衆議院

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第9号 平成18年2月23日(木曜日)

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平成十八年二月二十三日(木曜日)

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  平成十八年二月二十三日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。外務大臣麻生太郎君。

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明させていただきます。

 政府は、日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う経費の日本側による負担を図り、日本国における合衆国軍隊の効果的な活動を確保するためこの協定を締結することにつき、平成十七年二月以来アメリカ合衆国政府と協議しつつ、検討を行ってまいりました。その結果、最終的合意に達しましたので、平成十八年一月二十三日に東京で、先方ゼーリック国務副長官との間でこの協定に署名を行うことに至った次第であります。

 この協定は、日本国が、日本国に雇用されて合衆国軍隊等のために労務に服する労働者に対する一定の給与の支払い及び合衆国軍隊等が公用のため調達する電気などの支払いに要する経費を負担すること、並びに日本国政府の要請に基づき、アメリカ合衆国が合衆国軍隊の行う訓練を他の施設及び区域を使用するよう変更する場合に、その変更に伴って追加的に必要となります経費を負担することを規定することとともに、アメリカ合衆国がこれらの経費の節約に努めることなどを規定いたしております。この協定は、二〇〇八年三月三十一日まで効力を有するものとされております。また、この協定は、現行の協定が本年三月三十一日まで効力を有することとなっておりますので、本年四月一日に発効する必要があります。

 この協定の締結は、日米安全保障条約の目的達成のため日本国に維持されている合衆国軍隊の効果的な活動に資するものであり、ひいては日米関係全般並びに我が国を含むアジア太平洋地域の平和及び安定に重要な意義を有するものと考えられます。

 以上が、この協定の締結について承認を求めるの件の趣旨であります。(拍手)

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 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小野寺五典君。

    〔小野寺五典君登壇〕

小野寺五典君 自由民主党の小野寺五典です。

 私は、自由民主党、公明党を代表しまして、ただいま議題となりました在日米軍駐留経費負担特別協定につきまして、外務大臣及び防衛庁長官に対して質問を行います。(拍手)

 初めに、我が国の周辺情勢についてお伺いします。

 ポスト冷戦下のアジア太平洋地域の情勢は、中国の軍備近代化、北朝鮮の核開発に加え、テロや大量破壊兵器の拡散など新たな脅威もあり、不安定な状況が依然として続いております。このような状況のもと、在日米軍の抑止力を維持することは、我が国の平和と安全に不可欠なことです。しかし、我が国は、国債発行残高が約七百七十五兆円に達しており、極めて厳しい財政状況にあることも事実です。

 このような内外情勢において、政府は、近年のアジア太平洋地域の状況をいかに評価され、また、在日米軍の抑止力が具体的にどのような脅威の抑止に役立つとお考えなのでしょうか、外務大臣及び防衛庁長官に伺います。

 次に、具体的な我が国周辺情勢についてお伺いいたします。

 日米両国は、歴史的に海洋国家として発展し、貿易やエネルギーの確保を海上交通に依存しておりますが、このような日米両国にとって、中国の軍備増強は今や無視できない動きとなっています。本年二月三日に公表された、米国の四年ごとの国防計画見直しでありますQDRでは、中国を、破壊的な軍事技術を行使する、最大の潜在力を有する国と評価しています。政府としては、今後の対中政策についてどのような見解をお持ちなのでしょうか、外務大臣及び防衛庁長官に伺います。

 次に、在日米軍再編と基地問題について質問します。

 私は、本年一月、衆議院外務委員会の派遣団として沖縄へ視察に参りました。現地においては、在日米海兵隊司令官と懇談を行い、さらに普天間基地の移設予定地である辺野古沿岸を視察するなど、沖縄における在日米軍の現状について、自分の目で確認する機会を得ました。

 改めて申すまでもなく、沖縄は第二次世界大戦において我が国唯一の地上戦が行われ、現在でも、在日米軍基地の七五%が沖縄に集中しています。この痛みを日本国民がひとしく感じ、十分な対応をとらなければならないことは言うまでもありません。しかし、昨年十月に公表された在日米軍再編の中間報告については、沖縄を初め全国各地の米軍基地を抱える自治体、住民の方々から、さまざまな不満の声が上がっています。

 政府としては、在日米軍再編に関する地元住民の不満に対してどのような認識を持っているのか、また、今後基地負担の軽減にいかにして取り組んでいこうとされるのか、外務大臣及び防衛庁長官の答弁をお願いいたします。

 次に、防衛施設庁をめぐる談合事件についてお伺いします。

 厳しい財政事情の中で捻出している在日米軍駐留経費を、施設整備などを通じて実際に執行しているのは防衛施設庁です。しかるに、本年一月、元技術審議官らの逮捕にまで発展した防衛施設庁発注の空調工事にかかわる談合事件により、その信頼性がかつてなく揺らいでおります。防衛施設庁をめぐる事件はこれが初めてではなく、その不正の根の深さに改めて遺憾の念を強くしています。

 今後、在日米軍再編が本格化すれば、移転に伴う建設工事など、大量に発生します。防衛施設庁の信頼回復なくして、国民の皆さんからの血税に支えられたこのような大事業を任せることは到底できません。防衛庁長官は、国民の信頼を一日も早く回復するため、どのような決意で取り組もうとされているのか、答弁をお願いいたします。

 次に、我が国が置かれた情報戦争の現状について伺います。

 最近、我が国の防衛機密が脅かされている事件が相次いでいます。上海の総領事館員が中国当局から暗号情報の提供を強要され自殺するという、いわゆるハニートラップ事件。この問題は、外務省が事件を隠ぺいした疑いや、他に同様な事件による機密漏えいがなかったかという疑念が国民の中で大きく広がっています。この問題に対する調査の徹底と再発防止について、外務大臣に伺います。

 また同様に、陸上自衛隊のミサイル開発データが朝鮮総連傘下の在日本朝鮮人科学技術協会に漏えいしていた事件。昨日発覚した、海上自衛隊の機密データがネット上に流出した事件。民間においても、ヤマハ発動機による無人ヘリコプターの対中不正輸出事件など、外務省、防衛庁はもとより、民間企業においても、外交や防衛に関する機密に対して情報管理のずさんな実態は、危機的状況にあると言わざるを得ません。

 我が国の機密情報管理がこのような状況では、同盟国である米国が我が国への情報提供をためらうことは想像にかたくなく、日米安保体制の信頼を揺るがすおそれさえあります。したがって、我が国は、これまでの機密保全体制を抜本的に見直し、機密保全のための法整備、さらに、相手方の情報収集に対抗するカウンターインテリジェンス、防諜部門の強化が必要不可欠であります。

 我が国を取り巻く情報戦争の現状と、これに日本が勝ち残っていくための施策について、政府はどのような認識を持っていらっしゃるか、外務大臣及び防衛庁長官の答弁をお願いいたします。

 最後に、我が国の最重要政策の一つであるイラクへの自衛隊派遣についてお伺いいたします。

 最近の報道では、政府が陸上自衛隊のイラクからの撤退を本年三月末から開始することを決定したと伝えられていますが、そのような事実はあるのか、最初に確認したいと存じます。

 仮に近日中にイラクから撤退する場合には、自衛隊員の安全確保に万全を期すことが最重要です。兵を出すときより兵を引くときの方がはるかに難しいことは、古来より兵法の常です。イラクの人々に一度も銃口を向けることなく、すべての自衛隊員が安全に帰国するためにどのような検討を行っているのか、防衛庁長官に伺います。

 さらに、このことは、日米あるいは日本・イラク関係に与える影響を考慮しなければなりません。自衛隊の撤退が、良好な日米関係にさざ波を立てたり、あるいは自衛隊員の労苦の上に築かれたイラクとの友好関係を冷え込ませるようなことは、絶対に避けなければなりません。イラクからの自衛隊撤退には、安全面のほか、このような外交的な配慮も不可欠と考えられます。

 我が国として、今後のイラク復興支援に取り組む政府の見解を、外務大臣及び防衛庁長官に伺います。

 戦後日本の基礎を築かれた吉田茂首相は、晩年に外交の要諦を次のように言っています。外交は、小手先の芸でもなければ権謀術数でもない。大局に着眼して、人類の平和、自由、繁栄に貢献する覚悟を持って主張すべきは主張し、妥協すべきは妥協する。これが真の意味での外交である。

 日本が外交を通じて、世界の平和と繁栄に一層貢献できることを心から願って、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 小野寺議員から六問ちょうだいをいたしております。

 まず、アジア太平洋の地域情勢並びに在日米軍の抑止力についてのお尋ねがあっておりました。

 アジア太平洋地域、御指摘のありましたように、冷戦終了後も、地域紛争、大量破壊兵器やミサイルの拡散等、依然として不安定で、かつ不確実な状況が存在をしております。このような状況のもとで、日米安全保障条約を引き続き堅持し、米軍の抑止力のもと日本の安全を確保することが必要であり、高い機動性を有する在日米軍の抑止力は、我が国及び地域の平和と安定にとって不可欠な役割を果たしていると認識をいたしております。

 次に、先般公表されました米国のQDRにおける中国についての評価及び中国の今後に関する私の見解につきお尋ねがありました。

 米国のQDRにおきましては、中国の軍事力近代化や不透明性を指摘しつつ、中国がアジア太平洋地域において建設的かつ平和的な役割を果たすことを促し、中国が責任あるステークホルダーとして出現することが米国の目標であるとしている点に注目をしております。

 日本としても、中国が地域及び国際社会において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎すると同時に、中国の軍事力の近代化や国防費については、透明性の向上が重要であると考えております。このような認識は、昨年二月の2プラス2の際にも、日米両国の地域における共通戦略目標として認識をされております。

 次に、在日米軍再編についてのお尋ねであります。

 在日米軍の兵力態勢再編は、在日米軍の抑止力の維持と地元の負担の軽減の観点から検討してきたものでありますが、その内容につき、関連する地方公共団体や住民の方々に厳しい御意見があることは、重々承知をいたしておるところであります。

 現在、本年三月の在日米軍の兵力態勢再編についての具体案の最終的な取りまとめに向け、米側との協議を進めているところであります。関係する地方公共団体等の理解と協力が得られるよう、引き続き説明に努めてまいらねばならぬと思っております。

 次に、上海総領事館館員の自殺問題に対する調査の徹底と再発防止についてのお尋ねがあっております。

 本件につきましては、事件発生直後より、我が方としてできる限りの調査を行い、中国政府に対し、厳重な抗議を行うとともに、事実関係の究明を求めてきております。

 また、本件における機密漏えいの可能性につき、本件の発生後、関係全公館に対し外務省より専門家を派遣し、徹底的な調査を行った結果、暗号システム等の情報が漏えいしたことはないことを確認いたしております。

 再発防止策につきましては、情報防護を含みます秘密保全体制の点検及び周知徹底を図るために、研修等の強化をさらに行ってまいろうと思っております。

 次に、議員の御指摘、いわゆる情報戦争に関しましては、我が国が行っている情報活動の内容につき具体的に述べることは差し控えさせていただきますが、外務省として、本省及び在外公館のさまざまなソースを最大限に活用して、広範な関連情報の収集並びに分析を行っております。

 対外情報機能は、戦略的かつ強力な外交を展開していく上で重要な基盤であります。外務省として、本国及び在外公館の双方において、情報防護を含む秘密保全体制の強化に努めるとともに、対外情報収集・分析機能の強化をさらに行ってまいりたいと存じます。

 最後に、イラク復興支援のあり方についてお尋ねがあっておりました。

 現時点で、自衛隊を撤収するか否かを含め、何ら決定をしておりません。その上で、我が国のイラク復興支援のあり方について言えば、我が国は、イラクを民主的で安定的な国家として復興させることを目標として、引き続き積極的に支援を行う方針であります。

 自衛隊につきましては、フセイン政権の圧制と政権崩壊後の混乱の中で生活基盤が機能していない状況にかんがみ、医療や公共施設等の復旧、整備の活動を実施しております。今後、イラク人自身がみずからの手で、力で復興を行い得るようになれば、いずれ自衛隊が復興支援活動を行う必要はなくなると考えております。

 ODAにつきましては、当面の支援である十五億ドルの無償資金協力はすべて決定をし、現在、次々に現地で支援が成果を上げつつあると存じます。さらに、イラク人自身による本格的な経済活動の基盤整備のため、電力や運輸等のインフラ整備を含みます三十五億ドルの円借款を中心とする支援策を本格的に進めてまいります。

 今後、イラクの治安が改善していけば、ODAによる援助が一層円滑に実施されるとともに、NGOによる支援、さらには、長期的には民間企業の活動が進み、イラクがみずからの力で復興していくことが期待されると思っております。(拍手)

    〔国務大臣額賀福志郎君登壇〕

国務大臣(額賀福志郎君) 小野寺議員にお答えをいたします。

 外交、安全保障については、基本的には麻生外務大臣と認識を共有しております。

 まず、アジア太平洋地域の情勢及び在日米軍の抑止力についてのお尋ねがありました。

 アジア太平洋地域においては、地域の安定化に向けた努力が見られる一方、冷戦終了後も、軍事力近代化の動きや領土問題などが引き続き存在するほか、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散など、依然として不安定で不確実な状況が存在をしております。

 このような状況の中で、日米安保体制を引き続き堅持し、米軍の抑止力の中で日本の安全を確保していくことが必要であり、高い機動性を有する在日米軍の抑止力は、我が国及び地域の平和と安定にとって不可欠な役割を果たしていると認識をしております。

 特別協定に基づく負担を含め、在日米軍駐留経費負担は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保のために重要な役割を果たしているものと思っております。

 次に、先般公表された米国のQDRにおける中国の評価及び中国の軍事力の見通しについてのお尋ねであります。

 先般公表されたQDRにおいて、中国を戦略的岐路にある国家の一つとし、その軍事的な潜在能力に着目した記述がなされておりました。

 我が国といたしましては、防衛計画の大綱にも記述してありますとおり、中国の核・ミサイル戦力及び海空軍力の近代化を推進している姿を見ており、このような動向には今後も注目をしていく必要があると認識しております。また、近年、国防費の総額が大幅に増大していることを考慮すれば、今後も中国の軍事力の近代化が推進されていくものと思っております。

 次に、米軍再編に係る地元の方々の不満と今後の基地負担軽減のための取り組みについてお尋ねがありました。

 在日米軍の兵力態勢再編については、地元地方公共団体を含め、国民の理解なくしては実行することが不可能であるという認識を持っております。

 このため、私自身、関係地方公共団体を訪問し、共同文書の内容や方向性について丁寧に説明をしております。その際、基地ごとの個別の施策につきまして、基地機能強化や騒音の拡大等を理由として、受け入れられないという厳しい意見があることも承知をしております。

 しかしながら、昨年十月の2プラス2共同文書は、在日米軍の抑止力の維持と地元の負担軽減を図るために最適と判断した結果であり、本年三月の具体案の最終的な取りまとめに向けまして、日米間の協議を加速しております。早急にその具体的な内容を詰め、地元の皆さん方に理解と協力を得るために全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

 次に、防衛施設庁の談合事件についてのお尋ねがありました。

 私といたしましては、今回の事案において、防衛施設庁の幹部職員などの逮捕者が出ましたことは、まことに国民の信頼を裏切る行為であり、ざんきにたえず、事態を深刻に受けとめているところであります。

 今後、行政上、組織上の問題点をすべて洗い出し、国民の目線で一点の疑いもないように、真に実効性のある再発防止策を確立して、国民に信頼される政策官庁としての新しい防衛庁の出発を期したいというふうに思っております。

 この考えに基づきまして、検察当局に協力し真相究明に努めるのはもちろんのこと、私の統括のもと、防衛施設庁長官、木村防衛副長官を中心として、調査委員会、検討委員会において抜本的な対策を立ててまいりたいと思っております。

 次に、イラクに派遣されている陸上自衛隊の撤収時期についてお尋ねがありました。

 イラクにおきましては、昨年十二月十五日に国民議会選挙が実施をされまして、新政府樹立に向けての取り組みが行われている極めて重要な時期にあります。自衛隊の活動の終了時期についてあらかじめ決めておくというようなわけにはまいりません。

 いずれにいたしましても、政府としましては、今後、自衛隊の活動について、国民議会選挙の実施及び新政府の樹立などイラクにおける政治プロセスの進展の状況、及びイラク治安部隊への権限移譲などの現地の治安に係る状況、さらにムサンナ県で任務についている英国軍及び豪州軍を初めとする多国籍軍の活動状況、あるいはまたその構成の変化などをよく注意深く見ながら、現地の復興の状況等々もあわせて勘案をし、適切に対応していきたいというふうに思っております。

 次に、イラク撤収時の安全確保についてのお尋ねがありました。

 防衛庁といたしましては、部隊を派遣している以上、一般論として部隊の撤収に要する時間、撤収の要領等について検討を行っていくことは当然のことであります。PKOでのこれまでの経験などを生かしながら、必要な検討を以前から粛々と行っているところであります。撤収の決定がなされていない以上、具体的な撤収作業の詳細について、いまだ何も決まっていないということを申し上げておきたいと思います。

 いずれにいたしましても、イラク派遣部隊の安全確保につきましては、撤収時に限らず、各種の不断の検証を行いながら、引き続き万全を期して安全を確保してまいりたいというふうに思っております。

 さらに、今後のイラク復興支援に対する取り組みについてのお尋ねがありました。

 我が国は、イラクの平和と安定が我が国の国益にかなうとの観点から、自衛隊を現地に派遣し、人道復興支援活動を実施してまいったわけであります。

 現時点におきましては、自衛隊は撤収するか否かを含め、何ら決定しておりませんけれども、その上で、我が国のイラク復興支援のあり方につきまして言えば、イラク人の自立のために、民主的で安定的な国家として復興させるために、引き続き積極的に支援を行っていくことが望ましいというふうに思っております。

 さらに、情報戦争について、日本が勝ち残っていくためにはどうしたらいいかということについてのお尋ねがありました。

 我が国の安全保障を全うしていくためには、効果的な情報の収集及び分析とともに、きちっとした秘密情報の漏えい防止等の情報保全が完璧でなければなりません。

 防衛庁といたしましては、各種秘密保全制度の着実な運用や隊員への保全教育の徹底など、情報保全に万全を期すべく、引き続いて取り組んでまいりたいと思っております。小野寺議員の提言もありますので、引き続いて我々もしっかりと秘密保全体制の整備に努力してまいりたいと思っております。

 以上であります。(拍手)

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議長(河野洋平君) 山口壯君。

    〔山口壯君登壇〕

山口壯君 民主党の山口壯です。

 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の在日米軍駐留経費負担特別協定について質問します。(拍手)

 このいわゆる思いやり予算というのは、苦肉の策でしょうが、同盟政策を金で済まそうという名残が感じられるし、何よりも、我が国がみずから秩序をつくろうという志が感じられません。幾つもの違和感があります。

 まず第一に、我が国は、みずからの防衛費を削りながら、この思いやり予算を面倒見続けているわけですけれども、アメリカは、国防費を過去何年もふやし続けています。

 近年、我が国は、ほぼ一貫して防衛費を減らしています。主要装備も減らしている。戦車は、平成七年の大綱で九百両だったものが、今の新防衛大綱では六百両に、護衛艦も五十隻から四十七隻に、そして戦闘機も三百機から二百六十機に減るわけです。我が国の防衛費より在日米軍の駐留経費負担の方が大事なのか。

 特に、前回の特別協定の国会審議は五年前、二〇〇〇年の秋、すなわち、二〇〇一年の九・一一同時テロ事件の前でした。九・一一前は日本は金で済ます面があったかもしれないけれども、九・一一後は、ショー・ザ・フラッグと言われてインド洋へ自衛艦を派遣し、ブーツ・オン・ザ・グラウンドと言われてイラクへ陸上自衛隊を派遣するよう踏み切ったわけで、前回二〇〇〇年に議論をしたときと比べて、我が国は金だけでなく実際に人を出しているという意味で、日米関係が質的に変化している状況があります。それをすべて是とするものではないにせよ、従来からの経費負担を機械的に継続することが適当なのかどうかは、よく吟味せねばなりません。

 今回も同じように請求書を突きつけられて、オーケーするのかどうか。我が国がみずからの防衛費を削っている中で、前回同様、思いやり予算によって在日米軍の駐留経費の面倒を見なければならないとする基本的哲学は何なのか。外務大臣、基本的哲学について所見を求めます。(拍手)

 第二に、今回の思いやり予算は、もともと地位協定では読めないものです。そして、日米地位協定は、一九六〇年に締結されて以来、一度も改定されていません。

 それならば、その場しのぎの、そのたびごとの特別協定によってではなく、ホスト・ネーション・サポートを真っ正面から新しい地位協定の中に書き込み、対応することが本筋かつ望ましいのではないか。そして、アメリカにも裁判権の問題等、譲るところは譲らせる、それが外交でしょう。

 地位協定の改定なしに、運用でもって改善するというその場しのぎのやり方は、既に限界に来ている。裁判権の問題等含めて、地位協定の改定交渉をすべきです。外務大臣の答弁を求めます。

 第三に、そもそも思いやり予算は、我が国の安全保障をアメリカに守ってもらうという発想が根底にあるわけで、いわゆる核の傘もそのような発想の一環ですが、今、果たして日本の安全保障について、本当にアメリカ任せでいいのかどうか。

 例えば、小泉内閣がイラクへの陸上自衛隊の派遣を決めた際には、いざというときに北朝鮮から守ってもらわねばならないからということも大きな要因だったでしょうが、アメリカは、北朝鮮の核・ミサイル問題を六カ国協議という形で中国に丸投げしてしまっており、何もしていないわけです。のみならず、北朝鮮を攻撃しないと言ってしまっているわけですから、アメリカの核の傘は実質上なくなっているかもしれないと覚悟しなければなりません。

 北朝鮮は、既に核弾頭を何発も持っている。そして、毎年ふやしています。ミサイル防衛についてその技術的欠陥が種々議論されることもあわせて、我が国の安全保障について、本当にアメリカ任せで大丈夫か、我々はそろそろ、ギブ・ミー・チョコレートの世界から目覚めるべきではないのか。外務大臣の所見を求めます。(拍手)

 第四に、今回の特別協定に密接に関連するものとして、沖縄海兵隊のグアム移転にかかわる費用の話があります。米軍再編の一環として海兵隊がグアムに移転することに伴う経費を分担するのかどうかという話です。

 しかし、グアムの海兵隊は、在日米軍ではないわけですから、これまでのように在日米軍に関する地位協定、特別協定ではカバーできません。

 約八千億円の経費分担が日米当局間で議論されていると言われますけれども、外務大臣に質問します。そもそも、外国に駐留していた米軍がどこか他国に移転するとき、その移転経費を出した前例が世界のどこかにあったでしょうか。私は、寡聞にして聞いたことがありません。

 今、原理原則があいまいになってしまっていないか。米軍の何を日本が負担すべきか、何を面倒見ることが日本として正しいのか。沖縄の負担を軽くするためと言えば、いかにもそれらしく聞こえるけれども、果たして、何から何まで面倒を見るのが我が国のあるべき同盟政策なのか。

 誇りある日本の同盟政策として、グアムに米軍のための住宅を建てたり、レクリエーション施設をつくったり、病院、学校、育児所、銀行、郵便局、果てはガソリンスタンドからスーパーマーケットなどなど、本当に負担するのかどうか。これは一体どういう経費なのか。沖縄からの立ち退き料ですか。同盟の考え方から余りにもかけ離れている。まるで、属国が宗主国に貢ぎ物をするような構図にも見えてしまう。このような経費分担をアメリカ政府が当然のことのように言うこと自体、おかしい。自分の出身でもあり、これは私情において言うに忍びないけれども、外務省も、アメリカにこんなことを言わせるようでは、どうかしている。

 これは思いやり予算ではなく、アメリカが、日本はどうせ言うことを何でも聞くだろうとたかをくくって、思いつきで突きつけている、思いつき予算とでも呼ばれるようなものです。(拍手)

 昨年十月のいわゆる2プラス2の文書で、日本国政府は、「米国政府と協力して、これらのグアムへの移転を実現可能とするための適切な資金的その他の措置を見出すための検討を行う。」となっています。しかし、このような新しい法的枠組みを要するであろう支出について、国会の議論を経ずして事実上のコミットメントがなされてしまっていることは、極めて問題ではないですか。シビリアンコントロールの観点からも憂慮にたえない。

 日本は属国にあらず。昔の吉田茂なら、アメリカにそんなことは言わせなかったはずだ。そうだ、吉田茂首相は、麻生大臣のおじいさんに当たられるんですね。

 麻生大臣、当時の吉田茂首相は、今の地位協定の前身である行政協定の交渉に当たって、アメリカ側から、統合司令部、ユニファイドコマンドという概念を、NATOのような概念を突きつけられたわけです。これは、有事のときには米軍の司令官が日米全軍を指揮するというものです。吉田茂首相は、日本は対等の同盟関係を望むから、これについては一切受け付けられないと最後まで突っ張りました。アメリカは、それなら安保条約も講和条約も上院で批准しないぞ、ほごにするぞ、そこまでの圧力を受けながら、最後まで突っ張ったわけです。がつんとやったわけです。小泉総理対ブッシュ大統領の関係とは大分違いませんか。

 麻生大臣、吉田茂首相のDNAをぜひ思い起こしていただいて、このグアムの話についてはアメリカとがつんとやらなきゃいけない。この点についての麻生外務大臣の対処方針についてお聞かせください。(拍手)

 そして、グアムに移転する海兵隊について、その移転にかかわる経費負担を見ようとする場合に、在日米軍に関する地位協定も特別協定も当てはまらないとしたら、どのような枠組みにより対応できるとお考えか、外務大臣の見解を求めます。

 さて、最後に、思いやり予算に関しては、極めて残念ながら、防衛施設庁の官製談合問題が絡みます。

 額賀防衛庁長官、今、施設庁の長官、北原さんが事実の究明に努めていると聞きます。私も、外務省から防衛庁に出向させてもらって運用課にいたときに、北原さんがちょうど調査一課の専任部員でした。そして、大韓航空機撃墜事件の後始末を一緒にやってから、北原さんの高潔な人格、そして立派な人柄については毫の疑いも持っていません。しかし、また、ともに苦労したあの当時の防衛庁の仲間を思い起こすと、これも言うに忍びないけれども、今回の官製談合の事件があったからには、防衛庁の省への昇格の問題についても見送らざるを得ないのではないか。額賀長官の所見を伺います。

 相対性理論のアインシュタインが次のような言葉を残したと言われています。

 近代日本の発展ほど世界を驚かせたものはない。一系の天皇をいただいていることが、今日の日本をあらしめたのである。私は、このようなたっとい国が世界に一カ所ぐらいなくてはならないと考えていた。世界の未来は進むだけ進み、その間、幾度か争いは繰り返されて、最後に戦いに疲れるときが来る。そのとき人類は、まことの平和を求めて、世界的な盟主を挙げなければならない。この世界の盟主は、武力や財力ではなく、あらゆる国の歴史を超えた、最も古くてまたたっとい家柄でなくてはならない。世界の文化は、アジアに始まってアジアに帰る。それには、アジアの高峰、日本に立ち戻らねばならない。我々は神に感謝する。我々に日本というたっとい国をつくっておいてくれたことを。

 アインシュタインは、日本が人類の平和実現のための世界の盟主であると言い切ったわけです。アインシュタインが正しかったことを証明できるように、あすのアジアと世界についての確たる願いを持った日本としての誇り高い安全保障政策に少しでも近づくためのスタートに、今回の議論がつながればと心から願って、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 山口議員から五問ちょうだいをいたしております。

 まず、インド洋及びイラクへの自衛隊派遣と在日米軍駐留経費負担との関連についてのお尋ねがあっております。

 我が国は、国際安全保障環境の改善のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に取り組むために、テロ特措法、イラク特措法等に基づく活動を行っておりますが、これは、日米安保体制とは別問題として議論されるべき問題だと思っております。

 在日米軍駐留経費の負担は、あくまで、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用の確保のために、我が国として適切な水準を負担しているものと考えております。

 次に、地位協定についてのお尋ねがありました。

 政府としては、現行特別協定終了後も、これまでと同様に、日米両国を取り巻く現下の諸情勢を総合的に勘案の上、地位協定第二十四条に定めております経費負担の原則は原則として維持しつつ、暫定的、限定的な措置を定めるものとして、新たな特別協定の締結をすることが適当であるとの判断を改めて行ったものであります。

 政府としては、現時点において、これ以外の措置をとることを検討しておりません。地位協定第二十四条に定める経費負担の原則それ自体を変更することは考えていないということであります。

 また、日米地位協定について、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるとの考えのもと、刑事裁判手続を初め運用の改善に努力を行っております。今後とも、運用改善の成果を積み上げていくように努力してまいりたいと思っております。

 次に、米国の核抑止力と我が国の安全保障政策に関するお尋ねがありました。

 日本は、日米安全保障体制を堅持しつつ、みずからの努力として適切な防衛力の整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定を確保するため外交努力を行うことを安全保障政策の基本としており、引き続き、これらによりまして日本の安全を確保してまいりたいと考えております。

 核抑止力につきましては、米国は、日米安全保障条約上、我が国に対する武力攻撃がある場合には我が国を防衛する義務を負っておりまして、核抑止力を含めた米国の抑止力は、我が国の安全を確保する上で極めて重要な役割を果たしていると考えております。

 次に、米軍移転経費を負担した前例に関するお尋ねがありました。

 我が国としては、駐留米軍の撤退に際し、我が国以外の米国の同盟国がいかなる財政的支援を行ってきたかについて申し上げる立場にはありません。その上であえて申し上げれば、これまで承知している範囲において、御指摘のような事例はありません。

 最後に、海兵隊のグアム移転に関する経費負担の枠組みについてのお尋ねがありました。

 日米間では、兵力態勢の再編に関し、今年三月末までに最終取りまとめを行っていくための協議を行っているところであります。沖縄にとって大きな負担の軽減となります、在沖縄海兵隊司令部の要員及びその家族のグアムへの移転をなるべく早く実現するために、我が国としても資金的な措置を含め検討しているところでありますが、我が国が行う具体的な措置につきましては、その枠組みを含め、現時点では何ら決定されておりません。(拍手)

    〔国務大臣額賀福志郎君登壇〕

国務大臣(額賀福志郎君) 山口議員にお答えをいたします。

 防衛庁の省移行の問題でございます。

 山口議員、言うことは忍びないけれどもということに惻隠の情を感じるわけでありますけれども、あなたがおっしゃるように、近年、防衛庁・自衛隊の任務、役割というものはますます内外ともに拡大をし、国際的にも国民の皆さんからも高く評価をされているものと思っております。

 そういう意味では、諸外国と同じように、防衛庁を省と位置づけまして、主務大臣を置いて、シビリアンコントロールのもとに、安全保障や内外の国際平和協力活動あるいは災害対策等々において、これからもしっかりと汗を流していくことが求められているものと思っております。(拍手)

 しかし、残念ながら、今回の施設庁の事案というものは、国民の皆様方の期待を裏切ることになっておりまして、私といたしましては、まずこの問題がなぜ起こったかということについて、行政上、組織上の問題点を洗い出し、二度と再びこういうことが起こらないように、新しい防衛庁の出発をして、国民の信頼を取り戻したいと思います。

 その上に立って、皆さん方の協力を得ながら、今国会中にも、与党内、国会の中で議論をしていただいて、省移行の問題をしっかりとスタートしていただきたいというふうに思っておるものであります。

 以上です。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣  麻生 太郎君

       国務大臣  額賀福志郎君

 出席副大臣

       外務副大臣 塩崎 恭久君


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