衆議院

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第30号 平成18年5月16日(火曜日)

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平成十八年五月十六日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十三号

  平成十八年五月十六日

    午後一時開議

 第一 証券取引委員会設置法案(古本伸一郎君外六名提出)

 第二 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官訴追委員辞職の件

 裁判官訴追委員の選挙

 日程第一 証券取引委員会設置法案(古本伸一郎君外六名提出)

 日程第二 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)

 教育基本法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員辞職の件

議長(河野洋平君) お諮りいたします。

 裁判官訴追委員森山眞弓君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員の選挙

議長(河野洋平君) つきましては、裁判官訴追委員の選挙を行います。

中山泰秀君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官訴追委員に小杉隆君を指名いたします。

     ――――◇―――――

 日程第一 証券取引委員会設置法案(古本伸一郎君外六名提出)

 日程第二 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、古本伸一郎君外六名提出、証券取引委員会設置法案、日程第二、内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案、日程第三、証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長小野晋也君。

    ―――――――――――――

 証券取引委員会設置法案及び同報告書

 証券取引法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小野晋也君登壇〕

小野晋也君 ただいま議題となりました各法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 初めに、古本伸一郎君外六名提出の証券取引委員会設置法案について申し上げます。

 本案は、内閣府設置法に基づき、内閣府の外局として、証券取引委員会を新たに設置しようとするものであります。

 以下に、その概要を申し上げます。

 第一に、この証券取引委員会の任務は、証券取引等の公正を確保し、有価証券の投資家等の保護を図るとともに、有価証券の円滑な流通等を図ることとしております。

 第二に、その事務は、証券業を営む者等の検査その他の監督に関すること等としております。

 次に、内閣提出の証券取引法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、投資家保護のための横断的な法制を整備しようとするものであります。

 以下に、その概要を申し上げます。

 第一に、証券取引法の法律名を金融商品取引法に改めるとともに、その規制対象を拡大し、より広範に投資家の保護を図ることとしております。

 第二に、公開買い付け制度及び大量保有報告制度の見直しを行うとともに、四半期報告制度や内部統制報告制度の整備を行うこととしております。

 第三に、開示書類の虚偽記載や不公正取引等に係る罰則を強化することとしております。

 第四に、取引所における自主規制業務が適切に運営されることを確保するため、所要の制度を整備することとしております。

 引き続きまして、内閣提出の証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について申し上げます。

 本案は、証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴い、金融先物取引法等の四法律を廃止するとともに、金融商品の販売等に関する法律等の七十二法律の規定の整備等を行うものであります。

 各案は、去る四月十四日当委員会に付託され、十八日与謝野国務大臣及び提出者古本伸一郎君から提案理由の説明を聴取した後、二十一日より質疑に入りました。五月十日、内閣提出の両案に対し、民主党・無所属クラブの提案に係る修正案がそれぞれ提出され、趣旨の説明を聴取した後、各案及び両修正案について質疑を行い、十二日に質疑を終局いたしました。

 次いで、証券取引委員会設置法案について内閣の意見を聴取した後、各案及び両修正案を一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、まず、証券取引委員会設置法案は賛成少数をもって否決されました。次に、内閣提出の両案に対する両修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、内閣提出の両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、内閣提出の両案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 三案につき討論の通告があります。これを許します。小川淳也君。

    〔小川淳也君登壇〕

小川淳也君 民主党の小川淳也でございます。

 小野委員長の御報告には、お言葉ではございますが、ただいま議題となりました政府提出、証券取引法等の一部を改正する法律案外一案に反対、我が党提出の証券取引委員会設置法案に賛成の立場から討論を行わせていただきます。(拍手)

 大変残念なことに、昨今の金融市場をめぐっては、騒がしい話題に事欠きません。プロ野球の買収、放送局の支配、総選挙への立候補、本当は何がしたかったのかわかりませんが、とにかく勢いに乗った時代の寵児は、とらわれの身となり、そのうそと偽りがあらわになりました。

 二十一兆円の売り上げと過去最高益を更新した日本の自動車メーカー、その決算にかかわったのは、粉飾疑惑により業務停止に追い込まれた監査法人でありました。

 低金利下で高い収益を上げる大銀行、その圧倒的な力は、弱い立場の中小企業にリスクの高い商品を売りつけていました。そして、今度は、その経営手腕が、民営化される郵政会社で試されるのだそうです。

 私たちは、何を信じ、何を信じてはいけないのか、どの明るさは本物で、どの輝きには危うさが伴うか、その見定めが決して容易ではない不安な時代を突き進んでいます。しかし、後戻りをしようというのではありません。自由や競争の価値を認め、市場経済、貯蓄から投資、間接金融から直接金融へ、そのかけ声とともに、経済の力を高めねばなりません。

 一方で、私たちは覚悟しています。真の自由には、それをはるかに上回る規範を必要とします。自由な市場には、これまでにも増して手間暇と費用をかけ、はぐくまねばなりません。だからこそ、私たちは、十分な権限、人、政府からの独立、これらを兼ね備えた監視機関を日本市場につくりたいのです。三千人を超えるアメリカの体制に対し、日本はわずかに三百人余り。

 委員会審議の中、独立した強い機関が必要、その声は与党内ですら拮抗している、そう告白されたのは、ほかならぬ与謝野大臣御自身でした。そして、十四年前、今の監視委員会の姿に飽き足らずに、より高い独立性と強い権限を持たせることを主張されたのは、公明党の大先輩であられました。

 与党の皆様、私どもの主張に対して、何も恐れず、ひるまず、とらわれず、皆様の拮抗したお考えをぜひ行動に移していただきたいのです。(拍手)

 昭和二十三年以来歴史ある証券取引法は、新たに金融商品取引法へと生まれ変わります。株や債券にとどまらず、さまざまな商品を一手に扱うこの法案、しかしながら、不十分な点を指摘せざるを得ません。

 なぜ、横断的と言いつつ、銀行と保険を含めないのか。なぜ、小さな元手で巨額の損益を左右する商品取引を対象に含めないのか。外貨取引には電話や訪問勧誘を禁止しているではありませんか。なぜ、はるかに被害と苦情の多い商品取引は放置したままなのか。そこには、金融庁内部の縦割り、経産省や農林省との縄張り争いがあったのではありませんか。

 仮に役所の組織立てが立ちはだかるなら、そのときこそ政治の出番ではありませんか。困難は百も承知、利害錯綜は覚悟の上、それでも、そこへ手を突っ込んで、泥をかぶり、国民生活の安心のために、譲れない一線をかち取ってくるべきではありませんか。国民の暮らしは、決して役所の縦割りに沿って営まれているものではありません。

 私たちは、この商品取引を金融商品に位置づけ、その主務大臣には、農林、経産両大臣に加え、金融当局を追加すべきことを主張します。

 一連の高邁な看板と裏腹に、肝心かなめのところで、役所の利害を、関係団体の顔色をうかがってきてはいませんか。それが小泉改革の一面の実相ではありませんか。一部の明るさと引きかえに、不正や不公平を見過ごし、勝ち組に喝采を送る一方で、多くの不安や不満を顧みずにきた。そのことが格差の拡大する不安な社会を助長してはいませんか。

 格差は悪いことではない。本当ですか。開き直るようなことですか。言葉少なに苦渋の表情を浮かべ、宰相たるものの国民への愛情を示してはいただけませんか。国民に国を愛せとおっしゃる前に、宰相こそが、まずは国民への深い思いをお伝えになるべきではありませんか。(拍手)

 経済界の要請に、総理は、経済と、政治と商売が別だとおっしゃった。それは本心ですか。古くから、経世済民、政治とは、物心両面から国民生活の憂いを除き、幸せの増すことを願う営みではありませんか。

 靖国は心の問題だからですか。正気でおっしゃっておられますか。拉致や核の問題を抱えた今、中国や韓国と語り合えない今の状況は、すぐれて、国際政治、経済の問題ではありませんか。

 総理が進めてこられた金融の自由化、民営化、市場原理に競争社会、大いに結構です。しかし、私たちの社会は、そんな価値観だけで成り立ってきたわけではありません。互いに思いやり、いたわり合い、慈しみ合い、助け合ってきた、そんな情緒と知恵に満ちたものでした。私たちが大切にしてきた、そのもう一つの価値を再び取り戻す日本を築きたいと思っています。

 総理、あなたが冷徹を通される限り、私たちは、どこまでも温かくありたいと思っています。あなたが非情なら私たちは情け深く、あなたが切り捨てたものを私たちは拾い上げ、紡ぎ合わせる側に回りたい。あなたが目をそらしてきたものに私たちはひとみを見開き、耳を閉ざしてきたその小さく埋もれそうな声に私たちは耳を傾けたいと思います。

 今こうしている間にも、庶民の平穏な暮らしには魔の手が伸びようとしています。すきに満ちた日本の市場には、暴利をねらう拝金主義が虎視たんたん無垢な暮らしをねらっています。

 どうか議員の皆様、私たちの思いに御理解、共感をお寄せくださいますことを心よりお願い申し上げ、私の討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一、古本伸一郎君外六名提出、証券取引委員会設置法案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第二、内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及び日程第三、証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 教育基本法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、教育基本法案について、趣旨の説明を求めます。文部科学大臣小坂憲次君。

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 教育基本法案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 現行の教育基本法については、昭和二十二年の制定以来、半世紀以上が経過をいたしております。この間、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化など、我が国の教育をめぐる状況は大きく変化するとともに、さまざまな課題が生じており、教育の根本にさかのぼった改革が求められております。

 この法律案は、このような状況にかんがみ、国民一人一人が豊かな人生を実現し、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の平和と発展に貢献できるよう、教育基本法の全部を改正し、教育の目的及び理念並びに教育の実施に関する基本を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、教育振興基本計画について定める等、時代の要請にこたえ、我が国の未来を切り開く教育の基本の確立を図るものでございます。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、この法律においては、特に前文を設け、法制定の趣旨を明らかにいたしております。

 第二に、教育の目的及び目標について、現行法にも規定されている「人格の完成」等に加え、「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い」、「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う」こと、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」ことなど、現在及び将来を展望して重要と考えられるものを新たに規定いたしております。また、教育に関する基本的な理念として、生涯学習社会の実現と教育の機会均等を規定いたしております。

 第三に、教育の実施に関する基本について定めることとし、現行法にも規定をされている義務教育、学校教育及び社会教育等に加え、大学、私立学校、家庭教育、幼児期の教育並びに学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力について新たに規定いたしております。

 第四に、教育行政における国と地方公共団体の役割分担、教育振興基本計画の策定等について規定をいたしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 教育基本法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。下村博文君。

    〔下村博文君登壇〕

下村博文君 自民党の下村博文です。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました教育基本法案について、総理大臣並びに文部科学大臣に質問いたします。(拍手)

 GHQの影響下にあった現行教育基本法を改正し、我が国の伝統や文化に根差した真の日本人を育成することは、憲法改正と並んで、自民党結党以来の悲願でありました。その教育基本法がいよいよ改正されることに、私は、感慨を持って質問いたします。

 さて、我が国は、戦後の荒廃の中から立ち上がり、世界有数の経済大国まで成長しました。これは、我が国の国民が懸命に努力してきたたまものであります。

 こうした繁栄の原動力となった教育、教育を大切にする国民のもと、義務教育、社会教育などの諸制度は、我が国の経済のみならず、社会、文化の発展を支えてまいりました。

 しかし、この半世紀以上の間に、少子高齢化の進行と家族・地域の変容、産業・就業構造の変化、高度情報化とグローバル化の進展、科学技術の進歩と環境問題の深刻化など、教育を取り巻く状況は大きく変化しております。

 また、この間、高校、大学進学率の著しい上昇や生涯学習社会への移行など、教育のあり方も変容を遂げてきている一方、教育現場では、いじめ、校内暴力、不登校、学級崩壊、学力低下の問題が発生したほか、ニートに象徴される若者の職業意識の希薄化や青少年による凶悪犯罪の増加などの問題に直面をしております。

 我が国がこのような状況に至った原因として、私は、戦後教育のあり方が影響しているのではないかと思います。戦後の社会や学校現場では、個性の尊重や個人の自由が強調される一方、規律や責任、他人との協調、社会への貢献など、基本的な道徳観念や公共の精神が、ややもすれば軽んぜられてきました。その結果、拝金主義やルール無視の自己中心主義が日本人の意識の中に深くはびこり、日本の将来を危うくする事態を招いています。

 このような状況の中、私は、現行の教育基本法のままではもはや時代に適合し切れなくなっており、この際、教育基本法を今日にふさわしいものに速やかに改め、時代の変化に対応した適切な教育改革を進めていく必要があると考えます。

 そこで、まず初めに、小泉総理大臣に、今回、教育基本法案を提出した理由について改めてお伺いいたします。

 次に、改正の具体的内容について質問いたします。

 第一に、教育基本法の理念のうち、日本人としての資質に関するものについて伺います。

 今回の教育基本法案では、教育の目標に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」という規定が盛り込まれました。私は、我が国や郷土の伝統文化に対する理解を深め、それらをはぐくんできた国民や国土、自然環境なども含んだ我が国日本を愛し、その発展を願うということは、国民として極めて当たり前で、重要なことであると考えます。

 今回の改正において、このような規定にしたことにより、これからどう変わるのか、また、心でなくなぜ態度としたのか、文部科学大臣にお尋ねします。

 第二に、義務教育と学校の教員について伺います。

 義務教育は、我が国の教育制度の根幹ともいうべき重要なものであります。こうした重要性にかんがみ、国及び地方公共団体は、その役割を明確化し、義務教育が全国あまねく保障され良質のものとなるように、不断の努力を続ける必要があります。

 今回の教育基本法案では義務教育はどのように具体的に規定されるのか、また、義務教育の期間が九年であるとの規定は設けないこととしておりますが、その趣旨は何か、お伺いいたします。

 そして、近年の社会の大きな変化や児童生徒の実態の変化等に適切に対応し、信頼される学校教育を実現するためには、教員の資質向上がますます重要となってきております。教員の養成、研修等のあり方について検討し、その指導力の充実を期す、そのことが必要であると考えます。

 今回の教育基本法案においては、こうした学校の教員に関する諸問題に十分に対応できる内容になっているのか、あわせて伺います。

 第三に、今回新たに規定された、大学、家庭教育、幼児期の教育について伺います。

 先ほども述べましたように、戦後、我が国の教育の状況は大きく変化しました。当時は中学校を卒業すれば就職するのが一般的であったのに対し、今では大学、短大の進学率でも五割に達し、その一方で、家庭の教育力の低下や小学校就学前の幼児期の教育の重要性が指摘されるなど、教育基本法制定当時とは隔世の感があります。

 新しい教育基本法では、どのような考えのもとに、新たに大学、家庭教育、幼児期の教育について規定したのか、伺います。

 第四に、学校における宗教教育についてです。

 宗教は、人々にそのあり方や生き方を深く洞察させる機会を与えるなど、人格を形成する上で極めて重要であり、宗教が長い年月をかけて培ってきた人間理解、人格陶冶の知恵を教育の中に生かす必要があると私は考えます。しかし、実際の教育現場、とりわけ学校においては、宗教に関する教育は適切な教育が行われているでしょうか。

 今回の教育基本法案を見てみると、宗教教育の条に、新たに、宗教に関する一般的な教養を教育上尊重することのみが盛り込まれております。この規定の意味は何か、この程度によって宗教教育の大切さが教えられるのか、また、この規定によって学校教育がどのように変わるのか、伺います。

 第五に、教育行政について伺います。

 教育は不当な支配に服してはならないと規定されております。一部では、この不当な支配の主体は教育行政であるとし、また一方では、一部の組合組織であるとし、不毛な論争がなされ、戦後教育の混乱の一つとなっていました。

 新教育基本法を見ると、それにもかかわらず、この「不当な支配」という文言は引き続き規定されておりますが、果たしてこの意味するところは何か、御説明を伺います。

 第六に、教育基本法改正後の教育について伺います。

 教育改革の大きな前進につなげるためには、私は、この教育基本法を一刻も早く成立させ、あわせて教育全般にわたった諸法令の見直しが必要であると考えます。教育基本法の改正後、教育はどのように変わるのか、文部科学大臣の御所見を伺います。

 最後になりましたが、教育基本法の改正により、新しい時代にふさわしい教育が行われ、我が国及び国民の未来がますます明るくなることを期待し、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 下村議員に答弁いたします。

 教育基本法案を提出した理由でありますが、戦後、教育基本法の理念のもとで構築された教育諸制度は、国民の教育水準を向上させ、我が国の社会発展の原動力となってきたと思います。

 しかし、科学技術の進歩や少子高齢化など、教育をめぐる状況が大きく変化する中で、道徳心や自律心、公共の精神、国際社会の平和と発展への寄与などについて、今後、教育において、より一層重視することが求められてきております。

 このため、教育基本法を改正し、新しい時代の教育理念を明確にすることで、国民の共通理解を図りつつ、国民全体による教育改革を着実に進め、我が国の未来を切り開く教育の実現を目指すものであります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 下村議員から七つ御質問がございました。

 最初に、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」についてのお尋ねでありました。

 本法案では、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛することと、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与することを一体として規定するものであり、これらの全体を受けて「態度を養う」と規定しているものであります。

 なお、「我が国と郷土を愛する」は、我が国を愛し、さらにその発展を願い、それに寄与しようとする態度を規定しており、この態度を養うことと、心、心情を培うことは、一体としてなされるものと考えております。

 今後、このような資質を新しい教育基本法に明示することにより、国民的な共通理解のもと、さまざまな教育の場において、より充実した指導が期待をされるところであります。

 次に、義務教育の規定についてのお尋ねでありますが、義務教育は、憲法に規定されている、我が国の人材育成の基盤となる重要なものであります。このため、法案では、義務教育を適切に実施するため、第五条「義務教育」では、国、地方公共団体に対し、義務教育の機会の保障や水準確保のため、適切な役割分担、相互協力のもと、その実施に責任を課すとともに、第十六条「教育行政」では、国は、全国的な教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定、実施することとし、地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るための施策を策定、実施することを規定いたしております。

 なお、義務教育年限については、将来の延長の可能性も視野に入れつつ、その際の手続が柔軟に行えるよう、学校教育法などにゆだねることとしたものであります。

 次に、教員に関するお尋ねでありますが、教育は、教員と児童生徒の人格的な触れ合いによってその育成を促す営みであり、教育の成否は教員にあると言っても過言ではなく、その職責遂行のために、改めてその使命を自覚し、不断に資質の向上に努める必要があります。一方、指導力不足の教員や教員の不祥事などの事例が増加しており、これに対する適切な対応が求められております。

 このため、教員の使命や職責、身分の尊重と待遇の適正を規定した現行法の規定を基本的に引き継いだ上で、自己の崇高な使命を深く自覚すること、絶えず研究と修養に励むべきこと、養成と研修の充実が図られなければならないことを新たに加えることとしております。

 文部科学省としては、このような改正の趣旨や、現在、中央教育審議会における教員免許のあり方に関する議論などを踏まえ、今後、教員の一層の資質向上に向けた取り組みを進めてまいる所存であります。

 次に、大学、家庭教育、幼児期の教育の規定に関するお尋ねでありますが、大学については、知の世紀をリードする人材の育成に重要な役割を担うとともに、教育と研究を一体として行うこと、大学の自治に基づく配慮が必要であること、国際的にも一定の共通性が認められることなどの特性を踏まえ、特に規定しております。

 家庭教育については、すべての教育の出発点であり、基本的倫理観などを育成する上で重要な役割を果たすものであり、父母その他の保護者が子の教育について第一義的責任を有することを規定するとともに、国や地方公共団体の支援について規定をいたしております。

 幼児期の教育については、心身の健やかな成長を促す上で重要な意義を有するものであり、家庭、幼稚園、地域社会における幼児期の教育の重要性を規定し、国及び地方公共団体がその振興に努めなければならない旨を新たに規定いたしております。

 次に、宗教教育に関するお尋ねでありますが、宗教は、人間としてどうあるべきか、与えられた命をどう生きるかなど個人の生き方にかかわるものであると同時に、社会生活において重要な役割を持つものであり、また、国際関係が緊密化、複雑化する中、他国の文化、民族について学ぶ上で、背後にある宗教に関する知識や理解を深めることが必要であります。

 このため、教育基本法案では、主要宗教の歴史や特色、世界における宗教の分布など、宗教に関する一般的な教養を教育上尊重することとしたものであります。

 学校においては、宗教に関する知識や意義が必ずしも適切に教えられていないとの指摘があることから、改正の趣旨を踏まえ、信教の自由や政教分離の原則に十分配慮した上で、宗教に関する教育をより適切に実施することが求められております。

 また、現在、学校において道徳を中心に行われている、宇宙や生命の神秘、自然といった人間の力を超えたものに対する畏敬の念をはぐくむことなどの取り組みは、今後とも重要であると考えております。

 次に、不当な支配に関するお尋ねでありますが、現行法では、「教育は、不当な支配に服することなく、」と規定し、教育が国民全体の意思とは言えない一部の勢力に不当に介入されることを排除し、教育の中立性、不偏不党性を求めており、今後とも重要な理念であります。

 なお、一部の教育関係者等により、現行法第十条の規定をもって、教育行政は教育内容や方法にかかわることができない旨の主張が展開されてきましたが、このことに関しては、昭和五十一年の最高裁判決において、法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為は不当な支配とはなり得ないとされ、また、国は、必要かつ相当と認められる範囲内において、教育内容についてもこれを決定する権能を有することが明らかにされております。

 今回の改正においては、最高裁判決の趣旨を踏まえ、不当な支配に服してはならない旨の理念を掲げつつ、教育は法律に定めるところにより行われるべきと新たに規定し、国会において制定される法律に定めるところにより行われる教育が、不当な支配に服するものでないことを明確にしたものであります。

 最後に、教育基本法改正後の教育についてのお尋ねですが、今回の改正は、我が国の未来を切り開く教育が目指すべき目的や理念を明示することによって、国民の共通理解を図りつつ、教育改革の第一歩とするものであります。また、今日重要と考えられる資質が新しい教育基本法に明示されることから、教育の場においても、より充実した指導が行われることが期待されるところであります。

 さらに、文部科学省としては、新しい教育基本法に基づき、教育全般について見直しを行うとともに、教育振興基本計画を策定し、教育施策を総合的かつ計画的に推進してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 鳩山由紀夫君。

    〔鳩山由紀夫君登壇〕

鳩山由紀夫君 民主党教育基本問題調査会長の鳩山由紀夫です。

 民主党・無所属クラブを代表して、質問をいたします。(拍手)

 まず冒頭、先ほど御葬儀がございましたが、小泉首相初め皆様方とともに、急逝されました松野頼三先生のみたまに対し、心から御冥福をお祈り申し上げます。

 小泉総理、あなたは、就任後の所信表明演説で、米百俵の精神をこの演壇で国民に向かって強調いたしました。当然、お忘れになっておられるわけはありません。あれから五年がたちました。残念ながら、以来、私は、少なくともあなたの口から教育についての真剣な思いを聞いたことは一度もありません。昨今、目を覆いたくなるような事件が続発するなど、社会の荒廃が進んでいます。だからこそ、人づくり、教育改革が求められているのです。しかしながら、小泉総理にはそういう認識があるとは全く思えないのであります。

 その理由の第一は、教育基本法という国の根幹にかかわる重要法案を、国会の終盤に突然提出する姿勢です。このことこそが、あなたが教育を軽んじている証左ではありませんか。

 与党内で七十回議論したといいながら、中身が全く見えてきません。中教審の会長ですら、その議論の経過を全く聞いていないとおっしゃっています。そして、法案を見ても、本当に七十回も議論をしたのかと疑いたくなるような貧相な内容です。

 密室の中で、自民党の主張する愛国心と公明党の主張する宗教教育の中身をバーターしたということがあったとすれば、もってのほかで、全く国民不在であり、強い憤りを禁じ得ません。

 第二に、教育基本法は憲法の附属法でありますから、本来ならば、将来、新しい憲法の中でうたわれる教育の方針に沿って改正されるのが筋です。かつて、急逝された後藤田正晴先生をお招きしたとき、教育基本法は、歴史的にも内容的にも、憲法改正をしてから改正するべきものであると述べられたことを、先生の私どもに与えてくださった遺言と信じております。

 民主党では、歴史認識、来るべき文明、時代にについて考察の末、私の持論でもありました学ぶ権利や文化コミュニケーション権の充実を憲法提言の中にも盛り込み、そうした議論と連動して、今回の日本国教育基本法案を要綱としてまとめました。しかし、自民党の憲法改正案を見ても、教育に関する新たな考え方は全く示されておりません。教育についても、きちんとあるべき憲法の議論を行った上で、改正案を出し直すべきではありませんか。

 第三に、そもそも教育基本法の改正は、文教政策の真髄をなす議論であります。衆議院には文部科学委員会があるわけでありますから、ここで議論するのが当たり前ではありませんか。それを、時間がないからといって、数の力で強引に特別委員会を設置すること自体、常任委員会の否定であり、こうしたやり方は断じて許されるものではありません。本来ならば、まずは国会に憲法調査会のような調査会を衆議院、参議院に設置して、広く国民の議論を聞くことから始めるべきであります。

 総理、あなたは施政方針演説の中で、教育基本法について、国民的な議論を踏まえて速やかな改正を目指すと述べられました。あなたもおっしゃっているように、十分な審議を行い、国民的な議論を巻き起こすことが急務であります。六十年ぶりの改正を、会期が一カ月程度しか残されていない中で、今国会中に成立させることが本当に可能と考えておられるのですか。もし本気で考えておられるのだとしたら、国民軽視も甚だしいと言わなければなりません。

 小泉総理、あなたの、公約を守ることなんて大したことではないなどといった軽佻浮薄な言葉や、刺客を放つなどといった行為こそ、子供たちに悪影響を与えているのであります。教育基本法を改めるよりも先に、為政者の軽さこそ改めるべきじゃありませんか。(拍手)

 小泉総理、私ども民主党は、一昨年以来、多くの関係団体の方々とも議論をしながら、新しい教育基本法の制定に向けた作業を進めてまいりました。日本の教育を具体的に改善していくための大きな第一歩として、民主党の総意として、日本国教育基本法案を近く国会に提出することにしています。小泉総理、我が党の案と、政府の改正案と、どちらが真剣に子供のことを考えているのか、今の教育現場が抱えている問題を本気で解決しようとしているのか、大いに議論しようじゃありませんか。

 大変遺憾ながら、文部科学委員会でも調査会でもなく、特別委員会での審議になるわけでありますが、我々の法案も含めてしっかりと議論していくことを約束してください。間違っても、今国会中に成立などとざれごとを言わずに、これから一年、二年かけて、まさに国民を巻き込んだ議論を呼び起こして、これからの時代にふさわしい教育基本法をつくることを約束してください。総理の見解を伺わせていただきます。

 さて、私は、この政府案を拝見して、まず感じたことは、一体だれのための教育であり、教育基本法なのかということでありました。

 実際には憲法で、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と、教育は国民の権利とうたってはあります。しかしながら、現在、我が国では、格差問題が深刻化し、格差の世代間連鎖すら起こっているんです。人生のスタートラインにおける格差までも放置していいと開き直る総理は、世界広しといえども、小泉総理、あなた一人しかいません。まさに、格差問題解決のためにも、教育基本法の中では、学ぶ権利が国民にあることをしっかりと明記する必要があります。

 政府案では、教育の目的、目標の中で、国民に上から強制的に押しつけるような項目の羅列がありますが、一番大事な学ぶ権利や教育権がだれにあるのかが明記されていない。この点についてどうお考えでしょうか。

 さらに、学ぶ権利は、国民だけではなく、日本に住むすべての人々にあるべきと考えます。それが社会の安定や向上にもつながります。政府改正案の第四条で定める教育の機会も、「すべて国民」ではなく、「何人も」に対して保障すべきものだと思いますが、いかがですか。あわせてお答えを願います。

 次に、いわゆる愛国心に関して伺います。

 国を愛する心を、健全な形で、自然な結果として国民が持つのは、至極当たり前の話です。自分の家庭を愛し、故郷を愛し、祖国を愛する、そうした心が養われることによって、他者を慈しみ、他国を理解することもできるはずです。グローバル化の時代だからこそ、国を愛する心は必要なのです。しかしながら、それが強制的に押しつけられるものであっては決してなりません。

 我々民主党は、目指すべき教育について、前文の中で、「日本を愛する心を涵養し、祖先を敬い、子孫に想いをいたし、伝統、文化、芸術を尊び、学術の振興に努め、他国や他文化を理解し、新たな文明の創造を希求する」とうたいました。

 涵養とは、自然に水がしみ込むように、徐々に養い育てるという意味であります。日本のよき伝統、豊かな文化、日本人が大切にしてきた自然観、先人たちがどれほどの努力をし、困難を乗り越えて今日の日本を築いてきたのかなどを学ぶことによって、自分が生まれ育った日本に対して誇りを持つことができるのではないでしょうか。そういう精神は、決して、国を愛せと一方的に押しつけるだけで育つものではありません。

 この点について、政府案では、子供に対する押しつけリストと言ってもいいような項目が教育の目標として並んでいます。その項目の最後に、「我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」とあります。国を愛する態度というのは、具体的にはどういう態度なのですか。わかりやすい答弁を願います。国を愛するという心がなくとも、単に態度だけを示せばよいということなんでしょうか。それとも、態度の中には心も含まれるとおっしゃるのでしょうか。なぜ愛する心としなかったのかについてもお伺いをいたします。

 さらには、他国を尊重するとありますが、例えば、我が国に対して拉致という許せない行為を犯している北朝鮮をも尊重しなければならないのでしょうか。明確にお答えを願います。また、政府案のように、教育の目標の最後につけ足すのではなく、きちんと基本法全体にかかる基本として位置づけるべきではないでしょうか。

 次に、宗教教育についてお尋ねします。

 私は、子供たちが宗教心あるいは倫理観を自然に学ぶことは非常に大切だと思っています。しかしながら、現行基本法の特定の宗教のための宗教教育を禁止する規定が拡大解釈をされて、宗教心や倫理観の涵養までもが教育の場から忌避されてきた嫌いがあります。子供が子供を、親が子を、あるいは子が親を傷つけたりあやめたりという事件が続発をし、拝金主義が横行して、モラルというものが急速に低下をしています。今こそ、命の大切さや生命に対する畏敬の念、人間の尊厳の大切さを認識し、宗教的な感性を養うことが重要だと考えます。多くの自民党の皆さんも、私と同じような気持ちをお持ちなのではないでしょうか。

 残念ながら、政府案の中では、宗教教育に関して、ほとんど現行どおりの内容です。公明党への配慮でそうせざるを得なかったとの報道もありますが、教育が党利党略でゆがめられることがあっては断じてなりません。宗教的情操教育を充実させることは必要ないと考えておられるのか、総理、官房長官にお伺いします。特に安倍官房長官には、なぜ自説を曲げられたのかについても説明願います。(拍手)

 次に、高等教育についてお伺いいたします。

 高等教育に力を入れることは、国際的な競争力をつけていく上でも重要であり、現行法にない高等教育の規定を追加しなければなりません。政府案では、第七条に、大学に限って新設をされています。高等教育には高専なども含まれておるのでありますが、あえて大学に限定し、その他の高等教育機関に全く触れていない理由をお聞かせ願います。

 また、日本の高等教育における家計の自己負担比率は約六割と、先進国中最も高くなっています。所得格差が進む中で、高等教育を受ける機会の確保が重要です。政府は、国際人権A規約の中の高等教育段階無償化条項について、百五十一カ国中三カ国、マダガスカルとルワンダとともに、いまだに日本は留保しています。国連への勧告も出ており、回答期限も六月末と迫っています。これを解除し、高等教育の無償化に向けた奨学金制度の抜本的拡充について大きくかじを切るために、今回の教育基本法の議論を活用すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 また、少子化問題への解決を考えた場合、民主党案に盛り込んだ、幼児期の子供に対する無償教育の漸進的導入についていかがお考えでしょうか。

 私は、公教育には責任を持ってしっかりと財政支出を行うべきだと考えています。公教育財政支出の対国内総生産比率は、初中等段階で二・八%、高等教育段階で〇・五%となっています。いずれも先進国中最低レベルです。北欧諸国並みとまでは言いませんが、せめてアメリカ並みの、初中等教育三・八%、高等教育一・五%ぐらいには引き上げるべきだと思います。

 民主党案では、教育振興計画の中で、公教育費の確保、充実の目標を盛り込んでいます。政府案にはこうした観点は欠落をしています。小泉総理、あなたは教育に対して、財政支援も含めて責任を持つ覚悟がおありなのかどうか、お聞かせください。

議長(河野洋平君) 鳩山君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

鳩山由紀夫君(続) さらに、民主党案は、ニート問題を踏まえた職業教育の振興を、また、インターネット社会の進展が子供の成長に大きな影を落としていることから、情報文化社会に関する教育の充実を盛り込んでいます。さらに、教育の多様化のニーズにこたえ、建学の自由を最大限重んじるべきことなどを新たに盛り込んでいます。これらの重大な課題についても、総理の御見解を聞かせてください。

 人なくして国なしであります。自立しつつ、お互いに違う個性を尊重しながら、ともに生きていく平和な世界をつくるためにも、自由と責任についての正しい認識と、人と人、国と国、人類と自然との間に、ともに生き、互いに生かされるという共生、友愛の精神を醸成することこそが求められています。

 真の主権者たる人材の育成は、私ども民主党が政権を担い、私ども民主党の日本国教育基本法によってしか実現しないことを最後に申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山議員に答弁いたします。

 憲法についての議論と教育基本法改正との関係でございますが、我が国の教育はさまざまな課題を抱えており、新しい時代にふさわしい教育の基本を確立するため、教育基本法を改正することが必要であります。

 なお、教育基本法は、日本国憲法と密接に関連してはいるものの、憲法改正を待たなければ改正できないという関係にはないものと考えております。

 本法案に関する議論のあり方についてですが、教育基本法の改正については、平成十二年十二月の教育改革国民会議報告に提言されて以来、中央教育審議会における審議、意見募集や各種会議での説明など、国民的な理解や議論を深めながら取り組んでまいりました。

 このたび、与党における最終的な結論も踏まえ、政府案を提出したところでありますが、民主党が対案をまとめられたことは歓迎いたします。国会での議論の進め方は国会で決定していただくべきことと考えておりますが、政府としては、国会でしっかりと議論していただけるよう適切に対応してまいります。

 学ぶ権利、教育権についてですが、国民が教育を受ける権利については、憲法第二十六条に規定されているところであります。さらに、本法案においては、現行法に引き続き、国や地方公共団体が、学校制度の構築や学校の設置、運営などによって国民の教育を受ける機会の提供に努めなければならないという、より積極的な責務を規定しているところであります。

 教育の機会を保障する対象ですが、憲法第二十六条は、国民が教育を受ける権利を定めております。この憲法の規定を踏まえ、現行基本法では、国民を対象として教育の機会均等など教育の基本的理念を規定しており、改正案もこれを引き継いだものであります。

 本法案においては、外国人に関して特段の規定を設けてはおりませんが、希望する外国人に対する義務教育の機会の保障等については、今後とも日本人と同様に取り扱うこととしております。

 我が国と郷土を愛する態度についてですが、我が国と郷土を愛する態度とは、我が国を愛し、その発展を願い、それに寄与しようとする態度のことであり、このような態度は心と一体として養われるものと考えています。

 また、本法案においては、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」こととともに、「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する」ことを一体として規定することとしたところであり、これを受ける語句としては「態度を養う」とすることが適当であると判断したものであります。

 他国を尊重するということについてですが、「他国を尊重し、」とは、我が国や郷土を重んずるのと同様に、他の国に対して排他的になることなく、尊重することを全体として表現しているものであって、特定の国を指すものではありません。

 なお、この条項は「教育の目標」に規定しておりますが、「教育の目標」は教育基本法の第一章に規定しており、まさにこの法律の基本となるものであります。

 宗教的情操については、その内容が多義的であることなどから教育基本法案には規定しておりませんが、今後とも、現在、学校において道徳を中心に行われている、生命のとうとさや自然の偉大さを理解し、美しいものに対する豊かな心などをはぐくむ取り組みが引き続き重要であると考えております。

 大学について規定する理由についてでございますが、大学の役割は、我が国が知の世紀をリードするための人材育成を行う上で一層重要となっております。また、大学は、教育と研究を一体として行うこと、大学の自治に基づく配慮が必要であることなど、固有の特性を有しております。このような大学が担う役割の重要性と特性を踏まえ、大学については、学校教育全体に関する条文に加え、特に規定を置くものであります。

 国際人権規約における高等教育無償化条項についてですが、教育の機会均等は極めて重要な原則であり、改正法案においても引き続き規定しております。我が国の高等教育機関への進学率は、奨学金事業の充実等に努めてきた結果、先進国の中でも高い水準である七六%にまで達しておりますが、今後とも、高等教育を受ける機会の確保について適切な施策を講じてまいります。

 なお、国際人権規約の高等教育無償化条項については、無償化のための財源をどのように賄うか等の問題もあることから留保しております。

 幼児期の子供に対する無償教育の漸進的導入についてですが、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児期の教育は極めて重要であり、教育費負担の軽減など、幼児期の教育の振興に努めているところであり、今回の法案においても、幼児期の教育の振興を国及び地方公共団体の責務として規定したところであります。

 なお、幼児期の教育の無償化については、財源のあり方等を含めた幅広い観点からの議論が必要であると認識しております。

 公教育財政支出の水準や教育に対する責任を持つ覚悟についてですが、教育に対する投資については、我が国の学校教育費に対する公財政支出の対GDP比は諸外国と比較して低いものの、他方で、初等中等教育における在学者一人当たりの額を見れば、欧米諸国と遜色のない水準であり、また、公立小中学校については、平成元年から十五年間に五割以上増加しているところであります。

 いずれにしても、教育への投資は、我が国の発展に欠かすことのできない未来への先行投資であり、新しい時代を切り開く、心豊かでたくましい人材を育てる教育を実現するよう、全力を挙げて取り組んでまいります。

 教育上の重要な課題についてですが、今回の法案においては、職業教育に関しては、フリーター、ニートが社会問題化している状況を踏まえ、職業との関連の重要性について、また、私学の果たす重要な役割にかんがみ、私立学校の振興について新たに規定したところであります。

 また、インターネット社会の課題については、情報活用能力の育成や、有害情報等への対応等に関する指導の充実などを通じ、適切に対応しているところであります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣安倍晋三君登壇〕

国務大臣(安倍晋三君) 鳩山議員にお答えします。

 宗教的情操教育についてお尋ねがありました。

 私は、この件について、特段自説を曲げたということはありません。

 宗教的情操については、その内容が多義的であることなどから、教育基本法には規定しておりません。もとより、宇宙や生命の神秘、自然などに対する敬けんの念については、現在でも、学校において、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めることなどを通じてはぐくんでいるところであり、このような取り組みは今後とも重要であると考えております。

 なお、今回新たに、宗教に関する一般的教養を規定しており、今後、宗教に関する教育が適切に実施されるものと期待をしております。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 鳩山議員から三つ御質問がありました。

 最初に、教育基本法に大学について規定する理由についてお尋ねがありました。

 これからの大競争時代において、我が国が世界に伍して競争力を発揮し、知の世紀をリードする人材を育成するためには、大学の担う役割が一層重要となっております。また、大学は、教育と研究を一体として行うこと、大学の自治に基づく配慮が必要であることなど、固有の特性を有しております。このような大学が担う役割の一層の重要性と特性を踏まえ、大学については、学校教育に関する条文に加え、特に規定を置くこととしたものであります。

 次に、国際人権規約における高等教育無償化条項についてお尋ねがございました。

 教育の機会均等の達成は大変重要な課題であり、改正法案においても引き続き規定をいたしております。

 国際人権規約の高等教育無償化条項については、高等学校卒業後、社会人として税金を負担している者との公平を図り、学生に適正な負担を求める等の観点から、留保しているところであります。

 また、奨学金事業や私学助成等を通じた支援に努めてきた結果、我が国の高等教育機関への進学率は先進国の中でも高い水準に達しており、今後とも、高等教育を受ける機会の確保について適切な措置を講じてまいります。

 最後に、幼児期の子供に対する無償教育の漸進的導入についてお尋ねがありました。

 生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児期の教育の充実は極めて重要であり、教育費負担の軽減など、幼児期の教育の振興に努めているところであります。

 幼児期の教育の無償化については、財源のあり方等を含めた幅広い観点からの議論が必要な課題と認識をいたしております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 太田昭宏君。

    〔太田昭宏君登壇〕

太田昭宏君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました教育基本法案について質問いたします。(拍手)

 二十一世紀は人間の世紀であり、人道の世紀であります。そしてまた、二十世紀前半が領土を争う覇権の時代であり、二十世紀後半は富を争う時代であったのに対し、二十一世紀はアイデンティティー競争の時代であると識者の指摘するとおり、グローバリゼーションと歴史性の中でアイデンティティーを問う時代を迎えております。

 しかも、司馬遷が史記の中で、「国の衰亡は戦乱等によらず。人間の基本を失った時に起きる」として「本(もと)を失う」と表現したように、また、現行教育基本法がその前文において、「この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」とあるように、我が国において今最も重要課題は人間教育にあり、教育改革にあると言えると思います。

 まさに教育の深さこそが日本社会の未来を決定づけるのであり、今こそ衰弱する社会総体の教育力を向上させなければなりません。私は、まず、教育基本法論議の前提として、二十一世紀を教育の世紀とすべく、教育改革への総理の決意を伺いたい。

 大切なのは人間教育であります。東洋の思想では、人間という概念を、一人の人間とともに、人と人との間として人間(じんかん)とあわせてとらえています。我の世界と我々の世界と表現した教育学者もおり、教育は、我の世界の深まりと、我と我とが織りなす我々の世界、双方の充実を期さなければなりません。

 私は、現行教育基本法にある個人の尊厳、人格の完成の理念を、学校教育のみならず、生涯学習を含めて貫き、教育を大切にする社会を形成しなければならないと考えます。

 ビクトル・ユゴーは、海よりも壮大な眺めがある、それは大空である、大空よりも壮大な眺めがある、それは人間の魂の内部であると言っています。海よりも大空よりも広いものが人間の心だというユゴーの言葉は、ある意味では、地域をも国家をも超える、自由闊達な、時空を超える人間の生命空間の広がりと人間の無限の可能性への賛歌であると思います。教育はまさしく、無限の可能性を持つ人間を磨き、手入れをし、耕し、鍛え、豊かにするものでありましょう。

 憲法に規定されているように、教育を受けることは国民の権利であり、人間という視点を中心に据えた人間教育の復興に努めるべきだと考えます。総理の見解を伺います。

 同時に、グローバルな時代における日本人のアイデンティティーの問題であります。

 今から約百年前、明治期半ばの日本は、近代化への激しき波の中で、欧米の文明を受容しつつ、日本の文化、歴史とは何か、日本人とは何かと、多くの知識人、哲学者がアイデンティティーを模索し、問いかけました。

 新渡戸稲造の「武士道」が一八九九年。岡倉天心の「茶の本」、内村鑑三の「代表的日本人」、牧口常三郎の「人生地理学」などは、いずれも一九〇〇年前後の著作であります。今まさに、グローバルな時代における日本の未来を考えるときに、アイデンティティーの問題を、長い歴史的スパンと文化を常に念頭に置き、考えるべきであります。

 人は、その地域、環境によって与えられた文化を呼吸して生きていく存在であり、デューイの言うように、人間は学ぶことによって人間になる存在であります。それゆえに、最終価値を押しつけるのではなく、成長の過程で、人間観や自然観、国家観や世界観を持つ、判断力を持つ人間へと育ち行く教育が大切だと思います。総理の見解を伺います。

 さらに、先ほど述べました、人と人との間に生きる人間、社会の中に生きる人間の教育についてであります。

 率直に言って、人と人とのつながり、人と自然とのつながり、人と社会とのつながりが希薄になっていることは事実であり、これを取り戻す努力が必要となっています。個人ではなく私人になっていると批判し、それを現行の教育にすべて帰するのは誤りであります。むしろ、社会の変化によるところが極めて大きく、高度に発達した社会全体が大衆社会化状況において個の埋没や人間関係の分断化をもたらすものであることは、数十年前よりオルテガやホイジンガ、リースマン、オーウェル等が先駆的に指摘したところであります。

 私は、だからこそ、教育によって、他者への無関心と閉じた自己意識を克服すること、分断からのきずなの回復を目指す視点が大事であると思います。むしろ、より積極的に、本当の意味での幸福感は、人間と人間、人間と自然といった結びつきを通してしか得られない、その中において人格は鍛えられるものだという積極的考えに立つべきだと思います。総理のお考えを伺います。

 次に、今回の教育基本法案について何項目か伺います。

 第一に、なぜ改正するかという点であります。

 制定された昭和二十二年当時は、憲法二十六条においても、教育基本法においても、国民は、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う、その義務教育は九年であると書かれているように、当時は小学校教育さえ十分に受けさせられない家庭すらあったという状況であり、貧困の悪循環を断ち、国家には教育保障責任があることを規定しています。それが今、高校進学率が九七%、大学、短大への進学率が五割にも及び、むしろ大学の質と役割が問われる状況となりました。

 さらにまた、幼児期の教育や生涯学習、社会教育など、学校という場ではない教育が重要となっています。こうした時代の変化に対応した教育を打ち立てる基本法案になっているのか否か、お伺いいたします。

 第二に、教育の現状認識であります。

 昨今、教育にかかわるさまざまな問題が噴出しています。制定当時、想定されていなかった児童虐待や不登校、いじめ、薬物汚染、さらには学力低下の問題、そしてニート、フリーターの増加など、社会も教育現場も激変しています。また、子供を取り巻く社会環境も大きく変化し、高度情報社会、メディア社会、地域のつながりの希薄化、核家族化、労働環境の激変などにさらされています。それらの変化が子供の心をしぼませたり、傷つけたりしていることは間違いありません。これらの教育にかかわる諸問題をどうとらえるのか、教育基本法との関連で総理の御見解をお伺いしたいと思います。

 第三に、教育力の低下の問題です。

 子供は社会の鏡と言われます。少年による犯罪やいじめ等の問題が取り上げられると、家庭でのしつけや学校教育のあり方のみに問題があるかのような議論が交わされていますが、果たしてそうなのか。社会総体が本来有しているはずの教育力の低下という根因が巣くっていると思います。教育力の向上についての考えを伺います。

 第四に、学校教育の位置づけです。

 今回、義務教育を九年とする規定を教育基本法から外しましたが、それでは、小学校は一体何を教えるところなのか、中学校は何を教えるのか。普通教育、義務教育、初等教育、中等教育、高等教育、そして高等学校、大学との関係と性格と位置づけを明確にすることが大切だと思います。特に、私は、高校とは何かというその位置づけの不明確さが気になります。これらの点、今回の改正でどう位置づけたのか、お答えいただきたい。

 第五に、ニート、フリーター、そして二十代の雇用問題が我が国において今極めて重要な問題となっています。当然、職業教育が大きな役割を果たすことになりますが、中学、高校、大学教育の中でどのように組み込むか、現状と展望をお示し願いたい。

 最後に、今回の改正は、今から六年前の二〇〇〇年、小渕内閣、森内閣のもとで行われました民間有識者より成る教育改革国民会議の議論が事実上のスタートとなっています。そのとき、私も政治家として特別参加させていただきましたが、その答申で十七の提言があり、最後に指摘されたのがこの教育基本法改正と教育振興基本計画の策定でありました。そのほか、十五の提言が既に法改正を初め実現していると思いますが、その状況をお示しいただきたい。

 以上、何点か指摘させていただき、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 太田議員に答弁いたします。

 教育改革への決意でございますが、社会の未来を切り開くのは人であります。人こそが我が国の財産であります。我が国が今日まで発展してきたのは教育を重視してきたからであり、一人一人が豊かな人生を生き、互いに支え合って豊かな社会を築いていく原動力は教育であると私は信じております。

 今後とも、教育を国政上の重要課題として位置づけ、一人一人の人間力の向上を目指し、社会全体の力を結集して教育改革に全力を挙げて取り組んでまいります。

 人間という視点を中心に据えた教育についてですが、教育の本質は、教える者と学ぶ者との人格的触れ合いの中で、一人一人の能力を最大限に伸ばし、その可能性を開花させ、自立した個人としてそれぞれが夢と勇気を持って、かけがえのない豊かな人生を送ることができるようにするものであると考えております。

 御指摘のように、個人の尊厳や人格の完成の理念を教育全体に貫くことは普遍的で重要なものであると考えており、今回の教育基本法案においても、現行法に引き続き、これらの理念を規定することとしております。

 アイデンティティーと教育ですが、グローバル化が一層進展した新しい時代においては、一人一人が、先人の築いてきた知恵や文化に触れ、理解を深めるなどの経験を通じ、みずからがはぐくまれてきた背景を理解し、自覚することにより、日本人としてのアイデンティティーを確立することが重要であると考えております。

 同時に、国際社会を生きるこれからの日本人として、他国の多様な伝統、文化を尊重し、国際社会の平和と発展に貢献していくこともまた重要であると考えております。

 人間と人間、人間と自然などの結びつきという視点からの教育ですが、御指摘のように、少子化や都市化などが進み、人と人とのつながりや人と自然のつながりが希薄になっている今日において、教育を通じて社会体験、自然体験などを豊富に積み重ね、豊かな人間性や社会性を身につけることはますます重要になっていると考えております。

 教育の現状認識ですが、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化など、我が国の教育をめぐる状況は大きく変化しております。近年においては、道徳心や自律心の低下が指摘され、いじめ、不登校、さらには家庭や地域の教育力の低下など、さまざまな課題が生じております。

 これらの課題を社会全体の問題としてとらえ、それぞれの原因を究明し、総合的に解決していくことが必要でありますが、それと同時に、教育基本法を改正して新しい時代の教育の基本理念を明確にし、国民全体による教育改革を着実に進めていくことが重要であると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 太田議員から五問、御質問を賜りました。

 最初に、時代の変化に対応した基本法案となっているかどうかとのお尋ねでありました。

 教育基本法の制定以来、半世紀以上が経過する間、社会状況が大きく変化し、高校、大学の進学率の上昇とともに、家庭や地域の教育の重要性が増すなど、教育のあり方は変容を遂げております。

 このため、教育の根本にさかのぼった改革が求められており、今回の法案では、現行法の普遍的な理念は大切にしながら、今日重要と考えられる理念を明確にいたしております。また、時代の変化を踏まえ、新たに、生涯学習の理念や大学、さらに家庭教育や幼児期の教育の規定を設けるなど、新しい時代の教育の基本を明確にするものとなっていると考えております。

 次に、社会全体の教育力の向上についてお尋ねでありますが、子供たちをめぐる課題は大人社会の病理の投影とも言われており、社会全体の教育力の低下がその根本にあると考えております。

 今回の法案においては、家庭、学校、地域社会の三者がそれぞれの責任を自覚し、連携協力に努めることを新たに規定いたしております。これにより、社会全体の教育力を高め、心身ともにたくましい次世代を担う子供たちを社会全体ではぐくむことができるよう努めてまいりたいと思います。

 次に、普通教育や義務教育、高等学校、大学の位置づけなどについてお尋ねでありますが、まず、義務教育に関する規定においては、義務教育として行われる普通教育の目的を明示するとともに、機会の保障や水準の確保を図るため、国、地方公共団体の責任を規定しております。また、学校教育に関する規定においては、初等教育から高等教育までを通じた学校の基本的な役割として、児童生徒などの心身の発達段階に応じ、教育を組織的、体系的に行うものであることを規定しております。

 新しい教育基本法のこうした規定を踏まえ、現在、大変多様化している高等学校の位置づけなど、各学校種のあり方などについて、今後十分に検討を行っていく必要があると考えております。

 次に、職業教育についてのお尋ねでございますが、今回の改正案では、「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。」を教育の目標として規定しております。

 ニートやフリーターについては、雇用環境や景気の動向のみならず、将来の目的が見出せず、何をしたらよいのかわからない若者の増加も背景の一つと考えます。これからの学校教育においては、学ぶことの意義の自覚や自分の将来に関心、意欲を持たせることなどを通じて、望ましい職業観、勤労観や主体的に進路を選択する能力、態度を培うキャリア教育の充実が重要であります。

 このため、中学校における五日間以上の職業体験の推進や、高校、大学等におけるインターンシップなどの推進など、キャリア教育の充実に取り組んでおります。今後とも、生徒や学生がみずからの生き方を考え、主体的に職業を選択できるよう、キャリア教育の充実に積極的に取り組んでまいります。

 最後に、教育改革国民会議からの提案への対応についてのお尋ねでありますが、国民会議での報告では、人間性豊かな日本人の育成、一人一人の才能を伸ばし、創造性に富む人間の育成、新しい時代の新しい学校づくり、教育振興基本計画の策定と教育基本法の見直しの四項目について、十七の御提案をいただいております。

 具体的には、平成十四年一月から、指導が不適切な教員の転職を可能とする制度を導入し、平成十五年四月に、高度専門職業人の養成に特化した専門職大学院制度を創設するなど、教育改革を迅速かつ果断に実行してきたところであります。

 また、今日、教育基本法の改正案を国会に提出したところであり、今後とも、教育改革国民会議の御提案を踏まえ、教育改革にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(横路孝弘君) 石井郁子さん。

    〔石井郁子君登壇〕

石井郁子君 私は、日本共産党を代表して、教育基本法案について総理並びに文部科学大臣に質問いたします。(拍手)

 教育基本法は、憲法の理想を実現するという新しい教育の理念を示して、戦後の平和な民主的社会の建設に向けた取り組み、教育を受ける権利と子供の人間的発達の保障に大きな役割を果たしてきました。今、なぜこの教育基本法を変えるのでしょうか。現行法にいかなる問題があるのか。法案提出の根拠が全く示されていません。教育基本法のどこが時代の要請にこたえられなくなっているのか、明確にすべきです。総理の答弁を求めます。

 今、子供の非行や学校の荒れ、学力の問題、高い学費など、子供と教育をめぐるさまざまな問題を解決することを国民は願っています。これらの原因は教育基本法にあるのではなく、歴代政府が基本法の民主的理念を棚上げにして、それに逆行する競争と管理の教育を押しつけてきたからにほかなりません。今日正すべきは、こうした教育基本法に反した教育政策と教育行政であり、基本法ではありません。ライブドア問題や耐震偽装問題などありとあらゆる問題を教育基本法のせいにし、改定の口実にするなどもってのほかと言わなければなりません。総理の見解を求めます。

 ところが、憲法改悪を目指す自民党政府は、教育基本法制定直後から基本法改悪に乗り出し、最近では、二〇〇〇年の教育改革国民会議、続いて中央教育審議会を舞台に、また二〇〇三年五月からは自民・公明党の教育基本法に関する検討会で、法案の一字一句が検討されてきました。ごく少数の与党議員による徹底した密室の審議が三年間にわたって行われてきたのです。残りわずかな会期末にこのような重大法案を提出すること自体問題ですが、徹底審議のため、与党検討会及び協議会の会議録を国会に提出すべきです。総理の答弁を求めます。

 次に、法案の内容についてです。

 法案の最大の問題は、これまでの子供たち一人一人の人格の完成を目指す教育から国策に従う人間をつくる教育へと、教育の目的を百八十度転換させようとしていることです。

 法案は、新たに第二条「教育の目標」をつくりました。国を愛する態度など二十に及ぶ徳目を列挙し、その目標達成を義務づけようとしています。法律の中に「教育の目標」として詳細な徳目を書き込み、学校で具体的な態度が評価されたら、どうでしょう。時々の政府によって特定の価値観が強制され、子供のやわらかい心が政府の特定の鋳型にはめられることになってしまいます。目標がどれだけ達成されたのか評価するのでしょうか。評価を行えば、憲法十九条が保障した思想、良心、内心の自由が侵害されるのは明らかではないでしょうか。総理並びに文部科学大臣の答弁を求めます。

 日の丸・君が代のように、強制しないと国会で答弁していながら、東京都では強制による処分者が多く出されています。生徒の内心の自由まで侵されています。内心の自由の侵害は絶対許さないと断言できるのか、総理並びに文部科学大臣の答弁を求めます。

 日本共産党は、民主的な市民道徳を培うための教育の大切さを一貫して掲げ、他国を敵視したり他民族を蔑視するのではなく、真の愛国心と諸民族友好の精神を培うことも重要だとしてきました。その内容は憲法と教育基本法からおのずと導かれ、一人一人の人格の完成を目指す教育の自主的な営みの中でこそ培われるものです。市民道徳は、法律によって義務づけられ強制されるべきものでは決してありません。

 教育とは人間の内面的価値に深くかかわる文化的営みです。その内容を法律で規定したり国家が関与したりすることは最大限抑制すべきなのです。その抑制を取り払い、国家が目標達成を強いることは、戦前戦中、教育勅語の十二の徳目を子供たちに植えつけ戦争へと追いやった、その過ちを繰り返すことではありませんか。総理の答弁を求めます。(拍手)

 また、法案は、教育の目的を達成するために、教育に対する政府の権力統制、支配を無制限に拡大しようとしていますが、これも重大問題です。

 現行教育基本法は、その第十条で「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて」と、国家権力による教育内容への不当な支配を厳しく禁止しています。教育基本法作成当事者たちが書いた「教育基本法の解説」によれば、教育諸条件の整備確立というのは、教育行政の特殊性からして、それは教育内容に介入すべきものではなく、教育の外にあって、教育を守り育てるための諸条件を整えることにその目標を置くべきだというのであると述べられています。

 ところが、提出された法案は、この教育諸条件の整備を削除し、「国民全体に対し直接に責任を負つて」や、「教員は、全体の奉仕者」という規定も削除しています。そして、教育は「この法律及び他の法律の定めるところにより」行うとされ、教育振興基本計画で教育内容を決め、実施し、評価することができるとしています。これでは国が法律で命ずるとおりの教育を行えということになる、政府が決めた計画どおり実施せよということではありませんか。これこそ、教育の自主性、自律性、自由を尊重するという憲法の民主的原理を根本からじゅうりんし、政府が教育内容のすべてを握るという最悪の教育統制そのものと言わなければなりません。総理の見解を伺います。

 中教審答申は、この教育振興基本計画のトップに全国学力テストを挙げ、政府は来年度実施しようとしています。全国一斉学力テストは一九六一年から六四年にかけて実施され、学校教育に深刻な困難をもたらし、国民的批判の中で中止されたものです。それを今日復活したら、全国の学校と児童生徒を巻き込んだ激烈な競争教育にならざるを得ません。この無謀はやめるべきですが、総理の答弁を求めます。

 今回、教育基本法をあえて改定し、国を愛する態度を書き込もうとするのは、憲法九条を変え、海外で戦争する国にしようとする動きと一体のものです。愛国心とは、海外で戦争する国に忠誠を誓えということになるのではないでしょうか。また、政府や財界は、教育を競争本位にして、子供を早い時期から負け組、勝ち組に分け、弱肉強食の経済社会に順応する人づくりを進めています。教育基本法の改定によって押しつけられるのは、こうした二つの国策に従う人間づくりではありませんか。総理の本音を伺います。

 憲法と一体の教育基本法は、日本が引き起こした侵略戦争によって多大の犠牲を生み出した痛苦の反省に立って、平和、人権尊重、民主主義という憲法の理想の実現を図るという決意のもとに制定されたのです。日本共産党は、教育基本法の改悪は断じて許しません。教育基本法を守り抜き、この二十一世紀に生かすことを国民の皆さんにお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 石井議員に答弁いたします。

 本法案を改正する理由でありますが、教育基本法案は、制定以来半世紀以上が経過し、科学技術の進歩や少子高齢化など教育をめぐる状況が大きく変化する中で、道徳心や自律心、公共の精神、国際社会の平和と発展への寄与などについて、今後、教育において、より一層重視することが求められていると思います。これらに対応するため、教育基本法を改正し、二十一世紀を切り開く、心豊かでたくましい日本人の育成を目指し、教育改革を推進することとしたものであります。

 教育政策や教育行政を正すべきとのお尋ねですが、今日の学校や社会の状況を見ますと、倫理観や社会的使命にかかわるさまざまな問題が見られ、こうした問題に対応するためには、教育基本法を改正し、新しい時代の教育理念を明確にすることで、国民の共通理解を図りつつ、国民全体による教育改革を着実に進め、我が国の未来を切り開く教育の実現を目指す必要があると考えております。

 与党検討会及び協議会の会議録を国会に提出すべきとのお尋ねですが、平成十五年五月以来、与党では教育基本法に関する検討会及び協議会を設け、精力的に議論を行ってきたと承知しておりますが、政府としては、会議録を提出すべきかどうかについてお答えする立場にはないと思っております。

 いずれにしても、国会において法案の審議を進めていただくことを期待しており、政府として法案審議のため適切に対応してまいりたいと考えております。

 国を愛する態度等を評価することについてですが、今回新たに目標として規定することとした事柄については、これまでも学校教育において実際に指導が行われておりますが、その重要性から今回教育基本法に明記するものであります。これまでも児童生徒の内心の自由にかかわって評価することを求めておらず、このことは本法案により変わるものではありません。

 内心の自由についてですが、本法案において、我が国を愛する態度等は教育上の目標として規定しているものであり、児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようとする趣旨のものではなく、内心の自由を侵害するものではありません。

 教育の目標についてですが、「教育の目標」は、「教育の目的」を実現するため、今日重要と考えられる具体的な事柄を掲げたものであります。これは、新しい時代の教育理念を明確にすることで、国民の共通理解を図りつつ、国民全体による教育改革を着実に進めるためのものであって、子供たちを戦争へと追いやるようなものではありません。

 今回の法案が教育統制ではないかとのお尋ねですが、今回の改正は、法律において新しい時代の教育理念を明確にし、国民の共通理解を図りつつ、国民全体による教育改革を着実に進めるためのものであって、政府が教育内容すべてを握るという意図は全くありません。

 なお、国が必要かつ相当と認められる範囲において教育の内容を決定する権能を有することについては、最高裁判所の判決においても認められているものと承知しております。

 全国的な学力調査ですが、義務教育については教育の機会均等や一定の水準を確保する観点から、結果を検証し、これに基づいて改善を行うことが必要であります。このため、児童生徒の学力を把握、分析し、教育指導の改善、向上を図る全国的な学力調査を平成十九年度から実施し、義務教育の質の保証と向上を図ってまいります。

 教育基本法案が、海外で戦争をする国に忠誠を誓わせ、教育を競争本位にするものではないかとのお尋ねでございますが、教育基本法案は、平和で民主的な国家、社会の形成者として必要な資質をはぐくむとともに、個人の尊厳を重んじ、人間性豊かな国民の育成を目指すものであります。このように、この法案は御指摘のような人づくりを行うものではありません。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 石井議員にお答えをいたします。

 最初に、教育の目標に関する評価についてのお尋ねであります。

 「教育の目標」は、中央教育審議会答申等を踏まえ、「教育の目的」を実現するために今日重要と考えられる資質を規定しているものであります。これらの事項については、現行の学習指導要領に規定され、各教科や道徳などにおいて実際に指導が行われており、今後、その指導の充実を図ろうとするものであります。これらの評価につきましては、現在も各教科等の学習内容に応じ評価がなされているところであり、内心の自由にかかわって評価するものではありません。

 次に、内心の自由についてのお尋ねでありますが、今回、目標に掲げられた資質については、教育上の目標として規定しているものであり、もとより児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようとする趣旨のものではありません。したがいまして、内心の自由が侵害されるおそれがあるという議員の御懸念については当たらないものと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 保坂展人君。

    〔保坂展人君登壇〕

保坂展人君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、教育基本法案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 私は、国会議事堂にほど近い公立中学に通っていた当時、羽仁五郎氏の「都市の論理」に感銘を受けて、政治的、社会的な関心を抱きました。一九七二年、中学校卒業時に作成された私の内申書は、政治活動、学校批判の活動状況を詳細に記した内容だったことから、思想、信条の自由を保障する日本国憲法に反していると原告として内申書裁判を提訴、子供の学習権を問うて最高裁判所まで十六年間争った経験がございます。

 とかく教育は、それが国家であれ、教育行政であれ、教員そして保護者であれ、大人の側から語るのが当然だという風潮は今なお改まっておりません。一九九四年に批准した子どもの権利条約は、子供を権利主体として位置づけ、子供最善の利益を実現するための努力義務を各国政府に求めています。ところが、政府提案の教育基本法案のどこにも条約への言及がありません。六十年ぶりに教育基本法を改正するというのに、子供を権利主体として位置づける内容がないのはなぜなのか。総理の答弁を求めます。

 戦後五十年を期して発表された村山談話は、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」と過去の戦争を振り返っております。教育基本法が過去の戦争への痛苦な反省のもとに制定されたことを踏まえて、総理に伺います。この見解に変わりはありませんか。

 かつて戦争拡大へひた走る軍部の独走を許したのは教育の力だったと言われます。なかんずく、戦前の学校ですべての子供たちが繰り返し暗唱した教育勅語の果たした役割を政府はどう認識されているんでしょうか。教育勅語は戦後の国会で廃止され、教育基本法が戦後教育の基本理念を形成してきました。今回の基本法改正案の提出に当たって、教育勅語の復活ではないかという危惧の声もあり、政府は教育勅語と教育基本法そして今回の改正案のそれぞれの関係をきちんと整理、説明する義務があると思います。総理並びに文科大臣の答弁を求めます。

 今回のいわゆる改正案について、自民、公明間で、与党は三年間七十回以上の議論を尽くしたと言いますが、一切の文書は公開されず、議論の推移も明らかにしない異常な秘密主義で行われた密室の協議です。しかも、今回の改正案は全文改正であります。六十年にわたる教育の基本指針として根づいてきた教育基本法を全文削除し、今回の法案をもって上塗りしようという代物です。一体、与党間で何を議論してきたのか、大急ぎで閣法として提出し、文部科学委員会を棚上げして、特別委員会設置を強行し、スピード審議を目指す内閣は、誠実に国民に対してその経過を説明する義務があります。真摯に協議経過を明らかにすることを総理に求めます。

 以下、具体的に質問します。

 教育基本法の改正論議の中で、最も重要な論点が愛国心の問題であったことは疑いがありません。「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」と表現された部分は、総理が何度も引用する、憲法の保障する内心の自由と大きくかかわることは見逃せません。国旗・国歌法制定の際も、政府は教育現場で強制しないと何度も国会で答弁しているものの、教育現場では国歌斉唱時、教員に監視、監督が強まり、大量の処分者を生んでいるではありませんか。

 今回の改正によって、教育実践、授業内容に文部科学省が介入を強め、教員や子供の心の内面に土足で踏み込んで権力を振るう危惧が高まっています。総理並びに文科大臣の責任ある答弁を求めます。

 教育基本法に愛国心が盛り込まれることで、愛国心を持っているかどうかで教員や子供を評価、評定し、戦前、戦争に反対する者を非国民と排斥した歴史を繰り返すのではないか、国家権力が個人の内面にとめどなく介入する事態を生むのではないかと危惧します。そんな心配はないというのなら、どこに歯どめがあるのか、総理、明確にお答えをいただきたいと思います。

 また、ここで言う国は統治機構のことではないと聞いていますが、統治機構を愛することを法律に書くと何が問題になるのか、総理の見解をお聞かせください。

 現行法の前文にある「真理と平和を希求する」が「真理と正義を希求し、」に変えられています。これは、正義の名において行われた戦争への反省から生まれた日本国憲法と教育基本法の関係性を希薄にするものであり、辛うじて残された「日本国憲法の精神にのっとり、」という文言を抜け殻にさせてしまいます。「真理と平和」を「真理と正義」に変える理由は何なのか、文科大臣に伺います。

 現行基本法第十条から、「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」という文言が削除されました。「教育は、不当な支配に服することなく、」という規定は残っていますが、「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべき」との表現が導入されたことで、教育行政に関する規定の意味が正反対に転換しています。

 これまで国家の教育に対する支配を禁じる規定であったものが、政府、教育行政が教育内容や教育方法に公然と介入する根拠を与えられる一方、教育行政に対する要求や反対を不当な支配として禁じることで、国家による教育支配を守る規定に逆転することになりかねません。不当な支配とは、だれのだれに対する支配ですか。どのような場合に、だれがだれに対して不当と判断されるのでしょうか。文部科学大臣に説明を求めます。

 男女共学の規定が削除されました。一方、家庭教育の条文が新設されています。これによって、男女平等の教育を否定し、家庭のあり方にまで国家や行政権力が口を挟み、介入してくるおそれがあります。

 政府提出第十条は、親の子の教育に対する第一義的責任を規定していますが、本法案は、親の責任を規定する一方、親の教育の自由、親の教育への参加権は明示していません。この第一義的責任をめぐって、国家や教育行政が国民の子育てを管理監督するという時代錯誤が生じないのか、総理並びに猪口大臣の答弁を求めます。

 「教員は、全体の奉仕者であつて、」という部分が削除されました。「学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、」と書いた意図はどこにあるのか。国家や教育行政の実行者とだけ位置づけることにならないか。文科大臣の答弁を求めます。

 一般的な教養を口実に、過去の国家神道を教育現場に復活させる意図はないのか、総理に伺って、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 保坂議員に答弁いたします。

 児童の権利に関する条約と子供の権利主体としての位置づけでございますが、本法案においては、憲法に定める教育を受ける権利を踏まえ、教育の機会均等に加えて、新たに生涯学習の理念として、国民一人一人が生涯にわたり学習できる社会の実現が図られるべきことを規定したところであり、御指摘の児童の権利に関する条約の精神とも合致するものと考えております。

 村山内閣総理大臣談話の見解ですが、今回の法案は、教育をめぐる状況の変化に対応し、新しい時代の教育理念を明確にすることにより、教育改革を着実に進め、未来を切り開く教育の実現を目指すものであります。このような今回の法案によって、村山内閣総理大臣談話の認識が変わるものではありません。

 教育勅語と教育基本法の関係でございますが、教育勅語は、明治二十三年以来およそ半世紀にわたって我が国の教育の基本理念とされてきたものでありますが、戦後の諸改革の中で、教育勅語を神格化して取り扱うことなどが禁止され、これにかわり、我が国の教育の根本理念を定めるものとして教育基本法が制定されたものであります。

 今般の教育基本法の改正は、制定後半世紀以上が経過する中で、新しい時代にふさわしい教育の理念を確立するため行うものであり、教育勅語の復活を意図するものではありません。

 与党間での協議経過に関する公開ですが、平成十五年五月以来、与党では教育基本法の改正に関し精力的に議論を行ってきたところでありますが、政府として、その協議経過についてはお答えする立場にはありません。いずれにしても、国会において法案の審議を進めていただくことを期待しており、政府として法案審議のため適切に対応してまいりたいと考えます。

 国を愛することについてですが、我が国や郷土を愛する態度を養うことについては、教育上の目標として規定しているものであり、児童生徒の内心にまで立ち入って強制するものではありません。また、教員について、法令等に基づく職務上の責務として児童生徒に対する指導を行っているものであり、思想、良心の自由の侵害になるものではないと考えております。児童生徒の評価については、学習内容に応じて適切に行っているところであり、内心の自由にかかわって評価するものではありません。

 統治機構を愛することを規定すると何が問題かというお尋ねですが、法案に言う我が国を愛するとは、歴史的に形成されてきた国民、国土、伝統、文化などから成る歴史的、文化的な共同体としての我が国を愛するという趣旨であります。

 この趣旨を条文上明確にするため、伝統と文化をはぐくんできた我が国と郷土を愛すると規定し、統治機構、すなわち、その時々の政府や内閣等を愛するという趣旨でないことを明確にしております。

 親の教育の自由と国や教育行政による関与でございますが、本法案においては、家庭教育がすべての教育の出発点であり、重要な役割を担うことにかんがみ、父母その他の保護者が子の教育について第一義的責任を有することを規定したものであります。

 その際、家庭教育が本来保護者の自主的な判断に基づいて行われるべきものであることに十分配慮して、国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、家庭教育の支援に努めることを規定しているところであり、御指摘は当たらないと考えております。

 宗教教育ですが、人類が受け継いできた重要な文化である宗教の役割を客観的に学ぶことは重要なことだと思います。

 このため、本法案では、主要宗教の歴史や特色、世界における宗教の分布などの宗教に関する一般的な教養を教育上尊重することを新たに規定したものであり、国家神道を教育現場に復活させるというような意図はありません。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 保坂議員から五点の御質問がございました。

 最初に、教育勅語の果たした役割と、教育勅語、教育基本法、今回の改正案の関係についてお尋ねがありました。

 教育勅語は、明治二十三年以来およそ半世紀にわたって我が国の教育の基本理念とされてきました。しかし、戦後の諸改革の中で、昭和二十一年十月には、教育勅語を教育の唯一の淵源とし、神格化して取り扱うことなどが禁止され、これにかわり、教育の根本理念を定めるものとして、昭和二十二年に現行の教育基本法が制定をされました。

 戦後、教育基本法のもと、国民の教育水準は著しく向上し、社会発展の原動力となりましたが、この間、教育をめぐる状況は大きく変化し、さまざまな課題が生じております。このような状況にかんがみ、将来に向かって新しい時代の教育の基本理念を明確に提示し、未来を切り開く教育を実現するため、教育基本法を改正するものであります。

 次に、国を愛することに関するお尋ねでありますが、我が国や郷土を愛する心情や態度の育成については、現在も学習指導要領に「国を愛する心」などが規定され、学校教育において実際に指導が行われております。

 本法案においては、その重要性にかんがみ、我が国を愛する態度を規定しておりますが、これは教育上の目標として規定しているものであり、児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようとする趣旨のものではありません。

 また、教員については、我が国を愛する心情や態度に関する指導を行うことは職務上の責務であり、教員の思想、良心の自由の侵害になるものではないと考えます。

 次に、現行法の前文にある「真理と平和」を「真理と正義」に変更する理由についてお尋ねがありました。

 平和への貢献は極めて重要であり、これらの理念が教育を通じても実現されることが大切であります。このため、法案の前文において、世界の平和に貢献すること、及び、「教育の目的」として、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた国民の育成などを規定しております。その上で、法案の前文において、このような理想を実現するために重要な要素として、現行基本法の目的に掲げられている「真理と正義」を前文に規定したものであります。

 次に、不当な支配に関するお尋ねでありますが、「不当な支配に服することなく」とは、その主体を問わず、教育が国民全体の意思とは言えない一部の勢力に不当に介入されることを排し、教育の中立性、不偏不党性を求める趣旨であり、このような考え方は今後とも重要であると考えております。

 このため、本法案においては、引き続き、不当な支配に服してはならない旨の理念を掲げつつ、教育は法律に定めるところにより行われるべきと新たに規定し、国会において制定される法律に定めるところにより行われる教育が不当な支配に服するものではないことを明確にしたものであります。

 最後に、教員に関するお尋ねでありますが、教育は、教員と児童生徒の人格的な触れ合いによってその育成を促す営みであり、教育の成否は教員にあると言っても過言ではなく、その職責遂行のために、改めてその使命を自覚し、不断に資質の向上に努める必要があります。

 このため、本条は、教員の使命や職責などを規定した現行法の規定を基本的に引き継いだ上で、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励むことなどを規定したものであります。

 なお、本条は、私立学校の教員についても対象とするものであることから、全体の奉仕者を規定しなかったものであり、今回の改正により教員の法的な位置づけを改めるものではありません。(拍手)

    〔国務大臣猪口邦子君登壇〕

国務大臣(猪口邦子君) 保坂議員からの、親の教育の自由と国や教育行政による関与についての御質問にお答えいたします。

 本法案におきましては、家庭教育がすべての教育の出発点であり、重要な役割を担うことにかんがみ、父母その他の保護者が子の教育について第一義的責任を有することを規定したものでございます。このことは、児童の権利に関する条約第十八条第一項にも規定されているところであり、保護者が子供の養育、発達において重要な役割を負うものであることを改めて規定したものでございます。

 さらに、本法案におきましては、家庭教育が本来的に保護者の自主的な判断に基づいて行われるべきものであることに十分に配慮し、国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、家庭教育の支援に努めることを規定したものと承知しており、これが国などによる国民の子育てを管理監督するものとの指摘は当たらないものと考えております。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       文部科学大臣  小坂 憲次君

       国務大臣    安倍 晋三君

       国務大臣    猪口 邦子君

       国務大臣    与謝野 馨君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 長勢 甚遠君

       文部科学副大臣 馳   浩君


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