衆議院

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第14号 平成18年11月7日(火曜日)

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平成十八年十一月七日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成十八年十一月七日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 検査官任命につき同意を求めるの件

 地方財政審議会委員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 中央労働委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 検査官任命につき同意を求めるの件

 地方財政審議会委員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 中央労働委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

議長(河野洋平君) お諮りいたします。

 内閣から、

 検査官

 地方財政審議会委員

 電波監理審議会委員

 中央労働委員会委員

 労働保険審査会委員

 社会保険審査会委員

 運輸審議会委員

及び

 公害健康被害補償不服審査会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 内閣からの申し出中、

 まず、

 検査官に伏屋和彦君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 地方財政審議会委員に伊東弘文君及び木内征司君を、

 中央労働委員会委員に岩村正彦君、赤塚信雄君、岡部喜代子君、佐藤英善君、柴田和史君、菅野和夫君、曽田多賀君、野崎薫子君、林紀子君、坂東規子君、山川隆一君及び渡辺章君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に柳憲一郎君及び清水夏繪君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 地方財政審議会委員に池ノ内祐司君、木村陽子君及び佐藤信君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 電波監理審議会委員に浮川初子君及び濱田純一君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 中央労働委員会委員に尾木雄君、藤村誠君及び廣見和夫君を、

 労働保険審査会委員に平野由美子君を、

 社会保険審査会委員に高原亮治君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 運輸審議会委員に竹田正興君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣山本有二君。

    〔国務大臣山本有二君登壇〕

国務大臣(山本有二君) ただいま議題となりました貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 現在、多重債務問題が大きな社会問題となっている状況を踏まえ、貸金業の適正化、過剰貸し付けに係る規制及び出資法の上限金利の引き下げ等の措置を講ずるため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、貸金業の適正化を図るため、財産的基礎要件として最低純資産額を五千万円に引き上げること等、参入要件を厳格化するとともに、貸金業協会を内閣総理大臣が認可する制度を設け、その自主規制機能を強化し、広告の適正化や過剰貸し付けの防止等について自主規制規則を制定させ、当局が認可する枠組みを導入すること等としております。また、借り手保護の観点から、貸金業者に対する取り立て規制の強化等の措置を講ずるとともに、新たに業務改善命令を導入すること等、所要の措置を講ずることとしております。

 第二に、借り手の返済能力を超えた貸し付けが行われないよう、内閣総理大臣が信用情報機関を指定する制度を創設するとともに、貸金業者が個人向けに貸し付けを行う場合に指定信用情報機関の信用情報を利用して返済能力の調査をすることを義務づけ、年収の三分の一を超える貸し付けを原則禁止すること等、所要の措置を講ずることとしております。

 第三に、借り手の金利負担の軽減を図るため、貸金業者に適用されてきたいわゆるみなし弁済制度を廃止し、業として行う貸し付けにつき出資法の上限金利を年二九・二%から年二〇%に引き下げること等、所要の措置を講ずることとしております。

 第四に、やみ金融に対する罰則を強化するため、年一〇九・五%を上回る超高金利の貸し付けに対する罰則を新設するとともに、無登録営業に対する罰則を懲役五年以下から十年以下へ引き上げること等、所要の措置を講ずることとしております。

 第五に、政府は、関係省庁相互間の連携を強化することにより、カウンセリング体制の整備、やみ金融の取り締まりの強化、この法律による改正後の規定の施行状況の検証等、多重債務問題の解決に資する施策を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならないこととしております。

 なお、貸金業制度のあり方や出資法及び利息制限法に基づく金利の規制のあり方について、この法律の施行後二年六月以内に、過剰貸し付けに係る規定等や出資法及び利息制限法の規定を円滑に実施するために講ずべき施策の必要性の有無について検討を加え、その検討の結果に応じて所要の見直しを行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。柴山昌彦君。

    〔柴山昌彦君登壇〕

柴山昌彦君 自由民主党の柴山昌彦です。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 多重債務問題の解決は、我が国にとって重大かつ緊急の課題であります。テレビをつければ、あるいは町中で、オペレーター役の若い女優やマスコットの動物が登場する消費者金融、いわゆるサラ金の広告が至るところにはんらんしています。そして、十日で二割、三割といった法外な高金利の、いわゆるやみ金融のばっこ、臓器を売ってでも、あるいは死んで保険金で返せなどといった過酷な取り立て、家庭崩壊。私は、東京弁護士会の広報委員として、このような近年急速に深刻さ、悲惨さを増している実情を取材してまいりました。

 現在、消費者金融の利用者は約千四百万人、そのうち約二百三十万人が多重債務状態だと言われております。そして、我が国の年間の自殺者数は約三万人ですが、そのうち相当数が多重債務状態に陥っているとも言われております。なぜ、このような悲惨な状況が、特に無担保消費者金融において続いてきたのでしょうか。そして、国はこれまでどのような対策をとってきたのでしょうか。金融担当大臣に御説明を求めます。

 このような中で、利息制限法で定める一五ないし二〇%の上限金利と、出資法で定めた刑罰金利であり、かつ貸金業法上書面を作成して任意に返済すれば有効となる二九・二%の上限金利に挟まれたグレーゾーンの存在が、債務者を苦しめるものとして大きくクローズアップされました。

 裁判例においては、このグレーゾーンの返済の任意性を厳格に解するものが続出し、ついには、こうした高利息の返済を一回でも怠れば一括して残りの債務を即時に支払わなければいけないという当たり前のいわゆる期限の利益喪失約款をもって、特段の事情がない限り返済が任意に行われるものでないと本年一月十三日に最高裁が判示しました。

 その結果、二九・二%という高い金利を容認するこの貸金業法の規定は既に事実上効力を失っており、全国至るところで、既に債務者が支払った利息制限法超過利息の返還訴訟が起きています。既にこうした動きがある中で、今回の改正法案が法文上グレーゾーンを廃止することの意義を金融担当大臣にお伺いします。

 一方、例外や特例なく上限金利を利息制限法の水準に引き下げた場合、貸し倒れの危険性の高い消費者や事業者が適法に融資を受けられなくなり、かえってやみ金融を増長させかねないですとか、資金調達を初めとするコストや貸し倒れリスクに耐えられない中小の貸金業者が淘汰され、信用収縮、いわゆるクレジットクランチが発生するなどといった懸念も示されています。

 自民党においては、ことし五月に金融調査会のもとに貸金業制度等に関する小委員会を設置して以来、関係部会との合同会議も含めて、ほぼ二十回にわたりこの問題を討議しました。消費者問題、金融問題のエキスパートを初め、多くの議員たちが、ベテランから当選一回の皆さんまで、まさに改革政党の名にふさわしい正々堂々たる議論を繰り広げたのであります。(拍手)

 結局、今回の法案では、少額融資の場合に一定の高金利を認める特例を設けることや、利息制限法の上限金利の融資金額による区分の見直しは見送られ、あわせて、これまで金利規制の抜け穴となっていた保証料などについても、利息と合算して上限金利規制の対象とすることになりましたが、こうした金融排除やクレジットクランチの懸念に一体どのように対処していくのか、金融担当大臣にお伺いします。

 また、今回の法案では、無登録業者に対する罰則が懲役五年から懲役十年に引き上げられるなど、やみ金融に対する罰則も強化されておりますが、やみ金融に対する取り締まりの強化にどのように取り組んでいくのか、その決意と具体的な取り組みについて国家公安委員長にお伺いします。

 さて、こうした対応以外にも、多重債務問題の解決のためには非常に広範な対策が必要です。特に、借り入れの額については、債務者ごとの総量規制が不可欠ですし、期間についても、例えばいわゆるリボ契約について規制を設ける必要があります。このほか、貸金業者の登録要件、信用情報機関のあり方、貸し付けの際に業者に課される規制や取り立ての際の規制の強化について、それぞれ改正法でどのような手当てがなされているか、金融担当大臣にお伺いします。

 なお、これまで述べてまいりましたそれぞれの対策には、経済や債務者への影響を慎重に考え、一定の経過措置が必要と考えますが、具体的な施行時期、スケジュールについて金融担当大臣の御説明を求めます。

 一方、こうした債務者への対策としては、このたび発足した日本司法支援センター、いわゆる法テラスやカウンセリング機関の体制強化が必要であり、あわせて、債務整理等の専門家である弁護士会などの協力を仰ぐことが不可欠となるので、これら関係機関、団体による多重債務者への支援に関して法務大臣のリーダーシップが大いに期待されるところです。今後どのような取り組みをお考えか、法務大臣にお尋ねいたします。

 しかしながら、既に、例えばにせものの高級時計を情を通じた業者から借りさせて、それを質受けするなど、消費者を食い物にした新たな金融手段が登場しています。こうした行為に対する取り締まりの強化にどのように取り組んでいくのか、国家公安委員長にお尋ねいたします。

 また、貸金業者の中には、みずからが行う強制執行に用いる公正証書を作成するのに必要な債務者の同意を、委任状を債務者から不当に入手することによって得ることが多く見られています。さらに、債務者の生命保険契約をみずから締結し、保険料の立てかえ払いも行って、債務者の死亡後、生命保険金をもって債務の返済に充てさせている例までもが見受けられます。このような状況にどう対応していかれるのか、金融担当大臣の御所見を伺います。

 いずれにせよ、今回の法改正を円滑に施行するとともに、新たな対策を講じ、さらには借り手教育を充実させていくためには、関係省庁が連携して、また官民が一体となって、総合的で息の長い取り組みを行っていくことが必要です。この作業では、内閣官房が司令塔となって省庁横断的な情報収集及び対応を進めていくことが非常に重要だと思いますが、内閣のかなめである官房長官より、それに向けた御決意をお聞かせください。

 最後になりますが、今回の改正内容については、長年にわたり多重債務問題に真摯に取り組んでこられた日本弁護士連合会などの諸団体から、高く評価する旨のコメントが発表されました。安倍総理は、拉致問題に関し、一人の被害者も見捨てることはしないと述べられていますが、多重債務問題で亡くなる方を根絶することも、国を挙げての重要な課題です。一日も早くこの法案を成立させ、国民の期待にこたえることが立法府としての責務であることを強調して、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 柴山議員にお答えいたします。

 多重債務者問題に関する内閣官房の対応についてお尋ねがございました。

 政府といたしましては、多重債務問題の解決に向け、政府を挙げて取り組む決意でございます。このため、内閣官房に多重債務者対策本部を設置し、改正法の円滑な施行に加え、消費者教育の強化やカウンセリング体制の充実等について、関係省庁が連携して取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣山本有二君登壇〕

国務大臣(山本有二君) 柴山議員にお答えいたします。

 多重債務問題への政府のこれまでの対策についてお尋ねがありました。

 政府としては、近年、貸金業者による高金利での過剰な貸し付け等により多重債務問題が深刻化しており、その解決が重要な課題となっていると認識しておりました。こうした認識のもと、政府としては、これまでも、貸金業規制法等関係法令が累次改正される中で、法令に基づいて厳正かつ適切な監督に努めるなど、借り手の保護のための施策の実施に努めてきたところでございます。

 今回の改正において、いわゆるグレーゾーン金利を廃止することの意義についてお尋ねがありました。

 今回の法案では、多重債務問題を解決するために有効なあらゆる施策を講じることとしており、その重要な施策の一つとして、貸金業法第四十三条に基づくいわゆるグレーゾーン金利を廃止し、出資法の上限金利を二〇%まで引き下げることとしております。これにより、債務者の金利負担が軽減され、多重債務問題の解決に資することとなるものと考えております。

 信用収縮などの懸念に対し、どのように対処していくのかとのお尋ねがございました。

 今回の改正により、新たな多重債務者を発生させない枠組みを構築する必要がありますが、その過程において、現在の借り手が急に返済を迫られ、かえって生活に悪影響が出るような事態を招かないようにすることも必要であると考えております。こうした点も勘案し、今回の改正におきましては、上限金利引き下げと新たな過剰貸し付け規制の実施までおおむね三年程度の準備期間を設けることとしております。

 借り入れの額や期間に対する規制など、改正法上手当てされている施策についてのお尋ねがありました。

 今回の改正においては、上限金利の引き下げとあわせて、返済能力を超える借り入れが行われないよう、個々の借り手の総借入残高を指定信用情報機関を通じて把握させた上で、総量規制を導入するとともに、いわゆるリボルビング契約の毎月の最低返済額等についての自主規制規則を制定させ、金融庁が認可することとしております。

 このほか、貸金業者に対して、純資産要件の引き上げや資格試験の導入など参入要件を厳格化するとともに、日中の執拗な取り立て行為の禁止などの取り立て規制の強化及び事前の書面交付義務など行為規制の強化を行い、多重債務問題の解決に資する総合的な施策を講じることとしております。(拍手)

    〔国務大臣溝手顕正君登壇〕

国務大臣(溝手顕正君) 柴山議員の御質問にお答えいたします。

 まず初めに、やみ金融に対する取り締まりの強化についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、高金利貸し付けや違法な取り立て等、やみ金融事犯については依然として深刻な被害が出ているものと認識しております。

 警察では、これまでもやみ金融事犯の取り締まりを強力に進めてきたところでありますが、今回の改正を機に、関係機関、団体とも連携しながら、今後、さらに取り締まりを強化し、被害防止に努めるものと承知いたしております。国家公安委員会といたしましても、この問題について警察に寄せられる国民の期待と信頼にこたえることができるよう、その取り組みを督励してまいる所存でございます。

 次に、消費者を食い物にした新たな金融手段に対する取り締まり強化の問題であります。

 警察は、貴金属や商品券等を利用した金融手段についても、それが実態として高金利の貸金業と認められる場合には、これまでも出資法や貸金業規制法を適用して厳正に対処しているものと承知いたしております。御指摘のような新手の金融手段につきましては、それが違法な行為に該当すれば、警察においても厳正に取り締まりを推進していくものと承知いたしております。(拍手)

    〔国務大臣長勢甚遠君登壇〕

国務大臣(長勢甚遠君) 柴山議員にお答え申し上げます。

 多重債務者への支援に関する取り組みについてお尋ねがありました。

 御指摘の多重債務者への支援については、日本司法支援センターにおいて、法的トラブルを抱えた国民に対する情報提供業務の一環として、多重債務問題などの金銭の借り入れに関する法的トラブルの問い合わせを受け付け、破産手続等の法制度に関する情報や多重債務者に対する助言等を行うカウンセリング機関などの相談機関に関する情報を迅速適切に提供しております。

 多重債務の問題に適切に対応するためには、御指摘のとおり、弁護士会の協力を得るなど、関係機関、団体との連携協力のもとに司法支援センターの業務が行われる必要があります。このため、司法支援センターにおいては、協議会を開催するなどして、関係機関、団体との連携協力関係を一層深めるよう努めているところであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 北橋健治君。

    〔北橋健治君登壇〕

北橋健治君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま御提案のありました貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案について、関係大臣に質問を行うものであります。(拍手)

 昨今、自殺される方の数はふえたまま、減少の兆しは一向に見えておりません。一九九八年に自殺者が年二万人台から三万人台に急増して以来、現在に至るまで年間三万人を超える水準に高どまりしたままであります。言うまでもなく、自殺は人間の最大の悲劇です。この悲劇がやまないことを、私は悲しみと怒りを持って受けとめています。政府は、自殺者が一向に減少の兆しを見せないことを放置してきた責任があるのではありませんか。

 この悲劇の原因の一つが、言うまでもなく多重債務問題であります。消費者金融などによる借金が雪だるま式にふえ、多重債務に陥り、その結果、自己破産や夜逃げ、自殺などに追い込まれる悲惨な事態が目立っております。また、違法なやみ金融に手を出す事例もあり、借り手だけではなく家族らも巻き込んだ重大な社会問題となっていることは、もはや言うまでもありません。多重債務者人口は二百万人を超えると言われており、消費者金融の潜在的な利用者の約二割にまで陥っていると言われております。多重債務問題の深刻化を初めとする借金苦の増大については、小泉内閣の経済政策の失敗、その結果によるところが大きいと思いますが、金融担当大臣の所見があれば、お伺いしておきたいと思います。

 多重債務が広がる背景には、格差社会がどんどん広がってきている事実があります。今、年収三百万円以下の世帯の数は三割近くに達しております。もう一つ注目すべき数字は、預貯金がゼロの世帯数が二五%になろうとしていることであります。戦後六十年余、世帯数の二割を超えた事例は過去一回しかありません。それは東京オリンピックの前夜で、テレビなど、買う物がありました。現在二五%の人の預貯金がゼロであるという実態は、もはや緊急事態ともいうべき深刻な水準であります。

 政府は、これまで自由な競争を促進し、豊かな人をふやすことに腐心する余り、この現実から目を背けてきたのではありませんか。政治は、今こそこの現状を正面から受けとめ、有効な手だてを講ずるときであります。

 民主党は、これまで、これらの問題を重く受けとめ、出資法の上限金利が著しく高いこと、出資法と利息制限法の上限金利の間にグレーゾーンが存在することなど、制度的な欠陥を是正するために全力を尽くしてまいりました。民主党は、結党翌年の一九九九年の段階で、グレーゾーン金利を解消すべく、出資法の上限金利を現行の利息制限法の上限金利並みに引き下げ、年二〇%を上回る金利は罰則つきで明確に禁止するよう法案を提出したところであります。しかし、当時から政府・与党の協力は全く得られず、民主党案は成立することはありませんでした。その結果、深刻な問題が日本社会に放置されてきたのであります。(拍手)

 グレーゾーン金利をめぐっては、消費者金融業者に返還を命じたことし一月の最高裁判決をきっかけに、ようやく政府・与党内においても、灰色金利の是正、みなし弁済規定の廃止などの方向で議論が始まりました。当初、自由民主党は、利息制限法の金額刻みの引き上げ、特例高金利の設置を盛り込むことを主張しておりましたが、自民党のこうした当初の姿勢は到底世論の受け入れるところとはなりませんでした。最終的に我々民主党の提言に沿った方向で修正され、借り手の自殺を保険事故とする生命保険契約締結の禁止などの改正も盛り込まれました。至極当然のことであります。

 自殺者が急増し、その背景の一つに格差社会、多重債務問題があることが明らかであった中、民主党は、常にこの間、法改正に向けたメッセージを出し続けてきました。そのような中、今回の法改正がここまでおくれたことは極めて遺憾であります。この間、どれだけ多くの人々があいまいなグレーゾーン金利からくる借金地獄に苦しんだのでありましょうか。何ゆえここまで有効な手だてが打たれなかったのか、その政治責任は重大であります。所見があれば、金融担当大臣及び財務大臣にお伺いしておきたいと思います。

 さて、政府・与党が法案作成に戸惑った背景には、関係業界をめぐる政官業の癒着の問題も指摘されております。大手消費者金融に旧大蔵省と財務省の官僚OBが役員や顧問として天下り、現在も在籍していることが報じられております。四社に五人も現在も在籍している事実については、我々も有価証券報告書によって確認することができました。また、日銀のOBも含まれております。監督官庁OBが関連業界である消費者金融会社に今なお天下りしている事実は、到底看過できない問題であります。政官業癒着の温床になるような天下りは排除すべしとは、まさに国民の世論ではありませんか。

 しかし、こうした流れに逆行して、安倍内閣の動きを見守っておりますと、立件が困難な口きき行為の形式的な禁止と引きかえに、ただでさえ不十分な現行の天下り期間二年間の禁止措置を撤廃する案を検討していると伝えられております。一体、政府は、貸金業等をめぐる政官業の癒着を払拭するためにいかなる対策を講じられるのか、金融担当大臣及び財務大臣の明快な答弁をお伺いしておきたいと思います。(拍手)

 去る八月五日、福岡県弁護士会の主催で、消費者金融問題等に関する公開シンポジウムが福岡市内で開かれました。この会で、高金利の業者から金を借り、過剰な利息を支払わされるなど、貧困がさらなる貧困を招く構造問題が取り上げられました。また、北九州市でホームレスの自立支援に取り組む団体の代表が、多重債務などでホームレスを余儀なくされた人の多くに働く意思があるというデータを紹介する、そういった報道がございました。

 安倍内閣が現在目玉とされております再チャレンジ支援対象にはニートなどの若者などが想定されているようでありますが、こうした事例も重く受けとめ、多重債務などにより生活苦に直面している人にもきめ細かな再チャレンジ策を講ずるべきではないでしょうか。金融担当大臣より明快なる答弁を求めます。

 次に、制度の枠組みについてお尋ねします。

 今般の法案において、貸金業の参入条件の厳格化が盛り込まれています。この際、遵法意識の低い者が貸金業に参入することを防ぐため、貸金業者の登録制度を廃止し、新たに免許制度を設けるべきとの意見もありますが、政府としてはこうした方向はとらないのでしょうか。

 さらに、民主党は、違法業者、やみ金融対策として、課徴金適用も視野に入れた行政処分の見直し、罰則の強化等を提言してきました。また、ことしの通常国会で、政府は金融商品取引法の成立を図りましたが、被害の多い商品先物が対象から外れるなど、中途半端な内容にとどまっております。私たちは、今後の課題として、包括的な金融サービス法の制定、日本版FSA、金融サービス機構の設置など監視行政の強化充実にもあわせて取り組むべきことを主張しております。これらの問題にどう取り組まれるのか、金融担当大臣の答弁を求めます。

 消費者金融等の問題は、金融制度や貸金業制度の枠内だけで論じられるものではありません。当然、自己破産制度、生活保護制度の改善などとあわせて、新しいヒューマンな社会に向けたビジョンを策定すべきであります。民主党の提言によって、包括根保証制度が廃止されるなど、この間、前進の動きも見られますが、この際、日本特有の保証人制度について根本から問い直すべきだと考えます。かつて法務省内においても、アメリカの制度を見習って、この制度を見直す動きがあったのでありますけれども、金融担当大臣、法務大臣の明快なる答弁を求めておきたいと思います。

 次に、業者による貸し過ぎの抑制策について質問いたします。

 そもそも貸金業法は、「貸金業者は、資金需要者である顧客又は保証人となろうとする者の資力又は信用、借入れの状況、返済計画等について調査し、その者の返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない。」と過剰貸し付けそのものを禁止しております。しかし、条文は全く空洞化をし、行き過ぎた貸し付けが行われているのが実態であります。

 過剰貸し付けを抑制するためには、具体的な対策を講じる必要があります。フランスの調査に行かれた法律家のチームは、フランスの社会においては、テレビコマーシャルなど人目に触れるところにはこういった金融の問題は取り上げないという制度があることを報告されております。日本におきましても、無人契約機による契約は、不要な資金の過剰貸し付けにつながるため禁止すべきではないでしょうか。消費者教育、啓発活動への取り組みなど、未然予防策の強化、公正で透明なカウンセリングの抜本的な拡充、信用情報機関の体制整備なども不可欠であります。これらの問題についての取り組みについても、金融担当大臣より答弁をいただきたいと思います。

 さて、今年度のノーベル平和賞は、グラミンバンクとその代表であるムハマド・ユヌス氏に授与されました。バングラデシュで貧困に苦しむ農村の女性らを対象に、無担保で少額の信用貸し付けを行い、起業を助けてきました。このグラミン銀行の活動は、社会的活動を目的とした非営利金融であり、民主党は、今回のノーベル平和賞受賞に心から拍手喝采を送りたいと思います。そして、多重債務者を増加させてきた安易な営利型貸金業の対極にあるということを強調したいと思います。

 こうした国際的潮流の中で、日本でも行われているNPOバンクなどの動きを支援していくべきだと思います。NPOバンクは、市民が資金を出資し合い、それを原資として、一般金融機関が資金提供しにくい社会的事業や社会的課題に対して低金利で融資を行う非営利バンクであります。例えば、新潟では、被災地復興などの活動のためのNPOが設立されております。

 しかし、今般の政府案においては、小規模の貸金業者を排除し、法執行体制を強化するための規定を多く設定しているため、結果として必要諸経費がこれまで以上にかかる内容となっております。この法改正の内容は、小規模、非営利でボランティアベースであるからこそ成り立っているNPOバンクが成立できない条件であり、ほとんどのNPOバンクの動きが破綻してしまうのではないかとの懸念が指摘されております。非営利性や公益性を求めていない現在の貸金業規制法とNPOバンクとは、性質が基本的になじまない部分があります。

 政府内には、合併して大きなものをつくればよいというアドバイスがあるやに聞きますが、それは、小規模、非営利のボランティア金融の実態を無視した暴論ではありませんか。貸金業規制法からのNPOバンクの適用除外、あるいは貸金業規制法内でのNPOバンクに対する規制緩和などを講じて、NPOバンクの存続につながる実効ある措置を確立するよう求めます。金融担当大臣より明快なる御所見をいただきたいと思います。

 次に、中小零細企業、自営業者等に対する融資対策について質問いたします。

 言うまでもなく、日本経済の屋台骨を支えてきたのは、地方で懸命に努力をされている中小企業、地場産業であります。そして、零細事業者が、生きていくために万やむを得ず高金利の資金を借り入れている実態を政府はどれだけ知っているでしょうか。悪質な金融業者を排除することは重要でありますが、中小企業などにとって頼りがいのある事業者金融を同時に育成していくことも不可欠であります。

 これまで、民主党は、一貫して中小企業金融の充実強化を訴え、具体的な提案を行ってまいりました。第一に、政府系金融機関が行う融資については個人保証を撤廃すること。第二に、キャッシュフローに重点を置いた中小企業向け金融検査マニュアルをつくり、貸し渋り、貸しはがしを解消させること。第三に、金融機関の地域への寄与度や中小企業に対する融資条件などについて、情報を公開させる地域金融円滑化法を制定すること。こうした提言については、この際、政府としても真摯に取り組んでいただきたいと思いますが、金融担当大臣、財務大臣より明快なる御所見を求めたいと思います。

 結びに、多くの多重債務者を救うために、地方自治体独自の取り組みが進んでいることを強調しておきたいと思います。九州のある自治体では、司法書士や弁護士などで法曹界の特別のチームをつくっていただき、借金に苦しむ方々の法律相談所を役所に設けて、過払いの取り戻しや返済に関するアドバイスを提供している先進的な試行錯誤が始まっております。私の地元の北九州においても、ぜひともそのような取り組みを進めていきたいと考えておりますが、政府において、既にそのような先進的な取り組みを進めている自治体の動向をしっかりと把握されているでしょうか。そして、温かくそれを支援していっていただきたい。そのことを金融担当大臣に伺いまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣山本有二君登壇〕

国務大臣(山本有二君) 北橋議員にお答えする前に、柴山議員の答弁に若干補足をさせていただきたいと思います。

 柴山議員から、今回の法案の施行時期等についてお尋ねがありました。

 今回の改正のうち、まず、やみ金融等に対する罰則の強化について、公布から一カ月後に施行いたします。その後、取り立て規制の強化、新たな自主規制機関となる貸金業協会の設立などを内容とする規定については、公布から一年以内に施行し、その施行から一年半以内に貸金業務取扱主任者の試験や指定信用情報機関の指定等を実施いたします。また、施行から二年半以内、すなわち公布からおおむね三年を目途に、みなし弁済制度を廃止し、出資法上限金利を引き下げるとともに、新たな過剰貸し付け規制を導入することとしております。

 次に、貸金業者による公正証書作成委任状の取得や、債務者への生命保険の付保についてお尋ねがありました。

 今回の法案では、公正証書について債務者等がみずから十分な認識を持った上で作成されるよう、公正証書作成に係る委任状の取得を禁止するなど、公正証書作成に関して厳格な規制を導入しております。また、貸金業者が、債務者等の自殺によって保険金が支払われる生命保険契約を締結することを禁止することとしております。

 北橋議員にお答えを申し上げます。

 多重債務問題の深刻化の要因についてのお尋ねがありました。

 政府としては、近年、貸金業者による高金利での過剰な貸し付け等により多重債務問題が深刻化しており、その解決が重要な課題になっていると認識しております。

 多重債務問題は、金利負担のほか、返済能力を超える借り入れを行うこと等、さまざまな要因によるものと考えられますが、今回の改正は、上限金利引き下げとともに、返済能力を超える借り入れを防ぐ総量規制の枠組みを導入し、貸金業者に対する参入規制等を強化するなど、多重債務問題解決のため、抜本的かつ総合的な対策を講じるものでございます。

 次に、多重債務問題に対するこれまでの施策についてお尋ねがありました。

 先ほども申し上げましたとおり、政府は、多重債務問題の解決が重要な課題となっているとの認識のもと、これまでも、貸金業規制法等関係法令が累次改正される中で、法令に基づいて貸金業者に対する厳正な監督を行うなど、借り手の保護のための施策の実施に努めてきたところでありますが、今回の改正では、多重債務問題解決のため、さらに抜本的かつ総合的な対策を講じることとしております。

 次に、所管する業界へのいわゆる天下りと貸金業等をめぐる政官業の関係についてお尋ねがありました。

 国家公務員の再就職のあり方につきましては、現在、政府内で検討中と承知しておりますが、金融庁としましても、権限等を背景とした押しつけ的な再就職のあっせんは行うべきではないと考えております。また、貸金業者等に国家公務員であった者が再就職することによって行政がゆがめられることがあってはならないのは当然であります。

 金融庁としては、今後とも、法令等により公正かつ透明な行政運営に努めてまいります。

 多重債務者に対する再チャレンジ策についてお尋ねがありました。

 今回の改正は、先ほど申し上げましたとおり、上限金利引き下げとともに、返済能力を超える借り入れを防ぐ総量規制の枠組みを導入し、貸金業者に対する参入規制等を強化するなど、多重債務問題解決のため、抜本的かつ総合的な対策を講じるものであります。多重債務に苦しむ方々の再チャレンジ策としても有効なものと考えております。

 また、内閣官房に設置される予定の多重債務者対策本部において、カウンセリング体制の充実等に関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと考えております。

 貸金業者の参入規制について免許制度を設けるべきとのお尋ねがありました。

 今回の改正案におきましては、貸金業者の参入については現行どおり登録制とすることとしておりますが、登録要件として、純資産額を五千万円に引き上げることや、試験に合格した貸金業務取扱主任者の配置を求めるなど、現行法に比べて参入規制を大幅に厳格化することとしており、これらにより貸金業者の適切な業務運営を確保できるものと考えております。

 行政処分の見直し、罰則強化、監視行政の強化充実についてのお尋ねがありました。

 今回の改正におきましては、違法業者、やみ金融対策として、無登録営業等の罰則を強化するとともに、行政処分や罰則の対象となる取り立て規制の強化を初めとした行為規制の強化を行い、規制違反に対して機動的に対処するため、現行の登録取り消しの処分や業務停止命令に加え、業務改善命令を導入するなど、きめ細かな監督が可能となるような措置を講じております。これらの措置により、貸金業者の業務の適正な運営が確保されるものと考えております。

 保証人制度の見直しについてお尋ねがありました。

 保証は、民法上適法な契約であり、また、債務者の信用を補完し資金調達を容易にするなど、債務者にとってメリットがある場合もございます。したがって、金融庁が各金融機関に対して保証の利用を一律に禁止するなどの制限を行うことは適切ではないと考えております。

 保証契約の際には、保証人が保証を行うことについての合理性を十分に判断できることが重要であり、金融庁といたしましても、各金融機関における保証徴求の際、説明体制の整備等、適切な業務運営を行っているかなどにつきまして厳正に検査監督してまいりたいと考えております。

 過剰貸し付けを抑制するためのさまざまな具体的対策についてお尋ねがありました。

 今回の改正では、指定信用情報機関制度の創設とともに、無人契約機によるものを含め返済能力を超えた貸し付けを禁止し、違反した場合には行政処分を科すこととしております。また、消費者教育の強化やカウンセリング体制の整備につきましても、内閣官房に設置される予定の多重債務者対策本部におきまして、関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと考えております。

 NPOバンクの貸金業法上の取り扱いについてお尋ねがございました。

 多重債務問題の解決、借り手の保護の観点から、今回の改正は、原則として、すべての貸金業者を対象に実施すべきものと考えております。規制を潜脱する行為を防ぐ観点から、例外的な取り扱いにつきましては慎重に検討する必要があると考えております。

 中小企業金融の充実強化についてのお尋ねがございました。

 中小零細企業向け貸し出し等につきましては、その経営実態やキャッシュフローに重点を置いた金融検査マニュアルの中小企業融資編に基づきまして、きめ細かい検査に努めているところでございます。

 また、地域金融円滑化法の御提言でございますが、金融機関の地域貢献に関する取り組みにつきましては、まず、金融機関の自主的な経営判断により、自己責任と健全な競争のもとで、地域における資金仲介機能を発揮していただくことが重要であると考えております。

 次に、地方自治体のカウンセリングの取り組みについてのお尋ねがありました。

 地方自治体の中には、地元の弁護士等と連携して、多重債務者に対するカウンセリング活動を行い、成果を上げているところがあると承知しております。政府といたしましては、こうした取り組み等も参考にしつつ、カウンセリング体制の充実を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣尾身幸次君登壇〕

国務大臣(尾身幸次君) 北橋議員にお答えをいたします。

 多重債務問題に対するこれまでの施策についてお尋ねがありました。

 政府は、多重債務問題の解決が重大な課題となっているとの認識のもと、これまでも、貸金業法等関係法令が改正されるとともに、金融庁において、現行法令に基づいて貸金業者に対する厳正な監督を行うなど、借り手の保護のための施策の実施に努めてきたところであります。さらに、今回の改正では、多重債務問題解決のため、抜本的かつ総合的な対策を講じることとしていると承知しております。

 公務員の再就職についてお尋ねがありました。

 公務員の再就職について、一般論として申し上げれば、いわゆる天下り問題として国民の批判があることを真摯に受けとめ、権限等を背景として退職者を押しつけるようなことは行うべきでないと考えております。また、職員の経験や能力を活用した再就職の問題は、公務員制度全体にかかわるものとして総合的に検討されている課題であり、官民の別を問わず、社会全体としていかに人材を活用していくかという観点も含め、退職管理の適正化に向けた議論を行っていくことが必要ではないかと考えています。

 いずれにせよ、公務員が再就職したことにより行政がゆがめられてはならないことは当然であり、今後とも、厳正かつ公正な行政が行われるよう十分注意してまいる所存であります。

 政府系金融機関の融資に係る個人保証の撤廃、中小企業向けの金融検査マニュアル作成による貸し渋り等の解消、中小企業に対する融資条件等の情報公開制度の創設についてお尋ねがありました。

 政府系金融機関として、個人保証や担保に過度に依存せず、経営者の資質や事業の見込み等を評価し、適切に融資判断を行うことは重要と考えております。

 こうした認識のもと、政府系金融機関においては、引き続き適切な融資判断に努めるとともに、経営改善貸し付け、いわゆるマル経や新創業融資制度など、個人保証や担保の不要な融資の活用を進めております。また、再チャレンジする起業家の資金調達を支援するための融資の枠組みの創設等を検討しているところであります。

 また、中小企業向けの金融検査マニュアル作成による貸し渋り等の解消、中小企業に対する融資条件等の情報公開制度の創設が不可欠とのお尋ねについては、先ほど金融担当大臣からお答えしたとおり、金融庁において、きめ細かい検査の実施や、金融機関の自主的な経営判断による資金仲介機能の発揮に向けた取り組みが行われていると承知しております。(拍手)

    〔国務大臣長勢甚遠君登壇〕

国務大臣(長勢甚遠君) 北橋議員にお答え申し上げます。

 保証人制度の見直しについてお尋ねがありました。

 保証制度については、かねてより、保証人が過大な責任を負いがちである等の問題が指摘されているところでありますが、一方、例えば、個人が保証人となることを法律上一律に禁止したり、保証人が主債務者と同一の責任を負う連帯保証制度を廃止するといった強力な規制を行うとすれば、担保に供する財産を有しない中小企業の円滑な資金調達を阻害する等の弊害が生ずるおそれがあります。

 そこで、法務省においては、平成十六年、基本的には今申し上げた考え方に立ちつつ、極度額の定めのない根保証契約を無効とする等、保証契約の内容を適正化するための民法改正を行ったほか、できる限り保証に依存しない融資実務を担保制度の面から支えるため、在庫商品や将来の売り掛け債権などの担保化を可能とする法整備を行いました。

 法務省としては、これらの法改正の効果を見定めつつ、今後とも、保証制度、担保制度のさらなる改善の要否について、引き続き検討してまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 公明党の石井啓一でございます。私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案に関しまして質問をいたします。(拍手)

 法案への質問に先立ち、我が国の金融システムに関する課題について質問いたします。

 我が国の金利体系は、低金利の銀行貸し出しが多くの貸出残高を持っている一方で、貸金業者による出資法の上限金利に近い高金利での貸し出しが一定の残高を持ち、その中間の金利での貸し出しが少ないという状況がございます。近年、銀行のカードローンや銀行系の貸金業者が中間金利での貸し出しを行うようになりましたが、まだまだ残高は少ない状況です。本来、借り手のリスクに応じた多様な金利体系が整備されることが望ましく、政府としてもそのような金利体系の整備を推進すべきと考えますが、金融担当大臣の見解を伺います。

 また、我が国の金融機関の与信業務は、いまだ担保や保証人に頼る傾向が強くあります。金融機関が目きき能力、リスク評価能力を身につけ、担保や保証人に過度に依存しない融資を行うことが望ましく、政府系金融機関が率先して実行し、民間にも促していくべきと考えます。官房長官並びに金融担当大臣の見解を伺います。

 特に、中小企業の経営者には、企業の融資に個人保証を求められる場合が多く、企業破綻した場合の再挑戦が難しい要因となっています。中小企業経営者に個人保証を求めない融資を推進していくべきであります。また、企業破綻して再挑戦に取り組む者への支援では金融支援が重要であり、推進すべきであります。金融担当大臣の見解を伺います。

 続いて、法案に関して質問いたします。

 今回の改正案は、昭和五十八年に貸金業規制法が制定されて以来の抜本的な改正になります。近年の改正を振り返ると、平成十一年には、商工ローン問題を契機として、出資法の上限金利を四〇・〇〇四%から二九・二%に引き下げ、平成十五年には、やみ金融問題を契機として、貸金業者の登録要件の厳格化、無登録業者に対する規制強化、取り立て規制の強化等を行ったところであります。

 私自身も法改正にかかわりまして、一定の効果はあったと自負をしておりますけれども、残念ながら対症療法の域を出ず、多重債務者問題が深刻化しております。例えば、自己破産者は平成六年の約四万件から平成十七年には約十八万件になっており、多重債務者の数は約二百万人に上ると言われています。

 今回の改正案は、貸金業の適正化、過剰貸し付けの抑制、出資法の上限金利の引き下げとグレーゾーン金利の廃止、やみ金融への罰則強化、政府を挙げた多重債務者問題への取り組み等、貸金業の制度の土台からの抜本的な改革を断行し、新たな多重債務者を生まないことを目指しており、高く評価をいたします。ついては、深刻化している多重債務者問題を抜本的かつ速やかに解決するために、今国会で必ずや本法案を成立させるべきと考えますが、金融担当大臣の決意を伺います。

 今回の法案策定に関しては、政府と与党でキャッチボールを重ねながら最終案をまとめました。

 政府の当初案では、出資法の上限金利引き下げが公布後四年になり、さらにその後、少額短期の特例金利を最長五年設けることができるとされ、公布から九年かけて金利を適正化する案でありました。また、利息制限法の元本区分を物価水準の上昇に合わせて変更する案でした。その後、政府・与党間の検討、調整を経て、出資法上限金利の引き下げは公布からおおむね三年を目途とすることとし、また、特例金利の設定と利息制限法の元本区分の変更は、いずれも行わないことといたしました。

 一方で、当初案にはなかった、借り手の自殺により保険金が支払われることになる生命保険契約の締結禁止や、公正証書に係る委任状取得の禁止を盛り込みました。特に、特例金利を設定しないことと元本区分を変更しないことについては、公明党が強く主張したところであり、自民党の理解を得て最終案としてまとめられたことは、長年、多重債務者問題の解消に取り組んできた弁護士会等の関係者からも高く評価されているところであります。

 この経緯につきまして、政府としてはどのような御感想をお持ちか、金融担当大臣にお伺いいたします。

 改正案では、出資法の上限金利を二〇%まで引き下げるとともに、貸付総量の規制を導入したことを高く評価いたします。とかく金利に注目が集まりますが、仮に金利ゼロといたしましても、過剰に借り入れれば返済困難に陥ります。多重債務に陥らないためには、金利と貸付総量とをともに規制することが重要であります。法案では、指定信用情報機関制度を創設し、貸金業者が借り手の総借入残高を把握できる仕組みを整備した上で、貸金業者に借り手の返済能力の調査を義務づけ、総借入残高が年収の三分の一を超える貸し付けなど返済能力を超える貸し付けを禁止しており、画期的な対応であります。

 一方で、上限金利が下がり、貸付総額に規制が導入されると、リスクの高い借り手の一部が、新たに借り入れられなくなり、やみ金融に向かうのではないかとの懸念も示されております。政府としては、内閣官房に多重債務者対策本部を設置して取り組むと承知をしておりますが、金融庁、警察庁、法務省など関係機関が一体となり、徹底したやみ金融取り締まりを行うべきと考えます。官房長官に対応を伺います。

 また、多重債務に陥る原因の一つには、利息の負担を十分に理解しないまま借り入れを行う消費者の行動もあります。そこで、学校教育の段階や社会人に対して、家計管理や債務管理を含めた金融経済教育を充実させるべきであり、関係機関が連携して取り組むべきと考えます。さらに、多重債務に陥る前の適切な段階での予防カウンセリング体制の充実や、返済不能に陥った場合にやみ金融などを利用しないような事後カウンセリング体制の充実が極めて重要になります。それぞれの取り組みについて官房長官に伺います。

 安易な借り入れを行う原因の一つには、テレビCMを初めとする過剰な広告宣伝があります。特に若者の場合、テレビCMに出ているだけで安心できると思い込み、預金をおろす感覚で気軽に借りてしまうという傾向があります。テレビCMを全面禁止するといった一律の法規制を課すのは難しいとは思いますが、安易な借り入れを助長するような広告宣伝は抑えるべきであります。政府はこの問題にどのように対処するのか、金融担当大臣に伺います。

 緊急に突発的に資金が必要になった際に、貸金業者への借り入れに頼らなくて済むようなセーフティーネットの充実も重要です。低所得世帯に対しては、緊急小口資金制度の周知徹底や生活福祉資金の貸し付けを迅速化するとともに、その拡充強化を図るべきであります。また、中小零細事業者に対しては、セーフティーネット貸付・保証制度の拡充強化を図るべきであります。官房長官の見解を伺います。

 法案には、貸金業制度のあり方と金利規制のあり方について、施行から二年半以内の所要の見直し規定が設けられています。法案では、多重債務者問題の解決のためには一定の信用収縮はやむを得ないという考え方ですが、不測の急激な、大規模な信用収縮に対応するため等の見直し規定と認識してよいか、金融担当大臣に伺います。また、その他に想定している場合があれば、あわせて伺います。

 結びに当たりまして、多重債務者問題の深刻化を踏まえますと、一刻も早い法案成立が強く望まれることを重ねて申し上げまして、私の質問といたします。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 石井議員にお答えいたします。

 まず、担保、保証に過度に依存しない融資について、政府系金融機関が率先して実行すべきとのお尋ねがありました。

 御指摘のように、政府系金融機関として、担保や保証に過度に依存せず、経営者の資質や事業の見込み等を評価し、適切に融資判断を行うことは重要と考えております。

 こうした認識のもと、政府系金融機関においては、引き続き適切な融資判断に努めるとともに、担保や保証の不要な融資の活用を進めているほか、再チャレンジする起業家の資金調達を支援するための融資の枠組みの創設等を検討しているところでございます。今後とも、このような取り組みを一層推進してまいりたいと考えております。

 次に、やみ金融の取り締まりについてお尋ねがありました。

 政府としては、多重債務問題の解決のためには、金利の引き下げや過剰貸し付けの抑制などと並んで、やみ金融の徹底した取り締まりが重要であると考えております。やみ金融の取り締まりについては、内閣官房に設置する予定の多重債務者対策本部において、関係省庁が連携して取り組んでいきたいと考えております。

 次に、金融経済教育やカウンセリング体制の充実についてお尋ねがございました。

 多重債務問題の解決に当たっては、借り手の方々にも自覚と計画性を持っていただくことが大事であり、御指摘のように、家計管理や債務管理を含めた金融経済教育への取り組みも重要な課題であると考えます。また、借り手に対する予防的カウンセリングや事後的カウンセリング体制の充実も重要な課題であると認識をしております。これらの課題についても、内閣官房に設置する予定の多重債務者対策本部において、関係省庁が連携して取り組んでいきたいと考えております。

 次に、緊急に資金が必要になった際のセーフティーネットの充実についてお尋ねがございました。

 都道府県社会福祉協議会が実施している、低所得世帯に対する緊急小口資金を初めとする生活福祉資金の貸し付けについては、制度のさらなる周知徹底と手続の迅速化に努めてまいりたいと思います。

 また、中小零細事業者に関する対応としては、基本的に、高金利による融資に頼らざるを得ない状況となる前の早期の再生や、再チャレンジへの支援が重要であると考えており、今後、こうした観点から検討を進めてまいりたいと思っております。(拍手)

    〔国務大臣山本有二君登壇〕

国務大臣(山本有二君) 借り手のリスクに応じた多様な金利体系の整備についてお尋ねがございました。

 金融機関の役割は、適切なリスク管理のもと、資金の仲介者として経済活動に必要な資金を供給していくことにあります。このためには、各金融機関が、みずからの経営判断のもとに、与信先の事業計画、財務状況、返済財源等を的確に把握し、その信用リスクに応じた金利設定等を行うことが重要です。

 金融庁といたしましても、各金融機関が、借り手のリスクに応じた多様な金利で貸し出しを行うことにより、金融の円滑化に資することを期待しております。

 次に、民間金融機関に対する担保、保証に過度に依存しない融資の促進についてお尋ねがありました。

 金融機関が融資を行うに当たっては、貸出先企業の技術力や販売力、成長性等を総合的に勘案し、そのリスクに応じ、適切に融資判断を行うことが重要と考えております。こうした認識のもと、今後とも、民間金融機関に対し、不動産担保や個人保証に過度に依存しない融資を促してまいりたいと存じます。

 企業破綻して再挑戦に取り組む者への支援についてお尋ねがございました。

 事業に失敗した人が再チャレンジを行う上では、金融支援が重要でございます。また、個人保証が障害となっているとの御指摘がございます。

 金融庁といたしましては、先ほど申し上げましたように、個人保証に過度に依存しない融資の推進が重要と考えているところでございます。また、中小・地域金融機関に対し、事業再生に向けた積極的な取り組みを促進しております。

 いずれにいたしましても、再チャレンジ可能な社会の実現に向けた努力を社会全体として行っていくことが肝要であると考えております。

 次に、本法案の早期成立についてお尋ねがありました。

 今回の改正案には、多重債務問題を抜本的に解決するために有効と考えられるあらゆる対策が総合的に盛り込まれております。政府としては、深刻化している多重債務問題の解決を図るため、本法案について、ぜひとも今国会で早期に御審議の上、成立させていただきたいと考えております。

 次に、法案策定の経緯に係る感想についてお尋ねがございました。

 貸金業制度の改革案につきましては、与党におきまして、これまでのさまざまな御議論を踏まえ、借り手の保護に一層配慮を行う観点から取りまとめられたものと認識しております。今般提出させていただきました法案は、こうした考え方を踏まえ、多重債務問題解決のため、抜本的かつ総合的な施策が盛り込まれているものと考えております。

 次に、貸金業者の広告宣伝に対する政府の対応についてお尋ねがございました。

 政府としましても、貸金業者による過剰な広告宣伝が安易な借り入れを招き、多重債務者問題の一因になっているとの指摘があることは認識しております。今回の法案では、貸金業協会が広告等の内容、方法、頻度及び審査に関する事項を自主規制規則として定め、これを金融庁が認可する仕組みを導入することにより、広告の適正化を図ることとしております。

 次に、今回の改正における見直し規定についてお尋ねがございました。

 今回の改正案におきましては、施行後二年六月以内に所要の見直しを行う旨を規定しておりますが、この規定は、施行後の資金需給の状況その他の経済金融情勢や貸金業者の業務実態などを勘案して、貸金業制度のあり方、出資法及び利息制限法に基づく金利規制のあり方について、所要の見直しを行う趣旨で設けたところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 日本共産党を代表して、貸金業法等改正案について質問します。(拍手)

 この改正案では、出資法の上限金利を引き下げ、事実上グレーゾーンを撤廃することとしております。これ自体は一歩前進であります。しかし、利息制限法をはるかに超える金利を有効とみなす貸金業法を、政府はなぜ長年にわたって放置してきたのでしょうか。その責任は重大です。

 サラ金業界は、高金利を手に入れるため、十分な審査もせず、借り手の返済能力を超えた融資を行い、その上、命を担保とする生命保険まで掛けていたのであります。そのため、深刻な被害が全国に広がりました。年間の自己破産は二十万人、生活苦から命を絶つ人が年に八千人に上っております。

 サラ金の被害者やその家族によって、高金利の引き下げを求める切実な訴えが繰り返されてまいりました。また、グレーゾーン金利を認めない最高裁の判例も出されました。にもかかわらず、政府はなぜ動こうとしなかったのでしょうか。ここまで被害を広げてきた責任をどう感じているのでしょうか。答弁を求めます。(拍手)

 しかも、重大なのは、いよいよ新たな対策をとるという段階になって、政府・与党内で、グレーゾーン金利の取り扱いをめぐり大きな揺り戻しが起こったことであります。

 金融庁の貸金業制度等に関する懇談会では、上限金利を利息制限法の水準に引き下げ、グレーゾーンを廃止することが委員の多数意見であったと報告されていました。ところが、九月に自民党が発表した法案骨子は、それとは全く違う内容になっていたのであります。そこには、利息制限法を超える高金利を当面残す特例を盛り込み、その上、利息制限法の金利を事実上引き上げる案まで盛り込まれていたのであります。

 本法案では、高金利を認める特例も、利息制限法の金利の変更も盛り込まれておりません。これは、国民の猛烈な批判を浴びて撤回せざるを得なかったからであります。

 なぜ、自民党は九月に抜け穴だらけの案を提案したのでしょうか。我が党の調査では、サラ金業界から自民党及び自民党議員への献金など、資金提供は三年間で一千七百十九万円に上っていることが明らかになりました。サラ金業界から、献金を伴う猛烈な巻き返しがあったのではありませんか。

 次に、実施時期の問題です。

 法案では施行から二年半後とされ、おおむね今後三年間は高金利のグレーゾーンが維持されることとなっています。多重債務の被害が人の命にかかわる深刻な問題であることを考えれば、直ちに引き下げるべきではありませんか。

 日賦貸金業者及び電話担保融資の特例も、即刻廃止すべきであります。これも三年間据え置くというのでは、法律の知識のない利用者の金利被害を放置することになります。直ちに実施することを求めます。

 次は、現行の利息制限法の上限金利の問題です。

 一五%から二〇%という金利は、そもそも戦後の市場金利が高かった時期に定められたものであります。現在のように市場金利が非常に低い時期に、なぜこのような高い上限金利を維持する必要があるのでしょうか。

 今、大手銀行はサラ金業者と提携し、利息制限法の枠内で消費者ローンを急速にふやしております。仮に、金利一八%をサラ金業者と折半すれば、銀行には九%の金利が入ります。現に銀行は、これまで低金利で融資をしてきた利用者に対して消費者ローンを利用するよう誘導しており、それによって巨額の利益を得ているのであります。

 この利息制限法の上限金利についても検討を加え、多重債務を引き起こさない適正な金利に引き下げるべきではありませんか。

 以上で質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣山本有二君登壇〕

国務大臣(山本有二君) 佐々木議員にお答えをいたします。

 多重債務問題へのこれまでの政府の対応についてお尋ねがありました。

 政府としましては、近年、貸金業者による高金利での過剰な貸し付け等により多重債務問題が深刻化しており、その解決が重要な課題になっていると認識しております。

 こうした認識のもと、政府といたしましては、これまでも、貸金業規制法等関係法令が累次改正される中で、借り手の保護のための施策の実施に努めてきたところでございますが、今回の改正におきましては、上限金利引き下げとともに、返済能力を超える借り入れを防ぐ総量規制の枠組みを導入するなど、多重債務問題の解決のために総合的かつ抜本的な対策を講ずることとしております。

 次に、グレーゾーン金利の取り扱い等、法案作成の経緯についてお尋ねがございました。

 貸金業制度の改革案につきましては、与党において、これまでのさまざまな御議論を踏まえ、借り手の保護に一層配慮を行う観点から取りまとめられたものと認識しております。今般提出させていただきました法案は、こうした考え方を踏まえ、多重債務問題の解決のため、抜本的かつ総合的な施策を盛り込んだものと考えております。

 次に、いわゆるグレーゾーン金利及び日賦貸金業者、電話担保金融に係る特例金利の廃止の実施時期についてお尋ねがございました。

 今回の改正は、現在の借り手に大きな影響を与える可能性があることを踏まえ、急激な貸し渋りや貸しはがしによる家計や企業へのダメージを防ぎ、現在の借り手が無理のないペースで返済できるようにする等の観点から、いわゆるグレーゾーン金利及び日賦貸金業者、電話担保金融に係る特例金利の廃止等の措置まで公布後おおむね三年間の準備期間を設けることとしております。

 次に、利息制限法の上限金利についてお尋ねがありました。

 今回の改正では、貸金業者の実質的な上限金利を、出資法の上限金利であります二九・二%から利息制限法の上限金利である一五から二〇%まで大幅に引き下げることを踏まえ、現行利息制限法の一五から二〇%という水準自体は据え置くこととしております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 社会民主党・市民連合を代表し、貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 第一は、出資法の上限金利の引き下げ、みなし弁済の廃止の施行時期が経過措置を含め最大三年半もかかることについてであります。

 上限金利の引き下げは本体施行と同時に実施すべきだと考えますが、政府はなぜ、これまで多重債務者、自己破産者、自殺者など被害を広げてきた高金利を三年半にもわたり温存させるのでありましょうか。また、今後、みなし弁済規定の法的な位置づけはどう変化し、貸金業者、消費者にどのような影響が出るとお考えでしょうか。

 日賦貸金業特例については即刻廃止すべきであります。債務者が支払う脱法的な保証金は利息とみなす規定も直ちに施行すべきであります。

 第二に、見直し規定についてでありますが、施行から二年半以内に総量規制や金利規制のあり方について検討し、見直しをするとしていますが、この間、金融庁が示してきた高金利への抜け道となる少額短期特例高金利、実質金利引き上げにつながるような金額刻みの復活は絶対に許されません。金利の見直しについての考えを伺います。

 第三に、多重債務者への相談体制の強化と公的なセーフティーネット貸し付けの充実についてであります。

 消費者金融の利用者の年収は三百万円未満が約三分の一を占めていることからも、行政による低所得者層への支援対策として、生活福祉資金貸付制度の拡充、低利融資や社会保障などセーフティーネットを整備拡充することが急務であります。同時に、景気回復の恩恵が届いていない中小零細企業向けのセーフティーネット保証・貸付制度の充実も必要であります。

 多重債務者に対する相談体制の強化とともに、二十歳代の新規利用者が四割もいる現状から、クレジット、サラ金被害の未然防止に向けた消費者教育の充実をどう図っていくのかお伺いいたします。

 第四に、政府は、多重債務問題の解決に資する施策を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならないとありますが、その実効性はどのように確保されるのでありましょうか。また、貸金業協会に対しては、自主規制ルールの実効性や公的な中立性をどのように確保していくのか求めなければなりません。

 本改正案の目的は、多重債務者問題の解決と救済、弱い立場に置かれた消費者の権利擁護であります。その根本である上限金利の引き下げとみなし弁済規定の廃止の早期実施を求めるとともに、やみ金対策の強化、多重債務者に対する相談体制と公的支援の拡充、将来の貸出金利の引き下げを強く訴え、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣山本有二君登壇〕

国務大臣(山本有二君) 重野議員にお答えいたします。

 上限金利の引き下げやみなし弁済の廃止及び日賦貸金業者に係る金利や保証料の規定についてお尋ねがございました。

 今回の改正では、いわゆるみなし弁済制度を廃止し、出資法の上限金利を二〇%まで引き下げるとともに、保証料を利息と合算して上限金利規制の対象とする等の措置を講じております。これらの措置により、現在の借り手に大きな影響を与える可能性があることを踏まえ、急激な貸し渋りや貸しはがしによる家計や企業へのダメージを防ぎ、現在の借り手が無理のないペースで返済できるようにする等の観点から、上限金利の引き下げ等の措置まで公布後おおむね三年の準備期間を設けることとしております。

 次に、今回の改正における見直し規定についてお尋ねがございました。

 今回の改正案におきましては、施行後二年六月以内に所要の見直しを行う旨を規定しておりますが、この規定は、特定の施策や方向性を念頭に置いたものではなく、施行後の資金需給の状況その他の経済金融情勢や貸金業者の業務実態などを勘案して、貸金業制度のあり方、出資法及び利息制限法に基づく金利規制のあり方につきまして所要の見直しを行う趣旨で設けたものでございます。

 次に、多重債務者への相談体制の強化、公的セーフティーネット貸し付け等の充実、消費者教育の充実についてお尋ねがございました。

 多重債務問題の解決に当たりましては、借り手に対するカウンセリング体制の充実、公的なセーフティーネットの充実に加え、金融経済教育の取り組みも重要な課題であると考えております。これらの課題につきましては、内閣官房に設置される予定の多重債務者対策本部におきまして、関係省庁と連携して取り組んでいきたいと考えております。

 次に、政府の多重債務問題の解決に資する施策及び貸金業協会についてお尋ねがございました。

 内閣官房に設置される予定の多重債務者対策本部におきまして、関係省庁が連携して多重債務問題の解決に取り組んでいくこととしております。

 また、貸金業協会を認可法人とし、貸金業協会の定める自主規制ルールを、金融庁が認可する枠組みを導入することによりまして、自主規制ルールの実効性や中立性を確保することとしております。

 以上でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   菅  義偉君

       法務大臣   長勢 甚遠君

       財務大臣   尾身 幸次君

       厚生労働大臣 柳澤 伯夫君

       国土交通大臣 冬柴 鐵三君

       環境大臣   若林 正俊君

       国務大臣   塩崎 恭久君

       国務大臣   溝手 顕正君

       国務大臣   山本 有二君

 出席副大臣

       内閣府副大臣 渡辺 喜美君


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