衆議院

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第17号 平成20年4月4日(金曜日)

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平成二十年四月四日(金曜日)

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  平成二十年四月四日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 国土交通省設置法等の一部を改正する法律案

  (内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国土交通省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、国土交通省設置法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣冬柴鐵三君。

    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇〕

国務大臣(冬柴鐵三君) 国土交通省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 観光は、国内外における交流人口の増大により、我が国の地域経済を活性化させるとともに、国際的な相互理解を増進するものであります。観光立国の実現は、二十一世紀の我が国経済社会の発展のために不可欠な重要課題であり、平成十八年十二月には、観光立国推進基本法が衆議院、参議院ともに全会一致で成立しました。これを受け、政府では、昨年六月に観光立国推進基本計画を閣議決定いたしました。今後、この基本計画に基づき、観光立国の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に推進するためには、国全体として、官民を挙げて取り組む組織体制の整備が喫緊の課題となっております。

 また、昨今の公共交通機関における事故、トラブルを踏まえ、運輸安全対策の強化が求められています。国民が日々、安心して暮らしていくためには、安全、安心の確保が最重要課題であり、多様化、複雑化する陸海空の事故原因究明機能の高度化、原因関係者に対する勧告制度の創設等による事故再発防止機能の強化を図るため、組織体制を整備する必要があります。

 このため、この法律案を提案することとした次第であります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、国土交通省設置法について、国土交通省の外局として観光庁を設置することとしております。

 第二に、航空・鉄道事故調査委員会設置法について、題名を運輸安全委員会設置法に改め、国土交通省の外局として運輸安全委員会を設置し、同委員会は、陸海空にわたり事故原因究明を行うこととするとともに、事故等の原因関係者に対し勧告を行い、勧告に基づき講じた措置について報告を求めることができることとしております。

 その他、国土交通省の特別の機関として海難審判所を設置する等所要の規定の整備を行うとともに、関係法律について所要の改正を行うこととしております。

 以上が、国土交通省設置法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

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 国土交通省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。三日月大造君。

    〔三日月大造君登壇〕

三日月大造君 民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました国土交通省設置法等の一部を改正する法律案に対して質問をいたします。(拍手)

 四月一日から、揮発油税などの暫定税率が廃止され、ガソリン等が値下げされました。多くの消費者と納税者からは評価のお声をいただいております。

 一方で、厳しい競争のもとで、仕入れ分の暫定税率を負担しながら値下げに踏み切らなければならない全国のガソリンスタンドの経営支援対策は急務です。民主党は、ガソリンスタンド対策法案を提出し、ガソリンスタンドがかぶっている暫定税率分の税負担の還付措置などの緊急対策を提案しています。

 こうした事態になることがわかっていながら、三月末までに何の手も打たず、ただ責任を転嫁し、混乱を増長させている政府・与党の無責任な姿勢に対して、まず強く抗議をいたします。

 暫定税率が廃止されても、道路工事がなくなるわけではありません。私たちは、限られた財源を無駄なく、有効かつ必要な社会資本整備に投資をすること、国の基準による工事、国による配分ではなく、納税者や住民により身近な地方公共団体の財源と裁量を充実させ、道路整備などを行うことができる真の地方分権を実現すること、いわゆる新しい国の姿を提案いたしております。

 衆議院で再議決して暫定税率をもとに戻す、いわゆる増税を打ち出す前に、政府・与党として行うべきことは、第一に、福田総理の一般財源化の方針を閣議決定を行った上で法案として示すこと、そして第二に、相次ぐ無駄遣いを是正し、最新の推計に基づいた計画のつくり直しを行った上で、衆議院で議決され、現在参議院に送付されている道路整備費財源等特例法案を出し直すことではないでしょうか。

 政府の見解と方針について、官房長官の答弁を求めます。

 また、これまで苦しい答弁を強いられてきた冬柴国土交通大臣、総理から提案された一般財源化と特例法案及び道路中期計画との関係について、お考えを伺います。

 まず、観光庁の設置について伺います。

 観光は、歴史、文化、生活そのものであり、地域経済の発展にも寄与し得る、二十一世紀に可能性のある産業です。

 観光立国の実現という観点から、超党派の議員立法、全会一致で成立した観光立国推進基本法には、民主党として、第一に、単なる国際観光の振興だけではなく、それぞれの地域の住民こそが観光立国推進の主役に据えられるべき存在であること、第二に、単なる開発志向を戒めて、持続可能な活力や発展を目指した取り組みを推進すること、そして第三に、休暇制度の整備や観光教育の推進など、ソフト面の対策を充実させることなどを提案し、法律に反映させてまいりました。

 基本法制定時、委員会における決議に盛り込まれた「観光庁等の設置」を受けた今般の組織改正は、ある意味では時代の要請とも言えるでしょう。

 こうした経過と認識のもと、四点伺います。

 まず、今回の観光庁設置の意義と期待される役割は何か。行政組織の焼け太りではないかと批判もある中、行政改革の観点から具体的にどのような対応策を講じるのか、お答えをください。

 また、地方の予算を分け合う、時に奪い合う形となる、国土交通省所管の公益法人日本観光協会と都道府県との役割分担について、お互いの予算のあり方も含めて、今後どのように整理をされるのでしょうか。

 さらに、基本法制定時の決議項目のうち、観光庁設置以外の二点、旅館業を初めとした観光にかかわる中小企業の経営基盤確立のための施策の実施状況及び観光需要の創出、拡大のための休暇制度等の検討状況について、それぞれ現状と取り組み状況をお伺いいたします。

 運輸安全委員会の設置について、まず基本的な認識を伺います。

 厳しい労働条件の中、ミスを犯す人間が操作する公共交通の安全を確保するための、日本の事故調査、事故調査機関のあり方について、国として、政府としてどのように考えているのか、まずお答えください。

 これまで、インシデントを除く事故について、航空で千二百十七件、鉄道で百二十九件の調査が行われてきましたが、航空・鉄道事故調査委員会設置法に基づく勧告については、鉄道に対しては一件もなく、航空に関してのみで三件、そして建議については、航空十七件、鉄道五件、合計二十二件となっています。

 この状況から、事故調査機関と行政及び事業者との関係を、行政からの独立性の観点からどのように評価されていらっしゃるのか、お答えください。

 現行の航空と鉄道の事故調査に、海難の原因究明が統合されることが提案されています。このことのメリットとデメリットをどのようにとらえていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。

 私たち民主党は、公共交通の安全をつくり、守るため、かねてから日本の事故調査、事故調査機関のあり方について検討と提案を行ってまいりました。昨年の参議院選挙では、陸海空、自動車交通、物流も含めた安全管理の充実、事故被害者への支援の拡充、再発防止のための調査結果の蓄積、活用、過労運転防止や監査体制強化など事故の未然防止のための機能の強化等を可能とする運輸安全委員会の設置を提案してまいりました。

 今回の政府案では、名称だけ採用いただきましたが、その組織形態や有すべき機能の面で不足する点が多くあります。

 以下、政府案について、修正すべきと考える点について、概要を説明いたします。

 第一に、運輸安全委員会の独立性と中立性を担保するため、委員会を国土交通省の所管から内閣府へと切り離すべきです。

 第二に、委員会の調査範囲に、重大な社会的影響を及ぼした特定の自動車事故を含めるべきです。

 現行の財団法人交通事故総合分析センターと国土交通省に設置された検討会による調査では不十分です。社会的規制が行き届かぬ状態で、経済的規制の緩和だけが急速に進められてきました。いわゆる市場の失敗は明らかです。供給過剰、競争激化、労働強化そして事故の増加という悪循環になっているトラック、タクシー、バスなどの事業用自動車の事故についても、調査体制を再整備していくべきだと考えています。

 多くの方々がとうとい命を失われ、負傷されたあのJR福知山線列車脱線事故から、間もなく三年が経過しようとしております。亡くなられた方々に改めてお悔やみを、お心とお体に傷を負われた方々にお見舞いを申し上げます。

 多くの方々が利用される公共交通機関の事故では、原因究明と再発防止のための対策とともに、事故により大きな被害を受けられた方、その御家族や御遺族に対する公的支援の必要性が、本当に悲しい経験とともに切実に訴えられております。

 第三の修正項目として、政府として、事故直後や現場における対応、調査経過に伴う情報の提供、立ち直りの支援といった公的な支援体制を確立するとともに、特に、情報提供等、運輸安全委員会として行うべき、行い得る機能については法律に明記すべきだと考えます。

 第四に、勧告機能を強化すべく、事業者等が従わなかった場合の公表と関係行政機関による措置を可能にすること、第五に、運輸安全委員会が事故の再発防止や未然防止により貢献できるよう、関係機関や団体の協力を受けることができること、そして第六に、法施行後、五年後に全体的な見直しを行うことを提案し、そのことを可能ならしめる法案の修正を求めております。

 これらの提案に対する現時点での政府の見解と、よりよい事故調査機関をつくるために、多くの現場の皆様の御意見等を盛り込みまとめた私たちの提案を受け入れるおつもりがあるか、国土交通大臣の御見解を伺います。

 海難審判庁の見直しについて伺います。

 現行の海難審判制度において、歴史上の経緯や権利擁護の観点から認められている海事補佐人の制度について、原因究明と審判との分離の後、運輸安全委員会による海難の原因究明の段階においてどのように扱われるのか、御見解を伺います。

 だれが悪かったかを探る捜査と、何が悪かったかを探る調査との関係は、いつも調整され、議論されてまいりました。今般の法改正を受けて、警察庁と交わされている覚書の取り扱いはどのようになるのか、また、海上保安庁の捜査と運輸安全委員会による海難の原因究明との関係について、両機関において、どのように整理、規定をしていくおつもりか、お答えをください。

 その上で、先般発生をいたしましたイージス艦「あたご」と漁船との衝突事故における海難調査の現状についてお伺いするとともに、その原因究明や海上保安庁による捜査を越える形で防衛大臣みずからが関係者の事情聴取を行ったことに対して、まず国土交通大臣には、御感想とともに、海難の調査が、国防という大義にも阻まれることなく、公正かつ中立に行われることをいかに担保されるのか、確認をさせていただきます。同時に、石破防衛大臣には、政治的責任を含めた御見解を承ります。

 今回の法改正には、船員労働委員会の紛争調整機能を中央労働委員会等へ、そして調査審議機能を交通政策審議会等へ移管し、船員労働委員会を廃止することが盛り込まれています。

 船員の労働や船員の労使関係の特殊性について、現在、どのように評価をしていらっしゃるのか、また、それは制度発足時からどのように変化をしてきたのか、お答えください。

 内航、外航とも、海運を支える日本人船員を確保、育成することが喫緊の国家的課題となっております。このような中、船員労働委員会を廃止することが船員の確保、育成を阻害するのではとの心配の声も聞かれますが、その可能性について、また、そうならない対策について、どのように考えていらっしゃいますか。

 最後に、今回の改正が単なる数合わせの組織の再編ではなく、国際平和と我が国の発展に貢献する観光政策の充実、多くの人と物を運ぶ公共交通の安全の確立、四面環海の我が国の海の安全、そして船員の確保につながるものとなるよう、十分かつ慎重な審議と私たちの提案を受け入れた柔軟な修正を要請し、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 三日月議員にお答えいたします。

 道路特定財源制度に関するお尋ねがありました。

 去る三月二十七日の総理の提案では、国会審議の中での野党の御意見等を踏まえ、道路特定財源制度はことしの税制抜本改正時に廃止し、二十一年度から一般財源化するなどの考えが示されております。これを受けまして、三月三十一日、総理の提案を具体化すべく、関係五閣僚が集まって検討を深めることとして、取り組みを始めたところであります。その後の運びについて現時点で確定しているわけではございませんけれども、年末へ向けた考えられる道筋としては、税制の抜本改革の中で一般財源化が決まった段階で閣議決定し、法案化されることになるのではないかと考えております。

 いずれにしても、国民生活、地方財政等の観点からは、平成二十年度歳入法案、道路財源特例法等について、いまだ参議院の各委員会における審議が始まっていないという異例の状況にあるわけでありますが、御審議の上、速やかな成立を図っていただきたいと思います。

 あわせて、政党間のことではありますけれども、与野党間において一般財源化等の問題について速やかに協議を始めていただくことを期待いたしております。(拍手)

    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇〕

国務大臣(冬柴鐵三君) 三日月議員から十五点にわたって質問をちょうだいいたしましたので、順次お答えを申し上げます。

 総理からの提案と財源特例法及び中期計画との関係についてお尋ねがありました。

 中期計画の素案は、真に必要な道路整備の姿を示すため、政策課題ごとに対応を要する箇所を具体的に洗い出した上で、今後十年間で重点的に対策を講ずる箇所数に限って計画の内容としたものであります。

 この中期計画を計画的に推進するため、財源特例法は、揮発油税等の税収を道路整備費に充てることを義務づけている規定や、地方道路整備臨時交付金など地域の道路整備の支援策等を定めたものであり、今国会に提出し、現在審議をお願いしているところであります。

 他方、総理からの御提案は、道路特定財源制度はことしの税制抜本改革時に廃止し、二十一年度から一般財源化ですが、これは、国民生活や地方の行財政に混乱を及ぼさないことが必要との強い思いから、見直すべきは見直すとの決意のもと、与野党間の議論を前進させるために行ったものと理解しております。

 次に、観光庁設置の意義と期待される役割、また行政改革の観点からの対応策についてお尋ねがありました。

 観光立国の実現は、二十一世紀の我が国経済社会の発展のために不可欠な重要課題であり、平成十八年十二月には観光立国推進基本法が成立し、昨年六月には観光立国推進基本計画を閣議決定いたしました。

 今後、基本計画に基づき、観光立国の実現に向けた施策を強力に推進していくことが必要であり、観光庁の設置により、国全体として、官民を挙げて観光立国の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に推進する体制が整備されることとなると考えております。

 観光庁の組織及び定員は国土交通省内の振りかえで対応しており、行政改革の趣旨に沿っているものと考えております。

 日本観光協会と都道府県の役割分担についてお尋ねがありました。

 日本観光協会においては、都道府県を含む会員の合意のもと、旅フェアの開催など、単独の都道府県の事業には必ずしもなじまない全国的、広域的に効果が及ぶ事業を全国広域観光振興事業として実施しております。このように、都道府県の事業と日本観光協会の事業とは役割分担がなされているものであり、観光立国の推進の観点から意義のあるものと認識をいたしております。

 日本観光協会の全国広域観光振興事業に必要な費用は、会員である各都道府県からの拠出金で賄うこととされておりますが、事業の内容や費用負担については、会員の議論を経て決定されているものと承知しております。

 国土交通省としては、予算のあり方を含め、協会の適正な事業運営がなされるよう、引き続き指導を行ってまいる所存でございます。

 観光にかかわる中小企業の経営基盤確立のための施策の実施状況と、観光需要の創出、拡大のための休暇制度等の検討状況についてのお尋ねがありました。

 まず、地域における観光客受け入れの中核をなす宿泊産業を初めとする観光産業の経営基盤の強化は、中小企業対策としても重要な課題と認識しております。

 このため、現在も中小企業金融公庫の融資等により旅館などの中小企業を支援しておりますが、さらに、今国会に提出した観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律案に基づく宿泊施設の設備投資に対して、同公庫によるさらなる低利融資により支援をすることといたしております。

 また、宿泊の魅力を向上することにより中小の宿泊産業を活性化するため、宿泊と食事を分離する泊食分離を促進するなど、中小企業の経営基盤確立のための取り組みを支援してまいります。

 次に、観光需要の創出、拡大のためには休暇の取得の促進は大きな重要な事項であると考えております。一方、現状としては、労働者一人当たりの年次有給休暇の取得率は低下する傾向が続いており、平成十八年では四六・六%となっております。このため、昨年度、国内旅行需要喚起のための休暇のあり方について有識者や関係省庁と検討を行ったところであり、今年度は、民間企業による休暇取得の先進事例の紹介や実証実験など、休暇の取得促進を含む観光旅行の促進のための環境整備を促進する施策を実施することといたしております。

 事故調査、事故調査機関のあり方についてどのように考えているのかについてお尋ねがありました。

 平穏な国民生活のためには、安全、安心の確保が最重要課題であり、そのためには、事故の再発防止に向けた事故調査・原因究明機能の強化を図ることが極めて重要であると認識しております。

 このため、今般、海難、航空事故、鉄道事故を対象とし、多様化、複雑化する事故原因究明機能の高度化、原因関係者に対する勧告制度の創設等による事故再発防止機能の強化を図るため、運輸安全委員会の設置のため、この法律案を提出したところであります。この運輸安全委員会の設置によって、事故の原因究明の徹底が図られ、我が国の公共交通の安全性の向上が図られるものと確信いたしております。

 事故調査機関と行政及び事業者との関係を行政からの独立性の観点からどのように評価するかについてのお尋ねがありました。

 航空・鉄道事故調査委員会の独立性については、委員会設置法において、委員会の委員長及び委員は独立してその職権を行うこととされています。また、委員長及び委員の任命についても、両議院の同意のもとで行うこととされているところであります。

 委員会は、国土交通省に対しても、また事業者に対しても、独立した立場から公平中立かつ的確に事故調査を実施するとともに、国土交通大臣に対し、積極的に、事故防止対策等のため、勧告、建議を行ってきたものと評価をいたしております。

 航空、鉄道事故及び海難の原因究明の統合によるメリット等についてお尋ねがありました。

 統合により、陸海空に共通する事故の要因である人的要素、気象、金属等の専門的知見を委員会内において共有し、有効活用することが可能となります。また、海難についてさまざまな知見を有する多くの専門家によって事故調査が行われることから、背景要因も含めた多角的な原因究明が可能となります。これらにより事故原因究明機能の高度化が図られるものと考えています。

 さらに、運輸安全委員会は、原因関係者に対し直接に勧告を行う権限等を有することとしており、これにより事故再発防止機能の強化も図られるものと考えております。

 運輸安全委員会に係る法律案に関する民主党からの修正の提案に対する見解と、当該提案に対する対応についてお尋ねがありました。

 運輸安全委員会に係る法律案については、これまでの国会審議や附帯決議、事故の実態等を踏まえ、関係各方面からの意見も伺いつつ、政府内部で十分に議論を重ねた上でこの法律案を提出したところであります。議員の御提案も、事故原因究明機能の強化を図っていくためのものと認識しております。いずれにしても、今後の国会審議において十分な御審議をいただきたい、このように考えております。

 海難審判制度における原因関係者の権利擁護についてお尋ねがありました。

 これまで、海難審判では、海難関係者を補佐する補佐人が参加し、公開の審判廷で行ってきたところであります。これを踏まえ、新たに設置される運輸安全委員会の海難調査における原因関係者からの意見聴取につきましては、原因関係者の希望があれば、公開での意見聴取、本人以外に補佐して意見を述べる者の同席を認めることとしたいと考えております。

 警察庁と交わされている覚書の取り扱いについてお尋ねがありました。

 これまでも、警察の行う捜査と航空・鉄道事故調査委員会の行う事故調査については、覚書に基づき、事故現場において何ら支障なくそれぞれが円滑に実施されてきているところであります。このため、運輸安全委員会の発足に際しては、捜査と事故調査の円滑な実施のため、これまでの運用を踏まえ、警察庁と調整をしてまいります。

 海上保安庁の捜査と運輸安全委員会の調査の関係についてのお尋ねがありました。

 原因究明のための運輸安全委員会の調査と海上保安庁の捜査は、それぞれ、異なる目的のもとに異なる法律上の手続、方法によって行われており、一方が他方に優先するという関係ではございません。したがって、これまでの航空・鉄道事故調査委員会及び海難審判庁における運用実績を踏まえ、海上保安庁と調整が図られるものと考えております。

 先般発生したイージス艦「あたご」と漁船との衝突事故に係る調査の現状についてお尋ねがありました。

 本件につきましては、事態の重大性にかんがみ、重大海難事件に指定するとともに、特別調査本部を設置し、関係者の面接調査を実施したと聞いております。いずれにいたしましても、早期に原因究明が行われ、事故の再発防止に資するよう、所要の調査作業が速やかに進むことを期待しているところであります。

 イージス艦「あたご」の事故に係る防衛大臣の関係者への事情聴取についての感想と、公正中立な海難調査の担保についてお尋ねがありました。

 個々の事案については、論評は差し控えたいと考えております。

 海難については、海難審判庁が原因を明らかにすることを使命としているところであり、また、審判官の職権の独立性が確保されております。これにより、自衛隊の艦船に係る海難であるか否かにかかわらず、的確な原因究明に努めているところであります。これまでも、潜水艦「なだしお」や潜水艦「あさしお」に係る衝突事故について裁決で原因を明らかにし、潜水艦「あさしお」の事件では、防衛大臣に意見陳述を行ったところであります。

 今回のイージス艦の事故につきましても、徹底した原因究明を行うとともに、必要があれば勧告等所要の措置を講じていくこととなります。

 船員労働の特殊性等についてお尋ねがありました。

 船員労働には、長期間陸上から孤立し、二十四時間、労働と生活の場が一致した状態が続くなどの特殊性があります。船員労働や労使関係の特殊性は基本的に変化していないと考えますが、労使紛争の件数が大幅に減少したこと、その結果、労働組合と使用者との間の紛争調整手続について、陸上の紛争調整手続と別の体制をとるまでの必要性がなくなったこと等から、船員労働委員会を廃止し、その事務を中央労働委員会等に移管することとしたものであります。

 最後に、船員労働委員会の廃止による船員の確保、育成への影響についてのお尋ねがございました。

 船員労働委員会については、行政組織の効率化の観点から廃止することとしたところですが、その機能は、他の行政機関に移管し、船員の労働保護等に支障を生じないよう措置をすることといたしております。

 一方、船員の確保、育成については、国民生活、経済に不可欠な海上輸送の安定を図る上で喫緊の課題であります。このため、日本船舶及び日本人船員の確保を図る船舶運航事業者に対し、課税の特例を講じること等を内容とする法案を今国会に提出しているところであります。このような措置を実施に移すことにより、船員の確保、育成について、より一層の推進を図ってまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕

国務大臣(石破茂君) 三日月議員にお答えをいたします。

 今回の衝突事故を受け、海上保安庁の捜査や海難審判庁による調査が公正中立に行われるべきことは、極めて当然のことであります。

 他方、三百六十五日二十四時間、我が国の平和と独立を守る任に当たる防衛省・自衛隊において、いかなる事態が生起したかを防衛大臣が把握すべきことも当然のことであり、文民統制の観点からも、私がみずからこれを行うことは必要なことであったと考えております。

 なお、「あたご」航海長から、私を含めて防衛省として聴取するということについては、海上保安庁本庁のしかるべき部署にあらかじめ連絡をしておくべきであったと考えており、この点については、今回の事案も踏まえ、今後関係省庁と密接に連携をしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時三十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       国土交通大臣  冬柴 鐵三君

       防衛大臣  石破  茂君

       国務大臣  町村 信孝君

 出席副大臣

       国土交通副大臣  松島みどり君


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