衆議院

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第19号 平成19年4月3日(火曜日)

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平成十九年四月三日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十四号

  平成十九年四月三日

    午後一時開議

 第一 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律案(内閣提出)

 海洋基本法案(国土交通委員長提出)

 海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律案(国土交通委員長提出)

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出)の趣旨説明及び質疑

 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長西川公也君。

    ―――――――――――――

 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔西川公也君登壇〕

西川公也君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、農山漁村における定住等及び農山漁村と都市との地域間交流の促進による農山漁村の活性化を図るため、地方公共団体による活性化計画の作成について定めるとともに、当該計画に基づく事業等の実施に充てるための交付金を交付する措置等を講じようとするものであります。

 本案は、去る三月二十七日本委員会に付託され、同日松岡農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、翌二十八日及び二十九日質疑を行いました。質疑終局後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

加藤勝信君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 国土交通委員長提出、海洋基本法案及び海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律案の両案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 加藤勝信君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 海洋基本法案(国土交通委員長提出)

 海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律案(国土交通委員長提出)

議長(河野洋平君) 海洋基本法案、海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。国土交通委員長塩谷立君。

    ―――――――――――――

 海洋基本法案

 海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔塩谷立君登壇〕

塩谷立君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、海洋基本法案について申し上げます。

 本案は、海洋が人類等の生命を維持する上で不可欠な要素であるとともに、我が国が国際的協調のもとに、新たな海洋立国を実現することが重要であることにかんがみ、海洋に関する施策の基本となる事項を定めようとするものであり、その主な内容は、

 第一に、基本理念として、海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和、海洋の安全の確保等を定めること、

 第二に、国は、基本理念にのっとり、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有することなど、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにすること、

 第三に、政府は、海洋基本計画を定めなければならないこと、

 第四に、海洋に関する基本的施策として、国は、海洋資源の開発及び利用の推進、海洋環境の保全、排他的経済水域等の開発等の推進、海上輸送の確保等のために必要な措置を講ずること、

 第五に、内閣に総合海洋政策本部を置くとともに、本部の長に内閣総理大臣を、副本部長に内閣官房長官及び海洋政策担当大臣をもって充てること

などであります。

 次に、海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律案について申し上げます。

 本案は、海洋構築物等の安全及び当該海洋構築物等の周辺の海域における船舶の航行の安全を確保するため、所要の措置を定めようとするもので、その主な内容は、

 第一に、国土交通大臣は、海洋構築物等の安全及び当該海洋構築物等の周辺の海域における船舶の航行の安全を確保するため、国連海洋法条約に定めるところにより、安全水域を設定することができること、

 第二に、安全水域の設定は、特定行政機関の長の要請に基づき行うこと、

 第三に、船舶の運転の自由を失った場合等を除き、何人も、国土交通大臣の許可を受けなければ安全水域に入域してはならないこと

などであります。

 以上が、両案の趣旨及び内容であります。

 両案は、本日の国土交通委員会におきまして、全会一致をもって委員会提出法律案として提出することに決したものであります。

 なお、海洋基本法案につきましては、新たな海洋立国の推進に関する件を本委員会の決議として議決したことを申し添えます。

 何とぞ速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案を一括して採決いたします。

 両案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両案とも可決いたしました。

     ――――◇―――――

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外二名提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣柳澤伯夫君。

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 近年、就業形態が多様化する中で、短時間労働者については、その数の増加とともにその果たす役割の重要性も増大してきておりますが、短時間労働者の待遇は必ずしもその働きに見合ったものとなっていない状況にあります。短時間労働者一人一人が安心し納得して働くことを可能とし、ひいては我が国の経済社会の活力を維持していくためには、多様な働き方に応じた公正な待遇を実現することが極めて重要な課題となっております。

 こうした状況を踏まえ、政府といたしましては、短時間労働者について、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、その有する能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、その労働条件について文書の交付等により明示するとともに、短時間労働者からその待遇について説明を求められた際には説明をしなければならないこととしております。

 第二に、通常の労働者と同視すべき短時間労働者については、その待遇について短時間労働者であることを理由とした差別を禁止するとともに、それ以外の短時間労働者についても、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保を図るために事業主が講ずべき措置を定めることとしております。

 第三に、事業主は、その雇用する短時間労働者について、通常の労働者への転換を推進するための措置を講じなければならないこととしております。

 第四に、短時間労働者と事業主との間の紛争の解決を図るため、都道府県労働局において調停等を行うこととしております。

 第五に、指定法人である短時間労働援助センターの業務の見直しを行うこととしております。

 最後に、この法律は、一部を除き、平成二十年四月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 提出者西村智奈美君。

    〔西村智奈美君登壇〕

西村智奈美君 民主党の西村智奈美でございます。

 ただいま議題となりました民主党提出の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者を代表して趣旨を説明いたします。

 今や、パート労働者は一千二百万人を超え、企業において基幹的、恒常的な労働力として重要な役割を果たしています。しかし、その処遇については、労働時間や仕事の内容が正社員とほとんど同じでも、賃金や労働条件において均等な待遇を受けていないことが問題であり、格差拡大の一因となっています。処遇の格差については、国際的にも批判を受けているところです。パート労働法は、一九九三年に制定されて以来、大きな改正が行われていません。労働条件の格差の是正、ワークライフバランスの実現といった社会の要請にこたえていないのは明らかです。

 政府は、再チャレンジ政策の一環としてパート労働法の改正案を提出していますが、パート労働者と通常の労働者の労働条件について差別的取り扱いを禁止する対象が極めて限定的であること、パート労働者から正社員への転換の促進に関する措置が弱いことなどが問題です。これでは、とても格差の是正に資する内容とは言えないことから、民主党は、同一価値労働同一賃金の理念のもとに、パート労働者と通常の労働者との均等な待遇の確保を図るために実質的な法改正を提案いたします。

 以下、本法案の概要について説明いたします。

 第一に、均等待遇の確保について、同一の価値の労働に対しては同一の待遇を確保すべきとの観点から、短時間労働者の就業の実態に応じ、賃金の支払い等につき、通常の労働者とできる限り同等の待遇を確保することを法律に明記します。

 第二に、事業主は、短時間労働者について、均等待遇の確保等を図るために必要な措置を講ずることとします。その措置を講ずるに当たっては、通常の労働者の労働条件を合理的な理由なく低下させることがないように努めることを定めます。

 第三に、事業主は、賃金その他の労働条件について、労働者が短時間労働者であることを理由として、通常の労働者と差別的取り扱いをしてはならないこととします。

 第四に、事業主は、通常の労働者と同種の業務に従事する短時間労働者であって通常の労働者として雇用されることを希望するものに、同種の業務に従事する短時間労働者に対し、応募の機会の優先的な付与とともに、優先的な雇い入れ等の措置を講ずるよう努めなければならないこととします。

 第五に、事業主は、雇用する短時間労働者から求めがあったときには、その待遇の決定に当たって考慮した事項について説明しなければならないとともに、その雇用する通常の労働者の労働条件の一般的水準について説明するよう努めることとします。

 第六に、事業所内の均等待遇を確保するために、事業主は、事業主を代表する者並びに当該事業所の短時間労働者を代表する者及び通常の労働者を代表する者を構成員とした均等待遇等検討委員会を設置するよう努めるものとします。この検討委員会は、短時間労働者の均等待遇の確保等を図るための措置について調査審議し、事業主に対し意見を述べることを目的とします。また、事業主は、一定以上の短時間労働者を雇用する事業所ごとに均等待遇等推進者を選任しなければならないこととします。

 私たちは、パート労働者と通常の労働者との均等待遇の実現のために、これまで二回、同じ趣旨の法案を提出してまいりました。格差是正が喫緊の課題となっている今、法案の重要性を御理解いただき、本法案への御賛同をお願い申し上げて、趣旨説明を終わります。(拍手)

     ――――◇―――――

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。松浪健太君。

    〔松浪健太君登壇〕

松浪健太君 自由民主党の松浪健太であります。本会議場で初の質問に立たせていただき、光栄に存じます。

 私は、ただいま議題となりました短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、公明党を代表して、質問をいたします。(拍手)

 まず最初に、野党民主党の対案を久しぶりに見ることができ、審議拒否に代表される不毛な路線から戻られつつあることを率直に歓迎したいと思います。

 しかしながら、本日も質問通告が直前まで出されていないと聞いております。質問通告は、議論を深めるために長い国会の歴史の中で培われてきた慣例であり、平成十一年の与野党申し合わせ事項であります。審議拒否すると国民の批判が大きいからといってこのような小手先の手段に訴えるのは、質問する側、される側、お互いのためにならず、つまるところ国民の負託に背くものであると断じざるを得ません。不十分な通告で再質問をするのであれば、まさに本末転倒であります。アドリブでのやりとりはぜひ党首討論で存分にやっていただきたいと思います。国会のよき伝統が守られることを切に願うものであります。(拍手)

 それでは本題に入ります。

 我が国におきましては、景気が回復の傾向を示す一方、国民の所得や社会構造がいわゆる格差という二極化の方向に進んでおります。お隣の韓国でも、両極化、ヤングッハという言葉で問題となり、福祉国家と言われる北欧諸国も例外ではありません。先進国に共通の課題とはいえ、人口減少、少子高齢化が最も進行している我が国にあっては、抜本的な対応が求められております。

 こうした中、正規雇用、非正規雇用という言葉が頻繁に使われます。私は、この言葉がまずもってけしからぬと思います。正社員以外の労働者が千六百万人を超え、その所得格差を問題にしようというときに、こうした労働者を正しくあらずと呼ぶ感覚自体に問題があります。この非正規という言葉は法律に規定されているわけではありません。言葉は物事を定義します。名は体をあらわします。厚生労働省におかれましては、例えば、専属雇用と選択雇用とか言いかえて、言葉の使い方、定義から考え直していただきたいと思います。非正規という用語について、厚生労働大臣の所見を伺います。

 私もこれからは非正規という言葉は使わずに質問をいたします。

 さて、今や千二百万人を超えるパート労働者の方々の待遇改善は待ったなしの課題であります。政府案の目玉は、すべてのパート労働者の働き方に応じて正社員との均衡を図る、いわゆる均衡待遇であると聞いております。

 一口にパート労働といっても、さまざまな形態があります。政府案は、パート労働を、一、正社員と同視すべきもの、二、人材活用の仕組みが共通のもの、三、職務が同じもの、四、職務が異なるものという四つのイメージに分類をし、きめ細やかな体系で同一労働同一賃金を目指しています。

 他方、民主党案は、すべてのパート労働者を対象にした差別的取り扱いの禁止をうたっています。そのまま読めば、例えば、一日三時間で短期間パート労働を行っている方に対しても、正社員と同じように退職金、ボーナスを支払い、社宅を貸与するのでしょうか。私には、それが実現可能であるとも、公正な待遇であるとも思えません。このような法案では、同一労働同一賃金のための法案とは言えません。

 そこで、政府案の均衡待遇について伺います。政府案が対象とするパート労働者は限定的であるといった誤解も耳にします。仕事に見合った公正な待遇の実現に向けて、どうなっているのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 また、新規学卒者にとっては、数年前はまだ就職氷河期と呼ばれた時代でありました。企業が新卒採用を控えた結果、正社員として就職を望んだ多くの方々がいわゆるフリーターとなり、新たなチャンスに恵まれず、現在ではフリーターの高齢化が問題視されるまでになりました。たまたま時代のめぐり合わせが悪かったために、チャンスを失った多くの方々に再挑戦の機会が与えられなければなりません。

 そうした中、ユニクロやワールドといった企業が千人単位でパート労働者などを正社員化するという報道を目にするようになりました。こうした先進的な取り組みを企業全体に広げていくために、法の後押しが極めて重要であります。

 しかしながら、民主党案のように、パート労働者の優先採用を企業に求めることは、採用活動を硬直的にします。リストラされた方や生活に困っている失業者の方々よりも、パート労働者を一律に優先することが本当に必要なのかどうか、疑問を持たざるを得ません。

 政府案におけるパート労働者の正社員転換について、厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 パート労働者の方々の待遇改善は、大企業であれ、中小企業であれ、同じく実現されなければなりません。しかしながら、厳しい価格競争の中で努力を重ね、必死で会社を守っておられる中小企業事業主の皆さんに、ただ一方的にお願いするばかりでは責任の丸投げであります。そこで、パート労働者の均衡待遇に取り組む事業主への支援を政府はどうするのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 これまで述べましたとおり、民主党案は、差別禁止も正社員転換も、実態を踏まえない非現実的な内容であります。さらに、格差を是正すると言いながら、正社員の働き方、待遇の見直しはしてはならないことをわざわざ明記しています。資本金一千万円以下の中小企業では、労働分配率が八五%を超え、人件費がぎりぎりのところまで来ている実態を踏まえてなのか、疑問があります。これでは、せっかくのパート労働法を正社員保護法にしているとしか考えられません。支持団体である労働組合が正社員中心に構成されているとはいえ、余りに露骨な条文であります。本気で格差を解消しようとするなら、支持団体と対立をする気概も時には必要ではないかと考えます。

 パート労働以外にも、派遣労働、有期労働などさまざまな雇用形態が広まり、賃金水準、偽装請負、若者の就職などが問題となっています。今国会での法案を含め、対策の全体像について厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 我々与党は、雇用・労働問題に関する与党協議会を設置し、企業の社会的責任を改めて問う労働関係法制の見直しを打ち出します。組合の外に置かれて声を上げることができずにいる労働者の皆さん、パート労働者の労働組合組織率は四%しかないんです。こうした労働者の皆さんの声なき声を、与党はしっかりと受けとめ、真の同一労働同一賃金の原則を実現してまいります。

 国民一人一人が働くことに希望を持ち、喜びを感じられるような社会の実現に向けて、厚生労働大臣の御決意をお聞かせいただき、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 松浪健太議員にお答え申し上げます。

 まず、非正規雇用という言葉につきましてお尋ねがございました。

 長期雇用が保障されている正社員は、企業にとりましては、帰属意識の確保であるとか、長期的人材育成であるとか、あるいは技能継承の面から、それからまた、労働者にとりましては、生活基盤の安定の面から、それぞれメリットのある働き方として定着をいたしてきまして、日本経済を支えてきたものであります。今後とも、私は、この働き方は重要な働き方の形態であるということであると考えております。

 したがいまして、そうでない働き方を総称するという意味で非正規という言葉を使うことも多くなっているということは御指摘のとおりでありますが、他方、我々は、どのような働き方を選択しても、安心、納得して働くことができる雇用環境の整備を進めることも重要であると考えております。したがいまして、そういう事態が進めば、正規、非正規という区別も、自然と重要性が薄くなっていくのではないかと考えております。

 次に、均衡待遇の内容についてお尋ねがありました。

 パート労働者の就業実態は極めて多様でありまして、管理職としての役割を担い、または担い得るような方から、短い時間、補助的な仕事をする方まで、千差万別であります。これを踏まえまして、政府案におきましては、すべてのパート労働者を対象とした、賃金、教育訓練、福利厚生のそれぞれについての成果、意欲、能力、経験等に応じた均衡待遇の確保を図りまして、そのうち、特に正社員と同視できる働き方をしている者を対象とした差別的取り扱いの禁止を求めることとしているわけでございます。

 正社員転換についてお尋ねがありました。

 正社員として働くことを望むパート労働者の方々に対しましては、正規雇用の機会の拡大を図っていくことは重要であると考えております。政府案は、事業主に対して、正社員の募集情報の周知、社内公募への希望の申し出の機会確保、転換制度の導入といった、正社員への転換を推進するための措置を義務づけることといたしておりまして、それぞれの職場の実情に見合った方法で正社員転換を促進することといたしております。

 事業主への支援についてお尋ねがありました。

 事業主におきましては、既に基幹パート労働者の正社員化を図る等、政府案の内容を踏まえた雇用管理の適正化に着手している例も見られるところであります。このような取り組みをさらに推進するため、積極的に均衡待遇に取り組む事業主の支援として、今回のパート労働法改正により、短時間労働援助センターを通じまして、事業主団体や個々の事業主に対する助成を行うことといたしております。

 さまざまな雇用形態への対応についてお尋ねがありました。

 今国会におきましては、どのような働き方を選択しても、安心、納得して働くことのできる環境の整備を図るために、パート労働法の改正のほか、最低賃金制度の見直し、雇用対策法の改正、労働契約法の制定などの法案を提出しているところでございます。また、労働者派遣法違反であるいわゆる偽装請負につきましては、今後とも、その防止、解消に最大限の努力をしてまいる所存であります。

 働くことに希望、喜びを持てる社会の実現に向けた考え方についてお尋ねがございました。

 働くことは、人間の尊厳ある生活の基盤を支えるものであると考えております。この観点から、労働行政は、国民一人一人に、安定し充実した職業生活を確保し、そのことによって、国民の福祉の向上と経済の発展に努めていくべきものであると考えております。

 このような考え方のもと、国民がどのような働き方を選択しても、安心、納得して働くことができる社会を実現するため、必要な法制度の整備等について、引き続き全力で取り組んでまいる所存でございます。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 菊田真紀子君。

    〔菊田真紀子君登壇〕

菊田真紀子君 民主党の菊田真紀子でございます。

 ただいま与党の質問者がいろいろおっしゃっておられましたが、そんなに民主党案に対してお聞きしたいことがあるならば、正々堂々、ここで民主党案に対しても御質問をしていただきたかったと思っております。一言申し上げさせていただきます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました内閣提出の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案及び民主党提出の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案、いわゆるパート労働者の均等待遇推進法案について質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、冒頭、大阪、福岡に続いて三月二十三日に東京地裁で国が敗訴した薬害肝炎に関して、どうしてもお伺いさせていただきたいと思います。

 肝炎患者の皆さんは、今こうしている間も、国による救済を一日千秋の思いで待っておられます。これらの問題は、本当に裁判だけに、司法だけに任せておいてよい問題なのでしょうか。今こそ政治の出番であり、党派を超えた国会議員の政治的な決断で患者さんの早期救済に全力で取り組んでいくべきだと思います。

 先月の三十日、三つの判決をかたくなに受け入れず、患者の救済を放置して控訴しようとする政府に対して、薬害肝炎の患者さんたちはまさに命がけの座り込みを行いました。その場に我が党の小沢代表が激励に行き、民主党挙げてこの問題に取り組むことをお約束しました。また、同じ日に、下村官房副長官は、官邸で原告の代表とお会いになり、安倍総理の伝言として、与党と一体となって解決に向けて取り組んでいくと話されたとお聞きしました。ついては、どのような救済策をいつまでに決めるお考えなのか、厚生労働大臣からお聞かせをいただきたいと思います。

 それでは、本題に入らせていただきます。

 今や、働く人の三人に一人、約千六百万人が、正社員ではない、パート、有期雇用、派遣、請負など非正規雇用となっています。また、働いても働いても生活保護世帯以下の生活しかできない、ワーキングプアと言われる人々は四百万人に上るとも言われます。美しい国という言葉を自画自賛し自己陶酔しているような安倍総理の目に、こうした人々のぎりぎりの暮らしは一体どれだけ見えているのでしょうか。

 格差是正は待ったなしです。逃げることなく、真っ正面から現実を直視していただかなくてはなりません。もしも、安倍政権が掲げる再チャレンジ政策が看板だけでなく、口先だけではないとおっしゃるならば、ぜひとも、具体的で実効性のある中身で政府の真剣さ、本気さを示し、すべての働く人々に安心と希望を与えていただきたいと思います。

 今や日本のパート労働者は約千二百万人に上り、正社員と同じ内容の仕事をし、残業をし、会社のために一生懸命働いているにもかかわらず、パート社員という雇用形態の違いから、労働条件には大きな格差が存在しています。一つの例として、二〇〇五年の統計では、男性正社員の平均所定内給与に対し、男性パート社員は五二・五%、女性パート社員は四六・二%となっており、給与の格差は依然として大きく広がったままです。

 さらに、パートなど非正規の社員には、ボーナスや家族手当等が支払われず、教育訓練の機会もほとんど与えられません。長年パートとして働き、経験を積み、いつかは正社員になりたいと願い努力し続けても、現実には正社員登用への道は閉ざされたままであり、正社員と非正規社員との間には、所得だけでなく、さまざまな待遇の格差が大きく拡大し、しかも固定化しているのであります。

 政府は、このような状況を予測できなかったのでしょうか。なぜ、今日に至るまで放置し続けたのでしょうか。正規社員と非正規社員との間にどんどん格差が広がっても、それは仕方のないことだという認識だったのでしょうか。まず、厚生労働大臣にお伺いします。

 政府は、今回の法改正に、パート労働者の差別的取り扱いの禁止を盛り込み、これを大きな前進であると自画自賛しています。しかし、政府案では、差別的取り扱いの対象となるのは、正社員と同視すべきパート労働者で、すなわち、正社員と職務の内容が同じ、転勤や配置転換等の人事管理条件が同じ、期間の定めのない労働契約を締結しているという三点セットの要件がかかっています。果たして、このような条件に合うパート労働者がどれだけいるのでしょうか。

 委員会審議の中で、厚生労働大臣は、そのような調査は行っていない、四%から五%程度ではないかというあいまいな答弁しかされていません。私も、この週末、地元新潟の現状をいろいろ聞いてみましたが、果たしてそんなにいるのだろうかというのが実感であります。

 政府は、どれだけ対象者がいるのかいないのかもわからない差別禁止規定をつくって、どんな意味があるのでしょうか。再チャレンジ政策の目玉として胸を張って提出された割には、これでは全くのかけ声倒れ、格差是正とはほど遠いではありませんか。私は、ここで改めて、差別禁止規定の対象となる方は一体どれだけいるのか、調査を行うつもりなのか、厚生労働大臣にお伺いします。また、民主党案は、差別禁止規定の対象はどうなっているのか、提出者にお伺いいたします。

 政府案では、大部分のパート労働者は、差別的取り扱いの禁止の対象とならず、現行指針に倣い、均衡処遇の努力義務とすることにとどめています。努力義務では企業は動かず、逆に、正社員並みパートを減らして、ほかのパートをふやすことになりませんか。これでは、差別を放置しても許されることになり、かえって格差が固定化されかねません。政府案は、正社員とすべて同じに働くのでなければ差別しても構わないと言っているのに等しく、この法案はパート差別拡大法案ではないかと言わざるを得ません。努力義務で、現状の格差がどの程度改善されると考えるのか、厚生労働大臣に伺います。

 政府の経済財政諮問会議でも、同一価値労働同一賃金という考え方が議論されているように聞いております。しかし、私どもはパート労働者の労働条件の改善、格差是正を目指しているのに対し、政府内では目指す方向性が逆で、パート労働者の水準まで正社員の労働条件を下げればよいではないかとの考え方が示されていると報道されています。現実に、非正規社員の賃金引き上げに伴って、正社員の給与を減らしたという企業もあります。

 このように、政府は、正社員の労働条件を切り下げてパート労働者との均衡を図ることを容認する考えなのか、厚生労働大臣に伺います。また、正社員の労働条件の切り下げを防止する具体的な規定があるのか、厚生労働大臣及び民主党案提出者に伺います。

 パート、アルバイト等から正社員への転換といっても簡単な話ではありません。何年勤務してもパートのままで、いつまでたっても正社員になれないことに不満を持っている方は、二十五歳から五十九歳までの働き盛りの男性で特に高くなっていることは、厚生労働省の調査でも明らかです。

 政府は、この法改正のもう一つの目玉としてパート労働者の正社員転換を推進する措置を挙げていますが、正社員募集のパート労働者への周知、配置転換を希望する申し出の機会の付与、正社員への転換試験制度の創設等のうち、どれか一つを実施すればよいことになっています。このような法改正で現行と何が変わるのでしょうか。これによって年間何人が正社員に転換すると見込んでいますか。その実効性について厚生労働大臣に見解を伺います。民主党案についてはどうでしょうか。民主党は均等な待遇を基本にしていますが、正社員への転換についてはどう考えますか。提出者に説明を求めます。

 パート労働者がふえている中で、パート労働者の厚生年金への加入の拡大が大きな課題となっています。民主党は、すべての年金を一元化し、すべての国民が加入する年金制度の創設を提案しております。現行制度では、正社員の四分の三に当たる週三十時間以上働く場合に限り、厚生年金の適用が義務づけられていますが、政府はこれを週二十時間以上に引き下げ、かつ、残業手当などを除き、月収九万八千円以上、勤続一年以上、中小企業と学生は除外するといった要件を検討しています。適用拡大の対象となるのは十万人から二十万人程度と推定されましたが、これではほとんどが対象にならず、またもやポーズだけでお茶を濁すということではありませんか。しかも、自民党内でも、厚生年金の適用拡大には慎重意見が根強く、拡大対象をさらに限定することになると聞いています。

 政府案では、結局、どのような条件のパート労働者なら適用拡大の対象となるのか、現在よりも何人ふえるのか、厚生労働大臣に御答弁をお願いします。また、このパート適用拡大によって生じる国の財政的な影響、及びこれに関連して所得税上の変更を検討しているか、財務大臣にお伺いします。

 最後に、政府は景気は回復したと繰り返し発表しておりますが、地方においては全くそのような実感も自信も持てません。私の地元は、いまだ災害からの復興途中にあり、中小零細企業、地場産業、商店街、農家は依然として苦境の中であえいでいます。せっかく大学を出て、地元に戻り、就職したくとも採用がありません。正社員として働きたくても働けない人たちが大勢います。職安に通うことさえ嫌になり、家に引きこもってしまう若い人がふえました。このような社会は、安倍総理が目指す美しい国とは全く反対の方向に向かっているのではありませんか。もっと真剣に、もっと深刻にこうした地方の現実を直視してください。

 私たち民主党は、今国会に格差是正緊急措置法案を提出させていただきました。格差是正に本気で取り組むのは果たして与党なのか、それとも私たち民主党なのか、この法案審議を通して大いに競い合っていこうではありませんか。活発な議論を期待して、私の質問を終わります。

 御静聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 菊田真紀子議員にお答え申し上げます。

 先日、三月三十日に官房副長官が肝炎患者の方々、特に原告団の代表の方とお会いしたということを御指摘いただきましたが、このことは私も承知をいたしているところでございます。

 肝炎患者に係る対策につきましては、厚生労働省としては、現在行っております検査・診療体制の強化、治療方法の開発等の取り組みを推進しているところであります。今後、引き続き総合的に検討してまいる所存であります。

 正規、非正規の格差の拡大につきまして、政府の対応についてお尋ねがありました。

 格差につきましては、政府は、本国会審議におきましても、合理性を欠く格差については認められない、あるいは格差の固定化は適当でないという姿勢を一貫して説明してまいりました。今回のパート労働法の改正も、その他御審議をお願いする労働法改正各案とともに、政府のこのような政策態度の一環として取り上げておるところでございます。

 すなわち、パート労働法の改正は、正社員並みの働きをしていながら、それに見合った待遇を受けていない方、あるいは、正社員として働くことを希望しながら、希望がかなわずパート労働者として働いている方などにつきまして、格差を固定せず、どのような働き方を選択しても、安心し、納得して働ける環境を整備しよう、こういうことを企図して提案をさせていただいているものでございます。

 次に、政府案における差別的取り扱い禁止の対象者についてお尋ねがございました。

 この対象者につきましては、その要件を今回新たに定めましたために、直接対象者を示す過去の統計データは存在しておりません。このため、既に把握しているデータの中から最も近いデータとして平成十三年の調査をもとに、四、五%程度と考えているということをお答えしているところでございます。

 新たな調査につきましては、事業所、事業主、労働者のいずれに対するものも正確な内容を得にくい上、事業主は既に政府案の内容を踏まえまして雇用管理の適正化に着手するなど状況の変化が著しく、対象者を調査によって新たに把握するということは困難であろう、このように考えております。

 均衡待遇の、格差解消への実効性についてお尋ねがございました。

 政府案は、努力義務も行政指導の対象としておりまして、問題があった場合には都道府県労働局長が助言、指導、勧告を行うことといたしておりまして、実効性を確保していくことが可能である、このように確信をいたしております。

 正社員の待遇の引き下げについてお尋ねがありました。

 均衡待遇の確保に当たって正社員の労働条件を見直すということにつきましては、企業や経済の活動全体の底上げがなされ、正社員とパート労働者双方の労働条件が改善する中で進められることが望ましいと考えております。政府案では正社員の待遇引き下げを防止する規定は置いてはおりませんけれども、労働条件の引き下げについて、事業主の一存で合理的な理由もなく行われることは、およそ法的に容認されないものと考えております。

 正社員への転換の実効性についてお尋ねがありました。

 正社員として働くことを望むパート労働者の方々に対しまして、正規雇用の機会の拡大を図っていくことは重要であると考えております。

 政府案は、事業主に対して、正社員の募集情報の周知、社内公募への希望申し出の機会確保、それから転換制度の導入といった、正社員への転換を推進するための措置を義務づけております。このように、職場の実情に見合った方法で正社員転換を促進することといたしており、これによりまして実効性ある正社員転換が確保されるものと考えております。

 厚生年金のパート労働者への拡大につきましてお尋ねがありました。

 まず、適用拡大をする場合の対象人数についてでありますが、パート労働者千二百万人のうち約三百万人は、現行の基準によって既に厚生年金の適用を受けているのでございます。パート労働者に対する厚生年金の適用拡大について今回検討している案では、就労時間、賃金水準、勤務期間などの要件を設けることといたしておりまして、新たに適用対象となる人数は御指摘の程度と考えております。

 次に、パート労働者に厚生年金適用拡大をする場合の年金財政への影響についてでございますが、パート労働者への厚生年金の適用拡大により、厚生年金財政につきましては、保険料収入が増加する一方で、報酬比例部分の年金給付や基礎年金拠出金が増加することから、長期的にはほとんど影響が生じないものと考えております。

 なお、この適用拡大は、再チャレンジを支援し、被用者としての年金保障を充実させる観点などから行うものでありまして、年金財政を改善するために行うものでは当初からないということを御理解賜りたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣尾身幸次君登壇〕

国務大臣(尾身幸次君) 菊田議員からの御質問についてお答えいたします。

 パート労働者の厚生年金適用拡大についてお尋ねがありました。

 パート労働者への厚生年金の適用拡大については、再チャレンジを支援し、被用者としての年金保障を充実させる観点などから、厚生労働省において検討を進めているところであります。

 厚生年金財政への影響については、保険料収入が増加する一方、厚生年金の給付面も増加することから、長期的にはほとんど影響がないものと承知しております。

 なお、年金国庫負担については、もともとすべての国民が対象となっている基礎年金の給付費の財源となるものであることから、今回の厚生年金適用拡大によって基本的に影響はないものと承知しております。

 パート労働者の厚生年金の適用拡大と所得税上の変更についてのお尋ねがありました。

 パート労働者が支払う厚生年金保険料は、現行の所得税法においても社会保険料控除の対象となり、その全額が課税対象となる所得から控除されます。したがって、厚生年金の適用がパート労働者に拡大することとなった場合であっても、この社会保険料控除の取り扱いを変更する必要はないと考えています。

 また、パート労働者について厚生年金の適用が拡大されることにより、厚生年金保険料には増減が生じることになりますが、今回の厚生年金の適用拡大は、パート労働者に対する年金保障を充実させるなどの観点から検討が進められているところであります。厚生年金保険料は、被用者の将来の年金給付のための、所得に応じて負担を求めるものであり、先ほど申し上げましたとおり、その全額が所得税の課税対象となる所得から控除されることを踏まえれば、今回の厚生年金のパート労働者への適用拡大に伴い、所得税法上の取り扱いを変更する必要はないと考えております。(拍手)

    〔西村智奈美君登壇〕

西村智奈美君 菊田議員から、民主党案につきまして、差別禁止規定の対象はどうなっているかという御質問をいただきました。

 結論から申し上げれば、民主党案では、すべてのパート労働者が差別禁止規定の対象となります。

 パート労働については、おのおののライフステージにおいて、短時間労働を選択するケースもあれば、正社員とほとんど労働時間や仕事の内容が同じというケースもあります。柳澤大臣はパートの働き方が千差万別であると答弁されておられましたけれども、身分はパート労働であっても、実際には基幹的、恒常的な労働力としての役割を担っている方は大変多くあります。また、どのパート労働者も、企業にとって重要な働き手であるということに違いはありません。しかし、現状では、このパート労働者の働きに見合った処遇となっていないことが重要な問題なわけでございます。

 先ほど、自民党議員の方が民主党案に言及した折に、ボーナスのことをちょっと触れられたんでしょうか。私には、三時間働いている人にボーナスを出すのはだめだと言っているように聞こえたんですけれども、果たしてそうなのでしょうか。そもそも、この均等処遇の問題は、ボーナスの問題を含みますけれども、それだけではありません。全般的な均等処遇の推進ということが重要なわけでありまして、そこをよく御理解いただきたいと思います。

 そこで、私たち民主党の案では、政府案のように、ごく一部の限られた範囲のパート労働者についてのみ差別的取り扱いを禁止するのではなく、すべてのパート労働者に対して差別的取り扱いを禁止することといたしました。

 菊田議員もお地元の例を引かれておられましたけれども、いろいろな報道を通じて、大手スーパーの人事担当者が、政府案の差別禁止の対象になる人はいない、ゼロだというふうに報道をされておられます。私たち民主党の案では、政府案のように、対象を限定として、パート労働を分断するような法案になっていないことを答弁申し上げます。(拍手)

    〔小宮山洋子君登壇〕

小宮山洋子君 菊田真紀子議員からの二つの質問についてお答えをいたします。

 まず、民主党の正社員の労働条件の切り下げの規定についてお尋ねがありました。

 民主党案は、すべてのパート労働者に対して均等待遇の確保等を図ることを事業主に求めていますが、そこで、万が一にも、均等待遇の確保等を図るためということを逆手にとって、正社員の賃金、その他の労働条件が不当に切り下げられることがないように、通常の労働者の労働条件を低下させてはならないという努力義務規定を第三条二項に定めております。

 質問者も幾つか例を挙げられましたけれども、こういう規定を置きませんと、例えば、パートと正社員の処遇を整理したいということで、就業規則を変更して、正社員は転居を伴う転勤あるいは残業を予定する社員として、パートは予定しない社員という区分を明文化して処遇の見直しを図ることとしたケースがあります。その結果、正社員で転居を伴う転勤や残業に応じられない社員が、パートへの転換措置が講じられる。このようなケースもあるからです。こういうことを防ぐためには、やはり労働条件を低下させてはならないという規定を法文の中に置く必要があると考えまして、民主党ではそういう規定を置いております。

 次に、民主党の正社員転換促進についての規定についてのお尋ねですが、民主党案では、希望するパート労働者の正社員化を促進するために、事業主に対して、正社員と同種の業務に従事するパート労働者に対する正社員への応募の機会の優先的な付与とともに、他の応募者の就業の機会の確保についても配慮をしつつ、優先的な雇い入れ等の努力義務を第七条の二に定めています。

 先ほど、自民党の方は、こちらに質問されるのではなくて、一方的に批判をされましたけれども、私たちは、きちんと他の応募者の就業の機会の確保に配慮をしつつ、優先的な雇い入れ等の努力義務という形で、非常に現実的な規定をしていると考えております。政府案では、例えば正社員募集の掲示を出せば足りてしまうということも想定されますから、民主党案の方がより積極的な内容となっていると考えております。

 そして、これに関連して、質問者が言われたとおり、民主党案では、平等な均等待遇ということを基本にしております。同一価値労働同一賃金ということがきちんと確保できるように、各事業所の中に、検討委員会という、物差しをつくるという仕組みを導入しています。これは、これまでになかったことだというふうに考えています。

 政府の方でも、ワークライフバランスというのが少子化への対応のためにも必要だと言っておいでですけれども、やはり、パートが身分も処遇も違うという現状の中では、きちんと同一価値労働同一賃金の法整備がないと、子育てなどで家族が必要としているときに安心して短い時間働くこともできません。パートがこのように、短時間労働ということだけではなくて、身分や処遇に差があるということは、ヨーロッパなどでは考えられないことです。しっかりと、働ける時間を安心して働けるようにするには、一時間当たり同じ価値の仕事をしたら同じ報酬がある、そういう法整備がぜひとも必要だと私たちは考えております。

 ただ、日本の場合は、就職じゃなくて就社と言われるように、会社に入ってそれぞれの仕事をきちんとはかる物差しがなかった、そのことが均等待遇、同一価値労働同一賃金が実現できないもとにあったわけです。私たちは、各事業所の中で検討委員会をつくって、事業主の代表、正社員の代表、そしてパートの代表が入る中で、その事業所ごとに物差しをつくるという仕組みを、一歩踏み込んでそれをつくったということが今回の私たちの法案の特徴だと考えております。そういう意味で、民主党案の方が政府案よりすぐれているということを確信しております。

 自民党、与党の提出者も、批判のための批判をされるのではなく、必要があれば、質問をしていただければきちんと答えますし、私ども民主党案の内容はすぐれていると自負をしておりますので、しっかりと審議の中で真摯な議論をしていただくよう強く希望いたします。

 以上でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

    〔議長退席、副議長着席〕

     ――――◇―――――

 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

副議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。環境大臣若林正俊君。

    〔国務大臣若林正俊君登壇〕

国務大臣(若林正俊君) ただいま議題となりました自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 大都市地域を中心とする二酸化窒素及び浮遊粒子状物質による大気汚染については、自動車排出ガスに対する累次の規制に加え、本法に基づいた特別の排出基準の設定等、各般の対策を実施してきており、その結果、大気環境基準の達成状況については改善傾向が見られております。

 しかしながら、一方で、大都市地域において自動車交通量が多い道路が交差している一部の地区等においては、大気環境基準の非達成の状況が長期間にわたり継続しております。このような地区においては、大型車両の混入率が高いことや道路の構造上の問題等により、大気環境の改善が妨げられている状況にあります。また、窒素酸化物対策地域等の外から流入する排出基準を満たしていない自動車が大気環境に悪影響を与えており、このような地区における大気環境の改善が十分に進展しないおそれがあります。

 このため、新たに、このような地区の大気環境の改善を図るための重点的な対策を講ずることとし、大気環境基準が達成されていない地域について、できる限り早期の達成を図るとともに、既に達成されている地域については、その状況を維持するため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の概要を御説明申し上げます。

 第一に、大気汚染が特に著しい特定の地区に関する計画策定等についてであります。

 都道府県知事は、窒素酸化物対策地域内において大気汚染が特に著しい地区を、窒素酸化物重点対策地区として指定することができることとし、指定された地区について、窒素酸化物重点対策計画を定めなければならないこととしております。また、窒素酸化物重点対策地区内において特定の用途に供される建物を新設する者に対して、事業活動に伴い自動車から排出される窒素酸化物の排出の抑制のための配慮事項等に関する届け出を義務づけ、当該届け出に係る勧告等の制度を設けることとしております。なお、粒子状物質についても同様の制度を設けることとしております。

 第二に、事業活動に伴い自動車から排出される窒素酸化物等の排出の抑制のための措置の拡充についてであります。

 窒素酸化物重点対策地区等のうち指定された地区において、窒素酸化物対策地域等の周辺の地域内に使用の本拠の位置を有する自動車を運行する一定の事業者に対し、自動車から排出される窒素酸化物等の排出の抑制に関する計画の作成等を義務づけることとしております。また、窒素酸化物対策地域等において、窒素酸化物対策地域等の周辺の地域内に使用の本拠の位置を有する自動車を運行する事業者等について、自動車から排出される窒素酸化物等の排出の抑制等に努めることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

副議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。田島一成君。

    〔田島一成君登壇〕

田島一成君 民主党の田島一成でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりましたいわゆる自動車NOx・PM法の改正案について質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、先月二十五日、能登半島で発生をいたしました地震において、被害に遭われた皆様に衷心よりお見舞いを申し上げますとともに、犠牲となられた方々に心から御冥福をお祈り申し上げます。

 民主党は、この地震被害に対し、いち早く鳩山幹事長が現地に入るなど、現状把握等に努めてもまいりました。今回の地震により、大切な我が家を失われた方々も多く、いまだ不自由な避難所生活をされている方々も数多くいらっしゃいます。そのような中で、被災者の方々への支援と現地の復興が何より大きな課題となっております。

 民主党は、以前より、政府による被災者の方々への生活支援は極めて不十分なものであると指摘をし、被災者の方々が困難な生活から再建に取り組めるよう、被災者生活再建支援法の抜本改正を訴えてまいりました。残念ながら、与党の皆さんの理解を得られず、民主党が目指す被災者の方々への手厚い支援対策はいまだ実現しておりません。まことに遺憾のきわみであります。

 民主党は、今後とも、被災者の立場に立ち、被災者の皆様への最善の対策を行うため、政府に対し、一層粘り強く、強く働きかけていく所存であります。

 さて、本題に入ります。

 まず、環境基準未達成の最大の元凶とされている流入車対策についてお聞きいたします。

 対策地域外から入ってくる、いわゆる流入車については、排出基準に適合していない自動車の流入割合が高い点や、長年にわたり大気汚染が著しい局地汚染地域においては他の対策地域よりも流入車の交通量が多い点が、総務省の行政評価などでも指摘をされています。

 このような流入車の現状を踏まえると、現在、東京都などの首都圏や兵庫県において条例により実施をされている流入車規制のように、その自動車がどこで車両登録されていようとも、対象となる地域内の走行を禁止すべきだと私は考えます。

 ところが、この点について、政府は、規制を強化すれば人員不足や費用不足などの問題が起きるとおっしゃっているようでありますが、東京都や兵庫県などで既に実施できていることが、なぜ国ではできないのでしょうか。不可解きわまりないというよりほかはありません。例えば、監視をするべき地点を重点的に絞るとか、また、排出基準に適合した自動車であるかどうか容易に確認できるようなステッカー制度を導入するなど、簡単に実施できる方法は幾らでもあるのではないでしょうか。

 また、現行法のように、対策地域外からの車両が無規制というのは、公平性の観点からも問題があると言えます。

 そこで、流入車が及ぼす影響を真摯に受けとめ、少なくとも幾つかの自治体で先進的に行われている流入車規制を国として行う考えがあるのか、もしその考えがないのであれば、その理由は何なのか、環境大臣のお答えをお願いいたします。

 さらに、本改正案においては、対策地域の周辺地域に自動車登録をしているトラックやバス等を使って対策地域内に貨物や旅客を運ぶ運送事業者や対策地域内のデパート等の荷主に対しては、事業活動に伴った自動車の排ガスについて、排出抑制に努めなければならないと努力義務しか課してはおりません。

 これは、ことし二月の中央環境審議会が行った環境大臣の意見具申、ひいては中環審の大気環境部会自動車排出ガス総合対策小委員会の平成十七年十二月に示された今後の自動車排出ガス総合対策中間報告から見ても、明らかな後退であります。

 そこで、今回、荷主等に対する自動車の排ガス排出抑制義務が、なぜ単なる努力義務にトーンダウンしてしまったのか、その理由について、環境大臣の明確な答弁をお願いいたします。

 次に、粒子状物質の中でも、その粒径が二・五マイクロメートル以下の微小粒子状物質の総称であります、いわゆるPM二・五についてお尋ねをいたします。

 このPM二・五は、その小ささゆえに肺に沈着しやすく、がんや気管支ぜんそくなどとの関連性が強く懸念をされております。さらに問題なのは、ディーゼル自動車から排出されるディーゼル排気の微粒子は、PM二・五の代表的物質であるということであります。現在、このPM二・五について、我が国においてはいまだに環境基準が設定されておりません。

 一方、アメリカでは、このPM二・五について、既に約十年前に環境基準が設定をされております。アメリカにはできて、なぜ我が国にはできないのでしょうか。今また、行政による規制のおくれから多くの健康被害者を生み出すという、アスベストやダイオキシンの場合と同じわだちを踏もうとでもいうのでしょうか。

 もし、我が国でもアメリカと同じ環境基準で規制がなされたのなら、東京都における心血管疾患や肺がんなどで亡くなられる方のうち、約五千人以上を救うことができるといった研究報告も、昨年、報道をされています。環境基準を設定し、所要の対策を講じれば、多くの人命を救うことができるのです。政府は、どうして今すぐにでもやらないのでしょうか。政府の対応は余りに遅過ぎるのではないでしょうか。人の健康、人の命以上に優先すべきものが、この世の中にあるのでしょうか。私は、一刻も早く、このPM二・五の環境基準を設定することを強く要望したいと思います。

 このPM二・五の環境基準の設定について、発がん性が指摘をされている恐ろしい物質であるにもかかわらず、なぜ早急にこれをやろうとしてこなかったのか。また、今後も設定をする意思がないのか。その意思があるのなら、いつまでに設定をする方針なのか、環境大臣の答弁を求めます。

 最後に、現在、和解協議中の東京大気汚染公害訴訟について、お尋ねをいたします。

 政府は、この自動車NOx・PM法の改正案を、東京大気汚染公害訴訟の和解協議における原告の方々からの要求である交通公害対策の目玉として考えている、そんな書きぶりの新聞報道を目にいたしました。

 ところが、今回の改正案で対策の実効性が確保できるとは、到底考えられません。改正案で新たな対策を設けたところで、実効性があるかどうかわからない程度のものであるにもかかわらず、これを和解協議の目玉であると政府が本気で考えているのだとすれば、これは原告の方々を愚弄するものと言わざるを得ません。

 さらに申せば、原告の方々が裁判で一番強く求めていらっしゃるのは、国の謝罪や損害賠償であります。

 東京都は新たな助成制度の創設を表明しておりますし、自動車メーカー各社も、この和解に向けての前向きな検討がなされていると聞いています。

 翻って、国はどうでしょうか。賠償や医療費助成には全く否定的であり、さらに、東京都の提案するこの新しい助成制度への参加すら応じようとはせず、国だけが大気汚染患者の方々に対して無慈悲な対応をとり続けているのではないでしょうか。一九九五年七月、西淀川訴訟判決以来、司法の場において五度にわたって自動車の排ガスとぜんそくの因果関係が肯定をされ、道路管理者としての国の責任が明確に認められているにもかかわらず、国は、今もって、自動車の排ガスと気管支ぜんそくの因果関係は証明されていないとか、科学的知見が不十分であり、今後も調査が必要であるなどと強弁をし、自動車の排ガス汚染により健康を奪われ、苦しんでいる多くの被害者を見殺しにしているではありませんか。

 実効性ある自動車の排ガス対策をとらず、無策のまま放置をしてきたこの責任をよそに、今まさにぜんそく等の健康被害に苦しんでいらっしゃる大勢の皆さんに対し、国は一体いつまで待てと言うのでしょうか。

 水俣病しかり、アスベスト問題しかり、そしてこの大気汚染問題と、政府の余りの無策と健康被害者の方々への冷酷な対応に対して、私ども民主党は、環境健康被害者の救済制度に関する新規立法を検討しております。行政みずからが救済の範囲を狭めるような認定基準を設定、運用し、基準に漏れた患者の方々を切り捨てるような冷酷なものではありません。中立公平で独立の専門機関が認定基準を策定し、これに基づいて認定が行われるといった制度であります。たとえ、そのときの科学的知見をもっては健康被害の完全な原因究明が不可能であったとしても、環境汚染に起因する蓋然性が高いと判断すべき環境被害については、被害者に対して必要な救済を迅速に図ることができる先進的な制度の創設であります。

 そこで、民主党が現在検討を進めている新たな環境健康被害者の救済制度に対する政府の御所見をお聞きするとともに、政府は、このようなあらゆる健康被害者の救済制度をつくるつもりがあるのか、環境大臣の明確な答弁をお願いいたします。

 さらに、昨年九月二十八日、東京高等裁判所が、裁判所としてはできる限り早く抜本的、最終的な解決を図りたいとの解決を促す勧告を行いましたが、東京大気汚染公害訴訟に対し、政府として今後具体的にどのような姿勢で臨んでいく方針なのか。とりわけ安倍総理は、内閣支持率を気遣ってか、はたまた国のこれまでの対応を深く理解せずしてか、国に資金負担が求められている医療費助成制度については検討すると語ったとの報道がなされております。官房長官、総理のこの発言についての真意をお答えください。

 また、憲法第二十五条により、国は、すべての国民に対し、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利の実現のため重大な責務を負っているはずであります。原告の方々が被害者救済を求め続けた東京大気汚染公害裁判は、既に十年を経過し、裁判の途中で亡くなられた原告も既に百名を超えていると聞いています。これらの方々に対して、国は何と答えていくのか。総理にお尋ねをしたいところではありますが、官房長官にお尋ねをし、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣若林正俊君登壇〕

国務大臣(若林正俊君) 自治体で先進的に行われている流入車規制を国として行う考えがあるのかどうかとのお尋ねがございました。

 今回の改正案における流入車対策は、貨物運送事業者等に対し、NOx・PM排出抑制のための計画作成の義務づけ等を行うものであり、事業者による主体的な取り組みを促すものです。

 その取り組みは、適正運転の実施から車両の積載効率の向上まで幅広い措置に及ぶものであることから、幾つかの自治体で流入車対策として実施されている走行規制のような措置を導入しなくても、大気環境の一層の改善に効果を上げることができるものと考えているところでございます。

 いずれにしましても、大気環境の改善は、自動車NOx・PM法による三大都市圏に共通する措置と、東京都などの自治体の個別の取り組みとが相まって効果的に進められるものと考えております。

 次に、荷主による自動車排出ガスの排出抑制を努力義務というふうに今回の法案にした、その理由についてお尋ねがございました。

 中央環境審議会の意見具申、これは平成十九年二月二十三日でございますが、そこにおきましては、流入車を使用する自動車運送事業者や流入車を発生させる荷主に対しては、排出量の抑制のために必要な取り組みを行うべきとされているところでございます。

 今回の改正においては、これを踏まえ、荷主に対して積載効率の向上等、窒素酸化物等の排出の抑制について幅広く努力義務を課し、貨物運送事業者と協力する等により、これを促すこととしたものであり、排出抑制対策として適切なものと考えております。

 次に、PM二・五の環境基準の設定につきまして、大変遅いではないかという御指摘、お尋ねがございました。

 PM二・五の健康影響をも踏まえまして、米国が大気環境基準を設定し、またWHOが大気質ガイドラインを設定したことにつきましては承知いたしております。現在、これらの諸外国の知見に関する情報収集を行っているところであります。

 PM二・五につきましては、環境省において、現在、各種基礎調査研究を実施しており、日本国内におけるPM二・五の健康影響に関する科学的知見の集積に鋭意努めているところであります。現時点では、PM二・五の環境基準を直ちに設定する状況にはありませんけれども、今後も、国内外におけるPM二・五の健康影響に関する科学的知見の集積に努めてまいりたいと思います。

 環境健康被害者の救済制度につきまして、民主党が御検討の案も含めましてお尋ねがございました。

 さまざまな健康被害が生じている場合には、その迅速な救済を図ることが重要であることは言うまでもありません。しかしながら、一般には、健康被害が生じた場合に、その原因者が負担することが原則であり、生じた健康被害の広がりや特性、原因者を明らかにすることができるかどうかなどを見きわめて、個別に考えていく必要があると考えております。

 環境省としては、被害者の方々のできるだけ早い救済という観点から、個々の事例に応じ、何ができるかを検討すべきものと考えており、一般的な形で環境健康被害者の救済制度を創設するという考えは持っておりません。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 田島議員にお答え申し上げます。

 まず、東京大気汚染公害訴訟に対する国の方針と安倍総理の発言についてのお尋ねがございました。

 総理が言われたように、本訴訟の解決に向けて、原告の方々の意見をよく聞きながら、国としてできることを幅広く、誠意を持って検討するとの方針に基づきまして、関係大臣が対応しているところでございます。

 大気汚染による健康被害に対する医療費の助成に関しては、因果関係の解明という大きな課題があり、慎重に対応せざるを得ませんけれども、例えば、自動車排ガス対策の一層の推進や健康相談等を行う事業のニーズに合わせた拡充等、国としてできることについて、幅広く、誠意を持って検討してまいりたいと思います。

 次に、東京大気汚染公害裁判の原告に対する対応についてのお尋ねがございました。

 本訴訟は、提訴から既に十年以上が経過しており、原告団の中には訴訟の解決を待たずに亡くなられた方もいらっしゃると聞いているところでございます。

 国としては、こうした状況も踏まえて、できるだけ早く解決点を探るべく、何ができるかについて原告との話し合いを進めているところであり、引き続き誠意を持って検討してまいります。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣  尾身 幸次君

       厚生労働大臣  柳澤 伯夫君

       農林水産大臣  松岡 利勝君

       国土交通大臣  冬柴 鐵三君

       環境大臣  若林 正俊君

       国務大臣  塩崎 恭久君

 出席副大臣

       厚生労働副大臣 武見 敬三君

       環境副大臣   土屋 品子君


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