衆議院

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第27号 平成19年5月8日(火曜日)

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平成十九年五月八日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十一号

  平成十九年五月八日

    午後二時三十分開議

 第一 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件

 第三 武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件

 第四 千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件

 第五 消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案(内閣提出、参議院送付)

 第六 更生保護法案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件

 日程第三 武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件

 日程第四 千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件

 日程第五 消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第六 更生保護法案(内閣提出)

 日本年金機構法案(内閣提出)及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに歳入庁設置法案(山井和則君外五名提出)、国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出)及び公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案(山井和則君外五名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後二時三十三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長西野あきら君。

    ―――――――――――――

 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔西野あきら君登壇〕

西野あきら君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、千九百七十二年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の千九百九十六年の議定書の実施等に伴い、油、有害液体物質等及び廃棄物を海底の下に廃棄することを原則として禁止するとともに、有効な地球温暖化対策の一つとなり得る技術である特定二酸化炭素ガスの海底下廃棄に係る許可制度を創設する等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月二十日本委員会に付託され、二十四日に若林環境大臣から提案理由の説明を聴取し、二十七日に質疑を行いました。同日質疑終局後、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件

 日程第三 武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件

 日程第四 千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件

議長(河野洋平君) 日程第二、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件、日程第三、武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件、日程第四、千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長山口泰明君。

    ―――――――――――――

 武力紛争の際の文化財の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口泰明君登壇〕

山口泰明君 ただいま議題となりました三件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、武力紛争の際の文化財保護条約について申し上げます。

 本条約は、第二次世界大戦中に文化財の大量破壊等の被害があったことを受け、武力紛争下における文化財保護のため、平時及び武力紛争の際にとる措置等について規定したものであり、昭和二十九年五月、ハーグにおいて作成されました。

 本条約の主な内容は、

 締約国は、自国の文化財を武力紛争による影響から保全することにつき、平時において準備すること、

 締約国は、文化財を破壊または損傷の危険にさらすおそれがある目的のために利用することを差し控えること等により、文化財を尊重すること、

 締約国は、この条約に違反した者等について、国籍のいかんを問わず、自国の通常の刑事管轄権の枠組みの中で必要なすべての措置をとること

等であります。

 次に、武力紛争の際の文化財保護議定書について申し上げます。

 本議定書は、第二次世界大戦中に文化財の大量破壊、盗取等の被害があったことを受け、武力紛争の際の文化財保護条約とともに、昭和二十九年五月、ハーグにおいて作成されたものであります。

 本議定書の主な内容は、

 武力紛争の際に占領地域からの文化財流出を防ぐため、占領国は占領地域からの文化財の輸出を防止すること、

 締約国は、占領地域から自国に輸入される文化財を管理し、武力紛争が終了した際、当該地域の権限のある当局に当該文化財を返還すること

等であります。

 最後に、武力紛争の際の文化財保護第二議定書について申し上げます。

 本議定書は、武力紛争の際の文化財保護条約を補足するため、平成十一年三月、ハーグにおいて作成されたものであります。

 本議定書の主な内容は、

 特に重要な文化財の国際的な管理につき、強化された保護の制度を定めること、

 武力紛争の際の文化財に対する攻撃など、特定の行為を犯罪とすること、

 犯罪についての自国の裁判権を設定するため、必要な立法上の措置をとること

等であります。

 三件は、去る四月十八日外務委員会に付託され、二十五日麻生外務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十七日質疑を行い、採決を行いました結果、いずれも全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 三件を一括して採決いたします。

 三件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、三件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第五 消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(河野洋平君) 日程第五、消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長櫻田義孝君。

    ―――――――――――――

 消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔櫻田義孝君登壇〕

櫻田義孝君 ただいま議題となりました消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、生協が実施する共済事業等の健全性を確保するため、契約者保護、経営・責任体制の強化等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、共済事業について、契約者保護のための規定の整備を行うとともに、事業の健全性を確保するため、最低限保有すべき出資金額の基準等を設定すること、

 第二に、購買事業において必要がある場合に、隣接都府県まで組合の区域を広げることができることとするとともに、員外利用できる場合を定めること、

 第三に、組合の事業運営の規律を強化するため、理事会等に関する規定を整備すること

等であります。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る四月二十四日本委員会に付託され、翌二十五日柳澤厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、二十七日質疑を行った後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 更生保護法案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第六、更生保護法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長七条明君。

    ―――――――――――――

 更生保護法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔七条明君登壇〕

七条明君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、更生保護の機能を充実強化するため、所要の法整備を行うもので、その主な内容は次のとおりであります。

 まず第一に、犯罪者予防更生法及び執行猶予者保護観察法を整理統合して新たな法律とするとともに、更生保護の目的を明確化しております。

 第二に、保護観察における一般遵守事項及び特別遵守事項を整理して充実させるとともに、保護観察の実施状況に応じて特別遵守事項の変更ができることとしております。

 第三に、受刑者等の円滑な社会復帰を図るため、その者の住居、就業先その他の生活環境の調整をより能動的かつ積極的に行おうとするものであります。

 第四に、仮釈放の審理において犯罪被害者等から意見を聴取する制度、及び犯罪被害者等の心情を保護観察対象者に伝える制度を導入することとしております。

 本案は、去る四月十二日本委員会に付託され、二十五日長勢法務大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、二十七日参考人から意見を聴取し、質疑を終局し、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。これを許します。大串博志君。

    〔大串博志君登壇〕

大串博志君 民主党の大串博志でございます。

 民主党・無所属クラブを代表しまして、ただいま議題となりました政府提出の更生保護法案についての討論を行います。(拍手)

 私は、まず冒頭、四月二十七日に委員長職権で開催された法務委員会において本法案の質疑打ち切りと採決が与党によって強行されたことを、まずもって強く抗議いたします。

 四月十八日の少年法改正案の強行採決に続き、次々に委員長職権を乱発して与党単独で質疑を進めた上での暴挙です。これを行った七条明法務委員長の行為は、与野党の意見に公平に耳を傾け、公正かつ円満な委員会運営に努めるという委員長としての本来の職責に背くものであり、議会制民主主義や議会の権威を冒涜するものと言わざるを得ません。他委員会における強行採決の連発も考え合わせれば、まさに強権政治を旨とする安倍政権の本質を見た思いがいたします。

 さて、この更生保護法案は、二年前に奈良市や安城市で保護観察対象者等による重大再犯事件が起こったことをきっかけに、法務省が有識者会議も設けて更生保護制度の見直しを行った結果提出されたものです。有識者会議の報告書は、これまでの更生保護制度やその運営体制等について厳しい批判や思い切った改革の提言を含むものでした。

 これを受けた法案は、これまであった更生保護関係の二法を統合し、これまでもあった保護観察対象者の遵守事項を明確にし、充実することで保護観察の効果を高めることが盛り込まれましたが、その点では、更生保護制度の強化に資するものとして一定の評価ができると思います。

 報告書が具体的に提言している、例えば地方更生保護委員会委員への民間有識者の積極的登用、協力雇用主の三倍増、保護観察官の倍増等の提案については実行をなお担保できておらず、これらの面で、本法案は、なお審議を通じて、さらに加え、改善すべき点があるものの、法改正自体は必要なものであると考えられることから、民主党としては賛成することといたします。

 しかしながら、繰り返しになりますが、政府・与党が決めて提出した法案だから大して審議する必要はないと言わんばかりに短時間での拙速審議、拙速採決の強行は断じて許すわけにはまいりません。

 民主党としては、本法案をよりよいものにしようという観点から、ただいま申し上げました報告書の提言のうち法案に取り込めなかった点も含め、修正案の提出も検討しておりましたが、与党の強行な委員会運営により、提出の機会を得ることができませんでした。その主な内容は以下の点です。

 第一に、更生保護の目的について、再犯防止が第一の目的のようになっておりますが、再犯防止は社会内処遇を通じた改善更生の結果であることを踏まえ、目的規定を修正すべきであると考えます。

 第二に、国の責務等に関しては、国は単に民間の活動を促進し、PR活動を行うだけとも読めるような規定となっておりますが、国が第一義的に責任を負うべきことを明記すべきと考えます。あわせて、仮釈放者等の就労支援については、すべての国等の機関、事業者の責務である旨も追加すべきと考えます。

 第三に、地方更生保護委員会委員について、法務省の出身者が大半を占め、さながら法務省の早期退職者の受け皿の観を呈しております。社会内処遇の意義とリスクについての理解を国民に求めるのであれば、官の出身者ではなく民間人を中心に構成すべきものであり、法律、精神医学等の学識を有する者、民間人等のうちから男女のバランスも考慮し法務大臣が任命すること等の諸規定を設けるべきだと考えます。

 第四に、保護観察に関する規定の修正です。保護観察処分少年が遵守事項に違反した場合の少年院等送致決定の申請に関する規定は、保護観察処分が決まった少年に対して、保護司の呼び出しに応じなかったとか、朝早く起きてこないなどの、それ自体犯罪や非行とは言えないようなささいな事実をもって少年院送致の新たな審判事由とすることは余りにも不相応であり、また、もとの事件を考慮して審判するというのであれば二重処罰の疑いもあり、いずれにしても削除すべきと考えます。あわせて、仮釈放の取り消しには告知、聴聞の機会を保障するなどの規定を置くべきと考えます。

 さらに、本法案採決に当たっては、附帯決議を付す機会も奪われてしまいました。有識者会議の報告書が強く求めていた保護観察官の倍増などのアジェンダについても、厳しい財政状況下であるとはいえ、国がこれを年限を決めて着実に実施していくことが肝要であると考えます。

 以上が、本法案について、これをよりよくする観点から、委員会運営が正常であれば考えられ得た改善点であります。

 民主党は、これまでの強権的な委員会運営をめぐる七条明法務委員長の責任を問う権利についてはなお留保した上で、ただいま述べてまいりましたような改善点や課題については、引き続き参議院で十分に審議が尽くされ、更生保護の機能充実等を図るための万全の法整備がなされることを強く要望しつつ、本法案に賛成することを表明し、私の討論とさせていただきます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日本年金機構法案(内閣提出)及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに歳入庁設置法案(山井和則君外五名提出)、国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出)及び公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案(山井和則君外五名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案並びに山井和則君外五名提出、歳入庁設置法案、国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣柳澤伯夫君。

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、日本年金機構法案について申し上げます。

 公的年金制度は、国民の信頼を基礎として常に安定的に実施されるべきものであります。しかしながら、その運営を担う社会保険庁については、事業運営に関するさまざまな問題が生じたところであり、公的年金制度の運営体制を再構築し、国民の信頼を確保することが不可欠であります。このため、社会保険庁を廃止し、厚生労働大臣が公的年金制度に関する財政責任及び運営責任を担うこととする一方、新たに年金事業の運営業務を行う日本年金機構を設立するため、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、日本年金機構は、厚生労働大臣の監督のもとに、厚生労働大臣と密接な連携を図りながら、年金事業の運営業務を行うことにより、年金事業の適正な運営及び公的年金制度に対する国民の信頼の確保を図り、もって国民生活の安定に寄与することを目的としております。

 第二に、機構に、役員として、理事長、副理事長、理事及び監事を置き、その職務及び権限等を定めるとともに、理事会を置くこととしております。

 第三に、機構の役職員の身分は非公務員とし、その報酬・給与及び服務について、所要の規定を設けることとしております。

 第四に、機構の業務運営に関し、被保険者等の意見を反映するための措置や、年金事務所の設置、年金委員の創設、年金個人情報の利用及び提供の制限などを定めるとともに、厚生労働大臣の業務改善命令等の監督規定を設けることとしております。

 第五に、機構の当面の業務運営に関する基本計画の策定その他の機構の設立準備に関する事項を定めることとしております。

 以上のほか、社会保険庁の廃止に伴い、厚生年金保険法等において、社会保険庁長官の権限を厚生労働大臣の権限とし、厚生労働大臣はその権限の一部に係る事務を機構に行わせるとともに、保険料等の効果的な徴収を行う上で必要があると認めるときは滞納処分等の権限を財務大臣に委任できることとするなど、所要の規定の整備を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、平成二十二年四月一日までの間において政令で定める日としております。

 次に、国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 公的年金制度に対する国民の信頼を確保し、その安定的な運営を図るためには、社会保険庁の組織の改革とあわせて、国民年金事業等の運営の改善を図る必要があります。このため、本法律案を提出し、国民年金事業等について、サービスの向上、保険料の納付の促進、公正で透明かつ効率的な事業運営の確保などの措置を講ずることとしております。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、住民基本台帳ネットワークシステムから被保険者等に係る情報を取得することにより、その氏名及び住所の変更等の届け出を原則として廃止するとともに、社会保険と労働保険の手続の期限を一致させることにより、事業主による手続の簡素化を図ることとしております。

 第二に、クレジットカードによる保険料納付制度の導入など、国民年金保険料を納めやすい環境を整えるとともに、その滞納者に対して通常より短期の有効期間を定めた国民健康保険の被保険者証を交付することができる仕組みの導入、長期間にわたって保険料の自主的な納付がない場合に保険医療機関等に係る指定等を認めないこととすること、事業主に対して国民年金制度の周知等について協力を求めることができることなど、関係者や関係制度との連携のもとでの保険料の納付促進策を講ずることとしております。

 第三に、年金事務費に保険料財源を充当できるようにするとともに、いわゆる福祉施設規定を廃止し、新たに年金教育・広報、年金相談、情報提供等の国民年金事業等の円滑な実施を図るための措置に係る規定を整備するほか、基礎年金番号を法定化することとしております。

 以上のほか、国家公務員共済組合法等関係法律について所要の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、平成二十年四月など、改正事項ごとに所要の施行期日を定めることとしております。

 以上が、日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 提出者内山晃君。

    〔内山晃君登壇〕

内山晃君 私は、ただいま議題となりました民主党・無所属クラブ提出の年金信頼回復三法案であります歳入庁設置法案外二法案につきまして、提案者を代表して、提案理由及び趣旨を御説明申し上げます。

 二〇〇四年の年金法改正は、抜本改革とは全く言えず、国民の年金制度への不信を増大させただけで終わりました。さらに、民主党の追及により判明した、年金保険料を、年金給付とは関係のない二百五十六の年金福祉施設の建設等で、社会保険庁職員及びOBの天下りのために無駄遣いをされてきました。

 また、約五千万件もの年金保険料を納めた記録が、だれの記録かわからないために年金給付に結びつかない可能性があることなど、数多くの社会保険庁の怠慢と腐敗の実態が明らかとなり、国民の年金制度に対する不信と怒りはさらに大きく増加をしております。

 年金制度への国民の信頼を回復し、年金制度を将来にわたり持続可能なものとするために、民主党は、年金制度抜本改革法案を提出するなど、真の年金改革に取り組んできました。そして、このたび、年金信頼回復三法案、すなわち、現在の社会保険庁を解体し新たに歳入庁を設置する歳入庁設置法案、これまで大切な年金保険料を無駄遣いの限りを尽くしてきた現状に対し年金保険料流用禁止を明確化した年金保険料流用禁止法案、実に五千万件に達する年金納付記録の確認に関する、消えた年金記録被害者救済法案を国会に提出した次第であります。これら三法案は、年金制度に対する国民の信頼を回復するために必要不可欠であると確信をしております。

 以下、法案の概要を御説明申し上げます。

 まず、歳入庁設置法案について御説明申し上げます。

 この法案では、現在の社会保険庁を廃止し、国税庁を中心として構成する歳入庁を新設し、事務を移管することとしております。

 現行制度では、国民は、国税を税務署に納め、年金保険料を社会保険事務所に納めています。また、法人は、国税を税務署、年金保険料を社会保険事務所、労働保険料を都道府県労働局に納めています。社会保険庁が所管してきた厚生年金については、保険料徴収先が国税庁の法人税課税先と百六十万事業所がほぼ重なり、国民年金についても三百五十万人もの被保険者が納税者となっています。

 現在の国税庁の所得情報や徴収ノウハウを活用し、徴収コストを大幅に減らしながら保険料の徴収率を向上させることが可能となるとともに、公金納付や相談のワンストップ化により、国民の利便性も高めることができます。

 また、社会保険庁と国税庁との類似の事務を整理することで公務員を削減し、大幅な国民負担の軽減を実現することが可能となります。

 新設する歳入庁設置に際しては、政府は当面の業務運営に関する基本計画を定めることとしております。基本計画では、民間に委託する業務、委託先の選定方法などを定めることとし、民間委託によって、新設する歳入庁のスリム化や徴収コストの大幅な削減が可能になると考えております。

 また、基本計画では、社会保険庁または国税庁の職員が新たに歳入庁に移行する際の基準を設けることとしており、問題職員に対する適切な対処及び公務員定数の削減が可能となります。

 新設する歳入庁の事務処理状況や政府の定める基本計画について、国会に報告することを義務づけており、国会が適切な監視を行えるよう担保をしております。

 今回の民主党案では、公務員たる歳入庁長官に国会に対する説明を義務づけ、国会が全責任を負って年金を守ることを明示しています。しかし、政府案では、非公務員である民間人に対しては国会に対する責任を負わせることができるのか、問題があると考えております。

 次に、年金保険料流用禁止法案について御説明を申し上げます。

 社会保険庁は、年金保険料を公用車購入費や宿舎建設費などに無駄遣いをしてまいりました。政府提出の法案では、福祉施設の規定は削除していますが、ある意味でそれ以上に広範囲な流用が可能と考えられる教育及び広報等への保険料流用が可能となっています。

 加えて、年金事務費への保険料流用の恒久化も盛り込まれており、これは国民の理解を全く得られないものであります。民主党案は、年金保険料の流用を禁止し、大切な保険料の無駄遣いを許さないように措置をしております。

 最後に、消えた年金記録被害者救済法案について御説明を申し上げます。

 冒頭に申し上げましたとおり、約五千万件もの年金保険料を納めた記録が、だれの記録かわからないために年金給付に結びついていない可能性があります。また、被保険者等の提出した書類に基づいて年金記録の訂正を社会保険庁が行ったケースでは、年金保険料の納付記録が全く社会保険庁には存在せず、完全に消えてしまった事例も判明をいたしました。保険料を納付した国民には何にも落ち度がないにもかかわらず、政府は責任逃れをし、全容の調査を拒んでおります。

 本法案は、国民の適正な年金給付を行うために、政府に対し、五千万件の年金記録の全数調査を行い、年金納付記録の確認とともに、被害者の救済を課すものであります。

 以上が、本法律案の提案理由及びその概要であります。

 議員各位の御審議と御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 日本年金機構法案(内閣提出)及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに歳入庁設置法案(山井和則君外五名提出)、国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出)及び公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案(山井和則君外五名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。谷畑孝君。

    〔谷畑孝君登壇〕

谷畑孝君 自由民主党の谷畑孝です。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 公的年金は、国民の老後の生活を支える重要な柱であり、国民のだれもが老後に不安を感じることなく人間らしく生きるためのかけがえのない支えであります。

 内閣府の世論調査によれば、老後の生活設計について、ほぼ全面的に公的年金に頼ると答えた人が二九%、公的年金を中心として貯蓄などの自助努力を組み合わせると答えた人が四二%であり、七割を超える国民が公的年金を頼りにしていると答えております。

 このような中で、国民の年金に対する信頼をしっかりと支え、公的年金制度を持続させていくためには、これを運営する組織の役割は大変大きなものがあります。

 しかし、まことに残念ながら、社会保険庁は、これまでさまざまな問題が生じたことから、国民の信頼を失っております。

 公的年金に対する国民の信頼を取り戻すためには、今後も国が年金制度の運営に責任を持つということをしっかりと堅持しながら、社会保険庁を廃止し、国民に安心して保険料を納めてもらえる新たな組織として再出発を図らなければなりません。このことについて、安倍総理の御決意をお伺いいたします。

 社会保険庁においては、さまざまな問題が相次いで明らかとなり、深刻な不信を招いております。

 すなわち、一、全国の社会保険事務所等の職員が政治家や有名人などの年金記録を業務目的外で閲覧した問題、二、特定の納入業者との癒着の問題、三、保険料を財源として大量購入した書籍で職員が多額の監修料を受領していた問題、四、年金福祉施設の整備に多額の保険料が投じられてきたことのみならず、年金事務費として、職員宿舎、公用車から社会保険事務所のマッサージ器にまで保険料が使用された問題が明らかとなりました。

 さらに、昨年の通常国会において、社会保険庁を廃止するねんきん事業機構法案が提出された中、全国の社会保険事務所で年金保険料の不正免除問題が明らかとなり、同法案は廃案となったわけであります。

 今回の法案は、業務の徹底した効率化を図り、保険料の無駄遣いをなくしてほしいという国民の声を真摯に受けとめ、まさに社会保険庁改革の出直しの出直しとして提案されたものであります。

 このため、社会保険庁を廃止し、新たな公法人である年金運営新組織では、役職員の非公務員化を図り、その業務についても民間委託などのアウトソーシングを積極的に推進するものとなっております。

 また、国民の不信感を払拭するため、保険料の使途についても、その内容を精査し、国民の目から見て透明なものとされなければなりません。

 これまでの社会保険庁の組織、事業運営のあり方について、このような問題を生じた根本的な原因はどこにあったのか、新組織においてどのように変えていくのか、厚生労働大臣の率直なお考えをお伺いいたします。

 次に、新組織の職員の採用と人事政策についてお尋ねいたします。

 日本年金機構が国民に信頼される組織となるためには、その職員が、国民生活に不可欠な年金制度を支えるという自覚と誇りを持って職務に邁進することが大切です。新組織の業務を担うにふさわしい能力と適性を備えた職員を採用するとともに、個々の職員の能力と実績を正しく評価し、やる気を引き出し、人材を育てていくことが重要であります。

 このため、社会保険庁職員のうち、これまでまじめに職務に励んできた者には新組織においても十分その能力を発揮してもらうこととともに、必要な人材については民間からも職員を採用して、新しい風を吹き込むことが必要であります。新組織の職員の採用と人事政策について、厚生労働大臣のお考えをお尋ねいたします。

 次に、国民年金保険料の収納対策についてお尋ねいたします。

 国民年金保険料の納付率は、近年徐々に回復しているとはいえ、平成十七年度で六七・一%にとどまっており、年金制度に対する国民の信頼を維持する上で、この納付率の早急な改善が求められております。

 そのためには、支払われた年金保険料が将来の年金としてしっかりと給付が保障されていることを国民にわかりやすく伝え、国民みずからが納得し、喜んで保険料を納めることのできる環境づくりが必要であると考えます。

 その上であれば、負担能力があるにもかかわらず未納を続ける人に強制徴収を行い、また、日本年金機構が強制徴収の努力を尽くしても対応できない悪質な未納者には、強制徴収を国税庁に委託することとしても理解が得られるのではないでしょうか。

 さらなる納付率の向上を図るためには、効果的、効率的な対策の推進が不可欠と考えますが、今回の法案による措置を含め、今後どのように取り組みを強化していくのか、厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 また、公的年金の運営に当たっては、年金記録の極めて長期にわたる確実な管理が不可欠です。

 日本年金機構の設立に向けて、国民の信頼を得て年金業務の実務を担っていくためには、年金記録の管理に万全を期すとともに、国民一人一人に対し、保険料納付実績や年金の見込み額などをわかりやすく伝える仕組みの整備が極めて重要であると考えますが、厚生労働大臣の見解をお尋ねいたします。

 最後に、いわゆる歳入庁なる考えは、社会保険である年金制度への無理解から生じたものであり、国税の徴収対象と国民年金、厚生年金の徴収対象が異なり、決して徴収の効率化にはつながらず、結局は社会保険庁と国税庁を統合した公務員組織を温存するものにほかならないことを指摘し、自由民主党として、本法案の今国会での成立に向け、強い決意を持って最大限の尽力をすることを表明いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 谷畑孝議員にお答えをいたします。

 社会保険庁改革に対する私の決意についてお尋ねがありました。

 社会保険庁については、規律の回復と事業の効率化を実現するため、抜本的な改革をなし遂げなければなりません。このため、今回の改革案では、公的年金に関する国の責任は堅持しつつ、新たに非公務員型の日本年金機構を設置するとともに、民間企業への外部委託を徹底するほか、悪質な滞納者への強制徴収を国税庁に委託するなど、社会保険庁の廃止・解体六分割を断行することとしております。

 公的年金に対する国民の信頼をしっかり確保できる新組織の実現に向けて、引き続き最善の努力を続けてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 谷畑議員にお答え申し上げます。

 社会保険庁におきます問題発生の原因について、まず冒頭お尋ねがございました。

 御指摘のとおり、平成十六年以降、社会保険庁の不祥事が相次いで明らかになりまして、国民の皆様の深刻な不信を招きました。これらにつきましては、それぞれその原因を明らかにし、再発防止策を講じてまいったところでありますが、改めてこの場をおかりして深くおわびを申し上げます。

 これらの問題の構造的背景には、社会保険庁の地方職員が、かつて、身分は国家公務員でありながら知事の指揮監督を受ける、いわゆる地方事務官という特殊な存在であった点がまず挙げられると考えます。平成十二年に地方事務官制が廃止された後も、県単位の閉鎖的な組織体質が残り、地方独自の判断で事務処理を行う等がございました。また、社会保険庁の本庁におきましても、幹部が必ずしも実務に精通しておらず、専門職員の養成も不十分であったことなどの状況にあり、ガバナンスを欠くことになったと認識をいたしております。このため、現在、法令遵守の徹底や業務マニュアルの作成等により、事務処理の適正化を進めているところであります。

 今回御提案いたしております日本年金機構におきましては、さらに地方組織を都道府県単位から地域ブロック単位に再編し、職員の広域異動を行うことにより、地方事務官時代の意識の改革を図ってまいりたいと考えております。また、非公務員化のもとで、能力と実績に基づくめり張りのある人事管理を導入する所存であります。新組織におきましては、こうした取り組みを通じて、これまでの社会保険庁の構造問題にけりをつけ、一掃を図っていきたい、このように考えております。

 新組織の職員に関してお尋ねがございました。

 新しい日本年金機構におきましては、職員の採用につきまして、社会保険庁の職員を自動的に引き継ぐということは考えておりません。新組織の設立委員が新たな採用基準のもとで職員を募集し、採用する方式といたします。その際、中立公正な学識経験者の意見をお聞きし、厳正な審査を行い、新たな組織にふさわしい意欲と能力がある人材を選考いたします。また、民間からの採用も行います。

 新組織の人事政策につきましては、能力と実績に基づくめり張りのきいた民間的な人事給与体系を導入いたします。民間との人事交流も進めます。また、年金のプロの人材育成に努めたい、このように考えます。

 こうした取り組みを通じて、職員のやる気と能力を十分に高めていける組織とすることにより、国民の信頼回復とサービスの向上を図ってまいりたい、このように考えております。

 国民年金保険料の納付率向上のための対策についてお尋ねをいただきました。

 納付率の向上につきましては、御指摘のとおり、基本的に従来から、コンビニでの納付を可能とするなど保険料を納めやすい環境を整備するとともに、未納者については、負担能力が乏しい場合には免除等に適切に結びつけ、十分な負担能力のある場合には差し押さえを含む強制徴収を行うなど、その負担能力に応じたきめ細かな収納対策を進めてまいりました。

 本法案におきましては、こうした従来の対策に加え、クレジットカードによる保険料納付の導入や、市町村の国民健康保険の窓口を活用した保険料納付の促進策など、各般にわたる対策を盛り込んでおり、納付率のさらなる向上に全力を挙げてまいります。

 最後に、年金記録の管理についてお尋ねがありました。

 年金記録につきましては、平成九年に基礎年金番号を導入して以降、各制度ごとに管理していた記録の統合一本化を進めております。統合一本化に当たりましては、御本人に基礎年金番号以外の年金番号の保有の有無を確認するなど、正確な管理に努めてきたところであります。

 被保険者の方々にそれぞれの年金記録を確認していただく機会といたしましては、現在、年金受給直前の五十八歳到達時に事前に記録をお送りし内容を確認していただくこととするほか、インターネットを活用した情報提供等を実施いたしております。

 また、今年度からは、年金記録の確認を、五十八歳時点だけではなく、三十五歳時点、四十五歳時点でも行うようにするとともに、平成二十年度からは、ねんきん定期便を本格的に導入し、保険料納付実績や年金額の見込みをわかりやすくお知らせすることにより、公的年金制度を実感し、その理解を深めていただくこととしております。

 なお、昨年来、年金記録についての個別の相談に対して専用の窓口を設ける、いわゆる特別強化体制を実施いたしておりますが、本年六月には、既に年金を受給しておられる方々にも広くこの窓口を御利用いただくよう、約三千万人の年金受給者すべての方々に対してお送りをする年金の振り込み通知書にその旨の御案内をさせていただく予定といたしております。

 以上でございます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 民主党の長妻昭でございます。

 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の日本年金機構法案等、民主党提出の年金信頼回復三法案について質問申し上げます。答弁が不十分であれば、時間の範囲内で再質問をしますので、よろしくお願いをいたします。(拍手)

 まず、総理に申し上げたいのは、年金百年安心プランというごまかしの看板をそろそろおろしていただきたいということです。まず、今の年金制度は欠陥がある、安心できる制度ではないと認めることからすべてが始まります。看板をおろして、失政を認める勇気を持っていただきたい。いかがですか。

 年金不信を増大させた原因の一つに社会保険庁問題があります。最大の課題は、未納を減らし、保険料流用を禁止するなど信頼回復にあります。民主党はかねてより、年金の保険料は税金と一緒に集める、社保庁を国税庁に吸収合併する歳入庁がベストであると提言してまいりました。

 ところが、昨年、政府は、ねんきん事業機構法案という社保庁の看板かけかえ策を国会に提出しました。案の定、集中砲火を浴びてあえなく撤回。そして今回も、社保庁の公務員は全員首にしますと、かけ声は勇ましいのですが、ふたをあけてみれば、社保庁を特殊法人に衣がえする日本年金機構法案を提出してきました。これでなぜ未納が減り、年金の信頼回復ができるのか、意味不明でございます。

 特殊法人にすれば問題が解決すると政府は言わんばかりですが、これまで幾多の特殊法人で不祥事が発覚しました。今まで特殊法人にして成功した事例が一つでもあれば、具体的名前をお教え願いたい。

 当初、与党の中にも、民主党の歳入庁構想を受け入れる議論がありました。しかし、厚生労働省や社保庁が、天下り団体を養う原資でもある年間二十一兆円もの保険料徴収権限を手放したくないと抵抗したと聞いています。

 国民年金の被保険者のうち、三百五十万人が税金も払っています。厚生年金は百六十万事業所が加入しています。国税庁とのダブり仕事を解消すれば、大幅に人員削減が可能となります。コスト削減と徴収効果を考えれば、歳入庁しかありません。米国、英国、スウェーデン、カナダなども保険料と税金を一緒に集めて効果を上げております。

 この際、安倍総理に申し上げます。官僚の抵抗を振り切り、メンツも捨てて、民主党案に乗って問題を決着させようではありませんか。お答えください。もはや、これ以上の先送りは絶対にやめていただきたい。心から申し上げます。

 民主党法案提出者には、なぜ歳入庁が必要なのか、政府案との違いも含めて説明を求めます。

 社保庁で現在深刻なのは、民主党の調査で数字が明らかになった、厚生年金や国民年金の納めた保険料の記録が消えてしまう問題です。

 社保庁は、昨年八月二十一日から十二月二十八日までの年金記録相談の特別強化体制の中で、納付記録に漏れがあるとして訂正を求めた方のうち一万八百五十八人に対して、記録が残っていないとその申し出を却下しました。結果、救済されたのは領収書を保管していたたった八十六人だけ。実に、百三十人に一人しか救済されていません。昭和四十年代、五十年代の領収書を保管している人はまれです。

 納付記録の訂正申し出が却下された一万八百五十八人の記録を再度徹底調査すべきと考えますが、いかがですか。領収書によって救済された八十六人も、国会での追及を受けて三十一人分の記録が新たに発見されました。ずさんきわまりない。ぜひ再調査していただきたい。

 昨年八月二十一日からことし三月三十日までの七カ月間で、全国の社会保険事務所に約二百十五万人もの方が納付記録について相談に訪れています。そのうち約二十八万人に基礎年金番号への統合漏れがありました。本人が納付記録の漏れを申し出なければ、受給額が減るところでした。実に全体の一三%です。厚生年金、国民年金の被保険者は全体で約六千五百万人おり、一三%に統合漏れがあるとすれば、約八百五十万人は、自分で記録漏れを発見して申告しなければ受給額が減る可能性があるということです。

 また、同時期、二万六百三十五人の記録訂正の申し出が却下されました。却下された方々のすべての記憶が正しいとすると、記録消失の被害者は同時期相談のあった方の約一%です。厚生年金、国民年金の被保険者と受給者合わせて約一億人ですので、一%である約百万人の記録が消えている可能性があります。しかも、納付記録が消えていても記憶が薄れて指摘できない方もいるとすれば、被害者はさらに膨らむ可能性があります。

 記録消失推計百万人、統合漏れ推計八百五十万人、大きな問題であることを社保庁は認識していただきたい。社保庁としては、記録消失、統合漏れは何人程度と把握していますか。被害者救済策とともにお尋ねします。

 既に受給されている方も安心ではありません。多くの支給漏れが発生しています。平成十三年度からことし二月末までの六年間で、二十二万人もの方が、社保庁の納付記録ミスなどの理由で受給金額が変更になりました。被害者の全体は推計何人で、支給漏れの方々を救済するためにどのような対策を考えているのか、お尋ねをいたします。

 民主党の調査で、納付記録が基礎年金番号に統合されていないものが、厚生年金、国民年金合わせて約五千万件もあることが判明しました。基礎年金番号の付番前に死亡された方などを除いて、この中には、だれの納付記録か不明になり、統合できず給付に結びつかないデータも存在すると考えられます。これらのデータや、基礎年金番号に統合できるにもかかわらず、いまだ統合漏れのデータは推計でそれぞれ何件あるのか、お答えを願います。

 問題は大きく二つございます。一つは、記録が実際に消えてしまう問題。もう一つは、本人がすべての納付記録を正確に覚えて申告しなければ正しい年金額が支給できないおそれがあるというとんでもない問題です。納付記録が存在しても、基礎年金番号に統合されていない場合、本人が気づき確認しなければ受給金額には反映されません。本来は、本人の申し出がなくても統合を進めることが当然です。社保庁は一部統合作業はしていますが、例によって大変いいかげんです。今後、民主党の具体的アドバイスも受け入れて、全力を挙げて統合を進めることをまずお約束ください。いかがですか。

 銀行でいえば、たった一人でも預金が消えていれば、その銀行には厳しい処分が下るでしょう。しかし、社保庁は危機意識に乏しく、これを指導する柳澤厚労大臣も問題の深刻さがわかっていません。民主党は、せめて本日の法令審議までには、予備的調査を初め調査要求の未回答分にきちんと答えることを要求していましたが、いまだ回答がありません。回答することをお約束ください。いかがですか。

 また、被害者救済のために、民主党の消えた年金記録被害者救済法案を取り入れるべきと考えますが、いかがですか。これは総理にお伺いします。

 民主党法案提出者には、消えた年金記録被害者救済法案の内容について御説明ください。

 社保庁の記録は初めから間違いがないと信じている方が数多くおられます。この際、緊急に、全被保険者、受給者約一億人に、納付記録が消えることがあり得るということを十分注意喚起した上で、全員に納付記録一覧である年金加入履歴を送付して、漏れがないかチェックしていただくことを強く要請します。政府のねんきん定期便は合計百億円の経費をかけると聞きますが、受給者は対象でない上、三十五、四十五、五十八歳以外は加入月数を通知するだけで、チェックのしようがありません。ぜひ、緊急に民主党の提案を実施していただきたい。総理にお答え願います。

 もともと社保庁問題は、保険料浪費から端を発しました。民主党の調査で、六兆円もの年金保険料が年金支給以外に使われたことが明らかになったのです。リゾート施設の観覧車やメリーゴーランドの建設にまで流用された上、職員のカラオケセットやゴルフ練習場のクラブやボール、ミュージカルのチケット代にまで保険料が浪費されました。

 平成十六年二月二十五日、衆議院予算委員会で、当時、与党年金制度改革協議会の座長であった自民党の大野功統議員は、大野さん、おられますか、同協議会の与党合意として、「我々は、国民の皆様の大事な年金の保険料は年金の給付以外には絶対使わない、こういう誓いに達したわけでございます。」と大見えを切りました。当日はNHK生放送もされており、国民の皆様の前で与党として流用はしないことを公約したわけでございます。

 ところが、今回、これまで以上に流用を可能とする二つの法案が政府から提出されました。保険料の流用を、利便の向上に資する情報提供、年金教育・広報、年金相談その他の援助には可能とする条文が追加されました。何でも流用法とでも言うべきものです。天下り団体に仕事を与えるために、全国に年金教育センターや年金広報センターなどができ、保険料が食いつぶされることは明らかです。さらに、平成二十年度以降、永久に年金事務費に保険料を流用できる法案も今回提出されています。

 自民党総裁でもある安倍総理にお伺いします。予算委員会で全国民の前で誓った与党の公約をなぜ簡単に破るのですか。素直に二つの流用法を撤回し、年金保険料は年金の支給だけに使うという鉄則を打ち立てていただきたい。いかがですか。撤回しないのであれば、安倍総理に公約破りの責任をおとり願いたい。お答えください。本来は大野議員にもただしたいところです。

 民主党法案提出者には、民主党の年金保険料流用禁止法について説明を求めます。

 社保庁には、不祥事の後始末がいまだ数多く残っております。民主党の指摘で明らかになった国民年金の未納者を行方不明者にでっち上げる問題。未納者を切り捨てて未納率を減らす、成績アップを目的とした犯罪的行為です。行方不明者となる不在者設定をされると、通知など一切届かなくなります。平成十八年二月末現在で約七十八万人いる行方不明者のうち、不正に行方不明とされた方は何人おられるのか、お示しください。民主党は、一年近く前から調査要求をしております。責任のとり方とともに、お答え願います。

 社保庁は、監修料という名目で保険料をキックバックして、職員の飲み食い代など、五年間で六億円以上の年金や政管健保の保険料を使い込んでしまいました。しかし、いまだ一億六千万円しか返却されておりません。全額返却させるのが当然と考えますが、いかがですか。これは総理にお伺いします。

 政府・与党は、社保庁に甘過ぎます。納付記録の消失問題を初め、不祥事の後始末までほったらかしのまま、特殊法人に衣がえして逃げ切ることは断じて許されません。一連の政府法案は、年金責任逃げ切り法案と言わざるを得ません。安倍総理の反省の弁をお願いいたします。

 国の二つの保障、安全保障と社会保障、どちらも重要です。社会保障の切り捨てによって全国からわき上がる悲鳴にも似た声をよく聞いてください。現場を歩いてください。頼るべき最後のよりどころが年金なのです。安倍総理におかれましては、責任を自覚して、自分の言葉で答弁をお願いいたします。

 以上です。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 長妻議員にお答えをいたします。

 平成十六年の年金制度改正についてのお尋ねがありました。

 年金制度については、平成十六年の制度改正において、おおむね百年程度先までを見通して長期的な給付と負担の均衡を確保し、制度を持続可能なものとするための見直しを行ったところであります。また、本年二月に発表した暫定試算では、昨年末に公表された新人口推計の中位推計や近年の経済動向を織り込むと、全体として年金財政は好転しております。

 今後、法律の規定に基づき、平成二十一年までに、今回の暫定試算も参考としつつ、しっかりと財政検証を行い、国民の老後生活等の安心を確保してまいります。

 特殊法人についてお尋ねがありました。

 特殊法人などの公的な法人は、法律においてその目的や業務を規定し、それに基づいて運営を行ってきているところであり、それぞれの法人は、その目的に対応する成果を上げてきているものと認識しています。例えば、国民生活金融公庫は零細企業の資金調達に貢献をしており、その機能は、政策金融改革を行いながら大事にしていくべきであると考えています。

 民主党の歳入庁構想についてのお尋ねがありました。

 社会保険庁と国税庁を統合し、歳入庁を設置するとの民主党案については、年金保険料と国税とでは徴収の対象が大きく異なり、徴収業務の基本的性格も異なるという現状を無視したものであり、業務の効率化等の利点は考えにくいものであります。さらに、さまざまな問題があった社会保険庁を公務員組織のまま温存する案であり、改革の目的である規律の回復や事業の効率化等の観点から、我々としてはとり得ない案と考えております。

 年金記録にかかわる民主党案についてお尋ねがありました。

 年金記録については、今日では、さまざまな年金制度に加入した場合であっても基礎年金番号で統一的に管理される仕組みとなっており、基本的な問題は解決していると考えています。ただし、基礎年金番号が導入される以前の記録が統合されないケース等が残されていることから、これをどのように基礎年金番号に統合していくかが課題となっております。

 このため、社会保険庁では、昨年来、年金記録相談の特別強化体制をとり、年金記録の確認を幅広く国民の皆様に呼びかけており、今後さらにその周知に努めてまいります。

 これらの取り組みを適切に進めていくことにより、民主党案によらずとも対応していくことができると考えておりますが、年金記録の重要性に関する民主党の考え方は十分参考にさせていただきたいと存じます。

 年金加入記録についてのお尋ねがありました。

 すべての被保険者、年金受給者に対して納付記録を送付し点検をお願いすることは、大部分の方の記録が真正なものであることを考えれば、非効率な面が大きいのではないかと考えます。

 年金記録については、今後、三十五歳、四十五歳、五十八歳の各時点で御確認いただく体制が整備されることとなっております。また、現時点で年金記録に不安や疑問をお持ちの方には、現在、社会保険庁で実施している年金記録相談の特別強化体制を御活用いただくこととしており、その周知にさらに努めてまいります。

 民主党からの調査要求への回答についてのお尋ねがありました。

 民主党からの調査要求に対しては、ことし一月に、厚生労働大臣より、回答できるものはお答えし、回答できないものはその理由をお示ししたものと承知しております。その後に調査の御依頼があった事項についても、回答が可能なものについてはできるだけ速やかに回答してまいります。

 年金保険料の使途についてのお尋ねがありました。

 平成十六年二月の衆議院予算委員会のやりとりは、年金福祉施設を念頭に置いて交わされたものであります。このことは、翌月の与党の年金制度改革協議会の合意において、年金保険料は今後は福祉施設の整備費及び委託費には投入しないとされているところからも明らかであります。政府においては、この与党合意を踏まえて、年金保険料は年金給付及び年金給付に関連する年金相談、情報提供等の事業費や事務費以外には充てないという考え方で対処してきております。

 今回の法案では、年金給付と密接不可分なコストである経費に保険料を充てることとしておりますが、これは、他の公的保険や諸外国の例から見ても妥当なものであります。重要なことは、かつての社会保険庁に見られたような無駄遣いを許さないことであり、今後さらに、無駄遣いを排除するための取り組みを徹底いたします。

 監修料についてお尋ねがありました。

 平成十五年度以前に生じた社会保険庁職員の監修料の受領は、国民の信頼を損ねることとなりました。こうした事態を招いたことを社会保険庁が組織として重く受けとめ、反省の意を表するものとして、幹部職員を初め一定の地位にあった者が給与の一部を自主的に返納をいたしました。これは、業者からの監修料の受領について、その反省に立ってけじめをつける趣旨で行ったものであり、受領額そのものを国に返納すべきという考え方に立っているわけではありません。

 年金保険料の不正免除問題に対する対応についてのお尋ねがありました。

 国民年金保険料の免除等に係る問題については、社会保険庁において、累次の調査を経て、昨年八月に第三次調査報告書を取りまとめ、関係職員に対して停職を含む処分を行うなどの措置を講じたところであります。

 また、今回の事案発生を踏まえ、再発防止策として、これまでに法令遵守意識の徹底、業務の標準化、統一化の徹底等の措置を講じたところであります。

 刑事告発についてお尋ねがありました。

 国民年金保険料の不正免除の事務処理に関し犯罪があったと思料されるかどうかについては、必ずしも明確な結論に達することができなかったことから刑事告発に至らなかったと承知しているところであります。

 年金保険料の浪費の責任についてのお尋ねがありました。

 年金福祉施設等は、さまざまな批判や時代の変化を踏まえ、譲渡等を行うこととしています。また、その根拠となったいわゆる福祉施設規定も、今回の法案で見直すこととしております。

 安易な随意契約や予算執行の無駄遣いとの指摘に関しては、競争入札を原則とするとともに、調達委員会による厳正な審査に努めております。重要なことは、無駄遣いは絶対にさせないということであります。そのための取り組みを徹底し、社会保険庁を抜本的に改革することにより、責任を果たしてまいります。

 社会保険庁改革に関する政府案及び民主党案に対する私の考えについてお尋ねがありました。

 社会保険庁については、規律の回復と事業の効率化を実現するため、抜本的な改革をなし遂げなければなりません。

 このため、今回の改革案では、公的年金に関する国の責任は堅持しつつ、新たに非公務員型の日本年金機構を設置するとともに、民間企業への外部委託を徹底するほか、悪質な滞納者への強制徴収を国税庁に委託するなど、社会保険庁の廃止・解体六分割を断行することとしております。公的年金に対する国民の信頼をしっかり確保できる新組織の実現に向け、最善を尽くしてまいります。

 民主党案については、社会保険庁と国税庁を統合し歳入庁を設置するとの案は、さまざまな問題があった社会保険庁を公務員組織のまま温存し、また事務の効率化も図ることができない問題があります。年金保険料を必要な事務費に充てることも認めないとの案は、他の公的保険や諸外国の現状から見ても妥当ではなく、年金記録の調査については、既に五十八歳通知や年金記録相談の特別強化体制などを講じているところであります。そういう意味において、民主党案ではなく政府案に対する御理解をお願いしたいと思います。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 年金記録相談の特別強化体制絡みで、長妻議員から数字にわたって御質問をいただきました。

 この年金記録相談の、年金記録の訂正申し出があったわけですが、この訂正申し出が却下された方への対応について特にお尋ねをいただきました。

 御指摘の年金記録相談につきましては、昨年の八月二十一日からこれを実施しているところでございます。この専門窓口などを通じて相談をされた方に対しましては、まず、国民年金、厚生年金ともに社会保険庁の社会保険オンラインシステムの記録の調査を行ってチェックをいたします。

 また、この記録で確認できなかった申し出につきましては、国民年金の一部と厚生年金につきまして、社会保険庁の被保険者台帳、マイクロフィルムの保存がなされているものでございますが、これの調査を行い、さらに市町村に保存されている国民年金被保険者名簿等もろもろの資料に当たった調査等を実施した上で回答をいたしたということでございます。現在も、そういうことでこの回答を継続しているところでございます。

 さらに、御本人から保険料納付状況が記載された資料等に基づいて再調査依頼がある場合には、その資料等に基づきまして、今度は社会保険庁本庁において記録訂正の要否を慎重に判断させていただいております。したがいまして、ここまで調査をしておるわけでございますので、改めて調査をする必要はないというふうに考えております。

 それから、年金納付情報のいわゆる不備、消失についてのお尋ねがございました。

 社会保険庁において実施している年金記録相談の特別強化体制におきまして十二月までに相談を受けた約百万件の中で、社会保険庁及び市町村の資料に年金保険料納付記録がなく、被保険者が保有する領収書等によって記録を訂正した事例が五十五件ありました。百万件のうちの五十五件でございます。このような事例については、その生じた原因は特定できませんけれども、領収書等により保険料納付の事実が確認されれば、速やかに記録を訂正いたしております。

 さらに、こうした資料がない場合でありましても、保険料納付に関する具体的な状況から納付があったことが確実と考えられる場合には、記録の訂正を行うこともあり得るという姿勢で臨んでおります。

 いずれにいたしましても、現在、年金記録相談の特別強化体制において幅広く御相談を受け付けているところでございまして、年金記録に御不安や御懸念のある方は、社会保険事務所に御相談いただきたいと考えております。

 次に、平成十八年六月現在、基礎年金番号にいまだ統合されていないものが五千万件あるわけですけれども、この五千万件の各種の年金手帳記号番号の記録につきましてお尋ねをいただきました。

 基礎年金番号に統合されていない五千万件の記録の中には、基礎年金番号導入前にお亡くなりになった方や受給要件を満たさなかった方、さらには今後において年金の受給資格を取得される方に係るものが含まれていると考えられます。五千万件の中に含まれるこれらそれぞれの内訳件数については、これを把握いたしておりません。

 基礎年金番号に統合されていない記録を年金給付に適切に反映させていくことが必要ですが、このためには、今後、五十八歳到達者に対する年金加入記録の通知や年金記録相談の特別強化体制等を活用していただきますと同時に、基本的には、年金支給の裁定時において、受給権者との間で記録の確認が行われていくと考えております。

 年金被保険者によるこの確認の手続につきましては、今後さらに、ねんきん定期便の本格導入や、三十五歳、四十五歳の区切りの年齢において詳細な加入履歴をお届けする取り組みを進める一方、年金受給者に対しては、各年の振り込み通知に際し記録確認の呼びかけを行うなど、その機会を一層拡大してまいることといたしております。

 いわゆる不在者についてのお尋ねがありました。

 住所不明のいわゆる居所未登録者につきましては、昨年八月に公表した国民年金保険料の免除等に係る事務処理に関する第三次調査報告書に基づきまして、その適正な管理を徹底するために、不適正処理分約十万五千件の取り消しを行いますと同時に、平成十八年十月に新たな事務処理基準を策定し、残る六十九万人についてこの基準に照らして居所未登録者の再点検を開始しており、いまだ完了するに至っておりません。

 この再点検作業をしっかり進め、居所未登録者の適正な管理を徹底していくことが社会保険庁としての責任を果たすことであり、市町村の協力をいただきながら、できる限り早期に再点検を完了できるよう作業を進めてまいります。

 なお、平成十七年度に行われました不適正な居所未登録の処理につきましては、これにかかわった職員について、既に適切な処分を行っております。

 以上でございます。(拍手)

    〔山井和則君登壇〕

山井和則君 長妻議員から三つの質問をいただきましたので、順次お答えを申し上げます。

 まず何よりも、今の安倍総理、柳澤厚生労働大臣の答弁を聞いていて、なぜ特殊法人に看板をかけかえするこの法案によって納付率がアップするのかがさっぱりわかりませんでした。年金制度の安定、信頼回復こそが、今回の社会保険庁改革の最大の眼目であります。

 長妻議員からは、まず第一番目に、なぜ歳入庁設置法案を創設するのか、そしてその政府案との違いということについて御質問がありました。

 歳入庁設置には、三つのねらいがあります。

 まず第一は、何よりも、低下している国民年金の納付率、そして厚生年金の加入率の引き上げにあります。

 先ほど柳澤大臣から、国民年金の納付率がアップしているというような趣旨の発言が、谷畑議員からもございました。しかし、これは、六七%にアップしているのは、一七%分の猶予と免除による、いわゆる分母対策によるかさ上げにすぎません。実際、全額納付している人は五〇%に下がっております。これは、ここ数年間の改革によっても、一直線に下がっている一方です。公表されている納付率が六七%に上がっているように見えているのは、猶予と免除をふやしているからにすぎません。

 国民皆年金と言われながら、二人に一人しか払っていないこの国民年金の納付率をどう上げていくのか。そのために、私たち民主党は、九八%の徴収率を誇る国税庁との社会保険庁の統合、そして国税のノウハウを活用するという歳入庁の設置に至りました。

 また、空洞化しているのは国民年金だけではありません。昨年の九月十五日の総務省による行政監視の報告書によれば、何と三割もの事業所が厚生年金の未加入になっているという推計が出ました。これは何と六十万事業所、そして二百七十万人もの労働者が未加入になっていると推計されております。これについて、二〇〇四年度、社会保険庁は促進活動を行いました。しかし、実際加入に及んだ事業所はたったの三%ではありませんでしたか。

 このような問題について、政府案では全く加入率の向上が図れません。先ほども長妻議員からありましたように、スウェーデン、アメリカ、カナダ、イギリスでも、税金と年金保険料は一体として徴収をしております。そして、大変うまくいっております。このような統合によって納付率と加入率を上げていく、これが第一番目のねらいであります。

 そして、第二番目のねらい。これは、国税庁に社会保険庁を統合して、重複業務を整理し合理化することによるコストダウン、主として人員の削減であります。

 三百五十万人もの国民年金の加入者が国税も払っております。社会保険事務所そして税務署との重なりの業務も、整理をすれば業務は合理化することができます。このことにより、仕事とコストと人員を削減いたします。これが二つ目のねらいであります。

 そして、三番目の歳入庁のねらいは、何よりも国民の利便性の向上であります。

 今までは、税金と保険料は別々の場所で納付をしておりました。しかし、歳入庁になれば、保険料、税金のみならず、雇用保険料、労災保険料もワンストップサービスで、一カ所で納付をすることができます。さらに、年金の相談、税金の相談も、今まではばらばらで行われ、たらい回しに遭っていたケースもありましたが、これを一カ所で、年金相談にも対応することができます。

 つまり、民主党の歳入庁設置によりまして、納付率、加入率の向上、そして合理化による人員とコストのダウン、そして三つ目には国民の利便性の向上という、一石三鳥が民主党の歳入庁法案であります。

 一方、政府案はどうでしょうか。非公務員化と言いながら、実態は隠れ公務員ではありませんか。今までどおり、新たな日本年金機構という特殊法人の職員は税金によって給与が払われるのではありませんか。さらに、特殊法人になって平均給与がアップするのではありませんか。厚生労働省の年間平均給与は六百八十万円、そして厚生労働省管轄の独立行政法人の職員の平均給与は八百万円、そして特殊法人の事務、技術系職員の平均給与は何と八百十万円と、一番高いじゃないですか。さらに、今回の法案によって、ますます国会の監視や政府の監督がききにくくなるわけではありませんか。これが政府案と民主党案との違いであります。

 では、二番目の質問、年金保険料流用禁止法案、そして政府案との違いについて答弁を申し上げます。

 先ほど長妻議員の質問にもありました。本日も、当時の与党年金制度改革協議会の大野功統会長、御出席でありますが、議事録によりますと、平成十六年二月二十五日の予算委員会で、大野会長は、「年金財源というのはやはり年金の給付以外にはびた一文使っちゃいけない、こういう反省が出ております。 我々は、この年金の保険料、国民の皆様の大事な年金の保険料は年金の給付以外には絶対使わない、こういう誓いに達したわけでございます。」と語られました。あれから年月がたって、どうして正反対の法案が出てくるのでしょうか。

 さらに、小泉前総理も次のように答弁されております。本日は小泉前総理も御欠席のようですが、読み上げさせていただきます。

 平成十六年四月九日の衆議院厚生労働委員会での我が党の城島正光議員の質問に対して小泉前総理は、「年金の保険料は基本的に年金に充てる、事務費には充てないという御指摘、これはやっぱり真摯に受けとめるべきだと思っております。」と答弁をされております。小泉前総理の答弁と今回の政府の法案は百八十度違うではありませんか。

 ぜひとも、委員会審議に小泉前総理と大野議員に御出席いただきまして、当時の答弁、発言とのこの根本的な食い違いについて御説明をいただきたいと思っております。

 さすがに、与党の良識ある議員からは、この法案の与党内審議において、国民の不信がこれだけ高い保険料の流用を法案化するのはまずいんじゃないかという声が多数上がったと聞いております。もっともなことであります。にもかかわらず、このような法案が提出されたわけであります。そして、そういうことを禁止するために我が党は流用禁止法案を提出いたしました。

 では最後に、なぜ民主党は消えた年金記録被害者救済法案を提出したのか、そのことについて答弁を申し上げます。

 先ほどの長妻議員の質問にもありましたが、何と五千万件もの納付者と結びつかない年金記録、そして、過去六年間に二十二万件もの支給漏れによる年金記録の修正、昨年の後半期、半年だけでも一万七千件にも及ぶ年金記録が自分の給付と違うのではないかという苦情、これらに対して全く政府は真摯にこたえようとはしておりません。

 今回の政府の特殊法人への看板のかけかえ法案、これにつきましては、昨年の有識者会議においても、公的責任をなくすと国会の関与と政府の監督が行き届きにくくなるということは政府自身が認めていたところであります。今でさえ年金記録がわからない、それに対して、特殊法人化してうやむやにしていく、これではまさに政府案は年金責任逃げ切り法案ではないでしょうか。

 国民に対して年金保険料を納付せよと言う以上は、国民の最大の不満である、年金保険料は年金支給以外には使わない、そして納付した保険料は必ず給付につながる、このような民主党の年金保険料流用禁止法案、そして年金記録の被害者救済法案の可決こそが重要であると考えております。どうか、以上、法案を慎重に御審議いただき、御可決くださいますようにお願い申し上げます。

 以上で答弁を終わります。ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 長妻昭君から再質疑の申し出がありますが、残り時間がわずかでありますから、ごく簡単に願います。長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 再質問をさせていただきます。

 先ほど安倍総理の答弁で、聞き捨てならぬ答弁がございました。この大部分の方の記録が真正であると考えるという答弁であります。つまり、大部分の人の納付記録は正しいんだという答弁でありましたけれども、我々としては、消失した方が百万人おられるのではないのか、統合漏れが八百五十万人おられるのではないのかということを申し上げました。そういう方々の数が少ない、少なくて問題ないということなのか、あるいは、政府として数字をきちっと持っているのか、お答えを願いたい。政府として何人と、では推定をされておられるのか、それをお答えいただきたい。ぜひお願いを申し上げます。

 そして、もう一点、柳澤大臣にお尋ねしますけれども、五千万件の納付記録が宙に浮いておりますけれども、そのうち、本来統合すべき記録は、では何件なのか、あるいは、統合したくても記録が壊れていて統合できない記録は何件なのか、その二点をお尋ねいたします。

 以上です。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 年金加入記録についてお尋ねがありました。

 年金記録に不安や疑問をお持ちの方には、現在、社会保険庁で実施している年金記録相談の特別強化体制を御活用いただくことにより、その周知にさらに努めてまいります。

 また、ねんきん定期便とあわせて、三十五歳、四十五歳の区切りの年齢において詳細な加入履歴をお届けするなど、記録確認の機会を拡大することにより対応してまいります。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 先ほどもお答えをいたしましたように、長妻議員も、消えた年金というお言葉を改められまして、基礎年金にまだ統合されていない件数ということで、大変ありがたいと拝聴いたしました。

 そういうことでございますが、これは、先ほども申し上げましたとおり、内訳を言いますと、基礎年金導入前にお亡くなりになった方、それからまた、その時点で受給要件を満たさなかった方、それからまた、今後において年金の受給資格を取得される方、こういう方々がこの五千万件の中に入っているのであろう、こういうように考えるわけでございます。

 そうして、今……(発言する者あり)いや、そういうことではなくて、五千万件といいますと、非常に大ざっぱなようですが、たまたま五千九十五万一千百三件ということでございますので、そんな大ざっぱな話をしているわけではありません。これは長妻議員もよく承知をしているところでございます。

 それで、そういうことでございますが、これは、先ほども申し上げましたように、順次統合をする機会が与えられるわけでございます。そして、これは、先ほど言ったように、まず五十八歳通知というのを今やっていますが、その上、今度、三十五歳通知あるいは四十五歳通知ということで、どうぞ自分の記録と照合してください、突合してくださいということをお願い申し上げておりますので、それらが徐々に統合されていく、そういう過程を経るものと思っております。

 最終的には、もちろん残ります。残るのは、先ほども言ったように、亡くなられた方とか受給資格を得るに至らなかった方、これは残るわけでありますが、これは年金制度としては当然想定をしていることでありまして、そういうことを頭に置いてこの経緯をよく見ていただきたい、このように思います。

 五千万件を、今、順次統合されているわけですが、それを、いついつの時点で何件統合されたかということは、これは把握をいたしておるわけでございますけれども、しかし、この内訳を、先ほど言ったように、お亡くなりになられた方あるいは受給資格を得るに至らなかった方がそれぞれ幾らかというのを、現時点では我々は把握していない。

 そして、これから先徐々に、今言ったような機会を与えることによって統合をされていく。しかも、一番最終的には、年金の裁定を行うときに、本当に精査をするわけですが、それでもなお不満があるという方は、裁定後においても、我々は扉を開いて、いろいろなお話を聞いて、相談に乗ろう、こういうことでできる限り正しい年金記録に基づいた給付の決定をしていこう、このように考えているところでございまして、御理解を賜りたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 古屋範子さん。

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 公明党の古屋範子でございます。

 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について、内閣総理大臣並びに厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)

 我が国の年金制度は、二十歳以上のすべての国民を加入対象として、世代間扶養を行う仕組みであり、国民生活を支える社会保障の中核をなすものであります。

 しかしながら、その適正な運営を任務とする社会保険庁は、平成十六年以降に相次いで明らかとなった不祥事や業務運営に関するさまざまな問題により、残念ながら、国民の信頼を失ってしまいました。年金制度の安定的な運営を図るために、社会保険庁については、根本的な見直しを断行しなければなりません。

 今回の法案は、昨年末に我々与党が取りまとめた改革方針に沿って、公的年金の運営体制の再構築を図るものであります。社会保険庁を廃止するとともに、公的年金制度の運営に対する国の責任はしっかりと堅持する一方、一連の運営業務は、新たに設立する非公務員型の公法人に担わせるものであります。

 公的年金は、国に対する国民の信頼をその基盤とするものです。今回の法案による新たな事業運営体制のもとでも、制度運営に対する国の責任が十分に確保されていることを国民に明らかにすることが、公的年金の安心、信頼につながるものと考えます。

 そこで、今回の改革案において、国は具体的にどのような形で公的年金制度の運営に対する責任を果たしていくのか、安倍総理にお伺いをいたします。

 次に、日本年金機構における組織運営についてお尋ねいたします。

 社会保険庁改革は、社会保険庁を廃止するだけにとどまるものではなく、新たな組織のもとでいかにして国民の信頼回復を図るかが最も重要なポイントです。

 これまで社会保険庁において生じたさまざまな問題の主たる要因として、長年にわたる地方事務官制に由来する、組織としての一体性の欠如やガバナンスの不足が指摘をされてきました。

 日本年金機構では、こうした社会保険庁が抱える構造問題の解消やガバナンスの強化という課題にどのように対応していくのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、年金個人情報の保護についてお尋ねいたします。

 平成十六年には、社会保険事務所の多数の職員が、有名人の年金の納付記録を業務目的外で閲覧するという不祥事が発生し、社会保険庁では、三千名を超える職員の処分を行いました。

 公的年金を運営する組織には、膨大な個人情報が集積をされています。社会保険庁を廃止して、非公務員の日本年金機構にその業務を行わせ、さらに機構から積極的に民間へのアウトソーシングを行うに際しては、年金個人情報の保護が十分に図られなければなりません。

 年金新組織において、どのように年金個人情報の保護を図っていくのか、厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 次に、国民年金保険料の収納対策についてお尋ねいたします。

 近年の取り組みの成果として、国民年金保険料の納付率は改善の兆しが見えてきたと認識をいたしておりますが、なお一層の納付率の向上が最重要課題の一つであることは変わりありません。

 民主党からは、この点に関し、社会保険庁と国税庁を統合した歳入庁において、国税庁の徴収ノウハウを活用し、国民年金保険料の納付率改善を図るとの考え方が示されておりますが、国民年金と国税では徴収の対象が大きく異なり、また徴収業務の基本的な性格も異なることから、納付率の改善にはつながりにくいのではないかと考えております。

 やはり、国民年金保険料の収納対策には、保険料の納付が将来の給付と密接に結びついているという年金制度の特性を踏まえつつ、他制度との連携も図りながら、未納者の属性に応じたきめ細かな対策を講じていくことが重要です。

 その中で特に、納付率を年齢階層別に見た場合、若年者の納付率が他の年齢層に比べて低く、若年者の納付率の向上に向けた実効性のある取り組みが極めて重要であると考えますが、若年者に対する取り組みに関する厚生労働大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、年金保険料の使い道についてお尋ねいたします。

 社会保険庁における予算執行については、保険料の無駄遣いとの厳しい批判を受けてきました。この点については、年金保険料は年金給付のためだけに使うべきであり、それ以外の経費には充てるべきではないとの議論もございますが、そもそも、予算の無駄遣いは財源のいかんにかかわらず許されるものではなく、国民の理解を得るために何よりも重要なことは、無駄遣いの排除の徹底、予算執行における透明性の確保にあると考えます。

 公的年金の事務を新年金法人に行わせても事務費の無駄遣いが生じないよう、どのような措置を講じられるのか、また、保険料の使途についてどのように国民に明らかにしていくのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 最後に、国民サービスの向上についてお尋ねいたします。

 これまで社会保険庁が提供するサービスについては、年金相談の待ち時間が長い、送られてくる通知書の内容が不親切など、利用者の視点を欠くものでありました。

 こうした声にこたえようと、公明党は国民の視点に立った改革を進めております。十年来の取り組みによって、社会保険庁が年金受給者に対し生存確認を目的に毎年提出を求めてきた現況届が廃止をされました。さらに、年金が幾らもらえるかわからないといった不安を解消するため、自分の年金に関する情報をわかりやすく通知するねんきん定期便が三月より一部前倒しをしてスタートしており、平成二十年度から本格実施されることとなっております。

 社会保険庁も、平成十六年度以降、民間から登用した村瀬長官のリーダーシップのもと、各般にわたる業務改革がなされ、お客様志向のサービス向上に努めているものと承知をしております。

 とりわけ、公的年金は人の一生涯にわたる超長期の保険であることから、年金記録の適正な管理は極めて重要であると考えます。

 昨年来、年金の申請漏れの実態が指摘をされ、問い合わせが相次いでおりますが、これは公的年金に対する国民の不安のあらわれであると思われます。こうした不安にこたえるためにも、社会保険庁は加入歴の再確認を強く呼びかけるなど、丁寧な対応をすべきであると考えます。そして、国民一人一人に対しても、若いときから、保険料納付実績について、将来の給付との関連性も含めてわかりやすく説明することができる、国民に親切な組織でなければならないと考えます。この点に関する安倍総理のお考えをお尋ねいたします。

 社会保険庁改革は、これまで与党が責任を持って進めてまいりました。改革の目的は、社会保険庁の組織や職員の擁護ではなく、国民生活の基盤となる年金制度を守ることにあります。今後さらに、与党は政府と一体となって、国民の視点に立った改革を推進していくことを強く表明し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 古屋範子議員にお答えをいたします。

 公的年金制度の運営に対する国の責任についてのお尋ねがありました。

 今回の改革案では、非公務員型の日本年金機構を設置し、能力主義、実績主義に立って、規律の回復と事業の効率化を徹底することとしておりますが、あわせて、公的年金制度に関する国の責任はしっかりと堅持することとしております。

 具体的には、国が引き続き保険者として公的年金の運営や財政に関する責任を担うとともに、機構の業務や予算については国が直接管理監督するなど、国民が信頼、安心できる公的年金制度とするための体制を実現してまいります。

 年金記録の確認等についてのお尋ねがありました。

 年金の記録については、今日では、さまざまな年金制度に加入した場合であっても、基礎年金番号で統一的に管理される仕組みとなっております。ただ、基礎年金番号が導入される以前の記録が統合されていないケースが残されており、これが御指摘のような問い合わせとなってあらわれています。

 このため、社会保険庁では、年金記録相談の特別強化体制を整え、年金記録の確認を幅広く国民の皆様に呼びかけており、今後さらにその周知に努めてまいります。

 また、平成二十年度からはねんきん定期便を本格的に導入するなど、国民に親切でわかりやすい年金情報の提供により一層尽力してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 古屋範子議員にお答え申し上げます。

 まず第一は、社会保険庁の抱える構造問題とガバナンスへの対応についてお尋ねがございました。

 今回、提案いたしております日本年金機構におきましては、かつての地方事務官制に由来する閉鎖的な組織体質を改めまして、組織のガバナンス強化を図ってまいる所存であります。

 このため、地方組織を都道府県単位からブロック単位へ再編するとともに、都道府県域を越えた人事異動を行う方針を徹底いたします。また、能力と実績に基づくめり張りのきいた人事給与体系を導入いたそう、このように考えております。

 さらに、外部の方に理事会に入っていただくなどの意思決定機能の強化や、監査法人監査の導入などの措置を講じて、外部の声を取り入れていく、こういうことをやっていく所存であります。

 これらによりまして、これまで指摘されてきた社会保険庁の構造問題の解消を図り、国民の皆様の信頼を得られる新しい組織としてまいりたい、このように考えております。

 次に、年金新組織における年金個人情報の保護についてのお尋ねがございました。

 年金個人情報は、プライバシー性の高い情報であることから、本法案におきましては、まず、機構の役職員に法律上の守秘義務を課しますと同時に、機構が利用、提供できる年金個人情報の範囲を法律上細かく限定している、こういうことをいたしております。

 また、民間への委託に当たりましても、委託先に個人情報保護の適切な管理のための措置を講ずることを求める規定を置いておりますし、法律上、委託先の役職員に守秘義務を課し、これを罰則で担保することによりまして、年金個人情報の保護の徹底を図ることといたしております。

 次に、年金の被保険者についての、全体の問題ではあるけれども、特に若者に対する国民年金保険料の収納対策をどうするのかというお尋ねがございました。

 御指摘のように、若年者の納付率を向上させることは、国民年金全体の納付率の向上を図る上で極めて重要な要素であると考えておりまして、まずは年金制度に対する若年者の理解と信頼を高めなければならない、このように考えております。平成二十年度から本格導入されるねんきん定期便は、若者だけに行われるものではありませんけれども、特に若年者には年金を実感する機会となることを期待いたしております。

 また、若年者の納付率向上のための具体策といたしましては、従来より、コンビニでの納付など保険料を納めやすい環境を整備いたしますとともに、三十歳未満の負担能力の乏しい若年者に対しましては、納付猶予制度を導入するなどの対応を図ってまいりました。本法案におきましては、学生納付特例制度の利用を拡大するため、大学等が学生等の委任を受けて申請手続を代行できる仕組みを盛り込んでいるところであります。

 今後とも、これらのきめ細かな対策の徹底を図り、若年者を含む国民年金全体の納付率の向上に全力を挙げてまいりたい、このように考えております。

 年金新法人における事務費についてお尋ねがございました。

 今回の法案では、従来御批判をいただいてきた、保険料により福祉施設を行うことができる旨の規定は廃止をいたします。そして、事業の範囲としては、年金相談、年金教育と広報、年金情報提供などと明示的に列挙をいたしまして、真に必要なものに限定することといたしております。

 また、日本年金機構におきます適切な経費の執行の観点から、厚生労働大臣が機構の事業計画や予算を毎年度認可するなどといたしまして、このような手続によって厳しく無駄遣いのないように監督をしてまいりたい、このように考えております。

 さらに、機構が行う調達に当たりましても、民間企業人も参画する調達委員会で厳格な審査をするほか、年金保険料の使途が国民の目に明らかになるように、ホームページで予算を公表することを予定いたしております。

 こうした取り組みによりまして、無駄遣いの排除を徹底していきたい、このように考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 高橋千鶴子さん。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、社会保険庁関連二法案について総理に質問します。(拍手)

 本法案は、これまで年金業務を担ってきた社会保険庁を解体し、新たにつくる非公務員型の日本年金機構に年金業務を行わせ、その業務の多くを民間委託できるようにする、まさに年金運営の民営化法案であります。

 初めに、年金業務の民間委託が何をもたらすかについてです。

 七千万人を超える国民が加入する公的年金は、憲法二十五条が定める国民の生存権を保障する大切な制度です。だからこそ、年金保険料の徴収から給付まで一連の年金業務を国が直接責任を持って一体的に運営し、公務員が運営業務を担い、継続性と公正性を担保してきたはずです。確かに、これまでの社会保険庁の運営には見過ごしできない問題があります。しかし、国民の大切な年金業務を民間業者にゆだねることで、どうして年金への国民の信頼を高めることになるのでしょうか。

 この間のどの世論調査でも明らかなように、国民が最も不安に思っているのが年金制度です。ことし一月の内閣府世論調査でも、医療、年金などの社会保障の改革を求める人は七割を超えています。国民が年金改革で切実に求めているのは、月額一万四千百円の保険料を四十年間掛け続けても、満額で月額六万六千円にしかならないという、高い負担と低い給付を何とかしてほしいということです。また、四割を占める国民年金の未納、未加入や、厚生年金では三割の事業所が未加入という制度の空洞化も極めて深刻です。

 こうした根本問題は、本法案でどう解決するのですか。今やるべきは、最低保障年金制度を確立するなど、国民が安心できる公的年金制度に改善することではありませんか。総理の答弁を求めます。

 公的サービスの民間委託の弊害は明らかです。

 この間、損保ジャパン副社長だった村瀬長官のもとで、徹底したノルマ主義と強引な収納率の引き上げが進められてきました。この結果が三十八万件を超える不正処理を引き起こしたのではありませんか。郵政事業の民営化でも、集配業務の廃止や局外ATMの撤去など、国民サービスの後退は明らかです。採算優先の民間手法は、既に国民との矛盾を激化させ、破綻しているのではありませんか。

 法案は、年金の適用、徴収、記録管理、相談、裁定、給付などの業務をばらばらにし、その多くを競争入札で民間委託するとしています。委託業者や従業員が数年ごとに入れかわる制度で、どうして確実で安定した運営が保障できますか。答弁を求めます。

 社会保険庁の在り方に関する有識者会議の最終とりまとめでは、公的年金制度は「国の責任の下に、確実な保険料の収納と給付を確保し、安定的な運営を図ることが必要」としていたではありませんか。この立場に本法案は逆行するのではないでしょうか。

 また、社会保険庁の解体と機構への移管に伴って、正規、非常勤合わせて約一万人もの社保庁職員を削減することが計画されています。年金業務に習熟した公務労働者を大幅に削減して、年金制度の安定した運営ができますか。

 法案は、あの国鉄民営化法にさえあった職員の引き継ぎ規定を一切設けていないのはなぜでしょうか。国による首切り、リストラは絶対に認められません。

 さらに重大なのは収納対策の強化です。

 法案は、国民年金の保険料の未納者から国民健康保険証を取り上げて、期限つきの短期保険証を発行するとしています。なぜ、年金と健康保険という目的の異なる制度をリンクさせるのですか。これは、年金保険料を納めなければ病院に行くなと言うに等しい国民いじめではありませんか。断じて許されません。

 また、保険料の滞納者に対する強制徴収を国税庁に委任するとしています。信頼に基づく保険制度と納税義務は全く性質の違うものであり、国税庁の権限をちらつかせて取り立てを強化すれば、年金制度への国民不信を一層深めるのではないですか。

 年金情報の流出も強く懸念されています。

 全国一律のオンラインシステムから絶対に情報が漏れないという保証がどこにあるのですか。民間業者に提供された個人情報が勝手に流用されたり加工されたりしない歯どめはありますか。市場化テストに参入する人材派遣会社や債権取り立て会社が、年金情報を民間保険の勧誘や商品開発など自社の業務に活用しないと言い切れますか。きちんと説明してください。

 保険料の流用問題についてです。

 そもそも、国民の保険料は給付に充てるものであり、給付以外に流用することは禁じられていたはずです。法案は、なぜ保険料を事務費に充てることを特例措置から恒久規定に変えたのですか。流用は国の責任放棄ではありませんか。

 一方、厚生年金病院や社会保険病院は、不採算医療など地域医療を支える中核病院としてなくてはならない存在です。無駄な大規模施設とごっちゃにして廃止、売却することは許されません。すべて国の責任で存続させるべきです。答弁を求めます。

 最後に、百年安心などといって年金制度の改悪を推し進めてきた政府・与党が、その責任を棚上げし、国民の年金不信の矛先をすべて公務員に転嫁することは決して許されないものであることを厳しく指摘し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 高橋議員にお答えをいたします。

 公的年金業務の民間委託と国民の信頼についてのお尋ねがありました。

 今回の改革案においては、年金制度をより効率的に運営するため民間委託の仕組みを盛り込んでおりますが、厚生労働大臣が定める基準に基づき、業務が適正に実施されるよう管理を行き届かせつつ行ってまいります。

 また、公的年金の管理運営責任、財政責任は引き続き厚生労働大臣が担うこととしております。国として責任を持って、年金に対する国民の信頼の確保を図ってまいります。

 国民年金の改善や未納、未加入対策及び厚生年金の適用対策についてのお尋ねがありました。

 基礎年金については、適切な保険料負担と国庫負担の組み合わせにより、高齢期の基礎的な生活費用に対応する給付を生涯にわたり行う仕組みとしています。これは、負担と給付がそれぞれ見合った制度となっています。

 また、国民年金の未納、未加入対策については、従来から、二十歳に到達した方を基本的にすべて被保険者として適用するとともに、保険料を納めやすい環境の整備や未納者の負担能力に応じたきめ細かな収納対策を進めてまいりました。

 本法案では、こうした従来の対策に加え、市町村の国民健康保険の窓口を活用した保険料納付の促進策など、各般にわたる対策を盛り込んでおります。

 さらに、厚生年金の適用については、これまで行ってきた加入指導、事業所調査、職権適用という一連の対策をより強力に進めるために、本年度から各社会保険事務所ごとに具体的な行動計画を作成するなどの対策を進めております。

 最低保障年金制度についてお尋ねがありました。

 御提案の税方式による最低保障年金制度については、加入者がみずからの老後に備えて保険料を支払い、将来年金権を確保するという社会保険方式を放棄するのが適切か、巨額の税財源をどうするのかなど数々の問題があります。

 社会保険庁の抜本的な組織改革を実現するとともに、未納者の負担能力に応じたきめ細かな対策の徹底を図ることなどにより、社会保険方式のもとで国民の老後生活の安心を確保してまいります。

 ノルマ主義が国民年金の不適正処理を引き起こしたのではないかとのお尋ねがありました。

 明確な目標を設定して、これを達成するために組織を挙げて努力をすることは当然のことであります。過剰なノルマが不適正な事務処理を招いたとの指摘は当たらないと考えております。

 公共サービスの民間委託についてお尋ねがありました。

 公共サービスの提供のあり方については、国民の立場に立って不断の見直しを進めることが不可欠であります。政府としては、例えば公共サービス改革法に基づき、いわゆる市場化テストを推進しているところであり、今後とも公共サービスの不断の見直しを進めてまいります。

 民間委託と公的年金事業の運営についてお尋ねがありました。

 今回の法案においては、公的年金に係る一連の業務を新法人に行わせることとした上で、新法人はその業務の一部を委託することとしております。

 業務委託の範囲、委託先の選定基準、委託契約の方法等は、公的年金事業の業務が適正かつ確実に行われることを前提として定めることとしており、業務委託により、公的年金事業の安定的な運営が損なわれることはないと考えております。

 本法案と有識者会議の取りまとめについてお尋ねがありました。

 今回の法案では、公的年金の一連の業務を日本年金機構に行わせることとしておりますが、国が引き続き保険者として公的年金の運営と財政に関する責任を担うとともに、機構の業務や予算については国が直接管理監督するなど、国の責任をしっかりと果たす仕組みとしており、有識者会議の最終取りまとめの趣旨に沿ったものであると考えております。

 社会保険庁職員の人員削減についてのお尋ねがありました。

 社会保険庁の人員削減は、公的年金の安定的運営を確保することを前提とした上で、システム刷新による合理化、外部委託の徹底等を通じて計画的に行うものであり、公的年金の運営が損なわれることがないようにいたします。

 職員の引き継ぎ規定についてのお尋ねがありました。

 社会保険庁改革については、国民の信頼を回復するため、国民の視点に立った改革を断行する考えであります。

 したがって、年金新組織の業務にふさわしくない職員が漫然と新組織に移るといったことはあってはならず、このため、職員の引き継ぎ規定は設けず、第三者機関において厳正に採用審査することとしたものであります。この措置は、国家公務員法に対しても違法、不当なものではありません。

 国民健康保険の短期被保険者証の発行についてのお尋ねがありました。

 介護保険や医療保険の高齢者の保険料は年金から天引きされることとなっており、住民の年金受給権を確保することは、介護保険や医療保険の保険者である市町村にとっても重要な課題であります。

 このような中で、今回の措置は、市町村が短期被保険者証の発行を通じて保険料未納者との接触の機会をふやし、保険料の納付や免除の申請を促すことを可能とするものであり、必要な仕組みであると考えております。

 なお、国民健康保険の短期被保険者証は、通常の被保険者証と比較して有効期間が短いものであり、受診が抑制されるものとの批判は当たりません。

 国税庁への強制徴収の委任についてのお尋ねがありました。

 国民年金保険料の徴収については、ねんきん定期便などを通じて理解と信頼を高め、コンビニでの納付などで納めやすい環境を整備してまいります。その上で、一定の滞納者に対しては、これまでと同様に国税徴収の例によって強制徴収を行うものでありますが、悪質な事案については、ノウハウを有する国税庁に強制徴収を委任できることとするものであります。

 これらによって、保険料の徴収の公正さや効率性を確保し、国民の信頼を確保することができると考えております。

 年金個人情報の保護についてお尋ねがありました。

 年金のオンラインシステムについては、専用回線の使用等により、外部から侵入できない仕組みとなっており、個人情報の漏えいを防止しております。

 また、民間への委託に当たっては、利用できる情報は業務に必要な範囲のものに限定するとともに、関係法律においては、情報の漏えい、不正利用の禁止や安全確保措置が義務づけられており、これらを適切に運用することにより年金個人情報の保護の徹底に万全を期してまいります。

 年金保険料の使途についてのお尋ねがありました。

 今回の法案では、年金給付と密接不可分なコストである経費に保険料を充てることとしておりますが、これは、民間保険はもとより、他の公的保険や諸外国の例から見ても極めて妥当なものであります。重要なことは、無駄遣いは絶対にさせないということであり、そのための改革を徹底してまいります。

 厚生年金病院及び社会保険病院についてのお尋ねがありました。

 厚生年金病院及び社会保険病院については、地域の医療体制を損なうことのないよう、これらの病院が現に地域において果たしている役割をどのように維持していくかを念頭に置きながら、今後、整理合理化計画を取りまとめてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 糸川正晃君。

    〔糸川正晃君登壇〕

糸川正晃君 国民新党の糸川正晃でございます。

 私は、国民新党・そうぞう・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 社会保険庁をめぐっては、年金個人情報の業務目的外閲覧問題や保険料を職員の福利厚生に使っていた問題、監修料受領問題、保険料不正免除問題、さらには年金の過払い、未払いなどのプログラムミス、年金加入記録のずさんな管理など、枚挙にいとまがないほどさまざまな問題が指摘されてきました。こうした状況では、公的年金制度に対する国民の信頼が失われていってしまうのも、残念ながら当然のことではないでしょうか。

 したがって、社会保険庁を抜本的に改革しなければならないのは当然でありますが、その前提として、こうした不祥事を総括し、原因を究明することが必要であります。まずは、この点について総理はどのような御認識でいるのか、お聞かせ願いたい。

 昨年、国会に提出され、保険料の不正免除問題をきっかけに廃案となったねんきん事業機構法案においては、新たな年金運営組織は、厚生労働省の特別機関と、国の組織にしていました。これは、強制徴収などの公権力の行使は国の組織が行うべきとの考え方に基づいていたと思われますが、今回の法案ではこれを覆して、日本年金機構という非公務員型の公法人を設立しようとしています。

 なぜこうした大きな方針転換がなされたのか、小泉内閣当時の国の組織とする判断が結果的に間違っていたと認識しているのか、総理にお尋ねいたします。

 今回の法案では、厚生労働大臣が公的年金制度に関する財政責任、管理運営責任を担い、年金運営業務は公法人が行うことにした上で、民間事業者への業務委託まで含めて社会保険庁の業務を六分割するのだと説明しています。これは、社会保険庁の解体という改革のイメージを強く印象づけようとしているのでしょうが、それを強調し過ぎると、公的年金制度に対する国の責任の所在が見えにくくなってしまい、国民の公的年金制度に対する信頼をかえって失わせることになるのではないかと懸念されます。

 国民の不信、不安を払拭するためにも、国民が直接接触することになる年金業務を運営する組織が国の機関でなくなっても、公的年金である以上、将来にわたって国が責任を持ち続けるということを前面に押し出すべきと考えますが、厚生労働大臣の御見解をお伺いします。

 年金制度に対する国民の信頼を回復するためには、組織改革だけでなく、社会保険庁職員の意識改革が必要であるとこれまでも申し上げてきていますが、職員の意識改革は進んできたと考えているのでしょうか。それとも、保険料の不正免除問題に見られるように職員の意識は変わっておらず、今回の改革をしなければ意識改革もなされないと考えているのでしょうか。

 恐らく現在の社会保険庁職員の多くが新しい機構で働くことになるのでしょうが、現在の社会保険庁職員が新しい機構の職員に値する意識を持ち得るのか、厚生労働大臣の御認識をお伺いします。

 年金制度に対する国民の信頼のバロメーターとも言える国民年金保険料の納付率ですが、社会保険庁がさまざまな収納対策をとっているにもかかわらず、依然としてごくわずかの上昇にとどまっており、平成十九年度に八〇%にするという目標はもはや達成不可能と言え、来年度の目標も七〇%と早くも下方修正の報道がなされています。運営改善法案でもさまざまな収納対策を講じようとしていますが、これらの措置は、納付率を大きく向上させるものとは思われません。

 こうした納付率が低迷している状況の根本的な原因がどこにあると認識しているのか、今回の法案で社会保険庁を解体すれば、現行の年金制度を見直すまでもなく納付率の向上につながると考えているのか、厚生労働大臣の御見解をお伺いします。

 社会保険庁をめぐるさまざまな問題が公的年金制度に対する国民の信頼を失墜させた要因であることは間違いありませんが、社会保険庁を解体したからといってすべてが解決するわけではありません。年金制度が創設されたころと比べて大きく変わった社会経済情勢、国民の意識等を反映できるような年金制度体系を築き上げる必要があることを最後に申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 糸川議員にお答えをいたします。

 社会保険庁におけるこれまでの不祥事に関するお尋ねがありました。

 これまで生じたさまざまな不祥事については、その都度、事実関係を調査の上、原因を明らかにし、再発防止策を公にしてきたところであります。特に、これらに共通する構造的背景としては、内向きで閉鎖的な組織体質があり、適正な組織管理が不足していたという問題があったと認識しております。

 今回の改革案は、こうした社会保険庁の構造問題を十分踏まえた上で、その一掃を図り、国民の信頼を得ることができる新組織を実現するためのものであります。

 社会保険庁改革の方針についてのお尋ねがありました。

 社会保険庁改革については、昨年、法律案を提出した後、国民年金保険料の免除等に関する不適正な事務処理の問題が明らかとなり、廃案に至ったところであります。今回の改革案は、こうした問題の発生を踏まえ、規律の回復と事業の効率化をより一層徹底するため、新組織を非公務員型の公法人とするなど、前回の法案の考え方をさらに一歩推し進め、国民の視点に立った改革を実現しようとするものであります。

 なお、保険料の強制徴収など公権力の行使については、今回の法案においても、事前に国の認可を得て行うこととするなど、国の責任のもとで行うこととしております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 糸川正晃議員にお答え申し上げます。

 最初に、公的年金に対する国の責任につきましてお尋ねがございました。

 今回の改革案におきましては、公的年金の一連の運営業務を日本年金機構に行わせることといたしておりますが、公的年金の財政責任、管理運営責任そのものは国が担うことを大前提として、法律上、諸般の仕組みを構築しているところであります。

 具体的には、公的年金制度を堅持するとの原則のもと、国に特別会計を備え、保険料の徴収や年金の支払いは国の歳入歳出として行うことにより、国の財政責任を明確にいたしております。また、機構の業務につきましての事業計画や予算は国が毎年度認可をし、その業務運営につきましては国が直接監督することによりまして、国が公的年金の管理運営の責任を十分に果たすことといたしております。

 職員の意識改革についてのお尋ねでございます。

 職員の意識改革につきましては、平成十六年以降、内部改善提案制度や新たな人事評価制度の導入等の取り組みを進め、一定の成果が上がってきていると考えておりますが、さらにこれを進めていくためには今回の改革を行うことが必要であると考えます。

 このような考え方から、新組織では、社会保険庁の職員を自動的に引き継ぐことをいたしておりません。新しい組織の設立委員が職員を新たに募集する方式とし、新たな組織にふさわしい意欲と能力を備えた人材を、民間からの人材も含めまして採用いたす方針であります。また、人事給与体系も職員個人の能力や業務実績に対応するものといたします。これらによりまして、職員の意識改革をより徹底してまいりたいと考えております。

 国民年金保険料の納付率についてのお尋ねがありました。

 国民年金被保険者に対する調査によりますと、未納者のうち比較的高額な所得を有する者の中にも保険料負担が重いことを未納の理由とする者がいることや、特に若年者には、制度の意義等が理解できれば納めると答える者の割合が他の世代に比べて高くなっていることなどから、世代間扶養で成り立つ公的年金制度の仕組みや基本理念について十分理解をいただけていないことが未納の大きな要因となっているのではないか、このように考えます。

 このため、まずは、ねんきん定期便の実施などを通じて、年金制度に対する理解と信頼を高めることに努めていくところであります。また、コンビニでの納付を可能とするなど保険料を納めやすい環境を整備するとともに、未納者につきましては、負担能力が乏しい場合には免除等に適切に結びつけ、十分な負担能力のある場合には差し押さえを含む強制徴収を行うなど、その負担能力に応じたきめ細かな収納対策を進めております。

 そのような現行制度のもとでの努力に加え、さらに、今回の組織改革法案では、組織の非公務員化により、能力と実績に基づく人事管理を導入し、より根本的に職員の意識改革を図ることとしておりまして、このことによって、より効果的、効率的な事業運営が可能となり、保険料の納付率のさらなる向上にもつながるものと考えております。

 なお、組織改革法案とあわせて提出している国民年金事業等改善法案では、クレジットカードによる保険料納付を導入するなど、引き続き新たな収納対策も講じていくこととしております。

 以上でございます。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       法務大臣   長勢 甚遠君

       外務大臣   麻生 太郎君

       厚生労働大臣  柳澤 伯夫君

       環境大臣   若林 正俊君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  下村 博文君

       厚生労働副大臣  石田 祝稔君


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