衆議院

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第42号 平成21年6月25日(木曜日)

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平成二十一年六月二十五日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十九号

  平成二十一年六月二十五日

    午後一時開議

 第一 商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律案(内閣提出)

 第二 クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案(内閣提出)

 第三 経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第五 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 第六 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件

 第七 平成十九年度一般会計歳入歳出決算

    平成十九年度特別会計歳入歳出決算

    平成十九年度国税収納金整理資金受払計算書

    平成十九年度政府関係機関決算書

 第八 平成十九年度国有財産増減及び現在額総計算書

 第九 平成十九年度国有財産無償貸付状況総計算書

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第六 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件

 日程第七 平成十九年度一般会計歳入歳出決算

      平成十九年度特別会計歳入歳出決算

      平成十九年度国税収納金整理資金受払計算書

      平成十九年度政府関係機関決算書

 日程第八 平成十九年度国有財産増減及び現在額総計算書

 日程第九 平成十九年度国有財産無償貸付状況総計算書

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律案、日程第二、クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案、日程第三、経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長東順治君。

    ―――――――――――――

 商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律案及び同報告書

 クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案及び同報告書

 経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔東順治君登壇〕

東順治君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律案について申し上げます。

 商店街を取り巻く環境は厳しさを増し、各地でいわゆるシャッター通りが増加している一方で、地域の柱である商店街に対しては、住民の交流の場を提供し、地域コミュニティーを維持発展させる生活インフラとして、改めて期待が高まっております。

 本案は、こうした状況を踏まえ、各商店街における、その持ち味を生かしたさまざまな取り組みを支援することにより、商店街の再活性化を図ろうとするものであります。

 その主な内容は、商店街が行う、地域住民のニーズに応じた事業活動に対し、無利子融資の拡充など、必要な資金調達を支援する措置等を定めるものであります。

 本委員会においては、六月十七日二階経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、委員各位はいずれも商店街の活性化を願いつつ、活発な議論を展開しました。大臣からも実に熱意あふれる答弁がなされるなどして、十九日質疑を終了いたしました。質疑終局後、採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 次に、クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案について申し上げます。

 我が国は、クラスター弾による一般市民の被害をなくすための国際協力を推進する見地から、昨年十二月、クラスター弾に関する条約に署名を行いました。本案は、条約の内容を的確に実施するため、条約の対象となるクラスター弾等について、製造の禁止や所持の規制などの措置を講ずるものであります。

 本委員会においては、六月十九日二階大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、昨日質疑を終了いたしました。質疑終局後、採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 次に、経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、日本国とスイス連邦との間の自由な貿易及び経済上の連携に関する協定を初めとする経済連携協定が確実に実施されるよう、経済産業大臣による認定を受けた輸出者が原産地証明書をみずから作成することができる制度を新たに設けるなど、締結国等に輸出される物品に係る原産地証明書の作成、発給等を我が国の輸出者にとって利用しやすいものとするための措置を講ずるものであります。

 本委員会においては、昨日二階大臣から提案理由の説明を聴取し、同日質疑を行い、質疑終局後、採決を行った結果、同じく全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 三案を一括して採決いたします。

 三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

議長(河野洋平君) 日程第四、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第五、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長河野太郎君。

    ―――――――――――――

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔河野太郎君登壇〕

河野太郎君 外務委員長の河野太郎でございます。

 ただいま議題となりました両件につきまして、委員会の審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。

 日本・ブルネイ租税協定及び日本・カザフスタン租税条約は、いずれも、これまで我が国が諸外国と締結してまいりました租税条約と同じように、人的交流、経済的交流の中で発生する国際的な二重課税を回避することを目的としております。

 主な内容は、

 まず第一に、事業所得に対する課税は、企業が相手国において支店等の恒久的施設を通じて事業を営む場合に限り、かつ当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ、相手国で課税すること、

 第二に、投資交流を促進するために、配当や利子等の投資所得に対する源泉地国課税を軽減すること

等を主な目的としております。

 両件は、いずれも六月十八日外務委員会に付託され、十九日中曽根外務大臣より提案理由の説明を聴取し、二十四日質疑の上、採決をいたしましたところ、いずれも賛成多数で承認すべきものと決しました。

 なお、日本共産党は、我が国の多国籍企業は既に国の内外において税の優遇措置を受けており、本協定並びに条約を締結することにより、優遇措置がさらに積み上がり、税の公平負担原則の観点から容認しがたいという理由で反対をいたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両件を一括して採決いたします。

 両件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第六 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件

議長(河野洋平君) 日程第六、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長望月義夫君。

    ―――――――――――――

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔望月義夫君登壇〕

望月義夫君 ただいま議題となりました承認を求めるの件につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本件は、平成十八年十月十四日より本年四月十三日まで北朝鮮船籍のすべての船舶の入港を禁止することとする閣議決定について、その後の我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、本年四月十日に入港禁止の期間を平成二十二年四月十三日まで一年延長する変更をしたため、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、国会の承認を求めるものであります。

 本件は、六月十七日本委員会に付託され、同日金子国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、昨二十四日質疑を行い、採決いたしました結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第七 平成十九年度一般会計歳入歳出決算

      平成十九年度特別会計歳入歳出決算

      平成十九年度国税収納金整理資金受払計算書

      平成十九年度政府関係機関決算書

 日程第八 平成十九年度国有財産増減及び現在額総計算書

 日程第九 平成十九年度国有財産無償貸付状況総計算書

議長(河野洋平君) 日程第七、平成十九年度一般会計歳入歳出決算、平成十九年度特別会計歳入歳出決算、平成十九年度国税収納金整理資金受払計算書、平成十九年度政府関係機関決算書、日程第八、平成十九年度国有財産増減及び現在額総計算書、日程第九、平成十九年度国有財産無償貸付状況総計算書、右各件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。決算行政監視委員長川端達夫君。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔川端達夫君登壇〕

川端達夫君 ただいま議題となりました平成十九年度決算外二件につきまして、決算行政監視委員会の審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、決算等の概要について申し上げます。

 一般会計決算額は、歳入八十四兆五千億円余、歳出八十一兆八千億円余であり、特別会計決算総額は、歳入三百九十五兆九千億円余、歳出三百五十三兆二千億円余であります。国税収納金整理資金は、収納済額六十二兆七千億円余、一般会計の歳入への組み入れ額等六十一兆九千億円余であり、政府関係機関決算総額は、収入二兆六千億円余、支出二兆円余であります。

 次に、国有財産増減及び現在額総計算書の年度末現在額は、百五兆千億円余であり、国有財産無償貸付状況総計算書の年度末現在額は、一兆円余であります。

 本委員会におきましては、第百七十回国会において財務大臣から概要説明を聴取し、今国会において、総括質疑、分科会審査、重点事項審査、全般的審査を行い、昨二十四日締めくくり総括質疑を行った後、委員長から平成十九年度決算に関する議決案を提出いたしました。

 以下、議決案の内容を申し上げます。

  本院は、平成十九年度決算について、予算執行の実績とその効果、会計検査院の検査報告などに重点を置いて審議を行ってきたが、さらに改善を要するものが認められるのは遺憾である。

 一 予算の執行状況などからみて、所期の目的が十分達成されるよう、なお一層の努力を要する事項などが見受けられる。

   次の事項がその主なものであるが、政府は、これらについて特に留意して適切な措置を執り、その結果を次の常会に本院に報告すべきである。

  1 世界的な金融・経済危機から脱却するために、景気回復を最優先としつつ、年金・医療・介護・子育てをはじめ、社会保障制度の抜本改革を早急に実行する一方、不要不急の経費の見直しや無駄の削減による歳出改革を継続し、中長期的には財政の健全化に努めるものとする。

  2 地域経済を立て直すためにその実情に応じた地域の再生を推進すべきである。

    また、国直轄事業の費用負担の在り方については、積算等の透明性を確保すべきであり、改善に向けた見直しを早急に行うべきである。補助金等の使用状況について、地方自治体において不適正経理が行われていた事案が多数報告されたことを踏まえ、地方自治体に改善を求めるべきである。補助金等に係る国の画一的な基準設定が地域の実情に応じた柔軟な対応を妨げている側面もあることも踏まえ、補助金等の基準の弾力化等の見直しを早急に行うべきである。同時に、直轄事業や補助事業の在り方そのものについて、国と地方の役割分担を明確化し、国から地方に事務事業、権限及び財源を移譲する等、抜本的な地方分権改革を行う中で、見直すべきである。

    さらに、道路特定財源の一般財源化の趣旨を踏まえ、道路に係る歳出の改革を図り、適正に使用すべきである。

  3 年金記録問題への対応に当たっては、発生原因の徹底究明と再発防止に全力で取り組むとともに、標準報酬等の遡及訂正事案への対応等を可及的速やかに進め、正しい年金記録に基づく年金の支払いに万全を期すべきである。

  4 医師不足等の地域医療の課題に対応するため、医師、看護師、医療事務者等地域医療の人的基盤を構築するとともに、地域の医療体制が損なわれることのないよう公的病院等に対する手厚い支援に努めるべきである。

    現在の介護現場においては労働条件の悪化により人材不足が深刻化するなど危機的な状況にある。高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するため、介護労働者の賃金向上を含めた処遇改善策を積極的に推進すること等により、介護を担う優れた人材を確保するとともに大規模な雇用創出を図るべきである。

    また、保育の充実、幼児教育の推進、乳幼児医療の充実など子育て支援・少子化対策を強力に実施すべきである。

  5 高齢化が進む原子爆弾被爆者の早期救済を図るため、原爆症認定集団訴訟の解決に向けて適切に対応するとともに、原爆症認定を迅速化し、認定対象疾病の拡大の検討を可及的速やかに進めるべきである。

  6 世界に先駆けた低炭素・循環型社会を構築するため、太陽光発電及び次世代自動車の普及を促進するとともに、マルチモーダルシフトを強力に推進し、これらの環境対策を通じた景気回復・雇用創出を積極的に後押しすべきである。

    また、情報通信技術を活用したテレワークは、ワーク・ライフ・バランスの実現、人口減少・少子高齢化時代における労働力確保、低炭素社会の実現の観点から有効なものであり、より一層の推進を図るべきである。

  7 宇宙政策の推進に当たっては、政治主導を貫き、政府全体が一丸となって、総合的な施策を強力かつ計画的に推進できるよう、予算配分及び組織・人的体制を充実させるべきである。その際、省益を排し、国家戦略としての宇宙政策を推進するにふさわしい人材を積極的に登用すべきであり、その趣旨を体した能力・実績主義に基づく人事政策により徹底すべきである。また、科学技術の大型プロジェクトについては、経費の効率性及び成果の活用を検証し、国民に対する説明責任を果たしていくべきである。

  8 在日米軍関係施設の設置・移転等に関する日米間の協議及びその実行並びに各種の経費負担関係については、米国に対して国民・地域住民の視点を踏まえた主張を行うなどとともに、国民に対する説明や情報公開を十分に行い、地域住民の理解を得られるよう努めるべきである。

  9 消費者行政については、消費者被害の予防や被害の救済の視点から、関係行政機関は民間事業者に対する指導・監督を適切に行うとともに、これらの関係行政機関に対する監視が適切に行われるべきである。

 二 会計検査院が検査報告で指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。

   政府は、これらの指摘事項について、それぞれ是正の措置を講じるとともに、綱紀を粛正して、今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。

 三 決算のうち、前記以外の事項については異議がない。

  政府は、今後予算の作成及び執行に当たっては、本院の決算審議の経過と結果を十分考慮して、行財政改革を強力に推進し、財政運営の健全化、行政の活性化・効率化を図るとともに、政策評価等の実施を通じた効果的かつ効率的な行政を推進し、もって国民の信託にこたえるべきである。

 以上が、議決案の内容であります。

 次いで、採決を行った結果、平成十九年度決算は多数をもって議決案のとおり議決すべきものと決し、国有財産増減及び現在額総計算書並びに国有財産無償貸付状況総計算書は、いずれも多数をもって是認すべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第七の各件を一括して採決いたします。

 各件を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、各件とも委員長報告のとおり議決いたしました。

 次に、日程第八につき採決いたします。

 本件の委員長の報告は是認すべきものと決したものであります。本件を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり議決いたしました。

 次に、日程第九につき採決いたします。

 本件の委員長の報告は是認すべきものと決したものであります。本件を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり議決いたしました。

     ――――◇―――――

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣甘利明君。

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) このたび、政府から提出いたしました国家公務員法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 昨年六月十三日に公布された国家公務員制度改革基本法に基づき、国家に奉職するという高いモラル、みずからの職務への高いモチベーション、高い能力を持つ国家公務員を育成、活用し、あわせて、時代の変化、世界の変化に行政と国家公務員が機動的に対応し、その時々の行政課題に迅速、果断に取り組むことができるような体制を内閣のもとに構築する等のための国家公務員制度改革を早急に実施する必要があります。

 このような観点から、政府は、内閣による人事管理機能の強化等を図るため、人事の一元管理に関する規定を創設し、内閣官房の所掌事務及び内閣人事局の設置に関する規定の整備を行うとともに、議院内閣制のもと、政治主導を強化するため、国家戦略スタッフ及び政務スタッフの設置に関する規定の整備等を行うこととする本法律案を提出する次第であります。

 次に、本法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、内閣による人事管理機能の強化等を図るため、幹部職員等の一元管理に関する規定を創設することといたします。

 具体的には、幹部職への任用は、内閣官房長官が適格性審査を行った上で作成する幹部候補者名簿に記載されている者の中から、任命権者が、内閣総理大臣及び内閣官房長官との協議に基づいて行うものといたします。

 また、管理職員の職責を担うにふさわしい能力及び経験を有する職員を政府全体として総合的かつ計画的に育成する仕組みとして、幹部候補育成課程を設け、各大臣等が、内閣総理大臣が定める基準に従い運用することといたします。

 あわせて、幹部職員については、幹部職員の任用を適切に行うため必要がある場合には、「勤務実績がよくない場合」等に該当しない場合にあっても、一定の要件を満たす場合には、その意に反して、直近下位の職制上の段階に属する幹部職へ降任することができることとする等の措置を講ずることとしております。

 これらの措置を講ずるに当たっては、会計検査院、人事院、検察庁、警察庁、実施庁の職員等について、職務の特殊性を踏まえた適用除外規定、特例規定等を整備することといたします。

 第二に、時代の変化、世界の変化に行政と国家公務員が機動的に対応し、その時々の行政課題に迅速、果断に取り組むことができるような体制を内閣のもとに構築するため、内閣官房に内閣人事局を設置することといたします。

 内閣人事局は、国家公務員制度の企画及び立案に関する事務、中央人事行政機関たる内閣総理大臣の所掌する事務に関する事務、国家公務員の総人件費の基本方針及び人件費予算の配分の方針の企画及び立案並びに調整に関する事務、行政機関の機構及び定員に関する審査に関する事務等をつかさどることといたします。

 あわせて、採用試験及び研修の企画、任用、級別定数の設定及び改定を人事院から内閣総理大臣に移管することとし、これらに関する事務を内閣人事局に担わせることといたします。中央人事行政機関たる人事院から移管する機能については、移管後は、内閣が政令を定めるに当たっては、あらかじめ人事院の意見を聞くこととするほか、人事院による報告要求や是正指示等、必要な措置を講ずることといたします。また、内閣総理大臣は、人事院規則の制定改廃に関し、人事院に対し意見を申し出ることができることとします。

 第三に、議院内閣制のもと、政治主導を強化するため、国家戦略スタッフ及び政務スタッフの設置に関する規定の整備等を行うことといたします。

 国家戦略スタッフは内閣官房に置き、内閣総理大臣の命を受け、国家として戦略的に推進すべき基本的な施策その他の内閣の重要政策の企画及び立案について、内閣総理大臣を補佐することといたします。また、国会議員が国家戦略スタッフを兼ねることができることとし、内閣総理大臣補佐官は国家戦略スタッフに統合することといたします。

 政務スタッフは各府省に置き、大臣の命を受け、特定の政策の企画及び立案並びに政務に関し、大臣を補佐することといたします。なお、国会議員は政務スタッフを兼ねることができることといたします。

 以上が本法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中馬弘毅君。

    〔中馬弘毅君登壇〕

中馬弘毅君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました国家公務員法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 明治憲法下における官僚は、天皇の官吏として、使命感に燃えて、欧米先進諸国に追いつき追い越せの国家目標に邁進し、多大な役割を果たしてきたことは御承知のとおりであります。

 戦後は、国民全体の奉仕者、いわゆる公僕と位置づけられましたが、戦後の復興に戦前と同等のシステムと気概をもって当たり、中央集権、官主導で、焼け野が原のこの国を世界第二の経済大国へ押し上げたことは事実であります。

 しかし、国民の所得水準が上昇し、生活レベルの向上や教育の高学歴化に伴い、従来の官主導の画一的政策では十分に対応できず、逆に不満が高まる結果となってきました。しかも、その中央集権、官主導体制では、社会の多様化、複雑化が結果的に官僚組織の自己増殖を促し、行政組織と財政を肥大化させ、今では非効率の典型となってしまいました。

 この観点からの国家公務員制度改革は長年の懸案で、平成十三年には公務員制度改革大綱が閣議決定され、その後、私が行政改革担当大臣のときに取りまとめ、閣議報告した「新たな公務員人事の方向性について」などを土台として、昨年の通常国会において、国家公務員制度改革基本法が成立いたしました。

 これは、ねじれ国会と言われる中でも、与野党協議が結実した歴史に残る成果として位置づけられるものであります。私としては、政府案に盛り込まれていた国家公務員の一括採用の導入が削除されるといった残念な面もありましたが、全体としては、大きな前進として高く評価すべきものであります。

 衆議院での審議開始に当たり、私は、今般の公務員制度改革の方向性、全体像を国民に正しく伝え、改革への御理解と御支援をいただけるよう、以下の点について、総理並びに甘利公務員制度改革担当大臣の御所見を賜りたいと存じます。

 第一に、私は、国家公務員は国民の共有財産であり、その能力を高め、国民のために有効に使ってこそ本来の意義があると考えております。

 確かに、一部の不祥事を起こす者がありますが、ほとんどの者は勤勉で、国民のため、国のために職務に励んでいます。これを、マスコミ的興味の対象や政治的意図、党利党略のため、公務員はすべて国民の敵であるかのように、たたき、批判し、愚弄することが私たち国民にとってもプラスなのかどうか、非常に疑問に思います。

 総理も、国家公務員について「国民に奉仕する政府の経営資源」と言われ、みずから官僚を使いこなしていくと言われましたが、まず、総理の、国家公務員についてのあるべき姿など基本的な御認識と、本法案の成立に向けた御決意をお聞かせ願いたいと存じます。

 第二に、本法案は、府省の縦割り行政の弊害を是正するため、これまで各省ごとに行ってきた幹部職員の人事を、総理、官房長官、大臣の協議によって行うこととするなど、基本法に沿った制度を導入しましたが、これは縦割りの霞が関を改革すべしという与野党一致した認識で修正協議した結果であり、評価したいと思います。

 ただ、政権がかわるたびごとに幹部職員を全面的に入れかえるとか、行政の中に国会議員が百人規模で入り込むとかの考えもあるようですが、そこまですると、政治主導どころか、行政に対する政治の影響が強くなり過ぎて、行政の中立性が大きく損なわれると危惧いたします。

 さらに、公務員は、年金記録の改ざんなどの不祥事、さらに公務員にあるまじき破廉恥な行為をしても、これまでほとんど退職させたケースはありませんでした。その上、事もあろうに、勤務時間中に、国民の税金から給料を受け取りながら、公務以外の労働組合活動を組織的に行っている、いわゆるやみ専従問題が明らかになりました。これは、職場の規律保持もさることながら、明らかに違法事案であります。所管大臣がこれをどのように処分されるか、国民も注視しています。

 ともあれ、行政に対する信頼を取り戻すためには、信賞必罰を徹底し、不祥事が発生した場合は関係者の懲戒処分等を速やかに、厳正に行うとともに、不祥事の原因となった組織の体質や長年にわたる慣行を根本から変えていくべきだと考えますが、総理のお考えと御決意をお伺いいたします。

 第三に、幹部職員について、適材適所の人事を徹底していくためには、抜てき昇格する一方で降格することもあるという弾力的な任用や、それに伴う給与制度が必要であります。また、能力・実績主義のもとでは、高い専門能力を持ち高度な業務に従事する者とそれ以外の者との間では、処遇に差があって当然でありましょう。国家の重要施策を企画立案する本省の課長、局長クラスが、大手民間企業の部長や取締役の半分以下の給与というのであれば、民間からすぐれた人材を登用するのは無理です。

 今後行われる給与制度の改定において、能力、実績や担当職務に応じためり張りのある処遇、すなわち、職務によって給与の大幅な引き上げや引き下げが必要だと考えますが、甘利大臣、今後の給与法改定のスケジュールやその方向性をお示し願いたい。

 ところで、民主党はさきのマニフェストの中で、今後の所要の財源確保の一つとして、国家公務員総人件費の二割、一・一兆円のカットを公約していますが、給与や定員をどうするのか、具体策は示されておりません。地方分権により削減するとも説明されていますが、それでは、国の人員や人件費が減っても、地方の人員や人件費がふえてしまいます。これに関する甘利大臣の御見解をお願いいたします。

 第四に、いわゆる天下り問題に対して国民の厳しい目が向けられている中、政府としてもさまざまな対応策が講じられ、さらなる施策の検討を進めているようですが、その内容が十分に国民に伝わっていません。

 天下り禁止と言っても、天下りの定義を明確にしないと、すぐれた能力や役所時代の多くの経験を次の職場で生かそうとしても、再就職がすべて禁止されることになれば、国家にとって人材資源の大きな損失となります。あしき天下りとは、予算と権限を背景にした押しつけ的あっせんによる再就職という定義を再度確認した上で、天下り問題の議論を進めるべきではないでしょうか。

 また、甘利大臣からも、天下り根絶に対応した人事制度の取り組みについて、工程表にも入っていると思いますので、その取り組み状況を御報告願います。

 第五に、今回の法案においては、議院内閣制のもと、政治主導を強化し、所管の国家公務員だけではなく、幅広い知識人や経験者が内閣総理大臣及び各大臣を補佐する国家戦略スタッフ並びに各府省政務スタッフを設置することとしたのは画期的なことだと思います。

 ところで、その人選や役割はその時々の総理大臣にゆだねられているわけですが、私は、国際感覚を有する経済人や科学者、文化人などのいわゆる知識人や、総理経験者、地方自治体の首長経験者、外交経験豊かな人士など、我が国のあるべき姿に一つの見識を有する数人の方々で構成されるのがいいと考えますが、総理はどのようにイメージされているか、お示しいただけますでしょうか。

 最後に、世界は大きく揺れ動いています。我が国も次の時代に向けて、国際的にも一つの国家戦略をもって、機動的、効率的にこの国を運営していくことが必要です。その担い手は、誇りと気概と使命感を持った優秀な国家公務員でなければなりません。そのための国家公務員制度改革であることを議員諸氏も御認識いただいて、真剣かつ迅速に御審議願い、まずは、基本法、工程表に定めた来年四月からの内閣人事局並びに国家戦略スタッフの発足を現実のものとしていただきたい。

 このことを心から願って、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 中馬議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、国家公務員についての基本認識や、法案の成立に向けた決意についてのお尋ねがありました。

 公務員には公務員の役割があり、政治家には政治家の役割があるのは当然であります。総理大臣や各大臣は、会社でいえば、いわば社長であります。社員たる公務員を使いこなさなければならないと考えます。社員をたたくだけでやる気をなくさせて社長は務まらないと考えております。

 他方、公務員の側は、国民に奉仕するという崇高な仕事に誇りを持ってもらいたいと思っております。そして、省益を捨て、国益に徹し、国家国民のため粉骨砕身働くことが国家公務員のあるべき姿だと考えております。

 このため、国家公務員制度改革基本法に基づき、公務員一人一人が責任を自覚し、誇りを持って職務に専念できるよう、改革を推し進めているところであります。改革を後退させないためにも、今国会における本法案の成立を目指してまいりたいと考えております。

 次に、行政に対する信頼の回復についてお尋ねがありました。

 行政に対する信頼を取り戻すためには、公務員諸君が、その責任を自覚し、規律を持って、真摯な姿勢で国家国民のため業務を行うことが何より大切であります。

 仮に不祥事が発生してしまった場合には、各省庁において、関係者に対する厳正な処分を速やかに行うなど、信賞必罰を徹底するとともに、その原因となった内部管理体制、業務執行体制を見直し、同様の不祥事が再び生じることのないよう、必要な対応策を早急に講じていくことが重要だと考えております。

 最後に、国家戦略スタッフについてお尋ねがありました。

 国家戦略スタッフとは、国家として戦略的に推進をすべき基本施策、重要政策の企画立案について総理を補佐する役職であります。この制度は、時々の総理大臣の判断により適切と考える体制を組めるような柔軟な仕組みといたしております。

 私としては、日本の経済と社会をめぐる困難な課題を解決し、安心と活力の日本を築くために、さまざまな分野で活躍する日本の英知を結集した体制としたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 給与制度の改定につきましてお尋ねがありました。

 職員が意欲と誇りを持って働くことを可能とするためには、職員の能力及び実績に応じた処遇を徹底することが重要であります。

 このため、公務員制度改革に係る工程表に沿いまして、幹部職員等の任用、給与その他の処遇のあり方全般につきまして、職務の特性や能力及び実績に応じた弾力的なものとするため、平成二十二年に所要の法制上の措置を講ずることを目指します。

 次に、さきの参議院選挙の民主党マニフェストにおける国家公務員の総人件費削減による財源確保についてお尋ねがありました。

 総人件費削減の方法について、民主党の御主張の詳細は明らかではありませんが、仮に、地方分権の推進により国の事務事業の多くを地方に移譲し、これに伴い国の人員も移管することを想定しているとすれば、地方における人員や人件費は増加いたします。さらに、その増加する人件費について国が財源措置をする必要が生ずることとなるために、直ちに国の財源が節約できるものではないと考えられます。

 次に、天下り根絶に対応した人事制度に係る取り組み状況についてお尋ねがありました。

 平成十九年の国家公務員法改正による天下りの根絶に対応し、基本法に基づいて、人事制度の面からも、定年まで勤務できる環境の整備等を進めることといたしております。

 定年まで勤務できる環境の整備等に際しましては、いかにして、職員の高齢化による人事の停滞を防いで、組織の活性化を図り、能力・実績主義に基づく適材適所の人事を進める仕組みをつくるかが重要な課題であります。

 このため、工程表におきまして、任用、給与、勤務形態、組織のあり方などについての幅広い見直しを総人件費の抑制に留意しつつ実施することとしておりまして、平成二十二年中に必要な法案を国会に提出する準備を進めているところであります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 松本剛明君。

    〔松本剛明君登壇〕

松本剛明君 民主党の松本剛明です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました国家公務員法等の一部を改正する法律案について、総理、官房長官並びに公務員制度改革担当大臣に質問申し上げます。(拍手)

 本法案は、昨年、与野党で共同修正して成立した国家公務員制度改革基本法を受けたものと位置づけられています。私たちの理解では、基本法は、官僚主導と言われる現状の政府のガバナンスを改めるべく、必要な制度改革を断行して政と官のあり方を見直すことを目的としています。

 自民党の皆さんも、私ども民主党のことをおっしゃっていただく議論はもちろん受けて立ちますが、その前に、自分たちの足元のガバナンスをしっかり見詰め直していただきたいと思います。

 総理は、かねがね、官僚は、対決するものではなく、使いこなすものだとおっしゃっておられます。しかし、総理初め自民党の皆さん、すっかり使いこなされてはいませんか。

 先日、党首討論を聞いておりましたところ、総理は、国の会計二百十兆円のうち、国債費や社会保障費などの切れないものが百八十兆円あると主張しておられました。その説明は私たちも聞きました。その上で、その中身を詰めてただしていったら、実は切れないものとくくっている中に切れるものを混入させていることがわかったから、切れないものは百四十兆円だと申し上げているのです。

 民主党の予備的調査による天下りに関する数字、二〇〇七年度で四千五百の団体に二万五千人が天下り、国の予算が十二・一兆円流れていることに対する反論も同じです。官僚サイドの言い分をうのみにしていると、会計検査院が指摘されたことまで含めて、丸々容認することになってしまいます。ぜひ、それぞれ御自身で確認をされた方がよろしいかと思います。

 そもそも、総理は、政と官の関係をどうお考えなのでしょうか。

 官僚出身の官房副長官が、御自身が政治任用職であることを全く理解せずに、中立という言葉を使い、他方で、自民党に捜査は及ばないと言ったりしています。

 国家公務員法、人事院規則では、政治的中立を公務員に求めており、特定の政党に反対する政治的目的をもって、影響力を利用したり、公に意見を述べることは許されていません。

 ある省の次官は、我が党の政策を会見で批判する一方で、大臣と一部与党の方が政策面で対立していると思われるときに、与党の議員と意見交換、意思疎通を行うと公言しています。だれに仕えている公務員なんでしょうか。

 憲法に「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」とあることを根拠に中立を主張する向きがあります。しかし、憲法は、主権が国民に存することを宣言しており、そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権力は国民の代表者がこれを行使するとしています。すなわち、国会議員の選挙、議会での首班指名という民主的手続を経た内閣が国政を担うのであって、国家公務員はそれに従うべきではないでしょうか。都合のいい中立を許してはいけません。

 いかがでしょうか。総理の御所見を承りたいと思います。

 民主党は、昨年、霞が関改革・国家公務員制度等改革重点事項を定め、総合的な改革を準備しています。

 基本法で一部が進み、さらに今国会で公文書管理法案が我が党の抜本修正案を受け入れて成立するなど、文書管理等の適正化と情報公開に関して多少の成果が上がっていますが、合意できずに残された課題は山積しています。

 代表的な点が、天下りです。

 総理は天下りをことしいっぱいで廃止すると言われましたが、御指示でできた政令は、各府省による再就職あっせんを廃止する期間を三年以内から年内に前倒しするだけのものであります。まだ、官民人材交流センター、私たちから見れば、天下りバンクがあります。各府省あっせんを代替して、既に稼働しているのであります。これも、政府があっせんしていることに変わりはなく、やはり天下りです。

 先月の衆議院予算委員会で我が党の長妻議員が取り上げたように、抜け穴を探して大口随意契約先に再就職させており、まさに官僚のやりたい放題になっています。さらに長妻議員が追及すると、官房長官に答弁を求めているにもかかわらず、天下り先の所管省の大臣政務官が出てきて一生懸命説明しているのを見れば、依然として各府省のたなごころの上にあることは明らかで、語るに落ちたとは、このことであります。

 総理が各府省のあっせんをなくして天下りをなくしたと思っておられても、依然として権限や予算がついてくる官民人材交流センタールート、さらには、隠然として存在をする、各府省があっせんを認めていない水面下の天下りルートがあるのであります。

 今から三十二年前の一九七七年に、当時の福田赳夫首相がわたりについて実態調査を行った上で全面禁止措置を閣議で決定する意向と報道されましたが、今でも厳然とわたりが残っていることは、御承知のとおりであります。

 もはや自民党に、天下り根絶は、だれも期待していません。先ほどの信賞必罰の問題も、ぜひしっかり政権としてやっていただきたい。マネジメントができていないのは、自民党政権ではないですか。政権交代しかないことは、国民の皆様がよく理解していただいているものと思います。

 総理から、そして官房長官から、反論があれば伺いたいと思います。

 以下、各論について質問いたします。

 第一に、幹部職制度について、基本法において、新たな制度を設けるものとしています。

 任命権者の人事権が既往の制度とその運用によって身動きできないくらいに縛られている現状を憂い、幹部職を政権と運命をともにするいわゆる政治任用職とまではしないものの、任命権者が政治主導で柔軟な人事が可能となる制度とすることがねらいです。

 具体的には、内閣官房長官がその候補者名簿の作成を行うとともに、各大臣が人事を行うに当たって、任免については内閣総理大臣及び内閣官房長官と協議をした上で行うものとするとし、人事の一元化を図りました。同時に、昇任、降任、昇給、降給等を適切に行うことができるようにするとし、柔軟な人事ができる制度を用意するよう求めております。

 公務員制度改革担当大臣も、予算委員会で、名簿登載時に客観的なスクリーニングをかけているのだから、その先はある種政治任用の感覚が入ってきていいとおっしゃっておられるように、御理解、御認識は私たちと大きく異なっておりません。

 ところが、政府案には大きな問題があります。

 まず、幹部候補者名簿の詳細は政令で定めるようですが、全府省共通なのか、それとも各省ごと、またはポストごとになるのでしょうか。対象と登載者が狭まると政治の選択の余地は非常に小さくなります。名簿次第で天と地ほどの開きが生じます。

 私たちは、全府省横断的な大きなプールとなる幹部候補者名簿とすべきと考えますが、公務員制度改革担当大臣、どのようにお考えでしょうか、また、内閣人事局を預かる官房長官はいかがでしょうか。

 さらに問題なのは、柔軟な人事ができるようにするために、いわゆるこれまでの一般職とは線を引いて新たな幹部職制度を設ける必要があると考え修正を施したにもかかわらず、本法案は、基本法に規定する新たな幹部職制度の創設にはほど遠いことです。

 幹部職に当たる次官級、局長級、審議官・部長級の三つの職制上の段階の各段階内にとどまらない降格等について、申しわけ程度に降任の特例が設けられていますが、極めて厳格な要件を付しており、事実上それを困難ならしめていると解されます。

 大臣がどのような御説明を受けたかは存じませんが、事務局から、そんなに、つまり、降格はめったに起こるものではないという説明を受けたと公表している外部の方もおられ、私たちの見方と符合しています。

 幹部職を現行の一般職の枠内に置いて、実質的に降任がほとんど不可能な、官僚に都合のよい、形ばかりの柔軟な人事管理を提示する本法案は、明らかに基本法の趣旨に反し、骨抜きにされています。

 本法案のままでいいと本当に思っておられますか、総理、公務員制度改革担当大臣、官僚をコントロールすべき立場として、御所見を伺います。

 第二に、内閣人事局についてです。

 基本法では、与野党協議により、内閣人事庁を内閣人事局に改めました。幹部人事を担うコンパクトな組織を政権中枢の内閣官房のもとに置くのが修正の意図なのであります。

 しかし、本法案においては、明らかに基本法の趣旨を超えて肥大化しています。

 例えば、基本法が幹部職の定数査定を内閣官房の事務としているのに対し、本法案では、国家公務員全体の定数査定事務を内閣官房に移管しています。自律的労使関係制度を構築すれば、人事院の組織、所掌事務についても、その存廃も含めて抜本的に変えることになりますが、労働基本権についての実質的な検討を行わないまま一般職についての定数査定権限を内閣に移行することには、重大な疑義が生じます。

 内閣人事局の設計に係る議論からは、官僚が思惑でうごめき、この機会に新たなポスト獲得や組織拡大を企図している様子もかいま見えてきました。行政管理局を、機能からではなく、組織維持あるいは拡大の論理から丸ごと移そうとして、内閣人事局に独立行政法人の制度や行政情報システムまで所掌することになりかけました。さすがに指摘を受けてそこは軌道修正されましたが、まだ基本法が求めた姿とは大きく異なります。

 総務省の中で次官ポストにも恵まれない旧行政管理庁グループの独立宣言とやゆする声が霞が関から聞こえてまいります。真の意味での国益官僚の抜てきのための評価機関を相も変わらぬ霞が関の縄張り争いの対象としてしまう執念に、半ば感嘆しつつも、怒りを禁じ得ないと同時に、しっかりコントロールしていただけない自民党政権の皆さんにも大変残念な思いがするところであります。

 公務員制度改革担当大臣、本法案を見直して、本来の立法趣旨である、主に幹部職に関することを所掌する内閣人事局にするおつもりはありませんでしょうか。

 第三に、労働基本権の回復です。

 先月、超党派議員立法として成立した公共サービス基本法が定めるように、安全かつ良質な公共サービスが確実、効率的かつ適正に実施されることが国民の権利であるという考え方に基づいて、その従事する者の適正な労働条件の確保と労働環境の整備に関して必要な施策を講じることも基本法の目的であります。

 基本法では、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するもの」と定め、施行後三年以内をめどとして、必要となる法制上の措置を講ずることとなっています。

 これを受けて、労使関係制度検討委員会が設けられました。本年中に結論を出すこととなっていますが、お聞きしている検討のスピード、内容は、基本法の趣旨や政府の公式方針に照らし、著しく不適切かつ不誠実で、本当に意義ある結論を得ることができるのか甚だ疑問です。この検討のおくれは、公務員制度改革全体のスケジュールにも大きな影響があり、重大な懈怠と言わざるを得ません。

 そもそも、労働基本権を制約している現行の公務員制度は、国際労働機関、国連のILOから条約違反を指摘され、制度見直しを促す勧告を再三受けております。公務員制度改革担当大臣、条約違反の現状認識はおありでしょうか。大臣から方向性を示して検討を進めておられるんでしょうか。この遅々とした検討ペースを打開する決意がおありでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

 以上、指摘してきたように、基本法に照らせば、本法案には大きな問題があります。しかし、過ちては改むるにはばかることなかれです。本法案策定に当たって、たびたび共同修正提案者の修正経緯、意思を反映させるよう、これは、私ども民主党だけではなくて、自民党、公明党の方々も含めて意見表明の機会を求めてきたのですが、残念ながら、これにこたえていただけませんでした。

 でも、自民党におかれては、補正予算に賛成をしてから無駄があると指摘することが許されるぐらいの文化のようでいらっしゃいますから、今からでも、私たちの意見に耳を傾けていただいて、本法案についての過ちをぜひ正されたらいかがでしょうか。

 総理の御所見を承って、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 松本議員の質問にお答えをいたします。

 まず最初に、政と官の関係についてのお尋ねがありました。

 政である政治家は、国民を代表して、立法及び行政の責任を担います。一方、官である公務員は、政治家による政策決定や指揮監督のもとで、国民全体の奉仕者として、中立性、専門性を踏まえて、政策の実施、個別の行政執行に当たります。

 昨年秋の臨時国会におけます所信表明の演説においても、先頭に立って、官僚を率い、活用すると申し上げたのも、まさにこの趣旨であります。

 次に、天下りの根絶についてのお尋ねがありました。

 予算や権限を背景とした押しつけ的な再就職のあっせんに対する数々の御批判がありました。

 政府としては、平成十九年の国家公務員法改正により、各府省による再就職あっせんを全面禁止し、今後、再就職支援は、官民人材交流センターに一元化することとしました。また、各府省による天下り及びわたりのあっせんは、法律上は今後三年間認められていましたが、私は、ことしいっぱいで禁止することを決めております。こうした天下り規制の厳正な運用により、天下りは根絶されるものと考えております。

 官民人材交流センターは、各府省の予算や権限から隔絶された中立公正な機関であり、官民人材交流センターが行う再就職支援は、御指摘の天下りとは全く異なるものだと考えております。

 また、水面下の天下りについて御指摘がありました。

 一昨年の国家公務員法改正では、現職職員が利害関係企業に求職活動を行うことを禁止いたしております。また、再就職した元職員が、離職後二年間、もとの職場の現役職員に対して契約などに関する働きかけの行為を行うことを禁止いたしております。

 政府としては、こうした規制を厳格に運用し、国家公務員の再就職について、国民からの不信感や疑いを持たれることのないよう努めてまいりたいと考えております。

 幹部職員の柔軟な人事管理についてお尋ねがありました。

 本法案は、国家公務員制度改革基本法及びその国会審議を踏まえ立案したものであります。幹部職員を一般職と区別することが基本法の趣旨であるといったことは、基本法の規定におきましても、また、その法案審議の過程におきましても、記述ないし言及されたことはなかったと承知をいたしております。

 幹部職員については、あくまでも一般職の枠の中で適格性審査や降任、降格などの必要な規定をすることにより、基本法に定める趣旨が実現されていると考えております。

 最後に、法案の修正についてのお尋ねがありました。

 本法案は、国家公務員制度改革基本法及び同法の国会審議を踏まえて立案したものであります。政府として、現在の法案が最善のものと考えており、一刻も早い成立をお願いしたいものだと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) お答えをいたします。

 この法案は、昨年、国会議員の九割の皆さんが賛成をいただいて成立をした基本法が命じていることを忠実に実施するための法案でありますから、九割の方がきっと賛成いただけるものと確信をいたしております。

 まず第一点、幹部候補者名簿についてのお尋ねがありました。

 本法案におきましては、幹部職員の任用に当たって、能力・実績主義を徹底するとともに、内閣への応答性を確保するため、内閣官房長官が、適格性審査に合格した者について、幹部候補者名簿を作成し、任命権者に提示することといたしております。

 任命権者が各府省の幹部としてふさわしい人材を的確に把握できるような使いやすい名簿とするためには、例えば、各府省の幹部職の役職段階ごとに二倍程度の数の候補者を記載した名簿とすることも一つ考えられますが、いずれにいたしましても、具体的な名簿の形式につきましては、時の内閣の判断によりまして政令で適切に定めることができる柔軟な枠組みとしております。

 また、名簿上に適当と認める人材が記載されていない場合には、任命権者は内閣官房長官に名簿の更新を求めることが可能としております。

 このような仕組みによりまして、選択の余地が非常に小さくなるという指摘は当たらないものと考えております。

 次に、幹部職員の柔軟な人事管理についてのお尋ねにつきましては、先ほど総理がお答えをされたとおりでありまして、本法案は、修正者の答弁を十分吟味いたしまして、基本法の趣旨を踏まえて立案したものでありまして、これにより、成績主義のもと、適材適所の幹部人事を柔軟に実現できるものと考えております。

 次に、内閣人事局の所掌についてのお尋ねがありました。

 本法案におきましては、まず、基本法では、内閣官房長官が、政府全体を通ずる国家公務員の人事管理に関する説明責任を負うとともに、幹部職員のみならず、管理職員、それから幹部候補育成課程対象者等の一元管理事務を担うこととされておりまして、その機能を実効的に発揮するため、人事院、総務省等の関係機関から内閣官房へ機能を移管することとされているところであります。

 幹部職の制度のみ内閣人事局に移管する場合、制度全体を整合的に運用するためには、内閣人事局と人事院、人事・恩給局、行政管理局等の間で調整業務が新たに発生をしまして、弾力性、迅速性に欠けるばかりか、各府省にとっても負担増となりかねないことから、内閣人事局が幹部職及び幹部職以外の制度を一体的に担うことといたしております。

 なお、本法案におきましては、その検討過程において、内閣人事局の肥大化の懸念もありましたために、人事院、総務省等からの移管範囲を、基本法で求められている機能を発揮する上で必要不可欠なものに絞ったものといたしております。

 最後に、ILO条約違反の認識、労働基本権の付与の検討に向けた私の決意についてお尋ねがありました。

 現行制度のもとにおきましても、人事院勧告制度を初めとする労働基本権制約の代償措置は、ILOの原則を踏まえまして適切に機能しているものと認識をしております。

 労働基本権のあり方につきましては、労使関係制度検討委員会を設置しまして、国家公務員制度改革基本法第十二条に基づく自律的労使関係制度の措置に向け、精力的に検討をいただいておるところであります。

 今後の検討スケジュールにつきましては、基本法が定める三年以内、基本法は三年以内と定めてありますが、私はそれを加速させました。この三年以内の法制化というスケジュールを前倒しすることといたしております。具体的には、私が直接、検討委員会に検討の加速を要請しまして、本年中に結論を得て、来年中に所要の法律案を国会に提出することといたしております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣河村建夫君登壇〕

国務大臣(河村建夫君) 松本議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、天下りについてでございますが、ただいま総理が御答弁申し上げたとおりでございますが、官民人材交流センターの随意契約先へのあっせんについては、センター長決定に基づき、公正、透明な手続で行われます市場化テストによって、相手方法人が受託した業務を実施するのに必要な高度の専門的能力を持つ職員をあっせんしたものであります。

 次に、幹部候補者名簿についてお尋ねがございました。

 幹部候補者名簿は、基本法に基づき、縦割り行政の弊害を排除するため、内閣の人事管理機能の強化の一環として導入されたものであります。

 名簿の形式につきましては、時々の内閣の判断によりますが、政令で定めることとしております。その制度趣旨を踏まえて、任命権者が各府省の幹部としてふさわしい人材を的確に把握し、適材適所で配置していくことに資するようなものとする必要があると考えておるところであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 上田勇君。

    〔上田勇君登壇〕

上田勇君 公明党を代表して、ただいま議題となりました国家公務員法等の一部を改正する法律案について、麻生総理並びに関係大臣に質問をさせていただきます。(拍手)

 今日、戦後確立されました我が国の官僚制度、国家公務員制度は、抜本改革の必要性に迫られております。内外の経済社会情勢の大きな変化に対応できる機動的な行政システムへ改革していくためには、その担い手であります国家公務員が、国家国民のニーズに的確にこたえて、効率的に職務を遂行することができる仕組みに改めていく必要があります。

 今日、残念ながら、公務員に対する国民の信頼は地に落ちております。不透明きわまりない天下りやわたりの横行に対して、国民は憤慨しています。また、社会保険庁で明らかになった責任感、使命感の欠如、農林水産省におけるやみ専従問題等の不適切な労使慣行、厚生労働省での障害者郵便制度に係る不正、国土交通省での官製談合事件等々、信じられないような不祥事が次々と明らかになっています。国民全体の奉仕者としての責任を自覚し、国民に信頼される公務員制度への改革が急務となっています。

 総理は、こうした現状をどのようにお考えか、また、信頼を回復するためにどのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたします。

 公務員制度の改革は、現に動いている仕組みを適切に機能させながら、同時に改革を実行していかなければならず、また、現職の公務員の仕事や生活にも多大な影響が及ぶものであります。したがって、改革がすべて一朝一夕に成就するものではありません。単に改革を叫ぶだけでは前進はなく、中長期的なビジョンに基づき、計画的、継続的に改革を実行し、着実な成果を積み重ねていくことによって初めて目指すべき改革が達成できるものと考えます。

 これまで、平成十九年に国家公務員法を改正し、能力・実績主義に基づく人事管理の導入、再就職あっせんの内閣官民人材交流センターでの一元管理、現職者の求職活動や退職者の働きかけに対する規制強化などの重要な改革を実行してきました。また、昨年は、今後の公務員制度改革の基本方針を定めた国家公務員制度改革基本法が与野党合意の上で制定をされました。

 このように、公務員制度改革は着実に前進をしてきているものと考えていますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 本法案は、改革基本法の内容に沿って、政治主導による政策の形成や行政の執行を目指した制度改正であり、今国会で成立させることが必要であると考えています。

 国民の信頼回復のためには、まずは何よりも、不透明な天下りを根絶することが最優先だと考えます。

 平成十九年の改正だけでは必ずしも、国民が期待する問題解決、すなわち再就職あっせんが完全になくなるというわけではありませんが、大きな前進であることは間違いがありません。ただ、改革された新たな再就職の仕組みについては、それが適正に機能するための監視を行う再就職等監視委員会が発足すらできず、総理がみずからその役割を担っているのが現状であります。

 総理は、こうした事態をどのように受けとめられているのか、また、今後どのように対処されるのか、御所見をお伺いいたします。

 天下りの根絶を実効あらしめるためには、早期勧奨退職慣行を廃止して定年まで勤務できる仕組みを整備するなど、多面的な制度の改正が必要となります。

 二月に国家公務員制度改革推進本部で決定した工程表には、「平成二十三年から、いわゆる「天下り」の根絶に対応した新たな人事制度を実現する。」とあり、高齢者の任用、給与制度、再任用の原則化、定年の延長などの具体的な施策について、それぞれ実施時期を示しております。これらの取り組みによって、天下り、すなわち、退職者の関係公益法人や企業等の役職員への再就職は大きく減少することが期待されますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 本法案では、幹部職員等の人事の内閣一元管理を行うこととしております。

 現行の官僚組織については、府省の利害を最優先する縦割り意識が余りにも強いことから、内閣が決定した政策方針が必ずしもストレートに実施されないなどの弊害が指摘されてきました。今回の改正では、こうした弊害を取り除き、内閣が目指す政策を行政府全体が一体感を持って効率的に執行できるシステムにつくり変えることを目指したものと理解をしています。

 改めて、総理に、制度改革の趣旨と期待される効果について御所見をお伺いいたします。

 一方、その結果、時の内閣による恣意的な人事が横行するのではないか、内閣の覚えばかり気にして行政の中立公正性に支障が出るのではないかといった懸念もありますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 次に、内閣人事局についてお伺いいたします。

 内閣人事局のあり方については、さまざまな意見があると承知しています。

 工程表においては、人事・行政管理局となっており、総務省から組織管理機能をそっくり移管する案になっていました。一方では、人事局の所掌は、幹部職員の人事管理に限定した小さな組織にするべきとの意見もあります。

 こうしたさまざまな意見がある中で、最終的に所掌事務を法案にあるように決定した理由を甘利公務員制度改革担当大臣にお伺いいたします。

 法案では、級別定数の決定、改定、任用、採用試験、研修に関する機能を人事院から移管することになっていますが、これによって公務員人事管理の中立公正性の確保に支障が生じるおそれがあるとの指摘もあります。また、級別定数の移管については、公務員の労働基本権制約の代償機能が働かなくなるとの意見もあります。

 甘利大臣は、こうした意見についてどのようにお考えか、また、これらの事務を内閣人事局に移管することが適切と考える理由について、御説明をお願いいたします。

 国家公務員は、国民全体の奉仕者であって、中立公正でなければなりません。中立公正性を担保する上で、中央人事行政機関としての、内閣から独立性を有する人事院が重要な役割を果たしてきていると考えています。この改正に伴い、人事院の機能はどうなるのか、また、人事院の意見はどのように反映される仕組みとなっているのか、甘利大臣にお伺いをいたします。

 内閣人事局は、全府省の幹部人事を一手に所掌することになり、その役割は極めて重要であり、絶大な影響力を持つことになります。我が党内からも、人事局の組織が肥大化すること、過度に権限が集中することになることなどに対する懸念を示す意見もありました。人事局の組織についてはどのようにお考えなのか、甘利大臣のお考えをお伺いいたします。

 本法案では、国家として戦略的に推進すべき基本的な施策等の企画立案について総理を補佐する国家戦略スタッフを内閣に置くこととしています。

 官僚は、行政の継続性を重視する余り、前例主義に陥りがちであり、基本方針の転換には消極的になりがちです。官僚機構に依存せずとも、具体的な政策を企画し、実行する手段が充実されることにより、機動的な政策の実施に役立つものと考えています。

 国家戦略スタッフの規模はどの程度を想定しているのか、スタッフにはどのようなプロフィールの者を登用することを想定しているのか、甘利大臣のお考えを伺います。

 公務員制度改革の成否は、将来の我が国の命運を決する重要課題と言っても過言ではありません。今後とも公務員制度の改革は計画的、継続的に推進していく必要があるということを強調させていただき、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 上田議員の質問にお答えをいたします。

 まず最初に、公務員の信頼回復についてのお尋ねがあっております。

 公務員の不祥事がたびたび発生していることにつきましては、甚だ遺憾に思っております。

 大部分の公務員は、まじめに職務を遂行しているものと考えております。しかしながら、一部の公務員の不祥事によって、公務員全体に対する国民の皆様の不信が高まっていることも事実だと認識をいたしております。

 公務員に対する不信を払拭するには、まずもって公務員諸君が、省益を捨て、国益に徹し、国家国民のために粉骨砕身働くことが何よりも大切だと考えております。このため、国家公務員制度改革基本法に基づき、信賞必罰を徹底するとともに、公務員一人一人が責任を自覚し、誇りを持って職務に専念するよう、改革を推し進めてまいりたいと考えております。

 公務員制度改革の前進についてのお尋ねがあっておりました。

 公務員制度改革については、平成十九年の国家公務員法改正によって、各府省の再就職あっせんを禁止いたしました。また、昨年、基本法を制定し、それに基づき国家公務員制度改革推進本部を設立するなど、改革は着実に前進してきていると考えております。

 今般の国家公務員法改正案は、内閣による人事の一元管理や内閣人事局の設置など、基本法に基づく改革を具体化するものであり、改革を後退させないためにも、今国会における本法案の成立を目指してまいります。

 不透明な天下りの根絶についてのお尋ねがありました。

 平成十九年の改正国家公務員法において、国民から強い批判のある、予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんによる天下りを根絶するため、まず、各府省による再就職のあっせんを禁止しております。各府省による天下り及びわたりのあっせんは、法律上、今後三年間認められておりましたが、私は、ことしいっぱいで禁止することを決めました。今後、再就職のあっせんは、中立公正な官民人材交流センターに一元化することといたしております。

 このように、天下りに対しては、私は、厳しく臨んでおると思っております。

 再就職等監視委員会は、公務員の再就職に関して厳格な監視を行うなど、再就職等に関する規制の実効性を確保するためのものであります。このような機能を持つ監視委員会の委員が野党の反対によりいまだ任命できていないことは、まことに遺憾であります。再就職等規制を厳正に運用するためには監視委員会が必要であることを御理解いただき、できるだけ早く委員を任命する必要があると考えております。

 公務員の再就職についてお尋ねがありました。

 平成十九年の国家公務員法改正による天下りの根絶に対応し、国家公務員制度改革基本法に基づいて、人事制度の面からも、定年まで勤務できる環境の整備などを進めることといたしております。このような取り組みにより、退職勧奨に伴う再就職のニーズは減少していくものと考えております。

 幹部職員等の人事の内閣一元管理についてのお尋ねがありました。

 幹部職員等の内閣一元管理により、その育成及び活用を府省横断的に行うことが可能となります。これにより、国家公務員が、国民全体の奉仕者として大局的な視野から所管行政に取り組むとともに、時々の行政課題に迅速、果断に取り組むことができるようになるものと考えております。

 最後に、幹部職員に関する恣意的な人事の懸念についてのお尋ねがありました。

 幹部職員の内閣一元管理は、客観的基準で能力を判断する適格性審査を行った上で、候補者名簿を作成し、総理、官房長官及び大臣の協議を経て任用を行うものであります。これは、能力・実績主義を徹底した上で内閣への応答性を確保したものであり、恣意的な人事が横行するとの御懸念は当たらないものだと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) お答えをいたします。

 まず、内閣人事局についてお尋ねがありました。

 時代の変化に行政と国家公務員が機動的に対応し、時々の行政課題に迅速、果断に取り組むことができるようにするための体制を構築するために、行程表では、総務省行政管理局の機能をすべて移管し、行政改革推進機能をも担う内閣人事・行政管理局(仮称)を新設することとしておりました。

 その後、法案作成の過程におきまして、各方面から、行政情報化等の人事行政と直接関連しない機能まで移管することにつきましては、組織の肥大化につながるのではないかなどの懸念が寄せられました。これらの懸念を踏まえまして、最終的に、行政管理局からの移管範囲を、基本法で求められる機能を発揮する上で必要不可欠な機構・定員管理機能に絞ることといたしまして、局の名称も、基本法のとおり、内閣人事局とすることとしたものであります。

 次に、人事院の機能の移管についてのお尋ねであります。

 基本法では、内閣官房長官が国家公務員の人事管理に関する説明責任や幹部職員の一元管理等の機能を実効的に発揮するため、人事院等の関係機関から内閣官房へ機能を移管することとされています。

 内閣主導により、時代の変化に対応して、必要な業務に適切な人材を迅速かつ柔軟につけることを可能にするためには、内閣官房がポストとその格付を弾力的かつ府省横断的に見直すことができるようにする必要があります。このため、本法案では、級別定数機能を内閣人事局に移管することといたしております。

 その上で、級別定数には結果として勤務条件に関連する側面もありますために、移管後も、その設定等の際に事前に人事院の意見を聞くこととすることなど、労働基本権制約の代償機能の確保に十分配慮をいたしております。

 また、人材の確保、育成、活用といった人事行政の中核は行政の中枢に近い機関が担い、行政需要や人材ニーズ等を踏まえて、戦略的かつ弾力的に行っていく必要があります。このため、本法案では、任用に関する機能や試験、研修の企画立案に関する機能を内閣人事局に移管することといたしております。

 その上で、これらの機能については、政令の制定に当たって人事院の意見をあらかじめ聴取する仕組みであるとか、人事院による是正指示等の事後チェックの仕組みを法律上新設するなど、人事行政の公正が適切に確保されるよういたしております。

 次に、法改正後の人事院の機能等についてのお尋ねがありました。

 本法案では、基本法により求められる機能に絞って人事院から内閣人事局へ機能を移管することとし、給与、勤務時間、分限、懲戒、公平審査、試験、研修の実施等の機能につきましては、引き続き人事院が担うことといたしております。

 また、移管する機能につきましては、移管後に政令等を定める際には、事前に人事院の意見を聴取する、人事院が是正指示等の事後チェックを行うこととしております。

 このように、人事院は、今後とも、中央人事行政機関として、人事行政の公正確保機能、労働基本権制約の代償機能を担っていくこととしております。

 次に、内閣人事局の組織についてのお尋ねであります。

 内閣人事局の具体的な内部組織につきましては、二十二年度予算編成過程で結論を得ていくこととなりますが、改革のための組織づくりで行政の肥大化が生じるのは本末転倒でありまして、関係部門をそのまま足して合わせたような組織とならないよう、徹底した見直しとスリム化を行ってまいります。

 最後に、国家戦略スタッフについてのお尋ねがありました。

 国家戦略スタッフの規模につきましては、時の内閣が柔軟かつ機動的に決められるよう、政令で規定することといたしております。発足時の規模につきましては、今後の予算編成過程を通じまして確定をさせてまいりたいと考えております。

 また、国家戦略スタッフは、特別職でありまして、国会議員や官民を問わず、内閣の重要政策を担うのにふさわしい人材を広く求めることを可能としております。例えば、行政内外から専門家を登用することが想定されますが、特定の出身元の固定的ポストや各府省の出先とならないような運用が重要と考えております。

 以上です。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  麻生 太郎君

       財務大臣    与謝野 馨君

       国土交通大臣  金子 一義君

       経済産業大臣臨時代理

       国務大臣    甘利  明君

       外務大臣臨時代理

       国務大臣    河村 建夫君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  松本  純君

       内閣府副大臣   谷本 龍哉君


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