衆議院

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第38号 平成21年6月11日(木曜日)

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平成二十一年六月十一日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十五号

  平成二十一年六月十一日

    午後一時開議

 第一 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(内閣提出)

 第二 公文書等の管理に関する法律案(内閣提出)

 第三 エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案(内閣提出)

 第四 石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会、内閣提出)

 第六 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第七 国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件

 第八 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(内閣提出)

 日程第二 公文書等の管理に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会、内閣提出)

 日程第六 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第七 国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件

 日程第八 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件

 衆議院憲法審査会規程案(議院運営委員長提出)

 沖縄科学技術大学院大学学園法案(内閣提出)

 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(沖縄及び北方問題に関する特別委員長提出)


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長望月義夫君。

    ―――――――――――――

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔望月義夫君登壇〕

望月義夫君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮することが地域によっては困難な状況となっていることにかんがみ、タクシー運転者の労働条件の悪化等の問題が発生している地域において、タクシー事業の適正化及び活性化を推進するための措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、国土交通大臣は、供給過剰等の状況に照らして、タクシー事業の適正化及び活性化を推進することが特に必要であると認める地域を特定地域として指定することができること、

 第二に、特定地域において、地方運輸局長、関係地方公共団体の長、タクシー事業者、地域住民等により組織される協議会が地域計画を作成することができること、

 第三に、地域計画に即してタクシー事業者が実施する取り組みに係る計画について、国土交通大臣による認定制度を設けること

などであります。

 本案は、去る四月二十一日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、五月十三日金子国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、二十二日質疑に入り、六月二日には参考人から意見聴取を行い、十日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、本案に対し、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び国民新党・大地・無所属の会の五会派共同提案により、タクシー事業の運賃及び料金の認可基準に関する道路運送法第九条の三第二項第一号の規定の適用については、当分の間、能率的な経営のもとにおける適正な原価に適正な利潤を加えたものとすることなどを内容とする修正案が提出され、本修正案について趣旨説明を聴取しました。次いで、採決いたしました結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 公文書等の管理に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、公文書等の管理に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長渡辺具能君。

    ―――――――――――――

 公文書等の管理に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔渡辺具能君登壇〕

渡辺具能君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、公文書等の管理に関する基本的な事項として、行政文書等の作成・保存、国立公文書館への移管等についての原則を定めるとともに、歴史資料として重要な公文書等が国立公文書館等において適切に保存され、利用に供されるために必要な措置等を講じるものであります。

 本案は、去る五月二十一日本委員会に付託され、翌二十二日小渕国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、二十七日から質疑に入り、二十九日には参考人から意見を聴取するなど慎重な審査を行いました。

 六月十日、本案に対し、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案により、目的に、「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであること」を明記すること、行政機関の職員の文書作成義務について、その範囲の具体化及び明確化を図るための規定を整備すること、行政文書ファイル等の廃棄についての内閣総理大臣の同意に関する規定を整備すること等を主な内容とする修正案が提出され、提出者から趣旨説明を聴取いたしました。次いで、原案及び修正案を一括して質疑を行い、同日質疑を終局し、採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第三、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案、日程第四、石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長東順治君。

    ―――――――――――――

 エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案及び同報告書

 石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔東順治君登壇〕

東順治君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案について申し上げます。

 本案は、エネルギーの安定的かつ適切な供給の確保を図るとともに、化石燃料の利用に伴って発生する温室効果ガスを削減することが重要な課題となっていることにかんがみ、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用を促進するための措置を講じようとするものであります。

 次に、石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律等の一部を改正する法律案につきましては、資源の枯渇のおそれ及び環境への負荷が小さい非化石エネルギーの開発及び導入の促進が必要であることにかんがみ、従来の石油代替施策を見直し、対象を石油代替エネルギーから非化石エネルギーに改めるための措置を講じようとするものであります。

 両案は、去る四月二十三日本会議において趣旨の説明及び質疑が行われ、同日本委員会に付託されました。六月三日二階経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、参考人から意見を聴取するなど慎重な審査を重ね、六月十日質疑を終了いたしました。

 質疑終局後、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党の三会派から、エネルギー供給構造高度化法案に対し、この法律の施行後二年を経過した際、太陽光の円滑な利用の確保に関する取り組みの状況について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすることを主な内容とする修正案が、他方、日本共産党からは、非化石エネルギー源の名称を再生可能エネルギーに改めるとともに、再生可能エネルギー源から得られる電気の買い取り制度の創設等を主な内容とする修正案がそれぞれ提出されました。

 それぞれの修正案について趣旨の説明を聴取した後、討論を行い、順次採決を行った結果、日本共産党の提案に係る修正案は否決され、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党の三会派の提案に係る修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、代エネ法改正案に対し、日本共産党から、非化石エネルギー源の名称を再生可能エネルギーに改めること等を主な内容とする修正案が提出されました。

 採決を行った結果、日本共産党の提案に係る修正案は否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、エネルギー供給構造高度化法案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案を一括して採決いたします。

 日程第三の委員長の報告は修正、日程第四の委員長の報告は可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会、内閣提出)

 日程第六 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第七 国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件

 日程第八 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件

議長(河野洋平君) 日程第五、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第六、領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第七、国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件、日程第八、国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件、右四件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長河野太郎君。

    ―――――――――――――

 刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件及び同報告書

 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔河野太郎君登壇〕

河野太郎君 外務委員長の河野太郎でございます。

 ただいま議題となりました四件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本日は、メモを参照させていただきます。

 まず、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定の主な内容は、日本、香港両者は、共助の請求及び諾否の決定権限を持つ中央当局をそれぞれ指定し、両中央当局の間の直接の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続について共助を実施すること等であります。

 次に、領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の主な内容は、領事機関の公館は不可侵とし、領事機関の長等の同意がある場合を除き、公館に立ち入ってはならないこと等であります。

 次に、国際通貨基金における投票権及び参加を強化するための国際通貨基金協定の改正及び国際通貨基金の投資権限を拡大するための国際通貨基金協定の改正の主な内容は、国際通貨基金の機能を強化するため、総投票権数に占める基本票数の割合を現在の二・一%から五・五〇二%に増加させること、投資勘定等において保有する通貨を基金が決定する投資のために使用できるようにすること等であります。

 最後に、国際復興開発銀行協定の改正の主な内容は、国際復興開発銀行の機能を強化するため、総投票権数に占める基本票数の割合を現在の二・八六%から五・五五%に増加させること等であります。

 日本・香港刑事共助協定は、第百七十回国会に提出されましたが、今国会に継続審査となり、一月五日外務委員会に付託されました。また、日本・中国領事協定、国際通貨基金協定の改正及び国際復興開発銀行協定の改正は、六月四日に外務委員会に付託されたものであります。

 以上四件は、六月五日中曽根外務大臣から提案理由の説明を聴取し、十日質疑を行い、質疑終了後、採決を行いました。その結果、日本・香港刑事共助協定及び日本・中国領事協定はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。

 国際通貨基金協定の改正及び国際復興開発銀行協定の改正について、日本共産党は、米国を初め、先進国中心の運営が改められていないことなどを理由として反対いたしましたが、いずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第五及び第六の両件を一括して採決いたします。

 両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

 次に、日程第七及び第八の両件を一括して採決いたします。

 両件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

谷公一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、衆議院憲法審査会規程案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 谷公一君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 衆議院憲法審査会規程案(議院運営委員長提出)

議長(河野洋平君) 衆議院憲法審査会規程案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長小坂憲次君。

    ―――――――――――――

 衆議院憲法審査会規程案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小坂憲次君登壇〕

小坂憲次君 ただいま議題となりました衆議院憲法審査会規程案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 一昨年の第百六十六回国会において日本国憲法の改正手続に関する法律が成立し、国会法の一部が改正されたことに伴い、第百六十七回国会召集日に各議院に憲法審査会が設置されております。審査会に関する事項は、各議院の議決によりこれを定めるものとされており、本規程案は、原則として従来の憲法調査会規程を踏襲しつつ、議案の審査権の付与に伴う変更を加え、審査会の構成や議事手続等について整備するものであります。

 以下、規程案の内容を順次御説明申し上げます。

 第一に、審査会は、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、日本国憲法の改正案の原案、日本国憲法に係る改正の発議または国民投票に関する法律案等を審査するものとしております。

 第二に、審査会は、五十人の委員で組織するものとしております。

 第三に、審査会は、会期中であると閉会中であるとを問わず、いつでも開会することができるものとしております。

 第四に、審査会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、会長の決するところによるものとしております。

 第五に、審査会は、審査または調査のため必要があるときは、公聴会を開くことができ、憲法改正原案については、公聴会を開かなければならないものとしております。

 その他、政府との関係、傍聴、会議録、事務局等について従前と同様の規定を設けるほか、議案審査に伴い必要な衆議院規則の規定を準用することとしておりますが、それ以外の細則については、審査会の議決によりこれを定めることといたしております。

 本規程案起草に当たり、議院運営委員会においては、衆議院憲法調査会等における調査審議の経緯等につきまして、中山太郎元会長を初め、憲法調査会、日本国憲法に関する調査特別委員会の各党の関係者から意見を聴取するなど、慎重かつ熱心な協議を行い、本日の委員会において起草し、提出することを決定したものであります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。順次これを許します。園田康博君。

    〔園田康博君登壇〕

園田康博君 民主党の園田康博でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました議院運営委員長提出の衆議院憲法審査会規程案につきまして、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 本案は、自民、公明両党が、議院運営委員会に動議を出し、野党各党の意見に何ら耳をかすことなく、一方的に採決を行って委員長提出としたものであり、民主党としては、常識的に憲法の特徴を踏まえれば、国会内における広範な合意形成が要請されるにもかかわらず、再度繰り返された強引な手法とこのような手続自体が不適切なものとして、強く抗議をいたします。

 さて、この憲法審査会規程問題の前提となっている国民投票法は、今から二年ほど前、憲法調査特別委員会での審議打ち切りと強行採決によって衆議院で可決し、その後、参議院での審議を経て成立したものであります。

 それまで、憲法調査特別委員会や、その事実上の前身である憲法調査会では、高い御見識を持っておられる中山太郎会長の主導のもと、憲法についての各党派、各個人の考えの違いはあっても、国会内の広範な合意に基づいて、円満、円滑に議論や手続を進めるという運営が維持されてまいりました。

 憲法とは、国家統治の組織・作用の基本法、すなわち、その時々の政権の政策や理念をあらわしたものではなく、主権者たる国民が為政者に対して、その公権力行使の基本的事項について縛るルールであり、それゆえ、政権がかわってもお互いに従うべきルールであるという認識が各委員によって共有されていたからであります。

 この場をおかりして、中山太郎委員長の大変高い御見識と御努力に心から敬意を表するものであります。

 このようなコンセンサスを覆し、憲法問題をあえて参議院選挙の争点に掲げ、国民投票法の審議にまで対立的な議会運営の手法を強引に持ち込んだのが、当時の安倍首相でありました。

 言うまでもないことでありますが、国民の正当な選挙で選ばれた私たち国会議員は、憲法の命令を受ける名あて人であり、国会の、特に政権を担おうとする政党がそれぞれ共通のルールとして従うのが憲法であるという定義や、憲法改正の発議には衆参両院の三分の二以上の賛成を要するという要件を考えると、単に一院の過半数ではなく、政権がかわってもお互いに従うというルールであるということから、この憲法の特徴を踏まえ、その手続に関する議論を進めるには、国会内のより広範な合意に基づいて進めることが求められるものであります。

 このようなことを考えれば、国会での憲法論議は、与野党各党派の合意に基づく共同作業としてしか行い得ないことは明らかであります。現在のように、与党が国民投票法案の強行採決を何ら反省も謝罪もせず、信頼関係を欠いた状態のまま形式的に憲法審査会をスタートさせたとしても、国会での共同作業としての憲法論議は、今後は一歩も進まないのではないかと危惧をいたします。

 換言すれば、与党の皆さんは、そもそも、円満な憲法論議を通じて各会派の広範な合意点を築いていこうというつもりはなく、ただ選挙が近いからパフォーマンスとしてやっているだけなのではないでしょうか。私たちには、そのようにしか見えません。

 次に、規程案の内容に関して申し上げます。

 国民投票法案の衆議院での強行採決の後、参議院では、慎重な審議の末、与党も合意して十八項目に及ぶ附帯決議が付されました。この中には、本院の憲法審査会規程を制定する上でも、十分検討し、反映すべき重要な論点が含まれています。

 以下、一つ一つ申し上げます。

 第一に、審査会の委員数及び委員割り当てについてであります。

 参議院の附帯決議第十六項は、憲法審査会の審査手続及び運営に当たって少数会派に十分配慮することを求めております。もし、委員選任を各会派の所属議員の比率によるといたしますと、少数会派は、その議席数によっては委員を出せないなど、不利になる可能性があります。憲法改正原案の審議は、その効果が改正後長期に及ぶ可能性が高く、単年度の予算を審議する予算委員会よりも委員数を多くするなどして、委員割り当てについて十分配慮する必要があると考えます。

 第二に、憲法審査会の定足数についてであります。

 附帯決議第十六項は、また、憲法改正原案の重要性にかんがみ、定足数を明定することを求めております。憲法改正発議に総議員の三分の二以上の賛成が必要とされていることも考慮いたしますと、たとえ原案審査段階ではあっても、例えば定足数を三分の二以上に引き上げることも検討すべきではないでしょうか。

 第三に、憲法改正原案の表決についてであります。

 附帯決議第十六項は、さらに、憲法改正原案の重要性にかんがみ、議決要件を明定することを求めております。これについても、憲法改正発議に総議員の三分の二以上の賛成が必要とされていることを考慮いたしますと、原案の議決要件も三分の二以上に引き上げることが適当であるという考えも、説得力を持つものであると考えております。

 第四に、憲法改正原案についての公聴会の充実策であります。

 附帯決議第十七項は、憲法改正の重要性にかんがみ、憲法審査会においては、国民の意見を反映するよう、公聴会の実施に努めることを求めております。規程案では、公聴会を開かなければならないとしておりますが、憲法改正の重要性に照らせば、ただ一回国会で公聴会を開けばよいというものではなく、例えば全国各地で複数回開催するということを義務づけることも検討すべきであると考えております。

 第五に、憲法改正原案についての請願の取り扱いについてであります。

 附帯決議第十七項は、また、憲法改正の重要性にかんがみ、請願審査の充実等に努めることを求めております。従来の国会請願の取り扱いのように、会期末に形式的に審査をするというものではなく、例えば、会期中、複数回、請願の紹介議員が憲法審査会で趣旨説明を行い、質疑をするなど、実質的な審査を行い、憲法改正原案についての請願に対しては、手厚く国民の声にこたえられる体制を整備すべきではないでしょうか。

 これら五点を含む参議院の附帯決議は、与党も合意したものであり、衆議院憲法審査会規程を制定するに当たっても、与党として、当然、これを真摯に検討し、規程に反映させる責務があると考えますが、今回、規程案を議院運営委員長提出とするに際して、これらの点をどのように検討されたのか、あるいはしなかったのか、何の説明もいただいておりません。ましてや、審査会規程はつくるが人選は凍結するということに、一体何の意味があるのでしょうか。

 国会という機関において、衆参合同で両院が円満かつ同時にスタートできるような環境を整えることへの努力が見られません。このような誠実さを欠くお粗末な提案では、議論の入り口にすら立つことはできないと言わなくてはなりません。

 以上、国民投票法制定時の強行採決によって、みずから信頼関係を毀損したことについての、まずは、安倍元総理のほか、関係者の真摯な自己批判と謝罪、参議院で与党も合意した附帯決議中、審査会規程にかかわる決議事項の具体化についての誠実な検討の形跡が何ら見られないままでの本規程案の議決については到底容認できないため、断固反対する旨を表明し、私の討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 今井宏君。

    〔今井宏君登壇〕

今井宏君 自由民主党の今井宏です。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました憲法審査会規程の制定に関し、賛成の立場から討論を行うものであります。(拍手)

 平成十九年の第百六十六回国会において憲法改正手続法が成立したことにより、国会法の改正に基づいて、第百六十七回国会の召集日に憲法審査会が設置され、審査会に関する事項については、各議院の議決で定めることになっております。

 憲法審査会の構成や議事手続を定める規程は、本来であれば審査会設置と同時に整備すべきものですが、この第百六十七回国会は参議院通常選挙後に短期間の会期で閉会したため、規程の制定に伴う十分な議論ができないまま、現在に至っております。

 このように、既に設置されている憲法審査会の運営ルールが制定されることなく、二年にわたって放置された立法府の不作為、さらには憲法論議を停滞させた立法府の無責任を解消するため、一日も早く憲法審査会規程を制定すべきであります。

 そもそも、憲法審査会の設置は、与党だけでなく、野党第一党である民主党もその必要性を認めていたはずであります。第百六十四回国会に衆議院に提出された民主党案と第百六十六回国会に参議院に提出された民主党案は、いずれも国会法を改正して憲法審査会を設置すべきとしており、後に成立した憲法改正手続法と同一の内容でした。

 去る四月二十七日の議院運営委員会におきまして、中山太郎前憲法調査会長は、国会法改正部分に関する与党案及び民主党案の規定内容は一字一句同じであり、審査会規程で規定すべき事項も、法案提出会派である自民、公明、民主三党間で完全な合意が形成されていたと発言しておられるところでございます。

 野党の諸君は、憲法改正手続法は強引に採決されたと主張されておりますが、憲法調査会や特別委員会では、多くの公述人や参考人から幅広く意見を聴取し、調査会にあっては四百五十一時間を超える総調査、特別委員会にあっては百九時間を超える総審査を積み上げて法案を成立させております。その間、中山前会長は、野党第一党の幹事から調査会長代理を指名し、少数会派に対しても幹事会出席や発言の機会を保障するなど、その運営に関して可能な限りの配慮をされてきたところであります。

 民主党は、衆議院では不正常な採決がされた、当時の安倍総理と責任者は謝罪すべきと主張される一方で、参議院側の特別委員会では、民主党からの強い要請で、憲法審査会の運営について留意すべき点を自民、公明、民主三党による共同提案で附帯決議に盛り込んで議決しております。すなわち、民主党は、強行採決で信頼関係が途絶えたとしながらも、憲法審査会の開催を前提に、与党とともに憲法改正手続法の成立に応じており、党の主張と行動が全く一致していないのであります。

 もとより、憲法論議は、与野党の対峙を超えた大局的、国民的な見地からなされるべきものであります。中山太郎前会長からは、特別委員会が大阪で地方公聴会を開催した折、中野寛成元副議長が意見陳述の中で、憲法論議は国権の最高機関である国会の場で行うべきであり、その議論に当たっては拙速や党利党略は避けるべきである、そのときに必要なのは与党の度量と野党の良識であるといった趣旨の発言をされたと披露されました。全く同感であります。

 今回、憲法審査会規程を制定することは、決して拙速や強行ではありません。昨年来、議院運営委員長や与党側から何度も丁寧に要請を重ねており、民主党からも、さきの議院運営委員会において、規程がないことそれ自体は遺憾である旨の発言がありました。また、議院運営委員会においては、与野党から四名の関係議員を招致して御発言をいただき、さらに各党が意見を表明する機会を四回にわたりつくってまいりました。

 その意見表明にあっては、憲法を変えるべきとの声は少ないとの主張もございました。しかしながら、憲法を議論する場をつくることと実際に憲法改正に至ることとは別の問題であって、国会法の改正に基づいて憲法審査会が設置されている以上、その運営ルールである規程を制定することは至極当然なことであります。

 また、野党が主張される平和や人権などに関する憲法の精神を生かしていくためにも、早々に議論の場をつくり、国民的な関心を喚起していくことこそ、国会が果たすべき重要な役割です。憲法論議を、後退させるのではなく、一層広げていくためにも、審査会規程の制定は欠かせないのであります。

 さらに、憲法にかかわる問題は与野党の合意で進めよと主張されますが、民主党は、規程の制定は必要だとし、鳩山代表も議論は始めて結構だと発言しておられる一方で、共産党は、根拠法である憲法改正手続法そのものを廃止すべきと主張され、社民党も、規程の採決は行うべきではないと述べられております。これでは、野党の間ですら意見が統一されていないではありませんか。

 民主党は、審査会は衆参両院で同時に進めるべきと主張されていましたが、小坂議運委員長が提案された、規程は制定するが、委員の選任は凍結し、参議院で審査会規程が制定されるのを待って選任するという現実的な解決策にすら耳を傾けようとはしませんでした。

 現状のように、憲法審査会の構成及び委員の選任もできず、議事手続について定める規程が制定されない限り、憲法審査会を実質的に発足させることはできません。このように、審査会が設置されていながら、実際には機能しないまま、国会での憲法論議が停止状態に陥っているのみならず、議会における違法状態が続いている無責任な状況は、与党として、これ以上看過することができません。

 国家国民と議会政治に責任を持つ国会議員の良識に照らし、一刻も早く立法府の不作為と無責任を解消するため、既に二年前に設置されている憲法審査会の運営ルールを定める規程を制定し、与野党間で真摯に憲法論議を尽くしていくべきものであると申し上げ、私の賛成討論とさせていただきます。(拍手)

議長(河野洋平君) 笠井亮君。

    〔笠井亮君登壇〕

笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、憲法審査会規程の制定に反対の討論を行います。(拍手)

 なぜ今、審査会の規程づくりか。

 与党は、改憲手続法が成立したのに憲法審査会規程をつくらないのは立法不作為だと繰り返します。これは、憲法に改正規定がありながら手続法がないのは立法不作為だという、手続法をつくる際に述べていた理屈と同じであります。しかし、憲法審査会規程がないことで国民の権利が侵害された事実はどこにもありません。立法不作為論は全く成り立たないのであります。理屈にならない理屈で再び採決を強行するなど言語道断であることを厳しく指摘するものです。

 そもそも、改憲手続法のねらいは、九条改憲の条件づくりにほかなりません。

 二〇〇五年秋、憲法調査特別委員会で憲法改正国民投票制度についての審議が始まると、自民、民主など手続法をつくろうとする政党が、相次いで憲法九条を中心とする改憲案や改憲構想を発表しました。その中で、自民党は、憲法九条二項を削除し、自衛軍の保持と集団的自衛権の行使を含む、海外での武力行使を可能とする規定を盛り込んだ改憲案を発表したのであります。当時の法案提出者が主張した公正中立なルールづくりではなかったことは明瞭であります。

 改憲手続法は、内容上も、不公正で反民主的な法律であります。

 国の最高法規である憲法の改正は、主権者である国民の意思が最大限に酌み尽くされることが必要不可欠です。ところが、手続法は、どんなに投票率が低くても国民投票が成立し、有権者の二割台、一割台の賛成でも改憲案が通る仕組みとなっているのであります。公務員、教育者の国民投票運動を不当に制限し、改憲案の広報や広告が改憲推進勢力に有利なものであるなど、多岐にわたって重大な問題点を持ったまま成立が強行された欠陥法なのであります。

 今、自民・公明与党が規程制定を急ぐのは、国民投票法の施行が来年五月に迫るもとで、憲法審査会を一刻も早く始動させ、改憲原案づくりに着手し、国民投票法施行後、いつでも改憲原案を提出できるようにしたいからにほかなりません。総選挙が間近なとき、国会で多数を握っているうちに改憲の条件を整えようとすることは断じて許せません。

 二年前の本会議場で、与党が安倍総理の改憲スケジュールに沿って改憲手続法を強行成立させたとき、私は、憲政史上に重大な汚点を残す暴挙であると批判しました。その後、二〇〇七年の参議院選挙で改憲ノーの国民の審判を受け、安倍政権が退陣を余儀なくされたことは記憶に新しいところです。今回、審査会規程の制定を再び強行すれば、憲政史上にさらに大きな汚点を重ねるものであることを厳しく指摘するものです。

 国会における改憲の動きは、一九九七年の憲法調査委員会設置推進議員連盟の設立以来、憲法調査会、憲法調査特別委員会と十二年に及び、改憲勢力の周到な準備のもとに進められてきたかに見えます。

 しかし、いかに国会で改憲の機運を盛り上げようとねらっても、国民は、それをきっぱりと拒否してきました。国民は、憲法改正を求めてはいません。今日に至るまで、改憲勢力が主眼とする九条改憲を求めるような国民の声は、どの世論調査でも、一貫して少数であり、多数になったことは一度もないのであります。

 今日、政治がなすべきことは、貧困と格差を拡大させてきた構造改革路線を改め、雇用の確保、社会保障の充実など、憲法二十五条の生存権が保障される社会をつくることです。オバマ米大統領が核兵器のない世界を呼びかけている今こそ、非核平和の世界に向けて、九条を持つ被爆国日本ならではの役割を発揮することであります。

 憲法を守り、生かしていくことこそ時代の要請であり、憲法審査会は始動させるのではなく、その根拠法である改憲手続法は廃止すべきであることを強く主張して、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 大口善徳君。

    〔大口善徳君登壇〕

大口善徳君 公明党の大口善徳でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました憲法審査会規程案につきまして、早期制定を求め、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 まず、賛成する理由について述べます。

 憲法審査会は、国会法第百二条の六の規定によって、平成十九年八月に衆議院に設置されましたが、その下位の法規範である衆議院憲法審査会規程が整備されないまま、既に二年近くが経過しております。法律を制定した国会自身が、その法律の施行に必要な下位規範をつくらないという違法状態をこのまま続けることは許されません。

 衆参両院における憲法審査会の設置は、平成十九年五月に成立した、日本国憲法の改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法の中で定められています。国民投票法は来年五月十八日まで施行されませんが、憲法審査会の規定の部分は先行して施行されました。その理由は、国民投票法施行までの三年間、いま一度、落ちついた環境で、現行憲法について、果たして改正が必要なところはどこなのかを一から議論をし、合意形成の努力をしてみようとの考えがあったからです。

 すなわち、国民投票法ができると、すぐに具体的な形式を持った憲法改正案が提出され、国民投票が行われるのではないかとの不安を持つ人もおられることから、公明党は、国民投票法の施行を三年間凍結することを主張しました。この三年の間に、憲法審査会は、改正するならどこをどう改めるかあるいは改めないのかの幅広い議論をすることができたわけです。

 しかし、私たちが憲法審査会を動かすために規程を制定するよう幾ら求めても、野党の方々には今日まで応じてもらえませんでした。かけがえのない貴重な議論の時間が約二年間も失われることになりました。まことに残念でなりません。

 ところで、国民投票法を制定すること自体、また、憲法審査会を設置すること自体が改憲につながるかのような反対論があります。

 日本国憲法は、世界でも有数の硬性憲法であり、憲法改正は、衆参両院の総議員の三分の二以上で発議され、さらに、国民投票で過半数を得られないと実現しません。これは、現実の国会の状況、政治の状況を見ても、そう簡単に乗り越えられるハードルではありません。かように、憲法改正のハードルは高く、国会の多数派が強行採決でどんどん進めることができるような手続ではありません。国民的コンセンサスが生まれるまで、真剣に国会で議論を尽くすことが要請されます。

 今回の規程の制定は、憲法審査会という中立公正な議論の場を設けようとする手続の整備の話であって、特定の立場に立った、憲法改正を有利にしたり不利にしたりということがないということは明らかであります。憲法改正反対を言う余り、かたくなに憲法審査会を現状のまま放置させる姿勢は、憲法について真摯な議論が必要と考える多くの国民の思いを無視することにつながるのではないでしょうか。

 なお、憲法改正国民投票法が本院において不正常な形で採決されたことから、その政治的けじめがつかなければ規程制定を行うべきでないという意見もあります。しかし、憲法改正国民投票法の制定経緯を虚心坦懐に振り返るならば、その調査審議は、実に丁寧に行われたものであることが理解できるはずです。

 中山太郎議員が、憲法調査会長、憲法調査特別委員長として、護憲、改憲、論憲、加憲といった各会派の立場の違いを超えて、与野党が極めて円満に議論を進め、衆議院での議論は百九時間にも及ぶ濃密なものでありました。しかも、発言時間や質疑時間の割り当て等においても、少数会派に最大限の配慮をした上で行われたものでありました。最終局面で、わずかに採決に当たっての合意こそ得られなかったものの、きちんと手順を踏んで採決が行われたものだったのであります。

 このことは、衆議院からの送付を受けてさらなる議論が進められた参議院において、自民、民主、公明の三党が一致して十八項目もの附帯決議を付した上で、憲法審査会を始動させることを前提として円満な法案採決がなされたことからも、今、正常な状況にあることは明白であります。

 憲法審査会は、こうした憲法調査会以来の貴重な超党派的運営の先例を受け継ぎ、さらに発展させた憲法の議論の場となるべきです。それが大多数の国民の願いでもあると考えます。

 ここで、あえて公明党の憲法改正をめぐる立場に触れてみたいと思います。

 公明党は、かねてから、憲法改正のあり方として、加憲という立場をとっております。すなわち、現行憲法をすぐれた憲法であると高く評価し、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の憲法三原理を堅持しつつ、環境権やプライバシー権など、時代の進展に伴って提起されている新たな理念、原則を加え、補強し、二十一世紀型憲法を志向していく考え方です。

 憲法全体を一気につくりかえるのではなく、時代が要請するテーマに応じて関連する憲法規定を補強するこの加憲という方法であれば、国民投票法が定める投票方法にも合うだけでなく、テーマごとに議論を深めて、その成果を改正案として発議するため、全部改正を議論するよりも、はるかに国民のコンセンサス形成に役立つと思います。

 米国、フランスといった立憲主義の先進国も、加憲あるいは加憲型の改正を基本にしています。加憲こそ、民主的かつ現実的な方式であると確信します。

 公明党は、加憲論議に当たって、一、国民主権をより明確にする視点、二、新たな人権条項を加えて人権を確立する視点、三、平和主義のもとで国際貢献を進める視点、四、環境を重視する視点、五、地方分権を確立する視点の五点を重視しています。

 公明党は、平和主義に関する憲法九条については、戦争放棄を定めた第一項、戦力不保持を定めた第二項をともに堅持した上で、自衛隊の存在や国際貢献のあり方を加憲の論議の対象として慎重に検討しているところです。

 また、憲法には、環境という言葉はどこにも用いられておりません。しかし、現在、人類が普遍的に取り組まなければならない課題として、地球環境問題あるいは気候変動問題が取り上げられております。このかけがえのない地球をどのようにして次の世代に残していくか、持続可能性という考え方を国家の基本法たる憲法の中に明示的に書き込み、環境立国としての我が国の進路を明確にすることは、実に有効なことではないでしょうか。

 また、情報という言葉も憲法にはありませんが、インターネットを通じて情報がはんらんする中で、自己の情報やプライバシーを自分できちんとコントロールすることができる権利というものが必要になってきていると思います。

 さらに、生存権、憲法二十五条にプログラム規定として定められているものですが、少子高齢化の進行、金融危機に端を発する経済の停滞の中で、これを、より実質化し、人間が人間らしく生きられる権利ということで再定義し直すことが現在求められていると思います。また、人間の安全保障という視点からこれをとらえ直すなども含めて、この第二十五条を、単なるプログラム規定という位置づけから脱却させていくことも必要ではないでしょうか。

 幾つかの加憲に向けての私どもの視点を述べましたが、各党各人のさまざまな考え方があろうと思います。既に憲法改正試案をまとめたグループと議論すら拒否する方々など、その間の距離は相当離れています。

 ただ、先に五年かけて衆参で取り組んだ憲法調査会の結論は、改正が必要だとの意見が支配的だったわけですから、今度は、一歩踏み込んで、どこをどう変えるのかについて、政党間の協議を論じる局面に事態は変化したのだと思います。

 そうした憲法論議の重要な場の一つとして憲法審査会を位置づけ、その規程を早期に制定することで議論の場を整えるべきであると私は訴え、賛成の討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 辻元清美君。

    〔辻元清美君登壇〕

辻元清美君 社民党の辻元清美です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、衆議院憲法審査会規程の制定に反対の立場で討論をいたします。(拍手)

 本日、この本会議で採決を強行することは、立法府として、二年前と同じ過ちを繰り返すことであり、これは前回以上に愚かな行為であると、まず申し上げなければなりません。

 皆さん、もうお忘れでしょうか。二年前、国民投票法案の与党案が、この本会議場が騒然となる中で強行採決されたときのことをもう一度思い出していただきたいと思います。

 当時、与党推薦の参考人で改憲推進の立場の方からも、力任せに進めればこの国が割れてしまうと非難の声が上がる中での採決でした。新聞でも、廃案にして出直せ、時期も運びもむちゃくちゃだと批判されました。

 当時の総理大臣は安倍晋三さんで、私の内閣で憲法改正をなし遂げるという発言を繰り返していました。それに対して、憲法は国会案件であるのに行政府の総理大臣が音頭をとるのは三権分立の意味を理解しているのだろうかという懸念の声が与党側からも出る中での強行採決ではなかったですか。

 この過程は、憲法改正に賛成、反対の立場にかかわりなく、憲政史上恥ずべき行為であったということを皆さんに思い返していただきたいと思います。このような政府・与党の強引なやり方に対して、国民は参議院選挙でノーを突きつけたのではないですか。

 憲法という最高法規を論ずるに当たって最も大切なことは、主権者たる国民の民意と議会のコンセンサスです。これが、立憲主義の国の国際的な常識です。憲法は、今の与党の私物ではありません。

 衆参両院での調整もなく、さらに、衆議院の任期が残り三カ月という時期に、憲法審査会規程の制定を強行する必要性はどこにあるのでしょうか。まさか、政権交代の前に既成事実をつくってしまえという意図ではないと信じたいところですが、そのような浅はかな行為ととられても仕方がないと申し上げなければならないのは、情けない限りです。皆さん、いかがでしょうか。

 何をそんなに急いでいるのでしょうか。先ほど自民党の登壇者から、憲法を論ずるに当たって大切なのは与党の度量と野党の良識だという発言が紹介されました。与党だけで本日採決する、それに突っ走ろうとすることが、与党の度量なんでしょうか。与党の焦りではないですか、皆さん。堂々とやりましょうよ。

 最後に、立法府の良識を取り戻そうと呼びかけて、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

谷公一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、沖縄科学技術大学院大学学園法案とともに、沖縄及び北方問題に関する特別委員長提出、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案は委員会の審査を省略して、両案を一括議題とし、委員長の報告及び趣旨弁明を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 谷公一君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 沖縄科学技術大学院大学学園法案(内閣提出)

 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(沖縄及び北方問題に関する特別委員長提出)

議長(河野洋平君) 沖縄科学技術大学院大学学園法案、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告及び趣旨弁明を求めます。沖縄及び北方問題に関する特別委員長前原誠司君。

    ―――――――――――――

 沖縄科学技術大学院大学学園法案及び同報告書

 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 ただいま議題となりました両法律案につきまして申し上げます。

 まず、沖縄科学技術大学院大学学園法案につきまして、本委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、沖縄科学技術大学院大学の設置及び運営に関し必要な事項を定めることにより、沖縄を拠点とする国際的に卓越した科学技術に関する教育研究の推進を図り、もって沖縄の自立的発展及び世界の科学技術の発展に寄与することを目的とするものであります。

 本案は、去る五月二十七日本委員会に付託され、翌二十八日佐藤沖縄及び北方担当大臣から提案理由の説明を聴取し、本日質疑を行いました。

 質疑終局後、本案に対し、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案により、国は、予算の範囲内において、学園に対し、業務に要する経費について、その二分の一を超えて補助することができることに改めるとともに、十年間に限り業務に要する経費の二分の一を超えて補助できるものとする規定を削除すること等を内容とする修正案が提出され、その概要を聴取した後、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、本案は修正議決すべきものと議決した次第でございます。

 以上、御報告申し上げます。

 次に、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及びその主な内容を御説明申し上げます。

 我が国固有の領土である北方領土が、旧ソ連に不法に占拠されてから今日まで、六十有余年の歳月が経過いたしました。これまで、政府による北方領土返還交渉を初め、北方領土の返還実現に向け、さまざまな取り組みが行われてまいりましたが、いまだ領土問題は解決に至っておりません。

 この間、北方領土への墓参に加え、いわゆるビザなし交流と呼ばれる四島交流や自由訪問がそれぞれ開始され、交流等事業が定着した一方、元島民の高齢化や北方領土返還運動参加者の減少傾向といった経年による変化、北方領土隣接地域における活力の低下がうかがえるようになりました。

 本案は、このような情勢の変化を踏まえ、所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は、法律の目的に、北方領土が「我が国固有の領土」であることを明記することを初め、北方地域元居住者の定義の見直し、交流等事業の推進、返還運動の後継者の育成、特別の助成の見直し、北方地域の領海における漁業者の操業の円滑な実施の確保等について規定するものであります。

 本案は、本日の沖縄及び北方問題に関する特別委員会におきまして、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、沖縄科学技術大学院大学学園法案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

 次に、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣  中曽根弘文君

       経済産業大臣  二階 俊博君

       国土交通大臣  金子 一義君

       国務大臣  小渕 優子君

       国務大臣  佐藤  勉君


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