衆議院

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第27号 平成20年5月9日(金曜日)

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平成二十年五月九日(金曜日)

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 議事日程 第十七号

  平成二十年五月九日

    午後一時開議

 第一 農業者戸別所得補償法案(第百六十八回国会、参議院提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 農業者戸別所得補償法案(第百六十八回国会、参議院提出)

 国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 農業者戸別所得補償法案(第百六十八回国会、参議院提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、農業者戸別所得補償法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長宮腰光寛君。

    ―――――――――――――

 農業者戸別所得補償法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔宮腰光寛君登壇〕

宮腰光寛君 ただいま議題となりました農業者戸別所得補償法案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、食料の国内生産の確保及び農業者の経営の安定を図り、もって食料自給率の向上並びに地域社会の維持及び活性化その他の農業の有する多面的機能の確保に資するよう、農業者戸別所得補償金を交付しようとするものであります。

 本案は、第百六十八回国会の参議院提出に係るもので、昨年十二月五日提出者を代表し参議院議員平野達男君から提案理由の説明を聴取し、同月十二日及び十九日質疑を行った後、本院において継続審査に付されていたものであります。

 今国会におきましては、四月八日参考人から意見を聴取し、昨五月八日質疑を行うなど、会期をまたがって慎重に審査を進めました。質疑終局後、内閣の意見を聴取した後、討論を行い、採決した結果、本案は賛成少数をもって否決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

     ――――◇―――――

 国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、国家公務員制度改革基本法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣渡辺喜美君。

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 国家公務員制度改革基本法案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 行政に対する信頼を回復し、行政の運営を担う国家公務員が常に国民の立場に立って職務を遂行することを徹底するためには、国家公務員制度のあり方を原点に立ち返って見直し、国家公務員の意識を改革することが必要であります。

 このため、政府は、国家公務員が、能力を高めつつ、国民の立場に立ち、責任を自覚し、誇りを持って職務を遂行できるよう、国家公務員制度改革を総合的に推進するため、本法案を提出する次第であります。

 次に、法案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、国家公務員制度改革に係る基本理念を定め、国はこの基本理念にのっとり改革を推進する責務を有することとしております。また、政府は、本法案に定める基本方針に基づき改革を行うこととし、必要な措置については本法律の施行後五年以内を、必要となる法制上の措置については本法律の施行後三年以内を目途として講ずることとしております。

 第二に、議院内閣制のもと、国家公務員がその役割を適切に果たすため、政務に関し大臣を補佐する職を設けるとともに、これ以外の職員が国会議員に接触することに関し規律を設けること、幹部職員の任免は内閣総理大臣の承認を要するものとし、内閣人事庁は各大臣が人事を行うに当たって支援を行うものとすること、幹部職員は内閣人事庁及び各府省に所属するものとすること等の措置を講ずることとしております。

 また、職員の育成、活用を府省横断的に行うとともに、幹部職員等の適切な人事管理を徹底するため、総合職試験の合格者からの採用と各府省への配置の調整、大臣が人事を行うに当たっての情報提供、助言等の支援等の事務を内閣人事庁において一元的に行うための措置を講ずることとしております。

 第三に、多様な能力、経験を有する人材を登用、育成するため、採用試験を抜本的に見直し、新たな採用試験の種類を設けること、課長等の管理職員にふさわしい職員を育成するための仕組みを整備すること等の措置を講ずることといたしております。

 第四に、官民の人材交流を推進し、官民の人材の流動性を高めるため、人事交流について、透明性を確保しつつ、手続の簡素化及び対象の拡大等を行うこと等の措置を講ずることとしております。

 第五に、国際社会の中で国益を全うし得る高い能力を有する人材を確保、育成するため、国際対応に重点を置いた採用を行うための措置等を講ずることとしております。

 第六に、職員の倫理の確立と信賞必罰の徹底のため、職業倫理を評価の基準として定める等の措置、懲戒処分について適正かつ厳格な実施の徹底を図るための措置等を講ずることとしております。

 第七に、職員が意欲と誇りを持って働くことを可能とするため、職員の初任給の引き上げ、職員の能力及び実績に応じた処遇の徹底を目的とした給与及び退職手当の見直し等の措置等を講ずることとしております。

 第八に、政府全体を通じる国家公務員の人事管理について国民に説明する責任を負うとともに、総合職試験の合格者からの採用と各府省への配置の調整等の事務を一元的に行う内閣人事庁を設置することとし、必要な法制上の措置をこの法律の施行後一年以内を目途として講ずるとともに、国の行政機関が国家公務員の人事行政に関して担っている機能を必要な範囲で内閣人事庁に移管することとしております。

 第九に、国家公務員の労働基本権のあり方については、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示して、その理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討することとしております。あわせて、地方公務員の労働基本権のあり方についても検討することとしております。

 第十に、国家公務員制度改革推進本部を設置し、これらの改革を総合的に推進することとしております。

 以上が、本法案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。岡下信子君。

    〔岡下信子君登壇〕

岡下信子君 自由民主党の岡下信子でございます。

 私は、ただいま議題となりました国家公務員制度改革基本法案について、自由民主党を代表して質問いたします。(拍手)

 まず、国家公務員制度については、戦後の我が国において、欧米諸国に追いつけ追い越せのキャッチアップの時代にはうまく機能しておりましたが、我が国の社会経済が成熟化を遂げた現在、必ずしもうまく機能しておらず、また、昨今、官僚における不祥事も多々生じております。

 このような中、国家公務員制度改革を行うことは喫緊の課題でありますが、他方において、国家公務員に対するバッシングなどにより国家公務員が萎縮してしまう、あるいは優秀な学生が国家公務員を就職先として避けるようになってしまっては、我が国の行政が立ち行かなくなる、そのことも懸念されます。

 そこで、国家公務員制度改革を行うに当たっては、大胆な改革を行いつつも、現役の国家公務員や国家公務員を目指す学生にとってやりがいや魅力を感じることができるようなものとすることが必要であると考えます。今回の基本法案では、どのような理念のもとでどのような公務員像を実現しようとしているのか、総理の御見解をお伺いいたします。

 次に、政官接触の集中管理についてお尋ねします。

 今回の基本法案では、国家公務員による国会議員への接触に関して、大臣を補佐する政務専門官を各府省に置き、集中管理することとしております。もとより、国家公務員が大臣の意向に反する根回し等を国会議員に対して行うことはあってはならないことであるものの、他方において、政官接触の集中管理によって国会議員が国家公務員から必要な情報を得られなくなることとなれば、国会議員としての活動が阻害されることになることも懸念されます。政官接触についてルールを設ける際はそのようなこととならないようにすべきと考えますが、総理の御認識を伺います。

 次に、いわゆるキャリアシステムの廃止についてお尋ねします。

 今回の基本法案では、1種、2種、3種試験といった現行の採用試験の種類を抜本的に見直し、新たに、総合職試験、一般職試験、専門職試験を設けることとしております。現在の国家公務員の採用に関しては、いわゆるキャリアシステムのもとで、1種試験合格者が、採用時一回限りの選抜により、幹部候補として事実上固定化しているのではないかといった批判がありますが、今回の基本法案により、このようなキャリアシステムが廃止され、採用試験の種類にとらわれない能力・実績主義に基づく幹部候補の選抜が行われることとなるのでしょうか。渡辺大臣の御認識を伺います。

 次に、内閣人事庁についてお尋ねいたします。

 国民の立場に立って行政を行う上で、各省に根強く残っている縦割り意識を変革し、適材適所の人事を行うためには、各府省において人事をばらばらに行う現状を改革し、職員の育成及び活用を府省横断的に行うことが必要不可欠であると考えております。したがって、このような事務を行わせるため、内閣人事庁を新設することには賛成であります。まず総理に、内閣人事庁設置の意義についてお伺いさせていただきます。

 続いて、内閣人事庁の事務について、幾つか質問させていただきます。

 まず、採用について、内閣人事庁は、総合職試験の合格者からの採用と各府省への配置の調整を一元的に行うこととされております。公務員に、入省当時から、各府省の立場を超えて政府全体の立場に立って業務遂行を行う意識を身につけさせることは大切なことです。一括採用を行うと、採用プロセスにおいて採用志望者の希望や各府省のニーズを反映できないのではないかという不安の声もありますが、私は、制度設計の仕方次第でこのような不安は払拭できるものと考えています。

 総理は、一括採用の意義についてどのようにお考えか、また、現在、具体的な採用のプロセスのイメージがあるのか、お伺いいたします。

 また、内閣としての一体性を確保するためには、特に幹部職員の人事に際して、内閣人事庁が各大臣を支援することが重要だと考えます。今回の法案において、内閣人事庁は、幹部職員の候補者の適格性の審査を行うほか、必要に応じ候補者名簿を作成することができることとなっておりますが、このことによってどのような効果が期待できるのか、総理にお伺いいたします。

 幹部職員の人事について、内閣としての一体性を確保することが重要であるのは言うまでもありませんが、一方で、各大臣の指揮監督権を確保し、各府省がその機能を十分に発揮できるようにすることも重要であります。この両方の目的を満たすために、大変苦心されて「幹部職員は、内閣人事庁及び各府省に所属するものとすること。」という案文を作成されたと伺っておりますが、今後、この部分についてどのように検討を進めていくのか、総理にお伺いいたします。

 最後に、労働基本権については、我が党においてもさまざまな議論があるところであり、今後とも幅広い議論が必要であると考えておりますが、今後どう進めていかれるおつもりか、総理のお考えを伺います。

 公務員制度改革については、昨年成立をした国家公務員法等の一部を改正する法律の着実な実施に加え、本法案が成立することによって初めて二十一世紀にふさわしい行政システムを支える公務員像の実現が達成され、質の高い人物が公務の世界に入り、能力を高め、誇りを持って職務に専念することが可能となるものと考えております。本法案の趣旨に沿って公務員制度改革が着実に実施されることを強く期待し、私の質問といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 岡下議員から御質問がございました。

 基本法案の理念や公務員像についてまずお尋ねでございますが、私は、施政方針演説におきまして、行政や政治を国民本位のものに改めていかなければならないこと、常に国民の立場に立つをモットーに公務員の意識の改革も必要であるということを申し上げてまいりました。

 今回の公務員制度改革におきましては、公務員一人一人が高いモラルを維持し、能力を高め、誇りを持って職務に専念できるよう改革を進めてまいります。

 次に、政官接触の集中管理についてお尋ねがございました。

 今回の基本法案では、各府省に、国会議員への政策の説明その他の政務に関して大臣を補佐する政務専門官を設けることといたしておりますが、それ以外の職員が国会議員に接触することを一切禁止するものではありません。政官接触の集中管理に関する規律については、基本法成立後、具体化することとなりますが、その際には、国会議員の側からの情報収集等に支障を生じないよう十分配慮しつつ検討してまいります。

 次に、内閣人事庁の設置の意義についてお尋ねがございました。

 本法案におきましては、内閣人事庁を設置し、職員の育成及び活用を府省横断的に行うとともに、幹部職員等について適切な人事管理を徹底するための事務を一元的に行うこと等を所掌させることといたしております。このことにより、各府省の立場を超えて政府全体の立場に立った視野を持つ人材を育成、活用し、内閣としての一体性を確保することが可能になると考えております。

 次に、内閣人事庁による一括採用及びプロセスについてお尋ねがございました。

 政府全体の立場に立って業務遂行を行う意識を持った職員を育成、確保するために、総合職試験合格者からの採用は、内閣人事庁が一括して行うことといたしております。具体的な採用のプロセスについては、各府省の人材ニーズと合格者の志望も十分に反映されるよう、基本法成立後、制度設計を進めてまいります。

 次に、内閣人事庁による各大臣に対する支援の効果についてお尋ねがございました。

 各大臣が人事を行うに当たって、内閣人事庁が、適格性の審査や必要に応じて幹部候補者の名簿の作成を行い、大臣を支援することにより、幹部職員として政府全体の立場に立って職務を遂行できる能力を有する人材を活用し、内閣としての一体性を確保することが可能となるものと考えております。

 次に、幹部職員の人事についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、政府部内で議論を重ねた結果、今回の基本法案では、「幹部職員は、内閣人事庁及び各府省に所属するものとする」と規定しました。具体的な人事管理のあり方につきましては、幹部職員を一元的に管理する観点と、各府省大臣の幹部職員に対する十全な指揮監督権を担保する観点のバランスを考慮しつつ、基本法成立後、制度の具体化の中で検討してまいります。

 最後に、労働基本権についてお尋ねがございました。

 今回の基本法案では、昨年十月の行政改革推進本部専門調査会の報告の趣旨を踏まえ、「協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討する。」としておるわけであります。

 議員御指摘のとおり、労働基本権のあり方につきましては、今後とも幅広い議論が必要でありますが、政府としては、基本法に基づき、速やかに検討を開始し、結論を得ることとしたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) キャリアシステムの廃止及び能力・実績主義に基づく幹部候補の選抜の実現についてのお尋ねでございます。

 現在のキャリアシステムは、採用試験の段階で幹部候補が事実上固定化され、その後も同期が横並びで昇進していくような人事運用が身分制的であるとして批判をされています。

 このため、基本法案では、現行の採用試験の種類及び内容を抜本的に見直し、1種、2種、3種試験を廃止して、重視する能力に着目した総合職試験、一般職試験、専門職試験を設けるとともに、人事評価に基づく厳格な選抜と絞り込みを根本原則とする幹部候補育成課程を整備することといたしております。

 これにより、さきの国家公務員法改正による能力・実績主義の導入とあわせ、採用試験の種類にとらわれず、能力ある多様な人材が、能力と実績の評価に基づいて幹部候補として育成され、幹部へ登用されていくようになり、現行のキャリア制度は廃止され、根本的に異なる仕組みができ上がるものと考えております。(拍手)

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議長(河野洋平君) 馬淵澄夫君。

    〔馬淵澄夫君登壇〕

馬淵澄夫君 民主党の馬淵澄夫です。

 私は、ただいま議題となりました国家公務員制度改革基本法案に対し、民主党・無所属クラブを代表して質問いたします。(拍手)

 今、この国に、真の公とは何かが問われています。長きにわたり隠ぺいされた年金記録のずさんな管理、イージス艦衝突事故やインド洋における米軍艦船への給油をめぐる情報の隠ぺい、建築確認検査制度の欠陥を指摘されながらも放置した結果の耐震偽装事件、拙速な建築基準法改正により引き起こされた官製不況。官が公共の責任を担うことを放棄しているとしか言いようのないあきれた実態は枚挙にいとまがありません。

 そして、きわめつけは天下りに端を発する税金の無駄遣い。結果、そのしわ寄せとして、後期高齢者医療制度による年金からの保険料天引きなど、国民は十分な説明を受けることなく、不合理な国民負担を背負わされてしまっています。この最大の原因は、我々国会議員を含む公に奉ずる公務員の意識の劣化と、国家公務員制度そのものにあるのです。

 私は、官僚の方々が、初めは、国民のために奉仕し、社会に貢献したいという崇高な理念と志を持って国家公務員になられたと信じています。しかし、いつの間にか、自己保身のため事なかれ主義に陥り、失敗を恐れるが余りの責任回避に終始する姿へと変わってしまいます。さらには、保身の延長線上にある省益の維持、つまり、みずからの将来ポストをつくり出すための予算、権限の確保を目的とするようになります。

 その最たる例が、ことしの予算委員会でも明らかにされた、国土交通省による道路整備事業とそれに関する利権のシステムです。国土交通省は、道路の中期計画で、今後十年間で五十九兆円もの事業費を道路整備及びこれらに類する事業につぎ込もうとしていました。道路官僚は、巨額の予算と権限で天下り先を確保し税金をばらまくという仕組みをつくり上げ、この国の予算配分をいびつなものにしてきました。

 さらに、国家公務員全体では約二万六千人余りのOBが四千七百の法人に天下りをし、それらに年間十二兆円の税金が流れていることが新たに判明いたしました。天下りや道路の名目で年間十数兆円もの税金が使われています。一方、この国の十人に一人が後期高齢者として本人負担分保険料を年金から天引きされています。その額はおよそ一兆円。天下りや無駄な道路建設に巨額の公金をつぎ込み、片や、高齢者にとってかけがえのない生活費をむしり取る。これで国民が納得できる税金の使い方と言えるのでしょうか。(拍手)

 先日行われた山口二区における衆議院補欠選挙では、民主党の平岡秀夫議員が圧勝いたしました。後期高齢者医療制度への反発が選挙の勝因だと言われています。しかし、単に制度への批判だけではありません。税金の使い方を変えよという強い国民の意思のあらわれであり、有権者がこの国の今日の税金の使い方にノーを突きつけたのです。だれのためになるのかわからない政策ではなく、真の公のために、国民のために税金を使えという強い声なのです。選挙結果を受けて、民意ではないと強弁する与党の議員もおられましたが、これは総理が就任以降初めて政府に問われた税金の使い方の審判の結果なのです。

 福田総理、改めてお伺いをいたします。補選を終えて、国民の声を受けて、真の公のために税金の使い道を変えねばならないと心新たにされましたか。福田総理、いかがですか、明確にお答えいただきたいと思います。

 税金の使い方に最も悪影響を及ぼしているのが、現行の国家公務員制度であります。

 ピラミッド形でポストを奪い合うキャリア制度は、大量の早期退職者を生み出します。そして、退職者の職の確保のために独立行政法人や関係公益法人など天下り団体とポストが次々とつくり出され、それら団体は、交付金や随意契約など多額の税金で賄われます。いつの間にか官僚の天下り先確保に政策がねじ曲げられているのです。これこそが、議院内閣制ではなく官僚内閣制と言われるゆえんです。

 独立行政法人の整理合理化などの改革が進まないのは、官僚が天下り先の維持を図っているからにほかなりません。つまり、キャリア制とそれに伴う早期退職勧奨制度、すなわち肩たたきが、天下りと税金の無駄遣いの大きな原因となっています。公務員制度改革の核心は、天下り規制であると同時に、天下り先確保のために肥大化してきた各府省の省益の排除にあります。

 本法案についてお尋ねする前に、本法案には天下り問題については一切触れられていないことを指摘させていただきます。

 我々は、天下り問題に対する解決策としては、いわゆる肩たたき、早期退職勧奨制度の廃止こそが現実的かつ根絶の切り札になると考えています。

 福田総理にお尋ねいたします。本法案では天下り問題は取り上げないという理解でよろしいのでしょうか、それとも、天下り問題は本法案とは別に審議する用意があるという理解でよろしいのでしょうか、明確にお答えいただきたいと思います。

 以上、政府に対して、真の公に対する認識と、本法案では触れられていない天下り規制についてお尋ねをしましたが、以下、本法案の詳細について質問をさせていただきます。

 天下り先確保という官僚のための政策が国の政策となっている官僚内閣制の現状を排し、政治が役所をコントロールし主導する真の議院内閣制を確立しなければなりません。これまでも、国会議員が副大臣や政務官として行政内部に身を置いてまいりましたが、十分に機能を果たせているとは言いがたい状況です。政治任用の拡充と国会議員がこれまで以上に行政組織内に身を置くことが役所をコントロールする効果的な施策と考えます。福田総理並びに渡辺公務員制度改革担当大臣の御所見をお伺いいたします。

 官僚の魂をむしばんでいる事なかれ主義や責任回避の精神構造と、所属する府省の予算、権限の確保などによる省益本位主義は、キャリア制と各府省が差配する閉鎖的な人事に深く結びついています。キャリアと呼ばれる官僚は、国家公務員1種試験にさえ合格すれば将来の幹部ポストや天下り先が保障される特権階級です。人は、地位が保障されれば事なかれ主義や責任回避に走りがちです。また、各府省による人事権の行使は、官僚を所属する府省の予算、権限獲得に走らせることになります。結果、官僚みずからが生き残ることを目的としたシステムが連綿と維持されてきました。

 まず、このキャリア制という硬直した人事制度を見直す必要があります。

 本法案では、これまでの1種、2種、3種の試験を改め、総合職、一般職、専門職の各試験を創設するとしています。渡辺大臣は、メディア上で、キャリア制度について、今以上に狭き門にすればよいと思う、いわばスーパー1種をつくればもっと優秀な人材が集まってくるのではないかとして、幹部候補の数を百人程度に絞ってよいとも述べられています。しかし、これでは、競争のない閉鎖社会、特権階級をそのまま温存するどころか、さらに硬直化したものにしかねません。確かに、将来のポストが約束された特権階級をなくせば優秀な人材が集まらないといった意見もあります。しかし、みずからの人生はみずからが切り開くものではないでしょうか。リスクに挑戦してこそ人の能力は高まるのです。今こそ、生きる力を持った人間力に満ちあふれた人材が求められています。

 これを機に、本法案のような中途半端ではない、思い切ったキャリア制度の廃止をするお考えはありませんでしょうか。福田総理並びに渡辺担当大臣にお伺いいたします。

 省益の拡大という意識を排除するには、各府省内部で決定されてきた幹部職員人事を内閣による一元的管理に移行することが求められます。本法案の目的も一義的にはこれを目指していると理解しますが、幹部職員の候補者名簿の原案作成を内閣人事庁ではなく各府省が行うとしているのは、府省による人事の独占、縦割り行政の排除を形骸化するものです。内閣一元制の実効性を確保するのであれば、各府省が主導する形を改め、より内閣全体の視点を幹部人事に反映させるべきではないでしょうか。渡辺担当大臣の御所見をお伺いいたします。

 本法案では、新たに政務専門官を置き、国会議員への政策の説明などを行わせ、それ以外の職員の国会議員との接触には大臣の指示を必要とするとしております。

 与党議員と官僚の接触により議院内閣制がゆがめられているという実態と、その排除の目的自体は理解できます。しかし、手段としての政官接触の制限は極めて大きな問題をはらんでいます。野党議員への行政情報開示がより一層滞る可能性があるのです。

 また、政務専門官の員数にもよりますが、高度の専門性を要求された場合に、その説明能力にはおのずと限界があります。国会による行政監視機能の低下を招き、守秘義務強化と相まって、官僚への情報の集中をも招きかねません。渡辺担当大臣はこの懸念をどうお考えになりますか。

 他方、民主党は、政官接触について、文書の記録、保存と情報公開という本法案とは異なるアプローチにより公正性を担保できると考えています。渡辺担当大臣の認識をあわせてお伺いいたします。

 労働基本権のあり方について、政府の専門調査会報告書は、改革の方向性として、「一定の非現業職員について、協約締結権を新たに付与する」とし、さらに、この法案のもとになった懇談会報告も、これを尊重するとしています。他方、本法案では、協約締結権について「検討する。」にとどまっており、明らかに検討段階より後退しています。

 福田総理にお伺いいたします。総理のもとに設置された懇談会報告で肯定的な指摘をしているにもかかわらず、協約締結権についてなぜこれを尊重しないのか、明確にお答えいただきたいと思います。

 我が国の政策、資源配分を誤らせ、ひいては産業構造までをもいびつなものにしてきた大きな原因の一つが国家公務員制度です。公務員が、行政は間違ってはならないとの無謬神話にとらわれ、事なかれ、責任回避の自己保身に走るのも、人事制度に矛盾があるからです。その結果として、この国全体に断ち切ることのできない無責任の連鎖をもたらしているのです。今こそ、この状況に終止符を打ち、公務員が文字どおり公を務め上げることができるようにしなければなりません。公務員が生きがいを持って働くことができるかどうか、この制度の改革にかかっています。

 この議場にいる私たちも、特別職の国家公務員であります。選挙を経て職を預からせていただいている私たち個々が、皆さんが、守るべき公という価値観をお持ちのはずです。政治家を志した瞬間を、公に奉ずることを決意した瞬間を改めて思い起こしてください。今、私たちは、政治の責任でこの国の公のあり方を変えるという大きな岐路に立っています。いま一度、この責任を果たすために、議場を埋める皆さんの思いを一つにするべきときが来たということをお伝えしたいと思います。

 田中角栄元総理が若かりしとき、百日に及ぶ議員立法答弁にたった一人で熱弁を振るわれました。当時の議事録を見ると、その一言一句には、みずみずしいまでにこの国に対する思いがあふれていました。この国を変えようという強い意思がみなぎっていました。自分一人でもこの国の未来を切り開くのだという魂のほとばしりがありました。

 どうか皆さんにも、大いなる勇気を持って公務員制度の改革に当たっていただきたいと願います。議員諸兄が、それこそこの逆転国会の中で、あまたの英知を持って法案の審議に当たられることを心から願い、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 馬淵議員にお答えを申し上げます。

 税金の使い方についてお尋ねがありました。

 行政の無駄や非効率を放置したままでは、行政に対する国民の皆様の信頼を取り戻すことはできません。福田内閣においては、道路関係を初めとする公益法人の集中点検、随意契約の見直しなど、政府を挙げて無駄の排除に取り組んでおります。特別会計も含めて、こうした取り組みを強力に進め、予算の使い道を効率的なものとし、国民生活に真に必要な分野に重点配分を行ってまいります。

 天下りについてお尋ねがありました。

 既に、昨年の通常国会で成立した国家公務員法等改正法において、各府省の再就職あっせんを禁止し、官民人材交流センターに一元化するなどの規制を導入しております。また、これらの規制の実効性を確保するため、外部監視機関を設置し、厳格な監視を行うこととしており、改正法の施行に向けて所要の準備を進めてまいります。

 加えて、今回の基本法案では、定年まで勤務できる環境の整備、定年の引き上げや役職定年制の検討などにも取り組むべき旨を定めております。こうした方策により、いわゆる天下り制度を抜本的に是正してまいります。

 政治主導の強化についてお尋ねがありました。

 今回の法案では、改革の理念として「議院内閣制の下、国家公務員がその役割を適切に果たすこと。」を掲げているところでありまして、官僚に対する政治のコントロールを強化すべきという大きな方向性は民主党と共有しているものでないかと考えております。

 具体的な方策に係る御主張については、副大臣、大臣政務官制度を導入した趣旨やその後の状況も踏まえ、議論が必要であると考えます。

 キャリア制度の廃止についてのお尋ねでございますが、現在のキャリア制度は、採用試験の段階で幹部候補が事実上固定化され、その後も同期が横並び的に昇進していくような人事運用が批判されているものと認識しております。

 このたびの基本法案は、このようなキャリア制度を廃止し、能力ある多様な人材が、試験区分ではなく、能力と実績の評価に基づいて幹部へと登用される仕組みの実現を目指すものであります。

 専門調査会の報告との関係についてお尋ねがありました。

 昨年十月に取りまとめられた専門調査会報告では、「一定の非現業職員について、協約締結権を新たに付与するとともに第三者機関の勧告制度を廃止」すべきとしつつ、一方で、「改革に伴うコスト等に十分留意しつつ、慎重に決断する必要がある。」「改革の全体像を国民に提示して、その理解を得ることが必要不可欠である。」としております。

 基本法案は、このような専門調査会の報告の趣旨を踏まえ、立案したものであります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 政治主導の強化についてお尋ねがございました。

 副大臣、大臣政務官制度導入の趣旨を踏まえた議論が必要であります。

 今回の法案では、内閣官房に内閣総理大臣を補佐する国家戦略スタッフを、各府省に各大臣を補佐する政務スタッフを設け、国の行政機関の内外から人材を機動的に登用できるものとするとしております。

 これにより、戦略的かつ機動的な政策判断や迅速な意思決定の必要性が増大する中、内閣総理大臣や各大臣による政治主導の強化が図られるものと考えます。

 次に、キャリアシステムの廃止についてのお尋ねであります。

 このたびの基本法では、現行の採用試験の種類及び内容を抜本的に見直し、1種、2種、3種試験を廃止して、重視する能力に着目した総合職試験、一般職試験、専門職試験を設けるとともに、人事評価に基づく厳格な選抜と絞り込みを根本原則とする幹部候補育成課程を整備することといたしております。

 これにより、昨年の国家公務員法改正による能力・実績主義の導入とあわせ、採用試験の種類にとらわれず、能力ある多様な人材が、能力と実績の評価に基づいて幹部候補として育成され、幹部へと登用されていくようになり、現行のキャリア制度は廃止され、根本的に異なる仕組みができ上がるものと考えております。

 なお、総合職試験合格者からの採用規模については、今後の検討課題であると考えております。

 次に、幹部職員の内閣一元管理についてのお尋ねであります。

 本法案においては、内閣官房長官を長とする内閣人事庁が、各府省が作成した幹部職員の候補者名簿の原案について、これらの者が幹部職員としての能力、適性を有しているかという観点から審査を行うとともに、必要に応じ、内閣人事庁もみずから幹部職員の候補者名簿を作成できるといたしております。各大臣は、これらを勘案して人事案を作成し、内閣総理大臣の承認を受けた上で幹部職員の任用を行うことといたしております。

 このことにより、各大臣が人事を行うに当たって内閣としての一体性を確保することが可能となり、内閣による人事の一元化が十分達成されるものと考えております。

 政官接触の集中管理についてのお尋ねであります。

 今回の基本法案では、各府省に、国会議員への政策の説明その他の政務に関して大臣を補佐する政務専門官を設けることとしております。それ以外の職員が国会議員に接触することを一切禁止するものではありません。

 政官接触の集中管理に関する規律については、基本法成立後、具体化することとなりますが、その際には、国会議員の側からの情報収集等に支障を生じないよう十分配慮しつつ、検討してまいります。

 また、民主党の御主張でもある、政官接触に関する情報公開を進めるというお考えも、今後の制度の具体化の中での選択肢の一つであろうと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 上田勇君。

    〔上田勇君登壇〕

上田勇君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました国家公務員制度改革基本法案について、福田総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、去る二日にミャンマーで発生したサイクロン被害により、数十万人を超える被災者が発生したと報じられております。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 ミャンマー政府が海外からの支援要員の入国に消極的であることもあり、被災者の救援に支障が生じているとも言われております。政府として、人道的な観点から、海外からの要員の受け入れを促すとともに、昨日も追加支援を表明したところではありますが、最大限の支援を実施するようお願いをいたします。

 さて、我が国を取り巻く経済社会情勢は、科学技術の発展、グローバル化の進展などにより大きく変貌を遂げております。国内においても、人口減少時代に突入し、国民の行政ニーズが複雑化、多様化する一方で、財政や人員などの制約要因も厳しくなっております。こうした内外の変化に対して、我が国の行政システムは十分に適応できなくなっており、一層効率的で効果的なシステムへの改革が必要となっています。行政の担い手である国家公務員にかかわる制度については、行政システムの改革の効果が十分発揮されるよう、改革を進めることが急務となっております。

 また、最近の防衛事務次官の前代未聞の汚職事件、国土交通省等におけるさまざまな不祥事、社会保険庁等におけるずさんな仕事ぶりなど、国民の行政と公務員に対する不信はかつてないほど深刻になっております。さらに、国民は、予算や権限を背景とした関係法人等への不透明な天下りを行い、職責に見合わない常識外れの高額な給与や短期間の在職で高額な退職金を受け取るといった、公務員が私的利益のため税金を使い込んでいるとの疑惑を持ち、強い怒りを感じております。

 国家公務員は、国民全体の奉仕者であるとの強い自覚に立って、それぞれの能力を国家国民のために十分発揮するとともに、高い倫理観を持って公務を担っていくことが求められております。

 政府・与党では、平成十三年に公務員制度改革大綱を決定して以来、改革に取り組んでまいりました。この間、さまざまな意見調整の必要性もあり、ここまで必ずしも順調に改革が進んできたとばかりは言えません。しかし、平成十八年には行政改革推進法の制定、翌十九年に国家公務員法の改正を行うなど、これまで着実に前進があったものと認識しております。私も、改革の必要性を強く感じ、初期の段階から議論に積極的に参画してまいりました。本法案は、これまでの改革の成果を踏まえて、さらに議院内閣制に本来ふさわしい仕組みとするなど、改革を前進させるものだと考えております。

 今、国民が最も強く求めているのは、天下りによる税金の無駄遣いの根絶であります。これまでにも、独立行政法人、公益法人の役員への公務員OBの就任制限やその公表、現役出向制度の導入や退職金算定基準の引き下げといった改善を順次行ってまいりましたが、現状はまだまだ不十分だと考えております。また、昨年の国家公務員法の改正では、再就職に関する規制の導入や、各府省によるあっせんの廃止と官民人材交流センターの設置など、退職管理の改革を実行いたしました。

 総理は、天下り問題について、これまでの改革の成果をどのように評価しているのか、また現状をどのように認識されているのか、さらに、今後、行政と関係の深い公益法人等への天下りの原則禁止等一層の改革を検討するべきだと考えますけれども、総理の御見解をお伺いいたします。

 天下り問題と密接に関係があるのが公務員の早期退職慣行です。

 公務員が定年まで公務を継続できれば、天下りは必要なくなります。改革の第一歩として、平成十四年の閣僚懇談会申し合わせで、平成二十年度までには原則として現状に比べて平均の勧奨退職年齢を三歳以上高くすることを目標とすると定めました。我が党で調査したところ、十九年度までの実績を見る限り、残念ながらこの目標達成が難しいのではないかと思われます。総理の現状認識と目標達成に向けての御所見をお伺いいたします。

 次に、本法案では、採用時の試験区分による人事の硬直化を改善し、多様な人材を適材適所に登用することを目指して、現行のいわゆるキャリアシステムを廃止することとしています。一方で、新たに政策の企画立案能力を有する者を採用するための総合職試験を設けることとしており、現行の1種試験よりも人数を絞って採用する考えであると聞いております。これは、新たに特権的ないわばスーパーキャリア官僚を生み出し、人事を一層硬直化させて霞が関の閉鎖性を強めるのではないかということが懸念されます。そうした事態を防ぐためには、就職後の人事評価を厳正かつ適切に行うとともに、総合職試験合格者以外から積極的に幹部を登用することが必要だと考えますが、公務員制度改革担当大臣の御見解をお伺いいたします。

 また、前例や慣行に縛られた硬直的な発想を脱して、多様化する国民のニーズに的確に対応した施策を立案し、効率的な業務執行体制をつくっていくためには、民間の考え方や仕事の手法を取り入れていくことが重要であります。そのためには、民間出身者を積極的に登用していくべきであると考えます。その際、多様な経験と能力を持つモチベーションの高い人材を確保するためには、公募制をとるとともに、その選考過程の透明性を確保することが重要だというふうに考えております。

 長い間、民間企業の第一線で仕事をしてきた方が、そこで培った知識や能力を、今度は国家国民のために役立てていきたいと言っている人も少なからずおります。こうした人材を積極的に活用し、国民にメリットのある、真に機能する官民の人材交流を実現するための方策について、公務員制度改革担当大臣のお考えを伺います。

 次に、公務員の業績評価のあり方と信賞必罰の必要性についてお伺いいたします。

 多くの国民は、立案した政策の失敗や不適正な職務に対して、公務員が全く責任をとっていないのではないかと強い不満を持っております。社会保険庁や国土交通省に係る問題を初めとして、残念ながら、責任の所在があいまいになっている事例が多過ぎるのではないでしょうか。また、公金着服、情報漏えいといったさまざまな不正、法令違反の行為についても、身内の調査だけでお茶を濁しているケースが多く、責任追及が不十分であると感じております。

 本法案では、「職員の倫理の確立及び信賞必罰の徹底」が定められていますが、この規定をきちんと機能させていくことが必要であります。離職後であっても退職金の返還請求や懲戒免職以外の場合での退職金の減額等を可能にする制度の改革が必要だと考えますが、総務大臣のお考えを伺います。

 最後に、労働基本権問題について質問をいたします。

 公務員制度の改革を実行する上では、責任ある労使関係の構築など労働基本権のあり方の見直しも必要だと考えます。行政改革推進本部専門調査会を設置し、昨年十月に「公務員の労働基本権のあり方について」との報告書を取りまとめました。その中では、争議権など、意見集約に至らず両論併記となっている部分も多く残されてはおりますが、一定範囲の非現業職員について労働協約締結権を新たに付与するなどの見直しが提起されています。

 本法案では、本件について見直しの方向性やタイムスケジュールが明確になっておりません。早急に労働基本権の拡大などについて検討を行い、結論を出すべきだと考えますが、総理並びに公務員制度改革担当大臣のお考えを伺います。

 公務員制度の改革は、我が国の行政に対する内外の信頼性を回復するとともに、将来にわたり国民生活の安心と経済の活性化を図っていく上で極めて重要かつ緊急なテーマであります。本法案を早期に成立させ、改革を着実に進めていく必要性を強調し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 上田議員から、まず、天下り問題についてお尋ねがございました。

 昨年の通常国会で成立した国家公務員法等改正法におきまして、いわゆる天下り問題を根絶するため、各府省の再就職あっせんを全面的に禁止し、官民人材交流センターに一元化すること等としております。これによりまして、各府省から中立的な立場で、職員本人の能力、経験を生かした再就職の支援を行い、押しつけ的なあっせんを根絶いたすのであります。

 官民人材交流センターの行う再就職支援については、官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会の報告書を踏まえまして、公正かつ透明なものとするように検討を進めてまいります。

 次に、早期退職慣行是正についての現状認識と目標達成についてお尋ねがございました。

 各府省は、計画的に早期退職慣行の是正に取り組み、勧奨退職年齢は引き上がってきておりますが、いわゆる天下り問題への国民の厳しい批判等をも踏まえ、引き続き取り組みを推進することが必要であると認識しております。

 本年度が取り組み最終年度であることを踏まえ、今後は、人事運用面での取り組みに加え、専門スタッフ職制度の活用等によりまして、早期退職慣行の是正に一層取り組んでまいります。

 次に、公務員の労働基本権についてお尋ねがございました。

 基本法案では、行政改革推進本部専門調査会の昨年十月の報告の趣旨を踏まえまして、「協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討する。」ということといたしておるのであります。

 また、公務員の協約締結権のあり方は、幅広い論点を抱える問題でございまして、国民の理解を得ることが必要不可欠であることからも、検討には時間を要するものと考えておりますが、五年をかけるというようなことを前提としているわけではありません。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 人事評価の厳格かつ適切な実施及び総合職試験合格者以外からの幹部登用についてのお尋ねがございました。

 国家公務員の人事の硬直化、閉鎖性の打破は重要な課題であります。このため、昨年の国家公務員法改正により導入された新たな人事評価を厳格かつ適切に実施していくとともに、基本法案に盛り込んだ採用試験の抜本的見直しや幹部候補育成課程の整備等を通じて、採用試験の種類にとらわれず、能力ある多様な人材が幹部へと登用される人事制度の実現に取り組んでまいります。

 次に、官民人材交流の推進についてのお尋ねがありました。

 社会経済情勢の変化に迅速的確に対応した行政を進めていくため、官と民がお互いの知識経験を生かせるよう、官民の人事交流を抜本的に拡大していく必要があると考えます。特に、社会経済情勢の変化に対応して、政策企画立案能力を高めるため、民間の専門能力を持った人材を行政に受け入れることは重要だと考えます。

 このような観点から、国家公務員制度改革基本法案においては、中途採用試験を新設することを定めるとともに、官民の人材の流動性を高めるため、現行の制度を抜本的に見直すことを定めております。

 公務員の労働基本権についてのお尋ねがございました。

 基本法案では、行政改革推進本部専門調査会の昨年十月の報告の趣旨を踏まえ、公務員の協約締結権のあり方は、幅広い論点を抱える問題であり、国民の理解を得ることが必要不可欠であることからも、検討には時間を要するものとしております。しかし、先ほどの総理のお話のように、五年をかけることを前提としているわけではありません。(拍手)

    〔国務大臣増田寛也君登壇〕

国務大臣(増田寛也君) 上田議員より、退職手当制度のあり方についてお尋ねがございました。

 不祥事を起こした国家公務員に対する退職手当の取り扱いにつきましては、昨年十一月以来、総務省において有識者による検討会を開催しております。

 退職後に不祥事が発覚した場合、現行制度では、禁錮以上の刑に処せられたときに限り、支給済みの退職手当を返還させることができることとなっております。この返還事由を拡大して、懲戒免職相当のときにも退職手当の返還を可能とすることなどについて鋭意検討を進めておりまして、五月中を目途に取りまとめる予定となっております。

 私としても、公務に対する国民の信頼を回復するため、本検討会の報告書を踏まえまして制度の整備を行ってまいる所存でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

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副議長(横路孝弘君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、国家公務員制度改革基本法案について質問をいたします。(拍手)

 まず、総理にお聞きしたいのは、なぜ、何のために公務員制度を改革するのかという問題です。

 我が国の国家公務員制度をめぐって問われているのは、長年の自民党政治のもとでつくり上げられた政官業の癒着構造です。昨年、防衛省事務次官の収賄事件で発覚した日米軍事利権、高速道路建設をめぐる談合など、官と業の癒着のうみは今やすべての官庁に及んでいます。その一方で、社会保険庁の消えた年金問題、肝炎など後を絶たない薬害問題を初め、国民の安全、安心、生命をないがしろにした無責任きわまる行政運営が横行しているのであります。

 そもそも、行政は国民から信託を受けたものであり、公務員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のためにその職務の遂行に全力を挙げるべき義務を負うものであります。にもかかわらず、業者と癒着し、国民の安全や生命をないがしろにする行政が横行していることは断じて容認できません。ここに徹底したメスを入れる改革が必要です。

 同時に、三百万人を超える国、地方の公務労働者がその労働基本権さえ保障されないもとで働いていることも放置できない重大問題だと考えます。

 総理は、こうした我が国公務員の現状をどのように認識をしていますか。答弁を求めます。

 今回の法案は、政官業の癒着構造や無責任な行政運営を改革するものになっているのでしょうか。具体的にお聞きしたい。

 第一に、政官業の癒着構造の問題です。

 昨年、安倍内閣のもとで天下り自由化法が成立させられました。今回の法案では、「官民の人材交流を推進する」「官民の人材の流動性を高める」と称して、国と民間企業との間で幹部職員の交流を拡大しようとしています。これで公務の中立公正が担保できるのですか、官と業の癒着を拡大するだけではありませんか。天下りの規制強化こそ求められているのではありませんか。答弁を求めます。

 もともと、官民の交流の拡大は財界が求めてきたものであります。なぜでしょうか。

 総務省が日本経団連に行ったアンケートによれば、企業側は、人材交流のメリットとして、社員の知見・人的ネットワークの拡大等を挙げています。まさに癒着の構造を広げるためではありませんか。

 実際、官民人事交流推進会議の報告でも、官民人材交流については、民間企業の側からも、官民癒着であるとの社会的批判を惹起するとの声が出ており、総務省も、民間企業にメリットがあるような交流には官民癒着の批判のおそれがあると指摘をしているのであります。

 一例を挙げれば、内閣府原子力安全委員会事務局の規制調査官のポストは、原発メーカーである三菱重工業、三菱電機、日立製作所の指定席となっています。原発を開発、製造する企業が、その安全性をチェックする政府の機関を押さえている、だれが見ても癒着そのものではありませんか。

 法案には、こうした癒着への歯どめは一切ありません。国民から官民癒着の批判を受けることは明らかではありませんか。答弁を求めます。

 第二に、国民の安全、安心をないがしろにした行政の無責任体質の問題です。

 この間、社会保険庁の消えた年金問題、道路特定財源を食い物にした数々の無駄遣い、建物、交通、食品の偽装問題が相次ぎました。このような事態を引き起こした責任はどこにあるのでしょうか。

 自民党の社会保障・福祉軽視の政治が消えた年金問題を生み出し、相次ぐ規制緩和を進める政治が国民の安全をないがしろにしてきたのであります。まさに長年にわたる自民党を中心とする政権与党に第一義的責任があるのであり、すべて官僚の責任にすることは許されません。官僚と行政に対しては、行政情報の開示による国民の監視を高め、国会の行政監視機能を強化することこそ求められているのであります。

 この間、道路特定財源、年金、後期高齢者医療制度など、政権与党と官僚が進めた政治の問題点や無駄遣いが明らかになりました。これは、国民の監視とともに、野党の追及によって国会の行政監視機能が発揮された成果であります。

 ところが、今回の法案は、議院内閣制のもとでの国家公務員の役割を喧伝し、その目玉として、政務専門官以外の国家公務員が国会議員に接触することを規制するとしています。これは、国会による官僚への監視機能を封じ、行政情報の透明化に逆行するのではありませんか。

 また、内閣総理大臣を補佐する国家戦略スタッフ、大臣を補佐する政務スタッフ職を導入するとしています。さらに、内閣人事庁を設置し、幹部職員の内閣による一元管理を打ち出しています。これらは、国民に奉仕すべき公務員を官邸と政権与党に奉仕するものに根本的につくりかえようというものではありませんか、答弁を求めます。

 第三に、公務員の労働基本権の問題です。

 公務員の労働基本権は、日本国憲法で保障された権利であります。それを剥奪した占領下の政令二〇一号を踏襲する国家公務員法のもとで、六十年にわたって踏みにじられてきたものであります。ILOが国際労働基準に反するものとして、繰り返しその是正を求めてきた緊急の課題です。公務労働者の労働基本権回復を速やかに行うことは、公務員制度改革のかなめの問題であります。なぜ法案に基本権の回復を明記しなかったのですか。

 政府の行政改革推進本部専門調査会も、非現業公務員の労働協約締結権については付与する方向を打ち出し、公務員制度の総合的な改革に関する懇談会の報告でも、「労働基本権の付与については、専門調査会の報告を尊重する。」としています。ところが、法案では、この労働協約締結権についても「検討する。」と言うにすぎません。なぜ後退したのですか、明確な答弁を求めるものであります。

 公務員が全体の奉仕者として働く上で、労働条件の改善は不可欠です。

 法案は、「仕事と生活の調和を図ることができる環境を整備する」と言いながら、国家公務員の仕事と生活の調和を破壊している最大の元凶であるサービス残業の根絶をなぜ明記しないのですか。サービス残業が犯罪であるという認識はないのですか、また、国家公務員にサービス残業、不払い労働が蔓延しているという実態をどう把握しているのですか、答弁を求めます。

 また、官製ワーキングプアと言われる非常勤職員の問題も一切触れられていません。非常勤職員は、労働基準法も労働組合法も適用されないという、まさに法の谷間に放置されています。国がこうした無権利状態を放置することは断じて許されません。

 以上、答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 塩川議員にお答えをいたします。

 公務員制度改革の必要性についてお尋ねがございました。

 一連の不祥事により行政に対する信頼が揺らいでいる現在、公務員制度のあり方を原点に立ち返って見直すことが必要と考えております。公務員が能力を高め、常に国民の立場に立つをモットーに、誇りと責任を持って職務を遂行できるよう、総合的な公務員制度改革を推進し、行政に対する国民の信頼を回復してまいりたいと考えます。

 官民の人材交流と公務の中立公正の担保についてお尋ねがございました。

 社会経済情勢の変化に迅速的確に対応した行政を進めていくため、官と民が互いの知識経験を生かせるよう、官民の人事交流を抜本的に拡大していく必要があることから、今般の法案においては、現行の制度を抜本的に見直すことを定めております。官民の人事交流を拡大するに当たっては、その透明性を確保することなどにより、公務の中立性、公正性に十分留意する必要があると考えております。

 次に、官民交流の拡大を財界が求めていることについてお尋ねがございました。

 官民の交流の拡大は、財界が求めているということでございますが、国と民間企業の双方にとって、人材の育成、活用、組織運営の活性化や相互理解の促進等につながる有意義なものでございまして、御指摘のアンケート結果は、企業側もこうした官民交流の意義を評価しているということのあらわれと考えております。

 もとより、交流が官民癒着との疑念を抱かれることなく、国民の信頼を得られるよう進めていくべきことは当然であります。

 原子力安全委員会事務局における民間企業出身者の採用についてでございますが、この原子力安全委員会事務局においては、規制行政庁が行っている原子力施設の安全規制を監視、監査するための事務を行っている部署に、原子炉の製造や保守管理にかかわる民間企業出身の任期付職員を採用しておるわけでありまして、これは事実でありますが、当該事務を行う上で必要な専門的知識と実務経験を有する人材という観点から採用しているものでありまして、議員御指摘の癒着のような事実はないものと考えております。

 官民癒着への歯どめについてお尋ねがございました。

 官民の人事交流の抜本的拡大については、今般の法案の成立後に具体的な制度化の内容について検討を進めてまいりたいと考えます。その際、さきに申し上げたとおり、官民の人事交流の透明性を確保することなどにより、公務の中立性、公正性に十分留意し、官民癒着を防止してまいりたいと考えております。

 年金問題、道路特定財源問題等の責任についてお尋ねがございました。

 年金問題を初めとする御指摘のさまざまな問題につきましては、個々にその原因、責任の所在が異なり、事案ごとに問題の所在を的確に把握し、適切に対処することが必要と考えております。

 なお、一般論としては、政治、行政が国民生活の安全、安心のためにあることは論をまたないところでございまして、政治家、官僚いずれも、国民生活に重大な責任を負っているとの認識、自覚を常に忘れないように求められていると考えております。

 行政情報の開示による国民の監視と国会の行政監視機能についてお尋ねがございました。

 道路予算における不適切な支出の根絶や無駄の排除、年金問題への真摯な対応などにより、行政に対する国民の信頼を回復していく必要があると考えております。その際、行政情報の開示により行政の説明責任を果たすと同時に、国会等の議論を踏まえ、改革に取り組んでまいります。

 公務員の労働基本権の確立についてお尋ねがございました。

 基本法案では、「協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討する。」ということとなっております。基本法成立後、公務員の協約締結権のあり方について検討を進めてまいります。

 専門調査会の報告との関係についてお尋ねでございますが、昨年十月に取りまとめられた専門調査会報告は、「一定の非現業職員について、協約締結権を新たに付与するとともに第三者機関の勧告制度を廃止」すべきとしつつ、一方で、「改革に伴うコスト等に十分留意しつつ、慎重に決断する必要がある。」「改革の全体像を国民に提示して、その理解を得ることが必要不可欠である。」といたしております。

 基本法案は、このような専門調査会の報告の趣旨を踏まえて立案したものであります。

 公務員の残業についてお尋ねがありました。

 本法案については、「各部局において業務の簡素化のための計画を策定するとともに、職員の超過勤務の状況を管理者の人事評価に反映させるための措置を講ずること。」としております。このことにより、業務の効率化を進め、勤務時間の適正化を図ることといたしております。

 なお、昨年の人事院給与勧告時の報告においては、各府省において職員の在庁時間及びその事由を適切に把握し、在庁時間を削減するべきとされており、いずれにしましても、政府全体として業務の効率化を図るとともに、勤務時間の適切な管理の徹底に努めてまいります。

 非常勤職員の労働条件についてお尋ねでございます。

 非常勤職員の労働条件については多岐にわたる検討課題がありますが、現在、人事院において各府省における非常勤職員の給与等の実態把握に努めているところでもあり、それも踏まえ、どのような方策が可能か検討してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) 政官接触の集中管理についてのお尋ねでございます。

 今回の基本法案では、各府省に、国会議員への政策の説明その他の政務に関して大臣を補佐する政務専門官を設けることとしておりますが、それ以外の職員が国会議員に接触することを一切禁止するものではありません。政官接触の集中管理に関する規律については、基本法成立後、具体化することとなります。その際には、国会議員の側からの情報収集等に支障を生じないよう十分配慮しつつ検討してまいります。

 公務員の奉仕すべき対象についてのお尋ねであります。

 今回の法案は、「国民全体の奉仕者である国家公務員について、一人一人の職員が、その能力を高めつつ、国民の立場に立ち、責任を自覚し、誇りを持って職務を遂行することとする」ことを目的としております。

 また、国家戦略スタッフ、政務スタッフの導入や、内閣人事庁を設置しての幹部職員の一元管理は、議院内閣制のもと、国家公務員が内閣、内閣総理大臣及び各大臣を補佐する役割を適切に果たすためのものであります。(拍手)

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副議長(横路孝弘君) 菅野哲雄君。

    〔菅野哲雄君登壇〕

菅野哲雄君 社会民主党の菅野哲雄です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の国家公務員制度改革基本法案に対し、福田総理と渡辺公務員制度改革担当大臣に質問をいたします。(拍手)

 民法の権威、末弘厳太郎先生は、昭和初期の著書「役人学三則」の中で、「第一条 およそ役人たらんとする者は、万事につきなるべく広くかつ浅き理解を得ることに努むべく、狭隘なる特殊の事柄に特別の興味をいだきてこれに注意を集中するがごときことなきを要す」、「第二条 およそ役人たらんとする者は法規を楯にとりて形式的理屈をいう技術を習得することを要す」、「第三条 およそ役人たらんとする者は平素より縄張り根性の涵養に努むることを要す」と述べています。

 防衛省や国土交通省、文部科学省、社会保険庁初め最近の官僚の不祥事を見ていると、役所の硬直した姿勢は当時と全く変わっていません。こうした状況にメスを入れ、縦割り行政や閉鎖性、政官業の癒着を是正し、良質の公共サービスを提供することこそ公務員制度改革の目的だと考えます。そこでまず、公務員制度改革の意義とねらいについて総理の御所見を伺います。

 さて、国家公務員制度改革基本法案は、四月四日に法案が提出されるまで紆余曲折があり、閣僚間の対立や閣内不一致が新聞やテレビをにぎわせていました。しかも、提出された法案は、昨年十月の行政改革推進本部専門調査会報告や本年二月の公務員制度の総合的な改革に関する懇談会報告書の内容からすると、府省割拠主義に基づく旧態依然とした公務員制度を温存しようとする跡が随所に見えます。

 例えば、総合懇談会の報告では、キャリアシステムの廃止や幹部職員の内閣一元管理などを明確に打ち出しました。にもかかわらず、法案では、1種試験を廃止すると言いながら、かわりに総合職試験と幹部候補育成課程が設けられ、事実上キャリア制度を温存しています。

 また、専門調査会報告で使用者機関としての機能が期待されていた人事管理庁も、内閣人事庁として設置はするものの、情報提供、助言等のサポート役にとどまっています。幹部職員の人事権の扱いも、「内閣人事庁及び各府省に所属する」という妥協の産物に終わりました。

 私は、改革が後退した一番の責任は、骨抜きを黙認した総理にあるのではないかと考えます。縦割り行政、中央集権政治、官僚主導政治を打破し、民主的で透明な公務員制度への改革を進めるには、この機を逸してはなりません。法案に対する総理の基本認識をお聞かせください。

 また、渡辺大臣は、記者会見で法案について、満点とは言えないが合格点と総括されています。どの部分が足りなくて満点にできないのか、また、なぜそうなったと認識されていらっしゃるのか、率直にお答えください。

 私は、内閣人事庁を幹部公務員の人事の主体とするとともに、団体交渉の使用者代表という立場を明確化すべきだと考えます。さらに、キャリアシステムを解消し、すべての公務員に対して平等で公正公平な人事制度を確立することが必要だと考えますが、これらについて、総理及び渡辺大臣の御見解を伺います。

 法案では、定年制について、「将来における定年の引上げについて検討する」とされていますが、公務員の雇用と年金の接続のために定年を直ちに六十五歳に引き上げるべきです。渡辺大臣、いかがですか。

 さて、懸案だった公務員の労働基本権のあり方については、「検討する。」だけで終わっています。渡辺大臣、一定の非現業職員に協約締結権を付与することに踏み切った専門調査会報告や、それを尊重するとした総合懇談会報告を無視する内容になっていませんか。渡辺大臣は、かねがね、労働基本権の付与も避けて通れないと述べていただけに、大変残念です。

 そこで、渡辺大臣に伺います。

 法案は労働基本権の拡大を否定したものではなく、検討にとどまらず協約締結権を付与するものと理解しますが、いかがですか。また、法案では、五年間、国家公務員制度改革推進本部を設置するとしていますが、既に専門調査会や総合懇談会で検討してきたのに、さらに五年の月日を費やす必要があるのでしょうか。速やかに結論を得るよう、法改正と実施時期を明らかにしていただけますか。また、具体化に向けた検討に際しては、当事者が参加する検討機関を設けるべきではないかと考えますが、いかがですか。

 ILOの結社の自由委員会は、二〇〇二年十一月、公務員の労働基本権の制約を維持するとの考えを再考し、すべての関係者と率直かつ有意義な協議を速やかに行うべきと表明し、日本の法令及び慣行がILO条約の規定に反している等の見解を示しました。二〇〇三年にも、関係者の協議は公務員への団体交渉権及び団体協約締結権の保障、ストライキ権の付与などについて特に扱うべきであるという勧告が採択されています。

 総理、今回の基本法案は、これまでILOが求めてきた結社の自由の原則に調和する水準に達しているとお考えですか。ILO勧告を踏まえた労働基本権の確立について、総理及び渡辺大臣の決意を改めてお願いします。

 あらゆる分野で格差が拡大する中、国民生活の安心、安全のためにも、良質な公務サービスの役割は高まっており、その基盤となる公務員制度の改革は喫緊の課題です。公務員に労働基本権を確立し、公務の労使関係制度を透明で民主的なものに抜本的に改革することを強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 菅野議員にお答えを申し上げます。

 公務員制度改革の意義とねらいについてのお尋ねでございましたが、「国民全体の奉仕者である国家公務員について、一人一人の職員が、その能力を高めつつ、国民の立場に立ち、責任を自覚し、誇りを持って職務を遂行することとする」、このことが、今回の国家公務員制度改革の意義とねらいであります。

 法案に対する基本認識についてでございますが、今回の法案は、私のもとで開催された公務員制度の総合的な改革に関する懇談会の報告書を踏まえつつ、閣僚懇談会や渡辺大臣と各大臣との個別の意見交換の結果等に基づいて取りまとめられたものであります。検討の過程においてさまざまな意見があったことは事実でありますが、活発な議論を経た結果、最終的には、先ほど申し上げた今回の改革のねらいに沿った内容になったものと考えております。

 次に、内閣人事庁、キャリアシステム等についてのお尋ねがございました。

 内閣人事庁においては、職員の育成及び活用を府省横断的に行うとともに、幹部職員等について適切な人事管理を徹底するための事務を一元的に行うこと等を所掌することとしております。

 なお、今後、協約締結権のあり方について検討する際には、使用者代表のあり方についても検討がなされるものと考えております。

 また、本法律のもとで、いわゆるキャリア制度を廃止し、公務員について、能力本位で公正な人事制度を確立してまいりたいと考えております。

 ILOの勧告とその関係についてお尋ねがございました。

 過去三回にわたるILOの勧告は、基本的には、公務員制度改革について、政府に対し、組合を初め関係各方面と十分話し合うよう要請したものと認識しております。

 今回の基本法案は、労働組合や職員団体の関係者も委員として参加した行政改革推進本部専門調査会の報告及び公務員制度の総合的な改革に関する懇談会の報告書の趣旨を踏まえて立案したものであります。

 公務員の労働基本権の確立についてお尋ねがございました。

 基本法案では、「協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討する。」ということとしておるわけであります。

 基本法成立後、公務員の協約締結権のあり方について検討を進めてまいりますが、その際には、引き続き関係者との率直な意見交換を行ってまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣渡辺喜美君登壇〕

国務大臣(渡辺喜美君) まず、法案の評価についてのお尋ねであります。

 今回の国家公務員制度改革基本法案は、総理のもとの公務員制度の総合的な改革に関する懇談会の報告書を踏まえつつ、閣僚懇談会や各大臣との個別の率直な意見交換の結果等に基づいて取りまとめられたものであります。検討の過程においてはさまざまな意見があったことも事実でありますが、活発な議論を経た後に、最終的には、プログラム法という性格上、このような内容になったものと考えております。

 次に、内閣人事庁、キャリアシステム等についてのお尋ねであります。

 内閣人事庁において、幹部職員等について適切な人事管理を徹底するための事務を一元的に行うことは、縦割り行政の弊害を除去し、各府省横断的な人材の育成、活用を行うことに資するものであります。このことにより、各大臣が人事を行うに当たって内閣としての一体性を確保することが可能になるものと考えております。

 なお、協約締結権のあり方について検討する際には、使用者代表のあり方についても検討がなされるものと考えております。

 定年の引き上げについてお尋ねがありました。

 定年の引き上げについては、民間の状況等を踏まえれば、現時点において直ちに国家公務員について一律に年金受給開始年齢まで定年延長をすることは困難でありますが、雇用と年金の接続の重要性にかんがみ、基本法案においては、「将来における定年の引上げについて検討すること。」としております。

 同時に、行政の減量や効率化も重要な観点であり、定年の引き上げの検討に際しては、定年の引き上げに対応した給与制度のあり方や、役職定年及び職種別定年制の導入についても検討することといたしております。

 昨年十月に取りまとめられた専門調査会報告は、第一に、一定の非現業職員について、協約締結権を新たに付与するとともに第三者機関の勧告制度を廃止して、政府が主体的に勤務条件を考え、職員の意見を聞いて決定できる機動的かつ柔軟なシステムを確立すべきとしております。一方で、改革に伴うコスト等に十分留意しつつ、慎重に決断する必要があること、また、改革の全体像を国民に提示して、その理解を得ることが必要不可欠であるといたしております。

 基本法案は、このような専門調査会の報告の趣旨を踏まえ、立案したものであります。

 なお、基本法案は検討に五年をかけることを前提としているわけではなく、検討体制については、基本法成立後の問題でありますが、引き続き関係者の意見を十分聞いて検討を進めてまいります。

 なお、専門調査会報告は、当初、五年の予定のところ、私が期限を区切り一年半程度でまとめられ、スケジュールとしては大幅な進展を見ております。

 公務員の労働基本権の確立についてお尋ねがありました。

 基本法案では、「協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討する。」こととしております。

 基本法成立後、公務員の協約締結権のあり方について検討を進めてまいりますが、その際には、引き続き関係者との率直な意見交換を行ってまいります。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  福田 康夫君

       総務大臣  増田 寛也君

       農林水産大臣  若林 正俊君

       国務大臣  渡辺 喜美君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  大野 松茂君

       内閣府副大臣  山本 明彦君


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