衆議院

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第11号 平成17年3月15日(火曜日)

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平成十七年三月十五日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第五号

  平成十七年三月十五日

    午後一時開議

 第一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会、仙谷由人君外十六名提出)

 第二 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会、内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 議員辞職の件

 永年在職の議員森山眞弓君、堀内光雄君及び青山丘君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 日程第一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会、仙谷由人君外十六名提出)

 日程第二 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会、内閣提出)

 大野国務大臣の「新防衛計画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関する報告及び質疑

 地域再生法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 議員辞職の件

議長(河野洋平君) 議員中西一善君から辞表が提出されております。これにつきお諮りいたしたいと思います。

 まず、その辞表を朗読させます。

    〔参事朗読〕

    辞職願

   平成十七年三月十日

  衆議院議長 河野 洋平殿

 私儀、一身上の都合により衆議院議員の職を辞任いたしたく願い出ます。

 東京都大田区南千束二―九―七

                中西 一善

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 中西一善君の辞職を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、辞職を許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(河野洋平君) お諮りいたします。

 国会議員として、また、本院議員として在職二十五年に達せられました森山眞弓君、堀内光雄君及び青山丘君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 これより表彰文を順次朗読いたします。

 議員森山眞弓君は国会議員として在職すること二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員堀内光雄君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員青山丘君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) この際、ただいま表彰を受けられました議員諸君の登壇を求めます。

    〔被表彰議員登壇、拍手〕

議長(河野洋平君) 表彰を受けられました議員諸君を代表して、堀内光雄君から発言を求められております。これを許します。堀内光雄君。

堀内光雄君 堀内光雄でございます。(拍手)

 このたび、永年勤続議員として、院議をもって表彰の御決議を賜りましたことは、まことに身に余る光栄でございます。

 本日の栄誉に浴することができましたのは、地元山梨県の皆様や先輩、同僚、知人の皆様方の長年にわたる御理解と御支援のたまものと、ここに改めて心から感謝と御礼を申し上げる次第であります。(拍手)

 私が本院に議席を得ましたのは、昭和五十一年十二月に行われました第三十四回の総選挙でありました。当時、政治はロッキード事件で混迷を深め、経済は石油ショックによる世界的な不況に見舞われて、苦労いたしておりました。私は、「清潔な政治の実現」と経済回生のための抜本的な構造改革を公約として掲げました。

 昭和五十六年、鈴木内閣は第二次臨時行政調査会、いわゆる土光臨調を発足させました。そして行財政改革に取り組むこととなりまして、私も関係する一員に加わることになりました。

 当時の世界的な不況の中での行財政改革は、「大きな政府から小さな政府へ」という流れでありました。

 しかし、鈴木総理の政治理念は「足らざるを憂えず、等しからざるを憂う」という、弱者を救い、国民生活を安定させ、もって国民の連帯と協調を求めることにありました。これは大きな政府につながるものであります。

 我々は、このともすれば相反する二つの命題に取り組みました。そして、「増税なき行財政改革」を柱に、国鉄などの特殊法人の民営化、年金制度の統合一元化などを骨子とする答申をまとめ上げました。

 この答申は中曽根総理によって実行に移され、国鉄、電電の民営化など、着々と成果を上げたのであります。

 あれから二十年余りが経過した今日、再びさまざまな分野において制度の行き詰まりが指摘をされ、小泉内閣によって、今また行財政改革の取り組みが行われております。この取り組みには敬意を表するものでありますが、気がかりなのは、改革に際して日本国民の明るい未来を切り開くという理念や将来像が明らかにされていないことであります。そして、改革とは、ただ切り捨てるばかりではなく、人を慈しみ、物を育む心が必要であるということであります。(拍手)

 「国は無駄を省き、産業を興し、国民を豊かにする。」これが第二臨調を原点として、政治に取り組んできた私の基本的な考えであります。石油公団の解体に力を尽くしたのも、ただその一点でありました。(拍手)

 また、私の初当選以来変わらぬ政治信条は、国民と同じ常識を持って行動し、清潔で信頼される政治を実現することであります。

 しかし、我々の努力とは裏腹に、政治と金の問題など、いまだに政治は国民の理解と信頼を得るに至っておりません。これは政治の基本にかかわる問題であります。国会全体が真剣に取り組まなければならないと考えます。(拍手)

 本日の栄誉を契機にいたしまして、さらに決意を新たにし、日本国の繁栄と国民福祉の向上に全力を尽くしてまいる所存であります。

 先輩、同僚の皆様、並びに郷土山梨の皆様の一層の御指導と御鞭撻をお願い申し上げまして、お礼の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 本日表彰を受けられました他の議員諸君のあいさつにつきましては、これを会議録に掲載することといたします。

    ―――――――――――――

    森山 眞弓君のあいさつ

  このたび、院議をもって永年在職議員の表彰を賜り、まことにありがたく、光栄の至りでございます。

  昭和五十五年、国連婦人の十年の中間年でありましたが、私は、日本でも女性の議員を少しでもふやさなければと考えていましたし、個人的には衆議院議員であった亡夫の助けにもなれるかと思い、政界に入ることを決心しました。

  以来二十五年、まず参議院議員として二人区の栃木県で三回トップ当選を果たし、選挙制度が変わってから衆議院議員に転じて、初め北関東ブロックの比例区で二回、前回は栃木県第二小選挙区から高点で当選させていただきました。選挙に追われ、また、いろいろな党務やいただいた公務に忙しく、無我夢中で、いつの間にか四半世紀がたったという感じです。

  栃木県の皆様は、私の立場が変わってもずっと変わることなく、温かく、力強い応援をしてくださいました。私が今日を迎えられたのはそのおかげでありまして、まことに感謝にたえず、心から厚く御礼申し上げます。

  今振り返りますと、私にとって初めの十年は、世界が厳しい東西対決の時代であり、その構造は到底変わりそうにないと思われました。日本の政治もはっきりとしたイデオロギー対立を示し、その意味ではわかりやすかったものです。

  平成元年の秋、私が官房長官を勤めていました時に、突然ベルリンの壁が崩れ、東欧の社会主義国が次々に倒れる歴史的大転換がありました。ほどなく湾岸戦争が起こり、平成十三年にはアメリカにおける九・一一事件が発生して、国際情勢は目まぐるしく変化し続けています。

  日本の政治も、その波にもまれ、新しい政党ができては消えるという試行錯誤を繰り返しつつ、政党間の壁は低くなり、イデオロギーによる対立は次第に姿を消しつつあります。しかし、日本を取り巻く国際情勢はさらに複雑となり、一挙手一投足が大変難しくなってきました。政治はその荒波の中で、慎重に、大胆に、かじ取りを誤らぬよう責任を果たさなければなりません。

  女性議員の増加という点では、二十五年前に比べればいささかの進歩はありました。閣僚その他の要職につく女性も珍しくなくなりましたが、なお国際的にはかなり遅れており、さらなる努力が必要であります。

  私は、議員として二十五年の通過点を過ぎるわけですが、さらに精進して、国家のため、郷土のため、女性のために一層努力したいと思います。

  先輩、同僚の諸先生方の御指導、御鞭撻をどうぞよろしくお願い申し上げます。

    …………………………………

    青山  丘君のあいさつ

  このたび、院議をもって在職二十五年の表彰をいただき、まことにありがとうございます。ひとえに、私を支持し続けてくださった皆様のおかげであります。思えば、私は本当に恵まれてきました。感謝の気持ちばかりです。功少なきを恥じる思いですが、今日までお力添えをいただいた愛する郷土の皆様と、先輩・同僚議員の御指導のたまものと、深く御礼申し上げます。

  私は、昭和五十一年十二月、第三十四回総選挙で初当選し、以来、今日までひたすら、報恩感謝の精神で政治の道を邁進してまいりました。かつて落選を経験しましたが、その時も人の真の温かさや情けを知り、感謝を改めて学びました。

  昭和十六年、私は、戦争が始まった年に生まれました。物心ついたころは、住むところも着るものも、食べるものも貧しい戦後の荒廃期でした。「人間は一生この貧しさに耐えて生きるのか、いや、大人は一生懸命働いてこの国を豊かにしてほしい」と幼心に切望しました。そして、この思いが、私が政治に目を向ける原点となりました。

  戦後は、国民の皆様の御努力と勤勉で、我が国は奇跡的な繁栄を果たし、世界第二位の経済大国となり、健康寿命世界一の国となりました。

  経済的な豊かさを実現した今、我々は憲法を改正し、教育基本法の見直し、さらに科学技術の振興で経済の自立を図り、心の豊かな日本を目指さなければなりません。

  不足心、不満、怒りは、破壊的な社会を招きます。私は、「破壊から創造へ」、これが日本政治の課題だと考えます。創造的で美しい日本社会を目指すには、命のありがたさを深く理解することであります。子どもたちが自分の命のありがたさを知り、ふるさとやこの国を愛することこそが、創造的な日本社会を築く原点です。国づくりは人づくりであり、私は、子どもたちが「感謝する心」の大切さを理解する教育を目指してまいります。

  また今月二十五日から、私の地元、瀬戸市と長久手町で、「二〇〇五年日本国際博覧会(愛・地球博)」が開催されます。一九九七年六月十二日、モナコで開かれたBIE総会で開催地が瀬戸に決まった瞬間から、「生まれ育ったまちで開かれる国家事業の成功が私の政治課題であり、政治生命をかけて取り組む」とモナコの地で決意いたしました。

  以来、今日まで私は、中部国際空港の建設、東海環状自動車道などの交通アクセス、世界中の人々を受け入れられる街づくりに全力で取り組んでまいりました。開催を迎えると同時に、在職二十五年という栄誉を賜ることができましたことに、強い運命を感じ、光栄の極みであります。

  私を支えていただいた貴い地元の皆様と、先輩・同僚議員の恩義に報いるべく、創造的で美しい日本をつくるため、私はこれからも報恩感謝の精神で愛する郷土とこの国の発展に尽くしてまいります。

  本日はまことにありがとうございました。

     ――――◇―――――

 日程第一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会、仙谷由人君外十六名提出)

 日程第二 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会、内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、仙谷由人君外十六名提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案、日程第二、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長河上覃雄君。

    ―――――――――――――

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会、仙谷由人君外十六名提出)及び同報告書

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会、内閣提出)及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔河上覃雄君登壇〕

河上覃雄君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、両法律案の主な内容について申し上げます。

 仙谷由人君外十六名提出の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案は、競争政策における違反行為の抑止等に資するため、現行の課徴金制度の行政制裁金への名称の変更及び算定率の見直し並びに審判官の定員の見直し等、所要の措置を講ずるものであります。

 次に、内閣提出の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案は、競争政策における違反行為の抑止並びに審判手続の迅速性や効率性の向上及び適正手続の保障等に資するため、不当な取引制限等に対する課徴金の算定率の引き上げ、課徴金の減免制度の創設、犯則調査権限の導入及び審判手続の見直し等、所要の措置を講ずるものであります。

 両法律案は、第百六十一回国会に提出され、昨年十一月四日本会議での趣旨説明及び質疑の後、本委員会に付託されました。

 本委員会においては、昨年十一月十二日法律案に関し細田内閣官房長官及び提出者菊田まきこ君からそれぞれ提案理由の説明を聴取した後、十七日より質疑に入り、参考人から意見を聴取する等審査を行いましたが、両法律案は、今国会まで継続審査に付されました。

 今国会においては、去る九日から質疑を行い、十一日質疑を終局いたしました。質疑終局後、内閣提出の法律案に関して、自由民主党及び公明党から、一部規定の施行期日等に係る修正案が、また、日本共産党から、課徴金算定率のさらなる引き上げ、課徴金減免制度の適用対象者の限定等を主な内容とする修正案が、それぞれ提出されました。

 両修正案について趣旨の説明を聴取した後、討論を行い、順次採決を行った結果、まず、仙谷由人君外十六名提出の法律案は賛成少数をもって否決すべきものと議決いたしました。次に、内閣提出の法律案に関しまして、日本共産党の提案に係る修正案は否決され、自由民主党及び公明党の提案に係る修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し、附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案につき討論の通告があります。これを許します。鈴木康友君。

    〔鈴木康友君登壇〕

鈴木康友君 民主党の鈴木康友です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました民主党・無所属クラブ提出の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に賛成、政府提出の法案に対して反対の立場から討論を行います。(拍手)

 私たちは、規制改革の道筋を確立することとあわせて、独占禁止法を抜本改正し、官製談合に関して行政に対する強制調査権や業務改善命令権を付与することを提言してきました。

 しかるに、政府・与党は、自民党の二〇〇四年中に国会に独禁法改正案を提出するという公約を形式的に守るためだけに、急転直下、政府案提出に向けてかじを切り、ぬえ的な独禁法のひずみは是正しないまま、理念も哲学もなく、場当たり的な内容の独禁法改正案を提出するに至りました。

 民主党は、こうした矛盾と欠陥に満ちた政府案とは一線を画し、脱談合社会の確立、二十一世紀型経済憲法の制定を視野に入れ、独自の対案をまとめ、提出いたしました。

 民主党案は、三つの理念に基づく柱から成っています。

 第一に、制度のひずみの是正に関して、政府案は、課徴金と罰金の関係について、罰金の二分の一を課徴金から控除するという理論的根拠を欠く妥協的な調整を行おうとしていますが、本法案では、罰金の全額を課徴金から控除することとし、課徴金に罰金と同様の制裁的性格を明確に認める行政制裁金を導入します。

 政府案でも違反事実の申告による課徴金の減免を導入しようとしていますが、本法案で導入しようとする行政制裁金では、それに加えて、企業の法令遵守体制の整備や調査協力の程度によって最大五〇%までの制裁金の軽減を行い、その一方で、過去十年以内に、一回限り違反行為をしたことのある事業者には五〇%、二回以上違反行為をしたことのある事業者には一〇〇%を加えた算定率を適用します。これにより、制裁金の額は、企業が違反行為の防止のためにどれだけ努力しているかに応じたものとなります。

 第二に、適正で透明な手続の確立のため、審判官の定員を五名から必要に応じて最大二十名まで増員できるものとし、過半数を法曹有資格者とします。

 さらに、制裁金の減免に関しても、政府案では、課徴金の減免に関して証拠収集や事実認定を行う公正取引委員会の審査当局の不当な裁量が働くことを防止する措置が全く講じられていませんが、本法案では、法曹資格者を中心とする行政制裁金減免調査官が審査当局から独立した立場で制裁金減免について判断を行う制度を新設することとします。

 第三に、官製談合に対する抑止力の強化のため、違反企業の官製談合構造の解明への協力のインセンティブを高める制度を導入し、民間企業だけが悪者にされ、官側の利権が温存される官尊民卑の構造を正します。

 そのため、発注官庁職員の談合関与行為を申告するなどして官製談合構造の解明に協力した者には、他の軽減に加えて行政制裁金を二割減算します。

 哲学、理念、法体系などにおいて、民主党案と政府案は大きく異なっております。政府案には、大きな矛盾と欠陥が含まれています。

 第一に、政府案においては、あいまいで実効性の低い課徴金制度が温存されています。

 政府はこれまで、課徴金の根拠について、違反事業者による不当な取引による利得、すなわち不当利得を剥奪するためと説明してきました。政府の改正案では、この算定率を大企業の製造業で一〇%に引き上げておりますが、景気の低迷が長引く中で企業の利益は全体として減少する傾向にあり、明らかに不当利得の幅を超えています。課徴金制度の根幹を残したまま算定率を引き上げることは、極めて問題であります。

 現行の独禁法は、独禁法違反事件の対象法人に対して課徴金と刑事罰が併科されるという、先進国に例を見ない二重処罰の構造を温存しています。

 政府案においては、課徴金と法人刑罰併科の際には、前者から罰金額の二分の一の額の控除を認めることとしていますが、なぜ二分の一を差し引くのか、根拠が不明です。

 第二に、勧告制度を廃止する政府案はデュープロセスを軽視するもので、白紙撤回すべきものと考えます。

 現行制度では、課徴金の対象となる違反行為に対する措置は、排除措置勧告あるいは命令が出された後、課徴金納付命令が下されるという二段階になっています。さらに、排除措置勧告、課徴金納付命令は独立した別の行政行為とみなされているため、両者の審判手続は別々に行われています。

 法の実効性を高めるためにも、公正な審判手続は不可欠です。しかしながら、今回の政府案では、排除措置命令と課徴金納付命令を同時に行うこととしており、これでは、審判手続を経ることなく、双方に効力を生じさせてしまいます。政府案は、現行の事前審判手続による慎重な行政処分方式を規制側の一方的な行政処分方式へ転換するものであり、改悪と断ぜざるを得ません。

 第三に、政府案には、官製談合防止法の改正への道筋が欠落し、発注官庁職員の行為申告者の減免措置も盛り込まれていません。

 公正取引委員会と独占禁止法は、公共調達をめぐる談合、とりわけ官公庁が関与する談合の防止、抑止については、これまで全く機能していませんでした。独禁法違反事件の刑事告発権限は公正取引委員会のみに与えられているにもかかわらず、ほとんど告発されていないのが実態です。

 昨年、新潟地検が、新潟市の幹部職員と建設会社の社長を刑法の偽計入札妨害罪容疑で逮捕しました。この事件は、公正取引委員会が独禁法違反で調査していたにもかかわらず、刑事告発を見送った案件です。官製談合に対する公正取引委員会の機能不全は明らかです。

 政府の独禁法改正案では、民間企業への制裁だけは強化されていますが、談合にかかわる官の側への厳正なる対処が見られません。自民党と官製談合は表裏一体とも言われております。今回の独禁法改正を主導してきた与党自民党の姿勢は、談合社会から抜け出せないその体質を改めて浮き彫りにしています。また、かけ声だけは立派でも、内容のない制度見直しを繰り返す小泉政権の特徴が、ここにも如実にあらわれています。(拍手)

 以上の理由により、民主党案に賛成、政府案に反対すべきものと考えます。

 民主党としましては、今後とも、独自の法案作成に向けて作業を進めていく決意であります。唆し罪の創設などを視野に入れ、官製談合防止法の強化に取り組むこと、さらに、不当廉売に対する課徴金適用等を柱とする第二弾の独占禁止法改正に取り組むことを申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一、仙谷由人君外十六名提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第二、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(「新防衛計画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関する報告)

議長(河野洋平君) 大野国務大臣から、「新防衛計画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関する報告のため、発言を求められております。これを許します。国務大臣大野功統君。

    〔国務大臣大野功統君登壇〕

国務大臣(大野功統君) 政府は、昨年十二月、安全保障会議及び閣議において、「平成十七年度以降に係る防衛計画の大綱について」、すなわち新防衛大綱及び「中期防衛力整備計画(平成十七年度〜平成二十一年度)について」、いわゆる新中期防を決定いたしました。

 以下、これらについて御報告申し上げます。

 新防衛大綱は、今後の我が国の安全保障及び防衛力のあり方について新たな指針を示すものであります。

 これまでの防衛大綱は、策定から十年近くが経過し、今日、我が国を取り巻く安全保障環境には大きな変化が生じております。特に、米国の九・一一テロのような国際テロ組織の活動、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展など、新たな脅威や多様な事態への対応が国際社会の共通の課題となっております。

 特に、我が国周辺の情勢につきましては、極東ロシアの軍事力は量的に大幅に削減されましたが、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在しております。また、北朝鮮は、大量破壊兵器あるいは弾道ミサイルの開発、配備、拡散等の軍事的な動きを見せており、地域の安全保障上の重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防止の努力に対する深刻な課題となっております。さらに、中国は、軍事力の近代化や海洋における活動範囲の拡大などを図っており、その動向には今後も注目していく必要があります。

 このような安全保障環境を踏まえ、新防衛大綱は、第一に、安全保障の目標として、我が国に直接脅威が及ぶことを防止、排除すること、国際的な安全保障環境を改善して我が国に脅威が及ばないようにすることの二つを掲げ、かかる目標を我が国自身の努力、同盟国との協力及び国際社会との協力を統合的に組み合わせて達成するとの安全保障の基本方針を明らかにいたしております。

 第二に、今後の防衛力については、いわゆる基盤的防衛力構想の有効な部分は継承してまいりますが、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応すること、同時に、国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組むことを主眼といたしております。そのため、即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を効率的に構築してまいりたいと思います。

 第三に、我が国の安全確保にとって必要不可欠な日米安全保障体制についてであります。新たな安全保障環境のもとでの戦略目標に関する日米の認識の共通性を高めつつ、日米の役割分担や在日米軍の兵力構成等に関する米国との戦略的対話に主体的に取り組む等、日米安全保障体制を強化することといたしております。

 かかる方針のもと、弾道ミサイル、ゲリラや特殊部隊による攻撃、島嶼部に対する侵略等の新たな脅威や多様な事態に実効的に対応することが肝要となっております。一方、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下していると判断されます。したがって、いわゆる冷戦型の防衛力整備構想を転換し、防衛力の本来の役割にかんがみ、最も基盤的な部分は確保しつつも、本格的な侵略事態に備えた装備、要員の抜本的な見直しを行うことといたしております。また、国際平和協力活動に適切に取り組むため、自衛隊の任務における同活動の適切な位置づけを含め、所要の体制を整えてまいります。

 なお、新防衛大綱は、おおむね十年後までを念頭に置いていますが、五年後または情勢に重要な変化が生じた場合には、必要な修正を行います。

 次に、新中期防について御報告申し上げます。

 計画の方針については、第一に、本格的な侵略事態に備えるための基盤的な部分を確保しつつ、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を効率的に整備いたします。

 第二に、防衛行政を担う組織等を見直すとともに、自衛隊の基幹部隊、主要装備等について新たな体制へ早期かつ効率的に移行いたします。

 第三に、科学技術の発展に的確に対応しつつ、人的資源の効果的な活用を図りながら、統合運用の強化や情報機能の強化を図ります。

 第四に、装備品等の効果的かつ効率的な取得、関係機関や地域社会との協力等、防衛力を支える各種施策を推進いたします。

 第五に、日米安全保障体制強化のための各種施策を推進いたします。その際、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄を初めとする在日米軍施設・区域に係る過重な負担軽減に努めてまいります。

 第六に、各年度の予算編成に際しては、格段に厳しさを増す財政事情等に配慮し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力の一層の効率化、合理化を図り、経費の抑制に努めてまいります。

 なお、この計画の実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、平成十六年度価格でおおむね二十四兆二千四百億円程度をめどとし、また、この他に一千億円を限度として、所要の事業の実施について措置し得るようにいたしております。

 以上、新しい防衛大綱、新しい中期防のもと、国民の皆様の信頼にこたえ、国の安全と国民の安心のため、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を構築するとともに、国際的な安全保障環境の改善のための施策に取り組んでまいります。また、新たな安全保障環境に適切に対応し得るよう統合運用体制の強化を図り、高度な技術力、情報力、そして質の高い人的基盤に支えられた自衛隊の運用がなし得るよう心がけてまいる所存であります。

 何とぞ、皆様の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(「新防衛計画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関する報告)に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。古川禎久君。

    〔古川禎久君登壇〕

古川禎久君 自由民主党の古川禎久です。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま報告のありました新防衛計画の大綱及び新中期防衛力整備計画について質問いたします。(拍手)

 九・一一以降も、テロは世界各地で相次いでおります。いつ、何者が、どこで、どんな手段で、だれに危害を加えるかわからない。人々を不安と恐怖で縛ろうとする卑劣なテロは、まさに人類共通の敵であると言わなければなりません。加えて、危機のバーゲンセールとも言える大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散によって、世界の安全保障は、より複雑で、より難しいものになりつつあります。

 我が国周辺におきましても、朝鮮半島及び台湾海峡の不安定要因、そして中国の軍近代化や海洋における活発な活動範囲の拡大など、その安全保障環境は不透明度を増す傾向にございます。

 さらに、米国の軍事トランスフォーメーション、全地球規模の軍事態勢の見直しが進行中であり、日米同盟を基軸とする我が国も、無論、無関係でいられるわけではありません。

 このように、我が国の安全保障環境が多様化、複雑化する中で、新防衛計画大綱では、基盤的防衛力から多機能弾力的防衛力へと大胆に目標転換が図られたものと承知いたしております。

 そこで、内閣総理大臣にお尋ねいたします。

 時代情勢が大きく変化する今、我が国防衛の最高責任者として最も大切な心構えとは何だとお考えでしょうか。新大綱策定に当たっての総理の強い御決意をお聞かせください。

 さて、新大綱、新中期防では、統合幕僚組織の新設や長官直轄の情報本部設置など、統合運用を目指した組織改編が示されております。これは多機能弾力的な防衛力整備のため極めて妥当であり、私も関係法令の早期整備を望むものであります。

 ただ、組織改編を言うのであれば、私は、どうしても防衛省の設置という長年の懸案を避けて通るべきではないと思うのであります。現在、防衛庁は内閣府の外局として置かれておりますが、これは国防担当部局の設置のされ方としては、諸外国にも例を見ない変則的なものであります。近年の厳しい安全保障環境において、危機に対し迅速かつ的確に対処するためには防衛庁の省昇格は不可欠であると考えますが、防衛庁長官の御所見をお聞かせください。(拍手)

 また、名誉ある国際平和協力活動の本来任務化は、世界平和を志す我が日本国の理想を国際社会に明確にメッセージする上でも重要です。防衛庁長官のお考えをあわせてお聞かせください。

 ミサイル防衛システムの導入は、他国からの弾道ミサイルの脅威に対する抑止と対処という観点から重要かつ有効であると考えます。導入に当たり、せっかくのシステムが宝の持ちぐされとならぬよう、運用に万全を期すことは当然です。所要の法整備もさることながら、私は、この際一歩踏み込んで、集団的自衛権の行使の問題を整理すべきであると考えます。

 政府はこれまで、国際法上、集団的自衛権を保有はするが、憲法上、行使はできないという奇妙な解釈をとってこられました。しかし、あるけれども使えない権利などは権利がないのと同じであって、つじつま合わせも限界に達していると言うべきであります。私は、ミサイル防衛を導入する今、集団的自衛権は当然行使可能であるということを、冷静にそして淡々と確認すべきであると考えます。

 集団的自衛権行使を是とするにせよ、憲法の解釈変更によらず、あくまでも憲法改正を待つべしとの筋論もあります。しかし、今そこにある危機に備えることこそ国防の心構えであり、国政を預かる者の責任であります。今こそ、形式に逃げ込まない、真摯な決断が求められるときであることを強くお訴えし、議員諸兄の広く活発なる御議論を御提起申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 古川議員に答弁いたします。

 新防衛大綱策定に当たっての決意についてでございます。

 冷戦終結から十年余りたち、我が国をめぐる安全保障環境は大きく変化しております。新防衛大綱は、みずからの国はみずからで守るという考え方のもとに、我が国の今後の安全保障の基本指針として、テロや大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散といった新たな安全保障環境に適切に対処し得る防衛体制を構築することを目的とするものであります。

 こうした考えのもとに、将来の安全保障を見据えた防衛力の構築を目指す所存でございます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣大野功統君登壇〕

国務大臣(大野功統君) 古川議員にお答えいたします。

 まず、防衛庁の省昇格問題であります。

 自衛隊の任務や役割が増大し、国民の期待も高まっている中で、防衛を担当する省を設けることは、安全保障、危機管理に取り組む国の体制を強化し、これを重視している国の姿勢を内外に示すことになります。極めて重要な問題であると考えております。

 防衛庁の省移行については、政治の場で議論すべき課題とされており、現在は、その取り扱いについて、与党内で協議されているものと承知いたしております。

 今後、この問題について、国民の理解が一層深められ、政治の場で精力的な議論が行われて、早期に防衛省への移行が実現するよう期待いたしております。(拍手)

 次に、自衛隊の国際平和協力活動の本来任務化であります。

 昨年十二月に閣議決定された新防衛大綱においては、国際社会の平和と安定は、我が国の平和と安全に密接に結びついているとの認識のもと、自衛隊が国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組むため、同活動の位置づけを含め所要の体制を整えることといたしております。

 こうした自衛隊による国際平和協力活動への取り組みは、委員御指摘のとおり、我が国の国際平和に向けた取り組みを国際社会に対して明確なメッセージとして伝えていくものであると考えます。加えて、本来任務化することにより、これらの活動を行う隊員が、一層の自覚と誇りを持って職務に専念し得るものと考えます。

 いずれにしましても、本来任務化のための自衛隊法改正につきましては、できる限り早期に実現できるよう、与党とも十分調整の上、作業を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 前原誠司君。

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 民主党の前原誠司です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、新防衛大綱及び次期防衛力中期整備計画について質問いたします。(拍手)

 まず、昨日、マラッカ海峡で日本船籍のタグボートが海賊に襲われ、三人が連れ去られる事件が発生しました。政府に一刻も早い三人の救出を要望するとともに、この海峡は日本にとっても大切な海上航行路ですが、以前よりこの海峡は海賊行為の多発地帯であることを考えると、再発防止のために、他国と協調をして、航行の安全を守るための何らかの取り組み、連携が必要だと考えますが、政府の考え方をお聞かせいただきたい。

 およそ国の安全保障ほど、中長期の見通し、戦略に基づいて政策を立案し、遂行しなければならない分野はありません。戦闘機や艦船などの正面装備は、選定、開発から実戦配備まで、少なくとも十年の歳月を要します。その点から考えると、今回の防衛大綱の改定は、十年先の戦略環境を正確に分析しているとは到底思えません。また、なぜ今なのか、また、防衛の主眼を何に移すために変えるのか、コンセプトも不明瞭であります。

 我が国の安全保障の柱の一つが日米同盟関係ですが、先月、ワシントンで2プラス2が行われ、共通の戦略目標を定めて防衛協力を強化させることが確認されました。同時に、アメリカが進める米軍再編に呼応する形で日本における基地の整理再編が行われ、日米間の役割分担も変わることが想定されます。ことしの秋ごろまでに結論を出すとのことですが、なぜ、大綱策定を一年待って同盟のトランスフォーメーションに合わせなかったのか、明快な説明を求めます。(拍手)

 そもそも、防衛大綱を見直さざるを得なかった真の理由は、ミサイル防衛システムの導入にあります。現に、現中期防を四年で打ち切り、新たな五カ年計画策定を余儀なくされたのは、膨大な費用を要するミサイル防衛を導入するに当たって、陸海空それぞれの予算を削減すると財務省に約束させられたからにほかなりません。

 確かに、我が国の周辺には、我が国を射程距離におさめる国が複数あります。民主党もミサイル防衛の必要性は認識をしていますが、要は、財政の制約と通常戦力とのバランスをどのようにとるかの問題であります。北朝鮮だけでも、日本を射程におさめる弾道ミサイルは二百基以上あると言われており、新大綱の別表に書かれているイージス艦四隻、ペトリオット部隊三個高射群だけでは、到底あらゆるミサイルを撃ち落とすことはできません。

 政府は、国民に幻想を与えるべきではありません。ミサイル防衛には限界がある、すべてを撃ち落とすことはできないと、まずは認めるべきであります。その上で、何を少なくとも守ろうとしているのかを明確にすべきです。首都の中枢は当然のこととして、他の主要都市はどこを考えているのか、自衛隊や米軍の基地、重要港湾、空港、そして原発なども守る対象と考えているのか。あるいはまた、それらの施設は新大綱の態勢でカバーできるのか、お答えをいただきたい。

 同時に、新大綱でおおむね想定している十年という期間で、ミサイル防衛にどれぐらいの費用を投じようと考えているのか。次期防の中ではどの程度なのか。また、さらに次の十年でもミサイル防衛をさらに進めるべきだと考えておられるのでしょうか。アメリカは、近い将来、エアボーンレーザーを実用化させようとしていますが、日本も導入すべきかも含めてお答えください。

 中国は、経済発展を背景に、十七年連続、軍事費の伸びは対前年比一〇%以上を記録しています。特に海軍力、空軍力の増強は目覚ましく、このまま中国の軍事力増強が続くと、特に東シナ海における我が国の領土、領海及び排他的経済水域上空の制空権が維持できなくなるのは明らかであります。

 制空権が維持できなくなれば、海洋における支配権を行使できなくなり、制空権を握った中国が中間線の日本側でさらに天然ガスの探査、開発を行う可能性が高くなります。また、中国がみずから領土だと主張している尖閣諸島や、島ではなく岩だと指摘をしている沖ノ鳥島及びその排他的経済水域を、中国が実効支配を試みる可能性も否定できません。

 政府はそもそも、日本の領土、領空、領海、排他的経済水域を実効支配し続ける意思を持っているのでしょうか。仮に中国が日本の主権を侵した場合、看過せずに毅然とした態度をとる確固とした意思があるのでしょうか。あるいは、現在の戦力と次期防、新大綱をベースとする防衛力整備で、制空権を今後も維持することが現実に可能と考えているのか。三点すべてに説得力ある回答をいただきたいと思います。(拍手)

 EUはこのたび、一九八九年の天安門事件以来続いていた対中武器輸出禁止を、実質解除しました。EUの対中武器禁輸解除は、中台間の緊張を高めるだけではなく、我が国の安全保障にも大きな影響を及ぼすことになります。EUの中で武器の売り込みに最も熱心なのがフランスですが、近々来日されるシラク大統領に日本の懸念を率直に伝えるべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。(拍手)

 2プラス2では日米で共同宣言が出されましたが、共通の戦略目標に、台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的な解決を促すという項目が盛り込まれました。この点に関して、日本は具体的にどのような行動、役回りを考えているのか、それは外交的なアプローチに限られるのか、それともさまざまなシナリオを想定した軍事的なアプローチも排除しないのか、明確にお答えください。昨日、中国の全人代で採択された反国家分裂法の見解もあわせて答弁を求めます。

 私はそもそも、みずからの国はみずからで守るのが原則だと考えております。現在の日本は、歴史的な経緯からアメリカとの同盟関係を結び、核抑止力のみならず、敵基地攻撃能力、情報収集力など、防衛の枢要な分野の多くをアメリカに依存しています。したがって、今すぐ同盟関係を解消することは現実的ではなく、今後も日米同盟関係は必要だと考えます。

 ただ、自国の安全保障を他国に過度に頼ることが、日本の真の利益につながるのでしょうか。ある程度は、同盟国に頼らなくても自分の国は自分で守れる体制にする。そうでなければ、同盟国の行動が自国の利益につながらないときにまでおつき合いをせざるを得ず、国民の理解も得られずに、長い目で見れば同盟関係も弱体化していきます。健全な同盟関係を続けていく上でも、間合いは必要です。

 翻って、新防衛大綱に自衛能力を高める意志が少しでも感じられるでしょうか。ほとんどが現状追認。テロの脅威が高まっているという認識も、アメリカとの間合いが足りないからこそ、日本にもその脅威が連動して高まるというジレンマに陥っているにすぎません。

 官僚答弁ではなく、総理みずからの言葉で、自衛と同盟関係のあり方に対する考え方、あるべき方向性を語っていただきたいと思います。(拍手)

 最後に、BSE問題について伺います。

 先日、ブッシュ大統領との電話会談で、アメリカ産牛肉の輸入再開について強い要請があったと承知しています。政府の食品安全委員会の専門調査会でも、生後二十カ月以下の牛を全頭検査の対象外とする方向で議論が進んでいるようです。

 問題の要諦は、政府がいかに国民に説明責任を果たすかです。NHKの調査によりますと、輸入再開賛成は国民で一五%、反対は七五%に上っています。また、全頭検査支持は八四%に上っています。二十カ月以下の牛とそれ以外とをアメリカはきちんと仕分けができるのか、二十カ月以下の牛の感染確率は、ちまたで言われているように本当に低いのか、危険部位の除去をアメリカ国内では適切に行われているのか、アメリカの検査体制は日本の基準に合致しているかなど、これらの疑問に、政府は科学的根拠を示し、きちんと国民に答えると約束をしていただきたい。答弁を求めます。

 ゆめゆめ、ブッシュ大統領との人間関係を優先して、国民の食の安全をおろそかにされないことを心からお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 前原議員に答弁いたします。

 マラッカ海峡における事件でございますが、現在、事実関係の確認と関係者の無事な解放に向け、政府一体となって全力で取り組んでいるところであります。また、関係する各国政府当局に対し、被害者及び被害船舶の安全確保並びに関連情報の提供の協力要請を行ってきているところであります。

 今後とも、これまで進めてきているアジア各国の海上保安当局との連携をさらに強化し、マラッカ海峡の安全確保に向けた関係各国との協力を推進していく考えであります。

 新防衛大綱の策定と日米の共通戦略目標、米軍基地の再編計画の関係についてでございます。

 新防衛大綱では、我が国への脅威を防止、排除し、国際的な安全保障環境を改善するため、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を保持するという我が国自身の努力、日米安全保障体制を基調とする米国との協力及び国際社会との協力を組み合わせて推進することを安全保障の基本指針としております。

 もとより、国民みずからがみずからの国はみずからの力で守るという気概を持つことが、国防の基本であります。最初から他国に自己の生存を依存しようとする姿勢では、どこの国からも相手にされないと思っております。

 他方、冷戦下のように大規模な武力侵攻の可能性は少なくなったものの、現在でも、テロや大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散といった新たな脅威への対応は、一国のみでは困難であります。

 したがって、新防衛大綱は、必ずしもトランスフォーメーション、いわゆる軍の変革を進める米国との協議のために策定したものではありませんが、新防衛大綱では、米国との戦略的な対話に主体的に取り組むこととするとともに、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議に臨む基本方針として、米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍施設・区域に係る負担軽減に配慮することを明示しております。

 ミサイル防衛システムの限界と防衛目的についてでございます。

 大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散が進展する中、ミサイル防衛システムは、弾道ミサイルによる攻撃から我が国を守る、現在では唯一の手段であります。

 我が国のミサイル防衛システムは、ほぼ我が国全域をカバーするイージス型護衛艦が装備するミサイルによるシステムと、これによる破壊をくぐり抜けた弾道ミサイルに対して目的地付近上空での破壊を目的としたパトリオットミサイルによるシステムの二段階の防御から成っております。

 どのような兵器システムでも、百発百中を保証することは難しいと思っております。いずれにせよ、広く国民の安全を守るためのものであります。政府としては、現実的に想定される各種のケースに実効的に対応できるよう、ミサイル防衛システムの整備及び必要な法整備等を着実に推進してまいります。

 今後、弾道ミサイル防衛システムの整備に要する費用についてでございます。

 政府としては、国民の安全を確保するため、弾道ミサイル防衛システムの整備を着実に進めてまいる考えであります。

 このシステムの整備に要する費用については、現時点で、おおむね十年間に八千億円から一兆円程度、うち次期防期間中に六千百億円程度と見込んでおりますが、最終的には各年度の予算を通じて確定されるべきものと考えております。

 弾道ミサイル防衛の将来的な進め方と、米国で研究中の新たなシステムについてでございます。

 一般論として申し上げれば、将来の弾道ミサイル防衛システムについては、その時点における国際情勢や防衛力のあり方全般を考慮しつつ、弾道ミサイルをめぐる技術の進歩に対応していくことが必要と考えますが、現時点で、現在進めている計画終了後のことについて具体的に検討されているわけではございません。

 我が国の領土等の実効的支配及び我が国の主権が侵された場合の対応でございますが、我が国の領土、領海及び領空の保全並びに排他的経済水域、大陸棚における主権的権利等の確保は、我が国の外交政策上極めて重要な課題であると考えております。

 政府としては、我が国の領域の保全及び国益の確保のために、国際法に従って毅然とした対応をしていく考えであります。

 いわゆる制空権でございますが、今後の我が国の防衛力については、安全保障環境の変化を踏まえ、実効的にその役割を果たし得る体制を構築してまいりたいと考えます。

 戦闘機部隊については、新防衛大綱において、領空侵犯等に即時適切な措置を講じる体制を維持することとしております。また、新中期防期間中には現有戦闘機の後継機を整備することとしており、今後とも、領空の主権の確保に遺漏なきを期してまいります。

 EUによる対中武器禁輸解除の問題とシラク大統領訪日に関しての対応でございますが、政府としては、本件が我が国を含む東アジアの安全保障に及ぼし得る影響について懸念しており、地域を不安定化するような高度な武器、機微な技術等がEUから歯どめなく中国に移転されないことを実質的に確保することが重要であると考えます。

 我が国は、米国とも緊密に連携しつつ、従来よりEUに対し懸念を表明してきており、引き続き責任ある対応をフランスを含むEU各国に求めていく考えであります。

 台湾海峡をめぐる問題及び中国の軍事力の透明性についてのお尋ねでございます。

 台湾をめぐる問題については、我が国としては従来から一貫しており、当事者間の直接の話し合いによる平和的解決とそのための対話の早期再開を希望しております。我が国としては、引き続きその旨中台両方に働きかけていく考えであり、そのような我が国の取り組みにおいて軍事的なアプローチを現在想定しているということはございません。

 また、中国の軍事分野の透明性向上についても、引き続き、さまざまな対話の場を通じて働きかけていく考えであります。

 中国の反国家分裂法についてでございます。

 反国家分裂法においては、台湾が独立の動きを示せば、最後の選択肢として、非平和的手段の行使を行わなければならないとされており、台湾海峡の平和と安定の観点から、日本としても懸念を有しております。他方、同法においては、中国は中台問題の平和的解決のために最大の努力を尽くすとしていることに留意しております。

 我が国としては、武力行使には一貫して反対しており、平和的解決以外のいかなる解決方法にも反対であります。平和的解決のため、当事者間の対話の早期再開を強く希望しております。

 BSE問題でございますが、米国産牛肉の輸入再開に当たっては、種々の論点があることは承知しております。国民の食の安全、安心の確保を大前提に、科学的知見に基づき、適切に対処してまいります。(拍手)

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議長(河野洋平君) 赤松正雄君。

    〔赤松正雄君登壇〕

赤松正雄君 公明党の赤松正雄でございます。

 ただいま議題になっております防衛計画の大綱並びに中期防の問題につきまして、公明党を代表して、基本的な問題について質問をさせていただきます。(拍手)

 前回の大綱からちょうど十年がたちました。冷戦期におけるいわゆる脅威対応型から冷戦後における基盤的防衛力整備、こういったものから、今度は、先ほどもお話がありましたように、国際テロや新たな脅威に対応する形での多機能、弾力的な対応をしていくもの、こういうことで、今、前原議員の方からは極めて厳しい御指摘がありましたけれども、私たちは、基本的に大枠としてこれを了とする、時宜にかなったものである、こんなふうなとらえ方をいたしているところでございます。

 その上で、基本的な質問をしたいと思います。

 冒頭に、先ほども取りざたされた問題でありますけれども、昨日、マラッカ海峡での海賊による拉致事件について、こちらからも若干お聞きしたいと思います。

 かねてこの問題は懸念されていたわけでありますが、改めて現実のものになったわけです。救出に向けて今後どう取り組むのか、また、現行法体制の中で、この方面に向けての安全対策をどう進めていくのか。もう既に、こういったことを想定してさまざまな検討がなされてきていたと思いますけれども、その辺のことについて、さらに先ほどの答弁よりも踏み込んでお答えをいただきたいと思う次第でございます。

 次に、さきに日米間で2プラス2の会議があり、二国間で共通の戦略目標を定めるとの合意がなされました。これは、従来の日米関係から一歩踏み込んで、新たな展望の上に立とうとするものと思われます。同時に、アメリカの米軍再編計画が取りざたされております。これとあわせて、不安定の弧なる概念が改めて持ち出されています。

 日米が共通の戦略目標に立って、米軍が再編される、このことが日米安保体制に多大の影響を与え、日本の役割にも重大な変更をもたらすものと思われます。新たな大綱を日本が主体的に先に決めたのですから、再編計画もその範囲におさまるというのは当然でありましょうが、改めて、この大綱とトランスフォーメーションとの関係をお示し願いたいと思います。

 前回の大綱決定の二年後に日米ガイドライン、日米防衛協力のための指針が改定されたということを思うときに、今回も、今後、日米首脳間での新たな取り決めに向かって調整が必要だと考えます。

 そこで、総理にお伺いしたいのですが、日米ガイドラインの再改定の方向に行く必要を感じられているのか、それとも今のままでいいと考えられているのかどうか、お聞きしたいと思います。

 さらに、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応することと同時に、国際平和協力活動に積極的に取り組むことが重要だとの認識に異論はありません。鳥インフルエンザの処理に始まり、国内外の地震や津波などの大規模災害からミサイル防衛に至るまで、実に多彩な活動の展開が期待されているのが自衛隊であります。従来、国際平和協力活動が自衛隊法の中であいまいな位置づけしか与えられていないということには、いささかの疑問なしといたしません。

 ただ、国際平和協力活動といいましても、PKOのように既に十年を超えて実績を積み上げてきているもの、あるいは、イラク・サマワでの人道復興支援、またインド洋での燃料補給などといった特別措置法をつくっての対応、さらには、いまだ実施されていない、観念の域を出ていないと言ってもいい日本の周辺事態における対米後方地域支援といった行為を、国際平和協力として一律に論じることは難しいのではないかと考えます。また、それぞれの行為に従事する自衛隊の皆さんの武器の使用をめぐる問題についても、未解決の課題が山積をしております。

 それらを棚上げにしたままで、国際社会へのメッセージを出すことを急ぐ余り、任務の位置づけを新たにし直すということは、拙速にならぬかどうか。このあたり、適切な位置づけを含め、所要の体制を整えると防衛庁長官が言われておりますけれども、どう今後整理していくおつもりでしょうか。総理並びに防衛庁長官にお尋ねをしたいと思います。

 最後に、新中期防に関連いたしまして、日米安保体制強化のための各種施策を推進する際に、沖縄を初めとする米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍施設・区域にかかわる過重な負担軽減に留意すると先ほども言われましたけれども、具体的にどうされるのかという点であります。

 普天間基地の辺野古移転というSACO合意から十年。もはや、先延ばしは許されません。早急な取り組みが当然必要だとされますけれども、当面のつなぎの対応措置がなくていいのかどうか。今の時点で仮に言えないとおっしゃるならば、いつまでに考えをまとめられるおつもりか、その期限範囲をお示しいただきたいと存じます。

 この問題は日本全体で考えようといいながら、多くの時がとっくに過ぎてしまいました。沖縄で生まれ育ったある著名な作家がこう言っています。

 時あたかも管理社会にうんだ本土が、沖縄社会の規範の緩さに、いやしを期待するようになった。観光ブームである。ところが、基地の偏重が変わらず、安保体制はなおも沖縄が支えている。自然と文化がすばらしいなどと頭をなでられるけれども、基地を肩がわりしようという申し出がない限り、苦笑するほかない。沖縄のいやしは消耗品かと批判する若い知識人もあらわれたと書いております。またさらに、沖縄の歴史へのうらみが語られるのはこの現状への不満ゆえだ、現状が改まるならこの泣き言は直ちに消えるはずだとも述べております。

 この沖縄人らしい抑制をきかせた物言いでの現状への不満ということをどう考えるのか、総理、外務大臣にお尋ねして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 赤松議員に答弁いたします。

 新防衛大綱とトランスフォーメーション、いわゆる軍の変革との関係についてでございます。

 新防衛大綱は、我が国の今後の安全保障の基本指針として、テロや大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散といった新たな安全保障環境に適切に対処し得る防衛体制を構築することを目的とするものでございます。

 新防衛大綱では、軍の変革を進めている米国との戦略的な対話に主体的に取り組むこととし、また、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議の基本方針として、米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍施設・区域に係る負担軽減に配慮することを明示しております。

 この見直しが、現行の安保条約及び関連取り決めの枠内で行われることは当然であると思っております。

 日米防衛協力に関する指針の再改定についてでございます。

 先日の2プラス2会合を踏まえ、新たな安全保障環境のもとにおける多様な課題に実効的に対応するための自衛隊及び米軍の役割、任務に関する検討を進めていく考えですが、現時点でガイドラインの再改定について検討を行っていることはありません。

 自衛隊の任務についてでございますが、新防衛大綱では、自衛隊が国際平和協力活動に積極的に取り組むため、この活動の位置づけを含め所要の体制を整えることとしております。

 こうした新たな位置づけは、直ちに武器使用の問題と関連するとは考えませんが、いずれにせよ、新たな安全保障環境のもとで防衛庁・自衛隊にふさわしい任務とは何かという点も含め、国会等の議論も踏まえつつ検討されるべきものと考えております。

 在日米軍施設・区域の地元の負担軽減でございますが、沖縄県民の負担軽減のため、SACO報告の着実な実施が必要であると考えております。

 在日米軍の兵力構成見直しの議論の中で、在日米軍の抑止力を維持しつつ、いかに沖縄を初めとする地元の負担軽減を実現させるかについては、引き続きさまざまな可能性を追求していく考えであります。今後数カ月間、日米間で議論を集中的に深めていくこととなっております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣大野功統君登壇〕

国務大臣(大野功統君) 赤松議員の御質問にお答えいたします。

 海賊対策等につきましては、外務大臣からまとめてお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、自衛隊の国際平和協力活動の本来任務化についてであります。

 昨年十二月の閣議決定で、新防衛大綱におきましては、国際社会の平和と安定は我が国の平和と安全に密接に結びついているとの認識のもと、自衛隊が国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組むため、同活動の位置づけを含め所要の体制を整えることといたしております。

 こうした活動を本来任務化することによって、我が国の国際平和における取り組みを、国内のみならず国際社会にメッセージとして示すとともに、これにより、厳しい生活環境の中で活動する隊員が一層の自覚と誇りを持って職務に専念し得るものと考えております。

 また、いかなる活動を自衛隊の本来任務と位置づけるかにつきましては、御指摘のように、PKO活動のほか、テロ特措法、イラク特措法に基づく活動や周辺事態における活動など、さまざまな活動が考えられます。

 防衛庁といたしましては、本来任務化に当たっては、新たな安全保障環境のもとで防衛庁・自衛隊にふさわしい任務とは何かという観点からも、十分検討いたしたいと考えております。

 さらに、今般の本来任務化の検討は、武器使用権限などの枠組みを変えることなく、自衛隊の任務における位置づけを見直すことを考えております。

 いずれにせよ、本来任務化のための自衛隊法改正につきましては、できるだけ早く実施したいと考えており、御指摘の点につきましては、与党とも十分調整の上、作業を進めてまいりたいと考えております。

 次に、沖縄における在日米軍施設・区域の負担の軽減についてであります。

 先月十九日に実施されました2プラス2においても、SACO最終報告の着実な実施が在日米軍の安定的な駐留のために重要である旨が確認されております。

 政府といたしましては、SACO最終報告を着実に実施することが沖縄における負担の軽減につながる最も確実な道である、このような認識を持っておるところでございます。

 また、在日米軍の兵力構成見直しにつきましては、在日米軍の抑止力の維持と沖縄等地元の負担の軽減の観点から、現在、さまざまな具体的なアイデアについて検討を進めておるところでございます。

 今後数カ月間、日米間で議論を集中的に深め、加速化していくことといたしております。いかに沖縄等の地元の負担軽減を実現するかにつきましては、あらゆる可能性について総合的に検討してまいりたい、このように考えております。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 赤松議員にお答えを申し上げます。

 マラッカ海峡での海賊事件に関するお尋ねでございました。

 先ほど、総理からも御答弁を申し上げましたが、昨日の事件認知後直ちに、マレーシア、インドネシア及びシンガポールの日本国大使館、総領事館において、関連情報の収集に努めるとともに、関係国政府に対しまして被害者の安全確保につき協力要請をしたところでございます。

 また、外務省では、領事局長を長とする対策本部をオペレーションルームに直ちに設置いたしまして、関係省庁と密接に連絡しながら対応してきております。いずれにしても、政府としては、安全かつ早期の解放に向けまして、関係国とも緊密に連携しつつ、全力を尽くしてまいる所存であります。

 また、この方面における安全対策に関するお尋ねがございましたけれども、政府としては、これまでも進めてきておりますアジア各国の海上保安当局との共同訓練でありますとか、あるいはマラッカ海峡の沿岸国及びマラッカ海峡を利用する国、日本も含めてでございますが、これらの国々で、アジア海賊対策地域協力協定という条約のようなものを、今締結準備中でございます。こうしたことを通じまして、関係各国との協力をさらに強化していく考えでございます。

 いずれにいたしましても、マラッカ海峡はシーレーンとして、日本の経済的な権益確保だけではなくて、国際海上運輸においても重要な海域であることを踏まえまして、今後とも、このような取り組みを通じて同海域の安全確保を推進していく所存でございます。

 次に、在日米軍施設・区域の地元負担軽減についてのお尋ねがございました。

 これも既に総理及び大野長官がお答えをしたとおりでございまして、SACOの最終報告の着実な実施が沖縄県の負担軽減のために必要でございます。さきの2プラス2の共同発表でもその重要性を確認したところでございます。

 また、在日米軍の兵力構成見直しの議論の中で、在日米軍の抑止力を維持しながら、沖縄を初めとする地元の負担軽減をすることについて、引き続きさまざまな可能性を追求いたしまして、今後数カ月間、日米間で議論を集中的に深めていこうと思っております。また、この議論の中で、SACO最終報告の内容と接点が出てくる可能性は排除されませんけれども、現時点では何ら具体的に決まっているわけではございません。

 最後に、沖縄の方々のお気持ちあるいは不満というものをどのように理解しているのかというお尋ねでございました。

 私も数多く沖縄を訪問し、滞在し、沖縄の方々ともいろいろな機会に話し合いをしておりまして、皆さん方のお気持ちも私なりに理解をしているつもりでございます。

 昨年の八月のヘリコプターの事故もございました。また、さらに加えまして、最後の沖縄の司令官でありました大田中将の、沖縄県民かく戦えり、後世一層の御高配賜らんことをというあの有名な言葉を私なりに肝に銘じて、この問題に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表し、新防衛大綱、中期防について質問します。(拍手)

 今、小泉内閣は、世界の中の日米同盟路線のもと、日米安保を根本的につくりかえようとしています。

 新大綱は、日米が共通の戦略を持ち、役割分担を進めるとし、先月の2プラス2で共通の戦略目標に合意しました。これは、先制攻撃を現にイラクで実行し、国家安全保障の骨格に位置づけるブッシュ政権の戦略を日本が共有するということではありませんか。

 アジア太平洋地域のみならず世界における共通の戦略目標で合意したのも、地域的制約を完全に取り払って、先制攻撃戦略に基づく地球的規模の軍事同盟へ日米安保を根本的に転換するためではありませんか。

 ブッシュ政権が進める世界的な米軍再編の中核に据えられているのが、同盟国の役割の拡大です。政府は、新大綱と米軍再編は密接な関係にあるとしています。アメリカの米軍再編、同盟改革の方針に沿って、自衛隊が海外での米軍支援を本来任務として担い、在日米軍基地を先制攻撃の司令・出撃拠点として再編強化しようとしているのではありませんか。

 多国籍軍への参加を含む海外活動の本来任務化を、日本防衛のための必要最小限度の実力組織だから自衛隊は違憲ではないというこれまでの政府の憲法見解に照らし、どう説明するのですか。総理は答弁を避けてきましたが、この際、はっきりしていただきたい。

 新大綱は、中国と北朝鮮を名指しして事実上の軍事的脅威に位置づけ、2プラス2で台湾問題に初めて言及しました。台湾への軍事的介入戦略を持つアメリカと対中軍事戦略を共有するということですか。これは、一つの中国という政府方針と矛盾するものではありませんか。台湾問題の解決に当たって何よりも大切なことは、一つの中国の原則を厳格に貫くこと、あくまでも平和的話し合いによる解決を目指すことであることを強調するものです。

 以上、新防衛大綱、中期防の撤回を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 赤嶺議員に答弁いたします。

 日米の共通の戦略目標と日米協力についてでございます。

 日米の共通戦略目標は、日米おのおのの努力、日米安保体制の実施及び同盟関係を基調とする協力を通じて追求するものであります。日米両国が常に共同で行動することを意味するものではございません。

 なお、一昨年のイラクに対する武力行使は、累次の関連安保理決議に基づき行われたものであり、国連憲章に合致したものであると思っております。

 日米の共通の戦略目標と日米安保条約の関係でございますが、我が国は、従来より、世界の中の日米同盟という考え方のもと、イラクやアフガニスタンにおける貢献など、グローバルな安全保障面での課題についても、国際平和への貢献として米国と協力を進めてきておりますが、これは日米安保条約そのものを根拠として行うものではありません。

 したがって、先月の2プラス2の共同発表において、世界の中の日米同盟に基づく協力を通じて追求すべきものも含めた戦略目標が掲げられていることをもって、日米安保体制をグローバルなものへと変質させることにはなりません。

 自衛隊の任務についてでございますが、新防衛大綱におきましては、自衛隊の任務における国際平和協力活動の位置づけを含め所要の体制を整えることとしております。これは、自衛隊が国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組むための措置であり、在日米軍基地の再編と関連を有するものではありません。

 また、我が国が憲法上保持し得る自衛力は、自衛のための必要最小限度のものであり、その範囲内において国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組むとすることは、矛盾するものとは考えておりません。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

 地域再生法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、地域再生法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣村上誠一郎君。

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) このたび、政府から提出いたしました地域再生法案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応して、地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出その他の地域の活力の再生、すなわち地域再生を推進することが重要な課題となっております。

 地域再生を推進する上では、地方公共団体が、地域における地理的及び自然的特性、文化的所産並びに多様な人材の創造力を生かして、自主的かつ自立的な取り組みを行い、国はこのような地域の取り組みを総合的かつ効果的に支援する必要があります。

 この法律案は、このような状況にかんがみ、地域再生基本方針の策定等、政府全体として行う地域再生への取り組みを明確にするとともに、複数の省庁にまたがる同種の事業について、窓口を一本化して実施するための交付金の交付等の特別の措置を地域再生計画の認定に基づき講ずることにより、地域再生を一層強力に推進しようとするものであります。

 次に、この法律案の概要を御説明申し上げます。

 第一に、政府は、地域再生に関する施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本方針を閣議決定により定めるものとしております。

 第二に、地方公共団体による地域再生計画の認定申請、内閣総理大臣による計画の認定等の所要の手続を定めております。

 第三に、認定を受けた地域再生計画に基づき、地域再生に資する事業に対する投資を促進するための課税の特例、地域における生活環境の整備及び経済基盤の強化のための事業に充てられる交付金の交付等の特別の措置を講ずることとしております。

 第四に、地域再生に関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする地域再生本部を設置することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 地域再生法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。宇佐美登君。

    〔宇佐美登君登壇〕

宇佐美登君 宇佐美登でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました地域再生法案について質問をいたします。(拍手)

 さて、この法案も、悪い意味で小泉政権らしい法案であります。郵政改革や年金改革と同じように、お題目は立派だけれども中身が伴わない典型的な法案であります。もしも法案の名前のように本当に地域再生をする法案でしたら、もろ手を挙げて賛成をするところでございますけれども、しかしながら、手続も中身も地域再生とはほど遠いものであります。

 まず第一に、手続の問題であります。

 すべての省庁にかかわり、今後の地方に対する補助金制度をも根本から変えるかもしれないこの大変重要な新法を日切れ扱いと称し、三月三十一日までの年度内に国会で通せとは、いかなる考えでありましょうか。

 政府は、一年半にもわたり、経済財政諮問会議などで議論をしてきたようでありますけれども、それにしては、この法律案は余りにもお粗末であります。即効性を求められる制度改革ならともかく、この法案はすべての国民にかかわり、それぞれの立場に照らし合わせて十分な審議をすべき法案であります。それを、時間を制限するとは、余りにも国会軽視ではありませんか。(拍手)

 村上大臣に、日切れ扱いとしたその意味、理由を答弁を求めます。

 第二に、現状認識であり、法案の目的です。

 政府は、景気は回復していると繰り返しアナウンスメントしていますが、多くの国民の生活実感と大きくずれています。なぜなら、現在の景気回復は、一部の業界や一部の企業、特に大企業に限った話であり、それらの企業ですら、世界経済の回復による輸出増や賃金抑制によって利益をぎりぎり捻出しているような状況だからであります。ですから、利益の出ている一部の業界や企業で働くサラリーマンでさえ、賃金水準が上昇しているとは言いがたい状況であり、中小企業で働く大半の人たちは賃金が下がり続けています。

 また同時に、政府によると、すべての地域で景気は回復傾向にあるとのことですが、これもまた、現実とは乖離しています。日本有数の中小零細企業の集まる私の地元東京都大田区では、全くと言っていいほど景気の回復感はありません。

 政府の中小企業に関する統計は、資本金二千万円以上を対象としていますが、地元の人たちからしてみれば、資本金二千万円以上といえば中堅企業というのが実感であり、それらの企業の現況をもって地方経済を語ることは欺瞞に満ちているとしか言いようがありません。

 地方経済は、現実には相当疲弊しており、働けど働けど我が暮らし楽にならずというのが地域の実態ではないでしょうか。(拍手)

 地域を再生するためには、なぜここまで地方が疲弊したのか、なぜ地域再生が必要なのか、その分析なくして有効な方策は見出せません。しかし、本法案の目的を規定している第一条を見ても、「近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応して」としか書かれていません。

 本当に、少子高齢化の進展、産業構造の変化等のみによって今日の状況は生み出されているのでしょうか。また、単純に産業構造の変化と言っていますが、産業構造の変化とは果たして何を指すのでしょうか。

 他人事のように政府は言いますが、景気対策と称したばらまきにより地方を借金漬けにしながら、改革と称して地方を切り捨てている自民党政権が地方を苦しめているのです。(拍手)

 地方経済の現況と地域再生というテーマの重要性についてどのように認識しているのか、明快な答弁を求めます。

 続いて、法案内容についてであります。

 地域経済が疲弊した大きな原因は、中央による、地域の実情を無視した画一的な押しつけであります。ですから、地域を再生するためには、地域の知恵を最大限生かすことが重要であり、そのためには、地方分権改革や規制改革の断行が不可欠であります。

 私たち民主党は、補助金を大胆に廃止して一括交付金制度を創設するとともに、税源移譲を行って従来の補助金行政を打破し、地方の自由度、裁量性を飛躍的に高めると同時に、大胆な規制改革を行って、民間の活力を最大限に引き出すことで、地域のことは地域で決めることのできる環境を整備し、地域を再生することをマニフェストとして打ち出しております。

 対する小泉自民党政権の本法案では、補助金ばらまき型政治を継続する法案であります。

 地域再生計画の提出に当たっては、国からの支援について、用意されたメニューの中からしか選ぶことができず、地方が独自の提案を申請できない仕組みになっております。地方がメニューに独自提案を盛り込むためには、地域再生計画の提出とは別途呼びかけられる募集に応募しなければなりません。

 その後のフローを描いてみると、地方自治体などは、時の政権与党の議員と一緒に、内閣府に陳情と称して地域再生計画認定申請の許可を懇願し、補助金の承認をもらい、また、税制上の特例の申請をやはり与党税制調査会に働きかけるという現在の動きと何ら変わりはありません。(拍手)

 その上、審査は事実上、各省庁にゆだねられています。これでは、全く現状と同じで、縦割り行政、中央集権の弊害を解消できないと考えますが、本法案が成立したとしても、この仕組みを変えないつもりなのでしょうか。

 また、改革とは、例えば人件費を削減するとか仕事量が減るということであります。この法案が成立すれば、中央省庁全体として仕事は減りますか、ふえますか。窓口が内閣府で、ふえるだけではありませんか。中央省庁の役人の数を減らすことができますか。

 以上、大臣に明快な答弁を求めます。(拍手)

 本法案第五条第四項には、「基準に適合すると認めるとき」、内閣総理大臣は地域再生計画を「認定するものとする」と書いてあります。これを素直に読めば、基準に合いさえすれば、地域再生計画は必ず認定されるものと思います。

 しかし、第五条第三項では、課税の特例、道整備交付金、汚水処理施設整備交付金、港整備交付金、補助対象施設の転用などといった特別の措置を受けようとする場合は、「関係行政機関の長の同意を得なければならない。」となっております。

 幾ら申請の窓口が内閣府に一本化されたところで、各省庁の同意が必要とするならば、各省庁の意に沿った計画をつくらなければならず、地方の自由度、裁量性を高めることにはなりません。

 なぜ各省庁に同意を求める必要があるのか、もっと内閣府がリーダーシップを持つべきだと考えますが、明快な答弁を求めます。(拍手)

 第十三条には、道整備交付金など交付について規定をされていますが、これら交付金は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の対象になるのでしょうか。答弁を求めます。

 対象になるのであれば、モニタリング実施と称して、報告を求めた上で措置の要求の名のもとで指導を行い、それでも自分たちの意に沿わない地方公共団体には、交付金を返還させることが可能になると思われます。これでは、補助金は幾ら束ねても補助金という結果になり、名前は交付金だけれども何ら従来と変わらない補助金行政が続くことになりかねないと考えますが、いかがでしょうか。はっきりとお答えいただきたいと思います。(拍手)

 以上、本日の大臣答弁を参考にして、我々は賛否を決めてまいります。真摯な答弁を求めます。

 最後に、地域再生法の議論の前に必要なのは、国会の再生ではないでしょうか。

 前代未聞の強制わいせつ罪で国会議員が逮捕されたり、一億円をもらったことも覚えていられない議員がまだ本会議場にいたり、また、本会議中の堂々と寝ている議員の何と多いことでしょうか。民間で大事な会議中に寝ていたらどうなるでしょうか。子供たちが見ていたらどう思うでしょうか。

 私たちは国民から未来を託されています。

 国民の皆さんの苦労をしっかりと見詰めて、痛みを伴う改革はまず政治家と役人からを実行していこうではありませんか。(拍手)

 現在、議員会館の建て直しが計画されていますが、その前に国会議員の数を大胆に減らすことが必要ではないでしょうか。また、年金協議の前に国会議員の年金を廃止しようではありませんか。(拍手)消費税議論の前に我々がみずから痛みを伴う改革を行って初めて、国民の皆さんは納得してくれるのであります。

 政治の信頼回復こそが何よりも先決であることを訴えて、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 宇佐美君の御質問にお答えいたします。

 地域再生法案を日切れ扱いとした理由についてお尋ねがありました。

 本法案は地方の要望を踏まえて法案化されたものであり、地方公共団体からはその早期の施行につき、高い関心が寄せられているものであります。本法案に基づく地域再生の交付金については、新年度の予算の成立と連動して、速やかに制度の周知、地方公共団体における予算化及び地域再生計画の策定、認定申請等の一連の事務が行われる必要があります。

 仮に、法案が十六年度内に成立せず、十七年度当初からこれらの事務に取りかかれない場合、十分な事業実施期間を確保できず、予定した事業の円滑な執行ができなくなるなどの弊害が生じるおそれがあります。

 以上のことから、本案については、地方の期待にこたえるべく日切れ扱いと審議をお願いしているものであります。

 次に、地域経済の現状と地域再生の重要性についてお尋ねがありました。

 現在、我が国経済全体としては景気回復局面にありますが、各地域の経済状況には地域間のばらつきが存在しております。その要因は、地域の産業構成の違いなど、地域ごとに異なっており、そのため、地域再生は、全国一律の政策によるのではなく、地域の自主的、自立的な取り組みに基づいて行われることが重要と認識しております。

 そのため、厳しい財政事情のもと、ばらまき的な財政支援に頼るのではなく、歴史的、文化的資産や気候、風土といったそれぞれの地域の力、特性を生かし、地域が自主的、自立的な取り組みをみずから考えて行い、アイデア合戦を進めること、すなわち、自主的に自立を目指して、自分で考えるという取り組みが重要であると考えます。地域再生は、地域の具体的な提案に基づき、このような地域の取り組みを総合的かつ効果的に支援する必要があるとの認識に基づいて進めているものであります。(拍手)

 次に、地域再生計画に対する支援のあり方についてお尋ねがありました。

 今回の地域再生の支援措置は、地域からの具体的な提案に基づき、内閣官房が一元的に関係省庁と総合調整した結果として、新たに講じることとなったものであります。この中には、省庁横断的な交付金の創設など、従来実現できなかった戦後初の取り組みが盛り込まれており、縦割り行政の打破、地域の自主裁量性の拡大という点で画期的なものになっていると認識しております。

 また、国の支援メニューの改善につきましては、今後も地域からの地域再生に関する提案募集を引き続き実施する予定であり、これらの地域からの声を踏まえつつ、支援措置の充実を図る所存であります。

 なお、地域再生計画の認定に当たっては、交付金等の国の財政負担を伴う支援措置を講じるものであることから、ばらまきにならないよう、地域再生に寄与するなどの一定の基準を満たしているかどうかをチェックすることは必要であると考えています。

 関係行政機関の同意については、所管省庁との施策の整合性の確保を図る観点から、必要最小限のチェックを行うためのものであります。

 いずれにしても、地域の自主性、自立性を尊重することを旨として、地域の策定した地域再生計画を最大限、積極的に支援してまいりたいと考えております。

 地域再生法案の成立に伴う政府の業務、人員の増減の見込みについてお尋ねがありました。

 地域再生法案の成立に伴い、政府が行うこととなっている事務は、地域再生計画の認定に関する事務、地域再生の交付金に関する事務であります。

 地域再生計画の認定に関する事務については、従来より地域再生本部決定に基づく認定事務を実施しており、事務が増加するものではなく、課税の特例の対象となる会社の指定の事務も含め、現行の体制で対応することとしております。

 また、地域再生の交付金に関する事務については、事業所管省庁の補助金を整理統合した交付金であることから、内閣府において各省庁から各種施設に関する専門的な知見を持った職員を集めて対応することとしており、政府全体として事務が増加するものではなく、特別の人員増も考えているものではありません。

 関係省庁の同意の必要性についてお尋ねがありました。

 御質問のとおり、地方公共団体が認定申請する地域再生計画において、地域再生法案で設けられる三つの支援措置、すなわち、一、省庁横断的な地域再生の交付金、二、地域再生事業を行う企業への投資についての課税の特例、三、補助対象施設の転用手続の簡素化、迅速化が盛り込まれている場合には、法律上、内閣総理大臣の認定に際して関係省庁の同意が必要となります。

 この関係省庁の同意を必要としている理由は、支援措置に係る事業について、所管省庁の施策の整合性の確保を図る観点から、必要最小限のチェックを行うためであります。地域再生計画の認定に当たっては、地域負担を軽減し、かつ、円滑な実施が図られるよう、地域において策定された計画の意図を踏まえて、内閣府において一元的に関係省庁との調整を行ってまいります。

 地域再生交付金と補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の関係についてお尋ねがありました。

 地域再生のための交付金は、地域再生に資する基盤整備を行うなど、一定の施策目的を持ったものに対する交付金であり、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の対象となっています。

 これは、これらの交付金がその交付目的、交付条件に反して使用されるなどの交付金の不正な使用の防止を図る観点から、その返還等の措置をとることを可能とするためであり、御指摘のように、国の意に沿わない地方公共団体に対して関与する手段とするものではありません。

 なお、この交付金は、従来の補助金とは異なり、縦割り行政の打破、地方の自主性、裁量性の向上の観点から、各種手続の一元化、簡素化を図るとともに、計画に基づく自由な施設配置、事業間の予算の融通や年度間の事業量の変更を可能とするなど、地方公共団体にとって使い勝手を格段に向上させるものであります。

 以上、お答え申し上げます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       外務大臣    町村 信孝君

       国務大臣    大野 功統君

       国務大臣    細田 博之君

       国務大臣    村上誠一郎君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 杉浦 正健君

       内閣府副大臣  林田  彪君

       防衛庁副長官  今津  寛君


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