衆議院

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第9号 平成18年10月24日(火曜日)

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平成十八年十月二十四日(火曜日)

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  平成十八年十月二十四日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。

 第四百三十七番、大阪府第九区選出議員、原田憲治君。

    〔原田憲治君起立、拍手〕

 第四百三十八番、神奈川県第十六区選出議員、亀井善太郎君。

    〔亀井善太郎君起立、拍手〕

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員正森成二君は、去る十八日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 正森成二君に対する弔詞は、議長において去る二十一日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰された正森成二君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣甘利明君。

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 国民生活の安全、安心を確保することは、重要な国の責務であります。

 他方、昨今、ガス瞬間湯沸かし器の事故などが明らかとなり、製品の安全性に関する国民の信頼が大きく揺らいでおります。

 国民が日々の生活で用いる製品の安全性を確保するためには、事業者による安全な製品の製造、販売や消費者への情報提供、行政による安全性確保のための取り組み、消費者による製品の合理的な選択や使用など、事業者、行政、消費者それぞれが適切にその役割を果たすことが不可欠であります。

 そのためには、危険性のある製品の製造、販売の防止はもちろんのこと、製品事故が起きてしまった場合には、事故に関する情報を社会全体で共有し、その再発を防止することが必要であります。このため、事業者に対する国への製品事故の報告の義務づけや、国から消費者への事故情報の迅速かつ的確な提供を図る仕組みを構築するべく、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、製造事業者または輸入事業者が重大な製品事故が生じたことを知ったときは、主務大臣に報告しなければならないこととしております。さらに、製造事業者等が報告を怠った場合には、主務大臣は、重大製品事故の情報の収集や提供のために必要な体制の整備を命ずることができることとしております。

 第二に、主務大臣は、重大製品事故による危害の発生及び拡大を防止するために必要があると認めるときは、製品の名称や事故の内容等、危険の回避に資する事項を公表することとしております。

 第三に、小売事業者には製造事業者等に事故情報を通知する責務があり、また、販売事業者には製造事業者等が行う製品回収等の措置に協力する責務があることを定めております。

 以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。北神圭朗君。

    〔北神圭朗君登壇〕

北神圭朗君 民主党の北神圭朗でございます。

 ただいま議題となりました内閣提出の消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案に関して、民主党・無所属クラブを代表して、経済産業大臣に質問いたします。(拍手)

 まず初めに、背景にある製品事故についてお伺いいたします。

 最近、パロマ製ガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故や家庭用シュレッダーによる幼児の指切断事故など、大変痛ましい事故が相次いでおります。今回の改正案は、こうした事故が発生した場合に、製造事業者等に報告を義務づけるという内容になっておりますが、そもそもパロマの事故については、経済産業省は大分前から既に情報をガス事業者から知らされていたはずであります。具体的には、二十八件あった事故のうち、二十件についても報告がなされておりました。にもかかわらず、都市ガスやLPガスなど縦割りの担当ごとに情報が細分化をされ、事故の共通性と関連性が把握できなかったため、二十年という長きにわたって放置されていたのが事の真相であります。その結果、この間に何の対応もなされず、残念ながら、二十一名もの方々が亡くなってしまっているんです。

 こうした点について、パロマの一酸化炭素中毒事故に対する経済産業省の責任をどう認識しておられるのか、お伺いいたします。(拍手)

 私は、何もいたずらに犯人捜しをしているわけではありません。むしろ、今申し上げた事例が示すとおり、単に政府が事故の情報を把握しさえすれば事が済むのではないということを申し上げているんです。依然として、政府が情報を断片的に処理するのであれば、幾ら報告義務が課されても、問題の本質は変わりません。やはり、事故の原因について横断的かつ継続的な分析、評価を実施することが肝要であります。実際に情報がありながらもパロマの事故への対応が極めておくれてしまったことへの反省に立ち、事故情報の分析・評価体制をどう整備していくのか、お伺いいたします。

 また、重大製品事故に関する情報の多くは、当然ながら警察にも連絡が入ります。例えば、パロマの事故についても、経済産業省は、警視庁から連絡を受けて改めて過去の報告書を分析し直し、その結果、明らかになったものであります。さらには、内閣府所管の独立行政法人国民生活センターにおいても、消費者からさまざまな情報が寄せられております。したがって、省庁の壁を乗り越えて、製品の所管省庁と警察との連携体制、さらには国民生活センターといった関係機関との連携体制を構築すべきではないでしょうか。この点についてどう認識しておられるのかについても、あわせてお伺いいたします。

 次に、事故情報の報告が義務づけられる対象について質問いたします。

 今回の法案においては、製造・輸入事業者に対し重大製品事故の報告を義務づける一方で、小売事業者、修理事業者、設置工事事業者についてはこうした報告義務が課されないことになっております。これらの事業者については、より緩やかな形で、製造事業者等に情報を通知することに努めることを求めるのみとなっております。

 しかしながら、今回のパロマの事故を見ると、実は、一部には修理事業者による安全装置の改造がなされたために不完全燃焼に至り、一酸化炭素中毒事故が発生しているのです。そうだとするならば、こうした改造を実際に行う修理事業者や設置工事事業者についても報告を義務づけ、その責任を明らかにすべきではないでしょうか。何ゆえ、これらの事業者については努力規定しか設けず、報告義務を課さないことにしたのでしょうか。

 さらに、流通のプロセスが非常に多様、複雑になっております。こうした中で、明らかに消費者により身近な存在である小売事業者、修理事業者、設置工事事業者に報告を義務づけることなく、一体政府の迅速な情報把握は可能なのでしょうか。こうした点を含め、製造・輸入事業者のみに事故報告を義務づけることとした理由と根拠について、御説明いただきたいと思います。

 ところで、近年、規制緩和ということで、事前規制から事後規制へということが言われております。にもかかわらず、小泉政権のもとでは、事前規制の緩和を行っても、本来はあわせてやらなければならない市場のルールや法律を遵守させるための事後規制の整備を怠ってまいりました。

 本改正案は、そういう意味では、遅きに失しているものの、製品の安全に係る事後規制の整備という位置づけができます。その必要性について異論はありませんが、今回のように国民の生命や身体に対する危害が生じる場合にあっては、事故が発生してから事後的に対応をとっても遅過ぎるんです。確かに事故の拡大は防げても、被害者にとっては取り返しのつかない状況になってしまいます。したがって、重大な製品の事故の発生が予見されるような製品については、安全性を確保する観点から、製品の規格を厳格化するなど、いわば事前規制の強化が必要な場合もあるのではないかと考えますが、この点についての見解をお伺いいたします。(拍手)

 また、製品の安全性との関連で、我が国のものづくり技術の現状についてもお伺いいたします。

 我が国が、工業立国、貿易立国を実現し、世界第二位の経済大国となったのは、まさにものづくり産業における高い技術水準と品質管理のおかげであります。今後も、IT革命などさまざまな構造変化に直面しつつも、こうしたものづくり産業こそが我が国経済の生命線であると言っても過言ではないのです。しかしながら、今回のパロマのみならず、最近は、ソニー、トヨタ、松下電器といった国際的な企業から地元の中小零細企業に至るまで、相次いで製品事故が発生しております。これは憂慮すべき事態であり、日本のものづくりの現場は果たして大丈夫なのかと心配を強く感じざるを得ません。

 この背景の一つに、労働市場の安易な規制緩和という流れの中で、非正規雇用の増加に伴って、ものづくり技術が空洞化してきていることが挙げられるのではないでしょうか。

 そもそも、ものづくりの基盤は人にあります。長期間にわたる経験と蓄積の中で、これまで諸先輩方が培ってきた技術やノウハウが後輩たちに順々に継承され、一層高度なものへと洗練、発展されてきたんです。これが我が国の強みでした。ところが、最近、経営者はコスト削減のためにパートや派遣社員などの非正規労働者をふやしてしまっております。人材が入れかわり立ちかわり行き来しているような職場で、我が国が誇るべきたくみの伝統の連綿たる流れに断絶が生じつつあるのではないでしょうか。幾ら同じマニュアルや同じ機械を使ったとしても、現場の人次第で製品の質が大きく異なってくることは言うまでもありません。

 大局で見れば、政府そして経営者も、ここ十数年間、小さな政府、民営化、規制緩和なる旗のもとで効率を追い求めてきました。和魂洋才の精神のもとで、こうした英米の経済、経営の考え方を国益のために活用するのは、これは大いに結構であります。しかし、同じまねるのであれば、もう少し本場の全体像、そして細部の戦略、戦術までを勉強してからまねていただきたいと切に願うところであります。(拍手)

 英米両国においては、規制緩和はあくまで一手段として柔軟に行われております。逆に、国民の安全、安心を確保するためには、分野によっては、規制を強化し、のみならず、それを取り締まるために役所の権限をも拡大し、人員を増強する場合すらあるわけであります。これは決して、小さな政府に何ら矛盾することではなく、むしろ補完するものであります。

 同時に、外来の制度思想を導入する場合には、我が国の伝統的価値観、思想にふさわしい形でやらなければなりません。これでは、目先の利益を追い求める余り、日本資本主義の父、渋沢栄一が論語の道徳思想に基づいて経営方針を立てたという「論語と算盤」の精神を放棄してしまったのではないでしょうか、日本は。

 周知のとおり、そもそも経済という言葉は、経国済民に由来します。すなわち、国を治め、人民を救うという意味であります。つまり、効率も大事です、大事ですが、それはあくまで手段であり、経済産業政策の究極の目的は、済民、国民の生活の安心と安全を守ることにあります。

 こうした民族に脈々と流れている知恵と理想を忘れ、軽々しく外来の小さな政府だの民営化だの規制緩和だのを中途半端な、軽薄な、こっけいな、歪曲された形で取り入れて、明治の鹿鳴館の社交婦人のごとく踊らされている我が国の現状は、まことに目を覆いたくなるばかりであります。せっかく内閣もかわりましたので、ここ数年間はびこってきた軽佻浮薄な鹿鳴館経済学とそろそろ決別するときがやってきたのではないでしょうか。(拍手)

 いずれにせよ、製品事故の頻発が我が国の製造業、さらには政府の経済産業政策の根本方針が抱える潜在的な問題をあぶり出していることは間違いないと考えます。こうした点を踏まえ、我が国のものづくり技術をめぐる現状をどう評価し、今後どう対応していこうとするのか、お伺いいたします。

 最後に、近年、経済の国際化が急速に進展しており、我が国にも膨大な海外製品が流入しております。海外製品は、国内製品以上に品質が千差万別であります。中には余り品質のよろしくないものも含まれている可能性は、これは否定できません。国境をまたいだ製品の行き来が活発化している中で、海外製品の安全性についてどう確保されていかれるのか、御説明いただきたいと思います。

 いずれにせよ、最近の製品事故の頻発は、国民の間に不安を招いております。私たち民主党は、これまでも、食品衛生法や薬事法などの改正も含めた包括的な危険情報公表法案を提出してまいりました。平成十三年の臨時国会に提出した折には、残念ながら全く議論が行われないままに終わってしまいましたが、その間に今回のような事態が発生してしまっているのです。また、前回の国会において、建築物をも対象にした形で、消費生活用製品等及び特定生活関連物品に係る危険情報の提供の促進等に関する法律案を提出しております。

 いま一度、経国済民の原点に立ち返って、国民が安心して安全な生活を送れるようにすることこそが政治の果たすべき使命であります。行政に対して適切な対応を求めていくとともに、我々もまたこの問題に全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 北神圭朗議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、パロマ工業の一酸化炭素中毒事故に対する経済産業省の責任及び事故情報の分析・評価体制の整備方針についてお尋ねでありました。

 パロマ工業の一酸化炭素中毒事故によって、とうとい国民の生命が多数失われたことはまことに遺憾であります。本件の対応につきましては、経済産業省としても改善を図っていかなければならないと深刻に考えております。

 このために、経済産業省におきましては、製品安全に係る省内の連携体制の強化を図ったところであります。また、事故情報の適切な分析・評価体制を強化するため、必要な体制の整備に取り組んでまいります。

 今国会におきまして本改正案を一刻も早く成立させていただきまして、これを着実に実施することにより、製品安全対策に遺漏なきよう万全を尽くしてまいります。

 次に、関係行政機関との事故情報に関する連携についてのお尋ねであります。

 御指摘のとおり、製品事故への対応を図る上では、関係行政機関との間で密接に連携をしていくことが重要であります。

 経済産業省におきましては、警察庁等の協力を得まして製品事故に係る連絡会合を開催するなど、省庁の壁を乗り越えて関係省庁と一体となった取り組みを図ることといたしております。

 また、消費者からの情報が寄せられます国民生活センターとの連携も重要であります。内閣府と連携について検討を進めていきたいと考えております。

 次に、事故報告を製造・輸入事業者のみに義務づけている理由についてのお尋ねであります。

 製造・輸入事業者は、我が国の市場に最初に製品を投入する者でありまして、かつ、製品の設計、加工、組み立てや輸入行為等を通じて製品事故の原因を結果的に生ぜしめる者であります。

 このために、消費生活用製品安全法の全体を通じまして、製品の安全性に関しましては製造・輸入事業者に一義的に責任を課しておりまして、重大製品事故の報告義務についても、こうした考え方によりまして、製造・輸入事業者に義務づけを行うこととしたところであります。

 なお、小売販売事業者や修理・設置工事事業者につきましては、製品の安全性について一義的な責任を負う者ではないものの、消費者と直接に接し、事故情報に触れる機会が多いと考えられますことから、製造・輸入事業者への通知を行う義務を課すことといたしたものであります。

 次に、事前規制の強化が必要な場合もあるのではないかというお尋ねであります。

 ガス用品や電気製品など消費者に危害を及ぼすおそれが多い特定の製品につきましては、関係法令によりまして、安全基準を定め、製造、輸入において当該基準を満たすことを義務づけております。

 御指摘のように、消費者の安全性確保を図っていくためには、技術進歩等に応じまして安全基準を不断に見直しをしていくことが重要だと考えております。今回のガス瞬間湯沸かし器の事故や家庭用シュレッダーの事故等を踏まえまして、これらの製品につきましては、安全基準を強化するための措置を早急に講じていくことといたしております。

 次に、我が国のものづくり技術をめぐる現状と今後の対応についてのお尋ねであります。

 製品安全の確保は、ものづくりの大前提であると認識をいたしております。非正規雇用の増加や規制緩和等の進展によって、国民の安全、安心が損なわれることがあってはならないと考えます。経済産業省といたしましては、技術の伝承及び製品の安全性確保等が図られていくように、積極的な取り組みをしてまいります。

 最後に、海外製品の安全性をどのように確保していくのかとのお尋ねであります。

 海外から輸入される製品につきましても、国内で製造される製品と同様の安全性を確保することが重要であると認識をいたしております。このために、消費者に危害を及ぼすおそれが多い特定の製品につきましては、国内での製造のみならず、海外からの輸入につきましても、その安全基準を満たすことを義務づけております。また、今回の法改正におきましても、主務大臣への重大事故の報告につきましては、国内製造事業者と同様に輸入事業者にも義務づけを行ったところであります。

 これらの措置によりまして、海外からの輸入製品についても、国内で製造された製品と同水準の安全性を確保しまして、消費者の保護を図ってまいる所存であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 赤羽一嘉君。

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 公明党の赤羽一嘉でございます。

 私は、自由民主党並びに公明党を代表し、ただいま趣旨の説明がありました消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 近年相次ぐ、生命身体に危害を及ぼす消費生活用製品の使用による事故の発生は、我が国の製造業に対する国民の不信と不安を高めております。特に、パロマ工業のガス瞬間湯沸かし器の事故のように、昭和六十年から平成十七年の二十一年間で、二十八件の一酸化炭素中毒事故により実に二十一名ものとうとい命をなくしながら、何ら対策がとられず、放置されてきたことは言語道断であり、決して看過することはできない人災であります。

 かかる状況にかんがみ、我が党の太田昭宏新代表は、十月三日の衆議院本会議における代表質問において、国民生活に身近な生活用品全般の安全性に関する対応策を政府に求めたところでございます。安倍総理からは、国民の安全を確保することは政府の基本的な責務であり、政府として、国民生活に身近な製品の事故の再発防止に向けて取り組んでまいりたいとの答弁がなされ、消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案の今臨時国会での提出方針が示されたのでございます。

 この方針のもと、今般提出された本改正案は、一連の事故の教訓、つまり、事故発生に関する行政への報告がなかったために事故に関する情報を共有することができず、さらなる被害を拡大させてしまった点を教訓とし、死亡、身体欠損、後遺障害、一酸化炭素中毒、火災などの重大事故の報告を製造業者並びに輸入業者に義務づけるとともに、消費者に対して必要な情報を速やかに公表すること等を規定したものであり、本改正法案の早期成立による速やかな施行が強く求められるものであります。

 去る十月十二日、私ども公明党経済産業部会は、甘利経済産業大臣に対し、本改正法の円滑かつ有効な施行を実現するために、情報収集体制の強化並びに事故情報通知の周知徹底などに関する要望書を提出したところでありますが、重ねて以下の諸点につき質問させていただきます。

 まず、事故情報の収集体制の強化についてお伺いいたします。

 パロマ工業のガス瞬間湯沸かし器事故に際しましては、製造業者からの行政に対する事故報告の不備に加え、経済産業省内の情報共有及び連絡体制の不備が厳しく指摘されたところであります。

 今般の改正法案により、製造業者及び輸入業者に対し、すべての重大事故情報の報告を義務づけることになるわけでありますが、この報告の義務化に伴い、事故報告の情報量は大幅に増加することが予想されます。この膨大な事故情報を的確かつ迅速に分析、処理する能力が政府になければ、本改正案の目的の実効性が期待できないことは明白であります。

 経済産業省内の事故情報の収集体制をどのように改革、強化していこうと考えているのか、一連の事故において、結果として多くの犠牲が払われた事の重大性を真摯に受けとめ、これまでの反省を踏まえられての経済産業大臣の御見解を賜りたいと思います。

 次に、関係諸機関との事故情報の共有化についてお伺いいたします。

 経済産業省と関係省庁、関連独立行政法人との間に横断的な連絡体制を構築することにより、情報の共有化をグレードアップする取り組みを進めるべきと考えます。

 特に、警察庁や消防庁、独立行政法人国民生活センターや全国の消費生活センターとの密接な連携体制の構築は重要です。中でも、国民生活センターが管理する国内最大の苦情相談の情報データベースである全国消費生活情報ネットワークシステム、PIO―NETには、全国の消費生活センターや協力病院から収集された危険情報が多数蓄積されておりますが、残念ながら、各省庁との接続ができておりません。この点は真っ先に改善すべきであると考えますが、経済産業大臣並びに国民生活センター所管担当大臣の事故情報の共有化についての御見解を賜りたいと思います。

 続いて、事故情報の確実かつ迅速な報告、収集、そして消費者への速やかな周知徹底についてお伺いいたします。

 消費生活用製品の事故の再発防止や被害の拡大を最小限に食いとめることができるか否かは、事故発生後、どれだけ早く正確な情報を入手できるか否か、そして、その事故情報をどれだけ速やかに消費者に周知徹底することができるか否かにかかっていると考えます。

 しかしながら、その一方で、製造業者や輸入業者に義務づけられる主務大臣への報告に際し、PL法上の責任や損害賠償等の民事責任を負う可能性があるとするならば、積極的な報告の実施は期待できないのではないかとの懸念がございます。こうした懸念を払拭することができなければ、本改正案の目的である事業者の前向きな取り組みは進みません。

 まじめに事故報告をした事業者が、事故を隠し通した事業者に比べ、より大きな不利益が生じてしまう事態は何としても避けなければなりません。事故発生後の速やかな報告の実施は社会の一員としての企業の当然の責務とすることが、今般の法改正の目指すべきところと考えますが、この点に関する経済産業大臣の御見解並びに消費者への事故情報の周知徹底の取り組み方針について伺いたいと思います。

 最後に、製品の安全に関する企業風土の向上についてお伺いいたします。

 本来、我が国の製造業において、製品の安全性の確保はものづくりにおける基本中の基本であったはずであります。しかし、残念ながら、製品事故の頻発する昨今の情勢にかんがみると、我が国のものづくりの力が低下しているのではないかという懸念を抱かざるを得ないのであります。これは、競争力強化を最優先とし、安全性をないがしろにしてきた最近の一部企業の企業風土によるところが背景にあるのではないかと考えます。

 今般の改正法案を施行、実施することにより、安全性を最優先する企業風土の確立、また、万が一事故を起こしてしまったときにも、ちゅうちょなく報告を上げることが当然のモラルとする企業風土の確立、そして、企業としての安全への取り組みとともに、万が一の事故発生に際しての処理のよしあしも企業の評価の対象となる風土の確立を実現することが、今後、消費生活用製品の事故の未然防止、またその被害を最小限にとどめるためには不可欠であると声を大にして強く訴えるものでございます。

 私どものこの主張に対する経済産業大臣の御見解を最後に伺い、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 赤羽一嘉議員の質問にお答えいたします。

 まず、製品事故情報に関する経済産業省の分析・処理体制の強化についてお尋ねであります。

 経済産業省といたしましては、とうとい命が失われた一連の事故に関して、省内の事故情報の連絡・共有体制に不備があったとの御指摘を謙虚に受けとめ、原点に立ち返り、製品安全に万全を期す考えであります。

 既に、事故情報の適切な分析と処理を行うため、省内の関係部局が事故情報を処理する体制の整備や、同種の事故を検索することが可能な省内共通のデータベースの構築を行うとともに、事故原因の分析等に知見を有する独立行政法人製品評価技術基盤機構における事故分析体制の整備等を講じたところであります。さらに、今回の法改正に基づく事故情報の報告制度を十分に機能させるために、膨大な事故情報を処理するために必要な体制の整備に取り組んでまいります。

 次に、関係省庁間における情報の共有についてのお尋ねであります。

 御指摘のように、消費者保護の観点から、関係省庁や関係機関の間で製品事故情報を共有し、相互に活用を進めていくことは重要であると考えております。

 このために、経済産業省といたしましては、警察庁及び消防庁との間で製品事故に係る連絡会合を開催するなど、関係省庁との連携強化を図り、製品事故に関する情報交換を緊密にしてまいります。

 また、国民生活センターが管理をする全国消費生活情報ネットワークシステム、いわゆるPIO―NETでありますが、これへの接続は極めて重要な課題だと認識をいたしております。現在、内閣府におきまして、同システムの関係省庁との接続等に関する検討が行われていると承知しております。その実現に向けた結論が一刻も早く出ることを期待いたしております。

 次に、事業者による速やかな事故報告の実施と消費者への事故情報の周知徹底についてのお尋ねであります。

 御指摘のように、製品事故の情報に関しましては、製造事業者等に事故発生後速やかに報告をいただくとともに、消費者に周知徹底することが事故の再発や被害拡大を防止する上で大変重要だと考えております。

 事故報告を行ったことにより製造物責任法上の責任等を負うのではないかとの御質問につきましては、事故報告制度は、製品の欠陥の有無には着目せず、重大製品事故の発生を知ったときにその事実を報告するのみでありますことから、こうした責任は生じないと考えております。

 事故隠しが発覚した事業者に対しましては、体制整備命令のみならず、積極的な報告徴収、公表など厳正な措置をとりまして、速やかな事故報告がなされるよう取り組んでまいります。

 また、報告を受けた重大製品事故の情報は、経済産業省のホームページなどを通じて迅速かつ的確に公表するなど、消費者への事故情報の周知徹底につきましても積極的に取り組んでまいります。

 最後に、競争力の強化を優先していることが最近の製品事故の増大の原因ではないかとのお尋ねであります。

 御指摘のように、安全な製品を製造することは、消費者に製品を供給している企業にとりまして欠くことのできない基本的な姿勢であります。経済産業省といたしましては、今般、事業者に製品事故に係る情報の報告、公表及びそのための体制整備を求めますとともに、御指摘にもありましたように、安全性への取り組みに積極的な企業が評価されるような風土の醸成に努めることにより、消費生活用製品の安全対策を強力に推進してまいります。(拍手)

    〔国務大臣高市早苗君登壇〕

国務大臣(高市早苗君) 赤羽議員より、私には、国民生活センターなど関係行政機関等の事故情報の共有化についての御質問がございました。

 内閣府といたしましては、最近の製品事故等にかんがみ、関係行政機関などが事故情報を共有していくことが事故防止のために重要であると考えております。

 このため、内閣府では、去る九月末に「消費者の安全・安心に向けた取組みについて」を公表したところでございます。その内容は、第一に、全国消費生活情報ネットワークシステムを通じて国民生活センターが入手した死亡重篤事故情報の関係省庁へのより迅速な提供、第二に、関係省庁間の広範な情報共有のため、消費者政策会議のもとに設置される消費者政策担当課長会議の定期的開催、第三に、苦情相談情報の効果的な活用方策に関する検討会の立ち上げという三本柱から成るものでございます。

 今後とも、関係行政機関などと連携しつつ、消費者の安全、安心の確保に向けて積極的に政策の推進に取り組んでまいりたいと思っております。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       経済産業大臣  甘利  明君

       国務大臣    高市 早苗君

 出席副大臣

       経済産業副大臣  山本 幸三君


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