衆議院

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第22号 平成19年4月13日(金曜日)

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平成十九年四月十三日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  平成十九年四月十三日

    午後一時開議

 第一 日本国憲法の改正手続に関する法律案(第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出)

 第二 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出)

 第三 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 教育再生に関連する諸法案を審査するため委員四十五人よりなる教育再生に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 日程第一 日本国憲法の改正手続に関する法律案(第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出)

 日程第二 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出)

 日程第三 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案(内閣提出)


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(河野洋平君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。

 教育再生に関連する諸法案を審査するため委員四十五人よりなる教育再生に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決されました特別委員会の委員は追って指名いたします。

     ――――◇―――――

 日程第一 日本国憲法の改正手続に関する法律案(第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出)

 日程第二 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案、日程第二、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。日本国憲法に関する調査特別委員長中山太郎君。

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 日本国憲法の改正手続に関する法律案

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案

 及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中山太郎君登壇〕

中山太郎君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、日本国憲法に関する調査特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 日本国憲法第九十六条には、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。」と定められております。

 両法律案はいずれも、この日本国憲法第九十六条に定める憲法改正について、国民の承認に係る投票に関する手続を定めますとともに、あわせて憲法改正の発議に係る手続の整備を行うことをその主たる内容としておりますが、両法律案を比較いたしますと、おおむね次の六点で相違をいたしております。

 一、憲法改正の承認のほか、国政における重要な案件を国民投票の対象とするか否か、

 二、国民投票の投票権年齢について、満二十年とするか、あるいは満十八年を原則とするか、

 三、国民の承認を得たこととなる過半数の意義について、有効投票総数の過半数とするか、あるいは投票総数の過半数とするか、

 四、国民投票運動が禁止される特定公務員の範囲をどうするか、

 五、公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動の禁止の規定を設けるか否か、

 六、組織的多数人買収罪に関する規定を設けるか否か

であります。

 両法律案は、第百六十四回国会の昨年五月二十六日に提出され、六月一日の本会議においてそれぞれ趣旨説明及び質疑が行われ、同日の本委員会に付託後、直ちに両法律案の提出者から提案理由の説明を聴取いたしました。その後、先国会では、小委員会を設置し、参考人から四回にわたって意見を聴取するなど、審査を進めてまいりました。

 今国会では、去る三月二十二日に公聴会を、二十八日には新潟県及び大阪府においていわゆる地方公聴会を開催し、また今月五日に再度公聴会を開催するなど、慎重に審査を重ねてまいりました。この間、三月二十七日に、保岡興治君外三名から、自由民主党及び公明党の共同提案による両法律案を併合して一案とする修正案が提出され、二十九日に提案理由を聴取いたしました。

 次に、併合修正案の主な内容について御説明を申し上げます。

 第一に、国民投票の対象は、憲法改正国民投票に限定することとした上で、憲法問題予備的国民投票とでも言い得る法制度を中心とした一般的国民投票制度について、検討条項を附則に置くことといたしております。

 第二に、投票権者は、投票権年齢を満十八年以上とした上で、満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができるまでの間、投票権年齢を満二十年以上とする旨の規定を附則に置くこととしております。

 第三に、投票用紙への賛否の記載方法は、あらかじめ投票用紙に印刷された賛成、反対の文字をマルで囲む方式に変更した上で、賛成の投票数が賛成の投票数と反対の投票数の合計数の二分の一を超えた場合に、国民の承認があったものとしております。

 第四に、国民投票運動が禁止される特定公務員の範囲は、選管職員等に限ることとしております。

 第五に、公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の制限につきましては、地位利用の範囲を明確にした上で存置することといたしております。

 その上で、これに違反した場合にも罰則を設けないことといたしております。

 なお、国は、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、検討の上、必要な法制上の措置を講ずる旨附則に規定することといたしております。

 第六に、組織的多数人買収罪は、適用対象及び要件を限定した上で存置することとしております。

 第七に、テレビや新聞等における無料広告枠において、賛成意見、反対意見を公正かつ平等に扱うことといたしております。

 第八に、テレビ、ラジオにおける有料広告の禁止期間を国民投票の期日前二週間に延長するとともに、放送事業者は、国民投票に関する放送については、放送法の規定の趣旨に留意するものとする旨の規定を設けることとしております。

 最後に、この法律の施行期日及び憲法審査会の審査権限につきまして、施行を公布の日から起算して三年を経過した日とすることにしております。

 以上が、併合修正案の趣旨及び内容の概要であります。

 また、枝野幸男君外三名提出の法律案につきましては、今月十日、枝野幸男君外二名から、民主党・無所属クラブの提案による修正案が提出され、昨十二日の委員会において、提出者から提案理由の説明を聴取いたしました。

 その後、両法律案及び両修正案の各案について、これらを一括して質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。次いで、両法律案につきまして内閣の意見を聴取した後、順次各案について採決をいたしましたところ、まず、民主党提案の修正案につきましては、賛成少数をもって否決されました。次に、自由民主党、公明党共同提案の併合修正案につきましては、賛成多数をもって可決され、両法律案は併合して一案とし修正議決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案中、日程第二に対しては、枝野幸男君外二名から、成規により修正案が提出されております。

 この際、修正案の趣旨弁明を許します。枝野幸男君。

    ―――――――――――――

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 ただいま議題となりました民主党提出の修正案につきまして、提出者を代表して、提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 国民投票法制については、憲法改正に対する立場の違いとは関係なく、客観的、中立的な手続として幅広いコンセンサスのもとで制定しなければならないという認識がようやく広まりつつありました。憲法そのものに対する立場の違いを互いに認識しつつも、憲法調査特別委員会では、つくるとすればどのような国民投票法制が望ましいかという観点から、外部の数多くの有識者の方々などの意見にも真摯に耳を傾けながら議論を重ねてまいりました。

 しかし、ことし一月に安倍総理が憲法に関する妄言を繰り返すようになってから、議論の質が一変してしまいました。国民投票法制をめぐる議論のみならず、日本の憲法の議論も、この安倍総理の一連の発言によって、後ほど述べるように、政治論的には十五年、政治思想的には百五十年後退したという印象があります。

 安倍総理の発言をきっかけに、与党の執行部や国対関係者から一方的に法案の衆議院通過スケジュールが喧伝され、これまで真摯に議論を闘わせてきた特別委員会の与党側の委員の皆さんも、不本意だとは思いますが、こうした動きにあらがうことができず、勝手に定めた採決日程どおりに何が何でも運ぼうと、乱暴な委員会運営を進め、昨日の一方的な質疑打ち切りと採決の強行という暴挙に出てしまったのであります。

 強硬路線への転換の背景には、安倍総理の次のような考えがあると思います。すなわち、格差是正など、他の政治課題がうまくいっていないので、無理にでも憲法改正を参議院選挙の争点にしたいとの思惑です。もう一つには、安倍総理の憲法に関する考え、憲法観そのものであります。どうも、安倍総理は憲法の意味を勘違いしており、立憲主義を全く理解していないようであります。聞いていてください、総理。総理、聞いていてください。総理、ちゃんと、本会議中ですから、お聞きをしてください。

 権力組織と……(発言する者あり)

議長(河野洋平君) 御静粛に願います。(発言する者あり)静粛に願います。

枝野幸男君(続) 権力組織とその行使のあり方について定めた法、これが憲法の定義です。そして、権力が濫用されないように、しっかりとした憲法を定め、これによって権力を拘束するというのが近代立憲主義であります。憲法九十九条は、憲法擁護の義務を天皇、公務員に課していますが、国民には課していません。これは、憲法が権力を縛るものであることを意味しています。これは私の意見ではなくて、定義です。

 しかし、安倍総理には、憲法を統治の道具、この国を自分の意見のとおりにするための道具と考えている節が見受けられます。特定の政治家や……(発言する者あり)聞いてください。聞いてください。聞いていただければ賛成していただけると思っているので。

 特定の政治家や政党の理念や政策を実現するための道具として憲法があるのではなく、政治家や政党が理念や政策を実現するために権力を奪い合う上での土俵、手続が憲法であり、権力を持った場合の限界を定めたのが憲法なのであります。したがって、だれか個人や特定政党の理念に基づいた憲法というのは、立憲主義とか民主主義とかいう根本理念まで否定をするなら別でありますが、本来、あり得ないのであります。

 このような憲法の基本的性質も理解していないという意味で、安倍総理は、政治思想的に百五十年後退したものと言わざるを得ません。板垣退助や伊藤博文に象徴される明治維新以来の立憲主義の動き、大正デモクラシーなどへの認識が欠けているのです。総理は、歴史や伝統がお好きなようにお見受けしますが、総理の歴史には、昭和初期から一九四五年までの歴史しか存在せず、例えば、総理と同郷の偉人であります伊藤博文などが立憲主義確立に向けて尽力した明治維新から明治、大正期の歴史を全く御存じではないのかと危惧をいたします。

 五五年体制が崩壊して以降、我が国の憲法をめぐる議論は、ようやく九条のみに焦点を当てた護憲、改憲の神学論争的二元論から脱却し、立憲主義の基本に立ち返り、広範な合意に基づいて、合理的な公権力行使のルールを模索しようという方向に進みつつありました。この間の憲法調査会、憲法調査特別委員会の歩みは、まさにその成果であったはずであります。これを一気に破壊したという意味で、総理は、そして今回の強行採決は、憲法議論を十五年近く後退をさせてしまったのであります。

 国民投票法は、先ほども申し上げましたが、憲法そのものに対する立場を超えて、できるだけ多くの合意に基づいて制定させることが必要です。憲法改正の手続でさえ合意できずに、今後、内容たる憲法改正で合意できるはずがありません。

 もし、近い将来、本当に憲法を改正しようと考えているならば、国民投票法も、少なくとも衆参両院で三分の二以上の賛成で成立させなければなりません。それを目先の思惑で断念するならば、実は、憲法改正を真摯に考えているのではなく、憲法改正と叫ぶこと自体が目的であって、結果的に憲法改正をおくらせても構わないと考えている究極の護憲派であると言わざるを得ません。(拍手)

 さて、与党修正案の趣旨説明では、与党案、民主党案の違いはもうほとんどなくなったとありました。しかし、国政における重要な問題に係る案件の国民投票法制について、与党修正案では、結局何もしなくてもオーケーの規定です。投票権者を十八歳とする点についても、与党修正案では、実施を幾らでも先送りできる余地を残しています。また、与党修正案では、国家公務員法、地方公務員法等に定められた公務員の政治的行為の制限規定について、附則で検討を加えるにとどまっており、国民投票運動についてどう規制されるのかという、国民投票制度の最も重要な部分が先送りされるという致命的な欠陥を抱えています。

 このように、与党修正案は、特別委員会でのこれまでの議論の積み重ねを踏まえているとは言いがたいものでありますし、民主党の考えと与党修正案の間には厳然たる相違点が存在をしています。

 民主党修正案は、これまでの特別委員会での議論を踏まえ、当初の民主党案にこだわることなく、現段階において最も合理的かつ適切な中身となっております。委員会で時間をかけてきっちりとした議論をしていただければ、そのことを丁寧に説明し、論理的には必ず納得していただけると思っております。

 もし、どうしても今すぐ採決するのだとしても、予断を持たずにお聞きをいただいて、判断をしていただければ、与党の皆さんを含め、必ず圧倒的多数の賛同を得て成立させていただけるものと確信をいたしております。(拍手)

 では、本修正案の主な内容について、与党修正案との違いに絞って御説明申し上げます。

 第一に、国民投票の対象については、憲法改正のほか、国民投票の対象とするにふさわしい問題を、間接民主制との整合性を確保しつつ別に法律で定めることとし、その例示として、憲法改正の対象となり得る問題、統治機構に関する問題、生命倫理に関する問題を示しています。

 確かに、例えば具体的法律案そのものの賛否を問うならば、仮に法的拘束力がないにしても、憲法四十一条の趣旨に矛盾する可能性があります。したがって、間接民主制を基本としている現憲法の趣旨に反するものが対象とならないことを明確に示しています。与党の危惧はこの点において払拭をされています。

 与党からも、憲法改正について予備的に国民投票を行うべきという強い意見が出されていますが、法律案作成の前提として、あらかじめ国民の意見を聞き、その上で具体的立法作業を行うことがどうして許されないのでしょうか。

 例えば、臓器移植法を制定する際に、脳死を人の死と認めるかどうかという国民の意見を聞き、その結果に基づいて具体的法整備を行ったならば、臓器移植に対する国民の関心も認識も、よい意味で大いに違っていたのではないかと思います。

 このように、主権者の意思を十分に考慮しながら権限行使することは、何ら憲法に反するものではなく、むしろその趣旨にかなうことであります。

 第二に、投票権者の年齢については、本則において十八歳以上とし、附則において、本法が施行される三年後までに、公選法、民法その他関連法令について検討して必要な法制上の措置を講ずることとしています。この点、本修正案では、投票権者の年齢を十八歳以上とすることについて何らの条件を課していません。我々国会は、三年以内に必要な法制上の措置を講ずることをみずから法的に義務づけるのでありまして、その義務を果たす意思があるならば、与党のような附則は全く必要がないはずであります。

 第三に、公務員等及び教育者の国民投票運動の制限については、まず、公務員の国民投票運動及び憲法改正に関する意見の表明並びにこれらに必要な行為について、国家公務員法、地方公務員法等の公務員の政治的行為の制限規定は適用しないこととし、公務員等及び教育者の国民投票運動は原則として自由としています。

 与党が危惧されている公務の中立性等から見た弊害については、公務員法上の職務専念義務、信用失墜行為等の規定により適切に対応可能と考えています。

 また、国民投票運動に名をかりた政党機関紙の販売拡大運動などについては、そもそも国民投票運動とは言えないので、適用除外の余地はないものと考えます。したがって、与党の危惧も、これも誤解であります。

 その上で、特に悪質と思われる地位利用による国民投票運動の禁止規定については、これは与党と一緒であります。

 与党は、公務員法等の適用について結論を先送りしていますが、可能な限り最大限の国民投票の自由を保障することは憲法の要請であり、この法律の根幹部分です。その根幹部分について先送りをするという中身で、議論が尽くされたというのは、これは論理的に成り立ちません。

 第四に、新聞における無料広告枠については、政党のみに認められる部分は必要最小限にとどめるべきとの観点から、同じ活字媒体として新聞折り込み等によって各戸に配布される国民投票公報によって代替可能であるため、削除することとしました。委員会での議論においては、一度は与党も新聞無料枠を削除する方向で発言をされていました。どうして意見が変わられたのでしょうか。税金から広告料金を確保したい圧力団体に屈したと言われても仕方がありません。

 第五に、テレビ、ラジオにおける有料広告については、資金の多寡による不平等を防ぐべく、禁止期間を憲法改正の発議から投票期日までの全期間とすることといたしました。十四日間の禁止を認める理屈からは、全期間とした方が論理的、合理的であるはずで、この点でも与党が反対する理由はないはずであります。

 この間、報道等では、民主党が与党案に賛成するのか否かが注目されていたようであります。しかし、与党が民主党案に賛成するかどうかは問われないんでしょうか。民主党修正案が先に採決をされます。論理的、合理的理由がなく民主党案に反対をするならば、まさに党利党略と言わざるを得ないはずです。

 民主党からの指摘に対して、与党案の問題点に対して与党は論理的に答えていませんが、与党から示されている民主党案に対する危惧に対しては、今すべて合理的にお答えをし、危惧が杞憂であることは明らかであります。

 もし御理解いただけないのであれば、委員会で時間をかけて質問をしていただければ、少なくとも論理的には必ずこれで反対する理由がないことは皆さん納得せざるを得ないはずであります。(発言する者あり)ですから、それは党利党略でしょう。それは皆さんも党利党略で考えているということでしょう。この法案が合理的なのかどうかということをちゃんと判断していただければ、答えをそれで投票してくださいと私は申し上げているんです。

 与党のメンツとか党利党略抜きで、この法案に反対する理由が論理的、合理的にあるのかどうか、その一点で判断していただければ、与党に民主党案に反対する理由は残っておりません。

 何とぞ、議員各位の良識ある御判断により、本修正案に多数の御賛同を賜りますようお願い申し上げ、私からの趣旨説明とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。順次これを許します。近藤基彦君。

    〔近藤基彦君登壇〕

近藤基彦君 自由民主党の近藤基彦でございます。

 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました両法律案及び修正案につきまして、委員長報告のとおり併合修正することに賛成、民主党提出の全部修正案に反対する立場から討論を行います。(拍手)

 そもそもこの両法律案は、平成十七年九月の憲法調査特別委員会の発足後、約五十時間にも及ぶ委員会での調査、海外調査、そして憲政記念館会議室での各会派代表による集中的な論点整理といった、実に丁寧な議論と協議を積み重ねてきた成果であります。

 両法律案提出後も、二度目の海外調査、法案審査小委員会における精力的な審査を含め、きのうまで約五十八時間に及ぶ法案審査を通じて、最後の最後まで、それぞれの主張をベースとしながらも、それに固執することなく、譲るところは譲りながら、何とか合意形成ができないか探ってきたのであります。

 この間の各会派、少なくとも自民党、公明党及び民主党の理事の間で共有されていた基本的な認識は、実は、これに先立つ憲法調査会時代の平成十七年二月、当時の枝野幸男会長代理及び中川正春幹事の次のような発言に端的にあらわれていると思います。

 すなわち、憲法改正の基盤となるルールに関する法律は、政権交代があった場合でも共通するものであり、三分の二条項のもとで、幅広い真摯な合意形成のもとで制定されることが望ましい、真に政権を担う気持ちがある政党はこのような認識を持つべきだとの趣旨の発言であります。

 この歴史的発言には、我が党の保岡、船田両幹事、そして公明党の太田昭宏委員からも歓迎、同調する発言がなされ、その後、中山太郎委員長の公正中立な議事運営のもとで、この基本的スタンスは一貫して堅持されてきたのであります。

 ところが、昨年の通常国会真っただ中の五月、すなわち両法律案提出の直前、当時は自公民三党による共同提出に向けてぎりぎりの議論をしていたまさにその重要な局面で、さらには、ことしに入って両法律案の共同修正に向けて最後の最後まで真摯な政策的協議が行われてきた一昨日までのぎりぎりの局面において、統一地方選挙や参議院選挙における党利党略だけを念頭に、これまで培ってきた公党間の信義をかなぐり捨て、一字一句たりとも自分たちの主張をのまなければだめだとして、意図的に合意形成を拒絶したのはだれでありましょうか。これは、まさに憲法が定める議会制民主主義の理念を踏みにじる、唯我独尊の態度にほかなりません。

 温厚な中山委員長が二回の中央公聴会、二カ所の地方公聴会の開会に応じると、さらには全都道府県における地方公聴会が必要だとハードルを上げ、露骨な審議遅延要求を突きつけてきたのもそのような姿勢のあらわれでありましょう。

 議会制民主主義の根幹は、意見の相違を相違としながらも、互いの信義に基づき譲れるものは譲り合うという互譲の精神であります。その精神なくして、何が徹底審議でありましょうか、何が合意形成でありましょうか。

 そして、ついに昨日、やむなく質疑終局を宣告した中山委員長に対し、民主党理事らは、委員長席のマイクを投げ捨て、耳元で長時間大声を上げるなどしてその職務を妨害するという、議会人としてあるまじき、まさに目を覆わしめる暴挙に出たのであります。中山委員長は、実に辛抱強く、自席に戻ってくださいと秩序保持に努められたのですが、万やむを得ず、理事会での協議に基づいて採決を宣言されたのであります。

 この模様は、昨晩以来テレビ等で全国に流れており、冷静な国民の審判はすぐにでも下ることでありましょう。そして、新聞等を通じて、このような事態に陥った経過、すなわち、現場で芽生えようとしていた合意をただ目先の損得のために破壊した者がいることをみんなが知っております。その者こそがすべての責めを負うべきであります。(拍手)

 次に、委員長報告のとおり与党の併合修正案に賛成、民主党の全部修正案に反対する、その具体的な理由について述べます。

 実は、ただいま申し上げましたような委員会での審査を通じて、両案の相違点はほとんどと言ってよいほど解消されております。それこそ、各条文の表現ぶりまで含めて九割以上、一字一句同じであります。

 違うのは、まず一つは、焦点である一般的国民投票の取り扱い。二つには、投票権年齢を本則十八歳以上とし、関連法令を三年以内に見直し、必要な改正措置を講ずるところまでは同じであります。これに関する経過措置を設けるかどうか。三つ目は、公務員の政治活動制限についての公務員法制上の措置をどうするか。この三点であります。他の技術的な問題である二点の相違点を加えても、五点だけであります。

 これとても、投票権年齢の問題と公務員の政治活動制限に関する措置については、三年後の施行までに法整備をすること、そしてその法整備の基本的方向性では一致しているわけですから、唯一の政治的論点は、一般的国民投票制度の是非のみと言ってよいものであります。

 民主党の全部修正案でも、さすがに国政重要問題一般を対象に国民投票に付するのは、議会制民主主義を原則とする現行憲法それ自体に抵触するおそれがあると思われたようで、その対象を、憲法関連問題、統治機構、生命倫理などの大きく三つの分野に絞ってまいりました。

 これに対して、私どもは、最大限広げても基本は九十六条の周辺部分に位置する憲法関連問題であるべきであり、その他は憲法審査会での議論にゆだねましょうというところまで譲歩したのであります。

 これで妥協できないというのは、一体どういうことでありましょうか。

 さきの大阪地方公聴会で、中野寛成元衆議院副議長は、意見陳述者として意見を述べられた際、与党は度量を、野党は良識を示せと言われました。

 この議場におられる野党の皆さん、この唯一の論点である一般的国民投票制度に関して、どのように思われますか。ぜひとも、政治家として、本日この場で良識を示していただきたい。

 最後に、中山太郎委員長のこれまでの御労苦に敬意を表し、一般的国民投票制度を含む民主党の全部修正案に反対、両法律案を併合修正すべきとする委員長報告に賛成の立場から、私の討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 古川元久君。

    〔古川元久君登壇〕

古川元久君 民主党の古川元久でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました民主党提出の日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案に対する修正案に賛成、与党提出の国民投票法両案に対する併合修正案に反対の立場で討論を行います。(拍手)

 まず最初に、先ほど近藤議員から我が党に対するいわれなき批判が上がりましたけれども、その批判はそのまま与党にお返しをしたいと思います。

 本来、政争の具とすべきでないこの憲法の問題を、与党という責任ある立場にありながら、しかも、圧倒的多数を持つ、そういう立場にありながら、真摯に私どもの意見に最後まで耳を傾けようとしない、そのような態度こそまさに憲法を冒涜する行為でございます。私どもは、この憲法論議がこのような形で、与党の暴挙によって今後大きな影響を与えるであろうことを極めて遺憾に存じます。

 与党は、昨日の委員会を委員長の職権で決め、国民投票法案の採決を強行いたしました。与党は、既に十分審議を尽くしており、採決の環境は整った、与党案と民主党案の違いはほとんどないと強調しています。しかし、先週第二回目の中央公聴会を開いたばかりであり、また、民主党は十日に修正案を提出したばかりであります。これらを踏まえてさらに十分審議を尽くすべきであるにもかかわらず、なぜ採決を強行するのでありましょうか。

 しかも、強行採決された法案は、与党案と民主党案双方を修正した併合修正案という形になっております。私どもは、このような併合修正を一度も了解したことはありません。にもかかわらず、与党は勝手に併合修正案なるものを作成、提出し、それを強行採決するとは、平成十二年に憲法調査会が設置されて以来、与党、野党の立場や憲法に対するいろいろな考え方の違いを超えて憲法に対する真摯な議論を続けることを可能とした、政党間の信頼関係を根本から突き崩すものであります。

 日本国憲法施行六十周年となる日を目前にして、憲政史上極めて重要な意義を持つべき国民投票法の制定が、このような与党の横暴によって無理やり推し進められることは、憲政史上の大きな汚点として残るだけでなく、今後の憲法議論のあり方に大きな悪影響を及ぼすこととなるでしょう。主権者である国民の主権行使の象徴と言える国民投票のあり方について、改憲、護憲、憲法に関してどのような立場に立とうとも公正中立と言える国民投票法の制定に全力を注いできた私たち民主党は、こうした状況を引き起こした与党の態度に対し、国民の声を代表して強く抗議をいたします。(拍手)

 さて、民主党修正案に賛成する理由を述べます。

 第一に、国民投票の対象についてであります。

 民主党案は、憲法改正のほか、国政の重要な問題のうち憲法改正の対象となり得る問題、統治機構に関する問題、生命倫理に関する問題その他の国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題に係る案件としております。この修正によって、民主党原案よりも対象範囲は明確となり、与党の一部から出ている憲法改正予備投票についても含む趣旨である一方、一部で誤解に基づいて批判されているような、国会が定めるべき法律案そのものを国民投票によって決しようというものでないことは明らかであります。

 さらに附則では、国政問題国民投票に関し、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるとしています。このように、間接民主制に抵触することのない形で法整備を求めている点で、民主党案に対する批判は当たっているとは言えず、むしろ国民主権の充実という観点から大きな意義を有するものと考えます。

 第二に、投票権者の範囲についてです。

 民主党案は、本則で十八歳以上の日本国民を投票権者とした上で、法律施行までの間に十八歳選挙権、十八歳成年などの必要な法制上の措置を講ずるものとしています。国会はこの附則に当然拘束され、必要な法整備を行うこととなるため、十八歳選挙権等が施行されるまでは投票権者を二十歳以上とするような経過措置は不要であり、法律施行に伴い当然に十八歳投票が実施されるとする民主党案は合理的なものと考えます。

 第三に、国家公務員法、地方公務員法等の政治的行為の制限規定の全面適用除外についてです。

 主権者たる国民の自由闊達な意見表明や議論を保障するためには、国民投票に関する運動規制は投票事務の公正さを担保するための必要最小限度のものに限るべきであるというのが当初からの民主党の考えでもあります。加えて、委員会での質疑等を通じて、公務員の政治的行為の制限規定については、現行法上、法律ごとに相当の凹凸があり、公務員の種別によって国民投票運動が規制されたり規制されなかったりするおそれが大きいことが明らかになりました。

 こうした規制の現状を考えると、まず一たん全面的に適用除外することが適当と考えられます。公務員の職員団体等による組織的な運動の弊害に対しては、公務員法上の信用失墜行為の禁止や職務専念義務等に関する規定によって対応可能と考えられ、民主党案は合理的な内容と考えます。

 第四に、新聞の無料枠についてです。

 民主党案では、原案に盛り込んでいた新聞の無料枠について削除することとしています。これは、委員会での審議を通じて、政党だけに公費で意見表明の媒体が提供されることについて批判の声があり、このような政党への公費による便宜は必要最小限のものに限るべきであり、活字媒体としては別途配布される国民投票公報で十分に代替可能であることから適切であると考えます。

 第五に、テレビ等の有料広告規制についてであります。

 民主党案では、発議から投票期日までの全期間、テレビ等の有料広告放送を禁止することとしています。テレビ等の限られたメディアを利用する広告放送については、資金力に富む者とそうでない者との不公平が生じやすいと考えられることから、自主規制も含め何らかの規制が不可欠と考えられますが、広告放送の内容に立ち入って賛否の意見の公平取り扱いなどをチェックすることに比較すれば、全面禁止の方がむしろ表現に対する規制のあり方として簡潔明瞭で恣意的判断の入り込む余地がないと考えられます。

 次に、与党案に反対する理由を述べます。

 第一に、国民投票の対象についてであります。

 与党案は、本則で憲法改正に限定した上、なお附則において、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関しては、その是非及び具体的制度設計について速やかに検討を加え、必要な措置を講ずるとしています。是非を検討して非となれば何らの法的措置も講じなくてよいとする規定であり、民主党案とは根本的に考え方を異にいたします。

 第二に、投票権者の範囲についてであります。

 与党案は、本則は十八歳とした上で、法律施行までに十八歳選挙権等が実施されるよう検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるとしている点では民主党案と同じであるものの、同じ附則の二項で、十八歳選挙権等が実施されるまでの間は、投票権年齢を二十歳以上に据え置くこととしています。法律施行時において十八歳選挙権等が実施されていないことがあり得ると想定していることは、甚だ不可解であります。法整備の公布は間に合っても施行が間に合わない場合もあろうという説明は、にわかに納得できるものではありません。

 第三に、公務員の国民投票運動等についての国家公務員法、地方公務員法等の政治的行為の制限規定の適用についてであります。

 与党案は、法律施行までに、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることにならないよう、国家公務員法、地方公務員法等の規定について検討し、必要な法制上の措置を講ずるとしています。与党関係者等から、特定労働団体の名前まで挙げて、労働組合ぐるみの改憲反対運動は容認できない旨の発言がなされることもあわせて考えると、与党案に基づく検討は、結局のところ、本来自由闊達になされるべき国民投票運動そのものについて萎縮効果を及ぼす方向での検討となるおそれが強く、容認できません。

 以上の理由から、民主党修正案については賛成、与党併合修正案については反対を表明し、私の討論といたします。賢明なる与党議員諸氏におかれては、今後の憲法論議を意味あるものとするためにも、いま一度態度を再考されんことを心より祈念申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 大口善徳君。

    〔大口善徳君登壇〕

大口善徳君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました自由民主党、公明党提出の併合修正案について賛成の立場から、民主党提出の修正案に対して反対の立場から討論を行います。(拍手)

 憲法九十六条に定められた憲法改正のためのルールが憲法施行後六十年たった今日までつくられてこなかったことは、現行憲法誕生の経緯やその後の日本国が置かれた立場などからやむを得ざる側面があったとはいえ、まことに不幸なことでありました。本来、憲法制定と同時に一体のものとして制定されてしかるべき法律だったのであります。

 憲法をめぐる議論は、衆参両議院における憲法調査会において、平成十二年から十七年まで五年間の歳月をかけて、あらゆる角度から調査研究がなされました。その結果、幾つもの点について、改正されるべきであるとの意見が多く述べられました。

 他方、その議論の集約とは別に、六十年間放置されてきた改正手続に関する法案も準備しようとの空気が、与野党、特に自民、民主、公明の三党の間で募ってきました。それを受けて、憲法調査会のいわば後継として、一昨年九月に設置された憲法調査特別委員会の場において議論が進められてきました。

 憲法改正のための手続法なるものが具体的にはどうあるべきかをめぐって、まず広範囲な議論がなされてきました。海外における憲法改正のための手続の実態なども調査するなど、幅広い調査研究などを踏まえて、まず昨年五月に、原案としての法律案が自民、公明の与党側と民主党から提出されました。

 それを土台として、論点整理や参考人による意見表明などを通じてさまざまな検討、吟味が加えられました。また、先日は中央公聴会、地方公聴会も精力的に行われ、合計すれば、この憲法改正国民投票法制に関する審議時間の総計は百時間ほどになります。

 事ここに至るまでの経緯を振り返りますと、自民、公明の与党と民主党の間での手続法のあり方についての考え方にはそう大きな違いはないということが実感であります。残された課題についても、決して乗り越えられないものではなかったと今もなお思っております。

 最大の食い違いは、民主党案が、国政における重要な問題のうち、憲法に直接関連していなくても、国民投票の対象とするにふさわしいと別に法律に定める問題にまで国民投票の対象を押し広げようとされた点であります。

 そもそも、国民投票が要件とされており、その結果に法的拘束力がある憲法改正国民投票と、任意で諮問的な効果が想定される一般的な国民投票とでは、その本質が全く異なります。ここは直接憲法改正にかかわる事項に絞って対象を決めていかなければ、問題が拡散してしまうというのが私たち与党の判断であります。

 また、当初、自民党と民主党の間で意見の隔たりがありました投票権年齢につきましては、与党修正案で投票権年齢を十八歳としたことにより、各党の意見の差異は基本的に解消するに至っております。公明党は、さきの衆院選のマニフェストにも掲げたとおり、もともと十八歳選挙権を推進するとの立場でありましたが、この点は、与党の譲歩により意見の相違を乗り越えた部分であります。

 この手続法の最大のポイントは憲法審査会にあると考えます。この場において初めて、今の憲法のどこをどう変えるのか、あるいは変えずに、法律の運用やあるいは新たな法律の制定で対応できるものは何かといったことの調査研究が始まるのです。

 一部に、あたかも憲法改正がすぐにでも行われるかのごとき悪宣伝をして、この法律をつくることそのものに反対する向きがありますが、私どもからすれば、邪推、憶測も甚だしいと言わなければなりません。

 これから三年間かけて、憲法審査会の場で、公開の場で、一九四六年憲法をどうするかが初めて正面切って議論がされるのであります。この三年間は、憲法改正原案の審査権限が凍結される空白の期間などではなく、一九四六年憲法をじっくりと吟味、検討する極めて重要な期間なのであります。

 中山太郎委員長の中立公正な議事運営のもと、与党と民主党の間で、ある時期まで極めて良好な雰囲気で議論が進められてまいりました。昨年十二月十四日、憲法調査特別委員会において、民主党の前筆頭理事枝野幸男議員が、「可能であるならば、ちょうど五月三日に憲法記念日がございます。参議院での審議のことについて衆議院議員が言うのは差し出がましいことでございますが、希望としては、来年」、すなわち本年です、「の憲法記念日には国民投票法制が国会で成立をしているということを期待して、発言を終わりたいと思います。」と発言までされているわけでございます。

 ところが、いつのころからか、民主党案を丸のみしなければだめだといったように、政争の具にされてしまったことはまことに残念なことと言うほかありません。あらゆる角度からの英知を結集してつくられたこの法案を成立させた上で、いよいよこれから憲法の中身の議論に入るのです。

 それぞれが憲法をめぐる議論をする前から、自身の主張が通りそうにないから議論すること自体に反対などといった、およそ民主主義を標榜する政党、政治家にあるまじき考え方を一掃し、与野党ともに、これからの日本、将来の国民のために建設的な議論をしていこうではありませんか。このことを強く訴えて、私の討論といたします。

 以上でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) 笠井亮君。

    〔笠井亮君登壇〕

笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、憲法改正手続法案の自民、公明両与党提出併合修正案、民主党提出修正案に反対の討論を行います。(拍手)

 改憲手続法案は、国の最高法規である憲法の改正にかかわる重要な法案であり、その審議は慎重の上にも慎重でなければなりません。中央、地方公聴会においても、この間の世論調査や新聞の社説でも、また日弁連や憲法学界などからも、拙速を避け徹底審議を求める声が、法案への賛否を超えて圧倒的多数であります。にもかかわらず、審議も不十分なまま法案の採決を強行することは、憲政史上に重大な汚点を残す暴挙だと言わなければなりません。

 反対の第一の理由は、本法案が、安倍総理が目指す九条改憲の政治スケジュールに位置づけられたものだということであります。

 安倍総理は、ことしの年頭記者会見で、私の内閣で改憲を目指す、参議院選挙の争点にもする、そのためにまずは手続法だと言明し、施政方針演説でも、改憲手続法案の成立を強く期待するとまで述べました。そして、時代にそぐわない条文の典型は九条であると、改憲のターゲットまで明言しております。何のため、だれのための手続法案であるか、これを明確にしたのであります。

 法案提出者はともに、この手続法案は公正中立なルールづくりであり、改憲の動きとは無関係だとオウム返しに言ってきましたが、そのような説明を信じる国民はもはやいないでしょう。集団的自衛権行使の研究とあわせ、安倍総理が、憲法九条を変えて、日本を海外で戦争をする国につくりかえようとしている、そのための改憲手続法案であることは明々白々であります。

 第二は、両案とも改憲案を通しやすくする仕組みは共通しており、修正案もその点は変わりありません。まさに、憲法の国民主権原理に反する、不公正かつ反民主的な法案だと言わなければなりません。

 一つは、国民の承認にかかわって、最低投票率などの定めがないことです。

 国の最高法規である憲法の改正は、主権者である国民の意思が最大限酌み尽くされることが不可欠です。ところが、法案は、投票率がどんなに低くても国民投票は成立し、有権者の二割台、一割台の賛成でも改憲案が通る仕組みになっております。改憲推進政党にとって、都合よく、できるだけ少数の賛成で改憲案を押し通そうというねらいがあることは明瞭です。

 二つは、公務員や教育者の自由な意見表明や国民投票運動を不当に制限していることです。

 憲法改正国民投票では、だれもが自由に意見を表明し、運動できることが原則であり、地位利用を理由として、公務員、教育者の一国民としての国民投票運動を禁止することは許されません。罰則を定めないとしても懲戒処分の対象になれば、その萎縮効果ははかりしれません。まして、与党案にある、公務員の政治活動を制限する国家公務員法、地方公務員法の規定の適用は論外であります。

 三つは、改憲案の広報や広告が改憲推進勢力に有利な仕組みになっていることです。

 国会に設置される広報協議会は、改憲賛成政党が圧倒的多数を占め、広報や無料の広告などにおいても、改憲賛成政党に都合よく運営される仕組みが貫かれております。また、潤沢な資金力を持つ改憲推進勢力が有料の意見広告を買い占めてしまうようなことにも、何ら合理的な歯どめがありません。

 四つは、改憲原案を審査、提出する権限を持つ憲法審査会を常設機関として国会に設置することです。

 法案は三年後施行としながら、憲法審査会は、法成立後、次の国会に設置され、直ちに改憲の議論を行う仕組みとなっています。三年間は改憲原案の提出、審査は凍結するといっても、三年間の調査そのものが改憲作業の一環であることは明らかです。まさに九条改憲と地続きの仕組みと言わなければなりません。

 最後に、日本国憲法は、第九条に代表されるように、日本が起こした侵略戦争の反省の上につくられたものです。その平和主義は、日本が二度と戦争をする国にはならないと誓った国際的な公約であり、アジア共有の財産です。

 この六十年、憲法とともに生きてきた多くの国民は、全国六千を超える九条の会の草の根の広がりに見られるように、改憲を目指す勢力のこのような暴挙に抗して、憲法の目指す平和、人権、民主主義の日本に向かって力強く前進するでしょう。

 本法案の廃案を断固として求め、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 辻元清美君。

    〔辻元清美君登壇〕

辻元清美君 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、自民、公明の併合修正案及び民主党の修正案の憲法改正手続法案、両案に反対の討論をいたします。(拍手)

 昨日、両案が委員会で強行採決されました。まず、強く抗議いたします。また、本日、本会議場で、両法案提出者同士が非難の応酬をしています。このような状況で憲法を論じる資格はないと申し上げたいと思います。

 世論調査では慎重審議という声が圧倒的に多く、与党推薦の公述人からも強引に進めることへの懸念が示されました。主権者は決して急いでいません。急いでいるのは、私の内閣で憲法改正をなし遂げると音頭をとり、そのために今国会で手続法の成立をと立法府に口出しをしてきた安倍総理ではありませんか。

 憲法は権力を縛る規範です。主権者のものです。それなのに、安倍総理がみずからを戒めるべき権力を振り回し、自分の勝手な思いをなし遂げようとすることは、立憲主義の崩壊につながります。今、私たちはその危機に立たされています。

 私は、常に、憲法とは何かという共通認識の必要性を訴えてきました。しかし、両案とも、この基本的な議論を深めていなかったために、致命的な欠陥があります。

 憲法は、政権交代があっても揺るがない長い歴史にたえ得るものでなければなりません。ですから、憲法改正には、国民の総意に近いコンセンサスを得て、憲法の正統性を確保することが何より重要です。そのためには、最低投票率や絶対得票数の導入が必要です。この点だけをとっても、両案は認められません。

 改正手続を定めるのは憲法九十六条です。ここで言う三分の二とは、国会の発議までの要件です。そうであれば、発議後は、あらゆる場面で賛否の意見を平等に扱うのが当然です。それにもかかわらず、当初、公報のスペースなどが国会の議席配分によるとなっていました。これは、国会は発議するまでであり、決めるのは主権者であるという根本原理を全く理解していなかったということです。

 だれもがひとしく意見表明や運動ができるということも国民投票の基本です。公務員や教育者の運動規制は国民投票の国際スタンダードから外れ、日本の民主主義の成熟度が問われ、恥ずかしい限りです。

 テレビCMも問題です。資金力が民主主義をゆがめる可能性があります。全面禁止の声が高くなってきています。憲法改正が金で買われることがあってはなりません。

 国民投票の運動期間は六十日から百八十日となっています。憲法を国民一人一人が自分のものとし、熟慮し、賛否にたどり着くには余りにも短く、余りにも軽い扱いになっています。

 提出者は単なる手続法だと主張してきました。しかし、両法案には憲法審査会の設置が組み込まれ、これは改憲に向けてこまを進める布石です。

 そして、安倍総理は、現在の憲法が占領期につくられたとして、全面的に改めようと訴えています。しかし、両案で可能なのは部分改正であり、全面改正はできないのです。奇妙なことに、総理は、自分が目指す改正ができない法案を何がなんでも制定をと号令をかけているのです。これは、法案の中身はお構いなしに、なりふり構わず改憲への道を開いていこうとしているからにほかなりません。

 両案とも、国民のための国民投票法になっていません。安倍カラーを出すための改憲準備法案ではないですか。

 折しも、安倍政権は、防衛省を設置し、集団的自衛権の見直しを訴え、教育に愛国心を持ち込み、さらには過去の歴史認識、特に従軍慰安婦や沖縄の集団自決などの事実の書きかえまでしようとしています。安倍総理が唱える戦後レジームからの脱却とは、実は戦前レジームへの回帰であることが浮き彫りになってきています。そのための改憲を目指して、まず手続法の成立をと繰り返しているのが現状です。

 私は、主権者の慎重にという声を振り切って改憲への道筋を強行することは、時代を新しく前に進めるどころか、誤った時代を繰り返すことに手をかすことになると考えます。よって、両案に反対し、反対討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二に対する枝野幸男君外二名提出の修正案につき採決いたします。

 枝野幸男君外二名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、枝野幸男君外二名提出の修正案は否決されました。

 次に、日程第一及び第二の両案につき採決いたします。

 委員長の報告は、両案を併合して一案とし修正議決したものであります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。(拍手)

     ――――◇―――――

 日程第三 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第三、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長木村太郎君。

    ―――――――――――――

 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔木村太郎君登壇〕

木村太郎君 ただいま議題となりました駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。

 本案は、駐留軍等の再編による影響の増加に配慮することが必要と認められる防衛施設の周辺地域において、住民の生活利便性の向上等に寄与するため、特別の措置を講じ、あわせて沖縄県民の負担を軽減するとの観点から、駐留軍がアメリカ合衆国へ移転することを促進するため、国際協力銀行の業務の特例等を定めようとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、防衛大臣は、駐留軍等の再編に当たり、防衛施設の周辺市町村を再編関連特定周辺市町村として指定し、国は、再編交付金を交付することができること、

 第二に、防衛大臣は、駐留軍等再編関連振興会議の議に基づき、再編関連特定周辺市町村の区域等から成る地域を再編関連振興特別地域として指定することができること、

 第三に、国際協力銀行は、この法律の目的を達成するため、駐留軍再編促進金融業務を行うことができること

等であります。

 本案は、去る二月九日本院に提出され、三月二十三日本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、三月二十三日久間防衛大臣から提案理由の説明を聴取し、同月二十七日から質疑に入り、四月十日には参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を行い、昨十二日質疑終局後、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。順次これを許します。笹木竜三君。

    〔笹木竜三君登壇〕

笹木竜三君 民主党の笹木竜三です。

 いわゆる在日米軍再編特措法案への反対討論を行います。(拍手)

 いやあ、本当に驚きました。この手抜き法案と与党の説明責任の放棄、審議のすっ飛ばし。もともと私は、肉弾戦、物理的抵抗などは絶対に好きじゃありませんが、きのうはさすがにその誘惑に何度か駆られました。

 この法案が日米安全保障条約にかかわる最重要法案であるにもかかわらず、採決の当日まで外務大臣を答弁者として出席させない、御本人は答弁がそうお嫌いとも思えないんですが、そうしたすっ飛ばしの委員会審議。ここまでむちゃくちゃをやってでもアメリカの大統領への御機嫌がとりたいのか、それだけがそんなに大事か。いわゆるお土産なしでは今の日本の総理大臣は訪米することもできないのか。

 この法案は、在日米軍再編に伴って新たな財政支出を始めるという法律です。その財政支出に使われる税金を払うのは、アメリカの政府でもない、アメリカの国民でもない、もちろん日本国民です。であれば、その財政支出についての必要性や根拠については、当然のこと、日本国民に丁寧にされなければなりません。

 まず、この法案の根本的な問題は、国民への説明という姿勢が完全に欠落していることです。

 そもそも、アメリカの軍隊が、外国に駐留をしていた、この場合日本、その軍隊がアメリカ本土に戻るに当たって、駐留地だった外国政府が、この場合日本、経費をアメリカに拠出するという例がほかの国で歴史上あったか。答えは、全くない。

 では、この日本において、そのような経費を負担する法的な根拠はあるのか。答えは、全くない。

 政府の答弁によれば、経費について我が国が分担するということを明示的に禁ずる法律の規定はないと認識している。まあ、へ理屈、かなり無理をしてでも分担するという。では、なぜその経費を分担しなければならないのか。沖縄にいる海兵隊とその家族一万七千人がグアムに移転してくれることで日本の基地負担が軽減するからだと答弁。

 では、その一万七千人という数字、沖縄にいる海兵隊とその家族の実数からはかなり怪しいんじゃないかと聞けば、わからないが、アメリカ政府が言うから信じるしかないと答える。

 費用の見積もりが最大百二・七億ドルというが、その根拠は何か。米軍の家族住宅一軒当たり七千万円、八千万円。どうしてこんなにグアムはコストがかかるの、アメリカ本土の四倍もコストが高いのか、そう聞けば、アメリカ政府がそう言うからだと答弁。

 では、その金額枠の根拠についてアメリカからの資料を見せるべきだと言えば、アメリカ政府の許可がないと見せられないと政府答弁。

 日本が負担した経費が、つまり約束した、沖縄からグアムに移転した海兵隊と家族とは関係のないことで使われないという保証はあるのかと聞けば、会計検査院はチェックができるのかと聞けば、チェックできるとは言い切れないとの答え。何の覚書もない。

 グアムへの移転経費だけではありません。自治体への再編交付金。最初の年度の平成十九年度五十一億円という見積もりはあっても、その積算根拠も示されない。来年度以降については全く金額が明らかにされず、平成二十八年度に在日米軍再編が終了するまでには一体どのぐらいの経費が総額として、どのくらいでいいから、必要なのか。これも皆目明らかにされない。答えのとおり、やってみないとわからないという答弁が事実だとしたら、財政規律のかけらもないことになる。

 さらに、説明を回避するための、別途政令で定めるの乱発。「政令で定めるものに要する経費に充てるため政令で定める交付金を交付する場合においては、政令で定めるところにより、」「規定を適用」云々といったわけのわからない条文の乱発。

 説明が一向になされないのは、財政支出のこと以外についても同様です。なぜ普天間の代替施設に千八百メートルの滑走路が必要なのか。ジェット戦闘機は運用しないと言うが、ヘリコプターなら千八百メートルは必要ない。アメリカが明らかにしているオスプレー、垂直離着陸可能な新タイプの輸送機、日本政府はそれさえも認めていませんが、それが五機並んだとしても、滑走路三百メートルで済む。一体どうして千八百メートルの滑走路が二本も必要なのか、さっぱり説明されない。

 あるいは、ミサイル防衛。日米の一体的な共同運用の必要性は認めますが、肝心な独立国家としての日本の主体性は確保されているのかどうか。ある国から二発の弾道ミサイルが飛んできて、一発は横田基地に、もう一発はある都市に落ちそうだ。高い確率性を持った予測がアメリカ側にしかできないで、日本に伝えられる情報に優先順位がつけられるとしたら、悪意はなくても、結果としての情報操作の可能性はないんですか。このような不安に対して、政府は、日本国民に納得してもらう努力を全く行っていないのである。

 総理は、よく自由、民主主義などの価値ということに言及をされますが、自由や民主的な社会の発展にとって何が最も必要だとお考えになりますか。

 我が国で最も自由と民主主義を大切にした政治家の一人、斎藤隆夫氏は、「比較国会論」の中で、立憲政治の究極の目的は国民の共同意識をもって政治の原動力となすにありて、憲法及び国会はこの目的を達する機械、マシーンにすぎないと主張しています。国民の共同意識というのは、現在的に言えば、国民の参加意識あるいは国民のコンセンサスという意味で使われていますが、要するに、国民の参加意識を原動力にして、国民のコンセンサスによって政治を行うのが立憲政治だというわけです。そして、健全な国民の共同意識はどうやって育つのか。政治的な無知、知識がない状態を脱していないと育つことはないと続けています。

 国の安全保障にとっても、国民の共同意識は最も根源的な基盤です。肝心かなめとも言える部分をひた隠しにしている今回の手抜き法案と与党の説明責任の放棄、そして審議すっ飛ばしの態度は、国民を無知な状態のままにしようとすることであって、わけのわからないままお金を支出せよというのは、国の政治や防衛の基盤を掘り崩すことをみずからしていると言わざるを得ません。

 それにしても、今回の米軍再編というのは、日本にとって、日米関係をつくり直す、半世紀に一度あるかないかのチャンスでした。

 この再編によって、米軍は、世界じゅうのどこにでも、臨機応変に、速いスピードで部隊展開できる体制へ変革されていきます。だとすれば、在日の米軍も、中東だろうとどこであれ、極東以外に、極東の安全のためでなくても、直接活動範囲を広めていく可能性はますます高くなる。結局、日米安保条約の極東条項、その概念と現実のギャップはますます検討せざるを得なくなっている。

 そして同時に、日本が意図しない形でいつの間にか米軍と一体化させられることを避けるためには、事前協議。敗戦後の先輩たちが獲得した事前協議という権利、現在まで放棄し続けているような状態ですが、それを実質的なものにしていく。さらに、独立の主権国家としては非常に問題の多い日米地位協定の改定。

 今回の米軍再編という千載一遇のチャンスを得てもなお受け身の姿勢に終始している政府がこれらの課題に取り組む意思を持たなかったのは、歴史に対する怠慢としか言いようがありません。

 ただただ受け身で、ただただアメリカの言いなりで、法案を早く通さないと日米関係が大変だなどと言っている方に言いたい。SACO合意は十年以上実行されていないが、それで日米関係が崩壊しましたか。大切なことは、平成二十八年度まで続く在日米軍再編のこのスタート時点で、時代にふさわしいスタートを切ることだと思います。

 この手抜き法案、与党の説明責任の放棄、そして法案審議すっ飛ばしを許してしまったことは、つくづく痛恨のきわみです。一刻も早く時代錯誤の安倍政権を終わらせることをお誓いして、私の反対討論とします。(拍手)

議長(河野洋平君) 寺田稔君。

    〔寺田稔君登壇〕

寺田稔君 自由民主党の寺田稔でございます。

 私は、自民党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案について、賛成の立場から討論を行うものであります。(拍手)

 我が国は、昭和二十六年、サンフランシスコ講和条約に調印するとともに、日米安全保障条約に調印をし、我が国における米軍の駐留を前提とした日米同盟を我が国の安全保障政策の基軸に据えました。その選択は正しいものであったし、現在においても正しいものであると確信をいたしております。そして、今日に至るまで、米軍は、安保条約第六条に基づき、我が国抑止力維持のため駐留をいたしております。

 昨年の2プラス2において、再編実施のロードマップが合意をされますとともに、日米同盟の重要性について再確認がなされました。それを受けました本法案は、東アジア地域の平和と安定、そして我が国の安全保障に貢献をするものとなっております。具体的には、抑止力維持と地元負担の軽減という相反する命題を同時に実現するものであります。

 まず、抑止力の維持については、世界における紛争多発地帯として認識をされている不安定の弧の東側に位置をする重要拠点のグアムにおいて、相手からの第一撃をかわしつつ有効な抑止力を発揮し得る拠点を築く意味で、大変意義深いものであります。

 次に、基地負担の軽減については、今回の法案により、全国の米軍基地の七五%が集中をしている沖縄の基地負担の軽減に大変大きく貢献をする中身となっております。すなわち、八千名の在沖海兵隊の削減が実現をいたします。また、危険性が指摘をされています普天間飛行場を一刻も早く移設することが沖縄県民の悲願であることを、我々は深く認識をしなければなりません。

 さらに、米軍再編に伴う人員の削減により、いわゆる思いやり予算についても削減が図られることにも十分留意をすべきであります。

 また、再編関連の諸経費については、今回の日米合意に基づき、上限額を画することとされ、具体的な経費支出については、今後の進捗を踏まえ、来年度以降において具体化されることとなりますが、可能な限りの削減を図るべきことは、累次の政府答弁においても確認をされたところであります。

 今回、政府・与党側は、委員会・理事会要求資料に加え、委員会、理事会に正式に出されていない資料要求に対しても、誠意を持って対応をしてまいりました。しかしながら、民主党においては、資料要求を行った理事本人が理事会を欠席するなど、まことに不誠実な対応が見られました。

 また、地方公聴会についても、野党側の要求を踏まえて与党側で実施をすべく調整をしていたところ、民主党は突如としてその取りやめを主張し、実現に至らなかったことは、まことに残念至極であります。また、法案審査に外務大臣の出席を要求しておきながら、外務大臣の日程が確保されたにもかかわらず民主党のみが質疑を放棄したのは、まことに問題であります。

 多くの資料要求を出しておきながら、法案に対する修正はおろか、賛否の表明すらしなかったのは、政党としての説明責任を果たしているとは到底言えないものであります。

 また、審議時間についても約十七時間と十分な時間をかけており、ミサイル防衛関係の約十三時間、また防衛庁の省移行関係の十四時間を大幅に上回っております。

 また、いわゆる再編交付金につきましても、法案成立後、事態の進捗を踏まえ政令において関連防衛施設の指定が行われ、具体化されることとなりますが、これらの点については現時点で具体的な特定明記が法律上しづらいことは十二分に理解をされるところであり、本法案を否定する論拠とはなり得ないものと確信をいたしております。

 以上、本法案につきまして賛成することを表明して、自民党を代表しての私の賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、米軍再編特措法案に反対の討論を行います。(拍手)

 本法案は、米軍再編を促進するとして出されたものですが、いまだに、再編計画の全容、日本側の負担総額、グアム移転計画の全容、財政負担の具体的方法など、法案の骨格、基本にかかわる問題が何ら明らかにされていません。審議は全く不十分であります。地方公聴会も開かず、関係自治体の意見も聞かず、討論の機会さえ封じて、昨日委員会質疑を打ち切り、採決を強行した政府・与党に対し、断固抗議するものであります。

 そもそも米軍再編は、アメリカの先制攻撃戦略につき従って、米軍と自衛隊が一体となって海外で戦争できる態勢づくりにほかなりません。イラク戦争が国連憲章違反の侵略戦争であることは今や明白であり、米軍占領の継続が事態の一層の混乱をつくり出してきたのであります。このような米戦略に基づき、司令部から部隊まで一体化し、全国に基地強化を拡大する米軍と自衛隊の再編は、断じて許されません。

 第一に、政府は、在沖海兵隊のグアム移転を沖縄の負担軽減のためと言いますが、これは、グアムに陸海空海兵隊の新たな戦略拠点をつくるという米戦略の一部を担うものにほかなりません。

 政府は、在沖海兵隊司令部八千人の移転と説明してきましたが、現地米軍は、司令部だけでなく、航空部隊、陸上部隊、後方支援部隊の配備を前提とした計画に着手しているのであります。このことを政府も認めました。にもかかわらず、政府は、名護市辺野古への新基地建設を進め、しかも、垂直離着陸機オスプレーの配備の可能性を認めたのであります。

 今や負担軽減の口実は全く成り立ちません。巨額の税金を投入し、沖縄には最新鋭の新基地を、グアムには海兵隊司令部、実戦部隊の新たな拠点をつくってやるなど、言語道断であります。

 第二に、法案は、米軍が使用する米国内の軍事施設の建設費用や、我が国から米国への米軍撤退費用を負担するものであります。沖縄の基地は、米軍占領下に銃剣とブルドーザーで強奪して構築したものであり、この歴史に照らして、米軍撤退費用を負担することは到底認められません。

 しかも、外国軍隊の撤退費用を負担した例は世界のどこにもなく、安保条約、地位協定からも説明できません。憲法の平和原則を踏みにじる負担であることは明らかであります。

 また、政府は、国際協力銀行を通じた出資、融資資金の回収はアメリカを信じるとしか答弁できず、真水部分、すなわち直接財政支出はこれからスキームを協議するというのであります。矛盾と欠陥に満ちた法案と言わなければなりません。

 第三に、政府は、再編による基地強化を受け入れた地方自治体のみを対象に、しかも計画の進捗状況に応じて交付額をふやすという再編交付金を導入しようとしています。これは、地方を金の力で分断、懐柔し、基地強化を押しつけるものであり、関係自治体と住民を愚弄するものにほかなりません。

 今、沖縄でも本土でも、住民が求めているのは基地や騒音のない安全な町であり、危険きわまりない基地再編ではありません。この声を真摯に受けとめ、再編計画を撤回し、本法案は廃案にすべきであります。

 最後に、安倍内閣が改憲を公然と掲げ、沖縄戦の歴史まで書きかえて進めようとしている海外で戦争する国づくりを、国民、沖縄県民は決して許さないことを強調し、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 赤松正雄君。

    〔赤松正雄君登壇〕

赤松正雄君 公明党の赤松正雄でございます。

 公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました駐留米軍の再編の円滑な実施に関する特別措置法案につきまして、賛成の討論を行います。(拍手)

 まず、大変に今驚きました。民主党の笹木竜三議員の演説に対してでございます。極めて現実に根差したリアリストの多い、安全保障議論の論客が多い民主党の中にあって、先ほどの演説は極めて私は失望いたしました。これで政権を任せて大丈夫なんだろうか、大変に余計なことかもしれませんが、そういう感想を抱いた次第でございます。

 一昨年、私は、自由民主党そして公明党、さらに民主党の有志議員とともにアメリカを訪問し、トランスフォーメーションを検討するアメリカ当局の担当者たちと意見交換をいたしました。二〇〇一年九・一一の同時多発テロ以降、総力を挙げてアメリカはその軍事戦略の立て直しを図っており、世界に展開をする米軍の再編の検討に入った様子がリアルにうかがえました。

 その様子を見て、私の気持ちには、これは新たなパクス・アメリカーナではないのかという思いがよぎったのであります。そこには、中東からユーラシア大陸を経て東南アジアに至る地域を不安定の弧と名づけ、国際テロとの闘いに立ち上がる自由と民主主義の担い手、アメリカとしての強い使命感を感じたものであります。

 今回の法案は、そうした背景を大枠にして、日本における軍事的抑止力を低下させずに、同時に、これまでの沖縄県への過重な負担をいささかなりとも軽減をさせるというところにねらいを置いたものであります。具体的には、グアムへの海兵隊八千人の移転、沖縄における米軍の訓練の本土への一部移転などに取り組むとともに、グアムへの移転経費については総額六十億九千万ドルを日本が負担することなどが中心になっております。

 私どもは、この法案の審議の中で、アメリカ海兵隊のグアム移転について、沖縄県の負担軽減がされることについて県民の期待が裏切られないように十分な対応を迫りました。過去から現在に至る実態を数字を通じて明らかにしつつ、確かな手ごたえを感じながらの移転を着実に進めるべきであるとの主張に力を入れました。

 沖縄における基地は、従来、先ほどもありましたように本土の七五%、それが今回のトランスフォーメーションを通じて約七〇%に縮小する上、住宅密集地における基地の返還が着実に推進されていくことも明らかになりました。

 日本駐留の軍隊のアメリカ領土への移転にかかわる経費を日本が負担するということは極めて異例であることから、懸念をする声があるのは当然であります。ただし、家族住宅、基地内インフラ向けの三十二億九千万ドルについては、国際協力銀行による出資、融資で行い、いずれ回収されるということから、おおむね妥当なるものだとの判断をするに至りました。

 沖縄における基地負担の軽減は、グアムに移転されるものとは別に国内各地でも分担されます。当初、さまざまな意見が各自治体に見受けられましたが、最終的に受け入れられる流れにあることは、同じ日本を互いに支え合う自治体として痛みを共有するということで、大いに評価されてしかるべきでありましょう。

 先日、安全保障委員会におきまして開かれた参考人質疑の中で、沖縄県在住の著名な学者の方が、日米同盟を一言で言えば何か、こう問われて、日米共同覇権主義の象徴、こう述べられました。これは、沖縄生え抜きの知識人の言葉として重く受けとめなければならないとは思います。しかし、これは物事の一面を偏って見ておられると指摘せざるを得ません。私には、戦争で失った領土を交渉を通じて返すといった世界の歴史の中で極めて珍しい沖縄返還という決断をしたアメリカと、それを可能にさせた日本との二つの国家の確かなる運命の糸を感じます。

 あの瞬間から、かつての恩讐を乗り越えた日米同盟のきずなが芽生え出したものと確信をするわけであります。そのきずなを構成するものは、単に軍事力だけではなくて、文化力の側面も見逃されてはならないと思います。沖縄をアメリカ極東軍事戦略のキーストーンとだけ位置づけるのではなくて、それと同時に、アジア太平洋の平和戦略の島に変えていかなければならないのではないでしょうか。その営みは既に随所に見られると思います。今回の法案がそういったこれまでの歩みと重なる一歩となるように心から念じて、私の賛成の討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 日森文尋君。

    〔日森文尋君登壇〕

日森文尋君 社民党の日森文尋でございます。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提案の在日米軍再編特措法、仮にそう申し上げておきますが、これについて反対の立場から討論を申し上げたいと思います。(拍手)

 最初に、審議が極めて不十分にもかかわらず、昨日、強行採決を衆議院の委員会でされたということに対して、心から強く抗議を申し上げたいと思います。

 まず最初に、米軍再編は我が国及び極東の平和や安全の維持とは何の関係もないということを申し上げたいと思うんです。世界のどこで紛争が発生した場合にも迅速に兵力を展開するために米軍の態勢を見直すもので、米軍の米軍による米軍のための再編にほかなりません。我が国と極東の平和や安全の範囲をはるかに超え、世界じゅうでテロとの闘いを進めようとする再編後の米軍との同盟関係は、日米安保条約の規定を大きく踏み越えるものと言わざるを得ません。

 次に、国民負担です。

 本法案に直接かかわるのは、グアム移転経費の負担六十・九億ドルと、〇七年度で五十一億円の再編交付金であります。しかし、米軍再編全体では三兆円とも言われる負担が生じる、こういう指摘もされております。このような莫大な負担が本当に必要なのか、納得できません。恐らく、多くの国民も承服をしないと思います。

 在独米軍や在韓米軍の再編と比較しても、八千人の海兵隊の移転のために七千億円を負担する、これは全く法外であり、到底同意できるものではありません。既に米軍駐留経費の多くを負担している我が国が、米国が米国につくる軍事関連施設経費の五九・三%を負担するということに至っては、まさに論外と言うほかありません。

 また、海兵隊の移転によって沖縄県民の負担が軽くなる、こうおっしゃっていますが、基地機能を強化することによって新たな負担増になるということにもなるんだと思います。

 さらに、本法案では、関係市町村が再編を受け入れた場合に、施設整備の進捗状況に応じて交付金を交付するとされています。再編に同意すれば金を払うということでしょう。自治体の同意を金で買うという買収行為まがいの手法にほかなりません。このような、まさに地方自治の破壊というべき法案が堂々と国会に提出されたこと自体、驚きであり、断じて認めることはできません。

 九・一一同時テロ事件以降、ブッシュ政権は、テロとの闘いを名目に武力を振りかざし、捏造された情報をもとにイラクを攻撃するなど、暴力の連鎖を引き起こしてきました。これに我が国が加担することは絶対に許されません。

 本法案が、米軍のために日本国民に膨大な負担を押しつけ、地方自治を破壊し、同時に国際安全保障環境を悪化させる結果を招くものでしかないことを強く申し上げ、反対討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  菅  義偉君

       防衛大臣  久間 章生君


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