衆議院

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第29号 平成15年5月13日(火曜日)

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平成十五年五月十三日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十号
  平成十五年五月十三日
    午後一時開議
 第一 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 裁判の迅速化に関する法律案(内閣提出)
 第三 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第四 人事訴訟法案(内閣提出)
 第五 使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約の締結について承認を求めるの件
 第六 国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百九十年十月二十六日にモントリオールで署名された議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
 第七 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日程第一 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 裁判の迅速化に関する法律案(内閣提出)
 日程第三 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 人事訴訟法案(内閣提出)
 日程第五 使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約の締結について承認を求めるの件
 日程第六 国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百九十年十月二十六日にモントリオールで署名された議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
 日程第七 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律案(内閣提出)
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議
議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第一、証券取引法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。財務金融委員長小坂憲次君。
    ―――――――――――――
 証券取引法等の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔小坂憲次君登壇〕
小坂憲次君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、内外の金融情勢の変化に対応し、間接金融から直接金融へのシフトに向けて個人投資家の証券市場への参加を促進するためのインフラ整備などを行い、我が国証券市場の構造改革を促進するため、所要の措置を講じようとするものであり、以下、その概要を申し上げます。
 第一に、証券会社等の委託を受けて証券取引の仲介を行う証券仲介業制度を創設するほか、協同組織金融機関が有価証券の売買等に係る書面取り次ぎ業務を営むことができることにしております。
 第二に、証券会社等の議決権の二〇%以上を保有している主要株主について、その適格性を確認するための制度を導入することにしております。
 第三に、証券会社による投資一任業務等の兼業に係る規制を適正化することにしております。
 第四に、取引所の持ち株会社制度を新設するとともに、外国証券業者等が国内に支店を設けることなく取引所取引に参加できるよう、制度の整備を図ることにしております。
 本案は、去る五月六日当委員会に付託され、翌七日竹中国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、参考人の意見聴取を含めた審査を行い、同月九日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 裁判の迅速化に関する法律案(内閣提出)
 日程第三 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 人事訴訟法案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第二、裁判の迅速化に関する法律案、日程第三、民事訴訟法等の一部を改正する法律案、日程第四、人事訴訟法案、右三案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長山本有二君。
    ―――――――――――――
 裁判の迅速化に関する法律案及び同報告書
 民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び同報告書
 人事訴訟法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔山本有二君登壇〕
山本有二君 ただいま議題となりました各法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、裁判の迅速化に関する法律案は、裁判所における手続の一層の迅速化を図るため、第一審の訴訟手続を二年以内に終局させることを目標とし、基本となる事項を定めようとするものであります。
 次に、民事訴訟法等の一部を改正する法律案は、民事訴訟における計画審理の推進、提訴前の証拠収集等の手続の拡充、専門委員制度の創設等の措置を講じようとするものであります。
 最後に、人事訴訟法案は、人事訴訟の管轄を家庭裁判所へ移管するとともに、家庭裁判所調査官による事実の調査の拡充、参与員制度の拡充等の措置を講じようとするものであります。
 各案は、去る四月十五日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日委員会において森山法務大臣から提案理由の説明を聴取し、十八日裁判の迅速化に関する法律案について質疑を行い、五月七日及び九日各案について参考人を含めた慎重な質疑を行い、質疑終局後、裁判の迅速化に関する法律案に対して、目的、当事者等の責務、最高裁判所による検証に関する、佐藤剛男君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党の四党共同提案による修正案が提出され、趣旨説明を聴取し、討論、採決の結果、裁判の迅速化に関する法律案は賛成多数をもって修正議決すべきものと決し、民事訴訟法等の一部を改正する法律案は賛成多数をもって、人事訴訟法案は全会一致をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、裁判の迅速化に関する法律案及び民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対しそれぞれ附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
 次に、日程第三につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第四につき採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第五 使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約の締結について承認を求めるの件
 日程第六 国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百九十年十月二十六日にモントリオールで署名された議定書の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
議長(綿貫民輔君) 日程第五、使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約の締結について承認を求めるの件、日程第六、国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百九十年十月二十六日にモントリオールで署名された議定書の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。外務委員長池田元久君。
    ―――――――――――――
 使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書
 国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百九十年十月二十六日にモントリオールで署名された議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔池田元久君登壇〕
池田元久君 ただいま議題となりました両件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、放射性廃棄物等安全条約について申し上げます。
 平成六年九月の国際原子力機関第三十八回総会は、放射性廃棄物管理の安全に関する基本原則を定めることを目的に条約の検討を早期に開始する旨の決議を行いました。この決議に基づき条約作成のための専門家会合が設置され、平成七年から七回にわたって交渉が行われました。その結果、平成九年九月、ウィーンで開催された会議において、本条約が採択されました。
 本条約の主な内容は、
 締約国は、使用済み燃料及び放射性廃棄物の管理のすべての段階において、放射線による危険から個人、社会及び環境を適切に保護するため適当な措置をとること、
 締約国は、使用済み燃料及び放射性廃棄物の管理の安全を確保するため法令上の枠組みを定め及び維持し、並びにこれを実施することを任務とする規制機関を設立しまたは指定すること、
 締約国は、使用済み燃料及び放射性廃棄物の管理施設の使用前及び使用中に敷地内及び敷地外の緊急事態計画を作成すること
等です。
 次に、国際民間航空条約改正議定書について申し上げます。
 昭和十九年に作成された国際民間航空条約に基づき、民間航空の安全かつ整然たる発展を確保することを目的として設立された国際民間航空機関は、国際連合の専門機関の一つとして民間航空に関連する技術、経済、法律等の各分野において極めて活発な活動を行っており、その加盟国の数は、我が国を含め百八十八カ国に達しています。機関の理事会の構成員の数については、加盟国の増加に伴い条約改正が行われてきましたが、平成二年十月にモントリオールで開催された機関の第二十八回総会において、理事会が機関の加盟国全体を公平かつ適切に反映することを確保するため、構成員の数を増加することを定める本議定書が作成されました。
 本議定書は、条約に基づき組織される機関の理事会の構成員の数を三十三から三十六に改めるものです。
 国際民間航空条約改正議定書は、去る四月二十五日参議院より送付され、放射性廃棄物等安全条約とともに五月六日に外務委員会に付託されました。
 外務委員会におきましては、両件について、五月七日川口外務大臣から提案理由の説明を聴取し、九日質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、両件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決した次第です。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 両件を一括して採決いたします。
 両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。
     ――――◇―――――
 日程第七 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律案(内閣提出)
議長(綿貫民輔君) 日程第七、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長佐々木秀典君。
    ―――――――――――――
 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔佐々木秀典君登壇〕
佐々木秀典君 ただいま議題となりました特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、建物に侵入して行われる犯罪の防止に資するため、正当な理由のない特殊開錠用具の所持等を禁止するほか、指定建物錠の防犯性能に関する表示制度を新設し、その他特殊開錠用具等を用いて建物に侵入する行為の防止対策の推進について定めようとするものであります。
 本案は、去る五月六日本委員会に付託され、翌七日谷垣国家公安委員会委員長から提案理由の説明を聴取いたしました。同月九日質疑を行い、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。
    ―――――――――――――
議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案及び担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣森山眞弓君。
    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕
国務大臣(森山眞弓君) まず、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 我が国においては、内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法を国民に身近なものとし、国民の多様かつ広範な要請にこたえること等を目指した司法制度の改革が求められております。この法律案は、このような状況にかんがみ、司法制度改革の一環として、簡易裁判所の管轄の拡大及び民事訴訟等の費用に関する制度の整備、民事調停官及び家事調停官の制度の創設並びに弁護士及び外国法事務弁護士の制度の整備を行うことを目的とするものであります。
 以下、法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
 第一に、簡易裁判所の取り扱う民事訴訟事件の訴訟の目的の価額の上限を百四十万円に引き上げるとともに、訴えの提起の手数料の額の見直し及び民事訴訟等の費用の額の算出方法の簡素化を行うこととしております。
 第二に、弁護士から任命される民事調停官及び家事調停官が裁判官の権限と同等の権限をもって調停手続を主宰する制度を創設することとし、民事調停官及び家事調停官の任命、権限、手当等について所要の規定を置いております。
 第三に、企業法務の担当者及び公務員等であって司法試験合格後に所定の法律関係事務に従事し、かつ、所定の研修を修了した者に対して弁護士資格を付与するなどの弁護士となる資格の特例を拡充するとともに、弁護士について、弁護士法上の公務就任の制限の撤廃及び営利業務従事の制限の緩和、弁護士の報酬規定の会則記載事項からの削除、日本弁護士連合会に綱紀審査会を創設するなどの綱紀・懲戒制度の整備を行うこととしております。
 第四に、外国法事務弁護士による弁護士の雇用並びに外国法事務弁護士と弁護士等との共同事業及び収益分配に関する規制を緩和するとともに、それに伴う弊害を防止するための所要の規定を置いております。
 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 次に、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 抵当権等の担保物権の内容及びその実行手続については、社会経済情勢の変化への対応等の観点から、早急に見直す必要があるとの指摘がされております。また、民事執行制度については、司法制度改革の一環としても、権利実現の実効性を確保する見地から、強化する必要があるとの指摘がされております。
 この法律案は、これらの指摘にこたえるため、民法、民事執行法等の見直しを行うものであります。
 この法律案の要点を申し上げますと、第一は、抵当権と利用権との調整に関する民法の規律の見直しであります。
 現行の短期賃貸借制度については、執行妨害に濫用されており、賃借人保護の制度としても合理的に機能していないとの指摘がされておりますことから、これを廃止する一方、保護すべき賃借人に合理的な範囲で確実な保護を与えるため、抵当権者に対抗することができない建物賃借人に対して三カ月間明け渡しを猶予する制度及び抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度を創設しております。
 第二は、民事執行法上の保全処分の強化であります。
 占有屋等による執行妨害に対処するための保全処分について、不動産の価格減少の程度が著しい場合でなくても発令することができるようにするなど、その要件を緩和するとともに、保全処分の相手方である不動産の占有者を特定することが困難である場合には、相手方を特定しないで発令することができることとして、占有者が次々に入れかわることなどによる執行妨害にも対処することができるようにしております。
 第三は、強制執行の実効性の向上のための新たな方策であります。
 まず、間接強制の適用範囲を拡張し、直接強制または代替執行の方法によることができる債務についても、間接強制の方法による強制執行を認めることとしております。また、金銭債権についての債務名義を有する債権者等の申し立てにより、裁判所が債務者に対し財産の開示を命ずる手続を創設しております。さらに、扶養義務等に係る定期金債権に基づく強制執行においては、弁済期の到来していない将来分の債権についても、一括して債務者の将来の収入に対する差し押さえをすることができる制度を導入しております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。
 以上でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。平岡秀夫君。
    〔平岡秀夫君君登壇〕
平岡秀夫君 民主党の平岡秀夫でございます。
 ただいま議題となりました二法案につきまして、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、質問をいたします。(拍手)
 まず、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案について、司法制度改革推進本部の副本部長としての森山法務大臣にお尋ねいたします。
 この法案は、司法制度における改革を目指して、八本の法律の改正を内容としています。簡易裁判所の管轄の拡大、非常勤裁判官制度の創設、弁護士資格付与の特例の拡大、弁護士の公職就任、営利業務の自由化など、どれも、それぞれの制度の根幹にかかわる問題であり、かつ、質的に多様な内容を持っているものでありますので、以下、順を追って、各改正項目について質問いたします。
 質問の第一点は、簡易裁判所で取り扱う民事訴訟事件の範囲の拡大についてです。
 簡易裁判所は、軽微な事件を簡易迅速に解決することを可能にするため、その取り扱う民事訴訟事件の訴訟の目的の価額の上限を定め、現在、九十万円としておりますけれども、本法案では、それを百四十万円に引き上げることとしています。
 この点について、一昨年六月に出された司法制度改革審議会意見書では、「経済指標の動向等を考慮し、訴額の上限を引き上げるべきである。」としており、例えば、消費者物価指数を基準にすれば、約百十万円にとどまるにもかかわらず、本法案では、百四十万円と大幅な引き上げとなっています。
 そこで、お聞きいたします。
 簡易裁判所で取り扱う軽微な事件としての金額基準の上限を百四十万円とした根拠は何なのでしょうか。国民に対する適正な司法サービスの提供という観点以外の要素が何か入り込んではいないでしょうか。
 また、この引き上げにより、簡易裁判所に提起される訴訟の件数が大幅に増加することが見込まれると思いますが、簡易迅速な裁判を維持するために、その増加に対してはどのような対応を検討しているのでしょうか。
 質問の第二点は、いわゆる非常勤裁判官制度についてです。
 本法案により、民事調停事件及び家事調停事件に関し、弁護士が弁護士の身分を持ったまま、非常勤の形態で、裁判官と同等の立場で調停手続を主宰する制度が創設されることになります。この制度により、弁護士としての能力、経験を生かした紛争の解決や権利の適切な実現を図ることができれば、調停制度の充実、活性化をもたらすことになると考えますが、そのためには、その目的に合致するすぐれた非常勤裁判官を確保する必要があります。
 この点について、すぐれた非常勤裁判官を必要な数だけ確保するため、どのような方策を考えているのか、政府の考え方をお示しください。
 また、審議会意見書では、「弁護士任官等の推進のために継続的に実効性のある措置を講じていくべきである。」としていますけれども、非常勤裁判官の職務範囲の拡大について今後どのように進めていくのか、政府の考え方をお示しください。
 質問の第三点は、弁護士資格付与の特例を拡大しようとしている点についてです。
 現行制度では、弁護士資格付与の要件は、原則として、司法試験の合格と司法修習の終了という二つであります。この原則に対する例外には必要かつ十分な根拠がなければならないと考えます。
 ところが、本法案では、弁護士資格付与の要件をさらに緩和し、いわゆる特任検事や国会議員、企業法務担当者などに対しても弁護士資格を与えようとしております。
 そこで、お聞きいたします。
 その第一は、国会議員についてです。
 国会議員は、法律に携わる職種とはいえ、弁護士とは全く質的に異なる職務内容であるにもかかわらず、国会議員を五年以上務めたことで、司法修習を不要とする取り扱いをしようとしています。
 国会議員の実態は、我々国会議員が一番よく知っていると思います。法案の立案に当たっては、法律の専門家である衆議院や参議院の法制局にお世話になっていますし、むしろ、逆に、弁護士資格を有する現職の国会議員の多くは、弁護士が五年以上も国会議員をやっていたら弁護士として使い物にならなくなると言っているほどであります。
 以上のように、この点についての政府案は、合理性もなく、実態にもそぐわないと考えますが、いかがでしょうか。お尋ねします。(拍手)
 その第二は、いわゆる特任検事についてです。
 特任検事は、先ほどの二つの要件の両方を満たしていません。刑事事件については、確かに専門家かもしれませんけれども、民事事件などについては、法律の専門家と言える法律的保証は全くありません。
 本法案の本音は、いわば特任検事の再就職先確保ではありませんか。既に退職している人の中で特任検事五年以上の経験を有する人、そして、現役の特任検事はそれぞれ何人いるのですか。まさに政府のお手盛りの法案と言わざるを得ませんが、政府の見解を求めます。
 質問の第四点は、弁護士の公職就任、営利業務の自由化についてです。
 本法案では、弁護士の公職兼任の制限を撤廃するとともに、営利業務従事の許可制を廃止し、届け出制に移行することとしています。
 法律の専門家が多様な職種につくことは社会全体のメリットになるとは思いますが、弁護士が本来の業務分野以外の分野で営利業務に励んでいるというのは、社会正義の実現をその使命とする弁護士という職務のあり方からして、問題なしとは言えないと思います。
 この点について、本法案では制度的にどのように対応しているのでしょうか。お尋ねいたします。
 質問の第五点は、弁護士報酬規定の削除についてです。
 本法案では、弁護士会がその会則で弁護士報酬の標準を示すこととする根拠規定が削除され、弁護士報酬について、これまでのような取り扱いができなくなります。
 弁護士制度が整備される以前の三百代言が横行した時代のことはともかくも、現在でも、弁護士を利用すると幾らお金がかかるかわからないというのが一般国民の率直な認識です。
 審議会意見書が弁護士報酬の透明化と合理化を図ることを提言していますが、今回の改正では、利用者である国民の目から見て、標準的な報酬額の目安がわからず、かえって利用しにくくなることになるのではないかと心配です。具体的に、どのような方法で審議会意見の実現を図ることができると考えているのか、政府のお考えをお示しください。
 次に、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案について、森山法務大臣にお尋ねいたします。
 質問の第一点は、短期賃貸借制度の廃止についてです。
 本法案では、これまで賃借人の権利擁護に一定の役割を果たしてきた短期賃貸借制度を廃止し、抵当権の実行による競売が行われた場合、その売却後三カ月の猶予期間の後、建物の引き渡しを行うという制度を導入しようとしています。
 短期賃貸借制度が強制執行妨害の温床となってきたことは事実ですが、執行妨害の問題については、近年、執行裁判所が非正常型の賃借権を積極的に排除し、濫用的な賃借権を否認する取り扱いが定着しており、執行妨害対策の実効性は上がっているとも言われています。
 他方、現在の日本では、多くの賃貸建物には抵当権が設定されているため、大多数の市民、企業が、その生活の基盤たる住居、店舗、事務所を短期賃貸借によって取得し、生活や事業を営んでいるという実態があり、本法案による改正は、国民生活の安定に大変な影響を与えることが危惧されています。
 政府は、国民生活における短期賃貸借の実態についてどのように把握しておられるのか、そして、本法案による改正がその実態にどのように影響を与えることになると考えているのかについて、お示しいただきたいと思います。
 また、短期賃貸借制度の廃止がこのように多くの問題を惹起させることを考えると、執行妨害の問題は、抵当権者による適切な解除請求の実行や、売却のための保全処分の改正によることで対処すべきではないかと考えますが、政府はこの点についてどのように考えるのか、その見解をお示しください。
 質問の第二点は、企業倒産時における労働債権の取り扱いについてです。
 具体的な質問に入る前に、この二年間、小泉政権の経済政策の無策により、企業倒産が高水準で推移し、雇用が減少していることについて、小泉政権として責任を問われるべきであることを指摘しておきたいと思います。小泉政権の政策の失敗のツケが中小企業者や労働者に押しつけられているのが現状です。この点を鋭く、厳しく指摘した上で、以下、質問をいたします。(拍手)
 本法案による改正は、保護されるべき労働債権の範囲が企業形態によって異ならないようにしたこと、未払い賃金の先取特権が現在六カ月に限定されているのをすべての期間としたことなど、評価すべき点があるものの、みずからが勤めている企業の倒産によって直接的かつ集中的に被害を受ける労働者の保護がいまだ十分に図られているとは言えません。
 具体的には、第一に、法制審議会の中間試案に、労働債権の一部について担保権に優先させる制度を設けることが盛り込まれていたにもかかわらず、本法案では、これが見送られています。第二に、いまだ批准はされていませんが、ILO百七十三号条約で、労働者債権について、租税債権や社会保険料債権よりも「高い順位の特権を与える。」となっているにもかかわらず、この点について何らの検討も行われていないということであります。
 企業倒産という悲劇による影響を、特定の範囲の人々に押しつけるのではなく、できる限り社会全体で受けとめていくことが必要であると考えますが、これらの二点についての政府の見解をお尋ねいたします。
 最後に、これから本番を迎える司法制度改革は、国民のための司法制度の確立を目指し、国民の視点に立った改革として実施していくことが大切であることを指摘して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕
国務大臣(森山眞弓君) 平岡議員にお答え申し上げます。
 まず、簡易裁判所で取り扱う事件の金額基準の根拠についてお尋ねがございました。
 簡易裁判所の事物管轄の上限額の引き上げにつきましては、軽微な事件を簡易迅速に解決することを目的とし、国民により身近であるという簡易裁判所の特質を十分に生かし、裁判所へのアクセスを容易にするとの観点から検討を行い、各種の経済指標の動向等を考慮いたしまして、その上限額を百四十万円とすることが適切であると考えたものであります。
 次に、管轄拡大による簡易裁判所の事件数の増加に対する対応についてお尋ねがありました。
 今回の管轄拡大によりまして、現在の地方裁判所の民事訴訟事件のうちの一部について簡易裁判所が管轄を有することになりますが、その対応につきましては、人員配置や事件の取り扱い上の工夫などにより、裁判所において適切に対応していただけるものと承知しております。
 なお、政府として必要があれば必要な協力をしてまいりたいと考えております。
 次に、民事調停官、家事調停官の確保方策についてお尋ねがありました。
 民事調停官、家事調停官の採用に当たられるのは最高裁でございますが、既に、最高裁と日弁連の間において、候補となる弁護士の推薦手続を設けることが合意されており、弁護士の関心も高いものと聞いております。
 日弁連におかれまして、適任の弁護士を推薦していただけるものと期待しておりますし、最高裁におかれましては、応募者の中から適任者を確保していただけるものと期待しているところです。
 次に、弁護士任官等の推進のためのいわゆる非常勤裁判官の今後の職務範囲の拡大についてお尋ねがありました。
 民事調停官、家事調停官の制度は、弁護士任官を推進させるために最高裁と日弁連が設置した弁護士任官等に関する協議会における協議結果を受け、弁護士任官等の推進にも資するものとして設けようとしているものです。
 御質問の点につきましては、この協議会の取りまとめにおいて、最高裁から、その他の非訟事件についても、同様の制度が導入できる分野がないか研究したい旨の説明がなされ、日弁連もそれを了承したとされており、司法制度改革推進本部といたしましては、関係機関による取り組みを見守りたいと考えております。
 次に、弁護士資格付与の特例の拡充についてお尋ねがありました。
 今回、弁護士資格の特例を拡充することといたしましたのは、弁護士の果たすべき役割が増大していく中で、多様で広範な国民の要請に十分こたえ得るよう、多様なバックグラウンドを有する層の厚い法曹を確保するためであります。
 この中で、国会議員につきましては、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である国会において、法律に国民のニーズを反映させるという大局的な視点から、法律案の立案・審議という高度な識見・能力を要する職務を行っているため、司法試験合格後に五年間その職にあった者に対して弁護士資格を付与することとしたものであります。
 次に、いわゆる特任検事は、三年以上、副検事として在職した上、政令の定める極めて難しい試験に合格した者から任命され、司法修習を経た検事と全く同一の権限を有し、民商事法の解釈を要する経済事犯等の事件を含め、捜査・公判実務を十分に経験しています。したがって、五年間の在職経験を有する特任検事は、弁護士にふさわしい能力を十分に備えているものと認められます。
 司法制度改革審議会が特任検事への法曹資格の付与を提言した趣旨も、こうした経験を社会において活用しようとする点にあり、特任検事の再就職先確保やお手盛りなどではないと考えます。
 なお、退職された特任検事経験者のうち、御存命の方が何名いらっしゃるかは把握しておりませんが、退官後、現在おおむね七十歳までの人数を推計いたしますと、約三十名になります。また、現在の在職者数は四十六名であります。
 ちなみに、特任検事の最近数年間の平均任官者数は毎年三名程度でございます。
 次に、弁護士が営利業務に従事することについてお尋ねがありました。
 弁護士が営利業務に従事することに関し、許可制から届け出制に移行するのは、弁護士が社会の隅々に進出してそのニーズに積極的に対応し、法の支配の実現に貢献するためであります。
 営利業務に従事した弁護士が弁護士の品位にもとる行為を行った場合には、懲戒処分を受けることになります。今回の法改正により、懲戒制度の一層の透明化、迅速化、実効化が図られますので、これにより十分に対応できるものと考えております。
 次に、弁護士報酬の透明化、合理化についてお尋ねがありました。
 弁護士報酬についての予測可能性を確保するため、現在、日弁連において、司法制度改革審議会意見の趣旨にのっとり、日弁連や弁護士会の会則等により、個々の弁護士の報酬基準の作成及び備え置き義務、弁護士の依頼者に対する契約前の報酬説明義務、報酬契約書の作成義務を課すことなどを検討しているものと聞いております。
 これらが実現されることによって、日弁連、弁護士会の会則から報酬規定が削除されても、利用者は、弁護士報酬について、これまで以上の情報を入手し、また、必要に応じて複数の弁護士の報酬見積額を比較した上で弁護士に依頼することができるようになると考えております。
 次に、国民生活における短期賃貸借の実態についてどのように把握しているかというお尋ねがございました。
 現行の短期賃貸借制度につきましては、議員からの御指摘にもございましたように、執行妨害に濫用する例が後を絶たない状況にあると認識しております。
 他方で、多くの市民や企業が抵当建物を賃借して生活や事業を営んでおられることも、議員御指摘のとおりでございます。しかし、現行の短期賃貸借制度は、賃借人が保護されるか否かが賃借期間の満了時期と競売による売却時期との先後関係といった偶然の事情に左右され、賃借人に一定の保護を確実に与える制度とはなっていないものと認識しております。
 次に、短期賃貸借制度の見直しが国民生活に与える影響についてお尋ねがございました。
 本法案では、現行の短期賃貸借制度を廃止する一方、建物賃借人に対して三カ月間明け渡しを猶予する制度及び抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度を創設することとしております。
 これにより、現行制度が執行妨害に濫用されることにより国民の権利の実現を妨げていたという問題が改善されるとともに、抵当建物の賃借人の保護につきましても、合理的な範囲で、等しく確実な保護が与えられるようになると考えております。
 次に、短期賃貸借制度の見直しに関し、執行妨害に対しては保全処分についての法改正等により対処すべきではないかとのお尋ねがございました。
 執行妨害に的確に対処するためには、保全処分等の制度をさらに強化する必要があると認識しており、本法案でも、そのための民事執行法等の改正を行うこととしております。
 しかしながら、短期賃貸借制度に関しては、平成八年及び平成十年の民事執行法改正による執行妨害対策の強化並びに運用上の努力が重ねられてきたにもかかわらず、依然として、執行妨害に濫用される例が後を絶たない状況にあると指摘されております。
 そこで、執行妨害への対策としては、保全処分のさらなる強化等を図るにとどまらず、民法が定める短期賃貸借制度につきましても、濫用されにくい制度を構築するという観点から見直しを図る必要があると考えております。
 次に、本法案に労働債権の一部について担保権に優先させる制度が盛り込まれていないことについてのお尋ねがございました。
 法制審議会担保・執行法制部会において平成十四年三月に取りまとめられた担保・執行法制の見直しに関する要綱中間試案におきましては、一定の範囲の労働債権に係る先取特権について、公示手段を要することなく最優先の効力を認め、抵当権等の担保権にも優先するものとすべきであるとの意見があることが紹介されております。
 しかし、抵当権等の担保権がその設定時には認識することができない労働債権に優先されることとなりますと、抵当権者等の利益を不当に害するおそれがあること、また、そのようなおそれを考慮した抵当権者等の与信額の引き下げにより、債務者の資金調達に悪影響を及ぼすおそれがあることなどから、この意見は、法制審議会において本年二月に取りまとめられた担保・執行法制の見直しに関する要綱では、採用されるに至らなかったものでございます。
 そこで、本法案におきましては、この意見を実現する制度は設けていないものでございます。
 最後に、ILO第百七十三号条約との関係で、労働債権の保護についてのお尋ねがございました。
 御指摘のILO第百七十三号条約は、使用者の支払い不能の場合における労働債権の保護に関して定められた条約でありますが、債務者が破産した場合における租税債権、労働債権等の各種債権の優先順位につきましては、現在、法制審議会倒産法部会における破産法の見直しの中で、租税債権の優先順位を一定の場合に引き下げるとともに、労働債権の優先順位を一部引き上げるという案について、調査審議が行われているところでございます。
 なお、租税債権等は、国家等の財政の基盤でありまして、公益性が高く、公平かつ確実に徴収されるべきものであることから、現行法のもとでは、原則として、労働債権を含む私法上の債権よりも優先することとされております。
 以上でございます。(拍手)
議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時五十一分散会


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