衆議院

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第22号 平成16年4月9日(金曜日)

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平成十六年四月九日(金曜日)

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  平成十六年四月九日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

 高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案(古川元久君外五名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時八分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

小渕優子君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 小渕優子君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。

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 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

議長(河野洋平君) 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長武部勤君。

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 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔武部勤君登壇〕

武部勤君 ただいま議題となりました国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 秘書給与をめぐる不祥事、とりわけ秘書給与を不正流用、詐取する事件がたび重なり、国民の国会議員に対する不信を招いてきたことから、秘書問題について議長から諮問を受け、議会制度協議会等において、鋭意慎重に、かつ精力的に検討を重ねてまいりました。その結果、本日、ここに成案を得る運びとなったものであります。

 その内容は、六十五歳以上の者及び議員の配偶者の議員秘書への採用を禁止すること、秘書の兼職は原則禁止とし、例外的に、議員の許可を得て議長において届け出た場合には、これを認めるとともに、その旨公開すること、また、秘書の給与は全額を直接本人に支給すること、並びに秘書に対する所属議員の政党その他の政治団体・支部への寄附の勧誘及び要求を禁止すること等であります。

 本案は、本日議院運営委員会において起草し、提出したものであります。

 何とぞ御賛同くださるようお願い申し上げます。

 なお、先刻の議院運営委員会におきまして、議員秘書の氏名等の公表に係る各会派申合せが決議されましたことを申し添えます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案(古川元久君外五名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、古川元久君外五名提出、高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案について、趣旨の説明を求めます。提出者古川元久君。

    〔古川元久君登壇〕

古川元久君 民主党の古川元久でございます。

 ただいま議題となりました民主党・無所属クラブ提出の年金抜本改革推進法案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明いたします。(拍手)

 まず、趣旨の説明に先立ちまして、イラクにて発生した日本人拘束事件について一言申し上げます。

 昨日、イラクで日本人三名が拘束される事件が起きました。ボランティア活動や取材活動を行っている民間人を人質にとり、自衛隊撤退を要求する犯人グループのひきょうな手口に、激しい憤りを禁じ得ません。拘束されている三名や御家族の心中を察すると、胸が張り裂けそうな痛みを感じます。犯人グループは三名を即時解放すべきであることは当然であります。(拍手)

 こうした事態は十分に予測できたものであり、このようなリスクを覚悟して自衛隊を派遣した政府は、その対応に万全を期し、人質の救出を実現する重い責任があると考えます。政府は、三名の一刻も早い釈放、救出に全力を傾注すべきであり、さらに、イラクに残る他の邦人の安全確保にも万全を期すことを強く求めるものであります。(拍手)

 今回の事態を招いたことについて、小泉総理に重大な責任があることは明白ですが、民主党は、三名の救出を目指すための、この緊急事態に対応するため、現時点においては与野党を超えて政府に全面的に協力する用意があることを、この場において表明させていただきます。(拍手)

 そして、本来は、私たちすべてが、まずこの問題に対処することに全身全霊を傾け、年金に関する議論は、それ自体極めて重要な問題ではありますから、この問題を解決した後に、落ちついた状況の中で議論すべきであることを、最初に強く訴えさせていただきたいと思います。(拍手)

 趣旨の説明に入りたいと思います。

 昨年十一月に行われました総選挙において年金制度が重要な争点となったことは、まだ記憶に新しいところであります。その際、自民党は、小泉マニフェストの中で、二〇〇四年に年金制度の抜本改革を実施することを国民に対して高らかに約束しました。ところが、その内容は、国民の負担が毎年一兆円ずつふえていく、十四年連続保険料引き上げ法案であることが明白になりました。総理の言う抜本改革とは、単なる保険料引き上げと給付カットであり、抜本改革と呼ぶにはほど遠いものであります。

 政府案には、国民年金の四割が未納者であるといった年金制度の直面する最大の課題である空洞化、さらには、その背景にある国民の年金制度に対する不信、不安に対する答えは全くありません。ひたすら現行制度の維持にきゅうきゅうとし、そのツケを国民に押しつけているだけなのです。

 今、多くの国民は、みずからの老後の生活に対して大きな不安を抱えています。その最大の要因は、現行の年金制度に対する不安です。すなわち、世代間、職業、働き方などによって保険料や受給額が異なることによる不公平感、一体自分が幾らもらえるかわからないという不透明感、また、特に若い人たちの間では、自分たちが年金受給世代になるまで年金制度が維持できるのかという根本的な不信感が現在の年金制度に向けられているのです。

 民主党は、これら現在制度が有する構造的な問題を解決し、一刻も早く国民の年金制度に対する信頼を回復するために、制度の抜本改革を提案します。

 以下、民主党案の概要を申し述べます。(拍手)

 まず第一に、現在、職業別に国民年金、厚生年金、共済年金と分立している年金制度を、単一の制度に一元化します。

 平成二十年度に予定する新制度の発足時点から、二十歳以上のすべての国民は一つの同じ制度に加入することとし、すべての人が同じ制度においてひとしく負担し、ひとしく給付を受ける、すべての人にとって公平で納得のいく制度へと改めます。議員年金もまた、この制度へ一元化し、国民の不公平感を解消します。これによって、サラリーマン、自営業者、専業主婦、公務員、議員などの間の、いわゆる世代内の不公平を解消します。

 第二に、新たな公的年金制度においては、現役時代は所得に比例して保険料を納め、年金受給時には納めた保険料に比例して年金受取額が決まることを大原則とします。これによって、すべての人にとって負担と給付が明確で、納得のいく公平な制度となります。

 所得に比例して保険料を納める制度によって、負担の公平性を確保するとともに、現在の国民年金の、所得の多寡にかかわらず定額の保険料負担を求めるという逆進性を解消いたします。

 また、納めた保険料に比例して年金受取額が決まる制度と、現役時代にみずからの年金受給見込み額の見通しが確認できる仕組みを導入し、自分が幾らもらえるかわからないという国民の不安と不透明感を解消します。

 保険料率については、原則として現行の厚生年金保険料率を維持することとします。

 第三に、高齢者等の最低限の生活の安定を保障するため、税を財源とする最低保障年金制度を創設します。

 老後の生活の安定を確保することは、高齢者のみならず、現役世代にとっても将来の不安感が軽減することとなり、国民全体にもその利益が及ぶものと考えます。現行制度では、未納者や未加入者は公的年金を受け取れず、将来、生活保護を受けざるを得ない高齢者がふえる可能性があります。民主党の最低保障年金制度は、すべての人にひとしく老後の生活の安心を保障するものであります。

 第四は、国民にとって公平で納得のいく形で、今まで保険料を払ってきた世代に約束してきた年金を支払うために不足する財源を確保すると同時に、最低保障年金の財源に充当するために、年金目的消費税を創設いたします。

 政府案は、これまでに約束してきた年金給付を行うために、無謀とも言える年金保険料の引き上げを実施し、現役世代だけに過重なツケを押しつけようとしています。年金保険料を毎年一兆円ずつ十四年も連続で引き上げることは、国民の不公平感と年金制度への不信感を高めるだけでなく、企業負担の増大による景気の悪化、雇用の抑制、ひいては企業の海外移転促進など、余りにも大きな影響を生じかねません。

 私たちは、現役世代のみに過重な負担を押しつけるのではなく、高度成長を実現してきた世代の高齢期の生活を、高度成長の果実を享受する国民全体で支えるとともに、年金を受給する世代の皆さんにも支え合いに参加していただくために、公平で透明な消費税という形で負担をお願いしたいと考えます。

 民主党の創設する年金目的消費税は、すべて年金の給付に充てるものであり、それ以外の、例えば族議員や霞が関への流用などは一切ありません。国民からお預かりした貴重な消費税を、一切むだ遣いせずに、国民の皆さんへ年金としてお返しする約束をした上で、国民各位の御理解を得たいと考えます。(拍手)

 また、年金制度の抜本改革を適切に実施するための措置として、国税庁と社会保険庁の統合等を行い、効率的な保険料徴収体制を整えます。

 以上のような公的年金制度の抜本改革に関する基本的な理念、指針を定めた上で、すべての国民にかかわるこの新しい年金制度を、五十年、百年の計に立って、党派を超え、国民の意見も踏まえ、広く議論を行い、実現するために、国会に年金制度改革調査会を置くこととしています。

 調査会は、公的年金制度の一元化、所得比例年金、最低保障年金から成る新しい年金制度の創設、年金目的消費税の創設等を骨格とする新たな公的年金制度を平成二十年度に発足するため、その詳細の調査検討等を行うこととします。

 新制度を発足させるまでには、現行制度の基礎年金国庫負担率を、歳出の抜本的な見直しによって、三分の一から二分の一へと引き上げます。政府・与党は、国民に対する約束を先送りした上に、増税で財源を賄おうとしていますが、民主党は、さきに平成十六年度民主党予算案で示したとおり、抜本的な歳出の見直しによって、その財源を確保いたします。(拍手)

 さらに、グリーンピアなど、年金保険料のむだ遣いとなっている福祉事業の全廃も新制度発足までに行うこととしています。

 以上、民主党提出の年金抜本改革推進法案の概要について御説明をいたしましたが、最後に一言、特に申し上げます。

 小泉総理は、本院における年金審議を目前にして、公的年金の制度改革について、一元化が望ましいと発言をされました。しかし、政府案には一元化はなく、ただ平成十六年度から平成二十九年度までの十四年間にわたる毎年一兆円の保険料の引き上げを法定しているだけです。小泉総理の発言は、明らかに政府案と矛盾します。

 今や、年金制度の抜本改革のためには一元化が不可欠であることは、国民も一致した認識であります。しかるに、政府・与党は、この矛盾を早急に解消し、問題の先送りをやめ、再度、一元化に基づいた年金制度改革案を提出しようとしません。国民の失われた信頼を一刻も早く解消し、持続可能な年金制度を築くには、今国会で年金制度一元化を決めることが重要なのです。もはや問題を先延ばしすることは許されません。

 総理は、本院の答弁でも、一元化の議論を喜んでやると発言されています。(拍手)坂口大臣も、自民党、公明党の皆さんも、だれも一元化を否定してはいません。確かに、実現に向けて多くの困難があることは承知をしています。だからこそ、政府案を一たん撤回し、その上で、望ましい公的年金一元化創設に向けた議論を一刻も早く党派を超えて行おうではありませんか。(拍手)民主党案は、そのための最適の舞台を提供しているのです。

 年金改革の最大の目的は、年金制度に対する国民の信頼を取り戻すことにあります。しかし、政府案では、信頼を取り戻すどころか、不信と負担の増大からますます年金制度の空洞化が進むことは、火を見るよりも明らかです。

 本議場におられる皆さんは、年金問題に対する国民の関心が高いことを実感されていることと思います。この国民の熱い視線に対する答えが、本当に、一元化は先送りし、毎年一兆円、十四年間連続の保険料引き上げでよいのか、それとも、今こそ制度そのものの抜本的な改革に取り組み、国民の失われた信頼を回復し、持続可能な新しい年金制度の創設を目指すべきなのか、改めて真剣にお考えいただきたいと思います。その上で、真の抜本的改革を内容とする民主党案に対する御理解を賜ることをお願いいたしまして、私の趣旨説明を終わります。(拍手)

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 高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案(古川元久君外五名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。大野功統君。

    〔大野功統君登壇〕

大野功統君 自由民主党の大野功統でございます。

 自由民主党並びに公明党を代表して質問をさせていただきます。(拍手)

 私は、まず、昨日、イラクにおきまして三人の日本人が人質として拘束された、この卑劣な、理不尽なテロ行為に対して、激しい怒りの念を表明させていただきます。(拍手)

 自衛隊は、平和の使者として、人道支援のためにイラクへ行っているわけでございます。何の関係もない民間人をどうして人質として拘束しなきゃいけないのか。一日も早く、一刻も早く、三人の同胞が無事解放されることを心からお祈り申し上げるものであります。(拍手)

 政府におかれましては、三人の救済のために、救援のために、全力を尽くしていただきたい。そして、かかる卑劣で理不尽なテロ行為には絶対屈しない、こういう姿勢を示していただきたいと思います。(拍手)

 さて、民主党が年金法案を出していただくということを聞きまして、今日まで心待ちにいたしておりました。年金というものは数理の世界でございますから、哲学に支えられた、哲学に裏打ちされた、きらきらと光る、意味のある数字がちりばめられているだろう、こういう期待を持っておりましたが、対案のどこを探してもこの数字が入っておりません。

 この程度の案であれば、皆さん、四月一日には政府案をこの本会議で趣旨説明しているわけであります。なぜそのとき出していただけなかったんだろうな。そうすれば、この本会議は一回で済んだのであります。残念で仕方ありません。(拍手)

 数字のない対案でありますから、給付の水準も負担の水準もわかりません。全く不透明であります。しかし、ただ一つわかっていること、これは大増税があるということであります。しかも、この大増税は、民主党案によりますと、改革を実行する前に前倒しする、こういうことであります。また、このまま五年間は、国会の中で調査会を設けて、調査会で議論しているだけでありますから、言ってみれば、この民主党のお出しになった法案というのは、年金不透明法案、大増税法案、年金改革先送り法案という以外に言いようがありません。(拍手)

 皆さん、年金制度は負担と給付の助け合い、この助け合いを税で、税がわき役として支えているんです。これが本質なんです。

 政府案では、急速な少子高齢化の進行が見込まれる中で、厚生年金の保険料率を一三・五八%から一八・三%に引き上げる、これをお願いしております。給付は、現役世代の五〇%以上。そして、わき役の税金につきましては、この助け合いに、基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げる。これによりまして、百年先まで揺るぎのない年金制度を確立いたしました。しかも、この厚生年金保険料率の一八・三%というのは、他の諸外国に比べて決して高くないんです。

 ところが、民主党案を見て私はびっくりしました。いつの間にか、税金というのは年金制度助け合いのわき役である、そのわき役である税金が主役に躍り出ているんです。保険料の引き上げという大変厳しい、大変厳しい課題を避けて通って、不足する財源はすべて税金におんぶする。こういう考え方では、私は、民主党の法案に対して別の名前を差し上げたい。保険料負担の増加に反発する一部勢力におもねる選挙対策法案じゃありませんか。(拍手)

 しかし、せっかくの機会でございます、せっかくの機会でございます。不透明だからよくわかりません、わかりませんけれども、私の勘を働かせて、そして足らないところは想像力で補いながら、民主党の対案に対して質問をさせていただきます。

 第一は、民主党の所得比例年金、この所得比例年金の保険料部分というものは、積立方式という考え方に基づいておりますから、助け合いという考え方が全然ないんです。先ほど申し上げましたとおり、年金制度は助け合いが基本であります。この助け合いという基本的な考え方を民主党の皆様は放棄されたんでしょうか。

 また、民主党案では、税金がどのように投入されているのか、具体的姿が明らかになっていません。最低保障年金の額は幾らなのか、そして、どのぐらいの所得比例年金をもらう人までこの最低保障年金が行き届いていくのか、これはどうか明確なお答えをちょうだいしたい。

 政府案においては、厚生年金は、一三・五八%から一八・三〇%まで引き上げられます。いわば四・七二%引き上げるわけであります。しかし、サラリーマンという目で見れば、この負担増は半分の二・三六%であります。

 民主党案では、この保険料引き上げには反対をしておいて、そのかわり三%程度の消費税、これは私の想像です、三%というのは。三%程度の消費税引き上げを主張されております。ただ、三%というのは、私の計算では、まことに甘い計算、まことに甘い試算でありまして、給付水準を今のままで下げないとすれば、六%程度の消費税引き上げが必要だと考えております。

 いずれにせよ、本人及び事業主の負担をふやさないで、その分を、所得の少ない人に同じく負担させる逆進性の強い消費税によって家計にすりかえていく、家計に転嫁していく、このことをどうお考えでしょうか。政府案におけるサラリーマン本人の負担増は二・三六%であります。この二・三六%と、民主党案において家計が負担する消費税増三%、私の解釈では三から六%でありますけれども、どうぞ比べた上でお答えください。

 また、長年保険料を払ってきたお年寄りが年金を受給するときに、また改めて高い消費税を払わなきゃいけない。皆さん、これはお年寄りには二重負担じゃありませんか、二重払いじゃありませんか。これでは、まさにお年寄りいじめの法案としか言いようがありません。(拍手)

 さらに、民主党案には、保険料の労使負担の割合が明記されていません。法案の第七条三項では、事業主は保険料の一部を負担するとありますが、この「一部」とは具体的に幾らでしょうか。

 民主党案では、所得比例年金の財政は賦課方式によるとしつつ、支払う保険料の総額と受け取る年金の総額が等しくなるように年金額を定めることとしてあります。あたかも、払ったものがそのまま戻ってくる積立方式のような仕組みとしております。

 しかし、賦課方式のもとでこのようなことが可能なんでしょうか。このことが可能となるためには、合計特殊出生率が二・〇程度あって、現役世代の人口規模が一定に保たれることが条件であります。このような方式を採用したスウェーデンでは、将来の出生率が一・八まで回復し、移民の流入も含めれば現役世代の人口規模は縮小しないという前提でやっております。

 民主党の皆さんは、政府案が二〇五〇年に出生率が一・三九となる人口中位推計を基礎としていることについて、これは前提が甘いねとさんざん批判してこられました。しかし、考えてみますと、その人口中位推計あるいはそれ以下の出生率のもとで、果たして、払ったものがそのまま戻ってくる所得比例年金が将来にわたって維持できる見通しがあるのか、明快な、明確な答弁を求めます。引き続き少子高齢化の進行が見込まれる我が国の状況においては、民主党の所得比例年金という家は、まさに砂上の楼閣でしかありません。(拍手)

 さらに、払ったものが戻ってくる民主党案の所得比例年金の骨格には、残念です、遺族年金や障害年金が入り込む余地はありません。この法案における遺族年金や障害年金の位置づけは一体どうなっているんでしょうか、はっきりお答えください。(拍手)

 次に、年金の給付水準についてお尋ねいたします。

 この法案には、年金目的消費税の税率についても、年金の給付水準についても、明確な記述、明確な数字がありません。一体、どれだけ消費税を引き上げて、どのような給付水準とするか、教えてください。ぜひ、お願いいたします。

 日本人のDNAは、安心であります。年金の給付水準が明らかにならないのでは、国民は不安を覚えるだけであります。民主党のお考えでは、少子高齢化が進んで、お年寄り一人を現役世代一・四人で支えるようになる二〇五〇年ころまでに、積立金を取り崩して使ってしまうということのようでありますが、それでは、積立金がなくなった後に受給者となります若者や子供たち、今から生まれてくる赤ちゃんの年金は一体どうなるんでしょうか、心配でたまりません。どうか教えてください。

 また、最低保障年金の支給の仕方にもよりますが、民主党案では、所得の高い人は所得比例方式によって高い年金となり、所得の低い人は最低保障年金を受けられる、しかし、そのしわ寄せはすべて中堅の所得の人に行くのではないでしょうか。

 最後に、年金の一元化について一言申し上げます。

 一元化については、さきの与党合意においても、将来の課題としているところであります。一元化に当たっては、乗り越えなきゃいけない高いハードルがいっぱいあるからです。

 例えば、一号被保険者の所得の把握であります。もう一つは、一号被保険者の保険料負担の問題であります。倍の負担をしなきゃいけない。さらに、パートやアルバイトの問題については、我が党ではヒアリングを行いました。現状では、パートで働く人や事業主など関係者の理解を得るのは難しい問題であります。

 このように、一元化については、すぐに解決しがたい問題もあり、コンセンサスもまだでき上がっておりません。したがって、まず、給付と負担、税のあり方を明確にし、年金という助け合いの家、これを支える大黒柱である負担と給付、この負担と給付を百年間揺るぎのないものとする、すなわち、政府案をいち早く成立させることが、今一番大事なことであります。(拍手)

 その上で、年金という家の中にある国民年金という部屋、厚生年金という部屋、そして共済年金という部屋、この三つの部屋を一つにする、ワンルームにするリフォームという課題については、公平という観点から、将来の課題としてお互いに取り組んでいこうではありませんか。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔古川元久君登壇〕

古川元久君 大野議員の御質問に対しまして、まずは私から御答弁させていただきます。

 まずは、冒頭の助け合いについてでございますが、政府が年金制度を世代間扶養と説明するように、年金制度の助け合いの場合の助け合いとは、主に世代間の支え合いを指しているというふうに考えております。

 今回の私どもの案では、社会保険と、そして税との性格というものを明確にしております。社会保険においてはリスク分担を主たる役割とするものであり、同時に、社会保険においては、原則として負担と受益の関係が明確であるべきだというふうに考えております。しかし、現行の年金制度は、社会保険といいながら、ここに再配分機能を持ち込んでいます。そのことが負担と給付の関係を不透明にし、それが制度への不信感を高めている一因であると考えております。

 再配分を担うのは基本的に税の役割でありますので、その意味で、税を低額の年金受給者に重点的に投入する私ども民主党案こそ、保険料と税との役割を明確にし、社会全体による助け合いを具体化するものであると考えます。(拍手)

 次に、最低保障年金についてでありますけれども、最低保障年金額の水準は、国民の税負担に直結する問題であり、政府から正確な資料の提供がない段階で、軽々に法案にその額を明記することはできません。ただし、最低保障年金の性格から、現在の国民年金のモデル年金額が一つの目安になることは事実だと考えます。

 実際の金額につきましては、新制度を検討する中で、高齢者等の生活の安定を確保する額としてどの程度が適当なのか、正確な情報に基づいて、国会に設置する年金制度改革調査会の中で国民的な議論を踏まえた上で決めるべきものと考えます。(拍手)

 最低保障年金の給付対象範囲につきましては、少なくとも平均的な所得層までは支給することを想定しております。具体的には、政府がモデル年金としております平均標準報酬月額の方には、最低保障年金の給付対象となるように制度設計をしたいと考えております。

 事業主が保険料の一部を負担するという点について、「一部」とは具体的に幾らかという質問でありますが、被用者の場合、雇用主、被用者、それぞれが折半することが原則になると考えております。

 人口中位推計あるいはそれ以下の出生率において、払ったものが戻ってくるという所得比例年金の原則が将来にわたって維持できる見通しなのかというお尋ねがありましたが、私たちは、政府の示している基礎的資料の数字については大きな疑問を持ってはおりますけれども、現状、私たちが試算のベースにする数字については、政府が公開しているものを前提とせざるを得ません。

 今回の試算においても、基本的には、政府が公開する資料をもとに行っており、これに基づけば、私どもの案では、百年は優に払ったものが戻ってくる状況は維持できるものと考えます。もしそれが違うというのであれば、それは政府の資料が違うということでありましょうか。(拍手)

 さらに、坂口厚生労働大臣を初め、政府は、将来にわたって払った保険料の倍は戻ると断言しております。ところが、坂口大臣は、先日、現在よりも高い出生率である一・三九を維持できなければ、年金どころか日本社会が維持できないと、年金制度が崩壊することを断言しています。

 大野議員の質問は、既に、低出生率の場合に給付水準どころか年金制度そのものが維持できないと断言している政府に対して向けられるべきものと考えます。(拍手)

 次に、積立金がなくなり後世代の年金はどうなるかとの御懸念でございますが、私どもの案では、人口構成の最も悪化する二〇六〇年ころに向けて積立金を取り崩していく予定でありますが、積立金がなくなることはありません。

 また、二〇五〇年代には、現行制度を含む裁定者はいなくなり、新制度が成熟してまいります。新制度では、保険料は所得比例年金の財源へ、国庫は最低保障年金の財源へと、それぞれの区分が明確になりますので、政府案のような、保険料と国庫と運用収入が混在して全体を支えているため運用収入がなくなると大変なような、そういう制度ではないので、御心配のような状態には陥らないと考えております。(拍手)

 私の最後の答弁は、最後の質問でありました中堅所得層へのしわ寄せについてでありますが、民主党案に基づいて、所得比例年金と最低保障年金の合計額で政府のモデル世帯のケースで試算すれば、二〇二五年度の給付水準は五〇%程度となり、政府案の試算に遜色のない結果を得ています。また、所得の低い層ほど、最低保障年金によって政府案に比べ所得代替率が高くなっております。したがって、中堅層にしわ寄せが行っているという御指摘は当たらないと考えております。

 私からは、以上であります。(拍手)

    〔五十嵐文彦君登壇〕

五十嵐文彦君 私から、主に税に関する部分について答弁を申し上げます。

 大野議員とは、大蔵委員会、与野党の筆頭をやりまして、大変尊敬をする議員でございますけれども、今、答弁に入ります前に、大野議員からいただきました、消費税の額が我が党案ですと六%になるという御発言がありましたけれども、その根拠は私はないと思っております。

 出どころが厚生労働省と思われますけれども、私どもで確かめましたところ、厚生労働省では、民主党案は消費税六%ではない、そんな発言はしていないということを言っておりますので、間違ってお使いになった、そうでなければ根拠をはっきりお示しいただきたい、そう思うわけでございます。(拍手)

 それでは、答弁に入ります。

 第一に、消費税についてであります。

 まず指摘させていただきたいのは、自民、公明の与党は、昨年末において、この年金改革と一体で、二〇〇七年度から消費税の引き上げを合意しました。この与党の消費税の引き上げが逆進性に問題がなく、民主党のみ引き上げれば逆進性が高いと言われるのか、理解ができません。(拍手)

 さらに、確かに消費税には一定の逆進性がございます。年金保険料と比べた場合、しかし、どちらが逆進性が高いか。私は、実は保険料の方が高い、こう思っているわけでございます。

 標準報酬月額には、御存じのとおり、上限がございます。その上限額を超えた、こういった場合には賦課ベースは当該上限額にとどまるわけでありますから、これは実は逆進性が高いということになります。また、国民年金に至っては定額でございますから、これは逆に逆進性が極めて高いということになるわけであります。加えて、消費税はまだ選択の余地があります。しかし、年金保険料には選択の余地がないんです。消費税と年金保険料を比べた場合、保険料の方が逆進性が高いのは、したがって、明らかであります。(拍手)

 この逆進性の高い保険料を三五%も引き上げる案を提示されているのが与党でございます、政府でございます。みずからの逆進性に全く触れないということはいかがかと思います。正確な説明をしていただきたいと思います。

 しかし、私たちが国民負担を保険料ではなく消費税に求める主な理由は、逆進性にあるわけではありません。政府提案の保険料引き上げは、余りにも無謀であります。景気状況を全く勘案せずに、自動的に今後十四年間保険料を引き上げ続けるというのは、常識では考えられません。

 中小企業、中堅企業の皆様と私、あちこちで話をしておりますけれども、これ以上の社会保険料の負担増には耐えられない、こういう企業が中小企業初めたくさんあるわけであります。これ以上引き上げれば、空洞化をもたらします。どんどん正規雇用から非正規雇用に移り、結果的に皆さんの年金保険料の計算も合わなくなってくるんです。(拍手)日本全体を崩壊させる可能性があり、公的年金制度はつぶれてしまうんです。

 既に約束した給付は、原則として実施をしなければなりません。しかし、その不安を現役世代に集中すれば、社会全体が成り立たなくなる可能性があるわけであります。これを回避するために、私たちは、消費税で対応すべきだと訴えているわけであります。(拍手)

 次に、年金目的消費税の税率と、これによる給付水準についてお答えを申し上げます。

 まず最初に申し上げたいのは、年金制度において、負担と給付が重要であることは当然であります。しかし、財源は、保険料と運用収入と国庫負担以外にないんです。給付は、社会保険制度を基盤とする以上、基本的には、負担と比例的な関係になる以上、給付と負担はだれがやっても実は余り大差がないんです。

 今回の改革の最大の眼目は、国民の公的年金制度に対する信頼を回復することであります。公平で、透明で、持続可能な、ここが大事なんです、持続可能な年金制度をつくることによって、国民の不信を払拭し、その上で必要な負担を国民に求めなければ、年金制度は崩壊をしてしまうんです。

 その前提に立った上で、負担については、年金保険料を現行の一三・五八%で据え置く一方で、年金目的消費税を創設することで必要な財源を確保したいと考えております。現段階の……(発言する者あり)大事ですから聞いてください。現段階の試算では、年金目的消費税三%で三十年間程度は年金財政は健全な状態を維持することができます。

 これに対する給付についても、政府と大体同じ規模を考えております。その結果、給付水準においても、基本的に政府案と同じ水準を想定いたしているわけであります。具体的な水準については、先ほど古川議員から説明がありましたので、省略をさせていただきます。

 以上です。(拍手)

    〔山井和則君登壇〕

山井和則君 引き続き、大野議員の質問に答弁を申し上げます。

 まず最初に、抜本改革案を出してから、いろいろな批判を与党はやっていただきたいと思います。(拍手)小泉首相が一元化が望ましいと言いながらも、その案も出さずに批判ばかりする資格はありません。

 さて、本法案におきましても、障害年金、遺族年金を強く意識しております。法案名に「高齢期等」とあるのは、老齢年金ばかりでなく、遺族年金、障害年金を含んだ法案であることを意味しております。(拍手)

 本法案におきましては、最低保障年金と二分二乗方式という新しい方式により、すべての人々に安心感を保障しております。障害年金や遺族年金のあり方も、当然そのことを前提に変わりますが、新たな制度創設に伴い、年金制度改革調査会においてしっかり安心できる制度にしてまいります。

 高齢者の消費税については、そもそも、与党は昨年末に、二〇〇七年度の消費税の引き上げを既に決めております。(拍手)結局、与党は、消費税も年金保険料も上げる、ダブルの負担増であります。

 また、保険料を毎年一兆円引き上げる政府案は、厚生年金加入者や事業主にとって耐えられないものであります。そのしわ寄せは、結局は雇用に及び、正規雇用のリストラにつながります。つまり、政府案は、正規雇用削減法案、リストラ推進法案であります。(拍手)

 この十四年連続の社会保険料の引き上げは、日本の雇用と経済を崩壊させます。このような深刻な現状を考えたときに、保険料の引き上げによる年金制度の維持は不可能であり、我が党は、抜本的改革の中で年金目的消費税が必要だと考えております。

 以上で答弁を終わります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 山口富男君。

    〔山口富男君登壇〕

山口富男君 日本共産党を代表して、民主党提出の、高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案について質問します。

 質問に先立ち、イラクでの日本人拘束という許すことのできない蛮行に厳しく抗議し、政府が三人の安全と釈放のためにあらゆる努力を尽くすよう強く求めるものです。

 今日、自衛隊派兵の政府の論拠はすべて崩れており、日本共産党は、改めて自衛隊の速やかな撤退を求めるものです。(拍手)

 質問に入ります。

 本案は、厚生年金、国民年金、共済年金を一元化し、納めた保険料に応じて給付を受ける所得等比例年金と、年金目的消費税を財源とする最低保障年金を創設するというもので、この二階建て制度を二〇〇九年度から導入し、年金目的消費税は二〇〇七年から徴収するとしています。

 第一に、本案の最大の特徴である年金財源に年金目的消費税を導入するとしている問題です。

 政府・与党も、二〇〇七年度から消費税率引き上げを視野に入れています。民主党案は、結局、政府・与党に先んじて、消費税増税の旗を掲げたことになります。

 現行五%の消費税に三%上乗せするだけでも、国民などに七兆五千億円もの新たな負担増を強いるものです。これが、国民の暮らしを破壊し、景気に悪影響を及ぼすことになると考えないのですか。

 しかも、年金目的消費税を最低保障年金の財源に充てるだけでなく、過去の年金債務を含めてこの税収で賄うとすれば、当面三%としても、今後引き上げないという保証はどこにもありません。年金給付を消費税に頼る以上、税率の引き上げは避けられないではありませんか。責任ある答弁を求めます。(拍手)

 そもそも、消費税とは、所得の低い人たちの生活と中小零細業者の営業を痛めつける税制です。消費税の使い道を年金目的に特定したとしても、国民の消費生活から広く一律に徴収するという消費税の本質は、何ら変わりありません。逆進性の強い消費税を最低保障年金の財源に使うなど、もってのほかではありませんか。

 第二に、財界、大企業の負担についてです。

 財界は、二〇〇七年までに二けた税率を合い言葉に、社会保障の財源を確保するためには消費税しかないと、公然と主張しています。日本経団連は、国庫負担を二分の一にする財源は消費税が最もふさわしいとし、さらに、国庫負担の全額間接税方式の検討すら打ち出しています。

 大企業にとって、社会保障の財源に消費税を導入することは、年金保険料の二分の一の事業者負担を回避できる、まことに好都合な仕組みです。財界、大企業がこぞって年金財源を理由に消費税の大増税を主張するのも、このためです。

 結局、民主党案は、社会保障の名のもとに、財界と大企業の負担を軽減するということではありませんか。はっきり答弁いただきたい。(拍手)

 第三に、年金の給付水準の問題です。

 本案では、いわゆるモデル世帯で現役時収入の五〇%程度の水準と言われます。これでは、政府案と同じく、現行の給付水準五九%から五〇%へと、実質一五%も給付を引き下げるということではありませんか。これもはっきりさせていただきたい。

 この間の世論調査でも、年金財源のために消費税率を引き上げることに反対する声は六割を超えています。年金財源に消費税を使うな、この国民の判断は既に明確であることを申し述べ、質問を終わります。(拍手)

    〔五十嵐文彦君登壇〕

五十嵐文彦君 山口議員に簡潔にお答えをいたします。

 まず、消費税増税ではないかというお話でありますが、現行制度で約束した年金総額の負担不足額を穴埋めし、給付を維持するために必要なことでありますので、単純な増税というのとは違うということでございます。

 また、年金目的税でありますから、これは、私どもは国民の理解を得られるものと思っているわけであります。

 それから、将来においては、これはやはりいろいろな状況の違いが出てくる、しかし、三十年間は三%で行けるということでありますから、それから先はその時点での状況を踏まえて、見直しが当然あるべきものと考えております。

 それから、大企業に有利ではないか、そうではないんですね。中小企業の社会保険料負担が大変ひどいわけであります。また、先ほども申しましたように、これは社会保険料負担の方が逆進性が実は高いわけであります。薄く広く負担をするという考え方は、私はあるべき姿だと思っております。

 また、最後に、給付水準は五九%から五〇%に下げるのかという話でありますけれども、私どもは最低限五〇%を確保したい、こう考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二分散会


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