衆議院

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第24号 平成15年4月22日(火曜日)

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平成十五年四月二十二日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十五号
  平成十五年四月二十二日
    午後一時開議
 第一 住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 食品安全基本法案(内閣提出)
 第三 独立行政法人環境再生保全機構法案(内閣提出)
 第四 日本環境安全事業株式会社法案(内閣提出)
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日程第一 住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 食品安全基本法案(内閣提出)
 日程第三 独立行政法人環境再生保全機構法案(内閣提出)
 日程第四 日本環境安全事業株式会社法案(内閣提出)
 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第一、住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。国土交通委員長河合正智君。
    ―――――――――――――
 住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔河合正智君登壇〕
河合正智君 ただいま議題となりました住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、特殊法人等改革基本法に基づく特殊法人等整理合理化計画を実施するため、住宅金融公庫が一般の金融機関による住宅資金の貸し付けを支援するための所要の措置等を講じようとするものであり、その主な内容は、
 第一に、住宅金融公庫の業務として、住宅の建設等に必要な資金に係る金融機関が貸し付けた貸付債権について、債権譲り受けの業務及び債務保証の業務を行うこと、
 第二に、債権譲り受けの業務により譲り受けた貸付債権の回収に関する業務等を、金融機関等に委託することができること、
 第三に、債権譲り受けの業務及び債務保証特定保険の業務に関する基金を設けること、
 第四に、政府は、平成十九年三月三十一日までに、住宅金融公庫を廃止し、住宅金融公庫からその権利及び義務を承継する独立行政法人を設立するために必要な措置を講ずること
などであります。
 本案は、去る四月三日本委員会に付託され、八日扇国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日に質疑に入り、十六日参考人からの意見聴取を行い、十八日質疑を終了しました。
 質疑の中では、住宅金融公庫融資についての評価、住宅金融公庫の業務に証券化支援業務を追加する意義、民間金融機関の住宅ローンの状況、住宅の質的向上に関する誘導策などについて議論が行われました。
 質疑終了後、討論を行い、採決いたしました結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 食品安全基本法案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第二、食品安全基本法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長佐々木秀典君。
    ―――――――――――――
 食品安全基本法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔佐々木秀典君登壇〕
佐々木秀典君 ただいま議題となりました食品安全基本法案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、科学技術の発展、国際化の進展その他の国民の食生活を取り巻く環境の変化に適確に対応することの緊要性にかんがみ、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進するため、食品の安全性の確保に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び食品関連事業者の責務並びに消費者の役割を明らかにするとともに、施策の策定に係る基本的な方針を定めようとするものであります。
 本案は、去る三月十三日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日本委員会に付託されました。
 本委員会におきましては、三月十九日谷垣国務大臣から提案理由の説明を聴取し、四月二日から質疑に入り、同月九日には参考人から意見を聴取し、同月十六日には厚生労働委員会及び農林水産委員会と連合審査会を開催いたしました。
 去る十八日質疑を行い、質疑終了後、本案に対し、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守新党の各派共同提案に係る修正案並びに日本共産党提案に係る修正案が提出され、両修正案についてそれぞれ提出者からその趣旨の説明を聴取いたしました。
 次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、日本共産党提案に係る修正案は賛成少数をもって否決され、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守新党の各派共同提案に係る修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 独立行政法人環境再生保全機構法案(内閣提出)
 日程第四 日本環境安全事業株式会社法案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第三、独立行政法人環境再生保全機構法案、日程第四、日本環境安全事業株式会社法案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。環境委員長松本龍君。
    ―――――――――――――
 独立行政法人環境再生保全機構法案及び同報告書
 日本環境安全事業株式会社法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔松本龍君登壇〕
松本龍君 ただいま議題となりました両法律案について、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、独立行政法人環境再生保全機構法案について申し上げます。
 本案は、特殊法人等改革基本法に基づく特殊法人等整理合理化計画を実施するため、公害健康被害補償予防協会及び環境事業団を解散して、公害健康被害の補償及び予防、民間団体が行う環境保全活動の支援等の業務を行う独立行政法人環境再生保全機構を設立することとし、機構の資本金、役員及び職員、公害健康被害予防基金、地球環境基金の設置及び運用等に関する事項を定めようとするものであります。
 次に、日本環境安全事業株式会社法案について申し上げます。
 本案は、特殊法人等改革基本法及び特殊法人等整理合理化計画に基づく特殊法人の業務及び組織の見直しの一環として、現在、環境事業団が行っているPCB廃棄物の処理事業を効率的に行うため、PCB廃棄物の処理及び環境保全に関する情報提供等の業務を行う日本環境安全事業株式会社を設立することとし、会社がPCB廃棄物処理事業を経営する間は政府が会社の総株主の議決権の過半数を保有すること、会社が新株の発行、代表取締役の選定の決議、事業基本計画の策定等を行うについては環境大臣の認可を受けなければならないこと等を定めようとするものであります。
 委員会においては、両案を一括して審査に付し、去る三月二十五日鈴木環境大臣から提案理由の説明を聴取した後、四月十八日質疑を行い、討論、採決の結果、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決まりました。
 なお、両案に対しそれぞれ附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。
 まず、日程第三につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第四につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣坂口力君。
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 厳しい雇用失業情勢や働き方の多様化等が進む中で、労働力需給のミスマッチを解消し、多様なニーズにこたえていくためには、公共及び民間の労働力需給調整機関が、それぞれの特性を生かし、労働市場においてより積極的な役割を果たしていくことが必要であります。
 このため、職業紹介事業や労働者派遣事業が労働力需給の迅速、円滑かつ的確な結合を促進することができるよう、求職者の保護や派遣労働者の雇用の安定等に配慮しつつ、これらの事業に係る制度の整備等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一は、職業安定法の一部改正であります。
 まず、無料職業紹介事業について、地方公共団体が住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策に附帯して行う場合及び特別の法律により設立された一定の法人がその構成員を対象として行う場合には、届け出制により実施することができることとしております。
 次に、職業紹介事業の許可等の手続について、事業所単位から事業主単位に簡素化することとしております。
 このほか、兼業禁止の廃止や委託募集の許可制の見直し等を行うこととしております。
 第二は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部改正であります。
 まず、派遣期間について、その上限を一年から三年に延長し、一年を超える派遣期間とする場合には、派遣先はその事業所の過半数を代表する労働者等に通知し、意見を聞くものとしております。
 また、派遣先が期間の制限を超えて派遣労働者を使用しようとする場合、及び期間に制限がない業務に三年を超えて同一の労働者を受け入れている場合において、新しく労働者を雇い入れようとするときには、その派遣労働者に対し、雇用契約の申し込みをしなければならないこととしております。
 次に、物の製造の業務について、労働者派遣事業を行うことができることとし、この法律の施行後三年間は、派遣期間の上限を一年とすることとしております。
 このほか、紹介予定派遣について派遣労働者の就業条件の整備等を行うとともに、労働者派遣事業の許可等の手続について事業所単位から事業主単位に簡素化すること等としております。
 最後に、この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございますので、よろしく御審議のほどお願い申し上げたいと存じます。(拍手)
     ――――◇―――――
 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。鍵田節哉君。
    〔鍵田節哉君登壇〕
鍵田節哉君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、職業安定法及び労働者派遣法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
 まず最初に、大臣の御見解をお聞きしたいことがございます。
 先月、リクルート事件の主役である江副被告に対して、執行猶予つきながら有罪判決が言い渡されました。この事件は、多くの政治家や財界人を巻き込んだ大疑獄でございました。
 また、この判決に前後して、人材派遣会社日本マンパワーの代表取締役をめぐる一億円以上の巨額裏献金問題が発覚いたしました。しかも、逮捕直前まで、被告の一人である坂井隆憲議員は、衆議院厚生労働委員長を務めていました。人材ビジネスをめぐる政治と金にまつわる問題が明らかになるにつけ、人材派遣業が健全な労働市場を利権でむしばむ実態に、腹立たしい思いを強くいたします。(拍手)
 特に見逃せないのが、坂井議員に対して人材派遣関連会社の不正な資金提供が始まった九六年当時、彼は労働政務次官として内閣の一端を担っていたことであります。当時、労働者派遣法の改正で、対象業務が十六業務から二十六業務に一挙に拡大するなど、規制緩和が急速に進み、業界のパイが大きく広がる一方、社会保険料未払い等が多発するなど、問題点も数多くクローズアップされておりました。
 リクルート事件のときは、労働官僚にも未公開株が渡されるなど、その金権汚染は役所内部にも広がっておりましたが、大臣、今回の事件に関しましては、まさか、他の政治家やお役人にも広がっておるということはないでしょうね。
 人材派遣業の規制緩和をめぐる業者と政治家、お役人の不透明な関係は、国民の政治不信を増幅させています。不正な資金提供についてどのように評価されているのか、さらに、この時期にまたしても規制緩和によって業者に便宜を与えるような派遣法の改正案を提出することについて、大臣のお考えをまずお聞かせください。(拍手)
 次に、法案の中身について具体的にお伺いいたします。
 企業の人件費削減の流れを受け、人材派遣の主力である一般事務職の派遣料金は、今春、一時間千七百円から千九百円台の水準で、五年連続して下落し、法施行以降、最低水準に落ち込む見通しになっております。競争入札が当たり前となり、一社当たりの受け入れ人数を多くするかわりに、派遣労働者一人当たりの料金が引き下げられているのです。派遣会社が派遣労働者に支払う時給も、一般事務職で平均千五百十九円と、底値を推移しています。
 派遣労働は、派遣先にとっては、契約上の使用者責任を負うことなしに必要なときに必要な労働力を手に入れることができる、極めて利用価値が高い労働力の調達方法です。裏を返せば、派遣労働者にとっては、雇用関係と指揮命令関係が異なり、どうしても不安定な身分に置かれ、不利益をこうむりがちです。
 また、正社員を派遣労働者にした上で自社に派遣する、人件費削減のため新規採用を控え、かわりに派遣労働者の導入を図るといった傾向はますます拡大していくことが予想され、このことが、派遣先の正規従業員の労働条件あるいは正社員になりたいという労働者に大きな影響を与えることとなります。
 我が国も批准した民間職業紹介所に関する条約であるILO百八十一号条約は、労働力の需給調整に関し、民間の役割を承認し、官民の事業が相互に協力する体制を構築しようとしています。加盟国である我が国には、憲法に規定する労働権保障の責務を果たし、そのための十分な基盤整備を行い、必要な法規制を加えることが求められていると考えます。
 しかしながら、今回の労働者派遣法改正案は、派遣先、派遣元の都合だけが優先され、これ以上できないというところまで規制緩和を行う内容となっております。臨時的・一時的という位置づけは名ばかりで、派遣先にとって安い労働力の調達、使い勝手のよさだけが強調されているという印象をぬぐえません。
 本来ならば、今回の法改正に当たっての論点は二つ、すなわち、一つ目は、派遣労働者が本当に安心して働ける状況をつくり、対等に交渉ができる雇用環境を保障していくこと、二つ目は、リストラの波の中で正規従業員の派遣社員化を安易に促進しないための実効性を確保することではないのですか。大臣のお考えをお伺いいたします。
 次に、派遣期間についてお伺いいたします。
 今回の改正案は、臨時的・一時的労働需要を満たすという労働者派遣の位置づけを保持しながら、現行の派遣期間制限を一年から三年に延長しています。厚生労働省は、一年以上働きたい派遣スタッフと、もっと長期間働いてほしい派遣先の双方のニーズがあることを理由として挙げています。
 ところが、派遣期間制限の延長が派遣元と派遣労働者との契約延長につながるとは限らないわけでございます。
 労働相談には、派遣元と派遣先は一年間の契約を結んでいるにもかかわらず、派遣元と派遣スタッフとの間の契約は三カ月契約の更新をしておるという不満が多く寄せられています。中途解約を経験した人は、連合の調査でも、登録型派遣労働者で二六%、四人に一人、契約の短期化だけでなく、賃金の値崩れ、時間外労働は当たり前、拒否したら仕事はなくなるといった事例も指摘されています。
 長く働きたいという派遣労働者の希望の裏には、安定した雇用につきたい、できれば正社員になりたいが、正社員としての雇用が容易には得られないこと、あるいは、休暇の取得もままならず、企業に従属せざるを得ない現在の正社員の働き方に強い抵抗感を感じることなどから、やむを得ず派遣を選んでいるという本音があるわけでございます。このことを見逃してはなりません。
 派遣期間と雇用期間のずれを埋めていく、少なくとも使用者責任が不明確になりがちな登録型派遣は常用型に切りかえるなどの措置を講じなければならないと考えますが、大臣の所見をお伺いいたします。
 また、一年を超える派遣期間を定める場合は、「労働者の過半数を代表する者に対し、当該期間を通知し、その意見を聴く」こととしていますが、これがなぜ常用雇用の代替防止になるのでしょうか。通知と意見聴取は別々に行うのかも含め、その趣旨を明確にお答えください。
 さらに、今回の改正に伴い、一年の派遣期間制限の対象外となっている二十六業務に関し、同一の派遣労働者について労働者派遣が継続して三年を超えてはならない、いわゆる三年ルールが廃止されます。そのかわりに、直接雇用を促進するため、派遣先で三年継続して働いた派遣労働者に「雇用契約の申込みをしなければならない。」という規定が加わりました。
 しかし、条文をよく読めば、雇用契約の申し込みはその職場で常用雇用を必要としているときのみ、しかも、申し込みをしなくても労働者派遣としては有効である状態が続くなど、その実効性に大きな疑問が残ります。
 この施策により、どのくらいの派遣労働者が直接雇用されると見込んでいるのでしょうか。数字を挙げて大臣のお考えをお示しください。
 さて、改正案のもう一つの焦点として、製造工程業務の派遣解禁問題があります。製造業務への派遣労働の解禁は、たとえ派遣期間が一年でも、一気に広まる可能性を秘めており、労働監督の強化や安全衛生法規の見直し等、前提となる施策の充実が不可欠であります。
 製造業の現場では、以前から、請負といいながら、実際には仕事の指揮命令を顧客企業に任せている事例が多く指摘されております。今回、実態としては派遣にほかならなかった偽装請負を追認することで、製造業の現場において外部委託が進み、戦後の我が国の発展の原動力となってきた物づくりが危機的状況に至ることを懸念する声が少なくありません。すなわち、不安定、劣悪な労働環境のもと、技能訓練は派遣元が行うのか、派遣先が行うのか、その主体も明確ではない中で、高度熟練技術の継承が困難になることが各方面から指摘されているところでございます。
 製造業務への派遣労働の解禁に当たっては、少なくとも、こうした偽装請負を含め、違法派遣に対する制裁措置が十分に担保されなければならないと考えますが、ガイドラインの策定を含め、大臣の御所見をお聞かせください。(拍手)
 また、安全衛生に関しては、派遣元責任者と派遣先責任者とが「連絡調整を行うこと。」という文言が入りますが、労災補償については、何ら言及されておりません。
 労働者派遣において、労災補償は派遣元にあり、派遣先は適用になりませんが、派遣先が製造業であっても、派遣元には今までどおりサービス業の保険料率が適用されるのでしょうか。派遣先に労災保険適用事業者としての責任を課さない限り、派遣先の安全衛生へのインセンティブは担保されないと考えますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
 正規労働者として雇用される可能性がある紹介予定派遣についても、今回、大幅な改正が行われます。すなわち、紹介予定派遣について法律上に明確に位置づけ、派遣就業開始前に面接、履歴書の送付等を可能とし、就業期間中の求人条件の明示を可能とするなど、労働者派遣法上の労働者派遣の一つとして紹介予定派遣を位置づける内容となっています。
 しかしながら、派遣就業終了後に派遣先への職業紹介を予定している以上、紹介予定派遣は試用ないし見習い期間と同様の目的があると考えられ、それ以上の長期にわたる紹介予定期間は通常の労働者派遣との区別が不明確になると思われますが、大臣はどうお考えになりますか。紹介予定派遣の趣旨も含め、お考えを伺います。
 以上、指摘しました問題点は、ほんの一部にすぎません。このほか、労働者派遣法関連では、医療関係業務への派遣問題、派遣労働者の労使関係の確立、指導監督体制の整備、派遣労働者の教育訓練機会の創出、個別紛争処理機関の整備、派遣労働者と正規労働者の均等待遇の確立、派遣契約の解除の問題、社会保険の適用促進の問題など、また、職安法関連では、兼業禁止規制の削除の問題、許可単位の変更問題、求職者からの手数料徴収の引き上げ問題など、多くの課題が残っております。
 こうした措置が、労使双方にとっての選択肢の拡大を図ることにならなければ改正の意味はないこと、特に、労働者が主体的に、個性を発揮しながら活躍できるための労働条件の確保、働き方のルールの明確化につながらなければまさに改悪にほかならないことを強く指摘し、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
国務大臣(坂口力君) 鍵田議員から御質問いただきましたので、お答えを申し上げたいと存じます。
 まず最初に、リクルート事件あるいはまた坂井議員の事件における不正な資金提供と派遣法改正案提出の関係についてのお尋ねがございました。
 坂井議員が政治資金規正法違反等の罪で起訴されましたことは、大変遺憾なことであると思っております。
 なお、今回の事件と労働政策の実施とは別次元の問題であり、私といたしましては、労働政策がこうした不正な資金提供によってゆがめられているとは思っておりません。
 今回提出しております労働者派遣法等の改正法案は、厳しい雇用失業情勢や働き方の多様化等に対応いたしまして、迅速、円滑かつ的確な労働力需給の結合を促進し、企業活動に必要な労働力の確保を図りますとともに、一人でも多くの方が雇用の機会を得られるようにするためのものであり、ぜひ速やかな御審議をお願い申し上げたいと考えているところでございます。
 派遣労働者の雇用環境や正規従業員の派遣社員化についてのお尋ねがございました。
 派遣労働者の就業条件を整備いたしまして、安心して働ける状況をつくりますことは、大変重要なことであり、今回の改正法案におきましても、派遣元、派遣先の責任者の業務へ安全衛生の業務を追加いたしますとともに、派遣期間制限違反が生じないよう、派遣元事業主から派遣労働者への派遣停止の通知義務等を設けているところでございます。
 また、労働者派遣事業の、臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策としての位置づけは、今回の改正法案においても変更はなく、派遣期間を一年を超え三年までに延長する場合には、派遣先に労働者代表の意見聴取を義務づけるなどの措置を講じており、正規従業員の派遣社員化が安易に促進されるものとは考えておりません。
 派遣期間と雇用期間のずれを埋める措置と登録型派遣を常用型派遣へ切りかえる措置についてのお尋ねがございました。
 派遣期間の延長に伴いまして、派遣労働者と派遣元事業主との間で短期間の雇用契約の反復更新がなされる場合には、派遣労働者の雇用が不安定になる側面もありますことから、派遣元事業主は、雇用契約の締結に当たりまして、派遣労働者の雇用の安定が確保されるよう配慮することが望ましいと考えております。この点につきましては、審議会でさらに検討を重ねたいと考えているところでございます。
 また、派遣労働者の中には、派遣元事業主に常時雇用されることを望まず、期間や職場を選んで働きたい労働者が相当数いることも考慮しますと、登録型派遣は労働力の需給調整面で一定の機能を果たしており、常用型派遣とともに、その必要性が認められるものと考えております。
 労働者過半数代表者からの意見聴取とその方法についてのお尋ねがございました。
 一年を超えて労働者派遣を受け入れることができるのは、あくまでも、臨時的・一時的な業務について、その業務の処理に一年を超えて三年までの期間を要すると判断される場合に、派遣先が労働者代表にその旨を通知し、意見を聞いて決定した期間内に限られるものでございます。
 このため、労働者派遣の受け入れが臨時的・一時的な業務に限られるということに変更はないことから、派遣期間の制限による常用代替の防止という趣旨は維持されているものと考えております。
 直接雇用される派遣労働者の見込みについてのお尋ねがございました。
 派遣先が雇い入れようとする労働者の数は、景気動向等に大きく影響される面がありますことから、二十六業種に係る直接雇用の促進の措置により派遣先に雇用される派遣労働者を定量的にお示しすることはなかなか難しいと思っております。
 しかし、現在でも、二十六業種におきまして、派遣労働者の受け入れから三年経過時点で、派遣先の直接雇用に切りかわる事業所も一定程度、約二割でございますが、見られますので、今回の直接雇用の促進の措置を法律に明記することにより、さらに派遣労働者から直接雇用に移る労働者がふえるものと確信しているところでございます。
 偽装請負に対する対処についてのお尋ねがございました。
 物の製造の業務への労働者派遣が可能となれば、多数の製造現場において、請負と労働者派遣のそれぞれが適正に実施されることを確保するために、両者を明確に区分し、それぞれが適正に行われるよう指導する必要がありますが、そのためには、行政上、これまで以上の専門性、効率性が求められることとなります。
 このため、偽装請負の問題につきましては、現在、公共職業安定所にゆだねられております指導監督業務を都道府県労働局に集中化し、指導監督体制を強化したいと考えているところでございます。
 また、ガイドラインの策定についてもお触れがございましたが、これは、現在、請負と労働者派遣を明確に区分するための区分基準がございますので、この適切な運用を図りたいと考えております。もしこれで不十分であればさらに検討したいと考えているところでございます。
 労災補償についてのお尋ねがございました。
 労働者派遣事業に係る労災保険率は、派遣労働者が主としてどのような作業実態にあるかによって決定されるものであり、派遣元からの主たる派遣先が製造業の場合には、派遣元に製造業の労災保険率が適用されることになります。
 また、派遣労働者の安全衛生の確保のために派遣先事業主に責任を負わせることが適切な事項については、派遣法上、派遣先事業主に義務を課しており、これらの履行確保を図ることにより、派遣先事業主も災害防止に努めるものと考えております。
 最後に、紹介予定派遣の趣旨についてのお尋ねがございました。
 紹介予定派遣は、最初から直接雇用となるとちゅうちょする事業主や労働者に対しまして、雇用機会を提供し、円滑な直接雇用を促進するという積極的な意義を有しているものであり、今回の改正法案におきましては、これを法律上明確に位置づけまして、一層有効に機能させるために必要な見直しを行うものでございます。
 また、通常の労働者派遣と異なりまして、紹介予定派遣の派遣期間につきましては、いたずらに派遣期間が長期になることがないようにすることが大切であり、指針等で必要な措置を講ずることとしたいと考えております。この点につきましても、御指摘いただきました点を十分に踏まえたいと考えているところでございます。(拍手)
議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時四十四分散会


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