衆議院

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第4号 平成19年1月30日(火曜日)

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平成十九年一月三十日(火曜日)

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 議事日程 第四号

  平成十九年一月三十日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(河野洋平君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。太田昭宏君。

    〔太田昭宏君登壇〕

太田昭宏君 私は、公明党を代表し、安倍総理の施政方針演説に関連し、当面する重要政策課題に絞って、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 総理、私は、二〇〇七年は我が国にとって極めて重要な年であると思っております。失われた十年とも言われた九〇年代からの負の遺産を清算し、危機的であった経済を再建した今こそ、二十一世紀日本の確たる基盤をつくる一年にしていかなければならないと強く思うものであります。自由民主党との信頼と協力関係のもと、公明党は、日本の未来を眺望し、未来に責任を持つ政治を進める決意であります。(拍手)

 我が国は、今、前例のない構造変化に直面しています。少子高齢化、グローバリゼーション、有限なる地球環境の保全、安心・安全社会の再構築。まさに、この社会の劇的な構造変化を直視し、真正面から対策に踏み込まなければなりません。当然、教育や格差などの諸問題に常に力を注ぐとともに、未来に責任を持つ全方位にわたる政策実現、三百六十度の政策実現をもって、国民の負託にこたえなければならないと思います。

 生命の歓喜と創造をうたった哲学者ベルクソンは、問題は正しく提起されたときにそれ自体が解決であると言いました。また、中国の古典には、「民の欲する所、天必ず之に従う」とあり、我が国の漢字「国」には三つの書き方があり、くにがまえの中に王と書く「国」、そして、くにがまえの中に戈という武器を入れた難しい字の「國」という言葉とともに、もう一つ、くにがまえの中に民という字を入れた「〓」<※注>という字があることに注目すべきであります。

 私は、二十一世紀日本の未来に向けて発進する政権は民をもととしなければならない。まさに、国を民が生活する場所としての国と位置づけ、庶民に、生活者に、中小企業の方々に、地域の人々に心を寄せて、その胸中に力強き希望の、そして豊かな、暖かな旭日を上らせ行くべく、私たち政治家は闘わなくてはならないと思います。

 総理の美しい国づくりに向けての御見解を、私の視点も含めて、御答弁いただきたいと存じます。

 まず初めに、私たち公明党の、未来に責任を持つ政治の三つの課題、すなわち、子供たちの未来、働き手の未来、確かなる社会保障の未来を確たるものにすべく、具体的に質問します。

 深刻ないじめ、学力低下の問題等が連日のように問題となり、改正教育基本法が成立したことしこそ、教育改革を大きく前進させなくてはなりません。日本の未来を考えるとき、教育の深さが未来を決定することは間違いありません。

 そこで、総理、私は、まず第一に、国民総がかりの教育改革を力強くスタートさせるべきであると思います。

 政策提言や法改正にとどまらず、皆で子供を育てよう、地域も家庭も学校も、そして企業も、町会、自治会も、商店街も、子供や若者を応援しようという年にしたい。そのためには、「早寝早起き朝ごはん」運動もよし、地域でも商店街でもあいさつをしていくあいさつ運動もよし、企業が家庭と教育のことを考える取り組みもよし、まさに日本の教育熱、教育力がアップする年にしたい。そのリードオフマンとしての役割を安倍総理に期待したいと思います。

 第二は、家庭にかかる教育費の軽減です。

 それはそのまま、教育格差の是正につながります。幼児教育の将来的な無償化への取り組み、そして奨学金のさらなる拡充を求めます。

 第三に、現在の政府の教育再生会議においても見直しが検討されているゆとり教育についてであります。

 ゆとり教育とは、詰め込み教育に対する改善策として提案され、学ぶ力や考える力、生きる力など、文化や芸術、哲学も含めた人間力の向上を目指す教育であり、大切なことであります。しかし、結果的にゆとりが、ともするとたるみになっている嫌いがある。したがって、私は、ゆとり教育の検証をしっかり、総合的にやる必要がある、その上で、見直すべきは見直すことが大事だと申し上げたい。

 また、公明党は、土曜日の活用を訴えてきましたが、地域の協力による土曜学校の推進等、地域を巻き込んだ試みを検討することを提言いたします。

 第四に、教員へのバックアップが重要であるということであります。

 現在検討されている教員免許の更新制については、評価方法やそれに伴う研修のあり方など、内容を十分詰めて対応をすべきです。教員は仕事量も多く、雑務も大変多く、追われている状況があり、教員が一〇〇%のエネルギーを子供に注ぐことができるよう、環境を整えるべきだと考えます。教員へのバックアップであります。具体的には、地域の人材等を活用した教員サポート制の推進や教職事務の簡素化などであります。

 第五に、深刻化するいじめ問題への対応です。

 現在、いじめ対策として、出席停止措置や警察との連携等、厳しい態度で臨む姿勢が検討されていますが、いじめを解決するために最も重要なことは、救済とともに発見重視への意識転換を図りつつ、いじめと真剣に闘う姿を教師や大人自身が示すことであります。

 問題を教師一人が抱えずに、学校全体でいじめは許さないという姿勢を示すことが大事であり、同時に、いじめている子供に対しても、どこまでも粘り強く指導することが重要であります。そして、教育委員会や外部の専門家も加えて、学校をサポートすることを強く求めるものであります。

 以上、教育改革に対する私の指摘について、総理の御所見を伺います。(拍手)

 次に、働き手の未来に責任を持つための雇用改革です。

 「若者はなぜ三年で辞めるのか?」という本がベストセラーになっていますが、深刻な雇用不安は構造的なものになっています。また、今やパートタイマーは約千二百万人とも言われ、不安定な身分の労働者が増加し続けている傾向にあります。こうした雇用実態を直視し、将来を見据えた雇用改革が不可欠であります。

 第一に、団塊ジュニアを初め、就職が就職氷河期に当たった若者の雇用改善策はまさに待ったなしであります。

 今後は、新卒採用のみならず、中途採用に大きく門戸を開いた雇用システムへ変換する必要があります。総理が再チャレンジとして取り組まれている国家公務員や地方公務員の中途採用選考試験は、民間にも大きく波及する効果が期待されます。

 また、そのような中途採用であっても、正規雇用者に負けないスキルアップを徹底的に行うシステムづくりに政治がリーダーシップを発揮すべきであります。未来の日本を担う若者のために、社会全体で雇用を支援するための施策を強く求めるものであります。

 第二は、生涯現役社会の構築、特に六十歳代雇用であります。

 公明党は、六十五歳雇用を企業に義務づける改正高年齢者雇用安定法を推進、この結果、多くの企業で雇用延長の取り組みが進み、さらに十九年度予算では、七十歳定年を目指す中小企業に助成金が支給される運びにもなりました。私は、意欲や能力、体力さえあれば、NPOやボランティア活動も含め、年齢にかかわりなく働き続けられる生涯現役社会を目指すべきだと考えます。

 第三は、労働者がいかにして、仕事と家庭と地域という、この三つのバランスのとれた生活を営めるかという施策を打ち出す必要があります。

 公明党は、この点に早くから着目し、仕事と生活の調和を図るための基本法を提案していますが、この最大のポイントは、長時間労働の是正と労働者の賃金アップであります。

 これらについて、総理が考える未来の雇用対策の方針をお示しいただきたいと存じます。

 焦点となっていた日本版ホワイトカラーエグゼンプションの導入については、私は、改めて、慎重の上にも慎重を期すべきだと強く申し上げたい。

 一方で、この制度を導入しないかわりに、時間外労働の割り増し賃金率の引き上げやパート労働者の処遇改善についても見送るべきとの動きがありますが、私どもは、ぜひとも実現すべきものと考えます。

 雇用問題は、今、日本にとって一番大切な問題であり、働き方の改革や同一労働同一賃金が確立される社会を築くことが重要です。中でも、最低賃金の引き上げ、パート労働者の均等待遇の推進、年長フリーターの雇用状況の改善に力を入れるべきです。そのために、最低賃金法改正案やパート労働法改正案等については、今国会で法律改正する最優先課題だと思います。

 これら直面する雇用対策の課題について、総理のお考えを承りたいと存じます。(拍手)

 次に、確かなる社会保障の未来に責任を持つための社会保障制度の基盤の構築であります。

 未曾有の少子高齢化、人口減少社会への突入によって、多くの国民が将来の生活に不安を抱えています。こうした状況の中で、一連の年金、介護、医療改革は、一面、大変厳しい改革でありましたが、持続可能な社会保障制度を構築する上で大きな意義があるものだと思います。

 この一連の改革の目標を実現するためには、社会保障の安定財源を確保しつつ、後期高齢者医療制度のスタートに向けた体制整備、介護予防対策、生活習慣病対策を中心とする医療費適正化対策等を強力に推進していくとともに、社会保障の基盤をより安定させるため、さらなる改革努力が要請されております。

 まず、社会保障の支え手の拡大です。

 何よりも、若者の雇用を安定化させ、女性、高齢者の就労継続を図ることや、働きやすい雇用機会を確保することにより、不足する労働力を解消し、社会保障の支え手を拡大することが重要です。

 次に、定年を迎える団塊の世代を巻き込んだ、地域社会における助け合い・支え合いシステムの構築です。

 こうした活動は、本人の健康、介護予防につながるのはもちろんでありますけれども、御近所のひとり暮らし高齢者への声かけや子供の見守り活動等を通じて、地域コミュニティーの再生にもつながってまいります。

 さらに、次世代を担う子供たちの健全育成です。

 公明党は、これまで児童手当の充実に尽力してまいりましたが、乳幼児加算が十九年度予算で実現しようとしております。ことしであります。三歳児未満は第一子から一万円であります。今後、さらなる少子化対策が求められております。

 このように社会保障の基盤をより強固なものにするための戦略を明らかにするとともに、障害者の方々、母子世帯や低所得世帯など、さまざまな支援を必要とする方々が地域で安心して生活し、また、就業できるための配慮の行き届いた施策の推進について、総理のお考えをお聞きします。

 また、新人口推計と年金制度の持続可能性について確認をします。

 一部の方々からは、財政見通しについて不安をあおる声もありますが、私は、十六年改革におきまして、将来起こり得る少子化や経済状況の影響も柔軟に吸収できる制度設計が導入されたと認識しています。今般、新人口推計で、より厳しい少子化の見通しが提出されたことに対応して、政府として、速やかに、いろいろな可能性を示した上で年金財政の明確なる姿を示すべきと考えますが、厚生労働大臣の御見解を伺います。

 以上、三つの角度から、私たち公明党が目指す未来に向けた施策を提示させていただきました。

 これらを着実に推進するためには、何といっても日本経済の安定と成長が不可欠の要素であります。日本経済は、設備や債務の過剰をほぼ解消するなど、体質の改善を進めてきたことにより、息の長い景気回復を続け、プライマリーバランスの黒字化達成へ向けた進展も見られるところであります。これは、自由民主党、公明党の連立政権による構造改革の大きな成果であると思います。(拍手)

 このように経済が安定的な成長軌道に乗りつつある今、次の段階に進むべきときに来ております。総理御指摘のとおり、グローバル化やIT化に対応したイノベーション等により生産性を向上させることや、アジアとの経済連携の促進、さらには、高齢者、障害者、女性等の就業支援を初めとする、人すなわち人間力を高める施策の拡充など、我が国の成長力を強化するため、さらに改革を進めていくべきであります。

 また、経済全体のパイを大きくしていくことも重要ですが、それだけでは十分ではありません。これまでの景気回復の過程においては、経済が立ち上がるきっかけが必要だったことから、まずは企業部門が回復していくことが重要でありました。しかしながら、イザナギ景気を超えるような長期にわたる回復が進む中、国民にその実感が少ないのは、景気の広がりが十分ではないためであります。

 そこで強調したいのは、今後の経済運営に当たっては、成長の恩恵が偏るのではなく、家計、中小企業、さらには地域にも果実が分配されていくような経済成長を目指すべきであるということであります。労働分配率はようやく下げどまりつつありますが、企業は、配当等はふやしても、雇用者への賃金の分配には依然として慎重であります。また、中小企業の収益をめぐる環境や地域経済にも、まだまだ厳しい状況が見られます。企業に配慮を強く求めたいと思います。

 私は、歳出歳入一体改革、行政改革、規制改革等の構造改革をさらに進めながら、イノベーション等により成長力を高めるとともに、成長の果実を広く国民に分配していくような経済財政運営に努めるべきと考えます。経済財政運営に係る基本的な方針について、総理の御所見を賜りたいと存じます。(拍手)

 私は、全国を回りながら、地域格差の深刻さを強く実感しておりますが、今こそ、地域経済の活性化を図り、地域格差の是正に向け、政治が大胆に取り組まなければなりません。

 地域経済、地域産業の担い手は、中小零細企業であり、農林水産業であります。中小企業については、昨年末の予算編成、税制改正において、公明党の主張が反映され、中小企業予算が数年ぶりにふえ、留保金課税の撤廃、事業承継税制の拡充など、中小企業支援策を大きく前進させることができました。

 今後さらに、地域資源の活用を促進すること、人材の育成とインフラ整備、そして、地域の人とわざを生かして、地域の産業集積の活性化を図ることです。また、中小企業の知恵とやる気を生かした事業展開への支援、資金供給の円滑化、商店街の活性化などに力を注ぐことが重要であります。あわせて、観光立国への強い取り組みを求めるものです。総理の方針をお聞かせください。

 地域の医療体制の整備も重要な課題です。

 特に、産科、小児科の医師不足や看護師の不足問題が各地で深刻化しております。これに対して、各都道府県では、拠点病院づくりを進め、産科、小児科の集約化を図り、公立病院等からの医師派遣などで対応しようとしておりますが、国は、こうした取り組みを強力にバックアップしなければなりません。

 また、在宅医療を推進するために、往診できる開業医とこれを支援する拠点病院との連携体制を地域ごとに確立していくことが一層重要になっています。

 一方、医療の専門化が起こっておりまして、人口当たりの医師数は増加しているものの、各分野における医師は不足しています。この現状を踏まえ、国としても医師数の思い切った見直しをすべきと考えますが、いかがでありましょうか。

 公明党は、ドクターヘリ特別措置法案を提案しておりますが、これによって、僻地や離島はもちろん、都市部の救急医療が大きく改善されることは間違いありません。このような地域医療の整備について、総理の決意を伺います。

 昨年十二月に発表された食料の供給に関する調査によりますと、我が国の食料自給率について低いと答えた方が七〇%を超え、将来の食料供給について不安をお持ちの方が七六・七%にも達しております。食料自給率の低下は、日本人の食生活、食文化が大きく変化したことが主な原因でありますが、食料安全保障の観点から、ゆゆしき事態であります。

 我が党は、生産対策の面と、健康にもよい日本型食生活の普及促進など消費、需要面にわたる総合的な取り組みによって、今後十年間で五〇%へ引き上げるよう訴えていますが、食料の安定供給の基盤を一層強化しなければなりません。

 一つは、生産面であります。

 三十八万ヘクタールにも及ぶ耕作放棄地を活用するため、現在の農地保有合理化法人をさらに活用し、耕作放棄地等を担い手あるいは企業などへ積極的に貸与できるよう、体制の整備や充実を図るべきであると考えます。

 また、自立し、やる気のある農業者の確保・支援、経営支援のさらなる充実、特に団塊の世代の再チャレンジを意識した就農支援にさらに取り組むべきであります。

 二つ目は、消費、需要面であります。現在二五%しかない飼料自給率を高めるためにも、年間千百三十六万トンにも上る食品関連の事業者から発生する食料残渣を家畜飼料に活用することです。現に、横浜市を初めとする全国に百四十一ある飼料化事業所では、生産者と加工・販売業者が連携し、食料残渣の飼料化、リサイクル化に取り組み、実績を上げております。

 政府として、関係各方面と連携し、飼料化事業所の拡大、またリサイクル飼料活用の拡大充実を積極的に促す必要があると思いますが、総理、いかがでありましょうか。

 新型インフルエンザ対策についてお尋ねします。

 新型インフルエンザの大流行は時間の問題であるとも指摘をされております。かく大流行による大量死を防ぎ、社会経済の混乱を最小限に食いとめるためには、国、地方自治体、医療機関や企業が基本方針をまず立て、一体となって対応することが大切でありますが、最も重要な視点は、もう一つ、国民一人一人がそうした事態に対していかに賢明な行動がとれるかであります。

 食料品等の備蓄や、手洗いやうがいの習慣を身につけておくこと、流行時には外出を控えることなどについて、政府として国民にわかりやすく説明することが重要と考えますが、総理、厚生労働大臣の見解を伺います。

 次に、がん対策についてお尋ねします。

 昨年六月に制定されたがん対策基本法は、公明党が強く主張した緩和ケアの推進、放射線治療の普及などが基本理念として盛り込まれていますが、今後、がんと診断されたときからの緩和ケアが可能となる体制の整備、放射線治療を担う専門医等の医療スタッフの育成、さらには、個人情報保護等を配慮した上で、がん登録制度の導入についてもこの法律の基本計画に位置づけることが望まれます。

 一方、患者本位のがん治療体制を確立するための医療提供体制の整備、特に、セカンドオピニオンの充実や、がんに関する情報の提供窓口の整備など、患者、家族のニーズを踏まえた施策を強力に推進していくことが必要です。

 また、あわせて、健康フロンティア戦略の策定の考え方、健康寿命を延ばすための具体的取り組み、特に、健診などを受ける機会の少ない女性や若年層に対する対応について、総理の考えを伺います。

 次に、安心、安全の社会へ向けた環境整備についてであります。

 本日は、特に、地域の防犯対策と家庭の生活基盤である住宅対策に絞って質問します。

 犯罪に対する取り組みには、地域住民の力を生かした連携が欠かせません。今後さらに、地域の防犯ボランティアを支援する地域安全安心ステーションの全小学校区への拡充や、スクールガードの全小中学校への配備といった取り組みが必要です。特に、子供が巻き込まれる悲惨な事件が相次ぐ今、GPSやICタグを活用した子供見守りシステムを全国展開することが急務であります。

 政府は、世界一安全な国日本の復活に向けた治安再生を推進すると掲げていますが、まずは、地域社会の防犯力向上の取り組みをいかにサポートしていくかが重要であります。地域の防犯対策について、総理の取り組み方針をお伺いしたい。

 次に、暮らしの基盤である住宅セーフティーネットについて伺います。

 今後の住宅政策を展望すると、既存の住宅ストックをいかに活用して国民のニーズに対応できるかという視点が重要です。

 例えば、現在の公営住宅に加え、さらに旧公団住宅、そして民間賃貸住宅をも地域の優良賃貸住宅として活用し、高齢者、障害者、子育て世帯、母子世帯などにライフサイクルに応じた住宅を提供できる制度を構築すべきだと考えます。

 私たち公明党は、住宅セーフティーネット法案として、その法制化を目指しています。住宅困窮者に対する今後の住宅政策について、国土交通大臣の御所見を伺います。

 次に、行政改革についてもお伺いいたします。

 私は、今、早急に取り組むべき課題として三つあると思います。第一は、特別会計改革の断行、第二は、公務員の総人件費の削減、第三は、天下りに対する国民の批判を十分に踏まえた上での公務員制度改革であります。

 特に、この制度改革については、公務員の能力を十分に発揮し職務に取り組めるようにするという前提で、断固たる改革を行うべきでありますが、総理の御決意を伺います。

 地方分権についてお伺いします。

 地方が真に自立し、住民に対する行政サービスを一層向上させていくためには、今後は、具体的にどのように地方分権を推進していくかが重要です。そのかぎは、今後新たに設置される地方分権改革推進委員会の場で何が論議されるかです。

 私は、国と地方の役割分担、国の関与のあり方、地方の税財政基盤の強化などについて抜本的な見直しを検討すべきと考えますが、総理の基本的方針をお伺いしたいと存じます。

 憲法についてでありますが、昨年より国会において議論を続けてきた憲法改正手続を定めた国民投票法案については、なるべく多数の賛成を得た上で、今通常国会での成立を図ることが重要だと考えます。

 その上で、少なくとも国民投票法成立後から施行までの間は、憲法に関する調査に専念し、未来志向の落ちついた論議を行うべきであると考えます。今後の憲法論議に関する総理の御見解を伺います。

 日中国交正常化三十五周年、日中文化・スポーツ交流年のスタートに当たって、この一月、私は、公明党訪中団の団長として中国を訪問し、日中首脳等の交流促進、戦略的互恵関係の具体的展開、拉致問題を含む北朝鮮への中国側への要請など、胡錦濤主席を初めとする中国の要人らと直接対話、率直な議論を重ねてまいりました。

 昨年十月の安倍訪中によりまして、日中関係は大きく前進、改善をしており、ことしこそ、それを加速化させ、具体化し、確固たるものにしなければなりません。私は、日中両国の政治指導者が頻繁に交流し、対話をする流れをつくりたいと強く願うものであります。

 日中の戦略的互恵関係の具体的展開の一つが、日中環境パートナーシップの構築です。対中国のODAは、円借款が二〇〇八年の北京オリンピックの前までに新規供与が終了しますが、環境問題対策は長期的な取り組みを要するだけに、資金面での支援体制が重要です。そのために、例えば日中の共同出資による基金を設立するなど、具体的な日中間の協力の枠組みをつくることを提案しますが、総理の御見解をお伺いします。

 現在、米国、中国、ロシア、韓国など関係各国も、核、ミサイル、拉致問題をめぐる北朝鮮への外交を行っていますが、的確な情勢分析、そしてスピードのある外交でなければ、主張する外交を推し進めることはできません。六カ国協議が再開される見通しとなり、具体的成果が期待されますが、総理はどのようにお考えか、お尋ねします。

 以上、内外にわたる政治課題について言及してまいりましたが、信なくば立たずとあるように、国民の信頼なしにはどのような政策も改革も実行できません。

 相次ぐ官製談合事件や政治資金をめぐる会計処理、事務所費の問題など、昨年より、政治と金の問題が後を絶ちません。特に政治資金については、できるだけ透明性を確保する必要があり、疑惑を持たれた政治家は、真摯な態度をもって国民に説明する責任があります。と同時に、再発防止策を早急に講じなければなりません。

 例えば、事務所費は経常経費として総額を記載するだけになっていますが、五万円以上の支出に領収書の添付を義務づけるなど、透明性を高め、適切に処理するための制度改正の検討を行い、見直せるところから直ちに実行すべきであります。

 政治への信頼をどう取り戻すのか、政治家は常に襟を正すべきであります。御見解を伺います。

 以上、我が国の直面する課題に総理がどこまでも民をもととして挑戦することを心より望み、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 太田昭宏議員にお答えをいたします。

 私の美しい国づくりについてお尋ねがありました。

 私は、日本人には限りない可能性、活力があると信じています。それを引き出すことが政治の役割であり、私の美しい国づくりの核心であります。子供たちが夢を持ち、働く人があすへの希望を持ち、皆が困難を乗り越えて挑戦する意欲を持てるような社会をつくることを目指してまいります。

 自公連立政権は、未曾有の経済危機を克服してきた実績を持っています。この自信を糧とし、それぞれの現場で頑張っておられる人々の声に真摯に耳を傾けながら、さらに安定した連立政権の基盤に立って、美しい国づくりに向けてあらゆる政策を進めていきたいと考えております。

 国民総がかりの教育改革についてお尋ねがありました。

 家庭や地域の教育力の低下などが指摘される中、国民の共通の理解を図りつつ、社会総がかりで教育改革を推進することが喫緊の課題と考えています。

 このため、教育再生を内閣の最重要課題とし、新しい教育基本法の理念のもと、放課後子どもプランの全国展開や、御指摘の「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進など、これまで以上に学校、家庭、地域社会の連携を図り、教育新時代を開いてまいります。

 家庭にかかる教育費の軽減として、幼児教育、奨学金についてのお尋ねがありました。

 家庭の経済的状況により就学の機会が奪われないよう、教育の機会均等を図っていくことは極めて重要であると考えています。

 このため、政府としては、幼稚園、保育所の教育機能を強化するとともに、幼児教育の将来の無償化について、歳入改革にあわせて財源、制度等の問題を総合的に検討してまいります。また、健全性を確保した奨学金制度の充実を推進します。厳しい財政事情のもとではありますが、めり張りをつけつつ、教育費負担の軽減に努めてまいります。

 いわゆるゆとり教育と土曜日の活用についてお尋ねがありました。

 知識を身につけ、それを活用する力をはぐくむゆとり教育の理念は重要でありますが、それを実現し、すべての子供に必要な学力を身につけさせるための具体的な方法が必要であります。

 このため、必要な授業時間の確保や国語力の育成、理数教育の充実などに取り組んでまいります。

 また、土曜日に、地域の協力のもと、さまざまな学習や体験の場を提供することは重要であり、既に地域により特色のある取り組みも行われております。来年度予算案に盛り込んだ放課後子どもプランなどを通じ、その振興に努めてまいります。

 教員へのバックアップについてお尋ねがありました。

 近年、教員の業務や事務作業の負担が増加しているのは事実であり、教育改革を実効あるものとするためには、教員の事務負担を軽減し、教員が子供とかかわる時間を確保できる環境を整備することは極めて重要であります。

 政府としては、教員が教育活動に専念できる環境を醸成するため、教員OB等を活用した教育サポーター制度や、業務環境の改善について取り組みを進めてまいります。

 なお、教員の質の向上を図るため、教員が時代の変化や要請に合わせた教育を行える能力や資質を確保するよう、教員免許の更新制を導入することが必要と考えており、今国会に必要な法案を提出する考えであります。

 いじめ問題への対応についてお尋ねがありました。

 いじめは、人間として絶対に許されないことであります。子供たちに規範意識をしっかり身につけさせ、学校が安心して学べる楽しい場所となるよう、社会総がかりでいじめ問題に正面から取り組む必要があります。

 そのため、御指摘のように、いじめと真剣に闘う姿を教師や大人自身が示すことは本当に大事なことと考えております。

 その上で、学校を挙げて問題の早期発見、早期対応に取り組むとともに、教育委員会は、外部の専門家を活用するなどして、迅速な解決に向けた学校の対応を支援する必要があると考えています。

 若者の雇用対策についてお尋ねがありました。

 私は、今国会において、雇用対策法の改正案を提出し、新卒一括採用システムの見直しを進めます。また、訓練を行う企業への助成や公共職業訓練の実施などを通じ、中途採用者のスキルアップを図るほか、いわゆる年長フリーター等に対する新たな就職・能力開発支援に着手します。このほかにもさまざまな手だてを講じて、我が国の将来を担う若者の雇用の支援を進めてまいります。

 生涯現役社会についてお尋ねがありました。

 働く意欲を有する高齢者の方には、社会の支え手として活躍し続けていただくとともに、社会の第一線をリタイアされた方には、誇りを持って第二の人生に取り組んでいただくことを大切にしたいと考えております。

 このため、定年の引き上げの推進を初め、七十歳まで働ける企業に対する支援措置の新設などにより、幾つになっても働ける社会、幾つになっても活躍できる社会を目指した取り組みを推進してまいります。(拍手)

 仕事と生活の調和についてお尋ねがありました。

 仕事と生活の調和がとれた働き方ができる社会の実現は重要な課題であり、長時間労働の抑制を初めとする労働環境の整備が必要であります。

 このため、政府としては、労働基準監督署による重点的な指導監督を実施し、時間外労働の削減に取り組む中小企業に対する助成金を創設するほか、長時間労働を抑制するための労働時間法制の見直しを検討しているところであります。

 今後とも、御提案の基本法の趣旨を重く受けとめ、労働環境の整備に努めてまいります。

 直面する雇用対策の課題についてお尋ねがありました。

 近年、企業、労働者双方のニーズにより、多様な働き方が広がっていますが、重要なことは、正規雇用か否かを含め、どのような働き方を選択しても、安心、納得して働くことのできる環境を整備することであり、このため、今国会において、働く人たちのための一連の労働法制の整備に取り組んでまいります。

 具体的には、まず、最低賃金制度がセーフティーネットとして十分に機能するよう必要な法制度の見直しを行い、また、働く意欲を引き出す就労支援を図ります。次に、今般取りまとめた再チャレンジ支援総合プランに基づき、パート労働法を改正し、すべてのパート労働者を対象として、きめ細かく均衡待遇の確保や正規雇用への転換の促進に取り組みます。

 また、いわゆる年長フリーターについては、新たな就職・能力開発支援を行うとともに、雇用対策法を改正し、新卒一括採用システムの見直しを進めるなど、雇用機会の確保に取り組んでまいります。

 社会保障制度の基盤強化についてお尋ねがありました。

 人口減少社会を迎える中で、若者、女性、高齢者等すべての人がその意欲と能力を最大限発揮し、働くことができる環境整備を行います。また、障害者の方々、母子世帯、低所得世帯等も地域で安心して暮らせるよう、きめ細かい就労支援を初めとした各種の施策の推進に努めてまいります。

 さらに、二〇三〇年以降の若年人口の大幅な減少を視野に入れ、すべての子供、すべての家族を世代を超えて国民皆で支援する観点から、「子どもと家族を応援する日本」という新しい重点戦略を策定してまいります。

 経済財政運営に係る基本的な方針についてお尋ねがありました。

 日本は、人口減少社会を迎えるにあっても、生産性を向上させ、成長力を強化することが必要です。同時に、その基盤として、二十一世紀にふさわしい行財政システムの構築も重要であり、特に、歳出歳入一体改革を通じて財政健全化を進めるとともに、行政改革を引き続き進めることが不可欠であります。これらを実現するため、先般閣議決定した「日本経済の進路と戦略」に沿って、経済財政政策を戦略的に推進してまいります。

 今後は、こうした取り組みを通じて持続的な成長のシステムを構築することにより、経済社会の各層に、雇用拡大や所得の増加という形で成長の成果を広く行き渡らせることが重要であると考えております。

 地域経済、地域産業の担い手である中小企業への支援についてお尋ねがありました。

 全国四百三十万の中小企業の元気は、地方の活力の源であります。政府としては、魅力ある地方をつくり出すため、地方で頑張る中小企業を力強く応援をしてまいります。

 具体的には、産地の技術や農林水産品などの地域資源を活用した事業への支援、地域の強みを生かした産業集積の促進、事業者の再チャレンジへの支援や資金供給の円滑化、商店街の振興などについて積極的に取り組んでまいります。

 観光立国への取り組みの方針についてお尋ねがありました。

 観光立国の実現に向けた取り組みは、地域の特色を生かしたまちづくりなどを通じて国内、国外の人々の交流をふやし、地域の活性化に貢献するものであります。

 昨年十二月には、観光立国推進基本法が衆参両院で全会一致で成立いたしました。同法にのっとり、地域再生の視点にも十分配慮しながら、私が先頭に立ち、政府を挙げて観光立国を推進してまいります。(拍手)

 地域の医療体制の整備についてのお尋ねがありました。

 医師の偏在により、一定の地域や診療科によって必要な医師が確保できない状況や、医療機関によって看護師が不足している状況があると認識しており、医師が集まる拠点病院づくり、看護師の再就業の支援など、都道府県の取り組みを積極的に支援してまいります。

 また、新しい医療計画に基づき、病院と診療所との連携等による在宅医療の推進を図るとともに、国会における法制化の議論も踏まえつつドクターヘリの普及に努めるなど、安心な地域医療を確立するための取り組みを推進してまいります。

 農業政策に関し、耕作放棄地の活用、担い手の支援についてお尋ねがありました。

 耕作放棄地は、農地の効率的な利用を損なうものであり、その防止は緊急の課題であります。今後とも、農地保有合理化法人が農地の担い手への集積や企業への貸し付けのために十分な役割を果たせるよう、事業の充実や体制の整備を行ってまいります。

 また、農業の体質強化のためには、意欲と能力のある担い手が農業生産の相当部分を占める農業構造にしていく必要があります。来年度からの新たな経営安定対策の導入にあわせ、金融、税制などの面で従来にない斬新な発想による経営支援を措置し、担い手への誘導を図ってまいります。

 このような中で、団塊の世代の方々が他の産業で培ったさまざまな知識やノウハウを地域農業の発展に役立てていただくことは、極めて重要であります。これらの方々の就農の支援についても、積極的に取り組んでまいります。

 食品残渣の飼料化についてお尋ねがありました。

 食品残渣の飼料化は、食料自給率向上やバイオマスの利用、活用を進める上で極めて重要な課題であります。

 政府としては、食品残渣を飼料化する施設の整備について支援策を講じるとともに、食品残渣に関する情報交換の支援や安全性確保のためのガイドラインの作成等に取り組んでまいります。また、食品リサイクル制度の見直しを行い、リサイクル飼料の一層の利用促進を図ってまいります。

 新型インフルエンザ対策についてお尋ねがありました。

 新型インフルエンザ対策につきましては、国民一人一人が疾患に対する関心を持ち、みずから感染症から身を守っていくよう心がけることが何よりも重要であります。

 政府としては、今後とも、各国における発生状況等を注視しつつ、国民に対する最新、適切かつわかりやすい情報の周知に最善を尽くしてまいります。

 がん対策についてお尋ねがありました。

 がん対策につきましては、昨年六月に成立したがん対策基本法に基づき、がん対策推進基本計画を策定し、国立がんセンターや拠点病院を中心とした相談支援体制の拡充や、緩和ケアなど患者本位の治療体制の整備に加え、放射線医療を担う専門医等の育成、さらに、がん登録の推進などの各般にわたる対策を総合的に進めてまいります。

 新健康フロンティア戦略についてのお尋ねがありました。

 新健康フロンティア戦略については、健康寿命の延伸に向け、国民それぞれの立場に応じた健康づくりを国民運動として展開するとともに、イノベーションを通じて、病気を患った人や障害のある人も、御自身が持っている能力を活用して充実した人生を送ることができるよう支援することとしております。

 具体的取り組みについては、新健康フロンティア戦略賢人会議において検討を進めており、御指摘の女性や若年層に関する効果的な取り組みを初め、年度内を目途に取りまとめを行ってまいります。

 地域の防犯対策についてのお尋ねがありました。

 世界一安全な国日本を復活させるためには、地域社会における防犯力の向上が極めて重要であります。そのためには、地域、家庭の連帯、官民の協力等が必要不可欠であります。

 このため、御指摘の地域安全安心ステーションモデル事業や地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業等を推進するなど、地域社会における防犯力向上のための各種取り組みを積極的に支援してまいります。

 公務員制度改革についてのお尋ねがありました。

 公務員制度改革については、新たな人事評価を導入して能力本位の任用を行うとともに、官と民が互いの知識、経験を生かせるよう、官民の人事交流をさらに進めてまいります。また、予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんによる再就職を根絶するため、厳格な行為規制を導入します。

 地方分権についてのお尋ねがありました。

 地方の活力なくして国の活力はありません。地方のやる気、知恵と工夫を引き出すには、地域に住む方のニーズを一番よくわかっている地方がみずから考え、実行することのできる体制づくりが必要です。私は、地方分権を徹底して進めてまいります。

 地方分権一括法案の三年以内の国会提出に向け、国と地方の役割分担や国の関与のあり方の見直しを行います。その上で、交付税、補助金、税源配分の見直しの一体的な検討を進めてまいります。

 今後の憲法議論についてお尋ねがありました。

 国の理想、形を物語る憲法は、日本が占領されている時代に制定され、六十年が経過しました。私たちは、二十一世紀にふさわしい日本の姿や理想を反映した新しい憲法をみずからの手で書き上げていくべきである、このように考えております。(拍手)

 与野党において着実に議論が深められるべきと考えており、まずは、日本国憲法の改正手続に関する法律案の今国会での成立を強く期待します。

 中国の環境問題対策に対する支援についてお尋ねがありました。

 私の昨年十月の訪中では、日中両国がエネルギー、環境保護等の分野を重点として協力を強化することで一致をいたしました。これらの分野は、両国の利益のみならず、地球規模の問題解決に資するものであり、まさに戦略的互恵関係において日中両国が協力していくべき分野であると考えます。

 今後とも、御指摘の考え方も踏まえつつ、我が国の有する高い技術、知見、経験を生かしながら、同分野における日中協力を推進し、共通の戦略的利益を拡大していく考えであります。

 北朝鮮問題に関する六者会合に向けての政府の方針についてお尋ねがありました。

 北朝鮮による核保有は断じて容認できません。我が国としては、近く再開される予定の六者会合において、米国、中国を初めとする関係国と緊密に連携しつつ、北朝鮮に対し、核放棄に向けた具体的行動をとるよう強く求めていきます。同時に、六者会合においては、引き続き拉致問題も取り上げてまいります。

 政治資金規正法の改正についてのお尋ねがありました。

 政治において大切なことは、国民の信頼であります。政治家は、常に襟を正していかなければなりません。

 私は、自由民主党総裁として、御指摘の点を含む政治資金の規正のあり方について、党改革実行本部において検討するよう指示し、既に、政治資金規正法の改正を含め議論が行われているところであります。

 さらに、この問題は、政治活動の自由、政治資金の透明性等の観点から、各党各会派においても同様に十分御議論をいただきたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 太田議員から私に対しまして、新人口推計と年金制度の持続可能性につきましてお尋ねをいただきました。

 平成十六年の年金制度改正によりまして、保険料水準の範囲内で給付水準を自動的に調整する仕組みなどを導入しまして、将来にわたって持続可能なものとするというところで、大枠のところではこれを確保しているということでございます。

 しかしながら、年金財政におきましては、人口や経済の長期的な動向がどうなるか、常にこれは注視をしていかなければなりません。法律の規定によりましても、少なくとも五年に一度、将来見通しを作成することによって、財政検証を行うことが規定されております。

 この規定によりますところの最初の財政検証は平成二十一年までに行うこととなっておりますが、昨年十二月に新人口推計を公表いたしました。前年の国調に基づくものでございますが、この機会に、近年の経済動向なども踏まえました幾つかの前提のケースごとに年金財政に関する暫定試算を現在急ぎとり行っておりまして、近々まとまる見込みでございますので、まとまり次第、これを公表し、参考に供してまいりたい、このように考えております。

 今後も、安定的かつ持続可能な年金制度の維持に努めてまいりたいということでございます。

 次に、新型インフルエンザ対策に関しまして、最も重要な視点につきまして、国民一人一人の心得といったことが大事だという御指摘をいただきました。

 新型インフルエンザ対策につきましては、政府、都道府県が医療体制等の対策をしっかり整備しておくこと、これがまず肝要でございますが、同時に、国民の皆さん方に広く、新型インフルエンザ対策についての一般的な知識やその感染の予防法、それから発生時の対応などにつきまして、わかりやすく、常に的確に周知をしていくことが重要である、このことは御指摘のとおりと思っております。

 これまでも、厚生労働省におきましては、さまざまな媒体等を利用しまして関係情報の周知に努めているところでございますが、さらに、現在、個人や一般家庭等におきます必要な対応に関しましてのガイドラインの策定を進めておりまして、今後、このガイドラインの周知徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇〕

国務大臣(冬柴鐵三君) 私に対し、高齢者、障害者や子育て世帯等、住宅困窮者を対象とした公的賃貸住宅制度についてのお尋ねをいただきました。

 高齢者、障害者や子育て世帯等の居住の安定確保を図ることは、住生活基本法の基本理念としても位置づけられており、住宅政策の重要な使命の一つと考えております。

 このため、平成十九年度予算案におきまして、公営住宅を補完する公的賃貸住宅制度を再編し、高齢者、障害者や子育て世帯等、各地域における居住の安定に特に配慮が必要な世帯に施策対象を重点化し、民間事業者等による良質な賃貸住宅の供給を促進する地域優良賃貸住宅制度の創設を盛り込んだところでございます。

 今後とも、これらの公的賃貸住宅の的確な供給、管理に加え、民間賃貸住宅の活用を含めた重層的かつ柔軟な住宅セーフティーネットの充実に取り組んでまいります。(拍手)

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議長(河野洋平君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 日本共産党を代表して、安倍総理と関係大臣に質問します。(拍手)

 まず、暮らしの問題です。

 私が総理の施政方針演説を聞いて驚いたのは、四十分に及ぶ演説の中に、貧困という言葉も、格差という言葉も、一言もなかったことです。総理は、国民の多くが不安に感じていた貧困と格差の広がりという問題の実態をどう認識しているのか、まず伺いたいのはこの問題です。

 この間、NHKテレビが、ワーキングプア、働く貧困層についての特集番組を放映しました。どんなに働いても生活保護水準以下の暮らししかできない人たちが広がり、日本の全世帯の十分の一、四百万世帯以上とも言われています。

 例えば、母子家庭、一人親家庭は百四十万世帯を超えて急増し、その約六割が国際的な貧困水準以下の暮らしです。番組で紹介された、二人の小学生の子供を育てながら働いている三十一歳のお母さんは、昼と夜、二つのパートをかけ持ちし、仕事を終えて家に帰るのは真夜中の二時、睡眠時間は四時間から五時間という、働きづめの生活を強いられています。このお母さんは、あと十年頑張れば、自分の体がぼろぼろになっても子供たちは巣立つと思うと言いました。

 総理、シングルマザーが我が身を犠牲にしなければ子供が育てられない社会が、まともな社会と言えるでしょうか。

 また、国民健康保険料が高過ぎて払えず、保険証を取り上げられ、資格証明書に置きかえられた世帯が急増し、三十二万世帯を超えています。朝日新聞の報道によれば、保険証取り上げで、医者に行くのを我慢した末、手おくれで死亡した痛ましい例が、この数年で少なくとも二十一件に上っています。資格証明書では、病院の窓口で一たん十割全額の医療費を払わなければなりません。経済的困窮から保険料を払いたくても払えない人に、病院窓口で十割全額負担を求める。

 総理、国が号令をかけて進めている保険証取り上げは、経済的に弱い人にも必要な医療を保障するという国民健康保険の目的に真っ向から反するものだと考えませんか。

 総理に基本的認識を伺いたい。

 今や、貧困は、国民の一部の問題ではなく、病気、失業、老いなどの身近な出来事がきっかけで、国民だれにも起こり得る問題になっているという認識はありますか。一たん貧困に落ち込んだら、多くの場合は、どんなに努力しても、そこから容易には抜け出せない現状となっているという認識はありますか。

 さらに、ワーキングプアについて、政府は実態の調査さえ行っていません。これでは、再チャレンジといっても、まともな対策はできないのではないでしょうか。

 政府として、国民すべてに健康で文化的な生活を保障した憲法二十五条の立場に立って、貧困の実態を調査し、それを打開する抜本的な対策を立てるべきではありませんか。答弁を求めます。

 憲法で保障された基本的人権とのかかわりでも、柳澤厚生労働大臣が女性は子供を産む機械と発言したことは、極めて重大です。これは、女性の人間としての人格と尊厳を否定する、絶対に許すことのできない最悪、最低の発言です。厳重注意で済ませられる問題ではありません。

 我が党は、柳澤大臣の罷免を強く要求するものです。総理の答弁を求めます。(拍手)

 私は、貧困と格差を打開するためには、その根源にある次の二つの問題に目を向ける必要があると考えます。

 第一は、国の予算のあり方の問題です。

 そもそも、貧困と格差が広がったら、税金と社会保障によって所得の再配分を行い、それを是正するのが予算の役割のはずです。ところが、来年度政府予算案はどうなっているでしょうか。

 一方で、庶民に対しては大増税と社会保障の切り捨てが押しつけられようとしています。

 昨年、定率減税が半減され、高齢者への増税で住民税が数倍から十倍にもなったという怒りの声が全国で噴き出しました。ところが、来年度予算案では定率減税を廃止し、さらに一兆七千億円もの増税を庶民に押しつけようとしています。増税に加えて、国民健康保険料、介護保険料も引き上げられ、これ以上は払い切れないという悲鳴が全国各地から寄せられていることに、総理はどうお答えになりますか。

 生活保護を受給している母子家庭等への母子加算が廃止されようとしています。子供たちの衣服や食事、夏休みに海水浴に行くことなどのわずかな楽しみさえ節約せざるを得ないような家庭から母子加算を取り上げるというのは、まともな政治のすることでしょうか。

 他方で、財界、大企業と大資産家に対しては、減価償却制度の見直しと証券優遇税制の継続で、一兆円規模の減税が予定されています。総理は、成長戦略と称して、大企業への減税を進めれば経済が成長し、結果として国民の暮らしもよくなるとしています。しかし、この五年間に、大企業の経常利益は十九兆円から二十九兆円に十兆円もふえて空前のもうけを上げていますが、そこに働く従業員の給与は四十二兆円から四十兆円へと二兆円減りました。

 総理、政府の言う成長戦略とは財界にとっての成長戦略であって、働く人々にもたらされたのは貧困の拡大だった、これは事実が証明しているではありませんか。パート、派遣など非正規雇用労働者をふやし、労働者の賃金を削りに削って大もうけを上げてきた財界、大企業に、これ以上の減税による優遇措置を施す理由が一体どこにあるというのか、説明をしていただきたい。

 庶民には大増税と社会保障の切り捨て、財界と大資産家には大減税。日本共産党は、貧困と格差拡大に拍車をかける政府予算案の逆立ちしたあり方を根本的に転換することを強く求めます。総理の答弁を求めるものです。(拍手)

 第二は、人間らしく働ける労働のルールをつくることです。

 私は、今、日本社会で広がっている貧困と格差の大もとには、人間らしく働ける労働のルールの異常な貧しさがあると考えます。私は、この現状を打開するために、次の三つの問題を提起するものです。

 一つは、職場で蔓延しているサービス残業と偽装請負という二つの無法を根絶することであります。

 サービス残業、ただ働き残業については、労働者の闘いに押されて、厚生労働省は二〇〇一年に是正の通達を出し、それ以降、累計で八百五十二億円の不払い残業代が支払われました。しかし、是正されたサービス残業は氷山の一角であり、この無法は年々ふえる傾向にあります。

 偽装請負、実際は派遣なのに請負を装う無法についても、労働者の闘いに押されて、厚生労働省は昨年九月に是正の通達を出し、直接雇用をかち取る闘いも全国で生まれています。しかし、大企業の製造業の派遣労働を中心に、この無法の根も深いものがあります。

 総理に、この二つの無法を根絶する決意、それをどのように進めるかの方策について答弁を求めます。

 二つ目は、労働のルールのこれ以上の破壊は中止するということであります。

 昨年末、労働政策審議会がホワイトカラーエグゼンプション、ホワイトカラー労働者の残業代を取り上げる法律の導入を提起したことに、国民の激しい怒りが広がっています。仮に、この法律が導入され、財界の言うように年収四百万円以上のホワイトカラー労働者に適用されるなら、横取りされる残業代は不払いの残業代を含めて年間百十四万円にもなると試算されています。

 労働者は成果を上げるために際限なく働かなければならず、過労死が一層ふえることは避けられないでしょう。残業代取り上げ、過労死促進法の導入はきっぱり断念すべきであります。総理の答弁を求めます。

 三つ目は、最低賃金を抜本的に引き上げることです。

 日本の地域ごとの最低賃金の平均は、時給にしてわずか六百七十三円、労働者の平均賃金のわずかに三二%、主要国では最低の水準です。年収二百万円のラインに達するためには、年間約三千時間、過労死ラインを上回るような働き方をしなければなりません。

 総理は、最低賃金のこの水準についてどう考えますか。憲法二十五条に明記された生存権の保障から見て余りに低い水準であり、抜本的な引き上げが必要だと考えませんか。

 全労連も連合も、ナショナルセンターの違いを超えて、労働団体は、最低でも時給千円以上の賃金を要求していますが、我が党は、この要求を強く支持します。

 ヨーロッパ諸国は、最低賃金を、当面、労働者の平均所得の五割に引き上げ、六割を目指すことを決め、アメリカでも、大幅に最低賃金を引き上げようとしています。この世界の動向に照らしても、最低賃金を労働者の平均所得の五割の水準まで引き上げることを目標に、当面、時給千円以上に引き上げることには合理的な根拠があると考えます。

 日本共産党は、最低賃金を抜本的に引き上げ、世界の大多数の国々が既に実施しているように、全国一律の制度にすることを強く要求します。正規労働者と非正規労働者の労働条件の均等待遇のルールをつくることを求めます。これは、貧困と格差の深刻化の中で、待ったなしの課題であります。総理の答弁を求めます。(拍手)

 次に、憲法について質問します。

 総理は、施政方針演説の中で、憲法を頂点とした基本的枠組みの多くが二十一世紀の時代の大きな変化についていけなくなったとして、憲法改定の推進と改憲手続法の成立を宣言しました。また、時代にそぐわない条文として、典型的なものは憲法九条だと述べました。

 それでは、総理に問いたい。

 憲法九条の一体どこが二十一世紀の時代の大きな変化についていけなくなったのか、どこが時代にそぐわないのか、具体的に答えていただきたい。

 総理は、改憲の目的は、集団的自衛権の行使を可能にすることにある、日米軍事同盟を血の同盟とする、すなわちアメリカとともに血を流す、海外で戦争をする国をつくることにあると述べてきました。しかし、そんな方向に日本を導くことが、果たして二十一世紀の時代の大きな変化に沿った道でしょうか。反対に、それは二十一世紀の世界の流れに真っ向から反するものではないでしょうか。

 それは、イラクをめぐる情勢を見ても明らかです。イラクでは、アメリカによる侵略戦争と占領支配がいよいよ破綻を深め、内戦化とも呼ばれる深刻な情勢悪化が進んでいます。ブッシュ大統領のイラク政策はアメリカ国内でも強い批判を浴び、中間選挙では、ブッシュ共和党が大敗北しました。ブッシュ大統領は、この結果にも耳をかさず、二万人の米軍の増派という方針を決めましたが、この方針に対しては、共和党の有力議員も含めて、超党派で反対の声が広がりつつあります。

 安倍総理に聞きたい。

 総理は、イラク戦争の誤りがだれの目にも明らかになった今でも、日本政府がイラク戦争を支持したことを正しかったと言い続けるつもりですか。米国国内でも議会の多数が反対している米軍二万人増派について、強く期待するという態度をとり続けるつもりですか。米国が派兵を続ける限り、イラクへの航空自衛隊の派兵をいつまでも続けるつもりですか。明確な答弁を求めます。

 二十一世紀の時代の大きな変化と言うなら、どんな超大国であっても軍事力だけでは世界を動かせない時代となった、国連憲章に基づいて紛争を平和的、外交的に解決することが当たり前の時代になった、この変化をこそ見るべきであります。

 こうした世界の流れに照らせば、時代の大きな変化の先駆けとなっているのが日本国憲法九条であり、時代の大きな変化についていけなくなったのが自民党政治であるということは、明瞭ではありませんか。

 日本共産党は、憲法改定反対、九条を守れの一点で、思想、信条の違いを超え、国民的な多数派をつくるために力を尽くします。九条改定というよこしまなねらいと一体に結びついた改憲手続法案は、きっぱり廃案にすることを強く求めるものであります。(拍手)

 最後に、政治と金の問題について質問します。

 家賃がただの議員会館を主たる事務所にしながら年間一千万円以上の事務所費を政治資金収支報告書に記載していた国会議員が、自民党と民主党で合計十八人に上ることが重大な問題となっています。国民に知られたくない支出を処理する抜け道に事務所費を利用していたのではないか、規正法に反する虚偽記載が行われていたのではないか、この疑惑が問われています。

 この問題では、現行法の不備を正すことはもちろん必要ですが、その前にやるべきことがあります。日本共産党は、次の二つの点を強く要求します。

 第一に、疑惑をかけられた政治家、政党に、事務所費の実態を国民の前に明らかにすることを求めます。領収書や帳簿は保存が義務づけられており、その気になればすぐに公開できるはずであります。問題がないというならば、公開すれば済むことであります。閣僚席に座っている伊吹文部科学大臣、松岡農林水産大臣は、領収書と帳簿を明らかにする意思がありますか。両大臣に、この一点について答弁を求めます。

 第二に、安倍総理は、疑惑を指摘されている閣僚について、法にのっとって適切に処理されていると報告を受けているとして、問題はないとの態度をとっていますが、そんな無責任な態度は任命権者として許されるものではありません。佐田前大臣の問題も含めて、総理として疑惑解明に取り組む意思があるのかどうか、はっきりとお答え願いたい。

 続発する政治と金の問題の温床に、財界からの企業献金の野方図な拡大とともに、政党助成金頼みの政治の堕落があることを私は指摘しなければなりません。自民党の収入の六割は政党助成金です。国民から募金を集める地道な努力を放棄し、巨額の税金に依存してきたことが政治と金をめぐる感覚麻痺につながってきたのではないでしょうか。総理にその自覚はありませんか。

 美しい国どころか、醜い政治が国民から指弾されています。この問題に誠実な姿勢をとらない限り、どんな美辞麗句を並べても国民の心には響かないでしょう。疑惑の全容究明とともに、政治腐敗の温床となっている企業献金を禁止し、政党助成金制度を撤廃することを強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 志位和夫議員にお答えをいたします。

 母子家庭についてのお尋ねがありました。

 困難な状況に置かれている母子家庭を支え、その自立を支援していくことは、国の宝である子供たちをしっかりと育てていくためにも重要な課題であります。

 このため、母子家庭のお母さんの仕事と生活の両立が可能となるよう、就業支援や子育てと生活の支援などのきめ細かな支援を総合的に進めてまいります。

 国民健康保険についてのお尋ねがありました。

 国民健康保険は、住民の相互扶助により成り立つ社会保険制度であり、すべての被保険者に公平に保険料を負担していただくことが制度の存立の前提であります。

 低所得等の事情のある被保険者については、保険料を軽減するなどの措置を講じておりますが、負担能力があるにもかかわらず保険料を納めていない方の未納分は他の被保険者の負担となり、公平が損なわれることから、保険証にかえて資格証明書を交付しているものであり、制度の目的に反するものではありません。

 貧困の問題に対する基本認識についてのお尋ねがありました。

 病気、失業や年をとったことにより容易に貧困に陥ることがないよう、国民連帯に基づく社会保険制度によって国民の安心を確保しているところであります。

 また、自助努力のみでは生活に困窮する方々に対しては、生活保護により最低限度の生活を保障しているところでありますが、容易に抜け出せないことにならないよう、就労や自立の支援を適切に行うことが重要であると考えております。

 ワーキングプアについてお尋ねがありました。

 いわゆるワーキングプアについては、年齢層、家族構成などにおいてさまざまな形態がありますが、各種の調査結果に基づく一定の把握は可能であります。

 こうしたさまざまな世帯の状況に応じて、経済、雇用、社会保障等のそれぞれの分野が適切に支えていくことが重要であると考えております。

 具体的には、安定した経済成長を続けることにより、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で経済成長の成果を広く行き渡らせるとともに、雇用に関しては、フリーター二十五万人常用雇用化プランの推進、正規労働者との均衡処遇の実現等を図るためのパートタイム労働法の改正、最低賃金制度の見直し等により、経済的に困難な状況にある勤労者の方々などの所得、生活水準の底上げを図り、格差の固定化を防いでまいります。

 厚生労働大臣の発言についてのお尋ねがありました。

 私は、厚生労働大臣の当該発言は不適切であったと考えております。閣僚の発言は重く、国民に誤解を与えたことは大いに反省すべきであります。その反省の上に立って職務に専念し、結果を出すことによって国民の皆様に御理解いただくよう努力していただきたいと考えております。

 定率減税、年金課税の見直し、保険料などの負担増についてお尋ねがありました。

 税や保険料等のあり方は、負担が低ければいい、負担がふえるのは問題という単純な考え方で論ずるべきではなく、社会保障における給付と負担のバランスなど、それぞれの制度の置かれている状況、背景などから考えるべきであります。

 定率減税は、平成十一年当時に景気対策として導入された暫定的な負担軽減措置であり、こうした導入の経緯や経済状況の改善を踏まえ、半減、廃止したものであります。

 また、年金課税の見直しについては、世代間及び高齢者間の公平を図る観点から、負担能力に応じた税負担を高齢者に求めることとしたものであり、その際、標準的な年金以下の収入のみで暮らす高齢者世帯については、同水準の給与収入を得ている現役世代よりも軽い税負担となるよう配慮を行っているところであります。

 また、国民健康保険や介護保険の保険料増については、給付の増に伴うものと税制改正に伴うものがありますが、後者について言えば、影響を受けるのは一定以上の収入のある方に限られるものであり、段階的に保険料を引き上げる二年間の激変緩和措置も講じております。

 生活保護についてお尋ねがありました。

 現行の母子加算を含めた生活保護の基準額は、母子世帯全体の平均的な所得層の消費水準を上回っています。今回の見直しは、この生活保護を受けている母子世帯と受けていない母子世帯との公平性の確保という観点に立って行うものであります。また、激変緩和にも留意をしつつ、段階的に行うものであります。

 母子家庭に対しては、引き続き、保育を初めとする子育てと生活の支援、就業の支援など、自立に向けてきめ細かな支援を総合的に進めてまいります。

 私の成長戦略についてお尋ねがありました。

 私の申し上げている新成長戦略は、国民の一人一人が日々の生活についてあすへの希望を感じることにつながる経済成長を目指しており、財界や大企業のためのものではありません。

 企業に対する税制についてお尋ねがありました。

 今般の減価償却制度の見直しは、我が国経済の成長基盤を整備する観点から、現在の制度を国際的に遜色のないものに見直し、投資の促進を図ろうとするものであり、設備の除却までの期間全体を通じて見れば、税負担の総額は見直しの前後で変わりません。

 また、この制度の見直しの効果は、大企業のみならず中小企業にも及ぶものであり、財界、大企業に対する減税による優遇との御指摘は当たらないものと考えております。

 税制改正や社会保障のあり方などについてお尋ねがありました。

 定率減税の縮減、廃止、年金課税や減価償却制度の見直しの考え方については、既に答弁したところであります。また、証券税制については、市場の混乱を回避するための特例措置等について検討を行う観点から、現行の軽減税率を一年延長して廃止することとしております。

 社会保障については、高齢化の進行等に伴い社会保障給付の増加が見込まれる中で、世代間の公平や制度の持続可能性確保の観点を踏まえつつ、所得の低い方には配慮しながら、各制度についてこれまで必要な改革を行ってきたところであります。

 いずれにしても、成長力強化と財政健全化を車の両輪とする経済財政運営を通じて持続的な成長のシステムを構築することにより、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で成長の成果を広く行き渡らせることが重要であると考えております。

 サービス残業と偽装請負についてのお尋ねがありました。

 労働基準法に違反するいわゆるサービス残業や労働者派遣法に違反するいわゆる偽装請負については、周知啓発、監督指導の強化、悪質な違反が認められた事業主に対する厳格な対応等を徹底し、これらの解消に最善を尽くしてまいります。

 ホワイトカラーエグゼンプションについてのお尋ねがありました。

 働き方の問題については、働く人たち、国民の理解を得ることが不可欠であります。労働時間法制のあり方については、現在、検討をしているところであり、さまざまな議論を踏まえた上で適切に判断をしてまいります。

 最低賃金についてお尋ねがありました。

 今国会に提出する改正法案においては、最低賃金制度がセーフティーネットとして十分に機能するよう、地域別最低賃金について生活保護との整合性も考慮することを明確にいたしております。

 最低賃金額を御指摘のように抜本的に大幅に引き上げることについては、中小企業を中心として、労働コスト増により事業経営が圧迫される結果、かえって雇用が失われる面もあり、非現実的である、このように考えております。

 また、全国一律の制度とすることについては、地域によって物価水準等に差があり、生計費も異なることから、適当でないと考えます。

 非正規労働者についてのお尋ねがありました。

 経済産業構造の変化や価値観の多様化などを背景として非正規雇用が進んでいますが、格差を固定化せず、安心して納得して働ける社会をつくることが重要であります。

 このため、パートタイム労働者の多様な就労実態に応じ、差別的取り扱いの禁止、均衡待遇の確保の組み合わせにより、すべてのパートタイム労働者を対象として、きめ細かく待遇を改善するパートタイム労働法の改正案を今国会に提出してまいります。

 憲法第九条についてお尋ねがありました。

 憲法の基本理念である民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであって、将来においてもこれを堅持すべきものと考えております。

 一方、現行憲法が制定されてから六十年が経過しており、実態にそぐわない面があるのであれば見直すべきと考えております。憲法九条についても、我が国の安全保障のあり方や国際社会の平和と安全への貢献との観点から、その規定ぶりについて十分な検証が必要であります。

 これらの点も含めて、新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、与野党において議論が深められ、方向性がしっかりと出てくることを願っております。(拍手)

 対イラク武力行使に関する政府の見解についてのお尋ねがありました。

 当時、イラクは、十二年間にわたり累次の国連安保理決議に違反をし続け、国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力にこたえようとしませんでした。このような認識のもとで、政府としては、安保理決議に基づきとられた行動を支持したものであります。

 米政府のイラク政策に対する政府の見解についてお尋ねがありました。

 今般の米政府のイラク政策の発表において、ブッシュ大統領はイラクの安定化と復興に向けた米国の決意を示されたものと承知をいたしております。

 このような米国の努力が効果的に進められ、よい成果を上げることを期待するとともに、我が国としては、今後とも、国際社会と協力し、イラクの復興支援に取り組んでいく考えであります。

 イラクへの航空自衛隊の派遣についてのお尋ねがありました。

 今後のイラクにおける空自部隊の活動のあり方については、イラクの政治状況、現地の治安状況、国連及び多国籍軍の活動や構成の変化等の諸事情をよく見きわめながら、イラクの復興の進展状況なども十分に勘案した上で、適切に判断してまいります。

 政治資金をめぐる問題についてお尋ねがありました。

 御指摘の事務所費等の問題については、自民党総裁として、党改革実行本部において検討を進めるよう指示し、既に、政治資金規正法の改正を含め議論が行われているところであります。

 さらに、この問題は、政治活動の自由、政治資金の透明性等の観点から、各党各会派においても同様に十分御議論をいただきたいと考えております。

 自民党の政党助成金についてのお尋ねがありました。

 政党が政党活動をするため財政をどのように運営するかは、それぞれ政党によって異なっていると思います。政党助成金制度は、いわば民主主義のコストというべき政党の政治活動の経費を国民全体が負担するものであり、民主主義の発展に重要な意義を持つものと考えております。

 したがって、現行の政党助成金制度が政治と金をめぐる感覚麻痺につながっているとの御指摘は、全く当を得ないものと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) 志位議員にお答えをいたします。

 私の政治資金の入りと出は、帳簿に漏れなく記載し、政治資金規正法と、同法律を所管いたしております旧自治省、総務省への二十年来の問い合わせの積み上げを参考に報告、公開されております。

 なるほど、議員がおっしゃったように、私は議員会館を資金管理団体の事務所といたしておりますが、そのほかにも、当団体は東京と地元の事務所を、事務所費から家賃、借料を支払って使用しております。したがって、届け出の事務所が議員会館に置かれているという一事をもって、家賃がただだから疑惑があるという誤った認識を前提にした議員の御示唆にお答えするのは、法律上やや私は問題があると思います。

 もちろん、一定額以上の事務所費を計上している政党、政治家の扱いについて統一的な決定があれば、私は進んでそれに従うつもりです。(拍手)

    〔国務大臣松岡利勝君登壇〕

国務大臣(松岡利勝君) 志位議員の御質問にお答えいたします。

 事務所費についてのお尋ねでございますが、まず、法律に定められたとおり、正直に報告したすべてが記載をされ、報告をし、そして公開されているわけであります。法律に定められたとおりのことを報告して疑惑と言われるのは、まことに心外であります。

 当該政治団体の実際に支出をされた経費を計上した金額であり、当然、架空の団体、そういった経費や他団体の経費をつけかえるというような、そういう違法のものでは全くないとの報告を受けております。

 また、今……(発言する者あり)当然のことながら会計責任者がやっておりますから。

 昨今の政治と金の問題で、きのう総理からも御答弁がございましたように、常に襟を正していくというのは当然なことでありまして、ただいま伊吹大臣からもございましたが、また新たな基準で、どのように扱うかということになれば、その扱いに従って対応してまいるというのは当然のことであります。

 以上であります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 辻元清美さん。

    〔辻元清美君登壇〕

辻元清美君 社会民主党の辻元清美です。

 私は、社会民主党を代表して、安倍内閣総理大臣の施政方針演説に対して質問をいたします。(拍手)

 私は、今、女性国会議員として、本当に情けない気持ちでここに立っております。それは、柳澤厚生労働大臣の、女性は産む機械、装置という発言のためです。

 大臣はこうおっしゃいました。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかないとおっしゃったようなんです。

 柳澤大臣にまずお伺いしたいと思います。

 子供を産まない、産めない女性は、大臣の発想によれば、役に立たない機械なんでしょうか。

 女性だけではなく、人間を物扱いにすることは、どんなときでも許されることではありません。女性は、産めよふやせよの道具ではありません。この発言は、男女共同参画社会基本法の女性の性と生殖の自己決定権や国連の女性差別撤廃条約に照らしても、明らかに反しています。

 失言には本音が出ます。残念ながら、柳澤大臣は少子化も担当する大臣にはふさわしくなかったようです。私は、すべての女性を代表して、柳澤大臣の辞任を求めます。大臣、この場で潔いお答えをいただきたいと思います。男性の皆さん、賛同していただけないんですか。(拍手)

 輪をかけて情けないのは、安倍総理が注意だけで済むと認識されていることです。総理の人権意識はこのようなものだったのでしょうか。欧米などでは、即刻罷免だと思います。早く対処しないと、国際的に恥ですよ。これが美しい国創り内閣の姿なのでしょうか。

 総理も問われています。総理は毅然という言葉がお好きのようですけれども、毅然として罷免すべきだと思います。凜とした総理の答弁を求めたいと思います。

 さて、総理の施政……(発言する者あり)今、やじ飛ばしてはりますけれども、これは深刻な問題ですよ。しっかり皆さんお考えになった方がいいと思います。

 さて、総理の施政方針演説をお聞きしましたが、格差社会という言葉もワーキングプアという言葉も、一切出てきませんでした。一体、総理はどこを向いていらっしゃるのでしょうか。

 また、総理はことしの初め、日本人は少し働き過ぎではないかと発言しました。とんでもない。少しどころか、物すごく働き過ぎだと思います。それは、そうしないとやっていけないからだと思うんです。働き盛りの四人に一人は、月に八十時間以上の残業で、これは過労死認定がされるほどのオーバーワークです。総理はこの実態を御存じなかったのでしょうか。

 また、総理は、残業代不払い法案ができたら、残業が減り、家で過ごす時間がふえて少子化対策になるとも発言しました。本気でこのようにお考えだったのでしょうか。私は、世間知らずではないかと思いました。

 総理は、施政方針演説で、時間外労働を抑制するための取り組みを強化すると発言しています。まさか、ホワイトカラーエグゼンプション、残業代不払い法案のことではないでしょうね。この取り組みが何なのか、具体的に説明を求めます。

 今は、働いても働いても給料はふえません。大手企業は潤い、約五年間で株主配当は約三倍、役員報酬は二倍近くにふえています。しかし、従業員一人当たりの給料は逆に減っているのです。

 なぜ、企業はもうかっているのに給料は減っているのか。ここで、だれにでもわかるように総理に説明をしていただきたいと思います。

 また、パート労働賃金は正社員の約六割にすぎません。社民党は、すべてのパート労働者の差別を禁止して、同一価値労働同一賃金の実現をずっと言い続けてきました。

 今回の政府の改善策は、パートの一部の人たちにしか光が当てられておりません。なぜ、すべてのパート労働者を対象にしなかったのか、その理由もお聞かせいただきたいと思います。

 さらに、今や、日本は、格差どころか、新しい貧困層の拡大が深刻です。働いても働いても生活できないワーキングプアがふえています。子育て最中の一家が年間二百万円以下で暮らせると総理は思いますか。働く貧困層の問題への総理の責任ある答弁を求めます。

 地方では、働き口が少なく、商店街のシャッターは閉まったままです。そして、農業も林業も疲れ切っています。

 今の企業の繁栄は、こうした人たちの我慢によって支えられてきたのではないでしょうか。人間は経済の奴隷ではありません。労働者という人間のダンピング競争をして、国際競争力をつけようとする。地方を切り捨てる。そんな国のどこが美しい国なのでしょうか。

 総理は、経済三団体の新年祝賀会で、景気回復が家計にも広がるよう御協力いただきたいとあいさつされました。これは政府としての責任放棄ではないでしょうか。景気回復を家計に回せと言うのなら、なぜ特別減税を打ち切るのですか。なぜ年金受給者の税負担をふやすのですか。お年寄りからは、病院にも行けなくなったと嘆く声が聞こえているのが現状です。

 政府の最大の仕事は、国民に安心できる暮らしを保障することです。企業にお願いする前に、家計が潤う税制にするのが総理の仕事です。消費税をどうするおつもりなんでしょうか。はっきり示し、そして堂々と選挙で信を問うべきです。

 きのうから総理はごまかしていると思います。もう一度、答弁のチャンスを差し上げます。読むのではなく、自分の言葉による答弁に再チャレンジしていただきたいと思いますが、皆さん、いかがですか。(拍手)

 さらに、総理は、女性や障害者には冷たいようです。なぜ、必死に頑張っているシングルマザーから生活保護の母子加算や児童扶養手当を奪ってしまうのですか。なぜ、障害者自立支援法によって、最も重度の障害を持つ人が最も高い負担を強要されなければならないのでしょうか。応益負担は廃止すべきです。いかがでしょうか。

 教育格差も広がっております。総理が子供は宝と言うのなら、すべての子供が公立の高校や大学に無料で行ける方向を目指す、教育に燃えるという総理らしい御答弁をいただきたいと思います。

 総理の挙げている上げ潮経済路線は、労働者や弱い人たち、そして地方を踏み台にすることによってしか実現しないとはっきりしてきました。景気が上向けば上向くほど新しい貧困層がふえるのは、政策が根本的に間違っているからです。安倍内閣のこの政策が日本社会を壊しているのではないでしょうか。

 もう一つ、総理が壊そうとしているものがあります。憲法です。

 私の内閣として憲法改正を目指していきたいと、年頭の記者会見で総理は発言をしました。憲法改正は、国会の提案によって国民が決めるものです。内閣は、改正にしゃしゃり出る立場ではありません。憲法を守る立場です。自民党総裁としての発言という言いわけは通用しません。不見識のきわみです。

 また、総理は、年頭所感で、国民投票法案の成立を今国会で期しますとも発言しました。国民投票法案は議員立法です。この発言も越権であり、不適切です。三権分立をわきまえていただくようにお願いしたいと思います。

 総理は、立場をわきまえずに、憲法には口出しするのに、閣僚の不祥事についてはまるで人ごとのような態度です。政治資金規正法については、国会で御議論をいただきたいと知らぬ顔です。閣僚の任命責任がある総理が考え方を示すべきです。明快な答弁を求めます。

 さて、総理の憲法改正の標的は九条のようにお見受けいたします。私は、イラク戦争の検証をしない人に憲法九条を変えようと言う資格はないと思います。

 アメリカがイラク戦争に突っ込むのを日本政府はとめるべきだったと社民党は主張してきました。イラク戦争の成果とは一体何なんですか。具体的に示していただきたいと思います。

 イラクの航空自衛隊の活動を何回問い合わせても、真っ黒けに塗りつぶした資料が出てくるだけです。人道支援というならば、公表できるはずです。なぜできないのですか。理由をはっきりとお答えください。

 国民にはイラクでの自衛隊の活動内容を隠しながら、NATOでは、日本人は自衛隊の海外活動をためらわないと大見えを切ってくる。さらに、集団的自衛権の検討や、いつでもどこでも自衛隊の海外派兵ができる法律をつくるかのような発言をし、こぶしを振り上げる。やっぱり安倍総理の本性はタカ派で怖い、そんな危機感を持つ人がふえているのではないでしょうか。

 総理は、米軍再編でも、地元振興のあめを振りかざして、沖縄に新たな米軍基地をつくろうとしています。世界に誇れる海、ジュゴンがすむ沖縄のサンゴ礁をつぶして、総理が日本の美しさをみずから積極的に破壊しようとしています。今や、世界は、何をおいても環境優先です。おやめになるのが賢明だと思いますが、いかがでしょうか。

 日本は、被爆国であり、非核三原則を持つ国です。だからこそ、どこの国よりも強く、北朝鮮に核の放棄を、そしてアメリカなどに核廃絶を迫ることができるはずです。総理が、インドに対しては原子力の協力をし、事実上、核保有を容認しようとしているのはおかしいと考えます。なぜですか。これでは、核には制裁をと叫ぶ総理がみずから核拡散に手をかしていることになるのではないですか。

 世界の現状は、暴力の連鎖や核の拡散がとまりません。社民党は、こんなときだからこそ、憲法九条を持つ日本の立場を生かして、世界の平和構築に貢献できると提起してきました。その一つが、紛争の調停外交です。

 私は、NGO活動で紛争地にも行きました。日本は、ほかの国よりも紛争予防や和平交渉にもっと力が発揮できると実感してきました。それは、日本は憲法九条のもと、どの勢力にも武力で加担しないので、紛争の当事者の間に割って入りやすいからです。それにもかかわらず、安倍総理は、この貴重な立場を捨てようとしています。イラクに対しても、対立する各派の調停に、総理みずから勇気を出して乗り出していったらいかがですか。

 日本は、過去の戦争の経験から、軍事力の持つ限界を思い知っています。みずからの敗戦体験、そしてベトナムでのアメリカの失敗を見ていたのに、軍事力信仰に頼るブッシュ大統領に無批判、安易についていきました。そんな安倍政権は、歴史の体験から何も学んでこなかったと言うほかありません。

 総理、政治の最大の教科書は歴史です。総理のように、歴史認識は歴史家に任せるなどと逃げていて、どうして戦後レジームからの脱却などと言えるのですか。

 私たちにとって、戦後とは貧困と戦争をなくすことでした。そこからの脱却を叫ぶ総理は、再び新たな貧困と戦争を生み出す方向に日本のかじを切っているように見えてなりません。

 総理が美しい国づくりごっこに熱中している間にも、国民の不安はふえる一方です。こんな総理大臣に任せるわけにはいかない、そう憂える多くの皆さんに、一緒に安倍政権を選挙でノックアウトしようと呼びかけます。

 以上、代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 辻元清美議員にお答えをいたします。

 厚生労働大臣の発言についてお尋ねがありました。

 私は、厚生労働大臣の当該発言は不適切であったと考えております。閣僚の発言は重く、国民に誤解を与えたことは大いに反省すべきであります。その反省の上に立って職務に専念し、結果を出すことによって国民の皆様に御理解をいただくよう努力をしていただきたいと考えております。(拍手)

 格差社会及びワーキングプアについてお尋ねがありました。

 施政方針演説で申し上げたとおり、私は、一人一人が日々の生活に対して誇り、生きがいや充実感、あすへの希望を感じられることが大切と考えております。さまざまな事情や困難を抱える人たちの再チャレンジ支援を初め、国民それぞれの個性や価値観にも着目し、働き方と暮らし方をよくしていくことにこそ力を注ぐべきであると考えております。

 働き過ぎなど、労働時間の問題についてお尋ねがありました。

 労働時間については、長時間労働の抑制を図り、仕事と生活の調和を実現することが必要と考えています。

 このため、労働基準監督署による重点的な指導監督や、時間外労働の削減に取り組む中小企業に対する助成金の創設など、取り組みの強化を図ることとしております。

 働き方の問題については、働く人たち、国民の理解を得ることが不可欠であります。労働時間法制のあり方については、現在、検討をしているところであり、さまざまな議論を踏まえた上で適切に判断をしてまいります。

 いわゆる給料の実態についてお尋ねがありました。

 今回の景気回復は企業部門の体質を強化する中での回復であったため、正規雇用の回復のおくれ、地域間での回復のばらつきなどの課題が残されていることは事実であります。

 こうした状況のもと、雇用情勢の改善には広がりが見られるものの、賃金の伸びが緩やかなものとなっております。家計部門でも景気回復の実感が乏しいと指摘される要因の一つにもつながっていると考えられます。

 今後、景気回復を持続させる中で、企業の経営環境の改善がさらに進み、労働市場がタイトになることを通じて賃金が上昇していくことを期待しています。

 パート労働者についてのお尋ねがありました。

 パートタイム労働者の待遇を働き、貢献に見合った公正なものとすることは、国民一人一人が安心し、納得して働ける社会の実現のため、また我が国経済の活力の維持のために重要な課題であります。

 このため、政府としては、パートタイム労働者の就労実態は多様であることから、差別的取り扱いの禁止と均衡待遇の確保の組み合わせにより、すべてのパートタイム労働者を対象として、きめ細かく待遇を改善するパートタイム労働法の改正案を今国会に提出してまいります。

 ワーキングプアについてお尋ねがありました。

 いわゆるワーキングプアについては、年齢層、家族構成などにおいてさまざまな形態があると考えておりますが、子育てをしている世帯であれば、暮らしが大変であることは言うまでもありません。

 こうしたさまざまな世帯の状況に応じて、経済、雇用、社会保障等のそれぞれの分野が適切に支えていくことが重要であると考えております。

 具体的には、先ほど申し上げたとおり、安定した経済成長を続け、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で経済成長の成果を広く行き渡らせるとともに、経済的に困難な状況にある勤労者の方々の所得、生活水準の引き上げを図り、格差の固定化を防いでまいります。

 都市と地方との格差の是正についてお尋ねがありました。

 地域の活力なくして国の活力はありません。地域活性化は私の内閣の最重要課題であります。

 今後、日本経済に新たな活力を取り入れ、現在の景気回復基調をさらに息長く持続させることで、企業から家計へ、また日本全体に回復を力強く広げ、経済全体の底上げを図ってまいります。

 あわせて、雇用情勢が特に厳しい地域に重点を置いて、雇用に前向きに取り組む企業を支援するほか、地方の魅力を生かして活力を引き出すため、頑張る地方応援プログラムや農業の戦略産業化等を進めてまいります。また、地方都市の商店街の活性化を図り、住みやすく、コンパクトでにぎわいあふれるまちづくりを地域ぐるみで進めてまいります。

 定率減税、年金課税の見直しについてお尋ねがありました。

 定率減税は、平成十一年当時に景気対策として導入された暫定的な負担軽減措置であり、こうした導入の経緯や経済状況の改善を踏まえ、半減、廃止したものであります。

 また、年金課税の見直しについては、世代間及び高齢者間の公平を図る観点から、負担能力に応じた税負担を高齢者にも求めることとしたものであり、その際、標準的な年金以下の収入のみで暮らす高齢者世帯については、同水準の給与収入を得ている現役世代よりも軽い税負担となるよう配慮を行っているところであります。

 消費税についてお尋ねがありました。

 我が国財政は引き続き極めて厳しい状況であり、今後とも、経済成長を維持しながら、国民負担の最小化を第一の目標に、歳出歳入一体改革に正面から取り組んでまいります。

 歳出削減等を徹底して実施した上で、それでも対応し切れない負担増に対しては、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにしなければなりません。本年秋以降、本格的な議論を行い、十九年度を目途に、社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通しなどを踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでまいります。

 生活保護や児童扶養手当についてお尋ねがありました。

 現行の母子加算を含めた生活保護の基準額は、母子世帯全体の平均的な所得層の消費水準を上回っています。今回の見直しは、この生活保護を受けている母子世帯と受けていない母子世帯との公平性の確保という観点にも立って行うものであります。また、激変緩和にも留意をしながら段階的に行うものであります。

 また、平成十四年の改正による児童扶養手当の見直しについては、母子家庭の母に対する自立支援に主眼を置いた改革の一環として、子育てや生活支援策、就労支援策、養育費の確保策とあわせて実施したものであります。

 障害者自立支援法についてのお尋ねがありました。

 本制度においては、制度を皆で支えるため、国の負担を義務化する一方、利用者の方に原則一割の負担をお願いしておりますが、障害が重い方でも必要なサービスが受けられるよう、所得に応じた負担上限の設定など、きめ細やかな軽減措置を講じております。

 さらに、今般、法の円滑な運用を図るため、現場の声を十分に踏まえ、もう一段の負担軽減措置など、三年間で千二百億円規模の特別対策を講ずることとしており、引き続き、法の定着に万全を尽くしております。(拍手)

 公立の高校や大学について、無償の教育を目指すべきとのお尋ねがありました。

 高等学校や大学の無償化については、膨大な財政負担の問題などを含め、慎重な議論が必要と考えますが、家庭の経済状況によって修学の機会が奪われないようにすることが必要であると考えております。

 このため、高等学校については、すべての都道府県において、経済的理由により修学困難な高校生に対し、公立学校の授業料、入学金等の減免を行うとともに、奨学金事業を実施しているところであります。

 また、大学については、日本学生支援機構において奨学金事業を実施しております。

 国においては、引き続き、こうした取り組みへの支援を通じて子供たちの修学の機会の確保に努めてまいります。

 私の掲げる成長戦略についてお尋ねがありました。

 私の申し上げている新成長戦略は、国民一人一人が日々の生活についてあすへの希望を感じることにつながる経済成長を目指しており、財界や大企業のためのものではありません。

 今後、景気回復が実感できるようにするために重要なことは、日本経済に新たな活力を取り入れ、安定した経済成長を続けることによって、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で経済成長の成果を広く行き渡らせることである、このように考えております。

 憲法改正と国民投票法案に関する発言についてお尋ねがありました。

 現在、憲法改正について与野党において積極的な議論が行われているところであります。新しい時代にふさわしい憲法のあり方について議論が一層深められ、方向性がしっかりと出てくることを願っております。まずは、日本国憲法の改正手続に関する法律案の今国会での成立を強く期待をいたします。

 なお、憲法第九十九条の憲法遵守擁護義務は、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないことは事理の当然であります。

 一連の政治資金の問題についてのお尋ねがありました。

 政治資金をめぐる問題は、常に政治家が襟を正して当たらなければならない問題であります。佐田議員の件については、法にのっとって適切に行わなければならない収支報告に不適切な処理があったことから、同議員がその責任をとって辞職したい旨の申し出があり、私も、その判断を重く受けとめ、これを了としたものであります。佐田議員が結果として辞任を余儀なくされたことについては、国民の皆様に対して責任を感じております。

 私は、自由民主党総裁として、政治資金の事務所費の公表のあり方等について、党改革実行本部において検討を進めるよう指示し、既に、政治資金規正法の改正を含め議論が行われているところであります。

 さらに、この問題は、政治活動の自由、政治資金の透明性等の観点から、各党各会派においても同様に十分御議論をいただきたいと考えております。

 対イラク武力行使に関する政府の見解についてのお尋ねがありました。

 当時、イラクは、十二年間にわたり累次の安保理決議に違反し続け、国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力にこたえようとしませんでした。

 イラクは、過去、実際に大量破壊兵器を使用しており、当時も、疑惑を否定できない状況にありました。そのような状況の中で、政府としては、安保理決議に基づきとられた行動を支持したものであり、対イラク武力行使によって、それ以前のようなイラクの脅威はなくなったものと考えております。

 自衛隊のイラクでの活動内容の公表についてお尋ねがありました。

 活動内容の公表に当たっては、活動している自衛隊員はもとより、国連及び多国籍軍の要員の安全に十分に配慮することが必要であります。このことは人道復興支援活動であっても同様であります。

 このため、定期的に輸送回数、輸送物資等の区分、輸送物資の累計重量をまとめてお示しをしているところであります。

 今後とも、まずもって要員の安全確保や運用を最優先事項として、国連や各国の動向などにも留意をしながら、可能な範囲で活動状況をお示しするよう努めてまいります。

 米軍再編についてお尋ねがありました。

 在日米軍の再編については、抑止力を維持しつつ、地元の負担を軽減するものであり、ぜひとも実現しなければなりません。

 現在日米間で合意している普天間飛行場の移設案は、サンゴや藻場など、自然環境への影響をできる限り少なくしたものであります。

 政府としては、今後とも、自然環境に十分配慮し、一日も早い普天間飛行場の移設、返還を着実に進めてまいります。

 インドへの原子力協力についてお尋ねがありました。

 我が国は、インドの戦略的重要性はよく理解をしております。同時に、核不拡散条約に加入していないインドへの原子力協力については、国際的な核軍縮、核不拡散体制への影響等を注意深く検討する必要があると考えており、今後とも、本件に関する国際的な場での議論に積極的に参加してまいります。

 イラクにおける各派の調停に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 我が国としては、イラクの安定化と復興を重視しており、今後とも、国際社会と協力し、イラクに対する支援に取り組んでいく考えであります。

 このような観点から、我が国は、イラクにおける国民融和の促進が極めて重要であると認識しており、イラク側に累次の機会に働きかけを行うとともに、イラク各派の国民議会議員を我が国に招いて憲法制定セミナーを開催したほか、近く、イラク各派から有力者を招いて国民融和セミナーの開催を予定するなど、さまざまな取り組みを行っております。

 歴史から学ぶことと戦後レジームからの脱却についてお尋ねがありました。

 私は、歴史に対して常に謙虚でなければならないと考えており、神のごとく歴史について白黒をつけるような態度は慎まなければならないと考えております。

 我が国は、さきの大戦で国内外に大きな被害を与えたという事実に対し、率直な反省の上に立って、半世紀以上にわたって、自由と民主主義そして基本的人権を守り、国際平和にも貢献してまいりました。そして、高度成長もなし遂げました。こうした国の基本的なありようは、今後とも、私たちの手で守り続けていかなければならないと考えております。

 しかしながら、日本を取り巻く環境は戦後半世紀以上を経て大きく変化しており、先輩方が焼け跡の中から築き上げた平和で豊かな日本を引き続きさらに発展させていくためには、戦後の日本の成功モデルに安住していてはならず、今こそ新たな国家像を築いていく必要があると考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたします。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 私は、去る一月二十七日、島根県松江におきまして講演をし、その中で人口推計の説明をいたしました。その際、女性と人口との関係につきまして、女性の方々を傷つける不適切な表現を用いました。この点、まことに申しわけなく、深くおわびを申し上げます。

 今後は、深い反省の上に立って、安倍内閣のもとで、子どもと家族を応援する日本重点戦略の具体化を含め、少子化対策のために全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十九分散会

<※注>「くにがまえの中に民」

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣 安倍 晋三君

       総務大臣   菅  義偉君

       法務大臣   長勢 甚遠君

       外務大臣   麻生 太郎君

       財務大臣   尾身 幸次君

       文部科学大臣 伊吹 文明君

       厚生労働大臣 柳澤 伯夫君

       農林水産大臣 松岡 利勝君

       経済産業大臣 甘利  明君

       国土交通大臣 冬柴 鐵三君

       環境大臣   若林 正俊君

       防衛大臣   久間 章生君

       国務大臣   大田 弘子君

       国務大臣   塩崎 恭久君

       国務大臣   高市 早苗君

       国務大臣   溝手 顕正君

       国務大臣   山本 有二君

       国務大臣   渡辺 喜美君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  下村 博文君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君


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