衆議院

メインへスキップ



第9号 平成20年3月13日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十年三月十三日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  平成二十年三月十三日

    正午開議

 第一 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件

 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 日程第一 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)


このページのトップに戻る

    午後零時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件

議長(河野洋平君) お諮りいたします。

 内閣から、

 日本銀行総裁に武藤敏郎君を、

 同副総裁に白川方明君及び伊藤隆敏君を

任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 討論の通告があります。順次これを許します。中川正春君。

    〔中川正春君登壇〕

中川正春君 民主党の中川正春です。

 ただいま議題となりました国家公務員の任命につき同意を求めるの件につき、意見を申し述べます。(拍手)

 まず、日銀総裁候補の武藤敏郎氏については同意をしない。同じく副総裁候補の白川方明氏については同意をします。また、同じく副総裁候補の伊藤隆敏氏については同意をしないということであります。

 その理由を申し上げる前に、今回の人事案件に対する政府・与党の誤った対応について一言申し上げます。

 福田総理は、一体いつになったら、参議院では与野党逆転をしていて、その現実が理解できるのか、予算関連の旧態然とした対応も含めて、猛省を促したいと思います。

 政策決定プロセスに野党の意向を一切しんしゃくすることなく、政府と与党だけですべてを決定する。さらに、一たん国会の場に提出された法案や人事案件は、一切の修正を受け付けずに強行採決で通してしまうという従来型の与党独裁型国会運営、これをしていく限り、国会は行き詰まってしまうということは火を見るより明らかであります。

 今回の人事案件がそのすべてを象徴していると言えます。十九日の総裁任期切れ間際に提出してきたこと、さらに、私たち野党は、今回の武藤総裁候補が五年前に副総裁に任命されたときに、これに反対をしているのであります。私たちが今回もこれに賛成しないということが事前に予期できたにもかかわらず、あえてそうした候補者を提案するに至ったことは、一体どのような了見なのか。福田総理がもし参議院の逆転を理解しているのだとすれば、ここであえて政治的に対立の構図をつくり出すということはなかったはずであり、今回の混乱は、いちずに政府・与党の傲慢と国会の現実を理解することのできない与党のリーダーたちの責任であるということを指摘したいと思います。

 日銀総裁の任命に当たり、我々が事前に与党の人選に期待したことは、次の三点であります。

 第一に、市場と対話ができ、金融理論と現場に精通をしているということ、第二に、日銀の独立性を保てる、その力があるということ、第三に、国際金融市場に精通をして、存在感を持って日本の国益にかなった主張ができる、そうした力量がある人物であるべきだということであります。今回の人事は、この三つの条件を十分には満たしていなかったという結論であります。

 さらに、具体的に指摘をしていきたいというふうに思います。

 日銀と財務省の出身者が交互に総裁ポストにつくという従来からの悪弊、たすきがけ人事がベースになっていて武藤氏の人選がなされたのではないかという懸念があります。高度な専門性とその道で鍛えられた実践的な判断力を求められる金融の世界に、旧態然としたポストのたらい回しがいまだに行われるとすれば、これは直ちに改めるべきであります。

 さらに、先般行われた武藤氏との直接の議論で幾つか感じられたことがあります。

 一つは、日本の過去の金融政策、とりわけ、一九八五年のプラザ合意以降、日本がバブルに突入し、それが崩壊する過程に議論が及ぶ中で、当時の財政金融政策に対する反省が武藤氏にはないのであります。実際には、アメリカからの圧力で、バブルにつながる過剰流動性を日銀は財務省とともに起こしてしまった。しかし、当時の政策責任者たちは、ここで、アメリカからの圧力をアメリカとの協調という言葉に置きかえてしまったわけであります。財務省官僚の問題点が指摘をされるとすれば、まさにこの主体性の欠落であり弱さなのであります。武藤氏にも同じような体質が流れているのではないかと懸念をされるところであります。

 さらに、地方も含めて七百七十兆円という巨額の長期債務を許してきた財務省で、ミスター財務省と言われるほど中心的な役割を担ってきた武藤氏であります。異常な国債発行の原因を、その時々の政治判断、言いかえれば政治家の責任だとして、それを回避する手段はなかったと説明する武藤氏の言葉に、私は非常に違和感を持ったのであります。

 例えば、当時の実務担当者が財投資金で国債を買い支えることに異議を唱え、さらに日銀の判断で国債の買い切りオペを自粛することが行われれば、大量の国債を市場だけで消化することが困難になり、長期金利が上昇することになります。しかし、大局的には、それが逆に、財政政策の責任者にとってはこれ以上の国債は発行できないんだという危機感につながっていくわけであります。政治や国民の意識を本気で財政再建へと向かわせるきっかけをつくる可能性にもつながったはずであります。

 もし武藤氏がこれからも大量の国債買い切りオペを継続することで財政当局の国債管理を助けるとするならば、その判断は日銀トップにはふさわしくないのであります。日銀は、国債を買い支えることによって財務省のモラルハザードを助長し、財政破綻の解決を先送りしているのであります。

 日銀の独立性とは、アメリカなどを中心にした国際環境も含めて、政治的な圧力に対して、日本の本来の国益を守るために毅然とみずからの専門的識見を主張することができるかどうか、このことにかかっております。政治との調整能力を評価される武藤氏の資質とは異質のリーダーシップを私たちは新しい日銀総裁に求めていきたいと思っております。

 伊藤隆敏君については、これまでインフレターゲット論や日銀による長期国債買い入れ増額、ETFやREITの買い入れ等、日銀の金融政策として必ずしも有効性が担保されていない政策手段を積極的に主張し、今後も主張していくとの立場を変えていません。したがって、伊藤隆敏君についても同意することはできないということであります。

 最後に、国会の現状打開には、与野党の十分な話し合いが必要だという議論があります。私も賛成であります。財務金融委員会の現場で、具体的な提案をしました。しかし、残念なことに、与党の反応はすべてがゼロ回答でありました。

 与野党が基本的な政策を対峙させて勝負をしていくというのは、解散・総選挙を前提にした政策論争で、これは国民の理解も得られるところであります。しかし、その他、日常生活にかかわる多くの問題については、与野党のコンセンサスが必要な場面であります。対立したままでは参議院を通過しないと一たん割り切ることができれば、与党からまた違った対応が出てくるはずだと私は信じております。

 法案の修正や野党政策の丸のみなど、ぜひこれまでとは違った与党の対応を見せてもらいたい。特に、それぞれの委員会現場で与党の柔軟な対応が出てくることが、私たちの国会機能が国民の信頼をかち得ていくために欠かせないことなんだということをここで指摘をし、与党の対応に淡い期待を持って、討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 根本匠君。

    〔根本匠君登壇〕

根本匠君 自由民主党の根本匠であります。

 私は、自由民主党及び公明党を代表し、日銀総裁等の人事案件につきまして、賛成の討論を行うものであります。(拍手)

 以下、賛成する主な理由を申し述べます。

 その第一の理由は、国会同意人事の制度的性格によるものであります。

 国会同意人事は、内閣に対し独立の地位を有する機関、中立性が求められる合議制機関などの構成員を任命することについて、国会の同意を必要とする制度であります。任命権は政府、すなわち行政府に属するものであり、三権分立及び議院内閣制の趣旨からすれば、法案や条約の審査、総理の指名といった立法府の本来の機能とは異なり、国会の役割はあくまで行政に対するチェック機能を果たすことにあります。

 したがって、両議院は、政府の任命権を尊重し、政府の人事権の濫用を防ぐためにやむを得ない場合にのみ不同意とするなど、抑制的に権限を行使すべきものであります。本件につきましては、不同意の合理的な理由が全く見当たりません。

 賛成する第二の理由は、武藤氏が日本銀行総裁に最適の人材であるということであります。

 元財務事務次官の武藤氏について、民主党は、いわば財務省そのものであり、いわゆる財金分離の観点から、武藤氏が日本銀行総裁となることは不適当と主張しておられます。

 しかしながら、財金分離は、中央省庁改革の際、財政政策と金融監督、金融行政の分離という意味で使われたものであります。その点では、日本銀行の金融政策と直接の関係はなく、中央省庁改革で旧大蔵省から金融庁が独立した時点で解決済みであります。

 本件は、むしろ日本銀行の独立性の問題と考えるべきであります。ただし、日本銀行の独立性については、改正後の日銀法第三条により独立性が確保され、かつ金融政策の決定は合議制の機関である政策委員会にゆだねられ、独立性については確実に担保されております。

 したがって、日銀総裁及び副総裁の人選に際しては、出身母体や経歴にとらわれず、中央銀行の司令塔として職責を全うし得る人物か否かという観点から行うべきだと考えております。現に、欧米では、財務当局経験者が就任する例が少なくありません。

 武藤氏は、一昨日の所信聴取において、日本銀行の独立性をしっかりと確保していく、一〇〇%日銀の立場で物を考えてきた、与えられた職責に忠実に全力を尽くすことが自分の職業倫理と述べるなど、日銀の独立性を規定した日銀法の趣旨にのっとって職責を果たしていく決意を明確に示されました。

 また、武藤氏の五年間の日本銀行副総裁としての実績がこれを証明しており、国際会議への出席など国際経験も豊富であります。内外の金融市場の状況が極めて厳しい中、安定感もあり、次期日本銀行総裁として最適の人物であります。

 国会同意人事案件については、第一の理由の制度的性格の観点からさらに、従来より、総理指名と異なって、政治的な要素を含まないとされてきた経緯があります。武藤氏は日銀総裁に最適の人物であるにもかかわらず、財務省出身というだけではなから不同意では、まさに党利党略であり、到底納得できません。

 賛成する第三の理由は、日本銀行総裁及び副総裁の候補者三名は、最適の人材となっていることであります。

 民主党は、三名のうち、副総裁候補の白川方明氏のみを同意するとの判断を示しております。しかしながら、白川氏は、福井総裁及び武藤副総裁のもとで金融政策担当の理事を務め、金融政策の枠組みを構築する上で理論的支柱となった人物であります。武藤氏に対し、日本銀行副総裁として低金利政策を進めたことなどを批判している民主党が、武藤氏のもとで理事として執行部を支えた白川氏の副総裁任命に同意したことについては、一貫性を欠くものと言わざるを得ません。

 また、副総裁候補の伊藤隆敏氏は、国際的に極めて評価の高い一流の経済学者であって、改革意欲に富む、すぐれた人材であります。伊藤氏は、所信聴取において、金融政策の透明性確保や向上の重要性を強調しており、なぜ伊藤氏が否定されるのか、到底理解できるものではありません。

 武藤氏、白川氏、伊藤氏は、それぞれに、今日、日銀に必要とされる十分な資質を持ち合わせており、武藤総裁を中心とするとき、さらに高い総合力を発揮できる人選であります。ぜひとも、三者一体として評価していただきたいと考えております。

 以上、本案に賛成する理由を述べました。

 最近の報道等を見れば、内外を通じて、今回の人選は適切なものとして評価をされております。中でも武藤氏については、市場関係者を中心に、その経験、実績やバランスのとれた判断力、安定感が高く評価されております。その意味で、いわば、政府が提示した三名は、新聞各紙の論調からも明らかなように、世論の後押しを受けた候補と言うことができます。

 これに対し、民主党の対応については、これを強く批判し、こうした事態を招いた責任の多くは民主党にあると指摘し、参議院第一党としての冷静かつ責任ある対応を求めております。

 本件が与野党間の政争の具とされ、日銀総裁が空席となることへの国民の懸念は非常に強く、そうした事態となれば、日本売りの材料となることは必定であります。

 政治的な思惑を捨て、国民の声に十分に耳を傾け、最適の人材を任命することが我々議員の責務であります。提示された三名について、速やかに本院の同意が得られることを求めるとともに、与野党協議を通じ、空白が生じないよう、野党諸君の冷静なる判断を求め、私の賛成討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 日本共産党を代表し、日本銀行総裁、副総裁の国会同意人事に対する討論を行います。(拍手)

 日本銀行は、通貨・金融政策の最高の意思決定機関であります。その総裁、副総裁は、金融に関する専門的知識を備え、国民的視点に立ち、一定の自主性、機動性を持って的確な政策判断ができる人物でなければなりません。

 この立場から、今回提示された人事案に対する見解を述べます。

 まず、武藤敏郎副総裁の総裁昇格案についてであります。

 武藤氏は、二〇〇〇年から大蔵省、財務省の事務次官を務め、五年前に日銀副総裁に就任しました。この間、貧困と格差を拡大してきた構造改革路線、経済財政政策に重大な責任を負ってきた方であります。日銀の副総裁となってからは、不良債権処理を加速化させる政府の政策を後押しし、数多くの中小企業を廃業、倒産の危機に追い込む要因をつくったのであります。アメリカの圧力のもと、ゼロ金利政策や超金融緩和政策などで日本の金融を極めて異常な状態にしてきた責任も重大です。

 一昨日、議院運営委員会の質疑で、私は、一九八五年九月のプラザ合意後にとられた超低金利政策について、武藤氏の見解をただしました。当時、政府、日銀は、アメリカのドル高是正に協力する円高誘導政策とともに、公定歩合を五%から二・五%に引き下げ、それを二年間も続けたのであります。それがバブルをあおり、家計所得を奪ったことは、だれも否定できない事実であります。

 ところが、武藤氏は、聴聞で、低金利と公共投資拡大という政策は正しかったとの態度を表明したのであります。これは、国民生活と日本経済を重大な事態に陥れた政策上の反省が全くないことを示すものであります。

 また、武藤氏が財務次官だった二〇〇二年十二月、財務省が日銀に対し国債の買い入れ増を要請し、そのため、事もあろうに日銀券発行の歯どめを外すことを求めたのであります。財政規律から見ても、日銀の役割にも重大な疑問を投げかけるこの行為について、武藤氏は、デフレスパイラルを正すためにあらゆることをやる、真っ当だと言えないこと、異例だということをやることもあると述べたのであります。

 さらに、武藤氏は、社会保障費抑制路線を推進したことも問題であります。

 武藤氏が財務事務次官としてかかわった二〇〇二年度予算で、社会保障の自然増を三千億円抑制し、それを契機に社会保障の自然増を毎年二千二百億円圧縮する路線が敷かれたのであります。一昨日の質疑で、武藤氏は、これを当然視し、財務省の事務方のトップとしてやってきた国民犠牲の政策について全く反省がなかったのであります。

 このような方が、国民経済の健全な発展を責務とする日銀総裁にふさわしくないことは明白であります。

 なお、伊藤隆敏氏について言えば、経済財政諮問会議の民間四議員の一人として、財界代表メンバーとともに弱肉強食の構造改革論を推進してきた方であります。また、インフレターゲットの導入を強く主張してきました。この主張は、日本経済を危険な事態に導きかねないものであります。したがって、伊藤氏を副総裁に任命することは到底認めるわけにはいきません。

 白川方明氏は、日本銀行の理事として、ゼロ金利政策や量的緩和政策の一端を担ってきた経緯があり、日銀、政府の金融政策への明確な批判的見地を見出すことができません。従来の枠を出ることが明白でない以上、副総裁として賛成しがたいものがあります。

 最後に一言申し上げたい。

 この間、政府は、提案した人事案をのむよう野党に求め、日銀総裁に空白が生じてもいいのかと批判してきました。しかし、出された人事案に賛否の態度を明らかにするのが議会、議員の役割であります。賛成しないのはけしからぬと言うなら、議会政治は成り立ちません。

 そのような威圧的な態度を改め、野党が賛成し得る案を提示することこそ、政府のなすべき対応であります。このことを指摘して、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました同意人事案件につきまして、意見表明を行います。(拍手)

 世界経済が不安定になり、日本経済の先行きも不透明な状況の中で、金融政策を担うリーダーである日本銀行総裁の任が今ほど強く求められているときはないと考えます。

 こうした中で、政府は武藤敏郎氏を総裁候補として提案されたのですが、武藤氏は、財務省の中心的担い手を長年務めてきており、財政と金融の分離、独立という立場から、到底容認できません。

 そもそも、武藤氏は財務省の責任者として、社会保障費の自然増を三千億円削減し、その後の五年間の毎年二千二百億円削減の先鞭をつけました。この削減策によって医療崩壊が進み、介護や福祉施策は大幅に後退を余儀なくされました。そもそも、日本銀行の最大の目的は物価の安定です。物価の安定は国民生活の安定に裏打ちされねばならず、社会保障の充実抜きに、国民生活の安定や、とりわけ重要な内需の拡大は実施し得ません。

 また、日銀が行ってきたゼロ金利政策、量的緩和策によって預貯金者がこうむった逸失金額は、何と三百兆円を超えています。加えて、広がる地方の格差にも全く思いが及ばない方であり、日銀総裁にはふさわしくないと断言せざるを得ません。

 副総裁候補である伊藤隆敏氏は、一昨年九月から経済財政諮問会議の委員を務めておられます。同会議は、偽装請負や日雇い派遣を生み出す労働政策を初め、農業自由化などを推進してきました。非正規就労の急激な増加は、国民年金や国民健康保険を空洞化させ、社会保険制度そのものを危機に陥れるという今日の最悪の事態を生み出したのです。加えて、さきの質疑でも、社会保障費削減についての認識も国民の実感とは遠くかけ離れており、適任とは言えません。

 伊藤氏は、インフレターゲティング論を今日も主張されています。極端な政策によってデフレを脱却させるというのは副作用も含めて考える必要があり、この点からも伊藤氏は副総裁にはふさわしくないと言わざるを得ません。

 最後に、日銀総裁、副総裁にこうした経緯のある両氏を、しかも任期まで残りわずかというこの時期に提案すること自体、政府の見識を疑わざるを得ません。本院におきましても、参議院同様、きっぱりと両氏の任命には同意できないことを明らかにすべきであることを訴え、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 内閣からの申し出中、

 まず、

 日本銀行総裁に武藤敏郎君を、

 同副総裁に伊藤隆敏君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 日本銀行副総裁に白川方明君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

議長(河野洋平君) お諮りいたします。

 内閣から、

 宇宙開発委員会委員

 社会保険審査会委員長及び同委員

及び

 公害健康被害補償不服審査会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 内閣からの申し出中、

 まず、

 宇宙開発委員会委員に森尾稔君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に町田和子君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 社会保険審査会委員長に根本眞君を、

 同委員に矢野隆男君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長竹本直一君。

    ―――――――――――――

 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔竹本直一君登壇〕

竹本直一君 国土交通委員長の竹本直一でございます。

 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、道路整備費の財源の特例措置を改め、その適用期間を十年間延長する等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 まず第一に、平成二十年度以降十年間は、揮発油税等の収入額の予算額を毎年度道路整備費に充てることとし、当該予算額が各年度において道路整備費を上回る場合には、必ずしも道路整備費に充てる必要はないものとすること、

 第二に、道路整備事業の地方の負担の軽減を図るため、無利子の資金を貸し付ける地方道路整備臨時貸付金制度を創設すること、

 第三に、高速道路の利用者等の利便を増進し、その負担の軽減を図るため、高速道路株式会社による高速道路料金の引き下げとスマートインターチェンジ等の整備を目的として、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の債務を政府が承継すること

などであります。

 本案は、去る二月二十一日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、翌二十二日冬柴国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、同日福田内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行いました。二十七日には参考人からの意見聴取を行い、昨三月十二日質疑を終了いたしました。質疑終了後、討論を行い、採決いたしました結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。順次これを許します。長安豊君。

    〔長安豊君登壇〕

長安豊君 長安豊でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場で討論を行います。(拍手)

 本法案は、道路をこれまでどおりにつくり続けるために、国民からの血税を、道路特定財源という、道路族と道路官僚に使い勝手のよい財布に流し込む仕組みをさらに十年にわたって温存しようという、時代錯誤的な希代の悪法であります。真に国の未来を思い、国民の生活を思う政治家は、毅然としてこれに反対すべきであります。

 以下、反対の理由を申し述べます。

 まず第一に、立法の精神として、日本を取り巻く経済社会情勢の変化に対する認識が決定的に欠如しています。

 少子高齢化が進行し、日本経済の成長力が低下する中で、これまでの道路整備のあり方を見直し、変革していこうという志が全く見られません。政府は、今をさかのぼること二十年余り、我が国がバブル経済と呼ばれた時代に定めた四全総における一万四千キロの高速道路建設を、いまだ無分別に続けようとしているのです。道路栄えて国滅ぶという、まさにこのことであります。

 現実に、立派な道路が開通する傍ら、そこに住む人は減り、病院はなくなり、地域の活力が失われている例は枚挙にいとまがありません。今必要なことは、道路特定財源を死守することにきゅうきゅうとするのではなく、どうしたら国民が幸せになるのかを考え、そのために必要な最善の資源配分を考えるということであります。これは、一般財源化によってこそ実現できることであります。

 第二に、今後の我が国の道路整備を考える議論の前提として、日本が国家としてどのように国土開発を行い、インフラを整備していくのかというグランドデザインが欠如していることです。

 人や物の効率的な移動にかかわるインフラには、鉄道や空港、港湾など、道路以外にも多様な手段があります。道路整備が格段におくれていた道路特定財源制度草創期と現在では、私たちを取り巻く経済社会環境は大きく変化しています。今の政府には、その変化を踏まえ、総合的な交通体系を発想する意欲も能力も全くありません。過去の計画の延長と焼き直しの発想で道路をつくり続けるのではなく、地域に暮らす人と環境に優しい交通体系を再構築することこそ、国民が我々政治家に求めていることであります。

 第三に、今後十年間もの間にわたって暫定税率を延長し、国民に多大な負担を強いる法案であるにもかかわらず、その根拠となる道路の中期計画に算定されている事業量の根拠は全く薄弱であります。

 まず、当初六十五兆円であった事業量が、政府・与党合意によって瞬く間に五十九兆円に減額されたそのいいかげんさには耳を疑いました。法案審議の中でも、合理的な説明は何らなされず、つじつま合わせに官僚が四苦八苦していたというのが実態であります。

 さらに、高規格幹線道路のBバイCを算出するに当たって使用された数値の古さ、算定の恣意性など、計画そのものの信頼性を大きく損なうような事実も次々に明らかになりました。客観的な数値を装いながら、全路線が建設されるように数値をもてあそぶのは、国民を愚弄するに等しく、このようないいかげんな中期計画をもとに、暫定と称して国民に多大な負担を強いることは許されません。

 第四に、道路特定財源の一般財源化の方向性が完全に放棄されていることです。

 道路整備で余ったお金を申しわけ程度に一般財源化するというだけでなく、過去に一般財源化した分については後年度に道路整備に優先して使用できるという、巧妙な道路財源の埋蔵金化が仕組まれています。これはまさに一般財源化の偽装であり、改革の放棄にも等しいやり方であります。

 このような仕掛けをつくるのであれば、いっそのこと全額一般財源化したらいかがでしょうか。必要な道路は、堂々と一般財源から支出すればよいのです。教育であれ医療であれ、必要なもの、優先度の高いものを一般財源から支出するのに、何をためらう必要があるのでしょうか。一般財源化したら道路整備ができなくなると言っている政治家は、道路整備の必要性が低いことをみずから宣言しているに等しいことに気づかないのでしょうか。

 第五に、法案審議の過程で、道路特定財源の無駄遣いが次々と明らかになったことです。

 国土交通省関連の公益法人への天下り、随意契約、福利厚生と称した公金の私物化、口にするのも恥ずかしいような行為が綿々と続けられていたのです。こういった無駄遣いや組織の腐敗を是正することなく、今後十年もの間、暫定税率を維持し続けることに国民が納得すると本当に思っているのでしょうか。

 私は、今の日本は未曾有の危機にあると考えています。若者が将来に夢を持てず、子供を産み育てようという気持ちになれない現実は、長期的に見れば、日本が持続可能な国家ではないということを示しています。これからの十年は、再び日本が、日出る希望の国に戻ることができるか否かを決める大事な十年であります。そのような危機意識に立つとき、これまでと同じように、特定財源制度のもとで道路を優先的に整備していくということが正しい判断とは思えません。どんなに立派な道路をつくっても、それだけで人が幸せになり、国が成長するわけではありません。

 私は、一人の政治家として、今の子供たちに、そして生まれ来る子供たちに、成長と幸福の機会を残すことこそ政治の使命だと考えています。

 議員各位の賢明なる御判断を求め、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 穀田恵二君。

    〔穀田恵二君登壇〕

穀田恵二君 私は、日本共産党を代表して、道路財源特例法改正案について反対の討論を行います。(拍手)

 この二カ月間の国会の審議によって、国民の世論は大きく変化しました。道路特定財源は一般財源化して道路にも環境にも福祉にも使えるようにすべきだ、この声が国民の多数に広がっているのであります。

 ところが、本法案は、一般財源化を口にしながら、ガソリン税を道路財源に充てなければならないという大原則を一切変えていないのであります。その年度の道路整備の事業費を上回る税収があれば一般財源に充ててもよいというにすぎず、しかも、その使途は道路に関係する経費に限定し、一般財源に充てた分は翌年の道路整備費に充てなければならないというものであります。全くのごまかしであり、一般財源化を偽装する法案と言わなければなりません。

 福田内閣は、いまだにユーザーの理解を口実に特定財源の維持を主張していますが、安倍内閣のときには、今や八割の世帯が自動車を保有しており、ガソリン税の納税者は国民全体に及んでいるという認識を示しているのであり、この言い分は全く成り立ちません。もはや、一般財源化できない理由はどこにもありません。にもかかわらず、道路特定財源に固執する本法案は、断じて認められません。

 第二に、今後十年間にわたって、総額先にありきで道路財源の絶対量を確保しようとするものだからであります。

 もともと本特例法は、一九五三年に道路財源臨時措置法として制定され、以来、三年、五年の臨時、暫定措置をずるずる積み重ね、今日に至ったものであります。このことを全く反省せず、今回の法案は、事もあろうに、今後十年間にわたって、道路財源の絶対量を確保しようとしています。人口減少や資源の枯渇、地球温暖化など、経済社会情勢がいかに変化しようとも、道路財源だけは聖域として確保する、これは経済政策としても全く道理がありません。

 第三に、道路の中期計画の中心が高速道路の新設であり、際限のない高速道路建設を推し進めようとするものだからであります。

 審議で明らかとなったのは、総額五十九兆円の中期計画の中心が約四割を占める高速道路の新設であり、際限もなくつくり続けようとしていることであります。バブル期に策定された一万四千キロの高規格幹線道路、約七千キロもの地域高規格道路、さらには六本の海峡横断道路まであるのであります。冬柴大臣は、海峡横断プロジェクトの調査をやめると答弁しましたが、採算性も必要性もない無謀な海峡横断道路の計画そのものを中止すべきであります。

 こうした際限のない高速道路計画を国土形成計画の全国計画に位置づけることは、到底認められません。

 第四に、道路特定財源による高速道路の新設を中心とした道路政策が、地方自治体に巨額の借金を押しつけ、さまざまな困難をもたらしていることも審議ではっきりしました。

 地方自治体は、この間、地方交付税を削減され、過去の道路などの公共投資による借金を抱え、切実な生活道路の維持補修予算さえ削減せざるを得ないなど、深刻な事態が広がっています。その上、今後も、高速道路建設に伴う新たな借金を押しつければ、地方に一層の困難をもたらすことは明らかです。

 政府・与党は、道路特定財源がなくなれば、通学路の整備や踏切の改善ができなくなると言います。しかし、実際には、生活道路の整備費の大半が地方自治体の一般財源で賄われているのであります。地方自治体にとっては、道路特定財源を一般財源化してこそ、自治体みずからの判断で住民のために切実な生活道路の整備にも使うことができるのであります。

 特定財源によって自動的に高速道路ができていく仕組みを根本的に改め、その全額を道路にも福祉にも医療にも使える一般財源化すべきであることを主張し、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 保坂展人君。

    〔保坂展人君登壇〕

保坂展人君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、道路整備費財源等特例法改正案に反対の討論を行います。(拍手)

 社民党は、暫定税率は廃止の方向で見直し、そして道路計画は縮小し、とりわけ道路特定財源のあり方を根本的に変えるべきだと考えています。

 この法案をもって道路特定財源の一般財源化に踏み出すというのは、政策偽装にほかなりません。一般財源化した金額を翌年以降の道路財源につけ足していき、十年経過すれば、一般財源化した金額のすべてが逐次道路財源に吸収されてしまうトリックになっています。また、中期計画の五十九兆円の積算根拠、ろくろく説明がありません。また、六十五兆円から減額された経緯も十分な説明もありません。

 問題は、道路特定財源の使い道です。

 道路をつくれ、道路をつくれ、おれたちみんなの生きる道、車の走れる道路をつくれ、日本のあしたをつくる道と国民に呼びかけるミュージカルは、住民参加型道路広報事業という名で、全国百六カ所で随意契約で行われてきました。

 一体どこからワンステージ五百万円の予算が出ているのかを調べてみて、びっくりです。静岡は交通連携推進道路事業費、愛知は直轄道路維持修繕費、三重は一般国道直轄改修費、静岡は沿道環境改善事業費、香川は地域連携推進事業費、岩手は交通安全施設等整備費、新潟は道路事業調査費、石川は電線共同溝整備事業費、京都は道路調査費、大阪は交通円滑化事業費、兵庫は工事雑費であります。

 ここからわかるのは、国道事務所の財布はもうすべてごちゃごちゃで、どこからでもお金は出せる、上限もなければ基準もないということではありませんか。道路特定財源とは、不特定持ち出し財源、不特定何でもあり財源、不特定で遊びもできる財源ではありませんか。

 こうした国交省、道路官僚にとって自由自在に使える財布を、世界一高い道路コストを生んでいる既得権益そのものだと我々は考えます。よもや小泉元総理がこのような時代に逆行する法案に賛成されることはないでしょうということを申し上げて、私の反対討論にかえます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣  額賀福志郎君

       文部科学大臣  渡海紀三朗君

       厚生労働大臣  舛添 要一君

       国土交通大臣  冬柴 鐵三君

       環境大臣  鴨下 一郎君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.