第15号 平成21年3月17日(火曜日)
平成二十一年三月十七日(火曜日)―――――――――――――
議事日程 第七号
平成二十一年三月十七日
午後一時開議
第一 成田国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会東京招致に関する決議案(森喜朗君外五名提出)
日程第一 成田国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
消費者庁設置法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百七十回国会、内閣提出)及び消費者安全法案(第百七十回国会、内閣提出)並びに消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出)及び消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(河野洋平君) これより会議を開きます。
――――◇―――――
○谷公一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
森喜朗君外五名提出、第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会東京招致に関する決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(河野洋平君) 谷公一君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一に先立ち追加されました。
―――――――――――――
第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会東京招致に関する決議案(森喜朗君外五名提出)
○議長(河野洋平君) 第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会東京招致に関する決議案を議題といたします。
提出者の趣旨弁明を許します。遠藤利明君。
―――――――――――――
第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会東京招致に関する決議案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔遠藤利明君登壇〕
○遠藤利明君 ただいま議題となりました第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会東京招致に関する決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、国民新党・大地・無所属の会を代表し、提案の趣旨を御説明申し上げます。
案文を朗読いたします。
第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会東京招致に関する決議案
我が国において、一九六四年の東京オリンピック以来となるオリンピック夏季競技大会を開催することは、国際親善とスポーツ振興にとって極めて意義深いものである。
衆議院は、来る二〇一六年の第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会を東京都に招致するため、その招致活動を強力に推進するとともに、その準備態勢を整備すべきものと認める。
右決議する。
以上であります。
オリンピック競技大会は、世界各国のスポーツの発展とともに、スポーツを通じて民族の相互理解を深め、世界平和への貢献に輝かしい成果を上げてきました。
一昨年九月十一日、政府は二〇一六年第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会について東京都が招致することを閣議了解し、同年九月二十五日、東京都は国際オリンピック委員会に立候補届を提出いたしました。
この第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会には、世界の七都市が立候補し、昨年六月四日にギリシャで開催された国際オリンピック委員会理事会において、東京都のほか、マドリード、シカゴ、リオデジャネイロの四都市が正式立候補都市として承認されたところであります。そして、本年十月二日、デンマークで開催される国際オリンピック委員会総会において、この正式立候補都市の中から開催都市が決定される運びとなっております。
スポーツは、万国共通のルールのもとで行われるものであり、国際間の相互理解の促進に大きく寄与するものであります。世界の平和と繁栄に積極的に貢献する国づくりを進め、また、我が国の伝統文化と最先端技術を世界に発信し、都市の躍動と緑が調和したオリンピックの新しい開催モデルを示していくためにも、第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会の東京招致について、国を挙げて強力に運動を展開していかなければなりません。
また、東京、札幌、長野大会と同様に、オリンピック精神を最高度に発揮する大会が開催されますよう、政府、地方自治体及び民間が一体となって、万全の受け入れ態勢を確立すべきであります。
何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。
ありがとうございました。(拍手)
―――――――――――――
○議長(河野洋平君) 採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。
この際、文部科学大臣から発言を求められております。これを許します。文部科学大臣塩谷立君。
〔国務大臣塩谷立君登壇〕
○国務大臣(塩谷立君) ただいまの御決議に対して所信を述べます。
第三十一回オリンピック競技大会及び第十五回パラリンピック競技大会を東京都に招致し、我が国においてオリンピック競技大会及びパラリンピック競技大会が再び開催されますことは、国際親善とスポーツの振興にとってまことに有意義であり、喜ばしいことであると存じます。
政府といたしましても、ただいまの御決議の趣旨を十分に尊重いたしまして、平成十九年九月に閣議了解されました方針に従い、招致の実現並びに準備態勢の整備に最善の努力を払ってまいる所存でございます。(拍手)
――――◇―――――
日程第一 成田国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(河野洋平君) 日程第一、成田国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。総務委員長赤松正雄君。
―――――――――――――
成田国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔赤松正雄君登壇〕
○赤松正雄君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、成田国際空港周辺地域における道路、生活環境施設等の整備を促進するため、成田国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律の有効期限を平成二十六年三月三十一日まで五年間延長しようとするものであります。
本案は、去る二月二十四日本委員会に付託され、三月十二日鳩山総務大臣から提案理由の説明を聴取した後、翌十三日に質疑を行い、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(河野洋平君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
○谷公一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
内閣提出、奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
○議長(河野洋平君) 谷公一君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
―――――――――――――
奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(河野洋平君) 奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。国土交通委員長望月義夫君。
―――――――――――――
奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔望月義夫君登壇〕
○望月義夫君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、奄美群島及び小笠原諸島の振興開発を一層促進していくための措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の有効期限をそれぞれ五年間延長すること、
第二に、奄美群島及び小笠原諸島の振興開発基本方針及び振興開発計画に定める事項として、両地域の振興開発に係る関係者間の連携及び協力の確保に関する事項等を追加すること、
第三に、奄美群島における地方税の課税免除または不均一課税に伴う減収を地方交付税により補てんする措置の対象業種を追加すること
などであります。
本案は、去る三月十一日本委員会に付託され、同日金子国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、本日質疑を行い、質疑終了後、採決いたしました結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(河野洋平君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
消費者庁設置法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百七十回国会、内閣提出)及び消費者安全法案(第百七十回国会、内閣提出)並びに消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出)及び消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出)の趣旨説明
○議長(河野洋平君) この際、第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案について、順次趣旨の説明を求めます。国務大臣野田聖子君。
〔国務大臣野田聖子君登壇〕
○国務大臣(野田聖子君) ただいま議題となりました消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、消費者庁設置法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
社会の複雑化に伴い、消費者問題は複数の省庁にまたがる横断的なものとなっており、縦割り行政では適切に対応することが難しくなってきております。近年、生活の身近なところで大きな不安をもたらす数々の消費者問題が生じる中で、国民が安全、安心を実感できるように、我が国の行政のあり方を大きく転換することが求められております。
振り返ってみますと、これまでの行政は、明治以来、各府省庁縦割りの仕組みのもとで、事業者の保護育成を通じて国民経済の発展を図ってまいりました。こうした中、消費者の利益の擁護及び増進は、あくまで、産業振興の間接的、派生的なものとして取り扱われてきたにすぎません。
この法律案は、まさに消費者、生活者が主役となる社会を実現する国民本位の行政に大きく転換していくため、消費者庁を設置しようとするものであります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一は、消費者庁の設置、任務及び所掌事務等についてであります。
消費者庁は、消費者庁長官を長として、内閣府の外局として設置され、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けて、消費者の利益の擁護及び増進、商品及び役務の消費者による自主的かつ合理的な選択の確保並びに消費生活に密接に関連する物資の品質に関する表示に関する事務を行うこととしております。
また、消費者庁長官は、所掌事務に関し、関係行政機関の長に対し、資料の提出、説明その他の必要な協力を求めることができることとしております。
第二は、消費者政策委員会についてであります。
消費者政策委員会は消費者庁に置かれ、消費者の利益の擁護及び増進に関する基本的な政策等に関する重要事項について調査審議や意見具申を行うとともに、法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理することをつかさどることとしております。
また、消費者庁は、この法律の公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から発足することとしております。
続きまして、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、これまで各府省庁縦割りの仕組みのもとで行われてきた消費者行政について、消費者庁を設置し一元的に推進することが必要であり、消費者庁の設置にあわせ、消費者に身近な問題を取り扱う法律を消費者庁に移管すること等により、消費者の利益の擁護及び増進等を効果的に図ることができるようにするものであります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、内閣府設置法その他の行政組織に関する法律について、任務、所掌事務の変更等関係規定の整備を行うものであります。
第二に、食品衛生法その他の関係法律について、内閣総理大臣及び消費者庁長官の権限を定める等関係規定の整備を行うものであります。
第三に、所要の経過措置等を定めようとするものであります。
最後に、消費者安全法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
近年、消費者の需要はますます多様化し、かつ高度化しており、これに伴い、多種多様の事故やトラブルが生じるようになってきております。その中には、生命、身体に重篤な被害が生じたものや多額の財産的被害が生じたものも多数含まれており、その被害の回復について困難が伴います。
そこで、国、地方公共団体その他の関係者が一体となって消費者の生命、身体、財産の安全の確保に関する総合的な施策を推進し、国民が安全、安心な消費生活を営むことができる社会を実現していくことが喫緊の課題となっております。
このため、消費者の被害に関する情報の消費者庁による一元的な集約体制の確立と、当該情報に基づく適確な法執行の確保を図ることとし、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第一に、内閣総理大臣は、消費者安全の確保に関する基本方針を策定するものとしております。
第二に、都道府県及び市町村は、消費生活相談、消費者安全の確保のために必要な情報の収集、提供等の事務を行うこととし、これを行うための施設または機関として、消費生活センターを都道府県は設置し、市町村は設置するよう努めることとしております。
第三に、行政機関、都道府県、市町村及び国民生活センターは、生命、身体に関する重大事故が発生した旨の情報を得た場合は直ちに消費者庁に通知することとする等、消費者庁による情報の集約体制を整備するとともに、消費者庁はこれを分析し、取りまとめ結果の概要を公表することとしております。
第四に、集約した情報をもとに、内閣総理大臣は、法律に基づく措置の実施が被害の発生、拡大の防止のため必要と認めるときは、当該措置の実施を関係各大臣に求めることができるようにするとともに、このような法律の対象とならない、いわゆるすき間事案であって、生命、身体に関する重大事故に係るものについては、みずから事業者に対し必要な措置をとるよう勧告し、また、急迫する危険があるときは、その原因となった商品の譲渡の禁止措置等をとることができることとしております。
以上が、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案の趣旨でございます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(河野洋平君) 提出者枝野幸男君。
〔枝野幸男君登壇〕
○枝野幸男君 ただいま議題となりました消費者権利院法案について、提出者を代表し、その趣旨及び概要を説明します。
近代以降、消費者を取り巻く環境、特に消費者と事業者との関係は著しく変化しました。商品、製品やサービス等の高度化と複雑化、事業や流通過程の大規模化などが進み、事業者と消費者との間では、情報や経済力の点で非対称性が著しく拡大しています。
明治三十一年、一八九八年に施行された現行民法は、契約当事者の双方が対等な関係にあることを前提に組み立てられ、行政による民事不介入を原則として運用されてきましたが、この民法制定時には全く想像のできなかった状況となっています。本来であれば、この百年余りの間に、こうした社会環境の変化に対応して、法制度と行政とを大きく転換し、消費者と事業者との間に生じた非対称性を適正に補うことのできる制度をつくり上げてくる必要がありました。
ところが、製造物責任法や消費者契約法等が順次制定されてはきたものの、民事消費者法の整備はいまだ不十分です。それでも、裁判所は、判例の蓄積によって実質的公正の確保に努力してきました。が、司法だけで、広がる一方の非対称性を補い、消費者の権利を確保することは到底不可能です。
また、多くの国民にとって、裁判所は大変遠い存在です。時間的にも費用的にも、何よりも心理的にも、司法を通じてみずからの権利を守り得る消費者はごく一部に限られます。
特に、個々に見ると被害が少額な事案の場合、裁判というコストのかかる手段で救済や権利確保を図ることは著しく困難です。このため、多くの被害消費者は泣き寝入りを余儀なくされてきました。そして、加害者はやり得となり、不当に得た利益を確保できることから、抑止力が働かず、同種の被害が繰り返される原因となってきました。
さらに深刻なのは、行政の対応です。
そもそも近代日本の行政システムは、富国強兵、殖産興業を主たる目的としてつくられました。このため、産業振興を第一に置き、事業者との深い結びつきが形成されて、つい最近まで、消費者行政という意識が決定的に欠如していました。最近でこそ、表面上は消費者を重視する姿勢が見え始めていますが、それでも、百年以上にわたる事業者とのかたい結びつきと産業振興という長年の習性が一朝一夕に変わるものではありません。消費者の観点に立った権限行使には極めて消極的です。
長年にわたる民事不介入原則がしみついていることもあって、行政が被害救済に積極的になることはほとんどありません。国民生活センターによる被害救済ですら、原則として、当事者の自主的な合意を促すにとどまります。事業者が受け入れを拒否したり、そもそも初めから行政を相手にする姿勢のない、いわゆる悪徳業者であったりした場合は、ほぼお手上げの状態です。
さらに、日本の場合、省あって国なし、局あって省なしとやゆされるほど行政の縦割りによる弊害が大きく、中央政府と地方政府との間でも、その役割分担が明確ではありません。このため、消費者が行政の対応を求め、あるいは消費者被害情報が行政に届いても、省や局の間の壁、中央と地方の壁によってたらい回しされ、あるいは情報がたなざらしされる例が後を絶ちません。
これらの結果として、消費者の生命、身体や財産を脅かす事件が続発しながら、司法や行政が十分に対応できず、被害救済や再発防止が十分に図られない事態が繰り返されています。
経済産業省が事故情報を把握しながら適切な対応がとられず多くの命が奪われたパロマ湯沸かし器一酸化炭素中毒事故、法律に定められた表示の基準が守られず消費者の利益が損なわれた食品偽装や建物の耐震強度偽装、自治体と厚生労働省との連絡が適切に行われなかったために初動におくれが生じ原因究明に支障を来した中国産冷凍ギョーザ中毒事件、すき間事案であるがゆえに迅速な行政措置がとられなかったコンニャクゼリー窒息事故、相次いでいる生命保険やFXなど金融商品をめぐる消費者紛争やエル・アンド・ジーによる巨額詐欺事件、住宅リフォーム詐欺などなど、例を挙げれば切りがありません。
これらの事態を受けて、自民党内閣においても、おくればせながら、消費者行政の重視を掲げ、消費者庁の設置に動いたことは、当然のこととはいえ、一定の評価をいたします。
しかし、百年以上にわたって放置されてきた消費者行政を相次ぐ事態に十分対応できるレベルにまで整備するには、単なる行政組織の組みかえでは不十分です。行政組織を幾ら組みかえても縦割りの弊害が取り除かれないことは、例えば直近の内閣府設置の結果を見ても明らかであります。
内閣府は、縦割り省庁から超越した立場で、横断的に総合調整を行うことを期待されて設けられました。しかし、調整をするべき内閣府の経済財政担当大臣が調整を受ける側の財務大臣と兼任をしているという、この一点を見ても、その総合調整機能は絵にかいたもちになっています。
長年にわたって産業振興を担ってきた規制権限を有する各省庁は、これからも、規制を適切に実施する必要から見ても、事業者との強い結びつきを持たざるを得ないでしょう。そんな中で、新設官庁の消費者庁が、霞が関における力関係の中で、こうした古い規制官庁の抵抗を払いのけるような強い指導力を発揮できるとは思えません。
また、たまたま現在の野田消費者行政担当大臣は総裁候補にも名前の出る大物大臣ですから、野田大臣が今後もずっと消費者行政担当大臣を続けるのならば別かもしれませんが、他の大臣を歴任したキャリアの長い大物の政治家が就任することの多い規制官庁の大臣に対し、消費者担当大臣が本当に影響力を行使できるのでしょうか。
また、多くの消費者がその被害を相談し救済を求める窓口となるのは、地域に設けられた消費生活センターです。しかし、その権限や法的位置づけがあいまいな上に、現に相談に当たっている相談員の身分が、多くの場合不安定で、官製ワーキングプアの一つとなっています。それでも、相談センターが身近に設置されている地域は、まだましな方かもしれません。厳しい財政状況に置かれている多くの地方政府では、消費生活センターの設置、維持自体がますます困難になっています。この点の抜本的な解決がなされない限り、消費者被害に適切に対応することは不可能です。
私たちは、新しい消費者のための統治システムとして、以下申し上げる三つの条件を備える必要があると考えます。
第一に、消費の現場に近いところで、多種多様な直接の相談に適切に対応できるシステムを国の責任として整備する必要があります。
このシステムは、問題事案の情報を把握するという意味では、行政のアンテナ役を担います。相談、あっせん等を通じて被害救済を図るという意味では、裁判所だけでは十分に機能しない紛争解決機能、つまり司法を補うものであります。
アンテナ役を担うには、全国どこで生じた情報でも漏れなく一元的に把握される必要があります。また、司法を補うものである以上、全国どこにいても格差なく救済を求めて利用できる仕組みになっている必要があります。したがって、このシステムは国の責任で整備することが重要になります。
第二に、相談窓口から集められた情報に基づき、各省庁が有している規制権限を適正に行使させることで、消費者の利益を実現させるシステムを構築する必要があります。
各省庁の有している消費者保護に関係し得る法令は、少なく見ても二百本以上に上ります。多種多様な消費者問題の態様に応じてこれらすべての権限を適切に行使させることが可能でなければ、消費者行政の一元化とは到底言えません。
しかし、例えば薬事法や銀行法、電気事業法など、これらをすべて消費者関連官庁で所管することは現実的ではありません。世の中の大部分の問題は最終的には消費者とつながっており、関係し得る法律をすべて消費者関連省庁で所管するなら、外務省、防衛省を除いて他の官庁の大部分は必要なくなり、超巨大な消費者省だけで足りるということになってしまいます。
したがって、規制権限そのものは各省庁に残しながら、必要に応じて消費者行政の観点からその適切な行使を求めるという、一種の行政監視機能を持たせることで、どんな事態にも対応できる現実的な消費者行政を目指すべきであります。
第三に、相談窓口から集められた情報等を集約、分析することで、必要となる政策を消費者の視点から企画立案するシステムを構築する必要があります。
現場の情報を最も多く、しかも直接に把握する機関の意見ができるだけストレートに立法府たる国会に届くことが、適切かつ迅速な政策推進のために重要です。
こうした認識に基づき、私たちは本法律案を提案しました。
以下、本法律案の内容を具体的に申し上げます。
第一に、消費者基本法の理念にのっとり、消費者の権利利益の擁護と増進を図るため、内閣の所轄のもとに、すなわち、内閣から一定の独立性を有する機関として、消費者権利院を置きます。
行政監視機能を十分に発揮させるためには、何よりも内閣からの高い独立性を確保する必要があり、会計検査院のように憲法上の機関として位置づけることが、本来ならば望ましいと考えます。
しかし、相次ぐ消費者被害に迅速に対応する観点から、人事院や日本銀行など現行憲法下で認められている独立性の高い行政機関を参考に、憲法改正を要することなく設置できる最大限の独立性を有する機関として位置づけました。
第二に、消費者権利院の所掌事務及び権限として、次の諸事項について定めています。
一つは、消費生活に関する相談、苦情の処理のあっせん、消費生活に関する情報提供、消費者に対する啓発及び教育などの、幅広い消費者の窓口としての事務です。
二つ目に、消費者問題による被害の発生、拡大の防止や救済のために必要がある場合、行政庁に対して資料の提出要求や調査の要求を行えるものとしました。
同時に、行政機関や地方公共団体の長には、消費者問題の発生等について広範な報告義務を課し、一元的に情報が集約される仕組みとしています。
さらに、事業者に対しても立入検査を含む直接の調査を行えるものとしています。
なお、本法律案に言う消費者問題とは、取引、安全、表示などを問わず、事業者の行為に起因する消費生活における問題であって、多数の消費者の生命、身体、または財産を不当に侵害する一切のものと定義し、幅広くとらえることとしています。
三つ目は、行政庁に対し、期間を定めて消費者問題に係る処分を行うことなどを勧告することができると定めています。
また、勧告を行った場合には、その旨や勧告に係る事業者の名称等を公表することができるとしています。
四つ目は、消費者問題が発生し、または発生するおそれがある場合において、その被害の程度が著しく、緊急の必要があると認めるときは、消費者権利官が裁判所に申し立て、裁判所は事業者に対する一月以内の行為の禁止または停止の命令を発することができるとしています。
政府案では、いわゆるすき間事案について、内閣総理大臣が事業者に対し直接に勧告、命令を行うこととされています。しかし、その要件が抽象的で、どのような行為が対象になるのか明確でないにもかかわらず、この命令の違反に対しては一億円以下の罰金が科せられます。行政に対して余りにも大きな裁量権限を与えるもので、濫用防止の歯どめがありません。
民主党案では、省庁ごとの所管に限定されることなく、ありとあらゆる分野の消費者問題について対象とする一方、裁判所のチェックという適正手続をかませることで恣意的な権限行使を防ぎ得る制度となっており、政府案よりもはるかに現実的であります。
消費者権利院の所掌事務及び権限の五つ目は、消費者問題によって多数の消費者に生じた損害賠償請求権等について、強制執行が不可能あるいは著しく困難となるおそれがあり、緊急の必要があると認めるときに、消費者権利官の申し立てによって、裁判所が財産保全命令を発することができるとしています。
政府案の致命的な欠陥は、消費者被害の救済のための仕組みが一切導入されていない点です。消費者行政を幾ら強化したからといって、消費者問題の発生を完全に防止することは不可能です。消費者被害の回復を図り、消費者に被害を与えた事業者の違法収益を剥奪するための制度が不可欠です。
私たちは、この財産保全命令に加えて、訴訟援助等の規定を設け、後ほど小宮山議員から提案理由を御説明申し上げる消費者団体訴訟法案による損害賠償請求と相まって、違法収益の剥奪と消費者被害の救済に向けた実効的な制度を提起しています。
六つ目は、国会の要請による特定事項の調査、報告に関する規定を設け、国権の最高機関として幅広い行政監視機能を有する国会との連携について定めています。
また、国会及び内閣に対する法令の制定、改廃に関する意見の申し出の規定を定めることによって、消費者行政に関して幅広く立法提言を行うこともできるとしています。
第三に、消費者権利院の組織に関して、次のとおり定めています。
一つは、消費者権利院の長を消費者権利官とし、国会の議決を経て内閣が任命することとしています。この国会の議決を行うに当たっては、委員会において候補者の所信を聴取することを予定しています。
二つ目は、消費者権利官は、任期六年とし、再任されることができないこととしています。長い任期を保障する一方、再任できないとすることで、独立性を担保できる制度としています。
なお、消費者権利官は、キャリア公務員のポストではなく、消費者の権利擁護等に関してすぐれた経験や知識を有する民間人の中から選任することを予定しています。
三つ目に、消費者権利官を補佐するため消費者権利官補一人を置くほか、合議制機関として消費者権利委員会を置き、一定の重要事項についての審議に当たらせることによって、権限行使の適正さを担保することとしています。
四つ目に、消費者権利院には、中央の事務総局に加え、都道府県の区域ごとに地方消費者権利局を置くこととしています。
地方消費者権利局の長は地方消費者権利官とし、地域社会における消費生活の実情に通じ、消費者の権利擁護等について理解のある者のうちから、都道府県知事の意見を聞いた上で任命することとしています。
なお、現在の消費生活センターの多くは、この地方消費者権利局やその支局、つまり国の機関に移行します。そして、その事務が適正かつ円滑に実施されるよう、地方公共団体の消費生活部局との緊密な連絡を保ち、相互に協力しなければならないことを明記しています。
地方財政の現状にかんがみると、消費生活センターを初めとする地方の消費者行政について地方公共団体にゆだねてしまう対応は、無責任というほかありません。基金をつくり、数年間は財政支援をするという御提案もありますが、その基金が底をついたとき、地方の消費者行政はどうなるのでありましょうか。
第四に、消費者行政の第一線で消費者からの苦情相談、あっせん等の業務を担う消費生活相談員を非常勤の国家公務員として法律上明確に位置づけた上で、十年の任期を保障し、再任を原則としています。これによって、現在行われている不当な雇いどめを防止し、消費生活相談員の方々が、その知識と経験を十分に生かしながら安心して職務に専念することができるよう配慮しています。
第五に、以上の諸事項のほか、消費者権利官と捜査機関等との連携協力の規定など、所要の規定の整備をすることとしています。
なお、消費者権利院の設置に伴い、国民生活センターは、法律上は発展的に廃止され、その業務を消費者権利院が担うこととなります。
第六に、この法律の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としております。
今から八十年前、一九二九年に始まった世界恐慌は、領土拡大、植民地拡大による経済発展という十九世紀型の古い経済体制を崩壊させました。それ以来と言われる現在の世界同時不況は、二十世紀における大量生産、大量消費型経済体制の終わりの始まりです。事業者が個々の消費者と率直に向かい合い、安心、安全、信用、信頼など、大量消費社会では軽視されてきた価値をもう一度経済システムの中にしっかりと位置づけなければ、これからの経済は成り立ちません。
私たちは、こうした明確な歴史観に基づき、明治維新以来の我が国の統治システムそのものを消費者視点で抜本的に改革します。
単なる既存行政組織の組みかえではなく、司法、行政を含めたシステム全体を一から見直さない限り、明治維新以来、つまり、日本の近代以降を通じて積み重ねられてきた富国強兵、殖産興業型の行政を転換できるはずがありません。
以上が、この法案の趣旨及び概要であります。
何とぞ、御審議の上、御賛同くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(河野洋平君) 提出者小宮山洋子君。
〔小宮山洋子君登壇〕
○小宮山洋子君 ただいま議題になりました民主党・無所属クラブ提出の消費者団体訴訟法案につきまして、提出者を代表して、趣旨と概要を説明いたします。
このたびの消費者の権利を守るための法案は、長年の消費者、消費者団体の悲願でした。その要望の柱の一つが、違法に上げられた収益、違法収益を剥奪し、被害者に返してほしいということです。
二〇〇六年に消費者契約法を改正して、消費者の皆さんの要望にこたえて、全体では大きな被害ですが一人一人の消費者の損害は小さな額のため泣き寝入りすることが多かった事件について、消費者団体がかわって訴訟を起こせる消費者団体訴訟の制度をつくりましたが、被害の予防に当たる差しとめ訴訟だけ認める制度になっています。
当時から民主党は、予防のための差しとめ訴訟と被害を回復する損害賠償訴訟は、車の両輪のようなもので、両方がそろって有効に機能すると考え、損害賠償訴訟も盛り込んだ民主党案を提出し、並行して審議をしましたが、残念ながら実現しませんでした。
このたびの法改正では、そのときの案をより強化し、消費者権利院の支援を受けながら消費者団体が一人一人の消費者にかわって損害賠償請求もできるようにしたものを、独立した消費者団体訴訟法案として提出いたしました。
どのような消費者被害を救済できるかというと、例えば、高齢者をねらった、布団や医療器具、健康食品、リフォーム工事の契約などがあります。エビの養殖に投資させるワールドオーシャンファームの詐欺事件では、およそ五万三千人が総額八百億円の詐欺に遭っています。また、エル・アンド・ジーの円天事件は、古典的なマルチ商法ですが、およそ五万人が総額一千億円の被害に遭っています。
こうした個々の損害を一人一人が裁判することは困難で、全体の被害額が大きく、広がりがある事件で消費者の被害を回復するためには、損害賠償を消費者団体がかわって訴訟をする制度がぜひとも必要であることをおわかりいただけると思います。
民主党は、消費者の立場を代表する政党として、二〇〇四年の消費者保護基本法改正の際にも、消費者は保護の対象ではなく権利の主体であることなどの観点から対案を取りまとめ、積極的に改正に取り組んできました。そして、二〇〇六年の消費者契約法改正に当たっては、適格消費者団体を、政府の言う認定制ではなく、基準を明記した上で登録制にし、各地に存在するようにすること、また、差しとめ請求の範囲を政府案よりも拡大すること、そして、個々の被害者にかわって損害賠償を請求できるようにするなど、より消費者の皆さんの要望にこたえられる対案を提出しています。
二〇〇六年の衆議院内閣委員会の附帯決議にも、「消費者被害の救済の実効性を確保するため、適格消費者団体が損害賠償等を請求する制度について、司法アクセスの改善手法の展開を踏まえつつ、その必要性等を検討すること。」と明記してあります。
ところが、その後の政府の取り組みは、有識者による研究会を設置し、検討しているということですが、今回、消費者についての大きな法律をつくろうというのに、違法収益を剥奪して被害者に損害賠償をする制度が全く入っていないことは、画竜点睛を欠くどころか、大きな柱が欠けていると言わざるを得ません。
諸外国を見ても、アメリカのクラスアクション制度やヨーロッパ諸国での消費者団体が損害賠償請求をできる制度など、消費者被害を救済する実効性のある制度として損害賠償制度が存在しています。
また、二〇〇七年にOECD理事会で、加盟国に対して、多数の消費者に係る紛争解決及び救済の仕組みを導入するよう勧告されています。
日本も、せっかくの今回の機会を生かして充実させるべきだと考えます。
今回提出している消費者団体訴訟法案は、二〇〇六年の民主党の消費者契約法改正案を土台にして、消費者権利院制度を生かすとともに、ヒアリングなどで聞かせていただいた関係団体の皆様からの意見や私たちの研究成果も取り入れ、大幅にバージョンアップしたものです。その過程では、諸外国の損害賠償制度を参考にしながら、日本の民事訴訟制度の基本的な枠組みと整合性を持ったものにするために、さまざまな工夫をし、現実的で実効性のある制度設計をしております。
それでは、この法律案の概要について説明いたします。
第一に、適格消費者団体は、現行法の差しとめ請求に加えて、共同の利益を持つ多数の消費者の損害の救済のために、裁判所の許可を得て、みずから損害賠償等団体訴訟を行うことができるとしています。
また、損害賠償等団体訴訟の確定判決等に基づいて、弁済として受領した財産を当該消費者に配当できることとしています。その際、適格消費者団体は、損害賠償等を行う許可を得る前であっても、当該損害賠償等団体訴訟に係る仮差し押さえ命令の申し立てをすることができることとしています。
これらの制度は、あわせて提出している消費者権利院法案に基づいて、消費者権利院が行う事業者の財産保全、訴訟援助と相まって、事業者の違法収益剥奪と消費者の被害の救済のために新たな道を開くことになります。
第二に、現在の法律で認められている適格消費者団体による差しとめ訴訟についても、消費者契約法に規定されている対象範囲を拡大することとしています。
現在の法律では、差しとめ請求の対象が、消費者契約法に違反する不当な行為に限定されていますが、この法案では、その対象を、民法における詐欺や強迫に該当する事案、さらに民法九十条の公序良俗違反などに拡大し、消費者の被害の発生及び拡大の防止をより一層図ることができる内容としています。
第三に、適格消費者団体の登録の制度についての規定を整備しています。
現在の消費者契約法では、内閣総理大臣の認定を受けた消費者団体を適格消費者団体としていますが、その要件が大変厳しく、また、行政機関の裁量の余地が大きいため、ごくわずかの消費者団体しか認定を得られていません。法律が施行されて間もなく二年になるのに、現在ある適格消費者団体は、全国で七つのみで、広島より西にはありません。これでは、九州、沖縄の人は遠くまで行かなくてはならないことになります。
この法案では、消費者権利官、いわゆる消費者オンブズパーソンによって登録を受けた団体を適格消費者団体としています。認定制度から登録制度に変更するとともに、登録要件の簡素化、明確化を図り、より多くの消費者団体が適格消費者団体になることができるようにしています。これによって、消費者団体訴訟制度を積極的、実効的に運用することができるとしています。
第四に、適格消費者団体への支援について、必要な規定を設けています。
適格消費者団体は、差しとめ請求権の行使や損害賠償等団体訴訟の提起など、消費者の権利利益の擁護のため、積極的な活動を行うことが期待されています。ところが、経済的な基盤は十分とは言えません。そこで、この法案では、適格消費者団体が行う差しとめ請求関係の業務や損害賠償等請求関係の業務の公益性にかんがみて、国及び地方公共団体は、それらの業務のために必要な資金の確保に努める旨の規定を設けています。
このほか、消費者契約法その他の、所要の規定の整備を行うこととしています。
なお、この法案の施行期日は、一部の規定を除き、消費者権利院法の施行の日、すなわち、同法の公布の日から起算して一年を超えない範囲内で政令で定める日からとしています。
以上が、この法案の趣旨と概要です。
政府案には全く規定がないものであることからも、どうぞ、御審議の上、党派を超えて皆さん賛同してくださることを心からお願いいたします。(拍手)
――――◇―――――
消費者庁設置法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百七十回国会、内閣提出)及び消費者安全法案(第百七十回国会、内閣提出)並びに消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出)及び消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。やまぎわ大志郎君。
〔やまぎわ大志郎君登壇〕
○やまぎわ大志郎君 自由民主党のやまぎわ大志郎です。
私は、自由民主党を代表して、ただいま趣旨説明のありました消費者庁設置法案並びに関連法案につきまして、麻生総理大臣、関係大臣に対し、質問をいたします。(拍手)
昨今、冷凍ギョーザへの毒物混入、牛肉やウナギの産地偽装、いわゆる事故米の不正流通といった食の安全を脅かす問題、さらには、高齢者などをねらった次々販売やマルチ商法のような悪徳商法の横行、ガス給湯器や石油ファンヒーターの事故など、私たちの生活に直接かかわり、大きな不安をもたらす問題が毎日のように起こっています。
翻って我が国の消費者行政を見ますと、各省庁縦割りの仕組みのもと、長く生産者第一の発想で行われ、消費者の保護は産業振興を補完するものとしてしか行われてこなかったとの側面は否定できません。
多発する消費者問題にかんがみれば、私たち国民の安全、安心を確保するために、一刻も早く、こうした行政のあり方そのものを見直して、消費者の味方となる強い権限を持つ消費者庁を創設することが不可欠と考えます。麻生総理は、今国会の施政方針演説で、「消費者の利益を守るため、一日も早い消費者庁の設立に向け、関連三法案の成立を急ぎます。」と言明されました。私も全く同感です。
そこで、消費者庁設置に向けた議論を始めるに際しまして、消費者庁ができればこれまでの消費者行政と何が変わるのかを含め、その設置について、麻生総理大臣の御決意を改めて伺います。
あわせて、消費者庁の創設により、冒頭申し上げたような消費者問題への対応がどのように改善されるのか、また私たち国民の生活にどのようなメリットがあるのかについて、野田消費者行政担当大臣に伺います。
次に、消費者関連法の所管について伺います。
これまでの行政が、複雑、多様化する消費者問題に柔軟に対応できなかった原因として、消費者に密接にかかわる法律を各省庁がばらばらに所管し、連携がきちんととれなかったという点が挙げられます。そのため、消費者行政を担う新たな行政組織では、消費者にかかわる法律について一手に所管し、全体を連携させながら執行することで、消費者被害の未然防止、拡大防止に的確かつ迅速に対応する体制を構築することが必要です。この認識のもとに、政府案では、消費者に密接にかかわる法律について、各省から権限、組織を移管し、消費者庁に所管させることとしています。
他方、民主党案では、政府の従来の消費者行政の組織には何ら手をつけず、新たな消費者権利院という組織を政府の外にあわせ置くのみとしています。これまでの行政がうまく機能しなかったことは明らかであり、そのシステムを変えずに問題を解決できるとは思いません。
そこで、なぜ政府の外からではなく、政府の中から改革を行うのか、その考え方について、野田消費者行政担当大臣に伺います。
さらに、すき間事案と消費者安全法案について伺います。
例えば、コンニャク入りゼリーによる窒息事故では、現行の消費者問題にかかわる法律の規定に該当しない、いわゆるすき間で問題が起きたことが被害を拡大する一つの大きな要因であったと考えられます。現行法においても事業者の行為には規制がかかっていますが、それでもこういったすき間事案が生じます。
消費者庁が創設され、新法である消費者安全法を所管することとなれば、すき間事案に対しどのように対応できることになるのでしょうか。野田消費者行政担当大臣の御見解を伺います。
次に、地方の消費者行政について伺います。
私たち消費者がトラブルに遭った際、まず相談する行政の窓口は地域の消費生活センターです。ですから、国に消費者庁を創設するだけではなくて、消費者に最も近い地域の現場で消費者本位の行政が行われるよう、体制を整備しなければなりません。
この点について、民主党案では、地方の消費生活相談員を国家公務員とし、相談業務を国の事務とすることが提案されています。改めて申し上げるまでもなく、民主党を含む全会一致で成立した消費者基本法にあるとおり、地方公共団体には、当該地域の社会的、経済的状況に応じた消費者政策を推進する責務があります。地方の消費者行政サービスを国の事務にしてしまって地方の責務が果たせるのでしょうか。
現に、消費生活センターや消費生活相談員が行う地方の消費者行政は、他の行政部局と連携し、多岐にわたる住民のニーズにこたえるべく対応を行っています。地方の消費者行政は、それぞれの地域の実情に即して、地方自治体が創意工夫し、きめ細かく行うことが必要であり、自治事務としての位置づけは守るべきと考えます。
しかしながら、地方の消費者行政を見ると、その重要性とは裏腹に、平成十年には百六十四億円だった予算が、平成二十年度には百九億円と大幅に削られ、これに伴い、消費者行政担当職員も減少しています。また、消費生活相談員の処遇改善の必要性も強く指摘されています。このような地方消費者行政の実情を踏まえると、国としても思い切った支援が必要だと思います。
そこで、地方消費者行政の機能改善に向けてどのような取り組みを行おうとしているのか、野田消費者行政担当大臣に伺います。
以上、何点かお尋ねしましたが、私たち国民が安心して生活できる社会を実現するためには、思い切った取り組みが必要であるという基本認識は与野党を問わず一致しているものと考えます。
現在、日本を覆っている重苦しい閉塞感の大きな原因に信頼や信用の欠如が挙げられるのではないでしょうか。かつて、事業者と消費者、あるいは国民と国民の間にあった信頼関係、また行政や政治に対する信用が、たび重なる問題や事故で失われていると思います。消費者庁の設置は、今までどうしても生産者、事業者に向いていた行政を、国民の方を向いた行政に変える、そういった試みだと思います。これを契機に、国民と政治、行政の間に新たな信頼関係を構築していけるのではないか、そう期待しています。
昨年九月に本法律案が国会に提出されて以来、もう六カ月近くたちます。法案の審議入りがおくれている間にも、全国各地で次々と消費者被害が生じています。この間にも、実に多くの御意見をいただいてまいりました。その声に真摯に耳を傾ければ、多くの国民が消費者庁の早期創設を求めていることは明らかです。国民の思いを受けて、消費者庁の一日も早い創設に向けて、精力的に議論を行っていくことを提案いたしまして、私の質問を終了いたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕
○内閣総理大臣(麻生太郎君) やまぎわ議員の質問にお答えをいたします。
消費者庁設置についてのお尋ねがありました。
お話がありましたとおり、昨今、食の安全や暮らしの安全を脅かす事件が相次いで発生をいたしております。その中で、消費者の立場に立ってその利益を守る行政組織が必要になってきておると考えております。
既存の行政組織には、事業者を育てる仕組みはありました。これに対し、全く逆の発想をし、消費者、生活者の味方をするために創設いたしますのが今回の消費者庁設置の内容であります。
一日も早く消費者庁を設立し、真に消費者、国民の安全、安心を確保する行政を実現していくことがぜひとも必要と考えております。
残余の質問については、野田担当大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣野田聖子君登壇〕
○国務大臣(野田聖子君) まず、消費者庁創設後の消費者問題への対応、国民生活へのメリットについてのお尋ねがありました。
消費者庁が創設されることにより、第一に、地方の消費生活センターや関係行政機関から、消費者被害に関する情報を消費者庁に一元的に集約され、早期に問題を発見することが可能になるとともに、消費者への注意喚起を迅速に行う体制が整備されることとなります。
第二に、消費者庁は、消費者に身近な法律をみずから所管し、迅速に企画立案、執行を行うとともに、必要な場合には、各省庁に対して法執行の要求を行います。また、適用すべき法律上の措置のない、いわゆるすき間事案についても、新法である消費者安全法に基づき、同法の要件を満たす場合には、製造業者に対して、勧告や譲渡、引き渡しの禁止等、必要な措置を命じる等の対応を行うことが可能となるため、消費者被害の防止のための取り組みが強化されることとなります。
第三に、消費者庁は、消費者契約法、製造物責任法などの民事ルール等、消費者被害救済のための諸制度を一括して所管し、経済社会情勢の変化等に対応して民事ルールの迅速な整備や関連施策の実施に取り組むこととなり、被害者救済の体制が整備されます。
第四に、消費者庁には、有識者から成る消費者政策委員会が新たに設置されることから、消費者行政全般に対して消費者の声を反映する仕組みが強化されます。
このように、消費者庁は、消費者のパートナーとして消費者の側に立ち、その利益を守る全く新しい行政組織として、相次ぐ消費者被害の未然防止や拡大防止、また被害者救済の体制の強化に向けて取り組んでいくこととなります。
次に、政府の外からではなく、政府の中から改革を行う理由についてのお尋ねがありました。
消費者庁を設置する最大の理由は、既存の行政組織のままでは消費者問題に適切に対処できなくなっていることであります。すなわち、社会の複雑化に伴い、消費者問題が複数の省庁にまたがる横断的なものとなっており、縦割り行政では適切に対応することが難しくなっています。
政府案は、これに対処するため、既存の省庁の権限、予算、定員を切り取り、政府全体の司令塔として機能する強力な権限を有する行政機関を新設し、みずから所管する法律の企画立案及び執行を行うほか、各省に対して措置要求を行い、すき間事案に対する執行等を行わせることとしております。このように、政府の内部から、時代の要請にこたえた画期的な改革をみずから行うこととしたものです。
権利院法案のように、行政機関自体の組織、権限に全く手をつけず、内閣の外に全く特異な機関を新たに設置するとした場合、旧来の行政機関のあり方に全く踏み込むことができず、国民の要請を必ずしも受けとめるものとは言えないのではと考えております。
次に、消費者安全法案によるすき間事案に対する対応についてのお尋ねがありました。
消費者安全法案においては、消費者被害の発生または拡大の防止を図るため、他の法律に基づく措置がない場合、いわゆるすき間事案ということになりますが、重大事故等については、内閣総理大臣みずから措置を講ずることができるものとしております。
具体的には、事業者に対し、必要な点検、安全な使用方法の表示、役務の提供の方法の改善等をするように勧告または命令ができます。さらに、急迫した危険がある場合には譲渡等の禁止または制限を行うことができ、これに違反した場合には回収等の命令を発することもできることとしております。これらの措置によって、法律のすき間に落ちる事案についても適切な対応がとられることになるものと考えております。
最後に、地方消費者行政の機能改善に向けた取り組みについてのお尋ねがありました。
消費生活相談業務の一層の複雑化、高度化に対応するとともに、消費者庁と連携して、消費者問題に関する情報を一元的に集約し、迅速に対応していくためには、地方における消費生活相談体制の強化に早急に取り組む必要があります。
このため、消費者安全法案において、消費生活相談を地方の自治事務として明確に位置づけ、苦情相談やあっせんなどの事務の実施等、地方公共団体の果たすべき役割や、それに対する国の支援等について規定するとともに、相談員に対する適切な処遇について、地方公共団体の努力義務規定を設けたところです。
また、都道府県に消費者行政活性化のための基金を造成し、消費生活センターの設置や相談員の養成、レベルアップなど、消費生活相談窓口の強化等の地方公共団体の取り組みを支援、国みずからも国民生活センターを活用し、経験豊富な相談員による指導の実施や相談員養成講座等の充実等を実施、さらに、地方の自主財源拡充のために、平成二十一年度に消費者行政に係る地方交付税措置の大幅拡充を図ることとしております。
以上のような取り組みにより、地方の消費生活相談体制の強化を図ってまいります。(拍手)
―――――――――――――
○議長(河野洋平君) 田名部匡代君。
〔田名部匡代君登壇〕
○田名部匡代君 民主党の田名部匡代でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、質問をさせていただきます。
本日、この消費者関連法案、消費者にとって非常に重要な法案の審議が始まるというときに、福田前総理がいらっしゃらないのは大変残念なことでありまして、どこまで本気だったのかなと疑問を持たざるを得ません。また、私からは、批判はするけれども質問はしないというようなことはいたしません。ぜひ、多くの国民の皆様にどちらの法案がより消費者のためになるのか御理解をいただけるように、しっかりと質問してまいりたいと思います。(拍手)
ただいま議題となりました消費者庁関連三法案及び民主党提出の消費者権利院法案及び消費者団体訴訟法案について質問いたします。
これまで我が国の消費者行政は、それぞれの省庁が所管する業法にのっとって業者の育成と保護をし、その一方で、規制権限を適切に行使すれば消費者に被害が発生しないという、いわば業者規制の反射的に消費者の利益が守られてきました。
しかし、BSE問題を初め、汚染米に至るまで、食品の安全や、エレベーター事故から建築偽装までの製品安全問題、そして振り込め詐欺や保険金不払いなどの金融商品トラブルなど、近年の事件を見ても明らかなように、もはや従来の業者規制では賄い切れない問題に対し、消費者の利益を守る新しい仕組みが求められています。
そもそも、消費者行政問題の本質は、商品やサービスの専門性の高度化や複雑性による事業者と消費者間の情報の非対称性にあると考えます。つまり、消費者が正確な情報や知識を得られないままに事業者と消費契約を結んだ結果、不幸にして消費トラブルや被害が起こり、問題が発生した際、身近に相談できる解決の窓口がなく、行政がその問題に迅速、公正に対応し切れないまま被害が拡大し、行政が関与するしかないというところにあります。
近代の民主主義国家においては、そのような課題について司法の場で解決するというのが本来の姿です。しかし、裁判所は、迅速性、専門性、廉価性において、消費者の期待にこたえ切れていません。こういった問題を解決するのに肝要なことは、以下の三つであると考えます。
第一に、消費者を支援する身近な相談、解決の窓口を整備して被害を防止し、早期に被害救済をし得ること。第二に、事業者に対する各省庁の権限が適切に行使されているかをチェックすること。そして、第三に、被害が生じた際にその真相を調査し、正確な原因と情報を提供すること。その上で事業者の行為についてルールを是正することです。
そこで、麻生総理に、これからの消費者行政に何が必要なのか、伺いたいと思います。
例えば、中国製冷凍ギョーザ事件、シンドラー社のエレベーター事故、生保、損保各社の保険金の不払い問題、視力矯正手術でのレーシック感染事件や円天事件、これらはどのような原因で起こり、行政はどう対処したのか、そして、新しい消費者行政ではどう対応していくべきだとお考えなのか、総理と民主党提案者に答弁を求めます。
次に、消費者庁について政府に伺います。
消費者政策の充実強化については、民主党が結党以来訴えてきたテーマであり、政府がようやく重い腰を上げていただいたことは率直に評価します。
ただ、政府提案の消費者庁で何がよくなるのか全くわかりません。消費者行政の司令塔をつくると言われますが、中央に新しい役所を一つふやしたからといって、地方の現場で消費被害に迅速に対応できる体制がつくれるとは考えられません。
一元化というかけ声で国民、消費者に幻想を与え、ただ単に行政内部に新たな箱物をつくったのでは、行政の肥大化、多事化を招くというそしりを免れないのではないでしょうか。あいまいな権限移管と行政執行権限での二重行政による見えない化で、消費者被害が広がる懸念と、市場に対する過剰規制を生み出すことを危惧しなければなりません。この点、総理より明確な答弁を求めます。
一方、民主党案ですが、内閣の外に消費者権利院という新機関をつくるのは、これまでの発想では考えが及ばない組織のように見えます。この内閣の外にある消費者権利院とはどのような組織であり、またどのようにして消費者の利益に資するのか、具体的に答弁を求めます。
次に、政府案における内閣総理大臣と消費者政策担当大臣、消費者庁長官というこの三者の権限、役割分担について伺います。
法案では、内閣府の外局である消費者庁のトップは事務方の消費者庁長官、そして、最終権者は内閣府の長たる内閣総理大臣となっています。では、この場合、消費者政策担当大臣はどのような権限を持つのでしょうか。政府案では、消費者政策担当大臣の位置づけや職務内容があいまいで全くわかりません。総理、長官、そして担当大臣のそれぞれの役割分担について明確に説明していただきたいと思います。
今回の政府案で私が最も理解できないのは、二百近くあると言われる消費者関連法のうち、消費者庁が所管する法律はわずか二十九本です。
政府案のベースである基本計画をまとめた消費者行政推進会議では、その二十九本以外に、四十三本の法律について消費者庁への移管を検討すべきとしていました。
例えば、薬害肝炎に関する薬事法、保険金の不払いに関する保険業法、悪質リフォームに絡む建築基準法、パロマガス湯沸かし器事故に関するガス事業法、ミートホープ食肉偽装事件や船場吉兆事件に関する不正競争防止法、それに金融商品取引法、流通食品毒物混入防止法、振り込め詐欺救済法、牛トレーサビリティー法、電気用品安全法など、近年の国民的関心事となった大きな消費者被害に対する規制を規定した法律ばかりです。
消費者行政推進会議で挙げられた、これらを含む四十三本の法律がなぜ消費者庁の所管にならなかったのか、なぜ今回の二十九本なのか、その一つずつについて理由を明確に答弁ください。
また、消費者庁所管の二十九法律にしても、その多くが原省庁との共管になっています。
例えば、多重債務者問題を発端に、今回、消費者行政問題に政府が本腰を上げるきっかけとなった貸金業法については、金融庁との共管であり、消費者庁は立入検査権限がある一方、その処分に関しては金融庁から協議を受けてそれに意見を述べるというものにとどまっています。
これで本当に多重債務被害を防止できるのでしょうか。結局、司令塔機能など果たせないと考えます。与謝野金融担当大臣の御見解をお伺いいたします。
そのほかにも、同じように、共管、再委託と記された法律が、役所の内部調整という、国民、消費者に見えないところで調整がされ、結局、悪質業者への対応が後手に回り被害が拡大するという事態を招くのではないかと懸念します。野田大臣の答弁を求めます。
そして、問題なのは、消費トラブルの中で半数以上を占めると予測される生保、損保、銀行、証券取引、FXなどの金融商品取引について、貸金業法を除くほか、政府案には記述がないことです。また、肝炎や民間機関の医療サービスについても、薬事法や医療関連法の諸問題に消費者庁は関与できないのではないかということです。なぜ、金融庁そして厚生労働省からこれら問題に関する法律を消費者庁に移管しなかったのか、与謝野大臣及び野田消費者担当大臣、それぞれから明確な答弁を求めます。
これら現行法の谷間に抜け落ちたいわゆるすき間事案に関し、政府案では、消費者安全法案の中で、「重大事故等」については総理大臣が法律に根拠がなくても事業者等に対し緊急措置をとれる仕組みを抜け道的に提案しています。しかし、この「重大事故等」とは一体どのような定義なのでしょうか。むしろ、私は、この緊急措置を、一時の雰囲気に乗って行政が責任回避的に問題の真相究明もしないまま恣意的な運用をしてしまうのではないか、あるいは懈怠してしまうのではないかと大変懸念いたしますが、総理の答弁を求めます。
一方、昨年の通常国会で改正され、本年四月から始まる国民生活センターのADR機能についての記述が、民主党案にはありません。この点についてどう対応するのでしょうか。裁判所以外での身近な調停の場がなくなってしまうのではないか危惧されますが、この点について民主党提案者に答弁を求めます。
次に、消費者問題で最もかなめであると考える、地方の消費生活相談窓口についてお伺いいたします。
消費者の相談、解決の窓口である消費生活センターを置く地方行政の現場は、現在大変な惨状を示しています。地方の現場ではそもそも消費者トラブルへの対応が十分であったとは言えず、それが今回の新組織をつくろうという原動力になっています。しかし、地方行政の予算も年々削減され、一九九五年度に約二百億円だったものが二〇〇七年度では百八億円と約四六%も減少しています。消費者行政のかなめである身近な相談窓口がますます消費者のニーズにこたえられない状況に陥っているのです。
政府案では、財政難から縮小されつつある地方消費者行政について、根本的な解決策が示されていません。今後三年間の財政措置という中途半端なものではなく、恒久的な予算措置で地方消費者行政を立て直していこうという気があるのかないのか、総理に明快に答弁を求めます。
そして、地方の現場で実際に業務を行っている消費生活相談員の皆さんのほとんどが、法的権限がないばかりか、嘱託、パートという身分で、年収約百五十万円程度という、いわば公的ワーキングプアという状況で、多くの相談に乗れる現状にないことを政府は把握しているのでしょうか。総理は、専門的な相談員を確保、養成して、あまねく消費者の相談を受け、解決を図っていくことの重要性を理解しているのでしょうか。現在のような地方に丸投げの状態ではますますその機能は疲弊していくと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
民主党は、地域のことは地域で決める分権国家の実現を政策の柱とし、可能な限りすべての事務事業の権限と財源を基礎的自治体に移譲すべきだと主張しています。現在も、地方の消費者行政は自治事務であり、民主党の考え方によれば、各自治体が独自性を発揮して消費者行政に取り組むべきではないかと思います。
にもかかわらず、民主党案は、中央の消費者権利院のもと、各都道府県に地方権利局を置き、さらには、現在各自治体の非常勤職員として働いている消費生活相談員を非常勤の国家公務員として位置づけるというものです。これでは地方分権に逆行し、これも行政の肥大化を招くのではないでしょうか。地方分権の民主党がなぜこのような法案を提出されたのか、答弁を求めます。
最後に、円天事件のように、問題が報道され始めてから強制捜査までに一年以上かかり、その間に悪徳業者の違法収益がほとんど散逸し、消費者の被害が回復されない事件が後を絶ちません。
私も重要な課題であると認識していますが、この違法収益剥奪について、自民党の消費者問題調査会、また政府の消費者行政推進会議で当初から大々的に検討したと大言壮語していたにもかかわらず、今回の政府案では全く触れられていません。これでは、政府案は当初の計画から大幅に後退したものであると言わざるを得ませんし、そういった悪質な被害に遭われた方を救済することなどできません。どのようにそのことについてお考えなのか、円天事件への対応も含めて明確な答弁を求めます。
やみくもに行政権限を拡大することは単なる焼け太りであり、私は、それがこれからの消費者行政だとは全く考えていません。最初にも申し上げましたが、消費者に身近なところで被害救済、防止を行うとともに、中立公正な立場から真相究明をし、公正な取引社会をつくることであります。
政府の消費者庁関連法案では、単なる中央行政の肥大化を招くだけで、現在のさんざんたる消費者行政の現場を変えることは不可能であります。また、私自身も、一人の消費者の立場として考えてみても、政府案では真の消費者救済にはほど遠いということを申し上げ、この点について民主党がどのように考えているのか、答弁を求めまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 最初に、田名部先生から、この法案に力を入れられた福田前総理大臣の欠席の件について御下問がありましたが、前総理大臣は、ただいまボツワナで開催をされておりますアフリカ開発会議のフォローアップ会合などに出席するため、政府特使として出張をいただいておるということを、まず最初に御説明申し上げておきたいと存じます。
それでは、田名部議員の質問にお答えをさせていただきます。
まず、これからの消費者行政のあり方についてのお尋ねがありました。
消費者問題は、複数の省庁にまたがる横断的なものとなっており、縦割り行政では適切に対応することが難しくなってきておると存じます。そのため、これまで各省庁において産業振興に付随する形で推進されてきました消費者行政の仕組みを転換することが重要な課題となっておると存じます。
また、地方の創意工夫を生かしつつ、消費者の直接の窓口となります地方の消費者行政を充実させるとともに、情報を一元的に集約する体制を整備することが重要と考えたからであります。
次に、冷凍ギョーザ事件、エレベーター事故、保険金不払い事件、円天事件、レーシック感染症事件について、その原因と行政の対応についてのお尋ねがありました。
このような事件が起こった原因はさまざまであろうと存じますが、情報共有のあり方や各省庁の連携協力、いろいろあろうと思いますが、こういった連携協力など、行政の対応について問題が指摘されているところであります。
消費者庁は、こうした事件に適切に対処するため、一、情報を一元的に集約し、二、消費者に身近な法律をみずから所管し、企画立案、執行を行うとともに、三、各省庁に対しても措置要求を行う権限を付与されることとなります。
これにより消費者被害に対する実効性ある対応が可能になると考えております。
次に、消費者庁設置に伴う行政の肥大化などの懸念についてのお尋ねがあっております。
消費者庁設置に当たっては、各省庁から、権限、定員、予算を移管することで行政の肥大化を防いでおります。
今回の法案は、縦割りに陥りがちだった消費者行政を反省し、司令塔や各省庁の役割分担を明確にして実効性を高めるものと思っております。このため、二重行政や過剰規制になることはないと考えております。
また、内閣総理大臣、消費者政策担当大臣、消費者庁長官のそれぞれの役割分担についてのお尋ねもありました。
内閣総理大臣は、内閣府の外局であります消費者庁の主任の大臣であります。消費者政策担当大臣は、内閣総理大臣を助け、内閣の一員として消費者庁を担当する閣僚です。一方で、消費者庁長官は、その担当大臣のもとで消費者庁の長として所掌事務の実施に当たります。これらを例えて申し上げれば、内閣総理大臣、金融担当大臣、金融庁長官の関係と基本的には同様だと考えております。
いわゆるすき間事案についての対応についてのお尋ねがありました。
重大事故などの定義は、被害が重大なものにつきましては、消費者が死亡に至る事故など、客観的な要件を今後政令で明確に定めることにいたしております。
すき間事案に対する権限の発動に当たりましては、同じような被害の発生、拡大防止の必要性など、法律に定められた要件を十分に踏まえて、その運用に当たってまいりたいと考えております。
次に、地方の消費者行政に対する財政支援についてのお尋ねもあっておりました。
地方の消費者行政の強化は、消費者庁の創設と並んで大変重要な課題と私たちも認識をいたしております。
このため、今後三年程度を消費者行政活性化のための集中育成・強化期間と位置づけます。国からの交付金により都道府県に合計百五十億円の基金を造成することにより、この間に消費者行政活性化に取り組む地方公共団体を支援することといたしております。
また、地方公共団体の自主財源を拡充するため、平成二十一年度に、消費者行政に係る地方交付税を約九十億円から約百八十億円に拡充いたしたいと考えております。
最後に、消費生活相談員についてのお尋ねがありました。
消費生活相談員の処遇改善や、適切な配置、養成が重要であると、当然のことであります。
このため、先ほども申し上げましたが、国からの交付金により都道府県に合計百五十億円の基金を造成することや、消費者行政に係る地方交付税を拡充するなど、支援を行ってまいります。
また、基金の積極的な活用や相談員の処遇改善などを促すために、現在、地方公共団体に対して種々働きかけを行っているところであります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣野田聖子君登壇〕
○国務大臣(野田聖子君) まず、金融商品取引についての法律や医療関係法律など四十三本の法律について、所管しなかった理由についてお尋ねがありました。
消費者庁は、消費者利益の擁護及び増進等を任務とする組織であり、迅速かつ的確な法執行を行い、また基本的な政策の企画立案を行うことができるよう、消費者に身近な法律二十九本を移管し、または共管とすることとしたところであります。これにより、例えば、消費生活センターの相談事案の大半を消費者庁が所管する法律でカバーすることが可能になります。
消費者行政推進会議では、この二十九本以外にも、幅広い法律について今後も引き続き消費者庁による関与について検討を行う必要があるとして、四十三本の法律を例示したものと承知しております。
しかしながら、御指摘の法律も含め、何らかの意味で消費者がかかわる法律は多数ありますが、仮に、これらのすべてを所管するとした場合には、広範な分野の専門家等を集めた巨大官庁をつくることが必要となります。
消費者庁は、こうした考え方はとらず、消費者行政に関する政府全体の司令塔として、機動的に対応する簡素で効率的な組織としつつ、所管しておくことが不可欠な法律として二十九本を所管し、その他の法律については、必要に応じて、所管する各省庁に対し措置要求等を行っていくこととしたものです。
次に、共管となっている法律について、悪質業者への対応が後手に回って被害が拡大するのではないかとのお尋ねがありました。
消費者庁が消費者に身近な法律を所管することにより、消費者の利益の擁護及び増進がこれまで以上に確実に図られることとなると考えております。
消費者庁と各省庁の共管となっている法律についても、消費者庁と各省庁との間で明確な役割分担を行っており、迅速な対応が可能となるよう措置していることから、対応が後手に回るといった指摘は全く当たらないものと考えます。
次に、被害者救済制度及びいわゆる円天事件への対応についてのお尋ねがありました。
被害者救済制度に関しては、昨年の通常国会において、消費者団体訴訟制度を消費者契約法だけではなく景品表示法や特定商取引法に拡大して導入すること、国民生活センター法に重要消費者紛争に関する裁判外紛争解決機能、ADRを新たに付与することといった法改正をしております。
消費者庁の創設後は、こうした制度の施行状況を踏まえながら、消費者救済制度のあり方について、違法収益の剥奪等も視野に入れつつ、さらに検討を進めることとしております。
なお、いわゆる円天事件のような利殖商法についても、消費者庁は、消費者の安全、安心を確保するため、所管する法律に基づき、情報の一元的集約、分析、消費者への注意喚起を行うなど、積極的な役割を果たすことになります。(拍手)
〔国務大臣与謝野馨君登壇〕
○国務大臣(与謝野馨君) 田名部議員の御質問にお答えいたします。
消費者庁と金融庁との貸金業法の共管のあり方についてのお尋ねがありました。
貸金業法は、消費者の利益と密接にかかわることから、改正案においては、金融庁と消費者庁の共管とされており、貸金業者に対する処分に関する消費者庁への協議や消費者庁による意見の陳述等が措置されています。
消費者庁は、各地の消費者生活センター等から相談情報等が届けられ、これを集約、分析することを通じて、消費者保護全般に目配りをした行政対応を行っていくものと考えております。
金融庁としては、このような立場にある消費者庁が設立された暁には、多重債務の被害の防止や貸金業法の適切な運用に向けて、密接に連携していくことが重要と考えております。
次に、金融庁所管法律の移管についてのお尋ねがありました。
消費者庁関連法案では、消費者に身近な法律について、消費者庁が所管することとしたものと承知をしております。
銀行法、保険業法、金融商品取引法等の法律は、金融機関の財務の健全性や市場における公正な取引の確保も目的としており、一定の専門的な知見を必要とするため、金融庁が引き続き所管することとされたところであります。
金融庁では、従来より、金融システムの安定や透明、公正で活力のある市場の確立と並び、利用者保護、利用者利便の向上の観点から各般の施策に取り組んでまいりました。消費者庁と連携して、これまで以上に、金融分野における利用者保護に努めてまいります。(拍手)
〔階猛君登壇〕
○階猛君 民主党の階猛です。
民主党案提出者を代表いたしまして、田名部議員の質問にお答え申し上げます。
御質問は、大きく五つあったかと思います。
まず最初は、最近の消費者事故を踏まえた上で、これに新しい消費者行政としてどのように対応していくべきか、そういうお尋ねでございました。二つの事例に即して、民主党案による対応方法を述べさせていただきます。
まず、御指摘の中国製冷凍ギョーザ事件についてであります。
私どもの法案では、まず、国の行政機関の長、地方公共団体の長に対し、消費者問題が発生し、または発生するおそれがある場合について、消費者権利官に対する報告義務を課しております。また、消費者権利官は、みずから、国の行政機関、地方公共団体に対し、必要な報告や資料の提出を求め、さらに調査を求めることも可能となっております。
このように、情報を迅速に取得し、一元的に集約する仕組みを構築することで、中国製冷凍ギョーザ事件で起こったような保健所からの通報のおくれや行政内部での不十分な情報共有は解消され、迅速な情報の収集とその共有を図ることができるとともに、消費者に対する速やかな周知を図ることによって、再発防止措置をとることも可能となっております。
次に、円天事件について見てみます。
私どもの法案では、一定の要件を満たす適格消費者団体が多数の消費者の利益を代表して損害賠償請求を行うことができる制度を導入することとしております。したがって、この事件のように、全国規模で広範かつ多数の被害が発生している事件においては、個々の被害者を代表して適格消費者団体が損害賠償請求を行い、その違法収益を剥奪した上で被害者に配当を行う、そういった事後救済が可能となっております。
また、そのような訴訟によって被害回復を図る前に悪徳業者の財産が散逸してしまうことを防ぐ必要があります。消費者権利官の申し立てにより、裁判所が財産保全命令を発することができることとし、消費者の被害の救済に資するような制度を構築しているところであります。
第二問に移ります。
消費者権利院の組織及び役割についてのお尋ねでありました。
まず、消費者権利院の組織についてであります。
御指摘のとおり、消費者権利院は、内閣の所轄の下にある機関とし、内閣の直接の指揮監督を受けないものとしております。
同様に内閣の所轄の下にある機関としては、人事院があります。これは、会計検査院のように憲法で独立の行政機関とされている機関ではなく、法律に設置根拠を持つ、いわゆる独立行政委員会の代表というべき機関であります。
実は、消費者権利院の位置づけも基本的にはこの人事院と同様であります。内閣は、消費者権利官等に対する人事面での監督や、予算等を通じた財務面での監督を行うこととしております。また、消費者権利官等の任命については、国会の議決を要することとして、国会による民主的コントロールに服することとしております。
したがいまして、人事院その他の独立行政委員会に関する現行憲法の通説的な解釈に照らしてみても、その憲法適合性については、全く疑いの余地のないところであります。
次に、消費者権利院の役割についてです。
このように内閣の統括の外に置かれた機関だからこそ、縦割り行政を前提とした共管や委任といった議論を考慮することなく、ありとあらゆる消費者問題について勧告権限を行使することが可能となります。徹頭徹尾、消費者の側に立つ機関として活動することができるのです。
この消費者権利院の権限に関しては、しばしば、勧告権限だけでは実効性に乏しいであるとか、事業者への直接の行政処分権限を有する消費者庁の方が強力なのではないか、そういった御批判をいただきます。しかし、その御批判はむしろ政府案に当てはまるものと考えております。
なぜならば、行政処分権限を付与されても、内閣の統括の下の各省庁では、内閣一体の原則の縛りによって、権限発動の調整に手間取ることは明らかであるからです。
また、そもそも、事業所管官庁が同時に消費者行政をも担当することは、時として利益相反を生じるおそれすらあり、これが迅速な情報の提供を妨げる一因にもなってきたことは周知のとおりであります。
むしろ、内閣の外側から、迅速かつ大胆に勧告を行い、消費者問題を政治的な問題として取り上げさせ、世論を喚起する方がはるかに実効的であると考えます。これが、行政監視院の消費者版、すなわち私どもの消費者権利院であります。
第三問に移ります。
国民生活センターのADR機能に関するお尋ねでありました。
ADRについては、私どもとしてもその重要性を十分に認識しております。特に、消費者問題においてこそ、民事訴訟のように時間や費用のかかる方法によることなく、その前さばきをするADR機関が強く求められていると考えております。
しかし、国民生活センターの紛争解決委員会は、中央に一つ置かれるだけで、多くの消費者紛争を解決することはそもそも予定されておりません。
また、最近の消費者問題はますます複雑化、専門化しており、消費者問題といっても、金融、保険、医療、薬事、悪徳商法などなど、その分野ごとに、紛争を調停、あっせん、仲裁するのに必要な知識は異なります。これを国民生活センターに置かれる紛争解決委員会で処理しようというシステムには、やはり難点があります。
今日の消費者問題にかんがみれば、むしろ、事業者団体等が主導して設立した個別分野、業態ごとの民間ADR機関を、その専門性を踏まえながら、事業者、消費者、公益主体といったより公正な組織形態に発展させていく方が、はるかに現実的かつ実効的であります。
それを、監視機関たる消費者権利院の直接間接の関与のもとでの運用の中で、市民からの尊敬をかち得て権威を有する機関に育てていく、このことこそが重要であると考えております。
次に、第四問目であります。
地方消費者権利局の仕組みと地方分権及び行政の肥大化との関係についてのお尋ねでありました。
現在の地方財政の状況には厳しいものがあり、その中でも、法律上支出が義務づけられていない消費者行政関係の予算は年々削減されております。現に、自治体の消費者行政関係予算は平成七年度をピークに削減が続き、その約半分にもなっているわけです。
このような現状を踏まえるならば、地方分権の美名のもとに、地方分権だからとか自治事務だからということを口実に、わずかばかりの時限的な財政措置をしただけで中途半端に地方に丸投げするようなことは、先般の定額給付金を持ち出すまでもなく、国の責任放棄にほかなりません。
そもそも、真の地方分権とは、国が行うべきことは国が責任を持ってみずから行う一方で、地方に任せた以上は、国は、それを地方が自主性を持って行えるよう環境を万全に整備するべきものであります。
このような観点から、続発する消費者問題や地方の消費者行政の現状にかんがみるならば、まずは、全国津々浦々どの市町村に住んでおられても、ナショナルスタンダードとしての消費者の支援措置、救済措置を受けられるシステムを国の責任において講ずることが何といっても必要であります。
また、消費生活相談員の方々を国家公務員にすることの主眼は、国の財政負担でもってその身分を保障するということであり、それ以上でもそれ以下でもありません。したがいまして、その活動が地域に根差した地方自治体の行政活動と密接な連携のもとにおいて展開されるものであることは、これまでといささかも変わるものではなく、現にその趣旨の規定も法案の五十三条二項に盛り込んでおります。
最後の質問です。
政府の消費者庁関連法案に対する評価についてのお尋ねでありました。
政府提出の消費者庁関連法案は、消費者庁という消費者行政の新組織を創設するとともに、地方の消費者行政について一定の支援を行うこととしており、消費者、生活者の視点に立つ行政への転換を図ろうとしている方向性に関する限り、それなりの評価ができなくはありません。
しかし、政府案には少なくとも五つの大きな問題があります。
まず第一に、消費者庁は、多数の消費者行政関係法律のうち、わずか二十九本の法律しか所管していないという問題です。
消費者トラブルの大きな部分を占める金融、薬事、医療に関する権限を有していないばかりか、食品や製品の安全性といった消費者が強い関心を有している事項についても、ほとんど権限を有しておらず、また、権限があっても、他府省との事前協議が必要であったり、他府省の地方機関への権限委任が予定されていたり、消費者庁が主体的に権限行使をする体制にはなっておりません。
第二番目に、消費者の立場に立って消費者行政を監督するという視点が欠けています。
消費者問題が発生する背景には、情報を隠ぺいしようとする霞が関の体質があることは、汚染米事件やシンドラーエレベータ社の事故に関する行政の対応を見ても明らかです。そういった行政の体質は、権限の移管によっては解決されることはありません。必要なのは、徹底した行政監視とそれに基づく迅速な情報提供なのです。
第三の問題。
国が地方の消費者行政に対する支援を明確に打ち出すべきであるにもかかわらず、今回の政府案はこのような支援を法律で義務づけることなく、時限的な予算措置で取り繕おうとしております。
しかも、その予算措置も、地方消費者行政活性化のための基金造成等で、わずか二百五十億円程度で、極めて不十分であります。
第四の問題点です。
すき間事案に対する内閣総理大臣の権限行使の要件が、その権限の巨大さに比べてあいまいである点です。
すき間事案とは何か、また、どのような場合にこの権限が発動されるのか、条文上不明確であります。結果として、内閣総理大臣の恣意的な権限行使を許容するものとなっております。
第五の問題です。
消費者の被害を救済するための違法収益剥奪制度が導入されておりません。
消費者行政を幾ら強化しても、消費者の被害の発生を完全に防止することはできず、消費者の被害回復を図るための制度を早急に導入することは、消費者の権利利益の擁護のために不可欠であると考えております。
田名部議員は、政府案が単なる中央行政の肥大化、焼け太りであるというふうに評されましたが、実は、単に焼け太りであるだけでなく、中身のない、見かけ倒しの焼け太りである、そういうことをつけ加えさせていただきます。
見かけ倒しの消費者行政一元化は本末転倒、有害無益であります。民主党案は、消費者のために本当に役に立ち、有効に機能する消費者行政の確立を目指すものであります。何とぞ、御理解賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
―――――――――――――
○副議長(横路孝弘君) 田端正広君。
〔田端正広君登壇〕
○田端正広君 公明党の田端正広です。
私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました消費者庁設置三法案に関して、内閣総理大臣並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)
我々公明党は、昨年六月、福田前首相あてに、私たちが一貫して提唱してきた、消費者、生活者第一の消費者庁の創設を要請しました。
今回、福田前首相及び麻生首相の強いリーダーシップで、消費者の側に立って問題解決に当たるという法案の内容となりました。どちらかといえば、日本の行政はこれまで、産業発展、経済成長を第一義にして進んできた嫌いがありましたが、ようやくここに来て、消費者、生活者の視点に立つ流れをつくることができたと喜んでいます。
近年、食の安全が大きな社会問題となっています。赤福の不適正表示、船場吉兆の使い回し、中国冷凍ギョーザのメタミドホス混入事件、中国乳製品のメラミン混入事件、三笠フーズの事故米転売事件、さらにはコンニャクゼリー事件など、国民は、何を信じて何を食べたら安全なのか、不安を抱いています。今こそ、食の安全全般の信頼回復が問われています。
食の安全以外にも、耐震偽装事件やパロマ製ガス湯沸かし器の一酸化炭素中毒事故、金融詐欺事件、マルチ商法などによる消費者トラブルが後を絶ちません。
特に、このマルチ商法に関しては、昨年十月、民主党所属国会議員が、関係企業などから多額の献金を受けたり、パーティー券を購入してもらっていた事実が発覚しました。このような、マルチ商法業界との癒着により政治不信を招いた責任は非常に大きく、民主党及び関係議員は、国民に説明をする責任があると思います。
さて、私は、かつて、昭和四十年代にイタイイタイ病を追跡取材した経験があります。富山県神通川流域で、神岡鉱山から流れ出たカドミウムによる汚染米が原因で骨に異常を来し、多くの住民が苦しみました。これが、公害病認定の第一号になり、後に、昭和四十六年、環境庁設置のきっかけになりました。
また、やはり四十年前、昭和四十三年ですが、一万五千人からの被害者を出したカネミ油症事件も、体によいと言われた米ぬか油にPCBやダイオキシン類が混入していて起こった事件でありますが、ようやく、一昨年、患者救済への第一歩として仮払金の返還免除や見舞金の支給などの法律を制定し、予算措置を講じることができました。
このいずれもが、食の安全が保障されていなかったがゆえに起こった悲劇であり、しみじみと、食の安全こそ国民の健康にとって最重要課題だと実感しています。
したがって、消費者庁に一元的に権限が集約されれば、食の安全が保障され、少なくとも、三笠フーズの事故米転売事件のように、事前に予告して立入調査をするような事態は避けることができ、事業者への勧告、命令をもって対応することによって食の安全、安心が確保できると思いますが、消費者庁設置に対する麻生総理の強い決意をお聞かせください。
国民は、相次ぐ消費者問題に、そして行政の対応のずさんさに、大きな不信感と怒りを持っています。我々公明党は、昨年一月に消費者庁の設置を提唱し、関係者からのヒアリングや視察を重ね、六月に官邸を訪ね、生活者の視点に立った消費者庁の実現を求める提言を申し入れました。
こうした流れを受けて、政府は、昨年九月、臨時国会に消費者庁関連三法案を提出しましたが、野党の同意が得られず、継続審議となり、当初予定していた新年度早々からの消費者庁のスタートが大幅におくれるおそれがあります。何としても、今国会で早期に成立させ、今秋にはスタートさせることが重要と考えます。
現に、全国の六十八の消費者団体すべてが、消費者庁の設置を待ち焦がれています。日本弁護士連合会の先生方も推進しています。最初から百点満点でなくても、まずは消費者庁を設置し、消費者の側に立った行政をスタートさせてほしいと関係者は訴えています。野党の皆さんも、本当は、心の中では政府案に賛意を表されているのではないでしょうか。
その上で、あえて何点か確認いたします。
まず、消費者の窓口になる地方公共団体の所管である消費生活センターは、現在、約五百カ所ですが、少なくはないでしょうか。その消費生活相談員は約三千人だそうですが、これも足りないと思います。今後、どう専門家を養成し、人員を確保するのか、また、新たな資格等をつくるのか、消費者行政担当大臣の御所見を伺います。
そして、何よりもまず、どこに相談すればよいのかをわかりやすくすることです。たらい回しにされることなく、相談の受け付けから助言、紛争解決をワンストップで行われる窓口として機能することが期待されます。また、夜間のコールセンターの開設など、緊急時に三百六十五日二十四時間対応できる体制を整備する必要があると考えます。
同時に、近年の消費者行政関係予算を都道府県で見ると、平成十年度の百六十四億円から平成二十年は百九億円と、大幅に減少し、さらに、都道府県、市区町村の消費者行政担当職員数は、平成十年度から二十年度では約四千五百人も減っているなど、逼迫した財政事情によって、地方の消費者行政は厳しい状況に置かれています。中央に強力な消費者庁を設置するのは当然として、国民に最も身近な相談窓口となる地方の消費生活センター等の強化が最重要課題と言えます。
休日の消費生活相談の実施を含めた相談時間の延長、また、相談員の待遇改善や研修等による能力向上など、国は、地方の消費生活センターへの財政的な措置も含めた強力な助成が必要と考えますが、野田大臣の見解を求めます。
また、全国の情報を一元的に集約する国民生活センターと消費者庁との関係はどうなるのか。あわせて、各省庁と消費者庁との間ですき間が生じる心配はないのか。特に、事業者に対しての処分、指導について、消費者庁と各省庁間で重なったり、すき間が生じた場合、迅速性がどこまで担保されるのか。野田大臣の見解を求めます。
民主党案は、政府の外から勧告を行う考え方に立っていますが、消費者被害を防ぐには、まずは政府自体の意思を明確にすることが大事だと考えます。実効性のある勧告という権限は、消費者庁か、消費者権利官か、いずれがよいと考えるのか、野田大臣の見解を求めます。
消費者庁みずからが法律を執行したり法律に基づいて企画立案することが、日々起こり得る消費者被害に迅速に対応することになると考えます。特に、食の安全確保を担保するための対応策や管理体制を整備することが国民の生命と生活を守ることは明らかです。
したがって、テロなど意図的な異物混入も含めて、原材料から商品出荷、販売までの各段階で想定し得る危険性と対応策を洗い出し、品質管理や部外者の立ち入り制限などを徹底するよう、消費者庁が事業者を所管する各省庁へ未然防止策を促すべきだと考えますが、消費者行政担当大臣の見解を求めます。
また、昨年一月に起こった中国冷凍ギョーザ事件は未解決のままですが、食料自給率が低く、外国原産の食料品輸入に頼る我が国にとって、このような被害から国民の生命を守るには、消費者庁が外務省とも連携を密にし、国内外で適切な対応を速やかにとることが重要だと考えますが、消費者行政担当大臣の見解を求めます。
また、消費者行政は、保健所、福祉関係、商工関係など、地域の関係機関との密接な連携が必要であり、地方自治体が大きな役割を担っています。民主党が主張する消費生活相談員を国に移管することは、現場での連携に支障を来すと考えますが、野田大臣の認識を伺います。
さらに、一昨年六月から消費者団体訴訟制度がスタートし、現在まで七つの適格消費者団体が認定されましたが、今後、総合的な被害者救済制度をより充実させていくことも必要と思いますが、野田大臣の見解を求めます。
戦後最大の不況と言われる今日、政局を重視するのではなく、今こそ、国民生活の安心を第一に考え、速やかに政策を実行することが国民から負託された国会議員の使命です。
消費者庁の設置は、その意味で、環境庁創設から四十年ぶりの大改革であり、消費者の目線に立った今日的な行政改革と言えます。したがって、この消費者庁関連三法案の早期成立を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 田端議員の質問にお答えをいたします。
消費者庁設置に関する決意についてのお尋ねがあっております。
昨今、食の安全や暮らしの安全性を脅かす事件が相次いで発生しております中で、消費者の立場に立って、その利益を守る行政組織というものが必要になってきておると存じます。
御指摘のあった事故米のような問題につきましては、消費者庁が司令塔となって、迅速で効果的な対応というものを実現していかなければならないと考えております。
具体的には、消費者庁に情報が迅速に集約されるようにする、また、必要な場合には、関係省庁に対し、所管する法律に基づく処分などを求める、そして、必要な場合は、消費者庁みずから立入調査を行うなどなど、一日も早く消費者庁を設立し、真に消費者そして国民の安心、安全を確保する行政を実現していくということがぜひとも必要と考えております。全力を挙げて頑張ってまいりたいと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣野田聖子君登壇〕
○国務大臣(野田聖子君) まず、消費生活相談員の養成及び新たな資格等についてのお尋ねがありました。
地方の消費生活相談窓口の強化のためには、相談窓口の増設や相談員の養成、レベルアップが不可欠です。
このため、政府の地方支援策では、都道府県に造成する基金を活用し、消費生活センターの設置、拡充や相談員の養成、レベルアップに取り組む地方公共団体を支援することとしています。また、国みずからも、国民生活センターを活用し、各地域において相談員の養成に取り組むこととしています。
相談員に関する資格としては現在三つあると認識していますが、そのあり方については、地方公共団体、関係団体等からの意見を聞きつつ検討していくべきものと考えています。
次に、地方の消費生活センターへの財政的な支援措置についてのお尋ねがありました。
消費生活相談業務の一層の複雑化、高度化への対応や、消費者問題に関する情報を一元的に集約し、迅速に対応していくためには、消費者庁の創設とともに、地方における消費生活相談体制の強化に早急に取り組む必要があります。
このため、都道府県に基金を造成し、消費生活センターの設置、拡充や相談員の養成、レベルアップなど、消費生活相談窓口の強化の取り組みを支援します。また、国みずからも、国民生活センターを活用し、経験豊富な相談員による指導の実施や、相談員養成講座等の研修の充実等の地方支援事業を実施いたします。さらに、地方の自主財源を拡充し、相談員の処遇改善等を促すために、平成二十一年度に消費者行政に係る地方交付税措置の大幅拡充を図ることとしています。
次に、消費者庁と関係機関との情報共有体制及び執行体制についてのお尋ねがありました。
まず、情報集約の一元化についてであります。
国民の消費生活に関する情報の収集を行う中核的実施機関としての国民生活センターの位置づけは、消費者庁設置後においても変更はありませんが、消費者安全法案においては、関係行政機関、地方公共団体とともに、国民生活センターにも消費者事故等の発生に関する情報の消費者庁への通知義務を課しており、これにより、消費者庁において消費者事故等に関する一元的な情報の集約を図ることとしております。
処分、指導等の権限行使に当たっての各省庁と消費者庁との関係につきましては、まず、消費者庁が所管する法律に関しては、みずからが迅速に対応するほか、共管の法律の場合には、適切な役割分担をすることにより、二重行政となることなく、迅速に対処できるように措置しております。
また、他省庁所管の法律の規定に基づく措置の実施が必要な場合には、消費者安全法案に基づき、内閣総理大臣が所管大臣に措置要求を行うことにより、迅速な措置が実施されるようにしております。
さらに、どの省庁にも法律に基づく措置がない、いわゆるすき間事案については、生命、身体に関する重大事故等の場合は、消費者安全法案に基づき、内閣総理大臣がみずから必要な措置をとることができることとしております。
これらにより、消費者庁と各省庁で権限をすき間なく分担しつつ、全体として迅速な法執行が確保できるようにしているところであります。
次に、消費者庁と消費者権利官の他府省庁に対する勧告権限についてのお尋ねがありました。
消費者庁は、消費者の利益の擁護及び増進を貫徹するため、消費者行政に関する政府全体の司令塔として設置されるものです。このような司令塔機能を十全に発揮するため、みずから所管する法律に基づく権限に加え、新法である消費者安全法案に基づき、各省がそれぞれ所管する法律の規定に基づく措置を速やかに実施するよう、各省に対して要求する権限を持つこととなります。
この措置要求は、内閣の一員たる内閣総理大臣から同じく内閣の一員たる各大臣に行うものであり、かつ、各大臣は内閣の統括のもとに一体として行政機能を発揮するものであることからすると、各大臣がこれに応じることが期待される実効性の高いものと言えます。
このほか、消費者庁自身の権限ではありませんが、政府案では、消費者政策担当大臣が、内閣府設置法に基づき、行政各部の施策の統一を図るため、関係行政機関の長に対し勧告を行う権限を有しており、政府内部の意思を効率的に調整することができます。
これに対し、民主党案の消費者権利官は、内閣の外にあって勧告を行うのみであり、政府案と比較した場合に、政府の外からの勧告では、そもそも実効性に疑問がある上、本来政府一体となって迅速に対応を行うべき消費者被害への対応という観点からも適切でないと考えております。
次に、食の安全確保に対する消費者庁の役割に関するお尋ねがありました。
御指摘のように、原材料から商品出荷、販売までの各段階における食の安全を確保することは、極めて重要な課題であります。
消費者庁は、食品安全行政の司令塔として、食品安全基本法に基づく基本的事項の見直しなどを通じ、食の安全確保の中心的な役割を果たしてまいります。
次に、輸入食品に関する消費者被害についてのお尋ねがありました。
仮に、今回の冷凍ギョーザ事件と同様の問題が発生した場合、消費者の安全、安心を確保するためには政府一体となった迅速な対応を行うことが不可欠であり、消費者庁はその中核的な役割を担うことになります。
すなわち、消費者庁は、情報の一元的集約ルートをたどって届けられた情報をもとに、消費者政策担当大臣の指示のもと、緊急対策本部を開催することなどにより、厚生労働省や農林水産省、さらには警察庁、外務省等の関係各省庁間での緊密な連携協力を図ります。
具体的には、消費者庁は、当該省庁に対し、とり得る行政指導や行政処分等の迅速な対処を促すほか、外務省に対しても、外交ルートを通じた情報収集を含めた迅速な対処等を促すことができます。さらに、必要な場合には、関係大臣に対し、所管する法律に基づきとり得る行政処分等を行うよう、措置要求を行うことができます。
消費者庁は、こうした対応により、輸入食品に関する消費者被害に対しても政府一体の取り組みを推進していくことになります。
次に、相談員の国家公務員化についてのお尋ねがありました。
国と地方の役割分担については、地方自治法において、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本としています。
したがって、地域住民である消費者の声に日々真摯に耳を傾け、それに丁寧に対応していくことを基本とする消費生活相談等の事務は、地方公共団体の事務として位置づけるべきものであると考えます。
また、地方における消費者行政は地方公共団体の他の部局と密接に連携して行っており、消費生活センターや相談員を国に移した場合、このような連携が分断され、地方における消費者行政の円滑な実施に支障を来すおそれがあると考えます。
最後に、被害者救済制度についてのお尋ねがありました。
消費者団体訴訟制度は、消費者被害の未然防止、拡大防止を図るため、内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体が、事業者等に対し、消費者契約法上の不当行為について差しとめ請求をすることができることとするものであり、現在、七団体が適格消費者団体として認定され、消費者の利益擁護のための活動を行っております。
この消費者団体訴訟制度については、昨年の通常国会で成立した消費者契約法等の一部を改正する法律により、景品表示法や特定商取引法上の不当行為について差しとめ請求の対象を拡大することとしており、ことしの四月以降、順次、制度の施行が開始されることになっております。
このほか、消費者被害に関しては、消費者庁が所管することとなる国民生活センターに、重要消費者紛争に関する裁判外紛争解決機能、ADRが新たに付与されることとなります。
消費者庁は、消費者の利益の擁護及び増進に関して幅広く政策の企画立案を行う権限を有しており、こうした制度の施行状況を踏まえながら、被害救済制度のあり方について、さらに検討を進めることとしております。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(横路孝弘君) 吉井英勝君。
〔吉井英勝君登壇〕
○吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、消費者行政に係る政府提出三法案及び民主党提出二法案について質問いたします。(拍手)
消費者問題は、豊田商事事件、霊感・マルチ商法など形を変えた多くの悪徳商法の被害から、BSE汚染牛肉、偽装食品、パロマガス器具など製品欠陥による事故まで、生命、健康に直接かかわる広い範囲にわたります。
なぜ消費者被害拡大を早期に食いとめることができなかったのか、どこに欠陥があったのか、それは法律の不備によるものなのか、行政執行が不十分ないし不作為によるものか、安全の規制緩和による体制の弱体化か、商品テストや相談活動の予算削減によるものなのか、一つ一つきちんと検討して、消費者行政の強化とそのための組織の姿を明らかにすることが必要であります。
そこで、総理、国民に出回った残留農薬や発がんカビ毒で汚染された輸入米の三笠フーズ事件やコーヒー豆問題は、食品衛生法に欠陥があったのか、農水省の検査体制など行政執行に問題があったのか、検疫と事故食品の廃棄処分確認などの体制に問題があったのか、明らかにされたい。
三笠事件後に農水省が強化したミニマムアクセス米の点検で、カビ毒の発見がはね上がりました。総理、これまでの点検が不十分であったことは明白ではありませんか。
コーヒー豆など輸入食品の検査率を高めて発がん性のカビ毒が見つかると、翌年から、輸出国側の検査証添付でもって、輸入時に日本側で食品安全検査をしないようにしています。基準・認証の規制緩和によって、輸入食品の検疫を省略して国民の安全をゆるがせにしてきたことを直ちに改め、国民の安全を守る規制強化に切りかえるべきではありませんか。はっきりお答えいただきたい。
食料自給率四〇%の日本で、大量の輸入食品の検査率は、二十年前の約二〇%から半減し、今や一〇%に落ち込んでいます。九割は無検査で輸入され、食卓に上がっています。消費者行政の強化を口にするなら、輸入食品の検査率を少なくとも五〇%にまで引き上げ、体制を抜本的に強化するべきです。明確な答弁を求めます。
製品事故の問題では、なぜパロマ工業製湯沸かし器で二十件もの死傷事故が続いたのでしょうか。死者を出したシンドラー製エレベーター事故も解明がされずに事実上放置され、多数の死傷者が出るまで自動車のクレームが放置されてきたのはどこに問題があったと考えているのですか。一つ一つについて、何が問題か、どこに責任があるのか、どうすれば解決できるのか、明確にしていただきたいと思います。
欠陥製品をつくった企業の側に立証責任を課すなど、現行製造物責任法の強化が必要ではありませんか。伺うものであります。
大和都市管財事件の被害者は一万七千人、第二の豊田商事事件と呼ばれ、被害額も一千百億円を超え、多くの人々の生活設計を狂わせました。これは、近畿財務局長が部下の進言を排して、問題発生後もこの業者に抵当証券販売業務を扱う登録更新を行わせたことが被害を拡大することになりました。一体、金融商品被害を防止せずに、逆に被害を拡大したことについて、政府は責任をどう果たすのか、どのようにすべての被害を償うのか、総理に伺います。
こうした消費者被害を生み出した根底には、消費者保護法に基づく安全規制などが産業優先の立場から次々と規制緩和されたことによって骨抜きにされたことがあります。
政府は、二〇〇七年に出した報告書で、規制緩和、行革の名で、消費者行政の中核的役割を果たしてきた国民生活センターの直接相談業務の廃止や商品テスト業務の外部化などを求めました。こうした政府の態度に我が国の消費者行政を弱体化させた根本問題があります。このもとで、地方の消費者行政は、その予算も職員も激減し、商品テストなどを行う機能も事実上壊滅状態であります。
今なすべきことは、消費者行政の規制緩和を根本的に見直して、消費者の権利や利益を守る立場に立つことではありませんか。政府と民主党提案者に伺うものであります。
また、草の根で消費者行政を支えている消費生活相談員の七割の方が年収二百万円以下という官製ワーキングプアの状態に置かれています。勤続五年で雇いどめとなり、経験やノウハウが生かされないのが実態です。消費生活相談員の処遇の改善と安全を確認する商品テスト体制の立て直しは急務ではありませんか。答弁を求めます。
法案について質問します。
今回の消費者庁設置法案では、消費者が主役と言いますが、なぜ肝心の消費者の権利の尊重を盛り込まなかったのですか。明確な答弁を求めます。
消費者の皆さんが求めてきたことは、消費者目線で政府の消費者行政をチェックできる体制です。消費者政策委員会には、みずから調査審議し、勧告を行える権限が必要ではありませんか。そのためにも、委員会の職権行使の独立性、委員の身分保障を法律に規定すべきではありませんか。伺うものであります。
次に、民主党案について質問します。
我が党は、九七年に、行政を国民の立場で監視して、そのゆがみを正すことを目的とした行政監視院法、オンブズマン法案を発表しました。消費者権利院というオンブズマン制度を導入することは、一つの有効な考え方であります。
その一方で、消費者権利院は、行政機関そのものではなく、国会、内閣に対する立法提言にとどまります。独立したスタッフをどのように配置するのですか。
また、関係者が強く求めてきた悪徳商法などによる違法収益の剥奪なども重要です。この損害賠償訴訟に対する行政の連携についても、提案者の見解を伺います。
今、国民の皆さんが望んでいる消費者行政の一元化、強化を図るために、各会派が知恵を持ち寄って、本当に消費者の立場で機能する法律に仕上げていくことが重要であります。その立場で取り組むことを明らかにして、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 吉井議員から、七問ちょうだいしました。
まず、事故米やコーヒー豆の問題についてのお尋ねがあっております。
事故米の事案につきましては、たび重なる調査にもかかわらず、不正な流用を見逃すなど、農林水産省の検査体制などに大きな問題があったと考えております。
輸入米の点検については、それまでは、輸入時に袋をあけることなく、サンプルによるカビのチェックをしておりましたが、事故米問題の反省に立ち、昨年十二月からは、販売前にすべての袋を開いてカビのチェックを行うよう改めたところであります。
コーヒー豆の問題につきましては、平成十五年における検疫所の抜き取り検査の結果、食品衛生法違反が複数確認をされました。これを契機に、これまでの抜き取り検査に加えて、輸入業者に対し、輸入の都度、検査を命令することとしたところであります。
平成十六年以降、輸出国政府による検査結果証明書の添付をもって命令検査にかえるものとしましたが、その場合にも輸入時の抜き取り検査は実施をいたしております。
いずれにせよ、食品衛生法違反と確認されたコーヒー豆につきましては、国内で流通しないよう、輸入者に対し、廃棄や積み戻しをさせているところであります。
次に、輸入食品の検査率に関するお尋ねがありました。
多種多様な輸入食品につきましては、食品群ごとの違反率などに応じて、抜き取り検査や輸入者に対して検査の命令を行っております。その中心となる抜き取り検査につきましては、統計学的に適切に違反を検出することが可能となるよう、検査件数というものを設定いたしております。
あわせて、より実効性の高い監視が行われるよう、検疫所の人員の拡充や検査機器の装備などを進めているところでもあります。
製品事故についてのお尋ねがありました。
湯沸かし器事故につきましては、国における事故情報の収集や共有が不十分であったということが大きな課題であり、制度の見直しを行いました。
エレベーター事故につきましては、国において、事故発生後直ちに考え得る再発防止対策を検討し、必要な対応を行いました。事故の原因につきましては、捜査当局からの情報などを踏まえ、より詳細に検討を行う必要があるということで、現在、引き続き調査を行っているところでもあります。
リコールに係る自動車事故につきましては、製造業者においてクレーム情報の隠ぺいなどが行われ、リコールすべき事案が長期間にわたり放置されてきたことが大きな原因だったと考えております。
これらの問題につきましては、製造業側においていわゆる情報が伝達、共有されるよう促すとともに、行政としても、関係法令に沿って報告徴収、検査を的確かつ迅速に行っていくことが重要であると考えております。
製造物責任法についてのお尋ねがありました。
消費者被害の実態を真摯に受けとめ、被害防止や救済に結びつけていくことは、大変重要な課題であります。
製造物責任法については、これまで、相当程度、被害者救済に結びついてきていると認識をいたしております。
今回の法案は、製造物責任法の所管を消費者庁に移管することといたしております。消費者庁は、消費者行政の司令塔でもあり、消費者被害に関する情報を一元的に集約いたします。このため、今回の法律によって、消費者の安全確保のための体制が強化されるものと考えております。
大和都市管財事件についてのお尋ねがあっております。
大和都市管財事件の被害者の皆様の苦境、苦しみは、察するに余りあるものがあります。判決を真摯に受けとめ、これはしっかり対応していかなければならないと考えております。
政府としては、こうした利用者被害の発生を防止するという観点から、金融商品取引法を策定し、顧客への説明義務の拡充や虚偽説明の禁止など、多様な金融商品・サービスに対し横断的に規制を設け、利用者保護を強化したところであります。
利用者保護の徹底は金融監督行政の基本でもあり、今後とも、同様の被害が発生しないよう、法令に基づき厳正な監督を行っていかなければならないと考えております。
消費者の権利や利益を守る立場に立った行政を推進すべきではないかというお尋ねがあっております。
国民生活センターでは、現在でも、直接相談業務や商品テストを着実に実施いたしております。また、来年度からは、裁判外紛争解決を実施することといたしており、機能を強化いたします。
また、地方の消費者行政の体制強化のため、自治体の相談体制整備や財政上の支援の強化を行ってまいります。
さらに、これまで各省庁縦割りのもとで産業振興に付随する形で推進されてきた消費者行政の仕組みを転換する必要があると認識をいたしております。
このため、消費者の立場に立ち、その利益を守るために、消費者庁を創設することや、すき間事案への対応など、法規制の見直しを行うことといたしております。
最後になりますが、消費生活相談員の処遇改善及び商品テストの体制立て直しについてのお尋ねがありました。
消費者の安全、安心を確保するためには、地方の消費者行政の充実強化が不可欠であろうと存じます。
このため、消費者安全法案では、地方公共団体に対しまして、相談員の適切な処遇について努力義務を規定いたしております。
また、地方公共団体における処遇の改善、また商品テストの実施を促進するため、都道府県に消費者行政活性化のための基金の造成や、消費者行政に係る地方交付税の大幅な拡充により支援を行ってまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣野田聖子君登壇〕
○国務大臣(野田聖子君) まず、消費者の権利についてのお尋ねがありました。
消費者基本法においては、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進は、消費者の権利を尊重することを基本として行うことが定められております。
消費者庁設置法案では、消費者基本法の趣旨を受けて、消費者庁が消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進における中心的役割を果たすために必要な具体的な任務について定めることとしており、こうした消費者庁の役割を踏まえると、任務規定は適切なものと考えております。
次に、消費者政策委員会についてのお尋ねがありました。
政府部外者の有識者から構成される消費者政策委員会は、諮問に応じて調査審議を行うのみならず、みずから意見を述べること等の権限を独立して行使することとしており、消費者目線で政府の消費者行政のチェックを行う体制は整備されていると考えております。(拍手)
〔国務大臣金子一義君登壇〕
○国務大臣(金子一義君) 製品事故について、どうすれば解決できるのかという点でお尋ねがありました。
先ほど総理がお答え申し上げましたけれども、製造者側において情報が伝達そして共有されることを促すということが大事でありますし、行政としても、関係法令に沿って、報告の徴収、検査、これを的確、迅速に行っていくことが問題解決のために重要であると考えております。(拍手)
〔階猛君登壇〕
○階猛君 吉井議員の御質問に対してお答え申し上げます。
御質問は、大きく分けて、二つあったかと存じます。
まず、消費者の立場に立った消費者行政の見直しについてのお尋ねでございました。
消費者行政に関し、今なすべきことが、消費者の権利や利益を守る立場に立つことであるというのは、先生御指摘のとおりであります。民主党は、今回、先生御指摘のような発想から、徹頭徹尾、消費者の立場に立つ組織として、消費者権利院を設置することを提案しているところでございます。
まず、先生御指摘の国民生活センターの直接相談業務あるいは商品テスト業務につきましては、消費者権利院の設立後も、すべて消費者権利院において一元的に行うこととしております。
また、地方の消費者行政につきましても、日本全国津々浦々まで張りめぐらされた地方消費者権利局とその支局のネットワークにより、どこに住んでいてもあまねく消費生活相談機関を利用できるよう万全の体制とするとともに、その消費生活相談員その他の職員についても、国の財政負担でその身分を保障し、安心して相談業務に専念できるよう措置を講ずることとしております。
第二問に移ります。
消費者権利院のあり方等についてのお尋ねでありました。
まず、消費者権利院の権限は立法提言にとどまるとの御指摘がありました。
改めて御説明申し上げますが、消費者権利院は、立法提言のほか、行政機関に対して行政処分等をすべき旨の勧告を行い、消費者行政を消費者の立場から監視することとしております。
なお、消費者権利院は、消費者の立場から、国会、内閣に対して、消費者行政のあらゆる分野について幅広い立法提言をすることができることとしております。内閣にはこの立法提言の尊重義務を課すことで、その実効性を担保しております。
また、スタッフの配置についても御指摘がありました。
内閣から一定の独立性を持つ消費者権利院は、その長である消費者権利官を含めて、霞が関のいわゆるキャリア公務員が配置転換され、そのスタッフになるようなことは、一切想定しておりません。徹頭徹尾、消費者の立場に立って行動する消費者権利院のスタッフとしてふさわしいのは、消費者団体のメンバーや弁護士など、消費者の権利利益の擁護、増進とその被害の救済に携わってきた民間人であり、そういった人材を消費者権利院の事務総局に配置することを想定しております。
最後に、違法収益剥奪のための損害賠償請求に対する行政の連携について御指摘がありました。
民主党の消費者団体訴訟法案におきましては、消費者権利官が適格消費者団体と連携して違法収益の剥奪を行うこととしております。
具体的には、第一に、消費者権利官は、適格消費者団体による損害賠償等団体訴訟に先立ち、事業者の財産の処分を禁ずる財産保全命令を裁判所に申し立てることができるものとし、悪徳事業者等の財産の散逸を防止することができるようにしております。
第二に、消費者権利官は、消費者問題が発生した場合において、適格消費者団体から申し出を受けて、消費者権利官が保有する情報の提供等を行うことができることとしております。
第三に、消費者権利官は、必要があると認めるときは、損害賠償等団体訴訟に参加することができることとしております。
なお、以上のような仕組みは政府案にはございません。
民主党のセールスポイントについて御質問をいただいたことに対し、心より感謝を申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(横路孝弘君) 日森文尋君。
〔日森文尋君登壇〕
○日森文尋君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました消費者庁設置関連三法案及び民主党提出の対案に対して質問を行います。
中央省庁は、産業育成や事業者規制中心の発想が主で、消費者の視点というのが残念ながら弱く、社民党としても、消費者の目線で考え、生活者の利益を追求する消費者庁的な行政機関の創設を求めてきました。消費者保護基本法から四十年、ようやく消費者行政を統一的、専門的に所管する行政機関ができつつあることに感慨深いものを感じています。
麻生総理は、自民党幹事長時代、当時の太田誠一農水大臣の消費者がやかましい発言に対し、関西以西ではよく知っているという意味と擁護されました。これでは、消費者重視の看板も国民に信用されません。仏つくって魂入れずとならないよう、消費者行政推進会議の主宰者である総理から、謝罪と擁護発言の撤回をまず明確にしていただきたいと思います。
以下、政府案の内容について野田担当大臣にお尋ねいたします。
縦割り行政を打破し、総合的、統一的な消費者行政を可能にし、本当に消費者の立場でその権利利益を実現するものにしていかなければなりません。しかし、法案には、共管事項が多いことや、各省からの出向者が大部分を占めること、消費トラブルの過半を占める食品安全、金融、商品取引等が除外されていることなどから、消費者庁が消費者保護の司令塔として本当に機能するのか、国民の声が本当に届くのか、官が動かないときにどうするのか等々、大いに不安があります。
これらの不安にこたえるためにも、消費者の権利尊重をうたっている消費者基本法の理念も踏まえ、消費者の権利擁護の観点から、消費者庁の任務、役割をより明確にすべきと考えますが、いかがでしょうか。
違法収益を加害者から徹底的に剥奪し、違法収益を被害者にきちんと返済するという制度がなければ、やり得と泣き寝入りを助長してしまうことになり、消費者被害が繰り返されることになります。
野田大臣が会長を務めた自民党消費者問題調査会の最終取りまとめでは、違法収益、不当利得の剥奪や被害回復制度の導入を盛り込んでいます。私も、法制度導入に大いに賛成し、実現すべきと考えていますが、いかがでしょうか。
消費者政策委員会について、諮問に応じ重要事項の調査審議を行い意見を述べるだけであり、国民、消費者の声を生かす機関としては極めて不十分です。
立入検査権や勧告権、建議権等を付与し、いわば消費者Gメン的な、監視と提案をする機関として再構築すべきと考えます。また、消費者の苦情や意見を反映させる御意見番として、日本版スーパーコンプレイン制度を導入し、消費者みずからが能動的に参加、関与できるようにすべきです。これらについてのお考えをお聞きしたいと思います。
消費者行政を実際現場で担い、消費者行政の本丸ともいうべき消費生活センターなどの自治体の消費者相談窓口の相談件数は、一九九五年度では二十七万件であったものが、二〇〇六年度には約百十万件に達しています。しかし、行革や財政難を口実に、予算、人員は大幅に削減され、消費者相談員の待遇も劣悪な実態にあります。
地方の消費者行政の充実に向け、消費生活相談員の待遇改善や大幅増員、任意とされている市町村の消費者センターの共同設置、地方消費者行政活性化交付金などの国の支援の継続、相談員や担当職員の配置や処遇に関する指針の策定などを行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
私は、今の縦割り行政の弊害を打破し、消費者のための新たな仕組みをつくるべきだという点では同じであり、政府案、民主党案の両案がぶつかって成立しないことが一番不幸であると考えています。運動団体などからは、小さく産んでも大きく育てようという声が上がっています。国民の、消費者の権利利益の擁護、確立のために今何をなすべきなのか、与野党がそれぞれ英知を絞ってよりよいものに仕上げていくのが国会の役割と考えています。
最後に、野田大臣及び民主党提案者の決意を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 日森議員の質問にお答えをいたします。
かつて、私は、当時の農林水産大臣の消費者がやかましいという発言について、それは、よく知っている、これは福岡でよく使う言葉だという解説をしたが、これは、消費者の目が肥えていて意識が高いということだと評価したものだと申し上げたんですが、一部の方から、日本じゅうで通じる言葉でしゃべれと言われて、ごもっともだと思いました。
いずれにいたしましても、私は、安心できる社会というものを内閣の主要課題に掲げております。そうした消費者の皆さんにこたえられるよう、消費者行政というものや生活者重視の行政というものを、野田大臣ともども進めてまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣野田聖子君登壇〕
○国務大臣(野田聖子君) まず、消費者庁の任務、役割についてのお尋ねがありました。
消費者基本法においては、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進は、消費者の権利を尊重することを基本として行うことが定められております。
消費者庁設置法案では、消費者基本法の趣旨を受けて、消費者庁が消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進における中心的役割を果たすため、必要な具体的な任務について定めることとしており、こうした消費者庁の役割を踏まえると、任務規定は適切なものと考えております。
被害者救済制度についてのお尋ねがありました。
消費者庁は、消費者被害の未然防止及び被害の拡大防止に加えて、被害者救済の体制を強化するものです。
具体的には、消費者契約法、製造物責任法等を所管し、経済社会情勢の変化等に対応して民事ルールの迅速な整備に当たることとされております。
特に、被害者救済制度に関しては、昨年の通常国会において、消費者団体訴訟制度を消費者契約法だけでなく景品表示法や特定商取引法に拡大して導入すること、国民生活センターに重要消費者紛争に関する裁判外紛争解決機能、ADRを新たに付与することとしております。
消費者庁の創設後は、まずはこうした制度の施行状況を踏まえながら、被害者救済制度のあり方についてさらに検討を進めることとしております。
次に、消費者政策委員会についてのお尋ねがありました。
消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に関してすぐれた識見を有する政府部外者の有識者から構成される消費者政策委員会は、諮問に応じて調査審議を行うのみならず、みずから意見を述べること等の権限を行使することとしており、消費者の声を生かした運営を行うことは可能であると考えております。
次に、地方消費者行政の充実に向けた取り組みについてお尋ねがありました。
地方における消費生活相談体制の強化については、早急に取り組むべき重要な課題と認識しております。このため、消費者安全法案において、地方公共団体における消費生活センターの設置やその事務に関する国の支援等について規定するとともに、相談員に対する適切な処遇について地方公共団体の努力義務規定を設けております。
また、先般成立した補正予算により、都道府県に基金を造成し、複数の市町村の連携による設置も含めた消費生活センターの設置、拡充や、相談員の養成、レベルアップに取り組む地方公共団体を支援することとしております。
さらに、地方公共団体の自主財源を拡充し、相談員の処遇改善や適切な配置を促すため、平成二十一年度に消費者行政に係る地方交付税措置を大幅に拡充することとしております。
政府としては、まずは地方において基金を活用した事業を円滑に執行し、拡充された地方交付税措置を実際の予算に結びつけることなど、全力で取り組んでいただくことが重要であると考えております。
最後に、国民、消費者の権利利益の擁護、確立のために、与野党が知恵を絞ってよりよいものに仕上げていくべきとのお尋ねがありました。
これまで各府省庁縦割りのもとで産業振興に付随する形で推進されてきた消費者行政の仕組みを転換するため、消費者利益の擁護及び増進を任務とし、消費者のパートナーとして消費者の側に立ち、その利益を守る、全く新しい行政組織の創設が必要であります。
こうした観点から、政府としては、考え得るベストの案として消費者庁関連三法案を国会に提出しているところであり、国会において十分御議論いただいた上、関連三法案を早期に成立させていただき、消費者庁の創設を含めた消費者利益を守る体制を一日も早く整備することがぜひとも必要と考えております。
よろしくお願いいたします。(拍手)
〔階猛君登壇〕
○階猛君 日森議員の御質問に対してお答え申し上げます。
御質問は、国会の役割としてよりよいものに仕上げていくことに関して、民主党案提出者として決意を述べてほしいということでありました。
消費者の権利利益の擁護、確立のため、与野党それぞれが英知を絞ってよりよいものに仕上げていくべきであるという御指摘は、全くそのとおりであると考えております。
しかしながら、小さく産んで大きく育てるという御発想には、いささか疑問がございます。すなわち、これまで行政官庁が新設された例を見ていてもわかるように、小さく産んでしまった組織はずっと小さいままであることが往々にしてあるからでございます。最初に中途半端なものをつくってしまっては、それだけでお茶を濁されて、真の消費者の権利利益の擁護、確立のための議論が尽くされないまま終わってしまうことになりかねません。
先ほど来御説明しておりますとおり、我々の提案は、行政権限の中途半端な再編にとどまる政府案より、はるかに実効的な制度であると確信しております。
大きく産んでしっかりと定着させる、そのためにも、これから始まる法案の審議を通じて、政府が我々の意見を大胆に取り入れ、消費者権利院が速やかに設置されるよう、我々は全力で頑張ってまいります。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(横路孝弘君) 下地幹郎君。
〔下地幹郎君登壇〕
○下地幹郎君 国民新党の下地幹郎です。
私は、国民新党・大地・無所属の会を代表して、ただいま趣旨説明がありました消費者庁の関連法案について質問をいたします。
国民の皆様方には、平成十八年六月、東京都港区のシティハイツ竹芝で大変痛ましいエレベーターの事故が起きたことは、まだ記憶に鮮明だと思います。当時高校二年生であった市川大輔君がエレベーターの出入り口の天井部分と床部分の間に挟まれて亡くなるという事故でありました。
大輔君は、野球部に所属をしており、練習には一番乗りする努力家で、二年生でただ一人のレギュラーでもあり、チームメートからも信頼の厚い選手でありました。事故のあった日も、野球部の練習で汗を流し、家族の待つ十二階の自宅へ帰ろうと、安全だと信じてエレベーターに乗ったのです。
また、事故が起きた朝、大輔君は新しいバットを買っておりました。この新しいバットで活躍を夢見ていたやさき、思いも寄らない事故に遭遇した未来ある高校生は、命を奪われたのであります。エレベーターのドアが開いたままで、人が乗りおりしている最中に突然上昇してしまうなんて、だれが想像したでしょう。
私が改めてこの事故を振り返ることになったのは、先月、大輔君のお母さんが、大輔君の野球部の友達のお母さんと一緒に議員会館を一部屋一部屋訪問され、事件の真相究明について議員に訴えられた際、私も直接その話を聞くことができたからであります。
この事故は、発生から既に三年近くがたっており、事故原因についても究明され、賠償問題も解決が図られているだろうと思っていただけに、お母さんから何一つ解決が図られていないということを伺い、びっくりいたしました。
事故原因について、国土交通省はまだ明らかにしておりません。また、警察においても、捜査中で、送致は行われておりません。
そんな中、民事裁判の時効もあり、息子がなぜ亡くなったのか、真実を知るために、大輔君のお母さんは民事訴訟を起こしたとのことでありました。
一方、国土交通省は、昨年の十二月三日に、事故から二年半たって初めて、この事故機のエレベーターの調査を実施し、そして、ようやく昇降機等事故対策委員会が国土交通省に設置され、昇降機等に係る重大事故発生時の警察との連携体制も整備されたということであります。
しかし、大輔君が亡くなった事故以降も、エレベーターによるさまざまな事故が続いている状況を見ると、国土交通省の事故再発防止に対する対応は、余りにも遅過ぎるという感は否めません。
国土交通大臣、なぜ事故の原因究明と再発防止策がこれほどまでにおくれたのか、そして、警察庁においても、なぜ三年たっても送致が行われないかについて、御説明をいただきたいと思います。
そして、このように、安全であると信じていたエレベーターによって未来ある少年が命を落とすという忌まわしい事故が二度と起きないようにするために、消費者庁が設置されることで具体的にどのような対策がとられるのか。
つまり、このエレベーター事故のケースで考えると、消費者庁は、国土交通省に対して原因究明と再発防止を強く勧告することが可能なのか、行政の不作為を他の省庁に対して強く指摘することができるのかなど、消費者庁の権限について、野田大臣の御答弁をいただきたいと思います。
麻生総理、消費者庁が設置されることで、消費者行政においてさまざまな事件、事故がダイレクトに行政に届き、そして、そのことで改善が図られ、再発防止につながるという期待を持たれている国民は多いと思います。その大きな期待にこたえるためには、消費者庁に公正取引委員会や会計検査院並みの強い権限を持たせなければ、消費者庁が設置された結果は出てこないのではないかと考えております。
この政府から提出された消費者庁関連法案によって、消費者の立場に立った消費者行政が十分に行われるとお考えになっているのか、麻生総理の御答弁をいただき、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 下地議員の御質問にお答えをさせていただきます。
消費者庁関連法案により消費者の立場に立った行政が十分に行われるのかとの御指摘がありました。
消費者庁は、消費者の身近な法律をみずから所管し、企画立案、執行を行うとともに、各省庁に対しても、行政処分を行わせるべく措置要求を行えるようにいたしております。また、いわゆるすき間事案に対しても対応できるようにいたします。
さらに、有識者から成る消費者政策委員会を設置することなどにより、消費者の声を反映する仕組みを強化いたしております。
このような体制を整備することにより、消費者の立場に立った消費者行政を行うことができると考えております。(拍手)
〔国務大臣金子一義君登壇〕
○国務大臣(金子一義君) 平成十八年六月に発生しましたエレベーター事故についてお尋ねがありました。
この痛ましい事故でお亡くなりになりました市川君の御冥福をお祈りいたします。
同事故につきまして、同年九月二十九日にエレベーター事故の再発防止対策等について中間報告を取りまとめ、平成二十年二月の十八日に定期検査報告制度を見直し、同年九月十九日、安全装置に係る基準の強化を行ってきたところであります。
一方、事故原因の究明については、捜査当局による捜査を優先する観点から、捜査を見守っております。捜査進展により原因が特定され、新たな検討事項に対応して、引き続き検討を継続してまいります。
今後、事故発生時における現場への立入調査など、警察との協力体制も強化されたところから、本年二月六日に社会資本整備審議会のもとに設置されました常設の昇降機等事故対策委員会を活用して、的確な対応に努めてまいります。(拍手)
〔国務大臣佐藤勉君登壇〕
○国務大臣(佐藤勉君) お答えを申し上げたいと思います。
平成十八年六月に発生をいたしましたエレベーター事故についてのお尋ねがございました。
大変痛ましい事故で、お亡くなりになりました市川さんの御冥福をお祈りするとともに、御家族に心からお悔やみを申し上げたいと思います。
この事故につきましては、事故原因の解明や因果関係、刑事責任の所在などを明らかにするため捜査が長期に及んでおりますが、一日も早い真相解明を願う御家族の心情に思いをいたしまして、警視庁において、現在、検察当局とも協議しつつ、詰めの捜査を行っているところでございます。
以上です。(拍手)
〔国務大臣野田聖子君登壇〕
○国務大臣(野田聖子君) エレベーター事故における消費者庁の権限に関してお尋ねがありました。
その前に、私からも、事故で亡くなられた市川さんに心から御冥福をお祈り申し上げます。
御指摘のエレベーター事故のような問題が発生した場合、消費者の安全、安心を確保するためには、政府一体となった迅速な対応を行うことが不可欠であり、消費者庁は、その中核的な役割を担うことになります。
すなわち、消費者庁は、情報の一元的集約ルートをたどって届けられた情報をもとに、消費者政策担当大臣の指示のもと、緊急対策本部を開催することなどにより、国土交通省等の関係各省庁間での緊密な連携協力及び情報共有を図り、当該省庁に対し、原因究明を含めた事故の調査を促すことができます。
また、消費者庁は、行政の不作為という事態を防ぐため、必要な場合には、建築基準法に基づく地方公共団体による違反建築物是正のための措置がとられるよう、消費者安全法に基づき、国土交通大臣に対し、措置要求を行うことができます。
こうした対応により、消費者庁は、エレベーター事故に関しても、政府一体の取り組みを推進していくことになります。(拍手)
○副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。
午後四時二分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 麻生 太郎君
総務大臣 鳩山 邦夫君
文部科学大臣 塩谷 立君
国土交通大臣 金子 一義君
国務大臣 佐藤 勉君
国務大臣 野田 聖子君
国務大臣 与謝野 馨君
出席内閣官房副長官及び副大臣
内閣官房副長官 松本 純君
内閣府副大臣 増原 義剛君