廃案を目指すとともに、個人情報の自己管理の確立と個人情報の不正流出を規制することを主たる目的とした、野党提案の個人情報保護法案等の成立に向け全力を尽くすことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 工藤議員にお答えいたします。
 法案修正の理由についてでございます。
 旧法案については、本来、メディア規制を内容とするものではなく、その意図も全くなかったところですが、そうした不安、懸念がなかなか払拭されなかったところであります。
 このため、新法案では、表現の自由と個人情報の保護の両立を図るとの旧法案の趣旨を一層明確にするため、「基本原則」の削除等の修正を行ったところであります。
 自己情報コントロール権などの明記についてでございます。
 法案においては、個人の権利利益を保護する観点から、民間事業者及び行政機関の個人情報の取り扱いに対する本人の関与を重要な仕組みと位置づけ、開示、訂正、利用停止などについて明確に規定しているところです。
 しかし、本法案に、自己情報コントロール権やその概念を示す用語を「目的」に明記することについては、その内容、範囲及び法的性格に関しさまざまな見解があり、明確な概念として確立していないことや、報道の自由等との調整原理も明らかでないことから、適切ではないと考えております。
 センシティブ情報に関する規定についてでございます。
 すべての個人情報は、情報の内容や性質にかかわらず、その利用目的や方法、利用環境によっては、個人の権利利益に深刻な侵害が生じる可能性があるものであります。このため、何がセンシティブ情報であるかをあらかじめ類型的に定義することは極めて困難だと思います。
 このため、個人情報の保護に関する法律案においては、「基本理念」として、すべての個人情報について、個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきことを明記し、その上で、特定の分野において特に厳格な規律を要する場合には、別途個別の法制度や施策ごとにきめ細かく措置することを義務づけております。
 また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案においても、センシティブかどうかにかかわりなく、行政機関による利用目的の達成に必要のない個人情報の保有や目的外利用・提供を厳しく制限しているところであります。
 主務大臣制についてでございます。
 法案では、報道分野や著述分野について、勧告、命令などの主務大臣の関与の適用を除外するとともに、その他の分野においても、主務大臣の権限行使に当たって表現の自由を妨げてはならないこととされていることから、主務大臣による不当な介入を許容するものとはなっておりません。
 新たな第三者機関を設けるとすれば、地方組織を含む大規模な行政組織が必要となり、行政改革の流れに反するとともに、事業を所管する大臣との間に二重行政が生ずるなど、問題が多いものと考えます。
 第三者機関による目的外利用・提供のチェックについてでございます。
 政府案では、個人情報の法令に基づかない目的外利用・提供がある場合は、行政機関に利用停止を請求することができ、行政機関の決定に不服があるときは、審査会において第三者的な判断がなされる仕組みを設けているところであります。
 御指摘のような個人情報の目的外利用・提供の是非について、あらかじめ第三者機関でチェックする仕組みとすることは、行政全体に対する過大な負担や国民に対する行政の遅延をもたらすなど、問題があるものと考えています。(拍手)
    〔達増拓也君登壇〕
達増拓也君 工藤議員にお答えいたします。
 議員の提出者への質問は、民主党、自由党、共産党、社民党提案の個人情報の保護に関する法律案及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案と政府案との相違点についてであります。
 まず、個人情報保護法案ですが、四党案においては、「目的」の中に自己情報コントロール権を明確に位置づけております。また、センシティブ情報の取り扱いについて具体的な規定を設けるとともに、主務大臣の関与にかわり個人情報保護委員会を設置するなど、個人情報の保護に万全を期し、公権力による表現、報道の自由への不当介入を防ぐ内容となっております。
 また、行政機関の保有する個人情報保護法案についても、同様に、自己情報コントロール権の明記、センシティブ情報の具体的な取り扱いの規定、データマッチングに関する規定、情報公開・個人情報保護審査会の設置などを盛り込み、個人情報の保護と、行政による個人情報の無制限な目的外利用を防ぐ内容となっております。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 春名直章君。
    〔春名直章君登壇〕
春名直章君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の個人情報の保護に関する法律案及び関連四法案並びに野党提出の個人情報の保護に関する法律案及び関連三法案について、小泉総理及び野党案提出者に質問いたします。(拍手)
 初めに、個人情報保護特別委員会の設置について申し上げます。
 政府案は、前国会廃案となった旧法案の一部を修正したものであり、所管省庁も、基本的な内容も変わっていません。旧法案は、与野党合意のもと、二年余にわたって内閣委員会に付託され、官房長官、法案担当大臣、総務大臣の関係三大臣出席のもとで審議を行ってきました。法案の付託先を変える合理的理由は全くありません。「野党が委員長の内閣委員会では法案が通らないから」と報じられていますが、もしそうであれば、党利党略以外の何物でもありません。議会制民主主義にのっとり、これまで審議してきた内閣委員会で正々堂々と審議すべきであることを厳しく指摘しておきたいと思います。(拍手)
 さて、旧法案は、野党はもちろん、報道機関など国民各層からの強い批判によって廃案となりました。本法案は、その廃案となったものを一部修正し、再提出したものであります。
 総理は、旧法案について、委員会で審議する前から修正を指示するなど、その欠陥を事実上認めてきましたが、旧法案の一体どこに欠陥があったからと認識しているのか、まず初めに伺いたいと思います。(拍手)
 第一の問題は、旧法案で最大の問題となった表現、報道の自由を侵害するおそれが政府案によって払拭されたのかどうかという問題であります。
 政府案は、表現、報道の自由を脅かすと批判された旧法案の「基本原則」を削除いたしました。しかし、それと並んで報道の自由侵害の危険が指摘されてきた主務大臣制について、何ら手がつけられておりません。
 報道目的や著述目的の判断が主務大臣にゆだねられ、適用除外が狭く限定されたり、恣意的な判断がなされる危険な構造は、そのままであります。当然、そこに、報道に介入する余地が生まれます。この懸念に対し、日本民間放送連盟、日本書籍出版協会、日本ペンクラブなどから、早くも批判の声が上がっております。
 なぜ、主務大臣制を残すのでしょうか。答弁を求めたいと思います。(拍手)
 表現、報道の自由を排除し、個人のプライバシーという基本的人権に深くかかわる個人情報保護の実施機関は、直接の行政機関ではなく、行政から独立性を持つ第三者機関で行うことが必要で、既にイギリス、ドイツ、フランスでもとられている国際標準であります。
 総理、なぜ、行政から独立した第三者機関を設けないのでしょうか。答弁を求めます。
 野党案は、行政からの独立性を持った第三者機関の個人情報保護委員会を提案していますが、その意義について、野党提出者の答弁を求めたいと思います。
 また、政府案は、放送機関や新聞社などに対し、個人情報の取り扱いの苦情処理や個人情報の適正な取り扱いを確保するために必要な措置をみずから講じることを求める規定を設けております。
 総理、メディアが自律的に定めるルールや倫理について、なぜ、国が法律で指示しなければならないのでしょうか。
 法案作成にかかわったある官僚は、「基本原則」は削除したが、その一部を残し、メディアにも適用されるようにしたと言っていると報道されておりますが、それが報道機関への自主規制を指示したこの規定であります。たとえ努力義務でありましても、例えば、疑惑の政治家が、この規定を根拠にして、報道機関に対し、みずからの個人情報の取り扱いについて、苦情に応じるべきだと要求し、報道取材活動を妨害する口実にしたり、あるいは、名誉毀損裁判で裁判官が判断する際の根拠となる可能性も否定できません。いかがでしょうか。はっきり御答弁をいただきたいと思います。(拍手)
 第二に、個人情報を保護する法制度という角度から伺いたいと思います。
 個人情報保護制度をつくる上で最も重要なことは、自分の情報の取り扱いにいかに自分が関与し選択できるかという、自己情報コントロール権の立場を法全体に徹底させることであります。
 個人情報の取り扱いに本人が関与する必要がある場合は、個人情報を事業者が取得し保有するとき、事業者が目的外に利用したり第三者へ提供するとき、さらに、本人が自分の情報の開示や訂正、停止を要求するときなどであります。
 政府案は、一応、これらの原則を定めていますが、一方で、広範な例外規定が置かれております。
 野党案は、法案の「目的」に、個人情報の保護委員会を設置することによって、個人情報の取得、利用、第三者に対する提供などに本人が関与する自己情報コントロール権の立場をはっきりさせて、個人の権利を保護することを明記しております。ここに政府案との決定的違いがあると思います。
 なぜ、政府案は自己情報コントロール権を明記しないのでしょうか。答弁を求めたいと思います。(拍手)
 個人情報の中でも最も重要な情報は、思想、信条、病歴、犯罪歴など個人の名誉、信用、秘密に直接かかわるセンシティブ情報であります。これらの個人情報は、民間事業者であれ、行政機関であれ、法律に基づく場合や生命にかかわる緊急の場合など特別の場合を除いて原則収集禁止というのが、憲法に定められた幸福追求権や法のもとの平等原則からも当然だと考えます。
 この規定は、多くの国で設けられております。個人情報保護条例を策定している地方自治体でも、その約六割が既に設けているものであります。ところが、政府案には、この規定が欠落しています。
 政府は、どれがセンシティブ情報か一概に言えないからと言いますが、実際に実施している東京、大阪、神奈川など多くの地方自治体では、何ら業務の支障にはなっておりません。地方自治体でできて国ができない理由はないと考えますが、なぜ設けないのか、はっきりお答えいただきたいと思います。(拍手)
 次に、行政機関が保有する個人情報保護法案について伺います。
 第一に、政府案は、国民的批判を受けて罰則規定を新たに設けましたが、それで問題が解決するのか、大いに疑問であります。
 法案第五十五条は、個人情報収集の罰則規定ですが、職権を乱用し、専らその職務の用以外の用に供する目的で収集した場合に罰則を適用するとしています。逆に言いますと、職権を乱用して、個人の秘密に当たる情報を収集し、リストを作成しても、それが職務の用と判断されれば適用されない仕組みになっています。
 例えば、防衛庁リストを作成した海幕三佐は、仕事に活用できるかもしれないと思ってリストを作成したと述べております。そうしたケースでは、この規定で罰することができないのではないでしょうか。答弁を求めたいと思います。(拍手)
 野党案では、職権を乱用して個人の秘密に当たるリストを作成すれば、目的を問わず罰則を適用するもので、より厳格な扱いとしていますが、この考え方について、野党案提出者に伺いたいと思います。
 第二に、目的規定についてであります。
 政府案の目的規定では、行政の円滑な運営が優先されて、個人の権利利益の保護はそれとの調整の結果もたらされるものとなっています。
 この法律は、個人情報の保護に関する法律であります。なぜ、個人の権利利益を擁護することを正面に据えないのでしょうか。総理、これでは、個人情報保護の権利は行政の円滑な運営の範囲内でしか守られないということになるのではないでしょうか。答弁してください。
 野党案の「目的」には、行政の円滑な運営の規定はありません。本人関与を原則とする自己情報コントロール権の立場がここでも明確にされていると思いますが、野党案提出者に、目的規定の政府案との違いについて伺いたいと思います。
 第三に、行政による個人情報の目的外利用の規定についてであります。
 政府案は、個人情報を目的外に利用し、提供することを原則制限しています。しかし、利用することに「相当な理由のあるとき」は、この制限が外れ、目的外利用を認めています。
 「相当な理由」というあいまいな規定では、行政の都合や利便性に偏った判断が行われ、個人情報が国の機関から地方公共団体まで全国の行政機関で使い回しされるのではないか、大変危惧を感じます。答弁を求めたいと思います。(拍手)
 行政の都合のよい判断を規制するためには、目的外利用の是非について、第三者機関である個人情報保護審査会に諮問し、客観的立場からの検討を経て使用することが必要です。同時に、審査会を通じて公開することも必要であります。こうした運用は、既に多くの地方自治体で行われております。
 野党案はこうした進んだ経験を取り入れていますが、政府はなぜこれを取り入れないのでしょうか。答弁を求めたいと思います。(拍手)
 第四に、行政機関によるデータマッチングの危険についてであります。
 昨年八月から、広範な国民、野党の反対を押し切って、住民基本台帳ネットワークシステムが稼働されました。大前提の個人情報保護の仕組みがないもとでの稼働はもちろん許されないことでありますが、そもそも、国民すべてに十一けたの番号を振って管理することへの国民的合意がないことも、はっきり示されました。
 既に、昨年の法改正で、電算処理された住民票コードがつけられた本人確認情報が行政機関内部で広範に利用され、その事務数は、何と二百六十四にまで拡大されております。そのもとで、特に複数の電算処理された個人情報ファイルが簡単に相互検索されたり、一つのファイルにまとめられたりすることによって、膨大な個人情報が一括管理される危険が増大しているのであります。
 この危険を防止するために、電算処理された個人情報ファイル同士をコンピューターを使って相互にマッチングすることを禁止することがどうしても必要であります。ところが、政府案では、直接これを禁止しておりません。これでは、国民の不安や懸念をますます増大させることになるのではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)
 以上、ただしてきたように、提出された政府案は、基本的には旧法案の延長線上のものであり、国民の批判と疑問にこたえるものではありません。十分な審議を尽くすとともに、野党案に対しての議員各位の賛同をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 春名議員にお答えいたします。
 旧法案についてでございます。
 旧法案は、もともと、表現の自由と個人情報の保護の両立を図るとの趣旨で立案したものであり、本来、メディア規制を内容とするものではなく、その意図も全くなかったところです。
 しかし、各方面の不安、懸念が払拭されなかったことから、今回、その趣旨を一層明確にする修正を施し、再提出したところであります。
 主務大臣制についてでございます。
 法案では、報道分野や著述分野について、勧告、命令などの主務大臣の関与の適用を除外するとともに、その他の分野においても、主務大臣の権限行使に当たって表現の自由を妨げてはならないこととされていることから、主務大臣による恣意的な判断を許容するものとはなっておりません。
 新たな第三者機関を設けるとすれば、地方組織を含む大規模な行政組織が必要となり、行政改革の流れに反するとともに、事業を所管する大臣との間に二重行政が生ずるなど、問題が多いものと考えます。
 メディアが行うべき自主努力の規定についてでございます。
 報道等の分野については、個人情報の第三者提供の制限や、本人の求めに応じた開示、訂正などの、一般の事業者が個人情報を取り扱う際に遵守すべき種々の義務の適用を除外することとしていますが、これらの分野においても個人情報が適正に取り扱われるべきことは変わりありません。
 このため、個人情報の適正な取り扱いについての自主的な取り組みを求めているところです。また、自主的な取り組みの内容の適否について行政機関が関与することは認めていないなど、報道活動の制限とはならないと考えているところであります。
 自己情報コントロール権の明記についてでございます。
 本法案においては、個人の権利利益を保護する観点から、事業者による個人情報の取り扱いに対する本人の関与を重要な仕組みと位置づけ、開示、訂正、利用停止、第三者提供に当たっての本人同意などについて明確に規定しております。
 しかし、本法案に自己情報コントロール権を明記することについては、その内容、範囲及び法的性格に関しさまざまな見解があり、明確な概念として確立していないことや、報道の自由等との調整原理も明らかでないことから、適切ではないと考えております。
 センシティブ情報の収集禁止の規定についてでございます。
 すべての個人情報は、情報の内容や性質にかかわらず、その利用目的や方法、利用環境によっては、個人の権利利益に深刻な侵害が生じる可能性があるものであります。このため、何がセンシティブ情報であるかをあらかじめ類型的に定義することは、極めて困難であります。
 このため、政府案においては、「基本理念」として、すべての個人情報について、個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきことを明記し、その上で、特定の分野において特に厳格な規律を要する場合には、別途個別の法制度や施策ごとにきめ細かく措置することを義務づけております。
 行政機関個人情報保護法案第五十五条の罰則規定についてでございます。
 まず、刑事罰不遡及の原則により、防衛庁リスト事案そのものは、政府案の罰則規定の対象にはなり得ません。
 仮に、今後、防衛庁リスト事案と同様の事案が発生した場合に、政府案の罰則規定の対象となるか否かについては、構成要件に照らし、どのような事実認定がなされるかによることになります。
 政府案の目的規定の趣旨についてでございます。
 御指摘の目的規定の趣旨は、行政の適正かつ円滑な運営との適切な調和のもとに個人の権利利益の保護を図るべきとするものであります。すなわち、個人の権利利益の保護を最大限尊重することとしており、行政の円滑な運営の範囲内でしか個人の権利利益が守られないということではありません。
 個人情報の目的外利用についてです。
 個人情報の目的外利用が認められる「相当な理由」とは、原則禁止の例外として認めるにふさわしい事由をいい、個別事案に応じて厳格に判断すべきものです。
 また、個人情報の法令に基づかない目的外利用・提供がある場合は、行政機関に利用停止を請求することができ、行政機関の決定に不服があるときは、審査会において第三者的な判断がなされる仕組みを設けているところであり、行政機関の恣意的な目的外利用を許容しているわけではありません。
 個々の個人情報の目的外利用の是非について、条例で第三者機関の関与を定めている地方公共団体においても、目的外利用のための必須の要件としているところはないものと承知しており、あらかじめその是非について審査会に諮問することなどについては、かえって行政全体に対する過大な負担や国民に対する行政の遅延をもたらしかねないなど、問題があるものと考えます。
 データマッチングについてです。
 個人の権利利益を保護するために重要なことは、個人情報をみだりに目的外利用・提供させないことであり、このため、政府案では、利用目的を具体的に明確にさせ、その上で、目的外利用・提供を厳格に制限するとともに、個人情報ファイル簿等の公表により透明性を図ることとしております。
 これらにより、いわゆるデータマッチングを含め、行政機関によりみだりに目的外利用等が行われ、国民に不安感を抱かせるようなことはないものと考えております。(拍手)
    〔吉井英勝君登壇〕
吉井英勝君 春名直章議員の御質問にお答えいたします。
 第一点目は、個人情報を取り扱う監督機関である第三者機関の設置についてのお尋ねです。
 野党案は、監督機関として、現行の公正取引委員会と同じように、行政から強い独立性を持った個人情報保護委員会を提案しています。
 この設置には、二つの重要な意義があります。
 一つは、表現、報道の自由の侵害を排除するためです。
 表現、報道の自由は、言うまでもなく、民主主義の基盤をなし、国民の知る権利に奉仕する基本的人権であり、その保障は憲法第二十一条で規定されています。このため、報道目的の個人情報の取り扱いを義務規定から適用除外するだけでなく、さらに、監督機関それ自体を行政から独立させることが不可欠です。ここに、主務大臣制をとっている政府案と基本的な違いがあります。
 もう一つは、憲法第十三条で保障されている個人の尊重、つまり、プライバシーの権利を保障するためです。
 国民のプライバシーに公権力である行政機関が介入しないということは原則です。これを保障するためには、行政から独立し、公正中立の立場から個人情報を取り扱う機関が必要です。その機関として個人情報保護委員会を提案したものであります。
 独立した監督機関の設置については、一九九八年のEUの個人情報保護指令でも欧州各国に指示され、多くの国々で実施されている国際標準と言えるものであります。
 次に、行政機関法の目的規定について、政府案と野党案の違いについてです。
 野党案は、「目的」に個人の自己情報コントロールの権利を保護することを真っ正面に掲げて規定していることに、その特徴があります。一方、政府案は、御指摘のように、個人の権利利益の保護は行政の円滑な運営を図りながらとることになっています。ここに、野党案と政府案の基本的な違いがあります。
 この目的規定は、「目的」だけの範囲にとどまりません。法案全体にその精神が流れています。
 例えば、野党案では、個人の権利を守るために、思想、信条、犯罪歴など、センシティブ情報の取り扱いを行政機関に原則禁止としていますが、政府案には、この規定がありません。
 また、個人情報を収集時の目的以外に利用することや、本人が自分の情報を開示請求した場合、政府案は、「相当な理由」があれば、目的外に個人情報を利用したり、本人の開示請求を拒否してもよいという幅広い例外規定を設けています。これに対して、野党案は、例外規定を極力限定し、国民の自己情報コントロール権の立場を法案全体に徹底していることを特徴としております。
 第三点目ですが、野党案の罰則規定は、個人情報を守るために、政府案より罰則が厳格になっています。
 職権を乱用し、個人の秘密を収集した場合、たとえ業務に役立つと思っても、個人の秘密を収集することは許されません。業務に役立てば個人の秘密にかかわるリストでも問題ないという状況が庁内に蔓延したのが、防衛庁のリスト事件です。こうしたことを繰り返さないためにも、これらに対処できる罰則規定が必要だと考えております。
 また、野党案は、このほかにも、公表された個人情報ファイル以外のファイル、つまり、隠しファイルを利用した場合にも罰金を科し、個人情報保護の厳正な運用を図るようにしております。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
副議長(渡部恒三君) 保坂展人君。
    〔保坂展人君登壇〕
保坂展人君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の個人情報保護法関連五法案、そして、野党四会派提出の同関連四法案について、小泉総理並びに関係大臣、野党提案者に質問いたします。(拍手)
 まず、政府提出の行政機関の個人情報保護法案について、私は、重大な懸念を表明いたします。
 国民に十一けたの背番号を割り当て、行政が個人情報を管理する住民基本台帳ネットワークシステムが稼働するに当たって、個人情報保護法制が必要だという議論が繰り返し語られてきました。まず、厳しい基準を持って運営、管理しなければならないのは、国、自治体、特殊法人の扱う個人情報であることは言うまでもありません。
 小泉総理、総理みずからに、官に厳しくという姿勢のかけらでもあるのでしょうか。わずかに加えられた個人単位の罰則だけで、あとは昨年廃案になった法案とほとんど同じ構造の法案を提出する神経を私は疑います。官は誤りを犯さない、役人性善説にあなたは立つのでしょうか。個人情報保護法を懸念し、また、批判し、拒否する声を、小泉総理、あなたはどう聞いたのか、率直に答弁をいただきたいと思います。
 小泉総理は、行政機関をチェックする第三者機関設置を求める声をことごとく、結果として否定されてきました。民間には、主務大臣を置いて監視の目を光らせるのに、行政は適切な運営をするはずだからと野放しでいいのでしょうか。屋上屋を重ねる、行革の時代に逆行する、こう言われるなら、国民生活審議会や情報公開・個人情報審査会を活用することを検討してもよかったのではないでしょうか。答弁を求めます。
 データマッチングの禁止も重要です。
 第八条で、目的外使用を禁止しながら、行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で内部使用する場合で、「相当な理由のあるとき」は除外されるとしていますが、「相当な理由」をもってデータマッチングされるのはどのような場合なのか、具体例を示していただきたいと思います。
 また、第十条で、行政機関が個人情報ファイルを保有しようとするときは総務大臣に通知しなければならないと報告を義務づけておりますが、一年以内に消去される個人情報ファイルは適用除外とされています。言いかえれば、一年以内に消すのであれば報告なしの収集、監視は思いのままという、ざる法になっているではありませんか。また、政令で定める数に満たないファイルも同様です。その数なるものは、ずばり何件なのか。
 以上、総務大臣に答弁を求めます。
 政府案は、開示請求などに対し、原則三十日以内の決定、例外三十日の延長としています。しかし、第二十条では、さらなる例外として、期限の定めのない決定期間の延長ができることとなっています。これは情報公開法と同様の規定ですが、情報公開請求をしてからすべての決定までに一年近くも要する例が既に出てきており、この法案でも、決定が出るまで、ただ待つだけで、裁判も不服申し立てもできないという情報公開法と同様の問題が生じかねないと思います。
 この点を、総務大臣の見解をただすとともに、野党案ではどのような工夫がなされているのか、提案者にお尋ねしたいと思います。
 昨年廃案となった政府提出法案の議論に大きな影を投げかけた防衛庁リスト事件は、憲法が保障する国民の思想、信条の自由を脅かす、極めて深刻で重大な事件でしたが、結局、安全確保措置に関する保護法違反で海幕三佐ら四人が懲戒・訓戒処分に、事務次官や官房長ら五人は自衛隊法の信用失墜や指揮監督義務違反で減給・戒告処分になりました。
 しかし、今回再提案され、罰則が強化されたはずの政府案では、これら昨年の防衛庁リスト事件で処分された防衛庁長官ら関係者は、どこまでが処罰対象になるのでしょうか。総務大臣に明快な答弁を求めたいと思います。
 小泉総理、民間情報に関しては、偽りその他不正な手段によって個人情報の開示を受けてはならないとあっても、行政が個人から情報を取得するときには、その規制、網はかけられておりません。また、民間が個人情報を第三者に提供する場合、または目的外使用する場合には、本人同意が必要条件となっていますが、行政機関は、何と、「相当な理由」があればよしとしています。さらに、開示、訂正、利用停止の手続は行政の場合にも存在するものの、請求を拒否できる規定も存在し、甚だしきは、個人情報の存否を明らかにすることを拒むこともできるとされています。
 官に甘く民に厳しいという欠陥は明らかではないでしょうか。改めて、総理の答弁を求めます。
 個人情報保護法案に移ります。
 まず議論すべきは、なぜ個別法ではなくて包括法なのかという問題です。
 民間における個人情報保護法制は、金融信用情報、情報通信分野、教育情報、医療情報などの各分野で実効性のある法整備が急がれています。まずは個別法こそ必要と考えますが、国民全部に網をかける包括法を優先するのはなぜでしょうか。
 規制を受ける「個人情報取扱事業者」は「個人情報データベース等を事業の用に供している者」と定義されています。「事業者」とは何か、事業を営む者ではないのでしょうか。個人の親睦や趣味、または非営利活動が「事業者」とみなされるのですか。NGOやNPO、生協、労働組合、市民運動、同窓会、同好会など、すべからく「個人情報取扱事業者」としてしまう乱暴さは、市民生活を混乱に陥れるのではないでしょうか。
 内閣官房がことしの三月に配付した個人情報漏えい事件のリストをよく読んでみました。平成六年からの全六十六件のうち、金融信用情報が十八件、情報通信関連が十八件、医療七件、教育六件、これがすべてであり、ここには、非営利のNPOや個人の不祥事は一件も含まれていません。
 この事実をどのように受けとめますか。実際の漏えい事件はすべて営利事業者であるならば、まず営利事業者の個別分野から規制すべきではないですか。総理、厚生労働大臣、野党提案者にお尋ねいたします。
 また、「個人情報データベース等」とは「特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」と法文ではありますが、コンピューターを用いた電子情報に限定しているわけではありません。コンピューターを使って検索できる体系的な個人情報であれば、ペーパーによる印刷された個人情報、例えば電話帳や分厚い同窓会名簿などでも、これを持っていただけで個人情報取扱事業者だと拡大解釈の余地が生まれるのではないか。これは全く該当しないと断言できるのか、総理、厚生労働大臣の答弁を求めます。
 今回、「報道」の定義が法案化されましたが、小泉内閣は、「報道」を国家が定義することに恐れや自戒の念がないのでしょうか。
 そもそも「客観的事実」が何であるのか、この認識は立場によってそれぞれ違います。小泉内閣が的確な経済政策を打ってきたというのは、小泉総理自身としては客観的事実であると感じても、私からすれば主観的倒錯にすぎません。だれが「客観的事実」を認定するのか。主務大臣がこれを判定するとしたら、報道か報道でないかを国家が選別するという事態を招くことになります。
 また、メディア規制法という批判をかわすために、報道機関に個人を含み、「著述を業として行う者」も加えましたが、出版社は明記されていません。雑誌ジャーナリズムに対する規制の余地を残していないのかどうか、ここも伺いたいと思います。
 さらに、フリーライター、著述家が報道機関などと同一に解されるという今回の政府案の理論をもってすれば、「大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者」以外の在野の学者、個人の研究者はなぜ排除されてしまうのか、そこに一貫した考え方があるのかどうか。
 以上、三点について、総理、厚生労働大臣のしっかりした説明を求めたいと思います。
 最後に、一例を挙げたいと思います。
 例えば、原因不明、しかし、公害発生源と強く疑われる工場の周囲で、住民の健康被害が多発している場合を想定してみてください。住民が手をとり合って、ボランティアの協力を得て、周辺住民五千件の健康被害実態調査を行ったとします。さて、この情報収集は公衆衛生の向上のためと解されて、適用除外となるのでしょうか。
 NGOや市民運動の目的は、実は、報道でも学術でもなく、公害の原因の特定と排除、早期の健康被害防止にあります。NGOが雑誌や新聞でこの調査を報告すれば報道と解する向きもあるのでしょうが、それでは、NGOが記者会見をすれば報道、発表に相当するのかどうか。あるいは、この調査をNGOが学会で発表すれば学術目的というふうに言えるのでしょうが、学会に属する学者と公開討論会を持てば学術目的となるのかどうか。この法案の中にこういった視点が欠落しているのではないかと思います。
 市民参加の時代をうたって成立したNPO法のもとで続々誕生している非営利法人や、環境問題、人権抑圧に取り組むNGO、そして、大不況のもとで団結を求め雇用条件の改善を求める労働組合なども「個人情報取扱事業者」とされることは、時の政府による恣意的な弾圧やゆがんだ罰則適用を招くおそれが大ではないでしょうか。
 これら危惧される懸案について、総理と、御自身が医者でもある厚生労働大臣の明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 保坂議員にお答えいたします。
 個人情報保護法を懸念する声や、法案は個人情報の取得などについて官に甘く民に厳しいのではないかとの御指摘でございます。
 私は、これまでも、法案に対する懸念や批判には謙虚に耳を傾けてまいりました。そうした中で、国会や国民各層の御意見を踏まえ、行政に対する国民の一層の信頼を確保するため、今般、処罰規定を新設することとしたところであります。
 政府案では、民間部門については、そもそも、個人情報の取り扱いについて、自主規律を基本とし、必要最小限の規律としているのに対し、行政機関については、行政の公開性、透明性の向上の観点を加味し、詳細かつ厳格な制度としています。
 種々御指摘のあった点は官民の制度の違いによるものであり、官に甘く民に厳しいとの御指摘は当たらないものと考えます。
 行政機関をチェックする第三者機関についてでございます。
 政府案では、行政機関の長に個人情報を適正に取り扱う責任を一義的に負わせた上で、総務大臣が事前通知、意見陳述等を通じてチェックする仕組みとなっています。このほか、行政機関の長の開示、訂正、利用停止の決定に不服がある場合には、情報公開・個人情報保護審査会が事後救済を図る第三者機関として十分な機能を果たすものと考えております。
 個別法でなく一括法である理由や、昨今の個人情報漏えい事件についてでございます。
 IT社会における個人情報の大量漏えい等の諸問題は、個人情報が大量に、かつ、迅速に処理されることに起因しており、特定の業種、業務等に固有の問題ではないことから、包括的、一般的な規律を整備することが急務となっております。
 このため、政府案においては、既に問題が発生しているとされる分野に限らず、個人の権利利益の侵害を未然に防止する観点から、すべての分野に共通の必要最低限の規律を規定しているところであります。
 一方、特に適正な取り扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報については、保護のための格別の措置が講じられるよう、必要な措置を講ずることとしております。
 ペーパーによる個人情報についてでございます。
 政府案では、必ずしもコンピューターを用いていない場合であっても、カルテなど、個人情報を一定の方式によって整理分類し、特定の個人情報を容易に検索することができるよう体系的に構成されたものについては、政令において規律できることとしておりますが、電話帳を単に参照する場合など、個人の権利利益を害するおそれが少ない場合は規律の対象としないことを検討しております。
 「事業者」の定義やNPO、NGO等に対する主務大臣の関与についてでございます。
 政府案では、「「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者」としており、「事業」とは、営利、非営利を問わず、一定の目的を持って反復継続される行為を指すものです。
 また、事業の営利、非営利の別にかかわらず、大量の個人情報を取り扱う際に生ずる権利や利益の侵害の可能性は同様であることから、同様の規律の対象としております。
 なお、NPO、NGO等に対する主務大臣の関与が不適正な場合は、裁判所における救済を受けることが可能であり、懸念には及ばないものと考えます。
 「報道」を定義することについてです。
 報道機関の報道活動を適用除外する制度を設けるためには「報道」という概念を用いることが不可欠ですが、その範囲が恣意的に判断されることのないよう、趣旨を明確にするため、「報道」の定義を条文に明記することとしたものです。
 適用除外の対象に出版社が明記されていないことについてです。
 一般に、出版社が行う出版事業は、報道に限らず広範な分野を含むものであることから、報道機関の典型例として例示しなかったところです。
 しかし、出版社が行う業務については、報道に加え著述も適用除外とすることから、表現の自由との関係で特別な配慮が必要なものはすべて適用除外とされているところです。
 報道機関と比べた場合の在野の学者、個人の研究者の適用除外のあり方についてです。
 報道と学術研究では個人情報の利用方法など多くの点で相違があり、政府案では、こうした事情に応じて、必要な範囲で適用除外としているところです。
 具体的には、個人の研究者などは、活動の継続性、内容等についての客観的評価や、趣味や教養等の個人の知的活動との判別が困難であることもあり、適用除外の対象としておりません。
 NGO等の活動と本法案との関係についてです。
 本法案では、疫学調査に協力して個人情報を提供する場合など、公衆衛生の向上のために特に必要があり、本人の同意を得ることが困難な場合は、第三者提供の制限から除外されますが、御質問のあったNGOの情報収集活動がこれに該当するかどうかについては、実態に即し、事実関係を踏まえて判断する必要があります。
 また、御質問のあった、NGOが報道または学術研究の適用除外となるためには、個々の行為に加えて、当該NGOが報道を業として行う者であるか、学術研究を目的とする機関に該当するかどうかについて、当該組織の実態に即して検討する必要があると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
国務大臣(片山虎之助君) 保坂議員から、四点の御質問がございました。
 まず第一は、目的外利用に関する「相当な理由」についてのお尋ねでございます。
 原則禁止の例外として認めるわけでございますので、これは、だれでも納得できるような、それにふさわしい客観性がなければならないと思いますし、また、それは個別事案に応じて判断していく、こういうことになろうと思います。決して、行政機関の恣意的な解釈なり運用を認めるものではありません。
 どういう例があるかということでございますが、例えば、出入国に関する不正行為を防止するために法務省の出入国邦人のデータと外務省の持つ旅券管理のデータを突き合わせるような場合、あるいは、私どもの方の恩給と厚生労働省の援護年金についての支給調整をやるような場合に、両方のデータを突き合わせるようなことが考えられるわけであります。
 一年以内に消去される個人情報ファイルは、総務大臣への事前通知の適用除外となっております。これは一過性の情報でございますから、そういうものまで事前通知の対象にすることは大変煩瑣になる、過大な行政負担を課することになりますから外しておりますけれども、一年以内の情報も、法に従って適正に取り扱うことは義務づけておりますので、扱いは全く同じでございます。
 なお、政令で定める数に満たない個人情報ファイルの数でございますが、これから政令を決めますので、政令を決める段階では、実地を踏まえ、十分な検討の結果決めてまいりたいと考えております。
 それから、開示の期限の話でございまして、情報公開法の話がございました。
 各省庁、情報公開法も相当なれてまいりましたので、現在、三十日以内の開示が八三%、六十日を超えるものは五%、こういう報告を受けておりますが、今回の個人情報保護法、行政機関個人情報保護法でも、できるだけ法令で定める期間に処理する、これは当たり前でございますけれども、膨大な量の情報開示が出てくる、あるいは、相当ややこしいもので一度には処理できない、こういうものがあります場合には、やはり特例を適用する余地も残しておきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
 最後に、今回の罰則規定で防衛庁のリスト事件はどうなるのか、こういうことでございます。
 これは、もう既に総理もお答えになりましたように、刑事罰不遡及の原則がございますので、防衛庁リストの事案は今回の罰則規定の対象になりませんが、同様の事案が仮に起こりますれば、罰則規定の対象になるか否かについては、構成要件を含めて事実をしっかり認定して決める、こういうことになろうと思います。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 保坂議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 個人情報保護法案につきまして、包括法とする理由、個人情報漏えい事件についての見解、「事業者」の定義や主務大臣の関与、「報道」の定義、適用除外の範囲などにつきましてお尋ねがございましたが、これら法案の内容にかかわる事項につきましては、総理大臣の御答弁がございまして、私も同じ見解でございますので、重複することは避けさせていただきたいというふうに思います。
 なお、厚生労働行政との関係で申し上げますと、個人情報保護に関しましては、医療分野を初め、特に保護が必要な分野が多いことは御指摘のとおりでございまして、これまでも、医療従事者の守秘義務等の整備や指針の策定等を行ってきたところでございます。
 疫学研究分野におきましては、疫学研究に関する倫理指針の策定をいたしたところでございます。研究者が遵守すべき基本原則に個人情報の保護を規定したところでございます。
 また、医療分野におきましては、医療機関につきましては、いわゆる守秘義務規定の充実でございまして、これまで守秘義務が課せられていなかった看護師、准看護師、保健師、歯科衛生士等について、平成十三年の法改正において、新たに守秘義務を課したところでございます。
 健診につきましては、本年中に策定予定の健診の指針におきまして、健診情報が実施主体間でやりとりされる場合の取り扱いについて盛り込む予定にいたしております。
 保険者につきましても、健康保険組合の職員につきまして、レセプト情報に関する守秘義務の徹底について取りまとめを行ったところでございます。
 以上のように、それぞれの分野につきまして取り扱いを行っているところでございます。(拍手)
    〔北川れん子君登壇〕
北川れん子君 民主党、自由党、共産党、社会民主党を代表しまして、保坂議員の御質問にお答えいたします。
 なぜ個別法ではなく包括法なのか、金融、情報通信、医療などの個別法こそ必要なのに順序が違うのではないかという議員の御指摘がございました。
 民間の商業活動や経済活動のような分野は、本来、当事者同士の契約による私的自治に任される分野であり、市民団体等に、個人情報保護法がないことによる社会的弊害を検証し、それを除去するために最小限の法律をつくるべきではないかという趣旨の意見があることは十分承知しています。
 しかし、保護すべき個人情報は多様に存在しており、個人情報の漏えい等に対する不安や懸念はあらゆる分野で起きかねないことから、立法技術上も個人情報の保護と国民の自由の両立を図ろうと工夫しつつ、包括法の形式で提案させていただくこととなりました。
 四野党案は、規制の適用については、独立・中立の第三者機関である個人情報保護委員会が判断するなど、行政権力の乱用が起きない仕組みが用意されており、政府機関への情報の過度の集中のおそれや、大臣、官僚の恣意的運用への懸念を払拭できない政府案のような、主務大臣が権限を直接行使する形はとられていません。
 委員会の権限の行使に当たっても、確認的な意味で、三十七条において、「表現の自由、学問の自由、信教の自由及び政治活動の自由を妨げてはならない。」ものとしており、市民活動に不当な規制が及ぶことのないよう配慮しております。
 個人情報取扱事業者の適用除外について、政府案のような機関、団体ではなく、目的に着目して規定することによって、基本的人権の保障の観点からより適切な除外をすること、適用除外となった個人情報取扱事業者の努力義務を削除したことなどで政府案とは大きく異なっており、個人情報の保護と国民の自由の両立を図ろうと工夫しています。
 第六条三項で、「個人情報の性質及び利用方法にかんがみ、個人の権利利益の一層の保護を図るため特にその適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報について、保護のための格別の措置が講じられるよう必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。」と規定し、今後、個別法の対応を視野に入れております。
 とりわけ、民間分野でも、医療や金融、信用、電気通信分野などについては、別途個別法によって厳しく規制すべきであると考えています。
 また、野党案は、附則第九条で、「政府は、附則第一条ただし書に掲げる規定の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」としており、法案の施行状況に基づく見直しを行う旨、規定しているところであります。
 次に、「個人情報取扱事業者」の定義について、個人の親睦や趣味、非営利活動が事業とみなされるのか、個人情報漏えい事件のリスト、本年三月二十五日現在のものでございますが、実際の漏えい事件は営利業者ではないかという御質問がございました。
 「個人情報取扱事業者」の定義について、個人の親睦や趣味、非営利活動が事業とみなされるのか、個人情報漏えい事件のリストでも、実際の漏えい事件は営利業者ではないかというお尋ねです。
 「個人情報取扱事業者」については、これまでの政府の説明では五千件を超え、業として個人情報を扱えば義務規定の対象に入ることとなり、営利企業に限らず、個人も含まれます。
 野党案でも、「個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。」としており、定義の仕方は政府案と同じですが、主務大臣ではなく、独立・中立の第三者機関である個人情報保護委員会が関与すること、委員会の権限の行使に当たっても、確認的な意味で、三十七条において、「表現の自由、学問の自由、信教の自由及び政治活動の自由を妨げてはならない。」ものとしており、市民活動に不当な規制が及ぶことのないよう配慮しております。
 また、二条三項四号の、「その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者」の範囲を明確にすることで、個人や市民団体の自由な活動と個人情報の保護の両立を図りたいと考えております。
 内閣官房の配付した個人情報漏えい事件のリストからも、問題となっているのは営利企業であることは明らかであり、全くの個人やNPO、労働団体を、国や大企業とともに「事業者」という広いカテゴリーでくくり、これに規制を行おうということに対するさまざまな意見も理解できます。一方、個人情報は件数や目的にかかわりなく保護されるべきだという意見もあることは承知しております。
 よりよい法制度とすべく、野党案では、附則に検討条項を設けております。
 最後に、開示請求等の決定期間について、期間の定めのない延長ができることによる請求者の不利益を野党案ではどう克服しているのかという御質問にお答えします。
 保坂議員御指摘のとおり、行政機関個人情報保護法の政府案は、第十九条で、開示請求などに対し、原則として三十日以内に決定しなければならないとし、例外として三十日の延長ができるとしています。しかし、第二十条で、さらなる例外として決定期間の延長ができることになっており、延長できる期限は定められていません。これは、情報公開法と同じ規定ぶりですが、情報公開請求をしてから請求した情報すべてに対する決定までに一年近く要する例が出てきております。
 このため、政府案では、情報公開法と同様に、決定期間の特例規定によって、請求者は決定が出るまで、ただ待たざるを得なくなっており、その間、裁判も不服申し立てもできないという問題が生じる可能性があります。
 そこで、野党案では、本人開示請求、訂正請求、利用停止請求について、決定期間の特例規定を削除し、開示等決定の期限の三十日と延長期限の三十日を合わせた六十日を超えても決定がなされなかった場合には、請求が拒否されたものという決定がされたものとみなすことができるという、みなし拒否規定を置くことにいたしました。「開示決定等の期限」二十一条三項、「訂正決定等の期限」三十二条三項、「利用停止決定等の期限」四十条三項となっております。
 これらによって、請求から六十日を超えれば請求が拒否されたものとみなされ、裁判や不服申し立てといった救済手続に移行する道が開けることになります。
 なお、今後提出を予定している整備法案において、同様の趣旨で情報公開法についても改正を行うこととしており、情報公開法の運用の改善が図られることになります。(拍手)
副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十四分散会


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