衆議院

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第22号 平成18年4月13日(木曜日)

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平成十八年四月十三日(木曜日)

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 議事日程 第十六号

  平成十八年四月十三日

    午後一時開議

 第一 電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 国有財産の効率的な活用を推進するための国有財産法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 国有財産の効率的な活用を推進するための国有財産法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び消費者契約法の一部を改正する法律案(菊田真紀子君外三名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長中谷元君。

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 電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔中谷元君登壇〕

中谷元君 ただいま議題となりました電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、高度情報通信ネットワーク社会の形成、ブロードバンドゼロ地域解消に寄与するため、光ファイバー等の高度通信施設等の整備を促進する措置を引き続き講ずる必要があることから、電気通信基盤充実臨時措置法の廃止期限を平成二十三年五月三十一日まで五年間延長しようとするものであります。

 本案は、去る四月四日本委員会に付託され、四月六日竹中総務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。昨十二日、質疑を行い、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 国有財産の効率的な活用を推進するための国有財産法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、国有財産の効率的な活用を推進するための国有財産法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長小野晋也君。

    ―――――――――――――

 国有財産の効率的な活用を推進するための国有財産法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小野晋也君登壇〕

小野晋也君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国有財産の一層の効率的な活用と売却を推進するため、国有財産制度について所要の改正を行うものであります。

 その主な内容は、

 国有財産の民間利用を促進するため、行政財産の貸付対象を庁舎等の床面積の余裕部分等に拡大すること、

 不整形地等売却困難な土地等の売却を容易にするため、新たな交換制度を導入すること、

 国有財産の有効活用を促進するため、借り受け庁舎等を財務大臣が行う使用調整及び実地監査の対象に追加すること、

 庁舎等の効率的な整備を推進し、地震防災機能を高めるため、庁舎等の整備のための新たな仕組みを導入すること

等の措置を講ずることとしております。

 さらに、一般会計から特定国有財産整備特別会計への繰り入れ規定の廃止、同特別会計から一般会計への繰り入れ規定の新設を行うこととしております。

 本案は、去る四月三日当委員会に付託され、五日谷垣財務大臣から提案理由の説明を聴取した後、昨十二日質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び消費者契約法の一部を改正する法律案(菊田真紀子君外三名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、消費者契約法の一部を改正する法律案及び菊田真紀子君外三名提出、消費者契約法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣猪口邦子君。

    〔国務大臣猪口邦子君登壇〕

国務大臣(猪口邦子君) 消費者契約法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、消費者が契約の取り消しや契約条項の無効を主張できる場合を類型的に定めた消費者契約法が平成十三年から施行されています。これにより、消費者の被害救済が個別的、事後的に図られていますが、同種の消費者被害の発生や拡大を防止するには限界があります。

 このため、消費者契約法の実効性を確保する方策として、内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体が、事業者等に対し、消費者契約法に規定する不当行為の差しとめを請求することができることとするとともに、この適格消費者団体の認定及び差しとめ請求に係る訴訟手続等について所要の規定を整備することとし、この法律案を提出する次第であります。

 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、適格消費者団体は、事業者等が不特定かつ多数の消費者に対して、消費者契約法に規定する不当勧誘行為または不当条項を含む消費者契約の締結を現に行い、または行うおそれがあるときは、当該行為の差しとめ請求をすることができることとしています。

 第二に、内閣総理大臣は、適格性の要件に適合している者を、その申請に基づき、適格消費者団体として認定することができることとしています。適格性の要件は、特定非営利活動法人または公益法人であること、不特定かつ多数の消費者の利益の擁護を図るための活動を行うことを主たる目的とし、現にその活動を相当期間にわたり継続して適正に行っていることなどとしております。

 第三に、適格消費者団体は、差しとめ請求に係る業務を行うに際しては、不特定かつ多数の消費者の利益のために差しとめ請求権を適切に行使しなければならないこと、所要の事項の情報開示をしなければならないこと等とするとともに、内閣総理大臣は、適格消費者団体に対して必要な監督上の措置を講ずることができることとしています。

 第四に、訴訟手続につき、訴額、管轄、移送、併合等に関する所要の規定を整備することとしています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 提出者菊田真紀子君。

    〔菊田真紀子君登壇〕

菊田真紀子君 民主党・無所属クラブの菊田真紀子です。

 ただいま議題となりました民主党提出の消費者契約法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 近年、企業の不当な契約や勧誘など消費者契約にかかわるトラブルが増加しています。しかも、その内容は一段と多様化、複雑化しており、事態は深刻化しています。こうした状況を受け、消費者団体が消費者の利益のために訴えを提起する制度、いわゆる消費者団体訴訟制度の導入の必要性が唱えられてきました。

 消費者契約に係る被害は、同様の被害が多数の方々に及ぶケースが多いため、被害が広がる前に、事業者による不当な勧誘行為や契約条項の使用を差しとめることが必要です。これまでは、被害額が少額であるため、被害救済を求めて訴えを提起することが困難でありました。今回の政府案でも、個々の消費者の被害救済については消極的であり、不十分な内容であると考えます。

 そこで、民主党では、被害を受けた消費者の立場に立ち、実効性のある消費者保護を整えてまいりました。

 すなわち、個々の消費者にかわって損害賠償等を請求する制度を導入いたします。また、悪質な事業者の監視や取り締まり、被害を受けた消費者の救済のためには、従来のように行政ばかりに頼るのではなく、消費者の立場から、市場の監視者として、また被害救済の支援者として、消費者団体の役割をこれまで以上に積極的に評価します。

 民主党案は、こうした基本的な認識に基づき、真に消費者の権利の保護を図るため、所要の法整備を行おうとするものであります。

 なお、民主党案の策定に当たっては、広くパブリックコメントを実施し、多くの国民の皆さんや消費者団体など関係者の方々から御意見と御提言をいただいたことも御紹介しておきます。

 以下、本法律案の要点を申し上げます。

 第一に、事業者等の一定の行為による消費者の被害の発生または拡大を防止するため、適格消費者団体が、事業者等に対し、その差しとめを請求できることとしております。

 この点、政府案にも同様の規定がありますが、差しとめの対象が消費者契約法に違反する不当な行為に限定されており、消費者の立場からは、対象が極めて狭いものになっています。民主党案では、民法における詐欺や強迫に該当する事案、さらには民法九十条の公序良俗違反なども対象にしており、より消費者に係る被害の未然防止、拡大防止を図る内容としております。

 第二に、適格消費者団体が損害賠償等団体訴訟を追行し、これに係る確定判決等に基づいて支払われた金銭等を配当できることが特徴です。

 政府案は、こうした制度の導入を見送っており、個々の消費者被害の救済に消極的な姿勢であるのに対し、民主党案では、被害の救済の実効性の確保を図る内容としております。

 第三に、適格消費者団体の登録等の制度について所要の規定を整備しております。

 政府案は、適格消費者団体に係る適格性判断の仕組みを、内閣総理大臣による認定制をとっており、団体の範囲を著しく狭めていますが、民主党案では、法令で定める登録拒否事由に該当する場合を除いて、登録制をとることとしております。これにより、中間法人や消費生活協同組合も適格消費者団体となり得るなど、範囲をより拡大して、制度の積極的な運用が期待できるものとしています。

 加えて、民主党案は、登録制にかかわる登録基準を明記することにより、行政による裁量を排除する仕組みをとっています。この点、政府案は、抽象的な認定基準であり、行政裁量の余地が残る仕組みだと考えております。

 第四に、適格消費者団体への支援について必要な規定を設けております。

 適格消費者団体は、差しとめ請求権の行使や損害賠償等団体訴訟の追行など、消費者利益のための積極的な活動が期待されます。そこで、民主党案では、適格消費者団体が行う差しとめ請求関係業務や損害賠償等請求関係業務の公益性にかんがみ、国及び地方公共団体は、それら業務のために必要な資金の確保に努める旨の規定を設けております。これまで以上に、自治体も消費者の権利保護のために積極的にかかわることを求めています。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、本法律案の提案理由及びその概要であります。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び消費者契約法の一部を改正する法律案(菊田真紀子君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。林田彪君。

    〔林田彪君登壇〕

林田彪君 自由民主党の林田彪でございます。

 私は、自由民主党並びに公明党を代表し、ただいま議題となりました消費者契約法の一部を改正する法律案につきまして、猪口大臣に質問をいたします。(拍手)

 近年、消費者と事業者の間の契約、いわゆる消費者契約に関するトラブルは増加し続けております。最近では、悪質な住宅リフォーム問題などが記憶に新しいところですが、このように大きく社会問題化したものに限らず、消費者トラブルは、多くの消費者が同じような被害を受けるという特徴があります。つまり、加害者である事業者が消費者に対する不当な行為をやめない限り、被害は次々に拡大してまいります。

 このため、事業者の不当行為自体そのものをやめさせるための方策がぜひ必要であります。その具体的方策として、一定の消費者団体に事業者の不当な行為に対する差しとめ訴訟を認める、いわゆる消費者団体訴訟制度の設定は極めて重要かつ今日的な課題であると考えております。

 消費者問題への対応は、一義的には、業種ごとのルールの徹底や取り締まりなど、行政による対応が重要であることは言うまでもありません。しかし、新しい問題や複雑な事案が次々に発生している今日、さまざまな方法で、多面的に消費者問題に対応していく必要があると考えます。

 本法案は、一定の要件を備えた適格消費者団体に事業者の不当な行為に対する差しとめ請求権を認めるという画期的なものであります。消費者トラブルの未然防止、拡大防止に大きな役割を果たすものと期待しております。

 このような訴訟制度は、欧州諸国では既に長年にわたり運用され、社会に定着しているとも聞いております。我が国でも多くの消費者が、一日も早くその導入を待ち望んできたものであります。このたび、我が国において初めて消費者団体訴訟制度を導入するための本法案が国会に提出されるに至ったことは、極めて意義深いものと考えております。そこで、まず初めに、この制度の必要性と意義について、大臣の御認識をお伺いいたします。

 一方、この消費者団体訴訟制度は、不特定多数の消費者の利益を守るために、直接の被害者とは異なる一定の要件を満たす消費者団体に差しとめ請求権という特別の権利を認めるものであり、我が国の法制上、全く新しいものであります。このため、制度導入に当たっては、広く国民に理解され、かつ信頼されるものとなるようにすべきであると考えております。

 差しとめ請求権は、社会的にも経済的にも大きな影響力を持ち得る権利であります。それだけに、制度の濫用、悪用を防ぐため、適切かつ慎重な制度設計をする必要があると考えます。そこで、二点目として、制度の濫用、悪用の懸念に対して、本法案ではどのように対応しているのか、お尋ねいたします。

 本制度は、先ほど述べましたように、我が国において全く新しい制度であるだけに、制度をつくるだけではなく、その仕組みそのものが社会に円滑に導入され、適切な活用が図られていくようにすることが肝要であります。

 消費者全体の利益を守るという本制度の趣旨にかんがみれば、広く消費者みずからが適格消費者団体の活動を支えていく必要があります。また、適格消費者団体はその活動を通じて消費者からの信頼を確立し、被害情報が消費者から積極的に寄せられ、それを受けて、適格消費者団体は差しとめ請求権を適切に行使し、問題の早期解決につなげる。あるいは、適格消費者団体の趣旨に賛同する消費者は、みずからが会員となったり、活動への寄附を行う等、そうした好循環が働き、制度、仕組みが回っていく姿が望ましいと思っております。

 また、この制度が既に定着している欧州諸国では、訴訟が提起される以前に、適格消費者団体と事業者との間の事前交渉を通じて大多数の紛争が解決されていると聞いております。その意味で、適格消費者団体と被告サイドに立つ事業者が、お互いに過度に意識し警戒し合うのではなく、建設的な形で制度に臨めるよう、事業者にも制度の趣旨が浸透していく必要があると考えております。

 これらの取り組みにつきましては、適格消費者団体みずからの努力が何よりも重要と考えますが、行政としても、後押しすべきときは後押しすることが、広く消費者問題を効果的に解決するために重要と考えております。

 そこで最後に、消費者団体訴訟制度が社会に円滑に導入され、適切な活用が図られていくようにするためには、行政としてどのような環境整備を図っていくのか、お伺いいたします。

 一昨年成立した消費者基本法は、消費者政策の基本理念として、消費者を単に保護するだけではなく、消費者の権利と自立支援を重視した政策の推進を求めております。本法案で導入を図る消費者団体訴訟制度は、まさにこの要請にかなったものと考えております。

 消費者トラブルが多様化、複雑化している今日では、行政だけではなく社会全体で、また多様な方法により消費者問題に対応していく必要があり、この制度導入が我が国の健全な消費社会の形成に向けて重要な第一歩となることを期待し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣猪口邦子君登壇〕

国務大臣(猪口邦子君) 林田議員より三問御質問をいただいておりますので、お答え申し上げます。

 まず、消費者団体訴訟制度の必要性と意義について御質問がありました。

 消費者と事業者の間に、情報力と交渉力の格差があります。そのようなことにかんがみまして、平成十三年から消費者契約法が施行され、被害に遭った消費者の救済が個別的、事後的に図られるようになりましたが、同種の被害が発生していく、そして拡大していくことを防止するには限界があります。

 このため、一定の消費者団体が事業者の不当行為そのものの差しとめを請求できるよう、消費者団体訴訟制度を導入する必要性が高いものと考えております。本制度は、消費者被害の発生や拡大の防止に果たす役割がとても大きく、直接の被害者ではない第三者たる消費者団体に請求権を付与するという点におきまして、画期的なものと考えております。

 次に、制度の濫用や悪用に対する懸念についての御質問がございました。

 新たに導入した制度も、濫用や悪用が生じるようでは社会に定着してまいりません。このため、消費者全体の利益擁護の役割を担うにふさわしい実質を備えた消費者団体に限り、差しとめ請求権を認めることとしております。

 具体的には、内閣総理大臣が適格消費者団体を認定することとし、その適格性が維持されるよう、報告徴収や改善命令など必要な監督措置も講ずることとしております。また、適格団体が適正に業務を実施し、国民に対し説明責任を果たすよう、財務諸表の閲覧など団体の情報開示を徹底することといたしております。

 最後に、行政としての環境整備についての御質問がございました。

 適格消費者団体の自主的な取り組みを基本としつつ、行政としても、適格団体が業務を円滑に実施できるよう環境整備を図っていくこととしております。このため、制度の意義や適格団体の活動について国民の理解が深まるよう、制度全般の周知、広報に努めてまいります。

 また、適格団体が請求権を行使するに当たっては、広く消費者から被害情報を収集したり、訴訟結果の周知を図ることが重要であります。このため、行政としては、国民生活センター等の有する消費生活相談情報の提供や、差しとめ訴訟の結果得られた判決内容の公表などを通じ、適格団体の情報面での負担軽減を図ってまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 民主党の泉健太でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、また、全国で消費者被害に遭い、つらく苦しい思いをしている幾多の国民を代表いたしまして、ただいま議題となりました消費者契約法の一部を改正する法律案の政府案並びに民主党案に対し質問をいたします。(拍手)

 皆さん、消費者被害の実態は御存じでしょうか。賃貸物件の敷金や大学の入学金などを返還しない条項を盾にした契約条項トラブル、英会話、絵画、悪質訪問販売などの勧誘商法トラブル、架空請求や欠陥商品販売などの詐欺商法トラブル、二〇〇四年度の全国の消費生活センターへの相談は百九十二万件。何と十年前の八倍にも上っています。また、最近の傾向として、一つの業者が社名を変え、営業エリアを変え、悪質な契約行為が繰り返されるという被害、インターネットによって全国各地で一気に被害が拡大するケースが多発をしており、新たな対応が早急に必要です。

 私たち国会議員は、今、この数を統計資料として片づけるのではなく、その一つ一つに悲劇があり、国民の人間不信、社会不信が増幅していることを忘れてはなりません。

 あらゆるものを疑い怪しむ社会、これが政府の目指す健全な社会でしょうか。なぜこのような社会になったのか。大臣、この社会がおかしいと思いませんか。教育を含めたこれまでの政治に責任はないでしょうか。ちゃんとした解決策を示すのが政治の責任ではないでしょうか。まず大臣、これらの点についてお答えください。

 そして、本日この解決案を本会議で議論し、今後は委員会で議論がなされます。その中で、とりわけ巨大与党、自民党、公明党の役割、そしてこの政府案を作成した政府は、役割と同時に責任もまた大きいことを御認識ください。

 さて、今回の消費者契約法の改正とは、消費者被害を防止するとともに、消費者被害に遭った個人にかわって一定の適格性を持った消費者団体に訴訟権を与え、消費者保護と救済を図ろうという新しい仕組みです。

 私は今から、政府案に対し問題点を指摘するとともに、同時に提出をされた民主党案に対して質問をしたいと思います。

 まず、共通認識の部分ですが、被害を受けた一人一人の消費者であっても、業者を相手取り訴えを起こすことには幾つかのハードルがあります。

 まず一つ、被害額が裁判を起こすには割に合わない金額であり、結果的に被害者が泣き寝入りをするケース。第二に、被害者が訴訟に関する専門的知識や十分な資金に乏しく、また訴訟を起こすには時間的、精神的負担も大きいということ。第三に、被害者個人が裁判での立証責任を果たすことは非常に困難であるということ。こういったことが大変ハードルをつくっております。

 消費者と事業者は本来対等な立場であるはずですが、実際には、消費者と事業者には情報力、交渉力などにおいて格段の差が存在をします。その意味で、消費者を保護する実効性のある仕組みをつくることが求められていることは、政府案、民主党案の共通の認識であると思います。

 しかし、その共通認識を持つはずの両案ですが、今回提出された法案のうち、なぜか政府案には、大事な大事なところに五つもの穴があいております。

 まず一つ、個々の消費者の受ける被害の一番は、当然金銭的な被害です。なのに今回、政府案では損害賠償請求権がありません。販売差しとめ請求権のみが規定をされています。消費者団体と被害者、国民が本音で願っているのは、民主党案に書かれている損害賠償請求権じゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

 これまでの消費者被害では、勇気ある、そして熱意ある被害者がみずから声を上げ、時間や資金などの労力を割いて、被害者の会を結成し、血のにじむような努力で長期に及ぶ裁判を続けてきて初めて、損害賠償を獲得するなど被害者救済が図られていました。その中では、弁護士の多くも手弁当で訴訟を手伝うことも多々あったのは周知のことです。それでは被害を防ぐことはできないということで、今回の消費者契約法の改正が議論をされているのです。

 金銭の被害実態があるのに、適格消費者団体は販売差しとめの訴えだけで、損害賠償の訴えはできない、これが現在の政府案なのです。これでは悪質業者にやり得を許してしまうことにはならないでしょうか。これでは被害者の救済に消極的だと言わざるを得ません。大臣、なぜ、何ゆえこんな消極的な案にしたのか、お答えください。(拍手)

 初めての団体訴権の導入だから、総合的に考え、そういう答弁は要りません。この法律を今回成立させたければ損害賠償請求権の盛り込みは無理と、審議会や各検討委員会などで、政府はそんな暗黙のメッセージを消費者団体や学識者に送ってきたんじゃないでしょうか。きょうのこの審議を多くの関係者が見ております。その前で、この疑念に対して大臣の答弁をお願いいたします。

 そして、今国会では、犯罪収益吐き出し法案も審議をされると思います。今や、悪質業者による被害をストップさせるだけで喜んでいる時代ではないはずです。被害者の保護のみならず救済、悪質業者への制裁という意味からも、当然、損害賠償等請求権が盛り込まれるべきと考えますが、いかがでしょうか。今後、検討の用意があるかも含め、大臣の答弁をお願いいたします。

 これに対して、民主党案では、損害賠償請求権を盛り込み、消費者被害の救済の実効性を確保しております。民主党提案者に、なぜこれを盛り込むこととしたのか、なぜ政府案では不可能なのか、答弁を求めます。また、損害賠償等請求権によって具体的にどんな消費者被害が救済されると考えているか、提案者の御答弁をお願いいたします。

 次に、二つ目です。

 消費者にかわって訴訟を起こすこととなる適格消費者団体についてです。消費者にとっては、業者に裁判を起こすということは日常生活において大ごとだと思います。また、消費者団体にアクセスをするということも、実はなかなかできないことではないでしょうか。その意味では、さきの相談件数も氷山の一角かもしれません。

 だからこそ、消費者にとって、まず消費者団体が身近な団体でなければなりません。しかし、その適格消費者団体が政府案では認定制、かつ認定更新は三年ごととなっており、政府が現在予想する適格消費者団体数は最大で全国やっと九カ所です。これではアクセス障壁が高過ぎます。さらに、これでは遠方での訴訟にも対応しなければならず、消費者団体は資金面でも組織維持に大変苦労を強いられます。民主党案では登録制であり、登録更新は五年ごと、国及び地方公共団体による必要な資金の確保も盛り込みました。民主党案であれば、恐らく、全都道府県で適格消費者団体が立ち上がり、消費者のニーズにもこたえられる、そしてまた適格消費者団体の安定した運営も確保されると思いますが、政府案には資金的な支援もございません。このような要件を設定した理由を、大臣、そして民主党提案者にお答えをお願いいたします。

 そして、大臣、訴訟とは準備から判決に至るまで長期を要します。特に、この消費者団体訴訟制度においては、違法行為を発見し、事例を集めるなど、訴訟には十分な準備が必要と考えられます。政府案では、一たん判決が出ると後の同様の訴訟が遮断をされてしまうということからも、十分慎重な訴訟準備が必要です。その意味で、政府案の認定有効期間三年では、同一の案件を扱っている間に認定が切れかねません。せめて有効期間を五年とすべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

 次に、三つ目でございます。

 政府案では、差しとめ請求の対象行為を随分狭く規定しています。消費者契約法に規定する不当な勧誘等の行為、消費者を不当に害する契約条項の使用のみ。しかし、消費者が差しとめ請求をしてほしいのは、消費者契約法違反にとどまるものではありません。

 例えば、敷金を全額返済しないと書いた不動産契約書のひな形の使用を推奨する、いわゆる推奨行為、また民法での詐欺や強迫に該当する事案、そして民法九十条の公序良俗違反も含めるべきと多くの消費者団体からの強い要望があります。これは、先送りをすることなく、今この時点で法案に盛り込むべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。民主党案は、これらも差しとめ請求の対象に含んでおります。民主党提案者の見解もお聞かせください。

 そして、四つ目です。

 政府案では、適格消費者団体の訴訟による確定判決があると、その後は原則として同一事件についての差しとめ請求訴訟はできないことになっております。この点は、弁護士の皆さんであれば御存じかと思いますが、訴訟の効果は原則として当事者に限られるとする民事訴訟の原則に反するのではないでしょうか。民主党案では、再度の訴えも可能としております。大臣と民主党提案者の見解を伺います。

 そして五つ目、差しとめ請求を管轄する裁判所についてです。

 国民は、普通、訴訟を起こすとき、どこで訴訟を起こそうとするでしょうか。被害に遭った自分が住んでいる都道府県の裁判所でやはりだれでも訴訟を起こそうとするんじゃないでしょうか。

 政府案では、事業者の営業所等の所在地の管轄を認めることとはしています。しかし、営業所から遠方に出かけての訪問販売、展示会商法、さらにはネット商法など、地域を問わず被害が広がっている実態が今問題になっているんじゃないでしょうか。

 私は、この制度を実効ある仕組みとして機能させるためには、事業者が不当行為を行ったその行為地の管轄も認めるべきではないかと考えます。政府と民主党提案者の見解もあわせて伺いたいと思います。

 我が国の消費者政策は、消費者保護基本法の制定以来、国民各層、特に消費者団体などの不断の努力によって着実に前進を続けてまいりました。民主党も一九九九年、政府に先駆け消費者契約法案を国会に提出し、これを契機に翌年、政府案が全会一致で成立し、事業者の不当行為に消費者は、契約の取り消し、そして条項の無効を主張できることとなりました。

 しかし、今もなお、地域で地道に暮らす国民、弱い国民こそが悪徳業者にねらわれ、被害に遭っています。小泉政権のもとで広がる格差社会において、消費者の間には、経済格差のみならず、情報格差、訴訟力の格差までが広がりつつあります。

 そうしたとき、高支持率の政府・与党、小泉政権の役割は何でしょうか。高支持率だからこそ、困難な論点を乗り越えて、最高の法律をつくるべきではないでしょうか。この法律でいえば、今指摘をした五つの点をしっかりと穴をふさぎ、消費者の立場に立って消費者契約法を改正することが政府・与党に求められている役割じゃないでしょうか。

 なのに、今の高支持率の小泉政権は、まるでただ高いところを飛び続ける飛行機のようです。苦しむ国民をただ下に見て、高みの見物を決め込んで、そして大事な部分を先送りして、この法律の改正を進めようとしております。今、地上には、多くの被害に遭っている消費者がいるんです。格差に苦しむ多くの国民がいるんです。総理、大臣、この実態を見ていただきたいと思います。巨大与党ならばこそ、しっかりと地に足のついた法の改正を行っていただきたいと思います。ただ高い支持率を維持しようとするだけの小泉政権には、私は価値はないと思います。(拍手)

 総理、そして猪口大臣、そのただ高く飛び続けるだけの飛行機からは、この法案だけで五つの穴があき、そこからオイルが漏れているようなものです。地上で苦しむ被害者、消費者を見るならば、しっかりとこの五つの穴をふさいでいただきたい。

 今や、小泉さんのこの飛行機からは、道路公団、官製談合、天下りの問題を見てもわかるように、改革や倫理という大切な部品までもが次々と落下をしております。消費者を見る気がないなら結構です。私たちは、小沢一郎代表とともに、国民と手を携え、新しい政権をつくるのみです。

 常に後追いとなってきた政府の消費者行政に対して、民主党は、消費者の視点からの実効性ある仕組みを整え、消費者の権利擁護を図るべきだと考えます。政府案に再考を求め、全国の消費者、被害者のために、私たちが指摘する五点の穴をふさぐ改革が行われることを切に願い、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣猪口邦子君登壇〕

国務大臣(猪口邦子君) 泉議員から六問御質問をいただきましたので、お答え申し上げます。

 まず、消費者トラブルが多発しており、社会不信が増幅することへの解決策を示すべきとの御質問でございます。

 消費者を取り巻く経済社会情勢が大きく変化する中、一昨年、議員立法によりまして制定されました消費者基本法は、これからの消費者政策の大きな方向性として、消費者の権利の尊重と自立支援を基本理念として置いてございます。この理念を具体化していくことが必要であります。まさに、このたび、平成十二年に制定された消費者契約法を改正し、消費者団体訴訟制度を導入し、消費者被害の発生、拡大の防止を図ることといたします。

 次に、損害賠償請求権についてでございます。

 消費者被害については、同種の被害が多数の者に及ぶという特徴があることから、被害の発生や拡大を防ぐことがまず何よりも重要であり、事業者の不当行為そのものを差しとめる差しとめ請求権を適格消費者団体に付与する必要があります。

 これに対し、損害賠償は事後救済のための手段であり、被害を受けた個々の消費者に請求権がありますことから、被害当事者ではない第三者である団体にその権利を付与することについては、より広く、少額多数被害救済のための手法、司法アクセス改善との関係も踏まえていく必要があるのでございます。こうしたことから、損害賠償請求については、今回の制度化の対象とはしていないわけです。

 この点に関しまして、国民生活審議会の報告書では、その「必要性も含めて、慎重に検討」とされたところであり、この指摘を踏まえて対応してまいります。

 次に、適格要件と認定制度についてでございます。

 適格消費者団体につきましては、消費者全体の利益擁護の役割を担うにふさわしい実質を備えていることが必要であるため、団体の活動実績等の要件を設定し、申請団体ごとに実質的な判断を行う認定制度としております。

 また、認定の有効期間につきましては、団体側の負担等も勘案しつつ、適格団体の業務の適正な運営を確保し、制度の信頼性を維持する観点から、三年としております。適格要件を満たしている限り認定が更新されることから、訴訟の継続には支障はないと考えます。

 なお、適格団体の活動を支援するため、国民生活センター等の有する消費生活相談情報の提供や、差しとめ訴訟の結果得られた判決内容の公表、周知などを行うこととしております。

 次に、差しとめ対象についての御質問であります。

 差しとめ請求権は、社会的、経済的に大きな影響を及ぼし得るのであります。ですから、その対象は、具体的、明確であることが必要であります。

 いわゆる推奨行為につきましては、消費者、事業者間の契約を直接規定するものではないわけです。推奨行為の主体や程度には種々さまざまなものがあり、これら推奨行為を差しとめ対象とすれば、事業者団体による取引適正化のための活動まで萎縮させるおそれがあります。

 なお、詐欺、強迫や民法九十条の公序良俗違反につきましては、これは一般的な規定であり、解釈の余地が大きいことから、どのような行為が差しとめ対象となるかという予見可能性の点で問題がございます。

 次に、同一事件の取り扱いについての御質問がありました。

 消費者団体訴訟制度は、消費者全体の利益を擁護するという、いわば公益的な目的のために、直接被害を受けていない第三者たる特定の団体に政策的な権利を付与するものであり、できる限り紛争の一回的解決を図る必要があります。確定判決がある場合などの同一事件の取り扱いは、このような制度の特性に由来する制約であり、判決の効力は第三者には及ばないという民事訴訟の原則を変更するものではないと考えております。

 最後に、裁判管轄についてでございます。

 適格消費者団体と事業者とが公平に攻撃防御を尽くせるという観点から、被告事業者の本店所在地を基本としつつ、あわせて、実体を伴う営業所等の所在地による管轄を認めることとしております。なお、本制度では、消費者全体の利益擁護を目的とするものであり、個々の消費者に対し事業者が不当行為を行った地を管轄とするのは適当ではないと考えます。(拍手)

    〔小宮山洋子君登壇〕

小宮山洋子君 泉健太議員から民主党の議員立法についていただいた質問のうち、私から三問について答えさせていただきます。

 まず、損害賠償等団体訴訟制度の必要性についてですが、消費者団体訴訟制度は、二〇〇〇年に消費者契約法ができたときから課題になっていたもので、当時、商工委員会での附帯決議にも明記をされています。当初、昨年の通常国会に政府案が出されると言われていましたが、一年おくれて、ようやくこの国会に政府案が提出されました。

 ところが、審議会での議論の中で、消費者被害を予防する差しとめ訴訟だけになり、被害を受けた消費者を救済する損害賠償制度については、今回は見送られてしまいました。

 民主党としては、消費者や消費者団体が待ち望んでいた消費者団体訴訟が実効性を持つためには、予防だけでなく、被害を救済する損害賠償制度をあわせ持つ必要があると考え、損害賠償制度も盛り込んだ法案を提出いたしました。

 消費者被害の多くは、広い範囲で多くの人に被害が及びますが、一人一人の損害額がわずかなため訴訟を起こす人が少なく、被害者が救済されないままのことが多くなっています。

 諸外国では、例えばドイツなどでは、消費者団体が損害賠償訴訟を提起することが認められています。またアメリカでは、いわゆるクラスアクション制度が導入され、代表原告が、被害をこうむったほかの消費者を代表して、一括して訴えを起こすことが認められています。日本でも、選定当事者制度など、司法アクセスの改善が進められてはいますが、十分に活用されているとは言えない状態です。

 一方で、質問者も述べられましたように、近年、契約や勧誘などに関する消費者トラブルが急増しています。学習教材や浄水器の訪問販売による被害などが後を絶たず、また、ダンシング事件というのを御存じでしょうか。ダンスをするわけではありません。暖かい寝具。このダンシング事件でも、布団のモニター商法で多数の被害者が出たりしています。

 そこで、民主党の議員立法では、海外の制度も参考にして、適格消費者団体が、消費者にかわって事業者に対して損害賠償等を裁判で請求し、支払われた金銭を一人一人の消費者に配当できるよう、損害賠償制度を盛り込みました。

 なお、乱訴のおそれがないように、差しとめ請求では適格消費者団体は登録制なのに対しまして、損害賠償では裁判所に申請し許可を得ることとしております。

 昨今の消費者トラブルの状況からして、損害賠償制度を設けることによって被害の救済の実効性を確保するとともに、悪質な事業者に不当に得た利益を吐き出させ、事後の不当な行為を抑制することがぜひ必要だと考えております。

 次に、損害賠償制度の導入によってどのような消費者被害が救済されるかというお尋ねですが、損害賠償制度によって、例えば次のような場合に損害賠償等団体訴訟が起こされることが予想されます。

 一つの例としましては、入学金や授業料等の入学時納入金を前納した後、その大学などの学校ではなくて別の学校に入学した場合、適格消費者団体が、それぞれの消費者を代表して、一括して学校に対して返還請求を求める訴えを起こすことができます。また、別の例としましては、あるメーカーの欠陥商品を買った消費者がそのメーカーに製造物責任法に基づいて損害賠償請求をする際に、適格消費者団体が、一人一人の消費者が持つ請求権を代表して、一括して欠陥商品を製造したメーカーに訴えを起こすことができます。

 こうして起こされた損害賠償等団体訴訟の結果、支払われた金銭から配当を受けることによって、消費者一人一人の救済が図られる仕組みと考えております。

 次に、差しとめ請求の対象につきまして、質問者が述べられたとおり、政府案は、差しとめ請求の対象を狭い範囲に限定しています。これに対して、民主党案では、消費者の皆さんの声を反映して、消費者被害の実態に合わせて範囲を広げているのが特徴です。

 政府案では、差しとめ請求の対象となる事業者の行為について、消費者契約法に規定された不当行為に限定しています。これに対して民主党案では、人を詐欺し、または強迫する行為に該当する勧誘行為、そして民法九十条の規定によって無効とされる公序良俗に違反する条項を含む意思表示、また事業者団体等がその団体等に加盟する事業者に対し、不当な契約条項を含む消費者契約の意思表示を行うことを推薦し、または提案する行為を加え、対象の範囲を広げております。

 また、政府案では、事業者の不当行為が不特定かつ多数の消費者の利益に影響を及ぼす可能性がある場合に限って差しとめ請求を認めるとしています。民主党としては、こうした限定は差しとめ対象を不当に制限するもので、消費者被害の未然防止、拡大防止を図るという差しとめ請求の趣旨にそぐわないものだと考えております。したがって、民主党案では、こうした限定はせず、消費者契約法あるいは民法によって違法とされる行為であれば差しとめ請求の対象としております。

 以上申し上げましたように、民主党案は、差しとめ請求の対象を政府案より広げ、適切に設定しています。また、消費者の皆さんから御要望が多かった財政支援につきましても、国や地方公共団体が適格消費者団体が訴訟を起こすために必要な資金を確保する努力義務を置くなど、広く消費者の皆さんの要望を取り入れたものとなっています。(拍手)

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 残りの三問について、私からお答えをさせていただきます。

 まず、適格消費者団体、どんな団体に適格性を与えるのかという論点でございます。

 私たちは、質問者の質問にもございましたような趣旨から、できるだけ幅広く適格消費者団体を認めるべきであるというふうに考えております。なぜ、民間でできることは民間でと言っている政府側の案がそうなっていないのか不思議だなと思っておりましたが、先ほどの質問を聞いておりましたら、行政の対応こそが一番重要であるなどという質問が入っておりまして、ああなるほど、やはり民間でできることは民間でというのはうそなんだなということがよくわかりました。

 つまり、本来であれば、まさに当事者である消費者の方がみずからの権利を救済する、それが民間でできることは民間での原則であります。しかし、先ほど来の御指摘のとおり、消費者と事業者との間では明らかに力関係の差がありますから、個人の消費者だけでやってください、これでは不公平になる。

 だから、その個人の消費者ができるだけ集まって協力をして、つまり消費者団体という形でその権利をしっかりと行使する、そして、それではどうしてもできない件に限って行政が対応する、これが民間でできることは民間でということであるならば、当然のことではないかと私は思うものでありますが、だとしたら、できるだけ幅広く消費者団体に適格性を与えて、当事者の皆さんが協力をして自分たちの権利を守るという余地を、弊害がない限りは最大限認めるのが当然である。こういう観点から、私どもは、政府案とは特に三つの点が違っております。

 一点目は、適格性判断の仕組みであります。

 政府案は、内閣総理大臣による認定制、つまり、行政による裁量によって、こっちはオーケー、こっちはだめということを内閣総理大臣が判断できる、こういう中身になっております。私たちは、まさに行政の不当な介入の余地をつくらないということで登録制という制度にしています。そのかわり、登録の要件についてしっかりと法律に明記をしまして、おかしな団体が登録をされることがないように、しっかりと弊害除去の手当てはしております。

 二つ目、適格消費者団体の要件として、政府案には、特定非営利活動法人や公益法人であることという限定、あるいは弁護士、司法書士その他の法律に関する専門的な知識経験を有する者が確保されていることといった厳しい要件をつけております。

 訴訟を起こすときには、それは弁護士を依頼することはあるかもしれませんが、必ずしも組織の内部に法律の経験者がいる必要はない。あるいは、現実社会において、消費者の皆さんの権利擁護のために消費生活協同組合や中間法人などが現に活動しているという実態をしっかりと踏まえるならば、あるいはまた、それぞれの地域ごとに、事件の態様に応じて、比較的小規模な団体でも他の要件を満たしているならばこうした訴訟が起こせるようにということで、私たちは、こうした余計な要件は設けておりません。

 三番目には、先ほど来これは繰り返し出てきておりますが、私たちは、損害賠償請求権の行使も適格消費者団体に認めております。ただし、差しとめ訴訟においては、これは後でも申し上げますが、その判決の効力は限定的なものでありますが、損害賠償請求訴訟を認める場合には、逆に、その判決の効力を直接の当事者以外にも幅広く認めなければならない。その分、万が一にも弊害があってはいけないという、その厳しさはより強いわけでありますから、ですから、差しとめ請求の要件としての適格性は先ほど申し上げたようにできるだけ幅広く、ただし、損害賠償請求に当たってはそこはしっかりと限定をさせていく。

 しかも、その限定をさせていくやり方として、行政の裁量ではなくて、裁判の現場において、裁判所においての許可を必要とするということで、不適切な団体による損害賠償請求訴訟の遂行がなされない担保をしっかりとつけているところであります。

 二つ目のお答えです。

 裁判の効力がどこまで及ぶのかということで、政府案においては民事訴訟の基本原則を変えているという指摘がございます。私もそのように考えております。民事訴訟においては、判決の効力は訴訟の当事者にしか及ばない、これが大原則であります。したがって、その例外を設けるのであるならば、その必要性と合理性が十分に吟味をされなければならないと思っております。

 民主党案においても、損害賠償請求においては、その判決の効力を当該適格消費者団体が当該訴訟において代表すべき消費者すべてに及ぶとしておりまして、判決の効力を直接の当事者以外に及ぼすという例外を設けております。

 しかし、これは、損害賠償等請求訴訟の趣旨が、個々人では訴訟を起こすことが困難である消費者にかわって適格消費者団体が訴訟を起こし、勝った場合にはその反射的効果として訴訟の当事者ではない個々の被害救済がなされるという以上は、勝訴した場合だけではなくて敗訴した場合にも当然その効力が及ばなければ不公平ですね。こういう必要性に基づいて、しっかりと、敗訴の場合でも勝訴の場合でもそこまで影響を及ぼすことにする。

 ただし、この場合も、本人が知らないところで勝手に裁判を起こされてその判決の効力を及ぼされる、これではかないません。したがいまして、こうした効力を及ぼす前提として、当該適格消費者団体によって訴訟遂行されることを望まない被害者に対しては、裁判所による公告の手続がなされ、除外の申し出を認めております。この除外の申し出をした者には判決の効力は及ばないということで、しっかりと、この人たちには代表されたくないという人たちの権利も守るということで、実態に合った対応をさせていただいております。

 しかし、政府案の差しとめ訴訟においては、こうした形で民事訴訟の例外を設ける必要性には乏しく、また、当該適格消費者団体によって代表されることを望まない被害消費者の権利を公正に保障するための手続も確保されておりません。にもかかわらず、そこに判決の効力を及ぼすというのは、明らかに不当であります。

 なお、乱訴、裁判がたくさん起きて事業者の正当な利害が害されるおそれを強調する見解がありますけれども、これも訴訟の実態をわきまえない暴論であると思っております。

 仮に差しとめ請求訴訟の効力を、後に及ぶ、幅広く及ぶとしたとしても、裁判を起こすことはいろいろなやり方でやりようがある、乱訴をしたい人はできるわけで、いずれにしても、それは門前払いをされる。こういう規定を置いていなくても、現実的には、他の訴訟で明確な手続のもとで払われているような訴訟をだれか別の人が起こしても、事実上門前払いをされる。結局一緒なんであって、抽象的なリスクのことだけを指摘して、具体的にそんな問題があるのかという指摘は実は一切されていないということを申し添えておきたいと思います。(拍手)

 最後の質問でございますが、差しとめ請求の裁判の管轄でございます。

 これも、民事訴訟の基本原則、例えば不法行為などにおいては、あるいは契約においては、契約の当事者の地あるいは不法行為の行われた地、ここで裁判が起こせるというのは当たり前、当然のことでありまして、なぜ本件に限って事業者の営業所等の所在地に裁判管轄を限定しているのか。それをどうしてもやるならば合理的な根拠が必要でありますが、それはとても考えられないと思っております。

 例えば、営業所は東京一カ所ですという事業者が全国にダイレクトメールを送って営業する、たくさんあるケースじゃないですか。あるいは、営業所は東京一カ所にしか置いていないけれども、さあ北海道に出張させ、沖縄に出張させ、そこで不当な勧誘行為をしているというケースはたくさんあるわけじゃないですか。では、そこの、例えば沖縄の被害者の方が東京地方裁判所で裁判を起こさなければならない、北海道の方が東京地方裁判所で裁判を起こさなければならない、どこに合理性があるのか。特に地方の出身の議員の皆さん、冷静に考えていただきたいというふうに思っております。

 しかも、民事訴訟の理屈からいえば、事業者の側は、自分の意思でどこに営業所を置くかを決めて、なおかつ、そこに営業所があるからといってその地域に限定して営業するだけではなく、自分の判断で全国各地いろいろなところに行って営業しているわけです。被害者の側は、例えば、たまたま家にいただけなのにダイレクトメールが送られてきて、それによって被害に遭う。その送ってきたところの事業所が近くにあるのか遠くにあるのかといったことは、被害者にとっては何の関知をする問題でもありませんので、こうした公平の観点からも、当然のことながら、行為が行われた地に訴訟管轄を認めるというのは当然であって、これを認めない本提案は民事訴訟法の問題としても非常に不当であると私たちは考えておりますので、ぜひ、充実した審議の上で、政府案ではなく民主党案を成立させていただきたいとお願いを申し上げまして、答弁を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   竹中 平蔵君

       財務大臣   谷垣 禎一君

       国務大臣   猪口 邦子君

 出席副大臣

       内閣府副大臣 山口 泰明君


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