衆議院

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第2号 平成21年10月28日(水曜日)

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平成二十一年十月二十八日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  平成二十一年十月二十八日

    午後一時開議

  一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時三分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(横路孝弘君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。谷垣禎一君。

    〔谷垣禎一君登壇〕

谷垣禎一君 私は、自由民主党・改革クラブを代表して、一昨日の鳩山総理の所信表明演説について質問いたします。(拍手)

 間もなく十一月十二日を迎えますが、本年は天皇陛下御即位二十年というまことに喜ばしい年であり、国民こぞってお喜び申し上げたいと存じます。(拍手)

 さて、さきの総選挙によって私たち自由民主党は大幅に議席を失い、野党になりました。我々自民党は、国民の批判に改めて真摯に耳を傾け、我が国の発展のために真の国民政党として再生を遂げなければならないと決意をいたしております。

 過去のしがらみからは脱却します。個別の支持や利益のみを追求することなく、国民の皆様と志を同じくした公正な政治を旨とし、「政治は国民のもの」であるとの我が党立党の原点に立ち返ります。その一環として、まずは私みずから、全国津々浦々を行脚し、謙虚かつ丁寧に皆様の思いを伺いに参ります。

 選挙において厳しい御叱責をいただいた一方、多くの有権者の御支援をいただいたことも事実であります。日本のために自民党がしっかり再生すべきであるとの温かい御声援も非常に多くいただきました。我々は、身を引き締めて、いかにして我が国を豊かにしていくか、国会において真剣な議論を重ね、批判のための批判や歓心を買うためのうそ、まやかしに陥らず、将来に責任ある政治を行い、国民にとって最良の選択肢を示すことによって、期待にこたえていかねばならないと思っております。

 我が党は、五五年体制のもと、常に与党であるという慢心があり、それゆえに政権運営に、どこかにそのおごりがあらわれていたのかもしれません。このたび新しく政権を預かる立場となった民主党の姿勢を参考にすべき点は見習いたく存じます。

 しかしながら、選挙期間中も、自民党には不満があり、民主党には不安があるということが合い言葉のように言われました。民主党の政策や政権運営には、大局的に、また随所に無理があり、日本の将来を託すことは非常に危険だと考えております。国民の皆さんも、そんなうまい話があるものかといった率直な不安を直感したからこそ、自民党にもしっかりしろとの声がかくも多く寄せられているものと推察しております。

 私どもは、十分な国会審議を通じて国政を正してまいりたいと存じます。本日は、まず代表質問で、新政権の政治姿勢と基本政策のありようについて、時間の許す限り問いただしたいと思います。

 一昨日、総理の所信表明演説を拝聴させていただきました。友愛政治から国政全般まで御自身の言葉で語られた演説であったと敬意を表しますが、情緒的に過ぎ、理念先行、具体像が全く見えてこないという感は否めません。変えるというのはまさしくこれからであって、我が党は、言葉ではなく行動を注視してまいりたいと存じます。

 それから、何より、一つ解せないことがございました。選挙中あれだけ喧伝されたマニフェストの文字が一言もなかったことです。私が以前から愛用していた絆という言葉がキーワードとして使われていたこととは対照的であります。

 鳩山内閣は、マニフェストの実行を国民と契約され、義務づけられた内閣だと国民は認識しております。しかるに、内政、外交から、象徴的には日本郵政の人事に至るまで、約束違反、言行不一致ばかりが見受けられます。政権をとったらがらりと変わる御都合主義が許されていいものでしょうか。

 まずは、総理のマニフェスト実行にかける決意のほどを伺います。

 総理は、マニフェスト発表の記者会見において、達成できない場合は政治家として責任をとると明言されました。これは具体的にどのように責任をとられるのか、お教えいただきたいと存じます。

 我々自民党は、自助、共助、公助による絆社会を打ち立てたいと考えております。あくまでも、まず個人の自由と努力が基本として尊重されるべきであります。それを家族や地域社会など顔の見える間柄同士でともに支え合う温かさを大事にし、そして、それだけでは立ち行かないところを住民全体あるいは国民全体で相互に助け合う公的互助システム、すなわち公助が必要です。それが、真に個人を大切にするとともに、お互いが助け合う真心をも大切にする絆社会だと考えます。

 これに対し、鳩山政権の政策は、各家庭に満遍なく巨額の支給をするなど、いきなり公助ありきの社会をつくろうとしております。それでは、一時的な人気取りではあっても、個々人の努力や創意工夫にこたえることにはなりません。自助努力を阻害し、日本が厳しい国際競争の中で勝ち抜いていく底力もそぎ落としてしまいます。その上、高額所得者など、必要のない人にまで貴重な税金をただ漫然と投入することになります。

 頭越しに生活の糧を万民に与えるのではなく、いかにそれをみずから得るかのすべを与え、生きる力を備えてもらうようにすることこそが、政治の正しい役割なのではないでしょうか。総理のお考えを伺いたく存じます。

 現在、社会保障制度や財政の持続可能性への懸念が国民の将来に対する大きな不安の要因ではないでしょうか。これを払拭し、我が国が目指すべき国の形は、大きな負担を余儀なくされる北欧諸国のような大きな政府でもなく、また、国民皆保険制度がなくセーフティーネットが不十分とされるアメリカのような小さな政府でもなく、適切な規模の中福祉・中負担国家だと考えます。

 しかるに民主党は、のっけからとてつもないばらまきを行い、概算要求における歳出規模も一気に百兆円近くに迫ろうという勢いです。そのような大きな政府にすることは、結局国民に大きな負担を押しつけることになり、そのことに口をぬぐっておられることは極めて無責任であると考えます。民主党は、高福祉・低負担で我が国が存続できるとお考えなのでしょうか。低負担を補える打ち出の小づちをお持ちなのでしょうか。あるいは、高福祉・高負担の国家を目指そうとされているのでしょうか。総理御自身、我が国のあり方をどうお考えなのか、御見解を伺います。

 政権発足後四十日余りたちましたが、鳩山政権の政策は、戦略性や政策体系としての一貫性が全く欠如しているものと断ぜざるを得ません。各パーツのいいとこ取りのホッチキスどめであったり、国内の政治的局地戦を優先する余り、大きな国益を損ねている感が否めません。

 まずは、経済財政運営等についてお伺いいたします。

 我が国経済は世界同時不況のあおりを受けて深刻な危機に直面しましたが、景気の底割れを防ぐべく、矢継ぎ早に経済対策をとってきたところです。特に、今年度補正予算では十五兆円もの対策を講じました。しかし、世界経済は今なお先行き不安材料を抱えており、二番底懸念が指摘されております。にもかかわらず、民主党はその補正予算を取り崩すことのみに力を傾注し、地方の方々から次々と不安の声が上がっております。これでは、景気の二番底をみずからつくり出しているようなものです。

 先般、無駄排除などと大義名分を立て、補正予算のうち二兆九千億円余りの執行を停止されました。国民に不安や戸惑いを与えておいて、いたずらに政治空白をもたらすだけではありませんか。凍結された事項について、無駄かそうでないかの判断基準を総理はぜひ具体的にお示しください。

 あわせて、百兆円以上だ九十二兆円以下だという議論まで閣内で持ち上がっていたようですが、今後の経済対策も踏まえつつ、来年度の予算編成では総額何兆円規模が必要か、総理と亀井国務大臣の御見解をお聞かせください。

 ここで強く指摘しておきたいのは、この政権には経済成長戦略が欠けているということです。

 そもそも、成長の目的とは、国民所得を上げ、雇用をふやすことにあります。それを何よりも優先させるべきなのです。子ども手当や高速道路料金の無料化などによって家計を潤すことが何よりの景気対策だと言っておられますが、それは財源となるべき他の歳出削減とトータルで見れば、今の景気をかえって冷え込ませることになりませんか。

 それに加え、最低賃金や労働者派遣制度の見直しも掲げておられます。最低賃金について言えば、総理の御地元の北海道では六百七十八円の水準ですが、これを千円程度に引き上げられる企業がどれほどあるのでしょうか。かえって深刻な雇用問題を引き起こすのではないでしょうか。

 企業は、雇用機会をつくるという意味で家計にとっても大切な存在です。さらに、「コンクリートから人へ」と主張されていますが、ダムや道路は、治水やライフラインともなって国民生活を守るセーフティーネットでもあります。浅薄なキャッチコピーでは、国民の安心、安全は守れません。企業や公共事業を、国民生活にとって非効率なものや有害なものといたずらに決めつけているのではありませんか。

 総理が描かれる成長戦略は、何をもって成長につなげるのか、景気や雇用を何をもって改善するのか、根拠があればそれも含めてお聞かせください。

 民主党は、マニフェストで、無駄排除で九・一兆円も捻出できると主張し、総選挙においても、政権交代すれば予算の組み替えによって一割くらいはすぐに無駄をなくせるという主張を繰り返しておられました。

 総理は、選挙期間中の党首討論で、歳出削減について全く心配しておりませんと事もなげに言われました。そうであれば、七・一兆円と言われる来年度の新規歳出の財源は、九・一兆円の歳出削減によってなおおつりが来るはずであり、現段階で国債増発の議論など出てくるはずもありません。責任を持って、まずはそれを確実に実行すべきです。ここに改めて、歳出削減を速やかに実行してみせるとお約束ください。

 今までの予算は無駄だらけだったからこそ、それを財源に新規の恒久的な施策ができると公言されたのですから、それに見合う恒久財源を示すべきです。補正はがしのような単年度の財源、埋蔵金を充てるといったフィクションで世を欺くことがないよう、責任ある政治を求めます。総理の明確な意思を改めてお示し願います。

 さらに、マニフェストでは新規歳出十六・八兆円の財源を同額見出すとされておりますが、仮に財源が確保できたとしても、それを片っ端から使い切ってしまうわけですから、財政収支の改善は全くなされません。そればかりか、高齢化等による社会保障費の自然増で収支は悪化する一方となります。既に来年度の予算編成においても、税収が借り入れを下回るのではないかという状況ですが、これでは債務残高が膨らむばかりで、まさに破綻のシナリオであります。

 これほど無計画な予算が組まれていくならば、市場からの信用は失墜し、金利は高騰、住宅ローンや中小企業の借入金の金利もはね上がり、国民経済が立ち行かなくなるのは必至であります。よいことばかりを国民に吹聴した結果、大惨事をもたらすようで、責任ある政党と言えるのでしょうか。

 少なくとも我が党は、累増する社会保障費を賄うべく、消費税を含む税制抜本改革を行うこととし、その道筋も含めて、さきの通常国会で法制化したところであります。

 それに引きかえ民主党は、二年前の選挙では、マニフェストに二〇一一年度には国・地方の基礎的財政収支を黒字化すると書いておられましたが、今回のマニフェストでは財政健全化に向けた姿勢は全く見られません。こういった姿勢の後退を国民にどう説明されますか。

 政府としてどう責任を持って財政健全化を進めていくのか、あるいは財政健全化目標は不必要とお考えなのか、成長等の見通し等を含めたマクロ経済・財政運営の基本方針とあわせて、総理のお考えを具体的にお示しください。

 次に、外交・安全保障政策等について伺います。

 外交・安全保障政策は、国家の根幹にかかわる極めて重要な政策であるとともに、国際社会における我が国の果たすべき責任を明確に示すべきものでもあります。これまで築き上げてきた各国との信頼関係を前提として、さらに発展させていくことが我が国の国益に合致するものであり、政権がかわっても、変更に当たっては極めて慎重な検討が必要であります。

 昨日も、北澤防衛大臣は、普天間の現行案容認、給油活動を海賊対策に転用するなどのお考えを示されましたが、新政権発足以来、鳩山総理、岡田外務大臣、北澤防衛大臣等、閣僚の発言に多々食い違いが見られますが、そのことによって、各国から我が国に不信の念を持たれ、外交関係に支障を来すのではないかと大変危惧しております。

 民主党は、日米地位協定の改定を提起することをマニフェストで明確に掲げられました。米軍再編、普天間基地移設問題や在日米軍のあり方についても見直しの方向で臨むとされております。さらには、政権として補給支援法の単純延長もやらないと明言されております。これらの問題について総理の御見解を承りたいと存じます。

 総理は緊密かつ対等な日米同盟を標榜されておられますが、一歩間違えれば、それどころか、日米の信頼関係に亀裂が生じ、安全保障政策が立ち行かなくなるのみならず、両国の経済関係や国内のさまざまな施策に波及し、国民の生命財産を大きく脅かすことになります。明確な代替案もないまま日米間の合意事項を一方的に見直すということであれば、同盟関係の弱体化にもつながりかねません。具体的にどこをどう変えるのか、総理はぜひ明確に御説明願います。

 また、普天間問題については、福島国務大臣からも伺いたく存じます。

 なお、昨夜の護衛艦「くらま」とコンテナ船の衝突事故につきましては、一刻も早い原因の究明をお願いいたします。

 地球温暖化問題について伺います。

 総理は、温室効果ガスを九〇年比二五%減という目標をいきなり国際公約されました。この問題への対応の本質は、中国、米国などの大排出量の国々を国際的な枠組みに入れ、実効ある削減を図っていくことであります。今後、いかなる交渉戦略で米中の参加を実現しようとしているんでしょうか。総理は、米中が意欲的な目標を出すことを前提条件とされているようでありますが、その具体的な中身は何でしょうか。オバマ大統領の主張しておられる九〇年比横ばいは、意欲的な目標に当たるんでしょうか。

 相手への要求があいまいなままでカードを切るのは、交渉ではなく、単なるパフォーマンスです。年末のコペンハーゲン会合で米中の実効ある枠組み参加が決まらなければ、どう対処されるのでしょうか。今後のシナリオをよく考えて提案されたのでしょうか。

 また、二五%削減達成のための方策やそのコスト、経済成長率や産業空洞化への影響、家計への負担、雇用に対する影響をどう考えておられるんでしょうか。一国の総理が国際公約されるときに、これらの検討をしないで数字を言うことはあり得ません。

 これまでの政府の試算では、失業者の百二十万人増、所得の一六%低下等の数字を出しております。どこがどのように間違っているから二五%削減に踏み切ったのでしょうか。一部には、海外から排出権を買ってくればよいという議論もあるようですが、結局は国民負担であります。どのくらいの負担を想定されているんでしょうか。

 地球温暖化問題に、各国は国益をかけて厳しい国際交渉をしております。これらは、国際交渉を進めていく上で、我が国の国益を守るため当然検討すべきことであります。国民に納得できる交渉戦略と裏づけとなる数字を示すことを強く求めます。総理御自身の言葉で御開陳願います。

 次に、当面の政権運営について伺います。

 政治主導の予算編成や経済財政運営の司令塔として鳴り物入りで国家戦略室を設けたにもかかわらず、いまだに十分な体制が整っておらず、行政支出総点検会議は行政刷新会議に看板がかけかわっただけの状況です。経済財政諮問会議がなくなり、成長戦略も財政健全化のビジョンも、鳩山内閣として議論する場がありませんが、国家ビジョンがないだけでなく、ビジョンを打ち立てるつもり、姿勢が欠落しているのではないでしょうか。

 国民生活がかかっている予算編成についても全体をどう組み立てるのか、その司令塔の不在をどのようにお考えでしょうか。この役割は、総理なのか菅大臣なのか仙谷大臣なのか、あるいは藤井大臣なのか、それとも財務官僚なのか、どういう分担でどなたが主導されるのか、総理として内閣の方針をお示しください。

 マニフェストどおりにやると、マニフェストを金科玉条のごとく各大臣が言っておられますが、高速道路の無料化、暫定税率の廃止などのように専門家が異論を唱えている項目や、八ツ場ダムのように地元関係者の声を無視して掲げた項目もありますし、温室効果ガス削減目標のように科学的検証や国民的議論が余りにも欠落したままの項目もあります。おのおのの政策が問題をはらみ、実現可能性が極めて疑わしいものも散見され、一部の人間が拙速につくったとしか思えないような内容のマニフェストであります。

 はっきりと申し上げます。民主党のマニフェストは羊頭狗肉です。政権についた以上は、看板だけではなく、国民に提供する商品を早急に見せていただきたく存じます。自民党は、民主党の掲げた看板の多くは無責任であり、公正でもないと反対してまいりましたが、野党の当然の責務として、今後も徹底的に政策論で戦います。

 選挙前につくられたマニフェストの内容には全く問題はないと、総理は今言い切れますか。総理の御認識をお聞かせください。

 また、政策決定過程においては、関係者の意見に耳を傾け、議論を尽くす姿勢が必要ではないでしょうか。政治主導を呼号する政務三役と萎縮した行政官の関係では、具体的な事実関係の把握にも支障を来すのではないでしょうか。関係者や国民の声を真摯に受けとめるとともに、真に国民のためとなる総合的、大局的判断を政治家がみずからの責任において行うことこそが政治主導であると考えます。

 むやみやたらな政治主導は、政治家を無駄な些事にかかずらわせる余り、最終判断や責任といった本来の責務をおろそかにさせるばかりか、政治権力の行使に必要な自制心を失わせ、政治主導という名の政治暴走になりかねません。八ツ場ダムの問題や日本郵政の人事にその萌芽を感じておりますが、総理の言われる政治主導とは何たるかを御説明ください。

 そもそも、マニフェストどおりと言い募るだけでは、言論の府たる国会審議は事実上無意味になり、代議制民主主義の否定とならざるを得ません。国権の最高機関を大切にし、国政を決定するに当たっては、国会での審議を十二分に尽くされるべきと考えます。

 さらには、政権に入っていない与党議員については、意見を政策に反映する場が十分にはないようでありますが、それで民主党は民意をくみ上げることができるんでしょうか。国会議員の仕事は、委員会と本会議の採決への出席のみで事足りるんでしょうか。党や国会のことは小沢幹事長に任せるなどということではなく、鳩山総理の明確な姿勢をお聞かせ願います。その上で、堂々と我々野党と国会論戦に臨まれることを強く希望いたします。

 また、総理のいわゆる故人献金の問題等については、連日のように報道がございます。政治と金の問題を明確にされることは、自民党におられたころからの総理の政治家としての原点であったと存じます。であるからこそ、総理みずからこの問題について国民の納得される説明をされることを強く望みます。

 政治に夢がないと言われて久しくなりますが、あえて政治は夢を語り、国民に希望の光を示さなければなりません。我が国の歴史や伝統、文化、美しい四季折々の自然におおらかな自信を持ち、築き上げた先人たちに率直な敬意を感じるからこそ、それらをつくり継承してきた個人の理性ある自由と努力の可能性を信じるものであります。私たちは、それらを礎に新しい夢をつくってまいる所存です。

 我が党は、野党の立場にはなりましたが、不毛な政争をやるつもりは毛頭ございません。正論を吐き続けます。国民のためになるという目的が同じであれば、与党に対案を出して議論を尽くします。協力できることであれば協力は惜しみません。もちろん、その前提として、政治は正直に現実を国民に打ち明けなければ、うたかたの夢になるということも忘れてはならないことであります。

 民主党の皆さんにおかれましても、マニフェストを提示し選挙に勝利された以上、それを実現することはもとより、鳩山総理及び民主党が発言された政治姿勢については、将来とも御堅持いただき、責任ある政権与党として精進されることを願い、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇〕

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 谷垣自民党総裁の質問にお答えをいたします。

 昨夜、海上自衛隊の護衛艦「くらま」が貨物船と衝突をし、国民の皆様方に御心配と御迷惑をおかけいたしました。政府といたしましても、情報収集に努め、危機管理に万全を期したところでございます。今後も、しっかりと原因の究明を行ってまいりたいと存じます。

 まず、マニフェストの実行にかける私の決意についての御質問がございました。

 何か、谷垣総裁におかれては、私どもが政権をとったらすぐに、あたかも君子が豹変したように思ったようにおっしゃいましたけれども、そのようなつもりは毛頭ありませんし、言うまでもありません、君子でもありません。

 マニフェストは、民主党の、国民の皆様方への契約でございます。その内容の多くを、連立三党で合意いたしました。その政策合意の中に盛り込ませていただきました。

 マニフェストという言葉は、民主党が使った言葉でございまして、その言葉を、連立三党の政権でありますから、遠慮を申し上げただけであります。言うまでもありませんが、その中の子ども手当などの内容に関しては、しっかりと一つ一つ申し上げたところであります。

 マニフェストは、四年間におきます国民の皆様方との契約であります。したがいまして、必ず実現をいたします。

 もし、四年たって、国民の多くの皆さんから、残念ながら、民主党、社民党、国民新党の連立政権、マニフェストの政策がなかなか達成できなかったね、もし国民の皆様方からそう思われたら、当然、政治家としての責任はとります。言うまでもありません。

 それから、国づくりと政治の役割についての御質問をいただきました。

 私は、あえて所信表明の中で、政治の役割はそれほど大きくないのかもしれないと申し上げたんです。すなわち、新しい公共という概念が、これから、二十一世紀の日本のみならず世界の社会の中で最も重要な概念だと申し上げてまいりました。すなわち、人を支える役割を、今までは官中心でありましたが、官のみでなく、民もしっかりと参加していただいて解決をする、このような役割を持った新しい公共をこれから実現していくのが私ども新政権だと考えております。

 すなわち、全国各地で、子育て、介護、医療、教育、まちづくり、こういった問題に対して、自分たちで身近な問題を解決していこう、こういう動きが特に市民やNPOの皆様方の中で広がってまいります。私どもは、むしろこういった市民やNPOなどの活動を政府として支援申し上げる、こういう役割だと考えております。

 それから、福祉と負担のあり方についての御質問がございました。

 先ほど、百兆円近い大きな予算を考えている、そのようにおっしゃいましたけれども、百二兆円の補正と合わせた予算を提出されたのはどちらなんでしょうか。

 私は、むしろ、だから申し上げたい。大きな政府とか小さな政府と言う前に、政治は弱い立場の人々のためにあると申し上げたところであります。したがって、先ほども申し上げましたけれども、市民やNPOなどの活動を政府が支援する、これが新しい二十一世紀の政治の役割だ、そう考えますと、結果的に、それほど大きな負担にならなくとも大きな幸せというものを享受できる社会をつくることができるんだ、私たちはそのように考えているところであります。

 平成二十一年度第一次補正予算の執行見直しの考え方についての質問がございました。

 私どもは、「コンクリートから人へ」と、非常にわかりやすいメッセージを国民の皆様方に提示をし、そして選挙を戦い、政権交代を実現してまいりました。したがって、アニメの殿堂のような、このような予算に関しては執行を停止させたということであります。

 今回の補正予算の執行の見直しは、地方団体向けのもの以外の基金事業とか、あるいは官庁等の施設整備費等を初めとして、各大臣が必要性、緊急性の観点から厳しく優先順位を見直したものであります。その際に、言うまでもありません、地域経済や国民生活などに与える影響も勘案しながら執行の是非を判断したところであります。

 それから、平成二十二年度予算編成についての御質問がありました。

 言うまでもありませんが、平成二十二年度予算については、これから概算要求の中身を具体的に精査していくものでございます。そこにおきましては、無駄遣いあるいは不要不急な事業をまず見直すなどによって財源をきちんと確保していきながら、マニフェストの工程表に掲げられた主要な事項というものを実現するために全力を傾注してまいる所存であります。その際、申し上げておきますが、私どもは、一般会計だけではなく特別会計もあわせて考えてまいりたい、そのように思っております。

 景気対策についての御質問がありました。

 この新しい内閣は、経済合理性や経済成長率というものに偏重しないで、国民の暮らしの豊かさに力点を置いた、人間のための経済というものを目指したい、そう申し上げたところであります。歳出削減が進められていく一方で、子ども手当あるいは高速道路の無料化、こういった施策によって家計が潤い、消費などが増加することが当然見込まれてまいります。こうした施策を一つ一つ着実に実行することによって、日本経済が、自律的な民需、いわゆる内需を刺激することによって回復軌道に乗っていくことが十分に期待されているわけであります。

 最低賃金の引き上げについての御質問がありました。

 これは言うまでもありませんが、まじめに働いておられる人が生計を立てられるようにするためには、最低賃金の引き上げに取り組むことが重要だと私たちは考えているんです。

 今後、いわゆる歯を食いしばって必死に頑張っている中小企業の皆様方のことにも十分配慮しながら、中小企業における円滑な実施を図るための財政上あるいは金融上の措置というものを実施しながら、雇用の安定にも配慮をして、最低賃金の引き上げについて取り組んでまいりたいと思っております。

 最低賃金千円を目標としておりますが、一気に千円にすぐに到達をするということはなかなか厳しいことも十分理解しているところであります。

 それから、企業や公共事業は非効率で有害かという御質問がありました。

 私どもは、企業が非効率で有害だとは一言も言っておりませんし、思ってもおりません。また、公共事業に関しても、すべてがいたずらに非効率で有害だと決めつけているわけではありません。

 しかしながら、大規模な公共事業が国民にとって本当に必要なものかどうかをもう一度よく見きわめることが必要だ、そして、その中で、必ずしも必要でないものはやめようではないか、真に必要なインフラ整備に関しては戦略的に進めてまいろう、こういう趣旨でございます。

 言うまでもないですが、企業というものは、いたずらに利益を追求するだけではなく、雇用を生み出し、社会的に意義のある事業の担い手であることは論をまちません。公共事業依存型の産業構造を一方では転換をして、低炭素型の産業あるいは医療や介護、子育てなどの産業を育てていく、そして新しい雇用と需要を生み出してまいりたいと考えております。

 成長戦略について、具体策について御質問がございました。

 私どもは、まず、考え方として、基本に人間のための経済、まさに先ほど申し上げたように、経済成長率至上主義に陥ってはならない、その反省の中から、人間のための経済というものを重視してまいりたい。その意味において、我が国が経済成長を実現していくために、イノベーションの強化を通じた世界最高の低炭素型産業を創造したり、あるいは暮らしの安心を支える医療や介護、あるいは地域を支える林業、農業あるいは観光、こういった分野での内需中心の産業の育成、あるいは教育、子育てというものもあろうかと思いますが、こういったものを通じて、新たな雇用、さらには需要を生み出してまいります。あわせて、これも、アジアの成長を後押ししながら、その活力も取り込んでまいります。

 こういった取り組みを行っていくことによって、景気回復と雇用創出の双方を実現したいと考えております。

 マニフェストに基づいた歳出削減についての御質問がございました。

 九・一兆円というお尋ねは、これは特別会計と合わせての話でございます。無駄遣いや不要不急な事業を見直すことなどによって、マニフェストの工程表に掲げられた主要な事項を実現することが最優先だ、これは先ほども申し上げたところでありまして、このために、仙谷大臣を中心に、行政刷新会議というものを設立して、そこで事業仕分けを含めた歳出の抜本的な見直しに着手したところでございます。

 今後の予算編成過程において、行政刷新会議と各省で協力して、思い切った歳出削減に取り組んでいただいて、その中で財源を必ず確保してまいります。

 それから、予算編成における財源の確保についての御質問がございました。

 何か、埋蔵金を充てるなどといったフィクションで世を欺くようなことがないよう、そんなお話をされましたが、そもそも埋蔵金はないとおっしゃっていたのはどちらの政党なんでしょうか。そして、私どもの指摘で、埋蔵金というものがあるではないかと申し上げた途端に、埋蔵金に飛びつかれたのもどなたなんでしょうか。

 私どもは、マニフェストの工程表に掲げられております主要な事項を実現するに当たって、無駄遣いや不要不急な事業を見直すことなどによって財源は必ず確保できる、そのように確信をいたしているところでございます。

 恒久的な財源が必要ではないか、そんなお話がありましたが、恒久的な財源、例えば消費税の増税などのことを見通しておっしゃっておられるんだろうと思っておりますが、このようなことを国民に強いるためには、まずは国民の皆さんの政治に対する信頼が回復されなければならないんです、皆さん。私どもは、政治に対する国民の皆さんの信頼というものの回復をまず果たすために全力を尽くしていきたい、その前に消費税の増税を行う必要はない、そのように考えているのであります。

 来年度予算編成においても、すべての予算を組み替えて、新たな財源を当然見出してまいります。

 それから、財政健全化の進め方、経済財政運営の基本方針についての御質問がございました。

 平成二十二年度の予算編成においては、マニフェストに従って新規施策を実現するために、すべての予算を組み替えて新たな財源を生み出すことによって、財政規律を守り、国債マーケットの信認を確保することができると考えております。

 中長期的な経済財政運営のあり方については、国民の暮らしを守るための財政のあるべき姿を明確に示した上で、長く大きな視野に立った財政再建の道筋を検討すると所信表明でも申し上げたところでございます。

 その一環として、二十三年度以降、菅大臣のもとで、国家戦略室において、中期財政フレームの策定を検討してまいります。

 それから、日米地位協定、米軍再編、普天間基地移設問題、在日米軍のあり方についての質問をいただきました。

 日米同盟は日本外交の基軸である。言うまでもありません。

 明年は日米安保条約改定五十周年という節目の年であります。中長期的な視野に立って日米同盟を重層的に深化をさせてまいります。その観点から、御指摘の点を含めて、今包括的なレビューを行っているところでございます。

 その中で、在日米軍再編については、安全保障上の観点も踏まえて、過去の日米合意などの経緯も慎重に検証した上で、沖縄の方々の思いをしっかりと受けとめながら、真剣に取り組んでまいります。

 普天間の移設問題に関して、今まで十年以上結論を出さなかったのはどの政権なんでしょうかと申し上げたい。

 言うまでもありません、最後の意思決定は私が行わせてもらいます。

 補給支援特別措置法の延長についての質問でございます。

 インド洋の補給支援活動は、文字どおり、単純延長はいたしません。アフガニスタンを初め、国際社会にも真に喜ばれる日本の支援のあり方は何か。それは、今そのことを真剣に、慎重に調査をしているところでございまして、最も望まれている支援を積極的に行うことが重要だと考えております。

 それから、気候変動に関する今後の交渉戦略についての御質問がございました。

 九月二十二日、私は、国連の気候変動首脳会合において、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築や意欲的な目標の合意を前提として、温室効果ガスを九〇年比二五%削減という野心的な目標を率先して掲げたところであります。また、先進国と途上国との間の架け橋を、日本として、先進国は役割を果たさなければならない、その思いのもとで、途上国支援のための、いわゆる鳩山イニシアチブというものを提唱したところでございます。

 思い切った削減目標あるいは途上国支援というものを打ち出すことによって、国際交渉を通じ主導していく、国際的な枠組み、その枠組みの中にアメリカや中国の参加を促していきたいと考えております。

 言うまでもないのですが、私が国連で打ち出したことによって、COP15、コペンハーゲンで十二月に行われますが、COP15を失敗させてはならないという国際的な機運がわき上がっていることも事実であります。まさにこういったモーメンタムをつくらせていただいた、これを加速させて、アメリカや中国にも協力をしてもらえる状況を今つくりつつある、努力をしているところでございます。

 それから、日本の温室効果ガスの削減目標の前提条件である米中の意欲的な目標、それは何かという質問でございます。

 米中を含めた主要国にとっての意欲的な目標が何かということは、今後の国際交渉の中で明らかになっていくものでありまして、現時点では明らかでありませんし、また、明らかにしてはならないものであります。

 いずれにしても、すべての主要国が互いに検証、評価をできる形の中で、それぞれの状況に応じた最大限の目標を掲げることが重要であり、そのために日本としても全力を尽くすということでございます。

 コペンハーゲン会合に向けた今後のシナリオや戦略についてという御質問がございました。

 先ほども申し上げましたけれども、国連演説によって極めて大きな前向きのモーメンタムが出てまいりました。それが世界の風潮になってきています。したがいまして、世界全体の温室効果ガスを削減するということが重要なのであって、思い切った削減目標や途上国支援を打ち出すことによって、アメリカや中国などの主要国の参加を今後促すことに全力を傾注してまいりたいと思います。

 言うまでもありませんが、アメリカや中国などが、主要国が参加しない状況を前提とした戦略というものは考えてはおりません。

 二五%達成のための国民負担についてのお尋ねでありましたが、二五%の削減は、これは温暖化をとめるために科学が要請する水準に基づいたもので、それに基づいて私どもが表明をしたわけであります。

 旧政権における経済影響、家計負担の分析、あるいはその結果の表現方法については、マイナスのみならずプラスの効果もある、その扱いなども含めてさまざまな課題が存在しているところでございます。これは、経済成長率や家計、産業、雇用に対する影響、あるいは海外クレジットの獲得による影響等について、閣僚委員会のもとにタスクフォースを現在設置して鋭意検討しているところでございまして、いましばらく時間がかかりますが、それほど間がなく結論が出るものと期待をしております。

 それから、新内閣のビジョン、予算編成全体の組み立てについての質問がございました。

 成長戦略も財政健全化のビジョンも、ビジョン自身がないかのようなお話がございましたが、あなた方に言われたくないと思います。より正確に申し上げれば、こんな財政にしたのはだれなんだということであります。旧来型の政官業癒着に基づいた成長戦略とは一線を画したものを私どもは考えてまいります。

 新内閣は、戦後行政の大掃除を行う、税金の無駄遣いを徹底して排除する、そして税金の使い道と予算編成のあり方を徹底的に見直してまいります。すなわち、「コンクリートから人へ」という理念に基づいて、国民の暮らしを守るための財政のあるべき姿を明確に出してまいります。

 こういったビジョンを明確に私どもは打ち出しているところでありまして、これに基づいた予算編成を行ってまいります。

 予算編成の司令塔についての御質問がございましたが、司令塔は私でございます。

 国家戦略室は、税財政の骨格や経済運営の基本方針を立案して、予算編成のあり方を徹底的に見直してまいります。行政刷新会議は、歳出を徹底してまず見直してまいります。その上で、具体的な予算編成は財務大臣が中心に行う。このように役割分担がしっかりできているところであります。

 それから、民主党のマニフェストの是非についての御質問がございました。

 決して、私どものマニフェスト、羊頭狗肉だとは思っておりません。マニフェストの第一は、先ほどから何度も申し上げておりますが、無駄遣いの徹底的な排除でございます。それから、政策的には、人の命を大切にする、そういった事業、さらには内需を刺激する事業を最優先するマニフェストを作成しているところでございまして、基本的な方向は、マニフェストの内容に問題があるとは決して思ってはおりません。

 それから、政務三役と行政官の関係、さらに、政治主導とは何かという御質問がございました。

 行政官は、決して、あなた方が心配しておられるほど萎縮しておられません。政治家がしっかりと最終責任を負う、しっかりと政治家が責任を負うよということを我々が担保しておりますので、むしろ今まで以上に行政官はやる気を持って頑張ってくれている、そのように感じております。したがって、事実関係の把握に支障を来しているということはありません。

 さらに、政治主導について申し上げれば、今までが余りに官僚に頼り過ぎていた、そして、うまくいかないときには、その責任を官僚にかぶせて政治が責任を回避してきた、これが大きな問題だったと指摘いたします。

 政治主導というのは、政治家がしっかりと最終的な責任をとるということであります。官僚の皆様方、行政官の皆さんには、その意思決定のための資料、データなどを政治家に提供していただくということになります。

 何を些事と呼ぶかにもよるのでありますが、些事のすべてに至るまで、すべて政治家が行うべきだと考えているわけではありません。

 そして、八ツ場ダムとか日本郵政人事に関して、あたかも暴走みたいな話がありましたが、決して暴走だとは思っておりません。

 マニフェスト政策の国会審議について御質問がありました。

 マニフェストの適否を存分に、皆さん、議論しようじゃありませんか。私どもは、マニフェストに書いてあるもの、連立与党で合意したものを一つ一つ政府として政策にまとめて、それを法案にしたり、あるいは予算にして提出をいたしてまいります。それをどうぞ大いに国会の中で議論しようじゃありませんか、皆さん。したがいまして、国会審議は無意味だとは全く思っておりませんし、しっかりと行うべきだと考えております。

 与党議員のあり方についての御質問がございましたが、政府に入っておられない与党議員の皆様方も、それぞれの政策会議におきまして、御自身の意見を述べる機会は十分に用意をしているところでございます。政策会議におきまして、与党議員の意見を十分に参考にさせていただいて、それを政府が政策にし、あるいは予算づけしていくところでございまして、したがって、その場において民意を十分に酌み上げることができると考えております。

 最後に、献金問題の説明についての御質問がございました。

 私は、おっしゃるとおり、クリーンな政治を政治家として今日まで求めてまいりました。それを原点としてまいったことも事実であります。個人献金の問題に関して、国民の皆様方に大変な御迷惑をおかけしたことを、心からおわびを申し上げたいと思います。

 私自身も当事者の一人でございますので、調査を委託して、解明されたことを発表申し上げ、収支報告書を訂正申し上げ、さらに、残された疑問点を含めて調査の続行を依頼したところでございます。その後、御案内のとおり、地検が捜査に入ったわけでありまして、その後は捜査に全面的に協力をするように指示しているところでございます。

 これは言うまでもありませんが、選挙の結果を踏まえて一つ一つ政策を遂行していくことが、私に与えられた最大の責務だと考えているところであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣亀井静香君登壇〕

国務大臣(亀井静香君) 申し上げるまでもないことでありますが、予算の総額は鳩山政治を具体的に実現していく政策の積み上げの中で決まっていくことでありまして、予算総額はその結果決まっていくことでありますから、あらかじめ額を決めてやることではないと考えております。(拍手)

    〔国務大臣福島みずほ君登壇〕

国務大臣(福島みずほ君) 谷垣議員にお答えをいたします。

 普天間基地についての御質問がありました。

 三党連立政権の政権合意に、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。」とあります。

 特に、普天間基地の問題の解決に当たっては、沖縄県民の負担軽減の観点から対応していくべきものと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 西村康稔君。

    〔西村康稔君登壇〕

西村康稔君 自由民主党の西村康稔でございます。

 私は、自由民主党・改革クラブを代表し、谷垣総裁に続きまして、鳩山総理の所信表明演説に対し質問を行います。(拍手)

 私は、開会式における陛下のお言葉を謹んで拝聴いたしました。

 まず初めに、天皇陛下御即位二十年、御成婚五十周年を、お集まりの国会議員、国民の皆様とともにお祝い申し上げたいと思います。(拍手)

 また、不幸にも二年ぶりの台風上陸や風水害などによって被害を受けられた皆様方に対し、心よりお見舞い申し上げます。政府におかれましては、被災者へのきめ細かな対応、速やかな復旧を要望いたします。

 さて、鳩山内閣が、高い支持率のもと、スピード感を持って仕事に取り組まれていることに、まずはエールを送りたいと思います。特に、中堅、若手の副大臣、政務官が最前線で仕事をしておられる。同世代の政治家として大いに頑張っていただきたいし、私たち自民党も、私をトップバッターに、これから我が党の中堅、若手の精鋭が論戦を挑んでまいります。よりよい政策、よりよい国づくりができるように、政策を競い、大いに切磋琢磨していきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 しかし、仕事の中身に目を転じますと、その内容、手法には大いに疑問を感じます。特に、日本経済の先行きや外交政策、意思決定の進め方、すなわち見せかけの政治主導、これに大きな疑問、不安を覚えます。これから、こうした点について質問させていただきます。

 まず、経済政策についてであります。

 今般、鳩山内閣では、二十一年度補正予算について、三兆円近い執行停止、削減を決められました。私たちは、このことについて大きな疑問があります。

 私たちは、将来の税収源としての新産業育成、成長戦略、こうしたものを見据えながら、当面の景気対策として経済を下支えし、三年で日本経済を立て直すために、まさに政治主導で二十一年度補正予算を編成いたしました。

 本来、予算とは、日本経済、特に地域の経済状況を踏まえつつ、一方で、将来の成長戦略、財政規律、こうした長期のマクロフレームに基づき編成するものです。そうした方針なしに予算を削減したり編成したりするのはおかしいのです。鳩山政権は予算編成のやり方をわかっておられないのではないでしょうか。

 そもそも、こうした大方針を立てることこそが政治主導であり、そのためにつくられたのが国家戦略室と理解していたのですが、国家戦略室が何も仕事をしていませんね。鳴り物入りで就任された菅副総理、全く存在感がないじゃないですか。まさに看板倒れです。一体、何の仕事をされておられるんですか。

 そして、すべての省庁の副大臣、政務官がみんなそろって役所にこもり、何の方針もなく、まだ使っていない予算を無駄とし削ること、それが政治主導なんでしょうか。国民の皆さん、この見せかけの政治主導をぜひ見抜いていただきたいと思います。

 鳩山総理、総理は無駄を省けば財源はあるとおっしゃいましたね。私たちも気づかなかった無駄があれば、それは喜んで一緒に削減しましょう。しかし、削減を決められた補正予算三兆円もすべて無駄なんですか。

 総理は、不要不急と言われました。地域医療の整備や小中学校の耐震化工事、太陽光発電の設置、これも不急なんですか、不要なんですか、無駄なんですか。もし無駄というなら、削減した予算を来年度予算につけかえたりはされないでしょうね。

 まずは、この無駄の定義、根拠も含めて、ぜひ具体的にお答えください。

 しかも、九十五兆円を超える来年度予算の概算要求は何ですか。何の基準も方針もなく、マクロフレームもなく、そんな予算編成がありますか。いつまでも無責任な野党のつもりでは困ります。

 そもそも、現下の経済情勢をどう考えておられるんですか。

 私たちの補正予算の効果により景気は持ち直しの兆しが見られたものの、鳩山政権による理念なき補正予算の執行停止、これにより景気の腰が折られ、税収はさらに落ち込みました。また、閣僚らによる不注意な発言に伴う株価、為替の迷走、さらには、いとも簡単に公約を覆された鳩山総理の国債増発容認発言など、こうした政治姿勢で、市場関係者の間では、景気の二番底、三番底への懸念が非常に高まっており、鳩山不況と言われ始めております。鳩山総理の御見解をぜひお示しくださいませ。

 所信表明では、子ども手当などで家計を刺激し、外需主導から内需主導に転換し、経済成長を実現するとしています。

 内需主導への転換の必要性はわかります。しかし、社会保障への不安があり、しかも鳩山総理の国債増発容認との姿勢は、将来にツケを回す懸念が強まり、消費はふえるわけがありません。消費者のひもはさらにかたくなってしまいます。

 さらには、最低賃金改正、製造業への労働者派遣禁止など、企業の国際競争力をそぎ、産業の空洞化を加速しかねません。現に、民間調査によれば、約二割の企業がこれらの制度改正により製造拠点の海外移転を考えています。

 所信表明で言及された緑の産業や情報産業も私たちが従来から進めてきた政策であり、科学技術で世界をリードするとおっしゃいながら、産学官の共同研究や最先端研究開発支援など、こうした関連の補正予算も執行停止となっています。言っていることとやっていることが違うではありませんか。総理は、日本の未来をつくる予算も切ってしまっているのです。

 仕事をふやさず、将来の産業の芽を摘み、どうやって経済を豊かにし税収をふやすのでしょうか。税収をふやさずしてどうやって子ども手当を配るんですか。安易に借金をふやすんでしょうか。抽象的な理念だけでは、経済は活性化しません。

 私は、国際競争力の観点から、思い切った法人税減税も必要だと考えますが、先ほどの答弁に示されたような、新産業の育成のための具体策も含めた日本経済の将来像を示していただき、持続的な経済成長に向けた具体的政策を総理にぜひ御提示いただきたいと思います。

 中小企業が厳しい経営環境にあることは認識を共有しております。中小企業の資金繰り支援も大切であります。私たちも、公的金融機関の融資や信用保証の充実を図ってまいりました。

 政府は、貸し渋り・貸しはがし是正法案を提出予定とのことですが、その内容は明らかになっておりません。仕組みによっては、貸し手の金融機関も、借り手の中小企業もモラルハザードに陥りかねません。金融取引の安定、中小企業の発展の観点から大いに議論をしていきたいと思います。

 同時に、中小企業政策としては仕事をつくることも大事なのです。東大阪市、大田区、荒川区、川口市といった、世界有数の技術を持った中小企業の集積地域も不況に苦しんでいます。例えば、この地域を世界の試作品センターにすべく支援を行うなど、希望の見える中小企業の成長戦略を示すべきだと思いますが、総理、いかがでしょうか。

 さて、今般の日本郵政の社長人事には、大変驚きました。

 民主党は、常に脱官僚、天下り根絶を声高にうたい、すべての国会同意人事について官僚OBに反対されてきたのではなかったですか。言うこととやることが違うではありませんか。明らかに天下り、わたりです。脱官僚と逆行します。大多数の国民はそう思っていますよ。

 郵政民営化の方針を大きく変更するならば、その理由と郵政事業の将来像を国民に明確に語るべきではないでしょうか。巨大な官業をよみがえらせるのですね。今回の新社長は官僚中の官僚、その人事はまさしく象徴であります。民主党政権が目指すのは、組織の大掃除と言いながら、結局、官主導で資源配分をする、非効率な大きな政府をつくることなんですか。

 弱い人のための政治、友愛の政治、そうした政治は、結局、大きな政治がすべての人の面倒を見る、こういうことなんでしょうか。先ほどの御答弁では理解ができません。明確な御答弁を求めます。

 私たち自民党は、官から民への大方針のもと、非効率な政府部門をできるだけ小さく簡素にし、民間の力、すなわち、個人や企業の自助努力を基本に、市場や競争を通じて経済活動を活性化するとの考え方に立っています。

 かつての大英帝国は、大きな政府により凋落しました。菅副総理は、イギリスまで行政のあり方を勉強に行かれたそうですね。イギリスで一体何を学んでこられたんですか。仕事をしなくとも、格好いい名前のポストをつくることだけを参考にされたんでしょうか。

 郵政民営化の方針を転換し、さらに、前言を覆し、あえて財務省トップを据えた鳩山総理のお考えをお尋ねいたします。

 鳩山民主党政権の大きな政府への志向は、子ども手当や農業の戸別所得補償制度にも見受けられます。それぞれ五兆四千億円や一兆円もの巨額な資金を、財源を明示することもなく、官が一律に配分するやり方です。

 子ども手当については、配偶者控除や扶養控除を廃止してまで、所得の高い層にも一律に支給するのでしょうか。

 また、地方議会や市町村の手続や事務作業を考慮すると極めて無理があるにもかかわらず、来年の参議院選挙直前の六月からの支給を考えておられるとのことですが、本当でしょうか。

 それなら、なぜこの臨時国会に法律を提出されないのでしょうか。マニフェストを徹底的に議論しようと言われるなら、この国会も会期をもっと長くとろうではありませんか。

 そういえば、今年度の定額給付金について、鳩山総理自身が、当時、国家予算を使った選挙買収だと主張をされていました。間違いありませんね。私は、その言葉をそっくりそのまま鳩山総理にお返ししたいと思います。

 子ども手当について、所得制限を設けて、本当に経済的に厳しい世帯に重点的に支援するというのなら議論の余地はあります。あわせて、一定の質を担保しながら保育所の整備を加速する、あるいは、子育ての悩みを分かち合い、母親のサポートをするNPOの活動を支援する、また、子育てと仕事を両立できる労働環境を整備する、こうした取り組みを私たち自民党として提案したいと思います。

 子ども手当として全員に配るということにこだわることなく、限られた財源を真の子育て支援となるよう有効に配分し、協力して進めていこうじゃありませんか。子育てを支援する地域のNPOの活動や、病児保育などのコミュニティービジネスといった新しい共同体の息吹を一緒に応援しようではありませんか。鳩山総理と、そして所得制限を主張しておられた福島少子化担当大臣にお伺いいたします。

 また、農業の戸別所得補償制度について、全国一律の標準的な生産費と販売価格の差額を補償すると聞いておりますが、例えば米の場合、品種、地域、さらには大規模農家と小規模農家、中山間地域の農家などによって状況は大きく異なります。したがって、全国一律の補償では不公平が生じるばかりか、結果として、農業の現状を固定化し、規模の拡大や品種改良などに取り組む農家の自主的な努力をそぐことになりませんか。

 もちろん、農家の皆さんの経営安定のための政策は必要です。わかりやすい簡素な制度にすることも必要です。競争力強化に取り組む農家の方々の努力も評価しながら、そうした努力を促すことも大切です。いかなる制度がいいのか、ぜひ建設的な議論をしてまいりたい。総理のお考えをお伺いいたします。

 さて、鳩山不況が言われる中、雇用情勢は一層悪化することが懸念されています。現に、高校生、大学生の新規採用も大変厳しい状況にあります。

 先日、緊急雇用対策を取りまとめられましたが、残念ながら、中身を拝見すると、従来より我々の政権で進めてきたことばかりで、何ら目新しいものはありません。

 私たちの政権においては、この不況を脱するには三年かかるとの認識のもと、補正予算において基金を設け、年度をまたがる雇用対策を展開してまいりました。本気で雇用対策をお考えなんでしょうか。そうだとすれば、なぜ、こうした雇用対策関連の補正予算も執行停止にしたのですか。ぜひ総理のお考えをお伺いいたします。

 こうした補正予算の執行停止については、何より全国に大きな不安が広がっています。現実に予定されていた事業の執行が停止し、年末、年度末に向け、地域の経済や雇用への多大な影響が懸念されています。総理、この認識はございますか。

 さらに、地方自治体では、議会での議決やさまざまな関係手続を進めてきただけに、大きな混乱を招いています。予算プロセスをオープンにするとの所信表明とは全く異なり、実態は、政務三役が密室で作業を行い、地域主権と言いながら、地方との対話を全く無視した政治手法です。これが政治主導ですか。

 また、我が党は、経済環境、生活環境が一段と悪化している過疎地域について、過疎関係者と協議を行うなど、新過疎法制定に向けた準備を進めてまいりましたが、政府は単純延長を考えておられるようですが、総理の過疎対策に対する御所見をお伺いいたします。

 さて、混乱はこれだけにとどまりません。

 長妻厚生労働大臣、大臣はミスター年金と呼ばれ、こつこつ資料に当たられ、その粘り強さには敬意を表するところでございます。しかし、最近では、ミスター検討中と呼ばれているそうですね。

 長妻大臣、年金だけならともかく、医療や福祉、そして雇用対策まで担当されるのは荷が重いのではないでしょうか。インフルエンザの予防接種の方針も二転三転し、雇用対策も我々の行ってきた政策の寄せ集めでしか打ち出せないのも無理はありません。年金以外の医療、福祉のことはわからないということであれば、いつでもかわってさしあげますよ。

 特に、地域医療の不安は日に日に増大しています。医師不足や救急医療体制の整備のための補正予算、地域医療再生臨時特例交付金のうち、七百五十億円もの予算を停止したのはどういう認識からですか。地域は本当に困っています。

 私たち自民党も責任を感じています。その反省に立ち、社会保障費二千二百億円削減の方針を撤廃し、地域医療の再生に予算を重点配分すべきだとの認識のもと、医師不足や救急医療患者のたらい回しをなくすために、この補正予算を組みました。地域ごとに工夫をし、医療機関の再編、リニューアル、地域の医療再生のためにこの予算を活用しようとしていたやさきでございました。こうした地域の努力を一体どうされるおつもりですか。

 かつて大臣が指摘されたとおり、地方の医療は崩壊寸前です。また、がんや小児分野の未承認薬の開発支援などの予算も執行停止にされました。期待していた多くの患者さんたちから落胆の声が多数寄せられております。人の命こそ何より大事にするとおっしゃっていたのではないでしょうか。まさに見せかけの友愛です。こうした予算まで停止をされた総理のお考えをお伺いいたします。

 そして、何より、国民の皆さんが安心できる年金、医療、福祉の社会保障制度の構築が不可欠であります。政権がかわるたびに制度が変わるのは避けるべきであります。ぜひ超党派での社会保障制度協議会の設置を提案したいと思いますが、総理、いかがでしょうか。民主党は、野党時代には、与党だった私たちの呼びかけに応じていただけませんでしたが、これだけ多くの議席を得られたのですから、懐深く、国民のためにぜひ一緒にやろうじゃありませんか。総理のお考えをお伺いいたします。

 次に、外交・安全保障政策についてお伺いいたします。

 沖縄における米軍再編は、沖縄県の基地負担軽減とともに、いかにして在日米軍と自衛隊による抑止力を確保するか、この二つの要請にこたえるのが日米合意であります。

 普天間の移設なくして、海兵隊のグアム移転や在沖縄海兵隊の縮小、土地の返還はあり得ません。具体的代替案を示さず、先送りにするだけでは、沖縄県民の負担は軽減されません。一刻も早い移設が必要です。

 しかしながら、閣僚の発言はばらばら、鳩山総理の発言も二転三転し、沖縄県民を不安にしています。さらに、アメリカもあきれさせてしまっている現実を見てはおれません。十月二十二日付のワシントン・ポスト紙では、日本がアメリカにとって新たな厄介な問題となっているとの強い懸念を示す報道がされるなど、アメリカでは鳩山政権の安全保障政策を強く批判する声が日に日に高まっております。

 東アジア首脳会議の冒頭で、わざわざ総理が異例とも言える日米同盟の重要性を表明しなければならないほど、アメリカ側から不満をぶつけられていたのではないですか。しかし、所信表明でも何ら具体策も全く示さず、一国の責任者、総理として無責任きわまりない。真剣さは感じられません。総理は、抑止力の確保の意味をわかっておられるのでしょうか。日米同盟の重要性、日米の信頼関係を一体どうお考えなんでしょうか。具体的にお答え願います。

 また、インド洋での補給活動は、他国から高く評価されており、我が国のシーレーン防衛にもつながる極めて有意義な活動です。私たちは、このインド洋での補給活動を続けるための法案を議員立法で提出することにいたしております。これを中止して、治安の極めて悪いところにさらに民間人を送るのか、それとも、資金支援だけで済ます、いわゆる小切手外交に戻ろうとされているんでしょうか。総理にその方針を示していただきたい。

 私は、私自身が事務局長を務める超党派の新世紀の安全保障を考える若手議員の会で、前原国土交通大臣とともに、自衛隊の海外派遣の一般法をつくろう、こうした勉強、活動を行ってまいりました。前原大臣、この考えにお変わりはございませんか。

 また、閣僚の中には、そもそも、二〇〇六年二月の党大会で「現状、明らかに違憲状態にある自衛隊」と採択した社会民主党の党首も大臣として閣内に入っておられます。

 福島大臣、自衛隊は違憲だとお考えですか。お答え願います。また、先ほどの前原大臣の考え方に賛同なさいますか。お二人には政治家として信念に沿った責任ある答弁を求めます。

 次に、総理の言う友愛外交についてお伺いします。

 総理の外交姿勢に対し我々が特に憂慮するのは、国の根幹である領土についてであります。これは、友愛という言葉であいまいにはできない重要な問題であります。

 かつて総理は、四島一括返還では島は千年たっても返らないと述べたと伝えられています。友愛を掲げられる余り、相手側に対し領土問題の譲歩などの期待を与えないよう、ぜひとも総理には、北方領土の四島一括返還、竹島問題における考え方をこの場で国民の皆さんに説明していただきたいと思います。

 また、単に友愛では済まされない北朝鮮問題に対してどのような方針で臨まれるのか、核、拉致、ミサイルに対する方針をこの場でお聞かせください。

 次に、教育問題についてお伺いいたします。

 自民党は、改正教育基本法の理念を実現し、子供たちが我が国の歴史や伝統に誇りを持ち、国を愛し、将来の主権者たる自覚をはぐくむ政策を進めてまいりました。しかし、政権交代により、こうした教育政策についても我々は大変危惧をしております。

 新政権の目指す教育のあるべき姿については、先日の所信表明演説においても何ら明確な姿が国民に示されず、教育の経済的な支援にしか触れられておりません。鳩山総理の目指す教育の内容や教育行政は何なのか、教育基本法との関係も含め、将来像、具体像をお示しください。

 最後に、鳩山総理の故人献金問題についてお伺いいたします。

 総理は、御自身のブログなどで、秘書の責任は政治家の責任と述べておられ、所信表明では、国民の皆様に御迷惑をおかけした、捜査に全面的に協力すると表明しておられます。しかし、マスコミの調査によれば、七割以上の国民が納得していないと感じております。

 捜査に全面的に協力するというのであれば、そして、政治主導を掲げておられるわけですから、政治に対する信頼を高めるためにも、故人献金の全容を国会で全面的に明らかにする責務があります。

 また、先日報道された鳩山家からの二億円の偽装献金、これは事実なんでしょうか。事実でないとすれば、正式に抗議をされたんでしょうか。この献金の仕組みのすべてを知っておられる総理御自身から、国会の場でぜひ全容をみずから進んで明らかにしていただきたいと思います。

 不易流行という言葉がございます。松尾芭蕉が奥の細道の旅の間に体得した概念と伝えられております。不易は、変わらないこと、すなわち、どんなに世の中が変化しても、状況が変わっても、絶対に変わらないもの、変えてはならないもの、一方、流行は、社会や状況の変化に応じて変わっていくもの、あるいは変えなくてはならないもののことをいいます。

 私たちは、責任ある野党として、政府・与党に対して何でもかんでも反対するつもりは毛頭ございません。ぜひ、国民にとってよい政策となるよう、変革を恐れず、国会の場において建設的な論戦、議論を行ってまいりたいと存じます。

 しかし、目先の利益にとらわれ、結果として後世に不利益をもたらし、そして、国民の生命財産、国益を危うくさせるような政策や、我々が大切にしてきた歴史、伝統、文化、さらには民主主義の根幹を揺るがすようなことには一切妥協はいたしません。私たち自民党はこれを守ってまいります。

 地域に根差した草の根政党として、真の国民政党として、あの過酷な夏の悔しさをばねに、自民党の再生に期待する八割もの国民の皆さんの声にしっかりとこたえてまいります。

 政府を厳しくチェックし、責任を果たすことをお約束申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇〕

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 西村議員の質問にお答えをいたします。

 スピード感、そして民主党の若手の活躍に対してエールをいただいたことに感謝を申し上げます。ありがとうございます。ぜひ、西村議員におかれましても、古い体質から飛び出す覚悟で頑張っていただきたいと思います。

 予算編成のやり方、国家戦略室の仕事についてのお尋ねがありました。

 新政権は、税金の使い道と予算編成のあり方を徹底的に見直してまいります。そのため、補正予算を見直した結果、御案内のとおり、約三兆円の不要不急の事業を停止したことになりました。このお金は、国民の生活を支援し、景気に役立つ使い道へと振り分けることといたしております。

 国家戦略室の役割でありますが、複数年度を視野に入れたトップダウンの予算編成などを主導して、先般、予算編成のあり方の改革を閣議決定したところでございます。しっかりと役割を果たしております。

 菅大臣には、既に雇用問題、また地球環境問題のリーダーシップを発揮していただいているところでございます。予算編成の時期になります。むしろ、これからさらに菅副総理になお一層の活躍をしていただくことになりますので、御期待を願いたいと存じます。

 平成二十一年度第一次補正予算の執行見直しの考え方についてのお尋ねがございました。何の方針もなく補正予算を組んだ政党の方から、貴重な御意見をいただいたと思います。

 今回の補正予算の執行の見直しは、地方団体向け以外の基金事業や官公庁の施設整備費等を初めとして、各大臣がその必要性、緊急性の観点から厳しく優先順位を見直したものであります。

 見直された事業に関しては、二十一年度に執行する必要性、緊急性があるかどうかという観点から見直されたものでありまして、二十二年度の概算要求に盛り込まれているものがあれば、今後の予算編成過程においてその必要性を検討してまいりたいと思います。一言で申し上げれば、中途半端な事業であったものを一たん停止させていただいて、よりよいものにしていきたい、こういう方針でございます。

 現下の経済情勢についての御質問がございました。

 どうも、これまでの失政をだれかの責任にするかのような発言をいただいて、まことに残念でなりません。私どもは、景気はやや持ち直してきているとは思っておりますが、極めて自律性に乏しくて、失業率が高水準にある、年末も厳しい、そういう厳しい状況にあることを認識しております。

 政府といたしましては、家計の支援によって個人消費を拡大するとともに、新たな分野で産業と雇用を生み出して、内需を重視した経済成長を実現するよう政策運営を行ってまいります。

 また、この中で、九十五兆円を超える概算要求、極めて大きな概算要求だという御批判をいただいたようでありますが、百二兆円もの補正と合わせての予算をつけられたのはどなたかということを改めて申し上げておかなければなりません。

 日本経済の将来像と持続的な成長に関するお尋ねがございました。

 日本経済の安定的、持続的な成長を確保することは、国民生活を豊かにするだけではなく、社会保障や、あるいは財政の持続可能性を確保するためにも必要であり、新内閣の最も重要な課題だと認識をしております。

 したがいまして、このため、社会保障制度に対する不信感をぬぐい去るとともに、家計を直接応援をし、国民が安心して暮らせる、人間のための経済、この方向に大きく転換をしてまいります。

 同時に、イノベーションの強化を通じた世界最高の低炭素型産業の創造をしていくこと、暮らしの安心を支える医療、介護、さらには地域を支える林業、農業、また観光分野での内需型産業の育成などを通じて、新たな需要と雇用を生み出してまいります。そのことによって我が国の経済の成長を実現してまいりたいと考えているところでございます。

 一言で言えば、国民の暮らしの豊かさに力点を置いた経済社会を目指すということであります。

 なお、子ども手当の創設につきましては、財源を当然ながらきちんと確保しながら進めてまいる所存でございますので、どうぞ、御心配は結構でございます。

 中小企業の成長戦略についてのお尋ねがございました。

 我が国の産業や暮らし、地域経済を支えているのは、全雇用の約七割を占めております中小企業でございます。中小企業の皆様方が、大変歯を食いしばりながらこの国の発展のために頑張ってこられたことも言うまでもないところでございまして、そういった中小企業の皆さんが地域において大変厳しい状況に直面しておることも存じているところでございます。

 したがいまして、このような我が国の経済のまさに成長の礎であります中小企業が、未来に向けて展望が見出していけるような、そのような方向でこれから策定する経済成長戦略においてしっかりと位置づけさせていただいて、そのために資金繰りの対策とか、あるいは物づくり企業の研究開発力強化などの施策を着実に講じていく、その所存でございます。

 郵政改革の方針並びに日本郵政株式会社の社長人事についての質問がございました。

 郵政改革の方針に関しましては、国民生活の確保と地域社会の活性化という観点を踏まえて、これは国民共有の財産であります郵便局ネットワークを活用して、郵便そして郵便貯金、簡易保険、こういったサービスを全国あまねく郵便局で一体的に利用できるようにする、そういった意味を持った郵政改革の基本方針を先般閣議決定いたしたところでございます。この閣議決定に基づいて、今後改革案を検討してまいります。その法律案は次期の通常国会に提出する予定でございます。

 なお、日本郵政株式会社の社長人事でございます。

 社長に就任いたします齋藤氏は、御案内のとおり、旧大蔵省の事務次官経験者ではございますが、退官後もう既に十四年間民間で勤務をした経験がございます。もうこのことは御案内と思いますが、本当に私どもは能力のある方だと理解をしているところでございまして、適材適所、仕事のできる方を適材適所で配置をいたす、このことに関しては、仕事を見ていただくしかないと思っているところでもございます。

 子ども手当についての御質問がございました。

 次世代を担う子供一人一人の育ちを社会全体で応援してやろう、それが子ども手当の極意でございます。

 したがいまして、子ども手当については、平成二十二年六月からの支給を目指して、今、制度設計について検討を進めているところでございます。必要な財源を確保する必要がありますので、平成二十二年度予算編成を経て、通常国会に法案を提出したい、そのことを考えておりますし、当然、そのときには、その事務を担っていただく地方自治体の御意見も伺いながら進めてまいりたいと考えております。

 また、市民やNPOなどが行う多様な保育サービスや地域の子育て事業など、子ども手当以外の子育て支援策も、当然のことながら、充実に努めてまいります。

 最後に、定額給付金のことを国家予算を使った選挙買収だと、確かに私は申し上げました。

 この定額給付金は、すべての人に一律に配るものでありました。子ども手当に関しては、御案内のとおり、少子化という日本の最大の今解決しなければならないテーマに基づいて支給を申し上げるということでございまして、その目的が大きく違います。

 戸別所得補償制度についてのお尋ねがございました。

 現在、米を対象に、わかりやすく簡素な制度とし、また、規模や年齢にかかわらず、意欲のある農家の方々の努力が反映できるようなモデル事業を検討しているところでございまして、今後、農業をやっておられる方々や関係者の皆様方の御意見を伺いながら、具体化を図ってまいる所存でございます。

 雇用対策に関する御質問がございました。

 職業訓練と生活保障を実施する緊急人材育成・就職支援基金は、よりよい求職者支援制度というものを創設する、その観点から、平成二十三年度分を執行停止したというところでございます。

 一方、政府が一丸となって雇用の確保に取り組むため、細やかで機動的な緊急雇用対策を決定いたしたところでございます。

 職を失って生活に苦しんでおられる方々への支援、言うまでもありません。さらには、新卒未就職の方々への対応、さらには、雇用をいかにして創造するか、新しく創造する、そういったことに対して積極的に政府として取り組む所存でございますので、御理解を願いたいと存じます。

 また、平成二十一年度の第一次補正予算の執行見直しによる地域経済や雇用への影響についての御質問がございました。

 今回の補正予算の見直しに際しては、これは前も申し上げましたが、地方公共団体向けの基金は一時留保の対象から除外するなど、地域への影響に十分に配慮してまいります。そのことを御理解願いたい。

 また、現場をよく見ながら、政策的な必要性も精査をして、地域経済や国民生活などに与える影響も勘案しながら、執行の是非を検討するよう指示をいたしたところでありまして、各省において個別の事業を精査していただいた上、執行の是非を判断したいと考えております。

 今後の過疎対策についてのお尋ねがございました。

 過疎地域には、もう御案内のとおり、人口減少、さらには厳しい高齢化、あるいは農林水産業が大変厳しい状況にある、さらには、将来、維持が危ぶまれる集落が増加している、大変深刻な事態になっているということは承知をしております。

 したがいまして、私どもは、まず戸別所得補償制度の創設を含めた農林漁業を立て直すということがまず最大限のテーマだと考えて、これに注力をしてまいりたいと思います。さらには、新しい産業としての農業、林業、さらには観光産業を育成してまいりたいと思いますし、また、インフラや医療など暮らしの安心の確保などを行うことによって、活力ある地域社会をつくるために国としての役割も十分あると理解をしています。

 したがいまして、過疎対策は切れ目なく講じていくことが必須だと考えておりますので、延長を申し上げたいと思っているところでございます。

 地域医療再生臨時特例交付金などの執行停止についてのお尋ねがございました。

 この地域医療再生臨時特例交付金については、対象地域が決定をしていないというところで、一部、すなわち医療機関などの建物の建てかえなどのハードをやめて、それを執行停止して、ソフトの部分、すなわち喫緊の課題である医師確保対策などに集中をすることに決めたのでございます。

 この交付金の有効活用を含め、医師不足の解消、救急、産科、小児科等の医療提供体制の再建に取り組む所存でございます。

 また、未承認薬の話がありましたが、希少疾病用の医薬品への支援など、通常の支援によってはこれまで開発がなかなか進まなかった、こういったものは執行停止はしません。優先をして一層の支援を行うことに決めたところでございます。

 それから、超党派での社会保障制度協議会の設置についての御質問がございました。

 医療、年金、介護など社会保障制度を信頼できる持続可能なものにするために、財源の確保というものも求めながら、連立政権の合意やマニフェストで示した政策を、政府としては着実に実行してまいりたいと思います。

 したがいまして、野党の皆様とは、まずこういった国会の審議の場で堂々と真剣に行っていこうではありませんか。

 外交問題に関して、抑止力の確保及び沖縄の米軍再編についての御質問がございました。

 アジア太平洋の地域はいまだに不安定、不確実な状況である、その認識は持ち合わせています。したがいまして、こうした中では、日米安保体制に基づいて、米軍の抑止力というものは我が国の安全保障にとって必要なものだという認識はいたしております。

 したがいまして、こういった中で在日米軍再編について考えていく必要がありますが、こういった安全保障上の観点も踏まえて、過去の日米合意というものも慎重に検証していきながら、沖縄の方々の思いをしっかりと受けとめながら真剣に取り組んでまいりたい。これが私どもの基本的な姿勢でございまして、先ほどやや具体的に申し上げたところでございます。

 インド洋での補給支援活動とアフガニスタン支援についてのお尋ねがございましたが、アフガニスタンの支援は国際社会が全体として対処していかなければならない最重要な課題だ、そのように理解をしています。

 したがいまして、我が国といたしましては、本当に何が必要とされているのか、アフガニスタンの国民にとって必要な支援のあり方を検討して、日本が得意とする分野において積極的な支援を行っていきたい。例えば、農業、あるいは元兵士に対する職業訓練、さらには警察機能の強化など、行ってまいりたいと思っておりまして、小切手外交に戻るつもりはまるでありません。

 小切手外交とおっしゃいましたが、戻るとおっしゃったことは、今まで小切手外交をやっておられたということではないかと思いますが、私どもはそのようなことに戻るつもりはありません。

 ただ、援助要員の派遣に当たっては、当然、安全対策を十分にとらなければならないことは言うまでもありません。

 また、インド洋における補給支援活動については、単純な延長は行わない、先ほども申し上げたところでありまして、アフガニスタン支援の大きな文脈の中で対処をしてまいりたい。

 このインド洋での補給支援活動が大変役に立ったという西村議員の御発言がありましたが、本当に役に立っているのかどうか、御確認が必要だと思っておりますし、先般、岡田外務大臣がアフガニスタンに参りましてカルザイ大統領と懇談をしたときにも、一言もカルザイ大統領の方から補給支援の話は言及がなかったということを聞いているところでございます。

 また、北方領土問題及び竹島問題についての御質問がございました。

 北方領土問題を解決するために何が大切なのか。これは首脳間の信頼でございます。今までそれがややもすると欠けていたなということを申し上げなければなりません。

 このような考えから、先月、ニューヨークでの首脳会談でメドベージェフ大統領と率直に話し合ってまいったところでございまして、首脳レベルの対話を深めながら、北方四島の帰属の問題は解決をして平和条約を締結する、そのことを所信表明の中でも申し上げたところでありまして、この方針にのっとってしっかりと交渉して解決をしてまいりたいと思っているところでございます。

 竹島の領有権に関する我が国の立場は一貫をしております。何も変わっておりません。韓国側に対して累次の機会に我が国の立場を申し入れているところでございまして、今後とも、竹島問題の解決のため、より有効な方策を不断に検討しながら、粘り強く努力をしたい、そのように思っているところでございます。

 北朝鮮問題についてのお尋ねでございます。

 拉致、核、ミサイル、こういった諸懸案を包括的に解決する。そして、そのことによって不幸な過去を清算して、国交正常化を図る方針でございます。当然のことながら、核・ミサイル開発は全く容認できる話ではありません。

 したがいまして、北朝鮮に対しては、諸問題の解決に向けて具体的な行動をとることがみずからの利益になることを理解させることが極めて必要だ。したがって、このためには、国連安保理決議一八七四に基づく措置やあるいは我が国独自の措置を着実に実施していくことが肝要だと考えております。

 先般も、アメリカと北朝鮮が接触をしたようでありますし、温家宝総理も訪朝をして、その話をさまざま伺ってもおりました。六者会合の早期再開に向けての努力がスタートされてきている、そのように思っておりまして、引き続いて関係国と緊密に連携をする、特にアメリカ、韓国との連携が重要だという認識を私は有しているところでございます。

 拉致問題に関しては、私を本部長とする新たな拉致問題対策本部を設置したところでございまして、すべての拉致被害者の生還を実現すべく、これは所信でも申し上げましたように、考え得るあらゆる方策を用いて、一日も早い解決を目指してまいらなければなりません。

 目指すべき教育のあるべき姿という御質問がございました。

 私は、所信表明の演説そのものが、それが教育だと考えているところでもございますが、教育は、まさに未来への投資でございます。国民が日本人であるということに希望と誇りを持って、世界の架け橋としての日本になっていかなきゃならない、そのために教育というものが何より大切であることは論をまたないわけでございます。

 したがいまして、そのためにすべての意志のある人が質の高い教育を受けられるような環境整備をする、それが、子ども手当の創設が一つ、高校の実質無償化が一つ、また奨学金の大幅な拡充というものを実現してまいりたいと考えております。

 教育基本法の審議の中でも主張申し上げておりましたけれども、教育現場で創意工夫が進められるように各種制度を見直し、保護者と学校と地域の信頼関係、これが大変大事でありますが、保護者と学校と地域の信頼関係を深める、こういったことなどを行って、教育における地域主権というものをつくり上げてまいります。

 それから、最後になりましたが、いわゆる個人献金の話であります。二億円の偽装献金報道などについての質問でございます。

 先ほども申し上げましたが、私の政治資金の問題によって、政治への不信を持たれ、国民の皆様方に御迷惑をおかけしたことをまことに申しわけなく思う次第で、おわびを申し上げます。

 お尋ねの献金問題についての報道は承知をしておりますけれども、事実関係につきましては東京地検による捜査によって解明されると考えております。

 したがいまして、私のでき得るすべては、検察の捜査に全面的に協力を申し上げたい、そして検察の捜査による全容の解明を待つことが最も肝要なことだと考えております。同時に、国民の皆様方との約束を着実に履行して、国民の皆様方の期待を裏切ることのないよう政策を遂行していくことが私の使命である、そのようにも決意しているところでございます。

 残余の質問につきましては関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)

    〔国務大臣菅直人君登壇〕

国務大臣(菅直人君) 予算編成の方針に関連して、国家戦略室と私にいろいろと御心配をいただきまして、ありがとうございました。多分、しばらくすると、心配して損をしたと思われるのではないかと思っております。

 もう総理からも触れていただきましたけれども、今進行していることについて西村議員の方に少し説明をさせていただきたいと思います。

 今、長期マクロフレームということを言われましたけれども、つまり、私、この二十年間程度の自民党政権のそうした財政フレーム、中期的なものを見ていて、失敗の連続であったと思っております。つまり、景気が悪いときにそれを刺激するために国債を発行するというのは一定程度理解できますけれども、景気がいいとき、税収がたくさん集まったときにもたくさんの国債を発行してきたのが自民党の政策でありました。

 そのときの理由は、西村議員はまだ議員ではなかったかもしれませんが、いわゆる日米の貿易のインバランスを少なくするためにという名目で数百兆円もの財政出動を目指して建設国債が発行され続けてきた結果が、今日のGDPの二倍にも達するような借金超大国になったというのが、私も一時期与党におりましたので、それも含めて、大きな反省になって今の民主党があるということをまず御理解いただきたいと思います。

 そして、今進んでいることは何か。それは、財政の中身を根本的に変えるということなんです。つまりは、これまで、自民党政権では長年、公共事業に偏重した財政運営のために財政が硬直化して、族議員とつるんだために、時代の変化に財政の中身が全くついていかなかったのが現実じゃないですか。そうした根本を変えて、まさに「コンクリートから人へ」という方向に中身を変えること、中身を変えないでおいて財政の構造を変えることはできないじゃないですか。いかがですか。

 そういった意味で、まず、この一次補正について、当時野党であった私も予算委員会等で質疑をさせていただきました。今の景気の状況の中で財政出動が一定程度必要なことは、当時の議論でも、予算委員会で認めてまいりましたけれども、問題は、中身が賢い支出なのか、それともどうにもならない中身なのかの問題だったんです。

 そこで、一次補正の十五兆円の中、そうしたものを精査する中で、約三兆円の支出を凍結し、先ほど総理からもお話がありましたように、これをもっと国民のためになる、そして景気にもプラスになる、雇用にもプラスになるものに振り向けようというのが今後の財政運営の方向であるということをよく頭に置いていただきたいと思います。

 また、それに関連して、緊急雇用対策というのを、私もその本部長代行として取りまとめをさせていただきました。先ほど人材育成の基金についての話もありましたが、一部は凍結いたしましたけれども、多くはそのまま残っておりますので、それを有効に使わせていただいた、そうした雇用対策になっていることをよくごらんいただきたいと思います。

 そして、その中で、雇用や森林の育成など、新たな分野での雇用を生み出すことによって、新たなサービスが生み出されますので、それは経済の拡大、景気浮揚にもつながるもの、このように考えていることも申し上げておきたいと思います。

 さらに、先ほど総理からも触れていただきましたように、予算編成のあり方について国家戦略室として検討を行いまして、従来の単年度の予算から複数年度の予算を見通す。ただ、来年度の予算から複数年度を入れるのは、もはや焼け野原になったようなところに新たに家を建てるのには若干の準備が要りますので、来年度については、まさに足元の景気、経済を見ながら、雇用状態を見ながら予算を編成するけれども、再来年度からについては複数年度の予算を想定しながら、中期財政フレームをしっかりさせて、財政再建の道筋をしっかりと示すように、そういう方向で努力するということをこの検討会で報告いたしているところであります。

 次に、私に対して、イギリスに行って何を学んできたかという御質問をいただきました。

 総選挙の直前の五月の上旬に、五日間の短い日程でありますが、古川議員とともにイギリスに訪問してまいりました。私がイギリスに行って最も調べようと思った問題は何か。まさに、なぜ、同じ議院内閣制でありながら、イギリスは官僚主導ではなくて政治主導が実行されているかという、その中身を精査しに行ってまいりました。そして、その中から幾つかのことを参考にさせていただいて、現在の鳩山内閣の中で、その考え方も含めて実行されていることをよく頭に入れていただきたいんです。

 その一つは、事務次官会議を廃止いたしましたので、従来のように、閣議が、事務次官会議の結果を受けた事務の官房副長官の説明をただただ聞いてサインをするといったようなサイン会から脱却したということであります。そして、それにかわって、イギリスで行われている閣僚委員会というものを参考に、省庁間の調整は、政治家である大臣や副大臣同士が会って、そして議論をし、そこで得た合意を閣議にかけるという、この閣僚委員会を設けたことであります。

 そしてもう一つは、従来、副大臣とか大臣政務官とかといいますと、自民・公明政権でも今の民主党政権と同じ数だけの副大臣と政務官、おられたんじゃないでしょうか。西村さん自身も外務大臣政務官として、大活躍をされていたのかどうか、私は不幸にしてその話は聞いたことがありません。

 つまり、ただ形だけ副大臣や政務官をつくったからといって機能するものではなく、私たち鳩山政権では、大臣、副大臣、政務官が政務三役会議というものをつくって各省庁のイニシアチブを政治家が握ったことによって、先ほどエールを送っていただいた民主党の中堅、若手の大活躍が可能になった、このことをぜひ御理解いただきたいと思います。

 以上、私に対する質問のお答えとさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣福島みずほ君登壇〕

国務大臣(福島みずほ君) 西村議員に対してお答えをいたします。

 子ども手当についてお尋ねがありました。

 この内閣は、子育てを応援する、子供を応援する内閣です。

 国民の皆さんは、世論調査で、経済的支援の充実と仕事と家庭の両立支援、これを望んでいる方が多いという結果が出ております。

 まず、経済的支援の充実として、子ども手当の創設は大変意義があると考えております。他方、仕事と家庭の両立支援として、保育所や学童クラブの充実、そしてNPOを基底とした地域社会における子育て力をアップしていく、そのことに努めていく必要があります。

 今後、予算編成過程において、総合的でバランスのとれた、より効果的な子育て支援策となるよう、関係省庁と連携をして、努力をしてまいります。

 自衛隊についてお尋ねがございました。

 社民党においては、自民党政権下で自衛隊の活動が自衛のための必要最小限度の範囲を超え海外に広がった点を批判してきました。

 私は、鳩山内閣の国務大臣として、その施政に責任を負う立場から申し上げますが、連立政権の政策合意の中で、唯一の被爆国として、日本国憲法の平和主義を初め国民主権、基本的人権の尊重の三原則の遵守を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げることを確認しており、鳩山政権下において自衛隊の活動は憲法の枠内で適用されていくものと考えております。

 また、自衛隊の海外派兵一般法について御質問がありました。

 個別の大臣の取り組みへの見解を述べることは差し控えさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣前原誠司君登壇〕

国務大臣(前原誠司君) 西村議員にお答えをいたします。

 自衛隊の問題に関係なく、あらゆる施策につきまして、内閣の一員として、内閣の方針にのっとって行動してまいります。

 以上です。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 私は、公明党を代表し、鳩山総理の所信表明演説に対し質問を行います。(拍手)

 まずは、鳩山総理の御就任を心よりお祝い申し上げます。国民生活を守り、日本の針路を誤ることのないよう、総理のリーダーシップを期待します。

 私ども公明党も、さきの総選挙で示された民意を真摯に受けとめるとともに、我が党に御支援をお寄せくださった多くの有権者の皆様の御期待にこたえ、改めて、「大衆とともに」との立党精神に立脚し、福祉の党・公明党、平和の党・公明党の旗を鮮明に掲げ、全国三千人を超える議員のネットワークと、与党としてのこれまでの経験を生かし、生活現場の声を真に受けとめられる政党として、積極的に政策を発信していく決意であります。

 さて、国民は、鳩山内閣に期待を寄せる一方で、新政権になって国の政策がどう変わるかよく見えないとの不安を抱いていることも確かであります。

 総理、先日の所信を伺っても、そうした国民の不安は払拭されませんでした。総理は、両院の議員に対し、国民のためになる議論をぶつけ合おうと呼びかけられましたが、議論のたたき台となる具体的な提案はほとんど提示されておりません。国民の立場から見ても、年金や医療、介護などの重要課題についてどのように国民の生活が変わるのか、具体策が全くと言ってよいほど見えていません。

 総理に就任されて既に四十日が経過しております。内外の課題は山積をしております。総理、この国会で、論戦を通じて改革の具体策を国民に明示するよう求めるものであります。

 さて、具体的な質問に入る前に、まず、民主党のマニフェストを国の施策として具体化していく際の手続に関して、問題点を指摘しておきます。

 マニフェストの具体化に当たっては、その一つ一つについて、特に、これまでの政府の方針を変える場合は、関係者の意見を丁寧に聞き、国民にきちんと説明をし、国会の議論を経て実施すべきであります。

 ところが、前原国土交通大臣の就任直後の八ツ場ダム建設中止発言に象徴されるように、現地に赴くことも住民の意見を聞くこともなく、一方的に、ただマニフェストに書いてあるという理由だけで中止を宣言するのは、民主的な手続にもとる行為であり、決して認められるものではありません。総理御自身も所信の中で、国民にとって本当に必要なものかどうかをもう一度見きわめることからやり直す、このように述べられております。内閣で、それではこの問題について、本当に必要なものなのかどうか見きわめる作業を実際に行われたのですか。その結果として中止という結論になったのですか。

 まずは、この問題を含めて、政策決定の手続について、総理の見解を伺います。

 昨年九月のリーマン・ショックから一年、日本は、世界各国と協調しながら、世界金融危機克服のために、財政出動を中心とした経済対策を講じてまいりました。民主党は、当時、野党の立場からこの対策を強烈に批判しましたが、太陽光パネルの設置支援やエコポイント、エコカー減税・補助金などを含めた対策は、間違いなく景気浮揚に大きな効果を上げております。

 景気は、年末、年度末にかけて正念場を迎えます。中でも、中小企業や地域経済にとってはまさに正念場です。地方では、各議会が九月議会までに経済対策の各種事業の執行を前提とした補正予算を組み、あとは国からの交付、執行を待つのみという万全な状況でありました。

 ところが、鳩山内閣は、マニフェスト実現の財源探しと称して、まずは三兆円ありきの方針で、基準も不明確なまま、平成二十一年度補正予算のうち約三兆円の執行停止を決めました。総理みずから所信において、不要不急の事業を停止したと誇らしげに述べておられます。

 しかし、総理、例えば子育て応援特別手当、公明党が幼児教育の無償化への第一歩として創設をしたこの子育て応援特別手当は、本当に不要不急とお考えなのですか。厳しい経済状況の中で給付を楽しみにして必死に子育てをしている方々の期待を、無駄の一言で冷たく切り捨てて本当にいいと総理は考えておられるのでしょうか。あなたの友愛が泣くのではありませんか。

 地方自治体も、住民への広報やシステム改修など手続の準備をしてきたにもかかわらず、一転、中止によって、住民に対してその説明を余儀なくされるなど、大混乱です。そこまでしてなぜこの子育て応援特別手当を執行停止にしたのですか。総理、明確にお答えください。

 この子育て応援特別手当を含め、三兆円近い補正予算の執行停止の結果、地方自治体が予算の減額補正を迫られるなど、その影響が直接、間接的に国民生活に及ぶことは、もはや避けられない状況です。

 総理は、経済対策の優先順位をどのように考えておられるのでしょうか。来年四月までの間、補正予算の執行停止によって、約半年間の経済対策の空白をつくってしまいかねません。これで本当に日本経済や地域経済に悪影響はないと断言できるのですか。明確にお答えください。

 鳩山内閣についてさらに深刻な懸念は、経済全体の司令塔が一体だれなのか見えないことであります。

 各閣僚は、マニフェストの実現に躍起になるばかりで、それぞれが、ただ威勢のいい話をぶち上げているようにしか見えません。個々に見れば聞こえがよいものでも、全体から見れば整合性がとれていないのが実態ではありませんか。事項要求を加えれば約九十八兆円を超えるとも言われる前代未聞の来年度予算の概算要求を見ても、その心配が現実化しつつあります。

 足元の経済はおろか、財政健全化もその目標が具体的にありません。さらには、経済閣僚の円高容認とも受け取れる不用意な発言など、まさに、マニフェストあって経済政策なしの内閣と言われても仕方がありません。

 総理自身の口から、中長期的な経済戦略をわかりやすく国民に説明すべきであります。総理の答弁を求めます。

 これから年末にかけての予算編成、税制改正に関連し、何点か具体的に確認をさせていただきたい。

 第一に、足元の経済対策、雇用対策を怠れば、総理が軸足を置いておられる来年度予算そのものの大前提が崩れてしまうと申し上げたい。総理が現対策の執行を一部停止するならば、早急にそれにかわる経済対策を講じるべきであります。

 第二に、来年度予算の新規施策に必要な財源は一体幾らですか。マニフェスト実現に必要な財源として、平成二十二年度七・一兆円は既に示されていますが、各閣僚は、例えば協会けんぽへの財政支援など、マニフェスト以外の施策も次々と提案をしております。

 総理、必要な財源の全体像を国民に包み隠さず示すべきです。

 第三は、国債発行についてです。

 総理は、国債増発はしないとの公約を既に破棄されようとしております。さらに、来年度当初予算の国債発行額は、平成二十一年度補正後の四十四兆円を基準にするかのような発言も見られます。仮に景気後退によって税収が大幅に下がることを考慮しても、当初予算、すなわち二十一年度当初の三十三兆円と比較するのが財政上の常識ではありませんか。

 総理の財政健全化の考え方、そして今後、国債増発があり得るのかどうか、あるとすれば、その理由を明らかにすべきです。

 第四は、税制改革です。

 年末に向けた税制改正に関して、民主党マニフェストに沿って、まずはガソリン税などの暫定税率の廃止、配偶者控除、扶養控除の廃止、そして租税特別措置の見直しが主要なテーマになっているようであります。

 公明党は、かねてから、自動車関係諸税は簡素化をし、車のユーザーの理解を得る意味で、取得、保有、走行のうち、取得、保有に係る税は軽減するよう主張してきました。その意味で、自動車重量税等の取得、保有に係る暫定税率は軽減すべきと考えますが、ガソリン税等の暫定税率は、地球温暖化対策等の観点からすれば、廃止には慎重であるべきと考えます。

 いずれにしても、将来の財政のあり方を考える上で、税制改正、歳入改革のより具体的な方向を提示していくことが政権の責務であります。

 民主党のマニフェスト及びマニフェスト想定外の新たな施策の実現のためには、平成二十三年度以降、最終的には十三・二兆円プラスアルファの財源が必要とされております。それ以外にも社会保障関係費は毎年一兆円近い自然増がある中で、社会保障の給付と負担を含めた財源の議論は避けて通れないと考えます。

 以上の点について、総理の見解を求めます。

 中小企業支援について伺います。

 年末、年度末に向けて、景気の先行きが不透明な中で、資金繰りに万全を期すことは景気対策の観点からも極めて重要な課題であります。そうした意味で、御提案を申し上げたいと思います。

 昨年十月末に公明党の主張で実現をした緊急保証制度のうち、元本返済猶予期間が一年の分について期限が迫っております。まずは、これらの保証の元本返済猶予期間を延長するなどの柔軟な対応を考えてはどうか。総理、いかがでしょうか。

 今国会において、中小零細企業などを対象にした債務の返済猶予制度などを含む中小企業金融円滑化法案が提出される予定と伺っております。

 私は、健全な中小企業を一時の景気悪化や金融機関の都合のみで倒産させてしまってよいのかという問題意識は共有します。ただし、法案化に当たっては、公平性の確保が重要であります。金融機関の救済や中小企業者のモラルハザードを招くことがあってはなりません。また、制度の仕組みによっては、最終的に新たな国民負担を招く可能性すらあります。こうした問題点に対する総理の考えを伺います。

 私が現場を回り、中小企業の方々から寄せられる率直な声は、何よりも景気回復であります。仕事が欲しいということであります。

 総理、当面の資金繰り支援策もさることながら、こうした現場の声を踏まえた実効性のある中小企業支援策をパッケージで検討し、実行に移すことが重要だと考えますが、基本的方針を示していただきたい。

 昨年秋以降、雇用情勢は厳しい状況が続いております。今月二日に発表された完全失業率は五・五%、有効求人倍率も〇・四二倍と過去最低の数値を示し、年末に向けてさらなる悪化が懸念をされます。

 昨年秋以降、政府は、雇用維持、セーフティーネットの強化、雇用創出の各分野で、二度にわたる補正予算、二十一年度当初予算、補正予算を通じ、三兆円を超える雇用対策を立て続けに講じてまいりました。年末にかけて雇用不安が増大しつつあるこの時期にこそ、これらの対策への効果が期待されております。

 ところが、鳩山内閣は、さきの補正予算で政府が長期的な雇用対策を執行できるように創設した緊急人材育成・就職支援基金について、緊急人材育成支援事業を除き、執行を停止いたしました。その中には、中小企業の雇用創出支援のための訓練事業や日系人の離職者への支援、長期失業者の再就職支援などのメニューが含まれております。

 雇用対策は、単発ではなく、計画的に基金を造成し、そして取り組むことで実質的な効果が生まれます。執行停止により雇用不安をより高めることにつながらないよう、来年度予算においても同じ事業を継続すべきであります。

 また、公明党は、今働いておられる方が職を失うことがないよう、雇用調整助成金の拡充を主張し、約二百五十万人の雇用を守ってきました。さらなる雇用悪化が懸念される中、雇用調整助成金についても確実に維持できるよう、財政的な措置を講ずるべきであります。

 さらには、特に厳しい状況に見舞われている非正規労働者向けの対策や、就職先が決まっていない高校生、大学生の来春の新卒者対策など、支援が必要な方へのきめ細やかな対策を講じるべきです。

 以上、雇用対策について、総理の答弁を求めます。

 次に、行政の無駄削減について伺います。

 公明党は、これまで、国民の立場で行政の不正や無駄の根絶に全力で取り組んでまいりました。これからも徹底的に取り組む決意であります。

 その一環として、事業仕分けは、公明党が政党として初めてマニフェストで提案をし、平成十八年の行政改革推進法の中に盛り込んだものであります。

 鳩山内閣にもこの事業仕分けを強力に進めていただきたいと思いますが、平成二十一年度補正予算の執行停止の決定プロセスを見ておりますと、極めて不透明であり、国民には見えないところで決定をされました。事業仕分けの実施に当たっては、そうしたことのないよう、国民の見えるところで一つ一つの事業の要不要を明確に示すべきであります。総理の見解を伺います。

 次に、地方分権について伺います。

 私どもは、国の形として地域主権型道州制を提案していますが、その第一歩として、徹底的な地方分権の推進が重要であると考えます。

 そのために、地方の税財源の充実を図るとともに、二重行政との批判がある国の出先機関については、国と地方の役割分担を明確にし、事業の仕分けを行い、大胆に廃止縮小すべきであると考えております。

 地方分権改革推進委員会も国の機関の統廃合について既に勧告を出しておりますが、鳩山内閣は、この勧告をどう扱われるのか。また、総理は所信の中で、地方の自主財源の充実強化に努めるとおっしゃっておりますが、具体的に、いつからどのような充実強化策を考えておられるのか、総理の答弁を求めます。

 さらに、地方分権を推進するに当たっては、地方の意見を尊重することが不可欠です。公明党は、国と地方の代表等が地方分権に関して協議を行い、地方が権限を有する協議の場を法定化することを提案しております。総理の見解を伺います。

 次に、郵政改革の見直しについてお伺いをいたします。

 郵政民営化は、平成十七年の衆議院選挙の民意を受けて、官から民へとの原則のもと、民間の目線で効率的な経営が行われるようにするために実施されたものであります。

 これに対して鳩山内閣は、今国会に郵政の株式売却凍結法案を提出されるということですが、その目的は何なのでしょうか。民営化の否定につながる措置なのでしょうか。総理の明確なお考えを伺いたいと思います。

 また、日本郵政の西川社長を事実上交代させ、後任に元大蔵事務次官を起用すると発表されました。本日の株主総会を経て正式に認可されるものと承知しておりますが、総理、これは大物官僚の天下りであり、まさに、わたりそのものではないのですか。

 民主党は野党時代、日銀総裁人事の折に、元財務事務次官という理由だけで人事に反対をされました。今回の人事との違いは一体何なのか、わかりやすく説明をお願いしたいと思います。

 新型インフルエンザ対策について伺います。

 全国の推定患者数が八十三万人と報告されるなど、十月に入り急速に感染が拡大しています。この冬に向け、さらなる流行拡大を想定した万全の対策が必要です。

 ワクチン接種については、優先接種の対象である医療従事者の範囲があいまいだったこともあり、計画段階で当初の想定を上回る対象者数が報告されるなど、自治体レベルでも早くもワクチン不足が指摘をされております。また、予定していた原則二回の接種回数の見直しも重なり、現場での混乱に拍車がかかっております。

 新型インフルエンザ対策本部の本部長は、総理、あなたです。総理の強力なリーダーシップのもと、いま一度、自治体の準備状況を正確に把握し、接種体制について必要な見直しと適切な情報提供を行うべきであります。

 また、妊婦や基礎疾患を有する方、小児などの優先接種の対象者が漏れなく接種を受けられるよう、進捗状況の把握と費用助成の拡大を行うべきです。鳩山総理の答弁を求めます。

 さらには、重症患者への対応が可能な病床の確保や必要な医療機器等の整備など、地方自治体における医療提供体制の整備に対し十分な財政支援を行うべきです。総理にお伺いをいたします。

 児童手当は、昭和四十二年十二月、千葉県市川市議会定例会で、子供の健全な育成のために早急に実施すべきとの公明党議員の提案で、翌年四月、国に先駆けて、第四子以降に月額千円の手当が支給されたことがその始まりであります。国として昭和四十七年の制度導入以降、特に自公連立十年間で五回にわたり安定財源を確保しながら拡充をしてまいりました。

 一方、民主党の子ども手当は、子育ての経済的負担の軽減という点では、公明党の目指す方向と同じであります。

 ただ、重要なのは、約五・三兆円と言われる安定財源をどう確保するかであります。そのために、所得税の控除の見直しはいつから実施をするおつもりなのですか。また、企業の負担はどうされるのですか。子ども手当の財源について明快な総理の答弁を求めます。

 子育て支援は、子ども手当だけですべてが解決されるわけではありません。

 公明党は、児童手当や出産育児一時金など経済的支援と、待機児童ゼロ作戦、育児休業の取得促進など子育ての環境整備を両輪として取り組んでまいりました。延長・休日保育などの多様な保育制度、地域の子育て支援体制など多様なサービス提供が求められております。

 限られた財源の中でトータルな子育て支援をどう進めるのか、ぜひ全体像を示していただきたい。総理にお伺いをいたします。

 次に、後期高齢者医療制度について伺います。

 民主党は、昨年五月二十三日、社民党、国民新党、共産党の三党とともに、後期高齢者医療制度をことし四月一日に廃止をし、旧来の老人保健制度に戻す法律案を提出、参議院で可決をいたしました。一方、総理は所信において、廃止を明言し、新たな制度を検討されると表明されております。

 提出をした法案では旧来の老人保健制度に戻すとしながら、今度は新たな制度を検討するというのは、矛盾をしておりませんか。また、廃止するとしながら何の具体策もいまだに国民に示さないのは、余りにも無責任ではありませんか。

 そもそも老人保健制度は、医療費を支援する現役世代の負担額がわかりづらく、高齢者医療費の増大が続く中で、現役世代の負担が際限なく膨らみかねないという心配が強くありました。また、高齢者の多い市町村では、国民健康保険が財政破綻の危機に陥っていました。さらに、国民健康保険の保険料格差も自治体間で最大五倍もある等の問題点があり、その解決のために現行制度が導入されたというのが経緯でございます。

 長妻厚生労働大臣は、四年以内の廃止を目指すとか政治主導と言いながら、新制度案の検討を厚労省のお役人に指示したとの報道もあります。それでは、廃止はいつなのか、代替案はいつ示すのか、そのスケジュールも含め、総理、明確にしていただきたい、こう思います。

 新制度が当面示せないのであれば、少なくとも、現行制度をさらに改善し、高齢者の安定的な医療の確保に取り組むべきであります。特に、所得が低い方の外来の自己負担限度額の大幅な引き下げや、保険料の均等割の九割軽減、所得割の五割軽減などの措置については、継続をすべきであります。総理の答弁を求めます。

 高額療養費制度の見直しについて伺います。

 公明党は、これまで、難病患者や重い慢性疾患に苦しむ患者の医療費負担の軽減に取り組んでまいりました。特に負担が重い難病患者については、これまでの四十五疾患に加え、新たに今回の補正で拘束型心筋症など十一疾患を医療費助成の対象に加えたのは、我が党の実績でもあります。

 近年、難病患者だけでなく、がん患者や慢性疾患の患者で、高額の医療費負担が家計を圧迫し、苦しんでいる方がふえております。高額療養費の自己負担限度額をさらに引き下げ、たとえ病気になっても安心して暮らせる制度へ見直すことが急務であります。

 現行の高額療養費制度を見直し、過重な自己負担限度額の引き下げを急ぐべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 がん対策の充実について伺います。

 日本は、世界有数のがん大国である反面、国民の命を守るがん対策ではいまだに後進国であります。そこで、がん対策の柱の一つであるがん検診の推進について、がん対策基本計画では二〇一一年度までに受診率五〇%以上という大きな目標を掲げております。その一環として、女性特有の乳がん、子宮がんの検診率を上げるため、一定の年齢の方を対象にがん検診無料クーポンを配布し、検診率の向上に取り組み、成果を上げてきたところであります。

 この無料クーポンは、五歳刻みで検診を行うことから、すべての女性が平等に検診機会を得るためにも、来年度以降も継続すべきであります。また、今後、男性の検診率の向上のためにもがん検診クーポンを配布するなど、国民全体のがん検診率の向上に取り組むべきであります。総理の考えを伺います。

 次に、農林水産業について伺います。

 公明党は、農業こそが命を支える生命産業と位置づけ、経営安定化対策、担い手の育成、法人化支援、中山間地への直接支払い、農地集積事業などを積極的に推進してまいりました。

 農業分野において国際的な自由貿易の圧力が高まる中で、選挙前に民主党は、農業の戸別所得補償制度の導入を前提に、農産物も含む日米自由貿易協定の締結を目指すべきとの考えを示されました。もしそうであるならば、国内農業が壊滅的な打撃を受けることは間違いありません。

 公明党は、国際交渉に当たっては、食料の安全保障や農業の多面的機能の発揮等の観点から、日本特有の農業の保護と最低限の食料自給率を維持する権利があるということを主張し、その権利を国際的にもかち取るべきと考えますが、総理の見解を求めます。

 国内では今、秋の収穫期を迎え、来年の作付計画を立てる時期となりました。この時期に当たり、政府は、二十一年度の補正予算に盛り込まれた、競争力のある農家への農地集積を促進する農地集積加速化事業を突然執行停止いたしました。経営の大規模化を目指していた農家や農地の利用権移行を予定していた集落ばかりでなく、介護などの理由から営農継続を断念し農地を手放す予定だった方々に、不安と懸念が広がっております。

 加えて、来年度予算の概算要求では、麦、大豆への転作に対する助成が、地域によっては二割から四割も減らされることになっており、転作を進めてきた農家には、これではとても採算がとれない、もう大豆をつくれないなどの戸惑いが広がっております。食料自給率の向上の観点からも大きな問題であります。

 今後、農地集積をどのように進めるのか、また、農政改革に伴う現場の戸惑いと不安に対しどう対処されるのか、総理の納得いく説明を伺います。

 最後に、政治と金の問題について質問をいたします。

 本年六月に総理は、平成十七年から二十年の四年間の政治資金収支報告書で、総額二千二百万円にも上る虚偽記載があったことをお認めになりました。しかし、なぜそのような虚偽記載があったのか、ほかにも虚偽記載がなかったのか等の疑惑については、国民が納得できる説明はいまだになされておりません。世論調査でも、この総理の姿勢について納得できないという答えが七〇%にも上っております。

 政治資金収支報告書の虚偽記載は明らかな政治資金規正法違反であり、政治資金について国民の不断の監視と批判のもとに置くという法律の根幹を揺るがす重大な犯罪です。

 所信で総理は、政治への信頼を取り戻せるよう、捜査に全面的に協力をしますと述べられました。捜査に協力するのは当然ですが、総理みずからが進んで責任を果たすべきと思いますが、総理、いかがでしょう。

 我々国会議員が規範とすべき政治倫理綱領にも、「疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」とあります。総理、御存じですね。

 みずからが積極的に疑惑解明を行い、その説明責任を果たすべきであると、改めて強く申し上げたいと思います。

 さらには、公明党は、秘書が虚偽記載など法律違反をした場合、監督責任のある国会議員も政界退場、すなわち公民権を停止させるために政治資金規正法を改正すべきと考えますが、あわせて総理の見解を求めます。

 以上、当面する政治課題を中心に質問してまいりましたが、経済を立て直し、日本の確かな未来を切り開くための総理のリーダーシップを強く望み、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇〕

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 井上議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、就任のお祝いをいただき、ありがとうございました。

 八ツ場ダム建設中止についてのお尋ねがございました。

 私どもは、政権交代の選挙をマニフェスト選挙と位置づけて戦ってまいりました。そのマニフェストの中で、国民の皆様方との契約との思いで、政権交代をなし得た以上、その約束をいたしました一つ一つの事業に対して、四年間で着実に実現をしてまいりたい。その一つとして、今回の「コンクリートから人へ」、その象徴としての八ツ場ダムの事業がございます。

 私自身、昨年の夏、八ツ場ダムを視察してまいりました。御案内のように、ダムの目的は治水、利水、さらに発電という目的があることは存じ上げておりますが、そのいずれに対しても、私が視察した結果においては、クエスチョンマークをつけざるを得ない、そんな事業でありました。そのときも、住民の皆様方の御意見をいろいろと伺ってきたことも事実でございます。

 これからも、前原大臣を中心にして、この問題の解決に向けて努力を申し上げてまいりたいと思いますが、私どもは、できるだけダムによらない治水への政策転換を進めていかなければならないと思っておりまして、その強い意思のもとで今後とも行動してまいることをお約束いたします。

 子育て応援特別手当の執行停止について、このあり方を含めた質問がございました。

 子育て応援特別手当につきましては、もう御案内のとおりでありますが、三歳から五歳のお子さんに対して一回三万六千円を支給するというものでございます。当然、それは、意味がないものだとは思ってはおりません。しかし、より意味のあるものに仕立て上げていくのが新たな政権の役割だと感じております。

 したがいまして、子育て応援特別手当につきましては、その趣旨を生かしながら、より充実した新しい子ども手当の創設など、子育て支援策を強力に推進したいと考えておりまして、子育て応援特別手当に関してはその執行を停止いたしたところでございます。

 今後とも、子育て支援策の充実を図り、安心して子供を育てられる社会を構築してまいりたいと考えております。

 経済対策の優先順位と補正予算の執行停止による経済への影響についての御質問がございました。

 今回の補正予算の見直しに際しましては、地方公共団体向けの基金は一時留保の対象から除外するなど、地域への影響には十分に配慮をしてまいったところでございますし、現場をよく見ながら政策的必要性を精査して、そして地域経済や国民生活に影響を与えること、そのことなどもしっかりと勘案しながら執行の是非を点検するよう私から指示をいたしたところでありまして、各省において個別の事業を精査の上、執行の是非を判断してまいりたいと思います。

 なお、御質問の中に、補正予算の執行停止によって約半年間の経済対策の空白期間がつくられるというお話がありましたが、私どもは、必ずしもそのようには思っておりませんし、そうならないように最善の努力をいたす所存でございます。

 中長期的な経済成長戦略についての御質問がございました。

 言うまでもありません、司令塔は私本人であります。

 経済財政運営に当たりましては、縦割り行政の垣根を排してまいります。戦略的に税財政の骨格や経済運営の基本方針を立案して、それにのっとって対処をしてまいります。

 中長期的なことを申し上げれば、日本経済の安定的、持続的な成長を確保してまいるために、まず、社会保障制度に対する不信感をぬぐい去る、そのことが必要でありますし、その後、家計を直接応援し、国民が安心して暮らせる、いわゆる人間のための経済に大きく転換を図ってまいります。

 同時に、これも申し上げましたけれども、イノベーションの強化を通じた世界最高水準の低炭素型産業の創造をすること、あるいは暮らしの安心を支えていく医療、介護、さらには地域を支える林業、農業、観光産業、こういった内需主導型の産業を育成していく、このことによって新たな需要と雇用を生み出してまいります。さらには、成長しておりますアジアの活力も取り込んで、我が国の成長を実現してまいりたい。

 一言で言えば、国民の暮らしの豊かさに力点を置いた新たな経済社会を目指す、この一言でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 経済対策についての御質問がありました。

 政府としては、経済の動向というものを注意深く見守ってまいりながら、雇用情勢がこれからどのようになっていくか、かなり厳しい状況だとは理解をしておりますし、地域経済あるいは中小企業の資金繰りの厳しさなどの課題に対応して、日本経済を自律的な民需による回復軌道に乗せてまいるように積極的に努力をしてまいりたいと存じます。

 また、政府が一丸となりまして雇用対策に取り組むために、先般、緊急雇用対策本部を立ち上げたところでありまして、職を失い、仕事が見出せずにお暮らしに大変苦しんでおられる多くの方々への支援、あるいは、新卒、なかなか就職先が見つからない、こういった方々への対応、また新たに雇用というものを創造していく、こういったことへ本格的に取り組んでいくことなど、細やかで機動的な緊急雇用対策を先般政府として決定をしたところでございまして、これから、年末、さらに年始、来年の状況などを真剣、慎重に見きわめてまいりたいと思います。

 平成二十二年度予算における財源に関してお尋ねがございました。

 平成二十二年度の予算に当たっては、これも前も申し上げましたが、無駄遣いや不要不急な事業というものを徹底的に見直すということからスタートをして、財源をきちんと確保しながら、マニフェストにうたわれております工程表に掲げられた主要な事項を一つ一つ実現することが最優先の課題だと認識をしております。

 まだ予算編成に着手をして間がないという状況でもございます。財源の全体像を明らかにするという環境ではありませんが、今後思い切った歳出削減を実現して、概算要求を徹底的に精査をしてまいります。そのことを、どうぞ皆様方にも御協力を願えればと思います。

 平成二十二年度予算における国債発行額についてのお尋ねがございました。

 二十二年度の予算については、税収等が、なかなかまだ具体的に正確な数字が見込み得る状況ではありません。しかし、その中で財政規律を守り、国債マーケットの信認というものを確保していくことから、さらなる歳出削減に取り組まなければなりません。そのことによって、国債発行額を極力抑えるように努力をする政府であることをお誓いしたい。

 なお、具体的な国債発行額については、御案内のとおり、経済状況がまだはっきりと見えない部分もございますし、さらに、さまざまな要素に影響を受けることでありますので、現段階では申し上げることは困難な状況であることは御理解を願いたいと存じます。

 自動車の重量税等、揮発油税等の暫定税率について、さらにはガソリン税の暫定税率のお尋ねがございました。

 私は、国民に対する政治家の責務は、まずは、当然のことながら、こういった政権の運営に正直でなければならないということでありまして、長く続いた暫定税率、言葉自体が暫定であるのに、何でこれがこのまま何十年も続いて今日まで来たのか、このことに対して国民に正直にこたえなければならないと思っております。したがいまして、ガソリン税に関しましても、暫定税率はまずは当然廃止をしなければなりません。

 そして、当然のことながら、その上で、先般私から税制調査会に対しても申し上げたことでありますが、マニフェストにおいて実施することとしている税制改正項目の詳細の検討を願いたいということ、さらには、環境などへの影響を考慮した課税の考え方を踏まえ、エネルギー課税などについて温暖化ガスの削減目標達成に資する観点から、環境負荷に応じた課税に必要な事項の検討をすることを諮問いたしたところでございまして、今後、税制調査会において真剣にかつ迅速に検討が進むものだと理解をしております。

 税制改革や社会保障財源を含めた将来の財政のあり方についての御質問がございました。

 このことに関しては、社会保障の給付と負担のあり方を含めて、国民の暮らしを守るための財政のあるべき姿、これを明確に示した上で、長く大きな視野に立った財政再建の道筋を検討してまいりたいと考えております。

 私どもは、この社会保障の中で、特に年金の問題に関して、時間はかかりますが、新しい年金制度を構築しなければならないと考えておりますが、その新たな年金制度の移行期間などを考えたときに、消費税の増税などを今すぐに行う必要はない、そのように考えております。

 いずれの時点においては、当然のことながら何らかの議論を行う必要はあろうかと思っておりますが、これも前に申し上げましたが、消費税の議論などを申し上げるためには、その前の段階として、国民の皆さんの信頼というものを政治がかち得なければなりません。政治の信頼を失ったのはなぜか。今、私どもは政治の信頼をもう一度取り戻すために闘っている途上であるということを御理解願いたい。

 緊急保証つき融資の元本返済猶予期間の延長に関する質問をいただきました。

 緊急保証制度で当初の元本返済猶予期間を一年と設定したものについて、中小企業から猶予期間の延長の申し出があった場合には、金利の支払いを継続できるかどうか、あるいは猶予後の返済計画が立てられるかどうかといった点などを勘案しながら、個々の中小企業の状況を踏まえて、できる限り柔軟に対応する方針でありますが、そのことの意味することは、できればさらに延長ができるように万全の努力を図ってまいりたい、その思いであることを御理解願いたいと思います。

 中小企業金融円滑化法案により生じ得る問題点についての質問をいただきました。

 厳しい経済金融情勢のもとで、金融機関からの借り入れの返済に一時的に大変お困りの中小零細企業などの御負担を和らげ、活力を与えてまいることが喫緊の課題だと私どもも認識しております。

 したがいまして、このために、金融機関が貸し付け条件の変更等に努めることなどを求める法案を今国会に提出する予定でございます。その際、金融機関救済、中小企業者のモラルハザードなど、あるいは安易な国民負担につながらないような仕組みを構築する所存であります。中小企業の方々が本当に必死に頑張っておられる状況を少しでも和らげるために法案を提出いたしますので、この法案に関しましては、ぜひ与野党の別なく御賛成を願いますように期待をいたしたいと思っております。

 中小企業支援についての御質問をいただきました。

 私も、現実に、一生懸命歯を食いしばって頑張ってこられた中小企業の皆様方のお声をさまざまなところでお伺いをしてきたところでございます。こうした現場の声を踏まえて、資金繰り対策に加えて、新たな分野に挑戦をする中小企業への技術開発あるいは販路開拓、さらには、さまざまな経営課題を抱える中小企業に対するワンストップでの解決、さらには事業再生、事業承継の円滑化、さらには下請取引の適正化、いわゆる中小企業のいじめ防止の意味でございますが、こういった支援を実効性のある形でしっかりと行ってまいりたいと思いますので、公明党の皆様方にもぜひ御協力を願いたいと存じます。

 雇用対策についての御質問をいただきました。

 今般、政府が一丸となって雇用の確保に取り組むため、細やかで機動的な緊急雇用対策を決定したところでございます。職を失い大変お苦しみになっておられる方々あるいは新卒者への支援、さらには、雇用調整助成金による雇用の維持の支援等に機動的に取り組む所存でございます。

 また、緊急人材育成、さらには就職支援基金事業のうち、中小企業などにおける雇用創出支援事業などは、二十二年度の予算編成の過程でしっかりと検討をしてまいることをお約束いたします。

 私が申し上げたいことは、これは所信表明でも申し上げましたけれども、このようなときこそ、地方自治体や企業、あるいは労働組合、NPOの方々を含めて、社会全体が支え合いの精神で雇用確保に向けて努力を集中して行っていくということだと思っておりますので、国民の皆様方にも御協力を願いたいと存じます。

 事業仕分けを実施する際の透明性の確保についての御質問をいただきました。

 補正予算執行停止も、私どもは極力オープンな形で行わせていただきました。これは御理解を願いたいと思います。それだけに、いろいろと途中の議論が皆様方の目にもとまったのだと思っております。

 先日、第一回目の行政刷新会議を開催いたしました。平成二十二年度の予算編成において、歳出の徹底した見直しに取り組むために、事業仕分けの実施を決定したところでございます。

 事業仕分けについては、まさに、議論の透明性の確保というものが最も重要な要素であることは私どもも認識をしております。したがいまして、事業仕分けを行うに当たっては、すべてオープンの場で行ってまいることをお約束いたしますし、各界各層の皆様方の御参加をいただいて、お集まりをいただいて実施をして、しっかりと議論をして、税金の使い道の見直しに向けたしっかりとした評定をしていただきたいと思っております。ぜひ御期待を願いたいと思うところでございます。

 分権委の第二次勧告の取り扱いについての御質問がございました。

 地方分権改革推進委員会が第二次勧告において、国の出先機関の見直し、これを提言したことはよく理解をしております。しかしながら、旧政権では、この提言を受けて積極的に見直しに取り組んではおられなかったのではないか、そのように認識をしております。

 したがいまして、私どもは地域主権の実現を目指す、これが私どもの新政権の一丁目一番地であります。したがいまして、その一環として、国の出先機関を原則廃止する方向をマニフェストでも示したところであり、今後、政府として、真剣に検討を行ってまいります。

 地方の自主財源の充実強化についてのお尋ねもございました。

 いかなる政策にどれだけの予算を投入してどのような地域を目指していくのか、これは、本来、地域の皆さんが自主的にお考えいただき、お決めいただくべきことでございます。

 したがいまして、地方の自主財源の充実強化については、地域主権改革のまず第一歩として、今後、可能な方策から具体的な検討を行ってまいりますとともに、地方の再生を図る観点から、政府税制調査会において地方税制のあり方についても検討してまいります。できるだけ早くやりたいと思っておりますので、どうか御期待を願えればと思います。

 国と地方の協議の場の法制化についてのお尋ねがございました。

 国と地方の協議の場の法制化は、これもマニフェストに掲げた事項でございます。できるだけ早く実現をしたい。地方分権推進の委員会の第三次勧告にも盛り込まれているところでございまして、まずは国と地方との実質的な協議をできるだけ早く開催できるよう準備をしているところでございます。

 これは、御案内のとおり、私ども所信表明でも申し上げた、今まではややもすると国と地方が上下関係にあった、これが旧政権のあり方ではありませんか。これを私たちは、公平なパートナーとして国と地域を考えていく、その意味での協議機関を設置するということでありますので、こうした協議を通じて政府内で検討を進めて、できるだけ早い法案の提出を目指してまいりたいと思います。公明党さんも、ぜひ一緒にやらせていただければと思います。

 郵政株式売却凍結法案の目的についてのお尋ねがありました。

 郵政改革については、先般、閣議でその基本方針を決定いたしました。これに基づいて今後改革案を検討し、実行してまいります。

 今般提出予定の郵政の株式売却凍結法案は、この検討に当たって、制度設計の支障にならないように、日本郵政等の株式処分等を暫定的に停止するというものでございます。

 日本郵政株式会社社長人事と日銀総裁人事の違いについての御質問がありました。

 日本郵政の社長に就任をいたします齋藤氏は、旧大蔵省の事務次官経験者でございます。しかしながら、その退官後、長年、すなわち十四年間、民間で勤務をした経験がございます。本当にある意味ですぐれた人材だと考えておりまして、適材適所だと申し上げたところでございます。

 日銀総裁の人事との比較がございましたが、候補者の実績や考え方を勘案したほか、日銀の総裁人事に関しては日銀の独立性の問題を考慮する必要があったための結論でございまして、今般の人事とは事が異なります。

 新型インフルエンザのワクチン接種についての御質問でございます。

 厚生労働関係は長妻大臣が大変頑張ってくださっているところでありますが、新型インフルエンザ対策については万全の準備と対応を尽くしてまいります。情報収集及び丁寧な情報提供、すなわち四千五百万部、政府広報を配布する予定にしておりまして、そこで徹底をしてまいりたいと存じます。

 接種状況に応じたワクチンの流通確保などによって自治体と連携をいたしまして、できる限り円滑な接種体制を確保してまいります。

 接種費用は実費負担を原則としたい、そのように考えておりますが、低所得者の方々の世帯の負担に対しては軽減することを考えております。

 また、新型インフルエンザの医療体制整備についてのお尋ねがありましたが、地方からの御要望を踏まえて、新型インフルエンザ患者の方が入院する一般の医療機関の整備や、あるいは院内感染の防止のための設備を新たな助成対象として追加するところでございます。

 今後とも必要な施策を実施してまいりたいと考えております。

 子ども手当の財源についての御質問がございました。

 子ども手当は、まさに次代を担う子供一人一人の育ちを社会全体で応援するという発想で創設をいたしたいと考えております。したがって、所得税の控除の見直しについては、政府税調におきまして本格的な検討を今行っていただいているところでありまして、年末に向けて結論を出すことにいたします。したがって、今後、予算編成過程を通じて、財源の確保の方策を含めて、政府全体で制度の具体的な内容を決定いたしたいと考えております。

 トータルな子育て支援策についての御質問がございました。

 子育ては、言うまでもありませんが、未来への大変大きな投資だということで、社会全体が助け合い、負担をするという発想が何より肝要だと理解をしております。したがいまして、子供を産み育てることを経済的な理由であきらめてしまう、そういうことがないようにしなければなりませんし、また、子育てのために仕事をあきらめてしまう、こういうことが起きないような社会にしていかなければなりません。

 そのための財源というものをやはりきちんと確保しながら施策を推進してまいりますが、子ども手当の創設に加えて、保育所の増設等によって待機児童の解消、地域の子育て支援事業や多様な保育サービスの量の確保など、総合的な子育て支援策の拡充にこれから努めてまいることもお約束をいたします。

 後期高齢者医療制度廃止後の具体像についてはという御質問でございます。

 後期高齢者医療制度の廃止後の制度のあり方については、高齢者はもとより、市町村を初めさまざまな関係者の理解を得ることがなくてはなりません。したがいまして、政権発足後に寄せられた各方面からの御意見を踏まえて、老人保健制度に戻すということではなく、幅広い国民の納得と信頼が得られる新たな制度を検討し始めてまいっているというところでございます。

 後期高齢者医療制度の見直しのスケジュールに関してもお尋ねがありました。

 近く長妻厚生労働大臣のもとに新たな制度の具体的なあり方を検討するための会議を設置し、そこでスケジュールも含めて明らかにいたしますので、いましばらく御理解を願いたいと存じます。

 それから、保険料軽減措置の継続等に関する質問がございました。

 新制度に移行するまでの間、高齢者の方々に混乱や不安が生じてはなりません。そして、そのような混乱や不安が生じないようにしていくために、現行制度の保険料の軽減措置の継続等については適切に対処をしてまいります。御不安がないように努力をいたします。

 高額療養費の見直しについての御質問がございました。

 重い病気にかかっても安心をして医療を受け続けられるようにすることは、当然、命を大切にする、そういう政治にとって重要な課題だと認識をしております。

 したがいまして、高額療養費制度に関しまして、治療が長期にわたる患者の皆さんの負担を軽減させていただくために、具体的な軽減対象や負担水準について検討をいたします。その検討に当たっては、患者負担の現状、さらには医療保険財政への影響というものはやはり勘案してまいらなければなりませんので、御理解を願います。

 がん検診の受診率向上についての御質問がございました。

 検診を通じたがんの早期発見は大変重要であります。

 がん検診は、健康増進法に基づいて、交付税措置により市町村が実施をしておりますが、平成二十一年度より交付税措置が千三百億円に倍増いたしているところであります。その上で、平成二十一年度補正予算において、国が、特に受診率の低い乳がん及び子宮頸がんについて無料クーポン券及び検診手帳を配布することにいたしたところでございます。そのことによって十分な措置を実施してまいります。

 農業分野の国際交渉についての質問がございました。

 FTAやWTOなどの国際交渉につきましては、貿易・投資を自由化するという観点から、積極的に推進をしてまいります。

 その際に、これも言うまでもありません、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、さらには、国内農業・農村の振興などを損なわないようにしていく、当然、その考えのもとで行動をしてまいります。

 こういった基本的な姿勢のもとで、食料の安全保障を確保してまいりますとともに、農業の多面的な機能を維持してまいりますが、私ども、言うまでもありません、選挙で訴え申し上げたところでありますが、新政権といたしましては、食料自給率の向上を徹底して求めていくという観点から、戸別所得補償制度を早く創設することが肝要だ、そのように考えているところであります。

 農政改革についてのお尋ねがありました。

 戸別所得補償制度など、私どもが新政権で国民の皆様方にお約束を申し上げた政策を導入する、そのことによって、農業を営んでおられる方々が安心して営農できる環境を整備することが不可欠でございます。

 したがいまして、政策を転換することになるわけでありますから、政策の転換に当たっては、農業をなさっておられる方々や関係者の皆様方の声に耳をしっかりと傾けて、戸惑われることがないように、あるいは混乱がないように進めていく所存でございます。

 最後に、献金問題の説明、政治資金規正法改正についての御質問がございました。

 一昨日の所信表明演説でも申し上げましたとおり、私の政治資金の問題で政治への不信感を持たれ、国民の皆様方に御迷惑をおかけいたしましたことは、率直におわびを申し上げなければなりません。

 したがいまして、事件が発覚いたしました直後、直ちに弁護士によって調査を行っていただきました。そして、その後、記者会見を行って、記者会見で、判明をいたしておりました事実に関しましては公表をしてまいったところでございます。また、現在は東京地検の捜査に全面的に協力をしております。全容が解明されることを心から祈念をいたしているところでございます。

 弁護士による調査、記者会見、さらには検察捜査への全面協力は、まさに政治倫理綱領とも合致していると私は認識をしております。

 同時に、さきの総選挙の結果を踏まえて、国民の皆様との約束を着実に履行して、国民の皆様方の期待を裏切ることのないよう政策を遂行していくことが私の使命であると強く認識をしております。

 また、政治資金規正法改正の問題に関しましては、各党各会派におきまして積極的に御議論をいただいて、成案を得られるように、お互いに努力をすべきだと認識しております。

 以上であります。(拍手)

     ――――◇―――――

高山智司君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十九日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(衛藤征士郎君) 高山智司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(衛藤征士郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  鳩山由紀夫君

       総務大臣  原口 一博君

       法務大臣  千葉 景子君

       外務大臣  岡田 克也君

       財務大臣  藤井 裕久君

       文部科学大臣  川端 達夫君

       厚生労働大臣  長妻  昭君

       農林水産大臣  赤松 広隆君

       経済産業大臣  直嶋 正行君

       国土交通大臣  前原 誠司君

       環境大臣  小沢 鋭仁君

       防衛大臣  北澤 俊美君

       国務大臣  亀井 静香君

       国務大臣  菅  直人君

       国務大臣  仙谷 由人君

       国務大臣  中井  洽君

       国務大臣  平野 博文君

       国務大臣  福島みずほ君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  松野 頼久君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君


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