衆議院

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第28号 平成21年4月28日(火曜日)

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平成二十一年四月二十八日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十九号

  平成二十一年四月二十八日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 議員請暇の件

 公共サービス基本法案(総務委員長提出)

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 議員請暇の件

議長(河野洋平君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。

 尾身幸次君から、四月二十九日から五月六日まで八日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

谷公一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 総務委員長提出、公共サービス基本法案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 谷公一君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 公共サービス基本法案(総務委員長提出)

議長(河野洋平君) 公共サービス基本法案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。総務委員長赤松正雄君。

    ―――――――――――――

 公共サービス基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤松正雄君登壇〕

赤松正雄君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 本案は、公共サービスが国民生活の基盤となるものであることにかんがみ、公共サービスに関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、公共サービスに関する施策の基本となる事項を定めることにより、公共サービスに関する施策を推進し、もって国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与しようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、公共サービスの実施等は、安全かつ良質なサービスの確実、効率的かつ適正な実施、社会経済情勢の変化に伴い多様化する国民の需要への的確な対応、公共サービスについての国民の自主的かつ合理的な選択の機会の確保等が国民の権利であることが尊重され、国民が健全な生活環境の中で日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようにすることを基本として行われなければならないものとしております。

 第二に、国及び地方公共団体の責務並びに公共サービスの実施に従事する者の責務を定めることとしております。

 第三に、公共サービスを委託した場合の役割分担と責任の明確化、国民の意見の反映等、公共サービスの実施に関する配慮及び公共サービスの実施に従事する者の労働環境の整備を、国及び地方公共団体の基本的施策として定めることとしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 本案は、本日総務委員会におきまして、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

谷公一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 谷公一君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長今津寛君。

    ―――――――――――――

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔今津寛君登壇〕

今津寛君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、防衛省の所掌事務をより適切に遂行し得る体制を整備するため、防衛省設置法等の一部を改正するものであり、その主な内容は、

 第一に、防衛参事官を廃止するとともに、防衛大臣補佐官及び防衛会議を新設すること、

 第二に、陸上自衛隊の学校の生徒及び自衛官候補生の身分を新設すること、

 第三に、自衛官の勤務延長及び再任用に係る期間を伸長すること、

 第四に、陸上自衛隊の部隊として第十五旅団を新編すること、

 第五に、自衛官の定数及び即応予備自衛官の員数を改めること

等であります。

 本案は、去る二月十七日本院に提出され、四月十七日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日浜田防衛大臣から提案理由の説明を聴取し、二十三日参考人から意見を聴取いたしました。次いで、本二十八日政府に対する質疑を行い、質疑終局後、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(河野洋平君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。

    〔鳩山由紀夫君登壇〕

鳩山由紀夫君 民主党幹事長の鳩山由紀夫です。

 平成二十一年度の補正予算について、麻生総理に質問をいたします。(拍手)

 冒頭、豚インフルエンザ対策でありますが、本日、WHOが初めて警戒レベルを4に引き上げました。民主党も全力を挙げて対策に取り組みます。政府も、国民の安全を第一に、迅速的確な情報提供は言うまでもありませんが、渡航者対策、ワクチン対策も含め、スピード感を持って万全を期すことを強く要請をいたします。

 さて、麻生総理に申し上げます。

 総理の言葉をおかりすれば、今度の補正は四段目のロケットとなります。しかし、昨年九月の第一次補正の一段目は飛ばずに失敗、二段目の、ことし一月の第二次補正はタイミングがおくれて墜落、三月末に成立したばかりの今年度当初予算は燃料切れで目標に届かず、そして今回の補正予算は方向性が狂って暴発、これが、総理の景気・経済対策に対する私の率直な感想であります。

 なぜ政府の景気対策がこんなにきかないのでしょうか。それは、そもそも自公連立内閣の対応の失敗によって経済危機を加速させたという認識や反省がないからであり、処方せんを完全に間違えているからであります。

 では、この補正予算がいかにでたらめなものか、一説には、ゴールキーパーなしのサッカーゲームだなどとやゆされていますが、具体的にお示しをいたします。

 一口に言えば、百年に一度の危機といいながら、対策は百年続いている官僚機構に任せっ切り、数十年続いている、族議員と官僚の既得権である税金の無駄遣いを繰り返し、膨大な借金で歳出規模を膨らませて、あとは消費税の増税で国民に負担を押しつけるという無責任なものであります。

 そのでたらめぶりの第一の特徴は、安心も安定も得られないことであります。

 例えば、三歳から五歳のお子さんのいる家庭に限り、一回限り三万六千円を支給するという子育て応援特別手当であります。たった一回お金を配ることで、子育て支援、少子化対策になると本気で思っておられるのでしょうか。対象から外れる年齢のお子さんのいる家庭は支援する必要はないとでも言うのでしょうか。何の哲学もないこのばらまきも、結局は公明党対策の党利党略と言うのでしょうか。はっきりお答えを願いたい。

 介護労働者の待遇改善も、民主党の指摘によって、慌てて月一万五千円の賃金アップを目指すと言いますが、これも三年間だけのものであります。それでは、三年後には賃金を引き下げるのですか。はっきりお答えを願います。

 医師の確保も、五年間だけの期間限定の事業であります。五年たてば、今の医師不足が解消し、救急医療、小児科、産婦人科、地域医療は対策を講じる必要がなくなり、万全というのが政府の公式見解でありますか。この予算で医療をどうしたいのか、明確にお示しください。

 雇用対策も同じであります。手当つきの職業訓練制度も、基金の期限をもって終わりであります。雇用のセーフティーネットの体系をどう築くのか、明快に説明をしてください。

 民主党の政策はすべて恒久的なものでありますが、政府・与党が後から一部を猿まねした政策は、どれも臨時的、その場しのぎの場当たりであり、民主党案とは全く似て非なるものであります。

 今、派遣契約を中途解約される派遣切り、学生が採用内定を取り消される内定切り、育児休業を理由に解雇などの不利益扱いを受ける育休切り、要介護認定基準の変更により受けられる介護サービスが減らされる介護切り、この四つの切り捨てが行われようとしています。

 弱い立場の人を次々と切り捨て、官僚の天下りや族議員の利権を守り、借金漬けでこの国をつぶすのが麻生内閣、自公政権なんでしょうか。国民に明快に説明をしてください。

 また、五千万件の消えた年金のうち、千三十万人はほぼ持ち主が特定されました。既に、国民の十人に一人の年金記録が間違っていたことになります。とんでもないことでありますが、ただ、だれ一人処分もされていないのはなぜですか。なぜ、民主党の主張するように、国家プロジェクトで一気に解決を図らないのでしょうか。

 また、社保庁は、ついに百十八万人の無年金者の存在をようやく認めましたが、既に、千人を超える方々が、社保庁のミスなどで、本当は年金を受給できたのに無年金とされていることが判明をいたしました。しかし、実態はまだやみの中であります。早く実態調査をすべきでありますが、いかがでしょうか。年金問題を放置しておいて、安心も安定もあるはずがないじゃありませんか。

 一回こっきりの定額給付金と追加の子育て手当、恒久的な無料化ではなく、ETCをつけた自家用車だけの二年限りの高速道路料金の引き下げ、三年間だけの求職者支援、これで本当に国民が安心できるとお考えなのですか。その先を考えれば、今よりももっと不安になるのは当然ではありませんか。

 第二のでたらめは、財政と増税の問題です。

 官僚に頼り切りの麻生総理は、現在の予算に潜む税金の無駄遣いには手をつける意思もありません。補正の規模は十兆円と伺っていましたが、翌日には十五兆。役人からは、上司から何でもつけてやるから持ってこいと言われ、持っていったら予算づけされたとの声が聞こえてまいりました。こんなばかげた話を許していいんですか、皆さん。

 例えば、アニメの殿堂。総理のアニメ好きは存じておりますが、なぜ、百十七億円も投じて巨大国営漫画喫茶をつくり、独立行政法人を焼け太りさせる必要があるんでしょうか。

 また、一台約七十万円もする電子黒板を全小中学校に購入させる必要があるのでしょうか。ほとんどの小中学校にもう既にコンピューター室があるにもかかわらず、なぜ二百万台のパソコンを新たに購入させるのでしょうか。

 さらには、各都道府県に産学官連携と称して十五億円もの箱物をつくる予算に六百九十五億円。既に同様の箱物は各地に存在をしていることは御案内のとおりです。これも天下り機構への補助金ではありませんか。

 こんな古い供給者の論理に立った箱物やハードはやめて、年金や医療や母子世帯など、人を大切にする予算に変えていこうではありませんか。

 民主党の調査によって、公益法人など約四千七百の法人に約二万六千人もの国家公務員が天下り、これらの団体に約十二兆六千億円もの莫大な税金が流されていることがわかりました。随意契約は何と五兆七千億円にもなります。

 来年から、政府は、官民人材交流センター、すなわち天下りバンクで一元的に官僚の天下りを進めるといいます。

 こんな税金の無駄遣いをそのまま放置して、なぜ国債を発行するのか、なぜ消費税率を上げるのか。自民党、公明党そして官僚の皆さん以外には、国民だれ一人として理解できるはずはありません。借金を重ねようとしている麻生総理は、この場で国民に説明をする責任があります。

 私たち民主党は、ひもつき補助金、天下り、特別会計、官製談合、随意契約といった仕組み化された無駄遣いを一掃してまいります。

 今回の補正予算の結果、今年度の一般会計の規模は百兆円を超えると言われています。来年も、四十兆円をはるかに超える借金を続けるのでしょうか。税収に応じた水準まで戻すとすれば、国の支出を十兆円以上削減し、極めて深刻なデフレ予算となります。

 さらに最悪のシナリオが消費税増税であります。国債償還にも財源が要るとなれば、社会保障財源の確保とあわせて二〇一一年に引き上げると総理が言う消費税の税率は何%になるんでしょうか。税金の無駄遣いによる財政垂れ流しを消費税増税で賄うのでしょうか。

 そして、地方はどうなるのでしょうか。臨時の交付金をもらい、追加の事業費の裏負担分をことしは九割まで国が面倒を見るとしても、来年はどうなるんですか。国の財政が破綻すれば、地方は連鎖倒産するしかありません。地方財政の展望を示してください。

 加えて、平成二十一年度当初予算は四十六兆円の税収が前提ですが、昨日、政府自身が、今年度の成長率が政府の当初見込みと異なりマイナス三・三%へと落ち込むことを発表し、それによって税収も大幅に減ることが予想されております。

 総理は、国債の増発がさらに必要なことを隠して選挙をやろうとしているんじゃありませんか。税収入の落ち込みは、地方税収と交付税収入の落ち込みも意味するわけであります。麻生内閣、自公政権は、二重三重の粉飾を行おうとしています。この事実を国民に何と説明するんでしょうか。

 今年度、来年度、再来年度の財政の展望と、消費税増税の規模と使い道をはっきり国民に示してください。

 今実施すべき経済対策は、家計が自由に使えるお金をふやした上で、セーフティーネットを抜本的に強化して、国民が安心してお金を使える環境を整え、内需を拡大し、新しい産業、安定した雇用の創出に結びつけることであります。

 民主党は、政府に先んじて、四月八日に経済対策を発表いたしました。

 具体的には、年三十一万二千円の子ども手当の支給、二兆五千億円の減税となる道路特定財源の暫定税率廃止などで家計の可処分所得をふやし、そして、介護労働者の待遇改善や医師不足に対する抜本対策、就職支援策などを恒久的な政策として実施し、新しい産業、雇用を創出いたします。高校の無償化、奨学金の拡充など、あすの日本を支える子供たちの教育環境の充実を具体的に進めてまいります。

 民主党は、これらの対策をマニフェストで示した工程表を前倒しするとともに、追加の対策を加えて行います。したがって、短期的には景気対策にも効果を発揮し、中期的にも膨大な財政負担とはなりません。その財源は、安易に借金に依存することなく、税金の無駄遣いを徹底的に根絶し、特別会計、独立行政法人や公益法人に眠る埋蔵金などを活用いたします。だから、民主党は、政権一期目に消費税の増税などは全く必要ないと申し上げているのであります。

 麻生自公政権の経済対策は、責任感がある者ならば到底賛成できる内容ではなく、この四段ロケットで経済と生活がよくなるなどというのは真っ赤なうそであります。

 ここで一つだけ、北方領土に関する総理の基本姿勢を伺わなければなりません。

 谷内政府代表が、私は三・五島でもいいではないかと考えている、面積を折半すると実質は四島返還になると発言したと報道されました。国益にかかわる事柄での誤解を招く発言は取り返しがつかず、外交官としてまことに失格であります。

 しかし、実は総理も、外相時代の二〇〇六年、択捉島の二五%を残りの三島にくっつけるとちょうどフィフティー・フィフティーくらいの比率になると国会で答弁をし、また、ことし二月の日ロ首脳会談の後に、ロシアは二島、日本は四島では進展をしないとして、新たな独創的で型にはまらないアプローチを確認したと言われました。

 すなわち、谷内政府代表の発言の背景には、総理の意向があることは明々白々であります。来月にはプーチン首相が来日いたしますが、先に譲歩の姿を見せたら、交渉は不利になるのは当たり前じゃありませんか。

 谷内氏の処分を含めて、三・五島で平和条約を結ぶことはあり得るのかあり得ないのか、総理の明確な答弁を求めてまいります。

 さて、政権交代目前に小沢代表の秘書が逮捕され、政権交代を求める多くの国民の皆さんに心配をおかけしております。

 しかし、この問題については、検察OBですら、政治資金規正法に違反していないのではないか、これを違反とするなら自民党の場合はどうなのかなど、今回の捜査には大きな疑問符が提起されているのであります。

 メディアはさまざまな情報を、弁護団の意向も聞かずに、検察の意向に沿った形で垂れ流し続けました。その中には重大な誤報も含まれておりました。

 総務省、法務省は、法の解釈と運用の基準について何も語らず逃げ回り、検察も口をつぐんだままであります。

 不思議なことに、与党である自民党の違反例については、検察は立ちすくんでいます。あたかも、漆間官房副長官が自民党には捜査が及ばないと明言したとおりになっているようにも思います。

 検察の判断と対応は、法令に違反しているか否かではなく、そこに起訴事実以外の政治的な価値判断が存在するとの指摘があります。しかし、法治国家、罪刑法定主義に照らして、検察に政治的な価値判断に基づく裁量権を認めてよいのか、立法府としても考えなければならない重大な問題であります。

 政治家として、次の政権を担う野党のリーダーとして、小沢代表、民主党は当然、全国を回りながら、国民の皆さんと対話をする中でその説明責任を果たしてまいります。

 しかし、法令の解釈と運用、検察のあり方などは、すべての政治家、政治団体に共通の問題が投げかけられているのであります。民主党は、民主政治を守るためにも、今後ともこの問題を提起してまいります。

 そして、民主党は、現在、企業・団体による政治献金とパーティー券購入の全面禁止のための法改正を今国会で実現するべく準備を進めているところであります。

 また、国民に開かれた政治を推進するためにも、与野党で知恵を出し合い、親族間で資金管理団体や選挙区を世襲し、引き継ぐようなことはやめるべきだと思いますが、自民党総裁としての麻生総理の見解を伺います。

 総理は、民主党がこの補正予算の成立に抵抗するなら解散も辞さずとの見解と伺いました。民主党は、この補正予算の成立に断固として反対を貫き、対案となる政策を提示してしっかりと徹底審議を追求してまいります。

 総理は、どうやら公明党と密約をして、解散を七月の都議選の後に回し、七月のサミットに行くことを目標とされているようでありますが、選挙から逃げ回る姿を見続けるのは国民の一人として情けない限りであります。総選挙をやろうじゃありませんか。昨年九月の腰砕けを延々と任期満了まで繰り返すのですか。この場ではっきり国民に示してください。

 麻生総理も、長らく政権を担った自民党の総裁として、政党政治を担う矜持をお持ちになっておられるのなら、速やかに国民の審判を受け、自民党の政治を終わらせるよう強く勧告申し上げ、私の質問を終わります。

 皆さん、御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 鳩山議員の質問にお答えをいたします。

 まず最初に、豚インフルエンザ対策について要請がありました。

 今回の新型インフルエンザの問題につきましては、国家の危機管理上の重要課題であると認識をいたしております。本日未明、WHOがフェーズを3から4に引き上げたことを宣言したことを受けまして、新型インフルエンザ対策本部を設置したところであります。

 今後とも、国際的な連携を密にしながら、水際対策や国民への迅速かつ的確な情報提供など、政府が一丸となって、国民の安全、安心の確保に万全を尽くしてまいりたいと考えております。

 子育て応援特別手当についてのお尋ねがまずありました。

 子育て応援特別手当は、現下の不況下で家計の所得が減少しつつあることにかんがみ、幼児教育期の子育て世代を支援するという観点から、幼稚園や保育所に通う小学校就学前三年間の子を対象として、一人当たり三万六千円を支給するものであります。

 なお、子育てに対する支援に当たりましては、さまざまな課題に対応した取り組みを総合的に実施していくことが重要であることは申すまでもありません。

 今回の経済危機対策におきましても、安心こども基金の大幅拡充によります保育サービスの充実など、さまざまな対策を講じることといたしているところであります。

 介護職員の処遇改善についてのお尋ねがありました。

 今回の補正予算では、介護職員の処遇を緊急かつ確実に改善するため、四千億円の交付金を設け、賃金の引き上げを行う事業者に対して、平成二十三年度までの三年間、交付することといたしております。

 平成二十四年度以降につきましては、処遇改善の状況などを見ながら、介護報酬を初め介護保険制度のあり方全体を検討する中で対応してまいりたいと考えております。

 医師不足対策についてお尋ねがありました。

 医師不足問題への対応は、国民の安心を確保するためにも重要な課題であろうと存じます。そのため、当初予算を含め、これまでの医師不足地域における小児科医、産科医などの緊急の医師確保のほか、中長期の視点から、医師養成数の増員など、さまざまな取り組みを行ってきたところです。

 さらに、今月、政府・与党で取りまとめた経済危機対策では、医療機関相互の連携強化や医師の確保などの地域全体での医療再生への取り組みに対して財政支援を行うということにしたところであります。

 雇用のセーフティーネットについてのお尋ねがありました。

 今回の補正予算に盛り込んだ緊急人材育成・就職支援基金は、昨年の秋以来の歴史的な経済危機を受けまして、特に影響の大きな非正規労働者などを対象に、職業訓練、再就職、生活の支援を総合的に実施するものであります。

 基金の期限は、今後、経済状況が好転し、雇用情勢の改善が期待できるようになるまでの期間や、職業訓練などに要する期間を踏まえ、三年間としたところであります。

 なお、基金終了後も、雇用保険の給付やハローワークにおける再就職支援などを通じ、雇用のセーフティーネットに万全を尽くしてまいりたいと考えております。

 派遣切りなどについてのお尋ねがありました。

 派遣切りなど、労働者が不利益な取り扱いを受ける問題につきましては、労働関係法令に基づく指導や一連の経済危機対策に基づく各種支援を通じまして、雇用と生活の安定の確保に努めておるところです。

 要介護認定方法の見直しによりまして、従来のサービスが受けられなくなるのではとの懸念につきましては、経過措置を講ずるとともに、今後、見直し後の認定方法について検証を行うことといたしております。

 天下りにつきましては、改正国家公務員法により、予算や権限を背景とする押しつけ的な再就職を根絶いたします。各府省による再就職あっせんの承認は、ことしいっぱいで廃止をいたします。

 さらに、税金の無駄遣いにつきましては、徹底した見直しを今後とも実施し、適正に対応してまいりたいと考えております。

 年金記録問題に関するお尋ねがありました。

 年金記録問題につきましては、長い期間にわたり、さまざまな問題が積み重なって生じてきたものだと理解をしております。このため、特定の時期における特定の個人の責任を具体的に明らかにすることは困難でありますが、一つ一つ作業を着実に進めていくことが重要であろうと存じます。

 なお、作業の実施に当たっては、これまでも、自治体、企業、労働組合、福祉関係団体などの協力を得ながら、政府を挙げて取り組んできたところでもあります。

 また、今後、来年一月の日本年金機構の設立までに一区切りをつけることができるよう、年金記録問題への従事者数を全体で一万人を超える規模とするなど、体制の強化や作業の効率化などを徹底し、さまざまな取り組みを集中的、計画的に実施してまいりたいと考えております。

 なお、無年金者の実態調査につきましては、厚生労働大臣のもとで、どのような対応が考えられるか、検討を進めさせているところであります。

 定額給付金などの時限的な経済対策についてお尋ねがありました。

 我が国経済は、輸出、生産が大幅に落ち込むなど、急速な悪化が続いており、雇用情勢についても急速に悪化をいたしておると存じます。

 こうした状況に対し、景気の底割れを防ぎつつ、国民の安心を確保し、未来の成長力強化につなげていくため、時宜を得たさまざまな施策を講じることにより、民需主導の自律的回復を促進してまいりたいと考えております。

 メディア芸術の発信拠点についてのお尋ねがありました。

 今日、日本文化発信の中心的存在であります、アニメ、漫画、ゲームなどのジャパン・クールと呼ばれるメディア芸術の国際的な拠点を形成することが重要であると考えております。

 新たに創設いたします国立メディア芸術総合センターは、独立行政法人国立美術館の一組織として設けるものですが、管理運営はすべて外部委託といたすとともに、必要な財源は自己収入で賄うということにいたしております。

 電子黒板やパソコンについてのお尋ねがありました。

 未来を担う子供たちへの情報教育の充実に重要な課題であろうと考えております。このため、政府目標として、他の先進国並みの、児童生徒三・六人に一台のパソコンを整備することといたしておりますが、現状はその半分程度の整備にとどまっております。学校における情報機器を活用した教育の充実のため、今後、抜本的な整備を行うものであります。

 また、わかりやすい授業を行い、児童生徒の学力を向上させることは極めて重要であろうと考えております。電子黒板やパソコンを使うことで、教科書やノートを大きく表示したり、書き込んだり、映像を活用することなどにより、わかりやすい授業が実現できるものと考えております。

 政府といたしましては、今後とも学校の情報通信技術環境の整備に努めてまいりたいと考えております。

 産学官連携施設についてのお尋ねがありました。

 産学官連携施設につきましては、地域の特色を生かした共同研究を進める場となり、地域経済の活性化につながる重要なものと考えております。

 この推進に当たりましては、科学技術振興機構のノウハウを活用して、自治体とともに整備することが効果的、効率的であろうと考えております。

 いずれにせよ、予算の無駄があってはならないことは申すまでもないところであります。産学官連携の成果が上がるよう、その実施に当たってまいりたいと考えております。

 税金の無駄遣いと財政運営についてのお尋ねがありました。

 今後の財政運営につきましては、中期プログラムに沿って、行革の推進及び徹底した歳出の無駄の排除を大前提にして取り組んでまいりたいと考えております。

 このため、具体的には、随意契約の見直し、再就職に関する規制などを通じ、引き続き行革の推進と無駄の排除を進めてまいりたいと考えます。

 来年度の予算編成についてお尋ねがありました。

 二十二年度予算編成については、今後検討していくことになり、現段階で確たることを申し上げる段階ではありません。

 いずれにせよ、歳出改革の方針を維持しつつ、経済状況に応じて対応を行ってまいりたいと考えております。

 消費税についてお尋ねがありました。

 さきに成立した税制改正法附則におきまして、消費税の全税収は、確立・制度化した年金、医療及び介護の社会保障給付と少子化対策の費用に充てることにより、すべて国民に還元することといたしておりますのは御存じのとおりです。

 税率などの具体的な実施のあり方につきましては、この附則に沿って今後検討してまいりますが、議員御指摘のような税金の無駄遣いによる財政の垂れ流しを賄うものではございません。

 地方財政についてのお尋ねがありました。

 極めて厳しい地方財政の現状を踏まえ、平成二十一年度には、別枠で地方交付税を一兆円増額いたしました。

 また、経済危機対策に基づく特別の手当てとして、一兆四千億円の地域活性化・公共投資臨時交付金と一兆円の地域活性化・経済危機対策臨時交付金を交付することといたします。

 今後、当面は景気回復を最優先して税収回復に努めつつ、経済状況を好転させることを前提として、税制の抜本的な改革に取り組む際には、地方消費税の充実や地方交付税のあり方の検討などについて取り組んでまいらねばならぬと考えております。

 平成二十一年度の税収についてお尋ねがありました。

 二十一年度の税収の見込みは、二十年度税収の決算、二十一年度の課税実績など、さまざまな要素を踏まえて今後検討を行うことが必要であろうと存じます。

 税収をめぐる厳しい状況を認識しておりますが、これらがそろわない現時点では、確度ある見積もりは困難であります。したがって、税収補正を行わないこととしたことであり、議員が御指摘のような粉飾ということではございません。

 財政展望と消費税増税についてお尋ねがありました。

 現下の経済情勢の中、当面は景気回復を最優先とする一方で、これまでの歳出改革の基本的方向性を維持しつつ、めり張りのある予算配分を行ってまいります。

 消費税につきましては、繰り返しになりますが、税制改正法附則におきまして、消費税の全税収は、確立・制度化した社会保障給付などに充てることにより、すべて国民に還元することといたしております。具体的な実施のあり方につきましては、この附則に沿って今後検討してまいることになろうと存じます。

 谷内政府代表の北方領土問題に関する発言についてお尋ねがありました。

 御指摘の谷内政府代表の発言につきましては、二十日、同代表から中曽根外務大臣に対し、三・五島返還でもいいのではないかと考えているといった発言はしていない、しかし、全体の発言の流れの中で、誤解を与え得るものがあったかもしれず、結果として関係者に誤解を与えてしまったことは遺憾であるとの説明があったとの報告を受けております。

 これを受けて、中曽根大臣から、谷内代表の発言が結果として誤解を与えたことは遺憾であると伝え、同代表に厳重に注意を行ったと承知をいたしております。

 この点につきましては、本人も深く反省をしており、政府として、現時点ではこれ以上の対応をとることは考えておりません。

 いずれにせよ、政府といたしましては、北方四島の帰属の問題を解決してロシアとの間で平和条約を締結するという基本方針のもと、北方四島の返還を実現していくとの立場は変わりはございません。

 また、メドベージェフ大統領の一連の発言を受け、今後のロシア側の対応に注目しているところであり、我が方から新たな提案などを行うことは考えておりません。

 次に、企業・団体における政治献金の禁止や、資金管理団体や選挙区の世襲についての質問がありました。

 政治資金のあり方につきましては、民主主義のコストをどう負担するかの観点から、各党が議論されることはよいことだと考えております。その上で、各党で議論をして決めた法律は、それぞれの政治家が守ることが大事であります。

 また、選挙区の世襲などを含めて選挙のあり方について各党で議論することも、よいことと考えております。しかしながら、立候補を制限することにつきましては、十分な議論が必要と考えております。

 こうした政治資金や選挙のあり方については、現在、自由民主党においても議論がされているところであります。

 最後に、解散・総選挙について御質問がありました。

 今、国民が政治に望んでいることは景気対策と雇用対策であろうと、私自身はそう考えております。したがいまして、総選挙につきましては、いずれしかるべき時期に、野党との争点を明らかにした上で国民に信を問いたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 保利耕輔君。

    〔保利耕輔君登壇〕

保利耕輔君 私は、自由民主党を代表して、経済財政問題を中心に、麻生内閣総理大臣並びに関係大臣に対して質問を行います。(拍手)

 冒頭、本年は天皇陛下御即位二十年というまことに喜ばしい年であり、かつ、四月十日には天皇皇后両陛下御成婚五十周年を迎えられたことを、国民こぞってお喜び申し上げたいと存じます。(拍手)

 さて、四月五日、北朝鮮はミサイル発射を行いました。今回のミサイル発射は、我が国領域の上を越えた危険きわまりないものであり、我が国及び世界各国が北朝鮮に対して自制を求めていたにもかかわらず強行したことは、北東アジア地域の平和と安全を損なう行為であり、断じて容認できるものではありません。

 今回の北朝鮮の行為は明確な国連安保理決議違反であり、結果として国連安保理の議長声明発出に至りましたが、今後とも、二度と北朝鮮のミサイル発射が行われないよう、政府は、米国など関係国と連携しつつ、北朝鮮のミサイル関連活動の停止を含め、国連安保理決議の遵守を強く求めていくべきであると思いますが、総理のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。

 また、新インフルエンザの流行が懸念されます。我が党は、本夕、対策本部の設置を決めましたが、政府におかれましても、万全の措置を講じられますよう、また、無用な風評被害が起こらぬよう、広報等に十分御配慮をお願いいたしたいと存じます。

 次に、今般提出された平成二十一年度補正予算等に盛り込まれた経済危機対策についてお尋ねいたします。

 一般会計総額、過去最大の八十八兆円を超える平成二十一年度予算及び関連法案が成立し、あわせて、昨年来の事業規模総額七十五兆円の経済対策が順次実施に移され始め、定額給付金の支給や土日祝日の高速道路で一部区間を除きどこまで走っても千円になるなど、国民の皆様も対策の成果をじわりじわりと実感していただいていることと存じます。

 しかしながら、本予算を編成した昨年末以降も深刻さを増す経済雇用情勢と四月二日に開かれた第二回ロンドン金融サミットでの財政金融上の国際協調路線を踏まえ、景気の底割れを回避し、国民生活を守るために、政府・与党は、去る四月十日、今年度補正予算等を通じて実施する経済危機対策を策定いたしました。

 まずは、こうした対策の意義や必要性について、どう国民生活が好転するのか、総理に、わかりやすく、かつ具体的に御説明をいただきたいと存じます。

 今回の対策は、過去最大規模の国費十五兆四千億円、事業規模総額五十六兆八千億円にも上り、総理の迅速かつ大胆な御決断に敬意を表したいと存じます。

 主な中身として、活力あふれる農林水産業の構築を目的として史上空前の一兆円を超える額を計上した農業(むら)・林業(もり)・水産業(はま)対策や、開通していない道路の結合を加速させるなどの公共事業関連対策として一兆六千億円、今年度に限り子育て応援特別手当を就学前三年間のお子様について第一子から三万六千円を支給するなど、さらに、税制改正を含め、ソフト、ハード両面での施策をきめ細やかに盛り込んでいただきました。

 なお、これらの施策については、その多くが、我が党の日本経済再生戦略会議において、今後三年をめどにして日本経済立て直しの戦略に主眼を置き、広く国民各界各層からの御提言をもとに検討を重ねた結果が強く反映されております。

 一部の野党やマスコミは、今回の対策をばらまきと批判し、対策の意義や重要性について必ずしも正しく御理解いただけていないようでありますので、ばらまきではないということを、総理より、国民の皆様に向けて改めて御説明願いたいと存じます。

 今回、雇用情勢も一段と厳しさを増し、金融環境も厳しい情勢にある中、まずは景気の底割れを回避する緊急的な対策が必要であります。

 雇用対策としては総額二兆五千億円が措置されておりますが、とりわけ雇用調整助成金、これは、従業員を解雇しなかった企業を支援するものでありますが、今般六千億円の手当てをし、大幅に拡充いたしております。この雇用対策によりどのくらいの方々の雇用を下支えできるのか、舛添厚生労働大臣よりお答えいただきたいと存じます。

 金融対策につきましては、五月危機も叫ばれている中、中小企業や中堅・大企業も資金繰りに窮しております。こうした不安を払拭するためにも、資金繰り対策の具体的中身について、与謝野金融担当大臣及び二階経済産業大臣にお伺いいたします。

 なお、金融対策に関する与党による四本の議員立法が国会に提出されておりますが、速やかな審議が行われますことを、関係する皆様にお願い申し上げる次第であります。

 次に、地方への配慮についてお尋ねいたします。

 一月から三月までの地域経済情勢は一段と悪化と発表され、依然として地方経済の厳しさが浮き彫りとなっております。

 今回の対策では、地域活性化・公共投資臨時交付金を創設し、対策における公共事業等の臨時緊急の追加に円滑に対応するため、地方負担総額の九割程度に相当する一兆四千億円を財政力の弱い団体等に配慮して交付されます。これは、地方の負担に特別に配慮したものであり、地方においても、国と歩調を合わせ、景気に対する対応を行っていただきたいと考えております。

 また、平成二十年度第二次補正予算で措置し、地方自治体からは大変御好評をいただいている地域活性化・生活対策臨時交付金と同種の地域活性化・経済危機対策臨時交付金一兆円を創設し、地域経済の活性化のため活用いただくことといたしております。

 ところで、本予算及び補正予算の執行に当たっては、地方活性化の観点から、地域に基盤を置く企業にできるだけ受注の機会を与えるべきだと存じます。

 我が党としては、政府による最大限の御配慮を出先機関や地方公共団体等関係機関に指導していただきたいと存じますが、総理の御所見をお伺いいたしたいと存じます。

 続いて、未来への投資である環境関係対策についてお伺いいたします。

 まずは目先の景気の底割れを防ぎつつ、それと同時に、経済回復後を見据えた、将来の成長力を高める施策にも力を注ぐ必要があります。これこそ、限りある地球資源を考慮した低炭素社会の実現であり、太陽光発電、エコカー、省エネ家電の新たな三種の神器を定着させなければなりません。

 太陽光発電については、全国の公立小学校、中学校に、今後三年間でこれまでの十倍に上る一万二千枚の太陽光パネルを取りつけるなど、エコ改修を進めることといたしております。

 エコカーについては、その普及のため、買いかえ支援策をとります。例えば、二百五十万円のハイブリッド車を新たに購入した場合、十七万円の減税に加え、十万円を助成いたします。また、十三年を超えて使用している古い自動車をスクラップして乗りかえる場合には助成額が二十五万円となりますので、減税と合わせ、総額四十万円を超える額の支援となり、これは、諸外国と比較してもかなり高い水準にございます。

 また、省エネ家電の購入によるエコポイントの付与については、国民の皆様の関心は非常に高いものの、一体いつから実施されるのか、また、小売も含めてどこの家電販売店でも可能なのか、獲得したポイントはどう使えるのか、これらについて、二階経済産業大臣より、わかりやすく御説明いただきたいと存じます。

 さて、補正予算の編成により、今年度の国債発行額は四十四兆円を超える一方で、当初予算で四十六兆一千億円と見込んでいる税収は、企業の業績悪化により、数兆円規模でマイナスが予想され、戦後初めて税収と国債発行額が逆転する可能性が取りざたされております。当初予算及び補正予算合算で百兆円を超える大規模な財政出動が予定されておりますが、その背景には、短期的には景気回復をさせるとの総理の強固な意志がうかがえるのでございます。

 しかし、景気回復後の財政再建は、避けて通れない政治の使命であります。社会保障関係費が年々約一兆円ふえていき、他の政策分野への財源を圧迫する中、国、地方合わせて八百兆円を超える借金のツケを子や孫の世代に先送りすることなく、財政再建を軌道に乗せるためには、責任政党として、消費税を含めた税制抜本改革を検討しなければなりません。それは政治の責任であり、この問題を避けて通ることは、責任なき政治と言っても過言ではありますまい。

 総理及び与謝野財務大臣に、財政への責任について、その御決意のほどを改めてお伺いしたいと思います。

 さて、質問を終えるに当たり、教育問題について一言申し上げます。

 次代の日本を担う子供たちへの教育は、国家として重要事項であります。今次の補正予算においても、学校テレビのデジタル化や電子黒板、さらには耐震化の促進など、大幅な予算が計上されております。これらを充実させることは、教育上必要なことであります。

 そして、ハード面の充実と並んで重視されるべきは、精神面の教育でありましょう。

 古来、日本人は、礼節を重んじ、謙譲の美徳を備え、長幼の序を大切にしてきた民族であります。戦後、特に言われた個人の尊厳という思想は、民主主義の根幹をなす考えでありますが、このことは同時に、自分以外の他人の尊厳をも大切にするという考え方も含むものであり、決して自分だけのエゴイズムを主張するものではないのであります。

 人は、人と人との間で生きるから人間であり、人間としての生き方を教育上重視し、あすの日本を担う子供たちを思いやりのある美しい心を持った日本人に育てることが大切であると思います。人間教育について総理の御所見をお伺いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 保利議員の質問にお答えをいたします。

 まず、北朝鮮のミサイル発射についてのお尋ねがありました。

 北朝鮮によるミサイル発射は、我が国を含みます北東アジア地域のみならず、国際社会の平和と安全を損なう挑発的な行為であり、断じて容認できるものではありません。引き続き、米国や韓国を初めとする関係国と緊密に連携しながら、北朝鮮が、今後、十四日の国連安保理議長声明を重く受けとめ、安保理決議第一七一八号を完全に履行することを強く求めてまいります。

 経済危機対策の意義や必要性についてお尋ねがありました。

 この対策は、景気の底割れを防ぐため、雇用対策や資金繰り対策、未来の成長力強化につなげるため、低炭素革命や健康長寿社会構築に向けた施策、そして、国民の安心と活力を実現するため、地域活性化や、社会保障、介護、子育て支援など、いろいろ盛り込んでおるところであります。

 これらの施策により、民需の自律的回復を促進し、GDP成長率を一・九%程度押し上げるとともに、四十から五十万人程度の雇用の拡大を通じて、国民生活を守っていきたいと考えております。

 経済危機対策がばらまきでないことについてお尋ねがございました。

 今般の対策におきましては、景気の底割れを絶対に防ぎ、雇用を確保し、国民の痛みを軽減するとともに、未来の成長力強化につながるものとすることが重要であると考えており、こうした分野へ重点化してまいりたいと考えております。

 また、規模は大きなものですが、時宜を得た時限的なものという観点からの施策であり、ばらまきという批判は当たらないと存じます。

 地域に基盤を置く企業の受注機会の確保についてのお尋ねがありました。

 地域に基盤を置く企業は、地域の雇用確保や地域経済の発展に不可欠であります。地域の活性化を図る上で、地域の企業の受注機会の確保の視点も極めて重要であります。このため、予算執行に当たり、地域の中小企業の活用について各発注機関に周知させるなど、可能な対応を進めてまいりたいと考えています。

 財政への責任についてのお尋ねがありました。

 私は、大胆な財政出動をするからには、中期の財政責任というものを示すことが、責任ある政府・与党としての原点であり、矜持であろうと考えております。財政に対する責任と社会保障に対する国民の安心強化を図るため、消費税を含む税制抜本改革の着実な実施に向け、検討を進めてまいりたいと考えております。

 最後に、教育についてのお尋ねがありました。

 国づくりの基本は、人づくりであります。明るい日本をつくるには、日本の持っております底力に自信と誇りを持てる教育が重要であろうと考えております。教育とは、国民の期待にこたえられる日本人、世界に通用する日本人を育てていくこととも考えております。

 教育基本法では、豊かな情操と道徳心、公共の精神など、今日重要と考えられる具体的な理念が規定をされております。今後とも、内閣の重要課題として、質の高い教育を政府全体で実現してまいりたいと考えております。

 残余の質問に関しましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣舛添要一君登壇〕

国務大臣(舛添要一君) 保利議員から、雇用対策による雇用下支えについてのお尋ねがございました。

 経済の底割れを防ぐため、政府・与党で取りまとめられました経済危機対策に盛り込まれた雇用対策では、平成二十三年度までの三年間に約三百九十万人の対象者を見込んでおります。このうち、雇用調整助成金の拡充等により、約二百八十万人の対象者を見込んでございます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 保利議員の御質問にお答えします。

 企業の資金繰り対策についてのお尋ねがありました。

 景気が急速に悪化を続ける中で、中小企業はもとより、中堅・大企業の業況や資金繰りも厳しさを増しており、民間金融機関による適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が一層重要となっております。

 こうした認識のもと、金融円滑化のための特別ヒアリング、集中検査や、金融機能強化法を積極的に活用し、金融仲介機能を適切かつ十分に発揮してもらうための環境整備を実施しているところでございます。

 また、政策金融においても、今般の経済危機対策において、日本政策金融公庫のセーフティーネット貸し付けの拡充等や、日本政策投資銀行等による危機対応業務の大幅拡大等の措置を講ずることとしております。

 これらの施策により、企業の資金繰りに万全を期してまいります。

 次に、財政への責任についてのお尋ねがありました。

 我が国の財政は、主要先進国の中でひときわ厳しい状況にあり、将来世代へ負担を先送りする構造となっております。このため、景気回復に向けて全力で取り組む一方で、中期の財政責任を果たしていくことが重要であります。

 財政規律の維持に向けた取り組みを進めるとともに、持続可能な社会保障構築を図るべく、先般成立した税制改正法の附則に従い、消費税を含む税制抜本改革の着実な実施に向け、検討を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣二階俊博君登壇〕

国務大臣(二階俊博君) 保利耕輔議員にお答えいたします。

 最初に、企業の資金繰り対策についてのお尋ねがありました。

 中小・小規模企業向けは、緊急保証制度の拡充や関係機関の財務基盤の強化等、合計四十七兆円規模といたします。

 また、中堅・大企業に向けては、産業活力再生特別措置法に基づく出資円滑化のための損失補てん制度などのほか、日本政策投資銀行や商工中金の危機対応業務の大幅拡大等、合計二十三兆円規模といたします。

 経済産業省としては、今回の対策を踏まえ、引き続き、企業の資金繰り支援に全力で取り組みます。

 次に、エコポイントの活用によるグリーン家電の普及促進事業についてのお尋ねがありました。

 まず、実施時期でありますが、補正予算案の成立が前提であります。成立時期にかかわらず、五月十五日以降にグリーン家電を購入された方を対象に、エコポイントをだれでもが獲得いただけるように準備を進めているところであります。

 次に、対象店舗でありますが、いわゆる家電量販店に限ることなく、地域の電気店を含め、購入場所を問わず、エコポイントの獲得の対象といたします。消費者側、販売側いずれにとっても、すべての皆さんに公平な新しい仕組みにすべく、ただいま制度設計を進めているところであります。

 さらに、エコポイントは、さまざまな商品、サービスと交換できるように検討を行っております。その中には、省エネ型電球のような環境に役立つようなものを含む一方で、グリーン家電事業を十分効果のあるものとするため、消費者にとって魅力ある商品やサービスと交換できるように、関係省庁と検討を急いでいるところであります。

 以上です。(拍手)

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議長(河野洋平君) 太田昭宏君。

    〔太田昭宏君登壇〕

太田昭宏君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました財政演説、平成二十一年度補正予算案に関連し、総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 総理、我々政党、政治家は今何をなすべきか。その焦点とすべきは、ただ一点、未曾有の経済危機の突破へ向けた果敢なる行動、挑戦であると思います。景気・経済対策はツーリトル・ツーレートであってはならない。それは大手金融機関の破綻が相次いだ十年前の日本の教訓であり、景気対策は大胆に、そしてスピード感を持って行われなければなりません。

 昨年来の経済危機に際し、我が党は危機打開のエンジン役になるとの決意で取り組んでまいりました。いたずらに横道にそれた議論をしているときではない。政治家は、経済危機を乗り越えるため、体を張って仕事をするということに全力を挙げなければなりません。

 これまで、政府・与党が一体となって、世界の経済危機打開に向けて国際協調の推進役になるとともに、平成二十年度第一次補正予算、第二次補正予算、そして平成二十一年度本予算を三段ロケットとして、いまだかつてない七十五兆円規模の景気対策を行ってまいりました。冬は必ず春となる、春を呼び寄せる闘いであります。

 消費喚起への基礎をなす生活者支援では、二兆円の定額給付金を初めとして、子育て応援特別手当で六百五十億円、保育等の充実整備のための安心こども基金で一千億円。そのほか、高齢者の医療費負担軽減や介護報酬の三%アップ、妊婦健診十四回分の助成や出産育児一時金の増額、また住宅減税などを実施。

 雇用対策では、雇用維持に大きな効果を発揮している雇用調整助成金の拡充を初め、雇用創出のための四千億円の基金の創設や正規雇用促進のための助成金、非正規労働者の雇用保険適用の拡大など、三年間で総額三兆円の対策を行っております。

 また、中小企業支援では、緊急保証・貸付枠を三十兆円に拡大、省エネ設備等の投資促進税制や中小企業減税の拡充。

 地域活性化では、学校耐震化等の促進に約二千七百億円、高速道路料金の大幅引き下げに五千億円、地域活性化交付金に六千億円、地域活力基盤創造交付金で九千四百億円の対策など、矢継ぎ早に手を打ってまいりました。

 私はまず政府に、これら施策が速やかに現場で実施されるよう、その前倒し執行に全力を挙げることを強く求めます。

 現在の景気状況はいかなる地点にあるのか。昨年来の輸出の急減、生産の大幅減は在庫調整を一気に加速させ、まさにつるべ落としのように景気は低下を続けています。しかし、他方で、経済危機打開に向けた世界を挙げての取り組みと、我が国における七十五兆円に及ぶ切れ目のない経済対策とが相まって、ようやく経済の基調に若干の変化の兆しも見えてまいりました。

 具体的には、輸出や生産は依然厳しい水準にあるものの、輸出は、アジア、とりわけ中国向けに回復し始めました。景気ウオッチャー調査、街角景気は、現状判断DI、先行き判断DIともに、本年一月から三カ月連続して上向いております。原油価格の大幅低下は、日本の交易条件を大きく改善しています。資本流出は流入へと転換し、国内の金融環境にもよい影響を与えていくに違いありません。

 総理、ここが正念場であります。今が危機打開への分水嶺であります。日本経済に日はまた上るかどうか。否、日本が世界に先駆けて不況脱出を図るとの強い意志と、次への一手、断固たる対策が求められています。総理並びに財務大臣の経済認識と御決意を伺います。

 その断固たる対策が、真水十五・四兆、事業規模五十七兆円という大規模な今回の補正予算であると私は思います。この中で、失業手当のない人に職業訓練中の生活費を給付するなどの雇用対策や中小企業の資金繰り支援など、緊急を要する諸課題にも対策を講じています。

 あわせて、私は、全治三年の期間は、単にあらしを乗り越えるだけであってはならない、次の日本に向け新たなスタートを切らなくてはならない三年間だと強く訴えてまいりました。本年一月の代表質問におきましても、五つの処方せんとして、環境、農業、社会保障、社会資本整備、そして人間力をはぐくむ教育の五つの分野に力を入れようと提示いたしましたが、その内容が今回の補正予算案に具体的に入っております。

 直ちに切れ目なく、危機打開と未来への展望が今回の補正予算案の主眼でもあり、何としても早期成立させなければなりません。総理の決意を承りたい。

 まず、緑の社会への構造改革、グリーン産業革命であります。

 公明党は、新たな経済対策の検討に当たって、「ニッポンまるごと太陽光」「ニッポンどこでもエコカー」「ニッポンだれでも省エネ家電」と訴え、太陽光発電導入の抜本的加速、エコカー、省エネ家電の普及促進を求めました。これを受けて、本補正予算案には、一万二千校に太陽光パネルの設置を目指すスクール・ニューディール構想、環境性能のよい新車の購入に最大二十五万円の補助、最大一三%程度が還元されるエコポイントを活用した省エネ家電の普及促進が盛り込まれました。

 これらにより、景気対策と低炭素社会づくりがともに強力に進められることになります。その上で、さらに、今後導入される新たな電力買い取り制度については、グリーンエネルギー産業を力強く後押しするすぐれた制度としていただきたい。

 また、国を挙げた地球温暖化対策と低炭素社会づくりに向けて、その目標や手段、手順等を定める基本法の必要性が高まっていると考えます。

 低炭素社会づくりを加速していくためには、国民が目標を共有することが大事であります。私は、二〇二〇年の中期目標は、新たな日本の経済成長につながる野心的なものであるべきだと考えます。

 以上、総理並びに環境大臣のお考えを伺います。

 一兆円を超えた農林水産関係の補正予算案には、我が党がかねてから主張してきた持続可能な強い農業の構築の取り組みを中心に、手厚い支援が盛り込まれました。特に、担い手への農地集積の加速化のため、約三千億円の支援を初め、新規就農の促進、集落営農の組織化、土地改良負担金の軽減、水田フル活用の取り組みの加速化などが盛り込まれております。さらに、喫緊の課題である耕作放棄地対策として、これを解消して農地として利用、再生するための支援が行われます。画期的なことであります。

 その上で、申し上げたいことは、地域経済の活性化に直接結びつく農商工連携の充実強化であります。さらなる支援が必要と考えます。また、農地法を改正し、農地を貸しやすく、借りやすくできるように、さらなる推進を求めます。総理の御見解をお伺いいたします。

 今回の補正予算案では、地域医療の機能強化を初め、介護職員の処遇改善、女性特有のがん対策や子育て支援の拡充など、国民生活の安心確保のために緊急に対応すべき施策が盛り込まれました。我が党の主張したものでもあります。

 がん対策では、女性特有のがんの検診率を高めるため、子宮頸がんの場合は二十歳から四十歳まで、乳がんは四十歳から六十歳までの五年刻みで、検診のための手帳と無料クーポンが発行されることになりました。今後は、いつでも、どこでも自由に受けられるよう、きめ細かな制度設計が必要であります。また、これを契機に、男性を含めたがん検診率五〇%を目指し、政府を挙げて取り組んでいくことが重要であります。

 介護については、介護拠点の緊急整備とともに、介護分野を志す希望者が生涯の職業として、安心して働ける環境整備につなげていくことが求められています。

 子育て支援では、子育て応援特別手当の対象を第一子へ拡大、安心こども基金の拡充など、大いに前進がされました。

 私は、国民の安心確保のための社会保障の機能強化を何よりも優先していくべきと考えます。そして、従来の発想の延長ではなく、世界最速で少子高齢化が進む我が国において、地域の医療や介護事業に人材の流れをつくり、国の戦略産業として育て、そのノウハウで世界に貢献していくというビジョンを構築すべき時期に来ていると確信していますが、この点について、総理と厚生労働大臣の御見解をお聞きいたします。

 高齢社会に備える都市づくり、国際競争に勝ち抜く空港、港湾、道路などのインフラ整備を未来を見据えて行うことが大切であります。そして、国民の安全、安心を確保するための防災・安全対策として、社会資本ストックの耐震化の推進、ゲリラ豪雨対策、洪水・高潮対策など、必要な公共事業をできるだけ前倒し執行することが大事であります。

 その際、厳しい地方財政の現状を踏まえ、自治体にいかに配慮をするかが重要となります。今回の補正予算では、約一・四兆円にも上る地域活性化・公共投資臨時交付金が用意され、地方負担の軽減が図られるようになったことは評価したいと思います。

 今後重要なことは、公共事業の執行に伴う仕事が地域の中小企業への受注機会の拡大につながるよう配慮することであります。総理の社会資本整備と地域活性化へのお考えをお伺いいたします。

 私は、世界的な経済危機克服の活路を開くためには、アジアを先導役とするしか安定した経済成長は望めない、ウイン・ウインの関係でアジア全体の経済成長を図るアジア版ニューディールを日本が主導することが必要であると主張してまいりました。

 総理は、アジアを二十一世紀の成長センターと位置づけ、日本は国境を越えてアジア全体で成長するという視点に立つことが大事と述べられ、広域インフラの整備と産業開発の一体的促進や消費拡大のためのセーフティーネットの整備などを内容とする、アジア経済倍増構想を提案されました。

 私は、総理の御提案を高く評価するものであり、日本の環境技術の強みを生かし、またアジアの中小企業の育成も進めながら、その具体化をアジア全体で早急に図るべきであると確信いたします。

 あすから日中首脳会談、五月上旬にはプーチン首相との日ロ首脳会談に臨まれますが、総理の御所見をお尋ねいたします。

 総理、行政改革は待ったなしです。

 特に、国の出先機関については、業務が地方と重複し、国民から見て非効率な二重行政になっているとの指摘があります。この際、廃止、整理を強硬に断行し、国の事務権限を大胆に地方に移譲することが大事です。今こそ、二十一世紀にふさわしい効率的な行政の確立に向け、政治のリーダーシップを発揮すべきときと考えます。

 国民が行政に望むものは一体何か。それは、税の無駄遣いは絶対に許さないということであります。行政の無駄にどう切り込むか、強い姿勢を求めるものであります。

 また、消費者庁法案が全会一致で衆議院を通過いたしました。私は、法案の早期成立を望むとともに、さらに行政のすべての面で、生産者から消費者重視の考え方が貫徹されることを強く求めます。行政改革、消費者行政への転換は、景気対策を執行する上でも極めて重要であると思いますが、総理の御決意をお伺いいたします。

 最後に、新型インフルエンザ問題が全世界的な大きな問題となっており、WHOは警戒レベルを4に引き上げました。政府は迅速に対策を打ち、国民の不安を払拭することに全力を挙げるべきです。総理の御決意を伺います。

 以上、この未曾有の経済危機を打開し、あわせて日本の希望ある未来を切り開く総理のリーダーシップを強く望み、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 太田議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、景気の現状認識と経済対策に対してのお尋ねがございました。

 世界的な金融危機とそれによる世界経済の減速の中で、外需が急速に落ち込んだため、日本の景気は急速な悪化が続いており、雇用も厳しい状況にあると認識をいたしております。

 こうした状況に対し、景気の底割れを防ぎつつ、国民の安心を確保し、未来の成長力強化につなげるため、今般、国費十五兆円程度、事業費約五十七兆円の経済危機対策を取りまとめたところであります。

 この対策を速やかに実行するため、その裏づけとなります平成二十一年度補正予算を一刻も早く成立させる必要があると考えております。

 補正予算の早期成立についてのお尋ねがございました。

 経済危機ともいうべき現下の経済金融情勢を踏まえ策定されました経済危機対策を実施するため、平成二十一年度補正予算を取りまとめたところです。対策の速やかな実施のため、補正予算の早期成立が重要であると考えております。

 緑の社会への構造改革についてのお尋ねがありました。

 太陽光発電の新たな買い取り制度につきましては、国民の負担に留意をいたしつつ、関連産業の競争力の強化や地球温暖化対策への貢献につながるような制度設計を進めてまいりたいと考えております。

 地球温暖化対策や低炭素社会づくりの目標、手順、手段を定めることは極めて重要であります。このため、政府としては、地球温暖化対策推進法や低炭素社会づくり行動計画の策定などを進めてきたところでもあります。さらに、基本法が必要かどうかにつきましては、その中身を含めまして、今後十分な検討が必要であろうと考えております。

 中期目標につきましては、裏打ちのない宣言ではなく、経済面でも実行可能で、地球全体の温暖化対策に貢献し、米国や中国など、すべての主要経済国が参加する国際的な枠組みづくりに貢献するものを、遅くとも六月までには発表したいものだと考えております。

 農商工連携の強化及び農地政策の推進についてお尋ねがありました。

 農商工連携につきましては、今回の補正予算により、販路の開拓や新商品の製造に必要な施設の整備などへ支援を強化してまいりたいと考えております。

 また、農地制度につきましては、関連法案を御審議いただいているところですが、農地を貸しやすく、借りやすくすることにより、担い手への農地の集積を進めてまいりたいと考えております。

 医療や介護のビジョンについてお尋ねがありました。

 医療サービスや介護サービスは、国民の生命、健康を支える安心の礎でもあります。同時に、雇用の創出、国民経済を支えるサービス市場という意味で、将来的に有望な分野でもあると考えております。

 今月、政府・与党で取りまとめた経済危機対策では、地域医療再生や介護機能強化に重点的に取り組むことで、我が国の新たな飛躍の糧とすることとしたところでもあります。本予算の成立を期し、早急にその実施に移していきたいと考えております。

 社会資本整備と地域活性化についてのお尋ねがありました。

 社会資本は、安全、安心の確保や地域の活性化に不可欠なものであり、未来を見据えた整備が重要と考えております。

 また、社会資本の整備を通じ、地域の活性化を図る上で、地域の中小企業の受注機会の確保の視点も極めて重要であります。このため、予算執行に当たり、地域の中小企業の活用について各発注機関に周知徹底するなど、可能な対応を進めてまいりたいと考えております。

 アジア経済倍増へ向けた成長構想についてのお尋ねがありました。

 世界が現在の金融経済危機を克服し、持続的経済成長を回復するためには、アジアの成長力強化と内需拡大を図り、アジアが開かれた経済の成長センターとして貢献する必要があろうと存じます。

 そのため、私は、先般、広域開発の推進といったアジア諸国が協力して取り組むべき課題や、我が国の具体的な貢献策を取りまとめたアジア経済倍増へ向けた成長構想として発表させていただいたところです。今後、この構想の早期実現に向け、アジア各国と協力していく考えです。

 特に、来る日中首脳会談では、アジアそして世界経済の回復のため、今後とも日中が主導的役割を果たすべきであるということを確認いたしたいと考えております。

 ロシアは、アジア太平洋地域との結びつきを強化いたしております。五月のプーチン首相訪日の際は、それを念頭に置いて、日ロ経済関係を含め、幅広く議論いたしたいと考えております。

 出先機関の改革、行政の無駄の排除、消費者重視の行政への転換への決意についてのお尋ねがありました。

 出先機関の改革につきましては、本年三月に決定した工程表に従い、事務や権限の地方への移譲や組織の統廃合について具体的な検討を進め、年内に策定する改革大綱に盛り込んでまいりたいと考えております。

 行政の無駄を排除することは、政府として極めて重要な課題であります。行政支出総点検会議からの指摘を受け、各省庁に設置した担当プロジェクトチームによる取り組みを通じて、今後とも徹底して無駄を排除してまいりたいと考えております。

 消費者庁は、行政のあり方を、生産者、事業者重視から消費者重視に転換していく突破口となるものだと考えております。関連法案を早期に成立させていただき、一日も早く消費者庁を創設してまいりたいと考えております。

 最後に、豚インフルエンザ問題についてのお尋ねがありました。

 今回の新型インフルエンザの問題につきましては、国家の危機管理上の重要課題であると考えております。本日未明、WHO、国際保健機構がフェーズ4を宣言したことを受けまして、新型インフルエンザ対策本部を設置したところであります。

 今後とも、国際的な連携を密にしながら、水際対策や国民への迅速かつ的確な情報の提供、政府が一丸となって、国民の安全、安心の確保に万全を尽くしてまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 太田議員の御質問にお答えします。

 景気の現状認識と経済対策についてのお尋ねがありました。

 我が国の経済の現状については、輸出や生産の大幅な減少が続いていること、個人消費が緩やかに減少し、家計部門への波及が見られることなどから、景気は急速な悪化が続いており、厳しい状況にあるものと認識をしております。

 こうした状況のもと、今般取りまとめた経済危機対策により、景気の底割れを防ぐとともに、未来への投資を通じて日本経済の成長力を高めるため、あらゆる政策手段を総動員するものであり、平成二十一年度補正予算及び関連法案の早期成立をお願い申し上げたいと存じます。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 緑の社会への構造改革についてお尋ねがありました。

 まず、太陽光発電の新たな買い取り制度については、国民の負担に留意しつつ、温室効果ガスの大幅削減につながるよう、できるだけ多くの方に安心して設置していただける制度としたいと思います。また、そのことによって、グリーンエネルギー産業が大きく伸びるべく、環境省としても、経済産業省と連携して、積極的に努力をしてまいります。

 次に、基本法についてですが、地球温暖化対策、低炭素社会づくりに向けて、目標や手順を定め、計画的に推進することは重要と考えております。こうした背景も踏まえ、各党において基本法に関する検討が進められていることは承知しており、環境省としても、これらの動きを注視してまいります。

 次に、温暖化ガス排出抑制の中期目標については、次の三つの観点、一つ目は、科学の要請にこたえ、地球全体の温暖化対策に貢献するものであること、二番目に、国際交渉を我が国がリードし、すべての主要排出国が参加する枠組みづくりに貢献するものであること、三つ目に、経済的に実施可能であるとともに、我が国の将来の成長や低炭素革命を促す原動力となるものであること、この三つの観点から野心的な目標設定が必要と考えております。

 現在、有識者を含めたオープンな場で、科学的、総合的な見地から示された選択肢について、パブリックコメントの募集を行っているところです。今後、国民的な議論が十分になされ、適切な中期目標が決定されるよう努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣舛添要一君登壇〕

国務大臣(舛添要一君) 太田議員から、医療や介護のビジョンについてお尋ねがございました。

 我が国の医療や介護は、世界最高水準の健康寿命を達成するなど、大きな成果を上げてまいりました。

 今月、政府・与党で取りまとめられました経済危機対策においても、地域医療再生や介護機能強化に重点的に取り組むことで我が国の新たな飛躍の糧とすると盛り込まれております。

 補正予算においては、例えば地域医療の再生に関しては、都道府県の策定する二次医療圏を基本とした地域医療再生計画に基づく医療機能の強化、医師等の確保等の取り組みを支援するため、総額三千百億円を盛り込んでおります。

 厚生労働省といたしましては、こうした新たな取り組みも講じつつ、医療や介護について、国民が安心できるものとなるよう努めてまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、財政演説について質問します。(拍手)

 質問に先立ち、メキシコから世界に広がった新型インフルエンザに対して、日本政府は、国民に正確な情報提供を行い、水際で防ぐことはもちろん、国内での感染を防止する、地域の保健医療体制を緊急に整備することを強く求めるものであります。

 最近の急激な景気の落ち込みは、日本経済に深刻な衝撃をもたらし、大量の失業と倒産を発生させ、国民に大きな不安を広げています。三月に本予算が通った途端、四月に大規模な補正予算を組まなければならないというのは、本予算が欠陥予算であったことを証明しております。

 以下、具体的にお聞きします。

 第一に、十五兆円という数字はどこから出てきたのでしょうか。

 経済対策というなら、国民の生活の実態から見て何が必要か、緊急の雇用対策や中小下請企業に対する支援をどうするか、介護や医療、福祉の改善をどうするか、緊急を要する生活関連公共事業はどうするかなど、きちんと積み上げなければなりません。ところが、今回、政府は、GDP五百兆円の三%で十五兆円という決め方をしたのであります。

 日本は、当初、アメリカ政府と歩調を合わせ、GDPの二%程度の財政支出を主張しておりました。ところが、それに麻生総理が悪乗りして、GDPの三%としたのであります。このような総額先にありきの決め方は、余りにも無責任ではありませんか。

 第二に、なぜ一回限りの対策なのでしょうか。

 政府の経済危機対策では、盛り込まれる各施策が一時的な措置であることをわざわざ明記しています。

 具体的に言えば、例えば、不況下の子育て世代支援として、就学前の三歳から五歳の子供がいる家庭に三万六千円を配るという子供版給付金が提案されています。これは、なぜ一回限りなのでしょうか、なぜ三歳から五歳なのでしょうか。

 また、女性特有のがん対策が挙げられていますが、これも、ことしの対象となる人は一回だけ受けられますが、来年はありません。これで、どれだけ効果があるのでしょうか。

 これでは、理念のない、選挙向けの一時的なばらまきではありませんか。

 その一方で、母子家庭の児童扶養手当のカットは、その撤回を当事者が切実に求めているのに、なぜ、直そうとせず、無慈悲に続けるのでしょうか。生活保護の母子加算や老齢加算の削減も、なぜ直さないのでしょうか。

 高齢者の怨嗟の的となっている後期高齢者医療制度をなぜやめないのでしょうか。応益負担の名で障害者と施設に耐えがたい負担を課し、自立を破壊する障害者自立支援法をなぜ変えようとしないのでしょうか。しかも、社会保障の自然増を毎年二千二百億円削減する基本方針をなぜ続けるのでしょうか。

 以上述べた国民の切実な声を無視して一時的なばらまきを幾らやっても、不安は一層拡大するばかりであります。これまで自民党と公明党が進めてきた社会保障の制度改悪を根本的に転換することこそ、真っ先にやるべき仕事ではないでしょうか。

 第三に、なぜ大手企業にばかり大盤振る舞いするのでしょうか。

 財界、大企業は、ため込んだ膨大な内部留保を取り崩さないまま、政府に対して、さらに大規模な財政出動を求めています。麻生内閣は、この要請に唯々諾々とこたえ、昨日の国幹会議において、小泉内閣時代に白紙にしたはずの高速自動車国道計画の着工を新たに決めるなど、大型公共事業を大規模に推進しようとしております。

 大企業中心の研究開発減税は、法人税の三割の減税を四割にまで拡大し、繰越期間を最大三年に延長するという、至れり尽くせりであります。その上、十五兆円の枠組みとは別で、株価を買い支えるための借り入れに対して政府保証枠を五十兆円も用意し、さらに、産業活力再生特別措置法で、従業員五千人以上の大企業にも資金注入ができる仕組みをつくるというのであります。余りにも大企業一辺倒ではありませんか。

 赤字が続く中小企業には、まともな対策がありません。強い企業を助け、弱い企業を切り捨てる路線の転換こそ必要ではありませんか。

 また、体力のある大手企業への支援よりも、派遣切りをやめさせ、職や住居を失った労働者を救うことこそ優先されるべきであります。

 派遣期間制限の三年を超えて働かされるなど、違法派遣状態のまま派遣切りに遭った労働者がその是正を求めて申告しても、労働局の対応が余りにも冷たいという声が上がっています。詳細な書類の提出がないという理由で受理しなかったり、立会人も認めず、尋問のように聴取するケースもあります。解雇通告され、切迫した状況に置かれている労働者の立場に立ち、実情に応じた対応をすべきではありませんか。

 少なくとも、申告があったら速やかに調査に入り、必要な指導助言を行うこと。申告は口頭であっても文書であっても受理し、親身に対応すること。派遣期間制限を超えて働かせている場合、指導助言は直接雇用を進めるという立場で行うこと。これらを効果的に進めるため、労働局の体制拡充を図ること。この際、この四点に対する総理の明確な答弁を求めておきます。

 第四に、ばらまき補正のツケは、消費税の大増税で国民に回すことになるのではありませんか。

 政府の経済危機対策では、税制の中期プログラムの必要な改訂を早急に行うとしています。与謝野財務大臣は、四月十四日の記者会見で、相当な規模の補正予算になるので後始末をつけなければならないと発言しています。

 中期プログラムにも国税法の附則にも、法人税の一層の引き下げを検討すると明記しています。そうなると、すべてのツケを消費税の大増税で国民に回すことになるのではありませんか。

 中期プログラム改訂の内容は、消費税増税の目的を、社会保障財源だけでなく、赤字財政の穴埋めへと変更することではありませんか。明確にお答えいただきたい。

 財源が必要だというなら、これまで行ってきた大企業中心の過大な減税措置を直すべきであります。歳出面では、米軍への思いやり予算は今すぐ中止し、グアムの米軍基地建設と運営に日本の税金を使う計画を取りやめるべきであります。不要不急の大規模開発や道路、港湾等の公共事業を総点検し、抑制、延期、中止するなど、無駄遣いをなくすべきであります。

 今必要なことは、財政規模をむやみに膨らませるばらまき補正ではありません。がけから突き落とされたような衝撃を受けている労働者、中小企業、農林漁業者の命と暮らしを直接守る緊急対策であり、高齢者、障害者の社会保障制度を抜本的に改善することであります。

 日本経済の底辺を支えてこそ、外需依存から家計中心の内需主導型経済に切りかえることができ、新たな経済発展の軌道に乗せることができるのであります。

 このことを指摘して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 佐々木議員から十四問ちょうだいしました。

 まず最初に、補正予算額の根拠についてのお尋ねがありました。

 今般の対策は、景気の底割れを絶対に防ぎ、雇用を確保し、国民の痛みを軽減するとともに、未来の成長力強化につながるものとするとの考え方に立って策定をいたしたものであります。こうした分野の政策に重点化した結果、財政支出は十五兆円、名目GDPの三%となったものであり、総額先にありとの御指摘は全く当たらないと存じます。

 子育て応援特別手当についてお尋ねがありました。

 今般の子育て応援特別手当につきましては、現下の不況下で家計の所得が減少しつつあることを考え、平成二十一年度に限り、対象者を第一子まで拡大して実施することとしたものであります。

 対象者につきましては、幼児教育期の子育て世代を支援するという観点から、幼稚園や保育所に共通して通う年代である小学校就学前三年間の児童としたところであります。

 女性特有のがん対策についてのお尋ねもあっております。

 女性特有の子宮頸がん、乳がんは、検診を通じた早期発見が極めて重要であります。このたびの対策により、これまでがん検診を受診する機会のなかった方々にも、今後の継続的な受診を促す効果が期待できるものと考えております。

 今後も、早期発見、早期治療を基本とする女性特有のがん対策に取り組んでまいりたいと考えております。

 母子家庭の児童扶養手当や生活保護についてのお尋ねもあっております。

 母子家庭の児童扶養手当につきましては、受給期間が五年を超える場合でも、就業や求職活動などの自立を図るための活動をしている方には手当の一部支給停止を行いません。障害や病気などの事情がないにもかかわらず就業意欲が見られない方についてのみ一部支給停止を行う取り扱いとしたところであります。

 生活保護の母子加算や老齢加算につきましては、これらを含む支給総額が一般の母子世帯や高齢者世帯の平均的な消費水準を上回っていたことから段階的に廃止したものであり、適正かつ必要な見直しであったと考えておるところであります。

 なお、今回の補正予算におきましては、一人親家庭の支援や生活保護における子供の学習支援のための給付の創設など、低所得世帯の支援を強化しているところであります。

 長寿医療制度についてのお尋ねがありました。

 長寿医療制度におきましては、医療費の自己負担を現役世代より低い一割負担とし、低所得者の保険料の軽減も行うなど、高齢者が心配なく医療を受けられる仕組みとなっております。しかしながら、制度の説明不足や高齢者の方々の心情にそぐわない点があったものと考えております。

 しかし、この制度をなくせば問題が解決できるというようには全く考えておりません。制度を廃止するのではなく、先般の厚生労働省の検討会や与党の取りまとめを踏まえ、高齢者を初め、広く国民に納得していただけるよう、さらに具体的な検討を進め、よりよい制度への見直しを実施してまいりたいと考えております。

 障害者自立支援法についてお尋ねがありました。

 障害者自立支援法の利用者負担につきましては、法律上、サービス量の一割負担が原則、いわゆる応益負担となっておりますが、所得に応じて負担上限額を大幅に引き下げた結果、実質的には既に応能負担となっておるのは御存じのとおりです。

 今国会に提出をした改正法案におきましては、負担能力に応じた負担が原則であることを法律上明記するなどの見直しを行うことといたしております。

 社会保障の自然増削減についてお尋ねがありました。

 日本の財政が極めて厳しい状況である中で、社会保障分野におきましても、医師確保対策や必要な対応を行いつつ、歳出改革の基本的方向性は維持することが必要であろうと考えております。

 今後とも、少子高齢化の進行に伴い社会保障費の増大は確実であろうと存じます。安定財源の確保と並行して、社会保障の機能強化を図っていくとともに、コスト削減、また給付の重点化などの効率化を進めて、社会保障を安心なものとしていかなければならないと考えております。

 社会保障制度に関するお尋ねもありました。

 近年の一連の改革は、高齢化の進展などに伴い社会保障費が増大する中で、制度の持続可能性を確保するために必要なものであったと考えております。

 一方、社会保障の現状を見ますと、医師不足、介護人材の不足など、国民が不安を抱く課題に直面しているのも事実であります。

 そのため、今般提出した補正予算におきましては、現在の経済情勢を踏まえつつ、中長期的な成長などの観点も考慮し、緊急雇用対策の拡充強化や地域医療の再生、介護機能の強化などに関する施策に取り組むことといたしております。

 さらに、昨年末策定した中期プログラムに基づき、持続可能で安心できる社会保障の構築とその安定財源の確保に取り組んでまいります。

 大企業への支援についてのお尋ねがありました。

 御指摘の対策は、広く日本経済の底割れを防ぐために講ずるものであります。

 また、今般の経済危機対策では、緊急保証枠の拡大などの資金繰り対策や、物づくり中小企業の支援などの、専ら中小・小規模企業などを対象としたきめ細かい対策も講ずることといたしております。

 政府としては、平成二十一年度補正予算の成立後、できるだけ速やかにこれらの対策を実施し、早期の景気回復とともに、中長期的な成長を図ってまいります。

 中小企業対策についてのお尋ねがありました。

 我が国の産業、雇用、暮らしを支えております約四百二十万に及びます中小・小規模企業を守るということは、政府の最も重要な政策の一つであろうと考えます。

 二十一年度の補正予算案におきましても、現下の不況に苦しむ中小・小規模企業への資金繰り融資や、また弱い立場にあります下請企業への対策の強化を図っておるところであります。

 派遣切りについてのお尋ねがありました。

 いわゆる派遣切りに伴う雇いどめや解雇が発生していることについては大変憂慮いたしております。このため、労働契約法に関する啓発指導や、労働者派遣法に違反する事業主に対する指導監督を行っているところです。

 また、職や住居を失った方々に対しては、昨年末以来、住宅・生活支援のための資金貸し付けなどを実施してきたところであります。

 さらに、今回の補正予算案におきましては、訓練・生活支援給付や、また住宅手当の創設を行うことにより、職業訓練、再就職、生活の支援を充実強化していくことといたしております。

 労働者派遣法に基づく申告についてのお尋ねがありました。

 都道府県労働局に対しましては、派遣労働者から申告として受理した事案については他の事案に優先して取り扱うこと、また、申告者に対しては親身に対応を行うこと、派遣先が派遣期間制限に違反している場合には、労働者の雇用の安定を図りつつ是正を行うことを基本として対応するよう指示しているところであります。

 都道府県労働局における指導監督に当たる人員につきましては、今年度、拡充したところではありますが、今後とも、労働者派遣法違反が疑われる事案につきましては、最大限の努力を行い、厳正、的確に対処してまいりたいと考えております。

 今般の対策と消費税の関係についてのお尋ねがありました。

 今般の対策は、日本の危機的な経済状況にかんがみ、将来の成長力を高める施策により民需の自律的回復を目指すためのものであり、ばらまきとの御指摘は当たらないと存じます。

 また、財政に対する責任と社会保障に対する国民の安心強化を図るため、消費税を含む税制抜本改革を行う必要があり、今後、所得、消費、資産などの税体系全般について見直しを進めてまいりたいと考えております。

 最後に、財源として、企業向け減税措置の見直しや、在日米軍駐留経費負担などの取りやめや、公共事業への歳出の見直しを行うべきではないかとのお尋ねがありました。

 法人課税のあり方につきましては、我が国企業が国際競争力を強化し、それにより経済社会の活性化を実現することが重要と認識をいたしております。先般成立をいたしました税制改正法の附則に示された方向性に沿って、今後、具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。

 在日米軍駐留経費負担につきましては、日本の安全保障にとって不可欠な日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を確保するためのものであります。また、在沖縄米海兵隊のグアムへの移転は、沖縄の負担を軽減するためにも、ぜひとも実現させるべきものだと考えております。

 公共事業の実施に当たっては、厳しい財政事情のもと、真に必要な事業に絞り込むよう、事業の特性に応じ事業評価を実施しております。こうしたことによって、透明性を確保しながら適切な執行を確保していく必要があると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 佐々木議員の御質問にお答えをします。

 中期プログラムの改訂の内容についてのお尋ねがありました。

 中期プログラムについては、持続可能な社会保障とその安定財源確保という目的に沿って、必要な見直しをすることになると考えております。

 その具体的内容については、例えば、中長期的に講ずべき社会保障の機能強化と対策で講じた社会保障関連措置との関係などの論点がございますが、いずれにせよ、安心社会実現会議や経済財政諮問会議においても御議論をいただきながら、今後、検討を進めてまいるつもりでございます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、財政演説及び補正予算案に対して、麻生総理及び与謝野大臣に質問します。(拍手)

 質問に入る前に、メキシコで発生した新型インフルエンザに対し、政府は、侵入を防ぐことはもちろんでありますが、地域の医療体制を早急に整備するよう強く要請して、質問に入ります。

 総理は、バブル崩壊後の対応を引き合いに、堂々と日本の経験として語れるとするとともに、大胆な対策を打つことで世界で最初に不況から脱却することを目指す、このように言ってきました。しかし、〇九年度当初予算が成立して間もない時期の追加経済対策の策定は、当初予算が欠陥予算であるだけでなく、三段ロケット論の甘さを示していると言わなければなりません。経済の見通しの誤りについて、改めて総理に伺います。

 IMFの予測でも、日本は震源地であるアメリカやヨーロッパ以上に最悪の落ち込みになるとされています。欧米よりも輸出に依存する度合いが強いという以上に、新自由主義的な構造改革によって、日本の経済、社会がずたずたにされ、内需の基盤が掘り崩されてきました。

 総理は、小泉・竹中改革路線が危機への体力を奪ったことについてどうお考えか、お聞かせください。

 今回の経済危機対策は、ワイズスペンディングと言いながら、選挙目当てで規模ばかりが先行し、道路や新幹線を初め、族議員や各省庁の要求がどんどん積み上げられた水膨れの対策となっています。

 経済危機対策にソマリア沖・アデン湾における海賊対策が盛り込まれ、自衛隊派遣ありきで補正予算に計上されています。しかし、戦争と犯罪取り締まりは違います。軍事的対応では問題は決して解決せず、海賊対策は海の警察である海上保安庁の役割である、我が党はこのように主張してまいりましたが、マラッカで果たしたようなソフトパワーの支援こそ強化すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 一般会計の総額は、補正によって百兆円を超えることになります。四割強を借金で賄う異常事態となりました。一一年度に基礎的財政収支を黒字にという政府目標は達成不可能であります。どのように財政再建を図るのか。

 財政運営は危険水域に入ってきたのではありませんか。政府、自治体の債務残高は八百兆円を超える状況になりました。国内総生産比、GDPの一七〇%に達しています。また、二〇〇九年度当初予算の執行を大幅に前倒しし、さらに補正予算を実施に移した後、二〇〇九年度後半の需要減についてどう対応しようというのか。与謝野大臣に伺います。

 子育て応援特別手当について伺います。

 年齢を限定した一回限りの支援は、少子化対策ですか、それとも選挙対策ですか。安心して子供を産み育てる環境こそ構築すべきではないのですか。与謝野大臣も一年限りで終わるはずがないと反対したと報じられています。

 大臣、特別手当の拡充をなぜ認めたのか、どういう効果を期待しているのか、お答えください。

 地域活性化・公共投資臨時交付金、地域活性化・経済危機対策臨時交付金が交付されることになりますが、地方への配慮というのであれば、地方交付税を抜本的に増額するとともに、直轄事業負担金を廃止すべきではないかと考えますが、与謝野大臣の見解を伺います。

 低炭素革命も、本気でやろうとしているのか疑問です。高速道路の割引も、フェリーや鉄道など地球に優しい公共交通にしわ寄せが出ています。エコカーの購入促進や省エネ家電の買いかえ促進なども、業界支援策にすぎないだけでなく、CO2を増加させ、低炭素革命へ逆行するものではありませんか。

 総理、低炭素革命とまで言うのであれば、国土の七割を占めるCO2吸収源たる森林対策の抜本的強化や、公共交通の再生、活性化にもっと大きく踏み出すことが必要ではありませんか。

 さて、昨年末に定めたばかりの中期プログラムが早くも改訂されます。総理が、景気回復後、消費税を引き上げると述べております。また、与謝野大臣も、たくさん使ったので、それを取り戻す必要があると発言していることから、まさに、史上最大の対策のツケを将来の消費税率引き上げで国民が払うことになります。今は配れるだけ配っておいて、三年後に永続的な消費税アップで取り返そうというのでは、消費刺激にも格差是正にも逆効果だと考えますが、総理と与謝野大臣の見解を伺います。

 総理、老後や雇用に不安を抱えていては、現在の消費を抑えざるを得ません。しかし、ILO理事会へ報告された資料では、失業者のうち二三%しか雇用保険の失業給付を受け取っていないとされ、日本の制度の薄っぺらさが明らかになっています。G8労働大臣会合の議長総括も、人々への投資が、生産性を高め、回復を奏功させるための不可欠な手段であるとしております。

副議長(横路孝弘君) 重野安正君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単にお願いします。

重野安正君(続) 雇用と社会保障、環境分野に重点的に財政出動すべきだと考えますが、総理の所見を伺います。

 今回の危機は、市場原理主義の限界を示すものであり、今こそパラダイムシフトが必要です。オーストラリアのケビン・ラッド首相は、雑誌「世界」五月号への寄稿の中で、世界金融危機からの脱出は、社会民主主義以外に道はないと強調しています。日本も、憲法第二十五条の生存権、第二十七条の労働の権利義務などを政治や生活に生かし、実現していくべきであります。

 大洪水よ、我が亡き後に来たれとばかりに、国民の血税をその場しのぎのびほう策としてばらまくのではなく、長期的視野に立った制度改革や根本からの政策転換が必要です。

 政権の延命を続けるのではなく、これまでの失政のツケを重く受けとめ、直ちに総選挙で信を問うべきであることを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 重野議員の御質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、経済見通しと追加経済対策の策定についてのお尋ねがありました。

 昨年末に平成二十一年度予算を編成した後、世界金融危機と世界同時不況が深刻度を増したのは、御存じのとおりです。景気は予想をはるかに超えて急速に悪化し、これまでの動きは、政府経済見通しで想定していた成長経路を大幅に下回っております。

 こうした中で、経済の底割れリスクを回避し、安心と活力を実現するとともに、未来への成長力強化につなげるため、政府・与党は経済危機対策を決定したところであります。

 平成二十一年度補正予算などを早期に成立させることにより、経済危機対策を速やかに実施していくことが重要だと考えております。

 小泉改革についてのお尋ねがありました。

 これまで取り組んできた改革は、日本の経済と社会の活性化に一定の成果を上げてきたと私は認識をいたしております。

 しかし、改革によるひずみ、格差の拡大や地方の疲弊が指摘をされ、また、新しい課題、世界金融危機などが生じているのは御存じのとおりです。

 このため、私は、改革という基本路線というものは堅持しつつ、ひずみへの配慮と新しい課題への解決に取り組むことにより、改革を進化させてまいりたいと考えております。

 ソマリア沖・アデン湾における海賊対策についてのお尋ねがありました。

 この海域で多発する海賊行為から日本国民の人命、財産を保護することは、政府の最も重要な任務であり、急を要する課題であります。

 同時に、日本は、ソマリア情勢の安定や周辺国の海上取り締まり能力向上のための支援など、これまでのアジア海域における海賊対策の経験を生かしつつ実施してきております。

 今般の補正予算におきましても、海賊対策のための訓練センターや情報共有センターの設立などの支援を計上したところであります。

 低炭素社会に関してのお尋ねもありました。

 国土の七割を占める森林につきまして、二酸化炭素の吸収機能などを確実に発揮させるため、間伐や、間伐材などの木材資源の徹底した利用に取り組んでいるところであります。

 また、公共交通機関は、マイカーと比べて単位輸送量当たりの二酸化炭素排出量が極めて小さい交通サービスであり、バス、鉄道、また旅客船といった公共交通の活性化、再生化に積極的に取り組んでいく考えであります。

 なお、エコカーや省エネ家電の促進も二酸化炭素排出削減に資すると考えております。

 消費税についてのお尋ねがありました。

 今般の対策は、将来の成長力を高める施策が盛り込まれており、民需の自律的回復を促すものであります。

 他方、税制改正法附則におきましては、消費税の全税収は、確立・制度化した年金、医療及び介護の社会保障給付と少子化対策の費用に充てることにより、すべて国民に還元することといたしております。

 税率などの具体的な実施のあり方につきましては、この附則に沿って今後検討してまいりたいと考えております。

 最後に、雇用、社会保障及び環境分野への財政出動についてのお尋ねがありました。

 世界的な経済危機の中で、雇用や生活の安定を図り、生活者の安心を確保するとともに、未来への成長につなげることは大変重要だと考えております。

 このため、今回の補正予算におきましては、非正規労働者に対する新たなセーフティーネットの構築などの雇用対策のほか、健康長寿・子育てや未来への投資として、低炭素革命などの対策に積極的に取り組むことといたしております。

 残余の質問に関しましては、関係大臣より答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 重野議員の御質問にお答えいたします。

 財政再建についてのお尋ねがありました。

 世界的な金融危機と経済悪化を受け、当面は、景気回復を最優先とする一方で、これまでの歳出改革の基本的な方向性を維持し、めり張りのある予算配分を行います。

 また、昨年末に閣議決定した中期プログラム等に従い、消費税を含む税制抜本改革の着実な具体化等を図ってまいります。

 いずれにせよ、財政の中期的な持続可能性確保に向けた考え方を国民にお示しする必要があり、六月の基本方針に向けて検討をしてまいります。

 次に、補正予算とその効果についてのお尋ねがありました。

 経済危機対策の経済効果につきましては、本年後半から着実に効果があらわれ、平成二十一年度の実質GDP成長率を一・九%程度押し上げるとともに、平成二十二年度以降にもその効果が及ぶと考えております。本対策を速やかに実行するため、補正予算及び関連法案の早期成立をお願い申し上げます。

 次に、子育て応援特別手当についてのお尋ねがありました。

 今般、経済危機対策においては、現下の不況下で全体の個人所得が減少しつつあることにかんがみ、臨時異例の措置である子育て応援特別手当を平成二十一年度に限り第一子まで拡大して実施するとされたところであります。不況下の子育て世代への支援として一定の効果を期待しております。

 次に、地方交付税を抜本的に増額するとともに、直轄事業負担金を廃止すべきではないかとのお尋ねがありました。

 地域活性化・公共投資臨時交付金は、各自治体への配分額を追加公共事業等の地方負担額をベースに算定し、追加の直轄事業負担金を含め、実質的に地方の負担軽減を図り、補正予算債との組み合わせによって自治体の追加的な取り組みも期待できる、地方交付税における不交付団体にも適切に配分できるというメリットがございます。

 したがって、臨時特別の地方への配慮策として、御指摘の地方交付税増額や直轄事業負担金廃止よりも、同交付金は適切な仕組みと考えております。

 次に、消費税についてのお尋ねがございました。

 今般の対策は、経済の下支えに必要な施策に加え、将来の成長力を高める施策等が盛り込まれており、民需の自律的回復を促すものとなっております。

 他方、消費税の見直しは、少子高齢化のもとで国民の安心を確かなものとするため、社会保障の安定財源を確保する観点から行うものであり、税制改正法附則に沿って、今後検討を進めていくことが必要であると考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 亀井久興君。

    〔亀井久興君登壇〕

亀井久興君 国民新党の亀井久興であります。

 私は、国民新党・大地・無所属の会を代表して、与謝野大臣の財政演説に対し、限られた時間ながら、麻生総理に質問いたします。(拍手)

 以前より、麻生総理は、今の日本の不況は大したことはない、日本を世界で最初にこの不況から脱出させることを目指すと言われてきました。また、昨年度の第一次補正と二次補正、それに本年度予算を三段ロケットと称し、これらによって我が国がこの大不況から脱出できるかのように発言してこられました。

 去る一月、私は、総理の施政方針演説に関連して平成二十一年度補正について質問した際も、本予算で景気回復に対応できるとの強い自信を示されました。しかし、各種の指標を見ても、我が国の経済の落ち込みは世界の中で最も激しく、また、特に地方経済は惨たんたる状況にあり、麻生総理の認識と大きくかけ離れております。

 今回、政府は、いわゆる真水十五・四兆円を含む総額五十六・八兆円の経済対策を打ち出しましたが、これは、当初は想定されていなかった対策であります。我が国の不況、とりわけ地方を取り巻く深刻な経済状況を踏まえ、私どもは、本予算を組み替えて、より大胆な対策を、より迅速に打ち出すべきだと主張してまいりましたが、政府・与党は、三段ロケットで十分だとして、聞く耳を持ちませんでした。

 にもかかわらず、今回、新たな経済対策を打ち出したわけでありますが、私は、さきの日米首脳会談や金融サミットを境にして、総理の発言が大きく変わり始めたように思います。

 そこで、麻生総理にお尋ねいたします。

 今回、新たな経済対策をまとめられたのは、いつものように、政府の景気認識が著しく甘かったからでしょうか、それとも、米国を初め諸外国と何らかの約束をされたからでしょうか。今回、新たな経済対策を打ち出した理由と背景について、自己反省を含め、御答弁を求めます。

 次に、麻生総理は、今回の経済対策を史上最大規模のものだと豪語されています。確かに真水の総額や事業規模はそのとおりでありますが、私どもは、対策の中身そのものと対策に込められた政治のメッセージこそが重要であると考えております。

 今回の経済対策の中身を見ますと、エコカーへの買いかえ補助や省エネ家電の購入補助、羽田空港の滑走路延伸、家族応援手当の実施などがありますが、最も必要な個人の可処分所得をふやす政策が極めて不十分だと思います。景気回復には、何よりも個人消費を伸ばすことが求められ、そのためには、所得減税などによって、家計を豊かにして、購買意欲を強めることが不可欠であります。

 しかし、今回の経済対策には、家計を豊かにするような施策は盛り込まれておりません。さらに、再来年度からの消費税率の引き上げが予想されれば、個人消費が伸びるはずはありません。

 そこで、麻生総理にお尋ねします。

 この史上最大規模の経済対策によって、景気の動向を大きく左右する個人消費はどのくらい押し上げられると試算されているのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

 また、経済対策に明確な政治のメッセージが込められていないことについても申し上げたいと思います。

 しばしば、今回の不況とその対応は十一年前と比較されます。今回の対策は、真水の額においても、また事業規模においても、小渕内閣当時よりもはるかに大きいわけですが、十一年前は、対応の迅速さと大胆さに加え、やはり財政構造改革法を凍結させたことによる効果が極めて大きかったと思います。二兎を追うことをやめ、景気回復に全精力を集中したことが功を奏したと言えるわけですが、麻生内閣は、今日に至るまで骨太方針二〇〇六を凍結しておりません。

 皆様も御承知のように、韓非子の中に、どのような盾も突き抜く矛と、どのような矛も防ぐ盾を吹聴する商人の話が出てまいります。骨太方針二〇〇六を堅持したまま、当面は景気対策、中期的には財政再建、中長期的には経済成長と繰り返される麻生総理の言葉から、この矛盾話を思い起こさずにはいられません。

 景気対策、経済対策の中身の再検討に加え、私は、政府の思い切ったけじめと政策転換、そして明確な政治のメッセージがない限り、追加対策は効果を上げず、我が国の経済はますます悪化していくと思います。

 我が国経済の回復のため、また地方や生活者のため、地方や福祉を切り捨てる骨太方針二〇〇六と明確に決別し、文字どおり景気回復に全力を集中するお考えはないのか、いま一度麻生総理にお尋ねいたします。

 最後に、与謝野大臣の三ポスト兼務についてお尋ねいたします。

 昨年の九月、麻生内閣の発足に際し、中川財務大臣は金融担当大臣を兼務し、ことしの二月からは与謝野経済財政担当大臣が三つの役割を兼ねています。

 与謝野大臣の体力的な負担もさることながら、かつて断行された金融行政の大蔵省からの分離や中央省庁改革の趣旨からしても、財政規律を守ろうとする財務省の長と経済成長の牽引役になるべき経済財政担当大臣の兼務による弊害は極めて大きいと思うわけであります。

 骨太方針二〇〇六を堅持したままの財政出動は、まさにブレーキとアクセルを同時に踏むものでありますが、その可視的象徴こそが財務大臣と経済財政担当大臣の兼務であります。

 一人が三大臣を兼務することについて、麻生総理はどのようにお考えなのでしょうか。今後も三大臣兼務体制を続けられるのでしょうか。お答えを求めます。

 以上の諸点について、麻生総理に明確かつ明瞭にお答えいただくことを重ねて強く求め、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 亀井議員の質問にお答えをいたします。

 まず、新たな経済対策を打ち出した理由と背景について御質問がありました。

 昨年末に平成二十一年度予算を編成した後、世界金融危機と世界同時不況が深刻度を増したのは御存じのとおりです。景気は予想を超えて急速に悪化し、これまでの動きは、政府経済見通しで想定していた成長経路を大幅に下回っております。

 こうした中で、経済の底割れリスクを回避し、安心と活力を実現するとともに、未来への成長力強化につなげるために、政府・与党は経済危機対策を決定したところであります。

 平成二十一年度補正予算などを早期に成立させることにより、経済危機対策を速やかに実施していくことが重要であろうと考えております。

 個人消費の押し上げについてのお尋ねがありました。

 本対策は、平成二十一年度の実質GDP成長の上げ幅、成長率を一・九%程度押し上げると考えております。そのうち、雇用対策や低燃費車、省エネ製品の普及促進を図る施策などによる民間消費の増加は、実質GDP成長率を〇・七%押し上げる効果があろうと見込んでおります。

 骨太方針二〇〇六と景気回復についてのお尋ねがありました。

 我が国経済の急速な悪化や雇用情勢の悪化といった状況に対応し、経済危機対策を速やかに実施してまいりたいと考えております。一方、大胆な財政出動をするからには、中期の財政責任を果たさなければならないと考えております。

 いずれにせよ、政府といたしましては、経済財政運営の基本的な考え方をお示しすべく、今後検討を進めてまいります。

 最後に、与謝野大臣の兼務についてのお尋ねがありました。

 現在、国民生活にとって極めて重要な経済危機対策を取りまとめ、これを一刻も早く実施できるよう、補正予算及び関連法案の審議をお願いいたしております。こうした大事な局面におきましては、与謝野大臣には当面この仕事を続けていただく必要があろうと考えております。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  麻生 太郎君

       総務大臣  鳩山 邦夫君

       法務大臣  森  英介君

       外務大臣  中曽根弘文君

       財務大臣

       国務大臣  与謝野 馨君

       文部科学大臣  塩谷  立君

       厚生労働大臣  舛添 要一君

       農林水産大臣  石破  茂君

       経済産業大臣  二階 俊博君

       国土交通大臣  金子 一義君

       環境大臣  斉藤 鉄夫君

       防衛大臣  浜田 靖一君

       国務大臣  甘利  明君

       国務大臣  小渕 優子君

       国務大臣  河村 建夫君

       国務大臣  佐藤  勉君

       国務大臣  野田 聖子君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  松本  純君

       財務副大臣    竹下  亘君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君


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