衆議院

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第19号 平成20年1月11日(金曜日)

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平成二十年一月十一日(金曜日)

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  平成二十年一月十一日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 憲法第五十九条第二項に基づき、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案の本院議決案を議題とし、直ちに再議決すべしとの動議(大島理森君外百三名提出)

 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案、本院議決案


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日、参議院から、本院送付のテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案は否決した旨の通知を受領するとともに、返付を受けました。

     ――――◇―――――

 憲法第五十九条第二項に基づき、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案の本院議決案を議題とし、直ちに再議決すべしとの動議(大島理森君外百三名提出)

議長(河野洋平君) 大島理森君外百三名から、憲法第五十九条第二項に基づき、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案の本院議決案を議題とし、直ちに再議決すべしとの動議が提出されております。

 本動議を議題といたします。

 討論の通告があります。順次これを許します。仙谷由人君。

    〔仙谷由人君登壇〕

仙谷由人君 民主党の仙谷由人でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、内閣提出のいわゆるテロ新法を憲法五十九条二項により再議決すべしとの動議に対し、反対の討論をいたします。(拍手)

 同条項には、確かに、参議院が衆議院が可決した法案につき異なる議決をした場合に三分の二以上の多数で可決できるとの法律成立の例外規定を置いています。しかし、我が国の憲法体系では国会が二院制をとっていること、憲法五十九条一項の、両院で可決したときは法律となるとの規定が本則であること、また、国会では一事不再議の原則が貫徹しなければならないことなど、五十九条二項を使って法律を成立させようとすることは極めて異例であり、その前に同条に定める両院協議会における協議や次国会での再提出などの丁寧な審議が前置されるべきで、しゃにむに数の力で押し切るなどという乱暴な運営は努めて回避すべきであります。五十九条二項はあくまで例外的規定なのです。例外的な権限を行使するためには、それを正当化するに足りる理由が必要であることは疑う余地がありません。

 すなわち、参議院の意思を否定してまで衆議院の多数で強引に法律とする緊急性、及び、これをしなければ国家と国民に回復しがたい危険が発生し、かつ損害を与えるというような具体的な事由がなければ、それは単に形式的に付与されている権限を濫用しているにすぎないものであって、憲法上も極めて疑義の大きいものというべきであって、少なくともその政治責任が厳しく問われなければなりません。

 つまり、内閣は参議院に対しては解散権を持っていませんから、参議院の異なる議決が、内閣と与党にとって、参議院を解散したいぐらいだけれども制度上はそれはできないという程度の重要性があって初めて再議決が正当化されると考えます。

 わずか六カ月前の参議院選挙において、給油継続を掲げた自民党、公明党は歴史的な敗北をいたしました。安倍内閣のもとで、思い込みの強い法案を、国会審議を空洞化させながら次々と強行採決をしたことに対する国民のノーという意思表示でございます。国民は、給油継続についてもノーという意思を示したのです。

 さらに、その結果、参議院では、民主党を比較第一党として野党が過半数を占めるに至りました。政権の基盤政党と異なる政治勢力が国会の片方で多数を占めるという事態は初めてではないとはいえ、日本の政治史上新しい段階に入ったという認識を持つべきであります。

 しかし、自民党、公明党で政権を握り、政権を自己目的化し、政権を維持することだけを存在理由としてきた与党の方々は、従来の癖と惰性で、たまたま二年四カ月前、衆議院三分の二以上の議席を調達していたことを奇貨として、単に数の力を頼んで、インド洋上における給油は継続ではなく考え直した方がいいという国民の現在の政治意思に明確に反することを今行おうとしている、それが本動議であります。

 二十一世紀に入って、先進国、中進国を問わず、政権交代を核としながら、公開と説明を使命とする議会をつくらなければならない、すなわち熟議の民主主義あるいは民主主義の民主化を各国は追求してきました。

 官僚内閣制と言われる我が日本の議院内閣制、与党の皆さん、与党の皆さん方が官僚に政策立案、法案作成をゆだね、与党内部における事前審査という内輪の議論が済めば、国会では質問をできるだけしないで一刻も早く議決することに奔走するという、このやり方がいわば国会を官僚作成の法律案の追認、製造機関におとしめようとするものであることに、与党の皆さん方は何の後ろめたさも時代おくれであることをも感じていらっしゃらないんですか。皆さん方は、官僚のたなごころの上で踊りを踊ることで国民の負託にこたえていると胸を張ることができるんでしょうか。

 例えば、建築確認申請についての建築基準法の改正、障害者自立支援法、高齢者医療制度の高齢者の支払うべき保険料やリハビリテーションの期間など、実態を無視した机上の空論のような法律案を次々と強行可決したものの、施行されてみると国民の悲鳴と不満が噴き上がって、慌てふためいて手直しするなどという事態が続出しているのではありませんか。

 防衛省の連続する不祥事、こんなにひどいとはわからなかったなどと弁解がましく大臣に述懐させた社会保険庁、直近では、ついに政治決断できず議員立法に逃げ込んだ薬害肝炎患者との和解など、国会、委員会での野党の問題点指摘や提案、あるいは有識者や現場実務者の参考人としての意見を真摯に謙虚に検討し、議会での合意形成を図るという政治姿勢があれば、官僚の厚い壁に煮え湯を飲まされ続け、与党の統治能力の欠如があらわになるというような、現在のような事態はあらわれていなかったと思います。

 与党は何ゆえに、国会の本会議や委員会の表舞台で堂々たる議論を重ね、国民によく見え、よくわかる仕方で止揚された結論や妥協点を探るという新たな政治をつくろうとしないんでしょうか。時代はそのことを要請しているんです。ましてや、今、国会は、参議院の過半数が野党に握られたのでありますから、今こそ、粘り強い、見える議論と、それに基づく新しい合意形成に向けた努力が求められていたのです。

 現に、動かない国会と言われながらも、委員会での議論の結果、民主、自民、公明三党共同提案の一件、委員長提案九件、野党の修正要求を受け入れたもの三件の法律が成立をいたしました。参議院野党多数の事態が後押ししたことによる新しい合意形成の萌芽も生まれています。

 しかし、与党は、この間、二度、六十六日間も国会を延長したにもかかわらず、ほとんどの委員会を開店休業状態に置き、民主党が委員会を開くよう要求しても、与党側がこれを拒否しています。特に、民主党提出の議員立法である年金保険料流用禁止法案、農業者戸別所得補償法案、イラク特措法廃止法案、及び国民新党との共同提案による郵政株式会社等の株式処分停止等法案が参議院において可決され、衆議院に送付されているにもかかわらず、政府・与党は一向に審議に応じようとしません。肝炎医療費助成法案についても、与党はたなざらしにしたままです。国会を堂々たる議論の場にすることに背を向けているのです。

 本動議は、憲法五十九条二項をあえて行使する条件がないのに、テロ新法の成立を自己目的化し、数の力で力任せに再議決をもくろむものです。

 給油を継続すれば日米同盟は安泰だと無邪気に信じ込んでいるようでありますが、全く国際政治の動向に無自覚、無感覚です。まことに哀れで情けない。オーストラリアでは労働党政権が登場し、イギリスではブラウン氏が政権についてイラク南部からの撤兵を開始し、アメリカ大統領予備選挙での議論を見ても、イラク撤退を前提にした中東和平とアフガニスタンの治安の確保、民生の安定について新しい構想がつくられなければならないことが共通認識にあるとき、日本が油を提供しようがすまいが、全く取るに足りない問題であります。

 そして、この半年間、政府・与党は、給油継続がすべてに優先するお国の一大事であるかのような大騒ぎをし、今また異例で例外的な再議決をもくろむ、それが本動議であります。愚かと言うほかはありません。

 このように、テロ新法は、再議決に付すような緊急性もなければ重要性もなく、これが可決しなければ国家や国民に重大な危険を発生させるという事態は全く存在しないことは明らかであります。

 与党と福田内閣は、二年半前に他の内閣が得た議席の数を悪用して、その要件を欠く再議決という挙に出る。国民がこれを支持することに自信をお持ちなら、今再議決を企図するのではなく、国民に信を問う、すなわち、テロ新法の成立を掲げ、改めて衆議院で三分の二の議席を得るために解散・総選挙を行うべきであります。

 このことを要求して、本動議に対する反対討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 小坂憲次君。

    〔小坂憲次君登壇〕

小坂憲次君 自由民主党の小坂憲次でございます。

 私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました憲法五十九条第二項に基づき、本院議決案を議題とし、直ちに再議決すべしとの動議について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 昨年十一月十三日に衆議院で可決し、参議院に送付されましたテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案は、本日、参議院において否決され、本院に返付されてきました。

 今、国際社会は、テロとの闘いに一致団結して取り組んでおります。我が国も、テロとの闘いに主体的に取り組むべく、我が国の持てる能力と憲法の範囲内で、何ができるかについて真剣に検討し、旧テロ対策特別措置法に基づき、民主党の賛成も得て、派遣承認し、補給活動等を実施してまいりました。

 国連安保理決議第一七七六号にも示されているとおり、この補給活動は、国際社会に高く評価され、米国やイギリス、アフガニスタン、パキスタン、フランスといった国々や国連を代表する潘基文国連事務総長がさまざまな機会にこの活動に謝意や評価を表明しており、我が国海上自衛隊による高品質かつ安定的、継続的な補給活動は、テロリストにインド洋を自由にさせないという意味で、極めて重要な海上阻止活動の基盤となっていたのであります。しかし、まことに残念ながら、昨年十一月一日、旧テロ対策特別措置法の失効に伴い、やむを得ず我が国は補給活動を中断しましたが、その際、多くの国々が、活動の中断は残念であるとし、早期の再開に強い期待を寄せております。

 こうした国際社会の大きな期待にこたえるためにも、我が国は、補給活動を可能な限り早期に再開することにより、引き続き、みずから積極的にテロとの闘いにおいて役割を果たし、国際社会からの信頼を確固たるものにすべきであります。

 また、この補給支援活動は、結果として、インド洋の海上交通の安全確保に寄与し、石油資源の大部分を中東地域からの海上輸送に依存している我が国の国益にも大きく貢献するものであることを忘れてはなりません。

 民主党からは会期が残りわずかとなった昨年末になってようやく対案が出され、本法案の採決は国会閉会直前となるなど、国会戦術に偏った対応ではないかと疑問を感じざるを得ません。しかし、民主党の対案には今後の重要な検討課題として議論すべき内容も含まれているものと考えており、今後、こうした点については、民主党を初め野党の皆さんとも緊密に協議し、自衛隊の海外派遣に係る恒久法の制定につなげていくべきであると考えております。

 証人喚問、参考人質疑、集中審議も含め、衆議院テロ・イラク支援特別委員会では約四十一時間、参議院外交防衛委員会では約四十五時間の時間を割いて審議が行われてまいりました。活発な審議を通じ、我が国が補給した燃料はすべて適切に使用されたことが示され、また、給油量の取り違え、航泊日誌の誤破棄といった問題については、国会における議論を受けて政府より適切な対応がなされるなど、法案審議を通じて非常に有意義な議論が行われたと考えます。

 参議院においては、多数を占める野党の皆様には本法案の重要性を御理解いただけなかったことはまことに残念ですが、いま一度、先ほど申し上げた補給活動の意義を直視していただきたいと考えております。

 議論は十分に尽くされました。ここに至っては、憲法第五十九条の規定に従い、衆議院において本法案を再可決し、可及的速やかに補給支援活動を再開すべきと考えます。

 そもそも、日本国憲法は、国会は二院制のもと、首班指名を初め予算、条約、法律案について衆議院と参議院で議決が異なることがあることを当然の前提として受けとめ、それぞれの議決が異なった場合には、衆議院の優越規定を設け、国政の統一を図り、二院制による弊害を生ずることを回避しているのであります。

 法律案については、憲法五十九条の二項において、「衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。」と明確に規定されております。

 東京大学の学長であった佐々木毅氏は、新聞紙上などにおいて、法律案の再議決という手続は、両院が意見を異にする場合に決着をつけ、国会の意思を明らかにする正常な手続である、政権与党の責任は政治を動かすことに第一義的な責任がある、政治を動かす意思を持たない政権与党はその地位を事実上放棄しつつあると言われても仕方がないとまで言われております。

 いわゆるねじれ国会と言われる状況は、二院制をとる我が国において、決して例外的あるいは過渡的な現象ではなく、今後とも起こり得る政治の現実でありまして、我々が今求められているものは、国民の生活、我が国の将来、世界の中における我が国の果たすべき役割といった課題に対して、衆参それぞれの院における現職国会議員である我々一人一人がみずからの責任を自覚し、これらの課題に正面から向き合い、真剣に悩み考えて、遅滞なく議員としての判断を下すことにあるのではないでしょうか。

 このような議員の判断が会派やそれぞれの院の判断を構成し、国会の意思を決定するのでなければ、いたずらに時間のみを費やし、国会は機能不全となり、最大の被害者は国民となるのであります。

 まさに今我々に求められているのは、動かない政治を動かすため、憲法に定められた規定に従い、それを粛々と行使、活用することであり、当然の責務と言わなければなりません。もし再議決に異議があるならば、直ちに憲法審査会を始動し、議論をしていただきたいことを申し添え、圧倒的な多数の議員の賛同をお願いして、賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 穀田恵二君。

    〔穀田恵二君登壇〕

穀田恵二君 私は、日本共産党を代表して、新テロ特措法案の再議決を求める動議に反対の討論を行います。(拍手)

 参議院は、本日午前の本会議で新テロ特措法案を否決しました。政府・与党は、この参議院の意思を重く受けとめるべきであります。衆議院の三分の二議席という数の力で覆すことは断じて許されません。

 そもそも新テロ特措法案は、六年間に及びアメリカの対テロ戦争を支援してきたことへの総括も反省もなしに、この間のアフガニスタンや国際情勢の変化も顧みず、国民世論を無視して、再派兵先にありきで進められてきたものであります。

 安倍内閣は、昨年七月の参議院選挙で大敗し、アメリカに誓約した給油活動継続の見通しが立たないもとで政権を投げ出しました。そして、十一月一日、自衛隊はインド洋から撤退したのであります。これこそ民意に合致したものでありました。

 にもかかわらず、福田内閣は、再派兵するために新法なるものを提出し、二度にわたり会期を延長し、さらに、参議院が否決するや、直ちに衆議院の三分の二の多数で覆し、成立を図ろうというのであります。これは、参議院での審議内容やその意思を一顧だにせず、数の力を頼んで何が何でも押し通すというものであり、議会制民主主義を踏みにじる数の横暴、歴史的暴挙と言わなければなりません。

 しかも、法案の内容は、憲法九条を真っ向から踏みにじる、米軍の戦争支援そのものであります。

 自衛隊がインド洋で行うのは、米軍などによる報復戦争、掃討作戦への補給支援活動であります。政府は、自衛隊による補給は海上阻止活動を行う艦船に限定すると言ってきましたが、実際には、アフガニスタンやイラクへの空爆作戦を含む、あらゆる米軍艦船にこれまでどおり給油できるというのが政府答弁であります。まさに、憲法違反の海外での米軍戦争支援法であることは明白であります。

 テロに対して報復戦争で対応してきたことが、新たな憎しみと暴力を生み、アフガン情勢の泥沼化をつくり出してきたことを直視すべきです。戦争でテロをなくせないことは、今や明らかであります。

 アフガニスタンでは、カルザイ大統領自身が、空爆に反対し、タリバンを含む武装勢力との交渉による平和と和解のプロセスに踏み出しています。今、日本がなすべきことは、こうした和平プロセスを支援する外交努力であり、アメリカに戦争をやめよときっぱり言うことであります。

 ブッシュ政権がいまだに軍事力による打開に固執している中で、軍隊を派兵している同盟国からも、軍事中心の手法から和解を促進させる戦略に重点を移すべきだ、大幅な方向転換が必要だという声が上がっています。軍事支援に固執し自衛隊を再派兵することは、こうした変化を全く見ないものであり、まさにアメリカ追随のきわみと言わなければなりません。

 こうしたもとで、どの世論調査でも、給油活動に反対が賛成を上回っているのであります。しかも、審議をすればするほど反対の声が高まっている実態を、国民の理解と協力を得て進めると繰り返し述べてきた福田総理と与党が無視することは、断じて許されません。

 今、国民が求めているのは、日米軍事利権の徹底解明であります。輸送機などの兵器調達、米軍再編、ミサイル防衛など、守屋防衛事務次官のもとで進められてきた防衛政策そのものが根幹から腐敗にまみれているのであります。油を出すよりも腐敗と疑惑のうみを出せというのが、まさに国民の声であります。

 以上、本法案は、六年間に及ぶ米軍戦争支援の実態に照らしても、アフガニスタンの現実や国際社会の変化からいっても、また国民多数の世論から見ても、全く道理はありません。憲法九条に違反し、アメリカ言いなりで、米軍の軍事支援に固執することはやめるべきです。

 新テロ法案否決という参議院の意思を重く受けとめ、きっぱり廃案にすることを重ねて主張し、再議決に反対する討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、先ほど参議院で否決されましたテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案の再議決を求める動議に対して、反対の討論を行います。(拍手)

 米国の始めた対テロ戦争への後方支援、兵たん活動であるインド洋上での無料の給油活動は、イラク戦争への転用疑惑も晴れぬまま、旧テロ特措法の期限切れをもってその任務を終了いたしました。しかし、政府は、そうした実態とかかわりなく、あくまで給油活動の継続、再開にこだわり、新法案を国会に提出したのがこの間の経緯です。

 その法案は、先ほどの参議院で否決され、海上自衛隊の活動終了という意思がここにはっきりと下されました。政府は、この参議院での議決を尊重し、民意を受けとめ、給油活動再開のための法制定を断念し、新たなアフガニスタン復興支援のあり方について、広く中東全域の平和の再構築も含めて検討を始めるべきです。今、あえて衆議院で再可決してまで給油活動を急ぐ必要は全くないのです。

 ブッシュ政権の六年にわたる不朽の自由作戦は、既に九・一一テロを上回る空爆による民間人の犠牲者を生みながら、今なおビンラディンの所在も知れず、アフガニスタンの国土は荒れ果て、さらに著しい混乱と治安の悪化を生んでいます。テロリストを逮捕し、罰するために戦争以外の選択肢が本当になかったのか、アフガン、イラクと続いた対テロ戦争が、本当にテロを撲滅し、世界をより安全にしているのか、根本的な検証を行うべき時期であることは、皆さんもきっとそうお思いだと思います。

 また、本法案の審査に当たって表面化した防衛省をめぐるさまざまな問題は、いまだ何ら解明されておりません。旧テロ特措法制定時の責任者であった守屋前防衛事務次官の収賄容疑での逮捕など、防衛利権のやみ、自衛隊が給油した燃料のイラク戦への転用疑惑、さらには給油量の取り違えや航泊日誌の誤廃棄を含め、余りにもずさんきわまりない管理実態など、多くの問題の解明と再発防止をまず図らなくてはなりません。

 また、海上自衛隊の給油対象をテロリスト海上阻止活動に参加する艦船に限定する日本の条件の明文化を米政府が拒否しているとも伝えられており、提供した燃料が目的外に転用されないという保証は今後とも全くありません。拙速に給油活動を図ることなど断じて認めることはできません。

 加えて、この間のイラク・アフガニスタン戦争のために海外派遣された延べ二万人余の自衛隊員の中から、既に在職中に十六人の自殺者が出ていることも極めて深刻に受けとめるべきです。国論の分かれた中で再び任務につかざるを得ないとすれば、隊員の苦悩は想像にかたくありません。政府の説明責任と情報公開のあり方、国会の関与のあり方とシビリアンコントロールの問題、さらには自衛隊員の真の人権保障など、重大な論点が山積しており、衆議院での再議決どころか、法案審査の前提条件を全く欠いたままだと言わざるを得ません。

 衆議院の三分の二を超える与党の議席は、郵政民営化を争点とした選挙の結果によるものであり、直近の民意は、野党が多数を占める参議院にあることは明らかです。加えて、憲法五十九条にあるとおり両院協議会を開き、意見の一致を図る努力もせず、いきなり衆議院の再議決によってこれを覆すことは、二院制の本旨に照らしても断じて認めることができません。

 核拡散防止条約に加入することのないインドで原子力発電の承認問題が起き、また、パキスタンの不穏な情勢は皆さんよく御承知おきのことと思います。今、日本がなすべきことは、この核軍縮と世界平和の構築という大きな視点の中に立って何をなすべきかを、まずこの国会が論ずべきことだと思います。

 以上をもって私からの反対討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 大島理森君外百三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本動議は可決されました。

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 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案、本院議決案

議長(河野洋平君) テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案の本院議決案を議題といたします。

 直ちに採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 本案はさきに本院において議決のとおり再び可決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(河野洋平君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(河野洋平君) 投票総数四百七十三。

 本投票の三分の二は三百十六であります。

 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

  可とする者(白票)       三百四十

  否とする者(青票)       百三十三

議長(河野洋平君) 右の結果、本案は、出席議員の三分の二以上の多数をもって、さきの議決のとおり再び可決いたしました。(拍手)

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 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案、本院議決案を可とする議員の氏名

あかま 二郎君   安次富  修君   安倍  晋三君   阿部  俊子君

逢沢  一郎君   愛知  和男君   赤池  誠章君   赤城  徳彦君

赤澤  亮正君   秋葉  賢也君   麻生  太郎君   甘利   明君

新井  悦二君   井澤  京子君   井上  喜一君   井上  信治君

井脇 ノブ子君   伊藤  公介君   伊藤 信太郎君   伊藤  忠彦君

伊藤  達也君   伊吹  文明君   飯島  夕雁君   石崎   岳君

石田  真敏君   石破   茂君   石原  伸晃君   石原  宏高君

稲田  朋美君   稲葉  大和君   猪口  邦子君   今井   宏君

今津   寛君   今村  雅弘君   岩永  峯一君   岩屋   毅君

宇野   治君   上野 賢一郎君   浮島  敏男君   臼井 日出男君

江崎  鐵磨君   江崎 洋一郎君   江渡  聡徳君   江藤   拓君

衛藤 征士郎君   遠藤  武彦君   遠藤  利明君   遠藤  宣彦君

小川  友一君   小此木 八郎君   小里  泰弘君   小野  次郎君

小野  晋也君   小野寺 五典君   小渕  優子君   尾身  幸次君

越智  隆雄君   近江屋 信広君   大島  理森君   大塚  高司君

大塚   拓君   大野  松茂君   大野  功統君   大前  繁雄君

大村  秀章君   太田  誠一君   岡下  信子君   岡部  英明君

岡本  芳郎君   奥野  信亮君   加藤  勝信君   加藤  紘一君

嘉数  知賢君   鍵田 忠兵衛君   梶山  弘志君   片山 さつき君

金子  一義君   金子 善次郎君   金子  恭之君   上川  陽子君

亀井 善太郎君   亀岡  偉民君   鴨下  一郎君   川崎  二郎君

川条  志嘉君   河井  克行君   河村  建夫君   瓦    力君

木原  誠二君   木原   稔君   木村  太郎君   木村  隆秀君

木村   勉君   木村  義雄君   岸田  文雄君   北川  知克君

北村  茂男君   北村  誠吾君   久間  章生君   倉田  雅年君

小池 百合子君   小泉 純一郎君   小坂  憲次君   小島  敏男君

小杉   隆君   木挽   司君   古賀   誠君   後藤  茂之君

後藤田 正純君   河野  太郎君   河本  三郎君   高村  正彦君

近藤 三津枝君   近藤  基彦君   佐田 玄一郎君   佐藤  剛男君

佐藤   勉君   佐藤 ゆかり君   佐藤   錬君   斉藤 斗志二君

坂井   学君   坂本  剛二君   坂本  哲志君   桜井  郁三君

櫻田  義孝君   笹川   堯君   清水 鴻一郎君   清水 清一朗君

塩崎  恭久君   塩谷   立君   七条   明君   実川  幸夫君

篠田  陽介君   柴山  昌彦君   島村  宜伸君   下村  博文君

新藤  義孝君   菅   義偉君   菅原  一秀君   杉浦  正健君

杉田  元司君   杉村  太蔵君   鈴木  馨祐君   鈴木  俊一君

鈴木  淳司君   鈴木  恒夫君   関   芳弘君   薗浦 健太郎君

園田  博之君   田中  和徳君   田中  良生君   田野瀬良太郎君

田村  憲久君   平   将明君   高市  早苗君   高木   毅君

高鳥  修一君   竹下   亘君   竹本  直一君   武田  良太君

武部   勤君   棚橋  泰文君   谷   公一君   谷垣  禎一君

谷川  弥一君   谷畑   孝君   谷本  龍哉君   中馬  弘毅君

津島  雄二君   土屋  品子君   土屋  正忠君   寺田   稔君

とかしきなおみ君   戸井田とおる君   渡海 紀三朗君   土井   亨君

土井  真樹君   徳田   毅君   冨岡   勉君   中川  昭一君

中川  秀直君   中川  泰宏君   中谷   元君   中根  一幸君

中野   清君   中野  正志君   中森 ふくよ君   中山  太郎君

中山  成彬君   中山  泰秀君   仲村  正治君   永岡  桂子君

長崎 幸太郎君   長島  忠美君   長勢  甚遠君   並木  正芳君

二階  俊博君   丹羽  秀樹君   丹羽  雄哉君   西川  京子君

西川  公也君   西野 あきら君   西村  明宏君   西村  康稔君

西銘 恒三郎君   西本  勝子君   額賀 福志郎君   根本   匠君

野田  聖子君   野田   毅君   葉梨  康弘君   萩生田 光一君

萩山  教嚴君   萩原  誠司君   橋本   岳君   馳    浩君

鳩山  邦夫君   浜田  靖一君   早川  忠孝君   林    潤君

林   幹雄君   林田   彪君   原田  憲治君   原田  令嗣君

原田  義昭君   平井 たくや君   平口   洋君   平沢  勝栄君

平田  耕一君   広津  素子君   深谷  隆司君   福井   照君

福岡  資麿君   福田  峰之君   福田  康夫君   福田  良彦君

藤井  勇治君   藤田  幹雄君   藤野 真紀子君   二田  孝治君

船田   元君   古川  禎久君   古屋  圭司君   保坂   武君

保利  耕輔君   細田  博之君   堀内  光雄君   馬渡  龍治君

牧原  秀樹君   増原  義剛君   町村  信孝君   松島 みどり君

松浪 健四郎君   松浪  健太君   松野  博一君   松本   純君

松本  文明君   松本  洋平君   三ッ林 隆志君   三ッ矢 憲生君

三原  朝彦君   御法川 信英君   水野  賢一君   宮腰  光寛君

宮澤  洋一君   宮路  和明君   宮下  一郎君   武藤  容治君

村上 誠一郎君   村田  吉隆君   望月  義夫君   茂木  敏充君

盛山  正仁君   森   英介君   森   喜朗君   森山   裕君

森山  眞弓君   やまぎわ大志郎君   矢野  隆司君   谷津  義男君

安井 潤一郎君   保岡  興治君   柳澤  伯夫君   柳本  卓治君

山内  康一君   山口  俊一君   山口  泰明君   山崎   拓君

山中  あき子君   山本  明彦君   山本  公一君   山本  幸三君

山本   拓君   山本ともひろ君   山本  有二君   与謝野  馨君

吉川  貴盛君   吉田六左エ門君   吉野  正芳君   若宮  健嗣君

渡辺  具能君   渡辺  博道君   渡辺  喜美君   渡部   篤君

赤羽  一嘉君   赤松  正雄君   井上  義久君   伊藤   渉君

池坊  保子君   石井  啓一君   石田  祝稔君   上田   勇君

漆原  良夫君   江田  康幸君   遠藤  乙彦君   大口  善徳君

太田  昭宏君   神崎  武法君   北側  一雄君   佐藤  茂樹君

斉藤  鉄夫君   坂口   力君   田端  正広君   高木 美智代君

高木  陽介君   谷口  和史君   谷口  隆義君   富田  茂之君

西   博義君   東   順治君   福島   豊君   冬柴  鐵三君

古屋  範子君   桝屋  敬悟君   丸谷  佳織君   鈴木  宗男君

玉沢 徳一郎君   中村 喜四郎君   西村  真悟君   平沼  赳夫君

否とする議員の氏名

安住   淳君   赤松  広隆君   池田  元久君   石川  知裕君

石関  貴史君   泉   健太君   市村 浩一郎君   岩國  哲人君

内山   晃君   枝野  幸男君   小川  淳也君   小沢  鋭仁君

大串  博志君   大島   敦君   大畠  章宏君   太田  和美君

逢坂  誠二君   岡田  克也君   岡本  充功君   奥村  展三君

加藤  公一君   金田  誠一君   川内  博史君   川端  達夫君

菅   直人君   吉良  州司君   黄川田  徹君   菊田 真紀子君

北神  圭朗君   楠田  大蔵君   玄葉 光一郎君   小平  忠正君

小宮山 泰子君   小宮山 洋子君   古賀  一成君   後藤   斎君

郡   和子君   近藤  昭一君   近藤  洋介君   佐々木 隆博君

笹木  竜三君   階    猛君   篠原   孝君   下条  みつ君

神風  英男君   末松  義規君   鈴木  克昌君   仙谷  由人君

園田  康博君   田島  一成君   田嶋   要君   田名部 匡代君

田中 眞紀子君   田村  謙治君   高井  美穂君   高木  義明君

高山  智司君   武正  公一君   津村  啓介君   筒井  信隆君

寺田   学君   土肥  隆一君   中井   洽君   中川  正春君

仲野  博子君   長島  昭久君   長妻   昭君   長安   豊君

西村 智奈美君   野田  佳彦君   羽田   孜君   鉢呂  吉雄君

鳩山 由紀夫君   原口  一博君   伴野   豊君   平岡  秀夫君

福田  昭夫君   藤井  裕久君   藤村   修君   古川  元久君

古本 伸一郎君   細川  律夫君   細野  豪志君   馬淵  澄夫君

前田  雄吉君   前原  誠司君   牧   義夫君   松木  謙公君

松野  頼久君   松原   仁君   松本  大輔君   松本  剛明君

松本   龍君   三日月 大造君   三谷  光男君   三井  辨雄君

村井  宗明君   森本  哲生君   山岡  賢次君   山口   壯君

山田  正彦君   山井  和則君   柚木  道義君   横光  克彦君

横山  北斗君   吉田   泉君   笠   浩史君   鷲尾 英一郎君

渡辺   周君   渡部  恒三君   赤嶺  政賢君   石井  郁子君

笠井   亮君   穀田  恵二君   佐々木 憲昭君   志位  和夫君

塩川  鉄也君   高橋 千鶴子君   吉井  英勝君   阿部  知子君

菅野  哲雄君   重野  安正君   辻元  清美君   照屋  寛徳君

日森  文尋君   保坂  展人君   糸川  正晃君   亀井  久興君

下地  幹郎君   綿貫  民輔君   江田  憲司君   滝    実君

横路  孝弘君

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       国務大臣  町村 信孝君


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