衆議院

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第4号 平成21年11月17日(火曜日)

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平成二十一年十一月十七日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  平成二十一年十一月十七日

    午後一時開議

 一 中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

 二 新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明

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本日の会議に付した案件

 人事官任命につき同意を求めるの件

 中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑

 新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員中川昭一君は、去る十月三日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 中川昭一君に対する弔詞は、議長において去る二日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに逓信委員長の要職につき またしばしば国務大臣の重任にあたられた正三位旭日大綬章 中川昭一君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 永年在職議員として表彰された元議員浅井美幸君は、去る十月四日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 浅井美幸君に対する弔詞は、議長において去る四日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに沖縄及び北方問題に関する特別委員長の要職にあたられた浅井美幸君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 人事官任命につき同意を求めるの件

議長(横路孝弘君) お諮りいたします。

 内閣から、

 人事官に江利川毅君を

任命することについて、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣亀井静香君。

    〔国務大臣亀井静香君登壇〕

国務大臣(亀井静香君) ただいま議題となりました中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 世界的な金融資本市場の混乱により、我が国でも、厳しい経済金融情勢及び雇用環境にある中、中小零細企業等からは、資金繰りがなお厳しく、かつてない深刻な状況にあるとの声が上がっております。こうした状況にかんがみ、中小零細企業及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図ることにより、中小零細企業の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期することが喫緊の課題となっております。

 このような観点から、中小零細企業及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために必要な臨時的な措置を講ずるため、本法案を提出することにした次第であります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、金融機関に対して債務を有する中小企業者または住宅資金借入者であって、債務の弁済に支障を生じており、または生ずるおそれがある者から債務の弁済に係る負担の軽減の申し込みがあった場合には、金融機関は、できるだけ貸し付け条件の変更等の措置をとることに努めるものとすることとしております。

 第二に、金融機関は、貸し付け条件の変更等の措置を円滑にとることができるよう、体制整備その他の必要な措置を講じなければならないこととしております。また、金融機関は、講じた措置の状況等に関する説明書類を作成し、公衆の縦覧に供しなければならないこととしております。

 第三に、金融機関は、貸し付け条件の変更等の措置の詳細に関する事項を当局に報告しなければならないこととするとともに、当局は、金融機関からの報告を取りまとめ、その概要を公表することとしております。

 第四に、説明書類に虚偽の記載をして公衆の縦覧に供した者、当局に虚偽の報告をした者等に関し、罰則を設けることとしております。

 第五に、中小企業者に対する金融機関の信用供与の円滑化を図るため、金融機能強化法の適切な運用、信用補完事業の充実のための措置を講ずる等、政府の責務を定めております。

 以上、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。

 何とぞ御審議のほどよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。鈴木克昌君。

    〔鈴木克昌君登壇〕

鈴木克昌君 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案、いわゆる中小企業金融円滑化法案につきまして質問をいたします。(拍手)

 最初に、十月の台風十八号で被害に遭われた多くの国民の皆さんに、まずお見舞いを申し上げたいと存じます。

 さて、我が国は今大変な状況にあることは御案内のとおりでございまして、私は、その状況をいま一度亀井大臣にお伺いするとともに、提出をされました法案につきまして、大臣の真意を伺ってまいりたいと思います。おおむね四点でございます。

 まず最初は、現在の中小企業金融の状況をどのようにお考えになっているのか、また、なぜ今本法案が必要なのか、この点でございます。

 亀井大臣は、これまで、経済を体に例えれば、金融という血液が毛細血管まで回っていない状況である、そしてこれをうまく回していかなければならない、このようにおっしゃられております。そしてまた、就任当初から、中小企業、零細企業を含む現下の状況を大変厳しいものというふうにおっしゃってみえたわけであります。

 そうした問題意識を踏まえて、ただいまお伺いをいたしました、現状をどのようにお考えなのか、そしてまた、なぜ本法案が必要なのかをお聞かせいただきたいと思います。

 二つ目でございます。

 本法案は、私は、先行きに不安を感じている中小企業の返済負担を軽減するなど、中小企業金融の円滑化を通じて中小企業の事業活動の円滑な遂行や雇用の安定にも資するものだ、そして大変評価できるものだというふうに考えております。

 ただ、中小企業からは、仕事がない、単価が合わない、売り上げが伸びない、返すお金がないという非常に苦しい声も来ておるわけであります。一時的に返済が猶予されたとしても、業況改善のための抜本的な解決になるかどうか問題でございます。

 その点から大臣にお答えをいただきたいのですが、より総合的な対策が必要ではないか、こういうふうにお尋ねをしたいと思います。大臣のお考えをお聞かせください。

 少し具体的に伺ってまいりたいと思いますが、この法案の実効性についてでございます。

 努力義務が課せられてはおるものの、金融機関にとっては強制力がないのではないか、このような意見もあります。また、金融庁がすべての取引について、いわゆる金融機関が法令を遵守しておるのか、適切に貸し付け条件の変更を行っているのかどうかを監視するということは非常に難しいというふうにも考えられております。

 そこで、その辺がどのように実効性を確保されていくのか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

 四つ目であります。いわゆる新規融資についてでございます。

 返済猶予を行うと、かえって新規融資が受けられなくなってしまうのではないか、このような不安の声も聞こえているわけであります。貸し付け条件の変更が行われた後であっても、追加的な資金の借り入れが可能であることが明らかにされれば、今、本法案に対して漠然とした不安を抱いている中小企業の方々も、安心して本法案の活用を検討できるのではないでしょうか。

 したがって、新規融資も円滑に供給されるという、その辺のところの大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 終わりに、本法案は、いわゆる金融機関というのは、社会的役割を有しており、困っている中小企業や住宅ローンの借り手を支援し、地域経済を救うべきであるとの理念を示しました。これは、今後の金融行政にとって大きな意味を持つものであります。年末を迎える中小企業や住宅ローンの借り手のことを思いやれば、本法案の一刻も早い成立、施行が望まれるところであります。

 この場におられます国会議員の皆さんにおかれましては、どのような方法をとることが最善かという点では見解に若干の相違があるかもしれませんけれども、今、歯を食いしばって必死に努力をされている中小企業主や住宅ローンの借り手が直面している苦境を脱することができる手助けをしなければならないという問題意識は共通しているものと思います。

 どうか、ここはひとつ、大局的見地に立っていただき、ぜひとも、他会派の皆さんにおかれましても御賛同をいただき、この法律を、一日でも早く、一人でも多くの国民に元気を与えるために成立をさせていただきたい、このことを強くお訴え申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣亀井静香君登壇〕

国務大臣(亀井静香君) 鈴木議員の御質問にお答えを申し上げます。

 今の日本経済、回復過程に入っておるという議論もありますが、大企業においては、この二、三年のイザナミ景気という景気の中で、百兆円を超えると言われる内部留保を持って今なお経営に相当の余力を持っておる、そういう企業も見受けられるわけでありますけれども、問題は、中小零細企業、商店、また多くのサラリーマンの生活は、私は、日々その厳しさは増しておる、このように判断をしておるわけであります。

 今、政府がなすべきことは、まず、今苦しんでおる、そうした中小零細企業、商店、サラリーマンの人たちに対して、応急の借入金の返済猶予、新規融資等が円滑に行われる措置をとると同時に、私は、仕事が出ていく、そうした措置をとらなければならないと思います。返済猶予だけによって今の状況を打開できるものではない。そういう意味で、力強い景気対策をこの政府はやっていかなければならない、私はこのように考えております。

 そういう意味では、一月の補正に向けて、日本経済をどう活性化していくか、また、困っておられる方々にどう仕事が出ていくかという視点からのそうした対応がなされるべきであろうと思います。

 もう一つ。仕事が出ていっても、小泉政治のもとで、大企業が中小零細企業に対して仕事を出していくことに対して、場合によっては、公正取引違反と言ってもいい、そうした劣悪な条件のもとで仕事を出している状況が、残念ながら、相当一般化してきております。

 そういう意味で、仕事の出し方についても、公正取引委員会がその機能を十分発揮していくことを含めて、トータルの政策を実施しなければ中小零細企業が苦境を脱することはできない、このように考えております。

 なお、この法案を実施した上での実効性の問題でありますけれども、自由主義経済社会でありますから、これを強制することができないのは当然でありますけれども、金融機関がこの法律に基づいて誠意を持って借入者に対して対応しておるかどうか、これについては、金融庁において、監督検査を厳しくやっていく所存でもありますし、また、ディスクロージャーをきっちりとやらせていくつもりでもあります。

 そうして、金融マニュアル、監督指針を同時に私どもは抜本的に変えてまいります。従来の金融庁の検査のやり方が抜本的に変わっていく、それを今検討しております。

 簡単に申し上げますと、借り手にとって、中小零細企業等にとってよきコンサルタント的機能を金融機関が果たしておるかどうかということが今後の金融庁の検査監督の眼目でございます。

 それから、新規の貸し渋りが起きるのではないかという御懸念でございますけれども、今申し上げましたように、金融機関がきっちりと対応しているかどうかについて、我々としては、これを検査監督によってきっちりとチェックをしてまいる所存でございますので、そういう状況というのは起きない、私はこのように考えております。

 以上でございます。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 竹本直一君。

    〔竹本直一君登壇〕

竹本直一君 ただいま議題となりました中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案の趣旨説明に対しまして、自由民主党・改革クラブを代表いたしまして、藤井財務大臣、亀井金融担当大臣及び直嶋経済産業大臣に質問いたします。(拍手)

 まず、質問に先立ちまして、一言申し上げます。

 国会運営に関して、法案審議に先立って行われる大臣あいさつに対する一般質疑がまだどの委員会でも行われていない状況の中、与党は、きのうの議院運営委員会で、採決によって法案の趣旨説明、質疑を決めるという強硬な手段に訴えました。

 十月二十六日から会期が始まって以来、これまでの間、一度も国会が不正常な状態に陥ったことはなく、各委員会で議論を深めようと円満な協議を進めていた中で、なぜ突如としてこのような強硬な国会運営を進めようとしているのか、全く理解に苦しみます。

 本日、政権交代後初めての本会議における趣旨説明で、法案二本も採決によって本会議にかけるという議会運営は、憲政史上まれに見る、議会制民主主義を根本から揺るがす前代未聞の暴挙であり、議会に籍を置く者として到底許すことのできない行為でございます。

 さらに、鳩山総理、小沢民主党幹事長の政治資金をめぐる疑惑に関しては、選挙前から報道されているにもかかわらず、十分な説明を尽くしたとは言えない状況にあります。また、最近新たに、鳩山総理の五億円もの所得隠しという新たな疑惑も報道されております。

 特に、国民の代表である内閣総理大臣から納税義務の履行や政治と金に関する疑惑が次から次へと出てくることは甚だ遺憾であります。また、それらの事項に対して、国民が納得できる説明責任を十分に果たしていないことは、鳩山総理の個人的な問題にとどまらず、政治全体への国民の不信感を招く大きな問題であると考えます。

 また、十一月四日の衆議院予算委員会で、我が党の議員が、友愛政経懇話会をめぐる個人献金問題に関し、平成十七年以降、実際に献金をしていなかった方々について、同懇話会が総務省に対し寄附金控除証明書を申請し、四年間で延べ百十六名が証明書の不適切な発行を受けていた旨指摘しております。

 政治活動に関する寄附金控除は、寄附をした人が、総務省から寄附金控除証明書を受け、所得控除を受ける制度でありますが、実際には寄附をしていない実在の人物から名義を借りて、総理個人の資金あるいは関係者からの資金を寄附に充て、名義を貸した人に寄附金控除を受けさせるといったことが行われる可能性も否定できません。国税庁は制度の悪用がないかどうか調査して、内閣は政治の責任としてその全容を国民の前に明らかにする必要があると思います。

 通常国会まで十分な期間があるにもかかわらず、十一月三十日までという会期にこだわり、さらに、この極めて短い期間ですべての法案を成立させようという強引な国会運営の裏には、これら政治資金問題を追及される場をなくしたいという意図が隠されているのではないか。まさに、鳩山・小沢献金問題隠しの国会運営と言わざるを得ません。十一月十八日に行うべく与野党で調整されていた党首討論が何の理由もなく急遽取りやめになった背景にも、この献金問題隠しがあるのではないでしょうか。

 総理は、地検の捜査が進んでおりますので、そこで全容が解明されると述べており、国民に説明責任を果たす意図が全く感じられません。政治献金の問題は、政治に対する信頼の問題そのものです。司法の手続とは別に、政治家として、国民の前にみずからその全容を明らかにすべきであります。

 我が党のさきの予算委員会での厳しい追及により、疑惑はますます深まりました。鳩山総理が、鳩山家の資産管理会社から元秘書が資金を引き出す際に指示書に署名していたことが明らかになり、また、鳩山総理は、五万円以下の匿名献金について、弁護士から疑わしい部分もないとは言えないと言われたとして、匿名献金にも疑惑の資金が流れ込んでいる可能性を認めました。

 鳩山総理は、これまで、秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきだと述べてきたにもかかわらず、みずからのことになると、何ら責任をとろうとしないばかりか、最低限の説明責任さえ全く果たそうとしておりません。これは、まさに国民を愚弄するものと言わざるを得ません。

 後に本法案の質問の中でも述べますが、厳しい経営環境の中で懸命に努力をしている中小企業や、雇用不安の中で家族を守るために身を削る思いで住宅ローンの返済に取り組んでいる方々が、このような鳩山総理の庶民感覚と余りにもかけ離れたお金をめぐる疑惑を何と思うでしょうか。鳩山総理は、国民に対し、みずから疑惑を十分に説明する重大な責任があります。

 我が党は、今後もこの問題を徹底して追及していく所存であることをここに申し上げ、本法案の質問に入ります。

 まず、藤井大臣にお伺いいたします。

 本法案は、現下の厳しい経済金融情勢におきまして、中小企業金融対策として銘打たれたものでありますが、麻生内閣時におきましても、我々は、経済対策として今年度補正予算を成立させる一方、税法の附則におきまして抜本的税制改革を法定し、将来世代への負担の先送りをしないための方策をとったところであります。

 そこで、この件に関連して御質問申し上げます。

 第一に、今年度補正予算執行停止の問題であります。

 今年度補正予算は、国会において審議され、本年五月二十九日に成立いたしました。その後、八月の総選挙を経て鳩山内閣が発足すると、鳩山内閣は、その補正予算のうち約三兆円の執行を停止することといたしました。

 しかし、国会の立場から見れば、今年度補正予算は国会で議決されたとおりに執行されているものと考えるのは当然であります。なぜならば、今現在、五月に行われた国会の議決には何らの変更もなされていないからであります。

 国権の最高機関である国会の議を経ることなく、国会の議決と異なることを行うということは、財政民主主義の観点から手続上疑問がないとは言い切れません。藤井財務大臣は、この憲法に定められた財政民主主義という原則をどのように考えておられるのか、ぜひお聞きしたいと思います。

 第二に、来年度予算の財源問題であります。

 政府からは、来年度予算の編成に関して、約九十五兆円の概算要求がなされているとの発表がございました。また、今年度の税収は、当初見通しの四十六兆円を大きく下回り、四十兆円を割り込む可能性があると報道されております。

 来年度の税収見通しはまだ明らかではありませんが、来年度の国債発行額について、藤井財務大臣は、十月二十七日の記者会見で、麻生内閣のときの四十四兆の国債発行額を下回るようにしなければならないと発言しております。九十五兆円の概算要求については三兆円を削減したい旨の発言が一時期政府部内からありましたけれども、仮に九十二兆円の歳出を賄うにしても、国債発行が目標どおり四十四兆円とすると、計算上は税収等が四十八兆円となります。今年度の税収が四十兆円を割り込みそうだという状況で、差額の八兆円以上の財源はどのようにして捻出しようとされているのか、藤井財務大臣の見解をお伺いいたします。

 次に、亀井金融担当大臣にお伺いします。

 最近の経済金融情勢及び雇用環境のもとにおける我が国の中小企業と住宅ローンの借入者の債務の負担の状況を見るとき、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配意しつつ、中小企業と住宅ローンの借入者に対する金融の円滑化を図るための措置を講ずることは、我が党としても必要であると考えております。

 しかし、本法案には、その意義と効果に対する疑問やモラルハザードを招くおそれ、また、対象となる中小企業の範囲の適切性や中小企業が真に必要としているニューマネーを確保する措置などの諸点について、幾つかの疑問点がありますので、以下、順次お伺いいたします。

 まず第一に、三党連立政権は、さきの連立合意の中で、貸し渋り・貸しはがし防止法を成立させるとしておられました。しかしながら、その解釈をめぐり、亀井金融担当大臣の、三年程度の返済を猶予するモラトリアムを実施すべく取り組みたいとの発言に対して、鳩山総理は、いわゆるモラトリアム制度は連立合意に含まれていないとの認識を示すなど、閣内不一致を露呈したところであります。

 本法案は、連立与党の連立合意を実現しようとするものとして理解してよいものなのかどうか、御見解をお伺いいたします。

 第二に、これまで自公政権は、中小企業金融等の円滑化のため、リレーションシップバンキングの機能強化に向けたアクションプログラム等に基づく取り組みなど、きめ細かい対応を行ってまいりました。本法案を精査すると、これまでの自公政権が打ってきた取り組み以上のものは見当たりません。単なる努力義務を金融機関に課すために法律まで制定する意義はどこにあるのか、むしろ疑問さえあります。

 そこで、このような法律を制定するそもそもの意義と効果について、御見解をお伺いいたします。

 第三に、本法案には、真に貸し付け条件の変更等を必要とする者の救済になるのかという根本的な疑問があります。金融機関は、貸し付け条件の変更など必要のない優良な中小企業に対して貸し付け条件の変更を行い、政府の要請を適切に実施しているように装おうとするのではないかという懸念があるわけであります。

 他方、再建が全く困難な中小企業に対しては、全く返済を受けられないと考えて、政府が四割の肩がわりを可能とする条件変更対応保証という新たな信用保証制度を利用して回収を試みようとする疑念があります。

 このようなモラルハザードを招くおそれはないのか、また、このようなことが起きた場合、どのように対応しようとしているのか、御見解をお伺いしたいと思います。

 第四に、年末を控え、資金繰りが厳しい状況にある中小企業に温かい手を差し伸べることは、臨時の措置として、また政治家としての立場から、ぜひ必要であると私は考えております。

 しかし、本法案の措置によって、債務が予定どおり返済されず、金融機関の体力が低下し、その結果、信用収縮を招くのではないかという指摘があります。また、運用の仕方によっては、銀行のリスクが外部から判断しにくくなる結果、銀行の会計処理に対する透明性を強化しようとする国際的な要請に逆行するとの指摘もあります。これらの点について、御見解をお伺いしたいと思います。

 最後に、直嶋経済産業大臣にお伺いいたします。

 窮状にあります中小企業の再生のためには、中小企業の苦しみに耳を傾け、中小企業のために真に必要な政策を着実に実行していかなければなりません。そのためには、貸し付け条件の変更等にあわせて、新たな信用供与、すなわちニューマネーを供与することが必要不可欠であります。また、新たな仕事をどのように開拓するかを真剣に検討し、適切な支援措置を講じることが重要であります。

 本法案を中核とする中小企業等に対する金融円滑化対策の総合的パッケージは、貸し付け条件の変更等を行った後のニューマネーについては、民間金融機関の追加融資、緊急保証、セーフティーネット貸し付け等などの既存の取り組みで対応することとしておりますが、これで果たして十分でしょうか。また、中小企業が新たな仕事を開拓するために、どのような取り組みを経済産業大臣として考えておられるのか、直嶋大臣の御見解をお伺いいたします。

 自公政権は、四つの経済対策で日本経済を守りました。七―九月のGDP成長率が四・八%と発表され、自公政権の経済対策が効果をあらわしていることを示しております。

 現在、補正予算が三兆円削られている中で、今後の経済状況が我々としては大変心配であります。中でも、中小企業や住宅ローンの借入者で資金を必要としている方々に対して、国としてやるべきことをきちんと実行することがまさに急務であると考えるものであります。

 雇用を守る、中小企業を守る、個人消費を守る、そして金融システムを守る。今後とも引き続き日本経済を守っていくという我が党のかたい決意を表明いたしまして、本法案の趣旨説明に対する質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣亀井静香君登壇〕

国務大臣(亀井静香君) 竹本議員の御質問にお答えいたします。

 この法案は、三党連立合意に基づいて、中小零細企業、商店、サラリーマンの置かれている厳しい状況を少しでも改善するために直ちに立法措置をとれという鳩山総理からの強い指示のもとでこれを提案したものでありまして、総理との間で何のそごもございません。

 なお、自公政権においても取り組んでこられたということでありますけれども、取り組まれたとは思いますけれども、今の状況は、残念ながら、自公政権下のもとにおいて、改善されるどころか、もっと厳しい状況になっていることは現実であります。

 また、本法案によって金融機関のモラルハザードが起きるのではないかという御指摘がございましたけれども、そういうことが起きないように、金融庁がきっちりと監督、指導、検査をしてまいります。

 また、大企業の子会社がこれの対象になっていないという御指摘でございますが、この場合は、親会社が資金等について面倒を見ておる状況もございますので、一応適用の除外にいたしておるわけでございます。

 それから、本法案の実施によって信用収縮が起きるのではないかという御指摘でございましたが、逆でございます。金融機関が中小零細、商店等にとってよきコンサルタントである、そういう業務を遂行していくように、私どもは監督検査をしてまいるわけであります。

 金融機関にとって、借り手がきっちりと経営をしていくことは、貸し手の金融機関の経営にとってもこれはプラスに働いていくわけであります。そういう意味で、この法案の施行によりまして、そういう関係は起きないどころか、よき貸し手と借り手の間の状況が生まれる、このように私は確信をいたしております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣藤井裕久君登壇〕

国務大臣(藤井裕久君) 竹本議員の御質問にお答えいたします。

 補正予算の執行停止についてのお尋ねが初めにありました。

 政府といたしましては、今般の補正予算の見直しについて、対象事業を決定するとともに、必要な手続等を経て、二十一年度第二次補正予算及び二十二年度予算に反映するとの方針を閣議決定いたしております。現在、経済や国民生活に大きな影響を及ぼさないよう慎重に手続を進めており、所要の手続を経た上で、最終的に第二次補正予算を提出する予定であります。

 次に、二十二年度予算の財源確保についてお尋ねがございました。

 二十二年度予算については、税収等が具体的に見込み得る状況ではありませんが、財政規律を守り、国債マーケットの信認を確保していくとの方針のもと、国債発行額を極力抑制することといたしております。このため、行政刷新会議において、事業仕分けを含めた歳出の抜本的な見直しを行っているところであります。

 今後の予算編成過程において、行政刷新会議と連携しつつ、思い切った歳出削減に取り組み、その中で財源を確保していく必要があると考えております。(拍手)

    〔国務大臣直嶋正行君登壇〕

国務大臣(直嶋正行君) 竹本議員の御質問にお答えをさせていただきます。

 まず、条件変更後の新規融資に関する御質問でございます。

 これまで、緊急保証は十五・三兆円、セーフティーネット保証・貸し付けは六兆円の実績を上げておりますが、保証・貸付枠ともまだ十分残っており、これを十二分に活用し、また、改善を重ね、新規融資の円滑化に取り組んでまいります。

 また、条件変更を行ったことを理由に、新規融資が門前払いをされてはならないと思っております。企業の実態をよく見て保証・融資の判断を行うよう、先月末の中小企業向け年末対策で発表し、公的金融機関にも徹底をしているところでございます。

 また、中小企業の新たな仕事開拓についての御質問がございました。

 中小企業を取り巻く経済状況は、依然として厳しいと思っております。昨日も、私自身、中小企業をめぐる厳しい状況について、関係の方々の声を直接お伺いさせていただきました。

 中小企業にとって、経済危機を乗り越えるための資金繰り対策だけではなく、新たな需要を創出するための対策も極めて重要でございます。このため、仕事をつくり、中小企業の魅力を発信する観点から、例えば、ものづくり中小企業における試作品開発等の支援や研究開発の推進、新商品等の開発、販路開拓に向け、一貫したきめ細やかな支援などを実施いたしているところでございます。

 また、本年十月一日には、国や地方公共団体による入札情報を中小企業者がインターネットで簡易に検索、閲覧できる官公需情報ポータルサイトの運用開始をいたしました。

 このように、新たな分野に挑戦する中小企業の支援に全力を尽くしてまいります。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 竹内譲君。

    〔竹内譲君登壇〕

竹内譲君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律案について、亀井金融担当大臣並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 本法律案に対する具体的な質問に入る前に、政府の景気、経済に対する認識を伺います。

 しかし、その前に、指摘しておかなければならないことがあります。

 昨日公表されました七―九月期GDP速報値について、あろうことか、公表前に、主要経済閣僚の一人である経済産業大臣が情報漏えいするという極めて遺憾な不祥事が起こりました。

 そもそも、市場経済の中において、特に重要な指標がその公表前に漏れてしまうことの影響は甚大であります。場合によっては、インサイダー取引を誘発するなど、市場経済、市場規律をゆがめてしまうもので、その情報管理には細心の注意が必要であることは、行政にかかわる者にとってイロハ中のイロハです。経済産業大臣は、みずからの立場を自覚しておられるのか。今般のフライングは、業界団体へのリップサービス程度の認識だったのかもしれませんが、私は、経済閣僚としての適性に疑問を持たざるを得ません。

 ましてや、日本経済は極めて重要な局面を迎えており、特に市場が神経質な状況の中にあっての今般の不祥事は、まさに内閣として日本経済をどう立て直すかとの真剣さが欠如していると言われても仕方がありません。

 当事者である直嶋経済産業大臣には、国民に対して誠実な釈明を冒頭求めたいと存じます。

 さて、本題に入りますが、本法律案の目的には、最近の経済金融情勢及び雇用環境にかんがみて制定する旨が記されています。すなわち、我が国経済が依然として厳しい環境下にあり、この年末年始はもとより、来年度にかけても中小企業の資金繰りが逼迫し、雇用にも重大な影響を与えるとの基本認識があるものと思われます。

 であるならば、政府・与党がまずなすべきことは、早急に新たな経済対策を策定し、この国会に提案することではないでしょうか。ところが、政府・与党は、前政権の景気対策としての平成二十一年度補正予算のうち、子育て応援特別手当を初め約三兆円を執行停止するという全く逆の対策を講じたのであります。

 前政権の補正予算が無駄、不要のきわみであると言われるのであれば、そのかわりとなる賢い支出、ワイズスペンディングなるものを一刻も早く国民の前に提示して、堂々と本国会で論議すべきではないでしょうか。来年の通常国会で第二次補正予算案を提出する方向性であるようですが、そんな悠長な仕事ぶりでは、到底国民生活を守ることはできません。

 日本経済は、雇用を初め大変に厳しい状況が続いています。

 補正予算の執行停止によってGDPが〇・二%程度落ちるということは政府が認めておられます。日銀の展望レポートによれば、今年度、平成二十一年度の実質GDPの予測は、マイナス三・二%が中央値であり、また不確実性は依然高く、まさに二番底リスクに直面しています。

 また、需給ギャップは約四十兆円にも及ぶと指摘されています。しかし、米国経済の低迷は長期化が見込まれ、輸出も、中国向けを含め、その拡大は難しい情勢です。

 他方、内需の二本柱である設備投資と個人消費も弱く、さらに、デフレ傾向も指摘されている中で、物価の連続的下落により、企業収益の悪化と個人所得の低迷を通じて、景気後退の悪循環に陥る可能性もあります。

 一方、企業部門においても、中小企業の売上高は前年と比べて八〇%程度にとどまり、先行きも全く不透明であります。冬のボーナスも、大幅に減額あるいは支給ゼロという会社がたくさん出ています。町の中小企業の方々の声は、仕事がないという悲痛な叫びであります。これから地方の製造業、建設業などで倒産、失業の増大が懸念されています。

 本法案提出の背景となっている金融経済情勢をどう認識されておられるのか、また、中小企業を初めとする現場の方のお声をどう受けとめておられるのか、まず亀井金融担当大臣並びに藤井財務大臣にお伺いしたいと存じます。

 先ほども申し上げましたとおり、私は、中小企業を本当に守るというのであれば、直ちに経済対策を打ち、その裏打ちとなる第二次補正予算案を提出すべきであると考えます。

 その予算規模も重要な点であります。亀井金融担当大臣は、報道によれば、十兆円程度の補正予算が必要だと主張されておられるようです。第二次補正予算の規模並びに財源をどうするのか、場合によっては赤字国債の発行も辞さないと考えておられるのか、これらをあわせて、亀井金融担当大臣並びに藤井財務大臣の御見解をお伺いいたします。

 鳩山内閣が発足してから二カ月が過ぎましたが、新政権のマクロ経済政策が一向に見えてきません。中長期の経済成長戦略や財政再建目標、計画の策定もなされておらず、国民生活を預かる政権の責務を果たせていません。家計への直接給付により需要喚起を促すという考え方は一定の理解をいたしますが、それだけでは所得再分配の域を出ていないのではありませんか。早急にこれらの方針を示すべきと考えますが、菅経済財政政策担当大臣の見解を求めます。

 以下、議題となっております法律案についてでありますが、金融面、特に資金繰り面で常に弱い立場に立たされている中小零細企業の方々を救おうという本法律案の意義は、我が党もその認識を共有するものであります。

 その上で、幾つかの点について具体的にお尋ねをいたします。

 第一に、本法案は、返済猶予など貸し付け条件の変更に関して努力義務としている一方、金融機関には、そのための体制整備と開示を義務づけています。また、貸し付け条件の変更等の実施状況を当局に報告するよう義務づけており、行政庁はこれを公表することとしています。その一方で、法律とは別に、金融庁は、検査マニュアル、監督指針についても改定を行うほか、中小企業融資、経営改善支援への取り組み状況について重点的に検査監督を行うこととなっています。

 このように、努力義務と規定しつつも、実際上は強制に近く、私的な契約である金銭貸借の内容に国家が介入する危険性はありませんか。

 第二に、債務の返済が一定期間猶予されれば、金融機関の経営が悪化し、融資の余力が低下することが懸念されます。そのため、金融機関は中小企業に対する新規融資に消極的になり、結果として信用収縮を招くことになることを危惧しますが、この点、どうお考えでしょうか。

 第三に、金融検査マニュアル及び監督指針の見直しにより、条件変更を行っても不良債権には区分しないとするなど、その基準が緩和されると、金融機関は将来の損失に備えた引当金を積み増さずに済みます。しかし、この場合、将来、銀行に損失が発生するリスクが外部から判断しにくくなり、銀行の財務データに対する信頼性が損なわれるおそれがあります。また、銀行の会計処理に対する透明性が低下することで、国際的な邦銀に対する信用力にマイナスの影響を与える心配も生じるのではないかと考えます。

 第四に、元利金の返済が猶予されれば、それらの債権を裏づけとする証券化商品の価格が急落する可能性もあるのではないでしょうか。

 第五に、海外の投資家からは、このような法律案が提出されたことに対し、日本経済はそれほど状況が悪化しているのかとの懸念も出ており、結果的に金融制度を不安定にし、国際的信用を失う弊害が指摘されています。この点、どう認識されておられますか。

 第六に、法律とは別に、今回新たに、いわゆるプロパー融資のみの者に対して条件変更対応保証を設計し、信用保証協会が一部を肩がわりすることとしています。しかし、これは、これまで禁止されてきた旧債振りかえであり、金融機関に対して相当のメリットを与えるもので、貸し手のモラルハザードが問われることになりかねません。

 具体的に言えば、これまで正常債権であったが、最近売上高が減少している場合には、この制度を積極的に利用して旧債振りかえがなされるのではないか。あるいは、もともと要管理債権であるものが、今回の旧債振りかえによって保証つきの正常債権になる可能性があります。まさに金融機関救済につながるのではないかとの指摘もありますが、どう認識されておられますか。

 第七に、安易に保証制度を活用する、借り手のモラルハザードがふえないようにしなければなりません。また、貸し付け条件の変更後も、企業業績が回復しない場合には、結果として国民負担の増大につながりかねず、当局の適切な検査監督が重要であります。

 第八に、返済猶予を受けた場合、不良債権に該当しないとされていますが、実際には、経営再建のための新規融資が停止されるのではないでしょうか。これで本当に中小企業のためになるのかどうか疑問です。小規模企業ほど既に限度額いっぱいまで信用保証を受けており、その場合、返済猶予だけでは救われず、新規融資がどうしても必要です。信用保証限度額の引き上げなど、緊急保証制度を含めた、中小企業の資金繰り支援の拡充に向けた総合的な対策を講じるべきではないでしょうか。

 第九に、中小企業の方は、通常、複数の金融機関から融資を受けている場合が多い中で、調整に手間取って条件変更などの意思決定がおくれれば意味がなく、適切な対応措置が必要です。

 第十に、貸し付け条件の変更等の実施状況について、六カ月を超えない範囲で行政庁に報告するとなっておりますが、本法案が臨時の緊急性を有するのであれば、その実効性を上げるために、例えば毎月の報告とするなど、その頻度を上げるべきではありませんか。

 以上の諸点について、亀井金融担当大臣、さらには、新たな保証制度に関しては直嶋経済産業大臣の答弁をそれぞれ求めます。

 最後に、提出された法律案だけでは、正直申し上げて、この政策の持つ効果、実効性はよくわかりません。法律と同時に規定されることとなっている省令、検査マニュアル、監督指針、さらには経済産業省で検討中の新たな保証制度についての考え方が提示されなければ、政策全体の姿が見えてこないのであり、それなしでは法案の成否についての判断は到底できないのであります。

 今後の国会での議論に当たり、早急にこれらの考え方を提示すべきではありませんか。最後に、この点について亀井金融担当大臣の明確な答弁を求め、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣直嶋正行君登壇〕

国務大臣(直嶋正行君) 竹内議員の御質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、七―九月期GDP速報値の取り扱いについての御質問がございました。

 昨日朝開催された石油連盟との懇談会において、八時二十分ごろ、私から出席者にあいさつを行った際、本年七―九月期の実質GDP成長率に言及をいたしました。事前に事務方から公表方法等についての説明がなかったため、既に公表されたものと受けとめ、多くの関係者が景気の状況を心配されているであろうと考え、その場でデータを紹介したものであります。

 内閣府の正式な公表の前に、統計指標のデータに言及し、国民の皆様及び関係各位に多大な御迷惑をおかけしたことは、大変申しわけないと考えています。既に、官房長官からは、公表前のデータが漏れてしまったことはまことに遺憾であり、今後こうしたことのないよう厳重な注意を承ったところでございます。

 今後、私自身が先頭に立って、経済産業省全体として、統計指標のデータを含めた情報管理に万全を期してまいりたいと思っております。

 条件変更対応保証と金融機関救済との関係に関する御質問でございます。

 今回の条件変更対応保証は、中小企業に対する条件変更を後押しするためとはいえ、民間金融機関の既往のプロパー債権に後から保証をつけるものであります。形式的には、従来から避けてきた旧債振りかえに該当するものでございます。

 このため、金融機関救済にならないよう、真に中小企業のためになる場合にのみ利用されるべきとの考えから、厳しい規律を課し、また臨時異例の措置と整理をしているところでございます。また、保証の付与に際しても、個別に中小企業の事業の改善や再生の可能性を勘案することといたしているところでございます。

 三点目の御質問の、中小企業資金繰り支援の拡充に関する件でございます。

 これまで、緊急保証は十五・三兆円、セーフティーネット保証は六兆円の実績を上げているところでございますが、保証・貸付枠はまだ十分残っております。また、緊急保証は、八千万円を超える無担保保証にも借り手の状況を踏まえて柔軟に対応するなど、運用面での改善も重ねているところでございます。こうした措置を活用し、引き続き、新規融資の円滑化に全力で取り組む所存でございます。

 加えて、条件変更を行ったことを理由に新規融資が門前払いをされてはならないと考えております。企業の実態をよく見て保証・融資の判断を行うよう、先月末の中小企業向け年末対策で発表し、公的金融機関にも徹底をしているところでございます。(拍手)

    〔国務大臣亀井静香君登壇〕

国務大臣(亀井静香君) 竹内議員の御質問にお答えをいたします。

 竹内議員御指摘のように、現在の中小零細企業、商店、またサラリーマンの方々が非常な厳しい状況に追い込まれておるというように私は認識をいたしております。

 先ほども申し上げましたけれども、返済を猶予する、あるいは新規の借り入れが容易になるという、そうした措置だけでこうした方々の苦境を脱することができるかということになりますと、そうはいかないと思っております。やはり経済がきっちりと回復していくこと、しかも、それも大企業だけが業績を回復していくということではなくて、その下請や孫請等を含めての中小零細企業がきっちりと業績が回復をしていく、そういう経済運営、また、ある面では社会運営をしていかなければならない、このように考えております。

 そういう観点から、私は、来年の一月にも予定されると思いますけれども、第二次補正につきましては、第一次補正の執行停止の分をそちらに額として差し向ける、そういうだけで終わるべきではない、このように考えております。まず財源ありきではなくて、国民生活をどうするか、そういう観点から打つべき手をきっちりと打っていくべきだと私は思います。

 来年度予算についても同じであります。まず財源ありきと、限られた財源の中でどういう予算を組んでいくというのは、まさに逆さまの話であります。規模は最後に決まっていく話である、このように私は考えておるわけであります。

 また、議員、金融機関に対して事実上の強制にわたるのではないかという御指摘でございますが、自由主義経済社会であります。個人と個人との契約関係等について国家権力が強制的に介入をしていくべきでないということは当然のことであります。

 しかしながら、貸し手と借り手の力関係が決定的に違っておるような状況の中で、貸し手、金融機関がその社会的責任を果たしていないような、残念でありますが、今日のそういうことが一般化してきておる状況においては、政府がそうした社会的責任を果たすことを金融機関に強く求めていく、そのことについて、それが実効あるためのインセンティブをどういう形でつけていくかということを私どもは苦心したことでございます。そういう面では、体制をどうしておるかとか、また、そうした条件変更等にどう応じておるかというようなことについての報告義務を課しておるわけであります。それが虚偽である場合には罰則を付すということもやっておるわけでございます。

 また、先ほども申し上げましたけれども、金融庁の検査監督を、従来とは、ある意味ではコペルニクス的にこれを転換させます。そうして、その地域社会においてきっちりとした社会的責任を果たしておるかどうか、経営コンサルタント的な機能を果たしておるかどうかを検査するのが検査官の仕事である、私はこのように考えておるわけであります。もちろん、金融機関の健全性を維持していく、そういう観点からの検査は当然のことであります。

 また、新規融資が消極的になるのではないかという御批判、信用収縮が起きるのではないかという御批判でございますけれども、これは、今申し上げましたような観点から、金融庁がそういうことが起きないように責任を持って検査監督をしてまいるつもりでございます。(発言する者あり)ちゃんとやりますよ。

 また、この法律の実施によって将来国民負担が生じてくるのではないかという御懸念でございますけれども、返済猶予を求める、あるいは新規の貸し付けを求める業者は、事業を継続して意欲的に仕事に取り組んでいこうという意欲があるから申し出られるわけでありまして、そういう方々が必死の努力をされた結果、それにもかかわらず返済が不可能になってくる、そういう事態はあるかもしれませんけれども、そういうことがないように、先ほど言いましたように、経済全体を活性化していくという大きな対策も講じていかなければならない、このように考えておるわけであります。

 それから、国際的な信用力が落ちるのではないかというお話でございますけれども、中小零細企業の存在を抜きにして日本経済というのは成り立たない、その中小零細企業がこういう惨たんたる状況にあることを国際社会で隠す必要はない、そういう状況をきっちりと我々としては是正していくという努力をしていくことが国際社会においても評価をされるものだ、私はそのように考えております。

 それから、証券化商品の価格が下落する可能性があるのではないかという御指摘でございますけれども、これは、それを商品化する時点においてそのリスクは既に織り込まれておるわけでございますから、このことによってそういう事態は起きない、このように考えております。

 以上でございます。

 答弁漏れがあれば御指摘をいただきたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣藤井裕久君登壇〕

国務大臣(藤井裕久君) 竹内議員の御質問にお答えいたします。

 まず初めは、現下の金融経済情勢についてのお尋ねでございましたが、我が国経済は、持ち直しつつあると言う人もいますけれども、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にあると考えております。議員御指摘のように、業況の改善がおくれる中小企業の動向に特に目配りをしていく必要があると考えております。

 また、先行きにつきましては、雇用情勢の一層の悪化が懸念されるとともに、世界景気の下振れ懸念もあるなど、景気を下押しするリスクにも十分留意してまいりたいと考えております。

 次に、第二次補正予算の規模及び財源についてお尋ねがございました。

 経済対策においては、本日閣議報告されました予算重点指針に沿って検討が進められることとなっておりますが、対策の財源といたしましては、第一次補正予算の見直しにより捻出した財源を前倒しして活用するなどとしております。

 いずれにせよ、財政規律を確保し、国民生活を支援し、景気回復に役立つ対策を取りまとめていくことが重要であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣菅直人君登壇〕

国務大臣(菅直人君) 竹内譲議員の質問にお答えいたします。

 新政権のマクロ経済政策、さらには中長期の経済成長戦略、財政再建計画についての御質問をいただきました。

 八〇年代以降、多くの政権が何度となく経済戦略や財政再建計画を打ち出しましたが、ことごとく失敗をしてきたのはなぜかということを現在検証を行っております。

 その第一の原因は、私は、やはり、財政の中身が六〇年代から八〇年代にかけて大きく変わらなければならなかったのに、それを変え切れなかったことに最大の原因があると考えております。

 例えば、私が高校生のときに、東京オリンピックで東京―大阪の新幹線が建設されました。約四千億円の資金でありましたが、多分、何十倍という投資効果がその後生まれたと思います。

 しかし、残念ながら、八〇年代になってからの公共事業というのは、地方に仕事をつくり、お金を流すという意味で、格差是正には確かに役に立ったと思います。しかし、それ自体が目的になったために、投資効果の低い公共事業が多くて、それは必ずしも成長につながらなかったということになっていると私は思います。

 そういった意味で、現在我が内閣がやっている、財政の中身を大きく変えていくということこそ、まさにそうした財政の再建や経済成長の前提の大改革が進行している、このことをぜひ竹内議員にも御理解をいただきたいと思います。

 さらに検証を進めていきますと、一時期、企業の生産性を高めれば日本全体が成長する、当然のことのような議論がたくさんありました。

 確かに、このことは、完全雇用のもとではそのとおりでありますけれども、もし完全雇用でないときに新たな需要が発生しないまま一つの企業の効率が上がれば、必ず新たな失業を生む。つまりは、一つの企業はリストラによって生産性が向上するかもしれませんが、日本全体をリストラするわけにはいかないわけでありますから、日本全体の成長をするためには、必ずしも一企業の成長だけではそれがマクロの経済としては成長につながっていないということも指摘をしておかなければなりません。

 そこで、現在考えているのは、雇用の増大と需要の増大が両立するような経済政策を考えております。

 例えば、介護の分野は現在でも求人倍率は一を超えております。つまりは、ミスマッチなどによって雇用が発生されていない。そして、そこに新たな生産が生まれる可能性がありながら生まれていないところに、その両立を目指す政策こそが重要だと思っております。

 既に、十月二十七日、政権ができて四十日の段階で、我が政権は、緊急雇用対策本部において緊急雇用対策を提示いたしましたが、まさに雇用と需要を両方生み出すようなものに絞って、介護の分野、あるいは森林再生の分野、そういうものに重点を置いて、これまでの積み上がっていたいろいろな財源を活用する、そして、次の二次補正でさらにその方向を詰めようという形で、現在、政策の準備を進めているところであります。

 これによって、この二十年間続いた、景気対策のためには多くの国債を発行せざるを得ない、そして多くの国債を発行すればまた財政がおかしくなるという悪循環から脱却するという大きな目標に向かって、今、成長戦略の検討に入っているところであります。

 そういった意味で、もう一言だけ申し上げますと、これまでは財政規模によって景気対策が大きいか小さいかということを、多くのマスコミを含めてそういう評価をしましたが、私は、財政出動の大きさによってそれをはかるのは間違っている、もっと知恵を使えば財政に頼らないでも大きな需要を生む分野はあるはずだと思っております。

 例えば、クリーンエネルギーによる発電を固定価格で買い取る制度でありますとか、環境に優しい住宅を断熱構造でつくっていく、そういう建築基準法の改正ですとか、つまりは、ルールを変えることによって新しい需要を生み出す分野はたくさんあるわけでありまして、そういうことを考えていくのが、これからのマクロ経済政策であり、また財政再建計画、成長政策でなくてはならないと考えております。

 本日、閣議了解のもとで、私が責任者となっております国家戦略室においてそうした成長戦略をまとめろという御指示もいただきましたので、急いでまとめることもできますけれども、今申し上げたような方向で、現実に雇用政策、二次補正、本予算を組み立てていきますので、やはり十年間はもつような成長戦略をしかるべきときに必ず提示をすることをお約束して、答弁とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、議題となりました中小企業金融円滑化臨時措置法案について質問します。(拍手)

 中小企業・業者の営業は、年末に向けて極めて深刻な事態となりつつあります。最近の統計では、大企業、中堅企業の倒産は減少基調にありますが、負債五千万円未満の小規模企業の倒産はなお増加を続けております。また、失業率も高い水準にあり、このままでは年を越せないという悲痛な声が上がっています。まず、この現状をどのように受けとめているか伺いたい。

 中小零細業者にとって資金繰り支援は、年末を控え、経営の破綻を回避し営業を改善するために緊急に必要となっております。とりわけ、返済の展望がないため、新たな融資よりも返済猶予などの条件変更は中小零細企業にとってある程度有効な支援策となると考えます。

 法案の具体的な内容に即して質問いたします。

 まず、努力義務だけで改善されるのかということであります。

 法案では、中小企業及び住宅ローンの借り手が貸し付け条件の変更を申請した場合、金融機関にはできるだけ要請に応じるように努力することが課されております。法律上、できるだけ努力と、努力義務が設けられたことは一歩前進とも言えますが、問題は、これだけで金融機関の不誠実な対応が一掃されるかどうかであります。このような努力規定では強制力が働かないのではありませんか。

 十年前の金融危機の際、公的資金を受けた銀行に対し、中小企業向け貸出残高の目標値を定めさせたことがあります。しかし、実際には、大きく目標値を下回る金融機関が続出し、大手銀行を初め一部の銀行に対し行政処分も行われましたが、大きな改善は見られませんでした。この教訓から学ぶなら、少なくとも銀行ごとに数値目標を出させ、改善結果の報告義務を課すべきではありませんか。

 また、金融庁は、金融機関が不誠実、不透明な対応をした事実を把握した場合、当然、検査監督において銀行に是正を求めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 次に、体制整備と開示義務についてであります。

 法案では、金融機関に、責務を課すための体制整備や実施状況と体制整備状況等の開示を義務化しております。しかし、実効性を持たせるためには、その開示内容や基準、適切な罰則による監督が必要となります。例えば、条件変更の実施状況だけでなく、貸出残高についても開示させ、政府・金融庁が報告事項を公表する際にも、金融機関ごとの実施状況が一見して比較できる形で行うべきであります。金融庁はどのような開示基準を設けるのか、お答えをいただきたいと思います。

 本法案と同時に予定される検査マニュアル、監督指針の改定の内容も重要です。昨年、緊急保証制度など中小企業向け金融対策が実施されたときも、検査マニュアル等が緩和されました。今回は、具体的にはどのような内容となるのでしょうか。

 また、条件変更対応保証というものが新たに設けられますが、これは、公的金融機関を利用していない債務者、つまり、銀行からの融資しかない中小企業のみを対象としております。しかし、多くの中小企業、とりわけ零細企業は、公的制度を既に利用しているため、新しい保証制度の対象になりません。対象とならない事業者こそ、返済猶予の支援を受けたいと考えているのではないでしょうか。なぜそれを外すのか、説明を求めます。

 次に、条件変更を受けた中小企業・業者が新たな貸し渋りを受けないような対策をとるのかどうかです。

 返済猶予などの条件変更をすれば、金融機関は追加融資を避けるようになり、貸し渋りが発生するとの懸念があります。貸し付け条件の変更が実現したとしても、それを理由に金融機関が貸し渋るようなことがあってはなりません。そのようなことがあっては、中小企業は積極的に条件変更の要請をできません。一部の優良企業には新しい保証制度で対策がとられますが、多くの中小零細業者には何ら対策が施されないまま放置されることとなります。

 亀井金融担当大臣は、事あるごとに、新たな融資が受けられないようではだめだと言われていましたが、今回の制度で、新規融資、追加融資の貸し渋りが起こらないよう、どのような対策がなされているのか、お答えをいただきたい。

 民主党は、総選挙の民主党政策集で、特別保証制度を復活させ、保証制度をより使いやすくしますと公約しました。本法案にとどまらず、公約どおり特別保証制度を復活させれば、追加融資の懸念もなくなるのであります。なぜ特別保証制度の復活を行わないのでしょうか、経済産業大臣の答弁を求めます。

 これまで自民党が推し進めてきた構造改革路線は、不良債権の早期処理をてこに金融機関を統廃合させ、多くの店舗や職員の大胆なリストラを促進させました。その結果、地方銀行や信金、信組などは、中小企業を支えてきた目ききの能力が大きく損なわれたと言われています。

 また、市場原理主義を中小企業金融にも持ち込む金融検査マニュアル、あるいはスコアリングモデルの導入で、中小企業の評価を収益性により判断することが求められました。そのため、地域社会に貢献し、雇用を維持してきた中小企業であっても、一時期の経営難を理由に倒産、廃業に追い込んでしまったのであります。

 市場原理を持ち込んだ構造改革が金融機能を弱体化させ、その上に、今回の新たな金融危機が中小零細企業を襲ったのであります。もはや、小手先のやり方では金融システムの本来の機能は回復いたしません。小泉・竹中構造改革路線を転換することが金融政策にとっても必要だと考えますが、亀井大臣の明確な見解を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣亀井静香君登壇〕

国務大臣(亀井静香君) 佐々木議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、金融システムの本来の機能の回復は小泉・竹中の構造改革路線との決別が大事ではないかという御指摘でございます。私も全くそのように考えております。私は、そうした考え方のもとで、このたびこうした法案も提出をしたわけであります。

 議員御指摘のように、今の我が国経済は、格差が広がっておるといいますけれども、私は、極めて深刻な状況になっておると思います。中小零細企業が大企業まで伸び上がっていく、そういうエネルギーも持てなくなっております。

 私は、格差の是正というのは、金持ちを貧乏人にすることじゃないと思っております。そうではなくて、豊かでない人が豊かになっていく、それが格差の是正だ、このように考えておりますけれども、小泉構造改革と称するものによって、上っていく階段が壊されてしまっておる状況にあると思います。

 そういう状況の中で、中小零細企業、今倒産が非常に多いとおっしゃいましたけれども、今深刻なことは、倒産が依然として多いこともさりながら、もう将来の経営に希望が持てないということで、自主閉業、これが非常に激増をしておる状況があると思います。簡単に言いますと、もう気力を失ってきておるという状況が広がっておるということを、私は、これは国家として看過できない状況であるとも考えております。

 そういう観点から、このたび、少しでも希望を持っていただく、元気を出していただく、その狭い守備範囲の中での一助としてこの法案を提出したわけでございますけれども、先ほど、実効性に問題があるのではないかという御指摘がございました。

 しかし、日本は、共産主義国家ではございません。自由主義経済国家でございます。

 では、どうやってインセンティブを与えていけるかということに対して大変苦労をしたわけでありますけれども、これは、金融庁の検査監督の金融マニュアルを全面的に改定していく、そうした業務自体のやり方を変えていくということとの一体の中で実効性を担保していかなければ現実的ではない、このように私は考えておるわけであります。

 そうしたことと、金融庁に対して、実施状況、体制等を報告していただく、こういうことを実施することによってこれも大きなインセンティブが働くのではないか、このように考えております。

 それから、数値目標を置いた方がいいのではないかという御指摘がございましたけれども、そうした数値目標を置きますと、その達成だけがこの目的になるような処理がなされる危険性もございますので、金融庁の検査監督の中で十分これはやっていきたい、このように考えておるわけでございます。

 それから、開示基準をきっちりと設けたらどうかという御指摘がございましたが、できるだけ開示基準については明確にしていきたい、このように考えておるわけであります。

 また、金融機関が条件変更等の措置を行った場合、そうした中身について、これをきっちりと金融庁に対して報告させる中において、不適切である場合に対しては私どもが強い指導をやってまいる次第でございます。

 また、金融マニュアルの方向をどうするのかということでございますが、これは先ほども申し上げましたが、もうコペルニクス的に変えます、今準備はしてありますから。

 経営コンサルタント的な機能を果たしておるかどうかということが検査の眼目ということであります。もちろん、金融機関としての健全性ということも同時に検査いたしますけれども、そういう形で、検査マニュアル、また監督指針を現在検討しておる最中でございます。

 それから、新しい融資が受けられなくなるのではないかという御懸念でございますけれども、まさにそういうことが起きないように、今後、指導、検査をやっていく、そういう業務遂行の中でこういう問題はきっちりと処理をしてまいりますから、御安心をいただきたいと思います。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣直嶋正行君登壇〕

国務大臣(直嶋正行君) 佐々木議員にお答えさせていただきます。

 質問は二つございました。

 一つは、条件変更対応保証の対象者に関する御質問でございます。

 今回の条件変更対応保証の対象は、公的金融を利用していない者を原則といたしております。

 これは、これまで公的金融を利用している企業は、従来からの公的金融による積極的な条件変更や新規融資に加え、中小企業金融円滑化法案の施行により、民間金融機関が条件変更にさらに積極的に取り組むことが期待できます。これに対して、これまで公的金融を利用していない企業にはこうした施策が行き届かないことによるものでありまして、今回の措置は、そこに光を当てたものでございます。

 二つ目の御質問の、特別保証制度の復活に関する件でございます。

 年末に向けて、資金繰り対策に空白期間を設けてはならない、私どもは今これが一番大事だというふうに思っております。したがいまして、まずは、緊急保証やセーフティーネット貸し付け、中小企業金融円滑化法の施行や条件変更対応保証により、中小企業金融の円滑化に全力で取り組んでまいりたいと思っております。

 さらに、信用保証も含め、中小企業金融支援のあり方については、経済状況や中小企業の声を伺いながら、中小企業の皆さんが安心して事業に取り組んでいただけるよう、絶えず改善を重ねていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

    〔議長退席、副議長着席〕

     ――――◇―――――

 新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明

副議長(衛藤征士郎君) この際、内閣提出、新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣長妻昭君。

    〔国務大臣長妻昭君登壇〕

国務大臣(長妻昭君) 新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 国内で今般発生している新型インフルエンザについては、季節性インフルエンザと類似する点が多く見られますが、基礎疾患を有する方、妊婦等において重症化する可能性が高いこと、国民の大多数に免疫がないことから、季節性インフルエンザの感染者を大きく上回る感染者が発生し、国民の健康を初め、我が国の社会経済に深刻な影響を与えるおそれがございます。

 このため、政府においては、新型インフルエンザの発生は国家の危機管理上重大な課題であるとの認識のもと、その対策に総力を挙げて取り組んでいるところであります。

 今回の新型インフルエンザ予防接種については、新型インフルエンザ対策の一つとして、接種の必要性がより高い方に優先的に接種機会を確保しつつ、その他の国民についても接種機会を提供できるよう、厚生労働大臣が実施主体として臨時応急的に実施することとしております。

 このような中、厚生労働大臣が行う新型インフルエンザ予防接種による健康被害を救済するための給付を行うとともに、特例承認を受けた新型インフルエンザワクチンの製造販売業者等に生ずる損失を政府が補償することにより、新型インフルエンザ予防接種の円滑な実施を図ることを目的として、この法律案を提出した次第でございます。

 以下、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済措置として、厚生労働大臣は、みずからが行う新型インフルエンザ予防接種を受けた方が、疾病にかかり、障害の状態となり、または死亡した場合において、当該疾病、障害または死亡が当該新型インフルエンザ予防接種を受けたことによるものであると認定したときは、給付を行うこととしております。

 第二に、政府は、特例承認を受けた新型インフルエンザワクチンの製造販売業者を相手方として、当該製造販売業者から厚生労働大臣が購入する新型インフルエンザワクチンの使用により生じた健康被害に係る損害を賠償すること等により当該企業に生じた損失等について政府が補償することを約する契約を締結することができることとしております。

 なお、この法律の施行期日については、公布の日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

副議長(衛藤征士郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。藤田一枝君。

    〔藤田一枝君登壇〕

藤田一枝君 民主党・無所属クラブの藤田一枝でございます。

 長妻大臣におかれては、日夜、厚生労働行政に御奮闘されておりますことに、心から敬意を表する次第でございます。

 本日は、限られた時間でございますので、ただいま議題となりました新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案に関連して、早速質問に入らせていただきます。(拍手)

 新型インフルエンザ対策は喫緊の課題であり、国民の皆様の命にかかわる問題でありますので、命を大切にする鳩山内閣として、大臣の明快な御答弁をお願い申し上げます。

 御承知のとおり、本年四月、WHOがインフルエンザのパンデミック警戒水準をフェーズ4に引き上げたことを受けて、我が国においても、今回発生したインフルエンザを感染症法に基づく新型インフルエンザと位置づけ、対策本部を設置し、取り組みが開始されてきたところであります。

 当初は、水際での防疫や隔離などの措置がとられ、国民生活への影響も懸念されておりましたが、主要先進国での死亡率が季節性インフルエンザと大差ないことや、早期のタミフルなどの投与により、多くの方は比較的軽症で回復する傾向が明らかになりました。しかし、その一方で、基礎疾患のある方や子供さんなど、重篤な状況に陥り、お亡くなりになった方は、昨日時点で六十四名に上っています。

 そこで、こうした状況を踏まえ、まず、今回の新型インフルエンザの特徴についてどのように考えておられるのか、また、既に開始されているワクチン接種の目的並びに接種に当たって優先順位を定めた理由について、御見解をお伺いいたします。

 次に、全国的な流行が本格化する中、特に子供への感染が拡大し、各地で学級閉鎖が相次いでいます。このほど、厚生労働省は、子供への接種時期の前倒しを都道府県に依頼されましたが、その具体的な内容と実施の見通しについてお聞かせください。

 あわせて、経済的負担のために接種ができないという事態を避けるために、接種に当たっての経済的負担の軽減措置をどのように講じられるのか、また、国の責任において行う事業であることから、都道府県及び市町村負担分への措置も含め、御説明をお願いいたします。

 さらに、刻一刻と変化する状況に対して、現場が混乱を来さないよう、的確な情報収集と伝達が求められていますが、緊急時の情報収集、伝達についての御見解をお尋ねいたします。

 次に、ワクチンの確保と救済措置についてお尋ねいたします。

 既にワクチン接種が開始をされ、その副反応が報じられているところであります。多くの希望者に接種機会を提供するとともに、万が一、健康被害が生じた場合の救済措置の整備も、接種事業を円滑に実施するためには重要であります。したがって、本法案に基づく健康被害救済給付の迅速な体制整備とともに、今後、附則六条の内容も含め、予防接種制度の見直しが必要と考えますが、大臣の御所見をお聞かせください。

 なお、ワクチン確保に当たっては、国内産だけでは充足できないとの判断から、海外からも輸入するとのことでありますが、接種回数の見直しも図られたことから、国内産ワクチンの充足状況について、見通しをお聞かせください。また、薬事法の特例承認を受けるとはいえ、輸入ワクチンへの不安感は払拭されておらず、その安全性をどのように確保するのか、あわせてお尋ねいたします。

 最後に、国家的危機管理の上からも、来年度以降に向けたワクチン生産体制の強化や生産技術の開発は急務と考えます。また、強毒性の新型インフルエンザへの対応も必要でありますし、深刻な感染拡大に伴う医療体制の整備も重要な課題であります。ぜひ新政権においてこれらの対策の強化を図っていただきたいと考えますが、大臣の御決意のほどをお聞かせください。

 新型インフルエンザは、これから冬場を迎え一層の拡大が懸念されるとともに、患者の集中などによる医療機関への影響も心配されています。国民の皆様の不安を解消するためにも、今後想定される事態に対して、迅速かつ柔軟に、そしてパンデミックと闘う強い決意で対策を講じていただきますよう重ねて申し述べ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣長妻昭君登壇〕

国務大臣(長妻昭君) 質問をいただきまして、ありがとうございます。

 今回の新型インフルエンザの特徴並びにワクチン接種の目的及び接種順位についてお尋ねがございました。

 今回の新型インフルエンザについては、多くの感染者は軽症のまま回復していること、タミフルやリレンザなどの治療薬が有効であることなど、季節性インフルエンザと類似した点が多い一方で、妊婦の方やぜんそくなどの基礎疾患をお持ちの方などは重症化する可能性が高いとされております。

 また、厚生労働省において実施している調査では、今回の新型インフルエンザは、季節性インフルエンザに比べ、若者の患者が多く見られています。

 今回の新型インフルエンザワクチンは、感染を完全に防止するものではありませんが、重症化の防止には一定の効果が期待されるものであり、死亡者や重症者の発生をできる限り減らすこと、医療従事者の重症化等を防ぎ、必要な医療提供体制を確保することを目的として接種を行うこととしております。

 また、今回の新型インフルエンザワクチンについては、順次ワクチンの供給が行われることから、ワクチン接種の目的を踏まえ、より必要性が高い方に接種の機会が提供されるよう、事業の実施主体たる国が接種の優先順位を設けることとしたところでございます。

 次に、お子さんへのワクチンの接種時期の前倒し及び接種費用の負担軽減措置の内容に関するお尋ねがありました。

 新型インフルエンザワクチンのお子さんへの接種時期については、お子さんの間で感染が拡大し、重症化する事例が多く見られるようになってきたこと等を踏まえ、一歳から小学校三年生の年齢までに当たるお子さんなどについて、予定していた接種時期を前倒しし、十一月中旬から接種を開始することについて、できる限りの検討をお願いしたところであります。

 その実施状況については、先週末に都道府県に対し調査を依頼しており、今般の要請に対しては、半数以上の都道府県において対応をしていただいているところでございます。

 また、接種費用については、所得の低い方が新型インフルエンザワクチンの接種を受けられるよう、市町村民税非課税世帯を念頭に、市町村が負担軽減を行うこととしたところであります。なお、その費用の二分の一を国が、四分の一を都道府県が補助する仕組みとし、都道府県及び市町村の負担分については、総務省に対して特別地方交付税による措置をお願いしているところであります。

 次に、的確な情報収集及び情報伝達についてお尋ねがございました。

 新型インフルエンザ対策は、地方自治体や各地域の医療機関等の御協力によって成り立つものであり、的確な情報収集や、収集した情報をわかりやすく迅速に提供することが不可欠であるというふうに考えております。

 このため、緊急の対応が求められる事案について、地方自治体との間で二十四時間の連絡体制を設けるとともに、ホームページ、政府広報、ポスター等のさまざまな媒体を用いてわかりやすい情報提供を行うことのほか、政務三役や担当者による記者会見を行うなど、国民の皆様方に正しい情報を迅速に提供するよう努めているところであります。今後もわかりやすい情報提供に努めてまいります。

 次に、健康被害の救済のための体制整備と今後の予防接種法の見直しについてのお尋ねがございました。

 万が一、新型インフルエンザの予防接種により健康に被害を受けられた場合には、本法案により必要な救済を受けていただくことになりますが、こうした救済を迅速に行えるよう、審査体制の整備など、必要な体制の確保に努めてまいります。

 予防接種法の見直しについては、法案附則第六条に定めているように、新型インフルエンザの予防接種のあり方、また御指摘の健康被害救済のあり方などについて、次期通常国会への法案提出も視野に入れつつ、速やかに検討を進めてまいります。

 次に、国内産ワクチンの対象人数及び輸入ワクチンの安全性についてお尋ねがございました。非常に重要な点でございます。

 国内産ワクチンについては、今年度末までに約五千四百万回分を提供する予定でございます。また、ワクチンの接種回数について見直しを行った結果、優先的に接種する対象者約五千四百万人のうち、約四千三百万人の方について国産ワクチンにより接種可能となる見込みとなっております。

 また、輸入ワクチンについては、緊急に承認を与える場合であっても、海外臨床試験の資料によりその安全性について確認するとともに、国内でも臨床試験を行い、臨床試験の中間段階で安全性について確認をする、承認後も安全性を確認し、必要な措置を講じるなどの対応を行うこととしております。

 次に、ワクチンの生産体制等の強化、強毒性の新型インフルエンザへの対応及び医療体制の整備についてお尋ねがございました。

 新型インフルエンザ対策については、国家の危機管理の問題であると認識しており、政府一丸となってその対策の推進に努めているところであります。

 ワクチンの生産体制等の強化については、ワクチン製造企業に対し、生産設備の整備や技術開発を支援しており、今後も充実を図ってまいります。

 また、強毒性の新型インフルエンザへの対応といたしましては、今後、今回の新型インフルエンザ対策の結果を検証した上で、必要に応じて、検疫、医療、ワクチン、感染に関する動向調査等の施策全般についての見直しを行ってまいります。

 さらに、感染がより拡大した場合に備え、引き続き、都道府県との連携のもと、医療体制の整備に努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 加藤勝信君。

    〔加藤勝信君登壇〕

加藤勝信君 自由民主党・改革クラブの加藤勝信であります。

 私は、ただいま議題になりました新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案の趣旨説明に対し、自由民主党・改革クラブを代表して、長妻厚生労働大臣及び川端文部科学大臣に質問いたします。(拍手)

 質問に入る前に、鳩山総理の一連の疑惑問題について一言申し上げます。

 今国会は、鳩山総理の所信表明演説に対する本会議での代表質問、そして予算委員会での質疑と、与野党間で円満な国会運営が行われ、また、民主党の山岡国対委員長よりは、今国会の会期延長もあり得るべしとの発言もありました。しかしながら、これから本格的な国会論議がスタートしようとするときに、与党は、本日の本会議において重要な二法案をいわゆる二階建てで審議するとの異例の提案を行い、強引に決定したところであります。

 このように強硬的な姿勢に転じた背景には、予算委員会での我が党議員による鳩山総理の献金疑惑への厳しい追及があり……(発言する者あり)

副議長(衛藤征士郎君) 諸君、静粛にお願いします。

加藤勝信君(続) まさに、鳩山総理の献金疑惑、そして小沢幹事長の献金疑惑を隠そうという意図があるものとしか考えられません。

 鳩山総理は、政治資金法において定められている政治資金収支報告書において事実と異なる記載を繰り返しておられます。また、国会議員資産公開法において定められている資産等報告書、所得等報告書においても、さらには、税法で求められている税務申告書においてもしかりであります。

 鳩山総理は、こうした責任を秘書のせいにするだけではなく、あげくは、恵まれた家庭に育ったから自分自身の資産管理は極めてずさんだったと、家庭環境のせいにまでされておられます。

 政治資金に関する問題だけではなく、脱税の可能性まで指摘される中にあって、鳩山総理は、御自身のこれまでの御主張に沿って、みずからの疑惑解明に率先して取り組むのが当然であると考えますが、年金記録問題の解明等、国民に信頼される政治の実現に取り組んでこられた長妻厚生労働大臣の見解をお伺いいたします。

 長妻厚生労働大臣は、大臣あいさつにおいて、「謙虚に国民の皆様の声を聞いて、生活者の立場に立った信用できる厚生労働行政をつくり上げてまいります。」と言われていますが、実態は、逆の方向に向かっていると言わざるを得ません。

 平成二十一年度の補正予算の執行停止に関する事例を幾つか申し上げれば、子育て応援特別手当について、市町村では支給の具体的準備に入っており、また、DV被害者の方からは既に申請が行われていたにもかかわらず、厚生労働大臣は、一通の通知文書だけで執行停止にされました。市町村は、既に申請されたDV被害者の方を初め市町村民に対し、執行停止について丁寧に説明していかなければならない状況に置かれております。実際に仕事をされている市町村のことを、また、既に申請されている方を初め支給を期待されていた方々の気持ちをどこまで考えての決定であったのか、大変疑問に思います。

 さらに、地域医療再生臨時特例交付金の一部執行停止についても、それぞれの地域において地域医療の再生を図ろうと議論を重ねてきた努力を、また地域の方々の期待を無にしたものであります。

 厚生労働行政は、国、都道府県、市町村の円滑な連携があって初めて機能するものであります。その前提である信頼関係を大きく毀損し、国民の期待に背を向けて、どうして生活者の立場に立った信用できる厚生労働行政をつくり上げていくことができるのでありましょうか。大臣の猛省を求めるものであります。

 新型インフルエンザ対策についてお伺いいたします。

 新型インフルエンザの七月以降の患者数は七百三十八万人を超えていると言われ、死亡者も本日現在六十四人となり、その中には小児も含まれております。特に、小児の死亡に関するマスコミ報道を聞くたびに、四人の子供の父親である私と同様に、子供を持つ親御さんにとっての心配は大変なものがあると思います。ワクチン接種によって感染を防止するわけではありませんが、重症化の防止効果が期待されており、一日も早く、子供にまた家族に接種を受けさせたいと思うのは当然であります。

 都道府県においては、ワクチンが大幅に不足する中で、政府が定めた優先的接種対象者の状況を踏まえ、医療機関ごとにいかに適正に配分していくかに尽力していただいております。

 また、医療現場では、問い合わせが殺到する一方で、ワクチンが大幅に不足し、さらには、十ミリリットルの容器を使用することとしたために、それを一日で使い切らなくてはならないという制約も加わる中にあって、やりくりに大変御苦労されております。

 私がまず指摘をしておきたいのは、そうした中で、接種回数が二転三転し、医療現場は混乱し、現場の実情を全くわかっていないとの多くの批判が生ずる事態が、政治主導によって引き起こされているということであります。

 十月十六日の感染症の専門家による意見交換会では、十三歳以上の方々に対しては一回接種ということで意見がまとまったにもかかわらず、報道によると、足立大臣政務官が再検討を主導され、その三日後の十九日に再度開かれた会合において、今度は、健康な成人以外は当面二回接種を前提とするとされました。そして、今月十一日には、十二月中旬の臨床試験結果を踏まえ検討するとした妊婦も含めて、一回接種にすると接種回数の変更が行われたわけであります。

 十歳以上の小児及び成人については一回接種を推奨するとのWHOの助言が十月三十日に公表されていることからしても、十月十六日の段階で専門家の一回接種の結論に従っていれば、都道府県や医療現場が接種回数の変更に伴い翻弄されることはなかったはずであります。大臣が再検討を指示したとのことでありますが、専門家の意見を覆してまで再検討を指示したのは、どういう理由があったのでしょうか。足立政務官が再検討を主導したとのことでありますが、そういう事実はあるのでしょうか。

 また、接種回数が二転三転し、第一線で対応している都道府県や医療現場の関係者に無用の混乱を与えた政治責任を大臣はどう考えているのか、見解をお伺いいたします。

 次に、接種の費用負担に関して質問いたします。

 今回の新型インフルエンザの接種においては、優先的に接種する対象者を政府が設定し、政府がワクチンの全量を買い上げ、政府がワクチン接種を医療機関に事業委託し、さらに、輸入するワクチンについては政府が損失補償を行うなど、季節性インフルエンザとは大きく異なる対応となっております。また、欧米各国においては、ワクチン接種費用を無料にしている国、さらには、新型インフルエンザのワクチン接種においては無料の範囲を拡大している国もあります。さらに、国が実施している事業において市町村間で費用負担が異なることは、全く不適切であります。

 こうした点を考えれば、人を大事にされる政権として、国の負担において、少なくとも優先的接種の対象者については接種費用を無料にすべきではないでしょうか。少なくとも、既に国費で購入することにしているワクチン代、一回当たり八百六十三円、これを無料にすることは、長妻大臣、あなたの一存でできるのではないでしょうか。大臣の前向きなお答えをお聞かせいただきたい。

 厚生労働省は、小児への接種の前倒し実施を地方公共団体に要請されておりますが、マスコミの調査によると、前倒しを実施する都府県がある一方で、私の地元の岡山県を初めとして、ワクチン不足により、当初予定の基礎的疾患のある方への接種すら十分に対応できない中で、とても前倒しはできないという県もあります。国が全国を対象に実施している予防接種事業において都道府県間で取り扱いが異なることは、国民に混乱と不信をもたらすことになりかねません。

 そもそも、ワクチンの量が全く不足している状況において、接種の優先順位を変更するわけでもなく、小児への接種の前倒しを要請することは、都道府県への責任転嫁、国の責任放棄以外の何物でもありません。また、都道府県間において異なる取り扱いになっているのは、ワクチン接種回数の混乱も含め、国におけるワクチンの配分に問題があったからではないのでしょうか。

 小児への接種の前倒しの対応が都道府県間で異なっている現状について、厚生労働大臣はどのように考えているのか、お聞かせいただきたい。

 次に、優先的接種の対象の拡大についてであります。

 直接診療に当たる以外の医療関係者、歯科関係者、薬剤師、介護関係者、幼稚園・保育園関係者からも優先接種の要望が出されております。今回、接種回数を一回に変更したことに伴い、接種可能な人数に相当の余裕が出てくると思われます。要望を出されている方々の仕事の性格からしても、当然に優先的接種の対象者に含めるべきものと考えますが、大臣の見解をお伺いいたします。

 今回の法律案に関してお伺いいたします。

 この法律案では、特例承認ワクチン、すなわち輸入ワクチンの製造販売業者等に生ずる損害賠償による損失について、政府が補償することになっております。損失補償をしなければ外国企業から購入できないという事情があるものと思われますが、どうして国内ワクチンも損失補償の対象としないのでしょうか。国民から見れば、最終的に国が損失補償してくれるという方が安心であり、特に、国内ワクチンメーカーの財政基盤が決して盤石とは言えないことを考えると、国内ワクチンも対象に加えるべきと考えますが、大臣の見解をお伺いいたします。

 ワクチンの購入においては、平成二十一年度補正予算に計上されている新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備の予算の大半を流用されております。しかし、同予算は、全党が賛成をした平成二十年感染症法改正の附帯決議を踏まえ、国内のワクチン生産能力の向上や新たなインフルエンザに対応したワクチンの開発等に積極的に取り組むために計上されたものであります。

 大臣は、今年度に必要な予算は確保した上で、それ以外の予算を流用したと言われるのでありましょうが、それこそ役人の話に乗った対応と言わざるを得ません。国民の健康や生命に深くかかわる重要な問題であり、その重要性は一層高まっていることを認識していれば、むしろワクチンの開発や生産体制の整備への取り組みの前倒しを図らせることが厚生労働大臣の務めではないでしょうか。どうして、予備費を使わずに、国民の健康と生命を守る大事な予算を流用する道を選択したのでありましょうか。少なくとも、ワクチン購入額の全額を予備費で対応するように財務大臣とかけ合ったのですか。

 また、第二次補正予算を編成すると先ほども答弁がありましたが、その際には今回流用された予算は当然に確保されるべきものと考えますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたい。

 川端文部科学大臣にお伺いいたします。

 これから受験シーズンを迎える中で、新型インフルエンザに感染し受験できない若者が多数発生することが懸念されます。高校受験や大学受験という若い方々の一生を左右しかねない機会を、インフルエンザに感染したということで逸するようなことがないように、受験者間で不平等が生じないように配慮しつつも、別途受験する機会が設けられるような対応が必要と考えます。

 センター試験や国立大学の二次試験に関しては追試験を実施するとのことではありますが、文部科学大臣は、高校や大学等の入学試験実施者に対し、どのような対応をとられているのか、御説明をいただきたい。

 最後に、新型インフルエンザ対策及びこの法案に関しては、輸入ワクチンの特例承認の問題、健康被害に対する給付水準の問題など、議論すべき点は多岐にわたっております。国民の生命の安全と安心をしっかりと守っていくとの立場から、引き続き厚生労働委員会において議論を深めていくべきことを申し上げ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣長妻昭君登壇〕

国務大臣(長妻昭君) 質問をいただきまして、ありがとうございます。

 鳩山総理の献金問題についてのお尋ねがございました。

 この件につきましては、既に衆参本会議、予算委員会で取り上げられ、総理が説明をされておられると認識をしております。

 次に、インフルエンザワクチンの質問がございました。新型インフルエンザワクチンの接種回数についてのお尋ねでございました。

 新型インフルエンザワクチンの接種回数については、国内のデータや海外の知見をできる限り集め、その時点で得られた知見に基づき、行政が間違いがないように適切に判断していく必要がございます。

 十月十六日に意見交換会で接種回数に関し専門家の御意見を伺いましたが、さらに専門家の御意見を伺うことが必要と考え、十月十九日に別の専門家の御意見を伺い、最終的には、行政として十月二十日に結論を出したところでございます。

 今後とも、国内のデータや海外の知見などを収集し、適切な時期に判断を行うとともに、都道府県などの関係の方々に対して、迅速に情報を提供していくこととしております。

 次に、新型インフルエンザワクチンの接種費用についてのお尋ねがございました。

 新型インフルエンザ対策については、国家の危機管理上の重大な課題として、前政権より引き継ぎを受けており、今回のワクチン接種の枠組みも、基本的には前政権の議論を踏まえて設定をしております。

 今回のワクチン接種は、個人の重症化防止を目的として実施するものであり、その費用負担は、予防接種法の定期接種に準じて、実費を徴収することとしております。これは季節性インフルエンザと同様の仕組みでございます。

 同時に、低所得の方が接種を受けることができるよう、市町村民税非課税世帯を念頭に、市町村が負担軽減できる措置を講じ、国がその費用の二分の一を補助することとしております。

 次に、新型インフルエンザワクチンの小児への前倒し接種についてお尋ねがございました。

 新型インフルエンザワクチンのお子さんへの接種時期の前倒しについては、基礎疾患がないお子さんでも重症化する事例が多く見られるようになってきたことなどを踏まえて、各都道府県に対して、できる限りの検討をお願いしたところでございます。

 国としては、都道府県へのワクチンの配分に当たっては、優先接種対象者の人数の見込みに応じて公平に行っておりますが、都道府県によってワクチンの需給バランスに差異が生じていることなどから、接種開始時期は異なっているのが実情です。

 こうした中で、現在のところ、約半数の都道府県は、前倒しの要請に対応する方向で検討いただいております。

 国としても、各都道府県の接種状況をきめ細かに把握し、お子さんへの接種時期の前倒しに関する各都道府県の取り組みなど必要な情報を速やかに提供し、可能な限り早期に接種が進むよう努力をしてまいります。

 次に、ワクチンの優先接種の対象者についてお尋ねがございました。

 政府のワクチン接種の基本方針において、今回のワクチン接種の目的は「死亡者や重症者の発生をできる限り減らすこと及びそのために必要な医療を確保すること」としております。

 そのため、優先接種対象者は、「重症化リスクが高い方」及び重症者を守るための「インフルエンザ患者の診療に直接従事する医療従事者」というふうにしております。

 御指摘をいただいた歯科医師、薬剤師、介護士、幼稚園・保育園関係者については、リスクが高い方の生活を支え、直接的あるいは間接的に新型インフルエンザ対策を担っていただいているものと考えておりますが、一般的には、診療に直接従事する医療従事者には該当しないものと考えております。

 一方、接種回数の見直しを行ったことに伴い、接種可能数が大幅に拡大するなど、ワクチンを取り巻く状況が変化していることから、優先的に接種する対象者以外の方についての接種時期についても、できる限り早期に開始する方向で検討をしてまいります。

 次に、国内産ワクチンについても損失補償の対象にするべきとのお尋ねがございました。

 約五千四百万人の優先接種対象者のほか、広く接種を希望する国民に必要なワクチンを確保するためには、海外企業からの輸入が必要でございます。

 一方、こうした海外企業は、今回のようなパンデミックと呼ばれる世界的な流行の中で、短期間のうちに大量に製造したワクチンが健康被害を引き起こし、多大な損害が生じることを懸念し、ワクチンを提供する各国に対して、ワクチンを原因として生じた損失を政府が補償するように求めております。

 こうした要求に対して、我が国としては、健康危機管理の観点から、必要なワクチンを確保するため、これを受け入れたものであります。

 この損失補償については、こうした経緯を踏まえ、健康危機管理の必要性から緊急かつ例外的な対応として実施するものであること、また、輸入ワクチンについては通常の承認の要件を緩和した特例承認までも行うこととしていることから、海外の企業から輸入するワクチンに限って損失補償の対象とすることとしております。

 次に、ワクチン購入の財源についてお尋ねがございました。

 ワクチン購入の財源については、七月末から財務省と折衝を行ってきたところですが、まずは既定の予算から対応可能なものを充当することとしたところであり、プレパンデミックワクチン購入経費約六十六億円を充当するとともに、新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金約一千二百七十九億円のうち、約一千三十九億円を使用したところでございます。

 このほか、これから既定予算等で対応が困難な部分について財務省と協議を行い、予備費により約二百八十億円を措置することとしたところであります。

 次に、新型インフルエンザワクチン開発のための基金についてのお尋ねがございました。

 新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金による基金のうち、当面、新たな新型インフルエンザワクチンの開発、生産に必要な経費約二百四十億円は確保しており、平成二十一年度に行う実験プラント整備等の事業については予定どおり執行できると考えております。

 なお、流用した経費一千三十九億円については、今後の事業に支障を来さないよう、平成二十二年度予算要求の事項要求を行っております。機会があれば、第二次補正で対応していくつもりでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣川端達夫君登壇〕

国務大臣(川端達夫君) 加藤議員にお答えいたします。

 新型インフルエンザに係る高校や大学の入学試験での対応についてのお尋ねがありました。

 高校や大学の入学者選抜は国民の大きな関心事項であり、教育を受ける権利を保障する観点から、受験機会を確保するための対策を講じることが重要であると考えております。

 高校入学者選抜については、都道府県教育委員会等に対して、十月二十一日に入学者選抜の円滑な実施に向けた取り組みを依頼いたしました。また、大学入学者選抜については、十月七日に平成二十二年度大学入学者選抜に係る新型インフルエンザ対応方針を決定し、大学等関係機関に対し、追試験等の受験機会の確保措置等について要請しました。

 これを受けて、高校入学者選抜については、都道府県教育委員会等において円滑な実施に向けた具体的な対策を検討、準備しております。また、大学入学者選抜については、各大学において、本対応方針に基づき、追試験等の受験機会の確保措置を検討しております。

 今後とも、高校や大学の入試における新型インフルエンザ対策について万全を期してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 古屋範子君。

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 公明党の古屋範子です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案について、厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)

 新型インフルエンザの全国の推定患者数が百五十三万人と、本格的な流行が始まっております。

 新型インフルエンザは、弱毒性ではありますが、急速な蔓延により世界的に人類の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある、感染力が極めて強いものとされております。これまでに、小中学校などで休校や学級閉鎖が相次ぐなど、その影響は多方面に及んでおります。

 また、昨日、三人目の新型インフルエンザワクチンの接種後の死亡事例が報告をされております。厚生労働省は、速やかに死亡事例と接種との因果関係を調査し、ワクチン接種の安全性の確保に努めていただきたいと思います。

 インフルエンザ対策といえば、昨年二月から約半年をかけまして、自民、公明のプロジェクトチームで、週一回以上のペースで、全府省を巻き込み、経済界を初め幅広く意見聴取をするなど、総合的な鳥インフルエンザ対策の政策を立案してまいりました。私が先月WHOを訪問し、グローバルインフルエンザプログラム、メディカルオフィサーの進藤奈邦子さんとの会見をした際にも、そうした備えが今回のH1N1新型インフルエンザ対策に大変に役立ったことに同意をされました。

 季節性インフルエンザの流行も懸念される中で、どう感染の爆発をおくらせ、分散していくかが勝負です。この冬の流行を乗り越えるためには、さらなる新型インフルエンザの流行拡大を想定した万全な対策が必要であります。

 対策強化が急がれる中、新型インフルエンザワクチンの接種回数をめぐる議論は迷走しました。一回接種なのか二回接種なのか、二転三転をしたとの印象のある国産ワクチンの接種方針が、十一日、中高生に相当する年齢の方は現時点では二回、それよりも上の年齢の方は原則一回と示されました。大臣は、その後の会見で、間違いのない判断を重視したと釈明されたとのことですが、結果的に、一回接種する、この判断は約三週間おくれたこととなります。

 さらに、国内の入院患者の八割以上を十四歳以下が占め、その三分の二は持病のない状態などから、小児科医より、健康な子供への接種を前倒しすべきだとの批判が相次ぐ中、厚生労働省より小児の接種前倒しが要請されるなど、混乱が続きました。各地の医療現場や自治体では戸惑いが広がり、さらに接種回数や時期などを含めた問い合わせが数多く寄せられ、混乱しているとの報道もございました。

 国民の大半は、予防接種の方針が二転三転することに対しましては免疫ができておりません。方針が定まらなければ、現場は予定が立てられず、混乱するばかりです。不確定な要素があったとしても、大人は一回接種には一定の根拠がありました。十一日の意見交換会では、一回接種に批判的だった専門家からも二回接種を主張する声は出なかったと聞いております。

 この混乱ぶりは、政治家主導を意識する余りに起こった混乱ではないのでしょうか。国民をこのように不安に陥れた最終責任は、厚生労働行政の最高責任者である長妻大臣にあります。長妻大臣に、この間の事情の明確な説明を求めたいと思います。

 また、今回の予防接種の費用負担については、実費を徴収することとされており、一回接種の場合は三千六百円となっております。二回接種の場合は六千百五十円となり、決して軽い負担ではありません。

 所得の少ない世帯については負担軽減措置をとるとしておりますが、その費用は国が二分の一、都道府県が四分の一、市町村が四分の一負担することとなっており、特別地方交付税による地方財政措置がなされるものと認識をいたしております。

 しかしながら、この交付税は使途が限定されていないため、自治体によって負担の格差が生ずる可能性もあり、また、私は、そもそも国の事業として行う予防接種に地方の負担を求めることは妥当ではないと考えます。

 欧米主要国でも、新型インフルエンザのワクチンは原則無料と聞いております。国民を守るという公衆衛生上の根本から考えれば、ワクチン接種は原則無料化が筋であります。妊婦や基礎疾患を有する人、小児など優先接種の対象者などが経済的な理由で接種をためらうことのないよう、接種費用を無料にするなど、公的補助の範囲を広げるべきであります。大臣のお考えを伺います。

 今回のインフルエンザ予防接種は、国の事業としての予防接種が実施されることとなっており、国産・輸入ワクチンの購入や優先接種対象者が定められております。この優先接種対象者には、小中高生、妊婦、基礎疾患を有する者のほか、医療従事者等が含まれていることなどから、予防接種による健康被害に対する給付の額については、現行を上回る必要かつ十分な給付水準にすべきと考えます。大臣の御見解を伺います。

 次に、いわゆる予防接種法の抜本的な改正について伺います。

 現在、日本の予防接種の常識は世界の非常識と言われております。WHOは、日本で定期接種しているはしかや風疹、ポリオ等のワクチン以外にも、B型肝炎ワクチン、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、ロタウイルスワクチンを定期接種するよう勧告をしております。日本もワクチン先進国を目指し、今まさに予防接種の体制強化が求められております。

 そこで、今、大変に注目を集めているのが、先月十六日に承認された子宮頸がんワクチンと細菌性髄膜炎を防ぐ小児用肺炎球菌ワクチン、そして昨年承認されたHibワクチンであります。

 特に、細菌性髄膜炎は、生後三カ月から五歳ごろまでの発症が多いと言われ、年間約千人が発症し、その五%が死亡、二五%が脳の後遺症に苦しんでおり、その原因の約六割がHib、続いて約二割が肺炎球菌であります。世界百カ国以上で使われ、効果が認められているHibワクチンは、六〇%以上の接種率となるとHib感染症が激減する集団免疫ができます。これは肺炎球菌ワクチンも同じであります。

 米国では、子供に定期接種で接種をすると、どの年齢の人でも肺炎球菌感染が減り、とりわけ高齢者は六五%減ったというデータもあり、これらの接種率の向上が必要です。そのために、既に九十カ国以上で定期接種が行われているHibワクチン、また、三十八カ国以上で定期接種が実施されている肺炎球菌ワクチン等についても、日本でも一日も早い定期接種化が必要と考えます。

 ワクチンで防げる病気から国民の生命と健康を守ることは、最優先の政治課題であります。今後、鳥インフルエンザ等、別の新型インフルエンザが発生し、救済措置や損失補償等が必要になった場合においては、今回と同様に新たな立法措置を行うか、または予防接種法を初めとした関係法令の抜本的な改正を行う必要があります。

 そうであるならば、新型インフルエンザの重症化対策としても有効なHibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン等の定期接種化も含め、予防接種法の抜本的見直しに一刻も早く着手すべきと考えます。長妻大臣の御見解を伺います。

 最後に、日本の予防接種体制の根本的な見直しについて伺います。

 日本では予防接種行政の担当部局が細分化をされ、二年ごとに人が入れかわるなど、責任体制が不明確であることが指摘をされております。米国同様に長期戦略をつくるシステムづくりが必要であると思います。

 米国では、ACIPという、長期戦略を立て実行する委員会があり、ここで決定される指針は国の予防接種政策に反映されるという大変重要な役割を担っております。また、英国では、厚生省にワクチン部があり、予防接種施策の決定や質のよいワクチン製剤の選択、さらにワクチン代はすべて国が負担するなど、ワクチンの重要性を深く認識し、医療費のスリム化をうまく行っています。

 このように、海外では、新規ワクチンの接種年齢など、簡素な組織で意思決定を行うシステムが構築されており、限られた財源を効率的に配分するための医療経済評価が利用されております。

 一方、日本では、総合的な施策を議論する場が確保されておりません。

 特に、今回の新型インフルエンザ予防接種のように国の行う事業と位置づけるのであれば、ワクチンの安定供給、研究調査体制など、責任体制を明確にした総合的な施策を議論する場が必要であると考えます。

 そこで、予防接種体制の根本的な見直しを行い、新しいワクチンの導入や調査、ワクチンの安定供給、普及のための方策など、総合的な施策をつくることのできる予防接種体制を整備すべきであります。そして、将来的には、ワクチン政策全般を担う部局、日本版ACIPを創設すべきと考えます。

 今回の新型インフルエンザの流行が、日本のワクチン行政のあり方を大きく見直し、国民の安心、安全にこたえるものに大きく前進する契機となりますよう、長妻大臣の前向きな御答弁を強く求め、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣長妻昭君登壇〕

国務大臣(長妻昭君) 質問をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、新型インフルエンザワクチンの接種回数の見直しや、お子さんへの接種時期の前倒しに関するお尋ねがございました。

 新型インフルエンザワクチンの接種回数につきましては、十月二十日、十一月十一日と二回の見直しを行いましたが、いずれも、その時点までに得られた科学的知見に基づいて、専門家の意見も伺いながら、行政として必要な判断を順次行ったものでございます。

 もう少し詳しく申し上げますと、私どもといたしましては、臨床試験をしております。例えば、成人の方や中高生の方々にこの新型インフルエンザワクチンを一回接種、二回接種してどれだけ効果が得られるのかという臨床試験をしているところでございまして、なぜ十一月十一日に成人の方を一回接種にしたかと申しますと、ちょうど十一月十一日に成人の方の二回目接種の臨床試験の結果が出た、それを受けて、即日私どもは適正な判断を申し上げたところでございまして、私どもとしては、間違いがあってはなりませんので、慎重に判断をしているところでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 今後とも、国内のデータや海外の知見などを収集し、適切な時期に行政として必要な判断をしてまいります。

 また、お尋ねの、お子さんへの接種時期の前倒しについては、基礎疾患がないお子さんでも重症化する事例が多く見られるようになってきたことなどを踏まえて、各都道府県に対して、接種時期の前倒しについてできる限りの検討をお願いしたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、こうした見直しの趣旨や内容について、各都道府県に迅速に情報提供をするとともに、実情をきめ細かに把握して都道府県に助言等を行うことにより、できる限り円滑に実施されるよう努めてまいります。

 次に、ワクチンの接種費用について、無料化するなど公的補助の範囲を広げるべきではないかとのお尋ねがありました。

 今回のワクチン接種は、個人の重症化防止を目的として実施するものであり、その費用負担は、予防接種法の定期接種に準じて実費を徴収することとしております。これは、季節性インフルエンザと同様の仕組みでございます。

 同時に、低所得の方が接種を受けることができるよう、市町村民税非課税世帯を念頭に、市町村が負担軽減できる措置を講じ、国がその費用の二分の一を補助することとしております。

 次に、新型インフルエンザの予防接種による健康被害に対する給付の額についてお尋ねがございました。

 今回の新型インフルエンザの予防接種は、季節性インフルエンザと同様に、あくまでも希望する方に接種するものであり、接種を受ける努力義務が課される、はしか、ポリオなどの一類疾病の予防接種とは異なると考えております。

 このため、新型インフルエンザ予防接種により健康被害が生じた場合の救済措置については、接種を受ける努力義務が課されない予防接種法上の二類疾病の定期接種と同様の内容とすることが適当と考えました。

 なお、給付水準のあり方については、今後、予防接種法の給付のあり方を含め、次期通常国会への法案提出も視野に入れつつ、速やかに検討を進めてまいります。

 次に、予防接種法の見直しについてのお尋ねがございました。

 新型インフルエンザに関する予防接種のあり方については、法案附則第六条に基づき、次期通常国会への法案提出も視野に入れつつ、速やかに検討を進めてまいります。

 一方、新たなワクチンを定期の予防接種の対象に位置づけること、この御提案につきましては、引き続き検討を要する重要な課題ではありますが、今後、有効性、安全性などに関する科学的な知見等に基づき十分に議論していくことが必要と考えております。

 次に、ワクチン行政のあり方の見直しについてのお尋ねがございました。

 ワクチン行政につきましては、新型ワクチンの開発促進等産業政策の側面、医薬品としての承認等の規制の側面、感染症の予防対策の側面等々の業務について、各担当部署が連携をとりながら推進をしているところでございます。

 一方、担当部署が多岐にわたることから、おっしゃるように縦割り行政との御指摘も確かにいただいており、我が国の円滑なワクチン施策に支障を及ぼすとの御意見もあります。

 今回の新型インフルエンザの発生等を踏まえ、ワクチン行政のあり方について総合的に検討することが必要と考えておりますので、今後とも御指導を賜りますようお願いを申し上げます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題になりました新型インフルエンザ予防接種による健康被害における救済の特別措置法について御質問をいたします。(拍手)

 本年三月にメキシコで発生した豚由来の新型インフルエンザが世界じゅうで猛威を振るっています。しかし、当初、新型として発生が予想された高病原性の鳥インフルエンザとは異なり、今回の新型インフルエンザウイルスは、季節性並みの病原性であること、伝播力は高いものの、健康被害や社会的影響は甚大ではないという評価は、比較的早期に国際的にも共通の認識となりました。

 このような状況の中、政府は、新型インフルエンザ対策の基本的考え方を、基礎疾患を有する者等重症化しやすい者を守り、死亡者や重症者の発生をできるだけ抑制すると示しました。

 私どもは、これらの政府方針について基本的に賛同するものですが、以下、改めて大臣の御所見を伺います。

 初めに、まず何よりも、新型インフルエンザウイルス並びに新型インフルエンザの病状についての正確な情報の提供、並びにワクチン接種における丁寧な説明についてお伺いいたします。

 この間、メディアを通して、重症例、死亡例などが取り上げられることが多く、国民は不安な思いを強くしておりますが、我が国は入院率、死亡率ともに諸外国に比して低いことも指摘されております。

 また、予防接種は、あくまで個人防衛の手段として個人がリスクとベネフィットを勘案し選択するものであり、社会防衛的な観点で行うべきものでもありません。新型インフルエンザに関して、冷静な情報の提供とともに、ワクチンの効果は限定的であること、接種は任意であることを改めて周知徹底していただきたいが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

 次に、ワクチンの副作用被害救済のあり方についてお伺いいたします。

 現在、季節性インフルエンザワクチンによる副作用については、六十五歳以上の定期二類接種の場合は予防接種法、それ以外の任意接種の救済は医薬品医療機器総合機構法によりますが、どちらも補償内容は十分とは言えません。

 そもそも、副反応報告数に対して救済申請件数がその二割にも満たないのが実態です。今回、接種後の副反応事例については、厚生労働省に情報を一元化するダイレクトエントリー窓口が設けられましたが、情報収集にとどまらず、被害救済の申請も並行して受け付けることで申請漏れを防ぎ、早期の救済認定につなげることができるのではないでしょうか。

 また、接種と発症の因果関係が明確に否定できない場合は救済の対象とすること、すなわち、挙証責任の転換と、審査経緯と結果を速やかに公表することの二点を新法に明確に規定していただきたいが、これらについて大臣の御所見をお聞かせください。

 次に、入院患者に対するデータの集積と分析の必要性についてお尋ねいたします。

 十一月十一日現在の入院患者数は六千三百人、死者数は四十七人と公表されています。入院患者に対してウイルスの遺伝子検査を確実に行い、新型インフルエンザだけでなく季節性インフルエンザについても発生・分布状況や臨床像を把握することは、ウイルスの変異予測も含め、今後のインフルエンザ対策に不可欠です。

 季節性インフルエンザ対策を含めた地道で日常的なサーベイランス体制の充実とデータの集積、公開の重要性について、大臣の御所見をお聞かせください。

 次に、医療提供体制の確保についてお伺いいたします。

 五から九歳を中心とした子供は、他の年齢に比べて重症患者が発生する割合が特に高いとの集計結果を厚生労働省がこのほど発表いたしました。国立感染症研究所の最新のまとめでも、今月一日までの一週間の推計患者数約百五十四万人のうち、十四歳以下が百九万人と七割を占めており、夜間・休日診療所には患者さんが殺到しております。重症化した小児の入院ベッドの確保、地域の受け入れ実態把握について、大臣のお考えをお聞かせください。

 最後に、政府は、このたびの新型インフルエンザワクチンの確保に関して、優先接種対象者の選定や接種回数についての議論は公開してきましたが、不足分のワクチンを輸入で補うことについては既定方針とされてきました。しかし、安易に輸入に頼ることは賛成できません。海外でもまだ臨床試験中であり、その安全性、有効性については、我が国では十分な検証、判断材料を持ち得ません。

 国産ワクチンにおける副反応報告もふえつつある現在、すべてのワクチンの臨床試験のプロトコールを含め、承認前からの情報公開を徹底する必要があること、安全性が第一であることをつけ加えて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣長妻昭君登壇〕

国務大臣(長妻昭君) 質問をいただき、ありがとうございます。

 新型インフルエンザワクチンの効果等について正しい情報を提供するべきとのお尋ねがございました。

 新型インフルエンザワクチンの接種は、多くの方々に重症化の予防というメリットをもたらしますが、感染を防ぐ効果は証明されていないなど、一定の限界もあります。

 接種を希望される方には、ワクチンには効果もありますけれども一定のリスクがあることを御理解いただいた上で、各個人の御判断に基づいて接種を受けていただくことが必要であります。

 これまでも、新型インフルエンザの特徴やワクチンに関する情報などについては、さまざまな手段により情報提供を行ってきたところですが、今後とも、ワクチン接種後の副反応に関する状況も含め、ワクチンの有効性や安全性に関する情報について、できる限りわかりやすく国民の皆様方に対して提供をしてまいります。

 次に、インフルエンザワクチンによる健康被害の救済制度についてお尋ねがありました。

 新型インフルエンザワクチンについては、法案成立後、医療機関からの副反応報告や健康被害救済の相談について、厚生労働省において、御指摘のように、一元的に窓口を設けることが必要だと考え、それを実行する予定としております。

 予防接種法に基づく健康被害補償制度については、ワクチンと健康被害の因果関係が明確に証明できない場合でも、医学的に妥当であれば救済の対象としているところであり、新型インフルエンザの予防接種についても同様の扱いとするものであります。また、審査内容等についても、個人情報の取り扱いに留意しつつ、迅速に公表をするよう検討してまいります。

 次に、季節性インフルエンザを含めサーベイランス体制を充実するべきとのお尋ねがありました。

 感染症対策を的確に行っていくためには、季節性インフルエンザを初めとして、各種感染症の動向を継続的に把握することが重要であると認識をしております。

 現在、厚生労働省が行っている新型インフルエンザのサーベイランスでは、季節性インフルエンザのサーベイランスで行ってきた調査に加えて、手厚い調査を実施しているところであります。

 今後は、季節性インフルエンザの流行に際しても、新型インフルエンザにおいて新たに導入した調査も活用して、きめ細かいサーベイランスを実施できないか検討を行ってまいります。

 ちなみに、現在行っております季節性インフルエンザサーベイランスにおいては、約五千の定点医療機関からの情報による患者発生動向調査、そして約五百の定点医療機関からの情報によるウイルスに関する調査、これは季節性で行っております。

 新型インフルエンザサーベイランスは、今の季節性で行っている二つに加えて、入院患者の数やその重症化の状況に関する調査、そして死亡者の状況調査を行っているところでありますけれども、これに加えて、さらにきめ細かいサーベイランスを実施できないかどうか、私どもとしても検討をしてまいりたいと考えております。

 そして、次のお尋ねでございますけれども、新型インフルエンザの小児患者に対する医療体制の確保についてであります。

 厚生労働省では、各自治体に対し、小児のインフルエンザ患者を受け入れできる専門医療機関の確保も含め、地域の実情に応じた対策を講じるよう依頼をしております。特に、インフルエンザ患者が増加している自治体に対して、個別に、夜間、休日の救急外来の状況や入院患者の受け入れ状況などを調査、確認し、必要に応じて対策に関する助言等を行っております。

 今後とも、このような取り組みを通じて、地域の実態を把握し、小児を含め、新型インフルエンザ患者に対する医療体制の確保に努めてまいります。

 次に、輸入ワクチンの安全性に関する情報公開についてお尋ねがございました。

 輸入ワクチンについては、鶏卵ではなく、細胞で培養されたものであることや、アジュバント、これはワクチンの作用を高めるために投与される免疫増強剤のことでございますけれども、このアジュバントを添加しているものであることなど、国内で未使用のものが含まれており、安全性、有効性の評価を慎重に行わなくてはならないと考えております。

 また、御指摘のとおり、輸入ワクチンは、社会的関心の極めて高い医薬品であることから、特例承認の前に、臨床試験結果等を取りまとめた報告書や申請資料の概要について厚生労働省のホームページ上で公開するとともに、薬事分科会で公開の審議を行うなど、国民の皆様に積極的に情報をしてまいる所存でございます。

 以上であります。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣  藤井 裕久君

       文部科学大臣  川端 達夫君

       厚生労働大臣  長妻  昭君

       経済産業大臣  直嶋 正行君

       国務大臣  亀井 静香君

       国務大臣  菅  直人君

       国務大臣  平野 博文君

 出席副大臣

       内閣府副大臣  大塚 耕平君

       厚生労働副大臣 長浜 博行君


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