衆議院

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第19号 平成16年4月1日(木曜日)

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平成十六年四月一日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十二号

  平成十六年四月一日

    午後一時開議

 第一 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案(内閣提出)

 第三 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第六 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第七 商工会議所法及び商工会法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    …………………………………

  一 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出)及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 商工会議所法及び商工会法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出)及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長小沢鋭仁君。

    ―――――――――――――

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小沢鋭仁君登壇〕

小沢鋭仁君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における廃棄物の処理をめぐる状況にかんがみ、廃棄物の適正な処理を確保するための措置を講じようとするものであり、その主な内容は、

 廃棄物が地下にある土地の形質の変更による生活環境の保全上のリスクを管理するための制度の創設、

 廃棄物の特定の処理施設における事故時の措置に関する制度の創設、

 硫酸ピッチといった、人の健康または生活環境に係る重大な被害を生ずるおそれがある指定有害廃棄物の不適正処理を直罰で禁止するなど、不法投棄の撲滅に向けた罰則の強化を行うこと

等であります。

 本案は、三月十一日本委員会に付託され、翌十二日小池環境大臣から提案理由の説明を聴取し、二十三日質疑を終局いたしました。かくして、去る三月三十日採決いたしました結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し、政府一丸となって循環型社会の実現を期すため、望ましい法体系のあり方等につき検討すること等を内容とする附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長柳本卓治君。

    ―――――――――――――

 判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔柳本卓治君登壇〕

柳本卓治君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、裁判官及び検察官の能力及び資質の一層の向上等を図るため、判事補及び検事が一定期間その官を離れ、弁護士となってその職務を経験するために必要な措置について定めるものであります。

 本案は、去る三月十八日本委員会に付託され、二十六日野沢法務大臣から提案理由の説明を聴取し、三十日質疑を行い、これを終局し、昨三十一日採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第三、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案、日程第四、油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長赤羽一嘉君。

    ―――――――――――――

 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

 油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、船舶からの大気汚染の防止を目的とした議定書が平成九年九月に採択されたことを受け、我が国としても、船舶からの大気汚染の防止を図るための措置を講じ、国際的な責務を果たしていくためのものであり、その内容は、船舶に設置される原動機から放出される窒素酸化物を規制するとともに、船舶用の燃料油について、硫黄分濃度の基準に適合するものの販売及び使用を義務づけることなどであります。

 次に、油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、近年のタンカーによる油濁損害が現在の国際基金による補償限度額を超えると見込まれる大規模な事故が頻発していることにかんがみ、平成十五年五月に追加的な国際基金の設立を目的とする議定書が採択されたことを受け、我が国として対応すべき措置等を講じようとするものであります。

 その内容は、新たに設立される追加基金に対する被害者の補償請求権等を定めるとともに、タンカー以外の一定の船舶に対しても、油濁損害の賠償や座礁船舶の撤去費用等の支払いを保障する契約の締結を義務づけることなどであります。

 両案は、去る三月十九日本委員会に付託され、二十三日石原国土交通大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、三十一日に質疑を行い、質疑終了後、採決いたしました結果、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案を一括して採決いたします。

 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 商工会議所法及び商工会法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第五、中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案、日程第六、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案、日程第七、商工会議所法及び商工会法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長根本匠君。

    ―――――――――――――

 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案及び同報告書

 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

 商工会議所法及び商工会法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔根本匠君登壇〕

根本匠君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案につきましては、民間金融機関等による無担保融資の拡大を促すための業務として貸付債権等の証券化を支援する業務を中小企業金融公庫に追加するとともに、中小企業信用保険等の業務を中小企業総合事業団から同公庫に移管する等の措置を講ずるものであります。

 次に、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、投資事業有限責任組合が、出資のみならず、出資先企業に対する融資もできるようにするとともに、投資対象の制限を撤廃し、中堅企業などにも幅広く出資ができるよう、所要の措置を講ずるものであります。

 次に、商工会議所法及び商工会法の一部を改正する法律案につきましては、商工会議所同士の合併規定を創設するほか、合併が円滑に進むように商工会議所及び商工会の地区の特例を拡大する等の措置を講ずるものであります。

 本委員会においては、去る三月十七日、三法律案に関し中川経済産業大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取した後、同十九日より質疑に入り、昨日質疑を終了いたしました。質疑終了後、討論を行い、中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案及び中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、それぞれ採決を行った結果、賛成多数をもって、商工会議所法及び商工会法の一部を改正する法律案につきましては、採決の結果、全会一致をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、三法律案に対しそれぞれ附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第五及び第六の両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第七につき採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出)及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律案、年金積立金管理運用独立行政法人法案及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣坂口力君。

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 国民年金法等の一部を改正する法律案、年金積立金管理運用独立行政法人法案及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 我が国は、急速な少子高齢化が進行しておりますが、国民の老後の生活設計の柱である公的年金制度を将来にわたり揺るぎのない信頼されるものとするべく、社会経済と調和した持続可能な制度を構築し、国民の制度に対する信頼を確保するとともに、多様な生き方及び働き方に対応した制度とするため、制度全般にわたりその根幹にかかわる改革を行うこととした次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、基礎年金の国庫負担割合につきましては、これを二分の一に引き上げることとし、平成十六年度からその引き上げに着手し、平成二十一年度までに完全に引き上げるものとしております。

 第二に、国民年金及び厚生年金保険財政につきましては、将来の保険料水準を固定した上で、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入することとしております。

 第三に、国民年金の保険料額につきましては、平成十七年度から毎年度二百八十円ずつ引き上げ、平成二十九年度以降の保険料額を一万六千九百円とすることとしております。また、厚生年金保険の保険料率については、平成十六年十月から毎年〇・三五四%ずつ引き上げ、平成二十九年度以降の保険料率を一八・三〇%とすることとしております。

 第四に、今後の年金額の改定につきましては、毎年度、賃金または物価の変動率により行うことを基本とすることとしますが、五年ごとに作成する財政の現況及び見通しにおいて調整の必要があると見込まれる場合には、年金額の改定率に公的年金の被保険者数の減少率等を反映することとしております。

 第五に、在職老齢年金制度につきましては、六十歳代前半の在職者に対する一律二割の支給停止を廃止することとしております。また、一定以上の収入を得ている七十歳以上の在職者につきましては新たに支給調整を行うこととしております。

 第六に、育児をする被保険者につきましては、厚生年金保険料の免除措置を子が三歳に達するまでに拡充すること等としております。

 第七に、厚生年金につきまして、離婚時等において、当事者の保険料納付記録を分割し、厚生年金の給付に反映させる制度を創設すること等としております。

 第八に、国民年金保険料の収納対策につきましては、所得に応じた多段階免除制度等の納付しやすい仕組みを導入するとともに、滞納処分等に関し被保険者に対する調査の規定の整備を行うこととしております。

 以上のほか、障害基礎年金の受給権者が、六十五歳以降、老齢厚生年金等を併給することを可能とする等の所要の改正を行うこととしております。

 また、厚生年金基金等の企業年金や旧農林共済の特例年金等につきましても、所要の改正を行うこととしております。

 次に、年金積立金管理運用独立行政法人法案について申し上げます。

 この法律案は、特殊法人等整理合理化計画を実施するため、年金資金運用基金を廃止し、新たに年金積立金管理運用独立行政法人を設立しようとするものであります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、法人は、年金積立金の管理運用を行うとともに、その収益を国庫に納付することにより、年金事業の運営の安定に資することを目的としております。

 第二に、法人に運用委員会を置き、中期計画の審議等を行わせることとしております。

 第三に、法人の役職員に対し、職分に応じた注意義務、忠実義務等を課すこととしております。

 また、年金資金運用基金において行われていた大規模年金保養基地業務及び融資業務については、平成十七年度限りで廃止することとしております。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、平成十八年四月一日としております。

 次に、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。

 少子高齢化の急速な進行等を踏まえると、高年齢者が、少なくとも年金支給開始年齢までは、意欲と能力のある限り働き続けることができる環境の整備が必要であります。

 このため、六十五歳までの雇用の確保、中高年齢者の再就職の促進等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、六十五歳までの雇用を確保するため、事業主は、平成二十五年度までに段階的に、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講じなければならないこととしております。この場合、事業主は、労使協定等により継続雇用制度の対象者についての基準を定めることができることとしております。

 第二に、解雇等により離職する中高年齢者が希望するときは、事業主は、求職活動支援書を作成し、交付しなければならないこととしております。

 第三に、労働者の募集及び採用について、上限年齢を定める事業主は、求職者に対し、その理由を示さなければならないこととしております。

 第四に、シルバー人材センターは、届け出により、一般労働者派遣事業を行うことができることとしております。

 最後に、この法律は、一部を除き、平成十八年四月一日から施行することといたしております。

 以上が、これら三法案の趣旨でございます。

 皆様方におかれましては、十分に御審議をいただきますようお願い申し上げる次第でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出)及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。能勢和子君。

    〔能勢和子君登壇〕

能勢和子君 自由民主党の能勢和子でございます。

 私は、自由民主党を代表いたしまして、国民年金法等の一部を改正する法律案等年金三法案について質問いたします。(拍手)

 年金制度は、今や、現役世代約七千万人が加入し、約三千万人の受給者に約四十兆円の年金が支給され、高齢者の生活が支えられています。

 年金制度は、今日、だれにもあらかじめ正確に予測することのできない将来の生活を保障するかけがえのないものとなっており、これを、少子高齢化が急速に進む中にあって、きちんと機能するよう持続可能なものにしていかなければなりません。

 今回、政府・与党が責任を持って取りまとめた年金制度改正法案は、年金制度の支え手が減少していくことが見込まれる中でも、制度がみずから年金制度を支える力と年金給付のバランスをとることのできる仕組みを導入するものであり、これ自体、非常に大きな改革であります。(拍手)

 しかしながら、これに対して野党の皆さんから、抜本改革でない、全く違う仕組みに変えなければ抜本改革ではないと批判を受けています。(発言する者あり)静かにしてください。

 確かに……(発言する者あり)静かにしてください。確かに、与党年金制度改革協議会の取りまとめにもありますように、職業等によって給付と負担のあり方が異なる現行制度について、どのようにより公平なものにしていくかという課題はあります。小泉総理も、先日、年金制度の一元化は重要な課題である旨お話しされておられます。

 しかしながら、少子高齢化の予想以上の急速な進行など、年金制度を取り巻く環境の変化を目の当たりにしますと、将来への責任ある対応として、給付と負担の見直しは避けて通れない喫緊の課題であり、改革を先送りすることはできないのではないでしょうか。(拍手)

 政府・与党で議論を積み重ねて取りまとめた今回の年金制度改正法案は、本国会においてぜひとも成立を図ることが、次の課題の議論に移っていくためにも必要であると考えます。改めて、今回の年金制度改正法案の早期成立の必要性について、小泉総理のお考えをお伺いいたします。

 そして、国民の安心は、年金制度だけでなく、社会保障制度全体が機能して初めて得られるものであります。介護保険については、既に見直しの議論が始められていますし、医療保険についても、高齢者医療制度などを初め、改革は待ったなしの状況です。

 このような状況を踏まえると、一刻も早く年金の将来像を明確にして、社会保障制度全体の改革を着実に進めていかないといけないと考えますが、社会保障制度改革に向けた御決意を総理の方からお願いいたします。

 また、年金制度に対して、若い世代から、今後保険料が上がって給付水準が落ちるという不満や不信の声が聞かれるところです。確かに、若者たちにとって、経済の低迷が続き、将来発展するという展望が描きにくくなっている中で、保険料の引き上げを簡単に受け入れることができないのはわかります。

 しかしながら、仮に年金制度がなければ、老親の扶養の負担を若い世代一人一人が負わなければならなくなります。もちろん、若い世代への過重な負担は避けなければなりませんが、世代間で支え合いの仕組みを受け継いでいくことの大切さは、途切れてはいけないのではないでしょうか。

 今回の改革で、若い世代に対してどのようなメッセージを送ろうとしているのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。(拍手)

 次に、今回の年金制度改正の大きな論点は、平成十二年改正法附則に明記された課題である基礎年金国庫負担割合二分の一への引き上げであります。将来の保険料負担が過重になることを避け、必要な五〇%給付水準を維持するためには、この引き上げを着実に行うことが必要であります。

 今回の改正案は、国庫負担割合が二分の一に引き上げられることが前提でつくられており、かつ、引き上げの道筋も示されております。年金制度が将来にわたって期待される機能を果たすためには、税制改革が実行され、必要な財源を確保することが必要であります。これを着実に実行に移していくことについて、総理及び厚生労働大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、この改正案では、負担の上限と給付の下限が明確に示され、この範囲の中で年金を支える力と年金の給付のバランスがとられることになっています。

 公的年金の高齢期の生活の基本的な部分を支える役割にかんがみますと、負担に上限を設けたとはいえ、給付水準はどうなってもよいということではございません。今回の改正案では、モデル年金の給付水準は現役世代の平均の五〇%を上回る水準を確保することが法律に規定されていますが、早くも、見通しが甘く、五〇%の維持は難しいのではないかという指摘がなされています。いかにこの給付水準を、五〇%を確保していくか、厚生労働大臣の御見解をお伺いいたします。(拍手)

 次に、今回の改正では、女性と年金をめぐる諸課題についても検討が行われました。何も変わらず、改革は見送られたなどという批判もありますが、長年の課題であった第三号被保険者問題や離婚時等の年金分割について一定の改革が盛り込まれるなど、この課題に対する方向づけが行われたと考えます。

 今回の改正案における女性と年金をめぐる諸課題についての考え方と、短時間労働者の厚生年金適用など今後の課題への取り組みについて、厚生労働大臣にお伺いします。

 次に、少子高齢化の進展を踏まえ、より多くのお年寄りをより少ない現役世代で支えることを考えますと、年金積立金の運用により運用収入を安全かつ効率的に確保していくことは、年金財政を支える上で非常に重大な役割であります。

 年金改革の本体法案が給付と負担の関係を長期にわたって安定的に図るものだとすれば、年金積立金の運用組織についても、今回の法案により将来に向けてしっかりと確立されたものにならなければ、国民の年金制度に対する安心、信頼というものが確保されないと思います。このため、この年金積立金管理運用独立行政法人法案によって、どのように国民が安心して年金積立金の管理運用をゆだねられる組織となるか、厚生労働大臣から国民にわかりやすい言葉で御説明をお願いいたします。(拍手)

 次に、今回の法案は年金積立金の運用組織にかかわるものですが、国民にとっては、運用するための組織のあり方もしかりながら、その運用の方法、そのあり方が重大な関心事となっています。

 特に、平成二十年度末には財政融資資金から全額年金にお返しいただき、約百五十兆円という巨額の資金を運用することとなり、この資金を将来の年金財政を支えるためにいかに安全かつ効率的に運用できるかという点に国民の期待と不安があるかと思います。このため、今後の年金……(発言する者あり)静かにしないと聞こえないでしょう。今後の年金積立金運用の基本的な方針について、厚生労働大臣から具体的な御説明をお願いします。

 次に、年金制度が現在直面している最大の懸案は、国民年金保険料の未納問題であります。

 国民年金保険料の納付率は低下傾向が続いていますが、平成十四年度における国民年金保険料の納付率は……(発言する者あり)

議長(河野洋平君) 静粛に願います。静粛に願います。

能勢和子君(続) 六二・八%に低下し、このままでは公的年金制度の将来に影響を及ぼしかねない深刻な問題であります。

議長(河野洋平君) 能勢和子君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

能勢和子君(続) 厚生労働省においても、国民年金特別対策本部を設置し、未納問題に取り組まれていることですが、この点、今後どのように取り組みを徹底していくつもりか、厚生労働大臣にお願いいたします。(拍手)

 次に、私は、将来にわたり安定した、安心のできる年金制度を構築する上で、年金制度改革の実現が喫緊の課題になっている現在、国民に理解される改革を進めるためには、従来の年金保険料で行われてきた事業についても徹底した見直しが必要であると考えます。

 年金の福祉施設については、厚生年金会館や厚生年金病院といった二百六十五の施設が全国に建設され、平成十四年度の一年間で延べ約四千四百四十万人が利用されています。

 これらの施設につきましては、年金の福祉施設をもっとつくるべきだという強い声に基づいて整備が進められてきたのは紛れもない事実であります。また、政治の場においても、与野党や地方から福祉還元事業の充実が求められてきました。

 他にこうした低廉な料金で利用できる施設が少なかった時代には、加入者の方々に対し一定の役割を果たしてきたことも事実であります。

 しかしながら、時代は大きく変化してきており、今や民間でも似通った機能の施設がつくられるようになり、あえて年金財源を用いてまでこうした施設をつくる必要は薄れてまいりました。少子高齢化がますます進む中で、年金財政が極めて厳しくなっていくという現状を踏まえれば、福祉施設の徹底した見直しは不可欠であります。

 そこで、今後、年金福祉施設の見直しについてどのように取り組んでいくつもりか、厚生労働大臣にお伺いします。

 次に、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案についてお尋ねします。

 少子高齢化の急速な進展により、今後、若年者や働き盛りの世代の人口が大幅に減少し、二〇一五年までには約八百四十万人減少すると見込まれています。今後とも我が国経済社会の活力を……(発言する者あり)

議長(河野洋平君) 静粛に願います。

能勢和子君(続) 維持するためには、高齢者の方々に……

議長(河野洋平君) 能勢和子君、申し合わせの時間が過ぎましたから、結論を急いでください。

能勢和子君(続) 長年培ってきた知識と経験を生かしてますます活躍していただくことが必要であり、このことは、年金を初めとする社会保障制度の支え手を確保する観点からも重要であります。

 また、厚生年金の支給開始年齢は、段階的に六十五歳まで引き上げられつつあります。

 このようなことから、我が国の高い就労意欲を有する高齢者が、意欲と能力のある限り、少なくとも年金支給開始年齢まで働き続けることができる環境を整備することは大変重要な課題であり、また、それは高齢者だけでなく、若者も含めた働く人々の将来不安を払拭するためにも、早急な対応を求められます。

 政府として、この問題をどのように認識し、今回の改正案でどのような対応を講じるか、厚生労働大臣にお尋ねします。

 以上、社会保障の根幹であります年金制度の改革に政治の果たす責任が大変重要であることを強調し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 能勢議員にお答えいたします。

 法案の早期成立の必要性と社会保障制度改革についてのお尋ねであります。

 今回の政府提出の年金制度改正法案は、従来のように五年ごとに改正するのではなく、長期にわたって制度が維持できるように、給付の下限と負担の上限を定め、基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げるとともに、経済情勢や人口構成の変化に応じて給付と負担を自動的に調整する仕組みを定めたものであり、年金制度が高齢者の生活の基本的部分を支えるという役割を果たすことができるようにするための抜本的な改正であります。(拍手)

 少子化、高齢化の急速な進行が見込まれる中で、まず、今回の改正によって、給付と負担の長期的な均衡を確保し、安定的な仕組みとすることにより、国民の年金に対する信頼を確保することは、御指摘のとおり先送りのできない課題と考えており、今国会で法案をぜひとも成立させていただきたいと考えております。(拍手)

 今般の年金制度改正を基礎として、引き続き、介護制度や医療制度の改革を実施してまいります。その際には、社会保障制度全体を総合的に取り上げ、国民的な開かれた議論のもとに改革を進めていく考えであります。

 財源についてのお尋ねですが、基礎年金に対する国庫負担割合の引き上げについては、平成十六年度から引き上げに着手し、所要の安定した財源を確保する税制の改革を行った上で、平成二十一年度までの間に段階的に二分の一まで引き上げることとしております。

 これに伴う税制面の対応については、先般の与党税制改正大綱を踏まえ、社会保障制度全般の見直しや三位一体の改革とあわせ、中長期的視点に立って税制の抜本的改革に取り組んでいく中で、その具体化を着実に図ってまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 若い世代に対してのメッセージについてのお尋ねがございました。

 年金制度は、高齢者のみならず現役世代にとっても生活の安定に重要な役割を果たしておりまして、急速に少子高齢化が進行する中で、高齢者と現役世代がともに支え合い、譲り合って、国民生活にかけがえのないこの制度を持続可能なものにしていかなければならないものと考えております。

 今回の改正におきましては、このような考え方を基本にいたしまして、五年ごとに給付と負担の見直しをするのではなく、将来の負担の上限と給付の下限を法律上明らかにしまして、急速な少子高齢社会が進行する中で、年金を支える力と給付の均衡をとることのできる仕組みに転換をいたし、課題であった基礎年金の国庫負担割合についても引き上げの道筋を示しております。この持続可能な制度とするための姿を示したものであり、このことは、若い皆様方にもぜひとも御理解をいただきたいと考えております。

 国民年金の財源についてのお尋ねがございました。

 基礎年金の費用は高齢化の進展に伴いまして増大していきますことから、国庫負担割合の引き上げのための財源につきましては、安定した財源を税制改革により確実なものにすることが重要でございます。

 この点、与党税制改正大綱におきましては、平成十六年度からの年金課税の見直しによる増収分を財源として引き上げに着手をし、平成十七年及び十八年におきましては、いわゆる恒久的減税の縮減・廃止とあわせて、国、地方を通じた個人所得課税の基本的な見直しを行うこととし、安定的な財源を確保し、適切な水準に引き上げることといたしております。平成十九年度を目途に、年金、医療、介護等の社会保障給付全般に要する費用の見直し等を踏まえまして、消費税を含みます基本的な税制改革を実現した上で、平成二十一年度までに完全に引き上げることといたしております。

 また、給付水準の五〇%確保についてのお尋ねがございました。

 新しい給付水準の自動調整の仕組みによります給付水準の調整は、年金制度を支える被保険者数の減少度合い等に応じて行われるものであります。これによりまして、実際に給付される年金の水準は、今後生まれてくる者の出生率の低下が見込みよりも大きい等の変動があっても、少なくとも平成三十五年、二〇二三年までは、夫だけが平均賃金で四十年働いた場合の夫婦の基礎年金を含めた年金の水準で見て、五〇%を割り込んでしまうことはないと考えております。

 また、五〇%に近い給付水準まで調整が進むとしても、それに至るまでにはまだ相当な時間があり、まず、それまでの間に、次世代支援対策や経済の回復、発展に全力を挙げて取り組むことが重要であると考えております。

 女性と年金、短時間労働者の厚生年金適用についてのお尋ねがございました。

 女性と年金にかかわる課題につきましては、今般の年金制度改革案におきましても、個人の生き方、働き方の多様化に対応した年金制度とする観点から、離婚時など必要な場合の第三号被保険者期間の厚生年金の分割などの見直しを行うこととしているところでございます。

 また、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大につきましては、今回の改正案では、五年後を目途に総合的に検討を行い、所要の措置を講じる旨の検討規定を設けたところでございます。

 今後、被用者としての年金保障を充実する観点や企業間の負担の公平を図る観点から、短時間労働者の厚生年金の適用のあり方の見直しにつきまして、短時間労働者が多く就労する企業への影響、短時間労働者の意識、就業の実態及び雇用への影響などを勘案しながら、検討を続けてまいりたいと考えております。

 年金積立金の運用組織についてでございますが、今回の改革は、より専門性を徹底した上で、責任体制の明確化を図ることを目的としております。

 具体的には、新法人の長に民間から資金運用の専門家を登用すること、新法人に学識経験者から成る運用委員会を置きまして運用方針の検討や運用状況の監視を行うこと、グリーンピア業務や住宅融資業務を廃止いたしまして運用業務に特化すること、資産構成割合、基本ポートフォリオの決定権限を新法人へ移管した上で、業務実績を厳正に評価し、適切に責任を問う仕組みとすること、運用の基本的な方針などにつきまして国民に広く公表することなどを通じまして、専門性の徹底や責任の明確化を図っていきたいと考えております。

 年金積立金の運用のあり方につきましてもお話がございましたが、先ほど申し上げましたとおり、年金運用につきましては、国内外の債券、株式等の構成割合、いわゆるポートフォリオを決めまして、この構成割合を長期的に維持することによって、安全かつ効率的に運用しているところでございます。

 お尋ねの今後の年金積立金運用のあり方につきましては、国内債券を中心としつつ、国内外の株式を一定程度組み入れて運用するという分散投資の考え方に基づきまして、今回の財政再計算時におきます予定運用利回りの見直し、四・〇から三・二%に合わせて、今後、具体的な資産運用構成割合につきまして、専門的観点から検討する必要があると考えているところでございます。

 国民年金保険料の未納問題につきましてもお話がございました。

 国民年金一号被保険者の保険料につきましては、平成十四年度で納付率が六二・八%となり、これは大変深刻な問題であると認識をいたしております。

 具体的には、まず、この制度に対する理解を深めるために、国民の皆さん方に対しまして、年金教育などを徹底したいと考えているところでございます。

 未納者に対しましては、個々に催告状の送付、電話や戸別訪問による保険料納付を進めまして、さらに、コンビニエンスストア等での保険料の収納を開始するなど、より保険料を納付しやすい環境をつくりたいと考えております。

 また、こうしたことにおきましてもやはり十分に果たせないというときには、強制徴収も実施してまいりたいと考えているところでございます。

 今後の年金の福祉施設に対するお尋ねがございました。

 年金の福祉施設につきましては、年金資金を被保険者に福祉還元すべきとの国会附帯決議や審議会の御提言、地域のニーズ等を踏まえて実施されてきたものでございます。

 しかしながら、年金制度の厳しい財政状況等を踏まえ、必要な見直しを行うことは当然と考えておりまして、年金の福祉施設につきましては、例外なくこれを整理し、国民の理解が得られるよう、整理合理化を進めていきたいと考えているところでございます。

 最後に、高齢者雇用の促進に関する認識でございますが、少子高齢化の急速な進行や年金支給開始年齢の引き上げなどを踏まえると、高齢者が意欲と能力のある限り活動し続けることができる社会の実現を目指す必要があると考えております。

 このため、高年齢者雇用安定法改正案におきまして、六十五歳までの雇用の確保を図るために、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等を事業主に求めること等をしておるところでございまして、高齢者の雇用の拡大に努めてまいりたいと考えているところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 枝野幸男君。

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の骨なし、ごまかし、先送りの年金改悪関連法案について質問をいたします。(拍手)

 なお、政府の答弁が不十分な場合には、再質問、再々質問させていただくことをあらかじめ申し上げます。

 言うまでもなく、年金は、すべての国民にとって老後の生活を支える最大の柱です。ところが、社会の急激な変化とともに、年金制度の根幹が揺らいでいます。五年前、十年前に政府が約束した年金の支払いは、同じく政府の約束した保険料負担などでは到底賄い得なくなり、このままでは少子高齢社会を乗り切ることができなくなっています。年金財政は、破綻状態と言っても過言ではありません。だからこそ、昨年の総選挙で、私たち民主党はもとより、自民党や公明党の皆さんまでも、年金の抜本改革を約束したのではないでしょうか。(拍手)

 こうした問題に真正面からこたえるために、私たちは、ばらばらで複雑な年金制度を一元化するとともに、従来の基礎年金に相当する、老後の最低限の生活を保障する部分については全額税で賄う、新しい年金制度への抜本的な改革を訴えてきました。これを受けて、今般、総理は突然に、年金一元化の必要性をお認めになりました。これは、民主党の主張が大筋で正しいことを総理御自身も認めざるを得なくなったものであります。(拍手)

 ところが、政府案には、総理も認めた一元化という、まさに制度の根幹にかかわる見直しが全く含まれておりません。この案は、一体どういう意味を持つんでしょうか。

 政府・与党は、今回の法案がまさに抜本的改革であると主張してきました。五十年、百年の安心を確保するとまで言っていました。総理の発言に沿って考えると、本法案成立後一年ほどで、一元化によって制度の根本が変わることになります。五十年、百年の安心はおろか、数年ももたない、その場しのぎの案にすぎないことを総理自身も認識していると認めたことになります。(拍手)

 根本的な部分で見直しが必要な欠陥商品であることを認めながら、それでも抜本的改革と言い張るならば、それはまさに詐欺的と言わざるを得ません。総理及び厚生労働大臣の責任ある見解を伺います。(拍手)

 この国会で年金の抜本改革を実現するとした自民・公明両党の昨年の政権公約は、こうした総理の発言によってみずから否定されました。総理の公約軽視は今に始まったものではありませんが、これほど堂々と公約を破ったことについて、どういう責任をとるんでしょうか。またしても、大したことないと開き直るのでしょうか。総理及び厚生労働大臣に、公約破りの責任についてお尋ねをいたします。(拍手)

 さて、総理自身が一元化の必要性を認めているにもかかわらず、与党は本法律案の審議入りを強行いたしました。しかし、一元化について協議、検討するなら、本法案の審議は全くと言っていいほど意味を持ちません。保険料についても、また給付水準についても、一元化によって、あるいはどんな一元化をとるのかというその方法によって大きく異なってくるからです。今回の法律案で十年以上も先のことまで決めたとしても、数年で根本的に見直さなければならないんです。

 制度の枠組みが固まらなければ、具体的な数字を決めても意味がありません。意味のない本法案は撤回し、一元化を含む本当の抜本改革について先行して議論するのは当然のことであります。政府は、では、いつになったら一元化についての具体的な提案をしていただけるんでしょうか。総理の明快な回答を求めます。(拍手)

 さて、そもそも政府案は、一元化以前の問題としても、国民の期待する抜本的改革とはなっていません。

 年金に対する国民の不信と不安は、大きく言うと五つに整理できます。

 一つは、世代間の不公平です。世代によって、納めた保険料と将来受け取る年金額との比率に余りにも大きな格差が生じています。きちんとした説明をすることなく、こうした格差を放置することは、特に若い世代の年金不信を高めています。

 二つ目は、将来、本当に年金を受け取ることができるのかという不安です。年金財政が破綻し、ずるずると年金支給額が引き下げられ、老後の生活が確保できなくなるのではないかという不安を多くの皆さんが抱いています。

 三番目は、働き方によって制度が異なるために生じている不透明感です。民間と公務員、給与所得者と自営業者という違いに加えて、同じ職場で働いていても正社員かパートかによって年金制度が異なるというケースもふえています。

 四番目は、年金積立金が食い物にされているという問題です。多くの国民が、積立金について、不必要な福祉施設建設などに回され、利権と天下りの食い物になっていると受けとめています。(拍手)

 最後に、働く女性と専業主婦との間で相互に高まっている不公平感です。女性の生き方が多様になった今、いわゆる三号被保険者問題の解決は焦眉の急であります。

 政府案は、こうした不信と不安に全くと言ってよいほどこたえず、ただ単に年金支払い額を抑制し、保険料負担を今後十年以上にわたって毎年、毎年、毎年引き上げていくという数字のつじつま合わせをしているだけです。これをもってどうして抜本改革と言えるのか、今申し上げた五つの課題に政府案はどうこたえているのか、総理及び厚生労働大臣にお尋ねをいたします。(拍手)

 政府はこれまでも、五年ごとの年金改定のたびに、将来見通しを修正して、数字の手直しを繰り返してきました。今回も、これまで間違い続けてきた出生率と経済の予測について、何の反省もなしに、同じように踏襲しています。将来見通しが違ってくれば、政府の言っている給付水準の確保は到底なし得ません。五年前、十年前に間違えた見通しを、今回はなぜ将来にわたって信頼できるんでしょうか。総理の責任ある答弁を求めます。(拍手)

 年金の抜本改革は、私が本院に議席をいただいてからのこの十一年の間だけでも、二度にわたる年金改定のたびに課題となりました。しかし、結局は、国民負担の引き上げだけをとりあえず実施することが繰り返され、抜本改革は先送りされてきました。

 今回も、保険料引き上げなど政府案の中身だけ決めて、一元化などの抜本改革を後回しにするのでは、五年前、十年前と何も変わりません。そして、これまで繰り返されてきたように、何度も繰り返されてきたように、国民負担増だけがいわば食い逃げされ、抜本改革はいつになっても実現しないことになってしまいます。むしろ、今回の法案は十年以上先まで保険料の引き上げを盛り込んだ法案ですから、今まで以上に先送りがやりやすくなっているとさえ言えます。(拍手)

 こうした観点からも、本当に一元化などの抜本的改革を実現する意思があるならば、本法案は、一たん撤回するか、少なくとも凍結する以外にはありません。

 私は、古い対決型の国会審議でなく、対案を提示した建設的な国会審議を目指してきました。しかし、そのためには、政府から責任ある提案のなされることが必要不可欠の条件であります。総理自身が、審議の始まる前から見直しに触れざるを得ないような欠陥法案しか示されないのでは、そもそも議論の前提を欠いています。(拍手)

 間もなく提出する我が党の抜本改革案に対して、政府・与党として、一刻も早くまともな対案をそちらこそお示しください。それなしには、そもそもの審議の前提が欠けている、政府からまともな案が出ていないと審議のしようがないんだ、到底、委員会での実質審議には、入りたくても入れないということを強く申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 枝野議員にお答えいたします。

 年金の一元化に関する私の発言と法案や政権公約との関係についてでございますが、今回の法案は、従来のように五年ごとに改正するのではなく、長期にわたって制度が維持できるように給付の下限と負担の上限を定め、基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げるとともに、経済情勢や人口構成の変化に応じて給付と負担を自動的に調整する仕組みを定めたものであり、年金制度が高齢者の生活の基本的部分を支えるという役割を果たすことができるようにするための抜本的な改正であり、与党の政権公約を実現するものであると考えております。(拍手)

 少子化、高齢化の急速な進行が見込まれる中で、どのような体系をとったとしても、給付と負担を見直し、長期的な均衡を確保することは避けられない課題であります。こうした点に正面から取り組んだ今回の法案を、今国会において先送りすることなく、ぜひとも成立させていただきたいと考えております。(拍手)

 厚生年金、国民年金、共済年金に関しての年金一元化は、従来から議論のあるところであります。その実現のためには、所得の捕捉の問題をどうするのか、事業主負担をどう考えるか、税と保険料の負担をどう組み合わせるかなど、基本的に検討すべき事項があり、検討に一、二年を要し、実施には相当の期間を要する、制度の基本にかかわる問題であります。

 一方、今回の政府の改革法案は、どのような制度体系をとったとしても避けられない給付と負担の均衡を図るためのものであり、一元化を考えるとしても、それにつながり得るものであります。(拍手)

 このため、私は、今回の改革法案の成立を図ることとは切り離して、こうした基本的問題についても協議することは有意義であると申し上げたところであります。こうした考え方が詐欺的との批判は全く当たらない。

 民主党も、批判するばかりでなく、給付水準など具体的な内容を伴った対案を早くお出しいただきたい。その上で、政府としては、国会審議の過程で議論をさせていただきたいと考えております。(拍手)

 今回の年金制度改革法案と課題についてでございますが、御質問では数字のつじつま合わせと批判されておりますが、年金制度においては、給付と負担の均衡を図ることは本質的な課題であります。こうした点を含め、さまざまな課題に正面から取り組んだ今回の改革は、抜本的な改正であると考えております。

 すなわち、今回の改正案では、世代間の公平を図る観点から、既に年金を受給している者にも給付調整をお願いし、若い世代とともに制度を支え合って持続可能な仕組みの構築に協力いただくこととし、年金資金の運用体制を見直すとともに、あわせて年金の福祉施設について、年金制度の厳しい財政状況や与党合意等を真摯に受けとめ、例外なくこれを整理することとし、多様な生き方、働き方の選択に対応できる仕組みとするため、在職老齢年金制度の改正や、第三号被保険者制度において、離婚した場合などに厚生年金の分割ができる新たな仕組みを導入するなど、諸課題への対応策を講じることとしているところであります。

 年金制度改正案の前提とした出生率及び経済前提についてでございますが、今回用いている人口推計は、出生率の低下の主要因である晩婚化に加え、結婚した夫婦の出生力が低下しているという新たに判明した要因も加えて、前回の推計を見直したものであります。また、物価、賃金、運用利回りなどの経済前提は、労働力人口の見込み、最近の実績等を勘案して設定したものであります。

 以前の年金改正の際に前提とした出生率等については、予測しがたい社会状況の変化により実際には低位に推移したことは事実ですが、今回の改正案の前提とした出生率及び経済前提については、現時点において判明している事実や傾向をできる限り反映させたところであります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 枝野議員にお答えを申し上げたいと思います。

 公的年金制度の一元化についてのお尋ねがございました。

 御承知のとおり、公的年金制度の一元化につきましては、昭和六十年の改正におきまして、基礎年金制度の創設によりまして、一階部分については全国民共通の一元化した給付の仕組みが創設されたところでございます。

 その他におきましても、サラリーマンについての報酬比例部分につきまして、厚生年金と幾つかの共済年金制度に分立していることにつきまして、一元化を図っていくことが課題として残され、順次進められてきたところでございます。

 一方、自営業者の方も含めた一元化した制度を考えていく上では、例えば、自営業者についても二階部分の年金をつくって、それを含めて一元化した制度をつくっていこうというお話だろうというふうに思いますが、このような議論は比較的最近起こってきたものと考えております。

 そのような一元化を実現する場合には、保険料賦課のもととなります所得について、いかに共通で公平な把握をしていくかなどの税制との関係、国民健康保険など他の社会保障との関係、自営業者の保険料につきましては事業主負担をどう考えるのかといったようなことにつきまして、今後具体的に検討する課題であると思っております。

 これらの問題を、総理が御指摘のように、一、二年かけて議論をし、そして結論を出すというふうに御指摘でございますが、それは私たちもそうすべきであるというふうに思っておりまして、腰を据えて議論をすべき課題であると考えているところでございます。

 法案と政権公約との関係でございますが、総理からもお答えのあったところでございますけれども、従来のように五年ごとに改正するのではなくて、長期にわたって制度が維持できるように、給付の下限と負担の上限を定めて、基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げること、そして、経済情勢や人口構成の変化に応じて給付と負担を自動的に調整する仕組みを定めたものでありまして、年金制度が将来にわたって高齢者の生活の基本的部分を支えるという役割を果たすことができるよう、持続可能な制度の姿を示したことであります。こうしたことによって、私たちの政権公約は達成されているものと考えているところでございます。

 今回の年金制度改革案が抜本改革と言えるのかというお尋ねでございましたが、年金の給付と負担の均衡を図ります上からその見直しを図っていくことは、公的年金制度において本質的な課題でありまして、これはどのような制度体系をとっても必要なものでございます。

 五年ごとに給付と負担を見直すのではなくて、将来の負担の上限と給付の下限を法律で明らかにし、急速な少子高齢化が進行する中で、年金を支える力と給付の均衡をとることができる仕組みに転換をしたわけでございます。課題でありました基礎年金の国庫負担割合につきましても、道筋をつけたところでございます。

 年金制度が、将来にわたって高齢者の生活の基本的部分を支えるという役割を果たすことができる持続可能な制度となるようにするための根幹にかかわる大きな改革でありまして、抜本改革の名に値するものであると考えているところでございます。

 今回の改正案における諸課題への取り組みにつきましても御質問がございましたので、若干触れさせていただきたいと思います。

 将来の負担の上限と給付の下限を明らかにして、年金を支える力と給付の均衡をとることのできる仕組みとしまして、少子高齢化が進行する中で、将来にわたって持続可能な制度の姿を明らかにしましたほか、既に年金を受給している者にも給付調整をお願いし、若い世代とともに制度を支え合って持続可能な仕組みの構築に協力していくこととしたわけでございます。

 多様な生き方、働き方の選択に対応できる仕組みとするために、第三号被保険者制度に関しましては、サラリーマンの負担する保険料は専業主婦も共有して負担しているものであるという基本的認識を明らかにし、離婚した場合などには厚生年金の分割ができる新たな仕組みも導入したところでございます。

 また、年金の積立金につきましては、運用の専門性を徹底し、責任の明確化を図る観点から、年金資金運用基金を廃止した上で、運用の専門機関である独立行政法人を設立することとしたこと等、新たな制度を幾つか導入したところでございます。

 以上、御答弁を申し上げた次第でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) 枝野幸男君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。枝野幸男君。

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 坂口厚生労働大臣から一元化の話も検討するという御答弁がございまして、公明党は五十年、百年安心とおっしゃっていましたから、坂口厚生大臣は否定されるのかなと思っていたんですが、肯定をされましたのでほっといたしました。公明党の皆さんも五十年、百年もたないということを認識していらっしゃるんだなということが確認をできたと思っております。(拍手)

 その上で、総理にお尋ねをいたしますが、総理はその給付の下限、負担の上限を決めたとおっしゃいますが、一元化を議論して一元化をする、あるいはそういう方向に向かっていったとしたら、この給付の下限と負担の上限はそのままいくはずないじゃないですか。

 今国民年金をもらっている方々と今厚生年金をもらっている方々を一元化したとき、今の給付の下限と負担の上限というのは、厚生年金の皆さんを前提として計算をして、政府案の負担の上限で給付の下限、何とかつじつま合わせをしているんです。ここに国民年金層の人が入って一緒になったときに、では、本当に政府案の負担の上限で給付の下限までちゃんと支給をできるのかなんということは、その部分の所得把握とかをしっかりしなければ、計算のしようがないじゃないですか。(拍手)計算のしようがないことを今先に決めておいたって、意味がないじゃないですか。

 総理、それについて正面からお答えください。

 なお、再々質問の余地があることをあらかじめ申し上げておきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 既に答弁したところでありますが、再度の御質問でありますから、再度答弁いたします。

 私の一元化の発言と今回の年金改革法案、矛盾するものではございません。一元化の議論は前から出てきた議論であり、今回の政府の改革法案は、どのような制度体系をとったとしても避けられない、給付と負担の均衡を図るためのものであり、一元化を考えるとしても、それにつながり得るものであります。(拍手)

議長(河野洋平君) 枝野幸男君からさらに再質疑の申し出があります。残りの時間がわずかでありますから、ごく簡単に願います。枝野幸男君。

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 賢明な総理のことですから、おわかりになってお答えになっているのかもしれませんが、私は、総理にはぐらかされるような質問はしていません。見解の相違だなんて逃げられるような質問をしているつもりは全くありません。まさに総理がお答えになったように、今回の制度が一元化の話につながっていくのか、両立し得るのかということをちゃんと具体的にお尋ねしています。

 つまり、今度の法案は、負担と給付の自動調整を組み込んで、その負担の上限を定め、給付の下限を定めました、こう言っているわけですね。では、その負担の上限と給付の下限はどういうふうにでき上がってくるのか。まさに負担があって給付ができるわけですから、幾らぐらいの所得の人がどれぐらい負担をして、そして保険料がどれぐらい入るのかということが確定をして初めて、給付がどれぐらいの水準になるのか出てくるわけですね。この給付の下限まで決めるわけですから、負担はどれぐらいの方がどれぐらいしていただくのかがわからなければ、給付の下限なんか決められるわけないですよね。だれでもわかりますよね、こんなことは。(拍手)

 さて、現在の政府案は、厚生年金の世界の中ではどれぐらいの所得の人がいて、その所得に応じて、政府案の保険料率をかければどれぐらいのトータルの保険料が集まります、これは計算をしているでしょう。それが当てになるかどうか、ここを聞いたら見解の相違だと言われるだけですから、ここは聞きません。しかし、そういう計算をしているからこそ、でっち上げだとしても、これぐらいの給付ができますという給付水準の下限を設定できるんですよ。

 では、政府は、一元化の先にある、国民年金の皆さんがどれぐらいの所得層にどれぐらい分布をしているのか、どれぐらいの保険料をかければどれぐらいの保険料収入が上がってくるのか、知っていらっしゃるんですか。お持ちになっていないでしょう、国税庁以外にこの情報を持っているはずないんですから。したがって、ものすごい低い層に偏っていれば、それは給付の下限はとても賄い得なくなるだなんというのは、これは中学生でやる数学でもすぐわかる話ですよ。(拍手)

 そこの部分のところをどう認識をされているのかということを私はお尋ねしているのであって、一元化ということは、だれがおっしゃったんじゃないですよ。総理自身がテレビの前で全国民の皆さんに向かって、先ほど一、二年だなんておっしゃっていましたけれども、テレビでは一年とおっしゃっていましたよね。一年で結論を出すんだから、それぐらいのことは想定してやっているんじゃないですか。

 もしそういうデータをお持ちだったら出していただきたいですが、果たして、所得分布も把握していないのに、どうして負担の上限と給付の下限を決められるのか。一元化をした瞬間に、今幾ら決めたって、一元化して、調査をして、その時点で出てきた数字に基づいてもう一回計算しなきゃならない。この当たり前のことに気づいていなくて今みたいな答弁をされているのか、それとも、気づいていらっしゃるんだったら、どういうふうにこの矛盾を説明されるのか。

 きちっと具体的に、そんな細かいことは委員会でやるだなんて逃げないでくださいね。総理自身が、総理自身がテレビで全国民に向かってお話しされたから私は聞いているのであって、きちんと説明ができなければ、到底審議に値しないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 再度の御質問でありますから、再度答弁いたします。

 今回の年金改革法案が成立して、制度の一元化の議論を大いにしたいというなら、我々喜んでいたします。

 今回の年金改革法案と制度の一元化の議論は、全く矛盾するものではありません。国民年金、厚生年金、共済年金、制度が違う。これについては、じっくり対案を出すから協議してほしいというならば、政府としても十分真剣に受けとめてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 古川元久君。

    〔古川元久君登壇〕

古川元久君 民主党の古川元久でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出のいわば年金不信拡大法案とでも言うべき年金関連法案に対し、質問いたします。

 なお、私も、政府の答弁が不十分な場合には、与えられた時間の範囲内で、さらに議論を深めるために再質問させていただく可能性があることをあらかじめ申し添えます。(拍手)

 まず最初に、私の質問に入る前に、今の枝野議員に対する小泉総理の答弁に対して一言申し述べたいと思います。

 総理は、現行制度の延長線上の今の政府案の中のそうした改革案が、一元化された新しい年金制度とあたかも整合性がとれるような、そういう発想をしておられるようでございますが、制度を一元化するということは現行制度に竹を接ぐようなものではないわけであります。全く新しい制度をつくるわけでありますから、そもそも、こうした一元化された制度と現行のこの制度の延長線上に立った政府案が両立することはあり得ないということをまず最初に申し述べたいと思います。

 そして最初に、先日東京地裁で出されました、学生無年金障害者に対し救済措置が講じられなかったことを違憲とした判決に関して質問いたします。

 まず政府は、この判決を尊重し、控訴を断念すべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。(拍手)

 この無年金障害者問題については、年金の制度改革が議論されるたびに常に大きな論点となりながら、抜本的な解決策が示されることなく放置されてきました。今回の判決は、こうした私たち立法府、政府の姿勢に対し、司法から厳しい指摘がされたものと謙虚に受けとめなければなりません。したがって、政府は控訴を断念するとともに、直ちに無年金障害者問題に対し抜本的な措置を講ずるべきであります。(拍手)

 昨日開かれました無年金障害者問題を考える議員連盟においても、控訴の断念を求めるとともに、無年金障害者に対して、今国会において法的な措置を講じ、障害年金を支給することが緊急に決議されました。この議連には百四十八名もの議員が参加をしており、その中には与党も、自由民主党四十五名、公明党十名が参加しています。政府は、この超党派の議連によって示された緊急決議を真摯に受けとめるべきであります。(拍手)

 さらに、担当大臣であります坂口厚生労働大臣は、既に一年半前に、無年金障害者に対する坂口試案を発表しています。その中で、無年金障害者は、本人はもとより、その扶養者である両親を初めとする親族等は高齢化が著しく、看過できない事態に立ち至っている、速やかに実態調査をして、これらの人たちへの対応を開始しなければならないと述べておられます。今こそ、その対応を開始すべきときではないでしょうか。(拍手)

 私は、議連の考え方に沿って、まず、年金制度上欠陥の割合の高い、在日外国人、在外邦人、学生、主婦の四類型を優先し、年金制度の枠内で、障害基礎年金水準にできる限り近い給付水準を設定する形でこの問題の解決を図るべきだと考えます。総理及び厚生労働大臣の見解はいかがでしょうか。(拍手)

 このように考えますと、実は、この無年金障害者問題に対してどのような解決策を示すかは、年金制度そのものに大きな影響を与えるものであり、法案の中身に含まれてしかるべきものであります。しかるに、政府案には全く無年金障害者問題への対応は含まれておらず、このままの法案で審議を進めれば、後から論理的整合性を欠くことにもなりかねません。したがって、この点をもってしても、本法案は一度撤回し、この問題に対する解決策をきちんと示した上で出し直すしかないと考えますが、いかがでしょうか。総理の見解を伺います。(拍手)

 この無年金障害者問題に象徴されるように、現行の年金制度は余りにも多くの問題を抱え過ぎています。政府案のように現行制度の維持を前提とした改革案では、こうした制度の持つ矛盾や不公平がますます拡大し、年金制度に対する国民の不信感はますます高まります。私が今回の政府案を年金不信拡大法案と称するのは、そのためであります。(拍手)

 今求められている抜本的年金改革とは、国民の間に蔓延している年金不信を払拭する改革です。政府・与党は、負担と給付の関係が年金制度の根幹であり、今回の法案はその部分を明らかにしたから抜本改革だと言いますが、それは年金制度上の数理計算の世界でのそろばん勘定の話であります。

 年金制度に対し保険料を払っているのは国民です。幾ら机上のそろばん勘定が合おうとも、国民感情として保険料を払う気にならなければ、予定どおり保険料は集まらず、結果的にそろばん勘定も合わなくなります。国民年金の未納・未加入者の割合が四割にも上っているという事実は、まさにこのことを如実にあらわしています。にもかかわらず、負担増と給付減でそろばん勘定を合わせようとしているのであります。果たしてこれで、国民感情として年金保険料を払う気になるでしょうか。

 総理は、この案で本当に年金制度に対する国民の不信が解消されるとお考えなのか、総理の本音をお伺いいたします。(拍手)

 そもそも、国民感情としてどうしても許せないのは、これまでの国会審議や私たちの調査で次々と明るみになってきた、本来年金給付に充てられるはずの私たちが納めた年金保険料が、余りにもずさんかつ無責任に使われてきたことであります。(拍手)

 グリーンピアに象徴される年金福祉施設はもとより、さきの年金掛金ピンはね継続法審議で明らかになった事務費への年金保険料の流用、そして、コンピューター経費まで福祉という名のもとに年金保険料を使うことを可能にしてきた厚生年金法第七十九条等の、我が党の長妻議員いわく何でも福祉法の存在など、調べれば調べるほど、あきれた年金保険料の使い方が明らかになってまいりました。また、株式市場や債券市場での年金積立金の運用でも巨額な含み損を出しています。にもかかわらず、これまでだれも何の責任もとっていないのであります。

 総理、一体、この流用、運用損の責任は、だれがどのように負うのでありましょうか。抜本改革と言うならば、まずはこの点について、責任と今後の方策を明確にしてけじめをつけるところから始めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)

 政府・与党は、今回の法案の最大の売りは、保険料水準を固定し、厚生年金の給付水準は現役世代の収入の五〇%を上回ることを保障するところだと言っています。しかし、これが実現されるのは、これから十四年後、二〇一七年度以降の話です。果たして十四年後、この約束は本当に守られるのでしょうか。

 これまで政府は、年金改正のたびに、負担増と給付減を国民にお願いしつつ、もうこれで大丈夫、大船に乗った気でいてくださいと、国民を安心させて欺いてきました。ところが、次の年金改正のときになると、済みません、人口推計などの推計が予想と違いました、このままだとこの船は沈んでしまいますから新しい船に乗りかえてください、今度の船こそ大丈夫ですと言って、新たな負担増と給付減を繰り返してきたのであります。この繰り返しが、制度に対する国民の不信を増幅させた最大の原因であります。(拍手)

 総理、そして坂口大臣、今度の船はこれまでの船と違って、将来穴があいて沈むことはないと、ここで国民に誓えますか。誓えるとすれば、それはどうしてですか。明確にお答えをいただきたいと思います。(拍手)

 また、そもそも、保険料を固定することと給付水準を保障することとは両立し得ないはずです。入り口の保険料水準を固定しながら、出口の給付水準も保障するのは、どう考えても論理的にあり得ないと思うのですが、総理の明確な御説明を求めたいと思います。

 この法案で国民にとって唯一確かなことは、これから十四年間にわたって、保険料が毎年上がり続けるということだけであります。

 今後十四年間に及ぶ保険料引き上げは、我が国経済、そして雇用に大きなマイナスの影響を与えるでしょう。保険料引き上げによる国民全体の毎年の保険料負担増は、一兆円から一兆二千億円に及ぶと言われています。好不況に関係なく、毎年これだけの負担増を日本経済は受け入れることができるのでしょうか。

 保険料の引き上げは、厚生年金において、その半分を負担する企業の雇用や賃金体系にも大きな影響を与えます。保険料負担の継続的な引き上げは、賃下げやリストラ等、企業が社会保険料負担を回避する動きをますます加速させるでしょう。企業は新規採用を控え、中途採用も一段と厳しくなるはずです。そうなれば、年金の支え手である若者が、雇用機会そのものを奪われてしまう状況が起きてしまいます。また、運よく働く場所を見つけられても、多くは低賃金に甘んじなければならないでしょう。

 そうなれば、年金保険料を引き上げても、年金保険料の収入総額が政府が予想するようにふえるとは思えません。政府は、こうした保険料引き上げが経済や雇用に及ぼす影響をどのように分析しているのでしょうか。そして、政府の年金財政の将来収支見通しは、こうした影響を踏まえたものとなっているのでしょうか。総理と厚生労働大臣の正確な答弁を求めます。(拍手)

 以上、政府案の問題点のほんの一部分を指摘させていただきましたが、問いただしたい点はまだまだ数限りなくあります。にもかかわらず、これをもって抜本改革案と称するとは、まことに笑止千万と言わざるを得ません。まさに政府案は、現行制度の維持にいつまでもこだわるがゆえに、みずから年金制度に対する国民の不信の連鎖を引き起こしているのです。

 これに対して私たち民主党は、早くから、年金制度に対する国民の信頼回復のためには、現行制度にかわる新しい年金制度を構築するしかないと考えてきました。私たちは、すべての人が一つの制度のもと、すべての人にとって負担と給付の関係が明確で、すべての人に最低保障がある、そんな新しい年金制度を構想しています。

 新しい年金制度の創設のためには、幾つかの大きなハードルを越えていかなければなりません。しかし、真の抜本改革とは、こうしたハードルを高過ぎるから跳べないとあきらめるのではなく、高くても跳ぶという決意を決めて乗り越えることではないでしょうか。私は、新しい年金制度の創設は、できる、できないの問題ではなく、やる、やらないという意志の問題だと思います。そして、私たち政治家の役割は、まさにそうした決意を持って困難な課題を解決することにあるはずであります。(拍手)

 その意味で、今回、司法から突きつけられた無年金障害者に対する立法不作為という指摘は、立法府に籍を置く者として、私たちは極めて重く受けとめなければなりません。

 したがって、小泉総理は、まず本法案を一たん撤回した上で、この問題に対する明確な解決策を示し、年金制度の一元化のみでなく、それをも含んだ法案を再提出すべきであります。それこそ、さきの総選挙で二〇〇四年の年金抜本改革を政権公約として出した小泉総理の最低限の国民への約束履行であります。それなくしては、この法案は欠陥法案として私たちは断固リコールすることをここに宣言して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 古川議員にお答えいたします。

 無年金障害者問題の裁判の控訴とその対策、及びこの問題と今回の法案との関係についてでございますが、東京地裁の判決への控訴については、現在、厚生労働大臣を中心に十分検討しているところであり、その結論を得るのにもうしばらく時間が必要であります。

 一方、これまで年金制度へ加入していない障害者等の方々への対応の問題については、障害者基本計画においても、「拠出制の年金制度をはじめとする既存制度との整合性などの問題に留意しつつ、福祉的観点からの措置で対応することも含め、幅広い観点から検討する。」とされ、厚生労働省において検討してきているところであります。

 このように、この問題は、福祉的問題もあるため、今回の年金改革法案には織り込まなかったところであります。

 しかしながら、この問題につきましては、裁判の判決の控訴の問題とは切り離して検討する必要があると考えており、現在、与党においても議論が行われていることから、これらを踏まえ、問題の解決に向けて適切に対応してまいります。

 今回の改正により、空洞化問題など、年金制度に対する不信が解消されるかどうか、今までの改正と何が異なるのかについてでございます。

 公的年金制度は、高齢期の生活の基本的な部分を支えるものとして国民生活に不可欠な存在であり、公的年金に対する国民の信頼を確保していくためには、給付と負担を中心に見直しを行い、年金制度が少子高齢化が進行する中でもその役割を果たし続けていくことができるよう、持続可能な制度の姿を明らかにすることが重要であります。

 このため、本国会に提出した年金制度改正案においては、これまでのように五年ごとに改正するのではなく、将来の保険料の上限と給付水準の下限を明らかにし、急速な少子高齢化が進行する中で、年金を支える力と給付の均衡をとることのできる仕組みに転換し、さらに、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げの道筋も明らかにするなど、国民の信頼を得るべく、給付と負担についての長期的均衡を確保する制度の姿を明らかにしたところであり、今回の法案は、これまでの改正とは大きく異なる抜本的な改正と考えております。

 また、未納等の問題についても、強制徴収を含めた徹底した収納対策を実施するとともに、今回の改正法案においても、多段階免除や若年者の納付特例制度を導入し、今後、保険料負担が増加する中においても、できる限り保険料を納めやすいものとするなど、制度的にも対応を図っているところであります。

 年金保険料及び年金積立金の運用でございますが、年金福祉施設等の年金給付以外の支出については、年金制度の厳しい財政状況等を踏まえ、年金福祉施設については今後保険料を投入しないこととするなど、徹底した見直しを進めることとしています。しかしながら、こうした事業は、年金資金を福祉還元に使うべきとの各方面の声を反映し、予算の国会承認も得て、地元の要請等も踏まえつつ行われてきたものであり、関係者の責任を問うことは困難であると考えております。

 年金積立金の運用については、現時点で評価損が生じていることは事実ですが、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことが重要であると認識しており、一時点のみをとらえて評価することは適切ではないと考えております。

 いずれにせよ、現行の運用のあり方については、これを見直し、専門性の徹底や責任の明確化の観点から、新たに設立する独立行政法人において運用することとしているところであります。

 保険料水準の固定と給付水準の五〇%保障でございますが、今回の年金制度改正案では、将来の現役世代の負担が過大とならないようにするため、保険料の上限を一八・三%と固定するとともに、公的年金としてのふさわしい給付水準の下限を、平均的な賃金で働いてきた被用者の専業主婦世帯の年金で見て五〇%と設定したところであります。

 これらの水準は、最近の傾向等を踏まえて設定した出生率や経済状況を前提としたものであり、その実現は可能と考えておりますが、今後とも、次世代支援対策や持続的な経済成長の実現に全力を挙げて取り組むことが重要と考えております。

 保険料の引き上げが経済や雇用に及ぼす影響についてでございます。

 保険料の引き上げによって、保険料を引き上げない場合に比べて企業や個人の負担は大きくはなりますが、企業にとっても、年金等の保険料負担は、労働者の老後の不安等を解消することで、活力ある経済活動の基盤となること、保険料を引き上げない場合、かなり大幅な給付の抑制が必要となるが、その場合の高齢者の消費に与える影響や現役世代の老親扶養負担が増加することなども合わせて総合的に考える必要があり、今回の改正案は、これらを踏まえたものとなっております。

 総じて、西欧諸国においては、我が国よりも高い年金保険料負担となっております。我が国も、将来の過重な負担は避けなければなりませんが、高齢化する社会でも国民が安心して暮らすための負担は必要であり、将来に向けて経済が発展していく中での負担増であることは御理解いただきたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 古川議員にお答えを申し上げたいと存じます。

 まず、無年金障害者につきましてのお尋ねがございました。

 平成十四年の七月にも私の試案を発表させていただいたところでございまして、本年二月の与党合意におきましても、「その生活実態を踏まえた福祉的措置の在り方についてさらに検討し、必要な財源の在り方とともに速やかに結論を得る」というふうにされているところでございます。

 そのような中で、年金を受給していない障害者に対します、拠出制の年金制度の枠内での、御指摘のように障害基礎年金の水準に近い水準の給付を行うということは、保険料の負担を前提としている給付を行うという社会保険制度の枠内に関する問題としていろいろ議論を重ねていかなければならないことだというふうに思っております。

 しかし、この無年金障害者の問題をどう解決するかという問題につきましては、これにつきましての議論はどうしても重ねなければならないわけでございますし、今回のこの時期に何とか前進をさせたいと考えているところでございます。御指摘になりました、障害基礎年金を一つの基準にして考えるというのは、そのときの一つの方法ではないかというふうに思っている次第でございます。

 それから次に、今回の年金制度改革案、今回は本当に大丈夫かというお話でございまして、前提となっております前提条件が本当に守られるのかという御指摘だと思います。

 一つは、実質賃金上昇率一・一%というのが果たして守られるのかという御意見がございます。

 しかし、この実質賃金一・一%は、総賃金の伸び率で申しますと、人口が減りますので〇・七ぐらいになりますので、いかなる政府ができたといたしましても、これぐらいの伸びはなければ日本丸は沈没するわけでございますから、これは必ず私はでき得るというふうに確信をいたしているところでございます。

 もう一方の合計特殊出生率でございますが、二〇五〇年に一・三九という数字を定めております。これができるのかという御指摘もあるわけでございます。

 しかし、もし万が一、この合計特殊出生率が一・一というままで推移いたしますと、二〇五〇年には、現在よりも人口が三千五百万人減少することになり、九千二百万人になってしまいます。そして、そのまままた五十年経過するということになりますと、その五十年の間に、その人口がまた半分になりまして、四千六百万人減少し、二一〇〇年には、日本の人口は四千六百万人になるという計算になってしまいます。それは、年金が崩壊をすることではなくて、日本社会が崩壊することに結びつくと私は思っております。

 したがいまして、これからの政府の一番中心になります政策は、こうしたことを中心にして政策を立てていかなければならないというふうに思う次第でございます。

 最後に、保険料の引き上げが経済や雇用に及ぼす影響につきまして御質問がございました。

 先ほど、総理からも御答弁のあったところでございますが、もし仮にこの保険料が小さくなっていくということになりますと、現在四十兆円の年金が出ているわけでございますから、この年金の額そのものも小さくしていくということになれば、これは経済に与える影響がまた大きいわけでございますので、双方を見て考えていかなければなりません。

 したがいまして、保険料の引き上げが全然影響しないということを私は申し上げるつもりはございませんけれども、年金を小さくすれば、それはそれでまた影響が大きくなるということを考えて、ここは双方を見ながら、しかし、譲り合うところは譲り合って前進をする以外にないということを申し上げたところでございます。(拍手)

議長(河野洋平君) 古川元久君から再質疑の申し出がありますが、残り時間がわずかでありますから、ごく簡単に願います。古川元久君。

    〔古川元久君登壇〕

古川元久君 先ほど、総理は、この無年金障害者問題について、福祉的要素もあるというふうに答えられました。ということは、この無年金障害者問題を解決するには、年金制度としての問題も考えなければいけないということを含んでおられるというふうに考えてよろしいのでしょうか。そうであれば、この問題については、この年金制度改革の本体の法案の中に含まれるべきではないでしょうか。もう一度、正確な御答弁をいただきたいと思います。(拍手)

 そしてまた、負担と給付の関係、保険料率を固定し、そして給付も五〇%を約束する、それは前提が守られればというお話でありましたけれども、今の坂口厚生大臣の話を聞いておりますと、この政府がしている試算は、見通しではなく願望に基づいた数字であるということが明らかになりました。この見通しと願望とは明らかに違うわけでありまして、願望に基づいた、そうした見通しの甘い、極めて恣意的な数字をつくって、それをもって保険料率とそして給付水準両方があたかも保障されるような、そうした錯覚を国民に与えるものだと言わざるを得ません。(拍手)

 この点について小泉総理にお伺いいたしますが、前提が崩れれば、この願望が実現できなければ、保険料率の固定とそして給付水準の保障、その両方というものは、これは両立し得ない、そのことをお認めになるかどうか、はっきりとしていただきたいと思います。

 以上です。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 再度の質問ですから、再度答弁いたします。

 無年金の問題については、現在、与党において議論が行われ、これらの点も踏まえまして、問題の解決に向けて適切に対応してまいります。

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(中野寛成君) 大口善徳君。

    〔大口善徳君登壇〕

大口善徳君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の国民年金法等の一部を改正する法律案等の年金改革関連三法案につきまして、小泉総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 公的年金制度は、持続可能な社会保障制度の根幹であり、私たちが生涯の生活設計を行う上で、既に所与のものとして老後の生活に欠かすことのできない基本的、中核的な存在となっております。

 少子高齢化の本格的な到来、なかんずく団塊の世代がいよいよ年金受給者へ移行する重要な節目に当たって、持続可能な年金制度を確立するため、この通常国会で年金改革法案を成立させることが国民に対する立法府の責務であると考えます。(拍手)

 年金制度改革については、さきの総選挙においても、大きな争点の一つとなりました。私たち公明党も、マニフェストで、百年安心の抜本的年金改革案を国民の皆様にお示ししました。その後、政府・与党において議論を重ね、国民の負託にこたえるべく、今般、内閣から法案が提出されたのであります。

 他方、民主党の対応はどうでありましょうか。政府案は抜本改革に値しないと批判されるのは結構でありますが、責任政党を標榜するのであれば、早急に改革案をお出しになり、正々堂々と国会の場で議論すべきであると考えます。(拍手)

 そもそも、民主党は、総選挙のマニフェストで、新しい二階建ての年金制度を提言されていました。それからおよそ五カ月が経過した現時点においても、具体的な改革案が待てど暮らせど出てこない。いまだ国民に示されていない。このことをどう説明されるのでありましょうか。(拍手)

 ようやく近々、その案を示されると聞きましたが、その際、特に、新たな制度の見直しによって、年金制度の根幹である給付と負担はどうなるのか、また、財源として検討されている消費税はどのくらいの税率になるのか、もしも具体的な数値が明確に示されないものであるならば、それは国民に単なる幻想を抱かせるだけの虚構にすぎないのであり、全く対案の名に値しないことを、前もって申し述べておきたいと思います。(拍手)

 こうした認識の上で、以下、順次質問をいたします。

 まず初めに、今般の年金改革の意義であります。

 これまで、五年ごとに制度改正して、給付と負担の見直しを繰り返してきました。また、その際に使用される将来人口推計などの見通しや前提の置き方に甘さがあったことや、年金運用の面での問題が国民の年金制度に対する信頼を損なう結果につながったとするならば、率直に反省すべきものと思います。

 今般の年金改革の抜本見直しに当たっては、国民の率直な不安、具体的には、保険料はどこまで上がり続けるのか、給付水準は下がり続けるのではないか、将来年金は破綻し、我々はもらえないのではないかという声に対し、明確な回答を用意するものでなくてはなりません。また、その裏づけとなる試算についても、必要な情報を十分に国民に提供されるべきであります。

 内閣提出の年金改革案によれば、第一に、将来にわたってモデル年金における給付水準は現役世代の平均収入の五〇%以上を確保するとしたこと、第二に、保険料率は段階的に引き上げ、厚生年金の最終保険料率は一八・三%、国民年金は一万六千九百円を上限とすること、第三には、基礎年金の国庫負担割合について二分の一へ引き上げる道筋をつけたことなど、将来にわたる持続可能な、安心、安定した制度改革が盛り込まれており、政府案はまさに抜本改革の名に値する法案なのであります。(拍手)

 小泉総理並びに坂口厚生労働大臣に、年金改革法案の意義と、その骨格である給付と負担のあり方についてお伺いいたします。

 ところで、小泉総理の年金一元化に対する発言が一部憶測を招いているようでありますが、一元化は、所得の把握とプライバシーの関係、自営業者などの負担の増大、移行期間の取り扱いなど多くの問題があって、将来腰を据えてしっかりと議論すべき課題であり、まずは抜本改革である政府案の成立を期することが重要であると考えますが、その真意について、小泉総理の明確なお答えをいただきたいと存じます。

 また、既に年金を受給しておられる方については、その年金額は、物価の伸びがマイナスである場合を除き減額されないと認識しておりますが、この点、マクロ経済スライドとの関係とあわせ、坂口大臣の御答弁を賜ります。

 長年の懸案であった女性と年金の問題に関し、夫が払った厚生年金の保険料は夫婦で共同して負担したものとみなすという規定が盛り込まれ、いわゆる専業主婦である妻の年金受給権が明確になったことは画期的なものと認識しております。改正案では、離婚時等の年金分割規定が盛り込まれましたが、今後さらに検討を進め、女性の年金受給権を確固たるものとしていく必要があると考えます。小泉総理の見解を賜ります。

 高齢者雇用施策と年金の関係について質問いたします。

 今般の高年齢者雇用安定法改正案において、六十五歳まで働き続けることが可能な環境が整備される一方、年金制度においても在職老齢年金制度を見直し、六十歳代前半の一律二割支給停止措置を廃止することとしたことは、時宜を得た改正であると考えます。

 今後の定年年齢引き上げ、継続雇用制度の実現に向けた取り組みの方針を含め、高齢者雇用施策について、坂口大臣にお伺いいたします。

 次に、国民年金保険料の未納についてであります。

 この問題は、これを放置すれば世代間の助け合いという制度の根本を揺るがすものとなりかねず、看過することはできません。年金制度に対する国民、特に若年世代の理解を深めていくための努力を重ね、徴収対策の強化を図っていくべきであります。

 徴収に当たっては税務当局との連携を図ることが重要であると考えますが、この点に関して、坂口大臣並びに谷垣財務大臣の答弁を求めます。

 さて、今般の年金改革法案の重要な点として、これまでの永久均衡方式を改め、有限均衡方式を採用し、また、年金積立金の考え方を大きく転換させていることが挙げられます。

 有限均衡方式の意義について、さらには、今般なぜ積立金の考え方を変更したのか、坂口大臣の御答弁をお伺いします。

 また、年金積立金は、新たに設置される年金積立金管理独立行政法人において管理運用がなされるわけでありますが、これまで以上に、専門性の徹底と責任の明確化が図られ、安全かつ効率的な運用を行うべきであり、国民から見て、より透明性を高めていくことが重要であると考えますが、坂口大臣の見解を求めます。

 これまで、年金保険料を原資として、大規模年金保養基地、すなわちグリーンピアなど数多くの福祉施設が設置されてきました。その当時、与野党すべてが附帯決議で賛意を表した経緯があるとはいえ、その後の社会経済状況の変化の中で、これら福祉還元事業としての必要性が希薄になってきていたにもかかわらず、的確な対応がなされてこなかったことについて、その政治、行政の責任は極めて重いものと考えますが、この点について、小泉総理の見解をお伺いします。

 今回の法律案においては、グリーンピアは平成十七年度限りで廃止することとされていますが、さらに、その他社会保険庁が設置してきた福祉施設等についても、年金資金への損失を最小化しつつ、その廃止、売却を含めた徹底的な見直しを行うべきであると考えます。

 また、今後、公務員改革の先鞭をつける意味からも、委託先公益法人への厚生労働省職員の天下りは行うべきではないし、役員の処遇の適切な見直しが必要であると考えますが、年金福祉施設等と委託先公益法人の見直しに向けた基本的考え方、進め方について、坂口大臣の答弁を求めます。

 さらに、年金保険料を財源とする社会保険事務費の使途に、国民の強い批判があります。平成十六年度予算の執行に当たっては、使途を厳しく見直し、経費の一層の削減に努めるとともに、平成十七年度予算編成においても、この批判に真剣にこたえるべきと考えますが、小泉総理の見解を求めます。

 次に、無年金障害者の救済措置についてであります。

 先月二十四日、東京地方裁判所における学生無年金障害者訴訟において、国の立法不作為として違憲判決が出されました。政策論としては、無年金障害者の問題は、現在のように年金制度が成熟する前のいわば政策移行期において発生したものであり、強制加入である現行制度における未納問題とは別に、年金制度の枠組みの中で何らかの対策、救済措置を検討すべきであると考えます。

 我が党としても、今国会中に所要の立法措置を講ずるなど、その救済に全力を挙げてまいりたいと思いますが、試案を発表された坂口大臣の御見解を伺います。

 最後に、社会保険庁は、種々の批判を真摯に受けとめ、その反省に立って国民の信頼回復に努めるべきことは当然のこと、今後の福祉還元事業の清算に伴って、社会保険庁の組織・人員体制の抜本的な整理合理化を図っていくべきであると考えます。

 年金行政の信頼回復に向けた決意とあわせ、小泉総理の認識をお伺いし、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 大口議員にお答えいたします。

 政府法案と年金の一元化に関する私の発言についてでございますが、今回の法案は、従来のように五年ごとに改正するのではなく、長期にわたって制度が維持できるように、給付の下限と負担の上限を定め、基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げるとともに、経済情勢や人口構成の変化に応じて給付と負担を自動的に調整する仕組みを定めたものであり、抜本的な改正であります。

 少子化、高齢化の急速な進行が見込まれる中で、今回の改正によって給付と負担の長期的な均衡を確保し、安定的な仕組みとすることにより、国民の年金に対する信頼を確保することは、先送りのできない課題と考えており、今国会で法案をぜひとも成立させていただきたいと考えております。

 一方、厚生年金、国民年金、共済年金に関しての年金一元化は、従来から議論のあるところでありますが、その実現のためには、所得の捕捉の問題をどうするか、事業主負担をどう考えるか、税と保険料の負担をどう組み合わせるかなど、基本的に検討すべき事項があり、検討に一、二年を要し、実施には相当の期間を要する、制度の基本にかかわる問題であります。

 このため、私は、今回の改正法案の成立を図ることとは切り離して、こうした基本的問題についても協議することは有意義である旨を申し述べたところでございます。

 女性と年金についてでございますが、女性と年金にかかわる問題については、今回の年金制度改正案において、個人の生き方、働き方の多様化に対応した年金制度とする観点から、離婚時等における年金分割制度の導入を初めとする見直しを行うこととしておりますが、御指摘のように、女性と年金の問題については、今後とも検討を続ける必要があると考えております。

 福祉施設についてでございますが、グリーンピアや年金の福祉施設についてさまざまな批判があることについては、これを真摯に受けとめ、反省すべき点は反省し、今後このようなことがないように改革を進め、国民の信頼を確保していくことが重要と考えます。

 具体的には、年金制度の厳しい財政状況等を踏まえ、グリーンピアについては平成十七年度末までの廃止を決定しており、その他の年金福祉施設については、今後、年金保険料を投入しないこととするなど、そのあり方について徹底的な見直しを行うこととしたところであります。

 社会保険事務費についてでございますが、年金事務費については、その使途についてさまざまな御指摘があることは承知しております。平成十六年度予算の執行に当たっては、経費の節減を図り、その使途について国民の信頼を損なうことのないよう努めていくとともに、平成十七年度予算における取り扱いについても、適切に検討していきたいと考えております。

 社会保険庁と年金行政の信頼回復でございますが、年金制度を安定的に運営するためには、保険料の徴収や年金給付などの年金事業を担う社会保険庁に対する国民の信頼が不可欠であります。

 このため、社会保険庁は、多くの批判を反省し、効率化、合理化の観点から事業運営や組織のあり方に関して不断の見直しを行うとともに、年金受給者の需要に的確に対応できる体制を確保するなど、国民の信頼確保に全力を挙げるべきものと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 大口議員にお答えを申し上げたいと思います。

 一つは、年金額の改定とマクロ経済スライドとの関係についてのお尋ねでございました。

 今回の改正案で提案しております給付水準調整の仕組み、いわゆるマクロ経済スライドでございますが、既に年金を受給されている高齢者につきましても、ともに制度を支えていただくよう、物価上昇率から社会全体の年金を支える力に応じた調整を新しく年金を受給する者と同様にお願いすることといたしております。

 その際には、高齢者の生活の安定にも配慮しまして、改定率の調整は名目額を下限とし、調整によって年金額を前年度の額よりも引き下げることはしないことといたしております。

 高齢者の雇用施策につきましてのお尋ねもございました。

 少子高齢社会の急速な進展を踏まえまして、高齢者が意欲と能力のある限り活動し続けることができる社会の実現を目指す必要がございます。その意味におきまして、高年齢者雇用安定法の改正案におきましては、六十五歳までの雇用の確保を図りますため、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等を事業主に求めることとしており、こうした取り組みを通じて、高齢者雇用対策の一層の強化を図ってまいりたいと考えております。

 国民年金保険料の未納問題についてでございますが、国民年金第一号被保険者の保険料につきましては、平成十四年度で納付率が六二・八%となっていることは、まことに深刻な事態というふうに認識をいたしております。この事態に対しまして、制度に対する理解を深めていただき、自主的な納付に結びつけるようにしなければなりません。

 また、未納者に対しましては、個々に催告状の送付、電話や戸別訪問等による保険料納付の督励、こうしたものを行います一方、コンビニエンスストア等におきまして保険料の収納をしやすくするようなことも取り入れていきたいというふうに思っております。しかし、こうしたことを踏まえましても、それが前進をしない場合には、強制徴収も実施してまいりたいと考えているところでございます。

 社会保険庁と税務当局との連携につきましては、税務当局等からの所得情報の取得を円滑にするための規定を今回の改革案の中に盛り込んでおるところでございますが、効果的な納付督励、免除勧奨、あるいは強制徴収、こういったことにつきましては、未納者情報を税務当局に提供し、また税務当局からも情報をちょうだいできるようになればというので、現在、お話し合いを進めさせていただいているところでございます。

 それから、有限均衡方式についてでございますが、長期間の給付と納付の均衡を図りますために、世代間扶養の考え方を基本としつつ、一定の積立金を保有し活用することによりまして、将来世代の急激な負担の上昇を抑える財政計画となっております。

 これまでは、遠い将来にわたるすべての期間について財政の均衡を図ることとしておりましたが、遠い将来におきまして現時点では予測できないような大きな変化が生ずることも否定できませんことから、今回の改正案におきましては、現在から百年間の期間を考慮して検討をしているところでございます。

 今後の年金積立金の運用についてのお尋ねもございましたが、より専門性を徹底した上で、責任体制を明確化していきたいと思っております。

 新法人の長になる人は、民間から資金運用の専門家を登用いたします。また、新法人に学識経験者から成る運用委員会を置きまして、運用方針の検討や運用状況の監視を行うことにしたいと思っております。

 グリーンピア業務でありますとか住宅融資業務は廃止をいたしまして、運用業務に特化をしたいと思っております。

 第三者機関であります独立行政法人評価委員会による専門的かつ客観的な評価を受けることとし、その結果を役員の報酬等に反映させることといたしております。

 年金の福祉施設及び委託先公益法人に関する御質問もございました。

 年金の福祉施設につきましては、年金制度の厳しい財政状況や与党合意等を真摯に受けとめまして、年金の福祉施設につきましては、例外なくこれを整理してまいりたいと考えております。できるだけ年金財政に貢献できるようにすることが重要であると考えております。

 施設の委託先公益法人につきましても、天下りの問題も含め、そのあり方について徹底した見直しを行っていきたいと考えております。

 最後に、無年金障害者につきましてのお尋ねがございました。

 この無年金障害者の問題につきましては、今、鋭意検討を進めているところでございますが、平成十四年の七月に私も試案を出させていただいたところでございまして、ぜひ今回この前進を図りたい、そのためにどうするかということの詳細な検討を与党とも進めているところでございます。

 どうか、そうした状況にありますことをひとつ御理解いただきたいと存じます。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 大口議員にお答えをいたします。

 国民年金保険料の未納問題についてのお尋ねがございました。

 これにつきましては、厚生労働大臣からもお答えのあったところでありますが、政府全体として取り組むべき重要な問題と考えておりまして、社会保険庁と税務当局の連携によりまして、国民年金保険料の納付率を向上させるとともに、未納者に社会保険料控除の適用をさせないことを目指した対策を講じることとしております。

 具体的には、社会保険庁が市町村の税務当局から未納者の所得情報の提供を受けて、納付督励や強制徴収あるいは低所得者に対する免除勧奨という未納者対策を行った上で、未納者情報を税務当局に提供する、それから、税務当局は社会保険料控除の是正にこれを活用することとしております。

 現在、財務省と総務省、社会保険庁の間で、実務的な点について詰めを行っているところでありまして、この方策の実施によって、未納者ができるだけ少なくなるものと期待しております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(中野寛成君) 山口富男君。

    〔山口富男君登壇〕

山口富男君 日本共産党を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案等について質問します。(拍手)

 本法案は、年金保険料の引き上げと給付水準の引き下げを、今後は国会の審議抜きで毎年、自動的に行えるようにするものです。これは、国民の暮らしを支えるべき公的年金制度を根本から変質させるものであり、年金制度加入者七千万人、年金受給者三千万人に深刻な被害を及ぼす歴史的な大改悪と言わなければなりません。(拍手)

 第一に、保険料の引き上げによる連続的な負担増が引き起こす、国民生活への深刻な影響です。

 厚生年金では、毎年〇・三五四%ずつ十四年間にわたって保険料が引き上げられ、これに伴う負担増は、平均で毎年一万円です。国民年金でも、二〇一七年度まで、毎年三千三百六十円上がり続けます。

 小泉内閣のもとで、医療、介護、庶民増税を初めとして、七兆円規模の国民負担増が進められています。その上、さらに連続的な負担増を十数年も続けることになれば、これが国民の暮らしを圧迫し、消費の減退を長期にわたって引き起こすことは明らかではありませんか。

 社会保険庁の調査でも、国民年金の保険料未納の多くは、「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」を理由としています。この理由は、働き盛りの四十歳代でも七割を超えています。

 総理、あなたの改革とは、保険料の連続的な引き上げによって未納者を広げ、国民年金の空洞化をさらに進めるものではありませんか。答弁を求めます。(拍手)

 第二に、給付水準の連続的な削減が、憲法二十五条でうたわれている国民の生存権を脅かすことです。

 本法案は、マクロ経済スライドの名で給付水準を削り続け、現在の水準を実質で一五%もカットします。政府の言う一部のモデル世帯をとってみても、厚生年金で月額四万円の削減、仮に六十五歳から十五年の受給期間とすれば、七百万円を超える大幅な削減となります。

 政府は、現役労働者の平均所得の五〇%の給付水準を確保すると述べていますが、これは、ごく少数のモデル世帯にすぎず、これすら、二〇二三年には四五%台に落ち込む可能性もあります。さらに、政府の試算でも、共働きや単身者の給付水準は、三割から四割台しか確保できません。

 とりわけ重大なことは、この削減が、国民年金や障害年金の受給者など、年金額の低い人々にまで一律に及ぶことです。

 これまで、国民年金は、財政再計算ごとに政策改定として、ごくわずかの引き上げがされてきました。しかし、その水準は、現在でも、夫婦二人で平均九万二千円にとどまり、全国消費実態調査で見る高齢者世帯の消費支出総額の四割程度にすぎません。この水準をさらに一五%もカットすれば、年金収入に多くを依存する高齢者の生活に深刻な被害を与えることは目に見えています。

 これでは、憲法二十五条で定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」、生存権を侵害することになるのではありませんか。総理、健康で文化的な最低限度の生活ができる給付水準を確保することこそ、国が本来果たすべき責任ではありませんか。はっきり答えていただきたい。(拍手)

 第三に、二〇〇四年度までに実施すべき基礎年金への国庫負担二分の一引き上げを先送りしたことです。

 二分の一への引き上げは、全会一致の決議まで上げて、国会が政府に実施を求めてきたものです。そして、二〇〇〇年の法改正時に附則でその実施を書き込み、国民への約束としたものでした。今回の先送りは、公約違反そのものではありませんか。

 政府は、国庫負担引き上げの財源として、公的年金等控除の廃止などの年金生活者への課税の強化、所得税の定率減税の段階的廃止、そして、二〇〇七年度に所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、その後、二分の一への引き上げを行うとしています。昨年十二月、与党が合意した税制改正大綱では、「消費税を含む抜本的税制改革」と明記されました。

 総理、消費税増税は、あなたの言う安定した財源を確保する税制の抜本的な改革に含まれているのですか。二〇〇七年度に国庫負担引き上げの財源として消費税を引き上げる計画を持っているのですか。責任ある答弁を求めます。

 老後の保障である年金給付の財源を低所得者ほど税負担の重い消費税に求めるなど、およそ本末転倒であり、許されないことを改めて強く指摘しておくものです。(拍手)

 年金制度の現状をめぐって、とりわけ重大な問題は、低額年金の受給者や無年金者が大量に存在していることです。

 国民年金しか受給していない高齢者は九百万人で、その平均受給額は、わずか四万六千円です。月額三万円未満の方が一割、四万円未満で三割を占めています。

 厚生年金でも平均の受給月額は十七万円程度で、月額十万円未満が六人に一人、十五万円未満が四割を超えるなど、ここでも受給額は低い水準にとどまり、女性では、月額十万円未満の受給者が半数を占めています。

 総理、あなたは、このような低額年金、さらに無年金者の広がりについてどう認識されているのか。健康で文化的な最低限度の生活の水準になっているとでも考えているのですか。あなたの認識を述べていただきたい。

 国民年金では保険料の未納率が約四割に上るなど、制度の空洞化も深刻です。免除者、未加入者を含めると、保険料を払っていない方は既に一千万人を超えています。土台から国民皆年金を崩す、こうした事態を放置すれば、将来さらに膨大な無年金者や低額年金者が生まれ、一層深刻化します。

 総理、本法案のどこに年金の空洞化、無年金者、低額年金者の問題を打開する方策があるのですか。こうした現状への処方せんがなくて、何が抜本改革なのですか。

 日本共産党は、およそ改革の名に値しない年金改悪法案をきっぱり廃案にするよう、強く求めるものです。(拍手)

 国民の生存権の保障という憲法二十五条の見地に立った年金制度への改革は、今や、待ったなしの課題です。

 日本共産党は、年金制度の劣悪な現状を抜本的に打開するために、昨日、「「最低保障年金制度」を実現し、いまも将来も安心できる年金制度をつくる」という提案を発表しました。

 私たちの提案する最低保障年金制度は、国民年金、厚生年金、共済年金の共通の土台、つまり一階部分として、全額国庫の負担による一定額の最低保障額を設定し、その上に、それぞれの掛金に応じて給付を上乗せする制度です。最低保障額を当面月額五万円からスタートさせ、安定的な年金財源を確保しながら引き上げを図り、国民の生存権を保障する水準を目指すというのが、我が党の提案です。

 この制度によって、低額年金の問題、二十五年掛けなければ受給資格が生まれない問題、無年金者、年金の空洞化など、今日の年金制度が抱えている諸矛盾を解決する道を開くことができます。

 財源については次に述べることにして、まず、総理に端的にお伺いしたい。

 年金制度の劣悪な現状から見て、高齢者の最低水準の生活を保障する年金制度を築くことが必要だと考えるか、それとも不要だという立場に立つのか、答弁を求めます。(拍手)

 日本共産党は、最低保障年金制度を実現し、老後に安心できる年金制度を維持発展させるために、次の改革に取り組みます。

 第一に、最低保障年金に必要な財源は、道路特定財源の一般財源化と公共事業費、軍事費などの歳出の見直しとともに、大企業向け優遇減税を改めるなど、歳入面での税制の民主的改革で賄います。

 もともと、社会保障分野での日本の企業負担は、ヨーロッパ諸国と比べ、極めて低い水準です。企業の税と社会保険料の総額を各国ごとに国民所得と比べてみると、イギリス一六%、ドイツ一七・七%、フランス二三・六%に対し、日本は一二・三%にすぎません。

 総理、日本の企業負担は、ヨーロッパ諸国と比べて、極めて低い水準ではありませんか。大企業が年金を初め社会保障にその力量にふさわしい応分の負担をして社会的責任を果たす、これは、経済と社会の発展を考えれば当然求められるものではありませんか。(拍手)

 第二に、巨額の年金積立金は、現在の比例報酬、いわゆる二階部分の給付水準を維持するために、計画的に活用します。

 政府は、年金積立金について、高齢化のピーク段階での給付の維持に備えるためだとしてきました。それなら、二〇五〇年のピークに向けて、給付の確保を図るよう、計画的に活用すべきではありませんか。ところが、政府の計画は、高齢化がピークとなる二〇五〇年まで、ため込みを続けるものです。これでは、結局、高級官僚の天下り先の確保を将来にわたって続けるということではありませんか。

 日本共産党は、年金積立金を年金給付以外に流用すること、株式運用でリスクにさらすことを禁止すべきだと考えます。この方向こそ、グリーンピアに象徴される積立金の放漫なむだ遣いや株式投資の失敗を二度と許さない、責任ある態度ではありませんか。

 第三に、日本共産党は、雇用と所得を守る政策への転換を図り、不安定雇用の急増に歯どめをかけ、年金の安定した支え手をふやします。

 実際、大企業のリストラ、パート、フリーター、派遣労働など不安定雇用の拡大、中小企業の倒産などで、厚生年金の加入者は、政府の計画を二百万人から三百万人下回っています。保険料などの収入でも、二〇〇〇年、二〇〇一年度の二年間だけで、約六兆円も見込み額を割り込みました。これでは、年金財政が行き詰まるのも当たり前です。不安定雇用をふやす労働政策を続ければ、年金制度の土台を崩すではありませんか。総理にその認識はあるのですか。はっきりした答弁を求めます。

 第四に、将来に安心の持てる年金制度を確立するためにも、少子化対策に本格的に取り組みます。

 フランスでは、国が率先して社会全体で子育てを支える体制を整備し、二〇〇二年で一・八八まで出生率を回復させています。ところが、政府・与党の年金見通しは、二〇五〇年時点での出生率を現在の一・三二から一・三九にするもので、ほとんど横ばいの見通しです。

 少子化の急激な進行を避けることのできない前提とするのでなく、その克服に本格的に取り組むことと一体に年金制度の将来設計を立てる、これが政治の責任ではありませんか。(拍手)

 この間の世論調査では、負担増と給付減を長期にわたって国民に押しつける政府の年金案に対して、八割を超える国民が不安を訴え、反対の声を上げています。年金財源のための消費税率引き上げに対しても、反対は六割を大きく超えています。国民の判断は既に明確ではありませんか。

 本法案は、老後の最低生活を保障するという国が本来果たすべき責任を放棄したものであり、年金制度への不信と不安を一層かき立て、将来にわたって国民生活に苦難を強いるものです。その撤回を重ねて求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山口議員にお答えいたします。

 保険料の引き上げによる未納者の増加等の懸念についてでございますが、今後、少子高齢化の一層の進展が見込まれる中、年金制度を持続的で安定したものとしていくためには、いつまでも負担は軽く、給付は厚くというわけにはいかないと考えております。

 このため、今回の年金改正法案では、保険料の引き上げは段階的に行うとともに、現役世代の負担の増大が過大なものとならないよう、その上限を設けることとしており、また給付水準についても、現役世代の平均的収入との対比で五〇%を維持することを明確にしているところであります。

 将来、保険料未納による低年金者や無年金者が生じないようにしていくことは重要なことであり、強制徴収を含めた徹底した収納対策を実施するとともに、今回の改正法案においても、多段階免除や若年者の納付特例制度を導入し、今後、保険料負担が増加する中においても、できる限り保険料を納めやすいものとするなど、制度的にも対応を図っているところであります。

 年金の給付水準と憲法の生存権の関係及び最低保障年金制度の提案でございますが、拠出制の保険制度の仕組みをとる公的年金制度においては、基本的に拠出の実績に応じて年金額が決まるものであり、年金額の改定において、年金額が低い者に対して特別な取り扱いをすることは適当ではないと考えております。

 今回の年金制度改正案は、将来の現役世代の負担が過大とならないよう極力抑制し、年金を支える力と給付の均衡をとるため、高齢者にも一定の給付調整をお願いし、若者と高齢者がともに支え合う持続可能な仕組みとしていくものであります。

 健康で文化的な最低限度の生活については、国民の自助努力を基本としつつ、自助を共同化した共助の仕組みである年金給付や、生活保護その他の施策が相まって実現されるべきものと考えております。現に、大多数の高齢者は生活保護を受けずに生活を営んでおり、年金制度は貧困を予防する施策として機能していると考えております。また、本法案による給付調整は、憲法の規定に抵触するという問題ではないと考えます。

 なお、共産党が提案されている全額国庫負担の最低保障年金制度については、自助自律という社会保険の長所を放棄するのではないか、生活保護との関係をどうするか、必要となる巨額の税財源をどう賄うのか等の問題があるものと考えております。

 基礎年金の国庫負担割合の引き上げと消費税についてでございます。

 課題とされてきた基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げについては、本法案において平成二十一年度までに段階的に実施する道筋を明らかとしたところであり、公約違反との指摘は当たらないと考えます。

 その際には、安定した財源を確保することが必要であり、先般の与党税制改正大綱を踏まえ、社会保障制度の見直し、三位一体の改革とあわせ、中長期的視点に立って、税制の抜本的改革に取り組んでいくこととしております。

 このため、引き続き徹底した行財政改革を推進しつつ、消費税も含め、国民的な議論を進めていくことが必要であると考えます。

 社会保障分野での企業負担についてでございますが、ヨーロッパ諸国と比較して、これまで比較的高齢化の進行が遅かった我が国の社会保障負担は、今後、急速な少子高齢化の進行による増大が不可避であり、活力の基盤となる社会保障制度が国民生活の安定を図る役割を果たしていくためには、企業にも引き続き応分の負担をお願いしていく必要があるものと考えます。

 積立金についてでございますが、御指摘のように、高齢化が最も進む二〇五〇年ごろに積立金を取り崩し、使い切ってしまうと、給付と負担の均衡を失することとなってしまいます。このため、本法案におきましては、国民の将来に対する安心の確保のために、少なくとも、今生まれている世代がおおむね年金受給を終える、おおよそ百年程度の期間をかけて積立金を取り崩すこととしており、決して天下り先の確保を目的としているわけではありません。

 また、年金保険料の使途についてさまざまな批判があることについては、これを真摯に受けとめ、国民の信頼が確保されるよう、今後、年金福祉施設等について年金保険料を投入しないこととするなど、そのあり方について徹底的な見直しを行うこととしたところであります。

 年金積立金の運用については、新たに設立する独立行政法人において、安全性に配慮し、大部分をより安全な国内債券で運用することとしているところであり、今後とも、長期的な観点から安全かつ効率的に運用するよう努めてまいります。

 労働政策についてでございますが、パート労働者の増加については、経済社会を取り巻く状況が急速に変化する中で、多様な働き方を求める労使双方の意向等が反映されたものと考えますが、いわゆるフリーターと言われる若者が多数に上る現状などについては、年金制度への影響も含め、懸念すべき問題であると認識しております。

 このため、政府としては、若者自立・挑戦プランを推進するなど、フリーターになっている若年者を初めとして、安定的な就業に移行できるよう、積極的に支援しているところであります。

 少子化対策でございますが、少子化の進行は、年金等の社会保障制度を初め我が国の経済社会に深刻な影響を与えるものであり、国の基本政策として少子化対策を推進することが重要と認識しております。

 このため、政府としては、待機児童ゼロ作戦の推進、働き方の見直しなど、少子化の流れを変えるため、次世代育成支援策を積極的に進めているところであります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(中野寛成君) 阿部知子さん。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 ただいま議題となりました年金制度改正関連の法案に対しまして、社会民主党・市民連合を代表して、小泉内閣総理大臣並びに坂口厚生労働大臣に質疑をいたします。(拍手)

 年金問題が今ほど国民的な関心事となった時期はなかったと思います。しかし、複雑な制度の乱立ということもあって、必ずしも十分な情報が行き渡っているとは言いがたいのもまた事実です。

 例えば、若い皆さんに「あなたの年金は」と尋ねてみても、自分が果たして年金に加入しているのか、どの年金に入っているのか、将来幾らもらえるかなど、知らない方たちの方が圧倒的多数です。また、政府もこの間知らせる努力を怠ってきたというのもまたこれありと思います。今回の江角マキコさん問題はその象徴的な出来事であり、彼女のみをバッシングして事足れりとしているこの政府の姿勢こそ、大きな問題であると思います。

 ちなみに、我が国では、五十五歳以上の人は、社会保険事務所に行けば自分の予想年金受給額を知ることができますし、また、五十八歳以上の方にはそれが通知されますが、これとてやっと始まったところです。他方、スウェーデンでは、年金の仕組みは異なるものの、十八歳以上の被保険者全員にオレンジの手紙が届けられます。

 我が国も、まず国民一人一人に年金に関する基礎的知識、情報をきっちり伝え、各地で公聴会を開くなど、国民的議論の場をつくることから始めるべきで、現在のタウンミーティングの中でちょこちょことやるようなこそくなことでは、国民的論議とは決してなっていないと思います。

 そして、この間のさまざまな不手際、積立年金問題、失った年金への信頼等を取り戻すためにも、新たな国民負担は求めない、そして、きちんとした年金制度の確立に向けた国民論議をまず第一とするくらいの見識を小泉大臣には持っていただきたいと思いますが、まず御所見を伺います。

 そもそも、現在の年金制度は大きな構造的矛盾を抱えています。その一つが、先ほど来指摘されている国民年金の空洞化です。

 国民年金制度は、八五年の改正で、自営業者だけでなく、無業の者も含めてすべての国民が基礎年金給付を受ける年金権の確立と、国民全体で保険料を負担するという仕組みができました。

 にもかかわらず、現在、国民年金加入者の四割の方たちが保険料を未納、滞納しておられ、また、二十代前半の若者に至っては、完納者は三分の一に満たない状況となりました。年金への信頼の低下だけでなく、若年者の高い失業率、フリーターと言われている人たちが二十代を中心に増加し、十分な所得を得られていない実態が広範に広がっています。さらに、こうした若者たちは、いずれ無年金あるいは低年金者になるということでもあり、国民年金制度そのものが崩壊の危機にあると言わざるを得ません。

 加えて、現在の国民年金は、納付期間が二十五年以下では給付がなく、四十年満期で六万六千円、平均で五万二千円と試算されますが、実際には五万円以下の方が六割を超しており、保険料の支払い期間が短いこともその理由となっています。

 こうした問題について、厚生労働省は、掛金を支払わない人が受給できないことは当然と居直っておりますが、先ほど来御指摘の憲法第二十五条、さらには年金こそが老後の生活保障という視点からすれば、まずは国民が人間的な生活を保障される年金構造をつくることこそ抜本改革にふさわしいと思います。その意味からも、基礎年金部分を全額税方式とする、また、新たに社会保障税の検討なども含めた税制のあり方をきっちり考えていくことについて、総理大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

 また、三月二十四日の東京地裁判決、いわゆる学生無年金問題で、先ほどの御答弁はいわば控訴と救済策を分けて処するというものであって、実は、この問題に対して余りにも政治の見識、意思、責任、リーダーシップがないと言わざるを得ません。一日の食費わずか三百円で、キャベツ一個、お豆腐一丁を食べつないでいるような無年金障害者を生んでしまっている、そして小泉総理大臣はかつて二度厚生大臣を経験された、その責任においてきちんとした対処をなさるべきだと思いますが、総理大臣としてのお考えを再度きっちりとお述べいただきたいと思います。

 次に、提案されました政府の厚生年金にかかわる部分では、いわゆる保険料を段階的に引き上げ、二〇一七年度に一八・三〇、また、給付については、現役世代の手取り年収に対する割合を、現行の五九・三から二〇二三年度には五〇・二%まで引き下げるとしておりますが、まさしくこれは、政府によるこれまでの年金政策の制度的失敗、すなわち、既に四百五十兆円の給付過剰を後世代の若者に押しつける、極めて無責任かつ無展望な方針と思います。

 そればかりか、この提案は、これからの社会の一人一人の働き方をさらに不安定なものとしていくという意味で、まさに抜本改悪と言えます。保険料は労使折半ですから、勤労者への負担は言うまでもなく、当然、企業にもその影響は及びます。この間、中小企業では、既に、そうした社会保険料負担の増加に耐えられず、業を畳まざるを得ないところが多発し、大企業は、今まで以上に、保険料負担を避けるべく、派遣、パート、臨時といった非正規雇用をふやしております。

 その矛盾は、とりわけ若者と女性に重くのしかかっております。子供を持つことも含め、自分たちの将来設計を不可能にするばかりか、生活し得る賃金すら保障されないということも起こりかねません。当然、厚生年金の掛金を支払う人も減少し、年金財政は厳しくなる一方となります。

 社会保険料の負担増は、結局は年金財政を苦しくすることに結びつく、こうした点について、厚生労働大臣の御見識を伺います。

 さらに、政府案では、将来的な見直しについて、「長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない。」としています。そのための見通しの作成も、少なくとも五年ごととなりますが、例えば、政府案の出生率の見通しについて、二〇五〇年には一・三九としています。

 しかし、これまでに、こうした数値は常に常に常に裏切られ続け、どんどんどんどん出生率は下がっております。それは、女性が安心して産み、働くことができる環境整備をこの間一貫して怠ってきた。そればかりか、一九九〇年代後半からの雇用の流動化の名において、女性たちは子供を産むことを選び取りがたい状況が、ここに厳然と存在するのだと思います。このことについて、小泉総理大臣の御所見を伺います。

 では、年金制度の抜本改革とはいかなるものなのか。社会民主党は、まず、基礎年金部分の全額税方式、そして、その上に報酬比例部分を上乗せする制度を提案しております。また、現在の働く夫に専業主婦という世帯単位のあり方から、個人単位の制度に変えていくことを提案しています。

 既に働く女性の数が専業主婦を上回り、さらに増加するということが将来の見通しとしてもはっきりしているわけですから、個人単位の年金制度に変えていくことに向けて道筋をつけてこそ、抜本改革にふさわしいのではないでしょうか。

 政府案では、相変わらず、男性が四十年間同じ会社で働き、女性は専業主婦というモデルとなっています。しかしながら、まずは、現在、夫婦共働きという家庭の方が多いという実態を踏まえて、この夫婦共働きモデルをつくって、そのことを国民に示すことこそ坂口厚生労働大臣の役割と思いますが、お考えを伺います。

 この間、小泉総理大臣は、年金制度の一元化を考えるべきと発言されました。この発言は、先ほど来御指摘のごとく、今回の改正は一時しのぎ、そして、実は抜本改悪にもなりかねないことをみずから表明したものであると思います。

 ならば、小泉総理にお聞きしたい。年金制度の一元化の中で、個人単位の年金制度はどのように位置づけられているのか、御答弁をお願いします。

 国民からの年金制度の信頼回復のために、国会の内外での、皆さんの党派を超えた徹底した討議を期待して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員にお答えいたします。

 年金に関する情報提供についてですが、保険料の納付実績等の年金個人情報をお知らせすることは、現役世代、特に若い世代の方々に年金制度への理解を深めていただく上で重要であると考えます。このため、本法案において初めて、年金個人情報をわかりやすい形で通知することに関する規定を盛り込んだところであり、その具体化を着実に進めてまいります。

 年金制度の抜本的改革と基礎年金の全額税保障についてでございますが、現在、年金制度は、負担なくして給付なしという社会保険の仕組みに税財源を組み合わせる形で運営しております。これは、個々人では対応することが難しい老後の保障について、国民一人一人の老後に備える自助を基礎に、世代を超えて社会全体で共同し、連帯して支え合う仕組みであり、自助と自律の精神に立脚した我が国にふさわしい仕組みであると考えております。このような考え方のもと、今回の法案においては、年金制度の基本である給付と負担について抜本的な見直しを行ったものであります。

 基礎年金を全額税を財源として賄う税方式については、こうした自助自律という社会保障の長所をどう考えるのか、生活保護との関係をどう考えるか、巨額の税財源をどう賄うのかといった根源的な問題があると考えております。

 無年金障害者問題についてお尋ねですが、年金を受給していない方々への対応の問題については、障害者基本計画においても、「拠出制の年金制度をはじめとする既存制度との整合性などの問題に留意しつつ、福祉的観点からの措置で対応することも含め、幅広い観点から検討する。」とされているところであります。

 御提案のように、年金を受給していない障害者に対して障害年金を支給することは、保険料の負担を前提として給付を行うという社会保険制度の根幹にかかわる難しい問題でありますが、いずれにせよ、この問題については、従来より厚生労働省において検討してきているほか、現在、与党においても議論が行われているところであり、これらを踏まえ、問題の解決に向けて適切に対応してまいります。

 女性の仕事と子育ての両立についてでございますが、従来低かった育児期の女性の就業率は、近年、上昇の傾向が顕著であるとともに、雇用者総数に占める女性の割合も増加を続けております。

 こうした中、政府としては、待機児童ゼロ作戦を推進するとともに、育児休業の対象労働者の拡大や育児休業期間の延長等を内容とする法案を今国会に提出するなど、仕事と子育ての両立支援を総合的に推進しているところであります。

 年金制度の一元化と個人単位についてでございますが、今回の法案は、給付と負担の長期的な均衡を確保し、安定的な仕組みとすることにより、持続可能な制度の姿を示す抜本的な改正であり、今国会で法案をぜひとも成立させていただきたいと考えます。

 私は、今回の改革法案の成立を図ることとは切り離して、年金一元化についても協議することは有意義である旨を申し上げております。御指摘の個人単位化の問題についても、一元的な年金制度を考えていく場合には重要な論点となるものと考えており、こうした点も含めて、基本的問題について大いに議論していただきたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 阿部議員にお答えを申し上げたいと存じます。

 まず、保険料の引き上げについてのお尋ねでございました。

 年金保険料につきましては、従来より、段階的に引き上げていく段階保険料方式をとっておりまして、現在も、その引き上げの途上にあると考えております。将来の年金給付を支えるために保険料を引き上げる必要性が生じているわけでございまして、したがいまして、今後もこうしたことを皆さん方にお願いをしていく以外にないと考えております。

 四百五十兆円の給付の、いわゆる積み立て不足のお話が出ましたけれども、賦課方式であります以上、一定の積み立て不足が生じることは避けられないものでございまして、後世代に押しつけるという批判は少し当たらないのではないかというふうに思っているところでございます。

 また、夫婦共働きのモデルと年金制度の個人単位化についてのお話がございました。

 確かに、現在、夫のみが被用者として働いてきた夫婦世帯のモデルを続けているわけでございますが、これは過去にもこのモデルを採用してきたこと、そしてまた、女性の就労も増加してはきておりますけれども、女性の場合には、就労する時期でありますとか期間でありますとか、それがまことに多様でありまして、男性と同じようなモデルがなかなかできにくいということもございます。

 もう一つ加えますと、これは夫婦世帯で示しますことが、一人当たりにいたしますと年金額が最も少ないということもありまして、そうした意味で、夫婦単位で示すことが一つの意味のあるものというふうに思っております。

 最後に、世帯単位で考えるか、あるいは個人単位で考えるか、これは今後の大きな課題であると私も考えておりますし、この次の問題として一番大きな課題であるというふうに思っております。

 しかし、この問題は、税制でありますとか賃金体系、それから、他の社会保障の問題とも関係した問題でございます。例えば、国民健康保険との関係をどうするかといったようなこともあるわけでございまして、これらの問題を総合的に議論をしながら決着をしなければならない問題だというふうに思っている次第でございます。(拍手)

副議長(中野寛成君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(中野寛成君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十七分散会

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 出席国務大臣

        内閣総理大臣  小泉純一郎君

        法務大臣    野沢 太三君

        財務大臣    谷垣 禎一君

        厚生労働大臣  坂口  力君

        経済産業大臣  中川 昭一君

        国土交通大臣  石原 伸晃君

        環境大臣    小池百合子君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

        内閣官房副長官 細田 博之君

        厚生労働副大臣 森  英介君


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