衆議院

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第32号 平成19年5月18日(金曜日)

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平成十九年五月十八日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十六号

  平成十九年五月十八日

    午後一時開議

 第一 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出)

 第二 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出)

 第三 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出)

 第四 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出)

 第五 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第六 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第七 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出)

 日程第二 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出)

 日程第三 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出)

 日程第四 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出)

 日程第五 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出)

 日程第二 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出)

 日程第三 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出)

 日程第四 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出)

 日程第五 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案、日程第二、藤村修君外二名提出、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、日程第三、牧義夫君外二名提出、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案、日程第四、笠浩史君外二名提出、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案、日程第五、内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案、日程第六、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、日程第七、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案、右七案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。教育再生に関する特別委員長保利耕輔君。

    ―――――――――――――

 日本国教育基本法案及び同報告書

 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案及び同報告書

 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び同報告書

 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案及び同報告書

 学校教育法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔保利耕輔君登壇〕

保利耕輔君 ただいま議題となりました七法律案につきまして、本委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、内閣提出の三法案の内容について申し上げます。

 学校教育法等の一部を改正する法律案は、学校教育の充実を図るため、義務教育の目標を定めるほか、学校の運営、指導体制の充実を図るため、副校長等の職を新設する等のものであります。

 次に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案は、地方教育行政の自主的かつ主体的な運営を推進するとともに、緊急の必要がある場合などにおける国の関与の手続を整備する等のものであります。

 次に、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案は、教員の資質の保持と向上を図るため、教員免許更新制を導入するとともに、指導が不適切な教員の指導の改善を図るために必要な措置に関する規定を整備する等のものであります。

 次に、民主党提出の四法案の内容について申し上げます。

 鳩山由紀夫君外五名提出の日本国教育基本法案は、教育の目的を明らかにするとともに、適切かつ最善な教育の機会及び環境の確保及び整備、その他教育の基本となる事項を定めるものであります。

 次に、藤村修君外二名提出の教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案は、教育職員の免許状の制度の改革について基本的な理念及び方針を定めるものであります。

 次に、牧義夫君外二名提出の地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案は、地方公共団体による教育機関の設置及び学校理事会、教育監査委員会等に関し必要な事項を定めるものであります。

 次に、笠浩史君外二名提出の学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案は、学校教育の環境の整備を推進するため、基本方針を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務を明らかにするものであります。

 内閣提出の三法案並びに民主党提出の教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案は、四月十七日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同月十八日日本国教育基本法案とともに本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、同日伊吹文部科学大臣、提出者藤村修君、牧義夫君及び笠浩史君からそれぞれ提案理由の説明を聴取した後、七法案を一括して質疑に入り、安倍内閣総理大臣の出席を求めての質疑のほか、参考人十二名から三回にわたって意見を聴取し、五月九日及び十四日に計四カ所においていわゆる地方公聴会を開催するとともに、十六日にはいわゆる中央公聴会を開催するなど、慎重に審査を重ね、昨日質疑を終局いたしました。次いで、七法案を一括して討論を行い、順次採決いたしました結果、民主党提出の四法案はいずれも賛成少数をもって否決され、内閣提出の三法案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、内閣提出の三法案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、審議に参加された与野党委員各位及び関係者の皆様に敬意と感謝の念を表しつつ、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 七案につき討論の通告があります。順次これを許します。北神圭朗君。

    〔北神圭朗君登壇〕

北神圭朗君 民主党の北神圭朗でございます。

 討論に先立ち、民主党を代表して、一言申し上げます。

 昨日発生した愛知県長久手町の人質籠城事件において、林一歩巡査部長が殉職されたことに心から哀悼の意を表し、また、重傷を負われた木本明史巡査部長に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。崇高な使命感により職務に当たられたお二方に敬意を表したいと思うわけであります。事件の早期解決を願うとともに、銃器による凶悪犯罪に対し断固抗議を申し上げ、本題に入らせていただきます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の教育再生関連三法案に反対、そして民主党提出の日本国教育基本法案及び学校教育力の向上三法案について賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 どういう日本人を育てていくのかという教育の課題は、すなわち、今後どういう日本を築いていくのかという課題に直結するものであります。

 そういう意味で、安倍総理が教育を内閣の最重要課題に掲げたことそれ自体は大いに評価できます。民営化論のお祭り騒ぎを初め、経済の効率論に終始してきた構造改革のかりそめの熱狂が過ぎ去った今、改革の本当の本丸である心の改革にようやくたどり着いたのかとひそかに期待をしていたところでございます。

 そもそも、改革の革(かく)という字は、革(かわ)という漢字を使います。その心は、革は長らくほったらかすとカビが生えてくる。その皮をなめして、カビをそぎ落として、革の本来のぴかぴかの姿に戻すのが、これが改革の本義であります。

 まさに今の日本は、行き過ぎたあるいは曲解された競争原理、物質主義、個人主義など、外来のカビに覆われております。そのカビをそぎ落として、日本人の本来の心を取り戻さなければ、自分さえよければよいという安易な発想に流され、独立の気概と道義心を失ってしまいます。そういう国民や国家が長くないのは歴史の明かすところであります。

 であれば、教育の根本は、まずは子供の魂に火をつけることであります。商売であれ、スポーツであれ、職人であれ、何であれ、自分の志を鮮明にして、その志を貫く気力と知恵と根性を備えることだというふうに思います。そして、その志を遂げるためには、両親を初め周りの人々や、自分のふるさとと祖国と大自然の力に頼らなければならないという感謝の気持ちと愛情をはぐくむことであります。

 ところが、今回の教育再生関連法案の中身は、安倍総理の王道を歩む意気込みとは裏腹に、余りにも貧弱で、不十分で、中途半端であると言わざるを得ません。一言で申し上げれば、気合いが入っていないのであります。本当に今回の政府案の改正で理想的な教育に少しでも近づくことができるのであれば、私はこの法案に賛成するところでございますが、この法案では到底それは難しいと言わざるを得ません。

 これに対し、民主党の日本国教育基本法案と学校の教育力を向上させるための三つの法律案は、今申し上げた理想に一歩着実に踏み出すものであり、骨格の太い、中身の充実した、体系的な法案となっております。

 以下、具体的に討論を行ってまいります。

 まず、子供の魂に火をつけるためには、先生の魂が燃えていなければなりません。子供への使命感、責任感、愛情が強く求められるという大変厳しい、しかしながら、とうとい職であります。そういう意味では、今でもたくさんおられますが、さらに立派な先生を輩出することこそが教育改革の根幹であります。

 ところが、政府案を見ると、ただ単に、今の教員免許状に十年間の有効期間を設け、三十時間程度の免許の講習を行うだけの、まことに不十分なものとなっております。この程度の内容で本当に、先生たちの資質や能力がどれほど向上するのでしょうか。

 やはり鉄は熱いうちに打てであります。民主党案の方は、普通免許については、現在の四年制大学を修了してから、一年間の教育実習を含む二年間の修士を終了した者に免許を与えることになっております。また、教職についた先生が、一定の実務経験と専門的な教育を受ければ、今までにない専門免許を取ることも可能となっております。

 でもしかではなく、子供を育てることを天職と思うような学校の先生は、やはり養成の段階で確保するしかないのです。民主党案こそ、まさに先生たちの現場感覚を養いつつ魂の燃えている先生たちを輩出することができ、養成方法を変えずに単に研修を施すという政府案とは雲泥の差があると言わざるを得ません。

 次に、地教行法改正については、いじめ、未履修問題への対応をめぐり、教育委員会のあり方が議論となりました。安倍総理の肝いりで設置された教育再生会議においても、この一月の報告で教育委員会の抜本的な改革が大きな課題として取り上げられ、総理も戦後レジームからの脱却だと大見えを切っておられました。

 ところが、ふたをあけてみると、政府案は、結局、教育委員会をそのまま残しているではありませんか。確かに教育委員長と教育委員に権限集中を図ろうとしておりますが、これまで教育長に頼りっきりだった教育委員たちが現実にどこまでこうした役割を担えるのでしょうか。一方でこのように教育委員会の体制を強化しようとしているにもかかわらず、他方で教育委員会に対する国の関与を強めており、改革の方向性が矛盾をしております。

 また、政府案は、地方教育行政の広域化を図るため、市町村の教育委員会の共同設置を促すものであります。例えば、三つの市町村の教育委員会の間で共同設置をすれば、新しく設置される市町村を除いて、ほかの二つの市町村からは教育委員会が完全に消えてしまうわけであります。つまり、こうした広域化によって、今よりももっと地域の住民からかけ離れた教育行政を許すことになってしまうわけであります。

 どうも政府案では、国と地方と教育委員会、さらには学校現場や地域社会との関係が整理をされていないのではないかと疑わざるを得ません。

 これに対し、民主党案は、国の最終責任を明確にしつつ、教育委員会の事務を首長に集中させるとともに、新たに教育監査委員会を設置して事後チェックの機能を持たせます。また、地域の住民も参加できる学校理事会を設けることにより、現場のことは現場に任せて、学校主権の確立を図るものであります。

 民主党案こそが、形骸化している教育委員会において事務局長にすぎない教育長が実際の権限を持ち、部外者であるが予算の権限を持つ首長から支配を受けるといった責任のねじれ現象を根本から解消するものであります。また、国と地方の責任の所在と役割分担を明確にするとともに、地域住民との強い連携をはぐくむ抜本的な改革案であることは、火を見るよりも明らかであります。

 さらに、政府の学校教育法等の改正案については、義務教育の目標として、我が国を愛する態度を養うことを掲げております。冒頭申し上げたとおり、国を愛する心が極めて大切なことは言うまでもありません。しかしながら、態度という外面的なものを評価の対象として法律で定めて、本当に総理や伊吹文部科学大臣が望んでいるような教育ができると思われるのでしょうか。

 男女の恋愛においても、僕を好きだという態度を示しなさいと迫ることはまことにこっけいな話であります。いわんや、僕を心の中で好きになりなさいと押しつけるのは、こっけいを通り越して、少しばかり恐怖の領域に入ってまいるわけであります。つまり、心の問題は、基本的に強制にはなじまないということであります。ましてや、法律で縛るような話ではございません。

 だからこそ、民主党の日本国教育基本法案は、法的拘束力のない前文において、教育の目標として「日本を愛する心を涵養し、」と立法意思として規定しております。それでは単なる理念にとどまるじゃないかという批判もあろうかと思いますが、それは全く当たらないのであります。どうすれば、強制をせずに、日本を愛する心を涵養するのか。

 まさに男女の仲では、自分の魅力と欠点を含めて素直に相手に知ってもらうしかないのであります。

議長(河野洋平君) 北神圭朗君、申し合わせの時間が過ぎましたから、結論を急いでください。

北神圭朗君(続) 子供たちが小さいときから、日本の豊穣な文化と歴史、そしてその文化と歴史を血と汗と涙を流しながら築いてきた先輩たちの生きざまに触れていくことであります。そのために、人物の伝記を中心とした歴史教育を施し、和歌を初め豊かな古典文学や伝統文化に触れさせていくことが大事であります。そうすれば、日本は十分魅力のある国だということが浸透していくわけでございます。何も強制せずとも、日本を愛する心が自然で健全な形ではぐくまれていくことに……

議長(河野洋平君) 申し合わせの時間が過ぎております。結論を急いでください。

北神圭朗君(続) 私たちはもっと自信と誇りを持ってもいいのではないでしょうか。

 以上、るる申し上げてまいりましたが、政府の教育関連三法案には、今申し述べたとおり、たくさんの問題があり、反対。民主党提出の日本国教育基本法案及び学校教育力の向上三法案こそが、子供たちを天職とする先生たちを輩出し、教育行政の責任の所在を明確にし、財政面を初め学校現場のさまざまな課題に取り組むことができます。

 これにより、今後の日本を支えていく子供たちがそれぞれの鮮やかな志を立てて充実した人生を生き、結果として我が国の真の独立と繁栄を確保するための大胆で……

議長(河野洋平君) 申し合わせの時間が過ぎました。結論を急いでください。

北神圭朗君(続) 力強い一歩になることから、民主党案に賛成の立場を表明し、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 中山成彬君。

    〔中山成彬君登壇〕

中山成彬君 自由民主党の中山成彬でございます。

 私も、討論に先立ちまして、愛知県長久手町の監禁事件におきまして殉職された警察官の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。

 さて、私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております政府提出の学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案に対して賛成の立場から、また、民主党提出の四法律案に対しましては、提出者の教育に対する熱意には共感するものの、反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 内閣提出の教育再生関連三法案は、教育現場のさまざまな問題の解決に向けて、昨年改正された教育基本法において示された新しい時代の目指すべき教育の姿を踏まえ、緊急に必要な制度の改正を行おうとするものであります。

 賛成の理由の第一は、学校教育法等の一部を改正する法律案において、改正教育基本法の新しい理念のもと、義務教育の目標を新たに定め、各学校種の目的等を見直すとともに、学校に置くことができる職として新たに副校長等を設けること等について規定されたことであります。

 このことにより、教育新時代にふさわしい学力と規範意識を児童生徒に身につけさせるとともに、組織としての学校の力が強化されるものと考えます。

 賛成の第二の理由は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案において、地方における教育行政の中心的な担い手である教育委員会が、より高い使命感を持って責任を果たすとともに、国と地方の適切な役割分担を踏まえつつ、教育に国が責任を負える体制の構築について規定されたことであります。また、私立学校に関する地方教育行政の充実に係る規定も設けられておるところであります。

 このことにより、教育委員会の立て直しを図るとともに、教育現場における法令違反状態に国が責任を持って対応できるようになるものと考えます。

 賛成の理由の第三は、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案において、教員が、社会構造の急激な変化等に対応して、最新の知識、技能を身につけ、自信と誇りを持って教壇に立つことができるようにするとともに、指導が不適切な教員に対しては毅然と対応するため、教育職員の免許の更新制の導入及び指導が不適切な教員に対する人事管理について必要な事項の制度化について規定されたことであります。

 教育は人なりと言われます。教員の資質向上こそが教育再生のかぎを握っていると言っても過言ではありません。今回の改正により、教員全体への信頼性が高まり、全国的な教育水準の向上を図ることが可能となるものと考えます。

 以上のように、教育再生関連三法案は、改正教育基本法の新しい理念を踏まえ、安倍内閣の最重要課題である教育再生を実現するための具体的な制度改革の第一ステージとして位置づけられるものであると考えています。

 本教育再生関連三法案につきましては、本国会において五十時間を超える慎重な審査を行ってまいりました。その際、三回の参考人に対する質疑、四カ所の地方公聴会、さらに中央における公聴会を行いました。特に、地方公聴会におきましては、学校現場を視察するなど教育の実態把握にも努めたところであります。これらを通じ、与野党が相協力して充実した深みのある審議がなされてきたものと考えておりまして、昔の対立していた時代とはさま変わりの感がありました。

 我が国にとっては人材こそが資源であり、我が国が真に豊かで教養ある国家としてさらに発展し、活力を維持していくためには、国家戦略として人間力向上のための教育改革を一層推進していく必要があることは言うまでもありません。また、せっかくこの世に生をうけた子供たちが幸せな人生を送ることができるようにするためにも、教育の再生は待ったなしの課題であると考えます。そのため、教職員の定数や処遇の改善を初め、適正な予算を確保し、スピード感を持って改革を進めていくことが必要であります。

 この改正が着実に実施され、教育に対する国民の信頼を取り戻すことで、我が国の教育の再生のための力強い一歩となることを確信して、賛成の討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 石井郁子君。

    〔石井郁子君登壇〕

石井郁子君 私は、日本共産党を代表して、いわゆる教育三法案に反対の討論を行います。(拍手)

 三法案は、改悪教育基本法の具体化を図り、我が国の教育制度を根本から転換し、国の関与と統制を強化するもので、憲法と教育の条理に反するものと言わざるを得ません。しかも、これら三法案は、安倍内閣による昨年末の教育基本法の強行成立以来、教育再生会議、中央教育審議会における異常とも言えるスピード審議を経て国会に提出されたものです。そうである以上、徹底審議、慎重審議が求められていたのは当然です。それゆえ、公聴会でも参考人質疑でも、政府案に対する批判、疑問が相次ぎました。法案をめぐって解明すべき課題が山積しながら、昨日、特別委員会で採決を強行したことに断固抗議をするものです。

 三法案の審議で浮かび上がったのは、改悪教育基本法を受けて、教育に対する国家統制の強化を図り、これまで以上に教育現場を萎縮させ、さらなる困難を押しつけるというものでした。

 法案は、規範意識や我が国と郷土を愛する態度など多くの徳目を義務教育の目標として掲げ、その達成を義務づけています。これは、国が特定の価値観を子供たちに強制し、憲法に保障された内心の自由を侵害することになります。子供たちを特定の鋳型にはめ込む徳目の押しつけはやってはなりません。現に、いわゆる靖国史観を学校現場に持ち込む動きがありますが、愛国心の強制がこうした動きに拍車をかける危険を指摘せざるを得ません。

 また、法案は、教員組織を大きく変え、これまでの校長、教頭、教諭という組織から、校長、副校長、主幹教諭、指導教諭、それに教諭という、まさに職階による上意下達の体制としています。これは、上からの統制を強化するものです。既に実施されているところでは、教員の自主性、同僚性が奪われ、教員のチームワークややる気を奪っていることも明らかとなっています。

 教員の切実な願いは、もっと子供たちと向き合える時間が欲しい、子供たちのために授業準備がしたいというものです。こうした声にこたえることなく、導入される免許更新制による官製研修の押しつけは、教員の資質向上につながらないばかりか、教員自身の自主研修を困難にするものです。

 十年で教員の免許が切れるというやり方は、身分の安定と保障を求めたILO・ユネスコの教員の地位に関する勧告に反します。指導力不足教員の厳格化も教員への圧力となりかねず、教員の活動を萎縮させるものです。今やるべきは、多くの参考人が求めた教職員の多忙化解消のための増員であり、少人数学級の実現ではありませんか。

 また、教育委員会への国、文部科学省の権限強化は、教育の地方分権、地方自治の原則に反するものです。これまで、未履修問題やいじめ問題などを理由に、教育委員会に対する是正の要求を設けたと説明してきましたが、審議を通して、日の丸・君が代の実施もその対象となることが明らかとなりました。これでは、学習指導要領や教育振興基本計画の強制の手段に使われかねません。

 以上、これら三法案は憲法の原則と大きく矛盾するものです。このような悪法は廃案以外にありません。

 日本共産党は、憲法に基づいて子供一人一人を大切にする教育を実現するため、国民の皆さんと力を合わせて奮闘する決意を述べて、反対の討論とします。(拍手)

議長(河野洋平君) 大口善徳君。

    〔大口善徳君登壇〕

大口善徳君 公明党の大口善徳でございます。

 討論に入る前に、昨日発生した愛知県長久手町における元暴力団員による拳銃発砲立てこもり事件で、任務につかれていた林一歩巡査部長が拳銃で撃たれ、殉職されました。また、木本明史巡査部長が負傷されました。林巡査部長に謹んで哀悼の意を表しますとともに、木本巡査部長の早期回復と、一刻も早い事件の解決を望むものであります。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております政府提出の教育関連三法案に対しては賛成の立場から、民主党法案に対しては反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 教育の目的は、言うまでもなく、人格の完成であり、子供の幸せであります。その実現のためには、教員の資質をいかに高めていくかが極めて重要であります。また、現在では、家庭、地域の教育力が低下し、いじめや不登校、学級崩壊、児童虐待、ニート、フリーターの増加等、さまざまな問題が噴出し、さらに、少子高齢化や科学技術の進歩、情報化、国際化等、子供たちを取り巻く教育環境や社会環境は大きく変わりました。

 かかる状況においては、教員や学校を社会総がかりで応援していくことが不可欠であり、特に、地域、家庭との関係で、ますます役割を増す現場の教員が児童生徒と向き合う時間を十分確保することが喫緊の課題となっております。

 このような教育改革の必要性が叫ばれる中、昨年の十二月十五日、改正教育基本法が成立し、中教審、教育再生会議の議論を経て、今回、教育関連三法案が国会に提出されたのであります。

 まず、政府案に対して賛成の理由を五点にわたって申し述べます。

 政府案に対する賛成の第一の理由は、子供の最大の教育環境である教員の資質向上という課題に対応していることであります。教員として必要な資質能力は、本来的に、時代の進展に応じて更新が図られるべき性格を有しており、その意味で、今回の改正により、教員免許更新制を導入することで、原則としてすべての教員が十年に一度、知識、技能を刷新し、その時々で求められる資質能力を保持し、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得るようにするための前向きな免許制度が再構築されたと考えます。

 第二の理由は、不適切な教員への対応を講じる点であります。大多数の教員の方々は、多くの課題を抱える学校現場において、一生懸命に教育に取り組んでおられます。しかし、一部で不適切な指導を行う教員がいることも事実であります。そうした教員が教壇に立ち、指導をすることは、児童生徒にとって取り返しのつかない悪い影響を与えることになりかねないのであります。

 今回の改正では、不適切な教員の認定について、手続や研修を法的に位置づけるなど、公正な認定手続等を確保する内容となっております。

 第三の理由は、副校長や主幹教諭、指導教諭といった新たな職が設けられることです。副校長や主幹教諭の設置により、効率的な学校運営、現場教員の事務作業の負担軽減等を期待するとともに、現場のすぐれた教員を指導教諭として処遇することで、さまざまな課題を抱える教員を支援するなど、よりよい学校づくりに大きく貢献するものと期待をしております。

 第四の理由は、学校評価を推進することで、保護者や地域の方々等が学校の諸活動等について理解し、学校運営に参画するための情報提供が図られる点であります。こうした改正は、教職員の意識改革が進むとともに、保護者や地域社会から協力を得られるなどのメリットが期待されます。

 第五の理由は、改正案では、地方分権の趣旨を尊重しながら、必要な最小限度の範囲内で、国の指示など教育委員会への関与を規定し、国の責任を明確にしました。そして、教育委員会の責任の明確化や広域化など、地方の自主性、自律性を促す内容となっております。

 また、私立学校に対する教育行政のかかわりについても、私立学校法の趣旨を踏まえ、私立学校の自主性を尊重しながら、知事が教育委員会から専門的事項について助言、援助を求めることができる体制が法律で明確となりました。

 次に、民主党法案について反対の理由を申し述べます。

 民主党法案では、教育における国と地方の責任や教育行政事務の位置づけがあいまいであること、すべての教員資格を大学院修士とすると、教員でなく一般企業へ就職することとなった場合に大きなハンディとなること、教育委員会の廃止により教育の中立性が確保できるかどうか疑念が払拭できないこと、学校教育環境整備計画の概要や財源対策など、判断の前提となるものがはっきり示されていないこと、これらの理由などから、民主党案については、残念ながら反対するものであります。

 衆議院教育再生に関する特別委員会では、保利委員長の公平、公正、慎重、丁寧な運営のもと、与野党協力のもと、円満に、昨年の教育基本法の審議時間五十五時間を上回る、総審議時間五十七時間二十分に及ぶ充実した審議がなされ、教育再生の論議を深めてまいったわけでありますが、今回の法改正を契機として、教育改革の大きなテーマである公教育の再生へ向けて、現場第一主義に徹しながら、私ども公明党も、教職員定数の改善と教育予算の一層の充実に努め、子供たちにとってよりよい教育環境の整備に全力で取り組むことをお約束申し上げ、政府案に対する賛成討論、民主党案に対する反対討論を終わります。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 保坂展人君。

    〔保坂展人君登壇〕

保坂展人君 社民党・市民連合を代表して、政府提出教育三法案に反対する討論を行います。(拍手)

 日本の学校の姿が一変してしまうような重要法案を、連日のスピード審議で突っ走るのはなぜでしょうか。それは、参議院選挙を前に、安倍内閣が目に見える実績を形にしておきたいということ以外の何物でもありません。本来、教育改革への取り組みとは、長期的スパンで評価されるものであり、即席カップめんのように結果を出すものではそもそもありません。

 国民にとってインパクトの強いわかりやすい形、これを出そうとして大きな混乱を呼んでいるのが教育再生会議です。いじめ自殺が大きな問題になった昨年、再生会議が出した提言を見て、これをやってしまったら大変なことになると危機感を持ち、自治体独自の取り組みを行いましたと、こう語ったのが、愛媛県松山市の市長の地方公聴会における発言でした。

 政策通の自民党若手議員が有志の形で発表した教育再生会議への七つの疑問の中には、委員の中に教育社会学や教育行政学の研究者がいない、学力低下の実証的な論証がスポイルされている、これまでの教育のあり方を全否定しているところから議論を出発している印象がある、規範意識の低下として、高校の奉仕活動義務化、大学の九月入学制など論理の飛躍と思われる唐突な提案が多い、教育ですべての問題を解決できるという幻想にとらわれているなどの指摘をされていますが、教育改革の改革が必要だという結論には全く同感でございます。

 いわんや、最近の親学の提言に至っては、再生会議の迷走はここにきわまっています。子守歌を歌いながら母乳で育児を初めとした親学の提言にそんなに自信があるのなら、補佐官は国会に出てきて堂々とその論拠を主張したらどうでしょうか。

 安倍総理に至っては、親学アピールを先送りした理由について、マスコミ報道で物を言わないでくださいと逃げ続けました。国会に対して議事録も提供せずに、報道で論じるな、何たる国会軽視でしょうか。レベルの低い未整理な議論をしている教育再生会議は、即刻解散すべきではありませんか。

 学校教育法に新たな義務教育の目標が規定され、これまで学習指導要領に記載された内容までが詳細に書き込まれていますが、元来、徳目事項は法律になじむものではございません。国家が国民の心の中に自由に出入りするという錯誤を植えつける可能性が大であります。

 校長、教頭のほかにたくさんの職階を設けて、管理強化を図ろうとしています。佐世保事件など世間が驚愕する事件をよく取材してみると、問題は、研修などがふえてしまって、職員室で教員同士が語り合う時間、子供のことを見る時間、これがほとんどないという現実に突き当たります。教員の、お互い横の連携の力を強めることが今必要であって、教員の集団力を職階で壊してしまうようなことをするべきではありません。

 地教行法は、地方教育委員会への是正や指導を国の職権でできるとしています。そもそも、いじめ自殺や未履修、この問題は、地方の教育委員会のみの責任に帰するものなのでしょうか。文部科学省がいずれも関与していたのではありませんか。文部科学省の是正、指導こそ、本来必要です。

 教員免許更新制は、百十万人の教員や四百十五万人のペーパーティーチャーに教壇への意欲をそぐような結果にならないのか。社会人を登用した特別免許状の期限を撤廃して終身にしたのは、つい最近のことです。十年続くだろう教員大量退職時代にこそ、教員への門戸を幅広くあけておかなければならないはずであり、既に教員志望者の減少の兆候があらわれており、公教育からの人材の流出も懸念されています。教育公務員特例法改正による人事管理の厳格化も、任命権者の恣意的な運用が行われるおそれが強く、反対でございます。

 今必要なことは、少人数学級やきめ細かい教育のための教員の加配、予算増です。安倍内閣の、金は出さないが口は出す式の教育改革では、現場の荒廃は必至です。

 教育における格差の再生産を是正するために、どうやって内閣は子供たちを支援するのか。最近は、再チャレンジという言葉も余り聞かれなくなりました。子供の教育における格差の再生産こそ、早期に解消しておかなければならない最優先課題でございます。

 以上、政府提出三法案に反対、そして、教職員免許更新制を取り入れている民主党案にも賛同しがたいという立場を表明して、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一ないし第四の鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案外三案を一括して採決いたします。

 四案の委員長の報告はいずれも否決であります。この際、四案の原案について採決いたします。

 四案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、四案とも否決されました。

 次に、日程第五ないし第七の内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案外二案を一括して採決いたします。

 三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

     ――――◇―――――

 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、参議院送付、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣冬柴鐵三君。

    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇〕

国務大臣(冬柴鐵三君) ただいま議題となりました特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 従来より、欠陥住宅問題に対応するため、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づき、新築住宅の売り主等は、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、十年間の瑕疵担保責任を負うこととされております。

 しかしながら、先般の構造計算書偽装問題を契機として、新築住宅の売り主が十分な資力を有さず瑕疵担保責任が履行されない場合、新築住宅の購入者が極めて不安定な状態に置かれることが、改めて認識されることとなりました。

 このように住宅取得に対する不安が強まる中、住宅の安全の確保に対する国民のニーズにこたえていくためには、新築住宅の売り主等に対し、瑕疵担保責任を履行するための資力の確保を義務づけ、新築住宅の購入者等の利益の保護を図っていくことが必要であります。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。

 第一に、建設業者及び宅地建物取引業者に対し、新築住宅に係る瑕疵担保責任の履行の確保を図るため、住宅建設瑕疵担保保証金等の供託または住宅瑕疵担保責任保険契約の締結を義務づけることとしております。

 第二に、国土交通大臣は、住宅に係る瑕疵担保責任の履行の確保を図るための保険契約の引き受けを行う法人を、住宅瑕疵担保責任保険法人として指定することができることとしております。

 第三に、住宅瑕疵担保責任保険契約に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図るための処理体制を整備することとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 民主党の泉健太です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま御提案のありました特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案について、関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 二〇〇五年十一月、国土交通省が一級建築士による構造計算書偽装問題を公表して以来、全国の多数のマンションの耐震性に大きな問題があることが明らかになりました。耐震強度偽装事件は、建築行政また建築業界の不信を増大させた社会問題となり、いまだ国民の建築物に対する不信を払拭し得ておりません。

 建築物への信頼を揺るがした姉歯元一級建築士による耐震強度偽装事件の捜査についても、建設会社やマンション販売会社、コンサルタントらが密接に関与した組織的犯罪としては立証されず、姉歯被告個人の犯罪という対応がとられています。

 ことしに入っても、全国にホテルや分譲マンションを展開するアパグループの京都市内のホテルなどにおいて耐震強度不足が見つかりました。この物件は、一時営業停止、その後、耐震改修が進められ、検査を終え、基準を満たすことが確認された上で営業が再開をされています。

 さて、耐震強度偽装事件において私たち民主党が問題としたのは、幾重にも張りめぐらされたチェック機能がしっかりと機能せず、違法建築物が建築、販売されていたという事実であります。

 昨年二〇〇六年の通常国会で、政府は建築基準法の改正を図りました。強度不足の建物を設計した者には懲役刑の導入、そして、中高層ビルの構造計算は第三者機関の再計算が義務づけられました。また、臨時国会では、建築士法の改正により、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士が新たに設けられ、一定規模を超える建物を設計するには両建築士のチェックが必要となりました。一歩前進とは評価しますが、抜本的な再発防止策というには残念ながら不十分な内容でありました。

 民主党は、連日の国会質問や現地調査の成果を生かし、居住者、利用者、購入者の立場に立って再発防止策を取りまとめ、独自の法案を提出いたしました。その内容は、建築の最終確認には行政が責任を持ち、同時に行政の実務能力をアップさせること、第二に、設計、施工、管理を分離すること、第三に、建築事務所の開設は建築士に限り、そして不当な圧力を排除すること、第四に、建築に関与したすべての人をリスト化し公開すること、第五に、広告に保険加入の有無を表示させることなどです。

 政府は、今般、この売り主に対して瑕疵担保責任履行のための資力確保を義務づけるための法案を提出いたしましたが、私は、この法律が成立をしても、ヒューザー、姉歯に端を発し全国を揺るがした耐震強度偽装事件を政治的な重要課題から外してはならないと考えます。決して安易な幕引きは許されません。

 過去の自民党政権が何をなしてきたのか。国家資格者である建築士を初め、その他多くの業界団体を集票団体化することに腐心をし、心ある有資格者の期待にこたえず、有資格者全体の適性の向上には残念ながら目を向けてきませんでした。さらに、近年、市場原理の徹底こそが善として、監視機能を果たすべき行政組織の権限、責任を安易に民間に丸投げし、本来の監視機能を空洞化させるとともに、一方で、業界には過当な競争、特にモラル無視の価格競争を強いてまいりました。

 かかる耐震強度偽装事件は、このような政策の中で生じた事態であることを改めて認識すべきだと思います。

 膨大な物件の検査を少人数の人員で行い、違法建築を見抜けなかった指定確認検査機関の責任、そして特定行政庁の責任、さらには、このような検査体制であった指定確認検査機関を監督してこなかった国土交通省の責任も重大だと考えます。内閣の政治責任を明らかにし、耐震強度偽装事件を総括すべきと考えますが、国土交通大臣の明快なる御所見を求めます。

 提出法案に加えて、さきに述べた私たちの五つの提言もあわせて国土交通省に御実施をいただければ、それにより、国民がさらに安心をして住宅を購入、建設する仕組みを確立できるものと考えます。政府の取り組みについて、国土交通大臣の答弁をいただきたいと思います。

 次に、政府提出法案の内容について具体的にお尋ねします。

 住宅の欠陥に対する補償を本来義務づけられている販売業者が倒産、廃業をしてしまうと、これまで、欠陥住宅に住んでいた住民はどうすることもできず、お手上げの状態に追い込まれていました。こうした状況を解消する視点から、今般の法律には、建設業者による住宅建設瑕疵担保保証金、そして宅建業者による住宅販売瑕疵担保保証金の供託などが盛り込まれています。遅きに失したとはいえ、消費者、住宅購入者の利益を守る内容を盛り込んだものであり、その方向性は一歩前進と受けとめております。

 まず、消費者負担のあり方について質問をします。

 売り主が瑕疵担保責任を履行するための資金調達について、国土交通省は、売り主の自主的判断に任せるとともに、市場での競争や消費者の理解度によって適切な対応がなされると期待しているとしていますが、一方で、事業者と消費者の間には情報格差などがございます。価格転嫁、便乗値上げが誘発される懸念もあります。

 消費者に対しては、新築住宅購入について供託なり保険契約が締結されるということをしっかりと周知する、その仕組みが大切かと考えますが、いかなる施策を講じていくのか。住宅販売会社が供託、保険について契約関係書類などでいかに表記をなすべきなのか、最低限のルールを定めるべきと考えます。また、購入者が納得できる適正な保険料等の負担はどれぐらいの水準であるのか。以上の諸点について、国土交通大臣、明確な答弁をお願いいたします。

 次に、特定住宅瑕疵担保責任の範囲についてお尋ね申し上げます。

 法案においては、「構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵」と規定をされています。現在、住宅保証機構が行っている住宅性能保証制度については、戸建て住宅が大半を占めております。今回の制度改正で大規模高層マンションなどについてもきめ細かく対象となるのか、これを明らかにすべきと考えます。戸建てであれば、住宅が傾いたり雨漏りしたときなどの住宅瑕疵、これを明確にすることは容易です。しかし、集合住宅においては、一部にトラブルが発生した場合、どこまでが対象になるのかあいまいです。この点について御説明をお願いします。

 住宅瑕疵担保責任保険法人の指定についてお尋ねいたします。

 国土交通大臣が指定する保険法人は、一般社団法人、一般財団法人その他政令で定める法人としています。現在、瑕疵担保責任保証制度を実施する機関としては財団法人住宅保証機構などがありますが、そこがそのまま保険法人に指定されることになるのか、お答えをください。さらに、株式会社、社団法人などが指定要件さえ満たせば、数に限りなく保険法人の指定が可能になるのか、保険法人の公正性確保の視点も含めてお答えをいただきたいと思います。

 なお、現在の財団法人住宅保証機構の役員構成を見てみますと、理事長、専務理事、常務理事すべてが建設省、国土交通省のOBであります。そして、理事、監事にも多くの省庁OBが名を連ねています。そもそも、この住宅保証機構が官僚の天下り機関と化してはいないでしょうか。今回の法改正で指定される法人がふえ、結果、天下りをふやすということにならないのか、この疑念にどう答え、歯どめ策を講じるのか、御答弁をお願いします。

 本来は、住宅瑕疵担保責任保険は既存の民間損保会社が運営しても十分機能するものではないかという意見もございます。自前で保険業務を実施した方が、保険制度の全体の運営上のコストも少なくなるばかりか、建築物に対しての新たなチェックも働きます。損保業界が保険法人を引き受ける可能性は皆無なのか、損保会社が自発的に住宅瑕疵担保責任保険を運営するための環境整備を行う、そういう選択肢は国土交通省になかったのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。

 法案に関連をして、日本の住宅政策のあり方についても若干質問をいたします。

 政府は、国民の住宅取得、つまり持ち家に著しく偏った政策を後押ししてきました。今や、家族構成や所得など、人生の局面において生活環境が大きく変化をする時代です。それに合わせて価値観や嗜好も変化をする現在、硬直的、固定的な政策を改めて、賃貸住宅を重視する政策など、国民のニーズにこたえる住宅政策が求められていると思います。こうした認識に立ち、以下、三つの重点施策に関する取り組みについて伺います。

 第一は、リバース・アンド・モーゲージの促進であります。

 公的年金のみで退職後の生活を維持することは極めて困難となっている現在、高齢者が保有する資産を活用し、安心できる老後を過ごせることを可能とするこの制度は、ますます重要な役割を担っていくべきものと考えます。政府は、特別立法も視野に入れ、リバース・アンド・モーゲージの普及促進策に取り組むべきと考えますが、御答弁をお願いいたします。

 第二に、ノンリコースローンの普及であります。

 住宅ローンが返済できなくなっても、その物件を差し出せば他の資産に被害が及ばないローンを導入し、銀行など融資側に物件の確認を徹底させるための環境整備に力を注ぐべきと考えますが、政府の御見解をお願いいたします。

 第三は、リフォーム詐欺対策などとあわせ、住宅業界における悪徳業者の排除です。

 この背後には、クレジット契約による過剰与信などの問題も指摘をされています。割賦販売法改正も含めて総合的な対策を講じるべきと考えますが、御所見をお願いいたします。

 以上、三点すべてについて国土交通大臣、また、ノンリコースローンについては金融担当大臣、割賦販売法改正については経済産業大臣からも御答弁をお願いいたします。

 以上、提出法案に関する質問を行いました。

 現在、天下りや官製談合、日ごとに官庁、官僚に対する不信が強まっています。私が危惧をするのは、国土交通省へもこの信頼が著しく低下をしているという現在の状況です。

 きわめつけは、三月八日、水門工事をめぐる談合問題で、公取が国土交通省に官製談合防止法を適用、改善措置を要求したことにあります。中央官庁への適用は初めての事例であり、公共事業の総元締め官庁であります国交省が対象となったことは、国民、納税者に対する悪質な裏切り、背信行為であると私は断罪せざるを得ないと思います。

 現在、国交省には、以前にも増して、住宅や乗り物の安全の確保など、国民の命を守る職務に全力を注ぐことが求められています。国土交通省職員及びOBに至るまでの綱紀粛正、国民に対する信頼の回復が急務と考えます。これについての大臣の取り組みを求め、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇〕

国務大臣(冬柴鐵三君) 泉健太議員から私に対して、十一点についての質問をちょうだいいたしましたので、順次答えさせていただきます。

 構造計算書偽装問題の総括についてお尋ねがありました。

 構造計算書偽装問題で明らかになった課題は、建築士の能力や職業倫理が低下し、故意に構造計算書の偽装を行ったという建築士側の課題、指定確認検査機関のみならず地方公共団体においても偽装を見逃したという建築行政側の課題、住宅購入者への瑕疵担保責任が十分に果たされていないという売り主等の側の課題の三点に整理できると考えております。

 第一点目の課題については、さきの臨時国会で建築士法を改正し、建築士の資質、能力の向上や建築士事務所の業務の適正化など建築士制度の抜本的な見直しを行ったところであります。

 また、第二点目の課題につきましては、昨年の通常国会で建築基準法を改正し、建築確認検査の厳格化や指定確認検査機関の業務の適正化など建築行政側の審査体制を強化したところであります。

 さらに、第三点目の課題につきましては、消費者保護の観点から、住宅の売り主等の瑕疵担保責任の履行の実効を確保するため、今回の法案を提出させていただいたところであります。

 構造計算書偽装問題で明らかとなった諸課題につきましては、これらの包括的な施策により、適切に対応していくこととしております。

 民主党の提言と政府の取り組みについてのお尋ねがございました。

 構造計算書偽装問題は、住まいという生活の基盤への信頼を土台から崩すものであり、国民の安全と安心にかかわる重大な問題であります。国土交通省では、住民など消費者の立場から安全な建築物を供給していくことが何よりも重要であるとの認識に立ち、徹底した再発防止策を講じることとし、昨年の通常国会で建築基準法等の改正、臨時国会で建築士法等の改正を行ったところであります。

 この間、民主党からは、議員提案の法律を含め、さまざまな御提言をいただきましたが、消費者の立場から安全な建築物を供給するという基本的な考え方は政府案とも共通しており、臨時国会における建築士法改正につきましては、民主党も含め、衆参両院において全会一致で賛成いただいております。

 国土交通省といたしましては、昨年改正された建築基準法、建築士法に加え、今般の住宅瑕疵担保法案により、国民の安全、安心の確保に万全を期してまいりたいと考えております。

 消費者への周知や保険料等の負担水準についてのお尋ねがありました。

 消費者への周知につきましては、昨年の宅地建物取引業法や建設業法の改正により、保険契約など瑕疵担保責任の履行措置の有無や内容について、契約締結前の説明や契約における書面交付を既に義務づけております。

 本法案により、すべての新築住宅について供託または保険加入による履行措置が義務づけられることとなり、保険、供託いずれの場合においても、業者から消費者に対し措置の内容について説明または書面交付がなされることとなりますが、わかりやすい内容とするようにガイドラインも示してまいります。

 なお、保険料については、売り主等が負担するものでありますが、保険金支払いのための純保険料に、必要な住宅検査や事務処理の手数料を加えて設定されるものであり、それぞれの保険法人において適正に設定されるものと考えております。

 次に、集合住宅における特定住宅瑕疵担保責任の範囲についてお尋ねがありました。

 本法律案における瑕疵担保責任は、住宅の品質確保の促進等に関する法律第九十四条または第九十五条で位置づけられている瑕疵担保責任であり、同法及びその施行令において、対象となる瑕疵は、戸建て住宅、集合住宅の別にかかわらず、基礎や柱などの構造耐力上主要な部分と、屋根や外壁など雨水の浸入を防止する部分に係る瑕疵と規定されております。

 なお、具体的な瑕疵の内容や範囲、原因などについて、技術的支援を充実することにより、消費者の保護が適正に図られるよう努めてまいります。

 今後の住宅瑕疵担保責任保険法人の指定についてお尋ねがありました。

 住宅瑕疵担保責任保険法人については、本法案による保険業務を長期的、安定的に扱っていくべき法人であり、保険契約の引き受けの前提となる現場検査の能力の有無、保険業務の的確な実施に必要な財産的基礎の有無、役員等の構成による公正な保険業務の実施への支障の有無などの観点から、厳格な審査を行った上で指定を行っていくこととしております。

 施行後の保険法人の指定につきましては、財団法人住宅保証機構など、任意の制度として住宅性能保証制度を既に実施している法人も含め、申請のある財団法人、社団法人または株式会社の中から、指定基準への該当性を判断しつつ行ってまいります。

 なお、保険という性格から、それぞれの保険法人は相当規模の保険契約の引き受けを行うことが必要であり、指定を行う保険法人の数についてはおのずと限りがあるものと考えております。

 天下りの増大に対する懸念及び歯どめ策についてお尋ねがございました。

 財団法人住宅保証機構を初めとする公益法人への再就職については、公益法人の設立許可及び指導監督基準等に従って適切に対応しております。

 本法案において、国土交通大臣は住宅瑕疵担保責任保険法人を指定することとしておりますが、指定に当たって新たな公益法人等の設立を想定はしておらず、天下りが増大するとの懸念は生じないものと考えております。当然のことながら、国土交通省として保険法人に対し、監督権限を背景とした押しつけ的な再就職はあってはならないと考えております。

 なお、今後の営利企業及び公益法人等への再就職規制のあり方については、公務員制度改革の一環として、国家公務員法改正案として提出されており、国土交通省としても、国会での審議も踏まえ、適切に対応してまいります。

 損害保険会社による住宅瑕疵担保責任保険の引き受けの可能性についてお尋ねがありました。

 住宅瑕疵担保責任保険については、建築時の現場検査とその結果を踏まえた保険引き受けの判断、瑕疵に起因する損害が発生した場合の査定等を的確に実施することができる主体により運営されることが必要であります。

 このように、高度な建築に関する技術的知見に裏づけされた保険業務の実施は、現状では損害保険会社には困難であることから、本法案において、制度を着実に実施するため、そのような知見と体制を有し、かつ、保険業務を実施できる法人を指定する制度としているところであります。

 リバースモーゲージの普及促進策についてお尋ねがありました。

 少子高齢化の進展により福祉に対する国民の負担が増大する中で、リバースモーゲージの普及促進を含め、高齢者が保有する住宅を活用して多様な生活を営むことができる環境を整備することは、重要な政策課題であると認識しております。

 一方、リバースモーゲージは、融資残高が住宅価格を上回るリスクが存することから、民間金融機関等において、融資限度額の設定など一定の制約を付しているのが現状であります。

 このため、国土交通省としても、関係機関と連携しつつ、より汎用性の高いリバースモーゲージが提供される仕組みを検討してまいります。

 ノンリコースローンの導入についてお尋ねがありました。

 我が国の住宅は、年数経過に伴い大幅に価格が下落する傾向にあり、個人向け住宅ローンをノンリコースローン化する場合には、返済能力に係る審査の厳格化のみならず、貸付金利の引き上げや融資率の引き下げを大幅にする必要があることから、現在、金融機関において対応することは困難であると聞いております。

 このため、耐久性、耐震性等にすぐれた住宅が適切に評価される手法の検討など、個人向け住宅ローンについて、ノンリコースローンを導入することが可能となるような条件整備に努めてまいる所存であります。

 割賦販売法改正も含めた総合的な対策についてお尋ねがありました。

 住宅のリフォームにつきましては、消費者がリフォーム資金を金融機関から借り入れ、リフォーム業者が債務を保証する場合に、当該業者が契約どおりのリフォームを行わなかったときは、割賦販売法に基づき、金融機関に対し借入金の返済を拒絶することができることとなっております。

 また、本法案における保険制度は、売り主等の故意、重過失による瑕疵については売り主等の負担による修補を行うことを原則としているほか、保険契約の内容として、保険金支払いに当たり一定の負担を売り主等に求める縮小てん補率の設定、過去の保険金の支払い実績を踏まえた保険料の設定などを検討しております。

 これらの措置により、悪質な住宅業者の排除がなされるものと考えております。

 最後に、国土交通省における綱紀粛正と国民の信頼回復に向けた取り組みについてお尋ねがございました。

 入札談合等の不正行為、とりわけ官製談合はあってはならないことですが、国の機関として初めて改善措置要求を受けたことは極めて遺憾であり、まことにざんきにたえません。

 こうした事態を厳粛に受けとめ、国民の信頼を回復できるよう、談合行為の排除に向け、談合にかかわった場合の厳しいペナルティーについて職員及び事業者に徹底してまいります。

 このような不正行為の防止、綱紀保持の徹底はもちろん、国民の生命財産を守るという国土交通省の重要な使命に引き続き全力で取り組み、国民の皆様の期待と信頼にこたえてまいります。(拍手)

    〔国務大臣山本有二君登壇〕

国務大臣(山本有二君) 割賦販売法改正を含めた総合的な悪質業者対策の必要性につきまして、経済産業大臣に対するお尋ねがございました。

 経済産業大臣臨時代理といたしまして、お答え申し上げます。

 リフォーム詐欺といった悪質訪問販売業者の問題及びクレジット会社による過剰与信の問題につきましては、これまでも、特定商取引法に基づき悪質訪問販売業者に業務停止等の行政処分を行うとともに、クレジット業者に対し、悪質訪問販売業者の排除を指導してきております。引き続き、適切な措置を講じてまいる所存でございます。

 また、悪質訪問販売業者に安易にクレジット契約が利用されず、適正なクレジット契約が行われますよう、現在、割賦販売法及び特定商取引法の改正を視野に入れまして、産業構造審議会におきましてさらなる対策について議論を行っているところでございます。

 次に、ノンリコースローンの導入についてお尋ねがございました。

 金融担当大臣として、お答え申し上げます。

 金融機関がどのような商品やサービスを顧客に提供するかは、各金融機関がみずからの経営戦略の中で判断していくべき事柄でございます。各金融機関におきましては、適切なリスク管理を行いながら、創意工夫を行い、顧客のニーズにより的確に対応した商品開発等の取り組みが進められることを期待しておるところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 高木陽介君。

    〔高木陽介君登壇〕

高木陽介君 公明党の高木陽介でございます。

 私は、自由民主党並びに公明党を代表して、ただいま議題となりました特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案に関し、基本的項目についての確認とともに、国民生活にとって大切な安全、安心の住宅政策促進へ向けた国土交通大臣の決意を伺ってまいりたいと思います。(拍手)

 昨年の三月六日、公明党は耐震構造設計偽造問題対策本部として、当時の北側国土交通大臣に対し、耐震強度偽装問題の再発防止策を講ずるよう申し入れました。これに対して、大臣は、再発防止に全力を挙げることを約束し、中でも瑕疵担保責任の履行確保については、住宅取得者を保護する仕組みが必要との考えを示されました。

 こうした背景のもと、構造計算書偽装問題を改めて点検いたしますと、大きく三つの問題が明らかになりました。第一には、まず建築時における建築確認検査がしっかりなされていたのかどうか。第二は、そもそも住宅の設計等を行う建築士の資質、能力がしっかり確保されていたのか。三つ目として、売り主等が倒産などをした場合、瑕疵担保責任が履行されず、住宅の買い主が極めて不安定な状態に置かれることになったという点であります。

 これらの問題に対応するべく、昨年来より建築基準法の改正、それに次ぐ建築士法の改正が行われました。それに加えて、売り主等の瑕疵担保責任履行のための資力確保の措置を義務づけることにより、消費者の保護を全うすることを目的とした本法律案が第三弾として提出されたものと認識しております。

 これら一連の見直しによって、事件以来国民が抱いていた住宅取得の際の大きな不安感が払拭できるとお考えか。国民は安心して住宅を取得することができると言ってよいのか。まず、国土交通大臣の御意見を伺いたいと思います。

 さて、本法律案では、建設業者及び宅地建物取引業者に対し、新築住宅に係る瑕疵担保責任の履行の確保を図るため、住宅建設瑕疵担保保証金等の供託、または住宅瑕疵担保責任保険契約の締結を義務づけております。中でも保険制度の導入は制度の大きな柱となっております。私も、従来より、消費者保護を図るため、住宅に係る保険制度は極めて重要であると考えてきたところであり、今般の法律案において、供託または保険を義務づける制度が導入されることは画期的なことと考えております。住宅の売り主や消費者の任意による保険制度ではなく、供託または保険を義務づける制度の導入に至った経緯を含め、政府の考えについて確認しておきます。

 次に、消費者保護の観点から、保険制度について、売り主等の故意、重過失の場合の対応についてお尋ねをいたします。

 消費者は、瑕疵のある住宅を買わされた場合、売り主の故意、重過失によるものであろうと、通常の瑕疵であろうと、一律に救済してもらいたいと思うのではないでしょうか。特に、売り主等が故意、重過失に基づく瑕疵のある物件を売却し、その後、倒産をしてしまったような場合こそ、損害の回復の手段を失うことから、保険によって、より強く救済を願うところかもしれません。一般的には故意、重過失による損害は保険金支払いにはなじまないとされていますが、消費者保護に万全を期するとの立場から、どのような対応がなされるか、伺いたいと思います。

 売り主の故意、重過失の場合において、さらに売り主等が倒産する場合というのは、まれなケースと言ってよいでしょう。しかし、さきの構造計算書偽装事件のように、一たん事件が発生すれば、住宅という高額な対象ゆえに、その損失額は巨額に及びます。保険料の一部を積み立てることにより創設される基金だけでは、十分な補てんができない場合、資金が枯渇する場合なども想定されます。本法律案において故意、重過失による消費者の損害についてどのように担保するか、説明を求めます。

 次に、この法律の柱をなす保険制度において、保険契約を引き受けることとなる保険法人について伺いたいと思います。

 本法律案では、国土交通大臣が保険法人を指定し、その指定保険法人が保険契約を引き受けることとしております。今までも財団法人や民間会社が任意で住宅に係る保険を引き受けてきておりますが、年間に数十万戸にも上る保険契約を引き受ける可能性を踏まえますと、保険法人の体制整備をしっかり行うことがまず必要ではないかと考えます。本法律案ではどのように措置をされるのか、伺いたいと思います。

 また、本法律案によって、瑕疵担保責任の履行確保、消費者保護を目的として制度が創設されるのですから、保険法人が保険金の支払いをすることができなくなるような事態を絶対に起こしてはなりません。保険法人による支払い確保のための担保としてはどのような措置を考えておられるのか、あわせてお尋ねをいたします。

 先ほども申し上げたとおり、本法律案は、瑕疵担保責任履行のための資力を確保する方法として二つの制度を導入しております。一つは保険制度、そしてもう一つは保証金の供託の制度であります。

 これにより、消費者の保護策は大きな前進、大きな効果が期待できることは明らかでありますが、一方、売り主等が保証金の供託あるいは保険料を支払うということは、そこに新たな売り主の負担が発生することであり、その売り主の負担は、めぐりめぐって消費者の負担増につながることにならないのか、ひいては、住宅の円滑な供給にも支障を来すのではないかと懸念されるところでもあります。本法律案において、この点についてはどのように考慮されているか、伺います。

 供託と保険の二つの制度、選択肢が複数であることは、制度を円滑に住宅市場に根づかせる上で好ましいことと思います。しかし、この二つの制度が並行して運用されていく中で、保険制度については、保険契約の引き受けに当たり保険法人が住宅の検査を行い、瑕疵の防止、品質の向上にも資するという制度となっているのに対し、供託制度にはこのような仕組みがないことから、住宅の性能確保、品質の向上についての懸念が生じます。供託であろうと保険契約であろうと、住宅全体についての瑕疵の防止及び品質の向上が図られることが必要と考えますが、どのように担保されることになるのか、お伺いしたいと思います。

 本法律案によって消費者保護の制度は大きな前進を望めることとなりますが、諸制度を生かすかどうかは、今後の制度設計、運用に加え、個別の現場で起こる具体的な買い主と売り主との住宅に係る紛争に対し、しっかり対応できるか否かにかかっていると言えます。紛争処理が仮に不十分であったとしたら、本法律案が考える新しい消費者保護の制度は画竜点睛を欠くとの非難さえ受けかねません。

 住宅保証機構の住宅性能保証制度の現在の利用数は、住宅着工数の一割程度と言われております。本法律案により、紛争処理制度の利用数の大幅増加が見込まれるところでもあります。本法律案では、住宅品質確保法に規定する指定住宅紛争処理機関が、保険契約に係る新築住宅についての紛争の処理に当たることとされておりますが、利用数の増加が円滑かつ適切な業務遂行に支障を来すことはないかを確認しておきたいと思います。

 他方、本法案は、供託金対象の住宅を紛争処理の対象とはしておりません。その理由の一つは、供託の場合は保険の場合と異なり、施工段階で必ずしも品質の検査があるとは言えず、紛争処理のための十分な資料が整えられるとは限らないことが挙げられましょう。

 しかし、消費者保護の考え方からすれば、保険つき住宅と供託金対象の住宅で被害救済の方法に差異があることは好ましいこととは言えません。住宅は、一個人の資産だけにとどまらず、世代を超えて継承されるべき社会的財産に違いありません。したがって、全住宅について、住宅品質確保法による性能表示制度を利用することにより、供託金対象の住宅についても紛争処理をサポートする新しい体制が検討できないものか、お尋ねをいたします。

 さきの構造計算書偽装事件は、関係する物件を購入した人とその家族に極めて深刻な打撃を与えました。住宅は、大多数の人にとって、一生に一度購入できるかどうかという大きな買い物であります。購入のために一家で日常の生活費も切り詰め貯蓄し、やっと手に入れた夢にまで見た我が家。それがある日突然、重大な欠陥があることを知らされた購入者の悲憤、悲しみは当事者しかわかりません。

 私の住む地域でも耐震強度の不足を告げられたマンションがあり、私も何らかの善後策はないものかと国とかけ合い、市に要望するなど奔走しました。住民の皆さんの意向に十分沿った対応ができたとは言えず、内心じくじたる思いを禁じ得ません。それだけに、確実に瑕疵担保責任が履行される本法律案による体制の整備に私自身も強い期待を寄せております。

 改めて申し上げるまでもなく、瑕疵のある住宅に対する対応策は大切でありますが、より肝心なのは、瑕疵のない住宅の供給であります。安全、安心、良質な住宅を国民に提供するために、官民ともにさらにさらに努力を積み重ねていかなくてはなりません。

 住生活全般の質の向上のために、国土交通大臣の強い決意を伺って、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇〕

国務大臣(冬柴鐵三君) 高木陽介議員から、九点について質問をいただきました。順次答弁をさせていただきます。

 一連の法改正により消費者の住宅に対する不安を払拭できるのかという点についてお尋ねがありました。

 構造計算書偽装問題発覚後、判明した諸問題に対応すべく、昨年来、建築基準法及び建築士法の改正により、建築確認検査の強化、建築士の業務の適正化等、安全についての対策の強化を行ってまいりました。さらに、本法案により、住宅の売り主等に対して瑕疵担保責任履行のための資力の確保を義務づけることにより、消費者保護に万全を期すこととしており、一連の措置により、国民に安心して住宅を取得いただけるものと考えております。

 供託または保険を義務づけた経緯についてお尋ねがございました。

 構造計算書偽装問題を契機として、新築住宅の売り主等が十分な資力を有さず瑕疵担保責任が履行されない場合、新築住宅の購入者が極めて不安定な状況に置かれることが改めて認識され、国民の住宅取得に対する不安が強まりました。

 このような中、住宅に対する国民の信頼を回復し、消費者保護を全うするために必要な措置として、住宅が高額であることにもかんがみ、売り主等に資力確保の措置として供託または保険を義務づけることとした次第であります。

 本法案の保険制度における売り主等の故意、重過失の場合における消費者保護のための措置についてお尋ねがありました。

 消費者保護の観点からは、売り主等の側の故意、重過失の有無にかかわらず、住宅の瑕疵による損害をこうむった買い主等の救済が図られることが重要でございます。

 本法案においては、住宅の売り主等の故意、重過失を原因とする瑕疵について、売り主等が倒産していない場合にも保険金の支払い対象とすると、売り主等のモラルハザードを惹起することから、売り主等の負担によりみずから修補を行うことを原則としておりますが、売り主等が倒産する等、瑕疵担保責任の履行ができない場合に、買い主等が保険法人に対し保険金の直接請求ができることとすることにより、消費者の保護を図ることとしております。

 具体的な仕組みとして、保険料の一部をもとに基金を創設することとしております。基金創設時等において、多額の保険金支払いが発生し、資金不足を生じた場合には、既存の住宅保証基金からの無利子貸し付けが行えるよう措置を講じており、これにより、仮に資金が不足した場合においても消費者の救済を図ることとしております。

 保険法人の体制整備及び保険金の支払い確保の方策についてお尋ねがございました。

 保険法人は、瑕疵担保責任の期間である十年以上にわたり有効な保険を安定的、長期的に扱う法人であるため、指定に当たっては、保険契約の引き受けの前提となる現場検査の能力の有無、保険業務の的確な実施に必要な財産的基礎の有無について十分な審査を行い、しっかりした体制を有するものを指定することとしております。

 また、住宅瑕疵担保責任保険においては、住宅が高額な資産であることから、事案の状況によっては大きな保険金支払いも予想され、損害保険会社による再保険を活用すること等により、保険金支払いを確実にすることとしております。

 次に、売り主及び消費者の負担の増大に対する懸念についてお尋ねがございました。

 本法案では、新築住宅の売り主等に対して、瑕疵担保責任履行のための資力の確保を義務づけることとしております。このため、売り主等の負担が生ずることとなりますが、その負担が合理的なものとなるよう供託金額の設定を行っており、今後の保険料の設定に当たっても配慮してまいりたいと考えております。

 売り主等がその費用をどのように調達するかについては、個々の売り主等が判断することとなりますが、市場における競争や消費者による理解等を勘案し、適切な対応がなされるものと考えております。

 消費者の意識調査結果からも、安心を得るための一定の負担は御理解が得られるものと考えております。売り主等に対し資力の確保を義務づけることにより、国民が安心して住宅を取得できるようになることが、結果として円滑な住宅の供給に資するものと考えております。

 住宅全般についての瑕疵防止及び品質向上の措置についてお尋ねがありました。

 保険制度においては、第三者である保険法人が保険を引き受けること、売り主等が瑕疵担保責任を履行した場合のてん補が保険によって行われることから、保険法人が、リスクマネジメントの一環として、その引き受けに当たり検査を行うことが必要となり、結果として瑕疵の発生防止、品質向上に資することとなります。

 供託については、売り主等がみずからの財産により瑕疵修補を行うものであり、売り主等がみずから瑕疵の発生防止、品質の向上に努めるものと考えておりますが、さらに、性能表示制度の普及等により、住宅性能の向上に努めてまいります。

 指定紛争処理機関の円滑な業務遂行についてお尋ねがございました。

 本法案により、住宅品質確保法に基づく住宅紛争処理機関が保険契約に係る新築住宅に関する紛争処理を行うことができるようになることに伴い、住宅品質確保法に規定する住宅紛争処理支援センターの業務を拡大しております。

 具体的には、指定紛争処理機関に対し、保険契約に係る紛争処理の業務の実施に要する費用の助成、保険契約に係る紛争処理に関する情報、資料を収集、整理し提供することとしており、指定紛争処理機関の利用が増大した場合においても、簡易迅速で円滑な紛争処理が行われるよう支援をしていくこととしております。

 供託の対象である住宅に関する紛争処理についてお尋ねがございました。

 本法案において、指定住宅紛争処理機関が保険契約に係る新築住宅の紛争処理を行うことができることとしたのは、保険法人が検査を行い、その結果の資料が保管されるため、指定住宅紛争処理機関による迅速簡易な紛争処理になじむことによるものです。

 紛争処理の重要性は十分に認識しているところであり、住宅品質確保法に基づき同様の紛争処理を行っている性能表示制度の普及を図ること等を通じて、紛争処理体制の充実、拡大に努めてまいります。

 最後に、住生活の質の向上に向けての決意についてお尋ねがありました。

 これまでの建築基準法、建築士法の改正及び本法案により、住宅の瑕疵の発生を抑制するとともに、万一、瑕疵が発生した場合でも確実に瑕疵担保責任が履行される体制を整備したところであります。

 これら一連の措置により、安全、安心な住宅を供給するとともに、昨年制定されました住生活基本法を根幹とし、住生活全般の質の向上を図っていくための政策を積極的に講じてまいります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       文部科学大臣  伊吹 文明君

       国土交通大臣  冬柴 鐵三君

       経済産業大臣臨時代理

       国務大臣    山本 有二君

 出席副大臣

       国土交通副大臣  渡辺 具能君


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