衆議院

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第7号 平成18年10月13日(金曜日)

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平成十八年十月十三日(金曜日)

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  平成十八年十月十三日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 議員請暇の件

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 議員請暇の件

議長(河野洋平君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。

 海部俊樹君から、十月十七日から二十七日まで十一日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣塩崎恭久君。

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) ただいま議題となりました平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 国際社会によるテロとの闘いにおいては、これまで我が国としても、同法に基づき、海上自衛隊の補給艦等をインド洋に派遣し、海上阻止活動に参加する艦艇に対する給油支援を行うなどの取り組みを行い、各国から高く評価されているところであります。

 しかしながら、今日の状況を見ますと、テロとの闘いについては、一定の進展は見られるものの、アルカイダ及びその関連組織やアルカイダの影響を受けた細胞等の関与が疑われるテロ事件が世界各地で引き続き発生しており、国際テロの根絶は依然として国際社会の大きな課題となっていることから、各国は、今後ともテロとの闘いを継続する見通しであります。

 このような中、我が国としては、国際協調のもと、引き続き国際社会の責任ある一員としてテロとの闘いに寄与していくことが重要であります。

 この法律案は、このような状況を踏まえ、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するため、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づき我が国が人道的精神に基づいて実施する措置を引き続き実施するものとし、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的として提出するものであります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 この法律案の内容は、現行法の期限をさらに一年間延長し、施行の日から六年間とするものであります。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。石破茂君。

    〔石破茂君登壇〕

石破茂君 私は、自由民主党、公明党を代表して、ただいま議題となりました法律案につき、断固賛成する立場から質問をいたします。(拍手)

 去る八月十八日、私は、灼熱のインド洋上でフランス海軍フリゲートに補給活動中の我が補給艦「ましゅう」艦上におりました。摂氏五十度になんなんとする炎天下、吹きつける風はまさしく熱風であり、船体は熱く焼け、卵を落とせばフライドエッグが本当にでき上がってしまう、そういう過酷な環境の中で、補給活動は整然と行われておりました。

 洋上活動について、「ただのガソリンスタンドではないか。日本がただで燃料を補給するから各国も活動を続けることになるのだ」「明確な成果が上がっていない」「補給などしょせん後方支援でしかない」などという御批判があります。しかし、ぜひ一度現場をごらんになっていただきたいと私は思うのであります。洋上における補給は決して容易なことではありません。車にガソリンをつぐのとはわけが全く違うのであります。風があり、波があり、テロに対する警戒を片時たりとも怠ることができない、そういう中において、最長六時間にもわたり、他国の艦船と同じ間隔、同じ速度、同じ方向を維持しながら、並走して燃料を補給する。このような技術は世界各国どこの国でも持てるものではない。海上自衛隊の高い練度をもって初めて可能なオペレーションなのであります。(拍手)

 そして、忘れてはいけない、補給こそが作戦の成否を左右するのです。太平洋戦争時に、輜重兵、補給兵のことですね、輜重兵が兵ならば、チョウチョウ、トンボも鳥のうち、そのようなことを言って補給を軽視し、我が国が敗北を喫した歴史に謙虚に我々は学ばなければならないのであります。

 この活動にイスラム教国として唯一参加しているパキスタンの艦船は、日本が行う純度の高い燃料補給なくしては十分な活動が困難なのであります。テロとの闘いが文明の衝突などでは決してなく、テロの脅威に対して世界じゅうが団結して行う行動であることを象徴的に示しているのがパキスタンの参加であり、これを可能にする海上自衛隊の技量が作戦全体、ひいては一致した国際社会の取り組みにとっていかに重要であるかを我々は正確に認識すべきであります。

 私たちは当初、この活動がこのような大きな成果を上げることを予想していたでありましょうか。湾岸戦争の折、我が国は増税まで行い、総額百三十億ドル、国民一人当たり一万円の資金を拠出いたしましたが、国際社会において評価を受けることはありませんでした。つらくて危険なことはほかの国に任せ、我が国は安全なところに身を置いて、金だけ出して利益は享受する、そのような姿勢は「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」とする我が国憲法の精神にも反するものだということを我々は学んだはずであります。(拍手)

 平和も安全も金で買うことはできません。国際社会の平和と安全のためならば、そして我が国の独立と平和、国民の生命財産を守るためならば、自衛隊員の宣誓にあるごとく、危険を顧みず、身を挺して職務の完遂に努める人々と、それを懸命に支える御家族を初めとする人々の存在があってこそ、平和は実現するものと私は信じております。

 去る七月五日、テロ対策特別委員会でスピーチをされたアフガニスタンのカルザイ大統領は、自衛隊の活動はアフガニスタン一国のみならず国際社会全体にとって有益であると述べた後、ぜひこれを継続してもらいたいと強調されました。そのほか、感謝の言葉を寄せた国々は十カ国以上にも及んでいるのであります。

 もちろん、我が国は他国から感謝されるためにこの活動をやっているわけではない。九・一一テロにおいて、多くの我が同胞が犠牲となったのであります。これは我が国にとっての問題であることを決して忘れてはなりません。

 無線照会の数の減少は、活動の成果が如実に上がっていることを示すものであります。海上自衛隊の活動がテロの抑止や未然防止にどれほど役立っているか。これによって築き上げた各国との信頼関係が、我が国の国際的な発言力をどれだけ高めたことか。

 このような明確な国益があるにもかかわらず、現時点でこれをやめてしまうということは全く考えられません。まさしく国際的な責任の放棄であり、国民の生命財産を守るという政府の国民に対する責任の放棄でもあるのです。

 さらに、あえて付言するならば、唯一の同盟国である米国が中心となる活動への支援はもう行わない、しかし、ミサイル防衛のための米艦船はきちんと派遣をしてもらいたい、そのような虫のいいことが本当に言えるのか。我々はそのことも考えるべきなのであります。

 以上、本法律を延長する以外の結論は全くとり得ないものと考えますが、御所見があればお聞かせください。(拍手)

 次に、北朝鮮問題とも関連して、いわゆる一般法について、自民党内における議論を踏まえ、政府の見解を承りたいと存じます。

 このテロ対策特措法にしても、イラク特措法にしても、期限を限る時限法、特定の事態に対処する特措法という形で対応してまいりました。しかし、派遣の条件、活動内容、撤収条件、代替措置の必要性などにつき一般法として定めておかなければ、機動的、効果的な対処は困難になります。

 我が国として実行可能な活動のメニューを提示した上で、その中から政府が活動内容を選択する。それに対して、主権者の代表たる国会が事前承認などの形で厳格に関与する。このような体制こそが、本来あるべき文民統制にふさわしい姿なのではないでしょうか。(拍手)

 自由民主党国防部会防衛政策検討小委員会は、この夏に、このいわゆる一般法の原案を提示いたしました。今後、自民党内、与党内においてさまざまな議論と手続を経ていかねばなりませんが、この中では、現行憲法のもとで許される最大限の活動がメニューとして掲げられております。我が国の海外における活動、国際社会への関与の形を最大限の選択肢として提示することは、我が国の活動の範囲をあらかじめ示しておくことでもあります。

 この八月にテロ・イラク特別委員会でこの質問をいたしました際、当時官房長官であられた総理から、与党から提言が出されれば政府としてもしっかりと受けとめていきたいとの答弁をいただきました。昨年の総選挙における自民党の政権公約でもあるこの一般法について、総理のリーダーシップに期待しつつ、所見を承りたいと存じます。

 北朝鮮の核実験は、大量破壊兵器の拡散という観点からも、国際社会の平和と安全にとって重大な脅威となるものであり、現在、国連安保理における制裁決議に関する議論が最終局面を迎えようとしております。国連憲章第七章に言及した制裁決議が出された後で我が国が対応策を検討するようなことがあってはなりません。国民に対して説明責任を果たすためにも、今から根拠法並びに実運用についての検討を行っておくべきと考えます。

 選択肢は三つあります。

 まず第一に、本来あるべき姿として、先ほど申し上げましたいわゆる一般法を正面から議論することが考えられます。小委員会で提示いたしました案には、船舶検査活動についても国際水準にかなり近いものを定めております。

 他方、これは我が国の今後の海外活動の基本理念を示すものでもありますから、その成立は時間的に相当困難であるということも容易に予想はされます。とすれば、この法案から船舶検査活動に関する部分のみを今般の事態に特定した特措法という形で議論するのも、もう一つの考えであると存じます。

 第三は、現行の周辺事態法、船舶検査活動法を適用することであります。

 周辺事態法につきましては、平成十一年の政府統一見解において、ある国の活動が、国連安保理によって平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為と決定され、安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような場合であって、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合という具体例が示されており、これは今回の場合にも相当部分該当するのではないかと考えます。

 しかし、周辺事態に伴う船舶検査活動法は、相手船舶に対する要請、説得が活動の中心であり、実効性に疑問があるのみならず、警告射撃など任務遂行のための武器使用は定められておりません。さらには、危害許容要件も正当防衛、緊急避難に限定されておるなど、任務規定や武器使用権限などに幾つかの問題点が指摘されており、現在、自由民主党内で議論をいたしておるところであります。

 このような権限で自衛隊に任務を付与するのは、自衛官のみならず、ミッション全体を危うくすることになりはしないでしょうか。弱い味方は敵より怖いと言われるゆえんであります。周辺事態法、船舶検査活動法を適用する場合には、この二点につき将来的な法改正も視野に入れた検討を行うべきと私は考えます。

 速やかな実行のために周辺事態法を適用し、当面は補給などの後方支援を中心に行うということも確かに考えられるでしょう。しかし、補給対象は米艦船に限られ、活動範囲も領海内に限定をされるのであります。

 北朝鮮の脅威は、まさしく我が国にとっての脅威であるがゆえに、自衛隊の活動は実効性のあるものでなければなりません。そして、実際に現場に赴くのは自衛官たちなのであって、我々ではないのであります。これらについてきちんとした立法措置を行うことが政治の責任であると私は確信をいたすものであります。(拍手)

 以上、今後予想される活動の根拠法につき、総理の御見解を承ります。

 現在、北朝鮮に対して断固として圧力をかけるべきとの声が強まっており、私も基本的にはそのとおりであると考えます。しかしながら、我が国に一体何ができて何ができないのか、それを政治が正確に把握をするとともに、これに伴うリスクを認識し、その対応にも万全を期すことこそが危機管理を踏まえた外交の要諦であることを最後に強く申し上げておきたいと存じます。

 以上、政府の見解を求めますとともに、国際社会の安全と我が国の独立、平和を守るため昼夜を分かたぬ活動を続けている自衛隊の諸官に対し、そしてそれを支えておられる御家族初め多くの方々に対し、心より敬意と感謝の誠をささげ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 石破茂議員にお答えをいたします。

 テロ対策特別措置法の延長についてのお尋ねがありました。

 国際社会におけるテロとの闘いは依然続いており、我が国は、国際協調のもと、テロとの闘いを我が国自身の問題と認識し、引き続き重要な役割を果たさなければならないと考えております。

 法の延長期間については、アフガニスタンとその周辺地域の情勢が依然流動的であるため、状況変化に的確に対応できるよう、一年間としております。

 国際平和協力のためのいわゆる一般法の整備に関する認識についてお尋ねがありました。

 政府としては、今後、与党から御提言がなされれば、その趣旨を受けとめ、世界において責任ある役割を果たす国になるという観点から、国民的議論を十分に踏まえた上で検討していくべき課題であると認識をいたしております。

 国連憲章第七章に基づく対北朝鮮制裁決議が出た場合の対応についてお尋ねがありました。

 北朝鮮による核実験実施の発表に関連して、現在、国連安保理において対応が協議されているところであり、いわゆる船舶検査について予断を持ってお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、他方、事態は流動的で、瞬時瞬時に推移をしており、政府としては、常にあらゆる状況を想定し、いかなる対応が可能かを総合的に検討する必要があると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 山口壯君。

    〔山口壯君登壇〕

山口壯君 民主党の山口壯です。

 民主党・無所属クラブを代表して、テロ対策特別措置法改正案について質問します。(拍手)

 まず初めに、このたびの北朝鮮による核実験の件については、現時点では、アメリカも含めてどこもまだ確認するに至っていないわけですが、現実にそのような実験がなされたとすれば、これは、戦後我が国の安全保障上、最大の危機であることは間違いなく、我々国政を託された一人一人として、心して、くれぐれもそれを政争の具に使ったり、選挙の際のレトリックとして言及することのなきよう、厳に戒めなければならないと思います。一人一人のステーツマンとしての見識と良識が問われている。我が日本の将来と、アジアの平和と繁栄を守り、築くため、ここにいる四百八十人全員の知恵を、ウイズダムを結集しようではありませんか。(拍手)

 また、二〇〇一年の九・一一以降の、アフガニスタンにおける軍事作戦、イラク戦争、そしてそれらを取り巻くその後の経過を冷静に、注意深く振り返って、テロは武力で解決できるのかどうかという根本の命題をも自問自答しながら、我々は、最も賢明な策を見出していかねばならないのではないでしょうか。日本にしかできないことは何なのかという問いに対して、納得のいく答えを見出そうとする努力も大切にせねばならないと思います。

 さて、政府は、海上自衛隊がインド洋で米艦船などに行っている給油活動が十一月一日で期限を迎えるに当たり、これを一年間延長するため、このたびのテロ対策特別措置法改正案提出を六日金曜日の閣議で決定したわけですが、その後の九日月曜日に、北朝鮮は核実験をしたと発表しました。今回の改正案を検討するに当たっては、このような根本的な事態の展開をも念頭に置くべきかと思います。

 初めに、これまでインド洋での海上自衛隊の大いなる活動内容について、改めて国民に対し詳細に説明されることを求めます。そのオペレーションにこれまでかかった費用はどれくらいか、そして、コストに見合うどのような成果が上がっているのか、防衛庁長官に伺います。

 我々が気になる点の一つは、このように特措法の改正でつないでいくやり方で本当にいいのかということです。今回、これが三回目の改正ですが、特措法といいながらずるずる何度も改正し、機械的延長のようなやり方で本当にいいのか。いつまで続けるつもりか。そこにはいわゆる出口戦略がないのではないか。日本は無料ガソリンスタンドにあらず。総理、特別措置法を改正し一年間延長という、なし崩し的な、機械的な対応に問題はないですか。

 また、今回の一年間延長により、インド洋での給油活動は来年で打ち切りと考えておられるのか。日本として出口戦略を持った主体的な対応をすべきであると思います。総理の基本的哲学について答弁を求めます。(拍手)

 歴史を振り返るとき、アフガニスタンに手を出した国は必ず大やけどを負っています。イギリスが、その昔、今のパキスタンから一万人の軍隊を送って全滅したこともあります。ソ連は、アフガニスタン侵攻により、結局崩壊しました。

 今、盟友アメリカが、ますます悪化するアフガン情勢の中で手をやいている。今のアフガン情勢の悪化は、テロリストの流入とは直接関係のない事態です。アメリカが送ったカルザイ大統領が、有力部族を排除して政権を維持しようとしたことが国内をぐちゃぐちゃにしてしまったことが根底にあります。今後の戦略を練るに当たっては、このままずるずるでは、アメリカはアフガニスタンとイラクで手がいっぱいで回らず、日米として北朝鮮への対応について万全を期せないのではないかということにも思いをいたさねばならないのではないでしょうか。

 六日に閣議決定し、その後、九日に北朝鮮の核実験の発表があったのですから、戦略的な図柄が根本的に変わったと言わなければなりません。

 緻密に国家戦略を練る立場からは、機械的な延長には強い違和感があります。日本は、九・一一以降、ショー・ザ・フラッグとアメリカに言われて海上自衛隊を送ったわけですから、当初の象徴的な目的は果たしているはず。オペレーションの潮どきくらい、自分で判断できなければならない。でなければ、美しくない。そのような議論、出口戦略の議論をアメリカとやれますか。イラクのみならずアフガニスタンでアメリカが大やけどを負う前に、我が国は真の友人として出口戦略を語りかけるべきではないでしょうか。その中には、我が国としてできること、我が国しかできないことも含まれるでしょう。

 そして、ここ東アジアにおいて、北朝鮮問題に対して日米両国として戦略的にいかに対応すべきかを、今回、特措法を機械的に延長するのではなく、新たな戦略的模様も緻密に見ながら、きちんと考えることが我々に求められているのではないでしょうか。総理の答弁を求めます。

 密接に関連することとして、イラクにおける航空自衛隊の活動について一言。

 イラクでは、陸上自衛隊にかわって航空自衛隊のC130輸送機が活動していますが、イラクについては既に打つ手なしの状態であることは、アメリカ自身が一番知っているはずです。ここまでぐちゃぐちゃになったら、正直救いようがない。

 イラクで活動している航空自衛隊は、イラク特措法に定める安全確保支援、すなわち治安維持のためのアメリカ兵も輸送しており、今や米国の治安維持活動の手助けをしている形になっていますが、我々は、イラクについては、そもそも戦争の大義についても再考せねばなりません。

 先日発表されたアメリカの上院情報特別委員会の報告書は、フセイン政権がウサマ・ビンラディンと関係を築こうとした証拠はないと断定、大量破壊兵器についても、少なくとも一九九六年以降存在しなかったと結論づけています。

 ブッシュ政権がCIA情報等をもとに挙げた開戦理由がことごとく覆されたわけで、イラク戦争にはそもそも大義がなかったことがはっきり示されたわけです。今や当時の当事者からもそのような証言は枚挙にいとまがなく、メディアにも載っている。大義がなかった戦争、それでイラクをぐちゃぐちゃにして、米軍みずからの犠牲者のみならず、イラクの民間人の犠牲者も毎日ふえている。そのような経緯の延長線上に我が航空自衛隊があるということになってしまう。これをずるずるやるのは、余り美しくないのではありませんか。

 ちなみに、総理は美しい国と言われますが、これにはダ・ヴィンチ・コードのように何かメッセージが隠されているのでしょうか。美しい国、逆から読むと、憎いし苦痛。一見立派な政策構想が、現実には格差を広げ、国民の負担はふえる一方。憎いし苦痛。よくできている。ダ・ヴィンチ・コード顔負けの、さしずめ安倍コードですか。(拍手)

 イラクについては、日本もアメリカに言うべきことは言わねばならない。総理、日本は唯々諾々と従うのみでなく、真の友人として、アメリカに出口戦略につき促すべきではないですか。総理の哲学をお聞かせ願いたい。

 とかく最近の日本は、アメリカに唯々諾々と従い過ぎていませんか。アメリカとの間合いのとり方につき、総理、そして外務大臣、どのように考えておられますか。

 さらに、例えば、ことし七月のサンクトペテルスブルグ・サミット後に、アメリカがイランの核施設に攻撃をしかけるのではないかとの話があったはずです。外務省も幹部会等で真剣に議論したと思うし、それについては当時の安倍官房長官にも報告が伝わったと思いますが、イランの核施設は通常爆弾では届きませんから、核を使うという可能性も言及されていたという。アメリカがイランに核を使った場合、総理、まさか支持をされますか。

 アフガニスタンにおける軍事作戦、イラク戦争、その後の経過を冷静に注意深く振り返るとき、力によるテロ解決には限界があることを知らねばならないと思いますが、総理、そして外務大臣、いかがでしょうか。所見を伺います。

 最後に、防衛庁にかかわることとして、近年、自衛官を含む防衛庁職員の自殺者数が異常に多いことに驚かざるを得ない。平成十三年度六十四人、十四年度八十五人、十五年度八十一人、十六年度百人、十七年度百一人。一体何が起こっているのですか。防衛庁から防衛省への移行が今国会で論じられようとしていますが、なぜこのように異常に多いのか、どこかに無理があるのではないか、まだ省移行には無理があるのではないか。総理、そして防衛庁長官の答弁を求めます。

 一七七三年にベンジャミン・フランクリンは、友人の政治家クインシーへの手紙の中で、よき戦争、あしき平和などというものはないと書きました。世に、よき戦い、ましてや聖戦などというものはない、いかにあしく見えようと平和にまさるものはないというのが、アメリカ独立宣言の起草者ベンジャミン・フランクリンの信念でした。

 その子孫に当たるはずの今のアメリカの指導者の中には、フランクリンとはかなり異なる考え方を持った人たちもいるようですが、我々日本人の本来のアイデンティティーはどちらに近いのでしょうか。日本にしかできないことは何なのかという問いかけに対して納得のいく答えを求めんとするとき、ベンジャミン・フランクリンが残した、よき戦争、あしき平和などというものはないという言葉を大事にしながら、我が国の対応につき賢明を期したいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) テロ対策特措法の延長についてお尋ねがありました。

 国際社会によるテロとの闘いは依然として続いており、我が国は、国際協調のもと、これを我が国自身の問題と認識し、引き続き重要な役割を果たさなければならないと考えています。

 法の延長期間については、アフガニスタンとその周辺地域の情勢が依然流動的であるため、状況変化に的確に対応できるよう、一年間としております。

 テロ対策特別措置法に基づく対応措置のいわゆる出口戦略についてお尋ねがありました。

 テロ対策特措法に基づく対応措置の終了時期について現時点において一概に申し上げることは困難でありますが、政府としては、国際社会によるテロとの闘いへの取り組みの推移や、我が国にふさわしい役割を果たしていく上で自衛隊の活動を継続することの必要性などを十分に勘案した上で、適切に判断してまいります。

 我が国として米国にアフガニスタンに関する出口戦略を語りかけるべきではないかとのお尋ねがありました。

 米国は、アフガニスタンの安定化のために、軍隊の駐留や資金協力に努力しています。我が国は、世界とアジアのための日米同盟との考え方も踏まえ、アフガニスタンの復興を支援してきました。今後とも、治安面など困難な課題を抱えるアフガニスタンの安定化を共通の目的として、米国と緊密に協力をしてまいります。

 北朝鮮問題と特措法の延長の関係についてお尋ねがありました。

 北朝鮮の核実験発表を受け、日米は、日米同盟に基づく米国の抑止力は揺るぎないとの認識で一致をいたしました。引き続き米国と緊密に連携して対処します。同時に、国際社会が一体となったテロとの闘いは続いており、我が国として引き続きふさわしい役割を果たす必要があります。双方とも日米の共通の課題であり、我が国として主体的かつ適切に対応してまいります。

 我が国として米国にイラクに関する出口戦略を促すべきではないかとのお尋ねがありました。

 米国は、イラクの安定化のために、軍隊の駐留や資金協力に努力をしています。我が国は、世界とアジアのための日米同盟との考え方も踏まえ、我が国独自の判断として自衛隊を派遣し、経済協力と相まってイラクの復興を支援してまいりました。今後とも、治安面など困難な課題を抱えるイラクの一日も早い安定化を共通の目的として、米国と緊密に協力をしてまいります。

 次に、米国との間合いのとり方についてのお尋ねがありました。

 日米同盟は、我が国の外交、安全保障の基盤であり、私は、世界とアジアのための日米同盟の考え方のもと、米国と緊密に連携をしていく所存であります。そして、その基盤となる日米間の信頼関係をより強固なものにしていく考えであります。そのためには、日米双方が言うべきことを言い、やるべきことをやっていく必要があり、あらゆるレベルで緊密に政策協調を行っていく考えであります。

 なお、個々の問題や課題に対処するに当たって具体的にいかなる協力を行うかについては、日米両国がそれぞれの国益に基づき、また、おのおのの法的、政策的枠組みのもとで主体的に判断するものであることは言うまでもありません。

 米国がイランに核を使った場合に、それを支持するかとのお尋ねがありました。

 米国政府は、イランの核問題については外交的解決を目指すとの立場だと承知をいたしております。したがって、イランに対する核の使用という仮定を前提とした御質問にはお答えすべきでないと考えております。

 テロ解決の手段についてのお尋ねがありました。

 テロ問題の解決のためには、武力による直接的な脅威の除去のみならず、テロを生む社会的、経済的背景に存在する諸問題の解決を図ることが重要と認識をしております。

 我が国は、テロ対策特措法に基づく燃料補給支援等の活動を行うとともに、ODAを活用してテロ対処能力向上のための支援や貧困削減等の途上国への幅広い開発援助を行い、国際社会と協調しつつ、総合的に対策を展開してまいります。

 自衛隊員の自殺者数の増加と防衛庁の省移行についてお尋ねがありました。

 自衛隊員の自殺の原因については、さまざまな要因があると考えられますが、防衛庁においては、自殺防止に全力で取り組んでいると承知をいたしております。

 防衛庁の省移行については、我が国の危機管理体制を万全にするため、ぜひとも必要であると考えています。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 山口議員より二問ちょうだいをしております。

 まず、米国との間合いのとり方についてお尋ねがありました。

 御存じのように、日米同盟は、我が国の外交、安全保障の基盤であります。私も、世界とアジアのための日米同盟の考え方のもと、米国と緊密に連携をしてまいる所存です。そして、その基盤となります日米間の信頼関係をより強固なものにしてまいりたいと思っております。そのためには、日米双方が率直に言うべきことは言い、やるべきことはやっていく必要があります。今後とも、あらゆるレベルで緊密に政策協調を行ってまいる考えであります。

 次に、テロの解決手段についてのお尋ねがありました。

 総理からもお答えがありましたように、武力による直接的な脅威の除去のみならず、国際協力の推進とテロの背景にあります諸問題の解決というのは大事な点だと存じます。

 国際社会は、国連、G8などの枠組みを利用しつつ、テロとの闘いにつきまして、政治的意思の強化、国際的な法的枠組みの整備、また、テロ資金対策などに取り組んでいるところです。日本も、ODAを活用し、開発途上国のテロ対処能力の向上支援を行っております。

 同時に、テロを生む背景に存在する諸問題を解決する必要があります。日本としては、ODAなどを有効に活用しつつ、平和の定着や開発途上国の貧困の削減などの課題にも積極的に今後取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣久間章生君登壇〕

国務大臣(久間章生君) 山口議員にお答えをいたします。

 まず、インド洋での海上自衛隊の活動の内容及び経費についてお尋ねがありました。

 現在、インド洋においては、海上自衛隊の補給艦一隻及び護衛艦一隻が、海上阻止活動に参加している米国等の艦船に対し、艦船用燃料や水等の補給などの協力支援活動を実施しています。

 経費につきましては、平成十三年十一月の派遣開始以来、平成十八年八月末日までに約五百十六億円を執行いたしました。

 次に、活動の成果についてお尋ねがありました。

 インド洋に展開している各国艦船による海上阻止活動は、アルカイダ等のテロリストや武器弾薬等の関連物資が海上を移動することによりテロの脅威が世界各国に拡散することを阻止しています。

 海上自衛隊が実施している燃料補給等の協力支援活動は、国際社会のテロとの闘いにおいて重要な役割を占め、海上阻止活動に参加している各国艦船の作戦効率の向上に大きく寄与しており、テロリスト等の活動抑止という大きな成果を上げています。

 次に、自衛隊員の自殺者数の増加と防衛庁の省移行についてお尋ねがありました。

 自衛隊員の自殺の個々の原因については、借財、職務、家族問題等、さまざまな要因があると考えられます。いずれにせよ、近年の増加傾向を重く受けとめ、前途ある隊員を志半ばで失うことや、悲しい思いをされる御家族が生じるといったことを減らすべく、今後とも、自殺防止には全力で取り組んでまいる所存であります。

 その上で、防衛庁・自衛隊の役割は重要性を増していることから、省と位置づける必要があることに御理解賜りたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣 安倍 晋三君

       外務大臣   麻生 太郎君

       国務大臣   久間 章生君

       国務大臣   塩崎 恭久君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 下村 博文君


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