衆議院

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第17号 平成17年4月5日(火曜日)

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平成十七年四月五日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十一号

  平成十七年四月五日

    午後一時開議

 第一 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案(第百五十九回国会、保利耕輔君外四名提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案(第百五十九回国会、保利耕輔君外四名提出)

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案(第百五十九回国会、保利耕輔君外四名提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長松下忠洋君。

    ―――――――――――――

 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔松下忠洋君登壇〕

松下忠洋君 ただいま議題となりました国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国民の祝日として、新たに「昭和の日」を加え、「昭和の日」は四月二十九日とし、「みどりの日」を五月四日とするとともに、国民の祝日が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い国民の祝日でない日を休日としようとするものであります。

 本案は、第百五十九回国会に保利耕輔君外四名から提出され、昨年六月一日本委員会に付託され、翌二日提出者長勢甚遠君から提案理由の説明を聴取した後、継続審査となっていたものであります。

 今国会においては、四月一日質疑を行い、質疑終了後、本案に対し、自由民主党及び公明党の共同提案により、施行期日を平成十九年一月一日からとする修正案が提出され、提出者から趣旨説明を聴取いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣島村宜伸君。

    〔国務大臣島村宜伸君登壇〕

国務大臣(島村宜伸君) 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の趣旨につきまして御説明申し上げます。

 将来にわたる食料の安定供給と農業の持続的発展を図るためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成するとともに、このような農業経営を営む者に対する農地の利用集積を図ることが重要であります。特に、水田農業を初めとする土地利用型農業においては農地の利用集積のおくれが大きく、地域での話し合いを促進し、集落合意に基づく農地の利用集積を推進していくことが喫緊の課題となっております。

 また、農業従事者の主力を担ってきた昭和一けた世代の引退が本格化する中、遊休農地が増大しており、担い手への農地の利用集積の妨げとなる事態も生じていることから、その解消を図ることが強く求められております。

 政府といたしましては、このような課題に対応するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、農地保有合理化事業の拡充であります。

 農地保有合理化事業に、農業生産法人への金銭出資及び農用地等の貸付信託の事業を追加し、農地の仲介機能の強化を図ることとしております。

 第二に、農用地利用改善事業の見直しであります。

 集落における総合的な農地利用の準則である農用地利用規程の規定事項を見直し、集落での話し合いを通じ、集落営農の役割分担や担い手に対する農地の利用集積目標の明確化等が図られることとなるよう措置することとしております。

 第三に、遊休農地対策の充実であります。

 都道府県、市町村に対し、遊休農地の解消、防止に関する基本的な構想の作成を求めるとともに、都道府県知事の裁定による賃借権の設定、市町村長による遊休農地所有者等に対する措置命令等の措置を講じ、体系的な遊休農地対策の整備を図ることとしております。

 第四に、農業生産法人以外の法人に対する農地の貸付事業の創設であります。

 構造改革特区制度の全国展開として、遊休農地が相当程度存在する区域において、市町村等が農業生産法人以外の法人に農用地を貸し付ける事業を創設し、遊休農地の利用の増進を図ることとしております。

 第五に、農業振興地域整備計画の策定手続の見直しであります。

 地域全体の合意に基づく計画的な土地利用を進めるため、農業振興地域整備計画の策定・変更に際し、市町村の住民による意見提出の機会を付与すること等としております。

 以上、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。西川京子君。

    〔西川京子君登壇〕

西川京子君 私は、自由民主党の西川京子でございます。

 自由民主党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 今、我が国は飽食の時代と言われております。また、一方で、世界では飢餓線上すれすれの生活をしている人たちがたくさんいることも、また紛れもない事実でございます。少子化に悩む先進国と爆発的な人口増加に悩む開発途上国との間に噴き出した多くの矛盾点が、今国際社会で求められている解決の一番の、最大の課題であることは言をまちません。農業を取り巻く環境もこの限りではないと思います。

 世界の環境に目を移せば、地球温暖化の懸念や森林の減少、砂漠化の進行、水不足の問題、限られたエネルギー資源、さまざまな課題が浮き彫りとなり、こうしたことと密接にかかわり合いのある農業は、国の生存のかぎを握っていると言ってよいかと思います。

 近い将来、世界的な食料不足が懸念される中、WTOを中心とした世界の貿易交渉の舞台では、余剰農産物の輸出のはけ口を求める食料輸出国と我が国のような食料輸入国との間の農業生産物貿易交渉は、困難をきわめております。

 我々は、一度冷静になって、世界の食料需給の問題をもう一度じっくり見詰め直す必要があるのではないでしょうか。

 こうした世界の状況下で、我が国の食料安全保障、すなわち、食料自給率の向上が農業に課せられた大きな使命であることは間違いありません。そして、まさにこの農業の基盤を支えているのが農地であり、多くの先人たちが、多大な労力とコストを投入して、丹精を込めてつくり上げてきたものであります。

 この農地は、さまざまな多面的機能を有していることはもちろんでございますが、そこで生産活動が行われることによって、よりその効用が発揮されるものであります。無限の生産と永続性を有する農業を支える農地を決して荒廃させることなく、食料供給が可能な形で次世代に引き継いでいくことが大切です。

 このような考え方のもとに、何点か御質問させていただきます。

 まず、六十年前に行われた農地改革の評価についてお伺いいたします。

 昭和二十一年、戦後の混乱の中で、いわゆる農地改革が断行され、自作農の創設が行われました。地主百七十六万戸から国が農地を買い上げ、小作農四百七十五万戸が創設されました。

 しかしながら、このことは、一方で多数の零細な農家をつくり出し、生産効率の上がらない農業構造の要因となったという指摘が一方であります。その後の高度成長と相まって、農地の資産的保有傾向が強まり、農地流動化による利用集積が思うように進展しない一因となりました。

 このような農地改革を振り返り、現時点におけるその評価を農林水産大臣にお伺いしたいと思います。

 次に、農地制度の基本的な考え方についてお尋ねいたします。

 現行の農地制度においては、きちんと耕作する者に限り農地の権利取得を認めるという考え方、いわゆる耕作者主義に基づき制度が組み立てられております。この点について、所有と経営が未分離の前近代的な考え方であり、農業の近代化、発展を拒んでいるというような指摘が主に経済界、経済学者から聞かれます。

 しかしながら、農業について、他産業と同じようなシステムにゆだねてしまっては、優良な農地の確保や、担い手による活力ある農業の確立が心もとない状況になるのではないかと考えます。まして、自然を相手にしている農業については、そのように合理的な経営判断だけでは成り立たないと考えますが、農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、担い手への農地の利用集積と集落営農経営の育成についてお尋ねいたします。

 食料の安定供給の基盤となるものは、食料の生産を担う農業者の存在であります。高品質で安全な農産物を安定的に生産する農業の担い手の育成、確保が最も大切な課題であります。しっかりと国民の期待にこたえ得る担い手が農業生産の大部分を担う、そのような望ましい農業構造の確立に向け、意欲と能力のある担い手に農地の利用集積を進めていくことが急がれます。

 また、このたび改定された食料・農業・農村基本計画においては、担い手として、いわゆる認定農業者に加え、集落を基礎とした集落営農経営が位置づけられております。これは、我が国が古来、アジア・モンスーン気候の中で営々と築き上げてきた水田における独特の営農形態であり、担い手農家、兼業農家、あるいは小規模農家がお互いに協力し、田植え、収穫や水管理、草刈りなどを役割分担して行うものであります。この集落営農経営の組織化、法人化に向けた支援をしていくことが極めて重要であります。

 以上の点を踏まえ、担い手への農地の利用集積と集落営農経営の組織化、法人化を目指すための方策や支援措置について、農林水産大臣にお伺いいたします。

 最後に、農業の法人経営の問題についてお尋ねいたします。

 貴重で限りある農地は、効率的に持続して農業生産が行われなければなりません。このため、現在の制度において、農業者が主体となって農業を主として行う法人には農地の権利取得が認められております。

 一方で、平成十二年の農地法改正で、株式の譲渡制限のある株式会社について農地の権利取得を認めたほか、平成十五年からは、一般の株式会社でも、きちんと農業を行う旨の協定を市町村と結んだ上で賃借権を認め、農業に参入できるようになるなど、新しい動きも見られるところであります。

 このような中で、法人経営の資本力、経営力といったメリットを生かしながら、また一方で、農地制度の基本である、きちんと耕作する者に農地の権利を認めるとの考え方との調整をしていくことが望まれますが、この点について、農林水産大臣にお伺いいたします。

 以上、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣島村宜伸君登壇〕

国務大臣(島村宜伸君) 西川議員の御質問にお答えいたします。

 まず、農地改革の評価のお尋ねでありますが、農地改革は、戦後、地主的土地所有の構造を解体して農村の民主化を図るとともに、農業生産力の増強を図ることを目的に行われたものであります。百七十四万ヘクタールの小作地を国が買収し、その農地を四百七十五万戸の小作人へ売り渡すという大改革でありました。

 戦後復興、食糧の確保、雇用の安定が国是とされていた当時において、必要不可欠の改革であり、その後の経済社会の安定に大きく貢献したと評価しております。

 他方、この改革が、農業経営の零細性や分散錯圃という我が国の農地所有形態の要因となった面があると考えております。

 次に、農地制度の基本的考え方についてのお尋ねでありますが、農業は、通常、土地から得られる利益が他産業に比べて小さいため、農業を経営する者が農地に関する権利を取得して、みずから耕作し、そこから得られる利益を享受する形態が、農業を営むのに最もふさわしいと考えております。

 このような考え方のもと、農地の権利取得に際しては、農地のすべてを耕作すること、必要な農作業に常時従事すること、農地を効率的に耕作できることをその要件としております。

 これは、農地をきちんと耕作する者に農地の権利取得を認めるという考え方であり、これを耕作者主義と呼ぶとすれば、それは合理的なものと考えております。

 次に、担い手と集落営農経営についてのお尋ねでありますが、農業で他産業並みの所得を上げ得る経営及びこれを目指す経営を担い手とし、これらの経営が農業生産の相当部分を担う強靱な農業構造を構築することが、農政の喫緊の課題であります。

 このため、今回の法改正により、農地保有合理化事業の拡充などを通じ、担い手への農地の利用集積を加速化してまいります。

 また、家族農業経営や法人経営のみならず、小規模農家や兼業農家も参加して集落ぐるみで農業を行う集落営農を担い手として発展させていくため、行政、関係団体が一体となって集落営農経営の組織化、法人化を強力に推進してまいります。

 さらに、対象となる担い手を明確化し、その経営の安定を図る品目横断的な経営安定対策に転換することなどを初め、施策を担い手に集中化、重点化し、担い手の育成、確保に全力を挙げて取り組んでまいります。

 最後に、法人経営についてのお尋ねでありますが、法人経営は、家計と経営の分離、対外信用力の向上、事業の多角化による経営の発展など、さまざまな利点を有しております。

 しかしながら、一般の株式会社は、株式の譲渡が自由であり、農業を行うとの事業方針を立てても、これがいつでも変更される可能性があります。このため、農業の継続が図られ、かつ農業に携わる方が中核になっているなどの要件を満たす農業生産法人について、農地の権利取得を認めることを基本原則としております。

 一方で、耕作放棄地などが相当程度存在している地域においては、特区制度により、一般の株式会社などについても、きちんと農業を行うという旨の協定を市町村と締結した上で、リース方式による農業参入を認めており、今回の法案では、これを全国展開する内容を盛り込んでおります。

 このように、農地が農業の用にきちんと用いられることを担保しつつ、法人経営のメリットを生かしていくことにより、農業の発展を図っていく考えであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 鮫島宗明君。

    〔鮫島宗明君登壇〕

鮫島宗明君 民主党の鮫島宗明です。

 ただいま議題となりました農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案につきまして、民主党・無所属クラブを代表して質問させていただきます。

 本題に入ります前に、日米間の懸案である米国産牛肉の輸入再開問題に関して二、三質問させていただきます。(拍手)

 三月二十八日に、食品安全委員会のプリオン専門調査会は、約半年間の検討を経て、全頭検査の見直しについての見解をまとめました。

 この間、米国側は、日本側から米国産牛肉の輸入再開の期日が示されないことにいら立ちを募らせ、再三にわたり我が国政府に圧力をかけ続けてきたことは、皆様御承知のとおりであります。特に、米国の上下両院で対日経済措置が検討されたことは、まことにゆゆしき事態であります。

 BSE発生国がどのようなBSE対策を行うかは、各国の内政問題であり、米国側が、もし我が国に対し、牛肉輸入再開のおくれを理由に経済制裁を発動した場合は、明確なWTO規則違反になると思われます。経済産業大臣の見解をお伺いします。(拍手)

 米国産牛肉の輸入再開について、行政府は、食品安全委員会に改めてその条件を諮問することとされております。

 私は、米国のBSEに対する対応の最大の誤りは、アメリカ自身がBSE汚染国であるという自覚を欠いていることだと思います。現に、最近の米国会計検査院の検査でも、牛のえさに対し肉骨粉の規制がきいていないことが指摘されています。

 農林水産大臣は、食品安全委員会に対し、米国の肉骨粉規制の実態につき諮問することが当然だと思いますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。諮問するのかしないのか、イエスかノーかでお答えいただきたい。

 私ども政権準備党は、さきに、牛肉の履歴を明らかにすることを義務づける牛肉トレーサビリティー法を制定した際に、食品安全基本法にうたい込まれた内外同等の原則に照らし、輸入牛肉にも履歴証明を義務づけることが当たり前だと判断し、輸入牛肉トレーサビリティー法案を提出させていただきました。ところが、農林水産大臣はこの法案に反対の意向をお持ちだと仄聞いたしております。何かの間違いとは存じますが、もし反対ならば、この場で、全員の前で、その理由を明らかにしていただきたい。(拍手)

 本題に入ります。

 本日議題となった法律案は、あすの農業の担い手の姿を明確にし、担い手に農地の利用集積を図ることと、近年、中山間地域で拡大に歯どめのかからない遊休農地対策に取り組むことを柱としており、立法効果としての自給率の向上を目指しています。

 担い手の育成と担い手への農地の集積は、昭和三十六年の農業基本法制定以来の政府・自民党農政の一貫した基本方針であります。担い手の名前こそ時代とともに、中核農家から自立経営農家、専業農家、主業農家と変わり、農地の集積手法も、改正農地法から農用地利用増進法、農業経営基盤強化促進法と変わってきていますが、政策目的としては、農家に他産業並みの所得を保障し、農村に活力を与え、農業の産業としての自立を図り、食料自給率を向上させることが一貫してうたわれています。

 今回の法律でも、担い手として、従来の主業農家と生産法人に新たに集落営農という生産グループを加えることと、農地保有合理化法人に対し農地集積をしやすくするための措置が加えられていますが、基本的には、この四十年間の路線と変わりがありません。

 このたびの法改正は、今後十年、平成二十七年までの農業の達成目標を明らかにした新たな食料・農業・農村基本計画の実を上げるための改正です。しかし、基本路線を踏襲するなら、まず、今までの路線が正しかったのかどうかを検証してみなければならないはずです。

 政府・自民党が、農工間の格差是正を叫べば叫ぶほど、格差は拡大してきました。規模拡大は一向に進まず、農村に活力をと力めば力むほど、農村は疲弊してきました。自給率の向上をうたえば自給率は低下し、遊休農地の拡大にも一向に歯どめがかからないのが現状です。

 今回の法改正の効果として、政府は、一次産業、農畜水産業の総生産額が平成二十七年までにどの程度増大すると見込んでいるのか、また、農業に従事する一般農家、つまり販売農家と自給的農家を合わせた二百五十万世帯のうち何割の農家が、効率的、安定的な農業経営体に移行できると見通しているのか、農林水産大臣の見解をお伺いしたいと思います。

 また、全農業従事者のうち、他産業並みの所得が確保し得る従事者の数は今よりふえるのかどうか、あわせてお伺いしたいと思います。

 今回、新たな担い手として、目玉とされた集落営農経営体は、五年後に経理の一元化や法人化を目指すこと、将来、効率的で安定的な経営に発展していくことが見込まれることなどと極めて抽象的な規定になっており、その具体的な属性は客観的に規定されておりません。いわば、具体的な家族構成がわからないままに、家の間取りの是非を論議してほしいというような話だと思います。

 民主党の農業再生プランでは、農家の一部を担い手として期待するのではなく、地域の老若男女がそれぞれの役割を担って参加する全員参加型の営農チームを想定しています。

 農村集落では、女性が農業従事者の半数以上を占めていますが、農業委員や農業団体の役員など、営農意思決定への参加比率は五%以下と著しく低くなっています。新しい計画の中で、女性の参画支援のために今後どのような措置を講じるつもりか、農林水産大臣の見解をお伺いしたい。

 私たちが農家全体を営農主体だと考える理由は、自給率の高さと経営面積の広さが比例すると考えるからです。経営面積は、昭和四十年の七百四十四万ヘクタールから平成十五年の四百四十五万ヘクタールへと、この四十年間で四〇%減少いたしました。経営面積の減少に伴い、この間、我が国の自給率は七三%から四〇%へと減少しています。

 自給率の維持向上は、二つの意味で国民生活及び国民経済の安定にとって重要です。第一は、国際社会においてさまざまな経済交渉を進める上で、自給率は交渉力の基礎となると考えるからです。第二は、不測時の食料安全保障としての役割です。いかなる状況に陥ったときでも国民に食の不安を与えないというのが、政治の最低限の責務です。

 食料自給率が四〇%という低さは、国力の弱さを反映するものと受け取られ、経済問題における国際交渉力を低下させるものと考えますが、経済産業大臣の御見解をお聞かせください。

 政府・自民党の自給率目標は、この間、下方修正と先送りを繰り返してきました。平成二年には、平成十二年の自給率目標を五〇%に定めましたが、平成七年の見直しで平成十二年度目標を四五%へと下方修正し、平成十七年度目標も横ばいの四五%と定めました。しかし、平成十二年には、四五%の目標を平成二十二年度へと先送りし、今回の見直しにおいて、再び四五%目標を平成二十七年度へと先送りしました。

 見通しを下回った原因と責任を明らかにしないままに達成目標を提示しても、経営面積の拡大を図らない限り、自給率が上昇に転じることはあり得ず、再び先送りせざるを得なくなるのは火を見るよりも明らかです。

 経済財政政策担当大臣には、第一次産業の重要性についての質問を用意していました。しかし、大臣は本日の総務委員会における郵政民営化の集中審議を突然キャンセルし、委員会の開催を不能にしました。憲政史上初の暴挙であり、大臣としての資質を著しく欠いているものと断じざるを得ません。(拍手)

 資格を欠いている大臣に質問するわけにはいきませんので、予定質問を変更し、大臣に対しては、謝罪の上、本日のドタキャンの理由を皆の前に明らかにしていただきたいと思います。(拍手)

 民主党の農業再生プランでは、全員参加型の営農により経営面積の拡大を目指すとともに、自給率向上に寄与する小麦や大豆、菜種などの作付を拡大することにより、平成二十七年には自給率五〇%を達成するための具体的な道筋を示しています。自給率四五%の自民党と、五〇%の民主党のどちらがよいか、早い時期に国民に選択の機会を与えるべきです。

 自民党、公明党農政のもとで、遊休農地の拡大に歯どめがかからない状況が続いています。これまでも、市町村長に遊休農地の利用増進について必要な措置を勧告する権利が与えられていましたが、利用権が設定された実績は一つもありません。今回の改正で、知事に対し裁定に乗り出す権限が与えられましたが、遊休農地の発生は、労働力の不足が最大の原因です。中山間地域の活性化を図らずに知事に権限だけを与えても、遊休農地は解消しないと考えるのが自然ですが、大臣はいかにお考えでしょうか。

 中山間地域は農業を行うには不利な地域であって、農業振興だけで活力を向上させることは不可能です。活力を向上させるためには、就業機会や医療、教育サービスの提供など、政府挙げての取り組みが不可欠だと思いますが、官房長官のお考えをお聞かせいただきたい。

 世界各国の視察の体験がある議員御諸兄は、日本の自然がいかに恵まれたものであるかをよく認識していることと思います。北から南まで全島くまなく雨が降り、緑に覆われ、一年に二十四の季節を持つ国は、日本以外に存在しません。きょうは、草木の芽吹く気配を感じさせる清明という節気の始まりの日です。かけがえのない自然を慈しみ、自然との折り合いをつけながらきめ細かい農業を営むことこそ、我が国の農業者に与えられた使命です。

 カウボーイ的な発想では日本の農業を営むことができないことを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣島村宜伸君登壇〕

国務大臣(島村宜伸君) 鮫島議員の御質問にお答えいたします。

 まず、米国産牛肉の輸入再開条件の諮問に関するお尋ねでありますが、米国産牛肉の輸入再開条件の諮問については、米国産牛肉が国内産のものと安全性において差がないかについて食品安全委員会に諮問することとしております。

 飼料規制は、BSE病原体が牛から牛へ伝播することを防止するためのもので、牛肉そのものの安全性を直接確保するものではないので、これを諮問する必要はないと考えます。

 しかしながら、諮問に当たっては、米国の牛肉生産に関する情報の一環として飼料規制の実態についても資料として提出し、審議していただくことになると考えています。

 次に、輸入牛肉トレーサビリティー法案についてのお尋ねでありますが、輸入牛肉にトレーサビリティーを義務づけることについては、BSE発生国に対しては、特定危険部位の除去とBSE検査について我が国と同等の措置により牛肉の安全性が確保されれば、牛肉の安全性を直接保証するための措置ではないトレーサビリティーまで求めなくても輸入を再開し得るものと考えております。

 また、牛肉輸出国に対してトレーサビリティーを要求することは、WTO協定に抵触するおそれが高いと考えております。

 したがって、御指摘の法案については慎重に検討する必要があると考えております。

 次に、平成二十七年の国内生産額についてのお尋ねでありますが、平成二十七年度における食料の国内生産額は、地産地消や農業と食品産業との連携強化などに重点的に取り組み、国内農畜水産物の需要拡大を図ることを通じ、現状を上回る水準になるものと見込んでいます。

 次に、どの程度の農家が効率的かつ安定的な農業経営になると見込むのかとのお尋ねですが、「農業構造の展望」において、総農家数は、二十七年には二百十万戸から二百五十万戸程度になると見込んでおります。このうち、効率的かつ安定的な農業経営は、一、家族農業経営が三十三万戸から三十七万戸程度、二、集落営農経営が二万から四万程度、三、法人経営が一万程度と見込んでいます。

 効率的かつ安定的な農業経営を構成する農家数については、特に集落営農経営の場合さまざまであるため、正確に見通すことは困難ですが、行政と関係団体が一体となって集落営農の組織化に努めてまいります。

 次に、他産業並みの所得を確保し得る農業従事者数のお尋ねですが、効率的かつ安定的な農業経営の中で他産業並みの所得を確保し得る農業従事者の数については、法人経営、集落営農経営といった経営形態や、経営内における所得の分配方法などがさまざまであるため、これを正確に把握することは困難であります。

 いずれにせよ、今後、やる気と能力のある担い手が農業生産の相当部分を占める農業構造の確立に向けて、最大限の努力をしてまいります。

 次に、女性農業者の参画支援についてのお尋ねでありますが、女性は農業就業人口の過半を占めるなど、農業、農村の担い手として重要な役割を果たしております。

 このため、新たな基本計画の中でも、女性の農業経営や地域社会への一層の参画を促進することとしており、女性の農協役員、農業委員などの参画目標の設定とその達成に向けた普及啓発の推進、優良事例に関する情報提供や研修会の開催に積極的に取り組んでまいります。

 最後に、遊休農地対策のお尋ねでありますが、今回の改正法案においては、耕作放棄地対策として、都道府県や市町村が耕作放棄地の所有者などに対し、担い手への貸し付けなどの指導を行い、指導に従わない場合には、知事の裁定により賃借権を設定できるよう措置しております。

 また、耕作放棄地が周囲の営農に支障を及ぼしている場合には、市町村長が草刈りなどの措置命令を発することができるようにしております。

 さらに、耕作放棄地などが相当程度存在する地域において、一般の株式会社などがリース方式により農業参入を可能とする仕組みを全国的に展開することとしております。

 これらの措置により、耕作放棄地対策に取り組んでいく所存であります。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 鮫島議員にお答え申し上げます。

 米国産牛肉の輸入再開問題にかかわる米国の対抗措置についてのお尋ねですが、現時点におきましては、米議会もしくは米国政府において対抗措置の発動が決定されたわけではなく、また、その具体的な内容についても明らかにされておりません。なお、米国政府は、対抗措置ではなく、話し合いを通じた問題解決を図るとしております。

 したがいまして、現時点で米国の措置がWTO違反かどうかの判断はできかねておりますが、いずれにいたしましても、米国議会及び米国政府の動向を今後とも注視してまいりたいと存じております。

 次に、食料自給率の低下と国際経済問題の関係についてのお尋ねでございますけれども、食料自給率低下が交渉力低下につながるかは、食料需給や国際情勢にも依存し、一概には言えませんが、国際競争力のある農業の確立は、我が国の交渉力の向上に寄与する面が大きいと考えられます。

 私といたしましても、農政改革の推進を通じた我が国農業の競争力強化に期待するとともに、我が国農産品の販路拡大につながる通商政策を積極的に展開してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣細田博之君登壇〕

国務大臣(細田博之君) 中山間地の振興についての鮫島議員の御質問にお答え申し上げます。

 中山間地域の振興につきましては、政府を挙げて、関係府省が連携をとって社会資本の整備を進めること、そして、平成十七年度予算に政府の政策群の一つとして都市と農山漁村の共生、対流の推進を位置づけることなどの施策を講じてきたところであります。

 先般、閣議決定いたしました新たな食料・農業・農村基本計画におきましても、中山間地域が他の地域と比べ過疎化、高齢化の進行が著しいことを踏まえ、就業機会の増大、多面的機能の確保や定住の促進のための施策を総合的に講じる旨を盛り込んだところであります。

 私自身も、島根県という大変な日本一の高齢地域、しかも中山間地も多く、過疎、高齢化の農村を抱えた地域の選出でありますので、鮫島議員の御指摘は極めてごもっともであると考えております。特に、兼業機会が次々と縮小しておることなど、地域の大きな問題を抱えておることも承知しておるつもりでございます。

 今後とも、御指摘のように、総理が本部長となった食料・農業・農村政策推進本部におきまして、政府が一体となって、御指摘のような点を含めまして、対策に取り組み、中山間地の振興に取り組んでまいりたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 鮫島議員にお答えを申し上げます。

 ドタキャンしたのではないかという御指摘でございますが、そんな事実があったとは認識をしておりません。

 私は、内閣委員会が中心ですが、その他の委員会につきましては、これは国会運営の問題でございますから、与野党合意の上で、私が出席する必要があるとの判断がなされたものについては、当然のことながら、きちんと対応をさせていただきます。しかしながら、今般そのような合意がなされていたとは、私は承知をしておりません。

 いずれにしましても、引き続き、担当大臣として、国会を含めて、しっかりと説明責任を果たしていきたいと考えております。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       農林水産大臣  島村 宜伸君

       経済産業大臣  中川 昭一君

       国務大臣    竹中 平蔵君

       国務大臣    細田 博之君

 出席副大臣

       農林水産副大臣 岩永 峯一君


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