衆議院

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第26号 平成21年4月23日(木曜日)

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平成二十一年四月二十三日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  平成二十一年四月二十三日

    午後一時開議

 第一 株式会社地域力再生機構法案(第百六十九回国会、内閣提出)

 第二 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 資金決済に関する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 株式会社地域力再生機構法案(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第二 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 資金決済に関する法律案(内閣提出)

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出)

 エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案(内閣提出)及び石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 株式会社地域力再生機構法案(第百六十九回国会、内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、株式会社地域力再生機構法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長渡辺具能君。

    ―――――――――――――

 株式会社地域力再生機構法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔渡辺具能君登壇〕

渡辺具能君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、地域経済において重要な役割を果たしていながら過大な債務を負っている事業者の事業再生を支援することを目的とする株式会社地域力再生機構を設立しようとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、機構は、主務大臣の認可により、全国で一つに限り設立されるものとしております。

 第二に、機構に地域力再生委員会を置き、機構の業務運営に関する重要事項の決定を行うものとしております。

 第三に、機構は、対象事業者に対して金融機関等が有する債権の買い取り等の業務を営むことにより、その事業の再生を支援するものとしております。

 第四に、機構は、原則として、成立の日から二年以内に支援決定を行うとともに、支援決定から三年以内に、再生支援を完了するよう努めなければならないものとしております。

 本案は、第百六十九回国会に提出され、昨年五月十二日に本委員会に付託されました。

 本委員会においては、同月十四日に提案理由の説明を聴取し、同月十六日から質疑に入り、参考人から意見を聴取する等審査を行いましたが、以後、今国会まで継続審査に付されていたものです。

 今国会におきましては、四月二十二日、本案に対し、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案により、機構の名称を株式会社企業再生支援機構に改めるとともに、本案の題名を株式会社企業再生支援機構法に改めること、機構の支援対象を中堅事業者、中小企業者その他の事業者とし、いわゆる第三セクターを支援対象から除くことを主な内容とする修正案が提出され、提出者から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、原案及び修正案を一括して質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対して附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 資金決済に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、金融商品取引法等の一部を改正する法律案、日程第三、資金決済に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長田中和徳君。

    ―――――――――――――

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 資金決済に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔田中和徳君登壇〕

田中和徳君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、金融商品取引法等の一部を改正する法律案は、信頼と活力のある金融資本市場を構築するため、信用格付業者に対する公的規制を導入するとともに、金融分野における裁判外紛争解決制度、いわゆる金融ADR制度の整備を行うほか、金融商品取引所による商品市場の開設を可能とする等の措置を講ずるものであります。

 次に、資金決済に関する法律案は、資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、当該サービスの提供の促進を図るため、前払い式支払い手段の発行、銀行等以外の者が行う為替取引及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算について、登録その他の必要な措置を講ずるものであります。

 両案は、去る四月七日当委員会に付託され、翌八日与謝野国務大臣から提案理由の説明を聴取し、十四日から質疑に入り、十六日には参考人の意見を聴取するなど、慎重かつ熱心な審査を行い、二十一日質疑を終局いたしました。

 かくて、昨二十二日、金融商品取引法等改正案に対し、竹本直一君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案に係る、指定紛争解決機関による裁判外紛争解決手続に係る制度のあり方についての検討条項の追加を内容とする修正案が提出され、提出者を代表して松野頼久君から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、討論を行い、順次採決いたしましたところ、金融商品取引法等改正案は賛成多数をもって修正議決すべきものと決し、資金決済法案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、金融商品取引法等改正案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

 次に、日程第三につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

谷公一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 谷公一君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員長深谷隆司君。

    ―――――――――――――

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔深谷隆司君登壇〕

深谷隆司君 ただいま議題となりました法律案につきまして、本委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、海賊行為の処罰及び海賊行為への適切かつ効果的な対処のために必要な事項を定め、もって海上における公共の安全と秩序の維持を図ろうとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、船舶に乗り組みまたは乗船した者が、私的目的で、公海または我が国領海等において行う航行中の他の船舶の強取等の行為を海賊行為と定義いたしております。

 第二に、海賊行為をした者につき、その危険性や悪質性に応じて処罰することとしております。

 第三に、海賊行為への対処は、海上保安庁が必要な措置を実施するものとし、海上保安官等は、警察官職務執行法第七条の規定による武器の使用のほか、他の船舶への著しい接近等の海賊行為を制止し、停船させるため、武器を使用することができることとしております。

 第四に、防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、海賊対処行動を命ずることができるものとし、その際、原則として、対処要項を作成して、内閣総理大臣に提出し、内閣総理大臣は、国会に所要の報告をしなければならないこととしております。

 第五に、海賊対処行動を命ぜられた自衛官につき、武器の使用に関する警察官職務執行法第七条の規定及び他の船舶への著しい接近等の海賊行為を制止し、停船させるための武器の使用について、本法律案の規定を準用することとしております。

 本案は、去る三月十三日本院に提出され、四月十四日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日金子国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、十五日質疑に入りました。二十一日には参考人から意見を聴取し、二十三日麻生内閣総理大臣の出席を求め質疑を行うなど、実に二十五時間余にわたり慎重に審査いたしました。

 同日質疑終局の後、民主党・無所属クラブから、海上保安庁による海賊行為への対処が困難である場合の国土交通大臣の要請に基づく海賊対処本部の設置及び自衛隊が海賊行為への対処を実施する場合の国会の事前承認などを内容とする修正案が提出され、趣旨説明を聴取いたしました。次いで、討論、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。順次これを許します。川内博史君。

    〔川内博史君登壇〕

川内博史君 民主党の川内でございます。

 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、まず自衛隊派遣ありきの政府提出の海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について、反対の討論を行います。(拍手)

 民主党は、海賊行為は犯罪であり、国連海洋法条約においても、旗国主義の例外として、すべての国に取り締まりの権限が与えられており、主権の枠組みを超えて、各国が連携して対策を講じる必要があると強く認識をしております。

 特に、ソマリア沖・アデン湾の海賊対策は、累次の国連安保理決議も発出をされており、各国に積極的な取り組みが要請されており、同海域に艦船等を派遣して海賊対策に係る活動を行うことは、我が国の船舶保護のみならず、国際社会への大きな貢献であると考えます。

 それがために民主党が、前国会における本院での審議の上廃案となったテロ根絶法案の中に、公海における航行の自由の確保のため国際社会の取り組みに積極的かつ主導的に寄与することを規定したところからも、皆さんにもおわかりいただけると存じます。海洋の安全を重視することについては、政府・与党に先んじて提案をしてきたのであります。

 しかるに、今回、政府から提出された海賊対処法案の中身はいかがでございましょう。法案提出の前に、本来、日本近海を想定しているはずの海上警備行動を根拠に海上自衛隊を泥縄式に派遣をしたことを初め、我が国の海賊対策は海上保安庁の任務であると知りながら、自衛隊の派遣ありきで、本当に海上保安庁では対処できないのか否かを全く検討した痕跡もないままに本法案の提出に至ったのであります。

 政府は、事あるごとに、本来は第一義的に海上保安庁の任務であると言いながら、衆議院本会議及び委員会における質疑全体を通じても、できない、できない、行けません、行けませんと言うばかりで、海上保安庁の積極的な姿勢が全く見られませんでした。さらに、政府全体としても、海上保安庁の新造船を予算を確保して建造しようという姿勢は全くないのであります。

 海上保安庁は、海上保安庁法によって、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕など海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とし、特に、海上保安庁法第四条では、その任務遂行のために必要とする船舶及び航空機は、適当な構造、設備及び性能を有する船舶及び航空機でなければならないと定められております。しかし、政府は、海賊対処に必要な巡視船の予算を補正予算にも計上せず、海上保安庁は、予算要求すらしていないのであります。

 一方、自衛隊の方は、本来任務は我が国の防衛、安全保障であるはずなのに、国会の承認もなしにソマリア海賊対処に出かけているのであります。自衛隊の本来任務である我が国の安全保障は十分に確保されていると、国民が安心していると麻生総理は本当にお考えでしょうか。

 以上の認識に立ち、政府・与党の姿勢を正していくため、民主党は真摯に与党との修正協議に臨んでまいりました。その主な内容は、以下の六点であります。

 第一に、海賊対処は海上保安庁が主体的に取り組むことをより明確化するため、海上保安庁のみでは対応が困難な場合に、国土交通大臣の要請を受けて本部が対応するよう規定を整備する。

 第二に、内閣総理大臣は、第一の要請があった場合に、海賊行為に対処するため特別の必要があると認めるときに、臨時に内閣府に海賊対処本部を設置できるものとし、本部に置かれる海賊対処隊が、海賊対処実施計画に従い、海賊対処措置を実施させる。

 第三に、自衛隊の部隊が実施する海賊対処措置については、内閣総理大臣は、当該措置の実施の開始前に、国会の承認を得なければならない。また、実施計画の決定または変更があった場合及び海賊対処措置が終了した場合には、遅滞なく国会に報告をしなければならない。

 第四に、政府は、公海等における海賊行為を抑止し、船舶の航行の安全を確保することが極めて重要であることにかんがみ、国際間における海上警察の連携の促進、関係諸外国の海上警察の能力の向上のための支援等、海賊行為に適切かつ効果的に対処するため必要な国際協力の推進に努める。

 第五に、政府は、速やかに、海上保安庁が海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な船舶等の装備の充実その他の海上保安庁の体制の整備の方針について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

 第六に、政府は、この法律の施行後三年を目途に、海賊対処の実施状況に照らして所要の見直しを行う。

 以上の修正を要求させていただきました。

 残念ながら、与党からは、事の本質を全く理解しない、的外れの回答しかございませんでした。

 いわく、海賊対処本部の設置は、海上保安庁と海上自衛隊との間の調整をすればよく、統制や実施基準といった実務上の理由を盾に不要である。国会の承認については、武力攻撃事態や陸上でのPKFとは異なり、他国の領域に入ることは想定していない。また、国際協力は、既に取り組んでおり、修正の必要はない。まるで木で鼻をくくったような回答でした。残念です。

 果たして、事はそれほど単純なことでございましょうか。

 政府もお認めになっていらっしゃるように、海賊対処の原則は、海上保安庁の任務であります。今、自衛隊が行っている活動は、法的な性質は行政警察的活動でございますが、これまでのPKOやインド洋での補給活動のようないわゆる後方支援や補給活動とは異なり、実際に目前の海賊に対して、必要とあらば武器の使用も辞さない、武器の使用が許されている、極めて実戦に近い対応がなされ、場合によっては当事者の殺傷に至ることも覚悟せねばならない大変に危険な活動であります。

 また、他国の領域に入って公権力を行使することはないとしながらも、金子国土交通大臣は、当該沿岸国の同意を得た場合または要請を受けた場合、公海などから海賊行為を行った者を追跡して当該沿岸国の領海内に立ち入ることは可能と答弁しており、この矛盾をどう理解すればよいのでしょうか。

 このような重い任務を現場の隊員に課すにもかかわらず、単に国会報告で事足りるという政府・与党の姿勢は、物事の本質から目をそらすに等しいものであります。

 民主党が求めた海賊対処本部の設置にせよ、国会の承認にせよ、たとえ法的な活動の性質が、警察活動である、行政警察的活動である、武力行使ではないと言いながらも、国会によるシビリアンコントロールを徹底する見地から提案しているものであり、与党の対応は、民主党が承認行為を必要とした趣旨を全く理解していただいていないのではないかと言わざるを得ません。

 国際間の協力姿勢にしても、海上保安庁による東南アジアでの海賊に対する国際協力活動の大きな成果と評価をソマリアでの国際協力体制に積極的に生かすためにも、海賊対処のための本部を設置し、我が国が持つ海賊対策のノウハウを一元的に集約し、オール・ジャパンの体制で機動的に活動することが重要なのであります。

 自衛隊の対処を安易に先行させている姿勢こそが大変な問題でございまして、与党のしゃくし定規な対応は、大きな柱としての国際協力の必要性を強調するためにあえて法律事項にした民主党の姿勢に対する本質的な理解をこれまた欠いていると言わざるを得ないのであります。

 以上、民主党は、海洋国家日本の姿勢として、政府のなし崩し的な、とにかく自衛隊を派遣すればよいのだという対応にしっかりとした歯どめをかけて、本法案が真に海賊対処に役立つように、真に海賊がいない平和な海になるように、最高、最良の修正を提案し、真摯に協議を要請し行ったにもかかわらず、与党はその本質を全く理解しないままにゼロ回答であったということに抗議の意を表するとともに、修正協議の決裂を受けて、本法案には反対せざるを得ないということを申し上げ、さらに、本法案の修正は最後までシビリアンコントロールを徹底するという観点から絶対にあきらめないということを申し添えて、反対の討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 木村勉君。

    〔木村勉君登壇〕

木村勉君 自由民主党の木村勉であります。

 私は、自由民主党及び公明党を代表して、政府提出の海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 政府案賛成の第一の理由は、海賊行為への対処は、我が国の国益にかなう、こういうことであります。

 我が国は貿易立国であり、原油の九九・六%、鉄鉱石の一〇〇%を輸入に依存しているなど、我が国の経済社会及び国民生活にとって、輸出入の安定性は極めて重要であり、重量ベースで輸出入の九九・七%を分担する海上交通の安全確保は必要不可欠であります。

 このため、海上交通の要衝であるソマリア沖・アデン湾において多数発生している極めて凶悪な海賊被害に対し速やかに対策を講じることは、我が国の国益にかなうものと確信をしているものであります。

 第二の理由は、海賊行為への対処は、国際社会の一致した要請であり、これに対して我が国が積極的に貢献すべきであるということであります。

 国連海洋法条約では、すべての国に対して、最大限に可能な範囲で海賊行為の抑止に協力するという義務を課しております。

 また、昨年六月以降、四回の国連安保理決議が採択され、各国に軍艦を派遣することを要請しており、既に、アメリカ、ドイツ、インド、中国、韓国等二十カ国以上が艦船を派遣しております。

 さらに、国連や、国際海事機関、IMOの主導により、周辺諸国の取り締まり能力向上に向けた支援等についての議論が行われております。

 このように、まさに世界各国が海賊行為を人類共通の敵である犯罪行為としてさまざまな取り組みを行っているところであり、我が国としてもこれに積極的に貢献すべきものであると思うのであります。

 第三に、我が国においても、本年三月十三日、内閣総理大臣の指示のもと、防衛大臣が応急措置として海上警備行動を発令し、現在、派遣された二隻の護衛艦によって、我が国に関係する船舶のエスコートが実施されております。

 これは、いつ重大な被害が発生しないとも限らない状況を受け、また、法案の成立には一定の時間を要することを踏まえた英断でありますが、海賊事案に、より適切かつ効果的に対処する観点からは、保護対象が我が国に関係する船舶に限られている点や武器使用権限などの面で必ずしも十分ではないといった課題があります。

 一日も早く本法案を成立させ、発生している海賊行為の実態を踏まえ、これに適切かつ効果的に対処するために必要な規定を整備し、政府が万全の体制で海賊対処に取り組むことができるようにしなければならないのであります。

 ソマリア沖で海賊行為が頻発する状況の背景には、ソマリアでは、法執行機関が全く機能していないことや、社会インフラが破壊され、若年層の失業率が高いという事情もあると言われております。

 したがいまして、政府に対して、本法案の規定に基づく海賊行為への対処を着実に実施することに加えて、ソマリア沖における海賊問題の根本的解決のために、周辺国家の取り締まり能力向上の支援やソマリア情勢の安定化にも積極的に取り組むことを強く要請して、賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、海賊対処法案に反対の討論を行います。(拍手)

 本法案は、国連海洋法条約に則して、海上保安庁が国籍を問わず海賊行為を処罰し対処することを前面に出していますが、その核心は、自衛隊に海賊対処行動という新たな海外任務を与えることにあります。

 しかし、軍隊の派遣では、ソマリア沖の海賊問題は解決できません。

 昨年から、各国がソマリア沖に軍隊を派遣し、政府も自衛隊を派遣しましたが、海賊事件は減るどころか、逆にふえています。海賊が広域化し、軍隊が活動していない海域に活動拠点を移しているからです。まさにイタチごっこになっているのです。軍隊の活動で問題が解決できないことは、現地の米軍司令官自身が認めています。

 ソマリアの内戦と貧困という陸の問題が解決しない限り、海賊という海の問題も解決しないことは、国際社会の共通認識です。

 ソマリアでは、一九九一年以降、内戦状態が続き、国連PKO初の平和執行部隊の派遣、対テロ戦争の名による米軍の空爆と軍事介入が行われてきました。外国漁船による違法操業、有毒廃棄物の不法投棄が横行し、これが元漁民を海賊行為に走らせたと言われています。これまでの国際社会の関与のあり方が問われているのであります。

 ソマリア暫定連邦政府のアハメド大統領は、ソマリアの治安部隊を確立するための国際援助があれば海賊の攻撃の四分の三は防止できると発言しています。

 憲法九条を持つ日本がやるべきは、自衛隊の派遣ではなく、こうした現地ソマリアと周辺国の海上警察力の強化のための技術援助、財政援助であり、根本問題であるソマリアの内戦終結と貧困の解決のための外交努力と民生支援であります。

 政府は、自衛隊が行う海賊対処は警察活動だと言いますが、現地では、米軍を初め各国軍隊と協力して任務を遂行するとしています。

 米軍は、自衛隊が活動するソマリア沖・アデン湾で海賊対処だけを行っているわけではありません。対テロ戦争やソマリア本土への空爆など、さまざまな軍事作戦を混然一体となって進めています。その米軍に、海上自衛隊のP3C哨戒機や護衛艦が情報提供を行えば、米軍の軍事作戦全体を支援することになるのは明らかです。

 しかも、政府が自衛隊派遣の根拠の一つとする国連安保理決議は、アメリカ主導で採択されたものであり、国連憲章第七章に言及し、ソマリア空爆を含むあらゆる必要な措置をとる権限まで与えているのです。現に、アメリカは海賊が陸上の拠点から海に出てきた時点をとって攻撃することを検討していると報じられています。軍隊による海賊対処は、さらなる情勢の悪化を招きかねません。

 国際海事局は、軍事介入は海賊の凶暴化を招きかねないと警告を発してきましたが、米軍が人質救出のために海賊三人を射殺したことに対し、海賊が報復を宣言する事態になっています。

 さらに、アルカイダ系組織がソマリア沖の各国軍艦に対する攻撃を呼びかけ、アメリカは、ソマリアのイスラム系過激派組織の訓練キャンプに対する軍事攻撃を検討しています。

 力でねじ伏せるやり方は事態を悪化させるだけです。自衛隊の派遣は直ちに中止すべきです。

 武器使用も重大です。

 本法案は、抵抗、逃亡する海賊への危害射撃、海賊行為を制止するための船体射撃を規定しています。しかし、ほとんどの場合、海賊船と漁船は同じに見えると米海軍の専門家も指摘しています。遠く離れたソマリア沖で、自衛隊が戦後初めて人を殺傷しかねないのであります。

 以上、海賊対処を口実に、自衛隊の海外での武力行使、海外派兵恒久法に道を開く本法案はきっぱり廃案にするよう求め、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案に対し、反対の討論を行います。(拍手)

 私どもは、ソマリア沖・アデン湾近辺で、この間展開されている各国の軍を中心とした海賊取り締まり行為が、むしろソマリア沖での海の平和と安全の確保に向けた本質的な解決をおくらせているのではないかと危惧するものです。海賊の出没海域の拡散、インド海軍によるタイ漁船撃沈事件、米軍の海賊犯射殺に対する報復宣言など、新たな問題を生起させ、緊張感を高めているという側面を見逃すことができません。

 この現実を見ても、自衛隊をソマリア沖に派遣し海賊対策を行うことは妥当ではないと申し上げなくてはなりません。海上の治安維持には、海上警察をもって対処すべきです。平和憲法のもと、日本では、これまで、防衛力と警察力を厳格に分離し、海上の治安は、国土交通省のもとに海上保安庁を置いて、これに当たらせてまいりました。今こそ、そうした立場を生かした海上保安庁による貢献がまず何より求められております。

 そもそも、自衛隊による海上警備行動は、海上保安庁による対処が困難である場合に限られます。今回、この点について厳密な検証を行わず、まず海上自衛隊の派遣ありきで決められました。また、本来、海上警備行動は領海内の一時的な活動を想定した規定であり、遠く離れたアデン湾まで自衛隊を期限を定めず派遣することは脱法的運用と言わざるを得ません。

 本法案は、海賊対策を第一義的に海上保安庁の任務としながら、しかし、直ちに海賊対処行動を発令し自衛隊が出動できる構造となっています。国会の事前の承認の規定もなく、海賊行為の犯罪構成要件もあいまいです。何より、これまで認められなかった任務遂行のための武器使用が可能となり、自衛隊の海外での武器使用基準が大きく緩和されます。このような恒久法を拙速に制定することは断じて許されません。

 近年、ソマリア沖・アデン湾での海賊事案の急増は、ソマリアの事実上の無政府状態や経済的困窮、一昨年来のイスラム勢力に対する米国の対テロ作戦の拡大等の背景があります。こうした中で、軍事力による海賊対策、制圧は、もう、限界というより誤ったものであり、ソマリア問題の政治的解決とはなり得ません。

 一方、日本は、東南アジアにおける海賊問題について、ReCAAPに基づく情報共有センターの設立にリーダーシップを発揮し、海上保安庁による訓練など積極的な貢献を行い、大きな成果を上げてまいりました。海賊対策は、軍隊による制圧よりも、こうしたソフトパワーによる対処が最も効果的であり、それはソマリア沖も例外ではありません。

 以上、本法案の問題点を指摘いたしました。本法案は廃案とし、海上警備行動として出した護衛艦には日本への帰国を命じた上で、まず海上保安庁を派遣し、現地の実態を把握しつつ、日本が行う海賊対策の基本方針については、海上保安庁を軸に、その体制整備も含めて早急に検討することが必要であることを申し上げ、私の反対討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 下地幹郎君。

    〔下地幹郎君登壇〕

下地幹郎君 私は、国民新党・大地・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 近年、海賊事案が多発しており、航行する船舶が常に危険にさらされ、海上輸送にも大きな影響を与えています。海賊・テロ特別委員会においても、日本船長協会など、まさに現場の意見を聴取しました。海賊対処の重要性は全国民が共有しているところであり、政府は一丸となって海賊問題に当たる必要があります。

 私ども国民新党も、ソマリア沖での海賊対処を行わなければならないということには賛成であります。当面の暫定的な措置として、海上自衛隊の派遣もやむを得ないと考えております。

 ただし、本法案を成立させることには、以下の理由で反対いたします。

 まず、この海賊対処法案を成立させるに当たって、三つの理由から、海上保安庁と海上自衛隊が共同して海賊に対処すべきことを申し上げます。

 一つ目には、海賊対処は、原則として海上保安庁が行うべきです。

 二つ目には、当委員会の審議でも繰り返し質疑いたしましたが、海上保安庁には、遠洋航海が可能で、装備面からもソマリア沖の海賊に十分対応でき、能力的にも何の問題のない巡視船「しきしま」六千五百トンがあります。政府側も、巡視船「しきしま」ならばソマリア沖での実践的な業務は可能と説明しています。

 三つ目には、当委員会の法制局長官の答弁で、海上警備行動でも、本法案が成立した後も、法律上、海上保安庁と海上自衛隊が共同して対処することは何ら問題ないことが判明しました。

 以上の三つから、現段階で海上保安庁と海上自衛隊は共同で任務が遂行できるはずであるし、そのことを私たちは望んでいます。

 海賊対処が緊急の国際社会の問題として起きており、本法案で、海賊取り締まりは第一義的には海上保安庁の責務である、その旨の規定がされていることを重く受けとめるならば、「しきしま」級の新規の艦船の整備にも着手し、海上における警察活動についての海上保安庁の万全の体制を整備することに政府は真っ先に取り組むべきであり、そうしたことが海上保安官のモチベーションの維持向上にもつながるはずであると思います。

 今のままの状況では、海賊取り締まりと言われるようなものに対して、永久に海上自衛隊が派遣されなければならないということになることは、国民から見ても、海上保安庁を隠れみのにして海上自衛隊を海外に派遣するというような疑問を持たれる可能性があります。

 今回、この地域へ自衛隊を派遣するということならば、本法案を恒久法とせず、自衛隊派遣の趣旨、目的をはっきりさせ、期限つきの特別措置法とする方が国民にはわかりやすいのではないでしょうか。

 第三に、自衛隊の国際貢献については、これまでの実績から国際社会の高い評価を得ているだけに、自衛隊の国際貢献のあり方は国民と正面から議論をすべきであり、このような形でのカモフラージュ的な派遣のあり方は賛成できません。

 本法案は恒久法であり、一度法律が制定された後は、国会へ事後的報告だけはするものの、何ら国民の了解なしに政府だけの判断で海賊対処のために自衛隊を派遣することができてしまいます。それだけに、本法律案は時限立法にすべきであります。

 ねじれ国会の中で、このように衆議院を慌てて通過させても、参議院の審議でも難航することは明らかであります。海洋国家日本にとって、非常に重要かつ危険な任務である海賊対処に、海上保安官と海上自衛官に気持ちよく誇りを持って取り組んでいただくためには、国会でけんか別れをするような形ではなく、国民の支持、国会の大多数の賛成をもって彼らを送り出すようにすべきであります。

 与野党が知恵を出し合い、補い合って、よりよい法律をつくることが我々国会議員に課せられた役割ではないでしょうか。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案(内閣提出)及び石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案及び石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣二階俊博君。

    〔国務大臣二階俊博君登壇〕

国務大臣(二階俊博君) エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案及び石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 我が国におけるエネルギーの供給のうち、化石燃料がその八割以上を占めており、また、そのほとんどを海外に依存しています。一方、近年、新興国の経済発展などを背景として、世界的にエネルギーの需要が増大しており、また、化石燃料の市場価格が乱高下するなど、エネルギー市場が不安定化しております。加えて、化石燃料の利用に伴って発生する温室効果ガスを削減することが重要な課題となっております。

 こうした状況下において、エネルギーを安定的かつ適切に供給するためには、資源の枯渇のおそれが少なく、環境への負荷が少ない太陽光やバイオマスといった再生可能エネルギーや原子力などを含む、非化石エネルギーの導入を一層進めることが必要であります。また、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料についても、生産設備の効率化などを通じ、有効利用を促す必要があります。

 このため、非化石エネルギーの利用を拡大するとともに、化石燃料の有効利用を促進することによって、エネルギーの安定的かつ適切な供給の確保を図るべく、両法律案を提出した次第であります。

 まず、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案の要旨を御説明申し上げます。

 本法律案では、電気やガス、石油事業者といった、我が国で使用されるエネルギーの大半を供給するエネルギー供給事業者に対して、非化石エネルギーの利用と、化石燃料の有効利用を義務づけるための措置を講じます。このため、経済産業大臣が基本的な方針を策定するとともに、エネルギー供給事業者が取り組むべき事項について、ガイドラインとなる判断基準を定めます。これらのもとで、事業者の計画的な取り組みを促し、その取り組み状況が判断基準に照らして不十分な場合には、経済産業大臣が勧告や命令をできることとします。

 この枠組みを用いて、非化石エネルギーを利用した発電の比率を一定以上に高めることなどを電気事業者に義務づけます。また、太陽光発電設備については、我が国が競争力を有し、技術革新や需要の拡大により発電コストの低下が見込まれることから、住宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力を、電気事業者が現在の二倍程度の価格で買い取ることなどを義務づけることとしております。

 次に、石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案の要旨を御説明申し上げます。

 本法律案では、従来の石油代替施策を見直し、化石燃料に代替する非化石エネルギーを研究開発や導入促進などの対象とすることとします。これに伴い、本法の題名及び目的を改め、「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進」とあるところを、「非化石エネルギーの開発及び導入の促進」とします。

 以上が、両法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案(内閣提出)及び石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。北神圭朗君。

    〔北神圭朗君登壇〕

北神圭朗君 民主党の北神圭朗でございます。

 私は、ただいま議題となりました、内閣提出のいわゆるエネルギー供給構造高度化法案について、民主党・無所属クラブを代表して、関係諸大臣に質問をいたします。(拍手)

 本法案で注目されるのは、どうも、風の便りによりますと、太陽光パネルの普及を目的とする固定価格買い取り制度の導入のようであります。

 これは、太陽光パネルが高い、二百五十万円もするのでなかなか手が届かない、そこで、太陽光電力のうち、使い切れない分を電力会社に買わせることによって、買い手の負担を事後的に軽くしてあげる、そのかわり、電力会社は買い取り費用を電気料金に転嫁して、国民に負担をしていただく、こういう仕掛けであります。

 これは、すべて風の便りで知りました。というのも、法案に何も書いていないからであります。条文であるはずの第五条を見ても、固定価格買い取り制度のコの字もありません。ましてや、この制度によって、電力会社が幾らで余剰電力を買い取って、国民の負担がどのくらいふえるのかも全く書いておりません。

 しかし、電気料金というのは、生活を営む上で避けることのできない公共料金であり、税金に準ずるものでございます。税金の場合は、国民の財産を強制的に徴収することから、当然、租税法律主義という原則があります。公共料金についても、実際にこれを負担する身になれば、基本的には、こうした考え方に準じて取り扱うべきだと考えます。

 ところが、本法案は、買い取り価格を初め、何とすべてが大臣告示に白紙委任。これは、本制度が電力会社の経営に介入をし、国民に負担を強いるものであることを踏まえると、透明性並びに予測可能性の視点からして、ゆゆしき問題ではないでしょうか。

 役所の内々の説明では、電気料金が月百円ほどふえるにすぎないということでございます。しかし、大臣告示というのは、国会の審議を経ずに、幾らでも変更できます。会社の仕入れに国家が介入し、国民負担をふやすことにつながることを、ここまで、丸々行政の裁量にゆだねる仕組みで、本当に国会の納得を得られると思っているのでしょうか。大臣、御見解を伺いたいと思います。あわせて、法制的見解を官房長官に伺います。

 やっぱり、一般的な白紙委任はあり得ないのではないでしょうか。少なくとも、委任の範囲、基準、内容が法律に規定されなければ、歯どめがかからないじゃないですか。このままでは、電気料金を払う国民の立場からして、自分たちの負担がどこまでふえていくのか、甚だ不安であります。大臣と官房長官の御見解をお聞きします。

 逆に言えば、何にももったいぶらずに、具体的に固定価格買い取り制度を法律に規定すればいいじゃないか。それをあえてしない理由は一体何なのか。私にはさっぱりわからないので、大臣に御教示願いたいと思います。

 なお、大臣、御参考までに、この買い取り制度の本家であるドイツの例を少し調べたら、買い取り価格を初め、具体的な要件がきめ細かく法律に規定してありました。

 また、そもそも、電力行政については、平成十一年に、事前介入的・裁量型行政から事後監視的・ルール遵守型行政に大きくかじを切ったはずであります。にもかかわらず、大臣は、ことしの初めに、石油高騰への対応として、これまでの燃料費調整制度のルールを恣意的に破った、そして、不透明なる行政指導によって、突然、電気料金の上げ幅を圧縮しました。今回の白紙委任についても、告示による裁量型行政への逆戻りではないのか。大臣はどうお考えなのか、教えていただきたいと思います。

 他方、本法案では、ほかの風力、バイオマス等のエネルギーの利用についても、電力会社等に義務づけることができるようになっています。そこでお聞きしたいのは、太陽光の買い取り制度以外で、公共料金引き上げによって国民負担をふやすことは考えておられるのか。このような漠然とした条文では全く見当がつきません。大臣の御説明を求めます。

 もちろん、太陽光エネルギーの促進自体、私自身、環境面、何よりも国家のエネルギー戦略、また産業振興の観点からも、大いに賛成でございます。要は、どの政策手段、あるいは、それらの政策手段のどのような組み合わせが最も適当なのか、分析検討をしているのかが問題でございます。

 その点、私は、一つの判断基準として、できるだけ市場の機能をゆがめないものが適当と考えますが、大臣の見解を聞きたいと思います。

 これまでの政策手法としては、政府は、電力会社等に対し、太陽光を含む再生可能エネルギー利用の大枠を義務づけてきました。しかし、個別のエネルギーをどの程度利用するかについては、会社の自主性に任せてきたところであります。また、太陽光パネルを自宅に設置する個人に対して、国から一定の補助もしてきました。さらには、本年度から、太陽光パネルの設置について、住宅ローン減税の対象ともしております。四つ目の政策手法としては、NEDOのサンシャイン計画にも象徴されるように、技術革新への研究開発支援も着実に推進してきたところでございます。

 こうした既存の有効な手法がさまざまありながら、今回、あえて固定価格買い取り制度に踏み切った理由は何なのか。特に、大臣の所管省庁である経済産業省の総合資源エネルギー調査会でさえも、昨年九月、緊急提言において、ドイツ型買い取り制度については、電気料金の恒常的な値上げにつながるなどといった問題点を指摘し、消極的な姿勢を示しているのであります。

 いずれにせよ、これらの政策の利点や欠点を分析した上で、なぜ、既存の政策を拡充するのではなくて、新たに買い取り制度をそんなにも導入したいのか、大臣の考え方を教えていただきたいと思います。

 というのも、太陽光パネルの普及が目的であるならば、素直に考えれば、パネルの買い手に直接補助してあげるのが一番わかりやすいんです。何にもややこしいことをする必要はありません。政策というものは、政策目的に直結する手段が最も効果的かつ効率的であります。

 また、パネルを買えるのは、どちらかというと裕福な方々であります。買い取り制度では、パネルを買う一部の人たちのために、パネルを購入しない、あるいは購入することができない多くの方々が負担をする仕組みでございます。ここに、自然、逆進性の問題が発生するのであります。

 一方で、現行の補助金については、その財源は電力会社等企業に課せられている税金であります。逆進性の観点から、どちらがよりすぐれているかは火を見るよりも明らかでございます。

 大臣、今回、買い取り制度を導入するに当たって、こうした逆進性の分析をしているのでしょうか。また、未知数である買い取り制度を導入するかわりに、既に効果を発揮している補助金方式の拡充について検討したのでしょうか。

 大体、この補助金については、平成六年に導入してから大変な成果を上げているのにもかかわらず、平成十七年にはなぜか廃止をしている。廃止をした理由は一体何なのか。また、その後、これもまた今年度から急に補助金制度を復活させたけれども、その理由もあわせて教えていただきたいと思います。

 もっと言えば、エネルギー戦略は、中長期的な視点に立って、一貫性、継続性のある対策が求められるはずではないでしょうか。廃止しては復活、と思えば、今度は中途半端にドイツのまねごとをしてみる。こんなにころころ変わっていていいのか。大臣の見解はいかがでしょうか。

 以上、本法案は、固定価格買い取り制度を中心に、法律にしっかりと明記すべきことが明記されていないことや、既存の政策手段との利害得失について検討しているのかどうか、たくさんの疑問が残ります。

 全体の印象としては、政府の太陽光発電に対する政策、また電力行政の基本的なあり方が今回の法案で大きく変わったように見受けられます。

 もちろん、変わること自体悪いことではないですよ。与謝野大臣がたびたび発言しているように、小泉・竹中流小さな政府をしっかりと反省していただくことは、これは大いにやっていただいて結構であります。確かに、エネルギー自給率が極めて低い我が国において、太陽光発電も含めた総合的なエネルギー戦略は、政府主導で強力に推進していくべきであります。

 しかし、それにしても、我が国は、政権が変わらないまま、米国流市場原理から米国流グリーン・ニューディール、ドイツ流固定価格へと、心もとなく移ろい行く中で、具体的な政策や行政手法が、極端から極端、愚策から愚策、昔の革命言葉でいえば、右翼日和見主義から左翼冒険主義にまで大幅にぶれてしまうようでは、これはいささか困った次第でございます。

 結びに当たりまして、政府のエネルギー・産業・環境政策が、諸外国の流行に翻弄されるのではなくて、むしろ、国益という不易なる北極星をしっかりと見据えて推進していただくことを強く求めつつ、私の代表質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣二階俊博君登壇〕

国務大臣(二階俊博君) 北神議員にお答えをいたします。

 太陽光発電の新たな買い取り制度について、私どもとしては、法律において必要不可欠な重要部分を定めており、他の手段との比較は、当然のことながら、十分に行った上で判断したものであることをまず申し上げておきたいと思います。

 以下、順次お答えをいたします。

 最初に、制度の内容を大臣告示に白紙委任しているのではないか、国民負担の透明性に問題があるのではないかとの御指摘がありました。

 本法案の義務内容に関しては、事業者が非化石エネルギーの利用目標を達成すべきことや、太陽光発電など再生可能エネルギー源の導入に要する費用を関係者で負担すべきことなどの重要な点を条文上に明記をしております。

 新たな買い取り制度の詳細について法律に書いていないのは白紙委任をしているとか、御指摘のように、もったいぶっているからではないかというようなことがありましたが、これはもったいぶっているわけではなくて、制度の詳細については、経済的、技術的な状況を迅速に反映できるように、行政に委任することが適当と考えているからであります。

 大臣告示の内容については、今後の審議の中で考え方をお示しするとともに、各分野の専門家等が参加する審議会での議論やパブリックコメントにより、国民負担の程度の透明性を確保していきます。

 また、国民の御負担は電気料金に上乗せされることになりますが、これについては、本法案や電気事業法の定めるところによることは当然のことであります。

 次に、裁量型行政への逆戻りではないかとの御指摘がありました。

 事業者に対する義務内容については、先ほど申し上げたとおり、透明性を確保しながら、告示において明確に定めていくことにしており、事業者の予見可能性は確保されるものと考えております。裁量型行政との批判は当たらないと考えております。

 次に、買い取り制度の対象を拡大する考えがあるかとのお尋ねがありました。

 風力発電については、既に市場でコスト競争力があり、バイオマスについては、収集、運搬にかかるコストが大きいため、買い取り義務の対象としても短期的なコストの低下が期待できません。これらを踏まえ、国民の御負担をできるだけ抑える観点からも、対象を次々に拡大するのではなく、今後三年ないし五年の間にシステム価格の半減を目指す太陽光発電に限ることが適当と考えております。

 次に、太陽光エネルギーの推進政策について市場機能をゆがめない手段が適当との御指摘がありました。

 市場機能の活用が重要なことは言うまでもありません。太陽光発電は、現在、他の新エネルギーに比べてもコストが高い状況ですが、一定の政策支援を行うことで、今後、コストが大幅に低下し、自律的に市場が拡大していくことが期待されます。新たな買い取り制度の導入は、市場の機能を最小限の形で補完しながら、太陽光発電を短期間で拡大する方策であると考えております。

 次に、太陽光発電の新たな買い取り制度の導入に踏み切った理由についてお尋ねがありました。

 これまでの補助金、税制などの導入支援措置や、RPS制度といった規制的措置は効果があり、それぞれしっかりと進めてまいります。

 太陽光発電の推進には、エネルギー源の多様化や産業競争力の強化、さらには地球温暖化問題への貢献などの意義があります。太陽光発電の一層の推進を図るため、私どもは、ドイツのをまねるだけではなくて、さまざまな施策の利点、欠点を分析した上で、我が国の実情に照らしても最も適切な買い取り制度を創設することといたしました。これまでの施策と総合的に組み合わせることにより、新しい日本型の促進策を構築してまいりたいと考えております。

 次に、負担転嫁が逆進的ではないかとのお尋ねがありました。

 今や国民的な課題となりました太陽光発電の導入促進のために、各党からも強いこのことに対する推進の御意見をちょうだいしております。国民の皆様に広く薄く御負担をいただくこと、ここが問題でありますが、よく御理解をいただき、御協力をお願いしていきたいと考えております。

 国民負担の程度については、よく分析をし、本制度の対象を太陽光発電の余剰電力に限定、買い取り期間を十年程度に設定といった工夫により、平均的な御家庭での毎月の負担は、数十円から最大でも百円程度に抑えたいと考えております。

 次に、平成十七年度の補助事業の終了及び昨年の補助事業の創設の理由についてのお尋ねがありました。

 前回の補助事業は、太陽光発電のコストを六分の一に低減し、導入量を六十倍に拡大したため、事業目的を達したものとして終了をいたしました。その後、太陽光発電については、エネルギー源の多様化や環境技術の活用といった観点からその導入の必要性が高まり、昨年、国として新たに高い導入目標を掲げることとなったため、二十年度補正予算で新たな補助事業を創設した次第であります。

 次に、太陽光発電を初めエネルギー政策に関する政策の一貫性についてのお尋ねがありました。

 経済産業省は、これまでも一貫して太陽光発電の導入拡大に向けて取り組んでまいりました。その結果、導入量、生産量、技術力が世界トップクラスになるなど、成果を上げてきたと考えております。愚策という指摘は全く当たらないと考えております。

 今後とも、全くぶれることなく、エネルギー政策基本法の理念のもと、あらゆる政策を総動員して、太陽光発電の導入拡大を積極的に進めてまいりたいと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣河村建夫君登壇〕

国務大臣(河村建夫君) 北神議員の御質問にお答えいたします。

 行政の裁量にゆだね過ぎではないか、委任の程度等について法律に示すべきではないかとの御指摘がございました。

 エネルギー供給事業者の判断の基準に定めるべき事項や勧告及び命令をする条件など、経済産業大臣の具体的な権限となる重要な事項については、条文上に明記をされております。

 経済産業大臣は法律の範囲内において具体的な制度の詳細を決定することとなるため、行政の裁量が必要以上に拡大することはないと考えております。

 以上でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       経済産業大臣  二階 俊博君

       国務大臣  金子 一義君

       国務大臣  河村 建夫君

       国務大臣  与謝野 馨君

 出席副大臣

       経済産業副大臣  吉川 貴盛君


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