衆議院

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第30号 平成19年5月15日(火曜日)

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平成十九年五月十五日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十四号

  平成十九年五月十五日

    午後一時開議

 第一 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 地理空間情報活用推進基本法案(内閣委員長提出)

 第三 イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案(原口一博君外四名提出)

 第四 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 地理空間情報活用推進基本法案(内閣委員長提出)

 日程第三 イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案(原口一博君外四名提出)

 日程第四 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに国家公務員の離職後の就職に係る制限の強化その他退職管理の適正化等のための国家公務員法等の一部を改正する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)、特殊法人等の役職員の関係営利企業への就職の制限等に関する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長上田勇君。

    ―――――――――――――

 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔上田勇君登壇〕

上田勇君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、原子炉における使用済み燃料の再処理等の工程から発生する、深部の地層中での処分が必要となる放射性廃棄物などの最終処分を計画的かつ確実に実施することが必要であることにかんがみ、処分の対象となる廃棄物の範囲を拡大するとともに、処分費用の確保及び処分を安全に実施するための規制等について必要な措置を講ずるものであります。

 本委員会においては、四月二十五日甘利経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、五月十一日質疑を終了いたしました。質疑終局後、討論、採決を行った結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 日程第二は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第二 地理空間情報活用推進基本法案(内閣委員長提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、地理空間情報活用推進基本法案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。内閣委員長河本三郎君。

    ―――――――――――――

 地理空間情報活用推進基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔河本三郎君登壇〕

河本三郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 本案は、地理情報システムの利用を支える基盤となる地理空間情報の活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進しようとするものであります。

 第一に、地理空間情報の活用の推進に関する基本理念を定めております。

 第二に、政府は、地理空間情報の活用の推進に関する基本的な計画を策定することとしております。

 第三に、国は、基盤地図情報の整備、地球全体にわたる衛星測位に関するシステムを運営する主体との必要な連絡調整及び衛星測位に係る研究開発の推進等の施策を講ずるものとしております。

 本案は、五月十一日の内閣委員会において、賛成多数をもって委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 なお、本案に関する決議を議決したことを申し添えます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案(原口一博君外四名提出)

 日程第四 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第三、原口一博君外四名提出、イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案、日程第四、内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員長浜田靖一君。

    ―――――――――――――

 イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案及び同報告書

 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔浜田靖一君登壇〕

浜田靖一君 ただいま議題となりました二法案につきまして、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、内閣提出のイラク支援特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、イラク支援特別措置法に基づく措置を引き続き実施し、イラク国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資するため、同法の期限を二年間延長しようとするものであり、三月三十日本院に提出されました。

 次に、原口一博君外四名提出のイラク支援特別措置法を廃止する法律案について申し上げます。

 本案は、イラクに対する国際連合加盟国による武力の行使が正当性を有していないこと等の理由によりイラク支援特別措置法の法的な枠組みが完全に破綻していること等にかんがみ、同特別措置法を廃止しようとするものであり、四月十九日に提出されました。

 両案は、四月二十四日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われました。

 本委員会におきましては、同日塩崎内閣官房長官及び提出者山口壯君から提案理由の説明を聴取した後、二十六日より質疑に入り、五月十四日質疑を終局いたしました。次いで、両案について討論を行い、採決いたしましたところ、原口一博君外四名提出の法律案は賛成少数をもって否決すべきものと議決し、内閣提出の法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付したことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。楠田大蔵君。

    〔楠田大蔵君登壇〕

楠田大蔵君 民主党の楠田大蔵でございます。

 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、政府提出のイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案に反対、民主党提出のイラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案に賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 私は、一年余り国会にお休みをいただき、その間、地元行脚を重ね、現職時代と異なる客観的な立場から国会を見てまいりました。その分、より国民に近い立場で審議に当たることができると自負をいたしておりますが、今国会運営は、従来にも増して国民の意識からかけ離れたものになっております。本法案審議もまさにそれを体現するものでありました。以下、明らかにしてまいります。

 我が党は、イラクに対する武力の行使がそもそも正当性を有していないこと、いわゆる非戦闘地域の概念が虚構の概念であるなどイラク特措法の法的枠組み自体が完全に破綻していること、及び、イラクにおける自衛隊の部隊などによる対応措置に関する政府の情報開示が不十分であることなどにかんがみ、イラクへの航空自衛隊派遣を直ちに終了させるよう、イラク特措法廃止法案を提出いたしました。

 特に、戦争の大義とされたイラクの大量破壊兵器はついに発見をされず、フセイン政権とテロ組織とのつながりも今日に至るまで不明確なままでありますが、その不正確な情報に基づいて米国に追従し、イラク戦争支持を表明した政府は、今の今まで全くその責任を総括しておりません。ブッシュ大統領自身がその過ちを認める中で議会の与野党逆転を許し、ブレア首相は、多くの実績とあふれる人間的魅力を持ちながらも、この判断のミスが大きなもととなり退陣表明を余儀なくされました。この戦争は、本来それほど重たい決断であったはずであります。我が国だけがその過ちから逃れられるはずがありません。

 また、この重大な判断の過ちとその事実に対する無批判の姿勢は、戦後連綿と築き上げてきた我が国の平和国家としての礎を根本から脅かし、未来に禍根を残すものであります。主体性とは名ばかりにアメリカに追従をし、正当性のない戦争の片棒をも担ぐというあしき前例をこのままにしておけば、我が国の未来は大変危ういものになってしまうのではないでしょうか。早急に当時の政府判断について検証を行うとともに、今後十分な情報収集・分析体制の強化に努めるべきであります。

 国際的にも既に多くの国がイラクから撤退をし、イラク戦争の当事国である米英両国においても、イラクからの撤退を求める議論が高まっております。イラク国内は、以前にも増して宗派対立やテロなどが続発をしており、不安定な治安情勢下にあります。このような状況下では、非戦闘地域という概念などは到底成り立ち得ず、イラクで活動を行う自衛隊員の方々の安全確保義務を確実に果たせるかも極めて不透明であります。

 航空自衛隊の活動内容も、国連支援や人道支援物資などの輸送を行う人道復興支援活動から、多国籍軍支援等の安全確保支援活動が中心になりつつあるなど、大幅に変化をいたしております。この状況は、現基本計画に背くものであることはもちろん、武力行使と一体と疑われる事態でもあります。しかも、政府はその活動内容について必要な情報開示を行っておらず、シビリアンコントロールの見地から見ても大いに問題であります。何もかも黒塗りの公表資料は、怒りを通り越して脱力感すら覚えさせる、甚だしい国会軽視であります。

 また、二年という延長期間に関しても、ついに合理的な説明は得られませんでした。撤退に向けたいわゆる出口戦略も不明確なまま、ただ漫然と二年延長するだけでは、イラクに対しても自衛官の方々に対しても無責任であります。あくまでその間法律が継続するだけで、二年間必ず自衛隊がいる必要はないとの詭弁もありましたけれども、であるならば、できるだけ短い延長の幅にして実のある国会審議を担保することこそ、政府に求められる責任ある姿勢であります。

 異国による占領、戦後統治の例は数多くあれども、人類の長い歴史の中で、それが最終的に成功をしたためしはありません。必ずやお互いに深い傷を残すことになります。イラクも、かつてイギリスによる委任統治を経て、一九三二年にようやく独立をかち得た国であります。また同じような過程をたどるその国の人々の思いにも、はかり知れぬ複雑さがあるはずです。四年という長きにわたる法律の期限が切れるこの絶好の機会にこそ、その人類の普遍性に思いをいたし、勇気を持って自衛隊を直ちに撤退させるべきであります。

 最後になりましたが、はるか中東の地で任務に当たっておられる自衛官の方々、そしてその帰還を心待ちにされておられる御家族の方々に心から敬意を表し、だからこそ、政府提出のイラク特措法を延長する改正案に反対、同法を直ちに廃止する我が党案に賛成することを皆様の良心にお訴えし、御賛同を心よりお願いいたしまして、私の討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、イラク特措法延長案に反対の討論を行います。(拍手)

 第一に、イラク戦争がうそで始められた国連憲章違反の侵略戦争であることは、今や明白です。

 戦争の最大の根拠とされた大量破壊兵器がイラクに存在しなかったことは、既に確定したのであります。だから、ブッシュ大統領自身が開戦判断の誤りを認め、イギリスのブレア首相も辞任に追い込まれたのであります。情報が誤りであって、判断は誤りでないなどという矛盾に満ちた総理の答弁は、断じて許されません。

 第二に、自衛隊の活動は戦争終結後の人道復興支援という政府の説明も、全くの虚構であります。

 政府は、私たちの追及に、航空自衛隊の輸送活動のほぼ九割が多国籍軍支援であることを認めました。多国籍軍の中心である米軍は、今、バグダッドを中心に、B1爆撃機やF16戦闘機を投入して、空陸一体の大規模な戦闘作戦を行っています。自衛隊の活動は、人道復興支援どころか、まさに米軍の戦争支援そのものであります。憲法違反の自衛隊派兵は直ちに中止すべきであります。

 第三に、米軍による占領支配は、イラク国民の反発と抵抗を生み出し、イラクの復興に逆行するものであります。イラクの深刻な事態を打開するためには、期限を切った多国籍軍の撤退とイラクの国民的な和解に向けた国際社会の協力、外交努力こそ必要だということは、今や世界の共通認識です。

 だから、米国内でも米軍の撤退を求める声が高まり、各国が相次いで軍隊を引き揚げているのであります。イラクのマリキ首相自身も、年内には自衛隊は必要なくなると述べているのであります。にもかかわらず、二年先まで自衛隊の派兵継続を決めることは、こうした世界の動きを全く見ないものです。アメリカ追随以外の何物でもありません。

 以上、自衛隊派兵の根拠は、あらゆる面で完全に崩れています。本法案は廃案にすべきが当然であります。

 最後に、三十五年前のきょう、沖縄は、本土に復帰し、米軍の直接占領から日本国憲法のもとへ復帰を果たしました。その憲法をかなぐり捨て、アメリカとともに海外で戦争できる国づくりを進める安倍政治を断じて許さないことを強調して、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党・市民連合を代表して、政府提出のイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対して、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 二〇〇三年三月二十日、国際連合設立当初からの加盟国であるイラクに米英軍が先制攻撃をしかける形で、このイラク戦争は始まりました。自来四年余り、二〇〇三年五月一日にはブッシュ大統領みずからが主要戦闘終結、勝利宣言を掲げたにもかかわらず、戦禍は拡大し続け、二〇〇六年八月には駐留している米軍自身が内戦の危機を訴えるに至りました。

 一方、戦場とされたイラクにおいては、水や電気等の生活に不可欠なインフラ整備はもちろんのこと、対テロ戦争の名のもとに多国籍軍による大量無差別殺りくが行われ、あわせて自爆テロあるいは宗派間の対立の激化によって、今や、イラク保健省が調べ上げた中だけでも十五万人余のイラクの市民が犠牲になっております。おまけに、戦乱を逃れて国の内外に暮らす人々の数は、四百万とも六百万とも言われております。

 果たして、このイラク戦争とは何であったのでしょうか。開戦に至る最大の理由とされた大量破壊兵器は存在せず、また、国際テロ組織アルカイダとフセイン政権との関係も、米英みずからがその情報の誤りを認めております。この間、この対テロ戦争の正義を譲らず、さらに増派兵を訴えるブッシュ大統領の米国内での支持率は二八%にまで落ち込み、ブッシュ大統領の最大のパートナーであったブレア首相も退陣へと追い込まれるに至りました。

 しかるに、我が国は、米国ブッシュ政権への共感と国益を掲げてこのイラク戦争を支持し、二〇〇三年七月からは自衛隊を派遣する、憲法に違反し、そしてイラクの人々の復興に本当の意味で役に立たない道を選んだと思います。さらにその道を二年延長しようとする今回の法案は、到底容認することができません。

 二十一世紀最大の歴史の汚点となるであろうこのイラク戦争に対して、今私たちがなすべきことは何でしょうか。既に米国内の超党派のイラク研究グループが指摘するとおり、それは軍事による対テロ戦争の遂行ではなく、政治的、外交的手段をもって、真に国際社会が現状のイラクに対して心から寄与することが求められていると思います。

 社民党は、そのためにも、まず、米英軍を初めとする多国籍軍のイラクからの期限を定めた撤退、イラクへの治安権限の完全な移譲、自衛隊の即時撤退、さらに、中東における歴史的に築かれた我が国の中立的な位置を生かした政治、外交、調停努力、そして、湾岸戦争以来、国連の経済制裁に加えてさらに米英の侵略戦争がもたらしたイラク国民の深刻な生活破壊への支援、そして、現状で困難をきわめる避難民の支援などを行うべきと考えます。

 なお、即時撤退を明記している民主党提案のイラク特措法廃案には賛成いたします。

議長(河野洋平君) 阿部知子君、申し合わせの時間が過ぎました。結論を急いでください。

阿部知子君(続) 最後に、国民不在、情報開示も全くないままの政府提出のイラク特措法延長法案には強く反対することを訴え、私の討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第三、原口一博君外四名提出、イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第四、内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

     ――――◇―――――

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに国家公務員の離職後の就職に係る制限の強化その他退職管理の適正化等のための国家公務員法等の一部を改正する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)、特殊法人等の役職員の関係営利企業への就職の制限等に関する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案並びに馬淵澄夫君外四名提出、国家公務員の離職後の就職に係る制限の強化その他退職管理の適正化等のための国家公務員法等の一部を改正する法律案、特殊法人等の役職員の関係営利企業への就職の制限等に関する法律案及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。国務大臣渡辺喜美君。

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 国家公務員法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 これまで、公務員は、戦後レジームの中で、国家運営の担い手として、国民と国家の繁栄のために積極的な役割を果たしてまいりました。しかしながら、今日、本来優秀な人材が集まっているにもかかわらず、その能力が十分に生かされているとは言えない状況にあります。経済社会の変化に対応し、政策企画能力を高めるため、民間の専門能力を取り入れる必要も指摘されており、一方で、予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんや相次ぐ官製談合に対しては、国民の強い批判があります。

 このため、国家公務員に係る制度の改革を進める観点から、人事評価制度の導入等により能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図るとともに、離職後の就職に関する規制の導入、再就職等監視委員会の設置等により退職管理の適正化を図るほか、官民人材交流センターの設置により官民の人材交流の円滑な実施を図るための支援を行う等の所要の改正を行う本法律案を提案する次第であります。

 次に、本法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、国家公務員の人事管理の原則として、職員の採用後の任用、給与その他の人事管理は、職員の採用年次及び合格した採用試験の種類にとらわれてはならず、人事評価に基づいて適切に行われなければならないこと、人事評価は公正に行うこととし、その基準及び方法を定めることを明確にしております。

 第二に、能力本位の任用制度を確立するため、内閣総理大臣が、職制上の段階の標準的な官職の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力として、標準職務遂行能力を定めるとともに、標準職務遂行能力及び適性を昇任または転任の判断基準とすることとしております。また、内閣総理大臣は、採用昇任等基本方針の案を作成して閣議の決定を求めることとしております。

 第三に、退職管理に関し、離職後の就職に関する規制として、各府省等職員が職員または職員であった者について、営利企業等に対し、離職後の就職あっせんを行うことを禁止しております。また、職員がみずからの職務と利害関係を有する一定の営利企業等に対し求職活動を行うことを規制しております。さらに、離職後に営利企業等の地位についた職員が、一定の国の機関の職員に対して、当該営利企業等が関係する契約または処分であって離職前に関係していた職務に属するもの等に関し働きかけを行うことを規制いたしております。

 第四に、職員の離職に際しての離職後の就職の援助を行うとともに、官民の人材交流の円滑な実施のための支援を行うため、内閣府に官民人材交流センターを置くこととしております。また、離職後の就職に関する規制の実効性を確保するため、厳格な監視を行う体制を整備する必要があることから、同規制の適用除外の承認、任命権者への勧告等を実施する再就職等監視委員会を内閣府に置くとともに、同委員会に再就職等監察官を設置し、離職後の就職に関する規制違反の調査等を実施することとしております。

 第五に、国家公務員である特定独立行政法人の役員について、国家公務員法と同様の規定を適用することといたしております。

 このほか、国家公務員の職階制に関する法律を廃止するとともに、罰則等について所要の規定を設けることといたしております。

 以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 提出者鷲尾英一郎君。

    〔鷲尾英一郎君登壇〕

鷲尾英一郎君 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました民主党提出、国家公務員の離職後の就職に係る制限の強化その他退職管理の適正化等のための国家公務員法等の一部を改正する法律案、特殊法人等の役職員の関係営利企業への就職の制限等に関する法律案、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案の提案理由を説明いたします。

 民主党が行った予備的調査によれば、公益法人など四千五百七十六法人に二万七千八百八十二人もの国家公務員が天下り、公務員が天下った団体に対して平成十八年度の上半期だけで約五兆九千二百億円もの税金が流れています。天下り公務員を受け入れた団体は、当然、中央官庁に対して何らかの見返りを求めており、税金の無駄遣いを引き起こしています。天下りを介して、官製談合が横行してやまず、随意契約がはびこっていると言っても過言ではありません。

 このような天下りを背景とする官民のもたれ合い、癒着構造が温存、放置されることこそ、国家の財政を疲弊させている根本原因であります。この現状を顧みてもなお、自民党政府のこれまでの議論は、公務員制度改革をパッケージとして検討を進めるという美名のもと、肩たたきをそのままに、公的あっせんを残すという、まるで改革に逆行しているかのように見えるのであります。案の定、その自民党政府が国会へと提出したのは、いわゆる天下りバンクをつくって天下りの自由化を行い、天下りを公然と認め、税金の無駄遣い放置、拡大につながる法案でありました。

 天下りの根絶こそ、税金の無駄遣いを縮小し、国家財政に寄与させるとともに、公務員に対する国民の信頼を回復せしめ、公務員諸君の意気を向上させるというのが、我々の提出した法案であります。

 以下に、その概要を説明いたします。

 まず、国家公務員法改正案では、天下りを生み出す構造的要因である、中央官庁の早期退職勧奨と再就職のあっせんを禁止します。

 天下りを原則禁止とする期間を現行の二年間から五年間に拡大し、規制の対象となる天下り先を特殊法人、独立行政法人、公益法人等に拡大します。特別会計にぶら下がった財団法人、社団法人、いわゆる離れの地下室でじゃぶじゃぶと税金がやみに消えております。我々はこの点も当然しっかりとメスを入れます。

 現行規制では、離職後二年間、離職前五年間に在籍していた期間と密接な関係にある営利企業への天下りは原則禁止されています。しかし、この規制はざるであります。現状を見るに、いわゆる迂回天下りによって、現行の規制を巧妙にすり抜け、実効性はほとんどないと言っても過言ではありません。必要なのは規制の強化です。それにもかかわらず、政府案はこの規制すらも撤廃しようとしています。大幅な規制緩和であります。何をか言わんやであります。当然、我々はこの規制を強化いたします。

 中央省庁からの天下りだけが問題なのではありません。特殊法人等の役職員の関係営利企業への就職の制限等に関する法律案では、特殊法人等からの天下りについても、国家公務員と基本的には同様の規制を新設しています。また、ともに提出する地方公務員法改正案により、天下り規制対象を地方公務員にも拡大いたします。

 さらに、営利企業や団体等に天下った元公務員が、天下った企業が契約や許認可等の面で有利となるよう現職の公務員に働きかけるといった行為を規制いたします。

 また、口きき行為規制の実効性を担保するため、現職の公務員に対して、元公務員から働きかけを受けたことを任命権者に届け出る義務を課し、任命権者と国家公務員倫理審査会が事実関係を調査することとしています。

 続いて、独立行政法人通則法改正案について御説明をいたします。

 独立行政法人は、国からの補助金や交付金を使って非効率的な事業運営をし、公務員の天下りの受け皿となるなど、さまざまな問題を抱えています。税金の無駄遣いの温床となっている独立行政法人の体質を改めるため、独立行政法人の長の公募、各府省の独立行政法人評価委員会委員や各独立行政法人の監事の独立性向上等の改正を行います。

 公務員を取り巻く問題は天下りだけではありません。公共サービスの質を高め、国民の生活をよりよいものにするために、公共サービスの担い手である公務員が生き生きと働くことのできる環境をつくることが喫緊の課題であり、経済のグローバル化に伴い、世界的に公務部門の人材の劣化が叫ばれる今日、日本の公務部門に優秀な人材を集め、日本の国際的な力を維持する観点からも、抜本的な公務員制度改革を実行することが求められております。

 そこで、我々民主党が主張しているのが以下の点です。

 国家公務員法改正案では、政府が平成二十年中に抜本的な公務員制度改革実行計画を策定するよう規定しています。その中で、我々は、公務員の労働基本権の回復、能力及び実績に応じた処遇を可能とする人事管理制度や政治任用制度の導入を考えております。

 今の御時世、志だけで職務に専心しろというのがなかなか無理なのは重々承知しておりますが、それでもなお、我が党の案が、日本の、特に今、国会中継を見ている公務員諸君の士気の向上に資することを信じて疑いたくありません。

 政府・与党は、五年間で八兆円以上、特に六月から住民税を二倍近く大幅に引き上げる等、国民個人に負担を強いてきました。

 議員諸氏におかれましては、天下り根絶によって官民癒着を断ち切り、税金の無駄遣いをなくすことこそ国民が今まさに求めていることであることに気づき、ここに賛同するのであれば、政府案ではなく、我々の提出した法案に御賛同賜らんことを強くお願い申し上げ、私の趣旨説明を終わります。(拍手)

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 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに国家公務員の離職後の就職に係る制限の強化その他退職管理の適正化等のための国家公務員法等の一部を改正する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)、特殊法人等の役職員の関係営利企業への就職の制限等に関する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律案(馬淵澄夫君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。細野豪志君。

    〔細野豪志君登壇〕

細野豪志君 民主党の細野豪志でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の国家公務員法等の一部を改正する法律案及び民主党提出のいわゆる天下り根絶法案に対し質問をいたします。(拍手)

 なお、答弁が不十分であれば、時間の範囲内で再質問させていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 まず、安倍総理に天下りそのものについての基本認識を伺います。

 二〇〇五年に発覚した防衛施設庁に続き、緑資源機構で天下りが介在した談合が明らかになりました。これは氷山の一角にすぎません。民主党案の趣旨説明にもありましたが、いわゆる天下り団体である四千五百七十六法人に流れた税金の総額は、平成十八年度の上半期で約六兆円。

 金額もさることながら、問題なのはその中身であります。内訳を見ると、六九・一%が補助金の交付によるもの、三〇・四%が随意契約によるもの、六兆円のうち、入札によるものはわずか〇・五%しかありません。緑資源機構の談合は、極めて悪質ではありますが、入札という形式をとっているだけまだましだとも言えるわけであります。九九・五%は全く競争原理が働かない中で毎年天下り団体に直接税金が流れている現実を、我々は直視しなければなりません。

 もはや、天下りこそが税金の無駄遣いの温床であることは明らかです。これまで天下りを容認し、そしてともに甘い汁を吸ってきた政府・与党の責任は極めて重要であります。まず、安倍総理に、この責任をどのようにお感じになるのか、お伺いをしたいと思います。

 民間企業は、どこも厳しい競争の中で生き残りを模索しています。もちろん、どこを探しても、全従業員を対象とした再就職支援をしている企業などは見当たりません。国民が望んでいるのは、天下りの根絶であります。なぜ総理は天下りの根絶を決意できなかったのか、あわせてお伺いをいたします。

 こうした天下りの弊害が明らかだからこそ、これまで、退職前の官職と密接に関係をする営利法人への再就職は二年間禁止をされてきました。この規制は極めて不十分なものではありましたが、天下りによる官民の癒着を予防する唯一の歯どめがこの規制であったことは紛れもない事実であります。

 ところが、今回政府によりまして提出された法案では、この二年間の天下り規制は削除をされております。この削除された条文は、昭和二十二年、国家公務員法ができたときから一貫して守られてきた条文であります。今回の改正は、これまで行われてきた天下り規制の流れを百八十度転換して、天下りの容認へと大きく転換するものであります。私が理解できないのは、これだけ天下りが問題になっている中で、今なぜ唯一の規制であるこの条文を削除するのか、ぜひ合理的な説明を渡辺大臣にいただきたいと思います。

 一方、民主党案では、二年の再就職期限を五年に延長し、再就職先の規制対象を営利企業に加え非営利団体にまで拡大をしています。民主党案で規制を強化した理由をお聞かせください。

 そもそも、これだけ弊害が指摘されながら天下りが続いてきたのはなぜでしょうか。その最大の原因として、官僚の早期勧奨退職制度、いわゆる肩たたきがあります。

 事務次官を頂点とするピラミッド形組織の権力構造を維持するために、出世レースから外れた官僚は、働き盛りの五十代で退職を余儀なくされてきました。再就職先を省庁ぐるみで探し、そこで異常な厚遇が続いてきたのもこのためであります。

 政府提出の法案には、天下りを生み出している根本原因である早期勧奨退職制度についての言及が全くありません。本質的な改革を先延ばしし、小手先の改革に走るから、わざわざ新しい組織をつくって天下りを推進するという本末転倒の事態になるのであります。早期勧奨退職制度について法案になぜ言及しなかったのか、渡辺大臣にお伺いいたします。

 また、民主党案では早期勧奨退職制度はどのように扱われているのか、お伺いいたします。

 次に、官民人材交流センター、いわゆる新人材バンクの具体的な姿について質問をいたします。

 新人材バンクのあっせん対象となる退職国家公務員は、少なくとも毎年五千人に上ると言われております。これほどの規模の再就職を扱う新人材バンクとは、一体どの程度の組織になるのでしょうか。天下りをあっせんするために税金を使って巨大な組織をつくることを国民が認めるとは到底思えません。

 政府案を見て私が最も驚いたのは、新人材バンクを内閣府に置くだけではなくて、そのもとに全国に支所を置くと書いてあることであります。一体これは何なんでしょうか。天下りのチェーン店を全国に展開して、そして幅広く天下りをしていこうということなんでしょうか。こういうのを私は焼け太りというのだと思います。

 渡辺大臣、新人材バンクの予算の規模と人員の見込みを示してください。支所は全国に一体幾つ設置をされようとしているのでしょうか。また、支所の職員は公務員になるのか、非公務員になるのかもお知らせください。やりようによっては、支所そのものが天下り先になって、官民癒着の構造になることも予想されます。

 あらかじめ申し上げますが、新人材バンクの組織のあり方はこの法案の肝であります。まさか有識者会議で今後検討しますというような答弁は許されないというふうに思いますが、いかがでしょうか。渡辺大臣には、法案提出者として責任を持って御答弁をいただきたいと思います。

 次に、いわゆるわたりについて質問をいたします。

 天下りの問題は、退職直後の再就職にとどまるものではありません。幹部公務員が、退職後、出身省庁のあっせんによって二年から四年で再就職を繰り返し、そのたびに高い給与と高い退職金を得て、OBになってから数億円を荒稼ぎする渡り鳥は、これまでも問題になってまいりました。まず、総理に、このわたりについてどのようにお考えになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 また、新人材バンクの行う官民交流の名のもとにわたりが行われる可能性があります。もし行わないのであれば、渡辺大臣にこの場ではっきりと否定をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 わたりについては、もう一つ気になることがあります。四月十三日、渡辺大臣の指示で、二度目以降の再就職のあっせん、すなわちわたりの調査が公表されました。平成十六年から十八年までの三年間、全省庁でわずか十六件という信じがたい数字が出てまいりました。

 経済産業省は、私の委員会質問に対して、職務でわたりのあっせんをしていることを認めています。各省庁が少なくとも七十五歳前後までわたりのあっせんをしてきたことは、周知の事実であります。今回の調査結果は、この周知の事実を正面から否定するものであります。わたりのあっせんが組織的に行われていなかったことになると、仮に新人材バンクでこのあっせんをしないとしても、これからも隠然として各省庁で継続をしてわたりのあっせんが行われる可能性があります。それを予防するためにも、渡辺大臣には、断固として今回、再調査を指示すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 次に、独立行政法人及び特殊法人からの天下りについて伺います。

 緑資源機構の談合では、農水省から所管の独立行政法人である緑資源機構への天下り、緑資源機構から関連法人への天下りが重要な役割を果たしてきました。それに伴い、税金が農水省から緑資源機構へ流れ、さらにその下の関連法人に流れています。人、すなわち天下りが、国、独立行政法人、そして関連法人へと流れ、その三者で税金を食い物にするいわゆる三位一体の構造がここにあらわれています。それをさらに強固なものにしているのが、関連法人からパーティーチケットを購入してもらうなどしてこの三位一体の構造の用心棒をしている政治家がいるという現実であります。だれのことを指しているかは、この議場にいらっしゃる議員の皆さんはよく御存じだと思います。

 政府案では、独立行政法人及び特殊法人からの天下りが規制対象から外れています。これでは、税金を食い物にしてきた三位一体の構造は崩れません。特に、日本年金機構が規制の対象外となっているのは大きな問題であります。社会保険庁には天下りの規制がこれまでかかってまいりました。不祥事があって日本年金機構は特殊法人に移行いたします。特殊法人に移行した途端に天下り規制がかからない、これは一体どういうことでしょうか。渡辺大臣には、国民が納得のいく御答弁をしていただきたいと思います。

 民主党の法案提出者に対しても、独立行政法人及び特殊法人からの天下りの規制についての考えを伺います。また、独立行政法人通則法の改正案を提出した理由もあわせてお聞かせください。

 次に、地方公務員の天下りについて伺います。

 中央と同様、天下りは地方自治体にも見られ、官製談合の温床になっていることが言われております。政府は規制の導入を先送りしていますが、民主党はどのような考え方を持っているのか、法案提出者に伺います。

 最後に、総理に法案成立に向けた決意を伺います。

 これまで指摘してきたとおり、政府案で提案をされている新人材バンクは、天下りバンクそのものであります。政府案の実態は、天下り推進法案であります。世論の批判を意識してか、先週末あたりから、与党の幹部の中で、この法案の今国会での成立を断念するかのような発言が聞こえてまいりました。法案の中身に自信がないのであれば、さっさと撤回をして、与党内で中身の議論をじっくりやっていただいたらどうでしょうか。総理、この国会でこの法案を本当に成立させるつもりがあるのかどうか、御決意をお聞かせいただきたいと思います。

 安倍政権がこのまま天下り推進法案を推し進めようが撤回をしようが、我々民主党はいつでも受けて立つ覚悟があります。我々の法案こそが、税金の無駄遣いを徹底して排除し、国民が求める社会保障などの財源を確保するものである、そう確信をするからであります。与党が推し進める天下り推進法案か、野党が、我々民主党が提案をする天下り撤廃法案か、選択肢は明確であります。そのことを、残された国会での質疑の中で、そして来るべき参議院選挙において国民に問いかけ、そして勝利することを宣言して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 細野議員にお答えをいたします。

 天下りと税金の無駄遣いについてのお尋ねがございました。

 いわゆる天下りや談合の問題に対する厳しい批判があることは真摯に受けとめなければならないと認識をいたしております。官製談合その他、税金の無駄遣いの背景にある天下り問題を根絶し、また、年功序列を打破して、役所の中の非効率を正し、小さく効率的な筋肉質の政府をつくり上げるというのが政府の基本方針であります。このため、天下り問題に対しては、予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんを根絶するため、本法案を提出したところであります。

 天下りの根絶についてお尋ねがございました。

 今回の法案は、まさにいわゆる天下り問題を根絶する法案であります。具体的には、各省庁による再就職あっせんを禁止し、そして官民人材交流センターに一元化するほか、離職後の再就職に関する規制の導入、再就職等監視委員会の設置等により、退職管理の適正化を図ることとしております。これらの措置により天下り問題は根絶できるものと考えております。

 いわゆるわたりの見解についてお尋ねがありました。

 これまで各府省が元公務員について再就職のあっせんを行うことは慣行として行われてきたところであり、いわゆるわたりについて批判が強いことについて認識をしております。今般の法案においては、各府省等による再就職のあっせんを全面的に禁止し、新たに設置する官民人材交流センターに一元化することとしております。したがって、出身府省のあっせんにより二度目以降の再就職を行う、いわゆるわたりは禁止されることになります。

 法案を成立させる決意についてお尋ねがありました。

 公務員については、経済社会の変化に対応して、政策企画能力を高める必要などが指摘される一方、押しつけ的あっせんや官製談合に対する強い批判があり、年功序列の打破、天下り問題の根絶を一刻も早く実現しなければなりません。このため、迅速な御審議をいただき、今回の法案をぜひ成立させるよう、よろしくお願いを申し上げます。

 残余の質問につきましては、関係大臣からお答えをさせます。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 事前承認制度についてのお尋ねがございました。

 政府としては、官民の闊達な人材交流を通じて、役所の中の非効率が改善され、小さく効率的な政府、筋肉質の政府をつくっていくことができると考えております。逆に、官民の垣根を高めてしまえば、天下りだけでなく、本人の能力と経験を生かした再就職まで禁止するようなことになります。そうなれば、役所はますます一般の世界から隔絶された特殊な世界になっていくおそれがあり、このような考え方はとり得ません。

 今般の改正では、各府省等の行う再就職のあっせんを禁止するとともに、民間に就職した職員の働きかけ等についても規制をいたしております。事前から事後を通じた、罰則を含めた厳しい行為規制を導入しております。外部監視機関、再就職等監視委員会による厳格な監視体制を構築することにいたしております。これらの措置を実施することにより、公務の公正性に対する信頼の確保という事前承認制度の担保していた保護法益は十分担保できると考えます。

 早期勧奨退職慣行についてのお尋ねがありました。

 早期勧奨退職慣行がなぜ起きるのか、それはまさしく年功序列制度がその根幹にあるということであります。

 今回の法案では、まず、能力・実績主義を導入いたします。これによって年功序列を打破いたします。したがって、同期が横並びで昇進をし、幹部クラスでポストがなくなる、そういう仕組みは根本的に変わっていくのであります。また、昨年十月、長期間在職可能な専門スタッフ職俸給表の新設の具体化について検討を進めるよう人事院に要請をしたところであります。これらによって、従来型の早期勧奨退職慣行はなくなっていくものと考えております。

 なお、スタッフ職制の導入、定年の延長などを含む採用から退職までの人事制度全般の課題については、先般閣議決定された「公務員制度改革について」において、総理のもとに有識者から成る公務員制度に関する検討の場において検討を進めることとされております。今後、パッケージとしての改革として、総合的、整合的な検討を行います。

 次に、官民人材交流センターのあり方についてお尋ねがございました。

 官民人材交流センターの予算規模や人員、地方の支所の数、職員の、公務員か非公務員かという身分を含めた体制のあり方については、官房長官のもとに置かれる有識者懇談会の意見を踏まえて具体的な制度設計を検討してまいります。

 新人材バンクでのわたりあっせんが行われる可能性についてのお尋ねがございました。

 先ほど総理も答弁をされましたが、官民人材交流センターは、あくまで職員の離職に際し行う離職後の就職の援助に関することを行うものであります。したがって、通常、二回目、三回目の再就職は、離職後長期間にわたっているので、人材交流センターは基本的にあっせんを行わないと考えております。

 わたりあっせんに関する再調査についてのお尋ねがありました。

 御指摘の二回目以降の再就職あっせんに関する調査においては、平成十六年から十八年までの三年間に、各府省等において二回目以降の再就職のあっせんを行ったことが確認されたものについて、法人区分別の件数及びそのうち予算・権限関係にあるものの件数を各府省等から回答してもらい、それを取りまとめたものであります。

 今般の改正においては、先ほど申し上げましたわたりあっせんも含めて、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止をするわけであります。当面、再調査を行うことは考えておりません。

 独立行政法人からの天下りについてのお尋ねがありました。

 緑資源機構の事案では、林野庁の職員が機構に天下り、そこからさらに公益法人に天下りをするとの実態があったと承知をいたしております。役所がこのようなあっせんを行うということは、独法からさらにその先の天下りの部分も含めて、今回の法案では全面的に禁止をするのであります。

 一方、役所のあっせんによらない再就職については、規制の必要を含め、全く別個に検討すべき課題であると考えます。国家公務員の身分が与えられていない非特定独立行政法人の役職員に対し営利企業等への就職を制限することは、職業選択の自由との関係も考慮しつつ、慎重に検討すべきものと考えます。一方、公務員の身分を有している独立行政法人の役職員については、今回の法案の規制対象となっております。

 なお、独法については、先日の経済財政諮問会議において、民間議員から、ゼロベースで百一法人をすべて見直し対象にして行っていただきたいとの要請がございました。総理からは、政府機能の見直しの第一弾にふさわしい本格的な独法改革の指示があったところであります。大変重い課題でありますが、全力を尽くしてやってまいりたいと考えております。

 日本年金機構が天下りの対象でないとのお尋ねがございました。

 日本年金機構も、非営利法人の一つとして今回の法案では規制の対象になっております。機構の役職員は公務員ではないため、そこから先の再就職については、非公務員型の独立行政法人等と同様に、今回の国家公務員法改正案による再就職規制は適用されません。

 民にできる業務は官から民に移し、非公務員化していくことが基本であります。天下り規制の対象にするがために公務員のまま残すなどという議論は、全く本末転倒であると考えます。

 また、あわせて、機構の外部委託契約を競争入札等透明性の高い方法を用いることにより、不明朗な再就職の土壌が生じないようできると考えております。

 以上、真摯に答弁したつもりでございますが、さらに足りないものについては委員会の審議にゆだねたいと思います。(拍手)

    〔馬淵澄夫君登壇〕

馬淵澄夫君 細野議員からは、計五問、質問をいただきましたが、三問については私から、残余の質問については担当法案提出者から答弁させていただきます。

 まず最初に、民主党案の再就職を制限する期間や再就職先の規制対象の拡充について質問をいただきました。

 現行規制下においても、防衛施設庁や道路公団の談合事件など、天下りに起因する悪質な事件は後を絶たず、天下りが政官業の癒着、談合等の温床となり、税金の無駄遣いにつながっている状況は一向に改善が見られません。

 このような状況のもと、政府提出のいわゆる天下りバンク法案のように事前規制を撤廃して行為規制のみに頼れば、天下りバンクによっておてんとうさまの下で堂々と天下りのあっせんが行われ、そして官民の癒着が現在よりも深刻になることは火を見るよりも明らかであります。事前規制を撤廃して、天下りバンク内にて世間の批判をかわすため他省庁の所管法人に天下る、いわゆるたすきがけ天下りを可能とする政府案は論外であり、事前規制を強化する民主党案こそが今求められている天下り根絶の処方せんでもあります。

 現行の二年の事前規制も抜け道が多く、その実効性には疑問が残ります。さらに、先日、現行のこの規制に違反する事実が判明いたしました。金融庁の元局長が、国家公務員法上必要な人事院の承認を受けることなく、株式会社証券保管振替機構の取締役に就任していたのであります。言語道断であり、現行規制のざる法ぶりを示すものでもあります。

 そのような観点から、民主党案では、行為規制の導入にあわせ、事前規制についても離職後二年の規制を五年間へと延長することにより、官民癒着の阻止により実効性を持たせることとしました。まず五年間再就職できないとすることで、相当の影響力を排除することができるものと思われます。

 また、現行規制では、特殊法人や公益法人等への天下りについては事前規制さえ行われていないために、中央省庁から特殊法人、公益法人等に一度天下って、その後に営利企業に天下りをする、いわゆる迂回天下りが横行しています。これについては、ほかならぬ渡辺行革担当大臣御自身が、内閣府での四月三日の記者会見において次のように述べられております。「天下りの実態として、いきなり民間企業、営利企業に行く割合というのは一割そこそこなんですね。一三、四%ぐらいでしょうか。したがって、非営利法人、公益法人、認可法人、最近ほとんどありませんが特殊法人、政府系金融機関、非公務員型独立行政法人、こういったものを除いてしまったら、九割近くが規制対象でなくなってしまうということであります」と語っておられるんです。

 大臣御自身が九割が規制対象でなくなってしまうざる法と認められた政府案に対し、民主党案では、規制の対象となる天下り先を営利企業以外に拡大することにより、天下りの根絶を目指します。すなわち、事前規制を撤廃して、天下りバンクでたすきがけ天下りのあっせんまで行う政府案と、事前規制を強化し、加えて行為規制もしっかりと行っていく民主党案では、どちらがより天下りを根絶し、税金の無駄遣いを絶つことができるか、その実効性を持つ案であるかは、だれの目から見ても明らかであります。

 次に、民主党案では早期勧奨退職制度はどのように扱われているのかとの質問をいただきました。

 早期勧奨退職制度、いわゆる肩たたきは、国家公務員法で定められたものではなく、あくまで慣行として行われているものであります。各省の課長、審議官、局長、これらのポストが限られているために、同期の中でポストにつけなかった者は、各省から公益法人や民間企業といった再就職先を用意してもらい、肩たたきされて退職、転職していきます。そして、最後には同期入省組から事務次官一人だけが本省に残るというピラミッド形の人事制度は、世界的にも独特の慣例と人事院が評する特異な制度でもあります。

 この肩たたきがあるがために、役所は組織的に再就職先をあっせん、準備することが求められ、また、民間企業は各省庁の権限のもとに天下り官僚を受け入れざるを得ない状況が生まれます。営利を追求する企業は、受け入れ天下り官僚のコストに見合う公共事業の受注や権益を求めます。また、天下りを受け入れる法人においても、運営費交付金の名のもとに、見合いのコスト負担を政府が受け持つことが公然と行われています。

 さらに、そのような官業癒着にメスを入れるべく毅然たる指導力を発揮しなければならない政治が、これも、関係省庁の省益あるいは政治家みずからの利益のために行動しているという実態と疑惑が再三再四報道されております。まさに、政官業の癒着の温床を生み出す根本原因がこの肩たたきにあると断言できるのです。

 したがって、天下りに起因する数々の諸問題の抜本的解決を図るには、この肩たたきの禁止が不可欠であります。民主党では、我々の案では、特定の事由が生じた場合を除き、職員に対し、定年退職日前に退職することを勧奨してはならない旨、法案中に明記いたしました。これにより、公務員は、希望すれば定年まで公務員として勤めることができます。

 民間では、社長と現場の社員が同期入社で、長年の結果として立場は違えども、何十年も会社のためにともに汗を流してきた、組織のために生きてきたとの誇りを持って仕事をしてきた事例は枚挙にいとまがありません。官の世界だけがこれを認めず、希望すれば定年まで勤めることができるという当たり前の仕組みを実現しようとしない。これは全く与党の的外れな制度と言っても過言ではありません。

 肩たたきの禁止に伴って職員の在職期間が長期化することが想定されますが、これに対応するためには、ライン職をベースにした従来の人事管理に加えて、長年培ってきた知識、経験、スキル、こうしたものを専門職として活用できるようにする複線型の人事管理制度を導入することが必要です。そのため、法案の附則第二条において、職員の多様な知識及び経験を長期にわたり活用する人事制度を導入するために必要な措置を講ずる旨、明記をしたところであります。

 肩たたきがなくなると組織の活性化が維持できないなどとするのは、組織みずからが自己変革のマネジメントを放棄しているのに等しいものではありませんか。国民の理解を到底得るものではありません。

 一方、政府案は、こうした問題の本質には触れずに、根本原因である肩たたきを前提とした極めていびつな制度の上に、屋上屋を重ねて天下りバンクを創設するものであります。政府案は、肩たたきによって新陳代謝を高めて組織の活性化を図るなどという何の合理性も持たない理由で、法的に定められなかった慣行である肩たたきを温存させるものであり、かつ、肩たたきをしてやめさせるにもかかわらず、まだ働き盛りの退職職員を路頭に迷わせてはならないなどと、本末転倒、民間からすれば見当違いも甚だしい理由を持ち出して、天下りバンクを公につくるものであります。

 みずからの人生はみずからが開く、自己決定をしていく、この当たり前の人生観すら持ち合わすことができなくなってしまうようなひ弱な官僚を生み出す制度、政府は、このような制度を改革の柱と掲げることに何のためらいもないんでしょうか。

 結局は、天下りバンク構想は、安倍政権が勢いよく掲げた天下り禁止を、官僚や族議員に抵抗され、骨抜きにされたと国民から見限られてもいたし方ないものであります。

 最後に、独立行政法人や特殊法人からの天下りに対する規制について質問をいただきました。

 現行法では、非公務員型の独立行政法人や特殊法人の役職員が営利企業や公益法人等に天下ることを規制する法律は存在しません。政府案でも、この点については手当てしていません。例えば、現在、国会で民営化に向けた法案が審議されている日本政策投資銀行においても、関連する営利企業や公益法人等への再就職が多数見られます。

 独立行政法人や特殊法人から営利企業や公益法人等への天下りを背景として、随意契約などの税金の無駄遣いが行われていることから、非公務員型の独立行政法人や特殊法人の役職員に対しても、現行の国家公務員と同様の天下り規制を課すことが必要であります。

 さもなければ、独立行政法人や特殊法人のもとに連なるファミリー企業や独立行政法人化によって離れの地下室となって監視の目の届かないところで行われている税金の無駄遣いを食いとめることはできません。

 また、中央官庁から特殊法人や公益法人等に一度天下り、一定期間過ぎた後に営利企業に天下りをするいわゆる迂回天下りについても、独立行政法人や特殊法人の役職員の天下りを規制することで防ぐことが可能となります。非公務員型の独立行政法人や特殊法人の役職員が営利企業や公益法人等に天下ることを規制していない政府案は、ざる法の批判を免れないと言わざるを得ません。

 いずれの疑問にも、民主党案は、明確にその目的と理念によって問題の本質を明らかにし、解決を図るものであります。

 生活を支えていくのが政治、そのために国民の税金を一円たりとも無駄遣いはさせないとの気概を持って法案、制度の策定を行っていかねばなりません。国会の不断の監視が必要であります。ごまかしなき天下りの根絶こそ、国民の生活を最優先させる対策であるということを申し述べ、賢明なる議員諸氏の御賛同を心からお願いする次第であります。

 以上であります。(拍手)

    〔武正公一君登壇〕

武正公一君 細野議員から、二問、御質問をいただきました。

 四月下旬、帝国データバンク意識調査結果が発表されまして、この政府案が成立して、では、官製談合はなくなるのか、こういうような質問に対して、全国二万社に対する調査、答えたのは九千強の会社でありますが、五四%の経営者が、政府のこのいわゆる天下りバンク法案が可決しても官製談合はなくならない、このように言い切っております。あわせて、六七%は、運用に懸念、人材バンクに権益があるから、かえって民間に任せた方がよい、このように言っているところであります。まさに政府・与党案は筋が悪い法案と言わざるを得ないのでございます。

 国民は、なぜ公務員だけ再就職に税金を使った天下りバンクが必要なのか、不思議でならないわけでございます。ハローワークを使えばいいじゃないか、民間の職業紹介業があるじゃないか、なぜ公務員だけこの天下り人材バンクをつくる必要があるんだろう、これが率直な国民各位の疑問だというふうに言わざるを得ないのでございます。

 筋が悪いということであれば、もう一つ付言をすれば、ふるさと納税ということも最近言われておりますが、これも税制の抜本的な考えから外れておりまして、やはり寄附税制というものを改めればよい。こういったことは、やはり六月、住民税が約二倍に大幅に上がることから目をそらすために政府・与党は出しているのかなとあえて付言をさせていただくところでございます。

 さて、まず一問目、なぜ地方公務員を対象にしたかでございますが、天下りは地方自治体にもあります。官製談合もあります。そういった意味では、今回、民主党の三本の法案と一緒に地方公務員法改正案を提出したところでございます。国家公務員の規制に準じて、離職後五年間は、離職前五年間に在職していた機関と密接な関係にある営利企業に天下ることを原則禁止するものであります。人事委員会や公平委員会がそのチェック役になるという仕組みでございます。

 特に、昨年、三県で知事の逮捕が相次ぎました。そして、それを受けて、全国知事会がプロジェクトチームをつくりました。公共調達に関するプロジェクトチームでございます。そして、そこでやはり地方公務員法の改正など、立法化を全国知事会も要請をしたものも受けて今回提出をしたところでございます。

 さて、二つ目の質問でございます。独立行政法人でございます。

 先ほど渡辺大臣は、独法も対象だと胸を張りましたが、百一ある独立行政法人のうち、政府案の対象としているのはわずか八つでございます。九十三は対象外でございます。今、百一の独立行政法人のうち、九十三は非国家公務員型の非特定独立行政法人になっておりまして、政府案の対象外になっているのでございます。ここが、政府案の抜け穴たるゆえんがあると言わざるを得ないのでございます。

 さて、今その独立行政法人、民主党の予備的調査で、衆議院の調査局から調べた結果をもとに、その詳細をお伝えさせていただきますが、役員の約八割は天下りでございます。そして、役員の役職数の二倍、兼職をしております。そのうち三割は有給であります。ある独立行政法人の理事長は、五十九の兼職をしております、そのうち九が有給であります。そして、独立行政法人百一のトップ、八割は天下りであります。チェックをしなければならない監事の半数は、これも天下りであります。

 ということで、そもそも独立行政法人とは、国がやらなければならないけれども民間の知恵を使う、こういったことで制度設計されたはずでありますが、そのトップに八割も天下りしては、なかなか民間の知恵が使えない。だからこそ、民主党は、その独立行政法人のトップ、長こそ公募をすべきと考えたのでございます。

 あわせて、独立行政法人の、地方だけではなくて、監事やあるいは評価委員、これに多くの天下りの公務員が再就職をしている。あるいは、独立行政法人の内外のチェック役である監事、評価委員におさまっていることに加えて、評価委員が政府の審議会の委員も兼ねている。そうしたことを兼職できないように、天下り公務員が就任できないようにしたのもこの民主党の独立行政法人通則法改正案の骨子の一つでございます。

 さらに、現役常勤出向者は、昨年の四千二百十四人に比べ、四千八百八十八人とふえております。政府案は、係長職以下の現役出向者が出向先で就職の働きかけを行うことを認めております。抜け穴があるんです。平均二、三年で戻るこの出向も見直しが必要としたのは、ここにその理由がございます。

 前内閣、現内閣と、閣僚からはこうした答弁が続きます。いや、そういっても人材がいないんだ、あるいは、給料が安くてなかなかなり手はいないんだよ、こういうふうに言いますが、それは、いないんじゃなくて、探していないのであります。官僚OBしかそうした適格者はいないというのは、政府・与党のおごりであり、全国には、それぞれの地域にはすばらしい人材がいる、その人材を広く求める、これがやはり民主党の考えであり、政府・与党との際立った違いだと皆様に御指摘をさせていただきます。

 さて、先ほど渡辺大臣、経済財政諮問会議で民間議員の独法見直し提案を受け、総理もその指示をしたと言いましたが、閣僚はそういう本音をあちらこちらで言っています、民間には人材がいない、給料が安いからなり手がいない。その現内閣で、果たして独立行政法人の見直し、廃止及び民営化ができるんでしょうか。できないと言わざるを得ないのでございます。

 前内閣は、公務員削減を掲げ、五年間で八十四万人の公務員が三十三万人に減ったと胸を張っております、五十万人減ったと胸を張りました。しかし、その内訳は何でしょうか。二十六万人は郵政職員であり、十二万名は国立大学職員であり、同じく十二万人は独立行政法人であります。

 この二十六万人の郵政職員の給与が税金から払われていないことは、皆様御承知のとおりであります。さらにまた、国立大学、そして今回の独立行政法人も、非国家公務員化といっても、その給与は運営費交付金、すなわち原資は税金であります。これが、この五年間の見せかけの改革の実態でございます。あわせて、この運営費交付金等、三兆五千二百億円が投じられておりますが、これも前年度よりふえているのでございます。

 人件費について、評価委員会年報を挙げれば、平成十七年度は、ラスパイレス指数が一〇七・五、十六年度は一〇七・一。改善どころか、独立行政法人の人件費は高くなっている。一向に改革は進んでいない。このことをもって、日本年金機構、これは民間人といいますが、政府・与党案では、チェックが働かなくなりますので、給与が上がっていく可能性が大いに指摘されるのでございます。

 さて、民主党は、独立行政法人などの特殊法人を廃止、民営化、そして国でやるべきものは国でとうたっております。官から民へとうたいながら、見せかけの改革ではなくて、国がやるべきことはしっかりやる。しかし、国でやる必要のないものは廃止をする、民営化をする。しかし、そこはしっかりと法律のチェックを天下り規制について働かせる、これが民主党の法案の骨子でございます。

 重ねて申し上げます。

 百一の独立行政法人のうち、政府・与党案が対象としているのはわずか八つであって、九十三は対象外。人材は官僚でなければ人にあらずというような政府・与党案に対して、民主党は、人材は幅広く民間に求める、衆知を集める、これが民主党案の骨子であることを申し上げ、私の答弁とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 細野豪志君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。細野豪志君。

    〔細野豪志君登壇〕

細野豪志君 総理に対して、二問、再質問をさせていただきます。渡辺大臣に対しても、二問、再質問いたします。

 まずは、天下りの定義の問題であります。

 政府案が天下りを根絶するものであるという答弁を聞いて、私はびっくりいたしました。公務員の再就職のあっせんを公的にすることを、我々は天下りと称しております。なぜ政府案が天下りを根絶するというふうに言い切れるのか、そのことについての御答弁をお願いします。

 二点目は、政府の基本認識に基づいて、なぜ天下りバンクが必要なのか、このことについての御答弁をお願いいたします。

 押しつけ的なあっせんをやめるんだという話がございました。押しつけ的な天下り、押しつけ的なあっせんというのは、これは受け取る側の認識であります。これまで政府は、各省庁の天下りについて、押しつけ的なものはなかったと言ってきたけれども、政府は、今は認めるようになってまいりました。これは受け取る側の認識で、それこそ、各省庁がやっているものがより押しつけ的なのか、内閣府がやるものがより押しつけ的なのか、これは受け取る側の問題であります。

 ハローワークでやった方が押しつけ的色彩は弱いのではないか、そして、民間でやった方がはるかに押しつけ的な色彩は弱いのではないかと思いますが、なぜあえて人材バンクでやろうとするのか、これが問題であります。

 そして、もう一つ、総理は、小さな政府、効率的な政府とおっしゃいました。渡辺大臣は、すべて有識者会議でということで逃げられましたが、五千人の天下りをあっせんするんですから、相当の規模になることが予想されます。小さな政府、効率的な政府というならば、なぜ新人材バンクという新しい組織をつくるのか、この面からも、私は総理の答弁は矛盾をしているというふうに思います。

 なぜ、小さな政府をつくり、押しつけ的なあっせんをやめるために人材バンクをつくるのか、総理に明確に御答弁をいただきたいと思います。

 渡辺大臣に、二点、わたりについてお伺いいたします。

 わたりについて、渡辺大臣は、非常に大きな声で答弁をされましたけれども、答え自体は濁されました。

 私が聞いたのは、官民人材交流の枠組みの中で、二度目以降のあっせんもする可能性があるんですか、ないですかということを聞いたんです。このことについての御答弁がありません。

 強調しておきますが、二度目以降のわたりのあっせんは、これはどう考えても認め得るものではありません。この部分がないと答弁をしていただかなければ、この天下りそのものの根本的な問題が解決するとは到底思えませんので、明確に御答弁をいただきたいと思います。

 そして、調査結果、この再調査を私は求めたわけでございますが、そのことについて確認をさせていただきます。

 四月十三日に出た調査結果に対して、渡辺大臣は当初、信じがたい数字だという認識を示されました。認識を変えられたのでしょうか。

 大臣、先ほど私が伺ったのは、仮に新人材バンクでわたりのあっせんをしないとしても、それぞれの省庁でわたりのあっせんが隠然と続くのではないですかというのを申し上げたんです。これまでやってきたことと同じことがやられる可能性があるんだとすれば、これまでの部分もきちっと認めていただかなければならない、その趣旨で申し上げました。

 最後に一言申し上げます。

 公務員制度改革も先延ばし、新人材バンクのあり方も先延ばし……

議長(河野洋平君) 細野君、申し合わせの時間が過ぎました。結論を簡単にまとめてください。

細野豪志君(続) これまでいろいろな改革を見てまいりましたが、今回の改革の骨抜き度合いはこれは群を抜いております。このことを、これからの質疑を通じて、徹底して私どもは、私どもの考え方に基づいて対決していくことを宣言して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 細野議員から質問をいただいたのは本会議の始まる二時間少し前でありますが、しかしながら、私としては、なるべく無駄な答弁はしないように、そして丁寧に答えたつもりであります。再質問がございまして、もう既にお答えをしているとおりでございますが、天下り、いわゆる天下り問題を根絶する、これが私たちの法案でございます。

 公務員といえども職業選択の自由があるわけであります。天下りが引き起こしてきた問題を根絶する、これは今まで答弁してきたとおりでございます。具体的には、各省庁による再就職あっせんを禁止し、官民人材交流センターに一元化するほか、離職後の再就職に関する規制の導入、再就職等監視委員会の設置等により、退職管理の適正化を図ることとしております。これらの措置により天下り問題は根絶できるものと考えております。

 そして、新人材バンクと筋肉質の政府との関係についてお尋ねがございました。

 公務員制度を改革し、そして天下り問題を根絶するためにこのいわゆる官民人材交流センターを創設いたすわけでありますが、それと同時に、公務員の五・七%の純減を私たちは約束しているわけでありまして、そしてまた私たちは、総人件費を抑制する、このお約束をしているわけであります。民主党案ではできない、私はこのように思うわけであります。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 細野議員にお答えをいたします。

 細野議員は、あたかも我々が焼け太り法案を出すなどというとんでもない思い違いをしておられます。我々は、今総理がおっしゃったように、天下りを根絶する法案を出そうとしているのであります。

 今、天下りというのは、人事の一環としてそれぞれの省庁が押しつけ的に、国民の側から見ると、人事の一環というのは押しつけのように見えてしまうんです。ですから、そういうやり方を全面的に禁止して、そして中立的な機関である再就職支援の官民人材交流センターに一元化をしようというものであります。

 その人材センターの予算や規模等については、まさに先ほどもお答え申し上げましたように、有識者懇談会の意見を踏まえて詳細な制度設計を行うと申し上げているではありませんか。

 また、わたりあっせんについての御質問でございました。先ほども申し上げましたように、各省庁のあっせんは全面的に禁止をされるわけでありますから、当然、二回目、三回目のあっせんも、これは禁止になるわけです。

 人材交流センターにおいてはどうか。先ほども申し上げましたように、二回目、三回目の再就職というのは離職後長期間にわたっているので、同センターは基本的にはあっせんは行わないと申し上げたではありませんか。

 わたりあっせんの調査において、三年間で十六件という数字は少な過ぎるではないかとのお尋ねでございました。私もそう思います。これは、確認されたものが十六件しかない、こういう答えでございます。

 いずれにしましても、わたりあっせんを含めて、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止するわけでありますから、天下りは根絶されるということでございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 公明党の石井啓一です。

 私は、ただいま議題となりました国家公務員法等の一部を改正する法律案について、自由民主党並びに公明党を代表して質問をいたします。(拍手)

 今回の法律案の閣議決定に当たっては、同時に、「公務員制度改革について」との政府・与党合意文書が閣議決定をされました。この中では、今回の改正案以外に、採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について検討を進め、公務員制度の総合的な改革を推進するための基本方針を盛り込んだ法案を立案し、提出するとされております。

 公務員制度は国の中枢の制度であり、その改革は総合的、整合的でなければなりません。改革の全体像を早急に明らかにし、その一環としての今回の法案でなければなりません。また、制度の全体像がきちんと固められてこそ、公務員の将来に対する不安感の除去や、優秀な人材の確保が可能になります。

 基本方針を盛り込んだ法案を次期通常国会に向けて立案し、提出すると閣議決定で示されておりますが、確実にそれがなされるように総理の御決意を確認いたします。

 また、基本方針を盛り込んだ法案は、いわゆるプログラム法になると認識しておりますが、プログラムに盛り込まれる具体的な制度改革の施行時期は、官民人材交流センターに再就職支援が一元化される時期、すなわち、センターの設置から三年後には可能な限り施行されるべきと考えます。総理の御見解を伺います。

 あわせて、報道の論調の中には、参議院選挙を前にして世論受けをねらった官僚たたきとして、公務員制度全体の改革の中で先行して天下り規制を行ったのではないかとの失礼な批判もあります。ぜひ国民の前に総理の真意を御説明いただきたいと思います。

 また、天下りの背景には、官僚の人事が、入省年次による年功序列制で、キャリア組では課長クラスまでは横並びで昇進しますが、五十歳前後から、幹部ポストにつけなかった者が順次早期勧奨退職でやめていくという人事システムがあります。その際、在職中に退職後の心配をせずに公平中立に職務に専念できるように、再就職先を役所があっせんしてきたものです。

 早期勧奨退職を原則廃止し、ラインの幹部ポストにつけなくとも、専門スタッフとして定年まで働き続けることができるようにすれば、天下りをしなくて済みます。また、事務次官級で六十二歳、他は六十歳の定年年齢を、年金受給開始年齢の引き上げ等をにらみながら引き上げることも、天下りを少なくするのに有効です。天下り問題を抜本的に解決するためには、天下りをしなくて済む人事システムへの改革が不可欠と考えますが、総理の御認識を伺います。

 さらに、採用時に、各省での採用から内閣での一括採用に変えることが縦割り意識の変革につながると考えます。公務員制度全体の改革の一環として、内閣一括採用を検討してはどうかと考えますが、総理の御見解を伺います。

 次に、再就職に関する規制の改正についてお尋ねします。

 今回の改正案では、各府省が再就職あっせんを行うことを禁止し、内閣府に設置する官民人材交流センターが一元的に再就職の援助を行うこととされておりますが、センターは天下りの温床にすぎない、オール・ジャパンの天下り紹介センターなどの批判もあります。

 私どもとしては、天下り問題に対する国民の批判を払拭するためには、総理がおっしゃったように、予算や権限を背景とした押しつけ的な天下りは根絶しなければならない、そのためには、内閣において適正な再就職ルールを設定し、再就職を一元的に管理し、チェックする仕組みを構築することが大事であると考えてまいりました。そうした観点から、今回の改正案は、再就職のあっせん規制の対象が営利企業のみならずすべての非営利法人が対象とされたことも含め、大きな前進と考えます。

 そこで、総理にお伺いします。官民人材交流センターに対する批判に明確にこたえるために、いわゆる天下りのあっせんと適正な再就職の支援は異なることを説明していただきたいと存じます。

 また、総理は、機能する人材バンクとの発言をされたと伺っておりますが、大変重要な視点です。官民人材交流センターにおける人と仕事のマッチングは、決して容易なものではありません。一体どれだけの人員で何人の再就職支援を行えるのか、難しい問題です。今回の改革案の中でも、センターが円滑に機能するのか、懸念されております。

 そこで、官房長官に伺います。

 官民人材交流センターの制度設計については、官房長官のもとに置く有識者懇談会の意見を踏まえ、内閣において検討することとされております。センターに関する懸念を払拭するためにも、早急に検討を進め、その具体的な姿を明らかにすべきです。また、効率性は無視できませんが、センターが十分円滑に機能することを最優先に検討すべきと考えます。見解を伺います。

 また、先ほど指摘しましたように、天下りをしなくて済む人事システムを構築すれば、官民人材交流センターの再就職支援業務自体を少なくすることができます。この点からも、公務員制度改革の全体像を早急に取りまとめ、それと整合させてセンターの制度設計を検討しなければならないと考えます。官房長官の見解を伺います。

 次に、事後規制への転換と暫定期間について伺います。

 現行制度においては、一般職国家公務員が営利企業へ再就職する場合は、離職後二年間は、その離職前五年間に在職していた国の機関と密接な関係にある営利企業へ就職してはならないとの規制があります。

 今回の改正案では、この事前規制のルールを廃止し、罰則つきの行為規制を設け、あわせて監視体制の整備を図ることとされておりますが、私ども公明党の強い主張もあり、官民人材交流センターへの一元化の時点まで事前承認制度を暫定的に設けることとされました。現行の事前規制が廃止されると、密接な関係にある営利企業へ直ちに再就職するケースも想定されることから、新たに設けられる行為規制の実効性が確認をされ、また、センターのもと再就職支援が一元化されるまでは現行の事前規制が必要と考えたところであります。

 そこで、公務員制度改革担当大臣に伺います。なぜ事前規制から事後規制に転換するのか、また、暫定的な事前承認制度はどこが所管をするのか、お答えください。

 次に、能力・実績主義の導入についてお尋ねします。

 今回の改正案では、職員の採用試験の種類や年次にとらわれず、新たな人事評価制度の導入により能力本位の任用制度を確立することとされております。

 改正案では、公布の日から二年以内に能力・実績主義による人事管理が導入されることになっておりますが、現状の職制段階は省庁によって実に多様であり、職制上の段階の標準的な官職を定め、統一的に活用できる標準職務遂行能力を設定することは簡単ではありません。しかし、公務員の能力を十分に生かすためには、かたくなな年功序列制を打破することは大きな意義があり、難しいながらもぜひ実現していただきたいと思います。

 こうした観点から、公務員制度改革担当大臣に伺います。能力・実績主義については、これまでの公務員制度改革の経緯から、平成十七年十月から新たな人事評価制度の試行が行われておりますが、こうした成果が今回の改正案にどのように整理、活用されていくのか。また、能力・実績主義による人事管理を導入するのに二年間の準備期間で十分なのか、見解を伺います。

 最後に、労働基本権問題についてお尋ねします。

 公務員の労働基本権問題については、行政改革推進本部専門調査会において、佐々木座長のもとで議論が進められており、先般、議論の整理が行われました。その内容は、労働基本権を含む公務員の労使関係の問題については改革の方向で見直すべきとして、今後、基本権を付与した場合の具体的な仕組みや諸課題についてシミュレーションを行いつつ、議論を行うとしております。

 私ども公明党も、新たな能力・実績主義の人事管理が導入されようとしている今、公務の世界もグローバルスタンダード、すなわち労使協議が基本との思いを強くしているところでありますが、総理の御所見を伺います。

 終わりに、公務員制度改革について、これまでの改革の取り組みの経過を考えるとき、まことに困難な作業になると思いますが、一歩でも二歩でも着実に前進させ、国民の信頼を回復することが急務であると申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 石井啓一議員にお答えをいたします。

 基本方針を盛り込んだ法案についてのお尋ねがありました。

 公務員制度改革については、第一歩として、能力・実績主義や再就職規制を内容とする法案を提出しており、まずは本法案を成立させることが重要と考えております。さらに、本改革は人事管理制度全体に変革をもたらしていくものであり、パッケージとして改革を進めていくことが必要であります。

 このため、公務員制度の総合的な改革を推進するための基本方針を盛り込んだ法案を次期通常国会に提出いたします。また、この立案に向けて、私のもとに有識者から成る検討の場を設け、採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について、総合的、整合的な検討を進めてまいります。

 具体的な制度改革は、この法案に盛り込まれる基本方針を受け具体化されるものであり、施行時期を含め今後検討してまいる所存でございます。

 今回の法律案についての私の真意についてお尋ねがありました。

 公務員制度改革は、公務の世界に国益を真に追求する優秀な人材が集まり、公務員が誇りを持って仕事に邁進をし、責任を果たせる仕組みをつくるとともに、公務員の能力を多様に生かせる仕組みをつくることが重要と考えております。

 その第一弾が今回の法律案であり、二十一世紀にふさわしい行政システム構築の突破口として、実現できる改革から実現させ、加えて、全体パッケージとしての公務員制度改革の議論も進めることとしております。

 いわゆる天下りにかかわる人事システムへの改革についてのお尋ねがありました。

 今回の法案では、再就職規制や能力・実績主義を盛り込み、天下り問題を抜本的に解決することとしております。御指摘の専門スタッフ職の早期導入や定年延長などについて、パッケージとして取り込む必要があると認識をしております。専門スタッフ職制については、既に昨年十月に閣議決定して、人事院に検討を依頼しているところであります。

 こうした点を含め、採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について、有識者から成る検討の場を設け、総合的、整合的な検討を進めてまいります。

 内閣一括採用の検討についてのお尋ねがありました。

 公務員制度改革は、能力・実績主義や再就職規制にとどまるものではなく、行政組織の職員の採用、能力開発、昇進、退職等の相互に関連した人事管理制度全体に変革をもたらすものであり、パッケージとして改革を進めていくことが必要であります。

 このため、私のもとに有識者から成る公務員制度に関する検討の場を設けることとしております。御指摘の内閣一括採用など、採用のあり方は重要な課題であり、いずれにいたしましても、公務員の人事制度全般の課題について総合的、整合的な検討を進めてまいります。

 いわゆる天下りのあっせんと適正な再就職の支援についてのお尋ねがありました。

 今回の法案では、いわゆる天下り、すなわち予算や権限を背景とする押しつけ的なあっせんを根絶するため、人事の一環として行われる各府省等によるあっせんを一定期間後に全面禁止し、官民人材交流センターに一元化することとしております。官民人材交流センターは、個人の能力や経験を生かした再就職を適正な条件のもと支援を行うものであり、このような官民の人材移動はむしろ望ましいと考えております。

 このために、官民人材交流センターは、内閣府に設置され、各府省等からの中立性を徹底されていること、センター職員は出身府省職員の再就職あっせんを行わないこととしており、府省等の人事当局と企業等の直接交渉も禁止すること、そしてまた、あっせんによる就職実績の公表も含め、業務の透明性を確保するとともに、外部監視機関による厳格な事後チェックを行うこととしていることなどを原則とし、その行う支援はいわゆる天下りとは異なるものであります。

 公務員の労働基本権についてお尋ねがありました。

 公務員の労働基本権を含む労使関係のあり方については、御指摘のとおり、専門調査会において精力的に検討されております。

 政府としては、公務における労使間の協議の重要性を認識し、公務員の労働基本権のあり方について、専門調査会の審議を踏まえ検討することとしており、専門調査会において引き続き精力的な御議論をいただき、できるだけ早期に結論をいただきたいと考えております。

 労働基本権を含む公務員の労使関係の問題についても、改革の方向で見直すべきものと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 石井議員にお答えいたします。

 まず、官民人材交流センターの制度設計についてのお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、官民人材交流センターについては、職員の再就職支援機能を十分果たすことができるものとなることが大変重要であると認識をしており、このような認識に立って、今後、私のもとに置かれる有識者懇談会の意見を踏まえて、早急に具体的な制度設計をしっかり検討してまいります。

 次に、公務員制度改革の全体像と官民人材交流センターの制度設計についてのお尋ねがございました。

 「公務員制度改革について」、これは平成十九年四月二十四日閣議決定でございますが、そこにおいて、総理のもとに有識者から成る公務員制度に関する検討の場を設け、採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について総合的、整合的な検討を進めることとされました。

 官民人材交流センターの制度設計につきましては、公務員制度の総合的な改革の検討状況を勘案しつつ、私のもとに置く有識者懇談会の意見を踏まえ、鋭意検討してまいりたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 事前承認制度についてのお尋ねでございます。

 政府としては、官民の闊達な交流により、専門能力、民間の世界に対する深い理解に基づいた行政の展開が求められるとともに、公務員が再就職等のさまざまな機会にその能力を積極的に生かせる仕組みとすることが重要と考えております。

 今般の改正では、各府省等の行う再就職のあっせんを禁止するとともに、民間に就職した職員の働きかけ等についても規制をするなど、事前から事後を通じた、罰則を含めた厳しい行為規制を導入いたしております。また、外部監視機関による厳格な監視体制を構築することといたしております。

 これらの措置を実施することにより、公務の公正性に対する信頼の確保という事前承認制度の担保していた保護法益は十分担保可能であり、事前承認制度を残す必要はないと考えております。

 また、暫定的な事前承認制度は内閣により行われるものであり、その事務処理は内閣官房が行うものと考えております。

 次に、新たな人事評価制度の試行の成果の活用及び準備期間についてのお尋ねでございます。

 新たに導入することとしている人事評価制度は、能力・実績主義の人事管理を徹底するための基礎となるものであります。現在、評価項目、評価基準の検証等、人事評価に係る検討課題を実証的に確認し、今後の検討の参考資料を得ること等を目的として、人事評価の試行が実施されております。

 今後、さらに対象範囲を拡大して試行等を行い、試行により得られる実証的知見を踏まえ、実効性ある人事評価制度の構築に取り組むとともに、職制上の段階の標準的な官職と標準職務遂行能力を定めるなど、公布の日から起算して二年以内とされている施行日までに、新制度の導入に向けしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 吉井英勝君。

    〔吉井英勝君登壇〕

吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、国家公務員法等の一部改正案について総理に質問いたします。(拍手)

 第一に、天下り規制の問題です。

 国、地方を問わず官製談合が続発し、談合と天下りが密接不可分の関係にあることが改めて明らかになっています。今、官業癒着を防止するために必要な改革は、現行の離職後二年間、国の機関と密接な関係にある営利企業への天下り規制について、規制期間を五年間に延長し、規制対象を公益法人や特殊法人などに拡大するなど、抜本的強化に取り組むことではありませんか。

 法案の最大の問題は、現行の不十分な天下り規制を全廃していることです。総理、これは天下りを原則禁止から原則自由に百八十度変えることではありませんか。

 また、内閣のもとで一元的に天下りをあっせんする官民人材交流センターは、各省庁の予算と権限を背景にした押しつけ的天下りをなくすためとしていますが、関係省庁が関与できる仕組みがつくられています。規制を取り払い、窓口を一元化し、その上関係省庁が関与できる。これでは、官民人材交流センターというのは野放しの天下り推進センターになるのではありませんか。総理の答弁を求めます。

 天下り問題の背景にあるのが、I種採用者のいわゆるキャリア官僚の超スピード昇進を維持する、五十歳前後からの勧奨退職です。退職の勧奨をきっぱりやめて、職員が定年まで働けるようにすべきではありませんか。答弁を求めます。

 第二は、財界の求める官民人材流動化策についてです。

 経済財政諮問会議の民間四議員は、公務員制度についても労働ビッグバンと整合的な改革が必要と述べ、官民人事の流動化を要求し、国家公務員の再就職を、天下りではなく、その能力や技術を生かした通常の転職とすべきであると主張しています。総理、本法案は、こうした官民人材流動策の一環ではありませんか。

 公務員は、全体の奉仕者として、公正性、中立性、安定性が求められています。人材流動化によって、民間から利潤追求で効率のみを優先する意識と制度が持ち込まれれば、国民全体の奉仕者という性格は弱まり、公務がゆがめられるのではありませんか。答弁を求めます。

 第三に、能力・実績主義の導入についてです。

 能力・実績主義の人事管理は、既に民間企業で破綻が明らかになっています。一九九三年、他社に先駆けて成果主義を導入した家電メーカーでは、社員が評価を恐れてチャレンジしなくなった、地味な仕事がおろそかになりトラブルがふえたことなどによって会社の業績が落ち込み、成果主義は事実上崩壊しています。公務の職場に成果主義を持ち込む誤りは、民間企業のノルマ主義が導入されたもとで起きた社会保険庁の保険料不正免除事件でも明らかであります。

 公務の仕事は、採算や効率だけでははかれません。客観的な評価基準の設定を初め、実際の評価も極めて困難であります。本法によって恣意的な人事管理が横行するのではありませんか。答弁を求めます。

 最後に、労働基本権問題です。

 公務員制度を改革するとしながら、公務員労働者の労働基本権回復については何ら言及していません。労働基本権は憲法で保障された権利であり、公務員制度の民主的改革のかなめです。ILOからも、国際労働基準への適合として、繰り返し求められてきている緊急な課題であります。また、労働基本権制約の代償機関とされている人事院の権限も縮小されるばかりとなっているのは問題です。総理は、公務員労働者の労働基本権回復を速やかに行うべきであります。明確な答弁を求めます。

 公務員制度改革というなら、天下りをきっぱり禁止し、特権的キャリア優遇の廃止、労働基本権の確立など、公務員が国民全体の奉仕者として誇りと責任感を持って働けるようにする民主的改革こそ行うべきであります。このことを指摘して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 吉井議員にお答えをいたします。

 事前承認制度についてお尋ねがありました。

 今般の改正は、押しつけ的なあっせんを根絶するため、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止することとしております。これに加え、民間に就職した職員の出身省庁への働きかけ等も規制することにより、いわゆる天下り規制を抜本的に強化するものであります。

 また、政府としては、公務の中立性、公正性を確保しつつ、官と民との垣根を低くすることが望ましいことであると考えており、官民の人材の闊達な交流を損なうこととなる事前承認制度の抜本的強化には賛同できないところであります。

 現行規制の廃止は天下り原則自由化になるのではないかとのお尋ねがありました。

 先ほども述べましたように、今般の改正においては、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止し、新たに設置する官民人材交流センターに一元化することにしております。また、民間に就職した職員の出身省庁への働きかけ等も規制しており、これらの措置には、不正行為に対して刑罰を導入するとともに、外部監視機関による厳格な監視体制も構築することとしております。このため、これまでの事前承認制度以上に厳しい規制となっており、御指摘は当たりません。

 官民人材交流センターについてお尋ねがありました。

 官民人材交流センターの行うあっせんについては、制度改革の進行とともに、各府省等の人事の一環としての再就職あっせんからセンターによる再就職支援に重点を移していくこと、センターを内閣府に置き、各府省等からの中立性を徹底すること、センター職員は出身府省職員の再就職あっせんを行わないこととし、府省等の人事当局と企業等の直接交渉も禁止すること、あっせんによる就職実績の公表も含め、業務の透明性を確保するとともに、外部監視機関による厳格な事後チェックを行うこと等を原則としており、これらに従った制度とすることにより、適正な再就職支援を行うものであります。

 このとおり、官民人材交流センターは天下りを根絶するための組織であり、天下り推進センターとの批判は全く当たらないものと考えております。

 早期退職慣行の是正についてお尋ねがありました。

 早期退職慣行の是正については、職員が定年まで働くことも可能な人事制度の構築に向け、公務で培った知識経験等を専門スタッフ職として活用するなど、職員の能力、適性に応じた複線型人事管理を実現することが重要であると考えております。このため、既に昨年十月に閣議決定をし、人事院に対して、専門スタッフ職俸給表の新設についてその具体化を進めるよう要請をしております。

 こうした点を含め、採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について、有識者から成る検討の場を設け、総合的、整合的な検討を進めてまいります。

 本法案は官民人材流動策の一環ではないかとのお尋ねがありました。

 官から民、民から官への出入りが自由となり、例えば民間で得た知識を官で生かせるようになることが、新たな時代にふさわしい公務員像と考えております。また、押しつけ的でない、能力を評価された結果としての官から民の人材移動はむしろ望ましいことと考えております。

 他方、公務の公正の確保について十分に担保する必要があると考えており、本法案では、再就職後の元職員の働きかけ等に対する罰則つきの厳しい規制や、第三者機関による厳格な監視を導入することとしております。また、再就職の支援を行う官民人材交流センターは内閣府に設置して、各府省等からの中立性を徹底することとしています。

 人材流動化によって公務がゆがめられるのではないかとのお尋ねがありました。

 世界のグローバル化の中で、時代の変化に迅速的確に対応した効率的な行政を進めていくため、官と民が互いの知識経験を生かせるよう、官民の人事交流を抜本的に拡大していく必要があると考えています。

 特に、無駄のない筋肉質の政府を実現していく上では、公務の特性を踏まえつつ、民間の効率的、機動的な手法や意識を適切に取り入れ、行政の能率的運営を推進していくことが重要であります。公務の中立性、公正性等の確保を図りつつ、官民の人事交流を積極的に進めてまいります。

 能力・実績主義の人事管理についてお尋ねがありました。

 民間企業においては、種々工夫しながら人事管理の見直しに取り組んでいるものと認識しております。また、社会保険庁の保険料不正免除事件に関しては、明確な目標を設定して、これを達成するために組織を挙げて努力をすることは当然であり、能力・実績主義が不適正な事務処理につながったとの指摘は当たらないと考えております。

 今回の法案では、能力本位の任用制度の確立に必要となる昇任または転任の判断基準を明確化するため、課長補佐、課長等の職制上の段階の標準的な官職に必要な標準職務遂行能力を明らかにすることを盛り込んでおります。

 また、人事管理の基礎となる新たな人事評価については、現在、政府において、評価基準の検証等、評価に係る検討課題を実証的に確認するための試行を重ねております。これにより得られる知見も踏まえ、実効性のある人事評価制度の構築に取り組んでまいります。

 これらにより、能力、実績に基づく人事管理が適切に行われるものと考えております。

 労働基本権の付与についてお尋ねがありました。

 公務員の労働基本権を含む労使関係のあり方については、行政改革推進本部専門調査会において精力的に検討が行われております。政府としては、専門調査会の審議を踏まえ、引き続き公務員の労働基本権のあり方について検討することとしており、できるだけ早期に結論をいただきたいと考えております。

 労働基本権を含む公務員の労使関係の問題についても、改革の方向で見直すべきものと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 菅野哲雄君。

    〔菅野哲雄君登壇〕

菅野哲雄君 社会民主党の菅野哲雄です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、国家公務員法等の一部を改正する法律案につきまして、安倍総理並びに渡辺担当大臣に質問いたします。(拍手)

 安倍内閣は、公務員制度改革を戦後レジームからの脱却に向けた中核の一つと位置づけ、美しい国をつくる担い手づくりだと強調しています。しかし、私には、公務労働に市場競争原理を全面的に導入し、国民全体の奉仕者である公務員を、財界、国家のための官吏にしようとしているのではないかと思えてなりません。

 そこで、総理にお伺いいたします。

 戦後レジームからの脱却だとして、戦後憲法下で確立された全体の奉仕者という公務員の位置づけや民主的公務員制度まで変えるおつもりなのでしょうか。また、どのような公務員像を目指しているのでしょうか。端的にお答えください。

 今回の法案では、職階制を廃止し、能力・実績主義を導入しようとしています。国家公務員法では科学的、合理的公務員制度を築く職階制が定められていますが、現在の官庁の組織、人事システムは明らかにこれとは異なっています。渡辺大臣、職階制が実現されてこなかったのはなぜなのでしょうか。また、職階制すら実現できないで能力・実績主義が機能するのでしょうか。

 能力・実績主義の導入に際しては、だれがどう評価するのか、評価の客観性、公正性はどう担保されるのかが問われることになります。しかし、法案では、具体的な評価システム等の整備は先送りされています。しかも、人事評価の権限を、人事院ではなく内閣総理大臣に与えています。そうであるならば、最低限、労使協議制度の確立が不可欠ではないですか。渡辺大臣の明快な答弁を求めます。

 天下り規制について伺います。

 法案は、勧奨退職を継続するのか否か、専門スタッフ職の創設や定年延長などの措置をどうしていくのかといった根本的な問題を先送りし、人事院による事前規制を撤廃しようとしています。

 これでは、天下り規制どころか、新人材バンクを通じて天下りにお墨つきを与えることにほかなりません。暫定的に事前承認制を残すといっても、承認するのは内閣となっています。地方公務員法改正案については人事委員会の関与を検討しながら、国公法改正案では人事院が排除されています。なぜ第三者機関である人事院を排除するのか、そのことによって中立公正が保たれるのか、大変疑問です。渡辺大臣、いかがでしょうか。

 天下りの背景には、採用時から特権化されているキャリア制度があります。キャリア官僚が事務次官候補を除いて定年前にやめていく早期退職慣行をどう改めるのでしょうか。大臣、法的根拠もないまま慣習化され、公務員不祥事の温床ともなっているキャリア制度についてどうお考えなのでしょうか。率直にお答えください。

 労働基本権問題について、渡辺大臣はかねがね、基本権の制限は正常ではないと述べ、専門調査会では、団結権、団体交渉権に加えて協約締結権、争議権を付与する方向で議論されることを期待しているなどと発言しています。そこで、労働基本権付与について、大臣の認識を改めて明確にしていただきたいと思います。

 また、この点につきましては、総理の考えと御決意も明確にしていただきたいと思います。

 政府案は、キャリア制度や縦割り行政の弊害の見直しをわきに置いて、労働基本権問題にも手をつけていません。参議院選挙を控えた政治的な思惑だけが透けて見えます。ILO勧告を満たした労働基本権の確立と、民主的で透明な公務員制度改革の実現を強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 菅野議員にお答えをいたします。

 公務員制度改革における公務員の位置づけ及び目指すべき公務員像についてお尋ねがありました。

 今般の公務員制度改革では、公務員が誇りを持って仕事に邁進し、責任を果たせる仕組みをつくるとともに、公務員の能力を多様に生かせる仕組みをつくることが重要と考えております。したがいまして、公務員制度改革は、公務員の国民全体の奉仕者であるという現在の位置づけを変えるものではありません。

 また、今回の公務員制度改革では、将来の公務員像として、国民と国家の繁栄のために、高い気概、使命感及び倫理観を持ち、すぐれた企画立案能力、管理能力等を有する、二十一世紀にふさわしい公務員像の実現を目指すものであります。

 公務員の労働基本権についてお尋ねがありました。

 公務員の労働基本権を含む労使関係のあり方につきましては、行政改革推進本部専門調査会において精力的な検討が行われております。

 政府としては、公務員の労働基本権について、専門調査会の審議を踏まえ検討することとしており、専門調査会において引き続き精力的な御議論をいただき、できるだけ早期に結論をいただきたいと考えております。

 労働基本権を含む公務員の労使関係の問題についても、改革の方向で見直すべきものと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 職階制が実現されてこなかった理由及び能力・実績主義が機能するか否かについてのお尋ねでございます。

 職階制とは、すべての官職を職種、職級に格付けて分類し、これに基づき人事管理を行う制度であり、昭和二十二年の国家公務員法制定時に米国流の人事制度に倣って法律上位置づけられたものであります。しかしながら、集団で職務遂行することに重きを置く我が国の人事風土と適合しないなどの理由により、六十年近くにわたり実施されてこなかったものと承知いたしております。

 今回の改正においては、職階制の問題点も踏まえ、職階制のように官職分類を行うことはせず、係員、係長、課長補佐、課長等の職制上の段階の標準的な官職に必要な標準職務遂行能力を明らかにした上で、これを職員の昇進等の判断の基礎とすることにしております。これに基づき、年功序列を打破し、能力・実績主義の人事管理を徹底していきたいと考えております。

 次に、人事評価との関係で労使協議制度についてお尋ねがありました。

 今回の改正においては、現行の勤務成績の評定にかえ、新たな人事評価制度を導入することとしております。この新たな人事評価については、第一に、任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び上げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価であると明確に定義をしております。第二に、公正に行われなければならない旨、法律上明記しているところであります。

 公務部門における労使関係のあり方については、今後さらに、行政改革推進本部に設置しております専門調査会において検討することが必要と考えておりますが、いずれにしても、人事評価制度の設計については職員団体とも十分話し合ってまいりたいと考えております。

 事前承認制度についてのお尋ねでございます。

 政府としては、官民の闊達な交流により、専門能力、民間の世界に対する深い理解に基づいた行政の展開が求められるとともに、公務員が再就職等のさまざまな機会にその能力を積極的に生かせる仕組みとすることが重要と考えております。

 今般の改正では、各府省等の行う再就職のあっせんを禁止するとともに、民間に就職した職員の働きかけ等についても規制するなど、事前から事後を通じた、罰則を含めた厳しい行為規制を導入するとともに、外部監視機関による厳格な監視体制を構築することとしております。これらの措置を実施することにより、公務の公正中立性及びそれらに対する信頼の確保という事前承認制度の担保していた保護法益は十分担保可能であり、事前承認制度を残す必要はないと考えております。

 また、今般の改正において、職員の再就職については、行政の適正な遂行に最終的な責任を有するとともに、公務員の人事管理についても最終的な責任を有する内閣において一元的に管理することが望ましいと考えており、このため、暫定的な事前承認制度の主体を内閣とするものであります。その際、公務の公正性の確保のための基準に適合すると認める場合でなければ内閣は承認をしてはならないとしており、中立公正は保たれるものと考えております。

 早期退職慣行とキャリア制度についてお尋ねがありました。

 今回の改正では、採用試験の種類や年次によらず、能力と実績に応じて人事を行うこととしており、国家公務員採用I種試験合格者だからという理由で、人事評価がよくないにもかかわらず同期横並びで昇進させるような人事管理は否定されます。一方、優秀な人材については、キャリア、ノンキャリアを問わず、若いころから政策の企画立案等を担う機会を与えられることとなります。

 その点で、二つの区分は意味をなさなくなると考えます。年功序列を打破し、後輩が先に昇進して上司になるといったことも出てまいります。また、昨年十月、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」において、専門スタッフ職俸給表の新設につき検討を進めるよう、人事院に要請をしております。これらの措置により、お尋ねのような、いずれはキャリア官僚が事務次官候補を残して退職するといった慣行はなくなっていくものと考えております。

 なお、スタッフ職制の導入、定年の延長などを含む採用から退職までの人事制度全般の課題については、先般閣議決定された「公務員制度改革について」において、総理のもとに有識者から成る公務員制度に関する検討の場において検討を進めることとされており、今後、パッケージとしての改革として、総合的、整合的な検討を行うことにいたしております。

 最後に、労働基本権の付与に関してお尋ねがありました。

 労働基本権を含む労使関係のあり方については、行革推進本部専門調査会において「議論の整理」が取りまとめられたところであります。「議論の整理」においては、労働基本権を含む公務員の労使関係の問題について、改革の方向で見直すべきであるとしています。

 先ほど来総理から答弁がありましたとおり、政府としては、専門調査会の審議を踏まえ、引き続き公務員の労働基本権のあり方について検討することといたしております。私からは、専門調査会において、協約締結権、争議権を一定の範囲で付与する方向で検討し、秋ごろ、十月ぐらいを目途に最終的な結論を出していただきたい旨、申し上げております。

 以上であります。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       経済産業大臣臨時代理

       国務大臣  山本 有二君

       国務大臣  塩崎 恭久君

       国務大臣  渡辺 喜美君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  下村 博文君

       内閣府副大臣  林  芳正君


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