衆議院

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第23号 平成19年4月17日(火曜日)

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平成十九年四月十七日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十八号

  平成十九年四月十七日

    午後一時開議

 第一 放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律案(内閣提出)

 第二 統計法案(内閣提出)

 第三 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件

 第四 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件

 第五 核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第六 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 統計法案(内閣提出)

 日程第三 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第六 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出)、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出)及び学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長桝屋敬悟君。

    ―――――――――――――

 放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔桝屋敬悟君登壇〕

桝屋敬悟君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約等の適確な実施を確保するため、核燃料物質の原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、または放射線を発散させて、人の生命、身体または財産に危険を生じさせる行為等についての処罰規定を整備する措置を講ずるもので、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、放射性物質をみだりに取り扱うこともしくは原子核分裂等装置をみだりに操作することにより、またはその他不当な方法で、核燃料物質の原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、または放射線を発散させて、人の生命、身体または財産に危険を生じさせた者を処罰すること、

 第二に、第一の犯罪の用に供する目的で、その予備をした者、原子核分裂等装置を製造した者または放射性物質もしくは原子核分裂等装置を所持した者を処罰すること、

 第三に、放射性物質または原子核分裂等装置を用いて人の生命、身体または財産に害を加えることを告知して、脅迫した者を処罰すること

などであります。

 本案は、四月十日本委員会に付託され、翌十一日伊吹文部科学大臣から提案理由の説明を聴取し、去る十三日質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 統計法案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、統計法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長佐藤勉君。

    ―――――――――――――

 統計法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔佐藤勉君登壇〕

佐藤勉君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる公的統計の体系的かつ効率的な整備を推進し、調査票情報の多様かつ高度な利用を可能とするための措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月九日本委員会に付託され、翌十日菅総務大臣から提案理由の説明を聴取し、同月十二日及び十三日質疑を行い、これを終局いたしました。質疑終局後、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件

議長(河野洋平君) 日程第三、イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件、日程第四、イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件、日程第五、核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長山口泰明君。

    ―――――――――――――

 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口泰明君登壇〕

山口泰明君 ただいま議題となりました三件について、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、イーター国際核融合エネルギー機構設立協定について申し上げます。

 核融合エネルギーの科学的及び技術的な実現可能性を証明することを目的とするイーター事業に関し、同事業の実施に専念する安定的な基盤を有する国際機関の設立が必要と認識されるに至ったため、平成十三年十一月より政府間協議を行ってまいりました。その結果、協定案文について合意に達しましたので、平成十八年十一月二十一日、パリにおいて、日本、欧州原子力共同体、中国、インド、韓国、ロシア及び米国の七者により、本協定の署名が行われました。

 本協定の主な内容は、

 イーター機構を設立すること、

 イーター機構は、イーター施設の建設等を行うこと、

 イーター機構は、国際法上の法人格を有すること、

 イーター機構の資源は、加盟者から提供される財政上の貢献等から成ること

などであります。

 次に、イーター国際核融合エネルギー機構特権免除協定について申し上げます。

 イーター事業の実施に当たり設立される国際機関及びその職員等が確実にその任務を遂行するためには、特権及び免除の付与が不可欠であることが認識をされ、政府間協議を行ってまいりました。その結果、協定案文について合意に達しましたので、平成十八年十一月二十一日、パリにおいて、日本、欧州原子力共同体、中国、インド、韓国及びロシアの代表者により、本協定の署名が行われました。

 本協定の主な内容は、

 イーター機構の建物、公文書等は不可侵とすること、

 イーター機構は、裁判権からの免除、強制執行の免除等を享受すること、

 イーター機構並びにその財産及び収入については、同機構の公的な活動に関し、直接税、関税等を免除されること

等であります。

 最後に、日・欧州原子力共同体核融合エネルギー協定について申し上げます。

 我が国政府は、欧州原子力共同体との間において、イーター事業等を支援する、より広範な取り組みを通じた活動を共同で実施するための枠組みを定めることを目的とする協定について、平成十七年七月より交渉を行ってまいりました。その結果、合意に達しましたので、本年二月五日、東京において本協定の署名が行われました。

 本協定の主な内容は、

 より広範な取り組みを通じた活動は、国際核融合材料照射施設に関する工学実証及び工学設計活動に係る事業、国際核融合エネルギー研究センターに係る事業並びにサテライト・トカマク計画に係る事業の三つの事業から成ること、

 より広範な取り組みを通じた活動の実施のための資源は、両締約者から提供される財政上の貢献等から成ること

などであります。

 以上三件は、去る四月十日外務委員会に付託され、翌十一日麻生外務大臣から提案理由の説明を聴取し、十三日質疑を行い、討論の後、採決を行いました結果、いずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 三件を一括して採決いたします。

 三件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第六 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第六、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長西野あきら君。

    ―――――――――――――

 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔西野あきら君登壇〕

西野あきら君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、窒素酸化物対策地域または粒子状物質対策地域のうち、大気の汚染が特に著しい地区において、自動車から排出される窒素酸化物等による大気汚染防止対策の強化を図るため、当該地区について都道府県知事が窒素酸化物重点対策計画等を策定するほか、自動車の交通需要を新たに生じさせる建物を新設する際の届け出制度の導入や、窒素酸化物対策地域等の周辺地域に使用の本拠の位置を有する特定の自動車を指定地区で使用する事業者の取り組むべき措置を設けること等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、今月三日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、去る十日に若林環境大臣から提案理由の説明を聴取し、十三日参考人から意見を聴取した後、政府に対する質疑を行いました。同日質疑終局後、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出)、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出)及び学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに藤村修君外二名提出、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、牧義夫君外二名提出、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び笠浩史君外二名提出、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。文部科学大臣伊吹文明君。

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) ただいま議題となりました三法案につきまして、逐次その趣旨を御説明申し上げます。

 まず最初に、学校教育法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 昨年、約六十年ぶりに教育基本法が改正され、新しい時代に求められる教育理念が法律上明確になりました。

 近年の教育を取り巻くさまざまな問題を解決し、内閣の最重要課題である教育の再生を実現するため、改正教育基本法の理念のもと、学校における教育の目標を見直すとともに、組織運営体制及び指導体制の充実を図る必要があります。

 この法律案は、このような観点から、義務教育の目標を新たに定め、各学校種の目的等を見直すとともに、学校に置くことができる職として新たに副校長等を設ける等により、学校教育の充実を図るものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、改正教育基本法において明確にされた教育理念を踏まえ、義務教育の目標を定め、各学校種の目的等に係る規定を見直すとともに、学校教育法に規定する学校種の順序について、教育を受ける者の発達段階等を踏まえ、幼稚園から規定することとするものであります。

 第二に、学校は、教育活動等の状況について評価を行い、改善のための措置を講ずることにより、教育水準の向上に努めるものとするとともに、保護者等との連携協力を推進するため、教育活動等の状況について情報を提供するものとするものであります。

 第三に、大学等は、学生以外の者を対象とした特別の課程を修了した者に対し、証明書を交付することができることとするものであります。

 第四に、学校の組織運営体制及び指導体制の充実を図るため、小学校、中学校等に置くことができる職として、新たに副校長、主幹教諭、指導教諭を設け、これらの職務内容をそれぞれ定めるものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 次に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 国民から信頼される教育行政を実現するためには、教育基本法の改正を踏まえ、地方における教育行政の中心的な担い手である教育委員会が、より高い使命感を持って責任を果たすとともに、国と地方の適切な役割分担を踏まえつつ、教育に国が責任を負える体制を構築していく必要があります。

 この法律案は、このような観点から、教育委員会の責任体制の明確化や体制の充実、教育行政における地方分権の推進と国の責任の果たし方等について所要の措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、合議制の教育委員会がみずから管理、執行し、教育長に委任することができない事項を明確化するとともに、教育委員会の事務の管理・執行状況の点検、評価の制度化を図るなど、教育委員会の責任体制を明確化するものであります。

 第二に、市町村は教育委員会の共同設置等に努めることとするとともに、市町村教育委員会は事務局に指導主事を置くよう努めることとするなど、教育委員会の体制の充実を図るものであります。

 第三に、地方公共団体の長が、スポーツ、文化に関する事務を管理、執行することができることとするとともに、県費負担教職員の転任については、市町村教育委員会の内申に基づいて行うこととするなど教育の地方分権を推進するものであります。

 第四に、教育委員会の事務の管理及び執行が法令に違反する場合またはその管理及び執行を怠るものがある場合において、緊急に生徒等の生命身体を保護する必要が生じ、他の措置によってはその是正を図ることが困難な場合、文部科学大臣は、教育委員会に対し是正、改善の指示ができることとするなど、教育における国の責任の果たし方を見直すものであります。

 第五に、都道府県知事は、私立学校に関する事務について、必要と認めるときは、都道府県教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項についての助言、援助を求めることができることとし、私立学校に関する教育行政の充実を図るものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 最後に、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 学校教育の成否は教員の資質、能力に負うところが大きく、教育基本法の改正を踏まえ、教員全体への信頼性を高め、全国的な教育水準の向上を図ることが重要であります。

 そのため、教員が、社会構造の急激な変化等に対応して、最新の知識、技能を身につけ、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得られるようにする必要がある一方、指導が不適切な教員に対しては厳格な人事管理の実施を通じて毅然と対応する必要があります。

 この法律案は、このような観点から、教育職員の免許の更新制の導入及び指導が不適切な教員に対する人事管理について必要な事項の制度化を図るものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、教育職員の普通免許状及び特別免許状に十年間の有効期間を定め、更新制を導入するとともに、勤務実績不良等により分限免職の処分を受けた教員の免許状の効力を失わせることとするものであります。

 なお、既に授与されている普通免許状または特別免許状を有している教員についても、十年ごとに更新講習を課すものであります。

 第二に、公立の小学校等の教諭等の任命権者は、児童等に対する指導が不適切であると認定した者に対して指導の改善を図るための研修を実施しなければならないこととするとともに、研修の終了時の認定において児童等に対する指導を適切に行うことができないと認める者に対して、免職その他の必要な措置を講ずることとするものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 以上が、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 提出者藤村修君。

    〔藤村修君登壇〕

藤村修君 民主党の藤村修でございます。

 ただいま議題となりました教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、民主党提出を趣旨説明させていただきます。

 このたび、約六十年ぶりに教育基本法の改定がされ、政府は、中教審答申も踏まえて教育職員免許法の改正をただいま提案されております。ただし、その内容は、免許法について簡単に言えば、教員免許状に十年の有効期間を設け、十年ごとに免許状更新講習を実施し、修了した者に免許状の有効期間を更新する、それだけのものではないでしょうか。

 民主党は、何より、教員免許の見直しを行うなら、教員養成段階に手をつけない限り何ら抜本的な改革にはならないと考え、ただいま議題となりました民主党提出の免許制度改革法案を提案いたしました。

 民主党案のポイントは、第一に、教員養成段階で教員となる者の大幅な資質向上を図るために、教員の普通免許状については、現在の四年制大学修了から、さらにその後一年間の教育実習を含む二年間の修士修了者に免許することといたしました。第二に、修士を経て教員の職についた者が、実務経験八年以上を経た後に、さらに教職大学院大学で一年間の専門的な教育を受けて取得できる今までにはない専門免許を新設して、いわゆるスーパーティーチャーの資格を設けることといたしました。第三に、免許状には政府案のように十年の有効期間は設けないものの、原則として免許授与後十年ごとに講習を受け、修了を認定することとし、また、専門免許にはこれら講習の必要がない仕組みといたしました。

 このように、民主党案では、養成段階での大幅資質アップ、さらにスーパーティーチャー資格の新設、十年ごとの講習と修了認定の仕組みなどを盛り込んだ内容の大変厚いものとなっております。

 以下、内容の概要を御説明申し上げます。

 第一に、本法案は、教育職員の免許状の制度改革について基本的な理念と方針を定めるもので、教育職員が高度の専門性と豊かな人間性が求められる職業であることを踏まえ、その養成段階において、教育職員としての使命感を涵養しつつ、その職務をつかさどるための必要な資質及び能力を確実に修得させるとともに、実務についた後においても、研究と修養の機会を十分に与え、その資質、能力の一層の向上を図ることができるようにし、並びに教育職員の資格付与等に関し国が果たすべき役割と責任を明確にする等を基本にしております。

 第二に、免許状を子供の発達段階に適切に対応したものとするため、教諭の普通免許状及び特別免許状は、現行の学校種別ではなく、幼稚園、小学校の初等教育諸学校、中学、高校の中等教育諸学校、そして特別支援学校の三つの区分にすること。

 また、教諭の普通免許状は、専門免許状及び一般免許状に区分すること。専門免許状は、一般免許状を有し、教育実務等に八年以上携わった者が、教職大学院において三つの分野、すなわち、学校経営、教科指導、生活・進路指導等の各専門分野における高度な資質、能力を修得するための必要な科目の単位を得た者に授与し、一般免許状も、現行制度で学士の資格のところを修士の資格としたものであります。

 第三に、民主党は、我が党提出、日本国教育基本法案においても提案のとおり、普通教育に関し国が最終的な責任を有することにかんがみ、普通免許状は文部科学大臣が授与するものといたしました。

 第四に、免許状は、原則として十年ごとに、知識、技能に関する講習、模擬授業を中心とする演習等から成るおおむね百時間程度の講習を受講し、その修了認定を受けなければならないことといたしました。最初の十年経過の際の講習は、いわゆる教育公務員特例法について義務づけられている十年研修制度をもってこれに当てることを想定しております。また、専門免許状取得者は、いわゆる十年ごと講習の対象者とはしないことといたしました。

 以上が、民主党の教員免許の改革法案の御説明でございます。

 議員各位におかれましては、何とぞ、十分な御審議の上、御賛同いただきますようお願いを申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 提出者牧義夫君。

    〔牧義夫君登壇〕

牧義夫君 民主党の牧義夫でございます。

 民主党の学校における教育力向上に向けての政策パッケージ、いわゆる学校教育力の向上三法案の一つであります地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要について御説明申し上げます。

 今、教育現場では、教育格差の問題、いじめ、不登校、学力低下、子供をめぐる痛ましい事件の続発など、毎日のように問題が起こっており、こうした問題の一日も早い根本的な解決、改善が求められております。

 しかし、きめ細やかな対応が必要な問題であっても、現在の教育行政は、国が学習内容を決め、都道府県が教職員の採用や人事を決め、市区町村が学校の設置や管理を行うなど、責任の所在が三位ばらばらの実態がございます。さらに、地方自治体においても、教育の予算編成など教育財政は首長が決め、教育行政については教育委員会が行うといった二元行政の仕組みになっており、民主党は、こうした仕組みを改善することが今の学校教育現場及び教育行政に求められていることだと考えております。

 民主党は、今国会にも提出いたしております日本国教育基本法案において、普通教育と義務教育について、学校主権の確立と、いざというときの国の最終責任を明確にいたしました。その上で、各学校の活動について基礎自治体も大いに支援する必要があり、そのためには、地方公共団体が行う教育行政についても大きく改革しなければなりません。教育財政に責任を持つ地方自治体の首長が教育行政にも責任を持ってその任に当たる方が、今の教育現場を日々よりよくしていくためには望ましいと考えております。

 政府・与党は、こうした教育行政の改革に本気で取り組んでおらず、今回も小手先の見直しにとどめ、根本的な改革は先送りしております。こうした無責任な政府・与党に対し、民主党は、既に昨年の臨時国会において教育行政を改革する本法律案を提案し、今回、改めて学校の教育力を向上させるための法律案として再提出したところであります。

 以下、本法案の主な内容について御説明申し上げます。

 本法案は、民主党が提案している日本国教育基本法案の理念に基づき、地方公共団体における教育行政の民主的かつ適正な運営を図るため、地方公共団体による教育機関の設置及び学校理事会、教育監査委員会等に関し必要な事項を定めようとするものであります。

 第一に、責任の所在が不明確な教育委員会を廃止し、その事務を地方公共団体の長に移管することとしております。

 第二に、地方公共団体に新たに教育監査委員会を設置し、地方公共団体の長に移管された事務の実施状況に関し、必要な評価、監視を行い、長に対しその改善のために必要な勧告をすることとしております。

 第三に、地方公共団体の設置する学校ごとに保護者や地域住民、校長等から構成される学校理事会を設置し、各学校において主体的、自律的運営を行うこととしております。

 第四に、公立学校の教職員の任命は、すべて設置者である地方公共団体の長が行うこととしております。また、設置者である地方公共団体の長は、いわゆる指導力不足教員がある場合に、引き続き児童等に不適切な指導が行われることがないよう必要な措置を講ずることとしております。

 最後に、政府提出の地教行法改正案は、現在の教育行政の仕組みを温存したままの小手先の見直しにとどまっており、責任の所在は依然として不明確であります。

 いじめや未履修を初めとするさまざまな教育現場の問題は、今の教育行政の弊害も大きな原因の一つとして引き起こされた問題とも言えるのではないでしょうか。民主党は、責任政党として、学校の教育力の向上を目指し、教育問題における責任の所在を明確にすることを前提に、教育行政のあるべき姿として本法律案を提案した次第であります。

 何とぞ、十分に御審議の上、御賛同くださいますようお願いを申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 提出者笠浩史君。

    〔笠浩史君登壇〕

笠浩史君 民主党の笠浩史でございます。

 民主党のいわゆる学校教育力の向上三法案の一つであります学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要について御説明申し上げます。

 現在、我が国の公教育に関する公財政支出の割合は、先進国の中で最低の水準になっています。一方で、教育費に占める家計の負担は最高水準です。こうした状況の中で、教育格差、学力格差などの問題が深刻になっています。親の経済力によって、その子供の学びの機会に差がつき、その結果として、習得できる能力や就業できる職業、ひいては生涯の所得に格差がつく。まさに、格差の世代間連鎖が起こっています。

 こういった教育格差を是正し、教育現場が抱える問題を具体的に改善するためには、教育財政の拡充が求められます。人づくりへの投資にもっと十分な予算を充てる体制へシフトする仕組みが必要です。

 政府が教育予算の削減を進めようとしているのに対して、民主党は、今国会に提出している日本国教育基本法案の中で教育財政の充実を明記しており、その理念を具体化したのが本法律案であります。学校教育力を向上させるために、よりよい学校教育の環境を整備するための指針等を策定するとともに、その着実な達成を図ることにより、教育の振興に資することを目的としております。

 以下、本法案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、学校教育の環境の整備は、子供たちがその発達段階及びそれぞれの状況に応じた適切かつ最善な環境で学校教育を受けることができるよう、多様な教育機会の提供、きめ細やかな教育指導の充実、安全、快適な学校教育のための諸条件の整備、心身の健康、職業選択等に関する相談体制の充実等を旨として行うことを基本方針とすることとしております。

 第二に、国は、この基本方針に基づき、学校教育の環境整備に関する施策を総合的に策定、実施する責務を有することとしております。

 第三に、地方公共団体は、この基本方針に基づき、学校教育の環境整備に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その区域の特性を生かした自主的な施策を策定、実施する責務を有することとしております。

 第四に、教職員の数、教員の有する免許状の種類ごとの比率等の教職員の配置、学級編制、学校の施設設備など学校教育の環境の整備に係る重要項目についての目標水準、その達成の目標年次等に関し、日本国教育基本法案第十九条の教育の振興に関する計画の一部として、政府は整備指針を、地方公共団体は整備計画をそれぞれ策定することとしております。

 第五に、国及び地方公共団体は、日本国教育基本法案第十九条に規定する教育予算の確保、充実の目標を踏まえ、整備指針及び整備計画を達成するため、必要な財政上の措置等を講ずることとしております。

 第六に、行政改革推進法の五十五条の三項と五十六条の三項に当たる、公立学校教職員の削減を定めた規定及び人材確保法の廃止を含めた見直し等を定めた規定を削除することとしております。

 教育予算の充実こそ未来への投資であります。民主党は、責任政党として、学校現場における教育力を向上させるため、安定的な財源の確保は必要不可欠であると考え、本法律案を提案した次第であります。

 何とぞ、十分御審議の上、御賛同くださいますようお願いを申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出)、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出)及び学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。馳浩君。

    〔馳浩君登壇〕

馳浩君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりましたいわゆる教育再生三法案について、総理大臣及び文部科学大臣並びに厚生労働大臣に質問をいたします。(拍手)

 法律の具体的内容に先立ち、まずは、総理が立ち上げた教育再生会議の役割についてお伺いいたします。

 矢継ぎ早に改革案が打ち出される再生会議と、文部科学省との政策決定プロセスには、どのような連動性があるのでしょうか。また、再生会議と中教審にはどのような役割分担がなされているのでしょうか。さらに、再生会議はどうして中教審のようにマスコミにオープンではないのでしょうか。会議の後に議事録を公開するだけでは、議論の流れやニュアンスを第三者が判断することはできません。安倍内閣の重要課題に位置づけられている教育改革の、そのリーダー役を務めていると思われる再生会議は国民注目の的です。マスコミ公開に難色を示すメンバーがいるとしたならば、国民に開かれた再生会議とは言えず、何をか言わんやです。ぜひマスコミ公開のもとで議論されるべきであると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。

 次に、改正の具体的内容について質問いたします。

 第一に、学校教育法の改正について質問いたします。

 昨年、六十年ぶりに教育基本法が全面的に改正されました。新しい理念や目標が明示されました。これらの理念や目標を学校現場でどのように具体的に実現していくかがこれからの課題です。実現に向けての総理の見解をお伺いします。

 また、伊吹大臣には、学習指導要領をどのようなスケジュールで見直して、新たな教育の理念や目標の実現を現場に浸透させていくおつもりか、お伺いします。

 また、新たに規定された幼児期の教育についてお伺いします。

 幼児期の教育の重要性を考えると、保育所と幼稚園の垣根が低くなることが望まれます。幼保一元化に向けての国民の期待を総理はどのようにお考えでしょうか。また、幼児教育の将来の無償化については骨太の方針二〇〇六にも盛り込まれておりますが、実現に向けてのクリアすべきハードルは何なのか。財源なのか、文部科学省と厚生労働省のベルリンの壁なのか、総理と文部科学大臣及び厚生労働大臣に具体的にお伺いします。

 また、学校評価及び情報提供に関する規定が整備されます。

 私は、かつて、母校星稜高校で国語の教員として教壇に立っておりました。体験から申し上げますが、学校が適切な評価を受けるために一番大切な情報提供は、職員会議の運営と内容についてであると確信しております。例えば、一部の組合員の大声でじゅうりんされるような閉鎖的な職員会議であってはなりません。今回の改正で、職員会議を含め、どのように学校運営の状況に関する情報が国民に対して提供されるのか、伊吹大臣の答弁を求めます。

 第二に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。

 一口に教育委員会と申しましても、大きく違います。都道府県教育委員会、政令指定都市教育委員会、中核市教育委員会、規模の小さな市や町や村の教育委員会です。規模は違えど共通していることが一つあります。議会承認という手続こそありますが、いずれも任命権者である知事や市町村長に頭が上がらないことです。その証明は、三位一体改革のときに、教員給与の国庫負担金の一般財源化問題について、本心は反対なのに、知事会や市長会の顔色をうかがい、声高に意思表明できなかったことに尽きます。こんなありさまで、本当に教育の中立が保たれるとお考えでしょうか。総理と伊吹大臣にお伺いいたします。

 次に、高校の未履修問題について伊吹大臣に質問します。

 本来履修すべき教科の授業が行われていなかったこの問題は、いかなる言いわけも許されない、言語道断、情けない、根の深い問題でした。とりわけ私立学校に未履修が多く、裏返すと、地方教育行政上の指導が十分私学の現場に行き届いていないのではないかとの組織上の懸念を抱かせました。今回の法改正で、このような未履修問題に対し、私学も含めて対応できるようになるのでしょうか。

 御存じのとおり、私学を所管しているのは、教育委員会ではなく、知事部局である総務部です。このままでは、必要な教育行政上の相談や連絡体制において公立学校との格差が生じます。この問題は、国立大学法人附属学校においても同様です。私学を担当する知事部局に教育行政のプロの職員を配置するか、さもなくば、教育というくくりで教育委員会が所管するという形にするかを検討する時代ではないかと思いますが、伊吹大臣の見解を伺います。

 次に、民主党の地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案の提出者に伺います。

 この法案においては、教育委員会を廃止して教育事務を首長に移管するなどの仕組みが提案されていますが、このような提案で果たして教育がよりよくなるのか、民主党案の提出者に見解を伺います。

 第三に、教育職員免許法及び教育公務員特例法の改正案について質問いたします。

 私は、指導が不適切な教員を現場から排除する仕組みとして免許更新制を導入するという発想には断固反対します。

 私も、大学を卒業していきなり教壇に立ったとき、自分に自信がなく、大いに不安でした。しかし、そんな私を温かく指導してくださった先輩教員や保護者の支えがあったおかげで少しずつ成長できました。だめ教員を一方的に評価して現場から駆逐するという発想があっては、人間教育のはずの学校現場が殺伐とし、教員に求められる多様な個性を萎縮させかねません。免許更新制を今導入しなければならない哲学について、総理に伺います。

 また、現在教壇に立っている百十万人の教員が今後十年ごとの免許状更新講習を修了するとして、一体幾らの国庫負担や都道府県の負担が必要でしょうか。また、大学側の負担はどのようなものになるのでしょうか。それらの新たな負担に見合った、いや、それ以上の成果が納税者から期待されるわけですが、伊吹大臣の見解を伺います。

 次に、民主党から提案のあった新免許法について質問いたします。

 現行の教育職員免許法は、短期大学から大学院まで、さまざまな大学が、その特性を生かし、多様な教員を養成することを基本理念としていますが、民主党案では、どのような教員を養成することをお考えでしょうか。提案者の見解を伺います。

 また、政府から提出している教員免許更新制の要件は、教員の負担や大学の講師等の受け入れ体制を勘案して、三十時間の講習の修了としていますが、民主党案では、どのような要件を満たした者に更新を認めることとなるのでしょうか。お答えください。

 次に、指導が不適切な教員の人事管理の厳格化について伺います。

 そもそも、指導が不適切という言葉の定義は何でしょうか。伊吹大臣に伺います。

 既に、各都道府県で指導力不足教員への対応が一定程度進んでいます。しかし、その取り組み状況には地域によって温度差があります。文部科学省は、教員の資質の向上のために、つくばにある中央教員研修センターなどを活用して、全国的な教育水準の維持向上を図る必要があると思いますが、伊吹大臣の見解を伺います。

 また、よりよい教員を育てていくためには、教員の養成、採用、研修、免許更新制と、それぞれの段階を貫く哲学が必要であります。とりわけ採用に関しては、多様な指導力のある教員を現場に配置できるような配慮が必要です。より実践的な教科教育法や学級経営論や、障害児対策や、生徒指導や進路指導や部活動指導の方法もマスターしていかなければなりません。時には、理不尽な保護者への対応の仕方も求められます。伊吹大臣の哲学を伺います。

 多忙感をきわめる現職教員への要求は尽きることがありません。大変なプレッシャーのかかる教員の処遇については、一罰百戒ばかりではなく、優秀な教員に対する表彰制度や給与へのめり張りをつけることも必要です。当然、教職員をふやし、多様な要求にこたえるための職場環境の改善は、待ったなしであります。教員給与の優遇措置を定めた人材確保法は、制定時と現在では社会的、政治的背景が違いますので、一律性はぜひとも見直し、頑張る教員は評価され、処遇に反映されてしかるべきと思いますが、伊吹大臣の見解を伺います。

 最後に、美しい国を支える人材とは、具体的に一体どんな日本人像とお考えか、総理にお伺いして、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 馳浩議員にお答えいたします。

 教育再生会議の役割と中教審との役割分担についてお尋ねがありました。

 教育再生は、私の内閣における国政上の最重要課題であります。二十一世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を図るために教育再生会議を設置いたしました。

 教育再生会議の提言については、速やかに施策として実行に移せるものは移し、今回の教育三法案のように、制度改正が必要な場合など、さらに検討が必要なものは中央教育審議会での検討も踏まえつつ、内閣を挙げて教育再生に取り組んでいるところであります。

 教育再生会議の議事の公開についてお尋ねがありました。

 教育再生会議については、記者ブリーフィング、議事要旨、議事録等により、会議の内容を公開しています。これは委員の意見を踏まえた措置であり、今後とも、こうした形で会議の内容の公開に努めてまいります。

 学校現場における改正教育基本法の理念の実現についてお尋ねがありました。

 教育基本法の新しい教育理念を学校現場において実現するため、まず、学校教育法を改正し、義務教育の目標として規範意識、公共の精神、伝統と文化の尊重、そして郷土や国を愛する態度を養うことなどを法律上明確にします。さらには、学習指導要領の改訂などを通じて、このような内容の具体化を図り、公教育の再生に取り組んでまいります。

 幼保一元化についてのお尋ねがありました。

 現在の幼稚園と保育所は、それぞれ異なる目的、役割を有していますが、連携を進めていくことが重要と考えております。また、国民の多様なニーズに対応するため、昨年十月、就学前の子供への教育と保育を一体的に提供する認定こども園を創設したところであります。今後とも、認定こども園制度の活用促進など幼稚園と保育所の一層の連携を進め、就学前の子供に対する教育、保育の充実に取り組んでまいります。

 幼児教育の無償化についてお尋ねがありました。

 幼児教育の将来の無償化については、財源、制度等について検討する必要があると考えており、歳入改革にあわせてそれらの問題を総合的に検討することとしております。いずれにせよ、幼児期の教育は人間形成の基礎を培う重要なものとして極めて大切であると考えており、文部科学省と厚生労働省の連携により幼児教育の充実に取り組んでまいります。

 教育委員の中立性についてのお尋ねがありました。

 地方における教育行政については、教育の中立性や継続性、安定性の確保、さらには多様な民意の反映を図るため、首長から独立した合議制の執行機関として教育委員会が設けられております。このような制度の趣旨を踏まえ、教育委員会はみずからの責任を自覚して教育行政を進めていくことが重要であると考えています。

 教員免許更新制についてお尋ねがございました。

 国際化が進み、価値観が変化し、自然科学が進化するなど、世の中が時々刻々と変化している中で、教員が、その時々、必要な知識、技能を確実に身につけることは、教育の充実を図る観点から極めて重要であります。このため、すべての教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、そして社会の尊敬と信頼を得ることができるよう、十年に一度、資質、能力を刷新する教員免許更新制の導入が必要と考えています。

 なお、問題ある教員への対応については、御指摘の点に十分留意しながら、教育公務員特例法において対処していく所存でございます。

 美しい国を支える人材についてお尋ねがございました。

 明治、大正期に日本を訪問した多くの外国人は、日本人の謙虚さや質素さなどについて称賛をしております。そういう意味で、立ち居振る舞いの美しい日本人の育成こそ美しい国を実現する上で重要と考えています。このため、先般成立した改正教育基本法の理念のもと、家族、地域、国、そして命や自然を大切にし、公共の精神、そして豊かな人間性と創造性を備えた日本人の育成を目指してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) 馳議員から十一にわたる御質問がございました。

 まず、学習指導要領の見直しでありますが、現在、中教審において審議をいただいております。その中では、国会で御承認をいただきました改正基本法の理念を踏まえて、基礎的な知識の着実かつ確実な定着とその活用をする力、あるいは規範意識の確立のための具体的な手だてなどを検討していただいております。

 改正基本法を国会で御承認はいただいておりますけれども、学習指導要領は文部科学大臣の告示という手続によってなされますので、今回、学校教育法の御審議をもう一度国会にお願いすることによって、その間を国民の意思によってつないでいきたいと考えております。

 次に、幼児教育の無償化についてのお尋ねでありますが、御指摘のとおり、骨太の方針あるいは「日本経済の進路と戦略」等の閣議決定がございます。文部科学省と厚生労働省の間には、ベルリンの壁などというものはございません。あるとすれば、まさにそれは財源の壁でございます。これを無償化するためにはやはり膨大な財源が要りますので、閣議決定の際にも併記してあるように、今後の税制改正のあり方等々を参考にしながら、できれば無償化にすることが望ましいと思っております。

 次に、学校教育法改正で、職員会議等を含めて、学校の情報提供についてどうするのかというお尋ねでございます。

 学校は、まずその説明責任を果たして、そして家庭と地域と協力をして教育力を果たさねばなりません。そのためには、学校に関する情報の積極的な提供が求められておりますので、今回の学校教育法においても、情報提供について新たな条項を設けて規定しているところであります。

 この規定は必ずしも義務規定ではありませんけれども、本条の趣旨に照らして、学校の教育目標、教科指導や生徒指導の様子など、職員会議の内容も含めて、学校運営の状況を知らせるために必要な情報を各学校において積極的に検討していただきたいと考えております。

 次に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について二つ御質問があったと存じます。

 まず最初は、教育の中立性についてであります。

 既に総理がお答えをいたしましたように、地方における教育行政については、教育の中立性や継続性、安定性を確保し、さらに、多様な民意を反映させるために、選挙によって選ばれる首長から独立をした合議制の中立的執行機関としての教育委員会を設けていることは御承知のとおりであります。

 このような制度の趣旨を踏まえて、今回の改正案では、特に教育委員は、その職務の遂行に当たって、みずからが教育行政の運営について重大な責任を負っているということを自覚していただくことを規定し、同時に、教育委員会の責任体制の明確化を図ることといたしております。

 このような観点から、教育委員会が地方教育行政の中心として主体的にその責任を果たしていただくことを促してまいりたいと思っております。

 次に、私立学校の未履修問題についてお尋ねがありました。

 私立学校といえども、国公立学校と同様に、国会で定められた法律に基づく学習指導要領に基づいて適正な教育課程が編成、運営されることは、私は、国民として当然のことだと思っております。学習指導要領に反し未履修がある私立学校については、所轄庁である都道府県知事の十分な指導助言が行われることが大切であることは言うまでもありません。

 今回の地教行法の改正では、知事が必要と認めるときは、教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項について助言または援助を求めることができるという規定を新たに設けており、したがって、私立学校における未履修問題については、これまでどおり、所轄庁である都道府県知事において管理監督をいたしますけれども、その際には、教育委員会から助言、指導等が十分活用されるよう、一層適切な文部科学省としての要請、指導を行いたいと思っております。

 なお、法律を作成する際に、内閣総理大臣から総務大臣に対しまして、ただいま御指摘になりましたように、知事部局に指導主事を置くなど、適切な指導が行える体制を促すようにという御指示があったことを申し伝えたいと思います。

 次に、私立学校に関する教育行政のあり方についてでありますが、私立学校も公教育の一端を担うものでありますから、主権者たる国民の代表である国会で決められた法律を遵守することは、これは当然のことであります。このような考え方に基づき、中央教育審議会の答申では、所轄庁である都道府県知事のもとに学校教育に関する専門的知識を有する者を配置するなど、体制の充実を求めております。この求めに応じて、先ほど申し上げた総理の指示が出されたところであります。

 また、今回の改正地教行法におきましても、ただいま申し上げましたように、知事が必要と認めるときは、教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項について助言または援助を求めることができる旨の規定も織り込んでおります。

 今後とも、私立学校の教育行政上のあり方については、注意深くこれを見守り、国会の議決の範囲の中で公教育の責任を果たしていただくように努力をさせていただきたいと思っております。

 次に、免許更新制についての費用負担でございますが、更新制の導入に当たっては、更新の講習会の実施、全国的な免許管理システムの導入、その他必要な広報の実施等に係る費用が必要となってまいります。

 そのうち最も重要なものは、言うまでもなく、更新の講習の実施に要する費用であります。年間十万人ずつの教員が受講するといたしまして、従来の実績を勘案いたしますと、一人大体三万円程度の費用が必要になります。ということは、年間三十億前後の費用が必要だということです。

 この教員免許は、個人の資格、職業に対する資格でありますから、その更新に要する費用については個人負担にするという考えももちろんございます。しかし、同時に、国あるいは教育上の要請から、国会の議決によって、特に現職の教員についてはこれまで予期しなかった負担が生ずることになりますので、当然一定の配慮が必要だと考えております。

 したがって、国会においてどのような御議論をしていただくかということも踏まえて、今後、費用のあり方については、国、地方自治体そして御本人の負担等について検討させていただきたいと思います。

 指導力が不足という言葉の定義についてお尋ねがありました。

 これは、率直に言って、見る人の立場によっていろいろ考えが違うと思います。しかし、一般論として言えば、教科に対する専門的知識、技術が不足しているため、学習指導が適正に行えない教師、あるいは、指導力、指導方法が不適切であるため、学習指導を行うための技術や専門的知識まで欠けているような教師、そして児童生徒の心を理解する能力や意欲に欠けて、学級経営や生徒指導を適切に行い得ないような教師、このような場合がやはり指導が不適切な教師に当たると理解しております。

 次に、教師の資質向上について、全国的な教育水準の維持向上を図ることにつき、中央教員研修センターの活用などの御提案がございました。

 各地域で中心的な役割を担う校長、教頭等に対する研修や、都道府県教育委員会が実施する研修の指導者の養成を行うのが、御承知のとおり中央教員研修センターであります。文部科学省といたしましては、このセンターを活用し、教員の底上げに努め、全国的な教育水準の一定化を図りたいと考えております。

 教員の養成について、極めて哲学的なお尋ねがございました。

 教育は人なりと言われますように、学校教育の成否は教員にかかるところが大きいことは言うまでもありません。養成、採用、研修の各段階の改善充実を通じ、質の高い教員を育てていかねばなりません。

 養成段階にある大学においては、教職課程の見直しを図ることも大切だと思いますし、教員に求められる基礎学力をしっかり身につけるように指導をしていくことも必要だと考えます。採用段階では、御指摘のように選考方法に工夫を凝らし、質の高い教員の卵をしっかりと見きわめねばなりませんし、また、採用された後の現職の研修では、経験豊富な先輩教員の教えを前提として、実践的な指導力の完成を目指すことが何より大切です。そして、それとあわせて、今回お願いしております更新制は、時代の変化や要請に応じて求められる資質の刷新を図ることをねらっているものであります。

 こうした各般の施策を通じて、強い情熱そして確かな力量、総合的な人間力、馳先生が備えておられたような資質をしっかりと兼ね備えたすぐれた教職員の養成、確保に努めてまいりたいと考えております。

 最後に、教職員の処遇の改善、教員の表彰あるいは給与等についてのお尋ねがございました。

 単に教職員をむちで追うだけが私は教員をよくする道だとは決して思ってはおりません。そして、黙々と努力をしている多くの教員の人がおられることをよく存じております。したがって、政府としては、教職員の数も含めて公務員の総人件費の改革に取り組んではおりますけれども、今後の教職員定数のあり方については、安倍内閣の教育改革にかける思い、そして今後の教育振興計画の策定等の議論を踏まえて、総理も熱い決断をしてくださることを私は期待いたしております。

 すぐれた成果を上げた教員を表彰することは、ことし、初めて安倍内閣においてこれを実施いたしました。今後とも、教員の意欲を高めるためにさまざまな取り組みを推進してまいりたいと思います。

 なお、教員に優秀な人材を確保することは教育再生の必要不可欠な条件であると思いますので、人材確保法の精神は今後とも大切にすべきであると考えております。ただ、一律の優遇措置の見直しは、馳議員のおっしゃったとおり考えていく必要があると思いますし、職務負担の適切な評価やめり張りのある教員の給与ということが大切だと思っております。

 平成二十年度の予算編成に向けて議員各位の御協力を心からお願いして、御答弁といたします。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 馳議員からは、私に、幼保一元化関連で二つほど御質問をいただきました。

 保育所と幼稚園とはそれぞれ異なる目的、役割を果たすものとして設置をされております。したがいまして、今後とも、それぞれの特性を踏まえながら連携を深めていくことが基本であろうと考えております。

 他方、少子化の進行や保育、教育ニーズの多様化への対応も求められておりまして、これに対しましては、保育、教育を一体的に提供し、地域における子育てを総合的に支援する施設として、認定こども園というものを昨年十月より設置し始めたところでございます。

 いずれにいたしましても、文部省との間で垣根を低くして協調して、保育所と幼稚園の一層の連携を深め、就学前の子供に関する保育、教育の充実に取り組んでまいりたい、このように考えております。

 幼児教育の無償化につきましてお尋ねがありました。

 昨年七月に閣議決定されました骨太の方針二〇〇六等におきまして、御指摘のとおり、幼児教育の将来の無償化について検討することとされております。

 保育所も含めた幼児教育の無償化につきましては、保育制度、教育制度のあり方及び財源の問題にもかかわりがありますのは当然のことですが、さらに、親の働き方とも関連する面があること等から、国民の幅広い議論が必要であろうと考えております。

 厚生労働省といたしましては、閣議決定された方針に沿って、歳入改革が行われる場合には、文部科学省とも連携を図りながら、幼児教育のあり方として総合的に検討してまいる所存であります。

 以上であります。(拍手)

    〔藤村修君登壇〕

藤村修君 馳浩議員の御質問にお答え申し上げます。

 まず、馳議員の内閣提出法案に対する御質問については、ポイントを非常に厳しく押さえられ、時に辛口の質問をされたというふうに受けとめております。これぞ国会審議の矜持を示したものだと敬意を表したいと存じます。また、本日提出したばかりの我が党案にも御質問をいただいたことに感謝を申し上げます。

 馳議員からは、我々の新地教行法と免許法についての御質問でございました。

 まず、地教行法について、地方公共団体の行う教育行政について、我々は首長ということに権限を集中させました。現在、首長と教育委員会との二元行政の問題が、これはずっと指摘されているところであり、また、地教行法に基づく現行の教育委員会制度においては、教育委員は首長による任命制でございますし、ですから、レーマンコントロールという、いわば民意を反映した教育行政が行われているとは言いがたいということもずっと指摘されていたところであります。

 選挙を通じて住民に責任を負う首長が、これは財政も持ちますから、一元的に教育行政を所管することにより、地域の個性を発揮し、住民の声にも的確に対応する教育行政が可能となる、このように考えております。ただし、中立性の問題ということが常に指摘されます。

 そこで、我々は、現行教育委員会を、これは発展的改組という言い方をしておりますが、外部の教育監査委員会に改組することとし、教育行政に対する厳しいチェックを外部機関、独立した機関として機能することにより、首長の恣意あるいは行き過ぎた過度な政治性を排除することも、また学校現場の不適切な運営を排除することもでき、よりよい教育の実現に資するものと考えております。

 次に、免許法のことで二問ございました。

 まず、各大学、学部で学んだということを全然否定するものではございません。我々も教員養成についてはいわゆる開放制を考えております。ただ、現在、全国で約八百ぐらいの教員養成大学があります。先ほどの伊吹大臣の答弁にもありました、それらがマンネリ化しているといいますか、教員養成課程を持つそれぞれの大学にもやや問題があることは中教審からも指摘されているところでございます。

 基本理念としては、教員には高い資質、能力を求めたいという気持ちがございます。子供たちも多様化しており、昔は見られなかったような問題もさまざま出てきている教育現場でございますことも考え合わせれば、現在までと同じ学びの量で現在の理想に足り得る教員の資質、能力が培われるとはなかなか言いがたい現状があることも認めなければならないと思います。

 よって、民主党案では、思い切った教員養成におけるレベルアップを目標とし、一般免許はすべて修士レベルを要求し、その養成課程の中で、これは修士の段階でありますが、一年間の教育実習を必須とすることにより、養成段階での適切な学びと、教員としての高度の専門性と豊かな人間性を培うことに力点を置いております。

 もう一問、教員免許のことで。

 免許状の取得後原則として十年を目途に、学び直しの機会を設け、自己研さんを奨励するため、教員等の経験八年と教職専門大学院においての一年課程を修了した者に、より専門的な力を持っていると認定し、専門免許を授与することとし、免許を新設しております。

 また、専門免許未取得の免許者に対しては、原則として十年ごとに講習を実施することとし、その最初の研修機会として、現行教育公務員特例法で定められておりますが、十年経験者研修というものを拡充し、これに充てたいと思っております。また、その内容については、百時間程度。現行の教特法における十年講習というのは二十日間で、時間数にするとおおむね百時間程度になるかと思います。それを一つの参考にし、十年研修における百時間程度の講習の修了を目指しております。修了要件は、もちろん通信教育あるいはオンデマンド教育なども活用し、知識科目七十時間、スクーリング形式による実習、演習等を三十時間、計百時間程度としております。そして、これは委託された各認定大学等が修了認定をすることといたしております。

 以上、簡単に申し上げました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 野田佳彦君。

    〔野田佳彦君登壇〕

野田佳彦君 民主党の野田佳彦でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の教育関連三法案及び民主党が提出をした教育力向上三法案について質問をいたします。(拍手)

 その前に一言申し上げたいのは、最近、民主党がせっかく法案を提出して提出者が登壇をしても、一方的に自民党の議員が批判をして、そして立ち去るという姿を随分見てきました。ひきょうであり無礼だと思いました。その中で、先ほどの馳浩議員の態度は、疑問に思ったことはきちんとぶつけていただきました。教育者らしい、スポーツマンらしい、フェアな態度だと敬意を表したいと思います。

 一方で、最近の自民党の国会運営には厳しく抗議をしたいと思います。委員会、本会議、残念ながら職権で開かれるということが随分と多くなってまいりました。久しぶりにこの本会議に登壇しましたけれども、やはり見渡す限り自民党がふえた、そのせいだと思います。つくだ煮にしたいぐらいいっぱいです。そんな中で、どうしても傲慢さや強引さが出てきているんだろうと思います。

 私は、おなかの回りが八十五センチを超えたメタボリックの注意が必要な男でありますが、ハウスの中で、四百八十人の定数の中で三百を超える政治勢力となると、どうも注意すべき兆候がいっぱい出てきているんだろうと思います。

 度量の大きさが示されるべきでありますが、残念ながら、了見の狭い強引な運営ばかりが目立っていると言わざるを得ません。

 先週、十三日の金曜日、残念ながら教育再生に関する特別委員会が議決をされました。国会法の第四十五条によりますと、各議院は、その院において特別な案件と認められた場合とか、あるいは常任委員会の所管に属しない特定の案件については特別委員会で審議することができると規定をされています。

 しかし、今回の特別委員会設置の理由は、特段の理由が見当たりません。あえて言うならば、政府提出の法案の時期が大幅におくれにおくれたがゆえに、審議を迅速にするために、特別に、便宜的に設置をした委員会と言わざるを得ません。これは極めて残念なことであると思いますし、恐らく、与党の文部科学委員会の理事の皆さんや委員の皆さんでも、これは本来、文部科学委員会でこれまで議論されてきたし、これからもそうだと思っている方が本当は多いのではないかと私は思います。

 さて、そうした中で、具体的な質問に入っていきたいと思いますけれども、先ほども少し議論が出ていましたが、今回の三法案の提出に至る過程において教育再生会議、中教審の審議がありましたが、余りにも大急ぎの突貫工事のように見えました。その結果出てきた今回のさまざまな個別法案は、戦後教育からの脱却というそんな言葉を言う前の、何か貧弱な法案ばかりであります。

 私は、教育再生会議というのは、本来ならば、もっと奥の深い、奥行きのある議論を丁寧にする組織だと思っていました。地域社会と学校のあり方とか、家庭と学校のあり方とか、地域再生のあり方がなくして教育再生はありません、家庭の再生なくして教育再生はありません。まさに、教育再生とは日本再生そのものであります。その割には、残念ながら、そうしたしっかりとした議論がなされたようには思えませんでした。その最大の理由は、恐らく、私は、教育再生を一番最初に唱えて、今国会でも重要課題と位置づけている安倍総理の理念そのものにあると思います。

 そこで、安倍総理にお尋ねをしたいと思います。どのような理念に基づいてこの国の教育を再生しようとしているのか、ぜひしっかりとお答えをいただきたいと思います。(拍手)

 さて、個別法の質問に入ります。まず、教員免許法改正案についてであります。

 私も子供が二人います。子供たちの成長過程を見てまいりました。一番感動的だったのは、はいはいをしている赤ちゃんの段階から、立ち上がろう、立ち上がろうとしている、その満一歳前後だったと思います。とても感動的でした。赤ちゃんは、親が教えなくても、立ち上がろう、立ち上がろうとする。転んで滑って痛い思いをしても、ずっと寝ていた方が楽だという赤ちゃんはいないと思いました。みんなが伸びよう、伸びようとしているんだと実感をしました。その伸びよう、伸びようとしている新しい芽をしっかり学校教育の現場で受けとめて、また、その任に当たる教師がしっかりしているかどうか。これは大事な論点だと私は思います。

 そこで、政府案を見ましたが、真に教員の質と能力を高めるための内容になっているかというと、そうではなく、教員の免許期間を十年間として定め、三十時間の講習をして更新をするという内容、それだけです。その貧弱な内容で本当に教育再生ができると思っているかどうか、これについても総理にお答えをいただきたいと思います。

 さらに、具体的な質問は文部科学大臣にお尋ねをいたします。

 十年ごとに三十時間講習で更新。その講習の中身はどうなっているか、どこで講習を受けるのか、だれが認定をするのか、どういう費用負担になっているのか、具体的な仕組みについて御説明をいただきたいと思います。

 なお、民主党も新免許法案を提出しました。この中身については、せんだっての衆議院文科委員会において、法案提出者の藤村修議員と伊吹大臣との間で質疑応答がありました。

 民主党は、教員養成の段階から大幅に資質向上を図ろうとし、一定の実務経験を経た後に上級免許状を創設するなど、総合的、抜本的改革案になっています。そのことは、せんだっての文科委員会のやりとりで、伊吹大臣の表情を見ていますと、民主党案の方がいいんじゃないかなという顔を私はされていたと思います。ぜひきょうは、民主党案についての伊吹大臣の本音の御評価もお伺いをしたいと思います。

 さて、中教審の答申によりますと、「教員として必要な資質能力は、」「時代の進展に応じて更新が図られるべき性格を有しており、」という表現がございます。これは、ほかの専門職種にも当てはまる表現だと私は思います。例えば、医師として必要な資質能力は、時代の進展に応じて更新が図られるべき性格を有しており等々、他の専門職種にも十分当てはまる表現です。

 そこで、この点については総理にお尋ねをいたします。今回のような免許更新制度を今後他の専門職種にも適用するつもりなのかどうか。特に、医師免許は取り急ぎ検討すべき課題だと思いますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

 次に、不適切と判断をされる教員の問題であります。いわゆる外れ教師と言われています。

 私どもも入学式や始業式にお招きをいただくことがたくさんあります。そのときに一番異様な空気となるのは、担任教師の発表のときです。みんながわくわく、どきどきしながら、ことしは外れか当たりかを見ています。ことしも外れたわとどよめきが起こるときも私は何回か見たことがありました。

 外れた教師が学級担任になったときの教室は悲惨です。できる子は抑えられ、できない子は置いてきぼり、豊かな子は奪われて、気の弱い子はいじめられて、だれにとっても不幸な空間になりかねません。そうした意味からも、指導力の不足した教員あるいは不適切な教員への対策はしっかりと講じるべきだと思います。

 でも、政府案を見ますと、都道府県の教育委員会が不適切を認定するという内容で、その後、研修をさせたり、研修の効果があるかどうか、またその認定があるようですが、私は、肝になるのは、この不適格の認定基準だと思うんです。その不適格の認定基準について伊吹文科大臣はどのようにお考えなのか、お答えをいただきたいというふうに思います。また、この政府の仕組みは有効な対策として期待できるのかどうか、その効果についてもあわせてお答えをいただきたいと思います。

 次に、地教行法改正案についてお尋ねをします。

 昨年は、いじめによる自殺が多発をしたり、あるいは未履修問題が社会的な問題になってクローズアップされました。その際に、教育委員会が適切に機能していなかったという事態が随分各地で散見をされました。教育委員会の抜本的な改革は必要だと思います。

 しかし、今回の改正案を見ると、都合よく国の関与が教育委員会にできるようになっているだけであって、教育委員会制度そのものは温存をされています。文部科学大臣が教育委員会に是正要求や指示が出せる権限が盛り込まれました。しかし、先ほど申し上げたいじめの問題やあるいは未履修問題は、長い間放置されてきた文部科学省の感度の悪さも同時に指摘をされたはずでありました。国の関与を教育委員会に強めるだけで、一体これが有効な方策になるのかどうか、私は極めて疑問に思います。この点についての文科大臣のお考えをお聞かせください。

 そして、この是正要求であるとかあるいは指示というやり方、地方分権の流れに逆行するのではないかという懸念があります。地方団体の長もしかり、そして、政府の規制改革会議でもそういう指摘があります。分権の旗振り役である総務大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。

 私立学校に関する教育委員会の関与規定も盛り込まれました。私学の自主性や振興などにどのような影響があるか、これについては、文部科学大臣と総務大臣、お二人にお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 さて、昨年の教育基本法の改正によって、今回の学校教育法の改正がありました。中身は、義務教育の目標として、「規範意識」であるとか、あるいは「我が国と郷土を愛する態度を養う」、こういう項目が新たに規定をされたわけであります。

 私ども民主党は、心や感性は強制できるものではないという立場であり、昨年提出し、今国会でも提出をしていますが、日本国教育基本法の中で、「日本を愛する心を涵養し、」という表現をさせていただいています。水が自然にしみ入るように、じっくりと養い育てるという考え方です。これに対する、政府の先ほどの「規範意識」や「我が国と郷土を愛する態度を養う」というやり方、教育現場ではどのように行おうとしているのか、文科大臣にお尋ねをしたいと思います。

 中教審では、義務教育年限の見直しの議論もあったはずであります。九年を延長すべきという議論もあったと聞いていますが、最終的には九年のままとなりました。その理由を文部科学大臣にぜひ明らかにしていただきたいと思います。

 義務教育年限については、総理の御著書の「美しい国へ」にも明記されている部分があります。「義務教育の年限を何年にするかについても検討し直すことになる。」と明らかに書いていますので、総理は、今後、義務教育の年限の見直しを行うおつもりがあるかどうか、お考えをお聞かせください。

 最後に、忘れないように、民主党三法案についてでありますが、それぞれどのような点が学校の教育力向上に資するものか、どうぞお答えください。質問は簡潔でしたが、御答弁はじっくりと。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 久しぶりに登壇をしましたけれども、ちょっと前列からは随分にぎやかな御声援をいただきました。我が国と郷土を愛する態度を言う前に、やはり、心を澄まし、耳を傾ける態度をぜひ自民党で教育されることを強く申し上げて、質問を終わりたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 野田佳彦議員にお答えをいたします。

 教育再生についてお尋ねがございました。

 教育の理念については、昨年、教育基本法を改正したように、人格の完成、国際社会の平和と発展への貢献といった普遍的な理念を継承しつつ、道徳心、みずからを律する精神、公共の精神を養うことなどが、今日、極めて重要であると考えております。子供たちが豊かな人間性と創造性を備えた規律ある人間として育成されるよう、教育再生を内閣の最重要課題として位置づけ、教育改革を一層推進してまいります。

 免許法案についてお尋ねがございました。

 よき先生こそが教育再生のかぎを握っています。すべての先生が人間的に児童生徒の信頼を得、最新の知識、技能を身につけ、自信と誇りを持って教壇に立てるように、十年に一度の教員免許更新により資質と能力を改めて磨くことは、教育再生に資するものと考えます。

 免許の更新制度についてのお尋ねがありました。

 各種の免許制度については、それぞれの制度の置かれている状況にかんがみ、そのあり方を考えていくべきであると思います。医師免許についてさまざまな議論があり得ると考えられますが、現在、各学会等において、さまざまな研修の機会を活用した資質向上の取り組みが行われています。まずは、これらの取り組みを積極的に推進することにより、医師の資質向上に努めていくことが大切であると考えています。

 義務教育年限の見直しについてのお尋ねがありました。

 現在の小中学校の九年間という義務教育年限は国民の間に定着をしており、その見直しには国民の理解が必要であります。また、義務教育年限の延長は、学校教育制度のあり方にかかわり、多額の財政負担を伴う問題であるため、当面は、義務教育年限は、現行制度のとおり、九年とすべきと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) まず、地方教育行政法改正案と地方分権との関係についてお尋ねがありました。

 今回の地方教育行政法の改正は、いわゆるいじめ問題への適切な対応など、内閣の最重要課題であります教育再生の実現に向けた関係法律の改正の一環として、自治事務について認められた関与の範囲内で行われるものであります。したがって、内閣の最重要課題であります教育再生と地方分権改革を両立させ、いずれも強力に推進するものであると考えております。

 私立学校に関する教育委員会の助言、援助規定と私学への影響に関するお尋ねがありました。

 地方教育行政法改正案では、知事が私立学校に対応する際には、教育委員会に助言、援助を求めて、教育委員会の知見を活用できるようにすること等の規定が盛り込まれております。これは、私立学校における教育に関する最低限の基準の確保の必要性と、私学の建学の精神や独自性等の尊重の両面に配慮して盛り込まれたものと受けとめております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) 野田議員にお答えを申し上げます。

 先生がおっしゃったように、心を澄まし、耳をそばだてて聞いておりましたが、何分にも直前に御質問の予告をいただきましたので、漏れがないことを確信してお答えをいたしたいと思います。

 まず、免許更新制についてお尋ねでございます。

 講習の内容につきましては、平成十八年の中教審の答申で、まず一つに、使命感や責任感、それから教育的愛情、二番目に、社会性や対人関係の能力、それから、幼児児童生徒の理解や学級経営等の力、教科、保育内容の指導力、こういう事項について研修をしろということが言われております。

 これから、民主党も御対案をお出しいただいているわけですから、両々相まって御審議をいただいて、いいものを吸収させていただいて、具体的な内容を決めたいと思っております。

 それから、講習の主体でありますが、まず開設は、基本的には、教員養成を行う大学が主体となります。都道府県教育委員会等も研修の開設をすることは可能としたいと思っておりますが、同時に、講習の修了について、これは当然開設主体が認定をいたしますが、その確認は、必ず都道府県教育委員会が行うことといたしたいと思います。

 費用ですが、これは先ほど馳議員にもお答えをいたしましたように、今後、御本人とそれから地方自治体と国とのお一人当たり約三万円程度の講習費用の分担について、国会の御議論を踏まえて検討させていただきたいと思います。

 それから、民主党の新免許法案についての評価ですが、私の文部科学委員会の表情から、どうもその民主党案がいいというような表情をしていたというお話ですが、私は、余り心のうちは表情に出ない男だと言われております。多分、あのときに、私の表情は、いいものであっても、経費の負担だとかあるいは六年制による新しい教員の採用だとかを考えると、実務的にも実現可能性がどれほどあるのかなという表情をしていたんではないかと思います。

 それから、指導力が不適切な教員についてのお尋ねでございますが、指導力が不適切な教員の認定基準については、当然これは、任命権者である都道府県、指定都市の教育委員会が、地域の実態に応じて、その権限と責任において策定しなければならないものです。もちろん、その基礎には、評定者である校長の評定があることは言うまでもありません。

 文部科学省といたしましては、この認定基準の参考となるようなガイドラインをできるだけ早く、法律が通過いたしましたら作成をさせていただいて、各教育委員会に周知徹底することによって全国的な水準を一定に確保したいと考えております。

 同時に、任命権者において、指導が不適切な教員に対する人事管理システムについてのお尋ねでありますが、今回の改正案はその改善を図るための法律上の手続を規定するものでありまして、現法律のもとにおいても、教育委員会の決断とやる気があれば実はこのことはできるわけでありますけれども、さらにそのことを促進するために、今申し上げたように手続等を明確にしたものであります。

 それから、地教行法の改正について、なぜ指示や是正の要求を規定することにしたのかというお尋ねであります。

 これはもう先生から先ほど来お話がございますように、教育委員会の事務については、本来、任命された首長、それから任命に同意した地方議会が地方自治の力を発揮して、自浄能力を十分に発揮していただく、つまり、地方自治の力が試されている分野だと私は思います。このことが前提であることは申すまでもありません。

 しかし、教育委員会やあるいは教育委員を任命された首長、承認をされた地方議会が自浄能力を十分に発揮されずに現に起こってしまったのが未履修であり、いじめへの対応だと思いますので、十分な責任を果たせない場合には、憲法に保障する国民の権利を守るために、国が必要最低限の関与を行うということがこの法案の趣旨でございます。

 したがって、地教行法を改正して、教育委員会が法令上の規定に違反したり、事務の管理、執行を怠っているという場合には、教育を受ける権利が侵害されているということが明らかなときに講ずるべき措置として是正の要求を示しているということであります。また、教育委員会が法令の規定に違反したり、事務の管理、執行を怠っている場合には、生徒等の生命身体の保護のための緊急の必要があり、他の措置によっては是正することが困難なときに初めて指示を行うわけですから、地方自治との関係においては、先ほど総務大臣が御答弁になったとおりであると思います。

 次に、私立学校に対する関与でありますが、今回の地教行法の改正の趣旨は、私立学校において学校教育法等の国の法令に基づき適正な教育が行われることは、これはもう当然のことであって、知事が必要と認めるときは、教育委員会等に対し、学校教育に関する専門的な事項について助言または援助を求めることができるという規定を設けております。私立学校に対する知事の権限を侵しているものではありませんが、知事に地方自治の力を十分発揮していただくための突っかい棒をつくっているというふうに御理解をいただきたいと思います。

 それから、義務教育の目標として新たに示された規範意識や郷土を愛する態度をどのようにして養うのかという御質問であります。

 今回の学校教育法の改正では、教育基本法が既に国会の議決を受けているということを踏まえまして、義務教育の目標として、「規範意識」や「我が国と郷土を愛する態度を養う」ということを定めております。今後、国会での御審議もいただきながら、学習指導要領を改訂することといたしておりますので、学校では、道徳教育、社会や人々との触れ合いの体験活動、我が国や郷土の伝統や文化の学習の充実などを通じまして、義務教育の目標として新たに追加された規範意識や我が国と郷土を愛する態度をどのように養うかということの涵養に努めてまいりたいと思います。

 それから、中教審で義務教育の九年を延長すべきという提案があったが、最終的には九年としたのはなぜかというお尋ねであります。

 中教審ではいろいろな御意見があったということは確かでありますが、現在の国民間には、一応、六年、三年という義務教育期間が定着をしているということと、先ほど馳議員から御質問があったように、上に延ばすか下に延ばすかはともかくとして、この九年を延長するということは、義務教育は無償が原則でありますから、膨大な国民負担を伴うということは、もうこれは先生御承知のとおりです。したがって、今後、国民負担のあり方等々も含めて、この点は考えさせていただきたいと思います。

 以上、メモいたしておったので抜けているところはないと思います。(拍手)

    〔藤村修君登壇〕

藤村修君 野田佳彦議員からの問い合わせは、私ども民主党から提案された三法案について、それぞれどのような点が教育力向上に資するものになると考えるか、こういうお問い合わせでございました。

 私どもが今回提出いたしました教育力向上三法案は、必ずしも政府提出の三法案に対するそれぞれの対案とはなっておりません。私どもの三法案の目的は、学校教育の質の向上、この一点にあるわけであります。

 学校教育の質は、施設設備、カリキュラムなどはもとより、教育者として教壇に立つ教員の資質、能力、人柄による部分も相当大きいと考えます。そのために、教員の養成と研修、免許については、今回提出いたしました教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案において考えを示しております。

 具体的には、まず、そもそもの教員の指導力の基礎をつくる教員養成課程を基本的に修士レベルとし、免許の取得までに、現行では二週間とか四週間の教育実習でお客様的経験をするんですが、一年の教育実習を義務づけ、例えば各学校における副担任等として学校実習を積むことで、みずからの適性を判断し、本職の教員になる前にみずからの学ぶべき点を確認の上、本職の教員としてスタートしていただくように仕組んでおります。

 次に、教員免許状の取得後、原則として十年を目途に、学び直しの機会を設け、自己研さんを奨励するため、教員等の経験八年と教職専門大学院における研修一年を修了した者には、より専門的な力を持っていると認定し、専門免許を授与することとし、その免許を新設いたしました。

 また、専門免許未取得の免許者に対しては、原則として十年ごとに講習を実施することとし、その最初の研修機会として、現行の教育公務員特例法で定めておりますが、実施されている十年経験者研修、これを活用し拡充したい。個々の教員の学びのニーズに対応できるよう、選択科目を増強し、より効果的な学びの機会にすることを想定しております。

 また、教員免許状の要件は国が定めており、またその養成課程も国が所管しております。教員免許はいわば国家資格であります。しかし、免許の授与のみが都道府県教育委員会等、あるいは地方分権一括法において自治事務となっている。その点を、我々は、これは都道府県の自治事務とされても都道府県にはさほどの裁量がありません、国が最終的に責任を持つという考えから、民主党の日本国教育基本法の理念に基づき、免許権者は国といたしております。

 次に、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律でございますが、これも、民主党の日本国教育基本法の理念を実現するための制度改正の法律でございます。

 そのポイントは、学校ごとに、保護者、地域の方々、有識者、校長、教員等から成る学校理事会を設置し、その合議機関での機関決定によるところを大きくし、現場に権限移譲を図る趣旨でございます。

 地方分権がうたわれて長い時間が経過していますが、特に公立の義務教育諸学校に関しましては、保護者や地域住民の声が取り入れられる手段やルート自体が存在しておらず、地域の個性を生かし、地域コミュニティーと協働してという趣旨から見ても、これから、本来の地方分権を図る上であるべき姿として考えた姿でございます。

 次に、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案がどのように教育力向上に資するかについて御説明いたします。

 義務教育に係る最終責任は国にあるため、財源的な最終保障等は国の責務であることを明確にしております。

 現在中断されている第八次定数改善計画、五年ごとに改善されている第八次でございますが、これが閣議決定案件ということで法定されていないことから、簡単に、今、凍結されているのが現状であります。それではその時々の政権の考えに振り回され、着実な実施は確約できません。そこで、定数改善や教職員配置に係る項目を法定することといたしております。

 また、配置充実を図るために阻害要因となっている、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律の一部改正として、同法五十六条三項の規定を削除し、教員の定数削減に歯どめをかけることを附則で定めております。

 端的にまとめますならば、教員の養成課程を充実させ、教員のニーズに見合った研修機会を担保し、常日ごろから教職員の資質、能力の維持向上に努めること、学校理事会に権限の大幅移譲を図ることで、学校運営や教員人事に関しても保護者、地域の声が反映される道を確保することで、真の分権の理念にかなうと考えますし、地域コミュニティーの協働を仕組んだものであります。その上で、国の責任として教職員配置等、つまりは教育予算に関しては国が最終的に責任を負う、このことを明確にしたところでございます。

 まずは、これら三法案によって確かなる学校教育力の向上を図ろうとしているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 西博義君。

    〔西博義君登壇〕

西博義君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました教育関連三法案について質問いたします。(拍手)

 日本の教育制度は、教育基本法に掲げられた理念のもとに、学校教育法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律という二つの法律によってその骨格が形成されています。私は、学校教育を中心とする現行の教育制度が、戦後、教育の普及という面で大変重要な役割を果たしたものの、時代が変わり、社会の変化に対応できずに、制度疲労や制度の硬直化が見られることを指摘いたしました。

 その具体的な一例として、居場所がなくなる問題を取り上げました。これは、学校教育法第一条に規定される学校に適応できない場合、児童生徒にはそうした学校以外に選択肢がないので、子供たちに居場所がなくなってしまうという制度上の問題を指摘したものです。

 現在、いわゆる不登校の児童生徒数が十二万人、青少年の引きこもり者数が百万人とも言われており、極めて厳しい現実があります。子供たちに見られるこうした行動について、人間が真に成熟していくためのシステムが機能していないのではないかと、本質的な問題を鋭く指摘する識者もおります。

 これだけ多くの子供たちが学校、社会に対して拒絶反応を示していることについてどのようにお考えか、総理にお伺いいたします。また、人間が真に成熟していくためのシステムが機能していないのではないかとの指摘について、総理の御見解をお伺いいたします。

 政府においても、教育論議をされておりますが、現場や実態を踏まえながらも、幅広い観点から十分な検討を行い、教育のあり方に関して方向性が示されるような深い議論が行われることを期待しております。

 さて、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案について質問いたします。

 子供にとっての最大の教育環境は教員であります。授業がわからず学校がつまらないということが、子供の問題行動を起こす遠因として指摘されています。だれにでも経験があると思いますが、よい教員に教えてもらうと、やはり授業がよくわかり、学校も楽しくなってくるものです。興味を引き出し理解を深める授業力、特に、児童生徒とのコミュニケーション能力などが教員に要求されています。専門家としての技術を磨き、能力を高めるにはどうしたらよいのかが教員育成の最大の課題と言えます。

 現在、公教育の再生が一つのテーマとなっております。特に、有名私立学校と比較して、私立と公立との間に質的な教育格差が生じているということが問題視されていますが、公教育への不信の底流には教員の質に対する不信があることは言うまでもありません。

 教員免許更新制の導入に当たっては、教員の技術や能力を向上させるような実のある研修にしなければならないと思いますが、免許更新制度の導入にどのような効果を期待しているのか、お考えを伺いたい。

 また、いわゆる不適切な教員対策については、既に、各都道府県で研修体制を整え、対応しているところであります。今回、不適切な教員の認定については、手続や研修の法的な位置づけ、認定基準を明確にする改正が盛り込まれましたが、認定手続等の公正さをどう確保するのか、伺いたいと思います。

 続いて、学校教育法等の一部を改正する法律案について質問いたします。

 今回の学校教育法の改正は、小中学校等に副校長や主幹教諭、指導教諭という職を置くことで、学校の組織運営体制や指導体制の充実を図りたいということですが、それぞれの職の役割、そして位置づけについて、校長や教頭との関係性を含め説明されたい。また、地教行法第四十四条では、本来、都道府県知事が職階制に関する計画を定めることになっていますが、こうした役割や位置づけを条例で定めていくこととなるのか、伺いたいと思います。

 学校評価に関して質問します。

 学校評価については、文部科学大臣が定めるところにより教育活動や学校運営の状況について評価し、学校は、その評価に関する情報を積極的に提供することとしております。文部科学大臣が定める教育活動や学校運営の状況に関する評価項目はどのようなものか、また、学校が評価に関する情報を提供するというが、どのような手段を想定しているのか、伺いたい。

 学校評価が導入されると、結果的には、それが児童生徒への管理強化につながるのではないかという懸念があります。また、学校評価に関して結果を求められるようになると、校長や教員は、評価されやすい学力、テストでよい成績をとるということに安易に流されるのではないかということも懸念されています。こうした二つの懸念に対する見解を伺いたいと思います。

 次に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。

 昨年秋に大きな社会問題となったいじめや未履修問題については、その対応をめぐって、国、教育委員会や学校のあり方についてさまざまな議論を呼びました。

 平成十七年十月の中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」の中に、国、地方、学校の役割について考え方が示されています。答申では、「義務教育の中心的な担い手は、学校である。 国、都道府県、市区町村の協力で、学校を支えなければならない。 国は義務教育の根幹保障の責任を、また、都道府県は域内の広域調整の責任を十全に果たした上で、市区町村、学校が、義務教育の実施主体として、より大きな権限と責任を担うシステムに改革する必要がある。」と記述しております。

 教育は、子供たちや地域住民に身近な学校や市町村が、それぞれの学校や地域の特色を生かして主体的な活動を展開していくことが重要であります。実施主体はあくまで学校であり、学校ごとの裁量を広げ、教員の創意工夫が生かされる制度となるようシステムを改めるとともに、国、地方がしっかりとサポートする立場に徹するべきであると考えます。

 そこで、教育に関する国の役割とは、義務教育の根幹である機会均等、水準確保、無償制を保障し、学校を支援する役割だと認識していますが、改めて確認をしておきたいと思います。

 今回の地教行法の改正では、文部科学大臣が教育委員会に対し、是正の要求や指示をすることを可能としています。特に、指示については、地方自治法に基づく規定ですから、地方分権の趣旨を尊重し、その行使に当たっては、その目的を達するために必要な最小限度のものとするほか、自治体の自主性、自立性に配慮しなければならないことは当然のことであると考えています。必要最小限度での権限行使や自治体の自主性尊重をどう担保するのか、御意見を伺いたい。

 文部科学大臣が是正の要求や指示権限を持つということは、同時に責任も負うということになります。そうすると、責任を問われないよう、問題が起きる前に防止しなければならないということで、文部科学省が予防的な介入を行うようになるのではないかと懸念されます。このような予防的な介入など、必要な最小限度を超える介入は行わないということを確認しておきたいと思います。

 私立学校に関する教育行政のあり方について伺います。

 私立学校に対する教育行政のかかわりについては、法案の検討段階で、知事部局が担当している私立学校への指導を教育委員会が一部担うという考えが示されました。この考えに対して、我が党は、私立学校法の趣旨を踏まえ、私立学校の自主性、独自性を尊重する立場から、現状維持を強く主張いたしました。その結果、基本的には現行制度が維持され、教育委員会が私立学校に対して直接関与は行わないということになりました。

 今回の法改正では、知事が必要と認めるときは、教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項について助言、援助を求めることが可能となる内容となっております。そこで、助言、援助を求める専門的事項について、私立学校の自主性が損なわれないよう、あらかじめ何らかの形で明確にしておく考えはあるのか、伺いたい。

 いじめや不登校問題など、早急に対応が必要な課題があります。私ども公明党では、教育改革推進本部を設置し、教員、児童生徒、保護者、教育行政関係者などから意見を聞き、また、学校やいじめ問題に取り組む第三者機関等の視察を精力的に行ってまいりました。そして、三月六日、「緊急提言・現場からの教育改革」を発表いたしました。意見交換や視察の中で最も要望が多く、緊急の課題として集約したのが、いじめ、不登校、親、格差の四つです。

 主なものとしては、いじめレスキュー隊の設置を提言しています。川崎市や兵庫県川西市では、子供たちの問題を解決するための第三者機関としてオンブズパーソンを設置して、成果を上げています。学校と教育委員会、児童生徒、保護者という当事者ではなかなか思うような解決に至らないのも現実であり、公正な第三者機関が有効です。

 不登校対策では、一部自治体などで、教職を目指す大学生を学校に派遣するメンタルフレンド制度が実施されています。子供たちの心のよりどころとなり、また、教員と子供を結ぶかけ橋として不登校の防止に役立っています。

 親に関する施策では、カナダで大きな効果を上げている親学習プログラムの実施を推進したいと考えています。これは、親自身が育つ環境を整えるのに役立つ施策であると思います。

 また、格差解消のため、公教育の充実、教育費の負担軽減に取り組みたいと考えています。

 今回の教育関連三法案の改正とあわせ、こうした緊急的な課題に対してもぜひ積極的に取り組んでいただくようお願いしたいと思いますが、総理の御意見をお伺いしたいと思います。

 最後に、これからも私ども公明党は、現場第一主義に徹して、よりよい教育環境づくりのために全力で取り組んでいく決意を申し上げ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 西博義議員にお答えをいたします。

 不登校やいわゆる引きこもりの子供たちの問題についてお尋ねがございました。

 不登校やいわゆる引きこもりの原因については、家庭や学校生活の問題、本人の意識の問題等の要因が複雑に絡み合って発生していると考えられますが、これらの対応は極めて重要な課題と認識しております。

 不登校児童生徒については、スクールカウンセラーの配置等による学校における教育相談制度の充実等に取り組むとともに、いわゆる引きこもりの問題への対策としては、精神保健福祉に関する相談の実施等に取り組んでいるところであります。

 これらの問題に対しては、学校、家庭、関係機関が連携をして、地域社会全体でその社会的自立を支援していく環境の整備を図っていくことが必要であると考えております。

 人間が真に成熟していくためのシステムについてお尋ねがありました。

 近年、人間関係の希薄化等による地域の教育力の低下や、核家族化や少子化等に伴う家庭の教育力の低下、学校教育をめぐるさまざまな問題が相まって、子供たちを健やかにはぐくむための環境が必ずしも十全に整っていない面があると考えております。

 こうした課題に対応するためには、すべての子供たちにきちんとした規範意識を身につける機会を保障し、公教育の再生を図るとともに、地域や家庭の教育力を再生することが重要であります。このため、教育再生を内閣の最重要課題と位置づけ、社会総がかりで教育改革を一層推進してまいります。

 教育に関する緊急の課題についてお尋ねがありました。

 いじめや不登校の問題については、全国統一ダイヤルによる二十四時間いじめ相談の実施や、スクールカウンセラーの配置の充実などに引き続きしっかり取り組んでまいります。

 また、子育てに不安を抱える親の問題については、子育て講座の全国的開設、子育て中の親への情報提供、相談体制の整備などを図り、すべての親が安心して子育てを行えるよう積極的に取り組んでまいります。

 さらに、教育格差の問題については、保護者の経済力にかかわらず子供たちにひとしく教育を受ける機会を保障し、高い教育水準が維持されるよう、公教育を再生し、教育の機会均等に努めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) 西議員にお答えをいたします。

 いわゆる不登校あるいは引きこもりの原因についてはいろいろなものがあると思います。学校、家庭の問題あるいは本人の意識の問題。したがって、学校や家庭あるいは関係機関がお互いに協力し合って、このことを子供のために解決してやらねばなりません。

 文部科学省では、これまで、スクールカウンセラーの配置等により学校の教育相談体制の充実に取り組んでまいりましたけれども、これら学校における取り組みに加えて、地域社会総がかりで問題のある子供の社会的自立を支援していく環境を整備するということは、極めて大切なことだと考えております。

 人間が真に成熟していくシステムについてのお尋ねですが、これは総理がお答えしたとおりでございます。

 近来、社会の変化に伴いまして、家族制度が核家族化、少子化現象等で極めて変化をして、家庭と地域の教育力が極端に落ちております。その重荷をむしろ学校の先生が一身に背負っているというのが現実じゃないかと私は思いますので、やはり社会総がかりで教育改革を進め、家庭や地域社会がそれぞれの責任を果たして、子供たちの健やかな成長をはぐくんでいくための環境整備に、改正教育基本法の理念を大切にして努めていきたいと思っております。

 国際化が進み、価値観が変化して、自然科学が進化するなど、世の中は刻々と変わっております。その中で、国立、公立、私立を問わず教職員が、その時々で必要な知識、技能を身につけていただくことは、公教育の充実の観点から当然のことであります。

 免許更新制の導入によって、すべての教員が十年に一度、定期的に知識、技能を刷新し、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ながら教育に従事できるようになるようにしたいと思っております。

 また、指導が不適切な教員の認定を公正に行うことは、先生御指摘のとおり、極めて大切なことであります。したがって、今回の改正案では、任命権者が指導が不適切な教員を認定するに当たっては必ず専門家や保護者の意見を聞かねばならないこと、認定の手続について必要な事項は教育委員会規則で定めることを明記しております。

 その際、文部科学省といたしましては、認定基準の参考となるようなガイドラインは各教育委員会にお示しをすることにして、全国一律の水準を確保したいと考えております。

 新たに創設しようと考えております副校長というものは、学校に機動的、組織的な運営体制を確立するという観点から設置をするものであります。校長から任された校務をみずからの権限で処理することを職務としております。また、副校長と教頭があわせて置かれるような場合には、教頭は校長及び副校長を補佐する立場になることを想定いたしております。

 次に、主幹教諭は、校長や教頭と教諭の間に設けられる職でありまして、校長などを補佐する立場で、校長から任された校務の一部を取りまとめ、整理するとともに、児童生徒の教育もまた担当するということを考えております。

 指導教諭は、児童生徒の教育を担当するとともに、他の教諭に対しても教育指導に関する指導助言を行う職務としたいと考えております。

 現在の職階制は実施されていないところでありますけれども、これらの職については、給与などは条例で定めて、職の具体的な役割や位置づけは、法律の規定を踏まえて、教育委員会の規則において定めていただきたいと考えております。

 学校教育法の改正において、学校評価の具体的な実施手続や公表のあり方について、文部科学大臣はその基準を定めることといたしております。学校評価の項目は、現在、各学校においてその実情に応じて設定しておりますので、文部科学省がこれを一律に規定することは考えてはおりません。また、学校評価に関する情報提供の手段としては、一律に文部科学省がこれをしろということを命ずることは考えてはおりませんけれども、例えば、学校評議員への説明あるいは学校便り、またはホームページなどによる情報の提供が考えられるところでございます。

 次に、学校評価の導入に伴う御懸念がございましたけれども、学校評価は、学力に限らず学校運営全般の改善を図ることを目的として行われるものでありまして、児童生徒の管理強化につながったり、テストの成績で評価が左右されるというようなことはあってはなりませんので、適切な学校評価の趣旨の周知徹底に努めてまいりたいと思います。

 国は、国民の教育を受ける権利を保障するため、学校教育の基本的な仕組みを整備する責任を負っております。特に義務教育においては、教育の機会均等、全国的な水準の確保、それから、教科書及び義務教育の無償制という、その根幹を保障する責任を負っております。

 この責任を果たすために、国は、学校教育法等の法律により基本的な制度の枠組みをつくり、全国的な基準を設定し、教育条件の均等化のための財源の保障を行い、地方自治体に対する必要な指導、助言、援助を行う役割を担っておりますが、さらに、国会の定めた法律に基づいて教育が行われないような場合には、国の責任で法令を守らせるという仕組みを今回御提言しているということでございます。

 今回の地教行法の改正でございますが、教育委員会の事務については、任命した首長や任命に同意した地方議会が地方自治の力を発揮して自浄能力を十分発揮していただくことがまず第一であるということは、先ほど来累次申し上げております。しかし、教育委員会を任命した首長、地方議会が十分な自治能力を発揮していただけずに、十分な責任を果たせない場合には、憲法で保障される国民の権利を守るために、国が最小限の関与を行うということが今回の御提言のねらいであります。

 地教行法に規定する是正の要求や指示はこのような考えに立つものでありまして、決して国の権限を拡大し、教育を管理するものではございません。

 私立学校に対する公明党としての強いお考えの表明がございました。

 まず、私立学校も公教育の一端を担っておりますので、当然、先般の未履修問題などということがあっては困るわけでして、国の法令に基づく適正な教育が行われることを担保し、確保する必要があることは言うまでもありません。

 このため、地教行法の改正においては、知事が必要と認めるときは、教育委員会に対して、学校教育に関する専門的な事項について助言または援助を求めることができる旨を二十七条の二に規定し、お諮りいたしております。教育委員会の指導主事等が学習指導要領などに関する専門的な知見を知事部局に活用していただくよう、両者の連携をお願いしているということであります。

 したがって、私立学校に対する都道府県知事の権限は何ら変更されるものではございません。また、教育委員会が主体的、直接的に私立学校に助言等を行うということは法律上想定されていないことはもう先生よく御理解のとおりであります。

 このような趣旨に沿って、知事がどのようにこの条文を行使するかは、これからの国会の御議論を踏まえて、通知の内容等を考えさせていただきたいと思っております。

 最後に、公明党の緊急提言についてのお尋ねでありますが、いじめや不登校の問題については、個々の子供の状況に応じたきめ細かな支援に努めるということは当然のことであって、いじめの早期発見、早期対応が図られますように、安倍内閣においては、全国統一ダイヤルによる二十四時間いじめ相談の実施、スクールカウンセラーの配置の充実、学校や家庭、地域社会など関係機関が連携した取り組みなどに引き続きしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

 子育てに不安を抱える親の問題についても、子育て講座の全国開設や、子育て中の親への情報提供や相談体制の整備を図るとともに、中学校、高等学校生と幼児との触れ合いの交流や、家庭科における子育てや保育の重要性について指導を充実するなど、すべての親がしっかりと子育てを行えるよう積極的に取り組んでまいりたいと思いますし、また、所得格差によって教育格差の生じないように、教育機会の均等を担保するよう努力をしてまいりたいと思います。

 これらの諸課題について、公明党から現場に即した率直な御提言をいろいろいただいていることに感謝を申し上げて、答弁といたします。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 石井郁子さん。

    〔石井郁子君登壇〕

石井郁子君 私は、日本共産党を代表して、教育三法案について、総理並びに文部科学大臣に質問をいたします。(拍手)

 まず指摘したいのは、安倍教育改革の異常さです。

 昨年の臨時国会で、教育基本法の改悪を与党単独で強行成立させました。そして、総理直属の教育再生会議を発足させ、教育研究者と教育現場関係者を排除したまま、密室の協議で、安倍総理の掲げる改革を国民と子供たちに押しつけようとしているのです。その上、これら三法案を、中央教育審議会でわずか一カ月の審議で答申を出させ、法案化したのです。しかも、特別委員会を設置してまでごり押しを図るというのは、安倍内閣の強権政治のあらわれと言うほかはありません。

 教育は、子供の未来、日本の将来がかかった憲法上の重要課題です。国民と子供の合意なしには進めるべきではありません。総理の見解を求めます。

 教育三法案は、改悪教育基本法を具体化するものです。改悪教育基本法が、憲法の保障する思想、良心の自由、教育の自主性、自律性を踏みにじるものであり、今回提出された法案も同様の問題を持っていることを指摘せざるを得ません。

 法案の大きな問題の一つは、国を愛する態度などの徳目を法律に掲げ、その具体化を図っていることです。我が党はさきの国会で、このような徳目を法律に書けば義務づけることになり、時の政府による特定の価値観が子供たちに強制されると厳しく指摘しましたが、今回、学校教育法の改正で、義務教育の目標に国と郷土を愛する態度など多くの徳目を盛り込んでいます。義務教育の目標として法律に掲げれば、徳目の内容や教育方法について事細かな指示を学校、教員に行うことができるようになるのではありませんか。

 また、道徳を正式教科にすることも議論されていますが、正式教科となれば教科書もつくられることになります。文部科学省の行う教科書検定を通じて、政府に都合のいい道徳を押しつけることにつながりかねません。憲法の思想、良心の自由に反し、人間の内面や個人の生き方の問題である道徳について国が特定の方向を示して押しつけることは、やってはならないことではありませんか。総理の答弁を求めます。

 そもそも、安倍総理、あなたに道徳や規範意識を語る資格があるのでしょうか。タウンミーティングでのやらせ質問、そして松岡農林水産大臣をめぐる政治と金の問題など、政治不信に拍車をかけているのが、ほかならぬ安倍総理だからです。子供たちに規範意識を言う前に、正すべきは安倍内閣そのものではありませんか。総理の答弁を求めるものであります。

 三法案は、国の権限を強化し、教育の国家権力の介入を許す中身となっていることが重大です。昨年の教育基本法審議では、我が党の追及に、憲法上、教育内容への国家の関与はできるだけ抑制的にと認め、総理も、国の権限は強まらないと答弁しました。ところが、今回の法案はどうでしょう。

 地方教育行政法の改正では、文部科学大臣による是正、改善の指示、教育委員会に対する是正の要求を新たに持ち込みました。一九九九年、地方分権一括法で削除されたものの復活であり、文部科学省の権限を強化したと言わなければなりません。これらは、学校に対する直接支配を可能にし、教育委員会をこれまで以上、文部科学省の管理のもとに置くものです。これこそ、教育の地方自治、教育の地方分権を否定するものではありませんか。

 また、私立学校に対する教育委員会の指導助言を新たに可能としました。これでは、私学の自主性への侵害になりかねません。国の権限は強まらないどころか、強化されているではありませんか。総理の答弁を求めます。

 同じく、学校教育法の改正によって、小中学校に、これまでの校長、教頭、教諭に加え、新たに副校長、主幹教諭、指導教諭という職を置くこととしました。まさに、管理職を強化して政府の教育方針を押しつけるために、上意下達のピラミッド形の体制をつくるものです。

 教員免許法の改正によって、教員の免許状に十年の有効期間を定め、三十時間の講習修了を免許更新の条件としました。なぜ教員免許更新制が必要なのですか。説明してください。いわゆる不適格教員への対応は、現行制度で十分可能です。結局、十年で免許が切れるのだから上司の言うとおりにしろのおどかしにほかなりません。教員を萎縮させ、上ばかり見る教員にしてしまうのではありませんか。

 そもそも、教員は、教育の専門家として自律的に職務を行うことが要請されています。総理は、憲法上の要請である教育と教員の自律性を否定するのでしょうか。答弁ください。

 次に、四月二十四日に予定されている全国学力テストの問題です。

 この学力テストは、競争の教育を一層激しいものにし、全国の学校と子供たちを序列化するものです。既に学力テストが実施されている自治体では、点数が下がると言われた子供が学校を休んだりするなど、心を痛める問題が起きているのです。子供たちの心を痛めて、どうして学力の向上につながりますか。

 また、学力テストの実施を受験産業に丸投げすることも重大です。児童生徒の個人情報や学校情報が受験産業に握られるということに、父母や市町村教育委員会に新たな不安が広がっています。こうした不安にどうこたえるのですか。

 一斉学力テストは中止すべきです。総理の答弁を求めます。

 教育再生会議は、ゆとり教育が学力の低下をもたらしたという一方的判断のもとに、授業時間一〇%の増を提言し、夏休みや冬休みを短縮しようとまでしています。このようなことに一体どのような科学的根拠があるのですか。答弁を求めます。

 そして、教育再生会議は、学校選択制や、児童生徒が多く集まる学校への予算配分の優遇まで掲げています。学力テストがこうした制度と結びつけば、学校間格差は広がる一方ではありませんか。教育の機会均等の原則を破壊するものと言わなくてはなりません。

 今国民が願っているのは、学力やいじめなどの問題を解決するために、最も有効な三十人以下学級の実施など、国際的におくれた教育条件を抜本的に整備することであり、過度の競争教育から子供たちを解放することです。教育予算はOECD参加国最下位であり、これを抜本的に引き上げることこそ政府の責任ではありませんか。総理の答弁を求めます。

 日本共産党は、教育への国家統制の具体化としての教育三法案を廃案にするとともに、一人一人を人間として尊重し、自然と社会の仕組みを考えさせる知育、市民道徳を身につける徳育、豊かな情操、体育を学校教育の中心に据え、公教育の充実に全力を挙げるものです。このことを表明して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 石井郁子議員にお答えをいたします。

 教育の重要性についてお尋ねがありました。

 教育再生は内閣の最重要課題であり、昨年は、長時間の審議の上、六十年ぶりの教育基本法改正を行ったところであります。また、教育再生会議を立ち上げ、教育に関する議論を精力的に深めるなど、社会総がかりでの教育改革を推進してまいります。

 さらに、今回の教育三法案に関連する事項につきましては、既に、教育審議会において長い間にわたり御議論をいただき、結論をいただいたものであります。加えて、関係団体からの意見聴取やパブリックコメントなども実施しており、広く国民からの意見も伺ったところであります。

 教育改革は、教師、保護者、地域社会が連携して行うことが必要であり、関係者間の連携を図りつつ、すべての子供たちに高い学力と規範意識を身につける機会を保障し、教育再生に努めてまいります。

 道徳教育についてお尋ねがありました。

 道徳教育を充実するための具体的な方策については、現在、教育再生会議や中央教育審議会において議論が行われております。改正教育基本法にのっとり、すべての子供たちに規範意識を身につけさせることは極めて重要であり、そのことが思想、良心の自由に反するとは認識しておりません。

 私に道徳や規範意識を語る資格があるのかとのお尋ねがありました。

 私自身、確かに、至らない点の多々ある人間でございます。みずからの行動が子供たちの規範たり得ているかについて、日々、心の中で葛藤を繰り返しております。

 しかし、私たち大人は、次の世代の子供たちを教育する責任から逃れることはできないのであります。未来を担う子供たちに対して道徳や規範意識を語るのは、私たち大人の責任であります。

 今後とも、国民の声に謙虚に耳を傾けながら、反省すべきは反省し、政策運営に当たってまいります。そうした私たちの姿こそが、子供たちから真摯に受けとめられるものと信じております。

 国の地方教育行政への関与の強化が地方分権を否定するものではないかとのお尋ねがありました。

 昨今のいじめや未履修問題に見られるように、本来子供たちに規範意識を身につけさせるべき教育委員会の規範を逸脱した行為などが問題とされ、国民の公教育に対する信頼が損なわれかねない問題が生じたところであります。

 今回の改正による指示や是正の要求は、教育委員会が自浄能力を発揮せず、十分な責任を果たせない場合に、国民の権利を守るため国が必要な関与を行うものであり、地方分権を否定するものではないと考えます。

 私立学校に関する教育行政についてお尋ねがありました。

 今回の地教行法の改正案の趣旨は、知事が必要と認めるときは、教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項について助言または援助を求めることができるとするものであり、私立学校に対する知事の権限を変更するものではありません。したがって、私立学校の自主性を侵すとの問題は生じないものと考えております。

 教員の自由と自律性についてお尋ねがございました。

 学校教育において、教員がみずからの創意工夫に基づき豊かな教育活動を展開することは大切なことでありますが、他方、国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべき責任を有しております。

 今回の法案は、現在の教育制度における基本的な枠組みを前提としつつ、教員の質の向上を図るため、教員が時代の変化や要請に合わせた教育を行える能力や資質を確保するよう必要な改正を行うものであります。

 学力調査は全国の学校や子供たちを序列化するとのことでありますが、全国学力・学習状況調査は、児童生徒の学習到達度や学習環境、生活状況等を把握し、各教育委員会や各学校の指導の改善に資するために実施するものであります。

 この調査においては、個々の市町村名や学校名を明らかにした結果の公表は行わないこととし、学校間の序列化や過度の競争をあおらないよう、十分に意を用いているところであります。

 学力調査を中止すべきとのことでありますが、義務教育については、全国どの地域においても一定水準の教育を受けることができるようにし、その成果もしっかり把握、検証する仕組みが必要であります。今月二十四日の全国学力・学習状況調査を円滑かつ確実に実施し、その結果を検証しながら、我が国の教育の質の向上を図っていくことが必要と考えられます。

 授業時間の一〇%増の提言の科学的根拠についてお尋ねがありました。

 教育再生会議の第一次報告では、基礎的な学力を確実に身につけさせるための一つの有力な手だてとして、必要な授業時間数を十分確保し、基礎、基本の反復、徹底と応用力の育成を図ることが提言されたものであります。

 授業時間をふやすだけで学力が向上するとは考えておらず、全国学力調査の結果を生かすこと、習熟度別指導の充実、教員の質の向上、家庭学習の習慣をつけることなど、さまざまな取り組みを通じて基礎学力の向上を図るべきとの提言がなされています。

 学校選択制や児童生徒が多く集まる学校への予算配分の優遇についてお尋ねがありました。

 一般論として申し上げれば、公教育においては、平等な機会均等の保障、全国的な水準の確保と同時に、自治体、学校、子供たちが切磋琢磨して教育の内容や質を高めていくことは、いずれも重要なことと考えております。

 教育再生会議においては、こうしたことも踏まえ、教育再生の具体的な施策について、引き続き議論を進めているところであります。

 教育予算についてお尋ねがありました。

 教育再生は内閣の最重要課題と位置づけており、社会総がかりで、教育の基本にさかのぼった改革を推進し、教育新時代を開くものと考えております。教育予算の内容の充実は極めて重要であると考えております。

 このため、平成十九年度予算においては、問題を抱える子供の自立支援や教育相談体制の充実、全国学力・学習状況調査の実施や放課後子どもプランの創設、公立学校施設の耐震化の推進等、教育再生を推進する施策について重点化を図るなど、真に必要な教育予算の充実に努めてまいります。

 今後とも、効率化を徹底しながら、めり張りをつけて、真に必要な教育の費用については財政措置を講じてまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) 石井議員にお答え申し上げます。

 まず、義務教育の目標を含んだ学校教育法で教育の大枠を定めるということ云々というお話がございましたが、教育理念を規定する教育基本法とそれから学習指導要領の間をつなぐ法律として、学校教育法に教育の目標を書いております。

 したがって、今回の改正法は、教育基本法の規定を踏まえて、義務教育の目標として「我が国と郷土を愛する態度を養う」ということを書いているわけでして、もしもこの法律を国会に提出しないということになると、教育基本法と告示で物事が処理されて、教育の目標について再度国会で御議論をなさる場面がなくなるからこそ法律を出しているわけですから、どうぞ特別委員会で十分の御議論をしていただければ結構だと存じます。

 次に、免許制についてのお尋ねでございますが、今回の免許制は、免許の更新制そのものは不適格な教員の排除を直接の目標とするものではないということは、先生よく御承知のとおりです。教員が最新の知識と技能を身につけて、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得るための前向きな制度とぜひ御理解いただきたいと思います。

 いわゆる不適格教員への対応につきましては、今回の更新制とともに、教育公務員特例法を改正いたしまして、指導が不適切な教員の人事管理の厳格化を盛り込んでおりますので、これらが相まって、すぐれた教員をぜひ確保し、児童生徒によき教育を施す条件を整えたいと考えております。

 学力テストについて、児童生徒の個人情報との関係についてお尋ねがございました。

 全国学力・学習状況調査は、文部科学省が学校の設置者である市町村教育委員会、学校法人等と協力して実施をするものでありまして、調査問題の発送、採点等、一部の作業につきまして、経費等の観点から民間機関に委託しているということは、御指摘のとおりです。

 その際、個人情報保護等の観点から、安全確保措置や従業者の監督を確実に履行させるということが重要であることは、これは申すまでもありません。委託先に対しては、契約書において、機密の保持や個人情報の取り扱い等について遵守すべき事項を明示し、これに反した場合は、契約を解除し、損害賠償の請求をするということは、文部科学委員会で先生の御指摘もいただいて、厳密に規定をいたしております。

 文部科学省といたしましては、本調査の確実、円滑な実施に向けて、教育委員会と緊密な連絡をとって、遺漏なきを期してまいりたいと思っております。

 最後に、いわゆるゆとり教育についてのお尋ねがありました。

 基礎的、基本的な知識を身につけた上で、これを活用し、実地に適用し、考える力をはぐくんでいくといういわゆるゆとり教育の理念自体は、私は間違っていなかったと考えております。一方で、その運用について多くの問題があったということは、これまた事実でございます。

 我が国の子供たちの学力は、国際的な学力調査などの結果からいたしますと、自国語の読解力の低下が見られること、学習意欲や学習の習慣が必ずしも十分でないということをOECDから指摘されております。

 ただ、授業時間と学力の相関関係は、必ずしも、先生がおっしゃったように明らかではございません。したがって、基礎的な知識を定着させ、それらを活用して考えさせるために必要な授業時間を確保しながら、今後の基礎学力の充実に努めたいと考えております。

 以上です。(拍手)

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副議長(横路孝弘君) 保坂展人君。

    〔保坂展人君登壇〕

保坂展人君 社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の教育関連三法案に対する質問を行います。(拍手)

 冒頭、本来この三法案は、常任委員会である文科委員会でじっくり審議されるべきものであって、これをすっ飛ばして特別委員会で急坂を転げ落ちるような特急審議をなすべきことではないということを申し上げておきたいと思います。

 総理、学級閉鎖直前のような本日の本会議の欠席だらけの模様を、最重要法案提出者としてどうお感じですか。通告はありませんが、答弁を求めます。

 総理が語る教育再生という言葉は、無用な学校教育への不信感をあおっていないでしょうか。従来、国会で議論されてきた金融再生、民事再生という言い方は、経営破綻後の法的手続やスキームをあらわしていますが、日本の教育は破綻あるいは壊滅寸前の事態という認識のもとで、総理は教育再生という言葉を使っているのでしょうか。

 子供たちの規範意識の欠如を憂慮し、そのための教育再生を訴える総理に、政治家の規範意識、政治倫理についてどのような関心と方針があるのでしょうか。松岡農水大臣の何とか還元水、事務所費問題も無為無策で放置をしたまま、国民の間に政治不信が広がっている今、教育再生に増して政治倫理再生を最優先すべきではないでしょうか。総理の見解を問います。

 安倍総理の教育観を聞いていると、教育の自由について、統治権力の当事者としての規範意識の欠如を感じます。フランスの社会学者コンドルセは、「公教育に関する五つの覚書」の中で、教育の自由に触れ、学ぶ自由、教える自由をすべての人間固有の自然権としています。公教育は人民に対する社会の責務であり、また公権力の義務なのです。総理は、国家権力が教育現場に介入を強めることにいたく熱心ですが、教育の自由を国民に保障する為政者の責務について無自覚なのではないでしょうか。

 過去の教育改革論議を踏まえ、中曽根内閣当時の臨時教育審議会、また森内閣当時の教育改革国民会議の十七の提案で述べられたことは、今となっては不十分だったのか、総理に答弁を求めます。

 教育再生会議には、教育現場の経験者はたった二人だけ、教育問題の研究者はいません。文科大臣から諮問を受けた中教審は、土日返上の突貫審議を行って、わずかな期間で答申を強いられました。

 総理自身もメンバーとなった教育再生会議の第一次報告は、一体だれに対して行われたものなのでしょうか。また、この報告と文科大臣が中教審に諮問した内容は同一であるのか。だれが見ても前のめりにどたばたと急ぎ過ぎている理由は何なのか、総理の答弁を求めます。

 〇一年六月の国会審議で、学校教育法、社会教育法、地教行法の改正後、政府はその実施に努めている最中ではないのでしょうか。今回、改めて制度変更を行うというのであれば、六年前の教育関連三法案の改正をどう総理は総括されるのか。

 また、再生会議報告は、ゆとり教育を見直し、学力向上のために、授業時間の一〇%増加などで基礎学力強化をうたっています。ところで、ゆとり教育による学力低下が現実に起きているという調査結果はあるのでしょうか。文科省が全国の高校三年生を対象として行われた調査によれば、学力改善と学習意欲の向上がむしろ見られたという傾向が報告されています。また、授業時間増が学力向上に貢献するデータがあるのであれば、文科大臣、出していただきたいと思います。

 土曜日スクールの提言なども行われています。長い時間かけて議論をしてきた学校五日制の存否にかかわります。学校教育のみならず、社会全体で週休二日制を定着させようと努力してきた政府の従来の方針を転換するという考えもあるのか、官房長官に伺います。

 学校教育法改正では、我が国と郷土を愛する態度を養うことなどが教育の目標とされています。いわゆる愛国心の規定は、偏狭なナショナリズムの蔓延につながるおそれが極めて大きいと指摘してきましたが、早速、教科書検定において、沖縄戦での集団自決において軍の強制の部分が修正意見によって削除されています。事は重大です。総理の見解を伺います。

 従来、教育内容にかかわることは学習指導要領で示されてきました。学校教育法に具体性を持たせるべきではなく、目標は大綱的な基準とするべきではないでしょうか。学校教育法と学習指導要領の関係について文科大臣に聞きます。

 政府は、新設される副校長、主幹教諭、指導教諭などの管理組織で教職員の管理強化を図ろうとしています。従来の教頭や教務主任、学年主任との相関関係は一体どうなるんでしょうか。教師総がかりで子供に向かい合う必要のある現場に、ピラミッド形の指揮系統を持ち込むことは、管理職の顔色に振り回され、子供の顔色には目が行かないヒラメ型の教員を増してしまうのではないか、心配でございます。

 学校評価の拙速な導入は、学校間の格差を広げます。安倍総理が手本としているイギリスの教育改革では、学校間格差が拡大し、下位校に通う子供たちの存在が見捨てられました。

 エリートを一部選抜するのではなく、達成度の低い学校こそ手厚くサポートし、子供の学力全体の底上げを図る必要があります。テスト結果のみを絶対視せず、教育実践の全体を見なければなりません。短絡的に教員評価と学校評価を連動させるべきではないと考えます。学校評価と学校間格差について、また評価結果の扱いについて、文科大臣の方針をお願いします。

 地方自治法に規定される是正要求を地教行法に新設し、指示権限を国が持つ、これは国の管理強化にほかならず、教育の中立性と教育行政の安定性確保を目的とした教育委員会制度の否定にもつながります。

 地方分権の理念とも根本から対立します。是正要求、指示の要件とされる、児童生徒の教育を受ける機会が侵害されている、あるいは生命身体を保護する必要とは、どのような場合なのでしょうか。文科大臣から頻繁に是正要求や指示が出されるのか、それとも伝家の宝刀のようなものなのか。文科大臣に聞きます。

 教員免許は教員資格の問題であり、教員としての勤務状態は人事管理の問題であります。教員の採用、養成、研修などの人事行政、管理の不備を教員免許更新とすりかえており、問題の所在を履き違えていると言わざるを得ません。

 免許資格が条件とされる医師、法曹など多くの専門職の中で、教員免許のみを更新制とすることは、ただでさえ多忙な教員全体に不要な負担を強いることであり、現場を混乱させます。また、免許更新のためのコストはだれが負担するのでしょうか。文科大臣に聞きます。

 また、教育公務員特例法による人事管理の厳格化で、任命権者の恣意的な運用が行われるおそれがあります。これを防止するには、第三者機関の判定審査や不服申し立てなどの制度化が必要だと思いますが、文科大臣のお考えをお聞かせください。

 OECD加盟国の中で、政府提案のような教員免許更新制がある国は果たしてあるのか、どういう制度になっているのか。また、教員免許更新制の根拠となっている教員の質の低下ということを証明するデータが文科省にあるのでしょうか。文科大臣に聞きます。

 政府が提出した教免法改正案は、子供をめぐる社会的環境の変化を無視し、学力低下の要因をすべて教員に責任を負わせるものではないでしょうか。三十人学級など、きめ細かい教育プログラムによって子供の教育環境を改善することが先決ではないか。自由で独創的な教員によって意欲的な授業ができる環境をつくることが政府の使命ではないか。予算も教育施設も大幅な拡充が必要という認識について、総理並びに文科大臣に聞きます。

 教基法の審議の中で議論されたいじめ自殺、未履修問題が、国の地方教育行政への関与の強化によって果たして改善されるのか。いじめ問題は子供をめぐる社会の問題であり、未履修問題は有名大学への受験競争を本質とする問題ではありませんか。

 教育の制度設計を誤れば、子供たちのかけがえのない人生を奪うことになります。突貫工事はしばしば手抜き工事になり、通常の工期を無理に短縮してでき上がった建物は欠陥建物になります。教育制度の重大な変更は、慎重を期し、安全で間違いのない構造にしなければならず、拙速は禁物です。

 今回の法案は典型的な欠陥法案であることを指摘して、私からの質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 保坂展人議員にお答えをいたします。

 まず最初に、本会議の出席状況について御質問がございましたが、これはまさに衆議院で御議論をいただきたい、このように思います。

 教育再生という言葉についてお尋ねがありました。

 私は、すべての子供に高い学力と規範意識を身につける機会を保障することが必要と考えておりますが、現在の公教育、家庭、地域の教育力では十分な状況とは考えられないことから、教育再生を国政の最重要課題の一つと位置づけて取り組んでいるところであります。

 なお、私は、教育に新しい命を吹き込み、活力のあるものとする意味で、教育再生という言葉を使っております。

 政治倫理に関する私の考え方と教育再生との優先順位についてお尋ねがありました。

 私たち政治家は、国民の信頼の上に立って初めて政策を実現することができるのであって、李下に冠を正さずとの姿勢のもとに政治を行っていかなければならないと考えております。政治家一人一人が責任を持って、国民から信頼される仕組みをつくり、そしてそれを守っていくべきであると考えています。

 一方で、多くの国民の皆さんが、現在の教育のあり方について不安や不満を持っているのではないでしょうか。教育は子供たちの未来に直結をし、教育再生はまさに待ったなしの課題であります。早急に対応することが政治の責任であると考えております。

 教育の自由についてお尋ねがありました。

 国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべきものと考えます。また、近年、子供のモラルや学ぶ意欲の低下などが指摘される中で、豊かな人間性と創造性を備えた規律ある人間の育成が課題であることから、国の責務として、教育再生に向けて全力で取り組んでいるところであります。

 臨時教育審議会及び教育改革国民会議での議論についてお尋ねがありました。

 臨時教育審議会の答申や教育改革国民会議の報告は、それぞれの時代において、重要とされた教育改革についての方針が示されたものであり、これらについては着実に実行してきたところであります。

 しかしながら、なお、子供たちのモラルや学ぶ意欲の低下、子供を取り巻く家庭や地域の教育力の低下などが問題となっています。このため、教育再生を内閣の重要課題とし、改正教育基本法の理念のもと、社会総がかりで、教育の基本にさかのぼった改革を推進していく必要があると考えています。

 教育再生会議の第一次報告と中央教育審議会での審議についてお尋ねがありました。

 教育再生会議の第一次報告は、学校、教育委員会のほか、家庭、地域社会、企業そして文部科学省を初めとする政府に対する提言であります。

 この第一次報告で提言された四つの緊急対応のうちの三つは、教育職員免許法など早急に法律改正が必要となるものであり、改正教育基本法を踏まえた法改正を含め、文部科学大臣から中央教育審議会に審議を要請し、その答申を受け、今国会に教育三法案として提出したところであります。

 なお、教育再生会議の委員は、いずれも、教育、学術、芸術、スポーツ、企業活動等各界で御活躍され、教育に関して豊かな経験、識見を有している方々であります。さらに、中央教育審議会においても精力的審議を行っており、十分に審議を尽くしたものと考えております。

 平成十三年の教育関連三法改正の総括についてお尋ねがございました。

 平成十三年に行った教育改革関連法の改正は、平成十二年に取りまとめられた教育改革国民会議の報告等を踏まえ、政府として緊急に対応すべき事項につき改正を行ったものであります。この法改正については、社会奉仕体験活動の充実等についてその実行を図っております。

 今般国会に提出させていただいた法案は、以上の教育改革の動向や、教育をめぐる学校、地域、家庭の現状、昨年改正された教育基本法の趣旨を踏まえ、必要な法改正を行うものであります。

 義務教育の目標及び教科書検定についてお尋ねがございました。

 今回の改正案は、偏狭で排他的な自国賛美ではなく、国際社会で生きる日本人としての自覚の確立を目指すものであります。

 また、個別の教科書検定について見解を述べることは避けたいと考えております。

 次に、教育環境や教育予算についてお尋ねがありました。

 教育再生は内閣の最重要課題であり、社会総がかりで、教育の基本にさかのぼった改革を推進し、教育新時代を開くためにも、教育予算の内容の充実は重要であり、また、教員の質が教育再生のかぎを握っていると考えております。

 このため、平成十九年度予算においては、問題を抱える子供の自立支援や教育相談体制の充実、全国学力・学習状況調査の実施や放課後子どもプランの創設、公立学校施設の耐震化の推進等に必要な予算額を計上し、教育再生を推進する施策について重点化を図るなど、めり張りをつけ、真に必要な教育予算の充実に努めているところであります。

 一方、総人件費改革など行政改革の推進は行いつつも、公立学校における教育の質の低下をもたらすことのないよう、習熟度別少人数指導などに必要な定数を確保し、教育水準の維持向上とすぐれた教員の確保という観点から、めり張りをつけた給与体系の検討を行い、必要な措置を講じてまいりたいと思います。

 いじめ自殺や未履修問題と国の地方教育行政への関与についてお尋ねがありました。

 昨今のいじめや未履修問題に見られるように、本来、子供たちに規範意識を身につけさせるべき教育委員会の規範を逸脱した行為などが問題とされ、国民の公教育に対する信頼が損なわれかねない問題が生じたところであります。

 今回の改正による指示や是正の要求は、教育委員会が自浄能力を発揮せず、十分な責任を果たせない場合に、国が必要な関与を行うものであります。これらの措置により、いじめや未履修問題等に関してより適切な是正、改善を図ることが可能となるものと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) 保坂議員にお答えをいたします。

 いわゆるゆとり教育と学力についてのお尋ねでありますけれども、再三申し上げておりますように、国際的な学力調査でありますOECDのPISA二〇〇三によりますと、日本の子供の自国語の読解力の低下がある、それから、学習意欲や学習習慣が必ずしも十分でないという指摘を受けております。そして、先生が御指摘になりましたように、先般公表いたしました高校生対象の学力調査の結果では、同一問題の八割までが前回と同様の正答率でありまして、学力が改善したか、悪くなったかということは、にわかにこれだけでは判断はできないと思います。

 今月二十四日に全国学力・学習状況調査を行いますので、その結果、児童生徒の学力・学習状況をきめ細かに把握し、分析をして、授業時間と学力の相関関係を明確に理解した上で、必要な時間数をしっかりと確保していきたいと思っております。

 それから、義務教育の目標についてお尋ねがありました。

 今回のお願いいたしております学校教育法の改正案は、先般国会がお認めいただいた教育基本法の規定を踏まえて、義務教育の目標の一つとして、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」と書いておるわけですから、偏狭的、排他的自国賛美ということは、私は当たらないと思います。

 それから、現行の学校教育法におきましても、小中学校等の教育の目標が確かに書かれておりまして、教育内容の大枠を定めるということになっております。つまり、教育理念を基本的に定めた教育基本法と、文部科学大臣の告示による学習指導要領をつなぐ役割を果たしているわけで、このつなぐ役割について国会で御審議をいただくために国会に提出しているわけですから、どうぞ、特別委員会で十分な御議論をいただけば結構だと思います。

 それから、副校長、主幹教諭、指導教諭の創設等でございますが、副校長は、学校に組織的、機動的な運営体制を確立する観点から設けられるものでございまして、校長から任された校務をみずからの権限で処理することを職務といたしております。

 また、主幹教諭や指導教諭と主任との関係についてのお尋ねもありましたが、主任は各種校務の連絡調整を担う立場である一方、主幹教諭は、当該校務について一定の責任を持って取りまとめ、整理をし、他の教諭等に対して指示する職務であります。指導教諭は、教育指導に関する指導助言を行う職務であります。

 今回の職の設置は、学校が組織としての力を発揮できるように組織運営体制や指導体制を整備するものでありまして、より充実した教育が行われることを期待いたしております。

 学校の評価と学校間格差についてのお尋ねでありますが、今回の改正法案におきまして、学校評価については、それぞれの学校において教育活動など学校運営の状況についての評価を行うものであって、その結果に基づき、各学校がその学校の運営の改善を図るために必要な措置であります。

 学校評価を通じて、各学校が特色を発揮されて、課題を明らかにして、それに基づいて各学校の運営改善が図られるということが望ましいことでありまして、学校間の格差が生ずるなどということのないようにむしろ措置していくのは、教育委員会や我々の責任であると思います。

 次に、是正や指示の具体的な発動の場面についてお尋ねがありました。

 まず、これらを発動する前に、教育委員を任命された首長、それを承認された地方議会が自治の力を発揮して、このような是正の要求や指示が発動されない状況をつくってくださることが一番いいということは申すまでもありません。

 今回、是正の要求は、例えば、事務の管理、執行を教育委員会が怠り、教育を受ける権利が侵害されていることが明らかになったときに行うものであって、どのようなケースがこれに当たるかはケース・バイ・ケース、極めて慎重に事実を見きわめて行わねばなりませんが、例えば、未履修の状況に学校があるにもかかわらず、教育委員会がこれを放置した場合は明らかにこれに当たると考えております。

 また、指示についてもケース・バイ・ケース、同様でありますが、例えば、激しいいじめなどにより、児童生徒が生命身体の保護が明らかに必要な場合にもかかわらず、教育委員会が何らの措置を講じない場合は、文部科学大臣は毅然として指示を行わねばならないと考えております。

 公教育の中核を担う教員の必要な知識、技能は、本来的には時代の進展に応じて更新されていくべきものであって、今回の教員免許の更新制はそれを担保しようという制度であります。

 更新に必要な講習につきましては、長期休業期間中や週末、夜間の実施、通信教育の活用などいろいろなケースがあると思いますので、個々の教員の実情に合わせて、できるだけ授業に影響の出ないような形で措置をさせていただきたいと思います。したがって、十年に一度、三十時間という子供たちの教育のために必要な講習が、教員に過度の負担を強いるという理由で行われないという方が私はおかしいのではないかと思っております。

 費用負担については、先ほど来るる御答弁を申し上げておりますように、御本人と国と地方自治体がどのような形で分担するかは、これから先生方の御審議の模様も伺って考えたいと思います。

 それから、指導が不適切な教員に対する認定につきましては、公正かつ適正に行われねばならないというのは、保坂議員のおっしゃるとおりであります。

 このため、教育公務員特例法の改正案におきましては、任命権者が指導が不適切な教員を認定するに当たり、第三者である専門家や保護者の意見を聞かねばならないということを定めております。同時に、教員も地方公務員である限り、地方公務員法上当然のことでありますが、その処分について不服を申し立てる権利を持っております。

 OECD加盟国の中で免許制を適用している国があるかということですが、アメリカの中の六割以上の州においてこの制度を適用していると理解いたしております。

 それから、教員免許更新制の根拠になる教員の質の低下云々というお尋ねがありましたが、この更新制は、教員の質の低下のためにやっているのではありません。国際化が進み、価値観が刻々と変化する中、自然科学が進化する中、世の中のこれらの変化に応じて、そのときそのときに求められる教員として必要な資質を確実に担保するためにやっているわけで、低下したことを検証するためにやっているわけではありません。

 それから最後に、教育予算のことについてお尋ねがありましたが、これは先ほど総理がお答えをしたとおりであります。

 教育予算の確保は、教育を最優先課題とする限り、内閣として大変重要な課題と考えておりますので、担当大臣として全力を尽くしたいと思っております。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 保坂議員にお答え申し上げます。

 学校週五日制についてお尋ねがございました。

 学校週五日制は、学校、家庭、地域が連携をいたしまして社会全体で子供を育てる、このことを目指すものでございます。また、国際的にも大半の国が採用をしておりまして、我が国も長期的な検討を経て導入したものでございます。

 このため、国としてこれを維持した上で、土曜日における学習機会やさまざまな体験活動の提供を推進してまいりたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 糸川正晃君。

    〔糸川正晃君登壇〕

糸川正晃君 国民新党の糸川正晃でございます。

 私は、国民新党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案につき、総理大臣及び文部科学大臣に質問をいたします。(拍手)

 昨年末の臨時国会において、制定以来、約六十年ぶりの教育基本法の改正がなされました。しかし同時に、昨年は、いじめ自殺や未履修問題のように、教育現場に深刻な実態があることが明らかになりました。このように、教育の現場はさまざまな問題を抱えているわけですが、教育三法案の提出により、どのような教育改革を目指しているのか、総理のお考えをお伺いいたします。

 次に、改正の具体的内容について質問したいと思います。

 第一に、学校教育法の改正について質問いたします。

 六十年ぶりに教育基本法が改正され、公共の精神や伝統と文化の尊重などの教育理念が改正教育基本法に明示されました。こうした新しい教育理念を学校現場においてどのように実現していこうとしているのでしょうか。総理のお考えをお伺いいたします。

 また、教育が行われる場は学校でございます。しかしながら、実態は、いじめ問題などで明らかになったように、校長がリーダーシップを発揮できていない、こういう問題がございます。これからは、地域や学校の実情に応じた組織が必要であり、硬直化した学校組織を見直し、改正教育基本法を受けて新しい教育を行うにふさわしい学校の運営体制を整えるべきだと考えますが、文部科学大臣の御見解はいかがでしょうか。

 第二に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。

 教育再生のために教育委員会の果たすべき責任は非常に重いものと考えています。しかしながら、実態としては、教育委員会が事務局の案を追認するような状況があるなど、形骸化し、その機能を果たしていない教育委員会があることは極めて問題であります。こうした現状を改善すべきだと考えますが、総理の御見解をお聞かせください。

 また同時に、義務教育は国の礎であり、北は北海道から南は沖縄まで、また小さな島や山間部であっても、一定の教育水準が保障されなければなりません。そのためには、国がしっかりと教育に対する責任を果たすことは当然であり、とりわけ義務教育については、国は最終的な責任を負うべきであると考えます。

 安倍総理は、さきの施政方針演説において、教育に対する責任の所在を明確にすると述べられておりました。法令違反や著しく不適切な教育が行われている場合には、国がその責任においてこれを正す体制を構築することが必要と考えますが、総理の御見解をお聞かせください。

 さらに、高等学校における必修科目の未履修問題については、私立高等学校のうち約二〇%、中学校における必修教科等を開設していないことなどの問題については、私立中学校のうち約一〇%起こっておりました。

 このことから、私立学校においても児童生徒の教育を受ける権利保護のための措置が必要との意見もあります。その中で、今回設けた改正案では、知事が必要と認めた場合に教育委員会の助言、援助を求めることができる、こういう定めにとどまります。この助言、援助に果たして実効性があるのかどうか、甚だ疑問であります。

 当初、伊吹大臣は、私立学校についても教育委員会の所管とすることに意欲的であったとの報道もありましたが、今回、私立学校に関する事項がこの程度となった経緯についても含めて、本規定の効果について、またその意味について文部科学大臣の御所見をお伺いいたします。

 第三に、教育職員免許法及び教育公務員特例法の改正案についてお伺いいたします。

 よき先生こそが教育再生のかぎを握っています。学校教育が抱える課題はますます複雑、多様化し、学校や教育に対する期待は一層高まっています。国民の期待にこたえ、信頼される学校づくりを進めていくためには、教員に質の高い人材を確保することが極めて重要です。

 特に、高度情報化とグローバル化の進展、科学技術の進歩等の教育を取り巻くさまざまな環境の目まぐるしい変化、いじめや子供の自殺、子供たちのモラルや学ぶ意欲の低下、教育現場においても新たな問題が次々と発生するなど、教員をめぐる状況は時々刻々と変化しています。

 こうした中、政府は教員免許更新制を導入しようとしていますが、この教員免許更新制を導入する必要性及び意義とは何なのでしょうか。文部科学大臣のお考えをお聞かせください。

 また、昨今、いわゆる教員の指導力不足についての報道が後を絶ちません。子供たちに教えるに当たって必要となる基本的な知識すら身につけていない教員が教壇に立ち続けることはあってはならないことです。こうした教員に教えられる子供は、幾ら教育内容が充実したとしても、しっかりとした学力を身につけることができず、不幸としか言いようがありません。こうした指導力不足の教員を教壇に立たせなくすることにより、学校教育への信頼回復を図る必要があると考えますが、文部科学大臣のお考えはいかがでしょうか。

 最後に、教育における格差についてお伺いします。

 現代の日本は、総中流と言われた時代が終わりを告げ、俗に勝ち組、負け組と言われるように、格差の拡大が進み、格差社会になっていると指摘されております。

 教育の分野においても、この格差の問題は指摘されております。すなわち、親の所得、学歴や居住する地域の違いによって子供が受ける教育の質が異なり、その結果、格差が再生産され、固定化されていると指摘されております。

 私は、このような教育格差は是正されねばならないと考えます。子供の教育環境というものは、親の所得、学歴、生まれた場所によって大きな差があってはならないと思います。やはりここは、国として、保護者の経済力や学歴、生まれた地域の違いを教育の格差につなげないための取り組みを実施することが必要と考えますが、この点について、文部科学大臣に御見解をお伺いします。

 また、格差の問題の背景には、ニート、フリーターの問題があると考えます。仕事もせず、教育も訓練も受けていないニートと呼ばれる若者の数が約六十四万人と高どまりし、定職につかないフリーターと呼ばれる若者の数も、減少傾向にはあるものの、いまだ百八十七万人に達しております。少子高齢化が急速に進展する中、国家、社会の担い手として強く期待される若年層においてこのような状態が生じていることは、我が国が今後持続的に成長、発展をしていく上で極めて憂慮すべき深刻な問題であります。

 ニート、フリーター問題の背景には、正社員の雇用を抑えていった企業サイドの問題がより根本的な問題としてあろうかと思いますが、若者の勤労、職業に関する意識が揺らいでいることもまた大きな要因であろうかと考えます。政府においても、ニート、フリーター対策としてさまざまな施策を講じられてきていることは承知しておりますが、教育の分野においても、若者の勤労観、職業観をしっかりと育成し、次代の国家、社会を担う自立した人材の育成を図ることが重要だと考えます。

 そこで、教育を通じ、若者の勤労観、職業観を育成するための取り組みについて、文部科学大臣の御見解をお伺いします。

 以上、何点か指摘させていただき、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 糸川議員にお答えをいたします。

 教育三法案と目指す教育改革につき、お尋ねがありました。

 教育再生は内閣の最重要課題であり、改正教育基本法を踏まえ、社会総がかりで教育改革を一層推進し、教育新時代を開いてまいります。

 この教育改革を実効あるものとするため、学校教育法等を改正し、義務教育の目標を定めて教育内容の充実を図るとともに、副校長などの新たな職を置き、学校の組織の充実を図ります。

 また、地方教育行政の組織及び運営に関する法律を改正し、教育における責任の所在を明確にするとともに、法令違反の場合や不適切な教育に対して国がしっかりと責任を持って対応できるようにします。

 さらに、教育職員免許法及び教育公務員特例法を改正し、質の高い、すぐれた教員を確保するため教員免許更新制を導入するとともに、指導が不適切な教員への厳格な対処を行えるようにします。

 これらの改正を通じて、すべての子供たちに高い学力と規範意識を身につける機会を保障し、教育現場を一新し、教育再生に努めてまいります。

 学校現場における改正教育基本法の理念の実現についてお尋ねがありました。

 教育基本法の新しい教育理念を学校現場において実現するため、まず、学校教育法を改正し、義務教育の目標として、規範意識、公共の精神、伝統と文化の尊重や、郷土や国を愛する態度を養うことなどを法律上明確にします。さらに、学習指導要領の改訂などを通じて、このような内容の具体化を図り、公教育の再生に取り組んでまいります。

 教育委員会の現状等についてお尋ねがありました。

 教育委員会は、地方における教育行政の中心的な担い手であり、高い使命感を持って責任を果たすことが必要です。他方、御指摘のように、一部の教育委員会については、期待されている機能を十分に果たしていると言えないのは事実であります。

 このため、今回、地方教育行政の組織及び運営に関する法律を改正して、教育委員会の責任体制の明確化や体制の充実等について所要の措置を講じ、国民の皆様から信頼される教育行政の体制を構築すべく、断固として取り組んでまいります。

 義務教育における国の責任についてお尋ねがありました。

 国は、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持向上のための役割と責任を担っており、地方は、地域の実情に応じて実際に教育を実施する役割と責任を担っています。国と地方は、適切に役割を分担し、協力して義務教育を実施することが重要であります。

 一方で、昨今のいじめや未履修問題に見られるように、本来子供たちに規範意識を身につけさせるべき教育委員会の規範を逸脱した行為などが問題とされたところであります。このため、今回の改正により、教育委員会の法令違反や事務の怠りにより、生徒等の生命身体の保護のため緊急の必要がある場合や、教育を受ける権利が侵害されている場合は、文部科学大臣が教育委員会に指示や是正の要求を行い、是正、改善を図ることといたします。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕

国務大臣(伊吹文明君) 糸川議員にお答えをいたします。

 改正教育基本法では、学校において体系的な教育が組織的に行われねばならないということを、御承知のように六条の二項に定めております。したがって、昨今のいじめや子供の自殺問題、あるいは社会や家庭の変化に伴う子供の安全にかかわる問題など、さまざまな課題に適切に対応し、特色ある教育活動を展開するためには、学校は校長を中心に組織的、機動的に取り組む必要があって、職員会議が中心にやるべき職場ではありません。

 こういうことを前提に、中央教育審議会から本年三月十日に示された答申では、副校長、主幹教諭及び指導教諭の設置が提案されております。今回お願いをいたしております学校教育法の改正案は、これら答申を受けて、学校教育法において、副校長、主幹教諭、指導教諭の職を置くこととして、組織体として学校運営に当たる指導体制を確立したいと考えております。

 私立学校の未履修問題について、私が当初、私立学校の教育委員会への所管がえについて意欲的であったという報道というお話がありましたが、報道は常に正しいとは限りません。私が申し上げておりましたことは、建学の精神を持っております私立学校であっても、国民の血税である私学助成を受けておられ、公教育の一端を担っておられる限りは、法律をきちっと守っていただく体制をつくらねばならないということを再三私は申し上げていたわけであります。

 したがって、今回、必要があれば知事は教育委員会に対して指導助言の要請を行うことができるということを書いておるわけですから、地方議会が本来なすべき役割をなさずに地方自治のあり方が問われているような場合には、教育委員会に指導助言を求めることができるわけですから、そのことを書いているわけで、同時に、この法律をつくるときに総理から御指示があったのは、私と総務大臣が協力をして、地方自治の本旨を大切にしながら、知事部局において必ず法律が守れるような体制をつくる、具体的に言うと指導主事その他を置くことを促すようにという御指示もいただいておるところであります。

 次に、免許の更新制でありますが、国立、公立、私立を問わず学校に在職する教員は、その時々で必要な知識、技能を確実に身につけてもらわなければならないことは、公教育の充実を図る観点から、これは当たり前のことであります。免許制の導入によって、すべての教員が十年に一度、定期的に知識、技能のリフレッシュを行い、自信と誇りを持って教壇に立っていただき、社会の尊敬と信頼を得る存在になることをこの法律は目指しております。

 指導力不足の教員の件については、今回の教育公務員特例法の改正において、子供たちが不適切な指導を受けることがないように任命権者が配慮をするということを規定いたしております。現在、任命権者である都道府県あるいは政令指定都市の教育委員会において、指導が不適切な教員に対する人事管理システムを運用しているところでありますけれども、今回の改正案は、その改善を図るための法律上の手続を規定するものであります。

 次に、保護者の経済力や学力、生まれた地域によって教育格差が生じてはいけないという御指摘です。

 教育格差というものは、何を教育格差というかについてはいろいろな定義があると思いますが、先生がおっしゃっていることは、それは当然のことだと思います。ただ、OECD等の調査では、我が国は諸外国に比べて親の経済力や学歴、生まれた地域によって格差が比較的小さな国だと言われていることもまた御留意をいただきたいと思います。

 今後とも、義務教育において先生がおっしゃったようなことが起こらないように、我々は教員の資質を高め、教育内容を充実し、必要な就学奨励策を講じていくことが大切だと思います。

 最後に、教育を通じて勤労観、職業観を育成するようにというお話でございます。

 フリーターやニートの問題は、将来の目的がはっきり見出せず、今自分が何をしていいかわからないという若者がふえているということも原因の一つだと思いますので、学校教育において適切な勤労観、職業観を育成し、明確な目的意識を持って人生を歩み、就職してもらうような心構え、心意気を持ってもらえるように、しっかりと教育を施していきたいと思います。

 改正教育基本法におきましても、教育の目標の一つとして、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うということは、先生も御一緒に審議をしたから御承知のとおりであります。

 今後とも、関係府省や産業界と一層の連携をとりまして、若者の自立支援に積極的に取り組んでまいりたいと思います。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       総務大臣   菅  義偉君

       外務大臣   麻生 太郎君

       文部科学大臣  伊吹 文明君

       厚生労働大臣  柳澤 伯夫君

       環境大臣   若林 正俊君

       国務大臣   塩崎 恭久君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  下村 博文君

       文部科学副大臣  池坊 保子君


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