衆議院

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第2号 平成15年9月29日(月曜日)

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平成十五年九月二十九日(月曜日)

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 議事日程 第二号

  平成十五年九月二十九日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。菅直人君。

    〔菅直人君登壇〕

菅直人君 まず、北海道十勝沖地震で被災された皆さんに心からお見舞い申し上げますと同時に、政府に対して、的確迅速な復旧活動に従事されるよう強く申し上げます。

 民主党と自由党が合併をいたしました。新しい民主党と無所属クラブを代表して、さきの小泉総理の所信表明演説に対して質問をいたします。(拍手)

 同時に、間近に迫った総選挙に向けてのマニフェストをめぐる討論を行いたい。総理にも真正面から答弁をいただきたいと思います。

 まず、小泉総理大臣、総裁再選おめでとうございます。政局に強いと言われる小泉総理の真骨頂が発揮されたと感心をしております。

 特に、小泉総理が最大の公約とされている郵政事業民営化に真正面から反対を表明している自由民主党参議院青木幹事長を味方に引き入れて、再選の流れをつくった。まさに政略的には見事だと言えます。

 しかし、総理大臣、これであなたの公約は実行できるのでしょうか。青木幹事長は、たとえ衆議院が民営化法案を通しても参議院でつぶしてみせると言っておられます。マニフェストに盛り込むにしても、与党と総理が一致していなければ、にせもののマニフェストになってしまいます。結局のところ、与党と総理の意見が一致しない、それを理由に足踏みが続くのではないですか。総理、お答えください。

 総理は、所信表明でも、改革の芽が出てきたという表現をされます。しかし、小泉改革に期待していた経済界の中からも、小泉改革は余りにも遅過ぎる、スピードが遅いという指摘もあります。どちらが正しいのでしょうか。

 私ごとで恐縮ですけれども、私は、一九九六年一月に厚生大臣に就任し、十一月に小泉厚生大臣に引き継ぐまで、十カ月間務めました。その十カ月の間に、薬害エイズの和解、そして、O157をめぐる法定伝染病法の改正、豊島の産業廃棄物の問題の取り組み、さらには介護保険制度の最後の取りまとめなど、多くの改革を推進したと自負をいたしております。

 小泉総理の在任期間は既に二年半、三十カ月でありまして、私の厚生大臣の三倍の期間を在任されております。これで、まだ芽が出たという段階なんでしょうか。これからさらに三年、小泉政権が続くとして、この芽がせめて大きな木になるとでも言うのでしょうか。とてもそうではありません。小さな葉っぱが出るのが精いっぱいじゃないですか。こんなスピードで、日本が沈没することを防ぐことはできません。一日も早く退陣をお願いいたします。(拍手)

 それでは、なぜ、小泉総理にできないスピーディーな改革が、民主党が政権をとれば、私が政権をとれば実行できるのか、そのことを国民の皆さんに説明させていただきたい。ぜひとも、しっかりこのところをお聞きいただきたいと思います。

 その理由は、政権をつくる原理そのものが根本的に違うからです。端的に言えば、脱官僚政権を私たちはつくるからです。

 これまでの政権は、例えば、大臣は自分の役所の利益代表として発言することが役割だ、与党の政策決定の場も官僚と手を組んだ族議員が支配しているのが実態でありました。ですから、官僚が嫌がる政策はほとんど日の目を見ません。そして、官僚は戦前の職業軍人と同じく一人一人は優秀でありますけれども、組織としては方針が根本的に間違っています。つまりは、国の利益や国民の利益よりも自分たちの役所の利益を優先する。この官僚政治を打ち壊さない限り日本の改革が進まないことは、ここにおられる皆さんは大なり小なり感じておられるわけです。

 その官僚政治の象徴が、閣議にかける案件を決める事務次官会議であり、さらには、総理のそばに仕える総理秘書官の五人のうち何と四人までもが役所からの出向者で占められているというこの現状です。

 官房副長官の事務が古川さんからかわりましたが、総理はだれを選ばれたのですか。結局、霞が関の不文律、旧内務省の事務次官経験者にするというその慣例を踏襲された。つまりは、官僚政治をそのまま認めてきたわけじゃないですか。

 もし民主党が政権をとったときには、まず、事務次官会議は廃止します。そして、総理大臣の秘書官には、政治的な任用で選び、間違っても、お役所からのスパイを兼ねた出向を秘書官にすることはいたしません。そして、与党と内閣の意思決定を一本化するために、与党幹事長、民主党の場合は岡田幹事長ですけれども、内閣に入閣してもらって、閣議で党の方針も一本化して決める。さらには、総理大臣のそばには五人の総理大臣補佐官、さらには秘書官をしっかり固めて、内閣全体の指導ができる体制をつくります。

 このようにすれば、選挙前に国民の皆さんに約束したマニフェスト、政権公約を、選挙後、政権をとったときに改めて議論する必要はありません。直ちに閣議で決定し、直ちに実行を始めることが可能になります。(拍手)

 ところで、小泉総理、総裁選の折に、経済のイロハのイの字も知らないと言われたといって激怒されたとお聞きをいたしております。先日の所信表明演説を聞いていて、総理は経済のイロハのイの字も知らないばかりでなく、世の中の実情も知らないのではないか、こんなふうに感じました。(拍手)

 小泉総理は、これまで、サラリーマンをされたことがありますか。あるいは、自分で事業を営んだことがありますか。私は、サラリーマンの息子で、サラリーマン経験を四年間いたしました。その後、小さな特許事務所を経営して、従業員にボーナスを払うために銀行からお金を借りた経験もあります。

 サラリーマンにとってリストラがどれだけ厳しいものか、中小企業経営者にとって融資を断られることがどれだけ厳しいことか、今の自殺者の激増がそのことを物語っているじゃありませんか。

 総理が痛みに耐えてという言葉を吐かれるときに、本当にこの人は痛みがわかっているのかな、こう思うのは私だけではないと思います。(拍手)

 今、日本の経済がここまで落ち込んだ最大の理由は、国民の皆さんが払われた税金を官僚や族議員が自分たちの都合で使って、本当に国民のために使ってこなかった、そのツケがあらわれたのです。

 民主党が政権を握ったときには、雇用と景気を重視した、そうした財政運営を行います。

 まず、財政規模については、名目二%程度の景気回復が定着するまでは規模を小さくすることはできません。しかし、その中身については大幅に変えていかなければなりません。これまでのような、投資効果もない、一部の人たちにのみ利益を上げるような予算は全部組み替えます。

 例えば川辺川ダム、二千億円余りの予算で工事が予定されておりますが、こうした自然を破壊するむだな公共事業は即座に中止します。そのかわりに、川辺川の上流の五木村に広がる三万五千ヘクタールの山々を、例えば毎年二十億円の費用で山に入って山を保全する。

 全国の山、先日も長野県の黒姫山にC・W・ニコルさんと行ってまいりましたけれども、本当に山が荒れております。そうした自然回復のために、森林レンジャーを活用していく。安定した雇用にもつながり、そして、自然回復にもつながる。こうした財政運営を行ってまいりたいと思います。

 それに加えて、最も大きなむだ遣いを生んでいるのは、国がひもつきで地方自治体に補助金を配賦していることです。

 私たちは、改革派の知事の意見を受け入れて、原則的にそうしたひもつき補助金はすべて廃止し、自治体がみずからの判断で使える、そうした財源に振りかえていきます。そうすれば、改革派の自治体は、雇用につながるように、あるいは国民生活につながるように、老人福祉施設を拡大し、あるいは保育園を拡大して、女性が介護や育児で仕事を追われることがないような、そうした施策もきめ細かく実行されるものと確信をいたしているわけであります。(拍手)

 そこで、総理、総理は、四兆円の補助金を削減した上で地方に移すと言われております。削減が目的なんですか。一体具体的にはどうされるというのか、明確に、具体的にお示しをいただきたい。

 総理はマニフェストに郵政事業を盛り込む意向と聞いております。

 そこで、麻生総務大臣に、あなたは総理の言う郵政事業民営化に賛成なのか反対なのか、疑問をお持ちなのかどうなのか、はっきりとお答えください。

 私は、小泉総理の言う民営化によって郵便貯金と簡易保険がどうなるのか、まだ一度も聞いたことがありません。この郵貯、簡保からすべて引き揚げて民間に任せるという形での民営化なんですか。それとも、二百四十兆の郵貯、百十兆の簡保を大きな民間の銀行や生命保険会社とすることによって民営化しようとするのですか。一体、東に行くのか西に行くのか、はっきりも言わないで、ただ民営化だけを言っていても、これでは公約にはなりません。はっきりとお答えください。(拍手)

 私は、今、郵貯、簡保の三百五十兆円を中小企業に向けた融資に振り向ける方法を、そうした改革案を検討いたしております。

 信組、信金という地域の金融機関は、貸し出しの経験はありますけれども、残念ながら、お金を集める力は弱い。こういう地域の銀行に商工中金や中小企業金融公庫を介して郵便貯金のその膨大なお金が流れる仕組みをつくれば、中小企業に対する大きな支援になると考えるからです。

 郵政事業の最終的な経営形態は、この三百五十兆円という巨額の資金をどのように扱うかということの結論が出た上でなければ判断できないというのが当然のことではないでしょうか。(拍手)

 道路公団についても、まず私の考え方を申し上げて、質問をいたします。

 私は、大都市、首都高や阪神高を除く全国の高速道路を三年以内に無料化することを提案しております。そして、十四キロに一カ所の出入り口を三キロ程度に一カ所、増大させることを提案いたしております。その場合に、日本道路公団と本四公団については廃止をして、その債務は国が肩がわりする。そして、その債務は、現在約九兆円に上る道路財源の中から二兆円弱を振り向けて償還に充てます。そうすれば、残りの七兆円余りの金を一般道やさらなる高速道の建設に充てることができます。

 こうすれば、地域の生活に高速道路が活用でき、そして流通のコストが下がり、旅行などのコストも大幅に低下し、地域経済に大きな活力を生み出すものと私は確信をいたしております。(拍手)

 自由民主党の中でも、夜間だけの無料化とか料金の引き下げといったことが出てきておりますけれども、しかし、料金を取る限りは、出入り口を増大させることは大変困難が伴うことは御理解できると思います。

 総理の言う民営化は、永久に有料化する、会社が存続するためには未来永劫有料化することを意味しますが、総理、それでいいんですね。このことを明確にしていただきたいと思います。

 さて、イラクと北朝鮮についてお伺いをします。

 近く、アメリカのブッシュ大統領が来日され、自衛隊のイラクへの派遣、さらには費用負担を強く要請されるのではないかと言われております。その場合に、総理はいかに対応されるつもりか。イラクに自衛隊を送るとすれば、いつ、どの地域に、どの規模で送るのか、どうした財政支援を行うのか、この場ではっきりとお答えください。

 私は、今回のイラクの戦争は根本的に間違っていたと思います。しかし、攻撃を加えてフセイン政権を倒してしまった以上は、アメリカ、イギリスが責任を持って治安を回復し、そして、国連の支援を受けてイラク人による政府を一日も早く立ち上げることが必要です。

 私たちは、そうしたイラク人の政府や国連からの要請があった場合には、PKOあるいはPKFといった活動にも参加を検討すべきだと考えております。また、人道的な援助、復興援助に資金の援助もすべきだと考えております。しかし、今の、一方的に攻撃をし占領した米英軍に後から参加する形での、イラク特措法に基づく自衛隊のイラク派遣には絶対に反対であります。総理の見解を伺います。(拍手)

 北朝鮮についてお伺いをします。

 昨年、総理の訪朝で拉致被害者の皆さんが帰国されたことは率直に評価をし、私たちも喜びたいと思います。これからも拉致被害者、その家族の全員の帰国を私たち民主党も全力を挙げて支援していくことを、この場所でお約束をいたします。

 そこで、お聞きをいたします。

 拉致被害者の家族の帰国の見通しについて、総理の見解はいかがでしょうか。また、北朝鮮の核兵器開発をいかにすれば断念させることができるのか。六者会談は開かれておりますけれども、まだ不透明であります。日本としてやるべきことは何か、改めて総理の見解を伺います。

 最後に、政治改革についてお尋ねをいたします。

 民主党は、まず政治資金については、より透明化を高めるべきだと基本的にその政策を提案しておりますが、与党は、さきの国会で不透明化法案を出されました。総理はこの不透明化法案に今でも賛成されているのでしょうか。

 また、民間企業がリストラされ、地方議会が定数を削減する中で、私たち国会は衆議院の小選挙区をより強めるその意味も含めて比例代表定数を八十削減すべきだ、このことを我が党マニフェストに盛り込む予定にいたしております。総理の見解を伺います。

 さらには、定数の二倍以内の格差、さらには選挙年齢の十八歳への引き下げ、これらについても総理の見解を伺っておきたいと思います。

 総理、いよいよこの国会が経過をする中で解散をされる意向だと聞いておりますが、ぜひとも国民の前で、あと三年間、一体何をやってどういう成果を期待しているのか、さらには、これまでの二年間、なぜ何一つとして改革が進まなかったのか、そのことをわかりやすく国民に説明してこそマニフェスト論争になると思いますけれども、いかがでしょうか。

 どうか、真正面からお答えをいただき、総理の答弁が不十分な場合には、私の持ち時間の範囲内でさらに質問させていただくことをこの場で申し添えて、私からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 菅議員にお答えいたします。

 まず、総裁再選に対する祝意をいただきまして、ありがとうございます。

 郵政事業と道路公団の民営化が実現できるかというお尋ねでございます。

 私は、郵政事業の民営化というのは、これからの官業の構造改革の本丸だと位置づけてまいりました。今回、私の総裁選挙の公約にも、郵政三事業民営化を、具体的に年限を明示して、十九年に民営化するという公約を盛り込んでおります。

 党内には、もちろん、今まで反対がおりました。しかし、それをあえて総裁選の公約に掲げてやってきたわけであります。これを実現するというのが、自民党が真に改革推進政党になったかどうかの一つの試金石だと思っております。必ず党の公約にします。今は反対でも、これは今後、民主党ともいい争点になると思います。

 私が二年数カ月前、四月に総裁選のときは、郵政公社後、民営化の議論は一切行わない、そういう党大会の決議がなされました。なおかつ、国家公務員だ、民営化はしない、そういう枠がはめられたにもかかわらず、私は、総裁就任後、一貫して、なぜ郵貯も簡保も郵便も、民間人が現在やっている事業を国家公務員がやる必要はあるのかと。二十八万以上の国家公務員が民間と同じような仕事をしている。自衛隊だって、現在二十三万五千人ぐらいしかいない。そういうことから、私は、これは、民間にできることは民間にということで、民営化できるという主張を掲げてまいりました。

 郵政公社が、十九年三月で一定の期間が参ります。今、私は、その期間、来年までには、どういう民営化の形態がいいかということを経済財政諮問会議で議論して、そして再来年の国会には、具体的な民営化法案を提出いたします。

 私は、民主党はよく官の構造改革が必要だと言いますけれども、今まで、自民党も民主党も、一度たりとも郵政民営化の方針を出すことができなかったじゃありませんか。民営化の方針を出しただけで中身がない、菅さんは今言ったけれども、中身がないのはどっちだろうかと言いたい。

 しかも、自由民主党は、国家公務員とか地方公務員の役人集団の既得権を守る政党ではありません。公務員の集団の選挙の票も当てにしておりません、自由民主党は。(拍手)

 もしも民主党が本当に官僚の改革をするんだったらば、郵政事業に従事している人は、なぜ国家公務員でなきゃいけないんですか。なぜ民営化はしてはいけないんですか。それすらも言えないで、小泉内閣になってから初めて民営化を出すと、公社になると不十分だ、民営化しろ。民営化を言いますと、今度は、民営化には問題がある。いつも反対ばかりしているのが民主党じゃありませんか。

 批判のための批判です。真に官僚機構の構造改革をするんだったらば、民間にできる郵政三事業を民営化すべしと言ったらどうなのか。こんなことまで言えないで、何で官僚の既得権を破棄できるのか。私は、そういうことから考えて、郵政民営化に反対する民主党が官の構造改革なんかできるとは思えない。(拍手)

 自由民主党は、議論はします。議論はしますけれども、常識豊かな政党であります。これから、自民党は変わったというのを見せます。変わったのは、若い安倍幹事長になっただけじゃない。政策の面においても官僚に頼らない。民間にできることを役所の役人がやっていいとも思わない。

 私は、郵便局をなくせとは言っていないんです。国鉄がJR民営化になって、鉄道がなくなったわけじゃない。電電公社がNTTになって、電話がなくなったわけじゃないんです。郵便局の仕事を国家公務員じゃなくて民間人に任せれば、いろいろな仕事が展開できる。

 あの一等地にある郵便局の官舎、利用価値はたくさんあります。今、国家の財産が眠っている。いろいろな事業が展開できるはずだ。地域の再開発にも役立つはずだ。私は、民営化によって、今まで眠っていた資源が目を覚まし、やる気のない人がやる気を出して働いてくれるような、そういう郵政事業の活性化に向けた民営化をしていきたいと思っております。

 まず、今まで民営化の議論さえいけないということが、これほどはっきりと内閣の公約に挙げて自民党の政権の公約になる。こういうことは野党の民主党にはできないでしょう。今後、党内の今までは反対していた人たちも、必ずや、来るべき総選挙におきましては党の公約として良識ある活動をして、自民党は内閣と一体となって改革政党としての役割を果たしていかなきゃならないと思っております。

 構造改革のスピードについてのお尋ねがありました。

 私は、今、あらゆる分野において改革を進めております。郵政民営化とか道路公団民営化だけじゃありません。不良債権の処理あるいは税制改革、構造改革特区の導入、特殊法人への一兆円を超える歳出の削減など、従来では考えられなかった改革が確実に進んでおります。今後、芽が出てきたこの改革を大きな木に育てることができるよう、さらに全力を挙げて改革を推進してまいります。

 改革のスピードが遅いとの批判は当たらないと思います。

 内閣が官僚主導ではないかということではございますが、私は、閣僚には、辞令交付時に重要な課題及び対処の方針について明確に指示を与えています。会見前に役所から受ける説明を会見の場でどう活用するかは、各自に任せております。

 事務次官会議は、内閣の意思決定を行うに当たって、事務的な面で最終確認を行うとともに、内閣の方針を迅速に行政各部に徹底する機能を果たしており、今後とも、その適切な運営に努めてまいります。

 また、事務副長官については、行政実務に精通し、各省庁を調整する能力にすぐれた人物を適材適所で登用しております。

 また、道路関係四公団の高速道路を永久に有料とするかとのお尋ねであります。

 現行の高速道路制度は、建設資金を借入金で賄い、完成後、利用者からの料金収入でその借入金を返済し、借入金の債務償還後は無料開放するものです。このため、道路公団改革に当たっての閣議決定においては、「現行料金を前提とする償還期間は、五十年を上限としてコスト引下げ効果などを反映させ、その短縮を目指す。」としたところであります。

 道路関係四公団の民営化後の高速道路の料金については、この閣議決定の趣旨も踏まえつつ、今後十分検討すべきものと考えており、現時点では、民営化後の高速道路について、永久に有料とすると決定しているものではありません。

 政府案と民主党案との比較についてのお尋ねです。

 今後の高速道路の建設に当たっては、債務を先送りせず確実に返済しつつ、必要な道路をできるだけ少ない国民の負担でつくることが重要であります。

 民主党案は、必ずしも全体像が明らかではありませんが、大都市以外の高速道路を無料化し道路特定財源を一般財源化するとの提案は、借入金債務の返済あるいは道路の維持管理、必要な道路の建設を行うために要する財源として、収支のつじつまが合わないと思います。債務の返済を一律に税金で行う上、大都市の高速道路の利用者はさらに料金を負担しなければならないことは不公平だと思います。

 いろいろ問題があるものと考えますが、いずれにしても、具体的な中身を明らかにしていただければ、また今後議論をしたいと思います。

 政府としては、今後、道路関係四公団民営化推進委員会の意見を基本的に尊重するとの方針のもと、国民にとって真にメリットのある改革となるよう、建設コストの大幅削減、ファミリー企業の見直し等を引き続き推進するとともに、債務の確実な返済及び必要な道路の建設が可能となる政府案を取りまとめてまいりたいと考えております。

 痛みの意味を理解しているかとのお尋ねがありました。

 私は、就任以来、二、三年の低成長を覚悟して、今の痛みに耐えて明日をよくしようと国民の皆さんに呼びかけて、改革を進めてまいりました。

 民間主導の持続的な経済成長が実現するように、新しい雇用や新規産業の創出を促進し、規制改革を進め、また、不良債権の処理など金融改革や税制、歳出の改革を進めてまいりました。

 改革を進める過程では、社会の中に痛みを伴う事態が生じることがありますが、痛みを和らげ、不安を解消するために、雇用や中小企業のセーフティーネット対策に万全を期してまいりました。

 私にはサラリーマンや中小企業の経験はありませんが、国民の痛みには常に注意を払い、これを最小限に抑えるためのセーフティーネットを十分に整備しながら、多くの国民の努力によってようやく改革の芽が出てきた今こそ、民間の活力と地方のやる気を引き出して、改革を進めてまいりたいと考えます。

 今後の経済財政運営についてでございます。

 我が国の財政状況は、主要先進国中最悪の状況となっておりまして、将来の世代に責任の持てる、持続可能な財政構造の構築が急務となっております。

 このため、政府としては、二〇一〇年代初頭におけるプライマリーバランス黒字化を目指すこととしており、この目標の実現に向けて、徹底した歳出改革を行うとともに、あわせて、金融、税制、規制の構造改革を進め、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図ることとしております。

 こうした取り組みの進捗状況については、毎年度、「改革と展望」において評価を行い、将来の展望を示すこととしており、無責任な経済運営との指摘は当たらないものと考えております。

 イラクに対する復興支援とブッシュ大統領の日本立ち寄りについてのお尋ねでございます。

 イラク復興支援は、国際社会の重要課題であり、国際協調のもと、我が国にふさわしい貢献を行ってまいります。ブッシュ大統領が我が国に立ち寄られる際には、こうした考え方に基づき意見交換を行っていきたいと思います。

 北朝鮮の拉致、核問題についてでございます。

 拉致問題については、現在、被害者御家族の帰国の具体的見通しは立っていませんが、その早期実現を含めた問題解決のため、国際社会の理解と協力を待ちつつ、北朝鮮側に対し、前向きかつ具体的な対応を引き続き強く求めていく考えであります。

 核問題については、米国、韓国等の関係国と緊密に協力しつつ、六者会合を通じた取り組みを初めとして、さまざまな場で北朝鮮に国際社会の一員としての責任ある対応を働きかけ、問題の平和的・外交的解決を図っていく考えであります。

 政治資金についてでございます。

 政治資金の透明性を確保しながら、広く、薄く、公正に政治資金を確保することが認められるルールをつくっていくべきであると考えております。

 また、衆議院議員の定数の問題につきましては、議会政治の根幹にかかわる問題であり、今後、国会において十分な議論をいただくべきものと考えます。

 地方分権については、政府としては、真の地方分権の確立につながるよう、地方の意見も把握しつつ、補助金改革だけでなく、交付税の改革、地方への税源移譲を行う三位一体の改革を進めることとしており、これにより、地方がみずからの支出をみずからの権限、責任、財源で賄う割合が増すこととなると考えております。

 そのうち、補助金改革につきましては、基本方針二〇〇三において、社会保障、教育・文化、公共事業、産業振興その他の各行政分野にわたる改革工程を決定しており、今後、その改革の方向性、スケジュールに沿って廃止・縮減等の具体化を確実に進めていく考えであります。

 その際、補助金の性格等はさまざまであることから、個別に事務事業の徹底的な見直しを行いつつ補助金の改革を進めていくことが重要と考えており、御提案のように、補助金の大半を一律に一括交付金化するということは、少々無理があるのではないかと思っております。

 また、予算、とりわけ公共事業の見直しについてお話がございましたが、むだなものはやめ、必要なものに重点化していくということについては、私も同感であります。

 また、公共事業については、川辺川ダムについて触れられましたが、地元の方々などの意見もよく聞くことが重要と考えております。川辺川ダムについては、球磨川流域の治水対策上の観点から、地元自治体からも必要な事業と聞いており、引き続き、環境保全に十分配慮しつつ、事業推進のための努力を続けていくべきものと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 郵政事業の民営化の件につきましては、当然のこととして、小泉内閣の基本方針に沿って取り組んでまいります。

 郵政事業の民営化という問題は、国民生活に大変深いかかわりのある問題でありまして、さきに行われました総理の郵政事業の民営化にかかわる懇談会において案が示されておりますああいった論議も踏まえ、かつ、総理の所信表明の中にも示されておりましたが、幅広く国民的論議を行う等々の話がありますが、基本的に考えておかねばならぬ点は三つあると思っております。

 一つは、これを利用しておられる方々が、それを民営化された結果、どのようなメリットがあるのか。また、そういったところをよく踏まえなければわからぬという話を、今、懇談会でしておられるわけでありますので、その点も十分に考えておかねばいかぬのは当然のことだと思っております。

 二つ目は、そこに勤めておられる従業員の方々が約二十八万人、家族を含めて百万弱と思われますが、そういった方々の生活の安定という点は、二つ目に考えておかねばならないのは当然のことだと思っております。

 そして三つ目が、国全体としてこういったような観点全体で考えていかねばならぬことだと思いますので、私どもとしては、こういったことを十分に考えた上で民営化が取りまとめられますように積極的に取り組んでまいります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 菅直人君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。菅直人君。

    〔菅直人君登壇〕

菅直人君 国民の皆さんは、今の小泉総理の答弁を聞かれて、どんなふうに思われたでしょうか。持論の郵政民営化の場合は、手を振り、声を上げ、いろいろと脱線ぎみの発言もありましたけれども、それ以外の答弁は、目を下に伏せて、私が必ずしも質問した項目にないところまでちゃんと読み上げられました。これがまさに官僚主導政治の実態である、このことを国民の皆さんにぜひ御理解いただきたいと思います。(拍手)

 そして、小泉総理は、その得意分野、郵政事業について、私が明確に質問したことを一切答えられておりません。つまりは、小泉総理の言う民営化を行ったときに、郵便貯金がどうなるんですか、簡易保険がどうなるんですか。

 総理は、具体策は懇談会でと言われました。十一年前の郵政大臣はどなたですか。小泉郵政大臣じゃなかったのですか。十年以上前から郵政事業民営化、民営化と、そのことだけを言ってきた総理大臣が、いまだに郵貯、簡保をどうするかということを一つも示すことができなくて、これが何の民営化の公約でしょうか。(拍手)

 そして、マニフェストに盛り込むに当たって与党の皆さんからの賛成が得られるはずだと述べられました。そのときは、余り与党席からは拍手がありませんでした。しかし、青木参議院幹事長が、参議院で法案が来ても通さないと言われている。そんなに甘いものですかね、総理。

 つまりは、口先だけでごまかしてしまって、選挙で勝ちさえすればいいという、そういう公約だとすれば、マニフェストに盛り込むには値しない。しっかりと与党の衆議院候補者すべてがサインをした、そして、参議院も認めた公約でなければマニフェストにはならないということを、改めてこの場で申し上げておきます。どうすればそのことを実行できるのか、改めて総理にお尋ねをいたします。

 財政の運用について、地方自治体への補助金についてお尋ねをしましたが、これも明確な答弁をいただいておりません。

 平成十八年に四兆円の補助金を削減して、そして地方へということを所信表明でも言われましたが、四兆円すべて削減したら、地方へは一円も行かないことになります。そういうこともあり得るということなのかどうなのか、具体的に答弁をいただきたい。

 加えて、最も重要なことについての答弁がありませんでした。

 ブッシュ大統領と小泉総理は、まさに盟友ではないんですか。そのブッシュ大統領が日本に来られたときに、イラクに対する自衛隊派遣の要請があることはほぼ間違いないでしょう。それについて一切の答弁がないというのは一体どういうことなんですか。結局は、国民に説明ができないために逃げてしまっている。例の、フセインが見つからないから大量破壊兵器が見つからないのも仕方ないんだという、その詭弁すら聞かれなかったのは残念でなりません。はっきりと、イラクに対する自衛隊の派遣をどうするのか、いつ、どの時期にやるのか、やらないのか、財政支援についてどうするのか、明確な答弁をいただきます。

 それに加えて、もう一点申し上げます。

 総理は、我が党に対して、道路公団の改革案がないと言われました。耳をあけて聞いておられたのでしょうか。九兆円の現在の道路財源の中から二兆円弱を振り向けてもあと七兆円で、まだ道路の財源はあるわけでありまして、建設は可能であります。総理こそ、民営化したときの有料化について、有料化が永久に続くのではないかと言ったことについて、それは株式会社であるからそのときの社長が決めることだと私に予算委員会では答えられました。こんなばかな答弁がありますか。

 今の答弁も、民営化すれば会社です、会社が利益が上がらなくては成り立ちません、その民営化した道路公団株式会社が料金を無料にするという選択が本当にあると思って答弁しているんですか。それならそのことを明確にしてください。

 逃げの答弁で、自分に都合の悪い永久有料化は逃げて、そして逆に、我が党の提案をまともに聞かないで、そして批判だけをしているのは、まさに批判政党自民党になったのではないですか。

 総理に対して、もう一度、メモに目を向けないで国民に対してしっかりとこれらの問題についてお答えいただくように申し上げて、私の再質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今まで全部答弁したつもりなんですが、再質問されましたので、さらに補完いたします。

 郵貯、簡保の質問でございますが、私はもう既に答弁しているつもりなんです。

 まず、民営化の方針を出すことが大事だと。民営化させないと、みんな言っていたんじゃないですか。だから、来年の秋ごろまでに案をまとめると。

 これは先送りでも何でもない。独断専行を排す。民営化にはさまざまな議論があります。国民各界各層、そして政党の方々も、それぞれ意見を持っています。議員も意見があるんです。それを一年間かけていい案にまとめていこうというのですから、もうこれでしっかりした答弁じゃないですか。(拍手)

 私があれこれ専門家のような細かいことまで今決めることはしない方がいい。専門家の意見を聞いて、できるだけいい民営化案を決める。そのためには、一カ月や二カ月ではできません。来年の秋ごろまでにいい案をまとめていきたいと思います。現に、批判されている菅さんこそ、具体的な議論というものを提示していないじゃないですか。

 それと、補助金についてでございます。

 これも、年末の予算編成で具体的な額と項目が決まるんです。方針を出すのが大事なんですよ。三年間で約四兆円補助金を削減する、こういう方針のもとに、それでは予算編成のときに、幾らの額になるか、どういう項目を地方に譲るか、税源は何にするか。これは年末に、予算編成のときにははっきりします。これも、先送りでも何でもない。今まで方針を出せなかったことを、総理として方針をはっきり出したということであります。

 ブッシュ大統領が訪問されるときのイラク、自衛隊に関する御質問です。

 私は、ブッシュ大統領との会談では、世界の中の日米同盟、この重要性が増している、北朝鮮の問題、イラクの問題、テロ対策の問題、いろいろ意見交換する問題はあると思いますが、イラクの復興支援についての自衛隊の派遣につきましては、現在派遣中の調査団の調査結果を踏まえ、法律の規定するところにのっとって日本が主体的に判断すべき、決定すべき問題だと思います。

 また、道路公団につきましても、私は、既にはっきりと公約にしております。民営化という方向を出して、あの民営化推進委員会の基本的な意見を尊重してこれから年内にまとめて、来年の通常国会に法案を提出する。これだけはっきり方向を出している。

 総理大臣というのは、こうはっきり方針を出して、これに従っていい意見を集約して、いい知恵を出して具体化していくのが私は正しいやり方だと思っております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 安倍晋三君。

    〔安倍晋三君登壇〕

安倍晋三君 私は、自由民主党を代表し、小泉総理の所信表明に対する質問をいたします。(拍手)

 その前に、まず、九月二十六日の十勝沖地震により被害を受けた方々、負傷された方々に心からお見舞いを申し上げます。自由民主党としても、政府と協力し、対策に万全を期すことをお約束いたします。

 私は、このたび、自由民主党の幹事長という身に余る重責を担うこととなりました。小泉総理に対して、自民党を変えると言ったにもかかわらず自民党は何も変わっていないではないかといった論調もありました。しかし、当選三回の私が幹事長職に当たる、この一点をとってみても、明らかに自由民主党は大きく変わったのであります。(拍手)

 スピード感あふれる、オープンな、新しい自由民主党をつくっていきたいと思います。新しい党執行部をつくり、新しい内閣を発足させた小泉総理に、政権運営の方針と理念をお伺いしたいと思います。

 小泉総理の改革は何も進んでいない、そういった批判を耳にします。しかし、私は、総理のもとで二年半にわたり官房副長官としてお仕えし、改革がすさまじいスピードで進んでいることを実感しました。

 例えば、特殊法人改革は、これまでに、対象となる百六十三法人のうち百二十七法人の廃止、民営化、独立行政法人化などの措置がとられ、特殊法人などに対する財政支出も一兆四千億円削減されております。一兆円カットの目標を立てて実施を表明した際には、とても無理だと言われておりましたが、それを四千億円も上回る削減を実現したことは、まさに驚きであります。

 野党の言う、一見聞こえのいい改革とは異なり、我々の改革は現実に進み、実績をつくっています。力強い、誇りの持てる日本をつくるための総理の改革への御決意をお伺いいたします。(拍手)

 総理に対しては、景気回復やデフレ克服に興味がないのではないかといった批判もあります。しかし、平成十五年度の名目成長率は、政府の当初見通しであるマイナス〇・二%がプラス〇・一%へと上方修正され、三年ぶりのプラス成長となります。このままいけば、名目プラス成長が政府の見通しよりも一年早く実現することになります。明るい兆しがはっきりとあらわれ始めています。

 また、一・八兆円の減税先行措置は、八割の方々が評価するとした調査結果もあり、景気回復への効果は極めて大きなものがあります。我々は、改革を進めながら、景気を回復し、デフレを克服しつつあります。

 総理は、実はこのようにしっかりと、本格的な景気回復、デフレ克服のための施策を講じています。そのことをもっと強調していただきたいと思います。

 政府は、構造改革の推進により、ことしと来年の集中調整期間終了後は、二〇〇六年に名目二%成長、その後は毎年二・五%程度の名目成長が持続し、二〇一〇年代前半にプライマリーバランスを黒字化する目標を掲げております。改革によってこの目標を達成し、景気を回復し、デフレを克服する道筋について、国民にわかりやすく御説明していただきたいと思います。

 総理には、若者や障害者、中小企業等の弱者に対して冷たい印象があるとも言われております。しかし、これも全く違います。

 未来の日本を担う、最も希望と夢にあふれていなければならない若者の失業率が増加しております。この状況を何とかしたいと、小泉総理のもとで若者自立・挑戦プランが策定され、官民一体の総合的な取り組み体制がとられました。

 また、不況下で最もしわ寄せを受ける可能性があるのは障害者の方々です。こうした方々の不安を払拭するため、平成十四年度からは、障害者の雇用促進のためのさまざまな施策も取り入れられております。

 中小企業についても、取引先企業や金融機関の破綻などに直面した中小企業へのセーフティーネット保証・貸付制度の利用実績は、三十八万件、七兆七千億円に上っています。また、貸し渋り・貸し剥がしホットラインの創設等、あらゆる対策が講じられてきております。

 今後、改革をさらに加速していくに当たり、セーフティーネット措置の一層の充実についてどのように考えておられるのか、総理にお伺いいたします。困難な状況の中でまじめに頑張っている、しかし改革の痛みにさらされている方々に対して夢や希望を与える、それも総理の使命だと思います。本会議場から、総理のお言葉で直接語りかけていただきたいと思います。

 次に、外交についてお尋ねいたします。

 北朝鮮による拉致問題は、残念ながら、解決に至っておりません。大切なことは、目の前で引き裂かれている家族を一つにすることであります。北朝鮮に残された八人の皆さんを一日も早く家族のもとに戻すことが政府の責任だと思います。また、死亡、不明とされた十名の方々についても、私たちが納得できる形で確認しなければなりません。一人の日本人の命もおろそかにすべきではない、そう考えますが、総理の拉致問題解決への決意をお伺いいたします。

 さらに、核開発問題、ミサイル問題等を解決し、日朝平壌宣言を北朝鮮に誠実に履行させなければ、国交正常化を実現することはできません。総理のお考えをお聞かせください。

 この国会の最大の焦点がテロ対策特別措置法の延長にあることは、申し上げるまでもありません。

 我が国は、昨年一月、約八十の国や国際機関参加のもとに、アフガニスタン復興支援東京会議を主催し、復興支援の枠組みづくりにイニシアチブを発揮しました。国際社会が、文化や宗教の違い、国境を越えて、非人道的なテロリストからの挑戦に力を合わせて立ち向かい、アフガニスタンの復旧復興に協力するプロセスに道筋をつけたのであります。

 テロ対策特別措置法の延長に反対する人は、なぜ、アフガニスタンでタリバン支配が進み、ウサマ・ビンラディン率いるアルカイーダがばっこするに至ったのか、そして、三千人を超える犠牲者を生む悲劇となった米国同時多発テロにつながったのか、思い起こすべきです。西側諸国がアフガニスタンへの関心を失った結果、内戦の混乱が続いてあのような悲劇、悲惨な状況に立ち至ったことを忘れるべきではありません。

 今後、どのような姿勢で復興支援に臨むのか、総理の支援継続に対する決意をお伺いいたします。

 また、我が国自衛隊の補給艦部隊は、遠く日本を離れ、きょうもインド洋で極めて重要な任務についております。各国がさまざまなやり方でテロ組織撲滅のための行動を行っているさなかに日本だけが撤退するような事態は、国際社会の批判をまつまでもなく、日本国民自身が許さないと信じます。

 テロ対策特別措置法の延長に対する総理の御決意についてお伺いいたします。

 さきの通常国会でイラク人道復興支援特別措置法が成立し、イラクへの自衛隊派遣の是非が論じられております。イラクへの自衛隊派遣は戦争への協力ではなく戦後の復興支援活動のためであること、イラク支援を国連加盟国に要請する国連安保理決議第一四八三号は全会一致で採択されたものであることを国民によく説明し、理解を求めることは、国際社会の一員としての義務であると考えます。

 総理のイラクに対する人道復興支援のお考えをお伺いいたします。

 私の郷土の先輩である吉田松陰先生は、「天下の大患はその大患たるを知らざるにあり。いやしくも大患の大患たるを知らば、いずくんぞこれが計をなさざるを得ん。」と語られました。一番の問題は何が問題であるかを知らないことにあるという指摘であります。

 幸い、私たちは、どこに問題があるかを知っています。必要なのは、決断と実行の勇気のみであります。総理の改革に対し、自由民主党は、公明党、保守新党と一致協力し、全面的に支持していく決意を表明し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 安倍幹事長の質問に答える前に、菅氏に対する再答弁をいたします。

 イラク復興の費用負担について触れていないということでございますが、国際社会の責任ある一員として、イラク復興支援の費用負担については、国際社会と協調して今後決定していきたいと思います。

 安倍幹事長の質問に対して答弁いたします。

 構造改革への決意についてのお尋ねでございます。

 私は、就任以来、構造改革なくして日本の再生と発展はないという信念のもとに、もろもろの改革を進めてまいりました。確かに、多くの痛みに耐えて、歯を食いしばって我慢されておられる方もたくさんおられます。しかしながら、こういう多くの国民の努力によって、最近、ようやく明るい兆しも見えてまいりました。

 倒産件数、まだまだ多い中でありますが、過去、前年、十二カ月連続して倒産件数は減ってきております。就業者数も増加しております。企業収益も増加して、設備投資も民間は増加し始めました。私は、ようやく改革の芽が出てきたころだな、もうそろそろ悲観論は脱して、明るい未来に向かってこの芽を大きな木に育てていくことが重要だと思います。

 そのかぎは、やはり、民間にできることは民間に、地方にできることは地方に、総論賛成、各論反対をなくして、各論におきましてもこの方針を進めていくことが今後の日本にとって必要だと思います。多くの国民の理解と協力を得ながら、構造改革路線を邁進していきたいと思います。

 構造改革の推進と財政の健全化、経済再生の道筋についてでございます。

 私は、民間の活力と地方のやる気を引き出して、デフレの克服と経済の活性化を実現し、これから責任が持てる財政を確立することが小泉内閣の重要な使命だと言っておりますが、既に、今申し上げましたように、明るい兆しも出ております。名目成長率あるいは実質成長率も、政府の見通しよりも上になってきております。

 こういう成果があらわれておりますので、今後とも、日本銀行と一体となってデフレ克服を目指しながら、金融、税制、規制、歳出の構造改革を進め、創造的な企業活動を促進することなどを通じて新規需要や雇用を創出し、地域経済を活性化させる。同時に、二〇一〇年代初頭のプライマリーバランス黒字化を目指した財政構造改革を進めることなどにより国民の不安を除去して、消費、投資を活性化させる。これらにより、目標の実現に向けて、私は、民間需要主導の力強い持続的な経済成長を図ってまいりたいと思います。

 セーフティーネット措置の充実についてでございます。

 雇用・中小企業政策を充実する、これは大変大事なことでございます。小泉内閣におきましても、基本方針に掲げているところであります。

 これまでも、御指摘があったように、若者自立・挑戦プラン、さらに障害者の雇用促進などの雇用対策、やる気と能力のある中小企業への資金供給の円滑化など、雇用・中小企業のセーフティーネットには万全を期してまいりました。

 これからも、この方針で、中小企業あるいは雇用対策にできるだけの政策、対策を打っていきたいと思います。私は、やる気のある人や企業を応援して、勇気と希望を持ってそういう挑戦しやすいような環境をつくっていくことが小泉内閣の大きな課題だと思っております。

 拉致問題への取り組みについてでございます。

 拉致問題については、被害者御家族の帰国の一日も早い実現、拉致問題の真相究明等、徹底した問題解決を図っていく必要があります。政府としては、国際社会の理解と協力も得つつ、北朝鮮側に対して、問題解決に向けた前向きかつ具体的な対応を引き続き強く求めていく考えであります。

 北朝鮮の核、ミサイル問題と今後の国交正常化についてでございます。

 核やミサイルの問題、拉致問題等を包括的に解決し、その上で日朝国交正常化を実現するとの政府の方針は変わりありません。北朝鮮に対して、日朝平壌宣言に基づき、問題の解決に向けた誠実な対応をとることを強く求めていく考えであります。

 今後のアフガニスタン復興支援に対する姿勢でございます。

 アフガニスタン復興支援については、同国を再びテロの温床にしてはならない、こういう決意のもと、日本は国際社会と一致団結して積極的に取り組んでまいりました。我が国が東京会議で表明した支援についても、既に約四億ドルを実施決定しており、引き続き速やかな実施を図ってまいります。

 テロ対策特別措置法の延長に関するお尋ねでございます。

 九・一一テロ以降も、世界各地でテロが発生するなど、テロの脅威は依然として深刻であり、国際社会によるテロとの闘いは依然として継続しております。このような状況において、我が国がテロとの闘いに参加するのをやめたら、一体、日米同盟あるいは国際協調をどうやって保っていくことができるのでしょうか。

 我が国としては、テロとの闘いに引き続き積極的、主体的に参加していくため、テロ対策特別措置法の延長法案の成立に万全を期してまいります。

 イラクに対する人道復興支援についてでございます。

 国連安保理決議でも要請されているイラクへの人道復興支援は、来月、支援国会合が開催される等、国際社会の重要課題となっており、国際協調のもと、我が国にふさわしい貢献を行ってまいります。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 山岡賢次君。

    〔山岡賢次君登壇〕

山岡賢次君 合併民主党の山岡賢次でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、質問をいたします。(拍手)

 先日の小泉総理の所信表明からは、政策実現への熱気も真剣味も全く伝わってきませんでした。なぜなら、その内容は、先ほど読み上げましたように、官僚の作文の寄せ集め以外の何物でもないからであります。

 例えば、二年五カ月前の総理の所信表明には、米百俵の精神の話がありました。今回、新たな顔ぶれの内閣を発足させたにもかかわらず、米百俵のような総理の肉声は何一つ聞こえてきません。

 今や、小泉構造改革の正体は、完全に官僚政治に戻ってしまっているということがはっきりいたしました。総理は、もはや改革への情熱も失い、権力の座を守ることにきゅうきゅうとしているのであります。

 小泉総理の政策、政治姿勢や、民主党の公約であるマニフェストにつきましては、菅代表が今述べられましたが、私からもマニフェストについて述べるとともに、その他の主要課題について質問してまいりたいと思います。どうか、総理の肉声でお答えをいただきたいと思います。

 まず、米の問題でありますが、ことしは、世界各地で、異常気象による大洪水や、大河の水がなくなるほどの大干ばつ、森林火災が起こっております。

 日本においても、米作は天候不良の影響で作況指数七一の地域もあるなど、かなりの不作が見込まれております。既に各地で米の売り惜しみ、買いだめの現象が起こっておりますし、きょうの朝のニュースでもありましたが、米泥棒も頻発しております。

 ちょうど十年前の一九九三年にも凶作となり、備蓄の少なかった米価が高騰し、政府も慌てて外国産米を緊急輸入するなど、官民挙げてのパニック状態が生じたのは、記憶に新しいところであります。

 小泉総理、米百俵の物語ではなく、実際のことしの米作の問題をどうお考えになり、どう対処するつもりでおられるのか、お答えをいただきたいと思います。

 一九七三年のアメリカの大豆禁輸措置によりまして、我が国の豆腐価格が一・五倍から二倍に高騰し、そこから始まって、俗に言う狂乱物価を招いたのであります。

 また、一九八〇年、旧ソ連軍のアフガン侵攻で、アメリカがソ連に対する農産物の禁輸措置をとったことがソ連の崩壊につながってまいりました。核兵器よりも兵糧攻めの方がインパクトが強かったということになります。

 一九八九年のベルリンの壁の崩壊の際、命をかけて第一番に壁を越えた人の動機は、イデオロギーでも革命意識でもなく、西側に行けばバナナが腹いっぱい食べられるということでありました。バナナが革命の引き金を引いたと言えるのであります。

 一九九三年のミシシッピ川のはんらんによって、トウモロコシを運搬するはしけが約一カ月間航行不能となっただけで、我が国への輸入が断たれ、家畜の飼料がなくなり、大混乱が生じたのであります。

 言うまでもなく、今日の北朝鮮をめぐる国際緊張も、北朝鮮国内の食料危機に起因しているのであります。

 二十一世紀の人類最大の問題と言われる地球規模の食料危機は、もう目の前であります。現在の六十億人の地球の人口は三十年前に比べて倍増の勢いであり、このペースでいけば、地球上の食料をイナゴのように食い尽くすのにそう長い時間はかからないのであります。

 また、生活水準の向上は温暖化や異常気象を招いて、肉を中心とした食生活は大量の水と穀物を要し、急激な食料不足の大きな要因となっております。例えば、膨大な人口を抱える中国の食料消費量が今後急上昇した場合には、今の農政のままでは、我々の子供や孫たちは確実に食料危機に直面するのであります。

 日本を除く世界の先進諸国は、今、必死に食料自給の一〇〇%の確保を図っております。アメリカ、フランス、ドイツは既に一〇〇%を優に超え、日本と同じような島国イギリスも八〇%を超えております。山国のスイスは、自給率六〇%と日本よりはるかに高い国であるにもかかわらず、危機感を持って、食料増産体制に必要な農地の確保の施策を策定しており、また、非常時に向けた備蓄を官民一体で行っております。

 日本は、先進国の中で、わずか四〇%の自給率と、群を抜いて低い国であります。それにもかかわらず、これまで三十年間ずっと減反政策を続け、さらに、前国会で成立させ、これから実施しようとしているいわゆる新食糧法は、減反制度は廃止し、生産量の割り当てあるいは配分制度に変えましたなどと言って生産者をごまかしておりますが、実際には、前国会において予算委員会での私の質問に対して農水大臣がお答えになったように、実質減反強化を図るための法律であったということであります。

 時代の要請や世界の趨勢に全く逆行するものであります。総理、農水大臣はこの点をどうお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。

 小泉総理は、同じく前国会における私の質問に対して、自給率を四五%に引き上げる、法人化により自給率を向上させるなどと言われましたが、大法人が参入してくれば、他の多くの農家が離農せざるを得ないところとなり、かえって自給率は低下するのであります。

 また、集落営農、大規模農業経営それ自体はよいのでありますが、全体のうち一部の採算のとれる者だけの施策に重点を置いていけば、他の大部分の農家は取り残されるところとなり、国全体の自給率は大幅に低下していくことになるのであります。

 四五%の自給率にするなどというのは、農政にまるで無知であるか、もし知っていて言っているなら、国民を欺く大うそということになります。四五%という数字は、農業基本法で目標を述べたにすぎない有名無実のものなのであります。小泉総理は、このことを御理解になっていらっしゃるのでしょうか。

 また、政府の農業政策の基本となっているものは、消費者重視の農政、市場性重視の農政というものであります。消費者重視ということは、裏を返して言えば生産者軽視という意味です。

 地方よりも都会重視、自給率の確保よりも採算性重視、国民がこれから生きていくのに必要な量よりも現在商売として成り立つ量に応じて生産せよ、新食糧法によってその数量を割り当てます、あるいは配分しますという農政であります。

 これでは、生産者は成り立ちません。現在の農政は、農業はもうやめろ、農家は生きていくなと言っているのに等しいものであります。朝から晩まで一生懸命働いても、実質減反政策と販売価格の低下が続き、さらには、輸入農産物量は増大し、農機具代と土地改良代の負担がますます家計を圧迫しているのであります。

 他業種と比較した農業就業者一日当たり賃金を見ても、農業就業者は一日当たり収入わずか五千四百三十円にすぎず、五人以上の企業就業者は一万八千五百三十八円であり、五百人以上の企業就業者は二万七千六百十二円となっております。農業就業者すなわち農家の収入は、他の業種と比べて圧倒的に低いものであります。

 また、各国の農家一戸当たりの農業予算は、日本九十三万円に対してアメリカ四百八万円、イギリス四百二十一万円と、日本は米英の四分の一を大きく下回っているのであります。

 当然、農業後継者は皆無と言っていい状態であります。しかも、農業従事者は六十歳代から八十歳代に集中しております。これらの方々は、御先祖の田畑は我々が守るという使命感で頑張っておりますが、後継者がいないのですから、あと二十年もたてば、日本の農業は全滅であります。一度失った農業技術と田畑は二度ともとに戻らないと言えます。農業改革は急がれるのであります。(拍手)

 小泉総理並びに亀井農水大臣、あなた方は、この農業の現実や生産者の実態をどれほど理解されていらっしゃるのでしょうか。今後とも、消費者重視の農政、市場性重視の農政というのをお続けになるのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

 ところで、消費者重視の農政といっても結果的には生産者を軽視する農政が本当に消費者のためになるのでしょうか。今述べたように、あと二十年で日本の農業が壊滅したころに、世界の食料不足が深刻化してくるのであります。農家は自分たちの食べ物は確保できますが、みずからの手で食料を生産することができない都会の消費者は真っ先に生きていけなくなるということになるのであります。

 消費者重視ということは、その消費者の食料を生産する生産者を確保しなければならないということになるのではないでしょうか。そのことに、政府はもちろん、都会を中心とした消費者の方々も早く気がつかなければならないと思います。

 都会出身の小泉総理並びに亀井農水大臣、現在政府で行っているこの消費者重視、都会重視の農政が実はその都会の消費者を一番危険な立場に追い込んでいる、そうお考えにならないのか、お尋ね申し上げます。(拍手)

 民主党は、将来の食料危機に対して、国民の食料を確保するため、実質減反制度をなくし、全耕地を活用し、主要食料の国内自給体制を確立いたします。

 また、近い将来、食料不足により食料が輸入できなくなれば、国民の五、六千万人は養えなくなるのであります。

 現在の備蓄制度は、ことしのような単なる不作のときに備えた短期の制度設計になっておりますが、民主党は、世界の人口の爆発的増加や国際紛争などによる本格的な食料危機に備えた長期的備蓄制度を構築すべきと考えております。総理並びに農水大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

 また、メキシコ・カンクンにおいて行われたWTO閣僚会議は、合意を得ることができませんでした。農産物の関税引き下げを求められておりますが、輸出国が日本に対する食料供給を将来も保障してくれるわけではないのであります。

 民主党は、骨太の所得補償制度を導入し、海外農産物に対抗できるようにした上で、価格を市場にゆだねても営農を継続できる制度にすべきと主張しております。総理並びに農水大臣の御見解をお伺いいたします。

 小泉農政、自民党農政がこれ以上続けば、日本の農家も農業も間違いなく消滅してしまいます。

 政府や自民党の政治家は、農は国の基であり、農民は国の宝であるなどと歯の浮いたようなことを言っておりますが、実際に行われている農政の中身は、そのスローガンとは天と地の隔たりがあり、まさに正反対と言えます。(拍手)

 農家を生きていけないような状態にしておきながら、ほんのわずかの補助金やつかみ金をちらつかせて、あたかも、自民党を支持していかなければ生きていけないかのように思い込ませてきたのであります。

 一刻も早くこの現実に多くの人々が気づき、生産者が誇りを持って農業に従事し生活ができる農政、消費者の食料が確保できる農政、次の世代が生き残れる農政に変えていかなければならないと思います。

 小泉総理の最大の問題点は、農業の実態に対する知識が全く希薄であることに加えて、農政にほとんど関心もないし情熱もないという点にあります。所信表明における農業に関するくだりも、たった一行述べられただけであります。

 我々民主党が行わんとする農業政策を、政権を担うことによって一日も早く実現し、農業が本当に国の基となり、消費者から見ても農民が国の宝と思える時代をつくってまいりたいと思います。(拍手)

 次に、教育問題についてお聞きいたします。

 小泉政権のもとでは、教育改革が最もないがしろにされていると言わざるを得ません。

 三位一体改革の名のもとに教育関係予算がねらい打ちされていることや、「法人化で数百人天下り」とも報道されておりましたが、文部科学省による国立大学への統制強化などは、教育行政の明らかな後退であります。

 ゆとり教育により小中学校では完全週五日制を実施しましたが、その結果、学習内容は大幅に削減していく一方で、学力低下が問題になり、結局、補習授業が増大いたしました。このような猫の目教育政策では、子供たちが翻弄されるばかりであります。

 また、きめ細やかな教育現場を実現するための少人数制学級についても、国は推進するような姿勢を見せておりますが、自治体が教員の人件費などをかなり捻出しているというのが実態であります。

 さらに、保育所は厚生労働省、幼稚園は文部科学省といった所管のもとで別々に施設の基準や入所の要件が定められてきた結果、現在、約三万人もの待機児童が生み出されています。温かく、きめ細やかな学習環境、生活環境を与えられるべき子供たちに対し、大人の社会の財政事情や役所の縦割り行政のへ理屈を押しつけてきたのがこれまでの国のやり方であります。

 民主党は、教育の地方分権の具体化を最大の柱に据えた上で、少人数制学級をさらに推進するための制度改正と財政措置、幼保一元化による待機児童の解消をマニフェストに掲げております。総理並びに文部科学大臣はこのことをどうお考えになっておられるのでしょうか。

 昨春から実施されている新学習指導要領による影響について、公立小中学生の保護者の七割が学力低下を心配しているとの調査結果が、つい先ごろ発表されました。また、中学生以上の未成年者五千人を対象としたことし初めの新聞の調査では、四人に三人が、体調が気になると答えています。「時間に追われて生活している」が三七%、「つかれやすい」三五%、「ストレスがたまる」三一%、子供たちの心と体が非常に深刻な状態になっているということが言えます。

 ことし七月、長崎で十三歳の中学生がまだ四歳という幼い子供を殺害した事件などに代表されるように、近年の少年による凶悪犯罪を列挙すれば、枚挙にいとまがありません。これらの犯罪は特別な事例であると片づけてはならないと思います。今や、ごく一般の家庭や少年の中にも、それらの要素がかなり内在してきていると考えなければならないからであります。

 戦後進めてきた日本の教育は、結果的には完全に失敗であったと言えます。あるいは、既に機能しなくなったということが言えると思います。文部科学省主導のこれまでの管理教育により、学校崩壊、学力低下、地域の荒廃、キレる子供、規律ある自由を履き違えた大人といった弊害が噴出し、教育現場だけでは対応できなくなっているのであります。

 今日の教育に必要なことは、知識教育だけではなく、広い意味での人づくり教育を行うことであります。学校、家庭、地域社会がそれこそ三位一体となって人づくり教育を行い、その中で、我が国や地域社会の歴史や文化を学ぶとともに、互いに一体となって、共同生活のできる子供、そういう子供を育てていくべきであり、そのシステムの構築を急ぐべきであると私たち民主党は考えております。(拍手)

 総理は、所信表明で、ほとんど教育政策に触れられませんでした。未来社会を開くにふさわしい教育のあり方という観点で、今、最も欠落しているものは何であるとお考えになるのでしょうか。それを踏まえ、これからの人材を育て上げる具体的なプログラムをお立てになっているのか、総理の見解をお伺いしたいと思います。

 次に、治安対策について伺います。

 凶悪犯罪の検挙率は、わずか五年間で八四%から四八%へと半減し、犯罪全体の検挙率は、何と二〇%にまで落ち込んでしまいました。驚くことに、我が国では、犯罪者の五人に四人は検挙されていないのであります。

 このような状況に対し、総理は、大好きなゼロ作戦シリーズを使って、待機児童、ごみに続き、空き交番ゼロ作戦を所信表明で発表いたしました。何でもゼロ、ゼロと叫んでいればよいのでありますから、総理は気楽なものであります。実際には待機児童がふえているということをお忘れになっているのでしょうか。

 空き交番についても、一体、何人の警官をふやせば空き交番がゼロになるのでしょうか。この増員は、いつまでに、どのような形で手当てをするのでしょうか。空き交番ゼロに必要な警官の数などは霞が関に聞けばすぐわかると思いますので、明確にお答えをいただきたいと思います。

 民主党は、マニフェストにおいて、四年間で三万人以上の警察官を増員し、凶悪犯罪の検挙率を向上させることを国民に約束しております。この増員に必要な予算も、むだな公共事業の削減などによって明確に手当てをしております。

 それに比べると、総理の空き交番ゼロ作戦は、期限も手段も示さず、全く実現性に担保がありません。次には犯罪ゼロ作戦、そのようなものを掲げそうな勢いでございます。総理の御見解をお伺いいたします。(拍手)

 次に、雇用対策についてお尋ねいたします。

 あなたは、先日の所信表明において、「この三年間で約二百万人の雇用が創出されたと見込まれます。」と演説いたしました。多くの国民がこれを聞いて唖然といたしました。一国の最高責任者が、国民の代表が集う議会において、「見込まれます。」とは、何という無責任な発言でしょうか。政治の最も重要な課題である雇用について、このような評論家のような無責任な発言を私は聞いたことがありません。

 平成十三年四月、総理が就任された時点での就業者数は六千四百二十七万人、本年七月の就業者数は六千三百八十一万人となっております。総理が政権を担っている間に、実に約五十万人も就業者数が減少しております。これが実態なのです。総理の発言に、リストラで明日の生活さえ心配な国民、みずからの失業の不安にさいなまれる国民は激怒しております。

 そこで、総理に改めて確認いたします。

 二百万人の雇用は創出したのでしょうか、していないのでしょうか。仮に創出できたのだとすれば、それはどの分野で、どの程度生じているのでしょうか。明確に国民にお示しいただきたいと思います。また、仮に創出できているとすれば、一方では百万人単位の失業者が発生していることが考えられます。この方たちに対して総理はどのようなメッセージを送るのでありましょうか。

 民主党は、マニフェストのトップの項目で、失業率を四%台前半に引き下げることを国民にお約束いたしました。失業は、生活の糧を失うだけではなく、時に人間の尊厳さえ失わせかねない問題であります。福祉、教育、環境など国民ニーズの高い分野への税金の重点的投入や、事業規制の原則撤廃などによる起業の促進などを通じて、雇用を守り、さらに、時代に適した雇用を増大し、失業率を引き下げてまいります。

 最後に、一言申し上げます。

 総理の所信表明には、デフレ対策のデの字もありませんでした。総理がいかに経済の惨たんたる状況と雇用の厳しい情勢に危機感を感じていないかを浮き彫りにしております。

 総理、あなたが、構造改革を断行する、自民党をぶっ壊すと絶叫し、総理に就任してから、二年と五カ月がたちました。しかし、現実には、総理が行った政策により、というよりも、総理がスローガンだけで何もやらなかったことにより、日本の経済は破壊され、国民生活の方がまさにぶっ壊されてしまっているのであります。(拍手)

 日本企業の根幹をなしている中小零細企業は、銀行の貸し渋りや貸しはがし、あるいはデフレ不況により、次々と倒産をしていっております。また、製造業の空洞化は急激に進み、工業立国日本などともてはやされた往時の面影は消えうせてしまっているのであります。それに伴う国内下請企業を中心としたリストラ、失業などの雇用不安は増すばかりであります。また、商店街は、シャッター街と呼ばれるようになり、軒並み、シャッターをおろして閉店あるいは廃業になっております。農業も、政府の無為無策によって、全く立ち行かなくなっているのであります。農業、工業、商業が成り立たない国に、景気の回復も、雇用の安定も、さらには国の存続もあり得ないのであります。

 その上、世界一の高齢化社会になったという日本の現実の中にあって、医療保険の負担増や医療費負担の実質五割アップ、年金から夫婦で介護保険料を差し引いた上、将来は年金にも課税しようとしている。さらには、孫の小遣いなど、ささやかな消費に使っていた金利も、ただ同然にされているのであります。

 経営が厳しくなった企業はさっさと倒産しろ、金のない老人は早く死ねと言わんばかりの政策を平然と行っているのが小泉総理であります。(拍手)

 また、新たに第二次小泉内閣が組閣されましたが、ぶっ壊すはずの自民党の中にあって、あめとむちの手練手管を巧みに使って、政策の全く正反対の人までオール自民党に取り込んだのであります。自民党の中からでさえ、あれは手品師だとか、ペテンにかけられたなどとあきれる言葉が出てくる始末であります。自民党の要職にあった元幹事長ですら、選挙に勝つためだけの内閣をつくる、これで本当に自民党に国民の信頼が生まれてくるのかと、身内でありながら辛らつな批判をしております。

 総理が自民党を壊す気など毛頭なく、改革の姿勢もデフレ対策もポーズだけであり、国民を欺いてでも自分たちだけが選挙に勝てばよいという姿勢のみがありありとしております。

 国民は、冷静なまなざしで判断しております。国民をこれ以上侮ってはならないと思います。小泉政治の欺瞞性は見抜かれつつあります。このたびの総裁選、組閣、所信表明を見て、小泉総理には日本再建の理念も政策も誠意もまるでない、まさに自民党終えんの象徴的出来事であったと判断していると思います。

 このまま自民党政権、小泉政権が続けば、日本は崩壊の一途をたどり、最終局面まで行くことは明白であります。我々は、自民党政治を打破し、新たな政権をつくるために、その受け皿として、民主党と自由党が合併し、二大政党による本格政権づくりの体制を整えました。

 日本の再生、再構築を進め、一日も早い景気の回復と雇用の安定を図るために全力を尽くすことを国民の皆様の前に表明して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山岡議員にお答えいたします。

 ことしの米の作柄についてでございます。

 本年の米の作柄については、低温、日照不足のため不作が見込まれますが、政府備蓄米を十分保有しているため、国民に対する米の安定供給に支障はありません。

 なお、売り惜しみ、便乗値上げ等の防止のため、監視体制の強化等の措置を既に講じており、今後とも、米の適正な流通に万全を期してまいります。

 また、冷害に遭われた農家の方々には、被害状況の把握に努め、適切な支援に万全を期してまいります。

 食料自給率と食料危機への対応についてでございます。

 意欲と能力のある農業経営を支援し、国民が最低限度必要とする食料を安定的に供給することは、重要な課題と認識しております。

 このため、政府としては、平成二十二年度までに食料自給率四五%とするとの目標のもと、従来の減反政策を改め、需要に応じた米づくりを目指す米政策改革などにより農業の構造改革を進め、国内の農業生産の増大を図るとともに、国民の理解を得つつ適切かつ効率的な備蓄の運営を行う等、食料の安定供給の確保に万全を期していく考えであります。

 消費者重視の農政のあり方についてでございます。

 都会の消費者を含む国民に食料を安定的に供給することは、国の基本的な責務であります。一方、我が国農業の現状を見ますと、農業の持続的な発展に向けて構造改革の加速化が急務と考えております。

 こうした中、食の安全と信頼に万全を期しつつ消費者の需要に的確に対応した農業生産を推進することが生産者の利益や食料自給率の向上につながるものと確信しております。

 所得補償制度の導入についてでございます。

 政府としては、意欲と能力のある経営体を集中的に後押しするなど、農業の持続的発展に向けた構造改革を加速していくことが重要と考えております。

 一方、農業者に対し直接的な所得補償を行うことについては、農業者の経営努力を阻害しかねないほか、かえって現状の農業構造を固定し、構造改革に支障を来すおそれがあるなど、問題があるものと考えております。

 教育政策及び民主党の教育に関するマニフェストについてでございます。

 日本発展の原動力は、人であります。教育改革の推進は、国政上の最重要課題の一つであります。

 私は、人づくりを担う教育改革の原点は、家庭、地域、学校を通じた子供一人一人の人間力の向上にあると考えており、教育の目標を画一と受け身から自立と創造へと転換し、新しい未来を切り開く人材を育成するための取り組みを総合的に進めてまいります。

 こうした中、教育の地方分権を進め、子供や地域の状況に応じた学校づくりを実現していくことは重要な課題と考えております。このため、都道府県の判断による少人数学級編制、構造改革特区における市町村独自の教員任用による少人数学級を可能とするなどの取り組みを進めているところです。

 また、幼保一元化については、就学前の教育、保育を一体としてとらえた総合施設の検討を進めるなど、子供を持つ親の視点に立った改革を進めてまいります。

 なお、民主党は、全国一律の三十人学級を実現するという提案をされておりますが、政府としては、学級という概念にとらわれることなく、少人数指導や習熟度別指導を充実させるなど、きめの細かい対応策を講じているところであります。

 待機児童についてのお尋ねです。

 政府としては、待機児童ゼロ作戦の目標を掲げ、平成十三年七月時点において、必要な受け入れ児童数が十五万人と見込まれたため、平成十四年度から十六年度まで、毎年度五万人の受け入れ児童数の増大を図ることとし、これを着実に実施しております。

 女性の就労の増加等により保育需要はその後も増加し続けており、なお約二万六千人の待機児童が存在しておりますので、今後、必要な受け入れ児童数を見直し、必要があれば、その上乗せを検討するなどにより、待機児童ゼロ作戦の実現を図ってまいります。

 空き交番ゼロについてでございます。

 今後、犯罪対策の強化に必要とされる警察官の増員について、警察官一人当たりの負担人口を欧米諸国並みに近づけるべきであるとの自民党の提言なども参考にしながら、具体的な規模と期限を決めてまいります。

 警察官増員とあわせ、交番相談員の活用、交番の配置の見直し等により、おおむね三年を目途に空き交番ゼロを目指してまいりたいと考えます。

 五百三十万人雇用創出についてでございます。

 統計上の制約もあり、現時点で詳細な分野についての実績把握は困難ですが、毎月実施されている労働力調査に基づき試算すれば、この三年間で、サービス分野を中心に約二百万人の雇用が創出されたと見込まれます。

 完全失業率等、厳しい雇用情勢が続いておりますが、政府としては、今後とも、規制や制度の改革、人材育成や公的業務の民間委託なども進め、さらなる雇用の創出に全力で取り組むこと等により、厳しい状況の中にあっても勇気と希望を持って挑戦し続ける、やる気のある人を応援してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣亀井善之君登壇〕

国務大臣(亀井善之君) 山岡議員の御質問にお答えいたします。

 まず、新食糧法は、実質減反強化を図るための法律であり、時代の要請や世界の趨勢に全く逆行するものであるとのお尋ねであります。

 今回の米政策改革において、消費者ニーズを起点として、売れる米づくりの実現を目指しておりますが、需要量を大幅に上回る生産力を有することから、今後とも、国民の理解を得ながら、何らかの需給調整は必要であると考えております。

 平成十六年産米からは、客観的需要予測をもとに、国民に対する安定供給を確保する観点から、生産目標数量を設定することとしておりまして、あわせて、自給率の低い麦、大豆等の産地づくりを目指すこととしております。

 このような考え方のもとに、今回の食糧法の改正は、農業者、農業者団体が自主的、主体的に需要に応じた生産に取り組めるようにすることを目的とするものであります。

 次に、消費者重視の農政を続けるのかとのお尋ねであります。

 我が国農業の現状を見ますと、農業従事者の高齢化が進展し、六十五歳以上が約半数を占め、耕作放棄地も年々増大し、二十一万ヘクタールに及ぶといった状況にあります。農業の持続的な発展に向けて、構造改革の加速化を図ることが急務であると考えております。

 今後の農業生産においては、初めに供給ありきではなく、食の安全・安心に対する意識が高まっていることにこたえつつ、消費者や市場の求める良質の農産物を安定的に供給していくことが本来のあり方であり、これを通じて生産者の利益を確保していかなければならないと考えております。

 次に、消費者重視の政策が都会の消費者にとって問題ではないかとのお尋ねであります。

 人の命と健康の基本である食料を都会の消費者を初め国民へ安定供給するため、望ましい農業構造の確立により国内の農業生産の増大を図ることを基本として、これと輸入、備蓄を適切に組み合わせることにより、万全を期していかなければならないと考えております。

 こうした観点に立って、農業の構造改革の加速化を図るため、米政策改革の遂行を通じて、消費者や市場のニーズに即応した生産体制づくりに取り組むことにより、地域の特性を生かした産地づくりや担い手の育成を推進するとともに、これにとどまらず、農業の法人化の促進等による意欲と能力のある経営の育成、これにさらに取り組んでまいりたい、このように考えております。

 また、消費者の視点に立った食料・農業・農村政策の改革をさらに強力に遂行すべきという国民の要請にこたえ、本年八月末より着手した、平成十七年を目途とする新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けて、これまでの施策の徹底的な検証と見直しにスピード感を持って取り組んでまいりたい、そのように考えております。

 次に、備蓄についてであります。

 国民に対して食料の安定的な供給を図ることは、国の基本的な責務であると認識しております。

 このため、我が国では、主食である米と、供給の多くを輸入に依存している食料用小麦、食品用大豆等について、国内生産や需要の動向、これまでの国内外での不作、過去の輸出国における輸送問題の発生の例などを考慮して、必要な水準の備蓄、米百万トン程度、小麦約二・六カ月分、大豆約二十日分、飼料穀物約一カ月分を行っているところであります。

 今後とも、国民の理解を得ながら自給率の向上や適切かつ効率的な備蓄の運営に努めるとともに、安定的な輸入の確保等により、食料の安定供給の確保を図ってまいります。

 民主党の所得補償制度の主張についての見解についてであります。

 我が国農業、特に水田農業については、需要に対応した生産体制の構築や規模拡大の加速化等が急務である中で、民主党の提案のように、農業者の所得を直接補償するような措置を講じる場合には、需給事情等を反映した主体的な経営努力を阻害するおそれがあること、意欲と能力のある担い手を育てようとする構造改革に支障を来すおそれがあること等の問題があると考えております。

 一方、食料・農業・農村基本法において、農産物価格については、市場原理に基づき形成されるようにするとともに、農産物価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずることとされております。

 先般、私は、食料・農業・農村基本計画の見直し作業の着手を指示したところであり、基本法に示された政策方向に沿って、従来、品目ごとに講じてきた価格・経営政策から、意欲と能力のある担い手が安心して規模拡大等の経営改善に取り組めるようにするための品目横断的な対策への移行につき、検討を急ぐ考えであります。

 また、先ほど議員から、総理も私も都会の人間、このような御指摘がございましたが、神奈川県は、三浦半島におきましては野菜の大生産地でありますし、私が住んでおりますところは、かつては県央の、神奈川の一穀倉地帯でありました。私も、兄が農業をいたしておりまして、私は学生時代まで一緒に、兄を助けて農業に従事してきた男であります。

 先ほど来の御指摘も十分考慮して、日本の新しい農政を確立するために、さらなるそのような立場で努力をしてまいりたい、このように考えております。(拍手)

    〔国務大臣河村建夫君登壇〕

国務大臣(河村建夫君) 山岡議員より、教育の地方分権、少人数学級、幼保一元化による待機児童の解消についてのお尋ねがございました。

 地方や学校の自主性を高めて、子供や地域の状況に応じた特色ある学校づくり、あるいは地域から愛される学校づくりが行えるように教育の地方分権を進めることは、極めて重要であると考えております。

 文部科学省といたしましては、これまで、定数改善を行って少人数指導や習熟度別指導を充実させるとともに、学級編制についても、都道府県の判断による少人数学級が可能となるように制度の弾力化を図ってきたところでございまして、現在、三十都道府県が少人数学級を実施しておるところでございます。

 また、構造改革特区において、市町村独自の教員任用による少人数学級の編制が可能となっておりまして、現在、九つの市町村において実施されておるところでございます。

 また、幼保一元化につきましては、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三、骨太の方針でございますが、これに基づきまして、就学前の教育、保育を一体としてとらえた総合施設の設置について検討を進めてまいる所存でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 神崎武法君。

    〔神崎武法君登壇〕

神崎武法君 私は、公明党を代表して、総理並びに関係大臣に御質問いたします。(拍手)

 まず、発足した第二次小泉内閣の活躍に期待するとともに、これからが改革の正念場であります。さらなる緊張感を持って、国民のための改革推進内閣として全力を尽くしていただきたいと存じます。

 初めに、先般の十勝沖を震源とする北海道の地震ですが、被災者の皆様には心よりお見舞いを申し上げます。政府におきましては、一刻も早く住民生活が安定されるよう、各省庁が緊密に連携して万全の措置を講じていただきたいと思います。

 さて、今臨時国会の最大の焦点は、テロ対策特別措置法の延長であります。

 アルカイダ関連の組織の関与をうかがわせるテロ事件は世界各地で頻発しており、テロの脅威は依然として存在しております。

 こうした状況下で、我が国も国際社会と一致協力し、テロとの闘いを継続することは当然の責務と考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)

 次に、景気は緩やかながら自律的な回復への兆しを見せ始めておりますが、地方の経済は依然厳しいのが実情です。また、デフレはむしろ拡大し、家計、企業への影響も広がってきております。

 デフレの克服に向け、政府、日銀が一体となって総合的な対策を講じていくことが重要であり、必要に応じ、大胆かつ柔軟な政策対応を講じていくべきであります。

 小泉総理のデフレ克服に向けた決意並びに具体的にどのような対策を講じようとされておられるのか、明確な御答弁をいただきたいと存じます。

 経済活性化への重要な柱は、中小企業の活性化です。我が党は、税制面も含め、中小企業対策の拡充に全力を挙げてきましたが、なお一層の強化拡充が必要であると考えております。

 公明党は、さきにまとめたマニフェストで、特に中小企業金融について、中小企業に対する、個人保証を求めない融資の推進、金融機能の多様化、さらには、政府系金融機関による無担保無保証の新創業支援制度の拡充を掲げました。また、エンゼル税制の拡充などによる直接金融の拡大も重要です。

 特に、ベンチャーにとっての最大の課題は資金調達力に乏しいことであり、この点については、金融機関の担保主義、個人保証が大きな障害となっています。

 これらの施策は、総理の言葉をかりれば、こうした挑戦しようとするベンチャー・中小企業の芽を木へと育てるために、さらには、民間主導の自立した経済実現のための重要なインフラ整備であると考えますが、小泉総理の御見解を承ります。(拍手)

 次に、喫緊の課題である農産物の冷害対策についてお尋ねします。

 ことしの北海道、東北地方北部における冷害は、極めて深刻な事態となっております。我が党は、直ちに被害対策本部を設置し、精力的に現地視察や聞き取り調査等を実施、私も先週、仙台市に赴きましたが、被害は相当深刻であり、被害農家の窮状を打開することが急務であります。

 政府は、早急に、共済金の年内早期の支払い、天災融資法、激甚災害法の発動、来年度の種もみの確保など、万全の対策を講ずべきでありますが、総理の答弁を求めます。

 総理は、就任以来、行政のむだの排除を叫ばれてきましたが、私たちも同感です。国民に痛みを求める前に、まずみずからが身を削るべきであります。

 公明党は、マニフェストで、四年間で公共事業費一兆円の縮減を目標に掲げますが、むだな公共事業の排除は当然として、資材の単価、仕様等の規格の見直し、入札制度の合理化等によるコストの二〇%削減で、一兆円の削減は十分可能です。

 ただし、その際、下請事業者に影響が出ないように、官公需の中小企業への発注拡大やセーフティーネット債務保証事業の十分な活用など、きめ細やかな配慮は当然必要であります。

 行政に関しては、省庁の縦割りによる事業の重複などは一例であって、まだまだむだが多い。私は、総理の強いリーダーシップのもと、仮称ではありますが、むだ遣い一掃・政府対策本部を設置し、行政のむだ遣いについて、民間の知恵もかりながら徹底的に調査、改善等を行うことを強く求めますが、総理の御見解を承りたいと存じます。(拍手)

 そして、今回、特に提言したいのは、構造が複雑で透明性が低いなどの指摘がある特別会計の抜本見直しです。道路、空港、港湾、治水など、現在三十二ありますが、所管省庁の権限の陰に隠れたむだを徹底して洗い出すとともに、その使命を果たしたものについては整理合理化が必要です。

 学者によっては、数兆円規模の財源が捻出可能としています。この特別会計の廃止、統合を含めた見直しを政府も本腰を入れて検討すべきですが、総理、いかがでしょうか。(拍手)

 次に、年金制度改革についてお尋ねいたします。

 次期制度改正においては、給付と負担の将来像の明示、世代間格差の是正に取り組むとともに、少子高齢化の進展や経済の変動にもたえ得る恒久的な改革を実現しなければなりません。

 公明党は、従来からの課題であった基礎年金の国庫負担割合二分の一への引き上げ財源の明確化や将来の保険料負担の上限設定及び安心の老後を保障する適切な給付水準の確保など、制度不信を解消するための万全な制度設計として、先ごろ、年金百年安心プランを提唱したところであります。

 だれもが不安を抱いている老後の生活保障について、安心のメッセージを発信することが政治に課せられた責務であると思いますが、年金改革に対する総理並びに厚生労働大臣の御所見を伺います。

 年金に加え、二十一世紀の国際社会を展望すれば、思い切った教育改革も必要です。

 そこで、第一に、将来、子供たちが国際社会で活躍できるために、中学校卒業段階で日常会話ができることを目指し、国家百年の計として、中国や韓国でも実施しているように、今後、小学校から英語教育を必修とすることを提案します。

 第二に、これまでの国主導の教育行政のあり方を見直し、国から地方へ、また現場へと権限を移譲すべきです。学校が主体性を発揮し、地域や保護者の声を学校に反映させる仕組みとして、各学校に、地域住民や保護者が学校運営に参画する学校評議会の設置を提案いたします。

 総理並びに文部科学大臣の答弁を求めます。

 治安の回復は喫緊の課題でありますが、問題は、具体的な施策であります。

 第一は、何といっても警察官等の増員です。警察官OBの活用や民間委託を含め増員を図り、まずは、空き交番の解消を目指し、警察行政を現場重視に改めるべきであります。

 第二は、地域防犯体制の強化です。民間警備員は現在約四十四万人おりますが、この活用、提携により、地域の防犯パトロール体制を強化し、犯罪を許さない町づくりを推進すべきです。

 そのほか、少年犯罪や外国人犯罪対策を含め、政府が総力を挙げて治安悪化の徹底究明と総合的な対策を検討し、できるところから速やかに実施すべきであります。総理の答弁を求めます。

 改めて言うまでもなく、政治は結果です。小泉政権には、改革実行による明確な結果と成果を国民に示すことが求められています。総理のリーダーシップを強く期待し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 神崎議員にお答えいたします。

 テロ対策特別措置法の延長についてでございます。

 九・一一テロ以降も、世界各地でテロが発生するなど、テロの脅威は依然として深刻であります。国際社会によるテロとの闘いは継続しております。

 このような状況において、我が国がテロとの闘いに参加するのをやめたら、日米同盟や国際協調をどうやって保つことができるのか。私は、我が国としては、テロとの闘いに引き続き積極的かつ主体的に参加していくため、テロ対策特別措置法の延長法案の成立に万全を期してまいりますので、よろしく御協力のほどをお願い申し上げます。

 デフレ克服についてでございます。

 民間の活力と地方のやる気を引き出し、デフレの克服と経済の活性化を実現することは、内閣の重要な使命であります。

 デフレは複合的な要因によるものであり、デフレ克服や景気回復に特効薬、即効薬はありませんが、既に雇用者数や民間企業設備が増加し、名目成長率がプラスに転ずるなど、経済に明るい兆しも見えております。

 政府としては、こうした明るい兆しを確かなものとできるよう、引き続き、日銀と一体となってデフレ克服を目指しながら、金融、税制、規制、歳出の各分野にわたる構造改革を進め、創造的な企業活動の促進や地方経済の活性化などを通じた民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく考えであります。

 また、日銀においては、今後とも、金融・資本市場の安定とデフレ克服を目指し、政府との対話を密にしつつ、実効性のある金融政策運営を行っていただけるよう期待しております。

 中小企業金融政策の拡充についてでございます。

 中小企業は我が国経済の活力の源泉であり、やる気と能力のある中小企業が厳しい環境の中にあってもその力を発揮していくためには、中小企業への円滑な資金供給を確保していかなければなりません。

 政府はこれまで中小企業金融対策の強化に積極的に取り組んできており、中小企業に対する金融に新たな動きが出てくるなど、その成果は着実にあらわれ始めております。

 今後とも、不動産担保や保証人に依存しない無担保融資の拡大、売り掛け債権の担保化の促進や、エンゼル税制による直接金融の拡大など、多様な手法により、中小企業への資金供給を円滑化し、新たな事業に挑戦する中小企業を支援してまいります。

 農産物の冷害対策です。

 今回の冷害については、政府としても、農家の方々が安心して農業生産に取り組み、国民に対しても食料の安定供給が確保されるよう、被害状況の把握に努めるとともに、御指摘のあった点も含め、被災農家に対する適切な支援や米の安定供給等に万全を期してまいります。

 行政のむだの排除について御指摘がございました。

 小泉内閣は、発足以来、行財政改革を徹底し、むだを省くことを最優先課題の一つに位置づけてまいりました。今後とも、この方針を堅持し、与党と一体となって、簡素で効率的な政府を目指してまいります。

 公共事業のコスト縮減については、道路関係四公団では、約二割、総額四兆円を超える建設コストの縮減を図ることを、また、公共工事全般では、これまでに二〇%以上を縮減し、今後五年間で物価の下落等を除いて一五%の総合的なコスト縮減を達成することを決定しています。さらに、御指摘を踏まえ、一層のコスト縮減を実現したいと考えております。

 今後、総理のリーダーシップのもと、対策本部を設けて行政のむだを省けとの提言についてでございますが、私は、これまで閣僚に対し、特殊法人向けの予算の削減や会計検査院の報告をみずから聴取することを指示するなど、行政のむだを省くことに強い決意で当たってまいりました。今後とも、経済財政諮問会議を活用することなどにより積極的に取り組んでまいります。

 特別会計については、御指摘のような問題がありまして、塩川前財務大臣が既に見直しに着手しております。今後も、きちっとした成果を出すよう、全力で見直しを進めていく考えであります。

 年金改革についてでございます。

 公的年金については、国民の老後生活を確実に保障する役割を持続的に果たしていけるよう、長期的に安定した制度を確立することが不可欠であります。

 平成十六年度の年金改革においては、現役世代の負担が過大なものとならないよう、給付と負担の見直しを行うなど、若者と高齢者が支え合う、公平で持続的な制度を構築すべく、経済財政諮問会議で検討するとともに、国民的な議論を深め、年内に成案を取りまとめてまいります。

 小学校の英語教育の必修化と学校評議会についてでございます。

 英語によるコミュニケーション能力の育成は、国際化が進展する中、私は重要な課題と考えております。小学校では、総合的な学習の時間を活用した英会話活動や、構造改革特区において英語教育を必修とするなどの取り組みが始まっており、これらの成果も踏まえ、英語の必修化についても研究を進めてまいります。

 また、保護者や地域住民の意向を反映した学校づくりを進めるため、既に学校評議員制度を導入しているところですが、今後は、御指摘のあった学校評議会の設置など、新しいタイプの学校運営のあり方についても検討を進めてまいります。

 総合的な犯罪対策についてです。

 外国人犯罪や少年犯罪など、深刻化する犯罪情勢を改善し、犯罪の生じにくい社会をつくり上げるためには、政府として各種犯罪対策を強化するとともに、社会の安全は自分たちみんなで守るという意識に支えられた市民と地域の一致した取り組みを力強く後押しすることが重要であると考えます。

 具体的には、犯罪対策閣僚会議が年内に取りまとめる行動計画に基づいて、世界一安全な国、日本の復活を図ってまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 年金改革について御質問をいただきました。

 予測を超える少子高齢社会が進行いたしております。将来の世代の過重な負担が生まれないように、負担と給付のバランスを考えることが大事でございます。

 先般、試案を発表させていただきました。この中で、負担の上限、給付の下限を明確にいたしまして、これから政府が取り組むべき課題も整理したところでございます。今後、さらに少子化対策、そして女性と年金、そして国庫負担の財源のあり方、こうした問題につきまして、さらに煮詰めを行わなければなりません。

 十一月末には厚生労働案、そしてまた十二月末には政府案の取りまとめを行いたいと思っております。それまで、各党の御意見や社会保障審議会の御意見等を伺いながら決定していきたいと考えているところでございます。(拍手)

    〔国務大臣河村建夫君登壇〕

国務大臣(河村建夫君) 神崎議員より、二点のお尋ねがございました。

 第一点、英語教育の充実のお尋ねでございます。

 文部科学省といたしましては、英語が使える日本人の育成のための行動計画を策定いたしておるところでございまして、英語教育の充実に積極的に取り組んでおるところであります。

 総理からも御答弁あったところでございますが、小学校における英語教育につきましては、総合学習の時間における国際理解に関する学習の一環として、既に現在、過半数の小学校で英会話活動を取り入れておるわけでございます。また、構造改革特区におきましては、英語教育を必修とする、こういうことで取り組みも始まったところでございます。

 御指摘のように、いよいよ小学校に、では必修にするか、こういう問題でございますが、この問題については、神崎議員も御指摘のように、既に韓国、中国においては、小学校三年段階で必修化の方向を取り入れておるわけでございます。

 我々といたしましても、さらに、必修にするにはどういう問題があるかということを考えながら、研究開発学校制度を活用する、あるいは特区における取り組みを検証したり、さらに総合的な学習の時間における取り組み、こういうものをしっかり検証しながら、これからの英語教員の確保等々いろいろな課題がございますが、この必修化の問題についても前向きに、積極的に取り組んでまいりたい、このように考えておるところであります。

 さらに、地方や学校への権限移譲と学校評議会についてのお尋ねがございました。

 地方や学校の自主性を高めて、子供や地域の状況に応じた特色ある学校づくり、あるいは地域に開かれた学校づくり、こういうことが求められておりますが、学級編制や教育課程の基準の弾力化という形でこれを進めておりまして、今後とも地方や学校の権限の拡大に努めてまいりたい、このように思っております。

 また、保護者や地域住民の意向を把握して学校運営に反映させるために、既に平成十二年に学校評議員制度を立ち上げたところでございます。さらに、御指摘の学校評議会などの、地域が運営に参画する新しいタイプの学校運営のあり方についても実践的な研究を行っておるところでございまして、中央教育審議会においてさらに検討を進めてまいりたい、このように考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 日本共産党を代表して、小泉総理に質問します。(拍手)

 この国会は、解散・総選挙が間近に迫る中で開かれました。国民の前で十分な審議を行い、総選挙の争点を明らかにすることは、この国会の重要な責務であります。私は、二十一世紀の日本の進路はどうあるべきかについて、我が党の改革の提案を述べるとともに、総理の見解をただすものであります。

 冒頭、緊急にただしておきたいのは、政府が米国の強い要請を受け年内にもイラクへの自衛隊派兵を実現する方針に転換したと伝えられていることについてであります。

 イラクの治安情勢は悪化の一途をたどっており、自衛隊派兵を強行することは、戦闘地域には派遣しないとしてきた政府の見解とも真っ向から矛盾することになるのではありませんか。この政府の見解には変わりがないのか、変わりがないとすればこの矛盾をどう説明するのか、はっきりお答えいただきたい。(拍手)

 質問の本論に入ります。

 まず、暮らしと経済の問題です。

 今、国民の生活への不安は、かつてない深刻なものとなっています。内閣府が六月に発表した「国民生活に関する世論調査」では、生活の不安を訴える人は六七%と史上空前となりました。不安の内容の第一位は老後の不安、第二位は健康の不安、第三位は収入の不安、国民生活があらゆる分野で深刻な危機に脅かされていることが示されています。

 これは、小泉内閣が構造改革の名で、巨額の国民負担増の押しつけ、大企業のリストラ支援、中小企業つぶしなど、数々の痛みを押しつける政治を強行してきた結果ではありませんか。昨年、生活苦を原因とする自殺が七千九百四十人、史上最悪という痛ましい結果となったことを、総理は重く受けとめるべきであります。この道を暴走し、さらに生活不安を深刻にする政治を続けるのか、それとも、国民の生活不安を取り除き、国民だれもが現在と将来に安心して暮らせる日本をつくるのか、政治の責任が問われております。

 日本共産党は、日本経済の三つの改革を提案するものです。

 第一は、税金の使い方を改革し、社会保障を予算の主役に据えることであります。

 昨年十月のお年寄りの医療費値上げに続いて、ことし四月からサラリーマンの医療費自己負担が三割に引き上げられ、私たちが危惧してきたように深刻な受診抑制、お金の心配でお医者にかかれないという事態が広がっております。老後の生活の命綱である年金は、物価スライド凍結解除で、ことし既にモデル世帯で年二万五千円の削減が強行され、来年はさらに六万円もの削減が予定されている上、将来にわたって給付減、負担増の大改悪のレールが敷かれようとしています。

 総理は、高齢化社会だから仕方がない、これが嫌なら増税になると言っていますが、果たしてそうでしょうか。

 国民が国と地方に納めている税金のうち、社会保障への公費負担となって返ってくる比率、いわば見返り率がどうなっているか。サミット諸国で、日本は最低です。ことし二月に社会保障審議会に提出された資料をもとに試算しますと、日本の見返り率は二九%であり、アメリカ四七%、イギリス四三%、ドイツ四四%、スウェーデン四三%に比べて十数%も低い水準です。仮に日本の見返り率を欧米並みに引き上げますと、税負担は今のままでも、十兆円を超える新たな社会保障財源が生まれ、当面の医療、年金、介護を充実させる財源は十分に賄うことができます。

 総理、日本の社会保障が貧しいのは、国民の負担が少ないからではなく、予算の優先順位を間違えているからではありませんか。このゆがみを正す意思と展望を持っていますか。答弁を求めます。(拍手)

 社会保障を予算の主役に据えるためには、次の二つの分野に抜本的なメスを入れる改革が必要であります。

 一つは、九〇年代に五十兆円にまで異常膨張した公共事業費です。

 総理は、むだ遣いを削ると言いながら、破綻が明瞭になった川辺川ダム、諫早湾干拓事業、関西空港二期工事、苫小牧東部開発など、悪名高い巨大開発をやめようとしていません。加えて、都市再生の名で、全国各地に高層ビルを林立させ、高速道路を張りめぐらせる新たな浪費の計画も進めています。これらの巨大開発の浪費を中止し、内容を福祉・環境型に転換させることで雇用を確保しながら、膨れ上がった公共事業費をバブル前の二十五兆円程度の水準にまで段階的に削減すべきであります。

 いま一つは、五兆円にまで膨張した軍事費を聖域とせず、大幅軍縮に転ずることです。

 特に、ヘリコプター空母や空中給油機の導入など海外派兵のための新規装備購入の計画を中止すること、地球的規模での米国の核戦略に日本を組み込み、一兆円規模での巨額の財政支出を伴うミサイル防衛戦略への参加を中止すること、日米地位協定でも支出義務のない毎年二千五百億円にも上る米軍への思いやり予算を廃止することなどが緊急に必要です。

 総理の答弁を求めます。

 第二は、消費税の大増税を許さないことであります。

 今、政府、財界から、消費税率を二けたに引き上げよとの大合唱が始まっています。日本経団連は、二〇一四年度には一六%にと言い、経済同友会は、二〇二〇年度には一九%にと言い、政府税制調査会も、中期答申で二けた税率化を明記しました。

 総理は、九月二十二日の内閣改造後の記者会見で、三年間の総裁の任期中は消費税を上げる環境にないと言いつつ、構造改革を徹底的にやった後、もうこれ以上予算を削減するのはやめてくれというときに消費税を上げるならわかりますと述べています。

 これは、まず、首相の言う構造改革、社会保障の切り捨てなどを徹底的にやり、国民をぎりぎりの耐えがたいところに追い込んでおいて、これ以上やるのはやめてくれという悲鳴が上がったときに、それならと消費税増税を押しつけるということではありませんか。三年間は増税しないというよりも、三年間かけて増税の環境を着々とつくるというのが総理の立場ではありませんか。

 小泉内閣がことし六月に決定した骨太方針二〇〇三では、二〇〇六年度までに、包括的かつ抜本的な税制改革のための「必要な税制上の措置を判断する。」としています。ここで言う「必要な税制上の措置」の中には、消費税率の引き上げも含まれるのではありませんか。含まれる可能性があるのか否か、端的にお答えいただきたい。

 今、問われているのは、二十一世紀の日本の税制の中心に消費税を据えていいのか。税制のあり方をめぐる大問題です。消費税中心の税制を選ぶのは最悪の選択と言わなければなりません。

 消費税は、何よりも、所得の少ない人に重くのしかかる逆累進性を本質とする、最悪の不公平税制です。消費税は、税を価格に転嫁し切れず、身銭を切って納税している多くの中小零細業者にとって、営業破壊税そのものです。そして、消費税が景気破壊税であることは、九七年の橋本内閣によって行われた五%への増税が大不況の引き金を引いたことでも証明済みのことです。こんな天下の悪税を二十一世紀の日本の税制の中心に据える、これが総理の立場でしょうか。

 社会保障充実の財源のためというのが、大増税を主張する勢力の口実です。一九八九年に消費税が導入されたときも、九七年に五%に増税されたときも、この口実が使われました。しかし、消費税導入以来、社会保障は充実どころか、切り捨てに次ぐ切り捨てが続いてきたというのが現実ではありませんか。

 それでは、巨額の消費税の税収はどこに使われたのか。対照的な数字があります。

 消費税導入から十五年間の消費税収の累計は、百三十六兆円に上ります。ところが、同じ時期に法人三税、法人税、法人住民税、法人事業税の税収は、累計で百三十一兆円も落ち込んでいるのです。景気悪化によって法人税収入が減ったことに加え、法人税率を四二%から三〇%にまで引き下げるなど、大企業のための減税が繰り返されてきたためであります。国民の血と汗から搾り取った消費税がほとんどそっくり法人三税の減収の穴埋めに使われてしまったという計算になるではありませんか。

 今、消費税増税の大合唱から聞こえてくるのも、消費税増税とセットで法人税減税をという声であります。日本経団連の提言では、法人実効税率の引き下げを断行せよ、経済同友会の提言では、早期に法人税率を五%下げよ、政府税制調査会の中期答申でも、法人税の引き下げについて今後検討すべき課題と明記しました。

 社会保障の財源のためではなく、大企業の負担軽減のため、ここにこそ消費税増税の真実があるのではありませんか。(拍手)

 二十一世紀の日本の税制のあり方として、庶民に消費税の大増税を押しつけながら大企業の負担はもっと軽くする、こういう方向をさらに進めることを首相は是とするのか非とするのか、はっきり答弁していただきたい。

 日本共産党は、天下の悪税、消費税の廃止を一貫して求めている党です。社会保障を支える財源としては、まず、浪費を一掃する歳出改革を進めるとともに、将来については、負担能力に応じた税負担、応能負担の原則に基づいて大企業や高額所得者に応分の負担を求める、税制と社会保障制度の民主的改革を進めることを提唱しています。

 こうした立場から、消費税大増税の動きを阻止するために、国民とともに全力を挙げて闘うことをここに表明するものであります。(拍手)

 第三は、ルールなき資本主義と言われる現状を打破し、国民の生活と権利を守るルールある経済社会をつくる改革です。

 特に、雇用を支えるルールをつくることは焦眉の課題です。大企業が横暴勝手にリストラ競争を進め、政府がそれを応援するもとで、失業率は戦後最悪を更新し、勤労者の所得が急激に落ち込んでいます。

 我が党は、この危機を打開し、安定した雇用を拡大するために、次の三点を提起するものです。

 一つは、長時間労働を是正し、サービス残業を一掃して、新しい雇用をふやす本格的な取り組みを行うことであります。

 我が党は、サービス残業根絶のために、衆参両院で二百回以上の追及を行い、労働者、家族と一体になった闘いの中で、政府に根絶に向けた通達を出させ、全国で百五十億円を超える不払い残業代を払わせる前進をかち取ってきました。

 しかし、リストラ競争の中で、長時間労働とサービス残業はなおふえ続けています。男性の五人に一人は週に六十時間以上という異常な長時間労働のもとに置かれ、サービス残業は労働者一人当たり年間二百時間を超えると推定され、過労死、過労自殺、心の病など、深刻な事態を引き起こしています。

 第一生命経済研究所の試算では、サービス残業をなくせば百六十万人もの新規雇用が生まれ、国民の所得と消費の拡大によってGDPを二・五%引き上げる景気拡大効果があることを明らかにしています。

 サービス残業を繰り返しやらせる悪質な企業名の公表、入退社時間の記録など労働時間管理を企業の責任で行うことを徹底するなど、この無法行為を本腰を入れて一掃するために、政府挙げて取り組むべきではありませんか。答弁を求めます。(拍手)

 二つ目は、未来を担う若者に仕事を保障することを政府と大企業の責任で行うことです。

 大学を卒業しても、就職率は五五%です。四百十七万人もの若者が、フリーターと呼ばれるアルバイト、パート、派遣社員など、不安定な就労状態に置かれています。しかし、人間は物ではありません。いつでも解雇でき、低賃金で働かせ、教育訓練もしない、そんな使い捨ての労働から明日の日本を担う力が生まれるでしょうか。若者を使い捨てにする企業と社会には未来はありません。

 七月二十三日の党首討論で、私はこの問題を取り上げ、中小企業はこの六年間で若者の正社員の数を三万人ふやしているのに大企業が百八万人減らしている事実を挙げ、大企業に若者の雇用責任を果たさせることを提起しました。総理は、看過できない問題だ、御指摘の点も踏まえて雇用対策に力を入れていきたいと答弁しました。

 そこで伺いますが、大企業に対してどのような実効ある働きかけを行うつもりですか。はっきりお答えいただきたい。(拍手)

 三つ目は、人減らし応援の政治を根本から見直すことです。

 例えば産業活力再生法、リストラを行う企業の計画を国が承認し、金融・税制上の優遇措置を与えるという仕組みは、世界に例がない、全く異常なものです。

 一九九九年の法施行以来、二百十七社が認定され、認定したリストラ計画の人員削減数は八万九千二十五人、減税額は八百十億二千五百万円、労働者一人を減らすごとに企業に九十一万円の減税の恩典を与えたという計算になります。

 私の調べた限り、こんな制度をつくっている国は世界にありません。あるなら挙げてもらいたい。雇用不安を広げる企業に減税という全く逆立ちした政策は、直ちに中止すべきであります。総理の答弁を求めます。(拍手)

 安保・外交で問われる大問題は、こんなアメリカ言いなりの政治を二十一世紀も続けるつもりかという問題です。

 総理は、アメリカ言いなりにイラク戦争を支持し、今また、アメリカ言いなりにイラクへの自衛隊派兵を進めようとしています。しかし、今、国際社会では、この戦争そのものが無法だったことが厳しく追及されています。

 九月二十三日の国連総会での演説で、アナン事務総長は、米英軍の先制攻撃について、過去五十八年間、世界の平和と安定が依拠してきた原則、国連憲章の原則に対する根本的な挑戦であると批判し、もしこれが受け入れられるなら、それが先例となって、正当性のいかんにかかわらず、単独行動主義による不法な武力行使の拡散を招く結果になることを懸念すると述べました。これは極めて重要な言明です。

 総理に質問します。

 米英の先制攻撃を国連憲章の原則への挑戦としたアナン事務総長の批判を認めるべきではありませんか。

 総理は、六月十一日の党首討論での私との論戦の中で、大量破壊兵器はいずれ見つかると思いますと強弁しましたが、それから三カ月、見つからないではありませんか。米国調査団による調査でも、大量破壊兵器は発見できなかったという結論が出されようとしています。戦争支持の口実はことごとく崩れ去りました。米国言いなりに侵略戦争を支持したことの誤りを認めるべきではありませんか。(拍手)

 今、イラクでは、米軍への攻撃が相次ぎ、情勢の泥沼化が進んでいます。無法な戦争への支持に固執し続け、不法な占領支配を支援するための自衛隊派兵を強行すれば、日本もまた同じ泥沼の中に身を沈めることになるでしょう。無法な占領支配の共犯者としてアラブ・イスラムの人々の全体を敵に回すことになるでしょう。

 我が党は、今からでもイラクへの派兵を中止することを強く求めるとともに、派兵法そのものの廃止を要求します。テロ特別措置法の延長に反対し、インド洋に派遣した自衛隊を直ちに撤退させることを求めます。(拍手)

 総理がイラク戦争支持の態度を国会で追及され、苦しくなると持ち出すのは、日米同盟のためという決まり文句でした。しかし、日米同盟のためならば、無法な戦争も支持し、憲法も無視し、どんなことでも許されるというのが総理の考えでしょうか。二十一世紀も日米安保体制を、未来永劫続けるというのが総理の立場でしょうか。米国追従の根源にあるこの体制を絶対不可侵とする勢力には、およそ日本の独立も改革も語る資格はありません。(拍手)

 我が党は、二十一世紀の日本の未来は、日米安保条約をなくし、本当に独立した平和日本をつくることにこそあると確信するものであります。

 憲法九条を壊すのか、それとも憲法九条を生かした平和日本を築くのか、これも二十一世紀の日本の進路を分ける大問題です。

 総理は、自民党結党五十周年に当たる二〇〇五年十一月をめどに党の改憲案をまとめることを指示しました。内閣総理大臣が具体的期日を設けて改憲案の取りまとめを指示したのは、戦後かつてなかったことであり、極めて重大です。

 私は、端的に三つの点について総理の見解を問うものであります。

 第一に、総理は党の改憲案をまとめるというが、一体、憲法のどこをどう変えるというのですか。

 総理は、自衛隊が軍隊であると正々堂々と言えるように憲法を改正するというのが望ましいと明言してきました。総理の改憲論が憲法九条改定を含むものであることは明瞭だと考えますが、まず、はっきりお答えいただきたい。

 第二に、なぜ今、憲法九条改定かという問題です。

 総理は、就任以来、集団的自衛権が行使できないなら憲法を変えた方がよいということを繰り返し述べてきました。これは何を意味するのか。周辺事態法でも、有事法制でも、テロ特措法でも、イラク派兵法でも、自衛隊の米軍への支援活動は後方地域支援に限られるとされ、米軍の武力行使と一体になった支援は集団的自衛権の発動となり、憲法九条に照らして許されないというのが政府の建前でした。この建前すら踏み越えて、米軍が地球的規模で行う戦争に自衛隊が何の歯どめも制約もなしに参加できるようにする、ここに改憲論の目的があるのではありませんか。

 第三に、それでは米軍の戦争とはどのような戦争か。

 イラク戦争が示したように、米国は、先制攻撃戦略と、国連を無視した単独行動戦略を世界戦略の中心に据え、実行に移しています。これへの参戦体制づくりのための改憲は、アナン事務総長が述べたように、国連憲章の原則への挑戦にほかならないのではないでしょうか。

 憲法九条を擁護することは、日本の恒久平和の進路を確保する上で重要であるだけではありません。それは、米国による一国覇権主義を許さず、国連憲章に基づく平和の国際秩序を築く上でも、それと不可分に結びついたものであります。政府・与党に憲法改悪の策動を直ちに中止することを強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 志位議員にお答えいたします。

 自衛隊のイラク派遣についてです。

 イラクへの自衛隊の派遣については、自衛隊を戦闘地域に派遣せず、また、派遣された自衛隊が戦闘行為に参加しないというイラク復興支援法の原則を堅持しながら、現地情勢の調査結果等を踏まえて派遣の可能性を判断してまいります。

 社会保障予算についてでございます。

 社会保障予算は、十五年度予算においても、一般歳出を厳しく抑制する中、主要経費中最大の約十九兆円、対前年度プラス三・九%の伸びとなっております。優先順位を間違えているとの御指摘は当たらないと思います。

 そもそも、我が国の社会保障給付の財源の相当部分は保険料収入であり、保険料負担も国民負担の一部であることから、公費負担のみを取り上げて、その水準を他の経費と比較することは適切でないと考えます。

 公共事業のあり方を見直すべきとのお尋ねです。

 公共投資関係費については、「改革と展望」に沿って、景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安にその総額を段階的に抑制しつつ、魅力ある都市、地方の再生のほか、循環型社会の構築や少子高齢化への対応などの重点分野に大胆な配分を行っているところであり、浪費との御指摘は当たらないと考えます。

 防衛費の縮減が必要との御指摘です。

 自衛隊が今後保有する装備については、厳しい財政事情のもと、防衛関係予算の一層の効率化、合理化を図りつつ、我が国防衛及び国際協力活動上の必要性や周辺諸国に与える政治外交上の影響等を総合的に勘案して、導入の可否を決めてまいります。

 また、特に、最近の弾道ミサイルの拡散状況を踏まえると、弾道ミサイル防衛は、専守防衛を旨とする我が国防衛政策上の重要な課題であります。政府としても、米国と緊密な連携を図りつつ、費用対効果及び将来の我が国の防衛のあり方等を十分検討した上で、弾道ミサイル防衛システムの導入について、主体的に判断してまいりたいと思います。

 在日米軍駐留経費負担についてです。

 在日米軍駐留経費負担は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保する上で重要であり、現下の厳しい財政事情に配慮し、また、一定の節約・合理化策を踏まえつつ、我が国が引き続き負担していくことが適当であると考えます。

 消費税についてです。

 私は、消費税、在任期間中、長くても三年間ですから、引き上げないと言っているんですよ。それをあたかも引き上げるかのように批判していますけれども、そこを間違えないでくださいよ。引き上げないと言っているんだから。引き上げないで、徹底的な行財政改革をやるのが小泉内閣の使命です。

 後のことについては後の総理が決めることであって、それまで敷衍しない、言及しないから無責任というのは当たらない。むしろ、そんなことまでやったら越権行為ですよ、私がやめた後のことまで何々するというのは。無責任でも先送りでも何でもない。在任の三年間は、これから消費税を上げる環境にない。上げる必要はない。その間、徹底的な行財政改革をやる。それを批判されるのはいかがなものか。(拍手)

 サービス残業の解消についてのお尋ねがありました。

 いわゆるサービス残業については、これまでも、監督指導等を通じて企業の労働時間管理の適正化に努めてきたところであります。

 さらに、本年五月には、監督指導の強化を図るとともに、労使の主体的な取り組みを促進するべく、総合的な対策を策定したところであり、政府としては、引き続きサービス残業の解消に努めてまいります。

 若者の雇用についてでございます。

 政府としては、若年者の雇用問題の解決のため、若者自立・挑戦プランを推進することとしており、先般も、関係四大臣より、日本経団連等の経済団体に対し、同プランに対する協力や若年者の雇用拡大等について要請を行ったところであります。

 今後とも、大企業を初め産業界の理解や協力を得ながら、我が国の将来を担うべき若年者の雇用の拡大に努めてまいります。

 産業活力再生法についてです。

 我が国経済が民間主導の持続的な経済成長をできるようにしていくためには、民間のやる気と活力を最大限に引き出していかなければなりません。

 産業活力再生法は、民間の創意と工夫による経営資源の有効活用等を通じて、事業再生や競争力の回復、強化を図ろうとする民間企業の努力を支援する仕組みであります。

 この制度を利用して、国内で最新鋭の工場の建設が進められるなど、我が国産業の活力再生に向けた効果があらわれ始めており、新たな雇用機会の創出につながっていくものと考えます。

 今後とも、この制度の活用などを通じて、経済の活性化を図ってまいります。

 イラクに対する武力行使についてでございます。

 アナン事務総長が一般論として武力行使のあり方について問題提起を行ったことは承知していますが、米国等による対イラク武力行使は、関連する安保理決議に合致するものであり、国連憲章にのっとったものであると考えます。

 イラク人道復興支援法とテロ対策特措法の廃止についてでございます。

 テロとの闘いは終わっておりません。我が国がその闘いに参加するのをやめたら、むしろ、国際社会の信頼を損ねるものになるのではないか。

 また、イラク人道復興支援法は、イラクの復興と安全確保を支援することを目的とするものであります。

 多くの国が、今、イラクの国家再建を支援しようとしている中で、我が国が参加しないということで、どうして国際協調を保つことができるのでしょうか。私は、イラク人道復興支援法及びテロ対策特措法を廃止すべきとの御指摘には同意できません。

 日米同盟及び日米安保体制についてでございます。

 日米安保体制は、我が国の平和と安全のための基本的な枠組みとして有効に機能しており、今後とも、その堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとしてまいります。

 また、世界の問題を世界の国々と協調しながら解決していく原動力としての世界の中の日米同盟を一層強化する方針であります。

 違法な戦争を支持したり憲法を無視しないことは、当然であります。

 憲法改正についてであります。

 二年後にはちょうど自民党が結党五十周年を迎えます。一つの節目として、党として憲法の改正案を取りまとめて国民的議論を喚起することは、私は有意義であると考えております。

 小泉内閣において、二年後ですから、自民党は二年後に憲法改正案、素案をまとめる。そうしますと、各党もいろいろ案を出してくるでしょう。国民的議論が巻き起こります。そういうことを考えますと、私の任期三年間で、現実の政治課題として憲法改正を取り上げることは非常に難しいと認識しております。

 しかし、憲法は不磨の大典、絶対改正してはならないというものではありません。時代に合った憲法改正を政党が議論するのは、何らおかしいことじゃない、むしろ当然のことだと思っております。

 憲法九条や自衛隊のあり方も含め総合的に議論して、政党としての案をまとめて、国民的な議論の参加のもとで、あるべき憲法改正論を今後ともまとめていくべきだと思っております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。

    〔土井たか子君登壇〕

土井たか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、小泉内閣総理大臣に質問いたします。(拍手)

 質問に入ります前に、このたびの北海道十勝沖地震で被災された道民の皆さん、自治体の皆さんに心よりお見舞いを申し上げます。被災された方々の支援や、破壊されたライフラインの一刻も早い復旧、今後の地震に備えた防災対策の確立を強く政府に求めます。

 さて初めに、疑問と苦言を呈しておきたいと思います。

 小泉総理大臣は、一体何のために今臨時国会を召集し、所信表明演説をされたのでしょうか。演説は、小泉内閣が始まって以来、最もおざなりで、熱も内容もないものでした。

 今国会の最大の課題は、テロ対策特措法の延長問題でありましょう。しかし、所信表明の中でテロ対策特措法に触れた部分はわずか三行、予定された審議日程を見ても、到底、この問題をまともに議論しようとする姿勢はうかがえません。

 最初に解散ありきというのが見え透いているのではありませんか。解散日程の方がこの国会の審議日程よりも大切だとお考えなのでしょうか。国会の審議が、解散の日取りのために削減されたり、不十分な討議しか考えられないような取り扱いに合わせて、所信表明もおざなりにされたのでしょうか。

 その解散も、何ゆえの解散か、大義がはっきりいたしません。それならば、明らかに国会軽視であり、みずからの権力維持と与党の都合によって恣意的に解散を行おうとしているのではありませんか。それは国民の負託を軽視することではありませんか。このような政治手法、政治姿勢こそが改めて小泉内閣不信任に値すると言わなければなりません。(拍手)

 まず、今国会の主題であるテロ対策特措法の延長問題について伺います。

 テロ対策特措法は、米軍のアフガニスタン攻撃を後方支援するために自衛隊を派遣する法律であって、海外派兵を禁ずる日本国憲法に違反することは言うまでもありません。テロ対策特措法は、米英の艦船に対する燃料補給が目的とされています。しかし、海上自衛艦がインド洋に派遣されて以来二年間、自衛艦の行動や経費について、政府はその詳細を明らかにしておりません。この特措法の延長を問題にするのであれば、まずは、この二年間の活動について検証し、かつ、総括することが不可欠ではありませんか。お答えください。

 イラク戦争に参加した米空母キティーホークの艦長は、キティーホークの機動部隊がイラク戦争中に海上自衛艦から約八十万ガロンの燃料補給を受けたことを明らかにしています。これでは、米軍のイラク攻撃への間接支援どころか、直接支援そのものであって、法の範囲を著しく逸脱することは明白ではありませんか。そのほかにも、ペルシャ湾やインド洋北部でどのような対米軍支援が行われているのか、その実態は軍事機密を口実に全く明らかにされておりません。これらを明確に説明することが、国会による自衛隊の文民統制にとって極めて重要であります。

 テロ対策特措法の延長の目的が、イラクの米軍支援にもつながる危険性をはらんでいます。アメリカのラムズフェルド国防長官は、この五月に、アフガニスタンでの作戦に区切りがついたとの見方を示しています。インド洋に展開する自衛艦は直ちに引き揚げさせるべきであり、法を延長することなど、認められるはずはありません。しかも、このようなときに時間をかけた審議を省略して、この危険な法案延長を自動的に図ろうとする政府・与党の物の考え方は、論外であります。総理の御認識を伺います。

 さらに、ここで、どう考えてみても許されない、イラクへの自衛隊の派遣、派兵について伺います。

 小泉内閣はブッシュ政権の強い要請を受けて年内にもイラクに派兵する方針を固めたと報じられています。この派兵は幾重にも誤ったものであって、国民の利益にも反し、将来に甚だしい禍根を残すものだと思います。

 総理は、さきの通常国会で、自衛隊の活動する非戦闘地域について、「どこが非戦闘地域でどこが戦闘地域かと今この私に聞かれたって、わかるわけないじゃないですか。」と開き直った答弁をされました。今回、派兵の時期を決められたということですから、その非戦闘地域が見つけられたので地上部隊を中心に派兵すると理解していいのでしょうか。ならば、非戦闘地域はどこに決定されたのか、お聞かせいただきたいと思います。

 また、事もあろうに派兵の時期を総選挙後に持っていこうというこそくな考え方は、国民に信を問う誠実な態度とは縁もゆかりもありません。国民を愚弄するものです。総理、はっきりお答えください。

 そもそも、イラクへの自衛隊の海外派兵については、私は、以下五点にわたって申し上げたいと思うのです。

 第一は、米英のイラク侵攻は国連憲章、国際法に違反した正当性のない戦争行為です。

 米英が最大の大義名分とした大量破壊兵器は結局見つからず、うその情報、誇張された脅威によって国民を戦争に駆り立てたとして、今、ブッシュ政権もブレア政権も、国内で苦境に立たされています。イラクの占領は、正当性のない戦争の継続としての占領ではありませんか。

 日本からの派兵は、大義なき戦争、不正、不当な占領を認め、それに加担することになります。だからこそ、戦争に反対したフランス、ドイツ、ロシア、中国のみならず、戦争を支持したパキスタンもインドもトルコなども、派兵を行っていないのです。国連加盟の百九十一カ国のうち百五十八カ国の多数の国々は、派兵しておりません。

 二つ目には、自衛隊のイラク派兵は明らかに憲法に違反する海外派兵に当たります。

 自衛隊創設のとき、参議院は、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、この決議を国会決議として行って、海外出動はこれを行わないことを改めて確認しました。海外派兵とは、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することであって、それは自衛の必要最小限度を超えるものと政府は判断してきたのです。

 イラクへの派兵は、憲法も国会決議も、そして、今までの政府見解も踏みにじるものであることには間違いありません。

 三つ目に、米英占領軍への加担は派遣される自衛隊のみならず日本国民全体を危険にさらします。

 テロ集団による理不尽な攻撃という一面はあるでしょうけれども、大きな流れとして見れば、イラク国民あるいは周辺の中東諸国は戦争と占領に激しく反発しており、その結果が現在の米英軍への連日の攻撃となってあらわれています。もし占領に加担すれば、攻撃の矛先は、必ず、自衛隊のみならず日本国民にも向けられるでしょう。

 これまで、イラクを初め中東諸国は、日本に対して好意的でした。それは、中東諸国に対して、日本は植民地支配や軍事介入などを行ってきていないからです。なぜ、これまでの友好的な関係を裏切り、また、日本国民を危険にさらす決断をする必要があるのでしょうか。

 第四に、海外派兵は専守防衛を信じて自衛隊に応募した自衛官やその家族たちに対する契約違反に当たります。

 一体、自衛官のだれが、敵意に満ちたイラクの地に派遣されると予想していたでしょうか。派遣されれば、現在の状況は、小泉総理も認めておられるとおり、当然、死を覚悟しなければなりません。また、相手を殺すことも十分あり得ましょう。

 また、イラクの国土は、米軍が使用した劣化ウラン弾によって汚染されています。この問題で、社会民主党は、川口外務大臣に対して、幾たびとなく、その使用の有無を尋ねてきました。その答弁は、アメリカに問い合わせるという一辺倒のものでした。しかし、先日放映されたテレビ番組で、米軍のブルックス准将は、その使用をはっきりと認めています。

 また、イラクは小規模ゲリラ戦の戦場であることは、元防衛庁教育局長である小池加茂市長が指摘しておられるところです。

 被爆地でありゲリラ戦場であるイラク、そこに送り込まれる自衛隊員は二重の危険を背負うことになるのではありませんか。私たちは、そのような場所に日本の若者を送り出すことに同意できません。

 第五に、イラク派遣は国民の願いと意思に反します。

 ある新聞の調査によれば、イラクへの自衛隊派遣を可能にする法整備に賛成はわずか二%、逆に、間違っていたと思う人は四三%にも上ります。国民の多くは、自衛隊のイラク派兵を望んでいないのです。

 私は、断固として、自衛隊のイラク派兵に反対いたします。(拍手)

 そこで、具体的に総理にお聞きします。

 十月十七日に、総理はブッシュ・アメリカ大統領と首脳会談を予定されています。巷間伝えられているところによれば、テーマは、イラク復興へ向けた自衛隊派遣の催促と経費負担についてだそうです。アーミテージ国務副長官によると、日本の貢献が大きいものになるだろうということについて何ら疑問を持っていないと、莫大な日本の負担を暗示しておられるのが報道されております。

 総理は、この不況のさなかに幾ら経費負担をするおつもりですか。それは何のための費用ですか。戦費ですか、何ですか。具体的にお答えいただきたいと思います。また、今後もこの負担が長く続くと思われますけれども、一体、財源はどこから捻出するおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。

 さて、一昨日、私は、沖縄に参りまして、宜野湾の伊波市長から、普天間基地を一望できる嘉数高台で説明を受けました。すさまじいヘリ騒音をもたらす基地と隣り合わせで暮らす市民の悲鳴が聞こえてくるようでした。

 総理は、今回の所信表明演説で、日米同盟重視を訴えられていますけれども、肝心の、沖縄にある米軍基地の整理縮小問題、懸案の日米地位協定の改定問題については、一言半句も触れられませんでした。アメリカに何も注文をつけない、言われたとおりにするというのが総理の日米同盟の緊密化ということでしょうか。この間、立て続けに米軍の不祥事が沖縄では起きております。沖縄では、総理の演説で全く基地問題に言及がなかったことに深い失望がわき上がっているのを私は目の当たりにいたしました。

 今回の日米首脳会談で、過重な負担を強いられている沖縄の米軍基地問題について、総理はアメリカに解決を迫るおつもりがあるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

 次に、小泉総理は、所信表明演説で、最近上向きに転じたかに見える経済動向を、御自身の構造改革の成果と誇って、日本再生の芽が出てきたと自画自賛しておられます。

 確かに、株はこの夏から上昇して一万円台を回復し、企業の設備投資も増加しているようです。しかし、国民の生活実感からすれば、景気がよくなった、生活が楽になったなどということは到底言えません。町を走るタクシーに乗りまして運転手さんの話を聞いてみれば、たちどころにわかります。お客さんが全然乗ってくれないというのです。ラジオが景気上向きと言うのを、運転手さんはみんな、首をかしげて聞いています。いわば実感なき景気回復です。

 好調なのは輸出であり、株を買っているのは主に外国人投資家です。しかし、輸出は円高によって脅かされています。世界じゅうに投資先が見つからず、安い日本株に飛びついた外国人投資家も、そう長く買い続けるとは思えません。現在の好調は、いつまで続くかわからない、非常に不安定なものであると私は思います。

 本当の景気回復とは、GDPの六割を占める個人消費が動き始めるところから始まると思います。現在、最大の問題は、失業率が一向に下がらず、高どまりしていることです。また、地域経済が疲弊のどん底にあることです。安定した職につくことができ、町が活発に動いてこそ、国民は財布のひもを安心して緩めることができるのではありませんか。

 二年半に及ぶ小泉政治は、国民生活を悪化させ、安心を奪い、将来への希望を失わせました。国民の二割が貯蓄を持っていないという最近の衝撃的な調査結果がその象徴です。不平等が拡大しています。正規雇用が百七十万人も減り、不安定で低賃金の派遣、パートなど不正規雇用に移動しました。特に、若い人に仕事がない状況は深刻です。これでは、年金が空洞化して破綻寸前に追いやられるのも当然です。

 そして、景気が悪く、格差が拡大して、現在にも将来にも希望が持てない中で、人々はせつな的になって、自殺や犯罪がふえていくのです。これは統計からも明らかです。日本社会の安全が脅かされ、安心が失われたのは、小泉構造改革の帰結だと思います。

 必要なのは、警察官の増員や入管体制の強化だけではありません。競争だけでなく、信頼と連帯の精神があって初めて安定した社会が成り立つのではありませんか。信頼できる年金制度、保険制度が求められているのです。小泉改革は、この信頼の基盤を破壊しました。総理の御認識を伺いたいと思います。

 また、小泉総理は、年金改革について、具体的な構想を何一つおっしゃいませんでした。支給年齢は引き上げ、給付水準は引き下げ、そして保険料は引き上げるでは、何の改革でもありません。

 社民党は、まず、約束どおり、基礎年金の国庫負担二分の一への引き上げを即刻実現するよう求めます。総理の御見解を承りたいと思います。(拍手)

 私は、戦争に対する猛反省から生まれた現在の憲法こそ、国民が安心して、平和に、豊かに、そして文化的に生きる権利を保障する礎である、この信念から、憲法を政治に生かすことが私が政治家になった出発点です。その私にして、まさか戦前と見まがうような時代に生きるとは、よもや思ってもいませんでした。昨今、新聞を見ますと、投書欄を見たときに、戦前戦中を経験している世代の方々が、現在の政治のあり方、社会の風潮に強く警鐘を鳴らしておられます。

 平和に生きたいと願う私たちのまさに対極にあるのが小泉内閣ではないのですか。

 聞こえてくるのは、ワンフレーズと呼ばれる軽い言葉と、将来への責任を放棄したその場しのぎの答弁と、慎重さを欠いた武力への信奉だけであります。総理は改革推進内閣と言われていますが、実は改憲推進内閣というのが当たっているのではないでしょうか。

 憲法とは、その規定に基づいて議員や政府が立法や行政を行うという、いわば公権力の国民に対する契約ともいうべき根本法です。公権力は、憲法によって縛られていることを了承して、その限りにおいて国民から権力の行使を認められているわけです。だからこそ、憲法九十九条で、総理も私たち一人一人の国会議員も、憲法擁護の義務を課せられているのです。私は、今改めて小泉総理の憲法観を問いただしたいと思います。

 繰り返し申し上げます。憲法の軽視は、立憲主義の否定であり、法治主義の破壊であり、民主主義の破綻であります。小泉内閣の姿勢は、将来に恐るべき禍根を残すでありましょう。(拍手)

 最後に、私は、一九三六年の二・二六事件の直後に衆議院のこの場所で行われた、斎藤隆夫議員の有名な粛軍に関する質問演説を各議員、国民の皆さんに想起していただきたいと思います。

 斎藤隆夫議員は、私の尊敬する議員です。今にして議会史に残る名演説と言われる、心血を注いだ反軍演説を命がけでこの演壇で行われました。斎藤議員は、戦後、進歩党を結成し、第一次吉田内閣の国務大臣となり、また、民主党の最高委員でもあったのですから、ただいまの自民党の皆さんの大先輩に当たることを申し添えておきます。

 一九三六年当時、日本は、大変な不況のもとで軍部が権力を強めていった時代です。五・一五事件や二・二六事件などを通じて軍閥がばっこするようになった日本の状況に対して、政府と議員の怠慢を強く戒めて、その時々に対応を怠ったならば取り返しのつかないことになるとの警鐘を鳴らした斎藤隆夫議員の演説です。

 その演説の一節に、このようなことわざが引用されています。「寸にして断たざれば尺の憾あり、尺にして断たざれば丈の憾あり、たとえ一木といえども、これを双葉のときに伐取ることは極めて容易でありますが、その根が地中に深く蟠居するに至っては、これを倒すことはなかなか容易なことではない、」斎藤議員が、古くからのことわざである頼山陽を引用して、このように警告されています。

 若い皆さんには、「寸にして断たざれば尺の憾あり」という言葉がわかりにくいかもしれませんが、寸というのは尺貫法で長さの単位でありまして、一寸先はやみというあの寸です。三センチちょっと、三・〇三センチメートル。尺はその十倍、丈はさらにその十倍を指して言われておりますから、それからいうと、物事は早くそのことに対してしっかり対応しないと、後で手おくれになってからではできることではないということを言われているわけです。

 この警鐘を鳴らされた名演説にもかかわらず、そのうち日本は、軍を統制することができずに日中全面戦争へと突き進んで、破滅へと転がり落ちていくわけです。

 今、ここで、イラクへの派兵をやめなければ、必ず、次の派兵が準備されます。しかも、特措法や時限法ではなく、これはイラク特措法、テロ特措法が特措法や時限法であるわけですから、このような特措法や時限法ではなく、自衛隊をいつでも海外へ派遣できるようにと、自衛隊海外派遣のための恒久法を目指す動きが出てきているではありませんか。

 自衛隊が殺し殺されるという状況が当たり前になれば、日本社会の変質もまた起こってまいります。今私たちが当然に享受している、平和的に生きる権利が奪われてしまうでしょう。そして、憲法第九条が消えてなくなるようなことにでもなれば、それこそ取り返しがつかないことになります。いつか必ず、私たちの息子たち、あなたたちの娘たちが徴兵され、戦地に追いやられる日が間違いなくやってきます。

 そのような悲劇を二度と繰り返さないために、私たちは戦後、平和憲法を掲げ、守り通してきたのです。小泉政権が行おうとしているのは、反憲法そのものであって、この延長上に待っているのは奈落の底ではありませんか。

 悲劇の芽は、双葉のときに刈り取らなければなりません。

 各議員、国民の皆さんに心から訴えます。

 私たち社会民主党は、新たな社会への変革を提言いたします。そして、目指すべき新たな基礎に、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重を理念とする日本国憲法を置きます。

 国際間においては、わけてもこの北東アジアに、米国も中国もロシアも朝鮮半島も、同盟国のすべてが席を同じくする多国間の協調システムを確立して、北東アジア総合安全保障機構をつくっていくことを、既に社民党は二十一世紀の平和構想として提唱しています。

 社民党は、核も不信も戦争もない北東アジアを実現するため、当面する北朝鮮の核開発問題、拉致問題の早期解決に力を尽くしていくことを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 土井議員にお答えいたします。

 テロ対策特別措置法に関するお尋ねです。

 テロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊の活動については、これまで約百二十一億円の艦船用燃料を提供していますが、同法に基づく我が国の対応措置は、国際テロの防止及び根絶に向けた国際社会の取り組みに寄与するために行われているものであり、イラクの米軍支援を目的としているものではありません。

 我が国としては、国際社会によるテロとの闘いが継続している状況のもとで、国際協調のもと、テロとの闘いに引き続き積極的かつ主体的に寄与していくことが重要であり、テロ対策特別措置法の延長法案の成立に万全を期してまいります。

 自衛隊のイラク派遣についてです。

 イラクへの自衛隊の派遣については、自衛隊を戦闘地域に派遣せず、また、派遣された自衛隊が戦闘行為に参加しないというイラク復興支援法の原則を堅持しながら、現地情勢の調査結果などを踏まえて、派遣の可能性、時期等を判断してまいります。

 イラク復興支援は、国際社会の重要課題であり、国際協調のもと、我が国にふさわしい貢献を行ってまいります。ブッシュ大統領が我が国を訪問した際には、こうした考え方に基づき意見交換を行う考えであります。

 在沖縄米軍基地問題についてでございます。

 在日米軍施設・区域の集中による沖縄県民の多大な負担は十分承知しており、前回の日米首脳会談でも、その認識で一致したところです。また、いろいろな機会をとらえ、その軽減に引き続き努力してまいります。

 構造改革が安定した社会の基盤を破壊したのではないかとの御意見でありますが、私が進める構造改革が目指すのは、自助と自立の精神のもと、国民一人一人や企業が安心してみずからの能力や個性を十分に発揮できる活力ある社会の実現であります。

 このため、就任以来一貫して、国民が安心して暮らせる社会の実現を改革の目標に掲げ、国民の不安を取り除くため、雇用や中小企業のセーフティーネットに万全を期すとともに、社会保障制度改革、治安対策の強化などに取り組んでまいりました。

 構造改革が社会の基盤を壊しているとの批判は当たりません。むしろ、構造改革をしないことによってますます日本経済が衰退していくことを恐れております。引き続き、国民一人一人や企業、地域の前向きな挑戦を支える改革を進め、活力ある明るい日本の未来を築いてまいります。

 年金改革に対しての考えでございます。

 平成十六年の年金改革については、これまでも、関係大臣などから議論のための案の提示があり、また、経済財政諮問会議でも具体的に取り上げてまいりました。

 今後、現役世代の負担が過大なものとならないよう、給付と負担の見直しを行うなど、若者と高齢者が支え合う、公平で持続的な制度を構築することが必要であります。

 また、基礎年金の国庫負担割合の引き上げについては、法律の附則にあるように、基礎年金の給付水準及び財政方式を含めてそのあり方を幅広く検討し、安定した財源を確保する必要があります。こうした点について国民的な議論を深め、年内に成案を取りまとめてまいります。

 憲法観についてでございます。

 憲法の基本理念であります民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、これまで一貫して国民から広く支持されてきたものと私は受けとめております。将来においてもこれを堅持すべきものと考えます。

 同時に、自分たちの憲法として憲法改正について議論をすることは常に許されるべきものと考えております。その意味で、二年後、自民党、ちょうど結党五十周年の節目に当たりますので、党としての改正案を取りまとめて国民的な議論を喚起することは、有意義なことであると考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 熊谷弘君。

    〔熊谷弘君登壇〕

熊谷弘君 私は、保守新党を代表し、小泉総理の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)

 初めに、第二次小泉改造内閣発足直後の九月二十六日、十勝沖地震が北海道地方を襲いました。被害を受けられた方々、負傷された方々に対し心からお見舞い申し上げますとともに、政府に万全の対策を求めるものでありますが、十勝沖地震の被害の状況、政府の対応について、まずもって井上防災・有事法制担当大臣にお伺いします。

 さて、自由民主党の総裁選において見事な勝利をおさめられた小泉総理に対し、心からお祝い申し上げます。

 保守新党は、連立三党の信頼と協力関係を一層強化し、小泉内閣を支え、経済の立て直しを初めあらゆる分野での改革の推進に取り組んでまいる決意であることを、まずもって表明いたします。

 総理は、所信表明において、構造改革なくして日本の再生と発展はないとの信念のもと、構造改革路線を堅持し、改革の芽を大きな木に育てていくとの方針を明示されました。私ども保守新党としては、まさに我が意を得たりという思いであります。総理の姿勢は多くの国民の共感を呼んでいるものと確信いたします。

 問題は、改革の方向とその進め方であります。限られた時間でありますので、焦点を絞って数点お伺いいたします。

 まず、経済であります。

 総理も述べられているように、構造改革の成果が、いまだ芽の段階ではありますが、あらわれつつあることは明らかです。日本経済の構造問題とは供給過剰にありと言われてきました。過剰設備、過剰債務が指摘され、不良債権問題もまた、この文脈で大きな問題とされてきたのであります。こうした供給面について言えば、着々と成果があらわれつつあることは、評価されるべきところであります。

 しかし、需要面から見ますと、米国経済の動向に左右されるリスクは大きく、我が国みずからのマクロ経済運営による景気回復、デフレ克服策が今ほど重要な時期はないと考えるのであります。

 開放経済、すなわち、人や物やお金が国境を越えて自由に動き回る経済のもとで、財政政策を景気政策の手段とすることは必ずしも有効ではないというのが今日の経済学の教えるところでありますが、それだけに、金融政策は極めて重要であります。このことは連立合意に明記されておるところであり、総理も、本年の年頭所感において、この点を強調しておられました。金融政策の一翼を担う日本銀行も、新体制のもと、総理の目指す方向への協力姿勢もおぼろげながらうかがえるのであります。

 小泉内閣は名目成長率二%強を目標に掲げていることは、この意味で極めて重要であります。名目成長率が持続的にプラスになることこそ、構造改革の成功と日本経済の再生のかぎであります。財政金融政策といいますが、適切な需要拡大のための戦略思考を持って経済運営に当たられることを切望するものであります。

 この十年、アジアにおける最も劇的な変化は中国の台頭と日本の衰弱であると、米国の外交雑誌「フォーリン・アフェアーズ」で米国の外交専門家は述べています。総理も述べておられるように、悲観的にしか物を見ないのも問題ですが、根拠なき楽観がどのような悲劇を生むのか、我々は嫌というほど体験してきています。構造改革も、日本経済再生も、これからが勝負であります。この点について、総理の御認識を伺いたいのであります。

 さて、市場原理、効率を重視する経済は我々に何をもたらすのでしょうか。かつて、サッチャー革命を行い、大きな成果を上げた英国で、今最もはやっているのは、かつて共産主義諸国の中ではやった、「資本主義は人が人を搾取するものだ。共産主義のもとでは、それがちょうど逆になっている。」という古いジョークだそうであります。

 この十年、我が国の経済社会の最も大きな変化は、二極化、すなわち、勝ち組と負け組、強者と弱者の二極分化ではないでしょうか。一方に自殺者とホームレス、他方にブランド店に群れをなす人々。毎日のように完成していく巨大ビルが空に伸びていく東京と、シャッター通りとなっている地方都市。地域ですら勝ち組と負け組に分かれ始めているようです。

 総理は、今の痛みに耐え明日をよくしてと述べられました。この言やよしであります。明日はよくなると思うから、人々は今の痛みに耐えるのであります。

 人生の出発点において就職先が見つからない、若者たちは定職もなく社会的訓練もされず放置される社会が明るい未来なのでしょうか。数百万人に及ぶと言われるフリーターたち。ウイナー・テークス・オール、勝者はすべてをとる社会がよい社会とは到底思えません。ならば、かつての社会主義とやゆされた旧日本株式会社方式に戻るのか。このやり方がだめだったからこそ、構造改革の旗が掲げられているのであります。

 この矛盾を根本的に解決するのは、成長政策しかありません。社会をゼロサムゲームにするのではなく、ウイン・ウイン、すなわち、社会のすべての参加者が勝者となるゲームにすべきなのであります。

 かつて、巨大な政府と化したニューディール体制に挑戦し、小さな政府を目指してレーガン革命と言われる改革が試みられたとき、この改革を成功に導くためには成長政策が重要と主張した当時のケンプ下院議員が、実はレーガン革命を真に成功に導いた人だとされているのであります。

 総理が、雇用問題、中小企業対策、地方の活性化など、さまざまに目配りされた跡は高く評価するのでありますが、これらの施策の成功いかんは、総理の掲げた名目成長率をプラスにという目標が達成されて初めて可能になるものと考えるのであります。

 次に、外交・安全保障について伺います。

 日米同盟と国際協調が日本外交の基本という総理の認識は、ほとんどの国民が共有するものであると考えます。

 問題は、国際社会に地殻変動ともいうべき変化が起こっていることであります。イラク問題や北朝鮮問題をめぐる各国の動きを見ると、まさに国益と国益のぶつかり合う冷厳な現実の中で、日本の国益とは何か、それを守るためにいかに振る舞い、行動していくべきかを考えるとき、みずからの国の国益はまずみずから判断し、これを守るためにみずからの足で立つ日本に立ち戻るべきことを痛感するのであります。

 総理は、イラクに対し、各国と緊密な連携協力のもと、人道復興支援を進めると述べられました。現実には、国際社会がイラク問題をめぐって深い対立を抱えていることは周知のとおりです。各国に聞くのではなく、まず、我が国はいかに対応するべきかの判断が我が国自身になければなりません。

 同盟とは、苦楽をともにすることであります。イラク問題や北朝鮮問題の突きつけていることは、観念論ではなく、現実の問題として日本の国益を守るためになさねばならぬことは何かということであります。楽しいときだけのおつき合いでは、同盟関係は維持できません。かつて、フランスのドゴール大統領がこう発言したといいます。「同盟とは、バラの花々のようなものだ。生き生きしているのはわずかなときでしかない。」同盟関係を維持するのは、まことに苦労の絶えない作業の連続なのであります。

 総理は、総裁選のさなか、憲法改正の検討を示されたと承知しておりますが、所信表明では、この問題に触れられませんでした。

 かつて十年前、北朝鮮問題が現在と酷似する局面の中で当事者として苦悩した者として、国際社会を生き抜く最低限の国家のあり方を考えるとき、憲法問題は避けて通れないことを申し上げたいのであります。特に、北朝鮮が核開発やミサイル開発を進めている今日、抽象論ではなく、具体的な課題としてとらえるべきと考えるのであります。

 安全保障の問題に関連し、さきの国会において、武力攻撃事態対処関連法、いわゆる有事法制が同僚議員の圧倒的賛成をもって成立いたしました。しかし、有事法制は、国民保護法制や日米同盟に基づく日米協力の具体化があって完璧になるものと思います。国民保護法制の整備は、附帯決議において、一年以内を目標とすることになっております。その後の検討状況について、総理及び井上担当大臣に伺います。

 最後に、教育問題について伺います。

 日本発展の原動力は人だと総理は述べられました。しかし、教育現場に何が起こっているのか、総理も我が党の山谷えり子議員とのさきの国会における予算委員会での質疑の中で理解されたものと存じます。

 しかし、教育における問題は、それにとどまりません。大学の現場で、中学や高校の教科書を使いながら補習授業をしなければ大学の基礎的教育もできないほど、学力低下の危機に陥っているのであります。

 総理は、教育基本法の見直しに精力的に取り組んでいくと、その所信を披瀝されました。教育改革の重要性を認識していただいて、いま一層の教育改革への強い決意を国民に示していただきたいのであります。

 二十一世紀に突入した今日、国家日本の大計にかかわる教育改革は、国政の緊急にして重要な課題であります。教育改革についての総理の見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 熊谷議員にお答えいたします。

 マクロ経済運営による景気回復とデフレ克服についてでございます。

 民間の活力と地方のやる気を引き出し、デフレの克服と経済の活性化を実現することは、小泉内閣の重要な使命だと認識しております。

 デフレは複合的な要因によるものであり、デフレ克服あるいは景気回復に特効薬、即効薬はあるとは思いません。既に、雇用者数あるいは民間企業設備が増加しておりまして、名目成長率がプラスに転ずるなど、経済には若干明るい兆しも見えてきております。

 政府としては、こうした明るい兆しを確かなものとできるよう、引き続き、日銀と一体となってデフレ克服を目指しながら、金融、税制、規制、歳出の各分野にわたる構造改革を進め、創造的な企業活動の促進や地方経済の活性化などを通じた民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく考えであります。

 また、日銀においては、今後とも、金融・資本市場の安定とデフレ克服を目指し、政府との対話を密にしつつ、実効性のある金融政策運営を行っていただけるよう期待しております。

 我が国の外交・安全保障の基本的方向性についてでございます。

 これは、申すまでもなく、我が国の安全と発展を確保するためには、その基礎となる国際社会の平和と安定を実現することが必要であります。このような考え方に基づき、日米同盟関係と国際協調を日本外交の基本とし、国際社会が直面する課題に積極的に対応してまいりたいと思います。

 憲法改正についてのお話でございます。

 これは、先ほども申しましたように、二年後、自民党結党五十周年という一つの節目に、我が党として一つの改正案を取りまとめてみたいと思っております。現在、党に対しまして、国民的議論を喚起することが非常に有意義であると思うので党としての案をまとめてほしいと指示しております。

 考えてみますと、二年後にまとめたときに、そのときに各政党がどういう対案を出されるか、また、国民的議論がどうなるのか、そういうものをよく見きわめて、現実の政治課題としていくべきものだと思います。

 率直に申しまして、私はどんなに長くやってもあと三年しかありませんので、私の内閣、私が首相でいる間、現実の課題になるのは非常に難しいと思っておりますが、国民的議論を喚起して、多くの方々が憲法は自分たちのものだという認識を持てるような議論がなされるのが好ましいものだと思っております。

 有事法制の整備についてでございます。

 国と国民の安全の確保は国家存立の基盤をなすものであり、そのための法制の整備は、我が国の平和と安全を確保する上で極めて重要であります。

 政府としては、このような考え方のもと、国家の緊急事態への対処に万全の体制を整備するため、国民の保護のための法制の整備に迅速に取り組むとともに、米軍の行動の円滑化等に必要な法制の整備などを図っていく必要があると考えます。

 教育改革についてです。

 日本発展の原動力は人であり、教育改革の推進は国政上の最重要課題の一つであります。画一と受け身から自立と創造へという理念のもと、習熟度別指導の推進などにより、確かな学力と豊かな心の育成を目指した学校教育の改革を進めるなど、家庭、地域、学校が一体となって、新しい未来を切り開く人材の育成に取り組んでまいります。

 教育基本法の見直しについては、国民的な議論を踏まえ、また、与党とも十分協議しながら、今後とも精力的に取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣井上喜一君登壇〕

国務大臣(井上喜一君) 熊谷代表にお答え申し上げます。

 質問は二点でございまして、十勝沖の地震、有事法制でございます。

 この九月二十六日に、十勝沖を震源とする大変大きな地震がございました。まずもって、被災されました皆さん方に心からのお見舞いを申し上げる次第であります。

 現在の被害状況につきまして、人的被害としましては、行方不明者が三名、負傷者が五百九十一名、住家被害としては、全壊七棟、半壊十五棟となっております。また、苫小牧で製油所のタンク火災が発生いたしております。さらに、道路、河川、港湾等の公共施設、農林水産業関係あるいは学校施設に被害が出ておりますほか、今なお断水中の地域がございます。

 政府としては、発災直後に官邸の危機管理センターに関係省庁の幹部が参集いたしまして、情報収集あるいは応急対策等の対応を講じてまいりました。さらに、総理の指示によりまして、関係十二省庁三十六名、佐藤内閣府副大臣のもとに、被災当日の二十六日から二十七日にかけまして北海道に派遣いたしました。

 同調査団は、港湾、道路、河川等の公共施設や小学校等の被災箇所を調査し、また、避難所におられます被災住民の方々にもお会いしてまいった次第であります。地元公共団体からは、速やかなる災害復旧それから財政支援等につきまして要望があったところであります。

 政府としては、調査結果や地元の要望を踏まえまして、応急対策や被災地の速やかな復旧復興につき、政府一丸となりまして対応を行うとともに、今回の災害を踏まえ、今後とも地震防災対策に万全を期してまいる考えでございます。

 次に、有事法制でありますけれども、御案内のとおり、さきの通常国会におきまして、有事三法が成立いたしました。これらの法律は国家の有事にその対処の基本を提供いたすものと考えておりますけれども、この法律の制度が有効に機能するためには、国民保護法制なり、米軍の行動が円滑にいくような法律がぜひとも必要でございます。来るべき国会を目指しまして、今、その国会に法案を提出すべく精力的に作業中でございます。

 なお、国民保護法制の検討状況につきましてもお触れになりましたけれども、これは、国民保護法制整備本部、内閣にございますが、これを中心に検討作業が進んでおります。六月に第一回目の本部の会合、それから、八月には都道府県知事との意見交換会を実施いたしたところでございます。

 これから、法案の要旨を公表いたしまして、地方公共団体あるいは関係機関の意見をお伺いするなど、国民の皆様方の幅広い御理解を得つつ、保護法制の整備の作業を進めてまいります。先ほど申し上げましたように、来年の通常国会には法案を提出いたしたい、そのように考えている次第であります。

 以上であります。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十八分散会




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