衆議院

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第4号 平成16年1月27日(火曜日)

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平成十六年一月二十七日(火曜日)

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  平成十六年一月二十七日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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議長(河野洋平君) 御報告することがあります。

 元本院議長坂田道太君は、去る十三日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 つきましては、議院運営委員会の議を経て坂田道太君に対する弔詞を贈呈することといたしました。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに本院議長の要職につき またしばしば国務大臣の重任にあたられ終始議会政治の発展に貢献された従二位勲一等坂田道太君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

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 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。国務大臣石破茂君。

    〔国務大臣石破茂君登壇〕

国務大臣(石破茂君) ただいま議題となりましたイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 イラク特別事態を受けて、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取り組みに関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するとの立場に立ち、できる限りの支援、協力を行うことが重要であると考えております。

 このため、政府としては、同法第八条第二項の規定に基づき、自衛隊の部隊等が人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動を実施することとし、同法第六条第一項の規定により国会の承認を求めることとした次第であります。

 以上が、本件を提案する理由であります。

 次に、本件の内容について、その概要を御説明いたします。

 本件は、同法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施について、国会の承認を求めることを内容とするものであります。

 なお、別紙において、当該活動を外国の領域で実施する場合の当該外国について示しているところであります。

 以上が、本件の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御承認くださいますようお願いいたします。(拍手)

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 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。原口一博君。

    〔原口一博君登壇〕

原口一博君 民主党の原口一博でございます。

 民主党・無所属クラブを代表し、イラク特別措置法に基づく自衛隊派遣の国会承認問題に関して質問いたします。(拍手)

 先遣隊は、委員会理事も知らないうちに再出発しており、国会は参考人として直接現場の意見を、そして情報を聞く機会すらないことを断固抗議いたします。説明責任を果たさず、国会に真実を隠そうとするのであれば、小泉首相は一刻も早く辞任すべきであるということをまず申し上げます。(拍手)

 日本は、国民の合意も覚悟も、血を流してまで国際貢献するとはなっておらず、憲法上の制約もある。日本の国際貢献には限界があるということを心得なければならない。欧米と一緒になって、できないことをあえてしようというのは間違っている。危険だったら引き揚げるというのも一つの選択肢だ。日本国民は自由とか平和の重要性を十分認識している。しかし、平和のために、よその国民を救うために、日本は、そして日本政府は、日本の青年の血を流してまでよその国の自由と平和を回復するつもりはありません。(発言する者あり)

 無責任だというやじが飛んだが、これは私の言葉ではない。これは国会で小泉首相が発言されている議事録の言葉であります。このPKO論議のとき、憲法九条と前文の間のぎりぎりの判断とも首相は述べておられますが、総理の考えはこの十年でどう変わったのか、お答えいただきたい。

 総理には、日本国民の平和的生存にかかわる重大な政策転換をしたという自覚がおありですか。紛争地域に武装組織である自衛隊を送ることに、歴代内閣は、そして議長も、なぜ慎重な姿勢をとってこられたか、総理の認識を問います。

 大量破壊兵器の問題について伺います。

 アメリカの、最近まで調査に当たっていた調査団長デビッド・ケイ氏が、大量破壊兵器がイラクにあったとは思わないという発言をしました。総理は昨日も、発見される可能性があると答弁していますが、調査団は縮小、撤収の傾向ではありませんか。大量破壊兵器の脅威に基づいてイラクへの武力行使を支持された判断を、今も正しいと強弁されるのか。過ちであったと確定した場合、どのような責任をおとりになるのか。明確にお答えください。(拍手)

 そもそも、イラクは独自に大量破壊兵器生産の技術を自己開発していたんでしょうか。他国からの供与による疑いはないんでしょうか。他国からの供与だとすれば、どの国が供与したと首相はお考えですか。

 情報開示と説明責任について伺います。

 自衛隊の占領地への派遣という極めて重い判断を求めるとき、できるだけ詳しい判断材料を国会に提出するのが政府の責務のはずです。先遣隊報告書は提示されたものの、承認の判断とするには不十分です。また、航空自衛隊は、既に本隊も派遣されていますが、その根拠となるべき先遣隊の報告書もないとの答えです。一体、これでどう国会は判断すればいいんでしょうか。明確にお答えください。

 イラク特措法では、基本計画の派遣期間中、確実に戦闘行為がないと認められることが必要と定めていますが、先遣隊の報告書にも、深刻な失業問題による住民の不満が反連合軍活動に結びつく可能性、そして、アルバインやアジュラといった巡礼など大規模行事に伴う移動等が治安に与える可能性について触れています。外務省の最新報告にも、イラクにおける治安情勢は全般に予断を許さずと、みずから明記しているではありませんか。

 派遣期間中の状況の変化について、どのような報告をもとに派遣を決断したのか、国会及び国民を納得させられる資料、説明を提示することを強く求めます。(拍手)

 イラクの安定化と民主的政権樹立についてでございます。

 イラクの安定化を図る上で、治安問題とともに重要なのは、イラクを特定の政治制度のもとに一つにまとめる方法を見出すことです。イラクにおける安定は、占領軍と反占領軍勢力の間の戦闘がやむこと、そして、政治勢力間の合意が成立すること、この二つの意味を持っています。どのようにして憲法を制定し、どのような道筋で主権をイラクに返すか決めない限り、問題の根本的解決はあり得ません。大切なのは、イラクの諸集団が共生のための合意を見出すことで、丁寧な対話と長期にわたる政治交渉が必要だと考えます。このプロセスの見通しについて問います。

 また、橋本総理特使、中山総理特使はどのような話し合いを行ったのでしょうか。フランスやドイツは、イラクの治安維持活動に本当に参加する意思を示したのでしょうか。国連はイラクから撤収していますが、この事態を打開するために日本としてどのような努力をするか、お示しください。

 イラクの真の安定とそれに向けた支援のあり方について伺います。

 現在、イラクは軍事占領下にあるのに加え、全土で戦闘が行われ、国際法上、戦争状態にあると認められるのではないでしょうか。総理の認識を問います。

 現在は非対称性の戦争が継続しているのであり、イラク全土に広く薄く展開している現況で、米軍ですら襲撃を回避できない状況ではありませんか。既成事実の積み重ねで慎重な議論を妨げている政府の態度に、大きな警鐘を鳴らしておきたいと思います。(拍手)

 サマワでも、失業率が七〇%に達しています。仕事を求めてデモが暴徒化し、死傷者が出ました。失業問題が治安状況に及ぼす悪影響は、深刻化する一方です。

 当地では、自衛隊が雇用を生んでくれるという期待感が高まっていますが、浄水活動等で生み出される雇用創出効果は限定的ではありませんか。雇用創出につながる復興支援策を急がなければなりません。しかし、プロジェクトの中身を吟味すると、今、イラクの国民が緊急に必要としているニーズなのか、首をかしげたくなるものもあります。

 小泉総理は、イラクへの自衛隊派遣でどれくらい雇用効果を見込んでいるのでしょうか。雇用効果と治安の見通しをお尋ねします。

 文民の行う電力供給は、国全体として供給網が十分に機能し得る状況にないとしながら、実際に実行に移されるのはまだ先のこととなるようです。ODAの手法、経験を生かして、民生部門で電力支援などの支援を行うことが必要ではないですか。我が党の首藤議員が参考人質疑で看破しているように、私たちは、武力集団ができることと民生集団ができることをしっかりと分けて議論する必要があるのではないでしょうか。

 マドリッドのイラク復興支援会議で我が国は、世界銀行、あの交戦国の英国ですら九億ドルでございますが、それさえも上回る五十億ドルの拠出を約束しましたが、国民生活が苦しく、しかも財政赤字が拡散する中で、どのような根拠に基づいて拠出を決めたのでしょうか。突出した額を供出する合理的説明を求めます。

 有償援助では予定入札価格は設定されず、無償援助で予定価格は開示されないではないですか。開示するおつもりがあるのか、また、イラクへの我が国の債権を幾ら放棄するつもりか、その根拠は何か、お尋ねいたします。

 基本計画と承認についてでございます。

 基本計画に定められている対応措置の実施に関して、既にその全体について実施命令が出されていることから、一つの国会承認を求めることは適当であると総理は答弁をされていますが、一括承認であれば、この間延々と報じられてきた与党の空自、陸自の承認手続は、あれは何だったのか。茶番になってしまうんではないでしょうか。

 今回のイラクでは、どのような状況をもって任務が終了したとするのか、あるいはどのような事態が起これば撤退するとの判断をするのか、明確にお答えください。自衛隊の出口戦略を明確にすべきではないですか。

 憲法九条とイラク特措法九条の問題です。

 憲法九条二項、交戦権の行使に占領行政への支援が含まれるのではありませんか。政府は、我が国が交戦国でないという理由で憲法違反でないと強弁していますが、従来の法解釈をどう変えたんですか。従来の法解釈を大きく踏み出すものではないでしょうか。

 また、イラク特措法九条の観点からも、現時点での自衛隊派遣は問題です。九条には、安全の確保の義務が明記されています。最近では、総理は、危険が伴う任務、必ずしも安全ではないと公言してはばかりません。総理みずからが、法律に定められている条項をないがしろにしているのではありませんか。(拍手)

 イラクで起きているのは、見えない敵と見える占領軍との戦いです。テロリストたちは、最も弱いところにねらいを定めて奇襲をかけてきています。たとえ、この間ずっと治安のよかった地域も、一瞬にして交戦の行われる地域に変わってしまう危険を排除できない。バグダッドは、サマワからわずか二百五十キロです。東京から福島、あるいは名古屋の距離と同じです。憲法の観点からも、イラク特措法の観点からも、イラクへの自衛隊派遣は行えないと判断すべきです。(拍手)

 我が国の国際貢献への役割について、政治の側に認識の違いと誤りがあるのではないでしょうか。日本の国際社会に対する貢献は、資金面だけではありません。青年海外協力隊の例を持ち出すまでもなく、日本は、非軍事分野における人的貢献の最大の国の一つであるということを想起すべきです。金は出すが人的貢献はしない、汗は流すが血は流さないという批判は、全く見当外れではないか。総理の見解を問います。(拍手)

 調査報告を求めるにも困難をきわめ、先遣隊報告書も必要な事項が抜けています。法案審議では、そのときに総理は何とおっしゃっていましたか。具体的な中身を問えば、そのときになってから判断すると話をそらし、そして、既に一部部隊が派遣されてからは、部隊の危険にかかわることなのでと説明を避けています。これで、何を根拠に、どのように皆さん判断するんですか。実際に部隊が出てから議論していたのでは人命にもかかわるからこそ、事前承認が必要であったのではないですか。(拍手)

 政治が議論を怠ってきたツケを自衛隊員に負わせてはなりません。他国の軍隊とは全く異なる制約のもとで任務を遂行させようとしていることを、総理は自覚されているのでしょうか。危険を回避する能力があるからお願いするということだけでは、説明になっていません。自衛隊員の安全を確保する義務は首相が負うと考えますが、明確に答弁をお願いいたします。(拍手)

 自由と人間の尊厳を脅かすものと我々は闘っています。しかし、そこには価値や原則の一致がなくてはなりません。パートナーシップというのは……

議長(河野洋平君) 原口君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

原口一博君(続) 他に対応をゆだねることではありません。情報の共有と法執行の妥当性の確認について不断の努力がなければ、議会制民主主義は成り立ちません。

 劣化ウラン弾やクラスター爆弾の災禍にさいなまれる子供たち、イラクの現状を何度訴えたことでしょう。その声には耳をかさず、人道復興支援のもとで自衛隊派遣を強行する政府の姿勢に、疑問を禁じ得ません。

 国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない。圧倒的な力の行使が突きつけたものについて、省みる英知が必要であることを指摘して、質問を終えます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 原口議員にお答えいたします。

 イラク派遣に対する基本的認識についてでございますが、イラクの復興に対して世界各国が協力する必要があると思います。イラクの安定というのは、日本のみならず、国際社会全体の平和と安全の観点からも重要であります。こうした考え方に基づきまして、我が国にふさわしい貢献として、自衛隊の部隊が人道復興支援活動を中心とする活動を行うこととしたものであります。

 今後とも、情報開示に努めるとともに、国民の理解と協力を得られるよう、できるだけの努力をしていきたいと思います。また、情報開示に努めるとともに、各種手段によりまして広報にも理解を得られるような努力をしていきたいと思います。

 今回の自衛隊のイラク派遣はこれまでの国際平和協力のあり方からの転換ではないかという御指摘でありますが、自衛隊は、これまでも世界各地の平和構築努力に積極的に参加して、実績と高い国際的評価を積み重ねてきております。今回も、このような経験を踏まえて、我が国の憲法の枠内において平和的な国際貢献を果たすことができるものと期待しております。

 我が国の人的貢献でございますが、これまで途上国に対し、御指摘の青年海外協力隊の派遣も含め、積極的な人的協力を行ってまいりました。イラクにおいては、現下の治安情勢により、邦人の援助関係者が活動できる状況にはありません。こうした状況にあって、人的貢献を通じた人道復興支援を行うため、自己完結性を備えた自衛隊を派遣することを決定した次第であります。(拍手)

 イラク監視グループのケイ前団長の発言についてでございますが、ケイ博士の発言についての報道は承知しておりますが、国連査察団の報告等により指摘されている大量破壊兵器に関する疑惑は、今日に至るまで解消されておりません。米国のパウエル国務長官は、同監視グループに任務を続けさせ、大量破壊兵器の存在に関する疑いを解明する旨発言していると承知しておりまして、我が国としてこれを注視していく考えであります。

 我が国が米英に対してイラク武力行使を支持した判断についてでございますが、イラクはかつて実際に大量破壊兵器を使用しており、その後も大量破壊兵器の廃棄は立証されておりません。

 米国等によるイラクに対する武力行使は、安保理決議に基づきイラクの武装解除等の実施を確保し、この地域の平和と安定を確保するための措置として行われたものであり、国連憲章にのっとったものであり、我が国がこれを支持したことは正しかったと考えております。

 イラクによる大量破壊兵器の生産技術の開発でございますが、昨年三月の国連査察団の報告は、イラクによる大量破壊兵器の開発に外国からの輸入品が使用されている点に言及しておりますが、大量破壊兵器の生産技術をいかなる国から供与されたかについては言及がありません。

 自衛隊の派遣期間中の状況に関する判断の根拠についてでございますが、これまでの調査や各種の情報を踏まえ、バグダッド飛行場やバグダッドの連合軍司令部施設については、防護手段がとられた隔離された場所であり、このような場所の中までは攻撃は及ぶことは想定しがたく、活動の期間を通じて戦闘が生じるとは考えておりません。また、サマワ周辺の地域は、これまで、イラクの他地域に比べ全般的に比較的治安が安定しており、こうした情勢は今後も大きく変化するとは見られません。

 こうした状況を踏まえまして、サマワやバグダッド飛行場については、非戦闘地域に当たると判断し、実施区域として実施要項において定めたところであります。

 政府は、これまで、先般の基本計画の国会報告を含め、国会における議論の場などにおいて、自衛隊派遣に関する詳細な考え方やその前提となった各種の調査結果の概要などを可能な限り示してまいりました。今後とも、国会審議等いろいろな機会をとらえまして、自衛隊の派遣について国民の理解を得る努力を払ってまいります。

 イラクの今後の政治プロセスでございますが、イラクの安定のためには、イラク人によるイラク人のための新しい民主的な政府の樹立に向けた政治プロセスが着実に進展し、復興、復旧が進んで民生が安定することが重要であります。

 昨年十一月十五日のイラク統治評議会と連合暫定施政当局の間の合意によれば、本年六月末までに移行行政機構が統治権限を承継し、二月末までに制定される基本法に基づき、憲法制定や新政府の樹立を準備することとなります。

 平和で自由な民主国家としてイラクが再建されるためには、イラク内の各派の間で幅広い合意を得ていくことが重要と考えておりまして、我が国を含む国際社会は一致して政治プロセスの着実な進展を支えていくことが重要だと思います。

 特使の成果とフランスやドイツのイラクへの関与についてでございますが、我が国は、昨年末の特使派遣を通じ、国際協調の構築に派遣先の理解を得ることができました。特に、橋本特使がフランス、ドイツ両国首脳と協議した結果、三カ国でイラク復興支援についての協力を検討することとなる等、両国の積極的な姿勢を引き出すという重要な成果を上げました。なお、フランス、ドイツは警察官養成等を通じた治安分野の支援等を検討していると承知しております。

 国連の役割についてでございますが、中山特使を国連にも派遣いたしました。我が国は、イラクの復興には国連の十分な関与と国際協調が不可欠と考え、イラクでの本格的活動の早期再開を国連に働きかけております。国連の役割については、当面、選挙問題及び治安問題に焦点を当てて議論が行われていくものと承知しており、我が国としては、国際協調を強化するための外交努力を今後とも継続してまいります。

 現在、イラクは戦争状態ではないかというお尋ねでございますが、イラクにおいては、主要な戦闘は終結したものの、治安情勢は予断を許さない状態が続いております。特に、スンニ・トライアングルを中心に、米英軍、外国政府関係者や復興に協力するイラク人等に対する攻撃が継続しております。これに対して、米軍による掃討作戦などが行われており、また、イラク人警察による治安対策も強化されておりますが、戦争状態というべき状況ではないと認識しております。

 イラクへの復興支援ですが、基本計画に盛り込んだ自衛隊の活動内容は、累次の政府調査チームの調査結果や、総理補佐官による地元住民の代表との意見交換の結果などの情報を総合的に分析し、現地で我が国に対して要望の強い業務や、支援の必要が認められる業務であり、かつ、我が国にふさわしいと判断されたものを盛り込んでおります。

 自衛隊の活動による雇用ですが、イラクにおける活動がいかなる態様で行われるかについては、今後、先遣隊による調査結果も踏まえ、詳細について適切に判断してまいりますが、当面、自衛隊の宿営地内における各種の役務のために現地の方々を雇用することを検討しておりまして、これにより、限定的ではありますが、サマワでの雇用にも貢献できるのではないかと考えております。

 サマワの治安についてでございますが、住民の意向を反映した市評議会、穏健な宗教勢力等の存在により、治安は安定し、また、現地の治安維持を担当するオランダ軍も警戒態勢をとっていることから、これまで大きな事件もなく、住民は不審者を通報するなど、治安当局に協力的であると承知しております。ただし、治安状況につきましては、今後とも十分注意を払っていく考えであります。

 イラクに対する支援額についてですが、イラクの再建は、イラク国民にとって、また、中東地域及び我が国を含む国際社会の平和と安定にとって極めて重要であります。

 このような認識のもと、昨年の十月のイラク復興支援国会議で我が国が表明した支援は、世銀、国連等が行った復興需要調査を踏まえ、電力、水・衛生といった重点分野への協力について検討を行った上で、国際社会における我が国の地位にふさわしい貢献を行うとの観点から決定したものであります。

 対イラク債権についてでございますが、イラク復興に向け日本が国際社会で果たしている役割に合致するよう、先般、他の債権国と協調しつつイラクの債務について相当の削減を行うことに関与することを表明いたしましたが、その規模等については、今後、パリ・クラブの場において議論されることとなります。

 今回の決断は、イラクの再建はイラク国民にとって、また、中東地域及び我が国を含む国際社会の平和と安定にとって極めて重要であるとの認識に基づくものであります。

 対応措置の実施命令でございますが、対応措置の実施に関する命令は、昨年十二月十九日、防衛庁長官が陸海空各自衛隊の部隊等に対し発出いたしました。これは、基本計画及び実施要項に従い対応措置を実施すること、並びに、装備の準備、教育訓練の実施及び航空自衛隊の先遣要員の出国を命じています。他の部隊の出国については別に命ずることとされています。

 この実施命令に基づいて、各部隊に対しては、この日以後、状況をよく見きわめながら、逐次出国を命じる命令、いわゆる派遣命令を発出してきたところであります。

 国会承認でございますが、国会における意思決定のあり方については、もとより国会の判断によるものと考えますが、一般的に申し上げれば、憲法第五十六条第二項の規定により、衆議院、参議院、それぞれの出席議員の過半数の賛成をもって承認が決せられるものと考えます。

 イラクの電力分野に対する支援でございますが、イラクの電力不足はイラクの復興にとって重要な問題であり、我が国は過去のODAの経験も生かして、我が国企業が過去にかかわった発電所の緊急の修復等、電力の供給増のため積極的に支援していく考えであります。

 自衛隊の任務の完了についてでございますが、派遣の終了時期については、イラク特措法の期間内において、現地の政治、治安情勢を考慮しつつ、イラク人による国家再建の進展状況を総合的に踏まえて判断してまいります。

 また、活動する場所で戦闘行為が行われるようになるなど、非戦闘地域の要件を満たさない状況が生じた場合には、自衛隊は任務を終了することになると考えます。

 自衛隊の活動と憲法の禁ずる交戦権との関係でございます。

 イラク特措法に基づく自衛隊の活動は、武力の行使に当たるものではありません。また、我が国として主体的にイラクの人道復興支援を中心とした活動に従事するものであり、米英などの占領の一翼を担うとの指摘は当たらないと考えております。

 また、自衛隊が行う安全確保支援の活動も、国連安保理決議第一四八三において加盟各国に協力を呼びかけているものであり、人道復興支援に支障のない範囲で、そのような要請にこたえる活動をする国が直ちに占領国としての地位を得るというようなことはあり得ません。自衛隊の現地での活動が占領行為に当たるとして憲法違反であるとする指摘は当たらないと考えます。

 自衛隊員の安全確保でございますが、一般市民を巻き込んだ無差別テロのほか、アメリカ軍など駐留する外国の軍隊に対する攻撃も後を絶たないなど、現地の治安情勢は全般として予断を許さない状況が続いております。自衛隊の派遣に当たっては、こうした現地の治安情勢などについて改めて事前に調査し、また、必要な装備、武器、部隊運用について入念に検討と工夫を加えているところであります。まずは、不測の事態が起こらないよう、このような努力を積み重ねることにより、隊員の安全確保に万全を期することとしております。

 また、現地社会との良好な関係の確保が安全対策上、重要であると考えております。このため、事前の準備や訓練において、現地の住民の社会的、文化的慣習を尊重するよう隊員に徹底を図るとともに、自衛隊は戦争のために来るのではなく、イラクの人道復興支援のために駐留するのだということを現地の人々や国際社会にわかってもらえるよう、メディアなどさまざまな手段を通じて広報にも努めてまいります。

 万一、活動を実施している場所の近くにおいて戦闘行為が発生した場合などには、その場所から避難したり実施区域を変更するなど、不測の事態へも臨機応変に対応できるよう努めてまいりたいと考えます。

 カンボジアPKO派遣に関する当時の私の発言に対するお尋ねでございます。

 これは、私は、日本は血を流してまで国際貢献する、そういう状況ではないし、それは憲法で許されないという発言をしたわけでありまして、今回も、米英とともに日本がイラクで戦闘行為に参加するものではございません。人的貢献のために金だけ出せばいいというものではない、汗を流すことが必要であるということで、自衛隊も含めて人的貢献をする、そういうことであります。(拍手)

 自衛隊派遣に関する国会の判断の基準についてでございます。

 政府は、これまで、先般の基本計画の国会報告を含め、国会における議論の場などにおいて、自衛隊派遣に関する詳細な考え方やその前提となった各種の調査結果の概要などを可能な限り示してまいりました。

 今国会では、基本計画に定められた自衛隊による対応措置の実施、具体的には、人道復興支援活動と安全確保支援活動の実施、及び、イラクその他実際に活動を実施したり、あるいは、途中通過する諸外国について国会の御承認をお願いしているところであります。

 自衛隊派遣の事前承認についてでございます。

 イラク特措法は、イラクにおける主要な戦闘が終わった後において、人道復興支援の目的で、自衛隊等をイラクへ派遣するために必要な法的枠組みを制定したものであります。したがって、同法が国会の審議を経て成立したことにより、自衛隊のイラク派遣について国会の承認が得られたと考えることもできるため、具体的な派遣について事後承認とする仕組みになっている点も特段問題はないと考えております。

 また、国会承認の問題を論ずるまでもなく、隊員の安全確保につきましては、不測の事態が起こらないよう万全を期してまいります。

 自衛隊員の安全確保でございますが、派遣に当たっては、派遣される自衛隊が憲法の枠内で活動することを確保するとともに、隊員の安全確保に万全を期してまいります。自衛隊は、日ごろから訓練を積んでおりますし、また、厳しい環境においても十分活動できる自己完結性を備えるとともに、憲法上の制約のもとにおいても危険を回避する能力も身につけていると考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、総理に質問します。(拍手)

 小泉内閣は、昨日、航空自衛隊に続き、陸上自衛隊本隊と海上自衛隊にイラク派遣命令を下しました。これは、今なお戦争状態にある外国に武装した自衛隊を派兵し、軍事占領支配の一翼を担うことを核心とするものであり、戦後、かつてなかったことです。武力による威嚇、武力の行使、交戦権を否認した憲法九条に違反し、到底許されるものではありません。(拍手)

 まず、小泉総理がイラクは大量破壊兵器を保有していると断定し、イラク戦争を支持してきた責任について聞きます。

 イラク戦争は、米英が国連安保理の承認なしに一方的に始めた、国際法上の正当性、合法性が全くない無法な侵略戦争であります。

 米英両国は、イラクが大量破壊兵器を保有していると一方的に決めつけ、それを開戦の最大の口実にしました。ところが、大量破壊兵器は今に至るも発見されないどころか、当のアメリカのイラク調査団長デビッド・ケイ氏が、大量破壊兵器はもともと存在しなかったと言明しました。戦争の最大の口実を突き崩す、極めて重大な発言です。

 総理は、昨日の予算委員会で、これは未解決の問題、持っているとも持っていないとも言えないと発表しましたが、この答弁は、あなた自身がイラクが大量破壊兵器を保有していると断定したことが誤りだったということを認めるものではありませんか。答弁を求めます。(拍手)

 以下、自衛隊のイラク派兵について聞きます。

 総理は、戦争に行くのではない、武力行使に行くのではないと強調しますが、そもそも、イラク戦争は終結したという認識に立っているのですか。

 基本計画は、イラクにおける主要な戦闘は終結したと述べています。これは、国際法上、イラク戦争は終結しておらず、戦争状態にあり、今なお戦闘行為が継続しているということではありませんか。自衛隊は、現に戦争状態にある、いわゆる戦地に派遣されることになるのではありませんか。

 派遣される自衛隊部隊は、イラクを占領支配している米英軍等を支援することを任務としています。政府は、日本は交戦国ではない、いかなる意味でも占領国とならないと言いますが、戦争状態にあるイラクにおいて、交戦国である米占領軍を支援することは、当然、占領軍の一部、占領支配の一翼という評価を受けることになるのではありませんか。

 派遣自衛隊の国際法上の地位の問題です。

 CPA、連合国暫定当局の書簡は、自衛隊は連合国要員としてCPA命令第十七号に定められたように処遇されると明記しています。命令第十七号は、連合国要員を司令官、連合軍、連合国によって派遣されたすべての軍隊に区分していますが、自衛隊はこのどれに該当しますか。

 連合軍司令部は、自衛隊部隊は連合軍の指揮のもとに入ると回答していますが、派遣自衛隊は連合軍司令部の指揮のもとに入るのかどうか、明確な答弁を求めます。

 政府は、イラク派遣自衛隊が連合国要員、軍隊として処遇されることを認めながら、戦時国際法の適用は受けないと答弁しました。ところが、国連安保理決議一四八三は、占領当局のもとにあるすべての関係者に、ジュネーブ条約、ハーグ陸戦法規など国際人道法の遵守を明記しています。

 連合国要員である自衛隊がどうして戦時国際法の適用を受けないのですか。自衛隊は捕虜をどのように扱うのですか。政府は、自衛隊が旧フセイン残存勢力に捕まったときは捕虜の扱いを受けると言いますが、それは、自衛隊が軍隊の構成員であり、交戦者の資格を持つということではありませんか。

 自衛隊の輸送任務の問題です。

 航空自衛隊は、クウェートの空軍基地を拠点にしてイラク国内へ人道復興物資等の輸送を行うとしています。

 現在、イラクへの空輸は、カタールにある米中央軍前線司令部の一元的な統制のもとにあります。米軍前線司令部が、空爆作戦から戦略輸送作戦まで、すべての航空作戦を指揮統制しています。石川統幕議長は、米中央軍前線司令部と調整すると述べましたが、自衛隊の輸送業務は、米軍司令部の統制のもとで行う、連合軍への兵員、軍事物資の輸送ではありませんか。

 政府は、米軍等の兵員輸送も行うと答弁してきましたが、クウェート基地を経由して、バスラ、バグダッドから北部のモスルまで、武装した米兵の輸送を行うということになるということではありませんか。その際、武器弾薬は運ばないという政府方針はどう担保するのですか。現場の運用でやるというのは、具体的にはどういうことですか。

 自衛隊の航空輸送部隊は、コアリションの一員として、米軍司令部の統制のもと、米英軍などの輸送部隊とともに連合軍全体の空輸任務の一翼を担うものではありませんか。

 非戦闘地域の問題です。

 実施要項は、サマワ市やバグダッド、モスルなどを非戦闘地域に指定しています。いまだ戦争状態にあるイラクで、戦闘地域、非戦闘地域を区分けすること自体が国際法上成り立たないのではありませんか。

 バグダッドやモスルなどの飛行場は、現に地対空ミサイルによる襲撃が相次いでいる地域です。こうした地域がなぜ非戦闘地域に指定できるのですか。政府の言う、国際性、計画性、組織性、継続性の四つの基準に照らして、バグダッド空港、モスル空港などを非戦闘地域と判断した根拠を国民に説明するべきではありませんか。

 武器使用問題です。

 政府は、イラクにおけるテロを強調し、自衛隊員がテロから生命、身体を防護するため、正当防衛として武器を使用するのは当然だとしています。

 およそ戦争状態が継続している軍事占領支配のもとで、占領当事者たる米軍あるいは米軍の支配下に対する武力攻撃は、武力による抵抗、ゲリラ戦に当たるのではありませんか。

 旧フセイン残存勢力によるゲリラ戦の様相を呈している事態は、まさに国際紛争の一環としての武力紛争そのものです。そこで、自衛隊が部隊として、上官の指揮命令により組織的に無反動砲や対戦車弾を使用することは、まさに武力の行使そのものです。市民刑法の危害要件である正当防衛、緊急避難で説明することは、通用しないのではありませんか。

 防衛庁は、イラク派遣に際して、新たな部隊行動基準、いわゆる交戦規則、ROEを策定しました。防衛庁長官は、正当防衛として実際に遅滞なく撃てるようにしたと説明し、過剰防衛、誤想防衛の場合でも、ROEに従って撃てば免責されるとさえ述べています。

 自衛隊員の武器使用が仮に違法なものであれば、当然、刑法に従って処罰されるのであります。イラクは特例などという論理は成り立ちません。それとも、イラク派兵を機に、自衛隊の武器使用基準を根本的に変えようとでもいうのですか。

 以上、小泉総理の答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 赤嶺議員にお答えいたします。

 イラクの大量破壊兵器についてでございます。

 ケイ博士の発言についての報道は承知しておりますが、国連査察団の報告等により指摘されている大量破壊兵器に関する疑惑は、今日に至るまで解消されていません。現在、イラク監視グループが引き続きイラクの大量破壊兵器を捜索しており、我が国としてもこれを注視していく考えであります。

 イラクでは戦争が終結していないのではないかということでございますが、現在、主要な戦闘は終結したものの、特にスンニ・トライアングルを中心に、米英軍、外国政府関係者や復興に協力するイラク人等に対する攻撃が継続しており、これら武装勢力に対する米軍による掃討作戦などが行われている状況と認識しております。このように、イラクの治安情勢は予断を許さない状況が続いておりますが、戦争が継続している状況ではないと認識しております。

 自衛隊が占領軍の一部と見られるのではないかということでございますが、イラク国民が自国の再建に努力できるようにすることが国際社会の責務であり、国連もすべての加盟国に対し、国家再建に向けたイラク人の努力を支援することを要請しております。我が国は、このような認識に基づき、国際社会の責任ある一員としてイラクを支援するものであります。

 また、自衛隊はあくまでも我が国の指揮下において活動いたします。我が国は、いかなる意味においても武力紛争の当事国ではなく、また、占領国に当たりません。

 イラクに派遣される自衛隊の法的地位でございますが、自衛隊は、連合暫定施政当局命令第十七号における連合の要員の定義のうち、連合国により展開されるすべての部隊に該当いたします。

 自衛隊は連合軍司令部の指揮下に入るのかとのお尋ねでありますが、イラクに派遣される自衛隊は我が国の指揮下にあり、連合軍の指揮下に入ることはありません。

 イラクに派遣される自衛隊に対する戦時国際法の適用でございますが、安保理決議一四八三におけるジュネーブ諸条約及びハーグ陸戦規則への言及は、一義的には、米英の占領国としての権限、責任及び義務を改めて確認するものと考えられます。イラクに派遣される自衛隊の活動については、我が国が武力紛争の当事者とならず、また占領を実施する者でもないことから、この意味で、国際人道法の適用を受けることはありません。

 自衛隊員が旧フセイン残党勢力を捕らえた場合、自衛隊員が旧フセイン残党勢力を捕らえる事態はなかなか想定しがたいと考えますが、万が一、残党勢力の構成員の身柄が自衛隊のもとに置かれるような事態が生じた場合には、現地の治安当局に速やかに身柄を引き渡すことになると考えます。

 引き渡しまでの身柄の取り扱いに当たっては、普遍的に認められている人権に関する基準並びに国際人道法の原則及び精神にのっとって行うべきことは当然だと思います。

 自衛隊員が旧フセイン残党勢力に捕らわれた場合、捕虜の扱いを受けるかということでありますが、国際法上、捕虜となり得るのは紛争当事国の軍隊構成員等であり、武力行使を行わない我が国の自衛隊員が国際法上の捕虜となることはありません。

 一方、旧フセイン残党勢力が安保理決議を踏まえて活動する自衛隊員の身柄を拘束することは、国際法上、そもそも許されるものではなく、あってはならないことであります。にもかかわらず、自衛隊員の身柄が拘束される場合には、当該自衛隊員の身柄の即時解放を強く求めることとなります。

 イラクにおける自衛隊の輸送業務でございます。

 航空自衛隊の部隊は、基本計画及び実施要項に従い、クウェート国内の飛行場施設を拠点とし、イラク国内の飛行場施設との間で、人道復興関連物資を中心に航空輸送を行うこととしております。なお、これらの飛行場間においては、人道復興支援に支障の生じない範囲で、兵員の輸送その他安全確保支援活動を行うことはあり得るものと考えます。

 自衛隊が行う輸送については、我が国がいかなる物資を運ぶかにつき、あらかじめ米軍を初めとした関係国軍との信頼関係に基づく調整の上で実施するため、武器弾薬が含まれることはないと承知しており、このような我が国の方針については関係国によく説明し、既に理解を得ております。

 いずれにせよ、我が国としては、主体的に輸送任務等を選択して、航空輸送業務を実施してまいります。

 非戦闘地域の区分でございます。

 イラクの治安情勢は予断を許さない状況が続いておりますが、今までの調査や各種の情報を踏まえると、イラク国内に、イラク特措法で定める、いわゆる非戦闘地域の要件を満たす地域は存在すると考えます。

 サマワを含むイラク南東部ムサンナ県については、比較的安定した治安情勢が継続しているものと認識しております。

 いわゆるスンニ・トライアングルと呼ばれる地域などを中心にして、CPAやアメリカ軍、現地警察等に対する攻撃やテロも発生しており、依然として不安定な治安状況が続いています。これらが戦闘行為に当たるかどうかについては、その計画性、組織性、継続性等の観点から、攻撃の主体、対象や態様などを総合的に勘案して判断することになります。これまでの攻撃等の実態はさまざまであり、今のところ、必ずしもこれらのすべてが戦闘行為であるとは考えていません。

 他方、これまでの調査や各種の情報を踏まえ、バグダッド飛行場やモスル飛行場については、防衛、防護手段がとられた隔離された場所であり、そのような場所の中までは攻撃が及ぶことは想定しがたく、戦闘行為が生じることは考えていません。

 こうした状況を踏まえて、サマワとバグダッド飛行場、モスル飛行場等については、非戦闘地域に当たると判断し、実施区域として実施要項において定めたものであります。

 米軍に対する攻撃についてのお尋ねです。

 多くのイラク国民が復興と平和を希望している中、米英軍、外国政府関係者や復興に協力するイラク人等に対する攻撃が継続しておりますが、その性格については各事例ごとに個別に判断する必要があると考えます。

 自衛官の武器使用についてです。

 派遣される自衛官は、万一、自己等の生命、身体の防衛のため必要と認めるやむを得ない場合には、イラク特措法に基づき武器を使用することが可能ですが、これはいわば自己保存のための自然権的権利というべきものであります。

 派遣に当たっては、部隊行動の要領等を隊員に示し、訓練を行うことにより適正な武器使用を徹底することとしていますが、武器使用に係るこれまでの政府の考え方に変更はありません。

 また、一般論で申し上げれば、イラクにおける自衛隊員の我が国の法律に違反する行為に関し、国外犯の適用がある場合には、刑事責任を免れないことは言うまでもありません。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

        内閣総理大臣  小泉純一郎君

        国務大臣    石破  茂君


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