衆議院

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第8号 平成20年10月28日(火曜日)

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平成二十年十月二十八日(火曜日)

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  平成二十年十月二十八日

    午後四時三十分 本会議

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本日の会議に付した案件

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後四時三十二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣中川昭一君。

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) ただいま議題となりました金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 現在、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した外的な環境変化のもと、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援していくことが喫緊の課題であります。このため、国の資本参加によって、金融機関等の資本基盤の強化を図り、金融機関等が適切な金融仲介機能を発揮し、地域における中小企業に対する金融の円滑化に資する政策を積極的に推進していくことが重要であります。

 このような考え方を踏まえ、金融機能強化法の活用、使い勝手の改善のために必要な見直しを図るため、本法律案を提出することとした次第であります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、現行法上、平成二十年三月までとされておりました国の資本参加及び組織再編成における手続の特例等に係る申請期限について、平成二十四年三月末までとしております。

 第二に、国の資本参加の要件を一部緩和しております。具体的には、金融機関の経営責任等の明確化の要件や抜本的な組織再編成を伴わない場合に加重されていた要件を、制度上一律には求めないこととしております。

 第三に、協同組織金融機関全体で提供している金融機能の発揮の促進を目的として、協同組織金融機関の中央機関に対して、あらかじめ国が資本参加することを可能とする枠組みを整備しております。

 次に、保険業法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 最近における保険業を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、この厳しい状況のもとにおいて保険契約者等の保護を図り、保険業に対する信頼性を維持するため、セーフティーネットの確保が図られるよう本法律案を提出することとした次第であります。

 以下、その大要を申し上げます。

 生命保険会社が破綻した場合のセーフティーネットにつきましては、来年三月末までに破綻した場合、これに関連して生命保険契約者保護機構が行う資金援助等に関し、政府の補助を可能とする特例措置が設けられております。これに関して、平成二十四年三月末までの破綻に係る資金援助等について政府の補助を可能とするため、現行規定を三年間延長することとしております。

 以上、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。

 何とぞ御審議のほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)

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 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。竹本直一君。

    〔竹本直一君登壇〕

竹本直一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、内閣提出の金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案につきまして、総理及び関係大臣にお伺いをいたします。(拍手)

 現在、世界の金融経済は、さながら世界恐慌前夜とも言える様相を呈しております。各国の株価を一年前と比較すれば、アメリカでは四〇%近くの下げ幅を記録しております。また、ドイツ、イギリス、フランスでも三〇%ないし五〇%近くの下げを記録しております。ロシアに至っては七〇%近くとなっております。

 さらには、これだけの下げ幅を記録している中で、この先の行く末は、いつ底を打つのか不透明な状況であります。

 グローバルな経済が深化するに及び、このような広がりのある危機は、まさしく古今未曾有の危機、この先百年に一度の危機として記憶されるものになる可能性すら秘めていると考えられます。

 このような危機は我が国にも影響を及ぼしてきており、日経平均株価は一年前と比較して実に五〇%以上の下げ幅を記録しております。不動産会社や一部の企業では倒産が相次ぐ状況でもあります。

 こうした中、我が国の屋台骨を支える中小企業の状況に目を向けますと、輸出に依存する中小企業、業績の悪化した大企業の下請企業は極めて厳しい状況に直面いたしております。

 金融という観点でここ一年を見ましても、国内銀行の中小企業向け貸出残高が実に七ないし八兆円規模で減少しております。あるいは、日銀短観における中小企業が感じる金融機関の貸し出し態度のデータも極めて悪化しております。

 このように、中小企業の資金繰りは大変厳しい状況に瀕していることから、現在の中小企業が直面する厳しい状況が裏づけられるわけであります。

 私も、先般、地元の不動産、建設関係業者の方々から、業況が厳しい、銀行の貸し出し姿勢が厳しいという声を伺っております。

 さらには、米国発の危機は、今や中国やロシア、新興国にまで広がりを見せ、世界じゅうが困難な局面を迎える中で、経済全体が落ち込み、ますます我が国の経済に影響を及ぼし、中小企業もますます厳しい状況に至る懸念がございます。

 私は、このような中小企業が大変困難な局面を迎えているという状況に接し、日本政府は直ちに緊急的な対応が必要であると考えられますが、まずは、現在の中小企業金融を初めとする地域金融を取り巻く環境について、麻生総理大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 今回、政府から提出があった金融機能強化法改正案及び保険業法改正案は、こうした要請に電光石火、雷電風雨のごとくこたえるものであります。私は、この施策は、現在の危機そして将来の危機の備えとして、中小企業及び地域経済、それを支える金融を支援する政策と位置づけられるものと理解しておりますが、改めて、金融機能強化法及び保険業法の改正趣旨について、中川金融担当大臣にお伺いいたします。

 私は、今回の法案自体にももちろん賛成でありますが、金融機関の貸し出し姿勢という観点から一つ問題を提起しておきたいと思います。

 金融機関は、預金を集めて貸し出しを行うという業務の性質上、財務の健全性を保たなければならないことは百も承知をいたしております。しかし、一方で、金融機関は、経済の血液ともいうべき資金の円滑な循環を図っていくという公的な使命があることを忘れてはなりません。そのために、十年前、日本の金融危機においても、公的資本の注入によって金融機関の資本の増強を行い、信用秩序の維持を図ったわけであります。

 銀行は、このような公的な使命をしっかりと受けとめ、少しでも国民に貢献する、中小企業に対してリスクをとって積極的に貸し出しをする、こういう対応をすべきであると思います。

 しかしながら、銀行は、結局、一歩踏み込んだリスクテークを行っていないのではないでしょうか。銀行は、本来とるべきリスクをとっておらず、中小企業向け貸し出しを積極的に行うときは、いつも政府から後押しをしているように思えてなりませんが、この点について、中川大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 次に、法案の内容についてでありますが、やはり銀行は、公的資金を受け入れても、中小企業への貸し出しに本当に使うのか、自分の懐に入れてしまうのではないかという懸念を持つところであります。

 本案は、ただ金融機関を救済し、金融機関だけが得をするようなものであってはなりません。あくまで、本法案によって、中小企業、地域経済に対して確実にお金が回るようにならなければなりません。私は、この点について、堂々と地元の中小企業の皆様にも説明をしたい、そして、今回の法律はそういう内容になっていると考えたいのであります。

 そこで、政府に確認をしたいのでありますが、今回の法律においては、地域経済、中小企業金融の円滑化が図られるような手だてが講じられており、金融庁として適切にチェックしていくという理解でよいのか、中川大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 さて、今回の法律案では、銀行は、制度上一律には経営責任を問われない仕組みになっていると理解しております。しかし、仮に銀行の経営者が全く責任を問われないということであれば、大いに疑問を感じざるを得ません。

 今回の法律は、中小企業の支援、中小企業金融の円滑化という目的があるにしても、中小企業に対して直接資本が入るわけではありません。一方、銀行には公的な資本が入ることにより救われるということになるわけであります。

 公的な資金が注入される以上、いかなる場合にも銀行が何も経営責任を問われないということになれば、それでよいのかという疑問を感じるわけではありますが、あくまで、これは制度上一律に問われないのであって、一定の経営責任は問われるという理解でよいかどうか確認をさせていただきたいと思いますが、この点について、ぜひ中川大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

 今回の金融機能強化法の改正により、金融機関を通じた中小企業金融の円滑化に向けた対応策が図られました。しかし、次のさらなる一手として、実体経済に直接訴えていく対応策も迅速に図ることが重要であります。

 二〇〇七年の各経済圏の経済成長の内外需要の寄与度を見ますと、米国では内需一・六%に対し外需〇・六%、ユーロ圏は外需〇・六%に対し内需二・二%、英国は内需三・八%に対し何と外需マイナス〇・六%となっております。他方で、我が国は、内需〇・五%に対し外需〇・九%となっております。

 これを見ましても、我が国経済構造がいかに外国とは異なり外需に偏った特異な形であることがわかります。このようないびつな外需主導型経済から内需主導型の経済に転換を図る必要があると考えます。公共事業を実施していくという考え方もありますが、従来型の公共事業を行うということであれば、いたずらに財政赤字を膨らませてしまうだけであります。

 今後は、PFI方式や最近話題になっておりますプロジェクトファイナンス方式を積極的に活用して、民間の千五百兆円とも言われます個人金融資産を国内のさまざまなプロジェクトに投入できるようにすることが必要と考えるわけであります。その際には、国も、内需振興対策本部をつくって内需振興の強い決意を示し、政府保証等の形でこのような事業を支援していくことを検討すべきと考えます。

 このように、国内資金の活用により全国にプロジェクトを推進することにより、地域の活性化が図られ、中小企業も元気が出てくるものと考えますが、麻生総理大臣の御所見をお伺いいたします。

 最後になりますが、十年前のちょうどこの十月、日本は金融危機に遭遇し、国会においては、金融再生法、金融機能早期健全化法が成立いたしました。これは、与野党の協力のもと成立したものであります。現在の状況は、日本発ではないにしても、十年前と同じような国難、よりグローバルな危機という側面からすれば、未体験の危機を目前にしているとも思われます。

 私も先ほど、経営責任の観点から問題提起をいたしました。このように、議員一人一人、今回の金融機能強化法改正案に対し、いろいろな意見があると思います。しかし、政府の提案は、この短期間の中で、ただ法律の日付を延長するだけでなく、大胆に内容の改正にも踏み込むものであり、世界的な金融経済の危機から日本を守る、中小企業を支援する、地域経済を救うという強い意思と決意が感じられるものと理解をいたします。

 したがって、国会議員も、些事にこだわらず大事、大局に生きる、この精神にのっとって、この法案への意思表明をすることが求められるのではないかと思います。

 ここはひとつ、大乗的見地に立ち、ぜひとも、他党の皆様においても御賛同をいただき、この法律を世に送り出していかなければならない、中小企業、地域経済を救わなければならないということを強く訴えまして、私の質問を終わりたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 竹本議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、中小企業金融などを取り巻く環境についてお尋ねがありました。

 現下の厳しい経済情勢のもとで、多くの中小企業が資金繰りに不安を感じております。中小企業に対する円滑な金融は、民間金融機関の最も重要な役割の一つであると認識をいたしております。適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が求められていると存じます。

 政府として、今月末から、緊急保証制度の開始など、しっかりした資金繰り支援を迅速に講じることといたしております。さらに、本法案により、民間金融機関の資本基盤を積極的に強化することにより、中小企業に対する金融仲介機能の発揮を確保してまいりたいと考えております。

 次に、国内の民間資金を活用したプロジェクト推進についてのお尋ねをいただきました。

 米国のサブプライムローン問題に端を発した世界経済の成長の鈍化によりまして、外需依存型の経済成長を続けることは困難と認識をいたしております。PFI方式の実績は、平成十五年の約百件から平成二十年には三百二十件と、着実に増大をいたしております。地域を活性化するため、民間資金やノウハウなどを活用して、財政負担を軽減しながら、公共的プロジェクトを促進していくということは重要と考えております。

 残余の質問に対しては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 竹本議員にお答え申し上げます。

 金融機能強化法及び保険業法の改正趣旨についてのお尋ねでございますが、世界的な金融市場の混乱を初めとする外的な環境変化のもと、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援し、適切な金融仲介機能を発揮できるよう、国の資本参加によって金融機関の資本基盤の強化を積極的に推進することが重要であります。今般の金融機能強化法の改正は、このような考えを踏まえ、同法の活用、使い勝手の改善を図るものであります。

 また、現下の厳しい金融情勢のもと、引き続き、保険契約者の保護が的確に図られるためのセーフティーネットを確保することが重要であります。今般の保険業法の改正は、このような観点から、平成二十一年四月以降も生命保険契約者保護機構に対する政府補助を可能とするものでございます。

 次に、銀行による中小企業向け貸し出しについてのお尋ねがありました。

 中小企業に対する円滑な金融は、金融機関の最も重要な役割の一つであると認識しております。現下の金融情勢のもと、中小企業の業況は厳しい状況にあり、民間金融機関において、借り手企業の経営実態や特性に応じたリスクテークとリスク管理をきめ細かく行い、中小企業に対する円滑な資金供給に努めることが重要であります。各金融機関においては、工夫を凝らした自主的な取り組みにより、適切かつ積極的な金融仲介機能が発揮されることを期待しております。

 次に、地域経済、中小企業金融の円滑化に向けた方策についてのお尋ねがありました。

 金融機能強化法の活用により、金融機関の資本基盤の強化が図られ、リスクテーク能力が向上することで、厳しい状況に直面している中小企業の支援が促進されることが期待されます。

 こうした観点から、改正案におきましては、国の資本参加を受ける金融機関に対して、経営強化計画の中で、中小企業貸し出しの円滑化のための方策の策定を求めることとしております。

 金融庁といたしましては、この計画が円滑かつ確実に実施される見込みがあるかどうかを審査し、その履行状況を継続的にフォローアップしていくことにより、中小企業金融の円滑化を促進してまいります。

 次に、公的資本参加を受ける場合の金融機関の経営責任についてのお尋ねがありました。

 今般の見直しは、世界的な金融市場の混乱を初めとする外的環境変化によって適切な金融仲介機能の発揮が妨げられないよう、金融機関の資本基盤の強化を積極的に図るものであります。したがって、一定の数値基準等のみをもって一律に経営責任の明確化を求める制度については、見直すこととしております。

 ただし、国の資本参加を受ける以上、責任ある経営がなされることは大原則でございます。このため、例えば、申請時に責任ある経営体制の確保を図るための枠組みを内閣府令において設けるとともに、資本参加後は、経営強化計画の履行状況をフォローアップし、必要に応じ監督上の措置を講じていくことにより、責任ある経営が行われることを確保してまいる所存でございます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 中川正春君。

    〔中川正春君登壇〕

中川正春君 中川正春です。

 民主党・無所属クラブを代表して、質問をいたします。(拍手)

 サブプライムローン問題に端を発する金融危機は、世界を大きく揺るがしています。アメリカやヨーロッパの金融政策当局が不良債権の買い取りや巨額の資本注入を決断しても、株式市場の不安は深まるばかりで、株価が大きく下落をしております。日本の市場でも、昨日、麻生総理が六項目に及ぶ市場安定策を打ち出しましたが、それにもかかわらず、株価は引き続き大きく下落をし続けました。

 市場は、思い切った金融安定策と景気に対する有効な刺激策を期待しております。今回の麻生総理の対応を市場は完全に見限ってしまいました。今の政権には何も期待ができないと市場は結論を出しているのであります。麻生内閣、不信任。

 現状の閉塞感を脱して、思い切った金融対策と日本経済の内需拡大につながる構造改革を伴う経済対策を打ち出せる状況を日本は今こそつくらなければならない。そのためにも、解散・総選挙で政権と政策の是非を国民が直接選択し、国家の意思をはっきりさせることが必要なのであります。

 総理、本当は、自民党の支持率の低下を気にして解散に踏み込めない、そういうことだと国民は見透かしています。それを、現下の金融情勢が不安定だからと、もっともな理由にすりかえて解散を先送りするようなことがあるとすれば、それは、この国の危機への対応をも同時に先送りすることになります。現状から逃げて対応を先送りすることは、断じて許されません。

 さて、法案自体の議論に入る前に、まず最初に確認をしておきたいことがあります。

 与謝野経済財政担当相は、日本の現状は世界と違う、ハチが刺した程度の影響しかないと言われた。これは、リーマンの破綻だけに目を奪われて、破綻債権の所有が日本でどれだけあるかということだけを基準に、大丈夫だと発言されたのだと思います。もし大臣がこうした狭い認識の前提だけで政府の第二次経済対策を打ち出そうとしているのであれば、大変な間違いを犯しています。

 世界の金融情勢をトータルで判断することがいかに大事か、日本の経済対策はそこが今問われているのであります。今回の法案も、そうした狭い意味の現状認識から出発している限り、市場で十分な機能を果たすことは期待ができない、そのことをまず指摘しておきたいと思います。

 そして、改めて質問します。

 世界の状況がいかに深刻でも、日本は大丈夫だという間違った認識を総理も持ったまま、これからの対策を進めようとしているのですか。まず、その出発点をはっきりとしておく必要があると思います。

 世界の金融市場は大きく収縮しています。これは、サブプライムで代表される劣悪なローンなどが証券化されて生み出された新たな金融商品全体が信用を失い、劣化し続けているという事実。さらに、それから派生した保険商品のCDSなど、こうしたもので膨らんだ簿外の金融商品がその回収の連鎖を起こそうとしている瀬戸際であるということが、関係者のトラウマになっております。その規模、六千兆円から七千兆円と言われています。日本だけがこうした簿外の高リスクヘッジファンドとは無関係だとは言い切れないのであります。

 こうした状況に、昨今の株価急落を踏まえれば、早晩、国民の中にも銀行に対する不安が募ってきます。私自身は、今回の資本注入の枠組みと同時に、預金の全額保護を打ち出すべきときに来ている、そう思っております。まず、政府にその意思があるのか、伺いたい。

 改めて、法案の中身について質問をします。

 今回の法律で、具体的に、どの金融機関に対してどのくらいの資金規模で資本投入をしようと考えているのか、具体的な計画を政府は説明する必要があります。これは、マーケットに対するメッセージとしても非常に大切なことであります。

 次に、法案自体の政策ターゲットを明確にする必要があります。公的資金による資本注入は、金融機関の破綻を阻止するためのものなのか、それとも、中小企業の貸出枠の縮小を食いとめていくことを目的にするのか、明確にする必要があります。

 民主党の部会を通じての調査で明らかになったように、金融機関の救済の例では、農林中金の経営の失敗を今回の法案による救済対策に含めたことにその典型があります。本来そこまで手を出すことは禁じ手であったハイリスク債券にまで資金運用を拡大して、大きくつまずいているのが現状であります。この責任は、経営者のリスク管理にあります。彼らの経営責任が問われることになるのは当然であります。

 また一方で、株価の大暴落という、自身ではコントロールのできない現状に対応し切れない、地方の金融を担う金融機関が存在することも事実であります。急激な資本収縮に対してBIS基準を満たすためには、それに対応する貸し出しの総額を縮小せざるを得ない。その結果、立場の弱い中小企業に対して、理不尽な貸しはがしや貸し渋りが現在既に起こっております。

 どちらも公的資金の直接投入の対象になっておりますが、結果、得られるものは違ってきます。一方は金融機関の救済、もう一方は貸出枠、特に地方の中小企業に対する貸出残高が縮小することを食いとめるということにあります。法の目的はどちらなのか、また、それを区別して、経営者の責任と情報の公開を義務づけているとすれば、具体的にどの条項で区別をしているのか、答えていただきたい。

 農林中金に天下りをしている役員の個別の具体的な報酬についても情報を開示するように求めます。また、新銀行東京に対しても資本注入をしていくつもりなのか、はっきりと答えてください。石原都知事の責任を明確にできないまま救済することはあり得ない。私は、新銀行東京は今回のフレームから切り離すべきだと考えております。銀行の救済は、何回も言いますが、経営責任を問うこと、これが大前提であります。

 さらに、法案が本当に機能するかどうか、具体的な運用を確かめる必要があります。

 第一に、資本注入の枠はできても、それぞれの金融機関が具体的に手を挙げて公的資金の受け入れに応じるかどうかということであります。手を挙げることは、あの銀行は危ないのではないかと後ろ指を指されるリスクが出てまいります。昨日も、大手銀行が、これは政府ではなく民間からの増資を計画していることが報道されただけで関連の株価が急落をするありさまであります。これが現実なのです。

 今回の法案でも、それぞれの金融機関に対して強制的な資本注入をしていく前提にはなっておりません。今回の法案ではそれを具体的にどのように克服していこうとしているのか、具体的に答えていただきたい。

 また、資本注入で貸出枠が縮むことは防げても、それが中小企業に対する具体的な貸し出しに結びつくこと、金融機関が積極的にリスクをとっていくことにつながっていなければ、本来の目的を達したことにはなりません。

 小泉改革の矛盾は、地域経済や中小企業に大きな打撃をもたらし、ただでさえ疲弊していた状況に追い打ちをかけて、原料高と販売不振が経営を非常に厳しいものにしております。それだけに、金融機関が思い切ったリスクをとらないと中小企業の真の救済策にはなっていかないことは、だれの目にも明らかであります。

 信用保証枠の拡大はもちろん、破綻時の二〇%銀行負担枠を撤廃していくこと、中小企業向け貸し出し検査マニュアルを弾力的に運用して実態に合ったリスクテークの拡大を促す意思は政府にありませんか。

 その他、この法案の運用の中で、具体的にどのような方法で実際の融資拡大をすることを担保しているのか、答えていただきたい。

 世界市場は急速に収縮をしています。関係各国がこの危機に対して歩調を合わせ、資金の流動性を確保していくこと、これに全力を尽くすべきであります。金利、為替、国家破綻の途上国の救済措置など、各国が連携する中で必要な対策を速やかに打ち出していくべきであります。

 一方で、サブプライム問題から始まった今回の世界の金融市場の破綻については、アメリカのギャンブル金融そのものに対して根本的な見直しのための議論を行っていく必要があります。証券化という手法を野放しにしたことが架空のマネーのバブルを招いたのではなかったか。格付機関の責任を問わなくていいのか。時価会計ルールは本当の企業価値を反映しているのか。破綻連鎖の可能性を秘めたCDSなどの派生商品の崩壊危機とこれからの市場ルールをどのように設定していくのか。そのための国際的な舞台を早急に設置すべきであります。

 総理、その会議をあなたはどうして日本で開こうと提唱しないのか。ここが今私たちの出番なのです。そのことを改めて指摘しておきたいと思います。

 私は、今こそ、日本の政治が世界の中でリーダーシップを発揮し、日本経済を支える基本的な価値観に基づいた世界の金融ルールの再構築を提唱するときだと思っています。総理の力の源泉は、国民の支持があるかないかで決まるのです。総理、アメリカにしっかり物を言っていくときが今なのです。しかし、残念なことに、今のあなたの政治基盤では国際的なリーダーシップを唱えることができません。

 改めて総理の解散・総選挙への決意を期待しまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 中川議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、政府の方針について申し上げます。

 現在の国際金融情勢は、尋常ならざるものがあります。そのため、今回提案をしております金融機能強化法案などの改正法案は、一日も早く成立させる必要があります。したがって、今後、野党から具体的な御提案があった場合は、委員会審議を通じ、よりよい成案を早急に得られるのであれば、政府としても積極的に協議に応じてまいりたいと考えております。この点をまずもって申し上げておきたいと存じます。

 次に、各質問についてお答えをさせていただきます。

 経済対策についてのお尋ねがありました。

 日本の経済は、景気後退の上に、国際的な金融危機、それに伴う株価の下落が起こるなど、厳しい局面に立たされているものと認識をいたしております。

 国民生活と日本経済を守るため、生活対策の策定を政府・与党に指示し、今週中を目途に取りまとめることといたしております。また、昨日二十七日には、株式市場の安定、金融機能の一層の強化、そして証券投資のすそ野の拡大に向けた対応策の実施を関係閣僚及び与党幹部に指示したところであります。

 こうした対策を速やかに実施することで、金融市場の安定化、経済の活性化につなげてまいりたいと考えております。

 次に、預金の全額保護についてのお尋ねがありました。

 日本の金融システムは相対的に安定しておりまして、預金の全額保護を行うことは、かえって風評を招くおそれがあると考えております。また、我が国において、決済性預金の全額保護が既に措置をされているなど、適切なセーフティーネットが整備をされております。したがって、現時点で預金の全額保護を行うことを検討することは慎重な対応が必要と考えております。

 最後に、世界経済に関する国際会議を日本が主催する必要性についてお尋ねがありました。

 世界経済の現状にかんがみ、引き続き各国の財務・金融当局が協調し、かつ迅速に現下の状況に対応していくことが極めて重要であると私も考えております。

 こうした中、十一月十五日に、アメリカがG20と言われる各国の首脳を招待して、ワシントンにて金融・世界経済に関する首脳会合を開催することとなりました。日本としては、今後の世界経済、金融市場の安定のために重要な役割を果たすことが期待される米国が本件首脳会合を主催すると提案したことを支持したものであります。

 日本は、本年のG8の議長国でもあり、かつて金融危機を十年、十一年前に克服した経験を持っております。首脳会合の成功に向け、米国を初めとする関係国と協議しつつ、リーダーシップを発揮していく考えであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕

国務大臣(石破茂君) 中川議員にお答えをいたします。

 農林中金の役員の個別の報酬についてのお尋ねをちょうだいいたしました。

 農林中央金庫は、農林中央金庫法に基づき、その業務及び組織運営が行われておりますが、この業務運営等については、他の金融機関と同様の規制、指導がなされております民間の金融機関であります。

 したがって、役員の個別の報酬につきましては、このような民間機関である農林中央金庫が決定する事項であり、政府としてお答えする立場にはございません。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 中川正春議員にお答え申し上げます。

 預金の全額保護についてのお尋ねでございますが、ただいま総理からもお答えいたしましたが、我が国の金融システムは相対的に安定しており、また、現行の預金保険制度においては、決済用預金が全額保護の対象とされているとともに、システミックリスクが生じるおそれがあると認定された破綻金融機関の預金は全額保護とされるなど、諸外国と比較いたしましても既に手厚いセーフティーネットが存在しております。

 我が国におきましては、取りつけ騒ぎ等が起こった欧米諸国とは異なり、預金者が平静に行動しており、こうした状況において預金の全額保護を行うことにつきましては、逆に風評を招くおそれがあると考えております。

 以上を踏まえますと、現段階で預金者保護の上限の見直しを検討することについては、慎重な対応が求められるものと考えております。

 次に、今回の改正後における資本増強の状況に係る予測についてお尋ねがありました。

 金融機能強化法に基づく個別金融機関の申請につきましては、その金融機関の財務状況や資本調達をめぐる環境等を踏まえた自主的な経営判断により行われるものであり、今後の申請状況について確たることを申し上げることは難しいと考えます。

 いずれにいたしましても、今般、金融機能強化法の活用、使い勝手の改善を提案させていただいているところであり、国の資本参加を必要とする金融機関が、資本基盤の増強を通じ、適切な金融仲介機能を発揮していくことを期待しております。

 続きまして、金融機能強化法の目的と経営責任及び情報公開との関係についてのお尋ねであります。

 我が国の金融機関は、世界的な金融市場の混乱を初めとする外的要因により損失が生じ、自己資本の低下も懸念されております。このような状況が続けば、金融機関による金融仲介機能の発揮にも大きな支障となる可能性もあります。このため、今般、金融機能強化法の活用を図ることとし、本法案を御審議いただいているところでございます。

 したがって、この法律は、金融機関の救済ではなく、国の資本参加を通じて金融仲介機能を強化することにより、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援することを目的としたものであります。

 このため、本法案では、一律に経営責任の明確化を求める現行制度を見直し、国の資本参加を希望する金融機関が申請を行いやすい環境を整えることとしております。その上で、経営強化計画を通じた経営管理体制の整備、改善を求め、資本参加後に国がこれを継続的にモニターすることにより、適切な経営管理体制の確立を行うこととしております。

 さらに、経営強化計画やその後の実施状況についての公表を義務づけることにより、金融機関による計画の着実な実施を行っていくこととしております。

 次に、新銀行東京に対し資本注入をするのかとのお尋ねがありました。

 個別の金融機関に係る仮定の場合の対応については答弁を差し控えさせていただきます。

 なお、一般論として申し上げれば、適用対象機関から公的資本参加の申請がなされた場合には、民間の有識者で構成される金融機能強化審査会の意見を聞きつつ、法令にのっとり厳正に審査し、国の資本参加の可否を判断することとしております。

 公的資本参加の受け入れについてのお尋ねでありますが、強制的な資本注入の仕組みの導入は、システミックリスクが生じるおそれがあるとの風評を招く可能性があるほか、経営判断にゆだねるべき資本調達について金融機関の自主性を損なうものであるから、困難であると考えております。

 このため、今回の改正案におきましては、金融機関からの申請に基づく国の資本参加という枠組みを維持しております。

 一方で、世界的な金融市場の混乱という外的環境変化のもとで、金融機関の資本基盤の強化を積極的に推進する観点から、国の資本参加の要件を一部緩和するなど、今後、資本政策を検討される金融機関が申請を行いやすい環境を整えてまいりたいと考えております。

 中小企業向け貸し出しの拡大等についてお尋ねがございました。

 金融機能強化法においては、資本参加を受けようとする金融機関が、経営強化計画において、中小企業向け貸し出しの円滑化のための方策を策定し、金融庁がその方策について審査することとなっております。

 また、資本参加後においても、当該金融機関は、中小企業向け貸し出しの円滑化の方策等の実施状況を定期的に金融庁に報告することが求められており、金融庁は、計画の履行状況について定期的にフォローアップすることとなっております。

 なお、フォローアップの結果、計画の履行が不十分な場合には、報告を求め、原因を究明し、さらに、改善の努力が見られない場合には、必要に応じて監督上の措置を講ずることとしております。

 いずれにしましても、中小企業貸し出しの円滑化を図っていくためには、本法案の枠組みの活用を図るほか、金融検査マニュアルや責任共有制度の適切な運用、信用保証制度の拡充等、他の施策とあわせて、厚目厚目に中小企業金融の円滑化に向けた施策を総合的に実施していくことが重要であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 日本経済の先行きにつきましては、当面、世界経済が減速する中で、下向きの動きが続くと見られます。さらに、欧米における金融危機の深刻化や景気の一層の下振れ懸念、株式・為替市場の大幅な変動などから、企業収益の悪化や消費者マインドの冷え込みなどが生じること、金融面において、株安の影響などによる貸し渋り等により、必要な分野に必要な資金が回らなくなることなどから、景気の状況、とりわけ地域経済や中小企業の状況がさらに厳しいものとなるリスクが存在しているものと考えております。

 こうした情勢のもと、新たな経済対策を今週中にまとめるべく作業をしております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 私は、公明党を代表しまして、ただいま議題となりました金融機能強化特措法改正案並びに保険業法改正案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 法案の質疑に入る前に、まず、今回の米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機に関して伺います。

 今回の米国発の金融危機は、米国並びに欧州の大手金融機関が破綻あるいは実質国有化されるなど、一九二九年の大恐慌以来の百年に一度の危機的な事態と評されています。我が国の金融機関は、幸いにしてサブプライムローン関連の証券化商品への投資が少なく、金融システムは欧米と比べて比較的安定しています。

 しかし、欧米の金融危機は実体経済の悪化をもたらし、急激な円高も相まって、自動車を初め我が国の輸出の減少が始まっています。ここ数年の我が国の景気回復は輸出増に支えられていただけに、輸出減少は、生産減少、雇用悪化を通じて我が国の景気悪化に直結します。また、欧米の株式市場の大幅下落が、我が国株式市場での外国人を初めとする株売りにつながり、東証の平均株価はパニック的に大幅下落しています。株価下落は消費者心理の冷え込みに直結します。また、株価下落と景気悪化は、金融機関の信用収縮につながり、特に中小企業に対する貸し渋り、貸しはがし、貸しどめが懸念されます。

 このように、米国発の金融危機は、我が国の景気、経済に対して深刻な悪影響をもたらすと懸念されます。昨日、総理が、株価急落による金融システムの動揺を抑えるため緊急市場安定化策を指示されたように、私は、この際、財政、税制、金融等のあらゆる経済政策手段を平時対応から危機対応に切りかえなければならないと考えます。米国発の金融危機の我が国の景気、経済に対する影響と対応について、総理の御認識を伺います。

 また、十一月十五日に、金融危機に関してG20の緊急首脳会議が米国で開催されると承知しています。我が国としては、どのような方針で首脳会議に臨まれるのか、どのような発信をなされるのか、総理のお考えを伺います。

 総理は、欧米の金融危機勃発という事態に対処するため、補正予算成立直後の十月十六日に、新たな経済対策を策定すべく、政府・与党に指示をされました。十月二十三日には、与党の対策の骨格の申し入れに際して、住宅ローン減税について最大控除可能額を過去最高に拡大、道路特定財源の一般化に際して一兆円を地方が使えるようになど、具体的な指示を出されました。

 民主党の小沢代表は、政府・与党の経済対策は官僚ベースの延長線上の小手先の案で、市場は全く評価しないと批判をしましたが、私は全く的外れの批判であると思います。

 総理は、みずからのリーダーシップで、官僚任せではまとまらない大胆な対策を打ち出されようとしています。そこで、新たな経済対策に関する総理の取り組み方針、お考えを確認いたします。

 サブプライムローン問題に関しては、多くの教訓が得られます。証券化という手法自体は否定されるものではありませんが、サブプライムローンのリスクが証券化により細分化され複雑化されて、リスク自体が評価しにくくなり、あたかも破綻リスクが存在しないかのような高い格付が与えられました。さらに、レバレッジをきかせて取引されることにより、巨額の投資が行われました。金融工学の高度化、複雑化がリスクの存在をあいまいにさせ、巨額の投資を可能にしたとも言えます。

 証券化商品のリスクの透明化、格付の適正化については、規制強化すべきと考えます。また、行き過ぎたレバレッジを規制して、節度ある投資に誘導すべきです。人間の欲望を際限なく野放しにする強欲な金融資本主義が崩壊した今、人間の欲望を適切にコントロールする金融資本主義を模索すべきと考えます。総理の御見解を伺います。

 続いて、金融機能強化特措法改正案に関して伺います。

 我が国の金融機関は、欧米に比べて相対的に健全な財務内容とはいえ、大幅な株価下落により株式含み益が減少したり含み損を抱えたりし、自己資本比率が低下しています。さらに、今後の景気悪化も予想され、金融機関が特に地域の中小企業に対して貸し渋り、貸しはがしを起こさないように、予防的に公的資本注入を可能とするのが改正案の趣旨と理解しています。

 そこで、まず、我が国地域金融機関の業態ごとの直近の財務状況について、財務・金融大臣に確認します。

 改正案については、現行法で資本注入の申し入れが二件の実績にとどまったことを踏まえ、金融機関が資本注入の申し入れをしやすくするために、金融機関の経営責任を制度上一律には求めないとしております。現下の金融情勢では、スピード感を持って円滑な資本注入を可能とすることが重要であり、危機対応としてやむを得ないと考えますが、一方で、金融機関の経営者のモラルハザードを招きかねないとの批判もあります。一律に責任を求めないということは、野方図にするということではありません。例えば、放漫経営などにより過少資本に陥った場合などは、当然厳しく責任を求めるべきです。

 そこで、改正案における経営者のモラルハザードを招かないための対応策について、財務・金融大臣の答弁を求めます。

 昨日、総理が指示された緊急市場安定化対策の一つとして、金融機能強化特措法に基づく政府の資本参加枠拡大の検討が盛り込まれました。与謝野経済財政担当大臣は、テレビの報道番組で、二兆円では足りない、十兆円くらいと述べましたが、政府として、二十年度当初予算で二兆円の資本注入枠を今後の予算でどの程度まで拡大するつもりなのか、財務・金融大臣に確認します。

 また、今回の改正は、金融機関が中小企業への貸し渋り、貸しはがしを起こさないための予防的な措置です。過去の公的資本注入では必ずしも中小企業への貸し出しがふえなかったことが批判されています。このたびの改正案による公的資本注入では、確実に中小企業への貸し出しがふえなければなりません。そのための制度的な担保をどのようにされるのか、財務・金融大臣に確認します。

 昨年十月から、都道府県の信用保証協会で、それまでは借入額の十割保証をしていたものを、セーフティーネット保証は引き続き十割保証するものの、一般保証については借り入れの八割を保証し、残りの二割は金融機関が責任を負う責任共有制度を始めました。制度開始以降、保証承諾額、承諾件数ともに減少し続けております。

 金融機関が、二割の責任を負わされて融資の審査を厳しくしたことがありますが、責任共有制度の名をかりて、本来融資可能な案件にも貸し渋り、貸しはがしをしているとの指摘があります。責任共有制度を口実とした貸し渋り、貸しはがしを起こさないように金融機関を厳しく監督すべきであります。財務・金融大臣の見解を伺います。

 なお、私は、現下の金融情勢にかんがみて、責任共有制度は一時凍結してはどうかと指摘しておきます。

 さらに、改正案では、協同組織金融機関の中央機関に対しあらかじめ公的資本を注入し、傘下の協同組織金融機関の資本支援に活用できるとともに、中央機関の健全性強化にも活用できる仕組みを新設しております。

 現行の仕組みである単体としての中央機関への公的資本注入と、個別の協同組織金融機関への中央機関経由の資本注入でも同様の効果をもたらすと考えますが、新たな仕組みを設けた理由を財務・金融大臣に確認します。

 特に、農協系統の金融機関に対しては、現行法では、単体の農林中金と信農連に対する資本注入は可能としておりますが、個別の信農連と農協には農林中金経由で資本注入はできません。改正案により、農林中金にあらかじめ資本注入し、傘下の信農連や農協の資本支援をする必要性があるのかどうか、農林水産大臣に確認をいたします。

 また、現行法でも改正案でも、大手金融機関の申請は排除されておりません。しかし、申請の際に提出する経営強化計画では、中小企業に対する信用供与の円滑化等地域経済の活性化に資する方策が必要とされ、さらに、国の資本注入の条件として、地域における中小企業に対する金融の円滑化等が見込まれることとされているところから、法律は主に地域金融機関の利用を想定していると考えられます。財務・金融大臣の見解を伺います。

 保険業法の改正案に関して最後に質問します。

 大和生命の突然の破綻には驚きましたが、大和生命の場合、高いコストで資金を集めたために高いリスクをとって運用せざるを得なかったという特殊なケースであり、他の生保の財務内容は健全であるとの説明でありました。しかし、株価の下落が著しいため、大量の株式を保有する生命保険会社の財務の健全性に懸念が生じかねません。直近の生命保険業界の財務状況について、財務・金融大臣に確認をします。

 結びに、両改正案は、世界の金融危機に対応した予防的な措置として一日も早い成立が期待されることを申し上げまして、私の質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 石井議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、米国発の金融危機の我が国の景気、経済に対する影響と対応についてお尋ねがあっております。

 我が国経済は、景気後退の上に、国際的な金融危機、それに伴います株価下落が起きておりますなど、厳しい局面に立たされているものと私も認識をいたしております。

 国民生活と日本経済を守るため、生活対策の策定を政府・与党に指示をし、今週中を目途に取りまとめることといたしております。

 また、昨日二十七日に、株式市場の安定、金融機能の一層の強化、証券投資のすそ野の拡大に向けた対応の実施を関係閣僚及び与党幹部に指示したところであります。

 こうした対策を速やかに実施することで、金融市場の安定化、経済の活性化につなげてまいりたいと考えております。

 次に、G20緊急首脳会議についてお尋ねがありました。

 本首脳会議の内容につきましては、関係国間で調整がなされることになっておりまして、目下検討中であります。

 日本としては、国際金融システムの機能の強化、また金融機関、市場に対する規制のあり方の検討、そして世界経済の減速に対応した適切なマクロ政策運営といった点が今重要だと考えております。また、会議では、短期的ないわゆる解決策のみではなく、中長期的に、あるべき国際金融システムのビジョンというものも首脳間で議論すべきと考えております。

 日本は、本年のG8の議長国でもあり、かつて金融危機というものを克服したという経験も持っております。首脳会合の成功に向けて、米国を初めとする関係国と協議をしつつ、リーダーシップを発揮していきたいと考えております。

 新たな経済対策についてのお尋ねもあっておりました。

 緊急対策を八月二十九日に策定した以降も、御存じのように国際金融情勢は大きく変動いたしました。日本の実体経済への影響が懸念されているところでもあります。

 こうした新たな情勢のもと、十月十六日に、第一に生活者、第二に金融対策、中小企業・零細企業対策など、第三に地方の三つを重点分野とする新しい生活対策を早急に策定するよう、政府・与党に指示したところであります。この生活対策は、今週中を目途に政府・与党として取りまとめることといたしております。

 最後に、サブプライムローンの問題の教訓についてのお尋ねがありました。

 サブプライムローン問題に端を発する国際金融資本市場の混乱に対しましては、金融安定化フォーラムが報告書を、本年四月にG7に提出しております。その中で、市場参加者によるリスクの開示、格付機関による格付プロセスの改善など、取り組むべき課題が明示をされております。

 日本としては、これに着実に取り組んでいくとともに、金融システム安定化のための国際的なルールづくりの議論に引き続き積極的に参加してまいる所存であります。

 残余の質問につきましては、関係大臣より答弁をいたさせます。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 石井議員の御質問にお答え申し上げます。

 我が国地域金融機関の業態ごとの直近の財務状況についてのお尋ねでございます。

 地域銀行におきましては、地域密着型金融の取り組み等によって収益力の向上に努めてきたところでありますが、金融市場の混乱等を背景に、二十年九月期の業績予想は、有価証券の減損処理費用や不良債権処理費用の増加等により、減益となる銀行が多いと承知をしております。

 信用金庫、信用組合におきましても同様の背景のもとにあるものの、現在、二十年九月期の開示に向けた作業を行っているところであり、現段階では答弁を差し控えさせていただきます。

 金融庁としては、引き続き、高い警戒水準を維持しつつ、金融市場の動向や地域の経済情勢が地域金融機関に与える影響につきまして注視しております。

 次に、資本注入を受けた金融機関の経営者のモラルハザードについてのお尋ねがありました。

 今般の見直しは、世界的な金融市場の混乱を初めとする外的環境変化によって適切な金融仲介機能の発揮が妨げられないよう、金融機関の資本基盤の強化を積極的に図るものであります。したがって、経営の実態を見ずに一定の数値基準のみをもって一律に経営責任の明確化を求める制度については、見直すこととしております。

 ただし、国の資本参加を受ける以上、モラルハザードを招かないよう、責任ある経営がなされることは大原則であると考えております。このため、例えば、申請時に責任ある経営体制の確保を図るための枠組みを内閣府令において設けるとともに、資本参加後は経営強化計画の履行状況をフォローアップし、必要に応じ監督上の措置を講じていくことにより、責任ある経営が行われることを確保してまいる所存でございます。

 資本注入枠の拡大についてのお尋ねがありました。

 昨日、総理より、金融機能の一層の強化策の一つとして、金融機能強化法による国の資本参加枠の拡大を検討するよう指示をいただいたところであります。

 国の資本参加枠の拡大を検討するに当たっては、金融市場の急激な変動が生じた場合でも、金融機関の財務基盤の安定を確保し、より積極的なリスクテークが行われるようにすることによって、地域における円滑な金融機能が発揮されるよう、十分な枠を確保する必要があると考えております。このような考え方に立って、具体的な国の資本参加枠の拡大について検討してまいります。

 次に、中小企業への貸し出し増加のための制度的な担保についてのお尋ねがありました。

 金融機能強化法におきましては、資本参加を受けようとする金融機関が、経営強化計画において中小企業向け貸し出しの円滑化のための方策を策定し、金融庁がその方策について審査することとなっております。

 また、資本参加後においても、当該金融機関は、中小企業向け貸し出しの円滑化の方策等の実施状況を定期的に金融庁に報告することが求められており、金融庁は、計画の履行状況について定期的にフォローアップを行うこととしております。

 なお、フォローアップの結果、必要な場合には監督上の措置を講ずることとしております。

 本法案では、こうした枠組みを通じて、中小企業金融の円滑化を行う仕組みとなっているところでございます。

 責任共有制度と金融機関への監督についてのお尋ねでございます。

 責任共有制度は、信用保証協会と金融機関が連携して、中小企業者の事業意欲等を継続的に把握し、融資実行や経営支援を行うことを目的とするものであります。

 金融機関においては、制度の趣旨を踏まえた円滑な運用に努める必要があると考えております。その際、金融機関は営業上の判断に即した本来の説明を的確に行うことなく、責任共有制度を口実として融資を謝絶するといったような不適切な対応を行わないことが重要と考えております。

 金融庁としては、この点について監督指針に明記し、厳正な監督に努めているほか、さまざまな機会をとらえ、金融機関に対し要請を行ってきたところであります。

 今後とも、中小企業庁とも連携しつつ、中小企業に対する資金供給の円滑化に努めてまいります。

 協同組織金融機関の中央機関に対する新たな資本参加の枠組みについてのお尋ねでございます。

 新たな枠組みは、単体としての中央機関への資本参加と異なり、協同組織金融機関全体で提供している金融機能の発揮の促進を目的とするものであります。また、中央機関による個別金融機関への資本支援機能及びモニタリング機能を最大限活用すべく、国があらかじめ中央機関に資本参加し、当該中央機関の判断に基づき必要な資本提供を行うことを可能とする点で、中央機関経由での個別金融機関に対する資本参加と異なっております。

 このような新たな枠組みは、協同組織金融機関全体の金融機能を強化する観点から、従来の枠組みにはない効果をもたらすものと考えております。

 次に、金融機能強化法が対象とする金融機関の範囲についてのお尋ねでございます。

 今般の金融機能強化法改正は、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援するとの考え方に基づき見直しておりまして、地域における金融の円滑化を基本的なねらいとしております。このような目的、趣旨に合うものであれば、大手行に対して国の資本参加を行うことも必ずしも排除されていないと認識しております。

 いずれにせよ、改正案においては、国の資本参加を決定する際の審査基準の一つとして、地域における中小企業に対する金融の円滑化が見込まれることが掲げられており、この要件を満たすかどうか等について、申請した金融機関ごとに判断されることとなります。

 最後に、直近の生命保険会社の財務状況についてのお尋ねでございます。

 直近の株価の下落が生命保険会社の財務に一定の影響を与えているという点は、議員御指摘のとおりでございます。

 他方、生命保険会社はここ数年株式の保有を減らしており、株価変動の影響は小さくなっております。また、各生命保険会社は、経営効率化の推進や内部留保の拡充等、経営基盤の強化に努めております。

 現時点におきまして、株価の下落が生命保険会社の経営の根幹に影響を与える状況には至っていないと認識しておりますが、引き続き緊張感を持って注視してまいります。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕

国務大臣(石破茂君) 石井議員にお答えをいたします。

 農林中金を通じた信農連及び農協への資本支援の必要性についてのお尋ねをちょうだいいたしました。

 今般、協同組織金融機関の中央機関に対してあらかじめ国が資本参加し、さらに傘下の金融機関に資本支援をする仕組みを設けますのは、中央金融機関による資本支援機能等を最大限活用しつつ、協同組織金融機関全体としての金融機能の発揮を促進するためであります。

 農協系統金融機関も、農林中金が農協等系統金融機関の余裕資金を集め、これを効率的に運用し、例えば、平成十九年度では果実として三千億円強を還元することで、農協系統金融機関の経営基盤を強化し、農家組合員への円滑な資金供給を通じてその経営の安定に寄与する等、他の金融機関と同様に地域経済に対して重要な役割を担っております。

 このため、他の協同組織中央金融機関と同様に、農林中金に対してもあらかじめ国が資本参加をすることを可能とすることにより、信農連及び農協に資本注入ができる仕組みを構築することが必要であると考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、金融機能強化法等の一部改正案について総理に質問します。(拍手)

 アメリカ発の金融危機は、世界経済に大きな混乱をもたらし、日本経済に深刻な影響を広げています。

 今回の金融危機の背景に、アメリカにおける金融バブルの極端な膨張がありました。この十年来、金融自由化のもとで、銀行の貸出債権が売却され、証券化され、他の金融商品と組み合わせた金融派生商品が次々とつくられ、投機的な売買を通じて価格がつり上げられてきました。グラス・スティーガル法の銀行・証券分離の原則を後退させたことを背景に、巨大複合金融機関が大規模な投機的取引に手を出し、今日、巨額の損失を発生させたのであります。

 十月二十三日に行われた米議会公聴会で、FRB前議長のグリーンスパン氏は、金融派生商品の規制に消極的だったと指摘され、間違っていたと認めました。アメリカの金融自由化を手本に金融立国を推進してきたのが、日本政府であります。麻生総理、これまでの自由化一辺倒の路線を反省し、根本的に見直すべきではありませんか。お答えをいただきたい。

 この間、政府は、対米協調の名のもとで、日銀とともに異常な低金利政策を進めてきました。こうしてつくられた日米間の金利差が、円キャリートレードによる大量の投機資金を生み出す土壌となり、投機を一層増幅させたのであります。麻生総理は、金融バブルを加速させてきた日本の責任についてどう感じているのでしょうか。

 四月のG7では、国際展開する大手金融機関に対する各国当局の協力による共同監視が強調されました。一体、それはどこに行ったのでしょうか。十月のG7では、その姿勢を百八十度転換し、公的資金の投入に踏み出しました。バブルに踊った経営者の責任をまともに問わず、なぜカジノ経済のツケを国民に回すのでしょうか。

 法案の内容に即してお聞きします。

 第一は、金融機関への資本注入についてであります。

 法案では、その資金は、預金保険機構が政府保証によって調達し、最終的な損失が出たときは国民が税金で負担する仕組みになっています。しかし、金融機関の経営安定のために公的資金が必要というなら、それは最終的に、銀行業界全体の負担で返済すべきではありませんか。

 メガバンクはもちろん、農林中金、信金中金までもサブプライムや不動産関連など投機的な資金運用に傾斜し、多額の損失を出しています。公的資金による資本注入は、損失の穴埋めに使われるだけではありませんか。総理の答弁を求めます。

 第二に、今回の資本注入が貸し渋り対策だと言っていますが、その保証があるのかという問題です。

 従来の法律には、資本注入を申請する際に提出する経営強化計画に中小企業への貸し出し目標を盛り込むことが義務づけられ、それが未達成の場合、経営責任、株主責任を明確にすることが要件となってきました。ところが、今回の改正案では、これらの要件は必要ないと外してしまったのはなぜでしょうか。目標も掲げず、責任も問われないなら、中小企業への貸し出しをますますないがしろにすることになるのではありませんか。

 今、緊急に求められているのは、銀行の貸し出し姿勢を正すことであります。この十二年間、公的資金による銀行への資本注入は十二兆四千億円も行われてきたにもかかわらず、中小企業への貸し出しは、九六年三月からことし八月までの間に、実に八十四兆円も減らされてきたのであります。全銀協会長は、それを反省するどころか、貸し渋りをしている意識はない、貸せないところには貸していないと開き直っているのであります。中川財務・金融大臣は、これを正す姿勢を示しておりません。これでは、貸し渋りを容認するようなものではありませんか。

 総理、金融機関は、信用保証協会の保証つきでなければ貸さないのであります。この姿勢こそ正すべきであります。これを放置したまま、政府が信用保証制度に部分保証を導入したため、中小業者にとって命綱というべき保証つき融資すら受けられない事態を招いています。直ちに全額保証に戻すべきではありませんか。

 これまでの政策を見直し、公的金融制度の改善、拡充を行うべきであります。総理の答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 佐々木議員から八問ちょうだいしました。

 まず最初に、今般の金融危機の背景についてのお尋ねがあっております。

 今般の米国発の金融危機は、証券化商品に代表されます新しいタイプのビジネスモデルが急速に拡大していく中で、金融機関がそのリスクを適切に管理できず、金融市場が機能不全に陥ったものと理解をいたしております。

 我が国の金融機関は、サブプライムローン関連商品の保有額が限定されておりますなど、欧米に比べれば、金融システムは相対的に安定はいたしております。しかしながら、金融市場の規律の確保は重要であります。引き続き、米国を初めとする関係各国と緊密に連携をしつつ、国際金融市場の安定化に努めてまいる所存であります。

 次に、ゼロ金利政策及び過剰流動性についてお尋ねがありました。

 日本銀行は、バブル崩壊後のデフレという極めて厳しい経済、物価情勢に対応するため、御指摘の金融政策を講じたものと考えております。

 なお、金利水準が投資行動、市場の流動性にどのような影響を及ぼすかについては、国内外の経済や金融市場の動向によってさまざまな面が考えられるところであります。

 いずれにせよ、日銀において適切な金融政策運営が行われるものと考えております。

 次に、G7の取り組みについてのお尋ねがあっておりました。

 サブプライムローン問題に端を発します国際金融資本市場の混乱に対しましては、本年四月に金融安定化フォーラムが報告書をG7に提出しておりますのは御存じのとおりです。その結果、当局間の情報交換、連携の改善のため、本年末までに、グローバルに活動する大手金融機関ごとに国際的な監督当局間グループを設置する方向で作業が進められております。

 また、十月のG7では、現下の危機的状況についての共通の認識のもとで、金融市場を安定化させ、信用の流れを回復するための五項目の行動計画をまとめ、明確なメッセージとして打ち出しました。

 日本としては、これに着実に取り組んでいくとともに、金融システム安定化のための国際的なルールづくりの議論に引き続き積極的に参画する所存であります。

 次に、国の公的資本参加の場合の損失負担についてのお尋ねがあっております。

 世界的な金融市場の混乱という外的な環境変化のもと、地域経済、中小零細企業が厳しい状況に直面をいたしております。本法案は、我が国金融機関全体のリスクテーク能力の低下が懸念されている中で、中小企業金融を初めとする適切な金融仲介機能の発揮を確保するためのものであります。金融機関の負担を前提とすることは、全体としてのリスクテーク能力の向上につながらず、適切ではないと考えております。

 金融機能強化法による国の資本参加の目的についてのお尋ねがありました。

 現在、サブプライムローン問題に端を発する世界的な金融市場の混乱という外的な環境変化のもと、地域経済、中小企業が厳しい局面に直面をいたしております。こうした中で、金融機関のリスクテーク能力の低下というものが懸念されておりまして、そのため、国の資本参加によって金融機関の資本基盤を積極的に強化するというのを目的として、本法案を提出したものであります。

 資本注入の要件緩和と中小企業貸し出しへの影響についてのお尋ねもあっております。

 本法案において、資本参加を受ける金融機関に対し、中小企業向け貸し出しの円滑化のための方策の策定を求めるとともに、金融庁がその計画を審査、フォローアップして、必要に応じ監督上の措置を講じていくことといたしております。フォローアップの過程で問題が発覚した場合には、監督上の措置として、実質的に経営者の責任を求めることはあり得ると考えております。

 次に、銀行の貸し出し姿勢についてのお尋ねがありました。

 中小企業の業況は厳しい状況にあろうと存じます。政府としては、十月十五日に、金融機関の代表者を集めて、中川大臣から中小企業金融の円滑化に向けた要請を行ったところであります。また、中小企業金融の実態把握のため大臣目安箱を設置するなど、政府としても借り手の声を直接聞くことに努めております。

 各金融機関におきましては、適切かつ積極的な金融仲介機能を発揮することを期待しておりまして、本法案がそのために大きな役割を果たすことと存じております。

 最後に、公的金融制度についてのお尋ねがありました。

 金融機関と信用保証協会が適切に責任を分担し、中小零細企業に対し、金融機関が主体的な経営支援を行うことを促すために、昨年十月より責任共有制度を導入したところであります。導入に際しましては、困難に直面しております中小零細企業に配慮し、小規模企業への保証やセーフティーネット保証は例外としております。

 今月末から開始する緊急保証制度も、責任共有制度の例外として、一〇〇%保証といたします。これにより、対象業種がほぼ三倍の五百四十五業種へと拡大され、全中小零細企業の三分の二が一〇〇%保証が受けられることになります。

 今後、年末に向け、従業員への冬のボーナス支給など、中小零細企業の資金繰りというものはさらに厳しさを増すものと考えております。情勢を注視し、中小零細企業の資金繰り対策に万全を期していかねばならぬと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 ただいま議題となりました政府提出の金融機能強化のための特別措置に関する法律等について、社会民主党・市民連合を代表して質問いたします。(拍手)

 サブプライムローンに端を発する世界金融危機は、実体経済にも大きな打撃を与えております。特に、リーマン・ブラザーズ破綻以降、日米欧の株式市場は大暴落となっており、為替市場も、ユーロを含め各国通貨はドルに対して下がっている中で、円だけは上昇、一ドル九十円台という記録的な円高水準となっています。

 欧米各国は、公的資金の注入など安定化策を次々と行い始めていますが、危機的な様相は一向に改善されていません。我が国でも、急激な円高と七千円台ぎりぎりという株価の暴落から実体経済の悪化に向かっており、このまま放置すれば、日本経済は不況に突入し、最悪の事態となりかねません。既に多くの非正規雇用の方々が解雇や雇いどめされ、路頭に迷う事態となっています。

 日本経済は、この間、極端な輸出依存に頼ってまいりました。これが日本経済の弱点となっており、今般の世界的な金融危機に際しても弱さを露呈させる大きな要因になっていると考えます。

 そもそも、この間の日本経済の輸出依存は、二〇〇〇年代前半、小泉首相の時代に、竹中氏と組んで行った政策の帰結であります。すなわち、低金利から円安に誘導し、輸出産業を活性化させるというものでした。小泉、竹中氏が行ってきた輸出依存政策は、実は、内需拡大ないがしろ政策でもありました。賃上げもほとんど行われず、低所得の非正規雇用をふやし、社会保障費の伸びを抑制し続けてきたのです。

 麻生総理は、このたび、内需拡大に手を打つと述べています。もし本当にそうであれば、まず、こうしたいびつな経済構造をつくり出した政府みずからの政策を明確に反省した上で出発すべきと考えますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

 また、内需拡大というのであれば、自然エネルギー関連産業、環境産業あるいは医療産業などに大胆にシフトするなど、政府が二十一世紀にふさわしい新たな産業戦略のメッセージを内外に打ち出すべきと考えますが、麻生総理の御所見をお伺いしたいと思います。

 金融機能強化法案につきましては、株価の暴落により、このままでは自己資本の毀損から貸し渋りが拡大する可能性が極めて高い中で、その対策が必要なことは論をまちません。しかし、資本注入を受ける金融機関の役員報酬の開示も不十分であり、しかも、その経営責任を問う条文をすっぽり今回削除するなど、多くの問題があると考えています。

 加えて、同法案では、資本注入の条件として、地域における金融の円滑化が見込めることとし、資金が中小企業に流れるようにすることが述べられておりますが、果たして、地域における金融の円滑化は本当にこれで可能なのでしょうか、それをどのように保障しようとお考えなのでしょうか、こうした点について中川金融担当大臣にお尋ねいたします。

 最後に、ペイオフについてお伺いいたします。

 政府提案の金融機能強化法案は、使い勝手をよくするためと称し、金融機関の経営責任のみならず、組織再編すら条件にしておりません。ところがその一方で、ペイオフは完全実施されております。二〇〇五年四月から普通預金などは一千万円までしか保護されないのです。これでは、金融機関は救済しますが、預金者である国民は自己責任ですよというのに等しいのではないでしょうか。全額保護あるいは限度額を引き上げることを当然検討すべきと考えますが、麻生総理大臣の国民の立場に立った答弁をお願いいたします。

 公的資金注入は、最後には国民の血税による負担が伴う政策であり、決して金融機関救済にとどまるものではありません。あくまで、経済、金融全体を活性化させるという基本点を踏まえ、徹底した情報公開などの抜本的な対策を進めることが問われていることを申し述べて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 阿部議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず、小泉政権時代の政策の評価についてのお尋ねがあっております。

 日本の活力を取り戻すために小泉総理が取り組まれた構造改革は、一定の成果を上げたと認識しております。しかしながら、現在、地域格差の拡大など改革に伴うひずみが指摘をされ、また、景気後退や米国発の金融不安など新しい課題が出てきていることも事実であります。このため、改革による成長を追求するとともに、ひずみへの配慮と新しい課題の解決に取り組み、民間需要主導の持続的な成長の実現を図ってまいりたく考えております。

 内需拡大よりも新たな産業政策を打ち出すべきとのお尋ねがありました。

 日本が将来にわたって発展していくためには、二十一世紀という時代にふさわしい新しい経済産業構造を構築することが重要、私もそう思います。このため、世界に先駆けて低炭素社会を実現することを目指すなど、中長期的な視野に立った新経済成長戦略を進めてまいります。

 それと同時に、現下の厳しい経済情勢に対しても、短期的にしっかりと手を打たなければならないことも事実です。今そこにある危機に、まさにのみ込まれようとしております中小零細企業や家計に対する支援も積極的に講じていかなければならないと存じます。

 ただ、その際にも、将来の産業構造を見据えた政策を積極的に取り入れる考えであります。このため、新たな経済対策においては、省エネ・新エネ設備への投資については全額即時損金算入を検討するよう、政府・与党に指示したところです。

 預金保護の上限見直しについてのお尋ねがありました。

 我が国の金融システムは、相対的に安定はしております。預金保護の上限見直しを行うことは、かえって風評を招くおそれがあると考えてもおります。また、我が国におきましては、決済性預金の全額保護が既に措置されているなど、適切なセーフティーネットが整備をされてもおります。したがって、現時点で預金保護の上限見直しを検討することには慎重な対応が必要だと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 阿部議員にお答え申し上げます。

 地域金融の円滑化の確保についてのお尋ねでございますが、金融機能強化法におきましては、資本参加を受けようとする金融機関が、経営強化計画において中小企業向け貸し出しの円滑化のための方策を策定し、金融庁がその方策について審査することとなっております。

 また、資本参加後においても、当該金融機関は、中小企業向け貸し出しの円滑化の方策等の実施状況を定期的に金融庁に報告することが求められており、金融庁は、計画の履行状況について定期的にフォローアップをすることとなっております。

 なお、フォローアップの結果、必要な場合には監督上の措置を講ずることとしております。

 本法案では、こうした枠組みを通じて、中小企業金融の円滑化を行うための仕組みをつくっているところでございます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  麻生 太郎君

       財務大臣

       国務大臣  中川 昭一君

       農林水産大臣  石破  茂君

       国務大臣  与謝野 馨君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  松本  純君

       内閣府副大臣  谷本 龍哉君


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