衆議院

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第3号 平成17年1月25日(火曜日)

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平成十七年一月二十五日(火曜日)

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 議事日程 第三号

  平成十七年一月二十五日

    午後一時三十分開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)


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    午後一時三十二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(河野洋平君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。小宮山洋子君。

    〔小宮山洋子君登壇〕

小宮山洋子君 民主党の小宮山洋子です。

 民主党・無所属クラブを代表して、小泉総理に、少子化への対応、子育て支援について、そして介護保険制度の見直しについて伺っていきたいと思います。(拍手)

 質問を活性化するために再質問もいたしますので、よろしくお願いいたします。

 質問に入る前に、小泉総理に、昨日の岡田代表の再質問に対する答弁を拒否されたことについて申し上げたいと思います。

 河野議長が総理に、答弁に当たっては誠意を持ってきちんと対応されるよう望みますという異例の注意をされました。その後の総理の答弁も誠実で丁寧であったとはとても思えず、これは、議長の注意を無視し、国会と議長の権威を失わせ、議会制度に挑戦するものです。(拍手)

 国民は、総理が説明が足りないと思っています。民主主義のもとで、国会での質疑は、総理が説明する最大の場であるはずです。その国会の本会議でのきのうの総理の答弁は、後ろ向きと言わざるを得ません。昨夜地元で、答弁書がないと答えられないなら総理はかわってもらった方がいいと言われました。

 本会議質疑に臨む総理の姿勢を伺いたいと思います。答弁を求めます。

 再質問というのは、答弁漏れを補うものではありません。答弁漏れへの答えは、質問がなくても当然すべきものです。再質問は、本会議での質疑をもっと深め活性化するためのものです。その基本認識が総理は間違っています。書かれたものを読むだけでは、本会議質疑は形骸化し、儀式でしかなくなってしまいます。聞かれたことにきちんと答えない総理の姿勢は、子供たちにはとても見せられません。(拍手)

 これから私は総理に、答えられない難しいことや細かい数字を伺おうとは思っていません。官僚の皆さんが書かれた答弁書を参考にされるのはいいですが、棒読みにされるのではなく、総理としての考え方を御自分の言葉でしっかり話していただくことを強く要望して、質問に入ります。(拍手、発言する者あり)静かにしてください。

 これからの日本のビジョンを考えるときに、大きな課題である少子化への対応、子育て支援について、さまざまな角度から伺ってまいります。

 日本は、ますます少子高齢社会になっていきます。出生率は下がり続けています。昨年の合計特殊出生率、一人の女性が生涯に産む子供の数は一・二九、東京ではついに〇・九九と、男女二人の間に生まれる子供が一人以下になりました。少子化への対応、子育て支援は最重要課題だと考え、民主党は積極的に子育て支援をしていく方針ですが、小泉総理はどのようにお考えでしょうか。総理からビジョンというものを伺った覚えがありませんが、総合的なビジョンをお持ちだとすれば、どのような優先順位を考えていらっしゃるのか、明確に伺います。(拍手)

 人口の問題というのは、個人の選択にかかわるデリケートな問題です。産めよふやせよといった人口政策の対象とするのではなく、産む産まないは、それぞれのカップル、特に産む女性の自己選択、自己決定であることを、政策をつくる際に忘れてはなりません。

 その上で、それでは、日本では若い人たちは子供が要らないと言っているのか、そうではありません。若い人たちは子供を持つことを望んでいる人が多いんです。さまざまな調査で、若い人の九割は子供が欲しいと言っています。ことし成人した人に聞いた民間の調査では、子供は二人欲しいという人が七割という答えが出ています。また、女性に五年後の夢を聞いた調査では、働きながら子育てがしたいと過半数の女性が望んでいます。

 必要な政策が実施されれば、望む子供は産めるはずです。それなのに、持ちたい人が安心して持ちたい数の子供が持てていない。この現状について、必要な政策をつくってこなかった政府、政権与党の責任は大きいと考えますが、いかがでしょうか。(拍手)

 少子化の問題が出てきたのは、一九八九年に出生率がひのえうまの年を下回り、一・五七ショックと言われたころからだと思います。そのときに、健やかに子どもを生み育てる環境づくりに関する関係省庁連絡会議、そういう会議を政府はつくっておいでです。対策を出しているのに、それ以降、九四年にほんの少し上がっただけで一貫して下がり続けているのは、政府が効果ある政策を出せていない取り組みの甘さだと思いますが、いかがでしょうか。

 人口の将来推計も常に見通しを下回っています。それによって年金などへの影響も出ています。いつも下回るのはなぜなのか、お答えいただきたいと思います。(拍手)

 次に、さまざまな角度から、少子化への対応、子育て支援策について伺ってまいります。

 一つには、責任を持って行う省庁がないことだと思います。縦割りでは総合的な政策は出せません。関係省庁連絡会議をつくったときも、当時の厚生省以外、本気で取り組んでいるところはありませんでした。現在はどこがどのように責任を持って当たっているのか、お答えください。

 ノルウェーでは、一九九〇年に子ども家庭省を創設しました。就学前の子供にかかわるすべての事柄を総合的に担当しています。主な役割は、消費者の権利、利益、安全の強化、子供・青少年の育成環境づくり、社会の意思決定過程への参加機会の保障、家族に対する経済保障、社会保障、完全な男女平等の実現などです。ノルウェーでは、一・六五まで低下した出生率が子ども家庭省ができた九〇年以降回復し、現在は一・八になっています。

 子育て支援は縦割りでは無理なんです。民主党は、子ども家庭省創設をマニフェストに掲げています。責任を持って総合的に取り組むところが必要だと考えますが、いかがでしょうか。これまでに成果が上がっていないことを踏まえて、しっかりお答えいただきたいと思います。(拍手)

 次に、経済的支援について伺います。

 社会保障給付費の高齢者と子供の割合が七十対四というゆがみがあることを認識していらっしゃいますか。民主党は、子供を重視し、このゆがみを是正したいと考えています。

 子供を産めない理由に経済的負担を挙げる人が多いことは御承知のとおりです。経済的支援を拡充する必要があります。日本の子育て支援額は非常に低いのです。児童手当を第一子で比較してみますと、日本は五千円、小学校三年生までで、所得制限があります。これに対して、例えばイギリス、スウェーデンはともに一万三千円、十六歳未満までで、所得制限はありません。ドイツは二万円で十八歳未満まで、こちらも所得制限はありません。

 民主党は、義務教育終了まで一人一万六千円を所得制限なしに出す考え方を打ち出しています。(発言する者あり)ばらまきではありません。税の控除を簡素化し、社会保障給付、特に子供に充てるという考え方で、扶養控除、配偶者控除を廃止し、財源の大半はそれによって賄います。あとは公共事業削減などの歳出の見直しによって行う方針です。何を重視して社会を組み立て直すかのビジョンにしっかりと基づいた考え方です。子供手当を拡充する考え方はないのか、あれば具体的にお答えいただきたいと思います。

 また、出産費用の負担を軽減してほしいという声も多くあります。出産には平均四十八万二千円がかかるという調査があります。現在の制度では、出産にかかわる費用に保険は適用されず、全額自己負担です。医療給付外の現金給付として、原則三十万円の出産一時金は出ています。

 民主党は、出産一時金を増額するか、妊娠がわかってからの健診、出産費用全体に対して保険を適用するなど、出産費用の負担をなくすことを考えています。坂口前厚生労働大臣は、保険適用を検討しなければならないと国会で答弁されていますが、総理のお考えを伺います。(拍手)

 次に、育児休業制度について伺います。

 現在、取得者の九八%が女性、取得率は女性が六四%、男性が〇・三三%と、圧倒的に女性が多くなっています。それでは、女性は十分に活用しているんでしょうか。そうではありません。女性の約七割が、妊娠をすると仕事をやめています。その残りの三割のうちの六四%、ということは、全体の二割しか利用していないんです。

 来年をピークに人口は減っていきます。労働力という面からも、一人一人の自己実現から見ても、出産のために仕事をやめる女性がこれだけ多いのは大きな損失だと考えますが、どのようにお考えでしょうか。

 少子化社会対策大綱の実施計画で、男性一〇%、女性八〇%が取得できるようにするとしていますが、それをどのように実現するのか、伺います。

 民主党は、仕事と家庭の両立支援法を昨年の通常国会に提出しています。育児休業を両親合わせて十八カ月にし、そのうち一カ月は父親に割り当てるパパクオータを取り入れ、取得を促進する考えです。ノルウェーでは、パパクオータによって九割の父親が取得をしています。政府はこうした考えがないのか、伺います。

 育児休業中の所得保障の方法について伺います。

 現在の育児休業給付は、雇用保険法に基づいて、休業開始前の三〇%相当額が支給され、職場復帰後、月額一〇%相当額が給付されています。育児休業給付が検討されたときに、雇用保険は黒字なのでここからとされたと記憶しています。雇用保険からではこれぐらいが限度なのだと思います。

 男女の現在の賃金格差からして、一人子供がふえ出費もふえる中で、特に父親が安心して休業できるためには、新たな所得保障の方法を考える必要があるのではないでしょうか。

 一つの例として、スウェーデンでは両親保険の制度を、一九七四年に世界で初めて、両性が取得できる育児休業の収入補てん制度として導入しました。出産十日前から八歳の誕生日までに両親合わせて最大四百八十日休め、そのうち三百九十日まで所得の八〇%が支払われています。両親保険による所得保障は、年間百二十日までとれる看護休暇にも適用されています。費用負担は、当初は国民健康保険の一部で使用者と国が行っていましたが、現在は、使用者に加え雇用者も一部負担する社会保険になっています。

 日本でも新たな所得保障の方法を考える必要があると思いますが、どうお考えか、具体的に伺います。(拍手)

 次に、働き方を根本的に見直す必要があると思います。本来のワークシェアリング、多様な就労を可能にするワークシェアリングが必要です。子育てや介護のときには、男女ともに短い時間で働けるように、そのためには、一時間当たり同じ価値の仕事をしたら同じ報酬がある、均等待遇、同一価値労働同一賃金の法整備が必要だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

 また、日本の男性の働き方は大変いびつです。総務省の社会生活基本調査によりますと、働きに対して賃金が支払われている一般に労働と言われている有償労働と、家事、育児、介護といった家族のための無償労働の割合は、日本の男性は十二対一、六時間二十二分対三十三分です。女性はおよそ一対一、三時間十九分対三時間四十五分で、やや無償労働が多くなっています。

 先進国の男性は、オランダが一対一、ドイツ、アメリカ、フランスはほぼ三対二、最も少ないイタリアでも四対一です。いかに日本の男性がいびつな生活をしているかがわかります。少子化の問題だけでなく、男性の生き方そのものとしても問い直す時期ではないかと思いますが、お答えをいただきたいと思います。(拍手)

 また、女性のM字型カーブ、この点は、労働力が減っていくという面からも是正がぜひ必要です。女性の労働力率は、子育てをする時期の二十代後半から三十代前半に下がり、Mの字の形のちょうど真ん中のくぼみになるようになりますので、M字型カーブと言われています。先進国では、M字型カーブが残っているのは日本だけです。就業を希望する割合も足した潜在就業率では日本でも八〇%くらいになり、先進国と同じ食パン型、馬の背型になります。子育てと仕事の両立を望む女性の声にどのようにおこたえになるのか、伺いたいと思います。

 現状では、スーパーウーマンでないと両立ができません。私も、メディアで仕事をしながら三人男の子を育ててきましたが、電柱に張り紙をして、見てくれる人を探したり、閉まってしまった踏切をかいくぐって保育園に迎えに行くなど、みんな女性たちはそのようにして苦労をして子育てをしているわけです。

 また、収入が高い方が子供が多いということを御存じでしょうか。女性の社会進出が進むと出生率が下がるということではありません。諸外国を見ても、女性の労働力率が高いアメリカ、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、イギリスなどが出生率は高くなっています。また、日本でも、専業主婦より働いている女性の方が子供の数は多くなっています。二・一一人と二・一九人です。この点からも、働き続けられる環境をつくる必要があると思います。御答弁をお願いいたします。(拍手)

 また、就学前の子供にとって、質のよい居場所をつくることが必要だと思います。保育について、小泉総理は待機児ゼロ作戦としかおっしゃいませんが、その点はうまくいっているのでしょうか、お答えください。

 民主党は、保育所と幼稚園の連携強化、一本化、そして多様な担い手による保育が充実のための方法だと考えています。

 保育所と幼稚園の連携強化、一本化につきまして、政府が考えている総合施設は来年度、モデルで三十カ所のみ。現在、保育所は二万二千五百カ所余り、幼稚園は一万四千カ所余り、合わせて三万六千五百カ所余りあります。こうした既存のものの連携強化、一本化を進め、活用を縦割りでなくすることが第三の施設をつくるより重要なのではないでしょうか、お答えください。(拍手)

 そして、多様な担い手による保育、これは地域による子育ての再生にもつながります。私も、助産婦さんなどの経験のある女性が乳児を見る施設で子育てを助けてもらった経験を持っています。

 現在、NPOなどへの助成や補助は、市町村からの事業委託になり、事業に必要な経費についてのみ使えるようになっています。人件費や事務所家賃などの活動運営費としては使えない、また、初期費用や運転資金に使えないため、組織の運営が安定しないという声が多く聞かれます。

 児童虐待防止のためにも就学前の子供の質のよい居場所が必要で、そのためには、多様な担い手が運営できるよう、もっと規制をなくし、補助や助成の使い勝手をよくする必要があると思いますが、どのようにお考えでしょうか。

 次に、小児救急医療の充実について伺います。

 子供は急に熱を出したりします。夜中に熱で熱い子供を抱きかかえて、診てくれる医師を探し回った経験を多くの親は持っています。小児科の医師の養成、小児医療の診療報酬の適正化、地域での救急医療体制づくりが必要です。

 民主党は、政権獲得後三年で全国に三百五十カ所の小児救急センターをつくることをマニフェストに掲げています。小児救急医療の充実についてはどのようなプランをお持ちか、お答えください。(拍手)

 次に、教育の問題も子供を産むことをちゅうちょさせる大きな要因になっています。

 教育費について、民主党は、大学には希望する人は奨学金で行けるようにという考え方を持っていますが、政府はどのようにお考えか、お答えください。

 そして、肝心の教育のあり方について、政府の考え方が揺れていて、現場は混乱し、保護者は不信感を募らせています。先日、中山文部科学大臣は、二〇〇二年に始まったばかりのゆとり教育の象徴である総合的学習を見直す発言をされました。総合的学習は、テストの点ではなく生きる力を目指すもので、臨教審以来の考え方です。学力低下が言われたら見直すというのでは、学校の現場は混乱をしています。この混乱にどう対応されるのか、伺います。

 改革には現場の声を重視する必要があります。都内で初の義務教育分野での民間人の校長をしている元ビジネスマンの方が、具体的な提言をしています。点数至上主義で、正解はたった一つでそれ以外はだめ、そういう教育が新たなチャレンジやその意欲を失わせ、ニートや引きこもりを生む原因になっている、成熟社会を生きるすべを身につけるためには、地域の人々を学校に取り込み、実践を通した教育の地域主権、現場主義の徹底が必要だと提言されていますが、この点についてはどうお考えでしょうか。

 民主党は、人間として生きる力をつけるためには、地域に開かれた学校づくりをする必要があると考えています。民主党は、学校法人以外の組織も学校運営に携われるさまざまな形態のコミュニティースクールをつくれるように、五年前から率先して検討し、二〇〇二年には法案をつくっています。

 政府も、全国で九校の新しいタイプの学校運営の指定校をつくり、四月からは、どこでも公立学校は学校運営協議会を設置できることになってはいますが、地方教育行政法の改正は教育委員会の関与が必要な点など、自発性にゆだねるには不十分です。これからどのようにお進めになるのか、明確にお答えをお願いします。(拍手)

 もう一つ、民法を改正し、夫婦別姓が選べる多様な選択肢を用意することも、少子化への対応にもなると思います。それは、非嫡出子の差別などで法律婚でないと産みにくく、ちゅうちょしている人がいるからです。法制審議会の答申から十年がたちます。総理の明確なお答えをお願いいたします。

 とにかく、子育て支援のためには総合的な取り組みが必要です。二十一世紀の日本をどのような価値観でつくっていくのか、そうしたビジョンがあり、子供がそこにしっかり位置づけられていないと、欲しくても産めません。出生率の低下は、女性たちからの警鐘とも言えます。

 人口の動きが変わるには、政策をとって十年かかると言われています。特にここ数年は、第二次ベビーブームの子供たちが結婚し、出産しやすい年齢になります。少子化への対応、子育て支援は最優先の課題ではないでしょうか、明確にお答えをお願いいたします。(拍手)

 次に、介護保険制度の見直しについて伺います。

 五年目の見直しの法改正がこの通常国会で行われる予定です。介護の社会化によって、介護負担は確かに軽減はされました。しかし、残された課題は多く、先送りは許されません。

 今回、大きな改正点が三点あります。

 一つは介護予防。要支援と要介護一は予防給付に振り分けられ、今ある家事援助が受けられなくなるケースが多くなると聞いています。在宅のお年寄りの命綱を切ってもよいとお考えなのでしょうか、お答えください。

 また、予防にはパワーリハビリが有効と言われていますが、新たな機械を入れ、専門家の指導なしにお年寄りに筋力トレーニングすることの危険性が指摘されています。また、機械導入に利権が絡んでいるという話もあります。効果も実証されていない筋力トレーニングを無理やりやらせるおつもりなのか、お答えいただきたいと思います。

 次に、施設での自己負担について伺います。

 給付抑制策として、介護施設での食費など、自己負担アップが予定されています。在宅と施設の負担のバランスは必要です。しかし、利用料負担がふえることによって、必要な高齢者が介護施設や施設の個室が利用できなくなってはならないと考えますが、どのようにお考えでしょうか。

 この二つの課題は、サービスの低下、負担の増加ということになります。

 そして、最も重要な課題である介護保険の受給者と負担者の年齢拡大、すなわち、介護の普遍化がまた先送りされそうだということは大きな問題だと思います。

 介護保険法は一九九七年に成立しました。八年前のそのときからの懸案です。現在の制度は、六十五歳以上の介護が必要な高齢者と四十歳以上の特定疾患の患者しかサービスが利用できない高齢者介護保険制度になっています。介護制度を年齢で切っているのは、世界じゅうで日本だけです。

 法制定時の厚生大臣であった小泉総理、また先送りするおつもりなのか、明確にお答えをいただきたいと思います。(拍手)

 現在、介護保険制度による施設、デイサービスセンターやホームヘルプサービスは、近くにあっても障害児や若い障害者は利用できません。障害児や若年障害者の介護は、家族、特に母親に大きな負担を強いています。障害児の育児のために母親が仕事をやめなければならなかったり、家庭が崩壊したりしています。自分が先に死ぬことができないという声もよく聞きます。

 世論調査でも、七九%という大多数が障害者も介護保険のサービスを利用できるようにすることに賛成しているという結果が出ていますが、この点はどのようにお考えでしょうか。

 民主党は、結党以来、介護保険のエージフリー化を党の政策としています。家族だけでなく、社会全体で全年齢の介護を支え、障害があっても、年老いても、安心して自立して暮らしていける、そうした社会の実現を目指しています。

 また、子供の七%から八%が何らかの障害があると言われています。子育て支援を重視するという視点からも、介護保険の年齢拡大が必要です。今回の法案で、二〇〇九年からの介護保険の年齢拡大を明記すべきだと考えます。介護保険の年齢拡大について、総理の明確な答弁をお願いいたします。(拍手)

 加えて、民主党では、深刻化する高齢者虐待について、介護者支援も含めて、高齢者虐待防止法案を議員立法で提出する予定ですが、この点についてはどうお考えでしょうか。

 もう一点、肝炎について伺います。

 薬害に起因するものを含め、潜在的な患者が二百万人以上と推計される肝炎が、新たな国民病と言える状況にあります。特に、血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎ウイルスに感染させられていた問題は深刻です。このフィブリノゲンは、主に出産時や外科手術などに伴う大量出血の止血剤として、多くの人々に使用されたことがわかっています。

 昨年末、長年にわたって私たちが要求してきた納入先の医療機関名が公表されましたが、呼びかけや相談窓口の設置、検査・治療体制は極めて不十分です。早急に体制を整備し、手厚い対応が急務だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。(拍手)

 最後に、子育て支援、介護の支援、これは、ビジョンがあり、将来像がしっかり示されていれば、特に育児の九〇%近く、介護の八五%を担っている女性たちは、負担を拒否するだけということではないはずです。しっかりしたビジョンを示し、納得できるよう説明をしていく責任が政府、特に総理にはあるということを指摘して、再質問の時間を残しまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小宮山議員にお答えいたします。

 まず初めに、私の本会議質疑に臨む考え方についてでございますが、国会は国権の最高機関であります。国民の代表たる議員が国の基本的な政策について審議する場であり、私はこれまで、国会における質疑において、常に誠意を持って丁寧に答弁してまいりました。

 昨日の本会議における岡田議員の質問に対しても、私は、そのすべてについて丁寧に答弁したところであります。岡田議員の再質問に対しましても、その旨申し上げたところでございます。

 お互いに意見が異なることがあっても、国会は、その意見を闘わせ、審議を行う場であるという基本的な考えに立って、今後とも誠意を持って私の考えを説明してまいりたいと考えております。(拍手)

 少子化への対応ですが、少子化が急速に進行し、若い力が減少する場合には、国の基盤に影響を及ぼすことにもなりかねません。子供を安心して生み、子育ての喜びを実感できる社会を実現し、少子化の流れを食いとめることは、重要な課題だと思っております。

 これまでもさまざまな角度から少子化対策に取り組んでまいりましたが、社会の変化に伴う少子化の進行に対して、その流れを変える対策の効果が追いついていないということは、率直に認めざるを得ません。

 そこで、昨年六月には、少子化社会対策大綱を定め、我が国の人口が減少に転じていくこれからの五年程度をとらえ、集中的な取り組みを進めることとし、これに基づいて、子ども・子育て応援プランを昨年末に策定いたしました。待機児童ゼロ作戦、育児時間を確保するための働き方の見直し、地域の子育て支援などの施策を着実に実施し、社会全体で少子化対策に取り組んでまいります。

 人口推計における出生率ですが、人口推計は過去の実績に基づく傾向をもとにその時点における予測を示したものであり、これまで、過去の傾向を上回る速さで晩婚化、未婚化、出生力の低下が進行してきたため、結果的に出生率の実績が見通しを下回るものとなりました。

 なお、現在の社会保障の議論に用いられている人口推計は、平成十四年一月に、晩婚化に加え、結婚した夫婦の出生力が低下しているという新たに判明した要因も加えて前回の推計を見直したものであり、人口推計で前提とした出生率は、現時点において判明している事実や傾向をできるだけ反映した合理的なものと考えております。

 子ども家庭省の創設ですが、少子化の流れを変えるためには、保育、働き方の見直し、教育など、各般の施策について、まさに政府を挙げて取り組む必要があります。このため、全閣僚が参加する少子化社会対策会議を中心に次世代育成支援に取り組んでおり、これにより、各種施策を総合的に推進できているものと考えております。

 社会保障給付費の高齢者と子供の割合、児童手当の拡充でございますが、子ども・子育て応援プラン等に示されたとおり、社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成支援の推進を図ることは、重要な課題であると思っております。

 政府としては、平成十六年度税制改正において、老年者控除を見直すとともに、平成十六年度から児童手当の支給対象を小学校三年生までに引き上げる等の取り組みを行ってきているところでありますが、現在進めている社会保障制度全般についての一体的な見直しの議論の中でも、社会保障給付の中での少子化対策給付のあり方も含め検討を進めることが重要と考えております。

 なお、御提案のように、所得制限なしに義務教育終了まで児童手当を支給すると、約三兆円ほどの追加財源が必要になると考えておりますが、こうした財源をどのように捻出するのかについても真剣な議論が必要だと思います。

 出産費用の負担ですが、出産費用の負担軽減のため医療保険から出産育児一時金が給付されておりますが、健診や出産自体は疾病、負傷とは異なることから保険適用としていないところでございます。出産費用の負担をどのようにしていくかについては、こういった医療保険制度の基本的性格や厳しい財政状況等も踏まえつつ、平成十八年度に向けた医療制度改革の中で検討していかなければならないと考えております。

 育児休業の取得促進、育児休業期間中の所得保障に対する取り組みでございますが、仕事を続けることを希望しながら、育児との両立が困難であるため仕事をやめる女性が多いことは残念なことであり、男性も女性も、希望どおり、育児をしつつ働くことができる環境整備を図ることが重要であります。

 このため、子ども・子育て応援プランにおいては、目指すべき社会の姿について育児休業取得率の目標値を掲げており、企業の行動計画の策定、実施の支援等により、その実現に向けた取り組みを推進してまいります。

 また、育児休業給付の給付率について、平成十三年に二五%から四〇%へと大幅に引き上げたところであり、育児休業期間中は年金等の保険料が免除されていることを勘案すれば、育児休業給付金の給付水準は実質的には五〇%を超える水準となっています。

 男性の育児休業については、職場の理解不足や法制度に関する理解不足等を背景として取得が進んでいないことから、まずは、現行の法制度の周知や社会全体の機運の醸成等に取り組んでいくことが重要であると考えております。

 子育て、介護のときの労働者の待遇でございますが、政府としては、短時間労働者の処遇改善は重要な課題であることから、平成十五年八月の改正パートタイム労働指針に基づき、正社員との均衡処遇の確保に努めております。労使間においても、これを踏まえて議論を進めていただきたいと考えております。

 男女の働き方についてでございます。

 男性も女性も、社会の中で個性と能力を発揮しながら、子育てにしっかりと力と時間を注ぐことができるような社会にしていくことは重要であります。このため、昨年末に策定した子ども・子育て応援プランに基づき、男性の子育て参加促進、育児休業の取得促進、子育て期間中の勤務時間短縮等の措置の普及促進に向けた取り組みを進め、仕事と生活の調和のとれた働き方の実現、子育てしながら働き続けることができる環境の整備を一層進めてまいります。

 保育対策ですが、幼保一元化の問題については、子供や子供を持つ親の視点に立って、柔軟に保育所と幼稚園の壁を取り払うようにすることが重要であります。このため、幼稚園と保育所の連携を一層推進するとともに、就学前の教育、保育を一体としてとらえた一貫した総合施設について、来年度から新たに全国三十カ所で試行事業を実施することとし、それを踏まえ、平成十八年度からの本格実施に向け取り組んでまいります。

 また、三位一体改革の一環として、子育て支援に関する補助金を地方自治体の裁量度や自主性が拡大する交付金に再編しました。これにより、地域の特性や創意工夫を生かしつつ、多様な担い手による親子が相談、交流できる場の確保など、地域のさまざまな子育て支援サービスの充実を図ってまいります。

 小児救急医療でございますが、この小児救急医療の充実は、安心して子供を生み育てる上で重要であり、これまでも小児救急医療拠点病院の整備などに取り組んできたところであります。今後とも、四百余りの小児救急医療圏で小児救急医療体制が整備され、全国どこでも子供が病気の際に適切に対応できるようになる社会を目指してまいります。

 教育費についてでございます。

 教育の機会均等と人材の育成は極めて重要なことと考えており、奨学金事業については、小泉内閣発足以来、これまで貸与人員を二十一万人増員するなど、政府の重点課題として充実を図ってきたところであります。今後とも、意欲と能力のある学生が経済的理由により大学進学を断念することのないよう、引き続き奨学金制度による支援を推進してまいります。

 教育の地域主権、現場主義、地方教育行政法の改正ですが、学校、家庭、地域など社会全体で新しい時代を切り開く人材を守り育てなければならないと思います。こうした中、保護者や地域住民に信頼される開かれた学校づくりを進めることは重要な課題であります。

 このため、特区制度を活用した地域の提案を生かした学校運営や、保護者や地域住民が一定の権限を持って学校運営に参画するコミュニティースクールの設置といった取り組みを進めてきておりますが、その実施状況も踏まえつつ、学力低下の問題とあわせて、現場主義を徹底する教育改革にさらに精力的に取り組んでまいりたいと考えます。

 夫婦別姓ですが、夫婦別姓につきましては、婚姻制度や家族のあり方と関連して、これまでもさまざまな議論がされてきたと承知しております。民法改正の取り扱いについては、国民の意識動向を踏まえつつ、与野党間でよく協議していただきたいと考えます。

 介護支援についての考え方、介護保険制度の見直しに関連して、介護予防サービスの内容、施設入所者の利用者負担でございますが、介護の支援については、生涯を通じて国民一人一人が安心して生活を送り、自立して社会の中で十分に能力を発揮していくために不可欠なものであり、長生きを喜べる社会を目指し、国民に理解と協力を求めながら、介護保険制度の見直し等の施策を着実に進めてまいります。

 介護予防サービスについては、高齢者の方々の自立した生活を支援するために、効果的なサービスを提供していくことが重要であると考えます。このため、家事援助など既存サービスの内容についても、介護予防効果がより高いものに見直してまいります。

 また、筋力トレーニングについては、要介護度の改善に有効であることが科学的に証明されていることから新たに導入することとしておりますが、サービスの利用は本人の選択が基本であり、筋力トレーニングが強制されることはありません。

 さらに、今回の見直しにおいては、在宅と施設との利用者負担の不均衡是正等の観点から、施設入所者の居住費、食費を利用者負担とする見直しを行うこととしております。その際、低所得者の方に対しては、所得水準に応じた補足給付を創設し、施設利用が困難になることのないよう配慮することとしております。

 介護保険の被保険者、受給者の範囲でございますが、介護保険制度創設当初からの大きな課題であります。また、障害児、障害者とその家族のためにも、介護サービスを充実することは重要と認識しており、障害者福祉施設の充実を図っているところでありますが、さらに、介護保険のサービスを利用できるようにすることについての検討も必要であります。

 この問題については、今回の介護保険制度の見直しにおいても、関係者の間で主要な論点の一つとして議論が行われてきたところでありますが、御質問にもありましたように、将来的に制度の普遍化を目指すべきとの意見がある一方で慎重論もあることから、普遍化の可否を含め、国民的な合意形成や具体的な制度改革案についてさらに検討を進めていくことが必要であります。

 なお、検討の進め方についての今回の法案における取り扱いについては、現在、調整を行っているところであります。

 高齢者虐待でございますが、高齢者の尊厳の保持という観点から、今後の高齢者介護において、高齢者虐待への対応は重要な課題と考えております。このため、今般の介護保険制度において、新たに市町村に設置する地域包括支援センターの事業として高齢者虐待防止事業を位置づけるなど、積極的に取り組んでいくこととしております。

 C型肝炎についてですが、政府としては、肝炎検査受診を呼びかけるため関係医療機関名を公表し、国、都道府県等に約七百カ所の相談窓口を設けて、約十二万件の相談に適切に対応してまいりました。また、検査や治療体制等の一層の充実を図るため、新たに専門家等による検討の場を設け、本年夏ごろまでに検討結果を取りまとめてまいります。(拍手)

議長(河野洋平君) 小宮山洋子君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。小宮山洋子君。

    〔小宮山洋子君登壇〕

小宮山洋子君 最初にあれだけ申し上げましたのに、総理自身の御意見というのはほとんど聞かれなくて、大変残念です。誠意を持って丁寧に答えているとあの答弁でおっしゃるのでは、私たちのレベルと違い過ぎます。

 総理が、誠意、丁寧さ、総理にとってはどういうものなのか、そして、この本会議場での質疑を活性化するためにいろいろお願いをしているのに、それに答えられない。一体、本会議での質疑というのを総理はどのようにお考えになっているのか、明確にもう一度御答弁をいただきたいと思います。(拍手)

 そして、さまざまな角度から、少子化への対応、子育て支援について伺いました。そして総理のビジョンのどの程度の優先順位にあるのか、それを伺ったんですが、その点の明確な御答弁がありませんでしたので、そうしたことについてもお答えいただきたいと思います。

 お話にあったような、今までやってきた政策の羅列だけでは、決して女性たちは安心して子供を産めません。子供が欲しいと言っているのに、それも生み育てられない、その政府、そして政権与党、そのリーダーである総理の責任は非常に大きいと言わざるを得ません。ぜひ明確なビジョンを、安心して子供が持てるビジョンをお話しいただきたいと思っています。

 そして、介護のことにつきましても、その普遍化の可否を含めてさらに検討と言うだけで、総理の御意見は全く聞かれませんでした。一貫して、担当者、与野党の検討にゆだねる、それでは総理がいらっしゃる意味がどこにあるのでしょうか。ぜひ、総理御自身のお考えを明確に述べていただいて、説明責任を果たしていただきますように強くお願いをいたしまして、私の再質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小宮山議員の再質問に答弁いたします。

 私の答弁について御批判があるのは承知しておりますが、批判があるから承知できないと言ったら、なかなか議論は成り立たないんです。意見の違いはあっても、それは議論を深めてよりよい成果を出していくのが国会の重要な仕事でもあります。(拍手)

 そして、本会議の代表質問も重要でありますが、同時に、委員会等での質問も重要なんです。本会議での質問や答弁と、委員会での一問一答での質問、答弁と、おのずから違いがあっていいんです。その辺もよくわきまえて対応するのが国会議員としても重要なことではないかと思っております。私は、私の言葉で丁寧に答弁したつもりでございます。

 子育ての問題にしても介護の問題につきましても、総合的にこれから皆さんとよく議論を重ねて、よりよいものをつくっていくことが必要だと思っております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 野田佳彦君。(発言する者あり)――野田佳彦君。(発言する者あり)――野田佳彦君、登壇を求めます。

    〔野田佳彦君登壇〕

野田佳彦君 とり年、年男の野田佳彦です。

 政権取りを目指す民主党・無所属クラブを代表して、経済財政を中心に質問をいたします。(拍手)

 私も、答弁内容次第では再質問をさせていただきたいと思います。

 質問を申し上げる前に、やはり一言言いたいと申し上げたいと思います。

 きのう、そして今の総理の態度は、私は、これはとんでもないと思います。男子の本懐、浜口雄幸を、施政方針の結びで彼はあやかりながら決意を表明しましたが、浜口雄幸を語る資格はありません。

 浜口雄幸は、東京駅で暴漢に襲われて、そこで絶命をしたんじゃないんです。彼の真骨頂はその後なんです。大手術をして、そして、経過は悪かったけれども、国会に彼は出てきたんです。国会に出てきて、ロンドン軍縮条約などの大事な案件を、命をかけて説明責任を果たしたんです。目はへこみ、あごは細り、顔色は土色、脂汗を流しながら、彼は命をかけて政治説明のまさに責任を果たした。逃げて、ぼかして、隠して、開き直るあなたとは違う。(拍手)

 まず、具体的な質問に入っていきたいというふうに思います。

 まず第一は、景気認識であります。

 総理は、改革の芽は出てきた、景気回復は上向きだという認識を持っているようでありますが、しかし、これは違うと思います。

 総理が総理大臣になってから二年間は、景気はどん底に落ちました。その後のはい上がる過程を彼は景気回復と認識しているだけです。これは大きなまさに認識違いであります。

 改革なくして成長なしと言うけれども、一体何が効果があったんでしょうか。

 このはい上がる過程を見てみると、中国とアメリカの経済は好調でした。それに引っ張られた日本経済、これは構造改革とは関係ありません。デジタル産業、自動車産業は元気になりました。でも、これはそれぞれの努力であって、小泉構造改革とは関係ありません。

 一体、構造改革の何をもって効果が出てきたんだ、景気にプラスなんだと言いたいのか、論理的に説明をしてほしいと思います。

 私は、今の日本経済は勝ち組と負け組の二極化が残念ながら進んでまいりました。これは慨嘆すべき状況です。女性タレントが玉のこしに乗って負け組から勝ち組になることは、これは楽しい話かもしれないけれども、国民の暮らしの二極化は深刻な問題です。

 みんなが頑張って勝ち組になればいいけれども、今の勝ち組はどうなのか。政府におんぶにだっこに肩車の大きな企業は生き残って勝ち組。あるいは、税金で養われている人は、高額な退職金をもらった上に、後払いのわいろみたいに天下り先を用意されて勝ち組になる。税金を納めている人はどうなのか。雇用者報酬は三年連続減少です。貯蓄を取り崩して生活している人がふえてまいりました。中小企業経営者は、個人保証で、一度失敗すれば身ぐるみはがされて無間地獄に陥っている。これは公正な社会とは言えません。

 こうした兆候は、平成十六年度の補正予算の中にもあらわれています。歳出増の内訳を見ると、生活保護費が二千億円ふえています。平成十六年度の当初予算で一兆七千億円計上し、前年度よりも二千二百億円ふやしていたのに、また二千億円足りない。短期間に四千二百億円、生活保護費が必要になっている。これは小泉改革による二極化だと思いますが、この実態について、総理の明確な答弁を求めたいと思います。(拍手)

 あわせて、これからも一部の勝ち組にスポットライトを当てた経済政策を続けるのか、そうではなくて、中間層の厚みを取り戻すための経済政策に転換をするのか、総理のビジョンをお聞かせください。

 次に、平成十七年度予算案についてお尋ねをしたいと思います。

 小泉総理大臣、これで本予算の編成は四回目です。平成十四年度以来のその予算の推移を見てみますと、一般会計の歳出額は四年間ほぼ同じ。政策的経費である一般歳出も、大体四十七兆円の半ばぐらいでほぼ横並び。この四年間の数字を見ると、予算というのは政権の意思をあらわすはずでありますけれども、残念ながら、歳出改革の意欲は全く見られていないし、数字にあらわれていません。毎年同じような概算要求の基準に基づいて、結局、経理屋の発想の帳じり合わせに任せっ放しじゃないでしょうか。

 予算編成の核心は、国家のビジョンを定めて、そして資源を政治判断によって配分することです。残念ながら、総理のリーダーシップは全く見られません。道路公団の民営化は丸投げ、三位一体改革も丸投げ、予算編成も丸投げ。室伏広治選手はハンマー投げのゴールドメダリストですが、小泉総理は丸投げのゴールドメダリストであります。そうではない、自分のリーダーシップのもとで断固たる決断と方向づけを行ったと胸を張って言えるかどうか、お尋ねをいたします。

 予算の中身についてお尋ねをいたします。

 今回は、大型公共事業が予算化をされています。これからも、歳出につながるものでありますので、よく検討しなければならないと思いますが、まず第一に質問をさせていただくのは、整備新幹線です。

 これは、たしか四年ぶりの新規着工を認めることですが、問題は財源の捻出でありました。総事業費が一兆円を超える。国の負担や地方の負担では足りない分をどうするかと思っていましたら、ウルトラCがひねり出されました。将来のJRの新幹線の譲渡収入を担保として前借りをするというやり方、あるいは、新幹線が延びれば根元で営業をしている会社はもうかるから建設費を負担しろという言い方、こういうのをとらぬタヌキの皮算用というんじゃないでしょうか。(拍手)

 私は、旧国鉄の二十四兆円もの借金が一般会計に移されて、今国民みんなで返しているときなんです。だとするならば、JRの新幹線を売ったお金もJR東日本の増益も、まずは最初に、国民の負担を軽くするということが第一に考えられなければならないと思います。

 そうではなくて、あえてここで新規着工を認めたということは、悲願としている地域があることもよく存じ上げておりますが、しかし一方で、満員電車に揺られて通勤をして税金を納めている人たちにもしっかりと納得できるような説明責任が必要です。それを総理に求めたいと思います。

 二つ目は、関空二期であります。

 関空二期事業については、谷垣財務大臣は、関空に一本しか滑走路がないというのはいかがなものか、関西人として共感できると発言をされたそうであります。私も関西の友人がいっぱいおりますが、これだけの発想で予算をつくれというのは、これは問題があります。

 一番大事なことは、関空もあるけれども伊丹もある、神戸空港もできます、半径二十五キロの圏内に三つの空港がすっぽりおさまって五本の滑走路ができるというときに、この機能分担の議論が先送りをされていることが最大の問題であります。そのことを明確に青写真で描いてから二期事業の是非を検討するのが順番ではないかと思いますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

 空の行政ですから、後から、そら見たことかなどと言われないように、慎重な検討を求めたいと思います。

 もう一つは、社会保険庁の事務費の問題です。

 昨年もそうでしたけれども、特例公債法案の中に年金保険料の流用事項がまた盛り込まれています。去年の国会であれだけ問題になった社会保険庁のむだ遣い、年金掛金も相当むだに使われていました。社会保険庁の宿泊研修施設には、ゴルフの練習場も併設をされていました。そのクラブもボールも、みんな年金掛金で賄っていました。役人は打ちっ放し、国民は払いっ放し、そんな強い批判を浴びたものであります。にもかかわらず、まだ続けようとしている。

 今、社会保険庁は解体論すら出ているじゃないでしょうか。なぜこんなことを認めるのか、総理の御説明を求めたいと思います。(拍手)

 国債についても触れたいと思います。

 平成十七年度予算で、三十四兆四千億円新たな国債を発行することになりました。ということは、この四年間で百四十兆円の借金をつくることになります。歴代政権の最高額、世界一の借金王になります。

 将来世代のポケットに手を突っ込んで金をつかみ取るようなことを百四十兆円もやらざるを得なかった。だったら、将来に何を残したかということをきっちり説明しなければなりません。百四十兆円の借金をつくり、将来に何を残したか。将来世代、数十年先をにらんで、歴史に残る説明を求めたいと思います。

 次は、特別会計に移ります。

 一般会計の歳出規模は八十二兆円ですが、特別会計は、三十一の財布を全部合わせると四百十二兆円、一般会計の五倍です。一九六〇年から見ると、一般会計は五十二倍の伸び、特別会計は百十六倍です。お互いの重複はありますけれども、日本の予算の本体は、これを純粋に合体をすると二百四十兆円程度です。GDPの約半分。これは社会主義国家じゃないでしょうか。

 財政の健全化を言うならば、一般会計と特別会計を一体となって改革しなければならないはずでありますが、小泉総理には全くその姿勢が見えません。民主党は、ワーキングチームをつくって、三月までに整理合理化計画をつくろうと思っています。総理はどのように改革をするつもりなのか、その気がないのか、御答弁を求めたいと思います。

 次は、財政健全化の道筋についてお尋ねをいたします。

 先週、「改革と展望」が決定をいたしました。二〇一二年度にプライマリーバランスの黒字化を図るシナリオが出ていました。でも、びっくりしたんですが、例えば名目成長率は極めて楽観的に過ぎます。二〇〇八年度に三%成長に達し、そして二〇〇九年度からは四年間にわたって三・八%から四%水準で推移する、これはおかしい。バブルの前ならそれはわかりますが、九二年以降、四%成長も三%成長もないじゃないですか。何で二〇〇九年度以降は四年もこんな高い経済成長を実現できるのか、ぜひ国民にわかりやすく説明をしていただきたいと思います。

 次は、「改革と展望」の歳出の見込みです。

 二〇〇五年度が八十二兆円だったものが、二〇〇九年度には九十六兆円になるんです。四年間で十六兆円伸びるということは、毎年毎年四兆円ずつ伸びていく計算です。この計画には歳出改革の意欲がありません。しかし、おかしいじゃありませんか。総理は、施政方針の中で歳出と歳入の両面から財政構造改革をやると言ったのに、この試算の前提は歳出のたがは緩んでいる。この矛盾をぜひ御説明いただきたいと思います。

 同じく、国債の発行についても試算の前提は奇妙であります。国債発行三十兆円枠の公約違反をしたときは、その前提として税収が五十兆円ぐらい必要であるという弁明を言ってきました。でも、「改革と展望」の試算によると、二〇〇八年度には消費税を引き上げて、税収は五十兆円になります。でも、国債の発行は三十九兆円になっている。今まで言ってきていることとつじつまが合いません。ぜひこの点についても御説明をいただき、三十兆円枠はもう放棄したのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

 同じく、二〇〇八年度で消費税を引き上げる前提になっていますが、総理は、在任中は自分は消費税は引き上げないと言っております。なぜならば、歳出改革の意欲がなくなる、歳出改革のたがが緩むからと言っています。

 これまでも歳出改革の取り組みは熱心とは思えませんが、試算では、もっとその気持ちが緩んだ上に、二〇〇八年度で消費税を引き上げる、これはおかしいと思います。自分の在任中は消費税を上げない、後になったら知らないよでは、これは国民をだましたことになりませんか。そこの点の説明を明快にわかりやすくお願いしたいと思います。(拍手)

 そのほかの税制改正についてもお尋ねいたします。

 第一は、定率減税についてであります。

 定率減税の半減を平成十七年度税制改正では織り込んでおりますが、これは一兆円を超える増税です。サラリーマン家庭には大きな打撃になるでしょう。しかし、大事なことは、こういう増税という話を自民党の政権公約には盛り込んでいなかったということです。こんな後ろからけさ切りをするようなだまし討ちをなぜするんでしょうか。ぜひ御説明をいただきたいと思います。

 そして、定率減税半減の影響についてお尋ねをしたいと思います。

 私は、景気の腰折れあるいは消費の冷え込みにつながるのではないかと強い懸念を持っていますが、そこで思い起こしていただきたいのは、九七年当時のことであります。

 今国会でも恐らく焦点の人になるでありましょう、政治と金との問題で焦点の人になるはずである、ポマードで髪の毛を塗り固め、最近はいろいろなことを忘れてうそで顔を塗り固めている方が総理大臣だったころ、消費税を上げ、医療費を引き上げ、定率減税を引き下げて、風邪から治りかけていた日本経済を肺炎にしてしまいました。同じことをまた繰り返そうとしているんでしょうか。定率減税半減のその影響についての総理の御所見をお尋ねいたします。

 続いて、第三のビールの増税、ねらいを定めてヒット商品に税金をかけようとしている動きについてお尋ねをしたいと思います。

 酒税の中期的な整理は私は必要だと思います。でも、苦労して商品開発をして、ようやく市場に商品が出てヒットした途端に増税を行うというのは、これは長良川のウみたいなものです。一生懸命に水の中に潜って、そして魚をとってきて、やれやれ、きょういい仕事をしたなと思ったら、その途端に成果を横取りされるのでは、企業の開発意欲は失われてしまいます。

 商品開発は、奨励すべきものでありますが、ペナルティーを与えるものではありません。定率減税の半減という増税と相まってお酒の税まで上げられてしまっては、これは税制によるおやじ狩りと同じであります。まさにそうしたことのないような慎重な対応を私は求めたいと思います。(拍手)

 続いて、環境税についてお尋ねをいたします。

 京都議定書は間もなく二月に発効しようとしていますが、温暖化ガスの削減目標の達成は極めて困難な状況になってきています。

 その中で、昨年秋、環境省が環境税の素案をつくりました。これについては、あらゆる立場の人から酷評された内容でありましたけれども、依然として、将来の世代に良好な環境を残すために環境税は必要だという意見も強くあります。

 そこで、総理の環境税についてのお考え、京都の議定書のまさに削減目標を達成するために、あるいは将来のために環境税を有用と考えているかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。

 一連のこれらの動きは、どう見ても増税による財政再建に向けて政府がそろばん勘定を始めたということであります。でも、国民感情は違います。まずは隗より始めよ、引っ込め増税、貫け行革が国民の声です。この政府のそろばん勘定と国民感情の二つのカンジョウの間には大きな開きがあります。

 しかし、行革への取り組みは、残念ながら極めて不熱心と言わざるを得ません。「今後の行政改革の方針」を見ましたが、ほとんど小粒、岡田代表が取り上げた公務員の削減の計画については純減目標も言えないいいかげんさ、規制改革も化けの皮がはがれてまいりました。市場化テストは、民間提案はたしか百ほどあったはずです。でも、その来年度の試用は三つのケースに限られています。その法案の準備もおくれています。小泉内閣は行政改革も規制改革も全くやる気がないと私は思いますが、反論があればぜひ御披露をいただきたいと思います。

 日産の改革は、しがらみのないカルロス・ゴーンをトップに迎えて成功しました。日本の改革も、しがらみだらけの自民党にはできないということをここで申し上げたいと思います。

 次に、郵政改革についてお尋ねをいたします。

 この改革を本丸と位置づけて施政方針で総理は熱っぽく語りましたが、しかし、拍手をする方はまばらでありました。裸の王様のひとり芝居に見えました。そのお手伝いを紙芝居を使って一生懸命忠実にやっている幹事長はいらっしゃいますが、しかし、これは残念ながらドン・キホーテとサンチョ・パンサの熱演を見るがごとく、いずれにしても、これは茶番にしかすぎません。なぜ茶番なのか。それは、看板を書きかえても、結局は焼け太りになるんじゃないかと思われるからであります。(拍手)

 郵政改革の本質は、肥大化した郵貯や簡保、これが日本の資金循環のゆがみを生じさせてきました。いかにそれを正すかでありましたけれども、それは民営化して自動的に解消されるものとは到底思われません。その前の段階で規模縮小をするのが順番ではないかと思いますが、総理のお考えをお尋ねしたいと思います。

 それから、とても大事な問題は、国債管理政策と郵政民営化の関係です。これは、岡田代表がきのう二回にわたって質問をしましたけれども、具体的に答えていませんので、私は具体的に聞きたいと思います。

 民営化した郵貯や簡保に国債を買い支えさせるのか、そうではなくて、国債管理という国の命運を握る大事な問題を民間の経営者の判断にゆだねるのか。一体どっちなのか、はっきりしていただきたいと思います。(拍手)

 次は、雇用対策についてお尋ねをしたいと思います。

 あれだけ総花的にさまざまな項目が羅列をされていた施政方針でありましたが、雇用対策について本格的に触れているところは全くありません。失業率は四・五%、ピークのときに比べれば確かに一ポイントほど下がっていますが、依然として高い水準であることは間違いありません。雇用問題は峠を越えたとお考えならば、総理の問題認識能力に重大な欠陥があると思います。なぜ雇用対策を施政方針の中で軽視したのか、この点について総理の基本認識をお尋ねいたします。

 私が懸念をしていますのは、一年以上の長期失業者がふえている傾向にあるということです。今、三〇%以上となってまいりました。こうした長期失業者に対する対策をどのようにお考えなのか、あわせてお示しをいただきたいと思います。

 次に、金融問題について三点ほど質問をいたしますが、具体的な質問に入る前に一言申し上げたいのは、総理がペイオフ解禁は予定どおり四月から実施をするとさらりと言った言葉でありました。決して、ペイオフを凍結してからの九年間の歩みは予定どおりではありません。さまざまな曲折を経てやっとという思いを持っている方がたくさんいらっしゃると思います。金融国会で常に先進的な政策を提案し、以来、さまざまな金融政策を打ち出している民主党の政権ができていたならば、この予定はもっと早くなったろうということを申し上げて、三点ほど質問をさせていただきたいと思います。(拍手)

 まずは、日銀の独立性に関する問題であります。

 最近、日銀の国債買い入れ額が大幅にふえてまいりました。これは、財政政策に余裕のない政府が日銀を自分の財布として扱い、歯車の一つとして位置づけているのではないか、そんな懸念を持ちます。財政規律から、日銀の独立性から、日銀の財務の健全性という観点から、総理はどのようにお考えなのか、お示しをいただきたいと思います。

 次は、民主党の金融関連の幾つかの提案について、総理の御所見をお伺いいたします。

 金融の規制緩和を推進する前提は、利用者の保護をするルールをつくることであります。金融庁は、今、投資サービス法を検討し始めました。これは限定的なものであります。民主党は、銀行、生保等、金融サービス全般を含んで利用者の保護を図ろうという金融サービス法をつくるべきであるという提案をしています。総理の御意見をぜひお尋ねさせていただきたいと思います。

 次に、昨年は、西武鉄道やメディア各社など、残念ながら、株式の、有価証券の報告の虚偽記載問題が多発をしました。年末に金融庁が調査をしたところ、五百八十社に記載ミスがあったということです。日本のマーケットは、まさに信用を失墜しています。

 その信頼を高めるためには、かねてより私どもの民主党は、日本版SECをつくるべきだと提唱してまいりました。歴代自民党政権は聞く耳を持ちませんでしたが、今このときこそつくるべきではないかと思います。総理の御所見をお伺いいたします。

 次は通商問題ですが、自由貿易協定、FTA問題一点に絞ってお尋ねをしたいと思います。

 FTA交渉、アメリカやEUや中国に比べて日本はおくれをとりました。それを取り戻そうと、バスに乗りおくれまいと動き出したんですが、その動きは場当たり的であって、残念ながら、原則がよく見えません。しかも、今ちょうど行われているマレーシアとの交渉は大詰めを迎えていますけれども、経済産業省と農林水産省との動きはばらばらに見えます。

 外国との交渉、連携を図る前に国内の調整を図るということの当たり前さを改めて今認識しなければならないときであります。FTA交渉はすぐれて内政問題であるという認識のもとに、こういう調整を一気に行う組織をつくるべきではないかと思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 次は、中小企業政策についてお尋ねをいたします。

 一部の大企業が業績を上げていることは事実です。でも、中小零細企業は別の様相を呈しています。しかし、その実態を政府が十分に正しく把握しているのかどうかです。

 日銀短観などによりますと、中小企業の定義とは、資本金二千万円以上で一億円以下となっています。これは、一般の感覚からすれば、中小企業というよりも中堅企業でありましょう。景気の一番悪いところの実態把握をして初めて、有効な施策を講ずることができるはずであります。だから、今、平成十七年度の予算においても中小企業対策費は千七百三十億円、社会保障費の百分の一に甘んじています。

 民主党は、少なくともその倍増は必要だと思いますし、加えて、個人保証の問題についても改善をしなければならないと思っています。中小企業経営者の約八割は家などの私財を担保にして個人保証をしていますが、一度事業に失敗すれば、そこから立ち直る可能性はゼロに限りなく近い状況です。株式会社も有限会社も、そのトップの責任は有限責任であるはずですが、残念ながら、今は無限責任、無間地獄です。

 この流れを変えていく必要があります。少なくとも、政府系金融機関の貸し付けについては原則無保証という施策を講ずるべきではないでしょうか。あわせて、総理のお答えを賜りたいと思います。

 次は、独禁法改正についてお尋ねをいたします。

 経済憲法たる独占禁止法の改正、自由で公正な経済社会をつくるために必要であるという認識は、大方の皆さんが共有できるだろうと思います。

 昨年の臨時国会においては、政府案、民主党案それぞれ提出をされて、継続審議となりました。昭和五十二年の大改正のときには、徹底して審議の時間をかけて、国会の総意として成立をさせました。同じような姿勢で今国会も、ぜひ政府案の不備を改めて、民主党案には官製談合防止の観点など、すぐれた点がいっぱい入っておりますので、それを大いに取り入れて成案を得るように、総理の基本姿勢はどうなのか、お尋ねをしたいと思います。

 なお、民主党の独禁法案をつくる過程において、日本経団連との関係が一部の報道によって歪曲されて流されました。

 民主党は、さまざまな団体やさまざまな個人の声をしっかり受けとめてそれを政策にする、民があるじをモットーとする政党であります。したがって、経済憲法たる独禁法案をつくるときに、経済団体の声も聞いて、それを是々非々の立場で政策に取り入れるのは当たり前のことであります。

 この動きを、昨年の経済産業委員会において自民党の議員は、不当に批判をした上で、長年培ってきた自民党とそして経団連との信頼関係を損なうことのないようにと発言をされたそうでありますが、独禁法の世界で言うならば、これこそ私的独占、優越的地位の濫用であるということを指摘しておきたいと思います。

 最後に、会社法についてお尋ねをします。

 これも経済界が注目をしているテーマです。論点は多岐にわたりますけれども、三角合併、外国の企業が日本に子会社をつくって企業合併ができるようになっていく仕組みづくりの件であります。これを行うと、恐らく敵対的買収も相当にふえるだろうと懸念をされます。

 しかし、これはという防御策はありません。日米の主要企業の株価のその時価総額の差は決定的な開きがあって、それゆえに有効な防衛策はありません。バンビのような日本企業がハゲタカやあるいはハイエナに襲われる光景が私には目に浮かびます。

 総理は何か有効な措置をとろうとしていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。

 結びに、民主党は、税金を黙々と納めている働きバチのような国民のための政党です。そこに、残念ながら、シロアリのように血税に群がって、国家財政を破綻させようという政官業の癒着構造が今も根強く残っています。

 民主党は、シロアリを退治し、働きバチの政治を実現する政党、自民党は、シロアリ構造を許容して、働きバチにもっと負担しろという政党、だからこそ、今、政権交代が必要なんです。政権交代こそが唯一日本の再生の道であるということを強く申し上げて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 野田議員にお答えいたします。

 構造改革の成果についてでございます。

 私は、一番大きなものは、だめだ、だめだ、日本はだめなんだというこの悲観論、これがようやく、構造改革の成果だと思いますが、新しい時代に挑戦しようという意欲と、そして、やればできるんだなという自信みたいなものがだんだん日本並びに日本人によみがえってきた、これが構造改革を進めてきた一番大きな成果だと思っております。

 金融、税制、規制、歳出の改革をそういう面から、今後も一体的、整合的に全力で進めていきたいと思います。

 具体的には、金融面では、不良債権処理の加速等により、この二年半で主要行の不良債権残高は十五兆円減少し、不良債権比率は目標実現に向け四%台に減らし、負の遺産の整理にめどをつけ、税制面では、十五年度改正で実施した先行減税が研究開発投資の増加など経済活性化に寄与し、規制面では、構造改革特区を既に四百七十五件も誕生させ、最低資本金特例により約二万社の起業を実現させ、また、民間と一体となって都市再生によるまちづくりを活性化させ、歳出面では、歳出規模を実質的に前年度水準以下に抑制し、予算配分は大胆なめり張りによる重点化を行い、二年連続の着実な基礎的財政収支の改善を見込むなどの成果が見られます。

 こうした構造改革の取り組みにより、日本経済は、公共投資など政府の財政出動に頼ることなく、民間主導で回復してきたと思います。政府としては、改革の成果を地域や中小企業にも浸透させるとともに、構造改革の取り組みを加速、拡大し、引き続き民間需要主導の持続的な成長を図ってまいりたいと思います。

 また、デフレからの脱却を確実なものとするため、日銀と一体となって、政策努力をさらに強化してまいります。

 生活保護費の補正予算でございますが、高齢化の進展により離職した高齢単身世帯の増加、離婚の増加等による母子世帯の増加、景気の低迷などの影響により受給者数が増加することが見込まれることから、二千三十九億円を補正予算において追加計上する必要が生じたものであります。

 小泉内閣の目指す経済政策についてでございますが、今申し述べたとおり、国民一人一人や企業、地域が主役となり、努力が報われ、安心して再挑戦できる、自信と誇りに満ちた明るい社会の実現を目指すものであります。

 これまで、雇用・中小企業のセーフティーネットの確保に万全を期すとともに、新規起業の促進策、構造改革特区や都市再生など、地方の意欲や挑戦を尊重した地域経済の活性化策、持続的な制度の構築に向けた社会保障制度改革などに取り組んでまいりました。引き続き改革を進めて、地域や国民の多くが持っている潜在力が自由に発揮される活力ある経済社会の構築に向けて全力で取り組んでまいります。

 平成十七年度予算編成と私のリーダーシップについてでございます。

 私は、歳出改革路線の堅持、強化を基本とし、十月には、新規国債発行額について前年度よりも減額することを財務大臣に指示するなど、予算の方向づけを行ってまいりました。

 その結果、一般歳出を三年ぶりに前年度以下に抑制し、新規国債発行額を四年ぶりに減額するなど、財政規律堅持の姿勢を明確にするとともに、増額するのは社会保障と科学技術振興の分野のみで、公共事業関係は四年連続、防衛費は三年連続マイナスとするなど、めり張りのある予算編成を行うことができたと考えております。

 整備新幹線の新規着工についてでございます。

 平成十七年度の公共事業予算については、従来と同様に投資の重点化、効率化を図ることとし、全体として三・六%削減いたしました。整備新幹線についても、削減した公共事業予算の枠内で計上されておりますが、今回の新規着工区間についても、投資効果、収支改善効果等を十分に発揮することを厳密に検証したところであります。その上で、現在建設中の区間と一体的な整備を図ることなどにより、整備新幹線の開業効果を早期に発揮するため、今回、新規着工を行うこととしたところであります。

 民主党議員もかなり積極的でありました。なお、整備新幹線について、昨年十二月、「民主党「整備新幹線」を推進する議員の会」の代表である羽田孜議員の名のもとに、私のところに整備新幹線の建設促進に関する要請をいただいております。そういう点も勘案して予算を計上いたしました。(拍手)

 関西空港二期事業についてでございます。

 関西国際空港は我が国の国際拠点空港であり、我が国の国際競争力を強化するためにも、二本目の滑走路を早期に供用する必要があります。

 関西圏における三空港についても、今般、伊丹の位置づけについて、環境調和型の空港とするという観点から、ジェット枠の縮減等の見直しを行い、関空は国際拠点空港、伊丹は国内基幹空港、神戸は地方空港と、三空港の役割分担を明確にしたところであります。

 これらを受け、今後の関空の航空需要の動向と関空会社の経営状況にも見通しが立ったことから、今回、必要不可欠な事業に限定し、事業費を徹底して縮減した上で、二〇〇七年に二本目の滑走路を供用することとしたところであります。

 社会保険庁についてでございます。

 既定経費を厳しく見直し、全体として、年金事務費については約三百四十億円の削減を行っております。こうした中、年金事務費に保険料を充てる特例措置については、平成十七年度においても、国の厳しい財政状況にかんがみ継続することとしておりますが、その対象については、国民の理解が得られるよう、年金給付に必要な適用、徴収、給付事務やシステム経費に限定することとしており、国会で御指摘のあった職員宿舎や公用車などの経費は国庫負担としております。

 いずれにしても、効率的で厳正な予算の執行を図り、国民の信頼を損なうことのないよう努めてまいります。

 財政についてです。

 小泉内閣は、税収が歳入の六割程度という厳しい財政状況のもとスタートいたしましたが、財政構造改革を着実に推進し、国及び地方の基礎的財政収支赤字が平成十四年度の五・五%から平成十七年度には四%に改善する見込みであるなどの成果を上げてきております。こうした財政構造改革や、金融、税制、規制等の各般の構造改革を強力に推進することにより、我が国経済は長期停滞から民間需要中心の成長に移行しているところであります。

 しかしながら、我が国財政は、平成十七年度末の公債残高が五百三十八兆円程度に達する見込みであるなど、依然として厳しい状況にあります。政府としては、二〇一〇年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えるよう、今後も引き続き歳出歳入の両面から財政構造改革を進め、将来世代に対し責任ある持続可能な財政構造の確立に全力を挙げて取り組んでまいります。

 特別会計の改革ですが、これまで一般会計に比べ、特別会計の歳出の見直しについては必ずしも十分行われてこなかったとの御指摘でございます。

 このため、一昨年以来、すべての特別会計を対象として事務事業等の見直しを徹底的に進めており、十七年度予算においても、産業投資特別会計におけるNTT株式売却収入を活用した無利子融資制度について、将来的な廃止に向けて見直しを実施しております。今後とも、国全体としての一層の歳出の合理化、効率化の観点から、不要不急の事業等の温存を許すことなく、一層徹底した見直しを行ってまいります。

 「改革と展望」の試算について、四点お尋ねがございました。

 参考試算における名目成長率についてであります。

 この参考試算は、経済財政諮問会議における審議のための参考として内閣府が作成したものであり、閣議決定の対象ではありません。したがって、政府としての目標や公約といったものではありません。

 その上であえて申し上げれば、本試算においては、構造改革の推進により実質成長率が堅調に推移するとともに、政府、日銀一体となった取り組みによりデフレ圧力は徐々に低下していく結果、物価上昇率も高まることから、名目成長率が上昇していくと見込まれております。

 政府としては、民需主導の持続的な成長を実現するよう、引き続き構造改革の加速に努めてまいります。また、デフレからの脱却を確実なものとするため、政府は日銀と一体となって政策努力をさらに強化してまいります。

 参考試算における歳出でございますが、試算では、将来の具体的な施策が決まっていない中で、作業上の前提として、投資的経費や人件費等の削減が仮定されております。その結果、歳出総額は十六兆円ふえていますが、国債費が七兆円、地方交付税が四兆円増加すると見込まれ、一般歳出は五兆円程度の増加にとどまっております。

 政府としては、こうした試算結果を一つの参考としつつ、持続可能な財政構造の構築に向け、二〇一〇年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えるよう、歳出歳入の両面から財政構造改革を進めてまいります。

 参考試算における国債発行ですが、参考試算においては、公共事業関係費等に歳出抑制の前提を置いているものの、社会保障関係費や国債費が拡大することから、二〇〇八年度に三十九兆円程度の国債発行が必要と計算されています。しかし、これは種々の前提のもとに内閣府が参考として行った試算であり、実際の予算は、経済財政状況等を踏まえつつ、毎年度の予算編成過程において決定されるものであります。

 国債発行三十兆円については、平成十四年度当初予算の編成に当たって、歳出規模が八十兆円を超えると見込まれる中、税収が五十兆円程度と見込まれる状況において、財政の規律、節度を確保するため、目標と位置づけ、実際にこれを達成したところであります。

 今後の予算編成においても、経済財政状況を踏まえつつ、引き続き財政の規律、節度を確保するとの基本精神を受け継ぎ、財政構造改革を推進していくという考えに変わりはありません。

 参考試算における消費税についてです。

 「改革と展望」の参考試算におきましては、二〇〇九年度までに基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げることを前提とし、その税財源を所得税及び消費税に求めるとの仮定を置いております。これはあくまでも、内閣府において試算の便宜として仮定したものであり、特定の政策意図に基づくものではありません。

 なお、消費税率を含む税制のあり方については、歳出改革路線を堅持、強化しつつ、国民的な議論を進めていく必要があると考えております。

 定率減税についてですが、平成十四年六月以降の政府税制調査会の累次の答申において廃止していくべきとの指摘がなされており、一昨年末の平成十六年度与党税制改正大綱において、その見直しの道筋が明らかにされたところであります。

 こうした中で、平成十七年度税制改正に当たっては、政府税制調査会、経済財政諮問会議、与党税制調査会において十分な審議を尽くした上で、定率減税を半減することとしたものであり、だまし討ちとの御批判は当たらないものと考えております。

 また、定率減税の半減は、この制度が平成十一年以降、景気対策のための臨時異例の措置として継続されてきたものであることから、平成十七年度税制改正において、導入時と比較した経済状況の改善等を踏まえ、来年の一月から所得税、六月から個人住民税について実施することとしたものであります。

 検討に当たっては、民間部門に過度の負担が生じないよう配慮したところであり、定率減税の半減による平成十七年度の増収額は一千八百五十億円になるということを勘案しますと、景気に対する影響は大きなものではないと認識しております。

 酒税についてですが、企業や消費者の行動に対する税制の中立や公正な競争の促進の観点から、酒類の生産、消費動向等の変化に応じ適切に対応していく必要があると考えており、今後、政府・与党の税制調査会の指摘を踏まえ、酒類間の税率格差を縮小し、酒類の分類の簡素化を図る方向で、酒税制度の全般的な見直しについて検討を進めてまいります。

 環境税でございますが、京都議定書の来月の発効とそれに伴う我が国の責任を踏まえ、新しい目標達成計画を早急に策定し、官民挙げてこれを確実に実施しなければならないと思っております。

 環境税については、国民に広く負担を求めることになるため、温暖化対策全体の中での具体的位置づけやその効果、また国民経済に与える影響、諸外国における取り組みの現状を踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るように努めながら、総合的に検討していくべき課題だと思っております。

 行政改革と規制改革でございますが、昨年末に決定した「今後の行政改革の方針」に従って、独立行政法人については、三十二法人を二十二法人に再編し、八千三百人余りの役職員を非公務員化することとしております。また、これまでより一段と厳しい、今後五年間で一〇%以上の定員削減に取り組むなど、行政改革のさらなる推進を図ってまいります。

 市場化テストについては、平成十七年度において、ハローワークの中高年向け再就職支援、社会保険庁の保険料未納に対する督促や年金の電話相談などを対象としてモデル事業を開始するとともに、本格的導入に向けて法的枠組みも含めた制度の整備について鋭意検討を進める等、取り組んでまいりたいと思います。

 郵政改革についてでございます。

 現在、政府保証が付されている郵貯、簡保は三百五十兆円、家計の全金融資産の約四分の一を占め、その大部分を公的部門に還流させていますが、民営化後は政府保証を廃止し、民間企業として、市場経済の中でみずからの責任と経営判断により資金を調達し、運用を行うこととなるので、その資金は民間で効果的、効率的に活用されるようになるとともに、おのずと適正な規模が実現していくものと考えられます。

 このように、官から民への構造改革の本丸である郵政民営化に当たっては、郵貯・簡保資金を市場経済の中に吸収統合し、経営の自由度拡大によって効率的に活用するとともに、郵便局ネットワークという貴重な国民の資源を最大限有効活用するという方向で考えるべきであり、官の力によって強制的に規模の縮小を図るといった方向で考えるべきものではないと思っております。

 国債管理と郵政改革についてのお尋ねです。

 郵政民営化は、国民の貯蓄を民間で効果的、効率的に活用されるよう資金の流れを官から民へ構造改革するものであり、この改革の趣旨に照らせば、民営化後の郵便貯金会社、郵便保険会社が、財投改革に係る経過措置を除き、国債や財投債を制度的に引き受け続けるということはありません。

 また、民営化に当たっては、郵貯、簡保の既契約に係る公社勘定については安全性を重視して運用するとともに、移行期においては、市場関係者の予測可能性を高めるため適切な配慮を行うこととしており、国債市場の安定性を損なうことのないよう十分配意いたします。

 移行期後は、自立した民間企業として、みずからの責任と経営判断に基づき、きちんとした経営が行われることとなります。その際、資金の運用については、その規模の大きさにかんがみ、みずからの運用が国債市場に与える影響、それがみずからの経営にはね返る影響についても考慮の上、市場規律のもとにおけるみずからの経営判断として適正な資産負債総合管理がなされると考えます。

 他方、国債の安定的な消化を図る上では何より健全な財政運営が肝要であり、二〇一〇年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えるよう、歳出歳入両面から財政構造改革を推進するとともに、国債管理政策を財政運営と一体として適切に運営していくこととしております。

 このように、郵政民営化は、小泉内閣において同時並行的に進めている他の構造改革と整合性をとって進めていくことが重要であると考えております。

 雇用対策についてです。

 現下の雇用失業情勢は、厳しさが残るものの、引き続き改善しております。しかしながら、若年者を中心にミスマッチが大きく、長期失業者数が高水準で推移するなど、雇用対策は引き続き重要な課題であります。

 このため、ハローワークにおいて、早期再就職の必要が高い求職者に対し個々人ごとのきめ細かな就職支援を実施すること等により失業の長期化を防ぐとともに、長期失業者となった方については、今年度から新たに民間も活用してその就職支援を行う等の対策に引き続き取り組んでまいります。

 日銀の国債買い入れですが、日銀による国債の市中買い入れは、金融政策上の判断に基づき、時々の経済及び金融情勢等に応じて日銀が適切に判断されているものと承知しております。また、政府としては、歳出歳入の両面から財政構造改革を進め、財政規律を堅持していかなければなりません。したがって、現状の日銀の国債買い入れについて、御指摘のような観点から問題があるとは考えておりません。

 いわゆる金融サービス法の整備でございますが、政府としても、消費者、投資家の立場に立って、金融の機能別、横断的なルールを整備することは重要と考えます。銀行、保険、証券といった幅広い業態を対象とする金融サービス法の制定は理想ではありますが、現行のように業態別に法律が存在する体系のもとでは、各業法において整合的な整備を進めるとともに、証券の投資家に着目した横断的な法制である投資サービス法の制定に向けた検討を行うといった取り組みをまずは行っていくことが現実的であるとの金融審議会の答申に沿って、投資サービス法の制定に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

 日本版SECについてでございます。

 金融コングロマリットの出現や金融商品の一体化といった流れを踏まえれば、金融行政当局に関しても、企画、検査、監督、監視と機能別に編成することが銀行、証券、保険の各分野を業態横断的に所管することを可能とし、適当であると考えます。このため、日本版SECを創設し、証券行政部門を銀行・保険行政部門から切り離すことは適当ではないと考えております。

 なお、有価証券報告書の記載についての最近の不適切な事例を踏まえ、証券市場に対する信頼性を確保すべく、最大限の対応をとってまいります。

 FTAでございますが、FTAの推進は重要な課題と認識しており、関係省庁が緊密に協議しつつ、政府一体となって取り組んでおります。具体的には、経済連携促進関係閣僚会議において関係閣僚が意見交換を行い、昨年十二月には今後の経済連携協定の推進についての基本方針を決定するなど、政府一体となって緊密に調整を行っております。現時点で、政府内に新たな組織を設置する必要があるとは考えておりません。

 中小企業政策ですが、我が国経済の中小企業は活力の源泉であり、やる気と能力のある中小企業がその力を発揮していくことができるよう、平成十七年度予算では、厳しい財政事情の中にあって、新事業に挑戦する中小企業支援策などに重点化し、前年度とほぼ同額の千七百三十億円の中小企業対策費を計上しております。このほか、平成十六年度補正予算には千三百十億円を計上しております。

 政府系金融機関の貸し付けについては、経営者の個人保証を免除する制度を幅広く導入するなど、保証人に過度に依存しない融資の拡大を図ってまいります。

 独占禁止法改正案ですが、政府案は、各方面から幅広く意見を求め、十分な検討を重ねた上で国会に提出したものであります。独占禁止法の抑止力を強化するという改正の基本的方向は、民主党の対案と異なるところはないと考えております。日本経済の活性化のため、早期の成立に御協力をいただければと考えております。

 なお、御指摘のいわゆる官製談合の防止についても、政府として、官製談合防止法を積極的に運用しているところであります。

 外国企業による敵対的買収でございますが、今国会に提出予定の会社法案では、いわゆる三角合併を可能とする方向で検討しております。しかし、合併は会社同士の合意を前提とするので、それ自体は敵対的買収を増加させるものではないと承知しております。

 外国企業による我が国企業の敵対的買収のすべてが問題があるものとは考えませんが、一般の株主や顧客、雇用などへの影響に配慮することなど、適切な対応のあり方については今後とも検討を進めてまいります。(拍手)

議長(河野洋平君) 野田佳彦君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。野田佳彦君。

    〔野田佳彦君登壇〕

野田佳彦君 再質問をさせていただきます。(拍手)

 残り時間がわずかでございますので簡潔にお尋ねをしますが、ただいまの御答弁を聞いておりまして、総理の大胆かつ柔軟にといういつもの口癖の意味がよくわかりました。大胆というのは大ざっぱ、柔軟とはその場しのぎ。

 まず、第一問目の回答からびっくりしました。構造改革と景気との関係を、いきなり、やればできるで説明されたのでは。

 その他、随分たくさん質問をしましたけれども、全部もう一回質問したいぐらいですが、残された時間ですから、余り細かいことを言うと、さっき誠意を持って答えたろうと言われますから、二問に絞ります。基本的な政治姿勢の問題だけです。

 百四十兆円の借金を重ねて将来に何を残したか、歴史に残る説明をと言いました。これは、財政構造のために努力したことをいろいろ言いました。何を残したかということを、明確にもう一回、ここで胸を張って言えるかどうか、確かめさせていただきたいと思います。

 それから、これも政治姿勢にかかわる問題ですが、定率減税の半減については、何か批判を受けるいわれはないということを言っていました。ちょうど定率減税が実施をされたころ、私は実は浪人中でしたが、恒久的減税というのはずっと続く減税だと思っていました。それが政権公約にもなくて増税に転じるというのは、これはやはりおかしいんです。なぜこうなったのかは政治姿勢の問題ですから、機械的試算とか関係ないんですから、わかりやすく、丁寧に御説明をいただくようにお願い申し上げて、再質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 再度の質問ですから、再度答弁いたします。

 まず、何を残したかと言いますが、それは私がひつぎに入った後、どなたかが評価していただければいいと思います。私は、政治家として、総理大臣として、改革なくして成長なしということで、先ほど申し上げましたもろもろの改革を進めてまいりました。ようやく国民も、新たな時代に挑戦するための改革が必要だと認識してきたものと思います。

 やはり、将来に対して勇気と希望を持って進むような、そういうやればできるという意欲を持ってこれからも改革を進めていく必要がある。その結果については、後々の人が評価することでございます。

 定率減税のことでございますが、定率減税というのは、その税金だけを見て判断するものではございません。全体の財政状況、そして景気状況、もろもろを見ながら総合的に考えるものであって、一部定率減税だけをもって経済全体を判断するのはいかがなものかと思っております。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(中野寛成君) 神崎武法君。

    〔神崎武法君登壇〕

神崎武法君 私は、公明党を代表して、小泉総理の施政方針演説を含む政府四演説に関連して、主要なテーマに絞って質問をいたします。(拍手)

 昨年は、新潟県中越地震を初め、豪雨や台風により甚大な被害を受けました。年末にはインドネシア・スマトラ沖で大地震と大津波が発生しました。被害に遭われたすべての皆様に心からのお見舞いを申し上げます。

 我が党といたしましては、昨年末に国会議員三名を現地に派遣し、津波災害の実情を調査し、その結果を小泉総理に報告したところであります。

 今回の大津波で被害を受けたアジア諸国に対する我が国の迅速かつ強力な緊急支援は、国連や国際機関、各国からも高い評価を得ました。まず冒頭、この未曾有の津波災害に対する支援に取り組む総理の御決意と今後の中長期的な支援策についてお伺いしたいと思います。

 国民は今、国内的には、たび重なる自然災害、凶悪犯罪や詐欺事件の発生、景気、経済の行方や雇用、社会保障制度は一体どうなるのか、かつてない不安を抱えています。私たち政治家は、こうした国民の不安を真正面から受けとめ、安心、安全の日本を築くため、全力を挙げなければなりません。

 そこで、まず、災害に強い国づくりのための施策について、何点かお伺いいたします。

 日本列島は、今、地震活動が活発な時期に入っているとも言われ、防災対策の推進が何よりも必要です。新潟県中越地震では、住宅が我々の安心、安全にいかに生命線となっているのか、改めて印象づけました。住宅や病院、学校などの公共建築物、民間の建物の耐震化は、人命の救済、生活再建のスピードに決定的に影響します。

 ところが、耐震性が不十分とされている我が国の住宅は、全体の住宅総数の約四分の一にも当たる約一千百五十万戸、非住宅の建築物では、三五%に当たる百二十万棟あると言われております。耐震化施策は急務です。

 耐震診断はできるだけ個人負担を軽減し、耐震改修も制度をわかりやすくするとともに、工事の方法も類型化し、所得に応じて補助率を高めるなど、抜本的に制度を拡充する必要があります。国として、力強く国民や自治体を支援する必要があり、耐震化の年次計画を定めた推進制度を構築すべきであります。

 また、喫緊の防災、減災の課題として、避難通路や緊急避難所、特に沿岸部への津波シェルター、ハザードマップの整備などについて、国主導で優先的に公共事業として取り組むことを要請します。

 以上、北側国土交通大臣の見解をお伺いいたします。

 さらに、障害者や高齢者の避難マニュアルの作成を急ぎ、災害ボランティアの活動資金として災害ボランティア基金を設置することを提案します。小泉総理の積極的な所見を求めるものであります。

 奈良市での女子小学生の誘拐殺人事件をきっかけに、性犯罪者の出所直後の住所を法務省から警察に知らせる方向になりましたが、私は、プライバシーの保障の観点から、住民への情報開示には慎重であるべきと考えます。

 また、再発防止策として、欧米諸国では、性犯罪や殺人、薬物依存者らを対象に、服役中に社会復帰プログラムがあり、効果を上げています。我が国としても性犯罪者への矯正教育に力を入れるべきだと考えます。

 現在、地域においては、地域住民やボランティアによる防犯への取り組みが活発に行われています。今後、国としては、空き交番ゼロ作戦の推進はもちろん、各地域の取り組みを、国や地方自治体、警察、消防、学校がより連携し合いながら、安全、安心のまちづくりへの施策を推進すべきだと考えますが、総理の御見解を伺いたい。

 親族の情を悪用した卑劣きわまる振り込め詐欺など、人を欺く悪質かつ巧妙な犯罪が急増しており、早急な防止策が必要であります。偽造キャッシュカードによる預金引き出しの被害、犯罪についても、金融当局と銀行等は、利用者保護の観点から、予防対策や預金者の保護策など速やかな対策が必要と考えますが、その具体策をお尋ねいたします。

 我が国経済は、小泉内閣の構造改革の着実な進展、民間による血のにじむような経営努力などにより、景気は民需中心の回復が続いております。不良債権処理の進展にも一定のめどが立ち、デフレの脱却に向けた動きも着実に進んでいます。他方で、世界経済や為替、原油の動向などにも注視していかなくてはなりません。

 私は、こうした時期だからこそ、経済情勢を十分に見きわめ、必要に応じて、税制面も含め、適宜適切な対応を講じていくことが重要であると考えます。総理の我が国経済情勢についての認識、今後の経済運営のあり方についての見解を求めます。

 二〇〇五年度予算案は、財政健全化の重要性を十分に踏まえ、引き続き緊縮型ではありますが、構造改革を進め、めり張りをつけております。しかしながら、我が国財政の現状はなお深刻であり、財政健全化への努力を放棄するわけにはいきません。

 小泉内閣の誕生から、三位一体改革を含め、かなり大胆に予算改革を行ってきましたが、予算の執行状況のチェックとその反映、政策評価、コストの縮減、業務委託などによる事業運営の見直し、さらには公会計制度の見直し、定員の削減など、さらに徹底した歳出の見直し、削減に向けて不断の努力を続けていくことが重要であります。

 中でも、三位一体の改革は、国の仕事をやめる、もしくは地方に移すことであり、当然、国の行政組織の見直し、廃止を含めた改革に直結するものであります。

 よって、私は、総理の強いリーダーシップで、かつての橋本内閣が実施した行政改革にも匹敵する行政組織の抜本的改革で、行政のスリム化及びむだゼロの徹底を図るべきであると考えますが、総理の行政改革、予算改革などについて、御所見を賜りたい。(拍手)

 地域中小企業の景気回復は、地域、業種にばらつきがあり、中小企業支援策として、借りかえ保証制度、無担保無保証による融資の拡充、セーフティーネット貸し付け・保証の充実など、中小企業への資金供給の円滑化に引き続き取り組んでいくことが必要です。

 さらに、各分野で世界的なトップ技術を持っている中小、ベンチャーが日本の技術革新を支えていますが、ビジネスプランの策定やマーケティング、販路開拓等が弱いため、その技術が埋もれているケースもあるように見受けられます。その技術を紹介するなど、中小企業をさらに支援する体制を確立していくことが大事になってくると思いますが、総理の御見解を伺いたい。

 地域の再生に当たっては、地方公共団体の地域再生計画策定において、住民の意見や民間企業のノウハウを取り入れ、より実効性の高いプランを策定することが必要です。そして、今後は、コミュニティービジネスや地域再生事業の支援のため、地域再生ファンドなどを創設し、政府のみならず、地域住民、民間企業の資金、ノウハウも生かして支援することにより、地域再生事業の資金調達を行いやすくすることが今後の課題の一つだと考えますが、総理の御見解を求めます。

 二〇〇六年をピークに日本は人口が減少していきますが、人口減少社会を展望するとき、社会保障制度改革は避けて通れません。制度の信頼と持続可能性を確保するためには、年金、医療、介護などを一体的にとらえた改革と、財政、税制の抜本的な改革が不可欠です。

 また、社会保障制度における給付と負担の将来像の明示や必要財源の安定的な確保策など、改革の全体像を一日も早く国民の前に明らかにする必要があります。

 将来にわたって安心できる制度へ再構築するための具体的方策とその改革スケジュールについて、総理並びに厚生労働大臣に伺います。

 一方、人口減少社会において社会保障制度の持続可能性を確保するためには、その支え手としての次世代育成や、高齢者、女性の役割が重要になってきます。特に高齢者につきましては、生涯現役社会を目指して、定年の延長、採用における年齢差別禁止など、高齢者を活用できる雇用制度への変革が必要です。高齢者雇用のさらなる支援策の充実について、総理並びに厚生労働大臣に伺います。

 総理、少子化のさらなる進展は、社会保障制度の持続可能性を初め、我が国の社会経済全体に急速的な構造的変化をもたらします。そこで、これまでの施策の検証に加え、少子化の要因を踏まえ、社会全体がこれまでにない抜本的な支援をすべきときであります。

 こうした観点から、公明党は本年、少子化対策を最重要課題と位置づけ、党内に少子化総合対策本部を設置し、総合的な支援策を盛り込んだ少子社会トータルプランの策定に向け検討を開始したところであります。

 また、本年は、自治体や企業における子育て支援の行動計画の策定を義務づけた次世代育成支援対策推進法が十年間の集中的な取り組みとしてスタートすることもあり、本年を少子化対策抜本強化期間の元年と位置づけ、総理のリーダーシップのもと、強力な支援体制を構築すべきと考えますが、小泉総理の少子化の進展に対する危機意識と、その取り組みへの御決意を伺います。(拍手)

 少子化社会白書では、少子化の原因を未婚・晩婚化の進展や夫婦の出生力の低下と分析し、その背景には子育てに対する負担感の増大などを挙げておりますが、これらの指摘はこれまでも言われ続けており、問題は、こうしたニーズに適切に対応できる施策をいかに効果的かつ集中的に実行するかにあります。

 まず第一に、児童・家族関係給付を倍増するなど、子育て関係予算の抜本的な拡充が不可欠であります。

 児童手当の拡充や保育料の軽減を初め、乳幼児医療費や出産育児一時金等の子育てに係る医療費支援、さらには住宅費用や教育費への支援など、経済的負担の軽減策とそのための予算の拡充について、厚生労働省だけではなく関係省庁が重点的に取り組むべきと考えますが、総理並びに厚生労働大臣にお伺いします。

 経済的負担の軽減と並んで支援ニーズが高いのが、安心して子供を生み育てられる職場環境の整備です。平成十五年の育児休業取得率は、女性が七三・一%、男性が〇・四四%。この数値には小規模企業は含まれておらず、女性の大半が出産前に退職している現状も見落とされています。

 希望するすべての人が育児休業や短時間勤務等の制度を利用できるための実効性ある取り組みと、あわせて結婚や出産等を機に離退職した女性の再就職支援の充実について、厚生労働大臣のお考えを伺います。(拍手)

 活力ある日本をつくるためには、構造改革のさらなる推進とともに、我が国の特色を生かした分野の育成が何よりも重要になってきます。まずは、郵政民営化について質問します。

 私ども公明党は、民営化の方向性については基本的には賛成であります。しかし、問題は、当然ながらその内容いかんであります。

 総理の先日の施政方針演説においては、郵政民営化を改革の本丸と位置づけ、昨年九月に閣議決定された基本方針に沿って法案の成立を期すと、並々ならぬ決意を表明されました。総理の決意は理解いたしますが、私ども国会議員も、そして国民も、民営化にかかわる具体的な姿、制度設計のあらましが見えないことに不安を感じているのが実情であります。

 昨年暮れの情報システムの検討結果を見ても、平成十九年四月までには本格的な対応は困難、リスクがあるものの、適切に対応すれば何とか暫定対応が可能との結論であります。短期間のうちに大規模なシステム改修を行う場合のリスクについて、これまでの郵政民営化準備室の説明は余りにもあいまいかつ不十分であり、顧客、国民にとって不安は払拭されていません。

 国民の素朴な疑問は、郵便、貯金、保険の三事業一体で実現されてきた郵政サービスが分社化により本当に全国の郵便ネットワークが維持できるのか、我が地域の郵便局がなくなるのではないかということであります。また、三種、四種などの政策料金制度の維持についても国民の不安は大きいのであります。

 こうした不安を払拭するためには、民営化改革は、政府の当初方針であります郵政民営化に当たっての五原則に沿って忠実に進められるべきであり、同時に、懸命なる説明責任を果たしながら取り組むべきであります。総理の御見解をお伺いいたします。

 農業については、我が国の自給率は四〇%で、依然として低迷しております。現在、本年三月の策定へ向けて、食料・農業・農村基本計画の見直しの議論が大詰めを迎えておりますが、食料自給率の設定の議論が置き去りにされている感があります。

 今後の食料自給率の議論では、まず、なぜ自給率が向上しないのかを検証するとともに、目標の設定において、自給率の向上を国の責務として位置づけることが重要であると考えますが、総理のお考えをお聞きいたします。

 食は命、食は農と言われながら、食の安全、安心にもつながる有機栽培、減農薬、減化学肥料栽培など、環境保全型農業は余り進んでいないと思います。この際、我が国でも環境保全型農業を大きく前進させるため、直接支払い制度などを導入すべきと考えます。これら農政に対する総理のお考えをお尋ねいたします。

 大変厳しい状況が続いている農業ですが、一方で、国民の健康志向や、農業、農村に安らぎや憩いを求める国民の意識が高まるなど、我が国の農業へのニーズに対応しようとする新しい動きが出ています。

 例えば、昨年私が訪れた岩手県石鳥谷町では、ヒエやアワなどの五穀の生産、販売の取り組みが活発化しております。雑穀のおにぎりやまんじゅうを食べましたけれども、大変将来有望だと思いました。北海道では、日本で唯一、加熱せず、搾ったままの無殺菌牛乳の生産、販売を行っているグループ、他府県でも、温泉と特産物を一体化させた地域交流など、全国各地でさまざまな取り組み、地域ブランドづくりなどの挑戦が数多く行われております。

 輸出も、北海道の長芋のブランド化や台湾への輸出などを初め、我が国農産物はアジアでのブランドイメージが高まっていますし、海外には日本食ブームが広がるなど、中国、台湾のWTO加盟による輸入総量枠の撤廃などにより、今後、農産物輸出は相当拡大していくことが期待できます。

 ある面、農業は、これまでの守りから攻めの段階に入りつつあります。こうした新たな取り組みをさらに拡大し、創意工夫による攻めの農業を展開していくべきだと考えますが、総理のお考えをお尋ねいたします。(拍手)

 二月十六日に京都議定書が発効します。我が国の「この国のかたち」を考えたとき、環境先進国、自然共生先進国への道こそが最大の国益だと考えます。地球温暖化対策推進大綱も近々改定される運びであり、各界各層の一層総力を挙げた取り組みが緊急の課題です。

 私は、この際、その重要な柱として、都市のあり方についての提案をいたしたいと考えます。すなわち、自然と共生する都市づくりと、その第一歩としての、治水と環境と景観を統合的に進める、水と緑のマイタウン都市の提唱です。

 現在、東京には、日量で二万トンを優に超す地下湧水、あるいは一日の処理量四百万トンを超える下水道水、さらには雨水貯留水等の膨大な水資源がその活用を待って眠っております。これは東京だけにとどまりません。これらの再生した水を、ヒートアイランド対策やせせらぎづくり、緑づくりなどに生かす、花や緑にあふれた特色ある都市へとその活用を図ることです。そのためには、都市再生のためのモデル地域を指定するなど、施策と資源を選択的に集中することが重要と考えます。

 小泉総理は、総理就任後初の所信表明演説において、自然との共生が可能となる社会の実現を言及されましたが、水と緑のあるマイタウン都市づくりに対する総理の御見解をお伺いいたします。

 本年二〇〇五年は、愛知万博が開催され、あわせて中部国際空港も開港し、日韓関係におきましても、共同訪問の年などの催しも多彩に挙行されます。

 私ども公明党は、観光立国への取り組みは、各国の国民と民衆レベルで手をつなぐ民間外交政策であると考えております。総理は、二〇一〇年までの海外からの訪日旅行者数は一千万人達成を言明されていますが、果たして外国人旅行者をどのようにしてふやしていこうとされているのでしょうか。

 ロードマップを示し、観光立国宣言によって国民に理解と協力を求めるのも一案であります。

 国土交通省におきましても、中国からの観光客誘致のため、今回、愛知万博に限定して、訪日団体観光ビザ対象地域を中国全土に拡大する方針と伺っていますが、ビザの発給解禁あるいは免除措置を恒久化し、将来的にはアジア諸国全体に対象を拡大する、空港着陸料の大幅引き下げなど訪日旅行費用の削減策、外国人客の誘致効果のある観光目玉づくりを公共事業として実施するなどの大胆な施策を打ち出すべきです。

 総理並びに北側国土交通大臣の御見解を求めます。

 日本の科学技術はこれまで、日本経済を牽引し、国民の福祉の向上に貢献してきました。これからも、例えば、高度な情報通信社会を迎えている今日、ICタグ、ユビキタスネットワーク、情報家電、ロボットの活用など、日本の持つ技術力、潜在力をいかに引き出していくかが重要であります。

 その上で、応用・発展的な科学技術を支える基礎研究の充実、また先日、国際的な教育・学習到達度調査において我が国の小中高生の理科系教科の学力が下がったという報告結果などから理科離れが指摘されており、人材の育成が今後の課題であると考えますが、総理の御見解を賜りたい。

 映画、テレビ、アニメなど、コンテンツ産業振興政策が注目されています。

 今、アジアでは、映画などで韓流ブームが巻き起こっていますが、その背景には、韓国政府の積極的なコンテンツ産業振興策があり、綿密な市場戦略のもと、国を挙げて海外展開を進めています。結果として、韓国自体のブランドイメージにつながり、ひいては産業全体を押し上げる力としての映像コンテンツの力を痛感いたします。

 一方、我が国は、世界のアニメの六五%を日本製が占め、国際的評価は極めて高いものの、コンテンツ産業は個々の業界の努力にゆだねられております。そのため、市場規模の対GNP比は二%、国際社会平均の三%すら下回るという状況です。輸出もわずか三千億円台。これでは、我が国の特色を生かし切れていません。

 我が国を魅力ある国にするためにも、輸出の後押しや人材の育成など、コンテンツ産業振興に政府も本腰を入れた取り組みをすべきだと思いますが、総理の御見解を伺いたい。

 政治の使命とは、生きとし生ける人間が人間らしく生きる権利、つまり人権の保障と拡大のためにこそあると考えますが、人権の実現とは、人間が人間らしく平和で幸せに生きることの保障であると思えてなりません。

 近年、個人情報を悪用する事件や、高齢者や幼児に対しての虐待という痛ましい事件が多発していることを目の当たりにすると、人権というものが十分理解されていない状況が目につきます。私は、日本は人権大国を目指し、政府としても人権救済に関する制度の構築を初め、生命のとうとさや人間性の尊重を子供たちに徹底して教える教育にも真剣に取り組んでいただきたいと思います。総理の御決意を賜りたいと存じます。(拍手)

 次に、外交問題についてお伺いします。

 まず、北朝鮮問題であります。

 総理は、拉致問題の解決を目指し、圧力へのあらゆる選択肢を検討すると言われておりますが、どのようなタイミングでどの程度の経済制裁を発動するのか、あるいは段階的に発動するのか、我が国単独で行うのか、もしくは周辺国に協力を求めるかなど、具体的なシミュレーションを検討していることが北朝鮮に伝わらなければ圧力にはなりません。経済制裁に関して、当然、具体的な手順、手法について政府部内で検討がなされていると思いますが、現状を御説明いただきたい。

 米国政府内では、近く国連安全保障理事会への付託を検討するとの強硬論もあります。例えば、安保理決議の案文に拉致問題という人権問題を加えるよう外交努力をするなど、拉致問題解決へ政府はあらゆる努力と英知を結集させ、全力で取り組んでいただきたいと思いますが、総理の御決意と御見解を賜りたいと存じます。

 今月三十日に予定されているイラク国民議会選挙が成功するかどうか、世界が注視しています。我が国は、今後のイラクの民主化への政治プロセスを間接的にサポートする意味でも、自衛隊による人道復興支援とODAを初めとする経済支援は車の両輪としてますます重要な役割を果たしていくと確信します。

 ただし、サマワの治安状況について、官邸、防衛庁、外務省が相互に連携をとりながら緊密に情報収集を行い、自衛隊の安全確保に万全の上にも万全を期すべきであります。三月にはサマワからオランダ軍が撤退する方針であると伺っておりますが、今後の自衛隊の安全確保策について、総理の御見解をお伺いいたします。

 中国との関係は、最も重要な二国間関係でありますが、最近は戦後最悪との指摘があります。両国の首脳が相互に訪問できるよう、日中の信頼関係の構築を目指し、あらゆる努力をしていただきたいと思います。

 日中間にはさまざまな障害がありますが、日中関係は、経済だけではなく、北朝鮮問題の解決、国連改革のためにも、未来志向で強固な友好関係が再構築されることが急務です。総理の決意と打開策をお伺いしたいと思います。

 本年、我が国は被爆六十年を迎えますが、いまだ世界には約三万発もの核兵器が存在すると言われ、残念ながら、新型核兵器の開発や大量破壊兵器拡散の危機も進行しているのが実態です。本年五月には国連本部で核拡散防止条約運用検討会議が予定されており、核軍縮を一歩でも二歩でも前進させねばなりません。

 例えば、広島や長崎で開催されている原爆資料館の展示を世界の各都市で巡回できるよう強力に支援したり、国連総会への核軍縮決議案の提出と賛同国をふやすための外交努力など、被爆国として、我が国こそ平和と核廃絶、軍縮への具体的な行動を巻き起こすべきではないでしょうか。総理の御所見を承りたいと存じます。(拍手)

 国連安全保障理事会の常任理事国入りに総理は積極的に意思表明をされておりますが、我が国が世界平和に積極的に貢献するための意思表示でなければなりません。国際社会における日本の地位や名誉を求めて常任理事国入りを表明するのではなく、人間の安全保障の分野で日本が力をさらに大きく貢献するためにも常任理事国入りが必要だと考えますが、総理の決意をお伺いしたいと存じます。

 少子化が進展する今日、また、今後の世界に貢献する日本の役割を考えるとき、人づくりは極めて重要であると考えます。

 その上で、教育の生命線は何といっても教師であることは論をまちません。そのための方策として、教員養成の抜本的改革や教員の評価システムの確立などが必要であると考えますが、そのための具体的施策について、総理並びに文部科学大臣の御所見をお伺いしたい。

 教育基本法について、文部科学省は見直し作業に当たっていますが、教育基本法改正によって教育のどの分野の何を具体的に変えようとしているのでしょうか。また、何が変わることを期待しているのでしょうか、伺います。

 当然のことながら、基本法見直しについて、現行法の人格の完成や個人の尊厳という理念は堅持されるべきであり、国家や社会のための教育という発想に立ってはならないと考えます。教育の本義について総理の所見を伺うとともに、私は、同法に、国家主義的、全体主義的、戦前への復古主義的な考えを盛り込むことは断固反対であることを重ねて申し上げる次第であります。(拍手)

 また、総理は施政方針演説の中で、学力が低下傾向にあることを受け、学習指導要領全体の見直しに言及されました。ただし、大事なのは学力観です。偏差値教育に逆戻りしない学力観をお示ししていただき、その上で、今回の調査結果をどう評価されるのか、文部科学大臣にお伺いしたい。

 現在の学習指導要領は、小中学校について、二〇〇二年度より実施されてからまだ三年もたっておらず、総合的な学習の時間を含めて、その実施の十分な検証を踏まえた上での見直しでないと教育現場は混乱します。学習指導要領の見直しの方向性について、総理並びに文部科学大臣の御見解を賜りたい。

 国民の立場に立った今般の司法制度改革は、昨年、その制度的枠組みが一応完成するに至りました。中でも、昨年四月からスタートした法科大学院は、二十一世紀の国際社会に求められる幅広い教養と専門知識をあわせ持つ法曹を大学院教育によって養成すべく、画期的な制度として注目されています。

 しかし、現在、法務省の司法試験委員会では、平成十八年度から実施される新司法試験の合格者について、五年間並行実施される現行司法試験合格者との配分問題を議論していると伺っております。新司法試験については、法科大学院の教育課程を修了した者については相当割合を合格させるような配慮をしなければ、司法制度改革そのものが意味をなさなくなります。この点について、総理の御見解を求めます。(拍手)

 総理が憲法改正に言及されましたので、私も一言考えを述べ、総理のお考えをお聞きしたいと思います。

 憲法改正論議については、新しい時代の憲法のあり方について大いに議論を深めることについては、私も賛成です。ただし、どのような視点を持って議論をするかということが重要です。

 五月には衆参両院の憲法調査会から憲法改正についての一定の方向性が打ち出され、さらに議論が本格化することと思いますが、その際、目まぐるしく変化する国際社会にあって、二十一世紀の日本をどう世界から尊敬され、誇れる国にするのか、世界へ貢献する日本という視点を欠かすことはできないと思います。この私の考えについて、総理の御見解をお聞きしたい。

 内外にわたる政治課題について言及してまいりましたが、一番大切なのは、国民の政治に対する信頼であります。信なくば立たずとあるように、国民の信頼なしには、どのような政策も改革も実行できません。

 昨年の臨時国会においても、政治と金の問題が取り上げられましたが、不本意ながら、再発防止策の成案を得ることができませんでした。政治家一人一人が襟を正し、政治改革を進め、信頼の政治を確立できるよう全力を挙げることをお誓いして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 神崎議員にお答えいたします。

 いつも与党として、格別の御協力、御支援ありがとうございます。

 インド洋大津波災害への我が国の支援についてお尋ねがございました。

 インドネシア・スマトラ島沖大地震及び津波災害で被災した各国に対して、アジアの一員として、資金、技術、知識、人的貢献のそれぞれの観点から、緊急支援及び復旧復興の両面で最大限の支援を行ってまいります。また、関係国や国際機関と協力しながら、津波早期警戒メカニズムの構築に向けた国際的努力に積極的に貢献してまいります。

 避難マニュアルと災害ボランティア基金でございますが、障害者や高齢者の避難支援対策については、有識者等による検討会において、自治体の先進的な取り組み事例を踏まえたガイドラインを今年度内に取りまとめ、必要な施策を速やかに講じてまいります。特に、退避情報の伝達体制の整備や、要支援者ごとに避難支援者を定めた災害時避難マニュアルの策定などを自治体に働きかけてまいります。

 災害ボランティアの活動資金に関しては、社会福祉協議会が積み立てているボランティア基金が活用できるほか、新潟県中越地震では、共同募金会による資金助成の仕組みが拡充されております。政府としては、引き続き、関係者の意見を聞きつつ、ボランティア活動の環境整備に力を入れてまいります。

 性犯罪対策ですが、性犯罪者の住所に係る情報については、犯罪の防止と取り締まりを担当する警察当局において、再犯防止などの目的で有効に活用できる仕組みを確立すべきであると考えます。他方、これを地域住民に公開することについては、出所者、同居の家族などの人権及び社会復帰への影響などの問題があることから、慎重に検討すべきものと考えます。

 刑務所における性犯罪者に対する矯正教育を充実するため、有識者の意見も聞きながら、行動科学や心理学などの知見を導入した体系的な処遇プログラムを研究、実施してまいりたいと考えております。また、受刑者に改善指導を受けることを義務づける法制度を整備してまいります。

 安全、安心なまちづくりの推進でございますが、犯罪件数は二年連続して減少しているものの、なお凶悪犯罪は多発しており、住民が安全に安心して暮らせる地域社会を実現することは急務であります。

 政府としては、来年度において、三千五百人の警察官の増員のほか、退職警察官を交番相談員として配置するなど、空き交番の解消に全力を挙げてまいります。また、議員御指摘のように、関係機関が相互に連携しながら、住民の自主的防犯パトロールなど、地域挙げての住民の自主的防犯活動を支援する施策を推進し、安全で安心なまちづくりに努めてまいります。

 振り込め詐欺についてでございます。

 振り込め詐欺などの新しい手口の犯罪については、全国的に発生して相当額の被害が生じており、多くの国民に不安を与えていると認識しております。

 このため、警察当局では、昨年の臨時国会で改正された金融機関本人確認法を活用して、他人名義の通帳を犯罪に利用する者を検挙するなど、取り締まりの強化を図っております。また、犯罪の手口に対応したきめ細かな広報啓発に努めるとともに、金融機関による防止対策の充実を働きかけてまいります。

 偽造キャッシュカード犯罪の被害、この対策でございますが、この被害が急増していることから、これまでも金融機関に対して利用者保護の観点から適切な対応を要請してきたところであります。今後さらに、より実効性のある犯罪防止策を検討するよう二月中を目途に金融機関に要請するとともに、被害発生後についても利用者保護の実効性を確保し得る適切な対応を検討するよう重ねて要請してまいります。(拍手)

 我が国の経済情勢・運営のあり方についてでございます。

 我が国経済は、公共投資など政府の財政出動に頼ることなく、民間主導で回復してきておると思います。他方、経済をめぐる情勢は、依然として地域ごとにばらつきが見られます。また、我が国経済は緩やかなデフレ状況にあり、デフレ克服への取り組みは依然重要な政治課題だと思います。

 政府としては、改革の成果を地域や中小企業にも浸透させるとともに、改革の取り組みを加速し、引き続き民間需要主導の持続的な経済成長を図っていきたいと思います。デフレからの脱却を確実なものとするため、日銀と一体となって、政策努力をさらに強化してまいります。

 行政改革、予算改革でございますが、行政改革については、昨年末に閣議決定した「今後の行政改革の方針」に基づき、公明党の御提案を受けた行政効率化やスリムで効率的な政府の実現に向けて、公用車の削減や公共事業のコスト縮減、今後五年間で一〇%以上の定員削減などに取り組んでまいります。

 予算改革については、こうした行政改革の成果を予算に反映させるとともに、予算編成に当たっては、これまでの予算の執行や成果を評価、検証し、政策評価の予算への活用、反映に努めること等を通じて予算の質の向上を図っており、今後とも一層の取り組みを進めてまいります。(拍手)

 中小企業支援でございますが、中小企業は我が国経済の活力の源泉であり、やる気と能力のある中小企業が、厳しい環境の中にあってもその力を発揮できるよう、中小企業への円滑な資金供給の確保や中小企業の技術開発、販路開拓などを支援してまいりました。

 中小企業に関する金融対策については、今後とも、担保や第三者保証人等に依存しない融資の拡大、売り掛け債権の担保化の促進など、多様な手法により中小企業への資金供給の円滑化を支援してまいります。

 技術開発については、これまでの対策に加え、異なる業種の企業と連携して新事業に挑戦する中小企業などを総合的に支援する法律の制定を目指すなど、施策の充実を図ってまいります。

 地域再生ですが、地域再生の推進には、地域住民、民間企業の資金、ノウハウを生かして支援することが重要であります。このため、平成十七年度税制改正において、地域再生に資する事業へ民間資金を誘導するための課税の特例を創設することとし、官から民への考え方のもと、民間の力を生かした地域再生の推進を図ります。

 社会保障制度についてでございます。

 社会保障制度のあり方は、少子高齢化の進展、単身者の増大、雇用形態の多様化などの社会生活の変化にも密接に関連する問題と考えており、社会保障制度を将来にわたって持続可能なものとしていくためには、与野党が立場を超えて、社会保障の一体的見直しに早急に取り組み、新たな国民的な合意形成を行っていくことが必要と考えます。(拍手)

 このため、現在、政府においては、経済界、労働界の参加を得た社会保障の在り方に関する懇談会において、税、保険料等の負担と給付のあり方を含め、社会保障制度全般について幅広く議論いただいているところであり、その議論などを踏まえて方向づけをしていきたいと考えます。また、与野党間においても、それぞれ立場はありますが、国民的見地に立って早急に議論を行っていただきたいと考えます。(拍手)

 高齢者雇用でありますが、今後、労働力人口の減少が見込まれる中で、高齢者の方にますます活躍していただくことが必要であります。昨年、高齢者雇用安定法が改正され、六十五歳までの定年の引き上げまたは雇用を継続する制度の導入などが事業主に義務づけられました。これを適切に施行することによって、意欲と能力のある限り年齢にかかわりなく働き続けることのできる社会の実現を目指してまいります。

 少子化問題ですが、少子化が急速に進行し、若い力が減少する場合には、国の基盤に影響を及ぼすことにもなりかねません。子供を安心して生み、子育ての喜びを実感できる社会を実現し、少子化の流れを食いとめることは重要な課題であります。昨年末に策定した子ども・子育て応援プランに基づき、待機児童ゼロ作戦、育児時間を確保するための働き方の見直し、地域の子育て支援などの施策を着実に実施し、社会全体で全力を挙げて少子化対策に取り組んでまいります。

 子育てに係る経済的負担の軽減策ですが、子ども・子育て応援プラン等に示されたとおり、社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成支援の推進を図ることは重要な課題であります。

 政府としては、これまで乳幼児医療費自己負担分を一律二割へ引き下げるとともに、平成十六年度から児童手当の支給対象を小学校三年生まで引き上げること、奨学金制度の充実等の取り組みを行っているところでありますが、現在進めている社会保障制度全般についての一体的な見直しの議論の中でも、社会保障給付の中での少子化対策給付のあり方も含め検討を進めることが重要と考えます。

 郵政民営化の方針と説明責任でございますが、御指摘のとおり、民営化を進める上においては五原則を十分踏まえて検討してまいります。また、政府としての説明責任を果たすため、これまでもテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット等を通じた広報、また、私自身、郵政民営化の意義を説明した手紙を折り込んだパンフレットの配布などを行ってきたところでありますが、今後とも説明責任をしっかりと果たしてまいります。

 食料自給率でございますが、この低下は、国民の食生活が変化したことが大きな原因であることに加え、需要に対応した生産が行われてこなかったことも要因となっていると考えられます。このため、食料自給率の向上に向け、食生活の大切さを身につけるための食育を進めるとともに、やる気と能力のある経営の支援など農業の構造改革を進め、消費者の需要に即した国内生産の推進を図っていく考えであります。

 こうしたことを踏まえ、政府としては、関係者と一体となって取り組むための新たな自給率目標の設定に向け検討してまいりたいと考えております。

 環境保全型農業でございますが、農業の持続的な発展のためには農業と環境の調和が重要であることから、従来より、土づくりを通じて肥料、農薬の使用を節減する環境保全型農業を積極的に推進しているところであります。

 さらに、国内農業への国民の信頼を得ていくため、我が国農業全体について環境保全を重視したものに転換していくとともに、環境保全への取り組みが特に強く要請されている地域における環境への負荷の大幅な低減に向けたモデル的な取り組みに対する支援の導入につき検討していく考えであります。

 攻めの農業についてですが、近年、各地の農業、農村の現場では、農産物の海外への輸出、建設業を初めとする企業による農業参入、農産物の産地直売の成功等、今までにはなかった意欲的な取り組みが数多く見られるようになっております。政策面でも、こうした地元の創意工夫に基づく新たな動きを積極的に受けとめ、攻めの農政を展開してまいります。

 都市のあり方についてですが、まちづくりにおいて、自然との共生は重要な課題であり、災害からの安全を確保するとともに、良好な環境と景観の形成を図る必要があります。このため、御提案も踏まえ、昨年施行した景観緑三法の活用による緑豊かで美しい景観のまちづくりと、潤いのある水辺空間の創出を総合的に推進してまいります。

 観光立国でございますが、外国人旅行者を一千万人に倍増させる目標については、その達成に向け、世界に向けて日本を紹介するとともに、全国各地の観光カリスマが進めている魅力ある観光地づくりの支援や外国語標識の拡大による外国人の受け入れ環境の整備など、観光立国の推進に積極的に取り組んでまいりました。

 この結果、昨年の外国人旅行者数は、対前年比で一八%増加し、過去最高の六百十四万人を記録したところであり、着実に成果を上げています。引き続き、二〇一〇年までの数値目標を定めたロードマップを作成し、一千万人の目標の実現を図ってまいります。

 特に、本年は、三月から開催される愛・地球博にできるだけ多くの外国人観光客を迎えるため、訪日観光ビザの規制緩和や、産業観光など他の観光資源との連携を進めるなど、官民一体となって取り組んでまいります。さらに、外国に対する情報発信を強化し、姉妹都市交流、日韓友情年などを活用して、一年間で七百万人の外国人旅行者数を達成する考えであり、国民の皆様の一層の御理解と御協力をお願いしたいと思います。

 科学技術についてでございますが、科学技術創造立国を目指す上で、知の創造と活用の源泉である基礎研究の推進や人材の育成は重要な課題であります。政府は、総合科学技術会議の機能を十分に発揮させつつ、今後とも基礎研究の充実に努めるとともに、人材育成についても、次代を担う人材が科学技術への関心を持ち、それを発展させていくような施策等を推進してまいります。

 コンテンツ産業の振興ですが、我が国の映画やアニメなどは世界的に高い評価を受けており、経済の面にとどまらず、日本文化を海外に広めていく上でも大きな役割を果たすことが期待されております。政府は、引き続き、知的財産推進計画に基づいて事業の海外展開や人材育成を支援することによって、コンテンツに関する産業を振興し、文化芸術を生かした豊かな国づくりを進めてまいります。

 人権についてですが、人権の擁護は憲法の柱の一つであります。民主政治の基本でもあります。すべての人々の人権が最大限に尊重される社会を実現できるよう、人権救済に関する制度については、引き続き検討を進めます。

 人権教育については、今後とも、学校における道徳教育や体験活動などを通じ、生命のとうとさや人間性尊重等の人権意識の向上に努めてまいります。

 北朝鮮問題ですが、政府としては、対話と圧力という考えのもと、経済制裁は可能な一つの手段であるとは考えております。今後、北朝鮮側より拉致問題に関する迅速かつ納得のいく対応を得るため、最も効果的な政策を検討し推進してまいりますが、まず制裁ありきということではございません。

 拉致問題に対する外交努力でございますが、我が国は、この拉致問題の解決のためには、北朝鮮側に強く働きかけるだけではなくて、国際社会の理解と支持が重要との考えから、従来より、国連人権委員会を含め、種々の二国間、多国間の場で拉致問題解決の重要性を指摘してきており、今後も、諸外国の理解と協力を得ながら、問題解決に全力で取り組んでいく考えであります。

 自衛隊の安全確保策でございますが、サマワの治安情勢は予断を許さないものであると認識しており、宿営地や隊員を守るための警戒や被害発生防止の措置を充実強化させているところであります。

 オランダ軍撤退後の治安維持のあり方については、イラク暫定政府のほか、多国籍軍の中でイラク南東部に責任を有する英国が検討を行っております。英国は、我が国と引き続き協力していく方針である旨表明しており、現地の治安情勢の安定化に貢献してもらえるものと考えております。

 今後とも、自衛隊の活動に当たっては、現地の情勢に注意しつつ、情報収集を強化するとともに、適切な警戒や危険回避の措置をとり、隊員の安全確保に万全を期してまいります。

 日中関係でございますが、日中関係は、人的交流や経済分野を初め、ますます深化しております。昨年の日中首脳会談では、二国間のみならず、国際社会全体にとっても日中関係は極めて重要であるとの認識を共有し、未来志向の協力を発展させていくことで一致しました。個別の懸案についても対話を深め、大局的な観点から、御指摘のような国際関係の分野を含め幅広い協力を強化していく考えであります。

 核軍縮への取り組みですが、我が国は、唯一の被爆国として、広島、長崎の悲劇を人類の記憶にとどめるべく、海外における原爆展の開催を支援してきており、今後ともこうした支援を継続してまいります。また、核兵器のない平和で安全な世界を一日も早く実現することを目指して、国連総会に毎年核軍縮決議案を提出する等積極的な外交努力を行ってきており、今後ともこのような努力を強化してまいります。

 人間の安全保障と常任理事国入りですが、我が国は、グローバル化の中で多様化、複雑化する脅威に対処するためには、人間一人一人の保護と能力強化を重視する人間の安全保障の考え方を推進することが重要と考えています。我が国は、国連安保理常任理事国入りを目指す中で、引き続きこの考え方の重要性を国際社会に訴えかけていきたいと思います。

 教員養成の改革、教員の評価システムの確立でございますが、子供は社会の宝、国の宝でありますし、この子供を教える者にすぐれた人材を得るということは、学校教育の成否を左右する極めて重要な課題だと思っております。このため、質の高い教員の確保に向けて、現在、中央教育審議会において、教員養成及び教員免許制度の改革について検討を進めているところであります。本年中を目途に出される検討結果を踏まえ、教員評価システムの確立とあわせて、教員養成の抜本的改革に努めてまいります。

 なお、現在でも、すぐれた経験を有する方による授業を積極的に行うなど、魅力ある授業の展開を実践しているところであります。

 教育の本義についてですが、私は、教育は、現行の教育基本法において示されているとおり、人格の完成を目指し、心身ともに健康な国民の育成を期して行われるべきものであると考えております。

 教育基本法の改正については、人格の完成や個人の尊厳などの普遍的な理念は今後とも大切にしつつ、現在及び将来の教育において重要と考えられる新たな理念を盛り込むべきと提言した中央教育審議会の答申や与党における議論を踏まえて、引き続き国民的な議論を深めながら、積極的に取り組んでまいります。

 学習指導要領ですが、我が国の学力が、国際的な学力調査の結果、低下傾向にあることを深刻に受けとめる必要があると思います。なぜこのような結果になったのかということについてはさまざまな意見がありますが、文部科学大臣等が教育の現場を見るとともに、中教審を含め幅広く議論を行い、これを踏まえ、学習指導要領全体の見直しなど学力の向上を図ってまいります。

 司法試験の合格者数でございますが、国民に身近で頼りがいのある司法を実現するためには、司法を担う法曹の質と量の拡充が不可欠であるという考えのもとに、法科大学院を通じた新たな法曹養成制度が導入されたところであります。

 新司法試験の合格者数のあり方については、今年度内に一定の結論を得るべく、現在検討を進めております。質、量ともに豊かな法曹を生み出し、国民が司法制度改革の成果を実感できるように努力してまいります。

 憲法改正についてでございますが、民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重という憲法の基本理念を貫き、平和のうちに世界有数の経済的繁栄を達成してきた。これらの理念については、多くの国民からも広く支持されてきたものと思います。将来においてもこのような理念は堅持すべきものと考えております。

 憲法改正につきましては、国民が時間をかけて十分に議論することが大切です。自民党は、今秋、改正案を取りまとめる予定でありまして、公明党初め各党や国会においても議論が行われております。今秋というのはことしの秋ということであります。これらを通じて、新しい時代における憲法のあり方について大いに国民的議論を深めていただきたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣北側一雄君登壇〕

国務大臣(北側一雄君) 二問、御質問をちょうだいいたしました。

 一問は、住宅等の耐震化と津波対策でございます。

 これまで、耐震診断、改修に対する補助制度、融資制度など、制度の充実に努めてきたわけでございますが、さらに平成十七年度予算案では、従来の補助事業を一元化、統合化を図ることによって、地方公共団体が使い勝手のいい制度としてまいりたいと思っております。

 また、地方公共団体の住宅の耐震改修事業、こうしたものに助成を行っていける地域住宅交付金制度を今回創設させていただきたいと思っております。

 また、住宅ローン減税につきまして、築後年数要件を撤廃するかわりに、耐震基準への適合を要件化することとしておるところでございます。

 本日の御質問の趣旨を踏まえまして、今後、早急に耐震化の具体的目標を定め、地方公共団体等の関係者と協力し、計画的に事業の実施、普及啓発等を行ってまいりたいと思っております。

 また、与党の平成十七年度税制改正大綱におきまして検討事項とされました耐震改修税額控除制度につきまして、早急にその実現を目指してまいりたい、支援措置の充実を図ってまいりたいと思っておるところでございます。

 津波対策につきましては、着実な施設整備はもとより、人命を守るためには避難が非常に重要でございます。このため、避難地、避難路の整備、津波避難ビルの検討を行っております。平成十七年度から津波危機管理対策緊急事業を創設し、津波ハザードマップの作成支援等ソフト対策についても強力に取り組んでまいります。

 津波対策の現状と課題につきまして、現在、総点検を行っております。今後の基本的な方針につきまして、今年度中に取りまとめることとしております。これに基づき、ハード及びソフトにわたる減災対策を強力に推進してまいりたいと思っております。

 もう一点、観光立国への具体的な取り組みについてお尋ねがございました。

 中国からの訪日ビザに関しまして、昨年九月より、団体観光ビザ発給対象地域を三市五省に拡大したところでございます。その実情等を踏まえつつ、今回、愛知万博の期間中、訪日団体観光ビザ対象地域を中国全土に拡大する方向で、現在、中国側と調整をしているところでございます。また、他のアジア諸国等につきましても、韓国からの観光客に対して愛・地球博期間中はビザを免除する等、観光ビザのさらなる規制緩和を進めてまいりたいと思います。

 空港使用料に関しましては、旅客一人当たりの実質的な負担につきましては、日本の空港は欧米の主要空港と遜色のない水準となっております。さらに、競争力強化の観点から、引き続きそのあり方につきまして検討をしてまいります。

 その他、外国からの航空旅客が国際線から国内線に乗り継ぎをする場合の割引運賃の導入など、訪日旅行費用の削減を推進してまいります。

 また、国際観光の目玉となります観光地域づくりにつきましても、現在、異なる地域の連携や、公共事業を初めとしたハードやソフトの施策、事業の組み合わせなどにより、地域の取り組みを後押しするモデル事業を実施しておるところでございますが、さらに平成十七年度からは、まちづくり交付金を活用いたしまして、行政と一体となった民間組織による地域観光振興の取り組みなどを支援する観光ルネサンス事業を創設する予定でございます。

 これらの施策により、国際競争力のある観光立国を強力に推進してまいります。(拍手)

    〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕

国務大臣(尾辻秀久君) 社会保障制度改革についてお尋ねがございました。

 社会保障制度は、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティーネットとして重要な役割を果たしており、急速な少子高齢化が進む中で、制度を維持可能で安定的なものとし、国民の将来に対する不安を解消していくために、年金、医療、介護、生活保護など社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付のあり方を含めて一体的に見直していくことが必要であります。

 このため、社会保障の在り方に関する懇談会において、社会保障制度全般について一体的な見直しの議論をいただき、十二月八日にはそれまでの議論の整理を行っていただいたところであります。今後さらに、医療制度のあり方や雇用との関係などの議論、社会保障全体の給付と負担のあり方などについて議論を進めることといたしております。

 高齢者雇用の支援についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が急速に進行する中で、高齢者に社会保障制度の支え手として活躍していただくことが社会にとってますます必要となってきております。

 そのため、改正高齢者雇用安定法に基づき、年金支給開始年齢の引き上げに合わせ、平成十八年度から平成二十五年度にかけて、六十五歳までの雇用の確保措置の段階的な導入、募集・採用時に年齢制限を設定する場合におけるその理由の提示を事業主に対して指導するなど、高齢者雇用の支援に引き続き積極的に取り組んでまいります。

 子育てに係る経済的負担の軽減策や、そのための予算の拡充についてのお尋ねがありました。

 急速な少子化の進行は社会全体で取り組むべき重要な課題であり、昨年末に策定いたしました子ども・子育て応援プランに基づき、若者の自立から働き方の見直し、地域の子育て支援など、各般にわたる施策に総合的かつ計画的に取り組んでまいります。

 この子ども・子育て応援プランは、社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直すことに加え、地域や家族の多様な子育て支援とともに、児童手当等の経済的支援等についても、そのあり方などを幅広く検討することとしており、現在進められております社会保障制度全般についての一体的な見直しの検討の中でも、こうした課題について検討を進めることが重要と考えております。

 育児休業等の取得促進、再就職支援の充実についてお尋ねがありました。

 希望する者すべてが安心して育児休業等を取得できるような職場環境の整備や、育児期に離職した方の円滑な再就職の支援は、男性も女性も、子育てをしながら働くことができる社会を実現するための重要な課題と考えております。

 このため、子ども・子育て応援プランに基づき、育児休業制度等の一層の定着、次世代育成支援対策推進法に基づく企業の行動計画の策定、実施の支援、両立支援ハローワークにおける再就職支援等、その実現に向けた取り組みを進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣中山成彬君登壇〕

国務大臣(中山成彬君) 神崎議員にお答えいたします。

 教員養成の抜本的改革や教員評価システムの確立の必要性についてのお尋ねであります。

 教育は人なりと言われますように、学校教育の成否は教員の資質、能力に負うところが大きいことから、すぐれた教員を養成、確保するとともに、能力や実績等を適切に評価し、人事や処遇に反映させることは極めて重要な政策課題であります。

 このため、総理にお答えいただきましたように、現在、中央教育審議会におきまして、教員養成及び教員免許制度の改革等につきまして精力的に検討いただいておりまして、速やかに所要の制度改正を行いたいと考えております。

 また、教員評価については、教員一人一人の能力や実績等が適正に評価されるものとなるよう、各教育委員会における教員評価システムの改善充実に向けた取り組みを指導しているところでございます。

 私といたしましては、このような取り組みによりまして、教員がもっと尊敬される、高い評価を受けられる存在となるように努めてまいりたいと考えております。

 次に、教育基本法の改正により、教育のどのような分野の何を具体的に変えようとしているのか、何が変わることを期待しているのかというお尋ねでございます。

 教育基本法は昭和二十二年に制定されましたが、その後社会情勢は大きく変化し、教育についてもさまざまな課題が生じております。現在、精力的に教育改革に取り組んでおるところでございますが、これに加えまして、教育の根本にさかのぼった改革を推進することが重要な課題となっております。

 このため、平成十五年三月の中央教育審議会答申におきましては、これからの新しい時代にふさわしい教育を実現するために、現行の教育基本法を貫く普遍的な理念は今後とも大切にしながら、公共の精神やあるいは家庭教育の役割など、今日極めて重要と考えられております理念や原則を明確にするために教育基本法の改正を行うことが必要であること、さらに、教育基本法の改正を踏まえて、その趣旨が教育制度全般に生かされるように、学校教育法、社会教育法などに定める具体的な制度のあり方や学習指導要領などの教育全般にわたって見直しを行うことが必要であることについて御提言をいただいております。

 文部科学省といたしましては、今後とも国民的な議論を深めつつ、中央教育審議会答申及び与党における議論を踏まえながら、教育基本法の速やかな改正に向けてしっかり取り組んでまいります。

 次に、学力観と今回の国際的な学力調査の結果の評価についてのお尋ねであります。

 先般公表されました国際的な学力調査の結果によれば、我が国の子供たちの学力は低下傾向にあります。現行の学習指導要領がそのねらいとしております知識や技能を活用する能力が必ずしも向上していないのではないかと考えられます。

 特に私が憂慮しますのは、日本の子供たちの勉強時間が一番短くなっていることでありまして、子供たちがなぜ勉強しなければならないのかという学ぶ意欲、さらには学習習慣が必ずしも十分に身についていないのではないかということを考えて、このことは深刻に受けとめる必要があると考えております。

 私は、国際的な大競争が始まるこの二十一世紀を日本の子供たちがたくましく生き抜いていくためには、子供たちに基礎、基本をしっかり身につけさせるとともに、みずから学び、みずから考える力などの生きる力をはぐくむ教育の充実に向けてしっかり取り組んでいきたいと考えております。

 最後に、学習指導要領の見直しについてのお尋ねでございます。

 今回の国際的な学力調査の結果や子供たちの実態、社会経済状況の変化等を踏まえ、中央教育審議会におきまして学習指導要領の見直しについて本格的な検討に着手するようにお願いしたところでございます。

 現在、教員や保護者と直接対話いたしますスクールミーティングを全国展開する中で、現場の関係者の皆様方の率直な御意見を伺いながら検討課題を検討しているところでございまして、これを整理してまいりたいと考えております。近く、中央教育審議会に対し具体的な検討課題をお示しした上で、総合的な学習の時間を含めた現行学習指導要領の評価、検証等を行い、精力的に御審議いただきたいと考えております。

 現行学習指導要領の実施から三年間で見直しに着手することになりますが、伸び盛りの子供たちにとっては一日一日が勝負でございます。この三年間というのは、その間に子供たちが中学校を卒業する、ある意味では長い期間でもあります。その間に受けた教育というのは子供の一生を大きく左右するものでありまして、私としては、教育を受ける子供たちの立場に立って、常にその時点での最善と考えられる教育を行うために、スピード感を持って教育改革に取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

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副議長(中野寛成君) 穀田恵二君。

    〔穀田恵二君登壇〕

穀田恵二君 私は、日本共産党を代表し、小泉総理の施政方針演説に対して質問いたします。(拍手)

 質問に先立って、昨年夏以来相次いだ国内外の災害で被災された方々、亡くなられた方々に心からのお見舞いと哀悼の意を表明するものであります。

 第一に、焦眉の緊急課題、災害対策について質問します。

 昨年の災害で被災した多くの方々が、生活と営業の再建を目指し、また地域の復興を目指し、困難を抱えながら頑張っています。中越大震災の被災地では、二メートル、三メートルの積雪によって、地震で損壊した我が家がいつ押しつぶされるかという、言うに言えない不安を抱えながら仮設住宅で暮らしています。

 また、阪神・淡路大震災から十年たちましたが、被災者はいまだもとの生活を取り戻せていません。家賃負担に耐え切れずに災害復興公営住宅から追い立てられ、災害援護資金の返済のめどが立たずに取り立てを強制され、また中小事業者は、事業再建がままならない中で災害復旧資金の返済猶予が打ち切られようとしています。被災者、被災地の実態を顧みない機械的な支援打ち切りは直ちにやめることを強く要求します。(拍手)

 この十年間の重要な教訓は、住宅再建なくして生活再建なしということです。そのためには、国の制度としての住宅本体への公的支援に踏み出すことがどうしても必要だということです。

 住宅は、個人の財産であると同時に、地域社会を支える社会的存在です。何よりも、国民一人一人の毎日の生活を支える土台そのものなのです。だからこそ、旧国土庁の被災者の住宅再建のあり方に関する検討委員会は、個人住宅の再建は地域社会の復興と深く結びついており、「地域にとってはある種の公共性を有している」との報告を取りまとめたのではありませんか。

 鳥取県が始めた住宅再建支援は今多くの自治体に広がり、世論調査でも八〇%が国の支援が必要と答えています。

 総理は、昨年八月の我が党の志位委員長の質問に対して、住宅本体への公的支援の検討を約束しました。この間の災害の教訓を踏まえ、今こそ住宅本体の再建に対する公的支援、個人補償に踏み込むべきではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)

 第二に、国民に対する大負担増計画の問題です。

 小泉総理は、就任以来、痛みに耐えればあすがあると言い、サラリーマン本人の医療費三割負担、年金保険料の値上げなど、国民に耐えがたい負担を押しつけてきました。その上、今重大なことは、これまでとは質の違う巨額の庶民負担増、大増税へのレールを国民に押しつけようとしていることであります。

 総理は、施政方針演説で、定率減税の半減の方針を明らかにしました。既に与党税制調査会は、定率減税を二〇〇五年度に半減し、〇六年度に廃止する方針を決定しています。定率減税を廃止すれば、総額で三・三兆円もの負担増が国民に押しつけられることになります。

 これだけではありません。政府・与党が〇五年と〇六年の二年間に計画している負担増は、国民のあらゆる分野に及んでいます。配偶者特別控除の廃止、公的年金控除や老年者控除の縮小、廃止、消費税の免税点の引き下げなど、増税がメジロ押しです。さらに、年金保険料の値上げ、介護保険の利用料や保険料の値上げ、雇用保険料の値上げなど、社会保障のあらゆる分野で負担増の計画が進められています。

 定率減税の縮小、廃止による三・三兆円の庶民増税にこれらの負担増を合わせると、庶民の家計が〇五年と〇六年の二年間でこうむる負担増は、何と合計七兆円にも及びます。このような巨額の負担増を国民に押しつけることに、果たして道理があるでしょうか。

 私は、三つの点からその問題点をただしたい。

 第一は、景気に及ぼす影響です。

 一九九七年、橋本内閣は、財政危機打開を理由に、消費税の三%から五%への引き上げなど、九兆円の国民負担増を実行しました。これが大不況の引き金になったこと、そのことによって税収が数兆円規模で減り、深刻な財政悪化をもたらす結果に終わったことは、国民の記憶に新しいところです。

 当時は、年間数兆円規模で家計の所得が伸びているときでした。それでも九兆円の負担増が所得の伸びを上回り、景気を奈落の底に突き落としたのです。ところが、この数年間を見ると、家計の所得は年間数兆円規模で減っています。この所得の減少に追い打ちをかける巨額の負担増を負わせたら、日本経済はどうなるのか。橋本内閣の大失政の二の舞になることは明らかではありませんか。

 第二は、巨大開発の浪費を一向に改めていないことです。

 総理は公共事業の予算を減らしたと言いますが、来年度予算を見ても、関西空港二期工事や巨大コンテナ港湾など、巨大開発への予算は減らすどころか、大幅に増額しています。

 総理は、これらの巨大開発に採算と需要の見通しがあると考えているのですか。財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会も、関西空港の需要が大幅に下回っている現状を受け、「慎重にあるべき」との提言を出していることをどうとらえているのですか。採算も需要も見通しのない巨大空港や巨大港湾へのむだ遣いを拡大しながら、そのツケは庶民に回す、このようなやり方は、国民が到底納得できるものではありません。

 第三に、定率減税は、六年前、景気回復のためとして、大企業の法人税減税や高額所得者減税などとセットで実施されたものでした。

 ところが、定率減税は縮小、廃止しながら、同時に実施した大企業への減税二兆七千億円、高額所得者への減税五千億円はそのまま続けるというのです。史上空前のもうけを上げている大企業への減税を続け、所得が毎年落ち込んでいる庶民には大増税、こんな理不尽なやり方がどこにありますか。これも全く道理が立たないではありませんか。

 以上の三点について、総理の責任ある答弁を求めます。

 さらに重大なことは、七兆円負担増に続いて、消費税の大増税が計画されていることです。

 総理は、私の任期中には消費税引き上げはしないと言ってきました。しかし実際には、日本経団連が二〇〇七年度の消費税の二けた増税を打ち出し、政府の税制調査会は「消費税の税率を引き上げていくことが必要である。」と答申しています。谷垣財務大臣は、〇七年度から消費税をお願いする形で議論していかなければならないと答弁しています。

 総理は、施政方針演説で、定率減税の半減に触れた後、「税制の抜本的改革の具体化に向けた取り組みを進めてまいります。」と述べましたが、ここで言う抜本的改革とは消費税増税のことではありませんか、しかとお答え願いたい。

 七兆円の負担増に続く消費税増税という二段階の大増税路線は、国民の暮らしを破壊するだけでなく、日本経済のかじ取りを根本的に誤るものです。その見直しと中止を強く要求するものであります。(拍手)

 郵政民営化について聞きます。

 この問題で国民の多くが何よりも心配しているのは、身近なサービスがどうなるのかということです。ところが、総理は、この最大の問題について、まともな説明を一切していません。

 総理は、郵政事業を分割して、郵便、郵貯、簡保、窓口会社の四つの企業に切り離すとしています。ところが、政府の基本方針には、郵貯・簡保会社には全国一律サービスの義務がなされていません。これでは、地方や過疎地から郵貯、簡保の窓口である郵便局が消えてなくなることは明らかではありませんか。

 総理は、民間にできることは民間にと言いますが、民間にできないサービスを地域住民に提供したのが郵便局ではありませんか。過疎地にもあまねく店舗を置いて貯金や保険サービスを提供している大手銀行や生保会社があったら、挙げてみてください。全国あまねく公平に郵便を配達する郵便事業を、営利を第一に追求する民間事業者にできますか。

 民営化によって、明治以来国民の努力で築き上げてきた、まさに国民の財産である郵便局ネットワークを破壊することは、断じて許されません。

 第三に、NHKの番組に対する政治介入事件についてです。

 この問題で明らかな事実は、従軍慰安婦問題にかかわる番組について、その放送前に、NHKの放送総局長らが、当時内閣官房副長官であった安倍晋三氏らに面会し、番組の説明をし、その後に、総局長の指示で番組内容が修正、改編されたということです。

 NHKは、なぜ番組の放送前に安倍氏に説明しに行ったのか。それは、NHK自身が記者会見で明らかにしているように、安倍氏が「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の幹部だったからにほかなりません。

 安倍氏は、みずからのホームページでこう述べています。「明確に偏った内容であることがわかり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した。」と。

 NHKの番組を明確に偏った内容だとする立場に立つ安倍氏が公正中立にと言ったこと自体が、番組内容への政治介入になることは明らかではありませんか。現に、安倍氏らと会った直後に、NHKが二度にわたって番組内容の大改編を行ったことは、だれも否定することのできない事実ではありませんか。

 総理は、安倍氏らの行為が、憲法二十一条が禁止する事実上の事前検閲に当たり、放送法第三条「放送番組は、」「何人からも干渉され、又は規律されることがない。」に反することは明白だとは考えませんか。

 総理は、調査はしないとしていますが、政治介入を行ったのは当時の内閣官房副長官と現職閣僚であり、事は内閣にかかわる問題なのであります。真相を調査し、国民に明らかにすることは、総理の当然の責任であります。答弁を求めます。

 第四に、政治と金の問題です。

 日歯連による橋本元総理への一億円献金問題について、昨年の政治倫理審査会で、橋本氏は、受け取ったのは事実なのだろうと渋々認めました。しかし、肝心の献金の目的、使途は、依然として未解明です。関係者の証人喚問を求めるものであります。

 また、総理が調査を約束した迂回献金疑惑も、やみに包まれたままです。その上、あなたが派閥の長を務めた清和会の所属議員に対する、いわゆるもち代、氷代の政治資金収支報告書への虚偽記載疑惑が新たに浮上しています。

 総理、もはや人ごとではありません。一連の自民党にかかわる政治資金疑惑について調査をし、その実態と真相を明らかにすることは、総理・総裁であるあなたの責任ではありませんか。

 そもそも企業・団体献金は、金の力で政治を動かすものであり、政治家へのものであれ、政党へのものであれ、本質的にわいろであります。政治腐敗の根絶のために全面禁止に踏み切ることを強く求めるものであります。(拍手)

 最後に、外交・安保問題、日本の進路の問題です。

 自衛隊のイラク派兵の根拠は、いよいよ総崩れになっています。イラク戦争が、大量破壊兵器の保有といううそで始められた戦争であり、国連憲章違反の侵略戦争であることは、今や明白となりました。

 米軍は、ファルージャなどで無差別攻撃を繰り広げ、イラク国民の一層の反発と抵抗を生み、イラク情勢の極めて深刻な泥沼化をつくり出しています。多国籍軍の撤退が相次ぎ、今や有志連合は世界の一握りにまで孤立しました。

 アメリカ国内でも、イラク戦争は誤りだったという世論が多数を占めるに至っております。アメリカの先制攻撃戦略とイラク占領は、深刻な破綻と矛盾に直面しているのであります。

 しかも、サマワの陸上自衛隊の宿営地に対する攻撃が常態化し、非戦闘地域というイラク特措法の虚構の論理さえも、もはや完全に崩れ去っているのであります。イラク派兵を続ける理由など、どこにもないではありませんか。政府は自衛隊の撤退を決断すべきです。

 国連憲章からも憲法からも説明のつかないイラク派兵を続けながら、政府は昨年末、新防衛大綱を閣議決定しました。新大綱の核心は、海外活動を自衛隊の本来任務とすることにあります。しかも、米軍と共通の戦略を持ち、日米の役割分担を進めるとしています。これは、米軍が行う戦争に地球的な規模で参戦する本格的な海外派兵のための軍隊に根本的に変えてしまおうというものではありませんか。

 憲法九条が戦力を持たないと定めているもとで、自衛隊は日本を防衛する必要最小限度の実力組織だから違憲ではない、専守防衛だと国民に説明してきたのではありませんか。一体、自衛隊の海外での活動、しかもイラク戦争支援などの紛争地域、戦闘が継続する海外での活動を自衛隊の本来任務とすることが、どうして憲法上許されるのですか。これでは、自衛隊ではなく海外派兵隊ではありませんか。明確な答弁を求めます。

 自衛隊の任務の大転換が憲法九条改憲の動きと連動していることは重大です。この間明らかになった自民党の改憲草案でも、財界の改憲提言でも、一番の問題は、自衛隊が米軍と共同で海外での武力行使を堂々とできるよう、集団的自衛権の行使を明記せよというものです。これは、海外で米軍と一体となって戦争をできる国にしようというものにほかなりません。こうした道が本当に日本の進むべき道なのでしょうか。

 憲法九条は、日本が二度と戦争をしないことを世界に公約し、誓った、戦後日本の出発点です。二千万人に上るアジアの人々と三百十万人に上る日本国民の犠牲の上につくられた憲法九条は、ひとり日本の憲法であるばかりでなく、アジア共有の財産なのであります。九条を改悪することは、日本の原点である不戦の誓いに背き、アジアの共有の財産を投げ捨てるものです。それは、日本がアジアの一員として世界の中で生きていく足場を失うことになるのではありませんか。

 国会内での改憲論議とは違って、今多くの国民の中で、また世界各地で、憲法九条が掲げる平和の理想を広げようという声がほうはいと起こっています。

 私は、アジアと世界の平和の流れに合流し、憲法九条を守り生かすために全力を尽くす決意を述べて、質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 穀田議員に答弁いたします。

 阪神・淡路大震災被災者支援についてです。

 阪神・淡路大震災から十年が経過いたしましたが、被災地域では、地元自治体、地元住民を初めとする関係者の御努力により、目覚ましい復興が図られたところであります。しかし、その一方で、地域経済の活性化や被災高齢者の問題など、被災者の抱える課題もそれぞれ個別多様化しております。

 政府としては、兵庫県を初め地元自治体から被災地域の実情を聞きながら、引き続き援助を必要とする方については必要な措置を講じるなど、適切に対応してまいります。

 被災者生活再建支援法については、昨年の通常国会で、被災者が住宅を再建、補修する際に負担する経費の一部を支援する制度が設けられ、その積極的活用を図っているところであります。

 被災住宅の再建に対する公的支援の充実について、関係者から要望があることは存じております。他方、行政は公共サービスの回復に重点を置くべきであるとの立場から、個人の住宅本体の再建に対する公費支援については慎重な考え方もあり、また、住宅の耐震改修、地震保険の加入等の自助努力を促進する方策をまず充実させるべきとの考え方もあります。このため、さまざまな角度からなお議論を深める必要があると考えます。

 各種の負担増が経済に与える影響でございますが、我が国経済は、このところ一部に弱い動きが見られるものの、民需中心の回復を続けていると思います。今後とも、景気回復が雇用・所得環境の改善を通じて家計部門に波及する動きが強まり、消費は着実に増加することによって、引き続き民間需要中心の緩やかな回復を続けると見込んでおります。

 定率減税の縮減等の税制改正の検討に当たっては、民間部門に過度の負担が生じないよう配慮したところであり、景気に対する影響は大きなものではないと認識しております。

 関西国際空港二期工事、港湾の採算と需要の見通しでございます。

 関西国際空港二期事業やスーパー中枢港湾は、我が国の国際競争力強化のためにその整備が必要であり、採算性や需要について十分見通しを立てました。その結果、必要な予算は全体として削減した公共事業費の枠内で計上したものであります。

 特に、関西国際空港二期事業については、財政制度審議会の指摘を受け、需要予測について精査を行っており、二〇〇七年度には二本目の滑走路を必要とする十三万回程度の発着回数に達すると見込まれたことを踏まえるとともに、関西における伊丹、神戸空港の役割を明確化し、二〇〇七年に二本目の滑走路を供用することとしたところであります。

 定率減税の見直しと、個人所得課税の最高税率及び法人課税の実効税率の引き下げについてです。

 平成十一年度税制改正においていわゆる恒久的減税が実施された際には、定率減税のほかに、個人所得課税の最高税率及び法人課税の実効税率の引き下げも実施されたところであります。

 平成十七年度税制改正においては、景気対策のための臨時異例の措置として継続されてきた定率減税について、導入時と比較した経済状況の改善等を踏まえ、その規模を二分の一に縮減することとしたところであります。

 他方、個人所得課税の最高税率及び法人課税の実効税率の引き下げは、税制調査会の答申で指摘されているように、国際化の進展といった我が国経済社会の構造変化に対応した抜本的な税制改革の一部先取りとして実施されたものであり、単純な景気対策である定率減税とは位置づけが異なるものと考えております。

 消費税でございますが、私は従来から、在任中に引き上げることは考えておりませんと述べる一方、税制全体のあり方として消費税の議論は大いに結構であると申し上げてまいりました。将来の税制のあり方については、所得税、消費税など幅広く検討を行っていく必要があり、消費税については、その一環として、社会保障制度の見直し等とあわせ国民的な議論を行う必要があると考えております。

 郵政民営化についてでございます。

 郵政民営化は、全国津々浦々に置かれている郵便局ネットワークを生かして、より便利なサービスが提供されるようにするものであります。

 このような観点から、「郵政民営化の基本方針」においては、郵便貯金会社及び郵便保険会社にはユニバーサルサービスを義務づけることは盛り込んでおりませんが、両事業の窓口業務は、住民のアクセス確保が努力義務となる窓口ネットワーク会社に委託することとしており、また、窓口の配置については過疎地の拠点維持に配慮することとしていることから、御指摘は当たらないものと思っております。

 なお、大手銀行や生命保険会社等、民間金融機関はみずからの経営判断で店舗を配置しておりますが、過疎地においては、農協等を含めれば約半数が民間金融機関の店舗であると承知しています。

 郵便事業については、諸外国の多くで民間事業者が郵便事業を行っていること、また、民営化後の郵便事業会社に対し引き続き郵便のユニバーサルサービスの提供を義務づけることとしていることから、民営化後も全国あまねく公平な郵便サービスが維持できると考えております。

 NHKの問題ですが、本件については、NHK自身が、自主的な判断に基づいて編集して放送したものとしており、また、NHKにおいては、改めて調べた結果、政治的圧力を受けて番組の内容が変更された事実はないと、NHK自身がこう言っているんです。そういうことでありますので、本件は、憲法第二十一条第二項の検閲に当たらず、放送法第三条の規定にも抵触することはないものと承知しております。

 いずれにしても、本件は報道の自由にかかわる問題であり、報道機関において適切に対応すべき事柄であると考えます。

 一億円献金問題の関係者の証人喚問でありますが、この件については、既に昨年十一月三十日の衆議院政治倫理審査会において橋本氏から説明がありました。さらに国会における関係者の証言が必要かどうかについては、国会において決めるべき問題であり、各党各会派において十分に議論していただきたいと思います。

 自民党にかかわる政治資金についてでございます。

 自民党は、政治資金規正法に違反するいわゆる迂回献金を行った事実はありません。また、御指摘の清和政策研究会は、政治資金に関して政治資金規正法にのっとって適正に処理していると聞いているところであり、政治資金規正法上問題があるとは承知しておらず、調査する必要はないものと考えております。

 イラクからの自衛隊撤退ですが、自衛隊が活動するサマワの治安情勢は予断を許さないものですが、これまでの情報を総合的に判断すれば、現時点で非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えておりません。

 オランダ軍撤退後におけるサマワの治安維持については、イラク暫定政府のほか、多国籍軍の中でイラク南東部に責任を有する英国が検討を行っております。英国は、我が国と引き続き協力していく方針である旨表明しており、現地治安情勢の安定化に貢献してもらえるものと考えております。

 今後とも、適切な警戒や危険回避の措置をとり、隊員の安全確保に万全を期しつつ、自衛隊の活動を継続してまいります。

 自衛隊の任務についてですが、新防衛大綱においては、自衛隊が国際平和協力活動に積極的に取り組むため、自衛隊の任務におけるこの活動の位置づけを含め所要の体制を整えることとしております。

 いずれにせよ、自衛隊は、海外での活動として、武力の行使や他国による武力の行使と一体化するような活動を実施しないことは当然であり、憲法との関係で問題が生じることはないものと考えております。

 憲法についてですが、憲法九条や自衛権のあり方については、さまざまな議論があるものと理解しております。憲法が実態にそぐわないのであれば、憲法改正の議論を避ける必要はないと私は思っております。

 同時に、憲法改正については、国民が時間をかけて十分に議論することが大切です。自民党は、ことしの秋、党としての改正案を取りまとめる予定であり、各党や国会においても議論が行われております。これらを通じて、新しい時代における憲法のあり方について、大いに国民的議論を深めていただきたいと思います。(拍手)

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副議長(中野寛成君) 横光克彦君。

    〔横光克彦君登壇〕

横光克彦君 社民党の横光克彦でございます。

 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、総理の施政方針演説初め政府四演説に対し質問をいたします。(拍手)

 まず初めに、昨日の民主党の岡田代表に対する総理の答弁姿勢でございますが、余りに誠意を欠いた答弁であると言わざるを得ません。国民に説明責任を果たすと言いながら、それを実行しようとしない総理の姿勢に強く抗議をいたします。

 きょうは、どうか誠意のある御答弁をよろしくお願い申し上げます。

 昨年は、集中豪雨、相次ぐ大型台風の直撃、そして新潟県の中越地震、海外においてはあのスマトラ沖での巨大地震の発生等と、大災害に見舞われた一年でございました。冒頭、亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災者の皆様方に心からお見舞いを申し上げます。

 これらの大災害に緊急に対応するために、社民党は、補正予算の早期編成を行い、臨時国会中に提出することを他の野党とともに強く求めてまいりました。ようやく、災害対策費一兆三千六百四十八億円の増額、災害被害への対応等のための特別交付税が七百一億円の増額という補正が行われますが、遅過ぎたし、額も不十分であると言わざるを得ません。

 我々野党三党は、今国会に改めて被災者生活再建支援法改正案を提出いたしました。災害被害に対し、今や被災者だけでなく、広く国民の間から、自助、共助とともに、いざというときには公助も必要だという声が高まり、理解も広がっております。ぜひとも法案成立への総理の御尽力を求めたいと思います。あわせて、新潟県や被災市町村が求めております特別立法について、小泉内閣としてしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 総理は中国の古典をよく引用されますが、中国にはこういう言葉もございます。「小人に国家を治しめば災害並び至」、こう指弾されることのないよう、総理の御決意をお伺いいたします。(拍手)

 来年度予算案について、谷垣財務大臣は、財政健全化への一里塚としています。しかし、明確な増税路線にかじを切った与党の税制改革大綱と、義務教育国庫負担金を初め、地方への赤字ツケ回しに終始した三位一体改革を前提にしただけに、歳出歳入両面から国民に痛みを押しつける生活破壊型予算そのものとなっております。同じ一里塚でも、二〇〇七年度の消費税を含む税体系の抜本的改革の実現に向けた一里塚であると言わざるを得ません。

 所得、資産の格差拡大が進む中で、本格的な景気回復のためには、GDPの六割を占める個人消費を活性化させることの必要性は論をまちません。それには、雇用や福祉、中小企業対策などに大胆な予算配分を行い、生活や将来への不安を解消することが不可欠であります。総理の御見解をお聞かせください。

 九兆円の負担増をもたらした橋本内閣当時の九七年より雇用や家計の状況は一段と悪くなっている、まさにそのときに、民需を後押しする具体的なてこ入れどころか、所得税と個人住民税の定率減税の縮小に加え、介護施設の食費、住居費の自己負担も導入され、国立大学の授業料や自賠責保険の保険料も引き上げられます。さらに、所得税の老年者控除等の廃止、配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止、これにかてて加えて、厚生年金、国民年金、雇用保険料の引き上げなど、まさに際限のない負担増のオンパレードが次々と国民生活を直撃することになります。

 これらの各種の負担増が景気に与える悪影響について、竹中担当大臣はどのように認識しておられるのでしょうか。

 また、小渕内閣が実施した恒久的な減税は、定率減税だけではありません。所得税、住民税の最高税率の引き下げや法人税率等の引き下げもセットで実施されたものです。景気回復を理由とするのであるならば、中堅層に痛みを転嫁する定率減税の縮小ではなく、格差拡大の中で、高額所得者に対する所得税の累進制強化や法人課税の強化を実現することこそが公平であると考えますが、谷垣財務大臣の御見解をお伺いいたします。

 昨年の国内外の大災害を見るにつけ、天の怒りにより今地球そのものが悲鳴を上げているような気がしてなりません。オゾン層破壊等により、地球温暖化は今確実に進んでおります。これを進めているのが我々人類であります。しかしまた、これを最小限に食いとめることができるのも我々人類の責任であります。

 京都議定書は二月十六日に発効いたします。しかし、CO2を全世界の四分の一を排出しているアメリカは離脱したままになっております。よき友人とは、本人が道を誤ろうとしているときにそれをいさめ、正しい道に引き戻すことでなければなりません。総理が日米同盟を強調するのであれば、ただただやみくもに追従するだけでなく、アメリカに京都議定書の枠組みに参加を積極的に働きかけるべきであります。総理の御決意をお聞かせください。

 また、イラクにおきましては、三月にオランダ軍が撤退した後は、自衛隊はますます米英軍と一体化することになります。非戦闘地域に活動を限定したイラク特措法に照らしても、自衛隊のイラク駐留の根拠は既に失われており、現地の治安はますます悪化の一途をたどっております。一日も早い撤退を求めます。総理の御決断をお伺いいたします。

 次に、沖縄の辺野古海上基地問題についてお尋ねをいたします。

 総理は、普天間飛行場の移設、返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の早期実施に努めてまいります、こう言われておりますが、SACO最終報告には、軍民の共用化、埋め立ても、大型滑走路建設も盛り込まれてはおりません。用地の造成費のほかは、一兆円以上かかると言われております滑走路やターミナルなどの整備建設費用も明らかにされておらず、旅客の需要予測や費用対効果の分析も不透明のままであります。このような状況では、沖縄県民の理解を到底得られるとは思えません。

 辺野古への移設を見直し、沖縄県民の思いに沿った解決策を求めますが、総理の御見解をお聞かせください。

 次に、政治と金の問題についてお尋ねをいたします。

 政は正なりと言いながら、与党は、会期末に駆け込みで非公開の政治倫理審査会での橋本元首相の弁明を行って、疑惑の幕引きを図ろうといたしております。しかし、滝川元会計責任者、橋本元首相、村岡元官房長官、この三人の供述がことごとくばらばらであり、この方たち関係者が国会において証人喚問の場できちんと証言することなくして、真相の究明はもちろんのこと、国民の政治不信の払拭は到底できません。

 また、新たに、自民党森派の政治資金収支報告書記載漏れの疑惑が報道されております。しかも、総理が森派会長時代も含まれていると言われております。総理のこの疑惑に対する説明責任は当然でありますが、この事実解明は国会においても取り組まなければなりません。

 また、これらの再発防止のためにも、国会の意思として厳しい政治資金規正法改正に取り組まない限り、国民の政治不信は解消されません。さきの演説で多用した襟を正すという言葉が、ただただむなしく聞こえるばかりであります。総理の強い御決意をお伺いいたします。

 次に、NHKの問題にも触れたいと思います。

 NHK、朝日新聞、政治家、それぞれの主張が真っ向から対立し、泥沼化状況に陥っております。しかし、事の本質は、受信料で成り立っております公共放送NHKと政治との距離、関係でございます。今回の出来事は、言論、報道の自由を初め、民主主義社会の根本的価値に触れる重大な問題をはらんでおり、憲法及び放送法に抵触する、公共放送に対する政治家の介入の有無を初め、やぶの中に入りつつある事実関係について、国会でもきちんと究明しなければなりません。

 この問題についての総理のお考えと対応をお聞かせいただきたいと思います。

 さて、総理は、郵政三事業の民営化を改革の本丸と位置づけ、今国会の最大の課題とされようといたしております。しかし、与党の中からでさえ、何のためにやるのか、何のメリットがあるのかという声が上がり、民営化そのものに反対する声すらあります。郵政改革は必要です。しかし、なぜいきなり民営化なのでしょうか。郵政民営化を本当に多くの国民が望んでいるのでしょうか。

 読売新聞の調査では、優先すべき課題について幾つでも答えてくださいという設問に対し、郵政民営化はわずか六・七%でした。幾つでもいいというのに、何と優先順位は十五番目です。また、直近の各テレビ局の世論調査でも、民営化を望む声はいずれも五%台です。

 このように、国民が望んでもいない課題が、なぜ改革の本丸と言えるのでしょうか。総理と国民の願いに余りにも大きなずれがあると言わざるを得ません。国民に目を向けるのであるならば、郵政民営化より景気、雇用、社会保障制度に真剣に取り組んでほしいという切実な国民の声にこたえるべきではありませんか。総理のお考えをお聞かせください。

 最後に、憲法についてお尋ねをいたします。

 ことしは、あの敗戦から、そして広島、長崎の被爆から六十年の節目の年に当たります。この六十年間、私たちの国は、どこの国ともただの一度も戦争することなく、そして他国の人を殺傷することもなく、平和な国としてやってこれました。

 しかし、考えてみれば、このことはごく当たり前のことだと思います。しかし、そのごく当たり前のことを実現することがいかに困難なことであるかは、この六十年間の世界の趨勢、そして現在の世界の現状を見ればよくおわかりのことと思います。つまり、この六十年の平和は世界に向けての我が国の誇りであり、あすへの財産でもあります。そして、その根底に平和憲法があることを否定する人はいないでしょう。

 軍縮大使として活躍された猪口邦子さんは、最近の新聞のコラムで次のように述べておられます。「日本はナンバー・ツーの模範国家であり、その平和哲学は静かな評価を世界で得つつある。」「日本の主張は敬意をもって聞き入れなければならないという暗黙の空気があることに驚いた。この世は案外とフェアだなと思った。日本の苦労を世界はよく見ており、誠実に平和を希求する国が報われないことはない。」このようにお書きになっております。

 総理は、外交や経済活動においてこの六十年間平和憲法が果たしてきた意義、役割についてどのようにお考えでしょうか。お聞かせください。

 私は、今の改憲に向けた、とりわけ憲法九条までをも変えようとする政治の動きに対し、非常な危惧を感じております。憲法が不磨の大典であると言っているのではありません。しかし、第九条については、多くの国民が変えることに反対をしております。第九条をこそ日本の貴重な財産として引き継ぎ、さらに伸ばしていかなければなりません。

 現在のイラクの惨状を見るにつけ、六十年前のあの悲惨な戦争を決して忘れてはなりませんし、風化させてはなりませんし、ましてや、繰り返してはなりません。歴史は繰り返すと言われておりますが、絶対に繰り返してはならない歴史もあるのです。

 長い長い歴史の中で、私たちが生きている時間はほんの一瞬にすぎないかもしれません。しかし、その一瞬一瞬によって歴史はつくられているのです。一瞬の命だからこそ、大切に生かさなければならないと思います。

 私たちの子供たち、そして孫たちの一瞬の命のためにも、平和憲法を守り、憲法の理念が花開く世界を目指していくことこそが、今平和を享受している我々国民の、そして国会の責務であると思います。このことをすべての国会議員に強く申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 横光議員にお答えいたします。

 被災者生活再建支援法についてですが、昨年の通常国会で、被災者が住宅を再建、補修する際に負担する経費の一部を支援する制度が設けられ、その積極的活用を図っているところであります。

 被災住宅の再建に対する公的支援の充実について、関係者から要望があることは存じております。他方、行政は公共サービスの回復に重点を置くべきであるとの立場から、個人の住宅本体の再建に対する公費支援については慎重な考え方もあり、また、住宅の耐震改修、地震保険の加入等の自助努力を促進する方策をまず充実させるべきとの考え方もあります。このため、さまざまな角度からなお議論を深める必要があると考えております。

 また、新潟県中越地震につきましては、激甚災害の早期指定を行うとともに、新潟県等から要望があった補助率のかさ上げ等の財政支援措置の大半について、今回の補正予算案に計上しております。これらの被災地支援の内容は、阪神・淡路大震災の際の措置と遜色ない程度のものであり、現時点において特別立法が必要になっているとは考えておりません。

 景気回復と予算配分についてであります。

 我が国経済は、民間需要中心の回復を続けてきたと思います。平成十七年度予算についても、聖域なき歳出改革に取り組み、厳しく歳出を抑制する一方、例えば、若年者雇用対策の推進や中小企業の創業等への支援に前年度比で二〇%を上回る金額を計上するなど、活力ある社会の実現に資する分野については予算を重点配分したところであります。

 京都議定書への参加についての米国への働きかけですが、米国に対しては、かねてより、日米首脳会談を初め、さまざまな場で京都議定書に関する我が国の考え方を申し入れております。

 最近では、昨年十月の日米外相会談で京都議定書締結に向けた再検討を要請したほか、昨年十二月にアルゼンチンで行われた気候変動枠組み条約締約国会議の際にも、小池環境大臣から米側に対し京都議定書への参加を改めて求めたところであります。

 政府としては、引き続き米国に対し京都議定書への参加を働きかけてまいります。

 イラクからの自衛隊撤退ですが、自衛隊が活動するサマワの治安情勢は予断を許さないものですが、これまでの情報を総合的に判断すれば、現時点で非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えておりません。

 オランダ軍撤退後におけるサマワの治安維持については、イラク暫定政府のほか、多国籍軍の中でイラク南東部に責任を有する英国が検討を行っております。英国は、我が国と引き続き協力していく方針である旨表明しており、現地治安情勢の安定化に貢献してもらえるものと考えております。

 今後とも、適切な警戒や危険回避の措置をとり、隊員の安全確保に万全を期しつつ、自衛隊の活動を継続してまいります。

 米軍普天間飛行場の移設の問題ですが、普天間飛行場については、市街地にあることもあり、一日も早く周辺住民の方々の不安を解消したいと考えております。平成十一年の閣議決定等に従い、沖縄県等の地元地方公共団体と十分協議を行いながら、早期の移設、返還に向けて努力をしてまいります。

 政治資金規正法でございますが、与党が提出している政治資金規正法の改正案は、一定額以上の寄附の振り込みを義務づけ、政治団体間の寄附に上限を設けるなど、政治資金の透明性を確保しようとするものであると承知しております。

 さらに、規制の対象や内容については、いわゆる迂回献金の禁止の条項の問題などさまざまな御意見がありますので、規定の実効性などの点も含め、各党各会派で十分御議論いただきたいと思います。

 NHKの問題ですが、この問題は報道の自由にかかわる問題であり、報道機関において適切に対応すべき事柄であると考えます。

 いずれにせよ、報道機関は、一方に偏ることなく、公正中立な立場での報道に心がけていただくことが重要であると考えます。

 郵政民営化にこだわらないで、ほかの問題を重視しろという御指摘でございますが、私は、社会主義的な考えを持つ方とは基本的に違うと思いますが、民間にできることは民間に、行政改革、財政改革を断行しなさい、公務員を減らせという考えをお持ちの方ならば、郵政民営化に賛成してくれると思っております。私は、この総論を各論に移すにおいて最も効果的な対応がこの郵政民営化であると考えております。

 郵便局の経営は、公務員よりも、私は、民間人に任せた方がよりよいサービスが展開されると思っております。公務員でなければできない事業だとは思っておりません。まして、現在、郵便局には約二十八万人の常時公務員と十二万人に及ぶ臨時、非、短時間公務員がおります。四十万人の公務員でなければこの郵政事業、郵便局の仕事ができないのか、そうじゃない。私は、郵便局の仕事は民間人に任せてもできるし、民間人の方がうまくこの経営を考えてくれると思っているから、郵政民営化を主張しているんです。

 日本の外務省職員、日本の外務省も含めて、世界各国の日本の大使館、領事館も含めて六千人いないんですよ。しかし、なぜ郵便局に国家公務員が四十万人も必要とするんですか。警察官だってそうです。全国の警察官も含めて約二十五万人です。そういうことを考えると、なぜこの郵便事業だけは、郵政三事業だけは公務員でなきゃいけないのか、私は理解に苦しんでおります。(拍手)

 そういう観点から、これは、民間にできることは民間に、行政改革、財政改革を断行しなさい、公務員を減らしなさいというんだったらば、不可欠の改革であります。

 最後に、憲法についてでございます。

 憲法改正の議論は大いにしていただきたいと思っております。しかしながら、戦後、我が国憲法の基本であります民主主義、基本的人権の尊重とともに、平和主義という憲法の基本理念は極めて重要なものだと思っております。新しい時代に対応できる新たな憲法を制定するというのも、極めて意義のあることだと思っております。

 今後も、基本的な理念を尊重しつつ、いかなる憲法改正がなされても、世界各国との友好関係を日本は発展させて、国際社会の一員として、世界の平和と安定のために貢献していかなきゃならないと思っております。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 各種の負担増が景気に与える悪影響についてのお尋ねを一問いただいております。

 日本経済は、このところ一部に弱い動きが見られるものの、民間需要を中心に回復を続けておりまして、こういう動きが続くと見ております。

 お尋ねの、定率減税の縮減等の税制改正や各種の社会保障負担増の制度改正に当たりましては、民間部門に過度の負担が生じないよう配慮したところでありまして、結果として景気に対するマクロ的な影響は大きくないものと考えております。こうしたことから、十七年度経済見通しにおいても、実質一・六%、名目一・三%の成長を見込んでいるところでございます。

 いずれにしましても、財政の健全化と景気の回復を両立させるよう、担当大臣としてしっかり見ていきたいと思っております。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 横光議員の御質問は、定率減税は、平成十一年に所得税の最高税率の引き下げや法人税率の引き下げとセットで行ったのに、定率減税だけを今回いじるのは考え方があべこべじゃないか、こういう御質問だったと思います。

 これについては、共産党の御質問に先ほど総理からも御答弁があったところでございますが、これらの減税をやった理由が違うわけであります。

 すなわち、定率減税は、当時の差し迫った景気の状況に対応するために行われたものでございますけれども、所得税の最高税率それから法人税の税率の引き下げは、国際化の進展といった構造変化に対応するために、現在も取り組んでおります、いわばあるべき税制の構築の先取りをしたような面がございますので、導入時と比較して経済状況がよくなってきたことにかんがみまして、今回、その規模を、定率減税を二分の一に縮減するということにいたしたものでございます。(拍手)

副議長(中野寛成君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(中野寛成君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       総務大臣    麻生 太郎君

       法務大臣    南野知惠子君

       外務大臣    町村 信孝君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       文部科学大臣  中山 成彬君

       厚生労働大臣  尾辻 秀久君

       農林水産大臣  島村 宜伸君

       経済産業大臣  中川 昭一君

       国土交通大臣  北側 一雄君

       環境大臣    小池百合子君

       国務大臣    伊藤 達也君

       国務大臣    大野 功統君

       国務大臣    竹中 平蔵君

       国務大臣    棚橋 泰文君

       国務大臣    細田 博之君

       国務大臣    村上誠一郎君

       国務大臣    村田 吉隆君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 杉浦 正健君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 阪田 雅裕君


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