衆議院

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第16号 平成19年3月23日(金曜日)

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平成十九年三月二十三日(金曜日)

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 議事日程 第十一号

  平成十九年三月二十三日

    午後一時開議

 第一 独立行政法人に係る改革を推進するための独立行政法人農林水産消費技術センター法及び独立行政法人森林総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 自動車検査独立行政法人法及び道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 独立行政法人に係る改革を推進するための独立行政法人農林水産消費技術センター法及び独立行政法人森林総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 自動車検査独立行政法人法及び道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案(内閣提出)

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 独立行政法人に係る改革を推進するための独立行政法人農林水産消費技術センター法及び独立行政法人森林総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、独立行政法人に係る改革を推進するための独立行政法人農林水産消費技術センター法及び独立行政法人森林総合研究所法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長西川公也君。

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 独立行政法人に係る改革を推進するための独立行政法人農林水産消費技術センター法及び独立行政法人森林総合研究所法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔西川公也君登壇〕

西川公也君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、独立行政法人に係る改革を推進するため、平成十七年度末に中期目標期間が終了した農林水産省所管の独立行政法人のうち、農林水産消費技術センター等三法人の統合及び森林総合研究所等二法人の統合を行うための所要の措置を講じようとするものであります。

 委員会におきましては、去る三月十五日松岡農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、同十五日及び二十日質疑を行いました。質疑終局後、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 自動車検査独立行政法人法及び道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、自動車検査独立行政法人法及び道路運送車両法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長塩谷立君。

    ―――――――――――――

 自動車検査独立行政法人法及び道路運送車両法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔塩谷立君登壇〕

塩谷立君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、独立行政法人に係る改革を推進するため、平成十八年度末に中期目標期間が終了する自動車検査独立行政法人について、いわゆる非公務員型の独立行政法人とするとともに、同法人が審査手数料を直接徴収することができることとする等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る三月十四日本委員会に付託され、十六日冬柴国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、二十日質疑を行い、質疑終了後、討論を行い、採決いたしました結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第三、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長佐藤勉君。

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 恩給法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔佐藤勉君登壇〕

佐藤勉君 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、恩給受給者の要望等を踏まえ、扶助料制度間の不均衡是正の措置を講ずるとともに、恩給年額の水準を公的年金の引き上げ率により自動的に改定する制度の導入等を行おうとするものであります。

 本案は、去る三月九日本委員会に付託され、同月十五日菅総務大臣から提案理由の説明を聴取し、昨二十二日質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

加藤勝信君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、犯罪による収益の移転防止に関する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 加藤勝信君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 犯罪による収益の移転防止に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長河本三郎君。

    ―――――――――――――

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔河本三郎君登壇〕

河本三郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における犯罪による収益移転の防止対策に関する国際的動向にかんがみ、特定事業者による顧客等の本人確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届け出等の措置を講ずるとともに、国家公安委員会が疑わしい取引に関する情報の集約、整理等を行うことにより、犯罪による収益の移転防止やテロリズムに対する資金供与の防止等を図るものであります。

 本案の主な概要を申し上げます。

 第一に、特定事業者の定義についてであります。

 特定事業者として、金融機関、ファイナンスリース業者、クレジットカード業者、宅地建物取引業者、貴金属等取引業者、郵便物受取・電話受付サービス業者、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士等をいうこととしております。

 第二に、特定事業者による措置に係る規定の整備であります。

 その一は、特定事業者は、一定の取引について顧客等の本人確認を行うとともに、その記録及び取引記録を七年間保存しなければならないこととしております。

 その二は、司法書士等を除く特定事業者は、その業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがある場合等には、一定の事項を監督行政庁に届け出なければならないこととするとともに、当該行政庁等は、当該届け出に係る事項を国家公安委員会に通知するものとする等であります。

 第三に、弁護士及び弁護士法人による本人確認等に相当する措置については、本法に定める司法書士等の例に準じて日本弁護士連合会の会則の定めるところによるものとしております。

 第四に、国家公安委員会は、捜査機関等及び外国の資金情報機関に対し、疑わしい取引の届け出に関する情報を提供することができるとしております。

 本案は、去る三月十五日本委員会に付託され、翌十六日溝手国家公安委員会委員長から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入りました。昨日法務委員会との連合審査会を開会し、本日参考人から意見を聴取するなど慎重な審査を行い、質疑を終局いたしました。質疑終局後、直ちに討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

加藤勝信君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 加藤勝信君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長伊藤達也君。

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 関税定率法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔伊藤達也君登壇〕

伊藤達也君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における内外の経済情勢の変化に対応する等の見地から、法令を遵守する体制を整えている輸出入者等に対する特例措置の拡充、罰則水準の見直し、後発開発途上国に対する特別特恵関税制度の拡充、暫定関税率等の適用期限の延長等を行うものであります。

 本案は、去る三月十五日当委員会に付託され、二十日尾身財務大臣から提案理由の説明を聴取し、本日質疑を行い、質疑を終局いたしました。続いて、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 討論の通告があります。これを許します。楠田大蔵君。

    〔楠田大蔵君登壇〕

楠田大蔵君 関税定率法等の一部を改正する法律案に対する賛成討論をただいまより行わせていただきます。民主党・無所属クラブの楠田大蔵でございます。(拍手)

 もちろん、賛成の中身にもそれぞれ理由があるわけでございまして、今回、本法案に関しましては、関税の緊急措置について、農産品を中心に四百を超える対象が含まれており、輸入業者や流通業者、また地元で頑張っておられる農業者の方々を初め、そうした関係者の方々は、この法律の成立を心待ちにしておられます。

 また、コンプライアンスにすぐれた輸出入者などに対する特例措置の改善等を行うなど、国際競争力の強化、利便性向上のための見直し、税関における水際取り締まりの強化、後発開発途上国に対する無税無枠措置の拡充、暫定税率などの適用期限の延長など、緊急に措置すべき内容が数多く含まれておりまして、民主党としては、あくまで賛成の立場であります。

 ただし、本法案には、到底見逃すことができない改正も実は含まれております。

 経済連携協定を実施するための関税暫定措置法の内容が相手国によってほぼ違いがないということも踏まえまして、今回、一般的、包括的規定を設けるという措置がこの法案には含まれております。しかし、これまで経済連携協定が結ばれるごとに関税定率法等改正案が国会に提出され、財務金融委員会におきまして議論を行ってまいった、そうした今までの流れが、本措置によりまして、新たな経済連携協定が結ばれても個別に委員会で議論をするという機会が失われてしまうわけでございます。事務が煩雑だという理由のもとでこの改正がなされ、そして、今後そうした逐次の議論が省略されるとすれば、まさに、これまでの今国会の流れのように、財務金融委員会やこの本会議でもたびたび行われた審議の時間の省略であるとか、そうしたまさに審議軽視につながるのではないか。我々は、そのような観点から、大変な危惧を持っております。

 あくまで、改めて申し上げますが、今国会のこの改正案に関しましては、我々はそうした地元の皆様の頑張りにこたえて賛成でありますけれども、そうした国会軽視の流れに対してここで警鐘を申し上げまして、我々の賛成討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

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議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案について、趣旨の説明を求めます。防衛大臣久間章生君。

    〔国務大臣久間章生君登壇〕

国務大臣(久間章生君) 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案について、その趣旨を御説明いたします。

 駐留軍等の再編を実現することが、我が国の平和及び安全の維持に資するとともに、我が国全体として防衛施設の近隣住民の負担を軽減する上で極めて重要であることにかんがみ、駐留軍等の再編による住民の生活の安定に及ぼす影響の増加に配慮することが必要と認められる防衛施設の周辺地域における住民の生活の利便性の向上及び産業の振興並びに当該周辺地域を含む地域の一体的な発展に寄与するための特別の措置を講じ、あわせて、駐留軍等の使用に供する施設及び区域が集中する沖縄県の住民の負担を軽減するとの観点から特に重要な意義を有する駐留軍のアメリカ合衆国への移転を促進するための国際協力銀行の業務の特例及びこれに対する政府による財政上の措置の特例等を定める必要があります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、住民の生活の安定に及ぼす影響の増加に配慮することが必要な駐留軍等の再編が行われる防衛施設の周辺地域の市町村に対し、住民の生活の利便性の向上及び産業の振興に寄与する事業に係る経費に充てるため、駐留軍等の再編の実施に向けた措置の進捗状況に応じ、再編交付金を交付することができるものとします。

 第二に、駐留軍等の再編による影響が著しい再編関連特定周辺市町村を含む区域について、再編関連振興特別地域として指定され、当該地域の振興を図るため再編関連振興特別地域整備計画が決定された場合には、当該計画に基づく事業について、その要する経費に係る国の負担、補助割合の特例等を設けます。

 第三に、駐留軍等の再編に伴いアメリカ合衆国において実施される事業で駐留軍のアメリカ合衆国への移転を促進するために必要なものに係る資金の貸し付け等を国際協力銀行に行わせるとともに、これに対する政府による財政上の措置を講ずることができるよう、国際協力銀行法の特例を設けます。

 最後に、駐留軍等の再編に当たり、国は、駐留軍等労働者の雇用の継続に資するよう技能教育訓練その他の適切な措置を講じます。

 そのほか、関係法律の規定の整備を行うものであります。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。河井克行君。

    〔河井克行君登壇〕

河井克行君 自由民主党の河井克行でございます。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案について、久間章生防衛大臣に質問をいたします。(拍手)

 初めに、我が国を取り巻く安全保障環境の変化と米軍再編の意義、そしてこの特別措置法案の必要性についてお尋ねをいたします。

 昨年五月、日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2において、再編実施のための日米のロードマップが合意されるとともに、日米同盟の重要性について改めて確認がなされました。

 今回の米軍再編について、私は二つの意義を強調したいと存じます。第一に、北東アジアの平和と安定を図り、日本の独立と平和を守る安全保障戦略に資すること、二つ目は、基地の地元負担の軽減、特に全国の米軍基地の七五%が集中する沖縄県民の負担軽減への貢献であります。

 まず、安全保障戦略上の意義ですが、今回の米軍再編は、日本、米国両国が近年の安全保障環境の変化にいかに対応するべきかという問題意識から始まっていると考えます。日本周辺、北東アジアの環境は、この数年で激変しました。北朝鮮による昨年七月の弾道ミサイル連続発射、昨年十月の核実験実施、透明性が確保されないままで毎年一〇%以上の割合で増強される中国の国防予算、そして極東ロシア軍も、最盛期に比べると大幅に削減された状態にはありますが、近年は訓練活動などに増加の傾向が見られます。一方で、米国は、九・一一同時多発テロ以降、新たな脅威への対応という観点から、世界規模の米軍再配置を行いつつあります。

 米軍再編は、こうした安全保障環境の変化に対して、日本の自衛隊と在日米軍がより強固に結びつき、日米安全保障体制を強化する取り組みであります。つまり、米軍再編とは、まさに今私たちが直面している安全保障の諸課題に対して答えを出す動きであると私は評価しております。

 米軍再編二つ目の意義は、基地がある地元負担の軽減、特に沖縄県民の負担軽減であります。

 ことしは沖縄が本土に復帰して三十五年、節目の年です。今こそ目に見える形で沖縄の負担軽減を実現するべきですし、中でも、普天間飛行場の危険性を一刻も早く除去することが沖縄の皆様の強い強い要望であることを私たちは深く認識しなければなりません。

 この普天間飛行場の移設について、平成八年、当時の橋本龍太郎内閣総理大臣の強力な指導力により日米間で電撃的な合意がなされてから、既に十年余りが過ぎました。第二次橋本内閣の防衛庁長官として推進に努力された久間大臣におかれては、今度こそ移設を実現させようという並々ならぬ決意をお持ちのことと拝察いたします。この普天間飛行場の移設を一日も早く実現するためには、既に日米間で合意された政府案を実行に移すことが最も現実的な方法であると考えますが、この取り組みへの久間大臣のお考えをお示しください。

 続いて、再編法案の具体的な点について三つお尋ねをいたします。

 初めは、米軍再編の所要経費です。

 再編を進めるためにどれくらいの国民負担が生じるのかを明らかにすることによって、米軍再編に対する国民の理解はより深まります。再編経費の見積もりの現状及び将来の見通しをお尋ねします。

 二番目は、再編交付金についてです。

 この法案には、米軍再編の結果、基地負担がふえる自治体に対する新たな交付金制度が設けられております。米軍再編は、我が国全体としては基地負担の軽減につながるものです。が、一部の自治体で基地負担が増加してしまうことは避けられない事実なんです。負担がふえる自治体の御理解なくして、米軍再編を進めていくことは困難です。こうした負担を受け入れていただく自治体は、すなわち、日本の平和と安全という国の根幹にかかわる政策に御協力をいただく自治体であり、国として交付金を出すことは当然なことだと言えます。久間大臣、この再編交付金をどのような考え方で、どのような方法で交付するのか、お尋ねをいたします。

 また、政府は、米軍再編に対する地元理解と協力を得るべく説明に努めていますが、関係する自治体のすべてから御理解をいただいているわけではないのが実情です。地元に対する調整を今後いかに進めていくのかについても、あわせてお尋ねをいたします。

 三番目は、在沖縄海兵隊のグアム移転についてです。

 沖縄県から米軍基地の県外移設が求められてきましたが、こうした中、日米間の協議の結果、日本の平和と安全を損なうことなく、かつ、沖縄の基地負担を軽減させるものとして、沖縄海兵隊のグアムへの移転が合意されたことは大きな前進であると評価しております。

 せんだって私は、山崎拓団長のもと、与党安全保障プロジェクトチームの一員として、グアム島に赴き、この目で米軍基地の施設の現状をつぶさに見るとともに、現地の行政関係者、米軍関係者と意見交換を行ってきました。

 調査の結論は、一つ、グアム島には十分な土地面積があり、土地の確保については問題がない、二つ、グアム島民は在沖縄海兵隊の移転を歓迎している、三つ、社会基盤の整備が現状では不十分なため、米国もみずから相当規模の投資を行う予定であり、我が国としても応分の貢献を行うことが重要といったことです。

 また、現地を視察した私の率直な感想は、このグアム移転は決して世界規模の米軍再編に日本が渋々おつき合いをするという後ろ向きの考えではなく、日本の国益を追求するために、この好機を積極的に活用するのだという戦略的な発想をむしろ持つべきだということです。

 このようなグアムの施設整備に要する経費を日本が分担する理由と、それにより何が達成されるのか、大臣にお尋ねをいたします。

 今回の米軍再編は、両国の安全保障分野において、日米安保条約改定以来最大の事業と言えます。日本と米国が息長くお互いに協力し合ってこの大事業を成功させることを心から期待いたし、質問を終わります。

 ありがとうございます。(拍手)

    〔国務大臣久間章生君登壇〕

国務大臣(久間章生君) 河井議員にお答えいたします。

 まず、安全保障情勢と米軍再編の意義、並びに法案の必要性についてお尋ねがありました。

 昨年五月に日米間で合意した在日米軍の再編は、九・一一テロ以降の新たな安全保障環境のもと、抑止力を維持しつつ、地元の負担を軽減する絶好の機会であり、ぜひとも実現しなければなりません。

 このため、再編交付金や在沖海兵隊のグアム移転を促進するための特別の措置等を内容とする法整備を行い、国として米軍再編に取り組む姿勢を明確にすることが必要であります。

 次に、普天間飛行場の移設に向けた今後の取り組みについてお尋ねがありました。

 政府としては、昨年五月のロードマップにおいて日米間で合意した案を基本に、地元の意見を聞き、よく説明して理解を得ながら、一日でも早く同飛行場の移設、返還を実現してまいりたいと考えております。

 次に、米軍再編経費についてお尋ねがありました。

 在日米軍の再編は、抑止力を維持しつつ、地元の負担を軽減するものであり、ぜひとも実現しなければなりません。そのためには、我が国として、適切に予算上の措置を講じていく必要があります。

 日本側の経費負担については、現在、再編案の詳細な計画等について日米間で検討しているところであり、具体的に申し上げる段階ではありませんが、今後、厳しい財政事情を踏まえて鋭意検討を進め、所要の経費を精査してまいりたいと考えております。

 次に、再編交付金についてお尋ねがありました。

 再編交付金は、再編による負担をみずから受け入れる地元市町村の我が国の平和と安全への貢献に国としてもこたえ、もって米軍再編を円滑に実施することを目的とするものであります。このため、同交付金は、再編に御理解をいただく市町村に対し、再編に向けた措置の進捗状況に応じて交付したいと考えております。

 次に、米軍再編に係る地元調整についてお尋ねがありました。

 地元の理解と協力を得つつ、米軍再編を円滑かつ早期に実現していくことが極めて重要であります。政府としては、現在提出しております再編特別措置法案の御審議を踏まえ、地元に対し同法案の内容等について御説明するとともに、今後とも、地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力を挙げて取り組むことなどにより、米軍再編を着実に進めてまいります。

 次に、グアム移転経費を我が国が分担することの意義についてお尋ねがありました。

 在沖海兵隊の削減は、これまで沖縄県民が強く要望されてきたものであります。在日米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍基地が集中する沖縄の負担をなるべく早期に軽減するために、我が国も応分の負担をすることとしたものであります。これは、我が国外交の基軸である日米同盟の信頼関係の維持と沖縄の負担の早期軽減につながる大きな意義を有するものであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 長島昭久君。

    〔長島昭久君登壇〕

長島昭久君 民主党の長島昭久です。

 私は、ただいま議題となりました駐留軍再編の円滑な実施に関する特別措置法案につきまして、外務大臣、防衛大臣、財務大臣並びに官房長官に対し、民主党・無所属クラブを代表して質問いたします。(拍手)

 今から五十五年前の春、一九五二年四月二十八日、サンフランシスコ講和条約が発効し、六年九カ月にわたる占領に終止符が打たれ、我が国は晴れて主権を回復いたしました。その二日前、連合軍最高司令官マシュー・リッジウェー米陸軍大将が、「独立する日本国民諸君へ」と題する祝福のメッセージを発表しております。その中で、リッジウェー大将は、アジア太平洋地域の平和維持が日米両国にとっての最重要課題である旨指摘した上で、次のように述べております。

 この平和維持という目標に従って日米両国の間には安全保障条約が結ばれ、これにより、日本とその周辺にある米陸海空軍の配置が取り決められた。これらの米軍が日本に駐留するのはたった一つの目的、すなわち、日本が外部からの武力攻撃に対し固有の自衛権を行使するための有効な手段を持たぬ期間、日本を防衛するための暫定的な取り決めをしようというのである。だから、日本が直接及び間接の侵略に対して自己を防衛する力ができたとの自信を持つようなときが来れば、米駐留軍が撤退することも期待できるわけである。私は、その日が余り遠くないことを望んでいる。米国は、海外のどこであれ、不必要に長くその軍隊の駐留を引き延ばすことを欲してはいない、そのことは確かである。

 リッジウェー大将は、米軍の駐留が、あくまでも日本が自衛力を整備するまでの暫定的な取り決めであると明言していたのであります。

 ところが、現実はどうでありましょうか。半世紀余りを経た今日にあってもなお、四万三千人の米軍が、三百九平方キロという広大な日本の国土に排他的使用権を有する八十五カ所に上る基地施設を置き、ホスト・ネーション・サポートとして国民の税金から毎年二千億円以上もの予算が投入されているのであります。そして、このたび、米軍再編によって、総額二兆円になんなんとするさらなる財政負担が取りざたされているのであります。

 大戦終結から六十年が経過した今なお、米軍による占領の残滓がこれほどまでに鮮明にしるされた国は、世界で我が国以外に見当たりません。日本の政治家として、この異常な事態を何としても克服しなければならない、そういう思いは与野党を超えて議場の皆さんに共通だと私は信じております。今回の米軍再編に対しまして、日本国政府としての姿勢の原点は、まさにこの問題意識にこそ求められるべきだと思いますが、外務大臣そして防衛大臣、お二人の御所見を承りたいと存じます。

 私は、何もこの議場で、ヤンキー・ゴー・ホームを叫ぶつもりはありません。日米同盟が我が国外交の基軸だということにも異論はありません。米軍の前方プレゼンスがアジア太平洋地域の平和と安定を支える国際公共財であり、その基盤を提供する戦略的な価値がまさしく我が国外交の貴重なアセットであります。しかし、その価値ある資産を日本外交が生かし切れていないばかりか、米軍再編をめぐる対米交渉の中で我が国の主体性が全く見えなかったことに多くの国民がいら立っているのでございます。

 日米同盟の特異性は、有事のリスクはアメリカ、平時のコストは日本という役割分担の非対称性にあります。この非対称性こそが、日米同盟を揺るがす最大のアキレス腱であります。有事に当たっては米国の兵力に依存する日本、そのかわりに背負わされた平時の負担は、今や国民の皆さんの受忍限度をはるかに超えるレベルに達しようとしております。我が国の自助努力が決定的に足りないことが最大の原因だと考えますが、外務大臣、いかがでしょうか。大臣の率直な御見解を承りたいと思います。

 そして、今回の世界的な米軍再編という千載一遇のチャンスに当たってもなお、政府は、このゆがんだ同盟の基本構造に一切手をつけようとはしませんでした。すなわち、有事のリスクを我が国も引き受け、日米が相互補完的な役割を分担し合うように同盟そのものを再編することによって平時の基地負担を減らそうという正当な努力を怠ったのであります。その結果、相変わらず膨大な基地受け入れを含む平時のコストが残ったのであります。外務大臣、なぜ、かくも無気力な対米交渉に終始してしまったのでしょうか。戦後レジームからの脱却というのであれば、まず対米関係から実行に移していただきたい。明快な御答弁をよろしくお願いいたします。

 ところで、政府は、米軍再編に当たり、負担の軽減と抑止力の維持という二つの基本原則を繰り返し強調してまいりました。海兵隊のグアム移転で、普天間基地を初め沖縄の負担はある程度軽減されることになりますが、逆に、岩国や座間のように負担がふえる自治体もあることを忘れてはなりません。

 問題は、もう一つの柱である抑止力の維持に我が国がどう取り組もうとしているのかが全く見えないことであります。まさか、負担の軽減も、抑止力の維持も、米側から日本へ提供されるべきものと考えているわけではないでしょう。それは余りにも虫がよ過ぎる話で、同盟国として、いや、独立国として、甚だ無責任であると言わざるを得ません。防衛大臣、抑止力の維持、すなわち有事のリスクに対する我が国の役割は一体何なんでしょうか。国民の安全をつかさどる責任大臣としての明確な御答弁を承りたいと思います。

 抑止力の維持については、別の疑問もわいてまいります。すなわち、沖縄駐留の海兵隊部隊が八千人規模でグアムへ移転するわけでありますから、これまでの兵力規模で維持されてきた米軍による抑止力がそのまま確保されるとは考えられません。海兵隊の即応能力を担保してきた前方展開兵力削減の空白を一体何で埋め合わせようとしているのか、防衛大臣、国民に対してわかりやすく説明をしていただきたい。その際、米軍が大丈夫と言っているから大丈夫だなどという答弁では到底納得いたしません。

 米軍再編をめぐり、日本政府として本来あるべき姿は何だったのでしょう。私は、長年にわたってあいまいにされてきた集団的自衛権の行使を認め、日米同盟協力の中で抑止力の維持をめぐる日本側の任務や役割を拡大することを通じて、自衛隊と米軍兵力との間で重なり合っている部分を削減していく、そういう方法がベストであったのではないかと思いますが、皆さん、いかがでしょうか。そうすれば、まさに半世紀前にリッジウェー大将が予告したように、もはや必要のなくなった米軍兵力を削減するわけですから、その対価として新たな財政負担を求められることもなく、米軍の駐留経費負担は兵力削減とともに自然と減額することができるはずであります。外務大臣、そして防衛大臣、今後このような独立国として当たり前の姿勢を確立するおつもりがおありかどうか、明確な御答弁をお願いいたします。(拍手)

 ところで、総理の公約である集団的自衛権の行使をめぐる事例研究は、一体いつ成果が出るのでしょうか。この程度の研究は、自衛隊の幹部や専門家を集めて三時間ぐらい集中討議をすれば、結論は出るはずです。やる気が全く見られません。官房長官、官邸ではどんな作業が進められているのか、いつまでに成案を得ようとしているのか、国民に対して説明責任を果たしていただきたい。

 また、この点について、日米同盟を対等なものに再編するとの観点から、防衛大臣の御所見を承りたいと思います。

 次に、法案の内容について、二点に絞って伺います。

 第一に、膨大な再編経費はどのように捻出されるおつもりでしょうか。

 先ほどの趣旨説明によりますと、従来からの米軍施設移転に伴う経費のみならず、新たに設けられる再編交付金に加え、住民生活の利便や産業など地域振興策にまで国費を投入するとされていますが、これはすべて防衛省の予算でカバーされるのでしょうか。防衛大臣及び財務大臣に伺います。

 その際、米軍再編の日米合意以前に策定された、防衛計画の大綱に基づく現行の中期防衛力整備計画の達成が圧迫をされ、下方修正を余儀なくされるようなことはないのかどうか、防衛大臣に伺います。

 現在、我が国は、北朝鮮の核やミサイルの脅威に加え、ロシアや中国による大規模で急速な軍拡に直面をしております。米軍再編経費を捻出するかわりに我が国独自の抑止力が低下するようでは、まさしく本末転倒ではないでしょうか。

 第二に、グアム移転経費について、財務大臣に伺います。

 本法案では、日本側の負担分のうち、政府が直接支出をする二十八億ドル以外の三十二・九億ドル分について、資金の出資、貸し付け等の業務を国際協力銀行が行うことができるとされています。国際協力銀行の本来的な業務に関係なく、グアム移転の業務を行うための特例措置が設けられましたが、唐突感を否めません。このような手法は今までも使われてきたのでしょうか、具体的な事例があればお答えください。

 本法案は十年の時限立法にもかかわらず、資金の返済には米軍側から支払われる家賃や光熱水費が充てられるため、回収が完了するまでには四、五十年かかるとされています。その間、区分経理を行うため、駐留軍再編促進に係る金融勘定が設定され続けることになると思いますが、最終的に資金が回収できなかった場合にどのように責任をとるおつもりか、財務大臣にお尋ねいたします。

 さらに、資金が、施設整備の名目で、海兵隊施設を超えたインフラ整備や増強される海空軍施設などへ目的外使用されるおそれはないのかどうか。米軍と民間会社が共同出資をする事業主体への関与のあり方を含め、資金の使途をチェックするための新たな仕組みが必要だと考えますが、財務大臣の見解を承ります。

 いずれにいたしましても、本法案は、内容以前に、米軍再編に対する政府の基本姿勢そのものに重大な欠陥があると指摘せざるを得ません。

 明治の啓蒙家、福沢諭吉は、「独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず」、そう喝破しました。すなわち、独立心のない者が天下国家を語っていても、それは深刻なものでも切実なものでもない。同じことは国家にも言えるのではないでしょうか。すなわち、独立の気力なき国家は世界を思うこと深切ならず。

 私たちはそろそろ、自分の国は自分で守るという独立国としての当たり前の姿勢を確立すべきです。そうでなければ、平和構築に向けた我が国のいかなる理念や行動も、国際社会から真の意味で信頼を集めることはないでしょう。そのためには、我が国を取り巻く有事のリスクにも正面から取り組み、安易な対米依存体質から一日も早く脱却しなければなりません。みずからの足元もおぼつかなくて、インドやオーストラリアとの安全保障協力をうたったところで、しょせんそれは絵にかいたもちにすぎません。

 もし、自公政権では過去のしがらみがあって難しいというのであれば、私たち民主党がかわって、独立国家にふさわしい真に対等な日米同盟関係を築いてまいる覚悟です。そのことを改めてお訴えをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 長島先生より四問いただいております。

 まず、在日米軍駐留経費負担を含め、戦後六十年以上を経てもなお在日米軍が駐留している現状について政治家としてどう考えるか、また平時の負担についてどう考えるかという二つのお尋ねに最初にお答えさせていただきます。

 御存じのように、アジア太平洋もしくはユーラシア大陸の東半分、不安定で不確実な状況が現存している中にあって、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用は我が国の安全保障にとって不可欠でありまして、在日米軍駐留経費負担はそのために重要な役割を果たしていると存じます。

 政府といたしましては、今後とも、この駐留経費負担につきましては、厳しい財政状況に十分配慮しつつも、所要の見直しを図りつつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するため適切に対応していく考えであります。

 次に、今般の在日米軍再編協議に対する評価についてのお尋ねがありました。

 今般の日米協議では、日米間の役割、任務、能力を検討するとともに、抑止力を維持しつつ、地元の負担軽減を実現するとの観点から米軍再編に精力的に取り組んでまいりました。これは、日米防衛協力の推進と相まって、日米同盟の抑止力の信頼性を一層向上させ、我が国の平和と安全をより盤石にいたします。また、日米安保協力の強化を通じ、国際社会の取り組みに効果的に貢献する上でも有意義であると考えております。

 最後になりますが、集団的自衛権の行使を認め、自衛隊と米軍の役割、任務分担の重複を検討した場合の米軍再編についてのお尋ねがありました。

 日米間では、不安定な安全保障環境の中で脅威に効果的に対処するため、まずは現行の法制度の中で日米の役割、任務分担を検討し、米軍再編に取り組むことが重要と考えておりますが、いずれにせよ、自衛隊と米軍の任務が重複しているとは考えておりません。

 これらはいずれも大切な質問でありまして、詳しく御説明する必要があろうと存じますが、御質問いただきましたのが何せ三十分ぐらい前の話でありますので、質問書が提出されておりますのが今のような条項。仮に、今の御質問にちょっとお答えし切れていなかった場合は、追って文書をもって回答させていただきます。(拍手)

    〔国務大臣久間章生君登壇〕

国務大臣(久間章生君) 長島議員にお答えいたします。

 まず、米軍駐留が続く我が国の現状についてのお尋ねがありました。

 アジア太平洋地域に存在する不安定で不確実な状況のもとで、我が国は、自国の安全が脅かされるすべての事態に対してみずからの防衛力のみで対処することは困難であり、日米安保条約を堅持し、米軍に施設・区域を提供して我が国の安全を確保することは必要であると考えます。

 次に、抑止力の維持に対する我が国の役割についてお尋ねがありました。

 抑止力の維持に関する我が国自身の役割に関しては、新たな脅威や多様な事態への対応、対処も含め、防衛計画の大綱に従って、我が国の防衛体制を強化していくこととしております。また、米軍再編においても、訓練移転による日米共同訓練の実施やキャンプ座間等における日米の司令部併置により、日米間の相互運用性の向上等を通じて、抑止力の維持を図ることとしています。

 次に、グアム移転に伴う前方展開兵力の空白への対応についてお尋ねがありました。

 米国は、太平洋における兵力構成を強化するため、海兵隊の緊急事態への対応能力の強化や、それらの能力のハワイ、グアム及び沖縄の間での再分配を実施しております。これにより、個別の事態の性質や場所に応じて、より適切かつ柔軟な対応が可能となるものと考えております。

 次に、自衛隊の任務、役割の拡大と米軍兵力の削減についてお尋ねがありました。

 抑止力の維持に関する我が国自身の任務、役割については、新たな脅威や多様な事態への対処を含め、防衛計画の大綱に従って、我が国の防衛体制を強化していくこととしております。しかしながら、みずからの防衛力のみでは自国の安全が脅かされるようなすべての事態には対処できない以上、日米安全保障条約による在日米軍の駐留による抑止力の維持が必要となります。

 次に、集団的自衛権の行使に係る研究についてお尋ねがありました。

 防衛省としては、総理が施政方針演説で述べたように、世界の平和と安定に一層貢献するため、時代に合った安全保障のための法的基盤を再構築する必要があり、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な類型に即し、研究を進めていくとの考えを踏まえ、政府全体として取り組んでいくべきものと考えております。

 次に、米軍再編経費と防衛省予算との関係についてお尋ねがありました。

 骨太の方針二〇〇六においては、既存の防衛予算のさらに思い切った合理化、効率化を行ってもなお、今後五年間、国の予算を名目伸び率ゼロ以下の水準とする削減目標の中では、地元の負担軽減に資する措置の的確かつ迅速な実施に支障が生じると見込まれる場合は、各年度の予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずるものとするとされております。

 最後に、米軍再編経費と中期防達成の関係についてお尋ねがありました。

 御指摘の米軍再編経費が見込まれるところですが、我が国の防衛力を、新たな脅威や多様な事態、国際平和協力活動にも実効的に対応し得るものとするため、思い切った合理化、効率化を行いつつも、防衛計画の大綱や中期防に基づき、防衛力を着実に整備するよう努めてまいる所存であります。(拍手)

    〔国務大臣尾身幸次君登壇〕

国務大臣(尾身幸次君) 長島議員からの御質問にお答えいたします。

 米軍再編経費の捻出についてのお尋ねがありました。

 米軍再編経費と防衛関係費の関係については、昨年七月の基本方針二〇〇六において、米軍再編経費を含む防衛関係費について、これを聖域化することなく、名目伸び率ゼロ以下との削減目標を設け、さまざまな分野で合理化、効率化に取り組むこととされています。

 他方、同方針においては、米軍再編に要する経費については、既存予算のさらに思い切った合理化、効率化を行ってもなお、削減目標の中では、米軍再編に関する地元の負担軽減に資する措置の的確かつ迅速な実施に支障が生ずると見込まれる場合は、各年度の予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずるものとされており、財務省といたしましては、この基本方針二〇〇六にのっとって適切に対応してまいります。

 国際協力銀行の業務についてのお尋ねがありました。

 これまで、新しい立法によって国際協力銀行に追加的な業務を行うための措置をとったことはありません。海兵隊のグアム移転事業における国際協力銀行の役割は、駐留軍等の再編を実現することにより、我が国の平和及び安全の維持を実現しようとするものであります。

 一方、現在の国際協力銀行の目的は、我が国の輸出入もしくは海外における経済活動の促進等を行うというものであり、本法案により、今回、業務の特例を設けることとしたところであります。

 国際協力銀行の出資、融資資金の回収についてのお尋ねがありました。

 在沖縄米海兵隊のグアム移転のうち、米軍が支払う家賃や使用料により将来的に資金回収が可能な家族住宅とインフラは、民活事業により整備することとし、その資金は政府からの出資や融資などにより措置することとしております。民活事業の事業スキームや所要経費の積算の細部については引き続き日米間で協議中と聞いておりますが、今後、米国が支払う家賃収入やインフラ使用料収入により出資や融資などが確実に回収されるよう、きちんと精査してまいります。

 海兵隊のグアム移転に係る資金使途のチェックについてのお尋ねがありました。

 在沖縄の米軍海兵隊のグアム移転については、その詳細を日米両国間で協議中と承知しておりますが、我が国の財政資金を投入するものであることから、その資金使途のチェックの仕組みについても、今後のスキームの検討の中で適切に対応されるべきものであると考えております。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 長島議員にお答えを申し上げます。

 集団的自衛権の事例研究についてお尋ねがございました。

 日本をめぐる安全保障環境が大きく変化していることは、御案内のとおりでございます。特に、近年、大量破壊兵器やミサイルの拡散、テロとの闘い、地域の紛争の多発等によりまして、厳しさが一層増大してきております。このような中で、国民の生命、身体そして財産を守るために日米同盟が効果的に機能することがこれまでにも増して重要となっております。世界の平和と安定なしに我が国の平和と安定はない。PKOを初めとする国際的な平和活動への一層積極的な関与も必要となってきております。

 こうした観点から、時代状況に適合した実効性のある安全保障の法的基盤を再構築する必要性があると考えているところでございます。集団的自衛権の問題を含め、憲法との関係の整理につき、個別具体的な類型に即して整々と検討をただいま行っているところでございます。

 こうした問題については、静かな環境で落ちついて作業を進めることが重要だと考えておるところでございまして、その上で最終的な結論を出すことになると考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 遠藤乙彦君。

    〔遠藤乙彦君登壇〕

遠藤乙彦君 公明党の遠藤乙彦です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案につきまして、防衛大臣並びに外務大臣に対し質問を行います。(拍手)

 質問に入る前に、去る三月十一日、十二日の両日にわたり、安全保障委員会の理事会メンバーにより、在沖縄海兵隊の移転先であるグアム島の現地視察を行い、私も参加いたしました。限られた時間内のものでありましたが、百聞は一見にしかず、有益な視察であったと思いますので、まずその所感を申し述べたいと思います。

 総括的に申し上げれば、グアムへの海兵隊移転は、抑止力の維持の点で問題はなく、沖縄の負担を軽減し、グアム島の振興、発展に資し、今後の日米同盟協力関係の信頼性、有効性の強化につながり得る一石二鳥、三鳥の施策と思われ、ぜひとも成功させる必要があることを強く感じてまいりました。

 グアム島は、東アジアを視野に入れながら、遠過ぎずまた近過ぎず、一定の距離を置いて、緊張を高めることなく緊急展開能力を集積して、抑止力を維持するという観点からは絶妙の地政学的、戦略的位置にあります。近年、このことが再評価され、米軍再編の中でも、グアム島は特に重要な戦略拠点の一つとして位置づけをされ、今後、拡充強化される方向にあります。

 また、これは現地視察をして初めて理解できたことですが、グアム島は、沖縄とは異なり、基地はあっても基地問題はないということも重要な点であります。グアム島は淡路島と同じくらいの面積に約十六万人の人口を有していますが、ほとんど島の中央部に集中して住んでいます。他方、基地は、アプラ海軍基地及びアンダーセン空軍基地という広大な基地がありますが、いずれも島の外れにあり、民間地区とは離れているため、いわゆる基地問題は存在しません。

 グアム島のほとんど唯一の産業は観光産業であり、年間百二十万人と言われる観光客の八割は日本人観光客に依存している状況ですが、島の観光産業の展望は必ずしもよくはなく、今後安定した基地経済への依存度を高めることは、グアム島の財政事情の改善や雇用機会の確保にとり賢明な選択であると考えられます。

 カマチョ・グアム島知事にもお会いし、意見を聞きましたが、海兵隊員八千人、家族九千人、合計一万七千人は島の人口の一〇%を超えるものであり、この受け入れは、インフラ整備等の課題はあるが、グアム島の成長、発展の機会としてとらえており、歓迎している、島民の理解を得つつ本件をサポートしていきたいとの発言がありました。

 他方、島のインフラは、六〇年代から七〇年代にかけてつくられたものであり、老朽化し、能力が不足しており、電気、ガス、飲料水の供給、排水処理、廃棄物処理等かなり大規模な投資が必要であり、大きな課題であります。

 また、グアム島の面積の三割は国防省及びグアム島政府所有地であり、海兵隊移転先での住宅建設等も、土地代はかからないはずであり、費用の積算根拠については改めて精査が必要であり、今後、タックスペイヤーである国民に対する十分な説明責任を果たす必要があることを強く感じました。

 グアム島には、今後、高性能無人偵察機のグローバルホークも配備される予定の由でありますが、このような偵察能力強化と緊急展開能力の集積は、抑止力の維持という点のみならず、アジア太平洋地域における自然災害の際の緊急援助能力という点でも大きな可能性を意味しております。津波や地震、昨今の異常気象からくるハリケーンや台風の頻発等にかんがみれば、災害救助に向けてあらゆる資源、手段を活用すべきでありましょう。我が国としてはこのような視点から建設的な提案を行うことも検討すべきと考えております。

 以上、所感を述べましたが、外務大臣及び防衛大臣の御意見があればお聞かせいただければと思います。

 続いて、法案に関する質問に入らせていただきます。

 第一に、法案の背景、前提となっているトランスフォーメーション、いわゆる米軍再編並びにグローバル・ポスチャー・レビュー、全世界の米軍配置見直しの本質を政府としてどう認識しておられるのか、またそのことにより我が国の安全保障体制がどのように変化するのかについての基本認識を伺いたいと思います。

 第二に、法案では、再編交付金の段階的交付という仕組みが採用されていますが、この点については、巷間、交付金を使って自治体に負担の受け入れを強いるためのあめとむちではないかとの批判が寄せられております。政府がこのような仕組みを導入した理由について伺います。

 第三に、グアム島移転経費について、我が国が総額六十億九千万ドルを負担することが日米間で合意されております。このうち、家族住宅、基地内のインフラ向けの三十二億九千万ドルについては、国際協力銀行による出資、融資で行い、いずれ家賃収入などにより回収可能になるとの説明がなされております。政府として、国際協力銀行を通じた出資、融資が何年程度で回収されると見積もっておられるのか、また不良債権化するリスクについてどうお考えか、政府の答弁をお聞きいたします。

 第四に、在日米軍再編、特に海兵隊のグアム移転は、沖縄の負担を軽減するものとして歓迎される一方、再編事業の進展に伴い、沖縄米軍基地で働く九千名近い日本人労働者のうち、余剰人員が三千名以上に上るのではないかとの見方が広がり、現地では将来に対する不安が広まっております。国の政策に伴って大量の失業者が発生し、地域経済に悪影響を与えるような事態は、何としても避けなければなりません。政府としては、本法案に基づき、具体的にいかなる技能教育を講じようとしているのか、また再就職あっせんなど雇用不安に対する具体的施策についてどのように考えているのか、政府の考えを答弁いただきたい。

 第五に、最も憂慮されることですが、沖縄県を初め岩国市、座間市、在日米軍再編のかなめとなる自治体における受け入れ合意がいまだに得られておりません。まさに防衛省移行が実現した今こそ、防衛省の組織と能力をフルに発揮して、地元への説明、調整に最大限の努力を傾注し、関係自治体の受け入れ合意が得られることを切に希望するものでありますが、地元との調整の見通しとそれに取り組む決意について、防衛大臣の答弁を求めます。

 最後に、本件法案は抑止力の維持にかかわるものでありますが、抑止は安全保障問題のコインの一面であり、もう一つの面は、言うまでもなく対話であります。抑止なき対話も、対話なき抑止も平和の維持に失敗してきたこと、抑止と対話の賢明なバランスこそ持続的な平和の構造を構築する基本であることは、歴史の教えるところであります。

 昨年九月三十日に行われた公明党大会で採択された新宣言において、我が国はアジアとの共生、統合を進めるとともに太平洋のかけ橋となることを目指すべきことを打ち出しております。二十一世紀のアジア太平洋地域において、我が国としてどのような安全保障対話を進めていくのか、日米と中国との戦略対話と信頼醸成、ASEAN地域フォーラムの活用、六カ国協議における北東アジア安全保障メカニズム等についてどのように考えておられるのか、外務大臣並びに防衛大臣の御見解をお聞きして、私の質問を終わります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣久間章生君登壇〕

国務大臣(久間章生君) 遠藤議員にお答えいたします。

 まず、海兵隊のグアム移転の必要性についてお尋ねがありました。

 在沖海兵隊のグアム移転は、在日米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍基地が集中する沖縄の負担を軽減し、在日米軍の再編の一環として、我が国外交の基軸である日米同盟の信頼性の強化につながるものであり、ぜひとも実現しなければなりません。

 次に、米軍の変革と我が国の安全保障体制についてお尋ねがありました。

 米国は、安全保障環境の変化や軍事技術の進展に合わせ軍の変革を進めており、その一環として、世界的に展開する米軍の態勢も、テロなどの新たな安全保障上の課題に適切に対処できるよう見直しを行ってきております。在日米軍の再編は、この一環であると同時に、我が国にとっては、抑止力を維持しつつ、地元負担の軽減を図るものであり、その実施を通じて、日米安保体制は一層確固たるものとなり、ひいては我が国の平和と安全をより強固にするものと考えております。

 次に、再編交付金の交付の仕組みを導入した理由についてお尋ねがありました。

 再編交付金は、米軍再編により負担の増加する市町村に対し、米軍再編を円滑に実施することを目的に交付するものであることから、再編の実施に向けて事業が進捗した場合に交付額も増額する仕組みとすることにより、目的に沿った交付の仕組みとしたものであります。

 次に、出資、融資の回収期間及び不良債権化するリスクについてお尋ねがありました。

 現時点では、日米間で協議中であるため確たることは申し上げることはできませんが、例えば家族住宅については、米国の事例を踏まえれば、家族住宅の建設から維持管理を行うことから、事業期間は五十年程度になると考えられます。また、長期間にわたる資金回収により出資や融資が確実に回収されるよう、引き続き事業スキームや所要経費を精査してまいります。

 次に、本法案に基づく技能教育、また再就職あっせんなど、雇用不安に対する具体的施策に関するお尋ねがありました。

 米軍再編の雇用に及ぼす影響が明らかでない現時点において確定はいたしておりませんけれども、雇用の継続に資するよう、例えば、特殊車両の運転、パソコンなどの技能教育訓練を講ずる所存であります。

 また、再就職等の施策についても、離職前職業訓練を初めさまざまな施策について、関係省庁と連携しつつ努力する所存であります。

 次に、米軍再編に係る地元調整についてお尋ねがありました。

 地元の理解と協力を得つつ、米軍再編を円滑かつ早期に実現していくことが極めて重要であります。政府としては、現在提出しております再編特別措置法案の御審議を踏まえ、地元に対し同法案の内容等について御説明するとともに、今後とも、地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力を挙げて取り組むことなどにより、米軍再編を着実に進めてまいります。

 最後に、アジア太平洋地域における安全保障対話についてお尋ねがありました。

 防衛省としては、同地域の平和と安定のため、米国とも連携しつつ、中国等との二国間の交流やASEAN地域フォーラム等の多国間による枠組みの活用等を通じて、各国との信頼、協力関係の増進に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 遠藤先生より三問ちょうだいしております。

 まず、在沖海兵隊のグアム移転についてのお尋ねがあっております。

 在日米軍再編の協議におきましては、グアム移転により、抑止力を維持しつつ、沖縄の地元負担の軽減を図ることができるとの認識を日米間で共有するに至っております。議員御指摘のとおり、グアム移転はこのような重要な意義を有しておりまして、日米安保体制がより一層強固、確固たるものになると思っております。政府といたしましては、その着実な実施に向けて、米側と引き続き緊密に協議を進めてまいる考えであります。

 次に、米軍再編の意義についてのお尋ねがありました。

 米国は、軍事技術の進歩を背景に、より機動性の高い態勢というものを実現すべく、世界規模での軍事態勢の見直しを行っていると承知をいたしております。在日米軍再編は、米国のかかる取り組みの一環であると同時に、我が国にとりましては、抑止力を維持しつつ、地元負担の軽減を実現するものと思っております。これにより、日米安保体制は一層確固たるものとなり、ひいては我が国の平和と安全をより盤石にすることができると考えます。

 最後に、二十一世紀のアジア太平洋地域における安全保障対話の進め方等についてのお尋ねがあっております。

 この地域の平和と安定のためには、日米同盟を基盤としつつ、同地域における米国の存在と関与を前提に、二国間及び多国間の対話の枠組みを重層的に整備、強化することが現実的であり、適切な考え方だと考えております。我が国は、今後とも、米国、中国、韓国などとの安全保障に関する対話を行い、双方の信頼関係を進展させるよう努めてまいります。また、アジア太平洋の主要国が参加をする全域的な政治、安全保障の枠組みであるASEAN地域フォーラムに積極的に関与をしてまいります。

 さらに、六者会合は、北朝鮮の核問題を、我が国を含む北東アジアの安全保障を確保しながら、平和的に解決する上では最も現実的な枠組みだと考えております。この枠組みのもとで、北東アジアの平和及び安全メカニズムに関する作業部会が設置をされ、先般、第一回会合が開催をされました。日本といたしましては、この作業部会を含みます六者会合の枠組みが域内の信頼醸成を促進する上でも有益なものとなりますよう、積極的に関与を続けてまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、米軍再編特措法について質問します。(拍手)

 そもそも、アメリカが進めている米軍再編は、先制攻撃戦略に同盟国を深く組み込み、地球規模で軍事態勢を再編成するものであり、在日米軍と自衛隊の再編もその一環にほかなりません。イラクやアフガニスタンの泥沼化によって、その戦略の破綻は明白です。にもかかわらず、政府は、沖縄の負担軽減のためと言って、再編計画を推進しています。

 再編は、キャンプ座間、横田基地、原子力空母が配備される横須賀とあわせ、陸海空すべてで米軍と自衛隊の司令部を同じ場所に置き、一体化するものであります。岩国は、嘉手納に匹敵する極東最大級の巨大な基地にされ、全国の基地で日米共同訓練をあらゆるレベルで日常的に行うものであります。沖縄では、名護市辺野古に、地上部隊と一体化した、垂直離着陸機オスプレーも使用可能な滑走路を二本も持つ新基地がつくられようとしています。嘉手納には、既にF22ステルス戦闘機やPAC3ミサイルが新たに配備され、パラシュート降下訓練が強行されているのであります。

 負担軽減どころか、全国に基地被害を拡大し、沖縄に新たな負担を押しつけるものにほかなりません。政府は再編計画そのものを撤回すべきであり、その推進のための法案など、もってのほかと言わなければなりません。

 まず聞きたいのは、政府がいまだに再編の全体像を明らかにしていないことです。

 昨年、ローレス米国防副次官が、日本側の負担額は三兆円に上ると述べました。ところが、政府は今に至るも、おおよその見積もりも、厳しい財政状況の中で費用負担にどのような歯どめがあるのかも示していません。また、再編でどのような新たな基地建設を行うのか、その全体像も明らかにしていません。政府が強調してきた沖縄の土地の返還は、本年三月までに示すといいながら、いまだに明らかにしていないのであります。これらは再編の基本問題です。法案審議に入る当然の前提として、明確に説明すべきであります。

 第一に、グアム移転経費なるものの負担根拠の問題です。

 本来、米軍部隊が自分の国に戻るのは撤退にほかなりません。撤退に要する費用は、米国政府自身が負担するのが当然ではありませんか。これまで、米軍の撤退費用を負担した例が世界のどこにあるのですか。

 そもそも、沖縄の米軍基地は、米軍占領下に、銃剣とブルドーザーで住民の土地を強奪して構築したものです。強奪した土地から引き揚げる米軍の撤退場所の確保まで日本の税金で見るなどということは、断じて許されません。沖縄の土地強奪の歴史に照らして、どう説明するのですか。

 また、日米安保条約、地位協定上、撤退費用の負担などという規定が一体どこにありますか。政府はこれまで、日米地位協定上何ら負担義務がないにもかかわらず、思いやりと称して、在日米軍駐留経費を分担してきました。ところが、今度は、日本国内どころか、日米安保条約、地位協定さえ想定していない米国領グアムの米軍司令部や隊舎、家族住宅、インフラ整備に巨額の財政負担を行うというのであります。こんなことが財政法上なぜ許されるのですか。負担の根拠について明確な説明を求めます。

 次に、グアムの米軍基地増強との関係です。

 グアムの米軍基地増強は、米国政府自身がみずからの方針に基づいて進めるものであり、今回の在沖海兵隊の移転計画は、その一部を担うものにほかなりません。

 先日、安保委員会としてグアムに行ってきましたが、既にB52戦略爆撃機や原子力潜水艦の配備が進められ、今後さらに、米陸軍司令部と大隊規模の部隊配備、原子力空母の本格寄港に向けた港湾整備、無人偵察機グローバルホークや空中給油機の配備などが計画されています。太平洋地域重視を打ち出したQDRに基づき、陸海空海兵隊統合の新たな一大戦略拠点をつくろうとしているのであります。政府は、こうした米国の計画をどう認識し、海兵隊移転計画との関係をどう説明するのですか。

 政府は、海兵隊司令部八千人とその家族九千人をグアムに移転すると言いますが、米太平洋軍が昨年九月に発表したグアム統合軍事開発計画によると、一万人規模の地上、航空、後方支援の実戦部隊から成る海兵旅団をグアムに新設することを明らかにしています。司令部はそのうち二千八百人を占めるにすぎません。実戦部隊はさまざまな場所から移転すると明記しています。昨年の日米合意は、既に大もとから崩れているのではありませんか。明確な答弁を求めます。

 さらに、負担の仕組みの問題です。

 法案は、米軍家族住宅や基地インフラ整備については、国際協力銀行を通じた出資や融資の仕組みをつくるとしています。日本の資金で建設する家族住宅や基地インフラは在沖海兵隊のためのものと説明してきましたが、それ以外の部隊にも使用させることになっているのではありませんか。

 政府は、日本の出資、融資は将来返済されると言いますが、その保証はどこにあるのですか。返済期間は四十年とも五十年とも言われていますが、それはその間、日本政府がグアムの米軍基地を支え続けるということですか。グアムの米軍をどういう規模とするかは米軍の判断一つであり、それによって返済の保証が揺らぐことになるのではありませんか。これがまともな財政運営と言えますか。

 また、司令部や隊舎については、真水、すなわち日本の税金を直接投入するとしています。真水を投入するとは、具体的にどういうことですか。日本の税金で建設した資産を米側に無償で譲渡するということですか。法案は、なぜ真水について何も規定していないのですか。日米間において何の取り決めもしないのですか。このような税金投入を国会の審議も承認もなしに進めるなど、到底許されません。明確な答弁を求めます。

 最後に、今、多くの地方自治体、地域住民が再編の受け入れに反対しています。住民の生活と安全に責任を持つ地方自治体が、危険きわまりない基地強化に反対と懸念の声を上げるのは当然であります。政府は、そうした声を真摯に受けとめるべきであります。

 ところが、政府・与党は、一方的に閣議決定を行い、国防は国の専管事項だから政府に従えと言って、再編計画を押しつけてきたのであります。その上、本法案では再編交付金を創設しようとしています。これは、従来の基地交付金などとは全く異なり、再編による基地強化を受け入れた地方自治体のみを対象とし、しかも計画の進捗状況に応じて交付額をふやそうというものであります。法案は、どういう地方自治体を対象とするのか、再編による影響の増加の程度と範囲をどうはかるのか、進捗状況に応じてとは具体的にどう交付するのか、その基準を一切明示していません。すべてを防衛大臣の裁量にゆだねるというのですか。

 結局、この再編交付金は、政府方針を受け入れさせるために、地方を金の力でねじ伏せるものではありませんか。まさに基地を抱える自治体と住民を愚弄するものであり、断じて許されません。

 以上、再編計画と法案の撤回を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 赤嶺先生より六問いただいております。

 まず、米軍移転経費を負担した前例に関するお尋ねがあっております。

 駐留米軍の国外への移転に関し、日本以外の米国の同盟国がいかなる財政支援を行ったかにつき、確定的に知り得る立場にはありませんが、これまで承知している範囲において、御指摘のような事例は把握しておりません。

 次に、沖縄の歴史とグアム移転の関係についてのお尋ねがありました。

 沖縄に駐留する米軍は、日米安保条約の目的達成のため、重要な役割を果たしてきております。米軍の施設・区域の集中により、沖縄県民の方々に大きな負担をかけていることは十分に認識をいたしております。海兵隊のグアム移転につきましては、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担をなるべく早期に軽減するため、我が国も応分の負担をすることとしたものであります。

 次に、海兵隊のグアム移転費用の負担の根拠についてお尋ねがありました。

 米海兵隊のグアムへの移転経費の分担は、日米安保条約や地位協定の適用の対象となるものではありませんが、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担をなるべく早期に軽減するため、我が国も応分の負担をすることとしたものであります。また、財政法上、海外に所在する外国政府の施設を我が国の予算で整備することを明示的に禁じる規定はないと承知をいたしております。

 次に、米国のQDRとグアム移転の関係についてのお尋ねがありました。

 二〇〇六年のQDR、いわゆる四年ごとの国防計画の見直しにおいて、米国は、太平洋地域の潜水艦部隊などの増強を含め、世界規模における兵力態勢の見直しを進めていると承知をいたしております。在日米軍再編は、米国のかかる取り組みの一環であると同時に、我が国にとりましては、抑止力を維持しつつ、地元の負担軽減を実現するものであり、海兵隊のグアム移転は、日米間の協議において、沖縄の負担軽減を実現するとの観点からも合意に至ったものであります。

 次に、グアムに移転する海兵隊についてのお尋ねがありました。

 政府としては、議員御指摘の計画につきましては米側から説明を受けたわけではなく、その内容につきコメントをする立場にはありません。いずれにいたしましても、日米両政府は、昨年五月の2プラス2での合意に基づき、約八千名の海兵隊員及びその家族約九千名の沖縄からグアムへの移転を実施していくことで一致をいたしております。

 最後に、いわゆる真水部分についてのお尋ねがありました。

 在沖海兵隊のグアムへの移転に際し、司令部庁舎や隊舎の整備につきましては、いわゆる真水、すなわち我が国の直接的な財政支出により行うこととなっております。いわゆる真水部分にかかわる具体的なスキームなどにつきましては、引き続き日米間で協議を通じ詳細を検討していく必要があると考えております。(拍手)

    〔国務大臣久間章生君登壇〕

国務大臣(久間章生君) 赤嶺議員にお答えいたします。

 まず、米軍再編に係る経費についてお尋ねがありました。

 日本側の経費負担につきましては、現在、嘉手納飛行場以南の土地返還も含め、再編案の詳細な計画等について日米間で検討しているところであり、具体的に申し上げる段階ではありませんが、今後、厳しい財政事情を踏まえて鋭意検討を進め、所要の経費を精査してまいりたいと考えております。

 次に、グアム移転経費の負担の根拠についてお尋ねがありました。

 他国が駐留米軍の国外移転に当たり資金援助をした例は承知しておりませんが、在沖米海兵隊のグアム移転は、抑止力を維持しつつ、基地の集中する沖縄県民の負担をできる限り早期に軽減するものであり、日米双方で施設、インフラの整備に係る費用について応分の分担を行うこととしたものであります。

 次に、沖縄の米軍基地の歴史と今回のグアム移転との関係についてお尋ねがありました。

 沖縄海兵隊のグアム移転は、沖縄の歴史も踏まえた上で、在日米軍基地が沖縄県に集中し、住民の生活環境や地域振興に大きな影響を及ぼしている現状にかんがみ、抑止力を維持しつつも、沖縄の負担軽減を図ることが必要との観点から、日本政府として主体的に働きかけた結果、合意に至ったものであります。そのため、グアム移転の早期実現が重要であります。

 次に、グアム移転経費を分担する根拠についてお尋ねがありました。

 在沖米海兵隊の削減は、これまで沖縄県民が強く要望されてきたものであります。在日米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍基地が集中する沖縄の負担をできる限り早期に軽減するために、我が国も応分の分担をすることとしたものであります。

 なお、財政法上は、海外に所在する外国政府の施設を我が国の予算で整備することを禁ずる、あるいは制限する明文の規定はないと承知しております。

 次に、米国の戦略におけるグアムの位置づけと海兵隊のグアム移転の関係についてお尋ねがありました。

 米軍の戦略におけるグアムの位置づけについては必ずしも明らかではありませんが、米軍はグアムに配備されている航空機部隊や潜水艦部隊の増強を進めているものと承知しております。政府としては、在沖海兵隊のグアム移転の実現は、抑止力の維持と沖縄の負担の軽減の観点からぜひとも実現していかなければならないものであり、また米国の国益にもかなうものと認識しております。

 次に、昨年の日米合意が崩れているのではないかとのお尋ねがありました。

 御指摘の米太平洋軍の計画は米政府が公式に決定したものではないと承知しており、またその内容について米側から説明を受けたわけではないため、その内容につきコメントする立場にはありません。昨年五月のロードマップでは、第三海兵機動展開部隊の要員とその家族のグアム移転が合意されており、これが崩れているとの指摘は当たりません。

 次に、家族住宅やインフラの使用部隊についてお尋ねがありました。

 ロードマップにもあるように、日本側で整備する家族住宅やインフラは、あくまでも在沖海兵隊のグアム移転のためのものであります。

 次に、出資、融資の返済期間及び回収可能性についてお尋ねがありました。

 現時点では日米間で協議中であるため、確たることを申し上げることはできませんが、日本の出資、融資を確実に回収するためには、それなりの返済期間が必要と考えます。また、長期間にわたる家賃収入やインフラ使用料収入により適切に資金回収が行われるものと考えておりますが、出資や融資が確実に回収されるよう、引き続き事業スキームや所要経費を精査してまいります。

 次に、在沖海兵隊のグアム移転のうち、財政支出で行う事業についてお尋ねがありました。

 財政支出で整備する施設の具体的な事業スキームは、現在、日米間で協議中で決まっていないこともあり、日米間の取り決めはありません。また、法案は、財政支出以外の出資や融資等で措置する事業に関し、国際協力銀行の業務の特例を定めるものであります。

 次に、再編交付金の交付制度を導入した必要性についてお尋ねがありました。

 米軍再編を円滑に実施するためには、米軍再編に御協力をいただき、再編による負担をみずから受け入れる地元市町村に対し、交付金を交付する必要があります。また、再編の実施に向けて事業が進捗した場合に交付額も増額する仕組みとすることにより、再編の実施という目的に沿った交付の仕組みとする必要があります。

 次に、再編交付金の交付対象となる自治体や交付方法についてお尋ねがありました。

 再編交付金は、再編により住民生活の安定への影響が増加する市町村がみずからその影響の増加を受け入れる場合に、再編に向けた措置の進捗状況に応じて交付するものです。この影響の増加の程度と範囲や進捗状況の基準については、本法案に基づき、客観的な基準を政令等で定めることといたしております。

 最後に、米軍再編に取り組む政府の自治体に対する姿勢についてお尋ねがありました。

 米軍再編の実現には、地元自治体の理解と協力が重要であることは言うまでもありません。地元市町村がみずから負担を受け入れる場合に、これら市町村による我が国の平和と安全への貢献にこたえることは、国として当然であります。また、こうした市町村からは再編交付金に期待が寄せられており、その期待にこたえることにより、再編を円滑に実施し得るものと考えております。(拍手)

    〔国務大臣尾身幸次君登壇〕

国務大臣(尾身幸次君) 赤嶺議員の御質問にお答えいたします。

 グアム移転経費を日本政府が分担する根拠についてのお尋ねがありました。

 在日米軍の施設・区域の七五%が沖縄県に集中している現状を踏まえれば、海兵隊のグアム移転は、抑止力を維持したまま基地の集中する沖縄県民の負担を軽減するため、我が国が主体的に行うべき事業であります。その法的根拠については、国の予算その他財政の基本に関する事項を定めた財政法上、これを禁ずる、あるいは制限する明文の規定はないものと考えております。

 グアム移転に係る日本の出資、融資の返済についてのお尋ねがありました。

 海兵隊のグアム移転のうち、米国が支払う家賃や使用料により将来的に資金回収が可能な家族住宅とインフラは、民活事業により整備することとしており、そのスキームや所要経費の積算の細部については、引き続き日米間で協議中と承知しております。今後、米国が支払う家賃収入やインフラ使用料収入により出資や融資が確実に回収されるよう精査してまいります。

 グアム移転に係る日本の税金の投入に関してお尋ねがありました。

 現時点における日米の分担額は計画段階の米国の積算をもとに合意したものであり、日本の分担額の内訳や積算の詳細については引き続き日米間で協議しており、最終的には、それをもとに日本が精査することとなると承知しています。

 また、仮に詳細が定まった場合には、その支出については予算に計上し、国会で御審議いただくこととなることから、国会の審議も承認もなしに進めるといった御批判は当たらないことと考えております。

 米軍再編経費の総額やその歯どめについてお尋ねがありました。

 防衛省からは、米軍再編経費について、現在、所要の経費を精査しており、厳しい財政事情を踏まえ検討を進めているところと聞いています。財務省としては、国民負担の最小化の観点から、防衛省の検討結果を受け、その内容を精査してまいる所存であります。(拍手)

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) 赤嶺議員から、米軍再編に取り組む政府の自治体に対する姿勢についてお尋ねがありました。

 米軍再編の実現には、地元自治体の理解と協力が重要であると承知いたしております。今後とも、関係省庁が連携をして、地元の声によく耳を傾けながら進めていくものと考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 照屋寛徳君。

    〔照屋寛徳君登壇〕

照屋寛徳君 社会民主党の照屋寛徳です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提案の駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案について質問いたします。(拍手)

 質問に入る前に、正直に申し上げます。約二年前に脳梗塞で倒れ、二年ぶりの登壇です。うまくしゃべれません、早くしゃべれませんが、お許しください。私の脳梗塞は脳動脈一カ所の梗塞が原因でしたが、安倍内閣の政治は随所に梗塞状態があり、国民は生活不安、将来不安にさいなまれております。

 質問に入ります。

 第一に尋ねたいのは、米軍再編の認識についてです。

 駐留軍等の再編を実現することが我が国の平和及び安全の維持に資するとどうして言えるのか、全く理解できません。そもそも、米軍再編は、二〇〇一年九月のQDR二〇〇一で正式に表明されたもので、世界のどこで紛争が発生しても迅速に兵力を展開する能力を高めるために、米軍の態勢を見直そうというものです。日本の平和や安全の維持とは関係ありません。もし日本の平和や安全と米軍再編が関係するのであれば、日本政府は、米軍のGPR、グローバルな態勢の見直し構想の作成にどのようにかかわったのか、外務大臣に尋ねます。

 いわゆる米軍再編問題に日本政府が正式に協議を求められたのは、二〇〇二年十二月の日米安全保障協議委員会であり、二〇〇三年十一月のラムズフェルド米国防長官来日後に審議官級協議が始まったことからも、日本の関与が受動的なものであったことは明らかです。

 米軍によって、米軍のために作成された米軍再編構想に同盟国も協力させようというのが米軍再編の全体像であり、米国サイドの構想にどの程度の協力をするかという問題にすぎないのです。日本がみずからの防衛体制を大幅に変更し、莫大な負担を負わされる必要性があるとは考えられません。米軍再編に関して、国民に莫大な負担を迫るのであれば、米軍再編が我が国の平和と安全にどのように具体的に関係するのか、我が国にどのようなメリットがあるのか、説明すべきです。外務、防衛両大臣に尋ねます。

 次に、負担の内容についてであります。

 本法案に直接かかわるのはグアム移転経費の七千百億円と平成十九年度予算における五十一億円の再編交付金でありますが、米軍再編全体では三兆円の負担が生じるのではないかとの指摘もあります。一体、このような莫大な負担が本当に必要なのでしょうか。

 駐留米軍が二万人削減され、二十カ所以上の基地を四拠点に集約されるドイツや、米軍の三分の一に当たる一万二千人以上が撤退する韓国と比較しても、八千人の海兵隊の移転のために七千百億円の負担をするというのは、余りにも法外な内容ではないでしょうか。既に米軍駐留経費の多くを負担している日本が、米国が米国領グアムにつくる軍事関連施設経費の五九・三%を負担するというのは、余りにも常軌を逸しているのではないでしょうか。今必要なのは、米軍への思いやりではなく、国民への思いやりです。防衛大臣に尋ねます。

 三番目に、法案の内容についてお尋ねします。

 本法案は、駐留軍等の再編による住民の生活の安定に及ぼす影響の増加に対応する措置を定めるものであります。しかも、交付金の交付期間は、最大で十五年に限られ、再編案の受け入れや施設整備の進捗に応じて支給が行われます。米軍による負担に配慮するのであれば、負担の増加ではなく、現在の負担の存在に対して配慮し、負担がある限り交付金を支給すべきではないでしょうか。もし、関係市町村がロードマップを無条件に受け入れない場合は、交付金は受けられず、負担のみを強いられるのでしょうか。日米合意に基づくロードマップの修正を求めている沖縄県や名護市は、再編交付金の交付対象に該当するのか、防衛大臣に尋ねます。

 最後に、日本政府は、専らグアムの州当局や経済団体と連携し、グアム側が海兵隊の受け入れを歓迎しているかのように印象づけていますが、それは決してグアムの全体をあらわすものとは言えません。チャモロ先住民の組織は米軍の増強に強く反対しており、その他の住民や州議会の中にも、頭越しの海兵隊移転への批判が根強く存在しています。莫大な費用の負担と引きかえに、沖縄県民の負担の一部をグアム住民に押しつけようというのであれば、より丁寧な対応をすべきではないでしょうか。外務大臣に尋ねます。

 九・一一同時テロ事件以降、ブッシュ政権は、テロとの闘いを名目に武力を振りかざし、捏造された情報のもとにイラクを攻撃するなど、世界にテロと武力行使の連鎖を巻き起こしてきました。テロとの闘いを主たる目的とした米軍再編への協力は、決して我が国の平和と安全に直結するものではありません。また、テロとの闘いは、日本と極東の平和と安全を定めた日米安保条約の延長上のものでもありません。

 ロードマップに基づく米軍再編を着実に実施するための本法案は、関係自治体に対するあめとむちであり、同時に、自治を破壊する悪法です。米軍と自衛隊の一体化、融合化、部分化を加速する米軍再編、沖縄の基地負担の軽減ではなく、基地機能の強化につながる本法案は、我が国の国益にも反するということを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣久間章生君登壇〕

国務大臣(久間章生君) 照屋議員にお答えいたします。

 まず、米軍再編と我が国の平和と安全についてのお尋ねがありました。

 在日米軍の再編は、我が国にとっては、抑止力を維持しつつ、地元負担の軽減を図るものであり、その実施を通じて、日米安保体制は一層確固たるものとなり、ひいては我が国の平和と安全をより強固にするものと考えております。

 次に、グアム移転経費を我が国が分担する理由についてお尋ねがありました。

 在沖海兵隊の削減は、これまで沖縄県民が強く要望されてきたものであります。在日米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍基地が集中する沖縄の負担をなるべく早期に軽減するために、我が国も応分の負担をすることとしたものであります。これは、我が国外交の基軸である日米同盟の信頼関係の維持と沖縄の負担の早期軽減につながる大きな意義を有するものであります。

 次に、再編交付金の交付の仕方についてお尋ねがありました。

 再編交付金は、抑止力の維持と我が国全体としての地元負担の軽減という意義を有する米軍再編を円滑に実施することを目的として交付するものです。このため、米軍再編により負担が増加する市町村に対し、再編が実施されるまでの期間を考慮して時限的に交付したいと考えております。

 次に、地元市町村による負担の受け入れと再編交付金の関係についてお尋ねがありました。

 再編交付金は、米軍再編に御理解をいただき、負担をみずから受け入れる地元市町村の我が国の平和と安全への貢献に国としてこたえることを旨として交付するものであります。仮に、米軍再編を含めた防衛施設の設置、運用により障害が生ずる場合には、防衛施設周辺生活環境整備法等に基づき適切に対応いたします。

 最後に、市町村が反対した場合の再編交付金の交付についてお尋ねがありました。

 再編交付金は、米軍再編に御理解をいただき、負担をみずから受け入れる地元市町村の我が国の平和と安全への貢献に国としてこたえるものであります。このため、再編に反対の市町村はこの趣旨になじまないと考えておりますが、特定の市町村への交付の可否については、その時点の個別具体の状況を踏まえて適切に判断いたします。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 照屋議員より三問いただいております。

 まず、米国の世界規模での軍事態勢の見直しについてのお尋ねがありました。

 米国は、軍事技術の進歩を背景に、より機動性の高い態勢を実現することを目標として、世界規模での軍事態勢の見直しを行ってきていると承知いたしております。我が国は、この構想そのものの作成には関与しておりませんが、この構想の一環であります在日米軍再編につきましては、我が国にとって抑止力の維持と地元負担の軽減を図るとの観点から、米側と密接に協議を行ってきたものであります。

 次に、在日米軍再編のメリットについてのお尋ねですが、在日米軍再編は、抑止力を維持しつつ、普天間飛行場の移設、返還、グアムへの海兵隊部隊の移転などにより地元の負担軽減を実現するものであります。また、これにより、日米安保体制はより一層確固たるものとなり、ひいては我が国の平和と安全をより盤石にできると考えております。

 最後に、在沖海兵隊のグアム移転についてのお尋ねがありました。

 在沖縄海兵隊のグアム移転は、在日米軍の抑止力を維持しつつ沖縄の負担軽減を実現するため、昨年五月、2プラス2において日米両政府間で合意したものであります。グアム住民には米国政府からしかるべく対応がなされるものと考えますが、いずれにせよ、本件移転を実施する上でグアム住民の理解を得ることは重要なことであると私も認識をいたしております。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  菅  義偉君

       外務大臣  麻生 太郎君

       財務大臣  尾身 幸次君

       農林水産大臣  松岡 利勝君

       国土交通大臣  冬柴 鐵三君

       防衛大臣  久間 章生君

       国務大臣  塩崎 恭久君

       国務大臣  溝手 顕正君

 出席副大臣

       防衛副大臣 木村 隆秀君


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